1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年六月十一日(木曜日)
午前十時五十分開議
出席委員
委員長 高見 三郎君
理事 小山 長規君 理事 坂田 英一君
理事 谷垣 專一君 理事 長谷川四郎君
理事 本名 武君 理事 赤路 友藏君
理事 足鹿 覺君 理事 芳賀 貢君
伊東 隆治君 池田 清志君
大坪 保雄君 加藤 精三君
亀岡 高夫君 仮谷 忠男君
吉川 久衛君 小枝 一雄君
笹山茂太郎君 舘林三喜男君
寺島隆太郎君 藤田 義光君
細田 吉藏君 三田村武夫君
亘 四郎君 角屋堅次郎君
栗林 三郎君 楢崎弥之助君
西村 関一君 野口 忠夫君
湯山 勇君 稲富 稜人君
林 百郎君
出席国務大臣
農 林 大 臣 赤城 宗徳君
出席政府委員
農林政務次官 丹羽 兵助君
林野庁長官 田中 重五君
委員外の出席者
議 員 川俣 清音君
議 員 稲富 稜人君
農林事務官
(林野庁林政部
長) 丸山 文雄君
専 門 員 松任谷健太郎君
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六月十一日
委員湯山勇君辞任につき、その補欠として重盛
寿治君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員重盛寿治君辞任につき、その補欠として湯
山勇君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
林業基本法案(内閣提出第一五一号)森林基本
法案(川俣清音君外十二名提出、衆法第四〇
号)
林業基本法案(稲富稜人君外一名提出、衆法第
四四号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/0
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001・高見三郎
○高見委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、林業基本法案、川俣清音君外十二名提出、森林基本法案、稲富稜人君外一名提出、林業基本法案、右三案を一括して議題といたします。
質疑の通告がありますので、これを許します。角屋堅次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/1
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002・角屋堅次郎
○角屋委員 林業政策の基本をなすべき林業基本法案が内閣から提案され、さらにわが党から数年来の慎重な検討に基づく森林基本法案が提示され、さらに民社党からも森業基本法案が提示されまして、わが国の国土の約七割を占める林業の問題について、基本的にどういう方策を進めるべきか、こういう重要な法案が議論されておるわけでありますが、すでに地方公聴会あるいは中央公聴会も開催をいたしまして、関係者の意見を聞き、同僚委員によるところの審議も進められてきておる段階でありますが、とにかく重要な法案であるだけに、慎重審議を尽くして今後の施策の全きを期さなければならぬ、かように考えておるところでございます。すでに同僚委員からも各方面の角度からいろいろ議論が展開をされてまいりました。基本法というのは、法文としてもそう大量のものでありませんし、議論をすれば多方面にわたって詳細な議論をしなければなりませんし、総括的な議論としては、ある程度議論も今日まで展開をされてまいりました。若干同僚委員の質問と重なる点も相当あるわけでありますけれども、この際、重要でありますので、引き続き質問を展開いたしたいと思います。
言うまでもなく、林業の持つ役割りは、農業の場合の農地と若干性格をある意味では異にいたしまして、いわゆる森林の公益的機能というものが非常に重要視されなければならないかと思います。同時に、国民経済全体の中で果たしていかなければならぬ経済的機能というものも、大きな比重として持っておるわけでございます。かかる視野から、政府案あるいは社会党案、あるいは民社党案というものを見てまいりますと、すでに同僚委員からも指摘をされておりますように、いわゆる公益的機能という点については、社会党は、その法文の前段においても、あるいは第一条の「国の森林に関する政策の目標」においても、あるいは第二条の「国の施策」においても、まず、この森林の持つ公益的機能というものを重視して、これを冒頭に掲げているわけでありますが、政府の法案を見てまいりますと、その点が非常に軽視をされまして、いわば政府の林業基本法案というのは、その意味においては林業振興法案的な性格を持っておって、いわゆる林業政策全体に対する憲法としてまず林業基本法が存在し、それに基づいて林業関係の各種法案が関連法案として取り備えられるという形の認識には必ずしもなっていないんじゃないかという感じが、率直に言っていたすわけであります。したがって、いままでの議論の展開の中でも、農林大臣は、いわゆる林業に関する基本的な法律として林業基本法と森林法、これを並列的に考えて、それの総合的な政策の中で、自余のいろんな関連的な諸法案が出てくる、こういう認識に立っているんじゃないかという感じがするわけでありますけれども、私は、やはりわが党が考えておるような方向において、森林の持つ公益的機能、経済的機能というものは、いずれを従とし、いずれを主とするということのできない比重を持った問題でありまするから、政府の法案の中においても、この森林の公益的機能というものについては、明確に補強する考え方が必要ではないか、こういうふうに思っておるわけでありますけれども、まず、この点について農林大臣から御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/2
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003・赤城宗徳
○赤城国務大臣 森林全体につきまして、もちろん国有林も含めて、その公益的な機能をますます発揮させる、あるいは経済的な機能を活用する、こういう意味におきまして一本にまとめていくということも、これは一つの考え方であり、方法であろうと思います。また、そうあったほうがあるいは理想的かと思います。しかし、再々申し上げておりますように、公益的な機能につきましては、明治の中期におきまして森林法ができました。これは当時といたしましては非常に進歩的な、すぐれた、また公益性を強調した、りっぱな法律だと思うのでございます。そういうりっぱな法律がありますので、いま申し上げましたように、公益的な機能につきましては、これを基本法的に私ども考えておりますので、経済的面を主とした、いま提出いたしております林業基本法というものによって、補っていくといいますか、並列的に考えるといいますか、そういう面で御審議を願っておる次第でございます。もっともいま言いましたように、林業基本法におきましても、公益的な面を全然無視するというような態度であってはいけないという御説のとおり、私どももそれを無視するようなことは避くべきでありますから、法文の中におきましても、公益的機能を強調しておる面もあるのでございます。第一条等でもそうでありますし、あるいは第四条の二項、第十一条でございますか、そういう面にやはり公益的な機能というものを十分考えながら、経理面、経済面の方針というものも立てていかなければならぬということを強調いたしておるわけでございます。でありますので、分類的に言えば、先ほど申し上げましたような考え方で、森林法と林業基本法とに分けてありますけれども、林業基本法におきましても、公共的機能というものを尊重していかなければならぬという考え方は、十分盛っておるつもりで法案を作成しておる、こういう態度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/3
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004・角屋堅次郎
○角屋委員 この際、わが党提案者である川俣委員に簡潔にお答え願いたいのでありますが、ただいまも指摘申し上げましたように、政府の林業基本法案の根本的な内容における欠陥は、森林の持つ公益的機能、経済的機能の中で、前者の公益的機能というものが、法文の取り扱いの中で従属的に取り扱われておる。これはやはり農業の場合の農地と違った森林の持つ機能からいって、やはり林業基本法を考えるにあたって、あくまでもこの二つの大筋というものは明確に法文上でも明らかにし、その中で経済的機能を十二分に果たしていくということでなければならぬ。この点は、森林法にそういうものが書かれておるから、林業基本法の場合には付随的に取り扱ってよろしいという、そういう性格のものではあくまでもないと思うのでありまして、政府案の私が見て根本的な欠陥の一つは、この公益的機能というものを付随的に取り扱っておる法の立て方に根本的な問題があるのではないか、こう思うわけでありますが、この点簡潔に見解を明らかにしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/4
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005・川俣清音
○川俣議員 ただいまのお説のとおりでざいまして、日本の林政史をひもといてみましても、徳川時代の林政に対する考え方からいたしましても、今日のような日本の狭い国土の中でどうして耕作農業の安全を期するかというようなこと、御承知のように、日本は水田農業でございまして、水の利用が非常に旺盛であり、今後畑地農業にいたしましても、水の利用というものを考えなければ耕作農業が発展しないわけでございまして、そういう意味で、単に保安林だけがあって公益的機能を果たせばいいのだというわけにはいかないのではないか。森林全体が持つ機能から生ずるものでありまして、保安林だけが水資源を確保しておるのではなくて、付近の山全体が緑に囲まれ、森林に囲まれておるところに水資源の確保ができ、日本の気候風土を守っておるのは森林でございまして、そういう意味で森林全体を公益的に育て上げるということは、日本農業全体のために必要だ。これが林業の基本にならなければならない。森林の基本にならなければならない。そういう意味で私どもが強調いたしておるのが公益性でございます。この公益性につきましては、単に水資源ばかりでなくして、国民の健康の上からも、文化の上からも、また豊かな情操をつくる上からも、森林の機能というものを十分に認めていかなければならないのじゃないか。日本の殺伐たるドライな中に豊かな情緒を養うのは森林である。そういう意味の森林というものが、保健衛生からあるいは水資源から、そういうすべての公益性の上に立ったのが、日本の林業の本来であるというふうに私どもは理解いたしまして、特に公益性を強調いたしておるのであります。最近、かつての日本の林政史の中にはかなりこういう公益性を強調いたしておったのでありまするけれども、林業経済学と申しますか、企業林業というふうになってまいりますると、採算のとれる林業あるいは企業ということになりますと、公益性を犠牲にしなければ企業が成り立たない面も出てきておるわけでございます。たとえば木材価格が高くなればなるほど、伐採をやめる、停止するほうが、経済的には有利だというような本質を持っておりますので、私どもはこういう意味で公益性を強調し、政府もまたこれに見習うべきだという考え方で本法案をつくったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/5
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006・角屋堅次郎
○角屋委員 私は、国会に出てまいりましてから長い間、災害対策特別委員会に籍を置いてまいりましたが、ここ二年ばかり大きな災害というものは起こっておらないわけでありまするけれども、かつての伊勢湾台風、それ以降のいろいろな各災害の場合にいつも問題になりますのは、治山あるいは治水というものの根本的な確立ということが、その際においてあらためて認識をされ、強調をされるのであります。申し上げるまでもなく、都市あるいは都市周辺の住民は、山手におけるところの治山治水がきっちりできておるかどうかということの影響をそのまま受けるわけでありまして、そういう意味において、私は、森林の持つ公益的機能というものは、どれだけ強調され、重視されても、重視され過ぎることはない、こういうふうに考えておるわけであります。その点では、かつての大災害にかんがみて、治山治水十カ年計画というものが今日まで実施をされてきておるわけでありまして、本年度の場合においても、そういう点で百十九億千四百三十六万七千円というものが公共事業の中の治山事業としての予算化されているわけでありまして、そういう中で、緊急治山問題あるいはまた予防流山問題をはじめ、各般の保安林等を含む治山関係の事業が実施をされておりまして、これは今日の現状から見て、はたしてこれで十分かということさえ議論されなければならぬかと思うのでありますが、この機会にお伺いをいたしたいのは、治山治水緊急措置法に基づいて策定されました治山事業十カ年計画というのは、ちょうどことしが前期五カ年計画の最終年に当たっておるわけであります。従来の五カ年間の経緯を見ますと、いろいろな事情がありまして、当初予定した予算よりも相当上回らなければならないというふうな点等も出ております。これは治山ばかりでなしに、治水についても同様でありますが、この事業の非常に重要な点から見て、後期五カ年計画といいますか、これはもちろん今日所得倍増計画のアフターケアとしての検討とも関連をしてまいるわけでありまするけれども、この際治山治水緊急措置法に基づく治山十カ年計画の前期五カ年計画を顧みて、今後の治山後期五カ年計画というものは、おそらく当初予定した治山十カ年計画の千六百六十八億円という予算の規模をはるかに上回った気持ちの上に立って、後期五カ年計画を策定しなければならない段階ではないかと思うのでありますけれども、この際、農林大臣から、今後の治山事業というものに対する基本的な考え方を承り、さらに長官から、具体的な過去の経緯なり予算的な問題等についてふえんして説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/6
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007・赤城宗徳
○赤城国務大臣 森林が治山治水に重大な意義、役割りを演じておること、御説のとおりであります。そのほかにつきましても、いまの治山治水計画につきましていろいろ問題があります。いま建設省方面と協議いたしまして、あとの五カ年計画の策定を協議中でございます。積極的にこれをやっていきたい。できてから後の問題よりも、できない前に、災害がある前に、災害のないような対策が最も必要でございます。いま積極的に協議をいたしまして、対策を講じつつあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/7
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008・田中重五
○田中(重)政府委員 治山治水緊急措置法に基づきます治山十カ年計画、これは建設省の治水事業とも十分に調整をしながら、計画を樹立したわけでございました。それで、十カ年計画の総量としましては、いまお話がございましたように、全体で千六百六十七億、それから前期五カ年が七百二十九億円、それからその五カ年計画に対しまして、三十八年度末までに国有林、民有林を通じまして六百三十億、結局五カ年計画としましては大体八六%、十カ年計画で三八%という実績でございます。これは、この五カ年間に労賃あるいは資材の値上がり、あるいは当初の予定になかった災害の防備、そういうことで五カ年間の総量をほぼ四カ年で費消するという状態になったわけでございましたが、たまたま三十九年度はその前期五カ年の最終年次でございましたので、その機会に新しく年次計画を編成しようという考え方がございましたけれども、ちょうど所得倍増計画のアフターケアの作業の最中でもございましたので、この三十九年度中に将来に対しての災害対策を十分に検討しながら、新しい基幹計画を樹立いたしまして、今後に対する災害の予防、災害の復旧に対する万全を期したい、こう考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/8
