1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年四月二日(木曜日)
午前十時五十二分開議
出席委員
委員長 濱野 清吾君
理事 鍛冶 良作君 理事 唐澤 俊樹君
理事 小金 義照君 理事 小島 徹三君
理事 三田村武夫君 理事 坂本 泰良君
理事 細迫 兼光君 理事 横山 利秋君
大竹 太郎君 河本 敏夫君
坂村 吉正君 四宮 久吉君
田村 良平君 千葉 三郎君
中垣 國男君 中川 一郎君
服部 安司君 古川 丈吉君
井伊 誠一君 田中織之進君
畑 和君 松井 誠君
竹谷源太郎君 志賀 義雄君
出席政府委員
警 視 監
(警察庁刑事局
長) 日原 正雄君
法務政務次官 天埜 良吉君
検 事
(大臣官房司法
法制調査部長) 津田 實君
検 事
(刑事局長) 竹内 壽平君
委員外の出席者
検 事
(刑事局刑事課
長) 羽山 忠弘君
判 事
(最高裁判所事
務総局総務局
長) 寺田 治郎君
判 事
(最高裁判所事
務総局総務局第
一課長) 長井 澄君
専 門 員 高橋 勝好君
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四月一日
執行吏手数料の増額に関する陳情書
(第四一一号)
暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正す
る法律案の成立促進に関する陳情書
(第四五四号)
は本委員会に参考送付された。
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本日の会議に付した案件
暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正す
る法律案(内閣提出第九号)
下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の
一部を改正する法律案(内閣提出第一二一号)
(参議院送付)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/0
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001・濱野清吾
○濱野委員長 これより会議を開きます。
暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。
前回に引き続き質疑を行ないます。鍛冶良作君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/1
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002・鍛冶良作
○鍛冶委員 この前請求した資料をちょうだいしましたので、これについて質問をしたいが、これはちょっと研究しなければできませんので、この次に譲って、こまかい点で条文についてお尋ねしたいと思います。
第一条ノ二の二項に未遂罪を認められましたが、この未遂罪とはどういうところまでを見られるのか。それから、この項にだけ未遂罪を認められたのでありますが、どうしてこれだけに未遂罪を認めねばならなかったか、この点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/2
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003・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 第一条ノ二は、申すまでもなく犯罪はすべて故意犯でございますけれども、特にこの現行刑法の二百四条、二百八条の関係は、御承知のように、暴行、傷害の未遂の規定を置きませんために、傷害の故意のなかった場合二百八条でいく。逆に申しますならば、二百八条の結果的加重類型も二百四条の中に含まれるという解釈になっておるのでございますが、第一条ノ二は非常に危険な銃砲刀剣類を用いてする傷害でございますので、これに故意のないこのような重い傷害というものは考えられません。これは故意犯だけであるという考えを明らかにいたしました。したがいまして、その未遂をも同じように罰するということにいたしませんと、つり合いがとれないということになるわけでございます。
第一条ノ二の既遂と未遂との区別でございますが、これまたすでに御承知のとおり、犯罪の実行行為に着手して、結果の発生を見るに至らなかった、つまり、着手してその目的を遂げなかった場合が未遂でございます。したがって「銃砲又ハ刀剣類ヲ用ヒテ」とありますので、この「用ヒテ」は、前にも申しましたように、用法に従って使うことでございますので、刀剣類で申しますならば、みね打ちをくらすのではなくて、刀剣で切りつける、あるいは突くということが本来の用法に従った使い方でございます。そういうつもりでやったのでございますが、誤ってみね打ちになってしまった。傷害の結果は出ましたとしても、それはその本来の用法に従って傷をつけたのではなかったという場合のごときは、着手して遂げなかったもの、こういうふうに解せられるわけであります。もし未遂罪のこの適用を置きませんと、どういうことになるかといえば、暴行を加えただけであるということになって、刑法二百八条にいってしまう。これは非常にアンバランスと言いますか、第一条ノ二と二百八条という処罰では、非常な刑の不均衡が生ずるのでございまして、二百八条にいかないにしても、現行法の第一条第一項、つまり、凶器を示して暴行した、こういうことになるわけでございまして、二百八条ないし現行法の第一条の一項で処罰するという結果を生じますので、これは第一条ノ二の罪と比較しまして非常にアンバランスである。そこで、本来のたてまえに戻りまして、第一条ノ二については故意犯である。したがって、その未遂をも罰することによって両者刑の均衡をはかる、かようにいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/3
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004・鍛冶良作
○鍛冶委員 そうすると、かりに銃砲または刀剣をもって傷害しようと思っていわゆるなぐり込みをかけたが、なぐり込みをかけただけで終わった場合には、これはやはり未遂罪ですか、予備罪ですか、どちらになりますか。これはよくあることだと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/4
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005・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 なぐり込みをかけて、それから先切りつけるという行為までいったのかどうか……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/5
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006・鍛冶良作
○鍛冶委員 いや、いかない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/6
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007・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 いかない場合におきましては、本条には触れないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/7
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008・鍛冶良作
○鍛冶委員 どうもそこが私ははっきりしないのです。こういう場合、銃砲あるいは刀剣をもってやろうという故意はあった。ところが、やらぬでも目的を達したから傷害には及ばない、なぐり込みでやったという場合に、どうも予備罪はないし、未遂罪になるのかならぬのか、その点がわからないので、それで私は聞いたのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/8
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009・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 暴力団の行為の中にいま御指摘のような行為があるわけであります。これが従来野放しになっておりましたために取り締まり上不便を生じておりましたので、先般の刑法の一部改正によりまして凶器準備集合、結集、この罪を設けることによりまして、そのような行為を処罰するという道を開いておるわけであります。それによっていまの場合は処罰されるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/9
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010・鍛冶良作
○鍛冶委員 せっかくここに改正してこの条項を盛られたのですから、しかも、いま言うように、暴力団としてはしばしば考えられる所為である。そういうものである以上は、せっかくこの法律ができたのだから、この法律でまかなうようにするのがほんとうじゃないかと思うのです。これでまかなわれないけれども、改正刑法でまかなうということではもの足らぬように思いますが、その点はどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/10
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011・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 今度の改正刑法によりましてその点をまかなうというのじゃなくて、すでに現行法として凶器準備集合罪という罪をつくっておるわけであります。その法律によって処罰できるのでございますし、現に暴力団同士の出入りと申しますか、そういう凶器を持って押しかけていく、なぐり込みをかけるといったような事犯は、その凶器準備集合罪によりまして、現実にたくさんの事例において処罰を見ておるわけであります。その点は現行法において十分まかなえる、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/11
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012・鍛冶良作
○鍛冶委員 そうすると、未遂罪というと、やはり銃砲をぶっ放したが当たらなかった場合、刀は抜いたが切りつけなかった場合、そういう場合なんですね。そういう場合でなかったら未遂罪にならぬ、こう考えてよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/12
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013・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 仰せのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/13
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014・鍛冶良作
○鍛冶委員 次に第一条ノ三でございまするが、これは常習としてこれらの罪を犯した者ということになって、これは一人でありますね。常習の暴力団というか、暴力をもってかようなことをやる常習者、こう考えていいと思うのですが、ところが暴力団というものは常習者の一団じゃないですか、私はそう思う。常習者の一団。そうすると、一団でこの第一条ノ三の行為をなした場合には、これは第一条とはまた違うのですから、これこそ重く罰せられなければならないのじゃないかと思うのですが、この点に多衆というものは入っておらぬが、これでまかない得るかどうか、この点を疑問に考えておるわけです。
〔濱野委員長退席、三田村委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/14
