1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年五月十九日(火曜日)
午前十時五十六分開議
出席委員
委員長 高見 三郎君
理事 小山 長規君 理事 坂田 英一君
理事 谷垣 專一君 理事 長谷川四郎君
理事 本名 武君 理事 赤路 友藏君
理事 芳賀 貢君
伊東 隆治君 池田 清志君
吉川 久衛君 小枝 一雄君
坂村 吉正君 笹山茂太郎君
内藤 隆君 中山 榮一君
野原 正勝君 藤田 義光君
角屋堅次郎君 栗林 三郎君
東海林 稔君 中澤 茂一君
西村 関一君 松浦 定義君
湯山 男君 稲富 稜人君
小平 忠君 林 百郎君
出席政府委員
農林事務官
(農林経済局
長) 松岡 亮君
通商産業事務官
(軽工業局長) 倉八 正君
委員外の出席者
議 員 小平 忠君
専 門 員 松任谷健太郎君
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本日の会議に付した案件
連合審査会開会に関する件
学校給食の用に供する牛乳の供給等に関する特
別措置法案(小平忠君外一名提出、衆法第五〇
号)
肥料価格安定等臨時措置法案(内閣提出第一五
六号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/0
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001・高見三郎
○高見委員長 これより会議を開きます。
この際、おはかりいたします。
去る八日、肥料価格安定等臨時措置法案について、商工委員会から連合審査会を開会せられたいとの申し入れがありました。これを受諾し、商工委員会と連合審査会を開会するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/1
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002・高見三郎
○高見委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
なお、連合審査会開会の日時等については、商工委員長と協議の上、追って公報をもってお知らせいたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/2
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003・高見三郎
○高見委員長 次に、小平忠君外一名提出、学校給食の用に供する牛乳の供給等に関する特別措置法案を議題とし、提出者から提案理由の説明を聴取いたします。小平忠君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/3
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004・小平忠
○小平(忠)議員 学校給食の用に供する牛乳の供給等に関する特別措置法案の提案について、その理由を説明いたしたいと思います。
最近におけるわが国の酪農事情は、飼料の高騰及び大乳業者の買い価格の引き下げ等から、その成長は停滞状態におちいったかの観があります。また開放経済の進行によるナチュラルチーズをはじめとする乳製品の輸入、加えて学校給食用脱粉の政策的導入等、わが国酪農生産の前途はきわめて多難が予想されるのであります。従来行なわれてまいりました酪農関係諸施策は、主として酪農生産に関する施設であり、生産された乳の加工、流通、消費については、全くないがしろにされたように思われるのであります。特に成長農業と目される酪農の長期的発展と安定化は、これら加工、流通、消費についての積極的施策が行なわれ、初めて達成されるものであります。
特に開放経済を迎え、その中での酪農の発展は、生乳市場の確保がその第一といわざるを得ないのであります。しかるにわが国生乳市場は、大乳業者を中心とする営利目的の乳飲料、すなわち色づき牛乳に専断されておることは、国民栄養の確保並びに酪農振興の立場からもまことに遺憾といわざるを得ないのであります。
このような立場からも、現在、輸入脱粉により主として供給されている学校給食を国産生乳に切りかえ、輸入脱粉よりは栄養価も高く、飲みよい生乳により、役務教育課程の児童、生従の健全なる身体の発育を促進するなど、わが国酪農振興及び児童、生従の健康確保に質そうとするものであります。
特に酪農振興については、この法案により生産者は、年来の希望であった生乳の直接支持に相当するべき交付金を国から直接受けるものであり、酪農対策始まって以来、初めて大乳業の介在を許さない国と生産者の直接的結びつきを実現するものであります。
しかも三百余万石の生乳量が、年間を通じて、安定した供給が行われ得ることは、生産者にとって、価格維持その他市場の安定に役立つことは言うまでもないことであります。
さらに従来は、生産者団体による処理加工事業等のほとんどが、供給への安定市場が得られないため、独自の運営が成り立たず、つぶれるか、大乳業への身売りを行なうかであり、生産者団体独自の処理加工への進出はきわめて危険とされてきたのであります。しかし、欧米各国の協同組合の方向から、わが国農業協同組合も、また処理加工専業への進出を行なわなければ、生産者の利益を守り得ない段階に立ち至っておることは明らかであります。このときにあたり、学校給食という、公共的かつ国民的裏業を通じ、生産者の処理加工事業への進出をはかり得ることは、農業発展を期するこの法案の最も大きなる特徴とも言い得る点であります。
学校給食事業を通じ全国至るところに生産者による処理加工施設が設置されることは、これらの施設をして単に学校給食のみならず、工場労働者への集団飲用、各種公共機関職員への集団飲用等を促進する結果をも招来することとなり、わが国流通機構の一大刷新をも期待し得るものとなるのであります。
この法案は、このように大きな利益を生産者にもたらすとともに、さらに成長期にある義務教育課程の児童生徒を対象とする学校給食の充実につながるものであります。学校給食は、昭和三十二年以来実施されてきたのでありますが、その内容は、ほとんど輸入脱粉によってまかなわれてきており、昭和三十八年度を例にとるならば五万六千余トン、石数にして二百六十万石に匹敵する量であります。したがって、ミルク給食実施校は、全学校中の七四%(三十八年十一月現在)であるにもかかわらず、国産牛乳による給食実施校は、小学校において七%、中学校において一四%(三十八年一学期)のみにすぎないのであります。
酪農振興法第二十四条の三に規定される「国内産牛乳の消費増進事業の一環として学校給食を行う」は、いつのまにか、外国酪農の振興のために利用されてきたのであります。
少なくとも、わが国児童、生徒の身体の発育に資するには、国内農業の力によってこそ、初めてその恩義が認められるものであることは言うまでもありません。一部に脱粉と国産牛乳のコスト上の問題が云々されておりますが、国内食糧の自給度向上、外貨の節約等から勘案するならば末節論にすぎません。また諸外国の例を見るならば、スウェーデン、イタリアをはじめとして父兄負担はなく、父兄負担を有する国においても、その額は、きわめて僅少であります。さらに自国酪農があるにもかかわらず、その国の将来をになう児童、生徒の給食が、外国輸入製品によってまかなわれておるような変則的方途がとられている国家は、世界にもその多くを数え得ないのであります。
この法案は、このような立場からわが国義務教育児童、生徒に対し、五カ年をもって計画的に国産生乳による給食を行なうとともに、父兄負担については、現行負担額を増大せしめないよう、生産者価格相当分の交付金を除いた父兄負担分である処理流通経費について、都道府県の補助を促進するべく、都道府県補助額の二分の一を国がさらに補助しようとするものであります。したがって、処理流通経費部分を都道府県が全額負担する場合は、父兄負担は全く解消することとなります。もちろん学校給食の実施主体は市町村にあるわけでありますから、市町村に対する補助費等を考慮すべきでありますが、教育の機会均等のたてまえからも、同一都道府県内程度の父兄負担は統一されるべきとの理由により、補助の対象を都道府県に限定したのであり、かつまた都道府県の末端教育事業への結びつきによる意識の換起にも役立たしめようとするものであります。
以上のごとくこの法案は、国づくりの基本ともなるべき、児童、生徒の身体の健全なる発育と、わが国酪農の発展、農業団体の強化等、これらの目的を同時に達成しようとするものであります。委員各位の慎重なる御審議を賜わり、可決されんことをお願い申し上げる次第であります。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/4
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005・高見三郎
○高見委員長 次に、肥料価格安定等臨時措置法案を議題とし、質疑を行ないます。
通告がありますので、順次これを許します。坂村吉正君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/5
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006・坂村吉正
○坂村委員 それでは、ただいま議題となっております肥料価格安定等臨時措置法案につきまして、私、重要な各般の点にわたって、全般的に御質問を申し上げたいと思っておる次第でございます。
第一に、肥料の問題につきましては、皆さん御承知のように、いま農薬だとかあるいは農機具だとか、そういう面に非常に関心が強くなりまして、一般的にはややもすれば、肥料問題というのは、どうも幾らか安易に考え過ぎるんじゃないか、こういう印象を私ども受けざるを得ないのでございます。これは農民全体としてもあるいはそういう気持ちがあるかもしれませんが、それからわれわれといたしましても、国会でも、どうも肥料問題というと、肥料は農業生産資材としては、だんだん関心がいままでに比べまして幾ぶん安易な気持ちになってきておるという感じを受けるのでございます。これは御承知のように、生産が増加しておるし、それから需給が大体一応安定をしておる。こういうようなこともございましょうし、それからまた、農業経営の中で、肥料のウエートというか、肥料に対する支出のウエートというものがだんだん下がってきておる。こうような全般の情勢が、そういうぐあいにしておるのじゃないかという感じを私は受けておるのでございます。しかし、考えてみますれば、農業の生産力を高め、それから農業構造改善を進め、農業の近代化を進めてまいる、こういう場合に、肥料問題を農業から絶対に切り離すわけにはまいらぬ。肥料はやはり農業生産の基礎的な、最も重要な資材である。と同時に、いまでは林業部門その他の部門にまで肥料がどんどん伸びよう、こういう状態になっておるのでございまして、そういう点からいいまして、肥料問題は農業資材問題として非常に大事な問題で、一番根本的な問題ということにつきましては、先般の久保田委員の農林大臣に対します質問の場合にも、大臣からも答弁がございました。そういう意味で、私は非常に意を強くするのでございますけれども、さて、いままで肥料二法というものがあって、需給調整、価格安定、それから肥料の合理化を進める、こういう二木立ての法律がございましてここまで参りました。しかし、今度は本年七月に肥料二法が失効するわけでありますので、その後はたしてそれがどういうぐあいになるのか。いままでこういう状態で来ておったのだけれども、それじゃ肥料二法が失効した場合にはどういう状態になるのか、こういう点は、農民も肥料業界自体も非常に関心の中心であろうと私は思うのです。そうして非常な不安を持っておるというのが現状までの実情であろう。それに対しまして、一応今回政府は、この新法を立案して国会に提案されたわけでございますが、その点、政府の努力に対しまして私は満腔の敬意を表したいと思っておるのでございます。
この新しい肥料の法律、これは法律を読んでみましても、あるいは提案理由の説明を聞いてみましても、私は、いままでの法律の姿からいいますと、あるいは資材の統制の姿からいいますと、非常に新しい型のものであろうというふうに考えております。ですから、こういう意味で、今後自由主義経済を基調にいたしまして、農業生産資材を確保してまいる、こういう場合に、この新しい姿の法律、新しい試みの法律、こういうものを出していった場合に、今後のあらゆるそのほかの資材の確保に対します一つの試金石になるのじゃあるまいかというふうに私は考えておるのでございます。そういう意味におきまして非常に大事な問題でございます。非常に重大な意義を持っておる法律案であろうと思っておるのでございます。
そこで、全般論として、この法律がいかにもいままでと変わった法律でございますので、その点についていろいろの疑問がまだございます。いろいろ提案理由、補足説明を聞きましても、非常に疑問があらゆるところにございますので、その点を全般的にひとつ明らかにしておきたい。そうして委員会のこの審議を通じまして、国民にほんとうにこの法律の中身を理解し、政府の意図するところを理解してもらって、そうしてこの運用に万全を期していくということがぜひとも必要であろうというふうに考えておるのでございます。先般、同僚の久保田委員がいろいろな問題について質問を出されました。しかし、私、いろいろ聞いておりまして、政府の答弁は遺憾ながらはなはだ明快を欠いておるというふうに感ずるのでございまして、この際、この新しい法律に対しまして、それから今後の農業の重要資材の確保について、政府の新しい試みがほんとうに国民に理解されて、そうして今後役に立っていくかどうか、こういう点をはっきりさせる必要があろうと思うのでございますので、私は、ぜひとも私の質問に対しましては明快な——くどくど長い答弁は要りません。明快な答弁をいただきまして、そして国民の間にはっきりとこの法律のねらいを明らかにしてもらいたい、こういうことを最初に希望するものでございます。その点について答弁を求める必要はございませんが、農林省、通産省政府委員の両方から心がまえをまっ先にお伺いをいたしまして、内容に入ってまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/6
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007・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 ただいまるる御指摘がございました、農業の生産要素としての肥料の重要性につきましては、全く私どもも同感でございます。戦後農業の生産力が非常に伸びました要因といたしましては、もちろん、畜産とか果樹とか、選択的拡大の方向による生産力の上昇もございましたが、全体として非常に大きな生産の伸びを示しましたのは、基本的には、土地改良の進展と、化学肥料の円滑な、しかも低廉な供給があったと確信いたしておりますので、特に東北地方など、従来低位生産にあった地方において、化学肥料の増投が行なわれました結果、わが国の穀倉として東北地方が発展したということは、いかに肥料というものが重要なものであるかということを明らかにしておるかと思うのでございます。そういった趣旨におきまして、ここに新しい形の法律案を提出したわけでございますが、これはもちろん農業基本法の趣旨に沿いまして、従来どおり、肥料の低廉な、しかも円滑な供給を確保するという趣旨からでございます。ただ、従来と違いますのは、非常に化学肥料の生産力が大きくなって、内需を確保すれば、従来のように低廉にして豊富な肥料の供給は確保できるという目安がございますので、それを機軸にいたしまして、必要な場合に政府が介入し、あるいは必要な指導を加えるだけの基本を用意するという趣旨におきまして、できるだけ自由な経済の通常のもとで、価格の低位安定と内需の優先確保をはかるという趣旨で立案いたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/7
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008・倉八正
○倉八政府委員 簡単にお答えいたします。
いま全般的なことにつきましては、農林経済局長がお答えしたとおりでございまして、通産省としましては、農業資材という重要性にかんがみまして、肥料を豊富に、しかも安定した低位価格で供給するということが眼目でございまして、この目的に沿いまして合理化も進め、あるいは内需の確保をする措置をとるというのが、本法の趣意でございまして、われわれとしましては、内需確保優先ということと合理化ということを最重点に取り上げております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/8
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009・坂村吉正
○坂村委員 両政府委員の御答弁には大体満足するものでございますが、そこで、それでは内容に入ってまいりたいと思います。
第一に、私は、現在政府が新法を立案したそのバックには、やはりいままでの肥料二法がどういう効果をもたらし、あるいは肥料二法の運用上、肥料二法があることによってどういう不都合があったか、こういう点をまっ先に明らかにする必要があろうと思うのでございます。それについては、先般来から、昨年東畑委員会をつくって肥料問題につきましての根本的な対策を検討した、こういうことを政府は言っておるのでございますけれども、おそらくそこでも十分議論はされたことと思います。しかし、この委員会において、いままでの肥料二法がどういう効果をもたらし、また率直に言えばどういう罪悪を持ったか、こういう功罪をはっきりと明らかにいたしまして、そういう状態だから、初めていまここに新法をつくったのだ、こういうことを国民の前にもはっきりと示す必要があろうと思うのでございます。そういう意味におきまして、私は、第一に、緒論といたしまして、いままでの肥料二法の功罪につきまして、政府のお答えをいただきたいと思っている次第でございます。それは農業研におきましてもそういう問題がございましょうし、また肥料工業の面におきましてもいろいろ問題があろうと思うのです。そういうようなことで、まず第一に、農業の面では、いままでの肥料二法というものはどういう功罪を持ってまいったか、その実績及び現在の実情、そういう点について、これは大ざっぱでよろしゅうございますから、数字をあげまして、はっきりと明快な御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/9
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010・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 農業の面から申しまして、現行の肥料二法は、大体所期の目的を達し、また農業の生産力の向上に対しまして、あるいは農業所得の向上という面につきまして、相当な寄与をしてまいったと思うのでございます。それは具体的には、先ほども申し上げましたように、非常に豊富に、しかも低廉な価格で、六百万農家の全部が消費いたします肥料を供給したということでございますが、それを少し数字的に申しますと、後ほど合理化の進捗状況について通産省から御説明がありますが、アンモニアの生産能力におきましては、二法が制定されました当初におきましては三百三万トンにすぎなかったのでございますが、今日では約二・三倍に当たります六百八十五万トンの能力を保有するに至っております。その中で低廉な硫安を供給するには、固体原料から流体原料への転換を大いに進めたわけでございますけれども、その流体原料による生産能力も、全生産能力の九割に近いものまで合理化が進んでまっております。これはアンモニアの能力で申し上げましたが、ア系肥料の生産量で……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/10
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011・坂村吉正
○坂村委員 ちょっと待ってください。具体的に農業面でどういう功罪があるかということをはっきりしてもらいたいと思うのであります。というのは、肥料自体にもございましょうし、それから肥料が、この肥料二法のおかげで、ほかの資材に比べて、どういう状況になっているのか、こういう点を明確にしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/11
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012・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 ア系肥料の生産力におきましても二・二倍になってまいっております。すなわち、二百五十四万トンから約五百五十万トンへ能力が増加したわけでございます。このような状態で、まず肥料価格が相当低廉になっております。
具体的に申し上げますと、二十九肥料年度、すなわち、法律が制定されました当時八百七十七円八十七銭でありましたものが、三十八肥料年度におきましては七百三十八円七十一銭、十年間におきまして約百四十円値段が下がった、一六%の肥料価格の引き下げが行なわれたのであります。これは硫安の価格でございますが、同時に、尿素にも影響され、また、カリや過燐酸につきましても、一般的に肥料価格の低下ということが明らかにあらわれてまいっております。
その結果といたしまして、まず農家の経営上の肥料支出につきましては、肥料の施用量はかなり増加いたしておりまするが、肥料の支出はやや増加はいたしておりますけれども、たいした増加にはなっていない。依然として少しは増加しておりますが、これはむしろ肥料の施用量の増加と、特に最近における農業事情から、単肥から高度化成へ転換している、あるいは尿素へ転換しているというような事情から、農家の経営そのものの転換が反映されておるという面もございます。そういう点から、肥料支出はやや増加しておりますけれども、施用量の増加と、施肥の合理化と申しますか、そういう方向があらわれておるということでございます。それから農薬とか飼料、農機具等の資材費も、これはきわめて顕著に増加いたしております。しかし、単価で申しますと、農薬等も下がってはおりますが、肥料は常に着実に下がってきておる。施用量の増加にもかかわらず、肥料費のウエートというものは、むしろ全体の農業経費の中では、かつては四割くらいあったものが、二割前後へ低下してきた、こういうような事情になっております。一面、飼料費とか農薬費とかのウエートは高まっておりますけれども、肥料費のほうは、施肥の内容が豊密になり、かつ合理化されて、経営費の中に占めるウエートは低下している。いわば望ましき方向へ農業経営の形が転換されつつあり、肥料に関する限りは少なくともそういう方向になってきておる、こう申し上げていいかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/12
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013・坂村吉正
○坂村委員 通産当局にお伺いしたいと思うのでございますが、肥料工業につきましては、肥料二法のもとに第一次合理化計画、節二次合理化計画ということで、合理化促進法を基礎にいたしまして、合理化計画を進めてまいったはずでございます。その合理化計画がどういう実績を示しており、現状どうなっておるのか、それに関連をいたしまして、肥料工業としてはどういう功罪があったのか、肥料工業でほんとうに利益があったのか、あるいは非常に困る点があったのか、そういう点をはっきりといままでの実績でひとつお答えをいただきたいと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/13
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014・倉八正
○倉八政府委員 いま先生の御指摘の二点のうち、最後の点からお答えいたしたほうが便利かと思いますが、功罪はいかんという坂村先生のお尋ねでございますが、私は、功罪の功が大体四つくらいあるのではなかろうかと思います。一つは、化学工業の再建になった。これは能力的に化学工業の再建になった。能力というのが非常に大事でございまして、これはあとでまた御説明申し上げますが、したがいまして、世界的に日本が最も多量のア系の肥料を供給し得る国になったという問題だろうと思います。
それから第二の問題としまして、松岡局長も答弁されましたように、値段が下がって、ほかの化学金肥の値下がりは平均一〇%程度でございますが、これは年にもよりますが、一〇%程度であるにかかわらず、硫安が一六%も下がった、これが第二の利点だろうと思います。