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009・角屋堅次郎
○角屋委員 さきにも述べましたように、災害の起こるごとに災害地を視察してまいりますと、これは長野その他に行ったときもそうでありましたし、あるいは近畿から九州方面に行ったときもそうでありましたが、とにかく山間に近いところでは、治山に相当に早く手を打たれたところでは、災害は非常に軽微に済んでいる。ところが、それの放置されたようなところでは、相当予期以上の大災害を生んでおるということが常に問題になるわけであります。ちょうどいまもお話しのように、治山十カ年計画について、は前期五カ年計画を本年をもって終了する、新しく後期五カ年計画に入ろうとする、しかも所得倍増計画の再検討問題を含めて、総合的な中でこの問題に対する予算、総合的計画というものを立てる段階でありますが、私は、やはり森林の持つ公益的機能というものは非常に重要であり、また災害ごとにそのことが認識される従来の経緯にかんがみまして、予算規模あるいは事業分量その他においても、積極的な姿勢でこの問題に取っ組んでもらいたい、こういうふうに思うわけでございます。
次に、経済的機能の問題と関連をいたしまして、わが国の木材の需給見通しという問題を少しくお尋ねいたしたいと思うのでありますが、林野庁からいただいております参考資料を見てまいりますと、「森林蓄積の推移の見通し」というところがございまして、国有林の昭和三十八年度の場合九億八千四百万立米、十年後の四十八年は少しく減少いたしまして、八億四千四百万立米、二十年後においてはさらに減少いたしまして、七億六千七百万立米、三十年後において少しく上向きになりまして、七億七千三百万立米、それから四十年後においてさらに少しく上向きまして、七億九千九百万立米、こういう形に国有林としては、人工林、天然林等における増減はありますけれども、推移の見通しを立て、民有林関係においては三十八年度が九億五千八百万立米、これは十年ごとの数字を見ますと上昇傾向にございまして、十年後には十億八千六百万立米、二十年後には十三億五千万立米、三十年後には十五億八千百万立米、四十年後には十五億九千九百万立米、こういう形で、合計したものが十年後には若干の減少、それ以降は漸増傾向、こういうふうになっておるわけであります。これが見通しでありますけれども、おおむね見通しにはそう狂いがないとすれば、いわゆる木材の需給状況の中で、ここ四十年の範囲内において国有林が果たしていく木材の需給調整あるいは価格安定に対する機能というものは、通常予想しておるよりも大きな役割りを果たす状況にあるのかどうかということが、一つの問題になるわけでありまして、こういう観点から見てまいりますと、最近の非常に政治的な動きになっておる国有林の開放という問題一つを考えてまいりましても、今後の森林蓄積の推移の見通し、これが経済的機能として果たしていかなければならぬ木材の需給調整あるいは価格安定に対する役割り、こういうふうな面から見て、非常に慎重を要する問題を含んでいるのじゃないか、こういうふうに思うわけでありますが、国有林、民有林の森林蓄積の推移の見通しの問題について、これは技術的な問題でありますので、長官から、この見通しを立てられた内容の点について、若干御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/9
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010・田中重五
○田中(重)政府委員 現在の森林蓄積の推移の見通しにつきましては、森林法によります全国森林計画を策定するにあたって、その段階での長期見通しに即してこれを編成したわけでございますが、この蓄積の見通しは、現在の老齢過熟の天然林を急速に生長量の旺盛な新生林分に置きかえていく、そうすることによって将来の伐採量の大を、そうして供給量の大を目ざすというのが、この蓄積策定の考え方でございまして、これを国有林と民有林に分けてみました場合に、国有林は民有林に比べますと、天然林の比率が相当に多いわけでございます。したがって、この天然林を新生林分に改良していく場合に、天然林が多いという場合には、その蓄積の減少が一時的に出てくるということがございます。しかし、その後は、蓄積が減っても、今度は生長量か非常に旺盛になりますので、その分が結局伐採の対象になってまいるということで、これを策定をされております。そして、この蓄積の推移の見通しの前提といたしましては、生長量が旺盛で、しかもいろいろな被害に対する抵抗が強いと考えられる樹種、それを選定をし、それから一定の計算に基づきましたヘクタール当たりの本数、そういうものを前提とし、さらには現在並びに将来にわたって可能であろうと考えられる造林技術の拡充、それからもろもろの薬剤の進歩、そういうものを勘案をいたしまして造林計画を定め、そうして昭和六十年度には現在の人工林をほぼ千三百三十万ヘクタール程度に持ち込む、そういうことでほぼ日本の森林の半分に近いものを人工林地化するという考え方のもとに、将来の林力増強計画を立てておるわけでございます。そういう計画に基づいた計算の結果が、森林蓄積のこのような推移としてあらわれてまいっておる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/10
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011・角屋堅次郎
○角屋委員 木材需給量の最近の実績を見ますと、たとえば昭和三十八年の見込み数量として、供給が七千四百二十二万六千立米のうちで、輸入量が千三百九十一万立米に達しておるということで、最近の需給状況を見ると、国内の木材生産だけでは自給ができなくて、今後ともに輸入は増大の傾向に入ってまいる、こういう趨勢でありまして、この木材の輸入実績を見ますと、三十八年度の場合には、総需要量に対して輸入量の占める割合が二一・六%というところまできておるように統計数字で見受けるわけでありますし、しかもその金額にいたしましても、四億ドルを少しくこえる段階にきておるわけであります。したがいまして、今後の木材の需要量の推移の中で構成比を見ますと、建築用材、パルプ用材、それに次いで坑木という大体順序で、パルプ用材が年年比率の上では増加をし、三十八年度においては二四・八%と、建築用材の三八・八%に次いでおるわけでありますが、こういうふうな観点からいたしますと、一つの問題としては、国内における木材需給量をできるだけ国内で消化をしていくための所要の方策というものを積極的に考えていく反面、輸入の問題に対する自由化との関連での方策というものについて、やはり総合的な考え方をきちっととっていく必要がある、こういうふうに考えるわけであります。
まず、外材輸入の問題についてお伺いをいたしますけれども、最近の外材輸入の傾向というものは、大体米材あるいは南洋材というふうな関係が相当の比重を占めて、北洋材というふうなものについてはむしろ控え目に考えられておるのではないのか、こういう感じがいたしまするし、今後日中の経済交流というふうな問題等を考えてまいりますと、中国からの外材輸入というものの見通しについては、一体どういうふうに考えておるか。さらに外材輸入の問題に関連いたしましては、これの港湾施設その他の流通機構、受け入れ態勢の問題が必ずしも十全でないというふうなことが、従来からの批判としていわれておるわけでありますけれども、これら外材輸入の問題に対しての現状と今後の方針についてお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/11
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012・田中重五
○田中(重)政府委員 外材輸入につきましては、特に昭和三十年ころからの異常な木材の高騰と、それからさらに開放経済体制という環境の中で、急速な伸びを示しまして、いまお説のとおりに、昭和三十八年度で約二二%にのぼる輸入を見ております。この外材輸入の状況につきましては、まあ将来の展望について考えた場合、現在の国内の価格が、諸般の経済的な情勢から見まして、ある程度の安定を示すということになってまいりますと、この外材の輸入につきましても、いままでのような急速な伸びで推移するというふうには考えられないのではないか。しかしながら、いまお話にございました、今後における日本経済のさらに伸展に伴いまして、設備投資その他の増強が進むとすれば、それに伴うところの木材需要も、建築用材、それから特にパルプ用材を中心に伸びていくものではないか、そういうふうに考えられるわけでございます。それで、長期的な見通しといたしましては、先ほど申し上げましたような林力増強計画に基づくところの国内の生産体制が整備されてまいりますれば、現在の見通しといたしまして、まあ大体、現在の輸入量の伸びにある程度の伸びを加えた状況で推移するのではないかというふうに考えております。それで、現在のラワン材、米材、ソ連材等の国別、輸入先別の輸入量につきましては、特にいまお話のございましたソ連材につきましても、年々伸びておりまして、これはやはり国内需要に応じた伸びを示しておるわけでございます。特にこれが控えられているというようなことはないと考えております。現在は、全体の輸入量約千四百万平方メートルに対しまして、ラワン材が七百八十万立方メートル、米材が三百五十二万立方メートル、ソ連材が百八十五万七千立方メートルということになっております。なお、ソ連材につきましては、日ソ貿易協定の中で、毎年その次の年の納入の量のワクについて話し合って進めてまいるという取りきめをいたしております。三十九年度につきましても、その方針に従って計算をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/12
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013・角屋堅次郎
○角屋委員 大臣にお伺いをいたしたいのでございますが、木材の需給の中で、今後の経済の高度成長に伴って、木材需要というものは逐年ふえていく、しかし、反面、国内における木材の供給量というものは必ずしもそれにパラレルしない、こういう状況がありまして、外材の輸入というものはある程度やむを得ない事態に今日の需給事情ではなっておるわけです。問題は、そういう外材の輸入の場合に、やはり経済体制、政治体制とかいうことは、経済のベースの中では全然別にして、必要なものを必要な国からやはり入れるという考え方でやるべきだと思いますが、同時に、何といっても第一次産業の関係は、農業でも林業でも漁業でも、貿易自由化によるところの影響というものは、これは林業あるいは林業関連産業にも影響を大きく持ってくるわけでありまして、これらの対策をただ需給事情だけから考えて、外材を入れればよろしいというふうな安易な考え方でやるということになりますと、関連産業に大きな打撃を与える、あるいは価格の問題についても、需給の問題について計画的に推進をしないということになりますと、やはり価格変動に大きく影響を及ぼしてくる。これらに対する配慮というものが今後ますます必要になってくるのではないか。そういう問題に対して、具体的にどういう考え方で、需給の全体的な問題あるいは外材の輸入に対する対策というものを考えていかれるのか、この機会にお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/13
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014・赤城宗徳
○赤城国務大臣 確かに、御指摘のように、今後相当期間といいますか、二十年ぐらいを見ておりますが、外材に依存する度合いが増していくと思います。しかし、この輸入につきましては、国内の需給を補完するということでございますから、いたずらに輸入を進めるということは差し控えて、需給計画等に基づいて、国内の供給量に足らないものを入れていく、こういう方針でいくつもりでございます。また、輸入の面につきましては、イデオロギーとか国柄ということでなくて、やはり経済的に成り立つといいますか、経済的に有利な面ということで、ソ連とかその他を区別していくという方針はとっておりません。同時に、この林業基本法などもそういうねらいがあるのでございますが、国内の林業の経済面を助長していきたい。特に国有林は、先ほどからお話がありましたように、国が管理しておりますので、一そう力を入れやすいところでございますが、造林その他近代化をはかって生産性を助長していく、生産性を進めると同時に森林資源の供給量を増していく、こういうねらいを持って計画を立て、その計画を強力に推し進めるような方途を講じていきたい、こういうふうに考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/14
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015・角屋堅次郎
○角屋委員 木材の需給状況というふうなものだけで林業の問題を考えるわけにはまいりませんけれども、需給状況というものから見て、国内生産に対する必要な施策は、これから総合的に処理されようとする林業基本法の中で考えていかなければならぬわけでありますが、最近の林業の内部における実態、たとえば材木を伐採いたしましても、あとの造林というふうな問題一つをとらまえてまいりましても、最近の造林の実績というのは、昭和三十一年度以降年々低下の数字が出ておりまして、三十七年の場合には六十五万三千ヘクタールということになっておりますが、一番多いときには、三十一年度の場合は八十八万六千ヘクタール、これは年々によって違いのあるのは別といたしまして、この造林実績の逐年における低下という問題は、やはり林業内部における問題というものがこの一面にも出てきておると思うのであります。これから国内における木材生産の需給を高めていかなければならぬという経済全体の姿勢からいえば、そういうことを考えなければならぬ段階の中で、造林の実績が年々低下をしていく、こういう林業内部の問題というものをどう総合的に解決をしていくかというのが、林業基本法の一つの大きな役割りになるのだと思うのですけれども、最近の造林の実績というものは、これは補助造林あるいは農林漁業金融公庫等々を通じての融資の問題等、各般の問題について、もう少し今日の現状から勘案をして、さらに前向きに対策を考えていく必要があるのじゃないか、こう思うわけですが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/15
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016・田中重五
