1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年四月一日(水曜日)
午前十一時七分開議
出席委員
委員長 高見 三郎君
理事 小山 長規君 理事 坂田 英一君
理事 長谷川四郎君 理事 本名 武君
理事 赤路 友藏君 理事 足鹿 覺君
理事 芳賀 貢君
伊東 隆治君 池田 清志君
宇野 宗佑君 大坪 保雄君
加藤 精三君 仮谷 忠男君
吉川 久衛君 小枝 一雄君
野原 正勝君 藤田 義光君
松田 鐵藏君 三田村武夫君
亘 四郎君 角屋堅次郎君
東海林 稔君 楢崎弥之助君
西村 関一君 松浦 定義君
湯山 勇君 稲富 稜人君
林 百郎君
出席国務大臣
農 林 大 臣 赤城 宗徳君
出席政府委員
農林政務次官 丹羽 兵助君
農林事務官
(農政局長) 昌谷 孝君
農林事務官
(農地局長) 丹羽雅次郎君
農林事務官
(畜産局長) 桧垣徳太郎君
水産庁長官 庄野五一郎君
委員外の出席者
専 門 員 松任谷健太郎君
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本日の会議に付した案件
中小漁業融資保証法の一部を政正する法律案(
内閣提出第四九号)(参議院送付)
農林漁業団体職員共済組合法の一部を改正する
法律案(内閣提出第一〇〇号)
土地改良法の一部を改正する法律案(内閣提出
第七号)
農林水産業の振興に関する件(昭和三十九年度
畜産物告示価格並びに乳価の中央調停等)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/0
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001・高見三郎
○高見委員長 これより会議を開きます。
参議院送付にかかる中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案を議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/1
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002・高見三郎
○高見委員長 丹羽農林政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/2
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003・丹羽兵助
○丹羽(兵)政府委員 中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案につき、その提案理由を御説明申し上げます。
中小漁業融資保証制度は、中小漁業者の漁業経営に必要な資金の融通を円滑にするため、金融機関の中小漁業者等に対する貸し付けについて漁業信用基金協会がその債務を保証し、かつ、その保証につき政府が保険を行なう制度でありまして、昭和二十七年度に発足し、以来十年余の間中小漁業者に対する信用の補完を通じて、中小漁業の振興の上に重要な役割を果たしてきているのであります。
しかしながら、最近における沿岸漁業を中心とする中小漁業の現状に徴してみまするならば、その資金需要に一そう円滑に応じ得るためにも。また特に沿岸漁業構造改善事業の円滑な推進を確保する上からも、本制度の拡充をはかることがきわめて必要と考えられるのであります。
そのためには、政府は、明年度から政府の保険料率の引き下げを行なうほか、毎年拡大してまいりました政府の保険に付し得る保証金額の総ワクを出そう大幅に増加する等の措置を講じてまいる所存でありますが、この法律におきまして、沿岸漁業者及び系統金融の実情に即応して改善を加える必要があると存ずるのであります。このため、沿岸漁業者への融資の円滑化の推進及び水産加工業者等に対する信用補完の授与に関する所要の改正を行なって中小漁業の振興に寄与せしめるとともに、漁業信用基金協会の管理等に関する規定を整備しようとするのがこの法律案を提出いたしました理由であります。
次に、法律案の主要な内容につき御説明申し上げます。
第一は、沿岸漁業者への融資の円滑化の推進についての改正であります。
その第一点は、信用事業を行なう漁業協同組合を本制度における金融機関とすることであります。現在本制度におきましては、漁業協同組合が組合員に貸し付けるべき資金を農林中央金庫または信用漁業協同組合連合会から借り入れる段階で保証を付しているのが、大部分を占めておりますが、この改正によって漁業者が漁業協同組合から資金を借り入れることによって負担する債務を直接に漁業信用基金協会が保証し得る道を開くこととなるわけであります。
その第二点は、以上の改正にあわせ、漁業信用基金協会は、会員以外の者の債務は保証しないこととなっておりますのを改め、会員たる漁業協同組合の組合員の債務を保証し得ることとしたことであります。これによって、沿岸漁業者等はみずから出資して協会の会員とならなくとも、本制度の対象となり得ることとなるわけであります。
第二は、水産加工業の経営に必要な資金の借り入れに対する信用補完の授与についてであります。近年における漁獲物の利用配分の状況を見ますと、水産加工業において漁獲物の相当な部分が処理されておりますが、水産加工業者は、漁獲物の価格維持及び価値の向上に重要な役割をになっておりますので、水産加工業の振興をはかることがきわめて必要となるに至っていると考えられます。したがって、この際、水産加工業の経営に必要な資金の融通の円滑化をはかるため、漁業信用基金協会を通ずる信用補完の制度を利用することとして、漁業の振興に資することといたしたのであります。すなわち、漁業信用基金協会は、漁業の経営に必要な資金の融通の円滑化という本来行なうべき業務のほかに、水産加工業の経営に必要な資金の融通の円滑化のための業務をも行ない得ることとし、このために必要な範囲内において、漁業信用基金協会は、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会及び水産加工業協同組合の組合員資格を有する水産加工業を営む者をその会員たる資格を有する者とすることができることといたしたのであります。
第三は、漁業信用基金協会の管理等についてでありますが、これにつきましては、役員の責任の明示、余裕金の運用の方法の緩和、解散の場合における残余財産の処分の方法等につき必要な規定の整備を行ない、協会の運営の円滑化をはかることといたしているのであります。
以上がこの法律案の提案の理由及び主要な内容であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/3
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004・高見三郎
○高見委員長 引き続き補足説明を聴取いたします。庄野水産庁長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/4
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005・庄野五一郎
○庄野政府委員 ただいま中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由の御説明がございましたが、この法律案の内容につきまして、若干補足説明を申し上げます。
ただいまの提案理由説明にございましたように、中小漁業融資保証制度は、中小漁業の振興の上に重要な役割りを果たしてきているのでありますが、現在漁業信用基金協会は三十九協会が設立されており、本制度発足以来の保証累計額は、昭和三十七年度末までに六百四十九億円となっております。本制度の拡充につきましては、本国会で成立いたしました三十九年度予算におきまして、漁業信用基金協会が政府へ納入すべき保険料の率を本年度より年二%から年一・七五%に引き下げること、毎年逐次拡大してまいりました政府の保険に付し得る保証金額の総ワクを後年度の百四十億円から本年度は二百十億円へと大幅に増加すること等を予定しておりまして、この法律の改正と相まって、その実効を期してまいることといたしております。
以下法律案の内容につき御説明申し上げます。
第一は、沿岸漁業者への融資の円滑化の推進についての改正であります。
その一は、信用事業を行なう漁業協同組合を本制度の金融機関とすることについてであります。これは法第二条第二項の改正になります。本制度の対象となる金融機関は法律におきましてその範囲を規定しているのでありますが、現行法におきましては、金融機関は、農林中央金庫、信用漁業協同組合連合会、銀行及び資金の融通を業とするその他の法人であって政令で定めるものと定義されており、政令におきまして信用金庫を指定しているのであります。信用事業を行なう漁業協同組合を本制度の金融機関から除外しておりますのは、本法制定当時の漁業協同組合の事業の内容、系統金融の実情等にかんがみてやむを得ない措置であったわけでありますが、最近の漁業協同組合の状況は、本法制定当時に比べますと、その事業の内容等が相当充実してまいってきていることなどかなりの変化が見られますことにかんがみまして、この際漁業協同組合を金融機関に加えることにいたしたのであります。この改正により沿岸漁業者に最も近い金融機関である漁業協同組合からの沿岸漁業者に対する融資の促進をはかってまいろうといたしておるのでございます。
その二は、基金協会の会員たる漁業協同組合の組合員でみずから基金協会の会員でない者の債務を直接に基金協会が保証できることとすることについてであります。これは法第四条第二項の改正になるわけでございます。現行法におきましては、基金協会は、漁業協同組合が沿岸漁業者に貸し付けるために必要な資金をいわゆる転貸し資金として上部系統金融機関から借り入れる際に保証するほか、個々の漁業者が基金協会に出資してその会員となっておれば、その債務を保証することもできるのでありますが、沿岸漁業者の大部分は基金協会の保証を受けるためにみずから出資することは困難であると考えられます。これらの沿岸漁業者への融資をより円滑にするため、それらの者がみずから出資をすることを要せず、直接に基金協会の保証が受けられることといたしたのであります。
