1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年二月十二日(水曜日)
午前十時三十四分開議
出席委員
委員長 久野 忠治君
理事 上村千一郎君 理事 小澤佐重喜君
理事 坂田 道太君 理事 長谷川 峻君
理事 南 好雄君 理事 三木 喜夫君
理事 山中 吾郎君
臼井 莊一君 木村 武雄君
熊谷 義雄君 谷川 和穗君
床次 徳二君 中村庸一郎君
橋本龍太郎君 原田 憲君
松田竹千代君 松山千惠子君
落合 寛茂君 川崎 寛治君
實川 清之君 長谷川正三君
前田榮之助君 鈴木 一君
出席国務大臣
文 部 大 臣 灘尾 弘吉君
出席政府委員
総理府技官
(首都圏整備委
員会事務局長) 谷藤 正三君
文部政務次官 八木 徹雄君
文部事務官
(初等中等教育
局長) 福田 繁君
文部事務官
(管理局長) 杉江 清君
委員外の出席者
議 員 川崎 寛治君
専 門 員 田中 彰君
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二月七日
委員松山千惠子君辞任につき、その補欠として
稻葉修君が議長の指名で委員に選任された。
同月十一日
委員稻葉修君辞任につき、その補欠として松山
千恵子君が議長の指名で委員に選任された。
同月十二日
委員石田博英君及び加藤精三君辞任につき、そ
の補欠として木村武雄君及び松浦東介君が議長
の指名で委員に選任された。
同日
委員木村武雄君辞任につき、その補欠として石
田博英君が議長の指名で委員に選任された。
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二月十日
公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数
の標準等に関する法律の一部を改正する法律案
(川崎寛治君外八名提出、衆法第八号)
同月十一日
国立教育会館法案(内閣提出第七九号)
同月十日
学校栄養士設置に関する請願外二件(臼井莊一
君紹介)(第二八九号)
同(原茂君紹介)(第三〇〇号)
同(臼井莊一君紹介)(第三三六号)
同外二件(唐澤俊樹君紹介)(第三三七号)
同外一件(千葉三郎君紹介)(第三三八号)
同(辻原弘市君紹介)(第四五一号)
同(田中龍夫君紹介)(第四七二号)
日本学校安全会の国庫補助増額に関する請願(
井原岸高君紹介)(第二九四号)
同(藤田高敏君紹介)(第三五二号)
小、中学校児童、生徒に対する通学費国庫補助
に関する請願(原茂君紹介)(第三一八号)
同(松平忠久君紹介)(第三一九号)
同(下平正一君紹介)(第三六九号)
義務教育費の財源確保に関する請願(原茂君紹
介)(第三二〇号)
同(松平忠久君紹介)(第三二一号)
同(下平正一君紹介)(第三七〇号)
高等学校全員入学及び義務教育無償等に関する
請願(安宅常彦君紹介)(第三三五号)
国立北見工業短期大学の四年制工業大学昇格に
関する請願(壽原正一君紹介)(第三四九号)
スポーツ振興に関する請願外四件(藤田高敏君
紹介)(第三五一号)
学童の栄養改善に関する請願外一件(倉石忠雄
君紹介)(第五二九号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
国立教育会館法案(内閣提出第七九号)
公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数
の標準等に関する法律の一部を改正する法律案
(川崎寛治君外八名提出、衆法第八号)
文教行政の基本施策に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/0
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001・久野忠治
○久野委員長 これより会議を開きます。
国立教育会館法案を議題とし、政府から提案理由の説明を聴取いたします。灘尾文部大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/1
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002・灘尾弘吉
○灘尾国務大臣 このたび政府から提出いたしました国立教育会館法案につきまして、提案の趣旨及び内容の概要を御説明申し上げます。
教育を振興し、次代をになう青少年を健全に育成していくためには、常に教育職員その他の教育関係者の資質の向上をはかっていくことが重要であります。これらの教育関係者の効果的な研修に資するため、これにふさわしい研修施設を設けることとして、一昨年来東京都千代田区霞ケ関にその施設の建設を進めてまいりました。近くその工事は完成いたします。
右の研修施設を適切に運営し、教育職員その他の教育関係者の資質の向上をはかるため、特殊法人国立教育会館を設立し、これに国が建設した施設の財産を現物出資いたしますとともに、運営費についても一部国庫補助を行ない、その適切な運営に当たらせたいと思うのであります。
この法律案は、特殊法人として国立教育会館を設立してその目的を定めるとともに、この特殊法人の資本金、組織、業務、財務・会計、監督等に関し所要の規定を設けたものであります。
すなわち、第一に、国立教育会館は法人といたしますとともに、その設立当初の資本金は、前述の政府が現物出資した財産の価格の合計額に相当する金額といたしております。
なお、政府は、必要があると認めるときは、この法人に追加して出資することができることといたしております。
第二に、この法人の業務についてでありますが、この法人の行なう業務の第一は、教育関係者すなわち教育職員、教育機関の職員、教育行政機関の職員及び社会教育の関係者のための研修施設を設置し、運営することであります。業務の第二は、この法人が教育関係者のための研究集会及び講習会を主催するなど教育関係者の資質の向上のため必要な業務を行なうことであります。業務の第三は、教育に関する内外の図書その他の資料を収集、整理、保存し、及び利用に供することであります。
なお、この法人は、これらの業務を行なうほか、第一条に規定するこの法人の目的の達成に支障のない限り、その設置する研修施設を一般の利用に供することができることといたしております。
第三に、この法人の役員としては、館長一人、理事三人以内及び監事二人を置くこととし、これらの役員は文部大臣が任命し、その任期はいずれも二年といたしております。
次に、この法人には、その運営の適正を期するため、館長の諮問機関として評議員会を置くこととし、所定の重要事項について、館長は、あらかじめ、評議員会の意見を聞かなければならないことといたしております。なお、評議員は、二十人以内とし、この法人の業務の適正な運営に必要な学識経験を有する者のうちから文部大臣が任命するものであります。
第四に、この法人は、文部大臣の監督を受けるのでありますが、その業務の公共性にかんがみ、定款、業務方法書、事業計画、予算、財務諸表等については、文部大臣の認可または承認を受けることを要するものといたしたのであります。
なお、この法人は、所定の準備を経て昭和三十九年四月一日に設立されることと予定いたしております。
以上がこの法律案の提案の理由及び内容の概要であります。何とぞ十分御審議の上、すみやかに御賛成くださるようお願いいたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/2
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003・久野忠治
○久野委員長 次に、川崎寛治君外八名提出の公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、提出者から提案理由の説明を聴取いたします。川崎寛治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/3
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004・川崎寛治
○川崎(寛)委員 ただいま議題となりました公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして日本社会党を代表して、その提案理由及び内容の概略を御説明申し上げます。
科学技術の日進、月歩する今日、後期中等教育の拡充発展は、世界各国共通の課題であり、年限の延長拡大とともに、完全なる後期中等教育を目ざして質的充実発展につとめていることは御承知のとおりであります。
しかるに日本の現状を見ますと、教育条件の整備は決して十分とは言えず、すし詰め学級の全面的増大と、教職員定数の不足は、生徒指導を困難ならしめ、施設、設備の貧困と相まって、高校教育の質的内容を低下させています。
すなわち、文部大臣は三十八年度中学卒業生二百五十万に対し、六一・八%の進学率で足りるとし、百五十六万人の収容設備を用意しました。しかも、この百五十六万人は、高校定数法附則第五項によりさらに一割のすし詰めを見込んだものであります。本則どおり五十名学級として考えれば、百四十万の設備にすぎません。しかし三十八年四月現実に入学した生徒総数は、百六十九万人であり、実に二十九万人が、五十名定員をオーバして、詰め込まれたことになります。
この結果あらわれた高校教育の現状はまことに憂慮すべきものがあります。私学においては、一クラス七十名、八十名はあたかも普通であるかのような実情であり、たとえば国士館高校等においては、実に一クラス百名をもって編制しています。公立においても普通高校で六十名工業高校で五十五名等があらわれています。
しかもパイプ製の急増教室、理科、家庭科教室の転用等が行なわれ、実験も実習もできない授業が、すし詰めにひしめく教室の中で行なわれています。
