1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年四月二十四日(金曜日)委員長の指
名で、次の通り小委員及び小委員長を選任した。
文化財保護に関する小委員
上村千一郎君 坂田 道太君
床次 徳二君 中村庸一郎君
松田竹千代君 落合 寛茂君
長谷川正三君 三木 喜夫君
山中 吾郎君 鈴木 一君
文化財保護に関する小委員長
中村庸一郎君
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昭和三十九年五月八日(金曜日)
午前十一時十三分開議
出席委員
委員長 久野 忠治君
理事 上村千一郎君 理事 小澤佐重喜君
理事 長谷川 峻君 理事 南 好雄君
理事 二宮 武夫君 理事 三木 喜夫君
理事 山中 吾郎君
大石 武一君 熊谷 義雄君
谷川 和穗君 床次 徳二君
中村庸一郎君 橋本龍太郎君
原田 憲君 落合 寛茂君
川崎 寛治君 實川 清之君
前田榮之助君
出席国務大臣
大 蔵 大 臣 田中 角榮君
文 部 大 臣 灘尾 弘吉君
出席政府委員
総理府技官
(首都圏整備委
員会事務局長) 谷藤 正三君
文部政務次官 八木 徹雄君
文部事務官
(大臣官房長) 蒲生 芳郎君
文部事務官
(管理局長) 杉江 清君
委員外の出席者
参議院文教委員
長代理 北畠 教真君
大蔵事務官
(主税局税制第
一課長) 山下 元利君
専 門 員 田中 彰君
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四月二十四日
女子教育職員の出産に際しての補助教育職員の
確保に関する法律の一部を改正する法律案(参
議院提出、参法第一六号)
五月七日
学校栄養士設置に関する請願(田中織之進君紹
介)(第三五六〇号)
私立学校振興会法の一部改正に関する請願(中
曽根康弘君紹介)(第三五七三号)
国立夜間工業短期大学教育の拡充強化に関する
請願(臼井莊一君紹介)(第三六〇九号)
私立学校助成に関する請願(山下榮二君紹介)
(第三六一〇号)
文部省における芸術に関する行政機構の拡充整
備に関する請願外七件(床次徳二君紹介)(第
三六一一号)
日本芸術院の再検討に関する請願外七件(床次
徳二君紹介)(第三六一二号)
芸術大学の教育内容改善に関する請願外七件(
床次徳二君紹介)(第三六一三号)
日本学校安全会法の一部改正に関する請願(相
川勝六君紹介)(第三六四一号)
同(田中六助君紹介)(第三六四二号)
同(内藤隆君紹介)(第三六四三号)
同(二宮武夫君紹介)(第三六四四号)
幼稚園教員の確保に関する請願(相川勝六君紹
介)(第三六四五号)
同(二宮武夫君紹介)(第三六四六号)
同(田中六助君紹介)(第三六四七号)
同(内藤隆君紹介)(第三六四八号)
私立幼稚園園児父兄の教育費二重負担解消に関
する請願(相川勝六君紹介)(第三六四九号)
同(田中六助君紹介)(第三六五〇号)
同(内藤隆君紹介)(第三六五一号)
同(二宮武夫君紹介)(第三六五二号)
りんごの学童給食採用に関する請願(吉川久衛
君紹介)(第三六七五号)
同(倉石忠雄君紹介)(第三六七六号)
同(羽田武嗣郎君紹介)(第三六七七号)
第二十回国体冬季スケート競技会を蓼科に誘致
に関する請願(吉川久衛君紹介)(第三六八一
号)
同(倉石忠雄君紹介)(第三六八二号)
同(羽田武嗣郎君紹介)(第三六八三号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
女子教育職員の出産に際しての補助教育職員の
確保に関する法律の一部を改正する法律案(参
議院提出、参法第一六号)
私立学校振興会法等の一部を改正する法律案(
内閣提出第一二二号)(参議院送付)
文教行政の基本施策に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/0
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001・久野忠治
○久野委員長 これより会議を開きます。
参議院提出の女子教育職員の出産に際しての補助教育職員の確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、提出者から提案理由の説明を聴取することといたします。
参議院文教委員長代理北畠教真君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/1
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002・北畠教真
○北畠参議院議員 ただいま議題となりました女子教育職員の出産に際しての補助教育職員の確保に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及び改正内容を御説明申し上げます。
現在、実習助手は、教育公務員特例法の施行令において、寮母と同じく、教員に関する規定の準用を受けることとなっておりますし、その職務の内容も、他の教育職員と異なるところがないのであります。
しかるに、寮母については、すでに昭和三十年本法制定の当初から、第二条に掲げる教育職員として法の適用を受けておりますが、ひとり実習助手のみがいまだに除外されておりますことは、まことに不合理であると申さねばなりません。
以上の理由により、本案は、実習助手を法第二条の第二項に加えて、女子実習助手を法の対象とすることにより、学校教育の正常な実施を確保しようとするものであります。
なお、この法律は、公布の日から起算して三月を経過した日から施行することといたしております。
参議院文教委員会におきましては、慎重に協議、検討いたしましたところ、この際きわめて適切な措置であると思量いたしましたので、全会一致をもちまして、ここに委員会提案として発議いたした次第でございます。
何とぞすみやかに御審議の上、御賛同くださいますよう、お願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/2
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003・久野忠治
○久野委員長 以上で提案理由の説明は終わりました。
本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/3
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004・久野忠治
○久野委員長 次に、文教行政の基本施策に関する件について調査を進めます。
質疑の通告がありますので、これを許します。落合寛茂君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/4
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005・落合寛茂
○落合委員 筑波山ろくにきまりました研究学園都市建設の件で、当局のお考えを伺いたいのでありますが、非常に大きな計画でありました一千万坪からの事業が、六百万坪程度のものに縮小されまして、その後進行状態を見ておりますと、遅々として進まないような状態なんでありまして、その変更及びそれからの事業につきまして、この際地元の者はある期待とともに非常に懸念を持って見ておるようなわけでありますが、研究学園都市の計画のその後の進行状態を、大体でいいから伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/5
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006・谷藤正三
○谷藤政府委員 お答えいたします。
ただいまの研究学園都市建設の進捗状態でございますが、先生も御承知のように、県のほうには特別委員会ができまして、県の議会のほうでも積極的にいろいろ地元のほうの調整をいたしていただいておりまして、大体、ある一部落を除きまして、七カ町村のほうは部落全体としましては、研究学園都市の建設に対してほぼ賛成であるという意向がもとまってまいりました。ただ面積につきまして、最初のマスター・プランでは千四百万坪というふうになっておりましたが、その後地元の中に千六百戸近くの人家があるのと、耕地が相当含まれているという問題がございまして、地元との調整の過程におきまして、そういう耕地はなるべくはずしたいという意向で、現在の山林地帯を主体といたしまして、学園都市の再検討をいたすという計画で詰めましたところが、施設面積並びに公共施設、公益施設の全体を含めますと、最初のマスター・プランから、緑地関係、それから大公園の関係、そういうものを多少縮小いたしまするというと、約六百八十万坪くらいで、従来の施設といたしましては全部入るというふうに見込みが立ちましたので、それを主体にいたしまして、目下具体的な工事の方法について、建設省並びに住宅公団の当局との話し合いをただいまいたしておる過程でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/6
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007・落合寛茂
