1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年二月十一日(火曜日)
午前十時四十分開議
出席委員
委員長 高見 三郎君
理事 小山 長規君 理事 坂田 英一君
理事 谷垣 專一君 理事 長谷川四郎君
理事 本名 武君 理事 芳賀 貢君
伊東 隆治君 池田 清志君
宇野 宗佑君 大石 武一君
仮谷 忠男君 小枝 一雄君
笹山茂太郎君 舘林三喜男君
寺島隆太郎君 内藤 隆君
野原 正勝君 八田 貞義君
藤田 義光君 亘 四郎君
東海林 稔君 中澤 茂一君
楢崎弥之助君 湯山 勇君
稲富 稜人君 中村 時雄君
林 百郎君
出席政府委員
農林政務次官 丹羽 兵助君
食糧庁長官 齋藤 誠君
林野庁長官 田中 重五君
委員外の出席者
議 員 芳賀 貢君
専 門 員 松任谷健太郎君
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二月十一日
委員中澤茂一君及び楢崎弥之助君辞任につき、
その補欠として河野密君及び横路節雄君が議長
の指名で委員に選任された。
同日
委員河野密君及び横路節雄君辞任につき、その
補欠として中澤茂一君及び楢崎弥之助君が議長
の指名で委員に選任された。
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二月十一日
甘味資源の生産の振興及び砂糖類の管理に関す
る法律案(芳賀貢君外二十五名提出、衆法第九
号)
同月十日
国内産牛乳により学校給食制度の法制化に関す
る請願外百二十八件(福田赳夫君紹介)(第二
九〇号)
同外十八件(坂村吉正君紹介)(第三四七号)
同(小宮山重四郎君紹介)(第三六三号)
同外十五件(井手以誠君紹介)(第三九一号)
同(金丸信君紹介)(第三九二号)
同(田邉國男君紹介)(第四一七号)
同外一件(石野久男君紹介)(第四三八号)
同(舘林三喜男君紹介)(第四三九号)
同(塚原俊郎君外二名紹介)(第四五八号)
同(内田常雄君紹介)(第四五九号)
同外九十九件(中曽根康弘君紹介)(第四七八
号)
同外三件(井手以誠君紹介)(第五三六号)
同(金丸徳重君紹介)(第五三七号)
乳価値下げ撤回措置並びに国内産牛乳による学
校給食制度の法制化に関する請願外七件(松浦
周太郎君紹介)(第二九一号)
同外五件(松浦定義君紹介)(第四一八号)
同外十二件(永井勝次郎君紹介)(第四四〇
号)
同(林百郎君紹介)(第四六〇号)
繭糸価格安定対策に関する請願(原茂君紹
介)(第三二六号)
同(松平忠久君紹介)(第三二七号)
同(下平正一君紹介)(第三七二号)
北洋材のいかだ輸送廃止並びに漁業被害補償措
置に関する請願(壽原正一君紹介)(第三五〇
号)
国有林野解放特別法の早期制定に関する請願(
椎名悦三郎君紹介)(第三九三号)
同(湊徹郎君紹介)(第四一九号)
糖価引き下げ等に関する請願(江崎真澄君紹
介)(第四一六号)
宇治港を第四種漁港に指定等に関する請願(池
田清志君紹介)(第四二〇号)
甘味資源特別措置法案の早期成立に関する請願
(池田清志君紹介)(第四二二号)
漁業災害補償法の制定に関する請願(齋藤邦吉
君外一名紹介)(題四四一号)
漁業災害補償制度の早期確立に関する請願(三
池信君紹介)(第四四二号)
昭和三十八年度のり被害対策に関する請願(愛
知揆一君紹介)(第四七七号)
農地法の一部に関する請願(二階堂進君紹介)
(第四九四号)
農業協同組合の合併促進に関する請願(二階堂
進君紹介)(第四九五号)
農林水産施設災害復旧事業費国庫補助率引き上
げに関する請願(二階堂進君紹介)(第四九六
号)
農業構造改善事業のため国有林野解放促進に関
する請願(二階堂進君紹介)(第四九七号)
暖地てん菜栽培奨励に関する請願(二階堂進君
紹介)(第四九八号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
甘味資源の生産の振興及び砂糖類の管理に関す
る法律案(芳賀貢君外二十五名提出、衆法第九
号)
甘味資源特別措置法案(内閣提出、第四十五回
国会閣法第一二号)沖繩産糖の政府買入れに関
する特別措置法案(内閣提出、第四十五回国会
閣法第一三号)
保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案
(内閣提出第四六号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X00419640211/0
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001・高見三郎
○高見委員長 これより会議を開きます。