さらに、高校定数法附則第六項により、教員数算定の基礎になる生徒数を九%削減をし、その上に立って、教職員数を算定することを許しています。このため、公立高校のみについて概算しても、約五千三百名の教員が不当に削減され、教師の労働量ははなはだしく増加しています。劣悪な施設にすし詰めにされた生徒に対し、手不足の教員が労働過重により苦しんでいます。
このような憂慮すべき状況をつくり出している根源は現行の定数法にあります。すなわち、学級編制を五十人及び四十人と規定しておきながら、この急増期間中には一割の水増しを強制していることは、教職員をなお一そうの労働過重に追い込み、高校教育の実情を全く無視しているものと言わなければなりません。
昭和三十六年に制定された公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律は、高等学校設置基準(昭和二十三年一月二十七日、文部省令第一号)よりはるかに下回るものであり、所要の改正を加え、もって高校教育の充実発展を期することはきわめて適切な処置と考える次第であります。
以下改正案の内容について説明申し上げます。
第一は、現行法の附則第五項及び附則第六項を削除することにより一割の水増しを廃し、一学級の生徒数を五十名及び四十名とし、教育効果を高めようとするものであります。
第二は、教職員の定数を高等学校設置基準に準拠し、教諭、養護教諭、実習助手及び事務職員を合わせて約一万七千名の増員をはかり、教職員の労働条件を改善するとともに、教育効果を高めようとするものであります。
なお、この改正にあたって増加する人員については、教育養成機関における養成可能人員及び採用可能人員を考慮したことは申すまでもありません。
最後に、学校司書教諭、学校司書については学校図書館法の改正をもって定数化することとし、また学校用務員については、将来においてこれを定数化するため所要の改正を行なおうとするものであります。
さらに、高校生徒の急増が終了する段階においては、この法律の抜本的改正を行なわねばならぬことを申し添えておきます。
以上がこの法律案の提案の理由及び内容の概要であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださるようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/4
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005・久野忠治
○久野委員長 以上で提案理由の説明は終わりました。
両案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/5
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006・久野忠治
○久野委員長 次に文教行政の基本施策に関する件について調査を進めます。
質疑の通告がありますので、順次これを許します。落合寛茂君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/6
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007・落合寛茂
○落合委員 道徳教育に関連しまして、文教政策について文部大臣にお伺いいたしたい次第であります。
先般文部大臣の文教行政の所信表明の中に、人間性の涵養と高揚を説かれ、また国民の精神面のおくれを指摘されまして、国づくりの根幹は人つくりにありと言われております。また総理大臣も施政方針の中で、善悪を判断できない社会は、いわば、人間の存在しない荒れ地であるとも言っておられます。少なくとも私が近ごろの議会の速記録を調べましたところが、国民の精神生活方面に新熟語まで発明されてかくも関心を払いつつある政府はちょっと珍しいことと言わなければならぬような状態であります。それだけに現下の世上というものがいかに憂うべき事態にあるかということも考えられるのであります。
そこで私、文部大臣にお伺いいたしたいのは、あなたのおっしゃる国づくりの土台になる人つくり、私はこれを人格形成と解釈いたしますが、さきにこの文教委員会で予算書の説明を伺って、それに対する具体策としての多少の考慮も払われておるようでありますが、そこに一つ大きな忘れものがあるように私には思われるのであります。それはすなわち、宗教行政については一片の考慮も払われていないということなのでありまして、どうも政治上の問題になりますと、宗教という文字は一つのタブーのようなふうに取り扱われておる傾向があるのでありますが、この問題は、やはり文教においては相当に私は突っ込んで考えなければならない問題ではないか、こう思うのであります。
この際私は、一国の重大な精神活動のささえとして存在いたしており、こうしてそれにまた貢献をいたしております宗教そのものに対する——すなわち、文部大臣は一国の宗教政策についていかなるお考えを持っておいでになるか、ひとつお聞きをいたしておきやすいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/7
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008・灘尾弘吉
○灘尾国務大臣 宗教がわれわれの人生にとりまして、またわれわれの共同生活にとりまして非常に重要な意義々持つものであるということは、何人も疑う者はないと思うのであります。ただこの宗教につきましては、何と申しましても人間の心の自由ということが一番大きな要素でございます。したがって政府といたしまして、人々の宗教心なりあるいは宗教活動、そういう問題についてあまり干渉とかあるいは監督とか何か手を加えるということは、これは差し控えるべきだと考える次第であります。われわれといたしましては、ほんとうの宗教が日本の国におきまして大いに興ることも必要でございますし、またその宗教活動をになう方々におかれましても、この重要な使命にかんがみまして、国民のみんなが信頼し納得のできる宗教活動をやっていただきたいもの、かように念願をいたしておる次第でございます。特に積極的な宗教政策というふうなものは掲げてお話を申し上げるだけの材料は私持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/8
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009・落合寛茂
○落合委員 文部大臣のお考えはたいへん穏当でありがたいわけでありますが、実はいろいろな場合に当局の国としての御答弁はたいがいそういうふうなものなんでありまして、もう少し積極的なお考えで何か方策を立てていただきたいと思うのですが、もちろん原則的には憲法第二十条第三項にずばっと宗教に対する国の方針がきまっております。それは申すまでもなく「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」。というワクがきまっておるわけであります。ところが私あちらこちら速記録などをなにしてみますと、昭和二十一年七月三日の第九十回帝国議会におきまして、時の文部大臣田中耕太郎さんが杉本議員の質問に答えております。自来その線において国は宗教に対しているようでありますが、その田中文相の答えがこうなんであります。「宗教教育ト云フ意味モ、決シテ宗教的ノ情操ヲ酒養シテハナラナイト云フ意味デハナイノデアリマシテ、一宗一派ノ宗教教育ヲ施シテハナラナイト云フ意味ダト解シテ居りマス」、これなんでありまして、これについて灘尾文部大臣は自分もそう解釈するという御同意をされますかどうか、ひとつお伺いをしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/9
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010・灘尾弘吉
○灘尾国務大臣 ただいま御紹介をいただきました田中先生のお答えでありますが、私もそのように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/10
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011・落合寛茂
○落合委員 もし御同意だとすれば、一宗一派に偏した宗教教育さえしなければ、すなわち普遍的な宗教的情操を涵養する立場においてするならば、国及び国の機関によってできております学校その他そういう教育の場において、一宗一派に偏しない宗教情操というものの涵養は許されていいわけでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/11
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012・灘尾弘吉
○灘尾国務大臣 いわゆる宗教的な情操というものが教育の中に織り込まれるということは、何ら差しつかえないことと思っております。教育基本法においてもこれを容認しておると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/12
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013・落合寛茂
○落合委員 たいへんありがたい御答弁をいただきまして、これは将来宗教界にとりまして非常に大きな意味を持つものだ、こう思います。もちろん歴史的な事実としまして、宗教が過去において国家的弊害を残したことは、これは事実でありますが、今日、敗戦後の社会不安を反映しまして、いろいろな何百という新興宗教というものができてまいっております。これから非科学的ないろいろな問題を起こしておりますが、宗教法のない以上文部省としても取り締まることもできず、まことに困っておいでになるだろうと私は思うのでありますが、結局諸外国の例を見ますと、幼稚園の小さいころから、信仰ではなしに宗教というものの本質がわかるように教育をしている向きがたくさんどこの国にもあるのであります。そのために大きくなってから、もちろん西洋にも宗教はたくさんありますが、その中の正邪をわきまえるだけの宗教的素養を身につけておるのであります。そういう意味で非常に強固なんです。ですからどうかひとつわが国におきましても、そういう意味で、決して信仰とかいろいろなものではなしに、正邪をわきまえる知識として将来宗教というものを道徳教育に対する一つの道具として御採用願いたいと思うのであります。
