1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年四月九日(木曜日)
午前十時三十六分開会
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委員の異動
四月八日
辞任 補欠選任
牛田 寛君 小平 芳平君
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出席者は左のとおり。
委員長 鈴木 強君
理事
亀井 光君
藤田藤太郎君
柳岡 秋夫君
委員
加藤 武徳君
紅露 みつ君
佐藤 芳男君
丸茂 重貞君
山本 杉君
阿具根 登君
杉山善太郎君
藤原 道子君
小平 芳平君
村尾 重雄君
林 塩君
衆議院議員
発 議 者 本島百合子君
発 議 者 八木 昇君
国務大臣
労 働 大 臣 大橋 武夫君
政府委員
労働政務次官 藏内 修治君
労働省労政局長 三治 重信君
労働省労働基準
局長 村上 茂利君
労働省労働基準
局労災補償部長 石黒 拓爾君
労働省職業訓練
局長 松永 正男君
事務局側
常任委員会専門
員 増本 甲吉君
説明員
労働大臣官房雇
用促進事業団監
理官 村松 伍郎君
参考人
雇用促進事業団
理事長 万仲余所治君
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本日の会議に付した案件
○労働問題に関する調査
(雇用促進事業団の運営に関する件)
(労働災害に関する件)
○最低賃金法の一部を改正する法律案
(衆議院送付、予備審査)
○最低賃金法案(衆議院送付、予備審
査)
○中小企業退職金共済法の一部を改正
する法律案(内閣送付、予備審査)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/0
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001・鈴木強
○委員長(鈴木強君) ただいまより開会いたします。
委員の異動についてお知らせいたします。四月八日、牛田寛君が委員を辞任されまして、その補欠に小平芳平君が選任されました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/1
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002・鈴木強
○委員長(鈴木強君) 労働問題に関する調査を議題といたします。質疑の通告がありますので、順次これを許します。
なお、本日は、雇用促進事業団理事長万仲余所治君を参考人として御出席願い、雇用促進事業団の運営に関する件について質疑を行なうことになっております。柳岡秋夫委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/2
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003・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 きょうはお忙しいところ、ありがとうございました。前回の委員会で、雇用促進事業団の中における労使の問題につきまして、労働省に対し、一応御質問をいたしたわけでございますが、やはり当事者でない関係もありまして、十分な納得のいく回答が得られませんので、本日は、ひとつ当事者として明快な御回答をお願いしたいのであります。
業務を運営するにあたりまして、労使が安定していなければならぬということは、これは御承知のとおりでございまして、そういう中で、私どもも、常に、特に政府関係機関の労使の問題につきまして関心を持っておるわけでございますが、最近、雇用促進事業団の中における全総訓という労働組合が、宿日直拒否、あるいは賃金をめぐってのストライキというものを実施をしているわけでございますが、これに関連をして一組合員が起訴をされると、こういう事態が起きましたことは非常に遺憾であろうと思います。
そこで、まず、お伺いしたいわけでございますが、宿日直という仕事は、先般の委員会でも労働省から御説明があったわけでございますが、非常に重要な仕事ではないかと、こういうふうに私どもは考えておるわけです。いわゆる単に留守番というようなことではなくして、管理者がいない場合におけるいろいろな連絡なり、あるいは器物の保全を保つとかいうような面からいっても、仕事の内容は重要でございますので、そういう重要な仕事を一アルバイトによってこれに代替をするということは、私は、いかに労働争議に対する対抗手段といっても、ちょっと行き過ぎではないかと、こういうふうに思うのですが、この宿日直という仕事に対する理事長の考え方をひとつお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/3
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004・万仲余所治
○参考人(万仲余所治君) 当初に、たびたび御迷惑をおかけいたしますことをおわびいたします。
ただいま私どものほうの宿日直のあり方についての御質問と心得ましてございます。私どものほうは、御承知のように、職業訓練をいたしますと同時に、それに必要なる相当の建物並びに機械器具等を必要といたしておりまして、普通の学校なんかとはやや違った相当な財産を持っております。そういう関係上、昼間の職練所長が勤務いたしております以外の時間、夜中といえども、これらを安全ならしめる管理をする義務を私どもの所長以下で分担させております。ただ、所長その他二、三の特別な人間は毎日宿日直をしないということにきめておりますが、大部分の従業員が分担して日直並びに宿直をすることにいたしております。
そこで、お尋ねの点は、争議態勢ができて組合員が宿日直を拒否した場合、残ります組合員にあらざる非組合員で宿日直をやるということは、それだけの員数では、とうていこの重要財産その他いろいろな関係の時間外の管理が完全にいかない場合がございますので、そのために、過般の宿日直拒否の紛議がありましたときに、私から、必要な場合は適当なる臨時者を雇ってもよろしいということを指示いたしました。お尋ねの点の一つには、そういう何にも訓練所の内容その他を知らない者をアルバイトのように雇っても、重要である宿日直の事務ができないではないかということでございますが、この宿日直は二人ずつやることになっております。したがいまして、アルバイト一人で宿日直をさせてはおりません。必ず責任者が一人と、アルバイトを雇った場合には、アルバイトを助手的に使う、こういう意味合いでやっておりますので、大体まあ十分とは言えぬかもしれませんが、適当なる管理がなされると心得ております。
なお、おことばのうちに、ストライキの対抗的にそういうことをというお話がございましたが、これは私ども決して対抗的とは考えておりませんので、われわれの預かっております施設、機械器具等を適当なる管理をいたすためには、いかなる場合にも宿日直が必要であり、宿日直をやります以上は、最低限の効果がある状態でなくちゃいかぬ。その点から申しますと、場所によりましては、非組合員だけでは、なかなかそれだけで一日おき、もしくは、時には毎日のようなかっこうになるような状態ではできかねるところがありますので、そういう際を考えて、必要に即して適当なるアルバイトを臨時に雇ってもよろしいという指示を私がいたしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/4
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005・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 相当な財産を持っておるので、学校などと違って、やはり夜間においても十分なそういう保安の態勢が必要である、こういう立場から宿日直というものが重要な仕事としてあるという御説明でございました。そうなれば、当然昼間労働をしておる人たちをさらに夜泊めるというような形でなしに、守衛なり監視員なりという制度を設けて、そうして十分なそういう態勢を整えていくということが私は妥当ではないか、こういうふうに思うのですが、雇用促進事業団として、そういう監視員制度、あるいは守衛制度というものについて、予算的な面で、あるいはそういう制度をつくることについて労働省なりに要求をしたということがございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/5
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006・万仲余所治
○参考人(万仲余所治君) 具体的に、私が就任いたしてからは、いま言ったような要求ということはいたしておりませんが、各方面の地方にあります施設、もしくは地方でなくても、現場的な施設につきましていろいろ勘案いたしておりますが、理想的に申しますければ、あるいは昼間は守衛的な者、夜間は常時それに当たる屈強な者を特別に雇い入れておるほうが完全とは思います。しかし、私どものいま与えられております予算関係その他定員関係におきましては、なかなかそこまでまいりませんで、かねがね私どもは、学校とは違いますので、事務的、その他先生たる仕事以外の仕事が相当量多いので、事務的な人間をふやしていただきたいという要望を毎年数的にいたしておりますけれども、なかなか思うようにはまいっておらぬ状況でございます。したがいまして、宿日直について特別な専門的な者をお雇いくださいと申し出るまでの状態にはなっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/6
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007・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 では、労働省にお伺いしますが、先般の委員会で、いまそういう守衛なり監視員というものを置いておるところはあまりない、したがって、事業団もそういう例にならって宿日直という形でやってもらっておるのだ、こういう御説明でございましたが、いま理事長が申されましたように、非常に重要な仕事の内容でございますし、したがって、一律に基準監督署や、あるいは職業安定所のようなところと同格にこれを見て予算の査定をするとか定員の削減をするということは、これは私は間違いではないか、こういうふうに思うのですが、いま言われたような事務員の増員、こういう仕事をする人の雇い入れの問題について、どうして労働省としてこれを認めていかないのか、その点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/7
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008・松永正男
○政府委員(松永正男君) ただいま事業団の理事長のほうから、事務員増員についての要求をことしもしたんだという御説明がございました。人員増の要求につきましては、実は事務員が非常に足りないというので、われわれといたしましても、何とかこの充員をはかりたいということを考えておったのでございますが、御承知のように、炭鉱離職者訓練等をはじめといたしまして、転職訓練の規模を大幅に拡大をしなければならないというような実情に迫られまして、人員の要求といたしましては、事務員と指導員を合わせまして相当大幅な要求をいたしたのでございます。指導員につきましては相当程度認められたわけでございますが、事務員につきましては、残念ながら、ことしは指導員重点でいこうというようなことで、事務員については認められなかったのでございます。機械設備、建築等とあわせまして、人間の面では指導員に重点を置いた予算編成というような姿になったわけでございます。私どもといたしましても、事業団から要求された事務員につきましては、できれば確保いたしたい、あるいはその全数でなくても、幾分でも補充できるようなことにいたしたいというふうには考えておりましたのでありますけれども、総合的な折衝の過程におきまして、結局何と申しましても指導員が直接訓練に一番重大な影響を持っておりますので、これを最優先いたしました結果、事務員まで手が伸びなかったというような結果でございます。
なお、守衛の問題につきましては、御指摘のごとく、ほかの、たとえば単なる出先の事務所というようなものと比べますというと、相当の機械、部品、工具等を持っております施設でありますので、理事長の言われましたように、できれば、将来の問題といたしましては、専任のそういう保安の盗難防止等に当たる要員もほしいということは考えておるのでございますが、何ぶん予算折衝の過程におきまして、やはり全体として折衝をいたします場合に、獲得すべきものがいろいろございますので、まあただいま申し上げましたような人員の面については指導員重点、指導員の待遇改善というような面にことしは重点が置かれました結果、そこまで手が伸びなかったというような実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/8
