1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年五月二十七日(水曜日)
午前十時四十四分開議
出席委員
委員長 高見 三郎君
理事 小山 長規君 理事 坂田 英一君
理事 谷垣 專一君 理事 長谷川四郎君
理事 本名 武君 理事 赤路 友藏君
理事 足鹿 覺君 理事 芳賀 貢君
伊東 隆治君 池田 清志君
大坪 保雄君 加藤 精三君
仮谷 忠男君 吉川 久衛君
小枝 一雄君 坂村 吉正君
笹山茂太郎君 舘林三喜男君
寺島隆太郎君 中山 榮一君
野原 正勝君 八田 貞義君
藤田 義光君 細田 吉藏君
三田村武夫君 湊 徹郎君
森下 元晴君 亘 四郎君
角屋堅次郎君 栗林 三郎君
中澤 茂一君 楢崎弥之助君
西村 関一君 野口 忠夫君
松浦 定義君 湯山 勇君
稲富 稜人君 中村 時雄君
林 百郎君
出席国務大臣
農 林 大 臣 赤城 宗徳君
通商産業大臣 福田 一君
出席政府委員
公正取引委員会
委員長 渡邊喜久造君
農林政務次官 丹羽 兵助君
農林事務官
(農林経済局
長) 松岡 亮君
通商産業事務官
(軽工業局長) 倉八 正君
委員外の出席者
専 門 員 松任谷健太郎君
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五月二十七日
委員宇野宗佑君、藤田義光君、亘四郎君及び野
口忠夫君辞任につき、その補欠として中山榮一
君、湊徹郎君、森下元晴君及び森義視君が議長
の指名で委員に選任された。
同日
委員湊徹郎君及び森下元晴君辞任につき、その
補欠として藤田義光君及び亘四郎君が議長の指
名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
肥料価格安定等臨時措置法案(内閣提出第一五
六号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/0
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001・高見三郎
○高見委員長 これより会議を開きます。
肥料価格安定等臨時措置法案を議題とし、質疑を行ないます。
質疑の通告がありますので、これを許します。足鹿覺君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/1
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002・足鹿覺
○足鹿委員 肥料新法に対する総括的な質問をいたしたいと存じます。
質問に入るに先立ち、今日までの審議の経過を顧み、あらかじめ政府に申し上げておきたいことがございます。すなわち、現行肥料二法期限切れ失効に伴って、これにかわるものとして提案されたいわゆる今回の肥料新法は、去る四月四日提出をされ、四月九日本会議において提案理由の説明が行なわれ、社会党を代表して私が質問を行なったのであります。その後、五月十四日より本委員会の本格的な審議に入ったものでありますが、政府提出案件の順序に従い、審議は順当に進んで今日に至っており、提案されて以来今日まで、各委員の熱心な質疑が行なわれ、またこの間、商工委員会との連合審査、参考人からの意見聴取等も行ないまして、問題点は相当明らかになったと思うのであります。したがいまして、私は、これまでの審議を通じて明らかになった点との重複をできるだけ避けて質問を行ないたいと考えますが、重要な点につきましては、あえて重ねてこれを確認したいと考える次第でありますので、政府もそのつもりで御了承の上、御答弁願いたいのであります。特に本法が現行肥料二法より大きく後退し、とりわけ、農民保護の面が削除され、あるいは不明確になったことは、きわめて遺憾に思うものでありますが、今日までの審議を通じてますますこの点が明確になったことは、まことに遺憾にたえないものであります。この点については、さらに追及をしてお尋ねを申し上げたいと思います。
次に、本法の条文は、重要な点において不明確な点があまりにも多く、したがって、法運用の適否に問題がゆだねられておることは、明白な事実であろうと思います。
私は、従来の質問と若干角度を変えて、以下、重要な条項十数項目について、総括的に農林、通産両大臣及び公正取引委員長の所見を伺いたいのであります。したがって、本委員会における政府の言明は、法運用と重大な関係を持つものでありますから、政府は責任を重んじ、明確に答えられることを希望するものであります。すべて答弁は両大臣に、また公取は委員長にお願いいたしますが、場合によっては政府委員の答弁をもって大臣答弁とされることを認めることにやぶさかでありませんが、それはあくまでも大臣答弁として承りたいのでありますので、あらかじめ申し上げておきます。
以上、私の質問をする前提として申し上げましたが、次に資料を要求いたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。すなわち、次の五項目についてすみやかに提出されたいのでありますが、当局の準備はいかがでありますか。文書になっておるものは今日直ちにお願いいたしたいし、未準備のものはあとで正式にいただきたいと考えますが、その点もお手配を願いたいと思います。
資料要求の一、本法案関係の政令案及び政令規定見込み事項を具体的に提示されたい。
第二、現行肥料二法に基づき、従来行なってきた生産費調査、在庫調査等の調査要領と調査様式を提出されたい。
第三、過去数カ年の各工場別在庫の推移を一覧表にして提出せられたい。
第四、三十八肥料年度または三十七肥料年度の各社別仕切り価格、リベート抜きの製法別の資料を提出せられたい、これが第四であります。
第五、輸出硫安売掛金経理臨時措置法に基づく各社別売り掛け金の償却状況を提出せられたい。
以上五つの資料の御提出を求めますが、いかがでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/2
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003・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 ただいまの御要求の五番目は通産省関係のものでありますが、ほかの四つにつきまして申し上げますと、一番目の政令規定見込み事項、それから二番目の生産費、在庫等の調査要領と調査様式、それから三番目の工場別の在庫の推移、これは本日中に資料として提出いたしたいと思います。それから四番目の三十八年または三十七年の各社別仕切り価格、リベートを含めて——リベート、つまり、売り戻しあるいは見舞金というようなものでございます。これにつきましては、きょうじゅうにできるだけ調製いたしまして、すみやかに提出いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/3
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004・倉八正
○倉八政府委員 第五の資料につきましては、きょうじゅうに提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/4
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005・足鹿覺
○足鹿委員 了承いたしました。なるべくすみやかに御提示を願います。
そこで、農林、通産両大臣おそろいのところでお尋ねをいたすのが私の本旨ではございますが、他の委員会等の関係があって通産大臣が少しおくれられる趣でありますが、やむを得ないものとして、まず農林大臣にお尋ねをいたします。
それは新法の性格についてであります。去る四月九日の衆議院本会議における私の質問に、池田総理は、今回の肥料新法は農業基本法の関連法案だという趣旨の答弁を行なっておられますが、現行二法の農民保護的な面を全部取りはずされた新法が、はたして農業と他産業との所得格差を是正するという農業基本法の関連法と言い得るかどうか、農林大臣のこれに対する御所信を承っておきたい。しかも関連法といたします場合に、五カ年の時限立法とせられた理由はどこにあるのでありますか。やめる場合もあるという意味でありますか。それとも、より充実したものにこれを仕上げて、関連法としての性格を明確にするという御趣旨でありますか。農林大臣の基本的な本法の性格についての御所見を承りたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/5
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006・赤城宗徳
○赤城国務大臣 お話しの中に、現行二法よりも農民保護の面が後退したのではないか、こういう御指摘がございました。確かに法文の上から見まするならば、価格の面等におきましては当事者の話し合いということに基本を置きましたので、法文上から見れば、農民保護の形態が後退したようには見受けられると思います。しかし、実質的には生産状況あるいは需給の状況等が、非常に現行二法制定当時と違って安定してきておりますので、そういう強度の統制的なものを必要としない。必要としないが、農民保護の点におきましては、そういう強度の統制をはずしても、農民の保護は続けていくという内容をもっての改正と私は考えておるわけでございます。たてまえとして、両当事者の話し合いを基本として、それに対して政府がときには是正命令を出し、ときには調停を推進するというような形で、目的を達し得る、こういう観点から今度の法案が提案されたわけでございます。
そこで、これを五カ年の時限立法にしたところの理由いかん、こういうことでございますが、いろいろ意見等があります。あるいは法律はもう要らぬじゃないか、需給状況から見て、法律をなくしてかえって価格が下がる面もあるじゃないかという見方をしている人もございます。あるいはまた、価格統制令を発動すれば価格の面で押えられるのだから、そうむずかしい法律は要らぬじゃないかという議論をいたす人もあるわけでございます。御承知の肥料審議会等におきまして、そういう議論をしておられる方もあったわけでございます。あるいはまた一面こういう当事者の話し合いというようなことで価格をきめるということについての制裁的な、あるいは最終的にこれをきめていくところの法文上の整備がされていないじゃないか、そういうことになると、運営において政府が相当腹をしっかりしてやらなければだめじゃないか、こういうような議論もあるわけでございます。両方の議論等もありますので、今度の法案が私どもは適当とは考えますけれども、しかし、経過的なものというような傾向もなきにしもあらずでございます。でありまするから、いまの法律のようにまた考える場面が出ることは私は非常に少ないと思いますけれども、そういうこともあるかもしらぬ、あるいはまた一面においてこれをもっとゆるやかにしてしまえというような考え方もあるかもしれません。そういう両方面の意向等を参酌いたしてみますると、現行法と同様にこれを時限立法にして、そうしてこの運営の経過によってあるいはもっと強化するかもしらぬし、あるいはもっと自由化するかもしれません。しかし、いずれにしましても、現段階におきましてはこの程度の規制というものが必要である。でありますので、ある時期を見てなお再検討をする必要があろうか、こういうふうに考えますので、五カ年の時限立法というふうな態度に出たわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/6
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007・足鹿覺
○足鹿委員 政府の農業生産資材政策の一環としての肥料対策、しかも先ほど述べましたように、農基法の関連法案の性格を持つものであると総理が本会議場において明らかにしておられる性格としては、ただいまの農林大臣の御答弁ではまことに不十分のそしりは免れないのではないかと思うのであります。運営をしてみた結果、もっとゆるめるか、あるいはもっと足らざるを補うかは、後日の問題にするために、時限立法にしたという御趣旨でありますが、いやしくも低廉にして豊富な農業生産資材を供給していくことが、農業基本法二条六号に掲げられておる限りにおいては、私は、当然もっと権威のある、自信のある——運営をしてみた結果によって自由の方向をとるかもしらず、あるいはさらにこれを強化するかもわからないというような、あいまいな態度は許されないのではないかと思うのでありまして、私が農林大臣にお伺いいたしたいのは、そういう意味においての権威ある立法をなぜお示しにならなかったか、このことを申し上げたいからであります。いろいろ御事情のあることは、御説明にもありましたごとく、わからぬではありません。しかし、農業基本法の関連法としての性格を持つ以上は、ただいまの御答弁としては私はまことに遺憾に思います。
一例を申し上げますならば、飼料、農薬、農機具等の生産材の値上がりは顕著であります。特に政府管理の飼料等が本年度の予算に値上げを企画されたことに対し、当委員会の追及によって飼料の値上げはストップされたと聞いておりますが、その反面、数量を減額してつじつまを合わせるというような糊塗的な政策すらも現にとられ、進められておると聞いておりますが、まことに遺憾に存ずるものであります。
したがいまして、政府の農業基本法の精神は、全く生産資材面から見ましても成果をあげておらない。むしろ、この肥料二法こそが、諸物価の高騰に次ぐ高騰を続けておる高度成長下にあって、たとえわずかずつでも肥料の価格が値下げを続けておるということは、真に農業基本法の条項なり精神に合致したものといわねばならぬ。それを農民保護の面を大幅に後退した本法にすりかえられて、農基法関連法としての面目いずこにありやと私は申し上げたいのでありまして、いまの飼料の一例等からも御判断になって、農林大臣の深刻な御反省を私は求めたいと思う。肥料、飼料、農薬、農業機械等、総合的な政府の生産資材対策というものは、この肥料新法に見るがごとく、前進するのではなくして、後退する傾向すら持っておると断ぜざるを得ない。それでよろしいのでありますか。よろしくない。自分たちは、肥料を初め飼料、農薬、農機具等についても、関連法としての積極的かくかくの構想を持っておるとおっしゃるならば、それを明らかにしていただきたい。それとの関係においてこの肥料新法の位置づけをなさるのが当然ではないかと思う。御所見があれば承っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/7
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008・赤城宗徳
○赤城国務大臣 まことにそのとおりで、農業資材が低廉で豊富に供給されることが、農業基本法にいっておりまするような生産性の向上のためにも、あるいはまた農民の生活水準の向上のためにも、必要欠くべからざる問題でございます。でございますので、飼料等につきまして、予算の価格は他の肥料との関係もありまして高く見積もってはおりますけれども、実際に政府が売り払う場合においては、現状以上にすることを押えるという態度に出たわけであります。あるいは農機具、農薬等につきましても、できるだけ低廉に供給されるような方途を講じておるわけでございますが、特に肥料の点につきましては、十年間の実績というものが、御指摘のように、ほかの物価等が上がったにかかわらず、この二法及びメーカーの合理化等によりまして、肥料の価格が少しずつでも下がってきたということは、確かに農業基本法の趣旨に合致して、農民の保護の面が強く出ておったと思います。そこで、今度の法律では、その保護の面を取り去ったのではないか、こういうことでございますが、私はそうではない。方法論でございます。いままでは直接強力な統制によってそういう品物の豊富、価格の低廉をはかってきたのでございますけれども、これからはその線を当事者の話し合いによりましてその目的が達し得られる、こういう事情になってきておると見ますので、方法論として、今度の法案に盛られているような方法によって、現在まで続けてきたところの方途をさらに前進することにおいては、これは間違いなく私どもはそういう運営をさせまするし、そういうことに相なる確信を持っておるわけでございます。でございますので、農業基本法との関連におきましても、方法論としては現行二法とは違いますけれども、同じような考え方、話し合いの進め方をいたす、こういうつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/8
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009・足鹿覺
○足鹿委員 一昨日の肥料審議会において政府が提示をされた資料によりますと、主要肥料の卸売り、小売り価格の推移というものがあります。硫安を一例に申し上げますならば、昭和二十九肥料年度、すなわち、現行肥料二法が制定を見た年でありますが、硫安の卸売り価格は八百九十六円であります。それが昭和三十九年の四月には七百六十円となっております。二面、小売り価格におきましては、昭和二十九年が九百三十九円、これが三十九年四月におきましては八百六円、小売り価格でいうならば、差し引き百三十三円の値下りを見ておるのであります。このように、肥料二法は、昭和二十九年以来大きな成果をあげ、また審議会等においても歴史的な検討が行なわれて今日に至っておるのでありまして、このような成果のあがっておる旧二法、現行二法を新法に切りかえなければならないという明確な理由が、私どもには納得がいかないのであります。特に遺憾に思いますことは、農林省の一部においてすら、農業政策としての肥料価格を規制することは、すでに意味がないといったような意見が流布されるに至っては、私どもは何をかいわんやでありまして、農林省の存在理由についても、このようなことでは、その存在価値をみずから疑われるような結果になりはしないかと存ずるのであります。そういう点について、完全に意思統一をして、この新法の立案、提出に当たっておられるかどうか、この点を農林大臣に承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/9
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010・赤城宗徳
○赤城国務大臣 農民の重要な資材であるところの肥料を、量におきましても、あるいは価格におきましても、野放しにしたらいいじゃないかというような考え方を、農林省としては持っておりません。ただ、外部におきましては、需給状況が、とにかく四割も輸出に向くように生産が上がって、供給面がふえておる。でございますから、需要供給面からだけ見れば、価格も下がるような情勢だから、あえて肥料についての直接あるいは間接的な統制面は要らぬじゃないかというような声は、外部では聞いております。しかし、私ども農林当局といたしましては、何といたしましても重要な資材でございます。えさ、飼料も相当ふえてきておりますけれども、肥料はすべての農民に必要な資材でございます。こういう資材を全然野放しにしていくということにつきましては、安心感がなかなか持てないわけでございます。そういう点から見まして、農林省といたしましては、肥料の点につきましては、重大な関心を持って、その方法の強い弱い、度合いはありましょうけれども、これに対して政府としての権限をもって、適切にやっていくということが必要である、こういう考え方は以前とちっとも変わりはございません。そういうことで意思統一をしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/10
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011・足鹿覺
○足鹿委員 これから先は通産大臣を必要とするわけでありますが、まず農林大臣の御答弁を願っておいて、あとでまた通産大臣の御答弁を求めたいと思います。
政府は、肥料工業の合理化、近代化と体質改善のために、私が本会議で指摘いたしましたように、税制上あるいは財政融資上、これ以上の措置はとり得ないというほどの優遇措置をおとりになっております。また多額の財政援助も行なっておられます。その結果、肥料部門だけは合理化の余地はほとんどないというところまで至ったが、肝心のコスト面ではまだ目標に達していないといわれておるのであります。現時点におけるコスト及び目標に達するのはいつでありますか。三十六年九月に決定された第二次合理化計画によれば、三十八年度の合理化目標は、つまり本肥料年度でありますが、四十三ドル四十八セントであったことは、御存じのとおりでありますが、これは達成されたのかどうか。達成されていないとすれば、その原因は何か、いつごろ達成されるのでありますか、明らかにせられたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/11
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012・倉八正
○倉八政府委員 まだ通産大臣が参っておりませんから、私から事務的にお答えいたします。
