1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年三月二十四日(火曜日)
午前十一時六分開議
出席委員
委員長 濱野 清吾君
理事 鍛冶 良作君 理事 唐澤 俊樹君
理事 小島 徹三君 理事 三田村武夫君
理事 神近 市子君 理事 坂本 泰良君
理事 細迫 兼光君
大竹 太郎君 亀山 孝一君
河本 敏夫君 坂村 吉正君
四宮 久吉君 田村 良平君
千葉 三郎君 中垣 國男君
中川 一郎君 中村 梅吉君
石野 久男君 田中織之進君
松井 政吉君 山本 幸一君
横山 利秋君 竹谷源太郎君
志賀 義雄君
出席国務大臣
法 務 大 臣 賀屋 興宣君
出席政府委員
警 視 監
(警察庁刑事局
長) 日原 正雄君
検 事
(民事局長) 平賀 健太君
検 事
(刑事局長) 竹内 壽平君
法務事務官
(入国管理局長)小川清四郎君
委員外の出席者
大蔵事務官
(国税庁直税部
所得税課長) 大島 隆夫君
専 門 員 櫻井 芳一君
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三月二十四日
委員井伊誠一君辞任につき、その補欠として、
石野久男君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員石野久男君辞任につき、その補欠として井
伊誠一君が議長の指名で委員に選任された。
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三月二十一日
商法の一部を改正する法律案(内閣提出第一三
九号)(予)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
刑法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二
八号)
不動産登記法の一部を改正する法律案(内閣提
出節五八号)(参議院送付)
法務行政及び人権擁護に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/0
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001・濱野清吾
○濱野委員長 これより会議を開きます。
刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。
前回に引き続き質疑を行ないます。坂本泰良君。
〔「不動産が先だ」と呼び、その他発言する者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/1
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002・濱野清吾
○濱野委員長 坂本君、質疑を願います。——坂本君、約束どおり質疑してください。——坂本君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/2
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003・坂本泰良
○坂本委員 先般来、刑法の一部改正、いわゆる身のしろ金、営利の目的をもってというこの刑法を改正する、改正するというのは、新しい条文を設けることになるわけです。そこで私は、日本刑法の根本問題について大臣にお伺いをいたしたいのであります。
御承知のように、日本刑法はいわゆる目的刑主義であり、主観主義の刑法で教育刑主義であるわけであります。したがって、その根拠に基づいて日本刑法を見ますると、その特色は、いわゆる牧野博士その他が言われておりますように、法定刑の幅が非常に広い。それは第一には裁判官の、具体的刑事犯につきまして、裁判をするにあたって、そのいろいろの客観的の関係が違いますから、量刑の点について裁判官にまかせて、そうして最も妥当な判決を下す、こういうことにわれわれは聞いているわけであります。したがいまして、日本刑法はそのたてまえによってできておりますのを、このごろ、この日本の刑法の基本的体系がこわされておるように考えられるのです。それは刑法の一部改正ということで、いわゆる不動産侵奪罪を加えるとか、そのときどきの情勢によって刑法を追加いたしまして、そうして条文をふやして、刑法の改正がここ数年来行なわれております。それは名犯罪について構成要件を新たにこしらえまして、そうしてそれに対する法定刑をきめる、こういうことになっておりまして、今度のこの刑法の改正も、いわゆる吉展ちゃん誘拐事件その他の犯罪が急にふえたから、それを威嚇するために法定刑をふやし、さらに別な刑法の構成要件の新たな規定をする。こういう傾向にあるわけでありまして、いままでは裁判所は恐喝罪あるいは営利誘拐罪をもって処断していたのを、今度は、いわゆる身のしろ金の問題を中心にして刑法を一カ条追加して、そうしてそれを無期刑まで法定刑を定める、こういうふうなことになっております。これはとりもなおさず、やはり応報刑主義の威嚇主義を基本にしているものである、こういうふうに考えられるわけです。そこで一番考えなければならぬのは、けさの朝日新聞にも出ておりましたが、古展ちゃん誘拐事件は一カ年かかってまだ犯人がわからない、四十名何がしかの刑事はこれを残して今後捜査に当たるからというようなことで、これが立ち消えになるじゃないかと思われる。警察庁のほうから見えてますか。——そこで、私は日本の刑法の基本をこわす前に、捜査上の欠陥がある。捜査上の欠陥で犯人があらわれないということが、今度の刑法の改正のほんとうの目的じゃないかと思うのですが、そういうふうにして、捜査の不十分、不熱心、欠陥に基づいて犯人がわからない、だから無期懲役まで処するという新しい法定刑の刑法をつくって、そうして国民を威嚇する、こういうふうに出ておると思うのであります。いかに法定刑を重くしましても、捜査の欠陥があれば犯人がわからない。犯人がわからなかったら、いかに法定刑の重い刑法をつくりましても、それを処罰することができない。したがって、とりもなおさず、何べんも申しますように、威嚇の目的だけしかこの刑法の改正は役立たない、こういうふうに考えられるわけであります。法制審議会の会議録を見ましても、無期刑まで引き上げるのはあまりにも威嚇じゃないか、もっとこれを緩和する方法を考えなければ、単に刑法の法定刑だけを引き上げても威嚇だけではいかぬじゃないか、こういうことになるわけであります。したがって捜査の方向には、このごろの治安対策、いわゆる労働運動、大衆運動等には特別体を組織して非常な訓練をやる、そうして労働争議とか大衆運動に対してはどんどん逮捕して、そうして実際犯罪を犯していない者でも逮捕して捜査を進める、こういうあまりにも階級的にへんぱな捜査を進めるから、社会的なこういう身のしろ金その他の犯罪がふえると同時に巧妙になってくる。この方面の捜査は少しも進まない。労働運動、社会運動はどんどん組織的に訓練して逮捕している。そして弾圧する。その結果、こういう一般社会犯罪に対する捜査が不十分である。一年もかかって犯人がわからない。すなわち、捜査の欠陥、捜査の不十分を刑法を改正して法定刑を重くしてやろうというのが今度の刑法改正のほんとうの姿じゃないかと私は思う。そういう点について、第一は、日本刑法の目的刑、教育刑主義の体系をこわす、こういう刑法の改正で法定刑のつり上げ、威嚇主義、応報主義をもって、はたして身のしろ金その他の犯罪が撲滅できるかどうかということを非常に疑うのであります。この点に対する大臣の見解と、吉展ちゃん誘拐事件の捜査が一年もかかってまだ犯人がわからない。そういう状態ではこの刑法を改正して法定刑を重くしても何ら刑法の目的を達しない、こういうふうに考えますが、警察当局はどういう見解を持っておられるか、まずこの二つについて承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/3
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004・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 お答えをいたします。目的刑かどうかというお説でございますが、刑法上のたてまえとして一つの方針のみでいくというわけにはまいらぬと思います。結果加重等の配慮をする場合もございます。いろいろな角度から考えなければならぬので、犯罪の性質が悪性であれば刑も重くなるということは、私は当然のことだと思うのであります。裁判官の裁量の範囲を広くする、これも一つのけっこうな御方針だと思いますが、しかしながら、犯罪の性質によりまして、法定刑の定め方——一番重い罪にすることもあるということは、日本ばかりでなくどこの国の法制にもあることであります。いろいろな角度からきめなければならぬわけでございます。最低限をきめます場合には、威嚇でありませんでも、当人、犯罪者が更生、遷善するためにも、悪質の犯罪につきましては相当の期間が要るという点もあるわけであります。各種の角度から考えましてきめたわけでございまして、決してこれが一つの方針のみで、威嚇的のみにいくのだという立場ではないのでございます。
それからいわゆる吉展ちゃん事件で捜査が思うようにまいりません。長くいつまでもかかる、まことに遺憾な点でございます。しかし、捜査当局は全力をあげてやっております。お話しのように、この捜査が早く効果をあげるようにむろん考えなければなりません。しかし、それのみによって悪質な犯罪を刑を軽くしておくというわけにはまいらぬのであります。捜査の点から、すべてが集まりまして目的を達するわけでございます。これのみによって捜査の欠点を補っていく、さような考えではございませんので、捜査は全力をつくしてやる、改善すべき点は改善する、刑の法定刑も適当な程度に持っていく、こういう考え方でいっているわけでございます。決して捜査、あるいは刑の法律上における範囲、その一方によって目的を達するという考え方ではない次第でございます。捜査も、こういう重大問題につきましては全力をあげ、もっと効果があがるように努力しなければなりませんし、刑の法定刑につきましても、犯罪の性質及びそういうものがひんぱんに行なわれる現状を考えまして、この程度にするという必要を痛感いたしたわけでございます。いろいろ御議論もございまして、単にはこの犯罪の性質から、殺した場合には殺人罪の適用があるわけになっておりますが、これでなくて、むしろこの犯罪としてその場合も考えていいのじゃないかという説も唱える方もあったような次第でございまして、これはいろいろな点等から見まして、決して重きに過ぎるものじゃない、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/4
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005・日原正雄
○日原政府委員 吉展ちゃん事件につきましては、お話しのように一年になんなんといたしますのに、いまだ捜査のめどがつきません。まことに申しわけなく存じております。
この事件の捜査につきましては、当初の捜査につきましても欠陥がございまして、またその後の捜査につきましても、いろいろと欠陥があったのではないかと思います。われわれとして、それらの捜査上の欠陥につきましては十分に反省、検討をいたしまして、完ぺきな捜査体制がしけるように努力をしてまいりたいと考えております。ただ、かような凶悪犯に対しまして、私どもの考え方としては、その法定刑のいかんにかかわらず、捜査上の欠陥は欠陥として反省、検討をしていきたいという考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/5
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006・坂本泰良
○坂本委員 本案の提案理由も、法制審議会の刑事法部会の刑事局長の説明も大体同じでありますが、このすべてを見ましても、犯罪が起こる、捜査が十分でない、だからこれくらいならいいだろうというので、同一の犯罪がどんどん起きてくる。さらに捜査に欠陥がある、捜査によって犯人がわからない、こういうのが犯罪がふえる一つの原因になっておると思われる。そういうような犯罪に対して、法定刑だけを重くして、特別な犯罪構成要件の刑法をつくっても、私は犯罪の撲滅はできないと思います。もちろん日本刑法は、憲法上罪刑法定主義をとっておりまして、そして法のもとにおいて処罰することになっておる。その範囲内の刑法の規定は、われわれは了承するわけです。了承しておるその刑法は、先ほど来いろいろ申しましたように、目的刑主義であり、教育刑主義的であって、そして応報刑主義で、決して犯人を憎んでそれを弾圧するというものであってはならない。これが日本国憲法の罪刑法定主義をとった心髄であるし、さらにそのもとにおける日本の刑法であると思う。ですから、犯罪が起きましたならば迅速果敢な捜査によって、その犯人を検挙して、その犯人についても、かりに犯罪を犯したからといってだけ責めるだけでなくて、やはりいろいろの原因その他いろいろの情勢があるし、さらにまた犯罪を考えますと、やはりそのときの政治の行き方の悪い点、ことに現在は独占資本によるところの、資本家擁護のための法律、刑法もそういうふうになっておる。そういうふうに刑法の改正もいきつつある。そして労働争議とかその他の憲法上認められた正しい労働運動に対しても、権力をもってこれを弾圧しておる。警察当局はそっちのほうだけに重点を置くものだから、一般刑法の犯罪の検挙ができない。その一つのあらわれが、私はこの身のしろ金要求の犯罪となってあらわれておるのじゃないか、こう思うのです。そういたしましたならば、いかに刑法を新たに改正して、そして重く罰したところで、決してその犯罪の撲滅にはならない。また重くしたところで、その犯人がわからなかったら刑法は空文に帰するわけです。ですからまず刑法の規定、いわゆる法定刑と、その法定刑をうまく具体的犯人に適用して、適正公平な判決をくだすのには、その前提として、迅速果敢な捜査に待たなければならぬ。その捜査が階級的に立って、公安事件その他に重点を置いていく結果、こういう一般犯罪についての検挙がおろそかになるし、結局一年もかかって犯人がわからない、こういう結果になっておる。そういうことを考えますと、単に刑法を改正して、そして罪刑法定主義のもとにおける日本刑法の体系をくずす、こういうことになると思う。近くまた審議する暴力行為の改正も、やはり同じ経路をたどって、そして幾らでも犯罪をふやしていく、常習犯をふやし、その他の犯罪をふやし、さらに法定刑の最低を引き上げ重く罰する。そして公安事件については、どんどん捜査を進めて間違った捜査をやる。犯人でない者を検挙したりなんかする。一方には一年かかっても犯人がわからずに、そして社会不安を生じたから新たな刑法をつくって重く罰して、しかも無期懲役に処するというのは、これは応報主義、威嚇主義のあらわれじゃないか、こういうふうに思うわけです。そういうふうにせっかく世界に理想的な刑法を、次々にこま切れ的に改正して、応報主義、威嚇主義に持っていくという点について、非常に遺憾に存ずるわけなんです。それが結局また捜査の不手ぎわ、一方的に公安事件のみの捜査に重点を置くから、一般犯罪に対する捜査は軽んぜられて、わからない。こういう結果になるから、この刑法を一部改正しましても、私は、いまのような捜査のいき方では、これは決して犯人を適正公平に処罰をして社会防衛の火をあげるということは困難ではないかと思う。そういう点についての大臣の見解をもう一度承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/6
