1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年二月二十五日(火曜日)
午後一時三十分開議
出席委員
委員長 濱野 清吾君
理事 鍛冶 良作君 理事 唐澤 俊樹君
理事 小島 徹三君 理事 三田村武夫君
理事 神近 市子君 理事 坂本 泰良君
理事 細迫 兼光君
大竹 太郎君 亀山 孝一君
四宮 久吉君 田村 良平君
千葉 三郎君 中川 一郎君
中村 梅吉君 馬場 元治君
出席国務大臣
法 務 大 臣 賀屋 興宣君
出席政府委員
検 事
(大臣官房司法
法制調査部長) 津田 實君
検 事
(刑事局長) 竹内 壽平君
委員外の出席者
検 事
(刑事局総務課
長) 辻 辰三郎君
専 門 員 櫻井 芳一君
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二月二十四日
松山地方裁判所の本庁舎改築促進に関する陳情
書
(第七一号)
は本委員会に参考送付された。
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本日の会議に付した案件
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
閣提出第三八号)
刑事補償法の一部を改正する法律案(内閣提出
第四一号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/0
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001・濱野清吾
○濱野委員長 これより会議を開きます。
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及び刑事補償法の一部を改正する法律案の両案を一括議題といたします。
前会に引き続き質疑に入ります。質疑の通告がありますので、これを許します。大竹太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/1
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002・大竹太郎
○大竹委員 それでは前会に続いて刑事補償法のほうを一、二点お聞きしたいと思うのであります。
死刑の場合五十万から百万に引き上げた点につきましては、このいただいた資料その他で一応了解ができると思うのでありますが、この五十万というものを最初におきめになった考え方と言いますか、その点についてまず御質問をしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/2
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003・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 お答え申し上げます前にちょっとごあいさつ申し上げます。
先日私負傷いたしまして、長らく登院ができない状態でございました。当委員会の御審議等に非常に御迷惑をかけたと思いまして、ほんとうに相すまぬ次第でございます。出てまいりましても、こういうふうなはなはだ不ていさいな、皆さんに対して失礼千万な状態で、ほんとうに恐縮な次第でございます。何とぞ御寛恕のほどお願い申し上げます。
ただいまの御質問、前回にきめました点につきましての内容はひとつ政府委員よりお答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/3
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004・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 これは結局、申し上げますと、常識的にきまったというふうに申すほかないのでございますが、前回の現行法のときでございますが、この前の政府案として出しましたのは、たしか私一万円というふうに聞いております。それにプラスいたしまして、現に生じた損害がある場合には、それにプラスして一万円の慰謝料を払う、こういうことでありましたのを、前回現行法の審議の際に、一万円という金額はおかしいじゃないか、少な過ぎるというような御議論がいろいろありまして、その審議の過程におきまして、計数的な根拠は何らなくて、まあこの程度でというのが五十万円という数字になったようでございます。でございまして、この五十万円の根拠というものは、全く私どもにもなぜ五十万円が相当であるときめたのかわからないのでございますけれども、いやしくも国会で審議の結果五十万円という数字が出ておりますので、今回二倍程度に引き上げるということになれば、この点にも触れざるを得ないという考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/4
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005・大竹太郎
○大竹委員 またこの前の質問を蒸し返すようでありますが、もう一度お聞きしたいと思います。もちろん慰謝料でありますので、一万円でもけっこう、五十万円でもけっこうという一つのものの考え方が出ると思うのでありますが、しかし死刑の場合には、損失額はいわゆる死亡による損害があればそれはそれとして補償するというものの考え方でありますればよろしいのでありますが、死刑でない場合においては、慰謝料も含めていわゆる今度は千円から四百円ということになるのでありますが、この前も申し上げましたように、慰謝料というようなものは際限のないものであるから、そう無責任なことを言われても困るというようなものの考え方も一応納得できるのでありますが、死刑の場合における損害は別に見るというようなものの考え方からいたしますと、死刑でない場合のほうは、この考え方からして私は不都合じゃないかと思うのでありますが、その点はいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/5
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006・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 事務的な点でございますので、私からお答え申し上げます。
