1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年三月十九日(木曜日)
午前十時四十一分開議
出席委員
委員長 徳安 實藏君
理事 伊能繁次郎君 理事 辻 寛一君
理事 内藤 隆君 理事 永山 忠則君
理事 八田 貞義君 理事 石橋 政嗣君
理事 田口 誠治君
安藤 覺君 岩動 道行君
佐々木義武君 高瀬 傳君
塚田 徹君 野呂 恭一君
藤尾 正行君 保科善四郎君
前田 正男君 松澤 雄藏君
湊 徹郎君 渡辺 栄一君
茜ケ久保重光君 稻村 隆一君
大出 俊君 中村 高一君
村山 喜一君 山田 長司君
受田 新吉君
出席国務大臣
郵 政 大 臣 古池 信三君
出席政府委員
内閣法制次長 高辻 正巳君
内閣法制局参事
官
(第三部長) 吉國 一郎君
総理府総務長官 野田 武夫君
総理府事務官
(内閣総理大臣
官房賞勲部長) 岩倉 規夫君
宮内庁次長 瓜生 順良君
総理府事務官
(官内庁長官官
房皇室経済主
官) 小畑 忠君
郵政事務官
(大臣官房長) 武田 功君
郵政事務官
(電波監理局
長) 宮川 岸雄君
郵政事務官
(人事局長) 増森 孝君
郵政事務官
(経理局長) 長田 裕二君
委員外の出席者
郵政事務官
(大臣官房建築
部管財課長) 小川 房次君
自治事務官
(財政局地方債
課長) 立田 清士君
専 門 員 加藤 重喜君
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三月十七日
委員湊徹郎君辞任につき、その補欠として大西
正男君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員大西正男君辞任につき、その補欠として湊
徹郎君が議長の指名で委員に選任された。
同月十九日
委員島村一郎君辞任につき、その補欠として安
藤覺君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員安藤覺君辞任につき、その補欠として島村
一郎君が議長の指名で委員に選任された。
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三月十八日
臨時行政調査会設置法の一部を改正する法律案
(内閣提出第二八号)(参議院送付)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
国事行為の臨時代行に関する法律案(内閣提出
第五五号)
皇室経済法施行法の一部を改正する法律案(内
閣提出第一〇号)
郵政省設置法の一部を改正する法律案(内閣提
出第四四号)
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午前十時四十一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/0
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001・徳安實藏
○徳安委員長 これより会議を開きます。
皇室経済法施行法の一部を改正する法律案、国事行為の臨時代行に関する法律案の両案を一括議題とし、質疑を継続いたします。
質疑の通告がございますので、これを許します。村山喜一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/1
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002・村山喜一
○村山(喜)委員 初めに、国事行為の臨時代行に関する法律案についてお尋ねをいたしてまいりたいと思いますが、宮内庁次長が見えておりますので、はっきりさしていただきたいと思うのであります。
それは、先回の委員会で石橋委員のほうからいろいろ問題を提起をされまして追及された点は、できるだけ重複しないようにいたしてまいりたいと思うのでありますが、天皇の国事行為は、憲法六条と七条によって十二項目に限定されているものだと解しておりますが、そういうふうに宮内庁としては考えておいでになるのか、その点を明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/2
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003・瓜生順良
○瓜生政府委員 国事行為につきましては、憲法で規定されているものに限定しているものと解する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/3
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004・村山喜一
○村山(喜)委員 しからば、その国事行為というものと、それから国政というもの、この国事の性格、機能というもののとらえ方が問題になってくるわけでありますが、広い意味においては国事行為というものは国政の範疇に入る。これは法律的な解釈ですが、そういう国事と国政との区分をどのように考えておいでになるか。それから行為と権能という問題についてどのように区分をするのか。いわゆる機関としての天皇というものの行為は、これはいわゆる権能ではないのかどうか。こういう問題についてどのような解釈をお持ちになっているか、明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/4
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005・高辻正巳
○高辻政府委員 法制上の問題でございますので、私からお答え申し上げます。
まず第一に、国事に関する行為、国政に関する権能、それを対比してのお尋ねでございますが、お話のとおり、国事に関する行為も、広い意味では国政に関する事項であるということは、そうでございますけれども、憲法をごらんになればわかりますように、憲法の七条、それからいまおあげになったような事項、そういうものを称して国事に関する行為、実は一括してそういう称呼を用いているわけです。それと相対比しまして、国政に関する機能を有しないということは、そういう事項は、国政に関連があるけれども、むしろ実体的にながめまして、国政に——何といいますか、天皇の御意思によって、国事行為にわたる事項についての御行為のほかに、国政に影響を及ぼすような権能、そういうものはお持ちにならないということを憲法の四条は規定しているものと了解をされるわけでございます。
それから行為と権能というのはどうかというお尋ねでございますが、行為は、まさに七条にありますような行為をいっておるわけでありまして、行為をするということも、それは一般的にいえば権能には違いありませんけれども、この四条の行為、それから後段で「国政に関する権能」といっておりますのは、もうつとに御存じのように、憲法の国事行為というのは、むしろ、あるいは「内閣の助言と承認により、」あるいは「国会の指名に基いて、」というように、その実体的な意思というものは、天皇の御意思と別の機関の助言なりあるいは指名なりということによってその行為が行なわれるというところに、実はその行為の形式性というものが出てまいるわけでして、そのほかに天皇の御意思によって国政に影響を及ぼすというふうなものが、憲法では考えられておらないというような実体的な意味におとり願っていいのではないかというふうに思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/5
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006・村山喜一
○村山(喜)委員 その場合、天皇の象徴の地位というものは、これは象徴というのは地位とみなすか、それとも機能とみなすか、この点についてはどうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/6
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007・高辻正巳
○高辻政府委員 天皇の御性格に関連を持つ大事な点であろうと思いますが、第一条をごらんになりますればわかりますように、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。」というわけでございまして、地位か機能かということであれば、憲法第一条にありますように、地位というのが相当であろうというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/7
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008・村山喜一
○村山(喜)委員 そういたしますと、天皇は、国事行為を要する国政行為というものが、これは広い意味においてでありますが、その十二項目以外には、裏の面からいいますと、包括的に国政権能を持たない、こういうふうに解釈して差しつかえないわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/8
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009・高辻正巳
○高辻政府委員 天皇の国事行為といいます場合に、十二項目と仰せになりましたが、それも入っているであろうと思いますが、第四条の第二項の国事行為の委任というのも、それに含まれて考えて差しつかえないと思いますが、先ほど御指摘の六条なり、あるいは七条なり、そういうものについて、これを国事行為と見ていいと思いますが、そのほかの御行為につきましては、これはおのずから天皇もまた自然人であられますから、そういう意味の御行為というものはむろんあるわけでございますが、いわゆる国家機関としての行為としては、いま申し上げたような点に尽きるということは、仰せのとおりであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/9
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010・村山喜一
○村山(喜)委員 天皇の私的行為がほかにあるということは否定をするわけではないけれども、天皇の地位というものが、象徴の地位である。しかもそれは非権力的な地位である。そういうような意味において、天皇は包括的に国政権能を持たない存在である。だから、国事行為については、憲法第六条と第七条において憲法上明確にされている。だから、それ以外の権能というものはお持ちにならない。こういうふうに憲法としては解釈をするのが当然であると思うのであります。
そこで天皇が、今回この法案が成立することになりまして、外国に旅行をされる、こういうようなことになってまいりますと、当然そこには象徴天皇としての天皇と天皇が国事行為をなさるということとの間においては、これは当然な、必然的な関係があるわけで、そういうような場合に、天皇は対外的な国の代表権をお持ちになっていらっしゃらないとするならば、外国に旅行されるという場合の天皇は、そのときの地位というものは、日本国内においては象徴として天皇は存在をするけれども、外国に行った場合には、これはどういう地位にあられるのかということについて、外国旅行を考えているのが宮内庁でありますので、宮内庁次長はどういうような見解をお持ちになっているか。そうしてまた、法制局はそれに対して天皇の地位をどういうふうにお考えになるか、この点を明確にしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/10
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011・瓜生順良
○瓜生政府委員 天皇の国事行為は、憲法に明文のある範囲であります。そのほかに私的な御行為もありますが、なお公のような行為もやはりあると思います。と申しますのは、天皇が地方に、いろいろ大会なんかがありまして、行幸になります。あるいは国会の開会式の際においでになって、おことばがございます。これは国事行為として掲げられてあるものではございませんが、単なる私的な行為ではありませんので、国政には関しないが、儀礼的に——主として儀礼的の面が多いですけれども、その他、要するに国政に関するというようなことじゃないけれども、やはり象徴というお立場でなさる御行為はある。外国に御旅行になるという場合も、ほんとうに保養に行かれるというような場合には、これはほんとうの私的なことでございますが、儀礼的な意味でお出かけになるというような場合は、これはやはり公的なことというふうに考えられる。したがって、国事行為、それから単なる私的なことというだけでなく、その中間に象徴としての公の御行為はある。しかし、これはもちろん国政に関するような権能を持たれるようなことにはならない範囲のものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/11
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012・高辻正巳
○高辻政府委員 いま瓜生次長がお話しになりましたことにつけ加えて、さしあたり特に申し上げることはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/12
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013・村山喜一
○村山(喜)委員 そこで、私はこれは憲法の問題になってくると思うのですが、「天皇は、この憲法に定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。」、これは、天皇が公的存在としてなし得る行為は、国事に関する行為のみである、国政に関する権能は有しない、こういう立場から考えてまいりますと、国事行為以外に、天皇は公的行為をなし得るという瓜生次長の見解でありますが、それはどこに根拠があって、その公的行為がなし得るのか。この点を憲法上、法律上明確にしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/13
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014・瓜生順良
○瓜生政府委員 私の聞いております範囲で申しますが、あとまだ法制局のほうからお話があるかもしれませんが、象徴としてのお立場を持っておられる。で、国政に関する天皇ということにつきましては、第四条に制限がありますように、国事に関する行為のみを行ない得る、国政に関する権能を有しないというふうにございますから、その点は明らかでございます。それでは、それ以外に国政に関する権能でないことについて行ない得ないというような規定はありませんので、一般の学者あたりの憲法に関する通説なんかによりましても、特に何もできないということを書いてあるわけではございませんし、象徴というお立場で、国政に関する権能ではない範囲において、国事に関する行為以外のこともなされ得るというふうに解釈をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/14
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015・村山喜一
○村山(喜)委員 それは宮内庁の解釈でありますか、それとも政府の行政解釈であるのか。ここに総務長官がまだ見えておりませんので、その点については総務長官がお見えになってからはっきりしてもらいたいと思うのでありますが、私はここで明確にしなければならないのは、国事行為を行なう限りにおいて、天皇は象徴たるべき、その象徴の姿があると思う。とするならば、天皇が国事行為以外に公的な機能を有しておられるのであるならば、それは当然法律の上で明確にするか、憲法の上で明確にされなければおかしいと思うのです。というのは、象徴としての儀礼的なものは、幾らでも広げることができる、政府の時の行政解釈によってそれを広げていくということになってまいりますと、天皇の地位、いわゆる象徴としての役割りというものが、国事行為をやるがゆえに明確にされているとすれば、そのときの象徴というものは一体何を表現する概念であるのか。これはやはり本体は、日本国あるいは日本国民の統合というものは、自由平等という民主主義の政治概念というものを基礎にしているわけです。それを、象徴は本体を表現をする媒介物である、そういう考え方から、世襲的な存在として、また人格的な存在として象徴天皇が存在する、こういう解釈を下していった場合には、もし公的な行為をなし得るとするならば、それには条件がなければならない。一体どういうような条件のもとにおいてそれをなし得るのかという点を、象徴天皇という天皇の機能的な問題からこれをとらえていった場合には、そこに明らかに条件を付さなければおかしなことになる。さっきの法制次長の見解によると、地位ということでありますから、天皇の象徴の地位とした場合には、公的なそういうような行為というものはなし得ないのじゃないか、こういうように私は解釈するのですが、その点はいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/15
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016・高辻正巳
○高辻政府委員 憲法第一条の天皇の地位とありますこの象徴ということと、憲法第七条を主体とします国事行為をやられる立場の天皇というものの関連が、中心課題だろうと思うわけであります。第一条の象徴であるというのは、実は第七条の国事行為と直接的な関連があるわけではなくて、象徴というのは、実は天皇の御存在される限り、その御存在をめぐって象徴というものが常にあるわけなんです。そのほかに、実は国家機関といたしまして天皇がこういう国事行為の衝に当たられるということでございまして、確かに国事行為としての天皇の行為は限定はされておりますけれども、象徴としての天皇の地位が、象徴として天皇の御存在がある限り、象徴としての地位をお持ちになるわけであります。したがって、そういう地位をお持ちになる方でありますがゆえに、純然たる一私人にあらざる行為もありますし、また象徴という地位にあられるがゆえに、たとえば国会の開会式においでになるとか、あるいは憲法制定の記念式典に出席をされるとか、そういうたぐいのものが出てまいるわけでありますが、それはもとより先ほど申し上げたような国政に関する権能を有しないというわけで、そういう意味の国政に影響を及ぼすような行為につきましては、むろん拘束を受けることは当然だと思いますけれども、国事行為として、あるいは国家機関たるものの行為として、それが限定があるからといって、象徴としての地位にあられる天皇の御行動が限定されなければならないということにはならないのではないかと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/16
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017・村山喜一
○村山(喜)委員 私は、野田総務長官がお見えになりましたので、ここでお尋ねをいたしますが、天皇の公的行為、それと私的行為が、国事行為以外にあり得る。私的行為が国事行為以外にあり得ることは、人間天皇でありますから、これは私も認めるわけであります。その場合に、天皇は象徴であるがゆえに天皇の存在がある、こういう立場から考えてまいりますと、憲法上には明らかに、憲法に定める国事に関する行為のみを行ない得るのであって国政に関する権能は有しない、こういう立場に立っておるわけであります。そこで、先ほど瓜生次長が説明をされましたように、国会開会式に出席をされるとか、行幸をされるとか、こういうような行為というものは、国事行為以外の天皇の象徴という儀礼的な機能、地位に付随する公的な活動である、こういうお話でございます。とするならば、そういう天皇の地位から生まれる——私はこれは地位から生まれるのではなくて、天皇の機能から生まれると考えているのでありますが、そういう場合には、当然そこには制限がなければならない。儀礼的行為であるからということでこれを無制限に許しておく場合には、象徴天皇としての地位の上にも問題が出てくると考えるわけであります。そこで、それには天皇の公的行為というものが国事行為以外に認められるとするならば、それについての条件というものがあるはずです。政府は、それについてすでに行政解釈を下しておいでになるわけでありますが、それについてどういう条件のもとにおいて考えられているのかという点を、ここで明らかにしていただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/17
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018・瓜生順良
