1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年五月十二日(火曜日)
午前十時三十三分開議
出席委員
委員長 代理理事 鍛冶 良作君
理事 唐澤 俊樹君 理事 小金 義照君
理事 小島 徹三君 理事 坂本 泰良君
理事 細迫 兼光君
上村千一郎君 大竹 太郎君
坂村 吉正君 四宮 久吉君
田村 良平君 中垣 國男君
服部 安司君 古川 丈吉君
森下 元晴君 竹谷源太郎君
出席政府委員
法務政務次官 天埜 良吉君
検 事
(民事局長) 平賀 健太君
委員外の出席者
専 門 員 高橋 勝好君
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五月七日
委員岡崎英城君辞任につき、その補欠として早
川崇君が議長の指名で委員に選任された。
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同月八日
委員畑 和君及び松井誠君辞任につき、その補
欠として久保田鶴松君及び山本幸一君が議長の
指名で委員に選任された。
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五月七日
暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正す
る法律案反対に関する請願(加藤進君紹介)(
第三四四三号)
同外一件(川上貫一君紹介)(第三四四四号)
同外一件(志賀義雄君)(紹介第三四四五号)
同(谷口善太郎君紹介)(第三四四六号)
同外一件(林百郎君紹介)(第三四四七号)
同(河野密君紹介)(第三四八五号)
同(山花秀雄君紹介)(第三四八六号)
同外二十六件(坂本泰良君紹介)(第三四九九
号)
同(島上善五郎君紹介)(第三五〇五号)
同(志賀義雄君紹介)(第三五二七号)
同外一件(山花秀雄君紹介)(第三五二八号)
同外十六件(島上善五郎君紹介)(第三五四一
号)
同外四件(松井政吉君紹介)(第三五四二号)
同(横山利秋君紹介)(第三五四三号)
同(大柴滋夫君紹介)(第三六三二号)
同(加藤進君紹介)(第三六三三号)
同(川上貫一君紹介)(第三六三四号)
同外一件(河野密君紹介)(第三六三五号)
同外十五件(坂本泰良君紹介)(第三六三六
号)
同(志賀義雄君紹介)(第三六三七号)
同(谷口善太郎君紹介)(第三六三八号)
同(平岡忠次郎君紹介)(第三六三九号)
同(林百郎君紹介)(第三六四〇号)
暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正す
る法律案反対等に関する請願(神近市子君紹
介)(第三五五八号)
同(加藤進君紹介)(第三六三〇号)
同(山花秀雄君紹介)(第三六三一号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
遺言の方式の準拠法に関する法律案(内閣提出
第一二七号)(参議院送付)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X03319640512/0
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001・鍛冶良作
○鍛冶委員長代理 これより会議を開きます。
本日は委員長が所用のため出席がおくれますので、その指名によって私が委員長の職務を代行いたします。
遺言の方式の準拠法に関する法律案を議題といたします。
前回に引続き質疑を行ないます。大竹太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X03319640512/1
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002・大竹太郎
○大竹委員 この前一応御質問いたしたのでありますが、やはり一番問題になるのは、どこまでが方式であり、どこからが内容であるかということだろうと思うのであります。ちょうど出ておられます村岡さんは、この条約の会議にも行っておいでだそうでありますので、この会議においてもこれが一番問題になったかと思うのでありますが、それについて各国の考え方というようなものについて概括的にひとつ御説明を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X03319640512/2
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003・平賀健太
○平賀政府委員 実は一九六〇年のヘーグにおける第九回の総会には私出席いたしたのでございます。問題は、やはりどこまでが方式の問題であり、それから先は遺言の実質的な成立要件の問題あるいは遺言の内容の問題なのかということに疑義があるわけでございます。総会におきましても問題になりましたのは、この法律案で申しますと第四条と第五条の関係でございます。ほかの点につきましては、これは大体諸国の取り扱いが一致しております。遺言者の年齢によって遺言の方式に制限がある、あるいは国籍によって制限ある。たとえばある国の法律、オランダなんかその例でございますが、オランダ人が外国で遺言をする場合には自筆証書ではいけない、必ず公正証書による遺言をしなければならない。それは一体遺言の実質的な成立要件の問題なのか、あるいは遺言の内容の問題なのかそれとも方式の問題なのか。あるいはまた禁治産者——禁治産者が遺言の場合はございません、認めておりませんが、日本本でいえば準禁治産者に当たるような者が遺言をする場合には自筆証書ではいけない、また秘密証書でもいけない、公正証書によらなくてはいけない。それからまた、遺言をします場合には証人の立ち会いを要するとしておるところが少なくないわけでございます。