1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年五月十四日(木曜日)
午前十時四十一分開議
出席委員
委員長 徳安 實藏君
理事 伊能繁次郎君 理事 辻 寛一君
理事 内藤 隆君 理事 永山 忠則君
理事 八田 貞義君 理事 石橋 政嗣君
理事 田口 誠治君 理事 山内 広君
佐々木義武君 壽原 正一君
高瀬 傳君 塚田 徹君
藤尾 正行君 保科善四郎君
前田 正男君 湊 徹郎君
渡辺 栄一君 茜ケ久保重光君
稻村 隆一君 大出 俊君
堀 昌雄君 村山 喜一君
受田 新吉君
出席国務大臣
大 蔵 大 臣 田中 角榮君
出席政府委員
大蔵事務官
(大臣官房長) 谷村 裕君
大蔵事務官
(主税局長) 泉 美之松君
大蔵事務官
(関税局長) 佐々木庸一君
大蔵事務官
(理財局長) 吉岡 英一君
大蔵事務官
(為替局長事務
代理) 鈴木 秀雄君
委員外の出席者
大蔵事務官
(理財局証券部
長) 加治木俊道君
専 門 員 加藤 重喜君
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五月十四日
委員塚田徹君、湊徹郎君、山田長司君及び玉置
一徳君辞任につき、その補欠として河本敏夫君、
早川崇君、堀昌雄君及び受田新吉君が議長の指
名で委員に選任された。
同 日
委員河本敏夫君、早川崇君及び堀昌雄君辞任に
つき、その補欠として塚田徹君、湊徹郎君及び
山田長司君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
大蔵省設置法の一部を改正する法律案(内閣提
出第五〇号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/0
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001・徳安實藏
○徳安委員長 これより会議を開きます。
大蔵省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。
質疑申し出がありますので、これを許します。村山喜一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/1
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002・村山喜一
○村山(喜)委員 今回、大蔵省設置法の一部改正の中で、提案理由の説明を見てみますと、第一に、現在の証券部を証券局に昇格させるということになっているわけでございます。なぜ証券局に昇格をしなければならないかという提案の理由を見てみますと、これには、開放経済の移行に伴い、企業の自己資本の充実を期して、証券市場の一そうの整備、拡充をはかっていかなければならぬ、したがって、総合的、合理的な証券行政を推進をしていくために必要であるというふうに述べられております。
そこで、この総合的、合理的な証券行政という構想は、局に昇格をするという構想との間に一体どのような結びつきを持ってこういうような提案理由の説明がなされているのか、この総合的、合理的な証券行政とは一体何ぞやということを、まず説明を願っておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/2
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003・田中角榮
○田中国務大臣 証券行政を強化するということについては長いこと懸案になっておったわけでございます。一部においては、証券局というよりも、資本局というものもあわせて考えなければならないというような歴史的な事情がございます。もちろん御承知のとおり、四月一日から八条国に移行して開放経済になったわけでございまして、これからの日本の産業経済の実態を考えますときに、当然銀行局に比すべき重要な業務として、証券局を独立せしめたいという考え方に立っておるわけでございます。現在は、理財局証券部の官制の中で仕事を行なっておるわけでございますが、御承知のとおり、理財局というのは、大蔵省で非常に古い組織でございまして、この中では仕事は非常にたくさんあるわけでございます。銀行券の問題とか、財政投融資の問題とか、非常にたくさんございまして、理財局の分割という問題に対しては、長いこと懸案になっておったわけでございます。理財局長が証券部長を駆使しまして、最高度に証券行政をやってまいったわけでありますけれども、理財局長も他の仕事をたくさんかかえておりますし、できるならば証券局をつくって、組織の上でも独立をし、株式全般に対して、特に株式を発行しておる会社、これを流通せしめておる市場、また証券取引法に基づく業者、また一般大衆の資本参加に対する保護というような面につきまして、分離をすることによってより責任を明確にし、組織的にも分離することがより合理的であるという考え方に立って、御審議をお願いしておるわけでございます。
その基本になることをもう一つだけ申し上げますが、いままで産業というものに対しては金融が非常に重大であるということで、銀行局の官制は非常に古いのでございます。私は、銀行局をつくったときに、証券局もしくは資本局というものをなぜつくらなかったのだろうという考え方で、過去二年間にわたっていろいろ古いことも検討しました結果、今日において証券局をつくることは時宜を得たものであり、必要欠くべからざるものであるという考えに立ってお願いを申しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/3
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004・村山喜一
○村山(喜)委員 大臣は、その総合的な、合理的な証券行政の構想の中で、いま触れられたのは、責任を明確にするということと、必要欠くべからざるもの、この二つの要素について説明をなされたわけです。そういたしますと、これは責任を明確にするという合理的な考え方です。必要欠くべからざるということも、資本の合理性に基づいた構想である。その総合的という意味は、一体どういう意味なのか。その点をもっと明確にしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/4
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005・田中角榮
○田中国務大臣 証券行政は、御承知のとおり、理財局の証券部と経済課等で行なっておるわけでございますが、今度証券局をつくっていただきますと、その下に必要な課を設けまして、証券局長を中心にして、証券に関する、いわゆる資本に関する各般の問題を総合的な立場から検討し、施策を行なう、こういう考え方でございます。これは、銀行局を独立せしめるという考え方、また、国際金融については国際金融局を設けるという考え方と同じ立場で、総合的な施策を立案、施行するために必要である、こう考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/5
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006・村山喜一
○村山(喜)委員 その総合的なという意味は、証券局に昇格さして、銀行局なり国際金融局と同じような形において、大蔵大臣が大蔵省の総合的な行政をやっていく、こういうふうにいま説明を承ったんですが、局に昇格させるということの中に、そういう総合的な行政機能としての役割りというものが、局自体の中にあり得るのかどうかという点は、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/6
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007・田中角榮
○田中国務大臣 資本の需要、流通、投下というような問題を総合的に検討し、行政効率を高からしめるという考え方に立って、証券局をつくろうという考えに立っておるわけであります。私は、先ほど申し上げましたが、いまなぜ証券局、資本局というものが行政上できておらなかったのかという考え方、皆さんもきっとお考えになると思うのです。そういうところに基本的な考え方があるんです。銀行に対しては銀行局ができておりまして、相当銀行育成の施策も行ない、今日の金融機関をとにかくつくり上げておるわけでございます。証券行政に対しては、ただ市場における証券行政だけ、狭い視野でいままで語られ、まあ見られやすかったわけでございますが、これはいわゆる銀行、金融、二本の柱という考え方に立っておるわけであります。金融だけを主に考えるよりも、これからのあと戻りのできない八条国の体制から将来を考えるときに、この資本、証券という問題は、明治、大正時代に銀行というものが非常に重要な行政であったとより以上に、私は、時代の要請は証券、資本に集中されている、こういうふうな考え方に立っておるわけでございまして、これはまあ大蔵省だけが都合がいいのか、証券局長ができればいいのかということよりも、やはり主計局、主税局と分かれておりますように、大蔵省に局長を持つ証券局をつくって、証券行政全般をにらみながら誤りなきを期してまいるためには、やはり理財局の証券部よりも大蔵省証券局というほうがより合理的だろうということは、これはもう御理解いただけると思うわけでございます。こまかい問題は、またいろいろ御質問があればお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/7
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008・村山喜一
○村山(喜)委員 大蔵省が証券局をつくるという構想の中を今度第十条の二で拝見をいたしてみますと、現在証券局ではなくて部があるわけですが、この中に課が、一課、二課、検査課、三課でございます。その取り扱いを今後やっていくという内容的なものを調べてまいりますと、一号はこれは一課、二号も一課、三号は二課、四号、五号はそれぞれ一課、それに六号が二課、それに七号と九号、十号、十一号、これは経済課ですか、そして八号だけが新たに要素としてそこに事務内容が出てきている。こういうようなふうに見てまいりますと、先ほど大臣、お答えいただいたんですが、一体総合的な行政を推進をしていくという考え方からするならば、まあ今度経済課の大部分の機能を証券局に移すという程度にとどまるのであって、現在までやってきたものとさほど変わりがないのではないか、そして新たに課をその他つくる必要もないじゃないか、こういうふうに業務内容の面からは見られるのであります。これが第四十回国会で昭和三十七年に部になり、そして今回またここに局に昇格をするということになってまいりまする場合に、一体局に昇格をさした場合、どういうような将来の構想というものを行政機構としては考えているのかという点が、問題になってくるわけでありますが、この事務内容から考えてまいりまするならば、現在経済課で取り扱っているのをわずかに加味する程度の、そういう総合的な行政機能にすぎないんじゃないか、こういうふうに受け取れるわけでありますが、その点はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/8
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009・田中角榮
○田中国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、私は、人員も大いに増加し、まだまだ新しい機構をつくらなければならないという考えに立っておりましたけれども、行政管理庁等の御意見も聞いたり、行政の簡素化という一つの大きな目的もありますので、現在の状態におきましては、理財局の内部にばらばらになっておりますものを証券局に分離統合して必要な課を設け、最小限度において最大の効果をあげよう、こういう立場で今回お願いをいたしたわけでございます。でありますから、その意味において人員もあまりふえておりません。九人か十人ふやすならば、いまの理財局の中でもやり得ることではないかというようにおとりになるかもわかりませんが、いずれにしましても、ばらばらになっておったものを一つの証券局にまとめて、必要な課を設け、人間は現在の大蔵省の内部の総員をできる限り大きくしないで、その中で重点的にこれを配置するということによって目的を達成したいという立場に立っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/9
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010・村山喜一
○村山(喜)委員 局になったら、課を幾つにされるのですか。これは官房長……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/10
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011・谷村裕
○谷村政府委員 ただいまありましたように、現在の証券部は、証券第一課、証券第二課、それから証券検査課、こう三つございます。これに現在の理財局にございます経済課というのが加わりまして、それが現在の実体をなすわけでありますが、新たにできます証券局は、少し名前が変わりますが、全体で五課になる予定にいたしております。全体を五課と申しますと、大体のところは、証券の関係ではまあ投資信託というものが非常に重要になってまいりましたので、その関係のものを新設するという形において一課ふえるという形に相なると思います。あとは名前が変わるわけでございますが、総務課、それから企業財務課、これが主として経済課のほうの関係かと思いますが、主として企業の側に立ちまして、いろいろ資本発行の問題、資本充実の問題、あるいは資本税制に関する問題、さような資本を必要とする企業の側を見る企業財務課というようなものを考える。これは主としていまの経済課が移り変わることになるかと思います。それから証券業務課というのができます。これは主としていまの証券二課がやっているようなところになるかと思います。それからさっき申し上げた投資信託課、それから証券検査課、そしてこれ全体を統括いたしますような意味におきまして、総務課というのをつくりたいと考えております。
もう一度申し上げますと、証券局には、総務課、企業財務課、証券業務課、投資信託課、証券検査課、かような五つの配分にしまして、先ほど大臣が申されましたように、企業の側も、証券市場も、それから投資家に対する関係も、また証券業者に対する関係も、すべて総合的に、必要最小限度の人員と分課でもってやってまいるつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/11
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012・村山喜一
○村山(喜)委員 そういたしますと、これらの五課で局になった場合、発足をする場合は、定員の増加は九名、こういうように承っているわけですが、何か内部の振りかえがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/12
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013・谷村裕
○谷村政府委員 理財局の内部で若干の人員調整をいたしまして、全体の人数は百三十名程度のことを考えております。理財局の現在の証券部と経済課と合わせますと約九十何人、百名足らずであったかと覚えておりますが、それに多少理財局内の人員をさらに追加いたして、百三十名程度にいたそうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/13
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014・村山喜一
