1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年四月二十八日(火曜日)
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議事日程 第二十六号
昭和三十九年四月二十八日
午後二時開議
第一 暴力行為等処罰に関する法律等の一部を
改正する法律案(内閣提出)
第二 農山漁村電気導入促進法の一部を改正す
る法律案(農林水産委員長提出)
第三 水先法の一部を改正する法律案(内閣提
出)
第四 国有財産法の一部を改正する法律案(内
閣提出)
第五 国際開発協会への加盟に伴う措置に関す
る法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
第六 国民年金法及び児童扶養手当法の一部を
改正する法律案(内閣提出)
第七 風俗営業等取締法の一部を改正する法律
案(内閣提出、参議院送付)
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○本日の会議に付した案件
議員堤康次郎君逝去につき院議をもつて弔詞を
贈呈することとし、その文案は議長に一任す
るの件(議長発議)
矢尾喜三郎君の故議員堤康次郎君に対する追悼
演説
法務大臣賀屋興宣君不信任決議案(横路節雄君
外三名提出)
皇室経済法施行法の一部を改正する法律案(内
閣提出、参議院回付)
日程第一 暴力行為等処罰に関する法律等の一
部を改正する法律案(内閣提出)
日程第二 農山漁村電気導入促進法の一部を改
正する法律案(農林水産委員長提出)
日程第三 水先法の一部を改正する法律案(内
閣提出)
日程第四 国有財産法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
日程第五 国際開発協会への加盟に伴う措置に
関する法律の一部を改正する法律案(内閣提
出)
日程第六 国民年金法及び児童扶養手当法の一
部を改正する法律案(内閣提出)
日程第七 風俗常業等取締法の一部を改正する
法律案(内閣提出、参議院送付)
大平外務大臣の沖繩援助に関する日米間の書簡
交換についての発言及び質疑
午後二時八分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/0
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001・船田中
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
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議員堤康次郎君逝去につき院議をもつて弔詞を贈呈することとし、その文案は議長に一任するの件(議長発議)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/1
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002・船田中
○議長(船田中君) 御報告いたすことがあります。
議員提康次郎君は、去る二十六日逝去せられました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
つきましては、同君に対し、院議をもって弔詞を贈呈いたしたいと存じます。なお、この文案は議長に一任せられたいと存じます。これに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/2
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003・船田中
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
つきましては、議長の手元において起草いたしました文案を朗読いたします。
〔総員起立〕
衆議院は多年憲政のために尽力し特に院議をもつてその功労を表彰されまたがって本院議長の重職にあたられた議員正三位勲一等提康次郎君の長逝を哀悼しつつしんで弔詞をささげます
この弔詞の贈呈方は議長において取り計らいます。
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矢尾喜三郎君の故議員堤康次郎君に対する追悼演説発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/3
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004・船田中
○議長(船田中君) この際、弔意を表するため、矢尾喜三郎君から発言を求められております。これを許します。矢尾喜三郎君。
〔矢尾喜三郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/4
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005・矢尾喜三郎
○矢尾喜三郎君 ただいま議長から御報告のありましたとおり、本院議員堤康次郎先生は、一昨二十六日、東京新宿の国立第一病院において急逝されました。つい先日まで堂々の体躯と情熱をうちに秘めた独特の風貌をもって活躍しておられたことを考えますと、あまりの突然さに堤さんの死を信ずることができないのであります。まことに痛惜の至りにたえません。
ここに、私は、諸君の御同意を得まして、議員一同を代表し、つつしんで哀悼のことばを申し述べたいと存ずる次第でございます。(拍手)
堤さんは、明治二十二年三月滋賀県愛知郡秦荘町の農家に生まれ、幼くして父君を失われたあなたは祖父母のあたたかい愛情のもとに成長されたのであります。明治四十年、最愛の祖父を失われましたが、生来独立独歩、向学の念に燃えるあなたは故郷を離れて上京し、早稲田大学に入学し、自主の精神を養われるとともに、遠大な理想実現のために想を練られたのであります。
すでに学生時代より日本橋蠣殻町の三等郵便局を経営するなど、事業にすぐれた才能を発揮しておられたのでありますが、卒業後にやられた鉄工所、ゴム会社、石炭山、木造船会社、海運業、真珠の養殖などは、あなたの懸命の努力にもかかわらず、良好の結果を生むに至らなかったのであります。しかしこのことは、むしろ将来の大器のために神の課せられた試練であったと申せましょう。幾多の辛酸は、あなたに人生の大道を歩めと教えました。手練手管を弄し、いたずらに営利のみを追求するのが事業ではない。世のため国のために尽くす奉仕の精神こそ、事業の根本であるという心境に到達され、不毛の土地の開発を決心されたのであります。かくして箱根と軽井沢の開発に着手されたのでありますが、時に大正七年、堤さんが三十歳の年でありました。
当時、箱根といえば文字どおりの天下の険であり、土地の人たちだけが細々と生活している人跡まれなところでありました。幼き日に最愛の祖父から聞かされた数々の行商の話、その中で箱根の山の難渋さがいつまでもあなたの記憶を去らず、土地の人々の生活を豊かにし、交通の便をはかり、観光客の足をとどめさせることを思いつかせたのだと、後年あなたは語っておられますが、あなたの終生の事業を通じて見られる独創性と奉仕の精神が、すでにこのときから貫かれているのであります。
こうして大正十二年には都下国立の開発を手がけて現在の学園都市の基盤をつくり、また、土地開発事業と密接不離の関係にある交通機関の経営にも手腕をふるい、昭和三年には多摩湖鉄道を創設、また駿豆鉄道、武蔵野鉄道、近江鉄道を経営し、昭和二十年九月には現在の西武鉄道をつくり上げられたのであります。
しかし、私は、あなたの興された事業の隆々発展して、わが国はおろか世界に名声をはせられた成功のみを見て、世間があなたを立志伝中の人として故人の列に加えることを快しとしないものであります。あなたの決断と不屈の闘志に裏づけられた実行力、みずからを律し、他を律する克己心と合理性、失われることのない誠実さと感謝の精神、そして未来に対する洞察力、これこそがあなたの成功を約束させたのであり、もって後世の範といたさねばならないと信ずるのであります。(拍手)
政治におけるあなたの功績もまた事業に劣らぬものがありました。かねて、故永井柳太郎先生の薫陶を受けておられたあなたは、国民全体の幸福はかかって政治にあるとの強い信念に立ち、大正十三年、郷里滋賀県下から立候補し、弱冠三十六歳をもって、みごと当選の栄を得られたのであります。自来、本院議員に当選すること十三回、在職三十三年四カ月の長きにわたっているのであります。
若き日のあなたは、本院内において常にメモを片手に憲政会の闘士として得意の弁論を駆使し、当時の政府との激論の先頭に立って目ざましい活躍をされたのであります。将来の大政治家をほうふっとさせるその活躍ぶりは、同僚議員の刮目するところとなり、同郷の政治を志す者の羨望、憧憬の的であったのであります。
昭和七年五月、齋藤内閣成るや、永井拓務大臣のもとで、政務次官として二年有余にわたり拓務行政に参画して、その力量を発揮され、行政手腕においてもぬきんでた才能を披瀝されたのであります。
しかし、長年にわたるあなたの政治生活の中にあって特筆されるべきは、戦後の民主憲法のもとでの国権の最高機関たる本院の議長に在職されたことでありましょう。すなわち、昭和二十八年五月、第十六回特別国会において議長に就任され、在職一年八カ月、その間、第十九回国会の昭和二十九年六月には、会期延長をめぐって議長として非常な苦労を重ねられたのでありますが、この体験を経て、国会正常化に対するあなたの関心はいよいよ深められたのであります。
続いて、あなたは、多年議員として憲政のため尽力されたゆえをもって、昭和三十一年一月二十五日、永年在職議員として名誉ある表彰を受けられました。
自来今日まで、本院の重鎮として、また自由民主党の顧問として、わが国内外の政情を見詰め、憂国の情いよいよ厚く、政府・与党のよき助言者として重要な役割りを果たしてこられたのであります。
ことに、日本の国際的地位の向上に対するあなたの熱意は目ざましく、故大隈侯の故事にならい、みずから求むる何ものもなく、ただ遠来の客を迎えて互いに胸襟を開いて親善をせんものと、民間外交に身を挺されたことを大いに多とするものであります。
かくして、前後三十三年余議員として在職し、ことに本院議長の重職につかれ、終始国政のために尽瘁せられた功績は、まことに偉大なものがあると存じます。(拍手)
思うに、あなたは、辺幅を飾らず、礼儀正しく、情に厚い人でありました。あなたがこのすぐれた資質にあわせて、政治も事業もすべて世の人に対する感謝と奉仕であるとのかたい信念に徹し、七十五年の生涯を根気強く歩み抜かれ、大きな足跡を残されたのでありまして、政治家として、また事業家として、あなたの若い日の抱負は達成されたというべきでありましょう。
しかし、堤さん、私は、あなたが質素な節度ある日常を通じて、人もうらやむほどの健康を誇っておられ、ことに、人間の知恵も判断力も全盛期は八十代にありとし、そのために健康の維持につとめておられたことを思うと、いかに天命とは申せ、遠大な将来の展望を前に、中道にして倒れられたあなたの胸中は、痛恨やる方ないものがあったと存ずるのであります。突然の逝去は、まことに悲しみのきわみであります。
いまや、わが国は、内政に外交に、きわめて重大な時期に直面しております。この時にあたり、堤さんのような幅の広い、実行力のある政治家を失ったことは、国家にとって一大損失でありまして、惜しんでも余りある次第であります。(拍手)
ここに、つつしんで堤さんの生前の功績をたたえ、その人となりをしのび、心から御冥福をお祈りして、追悼のことばといたします。(拍手)
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法務大臣賀屋興宣君不信任決議案
(横路節雄君外三名提出)
(委員会審査省略要求案件)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/5
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006・小沢辰男
○小沢辰男君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
すなわち、横路節雄君外三名提出、法務大臣賀屋興宣君不信任決議案は、提出者の要求のとおり委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/6
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007・船田中
○議長(船田中君) 小沢辰男君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/7
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008・船田中
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
法務大臣賀屋興宣君不信任決議案を議題といたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/8
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009・船田中
○議長(船田中君) 提出者の趣旨弁明を許します。田中織之進君。
〔田中織之進君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/9
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010・田中織之進
○田中織之進君 私は、ただいま議題となりました法務大臣賀屋興宣君不信任決議案に対し、日本社会党を代表して、趣旨弁明を行なわんとするものであります。(拍手)
まず最初に、決議案文を朗読いたします。
法務大臣賀屋興宣君不信任決議案
本院は、法務大臣賀屋興宣君を信任せず。
右決議する。
〔拍手〕
理 由
一 賀屋法務大臣は、暴力行為等処罰法の一部改正案を三度びにわたって国会に提出し、労働運動をはじめ大衆運動弾圧の意図を明らかにした。さらに同大臣がその地位に留まる限り、引き続き一連の治安立法を計画するおそれは火を見るより明らかである。同大臣の存在は、わが国民七政治発展のガンといわねばならない。
一 賀屋法務大臣は、出入国管理行政をあずかる地位を悪用し、日朝自由往来を阻害し、さらに周鴻慶氏の不当勾留、中国貿易使節団員呉学文氏の入国拒否など、国民が長きにわたって積みあげてきた日中、日朝友好のきずなを強引に断ち切ろうとした張本人である。これほど国民の意思と利益をふみにじった大臣はない。
一 以上要するに賀屋法務大臣は、戦後の今日においても依然として旧時代の思想を信奉し、つねに政治反動の先頭に立ちことごとに戦前政治への復活を試みるなど、新憲法下の国務大臣としてもっともふさわしくない存在である。同大臣をこれ以上許すことは断じてできない。これが、本決議案を提出する理由である。
以下、ただいま読み上げました決議案について、その趣旨を説明いたしたいと思います。
不信任の第一にあげましたところの暴力法提案の反動性についてでございますが、わが国では、およそ社会と犯罪に目を配る場合、暴力団の存在を抜きにして語ることができない現状にあります。青少年非行の問題を追及してみても、必ずといってよいほど、暴力団の組織と背景に突き当たるのでございます。政府が国会に提出した資料によりますと、かかる暴力団体は、全国で約五千二百団体、その構成員約十七万人の多きにのぼるのであります。この中にいわゆる右翼団体が含まれておるかどうかは明確ではございませんが、最近では、やくざ団体が右翼を名のり、しかも、それが政治的に強い作用を及ぼしておることを注意しなければなりません。しかるに、歴代保守党政府は、この暴力団対策については、ほとんど無為無策であったといって過言ではないのであります。
その反面、新憲法による労働三権の保障による労働組合運動や、民主主義運動の高揚を押えるために、昭和二十四年四月四日の団体等規正令を皮切りに、同年五月二十二日労働組合法改正、労調法成立、六月一日公労法の施行、六月十八日の独禁法の改正、二十七年七月四日の破防法の成立、二十八年八月五日スト規制法の成立、三十三年十一月警職法の提案、三十五年五月十九日新安保条約の強行採決など、労働運動並びに民主的大衆運動抑圧の反動立法の制定等、弾圧体制の強化に狂奔し、破防法の成立に伴い設置されました公安調査庁や公安警察の強化は、まさに戦前の特高警察以上の強力なる組織と活動を行なっているのでございます。
この間、昭和三十五年十月十二日、衆議院解散直前、日比谷公会堂における三党首立ち会い演説会において、わが党浅沼委員長が、池田首相の面前において、右翼暴力団山口二矢なる少年により白昼刺殺されるという、世界の歴史にもいまだかつてない一大不祥事件が起こったのであります。しかも、その犯人が留置場内で自殺をして、今日に至るまでその背後関係に徹底的なメスを入れることができなくなっているのでございます。浅沼暗殺事件直後、国会において右翼テロ対策が盛んに論じられましたが、有効かつ具体的な対策が講じられることがなかったため、引き続いて中央公論社嶋中社長夫人等に対する右翼暴力団のテロ行為があり、嶋中家のお手伝いさんが嶋中夫人をかばって殺されるという悲劇を生んだのでございます。
