1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年四月一日(水曜日)
午前十時三十四分開議
出席委員
委員長 加藤常太郎君
理事 秋田 大助君 理事 上林山榮吉君
理事 佐藤洋之助君 理事 志賀健次郎君
理事 森山 欽司君 理事 大柴 滋夫君
理事 森本 靖君
小渕 恵三君 木部 佳昭君
小泉 純也君 佐藤 孝行君
本名 武君 山本 勝市君
山本 幸雄君 安宅 常彦君
片島 港君 下平 正一君
永井勝次郎君 畑 和君
受田 新吉君
出席国務大臣
郵 政 大 臣 古池 信三君
出席政府委員
郵政政務次官 金丸 信君
郵政事務官
(簡易保険局
長) 田中 鎭雄君
委員外の出席者
大蔵事務官
(銀行局保険第
一課長) 中込 達雄君
専 門 員 水田 誠君
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三月二十八日
委員佐藤孝行君辞任につき、その補欠として前
田正男君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員前田正男君辞任につき、その補欠として佐
藤孝行君が議長の指名で委員に選任された。
四月一日
委員大高康君及び畑和君辞任につき、その補欠
として山本勝市君及び久保田鶴松君が議長の指
名で委員に選任された。
同日
委員山本勝市君辞任につき、その補欠として大
高康君が議長の指名で委員に選任された。
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三月二十八日
香川県塩江町に簡易保険保養センター設置に関
する請願(大柴滋夫君紹介)(第一七五六号)
同(栗原俊夫君紹介)(第一七八二号)
同(成田知巳君紹介)(第一七八三号)
同(藤本孝雄君紹介)(第一七九六号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
電話設備の拡充に係る電話交換方式の自動化の
実施に伴い退職する者に対する特別措置に関す
る法律案(内閣提出第三七号)
日本電信電話公社法の一部を改正する法律案(
内閣提出第六七号)
簡易生命保険法の一部を改正する法律案(内閣
提出第九三号)(参議院送付)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/0
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001・加藤常太郎
○加藤委員長 これより会議を開きます。
電話設備の拡充に係る電話交換方式の自動化の実施に伴い退職する者に対する特別措置に関する法律案、簡易生命保険法の一部を改正する法律案及び内閣提出の日本電信電話公社法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、審査を進めます。
質疑の通告がありますので、これを許します。受田新吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/1
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002・受田新吉
○受田委員 最初にお願いしておきますが、民間保険との保険料率の問題を比較したいと思いますので、関係者をお呼び願いたい。
それから、政府から資料を出していただいておるので、参考資料——願わくば、料率の変更の経緯を示す資料をひとつお出し願いたい。つまり、民間保険が最近保険料を引き下げておる。既加入者については、配当を増額する、こういう措置をこの四月一日からとっておるわけです。その関係がありますので、簡保のほうの保険料算定基礎である死亡率、余命表等を十分参考にされた保険料算定基礎をお示しを願いたい。次回の委員会までに御提出をしていただきたい。民間保険との比較で出していただくとたいへんけっこうだと思います。
私は、今度の改正案の骨子である最高制限額の引き上げについては原則として賛成であります。従来この最高制限額が五十万円に押えられていたということについては、いろいろと大蔵省との折衝など、民間保険との関係などでそういう事態が続いたと承っておるのでございまするが、長期にわたってこの最高制限が終始民間保険の下位に置かれてきておる事情、そうしてこのたびこれを一挙に倍額に引き上げられるに至った事情を、掘り下げた立場で御説明いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/2
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003・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 従来から簡易保険の最高制限額はたびたび引き上げられたのでございますが、その際民間保険との関係を考慮いたしまして大蔵省方面と折衝いたしたのは事実でございます。従来は、とかく民間保険のほうで簡保の最高制限額が引き上げられると民業圧迫になるというような意味合いからこれに反対の声もあったようでございます。今回は五十万から百万に引き上げるという際に、民間におきましてはほとんど反対という声はありませんでした。従来から私どもの立場といたしましては、簡保の制限額を引き上げても民保の業績を圧迫することはないのだということを、そのたびごとに主張し、また、るる説明してまいったのでありまするが、事実もそのとおり、過去の引き上げ後の実績を簡、民保比較いたしましても、民保の業績がそれによって阻害されたという事実は全くございませんで、ここ数年民保の業績の伸びは著しいものがあるわけでございます。今回の五十万から百万という大幅の引き上げでありまするが、民間保険におきましても無審査の限度が、現在簡保と同様五十万でありまして、業界におきましても、これを百万に引き上げたという声もかなり各方面にあったようでありまして、一部ではこれに同調しない向きもあるやに聞いておりましたが、全般的にはこの際ぜひ無審査の限度を百万に上げたいという民間保険の要望とわれわれの主張とたまたま一致いたしまして、今回は比較的スムーズに両者の話し合いがついたのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/3
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004・山本勝市
○山本(勝)委員 関連。簡易保険の満期による払い渡しの手続について、一問だけちょっとお伺いしたいのであります。
従来五万円以上の契約の場合には、満期で払い渡す場合に、本人の住民票または戸籍謄本を持ってこなければ渡せないということになっておるようであります。実は十年間同じうちに通って、そして簡易保険を勧めて入っておるのに、十年たって満期になったときに、支払う場合に、本人か本人でないかを確かめる必要があるというのならまだ理由はわかるのですけれども、本人であろうがなかろうが、ただ生まれた日が間違っていないかどうかを確かめるためだ、こういうふうに郵便局のほうで言っておるわけでありますが、同時に、郵便局の話を聞きますと、実は自分たち現場でも困っておるのだ、せめて五万円を十五万円ぐらいまでは、そういうめんどうな手続がなくても、本人のうちは十年も通ってわかっておるんだから、そういう書類を添付しないでも払えるようにしてほしいということを、局の連中が集まっていろいろ陳情をしておるんだという話です。私自身、実はそれにぶつかって、なるほどそんなめんどうなことがあるのか、本人を確かめるというのならまだいいのでありますけれども、ただ生まれた日を合わせるというだけにそういう手続をとる、ことに十年でありますから、私の場合などは、女の子でもう遠方へかたづいてしまって、うちにいない。それを住民票を取り寄せるとか、戸籍謄本にしても遠方へまた取りに行かねばならぬ。こういうめんどうがあるのですが、当局では、これを引き上げる、つまり五万円以下は要らなかったのを、五万円以上はそういう書類が必要であったけれども、物価その他の関係で現場の連中が言っておる希望に従って、それに従って考慮する措置があるのかどうか、この一点だけお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/4
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005・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 ただいまの御趣旨、私どもといたしましても、簡易保険という性格から、そのような御要望があるのはまことにもっともなところと存じます。現在約款の七十八条で満期保険金支払いの際には被保険者の戸籍あるいは住民票の謄本、抄本といったようなものを要求しておるわけでございますが、通達で、五万円に満たない場合には、そういったものを省略してもよろしいというたてまえになっておるわけでございます。今回この法律改正によりまして、契約し得る最低限というものは従来の一万円が五万円に引き上げられるということになりますると、この辺から現在の五万円をある程度引き上げてもいいのではないかということになるわけでございまして、実際問題といたしましては、現在の満期は、大体最高限度が八万円時代のものが現在満期になっておるわけでございますが、本日から十五万のものも出てくる可能性があるわけでございまして、その辺を考慮いたしますると、いま省略し得る金額ははたしてどの辺に置くべきか。十五万か、あるいは十万か、いずれにいたしましても、先生の御趣旨に沿って、この辺を改正いたしたいと思いまするが、金額の点につきましては、もうしばらく検討さしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/5
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006・受田新吉
○受田委員 最高制限額引き上げの経緯、特に大蔵省との折衝、了解点に達したこと等で当局の御説明を了とさしていただきます。ただ、ここで、百万円という金額はその保険の目的を果たす金額として適当であるという御判断がされておると思うのですけれども、その百万円を老後の保障あるいは死亡時の遺族保障として最高限額に定められた、その面からの御説明をちょっとしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/6
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007・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 老後の生活安定費ということにつきましては、第十回生命表によりますると、五十五歳の平均余命は男子が一八・五四、それから女子が二一・六一年でございます。それから七十歳の平均余命は、男子が九・一三年、女子が一〇・九五年でございます。男女平均いたしまして五十五歳の平均余命を二十年、それから七十歳の平均余命を十年といたしたわけでございます。利率は年五分と押えまして、年金を年中央支払いといたした場合、年金現価率を見てみますると、二十年の場合が一二・七七、十年の場合が七・九一二四という数字が出てまいります。総理府統計局の調査によりまする勤労者世帯の収入及び支出、これは全都市でございますが、それの昭和三十七年中における一カ月平均の家族一人当たりの実支出総額は一万三百六十六円、年額で十二万四千三百九十二円ということになります。したがいまして、満期保険金として必要な額はこの両者をかけた額ということになりまして、結局五十五歳満期の場合は百五十八万八千四百八十六円、それから七十歳満期の場合は九十八万五百五円、こういう数字が出てまいります。この辺を見てみますると百万が妥当な線である、こういうふうに考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/7
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008・受田新吉
○受田委員 毎勤統計を一部基礎にされておられるようですが、そういう点から考えてみますと、もう一つ国民年金制度との関係です。国民年金制度なるものをどういうふうに最高制限額と対照的に御考慮されておられるか。老後の生活費というもの及び余命表によるところの平均を基礎にしたある期間の生活費というものを十分考慮された結論だと思っているのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/8
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009・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 国民年金制度の内容でございまするが、これはかなり増額されておるようでありまするが、現在のところそれによっていわゆる任意保険が影響を受けるという段階には至らないというような考え方から、これにつきましては、最高制限額の引き上げの際にほとんど問題にいたしたことはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/9
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010・受田新吉
○受田委員 もう一つ郵政省関係で郵便年金制度というものがあるのです。この郵便年金制度なるものは、養老保険との関係で当然考慮されるべきものである。この年金額の増額というものも含んで御検討をされておると思うのですが、これとの関係を御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/10