○落合委員 私ども同じ県に住んでおる者でありますが、いろいろな方面から見ておりますと、県のほうは国のほうにもたれかかって、ほとんど国のほうにいろいろな希望を述べ、要求をしたりいろいろしておるようであります。見ておりますと、国のほうはまたあべこべに県のほうにもたれかかっておるように見えるのであります。たとえてみますというと、県として要求をいたしております土地の買収方法とか、その他につきまして、ここに県でプリントしたものがありますが、「用地買収価格については、近傍類似の取引価格及び買収時までの社会、経済状勢の変動をも考慮のうえ適正価格とされたい。」こうあるのですが、まだその適正価格は、国のほうとしては出ておらないのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/7
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008・谷藤正三
○谷藤政府委員 その適正価格の問題でございますが、何ぶんにも長さにいたしまして、端から端まで約十五キロ、幅にいたしまして約五キロございます。したがいまして国道に近い地域と、離れました地域との両方の関係がありまして、地目別あるいはまた等級別のいろいろな要素の関係が具体的にこまかいところまできまっておりませんので、現在の平均単価を幾らにするか、先生も御承知のように、大蔵から本年度の予算として計画されておりますのは、坪約千円、これは全部含めまして千円ということになっておるわけでございます。それに対しまして、地元との話し合いがまだそこまでまいっておりません。あれを計画いたしました当時には、大体一反十五万以下の土地が大部分でございましたけれども、その後のいろいろな状況の変化によりましてどんどん上がってくる。あるいはまた周辺部の地域につきましては不動産業者の投機的な事業投資がございまして、その関係でだいぶ上がってまいりました。そういうことで、まだ具体的にはこの地域を限るというところまではっきりおりておりませんので、単価につきましてもはっきりした点が出ていないという点が一つございます。もう一つはその買収方式でございますが、山林地域のみの買収か、あるいはまた、ある一部分の地域も全体としまして一団地の環境施設あるいは新住宅市街地開発法による住宅市街地開発方式によるか、そういう点の個々の買収方式と事業方式とがまだ建設省、県の間に話がはっきりついておりませんので、具体的におりるところまで現在は至っておりません。今週中に大体具体的な方針を打ち合わせしょうということで、いま大体事務的な段階で順々に打ち合わせをやっている状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/8
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009・落合寛茂
○落合委員 用地の取得造成でありますが、「閣議了解どおり日本住宅公団が行なうものとし、茨城県は日本住宅公団の事務委託により用地取得の実務を担当することとされたい。」これは国に対する要求なんですが、これは国のほうの方針はきまったのでございましょうか。それからそれの必要な経費については、国のほうでこれは出していただきたいということですが、これに対する国としてのお答えをお願いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/9
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010・谷藤正三
○谷藤政府委員 全体の学園都市の全地域につきまして、今年、三十九年度に債務負担行為といたしまして百四十七億というものが用地買収費といたしましてついているわけでございます。ですから、三十九年度から事業化いたしております。ただ全額債務負担行為でございますので、その中の、実際今年度買収行為に入ります場合の事務費その他のものが具体的に実際の金として要るわけですが、それはついておりませんが、これは住宅公団の中の一般事務費の中から調整するということで大蔵省との間に了解がついておりますので、その事務が進みますようになりますれば、いつでも今年度から着手できるという体制になっております。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/10
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011・久野忠治
○久野委員長 次に、私立学校振興会法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
質疑の通告がありますのでこれを許します。落合寛茂君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/11
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012・落合寛茂
○落合委員 去る四月二十二日及び二十四日の当委員会におきまして、私学振興問題に関する質疑中、私学の寄付金に対する課税について、長谷川委員の質疑に続きまして、南、上村、山中、各委員諸氏から活発な質疑が開陳されまして、これに対し、また文部大臣からきわめて重要な発言がありまして、その結果、委員会の希望によりまして、本日は大蔵大臣の出席を求めて本問題の徹底的解決を期し、多年の懸案に終止符を打ってもらいたいというわけで、前回に引き続き面して質問を続けさせていただきます。
本問題についてはすでにこさいにわたり検討され、内容にわたっていまあらためて是非を云々する必要のないところまで煮詰まっておりますので、大蔵大臣の有名な腹一つということに帰着するものと考えられますが、この際本問題に対する大蔵大臣の、官学と私学を区別して、一方の寄付金からは税金をとり、他からは課税しないというような差別をつけておられる根本的な理由がどこにあるかということを、ひとつ最初に伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/12
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013・田中角榮
○田中国務大臣 私学の振興につきましては、文部大臣が御発言になっておられるように、私どもも私学振興のためには積極的な考え方を持っておることをまず明らかにいたしておきます。そういう立場に立ちまして、私学に対しましての指定寄付につきましては、通常は一年間でございますが、学校に関しては三年間までこれを期間延長を認めておるということでございます。第二には、個人及び法人が学校に寄付をした場合の損金算入の制度を拡充いたしておるわけでございます。また、第三点としましては、御承知の、昭和三十八年、三十九年度の予算を見ていただくとわかるのですが、私学振興会に対する出資及び財投からの繰り入れに対しても倍増というように、前向きな施策をとっております。ただ、いま御発言がございましたように、国及び地方公共団体に対する寄付金は全額免税であるにもかかわらず、私学に関しては制限を付されておるという一点につきましては、これは最終的な段階まで私たちも検討いたしておるのでございますが、国及び地方公共団体と他の団体というものに対しては、これは明治初年から長いことやはり区別をしておるわけでございます。国及び地方公共団体というものは国民全体の姿でありますし、国民から納税をしていただいて、その税でまかなっておるということでありますから、そういう意味で地方公共団体及び国は完全に免税ということになっております。これは税金を納めてもらうという同じ立場に立っておるわけです。が、しかし、地方公共団体や国と他の団体との間にはどんな最終段階にいっても何らかの区別はある、こういうことは理解いただけると思うわけでございます。そういう意味でございますが、私学振興の重大性はよく認識いたしておりますので、これからも大いに前向きでこれらの施策は検討してまいりたいという考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/13
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014・落合寛茂
○落合委員 いま大臣のおっしゃるそこのところが問題なのでありまして、そこを伺いたかったのですが、去る二十三日の委員会におきまして、文部大臣は、速記録を見ますと、文部行政の中で私学行政についてはこの辺で一つの曲がりかどにきているのじゃないかと考えられると言われて、ベテランの南委員なとは、そんなことくらい——そんなことというのは私学に対する課税なんですが、そんなことぐらいは大蔵省に話して解決できそうなものだ、官学であろうが私学であろうが学校法人に対する寄付に区別があるべき筋合いはないではないかと、文部省の弱腰をつかれて、これに答えて文部大臣は、もっともであります。「ただ、よく御承知と思いますが、大蔵省の」——ここを聞いていただきたいのです。大臣。「大蔵省のものの考え方はまたわれわれとは違うのであります。」こうあるのですね。「大蔵省にはしじゅう当たっておりますが、なかなかこの壁が破れないというのが嘆きであります。」これはほとんど悲鳴をあげている。最後には、文部大臣は、これからいよいよ意を決して大蔵省に強硬に当たる考えでありますから、御協力を願いますと、あべこべに委員会のほうに合力を……。大蔵大臣にお伺いいたしますが、閣議ですが、閣僚というものは、同僚同士がそんなにつれないものなのでありましょうか。おそらくこの問題については、文部大臣と大蔵大臣が直接お話しになったことだと思いますが、その間のお話をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/14