いま御指摘のように、四十三ドル五十、それで、御承知のように利潤抜きでございますから、普通の価格に直せば、これに大体一ドル五十ないし一ドル七、八十足せばいいのでありますが、それは遺憾ながら達しておりません。御承知のように、本年度の肥料価格は、ドルに直せば、大体五十ドル十九セントでございますから、まだこれには達しておりません。その原因としますと、当時あれを立案したときに予想しました生産の諸要素というのが変わりまして、たとえば電力が上がったとか、あるいは労務賃が上がったとか、そういう理由がありまして、不測な事態が出て、達しなかったというのがその原因でございます。
それから第二の御質問の、それならばいつごろになったら四十三ドル四十八セントに達するかということでございますが、これはできるだけ早くそれに達したいということは、政府としましても鋭意努力しておるわけでございますが、ただ、いろいろなファクターがはっきり予想できないのでございまして、したがいまして、何年何月になったならばそのとおりにちゃんとなりますということは、こればかりは遺憾ながら申し上げられないわけでありまして、われわれとしましては、できるだけ早くこれに到達するのに最大の努力を払うというのがいまの現状であると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/12
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013・足鹿覺
○足鹿委員 そういう事務的な答弁をもってしては私は満足いたしません。だから、通産大臣も御一緒に御列席を願って御答弁をわずらわしたいと申し上げておったのであります。その点はあとで御答弁願います。
これに関連して、いま一点申し上げたいと思いますが、昭和三十七年十二月の閣議決定により、百六億円の合理化融資が行なわれ、昭和四十二年度までの合理化計画が定められたはずであります。これによってコストはどの程度下がるのか、また下がったのか。合理化目標をこの際明らかにされたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/13
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014・倉八正
○倉八政府委員 御指摘の一昨年の十二月二十八日の閣議決定の合理化でございますが、これにつきまして、今後のたとえば肥料の品種別の変化、あるいは硫安でいえば、その合成硫安の伸び、こういうことは農林省とも十分御相談しまして立てたのでございますが、それならば価格が何百何十円になるということは、さっきも申し上げましたように、非常につかみにくいいろいろなファクターがありまして、いまのところは、われわれとしてははっきりした数字は出せない状況でございます。また、たとえばそういうふうに計算をしましてそれを出しましても、その後またそれが変わったという場合には、さらにまた結果的に見れば、これはうその数字であったのではないかという、そういう誤解を与えることは、またいろいろな点から見ましても、非常に問題があるだろうと思いまして、いまのところでは、繰り返して申しますが、どのくらいの価格が下がるということは、数字的にはまことに遺憾ながら申し上げられないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/14
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015・足鹿覺
○足鹿委員 ただいま申し上げました百六億の合理化融資のほかに、百三億の赤字補てん融資も行なわれており、合わせて二百九億に達しておるのであります。当時の状況としては、業界は狂喜してこれを喜んだと伝えられておるくらいであります。したがって、どのような具体的な合理化目標が達成されるかということは、政府は監督指導される責任があるはずであります。それがただいまのようなあいまいな事務的御答弁では、この大きな政策融資の成り行き一つ見届けないで、そして新法を提案されるということも、私は矛盾ではないかと申し上げたい。言うならば、現行二法に基づく硫安工業の体質改善対策の最終的の効果がいまだ確認されておりません。合理化目標すらも明確でない段階と言わねばなりません。肥料工業の国際競争力を強化しつつ、内需についても豊富にして最も低廉な価格をもって供給できるかどうかという、去る五月二十五日の肥料審議会における私の質問に対し、また昨日の同僚委員の質問に対して、倉八通産省軽工業局長は、四十二年度には五十ドルを割るという、きわめてばくとした言明しかなされておりません。この程度の見通ししか持てず、またこの達成を確約もできない現段階においては、当然現行肥料二法はその達成の時期まで延長するのが私は常識ではないかと思う。それを期限切れを好機として新法にすりかえるがごときは、政治家としてなすべき対策ではないと私は申し上げたい。この点について、あえて農林大臣の御所見を承っておきたい。これでよろしいのでありますか。いまの通産省当局の御答弁のとおりであって、新法に乗りかえられてよろしいのでありますか。少なくとも減税、政策融資、財政援助、それらが実ってある程度の結果を見届けてからでも、肥料二法の廃止は、あるいは新法への新しい構想への転換は、おそくはないと言わざるを得ませんが、これでよろしいのでありますか。あえて農林大臣の良心的な御答弁があれば承っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/15
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016・倉八正
○倉八政府委員 ちょっと農林大臣が御答弁になる前に申し上げますが、私がい重申し上げましたのは、四十二年に何十何円下がることはいま申し上げかねると申し上げたのでございまして、毎年肥料のコストというものは下がることを私は確信しております。というのは、合理化の進むと同時に、また同じ硫安の中で、たとえば回収とか副産というのが、非常なる伸び率でもってふえておりまして、そういう点を総合勘案しますと、必ず毎年合理化によってそれが下がるということは、はっきり申し上げられると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/16
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017・足鹿覺
○足鹿委員 農林大臣はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/17
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018・赤城宗徳
○赤城国務大臣 いまのお話しのように、合理化の融資あるいは赤字融資をいたしてきておるわけでありますが、それが予定の計画までいったときに、新法なら新法を出すべきであるということも一つの御意見でございます。ただ、その目標どおりにいかないといたしましても、ただいま話がありましたように、合理化は年々進んでおりまするし、したがって、生産費等も低くなってきております。またこれが農民のほうに反映いたしまして、価格の面におきましても逐次低廉な価格で、しかも量的にはもうすでに十二分に豊富に内需を確保できる、こういうときにちょうど前の二法律の期限が切れてきておりますので、そういう時期に、また改正といいますか、新しい法律を出すということも、これは一つの考え方だと思います。でございますので、前段の考え方も決して無理な考え方ではないとは存じますが、後段の考え方に立ちまして、法律が期限が切れたときに新しい法律を出すという考え方から、しかしてその立場においても、その面においても、いまの合理化も進んでおるし、あるいは農民に対する保護の面も従来同様さらに進めていけるという見通しのもとにおきましては、現在新しい法律を出すということも適当である、こういうように考えまして、新法を御審議いただいておるような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/18
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019・足鹿覺
○足鹿委員 昭和二十九年の二法制定当時を考えてみますと、国内価格を規制することによって、能率の悪い工場は生産をやめていくであろうという含みがあったことは、当時の同僚議員も御存じのとおりであります。ところが、現実は政府の財政投融資が受けられ、これが市中銀行の呼び水となって、能率の悪い工場も設備を拡張してきた。ここに問題があるのであります。硫安工業の合理化については、個々の企業の合理化よりも、企業の整備、老朽施設の廃棄等、化学工業全体としての体質改善が必要であることは申し上げるまでもありません。そのための政策を進めるべきではないか、かように思うのでありますが、通産大臣もお見えになったようでありますから、先ほどの質問をいま一応簡単に申し上げて、御所見を承っておきたいのでありますが、政府は肥料工業の合理化、近代化と体質改善のために、税制上これ以上の措置はとり得ないほどの優遇措置をとっております。また融資措置もとっております。差額の財政援助も行なっております。肥料部門だけは、合理化の余地はほとんどないというところまできておると伝えられておる。ところが、ふしぎなことには、肝心のコストの面では目標に達しておらないのが現実の姿であります。また、先ほども申し上げましたから、くどくは申し上げませんが、三十六年九月に決定された第二次の合理化計画は、当三十八肥料年度の合理化目標は四十三ドル四十八セントであったと思います。それが達成されない原因は一体どこにあるのか。先ほど私が御質問申し上げたことに対して、倉八局長からも御答弁がありました。また一昨日の肥料審議会において、いっこの合理化目標が達成できるのかという追及に答えて、四十二肥料年度には五十ドルを割るであろう。また昨日の同僚議員の質問に対しても、そういう趣旨の答弁が行なわれました。一体昭和三十八肥料年度に四十三ドル四十八セントの合理化目標が達成されなければならないはずのものが、そのための数々の保護育成の対策が行なわれない、四十二肥料年度に至って五十ドルを割るであろうというような無責任なことで、はたしていままでの合理化政策の成果があがったと言えるでありましょうか。この点をあわせて通産大臣の御所見を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/19
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020・福田一
○福田(一)国務大臣 お説のように、四十三ドル何セントという合理化目標を立てて、肥料の行政に当たってきたことは事実でございますが、これは私は何も言いのがれをしようという意味で申し上げるのではございませんけれども、これは目標でございまして、目標というものは、すべて達成する場合には、外界の事情というものも同じような状態であるということでないと、なかなかむずかしいかと思います。その合理化をする手助けをする意味のほうは実現をしたけれども、外界におけるその他の問題、いわゆる肥料価格を決定していきます上でのその他の問題、労賃でありますとか、あるいは物価でありますとか、その他いろいろの経済事情等が、当初予想いたしましたところと相反しましたために、なかなかその実現が困難でございました。今日までこれが目的を達成することができない。これから後の問題を考えてみましても、私たちはその目標達成を目途として、いろいろの合理化資金等を出しておりますが、外部の事情必ずしもわれわれの思ったとおりには動いておりませんので、軽工業局長が申し上げましたように、四十二年度には五十ドルを割るだろう。もちろん、これは五十ドルを割るといいましても、いろいろ割るということばで表現すれば、これは四十九ドル九十セントも割るのでありますし、四十八ドルも割るのでありますから、どこということは言えませんが、少なくとも現在よりは安くなるであろうということだけはわれわれは確信を持っております。
こういうようなわけで、いまのところ、合理化目標を達成できないことは遺憾に存じておりますが、しかし、何としても安い肥料を十分農家に供給するという意味での努力は、今後とも続けてまいらなければならない、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/20
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021・足鹿覺
○足鹿委員 メーカー側は、肥料部門の合理化はほぼ終わったという見解をとっております。なるほど新規の投資の余地は一応終局に達したでありましょう。しかし、ここから論理が飛躍して、だからもうコストは下がらないというような考え方は、ごまかしであろうと思います。それはコストの推移を見れば明らかであります。材料費、労務費のコストの中に占める比率は全体として下がっております。にもかかわらず、その割にコストが下がっていない。この点はあとで詳細に触れますが、それは設備投資の減価償却負担が増加しておるからだと思います。また、コスト計算に利潤を入れておる方式が取られておりますが、この利潤計算もくせ者でありまして、硫安製造に必要な資産に過去三カ年の製造工場の平均利潤を乗ずる、この計算方式では、減価償却が急速に進む今後二、三年間に、相当大幅にコストは下がるはずであります。それはお認めになりますね。これから二、三年に減価償却は大幅に進めば、コストは下がるはずであります。お認めになりますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/21
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022・福田一
○福田(一)国務大臣 お説のように、肥料、硫安の値段をきめる場合におきましては、減価償却ということは一つの大きなウエートを占めておることは事実であります。したがって、減価償却がなくなる、だんだんウエートが少なくなるということになれば、御説のようなことに相なると存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/22
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023・足鹿覺
○足鹿委員 通産省は、以上述べたような、私の指摘した点について、一応試算でもしてみておられましょうか。もしありましたら、抽象的にではなくして、具体的に資料として御提示になるか、またその内容について説明ができるならばしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/23
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024・福田一
○福田(一)国務大臣 ただいまのところ、その数字は持ち合わせておりませんが、私は、こういう公開の席上において、減価償却がもうだんだん少なくなった場合においては、コスト面にいい影響を与えるであろうということは、はっきり申し上げておるわけでありますから、これはそういう意味において十分考慮されてしかるべきものであると思います。ただしかし、減価償却をしたからといって、またそれが古くなって、これは何年の後にかまた更新しなければならないというような問題もありまして、いわゆる会社経営の立場から言いますと、いわゆる含み資産を十分持つということも必要でございますし、そういうようなこともあわせつつ、常に安定して安い肥料を供給する、こういうことは事業経営上の一つの問題になる、いわゆる原則に相なるのではないかと思いますので、その減価償却が済んだ分は全部コスト面に組み入れていいかどうかということは、また考えてみる必要があろうかと存じておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/24
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025・足鹿覺
○足鹿委員 前半の御答弁はよろしいけれども、後半は企業家の立場のような御答弁をなさっておる。前半の答弁を打ち消されるような印象を私は受けましたが、そうではなくして、後半の御答弁も、それは企業家としてのいろいろな立場を一応想定されたことを述べられたことであって、二、三年間に減価償却が急速に進む、今後二、三年間が一番肥料二法の結果が実りを結ぶときだ。ですから、これ以上上げないという新法の考え方、しかし、これ以下に下げるということについては言明がない。この関係において私は御質問申し上げておるのでありまして、従来からの経緯からしまして、下がったコストがすべて価格に反映するとは私も申し上げておりません。少なくともその相当部分は価格に反映してこそ、いままでの政策の成果があったと言うべきでありましょう。その点について考え方が違っておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/25
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026・福田一
○福田(一)国務大臣 ただいま、足鹿さんは非常に専門家でおられるので、私のほうが教えていただいておるような結果に相なって、恐縮であります。相当部分が反映しなければならないという御趣旨、ごもっともと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/26
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027・足鹿覺
○足鹿委員 事務当局の試算があれば、あるいは説明があれば承りたいが、あとでその点については資料として御提示を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/27
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028・倉八正
○倉八政府委員 減価償却の面につきましての資料はございますから、それは用意いたしまして提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/28
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029・足鹿覺
○足鹿委員 次に、新法の目的についてお伺いをいたします。
最初に通産大臣に伺い、並行して農林大臣に伺いますが、新法の第一条、目的には、現行二法にある需給の調整及び硫安工業の合理化の促進ということばが消えております。かわりに輸出体制を整備するということばが入ってきております。この点からも、農民保護の性格が新法にないことがうかがえるのであります。需給調整なくして価格は安定しない、これは原則であるにもかかわらず、消えておるから、私は申し上げるのであります。次に、輸出体制の整備ということばが出てきておりますが、これと需給調整との関係は、あなた方は苦心して、輸出さえ押えれば大体内需を確保できるのである、豊富に肥料を確保できるのであるという考え方に立っておられるようでありますが、輸出体制の整備ということは、一体どういうことでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/29
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030・福田一
○福田(一)国務大臣 それはもうすでに御案内のように、硫安の年間生産量というものを想定いたしまして、そうして過去の経験に徴し、またその他の事情も勘案して、年間必要な国内における硫安の量というものを想定し、これに加うるにある程度の在庫というものを想定いたしまして、その分を確保した後におけるいわゆる差額は大体輸出ができる、それを承認をしてまいります、こういう意味をこの第一条において明らかにいたしておるのでございまして、私たちとしては、そういうやり方でやれば、農家に対して肥料を量的には十分に供給できる、こう考えておるわけでございます。したがって、前の法律と、この書き方においては相違しておりますが、精神においては何ら変更がない、かように考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/30
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031・足鹿覺
○足鹿委員 先でこの問題についてばさらに触れるので、進みます。
この法律をしさいに点検していきますと、合理化メリットはそのまま全部生産者側に取り、それによってメーカーの国内支配体制を強化しようということにほかならないと思われますが、先ほどからの答弁によって、この点はある程度是正せられるであろうという認識に私は立っております。さように考えてよろしいのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/31
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032・福田一
○福田(一)国務大臣 私は、メーカーの独占的体制を強化するような意図は全然ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/32