池田政府は、その直後、昭和三十六年二月二十一日の閣議において暴力犯罪防止対策要綱を決定いたしましたが、きわめておざなりなものである上に、その第一に掲げておる行政上の措置、その中の重要なる総合的な暴力犯罪取り締まり体制の確立について見ましても、警察に暴力取締本部を設置いたしましたのはようやく本年に入ってからのことでございます。この一事をもって見ましても、暴力団対策とはかけ声のみで、真剣にこれに取り組もうとしていないということが言えるのでございます。(拍手)右翼テロ、暴力団対策に身を入れるのではなく、逆に同年、昭和三十六年の第三十八回国会に民主主義運動を弾圧するための政防法を提案してまいったのでございます。政防法に対しましては、労働者を中心とする国民の強い反対のために、ついに廃案になりましたが、自民党の治安対策特別委員会と法務省は、暴力団対策に名をかりて、現行暴力行為処罰に関する法律改正案を昨年二月四日、第四十三回国会に提出してまいったのでございます。
この暴力法案は、まず第一に、暴力犯罪、特に銃砲刀剣類による傷害と常習暴力に対する刑罰強化をうたっていますが、刑罰の強化のみが対策ではないのみならず、これは本来刑法に規定すべきものでありまして、このような刑事特別法に入れるべきではないのであります。二番目に、改正の一つの問題であります銃砲刀剣類の定義がないために拡張解釈をされ、乱用の危険があります。三番目に、常習暴力の認定に関する裁判所の解釈がきわめて広いために、労働運動その他の活動家に対して乱用される危険があるのでございます。四番目に、合議裁判からこの種事案の裁判をはずしましたということは、審理のスピード化をはかるということはできるといたしましても、誤判その他の弊害を免ずる危険性を持っておるのでございます。これらの理由から、わが党はじめ全日本の民主勢力から強力なる反対運動が盛り上がりまして、過去二回廃案となった因縁の法案でございます。
こうした国民の根強い反対意見を受けまして、政府与党たる自民党の衆議院の法務委員の諸君は、去る第四十三回国会において、一、労働運動などへの乱用防止規定の挿入、二、銃砲刀剣類の定義の明確化、三、常習性にしぼりをかけることを中心とする修正案を取りまとめられ、われわれ野党側委員と話し合っておる最中に、失対打ち切り法案の強行採決をめぐる国会混乱のあおりを食って廃案になったいきさつがあるのでございます。したがって、賀屋法務大臣が暴力法案提案にあたって言われておるがごとく、暴力対策の一環としてこの改正案を国会に提出するなら、当然従来の経緯にかんがみまして、少なくとも四十三国会で与党側が取りまとめた修正案を盛り込んで提案すべきであったと存ずるのでございます。しかるに、これを原案のまま提案いたしまして強行成立を企図いたしましたことは、最近の労働運動の激化や日韓会談反対の大衆運動の盛り上がりに対しまして、戦時中と同じく弾圧をもって臨まんとする反動的、ファッショ的企図のあらわれでありまして、われわれはこれを断じて許すわけにはまいらないのでございます。(拍手)
法案の審議にあたっては、過去三十九年にわたりこの暴力法が労働者や農民弾圧法として乱用されてきた歴然たる事実に目をつぶり、最近の労働運動を行き過ぎなりと断定し、正当なる労働組合運動や大衆運動をも本法によって抑圧せんとする態度を露骨に出してきているのでございます。
現行暴力法が大正十五年制定された際、当時の江木司法大臣が、小作争議もしくは労働争議あるいは水平運動には適用しないと明言したのでございますが、一たび本法が成立するや、まっ先に適用されたのが小作争議でございました。さらに、本暴力法が実施された大正十五年四月三十日から同年八月十五日に至るわずか四カ月足らずの間に、全国で本法により起訴し判決したるもの、さらに審理中のもの、合わせて五十一件にのぼるのでございますが、その中に、一般に暴力団とみなされている団体を背景として行動したために暴力法に抵触したものはわずか二件しかなかったのでございます。
戦後、新憲法によりまして、労働者の団結権、交渉権、罷業権が労働者の基本的権利として保障されてからも、この法律は労働運動弾圧のためもっぱら使われ、労働組合のビラ張り、団体交渉、組合の決定通知の措置に至るまで、この暴力法違反として逮捕され、起訴され、四年も裁判で争ったという事実、この種の事実は枚挙にいとまがないのでございまして、これらの事件は裁判所でいずれも無罪の判決をかちとりましたが、この暴力法により組合指導者や活動家が逮捕され、起訴投獄されている間に争議が圧殺され、組織まで破壊された事例がひんぱんに起こっておるのでございます。今回の改正により、傷害や常習暴力の下限が一年に引き上げられたことから、権利保釈が認められなくなることは、ねらいは暴力団のお礼参りを封ずることにありと弁明しておりましても、労働運動、大衆運動への乱用の危険を除くものでは断じてございません。
いかなる悪法もまた法律でございます。したがって、一たび成立いたしますればそれは一人歩きをするのでございます。賀屋法相はこの暴力法の過去における乱用の事実すら認めようとはしないのでございますが、この暴力法を足がかりとして、次々と治安立法を計画するおそれは火を見るより明らかでございまして、賀屋法務大臣の存在は、わが国民主政治発展のガンといわねばならない。これが不信任の第一の理由でございます。(拍手)
不信任の第二の理由にあげました、出入国管理行政担当者としての賀屋法務大臣の時代錯誤的の態度は、アジア外交がきわめて重大な段階にあるとき、その大きな障害となっているといわざるを得ないのでございます。賀屋法務大臣が、その経歴や環境から強い反共思想の持ち主であることは、あなたの自由でありますから、とやかく申しません。しかし今日、地球の二分の一以上の膨大な地域にわたり共産主義国家が成立、発展している事実は、否定できないのでございます。現にわが国も、ソ連邦をはじめ幾多の共産主義国家との間に外交関係を持ち、経済、文化、技術等、あらゆる分野で交流を行なっているのでございます。しかるに、賀屋法務大臣は、この事実を無視いたしまして、入国管理行政をあずかっている立場を利用いたしまして、昨年は中華人民共和国の周鴻慶氏を不当に勾留し、本人の意思を無視して、台湾に送還せんとしたのであります。さらに、目下来日中の中国経済友好使節団の団員であった呉学文君の入国を不当に拒否したことは、まさに国際条約や慣行に反する不都合な態度だといわなければなりません。賀屋法相がそのいすにある限り、今回、自民党の長老、松村謙三氏が中国側との間に妥結いたしました日中新聞記者交換や、日中貿易促進のための高碕・廖事務所駐在員の相互派遣の実行の妨げになることが懸念されるのでございます。
さらに賀屋法務大臣は、日本国民が広く支持しておりますところの日朝自由往来に対して、きわめて無理解な態度をとり、むしろこれを押えている態度は、全く非人道的態度として糾弾されなければならないと思うのでございます。私は昨日外務省に参りまして、大平外務大臣の代理として毛利政務次官に対しまして、先般日朝自由往来請願のため、大阪から東京まで三十数日間徒歩行進をした在日朝鮮人の諸君が、わが国民から、日朝自由往来支持の一千百万の署名を集めてまいりましたので、これを提出いたしたのでございますが、今日南朝鮮への往来は相当広範に認められておるにかかわらず、北朝鮮へは墓参をも認めないという態度は、明らかに差別政策でございまして、国連人権宣言に反するのみならず、国際法にももとるといわざるを得ないのでございます。
また、わが国民の広範なる反対運動と、南朝鮮における学生諸君を中心とする反対運動によりまして挫折いたしております日韓会談における在日朝鮮人の法的地位問題につきましても、南朝鮮と北朝鮮を差別的に取り扱おうとしておることは、断じて許すことができないのでございます。
かくのごとき賀屋法務大臣の態度は、台湾政権と通じ、日中国交回復を妨げ、アジアに新たなる戦争の危機を招来する日韓会談の早期妥結を推進せんとする態度とともに、断固排撃さるべきでございます。これが不信任の第二の理由でございます。(拍手)
賀屋法相の平和と民主主義に逆行する反動的態度と役割りは、賀屋さんの古い政治経歴からきておると思います。賀屋法務大臣は古い大蔵官僚で、戦時中の大蔵大臣として、当時はその政治力は高く評価されたでありましょうが、敗戦直後、太平洋戦争推進の中心的役割りを果たしたことにより連合国から戦争犯罪人としての責任を追及され、戦犯裁判の結果、終身刑の判決を言い渡され、服役中に講和条約が発効して釈放された人でございます。戦争遂行者としての連合国側への責任はこれによって解除されたかもしれませんけれども、幾百万の同胞を犠牲にし、国土を焦土と化し、われわれ国民を敗戦国民としての汚辱と塗炭の苦しみにおとしいれた責任は、いまだ解除されたとは言えないのでございます。
賀屋さん、あなたは昭和三十四年の第二十八回総選挙に東京第三区から衆議院議員に立候補された際、何と国民に約束されましたか。長い戦争によって国民にたいへんな迷惑をかけました、それを償うために、生まれ変わった気持ちで政治に精進したい、とりっぱな決意を披瀝されて、本院に議席を占められたのであります。しかるに、一たび政界に復帰するや、自民党の保守主義と事大主義の潮流に乗って、党の外交調査会長や政調会長の重職につき、党内に隠然たる勢力を持って、第二次池田内閣の組閣にあたっては、最も重要なる治安閣僚である法務大臣に就任すると、選挙の際の公約を忘れ、夢よもう一度ということばがございますが、日本の軍国主義復活の前衛としての役割りを果たしつつあるのであります。(拍手)
自民党にも人なしとは思いませんが、賀屋氏のような、戦争犯罪人の前歴を持ち、依然として旧時代の思想を信奉し、常に政治反動の先頭に立つこのような人を、閣僚に、ことに治安の元締めである法務大臣に推薦した池田首相の責任は、きわめて重大といわなければなりませんが、賀屋さん自身、私が法務委員会の質問において、あなたに申し上げましたように、戦犯として戦勝国によってさばかれ、数年間配所の月をながめられたあなたは、政治とは何であるか、社会は進展していくものだということを、身にしみて感じられたことと思うのでございます。敗戦を契機として、日本には主権在民の新しい憲法が実施され、平和と民主主義と人権尊重が政治の基本原理として打ち出されておることを、あなたも御存じでしょう。だから社会の中核たる労働者階級には、憲法第二十八条によって団結権、交渉権、罷業権が基本的権利として認められ、政治の主人公である国民の政治的活動の自由が保障されているのです。あなたたちが国民を誤った侵略戦争に引きずり込んだ権力主義政治は、もう清算されているはずであります。
こういう立場から考えますれば、いまから三十九年前制定され、人民弾圧法として乱用されてまいりました暴力行為等処罰に関する法律のごとき悪法は、すみやかに廃止すべきであります。右翼あるいは暴力団等の暴力行為に対しましては、現行刑法を正しく運用してその取り締まりを徹底するとともに、暴力団や暴力行為の起こる根源である社会のひずみと封建性を払拭するため、政治の姿勢を正すことが先決問題であると考えるのであります。
この根本理念をわきまえないところの賀屋興宣君は、法務大臣としての適格性を欠くものであると断ぜざるを得ないのでございます。賀屋法務大臣は、暴力法改正案が引き続いて本会議に上程せられる前にこれを撤回するとともに、いさぎよくその職を退くべきであると主張するものでございます。
以上が不信任案提出の趣旨でございます。何とぞ諸君の賛成をお願いいたしまして、趣旨説明を終わる次第でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/10
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011・船田中
○議長(船田中君) 討論の通告があります。順次これを許します。鍛冶良作君。
〔鍛冶良作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/11
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012・鍛冶良作
○鍛冶良作君 私は、ただいま提案せられました法務大臣賀屋興宣君に対する不信任案に、自由民主党を代表して、反対の討論を試みんとするものでございます。(拍手)
ただいま承っておりますと、不信任の第一の理由は、このたび賀屋法務大臣が提案せられた暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案が、大衆運動を弾圧する目的の反動立法であるということでございます。まことに驚いた結論を出されたものと考えます。(拍手)
この法律は、いま初めて出た法律ではございません。大正十五年からある法律でございます。その法律を一部改正したのがいまの法案なのです。しかも、改正の要点は、御承知のように、いま最もおそれられております暴力行為を取り締まろうとするものであります。しかも、その暴力行為のうちで、銃砲刀剣類をもって人を殺傷したる者を重く罰せんとするものである。さらに、かような暴力及び恐喝を常習としておる者が人に傷害を及ぼした場合に、これを重く罰しようとすることが本法の目的でございます。この二つの改正をすることに一体何の大衆運動弾圧がありましょうか。(拍手)まことに驚くのほかはございません。
審議の過程において、社会党の諸君の質問に対する賀屋法務大臣の答弁を聞いておりますと、これはばかの一つ覚えで、いつもこの法律を大衆運動に適用するかしないかという質問ばっかり。大臣は、もちろん、かようなものに適用するわけがない、この目的は、暴力行為を取り締まろうとするものであって、労働運動その他の大衆運動を取り締まらんとするものでないことは明瞭だから、そのようなことがある道理がない、かように常に答えておるのでありますが、(発言する者あり)社会党の質問の要旨は、労働運動は憲法上認められたる正当な行為である、その労働運動にもし適用することがあるならば、これは憲法違反だという。諸君、労働運動であろうが何であろうが、なしたる行為に法律違反があれば、取り締まらなかったらたいへんです。取り締まるのが当然である。しかるに、労働運動の美名のもとに、労働運動であれば何をやっても取り締まられないということが諸君の思想の根本にあらわれている。(拍手)かようなことは許されるものではありません。
私は、今日いろいろのことが社会上憂えられるが、最も憂うべきことは、法律を軽視せんとする思想のあることである。(拍手)目的がよいから法を無視してもよいとか、へ理屈を並べて、これが悪法であるから、かようなものは守らぬでもよいなどと言う者のあることは、一番憂うべき思想でございます。(拍手)われわれは、本法の成立に対して、このりっぱな法案を悪法なりと唱えて、これを無視する思想を国民に植えつけんとするこの考え方が一番あくどい。(拍手)民主政治のガンであると言われるが、この法案は民主政治のガンでなくて、かような考えをもって臨まれる人々こそ民主政治の真のガンでございます。(拍手)
なお、この法案の審議について、いま田中君から非難がありましたが、私は、このたびの法案審議ほどよくやったことはないと心得ておる。社会党の委員諸君からも、よくやってくれたとほめられたものを、突如としてここへきて、まことに不法なことをやったなどとは、一体どこから出てくるのか。いたずらにここで言わなければならぬので言われるならば、もっとほかのことでひとつ力を入れてもらいたい。(拍手)
次に、賀屋法務大臣の出入国管理行政に関する非難でございますが、これは、もう申し上げるまでもなく、諸君は御承知と思いますが、言われたのですから、一つずつあげてみましょう。
第一番に、周鴻慶の問題でございます。これは、私から申し上げるまでもなく、周という人は、突如としてわが政府へ、中国へ帰ったら身体に危険があるから日本に置いてくれと、向こうから申し込んできたものでございます。しかし、出入国管理令に基づいて、置いてくれと言ったからといって置くわけにいかぬから、そこで外国へ出なければならぬと言ったら、中国と国交を結んでおらないアメリカもしくは台湾か、タイか、その他の国へやってくれと言った。その点についてもいろいろ心配をしてやったが、今度はまた、どうか日本に置いて、妻子を呼び寄せてくれと頼んだのであります。しかし、それは許されぬと言ったら、今度は突如として中共へ帰ると言い出した。しかも、だれに言われて帰るというのか、われわれ日本政府としては合点のいかぬ主張でありましたがゆえに、その真意を確かめるためにいろいろの苦心をして、ついに中共へやっても差しつかえないということを見きわめて送ってやったにほかならぬものであります。わが日本にとって、これほど迷惑な人間はありません。この迷惑な人間をこれほど保護してやったのに、その保護のしかたが悪いといって、日本人の皆さんから攻撃されるとは、少々筋違いのことである。(拍手)
その次は、呉学文の入国についてでございますが、これも皆さん御承知のように、この人は、過去において数回わが日本へ来ておる人であります。その来ておるたびに、どういう行動をしたか。日本の外交上の攻撃を公然と世界に向かってやっておる。わが日本政府の政治を公然と誹謗しておる。かようなことをする常習者を何ゆえに入れなければならぬのか。(拍手)国際慣行上、わが国においておもしろくないと思う者は、これを拒否することは当然であります。また、その理由を明示しないと言われるが、さようなことに一々理由を明示しないのも国際慣行上の当然のことでございますから、慣行上許されたることをやって、諸君から攻撃を受けるわけはないと思う。(拍手)
北鮮との自由往来を主張せらるるが、その主張の中で、日本はいかにも北鮮人を日本に抑留しておいて、国へ帰さぬようなことを言っておらるるが、これはまことに事実をしいるもはなはだしいものである。戦後ことごとく自由に帰しておるはずである。いま、現にわが日本におる者は、自由意思をもって日本にとどまった者、もしくはその子供などでございまして、しかも、今日帰ると言えばいつでも帰してやっておる。決してとめたことはない。ただ問題は、一たん北鮮へ帰ったら、また自由に入れてくれというが、これは自由に許すべきものでないのであります。国連人権宣言その他から自由に入れろと言われるが、国際上の自由ということは、国へ帰りたいというときに自由に帰してやること、帰っていったら向こうで必ずこれを受け入れる、これが国際上の自由であって、一たん帰った者を、また戻してくること、これを入れるという自由は世界のいずれにもありません。(拍手)わが日本の最高裁判所の判例においてこの点は明瞭になっておるのであって、これをやれといって攻撃することは、大体日本人としては少々筋違いである。(拍手)どこかの国の者が言うのなら別ですが、私は、かような議論は、いたずらにわが日本の国論を惑わさんとする考えあっての悪質なことだと思う。この意味からして、入国管理令について、決して不法はございません。