第三が、輸出が増加しまして、日本はいま世界一の硫安の輸出国になっておりまして、これで一億ドルくらいの外貨をかせぐような輸出産業に発展したというのがメリットの点でございます。
それから欠点を申し上げますと、化学工業の再建を能力的に進めましたが、その過程において、最も重要な経営面からくる採算が非常に悪化したというのが、この一番のデメリットだろうと私は思います。というのは、バルクラインを引かれておりまして、合理化メリットが分配できなかったというところに、この法律の問題があろうかと思いますが、それが一口に言いますと欠点でございまして、そのために、絶えず新規技術、新規施設を要する化学工業が、総体的におくれていったというのが私は欠点だろうと思います。
それから最初の御質問に対しまして、どういう合理化の進捗をやったかということでございますが、それの一番いいあらわし方は価格だろうと思います。価格につきましては、六十ドル十九から五十ドル十八にいま下がっておりまして、一八%の値下がりをしたというのが、総合的な指数として最も合理化をあらわしている問題だろうと思います。しかしながら、いま先生の御指摘の、第一次の合理化目標に政府の計画は達していないじゃないかという御質問でございますが、これは遺憾ながらまだ達しておりません。と申しますのは、当時設定しました諸要素というものが、非常に変わりまして、たとえば電力費の高騰だとか、あるいは硫酸の値上がり 労務費の毎年平均五%ないし八%の値上がりということで、予想しなかった要素が出てきまして、達していないことは遺憾でございますが、この点につきましては、まださらに政府資金も出しまして、あと三カ年に二百六十六億円の投資をやりまして、さらに値下げということに進みたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/14
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015・坂村吉正
○坂村委員 大体現在までの肥料二法の功罪といいますか、いいところ、そそれから悪いところが、一応浮き彫りにされたと思うのでございます。
そこで、ただいま倉八軽工業局長の御答弁にもありますように、輸出が非常に伸びてまいった、こういうお話でございます。おっしゃるとおり、前は、肥料二法の制定当時の輸出は、二〇%以下あるいは前後だったと思う。いま大体生産の四〇%くらいは輸出されておる。こういう状況で、輸出産業としても非常に大事な工業だ、こういうお考えであろうと思うのです。しかし、肥料のこの新しい法律をつくる場合に、あるいは今後の問題といたしまして、肥料工業を今後扱っていく場合に、輸出産業としてこれを育成していく、そういう考え方に相当重点を置いてまいるのか、あるいは国内の農業資材としての一番重要な資材だから、国内の農業資材に重点を置いて考えてまいるのか、ここら辺の考え方、これはあるいは大臣にお聞きするのがいいかもしれませんけれども、大臣がおいでになっておりませんから、政府委員にお尋ねをいたしますけれども、今後肥料工業を輸出産業として伸ばすのか、あるいは農業生産資材の確保をするための工業として伸ばしてまいるのか、そういう点の基本的な考え方についてひとつお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/15
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016・倉八正
○倉八政府委員 肥料の問題は、御指摘のように、国内の農業資材の一番重要なマテリアルの問題でございますから、これは国内優先ということが第一前提でございます。ただ、御承知のように、こういう装置工業でございますから、一つのプラントで大きい生産の能力をあげるということは、国内にも安い肥料を供給でき、また輸出もできるという唇歯輔車の関係がありますから、その意味においては、輸出ももちろん重要視いたしますが、この一番の本来の目的は国内の絶対確保ということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/16
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017・坂村吉正
○坂村委員 ただいまの御答弁によって、大体政府の考え方はわかりましたけれども、そこで、肥料二法はことしの七月まであるわけでございますが、そのもとで、先ほど御答弁のありましたように、いままで合理化計画も進んでまいった。それから農業面におきましても、値段はだんだん下がってまいりました。供給も非常にふえてまいりました。こういう点でいい面が相当多いと思うのでございますが、それでは現状の生産状況あるいは現在の値段の状況、それから現在の輸出の状況、そういうものから判断をいたしまして、肥料の事情というものは、少なくとも現在において満足すべき状態にあると思うのか、あるいはまだこれは直さなければならぬという状態にあるのか、そういう点が今後の新しい法律をつくる場合の基本的な問題になろうと思うのでございます。したがいまして、肥料事情の現状というものが、ほんとうに一応満足すべき状態にあるか、あるいはまだまだこの点が足りない、この点は直していかなければならぬ、こういうことを考えなければいかぬかどうか、そういう点を大体基礎にいたしましてお伺いいたしたいと思うのでございますが、それにつきましては、第一赤目に、肥料工業の合理化というものはいままでやってまいりましたけれども、今後進むのかどうか、もしかりに進むとすれば、どの程度までの合理化ができるのか、その合理化目標というものは大体どこに置いて、進めるとすれば政府は進めてまいるか、そういう点をまずまっ先にお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/17
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018・倉八正
○倉八政府委員 二点についてお答えいたします。
今後合理化は進むと思うかということでございますが、これは必ず進みまともさることながら、御承知のように、最近はいわゆる副産物的な肥料にウエートが非常に大きくなっておりまして、たとえば回収、副産、こういうことで今後ますます肥料のウエートが多くなる、こういう意味におきましても、これは値下げの大きい要因でございまして、われわれはその面からもこれを大いに期待いたしておるわけでございます。
それから、今後の合理化の方針としてどう考えているかということでございますが、今後の合理化というのは、われわれとしましては、最も重要な農業資材ということで、政府としましては、これは絶えず進めていく、ある場合においては財政資金によって、ある場合においては税の面において進めていくことは、はっきりした方針でございます。その上に、外国との競争におきましても、われわれとしましては、外的な理由によっても進めざるを得ない、こういう状態にありますから、今後の合理化というのは、いままでと同じ力をもって今後とも進めていくつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/18
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019・坂村吉正
○坂村委員 今後の合理化は必ず進む、それから政府におきましても、合理化については積極的に進めて援助してまいりたい、こういうお話でございますけれども、大体進むといたしました場合に、本法は五年間の時限法になっております。その五年間ぐらいの間に、それじゃどの程度までの目標を画いて合理化を進めるのか、政府が指得する場合にはどういう方法をとって指導してまいるのか、従来の肥料二法のもとにおいて合理家促進法があったときのあの進め方と、それから今後五年なら五年間における合理化の政府の積極的な対策、そういうようなものと違うのか、あるいは同じことでやっていくのか、それから五年あとにはどの程度まで合理化が進んで、大体生産コストがどの程度まで下がってまいりますか、その点についてはいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/19
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020・倉八正
○倉八政府委員 どのくらい値下がりをするかということについて、いまはっきり何十何円下がるということはちょっと申し上げられませんが、今度の法律というのは、合理化という条項がございませんが、政府としましては、同じ心がまえで進めていくつもりでございます。したがいまして、さっきも触れましたように、財政資金の問題、あるいは輸入関税の問題、あるいは税の問題につきましても、法律にそれを盛り込もうが盛り込まないにかかわらず、これを進めていくということでございます。ただいま申し上げたように、値段が幾らになるかということは言えないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/20
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021・坂村吉正
○坂村委員 おっしゃるように、値段については、幾ら下がるということはなかなか言えないと思います。現状ではそれが非常に困難なむずかしい質問だと思うのでございますが、いろいろ財政資金等を投与して合理化を進めてまいる、こういう援助方策を考えるということでございますけれども、承るところによりますと、先般赤字対策といたしまして、二百何億の合理化資金といいますか、赤字対策のために、開銀融資あるいは北海道東北開発公庫の融資等をやったわけでございますが、あの措置でもって肥料業界に対する政府の援助というものは打ち切りだといううわさを私は巷間聞いておるのでありまして、それは、いま軽工業局長の、今後とも財政資金等を投与して合理化を進めてまいるのだというような答弁と、少し話が違うのじゃないか、こういう感じがするのでございますが、この点はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/21
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022・倉八正
○倉八政府委員 先般の十二月にきめました柱が三つ、四つございますが、その中で、いま先生の御質問に関係する財政資金でございます。これには二つございまして、一つの百三億円というのは、従来の赤字を消すために渡してやったものでございます。それから百六億円というのは、四十二年までの合理化をするための資金を投与するという額でございます。しかし、四十年を過ぎまして政府がこういう最も重要な産業に何ら援助しないということは、絶対あり得ないことでございまして、たとえば法律に書こうが書くまいが、ある産業に対して開銀なりあるいは北東公庫なりから融資していることは、御存じのとおりでございますから、その後におきましても、こういう財政資金なら資金による措置は必ず続く、われわれはそのいう方針で進んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/22
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023・坂村吉正
○坂村委員 こういう大事な工業でございますし、また合理化をしようと思えば、幾らでも合理化はまだまだ進む産業であろうと思うのです。それがひいて農民の重要資材のために非常に役立つものということになるのでございますから、そういう点、十分その事態事態に応じて合理化ができるだけスムーズに進んでまいりますように、ぜひ今
それに関連しまして、合理化を進める場合に、いまのような状態で肥料工業全部をかかえておったのでは、合理化はなかなか進まぬじゃないか。相当コストの違うものもあるし、それから能率の悪いものもございますのは、御承知のとおりだと思います。これは前からいろいろ議論がございましたけれども、ほんとうに合理化をしてまいるのであれば、思い切って弱小メーカーを切ったらいいじゃないかという議論が、私は一面にあろうと思います。だから、そのことが、ほんとうに能率のいい、コストの安い肥料を生産し、肥料工業が健全になるもとだ、こういう相当強い意見があろうと思います。その場合、もちろん、いろいろと労働問題がございましょう。労働者をどうするかという問題が、当然くっついてまいろうと思うのでございますが、そういう点については、通産省としてはどういうお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/23
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024・倉八正
○倉八政府委員 先生の御質問、原則的にはまことにもっともだと思います。御承知のように、外国におきましては、ドイツにおいても、フランスにおいても、イタリアにおいても、二、三社がやっているということでございますが、日本の現状におきましては、なかなかそういう割り切った政策というのがとれないという経済事情、社会事情があるというほかに、御承知のように、こういう装置工業でございますと、ある一つの技術を取り入れ、あるいは工程を改良すれば、すぐコストが安くなるという宿命的なものがございますので、たとえば具体的な例を申しあげますと、いまバルクラインをとっている中で、ある工場のごときは、ことしは十番目にあった、ところが、翌年はそれが二番になった、三番になったということも、御存じだろうと思います。そういうことがありまして、どの工場がいい、どの工場は落第だということは、非常にとりにくいのでございますので、われわれとしましては、できるだけアンモニアというものを多角化しまして、そうして企業内における肥料の生産比率を下げまして、総合的な力によって合理化していくことが、日本の現状で最も適しておるのじゃないか、こういうことで、端的に申し上げれば、いまの弱小メーカーの切り方というのは、非常にむずかしいということをお答えせざるを得ないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/24
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025・坂村吉正
○坂村委員 日本の国情、現状においては、そういう極端な考え方はなかなかむずかしいであろうと思います。しかし、いまのままで残しておったのでは、なかなか思うとおりの合理化は進まないというようなことも言えるのじゃないかと思うのでございまして、そのかわりに、それには多角経営をやってアンモニアの多角利用をやる、それが今後の合理化の一つの方針であり、方策である、こういうお考えにつきましては、一部には、アンモニアの多角経営といいますか、多角利用をやっていくことは、あるいはそっちのほうが非常にどんどん需要が伸びて有利になってまいれば、農業生産に対して非常に圧迫になるのじゃないか、こういう意見もあり、先般、これは久保田委員からも質問がございました。そのときに、私はその御答弁を伺っておって、どうもあまり明快な御答弁が得られなかったようでございますので、その点、決してそれは農業生産資材として大事な肥料の圧迫にはならないのだ、アンモニアの多角利用をやっていくというのが、農業生産資材として重要な肥料の圧迫にならないのだということが、はっきり言えるのであったら、ひとつはっきりと明快にお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/25
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026・倉八正
○倉八政府委員 圧迫には絶対にならないということを信じております。というのは、いまの多角利用の最たるものは繊維原料のラクタムであり、あるいはアクリロニトリルだろうと思います。それが回収硫安の八判以上占めておる。こういうものにつきましては、いわゆるアンモニアをそういう原料に一度使いまして、その廃アンモニアというのをまた利用するということによりまして、当然出てくる副産原料を肥料に向けるということでございまして、副産物の利用であり、それが工程上当然出てくるということによりまして、硫安のための硫安、すなわち合成硫安をつくるよりも、はるかに技術的でもあり、また副産物の利用という意味におきまして、いま先生の御指摘のような、そういうことができたために肥料の圧迫ということは、私は絶対あり得ないと思います。当然工程上出てくる商品が供給されるということを御認識いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/26
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027・坂村吉正
○坂村委員 ただいまの軽工業局長の言明で、非常に安心をするものでございます。
そこで、先ほどお話がございましたように、内需が十分確保されれば、余ったものは輸出として出していく、こういうことでございまするが、現状におきましては、とにかく生産量の四〇%も輸出になっているという状況でございますので、これは輸出産業としてもやはり相当大きなウエートを持っておると思うのでございます。その内需の確保ということが前提でございますけれども、それをおいて、それでは輸出の面で、現状において、あるいは今後数年間において、いまの日本の肥料工業というものが、はたして外国と太刀打ちができるのか、こちらの国内生産がふえれば、輸出が今後も伸びるのか、伸ばす際にはどういうことをやるのか、一例を申し上げますれば、国際競争で数年前はいろいろなダンピング等もございましたけれども、しかし、それらについて輸出を安定さしてまいるということも、私は内需の安定とつながってまいると思うのでございます。そういう意味で、輸出産業として、ほんとうに現状が、値段の上からいって、あるいは諸外国の肥料工業の実態と比べてみまして、輸出として太刀打ちできるのか、そういうような問題と、それから一面、それを安定させる意味で、これはあるいは当たりさわりがあるかしれませんが、ほんとうに輸出については国際カルテルのようなものでもつくって、輸出面も安定させていく、それがひいては一緒に国内産業、国内需要に対しても安定するような姿になってまいる、両々相まって肥料の安定が期せられるんじゃないか、こういう感じがするのでございますけれども、その点についてはいかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/27
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028・倉八正
○倉八政府委員 輸出を伸ばすには、二つの方策があろうかと思います。一つは、御指摘のように、国内の合理化をやりまして、外国と四つに組んでも十分やっていけるという力をつけることが基本問題だろうと思います。これについては、さっき御説明しましたように、合理化を進めていく。それから第二の問題としましては、外に向かっての政策であろうかと思います。と申しますのは、いまも御指摘がありましたように、硫安、ア系肥料というのが、非常に国際的なフラクチュエーションの激しい商品でありまして、それをどう安定して輸出するかということが、まず当面の基本問題だろうと思います。そのためには、外国とのいろいろの協調ということもあると同時に、また、たとえば信用を供与してやる、あるいはもっと生産技術を教えてやる、そういう積極的なことを今後考えていくと同時に、また市場調査をもっと掘り下げる、こういうことをしたいと思うのでございます。
ただ、日本としましては、御承知のように、肥料を需要する国が非常に近いところにありまして、たとえばドイツから中共に行くのは三十七、八日かかりますが、それを日本では三日で持っていけるというような、いわゆる時間あるいは運賃の問題もありまして、わりあい有利な地位にあろうかと思います。しかし、今後の外国の生産あるいは需要の動向というのは、絶えずわれわれは関心を持たなくてはいけないのでございまして、そういう意味におきまして、いろいろ調査も続けていきたいし、それからまず基本的には、日本の肥料をできるだけ合理化して下げるという、内外両政策をあわせて進めていくことが、輸出産業の一番基本問題ではなかろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/28
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029・坂村吉正
○坂村委員 現在の輸出の引き合いで、一番高いのはどの程度でございますか。あるいは平均でどの程度になっておるか。それは外国の輸出の値段と比べてどういう状況になりますか。そこら辺を具体的にちょっとお知らせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/29
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030・倉八正
○倉八政府委員 ことしの肥料年度の輸出価格の平均は三十八ドルか九ドルぐらいだと思います。昨年よりも平均にしまして二、三ドル上がっております。それで、いま御指摘の、一番高い契約はどうなっておるかということでございますが、いま具体化しました契約の一番高いのは、先般韓国と結びました四十四ドル五十でございます。これが一番高いので、最近の十年来見たこともないような高値でございます。
それから、外国の例はどうかということでございますが、最近の外国の例は、たとえばドイツ、イタリアあたりでは、FOBがすでに五十二ドルとか五十一ドルとかいうようなことになっておりまして、まだ日本はそれに比べれば安いのでございますが、ただし、こういうオファー価格というものは、実際はそのまま輸出が実現できるかどらかわからない価格でございまして、そういう意味において日本とのある程度の乖離があるのだろうと思いますが、いま申しましたように、昨年よりも相当上がっておる。ここしばらくはまだ上げ調が続くかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/30
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031・坂村吉正
○坂村委員 非常にお答えしにくい問題で、わざわざ答弁を落としたのかと私は思いますが、輸出について非常に国際的な過当競争をやるようなことではなくて、もう少し国際的にも協調してやってまいる、こういうような考え方についてはどういうぐあいにお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/31
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032・倉八正
○倉八政府委員 これは非常にデリケートな問題でございまして、一番極端に言えば、ヨーロッパ諸国が盛んに行ないましたかつての窒素カルテル、あるいはカリ・カルテルのようなカルテルもございますが、日本としましては、そういうことが禁ぜられておりますのですが、ただ、われわれとしましては、外国とそういう点は協調いたしまして、フラクチュエーションを避けるということについては、先生の御指摘のとおりにわれわれも考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/32
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033・坂村吉正
○坂村委員 軽工業局長の答弁はきわめて明快でございまして、非常に微妙な問題がございまするから、そういう点は私も追及はいたしません。しかし、それは気持ちとしては、国際的な過当競争が、これが結局ひいては、日本の肥料業界にも日本の農業にも非常に悪い影響を与える、こういうことになるのでございますから、その点は十分ひとつ今後とも広い腹を持って、いろいろ御指導をいただきたいということを要望いたしておきます。
先ほど来いろいろお話を伺ってまいったのでございますが、結局肥料問題の重点は、内需の確保、それから内需の価格の安定をはかってまいるということが重点でございまするし、また一方、いままでの御答弁にもございましたように、肥料業界の健全な発達と内需の確保、内需の値段の低位安定、こういうようなものが両々相まって、私は肥料というものがほんとうに安定するのであろうというふうに考えておるのでございます。それがひいては今後の農業生産力を高めてまいる一つの基礎になるのじゃないか、こういうぐあいに考えて、大体結論は私と一致をしたのでございますが、この点については一応満足の意を表したいと思う次第でございます。