○田中(重)政府委員 これまでの造林の植栽面積の数字につきましては、いまお話しのように減少傾向も見られます。また一方、計画といたしましても、先ほども申し上げました生産力を増強していくということで、天然林の改良、したがって、拡大造林の推進を技術的にでき得る限り短い期間で達成するという計画にいたしておりますので、ある一定時期は造林の計画面積が落ちてまいるということもあるわけでございます。しかしながら、労力不足のために、賃金の高騰が造林をはばむというような状態があるとすれば、これはあくまでその改善を期する必要がございます。そこで、その造林のためのまず林道の整備その他によりまして、造林をしやすくするように持っていくということ、それから言うまでもないことですが、労賃の助成の面につきましては、できる限りその面の改善を進めてまいるということ、さらにはまた造林の融資の面の制度の改善、利子あるいは据え置き期間等の改善を極力進めていくということ、その他分収造林の促進等もはかりまして、補助、融資あるいは自力、それぞれの造林が極力推進されるように、この林業基本法の趣旨に沿いまして進めてまいりたいと考えております。そして現在の目標といたしましては、先ほど申し上げましたように、昭和六十年には現在の森林面積のほぼ半分に近いものを人工造林いたし、それによって木材の供給の面についてでき得る限り遺憾なきを期したい、こういう考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/16
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017・角屋堅次郎
○角屋委員 いま長官から林道問題について触れられたわけでありますけれども、これは資料によりますと、今後の開設計画の十カ年計画として三万七千四百二十キロ、三十八年から四十二年の五カ年の前期計画として一万五千六百二十キロ、後期計画として四十三年から四十七年が二万一千八百キロ、こういう林道の開設計画が立てられております。従来の国有林関係の林道あるいは民有林関係の林道というものは、国有林関係林道というのは、もちろん最近は取り扱っておるわけでありますが、そういう比重から見ると、民有林関係の林道の整備というのはやはりおくれているという状況ではないかと思います。もちろん、国有林は国の事業でありますから、事業としてやりやすいという点もありますけれども、先ほど来触れておりますような木材の需給状況、あるいはそれを促進するための適切な措置の一環としては、最近の造林の低下傾向に対する適切な措置ももちろんでありますが、林道の開設計画一つをとらまえましても、たとえば林道の工事補助として、基幹林道あるいは一号林道、二号林道、三号林道、四号林道というふうな方式もあり、また別途山村振興林道というふうな取り扱いの形もとっておるわけでありますけれども、今後の林業振興の立場からいうと、これらの林道事業費の補助の形式の中で、産業道路的な立場あるいは山間におけるところの地域住民の福祉向上というふうな点等から見て、山村振興林道というふうなものは、相当大きな比重を持って考えられてこなければならぬじゃないか。予算的に見てまいりますと、もちろん、林道プロパーの問題も重要でありますけれども、これらの工事全体の総額あるいは予算配分、あるいはこういう従来の林道の区分でいいのかどうかというふうな問題等についても、この際、やはり基本法が考えられる段階で、根本的に再検討する必要があるし、またこの際、特に地域格差というふうな問題から、林道が、単に林業部面だけでなく、果たさなければならぬ役割りから見て、これらの問題についても、もっと積極的にまた考えていく必要があるのじゃないか。地域的な林道の分布状況等についても、政治力その他によってもちろんアンバランスがあってはいけませんし、森林計画あるいは地域の計画あるいは施業、こういうものと関連をして、これらの問題が適切になされていかなければならぬかと思うのでありますけれども、こういう林道問題の総合的なこれからの進め方について、大臣から御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/17
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018・赤城宗徳
○赤城国務大臣 林道は、もちろん林業に関係してのものでございますけれども、いまお話のように、道路として非常に要望もされ、またそういう開発面からも重大視してきておるわけでございます。林業関係からいいますと、いまお話のような山村振興林道とか、あるいは基幹林道というようなものを新たに実施いたしまして、できるだけ林業以外にも使えるといいますか、開発の便をはかるということで進めてきておるわけでございますが、私は、全体的に考えますと、林道の持つ意義というものをもっと一般的にも認識をしてもらいたいと思います。同町に、私のほうといたしましても、林道というものが一般的にも重要な道路交通網でもありますので、なお総合的に検討を続けて、これが進まるように、特にいま御指摘の民間関係との話し合い等も進めて、林道網が相当充実するように進めたい、こう考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/18
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019・角屋堅次郎
○角屋委員 所有形態別の問題に入りまして、日本の森林のうち、国有林野法の二条の関係の国有林野が七百五十二万六千町歩、百行造林が二十九万四千町歩、林野庁所管で七百八十二万町歩、その他の各省のものを加えまして八百四万三千町歩ということになっておりまして、公有林の関係が二百八十四万六千町歩、私有林関係が千四百十六万四千町歩、それらのものを合計して二千五百五万三千町歩、これが国土の約七割を占める森林の所有形態別の現状になるわけでありますが、まず、そのうちで、国有林の関係の問題について若干お尋ねをいたしたいと思います。
御承知の国有林の中は、第一種林地あるいは第二種林地あるいは第三種林地そのほかに除地、こういうふうな関係で、第一種林地は、言うまでもなく、国土の保全その他間接の公用のために、経営上制限を受けている林地、これが約二百十二万ヘクタール、第二種林地が、一種、三種以外のものとして四百五十五万ヘクタール、大体これが経済林として通常やられるものであり、第三種が地元住民の福祉のための経営上特別の施策を要する林地として、約三十万ヘクタール、こういうふうな仕訳になっているわけでありますが、数日来の議論でよく出ておりますように、森林の公益的機能、保安林的なものを除いて、他のものは一般にという、ある意味では暴論が、議論として一部に出ておりまするけれども、やはり先ほど来質疑を続けてまいりました、林業の持つ公益的機能、経済的機能、こういう面から見て、特に経済的機能の中でも、わが国の木材の需給関係、その中で国有林が果たさなければならない需給調整あるいは価格安定という問題から見て、ここ三、四十年という間は、蓄積量としては、だんだん天然更新をやっていく関係もありますけれども、逐年減少するという傾向の中で、その役割りを果たしていかなければならぬという立場から見てまいりますと、同時に、私有林の千四百十六万四千町歩の実態は、同僚議員からいろいろ議論されてまいりましたように、いろいろの問題が多いわけでありまして、いずれにいたしましても、わが党が森林基本法の中でいっておるように、国土は国民の全体のために存在をし、公共の福祉のためにこれを使っていくという基本理念から出発して、林業の問題についても考えなければならぬ。こういう立場から見てまいりますと、国有林であれあるいは民有林であれ、そういう観点から問題をとらえていくということが基本的な立場であろうと思うのであります。そういう観点から見て、国有林については、むしろ今後積極的に、公有あるいは私有の関係の中で、総合的な立場から、保安林等が中心になるかもしれませんけれども、またさらに買い入れを進めていくという部面も十分配慮していく必要があるのではないか。わが党の森林基本法の中では、国有林の買い入れという問題を条項の中でも明らかにいたしておるわけでありますが、今日北海道から九州までの国有林の分布状況というものを見、また国有林の果たさなければならぬ公益的機能あるいは経済的機能という面から見て、全国的な視野から見て、今後国有林の買い上げというものを積極的に進めなければならぬ問題をやはり包蔵しておると思うのでありまして、この問題についての大臣の御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/19
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020・赤城宗徳
○赤城国務大臣 国有林の売り払いばかりでなく、国有林として買い上げの点も、従来から保、安林として買い上げておるわけであります。今国会で保安林整備臨時措置法が十年延長されました。この法律に基づいて継続し、実施するつもりでございます。私は、できるだけやはり保安林等は国で管理するのが適当である、こう思っておりますので、実際面におきましては、払い下げをする場合等におきましても、交換という形で保安林として買い上げる、こういう形もとっております。できるだけやはり国土の保全というような公益的な面を考えまして、引き続き保安林等に買い上げをする、こういう方針でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/20
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021・角屋堅次郎
○角屋委員 国有林野の特別会計の問題でありますが、国有林野特別会計制度という問題について、われわれのほうでは、関連立法としてこの問題をさらに是正をしていく必要があるという視野から、いわゆる企業的業務の面あるいは行政的業務の面というのは、勘定を区分をするということが一つの問題と、さらに単年度というふうな形の中で独算制を考えていくということには、こういう森林という場合にはいろいろ問題があるわけでありまして、そういう会計の運営の問題についてはもう少し検討をしていく必要があるのじゃないか。それと、これは全然別個の問題のようで、今日一つの政治問題になっております、ことしの春闘の場合の三公社五現業というもののそれぞれの当事者能力という問題が、御承知のように出てまいりました。賃金その他労働条件の問題について、三公社五現業のそれぞれの当事者にその支払い能力というものが十分に付与されていないんじゃないか、これらの問題が、今後やはり根本的に検討していく問題として提起されておるわけであります。その中には、農林省の場合で言えば、国有林の場合は三公社五現業の一つとして、その問題の検討の中に加わってくる、と思うのでありまして、そういう問題も最近提起された問題として含んでまいりますが、国有林野特別会計制度というものについては、単年度独算制のような考え方でなくて、もっとやはり林業の特殊性あるいはまたいま言った公労法の適用との関係というふうな面等も含んで、検討をしていく問題を含んでいるのじゃないか、こう思いますか、大臣の御見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/21
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022・赤城宗徳
○赤城国務大臣 いまの単年度独立採算制というものについて検討を加えていく必要があるのじゃないか、私もそう思います。ただ、財政上、予算上いろいろ制約を受けておりますので、直ちにこれを改めるということが可能かどうかということにつきましては、少し問題があろうと思います。あろうと思いますが、林政、林業の問題は長期にわたる問題でもございまするし、あるいはまた事業経営の会計でございますが、林業そのものが公益性も持っております。そういう諸般の事情等をいろいろ勘案いたしまして、検討を続けていきたい、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/22
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023・角屋堅次郎
○角屋委員 きのうも同僚の芳賀委員からいろいろ問題が提起され、後ほどもまたこれは議論になろうと思いますが、国有林野に働く労働者の雇用安定問題、これについてはわが党からも独立立法を出しておるわけでありますけれども、この問題はやはり国有林の今後の重要な問題として、ぜひ前向きに考えてもらいたい。もっとも、これはこの間中央公聴会のときにも議論になりましたように、山林労働者の雇用安定あるいは社会的、経済的地位の向上の問題は、単に国有林ばかりでなしに、民有林の問題も含めて前向きに考えてもらわなければならぬ、こういうふうに私自身も思います。申し上げるまでもなく、今日の経済全体の情勢の中では、農業といわず、林業といわず、それに従事すべき熱意ある人々というのがだんだん失われていくという現状から見ても、これはやはり食いとめ、そしてまた、それぞれの産業の安定的成長という立場から考える場合には、どうしてもそれに従事する人々の雇用、生活の安定というものを積極的に考えていかなければならぬ、こういうふうに思うわけでありますが、この際、やはり農林大臣として、特に国有林の問題は農業省内部で考えられる問題でありますので、いま直ちにわれわれの党が考えております法案をそのまま政府案に置きかえて出してもらうという姿勢になれば一番けっこうでありますけれどもこの問題については、いつまでもじんぜん日を送るということではなしに、積極的にこの問題に取り組むというふうにぜひしてもらいたいと思うわけであります。
われわれのいただいておる資料によりましても、いわゆる雇用区分に基づく人頭数というものは、常用で昭和三十九年二月の数字で一万一千七百二十八人、定期で二千六百七十六人、臨時月雇いで三千三百三人、臨時日雇いで五万七千三百九十四人、合計して七万五千百一人、こういう国有林野事業をささえておる人々のうちで、いわゆる身分の不安定な人々があるわけであります。やはりこの中で、国有林野事業全体としての職員は、国家行政組織法の第十九条、農林省設置法の第九十一条第一項による定員内職員及び国家行政組織法第二十一条第二項、農林省設置法第九十一条第二項に基づく政令による定員内職員、これは給与等についていろいろ問題がありますけれども、身分的には安定をしておる。また国家行政組織法の一部改正によって、附則の第三項に規定するいわゆる定員外常勤職員、国有林野事業の場合においては常勤作業員といわれるもの、これもまず、給与の内容その他は別として、身分的には安定をしておるということになりますが、結局常用以下の問題について、特に定期作業員以下の問題について、雇用の安定をどうするかという問題は、やはり今後年次計画的に前進の展望を見せて、そこで働いておる人人に明るい展望を与えるという姿勢がどうしても必要ではないかと思うのでありますけれども、これらの問題についての今後の取り組み方について、ひとつ重ねてお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/23
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024・田中重五
○田中(重)政府委員 最後の、国有林野事業の定期作業員以下の雇用の安定の問題でございますが、申すまでもなく、山村の人口の減少というようなことを考えましても、山村の生活条件をよくして、そうして優秀な人々が山村にとどまって山村を守っていくということについて、十分に考慮をする必要があります。したがってまた、国有林の事業にいたしましても、そういうような面から、国有林に働く人たちの雇用の安定ということは、十分に考える必要がございます。そういう考え方は、この基本法の中にも十分に反映をさせているつもりでございます。それには、まず事業の仕組み、これを十分にくふうをいたしまして、さらにはまた機械化の促進と事業の近代化をはかって、できる限り事業が継続的に通年的に進められるような計画を立て、そのもとで雇用の面も継続してこれが行なえるように持って行く必要があろうかと存じます。国有林野事業が今後改善発展していきますためにも、優秀な作業員の人たち、そういう人たちができる限り常時雇用されて、そうして国有林の仕事を進めていくということでなければ、その目的は達成されないということを考えましても、いまの雇用の安定は、また国有林野事業の発展につながるというふうに考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/24