日本の民法におきましても、公正証書による遺言をする場合には証人の立ち会いを要するとしております。ところが、その証人につきましては、これは成年者でなくてはいけない、あるいは遺言者あるいは受遺者と一定の親族関係にあってはいけないとか、各国にそういう制限があるわけでございます。そういうのは一体遺言の実質的成立要件の問題か、あるいは方式の問題なのかということで見解が分かれるわけでございます。そこでこの条約におきましては、その点を、これは方式の問題であるというふうにはっきり割り切りまして、諸国の解釈を一定した。これについて解釈上疑義が生じて、ある国ではこれを遺言の実質的成立要件の問題、あるいはさらに進んで遺言の内容の問題というようなことにならないようにということで、これは方式の問題であるというふうに割り切ったわけでございます。これも要するにやはり方式の問題として処理しておるところが多いというところと、事柄の実態から見まして、これを方式の範囲の問題として成立決定することが合理的であるという両方の理由から、こういう法律案の第五条に相当するような条約の規定ができた次第でございます。
それから一番問題になりましたのが共同遺言なのでございます。共同遺言を禁止しておる国がある。それからこれを許すにしましても夫婦だけの共同遺言ならば認める、それからさらに夫婦だけではなく、夫婦以外の者の共同遺言を認めるというふうな国もあるわけでございますが、これが実は一番問題になりまして、これは方式の問題なのか、それとも遺言の内容の問題なのか諸国の取り扱いがまちまちなのでございます。現に日本なんかでは裁判所の確定した判例はございませんけれども、理論としましては、これは遺言の内容の問題であるという見解が有力でございます。国によりまして、これを日本の学者が言っておるようなことと同じように、遺言の内容の問題である、したがって遺言の内容をなしております相続でございますとか、その他の事項の準拠法でこれはきめるべき問題であるという考えのところと、いや、そうではなくて、これはやはり方式の問題であるというふうに考えておる国もあるわけでございます。この共同遺言につきましては、これは一体方式の問題なのかそれ以外の問題なのかということでだいぶ議論がされたのでございますが、いずれともこれはきめがたい。そこでこれを方式の問題と見るか、あるいは遺言の内容の問題と見るかということは、これは各国の国際私法にまかせる。ただ共同遺言についても、方式としましては、各国とも自筆証書でございますとか、秘密証書でございますとか、あるいは公正証書による遺言とか、いろいろあるわけでございますが、自筆証書の場合にはこうなければならないということで、日本の民法にもあるような規定がほかの国でもあるわけでございます。そういう点についてだけは、やはりこの条約が適用になる。たとえば日本法の方式に従いまして、自筆証書で共同遺言をしたといたします。日本の民法の規定に従って自筆証書による遺言をした。字句の挿入削除なんかについてもちゃんと明確にしまして、遺言の日付を書き、住所氏名、署名捺印をしておるということで、日本の民法の自筆証書の要件に当たっておれば、その方式の問題としては、これは有効であるということになるわけでございますが、ただ、かりにそれが相続に関する遺言遺贈でございますと、遺言者の本国法ということで、本国がたとえばそれがドイツ人だと仮定いたしますと、これはその遺言の内容につきましては、遺言者であるドイツ人の本国法、ドイツ法によるということになるわけであります。もし日本の学者が言っておりますように、共同遺言を許すか許さないかという問題は、日本の国際私法の解釈が、遺言の内容の問題であるという解釈に相なりますと、共同遺言を許すか許さないかという問題はドイツ法によってきめる。ところがドイツにおきましては、共同遺言を夫婦には認めておるということでございますので、そうなりますと、この遺言は内容的にもその点では有効である。共同遺言であるからといって無効となることはない。そういうことになるわけでございます。
総会では、この共同遺言の問題は非常に問題になりまして、結局、方式の問題ともあるいは遺言の内容ともこの条約で決定することはむずかしい。その点は断念したわけでございます。その他の点につきましては、特に問題はなかったように思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X03319640512/3
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004・大竹太郎
○大竹委員 いまの点に関連してちょっとお聞きしたいのでありますが、二条に五つのあれがございますが、ここで幾つにも、どの法律もとれるという場合に、順序があるのでございますか、どうですか。いまのような場合に、行為地法をとるという場合には、ドイツ法なら有効である、日本法をとれば無効になるという場合があります。そうすると、どの法律をとるかという順序がなければ私は変だと思うのでありますが、その点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X03319640512/4
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005・平賀健太
○平賀政府委員 これは順序はございません。あるものによれば方式にかなっていないが、ほかのものによれば方式にかなっておるというなら、それでいいのであります。順序は全然ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X03319640512/5
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006・大竹太郎
○大竹委員 それならば順序がないから、この中のどれか一つで有効ならば、それでよろしいという解釈ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X03319640512/6
