1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年五月七日(木曜日)
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議事日程 第二十七号
昭和三十九年五月七日
午後二時開議
第一 電話設備の拡充に係る電話交換方式の自
動化の実施に伴い退職する者に対する特別措
置に関する法律案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
皇室経済会議予備議員の選挙
厚生年金保険法の一部を改正する法律案(内閣
提出)の趣旨説明及び質疑
日程第一 電話設備の拡充に係る電話交換方式
の自動化の実施に伴い退職する者に対する特
別措置に関する法律案(内閣提出)
行政書士法の一部を改正する法律案(渡海元三
郎君外九名提出)
午後二時六分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/0
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001・船田中
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
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皇室経済会議予備議員の選挙発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/1
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002・船田中
○議長(船田中君) 皇室経済会議予備議員が一名欠員となっておりますので、この際、その選挙を行ないます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/2
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003・小沢辰男
○小沢辰男君 皇室経済会議予備議員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名せられ、その職務を行なう順序については議長において定められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/3
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004・船田中
○議長(船田中君) 小沢辰男君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/4
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005・船田中
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。
議長は、皇室経済会議予備議員に星島二郎君を指名いたします。
なお、その職務を行なう順序は第一順位といたします。
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厚生年金保険法の一部を改正する
法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/5
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006・船田中
○議長(船田中君) 議院運営委員会の決定により、内閣提出、厚生年金保険法の一部を改正する法律案の趣旨の説明を求めます。厚生大臣小林武治君。
〔国務大臣小林武治君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/6
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007・小林武治
○国務大臣(小林武治君) 厚生年金保険法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
厚生年金保険は、昭和十七年に発足して以来今日まで二十有余年を経過し、千七百万人にのぼる民間被用者を包含する年金制度でありますが、現行の給付体系、すなわち定額部分と報酬比例部分の二本立てによる年金給付の体系が整えられたのは、昭和二十九年の改正によるものであります。その後昭和三十五年には、給付及び保険料について若干の手直しを加えたのでありますが、この改正がきわめて幅の小さいものであったため、厚生年金保険の給付水準は、昭和二十九年以後の著しい経済成長、これに伴う生活水準の大幅な上昇に取り残され、労働者の老後の生活を保障するものとしてははなはだ不十分な状態に置かれているのであります。また、年金財政を左かなうため労使が負担する保険料率も、他に例を見ない低い水準のまま推移しているのであります。
以上のような事情にかんがみ、本年は保険料率再計算の時期でもあるところから、政府としてはこの機会に今日までの経済成長、生活水準向上の実態に即して厚生年金保険の大幅な改正をはかることが適当と考え、一昨年以来準備を進めてまいったのであります。
今回の改正の趣旨とするところは、まず、何よりも、人口老齢化の趨勢がいよいよ明確化し、年金受給者も増加して厚生年金保険が成熟期を迎えようとする時期において、労働者の老後の生活を保障するに足る老齢年金として平均月額一万円年金を実現することを中心として、制度の内容を大幅に改善し、これに伴う所要の調整を加えるとともに、給付の引き上げ、賃金水準の上昇に応じて、保険料負担についても適正な水準にまで引き上げようとするものであります。同時に最近普及しつつある企業年金と、改正後の厚生年金との機能や負担の競合を調整し、老後の生活保障を企業の協力により一そう充実強化し得るよう、両者の調整を労使の合意によって行なう道を開くこととしたのであります。
以下、改正法案のおもな内容につきまして、逐次御説明申し上げます。
第一に、基本年金額の引き上げについてであります。
まず、定額部分につきましては、現行の月額二千円を五千円に引き上げ、さらに被保険者期間二十年以降三十年までは一年につき二百五十円を加算することとし、これによって三十年では月額七千五百円となるようにいたしております。
また、報酬比例部分につきましては、現行の平均標準報酬月額に被保険者期間一月当たり乗ずる率千分の六を千分の十に引き上げることといたしております。
第二に、老齢年金の支給につきまして、現行では退職しない以上は年金が支給されない仕組みとなっておりますのを、高齢労働者の生活安定の趣旨に沿って若干緩和することとし、六十五歳に達したときは在職中でも老齢年金の八割相当額を支給することといたしております。