○瓜生政府委員 私たちは、この憲法の第四条に「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。」こうございますから、国政に関する権能というふうなことにわたる部分については、これはいけないのだ、これが条件だ、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/18
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019・村山喜一
○村山(喜)委員 それ一つだけですか。私は野田長官に尋ねておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/19
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020・野田武夫
○野田政府委員 憲法に明らかに、いわゆる政治には関係しないということが書いてあります。これはいま瓜生次長が申しましたとおりであります。そこで、儀礼その他は天皇の象徴としておのずから出てくる行為でありまして、国事行為以外でございますが、しかし、いま瓜生次長から申しましたとおり、天皇の行為というものが政治に直接関連する行為でなければ、これはおのずからそこに、何と申しますか、行政上の措置もございますが、行為自体が政治に直接関係があるかないかということは、常識的に考えましても、政治に関与することになりますれば、これは当然制約を受けるものでございますから、その間のことは、やはり天皇の象徴としての社会的にあらわれる影響、それから行為の実体、こういうものを考えますと、やはりきわめて常識的にこれが判断できるという範囲内の御行為は、私は制約以外ではないか、こう思っております。その以外は、いま瓜生次長の申しました御説明によっておわかりいただけると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/20
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021・村山喜一
○村山(喜)委員 どうも不明確です。やはりここで私は、次のことが明らかにされなければならないと思うわけであります。それは、天皇の公的な行為というものが国事行為以外にあり得るとするならば、それは先ほど瓜生次長が申されましたように、その公的な行為というものは国政に関する権能を含んではならない、この点は明確であります。それからその前に一番前提になるのは、この公的な行為については内閣が責任をとるということ、この点は明確にされておかなければ、象徴天皇としての責任の問題に発展するわけですから、内閣が責任をとるということは明確にされておかなければならない点だろうと思う。それと第二点は、いわゆる象徴天皇としての、その設置をした目的に反するような公的行為というものは行なってはならない。この三つの条件というものがあって、初めて私は天皇の国事行為以外の公的行為というものがなし得る、こういうように限定して解釈をしておかなければならないと思うのでありますが、その点についてはどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/21
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022・高辻正巳
○高辻政府委員 国政に関する権能を有しないという関連からの御質問でございましたが、新たに内閣が責任を負わなければならないというお話がありました。これは結局においてはそうだと思いますが、ただ、ここでちょっと明らかにしておきたいことは、やはり国事行為と天皇が象徴であるということと、国事行為以外の御行為をされ、それが公的な面を持つという場合の責任のとり方でありますが、御承知のように、憲法の規定によりますと、第三条に、「天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。」ということが明確にされております。つまり国事に関する行為につきましては、内閣が助言と承認をするということでありますので、その助言と承認をする実体的な関係から、内閣そのものが責任を負うということに相なっておるわけであります。ところが、国事行為以外の行為になりますと、これはむしろ直接には天皇のいろいろな御行為についてお世話をするのが宮内庁でありますが、その宮内庁のいわゆる公的事務等につきましては、むしろ内閣総理大臣が宮内庁を所掌しておる行政監督の一大臣としてその衝に立っておられますから、それはまた内閣を構成する方でありますから、そういう意味において内閣が関連を持つということはもとよりのことでございますが、そういう差がありますことを念のために申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/22
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023・村山喜一
○村山(喜)委員 もちろん憲法上の国事行為に対する内閣の責任と、宮内庁長官が一種の行政としてお世話を申し上げる、それに対する上級官庁としての総理大臣、ひいては内閣がそれに対して責任を負う、こういう二つの種類があることは、私も承知しております。しかし、いずれにしても内閣の助言と承認というものを明確にしておく意味において、内閣が責任を持つ、この立場は明確にされなければならないと思うのでありますが、総務長官どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/23
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024・野田武夫
○野田政府委員 ただいま法制局から申しましたとおり、天皇の公的な御行為に対しての責任につきまして、もちろん国事行為は、直接内閣が責任を持つことは憲法で明らかでございます。同時に、いま同じことを申すようでありますが、やはり宮内庁が内閣のもとにあります以上は、それはまたその行為に対して宮内庁のお世話をいたしておることについての責任は、やはり直接とか間接とかいうことと同時に、本来基本的に申しますと、やはり内閣に責任があるという考え方は正しいと私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/24
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025・村山喜一
○村山(喜)委員 宮内庁は、憲法調査会で、この委任の法律が制定されていないために、現在、国際儀礼上望ましいにもかかわらず、天皇は海外旅行を行ない得ない事情があるというふうに述べておりますね。これは瓜生次長が述べておる。だから、この立場から考えていくならば、宮内庁としては天皇の海外旅行を希望しておる、こういうふうに解釈して差しつかえないと思うのですが、その点はどういう考え方であるのか。なお、天皇が御自身海外に旅行をされた例が日本の歴史の中にありますかどうか、この点についてまず明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/25
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026・瓜生順良
○瓜生政府委員 憲法調査会の際に、証人というような形で呼ばれまして、この問題にも触れて申し上げたことの要点は、いまおっしゃったようですが、それはしかし、海外旅行ができないというよりも、困難であるという表現をしたと思います。しかしなお、いまお尋ねのように、それでは宮内庁は天皇が海外御旅行になることを希望しておるかといいますと、これは海外に御旅行にもなれるように、やはり制度ができているということは希望いたしております。いま海外に御旅行になる場合はどういう場合であるかということについては、これは慎重に検討せねばいかぬと思うのですけれども、御旅行になることができるような制度ができていることが、やはり普通の形だと思います。外国の憲法を見ましてもそういうふうになっておりますから、そのように思っております。
それから天皇がいままで海外に旅行されたことがあるかということでございまするが、これはいままではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/26
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027・村山喜一
○村山(喜)委員 日本の歴史の上において、天皇が海外に旅行されたという歴史がない。これは欽定憲法との関係があるとお考えになるのか、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/27
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028・瓜生順良
○瓜生政府委員 これは欽定憲法との関係とか、そういうようなことではないと思います。やはり以前は海外にお出になるというような場合には、いまのように飛行機も発達しておりませんから、相当の長期間の御不在を考えなくてはいけないし、また各国の間の国王とか大統領等の来訪というものも、以前はそうあまりなかった。戦後特に交通、通信機関が発達してから、国内と同じぐらいの世界になってしまったというようなところから、各国ともどんどん海外の旅行が多くなっております。そういう情勢の変化からきておると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/28
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029・村山喜一
○村山(喜)委員 そこで、天皇が海外に旅行されることを将来の予想としてこの法律案は提案をされておると思うのであります。そういうような場合もあり得るということですね。その場合に、いわゆる天皇が包括的に国政権能を有しておいでにならない。だから、天皇は、言うならば立法権、司法権、行政権の外にある。そういう天皇の地位というものは、象徴的な機能というものを備えておいでになるわけでありますが、その場合に、天皇が外国の元首と親書の交換をなされる、これは公的に不可能であると私は考えるわけでありますが、天皇が外国に行かれた場合に、そういうようないわゆる親書の交換というようなことをおやりになるのは、儀礼的な行為として認められるとお考えになるのか。外交上の問題としては、天皇が外国に行かれる場合を予想しておるがゆえに、この際明らかにしていただきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/29
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030・高辻正巳
○高辻政府委員 先ほど来お話が出ておりますように、天皇は国家機関としては国事行為を行なわれる。しかし、もともと象徴たる地位におありになるわけで、象徴としていろいろな御行動をなさる。それにつきましても、先ほど来からお話がありますようないろいろな条件といえば条件がございますが、しかし、そういう条件に適合する限りは公の、いわゆる公的な行為を行なうことができるわけでございます。したがって、外国の元首におめでたがあった場合には、それに電報を発してお祝いのことばを述べるとか、そういうたぐいのことができないといういわれはないと思います。したがって、ただいま仰せになりました親書を出すことができるかということは、結局親書の中身によるのだろうと思いますが、天皇は国家機関として、つまりその行為が国家に帰属するものとしてやり得る行為の種類というものが限定されておりますから、そういうたぐいのことについて親書を出すというようなことは考えられませんが、そうでない、たとえばいま申し上げたような電報というような中身のようなたぐいのものにつきましては、これはできないというわけにはまいらぬと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/30
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031・村山喜一
○村山(喜)委員 外国の元首にお喜びがある、慶事があったので電報を打つ、それはしかし私的な行為としては当然許される問題であるわけですから、そういうようなものを問題にしておるわけじゃないのです。やはり国を代表して親書を交換する、こういうような場合の権能というものは、象徴天皇にはおありにならない。なぜかなれば、包括的に国政権能の外にある。ですから、そういう儀礼的なものは差しつかえないけれども、国を代表するような対外的な権能というものはない。そういう立場で外国にお出かけになるべきだと思うのでありますが、その点を明確にしておきませんと、これは将来問題を残すと思いますので、瓜生次長のほうから明確に答えていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/31
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032・瓜生順良
○瓜生政府委員 天皇のお立場上、当然いま先生のおっしゃいましたような精神によって考えていくべきかと思っております。将来、外国に御旅行になるような場合につきましても、これは国政に関することではなくて、単なる儀礼的な意味の御旅行ということに考えるような範囲で事を進めなくちゃいかぬと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/32
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033・村山喜一
○村山(喜)委員 そこで私は、天皇の地位というものは、象徴というのは地位であるのか、それとも機能であるのかということを高辻法制次長にお尋ねをいたしたのでありますが、それは非権力的な地位である、こういうお答えでありました。そこで、天皇は象徴たる地位をお持ちになっていらしゃるわけでありますけれども、その象徴たる地位を、地位という考え方に立っていくならば、天皇が象徴たる地位を有しておいでになるがゆえに、憲法上十二項目の国事行為ができる。そういたしますと、国事行為だけを委任をいたしましたあと、あとに残るのは象徴という地位だけが残るわけですから、その象徴としての天皇が外国に行かれる場合には、これを包括的に委任をして行かれる場合と、一部だけを委任をして行かれる場合とを予想をされるわけであります。そこで包括的な委任もこれは否定はいたしませんけれども、問題はその委任のいわゆる発議というものは、これは天皇自身がお持ちになるべきか、それとも内閣がこの発議については責任を持つべきなのか、この点を明確にしておかなければならないと思うのであります。その点はいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/33
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034・高辻正巳
○高辻政府委員 ただいまの象徴というものは地位であるかどうかということに関連をしまして、先ほどの答弁を引用されましたが、私は、地位であるか、機能であるかという御質問について、実は問題の所在を的確につかみがたいのであります。私は率直に申し上げますと、先ほどは憲法第一条を引用しまして、地位とあるから地位なんだということを申し上げましたけれども、しかし、その地位にあるということは、自然に何らかの機能を営んでおるということは、これは当然あり得ると思うのです。つまりその地位に置かれている天皇の御存在を見ることによって、われわれはそこに日本国の象徴、日本国民統合の象徴があるというようなふうに見ておるというのが、憲法の趣旨でもあるし、その地位は主権の存する日本国民の総意に基づくということに相なっておる構成を、日本国憲法はとっておるわけであります。そのことだけをお断りしまして、したがって、地位と申し上げたから機能というものを全然無視しているのだというわけでなしに、もしそういうことを申し上げたために、さらに問題が発展するといけませんけれども、地位ということを私は特に申し上げたのは、機能というものを全然否定して申し上げておる趣旨ではないということをこの際つけ加えておきたいと思います。
それから国事行為の委任の場合でございますが、先ほども申し上げましたように、天皇が象徴であるというのは、天皇がかりにすべての行為を委任されましても、天皇はやはり象徴であることはお疑いがないと思います。その国事行為の委任は一体天皇の発意に基づくものかどうかということでございますが、この法律をごらんになればわかりますように、そうして私も先ほど触れましたように、四条の二項におきまして、天皇は「国事に関する行為を委任することができる。」、この委任するというのも、実は憲法が認めました天皇の行為でありますので、やはり憲法の規定するとおりに、内閣の助言と承認によってこの委任をすることにすべきであろうということで、この御審議を願っております法律案には「内閣の助言と承認により、」ということになっております。というのは、つまり内閣の意思によって、それに基づくということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/34
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035・村山喜一
○村山(喜)委員 そういたしますと、外国に天皇がお出かけになる場合には、内閣が受任者を決定をして、そうしてその者に国事行為を委任をすべく天皇に助言を申し上げる、こういう立場に立つと思うのでございます。その場合と、もう一つ、軽い御病気にかかられた場合、こういうことが提案の理由の中にあります。そういたしますと、軽い病気にかかられたときに、天皇御自身が発意されるということは予定はしておりませんか。その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/35
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036・瓜生順良
○瓜生政府委員 軽い病気の場合でございますが、宮内庁といたしまして、側近奉仕のことも責任の中に入っております。というのは、天皇の側近の奉仕をいたしておりますれば、軽い病気にかかられ、たとえばかぜを引かれて、熱が相当長く続かれる、そのためにいろいろ署名を要するような書類が内閣からまいりましても、おできにならないというような状態だ、こう判断をいたしました場合には、これは宮内庁の長官からその旨を総理大臣に申し上げる。それを内閣のほうで、そういう状況であるならば、やはりこれは御委任になるように助言と承認をしようということになって運んでいくと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/36
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037・村山喜一
○村山(喜)委員 そういたしまするならば、結局天皇の発意というものに基づくものではなくて、天皇が身体の故障等をお申し出になりまして、そうしてそれは客観的な資料として、その問題を内閣がその資料に基づいて決定をする、こういうことになりますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/37
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038・瓜生順良
○瓜生政府委員 内閣は助言と承認でございますから、やはり委任をされる主体は天皇になります。内閣が責任を持って助言、承認をされるということで、委任はやはり天皇がされるという形になります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/38
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039・村山喜一
○村山(喜)委員 ここで明らかにしておかなければならないのは、内閣の助言と承認というこの決定でありますが、これはいま委任は天皇がされる、こういうように答弁をされたわけですが、そうなってまいりますと、天皇の御意思、天皇の決定権というものは、内閣の助言と承認——こういうようなものは一体としていままで私どもはとらえておりました。そうしてそういうものには、いわゆる天皇が拒否をされる権限というものは、憲法上ないのですね。そうなりますと、天皇が御決定になる−天皇が発意されて、そうしてそれを内閣が助言と承認をする権能を持っているわけですが、天皇がおきめになるということになると、主体としての天皇というものの存在がはっきりしてくることになりますが、いままでは助言と承認なくしては天皇は意思決定はされない、こういうことになっていると思うのです。いまの瓜生次長の発言を聞いておりますと、主体と客体が食い違ってくるようなかっこうの発言に聞き取れたわけですが、その点を明確にしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/39