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007・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 いまのおことばの中に独占資本を優遇して扱っている、そういうことで世間の秩序を保てるか、こういう犯罪を防止できるかというお話であります。また労働運動を弾圧する、それはこの法案に全く関係のないことだと思うのでございます。ことに独占資本云々というお話でございますが、ことに戦後はその点はお話と全く逆になっております。大体所得の差にいたしましても、戦前の個人所得などは、その最高は、現在の個人所得は戦前の実質の四分の一くらいに下がっておる。日本には金持ちはなくなったと言ってもいいような状態だと思います。それから所得の各層の分布を見ましても、最低所得層の平均が、最高に戦前よりか非常に接近しておりまして、これまた貧富の懸隔が非常に接近をしてきた。格差が少なくなったということは、私はいま数字を持っておりませんが、数字が明瞭に示しておるのでございます。いまの個人の最高所得にしましても、戦前の最高所得者は日本では、四百倍に貨幣価値を換算いたしますと一年に約十六億円、いまは最高の者が三億円余り、むしろ小粒になりました。それから国民所得などを見ましても、大体中産階級、中くらいのところに、五十万円から百万円くらいの所得のところが非常に人数がふえておりまして、所得総額もふえております。その上下が非常に減っておるというのが実情でございます。大勢ではむしろお示しのことと逆だと思うのでございます。先日も国会におきまして御質問がございまして、私は社会保障に熱心であるが、それが何ゆえに政策減税、地方減税などをやるか、矛盾ではないかという御質問が、ある委員からございました。それなどは全く考え方がわれわれは逆なんでございまして、私どもは、この全体の国民の生活改善をどうしてやるかというためには、一方においては配分を公正にすると同時に、一方におきましては国民所得の総額をふやしまして、配分資源をふやすということに同時に着眼をしておるわけでございます。これは一方的に配分にのみ片寄りますと、いわゆる貧乏の分け合いで、いかに公平であってもそれは貧しい生活の公平になる。そして乏しきを憂えずひとしからざるを憂うというが、乏しきも憂え、ひとしからざるも憂うというのがわれわれの立場でございます。それでいわゆる政策減税というのは、結局日本の国民所得の総額をふやし、そのために産業経済の興隆をはかるためには、日本といたしましては資本の蓄積が重大である。また輸出貿易を盛んにして、必要な原料資源、食糧等を輸入しなければならぬ、そのための金融でございますから、そういう意味におきまして日本の所得総額をふやすためにわれわれは政策減税をやった。これは今日ばかりが政治の目的じゃない。将来の日本をよくするためのいわゆる庶民階級にうんと所得をふやすためにわれわれはやっておる。玉つきでいえば、玉を直接ねらうにあらずして、台をねらってはね返りで玉の当たることをねらっておるのでありまして、その考え方は全く独占資本に奉仕じゃない、あるいは巨額資本をむしろ利用していると見ていいのだと思うのでございます。
そういう考え方をいたしておりまして、こういう立法をするときに、むしろ社会状想を経済的にはよくする、現に犯罪も非常に日本にふえていると申しますが、ふえているのは交通犯罪で、次は暴力犯罪、窃盗や詐欺やそういう財物犯罪はもとから見れば三〇%も減っているのでございまして、むしろ経済生活はよくなったから犯罪が減っている、こう言ってよろしいと思う次第でございます。また、暴力行為に関します法律のご審議をお願いいたしておりますが、これなども全然労働運動を弾圧するなんという考えはごうもございませんし、また、その労働運動の際に起こりました衆力行為は、これは処罰しなければなりませんが、これも数字からいいまして、そういう際にあまり起こってない。特に凶器、銃砲刀剣類をもってしますような暴力行為というものは、幸いそういう際に起こっていないのでございまして、今回の改正のごときは全然それとは縁のない純然たるいわゆる町の暴力を目的といたしておる次第でございまして、何とぞ御了解を願いたいと思うのでございます。
なお、そのほか刑事政策の面につきましては、先ほど申し上げたのでありますが、なお補足すべき点がございますれば政府委員より申し上げることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/7
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008・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 ただいまの御質疑につきまして、一、二気のつきました点をお答えさせていただきます。
日本の刑法が主観主義刑法のもとでまことに幅の広い法定刑を持った理想的なものであるというお話がございましたが、今回の改正が、その法定刑の幅を狭めたという観点に立っての御談論もあったように思うのでございますけれども、私どもは、なるほど法定刑が無期、下は三年ということでございますので、この法定刑自身幅の広いものでございます上に、この種の犯罪の特性としまして、安全に被害者を返してきた、生還させたという場合には必ず減軽をするという、いわゆる減軽規定を置いておるのでございまして、そうなりますと、無期懲役という刑はなくて、減軽半分になりますので、一年半から十五年ということになりますが、そういう刑に変わってくるわけでございます。この点を見ましても、この刑が幅の非常に狭いものだということは言えないのでございます。先ほど牧野先生のお話もございましたが、牧町先生は有名な主観主義刑法学者でございますが、その牧野先生も、立法は妥協であるということを私どもは大学で教わった経験がございます。現にそういうふうに牧野先生自身も日本刑法の解説においてそのことを述べておられます。その後の刑法理論の発展等を見ましても、やはり罪刑法定主義というものをはっきりさせていくためには、ある程度犯罪類型をはっきりしたものにしていくという必要があるのでございまして、こういう点から見ましても、この刑法の改正をもってただいまのようなお考えで御批判をいただきますことは、実は当たらないように思うのでございます。
それからなお、もちろんこの種の犯罪を防遏いたしますためには的確な迅速な捜査と処罰の実現が必要であることは、私も全く同感でございます。遺憾ながら、この種の事件でしばしば犯人不明あるいは生死の不明というような事態がありますことは遺徳でございますけれども、だからといって、それはそれといたしまして、それでは当てはめる刑が適正であるかどうかということとは別問題でございます。本件について考えてみますと、現行の営利誘拐罪という規定ではとうていこれに対応するだけの法定刑としまして不十分であるのみならず、いま申したような生還を期するというような意味の刑事政策的考慮も施されていない現状でございますので、そういう点を整備いたしまして犯罪の予防に役立てたい。こういう考えでございまして、さらに他意はない次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/8
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009・坂本泰良
○坂本委員 戦前戦後を通じて権力者の中にあり、資本家の中にあって見られた日本刑法と、われわれみたように小作百姓のせがれが勉強して日本刑法を見たものとはやはり見方が違うと思います。実は、きょうは「刑事法学辞典」を持ってきました。これは私の頭の拡張だと思います。私のささやかな頭の拡張は辞典だと思います。これに基づいてわれわれみたような一般の働く勤労大衆の立場からの日本刑法と、大臣が権力者の中にあり、独占資本の中にあって見られた日本刑法とは、同じ刑法であってもその見方が違う。さらにまた、先ほど来私が申しますような捜査の結果もそこから出てくると思う。そういう点について、私は、できましたら五日でも一週間でも私の頭の拡張を手がかりとしまして、大臣と今度の刑法の改正を中心とした、目的主義の日本刑法の中でやっていかなければ、国の治安も国家の発展もない、かような考え方で出てきたわけでありますが、時間がありませんから、できたらまたあとで質問をすることにしまして、この程度で打ち切りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/9
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010・濱野清吾
○濱野委員長 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/10
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011・濱野清吾
○濱野委員長 次に、不動産登記法の一部を改正する法律案を議題といたします。
前会に引き続き質疑を行ないます。坂本泰良君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/11
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012・坂本泰良
○坂本委員 たいへん時間をとりましたから一、二点質問いたしたいと思います。
この不動産登記法の改正は、いろいろ専門的に見ましても、やはり現在の社会にあって迅速簡便に、特に登記は国民の財産に対するいわゆる対抗要件であるわけでありまして、憲法上保障された財産権の確保の上において重要であり、それが今度相当の手続上の改正が中心になっておりますが、手続を簡便にする、さらにまた、簡便にするけれども確実を期する、こういう点に努力を払われてこの改正案が出ておるということに対してわれわれは了解しているのでございます。
それで、その中について質問もありまするが、これを省略しまして、このような不動産登記法の改正をいたしまして、さらにまた従来のいわゆる土地台帳の改正等々によりまして、相当法務当局の職員の労働強化になっておることを私たち痛感しておるわけでございますが、今度の改正によって相当仕事がふえるわけであります。土地台帳の改正とあわせて相当ふえると思いますが、大体従来の職員の数でどれくらい事務がふえて人口を必要とするか、概略でいいから、その点をまず承っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/12
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013・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 法律案の趣旨につきまして御了解をいただきまして、まことに感謝にたえない次第でございます。
大体、本法案は正確性を失わないで迅速に手続を簡易にするということを主眼にいたしておりまして、手続は、この法律案の結果はいわゆる手間が省ける、仕事量を少なくするということが主眼でございまして、具体的にどこがどうかということにつきましては政府委員よりお答えを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/13
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014・平賀健太
○平賀政府委員 ただいま大臣から御説明がございましたように、今回の法律案は、登記所の職員に新たな負担を課するということよりは、従来あまり実益のないことで煩瑣な手続をしておった関係もございますので、むしろそれを簡素化、合理化するということが主たるねらいでございます。
たとえば、今回の改正案にございます元本並びに利息の弁済期の定めの登記の廃止、いわゆる担保権の手続の簡素化でございますが、共同担保目録を簡素化するとか、あるいは不動産の合併の登記を簡素化するとか、その他すべてが事務の簡素化につながるというものでございまして、登記所職員の負担という見地から見ましても、決して負担の増加になるものではございませんで、むしろ負担を軽減する、しかもそれによって登記の正確性、確実性が害されるものではない、そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/14