次に、私、筑波研究学園都市建設について質問をしたいのでありますが、この問題は、教育機関の大移動という、考え方によりますと歴史的と言ってもいいような新事態がありますので、文部、建設、首都圏整備委員会等の関係の各位に質問いたしたいと思います。
この問題が起きましたのは、察するに、激増します首都東京の人口分散のため、首都圏整備委員会の計画の一つとして、昭和三十八年九月十日閣議了解事項で茨城県筑波地区が研究学園都市の建設地に指定される運びになったようであります。その規模は、人口十六万人、面積四千ヘクタールというきわめて膨大な国家的大事業で、完成までには十年かかる。しかも二千億円という大計画であります。ところが新都市建設のためによそに家屋敷、農地、墓地まで移転しなければならない事態を惹起しました農家が千六百余戸ありまして、買収総面積中にその耕作地が大体六割を占めるというところから、が然反対運動が起きまして、水戸の県庁にむしろ旗を立てて押し寄せるというような事態まで起きたのは世間周知の事実であります。そんなわけで茨城県当局も困り果てまして、最初国から提示しました規模のものよりも縮小した案に立て直して地元を納得させようとしたのでありますが、今日依然として反対運動が続けられておるような状態であります。ついては、その間の事情及び推移を、首都圏整備委員会の事務局長さんがお見えのようでありますが、ちょっと御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/13
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014・谷藤正三
○谷藤政府委員 お答えいたします。ただいまの研究学園都市の問題につきましては、ただいま先生からお話がありましたような経過で進んでまいりましたが、当初私のほうのマスター・プランをまだ現地に対しておろす前に、といいますのは、調査測量等が本年の三月に終了いたします。そして、それが終わりましてから正常な一万分の図面ができまして、その図面に基づきまして、その地区に応じた実際の設計に入ってくるわけでありますが、最切につくりましたマスター・プランがそのまま現地のほうに流れまして、閣議了解のあとで、これがあたかも全部の千四百七十万坪というものが、千六百の農家を移転させて、それによって学園都市をつくるんだというふうに流布されまして、その間において、また一方、ある組合のほうから地元の千六百のものは全部ブラジルに移転させるんだ、あるいはまた秋田県の八郎潟のほうに移転させるんだというようなデマが入りまして、そのためにせっかくまとまるような地元の千二百名からの陳情書と了解書が委員長のもとにきておりましたけれども、その人たちさえも全部反対という側に回りまして、その後で直接に私どものほうと県との話し合いによりまして、実質的には山林を主体として学園都市をつくるんだ。したがいまして測量が全部終わりましてから、現地にその形でおろしてみて、その仕事を進めます。こう申してきたのでありますがなかなか了解が得られないことが一つと、もう一つは先生のお話しになりましたように、十六万という人間でございます。といいますのは、現在の水戸よりもやや大きい都市でございます。そういう大きな人口にいては、地元もなかなか三百年来の一家として住まってきました人たちには、水戸と同じ大きな町ができるという事項が了解できない。したがいまして、現在ある山林だけをつなぎ合わせて町をつくれば十分じゃないかというような気分が相当濃厚になってまいりました。実際には七カ町村の中で五カ町村は大体において了解されておりますけれども、残りの二カ町村、特に谷田部地区につきましてはちょうど今度の学園研究都市の中心地でございまして、商業地区、住宅地区というふうなものができる場所でございますが、その地元が相当強い反対をしているという現状でございます。そのために、実際には今年度末に終わります測量の結果を待ちまして具体的に仕事を進めていきたい。いまのところ県と話し合いをいたしておりますのは、大体山林地区を中心にいたしまして、一部区画整理的な仕事を並行いたしまして、その周辺を多少地元から譲っていただき、それによりまして約六百万坪近くのものを中心にして学園都市の設計に入りたいというふうなことで作業いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/14
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015・落合寛茂
○落合委員 実は私は地元にいる者なんです。ですから、ただいま御説明くださった内部の事情もよくわかるのですが、どうも国の立てられた構想に対する方針と、それから県のなにしております方針とが何か食い違っておるようでありまして、一般の土地の住民から見ますと、どうも国がやるんだかやらないんだかわからぬ。それから、県のほうも何か本気になってやるのかやらないのかわからぬというふうなことで非常に不安なんですね。そこへもっていって、いろいろないまのデマが流れて、そして実力大臣というのですか、河野さんに県知事がたいへんどなられてしかられてしまった。それで県知事がいま入院しております。そのために入院したのではないでしょうが、非常に過労で、奔走これつとめまして、気の毒なくらいに一生懸命でやっておるのです。それでとうとう入院をしておるのです。そんなような事態だものですから、一般の住民が、はたして国が本腰を入れてやるのかやらないのか、それからあの地域の中の相当な識者は、国で立てた構想を県で手直しをしたようなことで、はたして最初の理想どおりの学園都市ができるかできないか、ただいまあなたがおっしゃったような松林だけをつないで、こそくなことをした程度では、農業構造改革のほうも完全な成果を得ることはできないのではないか、こういうふうないろいろな思惑が流れておるわけです。そこへもってまいりまして、土地問題ですからブローカーが飛び込んできて、単価は皆さん国のほうで示しておられますけれども、それの何十倍もの売買をやっておる。だから非常な混乱がある。ですから私はこの際国としてやるのだぞ、もうどんなことがあってもやるのだという意思表示はできないものですかどうですか、それを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/15
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016・谷藤正三
○谷藤政府委員 ただいまの第一問の質問でございますが、私のほうの委員長はどうしてもやるという気持ちでおります。ただ事務局といたしましていろいろその点に問題がありますのは、普通の道路やその他の公共施設を実施いたしますときには、逐次買うことによって工事を進めていくということが可能でございます。ところがこの研究学園都市というような新しい市街地をつくりますときには、途中まで買って、あとは抵抗が多くなったからやめましたということはできません。そのために、全体としまして、現在、先ほど申しましたように六百八十万坪、少なくともこれだけの面積が入るという確信が得られなければ、土地買収という実施に入っていけないわけです。それで、県のほうに対しましては、最初の千四百七十万坪、これは周辺に全部緑地帯を持ちまして、高速道路が入ってくる。中心の都市内の道路についても車道、歩道の分離が行なわれるということで、マスター・プランは全体としましては非常に緑の多い都市になっておったわけです。ところが、実際は研究施設と学校施設、そういうものを全部配置いたしまして、いままでの理想的な緑の点から、周辺に農耕地がどうしても残るという農耕地を緑として扱いますような計画に変更いたしますと、現在考えておりますところの面積で、最初の施設は全部入ることになるのです。問題は周辺に残しました農地が今後いかなる形で侵略されるかということが問題になるのでございますが、この点につきましては農林省との話し合い、あるいはその他の都市計画的な方面から逐次押えることによって、従来の緑はそのまま残しておきたいというような計画の変更をいたしますと、先ほど申しましたような森林地帯を主体といたしまして、それをつなぎ合わせることによって大体町づくりは完全にできるというふうに自信を持っております。ただ先ほども申しましたように谷田部地区においては、どうしても中心市街地にならざるを得ない。そこへ商店街をつくり、その他の公共施設をつくり、義務教育的な学校施設を全部つくり、病院その他もつくるということを中心といたしまして住宅街を構成しなければならない。ここだけは一応まとめた面積を獲得できませんと、全体の中心が失われることになりますので、その点が一番のポイントになっておるわけであります。いまのところそれを中心にいたしまして、県のほうへおろしてきておりますが、県と私の方との間に意見の相違があるのではなくて、県の実際の地元の空気を反映しまして、逐次私たちも妥協できる範囲において修正しながら折衝しておるわけであります。県のほうでは、知事以下非常に熱心にやっていただきまして、特に去年の暮れには特別委員会が県議会につくられまして、積極的にやっていただいておることは事実でございます。私のほうといたしましても、できるだけ県あるいは地元の意向を尊重いたしまして、できる範囲の修正を加えながら実際の設計に入りたい、こういうふういに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/16