まず、先刻付託になりました芳賀貢君外二十五名提出にかかる甘味資源の生産の振興及び砂糖類の管理に関する法律案を議題とし、提案理由の説明を聴取することといたします。芳賀貢君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X00419640211/1
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002・芳賀貢
○芳賀議員 ただいま議題となりました芳賀貢ぐ君外二十五名提出甘味資源の生産の振興及び砂糖類の管理に関する法律案につき、提出者を代表して、その提案の理由を御説明申し上げます。
わが国における甘味資源としましては、てん菜を原料として製造したてん菜糖、甘蔗を原料として製造した甘蔗糖及びカンショ、バレイショを原料とするでん粉から製造したブドウ糖等でありますが、その生産量は、昭和三十八年度において、てん菜糖十六万トン、甘蔗糖十八万トン、ブドウ糖九万トンで合計四十三万トンとなっており、国内需要量百七十万トンの四分の一にすぎず、毎年百三十万トン以上を輸入に依存している状況であります。
これら甘味資源のうち、てん菜については、北海道における寒地農業の重要作物として昭和初年から奨励せられ、砂糖の自給化政策と相まって昭和二十七年にはてん菜生産振興臨時措置法が制定され今日に至ったのであります。
次に、甘蔗の生産につきましても、奄美及び沖縄における重要な作物であり、その農家所得の中に占める比重はきわめて大きいものがあります。さらにブドウ糖の生産につきましては、カンショ、バレイショ生産農家の所得の安定のため、でん粉需要の確保の見地からも大いに振興する必要があることは論をまたないところであります。
政府は昭和三十四年甘味資源自給力綜合対策を決定し、十年後の昭和四十二年度における砂糖類の総需要量を百五十二万トンと推定し、てん菜糖については四十万トン、甘蔗糖二十万トン、ブドウ糖十五万トン、合計七十五万トンの生産目標を立て、自給度五〇%の達成を指向したのであります。
しかるに、その後この長期計画の推捗状況は不振をきわめ、すなわち北海道のてん菜については三十八年度の計画面積五万八千ヘクタールに対し作付面積は七五%の四万三千ヘクタールであり、砂糖の生産目標二十三万トンに対し六〇%の十四万トンと大きく下回っている実情であります。また府県のてん菜については三十八年度の砂糖の生産目標十万トンに対し一四%の一万四千トンという状況であります。さらにその後の需要の増加は著しく、三十八年度において百七十万トンに達し、長期計画による四十三年度百五十二万トンの需要見込みをはるかに上回っている現状であります。
このような甘味資源の生産の不振につきましては、政府の施策に積極性を欠き、ことに畑地改良等の生産基盤の整備の立ちおくれ、てん菜生産者価格の低価格、さらには国内糖業対策の不徹底等、政府の無為無策に起因するところが多いのであります。現に北海道においては、原料の生産と確保を度外視して政治的な工場の過剰誘致が行われ、結果的には製造業者は原料不足による製品のコスト高で経営難におちいり、生産農民は原料の低価格により増産意欲を減殺している実情であります。また府県においても、政府の呼びかけにこたえててん菜糖生産に乗り出した民間製糖会社も、原料不足により一部の工場は操業中止のやむなきに至り、暖地てん菜生産の前途に暗影を投じている状態であります。しかるに、最近における政府の甘味資源対策を見ると、輸入砂糖については従来の外貨割り当て制を廃して、昨年八月末に無謀にも自由化の実施を行なったのであります。砂糖の輸入自由化についての政府の方針には明確な根拠がなく、単に自由化率九〇%達成のために国内甘味資源の保護対策を犠性にしたものであります。
ひるがえって欧米諸国における砂糖政策の状況をみると、砂糖の輸入が完全に自由化されている実例は皆無であり、あるいは政府輸入の方式をとり、あるいは輸入割り当て制、高率関税の採用、国内甘味資源に対する補助金制度等、いずれも強力な保護政策を講じ国内自給度の向上に努めている実情であります。
ことにイタリアにおいては、第二次世界大戦直後の一九四六年にてん菜糖生産量二十九万トンであったのを、十年後の一九五四年には百四十万トンの生産量に躍進させ、砂糖の自給化を完成した事績に徴しても、その国における政府の政策実行に臨む熱意こそが生産発展の成否を制することが実証されるのであります。これに反して、池田首相はじめ政府の態度は、甘味資源生産振興についての具体的対策もなく、国内態勢未整備のままでいたずらに自由化だけを強行したことは、全く理解に苦しむところであります。