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015・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 仰せのように、いわゆる暴力団の実態を見ますると、その集団の、特に構成員の幹部といわれておる人たちの前科、前歴を見ますると、まさしく暴力犯罪の前科者が多くいるということは事実でございます。そういう意味から、非常に乱暴な言い方かもしれませんが、そういったような暴力前科者の集団であるというふうに申しても過言ではないと思うのでございますが、この法律では、そういう集団を対象としての刑罰規定ではなくして、やはり個人個人を対象とした法律規定になっております。それで常習ということは集団の属性ではなくて、やはり個々の人の行為者の属性、かように従来判例も学説もなっておりまして、その判例、学説の考え方をやはり基調といたしまして、それに乗ってこの法律を立案いたしておりますので、本条の解釈におきましても個々の人を対象といたしまして、それが暴力団の構成員である場合が多いと思いますが、構成員でありましても、その構成員なるがゆえに常習性を認めるのじゃなくて、個々の人が現在犯した犯罪、過去の前歴等に照らしまして常習性、つまり繰り返して罪を犯すというその習性のあらわれとしてこの罪を犯したんだということが認定できる場合には、第一条ノ三の規定によりまして常習者として処罰される、かようになっておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/15
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016・鍛冶良作
○鍛冶委員 どうもそこがちょっと了解しにくいのですが、第一条は、やはりこれは多衆の力でこのような罪を犯した者を特別に取り扱ったのですね。これはおそらく常習でない者なんでしょうね。そうしてみると、常習でない者の多衆でさえ危険だというので、本条を設けて特別の取り扱いをせられた以上は、常習者が多衆の威力を用いて暴行脅迫をやるということは、なおさら一そう危険なことだ。そうしてみると、常習者が多衆の威力をもってやった場合は、普通一人の常習者よりか重いのだ、またこれを取り締まらなくてはほんとうの取り締まりができぬ、こういうように私は考えるのですが、この点は必要ありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/16
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017・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 御質問の趣旨はよくわかるのでございまして、必要がないかといえば、必要はあろうかと思うのであります。ただ、毎々申しますように、改正を最小限度にとどめたという立法上の考慮もございまして、かような立案形式になったのでございますが、御指摘のように第一条の第一項は、集団ということを前提とした暴力行為を規定しておるのでございますが、やはりやっておる者は集団でやっておるのではなくて、個々の人が集団を背景としてやっているというところに刑を加重すると言いますか、情状の重さを認めて規定をしている。しかし、中身はやはり個々の人を対象にしているのでございます。
それから第一条の二項、現行法の二項、今回一条ノ三に直した規定でございますが、これは全く個々の行為者の属性という常習性というところに重きを履いて刑罰をきめておる。そこで一条一項のほうは今回手を触れませんで、一条の二項に当たるところを拡充して傷害罪を加えたり、それから刑を加重した。こういう手当をして、構成員の人たちが常習的に暴力行為をやっておるという、先ほど御指摘のとおりの現実に適合するような法改正を最小限度の改正として試みた案でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/17
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018・鍛冶良作
○鍛冶委員 第三条でございますが、これはここに列挙されたる犯罪を「犯サシムル目的ヲ以テ金品其ノ他ノ財産上ノ利益若ハ職務ヲ供与」した者を第二に掲げております。これはいわゆる暴力団の親方をさしているのではなかろうかと思うのですが、第一に聞きたいのは、普通の者がやれば教唆でございますね。教唆とこれとの違いはどういうところが違うのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/18
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019・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 現行法の第三条は、仰せのように教唆犯でございます。教唆犯の全部を含んでおるかどうかはこれは別としまして、この構成要件に該当する行為はすべて教唆犯だと思うのでございます。これを独立の犯罪としてここへ掲げてあるわけでございますから、この条文に該当する限りは、それ自体として教唆犯で罰せられるわけでございます。御承知のように教唆犯というのは、刑法の総則の考え方からいたしますと、従犯でございますので、本犯が成立をすることが前提になるわけでございます。本犯が成立しませんと、従犯は不成立になるわけであります。ところが、独立の教唆犯として処罰の規定が設けられておりますために、本犯に至らなくても、こういう目的をもってこのような幇助的な教唆的な行為をいたしますれば、本犯とは関係なく処罰する。そういう意味で独立教唆を処罰しているという点に意味が出てくるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/19
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020・鍛冶良作
○鍛冶委員 その点、もっと明瞭にしておきたいのですが、これは第一条の方法によるとあります。第一条の方法によるということは「多衆ノ威力ヲ示シ、」または「多衆ヲ仮装シテ威力ヲ示シ」こういうことをやらしむる、こういうことになります。この点は、普通一般の教唆とは違うのじゃないかと思うわけですが、そういう意味で、普通一般の教唆を除外して本法によっていくのであるかと思うが、もっと具体的にその教唆の違うものを指摘しておいてもらいたいと思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/20
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021・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 お話のようにこの教唆犯を独立教唆にしておりますのは、一般の教唆の場合よりも条件がついておるわけです。その意味ではしぼってあると申してもよいと思いますが、いまお話しの第一条の方法によってやる教唆だけが条件としてしぼりがかかっておるわけでございます。そういう形の教唆をしようと、罪を犯させる目的で金品その他の財産上の利益または職務の供与、申し込み、約束、それだけが教唆ではないと思うのでございますが、そういう手段においてしぼりがかかっており、やる行為の態様について金品、財産上の利益、職務の供与、その申し込みまたは約束というような行為を対象としておる。そういう行為をした者、また、その情を知って受けた者についてのみ独立の犯罪として処罰する。こういう規定の趣旨でございまして、この規定の本質は、先ほど申し上げましたように教唆犯の一つの類型でございます。その教唆犯の中で、いまのような方法においてしぼり、行為の対象において限定をして、これを独立の教唆犯、かように規定しておる趣旨だと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/21
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022・鍛冶良作
○鍛冶委員 この法律は暴力団を主としてやるものだということがわれわれは頭から離れぬからその点を明瞭にしておきたいのです。普通一般の人が——普通一般と言うとおかしいが、そういう常習者でない者が、たまたま何かの目的があって、若い者なら若い者をおだてて、多衆の威力を示すことさえやれば第一条の方法になるのですから、そういう方法でやった場合に、やっぱり多衆の威力を使ったというので本法でいくのか。それともやっぱりいわゆる多衆にも多衆があって、そこいらの学生や青年団のようなものをつかまえてやるのとは違うのじゃなかろうか。それから、ただ普通の人がひとつやってくれといってやるのと、これはいわゆる暴力団の背後関係ですね、そういうものをさすのじゃあるまいか、こう思うのですが、この点が、私の先入観が悪いのかもしれませんが、そういう頭で見ると、これはちょっとわかりにくくなってくる。その点、ひとつ明瞭にしておいてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/22
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023・羽山忠弘
○羽山説明員 お答えいたします。具体的な例を申し上げますと、たとえば数人に対しまして、おまえどこそこへ行っておどかしてこいというふうに言ったといたします。そういたしましたときに、その数人が冗談言うな、おれはそんなことはいやだというふうに断わったといたしますと、現行法の解釈におきましては、これは御承知のように教唆の未遂というものでございまして処罰ができないわけでございます。それをこの場合におきましては、供与またはその申し込みでいいのでございまして、そういう第一項の方法によって、ここに列挙いたしました特定の罪を犯すような教唆をいたしましたら、向こうが断わろうと、もうそれだけで処罰をしよう、そこに教唆を独立して処罰する、こういうのがこの条文の趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/23
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024・鍛冶良作
○鍛冶委員 だんだんわかってきましたが、そうなると、たまたまこういうことを若い者をおだててやる者を罰するのではなくて、いわゆる暴力団として常習にかようなことをやる危険性のある者が対象になるのではあるまいか、これをまず伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/24
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025・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 それはおっしゃるとおり、暴力団の親分のような、常時そういうようなことをやっておる人たちがやりそうなことなんです。普通の人が、いま羽山課長から御説明したような事例で、多数の者におどしをかけてこい、そのかわり金をやるといった式に指図をするということは普通はないわけで、そういうことをしょっちゅうやっておる人はどういう人かというと、やはり暴力団の親分とか兄貴分とかいうような人たちがその対象になるであろうということが想像されるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/25
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026・鍛冶良作
○鍛冶委員 普通の人がやっても、第一条の方法でやれば教唆にならぬでも罰せられるのですか、それとも相手が常習的の者であるとか、教唆した者が常習的の者であるとか、そういう特殊のものを対象とするのであるか、この点もう一ぺん明瞭にしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/26
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027・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 それは法律のたてまえといたしましては、教唆する人が常習者であるとか、あるいは教唆を受ける立場の人が常習者であるとかいうようなことは必要としないのでございます。したがいまして、何びとでもこれに該当する行為があればこの条文で処罰されることになるわけでございますが、普通の人はそういうことはあまりやらぬだろうということを前提にして、これが暴力団を対象とした規定であるというふうに私どもは理解をするのでございます。法律のたてまえといたしましては、もちろんだれでもいいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/27