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011・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 郵便年金制度は確かに国民年金というものと絶えず相関連するものでありまするし、そういったものも郵便年金の経営の上からはいつも注意しておかなければならない点だと存じます。現在年金の最高額は二十四万円ということでありまするが、これを引き上げるかどうかという点も一応考慮はいたしました。ところが、現在の年金の実績を見てみますると、その最高額をいま引き上げるといったような、そういう実績がほとんどございませんで、九〇%以上が現在は小額年金であるという姿でもございまするし、これは必ずしも好ましい姿ではないのですが、現実がそういうことでありますので、年金につきましては今回ほとんどといいますか、全く手を触れられなかったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/11
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012・受田新吉
○受田委員 郵便年金というものも同時に検討を必要とするものだと思うのです。実際の利用度が低いというようなことは、啓蒙の足りなさを物語るものなんで、この点につきましては、老後の生活の保障、蓄積した資金を一定の年齢以後において、生活補給金として支給されるような体制に国の企業としてなされている以上は、当然あわせて検討すべき問題だと思うのです。これは政府官営事業ですから、官営事業がおざなり、場当たり的なものであってはならない。積極的にその効果を周知徹底させる努力をされる必要がある。周知徹底に事を欠いて、この利用度が低いなどということでは、国の事業としてはたいへんな欠陥を生じてきておるわけなんですが、周知徹底に事を欠いておるような面があるのではございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/12
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013・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 まことにごもっともな御意見でございまして、私どもといたしましても郵便年金制度の普及開発ということにはかねがね努力をいたしておるつもりでございます。現実の姿は、終身年金につきましては、特に戦前に契約された小額年金が現在無価値にひとしいというようなことで、かなり批判の声も出ております。保険ですと、保険金の支払いで契約者との関係は一応そこで断ち切られるわけでございますが、年金は生存中は毎年四回にわたって年金を支払う、そのために、契約者のほうでは、何だ、つまらない金額だというようなことが思い知られるような仕組みになっておるのでありまして、そういったような終身年金に対する要望といいまするか、加入意欲というものがかなり阻害されておるという点は事実でございます。そういうようなことで、現在は定期年金が大宗を占めておるといったようなことになってしまったわけでありますが、これを根本的に打開するためには、年金制度につきまして相当抜本的な改正をなさなければ、この現況を打破できないのではないかというふうに私どもも考えておりまして、もう数年来鋭意検討はしておるところでございます。現在まだ確たる成案として先生方にお見せするまでには至っておらないのはまことに残念なことだと思っておりますが、今後も引き続きましてこの問題につきましては十分に検討し、勉強をしてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/13
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014・受田新吉
○受田委員 これは郵便年金法の第一条の目的にも、低廉な掛け金で「国民の経済生活の安定を図り、その福祉を増進する」と書いてある。いまたまたま局長が御指摘されましたように、戦前の郵便年金契約者なるものは、現にもうたばこ代にも当たらない程度の年金しかもらっていないわけです。これは経済生活の安定になりません、福祉の増進にもなっていません。郵便年金法の目的から離れております。この点をいまはしなくも仰せになったのだと思うのでありますが、御検討をされるということになるならば、たとえば共済年金制度等各種の年金制度がありますが、適当な時期にそのときの経済情勢に適応するような年金額の改定などを含むという検討でございますか、いかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/14
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015・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 将来の経済情勢がどう変転するか、これはいろいろ御議論のあるところであろうと思いますが、物価にスライドした変額年金ということも一つの方法であろうかと思っております。私どもといたしましては、現在戦前のいわゆる小額年金につきまして、これを何とかこのままでなくて多少の色をつけて整理するか、それから年金の利回り向上をするか、年金の積み立て金だけを保険と別個のものにしてもより有利な運用をはかって、その面から加入者の利益を増強していく、こういった面も考えておるわけでありまして、現在のところはその小額年金をどうするかという点にまず手をつけるべきではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/15
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016・受田新吉
○受田委員 小額年金というのは、どの程度のものをさしておられるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/16
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017・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 二十一年以前の契約を私ども小額年金と申しておるわけでございます。件数にいたしまして八十八万件ほどございます。これは一件平均年金が百七十五円ということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/17
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018・受田新吉
○受田委員 まあ二百円にも当たらない年金、これは保険金の最高制限額の変更表を拝見いたしましても、大体昭和二十一年を契機にして、自後二十三年には保険金最高制限額も五千円から二万五千円と五倍に一ぺんに上がっておる。上昇率もこのときが一番高いわけです。そういうことで終戦当時までは比較的安定しておった物価事情が、自後急速にインフレの弊害を生み出しておるということを検討したときに、そこに小額で二百円か三百円のようなわずかな年金がいまごろまで生きておるというそのことはナンセンスなんですよ。これは全くナンセンスです。ピース四個か五個かしかないような年金をもらって、郵便年金の恩恵を謳歌するわけにいかないわけなんです。戦前は血のにじむような高価な掛け金をして、今日まことにナンセンスな年金をもらっているというこの事態は、これは何とかひとつ検討されないと、郵便年金制度に対する今後の契約を増強する上においても非常な欠陥が起こると思うのです。政府としていま局長さんが指摘されたような問題点を真剣に早急に検討していただいて、何とか結論を出していただこうじゃないか、郵政大臣、いま局長さんも検討しておられるということを伺ったわけですが、戦前の契約者が今日あわれむべき年金をもらっておる、郵便年金に対する不信感、これはよし国の戦争という悲劇の生んだ所産であるとはいいながらも、八十数万件という数字もいまおあげになっておられましたけれども、これは何らかの措置をしてあげる必要はないかと思うのですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/18
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019・古池信三
○古池国務大臣 ただいまの御意見はまことに私も御同感でございまして、その原因は、御承知のように終戦直後のあの日本として、未曽有の悪性インフレーションのために通貨価値が一ぺんに非常な下落をした、その結果、郵便年金の上においても思わざる影響を来たした、こういうことでございまして、今日、当初の趣旨が達成できないということも、まことにそのとおりでございます。しからばこれをどういうふうに措置すべきかということを従来も郵政省においていろいろと苦心をして検討してまいったのでありまするが、今日においてまだ具体的な対策ができ上がるまでに至っておりません。要するに、この郵便年金事業の会計の中においては、原資としては知れたものでありますから、その原資全部投げ出したところが、とうていその御期待に沿うような金はないわけです。しからばこれを一般の国民の税金でまかなうということがはたしていいかどうか、郵便年金事業というものは非常に普及はしていたとは申しながら、国民の全体からいえばその一部にすぎない人であります。その一部の人の救済のために一般の税金を使うことがいいかどうかというところにこの問題の非常に困難性があると思っておりまするが、御趣旨は全く私も同感に考えておりますので、今後十分にひとつ検討して考えていきたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/19
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020・上林山榮吉
○上林山委員 関連。この郵便年金制度をどうすればいいかという問題について、郵政省が非常に苦心をして研究を続けておるようでありますけれども、一向にその結論が出ないのです。
そこで私は大臣に伺いたいのですが、事務当局ともよく打ち合わせた結果であろうと思いますが、この制度を存置すべきであるかどうか、存置するとすればこのままでいいかどうか。こういう質問をなぜするかといいますと、ただいま御論議になっておる点もさることながら、国民年金あるいは福祉年金その他の年金制度というものが、国家として福祉国家をつくっていく前提のもとに非常に力を入れてきたが、さらに飛躍的な充実をはかっていかなければならぬ。これはもう当然のことであり、私どもこれを強く主張しておる一人です。そういうようなたてまえから、いまの小額の郵便年金あるいは最高を二十四万円とする郵便年金、こうしたようなものがはたしてどれだけの意味を持つものであるかということを私は考えておる一人です。だから、経過的な措置は郵政省として親切に扱っていかなければならぬけれども、しかしながら私は、これをそういうような意味においては廃止すべきじゃないか、しかしどうしても御研究の結果廃止することができないというなら、これが存在の意味があるような抜本的な改正にもう踏み切らなければならぬのじゃないかと思うのです。私は局長もこれを発展せしめ得る自信はないだろうと実は思っている。だからこれを存置するとすればどういうことをやるのか、あるいはいま存在の意味があるのか、この根本の問題を掘り下げておやりにならぬと、二年や三年御勉強になったって私は結論は出ないと思うのです。生きる道ありやいなや、あるとすればどういう方向をたどるべきか。私は、経過的措置は親切にいろいろしてあげなければならぬけれども、場合によっては、こういうものは廃止して、むしろ保険事業というものに重点を置いてやっていくということが、いわゆる前向きの近代化であろうと思うのです。これに対する話をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/20
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021・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 現在の年金制度の存在価値という点が問題でございますが、現在の年金制度そのものは、私はりっぱな制度だと思っております。国民年金との比較の点でございますが、現在の国民年金の給付の内容を見てみますと、月に千円から二千円足らずというようなことでありまして、やはり老後の生活安定という点を国民各人が考えた場合に、現在のいわゆる郵便年金制度のうちの終身年金におきましても、そういった国民年金制度を補完する、あるいはみずからの努力、節約によって将来に備えるという点から、十分の意義があると思うのであります。利回りその他の点を比較いたしますと、現在たとえば預貯金あるいは信託というようなものに比較いたしますと、必ずしも十分ではありませんが、やはり終身年金を得られるという点は、預貯金といったものと本格的に性格が違うわけでありまして、そういう点に終身年金というものの意義は十分あると私は考えております。ただ、戦前の年金につきまして、まあこれは郵便年金制度自体が招いたわけではないのでありますが、国の経済事情が急変したというようなことによりまして、戦前の年金に対する非難が郵便年金制度全般に対する非難、こういうふうにかかってきたように私どもは考えておるわけでありまして、したがいまして、先ほども申し上げましたが、将来の経済事情に即応してこれをどういうふうに改めるか、あるいは変額年金といったようなもの、物価にスライドしたものにする必要があるかどうかという点に議論のあるところでありますが、戦前の年金によって郵便年金制度すべてを律するのはどうかというふうに私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/21