第三に、障害年金及び障害手当金の額の引き上げについてであります。一級障害年金につきましては、現行の基本年金額に月額千円を加算する方式を改め、基本年金額の百分の百二十五相当額に引き上げ、三級障害年金につきましては、現行の基本年金額の百分の七十を、百分の七十五に引き上げるほか、さらに月額五千円の最低保障を設けることとし、また、障害手当金につきましては、現行の基本年金額の百分の百四十を、百分の百五十に引き上げることといたしております。
第四に、遺族年金につきましては、妻についての年齢制限及び若年停止を撤廃し、さらに年金額につきましては月額五千円の最低保障を設けたことであります。
第五に、任意継続被保険者について、新たに被保険者期間中の事故に基づく障害年金、障害手当金及び遺族年金を支給することとしたことであります。
第六に、年金額の調整についてであります。年金の額は、国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、すみやかに変動後の諸事情に応ずるための調整が加えられるべきものとしたことであります。
第七に、標準報酬につきましては、最近の賃金水準の上昇等の実情に即し、現行の三千円から三万六千円までの二十等級を、七千円から六万円までの二十三等級に改めたことであります。
第八に、保険料率の引き上げについてであります。今回の給付の大幅改善に伴い、保険料の負担につきましても、相応に増加すべきことはやむを得ないところでありますが、厚生年金保険におきましては、従来いわゆる修正積み立て方式のたてまえをとっており、五年ごとに再計算することとして暫定的な料率を採用しておりますが、今回もこの方式を踏襲いたし、急激な負担の増大を避けるため、とりあえず第一種被保険者すなわち一般男子については、現行の千分の三十五を千分の五十八に、第二種被保険者すなわち女子については、現行の千分の三十を千分の四十四に、第三種被保険者すなわち坑内夫については、現行の千分の四十二を千分の七十二に、第四種被保険者すなわち任意継続被保険者については、現行の千分の三十五を千分の五十八にそれぞれ引き上げ、さらにこれらの料率については、将来にわたって段階的に引き上げていくこととしたのであります。
第九に、既裁定年金の引き上げについてであります。現に支給中の年金が、所得保障の趣旨から見て著しく低水準にあるところから、既裁定年金につきましても今回の改正方式を適用いたし、改正後の計算例によってこれらの年金額を大幅に引き上げることといたしております。
第十に、旧陸海軍工廠の工員などの旧令共済組合員であった期間を厚生年金の被保険者期間に算入し、通算老齢年金に準じた特例老齢年金を支給することといたしたことであります。
第十一に、厚生年金の老齢年金及び通算老齢年金のうち、報酬比例部分につきましては、民間職域において設立されたいわゆる企業年金で一定の要件を備えるものについては、申請により厚生年金基金を設けてその代行給付を行なう道を開いたことであります。
厚生年金基金は、事業主及び被保険者で組織される特別法人とし、一定数の被保険者を使用する事業主がその被保険者の二分の一以上の同意を得て規約をつくり、厚生大臣の認可を受けて設立することとなりますが、その行なう事業は、厚生年金の給付のうち、老齢年金及び通算老齢年金の報酬比例部分の代行として少なくともそれを上回る額の年令給付を行なうほか、任意給付として死亡または脱退に関して一時金の支給を行なうことができるものとしております。
また、厚生年金基金は、信託会社または生命保険会社と給付の支給を目的として、信託または保険の契約を締結しなければならないほか、その事業に要する費用に充てるため、掛金を徴収することとしたのであります。
なお、国庫は、年金給付に要する費用のうら、老齢年金及び通算老齢年金の報酬比例部分相当額に要する費用の一五%、すなわち坑内夫たる加入員期間に対応する部分については、二〇%を負担することといたしております。
第十二に、厚生年金基金は、厚生年金基金の中途脱退者にかかる年金給付を共同して行なうため、厚生年金基金連合会を設立することができることといたしております。
最後に、実施の時期につきましては、諸般の準備等もあり、主たる部分については、昭和四十年五月一日からといたしております。
以上をもちまして、改正法律案の趣旨の説明を終わります。(拍手)
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厚生年金保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/7
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008・船田中
○議長(船田中君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。八木昇君。
〔八木昇君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/8
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009・八木昇
○八木昇君 私は、日本社会党を代表いたしまして、厚生年金保険法の一部を改正する法律案に対し、若干の質問をいたすものであります。
わが国の社会保障政策が著しく立ちおくれており、中でも年金分野のおくれがはなはだしく、特に厚生年金は各種年金制度の中核であり、これが抜本的改善が強く望まれてきたことは、御承知のとおりであります。しかるに、このたびの政府の改正案は、見せかけの一万円年金でありまして、さらに新たに調整年金制度を採用することによって、一方的に資本の側のみを利しており、事実は厚生年金の改善ではなく、労働者の期待を裏切った改悪案でありまして、きわめて遺憾でございます。(拍手)
以下、私は、われわれがこの法案を改悪案と呼ぶ理由を明らかにしながら、数点について質問するものであります。
質問の第一点は、本法案提出に至る経過についてであります。
厚生年金は、実施後二十二年を経過し、一昨年ごろから二十年という長い年月保険料を納めて、ようやく年金をもらえるようになった人がぼつぼつと出てきたのでございますが、その給付額の昭和三十七年度一人当たり平均額は、わずかに月三千四百八十二円であります。かくて、社会保険審議会厚生年金部会は、一昨年以来慎重に検討を重ね、昨年八月、満場一致の部会意見書を厚生省に提出したのであります。その内容は、多岐にわたって現行法の改正を要望するとともに、特に企業年金との調整については、今回は見送ることが適当であるというものであったのであります。しかるに、厚生省は、その直後の十月、審議会を無視し、突如として一方的な厚生省の改正案要綱を発表し、以後今日まで、終始ごり押しに政府案を押しつけてきたのであります。