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028・鍛冶良作
○鍛冶委員 そうなると、どうも私らもの足らぬようになるのですが、これはやはり暴力団の親方といわれる者がこのような行為をやった場合にこれに当てはまるのだ、そのかわりにそういうものは重く罰するのだ、普通の教唆とは違って重く罰するのだ、こうでなかったら、私は本法のほんとうの目的が達せられないのではなかろうかと思うのです。第一、ほんとうの暴力団の親方がこれをやった場合と、いまの話のような場合とは違うと思うのですが、暴力団の親方がさあ行ってこいと言って、金品を用いて、おまえをひとつ第二の子分にしてやろう、この次から兄貴分にしてやろうということでやったとすれば、一般のものより特段の処罰を、重く罰する必要があるのではないかと思いますが、この点は分離して考えるべきものでないか。そうしてまた、そういうものがやったとすれば、六カ月以下の懲役または五千円以下の罰金のごときは軽過ぎはしないか。この点をひとつ明確にしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/28
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029・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 ごもっともなことでございまして、第三条に手を加えていまの御趣旨に沿うような条文が書けるかどうかというような点は、実は検討もしたわけでございますが、これも前に申し上げたことでございますけれども、暴力団というものを法律上の概念としてとらえることが非常にむずかしいということが立案過程においても検討されまして、したがって、条文としましては、暴力団であるがゆえに重くするという形の立法がしにくいわけでございます。そこで暴力団がやりそうな行為を重くするという形をとったわけでございます。そういうふうに見て一条ノ二、一条ノ三というような規定を設けたのでございますが、そういう観点に立って見ました場合に、第三条をそのままにしておいていいかどうかという点ももちろん検討いたしたのでございますが、この際は、そういううしろで親分のやりそうな行為は一応この第三条でいいじゃないか、むしろ現実に暴力行為をする人をまず取り上げて対象とすべきではないかということ、これは立法政策上の最小限度の立法にとどめたいという気持ちがありましたので、その辺を勘案いたしました結果、第三条につきましては手を触れないことにいたしまして、これは現行法のままにしておこうということにして、改正の点をしぼりまして一条だけにとどめた、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/29
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030・鍛冶良作
○鍛冶委員 たとえば第一条ノ三をここに持ってきまして、これは同じことだろうと思うのですが、常習としてこういう刑法第百九十九条からここまでの罪を犯すおそれのある者、そういう者が罪を犯さしむる目的を持ってこれこれの利益をやるとか地位を与えるとか、こういうことについて一般のものと区別したとすれば、どういう弊害が起こりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/30
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031・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 一つの御提案と言いますか、御試案として、筋は、常習としてこういう教唆犯、罪を犯させるそういう者を強く罰するという手はないかということでございますが、常習というのは、教唆犯としていろんな罪を犯させることをしょっちゅうやっておる、そういう意味の常習という考え方もないとは言えないと思うのでございますが、刑罰法令で考えております常習というのは、犯罪行為の常習ではなくて、犯罪者の一つの性質と言いますか、その人の習癖、そういうものを常習と見ておるわけでございまして、いろんな罪を犯させる常習とか、そういうことを言いたがる常習とか、いろんな常習はあると思うのでございますが、刑罰の観点におきましては、ある犯罪を繰り返し犯すような者、こういうことを言っておるわけであります。そこで、暴力団について常習的に恐喝をやるということもあるわけでございますが、今回は常習恐喝は割愛しておるわけでございます。それはなぜかと申しますと、それは財産犯でございまして、ここに言われる暴力行為というのは、四十年来の運用の過程において確立した概念として見ますると、暴行、脅迫、器物損壊、この三つを四十年来暴力行為の典型的なものとしてあげておるわけです。その中には財産犯や生命犯はないわけでございます。したがって暴行と傷害とは親類同士のようなものでございますので傷害を今度入れたのでございますが、こういうものについての常習ということは法律概念としても考えられるのでございますが、いろんな罪を人にけしかける習癖、そういう癖も確かにあると思うのでございますが、それを常習犯というように取り上げますことは、まだ日本の刑罰法令にはそういう前例もございませんし、外国の立法例を見ましても、そういう常習性を認めた立法例等もないようでありますし、また学説としましても、先ほど申したように行為者の犯罪の習癖という観点からしますと、そういう犯罪ではなくて犯罪をけしかける習癖というようなことになって、異例な概念をここに持ってくることになります。そうなってまいりますと、かなり改正としましては根本的な問題でございますので、今回の改正ではそういう意味で触れないことにしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/31
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032・鍛冶良作
○鍛冶委員 これは改正にならないところだから、よけいなことを言うようだが、この問題については相当考えなければならぬ問題だと思います。いわゆる暴力団というものを考えますと、若い者をごろごろ遊ばせて、いざというときには暴行、脅迫をやらせるためにやっておる。これが一番危険なんじゃないか。そうしてみると、こういう者を何もやらないときにはとらえるわけにはいきませんが、若い者を置いておいて、さあいよいよ始まったというときに行って押える、これは一般の人が若い者をおだてるときとは違う。こういうときにはひとつ根こそぎにやらなければいけないと思います。こう考えてやることが、本法を改正せられる一つの概念ではなかろうかと思いますから、なぜそれを入れられなかったのか、入れないでもいいのですか、こういうことをくどく聞くわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/32
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033・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 その親分の行為につきましては、前に改正法で認めていただきました凶器準備結集罪、これは重い罪でありますが、この罪によって親分、兄貴分といわれるような黒幕的存在は相当重い刑で処断できることになっております。今回の改正におきまして、常習者あるいは危険な凶器を用いての傷害を重く罰することによりまして、こういう人たちの下っぱの者がそういう犯罪を犯して、もし三条に規定しておるような、親分がそういうことをけしかけておるというようなことでございますならば、三条の規定をまつまでもなく、親分との間にも共犯関係が成り立つわけでありまして、これは共犯としても処罰できるのであります。それからいまの準備集合罪、二項にある結集罪、これによっても親分を処分でき、そうして相当重い刑に処するならば、ああいう社会におきましては、親分が相当の間留守をしておるということになりますと、いつの間にか地図は変わってしまうわけでありまして、そういうようなことがやはり親分を没落させることになるわけであります。そのものずばりというふうなもの、それからいろいろな現行の刑罰法令を駆使することによってその目的を達するもの、その目的の達し方にはいろいろ方法があると思いますけれども、現行刑法の体系をくずさないようにしながらその目的を達する方法といたしまして、このような手段をとったわけであります。もちろん、これで十分であるというのではございませんが、さような立場からこの法律を見ていただきますと理解いただけるかと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/33
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034・鍛冶良作
○鍛冶委員 私はくどく言うようですが、この法律に対して反対の議論をせられる人は、これは名は暴力行為の取り締まり法ではあるけれども、これを他の労働運動等に悪用するのだというようなことを言われる人もあります。これはいかに労働運動であろうとも、実際にこの法律に当てはまる犯罪をやったり、刑法に当てはまる犯罪をやれば、取り締まるのは当然でありますが、ただ、そういう人々があるところにもってきて、私らは、これは暴力団を主にするのだ、こういう考え方で臨みたいのです。そういうことであれば、これはいますぐということではなくて、今後注意してもらいたいのですが、いま言われた結集罪のごときものも本法に入れて、そして刑法と両方に分けてやるというのではなくて、願わくはこの法律でまかなうようにせられたほうが、立法上その他刑事政策上よろしいのじゃないか、かように考えます。これはいまここで改正しなさいというのではありませんが、そういう考え方は将来いいのじゃないかと思いますが、あなたのほうでどう考えられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/34
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035・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 確かに御意見まことにそのとおりと思うのでございます。ただ、この暴力行為等処罰に関する法律も、これは本来刑法の一部をなす性質のものでございまして、これは刑法全面改正の際には刑法の中に取り入れられるものでございます。そこでいまの凶器準備集合罪、結集罪等は、これも将来は刑法の中に入るだろうと思います。現に準備草案におきましては、同趣旨の規定を置いております。したがいまして、準備草案から刑法の改正原案に成長していく過程におきまして、この暴力行為等処罰に関する法律の規定、それから結集罪の規定等が、それぞれの刑法の各条の地位を与えられて、体系的に整理されていくと思うのでございますが、それまでのつなぎ的立法でございますので、今回は、暴力行為等処罰に関する法律そのものが暴力団を対象として生まれてきた法律であることが当時の立法資料等によってもうかがえますので、その点を最小限度に手直ししてつないでいきたいという気持ちを持っておるわけでございます。いま、これが労働組合運動等の越軌行為にも適用されるおそれがあるという御心配がしばしば述べられておるのでございますが、現行法の一条一項につきましては、残念ながら若干の事例につきまして、その数は必ずしも多くございませんけれども、年間約三百数十名程度適用を見ておりますが、一条の二項、つまり今回の改正の一条ノ三に当たります常習暴力者というような点につきましては、いまだ一件もそういう活動家に対して適用を見た事例はございませんし、また今度新設されました一条ノ二の危険な武器を用いての傷害というようなことは、これは一般の人には考えられないことでございまして、こういう点等を考えましても、この強化の目的が暴力団対策にありますことは、条文自体から——暴力団ということばを使っていなくても、内容自体から十分御理解がいただけることじゃないかというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/35
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036・鍛冶良作