その他、賀屋氏の経歴について、いかにも反動立法をやるとか旧権力を回復するなどということばを使われましたが、これは人をしいるもはなはだしいものである。(拍手)なるほど、賀屋氏は開戦当時の国務大臣であったことは間違いございません。いかなる考えをもってこのときに閣僚に列したか、閣僚に列していかに戦争回避のために努力したかということは、諸君、ここに日本経済新聞社が昨年発行した「私の履歴書」という本がありますが、これを読んでみてください、りっぱにあります。(拍手)しかし、それでも、戦争が済みまして、みずから謹慎の意を表して一切の勲位をなげうち、公職をなげうって謹慎し、さらに、いま言われたように、戦犯として長らく身体の拘束を受けてきた人である。しかし、賀屋氏も、戦争が済みましては、達者なからだをもっておって、国のため、国民のために恩返しをして働かなければならぬ、その働く道は、経済及び政治に献身するほかはないと決心いたしまして、昭和三十三年以来、東京第三区において衆議院議員に立候補した。その結果はいかがです。みごと高点をもって三回とも当選しておる。この現実の事実を無視して、いま賀屋氏に対して人身攻撃をするということは、東京第三区の選挙民に挑戦すると同じことである。(拍手)どうか第三区に行ってやってください。
かようなことから考えまして、このたびの不信任案は、一つも理由はありません。われわれは賀屋氏の円満なる人格、賀屋氏の経歴、この円熟せる手腕力量、これらを認めて、やめてもらうどころでない、ますます法務大臣として御健在なることをお祈りして、私の反対討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/12
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013・船田中
○議長(船田中君) 細迫兼光君。
〔細迫兼光君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/13
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014・細迫兼光
○細迫兼光君 私は、日本社会党を代表いたしまして、賀屋法務大臣に対する不信任案にわれわれがなぜ賛成するかの理由を明らかにしたいと思うものであります。(拍手)
賀屋法務大臣は、学校を出てから直ちに大蔵省に入り、累進いたしまして東條内閣の大蔵大臣に就任したのであります。その結果、戦争責任を問われまして、気の毒に、公職追放の生活を長らく送られました。釈放後、生まれかわって、新しく国民のために尽くしたいという公な吉明のもとに、政界に復帰してこられました。そして、いまや時めく法務大臣に就任しておられます。
一体、戦争に責任を感ずる人の行き方にいろいろな形があることを、私は感じるのであります。
一つの形は、有馬頼寧氏の形であります。戦後、有馬氏に対しまして、政界復帰を慫慂する手はずいぶんと伸ばされました。私も、実は、ぜひとも政界に復帰してもらいたいという引き出しに行ったことがあるのであります。ぜひひとつ、有馬氏の力量人格によって、新しい日本の建設に力をいたしていただきたいということで、じゅんじゅんお話をいたしました。だが、有馬氏が申されまするには、何の面目があって、私がいまさら表通りを歩くことができましょうか、私は日の当たるところを歩くことができない人間でございますと言って、どうしても承諾をなさいません。そうして、御承知のとおり公の職責はもちろんのこと、ほとんど表らしい職業、役職につかれたことがございません。もっぱら草花をいじり、野菜をつくって、一生を終わりました。
もう一つの形は、わが党の先輩風見章氏であります。風見章氏は、御承知のように在野党の社会党に入党せられました。そうして、日中国交回復を企てまして、日中国交回復国民会議を提唱し、みずからその理事長となって、献身的な努力をいたしました。いま、北京におきまして、国民大使ともいうべき仕事をしておる西園寺君、この人を北京に派遣したのも、風見章氏の画策によるところであります。かくのごとく、実際に日中国交回復を目ざして、献身的な努力を一生かけてなさいました。私、ひそかに思うのに、あの近衛内閣にあって、この戦争の拡大をついに防止し得ず、日本の国民に対しても、ことに中国の国民に対して非常な害悪を与えたこと、これに対する反省、贖罪の心持ちがあったと、私はひそかに察しておるのであります。(拍手)まことに、戦後におけるわが国の行く道といたしましては、中国とかたく結ぶということが一番大きな問題だと、私は確信しております。(拍手)私は、日本の国は狭小にして資源も乏しいけれども、しかし、政治のやり方次第によって、これは十分一億の国民を豊かに、繁栄のもとに養い得る国だと考えておる。しかし、これには条件がある。前提条件として、私は、中国大陸とかたく結ぶことが絶対に必要であると思う。(拍手)風見氏もこのことを深く理解いたしまして、この日中国交回復に尽力したものと思うのであります。
ところが、ここに不信任案を突きつけられております賀屋法務大臣に至りましては、この日中国交回復にむしろうしろを向けて、これの進展の足を引っぱる、こういう役目を果たしつつあるのであります。(拍手)
さきにも田中君がその理由に持ち出しましたように、呉学文氏の入国を拒否いたしました。この呉単文氏は北京の新葬礼における優秀な記者、非常に尊敬を受けておる記者であります。この人が、中国の国際貿易促進委員会の主席南漢宸氏とともに日本に入国したいという申し込みをしたのに対し、これを拒否いたしました。好ましからざる人であるということであります。呉学文氏はたびたび日本に来たことのある人であります。私は、政府が言うような言動を彼がとったかどうか、寡聞にして聞きません。しかも、呉学文氏は、日中国交回復、その友好親善を願っておる人であります。だから、たびたび日本にも来たのであります。その日中親善友好の立場から見れば、これを害するがごとき言動をする者についてはあるいは攻撃をしたかもしれません。非難をしたかもしれません。しかし、日中の友好と親善を熱願する者からすれば当然なことではありませんか。これが、日中国交回復に向かって進もうとしておるこの情勢を、足を引っぱることでなくて何でありましょうか。これは、賀屋法務大臣が政界に復帰するにあたって、止まれかわってとおっしゃっても、企まれかわっていない証拠であります。(拍手)こういうわが国が進まなければならない前準的な道に対しましてブレーキをかけるような存在は、われわれははなはだ迷惑に感ずるものであります。(拍手)
しかも、このたび暴力行為等処罰に関する法律の立案に当たりまして、これを国会に提出してまいりました。御承知のように、この暴力行為等処罰に関する法律は、去る大正十五年制定せられたものでありまして、その当時、江木翼司法大臣は、この法律は、労働運動や農民運動、あるいは水平運動には、絶対適用いたす考えはありませんという宣言つきのものであったのであります。しかるに、これが実際は、猛烈な勢いでもって、小作運動、労働運動、水平運動に適用せられました。的確な資料が出してもらわれませんからよくわかりませんけれども、この暴力行為等処罰に関する法律が適用せられたものは、暴力団にはたして多いか、労働運動にはたして多いか、その数字が疑問であります。少なくとも私が的確につかんでおりますことは、国鉄労働組合において、多くの刑事事件が起きました。刑事事件として訴追せられた事件がありますが、その二〇%は、実にこの暴力行為等処罰に関する法律によってやられたのであります。かくのごとく、この暴力行為等処罰に関する法律は、労働者、農民などの多くの弾圧の血の返り血を浴びておる法律であります。政府は、しきりにこのたびの改正法を、直接労働運動を弾圧するものではないと陳弁いたしておるのでありますけれども、しかし、ますますこの暴力行為等処罰に関する法律の力を増大し、その罪を重くしよう、どしどしこれでもってふるってやれというけしかけのそういう形勢をつくることは間違いないことであります。こういう反動的な立法をこの際いまさら持ち出そうというがごとき、こうした反動的な、反民主的な大臣をしてこの内閣におらしめるということは、国民のまことに迷惑千万なことであります。私は、このような考えの賀屋法務大臣は、閣議においても相当な発言権を持っておるに違いないと想像するのであります、何しろ、池田総理が大蔵省のどこかのすみにおるかおらぬかわからぬときに、すでに大臣だったんだから。一日も早く、この賀屋興宣という人をこの法務大臣の地位から葬り去ることが、国民の利益であると確信してやまないのであります。
これ、われわれがこの不信任案に賛成するゆえんであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/14
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015・船田中
○議長(船田中君) これにて討論は終局いたしました。
法務大臣賀屋興宣君不信任決議案につき採決いたします。
この採決は記名投票をもって行ないます。本決議案に賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。——閉鎖。
〔議場閉鎖〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/15
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016・船田中
○議長(船田中君) 氏名点呼を命じます。
〔参事氏名を点呼〕
〔各員投票〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/16
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017・船田中
○議長(船田中君) 投票漏れはありませんか。——投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣——閉鎖。
〔議場開鎖〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/17
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018・船田中
○議長(船田中君) 投票を計算いたさせます。
〔参事投票を計算〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/18
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019・船田中
○議長(船田中君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。
〔事務総長報告〕
投票総数 三百三十六
可とする者(白票) 百七
〔拍手〕
否とする者(青票) 二百二十九
〔拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/19
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020・船田中
○議長(船田中君) 右の結果、法務大臣賀屋興宣君不信任決議案は否決されました。(拍手)
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横路節雄君外三名提出法務大臣賀屋興宣君不信任決議案を可とする議員の氏名
茜ケ久保重光君 秋山 徳雄君
有馬 輝武君 井岡 大治君
井谷 正吉君 伊藤よし子君
石野 久男君 石橋 政嗣君
板川 正吾君 稻村 隆一君
卜部 政巳君 江田 三郎君
大出 俊君 大柴 滋夫君
大原 亨君 大村 邦夫君
岡 良一君 岡田 春夫君
岡本 隆一君 加賀田 進君
加藤 清二君 片島 港君
勝澤 芳雄君 勝間田清一君
角屋堅次郎君 神近 市子君
川崎 寛治君 川俣 清音君
河上丈太郎君 久保 三郎君
久保田鶴松君 久保田 豊君
栗原 俊夫君 栗林 三郎君
黒田 寿男君 小林 進君
小松 幹君 兒玉 末男君
五島 虎雄君 河野 密君
佐藤觀次郎君 佐野 憲治君
阪上安太郎君 沢田 政治君
重盛 壽治君 島上善五郎君
下平 正一君 東海林 稔君
鈴木茂三郎君 田口 誠治君
田中織之進君 田中 武夫君
多賀谷真稔君 高田 富之君
滝井 義高君 只松 祐治君
千葉 七郎君 辻原 弘市君
堂森 芳夫君 中井徳次郎君
中澤 茂一君 中嶋 英夫君
中村 重光君 中村 高一君
永井勝次郎君 楢崎弥之助君
成田 知巳君 西村 関一君
野原 覺君 野間千代三君
芳賀 貢君 畑 和君
原 茂君 原 彪君
肥田 次郎君 平岡忠次郎君
平林 剛君 藤田 高敏君
細迫 兼光君 細谷 治嘉君
堀 昌雄君 前田榮之助君
松井 政吉君 松井 誠君
三木 喜夫君 武藤 山治君
村山 喜一君 森本 靖君
八木 一男君 八木 昇君
矢尾喜三郎君 安井 吉典君
柳田 秀一君 山口シヅエ君
山口丈太郎君 山田 長司君
山中 吾郎君 山花 秀雄君
山本 幸一君 横路 節雄君
横山 利秋君 和田 博雄君
加藤 進君 川上 貫一君
志賀 義雄君 谷口善太郎君
林 百郎君
否とする議員の氏名
相川 勝六君 逢澤 寛君
青木 正君 赤城 宗徳君
赤澤 正道君 秋田 大助君
天野 公義君 綾部健太郎君
荒木萬壽夫君 荒舩清十郎君
有田 喜一君 安藤 覺君
井村 重雄君 伊東 正義君
伊東 隆治君 伊能繁次郎君
岩動 道行君 池田 清志君
池田 勇人君 池田正之輔君
石田 博英君 稻葉 修君
稻村佐近四郎君 今松 治郎君
宇野 宗佑君 上村千一郎君
植木庚子郎君 臼井 莊一君
内田 常雄君 内海 安吉君
浦野 幸男君 江崎 真澄君
小笠 公韶君 小川 平二君
小沢 辰男君 小澤佐重喜君
小渕 恵三君 大石 八治君
大泉 寛三君 大倉 三郎君
大竹 太郎君 大坪 保雄君
大西 正男君 大平 正芳君
奥野 誠亮君 押谷 富三君
加藤 高藏君 加藤常太郎君
鍛冶 良作君 海部 俊樹君
上林山榮吉君 亀山 孝一君
鴨田 宗一君 唐澤 俊樹君
仮谷 忠男君 川島正次郎君
川野 芳滿君 木村 剛輔君
木村 武雄君 木村武千代君
菊池 義郎君 岸 信介君
吉川 久衛君 久野 忠治君
久保田円次君 草野一郎平君
鯨岡 兵輔君 熊谷 義雄君
倉石 忠雄君 倉成 正君
藏内 修治君 黒金 泰美君
小泉 純也君 小枝 一雄君
小金 義照君 小島 徹三君
小平 久雄君 小山 長規君
纐纈 彌三君 佐々木秀世君
佐々木義武君 佐藤 孝行君
齋藤 邦吉君 坂田 英一君
坂田 道太君 坂村 吉正君
櫻内 義雄君 四宮 久吉君
志賀健次郎君 始関 伊平君
椎熊 三郎君 重政 誠之君
篠田 弘作君 澁谷 直藏君
島村 一郎君 正示啓次郎君
進藤 一馬君 周東 英雄君
壽原 正一君 鈴木 善幸君
砂田 重民君 砂原 格君
關谷 勝利君 園田 直君
田川 誠一君 田口長治郎君
田澤 吉郎君 田中伊三次君
田中 榮一君 田中 正巳君
田中 六助君 田村 良平君
高瀬 傳君 高橋清一郎君
高橋 等君 高見 三郎君
竹内 黎一君 竹下 登君
武市 恭信君 舘林三喜男君
谷垣 專一君 谷川 和穗君
千葉 三郎君 地崎宇三郎君
中馬 辰猪君 塚田 徹君
塚原 俊郎君 辻 寛一君
綱島 正興君 坪川 信三君
寺島隆太郎君 渡海元三郎君
登坂重次郎君 徳安 實藏君
内藤 隆君 中村 梅吉君
中村 幸八君 中村 寅太君
中村庸一郎君 中山 榮一君
永田 亮一君 永山 忠則君
灘尾 弘吉君 南條 徳男君
二階堂 進君 丹羽喬四郎君
丹羽 兵助君 西岡 武夫君
西村 英一君 西村 直己君
野田 卯一君 野田 武夫君
野原 正勝君 野見山清造君
野呂 恭一君 橋本龍太郎君
長谷川四郎君 八田 貞義君
服部 安司君 濱田 幸雄君
濱地 文平君 濱野 清吾君
早川 崇君 原田 憲君
廣瀬 正雄君 福田 赳夫君
福田 篤泰君 福田 一君
福永 健司君 藤井 勝志君
藤枝 泉介君 藤尾 正行君
藤田 義光君 藤本 孝雄君
古井 喜實君 保科善四郎君
坊 秀男君 細田 吉藏君
堀内 一雄君 堀川 恭平君
本名 武君 前尾繁三郎君
前田 正男君 益谷 秀次君
増田甲子七君 松浦周太郎君
松澤 雄藏君 松田竹千代君
松野 頼三君 松山千惠子君
三池 信君 三木 武夫君
三田村武夫君 三原 朝雄君
水田三喜男君 村上 勇君
村山 達雄君 毛利 松平君
森 清君 森下 國雄君
森田重次郎君 八木 徹雄君
山口喜久一郎君 山崎 巖君
山中 貞則君 山村新治郎君
山本 勝市君 山本 幸雄君
吉田 重延君 和爾俊二郎君
早稻田柳右エ門君 渡辺 栄一君
渡辺美智雄君 渡邊 良夫君
亘 四郎君 麻生 良方君
伊藤卯四郎君 春日 一幸君
栗山 礼行君 小平 忠君
鈴木 一君 竹本 孫一君
竹谷源太郎君 西尾 末廣君
西村 榮一君 門司 亮君
本島百合子君 山下 榮二君
清瀬 一郎君
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皇室経済法施行法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院回付)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/20
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021・船田中
○議長(船田中君) おはかりいたします。