前回もお答え申し上げたわけでございましたが、この死刑の場合には五十万円のほかに物質上の、つまり財産上の損害が証明された場合にはそれに付加してというふうに書いてございますし、他方のほうにはそういうことが書いてございません。ひるがえって、それでは補償といものの性格は何かということになりますと、これは学者によっていろいろ議論もございましょうけれども、大体損害賠償でございます。損害賠償ということになりますと、物質上の損害と精神上の損害、この両者があるのであります。何も書いてない一般の補償、つまり死刑以外の補償の場合には両方含むと解釈せざるを得ないのでございまして、その額が適当であるかどうかということは、これはしばらく別としまして、考え方としましては物質上の損害、精神上の慰謝的な性質のものと両方含んだ額として基準額が定められる。死刑の場合は特にただし書きにそういうふうな規定がございますので、この五十万円というのは精神的な慰謝料だけをさすのだ、こういう解釈になろうかと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/6
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007・大竹太郎
○大竹委員 どうも納得のしない点もあるのでありますが、その点はその程度にいたしまして、もう一点だけお聞きしたいのであります。
これは直接この刑事補償法に関係ないかもしれませんが、この資料の十表を見ますと、無罪確定の人員というのは昭和二十五年、二十六年は三千人をこしており、二十七年から三十年までは千人台になっておる。三十一年から千人以下になっている。三十六年、七年になると四百人ぐらいに減っておるのであります。これはむしろ検察庁関係もあると思うのでありますが、非常に少なくなってきておるのですが、これは一体どういうことでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/7
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008・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 御承知のように検察官の起訴、不起訴を定めます場合に、これは裁判ではございませんけれども、検察官としましては、刑事政策的な考慮をいたしまして、これは有罪であるけれども刑事政策的に起訴しないほうが本人のためにいいというふうに判断されますときは起訴猶予ということにいたしますが、これはどうしても処罰をしなければ刑事政策的によくないという判断をします場合には、かなり証拠関係を厳密に検討いたしまして、検事の目から見ても有罪か無罪かあやしいというようなものはできるだけ起訴というような手続をとらないで処理をするというのが検察官の伝統的な精神でございます。ところが、新刑事訴訟法になりまして、従来の訴訟法からアメリカ式の訴訟法に急転回をいたしまして、このアメリカ式の訴訟法のもとでは、有罪か無罪かよくわからぬが、一応の嫌疑があるものは起訴をして、裁判所の裁判官にまかせるのが相当だというような議論も相当当時行なわれましたので、かなり起訴範囲を広めた形跡が、いまから見るとうかがわれるわけでございます。したがって、その当時の事件というものは無罪になった率も高かったと思うのであります。だんだん刑事訴訟法になれてまいりまして、やはり検察官の使命というものは、先ほど冒頭に申しましたような、厳密な検査をして起訴、不起訴をきめるのが相当だ、そういう考え方がだんだん高まってまいりまして、今日におきましては、ごらんの数字のように非常に無罪率というものは低うございまして、〇・五%程度が無罪率かと思います。かようになりましたのは、検察官が慎重な起訴、不起訴の決定をしておるということを意味しておるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/8
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009・濱野清吾
○濱野委員長 細迫兼光君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/9
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010・細迫兼光
○細迫委員 大臣にお伺いしますが、この改正法律案の理由となり根拠となったであろう労働賃金であるとか、あるいは物価であるとかいうものについて、御提出になりました資料によれば、もうすでに昭和三十八年には今日の程度に達しておるということがうかがえるのであります。おそらくはこの三十八年度を根拠に立案せられたものだと察せられるのであります。そうすれば、事はこの施行期日に関するのでありますが、「公布の日から」ということになっておりますが、三十八年に拘留をせられておった者などにも適用すべきことが道理だろうと思うのであります。すなわち、この施行期日を「三十八年一月から」というように附則を変えるべきだと思うのですけれども、この点について御意見いかがでありましよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/10
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011・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 いつからの無罪判決につきまして適用するかという問題でございますが、いろいろな考え方ができると思うのでございます。人によりましては、判決はいつにあろうと、この新しい補償金額が適用されるのは法律の施行のときからだ、それ以前の拘禁という事実に対しては、それだけの期待というものはなかったわけでございますから、議論はありましょうが、現実に法律は定められてなかった、そういう考え方も一部にあるのではないかと思います。しかし、現行法の事例もございますし、判決に準ずる免訴その他の場合もございますが、判決が施行期日以後にあれば遡及して初めから認める。この点につきましては補償金をもらう人に対しまして相当な顧慮が払われているというふうにも解釈できると思うのでございます。それで金額をきめました理由の採用した数字がいつかということでございますが、これは立法をきめるときにそういう数字を参考にしてきめたわけでございます。それだからどうしても三十八年当時に判決または判決に準ずべきものがあったら遡及しなければならぬ、こうすぐ考えなければならぬとも言えない点もあるのじゃないか、それで従来の例もございますし、金額のいまのような算定の基礎となる参考材料はそうでございますが、やはり施行期日、それから後の判決あるいはこれに準ずるような免訴とかその他のことがありましてからというのが一番妥当じゃないか、こういう考え方をいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/11