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033・足鹿覺
○足鹿委員 肥料工業を輸出産業として確立するということは、輸出をしてももうからねばならないということであろうかと思います。あるいは輸出をして損をしても、それを十分カバーできるということであろうかとも思えます。これが輸出体制の整備という本質的な意味ではないかと思うのであります。需給の調整ということは、それ自体意義があるのであって、輸出体制の整備ということは、いま私の指摘したのがほんとうではないのでありますか。ふえんして解釈をし、運用していくならば、あるいは需給操作に及んでいくことは、私も認めるにやぶさかでありません。しかし、本来、輸出体制の整備ということば自体は、いま私が述べた意味にとるべきではありませんか。そうして副次的に需給の調整ということが考え得られるのであって、いまの御答弁はいささか的をはずれた御答弁と思いますが、いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/33
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034・福田一
○福田(一)国務大臣 輸出体制の整備という目的が、いわゆる価格の面においては問題があるのではなくて、別途の意図を持っておるような御判断のように私ちょっと承ったのでありますが、われわれといたしましては、輸出産業として輸出が伸びますと、量的にふえますから、量的にふえるということは、経済の原則からいいましても、どうしてもそれが安く供給できるということに相通じておるわけであります。したがって、国内の分だけを生産しておるという場合と、別に五十万トンなり百万トンなりよけい生産した場合との生産費というものを考えれば、これは何としても安くなるべき筋合いのものであろう。でありますから、先般の審議会にも、実はそういうわけで輸出が四十何万トン伸びました、それについては、価格は下がりませんが、これはこういう事情でございますということを御説明さしていただいておるのも、いま申し上げた趣旨にほかならないのでございまして、やはり輸出が伸びるということは、結果としてそれだけ生産が多いということになりますから、これがまた間接的ではあるかもしれませんが、肥料の値段を安くすることに相通じておる、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/34
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035・足鹿覺
○足鹿委員 私はただいまの御答弁で満足いたしません。需給の調整ということと輸出体制の整備ということは本質的に別個なもの、やはり本命は輸出体制の整備、輸出の振興、こういうことにあるのであって、ふえんしていくならば、その結果として、運用面で需給の調整がつくのだ、こういう副次的なものであって、それを法律の目的の中から削っておるということは、先ほども御指摘したように、体をなしておらない、この点を指摘しておるのであります。一例をあげましょう。西独の場合、国内価格が六十三ドル、輸出価格は三十ドル前後という大きな開きがあります。それでも西独のメーカーは参らないのであります。ということは、輸出赤字を国内に転換できる体制ができておるからであります。しかし、そのかわりに、西独政府は農民に多額の補助金を出しておるのであります。イギリスも同様のシステムがとられておるのであります。わが国でもこのような方途を講じたいというのが、輸出体制の整備という文字の真のねらいではないでしょうか。そういうお考えがございますか。新法は、合理化のメリットをそっくり生産者側に取ろうというその保障しか、目的の面においてはわれわれに解せられないのであります。ですから、この点を指摘して、明確にしておく必要があろうと思うのでありますが、ただいまお尋ねした点について、通産大臣の御所見を聞いておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/35
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036・福田一
○福田(一)国務大臣 第一条の中に「輸出体制を整備し、もって農業及び肥料工業の健全な発展に資することを目的とする。」こういうことがあるのでございまして、生産のいわゆる合理化のメリットを全部メーカーのほうに与えるというような意味ではございません。
また、いまあなたの御指摘になりました、西独とかイギリスの制度をそのまま取り入れる意図があるかということでございますが、われわれとしては現段階としてはそのような考え方は持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/36
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037・足鹿覺
○足鹿委員 次に、第三に、価格取りきめについて通産、農林両大臣の御所見を承りたいと思います。現行二法と肥料新法の一番大きな相違点は、第二条の価格の取りきめであろうかと思います。生産者側の団体と販売業者の団体とが共同で話し合い、きまったら政府に届け出をするというシステムでありますが、原価主義を放棄するこのような方法ではたして適切な価格が決定できるであろうか、ここにも新法の性格、つまり、生産者保護的な性格がうかがえるのではないかと考えるのであります。そこで伺いたいのは、両団体が取りきめた価格が届け出られると、政府はこれを一応審査し、五つの項目に照らして不適当と認めた場合は是正命令を出すことにしておるが、この五つの項目はあまりにも不明確であろうと思いますが、いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/37
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038・福田一
○福田(一)国務大臣 ただいま御指摘がございましたとおり、事業者と供給者の関係で話し合いを進めて決定をするというわけでありますが、その場合には一応いわゆる過去のいろいろなもの、また今後のことについての資料というものを出して、そしてその資料の上に立って両者は相談をするということであり、価格の取りきめをするのでございますから、あまり矛盾が——矛盾といいますか、いわゆる生産者を保護するというような立場に偏することはあり得ない、かように私たちは考えておるのでございます。なお、もしその取りきめができたものが、御指摘がございました五項目から見て間違っておるということであれば、是正をするということであるが、その五項目の書き方が不明瞭ではないか、こういうことであるかと思うのでありますが、これは一応なるほどばく然とはしておりますが、私は、行政というものは、やはり自由裁量といいますか、ぴしっと全部が書けない場合もあるし、また書けないところに妙味のある場合もあると思うのであります。要は、いわゆる農家を決していじめない、農家のためになることを考える、同時にまた、生産者が非常に不公平な扱いを受けない、こういう立場を明らかにするために、ここに五項目をあげておるわけでございまして、この種の書き方以外にもっと詳しく書くということはなかなかむずかしかろうと思いますし、立法技術の上からいえば、まあ大体こういうような表現よりいたし方がないのではないか、かように考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/38
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039・足鹿覺
○足鹿委員 そういう答弁はおかしいです。じゃ突っ込んで申し上げましょう。第一の「農業又は肥料工業の健全な発展に支障を与えるものでないこと。」とは一体どういうことでありますか。相対立する両者に支障を与えないということは、何にもないということではありませんか。
また第二に、「不当に差別的でないこと。」とありますが、不当でなければ差別的であっていいのでありますか。「不当に」ということばがつく以上は、前提として差別的であるということを認めておる。だが不当である場合はいかぬのだ、こういう立場に立っておると思うのであります。「不当」とは一体いかなる事態をさすのか、例示して説明されたい。
第四に、「一般消費者及び関連事業者の利益を不当に害するおそれがないこと。」とあるが、「不当に害する」ということは一体どういうことですか。その害さないための規定の意味は、何を意味しておるのでありますか、具体的にひとつこの点も伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/39
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040・倉八正
○倉八政府委員 これは法規の内容の解釈でございますから、政府委員から答えさせていただきます。
最初の「不当」という字はどういうことをさしておるのであるかということでございますが、これは一般の取引通念から見て非常に不当な差別であるという意味でございまして、具体的な例を言えば、地域的または季節的な需要があるという場合に、そこに現実によって価格の差をつけるというようなことは、不当な差別ではない、こういう解釈でございます。
一の「農業又は肥料工業の健全な発展に支障を与えるものでないこと。」というのは、これは不当に高い価格あるいは特に低い価格ということが、社会の常識から見まして、それがまあ俗なことばでいえばおかしいというようなときに、この一が適用されるのでございまして、たとえば現行価格を非常に上げまして、そのために農業の経営に悪い影響を与えるという場合は、この一でございますし、それからまた、それがきわめて低く下がりまして、肥料工業の合理化ないし再生産ができないというような値段が出た場合は、それは一に該当するということでございますし、それから四の「不当」という場合も、さっき申し上げましたように、一般の取引通念から見た場合に不当である、こういう解釈でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/40
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041・足鹿覺
○足鹿委員 そもそも、売り手と買い手が話し合いの上に取りきめて届け出をしたものを、政府が一方的に是正し得るのかどうか。そういうことはあり得るのか。これは政府並びに公取に伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/41
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042・福田一
○福田(一)国務大臣 私は、こういう規定を置くことによって、両者がいわゆる常識的な姿でこの価格を決定することができる、かように考えまして、無理をすればちゃんと政府が見ておって是正をしますよということを明らかにするということでございますので、私は、そういう場合、この条文の意味はあると思います。また今度は、そういう不当なものが起こり得るかどうかということになれば、これはやはり力関係でありますから、場合によっては起こるかもしれません。そういった起こった場合にはちゃんとやれるような仕組みをつくっておくということは、またそういうことを明らかにしておくということは、農業の重要性を考え、また肥料工業というものの重要性を考えてみますときには、これは置いておいたほうがいいのではないか、こう考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/42
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043・渡邊喜久造
○渡邊(喜)政府委員 一応この場合においては、独禁法の例外規定といたしましては、両当事者間で団体交渉をなさるわけでございます。その場合に、両者のいわば力のバランスを得ている場合であれば、おそらく問題はないと思います。ところが、どちらかの関係あるほうが優位に立つ、やむを得ず片方は泣く泣くそれに従うというような事態が起こらないとも限りません。そういう場合におきまして、もちろん、法律の根拠がなければ政府が干渉するととはできませんが、そういう関係を是正するということを法律の根拠の上になすということはあっていいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/43
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044・足鹿覺
○足鹿委員 独禁法の適用除外によって、売り手と買い手が話し合いをして届け出たもの、これは適法に処理されたものと公取はお認めになるでありましょう。ところが、政府が一方的にこれを是正する法律の根拠を持つ。実際上にはこのような条項は発動をされる場合が具体的にきわめて少ない、こういうことを予想されるのであります。したがって、これは形式条文になるおそれが多分にあり、空文化するおそれがあると申し上げて差しつかえありません。真に政府の是正命令を権威と効果あらしめるためにとられる措置とするならば、届け出制ではなくて、認可制になさるのが当然なんです。それを届け出たものを是正し得るのだなどという、いわば気休めのような条文なり、また政府の甘い考え方で、このものをくつがえし得るのかどうか。私は、最小限度届け出制ではなくして、認可制にしてこそ、このものは法の権威と効果が保たれるのではないか、かように思うものでありますが、いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/44
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045・福田一
○福田(一)国務大臣 認可にしたほうがはっきりするのではないか、こういう御趣旨かと思うのでありますが、われわれといたしましては、両当事者間で話し合いをしてそれできめる、それが非常に不当である場合には、これは私たちが是正する、こういうことでやはり目的は達し得ると考えておるわけでございます。大体いままでの肥料行政の姿を見、また両者間の最近の動きを見てみましても、大体そういうことで目的を達するような状況下にある、かようにわれわれは判断をいたしておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/45
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046・足鹿覺
○足鹿委員 価格取りきめの内容はどのような内容をあらかじめ予測して御指導になる考えでありますか。たとえば基準価格一本とするのか、限月価格とするのか、あるいは最高最低価格とするのか、また数量を含むのか含まないのか、明らかにされたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/46
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047・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 その辺は特に想定して基準価格だけにするとか、限月の価格まで含めて取りきめるか、これは特に積極的にいまどうしようという指導の考え方を持っておりませんけれども、現実には、二法のもとにおきましては、最高販売価格をきめまして、限月の価格は両当事者できめてまいっております。これはもちろん政府も了承しての上でございます。そういう形で、最高ではなく、基準価格をきめまして、さらに限月価格をきめるということになってまいると思います。そのほかに、回収硫安の価格差であるとか、そういうことも協定の中に含められたほうが、当事者としてはやりよいということになるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/47
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048・足鹿覺
○足鹿委員 引き続き、この問題に関連して伺いますが、肥料というものは、使用の時期がきわめて限定されております。農民に不安を与えぬように、早目に価格を取りきめる必要があることは申し上げるまでもありませんが、価格取りきめの時期はいつごろをめどとして御指導になる御所存でありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/48
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049・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 これは今日までも肥料二法のもとにおきましては、肥料年度開始前にきめるように努力してまいったわけであります。今後もそういたしたい、そういうように指導を加えてまいりたいと考えておりますので、七月末までにはきめるように、したがって、両者の話し合いは、おそくともそれよりは相当前から話し合いが始まるように指導してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/49
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050・足鹿覺
○足鹿委員 先日の委員会において、経済局長は、是正命令を出す一つの基準として、現行価格より上回った場合は是正命令を出すという趣旨の答弁をしておられたようでありますが、それ以外にも基準がありますか。具体的な是正命令発動の判定の基準があったら例示をせられたい。また、このような大事な問題は、この委員会における質疑応答ではなくして、政令等に明記さるべきではないかと思うが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/50
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051・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 現行の価格より上がった場合に是正命令を出すと確かに申し上げたわけであります。それは三十九肥料年度につきましてそういうことを特に申し上げたわけでございますが、それ以後におきましても、もちろんそういう考えございますが、それ以降は、さらに合理化が進んで、下がるべき性質のことが想定されるわけでございます。その合理化が進んだ場合に、合理化のメリット、つまり、コストがどれだけ下がったかというメリットの部分を両当事者がどう分けるように話し合うかということになるわけでありますが、一番普通に考えられるのは、五、五、半々に分けるということでございます。それはいろいろな前からの経緯とか、あるいはそのときの情勢とかいうものがございますから、必ずしも五、五とはまいらないかと思いますが、要するに、話し合いできめられた価格が、メリットをどういうふうは配分していくか、その配分のしかたが、そのときの周囲の情勢から見て不当と考えられますような場合には、是正命令を発動する場合があると考えております。
それから、政令でそれを定めてはどうかというお考えでございますが、政令につきましては、結局そういった数字的な考え方を法文にきめるというようなことはなかなか困難でございます。こう考えるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/51
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052・足鹿覺
○足鹿委員 結局運用法ですね。是正命令というような重大な権力の発動といいますか、政府の行政の介入が発動していく場合に、その基準が政令等にもないということは妥当でないと考えますが、よく御検討になってしかるべきかと思います。
そこで、是正命令に従わなかった場合の罰則は、新法には見当たらないようでありますが、一体どうなりますか。是正命令発動の場合の法の権威はいかにして確保されるのか。それとも当初から発動を意図せぬというならば何をか言わんやでありますが、ただいま聞くところによれば、発動する場合も必ずしもないことはないというふうに受け取りました。従わない場合には一体どうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/52
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053・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 法律にもございますように、その場合には独禁法の適用が解除されないことになります。したがいまして、独禁法の罰則が適用になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/53
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054・足鹿覺