そこで、肥料対策の根本的な目標をもしそこに置くといたしますならば、現在提案されております肥料新法というものが、はたしてその肥料対策の根本的な目標に合うかどうか、こういう点をほんとうに突き詰めて、これは検討しておかなければいかぬと思うのでございます。そういう意味におきまして、数点を初めに全般問題としてお伺いしておきたいと思うのでございます。
第一に、先ほどいろいろ御答弁ございましたように、いままでの肥料二法は、相当内需に対しましても、あるいは肥料工業の合理化に対しましても、輸出に対しましても、貢献をしました。だから、あの肥料二法が七月に失効したら新しい法律をつくるというようなことは考えないで、肥料二法をそのまま延長したらいいじゃないか、こういう議論が相当行なわれておる面もあろうかと思うのです。そういう点については、これは先ほど言いましたように、肥料二法制定当時の二十九年とだいぶ事情を異にしてきております。事情を異にしてきておりまするけれども、肥料二法がその果たした功績というものが非常に大きいし、非常にいい点もあるから、これをこのまま延長したらいいじゃないか、こういう議論があると思います。そういう点については、政府は新しい法律をつくったわけでございます。肥料二法延長ということは適当でない、こういうお考えのもとに新法をつくったのだろうと思うのですが、延長という議論に対しましては、どこが悪いのか、その点をひとつ明快な答弁をお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/33
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034・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 この問題は、私どもからお答えするには重要な政策としての基本的な考え方もありますので、やや僭越かもしれないのでございますが、政府の考え方としましては、消極的に現行二法が困るという面と、積極的に新しい法律にすべきだという両面とがあると思うのでございます。
まず最初の、消極的に現行二法で困るという面でございますが、それは先ほど軽工業局長からありましたように、多少現行の二法が、きびしい統制でございますけれども、価格面で、生産者のほうの合理化意欲をやや阻害する傾向があったのではないかという気持ちがございます。つまり、合理化すればするだけ、すべて値下げの財源になってしまう。化学工業はもう年々新しい技術があらわれるにもかかわらず、それだけ進めて値下げに向けてしまうというようなことが、一面において、どうも肥料二法が——現在の情勢からいっても、農業から見ましても、肥料定業が健全であることが望ましい。さらに、政府から声がかからなくても自主的に合理化を進めてもらいたいところでございますから、その合理化意欲を促進するという意味からいいましても、現行の方式にやや無理があるという点が、消極的な困る面ということでございます。
それから第二の積極的に困る面——困るということばは適当でないかもしれませんが、どうもいまの二法で、これまでやる必要はないじゃないかという規定がかなりございます。それは、現行の二法のもとにおいても全然発動しなかった統制規定がかなりございます。生産指示、出荷指示、あるいは最近においては発動していない調整保管指示、根本的に情勢が変わって、非常に供給力がふえたにもかかわらず、供給力の少なかった時代においてあった規定をそのまま延長する、しかも、その当時使いもしなかった統制的な規定を残しておくというのはどうも妥当でない、こういう考え方があると思うのでございます。やや具体的にわたりまして、二法の単純な延長が妥当でないという考え方を申し上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/34
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035・坂村吉正
○坂村委員 御答弁の中に、これはことばのあやかもしれませんけれども、肥料二法が合理化意欲を阻害して、合理化がどうもあまりうまくいかないというような感じのことばがございましたけれども、これは非常に重大な問題だと私は思うのです。それでは、肥料二法がもしなかったら、いままでよりも合理化は進んだかどらか、こういう点については、通産省から伺えばいいと思うのですけれども、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/35
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036・倉八正
○倉八政府委員 これは坂村先生と非常に考え方が違うかと思いますが、私は、肥料二法がなくても合理化は進んだと思います。と申しますのは、先生も十分に御存じのように、たとえば、いま流体原料を使っておりますハウザー法だとか、テキサコ法というような代表的な進歩技術というのが、御承知のように、三十年から出てきたということになりますと、たとえばそういう法律がなくても、それは当然日本は採用したかと思います。採用し、それから固体原料から流体原料になるというのは、世の中と申しますか、世界の趨勢でございまして、進んだと思います。その場合に問題はなかったとすれば、企業者というのは、もっとゆとりのある進め方をしたのではなかろうか、私はこう思うのでございますが、さっきも申し上げましたように、いまの価格決定方式というのが、合理化したら、それを全部とってしまうというようなことで、それがある場合には過当競争に走らせたのではないか、こういうように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/36
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037・坂村吉正
○坂村委員 ただいまの通産省の軽工業局長の御答弁で、肥料二法、少なくとも合理化促進法——肥料二法といわず一法でございますが、合理化促進法がなくても、当然、化学工業の実態からいえば、合理化は進んできただろうと思う、こういう感じでございます。そうすると、いままで政府がいろいろ指導し、それから合理化促進法があってやってまいったのでございますが、化学工業の実態からいえば、当然そこまで合理化というものは進むのだということでございまして、しいていままでの合理化促進法や何かそういうものを置かなくても、これは当然肥料工業の合理化が進み、値段も下がってまいり、生産もふえてまいる、こういうようなことの見通しがはっきり現在では立てられるのだ、こういうことに考えて差しつかえございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/37
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038・倉八正
○倉八政府委員 傾向としてはそのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/38
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039・坂村吉正
○坂村委員 肥料二法の問題は、先ほどからいろいろ御答弁がございましたように、非常にいい点もございましたし、それからいま言いましたように、ある程度無理な点も現状では出ておる、こういうことでございまして、新しい法律を考えたのだということに私は了解をいたしたいと思うのでございます。
そこで、もう一方、先ほどからお話しのように、生産も非常にふえてまいった、それから値段も大体低位に安定しておるというような状況でございますし、肥料工業の合理化も進んでおるという状況であれば、これは、やはり企業というものあるいは商売というものは、自由にやらしたほうがいいのであって、何もいまから新しい法律をつくってこういうものを縛る必要はないのではないか、こういう考え方があろうと思うのです。たとえば、いま肥料問題を自由にほったらかしにしておきましても、先ほど言いましたように、内需の確保については、貿易管理令できちっと輸出は押えられておる。それから非常に値段が暴騰すれば、これは古い法律でございますが、価格統制令というものがまだ残っております。そういうような問題もございますし、それから輸出の調整をしようと思えば、輸出入取引法でカルテルはできる、こういうようなことがあるのでありまして、こういうようなことからいって、ここまで肥料の需給の状態が進んでまいれば、いまさら何も新しい法律を出す必要はないのではないか、こういう議論が私は反対にあろうと思うのです。この点については政府はどういうぐあいにお考えになっておりますか。これもやはり巷間にはそういう議論がずいぶんございますから、この点も誤解のないように、政府としてははっきりさせておく必要があろうと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/39
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040・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 ただいまの御質問は、二つの考え方が含まれているかと思うのでございます。肥料二法の延長論から、まず極端な左から極端な右へ完全な自由化論というものと、無法論、つまり法律のない状態、貿易管理令とか輸出入取引法とか、肥料に対して特別の法律をつくらない状態、この二つの御意見が入っているかと思うのでありますが、その最初のほうの完全自由化論は、私どもとしては、まずこれはとれないと思うのでございます。その理由は、何と申しましても、先ほど来申し上げておりますように、肥料は重要な生産資材でございます。六百万の農家がほとんど全部使っておるわけでございますから、これをいままで厳格な統制下に置いて、一番極端な完全自由に持っていくということは、流通面からいいましても、生産面からいいましても、あるいは輸出面からいいましても、極端な混乱を起こす可能性があると思うのであります。そういうことから、完全自由化論につきましては、私どもとしてはとりがたい、こう考えております。
次に、無法論、つまり、貿易管理令あるいは輸出入取引法、それから物価統制令の発動はちょっと問題がございますけれども、そういった他の既存の法律を適切に運用して、相当に目的を達成できるではないかということでございますが、これは確かに輸出貿易管理令を発動することによりまして、この新しい法律の輸出承認制にかわることはほぼできますし、また一定の輸出体制につきましても、輸出入取引法で一応できるわけでございます。したがって、新法の目的としておりますところの、これは数字であらわすことはどうかと思いますけれども、八割から九割は、他の法律を使うことによってできないことはないと思うのでございます。ただ、価格の取りきめを自主的にやらせる、政府が積極的に指導してやればともかくでございますが、できるだけ自主的に取りきめをやらせるということにつきましては、どうしても独禁法の適用解除が必要である。それから、できれば資料を政府が握って、行政指導に万全を期するという意味での調査報告を求めるという点については、新しい法律があったほうが望ましい、こういう具体的な要請がございまして、新法が成立することが望ましい、こういう結論を出したのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/40
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041・坂村吉正
○坂村委員 おっしゃるとおり、無法論、それから完全自由というような考え方、両方の二つの違った考え方があろうと思います。それで、少なくとも新しい法律をつくらなくても、現行法があるから、その範囲でやっていけるんじゃないか、こういうことでございますが、その議論の中には、先ほど経済局長が答弁されたように、それでは価格の自主的な取りきめとか、あるいは報告聴取とか、そういうものはできないじゃないか、こういうような議論がございましたけれども、価格の取りきめを自主的に業者にやらせる、独禁法の解除までしてやらせなければならないかどうかということも、私はその議論にあろうかと思います。こういう全体の需給状況が非常にゆるやかになってくれば、ものは自由に動かしてもいいじゃないか、何も値段をまとめてきめなくてもいいじゃないか、こういう議論もありますし、報告聴取などというものは行政権の発動で幾らでもとれるのですから、現行法のある限りの法律を使っていけば、大体内需の確保というものはできるであろう、こういう議論があろうと思います。そういう点が、私は先ほど申し上げました意見のもとになっておるのじゃないだろうかと思うのですけれども、その点について、価格の取りきめを自主的にやらせるのだという前提の御答弁のようでございますので、その点については反駁になっていないと思うのです。ですから、価格の取りきめを自主的にやる場合、やはり一応基準の価格をきめなければいかぬかどうかというような問題について、ひとつもう少しはっきりした御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/41
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042・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 御指摘のように、少しことばが足りなかったと思います。自主的な取りきめをやらせることが望ましいと申しますのは、もちろん、政府が積極的な指導価格を示して、どうだ、この辺で取引をやったらどうかという方法は、ないではないと思うのでございます。しかしながら、できればこういうのは避けたほうがいい、便宜的な方法であるといいますのと、長期的な施策として安定させていくということは、マル公という方式を現在の情勢ではとるべきではないと考えられますので、できるだけ自主的にお互いが納得できる形の取りきめをやって、それで安定させるということが望ましいと考えておるわけでございます。なぜ安定することが望ましいかということでございますが、その取りきめが行なわれなくとも、全般的な情勢としては、内需を確保いたしますれば、いまより低位に推移すると考えられます。しかしながら、場所的に、あるいは時間的には、かなりの変動を起こす可能性がございます。農家がいま買っておいたほうが得だとか、もう少し待てば安くなるとか、あるいはいま少しばかり思惑的に買いだめしておくかというような状態に持っていくということは、一方では米価というものをはっきりときめておる、そういうようなこともございますし、できるだけ農家というものはそういう面でつまらぬところに頭を使うことがないように、安定した値段で供給していくということには、マル公をつくることはいまでは行き過ぎでございますが、お互いの消費者団体あるいはメーカー団体が納得づくで安定価格をきめるということがよろしい、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/42
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043・坂村吉正
○坂村委員 おっしゃるとおり、いま肥料の需給状況が非常にゆるやかになったから、こう言って、きわめて大事な基本的な資材でございますから、新法の目的は、大体現行法を使っても七、八割は達成されるじゃないだろうか、こういう御答弁がございましたけれども、やはりこれは農業の今後の問題を考えた場合には、政府の基本的な考え方として、新しい方針を法律の姿で示すということが非常に大事なことであろうと思うのです。そういう意味で農業基本法にもございますように、第二条六号ですか、「農業資材の生産及び流通の合理化並びに価格の安定を図る」こういう項目があるのでございます。そういう農業基本法の趣旨から考えても、このような基本的な資材については、政府の態度をはっきりしておく必要があるだろう、こういうぐあいに私も感ずるのでございまして、その点は、経済局長の答弁に私も同感の意を表するものでございますが、それについては、この新法は、いま申し上げました農業基本法の第二条六号の関連法として考えておるのか、あるいは二法失効後の暫定措置でこれを考えておるのか。一応五年間という時限法の案になっておりますけれども、二法失効後、ただ何も手を打たぬとぐあいが悪いから、暫定措置でこれを考えていく、こういうことでいくのか、あるいは農業基本法の関連法としてこれを考えてまいるのか、これは非常に性格が違うと思うのです。もし農業基本法の関連法として、農業生産資材の一つの肥料という大きな問題を取り上げて、こういう新しい方式を考えてみた、こういうようなことになりますと、今後他の農業の資材についても、何かやはり新しい価格及び需給の安定の方策を、この例を一つの参考にしていろいろやっていく手があるだろうと思う。いま御承知のように、飼料、それから農機具、農薬などは実際問題として、需給、価格の問題、こういうものは現在ほったらかしでございます。そういうものに今後手をつけていく場合には、非常に重要な参考の一つの法律になるのじゃないか、こういう感じがするのでございますので、農業基本法の関連法として考えるのか、あるいは肥料二法失効後の暫定措置として考えてまいるのか、その点を明らかにしておいてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/43
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044・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 これは農業基本法の関連法律として提案しておる次第でございます。いま御指摘がありましたように、農業の重要な資材、農薬、農機具等につきまして、これがそのまま先例になるかどうかはちょっと言いかねますけれども、確かに一つの重要な参考になるかと思います。よく御承知のように、農林省においての行政のむずかしい面の一つに、農業と他の産業の接触面の行政がございます。肥料、農薬、農機具等、工業と農業とが接触する部面のものにつきまして、非常にむずかしい要素がございますが、これはその一つのモデルとなり得るのではないか、少し僣越でございますが、そう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/44
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045・坂村吉正
○坂村委員 そうしますと、この法律は、農業基本法の資材の確保という条項を頭に置いて、そうしてその一つの関連法という意識のもとに一応考えておる、こういうぐあいに理解をして差しつかえございませんね。
そこで、そういう基本的な考え方のもとにこの新法がつくられた、こういうようなことでありますると、これはまた一つの議論、一つの意見でございますけれども、こういう意見があることを御承知だと思います。たとえば英国とか西独とか、そういうようなところでは、肥料対策というものは、相当国が金を出してやっております。国から肥料補助金を出して、そうして農業の対策をやり、しかもそれが輸出に非常に大きな好影響を与えておる。そのことのために、いままで過去何年間日本の肥料業界も苦労してまいったと思うのでございまするが、そういう点について、西独や英国のように思い切って国が肥料補助金を出して、そうして肥料に対してはそういうような形で値下げをし、そうして肥料工業を安定さしていく、こういう考え方でございましょうけれども、現状におきましては、英国とか西独とか、そういうところでは、肥料政策はどういう内容に——だんだん昔とは変わってきていると思うのでございますが、大体どういう内容になっておるのか。いま言いましたように、そういう考え方についてはどういうぐあいにお考えか。農業基本法の基本的な一つの資材対策であるというふうな考え方をとった場合には、私は、一面においてそういう議論が起こってくるのも当然であろうと思うのでございますが、その点は現状では合うのか合わないのか、日本としてはとれないのかとれるのか、その点をひとつお答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/45
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046・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 少し不勉強でございまして、十分なお答えはできないかもしれませんが、まず最初に、西独とイギリスの肥料政策の中での補助金のあり方を簡単に御説明申し上げますと、西独の場合は、生産者最高販売価格の統制が行なわれておりました。その根拠としましては、価格法があったわけでございますが、その価格は、メーカーの申請によりまして国が決定した、こういうことでございますが、この統制は一九六三年の八月から廃止されておる。補助金も廃止になっております。それからイギリスは、統制はないのでございます。五三年にすでに廃止されておりますが、しかし、価格の決定は、英国の硫安連盟が自分できめておる。それで補助金が交付されておったのでございます。一九六三年から六四年の肥料年度におきましては、硫安トン当たりについて約二十ドルの補助金が出ております。現在では補助金が残っておるのはイギリスだけでございます。
そこで、多少推定が入るのでございますが、西独の場合は、どうもいずれも輸出ダンピングに対する補助的な色彩が強いわけでございます。国内価格を高くして、輸出価格を安くするという結果、国内価格に対して補助金を出すという色彩が強いわけでございますが、西独の場合は、農業政策としては好ましくないという議論がかなり強かったようでございます。たとえば、私の承知しているところでは、肥料に押しなべて補助金を出しますと、せっかくここに補助をしたいというときに、それほどやりたくないというところにも、いずれも平等にいく。極端な場合は、たとえば山岳農業地帯にはできるだけ補助金をやりたいけれども、草地地帯のあまり肥料を使わない、むしろ平地の農業地帯のほうによけい補助金がいくという結果となって、こういう補助金は望ましくないという批判がかなりあったようでございます。イギリスの場合は、むしろ不足払いの一つの手段として考えられているのではないかと私は考えておりますが、現在続いておるわけでございます。日本の場合は、西独の場合のように、補助金を出すということは、必ずしも重点的に農業のこの部面に補助したいというところに十分行き渡らない。また、輸出ダンピングといいますか、輸出の赤字に対する補助金としては、農業政策のうち外の問題として、それを農業補助金の形で出すことにかなりの問題がある、こういうふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/46
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047・坂村吉正
○坂村委員 そうしますと、ヨーロッパにおきましても、前には英国、西独ばかりでなく、何カ国か肥料に対する直接補助金というような形で、輸出ダンピングの足しにしておったというような状態があったのでございますが、それがだんだんと減ってきている、いま補助金を出しているのはイギリスだけだ、農業政策上、直接肥料に対して補助金を出すことはあまり好ましくないのではないかというような考え方で、減っている、こういうぐあいに了解して差しつかえございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/47
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048・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 西独の場合は、確かにそうでございます。イギリスの場合は、少し不勉強でございまして、不足払いの一つの手段、つまり、所得の補償的な意味があると思うのでございますが、これは私どもをして言わしむれば、その手段としては必ずしもよい方法ではないと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/48
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049・坂村吉正