わが党としては、甘味資源の生産振興と糖業の発展を国の施策として積極的に進めるためには、砂糖の自由化は行うべきでない旨をここに明らかにしておくものであります。
以上申し述べた現状と観点に立ち、今後の甘味資源対策を強力に進めるために、すなわち、てん菜及甘蔗の生産を振興するために必要な措置を講ずるとともに、砂糖、類の需給及び価格を安定させるために政府が砂糖類を管理することとし、もって農業経営の改善と農家所得の安定をはかり、あわせて砂糖の自給度の向上と糖業経営の健全化及び国民の食生活の安定に資するために、この法案を提出することとした次第であります。
次に、この法案の内容について概要を御説明申し上げます。
第一は、砂糖類需給計画の策定でありますが、農林大臣は砂糖審議会にはかり、砂糖類の需給見通し、砂糖類の生産目標、てん菜、甘蔗及びブドウ糖原料のでん粉の生産目標、砂糖類の輸入見通し等の重要事項について、毎五カ年を一期とする長期需給計画を定め、これに基づく毎年度の需給計画を具体に的定めて、施策の方向を明らかにして、これを公表することといたしております。
第二は、てん菜及び甘蔗の生産振興についてでありますが、生産条件がてん菜または甘蔗の栽培に適しており、農業経営の改善により生産が増大する見込みが確実であり、さらに製糖企業を成立せしめるだけの生産量を確保し得る見込みのあること等を考慮し、農林大臣は都道府県の区域につき生産振興地域の指定を行なうものであります。次に、生産振興地域の指定を受けた都道府県知事は、甘味資源生産振興審議会にはかり、生産振興計画を定め農林大臣の承認を求めることとしております。
第三は、砂糖類製造施設の承認制でありますが、現在の製糖工場は原料不足等の理由から不安定な経営におちいっている現状であり、これら製造施設の合理化はもちろんでありますが、設備が過剰とならないよう、原料の生産に即応し施設の設置または変更につき農林大臣の承認を要することといたしております。
なお、ブドウ糖の製造施設についても同様の承認を要することといたしたのであります。
第四は、生産振興地域内において生産された、てん菜または甘蔗の集荷及び販売については、生産者団体を通じて一元的に行なわれるように、また生産者団体及び製造業者はこれ等の事項につき契約を締結するようにいたしたのであります。
第五は、砂糖類の政府買い入れの措置について、国内産てん菜糖及び甘蔗糖にあっては砂糖製造業者の申し込みに応じて政府買い入れを行なうことといたしております。またブドウ糖については、市価が低落してブドウ糖の生産の確保と価格安定のため必要と認める場合は政府買い入れを行なうこととしております。
第六は、生産者価格及び買い入れ価格についてでありますが、まず、てん菜及び甘蔗の生産者価格については、選択的拡大の重要作物とみなして、生産者米価の算定と同様に、生産費、所得補償方式に基づき生産者価格を定めて告示することといたしました。
次に、てん菜糖及び甘庶糖の政府買い入れ価格については、てん菜または甘蔗の生産者価格に砂糖の製造及び政府への売り渡しに要する経費を加えた額を基準として定めることとしております。なお、ブドウ糖の買い入れ価格については、農産物価格安定法に基づくカンショ、バレイショでん粉の政府買い入れ基準価格に所要の経費を加えた額を基準として定めることとしております。
第七は、砂糖の政府輸入についてでありますが、政府は需給計画に基づき、必要量の砂糖を輸入することとし、政府以外の輸入は認めないことにいたし、また関税については、政府輸入の立場から、これを免除することといたしてあります。
第八は、砂糖類の標準販売価格についてでありますが、砂糖の販売価格が国民食生活に及ぼす影響等を配慮して、標準販売価格の算定については、国産砂糖の生産費、家計費、物価事情等を参酌して価格を定め、告示することといたしました。なお、農林大臣は糖価安定のために必要な勧告を行なうこととしております。
第九は、砂糖類の政府売り渡しについてでありますが、政府は需給計画に基づき、その所有する砂糖類を売り渡すものとし、売り渡し予定価格については、標準販売価格を基準として、それぞれ定めることといたしております。
第十は、助成措置についてでありますが、国は予算の範囲内で、生産振興地域の都道府県に対し、生産振興計画の実施に要する経費の助成を行なうこととし、及び砂糖類の製造施設の設置につき必要な資金の融通のあっせんを行なうものといたしました。
第十一は、砂糖審議会等の組織についてでありますが、甘味資源の生産振興及び砂糖類の需給計画に関し、てん菜等の生産者価格、砂糖類の政府買い入れ価格及び砂糖の標準価格の決定に関する重要事項を調査審議するため、農林省に砂糖審議会を設置することといたしております。