○村山(喜)委員 そういうような五課で発足をする構想を持ちながら、提案理由の説明を見てまいりますと、局をつくることによって企業の体質改善ができるのだ、それから投資者の保護ができるのだ、こういうような説明がなされているようであります。じゃ、そういうふうに百三十名程度の局ができて、そして五つの課ができる。その課によって企業の体質改善と投資者の保護が従前よりもよく進められていくのだ、こういう説明でありますが、それはなぜそういうふうになっていくのか、この際説明を願っておきたいと思うのでありますが、現在投資者の株式の所有者別の分布状況を見てみますと、重要な大株主というものは、銀行や会社であるということが歴然としておるわけであります。そういう点から見た場合には、これは投資者の保護に名をかりて、そのような大きな株主である銀行や会社の利益を守るような方向に運営されるために、局に昇格をされるのではないか、こういう見方も、皮肉な見方からすれば生まれるのでありますが、そのあたりの考え方は、一体局をつくることによって投資者の保護が万全が期せられるという考え方は、どういうところから出てきているのかを説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/14
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015・田中角榮
○田中国務大臣 大蔵省に証券局という局ができますから、すべてのものが全部うまくいく、こういう考え方は、これはそうは申し上げられないわけでございますが、証券行政、いわゆる資本行政というものが一体重要でないのかというと、非常に重要なものだ、こういう前提がまず一つございます。それを現在一体どうやっておるか。理財局の場合、いろいろなオリンピックの記念貨幣をつくるのも理財局でございますし、紙幣の印刷をしたり、財政投融資の御説明をしたり、また各公団や政府関係機関の仕事を見たり、また資金運用部資金の運用を行なったり、そういういろいろな仕事、また国庫の大きな仕事を持っておる、こういうような理財局の中の一部として現在あるわけでございます。理財局というのは、いま証券局の誕生をお願いしておるわけですが、これは昔から、三局くらいに分くべきだ、こういうことが、非常に長いこと、戦前からいわれておったわけであります。理財局という名前を変えて、証券を一本、それから国庫局という国庫業務を総括するものを一つ。昔は、御承知のとおり、資金運用部は長官を置いた預金部の非常に大きな機構があったわけでございますが、こういうものが全部理財局の中に入っておるわけでございます。でありますから、理財局というのは、時代の要請に沿って三つくらいの局に分くべきである、こういうことでありましたが、ほかの省の局を押える立場にある大蔵省としては、自分の局をまずやるなんということはとてもできないということで、今日まで放置されてきたということでございます。でありますから、この証券局をつくることによって、具体的に理財局の中にあることと一体どう違うのか、こういうふうに一つずつ詰めてこられると、それはなかなかあなたが御納得するような答弁にはならぬわけです。科学技術庁をつくったということは、一体どうよかったのかというのと同じことであります。銀行局をなぜ分離したかということでありまして、私はやはり銀行局という官制が古くから大蔵省にあって、相当大きな業績をあげておる。これに匹敵する資本関係に対しては、行政機構が必要であるという観点が、基本になっておるわけであります。
それから株主の分布を見ますと、機関投資家が非帯に大きい。これでもって銀行や機関投資家を保護するのではないか、こういうことでございますが、機関投資家も保護しないということではありませんが、いずれにいたしましても、増資調整をしなければならないというようなことが、現にいま問題になっておるわけであります。ところが、反面、戦前に比べて、開放経済に向かう日本の資本市場は一体どうかというと、戦前自己資本比率は、六一%でありまして、今日は二五%を割っておるのであります。こういう状態で一体八条国移行後どうなるんだ。資本の問題は非常に大きな問題でございます。でありますから、この資本問題を行政の責任者を置いて総合的な立場から調整をしながら、必要なのは立案をしていくということの行政機関が必要であるという考え方が、まず第一であります。
第二は、御承知のとおり、いま投資信託などというものは、いろいろの批判もございますが、現在上場しておる株式の約一割を持っております。このほとんど大半が零細な一般大衆であります。こういう問題に対して、やはり相当な行政が必要であるということも、論をまたないところだと思います。
もう一つは、いま公社債市場の育成ということがいわれておりますけれども、なかなかむずかしい仕事でありまして、公社債市場の育成という問題に対しても、まっこうから取り組まなければならない。なお、これから所得倍増政策が進んでまいりまして、だんだんお互いに国民の所得もふえてくるということになりますと、昔のように三分の一は、固定資産に投資をするということもさることながら、ほとんど一般大衆、特に婦人層などが零細な金を入れて資本参加をしておる。これは明治初年から百年間かつて見なかった状態でございます。こういう大きな社会問題の面からさえも非常に強く考えていかなければならない資本証券の現状を考えますと、私は、少なくとも、理財局の一部として処理しておって、これで足れりということよりも、勇気を出して、ひとつ皆さんに証券局の設置をお願いして、そうすることが政府の国民に対する責務である、こういう考え方に立っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/15
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016・村山喜一
○村山(喜)委員 名答弁のように聞き取れるのでありますが、問題は、証券局を設置するということと——その提案理由の中にいろいろな要素が加えられて提案の説明がなされておりますから、そういう立場から私は聞いておるわけでありますが、完全なものでなくても、その提案の趣旨に従って説明をしてもらわなければならないと思う。いま大臣も説明をされましたように、企業資本の充実という問題、これに対する考え方でございますが、今日企業資本の充実を困難ならしめている要因というものがなければ——大臣がいつも言われるように、企業資本構成は非常に悪い。これはずっと毎年低下してきている、こういうようなことを大臣は大蔵委員会におきましても説明されておるわけであります。二月六日ですか、大蔵大臣は、戦前の自己資本は六一%あった、今日においては二四・五%しかない、こういう説明をし、しかも年々低下をしておるということで、これに対しては抜本的な施策を講じなければならない、こういうことを言われるのであります。ところが、池田内閣が成立をしましてからもう三年有余、この間やはりそういうような資本の構成比率というものが年々低下していく。そうして抜本的な対策を講じなければならない。一体なぜ企業資本の充実ができないのかというその要因を明確に出して、それに対応するところの施策が講ぜられなければならないわけであります。そうなれば、現在の証券市場の現実というものから見て、はたしてこれでいいのかどうかという問題も当然出てくるのでありましょうし、そうしてなお企業資本の充実を困難ならしめている原因が一体どこにあるのかということを解明して、それに対する対策を講じなければならないと思うのでございますが、その主たる要因はどういうところにあるのでございますか。だから、それに対してはこういうようなことをしてこうしていくのだというあり方をお示し願わなければならないと思うのでございますが、その点を説明願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/16
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017・田中角榮
○田中国務大臣 非常に大きな重要な問題でございます。企業資本が一体なぜ集まらぬのか、この問題は、端的に申し上げますと、戦前は、少なくとも長い歴史の上に立っておりましたから、乏しいながらも貯金をし、乏しいながらも不動産投資を行ない、乏しい中からも有価証券投資を行なおう、こういうことがずっと積み上げられてきたわけでございますが、その結果六一%という世界水準になったわけであります。ところが、昭和二十年までに、爆撃その他、敗戦という事実は、日本をほとんど無資本にしてしまった。無資本の状態から国民自体が立ち上がったのであります。でありますから、その間にいろいろな企業再建のために戦後立法措置等が行なわれまして、ある程度のことはいたしました。いたしましたけれども、とにかく財産税の問題その他戦後の事情を振り返ってみますと、国民自体がほとんど無資本の状態になったということであります。その中で十八年、十九年のうちにここまでようやく経済も復興してまいりましたが、国民自体が、家がない、着るものがない、食うものがない、子供の学校教育をやらなければいかぬ、こういうこととあわせて今日までレベル・アップしてきたのでありますから、やはり産業資本調達の必要があっても、国民自体がこれに対してなかなか投資ができないという面もあります。投資をさせるのには可処分所得をふやせばいいから、減税しろ、こういう議論が絶えず国会であるわけでありますから、政府も十年来毎年減税をやって、可処分所得をふやして投資ができるような態勢をつくろうという政策を進めておるわけでございます。ところが、国民が投資する率よりも日本の経済の伸び方が激しかったということで、結局国民的な、民族資本だけでは何ともできないということで、銀行資金にたよる、そこでオーバーローン、オーバーボローイングの解消という問題が起きてきているわけであります。そればかりでなく、どうしても国外に向かって必要な金を集めなければならないというわけで、外資を入れているわけであります。でありますから、外資を入れておるということも必要やむを得ざる事態でございますけれども、同じような状態にあった西ドイツは、外資を入れないで、まず家をつくるより、着るものをつくるより、食うよりも、われわれの生活の源泉たる産業に全力をあげよう、こういうことをやって、民族資本だけで西ドイツは今日になったわけであります。そういうところは、同じ戦後十八、九年の比較でありますが、日本は、食いながら、家をつくりながら、生活を楽しみながら、日本の産業も国際競争力をつけよう、こういう欲ばりをしながら、まあまあここまできたわけであります。西ドイツは非常に苦労をしたけれども民族資本で今日を築いたということでありますが、一がいに可処分所得をふやすということをまず前提にしなければ、証券局をつくったって、証券市場に投資する人はありませんよという議論にはならないわけであります。そういう戦後の特殊事情の中でここまできたわけでありますので、また外資にも無制限にたよるわけにはいかぬ、そうすれば、当然、民族資本をおそまきながら貯蓄に、資本参加に向けていかなければならぬ、こういう重大な時期を静かに考えるときに、いかに資本の問題、証券市場の問題等が大切であるかということは御承知になれるわけであります。二、三年前は、零細資金が相当証券市場に入りました。入りましたが、その当時は、半年も持っておれば五割ももうかるというふうに思っておったのが、このごろになると、郵便貯金のほうは金利は少ないけれども、どんなに引き締めをしても何をしてもちゃんと利息は入る、株は持っておって損することもある、こういうことになって、このところちょっと停滞をしておるわけであります。でありますが、日本人はたくましいので、また頭もいいからへ郵便貯金だけに全部入るわけはないのです。またひとつやろう、こういうことにだんだんとなってきたので、株価もまた持ち直してきておるわけであります。こういう事実を十分直視していただいて、これからの日本の国民的な立場からも、行政の上からも、資本、証券というものが非常に重大である。私は、銀行法をつくった当時と同じより、それ以上に重要であるという考え方に立っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/17
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018・村山喜一
○村山(喜)委員 中央公論の六月号を見てみますと、自民党の総務会長の藤山さんが、今日の企業の資本蓄積のためには、政策減税をやらなければだめなんだということを主張しておられるようです。しかも公定歩合の引き上げが手おくれであった。ある程度高金利政策というものを、一時的であっても資本蓄積のためには進めなければならない、こういうような主張も述べておいでになるようです。また、五月十三日の経団連の二十五回総会におき住しては、企業減税、独禁法の改正、輸出環境の整備、これらに対する決議を上げているようであります。企業減税が自己資本の充実に必要であるということを、やはり依然主張いたしておるようであります。しかし、今日証券市場がふるわない、さらに今日の自己資本率が低いということは、やはり証券市場におけるところの増資後の配当持続が困難である。であるから、この際手っとり早い借り入れ金にたよったほうが、あとくされもないし、仕事もやっていける。だから、増資をして配当をするよりも、もう借り入れ資本にたよったほうが、会社としてはやっていきやすい、こういうところから、積極的に自己資本を充実しようという取り組み方を資本家の諸君がしてなかった。そこに、企業減税よりもまず第一の原因があるのではないか。そういうようなものを政策的に助長されなかったのも、こういう自己資本率が低くとどまっておる原因ではないかと思うのでありますが、そのようないわゆる増資後の配当の持続が困難であるというようなことを理由にいたしまして、そうして自己資本の充実につとめなかった現在の企業家のあり方に対しては、どういう考え方をお持ちになっているのか。やはり政策減税を柱にすべきであるとお考えになるのか。そのあたりを説明願っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/18
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019・田中角榮
○田中国務大臣 自己資本比率が上がらないということに対しては、先ほど申し上げた国民的無資本であったということが、一番大きな原因であったと思います。しかし、いま御指摘になった資本家、企業責任者が自己資本率を上げるために努力しなかった。これは率直にいえばそういうことだと思います。
なぜそうなったか。これは歴史的な問題でありますが、明治から非常に長いことかかって、個人から組織変更して有限会社になり、株式会社になり、一般公募をするようにだんだん歴史的な重さを背景にして大きくなってきたときでありますから、自己資本の比率は高かったのです。ところが、戦後無資本になってきた。無資本の中から立ち上がったということと、財閥解体とか、経済力集中排除法とか、そういうことで、企業家というものが、いまでもそうですか、昔は、少なくとも安定株主というものは、相当数の人が集まれば過半数になるというようなことであったのが、戦後は無資本からどんどん増資をしてきましたので、銀行の金を借りるか、機関投資家から投資をしてもらうか、一般国民の投資を得るかということでありましたが、成長が急でありましたために、どうしても銀行借り入れに依存しておった。銀行借り入れのほうが金利的に安い。六分の配当をするとすれば、法人税を払って、損金算入をしませんから、少なくとも一割の金を払わなければ、五分五厘、六分の配当はできないわけであります。それよりも、銀行から借りれば、長期でも三銭二厘、だんだんと低くなって現在は二銭五厘、年九分が政府関係機関の金利になっておるわけであります。これを短期にすれば二銭二厘とか、また輸出やそういうことになれば一銭八厘、一銭五厘、一銭三厘、こういうことになってきますから、べらぼうもなく借り入れのほうが安いわけであります。安易な道を選んだということも言い得ると思いますし、もう一つは、急であったので結局間に合うものでやってきたのだ、経営者はそう言うだろうと思うのです。しかし、事業というものは悠久であります。社長は一代で三年か五年かわかりませんけれども、事業は、世界的に信用を得るためには悠久なはずであります。そういう意味からいえば、結局高い利息を払うというつもりでも、自己資本比率というものは当然上げて、オーバー・ボローイングの解消はみずからやらなければならなかったわけであります。ところが、政治家からオーバーローンの解消、オーバーボローイングの解消、自己資本の比率を上げなければ、日本の企業は国際的に競争できない、こう言われて、初めてぼつぼつと自己資本比率を上げてくる。上げてくるときには下がるので、企業減税をしろ、こういう世論になっておるわけであります。世論があるなしにかかわらず、事実を見るときには、私はやはり産業育成というものは日本民族のために重大なものである、こういう考え方に立っておるわけであります。石炭産業に対すれば、こういうような重要なものには一般会計から金を入れても復興しなければならぬ。同じ立場に立って日本の企業の基盤を強化するためには、財政投資も必要でありましょうし、税制上も企業減税を必要とするという事態にあるわけであります。私は、ことしもその意味で企業減税をやったわけでございますが、それでもなお自己資本比率二四・五%、現在は二四%を割っておるでしょう。そういう状態であることを考えますと、やはり四十年、四十一年の減税等に対しても、企業課税の減税というものも、正面からひとつ取り組んでいかなければならない問題だろうというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/19
