1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年六月十九日(金曜日)
午後一時十九分開議
出席委員
委員長 高見 三郎君
理事 小山 長規君 理事 坂田 英一君
理事 谷垣 專一君 理事 長谷川四郎君
理事 本名 武君 理事 赤路 友藏君
理事 足鹿 覺君 理事 芳賀 貢君
伊東 隆治君 池田 清志君
宇野 宗佑君 加藤 精三君
亀岡 高夫君 仮谷 忠男君
小枝 一雄君 坂村 吉正君
笹山茂太郎君 舘林三喜男君
寺島隆太郎君 内藤 隆君
野原 正勝君 藤田 義光君
細田 吉藏君 三田村武夫君
渡辺 栄一君 亘 四郎君
角屋堅次郎君 川俣 清音君
栗林 三郎君 東海林 稔君
中澤 茂一君 楢崎弥之助君
西村 関一君 松浦 定義君
湯山 勇君 稲富 稜人君
出席国務大臣
農 林 大 臣 赤城 宗徳君
出席政府委員
総理府事務官
(行政管理庁行
政管理局長) 石川 準吉君
総理府事務官
(行政管理庁行
政監察局長) 山口 一夫君
農林政務次官 丹羽 兵助君
農林事務官
(畜産局長) 桧垣徳太郎君
林野庁長官 田中 重五君
委員外の出席者
自治事務官
(財政局財政課
長) 岡田 純夫君
専 門 員 松任谷健太郎君
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六月十九日
委員大坪保雄君及び野口忠夫君辞任につき、そ
の補欠として渡辺栄一君及び川俣清音君が議長
の指名で委員に選任された。
同日
委員渡辺栄一君及び川俣清音君辞任につき、そ
の補欠として大坪保雄君及び野口忠夫君が議長
の指名で委員に選任された。
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六月十八日
昭和三十九年産なたねの基準価格に関する請願
(大坪保雄君紹介)(第四三五三号)
同(稲富稜人君紹介)(第四三八〇号)
同(荒木萬壽夫君紹介)(第四三九一号)
同(中島茂喜君紹介)(第四三九二号)
同(山崎巖君紹介)(第四三九三号)
同(八木昇君紹介)(第四四〇五号)
同外二件(中馬辰猪君紹介)(第四四二七号)
同外三件(床次徳二君紹介)(第四四二八号)
同外十三件(野見山清造君紹介)(第四四二九
号)
同(中村寅太君紹介)(第四四三八号)
同外三件(三原朝雄君紹介)(第四四三九号)
同(森田重次郎君紹介)(第四四四〇号)
同外五件(坂田道太君紹介)(第四四五四号)
同外八件(荒木萬壽夫君紹介)(第四五二〇
号)
同外二件(中島茂喜君紹介)(第四五二一号)
同外十六件(山崎巖君紹介)(第四五二二号)
同外十六件(中島茂喜君紹介)(第四五四八
号)
果樹共済制度の早期実施に関する請願(天野光
晴君紹介)(第四三九〇号)
国有林野解放特別法の早期制定に関する請願外
二十件(椎名悦三郎君紹介)(第四三九四号)
同外十一件(椎名悦三郎君紹介)(第四四三五
号)
同(池田正之輔君紹介)(第四四五五号)
同外二件(井出一太郎君紹介)(第四四五六
号)
同(浦野幸男君紹介)(第四四五七号)
同外二件(小川平二君紹介)(第四四五八号)
同外八件(小渕恵三君紹介)(第四四五九号)
同外四件(小澤佐重喜君紹介)(第四四六〇
号)
同(金子一平君紹介)(第四四六一号)
同外三件(唐澤俊樹君紹介)(第四四六二号)
同外二件(吉川久衛君紹介)(第四四六三号)
同外四件(倉石忠雄君紹介)(第四四六四号)
同外五件(小山長規君紹介)(第四四六五号)
同外九件(佐々木義武君紹介)(第四四六六
号)
同外一件(椎名悦三郎君紹介)(第四四六七
号)
同(鈴木善幸君紹介)(第四四六八号)
同外九件(高瀬傳君紹介)(第四四六九号)
同外三十二件(田澤吉郎君外一名紹介)(第四
四七〇号)
同外十二件(野原正勝君紹介)(第四四七一
号)
同外六件(根本龍太郎君紹介)(第四四七二
号)
同外五件(羽田武嗣郎君紹介)(第四四七三
号)
同外九件(福田赳夫君外一名紹介)(第四四七
四号)
同外十八件(藤枝泉介君紹介)(第四四七五
号)
同(三田村武夫君紹介)(第四四七六号)
同外三十七件(森田重次郎君外一名紹介)(第
四四七七号)
同外十一件(森山欽司君紹介)(第四四七八
号)
同外六件(渡辺美智雄君紹介)(第四四七九
号)
甘しよでん粉の無制限買入れに関する請願(山
中貞則君紹介)(第四四〇六号)
国有林の民主的利用に関する請願外四件(淡谷
悠藏君紹介)(第四四二四号)
同外二十七件(淡谷悠藏君紹介)(第四四四四
号)
同外四十五件(淡谷悠藏君紹介)(第四四八二
号)
生産者米価算定方式の確立に関する請願(相川
勝六君紹介)(第四四二五号)
同(瀬戸山三男君紹介)(第四四三六号)
食糧自給政策の確立強化に関する請願(相川勝
六君紹介)(第四四二六号)
同(瀬戸山三男君紹介)(第四四三七号)
同外十四件(宇野宗佑君紹介)(第四五四六
号)
国内産牛乳による学校給食事業の法制化促進に
関する請願(芳賀貢君紹介)(第四四三〇号)
配給米の確保対策に関する請願(宇野宗佑君紹
介)(第四五一七号)
食糧自給政策確立及び昭和三十九年産米価に関
する請願(小枝一雄君紹介)(第四五一八号)
同(藤井勝志君紹介)(第四五一九号)
同(藤井勝志君紹介)(第四五四九号)
肥料二法期限満了後の措置に関する請願(加藤
常太郎君紹介)(第四五四七号)
は本委員会に付託された。
—————————————本日の会議に付した案件
参考人出頭要求に関する件
林業基本法案(内閣提出第一五一号)
森林基本法案(川俣清音君外十二名提出、衆法
第四〇号)
林業基本法案(稲富稜人君外一名提出、衆法第
四四号)
農林水産業の振興に関する件(乳価問題)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/0
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001・高見三郎
○高見委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、林業基本法案、川俣清音君外十二名提出、森林基本法案、稲富稜人君外一名提出、林業基本法案、右三案を一括して議題といたします。
質疑の通告がありますので、これを許します。川俣清音君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/1
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002・川俣清音
○川俣委員 時間の制約の中で質問を申し上げますので、総括的な点は大臣が見えてから質問することにいたしまして、具体的な問題について、御当局にお尋ねをいたして進行したいと存じます。
第二条に政策の目標を掲げておるわけでございますが、この政策の目標は、単に林野庁の方針あるいは政府の方針として宣言するばかりでなくして、国民の協力を得なければなりません。したがって、目標というものを明らかにすることによって協力を得られるものでありますから、他産業との格差が是正されるように生産性を向上させるということでありますが、現在他産業との格差がどのくらいあるのか、またこの格差の解消は何年ごろまでを目ざして行なおうとするのか、その目安と申しますか、目標をお示し願いたいと思うのであります。
また、林業従事者の所得を増大する目標を立てておられますが、林業従事者の所得をいままでどの程度に見て、どれだけ所得を増大していくか、また、何年ごろまでに達成させるのか、その目標を明らかにしてほしいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/2
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003・田中重五
○田中(重)政府委員 現在の生産性でございますが、最近の七カ年におきます伸び率は、林業では年率九・二%、それから農業では四・八%、製造業で、一三・五%ということであります。それで、その伸び率は、製造業に比べてまだ相当低位にありますけれども、これをさらに生産性の向上をはかって、その均衡がとれるように持ってまいりたい、こう考えております。