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017・落合寛茂
○落合委員 たいへんありがたいわけですが、それならこういうことをこの席で断言していただけますか。ほかにも赤城山ろくとか富士山ろくとか、いろいろなそういう首都圏整備委員会の候補地がたくさんあるようでありますが、絶対にいろいろな何があっても、そちらのほうへはいかずにあくまでも筑波山ろくで学園都市を何するということは断言していただけますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/17
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018・谷藤正三
○谷藤政府委員 その絶対にやるかどうかという問題につきましては条件が伴います。それは先ほど申し上げましたように、所要の面積が絶対に手に入るということが一つ、これがつまり先ほど申し上げましたように、途中で中途はんぱな町づくりはできませんので、所要の面積が絶対に地元から提供していただけるという条件が一つ入ります。
もう一つは地価の問題であります。従来最初にお話のありました地元からの話では、大体現在のところ坪七百円くらい、そういうことで、それなら絶対に手に入りますという話で、私どもは昨年の十月に参りましたが、その前のお話のとおりにそういうような言質を県からとっておるわけでございます。そういうものを標準にいたしまして町のあの計画が、全部最初のマスター・プランというものができておったわけでございます。そのあと逐次先生もいまおっしゃいましたようなブローカーが入りまして、場所によりましては四千円という値段が出ているかに伺っております。そうなりますと、従来の反十万から十五万足らずの土地が百二十万から百五十万というふうなことになりますと、実際の千万坪返くの膨大な土地を獲得しまして新しい市街地をつくるという事業そのものが挫折をいたします。その点がございましたので、ただいま大蔵省から三十九年度予算として示されておりますのは百四十七億の債務負担行為でございます。百四十七億ということは、もう常識で考えましても大体坪千円ということになるわけでございまして、この線がくずれますしおそらく事務的には非常に苦しい立場になってまいります。これは立木補償も含めましての価格でございますので、さら地になりますとどうしても六、七百円ということにならざるを得ないわけです。そういう問題がございます。その二つの事項が今後またどういう形であらわれてまいりますか。
なお、どんな形でもやるということになりますと、最初に言いました閣議了解の点に基づきまして——面積が減るという事実と、それから単価がふえるという事実を閣議了解にしていただけませんと、事務局は動けない、こういう形になっておるわけでございます。私たちといたしましてはできるだけやりたいという方針で前向きに進んでおりますし、県自身もそういう態度で進んでおりますので、地元の落合先生のほうからもひとつそういう点はできるだけ御援助いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/18
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019・落合寛茂
○落合委員 だんだん話してきたら私はだんだん何か不安心になってきたのですが、大蔵省の方きょうお見えになっていないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/19
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020・久野忠治
○久野委員長 見えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/20
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021・落合寛茂
○落合委員 とにかく非常に不安を持っている。それでさっきも申し上げましたが、ここにきょうおいでになるとたいへんよかったのですが、おいでにならない、実力大臣ですね、あの人の一言でいろいろな問題があれになるということで地元の人が不安を持っているのです。だからして、ぜひひとつ首都圏のほうでやっていただくことをお願いいたしますとともに、学園都市ができた場合に文部省がなにするのですが、これは東京の首都の官立全部を総合的にあっちへ移転するお考えなのですか。あるいは希望のものを移転なさるお考えなんでしょうか、どうなんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/21
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022・杉江清
○杉江政府委員 文部省といたしましては、首都圏整備委員会のほうから当初の計画をお示しいただいた際に、こういうことでいきたいから国公私立につきまして希望校があったらひとつ申し出てもらいたい、なるべく早くそれをまとめてもらいたい、こういうお話があったわけでございます。そこで、都内の大学に意向を尋ねましたところ、国立について一、二の大学、及び私立については相当の大学が、そういうことが実現するならば希望する、ないしは十分検討したい、こういう回答をいただいたのであります。ことに国立大学の中においては、東京の教育大字が前から土地が狭いから適当な場所に移転したいという計画がありましたので、そういうことならば真剣に筑波山ろく移転のことを考えたいということで内部で組織もつくられて検討されたのであります。そうこうしておるときに、実は地元でいろいろな問題が起こっておる、ただいまお話のような状況が出てまいりまして、実はそういうふうに前向きに検討しておりましたところ、それが一時挫折したという形が率直のところ出ております。私どもも首都圏整備委員会のほうとはよく御連絡申し上げておるのでありますけれども、まだ不確定な要素が非常に多いので、これ以上話を進められない段階にいまあると考えて、しばらくそういうほうの話し合いも進まず、事態を静観しておるというのが現在の状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/22
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023・落合寛茂
○落合委員 伺えば伺うほどだんだんに学園都市は影が薄くなるような気がいたすのですが、さいぜん御答弁を得ました、あくまでも国としては遂行したいのだし、するように努力するというお考えのようでございますが、最後に文部大臣のはっきりしたお考えを、この際——たいへん広漠としたところだし、住民も多いのだから、そういう方たちを安心させる意味においても文部大臣の責任ある御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/23
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024・灘尾弘吉
○灘尾国務大臣 責任ある答弁ということでありますが、私はこの構想には賛成でございます。ことに東京の状況から考えましても、このような構想が実現することが非常に望ましいと考えております。したがいまして、これができ上がりますように極力その方向に向かって私は努力したいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/24
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025・落合寛茂
○落合委員 私の質問は終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/25
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026・久野忠治
○久野委員長 次に、川崎寛治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/26
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027・川崎寛治
○川崎(寛)委員 これは質問ではございませんが、最初に、私、初めての委員会に臨むにあたって、今後の委員会の運営にも関係のある問題として、資料の問題でお尋ねをし、でき得べくんば委員長のほうでよろしくお取り計らい願いたいのであります。