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022・上林山榮吉
○上林山委員 戦前の問題は私も理解を持っておるつもりでございます。そこで二十一年以後のいわゆる新しい郵便年金の問題ですが、この問題も、ほかの保険や貯金の上昇率に比べれば低いのではないか、頭打ちの状態にあるのではないかというような気がしておるのですが、最近のこまかい数字を私は見ておらぬからわからぬのでありますが、どうも飛躍的な前進というものが見られていないと思うのです。だからこういうことに精力を使っているよりも、保険事業なら保険事業というものを改正して、時代に合ったような事業にしていくことが一番大事じゃないか。また、それならば、戦前の年金の非難を全体の年金の非難として批評されることは遺憾であるというお説であるが、私はこれもわかります。しかし、どうですか、これが発展策について、来年度あたりに、これ見ろ、このとおりやっていくのだという一つの前向きのいわゆる改正案というものを用意できますかどうか。私どもは、いまのやり方では、あなたの説明がどうあろうとも、あまり納得していないのです。これはお互いの仲ですから、あまりそう角を立てないだけの話であって、ほんとうはこういうものには私はたいして関心を持っておりません。魅力を感じておりません。とてもあなた方の手にはおえないだろうと実は考えておるわけであります。ひとつまじめに答えていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/22
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023・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 来年度までに成案を出せというおことばでありますが、 (上林山委員「できるかと言っているのだ。出せとは言っていない」と呼ぶ)来年度にこれではどうかという程度の改正案ができるかということでございますが、現在、来年度までにできるとはっきり申し上げることはいかがかと思います。私どもは、できるだけ早い機会にりっぱな改正案をつくり上げるという点に、従来にもまして努力をいたす考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/23
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024・古池信三
○古池国務大臣 これは私率直にお答え申し上げたいと思いますが、確かにいま上林山先生からのような御意見も一方において相当あるということは私耳にしております。郵政省はもう簡易生命保険一本に全力を注いでやるべし、郵便年金事業は、周囲の情勢も非常に変わってきておるし、これはむしろこの際やめてしまったらどうか、こういう御意見も私伺っております。そうして最近の伸び率もどうかといいますと、確かに伸びておりますけれども、簡易生命保険に比べると伸び率はやや緩慢であるように思います。その理由の一つとしましては、やはり潜在的に、終戦後のあのインフレーションによって通貨価値が非常な下落をした。だから、いま年金に加入しておいても、将来一体どうなるか。いま高い価値の通貨で払い込んでおいて、十年、二十年先において安い通貨で支払われたのでは損だからということがやはり潜在的にあるのじゃないか。そこで、これは年金ばかりじゃないかもしれませんけれども、特に最も露骨にそういう結果があらわれるのはやはり年金であろうと思います。そういうような点はございますが、しかし戦後のインフレというようなことは、これはほんとうに特殊的な条件であって、かようなことは二度と日本にはない、またあってはならない、かように私は考えております。そういう意味において、戦前のものは非常にお気の毒でありまするが、今後はそういうことを考えないで、やはりあくまで老後の生活安定という目標のために、新たな考えを持ってひとつやっていくということがよかろうかと思っておりまするが、しかし、ただいまのような御意見もありまするので、そういう御意見も十分頭に置きながら今後のあり方について検討してみたい、こう存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/24
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025・受田新吉
○受田委員 与党の有力な議員の御発言もあり、また野党は一致した見解で政府に迫っている問題でございますけれども、これは真剣に考えていただかなければならぬと思います。戦後二十年たって、戦前の当時の契約者は、もう年をとって、その老後の保障をいま現実に要求している人々です。それがたばこ代にも当たらないものでは困るという問題、それから制度そのものの問題、これは私も非常に懸念しておる問題ですけれども、簡易生命保険のほうは、死亡時における保障という魅力が一つある。そこに郵便年金との相違が一つあるわけでありますが、この郵便年金制度そのもののもう一つの問題は、国民年金は、その経済情勢の動き、物価の上昇等に伴うて適宜金額が改定される方向にあります。これは間違いない。世界の国々の実態もそうです。したがって郵便年金だけが据え置きで十年、二十年、五十年先に、いまの金額が保障されるということは、これは問題があるわけです。これは各種共済年金、恩給等におきましても、適宜ベースアップがなされております。そういうことを考えると、この貴重な現時点におけるお金を納めて、そうして力の抜けたお金を長い先にいってもらうというこの行き方については、十分検討しなければならぬ問題がひそんでおると思います。戦後二十年を経過しましたから、あまり時日をかけないで、早急に何らかの機関にかけてひとつ答えを出していただきたい。いつまでも答えを待つようであっては、戦前の契約者は死んでいきます。これは問題です。いまの上林山委員のお説まことにけっこうでございますが、早急に答えが出ますか、出ませんか。これはあまり時間をかけるべき問題ではない。もう十分検討しておられると思うのです。検討期が過ぎて結論を出す時期がきておると思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/25
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026・古池信三
○古池国務大臣 この問題は二つに分かれると存じます。将来郵便年金をいかにするか。ただいまお話にありましたように、やはりそのときどきの経済事情にマッチして、ベースアップのできるような制度にしていくかどうかという問題が一つと、過去において戦前の郵便年金に入っておられまする方々に対する是正の問題と、二つあると思います。それで、その将来にわたる問題については、十分検討してみなければいけませんが、ある程度計算のやり方によって可能な点もあるのではないかというようにちょっと考えております。もちろんこれはもう少し厳密に検討してみなくてはわかりませんけれども、およその筋としては考えられますが、過去の救済策については、今日までも郵政省の先輩がいろいろ考えてこられたんですけれども、いまだにこれはという妙案が浮かんでこないということは、要するにそれだけの何十億かかるか知りませんが、その原資をどこから持ってくるか、一般会計から持ってくると言えば、言うことはやすいのですが、しかしそれを言えば、今度はインフレーションによる影響は一に郵便年金事業だけではありませんから、他のほうにも直ちに波及していくということも考えなければなりません。したがって、これは半年、一年で結論を出せとおっしゃいましても、むろん私どもも結論が早く出るに越したことはありませんが、ここではっきりお約束することは困難じゃないかと思います。しかし、そういう御趣旨に沿って、今後できるだけ早くよい結果が生まれるように努力はむろん続けてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/26
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027・受田新吉
○受田委員 郵政職員——現場で保険加入、年金加入に努力される皆さんにしてみても、政府の腹がすわっていないと、第一線はたいへんな苦労です。労多くして報いられること少ないということになってくる。そこで年金契約者数があまり上昇しないという結論が出てくると思うのです。だから、この第一線で大衆に接触する人々自身にしても、希望と勇気を持つことができない。そこに仕事に張り合いが抜けてくるという問題にも関連すると思うのですがね。現にそういう状態じゃないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/27
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028・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 現実に毎年の新契約者の状況を見てみますと、毎年度とも、募集の目標額を上回った実績はあがっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/28
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029・受田新吉
○受田委員 この点は目標額そのものを上回っておることははっきりしておるのです。私は老後の保障という性格、老後の経済生活の安定ということを基礎にして、現時点における掛け金というものを考えていくのが一般の人情だと思うんですね。もらいますころに価値のないものをもらってはしようがないということが、一方不安がひそんでおる。この不安を一掃しなければならないというところに一つの経済政策と合わせた制度の御検討が必要である。この点十分含んで、ひとつ答えを早く出していただくように重ねて要望しておきます。
きょうここへ大蔵省の方が来ておられますから、民間保険と簡易保険との制度及び実態の比較、検討をさせていただきたいと思います。
今度民間保険は、保険料率の引き下げをきょうからなさるということに決定されたようです。これは大蔵省として何らかの確信を持って御指導された結果であろうと思うのですが、簡易保険との関係がございますので、きょうから引き下げられた事情を御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/29
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030・中込達雄
○中込説明員 お答えいたします。
実は保険料というものはいろいろな要素できまっておりまして、予定死亡率、予定利率、予定経費率という三本からでき上がっておるわけでございますが、ちょっと戦前と比較してまいりますと、戦前の保険料は各社まちまちでございましたが、大体三十年満期、三十歳加入という典型的なもので、平均保険料三十二円くらいでございました。ところが敗戦になりまして、非常に内容が悪くなったものでございますので、二十一年に保険料を三十七円に上げまして、内部留保につとめました。そこでその後だんだん死亡率及び予定利率あるいは経費の節減というようなことで強勉いたしまして、二十七年、三十一年、三十四年と三回の引き下げをいたしました。三十四年にその三十歳加入三十年満期というものが二十八円九十銭というきのうまでの保険料になったわけでございまして、戦前を下回るようになったわけでございます。これは普通養老保険について典型的なものでございますので申し上げました。
ところが、その後の各社の状況を見ますと、年々剰余金は上昇いたしまして、その中の大部分を配当というかっこうで契約者に返しておりまして、実質保険料の引き下げは行なっておるわけでございますが、もうこの段階におきましては、最初の保険料にこれを反映させていいではないかという判断に立ったわけでございます。
その一つの理由は、その二十八円九十銭の構成要素といたしまして、予定死亡率は第九回生命表というものを使っておりましたが、これは昭和二十五年の国勢調査によるものでございます。そこで、その次の第十回、昭和三十年の国勢調査の結果の生命表を使うほうが適当ではないか、こういう結論を得たわけでございます。もっとも三十四年以後三十六年くらいから、定期付養老という新種の保険については、もうすでに大部分の会社が第十回の生命表を使っておったわけでございます。そこでこのことについては、業界からもすでにそういう要望をする会社もございまして、適当ではないかという結論を得たわけでございます。
もう一つは経費の点でございますが、経費は、新契約費というものを対千、三十円、維持費が対千、五円、それから集金費を保険料の三%というように計算しておりますが、この維持費がだんだん機械化等によりまして節約できるという見通しがついておるものでございますので、各社の中には維持費を五円から四円に節約する、こういうものがございました。しかしこれは保険金額の大きいほうのものについて大体できそうだ、こういう営業上の見通しが立ったものでありますから、そういう会社について申請を了承しよう、こういうことになったわけであります。したがいまして、二十社ございますうちで十三社が、普通養老につきまして保険料の大体七%引き下げということで申請してまいりまして、認可いたしまして、きょうからこれを実施する。それから定期付養老につきましても、経費の面で節約できるという会社六社が、五円の維持費を五十万円以上四円、五十万円以下五円というように申請してまいりましたので、これも認可したという次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/30