参議院から、内閣提出、皇室経済法施行法の一部を改正する法律案が回付されております。この際、議事日程に追加して右回付案を議題とするに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/21
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022・船田中
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/22
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023・船田中
○議長(船田中君) 採決いたします。
本案の参議院の修正に同意の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/23
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024・船田中
○議長(船田中君) 起立多数。よって、参議院の修正に同意するに決しました。
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日程第一 暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/24
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025・船田中
○議長(船田中君) 日程第一、暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。
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—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/25
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026・船田中
○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。法務委員長濱野清吾君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔濱野清吾君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/26
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027・濱野清吾
○濱野清吾君 ただいま議題となりました法律案につきまして、法務委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本改正案は、年々歳々非合法的暴力の横行がいよいよ多きを加え、ために社会不安はますます増大する傾向にあるという前提に立って立案されております。そのさまざまな原因がいずれにあり、それぞれの対策をどうするかはここでは別として、これら犯罪から善良な市民の自由と平穏な生活を守るために、特に銃砲刀剣を用いる傷害罪並びに常習的傷害、暴行、脅迫等の犯罪に対して刑罰を加重強化し、その効果を得ようとするものであります。
本案のおもなる内容は次のとおりであります。
第一に、銃砲または刀剣類を用いる傷害罪の法定刑の下限を一年以上に引き上げ、これを一般の傷害罪より重く処罰することとしたことであります。
第二に、現行法に規定されている暴行、脅迫、器物損壊の常習的暴力行為に対する法定刑を三月以上五年以下の懲役に引き上げることであります。それと同時に、新たに傷害を加え、その常習犯については法定刑の下限を一年以上の懲役に引き上げ、通常の傷害罪より重い刑を科することとしたことであります。
第三に、右の改正により短期一年以上の懲役となる本件犯罪についても、地方裁判所は一人の裁判官でこれを取り扱うことができるよう裁判所法の一部を改正したこと等であります。
法務委員会におきましては三月十三日本案が付託されて以来、与党委員はもとより、特に野党全委員からきわめて熱心な質疑が行なわれ、学識経験者の意見を聴取するなど、文字どおり慎重かつ活発な審議が行なわれたのであります。
もとよりこの法律案に対しては賛否両論がありまして、そのおもなる問題点とするところは次のようであります。
すなわち、第一の反対意見として、本法を改正する必要はなく、現行法の運用によって十分まかなうことができるというのであります。
第二は、かつて事例のあったように、労働運動ないし大衆運動の弾圧の用具として乱用される危険が大きいというのであります。
第三は、銃砲刀剣類の概念並びに常習の概念が明瞭でなく、拡大解釈され、将来乱用される危険があるというのであります。
第四は、改正により短期一年以上の懲役となる本法に定める各罪の事件をいわゆる法定合議事件からはずすことにしているのは、人権の保障に欠けるところがあり、時代に逆行するものであるというのであります。
次に、賛成意見としては、
その一は、最近の暴力犯罪の実態並びに現実の取り締まり対策とその効果等にかんがみ、現行刑法ではまかない得ない。また将来刑法全面改正までは待つことはできない実情にあるので、原案のごとく緊急に法的措置をとったのであるというのであります。これは当然だというのであります。
その二は、本案は暴力団の構成員等が通常行なっている犯罪行為の危険性に着目して改正したものであって、銃砲刀剣類を用いての労働運動などは全然考える余地はないというのであります。したがって、これにより適法な労働運動、大衆運動が弾圧されるおそれなどはちっともないというのであります。
その三は、本案にいわゆる銃砲刀剣類は銃砲刀剣類等所持取締法の第二条の定義内容と同じものであり、また、ここにいう常習とは、傷害、暴行、脅迫または器物損壊の犯罪行為を反復累行ずる習癖を意味するものであって、それはすでに判例によって確立された概念であるから、拡大解釈され、乱用をされる危険は全くないというのであります。
その四は、本改正案により短期一年以上の懲役となる各罪は、その性質、態様、手段がおおむね単純であり、したがって、一人の裁判官が審理することとしても、人権侵害のおそれはないというのが賛成論者の意見でございます。
なお、民主社会党を代表して竹谷源太郎君より本案に対して修正案が提出され、その趣旨の説明がありました。その内容は、本法の適用にあたって正当な労働運動を不当に侵害することのないよう留意すべきであるという旨の規定を新設しようとするものであります。
四月二十四日、質疑を終局し、修正案並びに政府原案を一括討論に付しましたところ、日本社会党を代表して坂本泰良君より修正案並びに原案に反対、自由民主党を代表して小島徹三君より修正案に反対、原案に賛成、民主社会党を代表して竹谷源太郎君より修正案に賛成、原案に反対、日本共産党を代表して志賀義雄君より修正案並びに原案ともに反対の各意見が述べられました。これらの詳細は会議録に譲りたいと存じます。
かくて、採決の結果、修正案は否決され、次いで、本案は多数をもって政府原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
以上、御報告を申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/27
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028・船田中
○議長(船田中君) 討論の通告があります。順次これを許します。畑和君。
〔畑和君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/28
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029・畑和
○畑和君 私は、日本社会党を代表し、ただいま議題となりました暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案に対し、絶対反対の意見を表明いたしたいと存じます。(拍手)
私は、ここで本改正案そのものについて論議いたします前に、まず、現行法がいかなる経過をもって制定せられたものか、さらには、それが運用上いかなる役割りを果たしてきたかという歴史的事実について、若干触れてみたいと存じます。
そもそも明治以来わが国に労働運動が起こってからは、治安警察法第十七条によって、同盟罷業を誘惑し扇動した者として、多数の運動家が逮捕され、弾圧されてきたのでありますが、これに対しましては、一方において労働組合からの強い廃止の要求があるとともに、他方政府部内においても、同条の法定刑が軽過ぎるという批判とともに、労働運動だけでなく、当時盛んだった小作争議や水平運動にも適用できる集団的暴力行為取り締まり法規を要望する声が強かったところから、大正十五年の帝国議会において、治安警察法第十七条の廃止とともに、新たに現行暴力行為等処罰に関する法律が制定せられたのであります。
したがって、現行暴力処罰法は、そのおい立ちからして治安警察法第十七条の生まれかわりであり、本来労働運動や農民運動、水平運動取り締まりのための弾圧法規でもあったのであります。当時、同法案審議にあたりまして、同法が治安警察法第十七条の代替法ではないか、もしそうだとすれば、治安警察法第十七条の廃止は意味をなさないとの論議がなされたのでありますけれども、当時司法大臣の江木翼氏は、同法は暴力団取り締まりをねらいとしたものであって、何ら労働運動や農民運動、水平運動等の大衆運動取り締まりを目標としておるものではない旨を議会において明言し、ようやくにして通過、成立を見たいきさつがあるのであります。
しかるに、政府言明のことばのいまだかわかぬうちに、同法は、その適用第一号として、当時新潟県下に起こった小作争議に適用せられたのであります。(拍手)大正十五年四月三十日制定実施以来、同年八月十五日に至る僅々四カ月足らずの間に、全国で、同法による起訴五十一件、そのうち団体の威力を示して暴行、脅迫したもの十一件、その十一件のうち暴力団を背景としたものわずかに二件であると、当時の秋田地裁検事飯沢高氏に「司法研究第二輯報告書集」の中で述べておるのであります。このことは、明らかに本法が暴力団をねらいとしたものではなく、他にねらいがあることを示しておるものと存ずるのであります。また、前公安調査庁次長、現最高検検事関之氏も、その著書「労働刑法概論」の中で、「政府は当時、本法は合法的なる労働運動や小作争議を取り締まるものにあらざる旨を言明した。しかるに、その後の本法の運用の実情は、広く労働運動や小作争議の一切にわたり行なっている。本法は一般労働刑法として特に重要な地位にある」と述べておるのであります。さらに、戦前の大審院判例は、最初は、「小作争議は常に必ずしも違法性なきものというを得ざるをもって処罰を免れず云々」として、きわめて控え目の態度でありましたが、次第に断定的となり、「暴力処罰法は暴力団、不良青年団等、不法の団体のみを目標となしたるものにあらずして、労働争議または小作争議の場合にもその利用あるものとす」、かように変わってまいったのであります。また、昭和十年発行の、検事長谷川瀏氏の「暴力法解説書」中には、「暴力法運用にあたり平素から団体の内偵をやり、その団体の主義、綱領に注意し、特高警察と連絡をとり、思想、加入団体、加入の事情等を調べ、写真、指紋、学籍等を付して常習者名簿または犯罪表を整備しておくように」と書いてあるのであります。
これらの点から見ても、現行暴力処罰法が労働運動や農民運動の弾圧法規としての役割りを果たしてきたものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
ところで、現在暴力処罰法が労働運動にどのように適用されているかについては、法務省の昭和三十六年版犯罪白書によりましても、昭和三十年から三十四年までの合計で、刑事労働事件受理人員のうち、暴力法適用は一九・六%で、傷害の二三・四%に次いで第二位となっております。逮捕、起訴される以上は、よほどひどい乱暴をしたのであろうと思われがちでありますけれども、事実は決してそうではありません。単なるビラ張りが器物損壊の暴力行為となったり、同僚に対する説得行為が脅迫の暴力行為となったり、経営者の不当な団体交渉拒否に抗議する大声が脅迫となったり、あるいは鼓膜を振動させたからと暴行なりとされたり、腕をつかまえて引っぱり戻そうとする行為が暴行となったりで、逮捕され、起訴されておりますが、これらについては、さすがに同じ国家機関である裁判所から、多くは無罪判決が下されております。このことは、労働運動において、いかに同法が乱用されてきたか、また現在乱用されているかということを、雄弁に物語っているものと信ずるものであります。(拍手)
以上のごとく、現行の暴力処罰法それ自体が、たとえ立法者の意図がどうであったにせよ、現実に労働運動、その他の大衆運動の弾圧法規としての役割りを果たしてきたし、いまもなお果たしており、そうして、今後改正案が、さらにその性格を強めるものであることは間違いないのでありまして、これこそが、わが日本社会党が本改正案に反対する第一の理由であります。(拍手)
次に、政府は、本改正案は暴力団取り締まりのため、刑を加重し、強化することがねらいであると弁明し、宣伝をいたしております。国民も、最近激増しつつある暴力団を主とする町の暴力に対し、これが根絶を要求しており、わが日本社会党もまた強くこれを支持するものです。
しかし、この際明らかにしておきたいことは、国民が求めているものは、集団的または常習的に暴力的不法行為を行なうところの、いわゆる暴力団の根絶であり、右翼テロの根絶であります。いまや暴力団のばっこは、政府資料によりましても、昭和三十四年一月現在で四千百九十二団体、八万二千人、昭和三十八年一月現在で五千百三十一団体、十七万二千人に達し、幾十の右翼団体やあるいは幾千のばく徒、暴カテキヤ、ぐれん隊、会社ごろ、新聞ごろ、炭鉱売春、港湾のそれぞれの暴力団こそがその目標でなければならぬのであります。
しからば、これらの暴力団が存在し、かつ増加していく真の原因は一体どこにあるのか、その社会的背景は一体何か。それは、残念ながらいまだ封建主義が根強く残存しており、これが保守政治と密接に結びつき、貧困と格差のはなはだしい社会を温床としておることによるものと信ずるものであります。暴力を行なった者が英雄として祭り上げられ、あるいは幹部の身がわりとして自首し、前科や暴力体験の肩書きがついたとして誇りとなし、刑務所出所の際は仲間が総出でのぼり旗を持って凱旋兵士のごとく迎えに行く。これら暴力団に対して、刑罰強化のみをもって対処しようとすること自体、まさに本末転倒であります。
暴力団対策としては、暴力団の温床をなくし、その社会的原因を除く抜本的な対策を行なうこと以外に、その目的を達することはできないのであります。しかるに、政府には、これら抜本的な施策と取り紀もうとする熱意もなく、また、その政治的姿勢もない。政府は昭和三十六年二月二十一日、暴力対策について閣議決定をいたしております。けれども、その具体的推進について、何らの実効があがっておらないではないか。問題は、行政措置に熱意なく、わずかに刑罰強化の立法化に逃げようとするところにあります。
さらに、政府・与党の一部には、暴力団や右翼団体と関係がある者があることは疑いもない事実でありますが、政府・与党は、この際、これら一切のくされ縁を断ら切ることを宣言すべきであり、財界等にも、いかなる理由があるにせよ、資金の供給となるようなことをしないよう、政府は指導すべきであると存じます。現職の法務大臣が暴力団の親分の葬式に花輪を贈ったり、政党の大幹部がやくざの親分のあと目相続披露式に出席して、仁侠道を賛美して世のひんしゅくを買ったり、さらには、現職の大臣が札つきの右翼選挙屋から知事選の横流し選挙はがきを買い取ることにつき関与したと疑うに足りる理由ありとして捜査当局から極秘裏に取り調べられ、危うく不起訴になったり、都知事選に暴力団を雇って反対党たる社会党候補者の立ち会い演説を集中的に妨害させたりというような政治の姿勢で、どうして暴力団の根絶はおろか、取り締まりができるでありましょうか。これでは暴力団になめられるのはあたりまえであり、暴力団の根絶どころではないのであります。暴力団を育てている者は一体だれだと言いたくなるのであります。かかる政治姿勢に立ち、根本的な暴力団の本質把握をなすことなく、したがってそれに伴う抜本的対策を欠いたまま、いたずらに現象にとらわれて刑罰の強化のみに走らんとする政府の暴力対策には、われわれ日本社会党は絶対に反対せざるを得ない次第であります。以上が本改正案に反対する第二の理由であります。
なお、かかる見地に立って、われわれはさきにわが党の暴力対策を発表し、政府の暴力対策と対比しつつ、われわれの立場を明らかにしておるのであります。
次に、今次改正案の具体的内容の問題点の二、三について、意見を申し述べたいと存じます。
まず、第一点は、第一条ノ二を設け、従来の刑法体系にはなかった銃砲刀剣類を用いた傷害の故意犯という概念を設けまして、重く処罰し、その未遂をも罰せんとしたことで、学界におきましても刑法体系を根本からくつがえすものとの批判もあり、さらには、銃砲刀剣類とは一体いかなる範囲のものをさすのかという点できわめてあいまいであることであります。
第二点は、第一条ノ三を設け、常習として刑法二百四条傷害、二百八条暴行、二百二十二条脅迫、二百六十一条器物損壊の罪を犯した者が人を傷害したときは一年以上十年以下の懲役、その他の場合は三月以上五年以下の懲役としたことであります。これは現行法第一条第二項を削り、そのかわりに本条を設け、かつ、新たに傷害の罪を加えた包括一罪とし、しかも罰金刑を廃止して刑を加重したものであり、問題は刑の加重と常習であります。従来の判例によりますと、常習認定には、「他に資料があれば十年間無処罰でもよく」、あるいはまた、「習癖さえあればただ一回でも常習を認定し得る」、また「起訴猶予処分も常習認定の資料たり得る」とされていますから、大衆運動の活動家が常習と認定される危険がきわめて多いのであります。しかも、常習認定は最終的には裁判所でありますが、資料を提供するのは検察庁であり、警察であります。特に公安事件にあっては、警備公安警察の意見、判断資料がその基礎となります。警備公安警察は、とかく争議の中心人物を逮捕しようとするあまり、ときに法律的に無理な判断、認定をしやすい傾向を持っております。政府説明によりますれば、労働運動の活動家が暴力常習者などとは考えられない、かように申しますが、労働運動の活動家を長く拘束するため、暴力常習者にでっち上げることは、本法、特に改正案によって、前述のような警察の態度から見て考えられることであります。