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015・田中角榮
○田中国務大臣 文教の府の最高の責任者としての文部大臣がそうお考えになり、そう言われるのは、私も理解できます。私ももし文部大臣になることがあるとすれば、同じことを考え、申し上げると思います。しかし言う気持ち、考える気持ちはよくわかるのでありますが、財政上、税制上、純理論といたしましてお考えいただく場合には、先ほども申し上げたとおり——官学中心で明治から長いこと来たので、これから私学というものをだんだんと充実していかなければならないのだというような事実論から考えますと、いまあなたが御指摘になられたような気持ちになる、またそういう考え方を進めていくことは、十分理解できますが、先ほど申し上げたとおり、官学と私学だけを対象にしていただかないで——国及び地方公共団体というものは、これは特殊なものではないのであります。われわれ自体であります。国自体であります。でありますから、これらが運用する費用は税金をもってまかなうのでございます。でありますから、国に対して寄付金を行なった場合には、税金を納めたと同じことでございますから、これに課税するなどという理論は当然存在しないのでございます。ところが国、地方公共団体以外の団体というものの公共性、全く国に近い、国イコールというように近いものが存在することは認めますけれども、国ではない、こういう考え方になりますと、特例を認めてでも、納税と同じように全部これを認めるということはなかなかむずかしいところでございます。ここは文教委員会でございますので、私学のことだけを言われますが、これが隣の社会労働委員会にまいりますと、国がやらなければならない託児所や、精神薄弱者やそういう方々を収容しておる施設、社会保障施設を国民が自分でもってやっていることは不当である、こういうものに対しては国が金を出すことはもちろんであるが、寄付金を全額免税にしなさい、国が当然なすべきことを国民がやっているのだから、これは免税にしなさい、こういうことになるのでございまして、これはどこの委員会にもあるのであります。そういうことでございますので、やはり国イコール他の団体というわけにはいかないという理論が、そこで明確になるわけでございます。大蔵大臣は血も涙もないわけではございません。ところがどうも財政の責任者という立場から考えますと、おのずから区分すべきものには、情において忍びなくても、やはり筋を立てておかなければならない、こういう立場で大蔵省もいろいろ検討いたしまして、一年間に財投の繰り入れを倍にしたり、あるいはまた先ほど申したとおり一年間しか指定寄付の期限はないのでございますが、これを三年にする、将来また三年半にし、四年半にし、五年にするということもあり得るかもしれませんが、そういう意味で、できるだけの施策を行なっておるのでございますから、ひとつその間の事情を御理解いただいて、文部大臣と私の意見が違うのだというようにお考えにならないで、御理解を賜わりたい、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/15
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016・落合寛茂
○落合委員 大臣の非常に苦しい答弁をお察しいたしますが、文部大臣のお考えをひとつ伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/16
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017・灘尾弘吉
○灘尾国務大臣 文部省の立場から申しますれば、今日の状況からいたしまして、私学の振興についてさらに積極的に努力をしなければならない段階にあると思うのであります。その意味におきまして、いろいろな助成、育成の方策を立ててまいらなければなりません。この場合に、大蔵省の御協力がなければもちろんできない話でありますが、そういう意味で、始終大蔵省をわずらわしているところでありまして、今日までもその意味におきましては、毎年々々大蔵省の御協力をいただいて、逐次改善をいたしてまいったと思うのでありますが、まだまだこんなことではどうにもならぬというのがいつわらざる私の心境でございます。したがいまして、今後も大蔵大臣をはじめ大蔵省当局の皆さんに十分御説明もし、御理解もいただき、御協力もいただきたい、かように考えている次第であります。
前にも一度申したことがあるかと思うのでありますが、これは私の立場でございます。大蔵省にはまた大蔵省のお考えもあることであるし、お立場もあることでありますので、これがなかなかうまく完全に一致するところまで至らないというのが今日までの状況でありますが、私としましては、誠意を尽くして、大蔵省の方々の御協力を求めるために一そうの努力をするつもりでございますので、その辺でひとつ御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/17
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018・落合寛茂
○落合委員 時間がありますと、もっといろいろ伺いたいのでありますが、この問題は、もうすでに長い問研究もされ、発言もされている問題でありますが、ただこれをいま大蔵大臣のおっしゃるような税法上の解釈などという、極言すれば、しゃくし定木を振り回していたのでは、どこまでいってもこれは解決のつくものではないと考えられます。私学振興という大乗的な立場から、この際決断を下されて、初めて解決のつく問題だろうと思います。今日御承知のように、経済的な苦境に立って、私学は四苦八苦の経営状態でありまして、そのために営業的経営のそしりを受けつつある。私学の救済策の一方法として、あるいは学問の独立という厳粛な一面、重要な意義にも通ずる寄付行為の奨励のためにも、これは国として十分考えなければならない重大な問題だと思うのであります。
そこでひとつ大蔵大臣にここでお願いしたいのですが、この際大蔵大臣は、こうしたことは多年研究し尽くされて、当然常識にさえなっているこういう問題を、よしそれならおれが大蔵大臣のときにこいつをひとつ解決してやろうといって、解決してくださる御決断をお持ちになるお考えはありませんか。ひとつこれを伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/18
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019・田中角榮
○田中国務大臣 先ほどからるる申し上げておりますとおり、私学の重要性というものに対しては十分認識しているわけでございます。今度の税制改正におきましても、私学に対する寄付金というものに対しては十分考えなさいということで、幾ばくかのことはやったわけでございます。また現在税制調査会に毛、この種のもの、いわゆる科学技術の振興とか、また財産税の場合、それから相続税の場合、生前に死んだ場合のことを想定して、生前学校等にものを寄付した場合に、一体現行の税制度でいいのかどうかというようなことを広範にわたって諮問をしているわけでございます。財源も豊かならざる状況ではございますが、しかし積極的にこれらの問題と取り組んでおるのでございますから、あなた方がこうして御発言になっても、さっぱり手ごたえがないということではなく、いろいろこの文教委員会で勉励いただきましたので、一年が三年にもなっているわけですし、私立学校に対する寄付は別ワクで倍まで認められるというような前向きになっておるのでありますから、これは一ぺんに私の代で片づけるということもなかなかむずかしい問題でありますが、教育の重要性、私学の重要性を認識せざる者はない現在でありますので、私は皆さんの発言等がこれからの施策にあらわれるということをひとつ考えていただいていいのではないか、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/19
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020・前田榮之助