それから所得につきましては、現在の調査によりますと、林業従事者の所得は、林地一ヘクタール当たりほぼ一万六千円程度になっております。それで、これを将来約五万円程度に持っていくという目標を持っております。なお、労賃につきましても、他の産業と均衡するような水準に持っていくように対策を立ててまいりたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/3
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004・川俣清音
○川俣委員 そこで、問題だと思うのです。私は、林業の本質、森林の持つ公益的機能からして、他産業と並行して所得を上げるような方策というものは、非常な弊害を他産業に与えるのではないかと思うのでございます。というのは、原始産業といわれる農業である林業、特に林業のごときは、公益性の高い、あるいは他産業の土台石となり、縁の下の力持ちとなって、他産業の発展に大きな寄与を与えるというのが森林の持つ機能であろうと思うのであります。林業自体から林業の収入を上げるということよりも、むしろ、森林は他産業の発展のための土台石となって犠牲を払うところに、日本全体の国民の幸福をもたらすゆえんがあると思うのです。それにもかかわらず、林業で他産業並みの所得を上げるということは、むしろ発展すべき他産業をセーブする、押えるという結果になって、日本の国民経済から必ずしも好ましいのではないのではないかという危惧を抱くのでございます。したがいまして、公益性の高いこういう森林業については、それ自体の収入というものよりも、こうした公益性の高い、国民経済全体のために重要な役割りを果たしているのでありますからして、国が特別な報償を与える、あるいは助成をするという形をとらなければ、林業の本質を邪道に持っていくのではないか、そういう危険性を持つのではないか。現に戦後の乱伐、過伐が行なわれましたのも、企業的な経営を認めるということ、あるいは所有権というものの力を絶対視し過ぎたところに、あの乱伐、過伐が起こり、ついには日本が災害に見舞われる結果になったので、日本のような国土、気候、風土、地勢の中における林業というものは、おのずから経営林業ではなくして、日本の国土全体の防衛ということあるいは他産業の底力になってやるというところに使命があるのではないか。たとえば水資源にいたしましても、あるいは国土保全という表現は使いますけれども、その意味からだけではなくして、さらに進んで国民の福祉に寄与する役割りを十分果たさせることによって、日本の産業全体を発展させるところの犠牲となる肥料たるところに、国としての価値を認め、したがって、国民経済的な価値を示すのであるからして、一般会計におきましても、十分そのことをくんで助成の措置を講じていかなければ成り立っていかないと思うのですが、永年林政を取り扱っている長官の見解を直接伺い、並びに政務次官の御意見も伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/4
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005・田中重五
○田中(重)政府委員 お説のとおり、森林の公共性あるいは公益的機能、これを確保することば言うまでもないことでございますので、それは森林法の趣旨に沿って今後もますます強化をはかりたいと思いますし、また一方、林業の長期経営性の面につきまして、でき得る限り手厚い国の補助、助成を講ずることによって、その生産者を保護してまいりたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/5
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006・丹羽兵助
○丹羽政府委員 ただいま川俣先生の御意見を伺い、これは林業の基本的考え方だと考えております。事務当局から申し上げましたように、私も同感でございまして、そうした考えに沿うよう努力をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/6
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007・川俣清音
○川俣委員 先へ急ぎますが、もしも同感であり、林業の本質がそこにあるということでありますならば——そういう趣旨に基づいて農林省は訓示を出しておる。これが林野のいわゆる憲法だといわれている訓示を出しております。経営規程というものです。これは訓示であって、訓示は部内にだけ非常に有効なものでありますが、部外一般国民にはそれほどの影響力を持たない性質のものであります。それだけに、こういう立法をする場合には、この訓示を国民的な協力を得るために法制化する必要があるのではないか。たまたまその機会を失っておったのでありますから、こういう基本法をつくるときに、訓示を法律化して一般国民の協力を求めることが、私は今日まで林野当局がとってきた態度として正しい態度ではないかと思うのでございます。私ども基本法ば、そういう意味におきまして、この農林省の訓示というものを非常に高く評価して、この訓示の精神を法律に盛り込もうということで、あえてこれをつくっておるわけでございます。ところが、政府案が、みずから出した訓示に合わないような、あるいは訓示を重要視しないような政策目標を立てられるということは、いかがなものかと思うのであります。みずから訓示を垂れながら、その訓示の精神に沿わないような、あるいは沿わない危険をおかすような立法化は、これは農林省として考えなければならぬと思うのです。大臣お見えになって途中からでございましょうが、ひとつ農林省の方針を明らかにしていただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/7
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008・田中重五
○田中(重)政府委員 いま先生のお話の訓令の点につきましては、これは国有林野経営の精神を掲げたものでございまして、先生の御指摘のとおりだと思います。それで、この林業基本法におきましては、この訓令の趣旨とは矛盾するものではなく、森林生産の面で、それぞれ基本法で産業的な経営の面について今後国有林の経営を進めていく場合に、やはりその趣旨に沿うことができる、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/8
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009・川俣清音
○川俣委員 大臣がお見えになりましたので、総括的な質問に舞い戻りたいと思います。