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015・坂本泰良
○坂本委員 専務の簡素化はいいですが、この登一法の改正によって、それから土地台帳等の新しい制度によって事務が非常にふえておることは事実です。したがって法改正は定員の増加、それからまた事務の迅速をはかるためには、いわゆる全国にわたる登記所の職員に対してはやはり級別定数の拡大、こういう点について相当の増員をはかり、考慮をしなければならないと思うのですが、そういう点について法務省事務当局は、法改正はしたけれども、それを実施して国民のためになるようにするためには、いま私が申し上げましたような定員の増大、それから級別の関係等々も考慮しなければこの実況はできないと思うわけです。その点について事務当局のほうはどういう考えを持っておるか、その点承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/15
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016・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 ただいま政府委員より申し上げましたように、この法律案自体では、登記所の事務分量は増加するよりもむしろ減少するくらいでございますが、しかし、いま坂本委員のお話しになりましたように、全体として登記所の事務分量が非常にふえつつある、これは全くお示しのとおりでございます。非常な増加でございます。これに対しまして、こういう法律案を出しますのも、元来必要でもございますが、事務分量が非常にふえるところであるから、なおさら簡易迅速化ということが大事だ。この法律案を出しました気持ちも、やはり何とか事務分量に対する登記所職員の負担を減したいというのが一つの動機でございます。お話しのように、この法律案が出る、出ないにかかわらず、登記所の人員を大いにふやさなければならぬと私どもも痛感をしております。事務当局もきわめて熱心にそれを考えております。今年、三十九年度の予算におきましても、二百人の増員をいたしております。二百人ではほんとうは足りないのでございますが、昨年も二百人、その前に、いまちょっと忘れましたが、百人増しましたときもございまして、これは継続的に毎年ふやしていきたい、かように思うのでございます。しかし、二百人ずつ増しますとそれでいいかといえば、むろんわれわれは足らないと思っておりますが、財政当局のほうにおきましても、ほかのいろいろな政府の仕事におきまして人口の不足のものがずいぶんございまして、まあどこも思うだけの増員ができないというので、そこはやむを得ません、本年も二百人でがまんをした次第でございますが、将来これはできるだけ続けて増してまいりまして、仕事の負担を適正にするように努力を続けたいと思っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/16
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017・坂本泰良
○坂本委員 全国にわたる登記所の職員は、先般も質問しました税通の、いわゆる税務署に通知する分の事務の増加とか——法改正をしてそれがずっと完全にいきますれば事務の簡素化になるが、それまでには相当の増員がいる。したがって、この法を改正し、それを、よく実施するためには、やはり何としてもそれを担当する職員が安心して働き、相当の報酬をもらって、そして働くところにやはり法律の万全の実施ができる、こういうふうに思うわけです。したがって、全国の登記所の職員に対しては、税通の問題等々で非常に事務がふえていると同時に、臨時雇いが非常に多くて、これが本行にならない。こういう点が他の官庁の職員に比して非常に多いと思うのです。そういう点についても詳しく御質問をしたいと思ったのですが、省略しまして、宿直の問題、定員増の問題、それから級別是正の問題等もありますが、この点は他日に譲りまして、ぜひひとつ職員の労働強化にならないように、また職員に対しては適当な月給をやり、法改正がその職員の手によって完全に実施されていくように要望いたしまして、質問を打ち切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/17
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018・濱野清吾
○濱野委員長 田中織之進君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/18
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019・田中織之進
○田中(織)委員 二点だけまとめて質問いたします。
簡素化は非常にけっこうだと思うのですけれども、改正の第一点の抵当権その他担保権の登記で元本及び利息に関する弁済期の定めの登記を今度廃止することになるわけです。これは私しろうとでありますけれども、やはり抵当権、担保権の、この権利の存続期間と切っても切れぬ関係にあると思うのです。それから、ただ単に抵当権の設定というようなことではなしに、同時に、たとえば代位弁済というようなものがついてまいります関係から、やはり抵当権の実施等の関係でこの期日のことが現実の問題にはなるのではないかと思うのです。これを廃止した関係から、基本になるたとえば金銭賃借の場合における元金及び利息の弁済期というものと抵当権あるいは担保権の設定期間との関係の問題については、この改正によって、不都合を現実に生じないかどうか、 この点が一つ。
第二点はは、不動産の合併の場合、合併前の権利の移り変わりを移記することを廃止する、これはその意味からいえば合併後の不動産の登記の謄本等はきわめて簡明になることはわかるのでありますが、問題は、その不動産合併の問題にあるいは犯罪的なものがある、あるいは錯誤があるとかいうような関係の問題が現実にはあると私思うのです。そういうような場合には、合併前のいわゆる権利の移り変わりというようなものは合併後は移記することを廃止はなるわけなのですけれども、それのいわゆる不動産の台帳といいますか、そういう関係は、合併前のものはこれは永久保存になるのか、あるいは一定の期間があって合併後の新しいものだけが台帳に記載される、こういうことになるのか。永久保存だということになれば、合併に伴うそういうような故障が出てまいりました場合には、従来の経過は登記所の備えつけの台帳によって調べることができると思いますが、最近不動灘ブーム等の関係から見て、合併の問題については私必ずしも適法でないものが登記をされるケースがなきにしもあらずだと思うので、そういう点についての配慮がこの改正にあたってなされたのかどうか。この二点についてお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/19
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020・平賀健太
○平賀政府委員 第一点の元本並びに利息の弁済期の定めの登記をしないことにいたしました理由につきましては、前回詳細に御答弁申し上げたのでございますが、繰り返しますと、現在の担保権の登記の運用の実情を見ますと、単一の確定期限を弁済期として定めました登記はほとんど実例がないといってもいいくらいでございまして、これは多くは分割弁済になるのでございます。しかも期限の利益の喪失の約款がついておりまして、弁済期の定めの登記がしてございましても、必ずしも実態は登記どおりにはなっていない。分割弁済を一回でも怠ると期限の利益を全部について失うというような約款になっておりますと、たとえ分割弁済の定めが登記されておりましても、実際はすでに弁済期が到来しておるかもしれないということに相なるわけでございます。そういう次第でありまして、弁済期の定めの登記は、極端に申します一種の気休めといってもよろしいような実情なのでございます。ところが、ただいま申し上げましたように、これが分割弁済の例が非常に多うございます。それからまた期限の利益を喪失する事由なんかも、たくさん事由が掲げてございます。そういうのを全部登記いたしますと、登記用紙の一枚全部あるいはそれ以上にもわたるというのが実情でございます。それほどまでの手数を要して、登記をする実益がきわめて薄いのでございます。抵当権の設定者、あるいは債務者、債権者——債権関係の当事者でございますので、弁済期の定めはよく知っておるはずでございます。問題になりますのは、その不動産を取得する第三者の側におきましては、ある程度実益がないとも言えぬと思うのでございますけれども、いま申し上げましたように、弁済期の定めというのが実際の運用の状況におきましては一種の気休めのような状態になっておりまして、不動産の第三取得者に対し、それが保護する役目を果たすというようなこともほとんどない。ほとんど実益がないといってもいい状況なのでございます。そういう関係でこの弁済期の定めの登記を廃止するのでございます。この弁済期の定めが、非常に膨大な定めがされておりますために、先ほどからもお話が出ましたが、登記所の職員の非常に過重な負担になっておりますのみならず、申請人にとりましても、これが大きな負担なのでございます。そういう関係で、この定めの登記をすることを廃したのでございます。
それから第二点は、合併の登記を簡素化した点でございますが、まず、合併の登記が行なわれる際に、何らか不正の手段でこの合併の登記がされる懸念はないかという点について申し上げますと、この法律案におきましては、合併の登記を申請する際には、その合併の対象となっております元筆の不動産があるわけでございますが、その不動産の登記権利書を添付して合併の登記を申請するということにしております関係で、ほんとうは所有者でない者が他人の不動産についてかってに合併の登記をするというような懸念は生じないと考えられるのでございます。合併の登記それ自体は、そういうわけで違法な合併の登記がされるというおそれはございません。それからまた、その合併の対象となりました元筆の不動産につきまして、登記に無効原因があるというような場合はどうなるかという点でございますが、まずこの合併の登記をいたしますと、元筆の不動産が登記されております登記手続は、閉鎖の手続をいたすことになります。この登記用紙が閉鎖されますと、これは二十年間保存する。保存期間は二十年間でございます。でありますから、もし元筆の不動産につきまして、たとえば所有権移転の過程におきまして不正があって、合併当時の所有名義人がほんとうの所有者ではないというような場合がかりにあるといたしますと、この救済手続はどうするかということになりますが、その場合には、一たん合併しました不動産につきまして、この問題になっている元筆の不動産を分割の手続をいたしまして、その合併による所有権の登記が同時にこちらに移されてきますが、それを抹消いたしまして、前の所有権の閉鎖されましたところの登記用紙から、前の所有権に関する登記用紙をこちらに移してまいります。それに実は無効原因があるわけでございますが、それをさらに抹消いたしまして、そうしますと、その前の所有者の名義に回復になるわけでございますが、それも閉鎖登記簿のほうでその結果ははっきりいたしておりますので、真正の所有者の名義に回復されることに相なるわけでございまして、このように合併の登記手続を非常に簡素化いたしましたけれども、真正の登記上の権利者、真正の権利者の保護に欠けることはないというふうに考えておるわけでございます。
それからなお、この閉鎖しました登記用紙は、保存期間は二十年間でございますが、いままでの実例に徴しますと、閉鎖しました登記用紙の保存期間としては二十年でだいじょうぶで、さらに二十年もたった上で問題が生ずるという事例はいままで発生いたしておりません。二十年間保存されます関係で、ただいま御懸念のような危険が生ずるということはないと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/20
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021・田中織之進
○田中(織)委員 答弁はよろしゅうございますが、第一点の問題については、局長あるいはお金を借りたことはないかもわかりませんが、こまかいいわゆる弁済の規定あるいは契約というようなものについては、金融機関の場合でも、金を借りる者は、借りられればいいということで、あまりこまかいそういう規定については承知しないで借りる。したがって、分割払いの償還金が一回でもおくれた場合に分割償還の権利を失うわけですけれども、そういうようなことから、ともすればやはり紛争が生じておるのが現実だと思うのです。その点から見て、やはり抵当権を設定して債務者になった債務者の保護という点においては、私はこれが全然実益がないものではないというのが実情ではないかという点から質問したのでありますけれども、確かにそういう支払い約款というようなものまで全部登記するということになれば、繁雑なことになるので、繁雑さの点から見ればやむを得ないとは思いますが、私は必ずしも債務者保護、抵当権の抵当物を提供した人の権利の保護という点において将来問題が起こる懸念がなきにしもあらずだ、このように考えて質問したのであります。この点は私の意見でありますから、実際にそういう借り入れ等を行なう場合の、いわゆる債務者のほうの注意力というものを充実させなければならぬということに結局帰着するかと思う。