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009・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 指導員がふえるということは、これはいわゆる訓練生が相当多くなってきて、訓練の内容も充実をし、いわゆる業務量がふえていく、こういうことになると思うのですね。そうすれば、当然それに付随する仕事がまたふえてくるわけです。ですから、指導員だけをふやして、その付随する仕事を遂行する職員がいないということでは、これはまた十分な事業の運営というものはできないんじゃないか、そして、また、そのことが私は労働争議の一つの要因にもなっていくということを考えますと、こういう片手落ちなやり方は、今後ぜひ直して、そして全般的に円満な、スムーズな事務の運営ができるような体制というものをひとつつくっていただきたい、こういうふうに思います。
そこで、理事長にお伺いしますが、先ほどどうしても臨時を雇い入れなければできないというところは雇ってもよろしい、こういう指示を出したのだと、こういうことでございますが、私どもいままでの経験から言いますと、たとえば宿日直拒否という闘争を労働組合がした場合には、大体アルバイトを雇うというようなことは、これは官公庁の組合でございますが、そういうところではあまりやらずに、管理者がそれにかわって宿日直をするというようなことをやっておるのが、私がいままで経験した、あるいは見てきた実態でございます。そこで、どうしてもそれができないというのは管理者の数が少ないからだと、こういうことが一つ言われましたけれども、たとえば秋田にある総合訓練所とその他の訓練所の中で、臨時雇いをしなかったところがあるわけですね、そういうところと管理者の数は一体どういうふうな違いがあるのか、臨時雇いをしなかった訓練所は管理者が多いのか、また、どうして雇わなかったのか、そういう点をひとつお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/9
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010・万仲余所治
○参考人(万仲余所治君) 一番少ないところは、所長をまぜて三人でございます。所長ほか課長が二人というところがございます。一番多いところといえども、大阪あたりが一番多いところですが、これでも、私、正確な数字は存じておりませんが、約十人くらいの課長、部長、組合外の人がおるというのが一番多いところでございますが、こういうところはほんの一、二カ所でございます。多くは五人、四人、三人というようなふうでございます。私どものほうでは五十六カ所になりますか、総合職業訓練所を持っておりますが、アルバイトを雇ったのは半分くらいのところが雇っております。あとの半分くらいのところは雇っておりません。秋田は三人でございまして、二人ずつ宿日直をやることになっております。そうしますと、三人という数字は、私は肉体的に考えても、なかなか困難ではなかろうかと思いますので、私は、必ず雇えということは言いませんけれども、必要あれば雇ってよろしいという指示をいたしましたのです。三人のところは、継続的にある人が二日やらねばならぬようなことにもなります。肉体的にも私はそれは無理だと思いました。一方、先刻も申しましたように、ストライキに対抗という気持ちは一つもございません。私どもは、持っておる施設その他の管理をするために必要最小限度のことを宿日直拒否のときにもやらねばいかぬ、こういうたてまえで、私は必要に応じてアルバイトを雇いなさいと指示をいたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/10
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011・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 半数が雇って、半数は雇わなかったということでございますが、雇わなかった訓練所は、どういう形で宿日直拒否闘争中に管理者のほうでは行なってきましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/11
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012・万仲余所治
○参考人(万仲余所治君) 比較的数の多いところが多かったのでございますが、それらのところは、いま申しました三人のところに比べては肉体的な負担も心ないというような意味合いで雇わずに、自分たちで交代でやったというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/12
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013・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 そうすると、最低の三人という訓練所では、宿日直に対してアルバイトを雇わないところはない、こういうふうに確認してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/13
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014・万仲余所治
○参考人(万仲余所治君) 必ずしもそうではございませんで、私は、それは所長に一任をいたしましたので、所長によりましては、がんばって雇わずにやったところもあるかと思いますが、これは私は一任をいたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/14
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015・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 そうしますと、半数のところが雇ったと言われますが、大体延べ人員にして何人雇われて、一日の賃金は幾らでございましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/15
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016・万仲余所治
○参考人(万仲余所治君) 私はそこまで詳しくは存じません。宿日直の拒否がなされた期間は、十二月の二十三日から、たしか三月の初めまでだと心得ております。したがいまして、一人雇ったところもありましょうし、場所によっては二人雇ったところもありましょうが、必ずしも正確には存じておりません。それから、手当も、これは職員の人々が宿日直をやります手当に比べては、臨時的でありますので、幾らか多くなくてはいかぬじゃなかろうか、つまりそういう適当なる人がなかなか見つからぬじゃないかということで、これも適度なる値段――値段といってはおかしいのでございますが、手当は出してもよろしいと申してございますが、どれだけ出したかということは、私は一々つまびらかにいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/16
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017・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 先ほど、いわゆる宿日直拒否の戦いに対する対抗手段ではないと、こう言われたわけでございますが、しかし、たとえば秋田の場合に一人雇った、その人が労働組合の説得でやめた、二人目を雇った、二人目もまた労働組合の説得でやめた、で、三人目を雇った、三人目の人は労働組合の説得を聞かなかったと、こういう実態になっているわけですね。そうしますと、労働組合の対抗手段でないと言われても、こういう実態を見ますと、やはり何か労働組合に対抗して、何が何でもひとつ雇ってやるんだと、こういうふうに私は感じられるわけです。しかも、三人の訓練所の中でも、雇わないで、自分たちでその職務を行なってきたというところもあるということになりますると、秋田総合訓練所に関しては、私は、理事長が言っているような形での雇い入れではなくして、やはり労働組合の闘争に対応する手段として強行してきたというふうに私は感じられるわけでございますが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/17
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018・万仲余所治
○参考人(万仲余所治君) 私はそう考えませんです。三人では無理だという判断を所長がしましたのは無理もないことだと思います。したがいまして、現実に一人を雇った、労働組合側では宿日直の拒否をなさっておられるんですから、適法なる説得等はなされたでありましょう。ある人はやめた、やっぱり足りませんから、また雇わざるを得ないで雇った。またやめた、また雇わざるを得ぬから雇ったということでありまして、組合の闘争手段に実抗するという意思は一つもない。これではとても宿日直の最低限度の実効をあげることができないと考えましたので、次々と別の人を雇ったと、こう判断いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/18
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019・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 そういうような下部の機関においていろいろなめんどうを起こしておることについて、本部として一日も早くこういう状態を解消をして、そして正常な形での運営をはかりたいという努力は、私はなされたと思いますけれども、しかし、一月末から三月の初めにかけて行なわれた。しかも、秋田におきましては、外部にまで大きく宣伝をされるような事件が発生をしておるということは、まだまだ本部としてのこの争議を解決しようとする努力が足りなかったのではないかと、こういうふうに私は思うんですが、どういう努力をされましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/19
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020・万仲余所治
○参考人(万仲余所治君) これは比較的な問題でございまして、私が何と答弁いたしましょうが、おまえのほうは努力が足りなかったと認めるということであればしかたがございませんが、私どもといたしましては、前回当委員会にもまかり出まして申し上げましたように、昨年十二月十四日に、これはぎりぎりの線であり、しかも、中央労働委員会のあっせんの線でも出なかったことまで、私の腹で、その財源ありやなしやという見込みのないときに、これだけまで私どもがんばるから、ひとつ早く妥結をしてほしい。われわれの提案をのんでほしいということを申しました。それ以来、そのつどその意味のことを申しておりますが、相手さまのあることでございまして、私ども努力は相当にいたしたつもりですが、残念ながら妥結に至らず、そのうちに、さらに賃金問題が出てまいりまして、賃金問題とのからみ合いのようなかっこうになってまいりました点は、私は非常に遺憾に存じますけれども、それこれの状態で延びていったことはまことに残念に思いますが、私どもはできるだけの努力をいたしたつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/20
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021・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 私は、労働組合が要求をした額を満額獲得をするということがやはり目的ではあろうと思いますけれども、しかし、相手のあることでございますから、そうはいかない場合もございます。したがって、問題は、私は、額の問題よりも、その争議をどうやって解決をしていくかという、労使の双方の誠意の問題ではなかろうかと思います。そういう点から考えますと、たとえば労働組合が宿日直拒否をするという場合に、労働組合側から見れば、明らかに対抗手段と思われるような行動をことさらに強行をする。しかも、一方では財源がないといいながら、いまいわれましたように、半数近くの訓練所では、アルバイトを一日五百円から以上の手当を出して雇うということは、言いかえれば、その財源はあるということですね。ですから、アルバイトを雇う金があるなら、ひとつこれだけ金があるから、これをそれでは幾らか、一人当たりにすればわずかな額であろうけれども、ひとつこれで年度末手当は話し合って解決をしようではないか、こういうところに持っていけば、私は、労働組合のほうもその誠意を認めて、すぐさま宿日直拒否というような闘争はやめていく、そういうふうにも私は考えるのです。額の問題ではなく、誠意の問題だというふうに私は考えるのですが、そういう点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/21
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022・万仲余所治
○参考人(万仲余所治君) 誠意の問題につきましては、前回の当委員会でも申しましたように、私どもは、最初からでき得る限りのぎりぎりのところをお示しすることを目途といたしておりますから、あとからこれがあったから出す、あったから出すというようなかっこうにならないことをもって誠意である、そういう策士的なやり方は誠意でないと考えております。