また、甘味資源の生産の振興対策及び原料の集荷、販売等に関する重要事項について調査審議するため、生産振興地域の都道府県に甘味資源生産振興審議会を設置することといたしました。
第十二は、行政機構等についてでありますが、本法案の円滑な運用をはかるため、食糧庁に砂糖所管部の新設及びこれに伴う定員の確保を行なうための農林省設置法の改正、砂糖類の政府管理に伴い砂糖類管理勘定を設けるための、食糧管理特別会計法の改正、政府が砂糖の輸入を行なうため、関税免除のための関税定率法の改正、その他諸規定の整備を行なうことといたしております。
第一三、に、この法律は昭和三十九年四月一日から施行することといたしております。以上、本法律案の提案理由及びその内容の概略を申し述べました。
なお、本法案については、昨年三月第四十三国会に提出いたし、御審議いただいき審議未了となったものでありますが、今国会に再度提出したわけであります。何とぞ慎重御審議の上、すみやに御可決あらんことをお願いする次第であります。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X00419640211/2
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003・高見三郎
○高見委員長 次に、いずれも前国会より継続審査となっております。内閣提出にかかわる甘味資源特別措置法案及び押縄産糖の政府買入れに関する特別措置法案の阿東を一括して、審査を進めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X00419640211/3
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004・高見三郎
○高見委員長 両案につきましては、前国会においてすでに提案理由の説明は聴取済みでありますので、これを省略することとし、政府当局より補足説明をいたしたい旨の申し出がありますので、これを聴取することにいたしたいと存じまするが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X00419640211/4
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005・高見三郎
○高見委員長 御異議なしと認めます。それでは補足説明を聴取することといたします。齋藤食糧庁長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X00419640211/5
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006・齋藤誠
○齋藤(誠)政府委員 それでは甘味資源特別措置法案並びに沖繩産糖の政府買入れに関する特別措置法案の補足説明を申し上げます。
まず、甘味資源特別措置法案につきまして御説明申し上げます。
第一章は、総則に関する規定であります。
第一条では、この法律の目的として、この法律は、適地におけるてん菜及びサトウキビの生産を振興するとともに、てん菜糖工業、甘蔗糖工業及びブドウ糖工業の健全な発展をはかるために必要な措置を講ずることにより、農業経営の改善と農家所得の安定、砂糖類の自給度の向上及び国内甘味資源の国際競争力の強化に資することを目的とすることを定めております。
第二章は、てん菜及びサトウキビの生産の振興に関する規定であります。
まず、第三条は、砂糖類及び甘味資源作物の需要及び生産の長期見通しの策定について定めております。
農業基本法第八条第一項によりますと、政府は、重要な農産物につき、需要及び生産の長期見通しを立て、これを公表することとなっておりますが、この甘味資源特別措置法第三条におきましては、政府は、砂糖類並びにてん菜及びサトウキビを農業基本法第八条第一項にいう重要な農産物として、これらにつき、農業基本法の規定により需要及び生産の長期見通しを立て、これを公表すべき旨を定めているのであります。
次に、第四条から十二条までにおいては、適地において、てん菜及びサトウキビの重点的な生産の振興をはかるための生産振興地域の指定並びに生産振興計画の策定及び実施に関する制度を定めております。
第四条では、農林大臣は、一定の要件に該当する区域であって農業経営の改善をはかるためてん菜またはサトウキビの生産を計画的に振興することが特に必要であると認められるものを、てん菜生産振興地域またはサトウキビ生産振興地域として指定することができることとし、その要件は第四条第一項の各号に列記しております。
第一号は、栽培に適する自然的条件が備わっているかどうかの点であります。