それから第二の問題については、二十年保存しておいて、もうそれ以上、あるいは二十年という間にも問題はないということでありますが、高知市の問題で、市を相手に現在抗争中のものにつきましては、これは合併、ことに町村合併で市に移りまして、市がいわゆる管理という立場で登記をいたしました関係の問題が現実の問題になっておるわけなんです。したがって、それが登記簿の原本にどうなっておるかということが現在訴訟で争われている現実のケースがあるわけです。私、いわゆる合併前の書類の保存期間について考えたのでありますが、少なくとも二十年間は保存するということであれば、通常の場合は、かりに合併に伴う何らかの一枚が起こりました場合においても、それにさかのぼって調べる方法は残されているわけでありますから、通例の場合ならばそれで調べる道は残っておるという点で了解できるのではないかと思います。この点で私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/21
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022・濱野清吾
○濱野委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/22
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023・濱野清吾
○濱野委員長 これより討論に入る順序でありますが、別に討論の通告もございませんので、直ちに採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/23
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024・濱野清吾
○濱野委員長 起立総員。よって、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
おはかりいたします。ただいま、可決せられました本案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと思います。御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/24
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025・濱野清吾
○濱野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
〔報告書は附録に掲載〕
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/25
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026・濱野清吾
○濱野委員長 法務行政及び人権擁護に附する件について調査を進めます。
質疑の通告がありますからこれを許します。横山利秋君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/26
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027・横山利秋
○横山委員 うわさによりますと、日韓会談が不日終了される見通しがあるということであります。本委員会は日韓会談の中の法的地位について重要な関心を持っております。昨年の二月十二日、本委員会で中垣法務大臣は、在日朝鮮人には国籍選択の権利はなく、国籍は日韓会談によって最終的にきめられるものであるという趣旨の答弁をなさった旨私は承知いたしております。法務大臣は前大臣と同じようなものの考えでございますか、まず伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/27
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028・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 前大臣の御答弁のとおりでありまするが、なお少し御説明申し上げたいと思います。
外国人の国籍につきましては、日本の政府がこれを決定するわけにはまいりません。日本人ではない、外国人ではある、こういうことだけははっきりいたすわけでございます。今度日韓会談が妥結したらどうなるかと申しますと、まだ会談は済んでおりませんからはっきりは申し上げられませんが、ただいまのところ推測いたしますのに、当人が韓国側を選択いたしまして、韓国側がそれを認めた場合には韓国国籍ということがはっきりいたします。いまお証しのように会談できまるというのは、その意味を申し上げておるわけでございます。本人が韓国国籍を選択しません場合、韓国が認めない場合には、それだけでは国籍は日本としては明らかでございません。外国人ということは明らかですが、どこの国籍かということは日本側ではきめられない状態にある、国籍が明らかでない、かようになる次第でございますから、日韓会談によってきまると申した意味はさような意味だと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/28
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029・横山利秋
○横山委員 そうしますと、在日朝鮮人には国籍選択の自由がある、日韓会談によって個々の朝鮮人の具体的な国籍がきまるわけではない、 いわゆるルールがきまるのだ、こういうふうに大臣の御答弁を拝聴してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/29
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030・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 そう片づけられては困るのです。日韓会談の結果、永住権を与えられますについては、本人が韓国国籍を選択し韓国が認めたなら、そういうふうにきまると思います。韓国国籍と日本が認めればそういうふうになります。会談がそうなりました場合を申し上げておるので、これを概略申せば韓国国籍は会談の結果きまると申しても差しつかえないと思うのでございます。しかし、韓国国籍でない場合は日韓会談だけではきまりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/30
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031・横山利秋
○横山委員 いま伝えられる法的地位について日本及び韓国の立場の相違がある旨聞きましたから、具体的に一つ一つ伺いたいのでありますが、まず第一に永住権と称せられるもの、これはことばの意味をまず聞きますが、日本政府は永住権を与えるという立場に立っておるのか。何か承れば協定在留権ということばが言われておるそうでありますが、正確にはどのことばをお使いになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/31
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032・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 正確なことは、会談が成立して条約でもきまりましたらはっきりすると思いますが、私どもはいま内部の審議では永住権と言っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/32
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033・横山利秋
○横山委員 その永住権を付与される資格が、日本と韓国との間に主張の相違があるやに聞いておりますが、要するにミズリー号以前、つまり戦争前からおった者で講和条約発効までおった者、それからその生まれた子供というような資格について、日本と韓国との間に主張の相違がございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/33
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034・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 いまの問題は話し合い中でありまして、しっかりしたことは申し上げられませんが、大体は戦争終結前までに日本に来ておった在留鮮人でございます。今日までと申しますか、日韓の今度の会談ができまして条約ができますまで引き続いて日本におった人、その子供、孫も入るようになるかもしれません。だんだん孫の時代にもなるかもしれませんが、大体そういう考えで一致し得るものではないかと思っております。そこへいきますまでには、その切りをどこにするか、いろいろ折衝はあったようでございます。大体いまのような線に落ちつくのじゃないかと一応予測をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/34
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035・横山利秋
○横山委員 条約締結までに生まれた子供及び孫でちょん、こういうのが日本政府の主張でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/35
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036・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 大体さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/36
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037・横山利秋
○横山委員 わかりました。それからそれらに与えられる永住権というものは一体どういうものであるか。伝えられるところによりますと、永住権については、従来の外国人よりも範囲を拡張して永住権による利益を与えるという話を聞いておりますが、永住権によってもたらされる利益というものは何と何をお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/37
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038・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 永住権は、いまほかの在留外国人に対しまして条件がそろった場合にはこれを認めておるのであります。永住権はそういう性質でございますが、今度の在留鮮人と申しますか、それに永住権が与えられました場合には、従来の事実上の形態、つまり日本人としまして日本に長く在留しておった、こういうような点も考えまして、永住権を得る資格につきまして、一般の外国人に永住権を与える場合よりは寛大と申しますか、条件を緩和したもので、たとえば独立の生計を営むだけの技術とか、あるいは財産を持っておる、そういうふうなことも条件にしないでいこう、こういうふうな資格条件につきましても非常に緩和した方法でいきたい。それで、永住権の内容はほかの場合と同じと思いますが、これがいわゆる権利となるか再実上の利益となるか、その辺はまだしかと申し上げられませんが、たとえば生活保護の利益を受け得る、あるいは小学校、中学校、義務教育の学校に日本人と同じく授業料を払わないで入学し得る、こういうふうな現在の在留鮮人に認めております事実上の便宜、利益、恩恵と言ってはあるいはことばは適当でないかもしれませんが、そういうものは大体認めていきたい、こういう考えでございます。
それからなお、永住権で問題になりますのは、永住権とは申しますが、それが非常に犯罪を犯した場合とか、あるいは日本の利益を非常に害しますような場合には、やはり退去命令が出し得ることにはなるわけでございます。しかし、それにつきましても一般の場合よりは緩和していく。たとえば犯罪を犯しました場合でも、何年以上の罪という場合に、その年数をふやしまして寛大にしていくとか、例の貧困とか独立の生計というような条件も緩和する、いろいろそういうような退去の条件も寛大にするというようなこともいま考えておりまして、大体そういう方向にいくのじゃないかと思っておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/38
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039・横山利秋
○横山委員 はっきりとはしませんが、要するに大臣の話によりますと、他の長期に在留しておる外国人よりも、義務教育とか、あるいは生活保護法とか、あるいは資格を得る、独立生計を営む資産のあるなしというようなものについて相当の緩和をするというように承りましたが、このほかたとえば工業所有権だとか、国家公務員になる資格だとか、あるいは強制退去の条件を緩和するとか、そういうことも勘定に入っておるわけでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/39
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040・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 いまの工業所有権や、それから日本人として必要な、資格条件が非常にできぬものはむずかしいと思います。しかし、退去条件が前にも申し上げましたように非常に緩和される、こういうことになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/40