なお、宿日直の拒否ということがあり、それに対してどうしてもやらねばならぬ最小限度の仕事をするためにアルバイトを雇う、その雇う金があったら、その金を初めから出したらいいじゃないかというお話でありますが、これはなかなか私どもとしては受け入れられない御意見でございまして、そういうことがなされた場合に、何とかないものまでも振りしぼって、これに片方の財産保持、管理をせねばならぬというために支出する金というものを、初めから、それならこれだけの金があるから、おまえたちはこれを使えというふうにして出せるものではございません。理念的に、数字的に考えますとそういう計算はできるかもしれません。私どもは、団体交渉の席上でもそういうことをいわれたが、そういうことはわれわれは考えるべきでもなく、考えてもおらぬという返事をいたしておりましたが、どうも実際問題としては、事柄が前後いたしまして、私どもはどうしてもやらねばならぬことをやるための万やむを得ざるを措置を最小限度に講じよう。それを初めから予想して、これだけの金があるからというやり方は、幾らか労働関係の経験を持っております私としては、初めから予想してそういうことはできませんと考えて、やりませんでした。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/22
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023・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 まあ管理者と申しますか、経営当事者としてそういう気持ちで仕事の遂行を期していくということについては了解できるのでございますが、しかし、問題は、いたずらに労使の間を刺激するというようなことをすることは、私は経営当事者としてのやるべきことではないと思いますし、できることなら、これは労使の間を円満に話し合いによって解決をして、労使一体となっての事業の運営ということが本来の経営者としてのあり方ではないかというふうに思いますので、そういう点から考えると、私は、労働組合を刺激するようなアルバイトを雇うということでなしに、ほんとうにやるなら管理者だけが宿日直をやっていく、こういう気がまえをやっぱり持つべきではなかろうか。そして、そういうもし財源がよそにあるなら、組合とも率直に話し合って、そういう争議の一日も早い解決をはかっていくということのほうが、私は、やはり経営者として当然考えていくべきことではないかと、こういうふうに思っております。
そこで、問題の秋田の訓練所で青柳という方が起訴をされて休職になっております。しかも、四月から新しい訓練生が入るわけでございますが、二十三名という職員で、今回の新しい訓練生に伴っての増員ということは行なわれたわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/23
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024・万仲余所治
○参考人(万仲余所治君) まだ具体的に増員はいたしておりません。おりませんが、これは実情に応じて、必要ならば増員をせねばならぬと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/24
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025・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 それは三十九年度の予算の中で、必要に応じて増員をするといわれますが、増員をするいわゆる定員があるわけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/25
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026・万仲余所治
○参考人(万仲余所治君) これは、先刻職業訓練局長からのお話もありましたように、グロスである員数が認められております。それと、現在五十六の職業訓練所の仕事の実情を勘案いたしまして、もし秋田に一人休職者があるために仕事が十分にできないというときには、それを有無相通じて考えようということでございまして、初めからそういうものを予定して増員のもとを予定していただいたわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/26
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027・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 プール要員が何名おられますか。いま言われましたけれども、いわゆる初めから予定をしておらないことはわかりますけれども、いわゆるそういう必要に応じて増員をすると言われたわけですから、それに対応する要員というのは、いわゆるプール要員か何か知りませんが、本部で持っておられるわけですね、それは何人おられるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/27
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028・万仲余所治
○参考人(万仲余所治君) これから雇わねばならぬわけなんでございますが、私は員数そのものを正確に存じておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/28
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029・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 労働省わかりますか、いまの要員の増員について。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/29
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030・松永正男
○政府委員(松永正男君) 総合訓練所の定員で、三十八年度に比べまして、三十九年度におきまして増員される分は総合計百七十六人でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/30
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031・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 この百七十六人の増員をされた方々をどういうふうにそれぞれの訓線所に配置をするかということは、それは事業団でやることですか、それとも、事業報告書にもうすでに載せられておるものかどうか、その辺をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/31
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032・松永正男
○政府委員(松永正男君) これは事業団におきまして、先ほど理事長が申されましたように、全体を見まして各訓練所の配分の計画を立てまして、その配分によって充員をするという仕事でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/32
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033・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 もうすでに予算が国会で成立して、いまだにその人が来るかどうかわからぬ、これから雇うんだというようなことは、四月から新入生を迎えて、すでに仕事が始まるという段階で、私はあまりにもおかしいと思うんですが、その点はいかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/33
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034・松永正男
○政府委員(松永正男君) 予算がすでに国会を通りまして成立をいたしましたので、新年度予算につきまして、事業団法の規定に基づきまして、事業団におきまして予算計画、事業計画等を立てまして、これによってこの事業執行の財政的な基本をきめたものを労働大臣が認可をする、その際に大蔵大臣に協議をする。で、協議した結果、承認されましたものにつきまして、事業団が自主的な判断においてその内容を執行するという順序になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/34
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035・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 そうしますと、これからそういう大蔵大臣等の認可を得るということになりますると、新しい訓練生を迎えて、非常に時期的なそでを来たすんではないかというふうに思うんですが、その点は一体どういう関係になるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/35
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036・松永正男
○政府委員(松永正男君) 新しい訓練生を迎えて事業は直ちに始まるわけでございますが、この増員は、各訓練所におきます転職訓練等の規模の拡大に伴います増員も含んでおるわけでございます。規模の拡大につきましては、建築をし、機械を入れまして、そして動き出すということになりますので、それと、それから、従来人員が足りないからふやしたいというようなものと両方含んでおります。で、従来人員が足りないからふやしたいというものにつきましては、これはすでに設備の規模が同じでありましても、人員だけを配分をするということになりますが、増設をいたしまして拡充した後にやるというものにつきましては、定員の配分は、その進行状況によってやるということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/36
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037・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 まあそういう転職訓練等の問題もございますので、一応これからの問題も相当入ってくるということは理解できます。しかし、一応労働省としても、事業団と相談をして、三十九年度はどういう計画でもってどれくらいの訓練生を訓練をしていくかとういことは、すでに予定されておると思うのですね。したがって、それに対応する訓練の体制というものは当然なければいけないと私は思うんです。どこの訓練所でどのくらいの訓練生を大体やるか、したがって、この訓練所に指導員を何名あと追加しなければならぬかというようなことはさまっていなければ、私は、業務計画書としてはこれは不適当な、あいまいなものではないかというふうに思うんですが、そういう点はできておらぬですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/37
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038・松永正男
○政府委員(松永正男君) 具体的に秋田の訓練所につきましては、規模拡充計画はございません。で、ただいま御指摘になりました点は、なるべく早くそういうものの決定版をつくりまして実施に移りたいというふうに考えております。御承知のように、訓練所は、一般職業訓練所と総合訓練所と両方ございます。転職訓練におきましては、この両方合わせまして、たとえば中高年、炭鉱等がどこの訓練所で幾らあるかというような計画になるわけでございます。一般訓練所につきましては、国からの補助金が確定をいたしまして、これを受けまして県が県議会にかけまして予算を計上するということになります。大体の計画は、いまほとんど煮詰まりつつあるのでございますけれども、まだ県によりましては財務当局との話し合いがつかないというようなことで、まだ未決定のところもございます。総合訓練所につきましても、それらとの実質的な関係があるわけでございます。で、事業団本部と私どものほうで、予算の通る前から、事実上いろいろ相談をいたしておりまして、どこの訓練所に何科を増設するというような話も大体煮詰まってきております。これにつきましては、たてまえといたしましては、事業団本部が計画を立てて決定することができるわけでございますが、実際上は各県の県当局、中高年対策等を扱っております各県の実情に合わせましてやりますので、知事さん方の御意見も承りつつ、一般訓練所とあわせて、総合訓練所の増設というものも考えておるということになりますので、まだ一部未決定のところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/38