○鍛冶委員 その趣旨はわかりますが、私は、もしそういうものなら、先ほどから言うように子分を養ってそういうことを常習にしておる者が、いまここに書いてあるようなことをやれば特に重く罰するということを本法に入れてもらったほうがいいように思います。これはいまの問題ではありません。将来においてもそういうことを考えるべきだ。しかし、私の考えが間違っておるか、この点だけ、これは将来の参考になることですから、あなたから御返答願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/36
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037・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 ただいま鍛冶委員のおっしゃったことは、間違っているどころではない、それは私、正しいものの見方だと思うのです。したがいまして、刑法の全面改正の際には、体系的地位等につきましては慎重に配慮いたしまして、その趣旨が生かされるように鋭意努力してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/37
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038・鍛冶良作
○鍛冶委員 この法律案をもらったのですが、これを見ますると、第二条として、「裁判所法の一部を次のように改正する。」となっているが、これは間違いでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/38
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039・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 それはそれでよろしいわけでございまして、これは法律の題名が暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律でございまして、暴力行為等処罰に関する法律の一部を改正する法律ではないのでございます。したがいまして、今回の題名の中に入ります改正は、一つには暴力行為等処罰に関する法律の一部改正でありますし、もう一つには裁判所法の一部改正、こういう二つの内容を含んだ法律でございます。この「法律等」という「等」の字がついておるところに御留意願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/39
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040・鍛冶良作
○鍛冶委員 そうすると、この法律の第二条ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/40
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041・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 そうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/41
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042・鍛冶良作
○鍛冶委員 私、裁判所法を直すのだと思ったのですが、裁判所法第二条という意味だと思うが、そうじゃないのですね。そうすると、この法律でこれをきめて、裁判所法はそのままにしておくわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/42
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043・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 この法律によりまして裁判所法の一部改正が行なわれるわけでございます。これは立法技術的なものでございまして、他の法律によって改正をしていくということがしばしば行なわれるのでございますが、これもその例によるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/43
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044・鍛冶良作
○鍛冶委員 そこで、どういうわけで裁判所法にこの規定を設けて、本法の犯罪を単独の裁判でやるということですか。その立法理由をまずお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/44
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045・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 それは御承知のように、裁判所法第二十六条というのは、地方裁判所は原則としては一人の裁判官がすべての事件を裁判するということでございますけれども、上訴事件とか、あるいは事案が複雑で重要な事件につきましては裁判官の合議体で取り扱うという趣旨の規定でございます。そこで合議体で扱います制度は、慎重に時間をかけてやらなければならぬ重大事件、こういうものを対象としておるのでございます。そこでその重大事件としては死刑、無期または短期の一年以上の法定刑を持っておるような罪は、従来重大事件として合議体の裁判の対象にしておるのでございますけれども、現行法におきまして、二十六条のカッコの中に入っておりますように、強盗罪のようなものは短期は五年でございますけれども、これは当然合議体にかかるべき筋合いの事件であるにかかわらず、これははずされておるわけです。なぜはずしてあるかというと、これは犯罪の性質、態様、手段といったものがおおむね単純でございますし、審判を促進させていっていい事案だということで強盗事件ははずしておるわけでございます。傷害事件につきましても、なるほど武器を用いての傷害でございますから、重い罪ではございますけれども、武器というものと、あとは傷害でございまして、そうなってまいりますと、強盗罪と同じように、その罪の性質としましては単純なものであります。したがって、早く裁判を進めていくといったような意味から、原則に戻りまして、単独の裁判官でやらしていい。こういうことで、この一年の短期の法定刑を持っております武器を用いての傷害と、それから常習の傷害と認められる場合、この二つは本来は黙っておれば合議体の裁判にかかる筋合いでございますけれども、強盗などと同じように考えまして、これは単独の裁判官で裁判ができるというふうに道を開いておくほうが妥当であるという考えから、第二条でこの改正をした次第でございます。
〔「重くしたら慎重にしなければならぬ」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/45
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046・鍛冶良作
○鍛冶委員 いま向こうでやじがありますように、重く罰せなければならぬ犯罪としてきめたのでありますから、これはやはり慎重にやるべきであろうという議論が立つと思うのです。そこで、しかしこう書いてあっても、裁判所で特に合議体でやるべきものだと認めてやれば、やれる方法はあるでしょう。これはどういうときにやるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/46
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047・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 それはいま申しましたように、二十六条の規定は、法律で認めてある合議体でやるべき裁判、こういうことで法定合議というふうに申しております。それに対しまして、裁判官が合議体でやったほうがいいと裁断を下しまして、その結果合議体の裁判にかかる場合が裁定合議と申しております。単独でやるのが原則でございますけれども、いまの法定でやるべきものを除いて、単独でやることとなっておりますものにつきましても、一般的には単純だと考えられる犯罪でありましても、事案によりましては複雑であり慎重を要するという事例もないとは言えない。そういう場合には、裁判官の判断で、これは合議体で裁判をするということを決定いたしますれば、事件は合議体の裁判所にかかるわけでございまして、その道は十分開かれておりますから、原則論を申しますならば、この種の事件は単独裁判が妥当である、ただし事案によりましては裁判官の判断で合議体を相当とするというときには、裁判官が裁定合議事件として決定をすれば、それで合議体にかかる、かようになるわけであります。このことは従来の最高裁の判例にもあるわけでございますが、事件の取り扱いにつきまして機動性と弾力性を与えて、総体として妥当な効率をあげるようにこの種の規定は定められておるのだという趣旨に適合するというふうに私どもも考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/47
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048・鍛冶良作
○鍛冶委員 裁判所ではたいてい順番で判事のほうに回しておられるようですが、この事件に当たった判事は、記録を読んでみるわけでもないから、だれが合議体にしようということを請求するのですか。判事自身は初めからはわかりませんからやっておってみて、起訴状を読んで聞かしてもらったり、記録が出たりしてから、その判事自身がやるのですか。これはだれが合議体でやろうじゃないかということを発案することになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/48
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049・竹内壽平
○竹内(壽)政府委員 これば事件を一番よく知っておるのは検察官だと思います。それからまた弁護人も、検察官とは別に事件のあらましを知っておると思うのでございます。いろいろな事情から慎重に裁判をしてもらったほうがいいというような場合には、訴訟関係人からそういう申し出があるのが実情でございまして、そういう申し出が一方からありますれば、裁判官は他の一方の当事者にも意見を聞きまして、決定をするということになると思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/49
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050・鍛冶良作
○鍛冶委員 申し出は検事がしてもよし、弁護人がしてもよし、また被告人がしてもよしということですが、裁判所がそれを用いて合議にしようということになれば、これは裁判所は合議にしてもらいたいということをだれに請求するのですか、どういう方法でやりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/50
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051・羽山忠弘
○羽山説明員 私、裁判所の経験がございませんので、実務の詳しいことはよく存じませんけれども、聞いてまいりましたところによると、単独の判事さんは何かどこかの合議部に属しておられるそうであります。それで特定の判事さんが合議にしたほうがいいのじゃないかというので、その属しておられる部でその決定をなされる。それから東京あたりでは別に裁定合議委員会とかいうものをおつくりになっておられまして、そこでおきめになるというお話でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/51
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052・鍛冶良作
○鍛冶委員 いずれにしても、できることが必要であろうと思いますので、それはまたあとでなにしますが、いま考えられるような疑問も出ますので、その点を明らかにしたいと思います。
そこで、この間私が要求いたしまして出してもらった資料でありますが、これは一つ一つ取り上げていっておるひまもありませんけれども、三十七年のからひとつやっていきましょう。これは一番先は傷得、その次は暴行、その次は脅迫、その次は毀棄、こういうことですが、いわゆる労働運動と称するものでこれにはまったものはどれほど入っておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/52