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041・横山利秋
○横山委員 それは日本政府のお考えだと思うのですが、韓国政府はこの永住権の内容についてどういう主張をいたしておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/41
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042・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 これは交渉中でございますから、一々申し上げないほうがいいと思いますが、大体いま申し上げましたような辺に落ちつくのではないか、こういう見込みでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/42
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043・横山利秋
○横山委員 次に、強制退去の理由と称せられる中に、従来の強制退去の理由と区別をして、今度は四項目にしぼるというふうに私は承っておるのでありますが、この四項目の中に、日本の外交上不利な結果を招くような行為というものが入っておりますか。入っておるとすればそれはいかなる内容を持つものでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/43
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044・小川清四郎
○小川政府委員 私自身も法的地位の委員会の委員の一人になっておりますので、大臣にかわりましてお答えを申し上げます。
ただいま御指摘の、伝えられておるところの四つの項目について、退去強制事由をしぼっていくという中に、日本国の重大な外交上の利益を害した場合には退去強制されるというふうな一項目が入っておるのではないかという御質問でございますが、ただいま大臣からも申し上げましたように、一応いろいろな退去強制の事由につきまして日本側とずいぶん長い間折衝をいたしまして、おおむねのところはまとまっておりますが、ただいま御質問になりました重大な外交上の利益を存する場合ということにつきましては、先方の考え方も相当きびしいものもございますし、われわれも相当慎重に考慮しなければなりませんので、この点につきましてはまだ交渉中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/44
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045・横山利秋
○横山委員 日本政府が持ち出した四項目でありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/45
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046・小川清四郎
○小川政府委員 この一つの事由につきましてはいろいろないきさつがございまして、御承知と思いますが、例の二十四条にいろいろの退去強制事由が掲げられておりまして、最後に一般条項と申しますか、ゼネラル・クローズと申しますか、日本国の利益または公安を存したと認定される者という事項がございます。それを入れるか入れないかということにつきまして、先ほど申し上げましたように交渉を重ねてまいった次第でございまして、日本側から申し出たとも言えましょうけれども、そういったゼネラル・クローズを入れるか入れないかという問題につきましては、韓国側からも強い要望があった次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/46
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047・横山利秋
○横山委員 次に、協定の範囲でございますが、南朝鮮のほうは言うまでもなく国籍法によって全朝鮮が韓国民であるという立場をとり、北朝鮮のほうは、また同町に法律をもって全朝鮮は朝鮮民主主義人民共和国国籍の者であるという立場をとっておることは言うまでもないことでありますが、この法的地位の協定をするにあたって、日本政府はそれらについていかなる立場をとっておるのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/47
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048・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 主として永住権等について話しておりまして、その適用があるのは韓国国籍の人でございます。韓国国籍は先ほど申し上げましたようなことできまるわけでございまして、外務大臣も始終申し上げておるように、朝鮮という地域のうちで韓国の事実上支配権の及んでない地域、それはそういうふうに認めてまいりますが、ただいまの私どもの扱っております範囲内は、いま申し上げましたような協定で済むわけでございまして、特に地域関越を考えてどうするという交渉の必要のところにはまだぶつかっていないわけであります。一般論としましては、外務大臣そのほかからよくお答え申し上げるほうが適当かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/48
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049・横山利秋
○横山委員 それは向こうは在留朝鮮人のすべてはわが国民であるという立場を法律によってとっておるわけですね。こちらのほうは、いまあなたのお話によれば、その権限の及ぼす地域であるから、南朝鮮の国籍を、南朝鮮の国との協定、法的地位をとりきめようとしておるのであるという点について、双方の基本的立場が違って、なおかつ交渉が可能だと私は思いませんが、それは明確に日本政府の主張が向こうにいって、向こうも了承しておるのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/49
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050・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 韓国側で、これは自分の国籍だと申しましても、いまの永住権の登録の場合、本人が申請するわけでありますから、本人が韓国人だと言わない限りはそうならないわけでございます。本人がそう主張し、韓国側が認めた場合、それで差しつかえないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/50
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051・横山利秋
○横山委員 ここからが僕のきょう一番聞きたいところなんですが、あなたのお話によれば、義務教育も受けさせる権利を持たせよう、それから生活保護も、いままでは権利ではないけれども、権利的な方向に向けよう、それから強制退去の条件も緩和しようというふうに、この永住権による利益というものは日本政府としてはきわめて広範に与えよう、具体的にはどうなるかわかりませんが、与えようとする気持ちである。そこで在留朝鮮人約六十万が一定の期間内にその国籍登録をするということになるわけですね。もしも韓国籍に希望した者については、これらの永住権による利益が与えられる、もしも北朝鮮を希望した諸君に対しては、これらの永住権による恩典が与えられない、こういうことに結果としてはなるわけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/51
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052・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 いま生活保護や義務教育の点は事実上の利益になりますか、はっきりどういう権利の形になりますか、これはまだはっきり申し上げられないところでございます。事実上はそういう利益は受けられるということにはぜひしたいと思っておりますが、法律的の規定のしかたは、いままだそうするかしないかはっきり申し上げる段階にはなっておりません。
それから国籍をはっきりすると申しますが、北鮮籍のほうははっきりしないのです。する方法がない。韓国側ははっきりしますが、片方は、これは北鮮だということをいまはっきりする方法はございませんので、それは現状のままで残る、こういうことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/52
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053・横山利秋
○横山委員 そこのところは、はっきり僕は詰めてあなたの御意見を伺いたいのでありまするから、結果論とあなたの議論と明確に分けて御答弁願わなければなりません。私のお伺いしておることは、それじゃ、協定発効後五年以内だと承っておるのですが、五年以内に六十万の在日朝鮮人は永住権を取得したかったならば、国籍をひとつ申請しなさい、韓国籍を希望した者についてはこれらの永住権が与えられ、それによる利益の恩典がありますよ、北朝鮮を希望する諸君につきましては、これらの永住権及びそれに伴う利益は与えられませんよ、こういう結果になるのですかと聞いておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/53
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054・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 そうはならないのです。韓国籍を申請して、韓国が認めた者にはいまのような永住権の地位がはっきりいたします。それがたとえば五年なら五年の申請期間を置くとしまして、その間に韓国籍で永住権を登録——ということばが当たるかどうか知りませんが、登録ということばを使うとしまして——した場合に、やはり残る者があると思います。自分は韓国人じゃないのだ、北鮮の人間だという人は登録しません。それは残ります。それから韓国籍だと思う人も、何かのぐあいで、うっかりしているとか、手続がわからなかったとかいうことで残る者もあります。そういうものは、やはり日本側から見まして国籍が確定しない、不明の者として残るわけでございます。それに対しましての処置は、またそういう状態になりましたときに適当に考える。事実はどうかというと、現在も、法的地位は確定しておりませんが、昭和二十七年の法律によりまして、この状態を続けていこうということで、生活保護も義務教育の学校入学も認めております。その状態が、はっきりするまではやはり続いていく、こういうふうに一応考えております。その確定は、一ぺん登録をしてみませんとわからないことで、またいろいろな点も変化がございましょう。そのときの状態に適切なやり方をしていきたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/54
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055・横山利秋
○横山委員 きわめて不適切だと私は思う。あなたはことばをあいまいにして、さあといって私が質問をすると、いや、韓国籍を正確に取得しない人であっても、生活保護なり教育については引き続きやりますと言う。韓国籍を取得した者とそうでない者との区別というものをあいまいにしてしまわれる。ところが、先ほどの話は、永住権が正確に与えられるならば、あれもしようこれもしようと言っている。明らかにその区別は、違うのです。日韓協定によって明らかに区別した違うやり方がされる。北鮮籍を希望する人なり登録をしない人であっても、ゼロではないということがあなたの意見によってわかる。ゼロではないけれども、永住権を与えられて、韓国籍を所有した者については、今日よりもさらに法律上、協定上有利な処置がたまたまされるというのであるならば、これはきわめてその迷いがはっきりするではないかということを私は言っている。韓国籍を希望した者については永住権及びそれに伴う利益が供与されますよ、そのほかの人たちについては現状である、こういうことなんでしょうねと言って私は聞いている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/55
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056・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 それは何ともしょうがないのです。相手の国と国交がないのですから、そうして国交のある韓国籍を選択なさらないのですから。これは何とかしろとおっしゃったってやりようがない。決してあいまいじゃございません。そういう立場の方にはそれで処理していくほかない、国籍不明の外国人として。しかもそれは前から日本に在留した人であることがわかっておりますから、それで事実上のいまのような利益はちゃんとそのままやっていこう。私ははっきりしていると思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/56
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057・横山利秋