以上の二点の改正によりまして、沿岸漁業者は、その所属する漁業協同組合が基金協会の会員であり、その組合が本制度上の金融機関となっている場合におきましては、みずから出資することを要せずして漁業協同組合からの融資を基金協会の保証に付することができますので、融資の円滑化を期待し得るのであります。
改正の第二の内容は、水産加工業者等に対する信用補充の授与に関する改正であります。
その一は、基金協会の水産加工業に関する業務についてであります。これは法第四条第二項の改正に相なるわけでございます。その内容としては、第一に、水産加工業協同組合がその組合員たる水産加工業者に対しその経営に必要な資金を貸し付けるために必要ないわゆる転貸し資金の保証、第二に、水産加工業者の経営に必要な資金の保証、第三に、水産加工業協同組合及び同連合会の販売購買資金等の事業資金の保証を対象としております。これらはいずれも被保証人が基金協会の会員となっている場合に限っておりますが、水産加工業の経営に必要な資金の保証につきましては、漁業経営に必要な資金の保証の場合と同様に、会員が、水産加工業協同組合である場合には、その組合の組合員はみずから出資して基金協会の会員となっていなくても、基金協会から直接に保証を受け得ることとしております。
その二は、基金協会の会員資格についてであります。これは法第十条第三項の改正になるわけでございます。すなわち、基金協会が水産加工業に関する業務を行なう場合には、その業務に必要な範囲内において、水産加工業協同組合等で基金協会の定款で定めるものを、会員たる資格を有する者とすることができるようにしております。その範囲は、基金協会の業務が本来中小漁業の振興を目的としておりますことを考慮すれば、漁業との関連が深いいわば漁村的な加工業者を主とすることが適当でありますので、水産業協同組合法における水産加工業協同組合及びその連合会と、水産加工業協同組合または漁業協同組合の組合員資格を有する加工業者すなわち水産加工業を営む個人及び常時従業者四十人以下の水産加工業を営む法人に限ることといたしております。
なお、政府が各基金協会との間に締結する保険契約の内容には、基金協会が行なう水産加工業関係の債務の保証を加えることといたしております。これは法第七十条第一項の改正でございます。
第三は、基金協会の管理に関する規定の整備についてであります。
その一は、第一及び第二に申し述べました改正に伴う規定の整備であります。まず会員の脱退及び出資の払い戻しについてでありますが、会員たる漁業協同組合または水産加工業協同組合は、その組合員が借り入れた資金につき基金協会がその組合の組合員として保証しているときまたはその保証にかかる求償権を有しているときは、これらの組合自体に基金協会の保証または求償権があるときと同様、任意に脱退し得ず、または出資金の払い戻しを停止されることがあることといたしております。次に、基金協会の役員の被選挙権を有する者に、会員となった水産加工業関係の会員または会員の代表者を加えることといたしております。これは法第二十四条の第一項の改正になります。また基金協会は、水産加工業協同組合等に対してその業務の一部を委託し得ることといたしております。これは法四十三条第一項の改正でございます。
その二は、基金協会の運営の円滑化をはかるためのその他の規定の整備でありまして、総会招集の通知期限を水産業協同組合のそれと同様に短縮すること、これは第三十一条第三項の改正、役員の協会及び第三者に対する連帯責任を明定すること、これは法第三十三条の二でございます。及び不動産の取得を総会の決議事項から除くことがそれであります。法第三十八条の改正でございます。
以上の改正のほか、次の事項についても規定の整備をいたしております。
その一は、本制度上における中小漁業者は、現行法では漁業を営む法人につきましては常時従業者三百人以下であり、かつ、使用漁船の合計総トン数千トン以下のものに限っているのでありますが、昭和三十七年に行なわれました改正後の水産業協同組合法における業種別漁業協同組合の組合員資格とあわせまして、業種別漁業協同組合の組合員である者にあっては、経営規模の上限を二千トンにまで引き上げることとしているのであります。これは法第二条の第一項の改正に相なります。
その二は、基金協会の設立の認可に関する規定について、現行法におきましては、区域及び会員資格を同じくする協会が重複して設立されることを制限しておりますが、水産加工業関係の会員資格が加えられたこととかかわりなく、この制限は変更しないことといたしております。法第五十条の改正でございます。
その三は、協会が解散した場合における残余財産の処分に関する規定の改正をしたことであります。法第六十二条第三項の改正になります。現行法におきましては、清算人はまず債務を弁済してなお残余財産があるときは、これを各会員に対し、出資口数に応じて分配するのでありますが、その分配額はその出資額を限度としており、分配の結果なお残余財産がある場合においては、その残余財産はすべて国庫に帰属し、中小漁業融資保証保険特別会計の歳入になることとなっております。今回の改正はこれを一律に国庫に帰属することとしないで、政令で別段の定めをした場合には、その政令の定めによることとし、他に適当な帰属先のある場合に対処し得ることといたしております。
以上をもちまして中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案の補足説明といたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/5
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006・高見三郎
○高見委員長 次に、内閣提出にかかる農林漁業団体職員共済組合法の一部を改正する法律案を議題といたします。
補足説明を聴取いたします。昌谷農政局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/6
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007・昌谷孝
○昌谷政府委員 ただいま議題となりました農林漁業団体職員共済組合法の一部を改正する法律案の内容につきまして、少し詳しく御説明申し上げます。
この法律案は、給付の水準を国家公務員共済組合、私立学校教職員共済組合等の他の共済組合制度に準じて引き上げることを主要な内容とし、あわせてこの制度の円滑な運営をはかるための所要の規定の整備を行なうこととしているものでございます。
初めに、給付水準の引き上げに関する点につきまして、逐条的に御説明申し上げます。
まず、第二十条におきまして、標準給与の月額の表を改正し、標準給与の月額の最低を従来の三千円から六千円に、最高を従来の五万二千円から七万五千円に引き上げることといたしております。これは、最近における組合員の給与の一般的な上昇を考慮し、標準給与と現実の給与との乖離の是正に資するものでございます。
第二十一条におきましては、平均標準給与の算定の基礎期間を三年に改正いたしております。従来は五年でありましたが、これに比べて、改正後における平均標準給与の額は、一般的に従来より引き上げられることとなるわけであります。給付額はこの平均標準給与を基礎としこれに一定の給付率を乗じて算定されるものでありますから、この点の改正は、給付率の引上げと相まって、一般的に給付水準の向上に資することとなるものであり、今回の改正の眼目の一つでございます。
次に、第二十三条から第三十四条までの改正の中で、特に御説明を要しますのは、第二十三条の二、第二十四条及び第二十五条の改正であります。第二十三条の二は、退職年金と障害年金との調整をはかる規定でありまして、退職年金と障害年金とを支給すべき事由に該当するときは、受給者に有利ないずれか一つの給付を行なうこととしております。第二十四条と第二十五条は、遺族の範囲についての改正であります。従来一時金を受ける遺族は、必ずしも死亡した組合員の収入によって生計を維持していたことを要しない等の点で年金を受ける遺族よりその範囲が広かったのでありますが、これを年金を受ける遺族の範囲に一致させることといたしております。これは、生活保障の見地からは、年金も一時金も遺族の範囲を異にすべき理由はないという趣旨で、国家公務員共済組合等の他の共済組合制度が、その改正の際にとった方向にならったものであります。
次に、具体的な給付の内容について御説明申し上げます。
その一は、第三十六条及び第三十七条の退職年金についてであります。退職年金は、二十年以上の組合員期間を有する者に対して支給されるものであります。組合員期間が二十年の者に対する退職年金の額は、従来は、平均標準給与の年額の百分の三十三・三(四月分)でありましたが、これを平均標準給与の年額の百分の四十といたしております。また、組合員期間が二十年をこえる場合は、そのこえる一年について、従来は平均標準給与の年額の百分の一・一(四日分)を加算することとしておりましたが、この率を百分の一・五に改めることといたしております。なお、新たに三万五千五百二十円の最低保障額を設け、一方平均標準給与の年額の百分の六十という最高限度を設けることといたしております。
その二は、第三十七条の二の通算退職年金についてであります。通算退職年金の支給の前提となります組合員期間は、従来六カ月以上二十年未満でありましたが、他の共済組合制度にならい一年以上二十年未満としております。なお、この改正に伴う経過措置といたしまして、この法律の施行日後に退職した者で組合員期間が一年未満のものにつきましても、施行日前の組合員期間が六カ月以上あれば、一定の要件のもとに、通算退職年金の支給を行なうことといたしております。