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053・羽山忠弘
○羽山説明員 この表につきまして簡単に御説明申し上げます。まず表題が「公安等関係事件及び労働争議行為に関連して発生した暴力事犯の受理及び起訴人員調」ということになっております。この表題の「公安等」と申しますのは、上の欄に「公安等関係事件」という文句が使ってありますが、その部分の注釈が下に書いてございますように、労働争議に関連した事件を含むというふうに読んでいただきたいのでございます。したがいまして、ただいまの御指摘の昭和三十七年で受理した傷害が八万三千五百三十七となっておりますが、これは警察で検挙された人員ではございませんで、検察庁で受理いたしました人員でございまして、そのうちで公安等関係事件の受理人員が四百六十三人でございます。その上にカッコがしてございまして、三百六十五というのは労働争議等に関連して発生した事件の人員の数字でございまして、それはこの四百六十三の内数になっております。その次に比率がございまして、その次に起訴人員が出ております。すなわち全受理人員八万三千五百三十七人のうち、起訴になりました者が五万三千四十人でございます。もちろんこれは罰金、略式起訴を含んでおります。そのうち公安等関係事件、すなわちただいま申しました下の注釈に書いてある事件の起訴総人員が百二十二名でございまして、労働争議に関係いたしましたのが、カッコ書きの九十三人でございます。こういうふうに見ていただければ、あと全体がそういう形でつくってあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/53
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054・鍛冶良作
○鍛冶委員 いまあなた方にこの具体的な内容の説明を聞いても、どうもおわかりにならぬだろうと思うのだが、これは警察のほうでならばある程度わかりますが、三十七年は、カッコして九十三人とありますね。百二十二人のうち九十三人、このおもなるものはどういうものであったか、どういう犯罪であったか、どういう形態の犯行であったか、おわかりになりませんか。もしおわかりにならぬのならば、この次までにわかる人をひとつなにしてください。警察でおわかりになれば、警察でひとつ御答弁願いたい。(「下に書いてあるよ」と呼ぶ者あり)それはただ、どの争議というのじゃない。私のは、どういう形で暴行をやったのか、傷害をやったのか、そういうことがわかれば聞きたいわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/54
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055・日原正雄
○日原政府委員 この次に、調べまして御報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/55
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056・鍛冶良作
○鍛冶委員 近ごろこういう公安事件で起訴されたもので、あなた方お取り扱いになっておるもので、多くのものはどういうものがあるか。これは警察のほうでやっておられると思うが、これは三十七年ということなので、もっと近いところで、現実にあなた方の御承知になっておる事例があったらあげていただきたい。
〔三田村委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/56
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057・日原正雄
○日原政府委員 公安の関係は所属が違いますので、この次御一緒に御報告いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/57
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058・鍛冶良作
○鍛冶委員 私は、きょうはこの程度で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/58
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059・濱野清吾
○濱野委員長 暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/59
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060・濱野清吾
○濱野委員長 次に、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。松井誠君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/60
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061・松井誠
○松井(誠)委員 いま議題になりました下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案及びそれに関連をする事項について、二、三お尋ねをいたしたいと思います。
この法律案の内容についての詳しいことは、またあとでお伺いをいたしますけれども、最初に、その提案理由の説明にありますような、市町村の廃置分合などによって当然必要とされる整理を行なったというのは、市町村の廃置分合で行政区画の変更がある、その行政区画の変更に伴って簡易裁判所の管轄区域も当然変更がされるという趣旨であろうと思いますけれども、念のために、最初にそれからお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/61
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062・津田實
○津田政府委員 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の第三条によりますると、「裁判所の管轄区域の基準となった行政区画に変更があったときは、裁判所の管轄区域も、またこれに伴って変更される。但し、あらたに行政区画が設けられたとき、又は一の裁判所の管轄区域に属するすべての地域が他の裁判所の管轄区域に属する行政区画に編入されたときは、従前の管轄区域による。」こういう原則がございまして、市町村の廃置分合等によりまする結果、この第三条が適用されることになりますと、その廃置分合に伴いまして管轄は自動的に変わるわけです。しかしながら、その場合に、この下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律そのものは、そのままでは変わりませんので、それをこの三条によって変更されたように別表を改めるというのが、いわゆるこの機械的の整理、そういう意味の整理を行なっておるのが今回の題目でございまして、そのほかにまた、市町村の名前が変更になりますとか、あるいは町がそのまま市に昇格いたしますとかいうような場合は、何々町とあるのを何々市と改める、何々という名前を何々というふうに改めるというような改正をいたす。これも全く形式的な整理にとどまる。今回は、提案理由の説明にございますとおり、実質的に管轄区域を、この御提案申し上げてある法律の成立によって変えまするところは、鰍沢簡易裁判所と富士吉田簡易裁判所における管轄の変更のみでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/62
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063・松井誠
○松井(誠)委員 いまお読みになりました下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律、この法律の三条によって、行政区画と裁判所の管轄区域との関連というものがうたわれておるわけですけれども、私は、なぜこういうことになったのかということをお伺いをしたいわけです。つまり、行政と司法というものとは元来別なわけでありますから、行政区画が変わったことによって何か自動的に裁判所の管轄区域が変わらなければならないような、この昭和二十二年にできた法律の趣旨というものは、一体元来どこにあったのであろうか、この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/63
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064・津田實
○津田政府委員 本来行政区画そのものがどういう理由によって変更されるかということが問題なんでございまするけれども、この行政区画そのものの変更されることは、今日におきましては、その行政区画内の住民の主として利便によって行政区画が変更されるものというふうに考えるわけであります。したがいまして、裁判所の管轄区域がその行政区画を基準といたしまして設けられておりまする以上、その管轄区域はやはり自動的に変わるのが相当ではないか。そういたしませんと、行政区画がその地方住民の利便によりまして変更されましても、裁判所のみが依然として違った管轄を持っておるということになりまするので、そういうことはなるべく避けるほうがいいという考え方から、こういう趣旨になっておるものというふうに理解しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/64
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065・松井誠
○松井(誠)委員 私がこういうことをお尋ねするのは、実はこの中に、簡易裁判所という妙な名前の裁判所ができたときの簡裁というものの性格があるのじゃないかということを考えるわけです。聞きますと、この簡裁というのは、元来警察署単位につくるというような構想があったやに聞いております。つまりそういう意味で、行政区画と裁判所の管轄区域とは、本来初めから一体のような考え方があったのじゃないか。この点、いまの御答弁にはございませんでしたけれども、そういうことじゃなかったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/65
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066・津田實
○津田政府委員 簡易裁判所が全国に五百七十庁現在設けられておりますが、当初はそれより若干少なかったわけでございます。すなわち、当初と申しますのは裁判所法施行の当時でございます。そのときの簡易裁判所の数の考え方は、当時の警察署、つまり二つの警察に対しておよそ一つというような標準で設けられたというふうに承知しておるわけでございます。その理由は、当時といたしまして一番問題になりましたのは、刑事における令状の問題であります。令状の発付を受けるためには、少なくとも二警察に一つくらいは、令状の発付を受けられる簡易裁判所がなくてはならないということから、二警察に一つという基準を立てたわけでございますが、もっとも御承知のとおり昭和二十二年当時でございますので、交通等の利便も今日とはまことに違っておったわけでございます。そういう意味で、およそ二警察の単位ということを考えて設立するのが相当であるということで出発したものというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/66
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067・松井誠
○松井(誠)委員 そうしますと、その当初にできた簡裁というのは、大体そういう基準にのっとって設立をされたように伺ってよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/67
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068・津田實
○津田政府委員 そういうふうに私どもは承知いたしております。ただし、もっともこれはそのときの動機でございまして、そういう理由を必ずしも直接に法律の理由そのものとしたというふうには申し上げられないかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/68