○横山委員 わかりました。きわめて明白です。明白ですけれども、私はきわめて遺憾だと思う。なぜ遺憾かと言いますと、あなたもお気づきのはずでありましょう。いま在日朝鮮人六十万内外について、南か北かという点はきわめて深刻な問題であります。もちろん南でもない、北でもないという中立の朝鮮人諸君もたくさんいる。そこに、いま日本と韓国とが話し合いの上協定をして、韓国籍を取得した者に対しては永住権を与える、かつそれに伴う利益を供与するということは、どういう結果をもたらすか。韓国大使館なりあるいは日本政府の永住権に関する宣伝によって、好むと好まざるとにかかわらず、中立におる者あるいは北鮮籍にある者について韓国籍を申請するような誘導をする、そういう結果を政治的にあなたは考えなければ私はうそだと思う。あなたに、それはおれの知らぬことだと言わせませんよ。日本と韓国とが責任を持って協定をして、永住権並びにそれに伴う利益というものを供与することを確定する以上は、それに伴って在日六十万朝鮮人諸君に対してPRが行なわれ、韓国籍を希望したものについては利益が供与されるという宣伝が日韓両国によってなされるわけでありますから、これは自由な地帯にいる在留朝鮮人諸君に対して利益誘導をして、国籍選択の自由というものについて事実上これを誘導するという結果にならないのか、そういうことはあなたまじめにお考えにならないのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/57
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058・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 私の申し上げないことを御断定になっておる。何にもわが国は誘導いたしません。(「結果として誘導しておるじゃないか」と呼ぶ者あり)それは世の中はいろいろあるから、結果としてはそうなるかもしれませんが、誘導する意思はないのです。そうしてただいまは北鮮と交渉することはできない状態にあります。韓国とは交渉する。その結果そうなるだけで、何も日本が誘導するわけではない。それはあなたがそういう断定のもとに申されておる。誘導されるということには私は同意いたしません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/58
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059・横山利秋
○横山委員 それはあなたは多年政治をやっていらっしゃって、法律をつくればその法律どおりだとおっしゃっても、その法律のもたらす結果というものをお考えにならないはずはないと私は思う。もしもあなたが私の言う結果論を自分も承知しておるのだ、そういうことについて自分も予測をしておるとおっしゃるならば、ああそうですか、意見は違いますけれども、なるほどそれも一つの意見でしょうと私は言うのです。けれども、そういう結果についてはおれの知らぬこっちゃ、おれはそんなことを全然考えてみたこともない、結果も想像したこともないということを言われたのでは、私は引き下がれないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/59
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060・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 それは韓国と日本が国交がございまして、それでいろいろ協定ができれば、それの反射作用はいろいろございましょう。それは国交のある国とない国と全く同じにしようといっても、それは無理な御注文じゃございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/60
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061・横山利秋
○横山委員 無理なことではないと思います。それでは私のよって立つ基盤を申し上げますが、人権に関する世界宣言の十五条に「何人も、国籍を有する権利を有する。」「何人も、ほしいままに、その国籍を奪われ、又はその国籍を変更する権利を否認されることはない。」これは人権に関する世界宣言であります。そうしてベルサイユ条約におきましても、敗戦国の国民であっても、被割譲領土におる国民であっても、この国籍に関してはきわめて厳重な世界的なとりきめがあるわけであります。いま私が言いたいことは、あなたは無理じゃないかと言ったところで、事実上在留六十万の朝鮮人は利益に誘導されるという結果になる。それは人権に関する世界宣言によるこの内容について、日本政府が無意識と言いますか、私はあえて申し上げますと、意識的にこの利益誘導をやって、緯国籍の在日朝鮮人をふやそうとする結果になるのではないか。人権に関する世界宣言にに対して違反をするのではないかと私は言いたいのです。あなたは国交回復をしていないから無理じゃないかとおっしゃるけれども、一体なぜ永住権というものが本来与えられるのであるか。永住権は、日韓両国の利益という以前に、この日本におります朝鮮人の諸君は、戦争前から日本人であって、そうして日本の生活に住みついておって、そしてもういまや日本におって普通の仕事をしておる。だから韓国籍であろうと北朝鮮であろうと、そういう歴史的な経緯にかんがみて永住権を与えるというのでしょう。いま日本と韓国と交渉して話がきまったらという以前に、日本の歴史的実情があるでしょう。ですから北朝鮮の人間といえども、あなたの先ほどおっしゃったようにゼロではないということになるでしょう。永住権を与えるほんとうの基盤というものが日本における在日朝鮮人の歴史的実情でしょう。それによって考えられたことなのでありますから、南であろうと北であろうと、そんなことは一応は関係のないことだと考えるのが一番の基本的原理じゃないか、私はこう考えるのであります。日本と韓国とはいま国交を回復しようとする、したがって、それらの国民を保護をする、その歴史的実情があるならば永住権も与える、そこまでは、私も法理的にいろいろの問題があるけれども、必ずしも否定しようとはしない。しかし、その結果もあなたは考えなければいかぬ。それによって在日六十万朝鮮人諸君は五年以内に登録申請をし、韓国を希望するならば永住権による諸般の利益が与えられる、あとの諸君は何もしてやらないぞ、いままでどおりだけれども、新しい利益というものは何もしてやらないぞという結果というものをあなたはどういうふうにお考えですか。国交が回復していなくても、韓国籍を希望する諸君以外の諸君についても、永住権に対する利益を供与するということがなぜいけないことであろうか、その方法は全然皆無であろうか、そうは思わないのであります。ものごとというものは、結果がどうなるかということを考えて判断をなされなければ私はだめだと思う。あなたは長年政治を担当していらっしゃって、その結果がどういう結果をもたらすかということをお考えにならないはずはない。また、その結果を考えてやったといたしますならば、これはきわめて、重要なことだと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/61
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062・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 世界人権宣言に反するということですが、反しはしないのです。北鮮の国籍を主張する人を否認するわけではないのです。それを無理に韓国人だというように日本が扱ったら、これはおかしいかもしれませんが、主張する者に対して、それを曲げるというのではございませんから、人権宣言違反も何もしておりません。近ごろよく日本は在留鮮人の扱いについて世界人権宣言に違反をしているとかいろいろ変な説がありますが、決して違反していない。それから、どうも条約と結ぶ相手がないからしかたがないでしょう。事実は同じように扱おうと言っておる。だから、現在までも国内の扱いにおいては少しも違いがなくやっております。それで今度そうしようと思っても、条約を相手と結ぶわけにいかない状態にあります。将来条約も結ばれるような時期がきましたら、話し合うということになりましょうが、事実はそういうふうに扱うというのは、われわれは公平な上に好意を持った扱いだと思っております。それを認めて結べとおっしゃっても、どうもそれはちょっと飛躍しているのじゃないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/62
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063・横山利秋
○横山委員 私は、方法はいろいろあると思うのです。国交が回復していないから永住権が与えられないということではない。それならば、なぜいま事実上の永住権を与えているかということです。そうでしょう。事実上いま南も北も六十万の諸君は永住権を持っているではありませんか。そうでしょう。しかも、いま日韓交渉によって永住権をそれよりも以上に与えるというのであれば、いままでの事実上の永住権をさらに全般的に引き上げるのが何が違法であるか、何が問題であるか、国交が回復していないのにいま事実上の永住権を与えているではないか。それは一体いかなる根拠に基づくものであるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/63
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064・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 それは韓国側に対しても、今度日韓交渉ができてきめられるまでは、はっきりしたものはできていない。ですから、これは両方の国交の状態その他によりまして、はっきり合意した上できめるのがあたりまえでございます。だから、それまでは暫定的に事実上やっている。北鮮の人にもやっている。将来国際関係がどうなりますか、その変化に応じて適切にきめていこう、こういう考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/64
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065・横山利秋
○横山委員 私が言うことを一つお認めになりました。何個とも国交は回復していないけれども、事実上永住権を与えているということをお認めになりました。それならば百尺竿頭一歩を進められないという理由はないじゃないですか。大臣よく考えていただきたいと思いますのは、率直に言って、あなたは韓国びいきで、北朝鮮ぎらいかもしれませんけれども、六十万の諸君に、ここ五年以内に日韓両国とも事実上永住権を与えますから、それによって利益がありますから、韓国籍を希望しなさいという事実上の宣伝誘導が行なわれます。それをあなたは御承知でしょうね。そうすれば、今日本国内にいる在留朝鮮人の諸君に対して、国籍選択の自由という大原則に対して影響を与えますよ。影響を与えることば当然ですよ。そうすると、日韓両国が、協定によって六十万の諸君に心理的影響を与え、本来白紙で存する国籍選択の自由というものに対して、他の必要から、理由からこれを侵すことになりますよ。それは承知でしょうねと言っているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/65
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066・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 承知いたしません。そういう結果どういうことを考えるかというのは本人の考え方で、そんなことは国籍選択の自由を妨害するものでも何でもないのです。世界のどこに持っていってもそんな解釈は起こらぬでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/66
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067・横山利秋
○横山委員 あなたはえらいえこじになっておっしゃるけれども、私は冷静にひとつお考えになっていただきたいと思う。これによって国籍選択の自由を侵すことになると私は思うのです。在日朝鮮人団体あるいは大韓民国居留民団、それがこの登録申請をめぐって相当の紛争が起こることが予想される。それはまだしものことにして、在留朝鮮人諸君が、本来あるべき自分の気持ちというものをこれによって阻害されるという結果をあなたがお考えなさらぬことはない。だから、私は先ほども言ったのですけれども、これを平年に与えてなぜ悪いだろうか。あなたは悪いという理由を国交が回復してないからだとおっしゃる。それなら国交の回復していない両国に対して、暫定的といえども事実上の永住権を与えられていろ理由は何かと言うと、あなたはそれに対してお答えなさらない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/67
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068・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 いやお答えできますよ。北鮮側は今後もその状態に置こうというのです。だから一向差しつかえないじゃありませんか。今後もいまと同じ状態に置こう、それだから別に変わりはないのであります。片方の南鮮のほうだって、現在国交があっても、はっきり日韓交渉ができるまでは置いといたのですから、別に何にもそこに私は矛盾はないと思う。南北があっても矛盾いたしません。公平な扱いをしていると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/68