その三は、第三十八条の退職一時金についてであります。退職一時金の支給要件としての組合員期間は、従来六カ月以上二十年未満でありましたが、これを一年以上二十年未満としております。六カ月を一年といたしましたのは、通算退職年金の場合と同様でありまして、このことに伴う経過措置も通算退職年金の場合と同様に講ずることといたしております。退職一時金の給付につきましては、その給付額の算定の基礎となる額は、別表第一に定めているのでございますが、これを改正いたしまして、たとえば組合員期間十年の場合、従来平均標準給与の日額の二百日分でありましたものを二百四十五日分とし、最高の十九年六カ月以上二十年未満の場合、従来四百八十五日分でありましたものを五百十五日分としております。
その四は、第三十九条から第四十四条までの障害年金についてであります。障害年金につきましては、これを職務上傷病による廃疾を対象とする職務による障害年金と、職務外傷病による廃疾を対象とする職務によらない障害年金とに区分しております。まず、支給要件としての組合員期間でありますが、従来は、職務上傷病によるものと職務外傷病によるものとの区別なしに一様に六カ月以上でありましたが、この改正では、職務による障害年金については組合員期間を問わないこととし、職務によらない障害年金については組合員期間一年を経過した後の傷病による廃疾を対象とすることといたしております。次に、障害年金の支給要件としての廃疾の程度は、従来は一級及び二級でありましたが、これを他の共済組合制度における廃疾の程度の区分に合わせて、一級、二級及び三級に区分することといたしております。障害年金の額は、従来一級は平均標準給与の年額の百分の四十一・七(五カ月分)、二級は同じく百分の三十三・三(四カ月分)でありましたが、これを職務による障害年金については、それぞれ平均標準給与の年額に対して一級百分の八十、二級百分の六十、三級百分の四十とし、職務によらない障害年金については、同じく一級百分の五十、二級百分の四十、三級百分の三十といたしております。これらは基本額でありまして、組合員期間に対応して加算がなされることになります。加算額は、従来は組合員期間十年をこえ二十年に達するまでの一年について平均標準給与の年額の百分の〇・八(三日分)、二十年をこえる一年について同じく百分の一・一(四日分)でありましたが、この改正では、職務による障害年金については二十年をこえる一年について平均標準給与の年額の百分の一・五、職務によらない障害年金については十年をこえ二十年に達するまでの一年について平均標準給与の年額の百分の一、二十年をこえる一年について同じく百分の一・五としております。なお、最低保障額及び最高限度を設けることとし、最低保障額については、一級は四万七千五百二十円、二級は三万五千五百二十円、三級は一万九千八百二十四円とし、最高限度については平均標準給与の年額の百分の百といたしております。なお職務による障害年金につきましては、労働基準法の障害補償または労働者災害補償保険法の障害補償費との調整をすることとし、これらの給付が始まってから六年間は、この共済組合からの給付のうち、一級の障害年金者については平均標準給与の年額の百分の三十、二級の障害年金者については同じく百分の二十、三級の障害年金者については同じく百分の十に相当する額の支給をそれぞれ停止することといたしております。
その五として、第四十五条の障害一時金について申し上げます。障害一時金の支給要件となる組合員期間は、従来は六カ月以上でありましたが、他の共済組合制度にならって一年以上といたしております。障害一時金の額は、従来は平均標準給与の月額の十カ月分でありましたが、これを十二カ月分に引き上げることといたしております。なお、労働基準法の障害補償または労働者災害補償保険法の障害補償費の支給対象となる廃疾については、障害一時金の支給対象から除外することといたしております。
その六は、第四十六条から第四十九条の二までの遺族年金についてであります。遺族年金については、従来、組合員期間十年以上二十年未満の者が組合員または任意継続組合員である間に死亡した場合は平均標準給与の年額の百分の八・三(一カ月分)を基礎として、これに十年をこえる一年につき百分の〇・八(三日分)を加算した額を支給し、組合員期間二十年以上の者が死亡した場合は退職年金の二分の一の額を支給することとしておりましたが、この改正では、職務上傷病により死亡した場合には組合員期間を問わず平均標準給与の年額の百分の四十を支給し、組合員期間が二十年をこえる者が職務外傷病により死亡した場合には退職年金の二分の一の額を支給し、組合員期間が十年以上二十年未満の者が組合員または任意継続組合員である間に職務外傷病により死亡した場合及び組合員期間十年以上二十年米満で障害年金を受けている者が職務外傷病により死亡した場合には平均標準給与の年額の百分の十を支給し、さらにまた組合員期間が十年未満の者で職務による障害年金を受給している者が死亡した場合には平均標準給与の年額の百分の十を支給することといたしております。これらは基本額でありまして、職務上傷病による死亡につきましては組合員期間二十年をこえる一年について平均標準給与の年額の百分の一・五が、また、職務外傷病による死亡につきましては組合員期間十年以上二十年未満の者の死亡の場合その十年をこえ二十年に達するまでの一年について平均標準給与の年額の百分の一が加算されることとなります。なお、二万一千三百六十円の最低保障額を設けるとともに、職務上傷病による死亡の場合につきまして平均標準給与の年額の百分の六十という最高限度を設けることといたしております。また、職務上傷病による死亡の場合について労働基準法による遺族補償または労働者災害補償保険法による遺族補償費との調整をすることとしておりまして、これらの給付があったときから六年間は、この共済組合からの給付のうち平均標準給与の年額の百分の二十に相当する額の支給を停止することといたしております。
その七は、第五十条の遺族一時金についてであります。遺族一時金の支給要件としての組合員期間は、従来六カ月以上宝十年未満でありましたが、これを一年以上十年未満としております。六カ月を一年としました理由は、通算退職年金や退職一時金について申し上げたことと同様でありまして、このことに伴う経過措置も退職一時金等の場合と同様に講ずることといたしております。遺族一時金の額は、たとえば最高の組合員期間九年六カ月以上十年未満の場合は、従来平均標準給与の日額の百九十日分でありましたが、これを二百二十日分に引き上げることといたしております。
次に、第五十一条及び第五十二条の改正は年金者遺族一時金の制度を廃止することであります。年金者遺族一時金の制度は、たとえば退職年金受給者が死亡した場合に通常はその者の遺族に遺族年金が支給されることになるのでありますが、遺族年金の支給を受けることができる遺族は死亡した組合員の収入によって生計を維持していたこと等の要件を満たしていることが必要であり、これらの要件を備えている遺族が全くいないときに遺族年金受給者としての遺族よりも広い範囲に遺族を求めて、所定の額を支給するという制度であります。要するに死亡した組合員が積み立てた掛金の払い戻しないし持ち分の処分という考え方に立つ制度でありますが、今後掛金払い戻しないし持ち分処分的考え方より生活保障の見地を重視するという趣旨から他の共済組合制度では、その改正の際に、この制度を廃止いたしております。この改正においても、他の共済組合制度の改正の方向にならって、この制度を廃止することとしているのであります。
以上御説明申し上げましたが第三十六条から第五十二条までの改正が給付内容にかかる主要な改正点の概要であります。
次に、その他の改正点につきまして、順を追ってご説明いたします。
第十七条は任意継続組合員に関する規定でありますが、従来任意継続組合員になろうとする者は、所定の掛け金を添えて組合に申し出ることになっておりましたが、組合員の便宜を考慮いたしまして、その資格取得の申し出の際には掛け金を添えることを要しないこととし、その申し出の受理の通知を受けてから後所定の期日までに所定の掛け金を納付すればよいことといたしております。
第五十四条から第五十八条までの改正は、掛け金についての規定の改正であります。この中で、第五十六条におきましては、任意継続組合員が資格取得の際に納付すべき掛け金について定め、また、第五十六条の二におきまして、組合は掛け金の繰り上げ徴収を行ない得る旨の規定を新設することといたしております。
第六十三条から第六十七条までの改正は、審査会についての規定の改正であります。審査会の審査事項として組合員もしくは任意継続組合員の資格の決定、第五十八条の規定による滞納処分についての不服を追加いたしております。
第七十条の改正は、組合の余裕金の運用について、農林漁業団体への貸し付けができる道を開いたものであります。
最後に、附則について御説明申し上げます。
附則第一条は、この法律の施行期日でありますが、施行期日は、準備期間を考慮して、この法律の公布の日から起算して六カ月をこえない範囲で政令で定める日といたしております。
附則第二条は、標準給与に関する経過措置であります。標準給与につきましては、標準給与の月額の表が改正されることに伴い、すべての組合員の施行日以後の標準給与が改正後の表によって位置づけられたものとなるようにする等所要の措置を講じております。
附則第三条以下は、おおむね給付に関する経過措置でありまして、その内容における主要なものは、まず第一に、施行日前に給付事由が生じた給付は、改正前の法律の例によるものとしております。第二に、施行日の前後にそれぞれ旧法組合員期間と新法組合員期間とをもつ者に対する給付は、原則として、旧法組合員期間については改正前の法律の給付率をもって計算し、新法組合員期間については改正後の法律の納付率をもって計算し、その合算額とすることを定めております。第三に、旧法組合員期間に引き続く新法組合員期間を有する者ですでに改正前の法律の規定による支給要件を満たしているものについては、改正後の法律の規定によれば給付を受けることができない場合でありましてもその期待権を尊重する趣旨で所要の経過措置を定めております。