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025・角屋堅次郎
○角屋委員 どうもいまの答弁のような抽象的な説明だけでは必ずしも満足できませんが、それは先ほども言いましたように、きのう農政転換の問題で、別の機会に大臣にお目にかかりましたが、われわれ農政の問題に携わり、この道を進んできた立場からいたしましても、最近の農業の実態あるいは林業の内部の問題、いろいろ考えてまいりますと、深憂にたえない現状にあると私は思います。それで、やはり何といっても林業をささえていくというには、そこに働く人々がなければならないわけでありまして、これは国有林、民有林を問わず、最近の情勢から見て、雇用安定あるいは社会的、経済的地位の向上という問題は、旧来の観念ではなくて、やはりもっと近代的な感覚で、積極的に取り上げるというふうに強く希望しておきたいと思います。
国有林野の特別会計の問題で、一般の林政協力の問題でございますが、最近の国有林野の特別会計の会計実態あるいは将来の展望というものから見て、本来希望されておるところの林政協力という問題について、特に林政協力費を生み出すために、苦労してひねり出すという傾向があってはならぬと私は思いますが、この国有林野事業の林政協力という問題については、当初予算を編成します場合よりも、予算の最終決定の段階では、やはり林政協力というものがある程度無理に生み出されるという傾向が最近出てきているのじゃないかという感じがしますが、そういう点はどうなのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/25
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026・田中重五
○田中(重)政府委員 国有林野事業の林政協力の問題は、これはいままでにもろもろの法案の成立にあたりまして、国会の委員会におきましても、附帯決議として、国有林の組織、資金、技術、そういうものを動員して林政の進展に寄与するようにという御趣旨等に基づいてもいるということが言えると思うのでございます。
そこで、国有林野事業の一般林政への協力としては、資金の面からの協力と、国有林野事業自体としての協力と、分ければ二通りの面がございます。それで、資金の面の協力といたしましては、年々の事業の損益決算上生じた利益、これの半分をもって、林業の振興その他に充てるために、一般会計に繰り入れることができるという国有林野事業特別会計法の規定がございます。それに基づきまして現在進めているわけでございまして、昭和三十八年度末でこの林政協力に向けることになる資金、これが百五十九億九千万円ございます。それで、三十九年度予定といたしましては、この中から五十億円を林業振興の資金として一般会計に繰り入れることにしておるというのが現在の実情でございます。このような規定に基づいて進めているわけでございまして、無理にその資金を捻出するために、この経理自体をやりくりしているということはないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/26
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027・角屋堅次郎
○角屋委員 私は、常々山のさちは山に還元をしていくというたてまえが考えの基本になければならぬ、これは国有林、民有林を問わず、そういう精神で、山のさちというものは、そこに働く、あるいはそこに住んでいる人々に返していく、こういうことだと思うのですけれども、ただ、最近の状況を見ておりますと、この林政協力という問題については、そういう必要そのものを私は否定するわけではありませんけれども、何か国有林内部で、必要な企業投資、あるいはそこで働く人々のための財源支出というものをある程度押えてでも、林政協力の関係の費用を捻出しなければならぬ、こういうきらいが最近強くなっているんじゃないか。あるいはそれらの問題とからんで、国有林の増伐あるいは立木処分の拡大というふうなことが、通常考えられる経営計画以上にやられるというきらい等も出てきているのではないかという感じを持つわけでございまして、国有林野事業の正しい運営のあり方、そういう中における特別会計等の問題については、先ほど三公社五現業の関係で言いました問題も含んでおりますけれども、今後十分検討してもらいたい、こういうふうに思います。
それから、きのう同僚の芳賀委員に対して、最近起こっておる国有林の開放に対する政治的な動きについて、大臣から非常に明快な答弁がございました。それが全体として政府・与党に受け入れられるということになれば、私は問題はないかと思うのでありますけれども、この国有林の開放という最近の動きの問題については、国有林の持つ重要な使命から見て、慎重にこれには対処してもらわなければならぬ。そういう意味では、特別立法をつくるという考え方ではなくて、むしろ政府や農林省としては、もし国有林野法の中で、現状及び将来から見て、さらに改善すべきことがあるならば、前向きに改善をしていくという姿勢が必要ではないか。御承知のように、国有林野法の中には、部分林の問題もあり、あるいは共用林野の問題もあり、貸し付け、使用及び売り払いの問題もあり、そういう問題はそれぞれ国有林野全体に支障が起こらない限りにおいて今日までなされてきておる。そういう経緯の中で、現在及び将来の状況から見て、さらに改善する問題があるならば、むしろ農林省自身が、この問題について、どういうふうに国有林野全体の問題として、あるいは林業政策全体の問題として考えていくべきかというふうに受け取るべきであって、最近行なわれておるような、特別立法でもって国有林野の問題の今後に重大な支障の起こるような方向にいくということを、断じて許してはならない。むしろ、現実にある国有林野法の中で、改善すべきものについては改善をしていくという考え方が、この問題に対処する政府や農林省の姿勢ではなかろうか、こういうふうに思うわけでありますけれども、この点大臣から御見解を明らかにしてもらいたい。きのう基本的な考え方については、同僚の芳賀委員に対して、大臣自身として非常に明快な御見解をいただいたわけでありますけれども、重ねて、重要な最近の政治的動きの問題でありますので伺いたい。私自身は、いま申しましたように、国有林野については、地域住民その他の問題で考えていかなければならぬことは考えていくという姿勢からいけば、従来からも国有林野法の中で貸し付け、使用や売り払いの問題もあり、部分林、共用林野の問題もあり、そういう問題の中で、現在及び将来から見て、改善すべきものを改善する、こういう姿勢が、一番林業の実態に即し、また国有林野の持つ使命を達成していく場合においても、それに支障を生じないという形じゃないかと思っておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/27
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028・赤城宗徳
○赤城国務大臣 私も、国有林の払い下げ等につきまして、特に単独立法をするというような必要はないと思っております。いま御指摘のように、国有林野法におきまして貸し付け、使用及び売り払いの問題がありまして、特に第八条の第四号におきまして、優先して売り払い等をする場合、「当該林野をその所在する地方の農山漁村の産業の用に供する」こういうような規定もあるのでございますから、これを行政面においてどういうふうに取り扱うか。慎重に取り扱っていけばいいのでございます。でございますから、別途機構の問題等におきまして、営林局に審議会等を置くというのも、その方向を慎重にやっていくことに対しての進め方の一つでございまして、これは一例でございますが、こういう規定もありますし、いま御指摘のように、一般の民間において部分林制度をもっと活用していくということによって、国有林をこれまた活用するという道もありますし、共用林野の制度もございます。そのほかに森林法もございまするし、それからまた、御可決を願えれば林業基本法というものもありますから、こういう法律を基礎として、国有林野の払い下げ等の問題については、政治的、行政的にその目的を阻害しない、むしろ林政に協力できるということができるのでございます。特に単独立法等によって、終戦当時の農地解放のように、国有林をみんな開放していいという気持ちを持たせることだけでも、政治的にもいいことじゃない。そういう意味におきまして、現在の法律に基づいて運営を十分やっていけば、御要望にもこたえるものがある、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/28
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029・角屋堅次郎
○角屋委員 いずれ近い機会に議論されることになろうと思いますけれども、われわれのほうでも、森林基本法に基づく関連立法として、山地振興の立法を考えておるわけであります。与党内でも、そういうことについての議論がおおむねまとめられておる段階でありますが、この山地振興という視野から、国有林あるいは民有林を問わず、地域住民のために十分寄与し得るという適切な方途があるならば、そういう問題については、国有林野法の内部に含まれるそれの関連した問題になりましょうけれども、そういう視点でこの問題をとるべきだ。ですから、従来国有林の開放が行なわれてきた緊急開拓政策に基づくその後の実態、あるいは市町村合併その他に基づいて国有林の一部開放等行なってまいりましたけれども、過去の実績を見ると、必ずしも成績を残していない。これは林業の持つ一つの特殊な性格があるのだと思います。相当な年数を寝かせなければ実際の利益が回転をしてこない。こういう性格でありますから、山の問題については、山林開放、山林開放と言っても、個々ばらばらに開放するということは、いずれの政党であろうと断じて許せない問題であって、あくまでも山林政策としては、保守政党であろうとわれわれの政党であろうと、山林の持つ特殊な性格を十分踏んまえてやっていかなければならぬと思うのです。そういう点で、最近の政治的な一部の動きというのは、山林に対する認識あるいは林業政策に対する認識を十分持っているとは私ども思えないわけです。これらの問題の受けとめ方としては、先ほど来言っておりますように、国有林野法則の中にもその精神は十分織り込まれておるわけであり、現在及び将来の実態から見て、さらに改善すべきものがあるならば、前向きにこれを受けとめて改善をしていく、こういう姿勢が正しいし、また同町に、今後与野党の間で山林振興法というものが議論される段階になるならば、そういう視点から、国有林であれ、あるいは民有林であれ、地域住民のための適切な方途があるならば、そういうものに対しても国有林としても協力していく、こういう姿勢が正しいのだろうと思う。でないというと、国有林の内部においても大きな動揺をはらむということになりますし、またこれは私有林等においても、いたずらなる刺激的問題を提起しますと、こういう長期的な経営をやっておる民間の経営者に対しても、大きな動揺と混乱を与えるということになるのであって、これらの問題については、やはり林業の持つ特殊性格等十分踏んまえて、これは与党であろうと野党であろうと、十分そういう点を配慮して取り扱っていかないと、公共的使命あるいは経済的な使命を果たす林業の役割りというものが喪失されていくんじゃないかという感じを、私は最近の動きを見て率直に持っておるわけでありますが、農林大臣のほうから、おそらくこの点については異議はないと思いますけれども、御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/29
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030・赤城宗徳
○赤城国務大臣 私も同じような考えを持っております。ことにいまお話の出ました山村振興法といいますか、こういう問題等も検討を続けていきたいと思いまして、ことしの予算は山村調査費を計上いたしました。その調査等を待って、立法化するというような必要がありますならば立法化していきたい。そういう場合に、やはり国有林野との関連が出てきます。国有林野関係については、いまの国有林野法に十分尽くされておるのでございますので、いまお話のように、いたずらにいろいろな問題を提起して、これから林業の長期見通し、長期計画等を立てて、林業を育てていこうという民間の人にまで動揺を与えるということは、私どもも差し控えるべき問題じゃないか、こう思います。全体的にいまの御意見には私ども賛成でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/30
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031・角屋堅次郎
○角屋委員 それと同時に、これは林野庁の資料にもありますけれども、国有資産等所在市町村交付金というものがありまして、三十九年度予算では、千七百二十三市町村に対して六億二千八百五十三万円、こういうものが法律に基づいて交付されていくわけでありますけれども、この問題については、特に山村における経済的諸条件というふうな面から見て、これは別個の立場から、もっと増額というか、あるいはそれぞれの地域経済の振興のために、市町村等が財政支出にある程度の補完的な力を持つという前提に立っての考え方で、もう少しこの点は検討してみる必要があるのではないか。これは農林省だけの問題ではございません。国有資産の問題は他の問題も含んでこういう制度がとられておるわけだと思いますけれども、この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/31
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032・田中重五
○田中(重)政府委員 国有資産等所在市町村に年々交付金が出ております。それで、これはいわゆる市町村税として固定資産税的な意味だけではないわけでございまして、平素国有林として地元の市町村にいろいろお世話になる、事業の面その他でいろいろな協力を得ておるということに対するお礼の意味もあるわけでございます。そういう趣旨から言いましても、このような面で市町村への交付金のさらに増大がはかられることによって、市町村の財政もそれによって何がしか余裕を得られるということで、また市町村の国有林野事業に対する御協力もさらにそれが高まるということになりますと、両々相待って非常にけっこうなことだと存じます。そういう意味から言いまして、現在一応規定といたしまして、一定の基準がございますけれども、それの改善等をはかって、将来こういう面での一そうの改善を検討してまいりたい、こういう考え方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/32
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033・角屋堅次郎
○角屋委員 国有林の問題は、議論すればたくさんの問題があり、前々から取り上げられております直営等の問題も含めて、さらに一部に議論の問題としてございます国有林の公社制度の是否というふうな問題等もございまするけれども、これはたとえば国有林の公社制度というものは、若干議論としては従来存在しましたが、現状においてこの問題が直ちにどうということではなかろうと思いますので、これらの問題について触れることは省略をいたしまして、民有林の関係の問題について若干お伺いいたしたいと思います。