さらに、先般は、社会保障制度審議会が非常な苦心を払い、労使、公益各側の最大公約数としてのぎりぎりの妥結点を見出し、政府に答申したのでありますが、この政府案は、年金給付額のスライド制実施問題、あるいは厚生年金に対する国庫負担の引き上げ問題、あるいは厚生年金資金の管理運用問題、あるいは五人未満の事業所の労働者の問題等々の重要な諸点について、この答申を軽視または無視しておるのであります。政府はみずからが諮問した審議会の答申を尊重していないのであります。これは明らかに、成り行きを真剣に見守ってきた一千七百万人に及ぶ被保険労働者に対する裏切りでございます。このような政府の非民主的なる態度が許されてよいかどうか、私はまずもりて池田総理大臣にお伺いするものであります。なお、特に今後の国会審議にあたっては、もっと民主的な態度をもって、修正すべき点があれば修正するというそういう態度で当然臨まれなければならないと思うのでありますが、この点についても、自民党総裁としての池田総理の見解を明らかにしていただきたいと思うのであります。(拍手)
質問の第二の点は、本法案の内容についてであります。
私は以下数点についてただしたいのでありますが、まず、政府は本改正案により一万円年金が実現するというのでありますが、これはごまかしであります。政府の計算例によりますと、二十年間の全期間、標準報酬月額が二万五千円であれば一万円の年金支給となっておりますが、われわれの計算では、日通に例をとりますと、これに該当できる者は、退職するときの給料が四万五千円以上の者でなくてはなりません。このような条件の人は、全労働者の中の一部でございまして、本年度老齢年金の受給者のうち、はたしてその何%の者が一万円以上の年金受給者となる見込みであるか、厚生大臣より答弁せられたいのであります。
次に、当初厚生省案が発表された際、この点だけは改善であるとしてわれわれが歓迎したものに、国庫負担率を現行の一五%から三〇%に引き上げるという点と、保険給付の定額部分につき、物価が六〇%以上変動した際にはスライドするという二点があったのでありますが、この肝心かなめの二つの点が、この改正案では二つとも消えてなくなっておるのであります。まことに人を食った話といわなくてはなりません。このように根本的な点がはずされたことは、もはや全体として厚生省の考え方はこわされ、当初の法案要綱は骨抜きとなり、少なくとも厚生省として、この法案は事志に反したものであるといわざるを得ないと思うのであります。この点についての小林厚生大臣の所見を承りたいのであります。
次に、この法案がこのようなことになったのは、厚生省の強い要求を大蔵省がけったからでございますが、その理由を田中大蔵大臣から承りたい。また、厚生年金給付額に対する国庫負担率をかりに五%引き上げても、政府の財政支出の増加分は、今年度僅々十数億円にすぎないと思うのでありますが、この際その金額についても明らかにせられたいのであります。
次に、いかなる理由があるにせよ、保険料を一気に大幅に引き上げるということは、労働者の当面の生活を脅かすのであります。本法案は、保険料率を二倍近く引き上げるだけでなく、標準報酬の等級を、現行の三千円から三万六千円までの二十等級を、七千円から六万円までの二十三等級に改めるのでありますから、たいへんな保険料の引き上げであります。月収五万円の労働者の保険料は、現行千二百六十円から、三千円となるのであります。しかも今後五年ごとに、段階的にさらに保険料率を引き上げるというのでありますが、厚生省は、一体いつまで、どれだけ引き上げていくつもりであるのか、伺いたいのであります。
次に、五人未満の事業所に働く労働者の問題をどうしてくれるかということであります。厚生年金制度が単なる保険制度ではなく、社会保障制度であるためには、それがすべての労働者に適用されていなければならないことは論をまたないのであります。退職金も満足にもらえず、老後の生活保障が最も必要な零細企業に働く二百万以上のこれらの労働者が、この制度から除外されておるということは、理屈に合いません。各種社会保険の五人未満の問題について、適用調査会が発足してはおりますが、なぜにいつまでもこのような片手落ちをそのままにしておくのであるか、この点については池田総理大臣からお答えをいただきたいと考えるのであります。
質問の第三点は、ばく大なる厚生年金積み立て金の運用についてであります。
厚生年金保険は、大東亜戦争開始直後の昭和十七年六月一日から実施されたのでありますが、むろん当時といえども労働者保護の目的もあったでございましょうが、直接にはこの制度による強制貯蓄によって国民購買力を封鎖し、あわせてその積み立て金をもって戦費に充てる目的で発足したことは明らかであります。ところで、昭和三十七年度末の厚生年金の積み立て金は五千六百五十九億円に達しております。これは昭和四十年には一兆円に達します。昭和四十四年には二兆円、最大ピーク時には何兆円となるか予想もつかないのであります。労働者の汗とあぶらのにじみ出ておるこの貴重な積み立て金をもって戦前は戦費に充て、戦後は政府の資金運用部を通して資本家への財政投融資に充ててきたのでありますが、本改正法案によっていよいよますます急膨張していく厚生年金積み立て金を、政府は一体今後どのように運用されるおつもりでありましょうか。岸さんの時代に、政府は、この資金の四分の一を労働者への還元融資に回すこととしたのでありますが、ほんとうの意味で還元融資とみなされるものはきわめて少ないのであります。たとえば、年金福祉専業団への還元融資は、厚生年金、国民年金合わせて、本年度わずかに二百六十六億円であります。そこで池田総理に伺いたいのでありますが、岸さんよりは進歩派といわれておる池田さんでありますから、還元融資の割合を今後さらにふやされるのは当然だと思うのでありますが、ふやすとすればどの方面にどのようにふやすつもりであるか、お答えをいただきたいのであります。
質問の最後は、調整年金制度についてであります。