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039・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 そこで、前に戻りますが、先般も申し上げたんですけれども、秋田の場合、二十三人の定員と申しますか、指導員の中で、一名が休職、一名が嘱託、一名が病気ということで、実質的には今後二十名で運営をしていかなくちゃならぬということになりますると、これは先ほど理事長が、必要に応じてと言われるまでもなく、訓練をやっていく中で非常な人手不足を来たすということは明らかでございますけれども、当然これについては増員を予定しなければならぬと私は思います。しかし、問題は、増員の問題というよりも、休職という問題が就業規則によって事業団はやられたように思いますけれども、しかし、そのことは、いろいろそれまでの経過というものがあるわけでございまして、私は、事業団運営のためにも、ひとつそういう休職というものについては、早急にこれを考え直していくということが必要ではないか。そのことは、また労使間の安定した状態をつくり出す大きな力にもなるんじゃないか、こういうふうに思うんですが、その点、理事長の考えをお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/39
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040・万仲余所治
○参考人(万仲余所治君) これは私どものほうのやり方だけではなくって、公務員一般のやり方を私どものほうで勘案してやっておるのでございます。そこで、休職にしたという事実はありますが、いろいろな労使関係の円滑をはかるために、これを早急にもとへ戻すということがなさるべきではないか、なさぬかというご質問でございますが、これは御承知のように、懲罰の意味で休職にしているのではございません。起訴されるということによりまして、しばしばお取り調べを受けたり、いろんなことがあります。そのために訓練所における正常なる職務をとることはできないという意味合いが多くて休職ということがなされたわけでございまして、私どもとしては、これをいま直ちにもとの姿にかえすということを考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/40
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041・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 一般の破廉恥罪等によって起訴をされたということであれば、私は言うことはないんでございますけれども、いわゆる労働争議、しかも、それまでの経過があるわけですね。御承知のように、所長の暴行事件というようなことが前にもあって、非常に労使の間が先鋭的になっておったということは、私は否定できないと思います。そういう中で、さらに今度は宿日直拒否の戦いに対しての事業団側の、いわゆる私は対抗手段と申し上げたんですが、そういう形のものが出てきた。しかも、一人、二人、三人というふうに強行してきた。そういうことが組合側を非常に刺激しておったということは、私は否定できないと思います。そういう中で起きた問題でございますから、就業規則にそういうふうに書いてあっても、その辺はやはりある程度考慮をして、そして新入生を迎えての訓練の円満な遂行をはかるためにも、この際、考えていく必要があるんじゃなかろうか、こういうことを申し上げているわけです。その点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/41
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042・万仲余所治
○参考人(万仲余所治君) この休職の問題につきましては、柳岡先生いろいろお話がございますが、私ども、現在の秋田における労使関係ということから考えまして、休職の問題そのものが非常な刺激をし、非常な妨げになっておるというふうにも私は考えておりません。また、ただいまも申し上げましたように、私どもは決して対抗的に何をやるという考え方は持っておりません。私の年来の信念でございます。団体交渉をやりましても何をやりましても、あるいはいろいろな交渉の結果を、何か知らぬが、経営者側の原案が通った、あるいは労働組合側の原案が通ったとかいいましても、私は、勝った負けたという観念は持つべきでないし、持ってもおりません。したがいまして、私は、決して対抗的にこうやるというような考えは少しも持っておりません。そういう意味合いから、休職という事態は、一つは各所の実情に徴しまして、一つはこのままで就業してもらっては困る状態がたびたび出るということも予想されますというようなことがあって休職ということになっております。また、もう一つは、起訴されたという事柄は、あとがどうなるかわからぬわけであります。無罪になられるかもわからない、どうなるかわかりません。したがいまして、私は、事案が破廉恥罪であるとか、あるいは争議関係の起訴であるというような事柄よりも、起訴されたということによるわれわれの平常業務の運行に支障があるという意味合いが強く働きまして休職という事態が起こっている、こういうふうに考えて処置いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/42
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043・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 私は、労使間の問題について、やはりあまりにも法令なり、あるいは規定というものをしゃくし定木に運用するということが、いかに労使間の紛争をさらに激化させるかということを、経験上からいっても、あるいは現在のいろんな問題を見ても、強く感ぜられるわけです。お互いに人間の集団であり、したがって、そこに特に労働組合との関係におきましては、法の運用、規定の運用等については十分な配慮がされなければ、決して労使間の安定というものは期せられないということを感じているわけでございます。そういうことから言っても、事業団のとっておられることが、いままでの質疑の中でも、たとえば宿日直の問題に対しても、あるいはこの休職の問題についても、あるいは年度末手当の勤勉手当の配分の問題についても、あまりにも相手の立場を考えないで、ただ単に規定がこうなっているから、給与規則がこうなっているからという形でやっておられるような感じを受けてならない。そういう形では、私は、今後とも事業団の中における労使間の紛争というものは絶えない、こういうふうに思うのでございますが、そういう点をひとつ十分理事長としてもお考えをいただいて、私からこういうことを申し上げると非常に僭越でございますけれども、理事長さんは、民間の中で相当苦労なり、あるいは経験をお持ちでございますので、十分その点はお考えになっておられるかもしれませんけれども、しかし、民間の組合と政府関係機関の組合の問題はおのずから違うということも頭に入れていただきたいと思うのです。民間の場合は、当事者間にそれぞれの能力が十分にあるわけでありますが、しかし、政府関係機関の場合は、組合のほうは能力はあっても、当事者たる理事長のほうは能力がないわけです。これは先般の委員会でも申し上げましたように、すべて大蔵省なり労働省から相当大きなひもがつけられている。したがって、それだけに、非常に労使間の紛争を解決する場合の困難さというものがあるということです。ですから、この面を十分考えて、あまりにもしゃくし定木にすべての運用をしていくと、お互いに先鋭的な争いというものが出てくるような感じを受けるわけです。したがって、そういう点を十分ひとつ考えて、今後とも労働組合に対する対策をお願いをしたいというふうに思うわけでございます。
そこで、もう一つ聞きたいわけでございますが、まあ常識的にいいまして、労働争議をし、しかも、その労働組合は、労働三法に保障された組合として、明らかに合法的な実力行使をやってきた。しかも、そういう中で、一方では所長の暴力事件というものも起きたという経過があるわけでございますが、その場合、けんか両成敗ということではございませんけれども、しかし、今後秋田の訓練所がほんとうに労使一体となって訓練に励むということになりますると、片方だけ何か故意にそうされたのではないといっても、組合が起訴をされて、非常にこれからその組合に対する生活的な援助、あるいは裁判の費用の援助、いろいろ組合にかかるわけですね。したがって、そういう中で組合員が持つその感情は、おれらばかり非常に何か苦しめられていると申しますか、相手に対する感情がおもしろくない感情を私は組合のほうとしては持っておるのじゃないか。したがって、所長がいまのままあそこに居すわるということでは、決して今後の秋田の訓練所の運営にとってプラスにならないというふうに、私は常識的にこれは考えるのですが、やはりこの際、秋田の訓練所の問題をすっきりさせるためにも、これは人事問題でございますから、ここで私は言いたくございませんけれども、やはり事業団としても十分その点は考慮をする必要があるのではないか、こういうふうに思うわけです。これはお答えがいただければいただきたいのですが、いただけなければ――決して理事長の権限をここでどうこう私言いませんけれども、しかし、労使間の安定した姿をここではっきりさせるためには、やはり所長の処遇についても、私はこの際考える必要があるのではないか、こういうことだけ申し上げておきます。
それから、もう一つ、これは別な問題でありますけれども、訓練所の中で訓練をしている間に訓練生が事故を起こした場合の補償についてどういうふうになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/43
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044・万仲余所治
○参考人(万仲余所治君) これは特別にそのための規程というものは持っておりません。持っておりませんが、その事案が起こりましたときの実情を考えまして、工場、鉱山等において業務上の障害が起こった場合に対する措置、労災関係の措置というものを勘案しまして、また、その年齢等もむろん勘案いたしまして、実情に応じて、私どもとしては、そう他から御批判を受けなくてもいい措置をとっておるつもりでございます。大体業務上の労災関係を準用するたてまえでやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/44
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045・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 これは事業団法の中にもそういうことはないと思いますし、いわゆる見舞い金程度の考え方ではないかというふうに思うのですが、しかし、これは私は、やはり現在法の中における一つの盲点のような気がしてならない。したがって、最近指導員の人手不足ということもありまして、自動車にはさまれるとか、あるいは自動車の修理をやっているうちに急に自動車が飛び出してけがをするとか、こういうことが非常に各訓練所に多いようでございます。したがって、こういう訓練生の業務上災害に対する補償の面を、私は、今後労働省として十分考えていかなければならない問題ではなかろうか、こういうふうに思うのですが、この点、労働省の見解をお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/45
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046・松永正男
○政府委員(松永正男君) 訓練所内におきます災害につきましては、指導員の災害と生徒の災害と両方あるわけでございます。指導員につきましては、これは一般訓練所も総合職業訓練所も、労災保険の災害補償基準によって補償されるわけでございます。
それから、生徒につきましては、これは教育機関でございますので、たとえば工業高校、あるいは中学校等におきます生徒の災害の事例がまあときどきございます。それから、都会地におきましては、小学校等でも交通災害等がございます。で、これはたしか学校安全会法でございますか、によりまして、災害補償ではございませんが、労災とは性格が違いますので、補償ではございませんが、災害給付と申しますか、ちょっと正確に覚えておりませんが、支給基準がございます。それで、従来労働省の関係の訓練所におきましても、生徒の災害につきましては、大体まあこれに準ずるというような考え方でやっておりまして、学校安全会法の基準がやや上回っておりまして、これを、これではいけないというので改めまして、学校安全会法の基準と同等の基準をつくりまして、各訓練所でこれによりまして生徒の災害に対しては給付をする、まあ見舞い金というような名前にいたしておりますが、そういうことになっております。ただ、事案によりましては、特別に見舞い金を増額するということもできるというようなことになっております。ただ、いわゆる労災保険法によります、あるいは基準法によります災害補償と比べますと相当の格差がございます。そこで、私どもといたしましては、これはまだ具体的にどうというところまで至っておりませんのでございますが、転職訓練等がふえてまいりますと、従来、職場におきましては、災害の場合は災害補償を受けられた。就職しますというと、そこでまた受けられる。中間の訓練段階において災害が起こった場合に、特に中高年離職者等の場合には、家族をかかえておりますので、生活の面からいきましても、現在の基準ではあるいは低いということになるのではなかろうかというふうに考えております。で、これにつきましては、まだ具体案を得ておりませんけれども、転職訓練のウエートがふえてまいりますにつれまして、やはり一般の教育機関という、特にまあ中学校を卒業の、まだ責任のない子供に対する考え方と同じでいいかどうかということにつきまして、実は前から私どもとしましては検討をいたしておるのでございます。まだ結論を申し上げる段階に至っておりませんが、まあそのような考え方でやっておりますので、御報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/46