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007・平賀健太
○平賀政府委員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X03319640512/7
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008・大竹太郎
○大竹委員 それではいま一つお聞きしたいのでありますが、この附則のほうで、法例の二十六条の三項を削っておるのでありますが、申し上げるまでもなく、この二十六条の三項というのは「遺言ノ方式二付キ行為地法ニ依ルコトヲ妨ケス」という条文であります。これは普通相互主義というように言っておるのでありますが、そうすると、この原則はもうとらぬということになるのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X03319640512/8
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009・平賀健太
○平賀政府委員 これは二十六条にただいま仰せのとおり、遺言についての規定があるわけでございますが、この法律が成立いたしますと、遺言の方式に関しては一切この法律でまかなうということになりますので、遺言の方式に関する限りにおきましては、法例の規定を削っていいのじゃないか、そういう関係をもちまして、まずこの法例の一部改正をごらんになりますと、三十条の次に一カ条加えまして、第三十一条という規定を置きまして、「本法六遺言ノ方式ニ付テハ之ヲ適用セズ」ということにいたしたわけでございます。その結果、現行法の第二十六条の「遺言ノ成立及ヒ効力ハ」云々ということで準拠法も定まっておりますが、この第一項の遺言の成立の中には方式の問題も実は入っておるわけであります。ところが、この三十一条が新たに設けられましたので、三十一条の関係で、二十六条の一項における遺言の成立という場合には、実質的な成立要件の問題だけになりまして、方式の問題はこれからはずれてしまうということでございます。
それから第二十六条の第三項は、これはまず第一項でもって遺言者の本国法に方式もよるということになっておりまして、本国法に追加いたしまして行為地法によってもよろしい。でありますから、現行法では、遺言者の本国法と行為地法ということになっておるわけでございます。ところが、新しくいま提案になっております法律が成立いたしますと、方式の問題は全部この新しい法律でまかなわれることになりますので、三項はもう不要になる。そういうわけで第三項を削るということにいたしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X03319640512/9
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010・大竹太郎
○大竹委員 それからこの前にちょっとお聞きしたのでありますが、この点、あのときにまだ十分私納得がいかなかった点があるのでお聞きいたしたいのであります。第六条の「その国の規則」というこの「規則」でありますが、あのときにはたしか慣習法とか、そういう広い意味の、日本で言えば規範というような意味にお答えいただいたと思うのでありますが、この点もう一度御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X03319640512/10
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011・平賀健太
○平賀政府委員 この点は、私、前回少し説明が明確でなかったかと思うのでございますが、これは条約の原文によりますと、英文ではルールということばを使っております。それからフランス文ではレグルということばを使っておりまして、それの直訳といってはなんでございますけれども、やはり規則と訳すのが正確ではないか。それで規則は、前回も申し上げましたように、はっきり成文法になっているところもございましょうし、あるいは判例法なんかできまっておるというところもあるわけでございます。そもそも国際私法のことを、日本では抵触規則というふうに申すこともあるわけでございます。コンフリクト・オブ・ローズという英米式の言い方を日本語に直しまして、抵触規則というようなことばも使っております。その規則ということばも、日本ではある程度熟しております関係上、ルール、レグルということばは、規則と訳すのが一番正確ではなかろうかということで、こういう用語も使ってあるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X03319640512/11
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012・大竹太郎
○大竹委員 大体この程度で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X03319640512/12
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013・鍛冶良作
○鍛冶委員長代理 坂本泰良君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X03319640512/13
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014・坂本泰良