○坂村委員 日本の場合におきましても、私はいろいろ統計数字等を見ますと、農業経営の中で現金支出のウエートが、先ほど御説明ございましたように、昔は大体三五、六%以上もあった現金支出のウエート、肥料のウエートがだんだんと下がってまいりまして、いまでは飼料にとってかわられ、二一%か二〇%くらいに下がってきているという実態もあろうと思うのでございまして、これに対して直接政府が補助金を出すといろ政策は、必ずしも合うのか合わないのか、これは御存じのとおりであろうと思います。ただ、そういう意見がありまするから、その点の政府の意見をはっきりただしておく必要があるというふうに考えて、私は聞いたわけでございます。
そこで、それでは結論として、外国のいろいろそういう直接的な肥料政策、肥料対策をやっておったものと、日本の現状とを見て、国内価格の面で、農民が使う価格の面において、これはいろいろ物価の関係なんかが違うでしょうから、直接これを比べてもたいして意味がないかもしれませんが、ヨーロッパの二、三の国と日本の農民が使っておる値段と、国内価格の面ではどういう状況になっておるかということを、もし数字がありましたら、お示しをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/49
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050・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 国内価格の比較でございますが、これは多少数字が古いのでございますが、六一年から六二年の肥料年度でのヨーロッパの価格をとりますと、西ドイツが六十三ドル六十、イギリスが五十六ドル十五、イタリアが四十八ドル四十九、フランスが六十一ドル七十六、ベルギーが五十ドル二十、オランダが五十二ドル九十三、アメリカが五十五ドル十で、これに対応いたしまする日本の国内価格は御参考に申し上げますと五十ドル十九でございます。したがって、これはそのまま比較することは多少の危険がございますが、この数字だけを比較いたしますと、イタリアだけが日本より安い、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/50
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051・坂村吉正
○坂村委員 六一年、六二年といいますと、肥料市場は、世界的にも日本の間でもだいぶ事情が違うわけですから、それをもって、それじゃ日本の肥料が安いんだ、こういうことをそのままいうわけにはまいらぬと思いますけれども、少なくともその当時において比べてみましても、一応ヨーロッパの諸国と日本の国内の値段とを比べてみて、日本は決して農業面でもひけをとらないのだ、イタリアはああいうモンテカチーニというものがございますから特別かもしれませんが、日本は大体世界的に見ましても国内価格というものが一番安いんだ、こういうぐあいに理解をして差しつかえございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/51
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052・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 おおむねそうであると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/52
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053・坂村吉正
○坂村委員 そこで、こういう方法もあるじゃないか、ああいう方法もあるじゃないか、こういうようなことで、今後の肥料対策についてのいろいろの議論をあげまして、政府のそれに対する答弁を求めたわけでございまするけれども、先般も久保田委員から御質問がございましたが、どうもこの新法は、見てみますと、独占資本にもうかるような方向でつくっている、ちっとも農民の側は向いていないじゃないか、こういう御質問があったわけでございます。しかし、そのとき、私は答弁を聞いておりまして、どうもなかなか、はっきりと国民の前に、そうじゃないんだ——ほんとうに農業のためを思っているのか、あるいは独占資本にもうかるように法律を考えておるのか、そこら辺が具体的にはっきりした御答弁が得られなかったわけでございますので、その点をこの際もう一度明確に御答弁いただきたいと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/53
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054・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 独占資本に奉仕するというようなことは、もちろん毛頭頭にないわけでございますが、私どもとしては、現在の実勢からいいますならば、内需を完全に確保できる。これはもう輸出をチェックすればできるわけでございます。毎月の工場別の在庫もわかるようにいたしますし、そういった資料は十分ございますので、もし内需に多少でも心配があるというようなことならば、輸出の面で直ちに事前にチェックできるわけでございます。そういたしますならば、実勢として値段が上がるという要素はないわけです。少なくともむしろ低位になっていくべき情勢にあると考えておるのでございます。その上に立って、つまり、完全に、需給の実勢そのものが、価格を低位にさせるだけの条件が整えられるということがここで確保できておりますので、その上に立って、妥当な値段をメーカーと消費者が両者とも納得ずくで話し合ってきめるのが一番望ましい、こういう認識に立っておるわけでございます。決して肥料資本のために新法をつくるということではなく、ただ、私どもとしては、農業の側から見ましても、日本の国内の肥料産業が健全な姿であってほしい。これはもう基本的に農業のためにもそうあるべきだと思うので、お互いに納得ずくで値段をきめてもらうのが一番よろしい、こういうように考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/54
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055・坂村吉正
○坂村委員 ただいまの御答弁ではっきりいたしました。私もこれは同感でございまして、農業のためになるということは、一面において肥料工業がやはり安定しなければいかぬ。両方のためになるような法律であってこそ、初めて私は新しい法律の値打ちがあるのだろうと思うのであります。そういう意味で、内需の確保ということに最重点を置きましてやってまいると同時に、肥料工業がやはりもうけなければ商売にならないのですから、ある程度もうかることはしようのないことかもしれませんけれども、両方相まって、内需の確保と低位安定、それから肥料工業の安定、その柱がはっきりと立てられてこそ、初めて新法の意味があるのだろう、私はこういうぐあいに考ええておったわけでございまするけれども、同じ答弁をいただきまして、非常に意を強ういたしたわけでございます。
そこで、時間も午前中はもうございませんけれども、そういう全般問題について、もう一点だけお伺いしておきたいと思いますが、肥料新法は、せっかく新法をつくったのに、どうもこれをいろいろ見てみますと、ほとんど中途半端で、これはこんなことじゃ困るじゃないか、こういう感じを持っている面があろうと思うのです。たとえば値段をきめる、こういった場合にも、きまらないときには調停に持っていくのだ、調停に持っていっても、最終的には政府がどうするのかというようなところもあまりありませんし、それからまた今度は反面から言いますと、せっかく自由意思だ自由意思だ、こういって、自由に取引をさせるのだ、こういうことを打ち出しながら、しかも生産費を調査して報告書をとる、そしてこれで当事者に示し、あるいは調停の場合にはおそらくそういうものは資料になるのですが、そうすると、やはり昔と同じようにコスト計算をやってぎしぎしやっていくことになりはせぬか、どうも新しい法律をつくっても、いかにも半分は自由のように、また半分はいかにもしり抜けになっておって、これは非常に不安じゃないか、中途半端なしり抜け法律じゃないか、こういう意見があろうと思うのです。そういう点については、これはどういうぐあいに考えたらいいのか。私も、現在の実情からいえば、こういう法律が一応中庸を得たところの法律じゃないかという感じはいたしまするけれども、その点そういう意見がございまするから、その点については、政府はこれはこうだということをはっきり答弁をしていただく必要があるのではないかと思いますので、この点ひとつ明快にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/55
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056・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 そういう御意見は、実態をどう認識するかという根本の問題でございますから、制度の面で、実態を従来と同じように脅えていれば、あるいは現行の二法がぴったりくるかとも思うのでございます。しかし、私どもは先ほど来るる申し上げておりますように、実態は非常に前進をしておる。それに即応した体制が制度に組まれていいのではないか、こう考えておるわけでございます。価格のきめ方につきましても、できるだけ自主的にお互いが納得ずくで、十分納得して合理化メリットの配分を決定するなり、そうすることが、むしろ円滑に運営させるゆえんであると私どもは考えておりますので、政府が介入することは最小限度にいたしたい。それなら、なぜ従来と同じように調査権などを持つのだ、こういう御意見かと思いますけれども、これもその制度を運用するにつきましては、調査権の使い方といいますか、調査をした結果の資料も、そういう運営に役立つようにいたしてまいりたいと考えるのでございます。従来と同じようにバルクラインがどうだ、そういう計算も、それは一つの参考としてはいたしますけれども、それでやるために調査権を持つのではなくて、話し合いが円滑に行なわれるための資料、あるいは政府がやむなく調停をいたします場合に、客観的に判断をするに必要な資料として、必要な限度において徴するということでございまして、たとえば資料の交付につきましても、話し合いを円滑にさせるために交付いたします。合理化メリットがどのくらい出ているかということがわかるに必要な程度の資料を交付いたしますが、あくまでも自主的にやってもらうことを目安にして運営してまいりたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/56
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057・坂村吉正
○坂村委員 もう一時になりますが、私、基本的な序論のところで、総括問題だけを伺っておるのでございまして、あといろいろ条文に入って、項目に入ってお伺いしなければならぬ問題があろうと思いますが、委員長、午前中の時間はいかがでしょうか。入り込みますとまた時間が延びますけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/57
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058・高見三郎
○高見委員長 よろしゅうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/58
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059・坂村吉正
○坂村委員 では自後の質問は留保いたしまして、午前中はこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/59
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060・高見三郎
○高見委員長 この際、暫時休憩いたします。
午後零時四十一分休憩
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午後二時二十九分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/60
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061・高見三郎
○高見委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
肥料価格安定等臨時措置法案について質疑を続行いたします。坂村吉正君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/61
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062・坂村吉正
○坂村委員 午前中は、大体今度の肥料の新法につきまして、総括的な問題あるいは基本的な問題について、政府の所信をただしたわけでございますが、以下、大体肥料新法に織り込まれておりますところの重要なポイントにつきまして、具体的な質問を申し上げたいと思います。
第一に、肥料需給の問題でございます。この新しい法律を拝見をいたしますると、第一条に、「この法律は、肥料の価格の安定を図るため、その取引を適正かつ円滑にするのに必要な措置を講じ、あわせて肥料の輸出を調整するため、その輸出体制を整備し、」こういうことばがあるわけでございます。午前中の質問あるいは答弁によっても明らかなように、肥料の需給が相当緩和をしておる、こういうことは事実でございましょうが、しかし、肥料問題がいろいろ議論されておりましても、肥料の需給が非常に安定をして、あるいは国内でもだぶついてまいったというような状況は、私の見るところでは、二、三年前の状況を言っておるんじゃあるまいか、現状ははたして肥料の需給が安定したといって安心をしておられるような状況にあるのかどうか、こういう点をまっ先にひとつお伺いいたしたいと思うのでございます。それは、肥料の輸出が非常に好況になりつつある。午前中にお伺いしましたとおり、輸出の価格の引き合い等も、数年前に比べますれば相当に値上がりをいたしておりまして、高いのは四十四ドル、四十五ドルというようなも下が、最近は出ておるという状況でございまするし、また世界的にも、どうも肥料が逼迫をしつつあるというような状況にあるんじゃないかという観測も行なわれておるのでございます。ですから、肥料の需給が安定して非常に安心だというのは、私は、二、三年前の状況でそういうことが言えるのであって、現状では必ずしも二、三年前とは違うのじゃないか、こういう感じがするのでございますが、その点はいかがでございましょう。輸出の現況の問題ともからめて、一緒にはっきりといまの需給状況について御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/62
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063・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 まず、数字的な面から申し上げますと、御承知のごとく、ア系肥料の国内需要は約三百万トンでございます。これに対してア系肥料の供給力と申しますか、生産の能力は五百五十万トンでございます。したがって、量的にはまず内需を充足するにあり余るということは申し上げられると思います。これは肥料二法施行当時とは全然様相を異にしておるわけでございます。しかしながら、それなら、内需に対してあり余っておるが、輸出を含めて見た場合どうであるかという問題でございますが、御指摘がありましたように、最近におきましては、輸出の引き合いが非常にふえております。今年肥料度、この七月に終わります肥料年度におきましても、当初計画いたしました輸出見込み数量よりも、相当オーバーする程度の船積みが行なわれる見込みでございます。また輸出の値段にいたしましても、昨年は平均しまして、三十六ドル程度でありましたものが、今肥料年度は年度全体を平均しますと、三十八ドルないし三十九ドルくらい、最近の引き合いの価格は四十四ドルをこえておるということで、輸出が活況を呈しておりますことは御指摘のとおりでございますが、まだ国内価格のほうが割高でございますし、また今度このような活況が続きますと、手放しでおれば、あるいは輸出を含めると需給が窮屈になるという事態も考えられないのではないのでありますが、そういうことも含めまして、輸出のチェックをやるようにいたしたわけであります。三百万トンの国内需要は十分確保できるように、輸出承認制を運用してまいる、こういうことにいたすわけでございまして、その点はまず内需の確保という面では私どもは全然心配はない、こう考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/63
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064・坂村吉正
○坂村委員 数字の上からいいますれば、ただいま経済局長の言うように、それは大体内需の確保は心配ない、余って、輸出もできるんだ、こういうことが言えると思うのですけれども、さて現実問題として、たとえば先般も韓国から肥料の要求がありまして、これはどうも要求どおりには出せないというような状況でございまして、そういうような形で、輸出の面と内需の面とをからめて全体で考えてみますと、どうもやはり輸出が相当強気といいますか、強含みでだんだん動いているというような状況でございますから、必ずしも安心しているわけにはいかないんじゃないかという感じがするのでございます。
観点を変えて、それじゃひとつお伺いしたいと思うのですが、現在の操業状況は大体どういう状態ですか。大体九〇%以上というか、フル操業をやっておるか。その点についてはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/64
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065・倉八正
○倉八政府委員 現在は大体九一%から九二%の操業率でございまして、これは化学工業としては最高の操業度でございます。
〔委員長退席、坂田(英)委員長代
理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/65
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066・坂村吉正
○坂村委員 国内の肥料工業が、化学工業としては最高の操業度を維持して生産をやっておる。しかも現在、外国から引き合いがありました場合には、これに応じられないというような事態が現実には起こっておる。こういうことは、先般社会党の久保田委員の質問にもございましたように、そういう空気自体が内需を非常に圧迫する、こういう心配につながるのじゃないだろうか、こういうことが大体常識として言えるんじゃないかと思うわけです。ですから、その点は、農民として、輸出が非常に好況になったということが、内需について一つの不安要因になっているんじゃないだろうか、こういう感じがするのでございまして、この点は決して不安はないんだ、こういうことを政府として言い切れるかどうか。言い切れるのであったら、そこをひとつ明確に言い切っていただきたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/66
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067・倉八正
○倉八政府委員 これははっきり言い切れるわけであります。もちろん、引き合いは殺到していることは、先生の御指摘のとおりでございまして、もしもこれに応じたならば、国内が、足りないということも事実でございます。したがいまして、政府としましては、国内供給が第一原則だという鉄則を貫くために、厳重なる輸出許可の規制をしております。農林大臣と通産大臣が一緒になってしております。それからまた、一木体制ということで、各地各様の引き合いが来ないように、硫安輸出株式会社というのをつくって、そこで一本にやっておる。したがって、どんなに輸出が殺到しましても、国内には絶対不安を与えないという措置をはっきりとっておるし、またそれは確言できる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/67
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068・坂村吉正
○坂村委員 輸出の御承認制ということで、どんなに強い輸出の要求があっても、内需はきちんと確保いたします、こういう明言で、非常にはっきりいたしましたが、ただ実際は、そういうことを明言をいたされましても、現実問題として、それじゃ内需量というものをどれだけに見ておくか、相当ゆとりを持って見ておかぬ限りは、輸出のほうが相当そういう好況な状態が続けば、経済的な状況からいえば、自然の間にやはり内需が圧迫されるのだ、こういうような不安はやはり幾らか残るのではあるまいか、こういう感じがするのでありまして、内需量をどういうぐあいに見ていくか。あとでいずれ具体的に御質問を申し上げたいと思っておりますけれども、内需量については、私は、輸出の承認をする場合には、需要の見通しにおきましても、相当ゆとりを持ってといいますか、内需に圧迫がかからぬように、そういう配慮のもとにこれは考えておくべきじゃあるまいか、こう考えておりますが、この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/68
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069・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 御承知だと思いますが、内需を優先的に確保いたしますために、輸出承認制は、ア系肥料についての需給見通しに基づいて行なうことにいたしております。これはほぼ現行二法の場合と同じでございますが、需給見通しを立てます場合に、過去十年間内需の見通しを数字をつくってまいったわけでございますが、大体内需には大きな狂いはございません。コンスタントに三%前後の伸びを毎年示しておるわけでございます。ここに大きな狂いがない。したがって、三%か四%あるいは二%の前年度よりも増を見込んで、まず需給見通しを立てることができる。狂いがあってもきわめてわずかな狂いである。問題は、むしろ在庫にございます。これは在庫は予想よりも減る場合もあり、ふえる場合もございます。これは毎月在庫の調査をいたしておりますし、また生産数量の調査も、報告もとっております。したがって、国内において何月にどれだけの生産が行なわれ、また在庫があるかということは、しっかり政府がつかんでいけるのでございます。それに基づきまして、現在在庫がどれくらいあるから、いま輸出を承認することは内需に圧迫を加えるかどうかということは、明確に掌握できるわけでございます。多少そこにゆとりを見る必要がある。つまり、いまは大体硫安でいいますと、一カ月ないし一・一カ月ぐらいの在庫を見込みますけれども、情勢のいかんによっては一・二カ月にする、あるいは一・三カ月にする、そういう方途を講じますれば、非常に輸出の引き合いが強くても、もちろんチェックしますから、それが国内に影響しませんけれども、気分的に多少緊迫するようなことがあった場合、そういう措置をとることによって、十分安心感を与えることができると思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/69
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070・坂村吉正
○坂村委員 物の需給と価格の問題は、ムードによって支配される面が非常に多いと思うのであります。したがいまして、いかにも内需がぎりぎりのところで押えられておって、そして輸出の承認というものが行なわれますると、全体のムードとしては非常に窮屈だ、こういう感じがもし起こってまいりますれば、これは価格のつり上げ、そういうようなものに非常に影響をしてまいるんじゃないかというふうな感じがするのでございますので、その点はひとつ運用上十分の配慮をお願い申し上げたいと思う次第でございます。