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020・村山喜一
○村山(喜)委員 そこで、一体そういうような風潮というものは、ただ企業家だけでないと思うのです。国の政策にしても、経常収支の赤字がある。そして外資の導入を積極的にやらなければならないというので、国も借金政策、企業も借金政策、すべて借金にたよって高度成長を遂げているという姿の中からそういうようなものが生まれてきているのじゃないかと思うのでありますが、問題は、今日の証券市場が資本市場としての役割りを果たしていく場合に、株式会社の増資によりまして新たに株式を発行して、それに対する払い込みが行なわれるという形の中で資本の増資が行なわれるわけでありますが、この株式の市況が、ごく最近におきましては幾らか活況を呈してきてはおるようでありますが、依然として低迷をたどっているといってもいいのではないかと思うので、この低迷をたどっている原因の中には、直接的には日本経済の構造の変化の問題もありましょうし、あるいは金融情勢の逼迫の問題もありましょうし、さらに国際収支の先行き不安の問題もある。しかし、それと同じように考えなければないない、特に証券行政という問題を取り扱う大蔵省の立場としても、現在のこの証券市場の構造的なあり方といいますか、困難性というものを突きとめて、それに対応するところの行政指導を行なわなければならないかと思うのでありますが、一体今日の証券市場の持っているところの構造的な困難性というものを、どういうふうに大蔵省としては把握をし、それに対してはどのような指導と行政を進めようとしておいでになるのか、その点を説明願っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/20
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021・田中角榮
○田中国務大臣 証券市場が不活発であるということは、御指摘のとおりでございます。この不活発であるということが、もうどうにもならないということで不活発なのか、一時的な問題なのか、将来の飛躍への力をたくわえるためであるのかという面からは、いろいろ見られるわけでございます。一つの原因は、非常に急速に資本市場というものが大きくなった、資本市場の大きくなる過程において、投資者は思わざる利益を得た、こういうような半年か三カ月間持っておればもう二、三割はかたい、場合によれば五割になるかもしらん、こういうような状態というものを一ぺん味わいましたから、その後は、投資は額面割れになるとか、配当はタコ配をやっておるのではないかとか、いろいろなことを言われますと、ここらでひとつ引こうかというような考え方もあるでしょうし、まあもう少しの時を見ようというような考え方もあると思う。これは金がないから証券市場が非常に逼塞しておるのだということにならない。株を大衆が売ってきておらぬということ、もう一つは、株式市場に流れてこないときから軌を一にして、貯蓄にどんどん伸びておる、こういう考え方、これは関連性があると見なければなりません。そういう意味から見ますると、国民大衆が何かに投資をしようといっているにもかかわらず、これを吸収できない市場というところに問題があるわけでございます。これは上場して三百円だ、五百円だといったものが、半年後につぶれてしまったり、特設市場に入ったり、また、証券業者が一社でもって一年間に大学卒業生を八百人も採ったという会社があります。こういうとにかく急場間に合わせの仕事をやったために、出先というものは、証券さえやれば、投資をすれば絶対もうかります、こういうような投資勧誘態度があったために、国民に迷惑をかけた、こういういろいろなものが積み重なって今日になっているわけでありますが、ただ、日本の産業というものは、将来どうかといったら、たくましい成長力を持っているということは、もう世界じゅうだれでも認めていることでありますので、いま少し低調でありますが、やがては日本の産業自体がよくなる。しかも政府は、資本蓄積というものに対してはあらゆる施策を行なうという基本的な態度を鮮明にいたしているわけでありますから、私は、やはり一時低迷を続けた証券市場に大衆の金が流れつつあるというふうに考えているわけでございます。しかし、そういう面では、政府も施策を行ないますし、やはり企業の責任者というものが資本家に対して、資本参加をする国民大衆に対して、責任を負うという態勢をとらなければならぬわけであります。同時に証券業者も、四大証券などといって大きく喧伝をせられておりますが、日本の経済力の成長度と証券会社の状態、証券市場等を考えますと、私はまだまだ証券業者自体を育成強化しなければならないという考え方に立っているわけでございます。でありますから、証券市場に金を入れるためにはどうするかという具体的な問題に対しては、こうすれば入りますということだけ端的に申し上げられるほど簡単なものではございませんが、今後この証券局をつくっていただきまして、ここでひとつ万遺憾なき証券行政をやろう、こういう考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/21
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022・村山喜一
○村山(喜)委員 最後のところは我田引水のことばのように聞き取れるのですが、問題は、大衆投資家といいますか、大衆株主が出現をいたしまして、株式によって相当なもうけをした。ところが、その後株価の低迷とともに、これが投機の失敗の累積が積み重ねられて、その結果は、証券市場に対する不信感というものがあらわれてきた。これが今日なお払拭ができないというところに原因があるという大臣の説明、そのとおりであると思うのでありますが、問題は、そういうようないわゆる大衆がたやすく銀行よさようなら、証券よこんにちはというようなことばで飛びついていった大衆操作のからくりの中において、今日株価が増資プレミアムによって不当につり上げられている、そうところに原因があるのではないか。だから、その増資プレミアムが株主に帰属をする現在の日本のやり方、この証券市場のあり方というものが、はたして正しいかどうか。これは会社に帰属したら、内部蓄積に回されて、そうして資本の充実、企業の自己資本の充実ができる。しかしながら、それが株主に還元をされるという形の中で不当に株価がつり上げられる、そうすることによって大衆が投機の失敗の累積を重ねていった、こういうような姿が過去においてあらわれておるわけです。そういたしますと、一体日本のようなそういう額面株の額面発行という形の株の増資の方向が正しいのかどうかということに、私もいろいろまだ未熟でありますが、人の意見を聞いてみますと、これは考えなければならない問題があるのではないかと思うのでありますが、時価発行の是非の問題について、大臣はどういうふうにお考えになっているのかという点をお尋ねしておきたいのであります。
それともう一つの問題は、四月の東京市場の記録をずっと調べてみますと、これは大体五月でもそうでございますが、一時はなばなしい姿で第二市場、いわゆる第二部として上場されましたところの中規模の優秀企業の資金調達を目的とする第二市場が、これが非常に投機性に富む姿であらわれてきたわけですけれども、一時は第一部の平均株価に比べまして非常に高いところで出発をしていた。ところが、今日においては実勢力をあらわす数字、指標になっていると私は思うのでありますが、これが第一部よりも非常に低くなっておる。そういうところから、この第二市場創設は少し早かったのじゃないかという意見もあります。そしてまた、投機取引というものが、最も不安定な会社を対象としている日本のそういうような状態の中に、現在の証券市場がある。そこに投資家に対して不測の損害を与える。黒字倒産というようなのも出ているわけですから、そういうような点から考えた場合に、証券市場から大衆が離散をしていった。そして今日笛を吹けどもなお集まらずという姿の中で、資本市場としての役割りを果たさない姿があらわれているのじゃないかというふうに考えるわけでありますが、それらに対するところの行政指導を、どういうふうに今日までやっておいでになったのかということを明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/22
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023・田中角榮
○田中国務大臣 第一点の時価発行の問題は、非常にむずかしい問題でございます。むずかしい問題ですが、いま各方面でこれを検討いたしておるわけでございます。外国は、大体時価発行主義をとっております。それから新商法の改正等によって、相当株主権というものに対しては、新しい様式ができてきつつあります。しかし、私は、時価発行には個人的には反対なんです。これは非常に明確な考え方を持っているのです。外国の資本市場のように長い歴史を持ってきておりますものに対しては、時価発行ということ、いわゆる法人擬制説の問題等々あわせて考えるときに、時価発行をして別な株主を得ることによっても、その会社が益することであって、株主の資産を制約したり、減らすものじゃないのだという考え方が非常に通っておる場合には、私は時価発行ということが考えられると思いますが、日本はそうじゃないのです。戦前に持っておったような株式が、今日いろいろな制度の変革、その他の法律の改正等によって、いろいろな状態になり、安定株主がない。安定株主とは機関投資家である。安定株主とは、国民大衆がすべて株主になるときが、安定株主なんです。そういう全然前提が違うのであります。違うところにもってきて時価発行をある会社がやったわけです。時発価行をやるときには、国民大衆が安定株主になっておるときには株価操作ができませんが、特定の少数な人たちが、機関投資家が大株主である場合には、株価操作ができないとは言えないわけです。そこで時価発行する場合には、株価は三百円しているところで二百五十円で時価発行をして、半年もたたないうちに百五十円になってしまった。これが株式市場の混迷の原因の一つであります。こういうことを否定するわけにはいかない。こういうところに株式市場が混乱をした一つの要因があるのでありまして、やはりそういう全然前提の違う日本の現在の資本状態において、時価発行というものが既存株主権の制約にならぬという議論には、絶対に私はならないというのであります。これは大蔵省の意見ではございませんが、私としては、時価発行を早期にやると、日本の株式市場はますます混乱をする、こういう考え方、特に会社乗っ取りなどがありますと、その対抗手段といたしまして、特別割り当てをしてそれには対抗をする。それが高じて時価発行になる。こういう具体的な個々のケースをいままで発行しましたもので見ますと、必ずしも好ましくないということでございます。特に外債などにつきましては、転換社債を出すときに、とにかく時価百円であったものが二百円、一カ年間で相当上がっておる。その一割引きでもって外国市場へ出る。あとはつるべ落としに下がる。もしこういう事実があったとしたら、国内問題ではない。これは日本の信用の問題であります。そういう意味からいって、時価発行問題は、学者の議論と、いまの経営者の自分に都合のいいような議論と、それからやはり純理論としての株主権の擁護という意味から考えれば、軽々に即断すべき問題ではない、こういう考えを持っております。
それから第二の第二市場の問題、これは確かに大蔵省少し誤ったではないかということもあります。しかし、検討してみますと、中小企業というものの資本をどこで一体調達するのかということ。もう一つは、店頭売買だけをさしておきますと、もっと事故が多くなるわけです。明るいところに出ておきますと、そう悪いことはできないわけであります。明るいところにおってもやっておるのもありますが、ここはなかなかむずかしい問題であります。この第二市場をつくったというのは、店頭にあるものをより明るみに出すことによって、トラブルをなくする。国民負担というものに対してやっぱり考えなければいかぬということが一つ。もう一つは、資本調達の場をやはり正規につくってやらなければいかぬ、こういうことでありましたが、資本金が非常に小さい会社が上場をする。そうして毎年毎年増資をする。ところが、さっき言ったように、日本は株価とか配当とかいうことでなくて、増資をすれば、相当高く買ったものも、ひっくるめて計算をすれば相当もうかっておる。こういう初めから投機的な考え方を持っておる者もありますので、そういう意味で、第二市場が急激に今日の状態になった。しかし、これをやめてしまうということは、なかなかむずかしいのです。中小企業の資本調達の場というものを、とるわけにはいかない。ですから、現在のそれの割合が大体落ちつきましたから、今度は上場基準を辛くしたり、中間検査を行なったり、少なくとも二部、一部を言わず、上場株式に対しては、政府も、また証券市場も、それに対して何らかの責任を負えるという体制をつくりながら、だんだんとこれを育成していくということが、やはり一番好ましいことだということで、この間から連絡をしながら、上場基準もだんだんと上げていく。上げていくだけじゃなく、力のない証券業者が一か八かという仕事をしちゃいかぬので、証券会社の資本金も上げよう。それだけではいかぬから、ひとつ免許制にしたらどうか。免許制にするならすぐやればいいじゃないかと言われるが、それは民主主義の現状でございますので、免許制に二、三年のうちにしたいと思うのですが諸君はどうかということで、いま民間の意見、有識者の意見等も聞きながら、第二部市場、また特設にいったものに対してどうするかというような問題も、具体的に検討いたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/23
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024・村山喜一
○村山(喜)委員 もちろん時価発行の問題につきましては、現在株価そのものが低迷をしておるような状況、それに大衆資本家が育っていないというような日本の特殊的な状況、そういうようなものもありましょうが、株主保護という立場から考えていくならば、これは当然アメリカ等に見られるように、収益性が上昇をすることによって株式を分割をしていくという方式、これをやはり考えていく段階に将来はならなければならないのじゃなかろうかと思うのです。そうでないと、ただ増資プレミアムがつくからといって株価が不当につり上げられて、それに飛びついて、そして失敗をして、証券というのはもうこりごりだ、こういうような形に現在おちついているわけですから、そういうような問題も将来検討を願っておきたいと思うのでありますが、問題は、第二部で上場されております株の場合、新しく公開をする会社の株で幹事証券会社が引き受け価格と売り出し価格との間の利得というのですか、これを取得しているのじゃないかという大衆の疑惑というのですか、これが私は、現在の証券業界に与えられるところの疑惑の第一の理由じゃなかろうかと思う。それと、ブローカー的な機能とディーオーラー的な機能との二つを合わせ持って、片一方においてはコミッションをとりながら、片一方においてはみずからの危険負担で株式の売買をやる、そういうような本質的には相異なるべき筋合いのものを兼ね備えている、そうすることによって証券業界が不当に利得をおさめているのじゃないか、そういうような問題、あるいは投資信託の運用業務を兼ね備えているというような問題等、現在幾多の要素にわたるところの兼業を行なっているのが、日本の証券業界である。とするならば、これを大衆投資者の保護という立場から考えた場合には、これらのいわゆる機能といいますか、これに対するところの分離をするなりあるいは調整をするなりという役割りが大蔵省にあると思うのでありますが、これらに対する考え方をこの際承っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/24