また、政府説明は、こうも申します。現行の一条二項の常習の規定は労働運動に適用されたためしがないから、今度の改正案の一条ノ三の場合も適用あることは考えられない。しかし、現行法第一条二項の常習規定が適用されなかったのは、一条一項の一般の場合と法定刑が同じだったから適用の妙味もなく、積極的な実益がなかったからで、今次改正で常習についての法定刑が引き上げられれば、この常習規定が労働運動に対して大いに活用され、乱用されることは間違いないのであります。
また、常習規定と短期一年以上への引き上げ、罰金刑の廃止は権利保釈ができなくなることにもつながり、保釈も困難となり、求刑も量刑も重くなり、執行猶予も困難となります。罰金刑がなくなると、すべて体刑となるため、官公庁労働者は懲戒免となるのであります。
政府説明は、さらに、新設の規定は現行の第一条第一項の集団的暴力行為とは何らの関係もない、本来は刑法に規定せられるべきものだから、労働運動を目標としてはいない、といいます。なるほど、一応形の上ではそのように見えますが、問題は、労働組合の活動家の行為も、常習とされれば第一条ノ三によって処罰され、従来の第一条による以上に重く処罰されますから、今次改正が労働運動弾圧とは無縁のものとの政府説明は決して当たりません。
第三点は、短期一年以上と法定刑を引き上げた以上、当然裁判所法によって合議体の裁判官の裁判を受ける権利があるべきであるのに、本法の犯罪が比較的単純であり、しかも迅速に処理する必要があるとの理由で単独裁判官によって裁判すべきこととするよう、裁判所法の一部をあわせて改正せんとする点であります。銃砲刀剣類の認定といい、常習の認定といい、きわめてむずかしい問題を含んでおり、政府のいうごとく、決して単純ではないのでありまして、これこそは、政府のかってな都合により人権を軽視したものとして、とうてい容認できないところであります。
以上、これを要するに、百歩を譲って、今次改正案提出の意図が善意であり、暴力団取り締まり強化にあるといたしましても、結果としては、大衆運動抑圧強化の危険をもたらし、他面現行法の運用が、法定刑に比べて求刑、判決が軽きに過ぎ、その間にはるかに幅を残しつつある現状にかんがみるとき、暴力団対策としては、現行法の範囲内においてざらに一そう取り締まりに努力し、七際の刑の量定をもくし、運用の妙を得ますれば、十分その目的を達することができるのでありますから、今次改正案は必要なきものとして反対するものであります。
以上をもって反対討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/29
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030・船田中
○議長(船田中君) 三田村武夫君。
〔三田村武夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/30
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031・三田村武夫
○三田村武夫君 ただいま議題となりました暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案につき、民主党を代表して、政府原案賛成の討論を行ないます。(拍手)
先ほど来の論議によりましてほとんど本案に対する討論は終わったかの感がありますが、法律案、特に刑事立法の討論でありますから、筋道を立てて原案賛成の理由を具体的に申し述べます。
最近における暴力事犯の頻発、暴力団横行の現状は全く目に余るものがあり、善良な市民、一般国民大衆に深刻な不安と脅威を与えていることは、御承知のとおりであります。このような事態は、警察、検察、司法に関する刑事政策上の重要な問題であるばかりでなく、政治全体に及ぶ重要な基本問題でもあります。人の生命と身体に対する侵害は、最高の邪悪であり、許すことのできない人間社会共通の敵であることは、何びとも異論のないところであります。(拍手)
政府提出の資料によりますと、最近五カ年間に暴力事犯として検挙され、検察庁で受理した人員は、昭和三十三年、三十四年、三十五年、三十六年、三十七年、いずれも二十万ないし二十一万数千人を数え、この五カ年間で百五万二千五百十三人が検挙されているのであります。このことは、同時に毎年二十万人以上の善良な市民が理不尽な暴力によって人権を侵害され、その生命と身体及び財産に危害を加えられていることであり、五カ年間に百万人の被害者があったということであります。しかも、法務省提出の犯罪白書によって最近の犯罪傾向を調べてみますと、昭和三十一年を一〇〇とした指数で、三十六年は、強盗殺人が四六、普通強盗が七四と、著しく減少しているのに反して、傷害罪は二〇二、暴行罪は二四六と、二倍ないし二倍半にふえております。端的に言えば・金や物が目的ではなく、人を傷害すること、暴行を加えることを目的とした犯罪が激増横行していると言えるのであります。一面また、これらの犯罪の主動力ともいうべき暴力団の実態動向を調べてみますと、毎年増加の一途をたどり、昭和三十四年一月現在、団体四千百九十二、人員七万二千八百六十人であったものが、昭和三十八年一月現在では、団体五千百三十一、人員十七万二千七百十一人となり、団体にして約一千、人員にして約十万人の激増を示しておるのであります。しかも、この暴力団構成員の前歴、つまり前科を調べてみますと、三十四年一月では七六・六%であったものが、三十八年一月では八二・三%となり、いよいよ悪質化しておるのであります。
さて、このように逐年悪質兇悪化してまいりました暴力事犯、暴力団をどうしたらよいか、その対策の問題でありますが、その前に、司法統計によってもう一点明らかにしておきたい問題がございます。
それは、これほど暴力犯罪、暴力団横行の問題がやかましく論議されておるのにもかかわらず、検挙して裁判所に送ってみても、その刑がきわめて怪いということでございます。たとえば、昭和三十三年から三十六年までの四カ年間に、傷害罪として起訴された二万七千六百八十五人について、第一審判決を調べてみますと、一年以上の懲役に処せられた者が五千七百四十八人で、全体の二〇%、一年以下の懲役が一万七千八百六十七人で、六四%、罰金以下が四千五百十六人で、一四%となっており、しかもそのうちの四四%、すなわち一万二千二百五十二人は執行猶予の言い渡しを受けており、一日も服役いたしておりません。しかも現行の法定刑では、傷害罪は十年以下の懲役または罰金、科料の罪となっておるために権利保釈の道があり、せっかく苦心して検挙し、検察庁に送って裁判になっても、すぐ保釈金を積んで自由なからだとなり、大手を振って肩いからして町を横行し、被害者や警察官の家庭にまでお礼参りをするのであります。三十六歳で傷害暴行前科十八犯、三十歳で十四犯、二十九歳で十五犯、三十四歳で前科何と二十一犯という者もおります。三十歳未満で五犯六犯はざら、これではどうにもしようがございません。
そこで今度の改正案提出となったのでありますが、委員長報告のとおり、今度の改正案では、第一に、銃砲刀剣類を用いて人を傷害した者の罪を一年以上十年以下の懲役とすること、第二に、常習として暴行罪を犯し、人を傷害した者もまた一年以上十年以下の懲役とする。この場合の傷害は、銃砲刀剣類を用いない傷害であります。また、人を傷害しない常習暴行の罪についても、三カ月以上五年以下に刑を引き上げ、社会に害毒を流すこの種暴力犯罪と暴力団を一掃しようというのであります。もとよりこれだけで十分だとは言えませんが、今度の改正で、銃砲刀剣類を用いて行なう傷害罪と、常習暴力犯罪は、刑法の一般規定を離れて重い刑が科せられることになりますから、裁判所の科刑も当然変わってまいります。前に述べましたような一年以下の懲役六四%、執行猶予四四%というような低い量刑はなくなるのであります。また、刑の下限、すなわち最低刑一年以上としたことにより、いわゆる権利保釈がなくなり、したがって、つかまってもすぐ出てきてお礼参りをするなどということはできなくなるのであります。
以上述べてきました理由により政府案に賛成するものでありますが、この機会に反対論に対する若干の見解を明らかにしておきたいと思います。
反対論の第一は、本法が労働運動、大衆運動の弾圧に悪用、乱用される危険があるという主張であります。この論者の主張は、本法制定の当初、すなわち大正十五年にさかのぼり、昭和の初めから戦時中の群例をあげての反対論であり、戦後においてもまた同様に、悪用、乱用の事実があるというのでありますが、私は、今度の改正案に対して、この反対論は全くの杞憂であり、あえて言うならば、反対のための反対論だといわざるを得ません。(拍手)率直に申しますが、私も、昭和の初めから戦争時代へと激動期の日本に生きてきた一人であります。昭和十二年からは政治の第一線に立って、国民とともに、あの苛烈深刻な戦争政治の中に生きてきた経験者の一人であります。なるほど、本法制定当時から戦時中の政治においては、反対論者の主張するような本法耐用の事例がなかったとは言い切れません。私は、これを否定しようとは思いませんが、それは旧憲法時代の主権国家、権力支配の政治体制下における事例であります。だが、新憲法下の今日は事態が全く変わっておるのであります。憲法によって保障された労働者の団結権、団体交渉権、争議権は厳然として存在し、いやしくも正当な労働運動ないし大衆運動の弾正などあり得ないのであります。しかし、同時にまた、正当ならざる労働運動または大衆運動は、決して治外法権ではありません。銃砲刀剣類を用いて人を殺傷する労働運動または大衆運動、あるいは常習として暴行傷害を行なう労働運動、大衆運動などあり得ないのでありますから、労働運動、大衆運動弾圧を理由とする反対論は、全くの的はずれといわざるを得ません。
さらに一言つけ加えますが、戦前の治安関係法令の中には、行政執行法というまことに重宝な法律がありまして、逮捕状も令状も必要とせず、公安検束、保護検束の名のもとに、いきなり身柄を押えて留置することが可能でありました。しかし、現在ではこのような法律も手段もなく、裁判所の令状を用いずして身柄の自由を拘束するなどということは絶対にあり得ないのでありますから、本法乱用、悪用の道は全くないのでございます。
反対論の第二点は、いま世論の反撃を買っているものは暴力団の横行である、この暴力団を根絶するためには、暴力団そのものを処断の対象とせよというのでありますが、いわゆる暴力団といっても、表面に掲げている看板は、何々商事会社であり、あるいは土建業を営むもの、キャバレー、バーなどの経営者もあり、集団そのものを直ちに刑罰の対象とすることはきわめて困難なものが多いのであります。したがって、構成員によって行なわれる現実の犯罪行為を処罰の対象とする以外にないのであります。これは法治国家当然の制約であり、規範でありまして、目的のための便宜主義が許されないところに、大きな壁と困難があるのであります。
次に、反対論の第三は、現行の法律、刑法体系のもとでも、警察、検察、裁判を督励指導して、取り締まりを厳にし、刑罰を重くすることは可能である、これをやらないでこのような法改正を企てることは、怠慢であり、本末転倒だという意見がありますが、しかし、前に資料によって明らかにしましたごとく、現行刑罰法令のもとにおいては、現実に暴力犯罪根絶の実効があがらないのであります。ここに立法府としてのわれわれの責任があり、私は、与党、野党を分かたず、同僚議員諸君とともに心から本改正案の成立を切望する次第であります。
最後に、一言つけ加えますが、昭和三十七年には、警察に検挙された犯罪少年の数が、十四歳未満の触法少年を加えて百五万八千八百九十九人に及んでおります。私は、この犯罪少年層の存在を暴力団養成所あるいは暴力団予備軍と言っておりますが、まことに悲しむべきまた憂うべき傾向といわざるを得ません。このような犯罪少年の対象となる善良な青少年層の犠牲も重大な社会問題でありますが、また同時に、悪の道に走る年間百万の少年も、その前途を思うとき、真に胸の痛む思いがするのであります。民主的な近代国家においては、人の生命、身体の安全を保障することが、政治として、行政として絶対最高の責任であります。(拍手)ことしはオリンピックが開かれます。世界じゅうの目が日本に注がれているとき、心なき暴力事件、町の暴力団横行は、巖に排除する決意と対策の必要を痛感いたすのであります。
今回の法律改正だけで暴力事犯の根絶、暴力団の追放がすべて可能だとは思っておりません。だがしかし、今回の法改正を機会として、政府も、警察、検察、裁判等いずれの機関も、決意を新たにし、暴力対策に画期的な一線を画すると同時に、社会環境の一新、教育の問題、人間完成の方策について政府関係当局の格段の努力を要望して討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/31
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032・船田中
○議長(船田中君) 竹谷源太郎君。
〔竹谷源太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/32
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033・竹谷源太郎
○竹谷源太郎君 私は、民主社会党を代表し、反対の討論を試みんとするものであります。
最近におけるばく徒、テキヤ、青少年不良団等の常習的組織暴力は、まことに憂うべき激増を示しているのであります。このような社会情勢は一体だれによって、どうしてつくられたものかについて真剣な反省がまず必要ではありますまいか。(拍手)わが国は、一方において世界最高の経済成長率を誇りながら、他方では一人当たり国民所得は近代国家としてはまさに低位の二十番目以下にあるのでございます。また義務教育普及率は世界第一であるにもかかわらず、青少年の犯罪や非行が激増の一途をたどっておる。昭和三十年から三十七年までの間に所得は二倍になったのでございますが、他方では自動車事故は三・四倍、麻薬中毒は三倍、犯罪は二倍という恥ずかしい激増ぶりを示しているのであります。特に、道徳の低下、なかんずく対社会、対人関係における義務観念は、ゆがんだ個人主義の台頭の前に低下し切っている現状であります。このような社会的、経済的な各種のアンバランスの存在にこそ、暴力の温床をつくり出している基本的要因があるといわなければなりません。(拍手)政治に携わる者として、その施政の貧困のゆえにこのような根本的矛盾を引き起こし、そのことが暴力の、ばっこを助長していることを真剣に反省すべきであると思います。今日の暴力の横行は、池田内閣過去の施政に何らかの基本的欠陥があることを証明するものと断ぜざるを得ません。政治の基本姿勢を正し、国民の道義高揚に対策の主眼点を置くべきであり、特に、政治と暴力の結合、政治と右翼の結びつき、これをこの際断固断ち切らなければならないと考えます。(拍手)現時点において暴力犯処罰法改正による法制的措置は一定の意味を持つことは事実であるが、これをもってこと足れりとするならば、大きな誤りを犯すこととなることを政府に対し強く警告するものでございます。(拍手)
さて、このたび政府から提案されました暴力犯処罰法改正案は、常習的組織暴力の激増にかんがみ、これらの悪質な組織暴力から一般市民の日常生活上の権益を保護し、もって社会秩序の維持をはかる目的を持つものであることは、その改正内容、委員会審議、並びにその提案理由に示されているとおりであり、この法律の目的が常習的組織暴力の取り締まり強化に置かれ、いやしくも憲法上の国民の基本的権利や労働組合の正当な活動を侵害する意図を持たないものであることは、われわれの率直に認める点でございます。特に最近の刑法事犯中に占める暴力団関係等の犯罪は、まことに憂うべき率を示しており、特に銃砲刀剣を用いた悪行犯罪が増加の一途をたどっていることは、法治国家として看過できない現象であります。もしこのような事態をそのまま放置するならば、法治国家としての社会秩序は乱れ、犯罪から国民の権益を守るべきわれわれ立法府の使命は、その任務をみずから回避することになることを、われわれは厳粛に自覚すべきであります。
本法案が提出されるに及んで、一部に、これがいかにも正当な労働組合活動を制約するのであるかのごとき宣伝を行ない、これの成立を阻止せんとする動きがありますけれども、それはこの法律の趣旨をはなはだしく誤解ないしは故意に曲解したものであって、この法律の正しい評価を見誤ったものというべきであります。特に、これらの人々が措置しているような、銃砲刀剣類の中にプラカードや旗ざおが含まれるおそれがあるとか、労働組合の活動家が常習者として適用される危険があるとかいう議論は、あまりにもうがら過ぎた見方であり、不要の危惧というべきであります。(拍手)すなわち、銃砲刀剣類の定義については、銃砲刀剣類等所持取締法の現在の規定の定義によるものであることが明らかにされており、旗ざおなどの含まれないことは明白な事実であります。また、常習暴力犯の常習の定義も、習癖として反復累行するということに、すでに判例で統一された解釈が確立されており、いわゆる労働組合活動家が同法の常習軒としての満州を受けないことも明らかであります。