それから、その問題についてはそれで一応終わりますが、いま輸出が非常に好況だ好況だといわれておる状況が、それはどういう原因でいまの輸出の好況が出ておるのか、あるいはヨーロッパの寒波で農業生産が後退をしまして、その回復のためだとか、あるいはソ連で化学肥料を相当つぎ込んでひとつ農業生産を上げていこう、こういうようなことのために、共産圏で相当肥料の需要が起こっておるというような、いろいろな問題があろうと思うのですが、政府としていろいろ外交機関やなんかを通じて御調査があろうと思います。そういう意味で、いまの輸出の好況というのは、大体どういう原因があって、おもな原因はどれだということを、少しはっきりお答えをいただいて、それではそういう原因によっていまの輸出の好況が起こっておるのだから、これは大体どの程度まで続くのだろうかという見通しをお持ちかどうか、その点についてお答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/70
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071・倉八正
○倉八政府委員 御質問の活況の原因は、先生御指摘になったような原因でございまして、私は大体二つあろうかと思います。一つは、おととしの十二月から昨年の二月に至る欧州諸国の寒波で、発電余力が非常に落ちた。そのために需要が多かった。こういういわゆる需要増加、それと、生産国の、たとえばフランスにおけるストライキ、あるいはドイツにおける硫安の一部転換、こういうもので、供給力が減ったというのが第一番の原因。それから第二の原因というのが、いわゆる各国の、日本の輸出先である農業国が施肥の増量をはかっておる。特に昨年の十二月九日のソ連の発表におけるように、肥料化学工業五カ年計画ないし七カ年計画、あるいは中共における肥料の需要の増大、そういうふうな需要面の増と供給面の減から、現在のいわゆる輸出の不均衡というものが起こったわけでございます。
しからば、どのくらいこういう状態が続くかということでございますが、これは先生も御存じのように、非常に見通しがむずかしいのでございまして、たとえば暗い面をとりますと、日本が出しておる需要国というのが、ほとんど自給体制に入りかかっておる。台湾は大体予定どおりいけば、去年の十二月から自給に入る。それから韓国においても、その三割くらいの程度は自給ができるという見通しだったわけであります。そういうようなことで、供給先の自給体制による輸出減という暗い見方と、それからまた、特に中共はじめインドネシアあたりの肥料の膨大な需要増大というような明るい面と、これで両方非常にむずかしい判定でございますから、われわれとしましては、いま業界のほうに対しても調査をさせておると同時に、政府としましても、各大公使館を動員しまして、その間の事情を的確に把握するために調査をさせております。この一カ月なり一カ月半すれば、その結果が出てくるだろう、そう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/71
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072・坂村吉正
○坂村委員 大体の事情はわかりましたけれども、どういう原因であろうにしろ、過去のいろいろの経過を見てまいりますると、国際市況というものは、いろいろと変わってまいります。御承知のように、昭和二十九年の肥料二法発足当時に比べて、また数年後には非常な値下がりになって、そのために、輸出会社に赤字が累積したという状況になってきた。これではたいへんだというので、今度また新法をつくろうということで考えてまいりますると、また今度は輸出が非常に好況になってきて、事態が変わるということで、おそらくその事態事態によって、国際市況あるいは貿易状況というものは変わってまいろうと思います。そういう場合に、これは非常に硬直した制度であっては、なかなかそれに対応することはできないのではないかと思うのでございまして、そういう意味で、輸出のそういうあらゆる変化に対応しまして、内需優先という思想でもって内需を確保し、それから輸出についても混乱のないように持ってまいる、こういうようなことがぜひとも必要なことではあるまいか、こういうぐあいに考えておるのでございまするが、そういう意味におきまして、新しい法律案については、いままでの法律からいえば、相当弾力性のある法律であろうと思いますので、そういう意味では、今後の事態にもわりあいに対応しやすい法律ではあるまいかというふうに私は考いておるのでございます。その点を一応申し上げて、もう答弁は要りませんが、そういうぐあいに私も理解をいたして、先に進みたいと思います。
そこで、この肥料の新法におきましては、先ほど第一条を読みましたように、輸出の調整というものに一つの柱を立てております。価格の安定をはかるためということは、これは当然先に書いてありますけれども、その次には、輸出の調整というところに一つの柱を立てておるのでございまして、現行法では、需給の調整をはかって、しかも価格を低位に安定させよう、こういう考え方で、いまの二法は組まれているわけであります。しかし、新しい法律案におきましては、価格の安定ということをまっ先にいって、あわせて輸出の調整もやってみましょう、こういうような言い方をしておるのですが、価格の安定をはかる場合には、需給の安定というものが根本になるのではないか。需給の安定があってこそ、初めて価格の安定というものも期せられるのであって、そういう意味で、先般久保田委員の質問にもありましたように、政府はどうも今度の新法で需給調整という問題はほったらかしにしてしまって、需給調整の責任を逃げているのではないか、こういう御質問もございました。しかし、それに対しまして、私伺っておりまするところ、政府の答弁は非常に明快を欠いております。ですから、いま価格の安定をはかろう、こういうことを言っておる場合に、需給調整という問題については、政府は、法律にはことばは使ってないけれども、基本的な考え方をどういうあぐいに考えていこうとしているのか、その点について一応お伺いをいたしまして、その問題についてはまたこまかくひとつ伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/72
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073・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 確かに、御指摘のとおり、価格を安定させるためには、基本的に需給の安定をはかることが必要でございます。つまり、需給調整ということをやることによって、根本的には価格の安定ができるということでございますが、今回の法律案におきましては、結局現行の二法においてもそうであったわけでありますが、多少現行の二法とやり方は違いますけれども、需給調整のおもな眼目は、輸出の調整にあるということにあったわけでありますし、今後もあると思うのございます。つまり、生産力は十分持っておる。国内需要をオーバーする。だから、外に出過ぎないようにチェックすることは、需給調整の基本であるということで、その需給調整のための輸出調整については、まず需給見通しを政府が持って、その需給見通しを政府が立てることによって、妥当に輸出調整をやっていく、そこで需給の安定がはかれる、こういう考え方に立っておると申し上げてよいかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/73
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074・坂村吉正
○坂村委員 価格の安定をはかるためには、需給の調整がぜひとも必要だ、こういうことは、おっしゃるとおり、これはもうはっきりいたしました。そうして需給調整というものは、これだけ生産力がふえてきたのであるから、輸出承認制というものをきちんと運用すれば、これはもう需給調整は可能だ、こういうことは答弁によってはっきりしたのでございますが、私も現状においてはそのとおりだと思います。しかし、問題は、先般も社会党の久保田委員から御質問がございましたが、需給調整の面で政府が責任をのがれているじゃないかということは、たとえば地域的な非常なアンバランスができるとか、あるいは時期的なアンバランスができるとか、そういうような問題について、政府はどういう手を打てるのだろうか、これをみんな農業協同組合なりあるいは業者の団体にまかしておくのではないか、責任のがれをしているのではないか、こういうお話があったのでございます。しかし、それは値段こそ一応中央できめてはおりますけれども、これは実際の販売業者の責任において、いろいろ時期的あるいは地域的な調整がはかられているというのが現状ではないかと思います。ですから、今度の新法の運用の場合におきましても、需給調整という文句はとにかく、一応法文の第一条にはないのだけれども、輸出調整によって全体的の需給調整をはかる、しかし、国内における地域的な問題、あるいは時期的な問題の需給調整については、従来どおりやってまいれば大体いくという見通しをお持ちでございますか。それとも、これについても、今後も必要があれば政府が指導いたしますとか、あるいは関与いたしますとかいう答弁を、私はこの前聞いておるのでありますから、もし必要があれば指導するとか関与するとかいうことは、どういうことをやるのか、私の感じからすれば、ここまでこういう状態になってくれば、もういままででもそうなんだから、国内の需給の時期的あるいは地域的の問題というのは、農業団体なり販売業者なりが当然責任を持って需給調整を果たし得る段階にきているのではないだろうか、こういう感じがするのでございますが、その点について、この前の答弁では少し不満がございますから、はっきりした答弁をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/74
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075・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 全くお話のとおりだと思います。現行二法のもとにおいても輸出調整かやった、つまり、三十二年ごろまでは調整保管というものを念のため政府の指示でやったことはございますが、最近六、七年というものは、それもやらなくなっておったわけでございます。したがって、現行二法のもとにおいても、輸出をチェックすること、それに対して政府が責任を負うことによって、何ら国内に心配がなく、価格も安定してまいっておったのでございます。まして生産力がさらに大きくなっておる今日、輸出調整をほぼ従来どおり行なえば、国内にそういうような問題はない、こう申し上げてよいかと思うのでありますが、同時に、いまもお話がありましたように、農業協同組合の組織、特に全購連のような強大な組織と力を持っているところは、組合員のためにそれだけの能力を持っておりますし、任務も持っておるはずでございますから、十分その辺の調整はできるかと思うのでございます。それでもなお、突発的な天災とか、肥料工場が爆発したとか、火災を起こしたとか、そういうようなことで不時の災害でもあったような場合、何らかの心配があるならば、これは法律があろうとなかろうと、当然に行政上の任務として政府が責任を持って指導し、農家に不安を与えないように措置しなければならぬ、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/75
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076・坂村吉正
○坂村委員 おっしゃる趣旨はよくわかりました。私も同感でございます。たとえば不時の災害、天災地変とか、そういうようなことがございまして、ある工場がつぶれてしまったというような場合に、時期的あるいは地域的にアンバランスが起こってくる、そういう場合に、行政指導でできるということは当然であろうと思いますけれども、しかし、そういう場合に対処いたしまして、いまの法律では、そういうほんとうの最後の手段としての需給調整を、政府が権限を持ってやり得るという権限の留保が一つもないじゃないか。たとえばいよいよ困った場合には生産の指示をやるとか、あるいは出荷の指示をやるとか、そういう需給調整上の伝家の宝刀を政府としては持っておってもいいじゃないか、こういう議論もあるわけでございます。ですから、行政指導でできると言いますけれども、行政指導でできない場合だってございます。これは経済上の問題もございますから、そういうようなことで伝家の宝刀を持っておって、いよいよという場合にはいつでも出荷の指示もできますよ、生産の指示もできますよ、こういう体制をとっておくことが、農民に対しては非常に安心感を与えるのではないか。現行法においては、生産の指示とか、出荷の指示とか、いろいろございます。今度の新法にはそういう点がございません。その点はどういうぐあいにお考えをいただいておるか。心配ないというふうにお考えをいただいておるかどうか、そこをひとつはっきりと御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/76
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077・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 まず基本的に、国内のア系肥料の生産力は、国内の需要を四割も上回った能力を持っておるということにわれわれ注意する必要があると思うのであります。したがって、どこかの一工場が、労働組合の争議でもよろしゅうございますが、そういうことで一時ストップした、あるいは災害のために相当長期にわたってストップしたというようなことがあっても、能力として、また供給の数量として、国全体としてはまず不安がない状態であると申し上げてよいと思うのであります。したがって、そういった不時のことがあった場合に、もしも何らか有力な行政上の手段が必要であるといたしますならば、一番効果的で有効な措置は輸出の停止である。輸出を停止すれば、文句なく国内に生産された肥料は流れてまいります。十分以上に流れてくる。その輸出停止の期間の長さをどのくらいとるかということは、行政上の判断の問題であろう、こう思うのであります。それで、現行二法で生産指示とか出荷指示の規定がございましたが、これは発動する機会がなかったわけであります。必要もなかったわけでありますが、かりにそういう必要がある事態があったことを想定いたしましても、その場合は、強制的な指示とかいうものだけで事が済むとは思わないのでございます。いまお話のあったように、経済的な裏づけ、むしろ補償とか融資とか、そういうことによって、無理してこっちへ出荷してくれ、こういうことを政府が指導しなければ、ただ、強制的に出せ、こう言っただけでは、政府としての責任は果たせないと思います。万一そういうこと——私はもう想像できませんけれども、そういう事態が起きたとすれば、むしろ、そういう出荷指示とか生産指示とかいうよりも、そういう経済的の緊急な措置が必要であろう、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/77
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078・坂村吉正
○坂村委員 ただいま申し上げましたような事態はなかなか起こるまいというような御判断でございますが、あまり突っ込んでもどうかと思いますけれども、たとえば、かりに労働組合運動なんか強化されて、それで合化労連全部ストだ、こういうことでも起こった場合に、一週間、十日生産がストップしたというようなことがあるいは起こらぬとは限らない。労働組合運動がだんだん強化されてまいりますと、そういうふうなことはある程度今後——それはまあ労働組合も、合化労連といえども良識的になってきておりますから、おそらく農民を困らせるような、そういうストライキなどということはあるまいと思いますけれども、そういうような事態がかりに起こった場合には、これは政府としても、やはり相当腹をきめてその問題は考えておかなきゃいけないだろう。これは万一という場合でありますが、そういう事態もあり得ることを予想に置きまして、もし行政指導をするということであれば、行政指導の面におきましても相当積極的にその問題は考えておく必要がある。こういうぐあいに思いますので、その点は答弁は求めませんけれども、そういう事態がもう全然ないとは言い切れませんから、その点ひとつ十分頭に置いて、今後の行政指導の面を御検討おきをいただきたいというふうに私は御要望を申し上げておきます。
次に、需給の問題とからんで、これは非常に事務的な問題でございますけれども、法律の上で、需給計画というものを現行法では立てている。しかし、今度の新法では需給見通しといって、何かいかにも大ざっぱなような感じを与えるというのが一般の見方でございます。これは、現在需給計画といっているものと、新法で需給見通しといっているものと、内容においてははたして違いがあるのかどうか。もし違いがあるとすれば、どういう違いがあるのか、あるいは違いがないとすれば、なぜ需給見通しなんという新しいことばを使ったのか。そういうような点についていろいろと議論があるようでございますので、この点もひとつ明確にしておく必要があろうと思います。その点についてひとつお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/78
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079・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 ごもっともでございます。需給計画と需給見通しは一面において同じであり、一面において違っております。御指摘の御疑問はごもっともでございます。それで、需給見通しと需給計画とは、政府として考えております数字の内容は同じ性質のものでございます。従来どおり前期からの繰り越し在庫、それから内需、輸出の需要、それから調整、これは内需に含めるかどうかということはありますけれども、数字としては、いずれにしても結果は同じでございます。
〔坂田(英)委員長代理退席、委員
長着席〕
それから後期への繰り越し在庫、ア系肥料全体についてそういう数字をつくるわけであります。その数字の基礎になるデータも同じでございます。したがって、内容的には同じである、こう申し上げてよいかと思うのでございますが、ただ、計画と言わずに見通しと言いましたのは、従来の需給計画は、調整保管指示あるいは生産指示、それから出荷指示というような、先ほど来問題になりました統制的な行政行為の基礎になる性格を持っております。それで、そういった統制的な行政行為のもとになるためもありますので、肥料審議会に必要的諮問事項として必ず諮問してきめておったわけであります。そこに計画という名前を今回の見通しという名前に変えた気持ちの上での理由がある、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/79
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080・坂村吉正
○坂村委員 どうもはっきりしないのですが、肥料審議会に諮問をしてきめた、そういうものであるから、需給計画というのであり、今度のものは肥料審議会に諮問しないで政府が立てるのだから、これはぼんやりした需給見通しということばを使ったのだ、そういう御答弁でございますが、どうもその点はっきりいたしません。肥料審議会とどういう関係があるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/80
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081・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 審議会にはかったということは、一つの形式における相違でございますが、審議会にはかったゆえんは、場合によっては生産指示なり出荷指示、それから調整保管指示の根拠にもなる数字であるということで、そこに政府の行政行為に対する計画性の根拠としての色彩が非常に強かった、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/81
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082・坂村吉正
○坂村委員 それでは、需給計画ということばを需給見通しということばに変えたのは、内容についてはこれはたいして変わりない。ほとんど同じ内容であるけれども、いまこういう肥料の事情にかんがみて、大体できるだけ自主性を持たしていこう、こういうような考え方のもとに進んできておるのであるから、そこで、いわゆる昔のような固苦しい需給計画なんということばを使いますと、かえって統制的な色彩が非常に強くなって、これはよくないじゃないか、こういう配慮のもとに、ことばにまで気を配って需給見通しということばを使ったのだ、こういうぐあいに了解して差しつかえございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/82
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083・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 大体そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/83
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084・坂村吉正
○坂村委員 いままでは現行法においては需給計画を公表するということでしたが、これは私は輸出政策上からも非常に問題があったと思う。それで需給計画がいろいろ外国にわかっていく。どれだけの生産があって、どれだけの輸出が日本ではできるのであるかということが、外国にもう手にとるようにわかってしまうという状況であって、私は、輸出の立場からいって、非常に不利を招いておったのじゃないかと思う。この点は従来も非常に議論のあったところでございますけれども、今回需給見通しを公表するということばは、法律にはございませんし、これは公に発表する意図は全然ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/84
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085・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 公表することはございません。従来も公表にかえて関係者に通知することはできるという規定がございまして、関係者に通知をしておったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/85
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086・坂村吉正
○坂村委員 その点については、一つの考え方としては、私、通商政策上の一つの非常な進歩であろうと思います。そこで、その当事者に通知をする、こう言いますけれども、関係者ですか、当事者ですか、その当事者とか関係者とかいうのは、どの範囲のものを考えておるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/86
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087・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 大体肥料の生産あるいは取引に関係ある主要な中央団体でございます。例をあげて申し上げますれば、全購連とか硫安協会、そういった中央団体でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/87
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088・坂村吉正
○坂村委員 あとで問題は出てまいりましょうけれども、いわゆる中央において自主的に基準価格をきめる折衝をいたします、話し合いをいたします、その当事者という意味ですか。それとも、それには参加しなくても、たとえば全購連と肥料業者とメーカーとが協定をいたしまして、その場合に、別にあるいは商人系統のものもおりますし、いろいろの関係者がおるわけですが、そういうようなところまで通知をするというふうにお考えでありましょうか。その辺をはっきりしておく必要があろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/88