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040・瓜生順良
○瓜生政府委員 やはり政府の助言と承認によって意思をきめられるということ、このことは第七条の国事行為についても、まあこれは行為でございますが、助言と承認によってなさるのが天皇、たとえば栄典の授与なんかでも、やはり助言と承認によってそれに署名をなされるのは天皇ということであります。しかし、これはあくまでも内閣の助言と承認によられるわけで、天皇が考え、御自身でやられるということと違うわけです。責任も内閣が負われるということになっておりますが、それと似たようなことで、内閣のほうでその情勢をよく考えて助言と承認をされる、そこが責任を持って助言と承認をされて、それを受けて天皇は委任される。委任の中の、やはり形式上の主体は天皇であるということを申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/40
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041・村山喜一
○村山(喜)委員 これは明確にしておきませんと、内閣の責任、天皇の責任の問題にかかってまいりますので、いままで瓜生次長が出席をされない前、宮内庁長官もお見えになって、石橋委員のほうからこの問題について追及をされておるわけです。結局国事行為に対する発意、発議というものは、これは拒否権、修正権というものは天皇にない。これはあくまでも内閣の助言と承認以外にはないんだということが、明確にされているわけです。そういたしますと、いまの天皇の行為というものをはっきり解釈をしておきませんと、どうも瓜生次長の説明では、その意思決定権が天皇にあるように受け取れるわけです。この点は、法制次長から明確にしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/41
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042・高辻正巳
○高辻政府委員 私、そばで瓜生次長のおっしゃっておることを聞いておりますが、そう誤解をいただくこともないのではないかと思いますけれども、しかし、もう一ぺん私どもの考えを申し上げれば、御承知のとおりに、天皇の国事行為には内閣の助言と承認が必要である、また天皇は国事行為を内閣の助言と承認によって行なうというふうになっておるわけでして、この四条二項も、天皇は委任するとありますけれども、やはり天皇の行為の一つとして、助言と承認というものが必要であるという考えに立ちまして、助言と承認により委任をするということになっておるわけです。ということは、ほかの国事行為の場合と全く同様に、その助言と承認に、実はただいまお話がありましたように、天皇はそれを拒否する権能もないし、それを変える権能もないし、もっぱらその助言と承認によってその行為を行なわれるということでございます。なお不十分でございましたら申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/42
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043・村山喜一
○村山(喜)委員 いまの法制次長の答弁でよろしいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/43
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044・瓜生順良
○瓜生政府委員 いま言われたことと私の言ったこととは、違っていないと思うのですよ。要するに、私が申し上げましたのは、形式上の点を申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/44
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045・村山喜一
○村山(喜)委員 そこで、もう一つ明らかにしておかなければならないのは、内閣の判断で天皇の国事行為を委任する、こういう判断を下す。それから皇室会議の議決によって摂政を置いたほうがいい、こういうように皇室会議が議決をする。この二つの場合が形式的には存在し得ると思うのです。その場合に、一体どちらのほうが重きをなすかという問題は、ここで明らかにしておかなければならないと思うのでありますが、その点については、総務長官はどういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/45
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046・高辻正巳
○高辻政府委員 ちょっとまた法制上の問題でございますので、私が先に答弁させていただきますが、ただいまの御質疑は、国事行為の委任の場合と摂政が置かれる場合との関連といたしまして、かなり重要な問題だと思います。ただ、いま仰せになりましたように、皇室会議で決定をした、ところでまた同時に内閣が決定しようとするというような場合は、実は私どもとしてはそういう事態は生じないという考え方に立っております。その理由を申し上げますが、実は明治憲法のもとにおきましても、御存じだと思いますが、摂政の制度と監国と通常いわれておりましたいわゆる委任代行の制度と——これはあとのほうの委任代行制度は、憲法上の制度ではございませんでしたが、学説上そういう場合を考えている学説がございまして、その場合に、一体、摂政を置く場合と監国を置く場合をどういうふうにけじめをつけて考えるべきであるかというような、まさに先生の御指摘になったような問題が出ております。その際からの問題でありますが、結論から申し上げますと、旧憲法時代の摂政も、また新憲法のもとにおける摂政も、共通的な要素といたしましては、天皇が一定の事態、これは未成年の場合が含まれまして、故障がある場合には摂政が置かれる。この摂政が置かれるというのは、実は法定代行制度といわれるわけでありまして、天皇の御意思にかかわりなく置かれることになるわけでございます。そういう点から申しまして、実は旧憲法下におきましても、あるいは清水澄あるいは美濃部達吉というような憲法のそうそうたる学者は、摂政が置かれる場合は、天皇の意思能力にかかわりのあるような事態、天皇が委任をされるというようなことの発意といいますか、そういう意思がない場合、そういうことを前提として摂政ということが行なわれる。天皇に、意思能力の点に瑕疵のないような場合につきましては、むしろ委任でいくべきであるというふうな議論がなされております。先ほどもお話がございましたように、天皇が国事行為を委任するのは内閣の助言と承認によるわけでありまして、もっぱら天皇の御意思によってやられるということはないわけでございますが、それは決していまの問題を左右するものではないと思いますが、いずれにしましても、天皇に意思能力がある場合の代行の問題と、意思能力が欠ける場合の代行の問題と、二つの場合が考えられるわけでございまして、旧憲法時代の考え方というのはいま申し上げたとおりでございますが、そういう問題は、新憲法の審議の際の憲法議会におきましてもやはり問題になっておりまして、当時の金森国務大臣は、大体いま言ったようなことの線に沿って答弁をしておられます。私どももまた、この新制度を立案するに際しましては、摂政は未成年の場合以外は、いま言ったようなかなり重大なる事故があります際に摂政が置かれる。その重大なるということの判定は、意思能力との関連において考えられるほどの重要な故障があるようなときには、摂政が置かれる。そうでない場合には、たとえばしばしば言われますように、海外御旅行というような場合はそういう場合に該当いたしませんので、むしろ委任の制度でいくというわけで、そういう場合に、二つの方法が相並び存するというふうには考えておらないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/46
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047・村山喜一
○村山(喜)委員 私は、野田長官から聞いているんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/47
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048・野田武夫
○野田政府委員 ただいま法制次長が申しましたとおり、つまり天皇の意思決定の能力があるかないかということを基本として、代行を置くか摂政を置くかということでございまして、ただいま法制次長が申しましたとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/48
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049・村山喜一
○村山(喜)委員 私は、どちらに重きを置くかということを質問申し上げたわけですが、それに対してはお答えがないわけです。もう少しこの問題を深めてまいりますと、摂政を置くという場合は、これは一つの法定代理機関として置かれることになると思うのですが、委任をするものは、一種の委任代理機関的な存在、こういうような解釈がなされると思うのです。そうなりますと、摂政を置くという場合に私は重きを置くべきである、こういうような解釈を立てているわけですが、内閣総理大臣が、皇室会議議長、そして内閣の首長をしている、こういう立場から、実際上の競合という問題は、私は起こり得ないというふうに解釈はしております。しかしながら、この際国事委任の法律ができるわけでありますから、憲法上の摂政を置く場合と、同じ四条の二項に基づいて委任をする法律ができる場合との問題を明らかにしておかなければ、今後問題が起こり得る可能性も形式的にあり得るわけですから、その点をはっきりさせていただきたいということをお尋ねしているわけです。その点は、やはり野田総務長官がお答えになるべきだと思いますが、、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/49
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050・野田武夫
○野田政府委員 つまり臨時代行という場合と摂政を置く場合ということでありまして、先ほど法制次長が申しましたとおり、その臨時代行と摂政を置く客観的な状態というものが、大体明瞭になって考えられると思うのです。したがって、摂政の場合の皇室会議と、臨時代行を置く場合の内閣の助言と承認の問題でございまして、そこが混請するおそれがあるんじゃないかという御説でありますが、先ほど法制次長が申しましたとおり、天皇に意思決定の能力があるかどうか、天皇に意思決定能力があった場合には、それは代行委任をしたほうがよろしいというような、いま法制局から申しました、摂政と臨時代行を行なう場合の基礎的な条件というものは大体明らかでございますから、別に混淆することはないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/50
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051・村山喜一
○村山(喜)委員 私は、混淆するとかというようなことを言っているんじゃないのですよ。これは権限の競合問題が形式的に存在し得る。だから、この際明らかにしておかなければならないという意味で質問を申し上げている。実際上は生じないでしょう。皇室会議の議長は内閣総理大臣、そうして時の内閣の首長も内閣総理大臣なんですから、同一人物によって処理されることになるわけですから。しかしながら、摂政を置くという場合は、これは法定代理機関である、こういうような解釈をとってまいりますと、やはり摂政を置くその皇室会議の決定というものに重きを置くべきではないかということをお尋ねしているわけです。その点は同感とか、いやそれは違うとか、そういうような意思表示をお願いしているわけですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/51
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052・高辻正巳
○高辻政府委員 私の先ほどのお答えは少し行き過ぎたように思いますが、総務長官からただいまお話がございましたことからも明らかだと思いますけれども、ともかくも摂政が置かれる場合と、それから委任代行をする場合とは、場合を異にしておりますので、確かに先生のおっしゃるような競合の場合というものが考えられるとすれば、これはかなり重大な問題でありますし、さればこそ、そこには旧憲法時代からのいろんな論議というものがあるんだろうと思いまして、先生もまたその点をおつきになっているのだろうと思いますが、いままでのいろいろな旧憲法時代、あるいは英国などの例に徴しましても明らかだと思いますし、また、すでに当時の憲法議会で御審議をいただいた際、金森国務大臣が言っておりますのと全く同様な考えを私どもはとっておりますが、もうくどくど繰り返しませんが、要するに天皇の御意思の関連において、その能力が疑われるような懸念のある場合は、これは摂政、いわゆるおっしゃるような法定代理機関。法定というのは、そこに実は大いに意味があるのでありまして、そういう意味でそういう場合に限定される。そうでない、よく言われます海外御旅行とか、単なる軽い御病気ということになりますと、実はそういう場合は皇室会議を開いて摂政を置くというような場合ではなくして、代行の制度をそこに活用するということになるわけでございます。つまり私どもが言いたいことは、その場合が違っておる。したがって、競合の関係は生じないというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/52
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053・村山喜一
○村山(喜)委員 まあその問題は実際上競合しないというのを、私は形式的にどちらに重きを置くべきかという問題を論議しておることになりますので、水かけ論になりますから、これ以上は申し上げません。
そこで、国事行為の臨時代行に関する法律案は以上で終わりますが、皇室経済法施行法の一部を改正する法律案について、少しただしてまいりたいと思うのであります。
この中で、今回内廷費を六千万円を六千八百万円に上げられたわけでありますが、この内廷費は、俗に言う御手元金であります。その御手元金がそういうように上がった。それと同時に、天皇の公的存在と活動をまかなうために、宮廷費が一般会計の予算に計上されている。そこで内廷事務と国家事務、皇室の私的使用人と国家公務員との関係が、この内廷費と宮廷費をめぐる問題としてどのようなところで区分をされているのか、この点を明らかにしなければ、先ほどの憲法上、天皇はこの憲法の定める国事に関する行為を行なう場合は、これはもうはっきり天皇の公的存在と活動に伴う経費でありますから、これは宮廷費からまかなうべきであるわけでありますが、それ以外に、国事行為以外に天皇が公的行為をなし得る、そういう解釈でありますから、その公的な行為というものと私的行為、一体この区分をどこに線を引くかということは、非常にむずかしい問題が私は実際あるんじゃないかと思う。というのは、昔から言うように、天皇に私なしということばもあるわけですから、天皇のなされる行為というものは、幅を広げていけばいくほど公的行為というものと私的行為というものの区分がつかなくなる。そこで一体どこに線を引いて、これは公的行為であり、これは私的行為である、だからこの私的行為の分については当然内廷費からまかなうべきなんだ、こういう判断をどこで明確に下しておいでになるのか、その点をまず第一に明らかにしていただきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/53
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054・瓜生順良
○瓜生政府委員 この天皇の私的行為という関係は、一般の社会常識を基準として考えていくことになると思いまするが、日常の食事をなさる、そういうような経費でありますとか、平素のいろいろの被服の経費でありますとか、あるいは私的なお立場での御交際の経費でありまするとか、それから生物学の御研究をなさっておりまするが、これも私的な御趣味としてなさっておりまするから、そういうような経費も私的と考えます。それから祭事に関する、つまり賢所の関係その他祭事に関するもの、これはやはり私的な部分として考えておりまして、その部分については内廷費でまかなっておられる。その私的なことにもっぱら携わる人の人件費は、やはり内廷費のほうで考えるということに一応考えられております。たとえば生物学研究所の必要な人件費、あるいは祭事、祭に関する必要な経費、それから特に身のまわりの下のほうの女中に当たるような人、そういうのも、これは内廷費で考えられております。しかし、いわゆる側近奉仕というのは、よく秘書官的な面の仕事がありますので、その側近奉仕の人で、ときには私的な面のお手伝いをするということも、これはあり得ることでございます。そういう点はありまするが、もっぱら私的な面に携わる分については内廷費というふうにして分けて考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/54
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055・村山喜一
○村山(喜)委員 そういうような分類は、常識的にわかるわけです。ただ、学者によりまして、私的行為の範疇に入れるべきだという中に、たとえば天皇が神宮参拝に行かれる。これは賢所と同じ祭祀に関する問題であるから、当然これは天皇の私的行為である。そしてまた巡幸とか行幸、こういうような場合も、私的行為というものがあり得る。いまは植樹祭とかあるいは国民体育大会とか、こういうのはいわゆる公的な行為として常識的に通っておるのでしょうが、そういうようなものも私的行為だ、こういう解釈もあるし、あるいは天皇杯をスポーツ界の優勝者に与えるとか、こういうようなのも私的行為だ。それから国会の開会式に御出席になっておことばを賜わるわけでありますが、そういうようなのも、これは私的行為の範疇に入るべきだ、こういう分類をしておる学者もおります。そこで、ここからここまでは公的行為で、ここからここまでは私的行為という分類が、法律的にもはっきりし得ない点が私はあると思うのですが、いま私が例として申し上げましたような問題は、どういうふうにお考えになるのか、この点を明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/55
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056・瓜生順良
○瓜生政府委員 この象徴というお立場でなさいますことの、国事行為ではない部分がありますことは、先ほど申し上げましたとおりでございまするが、学者の中には、いろいろ学者がたくさんおられまするから、非常に狭く解釈される方と広く解釈される方といろいろございまするが、普通の常識的な解釈でわれわれは考えておるつもりでございます。たとえば神宮に御参拝にお出かけになる、そういう場合に、これは内廷費か宮廷費かというような問題でございますが、御参拝になるその際に、いろいろお供えになったりする、そういう関係の部分は内廷費で考えられておりまするが、その途中の地方行幸という部分については宮廷費で考えているのが実際でございます。あるいは植樹祭、国民体育大会なんかにお出かけの場合、これは公的と考えられております。それから純粋に私的に考えられておりまするのは、たとえば葉山へおいでになるとか、那須の御用邸へおいでになるとかというようなことは、これは私的と考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/56
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057・村山喜一
○村山(喜)委員 天皇の神宮参拝は、憲法上の政教分離の問題とも非常に関連があるわけでありますので、この点はまた他日機会を得て論議してみたいと思うのであります。時間の関係もありますので、その区分が非常にむずかしいと私は思うのでお尋ねをしておるわけで、この問題についてどうだこうだということを言うわけじゃないのでありますけれども、ただ常識的なということで片づけられないのじゃないか、もっとそこを明確にしておかなければならない点が、今後において出てくるのではなかろうかと思うのであります。その点は検討を願いたいと思います。