わが党は、以上の見地から、この法律が労働組合の一部などで危惧しているようなものではないことをまず認めるものであります。しかし、われわれが立法者として常に留意しなければならないことは、立法の動機、立法の内容がいかに善意であり、かつ、正しくとも、法の運用次第によっては、一般国民の権益に若干でも危険をもたらす危惧が予想される場合には、それを絶無にするためのあらゆる努力を怠ってはならないことであります。(拍手)
この観点から政府案を吟味するとき、国民に一定の処罰を加えることを内容とするこの種法案としては、必ずしも十分な配慮が加えられていない点を指摘しなければなりません。特に過去の事例において、労働運動に関連する暴力事犯が本法の適用を受けていることはまぎれもない事実であり、かつ、法執行者としての現在の警察、検察行政も、必ずしもその民主化が完全に徹底されておらず、人権問題を過去に引き起こしている実績等を考えるとき、法の運用について一定の規制条項を改正案自体に織り込むことは、この点に関する国民の疑惑を解くためにも、きわめて有益、かつ、必要な措置だと考えるものであります。(拍手)もとより、われわれは、過去における労働運動に関連する一連の暴力事犯が正常な労働運動であったとは毛頭考えておりません。したがって、それらの暴力事犯について本法が適用されたことを非難するものでもございません。なぜならば、刑法上の暴力を伴う労働運動は、本来邪道であり、労働運動の限界を踏みはずしたものであると考えるからであります。(拍手)われわれは、そのような暴力的労働運動まで是認せよという主張は、まぎれもない暴力肯定論であり、法治国家のもとでは許されざる主張であると断ずるものであります。(拍手)
しかしながら、ひるがえって、暴力行為等処罰法の第一条を見ますと、「団体若ハ多衆ノ威カヲ示シ、又ハ兇器ヲ示シ若ハ数人共同シテ暴行、脅迫又ハ器物損壊ノ罪ヲ犯シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金二処ス」と書いてあります。そこで、暴力団がなぐり込みに出かける、総会屋が株主総会で集団して威力を示す、あるいは不良少年団が、地方から東京へ修学旅行にやってきた少年のまわりを取り巻くといった行為とともに、労働組合が会社当局と団体交渉を行なう、あるいはデモ行進をやって会社に乗り込むといった行動も、これらはともに暴力行為等処罰法にいう団体または多衆の威力を示す行動ということになり、憲法で保障された労働者の団体行動権、団体交渉権または大衆の集会、結社の自由に基づく行動も、暴力団等の集団行為も一応本法の対象となり得るのでございます。したがって、憲法の保障する正当なる組合活動、大衆運動であるか、それとも正当性を逸脱したいわゆる越軌行動であるかいなかの判断が必要となってまいるのであります。かくして、この法律はもろ刃の刀となるおそれがあることに留意しなければなりません。
われわれ国会は、民主社会を乱す憎むべき組織暴力を徹底的に芟除しつつ、しかも他面において正当、健全な労働運動、大衆行動を完全に保障し、国民の自由と権利をいささかも侵すことのない万全の法律をつくる責任があると考えます。そのために、わが党が法務委員会において提案した乱用防止の修正条項をこの法律案に取り入れ、邪道を打ち破り正法をあらわすところの破邪顕正の名刀として鍛え上ぐべきであります。
しかるに、政府・与党はこのようなわれわれの当然なる主張に耳をかさず、労働組合や国民の一部とはいえ、その危惧に対して何ら法的保障措置を講ずることなく、一方的に押し通す挙に出たことは、われわれとしてどうしても容認できないところでございます。政府・与党は、われわれの修正案を拒否することによって、本法が、危惧されているような、場合によっては、労働運動に対しても不当なる制約を加える余地があることをみずから立証したのでございます。なぜなら、本法が真に正当な労働運動等を何ら拘束するものでないならば、修正案を拒否する理由はごうも存在しないからであります。政府・与党は、われわれの修正案を拒否する理由として、本法のごとき実体法の中に乱用防止規定を置くことは、立法技術上適当でないと主張しております。しかし、この主張は軽犯罪法等の立法の先例を明らかに無視した何ら正当性を持たない議論でございます。われわれの修正要求は本法に対する国民の最低の要求であり、これすら無視する政府・与党の態度は真に国民の立場に立ったものでないことを、この際はっきり指摘しておきたいと存じます。
以上の立場から、われわれ民社党は、このような当然の配慮が加えられない政府原案に対し、断固反対するものであることを表明して、討論を終わる次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/33
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034・船田中
○議長(船田中君) これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/34
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035・船田中
○議長(船田中君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第二 農山漁村電気導入促進
法の一部を改正する法律案(農
林水産委員長提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/35
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036・船田中
○議長(船田中君) 日程第二は、委員長提出の議案でありますから、委員会の審査を省略するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/36
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037・船田中
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。
日程第二、農山漁村電気導入促進法の一部を改正する法律案を議題といたします。
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—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/37
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038・船田中
○議長(船田中君) 提出者の趣旨弁明を許します。農林水産委員長高見三郎君。
〔高見三郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/38
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039・高見三郎
○高見三郎君 ただいま議題となりました農林水産委員長提出、農山漁村電気導入促進法の一部を改正する法律案について、その趣旨を申し上げます。
昭和二十七年に農山漁村電気導入促進法が制定されまして以来、同法に基づき、電気が供給されていないか、または十分に供給されていない農山漁村に電気を供給して、当該農山漁村における農林漁業出産力の増大と農山漁家の生活、文化の向上をはかってきたのであります。
この電気供給の方式といたしましては、いろいろの形態のものが見られますが、中でも、小水力発電所を建設し、その発生電力を地域内の電力会社の配電線に連係するいわゆる連係式小水力発電事業が広く行なわれておりまして、これは、当該地域における電力不足の解消のみならず、余剰電力による収入を通じ、農山漁村の振興に多大の貢献をしているのであります。
近時農林省において全国的に実施した調査結果によりましても、このような小水力資源が未開発のまま埋蔵されておる地点は、相当数存在していることが明らかにされておりまして、また、経済的に立地条件等の恵まれない農山漁村におきましては、この連係式小水力発電事業を一そう積極的に、みずからの手によって行ないたいという要望がきわめて強いのであります。
このような事情にかんがみまして、小水力資源を、農山漁民の手で一段と能率的かつ積極的に開発していくために、現行の制度に所要の整備を加え、電気導入事業の一そう適切な推進により、農林漁業生産力の増進及び農山漁村の社会、文化の進展に寄与することが緊要と存じ、この法律案を提案した次第であります。
次に、この法律案のおもな内容について御説明申し上げます。
第一は、電気導入事業の対象地域として、従来の未点灯または電力不足の農山漁村のほかに、発電水力が未開発のままに存在する農山漁村を加えたことであります。
第二は、電気導入事業の内容といたしまして、農山漁村に電気を供給する者に対し、その発電水力を開発して電気を供給することが含まれることを明確に規定することといたしました。
第三は、電気導入事業の事業主体として、現行法規では、農業協同組合、森林組合、水産業協同組合等、農林漁業を営む者が組織する営利を目的としない法人とされておりますが、これに加えて、これらの団体が主たる出資者となっている一定の法人も事業主体となり得ることを明記したことであります。
さらに、このような小水力発電に必要な施設の改良、造成、復旧または取得に必要な資金につきましては、農林漁業金融公庫から貸し付けを行なうこととし、農林漁業金融公庫法に所要の改正を加えることとしております。
以上がこの法律案の提案理由及びおもな内容であります。
委員会におきましては、四月二十四日この案を委員会の成案とすることに決しました。何とぞすみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/39
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040・船田中
○議長(船田中君) 採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/40
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041・船田中
○議長(船田中君) 起立多数。よって、本案は可決いたしました。
————◇—————
日程第三 水先法の一部を改正す
る法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/41
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042・船田中
○議長(船田中君) 日程第三、水先法の一部を改正する法律案を議題といたします。
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—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/42
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043・船田中
○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。運輸委員長川野芳滿君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔川野芳滿君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/43
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044・川野芳滿
○川野芳滿君 ただいま議題となりました水先法の一部を改正する法律案について、運輸委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案は、主要な港湾等における航行船舶の急激な増加に対応して、水先人の技術水準の向上をはかるとともに、水先人会の制度を設けまして、船舶交通の安全を確保し、かつ、運航能率の増進をはかろうとするものであります。
改正のおもなる点を申し上げますと、
第一点は、水先人の免許要件の船長履歴について、乗船期間を二年以上から三年以上に、総トン数千トン以上から三千トン以上に引き上げようとするものであります。
第二点は、水先区ごとに水先人会を設立し、水先人会は、水先人の引き受けに関する事務を統合して行なうほか、水先人の養成並びに指導を行なうこととしております。
第三点は、水先人に対して水先業務用施設の確保、水先約款の届け出等を義務づけるとともに、水先人に対する業務改善命令、報告、立ち入り検査に関する規定を設けようとするものであります。
本案は、三月十二日本委員会に付託となり、翌十三日政府より提案理由の説明を聴取し、四月二十二日及び二十四口質疑を行ない、同二十四日、採決の結果、全会一致をもって政府原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/44
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045・船田中
○議長(船田中君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/45
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046・船田中
○議長(船田中君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第四 国有財産法の一部を改
正する法律案(内閣提出)
日程第五 国際開発協会への加盟
に伴う措置に関する法律の一部
を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/46
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047・船田中
○議長(船田中君) 日程第四、国有財産法の一部を改正する法律案、日程第五、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
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—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/47
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048・船田中
○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員長山中貞則君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
—————————————
〔山中貞則君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/48
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049・山中貞則
○山中貞則君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
初めに、国有財産法の一部を改正する法律案について申し上げます。
この法律案は、国有財産の管理及び処分の適正化並びにその運用の円滑化に資するため、国有財産にかかる総合調整の手続を整備すること等を目的とするもので、おもな改正の内容は次の諸点であります。
すなわち、まず第一に、大蔵大臣が国有財産の管理及び処分の適正を期するため必要があると認めて、各省各庁の長に対し、その所管に属する国有財産について、用途の変更、用途の廃止、所管がえその他必要な措置を求める場合、現在閣議の決定を経てこれを行なうことになっておりますが、大蔵大臣が各省各庁の長に対して、直接必要な措置を求めることができることにし、さらに必要があると認めるときは、閣議の決定を経て必要な指示をすることができることに改めております。
第二に、公園または広場である公共用財産の減少及び皇室用財産の増加につきましては、現在一件当たりの財産価格が三百万円以上である場合、あるいは一年度間の財産価格の合計額が三千万円をこえる場合には、国会の議決を要することになっておりますが、最近における地価の上昇等の実情にかんがみ、これらの金額をそれぞれ三千万円及び三億円に引き上げるほか、皇室用財産の増加につきましては、寄付、交換、所管がえ等予算に計上されていないものについてのみ国会の議決を要することに改めております。
第三に、各省各庁の長が特別会計所属の普通財産である土地または建物の売り払い等をしようとする場合は、あらかじめ大蔵大臣と協議して行なうことにして、普通財産の管理及び処分の適正化をはかることにいたしております。
第四に、行政財産を、その用途または目的を妨げない限度において使用または収益させる場合は、私法契約によることを認めないで、今後はすべて行政処分たる許可によることに改めております。
第五に、地方公共団体等に対して、災害が発生した場合における応急措置を実施するために必要な普通財産を無償で貸し付けることができる道を開くほか、ごみ処理施設及びし尿処理施設の用に供するために必要な普通財産を無償で貸し付けもしくは譲与できるものとし、さらに行政財産についてもその用途または目的を妨げない限度において道路、水道及び下水道の用に供する場合は、これを無償で許可することができることにいたしております。
以上がこの法律案の概要であります。
本案については、慎重審議を重ねたのでありますが、特に武藤委員より、用途を指定しないで売り払った国有財産が、売り払い後数日を出ずして他に転売された事例をあげて、現行規定の不備を指摘されました。委員長としては、武藤委員の指摘された点はきわめて重要であり、そのまま看過すべきではないと考えまして、この際委員会修正により当該規定を整備することを必要と認めたのであります。かくして検討の結果、坊秀男君外二十三名より修正案が提出されました。