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089・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 価格協定の当事者になるかならないか、必ずしも関係ございません。まあ大体そういうことが多いわけでございますが、現在やっておりますのと大体変わらないと思います。現在行なっておりますのは、日本硫安輸出株式会社、全国購買農業協同組会連合会、全国肥料商連合会、有限会社中央肥料元売連盟、肥料輸出入協議会、日本硫安工業協会、塩安肥料協会、燐酸肥料協会、これだけに通知いたしておりますが、今後も大体同じに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/89
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090・坂村吉正
○坂村委員 いままで問題がございましたように、公表するということは、輸出の面からいっても、非常に不利を招くという問題もございましょうが、その当事者、関係者に通知をするといった場合に、そういうような形で大体関係するあらゆるところに通知をするということが、はたして通商政策上いいのか悪いのか、あるいはそのことが、もう公表したと同じようなことになってしまって、どこにでも漏れてしまっておる、そういう結果はいままで起っておりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/90
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091・倉八正
○倉八政府委員 貿易の立場からいえば、おっしゃるとおり、だれにも知らさないのが一番いいのでございます。それで、当事者というか、特に硫安会社だけぐらいが知っておけば一番いいのでございますが、しかし、この法律のたてまえが、最も重要な農業の基本資材である肥料について農民の方々を安心させるということが、また一つの大きい要請でございますから、そういう意味におきまして、いま農林経済局長が答弁しましたように、団体に知らせるわけでございます。したがいまして、その方々から漏れて、結局公表したのと同じ結果になるのじゃないかというような場合があろうかと思いますが、われわれとしては、なるべくそういう方々だけが御存じになって、公表してもらわないことを望むわけでございます。ただ、一つの公表のオーソリティと申しますか、権威としまして、政府がみずから発表するのと、それからまあ言わず語らずのうちに漏れたのとは、第三者に与える権威というものが非常に違うかと思います。したがいまして、日本政府発表、こういうのと、何か知らず漏れたというのでは、これは外国から見る場合の受け取り方というのは相当違うことは、十分お認めいただけるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/91
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092・坂村吉正
○坂村委員 国内の農民から見れば、大体肥料の需給見通しというものがどうなっているかということをはっきり知るほうが非常に安心であろうと思います。しかし、それにもかかわらず、いままで需給計画というものは公表するのだということでやってまいったのを、一応関係者にだけ通知をいたします、こういうぐあいに直した以上は、一つの目的があるわけですから、国内の需要者が安心すると同時に、輸出の上においても不利を招かないように、こういうことで、両方の利益のバランスが必要であろうと思うのでございます。それは法律上どうこうというわけにはまいらぬと思いますので、その点はよくわかりますけれども、どうぞひとつ、今後運用してまいります場合には、その両方の利益のバランスがよく調和がとれますように、十分行政指導の面で御配慮をいただく必要があろう、こういうぐあいに考えまするが、その点について結論としての答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/92
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093・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 十分御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/93
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094・坂村吉正
○坂村委員 需給の問題で、もう一つお伺いしておきたいのは、政府は硫安の輸入の自由化をやろう、こういうことを言っていますが、自由化はいつやろうということをお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/94
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095・倉八正
○倉八政府委員 大体政府の計画としましては、この自由化というのは、本法廃止からできるだけ近い時期、まあ通産省としましては、大体本年の十月を予定しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/95
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096・坂村吉正
○坂村委員 午前中から国内の肥料工業の実態と外国の肥料事情等も伺ったわけでございますが、あの御答弁によって、硫安の自由化をやることによって日本の肥料工業は困る事態になるようなことはございませんか。それともう一点、自由化によって安い肥料が入ってまいる。それじゃ、農民に対しては、全体として自由化が肥料を下げるという方向にはたして動くかどうか、そういう点についての見通しをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/96
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097・倉八正
○倉八政府委員 自由化によって与える影響というのはいろいろあろうと思います。しかし、それをわれわれは踏み切るわけでございます。いま第一の御質問の、困らないかということでございますが、これは硫安ないしア系の生産国がいわゆるダンピングで日本に出しまして、日本に安い、しかも不安定な価格で売ってくるということになりますと、日本のメーカーとしては困るわけであります。またこれを使われる農民の方としましても、あるときはなるほど安い値段できた、ところが、またある場合には高くなった、やれ予期していたとおりに硫安が入らないということになりますと、自由化によって安定した価格で入るならば別でございますが、いまの世界の事情は、御存じのように、決して安定した価格では入っておりません。したがいまして、使われる方にプラスだけの問題かあるいはマイナスのほうが大きいかということは、いろいろ問題があろうかと思います。ただ、共通した利点というのが一つありますのは、いろいろ硫安の引き合いがありますと、外国から絶えず安い価格で日本に流れてくるだろうと思います。そうすると、現実に日本にものが入らなくても、外国の相場は幾らだ、アメリカの場合はこうなっておるのだということになりますと、その面から日本の価格を引き下げさせるという点は必ず出てくる、こういうふうにわれわれは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/97
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098・坂村吉正
○坂村委員 いま軽工業局長の答弁がございましたけれども、いまの実情からいって、自由化を急いでやったところで、それじゃ値段が下がるのだというような影響が具体的に日本に起こるだろうかどうだろうか、その点については私は非常な疑問を持っておるわけですけれども、もう一度その点についてはっきりした御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/98
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099・倉八正
○倉八政府委員 総体的に言いますと、ものを自由化してその効果が出てくるのは、大体一年ないし一年半というのが自由化の常識でございます。たとえば日本が自由化をしたということになりますと、外国はどういうリアクションを受けるだろうかということを考えるのが、つまり先決問題だろうと思います。そのために、たとえばアメリカが、日本は自由化したのだ、今後自由に硫安は出せるのだということになりますと、アメリカの硫安というのは、御承知のように大部分が回収硫安でありますから、そうしますと、回収硫安をたとえば日本の輸出のみに向けるために何万トンかの増産をするというようなことは、観念的に考えられると思います。そうしますと、大体肥料というのは、いま例外なく各国がダンピングをやっておりますから、その意味におきまして、運賃をかけましても、アメリカのダンピング価格次第では、日本の現行価格よりも安いものが入る危険性というのが考えられるのではないか、こういうふうにわれわれは推測しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/99
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100・坂村吉正
○坂村委員 そうしますと、政府はいま肥料の自由化をやろう、硫安の自由化をやろうというお考えを持っておるのだけれども、それは現状においては、肥料工業にもそう大きな影響を与えない、それからむしろ国内価格に対しては、ある程度引き下げ要因のムードというか、そういう影響を与えてくるだろう、したがって、そういうことによって肥料工業も国内の農業も困らないし、また有利になっていくというふうに考えてさしつかえございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/100
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101・倉八正
○倉八政府委員 大きい流れとしては、いま先生の御指摘のとおりだとわれわれは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/101
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102・坂村吉正
○坂村委員 需給の問題については、大体その程度にいたしまして、価格の問題について、数点お伺いをいたしたいと思います。
先ほどからお話のように、現行の肥料二法のねらいは、御承知のように、バルクライン方式によって値段を積み上げまして、そして合理化メリットを価格に反映させてまいる、そして値段を下げてまいるというのが一つのねらいでございますし、また内需と輸出会社を遮断いたしまして、そして輸出価格の赤字を国内に転嫁をしない、こういうのが、大ざっぱに言えば、非常に大きな一つの柱であったろうと思うのでございます。それに対しまして、いろいろお話がございましたように、あるいはメーカーのほうでは合理化意欲が阻害されるというような不満もございましたし、また農民といたしましても、もっともっと合理化が進んだものが十分国内価格に反映されないのじゃないか、こういうような不満もあったろうと私は思うのです。全体としてはいい影響を与えてまいったというふうに見ていいと思います。そういういろいろの不満は、現行法についても私はあったのじゃないかというふうに考えておるのでございます。そこで、今度新法におきまして、価格をきめるのは、当事者間で、自由意思に基づいて相談の上できめさせよう、こういうようなことでございますけれども、その際に、価格をきめる場合の相談の材料として、新法におきましては、その資料として、政府のいろいろ調査したものを提供する、こういうことになっておるわけでございます。そうなりますと、やはり問題は、コストに非常に依存してくるんじゃないか。需給のバランスを考えながら、両方が自由な意思で相談をしていこうというような状態まできている。肥料の事情がそういう状況まできている。それにもかかわらず、資料を提供し、そういうものを材料にして相談する、こういうことになれば、やはりどうもコスト主義、いわゆる原価主義で話し合いをするのだというような印象を非常に与えるのじゃないか。そうすると、いままでの制度とあまり変わりばえがしないのじゃないか。自由にする、自由にする、自由意思でやらせると言いながら、政府がコスト調査をやって、資料を出して相談させるなら、やはりコスト、コストということで、コストに依存してくるというようなことになってしまいはしないか、こういうような議論がある。そういう点について、私は、運用のいかんによってはそのとおりになってしまうのじゃないかという心配もございますので、その点は、政府が提供する資料というのは、どんな資料を提供するか、そして実際値段を相談する場合に、従来のようにコスト主義が中心になっていくという見通しであるのかないのか、そこら辺の問題について、政府の考え方、今後の見通しをひとつお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/102
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103・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 実質的な価格の話し合いの背景としては、何と言っても需給の実勢であろうと思います。需給の実勢が緊迫しているという場合には、ムードとして値上げをしたいとかというような空気が出るのもやむを得ないということも出てくるのでございますが、まずその根本を、そういう状態をないようにするのがこの法律の主たる眼目でございます。さらにその上に、自主的に話し合う場合には、やはりコストだけでなくて、その需給の実勢をお互いに分析する。そして論じ合う。それからコストにつきましてもやはり論じ合うのがほんとうであろうと思うのであります。両方ともそれぞれ責任者が出て、納得のいくまで話し合うわけでございますから、コストについても、この項目はどうしても最近は値上がりしている、しかし、こっちは下がっているのじゃないかという議論をやはり尽くすのが、話し合いのほんとうの姿であろう。そうしてお互いに納得してここで手を打とう、こうきめていくのが、自主的話し合いというものであって、したがって、資料といたしましては、まず相互に出し合うというのが本来まず行なわれることであろう。しかし、やはりそこには政府が出す資料も一般にあるのがほんとうでございますから、需給にしましても、たとえば米の生産費にいたしましても、農家経済の現況につきましては、大体は政府が調査する。そこで、メーカーのコストでございますが、政府はメーカーのコストを調査いたしますが、米の生産費でもそうでございますけれども、これは各個人あるいは個別企業の機密に属するようなものは出すわけにはまいりません。したがって、大体におきまして、コスト関係については、どれだけ合理化が進捗したかということが想定できるような資料を提供いたしたい。それで、もちろん相互にも資料を出し合うと思いまするが、そのほかに政府が第三者として提供した資料に基づいて話し合いを円滑にしてまいる、こういうことにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/103
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104・坂村吉正
○坂村委員 そうしますと、いままでのようにいわゆるきちんとしたコストというような資料を出すというのじゃないのだ、コストといいますが、いろいろ値段をきめるのに判断ができるような必要な資料を出すのであって、それも最初にはとにかく当事者間でお互いに資料を出し合って相談するのだ、そうしてどうしてもそのときに政府の資料がほしいという場合に、第二義的に政府が資料を出すのだ、こういうお考えと了解していいのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/104
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105・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 時間的に先とかあととかいうわけではございませんが、考え方としては、お互いにまず出し合って議論し合って、それで納得がいけば一番いいと思うのでありますが、しかし、やはり多くの場合、政府がつくった第三者としての資料というものが貴重な材料になりますから、その合理化が大体どういうふうに進んでいるかということの資料を提供するわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/105
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106・坂村吉正
○坂村委員 その点については非常にはっきりいたしましたので、次に進みたいと思います。
先般久保田委員の御質問でも、合理化が今後進んでまいりました場合に、合理化メリットはどういうぐあいに配分されるのだろうか、こういう御質問があったわけでございます。この点は、その問題に関連をいたしまして、輸出赤字を国内価格に転嫁しないということが今後保証できるか、こういう質問がございました。この点を私伺っておって、どうもはっきり答弁が了解できない点がございましたので、少し明確にお答えをいただいておきたいと思うのです。と申しますのは、いま農業団体、農民の一番の心配は、何といっても国内価格と輸出価格と開きがあるのじゃないか。現状は、いかに輸出が好況であって、引き合いの値段が上がってまいっておるといいましても、そこは差があるんじゃないか。そうすると、今後の情勢からすれば、輸出会社できちんとこれが遮断できない以上は、やはり何といっても国内価格に赤字が転嫁されるんじゃないか、こういう心配を持っている向きが非常に私は多いんじゃないかと思う。ですから、その点は現状からいってどうなのか、それから考え方として、輸出赤字不転嫁という、そういうふうな原則がとれるのかどうか、そこら辺をひとつ明確にしておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/106
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107・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 いまの点、非常に重要なポイントでございますから、通産省のほうからも答弁があると思うのですが、農林省といたしましては、二つの面があると思うのであります。まずその前に、輸出の赤字は国内農民が負担すべきものではない、こういう前提に立っての話でありますが、一つの問題は、まだ合理化が進むに従って値段が下がる、合理化メリットが出てくるのにつきまして、御指摘のように、どう配分するかという問題であろうと思います。これは半々がちょうどいいじゃないか、半分は値下げして農家の利益になり、半分は企業に帰属させて、企業自身の蓄積なりあるいは人件費の増高に充てるとか、いろいろあると思いますが、とにかく合理化そのものを進める基本にしていく、こういう半々という数字的な言い方は、きわめて抽象的な問題であって、そのときの話し合いで、これだけは引き下げに向ける、これだけは企業に帰属させる、こういう点での話し合いが行なわれ、また政府としても調停などを行なう場合に、そういったものが目安になるということでございます。それからもう一つのポイントは、現行二法でとにかく内需バルクライン方式で、いままで赤字非転嫁の原則で現在の価格があります。現在の価格より引き上げれば、来肥料年度においては赤字の負担をさせたという形に一応なるわけです。これはコストの計算をやらなければなりませんが、とにかくそういう形が出てまいる。それは防止したい。それはこの法律による是正命令とかそういうような措置がございます。でありますから、まず、現行価格より上げさせることは原則的に認めない。これは政府の調停の場合におきましても、是正命令を出す場合においても、そうあるべきだと考えております。それから先は合理化メリットの配分の問題であります。今後は毎年発生する合理化のメリットをどう配分していくかということを、まず相対立する当事者が十分話し合って、そこで妥当な数字を出していく。そこに不当な面が出てまいりますれば、これはやはり是正命令の対象として考えるということになると思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/107
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108・坂村吉正
○坂村委員 非常にしつこいようでございますけれども、非常に大事な問題でございますから、この点は重ねてお伺いしておきますけれども、たとえば現状の値段は赤字を転嫁しておりません、したがって、これ以上上がらなければ赤字の転嫁ではございません、こういう御答弁のように私は伺ったわけでございますけれども、コストというものは時期によって違います。年によって違いましょう。それから輸出値段というものも、時期によって変わってまいるわけでございまして、かりに現在の値段よりも上がらなくても、実態的には輸出赤字が転嫁される、こういう事態だってあり得ると思う。そういうぐあいに、現在よりも上がらなければもう輸出赤字転嫁はないのだ、こういうことを理論的に割り切っていいものかどうか、その点にちょっと疑問がございますので、さらにもう一度答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/108
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109・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 これは御指摘のように、いま三十八肥料年度でございますが、三十九肥料年度のための生産費の調査はこれから行なわれるわけでございます。これはうっかりすると、諸物価高ということで、三十八肥料年度より高い原価計算が出ないとも限らないわけでございます。したがって、現在よりコストが上がった場合に、それだから値段を上げるという場合に、赤字の転嫁が行なわれたということは必ずしも言えないと思います。しかし、そういうこまかい議論は別にしまして、大まかな考え方といたしまして、現行の価格は、内需バルクラインでそういった特別な結果が出ない限り、赤字非転嫁という計算が行なわれてきておるわけでございます。で、コストにおいてそういう変化がない限りは、現行価格より上げれば、これはまず不当なものとして是正命令を出すという政府の考え方でございます。それで、今後においても何らかそういう不当な要素が出てくれば、是正命令の対象にいたします。これは是正命令を出す前に話がつき、あるいは調停が成立すればけっこうでございますけれども、そういう事態が起こった場合は、農業に不当な影響を与える、こういう考え方をとり得ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/109
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110・坂村吉正
○坂村委員 まことにくどいようでございますけれども、私は与党であっても、八百長質問をやっておるのではございませんので、くどいようではございますが、その点はもっとはっきりさせておく必要があろうと思うのでありまして、たとえば三十九年度のコストを調査しました場合に、三十八肥料年度で七百三十八円二十一銭ですか、コストが十円下がりますといった場合に、十円の合理化ができておる、そのときに輸出が相当下がっておって、値段は二円下がりました、三円下がりました、こういう場合には、現実問題として輸出の赤字転嫁ということになるんじゃないかと思うのですが、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/110