第一は、政府の林業基本法は、林業及び林業従事者のみを対象として基本規定を定められたのではないかという疑いと申しますか、そういう体制になっておると思うのですが、いま申し上げましたように、山林全体に対する考え方が十分織り込まれておらないのじゃないか。むしろ、そういうことによって林業の経済性を高めるということは、公益性を阻害する要因となりやすいものでございます。これは従来の経験からいたしましても、あるいはシナの時代から日本の徳川時代を考えてまいりましても、林業経営に重点を置き過ぎる欠陥をどうして是正するかということが真剣に考えられてきたと思うのであります。そういう意味で、再び経験が破綻を起こすまいとして起こってまいりました政策というものを、いまやはりかみしめていかなければならぬのじゃないかと思うのであります。そういう意味で、もちろん林業の経営が成り立つように努力することも必要ではございますけれども、やはり森林の公益性を高めるために林業経営をも行なわしめるのだという考え方に立たなければならない。林業経営を主体にして、森林のあり方というものを軽視する傾向というものが資本主義経済、自由経済の中において起こりやすいものでございます。すなわち、個人の経営利害と公益性との衝突というものは、常に今後行なわれるわけであります。特に経済の発展に伴いまして、いろいろな公害が発生してまいりましょう。あるいは大臣がお見えにならない前に一応申し上げたのですが、日本のような国土、地勢、気候、そうした条件下にあるからには、常に一つの産業の発展が公害を起こす危険性も露骨になってまいりましたし、文化の発展に伴って、国民生活の向上に伴って、また水資源の要求も強くなってきておりまして、そういう意味で、単に林業の企業経営から、木材の供給源としてだけ森林を見ることの弊害が出てくる危険性があるのではないか、そういう心配を私どもは抱きまして、私ども森林基本法とあえて名づけまして、森林の公益性を非常に強調いたしたのは、国民経済的な観点に立って今後の日本の産業というものは考えなければならぬのだという意味で、主張いたしておったのであります。政府案は不十分である。不十分であるけれども、今後改正をすればいいんじゃないかと言いますけれども、林業のような長期計画を要する森林施策につきましては、そう改変をするわけにはいかないのでありますから、立法の当時、本委員会において可決をする時点において、これらの趣旨をやはり生かすべきではないかと思いますが、大臣の見解を明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/9
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010・赤城宗徳
○赤城国務大臣 林業基本法の規定しております経済面だけを取り上げてお考えになると、いまの御指摘のような心配といいますか、そういうこともあろうかと思いますが、御承知のとおり、私どもは、森林法によりまして、森林の持つ公益性というものを中心として規定しておりますので、林業基本法においては経済面を強調して規定いたしておるのであります。この経済性を強調し過ぎて、公益性を害するおそれがないか、森林、山林の歴史から見て、あるいは国の歴史から見て、そういう心配があるのじゃないかという御指摘でございますが、私は、この林業基本法はそういうふうには考えません。林業基本法によりまして、やはり森林、山林生産の計画的あるいは持続的生産、こういうものをはかろう、こういうことでございますから、かつてよその国また日本の国にもあったような、目先の経済面だけを考えて乱伐するというような形で、経済性が公益性を侵害するということは、この林業基本法の考えておる精神ではございませんし、方針でもございません。林業基本法としては、先ほど申しましたように、計画的あるいは持続的生産をはかって、公益性を尊重して、両立して山林の持つ意義をなお高からしめていこう、こういうねらいでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/10
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011・川俣清音
○川俣委員 林業というものがかなり古くから公的経営であったのを、私的経営を認めて、その所得の増大をはかろうとするやり方がおくれておったから、その挽回策としてここまで踏み切ったということは、必ずしも理解できないわけではない。しかし、これによって公益性が阻害されないという言い方はまだ不十分だと思うのです。むしろ民間林業については経営林業をやらせる、そのほかのいわゆる森林の公益的機能は、幸いに国有林があるのであるから、そちらの面で大いにカバーしていこう、こういう説明でなければならないと私は思うのです。時間がないから、あえて答弁を求めないのですけれども、経済的経営をやれ、それは公益を害しないようにと言うけれども、それじゃ公害はなぜ今日発生するか、これはあまり企業経営に、利潤追求に走り過ぎるので、公害が発生してくるのです。これは自由経済として当然進むべき方向なんです。それをチェックするということになると、経営林業というものをチェックすることになると思うのです。それはそれとして伸ばすけれども、公益的機能としては、国有林が幸いあるから、これでカバーしていく、こういう説明だと思うのですが、そう理解していいのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/11
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012・赤城宗徳
○赤城国務大臣 まさにそのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/12
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013・川俣清音
○川俣委員 そこで、さらにお尋ねしたいと思うのですが、これは大臣でなくても、事務当局でもいいと思うのです。
これは将来重要な問題になりますので、お尋ねしておきますが、農業基本法との調整をどう処理するかという問題が必ず起こると思うのであります。というのは、農業基本法もまた、耕作農業を中心として酪農等を加味いたしました。農業の転換として、農民の生活を守り、その所得を増大するという方向でできておるわけですが、同じ土地の生産事業であります林業との衝突が必ず起こるものと想像されるわけでございます。すなわち、林業、林分として土地生産事業をやったほうがいいのか、あるいは酪農、果樹その他の土地として生産事業をやったほうがいいのか、必ず衝突する面だと思うわけでございます。これを自由にまかしておきますと、あるものは林分として林業経営をやる、あるものは牧野として利用したい、あるものは果樹として利用したいということになって、ここに土地利用の争奪戦が起きないとは言いがたいのであります。そういう意味で、林業のような長期計画を要し、長年月をもって所得の対象としなければならぬのを、こういう奪い合いの場とするならば、林業みずからが破綻をするばかりではなくて、常に土地の利用が改変されるということは、土地の持つ本質からいって好ましくないと思うのでありまするから、この調整が必要なのではないか。すなわち、林業基本法と同時に、牧野法、牧野に対する施策、酪農政策あるいはそればかりではなく、御承知のとおり、林業に関係する法律として、地すべり等防止法、砂防法、海岸法、河川法等、関連する法律がたくさんあるのでありまして、それらに対応できるような林野のにない手としての森林の土地のあり方、林野のあるべき姿を明確にする必要が、本法の制定と同時に起こるのではないかと思いますが、この点についてどのようなお考えを持っておるか、明らかにしてほしいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/13
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014・田中重五
○田中(重)政府委員 お説のとおりに、林業経営の大部分は農業を経営しておりますので、農業との調整は十分にはかっていく必要がある。それで、この農業と畜産、それから林業の総合的な経営につきましては、その地域の実情について十分にその調整をはかって、国有林野について言いますれば、共用林野制度の活用ということも、あわせて円満な推進をはかっていく必要があると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/14
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015・川俣清音