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069・松井誠
○松井(誠)委員 そうしますと、逆に警察署の管轄が変わることによって、裁判所の管轄を変えなければならないというような事情は、その後現実には出てこなかったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/69
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070・津田實
○津田政府委員 その後警察の制度も非常に変わりまして、警察署の統合もかなり行なわれているようでございます。その後の状況といたしましては、自治体警察になったり、あるいはそれが都道府県警察になったりいたしておりますので、そういう関係から、従来の二警察に一つというのは全く設立当初の動機でございまして、今日に至りましては、二警察に一つというようなことにはなっていないと思うのでございますが、一たん簡易裁判所が設立されました場合は、その区域そのものに関する関係住民の利便を考えて、その管轄を逐次変更しているというのが相当であると考えられますので、そういう関係住民の方々の利便を考慮いたしまして、十数年来逐次管轄を変更してまいった、そして今日に至っておるというのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/70
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071・松井誠
○松井(誠)委員 最初の動機としては警察署というものが頭にあって、その後警察署の管轄というものとはむしろ離れて、住民の利便ということから裁判所の管轄を考えるようになった。そうしますと、現在では警察の管轄区域と裁判所の管轄区域とは必ずしも一致しないという面も全国にあるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/71
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072・津田實
○津田政府委員 警察の管轄区域と簡易裁判所の管轄区域とは必ずしも一致しないというケースが非常に多く出ておると思います。一々調査いたして現にここに結果を持っておりませんが、あるいは一警察が二つの簡易裁判所の管轄区域にまたがっておるというようなケースは全国にあちこちございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/72
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073・松井誠
○松井(誠)委員 先ほどの令状請求その他の点について、そういう管轄区域のズレというものばさして不便は生じておりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/73
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074・津田實
○津田政府委員 当該警察自体としては不便であるというような意見もございますが、警察自体の利、不便だけを考えて管轄を変更するということは適当でございませんので、そうではなくて、むしろ地方住民の方々における交通の便、不便を考えまして、警察の管轄区域なんかも若干考慮に入れた上、逐次簡易裁判所の管轄区域を合理的にするというふうな方針でまいっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/74
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075・松井誠
○松井(誠)委員 私もいま御答弁になったとおりの考え方がいいと思うのです。最初は、いわば治めるほうの側から管轄区域というものが考えられ、しかしそれが事実上変わってきて、それを使う国民の側から管轄区域を考えるという考え方は、簡裁についての一つの進歩した変化だと思うのです。しかし、それ以外に、当初の簡裁が想定した簡裁の姿というものと、現実に運用されておる簡裁の姿というものとが一体一致をしているのかどうかという、これは管轄区域に直接は関係がありませんけれども、簡裁の実際の運用の状況を考えてみると、いろいろ問題があるのじゃないかと思うのです。簡裁の判事は、御承知のように特定の法律的な知識がなくてもやり得る道が開かれておるとか、あるいは司法委員というような制度が設けられておるとか、あるいは最初はその事物管轄については、刑事にしても民事にしてもだいぶ小さく考えられておる。そういうことから、簡易という妙な名前ですけれども、まさに簡易な、非常に手軽な、そうして民衆の意思というものは十分にその裁判の中にでも反映できる、最初はそういう点を考えておったのではないだろうか。この簡裁というものができるときの最初の考え方は、昔の区裁判所というものとはだいぶ違った性格のものを想定をされておったと思いますけれども、この点について、当時の簡裁のあるべき姿はどういうものであったかということについて、ひとつ御説明願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/75
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076・津田實
○津田政府委員 ただいま御指摘の点はまことに重要な問題だと思うのであります。少なくとも裁判所法成立当時の趣旨といたしましては、簡易裁判所を全国に数多く設置をし、そうして簡易裁判所の裁判官につきましては、これはいわゆるキャリアーでなくても簡易裁判所の裁判官になれるので、いわば外国にもありますように、地方の名望家等によって簡易裁判所の裁判官を得て、それによりまして地力と親しみのあるところの裁判所を運営していく、そういうような考え方で出発したものというふうに私どもは考えておるわけでございます。しかしながら、いざ出発してみますと、そういう裁判官の選考難というものが出てまいりまして、今日のような簡易裁判所の裁判官ということになっておると思います。今日の簡易裁判所の裁判官は必ずしも悪いというわけでございませんけれども、地力の名望家をもって充てるというような事態はまれな状態であろうかというふうに思うのであります。そういう意味におきましては、当初理想として描いておって姿とはおよそ違っておるということも言い得るわけであります。同時にまた、簡易裁判所自体が、裁判官の補充難というものから、地方に五百七十カ所ございますけれども、そこに常駐の裁判官を置くことができないというのが現状でございまして、二つの簡易裁判所あるいは場合によっては三つの簡易裁判所を兼ねる、あるいは本庁から週一回あるいは月二回というふうに出張勤務することを余儀なくされておるような実情でございます。そういう意味におきましては、地方と最も親しみのある裁判所からは若干遠くなっておるというのが現状でございますが、これはもっぱら裁判官の充員難というところにその原因があるのではないかというふうに考えられるわけであります。これらのすべての問題につきましては、やはり現在臨時司法制度調査会においても問題にいたしておりますので、将来の問題としては、何とかそのあり力というものを根本的に考え直さなければならないというふうに私どもは考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/76
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077・松井誠
○松井(誠)委員 いまのお話ですと、元来地方の住民に親しみやすいという形態をとるのが理想なんだけれども、現実に裁判官の補充ができないという障害のために、やむなく後退しているというように受け取れるわけですけれども、しかし、いまの簡易裁判所が地方裁判所と同じように単に下級裁判所だという、つまり質的には違わないのだという形になってきたのは、むしろ民事の管轄について十万円に引き上げたということから、積極的に簡易裁判所を昔の区裁判所に事実上近づけようという政府の方針があったのじゃないですか。どうしても裁判官がいないから簡裁はこうなったのだということでなしに、むしろ積極的なそういった方針とまでばいかないかもしれませんけれども、ともかく簡裁のそういう管轄を引き上げたということは、やむなくそうしたのではなしに、むしろ積極的にいまの簡裁というものを昔の区裁判所のような形に返すという施策がとられて、それが現実にいまの簡裁がそういう区裁判所に近づいてきたという一番大きな原因をなしているのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/77
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078・津田實
○津田政府委員 その点につきましては、民事について管轄を広げたのは、やはり貨幣価値の点に関係があるというふうに私どもは考えております。一方、地方裁判所は御承知のように事件の激増にあえいでいるわけでございまして、なるべく地方裁判所の負担を軽くしたいというような考えも一面にはあるわけでございます。その両者によりまして管轄をある程度拡張したというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/78
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079・松井誠
○松井(誠)委員 地方裁判所の負担を軽くしたい、あるいは最高裁判所の負担を軽くしたい、そこで簡裁というものの管轄をもっと広げる。これは単に貨幣価値の問題ではなしに、当初五千円で出発した訴訟物の価格が十万円に引き上げられたことによって、おそらく全体の訴訟事件の中における簡裁の事件処理件数というものの比重もずっと上がったと思うのですけれども、およその数字でけっこうですが、現在第一審の裁判所として地裁と簡裁とで民事についてどれくらいの取り扱い件数の比率になっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/79
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080・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 ただいまお尋ねの点でございますが、先ほど法務省のほうからもお答えがございましたように、先年、訴訟物の価格を十万円に上げていただいたわけでありますが、これは出発当初は二千円でありまして、その後五千円に上がり、そして三万円、次いで十万円にまた上げていただいたわけであります。この二十二年当時の二千円と今日の十万円と申しますと、その点ではほぼ貨幣価値の変動に見合うものであると私どもは考えておるわけでございます。
そこで新受事件がどういうような比率で地裁と簡裁にいっておるか、ただいま民事のほうのお尋ねと存じますので、民事の三十七年度の比例で申し上げますと、一審事件は簡易裁判所に六万六千五百件、地方裁判所に六万五千四百四十四件ということでございまして、ほぼ半々、やや簡裁のほうが多いという比率になっているわけでございます。しかしながら、戦前の統計によりますと、これは詳しい件数はただいま手元に持っておりませんが、比率でまいりますと、戦前は地方裁判所が一五%、区裁判所が八五%ということになっておったわけでございますので、その関係から申しますれば、現在の簡易裁判所は戦前の区裁判所よりは訴訟事件だけでもかなり狭くなっておるということが件数の上で申し上げられると思います。
なお、そのほかに御承知のように強制執行事件、競売事件というようなものは、戦前は区裁判所でありましたが、これが戦後は簡易裁判所ではなくて地方裁判所のほうにいっておりますので、そういう点でも現在の簡易裁判所は戦前の区裁判所並みになっておるというふうには言えない実情であろうと考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/80
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081・松井誠