そこで、近いうちに義宮が宮家を創設になる。そうした場合に、義宮の御婚儀等も行なわれることになるわけでありますが、いままで内廷費からそういうような結婚の費用等もお回しになっていらっしゃるというふうに聞いているわけです。そういたしますと、内廷費は今回六千八百万円ということで上がったわけでありますが、それが不時の用に備えるために蓄積をされている分は、これは天皇家の私有財産として存在をするもの、また将来においては、相続という場合が不幸にして考えられるわけです。その場合の取り扱いの問題がどういうふうになるのかということは、これは憲法上も法律上も規定されていないようであります。だから、それは一つの慣習に基づいて宮内庁としてはおやりになると思うのでありますが、当然そこに私有財産として相続の問題が出てきた場合には、その相続権という問題は一体どういうふうになるのか、この点を明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/57
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058・瓜生順良
○瓜生政府委員 この皇室経済法には、皇位とともに伝わるべき由緒ある物は皇位とともに継承されるようになっておりますが、その他の部分についての規定はございませんので、その私有財産の問題があると思いますが、その相続についてどの範囲は皇位とともに伝わるべきものであるというようなことに関する研究が、われわれもいたしておりますが、学者の意見も聞いたりいろいろいたしておりますが、まだ明確でない点がございます。なおさらに検討をしていきたいと思っておりますが、しかし皇位とともに伝わるべき部分とその他の部分については、いわゆる普通の相続ということに一応考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/58
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059・村山喜一
○村山(喜)委員 皇位とともに伝わるべき由緒ある物、これは三種の神器であるとかあるいはこれに類するものだと私たちは常識的に考えているわけです。その蓄積された内廷費の私有財産に該当する部分については、皇位とともに伝わるべき由緒ある物ではなくて、普通民間で考えられている私有財産と同じように分配をされるべき筋合いのものだと思うのですが、天皇あるいは皇族は、日本国の構成員でありますけれども、日本国のいわゆる国民ではないわけですから、そういうような点は法律の外にあるというふうに考えた場合に、その件についてはいま検討中ということだけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/59
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060・瓜生順良
○瓜生政府委員 現在のところは、まさに検討中ということであります。学者の中にいろいろ説があったりして、どの範囲が皇位とともに伝わるかという場合、三種の神器といわれておられるものについては疑問はございませんが、それだけではなくて、もっと考えなくてはいけないのじゃないかというような点があるのでありますから、検討中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/60
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061・村山喜一
○村山(喜)委員 新憲法が制定されてから、相当期間がたっているわけです。いままでは慣習に基づいて処理されてまいったように考えるわけですが、やはり何といいましても法律で規定すべきものはしていかなければ、いつまでも検討中ということでは、実際そういうような場面が出てきた場合にお困りになるのじゃないかということも考えているわけですが、それはいつごろまでに検討されるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/61
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062・瓜生順良
○瓜生政府委員 そのことにつきましては、早くはっきりしたほうがいいと思って鋭意いたしておりますが、いろいろの説があるのでございますから、できるだけ早くとは思っておりますけれども、はっきりしたものはまだ出ておりません。できるだけ努力して検討して、早く結論を出したいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/62
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063・村山喜一
○村山(喜)委員 そこで、いわゆる皇位とともに伝わるべき由緒ある物の三種の神器、これは当然皇位とともにあるべきものであることは、国民の普通の常識的なものとして考えられるわけでありますが、伊勢の皇大神宮にお祭りしてあるのは、その中の一部でありますか。そういたしますと、伊勢のいわゆる神宮は、神社仏閣になりますから、法人格を持つ神宮だ。そうすると、祭神は天照大神でありましょうけれども、そこにいわゆる宝物として持っておるという財産の所有と、いわゆる皇室経済法の七条にいう皇位とともに伝わるべき由緒ある三種の神器、これは当然天皇の皇位に付随するものであるということになりますと、天皇が伊勢神宮にお預けになっておるという品物で、伊勢神宮の品物ではない、こういうふうに解釈するのが正しいと思いますが、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/63
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064・瓜生順良
○瓜生政府委員 伊勢神宮の御鏡につきましては、これは歴史的にやはり天皇が伊勢神宮をして祭らしめられておるということでずっときておりますので、やはり普通の民法上の所有権とかいうようなものをすぐにぴったり当てることがはたして適当かどうか疑問がございますが、やはり皇室に属するものでありますから、皇位とともに伝わっていくものと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/64
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065・村山喜一
○村山(喜)委員 そうすると、伊勢神宮に預けておいでになる、こういうように解釈していいわけですね。この点はだいぶ前にも問題になったことがありますので、はっきりさせていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/65
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066・瓜生順良
○瓜生政府委員 そのとおりに解釈しておりまして、何年か前に、どなたか議員の方からの質問書がありまして、総理大臣からそういうように答弁がなされております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/66
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067・村山喜一
○村山(喜)委員 そこで、この内廷費の蓄積分の問題につきましては、将来相続との関係において検討していただくということにして、できるだけはっきりした方向を出していただきたいわけですが、ここで皇族のいわゆる独立の生計を営む親王に対しまして、今回五百十万円というものが支給されるようになっておるわけでありますが、これは所得税法の六条によって非課税の所得ということになっておるわけであります。そういたしますと、皇族のいわゆる基本的人権といいますか、これが所得税法の非課税の所得というようなことから見まして、天皇の内廷費六千万円とそれに比較する四百七十万円、今度改定になるわけですが、六千八百万円と五百十万の比率というものは、何か科学的な根拠に基づいてお出しになっているのか。その点は、非課税にいたしましても、五百十万円というのでは、内廷費に比べたら少な過ぎるのじゃないかという印象を受けるわけですが、そういうような点はどこに根拠があるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/67
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068・瓜生順良
○瓜生政府委員 これは戦後初に内廷費、皇族費をきめられる場合に、内廷費としてはどれくらいあったら実際問題としてよかろうというようなことを、いろいろ検討されて基準が出たわけであります。皇族費についてもそういうことでございますが、特に内廷費の関係は、一人当たり幾らということでございませんで、これは天皇、皇后両陛下に皇太子、同妃両殿下と浩宮、義宮さん、そういう方を全部含めておるわけであります。
それからなお、先ほどもいろいろお話が出ましたが、象徴であられる陛下のお立場上、私的にいろいろなさる経費も、これはほかの皇族さんから見れば、私的の御交際でも多いですし、先ほどのお祭の関係ですとか、そういうような関係も天皇としてなさっております。そういうような関係で、やはり経費の要られる面が相当内廷の関係で多いわけで、こういう金額になっておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/68
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069・村山喜一
○村山(喜)委員 皇族費というのは、これは皇族がお使いになる私有財産というふうに性格的に見られますね。そうなりますと、それ以外に宮廷費の関係があるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/69
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070・瓜生順良
○瓜生政府委員 皇族の場合ですと、それ以外の宮廷費といいますと、交際費というのはごくわずかあります。皇族という身分で公的に御交際される、そういうようなものが宮廷費に入っております。それ以外は、予算はございませんが、ただ、ときによると皇族が外国に御旅行になる。たとえば昨年ですと、三笠宮さんがトルコにおいでになりました。そういうような場合、これは皇族としての公的な御旅行という意味で、いまの三十八年度の予算にはのほっておりました。そういうような特別の場合についてのみ考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/70
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071・村山喜一
○村山(喜)委員 そういたしますと、皇族の方が自分のおうちでお使いになる使用人その他については、宮廷費のほうからは見ていないわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/71
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072・瓜生順良
○瓜生政府委員 各宮家では、事務官一名と運転手一名、これは宮廷費で見てありますが、その他の職員は、皇族費で雇っておられるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/72
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073・村山喜一
○村山(喜)委員 この前の委員会で宮内庁長官が、住まいとか自動車とかいうものの経費も見てない、こういうようにたしか説明をされたと思うのですが、その点はいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/73
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074・瓜生順良
○瓜生政府委員 住まいの関係でありますと、高松宮さん、三笠宮さんの関係は、御本人の所有のところでございますから、これは全然見てありません。秩父宮家のは、これは以前秩父宮家のものでありましたが、国のほうへ寄付されて、結局皇室用財産として管理をしておりまして、お住まいになっております。したがって、部分的には、秩父宮さんについてはそういう経緯がありますので、見られております。
自動車の関係では、自動車は、これは一台ずつは宮家にはいっておりますけれども、実際一台だけではお足りにならないで——両殿下おられますし、ときによると事務的な面もありましょうし、その他の自動車については、これは宮家で購入しておられるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/74
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075・村山喜一
○村山(喜)委員 そういたしますと、非常に経費が窮屈になると思うのです。そういうような立場から考えてまいりますと、皇族のいわゆる基本的人権と義務という問題との関係を明らかにしていかなければならないわけですが、選挙権、被選挙権は、これはいまないわけですね。そういうような基本的な人権というものが、どの程度——この世襲制の天皇制というものを維持するために、日本国憲法において皇族というものが設けられ、それに対しては国のほうから国会を通ずる予算の中において、今回五百十万円、こういう程度の給与しか支払いをしていない。これは私有財産として処分をされる権限があるわけですが、それには宮廷費のほうでほかにだいぶ見ておれば別でありますけれども、それは見てない。だから、片一方においては選挙権、被選挙権というものが制約をされている。そうして皇族の存在というものは、世襲天皇制を維持するために存在をしておるということになりますと、その基本的人権とこの給与との関係のバランスというものが、どうもおかしなことになるのじゃないかという気がするのですが、その点、いわゆる皇族の基本的人権と義務の問題は、どういうふうになっておるか、明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/75
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076・瓜生順良
○瓜生政府委員 皇族としてのいろいろ義務も持ってやっておられるのに、皇族費が少ないじゃないかというような点、これは必ずしも多いとはわれわれも思いません。必要の最小限度ということで、質素を旨としておられるので、こういうことで済んできておるわけでございまして、実情を拝見しなが−ら、実情に応じて徐々に上げてきてい一ただいて、今度も四百七十万円から五一百十万円に上げていただこうというようなことでございます。
皇族の義務の関係でございまするが、皇族としていろいろの行事とか、あるいは外国との交際など、よくつとめておられるわけでありますが、選挙権の関係は、これは戸籍法の関係の適用がございませんので、お持ちになっておりません。しかし、これは、天皇は全国民の象徴ということで、一方に傾かないという広い立場におられます。皇位継承権者の方も、やはり広い立場におられるというようなことから、特に選挙権、被選挙権をお持ちになっていないことが、かえってそういう精神から見てよろしいということで、こういうふうになっておるのだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/76
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077・村山喜一
○村山(喜)委員 いわゆる皇位継承資格者というのは八人ですね。皇太子、浩宮、義宮、高松宮、三笠宮及び三笠宮のお子さま御三方、この八名の方は、いわゆる天皇の皇位継承者の資格をお持ちになっておるのですから、それとの見合いにおいて基本的人権である選挙権、被選挙権というものが制約されてしかるべきだけれども、そのほかは、これは皇位継承資格者ではないわけですね。そうなりますと、そのほかの方は、当然そこには基本的人権の問題等が出てくることに私はなるのじゃないかと思うのですが、いま戸籍法云々と言われましたけれども、戸籍法は、ほかの目的に使うためにする。そういうようなものが適用されない者については、選挙権、被選挙権を持たないというのが、法制上生まれてまいりました過程においてあったわけですが、そういうような点から考えますと、これはやはり検討を要する問題が、この皇族の範囲の問題あるいは基本的人権という問題との関係においてあるのではなかろうかと思いますが、その点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/77
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078・瓜生順良
○瓜生政府委員 検討を要しないということは申し上げかねると思います。やはりこの問題については、さらに検討をしていくべきであると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/78
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079・村山喜一
○村山(喜)委員 皇族の存在する理由というのは、日本国憲法におけるところの世襲天皇制を維持するために存在すべきものだと、私は思っておるわけであります。そういうような点から考えていった場合には、皇位継承者でない、そういうような皇族というものの存在、あるいはそれと国民の基本的人権との関係、あるいは経費の問題、これらの点については、やはり再検討をしていかなければならないことが今後において予想されるのではなかろうかと思います。そういうような点から、先ほど申し上げました私有財産権の問題と同時に、この問題の検討を要望申し上げておきたいと思うのであります。
これで両法案に対する質疑は終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/79
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080・徳安實藏
○徳安委員長 田口誠治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/80
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081・田口誠治
○田口(誠)委員 まだあとに質問者もあるようでございますし、理事会できまった内容もございますので、私はきわめて短く質問をいたしたいと思います。私が用意してまいりました皇室経済の関係については、省略いたします。
そこで、一昨日石橋委員が質問をされ、そうして特に天皇の国事行為とそれから閣議決定、政令の出し方、それから国会審議の関係、こういう点について時間をかけて質疑がなされ、しかもその内容が討論に及ぶほどきびしくなされたわけです。私聞いておりまして、一つだけこれは確認をしておかなければならないということがありますので、その点をお聞きいたしたいと思います。と申しますのは、あの質疑応答の中で、一つの栄典法というのを例にとられて、そうしていろいろと質疑をされておったのですが、総務長官のほうからは、これは国事行為の中には栄典という面が明記されておるから云々ということで、それで閣議決定、政令ということが妥当性だという意味合いの答弁がなされておるわけなんです。したがって、これはまだ争点として残っておりますので、これに関係をして私は質問を申し上げたいと思います。
天皇の国事行為というのは、先ほど村山委員のほうからも質問をいたしましたように、六条の国会決定によるところの総理大臣の任命、それから最高裁判所の長の裁判官の任命、その他憲法第七条によるところの十項目にわたる内容が明記されておるわけなんです。したがって、この内容を一つ一つ検討をしてみますと、これは国の実際的な政治の運用とは全く切り離されたものであって、言うなれば形式的、名目的、儀礼的な性質のものというようになっておりますし、これは日本の多くの学者がそういうような見解をとっておるのでございます。したがって、こういうことからいいますと、総務長官が一昨日答弁をされた、栄典の関係は国事行為の中にも入っておるから云々といういうことで、これを国会で審議することなく、閣議決定をしたり、あるいは政令によってこうした問題を処理していくことは、不適当である、こういうように考えられますので、まず第一にお聞きいたしたいことは、この十二項目の国事行為の内容というものは、これは実際的には直接政治の運用というものとは切り離されたものかどうかということを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/81