○坂本委員 第八条の関係ですが、この提案理由に、「第四に、外国法の適用がわが国の公の秩序に反する場合には、それを適用しないこととしております。」この関係でございます。第八条の公の秩序を理由とする外国法の適用排除に関する規定ですが、もちろんこの規定は、「公の秩序に反するというのは、わが国が維持しようとする私法的社会秩序が破壊される場合をいうのであって、」こういうふうにあるわけですが、「そのような場合が実際に生ずることはほとんどないと思われる。」と書いてはありますが、やはりこういう規定がある以上、どういう場合が考えられるかその点お聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X03319640512/14
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015・平賀健太
○平賀政府委員 ただいま仰せの第八条の規定は、実は現行の法例にもあるのでございまして、現行の法例におきましては、第三十条におきまして、「外国法ニ依ルヘキ場合二於テ其規定カ公ノ秩序又六善良ノ風俗三反スルトキハ之ヲ適用セス」ということで、この第三十条も、やはり現行法の第二十六条で遺言の規定があるわけでございますが、遺言の方式に関する外国の規定が、わが国の公の秩序、善良の風俗に反する場合には適用しないということに相なるわけでございます。この条約も、この法律案の第八条と同じような規定が実は入っておりまして、そういう関係で、この法律案におきましても、現行の法例と同じように、この第八条を入れたわけでございます。遺言の方式に関しましては、この公の秩序に反する具体的な例を実はあげるのがなかなか困難でございまして、私総会に出ましたときにも——これはすべての国際私法の条約、ことにヘーグ会議において採択されます条約には、全部これが人「ておるわけでございます。そういう関係で、遺言の方式の関係では、いわば例文的なということになりますけれども、他の条約にも入っております関係でこれは入ったまでということでございます。
具体的な例をあげるということになりますと、私は非常にむずかしいのでございます。総会のときでも、具体例なんかあげられたことはないように記憶いたしております。非常にこれは具体例をさがすのが困難でございます。ただ、国際私法の関係で、こういうことはあるわけでございます。従来の例からいいますと、各国ともやはり自国の法律が一番いいという信念を持っておるわけでございます。なるたけ何か口実を設けて、外国法の適用を排除しょうという傾向がなきにしもあらずということでございます。そういう関係で、外国法の適用を排除して自国法によってやっていこうということになりますと、いつも引き合いに出すのが公序である。わが国の公序に反するから、これは適用しないで、国内法、自国法を適用するということをやりかねないのでございます。そういう関係で、ヘーグ会議におきましては、最近の条約では、明らかに公の秩序に反するときは、 明らかに」というのを入れまして、みだりにこの公序法を乱用してはいけないという趣旨で「明らかに」という字句を入れました条項が設けられるのが最近の例でございます。そういう関係で、明らかに公序に反するなどということになりますと、なおさら具体例というのがむずかしくなるのでございます。この適例では決してございませんけれども、国によりましては、たとえば口頭の遺言を認めておる国があるわけでございます。文明国の中で口頭遺言を認めておるのはオーストリアでございます。ただ、実際にはほとんど例がないということのようでありますが、その口頭の遺言なんかの場合でございますと、たとえばオーストリア人が口頭で遺言をした、ところがある国の裁判所でその遺言の効力が問題になったという場合に、口頭の遺言なんというのはわが国の公の秩序、善良の風俗に反するというようなことで、本国法に従ってその口頭の遺言は方式上無効だということはあり得るわけでございます。こういう規定がございませんと、そういうことが考えられるわけでございます。ところが、第八条におきまして「明らかに公の秩序に反する」というようなことになっておりまして、口頭遺言は公序に反するということはそう簡単に言えない。やはり口頭遺言も有効だという解釈にこれはどうもなりはしないかと私は思うのでございます。そういう意味で、逆に「明らかに」という規定が入っておるところに意味がある。結果から申し上げますと、第八条は、公の秩序ということを理由にして外国法の適用を排除することを制限するという効果がむしろあるのではないかというふうに私は考えるのでございます。御質問に対するお答えになっていないのでございますけれども、いかなる具体的な場合があるかということは、どうも実例をあげるのが非常に困難なように思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X03319640512/15
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016・坂本泰良
○坂本委員 公序良俗ということばは非常に法律問題の解決には便利であって、乱用することもできるし、またいいほうにこれを利用して解決を円滑にすることもできるわけです。そういう点から考えますと、いまおっしゃったような「明らかに公の秩序に反する」ということになれば、これはやはりわが国の公の秩序というものを前提にしてこれを考えるわけです。そうすると、外国では公の秩序に反することであっても、日本では反しないことがある。こういうことも想像できるわけですが、そういうような場合はどうですか。やはりこの法律は日本の法律だし、条約を批准する以上は、批准国の国情その他によってこの公の秩序ということを判断する、こういうことになるのじゃないかと思うのですが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X03319640512/16
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017・平賀健太