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025・田中角榮
○田中国務大臣 確かにあなたがいま言われたように、これはブローカー業務やディラー業務は分けたほうがいい。また、これを一緒にやっているためにいろいろな問題を起こす、こういうこともあります。アメリカなどはだんだんと分ける方向になっておるようでございます。ところが、日本の証券会社そのものも、これもたいした力があって出発したわけじゃないのであります。でありますから、証券会社に力があれば、事故があってもとにかく弁償するとか、もっと手数料を下げろとか、こういう市場の正常化ということができるわけでありますが、証券会社に力のないのがおりますと、これはいろいろなことをやるわけです。金持ちけんかせずでもって、金持ちであまり悪いことは——少なくとも証券や銀行ではそういう問題があるのですが、どうにも食っていけない、こういうことになれば、相当なことをやります。いまあなたが言ったとおり、引き受け金額と売り出し金額は違うじゃないか——これは証券部長があとでお答えするかもしれませんが、法律的にはどうなっているかわかりませんけれども、実際問題としては、百円でもって引き受けて百二十円くらいで売り出すということは、私の関知するところにおいてもあるようです。ですからだんだんと業容の整理というものは、証券会社の力がつくに従ってできるわけであります。現在すぐこれを分離をするということになると、証券業者の中でも千万円、五百万円、こういう小さなものもあるわけでありまして、なかなか分離をして業務を正確に分けることはむずかしい、こういう実情にある。実情にあるだけに、いろいろな問題を起こす、こういうおそれもあるわけであります。銀行は、昔は何でもやっておったのですが、だんだん分けて、信託が分かれた。こういうように専門システムに変わってきておる。力があればできるわけであります。あまり分けてしまいますと、これは力がなくて、今度手数料を倍にしてくれ、こういうことになると、大蔵省も非常に困るわけであります。でありますから、手数料もだんだんと下げていくような業態にならなければいかぬ。それには兼業もしようがない、こういうのが現実の状態でございますが、こういうのも、証券局ができましたら、ひとついろいろ検討いたしたいこういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/25
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026・村山喜一
○村山(喜)委員 現在投資信託の運用形態について大蔵省のほうでは、会社型の投資信託に中小の信用力のないものは切りかえていくのだ、こういうような指導をなさっているように承るのでありますが、そうすると、親会社たる単一の証券会社に併設をされましたいわゆる投資信託と、この会社型の投資信託の二つの型が並列していくという形になってくると思うのでありますが、そういうような構想のもとにおやりになるのか、それとも、現在大きな投資信託を取り扱っているようなところも一緒に含めて、そうしてそういうような会社型の投資信託の形に切り変えていく、こういうような方向をお考えになっているのか。そのあたりはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/26
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027・吉岡英一
○吉岡政府委員 お答え申し上げます。
大蔵省といたしまして、会社型の投信をすすめると申しますか、行政指導をしようという気持は、ただいまのところ全然ございません。ただ、御案内のように、投信にはいろいろな形態がございます。いま日本でやっておりますオープン型、ユニット型、そのほかに御指摘のような会社型というものがあるわけでございますが、それぞれいろいろな利害得失と申しますか、一長一短があるわけでございます。投信が発足いたしますときに、会社型も十分検討されたわけでございますが、日本としてはいまのユニット、オープン型がいいだろうということで、いまの形で発足しておるわけであります。会社型の投信につきましても、絶えず検討はいたしておりますが、ただいまのところ、会社型投信をやるということで行政指導をいたしておることは、全然ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/27
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028・村山喜一
○村山(喜)委員 それはよくわかりました。そこで最近の株式投信の動きを見てまいりますと、売り越しが、売り越しは続いているけれども、案外それが市況には大きな圧迫の材料になっていない。一体それはどこに原因があるのだろうかということで調べていけば、共同証券が肩がわりをしている。こういうことが言われているようでありますが、この投信の売りを消化し得るかどうかということが、今後の株価の問題にも影響が出てくるわけでありますけれども、一体共同証券の任務は、こういうような投資信託との関係においてどのような操作をやるように考えておいでになるのか、この点について伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/28
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029・田中角榮
○田中国務大臣 共同証券につきまして、大蔵省との関係は全然ないわけであります。これはただあのような状態においてつくられたということでございますので、株式市況が悪いということになれば、共同証券が買いに出るというようなことが行なわれておるわけであります、しかし、私のほうからこれを指示するとか、共同証券は投資信託に対してこうしろとか、売りに出した場合にはどうしろとか、こういう問題は、全然指示もいたしておりませんし、関係もありません。でありますから、共同証券が投資信託の売りをどういうようにさばいているかということに対して、こちらも指示しておらず、報告はとっておるかもわかりませんが、一般証券業者と同じ立場においてとっておるというにすぎないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/29
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030・吉岡英一
○吉岡政府委員 ちょっと事実の点だけ申し上げておきますが、三十八年の四月から三十九年三月までの一年間におきまして、投信の運用資金の増加額は、約四百三十三億円でございます。それだけの資金がふえたわけでございますが、同じ期間一年間に株式組み入れ額の増加額が、六百五十五億円になっております。つまり公社債その他のものを処分いたしまして、資金増加額以上の六百五十五億円の買い越しになっておるわけでございます。したがって、この一年間を見まして、投信が累計いたしまして売り越しになっておるというような数字にはなっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/30
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031・村山喜一
○村山(喜)委員 私は、一年間の統計を言っているのじゃなくて、四月も売り越しが六十九億円あったわけですね。今度五月も大体売り越しになるだろう、こういうような見方がされているので、それを共同証券が買いささえているのじゃないか、受け入れを肩がわりをしているのじゃないかという意見等もあります。そういうようなところから共同証券の性格についてお尋ねをしたのでありますが、これは大臣、この機関投資家が弱体であるということと、それから投信の衰退をカバーするということで、この共同証券は発足したのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/31
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032・田中角榮
○田中国務大臣 そういうふうには聞いておりません。私も共同証券をつくりなさい、こう言ったわけでもございませんし、任意につくったわけでございます。当時市況が非常に悪かった千二百円を割りそうだというような状況においてつくられたわけでございます。でございますが、この共同証券の運用というものに対しては、一般の証券会社と同じような考えで、証券部も理財局もあまりこまかいことを言わないように、こういう注意をしております。証券業者や銀行とか、いろいろな方々が集まってつくられたものであって、機関投資家が弱体であるからというようなことだけでつくられたものではないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/32
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033・村山喜一
○村山(喜)委員 ここで大臣に外資導入の基準の問題についてお尋ねしておきたいのであります。それは、宮沢長官が十二日に日経の記者に対して、記者会見で次のようなことを言っているように新聞で見たのであります。この輸出の延べ払い制度を拡充した場合に、外貨の準備高が問題になるが、これは一方で健全な外資をどんどん導入をすればよろしい。ヨーロッパでの日本の起債は、今後もかなり期待ができる。有利な条件で起債できるものを、将来利払いがかさむから外資導入を抑制せよというのは、ナンセンスである。現在国内では生産力を拡充して輸出力をつけなければならないし、また低開発諸国にも信用を供与する必要があるからだ。こういうようなきわめて楽観的な外資導入に対する態度を表明をしているようでありますが、一体大蔵省としては、この外資導入に対してはどういう考え方をお持ちになっているのかということを伺っておきたいのであります。昭和三十八年度の海外からの長期資本の流入額を調べてみると、七億八千八百万ドルもあるわけであります。そのほかに、技術援助契約に基づく利払いの問題もありますし、日本の株式取得の段階におけるところの資本の移動の自由化の問題が今後出てくるわけでありますし、また、現在外国資本によって日本の株が操作されるというところまではないでありましょうが、株の保有率が五〇%をこえているというようなものも、中には散見できるのであります。そういうような状況の中で一体外資に対する導入の基本的な考え方というものは、どういうようなところをお持ちになっているのか。非常に危惧する点が実は出てきております。というのは、自動車会社の各社が相次いで外資導入の交渉をして、インパクト・ローンによるところの外資借款を取り付けるというので、設備資金の一部金利負担の軽減をはかるために、日産自動車あたりが五百万ドル、アメリカの銀行から借りるような交渉を進めておる。また、そのほか今日まで各種の自動車会社においては、外資導入を積極的にやっているような事実もあります。そういうようなものに対しまして、この外資審議会によるところの外資導入の審査制度というものは維持されるものだと思うのであまりすが、一体そういうような議会において、日本の自主性、立体性という問題を今後どういうふうに考えていくのか。宮沢長官の意見等が出ておりましたので、非常に危惧する点もなきにしもあらずという考え方を持ちましたので、この際大臣の説明を承っておきたいのであります。特に、外資の基準を産業別に大幅に緩和するというような考え方も、通産大臣あたりから示されているようであります。七月あたりには改定作業を終わるというような考え方もあるようでありますが、これに対するところの大臣の考え方を御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/33
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034・田中角榮
○田中国務大臣 宮沢経済企画庁長官の談話がただいま指摘されましたが、これは記事になっている部分だけのことでございます。お話しになったことは長いことで、いろいろなことをお話しになって、ちょうどいま言われたそこだけ記事になっているわけであります。宮沢経済企画庁長官と私たちの考え方と変わっているところはありません。全く同じであります。外資というものに対しての考え方は、入れないで済むならば入れないでいい、こういう問題があるわけであります。国内資本で間に合うならば何も借り入れをすることはない、こういう原則が一つございますが、何分にも無資本の中から立ち上がってここまできたのでありますから、これは外資というものが害さえなければ——外資を入れることによって非常に利益があるということは、過去十何年間の歴史がこれを証明しているわけであります。お互い、会社経営をやっておっても、個人企業でも、自己資本だけでやるか、銀行と取引してやるか、そういうことであります。でありますから、外資というのは、われわれが銀行から金を借りて仕事をする、労働組合でも場合によれば労働金庫から金を借りる、こういうことと同じことであって、払えない金を借りたんじゃ困るけれども、その借りることによって非常に基盤が強くなり、その利益によって償還をしていける、こういうことになれば、何も外資に対してそう潔癖な考え方を持つことはない。日本は、明治初年に鉄道とか電力とか、こういうものが外資によって急速な発達をしたわけでございますし、戦後世界の専門家が、日本は再び経済的に立ち上がれぬ、こう判断した日本が、わずか十三、四年間でこう大きくなったわけでありますから、外資というものが必要であるという限度においては、良質のものを入れる、こういう基本的な考え方に対しては全然変わっておらぬわけであります。でありますから、宮沢長官が言った、必要な外資を入れる。そして日本の産業がよくなり、自由に返していけるのですから、一向差しつかえありません、こういうことを少し強調すると、借りちゃいかぬというのはナンセンスだ、こうきっと表現したのではないかと思います。これは私と経済企画庁長官はしょっちゅう同じところで国会で答弁しておりますが、同じ考えでございます。しかし、外資というものをこれから入れるのに、無制限に入れるかというと、これは少なくとも元利償還及び技術導入のロイアルティ等の支払いで年間二億ドル以上にもなるということでありますから、貿易外収支の改善という面から考えますと、できるならば自分の国の資本、いわゆる自己資本の充実ということもあわせて行なうべきであるという考え方は、これまた当然であります。でありますから、現在OECDに加盟をいたしまして、資本の自由化ということを原則的にうたってはおりますが、どこの国でも、直接投資に対してはスクリーン制度があるわけでありますから、無制限に入れようなどということは考えておりません。外資の審議会は当然残しておく。通産省や農林省、外務省等から大体大蔵省へ申し込まれますので、大蔵省は、現在までは為替局でございましたが、今度は、為替局というのでは、何でも入れない、こういう思想に映って困るので、国際金融局というように名前を変えていただいて、そこでスクリーンしよう、こういう考え方を持っておるわけであります。そのスクリーンの基準はどうかというと、まず日本の産業を支配してはならない、それから日本の産業分野に大きな変動を起こさないように、特に中小企業に影響を与えないように、こういう考え方を原則にいたしておりますから、これからもなお、外資などは幾らでも入れますよと対外的にはそう言っておりますけれども、国内的には、影響のあるものに対して、またホットマネー式短期資金というようなものに対しては、相当強い制限を行ない、交通整理を行なっていくのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/34
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035・村山喜一
○村山(喜)委員 大臣の説明を承っておりますと、無制限にそういうような資本の自由化に対する態度をきめているわけじゃないということでございますので、一応了といたしますが、問題はやはり国際収支の均衡という立場からと、それから外貨の保有という面から、さらに産業政策の上から考えていかなければならない。特に産業政策の面において、そういうような一部産業あるいは中小企業の分野において外国の企業進出に対する規制を残しておかなければならないということは、十分考えておかなくちゃならない問題だと思いますし、そういう立場から、宮沢長官の発言を新聞記事で見たので、その真意はわかりませんけれども、生産力を拡充して輸出力をふやすためには無制限に借りていいような、あるいは後進国に対するところの信用供与も引き受けなくちゃならないから外資を導入するというような印象を与えるような発言というものは、これは私は適正ではないんじゃないかと思うのであります。