それは、予算案というものは政治方針を具体的に金額であらわしたものである、こういうことは申すまでもありませんが、それゆえに三十九年度の文教政策というものを具体的にどう進めていくかということは文教予算にあらわれるわけであります。そこで、私は二週間ほど前に政府委員室に文教予算の詳しい資料をくれ、こういう要求をいたしました。そういたしましたら、たいへん丁寧に会館まで参りまして、しばらく待ってくれ、少し数字をいじるところがあるから、しばらくしたら差し上げます。こういうことでありました。私は常識的に二、三日待てばいいのだろうと思っておりましたところが、ついに何の音さたもなく、先般の委員会に出されましたのがこの予算要求額事項別表というたいへん簡単なもので節約いたしております資料であります。そこで、各省ともこういう予算の資料を出されておるのだろうかという点についてたいへん疑問を持ったのであります。と申しますのは、私国会に出てまいります前から先輩等を通じて、特に農林省の予算はいただいております。それから昨年の暮れ、社会党といたしまして農林省の予算の説明を聞いたのであります。そのときには、ここに手元に持ってまいっておりますが、こういうりっぱな厚い資料が出ております。十一月の資料でありますけれども、さらにはこれが政府案の決定をいたしました段階におきましては、こういう分厚い予算として説明が出てまいっておるわけであります。(発言する者あり)そこでいま大蔵委員会で云々というようなお話もありましたが、文教政策が具体的に金額であらわされておるのが予算書だ。そういう意味では三十九年度に行なわれる文教政策というものを具体的に予算書を見て分析ができるわけでありますが、そういたしますと、これに基づいてさらには農林省としてはこういう農林予算の説明というものが国会審議のためにということで出されてまいっております。そういたしますと、これを読めば予算の内容がわかると同時に、法律案の関係につきましても一読わかるのであります。そこで私が文教予算の内容も、この中で第一条にこの法律の目的ということで出されてまいっております。そういたしますと、これを読めば予算の内容がわかると同時に、法律案の関係につきましても一読わかるのであります。そこで私が文教予算の内容を勉強しようと思いましても、実はこれだけではわからないのであります。私が要求しますときにいついかなるときでも会計課長が来て説明してくれるのであればこれでけっこうでありますけれども、しかしそういうことは不可能である。ところが、たいへんこれは委員会というものを軽視しておると思うのでありますけれども、文部広報という文部省が出しておりますこの機関誌を見てみますと、この予算要求額事項別表よりもはるかに詳しい内容の説明がある予算関係の資料が出ておるのであります。このことは委員会の審議というものがほんとうに誠意を持って文教政策というものを審議していく、そういう形になっていない、残念ながらこういうふうに思いますので、ひとつこれから一年間の日本の教育政策、文教政策というものを審議してまいりますについて根本的な資料だと思います。しかもこういうふうに文部広報ですでに出されておることでございますから、せめてこの農林省予算の説明程度のものを早急に出していただきますように、委員長のほうでお取り計らいいただきますことをまずお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/27
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028・久野忠治
○久野委員長 川崎君の御要望の資料提出については、内容についてそれぞれ問題等もあろうかと思うので、十分検討して努力いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/28
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029・川崎寛治
○川崎(寛)委員 それじゃまず文部大臣にお尋ねいたしたいのでありますが、高等学校教育の公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律というのが三十六年に制定をされておるわけでありますけれども、この中で第一条にこの法律の目的がございます。その目的の「高等学校の教育水準の維持向上に資することを目的とする。」こういうふうにうたわれておるのでありますけれども、この高等学校の教育水準とは何であるか、お聞きいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/29
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030・灘尾弘吉
○灘尾国務大臣 非常にむずかしい問題でありますが、高等学校の教育水準につきましては学校教育法ないしこれに基づく高等学校の学習指導要領等においてきめておるのでありまして、それによって御承知を願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/30
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031・川崎寛治
○川崎(寛)委員 法律というのは意味、内容がきわめて明確に規定をされておるものだと思います。たとえばこの中学校なり高等学校なりを出た青少年が働くその場合も、賃金の問題としましては最低賃金法なりあるいは労働基準法なり、こういうのが職場では適用されておるわけであります。そういたしますと、そういう最低賃金法なりあるいは労働基準法にいたしましても、一つの水準というものがあるわけであります。たとえば現在日本の最低賃金法がILO条約に抵触しておる、あるいは労働基準法がILO条約に抵触しておるためにILO条約が批准できないでおる。こういう点から見ますならば、やはりそこに水準というものに一つのめどがあるわけであります。ただいまの文部大臣の御答弁では、ただ単なるレベルとしてきわめて大ざっぱなことを申されておるのでありますけれども、やはり水準というものは歴史的な経過というものが当然にあるのではないかと思うのであります。つまり維持向上、維持をし向上させるというかりにはどこかにその線を引かなくちゃならない、こういうことになってまいります。といたしますならばもう少し厳密な意味の水準というものについての規定が、当然法律としてはあってしかるべきである、こう思いますので、どなたからでもけっこうでありますから御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/31
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032・福田繁
○福田政府委員 ただいまの御質問でございますが、公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律でございますが、これにつきましては高等学校教育の水準の維持向上ということを目的にうたっておるわけでございます。この意図しておりますことは、学級編制あるいはまた教職員の定数というものはこれによって確保して、きめられました学習指導要領に基づく教育内容というものが十分実視できるというような見地から、学級編制それから教職員の定数というものをきめて、それによって教育水準の維持向上をはかっていこうというようなねらいでございます。そういった意味で、一口に申しますと学習指導要領にきめられました教育内容というものをできる限り実現する、そういった方向において高等学校教育の水準というものを考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/32
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033・川崎寛治
○川崎(寛)委員 きわめて満足できませんが、この問題についてはこれから委員会を通じてより具体的に討議をし質問をいたしてまいりたいと思いますので、先に進めてまいりたいと思いますが、現在の高等学校の教育の実態というものは、この高校定数法の第一条の目的を果たしていると思えるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/33
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034・福田繁
○福田政府委員 法律の内容そのものは、これはやはり日進月歩によって改正ということも将来起きるわけでありますから、三十六年に制定されました公立高校のいわゆる標準法なるものは高等学校の水準を維持するために必要な程度の教職員の確保という見地から、まあこれは最低でございましょうが、そういう趣旨できめられたものでございます。したがって現行法のもとにおきましては、最低この程度の教職員を確保できればまずまず高等学校教育については支障ないという、そういう趣旨でもってこれが制定されたものと考えております。したがってこの高等学校教職員の定数につきましてはいろいろ現場からの改正の要望等も出ていることを、もちろん私どもは知っております。しかし今日この高等学校の急増期にあたりましていろいろな問題はあるようでありますが、現行法をできる限りその趣旨に応じて運用していくということが、この際は適当であろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/34
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035・川崎寛治
○川崎(寛)委員 それでは具体的に高校急増対策についてお尋ねいたしたいのでありますけれども、この「国と地方の文教予算」という文部省が出した資料によりますと、二一九ページのところに、高校急増対策の具体的な内容が出ておるわけでありますが、これによりますと三十五年、六年、七年は実績が出ておるわけであります。そこでお尋ねいたしたいことは、三十七年の一月の閣議決定、つまり三十七年に高校急増対策ができまして、そしてそれが三十八年の一月に改訂をされたわけでありますけれども、三十八年の一月の改訂によれば二百五十万の中学校卒業者に対して、見込みとして入学率を六一・八%、高等学校の入学者を百五十四万と踏んだわけであります。ところが実際には三十八年の四月に入った子供の実態というものが問題になってまいるわけでありますけれども、その三十八年の四月の実際の入学率なりあるいは入学者数というものを私はいろんな資料から見ますと、入学率が六七・四%、入学者数が百六十八万、公立高校の場合に百六十八万八千、こういうふうに数字を出してまいっておるのでありますけれども、これでよろしいのかどうかお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/35
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036・福田繁