構造改善という問題が、わが党の場合にも政府案の場合にも出ておるわけでありますけれども、問題は、構造改善という場合に、これは中央公聴会のときに私若干聞いたかと思いますけれども、一方において、零細な山を持っておる人々の構造改善というものをどういうふうに考えていくのか、もう一つは、相当な面積を持った山林地主の財産保有的な、そういう所有形態のものが、やはり林業の持つ使命にかんがみて、十分その使命を達成をしていかないという状況にある場合に、これを資源開発あるいは構造改善の部面でどう手を打っていくか、こういう問題が私は出てまいると思うのであります。この際、構造改善、これは松浦君が質問した当時からしばしば議論されてきておる問題でありまするけれども、質問の順序でありますので、この際、重ねて、これから実際にやっていこうという民有林の場合の構造改善というものの基本的な考え方、その場合には、やはり特に零細なものの構造改善あるいは協業化の方向という場合には、森林組合というものが一つの大きな役割を持ってくることは当然でありまして、全国四千六百ぐらいある森林組合の現状から見て、今後やはり森林組合に対する政府の補助、助成、指導、いろいろなものもやっていかなきゃなりませんが、また地域的には合併の必要もありましょうし、また森林組合に経営能力、あるいは場合によっては事業指導能力というものをもっと積極的に付与するという問題も考えていかなきゃならぬかと思いますが、そういう問題もありますし、構造改善という問題を今後考える場合には、取り扱い上は非常に慎重を期さなければならぬと思いますけれども、今度の国会に政府が提案の予定で提案に至らなかった入り会い林野の問題の取り扱いというものを、この基本法と関連をして、今後どういうふうにしていくかという問題も、これはやはり非常に重要な問題の一つに相なろうかと思います。これらの問題について、しばしば触れられた問題でありますけれども、簡潔に考え方を明らかにしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/33
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034・田中重五
○田中(重)政府委員 構造改善の考え方についての基本的なものは、言うまでもないことでございますが、やはり林業経営に熱意を持った林家、そういう人たちの林業経営をでき得る限り国と地方の公共団体の手で助長をしていくというのが、基本的な考え方でございます。したがって、特に保有規模に一定の限定を置いて、それから上とかという考え方を必ずしもいたしてはいないわけでございます。ただ、一応いろいろな調査の結果から、どの程度の保有規模の階層にそういう傾向が強いかというようなことは、標準的な町村の中からは言えますけれども、しかし、一応そういう限定はいたしておりません。いずれにしましても、そういう零細所有者にとってその構造の改善をしていくという場合、まず第一に着手することは、これはいまの林道をつけるとかそういう公共投資は別としますと、保有規模をできるだけ合理的な広がりに持っていこう、そういうことの上に、もろもろの造林技術の革新なり機械化の導入なりというものを考えていくべきではないか。一応全国で、旧市町村の中で、林野率がきわめて高い地域、林野率を七割と一応押えておりますけれども、七割ある地域であって、少なくとも森林面積が五千ヘクタール以上、それからその中に民有林の面積か一千ヘクタール以上、あるような地域、そういうような地域、これを拾いますと、ほぼ千三百市町村ございます。そういう市町村に対して、特にやはりその熱意が高いと考えられるものから順次これを構造改善事業の対象にしていきたい、こういう考え方で、この三十九年度はまずその計画樹立の年というふうに考えまして、予算としましても、その中で九十二市町村を選びまして、実施に入ろうと、こういう考え方でございます。
それから一方、大山林所有者、これにつきましては、確かにお説のとおりに、財産保持的といいますか、そういう経営のままに推移しておるという傾向がきわめて強い。それで、これは少なくとも林業の企業的な経営をするだけの規模を持っているわけでございますから、それの計画的な生産、計画的な事業を推進していくというふうに指導をしてまいりたい。と同時に、一方、そういう山林所有者に対する分収造林設定等を極力勧奨していくということも考えなければならないというふうに考えている次第でございます。まあいずれにしましても、この林業基本法におきまして、目的の推進のためには、そういう大きな山林の所有者あるいは零細な山林所有者等もございます。そのほかに、国有林があり、都道府県の県有林あるいは市町村有林野があるということで、それぞれを施策推進のにない手として考えていきたい、こういう考え方でございます。
それで、特に森林組合のお話がございましたが、森林組合は、そのような林業構造改善の事業の推進の大きな推進力と考え、この零細な林業経営の協業化の大きな部分をになっていく。それで、その森林組合の零のたとえば施設組合等につきましては、伐出等の大型な事業、これについてその作業班をつくって、機機化もできるだけ進めた上で、この山林所有者の計画された事業の伐出搬送を請け負って進めていこうという分野の担当を考えるべきでございましょうし、一方また、生産森林組合等につきましては、小機能集団等の考え方に立って、造林等の協業に参加をしていくというふうな考え方をしているわけでございます。いずれにしても、零細な所有者については協業をできるだけ進める。所有者自身の協業もございましょうし、森林組合がいわば請け負いといいますか、それを生産森林組合が請け負う場合もございましょうし、施設森林組合が請け負う場合もございましょうし、それぞれその事業によって差はあると思いますけれども、その森林組合がそういう役割りを演じていく。そこで、森林組合自体の強化策としましては、現にやっておりますけれども、たとえば森林組合の合併促進、そういうことで大型化をはかって、内容の充実を進めていく、あるいはまた協業を進めていくということでも、機械装備について国が補助をするというようなことで、森林組合自身の強化をはかっているというのが現状でございますが、これをさらに将来に向かって積極的に推進をしたい、こういう考え方でございます。
なお、入り会い林野につきましては、これは今後なお十分に検討をすべき面がございますので、この基本法成立の暁には、これの関連法案の重要なものといたしまして、さらに内容を整備して、そうして保有規模の拡大、つまり、生産の場の拡大の重要な対象として、入り会い林野というものをとらえていきたい、こう考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/34
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035・角屋堅次郎
○角屋委員 時間の関係もありまして、さらにいろいろの問題をお聞きするのが残りましたが、先ほど来お尋ねしておりますように、林業の持つ特殊的性格というものを踏まえて、一方においては森林の持つ公益的機能を十分に今後とも一発揮をし、他面においては林業としての経済的機能を国民経済全体の視野から最高度に発揮していく、こういう立場から、国土の七割を占める山の問題を考えます場合に、私は、林業以外に、国土総合開発の関係から、農業その他に利用していくという、そういう問題における所有権移動というものは、当然起こってまいりますけれども、林業内部におけるところの林業政策あるいは林業経営という面から見れば、そう大きな変革というものは、現状においてなかなかむずかしいということだろうと思うのです。であるとするならば、そういう点において、国有林たると、あるいは公有林たると、私有林たるとを問わず、特に構造改善等の問題も含めて漸進的に問題を処理していくということに、林業プロパーの問題としてなるのだろうと私は思う。その場合に、やはり山の問題はいろいろの歴史的経過もございまして、いろんな複雑な諸条件を含んでおりますから、当然そういう問題について近代的な視野から合理化をやらなければならぬという問題については、やはり入り会い権等の問題も含めてやらなければならぬと思います。ただ、その場合に、家貧しきがゆえに賢者ならずということではないのであって、ややもしますと、零細な者あるいは山で働いておる人々というのが、そういう政策の過程で犠牲にされやすい条件がある。そうでなくて、やはり林業問題を考える場合には、林業の経営の立場にあろうと、あるいはそこで働く労働者の立場にあろうと、近代的な関係の中で林業全体が発展していく方向において、今後の林業基本法も受けとめなければならぬし、農林省、林野庁の施策というものも、そういう方向でやっていかなければならぬのじゃないか、こういうふうに考えておるところであります。
そこで、たとえば四十五万四千という統計数字が三十五年の林業就業者数で出ておりますけれども、これは実態としてはもう少し多いのじゃないかという感じがしますが、いずれにいたしましても、たとえば山林労働者の災害発生状況というふうなものを一つとらまえましても、先ほど少し統計的にお伺いをしましたら、約五%以上、おそらく実態はもっと多いのだろうと思うのですが、二万以上の災害発生状況が出てきておるというふうな問題等も含めまして、この政府の林業基本法の原案のままでは、今後の正しい林業政策というものは進められない。社会党が掲げておる森林基本法の骨子としておるところ、これは十分受けとめて、そして内容を充実するという形の中でこの法案を将来処理するという考え方が、林業全体の視野から見ても、国民経済全体の視野から見ても、やはり政府のとるべき謙虚な姿勢ではなかろうかというふうに私は思うのでありますが、これらの問題も含めて、最後に農林大臣の見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/35
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036・赤城宗徳
○赤城国務大臣 いろいろ御意見を承りましたが、御意見、私、大体親切な御意見であるというふうにお聞きいたしております。また、この法案につきましての問題でございますが、この法案につきましては、相当期間をかけて私のほうといたしましても慎重に提案いたしたものでございます。なお、御意見等につきましては、検討いたす点があろうかと思いますけれども、私のほうといたしましても十分検討したつもりでございます。いろいろ御意見等を検討させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/36
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037・高見三郎
○高見委員長 芳賀貢君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/37
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038・芳賀貢
○芳賀委員 大臣が退席されましたので、昨日の質疑で、残っておる重要な点につきましては保留しておきまして、林野庁長官に申し上げますが、昨日午後相当時間を用いて問題点について質疑をしたわけです。重要な点については政府としての方針、態度が明らかにされない部分が多いわけですが、今国会の会期も残り少ないわけですからして、この法案の成立あるいは審議の促進に積極的な熱意を示すとするならば、解明されない問題については、すみやかに問題の整理を行なって、それらの問題に対する解決の方途とか見解、方針というものを今明日のうちに明らかにしてもらわないと、幾ら委員会において協力しようとしてもそれは不可能なことになるので、その点をまず注意を喚起しておきたいと思うわけであります。
そこで、昨日も質問した点ですが、国有林の位置づけの問題等については、まだ明確な方針が出ておらないようであります。これは単に基本法の第四条に明記された点だけを中心にした国有林の位置づけということでなくて、国有林全体のになうべき使命という点について、あるいは政府案の基本法との関連で変化が生ずるような点についても、整理して明らかにしておいてもらいたいと思うわけであります。
もう一つは、昨日も指摘しましたけれども、自民党の一部議員の諸君が国有林処分の立法化を進めておるわけですからして、法案の意図する内容等については、林野当局としても把握されておると思うわけです。ですから、この点についても、将来法律案が国会に出されてから政府の態度を明らかにするということではおそいと思うのです。最近、農地補償法の問題にしても、今回の国有林野処分の問題にしても、最初は宣伝的な幽霊みたいなものだということを言って、軽視しておいても、その幽霊に手足が出るというのが、最近の自民党という政党の政治的な思わしくない動向になっておるわけですからして、幽霊に手足がはえないうちに、政府としてもその正体を見きわめて、打つべき手は打つ必要があると思います。ですから、いわゆる国有林野処分法案の大綱なるものに対して、政府として、林好当局として、いかなる見解と態度を示すかということを、これは問題点という形でもいいですから、すみやかに明らかにしておいてもらいたいと思うわけです。これが固まらないと、昨日農林大臣が言われたとおり、もしこの基本法を国会において通していただけば、おおよそ押えることができるであろうということでは、この幽霊というものは退治できないと思うわけです。ですから、これは当然農林省として、林野当局の責任において、すみやかに審議中に明らかにしてもらいたいと思うわけです。特にこれに関連して、歴史的な背景というものは無視することができないと思うわけです。この国有林野の制度が創設される当時における国民の側から見た不満とか不信とか、主権者としての国民の争うべき点に対する追及というものは、あるいは訴訟という形で係属されている案件も少なくないと思うわけです。これは林野庁として、そういう訴訟が提起された場合には、民事あるいは行政訴訟の中で応訴されておるということは、われわれ承知しておるわけです。ですから、これらの国有林開放の歴史的な背景をなすこの一つの要因に対しても、従来林野当局が示した態度というものは、決してこれが民主的な態度であるということにはならない点もあるのではないかと思われるわけです。したがって、この際、これは資料要求の形でもこちらはいいわけですが、委員長におはかりを願いたいわけですが、この国有林創設の当時にさかのぼり、所有の権限に属するような問題等を中心にして、旧所有者側から訴訟が提起されておるというような案件は、その形が民事訴訟あるいは行政訴訟の形でありましても、その内容をやはりこの際国会においてもつまびらかにする必要があると思うわけです。私の承知している点では、長いものは三十年あるいは五十年に及ぶというものもないわけではないのです。これは二代、三代にわたって、あくまでもその理非を明らかにしたいというような、そういう訴訟を提起する側の国民の意思というものは、全くこれが一方的に無法であるということだけも言えない種類のものもあるのじゃないかと思われるわけです。この点については、現在そういう係争中の事案は、民事的な訴訟あるいは行政的な訴訟の形で、どのくらいの件数があるか、それぞれの懸案についてはどういうような内容のものであるかということを、これは詳細にすることは不可能であるとしても、大体その件数とか、事案の内容であるとか、これがどういうような訴訟の内容で林野当局として応訴しておるかというような点について、これも基本法審議の一つの資料として、これを委員長から当局に提出方を要求していただきたいと思うのです。これは資料の形でもいいわけです。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/38