○川俣委員 ここで大臣、特に国有林のあり方についてお尋ねをしておきたいと思うのでありますが、時間がありませんので、詳しい説明は省略いたしますけれども、新市町村合併促進法に基づく、国有林野の基本財産としての売り払いがかつて行なわれたわけでございますが、それできょう行管並びに自治省からもおいでを願っておりますが、十分な調べではございませんが、私の調べでは、秋田営林局管内では、これは全部ではございませんが、調査いたしました七十一カ町村のうち、六十六カ町村がこれらの基本財産をすでに売り払っております。青森局管内では、八十三カ町村のうち七十八カ町村が売り払っております。基本財産として与えて、町村の財政の基礎を築いてやろうという考え方でできておるのでありますが、すでに基本財産を失っておるわけであります。これは市が入っておりません。町村だけです。市を入れますると、市は確かに売り払い率は低いようでございます。持続しておるようでございます。これは貧弱な町村がこれらの基本財産を得ると同時に、基本財産としてではなく、町村財政の赤字解消のために、これらの取得した財産をすぐ売り払ったのではないか、こう思われるわけでございまして、町村の疲弊状態が極度である。特にこれらの内容を調べてみますと、山間部ほどこれらの基本財産を失っておるようでございます。これは山間部が山に対して熱意がないのではなくして、むしろ山間の町村が疲弊をいたしておりまするところから、売り払ったのではないかと思うわけです。結果的には、資料的にはそうなっておる。そういう意味からも、今日行なわれておりまする国有林開放の運動は、最初は利用権を得たいということでありますが、最近の陳情は、みな所有権をも売り渡せという要求になってきております。これと相考えあわせますと、これはおそろしいことだと思う。ことに自治省及び行管の方にお尋ねしたいのですが、今度の国有林開放運動の費用負担は、従来府県の運動の負担は県財政規模に応じた負担が行なわれてきておりますし、町村におきましても、大体町村財政に見合った負担というものが行なわれてきておるのでありますが、この国有林開放運動に限っては、町村財政とは関係なしに、国有林の所在面積によって負担をさせるということをさしておるようでございます。こうなりますと、貧弱町村ほど財政規模から見ると膨大な運動費を出さなければならぬ。これだけの費用を出していたのでは、財産が取得できるという考え方に立って運動をいたしておるのだろうと思うが、こういう意味で非常に警戒を要すると思うのです。大臣にこれをお尋ねし、時間がありませんので、自治省及び行管の方にはただお知りおきを願いたい。答弁はあえて求めません。大臣、御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/15
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016・赤城宗徳
○赤城国務大臣 いまの数字は、ちょっと私のほうの調べとは違っておるようでございますが、青森では、国の売り払ったもの四十七件のうち、転売したのが二件、秋田では、二十五件のうち転売はゼロ、多分立ち木じゃないでしょうか。私の知っておるのでは、町村合併の際に町村の基本財産として払い下げを受けた立ち木を、学校建築等のために売って財源にした、こういう例は聞いております。しかし、私は、国有地を基本財産として払い下げを受けていながら、その土地を転売するというのはけしからぬと思うのですが、あまりいいことではないと思います。私のほうの監督ではございませんが、そういうことは私はよくないことだと考えております。なお今後とも注意いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/16
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017・川俣清音
○川俣委員 いま大臣の御答弁でありますけれども、これは私どもかなり正確な資料だと存じます。今後、国有林のあり方からいたしまして、大いに警戒を要すると思いますが、いま私の手元に資料がありますから、町村の名前をあげてもいいのですけれども、時間がありませんので、省略いたしますが、そういう意味で、国有林のあり方について十分警告をしてほしいと思うのです。
次に……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/17
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018・高見三郎
○高見委員長 川俣君に申し上げますが、お約束の時間を経過いたしておりますので、結論を急いでください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/18
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019・川俣清音
○川俣委員 時間がございませんので、最後に移ります。
いまるる申し上げましたように、十分ではございませんが、自治省並びに行政管理庁においでを願いましたのも、国の施策として取り上げたものが、施策どおりに行なわれていないで、多くの弊害を起こしておるということを警告し、その趣旨に沿うた基本法でなければならぬはずだと思うのです。弊害が予想されるのに、それを回避するだけでは、基本法の役割りを果たさないのじゃないか。したがって、私どもはそういう意味の修正をも加えて、あまりりっぱなものではございませんけれども、私のほうの考え方と比較してかなり劣っておるものではありますけれども、なきにまさるという意味で、この法案の成立を期待いたしておるわけでございます。
以上、警告を付しまして、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/19
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020・高見三郎
○高見委員長 この際、私から委員会を代表して、次の諸点について、政府当局の見解をただしておきたいと思います。
林業基本法案は、森林について国土保全等公益的機能を中心に規定した森林法と相まって、産業としての林業の発展に関する基本政策の目標を明らかにしたものであり、国有林野事業の重要な使命は、両法によって明らかにされたものと思われますが、この際、次の三点について大臣の方針を明らかにされたいと思います。
第一点は、国有林野事業の基本的使命を明確にされたいことであります。
第二点は、現在民有林のうち、国以外の者では開発利用することが困難な林地を、国が買い入れ、または交換する措置が必要と思われますが、林業基本法案第四条の「奥地未開発林野の開発等」の中には、これらの国の措置が含まれているのかどうか、明らかにされたいことであります。
第三点は、国有林野の活用については、特に地元地域における林業及び農業の構造改善その他地元民の福祉向上のため、部分林、共用林野の設定等の方法により積極的に活用さるべきものと思いますが、最近一部において立法化の動きのあるいわゆる国有林野の開放問題と関連して、明確に大臣の御所信を伺いたいことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/20
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021・赤城宗徳
○赤城国務大臣 お答えいたします。第一の点でございますが、国有林野事業についての基本的な考え方といたしましては、林業基本法案でも示しておりますように、災害の防止、水資源の涵養等国土の保全その他公益的機能の確保のほか、奥地未開発林野の開発等により、林業生産の増進をはかること、木材の持続的供給等により木材の需給及び価格の安定に寄与することであり、国有林野としては、広く国民経済的見地からこれらの使命の達成を強く要請されていると考えるのであります。
第二の御質問にお答えいたします。林業基本法案にも、「奥地未開発林野の開発等を促進して、」と規定してありますが、この中に買い入れ、交換の措置も含めて考えております。
第三の点でございますが、国有林野の活用につきましては、国有林野事業の使命との調整をはかりつつ、これを積極的に行なってまいりたいと考えております。農業の用に供するため必要な国有林野につきましては、草地の造成等を含めて売り渡しまたは貸し付けを行なうほか、共用林野の設定をもはかることとし、林業の用に供するため必要な国有林野については、活用後における林地の細分化ないし集中のおそれ等も考慮し、部分林の設定によることが好ましいと考えております。