修正案の内容は、普通財産の売り払いをいたします場合は、原則として買い受け人に対して一定の用途に供させることを義務づけることにして、普通財産売り払いの適正を期し、その有効適切な転活用をはかろうとするものであります。
次に、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。
国際開発協会は、昭和三十五年十一月の創立以来、低開発地域の経済開発の促進、土産性の増大及び生活水準の向上のために長期低利の融資を行なってまいりましたが、この融資に対する低開発諸国の需要が年を追って増大し、同協会の増資が慎重に検討されました結果、総額七億五千万ドルの資金追加が決議され、わが国も同協会に対して新たに四千百二十五万ドル相当額、本邦通貨の金額で百四十八億五千万円の追加出資を行なうこととなったものであります。
したがいまして、この法律案は、国際開発協会に対する追加出資の規定を新たに設けまして、百四十八億五千万円相当額の出資をすることができることにいたしております。
なお、今回の追加出資は、全額を円貨で行なうことにしておりますが、実際の払い込みは昭和四十年度以降三カ年度にわたり均等分割して行ない、かつ、当初はその全額を通貨代用国庫債券により行なうことが認められておりますので、昭和三十九年度については特に予算上の措置を要しないことになっております。
以上両法律案並びに修正案につきましては、去る四月二十四日、質疑を終了し、一括して討論に入りましたが、武藤委員は日本社会党を代表して両法律案に反対、修正案に賛成の意見を述べられ、竹本委員は民主社会党を代表して各案に賛成の意見を述べられました。次いで、採決いたしましたところ、国有財産法の一部を改正する法律案に対する修正案は全会一致で可決、同修正部分を除く原案は多数をもって可決となり、同法案は修正議決となりました。
続いて、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案は多数をもって可決となりました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/49
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050・船田中
○議長(船田中君) 両案を一括して採決いたします。
両案中、日程第四の委員長の報告は修正、第五の委員長の報告は可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/50
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051・船田中
○議長(船田中君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり決しました。
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日程第六 国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/51
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052・船田中
○議長(船田中君) 日程第六、国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正する法律案を議題といたします。
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—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/52
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053・船田中
○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。社会労働委員長田口長治郎君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
—————————————
〔田口長治郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/53
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054・田口長治郎
○田口長治郎君 ただいま議題となりました国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正する法律案について、社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
国民年金法は、昭和三十四年の第三十一回国会において制定され、三回にわたり改正が行なわれましたが、さらに、本制度の発展と内容の充実をはかるため、なお一般の改善を行なおうとするものであります。
本案のおもな内容は、
まず第一に、障害年金等の支給範囲の拡大についてでありますが、障害年金及び障害福祉年金の対象となる者は、従来、四肢の欠損等の外部的障害に限られておりましたのを、これを拡大し、結核及び精神病による内科的疾患に基づく障害者についても支給の対象とするとともに、母子年金及び母子福祉年金等の支給の対象となる障害の子の範囲についても障害年金と同様に拡大することであります。
第二に、福祉年金の支給制限の緩和でありますが、その第一点は、受給権者の扶養義務者の所得による支給制限の基準額を六十万円から六十五万円に緩和することであり、第二点は、戦争、公務により死亡しまたは廃疾となったことに基づく公的年金受給者に対する福祉年金の併給の限度額を七万円から八万円に引き上げることであります。
次に、児童扶養手当法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本改正は、支給範囲の拡大及び支給制限の緩和について、国民年金法の同趣旨の改正を行なうものであります。
本案は、去る二月二十五日本委員会に付託となり、昨二十七日の委員会において質疑を終了いたしましたところ、福祉年金及び児童扶養手当の受給者本人の所得による支給制限額を十八万円から二十万円に引き上げることについて、自由民主党伊東正義君、日本社会党伊藤よし子君、民主社会党吉川兼光君より修正案が提出され、伊東正義君より趣旨の説明を聴取した後、採決の結果、本案は修正議決すべきものと議決いたしました次第であります。
なお、本案に対し、松山千惠子君、八木一男君、吉川兼光君の三名提出にかかる三党共同の附帯決議を付することに決しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/54
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055・船田中
○議長(船田中君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/55
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056・船田中
○議長(船田中君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。
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日程第七 風俗営業等取締法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/56
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057・船田中
○議長(船田中君) 日程第七、風俗営業等取締法の一部を改正する法律案を議題といたします。
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—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/57
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058・船田中
○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。地方行政委員長森田重次郎君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔森田重次郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/58
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059・森田重次郎
○森田重次郎君 ただいま議題となりました風俗営業等取締法の一部を改正する法律案について、地方行政委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案の要旨は、第一に、飲食店等の営業の深夜における営業に関し、営業の場所、営業時間等について必要な制限を定むることができるものとすること、第二に、違反営業者に対して飲食店営業の停止を命ずることができること、第三に、年少者に関する禁止行為を定むること、第四に、罰則規定を整備すること等であります。
本案は、参議院先議のため、当委員会に予備付託され、三月十三日本付託となり、三月十九日早川国務大臣より提案理由の説明を聴取し、自来、青少年非行化の原因と実態、法律と条例との関係、風俗営業の範囲、風俗営業周辺のトルコぶろ、ヌードスタジオ、ボーリング場に対する規制の問題等について熱心に質疑を重ねましたほか、参考人を招いてさらに意見を聴取するなど、慎重に審査を行なってまいりましたが、その詳細は会議録によって御承知いただきたいと存じます。
四月二十七日、質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して安井委員、民主社会党を代表して門司委員より、それぞれ本案に対して反対の意見が述べられましたが、採決の結果、賛成多数をもって政府原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
なお、本案に対して、自由民主党、日本社会党、民主社会党の三党共同提案により、現行法体系の欠陥を根本的に再検討し、特に重要な規制事項は法律または政令に定むることとする等、法制を全般的に整備するとともに、トルコぷろ、ヌードスタジオ、ボーリング場についても関係法令の改正等により抜本的な対策を確立し、その実効を期すべき旨の附帯決議を付されたのであります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/59
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060・船田中
○議長(船田中君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/60
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061・船田中
○議長(船田中君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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大平外務大臣の沖繩援助に関する日米間の書簡交換についての発言発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/61
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062・船田中
○議長(船田中君) 外務大臣から、沖繩援助に関する日米間の書簡交換について発言を求められております。これを許します。外務大臣大平正芳君。
〔国務大臣大平正芳君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/62
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063・大平正芳
○国務大臣(大平正芳君) 政府は、わが国が琉球諸島に対して潜在主権を有すること、琉球諸島住民は日本国民たる地位を有すること、及び琉球諸島に対する施政権は将来わが国に返還さるべきものであることにかんがみ、琉球諸島の経済開発と同島住民の安寧、福祉を増進するため、米国政府と協力して積極的な援助の努力を推進してまいりました。昭和三十六年六月、ワシントンで行なわれた池田・ケネディ会談においては、米国が琉球諸島住民の安寧、福祉の増進について一そう努力し、わが国がこの目的のため米国と引き続き協力することが確認されました。昭和三十七年三月、ケネディ大統領は、池田総理とのそのような了解に基づき琉球諸島に対する援助供与についての日米間の協力を進めるための取りきめを行なうために日本政府と協議を開始する用意がある旨を声明されました。
その取りきめに関する日米間の交渉は、同年九月より開始されましたが、今般、琉球諸島に対する経済援助に関する協議委員会と、技術委員会の設置を骨子とする取りきめの案文につき、両政府間に意見の一致を見るに至ったので、四月二十五日、私とエマーソン駐日臨時代理大使との間でこの書簡を交換いたしました。
今回の取りきめのおもなる内容は次のとおりであります。
一、両政府は、琉球諸島に対する援助の供与について、引き続き協力する。日本政府の援助は、予算で認められた資金から供与され、この資金の支出は日本の法令に従って行なうこと。
二、協議委員会を設置する。同委員会は、日本側については外務大臣及び総理府総務長官、米側については駐日大使により構成される。同委員会は、琉球諸島に対する援助供与についての協力に関する両政府の政策調整を任務とすること。
三、技術委員会を設置する。同委員会は、琉球諸島高等弁務官の代表者、総理府総務長官の指名する政府職員及び琉球政府行政主席またはその代表者により構成される。同委員会は、援助の実施に伴って虫ずる問題の検討を任務とすること。
四、日本政府が琉球政府に提供する資金により取得される器材及び施設、日本政府が供与する器材及び施設または日本政府の琉球諸島における技術援助は、琉球政府が維持し、管理する。前記の器材及び施設に対する権原は、原則として琉球政府に帰属すること。
以上であります。
なお、わが方の書簡に対する返簡において、米国政府は、自由世界の安全保障上の利益が、琉球諸島を日本の完全な主権のもとへ復帰せしめることを許す日を待望する旨を述べて、前述のケネディ声明を確認しております。
右、御報告申し上げます。(拍手)
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沖繩援助に関する日米間の書簡交換についての発言に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/63
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064・船田中
○議長(船田中君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。これを許します。川崎寛治君。
〔川崎寛治君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/64
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065・川崎寛治
○川崎寛治君 私は、日本社会党を代表して、ただいま報告の行なわれた沖繩問題の根本である施政権の問題等について、総理大臣をはじめ関係各大臣に対し若干の質問をいたさんとするものであります。
本日は、昭和二十七年、講和条約が発効してから十二年目の日であります。この日、沖繩の那覇市においては、母なる本土への復帰を願って十万をこす県民が大集会を持っています。おそらく、戦後最大になるでありましょう。また、引き裂かれておる二十七度線上においては、本土側からと沖繩側からの代表三百人近くが海上交歓を行なっています。そして、ここ東京においても、今夕沖繩からの代表を迎えて祖国復帰国民大集会が持たれることになっています。日米協議、日米琉技術両委員会が発足した二十五日には、那覇市議会は全会一致で高等弁務官の専制支配のもと、自治権は皆無の状態になっていると、アメリカ統治を強く批判をしながら、日本復帰の決議を行ないました。日本本土からの圧力でその成り行きが注目されていた琉球立法院においても、昨日、全会一致で日本復帰を決議いたしました。しかも、われわれ日本の国政をあずかるものとしてはなはだ申しわけないことは、日本政府の弱腰にしびれをきらして、サンフランシスコ講和条約の全調印国に、立法院は日本復帰の要請を行なっているのであります。(拍手)本土の政府に対する不信にほかなりません。さらには、日本政府がもっと高い政治問題に強い決意で取り組んでくれることを要請いたしているではありませんか。両委員会が、施政権返還、自治権の問題等、広範囲の事項について協議する性格のものに全くなし得なかった結果から見て、池田総理は、対米従属外交の実態を認めざるを得なかったことと思いますが、いかがでありますか、率直に表明願いたいのであります。そして、太平洋戦争末期、米軍に占領され、日本から引き裂かれて十九年、今日なお他国の支配のもとに苦しんでいる沖繩同胞九十万に対して、総理は心からおわびを申し上げるべきであります。