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082・野田武夫
○野田政府委員 憲法上の国事行為が実際の政治の運用と関係があるかというようなことでございますがあの十二のあげてあります国事行為全体を考えまして、やはり内閣の助言と承認に基づいての国事行為でございますから、実際の政治に全然関係がないというような狭義の解釈はどうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/82
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083・田口誠治
○田口(誠)委員 全然関係がない云々という表現でありますれば、それは総務長官の御答弁なさったことが妥当であり、幾ぶんその関連は持っておりますけれども、直接に政治運用という面について関係はないものだという判断を、私はいたしておるのです。したがって、これを別の表現で言えば、これはきわめて儀礼的であり、形式的であり、名目的である、こういう内容で政治の面との関連を持っておる程度のものである、こういうように考えておるのです。したがって、国事行為の中に、たとえば栄典の授与というような項目がありましても、これを閣議決定をしたり、政令できめるというようなことは、これはやはり好ましくないことであって、当然こういう問題については、国会に出して国会の議を経ることが妥当であるというように考えられます。その点の考え方に相違がございますと、将来ともいろいろそうした問題が出てくると思いますので、私はあえてここで質問を申し上げたわけです。特に憲法の第四条には、天皇はこの憲法に定める国事行為のみを行ない、国政に関する権能は有しない、これは明確になっております。そういう点からこの国事行為の十二の条項を検討してみますと、やはりこれは何といっても儀礼的で、名目的で、形式的なものだ、こういうように判断がされますし、これは私ごとき者が判断するだけでなしに、相当多くの学者がこういう見解をとっておるのであるから、私は、少なくともこの問題については思想統一を行なって、将来の政治の運用をしていただく必要があろうと思いますので、ここできっぱりとした答弁ができねば、よく研究をしておいてもらうということになるかわかりませんけれども、もう一度その点について総務長官から御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/83
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084・野田武夫
○野田政府委員 憲法の解釈その他につきましては、ここに法制局がおりますから申しませんが、私がこの間御答弁いたしましたのは、国事行為の中に栄典という事項があるから、閣議決定してもかまわないのじゃないかという意味ではなかったのでございます。つまり、太政官布告によってつくられました栄典制度が今日現存しておるのだということが前提でございまして、もとより新しい栄典制度をつくるということになれば、これは当然国会の審議を通じてやるのが妥当でありまして、ただ国事行為の中に栄典があるから、どんな栄典制度でもかってに閣議決定して政令でやれるのじゃないかという意味ではなかったのでございます。したがって、従来の政府の考え方は、数回、新しい栄典制度をつくりたいということで、その栄典制度に対する法規を国会に提出したことは、これまた当然でございます。しかし、現内閣といたしましては、いわゆる旧来の栄典制度が存在しているのだから、この制度を生かして叙勲をやりたいという考えでこざいましたから、この意味において、閣議の決定は有効だと申し上げたのでありまして、国事行為の中にあるから栄典はかってに閣議できめるとか、あるいは政令でどうだというのとは、少し私どもの申し上げた内容は違っておりますから、それだけ申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/84
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085・田口誠治
○田口(誠)委員 その内容はわかりましたが、先ほど来私が申しておりますように、また、総務長官からもただいま答弁のありましたように、考え方においてやはり幾、ふん相違の点があろうと思いまするので、私は、ここで明確に申し上げておきたいと思いますることは、たとえば内閣総理大臣を任命する場合でも、最高裁判所の長たる裁判官を任命する場合でも、これは国会の指名した者を形式的に任命するということになるのであるから、これはどうしても、ことばをもう一つつけ加えれば、栄誉的、儀礼的、こういうことになろうと思うのです。そういうものであるから、これは六条をよく見ていただけばはっきりしておりますが、したがって、この国事行為として十二項目ある内容は、やはりそうした考え方の上に立っておのおのの項目を取り扱われることが妥当であって、ここにこう書いてあるから云々ということは、これはただいまの説明でわかりましたけれども、ひとつそういうことのないようにしていただきたいし、あくまでも、一昨日石橋委員がわが党を代表して重要な点を質問申し上げたわけでございまするから、そういう点については、やはり党派を超越して、こういう憲法解釈の問題ですから、今後とも御検討をいただき、処置をいただきたい、この点をお願いを申し上げておきたいと思います。
それから、ここで将来きわめて重要な点について、特に宮内庁の次長にお伺いをいたしたいと思いまするが、私どもの皇室に対する考え方と、それから、いま新制を出られた人たちの皇室に対する考え方、いわゆる新憲法下になってからの皇室に対する考え方というものが−もちろん、これは天皇の権限というようなものも大きな相違が出てきましたので、違ってはおりまするけれども、やはりあくまでも、天皇が日本の国と国民の象徴であるということから、国民から敬愛をされ尊敬をされて、そうして尊厳的な皇室であるということにしようといたしますれば、その場合には、いま考えなくてはならないことは、皇室に対する考え方がだんだんと薄らいでいっておるわけなんです。それで、極端な話を申し上げれば、これは私の申し上げる内容が悪ければ速記録を削っておいてもらってもいいけれども、いまは、あってものうてもどっちでもいいのじゃないか、こういうような極端な議論まで出ておるくらいでありますから、私はこれが五年、十年、二十年とたった皇室を考えたときに、現在の日本の国の象徴、国民の象徴としての尊厳を維持していく上においては、何か皇室に対するところの将来のビジョンというものがなければならないと思うのです。いまのままでは、これはだんだんと、私がいま心配をして申し上げたように薄らいでいくのではないか、こういうように考えておるわけなんです。それはどういうことかと申しますれば、日本の天皇の地位というもの、権限というものが大きく変わりまして、日本のシンボルということに相なったわけでございまするから、これは英国の女王なんかとの比較をいたしますれば、やはり天皇自体のふだんの御活動が、イギリスあたりとは相当相違があるわけなんです。これは次長は十分にお知りだと思いまするが、たとえば伊勢湾台風のようなああいう大きな災害があった場合には、みずからが飛行機でお見舞いをされるとか視察をされるとか、あるいは、みずから長ぐつをはいてお出かけになるというような行動すらあるのでございまするけれども、日本の場合には、もう天皇という地位になった場合には、そうしたことはまずないわけなんで、そうなりますると、やはり国民からの近親感というものがだんだんと薄らいでくるのではないか、こういうことが一つの心配として、いま相当学力のある方々の中でも心配されて、こういうことを言われておる面があるわけなんです。したがって、私は、そういう点から、やはり将来の皇室のビジョンというものをこの際お考えになる必要があるんじゃないか、こういうことを考えておるわけなんですが、実際において、いまの若い人たちの考え方を率直に私どもはくみ取って、将来の皇室をどういうような位置づけをし、どうして皇室が国民の敬愛の的となり、尊敬の的になり、そうして尊厳が維持されていくかということを考えたときに、私は、もう少し何かそこに一つの方法を見出していく必要があるんじゃないか、こういうように考えておりますので、いまだそういうことを考えておらないといわれればそれでよろしいですが、端的でいいが、
一言御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/85
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086・瓜生順良
○瓜生政府委員 御心配いただいております点、やはりそういう傾向もございます。われわれも雑誌類とかいろいろなものについて、皇室に関することについては見落とさないように見ておりますか、いろいろなことがやはりございますけれども、しかしながら、大勢としては、それほどではなくて、一部分の声と思っております。しかし、まあ世の中は動いてまいりまするので、皇室が真に国の象徴として国民に敬愛されるようにあられるように、それにはやはりいまおっしゃいましたように、一そう国民との親愛感を深めていかれるように、いろいろの御行動の面においてなされるように、われわれとしては御補佐申していきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/86
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087・田口誠治
○田口(誠)委員 そこで、天皇の場合には、菊の御紋のカーテンの一つのワクの中にあって、あまり自由な行動もできないわけですが、当然次に天皇の地位につかれるところの皇太子さまの場合、いまの実態を考えてみますと、もう少し何とかしてあげたほうがいいんじゃないか。それは勉強もしておいでになります。スポーツもされておられます。外部に対しましては、これは外国に旅行なさって親善はなされておりまするけれども、国内においては、たとえば慈善事業の大会なんかに御臨席になったようなときには、別なテーブルのところにおすわりになって、そうしてお下がりになるということだけではいけないと思うので、ちょっと極端な話かもしれませんけれども、やはり適切な職をお与えしたほうがいいじゃないか、こういうように考えられる。たとえば、そうなりますると、なかなかむずかしいのですが、赤十字の総裁というような、こういうお仕事を引き受けていただければ、これは赤十字の総裁として、外国に行っても、当然メッセージも読まれ、その中で国と国の親善も実を上げられるし、国内においても、皇太子さまはこういうようなお働きをしていただいて、国民としても親近感を持てれば、非常にけっこうなことだ。こういうけっこうな人間皇太子が今度天皇になられた場合の天皇の見方というものは違ってくるわけなんで、したがって、私は天皇になられるまでの皇太子期間においては、まだまだ宮内庁として助言をしたり、あるいはいろいろ考えてあげるところがあるんじゃないか、こういうように考えておるわけです。したがって、一つの問題点として一例をあげたが、ひとつ職を受けていただいたらどうでしょう。それには、私もいろいろ考えてみましたけれども、赤十字の総裁なんかは、その仕事柄からいっても、重要な仕事であり、外国とも関係を持たれる仕事であり、皇太子さま自身が御勉強なさって、そうしてなおその面について外国へ行ってもメッセージを読まれるというようなこともでき得るのですから、こういうような行動をされることにおいて初めて国民の親近感というものがわいてき、こうしたごりっぱな方が天皇の座におすわりになった場合には、私は相当皇室に対する見方が違ってくるのではないか、こういうように考えておりまするので、そういう点について、私はこれはどこの責任かということはわかりませんが、当然宮内庁がそういう点についてもう少し考えてあげる必要があるんじゃないか、こういうように考えておりますが、そういうことについては、どういうようにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/87
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088・瓜生順良
○瓜生政府委員 皇太子殿下が赤十字の総裁になられたらどうかということにつきましては、現在、皇太子殿下は赤十字の副総裁をしておられるわけであります。皇后陛下が総裁をなさっておりまして、副総裁として赤十字の事業には関与しておられます。なお、社会事業面については、特にいろいろの大会にお出になる以外に、たとえば社会福祉連合会の研究会がございます。そういう研究会にも一緒に出て、そういう方々に加わっておられるとか、それからあるいはいろいろ海外旅行をして帰ってこられた青年の方、そういう方も東宮御所へ見えますと、海外の視察談をされ、それに対して質問もされたりして、ひざを交えていろいろ話をされるということで、皇太子殿下の御日常については、そういう点に相当おつとめになっております。あるいは人によりますと非常におひまのように思っておられる方もありますが、一々新聞には出られないからおわかりになっていない点もございますが、そういうようなことはほとんど毎日のようになさっておるわけで、ございまして、いま先生言われましたような線で大いにつとめておられまするので、われわれもそういう点はさらに深めていかれるように側面からつとめたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/88
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089・田口誠治
○田口(誠)委員 その点は、よろしく宮内庁のほうで御配慮をいただきたいと思います。私は、天皇におなりになったときに、りっぱな方が天皇におなりになったんだ、それまでは国民とともにこういうように働いていただいた方だ、こういう点をやはり実績をつくっておいてもらいたいということなんです。ただ名目的なことだけではいけないので、そういう点でただいまの御質問を申し上げたわけなんです。
次に、もう一つだけお伺いをいたしたいが、先ほど、天皇は国民の一人であるかどうか、構成員ではあるけれども国民ではない云々というような点につきましては、検討中ということでございまするが、これはいまの国事行為の法案が通りますれば、今度は外国へも御旅行なさる場合があるわけなんです。そういう場合に、これは完全に、憲法に示されておるように、国事に関することについて以外は絶対に関与できないものだという、この天皇という線だけでいった場合には、相当向こうでお付き添いの方も気を使っていただかなければならないと思うのです。やはり向こうへ行っていろいろお話をされた場合には、いろいろな話が出てくるわけなんです。そういうときに、国民の一人ということなれば、これはやはり国民の一人としてこういう意見は話せるのだ、こういう主張もできるのだ、こういうことになるのですから、私は、そういうような点をやはりこの法案が出る前に結論を出していただいたほうが、明確でたいへんけっこうだったと思いますが、いまだにそういう点が出ておらないようでございますので、これは私、村山委員の質問を聞いて、いま申し上げたのですが、私の聞いた内容が違っておれば、そのように御回答いただけばいいのですが、やはりこの点は早急にやっていただかなくてはならないのではないか。現在でも、これはもしいけなかったらあとで速記録も削っておいてもらってもよろしいけれども、大臣なんかとお会いになったときに、いろいろお話しになる場合に、やはりいろいろなことを御注文なさるわけなんです。そのときに、たとえて言うならば、一つの例を引くならば、ある国務大臣が、陛下は御所へおいでになるときには三条のほうをお通りになるけれども、ひとつ今度は五条のほうをお通り下さい。五条の大橋というのは鉄筋コンクリートでりっぱにでき上がりますから、こういうお話を申し上げたら、いや、ちょっと待ってください。鉄筋コンクリートの橋ができるなれば、あの擬宝珠はどうなりますか。鉄筋コンクリートになれば、スマートになって擬宝珠なんかはなくなるでしょうな、と言ったら、それでは歴史的に有名な橋だけに、観光客がさびしいじゃないですか。そこで今度は国務大臣のほうから、それではまだこれからでも設計がえできますから、建設大臣とも相談して擬宝珠をつけるようにしますと言ったら、いや待ってください、天皇はいま国事に干渉することはできないけれども、国民としては意見を吐くことができるから云々ということがあったということを聞いておりますが、まだ結論が出ておらないのに、国民という観念からものが言えるということなら、あっさりとそういうように結論を出してもらえばいいし、そうでなかった場合には、やはりこういうところにも宮内庁のほうでは心づかいをしてもらわなければならないと思います。特にこれから外国にお出かけになれるようになるのだから、そういう点について明確にする必要があろうと思いますので、その点はいま私から聞きましても、こうですという答弁はおそらくできないと思いますので、早く結論を出していただかなくては支障を来たすのじゃないかと考えられますので、私のほうからも村山委員と同様にその点を要望申し上げて、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/89
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090・徳安實藏
○徳安委員長 受田君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/90
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091・受田新吉
○受田委員 ちょっと補足質問させてもらいます。
皇室経済法関係で今度賜与と譲り受けの金額を増額措置されたのでありますが、提案理由を拝見しますと、物価の上昇等を考慮して、二十二年当時に比較して約倍額に近い金額を設定されておるようです。しかし、これは私たちとしては、六百五十万円、二百二十万円という賜与、譲り受けの価格の上昇を何の形でおきめになられたかの算定基礎を一応明らかにしていただかなければならぬと思うのです。ただ物価指数を考慮してという、いいかげんな数字をおあげになられて金額をおきめになると、大ざっぱに予算がきめられるということになるわけです。この点、算定基礎を明らかにして御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/91
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092・瓜生順良
○瓜生政府委員 この賜与の現行の制限額三百七十万円、これを六百五十万円といたしました算定基礎は、現在の三百七十万円というのがきまりましたのは昭和二十四年でありまして、昭和二十四年を一として去年の十一月の都市消費者物価指数というのを計算してみますと、一・六八というふうになっております。一・六八を三百七十万円にかけますと、六百二十二万円となるのでありますが、それに幾らかゆとりを見まして六百五十万円という金額を算定したわけであります。
それから譲り受けのほうの百二十万円を二百二十万円に計算いたしましたのは、現在賜与の金額が三百七十万円、譲り受けが百二十万円で、約三分の一の割合になっておりますので、その割合をかけまして、その端数を整理して二百二十万円、物価指数の上昇等からいいますと譲り受けの金額はもっと多くなるわけでありますが、しかしながら、この献上ということにつきましては、あまりお受けにならない、その意味のあるところに限定しておられますので、特にこれを引き上げなければならない大きな理由もそうたくさんございませんから、この程度でよろしいということで現在の割合をかけたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/92
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093・受田新吉
○受田委員 二十四年に天皇と内廷皇族の賜与の価格が改定されておるわけでありますが、その他の皇族については改定されていないわけですね。二十二年のままになっている。そのものが今度分類されておるわけです。未成年の皇族と、しからざる皇族とに区別された理由、そしてその算定基礎について御説明いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/93
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094・瓜生順良
