1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年三月三日(火曜日)
午前十時四十七分開議
出席委員
委員長 濱野 清吾君
理事 鍛冶 良作君 理事 唐澤 俊樹君
理事 小島 徹三君 理事 三田村武夫君
理事 神近 市子君 理事 坂本 泰良君
理事 細迫 兼光君
大竹 太郎君 亀山 孝一君
四宮 久吉君 田村 良平君
千葉 三郎君 中垣 國男君
服部 安司君 井伊 誠一君
吉田 賢一君 志賀 義雄君
出席国務大臣
法 務 大 臣 賀屋 興宣君
出席政府委員
検 事
(大臣官房司法
法制調査部長) 津田 實君
検 事
(民事局長) 平賀 健太君
検 事
(刑事局長) 竹内 壽平君
委員外の出席者
判 事
(最高裁判所事
務総局総務局
長) 寺田 治郎君
専 門 員 櫻井 芳一君
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二月二十九日
委員一萬田尚登君辞任につき、その補欠として
服部安司君が議長の指名で委員に選任された。
三月二日
委員田村良平君辞任につき、その補欠として荒
木萬壽夫君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員荒木萬壽夫君辞任につき、その補欠として
田村良平君が議長の指名で委員に選任された。
同月三日
委員竹谷源太郎君辞任につき、その補欠として
吉田賢一君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員吉田賢一君辞任につき、その補欠として竹
谷源太郎君が議長の指名で委員に選任された。
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二月二十八日
下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の
一部を改正する法律案(内閣提出第一二一号)
(予)
三月二日
刑法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二
八号)
遺言の方式の準拠法に関する法律案(内閣提出
第一二七号)(予)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律案(内
閣提出第一一四号)
刑法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二
八号)
不動産登記法の一部を改正する法律案(内閣提
出第五八号)(予)
下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の
一部を改正する法律案(内閣提出第一二一号)
(予)
遺言の方式の準拠法に関する法律案(内閣提出
第一二七号)(予)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00919640303/0
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001・濱野清吾
○濱野委員長 これより会議を開きます。
逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律案及び刑法の一部を改正する法律案を順次議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00919640303/1
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002・濱野清吾
○濱野委員長 政府より提案理由の説明を求めます。賀屋法務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00919640303/2
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003・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律案について、その趣旨を説明いたします。
近時交通機関の発達等に伴い、一国で犯罪を犯した者が他国に逃亡して事実上刑事責任を免れようとする事例が次第に増加しつつあることにかんがみますとき、犯罪人の引き渡しに関する条約が存在しない国の相互間におきましても、必要に応じ、逃亡犯罪人の引き渡しが行なわれ、国際的な協力のもと犯罪人に対する適切な処罰を行ない得るようにすることが相当であると考えるのであります。
ところで、御承知のとおり、わが現行逃亡犯罪人引渡法は、わが国との間に犯罪人の引き渡しに関する条約が締結されている外国から同条約に基づいて犯罪人の引き渡しの請求が行なわれたことを前提として、その引き渡し手続等を規定するたてまえをとっておい、引き渡し条約に基づかないで逃亡犯罪人の引き渡しの請求が行なわれた場合には、これらの規定が類推適用されるものと解釈されているのでありますが、かような取り扱いは、国際的な観点からは必ずしも適当でないと考えられますので、この際、この場合における引き渡しの要件、手続等に関する規定を整備するため、この法律案を提出することといたした次第であります。
この法律案による改正の要点は、次の二点であります。
その一は、わが国に対し引き渡し条約に基づかないで逃亡犯罪人の引き渡しの請求が行なわれた場合には、一、当該犯罪人が犯したとする犯罪行為が請求国及びわが国のいずれかの法令により死刑または無期もしくは長期三年以上の自由刑に当たる罪とされていないとき、二、請求国から相互主義に基づく保証がなされないとき、三、法務大臣が、外務大臣と協議して、当該逃亡犯罪人を引き渡すことが相当でないと認めるときを除外しまして、その他の場合には、これに応じ得ることを明らかにした点であります。
その二は、新たに「請求国」の定義を設け、「引渡犯罪」及び「逃亡犯罪人」の定義を改める等のほか、関係の条文に所要の改正を加え、右の場合における引き渡し手続は、いわゆる仮拘禁制度を適用しないものとするほかは、引き渡し条約に基づいて逃亡犯罪人を引き渡す場合とおおむね同一の手続によることを明確にした点であります。