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031・受田新吉
○受田委員 これは民間保険に一つ問題があると思います。大体有力な会社は、相互契約方式、相互組織にしておる。これがいま節約部分で維持費等についての努力はされておるようでありますが、相互組織と称して、実は会社の重役が一般の企業会社と同じような規模で優遇され、ぜいたくな行動をし、そうして政治献金までする会社が出てきた。これが問題です。民間の零細な金を集めて、特定の政治目的のために献金をしておるというような余裕まで出るということになったら、これは生命保険会社としては私は許されないと思うのです。いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/31
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032・中込達雄
○中込説明員 剰余金が、先ほど年々増加いたしておりますと申し上げましたが、三十七年度決算で申しますと、剰余金が約六百億ございますが、これは法律上九割以上契約者に返すということになっておりますので、実際は約七%くらいが公共事業等に対する寄付あるいは重役の賞与等に使われております。重役の賞与等につきまして、私ども報告を受けておりますが、大体保険会社の上位五社については、都市銀行の重役の平均賞与よりも下回っておる。それから下のほうはずっと少なくなっておりますので、これはいま認可制にはなっておりませんので、事後の報告になっておりますけれでも、そういう点もよく見て冗費を使わないように監督しておるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/32
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033・受田新吉
○受田委員 私が判断をしたところでは、やっぱり相互組織と言いながら、一般の株式組織と同じような形態をとって、そして社長、重役なるものが、非常なぜいたくな会社の経営をやっておる。それから、これに反して外務職員なる者は、もう割り当てを受けて四苦八苦して、たいへんな苦労をして収益が上がらないという。これはあまりにも資本主義の露骨な欠陥が生命保険会社にあらわれておるのですね、現実問題として。これはやはり経費の節約をするという点において、もっともっと大衆組織の基盤に立つ経営をやってもらわなければならないと思うのです。民間保険の外務職員というのは、これは残酷ですよ。勤務時間といい、それから、割り当てを実施しないときの精神的な苦痛といい、容易ならないものがあるのです。そして、いわゆる幹部職員になると、その末端を、ちょうど往年の軍部が叱咤激励するように、割り当てを実施しない者に対してきびしい制約を加えて励ましておる。励ましているのじゃなくてむちうっておるのです。この実態は生命保険事業として非常な問題がひそんでおる。これは大蔵省として十分監督してもらわなければいかぬ。特に相互組織と、いかにも皆さんの集めた掛け金はみんな皆さんのほうへ分配するんだという美名のもとに、その内容がはなはだ警戒すべき実態であるということを大蔵省は御存じでしょうか。いまちょっと一例を示されましたけれども、そんな問題じゃないのです。もっと深刻な問題です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/33
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034・中込達雄
○中込説明員 お答えします。
相互組織につきましては、うちの大臣もすでに、これでいいかということで、いろいろ検討しておりまして、これは株式会社のほうがいいのじゃないか、こういう考え方もございます。ただ保険は相互扶助の組織でございますので、これが、一番最後のところでもし清算したら、一体財産はだれのものかということから考えますと、相互組織のほうがいいわけです。相互組織のどこに欠陥があるのかというと、運営上に欠陥がある。そこで、いま総代会というのを開いてやっておるのでございますが、その総代会の選出のしかたは、地方別に代表者を選んでおり、それは全部契約者の代表として来ていただいてやっておるのですけれども、しかし、やっぱりそういうところに問題がある。したがって、そういう点をもっともっと公益的な人を入れたらどうか。あるいは重役の中に公益的な社外重役を入れたらどうかというような問題につきましては、私ども内部的には検討いたしておりますが、まだ外部に打ち出す段階にはなっておりません。
それから相互会社の考え方といたしましては、先ほど先生もおっしゃいましたように、やはり公共的な機関運営ということで運営するように私どもも指導しておるつもりでございます。
次に外務員の問題でございますが、御指摘のように三十八年三月末で登録しておる者が約五十二万人で、三十七年度中に採用したものが約三十万、落ちた者が二十五万というように、非常に一年間に異動が激しい。こういう実態にありますために、募集上に欠陥があるということは、私どももすでに指摘しておりまして、業界とともにこの募集体制の近代化というものについては、何とかもっと優良な契約を取るような人たちを集めて、そうしてその人たちの募集のやり方も、もっと長期的な募集、要するに固定給の増加というようなことで優良な契約が取れるようなシステムはできないかという点につきましては、ただいま検討中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/34
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035・受田新吉
○受田委員 いま数字をお示しいただいて、私自身が考えたよりも激しい状態です。外務職員の半分も異動していくというようなことは、最初顔がきくときだけ外務職員をやらして、顔がきかなくなったら、おまえだめだといって首にするという実態です。こういう制度は、非常に不安定な、邪道である。その問題のあるところを十分大蔵省はいま御存じになっておる。その問題を十分心しておられる以上は、これに対する経営面、運用面、募集面の欠陥を十分是正して、国民みずからが保険会社に加入を申し込んでくるような——保険外務職員なる者が毛ぎらいされながら各家庭を訪問するといういき方でなくて、根本的に保険制度を理解し、国民が協力するような形に政府が指導される必要があると思うのです。二十五万という人々が首を切られていくということはたいへんな事態だと思うのです。こういう不安定な実態を早く打開するように大蔵省として十分指導監督をしていただくことを要望いたしておきます。
ここで、郵政大臣も、同じ官営保険の事業を担当されておる最高責任者でございますが、民間保険との関係で、国務大臣として十分比較検討の上で、これが是正策を閣議で御発言されて運用の妙を得られるように御要望しておきます。
ここで簡易保険との比較に入ります。今度簡易保険の新しい制度として特別養老保険なるものを始められて、いわゆる定期性を持った死亡保障ということになりますか、そういう性格のものを今度御採用になっておるわけです。これは、民間はすでにずっと前からやっておることは、いま御報告になっておりましたけれども、これを採用されたということは、保険制度本来の使命を果たす上においてけっこうなことだと思います。いま大蔵省の中込課長のお説によりますと、その保険料計算の基礎に第十回生命表を採用されたということです。ところが、郵政省としては、今度純保険料の計算基礎を第十回生命表の男子死亡率に合致せしめられて予定利率を年に四分下げておる。この根拠は、もっと掘り下げた御説明をしていただかないとはっきりしないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/35
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036・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 今回民間保険におきましては、一般の養老保険につきまして十回表を採用したということでありますが、簡保は三十六年からすでにこれを採用しておるわけでございます。男子の死亡表について保険料の計算をする、これは官民ともに同様でありまして、従来からそういうやり方をしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/36
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037・受田新吉
○受田委員 私は官のほうが男子に限定される必要はないと思うのです。やはり男子も女子もおるのですから、そこで男女の余命表を平均したものを御採用になるのが、官の側としては適切じゃないかと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/37
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038・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 男子と女子と個別に計算するということになりますると、一々加入者が男か女かということで異なった保険料料額表を使うということは、事務的にも非常に煩瑣になりまするし、また女子のほうが平均余命は長いわけでありまするから、女子のほうを採用すれば安くなるというのは当然であります。とかく、そうなりますると、逆選の問題とか、あるいは現実に事業の経営の方針になりまするが、低料率でいくか、高配当でいくかということにも関連するわけでありまして、従前から男子一本ということでやっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/38
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039・受田新吉
○受田委員 やはり科学的に算定基礎を官の側としてはお考えにならなければいけないと思うのです。そういう政治の幅を持たせないほうがいいと思うのです。そしてこれは、官の性格は民と相違する点でございますから、官みずからがそういう官に有利な形を御採用になるのは、私は問題があると思います。これは十分に検討されなければならぬ。大臣、あなたはこれを御存じであったかどうかですけれども、これはやはり実態に即していません。生命表を用いる以上は、男女それぞれのものがあり、またこれを一緒に考える場合には、女子を用いろとまでは言いませんが、もし一緒にやるとするならば、男女の平均の分を御採用されてしかるべきだと思うのですが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/39
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040・古池信三
○古池国務大臣 この保険料率の算出の根拠というものは、申すまでもなく非常に専門的な計算からきておるわけで、いわゆるアクチュアリーの十分なる慎重な検討の結果こういうことになったものと存じます。したがって、私そういう数字の点についてはしろうとでありまするから、ここに権威のあるお答えはできないのでありまするが、ちょっと私いま考えたのには、昔は男女の死亡率の差というものは今日ほど大きくはなかったのではないかというふうに考えております。したがって、男子のをとってもさほどの不合理はないというような根拠があったかもしれないと思っておりますが、これも私、確信を持って申し上げるわけではございません。ただいまの男女の平均の死亡率をとったらどうかという御意見は、これは私もしろうとながら、ごもっともな点があると存じます。したがって、そういうふうな御意見もあったということを念頭に置いて、専門の数理の人とも相談をしまして、やはりこういう問題はすべての方が納得されるような線できめていかなくちゃならない問題であると思いまするから、十分にそういうことを考慮しながら、相談をしてみたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/40
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041・受田新吉
○受田委員 それはむしろ官が指導されるべき性質のものだと思うのです。大蔵省として民間保険の問題にされる点は、簡易保険の場合にはそうはでなやり方でないことであるのですけれども、民間保険の場合は、いまの料率の問題とは別でございますよ。募集実績をあげるために、ある金額以上のものははでな観光旅行をやる、そしてちょっと常軌を逸脱したほどの景気をつけておる、こういう行き方があるわけなんです。こういうことまでして募集実績をあげなければならないものかどうか、この点、私ちょっと気にかかることをいま思い起こしましたので、お尋ねしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/41
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042・中込達雄
○中込説明員 募集費も経費全体の中に入りますけれども、経費はワクをきめておりまして、できるだけ節減するようにしておりますし、ましてや募集というものにつきましては、法律上も募集取締法がございまして、融資話法というようなものがありまして、非常にきびしくその点は規制しております。