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012・細迫兼光
○細迫委員 非常に安易な方法をとられておると思うのです。実害を損害賠償する、補償するという考えにこれは立脚しなければならぬと思うのです。事実この改正案によりましても、判決が公布の日以後であれば、その拘禁せられた期間が三十八年であろうと三十七年であろうと適用を受けるわけですね。そういう者は三十八年、三十七年の分の補償を得られるが、事件が早く進捗して判決が施行前であった者は、同じ期間において損害を受けても、新法によって受けられない、こういう不公平なことが出てまいると思う。これが実害を補償するという観念に立つならば、もうこの改正法を立案したデータがあらわれた期間に拘禁を受けて実害を受けた者には適用するというのが筋の通った話になるのじゃないかと思うのですが、いかがでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/12
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013・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 いまお示しになりましたお説も、これは申し上げ方がたいへん失礼ですが、相当に理由のあることだと存じます。ただ、そういう場合に遡及いたしますと、どこまで遡及するかという問題がやはり起こると思うのです。だから損害の補償という点にばかり重点を置きますと、これは相当前まで遡及しなければならぬ。それではどこまで遡及するかというと、そのまた前後で非常に幸、不幸ができるということになります。ですからこういう立法というものは、前から国が義務を生じておる場合にはやむを得ませんが、新たに決定する場合には、多くはその立法の当時からとすることがやむを得ないのじゃないか。多数の立法例もそういう考え方をとるのはやむを得ないのじゃないかというふうに考えられるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/13
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014・濱野清吾
○濱野委員長 鍛冶良作君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/14
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015・鍛冶良作
○鍛冶委員 この補償額ですが、四百円以上一千円以内ときまっておる。きめる標準はどういうところに置かれるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/15
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016・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 この補償のほんとうの性格というものは学問上なかなかむずかしいようでございまして、一がいには理論的に割り切ることはできぬと私思うのでございますけれども、たとえば経済事情というものが一つの要素であります。それから公平の観念から言いまして、国民の負担においてする補償でございますから、そういうものとして相当の程度かどうかというようなこと、あるいは現実の補償の実情がどうなっておるかというようなことを考慮して本来きめられるべきものだと思いますが、そういうことを考えますとなかなか出てこない。そこで、これも前にも申し上げたのでございますが、現行法のときにはどうやってきめたかということを御参考に申し上げますと、現行法のときは経済事情をおもに考えたようでございまして、労働者の一日の賃金、それから物価の指数、それからさらにもう一つ考えましたのは裁判所に出て参ります証人の日当でございます。こういうものを勘案してきめたということが第六回国会の審議の経過を見まするとうかがえるのでございます。そういう観点が今回どれだけの額にするのが相当かということをきめる標準だと思います。この資料にもありますように、産業別労働者の一日の平均の給与額というものを常用の労働者と日雇い労働者の二つに分けまして指数を出し、さらに東京の小売り物価指数、消費者物価指数、全国の卸売り物価指数、そういうものを一応つくりまして、それらをいろいろな形で算術平均を加えます。いま申しましたようなデータを全部寄せまして、それが五つの種類になるとすれば五で割りますと、一九九という数字が出ます。それから労働賃金は賃金、物価のほうは物価というふうに別々に平均を出してやりますと、二〇八という数字になる。要するに二十五年の当時に比べまして、一九九から二〇八ということで約二倍の指数になるわけです。一方証人の日当でございますが、これは現行法は千円でございます。そこでこの約二倍ということと千円というものをにらみ合わせますと、二百円を四百円にする、それから上のほうの頭のほうは、二倍であれば八百円でございますが、これを証人の千円に見合いまして千円にするということで、四百円ないし千円という数字をはじき出した次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/16
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017・鍛冶良作
○鍛冶委員 私が言うのは裁判所のことでございますが、四百円でいい、千円やらなければいかぬというその標準をどこのところに置いていこうというお考えなのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/17