○足鹿委員 公取、どうですか。そのとおりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/54
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055・渡邊喜久造
○渡邊(喜)政府委員 そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/55
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056・足鹿覺
○足鹿委員 それではいま一つ、これに関連して伺っておきますが、万一生産業者が価格交渉に当初から全く応じなかったときの処置はどうするのか。これはあり得ないとは言えますまい。またこれと関連して、話し合いの行なわれない場合に、調停を行なうことはできるのかできないのか、明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/56
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057・倉八正
○倉八政府委員 事実問題としてそういうことはあり得ないと思いますが、もしもメーカーのほうが価格交渉に応じないというようなことがありましたら、まず政府といたしましては、価格取りきめの話し合いをなさいという助言、勧奨を法律によって行ないます。そして両方がそこで話が推進するような助成策をこの法律にも書いておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/57
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058・足鹿覺
○足鹿委員 通産大臣にお伺いしますが、ただいままでの事務当局との質疑応答を通じて、いま私が指摘したような事態が起きた場合に、政府は、行政上取り得る援助措置等について、命令に従わない場合、これを考慮されて法の権威を保たれる御用意がありますか。これは運用法でありますから、罰則一つないのであります。行政的にすべてが進んでいくのであります。でありますから、あえて当事者が是正命令の発動に応じないからといって、罰則がないとするならば、行政的にこれを処置して、政府の権威なり法の権威を保つ以外にはないと思いますが、この点について大臣の構想がありましたら伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/58
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059・福田一
○福田(一)国務大臣 ただいまの、命令に従わない、あるいは話し合いに入らない、またはわれわれの行政に対してむしろ反抗的な措置をとる、こういうようなことについて、そういうことがあり得るかどうか、またあり得た場合の法の権威の問題、またこれに対する政府の態度、こういうふうな御質問かと思うのでございますが、私は問題にもよりけりだと思うのでありますけれども、肥料というものが農家にとって非常に必要なものであり、また業者にいたしましても、内需に売らないで手持ちをしておるということは考えられないことでございます。そういう場合において、合理的な値段をお互いで相談をしなさい、こういう法律ができているのに、そういうことは最初からいやですよ、こういうことは私は考えられないところであり、そのきめた値段をわれわれが見て、これはどうも少しおかしいから、こういうふうにしたらいいのだ——これはもちろん理事付するでありましょうが、そういうことを言った場合に、そんなものは認めないのだ、こういうようなことを言って——どちらが認めないと言うか存じませんが、たとえば農家のほうで、それは高過ぎるから認めないと言われるということは、私はちょっと考えられない。また業界においてはもちろんのことであります。売らなければ困るのですから、それは認めないから売らないのだ、こういうわけにはいかない。そういう観点から見まして、そういう事態は起こり得ないものと考えております。しかし、そういう事態が万一生じたときはどうか、こういう仮定の御質問でございますが、われわれはその場合においては、先ほど申し上げたように、独禁法の適用が除外されるということになれば、いわゆる話し合いをしておる当事者は両者の代表者でありましても、実際の農民は肥料を買いたい、使いたい、また会社は売りたいということになれば、そこで売買は必然的に行なわれていくということになってまいると思うのでありまして、そういうような事態は大体起きないし、起きた場合には、むしろ関係しておる両当事者が非常に世間から誤解を受けるというようなことになりますので、そういう事態はあり得ないと私は思っております。万一そういうことがあったらどうかということでございますれば、これはそのときになってわれわれとして考えてもよろしいのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/59
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060・足鹿覺
○足鹿委員 いま御答弁を聞いておりますと、自由と同じではありませんか。このような条文のあるなしにかかわらず、自由と同じような運営になるのではありませんか。そういう印象を私は受けます。命令を順守しない場合の罰則、あるいは罰則がなければ、これにかわるような行政的な制裁措置、そういったことを御言明にならない限り、常識的に見てそういうことはあり得ない、あるメーカーが応じなくても、あるメーカー同士で話が進んでいくから心配ないということは、自由と同じじゃありませんか。政府の行政介入権をみずから否定するような御答弁は私は首肯しがたい。
そこで、具体的に伺いますが、先ほど松岡局長からも御答弁がありましたけれども、今後の国内価格の値下げの重要なファクターとして、合理化メリットがございますことは先ほどのとおり。これをいかに配分するかということがおそらく話し合い等の中心になろうかと思います。配分はどういう構想で対処されますか。現在尿素メリットは織り込まれておりますが、従来から問題となっておる副産、回収硫安等は生産費に反映させるべきであるとお考えになっておりますか。これは重要な点でございますので、明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/60
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061・福田一
○福田(一)国務大臣 先ほど私が申し添えなかったことを追加さしていただきます。先ほど公取の委員長からも御言明がありましたが、命令に従わない場合には、独禁法の規定が適用され、したがって、それには罰則がございますということは、これはもうおわかりを願っておると思って申し上げなかったわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/61
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062・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 合理化メリットをどう配分するかということ、これはそのときの価格取りきめの際に、両者がいろいろな資料を持ち寄りまして、たとえば労賃が春闘の結果今度はどのくらい上がった、そういった資料を持ち寄りまして、議論を尽くして、今回はこう配分したほうがよろしい、こういうふうにきめていく性格のものであろう、こう考えておるわけであります。その議論を尽くした結果が、五、五になるか、あるいは六、四になるか、七、三になるか、いろいろな場合が出てまいるかと思いますが、これはだれが見ても納得がいかないというような場合に、政府としては、不当な配分である、取りきめである、こういうように見なさざるを得ない、こう考えておるのであります。その辺は、両当事者が資料を十分持ち寄って、議論を尽くして理解し合う、こういうことで配分は決定されるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/62
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063・足鹿覺
○足鹿委員 現在行なわれております合理化メリットの配分方式、またその算定方式といいますか、尿素メリットは、硫安トン当たり総原価から、硫安と尿素の総原価に両者の総生産量を乗じ、尿素、硫安の硫安換算量で除したものとの差額の半分ということになっておる。これはいまの御答弁によってこの算式を確認して、これを基礎として、さらに幅を持たせていくという御答弁に解してよろしゅうございますか。また、後段の質問にはお答えにならなかったようでありますが、副産硫安の場合はメリットが現在はございません。国内所要量から副産硫安生産量を差し引き還元して、合成硫安の一番安いものと同じものに見ておってよいのでありますか。当然メリットを見るべきではありませんか。また、回収硫安も最低の工場と同一の扱いをなされておりますが、これらは当然廃ガス、廃液等を原料としたものでありますから、それの原料としての価格の見積もり等に問題はあるとしましても、合成硫安よりはるかに安いことは万人の認めるところである。それらが合理化メリットとして織り込めないというはずはなかろうかと思いますが、この点も明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/63
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064・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 御指摘になりました点は、確かに非常に問題のところだと思うのでございます。いままで肥料二法でバルクライン方式できめてまいった方式でも、いろいろ問題がございました。非常に批判の余地が多々あると思いますので、結局これは肥料審議会においていろいろ議論していただいたわけでございますが、約束として通用してまいった、こうみなさざるを得ないのであります。回収硫安の考え方も、これは確かにコストを把握しにくいわけでございますが、いまの合成硫安の最低の工場のコストとみなしておりますけれども、それより低いかもわからぬわけでございますが、そういうことはやはり専門家が入った両当事者の話し合いで、いままでの慣行に必ずしもとらわれずに十分論議してもらって、妥当な方式があればそれでやっていただきますし、いままでの慣行でやるのが一番よろしいとみなされますならば、従来の方式を踏襲していただく。現在この法律で予定してどういう方式が妥当であるということをきめてかかることは、自主的な話し合いということからしましても、また従来の方式が絶対正しいというわけでもございませんから、その辺はあらためて検討していただいたほうが、私どもはよろしいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/64
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065・足鹿覺
○足鹿委員 この点は一番重要な点であろうかと思います。とにもかくにも、尿素メリットは一応半々ということになっておる。傾向としては、副産、回収硫安が急速に生産量を拡大しつつあるのでありまして、これが合成硫安の一番安いものと単に見るだけで、メリットとして織り込めないということになりますと、価格の点に大きく響くことは論をまちません。これは両大臣から統一見解として、通産大臣おいでになりませんでしたが、きょうの政府委員の答弁は大臣の答弁と心得るので、そのつもりで答弁しておいてもらいたいということをあらかじめ申し上げておきましたが、この点は特に重要でございますので、明らかに統一見解を述べていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/65
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066・福田一
○福田(一)国務大臣 ただいま松岡局長から御答弁いたしました趣旨には、そのとおり考えますが、その場合において、いわゆる折衝の場合に両当事者が十分に検討されるということはけっこうだと思いますが、私としては、その場合におきまして、肥料の製造、いわゆる硫安の製造が、一社で回収硫安も、また副生硫安もやっておるのだという場合には、いわゆる一本化して考えることが、非常に姿としていいと思うのであります。ところが、会社がたくさんございます。そして回収硫安もなければ、副生硫安もないという会社があるし、一方は回収硫安ができ、一方は副生硫安があるという会社があったと仮定いたしますと、非常に安いものができたのをあまりこれを安くいたしますと、場合によっては、硫安のみをつくっておるというか、硫安のみにたよっておるようなところは、非常な困難な経営状態におちいるということがあり得ることを考えなければならない。私は、この問題がひいては労働問題にも影響し、その他いろいろな問題にも関連がありますので、私がいま申し上げたようなことも頭の中に入れておきますと、従来の慣例でありますところの、最低の合成硫安の価格というところへいままでの考え方がいっておったのも、うなずけるという気がするのであります。しかしながら、御案内のように、今度の法律は両当事者の間においてきめていただくということでございますので、これがその価格のきめ方によってある会社がつぶれるとか、そういうような非常にドラスティックな問題が起きないということでございますれば、われわれとしては何も異議を差しはさむことはございませんが、そこらの点を十分考慮の中に入れて、価格の決定がなされるものであると考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/66
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067・足鹿覺
○足鹿委員 どうも松岡局長の答弁とちょっとニュアンスが違うように私は聞き取りました。どうも大臣の答弁を聞いておると、いい答弁を希釈するような傾向があるように、お立場上、そういうことも通産当局ともなればあるのかもしれぬが、松岡局長の答弁には農林大臣は御異存はないですね。またおとといの肥料審議会の際、私が指摘いたしましたように、これは原則的な話ですが、別にいまの合成硫安一点ばりの会社をつぶすというわけではありませんが、そういう意味にとっていただかないようにお願い申し上げますが、大勢としては、合理化の方向としては、副生硫安に持っていくのだ、それがほんとうの国際競争力の強化であり、豊富低廉な内需の確保に通ずるのである、こういうことであるならば、当然合成硫安の一番低いものに見合う価格でメリットはないのだという考え方では、合理化の目的が価格に反映しませんよ。それでいいのでございますか、農林大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/67
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068・福田一
○福田(一)国務大臣 私は、この価格の問題でございますが、数量が問題だと思うのであります。回収硫安、副生硫安にできるだけ持っていくというその考え方は、いま御指摘を賜わったとおりでございますが、それだけで、いわゆる合成硫安なしに数量が確保できるのであるならば、お説のとおりだと思いますが、それだけでは今後数年にわたっていわゆる数量の確保はできない、どうしても合成硫安というものをつくらなければいけないということになると、その合成硫安をつくる値段というものが非常な低廉なものに、回収硫安、副生硫安の値段のきめ方で変わっていきます。会社の存立に大きな影響を来たすということもあって、したがって、結果において、数量の十分な硫安を安く供給するという、十分なという意味にもちょっと支障を来たしますので、先ほど申し上げたようなことを実はお答えをいたしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/68
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069・赤城宗徳
○赤城国務大臣 松岡局長の答弁した方針で私は進みたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/69
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070・足鹿覺
○足鹿委員 通産大臣はいま御釈明になりましたが、松岡答弁の精神と同一見解とみなしてよろしいのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/70
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071・福田一
○福田(一)国務大臣 私は、松岡局長の答弁並びに農林大臣の答弁を認めておるわけであります。ただ、そのときの措置の方法についてお答えいたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/71
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072・足鹿覺
○足鹿委員 通産大臣は松岡答弁に賛成である、こういう御趣旨の御答弁があったと解してよろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/72
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073・福田一
○福田(一)国務大臣 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/73
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074・足鹿覺
○足鹿委員 新法によって、政府は価格取りきめに極力介入しない方針だと言っております。輸出赤字の国内非転嫁だとすれば、どこで保証されるのでありますか。価格は現行よりも下げる。転嫁もしない。一方輸出は拡大の一途をたどる。現実に輸出価格と国内価格の間には四、五ドル程度は少なくとも差があることは、万人の認めるところである。とすれば、輸出赤字が不可避の既定事実と言わねばなりますまい、現段階において。赤城農相は、久保田委員の当委員会における質問に答えて、国内非転嫁の確かな保証はないが、もしそういう事態になれば、行政措置をとると答えられましたが、行政措置の具体的な内容は、政府が輸出赤字を財政的に処理するという意味でありますか。他の何らかを考えて行政措置をとるとおっしゃっておられるのでありますか。その構想を明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/74
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075・赤城宗徳
○赤城国務大臣 内需に転嫁しないという観点からいたしますならば、輸出の面について赤字が出るというような点もあり得ると思います。そういう面におきましては、別途に行政的な考え方で対処していくことが必要であろうか、こういうことを申し上げたわけでございます。その内容につきましては、具体的にそういう場合に協議していくよりほかはないと思うのですが、この点、税制的な問題もありましょうし、あるいは財政的な問題もありましょうし、あるいは財政的な問題でも融資の面もありましょうし、いろいろそういった面があろうかと思います。私は、その方面のことについてはどうこうという的確な方途をいま申し上げるまでにいっておりません。先ほど御答弁申し上げましたのは、転嫁させないという点を強調した意味におきまして、その赤字の場合は行政措置をとる、そういうことを申し上げたわけでございます。具体的にどういう措置をとるかということにつきましては、私まだはっきり方途を持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/75
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076・足鹿覺
○足鹿委員 先般は行政措置をとるということをおっしゃって、いまから中身を言うことはできないといういまの御答弁、一応やむを得ない面もあろうかと思いますが、昭和四十二年度において政府は輸出を二百二万トンも見込んでおるのでございます。今後の合理化の遂行のみによって輸出赤字は出ないと考えてよろしいのでありますか。出なければそれでよろしいのであります。また出ないほうがいいのであります。輸出赤字が、いまの合理化による価格の段階においては、五、六ドル程度の輸出価格と国内価格との差が出る。昭和四十二肥料年度において五十ドルを割る。これが一昨日の肥料審議会の倉八軽工業局長の答弁である。昨日の答弁でもある。そうすれば、いかに好調を続けておる輸出量及び取り引き価格といえども、まだまだ昭和四十二年度においては赤字が出ると判断せざるを得ない。出ないのでありますか。出さないにこしたことはないのであります。私は、現在の実情から見、またあなた方の答弁から見て、出得る可能性があるから、その非転稼の保証だけは明らかにしておかなければならぬと考えますので、あえてしつこく申し上げておる意思を御了解願いたい。本法の最大の欠陥ではないかと思いますので、あえてこの点を重ねてお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/76