以上がこの法律案の主要な内容でございます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/7
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008・高見三郎
○高見委員長 この際、農林水産業の振興に関する件について調査を進めます。
昭和三十九年度畜産物安定価格に関する畜産物価格審議会の答申並びに同告示及び昭和三十八年十月一日以降の生乳等の取引価格についての中央調停の経過並びに結果について、農林大臣より報告を聴取いたします。赤城農林大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/8
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009・赤城宗徳
○赤城国務大臣 順序といたしまして、昨年業者側から乳価引き下げの通告が一方的にありまして、これに対する紛争がありました。その紛争を酪振法によりまして、県の調停ができなかったもの、そのものが中央の調停を申請してきました。中央におきましては、調停員の東畑四郎君、大月高君、長谷川清君の三人が、一月以上もかかりまして、調停をいたしました。非常に難航をいたしたのでございますが、次のような調停案となったわけでございます。
岩手県とか秋田県とか数県ありますけれども、一つの県の例を申し上げますと、
秋田県経済農業協同組合連合会および秋田協同乳業株式会社は、その紛争に係る秋田県における昭和三十八年十月から昭和三十九年三月までの生乳の売買価格について、次のように定めることを目途として、その具体的内容につきすみやかに協議を行なうこと。
(1) 昭和三十八年十月から昭和三十九年一月まで 五十六円六銭
(2) 昭和三十九年二月五十六円五十六銭
(3) 昭和三十九年三月五十七円六銭
(いずれも集乳所渡し一・八七五キログラム当たり)
昭和三十九年二月および三月分の生乳の売買価額のうち、五十六円六銭分については、昭和三十九年三月三十一日までに支出するものとし、その他の分については、同年四月一日から同年九月三日までの間に支出するものとすること。
いまの調停案と同様、岩手、青森、群馬等からも出てきましたが、いずれも同様の調停案でございます。
また、会社等につきましては、雪印、明治及び秋田協同乳業株式会社、この三社が県の調停ができませんので、中央調停に持ち込まれたものでございます。
この調停案をいろいろ調査検討の結果、私どもは、もう最大限度である、こういうふうに認めまして、この調停案をそれぞれ当事者がのむといいますか、承諾いたしまして、この調停ができた次第でございます。
第二に、畜産物価格安定法に従いまして、安定価格等を年度内に決定することにいたしました。昨晩おそくその決定を農林省告示として出したわけでございます。その告示を読み上げます。
畜産物の価格安定等に関する法律第三条第一項の規定に基づき昭和三十九年度の原料乳、指定乳製品及び指定食肉の安定価格を次のように定めたので、同条第六項の規定に基づき告示する。
内容は、原料乳の、安定、基準価格、単位一キログラムでありますが、安定基準価格二十九円三十三銭。
それから指定乳製品の安定下位価格及び安定上位価格、バター一キログラム、安定下位価格が四百八十五円、安定上位価格が六百円、脱脂粉乳十二・五キログラム、安定下位価格が三千四百円、安定上位価格が四千三百五十円。全脂加糖練乳二十四・五キログラムの安定下位価格が三千九百四十円、安定上位価格が四千七百円。脱脂加糖練乳二十五・五キログラム、安定下位価格が三千四百二十円、安定上位価格が四千百円。
それから指定食肉、豚肉でありますが、安定基準価格及び安定上位価格は、豚肉一キログラムで卸売り市場別に申し上げますと、大宮市におきましては安定基準価格が二百九十円、上位価格が三百八十円。横浜が安定基準価格が二百九十円、安定上位価格が三百八十円。名古屋が安定基準価格が二百九十円、上位価格が三百八十円、大阪が安定基準価格が二百七十円、上位価格が三百五十円、広島が安定基準価格が二百六十五円、上位価格が三百四十五円、福岡が安定基準価格が二百六十五円、上位価格が三百四十五円、こういう告示をいたした次第でございます。
以上御報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/9
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010・高見三郎
○高見委員長 本件について質疑の申し出があります。これを許します。芳賀貢君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/10
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011・芳賀貢
○芳賀委員 ただいま農林大臣から御報告がありましたが、第一は、乳価の中央調停の決定された結果の問題、第二は、三十九年度の畜産物価格安定法に基づく牛乳並びに豚肉の価格決定の問題についてでございますが、その決定に至る経過におきましては、担当の農林大臣としていろいろ努力されたことと思いますが、当委員会におきましても、三月二十六日に特に酪農振興対策に関する決議を行なったことは、大臣の御承知のとおりであります。四項目にわたる決議でありますが、これはいずれも、ただいま大臣の報告された問題に重大な関係がありますので、これとの関係で、主要な点について、若干お尋ねしたいと思うわけであります。
第一の点につきましては、ただいま三十八年度の取引乳価については、中央調停に付された四地区の場合に、これを二月にさかのぼって一升当たり一円の復元、三月にさかのぼって二円の復元ということでございますけれども、ここで問題は、中央調停に出された件数は、青森、秋田、岩手、群馬の四件の地域ということになっておりますが、しかし、都道府県の知事に対する紛争のあっせん調停が出された件数は、中央調停の件数を除いても約八件あるわけでございます。これらの中央調停に上ってこなかった、府県段階で停とんしておる未解決の問題等については、大臣のお考えとしては、この中央調停に準じて、すみやかに関係都道府県においてはこれを基本にして解決するように、今後指導、通達をされるかどうか、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/11
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012・赤城宗徳
○赤城国務大臣 中央調停に準拠して、それに沿うて県のほうにおいても解決するよう指導、通達いたすつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/12
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013・芳賀貢
○芳賀委員 次に、お尋ねしたい点は、取引価格において初めての中央調停でありますが、一カ年を通じて、たとえば一定の期間を限って取引価格が値下げされる、こういうことが繰り返されることになれば、それをまた政府として認めるということになれば、これは将来季節乳価を認めるようなことになるおそれもあるわけであります。ですから、これは生産者の立場から見ても、国会の立場から見ても、年間を通じて正常に生産される牛乳の取引が、会社側の一方的な意思に基づいて、季節的に一定期間値段が下げられるということになると、これは何か季節乳価を実績として認めるような事態が出てくるおそれが非常にあるわけであります。ですから、この点は非常に警戒する必要があるわけでありますが、これに対して農林大臣としては、これをあくまでも一年を通じた正常な取引でなければならぬ、価格面においてもそうであるべきであるということで、今後行政的に措置されるか、あるいは指導なさるお考えがあるか、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/13
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014・赤城宗徳
○赤城国務大臣 私は、いまもお話のように、年間を通じての価格にするように指導いたしたいと思います。ただし、こういうことは考えられます。一年間にしておいて、そして冬場を下げるということではなく、一年間の上に夏場を上げるというようなことで、季節的にきめるということならば、これは当事者同士できめることでございますから、私は、これはそういうきめ方もあるいはあり得ると思います。だから、下げるのでなく、きめておいた上に上げるという考え方のもので当事者同士できめるということでありますならば、私はすすめていい、こういうふうな考えを持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/14
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015・芳賀貢
○芳賀委員 そうしますと、あとでお尋ねしますけれども、たとえば年間を通じて、価格的には安い時期の価格というものがあくまでも基本であって、そうして夏場等の価格というものは、それにプラスアルファという形で積み上げられた価格であるという御判断のようですが、しかし、これは悪用されると、むしろ逆効果を生むおそれがあるわけですから、やはり行政の態度としては、年間を通じて適正な価格で、取引価格というものが契約等の面で締結されて、そうして特に生産を促進すべき点については、単に会社だけの意思でそういうことをやるのではなくて、やはり政府の方針として、会社側の生産者に対する生産促進等の協力的措置については、政府がこれを指導する、そういうところにやはり持っていってもらう必要があると思いますが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/15