ただ、ここで日産自動車あたりがアメリカの市中録行から金を借りる。その場合におけるところの金利負担の軽減があるということで、外国の金融の金利と日本の高金利と比較をしたら、企業にとりましては安い金利のほうがいいわけですから、そういうような面から外資の導入を歓迎をするという形が生まれてきた場合には、一体低金利政策というものはどういうふうに考えておいでになるかということが、問題になると思うのであります。というのは、藤山総務会長は、これに対しては、資本蓄積を促進するためには一時的な高金利もやむを得ない、こういう発言をしておるのであります。同じ与党の大蔵大臣は、その考え方に対してどういうような考え方をお持ちになっているのか。公定歩合もこの前引き上げた。これは国際金利に対するところの水準からいえば、非常に高い、そういうような状態の中にある今日の状況に対して、池田内閣の今日までとってきた低金利政策というものは、変わったのではないか、こういう印象をわれわれは持っているわけでありますが、これに対する基本的な考え方というものをこの際承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/35
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036・田中角榮
○田中国務大臣 まず第一に、自動車のインパクトローンでございますが、営業権には関係ははないようであります。しかも自動車会社と外国会社との提携等の問題に対しては、政府は聞いておりません。これが現実問題として持ち込まれれば、慎重にやります。これは特に自動車に対してはいろいろな問題がありますから、慎重にやりたい、こう思います。
もう一つの問題は外国の金利が安い。(「日本が一番高い」と叫ぶ者あり)これはまさに安いのです。安いものですから、金利負担というものを安くしようという考え方が一つと、もう一つこっちが困るのは、国内では金融調整をやっておりますのに、外資を無制限に許しますと、金融調整が外資によってこわれる、こういうことになるわけでありますから、そういうこともちゃんと前提にしながら、適当にスクリーンする、こういうことでございます。外資の窓口をあけておくために、政府がやっておる中小企業などが困るということさえも前提にしながら調整をやっておるのですから、それが外資によってがたがたになってしまう、こういうことは許せるわけはないので、こういう問題に対しては承知をしております。
第三点の藤山さんの発言でありますが、藤山さんは、大体私と同じ考え方だ、こういう基本に立っておるわけです。これも、藤山さんのそういうしゃべったところだけをとりますとそうですか、これは何ら変わりないのです。藤山さんが言われたことをいまあなたが引用せられましたが、自己資本比率を上げるために、ある程度高金利もやむを得ない、これは私たちもそういう考えで公定歩合の二厘引き上げをやったわけですから、これはもう事実言っていることと私たちがやっていることは同じでございます。
それから低金利政策は変更したんじゃないか。これは変更していません。藤山さんも、低金利政策は変更すべきだなどと言ってはおられないのです。低金利政策というのはどこから出てきたかというと、先ほどもどなたかがそうだと言っておられましたが、少なくとも世界で一番高い金利でございます。先進国としては一番高い。十カ国とすれば、最高であります。われわれが考えまして、原材料のない日本が、原材料を輸入してきて、それに加工してこれを輸出するのです。同じ市場で原材料のある人とない人とが競争をして、日本が勝たなければならない。そうしなければ輸出は伸びないのです。原材料がないというハンディキャップが一つあります。もう一つは、どこの国にもありますが、労働賃金と生産性の問題、中には労働賃金の定期的な上昇分を生産性でもってカバーできない企業もあるのであります。そういう第二のハンディ。第三はどうか。第三は、金利が高いのです。材料がなくて、金利が高くて、一体どうして日本の輸出は伸びておるのか、まさにたくましきかな、こうエコノミストも言っておるわけであります。なお、労働賃金というものは、西欧並みにしなければいかぬ、われわれもそう思っておるのです。そういう悪条件をずっと考えたときに、何で一体国際競争力をつけるか、これはまじめに日本人だれでも考えなければならぬ。そうでしょう。何で一体国際競争力がつくのか。そうすれば、せめて金利だけでも安くしていかなければいかぬ、こういうことは、だれが考えても、日本人である限り反対論は一つもない。ただ棒締めにどんどん下げていこう、こういうことはだれも考えておらぬ。あるときには財政と金融とは一体となり、金利は時に応じて弾力的、機に応じて、こう言っておるのであります。国会で政府の所信を明らかにしておるわけでございます。でありますから、ある時期には下げるからといって、どんどん下げなければいかぬ、これはもう全く金利の弾力性などというものを無視した議論になるわけであります。ある時期には金利を上げたり、ある時期には下げたり、そこに公定歩合や窓口操作という金融調節機能があるわけでありますから、金融調節機能によって上げたり下げたりしていきながら、だんだん上げるのじゃなくて、上げたり下げたりしてだんだん少なくして国際金利にさや寄せしよう、こういうのでありますから、自由民主党内閣の低金利政策といいますか、いわゆる国際金利さや寄せ政策というものは、未来永劫に変わるわけはないのであります。ある時期に上げることもあり得る、こういうことでございまして、藤山さんの発言は、そこをさしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/36
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037・村山喜一
○村山(喜)委員 上げたり下げたりして下がっていけばよろしいのですが、それが上がったきりでは困る。問題は、そういうような公定歩合を引き上げる政策をとらなければならなかったというのは、投資意欲が減退をしないということでやられたわけなんでしょうが、一体公定歩合を引き上げるということが、どれだけの影響力をもたらしてきておるのか。問題は、そういうようなものを数量的に把握できる状態があるのかどうか。それよりも、今日そういうような投資意欲がもしかりに減退をしておるとするならば、それは窓口規制による力のほうが大きかったのじゃないか、こういう見方もあるわけでありますが、今日その設備投資の資金計画というものが依然として高水準にあるのだということも聞きますし、公定歩合は引き上げたが、相変わらずそういうようなことであれば、非常に問題があると思うのでありますが、一体今日の投資意欲の問題は、どういうふうに見ておられるのか、御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/37
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038・田中角榮
○田中国務大臣 設備投資、大体四兆円程度と見ておったわけでございますが、設備投資の意欲は、だんだん減ってきておるようであります。これは資金需要というものが、大体鎮静に向かっております。
それから御承知のとおり、三十年以来在庫率は七九、最低でございますが、こういう状態にありながら、自由化の影響もございますし、八条国移行という、もう窓口は締めないのだという気分的な問題もあると思いますけれども、輸入は、昨年十一月、十二月から一月、三月まで相当高水準であり、十二月だけでも——十一月の中ごろから十二月一ぱいで約十億ドルの輸入超過になったわけでありますが、四月になって相当輸入は低下しておる。五月の第一週は、九日までで大体五千万ドルの黒字、信用状収支で大体そうなっておるわけであります。まあ相当急テンポに国際収支改善の兆も出ておるわけでございます。そういう状態であって、金融面は中小企業に対してどういう状態等が起きておるかということになりますと、下請、系列企業に対しましては、大体いままでの四十日、四十五日の手形が、十日ないし十五日延びておる。しかし、二分の一現金、二分の一手形というような状況のものが、三分の一現金になったのかというと、現在そういうことはないようであります。これは昨年歩積み、両建ての問題でたいへんな問題がございましたが、いわゆる債務者預金率が非常に多い。これが相当程度取りくずされておるということもあると思いますが、いずれにしても、系列企業に対してはこまかくいま資料をとっておりますが、そう強い影響は感じられないというのが、大蔵省側のすなおな見方であります。しかし、系列外の企業というものは一体どうなっておるのかというので、三百四、五十億にのぼる倒産の被害の中身、一体これによって連鎖倒産があるのか、一体どういう状態で倒産をしたのかというのを、いま件数別に当たっております。この中で、金融引き締めが直接の影響として倒産に追い込まれたということはまだ出ておりませんが、影響がないということもいえないわけであります。いろいろな面から見まして、生産水準は、御承知のとおり高いということは、御指摘のとおりでありますが、鉱工業生産も四月ごろから鎮静化しておりますし、大体、金融調整の影響はだんだん出てきたのではないか、こういう見方をしておるわけでございます。これは公定歩合を上げたのが効果を発揮したのではなく、窓口規制といわれましたが、私も、公定歩合だけであるとは考えておりません。公定歩合、窓口規制、準備率の引き上げ、輸入担保率の引き上げ等が総合的に働きまして、異常ともいうべき状態から、大体鎮静化しつつある。もう少し、政府が企図いたしました年率九%、一〇%程度の正常な経済成長率までこれを持っていきたいという考え方で、いま鋭意実情を検討いたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/38
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039・村山喜一
○村山(喜)委員 時間もありませんので、あとの質問者も待っておりますから、私としては次に譲りたいと思いますが、最後に一点だけお尋ねしておきたい点があります。それは関税中央分析所を松戸に移すということになっておるようでありますが、これが横須賀にきめられたのは、たしか去年。一年間の間に松戸に移さなければならない決定的な理由というものが、どうも明らかでない。昨年の改正で、横須賀市に置くということになれば、当然施設をつくらなければならない。ところが、その施設はできたやに聞いていない。それは自衛隊の、防衛庁の誘導施設の関係があって、横須賀につくることに対しては横やりが入った、こういうようなうわさを聞いているのでありますが、一体松戸のほうに移さなければならない理由というものはどこにあるのかということを明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/39
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040・谷村裕
○谷村政府委員 御説明のとおり、たしか昨年はそういう予定でおりました。それから予算のほうは、大体そういうことを前提といたしまして、とりあえずの調査費と申しますか、まだ本格的建設に入るわけではございませんが、そのいわば事前準備になるような意味の予算をつけておったと記憶いたしております。用地の問題等は、非常にこまかいいきさつは私も承知いたしておりませんが、横須賀のほうは、国有財産の問題として、手に入れるのが必ずしも適当でないというような事情があったようでございます。これに反しまして、一方で松戸のほうに、たまたま大蔵省といたしましては、財務局の、たとえば研修のために必要な施設をつくるというふうな問題が出てまいりまして、本年度予算を折衝いたします過程におきましては、いっそそれならばそういう土地を有効に利用するという意味で、松戸のほうに財務局の研修所を建てるというふうなこととあわせて、そこに税関の中央分析所をつくるようにしたら、そのほうが土地のいわばより有効利用というふうになるのではないかということになりまして、そこで横須賀のほうから松戸に移す。また、場所的に申しましても、いずれもさほど——横須賀に置いたほうがより便利である、松戸では不便だということでもないというふうに考えられましたので、昨年一たんそう予定しておきながら変えたということは、ある意味では不見識のようでもございますが、ある意味ではまたそれのほうがかえって適当である、有効である、合理的であるというふうに考えて、訂正をお願いするようにしたわけでございます。
なお、いきさつにつきましては、私はあまり詳しく存じません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/40
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041・佐々木庸一
○佐々木政府委員 いまお話のありました防衛庁のほうからの横やりという問題はございません。もともとそこにそういう施設がありまして、私どものほうで土地を選定いたします場合に、これはどうもじゃまだなと実は思っておったわけでございまして、そこを避けますために、一番いいところは使えないなということはございましたが、ほかからの横やりによって変えたということはございませんし、変えました理由は、官房長が申し上げましたとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/41
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042・村山喜一
○村山(喜)委員 去年つくることをきめて、またことし場所を変える、朝令暮改というのでしょうか、大蔵省のような優秀な人がお集まりになっておるところでそういうような不見識なことは起こり得るはずがないじゃないかと私は思うのですが、一応承っておきます。
私の質問は、これで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/42
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043・徳安實藏
○徳安委員長 堀昌雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/43
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044・堀昌雄
○堀委員 最初の村山委員の質問をずっと聞いておりませんでしたので、やや重復するところがあるかもしれませんが、ひとつお許しを願いたいと思います。
この大蔵省設置法の中で、証券局の新設というのが、特に大蔵省の機構の上では非常に目新しい問題でございます。そこで提案理由の説明を拝見いたしますと、たいへんけっこうなことが書いてあるわけでありますけれども、実は私、大蔵省の証券行政をずっと見ておりますと、率直に言って、一貫性が実はどうも不十分である、これが第一点。二つ目は、一体証券行政をどういう方向へ持っていこうかという目標というか、青写真というか、どうもそういうものに欠けていて、当面の行政行政がその時点時点で行なわれてきておるという感じがいたすわけでございます。証券局がこういうふうな形で新設をされましたら、これらの点が取り除かれるのかどうか、この点についてお伺いをいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/44
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045・田中角榮
○田中国務大臣 取り除くばかりでなく、真に資本問題、証券問題に対してまっこうから取り組みまして、将来誤りなきを期してまいりたいという考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/45
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046・堀昌雄