○福田政府委員 いま御指摘になりました数字は私どもの数字と少し違うように思います。三十八年度の中学卒業者は二百五十万でありますが、その中で高校に入学した者は私どもの調査では百六十六万というふうになっております。いま御指摘にありましたのは百六十八万と私はうかがったようでございますが、そういった点は若干数字が違うように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/36
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037・川崎寛治
○川崎(寛)委員 私たちのほうの統計では百六十八万八千というふうになっておりますけれども、その点についてはやはり文部省の指定統計に基づいて議論を進めるといたしまして、百六十六万といたしましても、三十八年の一月に閣議決定をして見越しました百五十四万から、さらには三十七年の一月の百五十万からいたしますと、十三万ないし十六万実際のあれが違ってまいるわけであります。そういたしますと、文部省が急増対策として進めてきた施設というものにそれだけ分よけい押し込んでおるということになるわけでございます。
そこで定数法の附則五項に、——つまり百五十四万という数字をもとに準備をされたのが三十八年の施設であるわけでありますけれども、そういたしますと附則の五項をはずした場合、つまり定数法での本法でいった場合には、どれだけすし詰めが行なわれているか、その実態をお知らせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/37
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038・福田繁
○福田政府委員 三十八年のいわゆる高校急増対策といたしましては、二百五十万の中学卒業者に対して政府あるいは都道府県で一応計画いたしましたものは、百五十五万という入学人員を見込んで立てたわけでございます。それが御指摘のように進学率六一・八%、こういうふうになるわけであります。もちろんこの急増期におきましては、この標準法におきまして一割定員を増加して収容してもよろしいという法律の規定になっておるわけであります。これは公立だけでなく私立も大体それに準じて運用しているようでございます。しかしながら現実の問題としては、先ほど提案理由をお読みになりました中にもございましたように、一部の私立学校では定員をかなりオーバーして入れているということは、これは事実でございます。そういうことでこの急増期におきます中学卒業者をできる限り公立にも私立にもたくさん収容したいという熱意を持って三十八年度は行なわれました結果が、先ほど申し上げましたような百六十六万人というのが入っております。数は百六十六万でございますが、その中で公立は百十一万、私立が五十五万という数になっております。大部分は、私立において定員を上回った分が収容されたということを立証するわけでございますが、政府計画の事業量としては当初から百五十五万の収容人員を見込んで、この分については財源の保障を政府で十分やるというたてまえで、補助金あるいは交付税あるいは起債をもって百五十五万人の収容見込み人員については急増対策として閣議決定で財源措置をきめたわけでございます。そのきめました事業量そのものはあとで三十八年度の都道府県が実施しました事業量とほとんど開きはない。したがってそういう点から考えますと、私どもとしては公立におきましては全体として見ました場合には百十一万人入れておりますけれども、それは一〇%以上に入れているということではなくして、むしろきめられておりますところの丁〇%のワク内で公立に収容しているということになろうかと思います。こういった点で、私どもとしては実際の進学希望者が意外に多かった、しかしそれは三十八年度におきましては財源措置をした百五十五万人という収容千定数に見合う事業量でもって都道府直は収容したということでございます。それが現実の姿になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/38
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039・川崎寛治
○川崎(寛)委員 実情はそういうことでありましょうが、しかしすし詰めの実態といたしまして私がお尋ねした点については答えられていないわけでありますけれども、私立を含めまして全体が百六十六万、私立の場合は一割以上の実際には五十名定員以上の、はるかにオーバーしたすし詰めをやっているわけであります。でありますからこれを公立並みの形で見て計算をしてみましても、この附則五項によるすし詰めというもので実質百三十八万人分の収容施設に百六十六万人を押し込んでいる、こういう実態になると思うのであります。したがってその点たいへんつじつまを合わせたような、簡単に見ておられますけれども、すし詰めの実態としては非常にきびしいものがあるのではないかと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/39
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040・福田繁
○福田政府委員 先ほど私数字を申し上げましたのでおわかりと思いますが、公私立を含めましても全般的に見ました場合にそう高い率にはなっていないわけでございます。私立の中にはいろいろ学校の事情もあると思いますが、多少、定員を上回って相当たくさんの生徒を収容したものはございます。しかしそれは全部の私立学校ではないと思います。そういった点は今後できる限り適正な学級編制などが行なわれますことを私ども希望するわけでございますが、公立におきましてはそういうことはないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/40
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041・川崎寛治
○川崎(寛)委員 それでは次に進みまして、三十八年度の閣議決定の急増対策と実数とが大きく食い違ってまいったわけでございますけれども、そういたしますと三十八年度に社会党で高校全入という立場で要求いたしてまいりました六八%の入学率で措置をしてくれ、こういつていたその要求というものが、三十八年の実績においては実際の入学者の実態から見ますならば当たっていた、こういうことになると思うのであります。そこで、三十八年度に六一・八%と見ておりました入学者が、実際に六七%をこす入学率になった、こういうことになっておるわけでありますが、三十九年度の入学率の見込み、あるいは入学者見込み数というものをどのように見ておるか、お尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/41
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042・福田繁
○福田政府委員 昨年の一月に閣議できめました急増対策によりますと、三十八年は二百五十万の卒業生がございますが、三十九年はそれよりも減って二百四十四万という見通しでございます。しかし卒業生の数が減りましても、昨年百五十五万の予定数をして急増対策を立てたわけでございますが、収容対策としてはやはり同じ数の百五十五万人がはいれる受け入れ態勢をつくるということが基本線でございます。したがって、三十九年度におきましても、この閣議決定の趣旨に従って百五十五万人の高等学校入学者を可能にするだけの施設設備の整備をやるということで、関係各省と連絡をとりながら、そういう財源措置をしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/42
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043・川崎寛治
○川崎(寛)委員 それに対する財源措置を具体的に説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/43
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044・福田繁
○福田政府委員 三十九年度におきましては国庫補助二十九億、起債が六十七億、交付税で九十一億、合計いたしまして百八十七億というものが一応予定されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/44
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045・川崎寛治
○川崎(寛)委員 そこで、三十八年の四月から閣議決定の線で見込んでいた入学率なり入学者数よりもはるかにオーバーをした実際の入学者が出ておる中で、教職員の定員が附則の六項によってはじき出されておるわけでありますけれども、この附則六項による定員減というのは、つまり本法どおりにいけば実際には何ぼ措置しなければならなかったか。附則六項によって、読みかえることによって実際の定員が何ぼ減っておるか、そういう点についてお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/45
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046・福田繁
○福田政府委員 これは私どもの推計でございますからそのおつもりでお聞きを願いたいと思うのでありますが、附則五項、六項で完成年度におきまして大体一万三千人程度ではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/46
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047・川崎寛治