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047・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 最後に、まあいま局長の申された初級訓練と申しますか、学校を卒業してすぐ訓練所に来るような方は、これは一般の学校と同じような考え方で成り立つかもしれませんけれども、しかし、これから失対事業の中からも訓練所に入る、あるいはその他の転職訓練が非常に多くなってくるわけですね。そうしますと、いまいわれたように、事業所におれば労災の関係で十分補償される。十分でないかもしれませんけれども、補償される。ところが、一年なら一年間の訓練期間に不幸にして事故にあった場合には、これは涙金程度の見舞い金で終わってしまうということになると、これはあとに残された家族のことを考えても、非常に重要な問題じゃなかろうかと思うのです。こういう点は、私もまたあとの機会にいろいろ論議をしてまいりたいと思いますけれども、ひとつ十分労働省としても早急に検討をされて、これについての対策を考えていただきたい、こういうふうに考えます。
以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/47
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048・鈴木強
○委員長(鈴木強君) 阿具根登委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/48
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049・阿具根登
○阿具根登君 ちょうどいい機会でございますので、労働省と事業団に一、二質問を申し上げたいと思います。
離職者の住宅が非常に急ピッチで進んでおりますのは、まことにけっこうなことでございますが、場所によっては、せっかくおつくり願った住宅に非常に入居者が少ない。こういうことを考えてみますと、あまりにも機械的に考え過ぎておられるのじゃないか。たとえば六畳、三畳というのは、これは絶対的な問題であって、これが日本国じゅうどこでも建っておる。そうしますと、これは家族の四人も五人もおる人はなかなか困難だ。また、一方、まあそういうことはしんぼうしてもらうにしても、数を多くしたほうがいいのだという理論も成り立ちますけれども、せっかく建ててもらったのに、あまりにも画一的にどこもここも同じじゃないか。それが一つなのと、まあ予算は少ないから私らにも責任はございますが、建てられた場所が作業環境の場所とあまりにも遠過ぎる。いわゆる往復の通勤費、時間等を勘案すれば、せっかく建ててもらった所に行くよりも、それよりも少々高いけれども、自分の作業現場のほうに行きたい、こういうことで集まっておらないという弊害が一つある。
もう一つは、大体二千八百円だと思いますけれども、それは千葉や埼玉や東京の周辺だったら二千八百円という家賃はきわめて安い、これはけっこうだと思います。ところが、三重や北海道に行きますと、市営住宅等はもっとそれよりも安くてその近所にある、こういうことになるということは、非常な物価高ではありますけれども、都会周辺はさらに住宅に対する家賃というものが非常に高いけれども、地方に行くに従ってこれがまた違っておる。それを画一的にどこも幾らだということをきめられておるうらみはないか。そういう点を考えてまいりますと、やはりこの種特殊の住宅でございますので、少し幅を持たせなければならぬのじゃなかろうか。たとえばその周辺に市営住宅があって、同じような機構であるならば、少なくともその線までは家賃を下げるべきだ。東京周辺であったらば、これはいまのものでも私はそう高くはないと思います。これくらいでもいいのじゃなかろうかと思います。しかし、今度は地方に行けば、私の見た範囲では、同じような住宅でもっと安い市営住宅がある、こういう点が一つと、特に雇用促進事業団にお世話になっておるこの勤労者の諸君は、きわめて零細な企業にしか従事しておらない、こういう点があるわけでございます。まことに吹きだまりというか、いわゆるこの団地だけは最下層の部類に入ると私は思います。これは政治の貧困でございますけれども、そういう点から考えて、もう少し住宅を建てる場合、最近は土地が高くてなかなか困難でございますが、なるべく通勤に便利のいい所に建てるようにするということと、それから、やはり地方の特殊性を生かした考え方にしなければ、せっかくりっぱな家ができても、現在三重県等は百五十戸建てて、七十数戸しか入っておらない、北海道もそのとおり、こういう状態があるわけであります。だから、その環境と家賃の問題について、これは大蔵省等ともいろいろ折衝の上のことですから、ここでそうするのだというお答えはできないとしても、考え方をお聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/49
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050・村松伍郎
○説明員(村松伍郎君) 宿舎の構造につきましては、三十九年度から六畳、四畳半、ふろ、こういうことに拡張いたしました。それから、将来はその部屋を合併しまして、二戸をもちまして二月にできますように構造を変えていきたいと考えております。
それから、家は、三十八年度までは入所者の資格を、八割を炭鉱離職者、二割を一般の広域職業紹介を受けた者、こういうことにしておりましたが、もちろん炭鉱離職者は優先しますが、場所によりましては炭鉱離職者以外の方の、炭鉱離職者がいない場所におきましては炭鉱離職者の方が六割で、一般の方が四割でよろしい、こういう緩和規定を設けております。それから、非常に家族の多い方につきましては、いままでは一世帯一戸でございましたが、世帯員の数が七人以上の場合におきましては一世帯に二戸を貸すことができる、こういう緩和規定を設けてございます。
それから、家賃につきましては、これは最高第二種公営住宅という、つまり低所得者の公営住宅をこえない、こういう限度を設けまして考えております。ただ、いま特殊の問題としまして、三重の問題の場合には、名古屋から三重に行きまする労働者ならば幾らでもあるのでございますが、私どものほうとしましては、いままでは県の安定課を通じまして、県の安定所ごとに住宅を割り当てておったものでございますから、どうしても三重県で就職した者をここへ入れたい、こういうことでございますが、最近その問題につきましては、三重と名古屋の間の調和をとりまして、早急に充員できるようにいたしてございます。それから、札幌につきましては、御承知のように、いろいろの特殊事情がございますが、これも雪解けが済みましたならば必ず充員したいと思いまして、特にあそこにつきましては、ふろ場を設けまして、それを事業団の外郭団体が経営するとか、あるいはバスの乗り入れを認めるとかというふうな対策を講じまして、雪解けが済みました六、七月までには大体充員できるようにわれわれも努力したいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/50
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051・阿具根登
○阿具根登君 それから、もう一点ですが、これもあまりこういうところで質問する材料じゃないですけれども、たとえば某住宅を見てまいりますと、ほとんど共かせぎなんですね。ほとんど共かせぎです。実際これが常態かと思われるくらい大の男が四百円くらいで働いておって、めしが食えないから、全部奥さんも働いている。そうすると、子供を置く場所がないのですよ。これは何も事業団の責任でもないし、労働省の責任ばかりでもないのですけれども、地方に託児所がない。だから、第一危険である。せっかくあいておるのであるから、一部屋貸していただけぬだろうか。そうすると、その住宅の人たちがお互いに輪番で全部の子供を預かりましょう、こういうことを言われたことがある。何もそれを労働省に金を出してくれとか、事業団に金を出してくれということではない。せっかくあいているからこの一軒を貸していただけぬだろうか。そうすると、そのアパートの人全部の子供をここでお互いが責任を持って預かるようにしたらどうか、こういう意見もあるのですが、こういうことについてどういうお考えなのか、その点をひとつお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/51
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052・村松伍郎
○説明員(村松伍郎君) 三十九年度におきましては三カ所の託児所を設ける予算を考えまして、比較的大きな団地から設けてまいりたいと思います。たとえば具体的に申しますと、ここでは神奈川県の座間でございますが、あの辺から設けてまいりたいと思いますので、将来はこの託児所を十棟以上の団地には全部設ける、こういう考え方でまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/52
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053・阿具根登
○阿具根登君 それはまことにけっこうなことだと思うのですが、まあ非常に大きな団地になってくれば、これは市としてもほっておかないでしょうし、あるいは市のほうに陳情もできるし、また、労働省、事業団関係にも陳情できるわけなんですね。ところが、いま言われました十棟以上ということになれば相当の数になるが、十棟以下等で、しかも、何戸もあいているというようなことならば、便宜上、これは託児所に貸すのだということでないと、大きなところは託児所がある、小さいところに限って特にへんぴになってくるでしょう、当然。同じ条件で建てても、小さいところはへんぴになるわけです。大きいところはそれに連なったいろいろな設備が整ってくる。そうすると、小さいところほど非常に苦労する、こういうことになるので、やっぱりそういうところはそういう便宜を計らってもらいたいと思う。大蔵省その他関係があるから、ここでそうしますと言うとかえってまずいならばそれでけっこうなんです。しかし、そういうところについて、そのくらいの規模じゃつくれないけれども、しかし、それに準じた部屋を貸すから、だから託児所はお互いに責任を持ちなさいというくらいのことだったら、何も金を出すことでも何でもないし、非常に自主的にみんなもやれるのだから、私はけっこうなことだと思う。それで、そういう問題につきましては、ひとつ蔵内さんも十分炭鉱関係は御存じですから、御返答をちょっと聞いておきましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/53
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054・藏内修治
○政府委員(藏内修治君) ただいまの阿具根委員のお話は、まことにごもっともでございます。いま直ちにあらゆる住宅施設に託児所を開設するということを決定するというわけにもまいりませんが、実情に応じまして、御要望が幾らかでもかなえられるように、弾力性のある措置がとれるように検討を命じたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/54
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055・鈴木強
○委員長(鈴木強君) 藤田藤太郎委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/55