なお、右に伴い、本法案の附則により、刑事補償法の一部を改正し、わが国が外国に対し引き渡し条約に基づかないで逃亡犯罪人の引き渡しを請求した場合に、当該外国が引き渡しのために行なった抑留または拘禁をもわが国の刑事補償の対象となる抑留または拘禁とみなすこととし、この種逃亡犯罪人の人権の保護をはかった次第であります。
以上が逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律案の趣旨であります。何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いを申し上げます。
引き続きまして、刑法の一部を改正する法律案について、その趣旨を説明いたします。
今次の刑法の一部を改正する法律案は、いわゆる身のしろ金目的の誘拐罪及びこれに関連する犯罪について特別の処罰規定を新設しようとするものであります。身のしろ金目的の誘拐罪は近年に至りまして多発化の傾向を示し、また、数名の犯人によって共同して遂行される計画的な事案の発生をも見るに至っております。しかも、過去の実例に徴しますと、誘拐された被害者が殺害され、生死不明となり、または睡眠薬を施用される等の事例が少なくなく、この罪が誘拐罪の中でもとくに危険な犯罪であることを示しているのであります。さらに、この種犯罪が誘拐された者の近親等に与える憂慮心痛は、まことに筆舌を絶するものがあり、このような手段によって身のしろ金を取得しようとする犯人の心情は卑劣きわまるものというべきであります。このような諸事情、さらにはこの種の犯罪が模倣性の強いものであることをも考慮いたしますと、身のしろ金目的の誘拐罪を刑法第二二五条によって一般の営利誘拐罪と同様に処罰することとしている現行刑法は、この種犯罪に対処するのに十分でないと考えられるのでありまして、この際、身のしろ金目的の誘拐罪及びこれに関連する罪について、その実質にふさわしい重い法定刑を定めることによって、この種犯罪の未然の防止をはかり、ひいてはこの種犯罪の発生によって惹起される社会不安を除去いたしますことは、単に強い世論にこたえるというばかりでなく、国家の刑政から見ましても、きわめて緊要なことと考えられるのであります。これがこの法律案を提出することといたしました理由であります。
この法律案の骨子は次のとおりであります。
第一点は、近親その他被拐取者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じてその財物を交付させる目的、すなわち、いわゆる身のしろ金を交付させる目的で人を略取または誘拐した者は無期または三年以上の懲役に処するものとし、現在の営利誘拐罪より重い法定刑を定めようとするものであります。
第二点は、人を略取または誘拐した者が、身のしろ金を交付させ、またはその交付を要求する行為をしたときも、同様に無期または三年以上の懲役に処するものとし、このような場合に、従来、実務上は単なる恐喝罪として処理されてまいりましたものを重く処罰し得るようにしようとするものであります。
第三点は、身のしろ金目的の略取、誘拐が行なわれた後に、その犯人を幇助する目的で、被拐取者を収受し、蔵匿し、または隠避させた者を一年以上十年以下の懲役に処するものとし、その他の誘拐犯人を事後に幇助する場合よりも重く処罰しようとするものであります。
第四点は、自己に身のしろ金を交付させる目的で、他人が略取、誘拐した被拐取者を収受した者を二年以上の有期懲役に処するものとし、一般の営利目的による収受等の場合よりも重く罰しようとするものであります。
第五点は、被拐取者を収受した者が身のしろ金を交付させ、またはその交付を要求する行為をしたときも、同様に二年以上の有期懲役に処することとするものであります。
第六点は、以上の罪を犯した者が、公訴の提起前に被拐取者を安全な場所に解放したときは、必ずその刑を減軽するものとし、それによって一たびこのような罪が犯された場合、犯人が被拐取者に危害を加えることを防ごうとするものであります。
第七点は、身のしろ金目的の略取、誘拐の予備をした者を二年以下の懲役に処するものとし、ただ現実に略取、誘拐の実行に荒手する前に自首した場合には、その刑を減軽または免除することにより、このような危険な誘拐罪の実行を未然に防止し得るようにするものであります。なお、以上に関連して、右に述べました略取、誘拐及び被拐取者の収受、蔵匿、隠避については、いずれもその未遂を罰するものとし、また、以上の罪はすべて非親告罪としようとするものであります。
以上が刑法の一部を改正する法律案の趣旨であります。
何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00919640303/3
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004・濱野清吾
○濱野委員長 次に、予備審査のため付託されました不動産登記法の一部を改正する法律案、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案及び遺言の方式の準拠法に関する法律案の各案を順次議題として、政府より提案理由の説明を求めます。賀屋法務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00919640303/4
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005・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 ただいま議題となりました不動産登記法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を説明いたします。
この法律案の趣旨は、不動産登記事務の適正迅速な処理をはかるために、不動産登記法の一部を改正して、登記手続を合理化及び簡素化することにあるのでありますが、そのおもな内容を申し上げますと、
第一点は、抵当権その他の担保権の登記手続を合理化及び簡素化することであります。しかして、その第一は、抵当権その他の担保権の登記において、現在登記事項とされております元本及び利息に関する弁済期の定めの登記は、その実益がきわめて乏しいのにかかわらず、申請人及び登記所に多大の煩瑣な手数を要する結果となっておりますので、これを廃止しようとするものであります。その第二は、共同担保関係を明確にし、共同担保に関する登記手続を合理化及び簡素化するために、共同担保については、すべて共同担保目録を設け、この目録を共同担保関係の登記に利用しようとするものであります。