○松井(誠)委員 ただ、民事事件の約半数というものが簡易裁判所で管轄されるようになった。そうしますと、最初の考えのように、簡易裁判所の判事は必ずしも法律的な経歴の必要がないとまで考えられたような裁判官の資格というものも、その理由がなくなってくるわけですね。つまり、地方裁判所の判事と同じような法律的な素養がなければ現実に民事の処理ができないということになる。ですからどうしても、そういう面からいっても、最初の簡裁というものに対する構想とはそういうところから違ってきたのじゃないですか。最初出発したときには二千円の訴訟物の価格であったというのですが、その当時の統計はございませんか、件数はおよそ幾らくらいの比率になっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/81
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082・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 昭和二十二年の統計はちょっと手元にありませんが、発足後二年くらいになるわけでありますが、二十四年の統計でまいりますと、簡易裁判所の新受件数は五千百九十七件でございます。それに対して地方裁判所の新受件数は四万一千八十六件であります。これはいわゆる訴訟事件だけでありますので、そういう点から申しますと、すでに発足当時におきましては、相当多くのものが地方裁判所にいっており、簡易裁判所にいく件数はかなり少なかったというふうに申し上げられると思います。
なお、少しつけ加えて申し上げさせていただきたいのでございますが、先ほど来のお尋ねは主として訴訟事件のことと存じまして訴訟事件に関する統計を申し上げたわけでありますが、簡易裁判所で実際扱っております事件の総数、これは三十八年の統計でありますが、民事事件で申し上げますと、総数が七十万六千三百四十四件でございますが、そのうち最も多数を占めますのが、いわゆる過料事件の二十九万件、それから督促事件すなわち支払い命令を出します事件が十四万七千件、雑事件が十二万二千件、調停事件が四万五千件等でありまして、訴訟事件が六万一千件というので、全体の一割以下になるわけであります。調停とか支払い命令というものが民事のほうで非常に大きなウェートを占めておる。それから刑事のほうにおきましても五百十五万件の事件がございますが、その中でいわゆる略式事件が三百四十万件、それから交通即決事件が二十五万件というようなことでございます。訴訟事件は五百十五万件の中で五万七千件にすぎない。すなわち一%強でございます。こういうことでございますので、事件全体から見ますと、簡易裁判所においては調停とかあるいは支払い命令とか、あるいは略式とかいうものがおもになっておる。いずれにしても、刑事のほうではそういう略式のようなものが大部分を占める。民事のほうでは督促、支払い命令とか調停というものがかなりのウェートを占めておる。こういうことでございますので、訴訟事件だけを見ますと、確かに終戦直後よりはかなり簡易裁判所のウェートは重くなってまいっておりますが、全体的にはまだそこまでということはないのではないかと私どもとしては考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/82
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083・松井誠
○松井(誠)委員 私はいま簡易裁判所の性格というものについてお尋ねをしたいと思いますので、したがって、簡易裁判所の仕事の量がふえたかどうかということは問題でなくて、地方裁判所と同じような法律的な素養が要る民事の訴訟事件というものの中で、簡易裁判所がどういう地位を占めておるかということが一番大事だと思って、それを中心にお尋ねをしたわけです。さっきのお話のように、民衆に親しみやすい裁判所ということならば、逆にいま家庭裁判所の管轄になっておる家事調停などを民事調停一般と同じように簡裁に回すわけにいかないのか。これは家庭裁判所の審判なんかとの関係があるのですけれども、しかし、やってやれないことはないし、簡裁というものが設立されたときの構想からいえば、元来それがほんとうではないかという気もするのですけれども、この点はどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/83
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084・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 これは制度の問題でもございますが、同時に最高裁判所の一つの司法行政のやり方の問題にも関連いたしますので便宜私のほうからお答えさしていただきたいと思います。
確かにお話しのとおりでございまして、家庭裁判所というものは最も民衆と身近な関係にあるものでございますので、これをなるべく一般の方々の手近に置いて、すぐかけ込んでいただくようにしなければならないということは、私どもとして常に考えておるところでございます。家庭裁判所そのものは法律でおきめいただいておるわけでございますが、それに基づきまして支部を置くことができるということになっております。その支部は最高裁判所の規則で置くことができるということになっておりますので、その支部を置いておりますし、さらに出張所を置くことも認られております。大体今日の実際の運用といたしましては、簡易裁判所の所在地の相当多数のところに家庭裁判所の出張所というものを置きまして、これは家庭裁判所の事件のすべてを扱っておるわけではございませんが、なるべく一般の方々の身近な事件はその出張所で扱うようにいたしております。その出張所の数もある程度逐次増加して、こちらの人員の充足の関係とにらみ合わしまして拡充いたしておるというのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/84
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085・松井誠
○松井(誠)委員 その出張所というのは簡裁支部を含めてですけれども、簡裁の約何割くらいのところに配置されておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/85
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086・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 家庭裁判所の出張所は現在七十八でございますから、簡易裁判所総数五百七十といたしますと、それのあれでございますが、簡易裁判所と申しましても、それは家庭裁判所所在地にある簡易裁判所もありますから、そこは当然ダブっておるわけで、独立簡裁のうち出張所のありますのは七十八ということになるわけでございます。独立簡裁は二百七十ばかりのようでございますから、その中で約三割ぐらいになりましょうか、七十八ということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/86
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087・松井誠
○松井(誠)委員 それからこの簡裁の性格の一つとして司法委員という独特の制度があるわけです。これが現実にどのように運用されておるのか。つまり司法委員が参加をする事件というのは、全体の事件の中でどれくらいあるのか。これは選任はされておるでしょうけれども、具体的にどの程度活用されておるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/87
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088・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 ただいまお尋ねの点でございますが、まず司法委員の選任につきましては、司法委員規則というものがございまして、それに基づきまして慎重に選任をいたしておるわけでございます。そうしてその数は全国で五千七百八名ということになっております。それから実際に司法委員が関与して処理いたしております事件は、やや統計が古くて恐縮でございますが、昭和三十六年度におきまして、簡易裁判所の民事の第一審事件七万四千六百六十三件のうち、千八百三十二件が司法委員関与ということになっております。したがって、その関与の率は、訴訟事件に関します限りはあまり多くないということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/88
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089・松井誠
○松井(誠)委員 この制度ができた当初は、一体いまのような姿を予想しておったのか、あるいはそうじゃなしに、もっと司法委員というものの活躍の範囲を大きく考えられておったのか。それがいまのようなことになったのは、一体どういう理由でそういうことになったのか。これは最高裁、法務省あたりの指導とはどういう関係になるのか、その辺ひとつまとめてお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/89
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090・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 まず私のほうの考えを申し上げたいと存じますが、確かにいまお尋ねの点につきましては、おそらく当初は司法委員の活躍する面がもっと大きいというふうに考え、相当大きな期待を持たれておったのではないかと思うわけでございます。正確なる内容はまだ申し上げる資料をいま手元に持っておりませんが、この裁判所法が制定されます当時の東大教授でおられた兼子先生などが、この訴訟手続の試案というようなものをお立てになって、いろいろ資料をお出しになったものを拝見いたしますと、現在の民事訴訟法よりはるかに簡単な手続を予想しておられて、そういうものを前提として簡易裁判所というものが考えられたようでございます。しかしながら、実際に法律になりました形は、確かに民事訴訟法の中に簡易裁判所の訴訟手続に関する特則というようなことで、たとえば証人の尋問ということで、調書をつくらずに、尋問にかえて書面の提出でやってもいいとか、あるいは調書を簡略化できるとか、あるいは呼び出しを簡易にできるとかいうのが若干ございますけれども、また判決につきましても、いろいろの簡易化の手続が判決書につきましても規定されてはおりますけれども、しかしながら、またその控訴審は、やはり普通の地方裁判所の控訴と同じような、いわゆる続審形態をとっておるという関係もございまして、これが地方裁判所で新規まき直しに覆審と言いますか、やり直すということでございますと、自然調書を書かず、あるいは判決を簡単に書いても、控訴審はまた初めからやり直すことになるかと思いますが、現在の訴訟法では、一審と同じように控訴でいけば、続審ということで簡易裁判所の続きをやる。そうなりますと、地方裁判所の側といたしますと、調書を何もとっていないということだとよくわからない、あるいは判決が非常に簡単だと地方裁判所ではよくわからない、こういうことにもなりまして、おそらくそういうこともかなり関係いたしておると思います。なおまた、これは国民の側と申しますか、あるいは弁護士さんなんかも含めまして、日本ではやはり正確に事由の書いたものを適時要求されるという面もあろうと思いますが、そういうことがいろいろ関連いたしまして、そう簡単な手続で簡単に言い渡すということが比較的世間でも受け入れられにくかった。私どものほうとしては、むしろこれは簡単にやるということはかなり指導はいたしたわけでございますが、しかし、これはまたその辺のいろいろ支障と申しますか、当事者のほうの側との関係もございまして、ある程度手続が地方裁判所化せざるを得なくなったということは、確かに事実であると思います。したがって、そういう面を根本的にどうするかというような点は、非常に問題であろうと思うわけでございます。手続をもっと簡単にすることを立法問題として考えるかどうか、あるいは区裁判所化することがいいかということは、それは確かに研究問題でございまして、その点では、お話しのとおり、当初とやや運用が違っているということは否定できない現状だろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/90
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091・松井誠