また、活用にあたりましては、その趣旨が十分に生かされますよう、計画的かつ効率的な利用を可能とする受け入れ体制等につきまして、十分配慮する所存であります。
なお、いわゆる国有林野の開放問題につきましては、国有林野の重要性は、林業基本法案において明らかにされておりますので、その趣旨に基づいて慎重に対処してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/21
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022・高見三郎
○高見委員長 林業労働者の就業の実態は、他産業の労働者に比して、林業の自然的条件の不利等により、労働関係法規による保護や各種社会保障の諸権利を享受できる程度が立ちおくれていると思われますので、林業基本法案第十八条に関連して政府は今後適切に労働条件の改善等に関する施策を実施する必要があるが、この点大臣の所信を承りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/22
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023・赤城宗徳
○赤城国務大臣 林業労働者の就業の実態については、御趣旨のとおりでありますので、今後すみやかに就業の促進、労働条件の改善、雇用の安定、社会保障の拡充等につきまして格段の努力をいたすつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/23
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024・高見三郎
○高見委員長 林業の生産基盤である森林資源について、その維持、増強と開発が林業発展の基本をなすと思われるが、このための中心施策である造林、林道事業をいかに推進する御方針でありますか、その実施に必要な財政、金融の措置を拡充する等について大臣の御所信を承りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/24
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025・赤城宗徳
○赤城国務大臣 造林の推進につきましては、助成、指導の強化改善をはかるとともに、林道事業につきましては、特にその公共性にかんがみ、一そう積極的にその開設、改良、管理等の助成、指導の強化によって、林地の高度利用、奥地山村の振興にも寄与してまいる所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/25
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026・高見三郎
○高見委員長 今後、林業の発展には、木材の流通機構の整備、木材の需給と価格の安定が前提となると思われるが、林業基本法案第十五条及び第十六条に関連して、特に国内森林資源に依存する供給の増強と外材の秩序ある輸入施策が重要事項であり、この点に関して大臣の御所信を承っておきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/26
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027・赤城宗徳
○赤城国務大臣 木材需要の増大に対応して供給の増大をはかりますためには、まず国内森林資源の維持増大と開発を行ない、国内生産の増大と木材の経済的供給をはかってまいる所存であります。
したがって、外材の輸入につきましては、木材需給と価格の安定等の見地から、国内生産の補完として行なうものであり、必要に応じ、業界の自主的な調整を指導する等弾力的な措置を講じてまいる所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/27
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028・高見三郎
○高見委員長 林業基本法案は、農業基本法、沿岸漁業等振興法と並んで、新しい角度からの林政の目標の確立を期そうとするものでありますが、関連立法の整備によって初めて実効あるものとなるのであります。政府は、すみやかに関連法案を立案し、国民にその具体的方向と措置を明らかにする必要があると思いますが、大臣の御決意のほどを伺いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/28
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029・赤城宗徳
○赤城国務大臣 林業基本法案の関連法案につきましては、さしあたり入り会い林野の権利関係の近代化の助長に関する法律、森林組合制度の改正を中心とする森林法の改正法案等を制定すべく検討いたしておりますが、さらに今後、本法案の成立に伴い、従来の林野行政のあり方に検討を加え、行政機構の整備、改善、国有林野事業特別会計制度の整備、分収造林の促進その他生産、構造、流通、加工等各般にわたりまして、諸施策の実施に必要なものを逐次検討してまいりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/29
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030・高見三郎
○高見委員長 林業経営の発展、林業構造の改善をはかるためには、特に農業との関連を重視していかなければならないと考えますが、この一環として農業、畜産、林業等の総合的経営の発展を助長することについて、御所信のほどを承りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/30
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031・赤城宗徳
○赤城国務大臣 林家経営の大部分が農家でもありますので、御趣旨のとおり農業との関係については、十分考慮していかなければなりません。そこで、いわゆる農、畜、林の総合的経営等につきましても、地域の実情に即し、たとえば共用林野制度の活用等これに必要な施策を積極的に促進してまいりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/31
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032・高見三郎
○高見委員長 林政審議会には、広く各界の学識経験者の参加を求めることがその趣旨であると思いますが、林業経営者代表や林業労働者代表をも加えることについていかにお考えになりますか。
なお、この機会にお伺いいたしますが、都道府県森林審議会の構成についても同様の趣旨で林業労働者代表をも加えるよう善処されたいと思いますが、これについてのお答えをいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/32
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033・赤城宗徳
○赤城国務大臣 林政審議会の委員の人選にあたりましては、御趣旨を尊重して善処いたしたいと存じます。
なお、都道府県森林審議会につきましても御趣旨に沿って十分指導してまいりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/33
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034・高見三郎
○高見委員長 これにて内閣提出にかかる林業基本法案に対する質疑ば終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/34