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016・赤城宗徳
○赤城国務大臣 そのように考えております。ことに今度の調停あるいは価格安定、基準価格等の決定につきましては、この委員会等においても議論がありましたが、私も痛切に感じていることは、いまの酪振法あるいは畜産物の価格安定法によっては、もう壁に突き当たっている、どうしてもこれは改正するといいますか、国のほうで、どういうふうに金を出すかという問題等も含めて——しかし、これは業者のもっこ持ちといいますか、業者のためにやるということになってはいけないと思います。業者は業者として合理化して、そうして金が出せるような形が前提でございます。そういう前提のもとに、政府でどういう形かで生産者に金を出すというようなかっこうのものができてきませんと、これはいまもう壁に突き当たっております。そういうことを痛切にいま感じているわけでございますから、私は次の国会までにはそういう案をつくっていきたい、こういうことを考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/16
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017・芳賀貢
○芳賀委員 ただいま酪農振興法並びに畜産物価格安定法は、現状においてはこれは不十分である、改正の意図を示されたわけでございますが、特に酪振法の改正の問題等について、今回の中央調停にしても、これは法律的な明確な根拠が非常に貧弱なわけです。たとえばきめ手になる職権あっせんとか、大臣の職権による勧告とか、そういう根拠というものがないわけですから、あくまでも調停審議会の努力によるあっせんということしかできないのでございますから、これらの点については、何も明年度を待たなくても、この点はいけないということをお気づきになった場合には、まだこの国会の会期も相当あるわけでございますからして、すみやかにその欠陥と認められる点の改正等については、当然われわれ国会としても協力して十分なものにする用意はあるわけですからして、この際、特に酪振法の改正については、契約あるいはあっせん調停とか、そういう問題についての改正も必要でありますが、特に大臣の公約の一つである、国産牛乳による学校給食の積極的な実施の問題等についても、われわれとしては、これは単独法を制定して行なうべきじゃないかというふうに考えております。政府のほうでは、酪振法の改正の中で措置されたいというような意向のようでありますが、これらも、当然今国会に法律改正という形で提案されるべきであるというようにわれわれは考えておるわけです。この法律の改正については、現在の時点において、農林大臣としてはいかような判断に立たれておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/17
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018・赤城宗徳
○赤城国務大臣 労働関係等における調整的な仲裁裁定とか、あるいは強制力を持たせるというようなことも考えられないわけでもございません。しかし、現在の段階におきましては、法制上あるいは制度上いろいろ問題があるように私も考えます。そこで、酪振法や価格安定法等の改正によって、国が相当介入できる、財政的や何かで介入できる、まあ、米のようなわけにはまいりませんが、結局そういうような形ができるときに、同時にそういうことを考えていくべきじゃないかと思っています。ですから、いまそういう当事者の調停にまかしておいて、それに対しての政府としての権限は持っておりません、両方承諾しない場合に。これも一つの調停制度そのままで終わって、きまればいいですけれどもきまらない場合の欠陥のように私も感じます。しかし、いまそれだけを酪振法の改正で入れようというのには、まだ私も研究が十分でございません。そういう欠陥があるということは私も認めていますが、十分検討しておりません。ですから、全体的に酪農あるいは畜産の振興に伴う根本的といいますか、相当な改正を必要とするので、来国会のときにこの問題も解決をいたしていきたい、こう思っています。今度の改正等におきましては、学校給食等になま牛乳を主としてやっていく、こういう線に切りかえる方面は提案いたしたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/18
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019・芳賀貢
○芳賀委員 そうしますと、学校給食関係の酪振法改正は、今国会にお出しになるということなんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/19
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020・赤城宗徳
○赤城国務大臣 そういう方針でいま進めております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/20
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021・芳賀貢
○芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、これは畜肉並びに乳価と非常に関係があるわけでありますが、当委員会の決議においても、酪農の経営あるいは安定のために現在政府の講じておる飼料対策というものが、非常に消極的であるわけでして、この点については確固たる飼料対策を確立すべきであるということを指摘しておるわけであります。特にしばしば当委員会で問題になりました政府、手持ちの輸入ふすまあるいは増産ふすま、専管ふすま等を中心とした、いわゆる食管会計の中で政府が扱うところの政府手持ち飼料の価格の安定、それを基本にして、三十九年度の飼料全体の価格の安定あるいは需給安定等については、これは年当初に明確にならぬと非常に混乱を生ずるおそれがあるわけでございますから、ここでまず明らかにしていただきたい点は、三十九年度の畜産物の価格に対する決定をされたわけでございますが、同時に、三十九年度の飼料の価格安定あるいは受給安定価等についてはどのような方針で臨むわけであるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/21
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022・赤城宗徳
○赤城国務大臣 飼料政策につきましては、本委員会の決議もありますように、根本的に再検討し、政府の輸入飼料ばかりでなく、国内の自給飼料等につきまして広く検討して、対策を立てていきたいと思います。特にいま御指摘の輸入飼料、ふすまあるいは専管ふすま等の値段の問題でございますが、これは御承知のように、予算においては予算価格が上がっております。しかし、いろいろの御議論もありますし、情勢も判断いたしまして、これは現状どおりで値上げしないという方針で進むつもりでございます。とりあえずといたしましては、これは財政当局とも話し合いましたが、六カ月は全然上げない、六カ月後におきましてもいろいろな方策を考えますけれども、考えても、これは上げるべきものじゃないという結論に持っていきたいということです。年間を通じてことしは現状のままにしたい、こういう方針で進めておりますから、それを強く押し通すつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/22
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023・芳賀貢
○芳賀委員 それでは飼料問題については、大臣の力強い言明がありましたので、それに期待することにいたします。
最後に、牛乳並びに畜肉の価格決定について、二、三明らかにしてもらいたいと思うわけですが、当委員会からは、私ももちろんでありますが、長谷川委員、谷垣委員が、いずれもこの国会の承認を得て審議会委員として出席したわけでございます。われわれとしては、今度大臣がおきめになった価格に対しては、率直に言って非常に不満足であります。しかしただ、答申が三様に分かれておるわけでございまして、いずれの答申を大臣が尊重なさるか、これは大臣の権限にかかわることでございますからして、それは特に追及する考えはありません。しかし、今度の審議会は、三日間、しかも四日目の午前二時に及んで答申を行なったわけでありますが、その間、大臣は日韓漁業交渉に当たられたので、ほとんど審議会には御出席がなかったのですが、今後運営上考えてもらいたいことは、第一は、委員の人選の問題であります。国会関係の委員以外は大臣の権限において選任されるわけでありますが、選任にあたっては、畜産物価格安定法の目的が邦辺にあって、審議会は何を審議しなければならぬかということを理解できる人物をぜひ選んでもらいたいわけです。当然生産される牛乳の価格あるいは畜肉の価格は、農民が生産したそれらの農産物の価はいくばくであるのが適当であるかということをまず判断しない限り、価格問題を論ずることはできないと思う。それをただ需給関係とか消費者の立場だけを頭に入れて、何でもかんでも安くさえあればいい、現状据え置きであればいいというような主張や、あるいは大蔵省の旧官僚を毎年選んでおりますが、これらの人間は、政府の試案よりもまだ安くすべきであるというような、こういう強力な主張を行なっておるわけです。もちろん、それは大蔵省の出先のような形で、財政面だけを考えた意見とわれわれは考えるわけですが、この法律の目的が、農民の生産した牛乳や豚肉の価格というものは、幾らが適当であるかということを判断するということになれば、やはり一番の材料は、毎年農林省が行なっておる統計調査部の生産費調査というものが、今日の段階において一番正確の度合いが高いと思うわけです。これらを振り向きもしないで、一顧だにこれを検討しようとしない。ただばく然と現状据え置きとか、安いほうがいいというような、そういう意見が多数を占めるような審議会の構成であっては、適正な答申はできないと思うのです。われわれは、答申というものは、当然一本にまとめる努力をして、それを大臣が尊重して、最も適当な価格を決定さるべきであるということで、鋭意努力したわけですが、こういう法律を知らない、理解できないような委員が多数を占めておる場合は、答申の一本化というものはどうしても困難でありますから、これは期限一年ずつですからして、来年度委員の選任に当たる場合には、少なくとも常識的に法律をわきまえ、その精神を理解して審議に臨むような、そういう委員をぜひ選んでいただきたいわけです。