○堀委員 ことばの上では、いまのような答弁が簡単に言えることです。そうすると、少し具体的にお伺いをしたいのですが、田中さんには田中さんの構想があると思います。しかし、率直に言って、大臣は大体長くても二年もすると、これまでずっとかわっているわけですね。そうすると、それはもちろん新しい大臣の考え方ということになりましょうけれども、一般の受け取る側は、大臣がかわるたびにまた一から新しいことを考えられてはかなわぬということが一つあるわけです。しかし、当面あなたがいま大蔵大臣として証券局を設置されるのでありますから、一応あなたなりのいまの問題についての少し具体的な考えをこの際伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/46
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047・田中角榮
○田中国務大臣 大臣がかわることはやむを得ないことでございますが、しかし、政党政治でございまして、議院内閣制でございますから、私もまだ当分代議士をやめるということを考えておりませんので、政府、与党一体となって、まずいいことはやっていこう、こういう考えでございますから、大臣機関説という意味で、そう個人的な考えが左右するということはないと思います。
一体証券局をつくってどうするか、こういうことでありますが、私の基本的な考え方というよりも、まず将来のビジョンといいますか、そういうことは、少なくとも何年か後には、戦前の六一%くらいに自己資本比率が上がるというようなめどをつけていかなければならぬ。いまちょうど中期経済五ヵ年計画を策定中でありますから、当然こういう作業をあわせながら、将来の資本問題に対するめどを一つつけなければならぬという考え方でございます。それを実行していくためには、資本市場の育成強化ということをやっていかなければならぬわけであります。そういう意味で、年間五千億か六千億の増資も調整しなければならない。これはまあ特別な状態においてでございますが、昨年度は三千億余でございます。今年度は五、六千億、そういう状態で、六千億ずつ増資がされたとしても、一体何年後に、何十年後に六一%までになるのかという問題になるわけでありますから、そういう資本市場では困るのであります。ですから、資本市場に対しては、もっと育成強化をしなければならない。そのためには、一体証券業者は現在の状態でいいのかという問題が、だんだんと出てきたわけであります。証券業者に対しても、もっと強い行政指導を行なわなければならぬ。これは民主的な立場において、盛り上がりを待つことはいいことでありますが、これはやはりある時点においては、ある意味において国民の代表である国会の意見も十分聞きながら、行政的にも推し進めていかないと、解決できない問題があります。そういう中に一つ、証券業者の免許制という問題があるわけであります。事務当局では、なかなかむずかしい問題のようなことも言っておりましたが、大蔵委員会で私が言明をしてから、これは大臣がやれと言うのだからやらなければいかぬなとこういうことで、大体歩調もそろってまいりました。しかし、これは一方的にやってもいかぬので、これはいま証券業者と証券業界に提示をいたしまして、一体この経過措置をどうするのか、またこれをやるとすればどういう時期がいいのかという具体的な問題を検討しておるわけであります。あとは一体どうかというと、投資者の保護をして、投資者自身が証券市場に、資本市場に入ってくる、こういうことになり、同時に、国際的にこれを撹乱されたりしないように配慮したり、国内的にも資本市場は、いまから何十年か前に銀行を育成しようという考え方を先人は打ったわけであります。そして今日の金融機関が存在するわけです。われわれもおそまきながら、これからやはり世界的な視野に立って、将来の日本の産業、資本状態を想定しながら、証券市場、証券会社の育成ということを考えなければいかぬ、こういう考え方を持っておるわけでありまして、こういうことをするには、証券部よりもやはり証券局がより合理的だ、こういう考え方でおりますので、御理解をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/47
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048・堀昌雄
○堀委員 そこで過去の証券担当部門の変遷を少し私調べてみましたけれども、これを見て感じますことは、大体全体において部局なりいろいろなもののつくり方が、過去の例を見ておりますと、少しおくれぎみのような感じが実はいたします。今回はいよいよ証券局ということになって、だいぶ機構も拡充されてくるようでありますから、その点については、今後のことでありますから、少し経過を見て論議をしていきたいと思いますけれども、この中で一つちょっと申し上げておきたいことは、実は大蔵省の皆さん非常に優秀でありますけれども、あまりあっちこっちぐるぐる回ってくると、大蔵省の仕事というのは、いずれも非常に専門的な知識を必要とするものですから、全然関係のない方が来られると、おおむね各部局において、率直にいって、当分の間はまごつかれるだろうと思います。私が五、六年の間見ておりますと、たとえば主税局のようなところは、国税庁との間の流通等があっても、比較的ワクの中で動いておられる。これはやはり税制というものが非常にきめがこまかいものですから、急によそから行ったのではわかりにいくという点もあろうと思いますが、銀行局等を見ていると、比較的ワクの中のような感じがします。今後証券局も、最初に申し上げた、一貫性というものを、ある程度人事面等において、今度は局になったのですから、配慮がされておらないと、全然関係のない方がぽっと課長にきたり、局長にきたりしたのでは、なかなか簡単にいかないのではないか。私も、これで五年ほど大蔵委員をやっておりますけれども、大蔵行政すべてをつまびらかにするというのには、なかなか至りません。もう五年もやれば、大体一通りマスターできると思いますけれども……。(笑声)ともかくそういう状態ですから、この問題については、今後証券局ができましたならば——私は証券局の個々の人事のことを言うのではありませんが、やはりできるだけ専門的な知識を持った方が行かれるのは一応いいが、あまりぐるぐる人が回るようなことでは、一貫性の点に欠ける点が起こるのではないかという感じがしますので、その点については、今後十分配慮しておいていただきたいと思います。
先ほどもちょっと出ておりましたが、証券局が今度できました中で、実は投資信託の問題というのが、いま村山委員も触れておられましたが、非常に重要な問題になっております。幸いにして、今度は投資信託課ということでこれを担当する課ができたことは、その点では皆さん方がこれの重要性について配慮されたということのあらわれだと理解してるわけであります。この投資信託について、きよう少し議論しておきたいと思います。その前にちょっと一般論で伺いますが、大蔵省はちょいちょい通牒というものを出しますが、この通牒というものの効力、規制力の範囲、それからこの通牒に違反したものの取り扱い、これをひとつ最初に伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/48
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049・谷村裕
○谷村政府委員 一般的に通牒と申します場合に、二つあるかと思います。一つは、下部機関に対しまして、財務局長あるいは国税局長、そういう第一線執行機関に対しまして、こういうふうに行政のやり方をやれ、こういう内容のやり方をやれということを出しまして、同時にかような通牒を執行機関に出したということを公表し、あるいは関係業界に伝えて、その趣旨徹底をそれによってはかる、そういう内容のものもございます。
それから俗に通牒と言われておりますけれども、正確な意味では通牒といえないかもしれませんが、業者に対し、あるいは団体を通じて業者に対して、何らかの内容のことを申す場合がございます。前のほうは、いわゆる行政機関としての命令のものでございますから、これはおそらく御質問になっている意味ではないと思います。あとの意味におきます一般的な、たとえば業者に対する考え方に——たとえは歩積み、両建てについては、慎まれたいとか、あるいは特利はとらないようにせられたいとか、あるいは決算についてはかくかくのようにやられたいという趣旨のものは、一般的な監督命令と申しますか、正確な意味では命令という形ではないのでありますが、たとえば銀行法第何条に基づく命令ということではないと思いますが、そういう命令権といいますか、監督権を背後に控えました上での一種の行政指導という内容になるかと思います。したがいまして、そういう通牒の内容に違反しましたときに、直ちに法令違反であるとか、命令違反であるとかいう事態には、一般的にはならないと思いますが、しかし、その行政指導をしている方向に合わないわけでありますから、そこはまたそのときに応じてどういう処置をとるかということが、個々に具体的に問題になってくることだと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/49
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050・堀昌雄
○堀委員 それではちょっと問題を具体的にいたします。
昭和二十八年五月二十二日蔵理一一九四二号、大蔵省理財局長から各委託会社代表者あてという通牒が、実は出されております。その内容をちょっと皆さんに聞いていただきたいのですが、「最近有価証券市場の不振に伴い従前に比し受益証券の募集にややもすると困難を生ずるに至ったところ、委託会社の一部においては、受益証券の募集に際して一部特定の者に対して、その者の有する受益証券の元本に損失を来した場合に、その損失額の補償をする旨を、口頭又は文書の形式により確約を與えている旨を仄聞する次第である。しかし現行の証券投資信託制度は実績主義を建前としているのであるから、このような確約を与えることは、制度の本旨にもとるものと考えられるのみならず、受益証券の募集制度上違法の行為に陥る虞なしとしない。よって各委託会社においては、上記の趣旨にかんがみ今後苟しくもかかる行為を採らざるよう留意されたい。以上、命によって通達する。」こういう通達が実は出されております。この通達は今日も生きておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/50
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051・加治木俊道
○加治木説明員 この法令集に収録されておる法令はもちろん、通達は生きているものでございます。この内容からいいましても、現在同じような指導を私たちはやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/51
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052・堀昌雄
○堀委員 実はこれは昭和二十八年でございますが、今日この通達が出されても、このままで生きるような事態がちょうどあるわけであります。証券が不振で、過当競争が行なわれておる、こういうことですね。そこでちょっとお伺いをしたいのは、この中で「受益証券の募集制度上違法の行為に陥る虞なしとしない。」と書いてあるのです。そうすると、この違法の行為に該当する法令というのは、どこからくるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/52
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053・加治木俊道
○加治木説明員 投資信託法に基づく投資信託の性格から見て、元本を保証するようなものではないわけですね。ですから、それは法の趣旨というか、制度の趣旨に照らしてそれに違反する疑いがあるという意味の表現かと思いますけれども、ちょっと私当時その通牒を出した者ではないので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/53
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054・堀昌雄
○堀委員 その当時の出した人でないし、突然聞いたからお困りかもしれませんが、しかし「違法の行為に陥る虞なしとしない。」と言った以上は、やはり法令のどこかに該当していないと、法律の趣旨だなんということなら、その前段のほうに「しかし現行の証券投資信託制度は実績主義を建前としているのであるから、このような確約を与えることは、制度の本旨にもとるものと考えられるのみならず、」こうきているわけですから、私もどこかちょっと調べてみたけれども、どうもどこへ該当するのかはっきりしないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/54
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055・加治木俊道
○加治木説明員 証取法に投資勧誘の態度の規定があるわけであります。この中に受益の保証とか元本の保証をしてはいけないとかという……。(堀委員「何条ですか」と呼ぶ)百九十一条の三、「何人も、第二条第一項第六号又は第七号に掲げる有価証券の募集又は売出に際し、不特定且つ多数の者に対して、これらの者の取得する当該有価証券を、自己又は他人が、予め特定した価格若しくはこれを超える価格により買い付ける旨又は予め特定した価格若しくはこれを超える価格により売り付けることをあっ旋する旨の表示をし、又はこれらの表示と誤認される虞がある表示をしてはならない。」特定の価格と書いてありますけれども、要するに一定の価格をあらかじめ約束して、市場価格と離れた価格でもって買い取るとかあるいはそれをあっせんする、それからたとえば元本補てんということになりますと、当然そういった意味の内容になってくるわけで、基準価格が低くなるわけでございますけれども、五千円で設定しましたユニットでも、四千円になる可能性があるわけで、それを五千円で買い取るということでありますと、これは元本補てんということになるわけでありますから、いまの条文に該当すると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/55
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056・堀昌雄
○堀委員 これに違反したのは、何か罰則がありますか。あわせてちょっと……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/56
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057・加治木俊道
○加治木説明員 罰則はあると思います。第二百条の四の二「第百九十一条の三又は」これに書いてありますから「左の各号の一に該当する者は、これを六月以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。」と書いてあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/57
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058・堀昌雄
○堀委員 いまの答弁いいですね。それは私が話を進める前に、大蔵省がここで答弁をしたことに間違いがあったなんということになると、大蔵省の権威にも関するから、ちょっと確認をしておくわけですが、いいですね。——その点で私はいまの違法のおそれがある、それについては処分ができるということがはっきりしましたから、その次に話を進めるわけですが、もし現在元本保証をしておる者が事実あった場合、それから投資信託を値引きをして売っておる者が事実あった場合、元本の保証も値引きも、いずれもそういうことになると、大体この問題にかかってくるのじゃないかと思う。ちょっと違う点もあるかもしれませんが、元本保証はいまの点でいいですね。値引きをして売る場合については、どうなりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/58
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059・加治木俊道
○加治木説明員 いまの条文は、将来一定の価格で買い取るということをやってはいけないという規定でございますから、値引きは直接いまの条文には該当いたしませんけれども、いずれにいたしましても、投資勧誘態度として、それから業界の秩序を維持する観点からいきまして、適当でございませんので、厳重に取り締まるように現在指導いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/59