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018・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 これは補償の内容について刑事補償法の第四条の二項にその基準が定めてございます。裁判所はこの補償金の額を定めるにあたりまして、「拘束の種類及びその期間の長短、本人が受けた財産上の損失、得るはずであった利益の喪失、精神上の苦痛及び身体上の損傷並びに警察、検察及び裁判の各機関の故意過失の有無その他一切の事情を考慮しなければならない。」こういうふうに基準が示してございます。それに基づいてそれぞれ裁判所は額をきめておると思うのでございますが、現実の姿を見ておりますと、やはり経済事情というところに相当重きを置いておるようでございまして、現行法ができました昭和二十五、六年当時には下限二百円に近いところにかなり数字が出ておりますけれども、その後二十八、九年以後最近に至りますと、四百円の最高額のほうに近い数字が約半数になっております。昭和三十七年あたりは約半数がそのくらいの数字が出ておりまして、四百円にならないまでも、三百円程度のものと四百円とで過半数を占めておる。こういうふうに変わってきておるということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/18
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019・鍛冶良作
○鍛冶委員 その他一切と書いてあるから、何でもということになるかもしれないが、私の特にお聞きしたいのは、その人の身分上の条件もしくはその人の特に収入の大小、それらのものは加わると考えられるべきではないかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/19
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020・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 当然考慮されることと思います。されなければならぬと思います。ただ、生活保障的な意味の損害というものはこの中には含まれていないように私どもは理解しておりますので、そういう点の考慮につきましては一応考慮はされるでありましょうけれども、刑事補償の性質の中には少なくとも生活保障的な意味の損害というものの補償は一応入っていないというふうに理解いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/20
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021・鍛冶良作
○鍛冶委員 この資料を読んで見ますると、いまお話のありました証人の日当ですが、当時百二十円であったものが千円になっておるから、こう書いてある。百二十円が千円になったのなら八倍以上ですね。しかるにこれはたった二倍というのはどういうわけですか。この資料からいうと、そういう議論が出てこぬように思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/21
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022・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 それは先ほど申しましたように、単に経済上の理由だけというのじゃなくて、この補償の性格の中には数字であらわしがたいような理由があると私は思うのでございますが、一応現行法をつくりますときの基準になりましたもの、そういうものを勘案した結果であります。特に証人の日当というのは、実を申しますと、その当時の物価などを反映した間接的な資料だと思うのです。証人といえども物価と無関係にきまっておるのではなくて、物価などを反映して証人の百円とか百二十円というものはきまっておるので、証人のあれを物価と同じ列において勘定することはいささかおかしいのでございますけれども、それもにらんだということでございまして、にらみ合わせますと、千円ということが適当であろうというふうに思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/22
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023・鍛冶良作
○鍛冶委員 いま細迫君からの質問に大臣がお答えになったところをちょっと伺いたいのでありますが、附則の二項ですが、「この法律の施行前に無罪の裁判又は免訴若しくは公訴棄却の裁判を受けた者に係る補償については、なお従前の例による。」要するに、前に裁判があったものならば前の額でやる、こういうことですね。ところが金をもらうのはいまもらうのでしょう。そうすると、現在の社会状態に合うようなものを渡すというのがほんとうじゃないかと思うのですが、裁判が前にあったからといって前のものでいいというのは、いかにも理屈に合わないように思われますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/23
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024・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 先ほど大臣が御説明になったとおりでございますが、刑事補償の請求権というものは一体いつ発生するのであろうか、これは無罪等の裁判がありましたその時点において請求権は発生するわけでございます。したがって、その請求権の発生した時点において、もし無罪の判決等が本法施行後にありますと、原因となった勾留その他はそれより数年前であろうが、三十年前であろうとも、補償を受けます人の勘定というものは三十年前の勘定で受けるのではなくて現時点において受けるという考え方、したがって請求権の発生した時点を基準といたしましてそのときの金額で、三十年前のものでありましても二年前のものでありましても、現行法によって補償される。しかしながら、この法律施行前に無罪の判決があったというときには、請求権は改正法のもとではまだ発生してないわけで、いま問題になりますのは、本法施行の日がいつになるかわかりませんが、かりに予算と同じように四月一日からこの法律が施行されるといたしますと、三月三十一日に無罪の判決が確定してしまったという場合には、この方には三月三十一日に請求権が発生したのでございますから、新しい法律ではいけないので、現行のほうでいく。これはどこかで線を引かなければなりませんので、線を引く場合としましては、いまのようなところが最も妥当であろうというのが先ほどの大臣の御説明にもあったわけです。私もさように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/24