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069・横山利秋
○横山委員 いま大臣のお話によりますと、今後もこの状態に置こうと北鮮側が言っておるということは、何を証拠に言っておられるのですか。交渉でもあったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/69
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070・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 ちょっと御質問の趣旨がわかりませんので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/70
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071・横山利秋
○横山委員 あなたはいま、今後もこの状態に置こうと北鮮側が言っておるとおっしゃいましたが、それはいかなる根拠によってですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/71
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072・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 いや、そういうことは申しません。もし言ったら私の言い間違いであって、北鮮側の人もいまと同じ状態に残るということを申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/72
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073・横山利秋
○横山委員 北鮮側の人が今後もそういうことを希望しておると言ったら……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/73
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074・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 希望じゃないですね。いまの現状でずっとおられる、こういうことを言ったんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/74
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075・横山利秋
○横山委員 北朝鮮の諸君が現状を認めると言った、そういう立場におるとあなたは観測をしていらっしゃるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/75
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076・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 ちょっとわからないですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/76
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077・横山利秋
○横山委員 あなたのおっしゃることもよくわからぬ。もう一ぺん正確に聞かしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/77
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078・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 韓国籍を選択しない在留鮮人の方は、ちょうどいまと同じような状態が続くと思います。しかし、将来何かの機会に、確定することができるような機会には確定した処置がとられましょうが、それまでは事実上現在の状態が続く、こういうことを申し上げたのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/78
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079・横山利秋
○横山委員 それは北朝鮮及び北朝鮮を希望する人の意見ではなくして、そういう展望であるというお話のようですね。私は、大臣がいま日韓交渉の法的地位を確定されるにあたって、こういう差別待遇が事実上行なわれる状況について、きわめて公平だ、自分のやっていることは公平だとお考えになるその基礎が私には全然わからないわけです。事実上差別待遇が六十万の諸君の中に繰り広げられることについては、あなたも事実としてお認めでしょう、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/79
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080・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 それは差別待遇というのじゃないですね。相手のことと、日本との関係が違うから起こるもので、その個人に対して区別しようという考えではないのです。私は差別待遇じゃないと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/80
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081・横山利秋
○横山委員 それはおかしいですよ。個々人の在留朝鮮人に対して、Aは永住権による利益を供与し、Bはその利益が受けられないという事実上の差別待遇が、六十万の諸君にわたって繰り広げられるということをあなたはお認めにならないということは、おかしいじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/81
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082・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 それは法律的な差別待遇じゃありません。両方の国の違う、朝鮮が一体になっていない状態で起こることでございまして、日本が差別待遇するんじゃないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/82
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083・横山利秋
○横山委員 私は日本が差別すると言っているんじゃない。六十万の朝鮮人が、Aは供与が行なわれ、Bは供与が行なわれないという事実上の差別が起こると私は言っておるのに、何もそれに余分な尾ひれをつける必要はないじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/83
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084・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 それはむしろ法律上の差別ですよ。片方は法律上、条約上確定するが、片方は確定してないで事実がある。事実は変わらぬが法律的の立場が違う、こういうことじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/84
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085・横山利秋
○横山委員 いや、いや、そうじゃありませんよ。義務教育にしてもさらに強化しよう、生活保護にしても、いま権利ではないけれども権利の方向に行こう、あるいはそのほかにも強制退去の条件にしてもこれを緩和しようとあなたは先ほど言ったばかりじゃありませんか。Aという在留朝鮮人はそれらの便益供与が行なわれ、権利も供与される、Bはそれがなくなるということはあなた先ほど言ったばかりじゃありませんか。その事実上の差があり得るのだということを認めないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/85
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086・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 あなたはしいて区別をつけようと思っていらっしゃるのじゃないですか。私は、前から言っているように、生活保護だって、それから義務教育の学校に入るのだって、はっきり権利を与えるとは申し上げてないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/86
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087・横山利秋
○横山委員 どうするのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/87
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088・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 大体そういう方向に行くということを申し上げているのです。それで強制退去でも、貧乏だから退去を命ずるなんということは北鮮の方でもしないつもりでありまして、その国と国との関係が、状態が違うから起こることで、その個人個人について区別するという考えはない。まあ、いずれにしましても、あなたは区別していくのだという断定でお話しになるが、私はそう思わないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/88
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089・横山利秋
○横山委員 ああそうですか、それじゃ伺います。六十万の在日朝鮮人そのものについて、日本国政府は法律上その他について区別はしない、差別はしないと宣言してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/89
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090・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 そうはまいりません。相手の国が違う場合には、その違うことから形式上の区別は起こるでしょうし、あるいは場合によれば区別ができるのであります。そういうことはいまはっきり申し上げられません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/90
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091・横山利秋
○横山委員 ひきょうじゃありませんが。私がああ言えばこう言う、それならこっちから言えばそっちへ逃げるという御答弁のしかたは、失礼ながらひきょうだと思う。私はあなたの話を聞いて、私の意見は別として、それじゃ事実上の差別が起こりますかと言ったら、差別はしない、差別はしないというのなら事実上の差別は全然ありませんかと言ったら、またそうじゃない。
もう一ぺん白紙で聞きますけれども、韓国籍を希望する在留朝鮮人とそうでない人とはどういう違いが具体的に起こりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/91
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092・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 それは日韓交渉が成立しまして、それに必要な法律を出しましたときに、はっきりいたします。大体は同じような待遇をしようという気持ちで進んでおりますことを申し上げて、それをいまどこがどうだ、ああだこうだとおっしゃっても、それはそういうこまかいことまで御答弁できません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/92
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093・横山利秋
○横山委員 それはおかしいですよ。私は、あなたがほんとうにもう少し率直な答弁をしていただきたいと思う。さっきから右通り左通り、そうして僕が右も左も抑えてどうだと言ったら、あまり違わないようにしよう、こういうお話ですけれども、あまり違わないようにしようということは違うということなんです。私はことばじりをつかまえるのはいやなんですが、正確にあなたにお伺いしたいのです。一体どういう違いが起こるかということをさっきから言っているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/93
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094・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 その違いが出るか出ないかわかりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/94