○川崎(寛)委員 この三十七年度の文部省が出しました教育白書、「日本の成長と教育」というこの教育白書によりますと、たいへん数量的な教育のとらえ方というものを試みておるのでありますけれども、そういう点から、私は最初の高校定数法の第一条の目的というものについて、教育水準というものの意味内容が何かということを実は明確にいたしたかったのであります。こういうように数量的に教育というものをとらえていく立場からいくならば当然にこの法律で規定をされた高等学校の教育水準というものの意味内容も、もっと明確になってこなくてはならぬと思うのであります。その点は差しおくといたしまして、この教育白書によりますと、九十八ページでありますが、「教員の量と質とは、学校における教育効果に影響を与えるものである。」こういうことで教員の量としては教員一人当たりの生徒数、こういうふうな点でとらえてまいっております。そこで私お尋ねいたしたいのでありますけれども、この教育白書によりますと、明治八年には教員一人当たりの生徒数というものが二一・一人になっております。これは旧制中等学校でありますけれども、一人当たりの生徒数の一番低いのは明治十三年であります。戦後をとってみましても、昭和二十五年の新制高校になりましてからを見ますと、昭和二十五年が一人当たり一九・二人であります。三十年が一九・九人、三十五年が二一・一人、こういうふうに今度は新制高校が発足をすると同時に、一人当たりの生徒数というものはだんだんふえてまいっておる。三十七年の実績で見た場合に、一人当たりの生徒数は何ぼであるかお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/47
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048・福田繁
○福田政府委員 ただいま詳しい資料を手元に持っておりませんが、この標準法ができまして、高等学校のいわゆる教員一人当たりの生徒数を計算してみますと、大体教員二人について生徒二十人というのが想定されているわけであります。この教員一人当たり二十人という数字でございますが、これはアメリカなどではこれより少し下回っておりますが、ヨーロッパのほうで見ますと、西ドイツ、あるいはイギリスあたりは大体二十人前後でございます。そういった程度で、決してこの高校定数法の中身としては、諸外国にさして遜色のないものというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/48
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049・川崎寛治
○川崎(寛)委員 この教育白書の百ページを見ましても、中等教育全体の計画性がなかった。それから新制高校が発足して以後の問題についても、十分に措置されていない点が出ておるわけであります。そこで新制高校になりましたあとを見てみましても、むしろ教員一人当たりの生徒数というものはふえてきておる。さらには急増期に入っております三十八年の実積、あるいは三十九年というものの予想というものが当然出てまいると思いますので、この点については後ほどでけっこうでありますから、ひとつ計算して具体的な資料に基づいて回答を願いたいと思い
ます。
そこで学校教育法が昭和二十二年に制定をされ、高等学校の設置基準が二十三年に文部省令の第一号として出されておるわけであります。そして高等学校の定数法が三十六年であります。こういうぐあいに学校教育法あるいは設置基準、そして高校定数法という過程を振り返ってみますと、残念ながら高等学校教育の内容というものは、年々低下をしてきておるということが実態でありますけれども、その点についてお尋ねをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/49
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050・福田繁
○福田政府委員 さような見方でごらんになっていらっしゃるかもしれませんが、私どもといたしましては、新しい高等学校制度ができましてから、当初は教育内容その他におきましてもいろいろな不備な点があったと思います。しかし現場の学校あるいは教育委員会、あるいは文部省ももちろんでありますが、各方面の努力によりまして、だんだん内容も向上し、改善されつつ今日まできたわけでございます。したがって、教育内容が非常に低くなったというようには私どもは考えてないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/50
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051・川崎寛治
○川崎(寛)委員 数量的にとらえてみましても、明らかに低下をいたしておる点は、私が先ほど指摘をしたとおりでありますが、昨今相次いで高校生の事件というものが世間を驚かしておるわけであります。一月の二十一日における高校生の殺人事件、あるいはこの二月の四日におきます連続強盗事件、こういうものからとってみましても——ここに二月四日の朝日がございますが、この朝日を見てみましても、「急増対策が生んだ盲点」といたしまして、子供に対する十分なめんどうが見れない今日の教育の実態というものが、具体的に現場の先生方からも出ておるわけであります。全国高等学校長協会の役員の方も、この朝日で言っておられますが、「生徒が多過ぎて、これではとても手が回らない。早目に手を打とうと話し合っていたところだ」、事件が起きたあとには必ず、これをいまやろうとしていたところ、だということが出てまいるわけでありますけれども、現在の高校一年生というのは、戦後のベビーブームで、自分の責任じゃなくて社会に出てきたわけでありますが、この子供たちがベビーブームの中にあえぎながら成長してまいっております。小学校ですし詰め、中学校ですし詰め、そして現在またすし詰め、さらには二年先、三年先には、今度は大学がいよいよ狭い門だ。こういう中でもみくちゃにされておるのが、この高校一年生の、あるいは現在の高校生の姿ではないかと思います。
私自身が社会的な変動の中でもみ抜かれてまいりましたので、現在の高校生に対しては、なみなみらなない理解ができるわけであります。と申しますのは、私は小学校に入ってすぐ満州事変であります。それから中学校に入ってすぐ日支事変であります。高等学校に入ってすぐ太平洋戦争であります。そして大学に入って第一回の学徒動員、こういうことで社会の変動の中にもみ抜かれてまいっておりますので、それだけに私は、現在の高校生の犯罪というものについて、これをただ単に学校の責任である。家庭の責任である、教師の責任である、こういうことで道徳教育等にすり変えるのでは、問題は解決できないと思います。社会全体の問題として考えますならば、これを解決することが政治である、このように思うわけであります。それゆえに現在の高校生のこういう犯罪について、文部大臣としてはどういう対策をとるべきであるか、御回答願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/51
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052・灘尾弘吉
○灘尾国務大臣 今日の高等学校の生徒あるいは中学校の生徒の中に、ほんとうにどういうわけでああいうことをするのであろうかというような非行も、ずいぶん出ておるわけであります。この点はまことに残念なことでもあり、ことに教育に関係する者としましては、その責任はまことに重いと思うのでありましてこれはだれを責めるとかかれを責めるという問題ではございません。文部省をはじめといたしまして、教育に関係がある者としましてはまことに残念でもあるし、また責任も重いということを痛感いたしておる次第であります。いまお話にもございましたけれども、ひとり学校だけを責めるわけにも参らぬと思います。またひとり家庭だけを責めるわけにも参らない。しかしながらまた同時に学校にも責任がある。家庭にも責任がある。広く社会全体にも責任がある。このような考え方も私はしなければならぬと思います。すべての人がお互いに協力いたしましてりっぱな教育をし、またりっぱな養育をいたしまして、そしてこのようなことのないように努力する以外には道はないと私は思うのであります。的確な対策があれば、これは言うことはないのでありますが、なかなか的確な対策として申し上げるだけのものがない。要は関係者がすべて気持ちをそろえて、この方向について努力するという以外にはないのだと思うのでありまして、文部省といたしましては、ことに教育環境の整備ということがやはり文部省の大きな責任でございますので、そのことについては年来努力もしてまいりましたし、また現在、将来にわたって努力をしてまいらなければなりません。ただ現状におきましては、先ほど来の御指摘にもありましたとおり、かなり無理な施設で無理な教育をいたしておると申しますか、学校施設その他も不十分でありますし、あるいはまた教師の数あるいは質というような点におきましても、なお足らざる点があろうかと思うのであります。これらの欠陥を除去いたしますために、なお一そうの努力をしなければならない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/52
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053・川崎寛治