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025・鍛冶良作
○鍛冶委員 死刑の場合には百万円、この間承ったところでは全く慰謝料、こういうことで、したがって損害賠償を請求して、損害を立証すればそのほかにもらえるということですが、慰謝料についても、百万円では足らぬというので、もっと大きな金で慰謝すべきものだという人がおれば請求できるのですか、できないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/25
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026・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 刑事補償法のもとではできないのでございます。慰謝料としましては百万円限度、ただし、それに携わりました公務員に故意、過失がございました場合には国家賠償法によって賠償を請求することができます。その場合には百万円という額に拘束されませんので、あるいはおそらくはもっと大きな数字の補償がある。そうしますと、その補償額から百万円を差し引いたものが現実に百万円よりもオーバーした分だけが結局もらえるということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/26
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027・鍛冶良作
○鍛冶委員 損害賠償の請求ができるということは、これは公務員の故意、過失をもとにするものでなくてもできるんじゃないですか。私は、あの人はいままでもし生きておればこれくらいのものであったということを請求するのだから、これは公務員の故意、過失に限らず、損害を立証すれば請求できるんじゃないですか。そうしてみると、それと一緒に慰謝料は百万円では足らぬ、その身分としては百万円くらいではいかぬ、こういうことも主張できるのではないかと考えられるのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/27
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028・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 財産上の損害につきましては、お説のとおりに証明をいたしまして、得べかりし利益その他の損害を見積もって、幾ばくの金額になりますか、その請求をなし得ると思うのでございます。それで慰謝料については百万円が限度ということでございまして、それの範囲内で裁判所がきめる、こういうことでございますから、かりに慰謝料についていかほどの証明をされましても、百万円をこえて慰謝料というものが出るとは、この法律からは出てこないと思われるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/28
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029・鍛冶良作
○鍛冶委員 慰謝料だけは百万円で打ち切ったということになるのですか。どうもそこはふに落ちないのですが、損害の場合はやれると書いてありながら、もし損害が立証される、身分上として百万円以上のものであるということが裁判所に心証を得た、そういう場合はやってもいいように思うのですが、それならば慰謝料についてはこれでだめだということをここであらわしておかなくては、あとで問題が起こりはしませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/29
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030・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 これはこの前の現行法のときの御審議の過程におきまして、政府原案は、先ほど申しましたように、慰謝料としては一万円、それにプラスしまして現に生じた財産上の損害については、これは証明すれば、たとえば弔いの費用とかそういったものは、こういう程度の補償であったわけで、それを一万円はおかしいというので五十万円に変わりました。そのほかに現に生じたというところを削りました。そこで物質的な損害については、得べかりし利益がずっと広く認められることになったわけでございますが、慰謝料のほうは一万円を五十万円に引き上げることによって、慰謝料は定額ということで、大体故意、過失なくして国が補償するものでございますので、定額制という定型化された補償額だというふうに見るのが相当だと思います。したがって、いま物質のほうにつきましては証明することによって金額は伸びますけれども、精神上の損害のほう、つまり慰謝料のほうは定額でございますから、幾ら証明をされましてもこの法律のもとでは百万円が限度であるというふうになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/30
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031・濱野清吾
○濱野委員長 次会は二十七日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後二時六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00619640225/31
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