第二号は、その地域における農業経営の諸条件から見て、その生産が安定的に増大する見込みが確実であるかどうかの点でありまして、その判定にあたっては、その地域内の農作物の作付の体系、競合農作物の状況、農業労働条件その他の諸条件を勘案することとしております。これは、甘味資源作物の生産の着実な伸長のためには、単に自然的条件のみならず農業経営上の諸条件が備わっていることが特に必要と考えられるからであります。
第三号は、その地域におけるてん菜またはサトウキビの生産数量が、てん菜糖または甘蔗糖の製造事業が安定的に成立するために必要な数量に達する見込みが確実であるかどうかの点でありまして、てん菜及びサトウキビが砂糖原料作物であることからこれを原料とする製造事業との結びつきを考慮しなければならないこと、また、第一条の目的に規定してあります国内甘味資源の国際競争力の強化という観点等からその製造事業も合理的な経営が可能となるものでなければならないこと等の理由により必要とされる要件であります。
なお、第四条第二項におきまして、農林大臣は、生産振興地域の指定をしようとするときは、関係都道府県知事の意見を聞くこととしており、さらに、第五条では、都道府県知事は、生産振興地域の指定をすべき旨を農林大臣に申し出ることができることとしまして、生産振興地域の指定につき都道府県知事の意向も反映され得るように配慮しております。
次に、第九条では、生産振興地域の指定を受けた区域を管轄する都道府県知事は、毎年、関係市町村及び農業団体等の意見を聞いて、てん菜またはサトウキビの生産振興計画を立て、農林大臣の承認を受けるとともに、その承認を受けたときは、その概要を公示することといたし、第十一条及び第十二条では、生産振興計画の円滑な実施とその計画の達成をはかるため、政府は、生産振興地域のある都道府県に対し、生産振興計画の実施に要する経費の一部を補助することができることとするとともに、てん菜またはサトウキビの生産者またはその団体に対して、助言、指導、融資のあっせん等の援助を行なうようつとめることとしております。
第三章は、生産振興地域におけるてん菜糖または甘蔗糖の製造事業に関する規定であります。
第十三条では、てん菜またはサトウキビを原料として砂糖を製造する施設、すなわち、てん菜糖工場または甘庶糖工場を生産振興地域の区域内において新たに設置するには、農林大臣の承認を要することとしております。この承認を必要とする製造施設の範囲は、政令で定めることとなっています。
この生産振興地域におけるてん菜糖または甘蔗糖の製造施設の設置の承認制を採用いたしましたのは、原料生産の伸びに見合った秩序ある工場設置をはかり、その地域における生産の振興と農家の利益の保護並びに製造事業の健全な発展を確保する必要があるからであります。
したがって、承認の基準も、この必要性に即して設定しており、その主要点は、第十三条第二項第一号でありまして、その生産振興地域におけるてん菜またはサトウキビの生産の見込みと既設、新設を合わせた製造施設の原料処理能力との全体としてのバランスを見ようとするもので、その原料処理能力が、先ほど御説明しました長期見通し等から推定されますその地域における生産の長期の見通しに照らして著しく過大にならないことを要件としております。
なお、以上御説明しました第十三条第一項の承認は、生産振興地域が定められた後に新たに設置する製造施設についてのみ必要とされ、既存製造施設については設置の承認を必要としないので、第十四条では、生産振興地域の指定等があった際には既存製造施設の設置者から必要な事項を届け出させることとしております。
第十五条では、第十三条の指定製造施設の新設についての承認に見合って、指定製造施設の変更についても農林大臣の承認を要することとしています。
次に、第十八条では、製造施設の承認制を採用したこととも関連して、生産振興地域内における農業経営の改善と農家所得の安定をはかるため、農林大臣は、地域内の製造事業者に対し、てん菜またはサトウキビの買い入れの価格その他生健者との取引の条件及び方法、原料集荷区域等に関し必要な指示をすることができることとし、これによる製造事業の適正な運営の確保と、あとで御説明しますてん菜及びサトウキビの価格支持制度の運用と相まって、農家の利益保護に遺憾なきを期することとしています。なお、この指示をしたときは、これを公表するものとしております。
また、第十九条では、第一条の目的にも規定してあります国内甘味資源の国際競争力の強化という観点等から、地域内の製造事業の合理化を促進するため必要があるときは、農林大臣は、地域内製造事業者に対し、運営の改善、事業の休止、経営の共同化等の措置をとるべき旨の勧告をすることができることとし、その勧告に従い所要措置をとる者に対しては、融資のあっせん等必要な援助を行なうようつとめることとしています。