○川崎(寛)委員 ただいま文部大臣のほうから方針を説明されたわけでありますけれども、きわめて抽象的でありまして、具体的には理解しかねるのでありますけれども、現在の高等学校教育というものが、結局人口増に押されて、とにかく間に合わせで過ごしている、こういう実態で急場しのぎをやっているわけであります。特に三十六年の高校定数法の附則の五項で、すし詰めを認め、奨励をしておるし、さらには六項によって、先ほど局長が答弁されましたように、一万三千人の高校教員の定数不足、こういう実態の中で定員切り下げをやって教育を進めてまいる、そういたしますと、二重の意味において教員の数は少なく、学級当たりの定員は多くこういうことになりますと、二重、三重に高等学校教育の内容というものが低下せざるを得ない羽目に追い込まれておるのが今日の実態であります。でありますから、今回東京都教育委員会でも、たいへん志願者が多くて悩んでおるようでありますが、十日の都議会の文教委員会の中身を読んでみましても、この中で都の教育長が、母親たちの、あるいは委員会における質問等に対して、気持ちはよくわかる、これまでも高校増設など努力をしてきたが、現在はこれだけでかんべんしてほしいと言うほかはないのだと答弁しておりますが、現在の文部省側の答弁なり方針なりというものも、これと同じように受け取れるわけであります。そこで、現在のこうした附則五項あるいは附則六項によってすし詰めと定員の切り下げが行なわれておるのが今日の教育の実態であることについては、お認めのとおりであります。現在のこうした不幸な事件というものが相次いでまいります中で、特に日本の未来をになうのがこれらの青少年の諸君でありますから、そうした点についてあたたかい手を差し伸べていくのが政治である、こう思いますときに、この附則五項と六項を撤廃することが、そうして定数法の本法に従って措置をしていくことが、当面の急務である、このように私は思うわけであります。その点につきまして文部大臣の御回答をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/53
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054・灘尾弘吉
○灘尾国務大臣 現状につきましては、大体御指摘のとおりだろうと思います。その意味におきましては、現在の高等学校の生徒諸君はほんとうにお気の毒だという心持ちもいたしております。さりとてこの問題はまた機械的に片づけるわけにもなかなかまいらない点があろうかと思うのであります。現状におきましてはできるだけの努力をしまして、このむずかしいところを切り抜けていく。また、生徒諸君にも窮屈なことはひとつごしんぼう願って、しっかり勉強してもらうということを申し上げざるを得ないのであります。高等学校の教育全体から申しますれば、いまの諸君には非常にお気の毒だということは申し上げるまでもございませんけれども、漸次改善はもちろんせられていくものと私は考えております。いつまでもこの状態が続くものとは考えておりません。その中において、私は現在に処して、やはり生徒諸君も窮屈ながらもしっかり勉強してもらうし、また学校の先生方も、苦しいながらも一そう努力いただきまして、これを切り抜けてもらう以外にはない、かように考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/54
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055・川崎寛治
○川崎(寛)委員 まあ文部大臣、大へん悩んでおられるわけでありますけれども、三十六年の十月二十日の本委員会において、高校定数法が成立をいたしましたとき、いまここにお見えの八木文部次官が提案者になりまして、自民、社会、民社三党の提案で附帯決議がつけられておりますが、この附帯決議を見ますと、高等学校設置基準の甲号を目ざせ、こういうことを指向して努力をすること、こういうふうに明らかに附帯決議をつけておるのであります。そういうものからいたしますと、いつまでもこういう状態が続くとは思わない、こう文部大臣は言われるのでありますが、それは当然であります。ここ二、三年で急増期は過ぎるわけであります。そういたしますと、まあまあで過ごして、そうしてその責任といいますか、その果実を受けるのは子供たちであります。でありますから、そういうやり過ごしをやって一時を糊塗するのではなくて、こういう三十六年十月二十日の附帯決議等から見ましても、一時的な便法で現在の急増期を過ごそうといたしておりますのを取りやめて、本法の精神に返って本法で措置をする、そのことがさらには急増期を過ぎましたときには附帯決議の高等学校の設置基準の甲号に進めていく足がかりになってまいると思うのであります。その点についての文部大臣の御回答をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/55
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056・灘尾弘吉
○灘尾国務大臣 現在のような附則を設けましたのも、やむを得ざる事情から私は設けたと思うのであります。決してこれが希望すべきことであり、望ましいことであるというわけにはまいらぬと思います。やむを得ず、そのような附則を設けたと思うのであります。そういう観点からいたしまするならば、現状において直ちにこの附則を取り払ってしまうということは、困難であろうかと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/56
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057・三木喜夫
○三木(喜)委員 ちょっと関連して。川崎君のほうから、冒頭「予算要求額事項別表」の件についてお話がありましたが、委員長のほうで適当な取り扱いの方法を言っておられたようでありましたが、こういう問題は、いますぐに間に合わないだろうと思うのです。そこでそういう措置をとるとおっしゃったのですが、具体的にどういうようにとられるか、ひとつ知りたいということ。それから、こういう実態が長い間に積み重なってきたということに私は問題があると思うのです。一方はこんなもの一つだけで説明していこうとするし、一方農林関係はこういうもので農林行政をしっかり進めていきたいというかまえである。ここに問題があるので、川崎委員のほうからどういう資料を要求されたのかわかりませんけれども、どういう答弁をなさったかということが私は問題だと思うのです。そういう点もうひとつ明らかにしていただきたい。こういうことが今後なされるのか、あるいは委員長としてどういう措置をとられるのか、それを聞かしていただかぬと、いいかげんなことでまたこれは済まされるということも問題だと思うのです。その点お聞きしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/57
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058・久野忠治
○久野委員長 私が申し上げたのは、この「予算要求額事項別表」というものがあまりにも簡単に過ぎるので、もっと詳細をきわめた予算の内容についての資料を出してほしい、こういうふうに私は解釈したわけです。ところがそれには相当また準備も必要でしょうし、その資料を作成するための時間も私はかかるだろうと思うのです。そこでできる限り御趣旨に沿うように努力をしてみたい、こういうふうに申し上げたわけなんですが、いまのような制約があるとすれば、その制約をどう調整するかということを政府当局とも十分私は打ち合せわをして川崎君の御要望にこたえたい、私の申し上げたのはこういう意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/58
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059・三木喜夫
○三木(喜)委員 もう一つ、川崎君の質問の中で聞き捨てならなかったのは、政府委員にこれを要求したが、ようとして返事がなかった、そして出てきたのはこれだったということですね。そこに私は責任があると思うのです。どの政府委員からそういうことをやられたか、ひとつそれを聞かしてもらいたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/59
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060・久野忠治
○久野委員長 私もまだそれは聞いておりませんので、いずれ調査しまして御相談申し上げたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/60
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061・川崎寛治
○川崎(寛)委員 一月なり二月なりに予算が済みますと、今度は三月にはこういうりっぱな「国と地方の文教予算」という、事こまかに書いた資料が出ておるのです。だから委員会にはそのようなばらばらっとしたやつ一これは去年よりいいとしたら、去年はもっとひどい資料が出ていたと思うのでありますけれども、委員会にはこういうやつが出ておって、ほかの省ではもっと詳しいやつが出ておる。しかも文部省の場合は、済んだらこういうりっぱなやつが出ておる。これは、委員会の審議に対する文部省側の姿勢としては、私はほんとうに残念だと思うのです。でありますから、この点は抜本的にやっていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/61
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062・久野忠治
○久野委員長 川崎君の御意見については、先ほど私が申し上げたように、いろいろ資料を作成するについての時間的な制約なりその他の問題点もあろうかと思いますので、十分その点を勘案いたしまして努力をいたしたいと存じます。日本はこの程度といたします。
次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。
午後零時八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X00219640212/62
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