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077・福田一
○福田(一)国務大臣 輸出赤字の問題でございますから、その分について私からお答えをいたしたいと思いますが、これは四十二年に輸出赤字が出るかどうかということは、世界の各国がいわゆるアンモニア系の肥料の製造に対する工場能力をどれだけ充実するか、また当時における天候がどういうふうな影響があるかということが、一番大きな問題でございます。したがって、いまから各国の事情をつまびらかにし、天候の問題を明らかにすることはできませんから、いまにわかに予断することはできませんが、今日の状態から推してみますと、この硫安の価格というものは相当高いところにおりますので、たいして輸出赤字というものが大きく出るとは思いません。いずれにいたしましても、その会社経営の中におけるいわゆる資料の提供ということによって、輸出赤字が転嫁されておるかどうかということははっきりいたすわけでございまして、その輸出赤字が転嫁せざるを得ないような事態になった場合においては、先ほど来農林大臣が申し上げましたように、われわれとしては、政治的な措置をとるということを申し上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/77
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078・足鹿覺
○足鹿委員 ただいまの通産大臣の御答弁は、従来からの御答弁、肥料審議会等における答弁あるいは衆議院の予算委員会における私への答弁と、いささか違った御答弁をなさっておりますが、昭和三十七年末の二百九億の政策融資、もうこれでおしまいなんだということをおっしゃった。縁切りだ、こういうことをおっしゃったことは、通産大臣も御記憶であろうと思います。つまり、そのことは、いま承りますと、赤字が出たら、税法上その他の点についてまた考えなければならぬということとは、一緒なのでありますか。あのとき、あなた方が行政措置として膨大な政策融資をなさったときには、もうこれで会社側に対してはとるべき措置はおしまいだ、つまり、もうこれで縁切りだ、こういう御答弁と私は解しました。肥料審議会においても予算委員会においても、そういう御答弁は記録に残っております。が、政府が若干の行政介入の足がかりになるような、こういう穴だらけの立法をあえてされたということは、何かないと——手放しで、生産者側が万一輸出赤字を出した場合に、農民にこれを転嫁されては困るという趣旨から、またまた行政措置をおとりになる。私は、農民に非転嫁はけっこうでありますけれども、国際競争力にたえ得るところまで育成強化の措置がとられておるのでありますから、残酷なことを言うようでございますけれども、一応たてまえとしては、これははっきりさせておかなければならぬ問題だと思う。農民に転嫁されるような場合以外は、他にいろいろな援護措置等はもうおしまいでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/78
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079・福田一
○福田(一)国務大臣 私が申し上げておったことと矛盾するではないかというお話でございますが、いまの現行二法がありまする限りにおいて、私たちとしてはああいう措置をとってまいっておるのであります。そうして今度は新しい法律でございますが、新しい法律でやります場合において、そういうような心配があった場合には、われわれとしては、農家にこれを転嫁するということは断じて避けなければなりません。この点を強調する意味において、私どもは行政的な措置もあえて辞さないということを申しておるのでありまして、私は必ずしも矛盾ではないと考えます。ただ、もしあなたが、そういう意味でどうもやはりその点が首尾一貫せぬということでございますれば、これは、私は答弁が間違っておるという意味でおしかりを受けても差しつかえありませんが、しかし、私たちとしては、農家に転嫁させないということは最も重要であると考えておりますから、やはり農林大臣のお答えになっておるとおりにいたさなければなるまいかと考えております。転嫁はさせないようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/79
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080・足鹿覺
○足鹿委員 農民に輸出赤字を転嫁しないというための措置は、私はあえて否定するものではありません。それをオーバーに拡大解釈をすれば、幾らでもやり得る情勢にあるのです。一方においては、二法下にあってあらゆる援護措置が講じられても、四十二年度において五十ドルを割る程度の合理化成績しか上がらない、何ドル割るかわからないということでございますが、そう大きく割るとはどうも考えられない。割るなら割るとはっきりおっしゃっていただけばけっこうでございますが、そうだといたしますと、私はいつも言うのでありますが、すでにもう合理化目標は達成しておる、達成しておるけれども、達成しておらないかのごとく装っておる場合もあり得る、かように聞いておるのであります。だから、一昨日の肥料審議会においても、四十二万トンの当初計画よりも輸出を伸ばしても、業界は平気でおられるのであります。合理化の段階が遅々として進んでおらないのが実態とするならば、悲鳴をあげざるを得ないではありませんか。従来だって、ずいぶん大げさに政府に泣きつき、いろいろな施策が講じられたことは御存じのとおりです。だから私は、農民への非転嫁に寄せて、拡大的な措置がとられる可能性もありはしないか、あえてそのことを申し上げておるのでありまして、農民への非転嫁の措置が不要であるとは申し上げておらないのでありますから、その点はよく御理解願いたい。同時に、その範囲内において、少なくとも厳正になさるべきだと思います。この点はいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/80
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081・福田一
○福田(一)国務大臣 お説のとおりでございまして、私たちは何も会社の利益を擁護しようなどという考えはございません。ちゃんと資料に基づいてこれがどういうふうに処理されているかということを明らかにして、その限度においてどうしても農民に転嫁せざるを得ないような事態であれば、これは何らかの措置をとらざるを得ない、こういうことをはっきり申し上げている。あえて会社の利益のためにわれわれは何も努力する必要はないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/81
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082・足鹿覺
○足鹿委員 私は別にあなた方が会社の利益を守っているなどとは申し上げておりません。あまりひねくれて御答弁にならないほうがよろしかろうと思います。
そこで、次に、資料の交付についてお尋ねいたします。
新法第三条は、関係者より資料交付の要求があった場合、これを交付することをきめておりますが、この資料は価格取りきめの成否を握る重要な一つのポイントだと考えます。従来の肥料審議会の例を見ても、政府は肝心な資料を出し渋っている傾向はお認めになろうかと思います。交付の要求があっても、慎重に検討した上でということで引き延ばしや出し惜しみをせずに、価格取りきめがすみやかに妥結するよう、その促進剤的な効果を果たすような、要求された資料を交付すべきだと考えるが、どうでございましょうか。一例をあげますならば、少なくとも肥料審議会が過去において要求し、これに提出をされた程度のことは最小限度守られるべきであろうと思いますが、いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/82
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083・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 政府といたしましては、この法律に基づきまして、生産数量、在庫数量あるいは生産費の調査を実施いたします。そのほかに、政府自身がほかにやっている調査もたくさんございますので、そういった資料は極力要請に応じて交付いたしまして、話し合いが円滑にいくようにいたしたいと考えております。ただ、その際、個々の企業の機密に属するようなことは、これは政府としてはいたしかねますので、そういった点は、もちろん配慮いたす所存でございますが、できるだけ要請に応じて資料を交付いたしたい、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/83
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084・足鹿覺
○足鹿委員 通産当局も同感ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/84
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085・倉八正
○倉八政府委員 いま農林省の松岡局長の答弁したとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/85
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086・足鹿覺
○足鹿委員 次に、政府の調停について伺いたいのであります。
新法において、政府が価格に介入できるのは、第四条の調停ということのみであると言っても過言でございません。第四条には、相当期間にわたり努力しても締結できない場合に調停を行なうこととされている。相当期間とはどの程度の期間をいうのか、お尋ねをいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/86
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087・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 先ほども申し上げましたように、大体肥料年度が始まる前に取りきめができることを期待しているわけでございます。そういたしませんと、新肥料年度の取引の値段が正式にはきまらないということになるので、その開始前、私どもとしては、少なくとも一カ月ぐらい前に交渉が始まってもらうように指導してまいりたいと思っておりますが、新年度に入りましても、直ちにどうにも話し合いがきまらないというような場合も考えられますので、そういった場合には、必要により暫定価格、これは従来も暫定価格というものがございましたが、暫定価格でとりあえずしばらくの間施行して、それでなお話し合いを続けてもらう、その期間を的確に何日ということは申し上げかねますが、やはり暫定価格をいつまでも続けるわけには参りません。一ヵ月以内とかそういう時期を見まして調停に入る、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/87
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088・足鹿覺
○足鹿委員 また「努力したにもかかわらず」と規定されておりますが、どちらか一方がさぼった場合には、調停の対象になるのかならないのか、この点はどうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/88
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089・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 努力したにもかかわらず、片一方が努力をしないでさぼったという場合でございますが、一方の当事者が非常に努力しておるが、相手がやらない場合、話し合いに真剣に応じてもらうという勧奨をするのがまず第一だと思います。しかしながら、それでもやらないという場合は、一方の当事者の申請によって調停をする場合があると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/89
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090・足鹿覺
○足鹿委員 公取に伺いますが、そういう場合には、公取としては独禁法適用除外が得られますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/90
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091・渡邊喜久造
○渡邊(喜)政府委員 結局この法律二条それから三条、四条による一応の手続を経た取りきめであれば、これは適用除外になります。しかし、そうしたものでない、この法律によってたとえば調停しても、調停に応じない、そういったことでもってきめた、たとえば生産者なら生産者のところの値段の取りきめのごときは、これは公取法に抵触した取りきめになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/91
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092・足鹿覺
○足鹿委員 さらにまた、申請があっても、特に必要があると政府が認めたときに調停することになっておるのでありますが、特に必要があると認めるときというのは、私が前段で指摘したようなことのほかに何か考えられますか。最も肝心な調停に根拠も基準もないということは、新法がざる法的存在であるという証拠だとも言い得ると思うのでありまして、こういうことについては政令があってしかるべきだと考えます。政令を考える御所存でございますかどうか、この点についても明白にしておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/92
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093・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 この規定はたびたび申し上げておるわけでございますが、取りきめは、できるだけ自主的な努力で話し合いが行なわれるようにされるのが望ましい、安易に調停に持ち込まれて政府にきめさせるというようなことは、できるだけ避けたほうがよろしいという趣旨の考え方でございまして、それで「特に必要があると認めるときは、」という規定を入れたわけでございます。めんどうだからひとつ政府に持ち込もうじゃないかということで、ちょっと話し合ってみて、どうも話が合わないから、こういうことで安易に持ち込まれないようにしたいということで、話し合いを真剣にやってもらいたいという趣旨から、特にこの規定を置いたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/93
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094・足鹿覺
○足鹿委員 私は、本会議においても農林、通産両大臣に伺ったのでありますが、調停は仲裁と違うと思うのであります。従わなくとも別に違法ではないことは、本来の趣旨から明らかだろうと思うのです。現実に調停に従わない場合はどうなるかというととは、先ほどもお尋ねいたしまして、るる御答弁を承ったのでありますが、ここで結論的にいま一つ確かめておきたいことは、運用をなさった上において、政府の調停の権威が疑われるような事態が生じた場合には、仲裁等の機関が考えられるのではないかと思いますが、十年の肥料二法のもとにあって一応慣行としてある程度運用がつくのではないかとも一部に見ておる向きもありましょうが、それは現行二法という大きなかんぬきの中における事態と、これがはずれた場合とにおいては、おのずから趣が変わってこようかと思うのであります。そういう場合に備えて、調停をさらに仲裁と、行政介入をしていく必要が生じはしないか、かように私どもは考えておるわけでありますが、このままでいきますと、調停に従わないといっても別に違法ではないというならば、成り行き次第で自由放任と同じ結果とも言えるのでありますが、これらの点について大臣の御構想がありましたら承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/94
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095・赤城宗徳
○赤城国務大臣 調停につきましては、先ほどお話がありましたように、十年のいろいろな現行法におけるいきさつがありますから、私は、調停の場合には調停ができる見通しがつくものと考えます。また調停ができないというような場合には、是正命令を出さなければならぬ事態であろうかと思います。でございますので、調停が不調のままで終わるということはあり得ないと私は思いますが、もしもそういうことがたびたび起きるということでありますならば、さらに考慮しなければならぬと思いますが、いまの見通しからするならば、調停が成立するし、もしも成立しないような場合には、是正命令を出さなければならぬ事態であろうと考えます。あるいはまた公取関係からのいろいろな面もございますので、いまこの程度にとどめておくのが適当であろうかと私は考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/95
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096・足鹿覺
○足鹿委員 次に、新法の対象について、これはきわめて重要な点でありますので、しかとお尋ねをしておきますが、現行二法の対象を拡大しようということと、現行二法が失効して新法がもしできた場合の対象を拡大するということは、本質的に違った意味を持っておると思いますが、この点はいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/96
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097・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 ただいまの御質問は、現行二法のもとでは合成硫安だけの価格を政府がきめる、それに対して新法ではさらに広げて硫安以外のほかのものも価格取りきめの対象にしてはどうかという御質問……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/97
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098・足鹿覺
○足鹿委員 全然違う。そこまで入っていない。ではもう少し説明しましょう。それくらいのことがわからぬのですか。これは一番根本の問題ですよ。要するに、現行二法の対象を拡大せよ、つまり、硫安から尿素に、あるいは高度化成に適用を拡大せよとわれわれが言ってきたことは、価格統制、マル公を強化せよということなんです。そういう意味ですよ。ところが、二法が失効してかりに新法が発効したといたした場合の対象の拡大ということは、現在の硫安にのみ限定されておるものを、あなた方は政令に依存して特定肥料にまで及ぼそうとしておる。このことは、対象品目を拡大して価格カルテルを拡大強化することであって、本質的に違うということを言っておる。この点を私は聞いておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/98
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099・赤城宗徳
○赤城国務大臣 これはカルテルの本質論から出ると思いますが、この法案におけるカルテル行為は、一方的に共同的に独占価格を決定するというようなカルテルでないことは御承知のとおりであります。消費者の面との話し合い上、カルテル結成を認める、こういうことでございますから、一般にいわれておりまするように、カルテルを結成して独占価格を決定する、こういうものとはいささか違うと思います。前者のように独占価格を決定するというカルテルであるとするならば、これは合成硫安のほかにその他のほうへ拡大するということは考えものだと思います。しかし、価格決定、価格を協議するというカルテルであるということであるならば、私は、他の肥料のほうにも広げていくことが、消費者の面にも便宜である、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/99