本法案が企業年金との調整措置として新しく厚生年金保険基金を設けたことは、これは大問題であります。しかも、この措置が日経連を中心とする資本家陣営の年来の主張に応じたものであることは明らかであります。社会保険審議会におきましても、経営者側代表は口をそろえて、厚生年金の改正には応じられない、保険料引き上げの金は絶対に出せない、どうしても改正をやるというなら、退職金を年金化し、これを調整する新たな年金制度をあわせて設けよと、強硬かつ執拗に繰り返したのであります。労働者から退職一時金制度を奪い、年金化することによって労働者を五十五歳までおのれの企業にくくりつけることができる。あるいは企業年金が厚生年金保険基金となり、厚生年金事業の一部を管掌する特別法人となることによって、従来の退職積み立て金、退職年金積み立て金の税負担を免れることができる。基金を設立した企業は、厚生年金保険に対して定額比例分相当分だけの保険料で済み、負担が半減する。おまけに基金は信託会社または生命保険会社と契約することとなっておりますから、経営者は積み立て金を企業経営資金に借り出して運用ができる。その他いろいろと、この調整年金制度によって資本家側が一方的に受ける利便はたくさんあるのであります。しかしながら、労働者は反対に犠牲をこうむる。政府は、これに対して、基金は労使団交ないし被保険者の過半数の同意がなければ設立できないのであるから、労働者が希望しないのなら幾らでも阻止できるじゃないかというのでありますが、これはまことに詭弁であります。厚生年金被保険者はすべて民間企業の労働者でありまして、民間労働者の七割はいまだ労働組合すら持っておらないのであります。資本家側の圧力によって、基金は労働者の意思に反し、漸次ふえていくでございましょう。ところで、一口に社会保障制度といっても、厚地年金は保険制度を取り入れておるのでありまして、労働者から強制的に保険料を取り立てるのであります。したがいまし七、その大幅改正は、十分に労働者の納得を得て行なうべきであり、ましてや、労働者の強い反対を押し切って、他方で資本家のほくそ笑みを背に受けながら強行するというようなことは、絶対に許されないと思うのであります。
私は、最後に結論的に申し上げたいと思うのでありますが、この法律は、年金支給をいまの三倍にしてやります。そのかわり掛金も三倍にしますぞ、そうして政府の補助金はいままでどおりふやしませんよというのです。これが改善でしょうか。これは改善じゃございません。もう一つ申し上げます。政府は労働者の賃金値上げは極力押える、一方厚生年金の掛金はむやみと上げる、物価も上げる、しかし年金額のスライドアップはしないというのです。そうして退職金制度はなしくずしにくずしていこうというのであります。これがこの法案なんです。これがどうして改善でしょうか。保守党内閣といえども、労働者のための社会保障制度を確立しようという以上、もっと正しい姿勢があるはずだと私は思うのであります。保守党内閣だからといって、労働者を敵視するばかりが能じゃない。すでに労働者は二千五百万でありまして、年々百万人ずつふえていくのであります。ヨーロッパにおける保守党の政治がどういう進め方をしておるかは、いまさら申し上げるまでもないのであります。私は、この意味において最後に池田総理にお伺いいたしますが、この際は調整年金については思い切ってこれを見送るというお考えはないかどうかお伺いをするのであります。
以上をもちまして、質問を終わる次第でございます。(拍手)
〔国務大臣池田勇人君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/9
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010・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。
今回の厚生年金保険法の一部を改正する法律案は、多年の要望でございましたこの給付内容を、いままでがあまりに低額でございましたので、月一万円という大幅引き上げを考えてのことでございます。社会保障制度審議会あるいは社会保険審議会の意見も十分聞いております。したがいまして、定額部分を四千円から五千円に上げるとか、あるいは保険料率を千分の六十から五十八に下げる等、いろいろ政府としてもくふうをいたしました。との案が現在においては最良のものであると考えておるのであります。
第二の御質問の、五人未満の被用者を有する事業所について強制的にどうか、こういう問題でございますが、いまのわが国におきまする五人未満の事業所のいわゆる経営状態、内容等から申しまして、いま直ちにこれを行なうということは相当問題があると思います。したがいまして、答申にもあることでございますから、今後十分この問題につきましては検討いたしたい。他にも五人未満の事業所についての特例があるのでございます。こういう全体の問題として考えていきたいと思います。
なお、積み立て金の運用につきましては、国民生活の安定、向上、また被保険者の福祉向上を考えなければならぬことは当然でございます。したがいまして、還元融資につきましても、今後十分政府も検討してまいりたい。少なくとも資金運用審議会におきまして特別委員会を設けまして、来年度までにはこの結論を出すことにいたしております。その際におきましても、被保険者への福祉向上を十分考えていきたいと思っておるのであります。
最後の、調整年金制度でございますが、最近労働者の老後の生活を保障するために企業年金が非常に拡大せられつつあるのであります。私としては、この際厚生年金の大幅改正の場合におきまして調整年金の調整をすることがいま適当であると考えておるのであります。したがいまして、こういう場合におきましても、労働者の意見を十分聞かなければなりませんので、事業主の案に賛成ならば、労働者の二分の一以上の意見を聞いて行なうことにしておるのでございますから、この際としては、私は適当な時期と考えておるのであります。
なお、最後に申し上げておきますが、この厚生年金にしましても、国民年金にしましても、国民の老後の保障をするために非常に重要な問題でございます。しかし、それを考える上におきましては、やはり国の財政、国民経済ということも十分考えていかなければならぬということを、この際申し上げておきます。(拍手)
〔国務大臣小林武治君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/10
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011・小林武治
○国務大臣(小林武治君) 一万円というのはごまかしだ、こういうお話でありますが、一万円年金というのはあくまでも制度のたてまえとして、二十年基準で、平均標準報酬が二万五千円の者が、年金が一万円になる、こういうことであります。したがいまして、御指摘のように、当面は、過去の標準報酬が低いものにつきましては、一万円年金に満たない場合がある、こういうことでありますが、今後のことを考えますれば、被保険者の平均在職年数が三十年前後とも見込まれるのでありまして、将来の賃金上昇を考えますと、むしろ平均的には、将来は一万五千円以上の年金になる、こういうことになるのでございます。いずれにいたしましても、実際に一万円年金が実現するのは、炭鉱その他の坑内夫等につきましては、改正法施行と同時に実現するものでありまするし、また一般の被保険者につきましても、改正法施行後一両年を経過しますれば、現実に一万円が支給される、こういうことになるのであります。