次に、第四章は、生産振興地域内におけるてん菜及びサトウキビの生産者価格の支持とてん菜糖及び甘庶糖の製造事業の健全な発展を確保するためのてん菜糖及び甘蔗糖の政府買い入れの制度を定めております。
御承知のとおり、政府は、従来より、てん菜生産振興臨時措置法に基づくてん菜の価格支持及びてん菜糖の政府買い入れの制度を実施してまいりましたが、この法律におきましても、同様の制度を取り入れますとともに、あわせて、サトウキビの価格支持及び甘蔗糖の政府買い入れについても同様の制度を採用することとし、これら甘味資源作物の生産の振興と国内産糖製造事業の健全な発展に遺憾なきを期することとしたのであります。
第二十条では、てん菜糖または甘庶糖の政府買い入れは、砂糖の価格が第二十三条第一項により定められているてん菜糖または甘庶糖の政府買い入れ価格より低落した場合において必要があるときに行なう旨を定めております。これが政府買い入れを行なう場合の原則でありますが、当面の諸事情を考慮し、附則第二条第一項において、当分の間、本則第二十条による政府買い入れのほか、地域内製造施設の新設の当初においてその事業者が原料集荷等の面で受ける著しい不利を補正する・必要がある場合、その他政令で定める特別の事由がある場合において特に必要があるときにも、政府買い入れを行なうことができることとしております。
次に、第二十一条では、これらの政府買い入れの対象となるてん菜糖または甘蔗糖の範囲を定めており、政府買い入れの対象は、生産振興地域内において生産されたてん菜またはサトウキビを原料としていること、これらの原料は最低生産者価格を下らない価格で生産者から買い入れられたものであること、これらの原料から地域内製造施設により製造されたてん菜糖または甘蔗糖であって、一定の種類、規格及び生産年のものであることとされています。なお、さきに御説明しました附則第二条第一項の政府買い入れを行なう際の買い入れの対象につきましては、同条第四項において、生産振興地域外の農林大臣の指定する区域内において生産された原料から製造されたもの及び地域内製造施設以外の農林大臣の指定する製造施設により製造されたものをも買い入れることができることとしております。
第二十二条では、てん菜及びサトウキビについての最低生産者価格の制度を定めております。すなわち、農林大臣は、てん菜及びサトウキビごとにその生産者販売価格の最低基準となるものとして最低生産者価格を定めることとし、この最低生産者価格は、農業パリティ指数に基づき算出される価格を基準とし、物価その他の経済事情を参酌し、てん菜及びサトウキビの再生産を確保することを旨として定めるものとしております。
第二十三条では、策二十条によるてん菜糖または甘庶糖の政府買い入れの価格を定めており、その価格は、最低生産者価格に標準的な製造、販売の費用を加えて得た額を基準とし、第十八条により生産者取引価格につき指示した場合には、その指示事項を参酌して農林大臣が定めることとしております。なお、附則第二条第一項による政府買い入れの際の価格は、同条第二項により、最低生産者価格に標準的な製造、販売の費用を加えて得た額を基準とし、その原料たるてん菜またはサトウキビの生産事情、集荷事情その他の経済事情を参酌して定めることとしております。
次に、第五章は、国内産ブドウ糖の政府買い入れの制度及びブドウ糖製造事業者に対する勧告に関する規定であります。
御承知のように、政府は、従来より、農産物価格安定法によるイモでん粉の政府買い入れを通じて、カンショ及びバレイショの生産者の所行の安定をはかるとともに、イモでん粉の新規用途としての結晶及び精製、ブドウ糖の製造事業を育成するための諸施策を講じてまいったところであり、今後におきましても、農産物価格安定法の適切な運用をはかることにより、イモ作農家の所得の安定に遺憾なきを期してまいることはいうまでもないところでありますが、この際、糖価の変動に対処してブドウ糖の生産を維持することにより、でん粉の原料となる国内産のカンショ及びバレイショの長期的な需要の確保をはかるとともに、あわせてブドウ糖工業の合理化を促進するため、国内産、ブドウ糖の政府買い入れの制度を設けることとしたのであります。
第二十四条では、国内産ブドウ糖の政府買い入れは、砂糖の価格が著しく低落した場合において、国内産ブドウ糖の生産を維持してその原料でん粉の原料となる国内産のカンショ及びバレイショの需要の確保をはかるため必要があるときに行なう旨を定めております。これが政府買い入れを行なう場合の原則でありますが、附則第三条第一項において、当分の間、本則第二十四条による政府買い入れのほか、国内産ブドウ糖の製造事業の合理化を促進するため特に必要があるときにも、政府買い入れを行なうことができることとしております。