○平賀政府委員 ただいま仰せのとおりでございます。この法律案について申し上げますと、第二条により上ますと、一号から五号まで準拠法が掲げてございますが、これは国内法である場合もございますが、外国法である場合があり得るわけでございます。その外国法を適用することがわが国の公の秩序、善良の風俗に反するという結果になる場合には、その外国法は適用しないということで、わが国の公の秩序というものを基準に考えることになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X03319640512/17
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018・坂本泰良
○坂本委員 最後に一つだけですが、これは現行法の法例と関係するところがずいぶんあると思うのですが、現行法の法例と抵触するような規定があるがないか。もしその解釈上その他抵触するようなことがあった場合はどちらを適用するか、その点御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X03319640512/18
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019・平賀健太
○平賀政府委員 現行の法例と抵触してはこれは困りますので、抵触しないように、法例の一部改正を附則でやっておりまして、法例との抵触ということはないようにこの法律案ではいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X03319640512/19
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020・大竹太郎
○大竹委員 さっきの点、もうちょっとお聞きしておきたいのですが、方式と実質の問題で相当各国の間に意見が違っておるというお話ですが、そういうときに利益の衝突があった場合には、やはり相互主義によって処理するよりしかたがないと思うのでありますが、その点はどういうことになりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X03319640512/20
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021・平賀健太
○平賀政府委員 ただいま仰せの相互主義という問題はちょっと起こらないと思うのでございます。各国の国際私法が違うことから違った結論が出てくるおそれがございますのは、先ほどからも申し上げましした第四条の共同遺言に関してでございます。同じ遺言が、たとえば日本の裁判所で問題になればこれは有効だけれども、ほかの国で問題になれば無効になるという結果が生ずるおそれがあるわけでございます。この国際私法の統一を目的としておりますところのヘーサ条約は、できるだけそういう事態を防ごうというのがヘーグ会議の精神なのでございます。ところが、国が多数ありますことでございますし、なかなか各国の見解がまとまらないという場合には、これはやむを得ないのでございまして、共同遺言に関する限りにおきましては、条約で最終的にはっきりするということに至らなかったわけでございます。これを方式の問題というふうにはっきり割り切れば、もう問題解消でございますけれども、それが割り切れなかったというところに、まだ理想からはちょっと遠いところにあるわけでございますが、第五条の関係におきましては、これははっきり割り切れまして、この限りにおいては締約国のどの裁判所におきましても違った結論になることはないわけでございます。ただ、共同遺言に関します限りは、これはどこの国の裁判所で問題になるかということによって遺言が有効になったり無効になったりするという結果が生ずることはやむを得ないことでございます。しかしながら、仰せのように相互主義という問題はちょっと起こりかねると思うのでございます。相互主義はこういう場合に問題になろうかと思います。たとえば日本人夫婦がアメリカ——アメリカは締約国になる可能性はございませんが、イギリスはすでに加盟しております。イギリス人夫婦が共同遺言をした。それが何らかの関係で日本の裁判所で問題になった。日本の裁判所では、この準拠法の関係でこれは有効だというふうに判断された。ところが日本人夫婦が共同遺言した。それが何かの関係でイギリスの裁判所で問題になった。ところがイギリスではそれを無効とするという場合に、イギリスが無効とするならこちらも有効とするわけにいかぬ。イギリスが有効とするならこちらも有効とするというような脅え方、そういう場合に相互主義というようなことがいわれるわけでございます。この条約並びに法律案では、そういう意味の相互主義というものは問題にならないわけでございます。イギリスの裁判所で日本人夫婦の共同遺言を有効としようとしまいと、日本の法律の場合におきまして、それが有効ならば有効ということになるわけでございます。相互主義ということは全然問題にならぬと思うのでございいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X03319640512/21
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022・鍛冶良作
○鍛冶委員長代理 ほかにありませんか。——それでは本日の議事はこの程度といたします。
次会は来たる十四日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。午前十一時五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605206X03319640512/22
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