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056・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 私も一、二点お聞きしておきたいと思う。万仲理事長にまずお聞きしたいのですが、訓練所の業務が終わって、夜の宿直、それから、休みの日の日直というかっこうになって、日直とか宿直というのは業務の延長だと私は理解をしているわけです。その業務に関連して問い合わせとかなんとかあった場合に受け答えるために日直宿直がおる。これは政府機関であろうと民間の事業であろうと、そういう処置が業務の延長処理として行なわれていることだと私は思う。そこで、総合訓練所は、この前、労働大臣とも少し質疑をしたのですが、大きいところでは守衛というようなかっこうで、その事業、敷地、財産管理体制というものが明確になっておる。そうでないところ、学校とか、そういうところでは作業員とかなんとかいうかっこうで管理体制が明確になって、業務の延長の分だけは日直、宿直になっている。総合訓練所はいずれにも処置がとられずに、日直、宿直でその財産の管理、一切が行なわれているということでは、もしも盗難、火災その他の事故があったときにはどうなるのか。そういう財産管理を含めた責任体制まで一応の労務をした日直宿直員に与えるということは、私はよろしくないのではないか。慣例によって、事故がないものという主観的な要素から、ただおるだけでいい、夜は寝ていいのだという慣例になっているようでありますけれども、そういうものの概念というものは業務延長の問題だけだと思う。財産の管理その他の問題については、観念的には意識されてない、しかし、事故が起きたら、その責任体制は日直、宿直にかかってくる。おもなる責任は、その人よりもっと上の監督の地位にある人にかかるでありましょうけれども、直接の責任は日直、宿直にかかってくる。私は、こういう体制はまずいのではないかということを労働大臣に申し上げた。労働大臣も、そう聞いてみると、一ぺん研究さしてくれということであったのですが、万仲理事長はこの問題をどうお感じになっておるか、ちょっとお聞きしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/56
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057・万仲余所治
○参考人(万仲余所治君) お説のとおりでございまして、私もそう考えます。ただ、現実には置くことがまだできない状態にあるわけなんです。そこで、ただいまは、普通宿日直は一人のところが多いのですが、二人ずつということで、できるだけ財産その他の管理をするということでやっておりますが、私は、お話を伺いまして、少し言い過ぎかもしれませんけれども、柳岡さんには、いままで宿日直、守衛等については予算の要求をしたことがないと申しましたけれども、これからは、ひとつそれも含めて、予算の要求をしたいと思います。そのことを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/57
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058・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 いや、私の申し上げているのは、日直、宿直に対する負担の分の予算要求は必要であります。特に総合訓線所というのは何億円も、もっとそれ以上の機械設備がある、そういう管理まで業務上の延長処理という日直、宿直に負担さすということに無理がある。だから、昼夜を通じて管理をしているという人、守衛とか学校の用務員とかを私は置かなければならぬ。その上で業務上の延長の問題としての日直、宿直の問題の手当の増額、柳岡さんの言われた手当の増額ということも考えなければならぬでしょう。現代の実情は、根本的には、現場を預かっておる責任者の問題をやはり考えておいきにならなければその問題の解決はできないわけです。そこをお聞きしておるわけです。どうですか、それは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/58
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059・万仲余所治
○参考人(万仲余所治君) その意味でも、私は含めてお説のとおりと申し上げたわけでございまして、これからはそういう意味の重要性も、特に予算要求等には強く申し述べるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/59
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060・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 柳岡さんがいろいろ質疑されましたから、もう万仲理事長に対する質疑はあまり多くしたくはありませんが、ただ、私たちがその質疑を聞き、現地のお話を聞いておって、国家的事業なんです職業訓練というものは。だから、所長がえらくて職員があかんという、民間企業の財産、経営権、そういうものとの関連とイコールといえばイコールと言えるかもわからぬけれども、もっとそれを乗り越えて、国家的な訓練という事業をやっていくという訓練所に対しては、特に今日緊急な事態がある。そういう意味からいって、私は、何かその面から労使といっていいかどうかわかりませんけれども、私は、訓線業務をみんなが一緒にやっていくという実情とは少しそぐわないものがあるんじゃないか、感情的にも。それから、何か四角ばったといいますか、どうも一般の労使の関係においても四角ばったことが先にいってしまって、団体交渉するにしたって、何も団体交渉と言わなくても、何人でなければならぬという先走ったところから問題が起きている。今度の問題もそういう感じが私はする。そうすれば、残るのは感情だけだと思う。話がついたとしても、前段で残った感情があとに残っていく、こういうことになるわけでありまして、そういう点は、理事長さん、ひとつたくさんな総合訓練所の責任を持っておられるのでございますから、その点は、私は、いまの国民、国家的な要求の上に立って労働者に技術をつけていくのだ、それは労使というような感じでなしに、一般の民間と違って、一体となってやっていくということを私は努力をしていただきたい。それでなけれで、不信感というものがそこに生まれてくれば、よい問題が出てこないんじゃないかという感じを持っておる。これはどうも駄弁のようになりますけれども、少しそういう感じがいたしますので、特段の御配慮をお願いしたい、お願いをしておきます。
それから、訓練局長に私お尋ねをこの際しておきたい。その訓練をする原則というものをどこに置いておられるかということなんです。いまの日本の産業の発展ぐあいを見ると、一口に言えば、本島をずっと見て、北海道から九州まで見て、太平洋ベルト地帯に生産工場が集中をしておる。集中するから、そこへ他の方面から集まって来る、住宅が不足する、こういうことでそこへ踏み切れない。失業者、半失業者、もっといえば潜在失業者といいますか、ボーダーラインのすれすれの人が、貧農、零細農で困っている。それでも私がずっと見た状態を見ますと、幾らか北陸の方面には事業がありますから、幾らかましでありますけれども、山陰へ入って見ますと、その人口の――赤ちゃんもむろん毎年出産で生まれるわけでありますけれども、一%から二%その市町村の人口が減ってくるわけです。ふえるものも含めて、全体の数が一%か二%人口が一年に減っていく、そうして現在太平洋べルト地帯の工場地帯に集中している。これは私は四国の現象もそうだと思うし、鹿児島あたりのうんと遠いところはどうかよくわかりませんけれども、殺到率が六とか七とかいうことでありますから、時間の問題だ。集中していかなければ食っていけないという状態になっている。そうしていくと、単に集中した都会周辺に訓練所を持つというか、私は、訓練をする原則というもうは、訓練をして産業に資するということが大目的だと思う。そうなれば、単に太平洋ベルト地帯に訓練所を置くというようなことでなしに、私は、そういうところに訓練所を持つ、こここそ政府の費用で訓練所を建てて、そうして半分半分といいますか、相当な分は寄宿舎制度をつくる、そうして通勤のウェートから見て可能なところに訓練所を持っていく、そこで訓練をした人を、工場誘致の問題も一つありますけれども、技術者として都会に送り込んでいく、それなら収入が伴うから、何とか住宅の問題も伴ってくるのじゃないか。そういう点がどうも行政の上でないがしろにされているような気が私はいたします。ですから、そういう点の訓練をする。ただ、都会の周辺に、通勤しながら訓練する場所、それはまたそれでこしらえたらよろしい。しかし、いま零細で、転換をする気力もないような不安な方々を訓練をして自信をつけてあげる、そこに地域の産業を配置するとか、どうしてもいけなければ技術者として都会に送り込む、ここに私は、今日、昭和三十九年なら、そこに力を入れるべきではないかという気がするのです。これは大臣がおいでにならないので、所見は承ることはできないのですけれども、その専門家であります局長から、また、次官も御所見があったら、こういう点についてこの際御意見をひとつ聞かしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/60
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061・藏内修治
○政府委員(藏内修治君) ただいま藤田委員から御指摘になりました点は、非常に重要な問題を含んでおると思います。労働力需要地において訓練施設を開設するか、あるいは供給地において開設するかというような問題であろうと思います。これらの点についても、労働省において非常に議論のある点でございまして、この点は非常にただいま慎重に検討中と申し上げる段階ではないかと思います。詳細については訓練局長が申し上げると思いますが、私の承知しております限り、そういう段階でございます。これはまた将来の日本の新産業都市の建設にもかかっておるわけでありますが、そういう問題とも非常に大きな関連を持つ問題でございますので、ひとつ労働省だけの問題ということではなくて、もう少し経済政策全般の上からも、十分検討してまいりたいと思っております。詳細については、また訓練局長から申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/61
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062・松永正男
○政府委員(松永正男君) 基本的な問題でございまして、これに対しまして政務次官からおっしゃられましたような考え方で対処をいたしておりますが、全体といたしましては、訓練計画は、やはり雇用計画、雇用の見通しというものと密接な関連を持たなければならないというふうに存じます。したがいまして、全国的な規模、数量等におきましては、国全体の雇用計画、それから、労働省で地域別の雇用計画につきましても、いま検討をいたしておりますので、これとも調整をしつつ計画を立っていかなければならないというふうに考えております。現状におきましては、おっしゃいましたように、確かに工業地帯に相当訓練所が集中をいたしておりますが、一般訓練所は全体で約二百八十ございますが、これの配置を見ますというと、全国相当まんべんなく配置をされております。私どもも、いま持ってまいりませんが、全国地図に配置図をつくってございますけれども、実は私もややうかつでございましたが、その地図をつくってみまして明確になりました点は、わりによく全国的にアンバランスなく配置されておるという感じがいたします。ただ、御指摘のごとく、今後の技能養成というものにつきましては、ますます需要がふえてくるというふうに考えますので、この現在の配置を、さらに将来の方向づけに基づきまして修正しつつ、新設、増設をはかっていくということは、御指摘のような全体及び地域別の雇用計画に基づきまして、おっしゃいましたような、いわゆる工業地帯のみに集中せずに、たとえば新産都市計画、あるいは工業整備地域の計画、あるいは低開発地域の開発計画というようなものがございますので、これらと吻合をとりつつ設置をはかってまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/62
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063・万仲余所治
○参考人(万仲余所治君) ただいま藤田先生、また、さきに柳岡先生から、別段答弁は求めないがという意味のお話でございましたのですが、たいへんいろいろとありがたいお話をちょうだいいたしましたのと、おまえは長年労働関係に携わりながら何だ、どうもけちけちと重箱のすみを突っつくようなふうにやっているじゃないかというふうなおしかりを受けたような気がいたしますので、まことにその点、私、恐縮に存じております。
ただ、一言申し上げたいのは、私もまずうございましたと思います。どうも少し甘いような気持ち、また、私どもの相手方の事業団の労働組合員にもそういう気持ちがややあったのではないかということで、昨年も一昨年も、何だか知らぬが、こう薬ばかりみたいな点になった気もなきにしもあらず。それではほんとうに、特に私ども官庁のそばに置いていただき、ことに労働省の所管の事業団でありながら、正しい労使関係にならぬじゃないか、ひとつ私ども正しい労使関係を打ち立てるという意味合いで、それには基盤から正しくしておかなければならぬということで、どうも少しおしかりをちょうだいするようなふうにも見えるかもしれませんが、大体においてやや到達点に近いところまで歩み寄ってきておりますので、どうかいましばらくひとつごらんくださいまして、私ども御趣旨に沿って正しい労使慣行を近く打ち立てたいと存じております点をこの際申し上げておきたいと思いましたので、申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/63