第二十六条では、第二十四条による国内産ブドウ糖の政府買い入れの価格を定めており、その価格は、農産物価格安定法の甘蔗でん粉の買い入れ基準価格及び運賃その他の諸掛かりに標準的なブドウ糖製造、販売費用を加えて得た額を基準として、農林大臣が定めることとしております。ただし、附則第三条第一項による政府買い入れの際の価格は、同条第二項により、甘蔗でん粉の買い入れ基準価格及び運任貝その他の諸掛かりに標準的なブドウ糖製造、販売費用を加えて得た額を基準とし、でん粉の需給事情その他の経済事情を参酌して定めることとしております。
第二十七条では、政府が買い入れた国内産ブドウ糖は、随意契約により売り渡すことができる旨を定めております。政府が買い入れた物資は競争入札により売り渡すのが会計法の原則でありますが、ブドウ糖はその保管の可能な期間が短い等の事情があり、買い入れ後すみやかに売り渡す必要がありますので、随意契約による売り渡しの規定を設けたわけでございます。
また、第二十八条では、第一条の目的にも規定してあります国内甘味資源の国際競争力の強化という観点等から、国内産ブドウ糖の製造事業の合理化を促進するため特に必要があるときは、農林大臣は、ブドウ糖製造事業者に対し、経営の改善、経営の共同化等の措置をとるべき旨の勧告をすることができることとし、その勧告に従い所要の措置をとる者に対しては、融資のあっせん等必要な援助を行なうよう努めることとしています。
第六章は、甘味資源審議会に関する規定であります。
この法律の制定を機会に、広く学識経験者の御意見、御協力を得て、甘味資源に関する行政の適正を期するため、農林省に甘味資源審議会を設置することといたしております。
甘味資源審議会は、農林大臣の諮問機関として、てん菜及びサトウキビの生産の振興、てん菜糖工業、甘蔗糖工場、ブドウ糖工場及び精糖工業の合理化その他この法律の実施にあたっての重要事項を調査審議するとともに、これらの事項に関し農林大臣及び関係各大臣に建議することができることとなっております。
第七章及び第八章では、報告徴取等及び罰則に関し所要の規定を設けております。
終わりに附則がありますが、重要な規定もございますので、その主要点を御説明いたします。
さきに御説明しましたてん菜糖及び甘庶糖の政府買い入れの特例とブドウ糖の政府買い入れの特例につきましては、それぞれ附則の第二条と第三条で、政府買い入れをすることができる場合とその際の買い入れ価格を定めております。
次に、この法律によるてん菜糖、甘蔗糖及びブドウ糖の買い入れ及び売り渡しの会計処理につきましては、附則第六条で、食糧管理特別会計法の一部を改正し、同会計に砂糖類勘定を設け、これら砂糖類の買い入れ売り渡しは砂糖類勘定において行なうこととして、砂糖類の買い入れ売り渡しによる損益を明確にすることといたしております。
なお、この食糧管理特別会計制度の改正は、予算の編成及び執行との関係もありますので、附則第七条で、砂糖類勘定の設置は昭和三十九年度分の予算から適用することとし、三十八年度分は農産物安定勘定で処理することといたしております。
最後に、附則第八条の農林省設置法の一部改正は、甘味資源審議会の設置に関連しての規定であります。
以上が甘味資源特別措置法案の補足説明でございます。
次に、沖繩産糖の政府買入れに関する特別措置法案の補足説明をいたしたいと存じます。
現在国会において御審議を願っております甘味資源特別措置法案におきましては、糖価が低落した場合において必要があるときは、国内産糖保護のため所要の政府買い入れを行なうことができることといたしておりますが、御承知のとおり、沖繩については現在わが国に施政権が存しないため、同法案が成立いたしましてもこれを沖繩に適用することはできないわけであります。そこで、今後における著しい糖価低落が沖繩のサトウキビ生産者に及ぼす影響に対処して、その農業経営の改善と農家所得の安定に資するため、沖繩産糖につき甘味資源特別措置法案による国内産糖の政府買い入れの措置に準じ、政府が買い入れる道を開くため、特別立法を行なうこととした次第であります。
この法案の第一項におきまして、沖繩産糖が輸入された後において、その製造事業者またはその者から委託を受けてその沖繩産糖を本邦に輸入した者から買い入れることといたしておりますのは、右のような施政権の問題を考慮してこのような方式をとったものであります。
現在沖繩におきましては、昭和三十四年に制定されました糖業振興法により、サトウキビの生産振興、製糖業及び製糖施設の規制、サトウキビの最低生産者価格の決定等の措置が講じられておりますので、この法案による政府買い入れ措置と沖繩におけるこれらの制度の適正な運用と相まって、サトウキビ生産者の保護に遺憾なきを期することができると存じます。