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039・田中重五
○田中(重)政府委員 いまお説の点、一々ごもっともだと存じます。そこで、急速に今明日中に、いまの御指摘の点につきまして検討を加えまして、見解を明らかにしたい、こう考えます。
それから資料の点につきましては、係争中の分その他急速に取り調べまして、提出いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/39
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040・芳賀貢
○芳賀委員 それでは、きのう若干残った問題がありますので、こちらから指摘して、長官答弁で足りる点はいいですけれども、大臣から明らかにしてもらう点については、長官のほうから大臣に伝えて、明日でいいですから、明らかにしてもらいたいと思うわけです。
政府基本法にもありますとおり、民有林問題については、民有林の高度利用——国の権限においてこれを管理すべき諸点等については私から申し上げたわけでございますが、基本法においては、国有林の関係については、これを農業上に利用する、あるいは小規模林業の拡大の面に国有林を活用するという表現をされておりますが、民有林というものを、森林の開発発展だけではなくて、農業の発展に活用する場合の方途いかんということになるわけです。この点については、基本法の中では明らかにされておらないわけですから、現在一千五百万町歩に及ぶといわれる民有林の高度な社会的利用という面について、これを農業上に活用する具体的な方策、あるいは小規模林業経営とこれを調整して活用する方策、こういう点についてはどのような見解を持っているか、お尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/40
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041・田中重五
○田中(重)政府委員 民有林の林業的活用につきましては、昨日もお答えいたしましたように、分収造林特別措置法による都道府県知事のあっせんの権限をでき得る限り活用をいたしまして、そして、みずからは林業経営の熱意のあまり認められない山林所有者に対して、その利用権を設定するとかいう方向へ指導するように、できる限り努力したいという考え方でございますし、また民有林の農業的利用につきましては、その民有林が農業に活用されることが望ましいというその地域の意見があって、その併有者もそれに活用されること自体については同意をしたというような場合に、その山林所有者が、たまたま近傍に国有林があって、そして国有林の部分林等の事業を進めたいという希望がある場合には、その希望に沿うことによって、農業的活用の促進をはかるというようなことで、国有林活用の一環の問題として考えていくということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/41
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042・芳賀貢
○芳賀委員 だいぶ消極的な長官の意見ですが、われわれの考えておるのは、たとえば、これは林野庁だけの力では処理できない問題になるが、先日土地改良法の改正のときにも、委員会として論議して、附帯決議の形でその道を開くように進めたわけですが、民有林等を農業上に広く利用しなければならぬ必要性がある場合、土地改良法の改正によって、今度は単に農地と限定せず、農用地の造成、あるいは改良事業等についても、その地域内に民有林が包括されておる場合においては、これを対象とする、あるいは同意させるということになるわけですが、改正された土地改良法の中には、御承知のとおり、この対象になる民有林の所有者が個々全部が応諾しなければ、その事業を進めることができないという欠陥がまだ残っておるわけです。これは農地局のいまの消極的な態度だけでは解決できないわけです。ですから、民有林に対する国の指導を通じて、林政はやはり林野庁が担当しておるわけですから、その側面からも、民有林の性格、実態なるものは、むしろ農業上にこれを活用したほうが利点があると判断ができた場合においては、強力にこれを林業政策、林業行政の面からも推進して解決に当たるという、そういうかまえがなければ、なかなかいまの農地局だけでは問題の解決はできないというふうに考えて、指摘したわけですから、この点に対してはどう考えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/42
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043・田中重五
○田中(重)政府委員 その問題につきましては、農業発展の面からいいましても、好ましいことだとは存じますけれども、十分ひとつ検討を加えさせていただきたい、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/43
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044・芳賀貢
○芳賀委員 何でもかんでも山を守るというだけではだめなんですよ。やはり経済的な価値とか、その地域における社会発展上これがどうかという、林政あるいは行政担当者の判断と指導力というものがなければ、国有林でも民有林でもみんなこれを厳存すればいいのだというだけではいけないと思うのです。これは検討しますなんかじゃ手ぬるいですから、そういうことでなくて、これはこうしなければならぬという明らかな方針というものもすみやかに整理して、これは大臣からでいいですから、明確にしてもらいたいと思うわけです。
次に、政府の基本法にも、林業従事者、特に林業従事者の中の林業労働者の雇用の安定、福祉の向上等についての施策というものは、抽象的に述べられておるわけですが、これに対してどういうような具体的な処理を進めていくかということについて、明らかにしておいていもらいたいと思うわけであります。第三条の「国の施策」の中に、あるいは社会党案の「国の施策」の中にこの点は表現されておりますし、それから政府案の十八条には「林業労働に関する施策」の条文がありますし、また社会党の案の二十六条には「林業労働者の雇用の安定等」という条項が出てあるわけです。ですから、両法案を比べると、相当共通点、類似点というものが多いわけですから、これを具体的にどうするかということに問題はかかっておるわけです。その共通性というのは、林業従事者、労働者の養成、労働力の確保、福祉の向上、就業の安定、社会保障の充実、それから政府案にはありませんが、社会党案で、雇用の安定、労働条件の改善、こういう形でこれを総合して、国有林の問題には昨日触れましたから、民間の林業従事者である労働者の問題等については、これを一体どういうふうに取り上げるかという点であります。特に政府案の第二十条では、「林業団体の整備」という事項の中で、その一つは、森林組合の体質の改善、強化等を意味しておるわけですが、もう一点は、林業従事者の地位の向上をはかるための団体の整備という点もうたわれておるわけでありますから、これは民間における林業従事者である林業の労働者の地位の向上をはかるための団体の整備ということになれば、社会通念的には、民間林業従事者の労働組合というものが自主的に発展することはもちろん望ましいわけでありますけれども、基本法の精神を通じて政府としてもこれを助長して、民間における林業労働者のたとえば労働組合の育成、結成等の問題についても、この政府の林業基本法の精神というものは指向しておるのじゃないかというふうに考えるわけですが、この点については具体的にどう考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/44
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045・田中重五
○田中(重)政府委員 林業労働に従事する者の福祉の向上という面につきましては、昨日来具体的な対策を申し上げてきたわけでございますが、要するに、林業の経営の近代化なりあるいは協業の推進ということにつとめてまいりますとともに、職業訓練の事業の充実なり、あるいは失業保険その他の社会保障制度の適用をさらに改善して、そうして労働者のためになるような施策を講じていきたいということでございます。一方また、こういう社会保障制度が円滑に適用されるためには、雇用者の側でその事業の整備、計画性、そういうものをはかっていくことによって、それぞれの法が適用されるような条件をつくり出すような指導、これも必要かと存じます。
それから、いま団体の問題がございましたが、ここでいっております団体には、林業に従事する労働組合等が入るのかどうかというお話でございますが、この七条の条文からいえば、これは当然入ってくるというふうに理解をすべきものだろう、こういうふうに考えております。それで、これは林業の将来に向かっての近代化、合理化の面からいいまして、やはりそのような団体の健全な発展は、ここにございますように、自主的な努力を通じて生まれてくる健全な発展を助長するということについては、これはこの趣旨で進めるのが正しい、こう考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/45
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046・芳賀貢
○芳賀委員 いろいろ言われますけれども、どうもはっきりしないですね。問題は、政府案にも出ておるし、社会党案ではもちろん明らかにされておるが、林業従事者である労働者ですね、きのう明らかにした点なんだが、林業の従事者であって労働者であるという、この人々が結合して、経済的な地位の向上とか、あるいは福祉の向上に努力する場合の最も効果的な手段方法としては、やはり労働組合というものがつくられる。みずからの意思でつくることはもちろんでありますが、それと同時に、そういうものがつくられる素地、それを指導的に助長するということは、林業基本法の政府案にあっても当然の任務だと思う。それを前向きでやるのか、こういうものはうたい文句にはしてあるけれども、やらないという考えであるか、その点が明らかになればいいのです。なぜそういうことを言うかというと、たとえば全国の民間の林業の労働者の労働組合の組織化が一番おくれているのですね。ですから、労働組合というものがつくられてないということは、国の制度としての、たとえば社会保険のそれぞれの適用を受けることができないという不利益が包蔵されているわけです。ですから、この社会的不利益あるいは労働上の不利益性というものを克服するためには、やはりその方向というものを明らかにしてやらなければいけないと思うのです。そのために、政府の基本法の目的においても、国の施策においても、格差の解消をはかって、林業従事者の経済的、社会的地位の向上をはかるということであれば、その最適の方法である、林業従事者である労働者が結合して労働組合をつくるということに対して、助長するという方針が明らかにされてしかるべきだと思うのですよ。そうではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/46
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047・田中重五
○田中(重)政府委員 その点につきましては、第七条にございますように、「林業に関する団体がする自主的な努力を助長することを旨とするものとする。」という趣旨を明らかにいたしておりますので、その点は、労働組合の場合であっても、その自主的な努力を助長することを旨とするという点に変わりはないというふうに解釈していいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/47
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048・芳賀貢
○芳賀委員 それでは政府としては助長するわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/48
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049・丸山文雄
○丸山説明員 ただいまの御質問でございますけれども、御存じのとおり、労働組合関係につきましては、いわゆる労働三法があるわけでございます。したがいまして、いわゆる団体の労働組合という角度からの育成というものは、やはり労働三法の範疇の問題ではないか。しかしながら、もちろん組合員個々につきましては、従事者ということで全部この基本法の中に包括されますので、その意味におきまして、もちろん、育成すべきものの集合体である組合の助長を阻害するようなことはない、そういう理解に立っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/49
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050・芳賀貢
○芳賀委員 それはどういう意味ですか。長官の答弁に水をさすつもりでいるのですか。私の聞いているのは、林業に従事する労働者は、政府案の基本法からいうと、明らかに森林所有者あるいは経営者と同じように、林業従事者という定義のもとに位置づけられているわけですね。しからば、この基本法の政府案でいうところの、林業従事者である社会通念的には労働者の、この法律にうたってある経済的、社会的な地位の向上をはかるという具体的な手段方法いかんということになれば、林業という事業に参加することによって、自分の労働の価値を適正に評価されて、その労働を通じてそれらの労働者の社会的あるいは経済的な地位が向上するということでなければいけないわけです。当然これは国民経済の発展に通ずるということの社会的な前提というものがあれば、しかし、それが現在の全国的な事情のもとにおいてはその道が開かれていないのですよ。ですから、林業基本法というものができた場合は、これを契機にして、その開かれていない道を開発して、そして当然国民の権利として、主権者の権利として認められておる労働組合の組織化というような問題についても、言うまでもなく、これは憲法や労働法の規定に基づいて自主的につくるべきものではあるけれども、それができるようにやはり政府としても啓発、助長することは、当然の役割りかと思う。そのことも、政府案の基本法の精神の中には包蔵されておるのではないかということを、この際明らかにしてもらえばそれでいいわけです。含まれていないとか、意図していないのならいないというように、はっきりしてもらえばいいのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/50
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051・丸山文雄
○丸山説明員 その点につきましては、ただいま申し上げましたようなことでございますけれども、要するに、基本法で団体の育成という規定があるために、いわゆる労働三法でいう労働組合そのものをまつ正面から取り組んで育成するということにはならないのではないかと考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/51
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052・芳賀貢
○芳賀委員 それでは政府案の基本法はそういうことを毛頭考えてないのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/52
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053・丸山文雄