○前田(榮)委員 大蔵大臣にお尋ねいたしますが、ただいま大蔵大臣の答弁によりますと、国、地方公共団体、これは国民の税金によってまかなう機関であるから、したがって法人の学校等への寄付とは全く一〇〇%同率に見ることはいまの場合できないじゃないか、こういうことであります。私もそういうことは認めますけれども、私は同率に認められぬのは、私学の寄付の方法がその点では重いと思っておる。あなたとは逆なんです。それはどういうことかと申し上げますと、今日の私学は企業ではない。企業として、もうけるために行なう行為じゃないわけでございます。したがって寄付されたことによる学校の財産というものをかってに処分するということはできないはずであります。それぞれの法人の、団体の機関に基づいて処理する。しかも今日の学校教育は私学にたよることきわめて多くなければならぬ状態なんであります。そこへ国民の一部から寄付をしてくれて、国がやるべきものもやらないで済むということは、いまあなたが例に出された科学の問題や社会事業への寄付等も言われますけれども、その社会事業等においても、法人として公共性のある財産の処分が制限を受けておる。こういうものと、制限を受けておらない、たとえ社会事業でもやはり個人的な意味で運営されておるものとは、その点が違うのであって、その点によって税金をどうするとかいう問題が起こり得ることは、これもまた当然ではないかと思うのであります。したがって今日の私学振興の上からいいますと、今日の社会においては積極的に私学振興に必要な寄付等については、これに課税するどころではなくて、そういうものについては何割かを国がもっと補助して、それに突っかい棒をしてやろうというくらいのことがあってもしかるべき私は情勢じゃないかと思う。したがって、いま同僚の委員からの質問によって、大蔵大臣は積極的にこの際やるというような意思を表明してもらいたいという希望的な御意見がございましたが、そういう点では若くて非常に前向きな政治をされようとする田中大蔵大臣は、こういうことをむしろ何とかして私のときにやらなければ私は済まぬというようにおっしゃっていただけるものだと私は期待をいたしておるのですが、その点はどうですか。いまあなたがおっしゃった地方公共団体あるいは国というものと違うというようなこの考え方は、私は理論的には成り立たないと思うのです。どうですか、その点は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/20
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021・田中角榮
○田中国務大臣 あなた方の言う気持ちはよくわかるのです。といって、財政当局者として考える場合には、やはり先ほど申し上げたとおり国と地方公共団体及び他の団体——公益性が非常に強いということは、もう場合によって国が全然やらなければならないものを他の団体としてやっておるという事例がこれからますますあるということは認めますから、気持ちの上ではあなたの御発言を理解できるのでありますが、やはり最終的に国イコール他の団体ではないということは、これはやはり考えていただかなければならぬ問題であります。
それから第二の問題は、現在の税制上の問題で、二つあります。所得税関係と法人税関係でございまして、これは一定の限度までは、寄付した場合には非課税である。こういうことに対して、これはもう一定限度じゃなく無制限にしなさいというあなた方の御発言の趣旨になっておるわけです。
もう一つは指定寄付というものがございまして、大蔵大臣が指定したものに対しては普通は一年間であります。学校に対しては三年間認めておるわけであります。この三年間というようなものは撤廃をして、指定寄付も何もなく、みな無税にしろということであります。しかしいまのこの所得税や法人税の率をもう少し上げるということは、一つの問題として考えられると思います。また考えていく場合には、そういう問題が当然少しずつでも解決をしなければならぬ、こう思いますが、この指定寄付の問題は、災害を受けた場合に、災害復旧をするとかまた設備を更新するとか、また校舎を増設するということでありますから、手数というものは、大蔵大臣のところへ持ってくればほとんど無条件で指定をするのであります。しかも三年間もあるのですから、事務上、手続上そう大きな障害になっておるとは思わないわけであります。三年間のうちにやれない。三年間たったら、また別に更新をして、新しく指定を受ければいいのでありますから、制度の上では相当大幅な私学振興の制度をとっておるというふうに私は理解をしておるわけであります。
それから現物を学校に寄付をしたという場合につきましても、一般に現物を贈与した場合には贈与税が課税されるのですが、現物を学校に寄付した場合には贈与税を課さない、こういう非課税の制度をとっているわけです。ですからいまの問題は、学校に対する寄付であるならば、何でも非課税にしろ、こういう問題だけが残っておるというふうに考えられるわけであります。でありますから、この所得税や法人税の中で、年所得総額の何%をこえるものは課税をするということを撤廃しろという議論だけは残っておるのであります。大蔵省も、何にもやっていないように聞こえますけれども、私学振興のためにはもう相当のことをやっているのだということもひとつお考えいただいて、なおこれからも前向きに検討いたします。こういうのでございますから、大体ここらで御理解いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/21
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022・前田榮之助
○前田(榮)委員 私学の特性というものについては、国立や公立の学校とはそれぞれまた味わいも違うのである。これを一律にこの点は免税にするとか、この点は免税にせぬということは、その点にむずかしさがあると私は思います。そういう際に、これは日本ばかりじゃなしに、イギリスやその他の国においても、私学の振興について、国がどのくらいの犠牲を払っておるかということは、大臣よく御承知のとおりなんであって、今日の日本として私学振興を非常に要望しておるときに際しまして、一そう学校教育に資産家等が積極的に寄付等を行なう風習、これらは非常に国家の発展に歓迎すべきなんで、私は奨励するような意味においてやってもらいたい、こういうことなんですから、ひとつ御考慮願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/22
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023・南好雄
○南委員 関連して。いま質問している問題は前回の文教委員会のときに、文部大臣に私から御質問申し上げて、いろいろその答弁から、どうしても大蔵大臣にも出ていただいて、あなたは特別にこういう問題については御理解のある方だし、あなたみたいな人でなかったらこの問題は解決できない、そのような意味において与党を代表して大蔵大臣に特にお願いを申し上げます。
東京大学へ私が寄付するときには税金はかからないが、早稲田大学に寄付するときには法律上いろいろ制限があるんだ。ただし大蔵大臣が許可すれば、一年とか三年とかいう許可年限の間はいいが、その許可年限後においては私はそれ相当の寄付はできないし、また収益の何%か以内ならやれる。東京大学のほうはそんなことは一向にかまわない。安田講堂を建てたいというので、安田善次郎の記念事業としてああいうりっぱな講堂が建っていく。これは大蔵官僚は出した寄付金にひもをつけるということは大きらいで、そんなことは一切受け付けない。しかし魚心あれば水心ありということで、安田善次郎さんが安田講堂を建てるときには、一ぺん国庫に入った金が東京大学に補助になって出てあそこに講堂が建っているわけです。もしそういうことが認められるならば、そんなしゃくし定木な考え方をせずに、大蔵省はもう少し私学振興のために——今日くらい私学が理科教育その他に大きな使命をになっているときはないと思う。しかもわれわれ現に私立大学に子供を入れますと、官学の三倍、四倍という金がかかって非常に困っておる。困っておるのに——国庫でまかなう金は国立には出るが、私立は一切がっさい自分で出すんだということに原因があるもののように思うのであります。この際ひとつ大蔵大臣思い切って寄付金全部・私立大学のほうへ補助金として、国に寄付しますから、私立大学に寄付したいというものは、金澤なら金澤の何々私立大学へ寄付したいというのは、一ぺん国庫へ帰属させても、ひもをつけて金澤へ持ってくる。九州は九州の明治専門学校ですか、ここへ出したいという人がいたら、そこに持っていく。大蔵官僚はいやがるのですが、それくらいの勇断で官公立と私立の差別がないようにして、国民の浄財を学問の振興のために、私学の振興のためにやっていただくということのためなら、一応の法律理論も成り立つ。補助金で出すのですから、これは税金がかからぬことははっきりしておる。国へ寄付するんだから税金をかける対象でない。もし万一そういうことで脱税するようなことがあったら、これはまた別の権限で大蔵大臣が厳重に査察なさって調べられればいいのですから、目的が非常にいいことなんでありますから、ひもつき寄付ということを認めていただいて、そして税金のかからないようにしていく。国立は東京大学に寄付するといって京都大学に持っていったって、何にも文句を言わないならいいのです。ところが東京大学の講堂をつくりたいのだといって寄付しても、これには税金がかからない、早稲田大学だったらあなたに一々認可をとって、大隈講堂設立記念事業といって一々大蔵大臣の認可をとり、やかましい査察調査を経なければやれないようなことでは、これは大蔵大臣、何ぼ私学振興をおっしゃっても、私は税法上非常に差別待遇があるように思えてかなわぬ。今日においてはやはり学校法人の負担している義務と申しますのは、私は国立と私立と変わりないと思います。全く営利法人のように考えられることは、これはここに文部大臣おられるが、そういうことは万々あり得ない。たまに不心得の理事者があってそういうこともありますけれども、それは何千何万分の一なのでありまして、ぜひこの際あなたでなければできないのですから、寄付金はひとつ全部無税にする。そうして寄付者の希望を入れて、その学校に補助金として文部大臣を経由して出す。会計検査も十分やっていただき。いろいろな査察も十分やっていただいていいから、民間人の私学振興に対する熱意というものに大蔵大臣はこたえていただくような、これは少し法律解釈を乱用したきらいはありますけれども、そういうような方法も御考慮願えないものか、私は即答は求めませんから、主税局長にひとつ厳重に申しつけて、一ぺん調査をして、いつでもけっこうでございますから、御回答願うようにぜひひとつお願いしたいわけです。何とかしてひとつ解決してやらないと、私学振興はほんとうにできません。三百億や四百億の私学振興補助金ぐらいは、民間の寄付に税金は取らぬとさえ言っていただければ幾らでもできるのであります。それを充実した学校へやっていただけば私は生きていくと思うのです。ぜひひとつ前向きに御善処を願うように ほかの大蔵省上がりの大蔵大臣なんかこんなことを言っても全然だめです。あなたのような人でなければこの問題は解決できない。ぜひひとつお願い申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/23