なお、今回老齢年金の二分の一をたてまえとする遺族年金につきましては、月額を最低五千円にする、こういうことにいたしたのでありまして、これも一万円年金の要旨に沿ったものと考えておるのでございます。
それから次に、国庫負担の引き上げの問題でありますが、今回の改正にあたりましては、この審議会の答申や、各方面からの改善意見等に従って、その趣旨をできるだけ尊重したのでありますが、御指摘の点につきましての、国庫負担についてでありますが、厚生年金の国庫負担率は、被用者年金制度におきましては、厚生年金ばかりでなく、現在、私立学校職員共済組合及び農林漁業団体職員共済組合等も、いずれも一五%となっておるのでありまして、今回の改正によりまして、厚生年金の給付水準が、現行の二倍以上になるということに伴いまして、国庫負担も、それだけこの際見合って増加することは当然であるのでありまして、今回は、とりあえず現行どおりとしたのでありますが、これにつきましては、各種年金共通の問題としまして、今後も検討をいたしたいと存じておるのであります。
なお、スライド制の問題についてのお話でありますが、これはスライド制を定額部分に限るのか、あるいは報酬比例部分に限るのか、あるいはまたこれらのスライドの基準として、物価、賃金あるいはそのほかの生活水準、いろいろなものを、どれを標準にするか、いろいろ検討すべき問題があるばかりでなく、これらの問題は、他の年金その他の給付につきましても共通の問題でありまして、今回の改正では、この法律の中には、スライドしなければならぬという基本的の原則だけをきめておるのでございまして、実施の方法につきましては、スライドによる追加費用をだれが負担するか、こういうふうないろいろの問題もありますので、続いて検討を重ねるつもりでおります。
なお、保険料率の問題でありますが、今回の保険料では、だいぶ上がった、こういうふうな御意見がありまして、千分の三十五が千分の五十八になった、こういうことでありますが、元来この年金の保険料というものは、むしろいままで低額に過ぎておった、こういうことが言えるのであります。たとえば、国内におきましても、国家公務員共済組合の掛金は千分の八十八になっておるのでありますし、また欧米における厚生年金等の掛金は、大体千分の百前後になっておるのでございまして、これらから見ましても、この際ある程度引き上げることはやむを得ない、こういうふうに考えておるのであります。すなわち、今回の改正におきまして、現行の二倍近くに引き上げることとしたのでございますが、この問題につきましては、むしろ前の行きがかりを申し上げますれば、最初これが始まったときは千分の六十四でありまして、昭和二十二年当時は千分の九十四、こういうことになっていたのでありまして、二十九年からこの数字になっておる。それはインフレ等の関係によりまして、従来のような完全積み立て方式をやめて修正積み立て、こういうふうな方法にしたために三十五に下がった。すなわち、かつては千分の百のときもあった、こういうことをお考えを願いたいのでありまして、この際、引き上げとしては、むしろ非常に内輪に見積もっておる、こういうふうに御了解を願いたいのであります。
なお、五人未満の問題につきましては、ただいま総理からお答えがありましたが、これは厚生年金ばかりでなく、労災保険、失業保険あるいは健康保険、いずれも共通な問題でありますので、この全体をひとつ強制適用に持っていこうということで、厚生、労働両省でこれの検討をいたしておるのでございます。
以上、お答え申し上げます。(拍手)
〔国務大臣田中角榮君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/11
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012・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) 厚生省の原案と提出政府案と違う、この違うのは大蔵省が反対したからだというような御説でございますが、法律案作成の過程においていろいろな議論がございましたが、最終的政府案として決定をしたものは、いま御審議を願っておるものでございます。
第二点は、国庫補助率を五%引き上げたと仮定した場合、一体幾らかかるのかということでございます。厚生年金の受給者は、三十七年度末におきまして御承知のとおり三十八万人でございますが、三十九年度予算におきましては四十六万人を見込んでおるわけでございます。給付金の総額は、三十九年度の予算において百八十六億円、国庫負担額は二十九億円であります。かりに国庫負担率を五%引き上げるといたしますれば、三十九年度において約十億円の増額を要することになるわけでございます。しかしながら、厚生年金は現在創設以来二十年に達しまして、本格的な老齢給付が始まる段階に入ったところでございます。被保険者は約千七百万人に達しておるのでございまして、年金受給者数は著しく少ないのでございますが、今後は年を追いまして年金受給者が急増いたすわけでございます。これに伴いまして給付費も増額をするのでありまして、三十九年度、四十年度というような短期の財政負担だけで国庫負担率を論ずるわけにはまいらないわけでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/12
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013・船田中
○議長(船田中君) これにて質疑は終了いたしました。
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日程第一 電話設備の拡充に係る
電話交換方式の自動化の実施に
伴い退職する者に対する特別措
置に関する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/13
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014・船田中
○議長(船田中君) 日程第一、電話設備の拡充に係る電話交換方式の自動化の実施に伴い退職する者に対する特別措置に関する法律案を議題といたします。
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015・船田中
○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。逓信委員長加藤常太郎君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔加藤常太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/15