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035・高見三郎
○高見委員長 この際、芳賀貢君外二名提出にかかる本案に対する修正案が委員長の手元に提出されております。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/35
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036・高見三郎
○高見委員長 趣旨説明を求めます。芳賀貢君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/36
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037・芳賀貢
○芳賀委員 私は、自由民主党、日本社会党及び民主社会党を代表して、内閣提出にかかる林業基本法案に対する修正の動議を提出いたします。
修正案文については、お手元に配付してあるとおりでございますので、その朗読は省略さしていただきます。
この際、修正の主要な点について御説明をいたします。
まず第一点は、第一条の法律の目的の修正でありますが、この点は社会党提出にかかる森林基本法案との調整も必要でございまして、特に政府の林業基本法案は、その母体である森林法並びに国有林野法との関連性がまことに不明確でありますので、この際、森林資源の持つ重要な意義というもの、資源論あるいはまた国土保全の公共的意義というものを、林業の使命感として規定することが必要でありますので、この点についての基本的な修正を行ないまして、特に森林資源の確保及び国土の保全のため、林業に関する政策の目標を明らかにすることを明確にしたわけでございます。
第二点は、国の施策である第三条の修正でございますが、これは国の施策の目標というものを各号にそれぞれ明確にうたってあるわけでございますが、特に第六号の「林業労働に従事する者の養成、確保及び福祉の向上」の点でありますが、特に本法におきましては、森林従事者である労働者の福祉の向上というものは重要視さるべき点でありますので、この際、人間尊重の意味からも、林業労働者の福祉の向上をまず第一番に配慮するという意味で、修正を行なったわけでございます。
さらに、第二項における、各号の国の施策を実行する場合の基本的な配慮についてば、もちろん地域的、社会的諸条件の考慮も必要でございますが、その前に、国土保全並びにこれが公共の利益に合致するということを大前提にしなければなりませんので、この点の修正を行なったわけでございます。
第四条の国有林野に関する規定については、特に修正は行なっておりませんが、この点については、今後国有林野の持つ意義並びにその位置づけ等については、ただいまの委員長質問、農林大臣答弁の中で政府の見解を明らかにするということで、この点の修正は譲ったわけでございます。
第三点といたしましては、特に修正の中で一条を加えまして、林野所有者の責務規定をうたっておるわけでございますが、この新設する第八条のその目的と意義は、国有林野を除く民有林の所有者並びに経営者に対する責務規定をここで明らかにしておるわけでございます。ややもすると、現状におきましては、私有林については、一部の大山林所有者がその集中をたくましゅうして、特にその経営というものは、単に財産保持的な消極的な態度をもって行なわれておる。この弊害を見のがすわけにはいかないのであります。したがって、これらの弊害を除去して、私有林の林地の高度利用というたてまえから、特に地域における社会生活の発展を考えた場合には、地元の農業の開発、発展等と十分の関連を持って、その民有林の高度利用、特にそれが農業の利用に必要である場合には、農用地あるいは農牧林の開発等によって、これを高度利用するということは当然なことでありますので、これらの点について、民有林についても国の有権的な指導と管理の必要性を新しい条文の中で規定したわけでございます。
第四点といたしましては、第九条の改正でございますが、特にこの点は、現存する森林法あるいは国有林野法、さらに社会党の森林基本法との関連に基づきまして、特に森林の長期計画というものは、一たび造林しましてから主伐期に入るまでには少なくても四十年以上を要するというようなことになれば、国家百年の大計を立てる見地からも、資源の培養、確保等については、長期の基本的計画というものを立てることは当然必要なことになるわけでございます。したがって、資源関係については、これを長期基本計画を立てることを前提といたしまして、この基本計画に基づいて、これに見合った林産物の長期の需給の見通しを立てるというふうに所要の修正を加えたわけでございます。
なお、第二項、第三項に対しては、この第一項の修正に基づく所要の修正ということになっておるわけでございます。
第五点といたしましては、第十条の林業生産に関する施策の点でございますが、特にこの第十条の規定の重要性は、生産基盤を確立するというところにその趣旨があることにかんがみまして、そういたしますならば、今後林道の開設あるいは既存の林道網の整備等は、これは公共事業に準ずる事業としてこれを推進することは当然なことになるわけでありますし、さらに生産の資源的向上、培養ということを考えた場合においては、林相の改良、さらに人工造林の必要性は言うまでもありませんので、この点について内容を明らかにした修正を行なったわけでございます。
次に第六点といたしまして、第十二条に関する修正でありますが、これは政府案によりますと、「協業の助長」ということになっておるわけでありますが、しかしながら、現在の森林経営あるいは林業経営の中における大部分の零細所有や零細経営の実態を克服する必要があるわけであります。さらにまた、その生産構造についても根本的な機構の改革が必要であります。それを行なってこそ、初めて林業を通じての収益を確保することができるわけでありまして、特に零細経営の克服等については、当然共同化の方向にこれを進めることは当然でございますけれども、法律の表現については、この際「協業の促進」ということの修正にとどめてあるわけでございます。
最後に第七点といたしまして、林業労働に関する第十八条の修正でございますけれども、特にこの基本法におきましては、先ほど申し述べましたとおり、林業の従事者の中には、当然その主体となって働く林業労働者が対象になることになるわけでありまして、この主体をなして働く林業の労働者に対しては、本法の規定においても、後日誤りのないように明確な根拠を定めておく必要がありますので、修正のとおりの必要な修正を行なったわけであります。特にこの林業労働者の規定の問題等についても、これは大別して、国有林野の労働者と民有林の労働者の今日置かれた特徴的な問題については、今後この基本法の成立を機会といたしまして、国有林野のその使命というものは、国民経済的にも、公共の福祉の上から見ても、ますます期待されるわけでございますから、その事業の経営管理についても、やはり国民の期待にこたえ、経営の改善というものが必要になるわけであります。特に国有林が国民共有の森林であるということを考えた場合に、ここで働く労働者の就業の場を確保するということは、もちろん重要なことになるわけでございますので、事業の面についても、今後奥地林野の買い入れあるいは開発等を通じまして、造林事業等については直営生産の方式を一そう拡大いたしまして、これらを通じて、国有林野労働者の定員化の問題あるいは定期作業員の通年制度を実現するための雇用安定制度の実現等が必要になるわけでございます。さらに民有林の労働者の今日置かれた賃金の状態、雇用の状態あるいは社会保障制度の適用の状態等を見た場合には、まことに憂うべき点が多々あるわけでございまして、これらの点はこの十八条の修正をもって、これを基礎にして根本的な改善をすみやかに講ずべきことを期待いたしまして、所要の修正を加えたわけでございます。