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060・堀昌雄
○堀委員 いまの罰則の点なのですけれども、そうすると、もしセールスマンがその元本保証をしたということになると、その罰則はセールスマンへ行くわけですか。会社のほうの代表者に行きますか。その点はどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/60
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061・加治木俊道
○加治木説明員 それは、だれが約束したかによって決定されるべき問題だと思います。たとえば会社の支店長が機関として約束しておれば、会社の責任になります。支店長個人の問題ももちろん出てきます。セールスマンが、それは状況によって判定しなくてはなりませんが、かりにセールス限りで保証しておれば、セールスが責任を負わなくてはなりません。何とも書いてありませんから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/61
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062・堀昌雄
○堀委員 元本保証の投資信託でありますから、実はそれがユニットで満期になれば、保証しておる額面割れの部分の差額を埋めなければなりませんから、私は、セールスマンが保証することはあり得ない、会社が了解をしないではそういうことはできないと判断をします。それでなければ、セールスマンは自分のポケットから出さなければならぬことになりますから、それは次に不正を起こすもとになりますから、おそらくそういうことはないと思います。
そこでお伺いいたしますが、現在、大蔵省は、元本保証をして投資信託を売っておる事実を御存じかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/62
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063・加治木俊道
○加治木説明員 現在というのは、いま広く一般に行なわれておるかどうか——私は行なわれていないことを強く期待いたしておりますが、もし発見された場合には、——発見されたこともございます。これはお客さんの手元を見せていただかなければ、こちらから検査に行っても、保証書はお客さんのほうに渡っているわけでございますが、たまたまその写しが店で発見されるということがございますれば、これはあったわけでございますが、そういう場合には、そのように処置いたしております。適当の制裁を加えておりますが、いま申し上げましたように、お客さまの手元にあるのが普通でございますので、そうひんぱんに、少なくともわれわれが具体的事実を確かめたことはございません。しかし、 だからといって、全然行なわれていないということを言い切るだけの自信は私はありませんが、たぶん行なわれていないだろうということを期待いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/63
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064・堀昌雄
○堀委員 大蔵省としてはまことにどうも歯切れの悪い答弁ですが、事実行なわれておりますし、私は事実を少し私の知人関係の中を通じて調べてみました。かなり証拠が上がりました。ここで私はそれを持っておりますから、その証券会社を処分しろ、そういうことを言うのではありません。ありませんが、昭和二十八年にこういう通達が出されておって、これは景気のいいときには、率直に言ってこういうことは起きないのです。ところが、最近の投資信託の実情というものは、さっき一年というような大きな話で出ておりますけれども、こまかく見ましても、大体四月のユニットで月間の増減を見ると、投資信託というのは十四社ありますけれども、その中でふえたのはわずかに四社です。あとの十社は月間設定をしたけれども、解約のほうが多いというわけですから、現在の投資信託の状況というものは、もし設定をしなければ、もちろん解約で赤になる、設定をしてもなおかつ解約のほうが多くて赤になっておる、こういうきわめて困難な実情に当面をしておる。そこで、その投資信託の設定というのは、一体いまどういうことになっているかといえば、こっちの投資信託を解約してこっちの投資信託に乗りかえたり、そういう普通なら必要のないことが行なわれるほどの困難な条件にきておる。しかし各投資信託が、そうは言いながらも、解約が殺到するから、どうしてもセールスマンのしりをたたき、会社自身も何とかして設定額をふやそうとするのが、今日の値引きと元本保証の問題に発展をしてきたと思うのです。率直に言って実にゆゆしい状態なんです。そこで大蔵省に申し上げておきますけれども、あなたのほうで責任を持って調査してもらいたいと思うのです。私は、その調査を特に要望する点は、この通牒にもいみじくも書いてあるのですけれども、それは一部特定の者に対してやっておるわけです。よろしいですか。いまの投資信託の内容をひとつあなたのほうでお答えをいただきたいのですけれども、投資信託一般として、私は小口のものと大口のものとに分けて考えてみたいと思うのです。ごく小口のもの、十口ぐらいまでのものとそれ以上のものと分けてもいいですけれども、一体加入者におけるウェートは、十口以下とそれ以上でもいいです、どこでもあなた方の資料にある点でもいいですけれども、どういうウェートになっておるか。要するに零細な人が非常にたくさんいて、今度は非常に巨額に投資信託を買ってくれる人、巨額といっても五十万とか百万とかそういうところから始まるのですが、そういう人が少数におるというのが、いまの投資信託の実態なんです、ところが、値引きというものは、五口買いましょう、三口買いましょうという零細投資家に対しては、値引きもやらなければ元本の保証もしていないのです。そして五十万円買いましょう、百万円買いましょう、まさにここにいう一部特定の人に対して、値引きをいたしましょう、それから元本も保証いたしましょうということが行なわれておる。証券民主化にこれは逆行しているわけですね。だから、この点は、この際証券部が証券局になる段階でもありますから、ひとつ投資信託委託会社に対して徹底的な調査をしてもらいたい。こういう不公平な取り扱いによって、あなた方の法令に違反することは明らかなんですから、さっきちょっと伺ったのですが、そういう写しが出たときの処分、どういう処分をされたのか、ちょっと伺いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/64
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065・加治木俊道
○加治木説明員 前段の御質問でございますが、徹底的に検査をするという、特別検査をやるかどうか、これは私いまここで直ちにそういうことをやっていいかどうか判断しかねまするので、当然考えなければならない重大な問題だと思うのであります。証券業協会においても、お互いの過当競争でこういうことになっているわけです。適正販売ということをこの際さらに前進させたいという気持ちを持っております。それで何らかの意味で、おそらく近い将来にいろいろな意味で、いま投資信託の合理化ということを進めておりますけれども、これは業界が自主的に進めておるわけでありますが、その一環として適正販売の問題も強く取り上げて、業界としても、場合によれば何らかの——投信協会は法律に基づく協会でございませんから、罰則、制裁はございませんけれども、自主的なそういう措置を考えたいということを言っております。われわれがやりましたそういう場合の措置は、たとえば一ヵ月とか、内容によりますけれども、投信の募集をその店全店がやっておれば、問題なく全店に罰則、制裁を加えますけれども、たまたま発見されたその店が一店でありますならば、その一店の募集を停止させる、こういう制裁を加えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/65
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066・堀昌雄
○堀委員 もう一つの比率を言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/66
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067・加治木俊道
○加治木説明員 その月によって違いますけれども、ちょっと私いまその数字を持っておりませんが、設定額の平均が、要するに一人当たりの募集額というか、応募額の平均が、一万円とか三万円とか、大体そういう金額でございます。その月によって違います。したがって、非常に零細層が多いということはわかるのであります。ただ、その分布はちょっといま手元に資料を持っておりませんが、たぶんおっしゃるとおりだと思います。おそらく割引が行なわれている、あるいは元本補てんが行なわれているとすれば、当然ある意味において一番メリットの高い層に向かってそういうことが行なわれる可能性があるわけでありますから、そういうことが起こり得ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/67
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068・堀昌雄
○堀委員 ともかく私は、この前大蔵委員会で、いまの免許制度の問題に触れて、証券業者のあり方ということについて申し上げましたが、いま一番重要な段階だと私は思うのです。それは証券の問題というのは、実に日本経済の、これは政府、与党の施策適当でない点があると思うのでこうなるわけですね。これは二十八年にこういうことが出ているわけです。当時は証券が悪かったわけです。それから一応よくなって、また悪くなっておる。山、谷が非常に大きいのです、証券の問題については、山、谷が非常に大きい。そのために、実はそういう谷のところですべてのトラブルが集中をして出てくる。これは証券事故の問題においてもしかりであります。投資信託におけるいまのような問題もしかりであります。ここで私は問題が発展をしてくるであろうと思いますのは、実は投資信託は、いま額面割れのものが非常にたくさんある。この額面割れのものが、おそらくこの八月か九月ごろから償還が行なわれる時期に当面をすると思います。この額面割れは、もちろんそのときのダウ価格によりますから、株価のいかんによって額面が戻る場合がありましょうけれども、おそらくそう簡単に額面が戻るとは考えにくい現状ではないか。額面が戻れば、どんどんそれを売りに出したりすれば、また当面問題が起こるわけでもありますから、なかなかそうもいかないのではないかと思いますが、これから額面割れるものが償還をされるときに元本保証をしておるとするならば、これに対して証券業者は金を払っていかなけばいかぬという問題があわせて生じてくるわけですね。これは元本保証というものは、なるほどその買ったときに上がるということであるならば、元本保証は現実の問題として問題を生じてこないのです。今回のように額面割れで償還をやることになってきたときに起きてくる元本保証というものは、たいへんなことが起きてくると私は思うわけです。だから、いまのものは、これから償還の行なわれるものは、すでに五年前のものでありますからともかくでありますけれども、ともかく投資信託の募集については、このことは厳にやってはならないことなんですね。昭和二十八年に通牒を出して、それが今日も生きておるということですから、これらについてはいまお話がありましたけれども、ひとつ今後はそういうことの行なわれないように——また行なわれないようにといっても、あなたのいま言われたように、たまたま何か証券業者の検査で写しが発見される程度で、実はこれは投資家の側にあるから、なかなかわからないということはありましょう。しかし、私は、その気になれば調査方法はあると思うのです。投資信託の場合についても、調査方法はある。だから、別に何もそれを調査しろと言うのではありませんけれども、もし改まらないなら徹底的な調査をしますという程度のことは、私はこの際はっきりさせておく必要がある。このことは、投資家保護でもあるし、それから一般の投資家に対する公平な措置としてもどうしても必要だという点で、特に強く要望をいたしておきます。
その次にもう一つお伺いをいたしたいのは、証券投資信託法第七条に免許の基準というのがございますね。この免許の基準の第一項に「免許申請者の人的構成及び有価証券への投資の経験及び能力並びに証券市場の状況等に照らし、当該免許申請者が証券投資信託の委託者としての業務を行うにつき十分な適格性を有する者であること。」というこの条件がありますね。そこで大臣にお伺いをしたいのですけれども、証券投資信託委託会社を新たに免許するについては、ここに特に言っておる「証券市場の状況等に照らし、」ということは、現在のような非常に困難な状態、要するに投資信託の設定よりは解約が多いというような時期に、新たに委託会社を免許することは、この条項に照らして適当でないというふうに私は判断をするのです。大臣、その条項についてどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/68
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069・田中角榮
○田中国務大臣 現在まであるものが合併をするということは、合理化が行なわれるということですから、これはもう免許しております。それから現在まだそういう申請はありません。こういう不況のときにやろうという申請者が第一ないということでありますし、特殊な申請があるということもいま想定されません。ですから、まあ大体あなたの言うように、申請もありませんし、免許もしない、こういうことだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/69
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070・堀昌雄
○堀委員 あなた方ちょこちょこそこで話をしておるから、こっちのほうからはっきりさしておきますけれども、実は私ちょっといろんなものを読んでおりましたら、こういうことがちょっと書かれておるのがあるのです。投資信託の合理化のために各社を統合するという問題が出ていて、現在すでに山崎、勧業、山叶の三社が何か一つになって新しい証券信託の委託会社をつくるということが、もうそろそろ、免許をしたのかどうか知りませんが、起こるのだろうと思います。この点あとで論議しますが、しかし、その次に、ここにちょっとこういうことが書いてあるわけです。「野村系の江口は運用五社のうち同系統の日東、光亜、八千代、丸三の四社との新投信委託会社の設立が伝えられている。」こういうことが、あるものの本に載っておるわけです。それが事実かどうか私も知りませんけれども、いまのこの点で実は私はちょっとひっかかるわけです。ということは、さっき私が触れたように、現在の投信の状態というものは、非常に困難な状態にありますし、大体四社といえども実際はそういう状態ですから、ましてやその他の十社はたいへんな状況で、一回の設定が一億そこそこというようなところがあるわけですから、これは投資信託を当初発足させたときには、おそらく予想もしなかったことではないだろうか、こういうふうに思います。しかし、そういう時期にいまあるものが、何らかのかっこうで統合して合理化をするというのなら、これは議論はいろいろありますけれども、やむを得ない措置だというふうには私も理解いたしますが、いまやってないものを——ある一つのやっているものがやってないものを一緒にして新たに委託会社をつくるというのは、それは全然新しいものばかりではないけれども、これはやはり私は新たな証券投資信託の委託会社をつくることと同様の効果を生ずると判断するわけです。