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100・足鹿覺
○足鹿委員 大臣、それはちょっと違うのです。立法者の意思と、適用する場合の適用者の法の運用とは、必ずしも一致しない場合が多い。いま大臣が御答弁になったような御趣旨が、そのままスムーズに法施行の上にすべり込む場合もありましょうし、ない場合だってあろうかと思うのであります。この点は明確にしておかなければなりませんが、現在の肥料二法は硫安に対してマル公のワクをはめておる。従来メーカーは硫安輸出会社の取り扱い品目に——つまり輸出カルテルを認められておるものでありますが、これに尿素を入れてもらいたいという気持ちをひそかに持っておったことは、御存じのとおりであります。現行二法下にあっては、輸出カルテルが認められる反面、価格統制の対象となり、コスト調査等が行なわれるために、表向きこれを要求できなかったといういきさつもあると私は聞いております。新法によって安心してこれらに価格カルテルが認められることは、われわれは容認し得ないところでございます。性格が違うのであります。その点を私は農林大臣にとくと御勘考の上、御答弁を求めておるつもりでありますが、意思がどうも通じておらないようでありますが、いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/100
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101・赤城宗徳
○赤城国務大臣 私のほうの意思が通じてないような気がいたしますが、私は、独占価格決定のような形で、肥料の対象範囲を拡大するということでありますならば、これは不当と考えます。しかし、そういうことでなくて、両当事者で価格をきめる、供給者と消費者との間で価格をきめる場合に、硫安だけでなく、尿素その他が非常にふえておるのでございますから、それも関連してきめていくということであるならば、これは便宜であろう、こういうことでございます。私は、本質的に独占価格を決定するというような形であるとするならば、これはいまの独禁法違反になると思います。そういうカルテルでないと思いますから、私はそういうふうに御答弁申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/101
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102・足鹿覺
○足鹿委員 特定肥料というものは、将来何を考えていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/102
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103・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 政令で定められるものは、尿素あるいは塩安、硝安、場合によっては過燐酸、カリ等もきめていくこともあると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/103
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104・足鹿覺
○足鹿委員 われわれが従来二法下にあって尿素、高度化成等を対象に入れろということを言ったのは、そのウエートが消費構造の変化によって高まってきつつある、インスタントになりつつある、そういう面から、ア系窒素として一応影響力を持つとはいうものの、硫安のみに限定されておることでは不十分である、だから、この尿素や高度化成を適用の対象にせよという主張をしてきたのでありますが、今日この新法の場合は、これは考え方が全然別個になる。農林大臣はよいと思っておっしゃっておりますけれども、他の産業にも重大な波及をしようという、このような独占禁止法に穴をあけるカルテルの容認行為というものは、私は重大な問題だと思います。ですから、大臣が言われておりますように、これがマル公でありますならば、拡大をして効果はあがるでありましょうが、両者間の話し合い、また政府の是正命令や、あるいは調停に何らの罰則もない行政介入で、何ほどの効果をもたらすか。乳価の場合でも同様だろうと思うのです。指摘ができるだろうと思うのであります。ですから私は聞いておるのであります。
一歩進めて伺いますが、政府は硫安はこれ以上は上げない、下げると言明されました。では、尿素、塩安等を現行より上げない、下げるということをこの際明らかにされてしかるべきではないか。農林大臣が先ほどの御答弁をなさる以上は、これらのものを根本的に下げるのだ、高度化成も尿素も塩安も下げるのだ、そういうはっきりとした覚悟と方針と施策を伴うならば、これはまたおのずから問題は別個になってまいりましょうが、その点はいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/104
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105・赤城宗徳
○赤城国務大臣 硫安そのものが下がる傾向にあり、また話し合いの上で下げるべきだ、こういうことに考えております。したがいまして、尿素とか高度化成とか、こういうものも成分から割り出せるものでございますから——これにいま生産量ということもありましょうが、生産量もふえておりますので、これは当然それに比例して下げるべきだという方途を私どもはそういう場合には講じていきたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/105
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106・足鹿覺
○足鹿委員 了承いたしました。明確になりましたので、先へ進みます。
次に、需給見通しについてお尋ねをいたしたい。新法は二法の「需給計画」を「需給見通し」に改めておりますが、農林大臣は、同僚久保田委員の質問に対して、需給見通しも需給計画と変わりはないものだという趣旨の答弁をされました。実質的に変わらないものであるとするならば、計画を見通しに変更したことは、農民の側から見た場合、従来よりも後退したという不安と印象を受けるわけでありまして、変える必要はなかったではありませんか。どうもその辺は需給計画——あとでこれは通産大臣と公取にもお尋ねをする予定でありますが、その点は大事だろうと思います。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/106
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107・赤城宗徳
○赤城国務大臣 先ほど述べましたが、今度の法案で需給見通し、こうなっておりますので、非常に後退したような感じを与えるのじゃないか、確かにそういう感じを一応与えるかもしれません。しかし、法のたてまえが、現行法におきましては、生産指示とか、出荷指示とか、あるいは、調整保管とか、非常に強度の統制下に置かれましたので、需給計画という名前で計画をいたしたのでございますが、今度の法のたてまえは、需要者と供給者といいますか、この話し合いで価格等をきめる、こういうたてまえでございます。そのたてまえ論からいいまして、内容は需給計画とほとんど一致しておると言っても差しつかえないと思いますけれども、表現上は見通し、こういうことにいたしておるのでございますが、これは法のたてまえから出ておる呼び方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/107
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108・足鹿覺
○足鹿委員 現在農林省には需給委員会というか、需要懇談会というものが設けられておる由聞いております。いわゆる需給の見通しであれ、需給の計画であれ、同じだというならば、需給委員会のようなものを法制化して、そして共通の土俵を設けておかないと、私は大きな問題が発生するのではないかと思います。従来の需給計画は、調整、保留、生産命令、譲渡命令等が明文化されておりました。これらが今度は削除されておるのでありますから、需給見通しと計画の差は明らかであろうと思います。いかに強弁をなさいましても、大臣、内容が違うのであります。生産業者は採算が合わなくなれば、簡単に操業短縮が可能となり、新法ではこれをチェックできないと思いますが、公正取引委員長の御所見を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/108
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109・渡邊喜久造
○渡邊(喜)政府委員 私のほうで直接お答えするより、通産大臣からお答え願ったほうが適当な問題だと思います。(足鹿委員「操短の問題なら公取でしょう」と呼ぶ)その点について申しますと、お互いの間で操短関係を協議して、そして肥料会社が操短をするというようなことは、この全体の法制の上からして、そういう共同行為は認められておりません。したがいまして、各会社が個々に自分のほうのいろいろな関係を考慮しながら操短をする、あるいは操短しない、これはあり得ると思います。しかし、業界全体が話し合いをしてある程度操短するとかなんとかいう、そういう意味のカルテル行為は、この法律全体において認められておりませんから、もしそういうことがあれば、われわれのほうとしては、独禁法違反としてこれを措置します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/109
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110・足鹿覺
○足鹿委員 これで明確になりました。そういう方針を貫いていただきたいと思います。操短と需給見通しあるいは需給計画は表裏一体をなすものでありまして、それはまた価格と表裏一体をなすものであるから、念を押しておるのでありまして、この点はあくまでも堅持していただきたいと存じます。
需給見通しに対する農民の不安感をぬぐい去るために、また国内価格の値上がりを防止する一つの要素として、需給見通しの策定にあたって、在庫調整が問題となろうかと思います。したがって、需給見通しはゆとりを持って、メーカーあるいは販売業者に在庫をたっぷり持たせておくことが必要であると考えますが、在庫数量をどの程度見るお考えでありますか、明らかにされたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/110
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111・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 従来の需給計画の策定にあたりましては、在庫を平均一・一カ月見ておったのでございます。その内訳を申しますと、硫安とか尿素あるいは塩安、こういうものは一カ月、それから高度化成のようなものは二カ月、平均いたしまして一・一カ月程度を計上しておりました。今後も月並みの場合はその程度の在庫で十分かと存じますが、輸出が活況を呈するというような場合には、必要によって在庫をふやす、こういうことが必要な措置となってくるかと考えられます。輸出が活況を呈しておるときは在庫率を引き上げる、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/111
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112・足鹿覺
○足鹿委員 通産省、いいですね。——通産省も同意見だそうでありますから、先へ進みますが、肥料はえさなどと異なりまして、一年一回ないし二回に時期的に限定されており、安い時期に購入して肥やしをやろうというわけにはまいらないことは申し上げるまでもありません。したがって、ピークをいつに見るか、またピーク時における在庫調節をどうするかは、重要な問題であろうかと存じます。そういう意味から、在庫の確認、把握については、従来以上に的確にする必要があろうかと思いますが、御努力になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/112
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113・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 全く御指摘のとおりでございます。今後一そう在庫の把握に努力いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/113
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114・足鹿覺
○足鹿委員 肥料の国内需要拡大のために、果樹、野菜への施肥の増加及び林地、草地等に対する新規需要の拡大について、農林省はいかなる見通しで需給見通しを策定しつつあるのか、明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/114
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115・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 果樹園芸部門、それから飼料作物などに対する施肥は増加の傾向にございます。先ほどお話の中にありました需要懇談会という、農林省の中にあります懇談会は、そういった問題に特に技術的に検討を加えておるわけでございます。今後、草地の肥培管理あるいは林地の肥培管理等ございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/115
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116・足鹿覺
○足鹿委員 二法制定前の二十六、二十七年当時、輸出価格の高騰が影響して、国内価格が暴騰し、当時の肥料公団が手持ち肥料を放出したけれども、これを完金に冷やすことができなかった。そういう先例があることは御記憶があろうかと思いますが、今後についても、かかる事態の発生しないという保証はできないはずであります。現実に輸出が非常に好転し、輸出価格も上昇傾向にある。万一このような事態に立ち至ったときは、輸出量の調整時期が大きな問題になろうと思いますが、農民の立場からいたしますならば、早目にこれを行なって国内価格にはね返りのないようにすべきでありますが、輸出のストップをかける時期をどのように考えておられるのか、明確に御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/116
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117・倉八正
○倉八政府委員 いま御指摘の二十七年、二十六年というのは、まだアンモニアの能力もきわめて少ない時期でございまして、非常に窮屈な需給関係であったわけであります。ところが、いまは御承知のように膨大な能力を持ちまして、そういう心配はなかろうとは思いますが、われわれとしましては、農民の方に不安がないように、毎月の生産調査、在庫あるいは出荷をちゃんと把握しておりまして、そして農林、通産両大臣が輸出計画を定めて承認するということを徹底的に行なっておりますから、今後そういう場合が起きましても、その方策を堅持していけば、国内の確保ということは十分であると確信しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/117
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118・足鹿覺
○足鹿委員 具体的に伺いますが、輸出承認の具体的な方法は、たとえば一カ月ごとの承認にするのか、あるいは半年ごとにするのか、承認の方法を明確にしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/118
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119・倉八正
○倉八政府委員 いまやっております硫安輸出会社の買い受け承認というのは、三カ月に一回両大臣の許可ということになっておりまして、さらにそれを掘り下げまして、個々の輸出の場合に及ぼしておるわけでございます。したがいまして、形式は三カ月に一回の買い受け承認でございますが、事実問題としては、毎月行なっておるというのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/119
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120・足鹿覺
○足鹿委員 公正取引委員長に伺いたいのでありますが、輸出承認について通産大臣が承認権を持ち、農林大臣はこれに同意を与えるように新法では規定されておりますが、現行二法には公正取引委員会の事前の同意が必要であるように規定されておるのであります。ところが、新法では事後通告でよいことになっており、公正取引委員会の事前審査権は抹消され、肥料に関しては公正取引委員会はその権限が大きく後退しておると存ずるのであります。従来現行肥料二法下にあっては、公取が事前に注文をつけた事例がありますが、今回の新法では完全にノータッチでございます。はたしてそれで公取の機能は保持できるとお考えでございましょうか、明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/120
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121・渡邊喜久造
○渡邊(喜)政府委員 この法制全体のたてまえが、価格についていえば、団体交渉とかいったような法制のたてまえをとっております関係で、公取委員会に対しましても一応通知という形になっております。しかし、その通知された事項がそれぞれの規定されている要件を備えていない場合におきましては、私のほうとしては、処分請求ができるわけであります。同時に、その処分請求に応じての処分がなされない場合におきましては、もうそうした取りきめ自体が独禁法の適用除外をできなくなりますので、結局問題としましては、公取がいかに正しい姿勢でこの問題を処理するかということで問題は解決できるのではないかと思っております。ただ、おそらく実際の問題としましては、通産、農林両大臣が調停されるというときに、私のほうでもってあとでまたそれの取り消し通告といったようなことも考えられますが、事実上は相当事前に話し合いがなされ得るものではないかと思います。しかし、法律としましては、通知、そしてこちらのほうとしてはそれの取り消し通告ということで、十分公取としての仕事は果たし得るものだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/121
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122・足鹿覺
○足鹿委員 新法の重要な点の一つは、価格カルテルを公然と認めたことでありましょう。価格取りきめだけでカルテルを公認することは重大な問題であり、独禁法のたてまえからいっても、大きな疑義のあることは、他の同僚議員からも指摘されたとおりであります。これについて政府の言い分は、金属鉱業等安定措置法に前例があると言っているそうであるが、この法律には、輸入の自由化によって企業が成り立ち得ない場合はという趣旨の、いわゆる不況要件が挿入されているのでありまして、肥料のように安定した商品、しかも大企業に全く新しい価格カルテルを容認したことは、独禁法に穴をあけることであり、今後他の産業に波及していくことは必至と考えますが、公取委員長はこれにいかに対処せられます御所存であるか、承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/122
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123・渡邊喜久造