第二点は、不動産の合併の登記手続を簡素化するとともに、合併後の不動産の所有権の登記を簡明にすることであります。現在、不動産の合併の登記においては、合併前の不動産の所有権の登記を多数移記することとなっておりますが、これはきわめて煩瑣な手数を要するのみならず、合併後の不動産の所有権の登記としては、かえって簡明を欠きますので、合併の登記をするときに、登記官吏が合併後の不動産について、単一の所有権の登記をすることとして、合併後の不動産の所有権の登記を簡明にすると同時に、合併の登記手続を簡素化しようとするものであります。
第三点は、以上に述べました以外の点について登記手続の合理化及び簡素化をはかることであります。しかして、その第一は、現在保証書を提出して登記の申請がありました場合には、すべて登記義務者にその登記申請の間違いのないことを確かめるために、事前に通知をしているのでありますが、従来の実績に照らし、この事前通知を所有権に関する登記及び不動産の合併の登記の申請の場合にのみすることとしようとするものであります。その第二は、合併後の不動産に関する所有権の登記の登記済証を簡略化し、合併後の不動産に関する権利の登記手続を簡素化しようとするものであります。その第三は、登記申請書に添付される登記義務者の権利に関する登記済証または保証書についての登記済の手続を簡素化しようとするものであります。その第四は、未登記の不動産についての判決もしくは収用による所有権の保存の登記または処分の制限の登記の申請書または嘱託書にも、当該不動産を特定し、明確にするために、土地の所在図または建物の図面等を添付することとしようとするものであります。
第四点は、以上の改正に伴い所要の経過措置等を定めるとともに、担保附社債信託法及び立木に関する法律に所要の整理をすることであります。
以上がこの法律案の概要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決されんことを希望いたします。
引き続きまして、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を説明いたします。
この法律案は、土地の状況、交通の利便等にかんがみ簡易裁判所の管轄区域を変更し、最近における市町村の廃置分合等に伴い下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の別表について所要の整理を行なおうとするものでありまして、以下今回の改正の要点を申し上げます。
第一は、簡易裁判所の管轄区域の変更であります。すなわち、土地の状況交通の利便等にかんがみ、鰍沢簡易裁判所の管轄に属する山梨県西八代郡上九一色村字富士ケ嶺の区域を富士吉田簡易裁判所の管轄区域としようとするものでありまして、地元の住民の希望を考慮するとともに、関係諸機関の意見をも十分参酌したものであります。
第二は、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の別表の整理でありまして、市町村の廃置分合等に伴い、同法の別表第四表及び第五表について当然必要とされる整理を行なおうとするものであります。
以下が下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますよう、お願い申し上げます。
次に、遺言の方式の準拠法に関する法律案につきまして、提案の理由を説明いたします。
この法律案の趣旨は、渉外的性質を有する遺言について、その方式に関し、いずれの国の法律が適用されるべきかを定めるものであります。遺書の方式に関する法律の抵触に関する条約について承認を求めるの件がこの国会に提出されておりますが、これは遺言の方式の準拠法を定める各国の規定を統一することを目的とする条約であって、同条約の批准に伴う国内法上の措置としてこの法律案を提出したのであります。したがいまして、この法律案の内容は、同条約中の準拠法の指定に関する規定を、その表現に若干の修正を加えて取り入れたものであります。
次に、この法律案の要点を申し上げますと、第一に、遺言は、その方式が、(イ)行為地法、(ロ)遺言者の本国法、(ハ)遺言者の住所地法または常居所地法、(ニ)不動産に関する遺言についてその、不動産の所在地法のいずれかに適合するときは、方式に関し有効であるものとしております。このように多数の法律が準拠法とされておりますのは、遺言が単なる方式上の理由で無効とされることを、準拠法を指定する法律の立場からはできる限り避けようとするものであります。なお、遺言を取り消す遺言については、さらに、その方式が、従前の遺言の準拠法は適合するときも、方式に関し有効であるものとしております。
第二は、この法律の適用範囲を明らかにするために、若干の規定を設けております。
第三に、遺言者の本国法及び住所地法を決定する基準についての規定を設けております。
第四は、外国法の適用がわが国の公の秩序に反する場合には、それを適用しないこととしております。
第五に、この法律は、前に述べました条約が日本国について効力を生ずる日から施行することとし、これに伴う経過措置を定めるとともに、法例及び民法について所要の整理をすることとしております。
以上が、この法律案の概要であります。何とぞ慎重御審議の土、すみやかに御可決いただきますよう希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00919640303/5
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006・濱野清吾
○濱野委員長 以上をもちまして、各案の提案理由の説明は終わります。質疑は後日に譲ることといたします。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X00919640303/6
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