○瓜生政府委員 皇族の関係は、いまおっしゃいましたように、昭和二十二年から変えてありません。物価指数が四・〇四ですから、四倍で六十万円と出ておるわけですが、それでは未成年の皇族についてもやはり六十万円にするかという問題でありますが、現在の実情を見ますと、未成年の方で独立しておられない方の場合は、お受けになる場合、またお出しになる場合は多くありませんので、現在の制限額の十五万円でも十分でありますので、その必要性があまり多くないということで、現状維持の十五万円ということでやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/94
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095・受田新吉
○受田委員 やはり大ざっぱにおきめになっておられるようでありまして、やはりいろいろな現状分析で未成年の方の十五万円、その他の方の六十万円、こういう数字をお出しになっておるようです。目分量でやられるということは、ある程度やむを得ないかと思いますが、さっきあげられた一・六八の数字だけを基準にしておきめになるということにも、また問題があるのじゃないか。この点は一・六八をかけられて多少の融通額を算定されるということ、これは一・六八のこの数字だけにとらわれるのは問題じゃないですか。別のほうの数字も算定基礎にする必要はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/95
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096・瓜生順良
○瓜生政府委員 これはやはり実情を考えますと、現在の三百七十万円の制限額に物価指数をかけて、それに少しプラスして六百五十万円ぐらいにしていただくのが実情に即する、その点を考えあわせてそういうふうにしたのでありまして、物価指数だけを基礎にしたのではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/96
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097・受田新吉
○受田委員 賜与の内容をひとつ御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/97
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098・瓜生順良
○瓜生政府委員 この賜与は、天災地変がありました場合のお見舞い金というようなもの、あるいは社会事業に対してお出しになるお金、あるいは学士院、芸術院等、学術、技芸に関する団体に恩賜賞というようなことをいっておりますが、そういうようなところに奨励の意味でお出しになる、そういうような内容のものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/98
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099・受田新吉
○受田委員 その増額された部分、いま指摘された賜与の対象に対して範囲を拡大する、もしくは金額を増大する、いずれかの方法をとられると思いますが、その具体的な方針をお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/99
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100・瓜生順良
○瓜生政府委員 現在の賜与の金額について考えてみますと、低過ぎる部分がございますので、常識的に低過ぎる部分を幾らか引き上げるようにするという問題がございます。範囲は、いま申し上げたような大体従来の範囲だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/100
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101・受田新吉
○受田委員 金額の増額で範囲は変わらないということでございますが、たとえば国家、社会に貢献された方々がなくなられた場合に、天皇が供物料をお差し出しになる、こういうこともそれに入るわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/101
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102・瓜生順良
○瓜生政府委員 これは予算のたてまえで、いわゆる祭薬料と申しておりますが、おなくなりになった方に対して、普通民間でいう香典ですが、祭粢料をお出しになるのは、これは宮廷費の中の報償費ということで、内廷費ではございませんが、その関係も先生の御意見がいろいろございましたので、そういう点も十分考えまして、三十九年度には金額の少な過ぎるのを増額するように予算面で考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/102
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103・受田新吉
○受田委員 この宮廷費の中の報償費が七百二十七万九千円ということでございますね。この額はどうですか。いまの祭粢料、これは賜与とそれぞれ相対応する問題になると思うのでございますが、対象になる方々の範囲を広げていく、そしてただ、いままで位が高かったとか地位が高かったとかいう意味ではなくて、もっと大衆で貧困なる層の中にも非常にりっぱな行為をして、国家社会に貢献をしたような人があるわけでありますが、そういう人々にもいまの祭粢料、供物料、こういうようなものを広げて、金額は少なくても対象を広げていくという方針をおとりになるべきじゃないかと思うのです。とかく位人身をきわめるとか、官界、政界、財界の大ものとかいう方々だけにこの祭粢料等が限定されている懸念があると私は思うのです。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/103
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104・瓜生順良
○瓜生政府委員 祭粢料につきましては、各省のほうから関係の事業について特別国家社会に功労のあった人について宮内庁のほうへ申し出がございまして、それに基づいていたされておるわけでございまするが、その範囲につきましては、各界の功労者、あるいは社会事業、あるいは経済界もありましょう、その他各界の関係の功労者ということにつきましては、つとめてそのお考えをしていただくように努力をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/104
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105・受田新吉
○受田委員 努力をいたしておられるということでございますが、実際問題として、その比率などを見たときに、おそらく社会事業的な功労者に対する恩典は、はなはだわずかであると思うのです。やはりそういう各界の大ものというものに重点が置かれている。国家社会の功労度というものに対するもっと幅広い、天皇の御存在が、ありがたみがもっと大衆に浸透するような方式を、また政府自身、各省も十分注意して、この問題をもっと大衆的に解決していただくように要望しておきます。
おしまいにもう一つ、この間も議論をされました天皇の国事行為に関係することでございますが、総務長官、あなたにちょっと最後に一言だけはっきりしたお答えを願いたいのです。当委員会で石橋委員が指摘されたように、従来栄典制度の基本的な討議が繰り返されておる。小委員会もできておる。そういう段階であなた御自身は、この栄典制度を法律をもって制定するのが適切であると思うか、あるいは内閣の専管事項としての閣議決定で処断すべきと思うか。この二つの方法があるが、いずれをとるほうが適切であると思うのか、お答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/105
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106・野田武夫
○野田政府委員 新憲法下の栄典制度を実施するということでございますから、またいろいろの各方面の御意見もありまして、新しい栄典法をつくる、新栄典制度をつくるという御意見は、私はやはり一つの御見識だと思っております。しかし、現在の栄典制度を生かしてこれを実施するという理由は、しばしば申し上げましたとおりで、すでに戦後一万数千人も叙勲いたしております。外国人に対しましても、千何百人という方に叙勲しております。そういうことでございますから、今日の情勢からいたしますと、いわゆる栄典制度を全面的に、生存者にもこれを実施したらいいというような段階に入っていると、私は思っております。そういう意味からいたしますと、先ほどもちょっと触れましたように、現在の栄典制度は、新憲法下においても生きておる。しかも歴代の内閣が、これは保守党だけでなくて、社会党内閣のときもそうでありますが、この栄典制度が生きているものという前提のもとに叙勲行為が行なわれております。そこで、これが生存者ではございませんで、死亡者——二十八年にはもちろん一部の緊急な生存者にも叙勲いたしておりますが、そういうことを勘案いたしますと、今日の情勢におきましては、やはり国民の最も親しんでおる、また歴史と伝統を持っている褒賞制度でございますから、新たな制度をつくることも一つのやり方です。しかし、いまお話しました国民に親しまれている栄典制度を生かすということも、一つのやり方であります。政府といたしましては後者を選びまして、そうして今度生存者叙勲も実施したらいいという考えになりました場合におきましては、これは閣議決定をいたしまして、これを実施しても、そこに法律上におきましても何らの疑義はない、こう踏み切った次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/106
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107・受田新吉
○受田委員 私がお尋ねしておるのは、法律事項にするがよろしいか、あるいは政令に委任するための閣議決定によるがよろしいか、はかりにかけてみて、あなた御自身お考えになられて、どっちが適切であると思うか、民主主義国家の日本の現状から見てどっちが適切であるか、答えをはっきり言ってもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/107
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108・野田武夫
○野田政府委員 私も政府の一員でございますから、政府のとりました処置を妥当だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/108
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109・受田新吉
○受田委員 そうすると、あなたは法律事項にするよりは、閣議決定で政令でつくるほうがいい、そのほうが適切だ、こういうお答えですか。次善の策としてというのではなくして、そのほうが適切である、積極的意思でやられたわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/109
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110・野田武夫
○野田政府委員 それはいま申し上げるとおり、手続上の問題で私は妥当と申し上げたのでございまして、私個人の意思はどうかということでございますが、私は、つまり新しい栄典制度をつくる場合、もちろんこれは法律を置かなくちゃなりませんが、いまの栄典制度を実施することも妨げないというので、私は、やはり政府の一員としてこれに賛成しているものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/110
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111・受田新吉
○受田委員 私は、総務長官にお尋ねしている。核心に触れたお答えを願いたいのです。いまあなたがこういうことを言われた。新しい栄典制度をつくるということであれば、これは法律事項がよろしいと思う、こういうことを言われたのです。そのことは間違いないのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/111
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112・野田武夫
○野田政府委員 新しい栄典制度をつくれば、これは当然法律をつくらざるを得ないので、ございまして、これは論外でございます。ただ、どっちがいいか、こっちがいいかという御質問でございますが、私はいま政府の一員で、ございます。政府のやっていることを妥当だ、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/112
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113・受田新吉
○受田委員 あなたはいまそういうことをおっしゃるけれども、政府が意図されている今度の栄典制度の拡大強化ということは、結局新しい栄典制度をつくると同じようなことをやっておられるわけです。従来のものを踏襲するというのではなくて、積極的に範囲を拡大し、そして対象を生存者に及ぼしていくという考え方ですから、もう新しい栄典制度です。古いものがそのまま残っていくわけではない。
ちょっとお聞きしますが、位階令は、従来の栄典制度ですね。この位階令も依然として存続されることになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/113
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114・野田武夫
○野田政府委員 位階令はもちろん現存しております。しかし、生存者には大体出さない方針でおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/114
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115・受田新吉
○受田委員 そうすると、政府の今度の栄典の制度の考え方は、位階令は、引き続き死亡者には今後とも持続するという方針ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/115
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116・野田武夫
○野田政府委員 そのとおりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/116
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117・受田新吉
○受田委員 もう一つ。勲章の制度も従来の形のものをそのまま踏襲する、こういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/117
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118・野田武夫
○野田政府委員 そのとおりです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/118
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119・受田新吉
○受田委員 そうして、生存者がはずされていたから、それを広げていくという、勲章の種類等も従来と同じにする、こういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/119
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120・野田武夫
○野田政府委員 そのとおりです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/120
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121・受田新吉
○受田委員 それが問題なんです。従来の位階令と勲章制度を生かして、そのとおり生存者にも及ぼしていく。この旧式の戦前の規定を新時代にそのまま大幅に生かそうという心得違いが、反動体制がここにある。自民党の皆さんでも、すでに新しい感覚に基づく相談に乗って結論が出ておる。そういう段階で、まだそういうことを考えておられるという、そのことが問題なんです。これはもう時代が古い。
そこで、ひとつお聞きしますが、そういう考え方でやっておられる作業は、いまどこまでいっているのです。生存者にも及ぼすというのは、いつごろを目標に作業しておられるのか、それをやっておられる機関はどこなのか、お答え願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/121
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122・野田武夫
○野田政府委員 いろいろ御批判はありましょうが、勲章1いわゆる栄典制度は新しい時代に云々ということがありましたが、これはいわゆる栄誉と言いますか、つまり功労者の栄典制度でございまして、外国におきましても、ずいぶん古い勲章をいま現に実行いたしております。十分御承知だと思いますが、フランスなんかも、ナポレオン一世時代のものもあります。だから、必ずしも古いものだからすべていけないというようなお話は——これは一つの御見解ですから、何もそれが悪いとかいいとかという考えではございません。それはおのおのの御見解でございますから、私はかれこれ御批判いたしません。
ただ、叙勲の基準でございますが、基準は、もちろん総理府の賞勲部を中心といたしまして、戦没者の叙勲のことがございますから、厚生省と連絡いたしまして、いま基準作成にかかっております。大体今週か来週あたりまでに事務的な基準の作成を終わりたいという考えでございますが、作業がなかなか——やはり対象といたしましては、いまお示ししたとおり、広く対象とする。これは閣議の決定もありますし、また、国家、公共の功労者、しかも対象を広くしようということでございますから、なかなか基準決定に手間取りまして、できるだけ公正な基準をつくりたいというので、いま事務的に仕事をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/122
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123・受田新吉
○受田委員 基準が今週か来週きまり、それに基づいて閣議でも相談がある。そうして実行をいつの目標にしておりますか。死亡者の場合、生存者の場合、一応目標があるはずです。お答え願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/123
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124・野田武夫
○野田政府委員 戦没者は、これはできれば——これは御知知の募り対象が二百万の数になりますから、なかなか一度には事務的にできません。したがって、これは四年か五年継続してやりたいと思っております。そこで、生存者よりも、少なくとも戦没者の調査というもの、これは厚生省の援護局なんかでいろいろできておりますから、そうむずかしくなく、最近大体完了すると思っておりますから、完了次第できれば四月中にでも——戦没者のこれは一部です。二百万人全部一度にできませんから、一部叙勲を開始したい。生存者につきましても、基準の決定に基づくのでございますから、大体の基準は、先ほど申しました今週か来週中に事務的にやりたい。その後やはり閣議その他のことがありまして、もちろん今月中には基準はできませんが、来月に入りますと、何とか基準を正式にきめたい。そこで、それでは生存者に叙勲するかというお話でございますが、これも基準がきまりましたならば、できるだけ早くやりたいと思っておりますが、いま申します基準がきまりませんと、ここでいつごろからやりますということは、ちょっと明言ができません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/124
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125・受田新吉