○渡邊(喜)政府委員 お話しのとおり、非鉄金属のほうにこれと似たような団体交渉のカルテルがありまして、独禁法の適用除外をしております。しかし、それはいま御指摘になりましたように、一種の不況要件を備えたと見る場合、非鉄金属に特有な、きわめて特殊な場合だと思っております。したがいまして、それがあるからすぐにこの肥料の問題についてこういう団体交渉も認めていいんだといったような安易な気持ちは毛頭持っておりません。ただ、足鹿委員先ほどからるるお話しになっておりますように、従来肥料につきましては、いわば統制価格があった。それじゃ統制価格をやめてすぐ普通の自由経済の中に出していいかどうかということになりますと、おそらく農民の方にも相当の不安があるのじゃないか。今度の場合におきましては、一応通常の取引と違いまして、監督官庁である通産省、農林省は、生産者のところへ立ち入り検査までして相当の資料を整えることもできる、原価計算的な資料も持ち得る、それを交渉の場に当たる人に交付する、それをもとにしながら交渉する、こういったような、きわめて異例な事態でございますので、いわば従来の統制価格のところから順次自由価格へ移っていく一つの過程として、こういうものがあっていいじゃないだろうかという意味において、われわれのほうとしては同意したわけでございまして、その場合におきましても、先ほど来御指摘になったようないろいろな要件は、もちろん満たしてもらわなければ困るということができております。したがいまして、ここにこういったような団体交渉を認めたから、ほかの産業についても同じようなことがあとからあとからあるのじゃないかというようなことは、われわれのほうとしては全然考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/123
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124・足鹿覺
○足鹿委員 公取委員長の明確な御答弁がございましたが、佐藤通産相当時の経緯を私は聞いておるのであります。すなわち、金属鉱業等安定臨時措置法にカルテルが認められたのは、次のようないきさつがあったと聞いております。政府は現行肥料二法にかわる肥料工業の振興及び肥料の取引の適正化に関する法律案を策定された。佐藤通産相当時であります。その際、この法案に価格カルテルを初めて認めさせたが、輸出赤字の未処理の段階であったので、メーカー側の強い反対にあって、閣議決定寸前で同案はつぶれたと聞いております。このとき、この法案の立案に当たった当事者が、後、鉱山局に転勤となり、ここで前記金属鉱業法を立案して、公正取引委員会に対し、つぶれたとはいえ、肥料の前例を認めたのだから、今回もということで、金属鉱業にも価格カルテルを認められたと伝えられておりますが、公取の態度は私は少し軟弱ではないかと存じます。私が聞いたこのような真相が違っておれば別でありますが、これは知る人ぞ知ることでありまして、そう私は虚構のことを申し上げておるつもりはございません。今後もこのような事例等の経緯にかんがみて、しかと公取委員会の権威と機能発揚につとめていただきたいと思いますが、御所信のほどを承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/124
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125・渡邊喜久造
○渡邊(喜)政府委員 過去のそうした事態があったかなかったかということは、私着任前の問題であり、いま突然のお話でございますので、私何とも申し上げかねます。ただ、少なくとも私が着任後、同時に今後においては、いまの御趣旨のように、公取としては、当然与えられた権能、同時にそれは責任でありますが、これは十分尽くしていくつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/125
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126・足鹿覺
○足鹿委員 第九点として、報告の徴収について、通産、農林大臣の統一見解を伺いたい。新法においては、生産業者、販売業者の自主的話し合いによる価格取りきめを行なうこととなっておりますが、このための重要な基礎資料として、生産数量、在庫数量、購入数量、生産費を知ることが不可欠の条件となってくるのであります。このうち、購入数量は全購連等がみずからの販売または調査により知ることができますが、生産数量または在庫数量、生産費については、何らかの方法による提供を待つ以外に方法はないと思いますが、その点はいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/126
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127・倉八正
○倉八政府委員 この報告及び報告の条文につきましては、十六条に明記してあるとおりでございまして、販売、生産、出荷、それから生産費に関する調査というのは、いまの御趣旨のとおりにわれわれは進めていきたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/127
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128・足鹿覺
○足鹿委員 もちろん、価格交渉にあたって、相手方である生産者よりある程度の資料の提供はあるにしましても、価格決定のめどをつける心がまえを持つ意味で、公平な第三者、それも権威あるものよりの資料の交付を受ける必要があると考えるものであります。このため、新法においても資料の交付をなし得るものとなっておるように解しますが、その点はいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/128
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129・倉八正
○倉八政府委員 話し合いでございまして、両方を信頼しまして、お互いが出した資料に基づいてやるというのが一番適当な行き方ではなかろうかと思いますが、しかし、政府は政府として、農林、通産で調査した資料がございますから、要求があれば、それを提供いたしまして交渉の参考に資する、こういう仕組みになっておりまして、足鹿先生のおっしゃった趣旨に合致しておると私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/129
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130・足鹿覺
○足鹿委員 肥料の生産、在庫、生産費の実態を把握することこそ、価格決定の成否の第一条件であるから、申し上げるのであります。ところで、新法では、このような重要な資料の交付をする際の重要な材料となる関係者よりの報告の徴収について、明確を欠くうらみがあると思いますので、以下数点について伺っておきたい。
第一に、新法では、政令で定めるところにより、必要な事項の報告を求めることとなっておりますが、そもそもかかる重要事項を政令に譲った理由は何でありますか、御答弁願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/130
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131・倉八正
○倉八政府委員 十六条に明記しておりますように、「この法律の施行に必要な限度において、」というきわめて広範な規定の書き方をしておりまして、その必要な限度において何をとるかということを政令で定めておるわけでございまして、いわゆる法律によって政令に授権されておりますから、法律でここに書こうと政令に書こうと、それは実体的に何ら差異はなかろうと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/131
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132・足鹿覺
○足鹿委員 現行法では、明らかに肥料の生産費、輸入価格その他を法文に明記されており、当然法律事項にすべきではございませんか。どうもその辺がばくとしておるのであります。いままでの質疑の過程でも、生産費の報告の徴収について明確な答弁を得ていないが、生産費調査の内容について、より詳細に、たとえば全工場を行なうのか、毎年一回行なうのか、従来と同じく詳細な調査項目で行なうのか、この点を明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/132
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133・倉八正
○倉八政府委員 生産費の調査の内容でございますが、これは目的が二つあろうかと思います。一つは、合理化がどういうかっこうで、どういう幅で進展しておるかということをはっきり把握する目的が一つと、それからもう一つは、従来との関連におきましてどう変化してきたか、それを見るために調査を行なうという、二つの目的がございます。したがいまして、やり方につきましては、全工場をとる方法もございましょうし、それからそこの中のティピカルなものを選んでやる方法があろうかと思いまして、その点の検討につきましては、われわれとしましても、今後いまの目的を逸脱しない範囲におきまして、合理化の内容を把握するという意味におきまして、続けていくつもりでございます。しかし、いまの調査内容は、御承知のようにまだ適切でない項目もありますから、そういう点につきましてはある程度の簡素化を行なうということも必要ではなかろうか、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/133
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134・足鹿覺
○足鹿委員 この点は非常に重大であろうと思うのであります。たとえば三十八肥料年度の生産費は、全工場総平均一かます八百十八円四十九銭、尿素メリット三十九円六十六銭、回収メリット十三円七十銭、差し引き七百六十五円十三銭であります。しかるに、バルク内平均では七百九十八円二十四銭、尿素メリット四十九円八銭、回収メリット十円四十五銭、差し引き七百三十八円七十一銭、両者の間には二十七円の差があるのであります。また尿素メリットを織り込む前の生産費を見ても、最高が九百三十六円二十八銭、最低が七百五十五円八十銭、その差は百八十円四十八銭に達しております。尿素メリットを織り込んだもので最高八百五十六円四銭、最低七百二十五円八十銭、その差百三十円二十四銭と開いておるのであります。さらにまた、工場別控除項目を見ても、最低五円の工場から最高千九百円、本社経費も最低五百十八円から最高千三百八十円という大きなふれがある。本社費の中の宣伝費にしても、最低二円のところから百四十九円のところまであります。御存じでございましょう。先般、肥料審議会の際に、私が指摘したとおりであります。このように生産費のとり方いかんによって非常に大きな差があるわけでありまして、詳細な調査を毎年一回行ない、バルクライン方式と同じ計算ができるような資料を持つべきであろうと私は考えるのであります。一たびこれを誤ったならば、この法の一番肝心なところでしりが抜ける、かように申し上げても言い過ぎでないから、この点をお尋ねしておるのでありますが、明確にしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/134
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135・倉八正
○倉八政府委員 いま御指摘になりましたような差も、工場によってありますから、われわれとしましては、これを定期的に——定期的にということばが一番いいと思いますが、定期的にとりまして、それがどういうふうな合理化によって幅が縮まったか、あるいはどういう速度で進んでおるかということを調査することは、この法律にもその権能をうたわれておりまして、われわれとしましては、その法律の趣旨によって調査を続けていきたい、こう申し上げておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/135
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136・足鹿覺
○足鹿委員 まだこの問題については論議をすれば幾らでもあるのであります。でありますが、私もこれを省略して、農林大臣の御都合もあるようでございますから、一問だけ農林大臣に最後のお尋ねとして伺っておきたい。
以上、見てきたとおり、現行二法にかわる法案として提案された新法は、現行二法とは全く性格を一変して、農民保護から生産者保護のための法律となっており、農業政策としての肥料対策は皆無にひとしいざる法であり、かつまた独禁法に穴をあける悪法であるとすら言い得る点もあろうかと思います。われわれは農民保護を規定した現行二法をさらに向こう数カ年間延長し、その間にあって農業政策としての肥料対策のよりよい代案を考え、もって生産農民の期待にこたえるべきであろうと考えるのであります。それからの状況を勘案して、もし立法の必要があれば、それからで決しておそくはないと思います。二法の期限切れを好機として、かかるざる法とすりかえて、はたして農業政策としての肥料対策と言い得るかいなか、農林大臣の御所信を最後に承っておきたい、かように存ずるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/136
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137・赤城宗徳
○赤城国務大臣 現行二法によって農民の保護をはかろう、こういう御趣旨は私も同感でございます。しかし、新法によってこれが後退して農民保護の線から離れるんじゃないか、こういう御心配があるようでございますけれども、私は、現行二法を現段階に適応した形に改めて、農民の保護の線はこの法律によってさらに一そう目的は達する、こういう考え方でおりますので、運営等につきましては、なお一そう御趣旨に沿うような方向でやっていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/137
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138・足鹿覺
○足鹿委員 最後に、肥料新法に関する私の質問を終わるにあたって、政府に一括して申し上げますが、現行肥料二法が昭和二十九年に制定されて以来、農民に対し豊富低廉な肥料を供給するという面で、二法が果たしてきた役割りは高く評価されなければならないと考えております。農林、通産両当局も委員会においてこの点は率直に認めているにもかかわらず、肥料生産業者の強い圧力に屈して、二法の持つ農民保護的な面を全面的に削除し、メーカーに都合のよい部分だけを残しただけの新法を提出したことは、まことに遺憾にたえません。
もともと現行肥料二法は、供給過剰対策として立案されたものであり、つまり、昭和二十六、七年にかけて供給過剰からダンピング輸出が行なわれ、輸出赤字と国内価格が問題となった。これに対する対策として立案されたものが、国会審議中に供給不足ぎみとなり、急遽修正を行なったものであります。要するに、現行二法は、一面において過剰対策であり、一面においては不足対策という二面性を持っておることは、明らかな事実でございます。このような現行二法に対し、生産業者はかねてから不満をいだき続けてきたことは、周知のとおりであります。生産業者は、二法の持つ農民保護的な面が強過ぎることを不満として、現行二法は不足対策として立法化されたものであるというムードをつくり上げ、それが新法制定に大きな圧力となったことはいなめないと思います。特にメーカー側は、長年の懸案であった輸出赤字の処理について、去る三十七年十二月の閣議決定に基づく政策融資の金利メリットによって、これが解消のめどがついたため、二法による恩典は取れるだけ取ったという立場から、二法廃止を強く望んできたわけであり、このようなメーカー側の一方的な圧力に屈して新法を制定しようとする政府の態度は、全国農民の期待を裏切るものと言わざるを得ないことを切言し、私の質問をこれをもって終わりといたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/138
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139・高見三郎
○高見委員長 この際、午後二時五十分から再開することとし、暫時休憩いたします。
午後一時五十三分休憩
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午後三時十一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/139
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140・高見三郎
○高見委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
肥料価格安定等臨時措置法案に対する質疑は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/140
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141・高見三郎
○高見委員長 この際、芳賀貢君より発言を求められておりますので、これを許します。芳賀貢君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/141
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142・芳賀貢
○芳賀委員 私は、この際、臨時肥料需給安定法の一部を改正する法律案起草の件について以下申し述べます。
案文を成案とし、これを委員会提出法律案とせられたいとの動議を提出いたします。
まず、案文につき申し上げます。
臨時肥料需給安定法の一部を改正する法律案
臨時肥料需給安定法(昭和二十九年法律第百七十二号)の一部を次のように改正する。
附則第二項中「昭和三十九年七月三十一日」を「昭和四十一年七月三十一日」に改める。
附 則
この法律は、公布の日から施行する。
次に、本動議を提出いたしました趣旨について申し上げます。
まず第一は、現行臨時肥料需給安定法は、時限法であるため、本年七月三十一日をもって失効し、したがって、無法状態になるので、さらに本制度を存続する必要があること。
第二は、現在審議中の政府提出にかかわる肥料価格安定等臨時措置法案をもって現行肥料制度にかえるものと認めがたいこと。
以上二点が、臨時肥料需給安定法を改正する必要を認めるおもなる理由であります。
次に、政府提出のいわゆる肥料新法について、問題点を指摘し、現行法延長の必要性を強調いたしたいと思います。
第一点は、農業基本法の趣旨に反するものであることであります。その点は、農業基本法の第二条、「国の施策」において、その一項第六号では、「農業資財の生産及び流通の合理化並びに価格の安定を図ること。」と明記されておるわけであります。この農業基本法の国の施策の趣旨に照らした場合においては、基本法以前に運用されておる現在の臨時肥料需給安定法よりも、農基法が実施されておる今日において、政府から現行法よりも大幅に後退した、制度を弱める法案が提案されたことに対しましては、農基法の趣旨に反するものと考えるものであります。
第二点は、現行法によりますと、ア系肥料の需給計画を毎年政府はその肥料年度の開始前に肥料審議会に諮問いたしまして、その肥料年度の需給計画を明らかにして、これに基づいて肥料の生産並びに需要あるいは輸出の円滑化を進めてきたわけでありますが、今回の政府案によりますと、この重要な肥料の需給計画なるものが抹殺されまして、それにかわってわずかに需給見通しなるものが出されておるわけでございますが、これらの見通し程度では、今後重要な農業生産資財である肥料の国内需要量の優先確保、あるいはこれを満たすための生産の保障が不安になるという点であります。
第三点は、現行法におきましては、内需優先確保の規定が明らかになっておりまして、政府は必要に応じ、肥料製造業者に対しまして生産命令または譲渡命令を発することができる規定がありますけれども、今回の政府案においては、これらの重要な内需優先確保の規定というものがいささかも明らかにされていない点であります。
第四点は、従来も問題とされましたいわゆる輸出赤字の非転嫁の保証が政府案にはないという点であります。現在の肥料の国内価格と輸出価格とを比較してみますと、国際的に硫安はそれぞれの国が輸出ダンピングを行なっておるというような現況であります。したがいまして、わが国におきましても、硫安等の輸出価格は、FOB価格にいたしましてトン当たり三十七ドル程度であります。これに対しまして国内の価格は、トン当たり五十二ドル程度であります。そういたしますと、わずか一トン当たりで輸出価格と国内価格との格差が十五ドルに及んでおるわけでございます。このことは、四十キロ一かますについて二百円、国内価格が輸出価格よりも高値であるということが明らかになっておるわけであります。現行法におきましては、この輸出赤字を国内価格に転嫁させない保証といたしまして、いわゆる内需を満たす数量につきましては、バルクライン方式を採用いたしまして、このバルクラインの範囲内においてコストの低い会社の生産数量を積み上げまして、いわゆるバルクライン方式による加重平均による国内価格を算定いたしまして、これを政府は肥料審議会の議を経て、国が硫安の最高販売価格というものを告示するという制度がとられておるわけでありますが、今回の政府の新法案には、このような重要な規定というものがいささかも示されておらない。したがって、輸出赤字が国内価格に転嫁されないという保証はないわけでございます。