そこでひとつ大臣にお伺いをしたいのは、私はこの際そういうものが広がれば広がるほど、その本業の証券会社というものが困難な条件があるところへ、さらに困難な条件を、負担を添加させるおそれがあるのではないかというふうな感じすらするわけであります。そこでひとつこの際私は、いまの条項、この過当競争で先ほど申し上げたような元本保証や値引きをやりながら額面割れが償還をされるというような困難な時期というのは、まさに証券投資信託法第七条が、そういう時期には投資信託の委託会社の免許を認めないということを明らかにしておるのだと理解をするので、この点は、大蔵省としても、そういう時期に新たなものがそういうものをつくるということは認むべきでない、こう思うのですけれども、大臣ひとつここではっきり答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/70
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071・田中角榮
○田中国務大臣 いま御指摘になりましたように、山種とかそれから山叶とかで一つつくる。それからあとは大阪屋とかその他玉塚ですか、その他で一つつくる、合併しよう、そういうところまで聞いておるわけです。そのほかに、江口がどうするというようなことはまだ聞いておりませんが、これが新設になるのか、あるいは、現在江口証券の持っておるものの業容の拡大になるのか、それが合理化という線に沿うのか、これは出てきてみなければわからぬ問題でございますが、全然証券業法によってそういうものを許可しない、こういうことをいまはっきり申し上げることもできないと思いますが、これが証券業法の精神に背反をするというようなときであれば、これはもちろん免許しませんし、これが現在の状態よりもよくなるのだ、こういうことであれば免許することもあり得ますし、これは申請が出てきてからの問題として検討いたしたいというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/71
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072・堀昌雄
○堀委員 実は皆さんのほうでは、この際いろいろと合理化をしたほうが、少しでもそういう困難な時期を乗り切りやすいという判断があるでしょう。私は、実はあまり小さな十社が少しずつまとまったからといってはたしていいかどうかは、これは率直にいって問題があるところだと思うのです。十社なら十社全部一つになるというくらいならば、これはだいぶ話が違いますよ。これは非常にスケールが大きくなる。しかし、実はいま出ております三社程度ずつが寄り合っても、そんなに大きくならないと私は思います。おまけに、たいへん具体的な名前を出して恐縮ですけれども、いまの一番最後に私の触れている問題は、実は江口証券というのは、残存元本が百十億しかない。一社で残存元本が百十億しかない投資信託に、投資信託をやっていない会社を、三つか四つか知りませんが、くっつけてスタートするなんということは、どろ沼の中にさらに被害者をふやすだけのことであって、これは政治的判断から見ても、行政当局として、さっきあなたのお話しになった、要するに正しい指導をするという意味から見れば、これはここでやれとかやるなとか、私もうこれ以上言いませんけれども、これは相当慎重な検討をしてもらわないと、重大な問題に発展していくのではないか。ものの見方としてですよ。ですから、いまの江口というのが五百億も八百億もの残存元本を持っておる大きな投資信託の会社であって、それにほかのものがくっつくというなら、これはまた話が別だと思います。しかし、あなた方のほうでは、少なくとも残存元本は最低三百億ぐらいないと投資信託はうまくいかないというふうに、大体考えているのじゃないですか。証券部長、一体投資信託の現状として、せめて望ましい条件というのは、どういうところにありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/72
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073・加治木俊道
○加治木説明員 これは投資信託の運営ともからんでくる問題でございまして、はっきり一定金額でなければ成り立つ、成り立たぬということにはならないと思います。たとえば年に一回募集をやり、そして設定するというようなことだって、当然投信の運営としてあり得るわけです。そういう場合と、いまのように毎月設定するという場合とでは、状況が非常に違ってくると思います。ただ、よかれあしかれいままで毎月設定してきておりますので、いまここで新しい運用方針に切りかえる、月々設定をやめるというようなことが実際上できないということを考えますと、ある程度の規模がなければ、委託会社としても採算的にもなかなか苦しくなるということは考えられると思います。これを三百億というか、五百億というか、そういう数字ではっきり具体的な結論を出したことはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/73
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074・堀昌雄
○堀委員 具体的な結論を出したことはないとおっしゃるわけですが、百億やそこらでは非常に私は困難だと思う。それから投資信託の月間設定額が一億や一億五千万円では、これまたたいへん困難だということは間違いないでしょうね。どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/74
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075・加治木俊道
○加治木説明員 元本のほうは、いま言ったように設定を毎月やるかどうかによって非常に違ってまいりますから、はっきりお答えいたしかねますけれども、月々一億とかそういう数字でありますと、決算公告費をまかなう——これは無記名ですから必ず新聞に公告しなければならないということになっているわけですが、公告費をまかなうことはなかなかたいへんです。非常に少ない二十人か三十人の世帯でございますけれども、やはり人件費もかさんできますので、なかなか採算は苦しいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/75
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076・堀昌雄
○堀委員 ですから、私が理論的にもこの際には適当でないということは、現実の条件から見ましても、いまのあとの場合は、どうも率直に言って適当でない。間口を広げる時期ではなくて、間口を狭める時期だと私は考えておりますから、その点については、少し慎重な御検討をお願いしておきたいと思います。
その次に、今度は投資信託そのものの今後の問題について少し伺っておきたいのですけれども、実は私、少しアメリカの投資信託を調べてみました。いろいろと沿革的な経緯もありますけれども、現在アメリカで主たる投資信託の形というのは、オープン・エンド方式というかっこうの投資信託会社方式の投資信託というのが、大勢を占めておるようであります。日本の証券取引法及びいろいろな問題というのは、大体アメリカの方法が戦後導入をされておって、その考え方の中には非常にアメリカの方式が強いわけですけれども、しかし、ユニット式投資信託というものは、これはどうも率直に言って世界にあまり例のないスタイルのものだと思うのです。この点について、いまある投資信託の問題もいいのですけれども、そろそろ投資信託というもののあり方について、証券局ができる今後の問題として、将来的な何らかの青写真がもう書かれてもいい段階にきているのではないか、こういうふうに私はいろいろ調べてみて判断をしておるわけです。あるべき投資信託の姿というものについて、もうそろそろ検討を始められていい時期ではないか、こういうふうに私は考えますが、大臣、どうですか。今後の投資信託を、もうそろそろいまのユニットのようなものから新しい会社型投資信託というものに移行をするほうが——もちろんこれをやりますためには、商法を初めすべての改正が必要になりますけれども、今回のような事態に対処するについて、比較的抵抗力もあるし、いいんじゃないか、こういう判断をするわけですけれども、その点について今後の見通しをひとつ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/76
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077・田中角榮
○田中国務大臣 投信の将来という問題に対しては、まだ結論を出しておりません。あなたの意見も聞いたり、また学者の意見その他も聞いたり、こういうものはつけ焼き刃式でさっさとやってしまうと、なかなかめんどうな問題が起きますので、いままでの経験が十分ありますし、いまの投資信託の額面割れその他が市場圧迫になっておるというような問題といま取り組んでおるわけでありますので、そういう問題を前提にしながら、投信の将来あるべき姿、これは当然考えなければならないことだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/77
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078・堀昌雄
○堀委員 それは今後の問題ですから、大いに検討を進めてもらいたいと思うのですけれども、いまの証券行政は、私がずっと見ておる中でも、監督についても、とにかく形式的な監督というものが非常に多くて、実質的な点が案外抜けておるのではないか。だから、問題は、証券業法が定めておりますように、やはり投資家保護ということをもう少し実態的にとらえるのでないと——要するに書類の形式がどうであるとかこうであるとか、どうも監督自体が非常に重箱の底をほじくるようなこまかい問題に終始をしておって、いまのような、たとえば投資信託についても元本の保証をするのだとかいうようなことは、相当以前から行なわれておったようです、私もいろいろなものを読んでみて、なるほどこんなことがあるのか、夢にも知らなかった、調べてみると、なるほど行なわれておるというような事実があるという点については、証券行政のあり方にやはりどこか一本抜けておる点があるのじゃないか。そういう点について、今後の検査の問題についても、ただ形式的な検査をするということでなくして、実態的なあり方について検討が必要じゃないかというふうに私どもは考えるのですが、その点について一体どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/78
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079・田中角榮
○田中国務大臣 大体行政は、いま御指摘されるように、法律ができますと、その法律を解釈をして、ここまでやれるんだ、こういう法律違反を犯さないということを前提にしてやっておるのですが、実際問題になると、形式的に書類を一回で済むものを何回も出さしたり、こまかい様式をつくったり、そういうことが好きだということは、行政機構全般の弊害であります。そうしておって、案外大きなところは抜けて、特に証券行政は、証券局がつくられれば、私はそういうことを考えておるのですが、多少手きびしくやらなければ、なかなか相手が相手でございますから——そう言うとはなはだ遺憾な表現かもわかりませんが、私はこれは前提には、証券市場、証券業者というものをよくしよう、またそうして証券市場がよくなければ資本調達市場そのものが解決しないというのでありますから、ただ及び腰でていさいを整えておるというのではなく、私はやはり証券業者というものを免許制にしようということさえ前提にしておるのでありますから、投資者保護ということに対しては、積極的に政府の意思を反映せしめ、証券業者の自覚を待つ。こういうことをだれもやっておるのだから、なかなか手に負えぬですということでやっておったのでは、前進態勢がないので、まあこの証券局ができたら——できるだけこれを早くつくっていただいて、私も自分自身で証券業というものを勉強して、もう少し積極的な立場で行政指導をしなければいかぬ。特にあなたがいま言われた元本保証の問題とかそういう問題は、なかなかつかみにくいのですとか、それからまた大体どこもやっているのですとか、あまり手きびしくやるとつぶれるのですとか、そういう目先のことばかりやっていると、本筋をはずれる、こういうところにあるのでありますから、私は、日本の証券行政というものは、この証券局をつくることによってスタートするというくらいの考え方を持っておるわけです。証券業者というのは、非常に頭がよくて、何でも考えていくわけです。相手が国民でございますから、新しいもの、新しいものということを外交員は考えますから、外交員に対しても登録制にしようとか、もっと勉強するために一体どういう勉強方法をとるとか、いろいろなことを考えておりますが、国民大衆に迷惑をかけてしまってから、さあさあというようなことではいけない。大蔵省の諸君も、証券局ができるということの意義というものを十分考えながら、積極的な行政を行なうという考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/79
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080・堀昌雄
○堀委員 さっきちょっと村山委員も触れておられましたけれども、御承知のような条件の中で共同証券というものがたまたま今日に至っております。これはいまはあのままで大して問題はないでしょう。しかし、時間がだんだんたったきますと、あれは一体どうするのかという問題が出てくる時期が、やはり早晩くると思います。いまのような形のままでいいのか、引っ込みはどうなるのか、最終的なところがどうなるのかという点が、小さいうちはまだいいのですが、だんだん大きくなればなるほど、あとの処理ということについては、いろいろ意見も出てくる問題であると思います。私は、ただ私の判断ですけれども、さっき私が少し提案をしておるこれまでの証券投資信託のあり方については、過当競争も激しい、ともかく日本のいろんな問題というのは、常に過当競争によっていまのような種々の弊害が生じておるわけです。そういう過当競争をなくしていくという意味においても、もう少し社会化をされたそういう会社型投資信託というものができて、さっき私が触れたように、零細な投資家のほうに比重をかけて、特定のものにサービスするのでなくて、やるということでないと、少なくともこれまでやってきたあなた方のかけ声というのは、実におかしなことになってくるのではないかと私は考えるわけです。そこらに共同証券が、今後は投資信託の会社型のものに将来発展する可能性をも私は多少考慮をしてもいいのではないか。これは私の意見ですから、別によろしいですけれども、そういう問題等を含めて、大蔵省は、いろいろな行政面については、ただ現状だけの問題にとどまらず、少し先を見ながら問題の処理をする程度の考え方をしていかないと、結局今日のようないろいろなまずい問題ができてからどうするかということで、いま急いで小さな投資信託会社を五億円設定の基準で集まりなさいとかなんとかというようなかっこうにしたのでは、まさにどろなわ式で、結局投資家が、率直に言えば、大きな被害を受ける。それが特に零細な諸君が被害を受けるというところに、私は大きな問題があるというふうな判断をするのであります。これらの問題については、何も証券局ができなくても、これまでにでも当然やらなければならぬ。あなたは、証券局ができたらできたらと言って、何か証券局ができたら、とたんにこれまでと変わるようなことを言っておりますが、その姿勢については、やや問題があると思う。証券局があろうとなかろうと、すでに証券部があるのですから、そこで心を新たにしてやるというくらいでないと、何か証券局ができたら、天から何か降ってきて、とたんにポパイがホウレンソウを食ったようなことにはならないわけです。その点はひとつ十分心にとめて、現在でも、私がきょう問題を提起したことについては、大蔵省としても責任を果たしてもらいたいということを要望いたしまして、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/80
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081・徳安實藏
○徳安委員長 本日はこの程度でとどめ、次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。
午後一特十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604889X03219640514/81
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