そこで、はでに旅行をさしたことがあるとお伺いいたしましたが、この件につきましては、私、実は存じないのでございますが、もしそういうことがございましたらば、注意いたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/42
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043・受田新吉
○受田委員 それはどこの会社でもやっていることなんです。つまり一定額以上の保険契約をした者をきわめてはでな旅行に連れていく、こういう行き方で募集費がばかにかさんでいる。そういうようなことは、むしろ零細な加入者の料率を下げるようなほうへ努力さしていくべきで、契約高の多寡によって処遇を変えるような方法は問題だと存じます。簡易保険のほうでは、たとえば今度高額の百万円を契約してくれた人に別の優遇措置をとるような御計画はないでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/43
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044・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 高額契約者に対しまして観光旅行といったようなことはとてもできないのでありまするが、手ぬぐいに類したようなものを差し上げるというようなことは現業方面でやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/44
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045・受田新吉
○受田委員 手ぬぐいというのは、これはやはり一つの礼儀ですよ。三十円か五十円で事足りるわけですから、やはりそれくらいは持っていかないといけない。特に、今度百万円にふえた場合に、募集に別の努力を必要として、これに従業する職員に別の負担をかけるという懸念はないのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/45
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046・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 私どもは、負担をかけるよりもむしろ募集がしやすくなるのだというふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/46
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047・受田新吉
○受田委員 大体目標をどのくらいに置いておられますか。これを増額して直ちにきき目があらわれるものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/47
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048・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 来年度新契約の募集目標は三十二億でございます。今回の百万円の引き上げ、さらに新種保険の創設というようなことで、大体このうちの二億程度が法律改正の効果というふうに見ているわけでございます。したがいまして、年間にこれを引き延ばしますと、純増加分、つまり事業費その他を差し引きますと初年度は九億という数字を考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/48
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049・受田新吉
○受田委員 今度はもう一つ別のほうでお聞きしたい点があるのですが、百万円に制限額が引き上げられて、募集も好都合になってくる、成果もあがってくるということと同時に、今度はこれを利用する側の問題を考えねばならぬ。利用度が高まるわけです。この間から転貸し債の問題などが論議されているのでございますが、ここで団体貸し付けのことでちょっと聞きたい。
契約者の団体貸し付け——契約者というか、地方公共団体の団体貸し付け及び契約者自身の貸し付け制度、十五名以上で利用できるいわゆる契約者の団体の貸し付け、こういうものの数字は一応ここへ出ておりまするけれども、これは今後大幅にこれの利用度を高めようという方針を持っておられるかどうか、今後の見通しを聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/49
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050・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 今回の制度の改善に伴いまして、団体貸し付けを特にどうこうするという考えは持ち合わせておりません。現在のままの推移といいまするか、団体の貸し付けに特に非常な影響を与えるというふうにも考えていないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/50
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051・受田新吉
○受田委員 この数字をここで示していただきたいのですが、契約者貸し付け、この金額だけは出ているのですけれども、利用者が一体加入者のどの程度あるかという比率が出ていないのです。保険に加入した、そうして還付金の範囲内における貸し付けを受けるという利用者が一体契約者のどの程度あるのか、示していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/51
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052・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 三十六年度を見てみますると、年度末の現在契約件数が四千六百四十九万件余りあるわけでありまして、その年度の貸し付け件数は百八十八万件でありまするので、大体四%ということになります。三十七年度は三・九%、三十八年度はこれは十二月末でございますが、二・七%ということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/52
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053・受田新吉
○受田委員 貸し付け制度の利用者はあまり多くない。このことは経済の実態にも関係してくることで、私はある程度非常に喜ばしい傾向だと思うのです。ただ、もう一つ問題は、契約後一年か二年かで解除する、すなわちこれはやはり契約解除、失効です。失効ということは、無理をして入ったけれども、契約が維持できないという立場の人が一体どのくらいおるか、これは民間保険のほうともあわせて御答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/53
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054・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 解約、失効率でありまするが、件数比で見てみますると、三十四年度が二・六五、三十五年度が二・三七、三十六年度が一・八八、三十七年度が一・五六と逐次改善されておるわけでございます。民間保険のほうは、私どもの調査したところによりますると、ここに大蔵省の方も見えておられるのでありますが、一応私どもの調査について申し上げますと、件数比は三十四年度が八・二、三十五年度が七・八六、三十六年度が七・六八、三十七年度が七・一七でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/54
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055・受田新吉
○受田委員 これは特に考えていただかなければならぬのですが、これだけもう一割に近い程度の解約者、失効者がおる。これは問題です。無理をして保険に入ったということになるので、これは簡易保険のほうはその点金額も少ないせいもありますし、周知徹底——外務職員のよりよき理解を高める説明などで、国に対する安全さということも手伝っておるでしょうが、その三倍からの解約が民間保険にあるということは、これは何とかしないと、解約したものはそのままですから、かけ捨てじゃなくて投げ捨てですから、非常に問題があると思うのですよ。これを少なくさせるような努力を、大蔵省はどう指導されておるか、御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/55
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056・中込達雄
○中込説明員 ただいまの郵政省の局長さんの御説明の数字は、件数比でございましたが、これを金額比にいたしますと、解約、失効率が三十六年度が一三%、三十七年度が一二・五%、三十八年度が一二・二%というふうに、大体一割をこえた解約率が御指摘のようにございます。これはいま申し上げたように、年々改善はされております。しかも、このうちで一番多いのは新規契約分が一、二年のうちに三割程度解約されているというところに大きな問題点がございます。これにつきましては、私どもつとに業界に注意を与えておりまして、したがって、これは先ほど申しました募集体制との関係もございまして、長期優良契約をとるようにということで指導をしておるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/56
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057・受田新吉
○受田委員 私は、契約金額においてさらに上回る解約、しかも新規契約は三割とか、ものすごい契約解除者なるものがおるということは、これはゆゆしい問題だと思うのです。これはいかに募集が無理であって、その外務職員が無理をして、そのために契約者に損害を与えておるか、契約の維持ができないことがわかりながら、義理立てにそれに入っていくという場合も、これはたくさん含まれていると思うのですが、大蔵省としては、新規契約者の三割も解約するという実態は、何とか早く解決させるようにお骨折りを願いたいと思うのです。民間保険ではたいへんな無理をして、とにかくこれで食っておるのじゃないですか。新規契約者の三割がやめてしまうということになれば、まるまる業者がもうかるのですからね。これは重大な問題だと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/57
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058・中込達雄
○中込説明員 会社がそれで食っておるということはございません。というのは、契約をとりますと、その給与の体系が初めとったものに非常にウエートを置きまして、七割から八割ぐらいは募集員に給与的にやるわけですね。したがいまして、会社としては、その落ちた契約についても経費が要るので、解約があるということは非常にマイナスになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/58
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059・受田新吉
○受田委員 解約があることがマイナスになるという御説明だが、これは私は問題だと思うのです。つまり最初の掛け金だけ募集費が要るという御解釈をされるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/59
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060・中込達雄
○中込説明員 実は募集費は、先ほど対千、三十円と申し上げましたが、この募集費は初めの保険料と大体匹敵するくらいにかかっておるのが現状でございます。そういう数字が出るのですが、そういう点は改善をするようにということを、先ほど申し上げましたように勧告しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/60
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061・受田新吉
○受田委員 宣伝費、募集費なるものを最初の人にみんなしわ寄せしたようなお考え方はまた問題があると思うのです。これは保険会社の宣伝ということにもなるわけで、次の新しい人への予備的な宣伝にもなるわけです。だから最初の加入者だけが犠牲を受けるということは、これは一つの解釈のしかたとしてはまずいと私は思うのです。次への宣伝の予備工作にもなるというわけなんです。ですからこれは、たとえ理屈はどうあろうと、最初加入した人が三割も解除するという行き方は、これは実態をにらんだときに、悲しい現実ですね。加入者の側から見たらちっともプラスになっていないのです。この点は大蔵省は民間保険に対して手きびしい指導、監督をしていただきたいのです。あなたのような聰明な方に民間保険の責任者として終始努力をしていただきたい。