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095・横山利秋
○横山委員 わかりませんという不親切な答弁がありますか。私が一番最初から一つ一つ、資格はどうなるのですか、永住権はどうなるのですか、強制退去はどういう状況になりますか、協定の範囲はどうなりますかということを聞いてきた。そうしたら明らかに韓国籍を希望する人間と、そうでない人間とは違うということがわかってきた。わかってきたんですよ、あなたの答弁で。議事録を見てもよろしい。わかってきたから、さてそこで一番問題の焦点である、それだったならば利益供与を受ける人間と供与を受けない人間とがあって、したがって六十万の諸君に対して、そういう事実によって、より韓国籍を希望させようとする努力というものが、日韓両国で意識的であるといなとにかかわらず、そういう努力がなされると思う。したがって、それは人権に関する世界宣言に抵触しはしないか。一つ一つこまを置いて進めてきたのです。そうしたら一番最後に、あなたは、いや区別はしない、こうおっしゃる。区別しないなら区別しないとはっきり言うてくれと言ったら、いや区別はある、なるべく一緒にしたい、私はきょうの私に対する大臣の御答弁は、きわめて率直でない、そう感じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/95
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096・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 きわめて率直であります。大体日韓交渉はまだ成立していないのです。大体どういう話し合いかと言うから、大体のことを申し上げたのです。それを細部にわたって、少しも違うか違わぬか、これは交渉ができまして、条約ができ映して、またそれに必要な立法もいたしまして、御審議を願う段階になると思います。そこまでいかなければ、そんな筋がどうなる、どこが迷うか迷わぬかといっても、私はいまちょっと御答弁できませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/96
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097・横山利秋
○横山委員 そういう意味で言っているのではありません。問題は、どう考えたって、いまの政府の進み方では差別が起こらないとは言えないということははっきりしているじゃありませんか。何のために法的地位を相談をし、何のために永住権について相談をしているのですが。永住権によって利益供与を行なうということは当然のことになって進んでいくではありませんか。だから当然これが、あなたの言うように一であるか五であるかは別だけれども、しかしながら、差別が起こるということは厳然たる事実じゃありませんか。差別が起こらないとあなたは断言できますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/97
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098・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 あなたはあなたのお考えでいま御理解願うほかはないのです。大体はいま申し上げておりますように、できるだけ実質が同じようにしたいという考えを私は持っています。ただ国が迷いますから、その国と国との関係によって起こる差別が全然ないかあるかということまでいまはっきり申し上げられないのです。これが私のお答えです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/98
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099・横山利秋
○横山委員 差別が起こるということをあなたも多少ながらか、あるいは多くかは知らぬけれども、差別が起こるということをあなたは認められないはずはないと思うのです。やっぱりその差別が起こらないようにしようということは、全然差別をしないということをも含めてお考えになっておるのか、もう一ぺん恐縮ですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/99
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100・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 そういうことは申し上げられないというのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/100
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101・横山利秋
○横山委員 なぜです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/101
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102・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 相手が違うのでありますから、国交があって条約がある国と、その国民と、そうでない国民と、どこをさがしても差別があるかないか、いま申し上げたように、それは条約ができまして、それに対して日本はどういう法律を出して実行するかというところにまいりまして、いろいろこまかいことはきまるので、いま申し上げましたように、もとから日本人として長く日本におって、そうして当人の意思はどうかわかりませんが、桑港条約、その前にはいろいろ各国の協定、宣言もあったかもしれません。そういう結果国籍をとられた人から、実質的にはなるべく生活の本拠になった日本で暮らせるようにしたい、こういう意味の基本の考え方に差別はないということを申し上げているのです。だから片方は法律で保障され、片方はないじゃないか、差別があるじゃないかとおっしゃれば、それは差別ができるかもしれません。基本の考え方は差別する気持ちはございません。こういうことを申し上げているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/102
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103・横山利秋
○横山委員 基本の考えは差別がない、えらいくどい言い方で恐縮ですが、率直に言います。私は初めからずっと順を追って話を聞いてきたのですから、私の聞き方が悪かったら、こういうふうなんだと一貫しておっしゃればいい。右かといってきめていくと、左だ、それなら左だとはっきり言ってくれというと、そうではない、こうおっしゃるものですから話がややこしくなってくる。それじゃ、日本政府の態度として正確にお伺いしたいのですが、南であろうと北であろうと、できるならば日本政府の基本的態度として差別はしたくない、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/103
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104・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 できるならばということが私、ちょっとわからないのです。そういうあなたの言うように、明確に言われますと、ことばの意義を一々法律的にきめてかからないと、また違ったと言われますから……。大体の基本的考え方は前に申し上げた、この直前に御答弁申し上げたような考え方です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/104
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105・横山利秋
○横山委員 できるならばということをそれじゃとりましょう。日本政府として基本的には、南であろうと北であろうと、いろいろな利益供与について差別はしない、こういうのが日本政府の基本的立場と理解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/105
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106・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 それは人道的考慮に基づきまして、在日朝鮮人の生活その他を考える立場におきまして基本的に変わりはないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/106
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107・横山利秋
○横山委員 そうすると、これはあとあと交渉が成立しました場合に、大臣のいまの御発言は非常に重要な話題になると思いますから、あらためて言うておきます。要するに大臣のお話は、世界人権宣言その他からも徴して、南であろうと北であろうと、日本政府は差別をつけるつもりはない、これが一本政府の態度だ、こういうことですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/107
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108・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 私の言ったことばどおりで御了解願いましょう。あなたが言い直されるとまた違ったことになるかもしれません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/108
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109・横山利秋
○横山委員 私の言った言い方が悪かったならば、大臣の言い方でもよろしい。もう一ぺん恐縮ですが正確に、あいまいなことを言わないで、正確に大臣の、基本的な日本政府の態度をおっしゃってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/109
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110・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 先刻申し上げましたとおりであります。一々ことばじりをつかまえてああだこうだ、これじゃ私は話し合いにならぬと思うのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/110
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111・横山利秋
○横山委員 委員長、恐縮ですが、いまの大臣の言われたことばを、ちょっと休憩して、議事録をひとつよこしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/111
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112・賀屋興宣
○賀屋国務大臣 私もちょっと見せていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/112
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113・濱野清吾
○濱野委員長 どうです。大体両方の気持ち、両方の考え方は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/113
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114・横山利秋
○横山委員 合いません。ああいうあいまいな態度はないのです。自分の言ったことは二度と言わないというばかな態度がどこにありますか。私も率直に聞いて、何べんも大臣が言い間違いがあったら言ってください、それなら私の言うことも撤回して大臣がどうぞ言ってください、こう言っているのに、さっき言ったことばを二度と繰り返す気持ちはないと言うなら、議事録をいただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/114
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115・濱野清吾
○濱野委員長 ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/115
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116・濱野清吾
○濱野委員長 速記を始めて。
本日の議事はこの程度にいたします。
次会は来たる二十六日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後一時十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X01719640324/116
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