簡単でございますが、修正案の趣旨について、主要な点を御説明申し上げたわけでございますが、何とぞ全員の皆さん方の御賛同をお願いするわけでございます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/37
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038・高見三郎
○高見委員長 修正案について、別に質疑もないようであります。
これより内閣提出にかかる林業基本法案及びこれに対する修正案を一括して討論に付するのでありますが、討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。
これより内閣提出、林業基本法案の採決を行ないます。
まず、芳賀貢君外二名提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/38
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039・高見三郎
○高見委員長 起立総員。よって、本修正案ば可決いたしました。
次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて原案について採決いたします。
これに賛成の諸君の御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/39
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040・高見三郎
○高見委員長 起立総員。よって、本案ば修正議決いたしました。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/40
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041・高見三郎
○高見委員長 この際、本名武君外二名から、本案に附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
趣旨説明を許します。本名武君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/41
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042・本名武
○本名委員 私は、ただいま修正議決されました内閣提出、林業基本法案に対し、自由民主党、日本社会党、民主社会党の三党共同提案により、附帯決議を付するべき旨の動議を提出いたします。
附帯決議の案文はお手元に配付しております。
まず、案文を朗読いたします。
林業基本法案(内閣提出)に対する附帯決議(案)
政府は、林業基本法の実施に当つては、次の事項に関して遺憾なからしむべきである。
一、森林資源の維持、開発の施策としての林道網の整備拡充と造林の推進については国庫負担及び補助率の引上、貸付条件の改善並びに予算及び融資の飛躍的増大等特段の措置を講ずること。
二、国有林野事業の運営に当つては、特に地元産業の振興と地元住民の福祉の向上に留意し、山村地域の振興に貢献するよう努めること。
三、民有林業並びに木材産業の振興のため、更に積極的な施策を講ずるとともに、これに対応する行政機構の整備改善を行なうこと。
四、国内森林生産の増強に努め、外材輸入についてはこれを弾力的に指導して木材需給の調整と価格の安定に努めること。
五、林業労働者に対しては、労働法規に基づく保護及び各種社会保障の諸権利を速やかに享受できるよう雇用の安定、労働条件の改善等その実現に努めること。
六、林政審議会の委員に、林業経営者、林業労働者等広く各界より権威者の参加を求め、法の適正、円滑な運用がより一層可能となるよう配慮すること。
七、本法施行に伴い必要な関連立法の早期実現に努めるとともに、関係法を速やかに整備すること。
右決議する。
以上が附帯決議の案文であります。
林業基本法は、国民経済の発展に即応し、林業を産業として確立するために、政府が講ずべき基本施策の方向を示したものでありまして、わが国林業は、今後この林業基本法と森林法とをてことして展開されるもろもろの施策によって、一歩一歩明るい方向へ前進するものと期待されるわけであります。しかし、基本法の制定の意義は、今後における関連法の整備、必要な財政金融措置によって、初めて画竜点睛が期せられるわけでありまして、政府の林業に対する積極的な施策に期待するところきわめて大なるものがあるのであります。
林業基本法の実施に対する政府の基本的な方針については、先ほどの委員長の質問に対する農林大臣の答弁によって、すでに明白になったのでありますが、なお、政府が林業基本法の推進にあたって留意すべき事項を、本委員会の決議として政府に対し要請すべく、ここに附帯決議を付すべしとの動議を提出した次第であります。
何とぞ全員の御賛同を得られますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/42
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043・高見三郎
○高見委員長 おはかりいたします。
本名君外二名提出の動議のとおり、本案に附帯決議を付するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/43
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044・高見三郎
○高見委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
この際、ただいまの附帯決議について政府の所信を求めます。赤城農林大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/44
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045・赤城宗徳
○赤城国務大臣 ただいまの附帯決議に対しましては、政府といたしましては、積極的にその趣旨を尊重して進めていく所存であります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/45
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046・高見三郎
○高見委員長 なお、本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/46
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047・高見三郎
○高見委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
〔報告書は附録に掲載〕
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/47
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048・高見三郎
○高見委員長 次に、農林水産業の振興に関する件について調査を進めます。
乳価問題について質疑の通告があります。これを許します。足鹿覺君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/48
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049・足鹿覺
○足鹿委員 本日は本会議も迫っておりますし、問題を提起して委員長の御善処をお願いするという意味におきまして、簡単に飲用牛乳販売価格の引き上げについて、農林大臣の御所信を承っておきたいと思うのであります。