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016・加藤常太郎
○加藤常太郎君 ただいま議題となりました電話設備の拡充に係る電話交換方式の自動化の実施に伴い退職する者に対する特別措置に関する法律案に関し、逓信委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案は、去る一月二十九日内閣から提出されたものでありますが、まず、その要旨について御説明いたします。
日本電信電話公社は、電話の普及改善に対する強い国民的要望にこたえて、長期継続計画を樹立し、鋭意電話設備の拡充整備につとめているのでありますが、この法律案は拡充計画の主要な一環をなしておる電話交換方式の自動化の進捗に伴い、女子電話交換要員に一時に多数の過員が発生し、しかも配職転等の措置がきわめて困難となる事情にかんがみ、過員のうち退職を希望する者に特別の給付金を支給して退職の円滑化をはかり、もって電話拡充計画の遂行を促進しようとするものであります。
この特別給付金は、これら過員となる電話交換要員が、昭和四十八年三月三十一日までの間において、所定の手続を経て退職した場合に限り支給するものでありまして、その給付額は、勤続期間五年未満の者は、退職日におけるその者の基準内賃金の月額合計額の八カ月分、五年以上の者は十カ月分としているのであります。
逓信委員会においては、二月十二日本案の付託を受け、慎重審査の後、四月二十八日の会議において、質疑を終了、討論採決の結果、多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決いたした次第であります。
以上をもって御報告を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/16
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017・船田中
○議長(船田中君) 討論の通告があります。順次これを許します。大村邦夫君。
〔大村邦夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/17
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018・大村邦夫
○大村邦夫君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題になりました電話設備の拡充にかかる電話交換方式の自動化の実施に伴い退職する者に対する特別措置に関する法律案に対して反対の討論を行なおうとするものであります。(拍手)
私が本法案に反対する第一の理由は、本法案が労組法、公労法などによって保障されている労働組合の生命ともいうべき基本的権利を侵害していることと、憲法違反のおそれがあるという点であります。
公労法第八条では、労働者の処遇問題、すなわち労働条件については、その直接たると間接たるとを問わず、すべての事項が団体交渉の対象とされるべきであると規定されています。この点に関しましては、法案審議の過程におきまして、大橋労働大臣からも、特別給付金は当然団体交渉事項であるから、すみやかに団体交渉を行なうよう勧告をしたという発言まであったのであります。しかるに、古池郵政大臣並びに電電公社総裁は、法定事項であるとの主張を繰り返しているのみで、依然その態度を固執していますが、この事実は、明らかに政府部内、政府機関内に本法案の取り扱いに関して見解の不統一があることをさらけ出したものでありまして、かかる状況下において法案の成立を強行せんとする政府、局の態度は、まことにもって無責任きわまるものといわざるを得ないのであります。(拍手)しかも、労働者を職場から排除するというきわめて重大な内容を含んでいる本法案に関して、当該労使の間にいまだ一回の団体交渉も行なわれていないということは、まさに不遜、不当なる態度であって、絶対に許すことができないのであります。(拍手)
近代社会における労使のあり方として、事労働条件に関しては労使が対等の立場に立ち、話し合いによって問題の解決をはかることが当然の姿であり、鉄則であります。それにもかかわらず、団体交渉権を否定し、権力によって一方的に労働者の職を奪うということは、明らかに憲法に保障する団結権の侵害であり、ファシズム的悪法であると断定せざるを得ません。(拍手)このように労働組合を無視し、団体交渉を行なう権利を剥奪してまでも、なぜ政府は本法案の強行をはからなければならないのであるか、私は、はなはだ理解に苦しむものであり、政府のこのような態度を容認することができないのであります。
次に、私が反対する第二の理由は、恩恵的と称する特別給付金の背後に悪らつな首切りのやいばが隠されている点であります。
本法案によりますと、特別給付金の支給条件はもとより、対象電話局から個々の対象者に至るまで、すべて当局側が一方的に措置し得るものでありまして、労働者に対する恩恵法どころか、強制的な人員促進法の性格を持っているのであります。世間では、本法案を電話自動化首切り法と呼んでいるのも決してゆえなしといたしません。
しかも、本法案の対象としている労働者が女子交換要員を主体としているという点につきましても、私は暗たんたる思いがするのであります。憲法第十四条は「人種、信條、性別、社會的身分又は門地により、政治的、経済的又は社會的関係において、差別されない。」と規定しているのであります。男女同権といわれる今日におきましても、現実の社会では、ともすれば女性は弱い立場に置かれているのであります。こうした女性労働者をむしろ積極的に保護し、その地位を向上させるために意を注ぐことこそ、現代政治がなすべき当然の責務でありましょう。にもかかわらず、こともあろうに、その女性労働者の生活権を奪おうとすることは、いかなる理由がつけられようとも、天下の悪法であり、憲法違反の立法措置であることを、国民の前に明らかにしておきたいのであります。(拍手)
私が反対いたしたい第三の理由は、大資本擁護のための社会資本充実の政策によって、労働者ばかりでなく、国民大衆が大きな犠牲を強制されていることであります。
一九五三年から始まった電信電話拡充合理化計画は、すでに一次、二次を終わって、昨年から第三次計画に入っているのであります。特に第三次計画は、もはや破綻に瀕した所得倍増計画の成長テンポよりも、さらに急速度にして過大な合理化計画が策定されているのでありまして、所得倍増計画がもたらした経済的、社会的格差と矛盾を、この合理化は一そう拡大しているのであります。この当然の結果として、国民大衆が強く要望している加入電話は依然として積滞したまま放置され、地方、中小都市や農山漁村における電信電話サービスの拡充も軽視され、新規加入者への公社債の強制的押しつけや設備負担金の過重などによる資金の動員によって、ひたすら大資本のための資本蓄積を助けるために、この合理化計画は進められているのであります。大資本の要請に忠実な電信電話事業の拡充のみに急で、関係労働者の雇用と労働条件について何らの考慮も払わず、ただ首切り措置だけを考えようとする政府の態度は断じて許すことができません。