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024・田中角榮
○田中国務大臣 官学出身の南さんが特に私学の振興を説いておられるのですから、いかに切実かということはよくわかります。私もおほめにあずかったのかどうかわかりませんが、田中角榮個人であると同時に、大蔵大臣としてお答えをしておるわけでありますから、るる申し上げたように、私学の振興を考えること人後に落ちるものではない。がしかし、なかなかあなたの言うようにすぐさまそういうことにならぬ、こういうことを申し上げたわけでございます。
いま非常にむずかしいアイデアをお出しになった私学振興のための財源に関する法律ですか、何か法律としてつくればその準拠法に基づいて特別な寄付をしたものは、国庫が収納したものを還元するような方法があるというようなお話であります。これは初めて聞く話であります。私たちも前に、憲法に背反しないで道路の整備をするために、ガソリン税を目的税等にしたということもありますから、代議士としては考えやすいことでございます。しかし、こういうものが法制上、どういうふうな関連があるのか、他の見解もございます。いろいろな問題もございますので、いまの御発言は、十分重要な御発言としてこれを参考にいたしまして前向きに、先ほど申し上げたように検討をいたしてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/24
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025・久野忠治
○久野委員長 次に谷川和穗君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/25
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026・谷川和穗
○谷川委員 それでは、ただいま南委員の申されました問題に関連をいたしまして、かつまたこの私学に関する、寄付のみに限らず、その他税の問題について、大蔵大臣お見えになっておられますからちょっとお聞きしたいと思います。
ただいま、南委員の御指摘になられました方式というものは、これはやはり私学を育成するためには民間の寄付を大いに奨励をするということが何といっても基本であるということを考えれば、きわめて考慮に値する提案だと思います。ひとつ十分にこれはお考えをいただきたいというふうに考えます。
それで、ひとつ指定寄付についてお伺いしたいことは、現在指定寄付についてはいろいろと制限がございますけれども、その制限の中で、特に現在の指定寄付の用途といいますか、集まった金を使うのに、臨時的経費のみにしか使えず、それを経常費には使えないことになっております。しかしこの方面につきましても、やはりわれわれとして考えて、私学の経常経費というものを全部かりに国庫で見たとすれば、これはたいへんな金になるだろうし、かりに三分一補助する形にしても、おそらく数百億は必要だと思う。というようなことを考えますと、先ほどのようなことから、民間の財源をなるたけ吸い上げてくるということが必要だと思います。そういう意味から考えましても、現在のこの臨時的経費のみしか使えないというような制限を取りはずずことができないかどうか、この問題についてお聞きをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/26
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027・田中角榮
○田中国務大臣 非常にむずかしい問題でございます。いまの問題が私学振興のためのポイントになっておるわけです。それは先ほど申し上げましたとおり、相続税の場合には現物給付をする。現物給付をする場合には相続税の対象にしておらぬのでありますから、これは全く全部が学校のものになる。指定寄付の場合には災害等の復旧とか、校舎及び施設というものに限っております。でありますから、校舎及び施設の増強をする場合に、指定寄付さえ受ければ三年間やり、また三年目に期限が切れれば新しく三年やればいいわけでございますから、これはできるわけでございます。ところが問題は、経常経費に充てる寄付金というものは一体どういうものかということでございます。これは先ほど申し上げたとおり、法人税で寄付金を損金にすることのできる限度の制限をしているわけであります。これは申し上げるとうるさいことでありますが、法人税の場合には資本金の千分の二・五、プラス所得金額かける千分の二十五、の合計の二分の一というような非常にこまかい制限がある。一応三万円とか五万円とかというようなことをやっておりますから、これが経常経費にあたっておるわけであります。この制限を撤廃しろということがあなた及び先ほどからの御意見でございますし、撤廃すれば国の税金と同じことになってしまうし、撤廃はできない。撤廃はできないけれども、この制限が所得金額の何%限度ということになっておるのを、一〇%、二〇%、五〇%ということになれば、実際撤廃と同じことになるわけです。ですから、そういう意味でいま制限をしておるものをだんだんと拡大をしていくということがこの委員会の委員の皆さんが申されておる問題を解決する主点であります。あとの問題は解決になっておりますから。ですからこの問題に対しては先ほど申し上げたとおり税制調査会にも諮問しておりまして、権衡論もありますし、いろいろな問題がありますから、そういう問題をすべてあげて税制調査会の判断に待っておるわけです。そういうものに対して答申がない場合もありますので、今年度の場合には答申がなくてもやろうということで、今年の税制改正にはこれを倍額にしようというように前向きになったわけです。倍額になってもたいしたことはないということに論点があるわけでございますので、税制調査会の調査も待ちながら、私たちもこの額をだんだんと広げていくというような方向で検討していきたいというのが現段階におけるお答えなわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/27
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028・谷川和穗
○谷川委員 ただいまの指定寄付のいろんな制限を撤廃するという中で、二つ強く要望を申し上げておきますが、先ほど南委員が申し上げたような方式が可能かどうかということをお尋ねしておきたい。それからもう一つは、使途については、ただいまのような経常経費についても使えるように何とか法制の改正が必要とするならば、するようにお願いしておきたいと思う。
次に、個人の寄付について非常に不合理ではないかと思う点が一点ありますが、この際お伺いしておきたいと思うのであります。それは不動産の寄付、この不動産の寄付にあたってはみなす譲渡となって、生前寄付をした場合には税の二重取りになるのではなかろうかということを言われておりますが、その点はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/28
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029・田中角榮
○田中国務大臣 譲渡をした場合に譲渡所得、それから贈与を受けたほうからは贈与税ということでありますから、それは二重取りということになるわけであります。これは税制上の問題でございますから、こういう問題もこれからつめてまいりまして、学校等に寄付をした場合にはできるだけ税負担が軽くなるようにということは当然検討に値するものと思います。先ほど南さんから言われたことでありますが、これは非常にいいこと、非常に知恵のあるやり方ですが、税制の上から考えると、税制を乱すということでなかなかむずかしいと思うのです。ですから、指定寄付の中に先ほどの御発言をずっと検討しますと、指定寄付というものは物件だけにしぼっておる。経常経費に使えない。これは経常経費までは広げてしまえば無制限になる。ですから年間の経常経費の何%というか、そういうものにしぼりをかけて指定寄付というものの中に入れることができるかどうかという技術問題が出てきます。ただその場合に、物件調達の場合には年限を付すということができますが、今度経常経費を幾らかでも見るという場合になると、年限ではなく無制限にということになるので、指定寄付制度そのものを変えなければならないという問題も出てくる。またこれらの問題は、いろいろ具体的に御指摘になった問題でありますし、私たちも理解できる問題でありますので、指定寄付の制度を一体どうするか、一体経常経費にしぼりをかけてこれを対象にでき得るものか、そういうむずかしいことをするよりも、他にも及ぼすので、経常経費をまかなうための個人及び法人の寄付というものの限度額を上げる。そういうものは相関関係がございますので、これらをあげて前向きで検討してみたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/29