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111・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 はなはだこまかい御質問でございますが、それはやはり論拠のいかんによると思うのでございます。三円を値下げに使って、七円を企業に帰属させるということについて、相応の理由があれば、それでもし話し合いがつけばなおけっこうでございますが、政府として是正命令を出さないということもあり得ると思います。また逆の場合、七円値下げに使って、三円しか企業に残さなかったという場合も同じケースであろうと思います。これはやはりそこで双方から出された論拠、それから政府自体が調査した結果等から判断する、そこに一般原則として、十円の合理化メリットが出たから五円ずつ分けろ、こういうことはなかなか言いがたいことであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/111
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112・坂村吉正
○坂村委員 非常にその点は問題としては大きな問題であろうと思いますけれども、いまの値段よりも上がらなければ輸出赤字の転嫁はしていませんという、そういう大ざっぱな考え方自体が、私はおかしいであろうと思うのです。そうじゃなくて、原則として、頭は輸出赤字の転嫁はいたしませんという、そういう指導方針、考え方はけっこでございます。しかし、現実問題として、需要者団体と生産者団体が話し合いの上できめることであるから、そのときに両方納得の上で話がつくものであれば、幾分は輸出赤字転嫁があったって、あるいはそういう点は、合理化メリットの配分についてはお互いの自主性によってきめていく問題だから、両方の利害はこれは存しないのだ、このくらいまで割り切らなければ、この法律を施行する意味がないんじゃないか、こういうぐあいに感ずるのでございまして、輸出赤字の不転嫁というものを非常に機械的に考えてまいることは、私は、運用の上において非常に支障を来たすのじゃあるまいか、こういう感じがいたすのでございますが、その点はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/112
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113・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 御質問が多少ことばのあやのような感じもしないではないのでございます。そこは私の答弁とそう変わってはいないと思うのでございますが、私どももいまの価格だけでものを言っているわけではないので、いまの価格がまず一つの問題である。その次には、今後の合理化メリットの配分において不当な配分が行なわれれば、やはり是正はしなければならない、こういう考え方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/113
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114・坂村吉正
○坂村委員 その問題は、いろいろ輸出赤字の不転嫁という議論がございますけれども、私は、現行法を頭に置いて輸出赤字の不転嫁という議論が出ておるという点が非常に多いんじゃないかと思うのです。したがいまして、需給事情もこういうぐあいに変わって、消費者とメーカーが相談の上で値段をきめていくという場合には、機械的に輸出赤字の不転嫁ということばかりにとらわれないで、今後の合理化メリットをいかに両方で相談しながら配分していくか、こういうことによっておのずからきまってまいる値段に落ちつけば、それが両方の利益になるのだ、こういうぐあいに割り切って考えたほうがすっきりするんじゃあるまいか、私はこういう感じがいたしますが、どうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/114
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115・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 そのお話のお気持ちは十分わかりますが、どうもニュアンスの違いとして、私ども多少とらわれるようでございますが、合理化のメリットの配分についても、これはそのときに応じた事情の違いはあると思いますが、気分的には不当な配分が行なわれてはならない、こう考えております。なお、この点については通産省も同じ考えであろうと思いますけれども念のために通産省のほうからお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/115
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116・倉八正
○倉八政府委員 私は、観念論だったら大いにこの問題は論じてもいいと思います。というのは、日本の輸出のありとあらゆるものが国内価格よりも高いものは一つもございません。ありとあらゆるものが全部輸出価格が安うございます。そうした場合に、輸出赤字の転嫁というのは、ありとあらゆる物資にあると思うのです。肥料の場合、いま坂村先生の御指摘のように、合理化で十円下がるべきのに、それをたとえば五円の下げで両方の手打ちが行なわれた。私が言っているのは、松岡さんの意見と絶対同じでございますが、その場合に、それを合理化メリットというか、あるいは従来の観念からする赤字の転嫁というか、私は、実際はせんじ詰めればそこの問題だろうと思うのです。これは非常に割り切っていいんじゃないかと思います。従来はその場合には、たとえば十円というのをそのままとってしまった。ところが、今度の法律というのは、まあ両方が立つような方向でいこうじゃないかということは、結局合理化メリットをどう配分しようかというようなところに帰するだろうと思います。その場合に、たとえて言えば、五円ずつを分け合ったという場合に、それが合理化メリットというか、またそれがいま坂村先生の御指摘のような、たとえば輸出赤字の転嫁というか、その辺のニュアンスの違いだろうと思います。
それから、そもそもこの硫安の赤字の問題についてメーカーがどう考えているかということでありますが、それはメーカーとしましては、こういう政治的に大きい物資である場合に、従来国内に転嫁するということは大体考えておりません。というのは、いま高くなりましても大体まだ四ドルくらいもマル公と違います。それをそのまま転嫁するとすれば、いまの肥料価格よりも十何円上がるはずでございます。ところが、そういうことはだれも考えておりませんし、また政府としましても、そういうことは絶対させない。したがいまして、さっき私が言いましたように、前段のように、合理化メリットの配分というところでこの問題を解決するというのが、一番現実の問題であるし、また肥料の価格安定になるのではないか、こういうのが観念論としてのお答えであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/116
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117・坂村吉正
○坂村委員 いろいろニュアンスの相違はございますけれども、大体基本方針といいますか、考え方としては、輸出赤字の転嫁あるいは不転嫁という問題は、合理化メリットをどう配分するかという問題と大体同じような問題でありますし、そこで、需要者と生産者とが話し合いの上で、基本的には輸出赤字を国内に転嫁しないのだ、こういう考え方を頭に置いて相談をやってまいる、それから政府の指導についてもそういう頭でやってまいる、こういう点は確認をいたして差しつかえございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/117
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118・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/118
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119・坂村吉正
○坂村委員 あともう一つ、メーカー・カルテルを今度認めることになるわけでございますが、もちろん、価格を相談してきめまして、相談がまとまった範囲内でのカルテル、こういうぐあいにここには書いてあるのでございまして、その点は私は非常に問題はないと思うのです。しかし、現実問題といたしまして、先ほど申しましたように、会社によっては非常にコストの違う会社があるわけでございますから、メーカー・カルテルを認めるということになった場合には、あえてどちらかといえば全体の工場を包含できるような、そういう値段をメーカーとしてはオファーするでしょうし、そういうことであれば、実際問題としては、値段があるべき姿よりも、引き上げられたものになってきまるのじゃないか、こういう議論が非常にあろうと思うのです。その点について、そういうことはないのだ、あるいは別の理由があって、たとえそういうことがあっても、現状からいえばやむを得ないのだ、それが自然なんだ、こういうようなことであるのかどうか、そこら辺について伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/119
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120・倉八正
○倉八政府委員 われわれとしましては、いまのようなどのメーカーもカバーできる——たとえば総生産費と申しますか、そういう考えは大体持ちません。もちろん、どの方式でやるかということは両者間の話し合いでございますが、現実問題としては、いま坂村先生の御指摘のような総生産費というので決定されるということはないと、これはもう私は確言できると思います。と申しますのは、いま御指摘のような七百三十八円何がしでございますが、総生産費でやりますと、二十円以上現行価格よりも高くなると思います。こういうことは、この肥料のいままでよってきた経緯、あるいは肥料の重要性ということにおきまして、そういう価格で両方話し合いをされ、またそれがその結論的なものに導かれるということは、見通しとしては言えない。したがいまして、この両方の話し合いの内容というのも、メーカーと購買者である全購連初め肥料商の方の良識的な話し合いが行なわれる、こういうふうに私は確信いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/120
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121・坂村吉正
○坂村委員 その点は、私も、現状の実態からいいまして、また本日のいろいろの答弁からいたしまして、安心をいたしておるのでございますが、その際、政府が届け出価格の是正や禁止をやる、こういう条項があるのでありますが、その場合といたしまして、農業、肥料工業の健全な発達に支障を与える場合は、是正命令を出したり、是正措置をやるのだ、こういうような条文になっておるのでございます。農業や肥料工業の健全な発達に支障を与えるというのは、非常に抽象的なことばでございますけれども、具体的に政府として是正命令をやることは、非常に重大な問題でございます。一度メーカーと販売業者団体と相談してきめた値段を是正するということになれば、これは非常に重大な問題でございますから、その是正をするという場合に、農業や肥料工業の健全な発達に支障を与える場合というような抽象的な考え方で、抽象的な条文のもとに政府が非常にこれを恣意的にいつもやられたのでは——両方ともかなわぬだろうと思う。その場合の基準といいますか、考え方はどういうところに置いておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/121
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122・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 この文章は、こういう独禁法の排除を行なう場合に、例文といえば例文でございます。しかしながら、第一項で「農業又は肥料工業の健全な発展に支障を与える」というのは、この場合特別に入っておると申し上げていいわけでありますが、どういう場合にというのを一々列挙するのも、なかなかむずかしいのでございますが、先ほど申し上げておりますように、現行の価格よりも引き上げるというようなことがありました場合には、これは農業の発展に支障を与える、こう考えて是正命令を出す場合を想定いたしております。
それから「肥料工業の健全な発展」という点は、むしろ通産省から答えていただいたほうがいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/122
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123・倉八正
○倉八政府委員 松岡局長の答弁に尽きると思いますが、肥料工業の健全な発展ということは、常識的にいえば、だれが見てもこんなに下げられて肥料工業がやっていけるかという、そういう価格をわれわれは指しておるのでございまして、いわゆる非常識な価格低下、こういうことを言っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/123
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124・坂村吉正
○坂村委員 その点は、現実の事態に遭遇してみなければ、私は、具体的はこういう場合にこうですということは、御答弁ができないのが良心的であろうと思うのです。したがいまして、全体の経済情勢、農業情勢というものを見ながら、そのときの値段を大体判歯をして、そうしてこれは適当であるか、適当でないかということを判断するというのが、実情に合うのじゃないかと思うので、いま具体的にそれじゃどういうのかと詰めて御答弁を要求することはいたしません。その点一応了解をいたしましたけれども、できるだけ両方の当事者の自主性を尊重する、こういうたてまえでございますから、ぜひともそういう意味で、両者の相談ができたものについては、できる限り自主性を尊重してまいる、こういうことが必要であろうと思うのでございます。
それに関連をいたしまして、たとえば相談ができない場合には政府が調停をやる、こういうことになっておるわけでございますけれども、調停をやる場合に、政府の調停の基本的な態度は、いま言ったように、たとえば是正命令を出すというような場合と同じような考え方で、農業及び肥料工業の健全な発達に支障を来たすことのないような意味で調停をするのだ、そういう基本的な考え方でおやりになるのかどうか、その点ひとつお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/124
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125・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 全く御指摘のような考え方で調停はいたしたいと思います。なお、できるだけ自主的に話し合いをやってもらうように、調停に政府が介入するということはできるだけ避けて、自主的にまとめられるものはまとめてもらうという考え方で指導してまいりたい、こう考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/125
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126・坂村吉正
○坂村委員 その点は了解をいたしました。新しい法律においては、当事者が自主的に相談していく、こういう新しい方式を考えたわけでございますから、いつでも必ず調停に持ち込まれてしまうというような状態が起こったのでは意味がございませんから、なるべく事前に、政府の調停なんというものに持ち込まれないように、両省の関係業者に対する指導をやっていく必要があろうと思うのでございます。その点についての政府の御覚悟のほどを了解しておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/126
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127・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 全くお話のとおりでございまして、政府としては、とにかく自主的に話し合いをまとめてもらうように指導もし、協力もしたい。調停というものは、ほんとうに両者の話し合いがデッドロックに乗り上げて、これではどうしても話し合いが無理だというとき、しかもそれが農家の一般の取引に非常に混乱を来たすような場合にいたすという意味で、したがいまして、調停に対する基本的な考え方も、できるだけ両者の主張を聞いた上で妥当な判断をいたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/127
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128・坂村吉正
○坂村委員 調停に対する政府の考え方がはっきりして非常にけっこうだと思います。同感をするのでございますが、調停に持ち込まれました場合に、調停のやり方としてはどういうぐあいにやってまいるか。具体的に政府が値段をきめて出すのか、あるいは調停について別の審議機関か何か持たなくてよいのかどうか、政府が独断でやっていってよいものかどうか、そういう点についてはどうか。
もう一つ、関連いたしまして、肥料審議会というものがございます。肥料審議会において値段をきめます場合には、一応諮問をしてきめておったわけでありますが、そういう相談をするような機関が要らないのかという点を、簡単でけっこうでございますから、もう一度。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/128
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129・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 調停機関というものはつくらない考えでございます。また、審議会のように相談をする、諮問をする機関もつくらない考えでございます。つまり、政府の責任で直接調停に当たる、こういう考えでございまして、その際には、まず両者の主張を聞きまして、言い分のもっともな点は取り上げ、間違っている点は間違っているではないかということで、両者の主張の調整を第一として話をやっていきたい。それでもなおできないという場合には、客観的に政府が別途の判断を下すということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/129
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130・坂村吉正
○坂村委員 いろいろ審議会や委員会を諮問機関として持ちました場合に、たとえば肥料審議会は非常にりっぱな役割りをいままで果たしてきたと思うのでございますけれども、かりに利害の相反する当事者が入って、そういうふうな審議会をつくった場合、なかなか意見がまとまるものではございません。そういうような意味で、調停の場合におきましても、政府が審議機関をつくらないという言明は、非常にはっきりしてよいと思いますが、そのかわり、政府が両当事者の意見を聞いて、きぜんたる責任ある態度をとってもらいたいと思うのであります。この点は、この新法案に非常に敬意を表する次第でございます。
次に、調停が不調の場合にどうなるかという問題があろうと思います。いま伺いましたように、不調の場合ということはないのであって、最後には政府がきめるのだ、こういうことがあればそれはよいのでございますが、政府の決定ということはございません。政府が調停をします、こういうことでございまして、両方の話を聞いて、両方の話を合わしていくのが調停でございまして、政府の決定という条項はございませんから、不調の場合には、いつまでも話がつかないのじゃないか、こういう感じがするのでございますが、その場合に何らかの対策がありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/130
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131・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 私どもは、調停に持ち込まれる場合を最小限度にとどめるようにまず指導してまいりたいと考えておりますが、さらに不幸にして調停に持ち込まれましても、調停は十分成功すると考えております。乳価などの調停が非常に難航した先例がございますので、御心配の向きがございますけれども、私どもは、いままでの肥料の価格問題というものは、もう相当に熟練したといいますか、りっぱな経験と組織を持った中央団体同士の話し合いであり、そこには良識をもってまず問題を円滑におさめようという努力が必ず行なわれると思っております。さらに政府自身も肥料の行政については何十年の経験を持っておりますから、調停は最後の場合でございますが、大体調停によって解決し得ると考えております。万一の場合というのは、その措置としては特に用意はしておりませんけれども、結局最後まで調停に努力する、こういうことであると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/131
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132・坂村吉正
○坂村委員 覚悟のほどは非常にごりっぱでけっこうでございますけれども、相手のある仕事でございますから、必ず調停が成功しますということが言えるかどうか。それからもう一つは、肥料というものは時期がございます。調停が非常に長引くことによって時期を失する。そういう問題で、むしろ需要者のほうがじりじりしてまいりまして、需要者のほうに不利なような状況が起こってまいるというようなことがないとも限りません。そこで、そういう場合に、新法には何らの救済事項もないけれども、仲裁機関でも置いたらどうだろうか、こういうような意見もないではないわけでございます。第三者あたりで仲裁をする、そういう機関を置いたらどうだ、あるいは政府がその場合には価格を決定するとか、価格を指示するとか、そのくらいの強い権限は留保しておってもいいのじゃないかというような意見もございますけれども、一応先ほどの答弁で尽きているとは思いますが、新たにそういう意見もあちらこちらにないわけでもございませんから、その点についても、政府としてそういうものが要るのか要らないのか、要らないのなら、先ほど言ったようなやり方でやっていけるという見通しがあるのか、その問題もあわせて、その点をもう一度はっきりと御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/132
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133・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 この法律案をつくります場合に、そういう論議は幾らか確かにございました。いまでもそういう論議はございます。しかし、私どもは、政府の調停なり仲裁に執行力を持たせるということ、あるいは別途の仲裁裁定機関を設けるということを検討はいたしましたけれども、その必要がないということを終始確信してまいったわけであります。というのは、仲裁裁定にいたしましても、現在の政府の持っておる肥料行政に関する指導力というのは、仲裁裁定とたいして変わらないと私どもは確信いたしております。直接にはいろいろな措置が——ここには書いてございませんけれども、輸出の調整という権限、あるいは報告を徴収する、調査を執行する権限——政府が自分自身で調査していろいろな資料を持っておりますから、政府としての説得力もありますし、輸出に対するチェックという権限もございます。そういうことから言いまして、仲裁裁定のような機関がなくても、政府としては同じ程度の指導力は発揮できる、こういう確信を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/133
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134・坂村吉正
○坂村委員 政府の決定権とか指示権とか、そういうものを留保しておく必要はないか、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/134