御承知のように、昭和三十九年五月二十一日、農林省畜産局長名をもって各都道府県知事あてに、飲用牛乳販売価格の引き上げについての通達が発せられております。しかるところ、市乳小売り値上げ問題について、メーカー及び小売り業者の意見を聞き、生産者の意見を聞いておらないで、一方的にこの局長通達が出ておることは、まことに私は遺憾に存ずるものでありますが、それはともかくといたしまして、局長通達によって配分率の改善と言っておりますが、この配分率の改善ということは何を意味しておるのでありますか。具体的に申し上げますならば、本日私の手元に入った調査によりますと、乳価値上げのメーカーから生産組合に対する通告の状況は、森永が平均において、市乳地域において一升当たり六円、加工乳地域において二円ないし三円、雪印におきましては市乳地域において六円、また準市乳地域において五円、加工乳地域において三円というように、大体通告が発せられるような情勢になっておると聞いておるのであります。その他、各地の情勢について詳細な資料はありますが、省略をいたしますが、これを一つ例にとってみますならば、当初一般生産者が期待しておりました点は、少なくとも一合二円の値上げに対しては、二分の一で一円以上の生産者に対する配分のあることをこいねがい、また当局もそれを期待しておられたものだと思うのであります。しかるに、原料乳地帯二十銭、市乳地帯ば六十銭と著しい差があり、大体において最高が三九%程度といたしますならば、まことに遺憾千万と言わねばならないのであります。このような点から考えて、また一方、六月一日からは小売り価格は上がっておるのであります。生産者乳価値上げ分は本年の十月ごろに支払われることになろうと思いますが、一体いつまでにこの問題を解決される御所存でございますか。この点を農林大臣にまず伺っておきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/49
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050・赤城宗徳
○赤城国務大臣 お話のように、六月一日から小売り価格を上げることに相なりまして、政府が管理しておるものではございませんけれども、小売り価格を上げるに際しましては、これが生産者に還元できるように、生産者価格が上がることが条件といいますか、そういうことで、私どもも法律的に認めるとか認めないとかは別にいたしまして、事実上認めるようなことにいたしたわけでございますから、この小売り価格の上がったものをできるだけ多く生産者価格に還元されることが望ましいと思っております。ことに生産者団体からは、その半分、いまのお話のように、二円なら二円のうち一円を還元するようにという強い要望もありましたので、私どもといたしましては、小売り価格を上げるときのいきさつから考えまして、生産者価格ができるだけ多く上がることを期待いたし、また畜産局長からの通達におきましても、そういう趣旨を含めて、当事者間の交渉によるものではございますけれども、生産者により多く還元される方針で指導をするように、県当局その他にも通知を出して、そういう指導をいたしておるわけでございます。この生産者価格の値上がりをいつまでにきめるのかということでございますが、私は、ごく最近といいますか、近い機会にこれは解決していくべきものだ、こういうふうに考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/50
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051・足鹿覺
○足鹿委員 いま一問だけお尋ねをいたしておきますが、ただいまの御答弁で、御善処になることをわれわれは期待いたしておりますが、このままの姿でまいりますと、通達の権威と申しますか、実効は期待できないのではないかということを憂えるものであります。したがって、通達違反ということは適当な表現でないかはしれませんが、少なくとも通達が守られ、適正に配分が行なわれるように、今後対処してもらいたいと思います。どうしてもその趣旨が達成できないときには、農林省としてもいわゆる断固たる態度をもって対処し、御善処を願いたいと考えておりますが、その点について大臣の御所信がありますならば、この際明らかにされたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/51
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052・赤城宗徳
○赤城国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたように、小売り価格の値上げが生産者価格のほうに還元すべきことを前提として、私ども法律的ではございませんが、認めたいきさつがございます。なお、いまお話がありましたように、畜産局長から通達も出しておるわけでございます。でございますので、この通達が守られて、その趣旨により沿うように、今後とも激励し、私自身もその実現を強力に推していきたい、こう考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/52
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053・足鹿覺
○足鹿委員 この際、委員長にお願いを申し上げておきたいと思いますが、先ほども述べましたように、本日は本会議の時間も迫っておりますので、この程度にとどめておきたいと思います。問題を一応提起した程度にとどめたいと思います。よって、次の定例本委員会において本格的にこの問題を取り上げ、検討をし、対処すべきだと存じますので、御配慮をわずらわしたいと思いますので、よろしくお取り計らいを願いたいと思います。参考人等につきましても御善処を願いまして、理事会の申し合わせ等によって、すみやかにこの問題が公正妥当に解決がされて、酪農振興に大きく寄与するように本委員会としては努力すべきだと考えまするので、この際、委員長の御所信を承っておきまして、本日の私の質問を一応この程度にとどめておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/53
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054・高見三郎
○高見委員長 足鹿委員にお答え申し上げます。
御意見、私も全然同感であります。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/54
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055・高見三郎
○高見委員長 そこで、この際、おはかりを申し上げます。
本件調査の参考に資するため、参考人の出頭を求め、意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/55
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056・高見三郎
○高見委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。
なお、参考人の人選並びに意見聴取の日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じまするが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/56
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057・高見三郎
○高見委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。
次会は来たる二十三日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後二時二十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605007X06219640619/57
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