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030・久野忠治
○久野委員長 山中吾郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/30
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031・山中吾郎
○山中(吾)委員 いまの質疑応答の中でたいして進歩していないように私は思う。あるいは来年ふたをあけるとまた同じようなことになるのではないか。きょうの質疑応答で来年の予算編成その他の政府の方針にたいしてプラスになっておるという感じがしないので、前向きでお尋ねしたいのですが、国立に対する場合は無税であって、私立に対する場合の有税は、これはどうしてもそういう違いは捨てるわけにはいかないという大蔵大臣のまず思想が明確に出されておるわけです。これが一つ大きい壁だと思うのですが、これはたとえば補助金とかいうふうなものならばまた論議が出る。これは教育事業に寄付したものについては税金をかけないという問題なんですから、それを国立と私立の場合に、何か私立に補助金を出すということは、国立プロパーでないから相当考えなければならないというような論議と混乱をしてお話をされておる。個人が日本の教育のために自分の財産を寄付するということに対して税金を全廃するということ、これは補助金の問題ではなくて、国立と私立に税金をお考えになっておる思想、免税についてはそういう思想を持つ必要はないということを大蔵大臣が明言をされない限りは来年も同じだと思う。思想をひとつ明確にしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/31
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032・田中角榮
○田中国務大臣 地方公共団体及び国——地方公共団体に近い公益性を持つ団体というものに私学が入ることはわかります。わかりますが、少なくともどんなに国に近くても、国、地方公共団体と他の団体と同一であると断定はできない、こういう考えでございます。これは原則として私が申し上げたとおりでございます。でありますから、仮定の問題として申し上げて、私学が非常に重要だから、ある場合においてはいまの高校急増対策のように、大学の振興が非常に必要だ、国は金を出せない、私学にゆだねなければならないというような場合でも、その全額というような問題か起こったと仮定いたしましても、やはり九九・九%になっても一〇〇%というような考え方というものにはやはり限界をつけてちゃんと考えておかなければならぬという法理論上から申し上げておるわけであります。
それから私学に対しては個人が財産及び自分が生活に消費すべきものを寄付するのだから、免税にしても何ら差しつかえないということでございますが、これは国の大本として税はいただく、税をいただかなければすべてのものの運営ができないのであります。そういう一つの大きな国の使命がございます。ですから、税金を納めた後にこれを寄付をするという場合と、そうではなく、どうせ税金を納めるのだからこのものは学校へ寄付したならば免税にすべきだという議論が存するわけであります。ですから、あなたが主として言われておるものは、もう税金は全部納めてしまったのだ、だからもう学校へでも寄付をしなければこれは食ってしまうのだ、こういう金を寄付した場合には免税でもいいじゃないかというのですが、物件等の場合にはこれを消費する場合には他に転売しなければならない、転売するときには譲渡所得税をいただくようにちゃんとなっておるわけです。ですから個人のものではありますが、国と無関係ではない、こういうたてまえから減税問題が起こっておるわけであります。でありますから、寄付をしたものはすべて免税にすることが税法上もそう大きく問題はないのだというふうには、どうしても考えられないわけであります。でありますから、免税の場合は、税金を納めると同じ立場で同じ結果が出たもの、すなわち、国及び地方公共団体に寄付をしたものは、税金と同じでございますから、これは免税も何も起こらないわけであります。もちろん免税であります。国、地方公共団体以外の団体ということになりますと、やはり何らかのしぼりは、どこへいっても必要であるということは理解できると思うのです。ですから、皆さんが、全額免税しろということを言われないで、九九%免税まで上げるほど私学の興振は重要だ、こう言われるならば、話はわからぬことはないのですが、国、地方公共団体と同一である、こういう考え方を前提にして御発言になると、どうしても、私のほうでは、それをそのまま是認するわけにはまいりませんというお答えになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/32
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033・山中吾郎
○山中(吾)委員 何かごまかされたような感じがしてなりませんが、隣におられるのは大蔵省の税制第一課長ですか、一緒に聞いていただきたいと思うのですが、国立、公立、それから私立の差は当然あるわけです。それは、国民の税金の使い方については、その論議は、大蔵大臣の言うことはわかる。寄付というのは——私の言うのは、個人の財産なんですから、個人の財産を大学に寄付する場合に、一方は税金でまかなっておるから云々という論理は合わないじゃないか。補助金を多くするとか少なくするとか、経常費まで私学に税金を出すということは、これは国立でないから相当考えなければならぬということは、いままで相当論議もして未解決のままに、私学振興はどうするかということは未解決のままであることはわかっておる。そこの差別が出ることはわかっておる。しかし、個人が教育事業に寄付したときに、税金を課するか課さないかというときのことは、公私立を差別するということはしなくていいんだという思想に変えないと、問題は解決しないと思うのです。憲法の二十六条で、すべての国民は教育を受ける権利があるという、この新憲法の思想のもとにおいて、もっと勉強したいというものがあって、私学がそれを引き受けておる、機能を果たしておる場合について、せめて個人の私有財産を教育事業に寄付するときまで官公私立を差別をしなければならぬということに非常に膠着した思想を発揮されることは、おかしいじゃないか。補助金とか融資ならわかるのですよ。財政投融資にどれだけするかというふうな融資と補助金の問題ならば、私は引き下がるわけです。いまのは個人の財産、免税の問題です。それはおかしいのじゃないか、それが一つ。
それから、私の言うのは、いまの税金は税額控除なんです。所得除控にしてほしいというのが、具体的にはわれわれの論議になるわけです。寄付した所得、その分は、ふところに入るかわりに教育にくれてやるものですから、その分は所得がないものだと見る思想の上に立って、全部というのでは困るとか、あるいは何%はどうだということはあとに残ると思いますけれども、いまの現行制度は、いわゆる税額控除なんです。これをせめて所得控除という思想に切りかえなければ、この問題は一歩も進まない。その点を明確に言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/33
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034・田中角榮
○田中国務大臣 官公立の学校には全額免税であるが、私立学校を区別をするのはどういうことかということがまず一点でございますが、官公立のということは、学校だけで考えていただかなくて、官公立の学校というものは、国及び地方公共団体である、こういうことでございます。ですから、国と私人との関係をひとつ考えていただく。国と私人であります。私人から国は税金をとる、こういう立場にあるわけであります。でありますから、国立学校、公立学校というものは国及び地方公共団体である。国及び地方公共団体に出したものは税金と同じでありますから、免税であることは当然である。しかし、私人である他の法人が一その内容がだんだんと公共性が強くなって、もう国のやっていることと大して変わらないじゃないかというのが私学であります。でありますが、あくまでも国とは違うという観点に立っておるわけでありますから、公立学校にやっておって私立学校にやらぬというのはおかしいという議論は、前提が違うのであるという考え方、これはもう、同じ小学校でも公立学校はただでありますし、私立学校へ行けば何か納めなければいかぬということは、これは当然差があることでありますから、そういう原則的な問題はひとつ十分御理解いただきたい。