十二時になりましたから質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/61
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062・加藤常太郎
○加藤委員長 次に、永井勝次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/62
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063・永井勝次郎
○永井委員 前回に引き続いて簡単にお尋ねをいたします。
簡易保険の経営に当たっておる立場からいろいろ御意見があろうと思うのです。それは経営者の立場から、また加入者の利益をはかるにはこうしたらいいという当面の問題点がいろいろあろうと思います。その問題点は何と何であるか。
〔委員長退席、秋田委員長代理着席〕
これを大臣の立場からと局長の立場から、実際に経営に当たってこういうところはこういうふうに改善したいのだが、いまはちょっと困るという点があったら、最初に伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/63
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064・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 簡易保険事業の経営の立場からどういう点に主眼を置いているかということでございまするが、詰まるところは保険法第一条に簡易生命保険の目的がうたわれておりまして、簡易に利用できる生命保険を、確実な経営により、なるべく安い保険料で提供する、それによって国民の経済生活の安定をはかり、福祉を増進することということが私どもに課せられた使命であると存じております。
具体的にどうかという点でありまするが、ここ数年の間に国会に法律案を提出して御審議を願った点が最も重要な部分の一つであろうと存じます。その中には最高制限額の引き上げあるいは最低制限額の引き上げも含まれております。そのほかに、今回は新種保険といったようなものも出ておるわけでございまするが、契約条項のうち重要な部分は法律で規定されておるわけでありまして、そういう面でも常に改善をはからなければならないと思います。それから積み立て金の運用範囲の拡大という点もしばしば御審議を願いまして、少しずつ前進を示しておるわけであります。そのほかに加入者の利益の観点から、福祉施設の拡充という問題があるかと思いますが、これも先般福祉事業団の設立を見まして、従来に比較いたしますと飛躍的と申してよい生保の拡充整備がはかられておるわけでありますが、まだこの面におきましても今後とも私どもとしてなさなければならない問題もあると存じます。
以上が大体大きな点であろうかと存ずるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/64
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065・古池信三
○古池国務大臣 お答えいたします。
ただいまの御質問の御趣旨からいたしまして、要するに簡易保険の最も重要なる点は何かと申せば、それは一に加入者の利益を増進するということが最も大きな目的であろうと存じます。したがって、事業の上においていろいろと関心を持ち、努力してまいらなければならない面としては多岐多端にわたると思いますが、要するにそれはすべて加入者の幸福、加入者の利益保護、ここに基礎はあるものと私は考えております。それにはまず保険制度のあり方からいいまして、やはり加入者をできるだけ広く集める、広くなればなるほど保険の目的は達成し得るわけでございます。またそれによって保険料の低減ということも考えていかなければなりません。すなわち加入者の負担をできるだけ軽減していくということでございます。
それから保険の目的は、前回にも申し上げましたように、第一は死亡の際の保障ということでありますが、しかしそれだけではやはり十分とは申せませんので、第二段には、満期の場合の養老、すなわち老後の生活の安定のために資するということが大事になってまいります。そこで長生きをして、老後の生活を楽しく過ごしてもらうというような意味から、加入者ホームなりあるいは保養センター、あるいは診療所というような福祉的な施設も拡充していく、これも目的は一に加入者の利益増進のためであろうと存じます。また保険金を確実に支払いするために、その運用についても十分意を用いて、確実にしてかつ有利にこれを運用していくというようなことも、当然その目的を達成する上から必要な事項として考えねばならないことであろうと思います。要するに社会全体が一つとなって、お互いが非常時の場合、あるいは老後の安定のためというふうな思想のもとに助け合うという、相互扶助と申しましょうか、社会連帯の精神、この思想の上に立っておる保険でございますから、そういう精神を十分普及して国民の皆さまによく理解していただき、ますます保険事業を発展させることが、すなわち、また一面においては、個々の加入者の利益の増進にもなることだ、かように存じて、この経営の衝に当たっておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/65
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066・永井勝次郎
○永井委員 局長の答弁は事務的な答弁から一歩も出ない、大臣の御答弁は、保険の精神を生かさなければいけないという一般論として一応けっこうだと思います。しかし簡保の場合はそういう一般論ではなくて、もう少し掘り下げれば、簡保の背景となっているものは何か、日本の社会保障制度が不十分だ、行き届いていない、自己保障しなければいけないというせっぱ詰まった状態に追い詰められているという背景を持っていると存じます。そして簡保の基盤は何かといえば、簡保の基盤は中以下の零細な、低収入の方がその大部分の基盤である、こういう政治の行き届かない点、おくれている点、そしてその中で零細な、低収入の方々が、いかにして生活を幾らかでも安定させようかというはかない願いの中から簡保に集まってきている、それだけに、普通一般の保険事業とは違って、国がやる仕事でありますから、特にこれは心をそこに置かなければいけない。それは簡保の効果というものがその人々の加入者の期待に沿うような内容のものでなければならぬと思うのです。そういうふうに考えますと、いまの時点で簡保がどういうふうに運営され、どういうような効果をあげているか、加入者に対して効果を結果しているかという観点に立てば、私は当局が胸のうずくものを感じながら、ほんとうに少しでも希望に沿うようにという反省の上に立った心がまえ、仕事への取り組みというものがなければ相すまないのではないかと思うのです。そういう点から私は一、二お尋ねしてみたいと思うのであります。
第一に生命表の問題です。これは第十回生命表を使っておるということでございますが、第十回の生命表にいたしましても、これは昭和三十年の国勢調査のものだと思うのです。その前の第九回は二十五年、そうすると、戦後、生活安定、それからまた生命が非常に伸びてきたというような環境衛生その他の効果がまだ十分に出ないときの調査表だと思う。生命表ができますためには、やはりタイムラグ、時間的なずれがある。ですから、第十回の生命表というのは昭和三十年の国勢調査だとすると、現時点に立ちますと、約九年、十年近くの違いがあるわけであります。でありますから、私は料率計算の基礎になるこれらの問題についても、しっかりした——データとしてはそれよりないのですから、それはいいのですが、この男子の分をとるということにしましても、私は男子の平均というようなことにしてもいいではないかと思う。それから料率計算においても、そのタイムラグの関係を計算の中にもう少し生きた一つの運用として入れたらどうか、こういうことも考えるわけでありますが、こういう点において、まず掛け金の計算基礎において、そういうことを加入者の利益の立場ではなしに、経営者の利益の立場で加入者の利益をチェックしている点がある、こういうふうに私は思うのですが、これはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/66
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067・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 三十年の国勢調査からもかなり年数がたっておりますが、三十年の国勢調査をもとにいたしまして生命表を整理いたしますにはかなり年数がかかりまして、大体五年ぐらいかかるようであります。したがいまして、生命表ができたのは大体三十五年でありまして、私どものほうは直ちに三十六年からそれを採用したということであります。また三十五年の国勢調査の結果はまだ生命表としては出ておりませんで、これは近く発表される模様でございます。そういたしますると、それを採用するということは、これは従来からの方針を踏襲すればそういうことになりますが、おのおの事業の立場から経験死亡表というようなものも当然考えなければならないわけでありまして、民間の保険会社におきましてもそういう作業がかなり進んでおるようであります。私どもといたしましても、そういう観点から経験死亡表の作成という点に目下資料を集めておる最中でございます。したがいまして、保険料計算の基礎になる生命表につきましては、最も新しいものを採用して、その間に年数の開きと申しまするか、保険料の適正化をはかるという点には努力をいたしておるわけでございます。
それから男子女子の点は、先ほど受田先生の御質問もあったのでありますが、私どもといたしましても、将来その点につきましても検討してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/67
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068・古池信三
○古池国務大臣 御承知のように、民間保険におきましては、以前は株式会社の組織が多かったように思います。そういうような場合は、株主の利益ということも考えなければなりませんから、そういうふうな利益の保留が必要であったと思いますが、今日ではほとんど民間生命保険は、相互会社になっておりますから、株主の利益を考えるという必要はないと存じますが、簡易生命保険におきましては、当初から国営でございまするから、この保険の経営によって利益をあげてこれを経営者のほうに保留するというような必要はもちろんないわけでございます。ただ経営上必要なる施設の改善であるとか、あるいは従業員のための給与、こういうものを除けば、あとはすべて加入者にお返しする、こういうたてまえであろうと思いますから、ただいまお尋ねになりましたが、やはり加入者の利益第一という方針でやっていくべきものだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/68
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069・永井勝次郎
○永井委員 そういうふうにお考えになることはいいのですが、具体的な仕事としてあらわれたときには、女子は切って男子をとる、それからタイムラグはここに生かされていないというふうに、それだけ実態においては加入者は利益をチェックされておるということが事実であります。生命表は三十五年のものを用いていない、それはそのとおり事務的でけっこうですが、五年ごとの生命表ができてくるわけですから、その過程において、安定した条件の五年ならいいのですが、非常に傾斜して動いていく、こういう時点に立ちましては、もっと加入者の利益という視点に立ってものを判断しますならば、いま大臣の言われた心のかまえというものをもっと具体的な施策としてここに示さなければ、そういう気持ちだということだけでは加入者の利益にはならない、私は一つその点があると思う。
それからいままで民間保険が、加入の限度額の引き上げを行なう場合には、多くの場合みんな反対してきたのでありますが、今回は反対がない。このことをあっさり評価しないで——そうだという事実の表現であったかもしれませんが、そういうふうに先ほど局長はお答えになっておるのですが、私はここに相当問題があると思う。なぜいままで三十万円を五十万円に上げるというときに反対があったのに、今度は五十万円から百万円に上げるときに民間業者は反対をしないか、私は一、二民間業者に電話をかけて聞いてみたのですが、簡保のような非常に安い、コストの高いところでは、これはまあこちらのほうでは足手まといぐらいな感じで、荷やっかいだけれども、百万円となれば競争したって私のほうは絶対負けません、百万円ぐらいのところに入ろうという人は、民間ではどうだと比較する、比較すれば私のほうは絶対に負けません、ですからこれは反対しなくてもいいのです、国がやってくれたら、国の水準まで私のほうで無審査でどんどんとるようにします、そこで競争すれば、われわれの勉強と簡保のなにとはっきりわかる、こういうところで反対をしないのです。ですから、加入者の利益というものは民間のほうが多く、具体的に料金や掛け金その他のサービス等においても十分果たしている、国のほうは官営の仕事でありながら加入者の利益にこたえていないということを顕著に示しておるものだと、私はこう思うのです。その点については、百万円に対して民間が反対をしないという評価について、一応当局の見解を承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/69