第五の点は、肥料価格の決定の方式についてであります。現行法によりましては、先ほど申し上げましたとおり、国の判断に基づいて硫安の最高販売価格というものは告示され、その範囲内において肥料の取引が適正に行なわれるわけでありますし、ア系肥料の中で、硫安以外の重要な尿素等についても、硫安の価格を建て値といたしまして、成分価に基づいて価格が決定されて、取引が行なわれておるわけでありますが、今回の新法案によりましては、国が最高販売価格をきめるという規定が失われまして、そのかわりに、価格決定については生産者である肥料製造業者と需要者である農協を中心とした団体との間において、団体交渉を通じて取引価格をきめるという規定になっておるわけでありますけれども、これによって従来よりも農民の利益が増大されるという保証というものはいささかもないわけであります。それどころか、この新法案なるものは、単に団体交渉をやる場合においても、一方のメーカー側だけに独禁法を排除した、いわゆるカルテル行為を認めるという、こういう不当な規定を法律の中に明記いたしまして、これによって従来よりもメーカー側に大幅な利益を与えるというようなことが、価格決定の方式の中に打ち出されておるわけでございます。
もう一つの問題は、農協を、新法案におきましては、肥料を取り扱う肥料業者と同様に販売業者と規定しておるわけでございますけれども、これらのことは、政府が、農業協同組合法に基づいて農業協同組合あるいは連合会が行なっておる事業が、真に生産農民の共同組織である農業協同組合の運営の姿であるということを見失ったような形でこれを取り扱っておるということに対して、これは了承できがたい点でございます。
第六の点は、政府が価格調停を行なうということになっておりますけれども、この点につきましても、肥料メーカーと需要者側において交渉を行ないまして取りきめができない場合において、政府が調停あっせんに乗り出すわけでございますけれども、さらに調停が十分ととのわない場合には、当然政府の権力をこれに介入さして価格の裁定を行なうという権限がなければ問題の解決はできないわけでありますけれども、この点に対する政府の有権的な価格裁定の規定がないということについては、非常に大きな問題が後日に残るわけでございます。
第七点といたしましては、今回の新法にも、政府の調査権の発動あるいはメーカー等に対する報告の義務を負わせる規定があるわけでございますけれども、現行法におけるこれらの調査権あるいは報告の義務等の規定は、肥料の価格を適正に決定するために基礎的な必要な生産費の調査を目的として、国が調査権の発動をし、あるいはメーカーから報告を徴することになっておるわけでありますが、今回の政府が考えておる調査権あるいはメーカーに対する報告の義務等については、現行法の生産費を調査することを目的としていないというところに問題があるわけでございます。
以上が、政府が提案されたいわゆる新法をもってして現行肥料需給安定法、いわゆる肥料制度にかえることはできないという理由でございます。現行法延長の改正法律案の委員会発議を必要とする理由もまたここにあるわけでございます。
以上が動議を提出いたしましたおもなる理由でございますが、何とぞ、各委員の皆さん方の御賛成をお願い申し上げる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/142
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143・高見三郎
○高見委員長 ただいまの芳賀貢君の動議についておはかりをいたします。
芳賀貢君の動議のとおり決するに賛成の諸君の御起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/143
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144・高見三郎
○高見委員長 起立少数。よって、本動議は否決されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/144
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145・高見三郎
○高見委員長 これより本案を討論に付します。
討論の通告があります。これを許します。足鹿覺君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/145
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146・足鹿覺
○足鹿委員 私は日本社会党を代表し、現行肥料二法を昭和四十一年八月一日まで延長することを主張し、肥料価格安定等臨時措置法に反対の討論を行なうものであります。
現行肥料二法が制定されて以来、農民に対し豊富にして低廉な肥料の供給がなされてきたことは、われわれの高く評価しなければならないところであります。農業生産上の重要基礎資材としての肥料の需給と価格の安定が農業生産の増強の一翼をにない、国民食糧の確保に寄与し、今日の経済発展の基礎をなしたことは否定できない事実であります。特に現在農業危機が叫ばれ、農業の一大転換期にありますが、御承知のごとく、生産される農産物の価格は変動著しく、その所得の安定はなく、一方生産資材につきましても、飼料、機械等の価格の安定のめどはなく、農民は不安にさらされた生産を続けているのであります。しかしながら、肥料のみは、現行二法によってかろうじてその不安から守られてきた唯一のものであります。
かかる農村の実情にもかかわらず、今回政府は肥料二法の期限切れに際し、従来の生産規制とマル公価格を廃止し、価格の自主取りきめと輸出の一元化を骨子とする新法に切りかえようとしております。
わが党としては、肥料の重要性にかんがみ、新法の制定に賛成の意を表しかねるものであり、現行二法をさらに二カ年延長し、その間慎重な検討を加え、必要があれば、新しい情勢に適応した完ぺきな立法を行なうべきであることを主張するものであります。
以下、新法に賛意を表しかねる諸点と、肥料二法の二カ年延長の理由を申し上げたいと存じます。
第一、肥料二法の成果とその評価は、物価値上がりの高度成長下においても、漸次値下がりの成果をあげて現在に至っているにもかかわらず、これを改正する必要性が明確でないこと。
第二、新法は、従来の輸出カルテルに加え、国内価格についても農民保護の美名のもとに公々然と価格カルテルを認めていることは、独禁法を骨抜きとし、今後他産業へも波及するおそれが生じてくること。
第三、現行法に基づく硫安工業体質改善対策の最終的効果はいまだ確認されておらず、合理化目標すらも明確にできない段階であること。すなわち、わが国の肥料工業の国際競争力を強化しつつ、内需についても豊富にして最も低廉な価格をもって供給し得るかとの去る五月二十五日の肥料審議会における私の質問に対して、通産当局は、四十二年度には五十ドルを割ると言明しておるが、この程度の見通ししか持てず、またこの達成も確約できない現段階においては、当然現行肥料二法はその達成時期まで延長するのが当然であること。
第四、政府は、肥料生産業者に対し、融資、減税等、食うものはすべて食わせてしまったが、その結果を見届けないで、現行法を廃止し、有名無実の新法にすりかえようとすることは、首相が四月九日、本会議において農業基本法の関連法としての新法であると言明したことと一致せず、はなはだしい矛盾といわなければならないこと。
第五、硫安等の輸出の増大する現状からして、硫安工業の体質改善が最終的に達成され、コストの低下が実現されない限り、輸出赤字は必ず増大することは必至である。しかるに、新法は、この輸出赤字の国内価格への不転嫁の保証が全くなく、その上、合理化メリットもメーカー側のふところにまるまる入り、農民への配分が期待されず、著しい不利が予想されること。
第六、農民を保護し、健全な輸出産業として肥料工業を育成せんとするならば、新法を大幅に修正する必要が生ずるのであって、そうすれば、その大綱は当然現行法に帰着することは明らかである。ただ単なる一部の手直しや附帯決議をもってしては、以上指摘した根本的欠陥は補正し得ないものであると判断したこと。
第七、政府が新法を立案するにあたっての構想は、長い歴史と功績のある肥料審議会を無視し、政府が一方的に指名した肥料問題懇談会の結論を骨子とするものであり、公正な各界の意見を反映したものと言い得ないこと。
第八、新法は、当委員会の審議の経過から見て、農業政策としての肥料対策として根本的な欠陥を持っていることは明白であること。
第九、以上の観点に立って、わが党は現行法を二カ年延長し、その効果を一応見届ける必要があり、この間に広く妥当な人材を求めてその意見を網羅し、必要があると認めた場合は、新しい情勢に即応した権威ある立法を行なっても決しておそくないと断言してはばからないこと。
第十、四月九日、本会議において、わが党が新法に対する基本的な態度として表明した無法状態は許されないとする立場に立って、本日先ほど現行二法の延長の動議を提案した。しかるに自由民主党はこれに反対したこと。
以上、われわれの新法に対する態度を表明し、現行二法の延長を強く主張して、私の反対討論といたす次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/146
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147・高見三郎
○高見委員長 林百郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/147
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148・林百郎
○林委員 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題になっております肥料価格安定等臨時措置法案に反対いたします。
その理由は次のとおりであります。
第一点は、本法は、農業生産上重要基礎資材である肥料の需給と価格の安定に関して、生産農民を犠牲にして、肥料メーカーの利益を保障するものであります。今日ようやく肥料業界の合理化によるコストダウンが実現される段階に至って、すなわち、総計千四百六十五億の設備投資の実績と、さらに三十八年以降体質改善のため百六億円の融資を行なわれることが予定されており、また生産技術の面から申しましても、アンモニアのガス源転換もほぼ完了し、減価償却も進んでおり、輸出赤字の補てんも百年間の漸次償却というような優先的な措置が講ぜられました。漸次合理化が進み、コストダウンが実現されるという段階におきまして本法が制定されるのは、明らかに合理化によるコストダウンを阻止して、それによる超過利潤をメーカーが独占する、このためのカルテル制度を法律で認め、独禁法に対する新しい抜け道をつくる、これが本法の本質だと思うのであります。しかも、近来とみに需要の増大を見ておる尿素と高度化成については、何ら法律に明記しておらないことは、むしろ将来のこのカルテルの制度をここまで拡大することを隠しておるといわざるを得ないのであります。
第二点は、政府は、もし不当な価格の取りきめがなされた場合には、是正命令を発令するといって本法を弁解しておりますけれども、本法を検討いたしますれば、是正命令を出す場合とは、農業または肥料工業の健全な発展に支障を与えるというような、いずれか一方によって逃げ道が与えられておる。または一般消費者を不当に害するおそれがあるというような、自由裁量の非常に広範囲な場合が予定されておるのであります。このことは、事実上は是正命令を出すことが不可能であり、事実上はメーカーと全購連の間で話し合いのついた価格がそのまま強行されるということが、むしろ予想されるのであります。したがって、本法によりますれば、業者間の取りきめによるカルテルが優先的に維持されるのであって、是正命令を期待するということはとうていできないのであります。
第三点は、本法は輸出赤字を国内に転嫁しないという保証が見当たりません。現在硫安の総生産高約五百八十二万トンといわれておりますけれども、輸出がそのうちに占める量は約四〇%といわれております。しかし、この輸出につきましても、今日国際カルテルの関係からいたしまして、当然出血輸出が考えられるのであります。たとえば、現在硫安の国内価格はトン当たり五十・一九ドルでありますけれども、西ドイツの輸出価格を見ますと、御承知のとおり、これは三十ドルであります。また従来、日本の肥料メーカーは、輸出によっては材料費が補えればいい、固定償却分はすべて国内価格に転嫁するという方針がとられております。そうしますと、国際カルテとの関係あるいは西ドイツの輸出価格等と比較してみまして、場合によるとトン当たり三十ドルを割るような場合も考えざるを得ないのであります。このような場合の赤字を国内に転嫁しないという保証は何一つもなく、したがって、輸出赤字の国内転嫁は、将来火を見るよりも明らかだといわざるを得ないのであります。
第四点は、本法には消費者たる生産農民の利益を反映する道が開かれておらないという点であります。メーカーと全購連との取りきめの価格が取引価格となるのでありますが、この際全購連は自分の販売権を確保したいということのために、メーカーと妥協するということが十分考えられるのであります。従来不十分ながらも農民の利益を反映したと考えられる審議会の制度すら廃止されておるのであります。
第五点は、業者間の価格取りきめにおいては、メーカーごとの原価計算に基づくバルクライン方式の実施が何ら保障されておらないばかりか、業者間価格協定の取りきめに際しては、政府の勧奨または助言並びに調停の制度というものがありますけれども、これも何らの強制力がないのみか、その発動も、たとえば調停の条項を見ましても、相当の期間にわたって努力したにもかかわらず取りきめを締結することができない場合とか、さらには特に必要があると認めるときというような状態でありまして、このような条件であっては、とうてい調停が事実上発動することは不可能であると同時に、かりに発動された調停ですら拘束力を持たないという制度であります。このことは、明らかに業者間の価格協定、すなわち、メーカーが実際の権限を持つ新しいカルテルが、優先的に支配するということが考えられるのであります。
第六点は、以上のごとく、本法は、明らかに、肥料メーカーの合理化による生産費低下の効果を肥料メーカーが独占するための新たなカルテルの制度であり、合理化によるコストダウンを阻止して、超過利潤を肥料独占が自分のふところに確保するための法案、さらには輸出赤字を新たなカルテル制度によって国内生産農民に合法的に転嫁し得る本質を持った法律案であって、生産農民の立場に立ってはとうてい賛成するわけにはいかない法案だと思うのであります。
最後に、私たちの方針を主張いたしますならば、国内の供給の最優先、輸出赤字の国内への不転嫁、合理化の推進の三原則の立場に立って、現行肥料二法の持つ農民保護の側面の維持を拡大し、価格つり上げのための操短等を禁止し、第三には、厳正な原価計算に基づくバルクライン方式による生産費主義に立却した最高価格販売制度を厳正に実施し、われわれ国民の大きな犠牲のもとになされた肥料業界の合理化の利点を生産農民に均てんさせるという、こういう条件をつけて現行二法の延長を主張し、さらに将来には、民主的な政権による肥料企業の国家管理への移行を目ざすことを主張いたしまして、反対討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/148
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149・高見三郎
○高見委員長 これにて討論は終局いたしました。
肥料価格安定等臨時措置法案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/149
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150・高見三郎
○高見委員長 起立多数。よって、本案は可決すべきものと決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/150
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151・高見三郎
○高見委員長 この際、中村時雄君外一名より、本案に附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。趣旨弁明を許します。中村時雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/151
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152・中村時雄
○中村(時)委員 自由民主党並びに民主社会党の両党を代表いたしまして、ただいま採決されましたところの肥料価格安定等臨時措置法案に対し、附帯決議を付するの動議を提出したいと思います。
まず、案文を朗読いたします。
肥料価格安定等臨時措置法案に対する附帯決議
政府は現在農業のおかれている重要な地位を認識し農業基本法制度の趣旨に従い、農業の重要生産資材である肥料については、農業生産の発展を旨として肥料工業の合理化を促進し、国内肥料供給を増大しその価格を低減するよう適切な措置を講じ本法の運用に萬遺憾なきを期すべきである。
以上が、附帯決議の案であります。
先ほど来御存じのように、社会党並びに共産党から、この原案に対する反対がありましたが、その中には多々私たちも聞くべきものがあると思っております。特にまず生産費の問題について、あるいは化学工業内部の構造変化の問題、さらには輸出赤字の国内転嫁の問題、さらには農家経営に肥料費の占める地位、あるいは価格決定におけるところのバルクラインの問題等は、農家にとっては非常に必要性を持ったものでありますが、これらを省かれるとなりますと、価格決定に対する影響は非常に大なるものがあると考えられるのであります。そういう立場、さらにはまた、合理化と称して、御存じのとおりに、独禁法の価格カルテルという問題までひいては発展をするようなおそれすらある。これらの合理化に対すましても十分配慮をしなくてはならない、このように考えられるわけであります。
個々の問題に関しましては、すでに審議を終えておりますので、これ以上申しませんが、以上七点は特に十分配慮の上で、この安定の方向並びに低減の方向に政府は極力努力をし、この附帯決議案に対して満場の賛成を得たい、このように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/152
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153・高見三郎
○高見委員長 採決いたします。
中村時雄君外一名提出の動議のとおり決するに賛成の諸君の御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/153
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154・高見三郎
○高見委員長 起立多数。よって、動議は可決いたしました。
この際、ただいまの附帯決議について政め所信を求めます。赤城農林大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/154
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155・赤城宗徳
○赤城国務大臣 ただいまの附帯決議の趣旨は、十分尊重して対処いたしたいと思います。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/155
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156・高見三郎
○高見委員長 なお、本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/156
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157・高見三郎
○高見委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
〔報告書は附録に掲載〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/157
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158・高見三郎
○高見委員長 次会は、明二十八日午前十時から理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後三時四十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05319640527/158
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