○受田委員 これで質問を終わります。総務長官、その基準を近くきめる、明四月中に生存者の基準がきまる。目標を置いておられて、できるだけ早くやりたい。だから、死亡者と生存者と並行してどんどん叙勲していくということになるのだと私は思うのです。死亡者のほうを一段階早く始めても、死亡者が全部済んでから生存者にかかるのではなくして、死亡者から生存者に及んでいくと思うのです、時期としては。そこで私がお尋ねしておきたいことは、歴代の保守党内閣が栄典法案を出した。別に閣議決定により、政令の生存者の一部の叙勲という制度を生かしましたけれども、原則としては、この委員会を通じて終始栄典法の審議にわれわれ当たってきたのです。その方向をおやめになられて、旧式の考え方による旧制度をそのまま拡大強化するという行き方は、たいへんな間違いであることを、ひとつ総務長官は心に入れておいていただきたい。それから同時に、池田内閣がいつまでも続くとは思われない。そこで、われわれとしても、こういう暴挙をあえてするような内閣の存続することには疑問があるし、ひとつこの際、あなたとしても、閣議で、この世論、委員会の空気も−少なくとも法律論として、国会に提出する手続をとることが重要であるということを、あなたの良心にむちを打たれて閣議で御主張していただきたい。そうして、この国会が終わってしまったときに、ばたばたと叙勲をせられるということになると、手も足も出ない。願わくは、一応基準をおきめになられてから、われわれのほうからもお尋ねしますから、それを当委員会でお示しになられて、そうして十分国民代表の意思も反映さしてもらいたいと思いますが、その点よろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/125
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126・野田武夫
○野田政府委員 御意見はよくわかりました。ただ、一言申し上げます。この生存者叙勲まで踏み切ります前に、昨年の二月に一応世論調査もいたしております。しかし、いま受田さんの御意見は、私は御意見として十分傾聴いたします。私どもの見解と受田さんの見解がかりに違っておりましても、やはり一つのたっとい御意見として拝聴いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/126
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127・徳安實藏
○徳安委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/127
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128・徳安實藏
○徳安委員長 これより討論に入るのでありますが、別に申し出もございませんので、直ちに採決をいたします。
まず、国事行為の臨時代行に関する法律案について採決いたします。
これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/128
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129・徳安實藏
○徳安委員長 起立総員。よって、本案は可決すべきものと決しました。
次に、皇室経済法施行法の一部を改正する法律案について採決いたします。
これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/129
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130・徳安實藏
○徳安委員長 起立総員。よって、本案は可決すべきものと決しました。
なお、ただいま議決いたしました両案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/130
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131・徳安實藏
○徳安委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/131
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132・徳安實藏
○徳安委員長 次に、郵政省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を継続いたします。
質疑の申し出がありますので、これを許します。村山喜一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/132
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133・村山喜一
○村山(喜)委員 郵政省設置法の一部を改正する法律・案につきまして、次のような点をお尋ねしてまいりたいと思うのであります。この特定郵便局の問題は、先ほども論議されてまいったのでありますけれども、この所掌事務の内容を調べてまいりますと、当然行政法上から見まして、公共企業体としての組織は、公の行政組織の一部を構成するわけでありますから、したがって、これに当たるところのへ的な要素、並びにこの目的に供用をされる物的な要素は、原則としてそれぞれ公務員であり、また公共物でなければならないという考え方が当然出てこなければならないと思いますけれども、その点につきましては、大臣はどのようにお考えになっているのか。この基本的な考え方を明らかにしていただきたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/133
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134・古池信三
○古池国務大臣 原則といたしまして、お説のとおりだと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/134
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135・村山喜一
○村山(喜)委員 そういたしますと、この公共企業の保護、企業の成功を期するために、公用負担の特権とか、あるいは経済上の保護とか、こういうようなものが当然伴うわけでありますが、それについて現在どのような公企業の保護がなされているのか、この点を明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/135
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136・古池信三
○古池国務大臣 郵便事業はもとより国の事業で。ございまして、これの遂行のためには、郵便法その他によって国の特別な監督、あるいは便益を与えられておることは、お尋ねのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/136
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137・村山喜一
○村山(喜)委員 その便益の内容は、公用負担の特権としては、土地の収用とか、土地の立ち入り、あるいは使用、障害物の除去、こういうものについて与えられておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/137
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138・吉國一郎
○吉國政府委員 土地収用法の点でございますが、土地収用法の第三条の三十一号に基づきまして、郵便事業、あるいは簡易生命保険事業等々については、土地の使用、収用等について特権を認められております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/138
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139・村山喜一
○村山(喜)委員 土地の収用については、土地収用法で明らかにされておるということでありますが、土地の立ち入り、使用、障害物の除去等はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/139
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140・吉國一郎
○吉國政府委員 郵便あるいは簡易生命保険の関係につきましては、障害物の除去、あるいは土地の通行、立ち入り等の特権は認められておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/140
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141・村山喜一
○村山(喜)委員 経済上の保護といたしまして、先ほど郵便法の六十九条以降によって、損害賠償責任の否定あるいは制限、さらに郵便法の三十七条による行政上の強制徴収権及び先取特権等については規定がされておるわけでありますが、免税の措置、あるいは国有財産の貸し付け、交換、譲渡、補助金、負担金、利子補給等その他の給付金につきましては、どのような経済上の保護がなされておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/141
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142・小川房次
○小川説明員 土地収用法に基づく経済上の保護はございますけれども、その他の保護はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/142
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143・村山喜一
○村山(喜)委員 自治省、見えておりますね。地方財政法の十二条の二項によって、これは国のいわゆる事業と地方公共団体の経費の負担区分が明らかにされておるわけでありますが、特定局を設置し、または借り上げをし、その維持及び運営をする経費というものが、地方公共団体に負担をさしてはならないんだ、こういうふうに地方財政法の十二条の二項から解釈ができると思うのですが、この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/143
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144・立田清士
○立田説明員 いまの御指摘の点は、地方財政法十二条の一項と二項の関係だろうと思いますが、すでにいま御指摘のとおり、地方財政法十二条は、「地方公共団体が処理する権限を有しない事務を行うために要する経費については、法律又は政令で定めるものを除く外、国は、地方公共団体に対し、その経費を負担させるような措置をしてはならない。」こういうような規定の趣旨でございます。
それで、現在地方団体が貸し付け事務として貸し付けを行ないますものに対して、地方債の面で、その貸し付け金の財源として地方債の対象にしておったわけでございまして、その事務自身は、地方団体としての貸し付け事務というふうに私たちは考えております。したがいまして、この規定の関係では抵触しない、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/144
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145・村山喜一
○村山(喜)委員 転貸債に伴う事務については、それは地方自治体の固有事務だ、こういうような解釈のようでありますが、私は、この維持及び運営をする経費、借り上げをなし、あるいは設置する、そういうような維持及び運営をする経費の範疇から考えてまいりますと、県が債権確保のための抵当権を設定をする、あるいは質権を設定をし、大臣に対する起債許可等のそういうようなものを行なう行為というものの中から、人件費なりあるいは物件費というものがこれに伴ってくることは事実ですから、そういうような国の固有事務——郵政事業というものは、政府に企業の独占権が保障された事業でありますから、地方公共団体がそれに関与することができない。こういうようなところから考えてまいりますと、当然財源区分を誤った行為ということになるというふうに解釈をするわけですが、その点は、そういうような抵当権の設定とか、質権の設定とか、あるいは大臣に対する許認可の事務に伴うところの人件費、物件費、こういうようなものは、どういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/145
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146・立田清士
○立田説明員 いまの御質問の点、確かにごもっともかと思いますけれども、ここであげておりますいまの特定局舎が国の機関であるかどうかという点については、いろいろ御議論もあろうかと思いますが、現在地方団体が地方団体の判断におきまして貸し付けというかっこうで貸し付け事務を行なっておりますので、その関係におきましては、貸し付けに伴う経費あるいは貸し付けをするにあたりましての貸し付け条件の確保の債権管理の面等の経費は、公共団体自身の事務であるというふうに私たちは考えております。これは一般の貸し付け事務、他の貸し付け等についても、そういうふうな関連の問題があろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/146
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147・村山喜一
○村山(喜)委員 それはおかしいのですよ。地方自治法第二条で、地方公共団体は「国の事務に属しないものを処理する」ことになっておるわけです。それで二十二項にわたるところの例示が掲げられて、そして普通地方公共団体は国の事務を処理することができないというのが、明らかにされているわけです。そうなりますと、いま行政組織上特定郵便局がどういうような機関であるかということについては問題があると言われたけれども、この問題については後ほど私は郵政省に確かめたいと思いますが、法令の規定というものは、地方自治の本旨に基づいてこれを解釈し及び運用しなければならないということが、地方自治法に書いてあるわけです。そういたしますと、いま自治省が説明をしたそういうような地方の事務というものは、おかしいじゃありませんか。そういうような規定は、「地方自治の本旨に基いて、これを解釈し、及び運用するようにしなければならない」ということは、私の基本的な考え方の中に、国家行政組織上特定郵便局というものはやはり公企業法の領域に入る経営形態はとっているけれども、国の付属機関である作業所としての性格を持っている、こういうとらえ方をしているわけです。それに対して、そういうようなとらえ方でなければ、あなたの言われるような主張が出てくるかもしれません。行政組織法上、特定郵便局というのはどういうような立場にあると自治省のほうでは認識をしているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/147
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148・立田清士
○立田説明員 御質問の点は、いま行政法上というふうにおっしゃいましたが、少なくとも私らの関係いたしております地方自治法の面では、ただいま御指摘の地方自治法の第二条の関係でございますが、その九項に国の事務の例示といたしまして「郵便に関する事務」というのがございます。この点に関して御質問があったかと思います。したがいまして、郵便業務そのものにつきましては、地方団体は処理能力はないわけでございます。そこで、ただいま御質問の点で問題になっております点は、いわゆる局舎に対する資金の貸し付けという面で地方団体が現在そういうふうな関係に置かれておるわけでございまして、その点に関しましては、建物そのものの改築に対する資金の貸し付けという面では、ここで言っております郵便業務という関係には直ちに抵触はないというふうに私たちは考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/148
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149・村山喜一
○村山(喜)委員 そこで問題になるのが、郵政に関する事務の範疇は一体どこまでかということであります。それで先ほど私が大臣にお尋ねをしたように、行政法上から見て、公共企業というものの組織は公の行政組織の一部を構成するのだ、そういう立場から見た場合に、これに当たる人的要素は公務員であり、これを目的に供用される物的要素というものは、これは当然公物であるという原則が成り立ってくる。だからそこに、その人的要素と物的要素というものがかみ合わされて公共企業体としての仕事ができてくる。とするならば、建物というものも本来ならば国有化していくべきものである、そういうような方向から郵政に関する事務という内容を考えていかなければならない。これに対して、原則としてはそのとおりだということを大臣はお認めになった。だから、そういうふうな考え方に立つとするならば、郵政に関する事務という範疇の中には、人的機能だけではなくて、物的なそういうような公共物という概念も入ってくるべきだと私たちは考えておるわけですが、郵政省はそういうふうにお考えにならないのですか、その点はどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/149
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150・古池信三
○古池国務大臣 「郵便に関する事務」と申しますのは、郵便自体の運営をいたすその事業をさすものであると私は解釈をしております。さらに、これに従事する者は公務員でなければならないということは、そのとおりで、現在公務員の資格を持っております。さらに郵便局舎は、今日全国で一万六千余りございます。その中で、特定局と申しますのが一万四千六百余りございますが、それらは全部国有の局舎ではありませんので、そのうちの九三%か四%余りは、民間の所有に属する局舎を国が借り上げて使用しておる。したがって、所有権は国にはないわけでございます。所有者は、あるいは局長である場合もあり、局長以外の民間人である場合もある、あるいはまた財団法人が建設をして国に提供して貸しておる、こういう場合もございまして、国が借り上げて使用しておる範囲においては、これは公共物であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/150
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151・村山喜一
○村山(喜)委員 自治法の二条の九項というのは、郵政に関する事務でしょう。郵便に関する事務ですか。郵政に関する事務というふうになっておる。これは事業内容だけではないと思うのです、郵便に関する事務じゃないですから。その点は大臣どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/151
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152・古池信三
○古池国務大臣 これは法文は「郵便に関する事務」となっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/152
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153・村山喜一
○村山(喜)委員 では、その問題点はさらに深めてまいりたいと思いますが、地方自治法二百十条によりまして、債務負担行為等を行なう場合、これはもちろん総計予算主義の原則に立つようになっておりますし、また二百三十四条によりまして、契約の締結をする場合は、当然売買、貸借、そういうような契約事項が掲げられているわけでありますけれども、その中で、その財産権の中に債権が入ることも明らかになっているわけであります。そうなりますと、いわゆる転貸債を取り扱う都道府県が、その権限に基づきまして、自分の所属職員を使用してその運営状況についてどうだということを調査する長の権限も当然あり得ることになっている。それに伴いまして、県の監査委員会等がそういうような業務内容について監査することも、自治法上許さるべき行為である。そうなってまいりました場合において、この郵政事業が国の独占を許されたいわゆる公共企業体であるという立場と、自治法上のそういうような都道府県の長が持つべき権限との間に、矛盾は出てまいりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/153