○丸山説明員 そういうことでございますけれども、この規定からはそういうものをつくれということは全然出てこないと思います。つくらねばならぬということは出てこないと思います。問題は、労働三法が目的として労働組合を育成する方向で考えられているような指導あるいは助成、援助というものは、労働三法の範囲内の事項である。たまたまいろいろな労働に従事する方々が、仕事のやり方の問題であるとか、いわゆる事業と密着した面において、そういう組合をつくるとか、あるいはそれは労働組合であるかもしれませんけれども、そういうことによって事業の促進をうまくやっていく、それが同時に福祉の向上にも役立つという角度のもとにおいては、この基本法のいっている福祉の向上という面を通じての団体と同じものであるかもしれませんけれども、そういう団体というものはだんだんできていく可能性があるというふうに、労働三法とこの規定との関係が、非常に御質問のとおり関連性を持っておると思いますけれども、基調といたしましては、いわゆる労働問題と申しますか、労働三法の意図しているところは、やはり労働三法の関係で推進されるでありましょうし、福祉の向上という面、私が申し上げましたように、事業との関係における問題としては、基本法でいう団体の育成と申しますか、そういう面からのかっこうで進められていくべきではないか。相互に関連する事項であると思いますので、全然無関係だとは言えませんし、それから全部労働組合というものをこの規定でもってまるがかえにして育成するのだということにもならないのではないかというのが、大体この案を作成するときの結論になっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/53
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054・芳賀貢
○芳賀委員 それじゃどうして従事者の中へ労働者を入れるわけですか。労働者が入らぬということになればはっきりするのですよ。従事者の中から労働者を排除する、林業労働者を除いた残りの従事者だけの経済的、社会的地位の向上をはかる、福祉の向上をはかるのが政府案の林業基本法であるというのであれば、話はわかるのですよ。ところが、昨日は大臣も長官も、いや、林業従事者の中には、森林所有者も入る、森林経営者も入る、経営者の家族従事者も入るが、同時に雇用関係において労働を提供してその事業に従事する林業の労働者も入るということを明らかにしているわけです。入った以上、この林業労働者に対しても、同様に経済的、社会的な地位の向上あるいは福祉の向上をはかるということが、基本法の目的、任務ということになるにもかかわらず、それではどういうふうにして実行するかということになると、それは労働三法の関係だからして関係ないということになれば、一体基本法というものは、労働者を従事者に入れておるのか入れていないのかということにまたこれはなるわけです。入れたくないなら入れないということをはっきり言ったらいいじゃないですか。定義の中からはずしておけばよい。それでは政府は、林業労働者というものを社会的に特段低い地位にみなして、これは労務者である、君たちには人権とか人間性というものはあまりないんだという、そういう判断で扱うというのであれば、それでもいいですよ。これは大事な点ですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/54
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055・田中重五
○田中(重)政府委員 まず、第七条の出たゆえんのものは、要するに、この基本法の趣旨がねらっておりますところの林業の近代化、近代化を通じての発展、国民経済のための林業の総生産の増大なり生産性の向上なり、それを通じてまた所得の増大、そういう目的を追求していくためにも、林業従事者の福祉の向上が必要だ、林業従事者という中には、林業労働に従事する労働者、従事する者、それが含まれておるのは当然だということを申し上げておるわけでございますが、そこで、そういう方々の福祉の向上をはかり、環境の整備をはかり、さらにそれの確保、養成、これは特に近年の山村からの人口の若年層の流出というようなことを考えた場合には、なおさら必要ではないかという意識にまず立っている。そういう意味からいって、この第七条では、これは林業に関するもろもろの団体を考えておりますけれども、その団体の中には労働組合ももちろん入るでしょうが、その林業労働に従事する者が組織しようとするそういう自主的な努力、しかもそれが健全なものである限りにおいては、それを国として助長しましょうという態度をこの第七条は示しているというふうに御理解をいただければけっこうだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/55
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056・芳賀貢
○芳賀委員 それは助長するというのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/56
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057・田中重五
○田中(重)政府委員 助長することを旨とするものとするということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/57
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058・芳賀貢
○芳賀委員 助長することを旨とするものとする——そうすると、主目的は、労働組合というものを組織させることをまず助長する、そうして労働組合の人格を通じて、もちろん生産に協力もするわけですけれども、それを通じて経済的、社会的地位の向上をはかることを旨としてこれも助長する、そういうことですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/58
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059・田中重五
○田中(重)政府委員 この条文に自主的な努力という字句がございますように、農山村の林業に従事する者、つまり、農山村の労働者、そういう方々が自主的にするところの健全な組織の結成というような努力がある場合に、それを助長するという態度を示しているわけでございまして、林業に関係する労働組合といえども、やはり林業の発展、そうして林業の従事者の地位の向上をはかるというような目的からするそのような組織の結成等について、健全な合理的な努力が行なわれるならば、それを助長する考え方を政府としてはそこで示したということでございます。ただ、いまも話が出ましたように、一方において労働三法等の法規の中から出てくるものは、それが指導、助長あるいはまた制約という面があるわけでございますから、そのワクの中での問題であることは言うまでもないということを林政部長は申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/59
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060・芳賀貢
○芳賀委員 林政部長に私は質問しているのではない。あなたに質問したのに対して、林政部長が心配して補助的な発言をしたわけです。それは長官の助け舟になったか、足を引っぱったかわからぬということを私は言っただけです。労働者の団結権等の基本的人権というものは、これは憲法で保障されているのですよ。それから労働組合をつくり、できた労働組合を法的に国が保護するというような点については、これは労働三法の規定によるわけだ。だから、いま民間の林業の労働者の諸君は、この憲法の保障と労働三法の保護の中間にいるのです。だから、つくる場合には、もちろん労働三法に基づいてつくるし、できてしまえば、労働三法に基づいて保護されることは当然だが、この中間にあるという現実を一体どうするか。ですから、この中間にあるものを、たとえば政府案の林業基本法のそれぞれの条項には、林業従事者である労働者の団体というものを整備助長するということが示されておるのであるから、それを具体的に言えば、民間の林業労働者が労働組合というものを国の制度のもとで結成して、それに基づいて権利の主張ができるようにするということに対しては、政府案の基本法もそれを目的として助長するのかどうかということを聞いておるわけだから、そうだとか、そうでないということだけを明らかにしてもらえばいいわけです。どうしてもそうしろということを言っておるのではないのですよ。社会党案にはその根拠があるから、何も押しつけて不十分な政府案でなければならぬということはわれわれは考えていないのです。あなた方が何の目的で基本法をつくるのかわからないから、質問の形で聞いておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/60
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061・田中重五
○田中(重)政府委員 いまも申し上げましたように「林業に関する団体がする自主的な努力」ということをまず掲げておるわけでございまして、特に第七条で、林業従事者の福祉等に関係をして、それの達成への助長を規定したものでございます。そこで、労働組合法にいうところの労働組合の組織化自体、それをここで規定したということではないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/61
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062・芳賀貢
○芳賀委員 委員長からちょっと注意してもらいたいと思うのですが、質問者の質問の趣旨というものが、政府委員にあまり通じていないのですよ。私の質問の方法が拙劣で通じないのか、政府委員がそれをまともに理解できなくて質疑にそごがあるのか、そこは賢明な委員長に判断してもらわなければならぬが、質問者の質問が拙劣であるというのであれば、御注意願えばいいわけだが、どうですか、長官と質疑をしておると、こっちも長官のペースに巻き込まれて、何だかあやふやなことになってしまうのだが、委員長の判断をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/62
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063・高見三郎
○高見委員長 丹羽政務次官から御答弁願えませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/63
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064・丹羽兵助
○丹羽政府委員 あまり答弁が詳しくて、御理解願えにくかったと思いまするが、要は、林業基本法をつくりまして、御指摘になりましたように、一つは大いに従事者の福利厚生をはかっていくということを言っております。その中には、もちろん労働だけ提供している、労働に携わる人を含めて、これが中心になっておるということを言っておるわけであります。そこで、そうした方々の労働組合をつくることまでに力を入れるかというお尋ねのようでありますが、それはもう力を入れなくとも、御指摘のありましたように、当然組合はできることでございましょうから、できた上には、政府としてはあくまで直接、間接を問わず協力し合って福祉を願っていく、こういう考え方でございますから、さよう御承知を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/64
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065・芳賀貢
○芳賀委員 いいですか、丹羽さん、できてしまえば、農林省や林野庁長官が心配しなくても、労働三法というものは厳存して、皆さんの御心配をかけなくて済むわけですよ。できない条件というのは幾多あるでしょう。だから、そこに到達するまでの努力をみずからもやる必要があるが、それに力をかして到達するまで助長してやる、そうしなければ、基本法の目的あるいは国の施策の中でいう、従事者である労働者の経済的な利益とか福祉の向上をはかることができないじゃないですか。そこまでの間、一体めんどう見るか、助長するかということを聞いている。できてしまえば、丹羽さんや田中さんの世話や何かにならぬですよ。いいですか。そこへいくまで、法律の精神は、助長するということを意味しているかどうかということを繰り返し聞いているわけですから、その点、賢明な丹羽さん、もう一回………。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/65
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066・丹羽兵助
○丹羽政府委員 そうした仕事に携わる方々が組合を結成されないという理由はないと思います。当然できると思います。そこで、できない条件があるという御指摘でございますが、それが組合を結成する阻害になっているというような条件で、当然排除していくべき性質のものならば、そうしたものは除去して、組合のできるように協力することが当然だ、こう私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/66
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067・芳賀貢
○芳賀委員 ではこの基本法は、政府案といえども、そういうことを使命としているわけですね。それを確認しておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/67
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068・丹羽兵助
○丹羽政府委員 いまお話のありましたように、組合をつくることにじゃまになっている、組合結成の一つの歯どめになっているというような問題があれば、それはこの仕事の上とかあるいは組織の上のいろいろな都合であって、当然健全な労働組合ができるのにブレーキをかけたり、とめているというような支障があれば、これはもう林業基本法の精神からいきましても、当然そうしたことは政府として除去するについて協力をしなければならぬ、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/68
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069・芳賀貢
○芳賀委員 長官、いいですか。そのとおりだか、そうでないかでいいですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/69
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070・田中重五
○田中(重)政府委員 組合を結成するのに障害があるとすれば、それはやはりこの林業経営というものの安定がない、あるいは近代化がおくれている、林業に従事する労働者の地位が確立していない、おくれているというようなことであろうと思います。政務次官のお話もそういう趣旨を申し上げておられると思いますが、そこで、そのような林業経営の近代化なり、安定なり、さらに林業労働の従事者の地位の確立なり、そういうものをねらったのがこの林業基本法の趣旨でございます。そういう意味からいきまして、そういう趣旨に立って、この林業労働者がする自主的な努力を助長する態度ということを政府は明らかにしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/70