それからもう一つは、われわれ毎年指摘しておる点でありますが、審議会の会長をやっておる人物が、事務当局と協力して政府の試案を作成しておるという点であります。これはあくまでも大臣が任命した委員というものは、中正な立場に立って議論を展開すべきであって、当局とぐるになって、わざわざ高等数学に基づく試案の作成に協力して、それを主張するような立場で、いやしくも審議会の会長が行動するというようなことは、今後これは断じて避くべきだと思うわけです。従来三年そういう状況をわれわれはまのあたりに見て指摘しておる点でありますが、これは明年から厳重に慎んでもらいたいと思うわけです。この点を申し上げるわけです。
それからもう一つは、生産費調査というものは、政府自身に尊重されていないのですね。統計調査部と畜産局は違うということを言われるかもしれないが、しかし、同じ農林大臣の所管のもとにおいて、それぞれ農林省の業務というものを分担して、そうして統計調査部は、予算は非常に少ないけれども、その中で一生懸命統計調査の仕事をしておるわけです。ですから、これが一〇〇%完全なものであるというふうにわれわれは見るわけにはいきませんが、不完全の点があれば、十分必要な予算的な措置を大臣のほうで講じられて、そうして確実な生産費の調査というものが、農産物あるいは畜産物全体にわたって行なわれるようなことになれば、一体、毎年度の牛乳の生産費あるいは豚や牛の飼育の生産費はどのくらいかかるものであるかという判断というものは、これはできるわけです。この判断をわれわれは非常に重視したわけでございますが、たとえば農林省の生産費調査の場合の自家労賃の評価は、御承知のとおり、農村における雇用労賃を基礎にして生産費を算定しておるわけです。したがって、三十七年度の牛乳とか豚肉の生産費の場合の自家労働費の計算は、雇用労賃として一時間当たり七十二円、一日大体五百五十円程度が自家労働費として計上されておるわけです。したがって、これをたとえば米価算定の場合と同じような都市の近郊労賃というようなことで評価した場合においては、大きな格差が出てくるわけでございますけれども、しかし、昨年、一昨年、今回、また御決定になった価格から、生産費あるいは自家労賃というものを分析してみた場合においては、おそらく今年度の牛乳の価格あるいは豚肉の価格の中における自家労賃というものは、この農林省が調査しておる農村雇用労賃を確保することは不可能だと思うのです。それより大幅に下回るということは、大臣も大体御判断できると思うのですね。そうしますと、一方的に生産者にだけ大きな価格上のしわ寄せが及んで、それがまた明らかにされておらないという点は、非常に問題になる点でありますので、たとえば先ほど報告されました価格等についても、これを分析した場合においては、三十九年度における牛乳の生産農家あるいは豚の生産農家の自家労働費というものは、おおよそ一時間でどのくらいであり、一日どのくらいにしかならないということを、あわせて参考として発表されて当然だと思うわけです。こういう点に対しては、農林大臣としてどのようなお考えの上に立っておるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/23
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024・赤城宗徳
○赤城国務大臣 第一に、委員の選任の問題でございますが、委員の選任につきましては、お話しのように、この価格安定の法律というものの趣旨を十分理解してもらえるような人を選ぶべきだ、こういう御説は私も賛成でございます。やはりその審議会、委員会の目的に沿うたような人を選ぶように、慎重に考慮いたしたいと思います。
第二に、審議会の会長が農林事務当局と一緒になって試案を作成すると公正を欠くじゃないか、こういうことでございます。審議会の事務を助けるために、農林省の事務当局も当然事務を助けるべくいっておりますが、試案をつくるために公正を欠くようなことで手伝ったり手伝わせるということは、少し行き過ぎていると思います。この点はよく注意いたします。事務の手伝いという点は御了承願いたいと思います。
第三に、この答申がいろいろでありますし、生産費の調査等につきましても、統計調査部というものに信頼を置くべきじゃないか、確かにそのとおりでございます。いろいろ不完全な点につきましては、いまのお話しのように予算等の措置もとりまして、なお一そう完全なる調査ができるようにいたします。ただ、畜産のほうは非常に成長過程で、最近における発達がぐっと伸びてきましたので、この方面などの統計につきましては、十分だとは私も考えておりません。しかし、これは統計が基礎でございますから、一そうしっかりした統計ができるようにいたしたいと思っております。
それから算定方法でございますが、いまお話がありましたように、自家労賃を換算すると、生産費の調査の自家労賃より、今度の告示価格は低くなると私も思います。実はそういう面で苦心をいたしたのでございますが、何しろ、いまの取引関係が、豚は別でございますが、牛乳等につきましては、相手方が——よく社会党なんかでは独占資本と言われておりますが、私は独占資本というのはどうかと思いますが、一般に市販できるというか、直接市場に売り出せるというようなものでなくて、相手方がきまっておるようなかっこう、そういうかっこうでございますから、一方においては生鮮食料品のようなもので、不売とかなんとかいうことができない生産者の立場もございます。そういうことから、生産者としても取引上非常に不利な点もございます。一方また、業者のほうにおきましても、去年の復元などやってみましても、一度に金は払ってない。ことしの九月までに金を払うというような事情のようでございます。しかし、私は、業者のほうはまだまだ合理化するといいますか、余地はあるというふうに思って、強く当たっておるのでございますけれども、そういうような事情もありますので、あまり現状におきましては——あまりということは取り消しますが、現状におきましては、相当生産者の値段についての確保を努力するということは、非常に現実的には困難ではないか。そういうように困難でありますから、私は、これはどうしても法律を改正して、一つの制度をしかなければやっていけないのじゃないか、こういう感じがいたしますので、私は来年までにどうしてもこれは直しておかなければならない、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/24
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025・芳賀貢
○芳賀委員 将来に関することでありますから、基本的な問題は、いま大臣のお話のありました法律の改正を行なわなければなかなかうまくいかない点があるわけです。われわれは現行法でも一運営よろしきを得れば処理できると思いますが、政府当局のほうは、いまの法律を悪用して、精神を発揮させないところに問題があるわけです。そうなればなお、大臣の言われるように、一そう法律の内容をよくして、だれが手をつけても悪用できないところまで直しておけば心配はないと思いますが、ぜひこれは進めていただきたいと思うわけです。
もう一つ、これは今後の問題ですが、乳製品の原価計算というものは全く適正に行なわれていないのです。これは一例だけ参考に申し上げますと、バターの生産原価の問題でありますが、これを先ほど言われた大メーカーと中小メーカーに区分いたしますと、一キロについてバターの生産費は、大メーカーの場合には百九十四円九十銭ということになっておりますが、中小メーカーの場合には百六円八十銭ということになっているわけです。ですから、普通の企業でありますと、大企業のほうが製造経費が非常に低減するということになるのが当然でありますが、乳製品の場合には、大企業ほど製造経費がかさまるという農林省の調査が出ておるわけです。しかもわれわれとして理解できない点は、直接製造経費以外の販売経費の面において、大メーカーの場合には九十一円六十銭かかっておる。中小メーカーの場合にはその五分の一の十五円四十銭である。こういう点であります。そうしますと、原料費、労務費、直接製造経費が五十八円五十銭であるのに対して、販売部面の経費が九十一円六十銭である。しかも全経費の百九十四円九十銭に対して、その半ばが販売経費にかかるということは、全くわれわれとして了解に苦しむわけです。これらの点についても、審議会の答申あるいは附帯決議の中で、特に指定乳製品の製造経費の分析、検討等については、すみやかに農林省において作業を進めて、的確な調査の結果というものが出されて、やはり乳製品にいたしましても、原料を基礎にして、それに製造経費とかあるいは適正利潤を加えたものが生産価格になるのが当然でありますが、これが行なわれていないのです。ことしの審議会等においても、メーカー側からは、製品は据え置きしていいということを先に言うのです。おかしいじゃないですか。乳製品は据え置きでよろしゅうございますということは、牛乳の生産に対するえさの値段とか、労賃とか、物価が上昇している中において、原料乳価をどうするかということを検討しないで、乳製品は据え置きでよろしゅうございますというような、こういう発言が先に飛び出すことは、乳製品から逆算して乳の値段はきめなさいという意見にこれは通じているわけです。こういうでたらめが実は委員会の審議の実態でございますので、この乳製品の経費の分析検討等については、農林省としても従来の態度を一てきして、十分積極的に内容の検討を行なわれて、適正な牛乳の価格に経費を加算したものが乳製品の価格であるということが実現できるように、ぜひこれはしてもらいたい。