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154・立田清士
○立田説明員 私が御答弁するのが適当かどうかわかりませんが、私のほうから一応申し上げさせていただきます。
いま御指摘の点は、地方自治法のそれぞれの規定に基づきまして貸し付けをいたしておるわけでございますが、その限りにおいては、地方団体の長のほうと貸し付け金の交付を受けております方との関係は、当然出てくるわけでございます。もちろんその際に、貸し付け金の貸し付けをしております貸し付けにあたって、そういう貸し付け金の使途その他の状況があるわけでございますので、調査等につきましても、したがってそういうような貸し付け対象というものを中心にした調査になってくるのではないか、そういうふうに思います。したがいまして、いまの郵政業務との関係は、むしろ郵政省の関係のほうのお答えが適当かと思いますが、そういう意味では、局舎自身の改築という点を中心にした調査ということが考えられるのではないか、そういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/154
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155・村山喜一
○村山(喜)委員 債権については、二百四十条によって督促したりあるいは強制執行をしたりその他の保全処置、取り立てに関して必要な措置をすることができるわけです。そうなってまいりますと、万一特定郵便局長が契約に違反をいたしましてそれを納めないということになったら、当然地方公共団体、都道府県は、債権者の立場からその権限を行使することになります。そうなりますと、その特定郵便局長が管理しているそういうような郵便業務の上から見て、はたしてそれを納めることができないのかできるのかという内容面まで検討しなければ、この強制取り立てその他の執行ができないということに相なってくると思いますが、そうなってくると、私は国の業務内容と地方の業務内容との間に予盾点が出てくると思うので、その点を自治法上から問題があるのじゃないかということを言っているわけでありますが、それに対して、郵政省としてはそういうようなことばないと、これは御答弁できますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/155
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156・古池信三
○古池国務大臣 この局舎を郵便局として提供します関係は、これは私法上の問題になって、契約関係でございます。したがって、ただいまのような御懸念はないと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/156
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157・村山喜一
○村山(喜)委員 いや、私法上の契約事項であるがゆえに、そういうようなことが出てくるのです。それは自治法をお読みになれば、当然そういうような二百四十条による債権の強制執行権は都道府県にあるわけですから、その点は否定はできない。その点はそうでしょう、自治省どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/157
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158・立田清士
○立田説明員 いまの地方自治法の;百四十条で、債権に関する規定を一般的に地方自治法では置いております。ここで申しております債権は、金銭の給付を目的とする地方団体の権利でありますが、その点につきましては、地方団体のほうで資金の貸し付けをいたすわけでございますので、債権の管理というような問題はあろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/158
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159・村山喜一
○村山(喜)委員 だから、大臣が私法上の契約に基づくことだからそういうようなことはないと言われるのは間違いです。その点はそうですね。ですから、大臣がお答えになるのは、そういうような事態が出てこないように行政指導をする、あるいは債権債務の関係は迷惑をかけないようにするというのが次官通達で出ているわけですから、そのような立場からその特定局舎をつくりましたその本人に対して転貸債が貸し与えられるわけでありますが、その場合に、郵政省としては、その償却と支払いと、それから国が特定局舎を借り上げるわけでありますから、借り上げ料との間において誤差がないように、借り上げ料のほうが上回るような措置を講じているからだいじょうぶだとかいうような答弁が出てこなければならないと思うのですが、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/159
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160・古池信三
○古池国務大臣 国が局舎の所有者との間に契約を結びまして借り上げるわけでありますから、その契約に基づいて局舎の所有者は義務を履行してもらうということは、国として十分に要求し得るわけでございます。先ほど私が申し上げましたのは、局長が局務を遂行するという関係の公の事務と、局長が融資を受けて局舎を建てて、そうして国にこれを貸すという問題とは、おのずから別であるという意味で申し上げたことでございまして、局舎自身については、十分国の用に適するがごとくに維持されることを国としては要請しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/160
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161・村山喜一
○村山(喜)委員 それで問題になるのは、この三十八年度の特定局の借り料が、予算書、決算書によりますと、十三億八百余万円ございます。三十九年度は十三億六千七百万円余りあるわけでありますが、この局舎の数は一万三千五百二十四局ということになっております。一局平均をいたしてみますと、大体十万円ということになるようであります。そうなりますと、われわれがいまいろいろなところで聞くのは、この三十坪の局舎が三億円の転貸債によって昨年実施されたわけでありますが、その場合、三十坪の局舎をつくる場合には大体百五十万円くらいの融資で二百局できる。そういたしますと、坪当たりの家賃が大体六千五百円くらい、年間十九万五百円くらいの収入が入って、百五十万円の弁済の元利均等償還は、年間にして十五万八千円くらいであるから、特定局長は、弁済をしながら年間三万七千円ももうかるという計算が生まれてくる、こういうような説もあるわけでありますが、その三億円の転貸債でつくりました局舎の借り上げ料と、それからその弁済の元利償還額は、年間比率どういうふうに相なりますか、その点を説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/161
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162・小川房次
○小川説明員 お答え申し上げます。
よく、三十八年度予算におきまして借り上げ料は六千五百円ということで、これは三十坪分で十九万五千円ではないかというお話があるのでありますが、これは予算書をごらんいただければ、実は六千五百円というものは、その中に家賃といたしましては四百五十円、それから地代といたしまして八十円、火災保険料として十二円、こういう構成になっているわけでございます。家賃の中には、管理費でございますとか、あるいは固定資産税に相当するものでございますとか、あるいはまた修繕費に相当するものでございますとか、それからまた元本に相当するものもあるわけでありまして、また利子に相当する部分もある。いろいろなものが入りまして、この家賃、いま申し上げました四百五十円というのを構成しているわけでございます。したがいまして、この坪五万円で三十坪、つまり百五十万円を払う。この百五十万円が、実は十五年均等償還で元利合計いたしますと、二百三十七万になるわけでありますが、一年間には十五万八千円返すということになっているわけでございます。そこでいま先生がおっしゃいましたように、家賃は六千五百円で三十坪では十九万五千円ではないか、十九万五千円もらいながら十五万八千円の弁済をしていくと、三万七千円、まるめて四万円、これだけもうけているではないかというお話がございますが、いま申し上げましたように、六千五百円を分解しますと、そういうことになるわけでございます。それから私どもの考えておりますのは、修繕費とかあるいは管理費とかというものは、当然これは特定局長さんが使っていただかなければならないものでございまして、償還に充てる金といたしましては、元本と利子だけでございます。その元本と利子だけを抜きまして、こちらから払うのがどのくらいだということになりますと、約十一万九千円くらいになるわけでございます。で、いまの元利償還の二百三十七万円を十一万九千円で割りますと約二十年、二十年たたなければ返せない、こういうことになっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/162
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163・村山喜一
○村山(喜)委員 そういたしますと、それは三十八年度の家賃、地代、火災保険料であったと思いますが、三十九年度は幾ら見てあるわけですか。同じように融資を受けて新設をした場合の家賃相当額は、やはり十一万九千円ということになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/163
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164・小川房次
○小川説明員 三十九年度につきましては、これももう少し申し上げますと、ただいま申し上げました四百五十円という家賃は、坪当たりの工事費を四万九千円ということにしてあるわけでございますけれども、三十九年度は坪当たり五万二千円ばかりになっております。したがいまして、これも少し上がりまして、全体の額がいまの六千五百円が六千八百円ということに相なっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/164
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165・村山喜一
○村山(喜)委員 そういたしますと、これは坪当たり六千八百円ということで計算してよろしいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/165
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166・小川房次
○小川説明員 融資を受けた局に対する分に対しましては、国のほうで六分五厘ということでお貸ししてあるものですから、これに基づいてはじいております。それに基づいて家賃をはじきますと、いまの六千八百円が六千三百円ということに相なります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/166
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167・村山喜一
○村山(喜)委員 そういたしますと、十一万九千円より少なくなりますね、六千五百円から六千三百円に下がるのですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/167
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168・小川房次
○小川説明員 少なくなろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/168
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169・村山喜一
○村山(喜)委員 百五十万の弁済、元利均等償還をやった場合には、年間十五万八千円かかる。そういたしますと、この六千三百円で計算をいたしましたら、これは先ほどの計算の方式でいけば二十一年くらいになりますか、この収支がとんとんになるのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/169
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170・小川房次
○小川説明員 私のほうの計算は、大体二十年で償還するということになっておりますので、大体二十年前後で償還されるようなことになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/170
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171・村山喜一
○村山(喜)委員 そこで法制局にお尋ねをいたしたいのは、いままで転貸債が、過去においても、厚生関係あるいは福祉関係、たとえば下水道とか公衆便所その他公の施設のためになされていることは、事実であります。そこで、そういうような場合には、住民のための財産としてその転貸債が残っていく。それはそこに住んでおる人たちの福祉のために直接使われるわけであります。ところが、今度特定局の転貸債というのは、そのあとに残りましたものは、私有財産として完全に私有物化するわけであります。そういうようないままでの転貸債の種類と、今回私有物化される財産として残される転貸債との間には、これは明らかに差がなければならないし、問題にされる点がそこにあると思うのですが、それについて、法制局としては、転貸債の性格について、住民福祉という立場からどのようにお考えになっておるのか。それは参議院の法制局あたりでもだいぶ問題になっているようでありますが、この点についてのお考えを明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/171
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172・吉國一郎
○吉國政府委員 ただいま転貸債の性格の問題ということで御質疑がございましたが、私お答え申し上げるのがあるいは的をはずしておるかもしれませんので、もしそういうことがございましたら、重ねてまたおただしいただきたいと思います。
私ども、今回の措置について法律上問題になるであろうということでいろいろ検討いたしたわけでございますが、第一に、簡易生命保険の資金が地方債として流れ出る点につきましては、現在運用法のたてまえからいたしまして、地方債である限りは問題ない。
第二に、このような資金が地方債として地方公共団体に支出をせられるという点につきましても、地方財政法の規定から申しまして、地方公共団体が行ないまする貸し付け事業の資金として地方債を発行することは、地方財政法の第五条の認めるところでございますので、これまた可能である。
第三の問題といたしまして、このような郵便、貯金、保険あるいは電信電話というような事業についてという先ほど来の先生の御指摘の点でございますが、この点につきましても、郵便なり貯金なり保険なりあるいは電信電話なりの事業が、ある地域におきまして円滑に行なわれるということは、当該地域の住民の利便及び福祉の向上に寄与するという点から見て、地方自治の範囲内に属するものであるというような考え方をとっております。したがいまして、今回の措置がただいま御指摘がございましたように、従来の転貸の場合とはやや違うではないかというお話でございますが、従来でありましても、たとえば資金運用部資金の転貸によりまして個人の住宅の浄化施設等が融資の対象になりました場合がございまして、この場合は、もちろんその浄化槽の設備は住宅所有者の個人の所有に属するわけでございます。また、中小企業の近代化資金でございますとか、あるいは商店街の造成の資金というようなもの、これもいわば転貸資金に属すると思いますが、このようなものにつきましても、当然中小企業者たる商工業者あるいはその商店街を形成しております商店の持ち主である個人の所有になる場合が大部分の場合でございまして、あくまでこれは資金の貸し付けでございますので、貸し付けられた資金が返済されました後と申しますか、貸し付けられる当時から、すでにその貸し付けの対象たる個人の所有に属するという点は、当然前提として考えておりました点でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/172
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173・村山喜一
○村山(喜)委員 地方住民の一人であるその個人が、浄化装置について改良をやる、あるいは中小企業の人たちが近代化施設を整える、これはその当該都道府県なりが、そこの住民に直接的に奉仕する、こういう形態をとるわけです。
私が問題にするのは、特定郵便局なりといえども、これは国のどういうような機関、国家行政組織上どういう地位を占めるのかということは、まだ問題にしておりませんが、国のいわゆる行政の付属機関としての作業所としての性格を持つところの、そういうような地方公共団体の権限が直接及ばないものに、財産としてそれが残っていく、そういうような仕事をする作業所が、財産権として個人のものに帰一して残されていくというところに、どうもおかしな点を感ずるわけです。そういう点から、国民がこれは問題がある、特定郵便局長さんはまるまるもうけてけっこうなことじゃないか、そういうようなことから問題が出てくると思う。だから、それはいままでやってきた転貸債のやり方と今度の場合とは、明らかに違うんじゃないか。片一方においては、国家権力というものを持った特定郵便局があるわけです。それはなるほど普通の行政権のような、そういう権力的な行政を行なう機関ではありませんけれども、国民にサービスをするために設けられた機関ではありますけれども、いずれにしても地方公共団体の権限が及ばないものに対して、地方公共団体である都道府県が転貸債という形で世話をしなければならない、こういうおかしな形というものは、一体国と地方公共団体の行政区分を誤まるものではないか、こういう点を私は問題としているわけです。
そこで、運営内容の問題につきましたり、いろいろ今回予算として提出をされている内容等調べてまいりますと、非常にまだ私は問題があると思うのであります。というのは、この簡易生命保険及び郵便年金特別会計等をのぞいてみまして、経理の内容から見まして、これは非常に重大なる段階にいま来ているのじゃないか。それはまた後日に取り上げますが、この点から考えていくならば、いかにしてこの職員が十分に働くような意欲というものを盛り上げていくかということを中心に考えなければ、もう御承知のように、昭和三十三年をピークにして、簡易保険の契約高は、国民所得に対する割合は、逐次減退をたどっている、こういう状態がすでに統計表の中にあらわれてきているわけです。おまけに今年度満期になる、そういうようなピークを迎えております。千六百億円も支払いをしなければならない、そういう段階に来ている。こういうことを考えてみますと、いかにして郵政業務、この簡易保険業務等で働く職員の意欲を向上させるかということが、中心にならなければならないと思うのであります。そういうような問題点から考えましても、ここで無理をされないほうが私はいいのじゃないかという考え方を持っているわけでありますが、本日はもう時間がきておりますので、これで私は次に持ち越したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/173
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174・徳安實藏
○徳安委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は、来たる二十四日午前十時理事会、十時半より委員会を開くことにいたします。
これにて散会いたします。
午後一時五十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X01119640319/174
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