○松井(誠)委員 私は簡易裁判所の特別の訴訟手続のことをお尋ねしたのではなくて、司法委員というものが、さっきのお話ではほとんど活用されていない。それはどういうところに原因があるだろうかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/91
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092・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 結局、そういうふうに手続が地方裁判所化しましたところが、司法委員の活躍の余地の比較的少なくなった一番大きな原因ではないかという考えから申し上げたつもりでございます。
それからなお、司法委員が訴訟事件に関与いたします限度では、先ほど申し上げておるとおりでございますが、調停事件のほうではこれはかなり活躍いたしておりまして、七千二百五十件というような数字が出ておりますので、そちらの面ではかなり活躍する面があるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/92
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093・松井誠
○松井(誠)委員 簡裁の手続、調書やなんかの面を簡略化するということは、それ自体いろいろ問題があると思うし、その問題がなぜ起きてくるかという一番大きな原因は、むしろ十万円まで引き上げて、元来簡略化し得ないような訴訟事件を簡裁に扱わしておきながら、手続だけは簡略にしろというそこからくる矛盾じゃないかと思うのです。だから最初十万円に引き上げたときに、簡易裁判所がそういう民事訴訟としては第一審だという考え方に徹するか、そしてそれに相当した人員の配置をするか、あるいは昔の区裁というような考え方に徹してやるか、どっちかにしなければ、いまのような中途はんぱな、仕事をたくさんしょわしておきながら、手続だけは簡略にしろ、そういう矛盾が出てくるのではないか。そこで司法委員がやはりそういうようにほとんど、少なくとも訴訟事件について動いておる余地がないというのは、司法委員というものが入るにはあまりにむずかしい訴訟事件が簡易裁判所に多いのだということの証拠にもなるんじゃないか。いまの御答弁では、何か手続を簡略化することについては非常に奨励しておるというお話でございましたけれども、司法委員そのものをなるべく使えというようなことについての御指導というものはされておるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/93
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094・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 ただいまのお尋ねの前段の点について、まず少し申し上げさせていただきたいわけでございますが、実は昭和二十九年の改正のときに、政府のほうから出していただきました原案では、訴訟物の価額を二十万円まで引き上げるという案であったように承知いたしております。これは確かにいまおっしゃいましたように、簡易裁判所の性格を変えるということで、そのかわりに裁判所法の附則で事務移転という規定を置いていただきまして、そうしてつまり、本庁の所在地あるいは支部の所在地、少なくとも支部の所在地に民事訴訟の事件を集めまして、簡易裁判所はそれ以外の調停に専念する、こういう考え方で提案されたように記憶いたしております。ところが、それがいろいろの経緯を経まして、結局、国会で十万円ということに修正されたわけでございますが、十万円でございますと、私どもの理解では、貨幣価値の変動の程度のものというふうに理解したわけで、大体そういうことになったわけでございます。これが当時二十万円になっておりますれば、明らかに性格が変わるということであったわけでありますが、その点では十万円でございましたので、性格が変わるとまではいかないのではないかというふうに考えておるのでございますし、むしろ、現在としては、貨幣価値の変動だけからいっても、もう少し高い訴価にしていただいてもいいのではないかと考えておるようなわけでございます。
それから司法委員の活用についてどうしておるかというお尋ねの点でございますが、この点は、むろんわれわれとしては、こういう大ぜいの力に司法委員になっていただいておるわけでございますし、そうしてまたお忙しいところを相当な選考をしてなっていただいておるわけでございますから、これはもう機会あるごとに、会合のたびごとに司法委員を活用していただくように、またどういう活用状況になっておるかということの打ち合わせ会もしばしばやってはおるのでございます。ところが、一方では調停委員は、これはほとんど兼ねておられる方も実際に相当数おいでになるわけでございますが、その調停委員のほうは非常に活用されておるのに、司法委員のほうがそれほど活用されておらない、これはやはりそういう手続のところからくるのではないだろうか。もし、そういう委員の方を裁判所が無視するというような気持ちであれば、調停委員を活用しないかと思うでのすが、調停委員のほうは非常にお世話になっておるのでありますのに、司法委員の方にそれほど活躍していただく余地が現在のところ少ないのは、やはり手続に関係があるのではないかとでも考えるよりほかにないというふうに考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/94
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095・松井誠
○松井(誠)委員 最後に、簡裁の性格に関連をしますので、簡易裁判所の判事の資格の問題についてお尋ねをしたいのですけれども、裁判所法の四十四条に任命資格があって、四十五条に、そういう任命資格に該当しなくても、簡裁判事に任命できるという規定があるわけです。これも簡裁の最初考えられた一つの特色であっただろうと思いますが、この規定によって任命をされておる判事というのは、現在の判事の中でおよそどれくらいの割合を占めておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/95
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096・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 ただいまお尋ねの点は、昨年の暮れの統計によりますと、簡易裁判所の判事の定員が七百十名でございまして、約三十名近い欠員がございまして、現存員が六百八十三名ということになっております。そのうち、いま御指摘のございましたいわゆる特別選考による簡易裁判所判事が三百八十一名ということで、大体五五%というような割合になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/96
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097・松井誠
○松井(誠)委員 その特別な任用というのは、やはり裁判所に勤務をしておったという経験のある人、裁判所の書記官をやっておった、そういう人が大体大部分ですか。その経歴というのはやはりそれが大部分ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/97
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098・寺田治郎
○寺田最高裁判所長官代理者 これは行政官や外交官からおいでになった方もございますし、また学校教員からおいでになった方もございますが、数の上におきましては、やはり裁判所の職員から来た者が一番多いわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/98
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099・松井誠
○松井(誠)委員 いろいろお伺いをしておりますと、簡易裁判所というものができたときの考え方と、現実の運用というものはずいぶん変わってきて、地方裁判所と並ぶ普通の下級裁判所のような形になりつつあるわけですが、これは最初に戻りますけれども、最初に御答弁があったように、現実に簡裁の判事にその人が得られないというそれだけのことなんですか、あるいはやはりこういう考え方が日本の風土に合わないというもっと根本的な原因があるからなのか、その辺のことをもう少し詳しくお聞かせをいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/99
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100・津田實
○津田政府委員 その点はいろいろ考え方があろうかと思うのです。現実に適任者の充員が困難でであるということは大きな理由でございますが、最初に考えられたような形の簡易裁判所というものが、日本の風土に適するかどうか。適するにもかかわらず、その充員難の問題からできないのであるというふうに現在断定し得るかどうかという点につきましては、私どももまだその自信がないわけでございます。当初の動機と申しますか、趣旨としてはそういう理想的なものを考えておったわけでございますけれども、今日の問題としては、次第に権利思想と申しますか、そういうものも盛んになってまいったわけでございますし、単に名望家というものが裁判を行なうということだけで、はたして一般の方々の満足を得られるものかどうかという点につきましては、私どもも必ずしもそのとおりであるというふうにはちょっと言い切れないというふうに思うのです。しかしながら、これは見方によりましていろいろ御意見のあるところだと思いますので、私どもとしても最終的にそうであるというふうに断定いたしておるわけではございません。しかしながら、簡易裁判所の将来の問題といたしましては、やはりもう少しいまの民事訴訟の問題、あるいは刑事訴訟につきましても同様でございますが、やはり法律的な素養をもう少し高める必要があるというようなことも考えられないわけではございません。現に臨時司法制度調査会なんかでも、全簡易裁判所判事を有資格者にすべしというような御意見も相当出ているわけでございますので、そういうような御意見もやはり一つの御意見としてごもっともであるというふうに考えられますが、これは将来法曹の数をどれだけ拡大するかという問題にもからむわけでありまして、直ちに全員を有資格者をもって充てるということは実際問題としては不可能であります。その御意見の存するところは、やはりそういうような特任の資格者の裁判というものが、わが国の風土に合わないのじゃないかというようなお考えが根拠になっておろうかというふうに考えられます。司法制度に関する立案当局の法務省といたしましては、ただいまのところは、いずれであるというようにちょっと結論がついていないような状況でございますが、臨時司法制度調査会における御議論等も十分参酌いたしまして、今後検討してまいりたいというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/100
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101・松井誠
○松井(誠)委員 これでやめますけれども、いまの話のように、民衆が手軽に利用できるというそういう要求と、それから権利の主張、権利の確保というものが必要だという、そういう要求と、これはある面では確かに二律背反のところがあると思うのです。しかし、そのどちらともが大事である限り、これからあと、簡易裁判所の性格は裁判制度全体に関する問題でありますけれども、それだけに、やはりいまの臨時司法制度調査会の中で、つまり国民の立場からそういう両方の要求が満たされるように結論を出していただくようにお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/101
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102・濱野清吾
○濱野委員長 本日の議事はこの程度といたします。
次回は明三日午前十時より開会することといたし、これにて散会いたします。
午後零時四十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X02119640402/102
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