もう一つあわせて申し上げたい点は、これもやはり将来の問題でありますが、法律では原料乳ということになっておりますが、これは生産者の理解から言うと、飲用乳と原料乳というものを区分して生産しているわけではないのです。たまたまその地域が主として飲用乳の供給地域であるとか、原料乳の供給地域であるということの区分は現実の面で出てきますが、生産しておる農家にとっては、乳を生産するということが自主的であって、生産の経費については、飲用乳だから経費がかさむとか、原料乳だから生産費が安いということにはならぬと思うのです。極端に言えば、半分飲用乳にして、半分原料乳にする場合に、左の乳房の牛乳は飲用乳の目的である、右の乳房のものは原料乳であるというような区分で乳が生産されているのではないのです。この点は、大臣が言われたとおり、次の法律改正の場合において、やはり原料乳でなくて、生乳の価格というものを適正に判断して、そうして乳の支持価格をきめるということにしないと、これは解決ができない点です。したがって、この取り扱いについても、事務当局はことさらに割合として原料乳の多いような地域の都道府県だけを選定して、そこの生産費がどうであるとか、こういうような作業を今回も進めておるようでありますが、これは非常に危険を生ずるわけですから、こういう小手先の仕事は絶対にしないように、大臣から注意を願いたい。
もう一つは、今後問題となるのは、用途別乳価とか地域別乳価というものは、会社側の一方的な態度から生じやすいおそれが非常にあるわけでありまして、これは冒頭の質問の中でも述べたわけでありますが、そういう会社側の一方的態度が生産者に不利益となって及ばないように、こういう点も農林大臣から行政的に十分な配慮をお願いしたいと思います。
以上で質問を終わりますが、いまの私の発言に対して、大臣の答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/25
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026・赤城宗徳
○赤城国務大臣 指定乳製品の価格決定等につきまして、この間の審議会等におきましての、据え置きでよろしいということは、原料乳も据え置きのつもりかもしれませんが、それは逆だと思います。やはり積み上げ的なものでいくことが当然でございますから、そういう点につきまして、事務当局におきましても、なお合理的な検討を加えるようにいたさせます。
それから第二に、飲用とか原料とかいうのは、お話のように、これは買うほうで飲むほうに回すとかあるいは原料乳に回すので、生産するほうから見れば生牛乳のわけでございますから、そういう意味におきまして、この点も用語等につきまして十分検討いたしたいと思います。
第三番目は、一方的にきめるような値下げとか、そういうことは、私は十分行政的にやらないようにさしたいと思います。法的に言えば契約でございますので、片方が力が強いというようなことから、一方的に通告するというような形でやることは、これは契約の原則からいっても間違っていると思います。でございますので、そういう場合には、私どもというか、農林省なども十分相談を受けてからにしませんと——しかし、下げることはやらせたくないと思うのですが、そういう点にも十分注意していきたい、こう考えております。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/26
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027・高見三郎
○高見委員長 次に、土地改良法の一部を改正する法律案を議題といたします。
補足説明を聴取いたします。丹羽農地局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/27
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028・丹羽雅次郎
○丹羽(雅)政府委員 土地改良法の一部を改正する法律案につきまして補足説明を申し上げます。
本改正案は、さきに第四十三回国会に提案いたし、審議未了となりました土地改良法の一部を改正する法律案につきまして、その後地方自治法の一部を改正する法律の制定に伴い必要となりました技術的修正等による補正を加えて、さらに第四十四回国会に提出いたしました法案と同様のものであります。この改正案の内容は、おおむね七つの主要事項に区分することができると考えられますので、この区分に従いまして御説明をいたしてまいりたいと存じます。
第一は、法律の目的の改正でありますが、これは、提案理由で説明がありましたように、土地改良法の目的が、農業基本法に掲げられている政策目標の達成に資することにある旨を明定することにより、今後の土地改良事業の進むべき方向を明らかにしたものであります。なお、第一条第二項を改正し、土地改良事業の施行にあたっては、その事業は、政令で定める計画基準に準拠するものでなければならない旨の規定を削除し、これとおおむね同趣旨の規定を、土地改良区の設立についての適否、決定の基準、国営事業及び都道府県営事業の計画の決定の要件等として規定することにいたしておりますが、これは、個々の事業の施行の前提として、具体的にこの計画基準を適用することにより、事業施行の適正化を期したものであります。
第二は、土地改良事業の拡充及び整備をはかったことであります。
まず、土地改良事業を、農地すなわち耕作の目的に供される土地のほか、いわゆる草地すなわち主として家畜の放牧の目的または養畜の業務のための採草の目的に供される土地をも含めた農用地の改良、開発、保全及び集団化に関する事業として、土地改良事業の範囲を拡大することといたし、これに伴い、従来の開田又は開畑の事業を農用地の造成の事業に改め、農地についてのみならず、草地の改良、開発等の事業につきましても本法に基づいてこれを実施することができることといたしたのであります。
また、農用地の造成事業につきましては、その施行の要件として、その事業の施行地域内の農用地以外の未墾地について事業参加資格を有する者の全員の同意を要することといたしたのであります。これは、未墾地からの農用地の造成が土地の形質及び利用目的を根本的に変更するものでありますことから、事業参加資格者の三分の二以上の同意がありましても、未墾地にかかる事業参加資格者で同意しないものがある場合には、強制的に当該事業を施行し得る方式をとることが穏当を欠くと考えられたためであります。
ただ、全員の同意を得ることが困難な場合が予想されますので、このような場合に対処して農用地造成事業の円滑な施行に資するために、関係資格者のうちに同意しない者がある場合には、発起人等が関係者と協議して、所有権の移転または利用権の設定等の方法により、全員の同意を得るために必要な措置を講ずることといたしまして、それでもなお同意が得られない場合には、都道府県知事が関係者の意見を聞いて、あっせんまたは調停を行なうことができることといたしたのであります。
次に、農業の生産性の向上をはかるため機械化を促進する等の観点から見まして、圃場条件を整備することが急務であると考えられますので、このいわゆる圃場整備事業を円滑に実施するために、区画整理事業の範囲の拡充と換地計画に関する規定の整備を行なうことといたしております。
まず、区画整理事業につきましては、これを本来の区画形質の変更の事業と、これと付帯して施行することを相当とする農用地の造成の工事または農用地の改良もしくは保全のため必要な工事の施行とを一体とした事業といたしまして、これにより、圃場に直結する各種の土地改良事業を一つの施行手続をもって実施できることとし、手続の簡素化による事業の促進を期することといたしております。
次に、換地計画及び換地処分に関する規定の整備についてでありますが、現行制度においては、換地計画の樹立を工事の完了後に行なう仕組みになっておりますこととの関連から、集団化のために十分な機能を発揮し得ないうらみがありますことにかんがみまして、今回の改正においては、換地処分が農用地の集団化その他農業構造の改善に積極的な役割を果たすものであるという観点に立って所要の規定の整備を行なっております。すなわち、換地計画は、土地改良事業の工事の完了前に樹立することをたてまえとするとともに、換地計画の決定及び認可の基準を明らかにするほか、換地計画において定めるべき事項、換地を定める場合の要件、換地を定めない場合の特例、新たに土地改良施設の用に供する土地についての措置、換地計画の変更手続等について規定の新設ないし改正を行なっております。また、一時利用地の指定につきましても、農用地の集団化に資するよう必要な規定の整備をいたしますとともに、換地処分の方法及びその効果等につきましても、この際、所要の規定の新設ないし改正をいたしております。