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071・芳賀貢
○芳賀委員 私の聞いているのは、丹羽政務次官の答弁でたくさんなんですよ。しかし、あなたが国有林野の長官でしょう。だから、あなたをさておいて、丹羽政務次官の答弁だけで、それでよろしいといっては、あなたに対していささか失礼にあたるので、それでわざわざ丹羽政務次官のただいまの答弁と相違ないかどうかということを、これは好意的に確かめているわけであって、そうであればあるとか、なければないということだけ言ってもらえばいいのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/71
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072・田中重五
○田中(重)政府委員 いま私が申し上げたとおりで、相違ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/72
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073・芳賀貢
○芳賀委員 あなたがいま言った、たとえば労働組合さえもできないというその原因は、森林経営とか林業の体質的なところに問題があるのでしょう。そうじゃないですか。できないという阻害要因というものは、その主体をなす森林の経営とか、あるいは林業そのものの体質的な後進性に基因するということは、これは言えるわけですね。それが解決してから、それでは労働組合をつくってもいいというものではないのです。そうではないですか。だから、そういうことを考えないで、基本法の目的や国の施策にだけりっぱなことを書いても、これは意味がないわけです。ただ、私が一番指摘することは、この法律案でいう林業従事者の中には、労働者が包括されておるという政府の言明であるならば、一体従事者である労働者は、どういう形態を通じてその利益、福祉というものが確保されるかということなんです。従事する労働者は森林を所有していないでしょう。経営しておらぬでしょう。やはり労働を提供して、その経営とか事業に参加しておるわけです。そういうことになると、結局雇用条件というものは厳存するわけです。雇用を通じてその経営に参加するということに当然なるわけですね。だから、雇用の安定とか雇用の条件というものは、従事者である労働者の地位の向上をはかるということの一番の大きなポイントになるわけです。その場合、それは個々ばらばらに分散した形で雇用関係を結ぶとか労働条件を改善するということは、現在の資本主義体制のもとにおいては不可能でしょう。それには、憲法で保障され、労働三法で保障されておる労働者の団結権というもので労働組合というものを結成して、そうして共通の場で、労働者と雇用者、経営者側との雇用条件とか労働条件というものを明らかにして、そうして積極的にその経営や事業に参加して努力する、当然なことじゃないですか。ですから、労働組合をまだつくることのできないような林業の持つ特徴、あるいは地域性であるとか条件というものが、幾多数えればあるわけです。これは労働者だけの力では排除することができないということをわれわれは判断しておるわけです。その場合には、林業全体の発展のためにも、個人個人の労働者の力では除去することができない後進性とか障害というものは、やはり労働組合をつくることについても、国の目的として、法律の目的として、これを助長するということは当然なことなんですね。それを答弁を左右にして明らかにできないなんというのは、一体何を考えているかということになるわけなんです。しかし、丹羽さんはさすが国会の経験の長い政治家だから、そういう点はちゃんと心得て、そのとおりだということを言っておるが、あなた方役人は何十年も林野庁に勤務して、あるいは農林省に勤務しておって、一体このような問題をどう考えておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/73
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074・田中重五
○田中(重)政府委員 いま先生が指摘をされました内容につきましては、ごもっともな点が多いと存じます。一方政務次官から申し上げました答弁に私も異存はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/74
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075・芳賀貢
○芳賀委員 早くそう言ってくれればひまかからぬのです。ただ、この問題は、通年的、継続的な労働ができない国有林の労働者です。これは昨日言ったとおりです。この事業の特徴上、雇用関係が表面から見れば断続する、しかし、国としてはこの労働力を確保するためには、労働者のほうでは継続的に働く意思を持っておるけれども、国有林の経営上、時期的に事業が休止される、休業されるという場合の、休止状態になったところの雇用関係というものを制度の中で明らかにすべきだということを、私が社会党の提出した国有林労働者の雇用安定法案を通じて提起したわけです。これに対しても十分検討して明らかにしたい、解決したいというような農林大臣の答弁もありましたので、この国有林労働者の雇用安定の問題とあわせて、ただいま次官並びに長官が同意されました、民有林労働者のいわゆる労働組合がつくれる条件を政府が責任を持って助長するという具体案等についても、内容を整理してこの法案審議中にすみやかに明快にしてもらいたい、これを私のほうから希望するわけですが、この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/75
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076・田中重五
○田中(重)政府委員 この点は十分に検討いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/76
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077・芳賀貢
○芳賀委員 それでは林業に関連する、たとえば製材であるとか、林産加工であるとか、大きな関連事業とすればパルプ産業もありますが、林業との関連で発展しておる、あるいは衰退しておる事業もありますけれども、これらの関連する第二次産業の育成とか、今後の発展に対する具体的な方策、これに対して尋ねておきたいと思うわけです。政府案、社会党案でも、林産物の需給あるいは流通、価格等に対する安定というものをはからなければいけない、あるいは国際競争力等についても、自由化の圧迫とか弊害というものを排除して、国内における産業の保護育成をはかるということは、基本法にも明らかになっておるわけですが、特に中小企業といわれる製材あるいは林産加工産業等の面に対しては、林業の一環として、あるいは林業の関連産業として、どういうふうにこれを保護助長するかということと、もう一つは、現在までの国有林の経営というものは、その産物の売り払い、処分等についても、率直なところ、巨大なパルプ企業を中心として大企業に利点を与えて、地元の中小零細な企業に対しては冷遇したというような施策が講ぜられてきておるわけでありますが、この弱い者いじめの政策というものを、今後弱い者を守って、強い者には自力で十分適正な企業をさせるようにするためには、一体どうするかという点について、明快にしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/77
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078・田中重五
○田中(重)政府委員 製材加工の流通段階におきます中小企業の改善につきましては、まず、非常に零細で、しかも数の多い零細業者、これの企業合同であるとか、あるいはまた協業であるとか、そういった面で、組織としての取引を生産者との間で進めるような、そういう取引の改善を行なうことを通じまして、零細なものの過当競争によるところの製品安の原木高という事態を解消してまいりたい、こういう考え方でございます。一方におきましては、この総生産の増大をはかることによって、その原木の供給に極力支障なからしめるという対策も必要かと存じます。一方、製材工場に従事する労働者を含めた製材加工関係の従事者の全般の福祉対策等については、中小企業安定法のほうにいくかと存じますけれども、これは両々相まって加工段階の発達改善をはかって、そうして林業経営の改善のためになるように進めてまいりたい、こういう考え方でございます。
それから国有林材の売り払いについてでありますが、これは原則としては、御承知のとおり、一般公開入札、これが原則でございまして、それを不適当とする場合に、指名入札あるいは随意契約という売り払いの方法で進めておるわけでございますが、もちろん、この売り払いの方式にしても、今後国有林野事業の改善の過程で検討を要する事項が多々ございます。ただ、国有林材の売り払いについて、パルプ資本等のものを庇護育成し、零細製材業者にはまま子扱いということではないのでございまして、これは国有林野の地元に所在する製材業その他合板等の、国有林からの買い受け方の実態を調査すれば明らかなのでございますが、この随意契約については配材基準という一定の基準を設けて、それに従ってそれぞれの製材工場の能力に応じて供給しておるというのが実態でございます。ただ、売り払いの全数量に限度があるだけに、その能力がフル稼動するのに十分な数量が供給し得ていないうらみはございますけれども、配分については、それぞれ地元の零細な業者を十分に尊重しての売り払いであるというふうに考えているわけでございますし、また一方、パルプの業界等には、これは製材資材とおのずからその材種等について相違がございますので、パルプ原木自体とはそれほど競合関係はないということでございます。ただ、パルプの消費する数量が大きいために、その数量金額は大きく出てまいりますけれども、製材工場への圧迫要因となっているというふうには考えられないわけでございます。いずれにしましても、国有林材の売り払い自体については、もっと改善すべく検討を要する、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/78
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079・芳賀貢
○芳賀委員 時間がありませんから、これでやめますが、いま中小企業の場合、原木高の製品安ということを言われておるが、そうではなくて、中小企業の場合には、設備に比して原木が不足なんですよ。いいですか。原料不足である。ですから、必然的に設備能力に比べて操業度が非常に低下しておる。ですから、経営的に見ると、資本とか設備は零細なものであっても、製品コストは収益として十分還元されないといううらみがあるのです。それでは国有林にしても民有林にしても、現在以上に原木の価格というものを引き下げるということが可能であるかどうか。国有林というものは、これは経営を度外視すれば、ただで提供してもよいということになるかもしれぬが、ただ、国有林の林材の価格というものは、民有林から生産される木材価格というものを左右しておるわけです。価格あるいは需給の調整作用というものを国有林野が受け持っておるわけですから、そういう場合、経営的に見て原木高と言われるけれども、まだ安くしてやるということであるとすると、これは経営的に見てたいへんなことになる。そうではないですか。現実には長官が何と言おうと、日本の木材の需給を支配しておるのはやはりパルプ産業です。木材価格を支配しておるのはやはりパルプ産業であるということは、これは否定することはできない。競合しないから何でもないというようなことはもってのほかです。そういう反省をした場合には、幾多の欠陥がないということは断定できないわけだからして、やはりこの基本法の審議を機会に十分反省すべきものはして、このいわゆる林業従事者の一環をなすところの造材事業であるとか、零細な製材加工事業等についても、当然一環として、特にそこで働いておる従事者というものは、一般の民間の労賃から見ると、非常に低いということは、これは長官も御存じのとおりですからして、そうなりますと、これを是正するにはいろいろな方法もあるが、とにかくパルプ産業、パルプ企業に優位性を与えておる事実というものを根本的に改善しない限り、中小零細な関連産業に対する体質の改善であるとか、この保護育成ということにはならないというふうにわれわれは信じておるわけです。ですから、その方向に向かって今後十分努力してもらいたいと思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/79
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080・田中重五
○田中(重)政府委員 その点は重々ごもっともな点があると思いますが、要するに、いまお話の製品安の原木高という中には、やはり零細な業者の中から過当競争といいますか、したがって、いまお話のような原木の買いあさり、一方また、製材工場が長く持てないで投げ売りするというようなことから製品安、いずれにしても、そういう零細な企業体を改善していくということも、原木なり製材なりの価格が安定するという方途であります。そういう点から、企業自体の整備なり、合同なり、協業なり、そういう面から改善を加えていきたいという考えを、この基本法でも持っておるわけでございます。
なお、国有林材の売り払いにつきましては、パルプに限らず、地元の製材工場等にも、十分に検討を加えまして、できる限り改善を進めてまいりたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/80
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081・芳賀貢
○芳賀委員 それでは、先ほど要求しました資料の提出と、それから基本法に関連するいわゆる関連法に対する政府としての方針、これを整理してもらいたいという点、特にその中でも、国有林労働者の雇用安定の制度化の問題、たとえば先ほど言いました民有林労働者の組織化の具体策の問題、それから国有林の今後の位置づけあるいは方向づけの方針であるとか、あるいは自民党の一部で作業を進めておるところの、いわゆる国有林開放特別措置法案なるものに対する政府、特に林野庁としてのそれに対する明確な見解、こういうような重要な諸点については、今明日中にすみやかに整理をされて、単に林野庁とか農林省というだけでなくて、政府としての責任ある見解というものを統一して、そしてきょうはもうこれで委員会が散会になりますから、明日ぜひ大臣を通じて明らかにしていただきたい。これは特に委員長からも指示してもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/81
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082・高見三郎
○高見委員長 次会は明十二日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後一時五十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X05819640611/82
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