また、第三項におきましては、沖繩産糖の政府買い入れ価格は、甘味資源特別措置法本則の規定により定められている国内産甘庶糖の政府買い入れ価格及び沖繩におけるサトウキビの生産事情、沖繩産糖の製造事情等を参酌して定めることといたしております。沖繩におきましては、その自然条件が奄美諸島等に比しサトウキビの栽培に有利であるところから、昭和三十七年ないし三十八年におきまして、サトウキビの平均反収は、奄美諸島等が六・一トンであるのに対し、沖繩は七・八トンであり、分密糖一工場当たりの原料処理量は、奄美諸島等が約二万六千トンであるのに対し、沖繩は約九万七千トンとなっている等、沖繩産糖のコストは国内産糖に比し著しく低廉であると認められますので、国内産糖に対する保護との均衡の点をも考慮して、これらの諸事情をも参酌して政府買い入れ価格を定めることとしているわけであります。
なお、附則第二項および第三項におきましては、沖繩産糖の政府買い入れは、甘味資源特別措置法案による砂糖類の政府買い入れと同様、昭和三十八年度においては食糧管理特別会計農産物等安定勘定において、昭和三十九年度以降は同会計砂糖類勘定において行なうことと規定しております。
以上をもちまして沖繩産糖の政府買い入れに関する特別措置法案の補足説明といたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X00419640211/6
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007・高見三郎
○高見委員長 次に、保安林整備臨時措置く法の一部を改正する法律案を議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。丹羽農林政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X00419640211/7
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008・丹羽兵助
○丹羽(兵)政府委員 保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。
現行保安林整備臨時措置法は、昭和二十八年ごろに相次いで発生した大災害を直接の契機として、主として災害の防除軽減を目的として緊急に保安林を整備するため、十年を限って、昭和二十九年に制定されたものでありまして、以来、保安林の整備は同法の保安林整備計画に基づき計画的に実施に移され、保安林の整備についてはほぼ当初の目標を達成するなど相当の成果をおさめたのであります。
しかしながら、最近のわが国経済の高度成長に伴う水資源の急速な需要の増加に対処し、かつ、林地の荒廃による災害を未然に防止して、国土保全の万全を期するためには現在における保安林整備の状況ではなお不十分であります。
したがいまして、このような事態に即応した保安林の整備をはかるためには、保安林整備計画の改訂を行ない、緊急に水源涵養保安林を主体とする流域保全のための保安林の拡大をはかるとともに、保安林配備の適正化を行ない、保安林施業の合理化、保安施設事業の適正な実施を計画的に行なう必要があるのであります。
さらに、保安林整備計画の重要な一環をなします保安林の国による買い入れにつきましては、買い入れ事業が国土保全上重要な地域を対象として行なうものでありますだけに、上述の水資源確保の観点も考慮して、買い入れ計画に再検討を加えた上、国土保全と国民生活の安定の要請にこたえるべく、継続してまいりたいと考えております。
以上述べましたような目的を達成するために、保安林整備臨時措置法の有効期間をさらに十年延長することとするのが、この法律案の内容であります。
保安林整臨時措置法の一部を改正する法律案の提案理由及び内容は、以上のとおりであります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X00419640211/8
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009・高見三郎
○高見委員長 この際、暫時休憩いたします。
午前十一時二十一分休憩
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〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X00419640211/9
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