それから、補助金と税の問題でありますが、その人が寄付をしないでおったならば国が当然税金として収納を受くべき金額を寄付をした場合には、これは補助金をやるのと同じ理論であります。そこをひとつよく御理解いただきたい。その法人もしくは私人が有しておる財産というものが、寄付をしないでおるという場合には、国が当然それを税対象としていただく。国がいただく分から寄付をしてしまうから、どうせ国に税金を納めるのだけれども、その一部を寄付したのだからそれを免税にしろということになると、私人から私立の学校に寄付はしておりますけれども、国の立場からいいますと、当然受くべきものを学校にやったから、補助金をやるのと同じ性格のものであります。あなたの言うことは、そうではなくて、税金を払って、自分が食っても、それから売ってしまってもだれにやってもいい財産を寄付した場合に、税金を取るのはおかしいじゃないか。この議論は、常識論としては出てくるのですが、これは国家から考えると、税法上から考えると、これは個人のものではありますし、税金は一応納めてはおりますけれども、いつかまた税金の種にはなる。死ねば相続税がかかるのです。贈与すれば贈与税の対象になるものであります。ですから、そういう意味を考えますと、やはり国と無関係のものじゃないわけでありますので、われわれが税金を払ってしまったあとのものを幾ら処分したところで税金をかげるのはおかしいじゃないかという議論は、税理論としては成り立たないのであります。
第三の問題として、所得控除か税額控除かの問題、これは私たちも考えております。税制調査会に諮問しましたら、いろいろ検討した結果、やはり税額控除のほうがいいのじゃないかという結論が出ましたのは、どういうことかというと、大きな所得のある人が大きく寄付もできる、こういうのは、公平の原則をそういうところへ準用することがいいかどうかわかりませんが、いろいろ考えた結果、税額控除がいいという調査会の結論が出ましたので、われわれもそれを採用しておるわけでありますが、これはまた将来の問題として十分検討に値する問題だというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/34
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035・山中吾郎
○山中(吾)委員 私は社会党ですが、社会党であるにかかわらず、大きい所得から大きく大学に大講堂を寄付するということは、そういういいことは免税にしたらいいのじゃないか。大蔵大臣と話しておると、だんだん思想がうしろ向きになっていくので、私はまことに遺憾なんです。抽象的に論議をしているときは前向きに見えるのですが、具体的に論議すると大蔵官僚と同じなんです。隣の課長のほうから悪知恵が入ってくるのかどうか知りませんが、少なくとも、税理論税理論といいますけれども、一体、免税という制度は税理論の中に最初からあるわけですから、免税することは税理論と合わないということを繰り返して、学校に寄付するときにそういう理屈を言われているように思うのですけれども、そうではなくて、教育事業という、本来国が背負ってやらなければならない問題を個人が自分の所得で、何かに使えるべきものを学校に寄付するのを免税にするのがどうして法理論に合わないのです。法理論に合わぬことはないじゃないですか。それが一つ。これは、もう少し明確に具体的に答えをいただかなければ、大蔵大臣は、文教委員会へ幾ら言っても来ない。この機会に、責任者にひとつ、何か実質があらわれてくるような収穫を得ないと、これはもう意味がない。久野委員長のときだからおいでになったかもしれないが、もう一回来るというなら私これでやめますけれども、いまのままでは一歩も前進していないと私は思うのです。前進をしているような受け取り方をしないと、せっかく大蔵大臣が忙しいのにおいでになったのだし、われわれも一つの期待を持っておるので、その点明確にしていただきたい。
それで、さらに一つ気にかかっておることは、これも大蔵省の課長がおるのでお聞きしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/35
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036・久野忠治
○久野委員長 時間が来ましたから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/36
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037・山中吾郎
○山中(吾)委員 時間は、私納得するまで——大臣が帰ったら、あと保留して、もう一回呼んでもらわなければならぬ。
予算の一般質問の中で、私こういう質問をして、大臣がお答えになったのを覚えておられるかどうかお聞きしたいのですが、免税を全面的にやるべきであるという私の質問に対して、大蔵大臣はこういうふうに答えておるわけです。「御承知のとおり憲法上の問題がありまして、」八十九条ですか、そこで「(山中委員「解消しておるはずだ」と呼ぶ)いや、解消してないのです。それは私学の問題だけではなく、宗教に対してもあるわけであります。というので、強硬にそういう答弁をされておる。ここにまた灘尾文部大臣のいう大蔵省の厚い壁があるというその壁の原因の一つになっておるかどうか、これも明確にしておいてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/37
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038・田中角榮
○田中国務大臣 去る予算委員会で御質問がございまして、そういう御答弁を申し上げたことは、そのとおりでございます。しかし、そのときは、法律を全部調べてみたのですが、昭和二十何年でありますか、確かに国会で問題になりました。靖国神社や伊勢神宮というような問題もあわせて、私学に対して国が補助金を出すということがどうして悪いのだという問題がありましたときに、いろいろ法律論者の議論も聞き、また意見も徴しながら、最終的にはいろいろな結論が出たようであります。また法制局に対して各省から照会された事項に対しては明確になっておりますが、学校、宗教法人等に対して国は特別のことをやってはならぬ、こういうことであって、それの中には無償で土地をやるということもあるじゃないか、それから補助金をやってもいいじゃないかというような議論があったのですが、補助金をやるのは、この憲法の条章があるのでということで、私学振興会がそれによってできたわけであります。私学振興会を学校法人と同一にみなすということで、各種の施策をやったわけであります。でありますが、いままでの法制局や各法律家に対する照会事項の中で、寄付金というものに対して明確な憲法解釈論が出ておらぬのであります。でありますので、いままでの明治憲法時代の考え方をずっとやりますと、免税ということは、先ほど申し上げたとおり、国が当然受くべきものを他に寄付をして免税にした場合には補助金と同一に解すべきだという議論が今日までの通説であります。そういう意味からいって、全額免税ということになると、憲法のこの条章に、とにかくその議論を残すということは、今日まで未解決になっておるわけであります。でありますから、私はそのことを申し上げましたら、当時私学振興会をおつくりになった時代に、もう私償に関しては一切話はついているのだ、こういう御発言がございましたので、私もその後省へ帰りましていろいろな文献も調べましたし、法制局とも取り扱いも検討しましたが、この問題に対して、憲法解釈論として解決はしておらぬということは事実であります。しかし、私学振興というものを、憲法論をやることは、過去にもう何回もいたしましたので、私はああいう答弁をいたしましたけれども、これからは、文教委員会に出ましても、どこで私学の話を聞かれても、憲法論はもう言わないことにしよう、こういうことを私自身がきめたわけでありますので、あの発言はあのときに申し上げたことであり、またこれを蒸し返されれば私としてもいまのような憲法解釈論を申し上げざるを得ない政府の立場にございますけれども、そうでなく、具体問題として、前例もありますし、慣例もありますので、そういう意味で税法上はできるだけこちらのほうは私学振興のために資したいという考えでありますので、大蔵省は壁が厚いと言っておりますけれども、厚くありません。大蔵省も非常に私学振興ということを考えておりますので、いまの御発言に対して、私は正式に申し上げます。所得税、法人税の寄付金控除制度及び指定寄付金の制度の合理化につきましては、今後大蔵省も十分に検討いたしまして毒処いたしたい、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/38
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039・南好雄
○南委員 関連。次会に前向きな回答を要求しようと思っておったのですが、大蔵大臣、これは与野党一致の議論なんです。私は、組み立てられた税法ですから、税法上に特別のいろいろなことを求めようとしますと、税制調査会もありますし、いろいろな点でお立場もありますから、やはりいま左で御返事なさったような答弁しかできないものだと思う。そこで私は、さっきあなたは言うつもりがなかったやつが口がすべったのだろうと思うのですが、ガソリン税を上げて道路を直したことはあなたと私でやったのです。大蔵省にきらわれて顔を見るのもいやだと言われた事実もある。しかし、こんなに私学振興、人つくりがやかましい時代において、時限立法でもいいから十年間ぐらいは思い切って、そんな所得控除とか租税控除というような積み上げられた議論でなしに、民間が私学振興のために出す寄付金には一切税金は課さないのだ、そうしてなるべく寄付者の気持ちを重んじて、国から文部大臣を通じて補助金を出して、その使用については、また補助金を出す学校については、委員会でもつくって、いいかげんに使わせぬように、国の監督は、税金でやる国立、公立と同様に厳重にするのだという特別立法をつくったら、大蔵大臣は反対せぬかどうか、これだけ返事をしておいてください。そうすれば与野党一致でいますぐにでも今国会に間に合うように法律をつくりますから。これを全く考えていただかないと困難だと思うのです。教育投資論なんという議論が出て、小学校から私立大学を出るまでに七百万円かかる。ところが卒業してから五十五の定年まででは二千何百万円とるから、投資としてもいまの授業料は安過ぎるというようなべらぼうもない議論さえ聞くのですが、郷里へ帰って父兄に聞いてみますと、学校のあれが非常に大きな負担であります。ことにわれわれ農村に行きまして、大学は出したいしというような話を聞きますと、これはほんとうに涙なしには聞けない。何とかして教育に金のかからぬようにしてやりたい。