次に、交換分合に関してでありますが、上述のように草地を土地改良事業に加えましたことの一環としまして、農地相互間のみならず、農地と草地の間または農地相互間においても、交換分合を行なうことができることとするとともに、従来の農業委員会、土地改良区及び農業協同組合のほか、市町村も、土地改良事業を施行する場合において交換分合を行なうことがその土地改良事業の効率的な施行と農用地の集団化その他農業構造の改善に資することが明らかである場合には交換分合の事業主体となり得ることといたしております。
第三は、土地改良長期計画の制度を設けたことでありますが、この制度を新しく設けました基本的な理由は、農業基本法において農業生産の選択的拡大、農業構造の改善等新たな観点に立って諸施策を講ずべきことが要請されている今日におきましては、土地改良事業につきましても、長期の見通しの上に立って農業基本法の趣旨に即応し得るよう計画的な事業の施行をはかるべきであるということにあります。
この長期計画は、農林大臣が農政審議会並びに関係行政機関の長及び都道府県知事の意見を聞いてその案を作成し、閣議の決定を経て定められることになっておりまして、計画が定められましたときは、その概要を公表いたしますとともに、国はこの計画の達成をはかるため、その実施につき必要な措置を講ずることとなっております。
第四は、土地改良事業の施行方式及び費用の賦課徴収の方法に関する改正であります。
土地改良事業の実施の現況と土地改良事業の態様の変化等にかんがみまして、土地改良事業の適正かつ効率的な実施を確保することができるよう制度を整備する観点から、事業の施行方式について、以下申し述べますような改正を行なうことといたしております。
すなわち、その一は、事業の総合的な実施をはかるための改正でありまして、相互関連性の深い二以上の土地改良事業をあわせて施行するための事業計画の決定または変更等の手続について規定の整備を行なうことといたしております。
その二は、国営事業及び都道府県営事業の計画樹立に関する改正であります。
まず、従来の申請に基づく事業のほか、申請によらないで計画を樹立し得る事業の範囲を拡大いたしまして、その事業による受益の範囲が広く、その工事に高度の技術を必要とする等、その事業の性質または規模に照らして適当と認められるかんがい排水事業等については、国または都道府県がみずから計画を定め、関係農民の三分の二以上の同意を得、かつ、異議申し立ての機会を与えた上で計画の確定と事業の施行を行なうことができることといたしまして、国及び都道府県による農業基盤整備事業の積極的な推進を可能ならしめることといたしております。
また、国営事業及び都道府県営事業の計画の樹立または計画の変更につきましては、これらの事業が関係都道府県または関係市町村の利害に密接に関連するものでありますので、これら関係都道府県または関係市町村の長とあらかじめ協議を行なうことを事業開始の要件といたしまして、これにより、国、都道府県及び市町村を通ずる協力体制のもとに事業の円滑な施行を期することといたしております。
次に、費用の賦課徴収の方法に関する改正について申し上げます。
まず、国営事業または都道府県営事業の負担金につきましては、従来、国がその費用の一部を負担または補助し、その残額の全部または一部を都道府県が受益者から徴収するか、またはその徴収にかえて、その受益者によって構成される土地改良区から徴収することとされているのでありますが、今回の改正においては、この従来の方式のほか、関係市町村がその議会の議決を経て同意した場合には、都道府県はその市町村に負担させ、その市町村がその負担した金額を受益者から徴収するという方法をとることができることとし、この場合において、防災事業等受益農業者以外をも利するような事業については、政令の定めるところにより、市町村がその費用の一部を自己負担して残額を受益者から徴収することができる道を開いたのであります。
次に、農用地以外の土地についても利益を与えることの明らかな事業について、国、都道府県のほか、市町村も農用地以外の受益者から負担金を徴収し得ることといたしたのであります。
第五は、土地改良施設の維持管理に関する規定の整備であります。
まず、土地改良区、市町村等がかんがい排水施設その他の重要な土地改良施設の管理を行なう場合には、その事業の実施の細目について管理規程を定め、都道府県知事の認可を受けなければならない旨を規定し、土地改良施設の管理の適正化に資することといたしております。
次に、国営事業または都道府県営事業につきましては、従来ややもすると建設工事と工事完了後における施設の管理との間に結びつきを欠きまして、そのために、施設の管理、なかんずく委託管理の適正な運用をはかることが困難でありましたことにかんがみまして、このような大規模事業によって造成される施設につきましては、事業計画の樹立の際あらかじめその施設の管理者及び管理方法に関する基本的事項を定めることとし、これに基づき土地改良区等に管理の委託を行なうことにいたしまして、国営造成施設及び都道府県営造成施設の管理の適正化に資することといたしております。
第六は、土地改良区の管理及び組織に関する規定の整備であります。
土地改良区は、土地改良事業の施行のための農業者の協同組織として、全国にわたって設立され、その数は一万三千の多きを数えておりますが、中には、運営が不健全であるか、またはその存立の基礎が必ずしも十分でないものも存するのであります。
そこで、今回の改正におきましては、従来のごとき一事業ごとに土地改良区を設立するという制度のたてまえを改めまして、一つの土地改良区で関連性の深い二以上の土地改良事業を行ない得ることとしてその手続を整備いたしましたほか、土地改良区の乱立を規制するため、土地改良区の設立申請があった場合において経理的基礎または技術的能力の有無等を適否決定の要件とするとともに、土地改良区の合併につきましても、その手続を整備いたしております。
なお、土地改良区の管理運営の健全化または適正化に資するため、役員の土地改良区に対する義務を明確にするとともに、その損害賠償責任に関する規定を整備することといたしております。
以上が今回の改正の主要事項でありますが、そのほか、土地改良事業の適正かつ円滑な実施をはかるため必要と認められる事項につきまして、所要の改正を行なうことといたしておりますので、これらの事項につきその要点を申し上げたいと存じます。
従来土地改良区の事業計画の変更の手続とこれに関連して必要がある場合における定款変更の手続とがそれぞれ別個に行なわれる仕組みになっており、事業施行の円滑化の面から問題がありましたので、今回これを是正して同一の手続で行ない得るようにいたしました。
次に、国営事業及び都道府県営事業につきましても、農用地造成事業、区画整理事業の施行に伴い換地処分を行なうことが必要になってまいりましたので、国または都道府県が換地計画を定めて換地処分を行なうことができるよう所要の規定を設けることといたしました。
また、従来特定土地改良工事特別会計による事業は、かんがい排水事業及び干拓事業等に限られておりましたが、かんがい用と防災用との共用のダムの建設工事を行なう必要が出てまいりましたので、かんがい排水事業とあわせて行なう防災事業を特別会計事業として行ない得るよう規定の改正をいたすこととしております。
次に、国営の干拓または埋め立ての事業によって造成されました干拓地または埋め立て地がその本来の目的に供されることなく、他の用途に転用され、その者が不当に利益を得ているという事例が生じておりますので、この事態に対処するため、干拓地または埋め立て地の配分を受けた者が土地取得後八年以内にその土地を転用した場合には、本来の負担金のほかその土地の造成に要した費用から本来の負担金を差し引いた額を限度として、特別徴収金を徴収することができることといたしました。
次に、国営事業によって造成された施設のうち土地改良区等に譲与し得るものの範囲を実情に即して拡大することといたしております。すなわち、国営事業によって造成された土地改良財産の譲与につきましては、従来道路法の認定外道路等に限定されておりましたものを拡充いたしまして、主として小規模な道路、用排水路その他の施設を直接の管理者たる土地改良区等に譲与することにより、その管理運営の簡素化をはかることとする等の改正を行なうことといたしております。
さらにまた、市町村または農業協同組合の行なう土地改良事業につきましても、土地改良区の行なう土地改良事業に関する規定の整備に対応して改正を行なうこととしておりますが、特に市町村の行なう事業につきましては、農用地造成事業に関する規定、農用地以外の土地にかかる受益者からの負担金の徴収に関する規定、土地改良区等からの土地改良施設の管理委託に関する規定等新たな規定を設けることといたしております。
最後に、附則につきまして一言申し上げておきたいと存じます。
附則においては、この改正法律の施行の期日をはじめ、この改正に伴い必要な経過規定のほか、草地の交換分合についての不動産取得税の免税のための地方税法の改正、特定土地改良工事特別会計による事業の範囲の拡大及び干拓地等の転用の場合における特別徴収金の徴収に伴う特定土地改良工事特別会計法の改正並びに農地法、土地区画整理法及び愛知用水公団法に関する技術的な改正を行なうことといたしております。
以上、この法律案の要点につきまして補足説明を申し上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/28
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029・高見三郎
○高見委員長 次会は、明二日午前十時から理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後零時四十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X02919640401/29
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