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064・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 新産業都市というお話が出たので、一言言わんならぬことになったわけですが、新産業都市というのは十三カ所、またこのごろ追加するとかせぬとかという話が出ております。新産業都市が具体的に動いているのは臨海地帯であり、このベルト地帯に近いところ以外には動かないのですね、言うだけで。ほんとうに山の中で新産業都市を指定して、コンビナートみたいのものをつくると言うてみたところで、いまのような無統制、自由経済、自由主義の中で、過剰投資でしのぎを削っていく中では、そんなものは起きてこない、そんなところに経済の施策の間違いがあると思いますが、この点は、私はあなたときょうは議論はいたしません。私は、その問題も重要な問題として、これはひとつ閣議でしっかりとやってもらわなければいかぬ問題だけれども、しかし、労働力の配置問題は、いま私は非常に重要だと思うのですよ。昭和三十七年の七月一日の就業構造調査を見ても、たとえば農業所得は昭和三十年から三十七年までは二二%しか伸びてない。ところが、国民所得は一三三・九%、約一三四%伸びているのですね、大体七倍伸びている。その中で極端な分配が行なわれて、一人二十万円の国民所得は、五人世帯なら百万円をこすわけですけれども、ことしの予定を見ても、実際の収入は半分以下というのが国民の大半になっている、そういうアンバランスの状態が日本の状態なんである。しかし、そういうことはともかくといたしまして、零細農の方々が手も足ももがかれたということです。第二種兼業が四〇%に三十七年度はなっておる。第二種兼業というのは、主体が別の仕事で、農業が兼業ですが、これが四〇%、私は、ことしになったら五〇%近くになるのじゃないかと思います。農村から次三男が出、長男が出、そして農業主体者が農村を去っていく。ちょっと便利の悪い農村を歩きましたら、たんぼがあっても耕作のないたんぼが並んでいる。これはもうそこでは食べていけないという状態なんで、これはよほど思い切った人の出てくる現象なんです。だから農業改善事業云々という話が出て、いま進められているようでありますけれども、これも実らない結果に私はなるのではないか。これは批判的なことをいって恐縮ですけれども、そういうことになってくると、いまの零細農の農民をどこで生活をさすかということは大問題だと私は思うのです。その大問題の農民、零細農が転換をしていくのにつっかえ棒をしてあげる、これは私は労働省の労働行政だと思うのです。農民で食っていけないのです。それで、いま技術者が足らぬというなら、最もよい機会だと私は思う。最もよい機会に、その方々がほんとうに生活できる道を開いてやるから都会に来なさい、そしたら都会の周辺で訓練をしてあげましょう、そんなことではとても農家の方々は踏み切れないのです。だから、地域で家族がそこに入れば、面会にも行けるし、通勤もできる、通学もできるようなところへ適切な訓練所を建てていくということが、私は、もう今日こういう議論は――ことしはまだそうお感じにならぬかしれぬが、来年、再来年になったら、もう重要な問題の一つに私はなってくる、こう思うのです。だから、そういう意味で、労働省も、この訓練の問題は、単に工業的なところに持っていくという――私は、大中小の都会の産業家が、自分の従業員の技術訓練の負担を軽くするために公共総合訓練所に集中して、みずから訓練をするということでなくてやっていくということになっているので、それは個個の問題ですからいいんですが、労働省の労働力配置全般からいえば、いま私の言ったようなことをほんとうに真剣に考えなければいかぬのじゃないか、私はそう思うのです。だから、産業都市との関係というものは重要でありますけれども、実際問題として、山の中に産業都市を指定したって、いまのところ、そんなところに工場は建ちっこありません。だから、そんなところにほんとうに生活のできない人々の労働力を余らしておかないで、生産労働にいかにしてつけるかということを労働省が考えなければならぬじゃないか。私は、いまの柳岡委員の発言に対して、局長から、今後も訓練所が足らぬからふやしますというおことばがありましたのでこういうことを申し上げておるのですが、これはひとつ真剣に取り組んでいただきたいと、こう思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/64
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065・松永正男
○政府委員(松永正男君) 御指摘のごとく、単に工業地帯のみならず、いわゆる農村地帯、あるいは漁村地帯、あるいは山村地帯というようなところにつきましても、労働力の需給の面から見まして、必要な訓練所を設置するという必要は確かにあると思います。従来、農業基本法、あるいはいま提出しております林業基本法等にも訓練の規定がございまして、計画を立てる際に、農民であれば農林省で立てました計画についてこちらと十分協議をして、訓練所の設置等につきましても配慮をするというたてまえになっております。御指摘のごとく、私どもも、農山漁村等におきます労働力の状況が、従来に比べまして、急角度に変容しつつあるということは、私どもも強く感じております。したがいまして、今後におきまして、工業地帯等につきましても必要な措置はしなければならないと思いますが、農林省等ともよく連絡をいたしまして、訓練所設置の必要については措置をとってまいりたいと存じます。
それから、また、先ほどちょっと柳岡先生の御質問にお答えいたしました際に、各県の訓練所設置の計画をそれぞれ聞きました上で全体的な配置を考えたいということを申し上げておりますが、各県の知事から出てまいります要望の中には、もちろん新産都市建設についての要望もございますが、同時に、御指摘のように、たとえば内陸地帯におきまして農業とか林業とかいうようなものが主要産業になっておるような地帯、こういうものについても、将来の計画として訓練所を設置したいというような計画も出てまいっております。それらの御意見も入れまして、訓練所の、そう大きな数でもございませんけれども、配置については十分慎重に考えたいというふうに思っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/65
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066・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 私は、具体的な問題にはきょうは触れませんけれども、そういう基本原則を労働省が立ててもらわなければ問題の処理ができないのではないかという気がいたします。たとえば一つの例をとりますと、兵庫県の五区が急速に人口が減って、もう選挙区の三名区を二名にしなければならぬという議論が起きて、これは答申もありますように、極端に人員が減っておる。これは四国もそうだと思うし、九州もそうだと思うのです。私は具体的なことをあまり調べておりませんけれども、そういう事態をほうっておいていいかということは重大な問題だと思う。その点はひとつ真剣にいままでの懸案をことしじゅうには処理するという心がまえでやってもらいたい、これをお願いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/66
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067・鈴木強
○委員長(鈴木強君) 私も一言最後に要望しておきたいのですが、雇用促進事業団でおやりになっておる仕事は、本来、労働省が直接やるべき筋合いだと思うのです。ところが、効率的、能率的な運営をするためには、やはり事業団組織のほうがいいということで移行したと思うのですね。自来三年近くなるわけですが、われわれはその成果を相当に期待しておるわけです。これが逆に労働問題等について遺憾な事態が発生をし、国会においてこれが論議されるようなことは、きわめて遺憾なことだと思います。したがって、事業団のほうでは、かなりの制約の中で仕事をするわけですから、理事長以下、非常に苦労もあろうと思う。そういう点は、発足をした所期の目的を達成できるように、政府当局においても十分な裏づけと配慮をしてやることが必要だと思うわけです。そういうようにひとつぜひ、困難もあろうかと思いますけれども、また、いろいろ各委員の皆さんの御質疑がございましたような重大な段階にありますから、ぜひひとつ関係の皆さんの今後の御検討をお願いしたいと思います。
午後一時まで休憩いたします。
午後零時二十一分休憩
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午後一時二十七分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/67
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068・鈴木強
○委員長(鈴木強君) これより再開いたします。
最低賃金法の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、発議者、衆議院議員本島百合子君より提案理由の説明を聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/68
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069・本島百合子
○衆議院議員(本島百合子君) ただいま議題となりました最低賃金法の一部を改正する法律案について、その提案理由を御説明申し上げます。
御承知のとおり、現行の最低賃金法は、最低賃金の決定について、労働協約に基づくもの、審議会の調査審議に基づくもの等を認めておりますが、その主軸が業者間協定に基づく最低賃金にあることは明らかであります。そのことは、同法施行後における最低賃金の決定状況を見れば一目瞭然であります。すなわち、これまでに決定を見た最低賃金の数は、昨年末現在で千四百八十二件、適用労働者数にして二百七十五万余人に達しておりますが、そのほとんどが業者間協定に基づくものばかりで、労使協定に基づくものはわずかに四件しかないという実情であります。
この業者間協定につきましては、ここに多言を要するまでもなく、それは、あくまでも使用者側の一方的の協定であって、賃金は労使で決定するという賃金決定に関するわが国労働法上の原則並びにILO条約の原則に合致しないものであります。
このような賃金決定の原則からはずれた業者間協定を最低賃金決定の基礎とし、かつ、この方式を主軸に考えている現在の最低賃金法は、すでに立法当時から多くの非難をあびており、できるだけすみやかに改正さるべき要素を当初から持ったものであります。
われわれが、この際、最低賃金法を改正せんとする主たる動機は、そうした当初から矛盾を含んでいる現行法を、そのままの形でこれ以上存続させることは適当でないと考えたからにほかなりません。もちろんわれわれは、業者間協定が過去におけるわが国の劣悪な賃金の引き上げにある程度の役割りを果たしてきた事実を否定するものではありませんし、したがって、現在の最低賃金の存在理由を頭から否定するものでもありません。しかし、われわれは、労働者の生活権擁護という立場から、社会情勢の進展に見合って、よりよい最低賃金制の確立のために常に努力しなければならない責務を負っております。そのような見地から現行法を見るとき、それはきわめて不満足であります。
その第一の点は、現在のごとき業者間協定を主軸とする最低賃金法を、この際幾ら強力に推し進めたところで、そこに好ましき最低賃金制の確立を期待することは困難であること、換言すれば、現行の最低賃金法は、今後のわが国における適正な最低賃金制の確立について決定的役割を果たし得ないこと。第二には、業者間協定の本来の性格からして、それが労働者の最低生活の保障と無関係に決定され、かつ、それが最低賃金ではなく、最高賃金化しつつあるという弊害を生み出していることなどがそれであります。
われわれは、以上のような趣旨から、この際、最低賃金法を抜本的に改正し、わが国における正しい最低賃金制度の確立をはかることが目下の急務であると考え、ここにこの法律案を提出した次第であります。
以下、この法律案の概要について御説明申し上げます。
まず、第一に、現行の最低賃金法第三条では、最低賃金は、労働者の生計費、類似の労働者の賃金及び通常の事業の賃金支払い能力という三原則を考慮して定められる旨を規定しておりますが、通常の事業の賃金支払い能力を考慮するあまり、最低賃金の実施がはばまれる傾向にある実情にかんがみ、三原則中からこの部分を削除いたしまして、最低賃金の本来の趣旨を明確にいたしました。
第二に、現行の最低賃金は、業者間協定に基づいて決定される最低賃金を中心としておりますが、これは使用者の一方的協定を最低賃金とするものであり、賃金についての労使の自主的決定の原則に反するものであるだけでなく、ILOの最低賃金に関する諸原則にも反するものと考えられますので、労使が自主的に決定した労働協約に基づく地域的最低賃金が決定できる場合には、これを第一といたしまして、次に、最賃審議会の勧告に基づく最低賃金及び行政官庁が職権により決定する最低賃金に最低賃金決定の主軸を移すことといたしました。同時に、業者間協定につきましても、その内容が適当な場合には、これに基づき最低賃金を決定し得る道を残すことといたしまして、現行の第九条から第十六条までを次のように全面的に改めることといたしました。