もう一つ私は言いますが、これは選挙区の話になって申しわけないのですが、特に文部大臣と大蔵大臣ここに二人出ていらっしゃるから申し上げたいのです。私の石川県という県はばかな県でございまして、高等工業専門学校を市立で金沢に一つ設けた。ところがこれに入学するのに、どうも聞いてみますと五十万円寄付させられる。学校の試験を通ってもやはり五十万円くらいの金を出さなければ入れないということは——これはうわさなんで、私は事実かどうか確かめたことはない。ところが隣の富山県に行くと、これはただで入れるのです。こういうべらぼうもない国立と公立の違いがあったのでは、これは私は何としても合点ができない。すみやかに金沢にも国立工業専門学校をつくってくれと言うて、文部大臣に陳情しておるのですが、大蔵省は三十九年までにどうのこうのとむずかしいことを言われるけれども、これだけ差があっては、一県一校などというつまらぬ理屈にこだわらずに、なるべく金のかからぬ、ことにこれからの人つくりで、これからの日本は輸出第一主義で技術者を養成する以外に生きる道がない。これは私が言わなくても大蔵大臣よく御存じのとおりなんです。文科系統が六割もおって、理科系統が四割なんというべらぼうな国は一等国では日本だけなんです。ソ連でさえも六割も七割も理工科を出ておるのに……。その大半は私立学校がかついでおる。要は金がないからという理屈なんです。租税の理論からいけばお説のとおりなんですが、目をつぶって十年間、寄付するものは、りっぱな委員会をつくって、そしてその委員会で審査を受けた大学へは補助金の形にして出す、だから税金を課さないんだというくらいの英断は、これは大蔵大臣、灘尾文部大臣と相談して、何とか考えてみようくらいのことはここで言って帰っていただきたい。そうすればもうほとんどこの質問は大部分なくなってしまいます。ぜひひとつ考えていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/39
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040・田中角榮
○田中国務大臣 南さんの発言をお聞きしまして身にしみております。が、しかし、こういう大問題をいますぐここで与野党一致でお出しになる、こういうことはひとつもう少しお待ちいただきたい。先ほども申し上げましたように私学振興に対しましては、私たちも税制調査会やいろいろの機関にもはかりながら前向きにいま検討中だ、こう言っておるのでございますので、まあできるならばひとつ、私たちがこれから検討いたしましていろいろ私学振興になるような施策をいま考慮中でございますので、どうぞひとつ御理解をいただければはなはだ幸いだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/40
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041・山中吾郎
○山中(吾)委員 大臣のお答えの中で、憲法の疑義は残っておると言われる。私は、公の支配に属しない宗教、公の支配に属しない慈善事業はありますが、公の支配に属しない教育事業はないと見ておるのです。そこで論議をしなければならぬのです。たとえば、どこかの党の学校とか花嫁学校とかいうのは知りません。文部大臣が認可をして、そうして学校として認めたものは全部公の支配に属する学校で、属しない学校を、宗教と慈善事業と同じようにされるところに問題があるので、これはもう一回論議を、何にしてもしなければならぬと思っておるんです。そこでそれはそういうことは言わないというお話であるのですが、具体的にそんならば、少なくとも学校に寄付をするというような場合に八十九条が、その施策を具体化するときに影響を与えないんだということをお答え願えますか。八十九条の解釈が未解決であるということがこういう私学に対する免税を論議するときに、全廃をするということは憲法上疑義があるのでできないんだという思想をお持ちでないんだ、この点について言えるかどうか。それは明確にしておいていただきたい。ほかのことはあるいは関係するかもしれないが、この点については心配ない。ということはこれは課長がここにおりますから、大蔵省の解釈がいつもその中で大蔵大臣に影響を与えておることを知っておるものですから私は聞くのです。それが一つ。
時間がないですから、さらに私学の収益事業を全部教育事業に使う場合についての免税の問題、これを含めて検討される御意思があるかどうかということが一つ。
それから私立ということばをお使いになっておる。それは私立というのは旧憲法の場合の個人でなくて、現代の憲法における私立というのは学校法人。学校法人立でなければ補助も寄付も何もしないということが現行法にあるので、私立ということばを使ったときに個人の学校という考え方でどこかに入ってしまっておる。そこが大蔵大臣が私立と言っておる場合は、これは学校法人なんですから、昔のような教会がつくっておるとか個人がやっておるものにはどこにも、寄付も補助もやれとは私は言っていないわけです。したがって国、公共団体は、これは公法人であるということをいっておるならば、その意味では学校法人も公法人である。民法上の特殊法人なので、その点にも大臣のお答えの中にまだ思想が吟味されていないように思う。その中で来年度の予算をお考えになるときには、いま私が論議したことについてやはり何か有効な結果が出ないように思うので、その点を明確にお答え願っておきたい。なおその具体的な問題についてもう少し論議をしないと私は有効に結果が出ないと思うので、委員長にもう一回会期中に大蔵大臣を呼ぶ努力をしてもらうことを私は要望するので、お答え願ってこの質疑を終わります。先ほど善処するという政治的答弁はございましたが、その中身は、善処というのはいつも行くえ不明になるものですから、そういうことを含んでお答え願い、委員長と大蔵大臣にお答え願って私の質問は終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/41
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042・田中角榮
○田中国務大臣 憲法八十九条の問題でございますが、これは私学振興というものに対しては一切この憲法の条章を考えないでやるのかということを答弁できるか、こういうことでございますが、これはまあひとつ、程度問題でございまして、ここで憲法の条章を全然考えないでやりますということはなかなか答弁できにくいことは御承知いただけると思います。が、先ほども申し上げたとおり、私学振興に対してはあらゆる角度から努力をいたします。こういうことでひとついまの第一問は御了承願いたいと思います。
それから第二の、学校法人の中で収益事業をやっているものでございますが、これは通信教育をやったりいろいろなことでございますが、これはまあ学校法人というものを免税にする、こういうことは収益事業でないもの、公益性の高いものということで免税にしておるわけであります。この学校法人が何でもやれる——これからになると遊園地でも何でも計画するということになるわけです。ゴルフ場をやるとか、まあそういうような問題をさしておられるのじゃなく、やはり学校法人としてやむにやまれず付随事業ということなんでしょうけれども、なかなか線の引き方がむずかしい。ゴルフ場といっても体育のため、こうなるので、時代の変遷によると剣道や柔道が正科でなく、ゴルフが正科になることもあり得る。なかなかこれはむずかしいことでありまして、まあ収益事業というものは課税対象になる、これは税の均衡論からいってなかなかこれをとることはむずかしい、こう考えます。
第三の問題は、いろいろ御発言を承りまして、私学振興がほんとうに大切なものであるという当委員会のお考えはよくわかりましたし、私もまた大蔵省も人後に落ちるものではございませんので、大いに前向きに検討いたして善処いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/42
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043・久野忠治
○久野委員長 ただいま山中君の御要望については、委員長といたしましてはせっかく努力いたしたいと思います。
午前の会議はこの程度にとどめ、暫時休憩いたします。
午後零時四十九分休憩
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〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605077X02319640508/43
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