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070・古池信三
○古池国務大臣 お尋ねのまず第一のほうでございますが、なるほど最近の十年間における死亡率というものは、寿命が非常に長くなったといわれております。ですから、過去のことと比べますと、やはり死亡率は最近のものをとってすべきじゃないかというお説は、私もごもっともなことと存じます。簡易保険は先ほど局長から御説明申し上げましたように、第十回の生命表ができました際には翌年に率先してこの生命表を採用しております。民間の生命保険においては、ようやくこの四月から採用されたようでありますから、その間三年余りは私のほうが早くこれを採用しておる、こういうことでございまして、これも加入者の利益を十分に考慮するというたてまえから今日までやってきたことと御了解いただきたいのでございます。
また、男女の死亡率は相当開きがあるから、むしろその平均をとるべきではないかというようなお説も、先ほどもちょっとお答え申し上げましたが、私もごもっともなことと考えます。従来は男子と女子とそれほど大きな開きがなかったように存じまするので男子のを用いたものと考えておりますが、今後の保険料率の決定にあたりましては、さような点も十分考慮に入れて計算をすべきものではなかろうかと考えております。
それから、次に、今回百万円に最高限度を上げていただくことにつきまして民間がそれほど反対をしなかったということはお説のとおりでございます。以前に非常に反対をしたのが、今回それほど激しい反対がなかったということの理由についは、保険会社のほうに聞いてみたわけではございませんけれども、やはり最近皆さんの御努力によって生命保険思想というものが非常に普及してまいったと思います。そのために、従来保険市場というものが非常に狭かった、したがって、簡易保険が金額を上げれば、なかなか競争はより激甚になるというような意味合いから民間のほうで反対が強かったものと考えますが、今日は一般的に非常に保険思想が普及しましたために、簡易保険が百万円に上げても民間としてはそれほど大きな影響は受けない、十分やっていける、こういう観点からあまり大きな反対はなかったのじゃなかろうか。これが加入者に対するサービスというような点においては、私どもとして民間には劣らない覚悟でやっておるわけでございます。
なお、こまかい点については局長のほうからお答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/70
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071・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 今回百万円に上げた場合、民間も歩調を合わせて百万に上がる。その際に、民間のほうは競争した場合に簡保に十分勝つ自信がある、それはそれだけ契約内容その他が民間のほうが有利ではないかというような御質問のように承りましたが、これはいろいろ比較の角度によって違う点があるわけであります。協定保険料をずばり比較をいたしますと、今回の民間保険の低料化が実施される前は簡保のほうが若干低かったのであります。今回の低料の案も、ただ十回表の採用というだけでありますれば、大体簡保と均衡がとられるのでありまして、さらに維持費の節減というようなことになりますると、大体民間のほうが安くなるというのが現状でございます。そのほかに一番問題は配当の問題がありまして、この点は、残念ながら私どものほうの配当率は民間保険に比べましてかなり下回っております。ただ、契約条項で、たとえば倍額支払いに民間保険では特約の保険料を取っておるのに、簡保は取っておらない。あるいは福祉施設の面で、かなり簡保のほうが進んでおるのではないか、いろいろそういった簡保のほうが進んでおるということもなきにしもあらずでございますが、一応保険料を中心にいたしましてお答え申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/71
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072・永井勝次郎
○永井委員 加入者が掛け金を担保で金を借ります。その場合の普通金利及び延滞した場合における延滞金等は、いろいろあるでしょうが、その最高限度をちょっとお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/72
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073・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 契約者貸し付けに対する利子は六分でございます。貸し付け期間が満了した後、二カ月を経過しても弁済をしないときは、利息とともに遅滞金を徴収いたします。その遅滞金は、貸し付け金弁済額百円またはその端数につき、遅滞期間が一年以内のときは二円、二年以内のときは四円、三年以内のときは七円、四年以内のときは十円、こういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/73
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074・永井勝次郎
○永井委員 加入者は、先ほども言ったように、簡保の基盤は低所得者である、非常に低い収入で生活しておると思うのです。最高日歩十円というような金利は、ちょっとほかにはないのではないかと思うのですが、こういう高い金利の問題について、経営者の立場で、もう少し加入者の利益の立場で今後考えていかなければならぬというような反省がないのですか、ひとつその点を伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/74
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075・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 これは四年間に幾らというふうに御理解願いたいわけであります。ですから、 いま先生のおっしゃったのと全然違うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/75
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076・永井勝次郎
○永井委員 日歩十銭になるんじゃないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/76
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077・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 年二分五厘ということになります。——六分の利息と二分五厘の遅滞金というわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/77
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078・永井勝次郎
○永井委員 それは私が聞いておるのとはちょっと違うのです。私もあまり金を借りたことがないし、利子を払ったことがないので、思い違いかもしれない。これはまたあとでお尋ねします。
それから、一定期限が切れますと、民間の保険の場合は、自動立てかえ払いというので失効にしない。できるだけ加入者の利益の立場で立てかえ払いをしておるという制度があるわけですが、簡保の場合は、そういうものがきたらぴたっと失効にする、こういうので、もう少し加入者の立場で自動立てかえ払いの制度を設けるというようなことはお考えにならないかどうか。この点を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/78
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079・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 いまの点は、これは一長一短でございまして、民間の立てかえ払いも、長い間やっておりますると、保険金が全くゼロというようなことで、全然効果がないというような点もございまするし、これは考え方の相違ということではないかと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/79
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080・永井勝次郎
○永井委員 考え方の相違ということでなくて、私はこれは長期にわたって、たとえば一つの条件を——非常に特殊な事例としてこういう場合があるから損だというような例は私は例にならないと思うのです。自動立てかえ払いにして一時をしのいでその間に復権する。たとえば失効したものをまた権利を復活させるということを年限も置いていろいろやっているんですから、そういうものもあるわけですから、そういう点からいえば、自動立てかえ払いの制度を置いて、そうして一定期限の、加入者に利益の限度においてこれを活用していくという制度にすればよろしい。もとのものが全部なくなってしまう、それでも自動立てかえ払いだというのとは私は違うと思うのです。加入者の利益の限界でこれを運用していくということは考えていいことではないかと思うのです、いかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/80
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081・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 加入者の利益と申しましても、ある特定の人間あるいは少数の人の利益をはかるために全体が不利益をこうむるということでは、保険団体全体の繁栄という点にはマイナスになるわけでございまして、その辺のかね合いが一番問題だろうと思います。いまのような自動たてかえ払いということも一つの考え方、よいいき方ということもできると思いますが、失効防止のためには契約者貸し付けという制度もございますし、またいろいろの制度を取り入れますと、四千五百万件もあります全国的に存在するこの事業の経営に、かえって事業費がかさんで契約者全体の不利益になるということも言えるわけでございまして、その辺を彼此勘案して制度を決定していきたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/81
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082・永井勝次郎
○永井委員 百万円に限度額を引き上げた場合、第一年次、第二年次、第三年次ぐらいまでこの増額はどのくらいの予定を立てておるのか伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/82
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083・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 三十九年度は、第一回保険料で二億でございますから、年度末の資金量といたしましては九億という計算になります。それから四十年度が四十三億、四十一年度が百十三億、こういう一応のめどでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/83
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084・永井勝次郎
○永井委員 この年度に集中満期がやってくると思うのですが、その総額は年度別大体どのくらいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/84
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085・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 先ほどと同じように三十九年度から申し上げますが、三十九年度が満期支払い保険金、分配金、合計いたしますと大体千六百億でございます。それから四十年度が千二百二十億、それから四十一年度が九百四十億でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/85
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086・永井勝次郎
○永井委員 そうしますと、資金運用部における簡保原資は、この三年度においてどのような数字になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/86
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087・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 いまちょっと調べておりますので、後ほどお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/87
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088・永井勝次郎