むしろ政府がいま直ちになすべきことは、破綻した所得倍増計画の転換と同時に、あまりにも鋭角的に過ぎる現行合理化計画を根本的に改め、本法案を撤回することこそ最も賢明であることをここに強調いたしまして、本法案に対する私の反対討論を終わるものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/18
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019・船田中
○議長(船田中君) 秋田大助君。
〔秋田大助君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/19
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020・秋田大助
○秋田大助君 ただいま議題となりました電話設備の拡充に係る電話交換方式の自動化の実施に伴い退職する者に対する特別措置に関する法律案に対し、私は自由民主党を代表してこれに賛成の意を表するものでございます。(拍手)
近時、わが国経済の飛躍的成長に伴い、電話に対する社会の需要も当然急速に高まってまいったのでありますが、これにこたえて日本電信電話公社におきましては、昭和二十八年度以降、電信電話設備拡充の長期継続計画を策定実施し、現に第三次五カ年計画の遂行途七にあることは御承知のとおりでございます。この一連の長期計画の目標とするところは、昭和四十七年度末までに加入電話の充足率を一〇〇%まで引き上げると同時に、市外通話を大部分即時化しようというにありまして、これは国民の長い間待望してきたところであるとともに、またわが国電話事業に課せられた至上命令ともいうべきものでございます。
しかるに、この大目標を達成するには、その道程におきまして電話の自動化、詳しく申し上げますれば、市内通話の交換方式及び市外通話の接続方式を手動式から自動式に変更することが絶対に必要なのであります。言いかえますれば、今日のいわゆる技術革新時代において電話事業内の自動化、オートメーション化ということは、他の企業に見るような単なる能率増進のための措置ではなく、電気通信の機構そのものに根ざした必要欠くべからざる改革であることをまず御了解願いたいのでございます。(拍手)
さて、この電話の自動化に伴いまして、電話の現業において一時に多数の電話交換要員が過剰となるという特殊の事態が起こってまいります。いな、このような事態はすでに第一次、第二次五カ年計画実施中にも起こっておるのでありますが、今後計画の進むにつれ、自動化が大都市、中都市から地方の小都市に及ぶに従いまして、大部分が女子であられますこれら過剰要員を配置転換あるいは職種転換によって転用することはますます困難となり、その間種々の雇用上の問題を生じて、ひいては電話拡充計画の遂行上支障を及ぼすおそれもありますので、これが対策としてこれらの過剰要員の退職につき、特別の給付金を支給する臨時措置を講じて、退職の円滑化をはかるという趣旨から、この法律案が提出されたのであります。
すなわち、この法案は、ある期間にわたって電話事業に従事した職員であって、事業上の要請に服し、自己の都合によらずして退職を申し出た方々に対し、その労苦をねぎらうとともに、公社計画遂行に対する協力を謝する意味において、普通の場合の退職手当のほかに特別の給付金を支給するという、社会通念から申せばきわめて常識的な内容を持ったものであります。(拍手)
しかるにもかかわりませず、この法律案は、昨年第四十三回国会に提出されて以来、野党なかんずく社会党によって再三その成立をはばまれて今日に及んだのであります。しからば反対論の論拠は何かと申しまするに、ことさらに本案の趣旨を曲解するか、あるいはいたずらに末梢的な法理論に終始して、国民のひとしく要望する電話拡充の実現という大目的を忘れた観がありますことは、私の深く遺憾とするところであります。(拍手)
一例を申せば、反対論者はこの法律案は強制退職すなわち首切りをたくらむものであると称しておりますが、本法案はごうまつも退職を強制し、あるいは勧奨するものではありません。いな、法の規定するところは、自動化に伴って生じた過員については、まず配置転換あるいは職種転換の方途を講ずることを先決といたしまして、これら転用の措置ができないか、または著しく困難と認められ、かつ、御本人から退職の申し出があった場合にのみ初めて本法を適用するというのでありまして、退職を希望しない者については、そのまま過員として残留の措置が認められているのでありますから、これが首切りである上いう非難は全然的はずれであり、本案に反対する議論がおよそ根拠のないものであることは、これをもってしても明らかであろうと思うのでございます。
また、この法律によって支給される特別給付金の金額は、勤続五カ年未満の者は、退職日における基準内賃金の八カ月分、五年以上の者は十カ月分でありまして、たとえば電電公社職員であって、勤続五年で退職した場合は、国家公務員等退職手当法第五条による退職手当が平均約十二万三千円、本法による特別給付金が約十七万三千円、計二十九万六千円程度であります。この額は、国家公務員あるいは他の公共企業体職員の場合に比すればもちろん、これを日本鉱業、三菱金属、新日本窒素、日産化学、宇部興産、三井鉱山の民間六社の五年勤続の者の整理退職金の平均推算額二十三万四千円と比較しても、相当の差のある手厚いものでありまして、常に労働者の待遇の向上を呼号される社会党の諸君が、労働条件を大幅に前進するこのような内容の法案に反対されることは、私のはなはだ不可解とするところであります。(拍手)
さきに、私は、電話事業における設備自動化の問題は、他の企業のそれとはいささか異なる本質的なものであると申しましたが、一般論として言うならば、技術革新に伴うオートメーション化ということは、今日あらゆる企業に通ずる趨勢でありまして、電話事業のごときは、その先端に立っているものというべきでありましょう。好むと好まざるとにかかわらず、これは時代の大きな波であって、この流れにさからっては、企業そのものが成り立たなくなるのであります。このような時代においては、雇用の問題もまた、この現実を正視し、これに即して解決していくことが必要であって、一にも二にも、オートメーションに反対し、企業合理化に反対するということは、私としては、正しい政治の姿とは受け取れません。