日米協議委員会が、日本側の努力にもかかわらず、施政権の厚い壁を突き破り得なかったそもそもの出発点は、六一年の池田・ケネディ会談にあります。その首脳会談においては、沖繩返還には触れられず、日米協力による住民の福祉の増進を約束したにとどまったではありませんか。池田総理が米国に出発する前、五月十二日、本院の外務委員会において、琉球立法院議員団の代表三名は、住民の第一義的希望は、福祉の増進ではなく、施政権の返還であり、これを六月の日米首脳会談で取り上げてほしいと強く要請されたことは、お忘れでないと思います。沖繩九十万同胞のみならず日本全国民の悲願を、なぜ訴えず、交渉されなかったか、明らかにしていただきたいのであります。岸前総理すらアイクに要求したではありませんか。施政権の問題は高度の政治問題だと、政府は口を開けば言います。その高度の政治問題を、池田・ケネディ会談において取り上げなかったことは、もともと池田内閣に沖繩返還を解決する腹がまえがなかったと言われても、弁明の余地はないと思いますが、いかがでありますか、明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
援助の方式について、次にお尋ねいたします。
外務大臣は、ただいまの報告で、日本がアメリカと協力して住民の福祉の向上をはかると申しました。しかし、米国側の書簡には、日本国政府の協力を求めて云々と、あくまでもアメリカが主役で、日本は明らかにバイプレーヤーにしかすぎないのであります。そして、この委員会が、複雑なこれまでのルートの単なる交通整理に終わり、日本の支出援助計画を検討するにすぎない機関になると思われるのであります。援助資金はすべて高等弁務官の認める計画によるものとすると、きびしく米民政府は原則を定めております。これまでは、日本政府はアメリカ高等弁務官の現地支配権を通じて援助を行なってまいりました。今回の措置によっても間接援助の方式は改まっていないと思うのでありますが、いかがでありますか、お答えいただきたいのであります。
マイクロウェーブの問題は、いろいろの問題を投げかけております。日本電電公社が昨年十一月完成させたマイクロウェーブが、でき上がってすでに半年を経た今日、なお開通いたしておりません。日本・沖繩の間における料金分収率の問題でおくれていると言っておりますが、はなはだ奇妙であるといわざるを得ません。日本の技術援助の今日の姿を最も端的にあらわしていると言えましょう。貴重な日本からの援助資金が円滑に今後使われる保障があるのか、郵政大臣並びに総務長官に御説明を願います。
六二年三月十九日のケネディ新政策によれば、今後沖繩の諸水準を、数年後には本土の県並みに引き上げることが提案されております。御承知のとおり、今日の沖繩経済の実態は、所得は本土の六割、税金の重さは三倍、物価は三割高、その上に社会保障制度は皆無という状態であります。行政水準は、佐賀、鳥取、高知、徳島等の七割であります。しかも、これら各県は、国庫補助を平均して七割受けております。沖繩においては、日米援助の総予算に占める割合は、六三年度でわずかに二二・八%、しかも、アメリカの援助は、ドル防衛の立場上、その比率を年々低下させているのであります。これらの点から見て、沖繩を本土並みに引き上げるにはいかにすべきか、その長期計画をお示し願いたいのであります。
全会一致で決議をされました那覇市議会の祖国復帰要請決議は、米国の統治はケネディ政策に逆行し、最近では高等弁務官の専制支配が露骨化し、自治権は皆無の状態となっている、こう訴えています。キャラウエー高等弁務官が沖繩の自治権は神話であると言ったことを裏づけているではありませんか。池田総理の言う自由陣営三本の柱である大国日本のこの領土内において、九十万の日本人が、自由と民主主義の国アメリカにこのように支配されておることこそ二十世紀の神話でなくて何でありましょう。(拍手)そして、ケネディ政策に反する統治が行なわれていることは国際信義に反することであります。外務大臣はいかにこれを考えられ、自治権の拡大をいかにしてはかるおつもりなのか、具体的にお示しをいただきたいのであります。
私は、郷里鹿児島の港を出入りする沖繩航路の船を見るにつけ、沖繩の同胞が日本の領土内にありながら渡航の自由を奪われている姿に胸を締めつけられる思いをいたしております。私たちは、今夕東京で行なう沖繩祖国復帰国民大集会に、沖繩から三十名の代表を招待いたしました。昨日ようやく東京に到着をいたしたのは、わずかに七名であります。二十三名にはパスポートがおりていないのであります。しかも本土から親族の病気見舞いに帰るため渡航申請をしておる四名に対してもパスポートがおりていないのであります。かくのごとく、最近では理由を示さない不許可がふえているといわれています。この同胞が熱望しておる渡航の自由について、政府は具体的に交渉したことがあるのか、また、その見通しはいかなるものであるか、外務大臣並びに総務長官に御説明を願いたいのであります。(拍手)
祖国から切り離されて十九年、アメリカの絶対権力の統治下にあって、日本本七と一体の教育を行なうことがどんなに困難であるか、想像にかたくありません。米民政府布令による琉球教育法を乗り越えて、二度にわたる民政府の拒否にも屈せず、三年がかりで三度目に教育基本法をかちとった立法院の勇気を、私は、称賛いたしたいのであります。(拍手)この沖繩の教育基本法の前文において、堂々と、われらは、日本国民として教育を推し進めるのだと、教育の目的、教育の基本確立をうたっておるのであります。沖繩における教育の基本課題は、教育権の確立と復帰であり、日本国憲法の適用であります。また、かって大平外務大臣が、昨年末の本院予算委員会において、不当なる人権問題に有権的に関与する道がないと、絶望的な答弁をいたしておりますが、今日相次いで行なわれておる殺人、暴行、こうした人権問題に対しても、沖繩に日本国憲法を適用することこそ今日の最大急務であります。総理大臣、外務大臣、文部大臣の明確なる御答弁をお願いいたします。
アメリカは沖繩を信託統治にしないことを明らかにしております。日本にもその意思はありません。まして、沖繩の住民は、一日も早い祖国復帰を願っております。日本が国連に加盟をしておる今日、講和条約第三条並びに国連憲章から見て、もはやアメリカには沖繩を支配する法的根拠は失われております。アメリカのいう極東に緊張のある限りなどという条件は、講和条約のどこにもありません。(拍手)しかるに、外務大臣はアメリカのいう沖繩統治の論理を全面的に認めております。そしてアメリカは、繰り返し、米国の主権は暫定的でないと言明しているではありませんか。そのことをお認めになっておるのか。法理が明確でなければ突き詰めなければなりません。池田内閣は、なぜ突き詰めようとしないのでありますか。(拍手)法的根拠を失ったアメリカの統治は、既成事実の上に立った不当な施政権の行使であり、この不当性に日本政府は協力をしておることになります。アメリカが沖繩を返還することこそ、法と道義にかなった正しい道であると私は確信をいたしますが、総理並びに外務大臣の見解をお尋ねいたします。
アメリカを信頼し、協力しつつ、逐次推し進めていくと外務大臣はおそらく答弁するでありましょう。ケネディ政策は、沖繩が復帰する日までの間は、すべての関係者が寛容と相互理解の精神で対応しなければならないとうたつております。日米協議、日米琉技術委員会設置に見られるごとく、日本の一方的譲歩が寛容と相互理解の精神でありましょうか。われわれはそれをを断じて認めるわけにはまいりません。国会は過去四回にわたって沖繩の日本復帰を全会一致で決議いたしました。外務大臣は、施政権の返還と日本復帰についてはっきりと目標を立てて、返還を可能にする手順を具体的に国民の前にお示しをいただきたいのであります。(拍手)
この選挙法の一部改正をごらんください。池田内閣は潜在議席をさらに潜在化させてしまったではありませんか。国内法でできることすらアメリカに気がねをして、潜在議席をやり通し得ない今日の実態であります。われわれはいますぐにでも沖繩県民代表の国政参加を実現したいのであります。しかし、せめてこの議場に四つの議席を設けて、いつでも参加できるように準備をしておくことが、沖繩九十万同胞に対するわれわれの義務であると確信をいたします。(拍手)なぜ提案をされなかったか、その理由を明らかにしていただきたいのであります。
最後に、池田内閣は高度の政治問題である施政権の返還を避けて、単なる経済援助の積み重ねでいこうといたしております。このことは、いたずらにアメリカの軍事基地保有の永久化を助けるものにほかなりません。高度の政治問題に対処するには異常なる決意が必要であります。沖繩の日本復帰についての池田内閣の不退転の決意を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣大平正芳君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/65
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066・大平正芳
○国務大臣(大平正芳君) 沖繩の施政権返還に対する政府の基本的な態度は、しばしば国会で明らかにしたとおりでございます。これに対しまして、アメリカ側の態度は、沖繩に対する日本の潜在主権を確認し、さらに、米国が沖繩を保持するのは極東の現状も継続する期間に限る旨を明らかにしてきましたが、一昨年三月の大統領声明では、沖繩が日本領土の一部であることを認めるとともに、同島がやがてわが国の完全な主権のもとに復帰する日に備えて、日本と密接に協力していこうと言っておるわけでございます。かくして、沖繩の経済の開発、沖繩住民の安寧と福祉の増進に対し、日本政府が実質的にかつ組織的に参加することになってまいりましたことは、わが国の沖繩政策が着実に前進していることを示すものと思います。
自治権の拡大問題でございますが、これは一昨年の大統領声明にもありましたように、施政権者としてのアメリカが、必ずしも保留しておく必要のない行政機能を、いついかなる状況のもとにおきまして、いま以上に琉球政府に委譲することができるか、琉球諸局の行政機能につきまして継続的に検討を行なうという声明がありまして、それ以来、アメリカ政府は、若干の点についてすでに自治権の拡大の実施を見ておりますことは御案内のとおりでございます。私どもは、米国がその方針を実施するにあたりまして、適切と認められるものにつきましては、随時かつ建設的な提案を行なってまいるにやぶさかでございません。
それから、日本の援助は直接援助ではなく、間接援助にとどまるではないかとの御批判でございますが、施政権がアメリカにある以上、やむを得ないことでございます。しかしながら、今回の二つの委員会の設置によりまして、沖繩に対する経済技術援助は、一そう有効かつ能率的になることと確信をいたしております。
それから、渡航の問題でございますが、私どもは、できるだけ自由に沖繩と内地との間の渡航を認めるように努力をいたしておるわけでございますが、米国の施政権行使の問題もございまして、ただいままでのところ、的に制限を撤廃するというところまでは、遺憾ながらきておりませんが、今後とも一そう努力を重ねてまいりたいと思います。
それから、憲法の施行の問題でございますが、これは申すまでもなく沖繩はわが国の領土でございますから、観念上は日本の憲法は沖繩にも適用されます。しかしながら、平和条約第三条によりましてアメリカの施政権を認めておる関係上、米国の施政権が行使されておる限りにおきましては、日本国憲法の現実の適用は排除されるのもやむを得ないと思います。(拍手)
〔国務大臣灘尾弘吉君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/66
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067・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) お答えをいたします。
施政権の問題につきましては、外務大臣のお答えになりましたとおりであります。われわれも、一日も早く施政権が返還せられることを熱望いたしておるわけであります。
教育の問題といたしましては、それまでの過程におきましての問題であります。御承知のように、お話の中にもございましたが、沖繩では日本国民としての教育をやっていくという理念が確立いたしておるわけであります。沖繩の人たちは、むしろ本土よりももっと日本人らしい教育をやっていこうというような気持ちを持っておるようでございます。(拍手)
問題は、その教育の水準を向上するということであります。これにつきましては、御承知のように、日、米、琉球政府協力いたしまして今日までやってまいりました。これを今後さらに充実することに努力することを申し上げたいと思うのであります。皆さんの御協力のもとに、できるだけ教育水準の向上をはかりまして、日本本土に復帰する日を、私ども、皆さんとともに待ちたいと思っておるわけであります。(拍手)
〔国務大臣赤澤正道君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/67
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068・赤澤正道
○国務大臣(赤澤正道君) 沖繩県の代表諸君をいまもってこの議席に迎えることができないのは、まことに残念に思います。しかし、実際選挙を行なうことができないのに、ただ議員の配当だけを行ないますよりは、やはり、おことばではありましたけれども、民生の安定や福祉の向上に努力するのが先であると思います。議席の割り当ては、施政権返還と同時に行なって差しつかえないものと考えております。(拍手)
〔国務大臣古池信三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/68
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069・古池信三
○国務大臣(古池信三君) 日琉間マイクロ回線による公衆電気通信役務の料金及びその分収につきまして、日琉両電電公社間において昨年七月以来数回にわたって協議をしてまいりましたが、両公社間の意見の一致を見るに至らず、現在まだこの回線は使用されていないのであります。両公社間の意見が一致しない点は、料金を日本と琉球両電電公社間でどのように分け合うかということにあります。今度この問題の処理につきましては、総理府と緊密なる連絡をとりまして、でき得る限りすみやかに解決するように努力する考えであります。(拍手)
〔政府委員野田武夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/69
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070・野田武夫
○政府委員(野田武夫君) 先ほど沖繩に対するアメリカの援助が、むしろ減りつつある傾向があるというようなお話がございましたが、これは御承知と思いますが、何かのお考え違いだと思っております。三十七年のケネディの声明以来、プライス法の改正をいたしまして、従来、アメリカが五百万ドルを制限して援助をプライス法でやるというのを、倍額の千二百万ドルまで修正いたしました。その結果、その当時、五百万ドルのプライス法における援助も、この一九六四年におきましては、約倍に近い九百万ドルまでの援助をすることになっております。日本も、同時に、昭和三十五年は一億の援助でございましたが、本年度の予算におきましては、二十一億近く援助することになっております。したがって、その内容につきましても、漸次沖繩の全体の産業の開発、また、民生の安定向上ということに力が入りまして、必ずしも私どもの希望するとおりはいっておりませんが、漸次向上していることは事実でございまして、たとえば、数字をもって申し上げますと、一九六三年に国民所得が二億三千二百万ドルというのが、一九六三年には二億六千五百万ドルまでいっております。そういうことでございまして、一人当たりの国民所得が大体一二%の向上をしている、こういう状態でございまして、必ずしもわれわれの希望どおりはいっておりませんが、漸次向上していることは事実でございます。(拍手)
次に、マイクロウェーブのことでございますが、これは、いま郵政大臣からお答えがありましたとおり、両電電公社が折衝いたしましたが、なかなか解決いたしません。そこで、このままではできませんので、政府としては、これはひとり両電電公社にまかせてもなかなか解決が困難であるから、できればひとつ政府がこの際いろいろの対案を考えまして、早急にこの解決をはかりたいということで、目下検討いたしておるのでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/70
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071・船田中
○議長(船田中君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/71
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072・船田中
○議長(船田中君) 本日は、これにて散会いたします。
午後五時二十五分散会
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出席国務大臣
法 務 大 臣 賀屋 興宣君
外 務 大 臣 大平 正芳君
文 部 大 臣 灘尾 弘吉君
厚 生 大 臣 小林 武治君
農 林 大 臣 赤城 宗徳君
運 輸 大 臣 綾部健太郎君
郵 政 大 臣 古池 信三君
自 治 大 臣 赤澤 正道君
出席政府委員
総理府総務長官 野田 武夫君
大蔵政務次官 纐纈 彌三君
電気通信監理官 野口 謙也君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02719640428/72
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