○永井委員 前回も私述べておいたのでありますし、その他の委員からもいろいろ問題を提起しておるわけですが、集めた金の運用について、当局も現在のような運用では十分でない、加入者にとって、最も有利に、また確実な運営の方法でない、こういうことはお認めであります。そういたしますと、先ほど私が冒頭に申し上げましたように、加入者の利益のために順次改善していくんだ、その努力を積み上げていかなければならぬわけでありますが、いまそういう面においてどのような努力を払っておるか。そしてそのネックはどこにあるのか。そうしてことしの電力関係に若干道を開いたというだけでたいへん明るい見通しのようなことを書いております。こんなことはもう問題にならない程度のものですが、いままでの資金運用についての簡保としての、こらありたいという方針、これに対する大蔵省なり何なり隘路があるとすれば、どこに隘路があって、どういうような経過になっているか、そのいきさつをこの際明確に承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/88
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089・田中鎭雄
○田中(鎭)政府委員 資金の運用関係につきまして、私どもはかねがね運用範囲を拡大して、それによって事業の活動分野を広げるに資するとともに、運用利回りの向上をはかりたいということで、従来から問題になっておりましたのは、より有利な社債に運用範囲を広げる。その第一歩として昨年電力債に運用し得るようになったのでございますが、電力債以外にさらに交通とか運輸、通信その他いわゆる公共事業社債という点にまで運用範囲を広げたいというのが、第一点でございます。
〔秋田委員長代理退席、委員長着席〕
そのほかに、余裕金の運用の改善——この余裕金につきましては、一定のものにつきまして資金運用部から特利がつきます関係上、最高六分に回るわけでありますが、これの運用利率の向上、さらには余裕金を郵政省で直接運用するという問題もあるわけでございます。これらにつきまして大蔵省といたしましては、簡保の資金も国営事業であるからには政府資金である。したがいまして、政府資金が一元的に運用されるのが筋である。余裕金の直接運用などということは、国庫余裕金その他との関連から、これもそういう統一運用を乱すものであるので賛成できないというのが従来の経緯でございます。ただ、電力債に出たというような観点から、簡保事業は国営事業ではあるけれども、やはり一つの事業であり、資金は加入者の資金であるというような点は、大蔵省側でも徐々にいま理解はされつつあるように私ども感じております。ただ、私どもも政府事業であるからには政府資金でないとは言い切れませんで、そこにおのずから公共方面に投資するという制約も出てくるわけでありまして、その両者をどこで調節するかという点が従来からの問題点になっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/89
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090・永井勝次郎
○永井委員 郵政省は郵便貯金を集める、年金を集める、簡保を集める。金を集めるだけで、使うのは人に使ってもらう。使う関係においても、責任は集めたところにあると私は思うのです。そうすると、その金が流れていく先で、郵政省の関係の者がある程度タッチしてどうこうと、普通の資本主義経済の中では、金を出せば、重役が乗り遊んでその金の使い道なんか監督するということが普通なんですが、ここで見ましても、政府関係機関でも、国鉄なり住宅公庫なり、国民金融公庫、農林漁業、北海道、東北公庫あるいは公団なんかにもずっと出している。これらの政府関係機関なんかにも乗り込んでいくのは、大蔵省の役人の退職者が天下り人事で入っていく。金を集めるだけ集めて、あとはその金の使い道も何ら見届けもできない。天下り人事にも——天下り人事がいい悪いということになれば、われわれは悪いということでありますけれども、いまの中で運用されている限りにおいては、郵政省は簡保の金を千数百億あちらのほうに出してやって、うんともすんとも言えない。よそから指をくわえて見ていなければいけない、こういう運用の仕方というものが一体あるかどうか。金をやるからには人も一緒についてやるというくらいの——これは資本主義の見識ですよ。われわれの見識じゃないのですが、それくらいの見識を持って、もう少しこの問題はそういう面から、たとえば金利という面で実益をとれなかったならば、運用の面でもう少し加入者に利益を還元するというような有機的な関連性を持たなければ、加入者に対してほんとうに忠誠を尽くしているということにならないのではないか、こう思うんですが、何かこれらのところに、公庫関係や政府機関に郵政省の古手を乗り込ませるというような事実があるのですか。もう全然鼻もひっかけられないという状態にあるのですか、その点をひとつ伺いたいのです。そういうことは、金の力だけではなくて、人材の関係でそうなるのか、そういう関係を大臣から承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/90
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091・古池信三
○古池国務大臣 以前は簡易保険の積み立て金に対する、その運用に対する郵政省の発言力は非常に弱かったのでありますが、皆さまの御協力、御支援をいただきまして、今日簡易保険の積み立て金については、相当の指導力を郵政省が持っているわけでございます。しかしながら、先ほど局長からもお答えいたしましたように、やはり国営事業であるという観点から、それは一つの政府資金になる、かような理由から、これの運用については、やはり郵政省独断でやるということはむろんできませんので、大蔵省等とも協議をし、また運用の審議会にもかけまして実行しておるような次第でございます。今後はさらに一そう加入者のために、運用については十分われわれの主張を通して利益をより一そう守っていくために努力してまいりたいと考えております。
それから政府関係機関に対しまして、郵政省の経験深い者が出ていって協力していったらどうかという御意見でございます。確かに今日までは、郵政省出身者で、学識経験者がさような公団あるいは公庫等に出向いていくという例はきわめてまれでございますが、最近もう御承知のように、日本住宅公団には役員として一名こちらから出向くようにいたしたのでございまして、これはきょう発令をいたしたようなわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/91
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092・永井勝次郎
○永井委員 大臣からホット・ニュースとしてきょう発令したということを伺ったのですが、答弁できる人事というのはたったそれだけですか。私は一千六、七百億もの金を出しておきながら、全く外から指をくわえて見ておらなければならぬ、こういうことは加入者に対して忠実なゆえんではないと思うのです。そういう意味で、簡易保険の背景となっておるもの、その基盤となっておるもの、そういうところから言えば、特に政府の事業として加入者にできるだけの経済効果の実った実を還元するという考えに立たなければ、社会保障がこんなに行きわたっていない実情から見ても、私は政治責任が国にあると思うのです。入りなさい、入りなさい、こう言いながら、入ったら物価はどんどん上がるし、通貨はどんどん膨張して通貨価値はどんどん下落していく。加入をしたときの価値のある金は、受け取るときは二足三文、たばこ銭になってしまう。そうして集めた金は、自分の生活の中に還流してこないで、そうして全く別な大企業のところにこれが重点的に投資される形で使われてしまう、こういう形になってしまっていては、ほんとうにそろばんをはじき、経済的な損得の関係で、あなたお入りなさい、入ったらこれだけの利益がありますよ、こういうことを自信を持って、ごまかさないで、加入者にすすめて加入させる勇気が、こういうやり方では出てこないのではないか、不利益なんですから。民間の営利会社の保険会社よりも利益がないのですから、加入者は毎月集金に来てくれるというだけのことで入っているというだけです。受け取るときには、もうけをとろうとするには早く死ななければならない、死んだら一番利益がある、長く生きていたら、これはもう全くそろばんに合わない損な結果になる、こういうような仕組みの簡易保険制度というものは、大臣、これは良心のある国のやり方じゃないと思うのです。ですからこういうことを加入者の利益という立場でほんとうにやらなければ——もう少し内容的に検討して、ただ事務的にものを処理して、こうなるからこうなるという算術計算だけではなくて、そうして低所得者層の国民生活の実態に触れて、血の通った行政、血の通った経営、こういうものがこの中から生まれてこなければならぬ。現在生まれてこなくても、あしたはそういうふうな方法で改善されるのだ、あした改善されないことはあさって改善するのだ、こういうふうな前向きな形で努力するところがなければ、加入者に対して申し開きが立たぬと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/92
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093・古池信三
○古池国務大臣 生命保険というものは、早く死ねば得をする、早く死ななければもうからないというふうな見方は、これは私はどうかと思います。むしろ不幸にして早く死んだ人のために、生き残った者がみな犠牲を多少ずつ払って、早く死んだ人の冥福を祈ってお助けする、こういう相互扶助の観念から出発したものでございますから、ものの考え方、見方の裏表になるかもしれませんけれども、私もそういうふうに考えていきたい。あくまでそういう事故の起こったような人は不幸でありますから、これをみんなが残った者で助けていく、こういう考え方であると存じます。これは一に簡易保険の問題ばかりじゃなく、生命保険全般の思想的根拠であろうと考えております。
それから、通貨価値が非常に下落すると、将来にわたってもらう保険金の価値というものは非常に少なくなるのではないかということはお説のとおりでございます。残念ながら日本はああいう歴史上未曽有の敗戦という事実にぶつかりましたために、その後きわめて異常な悪性インフレに見舞われまして、その結果、戦前と今日とではたいへんな通貨価値の相違を見せておりますが、かようなことは、もうあれだけで十分でありまして、今後は絶対にかようなことはないであろうということを私は確信をいたしております。特にきょうからIMFの八条国に移行いたしましたので、今後は日本の通貨価値というものは国際的に大きな影響を持つものになってまいりましたから、今後はさらに十分に努力をして、通貨価値の実質的な値打ちを変えないように、むしろこれを上げていくような方向に向かって進まなければならないと考えます。将来物価が上がるだろうと言われておりまするけれども、極力物価の値上がりを押えて、むしろ物価は下げるほうに努力をせねばならぬ。そうすれば通貨価値は自然に上がっていくわけでありまするから、保険の加入者も将来を非常に希望を持って期待をすることができる、かように考えます。
なお、経営の面につきましては、十分に注意をいたしまして、積極的な方面、消極的な方面、両面から一そう努力をして健全な経営をし、同時にまた、加入者に有利な経営をやっていくことが必要ではなかろうか、かように考えて、微力ながらそういう線に沿って今後も努力を続けてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/93
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094・永井勝次郎
○永井委員 最後に希望を申し上げておきます。物価を安定し通貨価値を安定させるということは、国務大臣としての責任であります。古池大臣は、国務大臣としての立場で物価を下げるなんという、いまの段階では大それた希望を持たないで、上げないようにするというだけの努力は十分尽くしてもらわなければいかぬ。また郵政大臣としては、行政庁の長官として、この簡保の運営は決して正常じゃないと思います。あっちからこっちから押しつぶされて、縮むだけ縮み上がって、そうして加入者がそれだけ不利益を招いておるということが現状ではないかと思います。役人のなわ張り争い、あるいは役所のなわ張り争いだけではなくて、背景となっておる加入者の利益のために、もう少し正しい施策と勇気とを持っていろいろな関係にがんばってもらいたい。金の行くえについても、もう少し各大臣は、郵政省の退職職員の身の振り方についても、これだけの金を持っていたらいい知恵があってよさそうに思いますが、そういう面においてがんばっていただきたい。これらのことを希望しまして私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/94
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095・加藤常太郎
○加藤委員長 本日はこの程度とし、次会は明後三日午前十時から理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後零時五十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604816X01619640401/95
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