この法律案は、先ほども申しましたとおり、最初国会に提出されましてから、ほぼ一年の時日が経過しております。この間においても、電話の自動化は日々進行しており、多数の電話交換要員が、本法による利益を受けることなく職場を去っているということは、まことに同情にたえないところでありまして、この意味からも、本案の成立の一日もすみやかならんことを切望いたしつつ、本案に対する賛成意見の表明を終わるものでございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/20
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021・船田中
○議長(船田中君) これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/21
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022・船田中
○議長(船田中君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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行政書士法の一部を改正する法律案
(渡海元三郎君外九名提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/22
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023・小沢辰男
○小沢辰男君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
すなわち、この際、渡海元三郎君外九名提出、行政書士法の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/23
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024・船田中
○議長(船田中君) 小沢辰男君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/24
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025・船田中
○議長(船田中君) 御異議ないと認めます。よって、日程は追加せられました。
行政書士法の一部を改正する法律案を議題といたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/25
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026・船田中
○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。地方行政委員長森田重次郎君。
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〔報告書は会議録追録に掲載〕
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〔森田重次郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/26
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027・森田重次郎
○森田重次郎君 ただいま議題となりました行政書士法の一部を改正する法律案につきまして、地方行政委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
この法律案は、行政書士の資質の向上と業務の適正な執行を確保することにより、それを利用する国民の便益をはかろうとするものでありまして、その内容は、
第一に、行政書士の業務の範囲を明確にするため、行政書士が作成する書類の中に、実地調査に基づく図面類をも含むこととするものであります。
第二に、行政書士の資質の向上をはかるため、国または地方公共団体の行政事務を担当する公務員として在職した者については、行政書士の資格の取得期間を現行八年から十二年に、高等学校卒業者等にあっては現行五年から九年に、それぞれ引き上げようとするものであります。
第三に、行政書士の業務の安定とその適正な執行を確保するため、行政書士でない者などの取り締まりに関する規定につき所要の整理を行なおうとするものであります。
本案は、四月二十二日出委員会に付託され、四月二十八日、提案者を代表して永田亮一君より提案理由の説明を聴取し、続いて質疑を行ないましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
質疑は同日をもって終了し、五月七日、討論の通告もなく、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決定した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/27
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028・船田中
○議長(船田中君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/28
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029・船田中
○議長(船田中君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/29
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030・船田中
○議長(船田中君) 本日は、これにて散会いたします。
午後三時六分散会
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出席国務大臣
内閣総理大臣 池田 勇人君
大 蔵 大 臣 田中 角榮君
厚 生 大 臣 小林 武治君
郵 政 大 臣 古池 信三君
自 治 大 臣 赤澤 正道君
国 務 大 臣 佐藤 榮作君
国 務 大 臣 宮澤 喜一君
出席政府委員
内閣法制局長官 林 修三君
厚生省年金局長 山本 正淑君
郵政省人事局長 増森 孝君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104605254X02819640507/30
4. 会議録のPDFを表示
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