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135・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 全体としての考え方が、自主的にまとめてもらおう、できるだけ政府にたよらないで、政府が介入しないでまとめてもらおうということを基礎にいたしておりますので、単に指示権とか、そういうものはなまじっか持たないほうがいい。われわれとしては、実際の必要があれば最後まで指導を加えてまとめさしてみたい、こういう考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/135
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136・坂村吉正
○坂村委員 肥料工業及び生産者団体と農業協同組合等に対しまする政府の現在の指導の状況から申しまして、あるいは業界に対するいろいろな財政資金を出しておるとか、指導しておるとか、あるいは農業協同組合の監督権をいろいろ持っているというような面からいえば、いまの御答弁のように、何も政府が決定権を持つとか、あるいは仲裁裁定機関を置くとかいう必要はなくて、政府の実力に信頼をして調停が成功させられる、こういうぐあいに私も見通しを持っておるのでございますけれども、その点、ただいまの御答弁で非常に強い御覚悟のほど、また見通しのほどを伺いまして、安心をいたしたわけであります。調停が長引くことによって、農民がかえって不利になるというようなこともございますから、その点十分指導力を発揮されまして、ぜひとも遺憾のないように御指導をお願いいたしたいと思う次第でございます。
それに関連いたしまして、審査の問題でございますが、ここに資料の交付とか報告徴収とか立ち入り検査という権限をこの法律でも留保しております。その内容でございますが、たとえば報告徴収等につきまして、ことばとしては、現行法と同じことばを使っておりますけれども、大体これは現行法と同じような内容で考えておるのか、あるいは政令に譲っておりますけれども、政令の内容としてはいまどんなことを考えてまいるのか、その点を一応お伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/136
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137・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 生産数量、出荷数量、在庫数量等の調査は、従来どおり実施したいと思うのでございますが、生産費につきましても、おおむね従前のとおりやりたいと考えておるのであります。これはたいへんな調査でございますし、また生産費というものは、毎年詳細に調査しなくても、これは農業の場合とかなり違うと思うのでございますが、主要な項目の変化等をつかまえれば済むような場合もございます。そういうこともありますので、おおむね従前の生産費調査を行ないたいと思いますが、簡素化できるものは簡素化してまいりたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/137
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138・坂村吉正
○坂村委員 時間もあまりないようでございますから、次に、別の問題に移りますが、メーカー・カルテルを新しく認めてまいって、先ほど値段のつり上げにならないかという質問を申し上げたのでありますけれども、実態論からいいますと、メーカーによっていろいろ違いがございます。たとえば回収硫安だ、副生硫安だ、そういうものが主になっておるメーカーもございますし、そういうものは本来からいえば、農協という非常に強大な組織力のあるところが個々のメーカーと話し合ってやっていったほうが、値段は下がるのではないか、農民のためには有利になるのではないか、そしてそれは農協の中でプールをしてやっていったらいいのではないかという議論があろうと思います。そういう議論を聞いております。そういう議論、考え方については、農林省はどういうぐあいに考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/138
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139・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 全購連等を通じないで、直接単協あるいは経済連、特に最近のように大型の単協ができましたので、直接隣接の硫安メーカーから買い取ったほうが安くなるという場合が、実際問題としてはあると思うのです。現在でもある程度の調整が行なわれておりますが、したがって、全国的に何も安定価格とかいうようなものをつくらぬでもいいじゃないかという議論は、その議論としてはあり得ると思うのですが、それならば、こういうふうな両団体の間で安定価格をきめないほうがいいかと申しますと、かりにそういうことにすると、値段は下がる場合も確かにあると思うのです。それは生産費計算などをやるよりは、需給の自主性にまかしておいたほうが、ぼっと下がって、かえってその場は農家がいいというような場合が出ることもあると思うのですけれども、やはりそれではメーカーのほうも混乱いたしますし、流通も混乱する場合がある。かえって逆にその後には暴騰がくるというようなことで、非常に不安定な、農家にとっては迷惑な状態が出てくると思います。そういった意味から、必ずしもそういう議論には賛成いたしがたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/139
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140・坂村吉正
○坂村委員 現状からいいますれば、非常に強い統制をやってまいったわけでございますから、農業協同組合の組織力というものが非常に極大なものがあるにしても、一応やはり中央で基準になるような値段をきめて、そして統制といいますか、組合の調整にも資するようにしてやってまいる、こういうことが現状の段階としては実情に即するんだ、こういうお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/140
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141・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 そうでございます。現状において、確かにいま組織力を使った、いわば基準的な、安定した価格をつくらないということは、流通の秩序を乱し、また非常な不安定をもたらすおそれが非常に大きいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/141
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142・坂村吉正
○坂村委員 その点は了解をいたしましたので、次に移ります。
簡単に、この法律では、特定肥料として、大体硫安を考えているというふうに考えて差しつかえございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/142
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143・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 さしあたり硫安を考えておるわけでございます。硫安がきまりますと、成分価で尿素がきまり、あるいは塩安がきまるということで、硫安がきまれば、高度化成は別といたしまして、アンモニア系の主要肥料は、基準となるべき価格水準が出る、こういうことで考えておりますが、しかし、この規定そのものは、今後において、たとえば尿素を加え、あるいは過燐酸石灰を加えるということを妨げるものではございません。そういう必要があれば、この規定を使うということは考えられるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/143
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144・坂村吉正
○坂村委員 その点について、現在肥料の全体の消費は八百万トンくらい、過燐酸からカリから入れればあると思いますが、その中で、化成肥料のウェートが非常に大きい。だんだんふえてまいりまして、おそらく四百万トンくらいになっているんじゃないか、半分くらいは化成肥料にいっているんじゃないかと思いますけれども、化成肥料は、これはどうも実際問題としては野放しの状態、そういうものについて、たとえばこういう法律でやっていくか、あるいは別に、農業団体あるいはメーカー等の間で自主的にもう少し話し合いを進めてまいるか、そういう点について、化成肥料のウエートがそれまで大きくなってまいった現在においては、化成肥料について政府がそっぽを向いているということは少しおかしいのではないかという感じがするのですが、化成肥料の問題についてはどういうぐあいに考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/144
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145・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 確かに御指摘のような問題がございます。しかし、高度化成の重要性が増してまいったのでございますが、この価格を政府がきめたりするということは、銘柄が非常に多いわけでございますし、またその成分がいろいろ違う、こういうことから、一つ一つまた違った値段になってしまう。そうかといって、高度化成の規格を定めるということは、現段階において若干無理があると考えられるのでございます。そういうことで、基準となるべき高度化成の価格というものはなかなかきめがたいのでございますが、最近は高度化成も若干値段が低下しつつあります。従来ややもすると、単肥よりも割り高であるという傾向が強かったのでございますが、高度化成の生産が非常にふえてまいりましたので、だんだん下がってまいり、また中間マージンも幾らか節約される傾向が出てまいりましたので、もう少し推移を見た上で、なかなかむずかしいとは思いますが、もし必要あれば対策もとりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/145
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146・坂村吉正
○坂村委員 だんだんと農業の近代化も進んでまいりますし、それから農業の働き手も、現状では三ちゃん農業という状態になっておるのでございますので、肥料自体についても、今後やはり相当姿が変わってまいると思うのです。ですから、いまはそういう状況でございますけれども、化成肥料、特に高度化成の消費はどんどんふえてまいるのではあるまいかと思いますので、ぜひ化成肥料の問題については十分な調査を進めまして、今後あるいはこういう法律にのっけるのがいいかどうか、非常に複雑でございますから問題でございます。しかし、それが農民に低位安定の価格で入手できますように、政府として今後検討すべき問題があると思いますので、その点を重ねてもう一度お伺いいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/146
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147・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 御趣旨の点については、十分検討いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/147
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148・坂村吉正
○坂村委員 次に、新しい問題でございますが、流通問題について一、二点ちょっとお伺いしておきたいと思うのです。
いまの農協系統と商人系の肥料の取り扱いについて、政府の指導方針といいますか、基本方針をひとつはっきりさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/148
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149・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 私どもとしましては、もちろん、農協が農家のために十分な活動をしてもらうことは望んでおるわけでございますが、それだからといって、ほかの商業者の活動を排除していくというようなことは考えていないのでございます。両々相まって競争して、妥当な競争を行なって、農家にできるだけ安い肥料を円滑に供給してもらいたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/149
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150・坂村吉正
○坂村委員 従来から農協系と商人系の肥料の取り扱いの問題は非常に大きな問題でございますが、現状では農協系が大部分を占めておると思います。商人系におきましても、お話のように、活動分野を相当持って働いておられるのでございまして、二、三年前でございますか、商人系の一つの中枢の機関として、有限会社ですか、中肥連というものができたと思いますが、これが商人系とのつながりになっておるのじゃないかと思うのです。その後、中肥連の動き、それから実際の取り扱いの実情、そういうものはどういうぐあいになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/150
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151・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 中肥連は、元売りの八社の出資によります有限会社でございます。硫安をメーカーから共同購入しまして、それぞれの商人系に配給しておるわけでございますが、その扱いの実績は、三十七肥料年度では、硫安のトータルで中肥連が一五・七%でございます。合成硫安だけでいいますと一八・九%であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/151
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152・坂村吉正
○坂村委員 商人系統も農協系統も、これは両々相まってという御答弁がございました。しかし、いま商人系統としては組織が非常にはっきりしていないじゃないか。現実の組織はどういうぐあいになっておるのか。そういう商人系統も、ほんとうに農協と一緒になってやっていくのであれば、これはもう少し組織がきちんとしないとやっていけないのではないかと思うのです。と申しますのは、中央では農協が大体六〇%、しかし、末端では農協が八〇%というのが現在の実情であろうと思うのであります。そうしますと、全購連の扱ったものは、末端では農協と商人とはほとんど入り組んで一緒になっておるというようなこともあろうと思うのでありまして、それが現状としてはいいのか、あるいはもう一歩進んで、商人は商人として協同組合組織をもっと強化して、商人の協同組合として、やっぱり全購連と相まってやっていく、こういうような組織を考えるのがいいのか、その点についてはどういうぐあいにお考えでございますか。また、協同組合ができておるとすれば、どういう実情になっておるか、その点を明らかにしておいていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/152
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153・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 問題の点だと思います。商人系はやはり商人系として、自分の組織力を強化して、肥料の円滑な、かつ合理的な取り扱いをやってもらうようにしてもらいたいと考えるのでございますが、いままで中小企業団体の組織に関する法律に基づいて商工組合の設立の見込みのあるものは十件でございまして、認可済みのものは九件でございます。大体十九件くらいのことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/153
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154・坂村吉正
○坂村委員 融通の問題につきましての大体の政府の考え方もわかりまして、その他、いろいろこまかい問題についてもまたお伺いしたいことが一ぱいあるのでございますけれでも、もう相当時間も進んでおりまするので、大体結論といたしまして、二、三の点についてはっきりと答弁をいただきたいと思うのでございます。
第一に、いろいろ午前中からの質疑を通じまして、いろいろの御答弁がございました。結論といたしまして、新法を施行することによって、今後肥料の値段は下がるのか上がるのか。下がるということが言明できますかどうか。この点は大臣に質問するのが至当だと思いますけれども、先般久保田委員も質問はいたしておりましたが、あらためてひとつはっきりとした答弁をお伺いしたいと思います。一言でけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/154
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155・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 下がります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/155
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156・坂村吉正
○坂村委員 下がるという言明をいただきまして、私、非常に農民のために喜ぶものでございます。
次に、この肥料の新法の政府原案に対しまして、いままでいろいろ各方面から私、意見を伺ってまいりました。しかし、この新法につきましては、農協系統機関といいますか、農業団体におきましても、また商人団体におきましても、それからメーカーの皆さんも、この法律が現状においては一番いいところだ、いろいろのことはいままで議論をしたんだけれども、この法律が現状においては最大公約数で一番いいんだ、これをやっていくことによって、現状では肥料の合理化も進み、肥料工業も安定し、農業生産資材としての肥料も低位安定で、今後も下がって、そうして確保されるんだ、農民は安心ができるんだ、こういうぐあいな考え方ということを聞いておるのでございますけれども、この三団体といいますか、農業団体、商人団体、それからメーカーの三者の意見は、この法律案をいまのところ絶対支持だ、こういうぐあいに聞いておるのでございますけれども、この点は政府にお伺いするのもどうかと思うのでありますが、政府はいままで聞いておる範囲内では、その点はいかがでございますか、これもはっきりとひとつ簡明なお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/156
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157・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 農林省の承知しております範囲では、お話のとおりでございます。私どもも十分団体の意見も聞き、議論も尽くして立案いたしておりますので、私どももそう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/157
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158・倉八正
○倉八政府委員 メーカーの側もそのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/158
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159・坂村吉正
○坂村委員 いま、農業団体、商人団体、メーカー、あらゆる肥料の関係者が、とにかくこの法律案に対しては賛成である、支持である、こういう意見を伺って、私は非常に心強く思うのでございまするが、今後この肥料の法律を運用してまいります場合には、ぜひともこの関係者はそういう理解のもとにこの法律を支持し、そうしてこの法律の運営に協力をしてまいる、こういう体制が絶対必要であろうと思うのでございます。したがいまして、いままでのようにあるいはメーカーと消費者と非常な対立感情を持つとか、あるいは商人と農協が非常な対立感情を持つとか、そういうことではなくて、お互いに相互の立場を理解し合って、自主的に話し合いを進めて、そうして肥料の円滑な供給と価格の安定をはかってまいるのだ、こういうことが私は絶対必要であろうと思うのでございまするので、この点について、ぜひとも今後政府としては特段の御指導をいただきたいと思っておる次第でございます。この点、特に要望を申し上げておきます。
次に、農協の問題でございまするけれども、この際、私は、農業協同組合としては、やはり何か大きなものを柱にいたしまして、そうして農協の組織の強化ということが、一番有効な組織活動になるんじゃないかと思うのでございますので、たまたまこの法律がいままでのような非常に統制の強化された法律でもないし、必ずしも自由な法律でもない、そのちょうど中間のところの、自分でやろうと思えばできる、こういう法律でございまするから、特に農林省におきましては、農業団体に対しまして、この際、この法律が施行になりましたら、この法律を一つの柱といたしまして、農協活動、農協の組織の強化の点について、ぜひ積極的な御指導をいただきたい、こういうぐあいに私は考えるのでございますが、その点、経済局長からお答えをいただいておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/159
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160・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 全くごもっともでございます。農林省といたしましても、農協の合併等の方法で農協組織の強化を進めておるわけでございますが、さらに御趣旨に沿うように努力いたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/160
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161・坂村吉正
○坂村委員 もう一点。先ほどから申し上げまするように、本法は非常に自由裁量の面が多いわけでございます。政府が自由裁量あるいは指導というような面の非常に多い、変わった法律でございまするから、これが今後運用につきましては、政府が非常に恣意的にわたって、業界あるいは農民に対しまして非常な不都合なことの起こることがないように、この指導につきましては十分今後配慮されたい、こういうことを私、最後に御要望申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/161
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162・高見三郎
○高見委員長 次会は明二十日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後四時三十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X04819640519/162
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