(イ)まず、労働協約に基づく地域的最低賃金につきましては、最低賃金決定の申請の要件を、労働協約の適用範囲及び申請の手続の二点でゆるめることといたしまして、労働協約に基づく最低賃金決定の道を広げましたこと(第九条)。
(ロ) 次に、最賃審議会が最低賃金の決定または改正を適当と認めて、勧告を行なったときは行政官庁は最低賃金の決定を行なわなければならないことといたしますとともに(第十二条)、中央最低賃金審議会が、全国的最低賃金の決定または改正を可能かつ適当と認めたときは毎年四月一日に勧告を行なわなければならないこととし、行政官庁はこの勧告に基づいて最低賃金の決定を行なうことといたしましたこと(第十三条)。
(ハ) 労働者百人以上の請求があったときは行政官庁は最低賃金の決定のための調査を行なわなければならないこととし(第十五条)、行政官庁は、調査の結果または職権により最低賃金の決定をする必要があると認めましたときは、これを行なっていることといたしましたこと(第十六条)。
(ニ) 業者間協定につきましては、関係労使の代表を含む最賃審議会が適当と認めた場合に限り最低賃金として決定し得ることといたし、業者間協定の地域的拡張適用についても同様といたします(第十条)。
(ホ) その他現行の第十二条(異議の申出)、第十三条(最低賃金の改正等)及び第十五条第二項(再審議の請求)とほぼ同様の内容を有する規定が必要でありますので、所要の整理を行ないました上、第十一条(異議の申出)、第十一条の二(最低賃金の改正等)、第十四条(職権による最低賃金の改正等)及び第十六条の二(再審議の請求)の四条を設けましたこと。
第三に、現行の最低工賃は、最低賃金の実効を確保するために、関連家内労働について行政官庁が決定し得る旨を定めておりますが、積極的に家内労働者の労働条件の保護、改善をはかるという観点からこれを改めて、最低賃金にかかわりなく、行政官庁が最低工賃の決定を必要と認めたときまたは最賃審議会が最低工賃の決定を適当と認めて勧告を行なったときは、これを決定し得ることといたしております。
第四に、この法律の効果的な実施は、結局最賃審議会の活躍にまつところ大でありますので、最低賃金の決定にあたっての審議会の権限を強化するとともに、審議会の公正な運営を一そう確保するために、かつILOの勧告の線にも沿って、公益委員の任命にあたっては労使委員の同意を要することといたしました。また、最低賃金を決定するに先立って労働協約に基づく最低賃金の場合を除いて、関係労使委員及び公益委員からなる専門部会を最賃審議会に必ず設け、これに専門事項を調査審議させることといたしております。また、船員に関しましても、同様に、船員労働委員会に最低賃金専門部会を設けることといたしております。
第五に、この法律の効果的な実施を確保するために、労働者または家内労働者が次の行為をしたことを理由に、これらの者に対して不利益な取り扱いをすることを禁止する規定を設け、これに違反した使用者または委託者に対して第四十四条の罰則(一万円以下の罰金)が適用されることといたしております。
(イ) 最低賃金または最低工賃以下の額の賃金または工賃が支払われた旨の申告を行なったこと。
(ロ) 最賃審議会等が行なう、最低賃金または最低工賃の決定についての調査審議に関与したこと。
(ハ) 労働者が最低賃金の決定のための調査の請求を行なったこと。
(ニ) 行政官庁から要求があったとき、これに対して報告を行なったこと。
第六に、その他関係条文の整備等を行なうことといたしております。
以上が最低賃金法の一部を改正する法律案を提案するに至った理由及びその概要でございますが、本法案が成立、施行されますならば、わが国における労働者の労働条件の向上と低賃金労働者の最低生活の保障に資するところがきわめて大であると信じております。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/69
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070・鈴木強
○委員長(鈴木強君) 本日は、本案に対する説明聴取のみにとどめておきます。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/70
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071・鈴木強
○委員長(鈴木強君) 最低賃金法案を議題といたします。
まず、発議者、衆議院議員八木昇君から提案理由の説明を聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/71
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072・八木昇
○衆議院議員(八木昇君) ただいま議題となりました最低賃金法案の提案理由及びその概要を御説明申し上げます。
本法案を提案いたします理由は、現行最低賃金法の内容が、憲法第二十五条、労働基準法第一条の精神をじゅうりんし、また、最低賃金制に関する国際的な水準であるILO二十六号条約及び三十号勧告の趣旨に全く違反しているところにあります。また、全国一律最低賃金制を基本的な内容といたします本法案が、現実的に要請されます理由は、政府の高度成長政策の結果、若年労働力、技能労働力が逼迫し、そのために初任給の大幅な上昇をもたらし、現行法による最低賃金額が実効性をなくしている事実にあります。さらに、諸外国からの要請といたしましては、わが国のIMF八条国への移行、ガット三十五条の援用の撤回、OECDへの加盟など、自由化体制のもとでは公正労働による公正競争が前提であり、従来のソシアルダンピングという非難を回避するためにも、全国一律最低賃金制の実現が迫られているのであります。
私は、全国一律最低賃金法案の提案にあたって、現行最低賃金法の廃案を強く要求いたしますが、それとともに、現行法による業者間最低賃金の欺瞞性、その致命的な欠陥について具体的に指摘せざるを得ないのであります。
第一は、現行法が最低賃金額の決定にあたって労使対等の原則を無視しているということであります。ILO第二十六号条約及び第三十号勧告を見れば明らかなように、最低賃金額の決定にあたっては、労使が対等の立場で参加して決定すべきことを規定しております。最低賃金制の主旨が、労働者の最低生活を保障しようということにある以上、このILO第二十六号条約及び第三十号勧告の言うところは、当然守られなければならないものであります。しかるに政府は、いまなお第二十六号条約を無視して批准しようともせず、また、この条約に違反する現行最低賃金法の運用によってわが国の低賃金構造を温存しようといたしておりますが、すでにその欠陥は、はっきりと実証されているのであります。
第二は、現行最低賃金法による最低賃金額の算定にあたって、労働者の生計費が全く考慮されていないという欠陥であります。現行最低賃金法第三条は、最低賃金は労働者の生計費、類似の労働者の賃金、及び通常の事業の賃金支払い能力を考慮して定められなければならないと規定されております。この規定は、最低賃金決定の基準として国際的通念となっている原則、すなわち、労働者の生計費、類似の労働者の賃金水準を勘案しなければならないことと相違しているのであります。しかも、最低賃金額を実際に決定するにあたっては、企業の賃金支払い能力のみが優先的に考慮されている実情でありますために、類似の業務に従事する労働者であっても、企業の規模が相違するというだけで賃金に非常な格差があるのであります。さらに、労働者の生計費を無視した企業本位の業者間協定による最低賃金額でありますために、最近の異常な物価騰貴により、実質賃金はますます低下いたしているのであります。その結果、最低賃金制の根本思想であります労働者の最低生活の保障の原則は、全くくずれ去っているのであります。
第三は、最低賃金制の制度としては、全国一律に最低賃金がきめられることが国際常識となっておりますが、現行最低賃金法はこのような基本的な規定を持たないために、極端に低い最低賃金、たとえば日額百八十円というような最低賃金額が存在しているのであります。その結果、労働者がその最低生活を維持することも不可能となり、すでに最低賃金としての実効性を喪失しているのであります。
第四は、現行法が労働者の組織化を妨げる役割りを果たしているということであります。
周知のように、諸外国における最低賃金法制定の動機を考えてみまするに、最も大きな動機の一つとして、労働者の組織化の促進ということがあげられているのであります。この諸外国のあり方と比較いたしますときに、わが国の現行最低賃金法の運営は、全くこれと逆行する傾向を示しているのであります。たとえば大企業労働組合が労働協約を結び、その協約下に未組織の労働者を組織しようと努力している最中に、低い賃金の業者間協定を結んで、労働者の組織化の努力を水泡に帰せしめるということ、これはまことに遺憾なことでありますが、数多くの事実としてあげられていることであります。本来、労働行政の目的は、労働者の組織化を育成し、それによって労働者の生活の向上をはかることにあるのであります。この労働行政本来の目的に違反して現行最低賃金法が運営されている限り、私どもは根本的立場から現行法の廃止を要求せざるを得ないのであります。
第五は、現行の最低賃金が最高賃金化しつつあるということであります。このようになる理由は、現行の業者間最低賃金協定が、過当競争の排除と求人難の打開ということに基づいて決定されている実情の中にあると思うのであります。過当競争を排除するために業者が協定し、一定の賃金以下は支払ってはならないことを決定はするが、一たんその事態が回避されれば、この決定した最低賃金額が標準賃金として固定化し、結局、頭打ち賃金としての作用を持ってきているのであります。このことは、現行最低賃金額が業者本位にきめられている当然の帰結でありましで、このような事態が一般化する傾向を私たちは深く懸念するのであります。
次に、私は、最低賃金法案について、法案の概略を御説明いたします。
第一に、本法案は、労働基準法第二十八条第二項に基づいてつくられたものであります。御承知のように、現行法の成立の際、第二十八条は修正され、第二十九条から第三十一条までは削除されております。
本法案は、附則において労働基準法第二十七条を削除し、第二十八条から第三十一条までを修正して復活しておりますが、その意図は次の点にあるのであります。
すなわち、労働基準法の最低賃金の規定は、憲法の精神を受け継いで具体化し、労働者の最低賃金を保障すべき立場からつくられたものであります。しかるに政府は、この憲法の精神をじゅうりんし、労働基準法の最低賃金規定を骨抜きにした現行最低賃金法をつくったわけでありますが、私どもは、現行最低賃金法が憲法及び労働基準法、ILO第二十六号条約及び第三十号勧告の精神にもとるものであると深く憂慮するのであります。ここに私どもが憲法及び労働基準法の精神に沿った、正しい意味の最低賃金法案を提案する理由があり、労働基準法第二十八条から第三十一条までを復活させた重大な意義があると信ずるのであります。
第二に、最低賃金額決定の基準は、必要生計費、一般賃金水準、その他の事情を考慮して定めることといたしました。これは、現行法の欠陥のところで述べましたように、業者の賃金支払い能力があまりに優先する企業本位の偏向を防止し、正しい意味の最低賃金額を決定させることにあるのであります。特に必要生計費については、労働者が人たるに値する生活を確保するために必要な諸品目及びその数量を基礎として算出することにいたしました。
第三に、雇用されているすべての労働者の最低賃金額は、中央最低賃金委員会で決定することにいたしました。なお、この一般最低賃金額の改正につきましては、中央最低賃金委員会は、六カ月に少なくとも一回、すべての労働者の最低賃金額の適否について審議し、必要を認めた場合は、その金額の改正を決定しなければならないこととし、さらに六カ月の間に必要生計費が百分の三以上増減した場合は、これに応じてすべての労働者の最低賃金額の改正を決定しなければならないことといたしました。
第四に、労働協約に基づく地域的産業別最低賃金について規定しておりまして、中央または地方最低賃金委員会は、一定の地域内の同一産業の労働者の大部分が、賃金の最低額についての定めを含む労働協約の適用を受ける場合に、労働組合または使用者の大部分の合意による申請があったときは、すべての労働者の最低賃金額をこえる額で、その一定の地域内の同一産業の労働者の全部についての最低賃金を決定することができることにしました。ただし、労働協約の適用を受けていない労働組合または使用者は、拡張適用の申請について三十日以内に異議を申し出ることができることになっており、中央または地方最低賃金委員会は、労働協約の拡張適用についての異議の申し出があった場合、一定の範囲の事業について、その適用を一年の範囲内の期間で猶予し、またはその期間別の最低賃金を決定することができることにいたしました。
第五に、使用者委員、労働者委員及び公益委員をもって最低賃金委員会を組織し、中央には中央最低賃金委員会、各都道府県に地方最低賃金委員会を置きまして、中央最低賃金委員会は、使用者委員及び労働者委員各十五人並びに公益委員五人をもって組織し、地方最低賃金委員会は、使用者委員及び労働者委員各十人並びに公益委員三人をもって組織することにいたしました。
また使用者委員は使用者の団体の推薦する者を、労働者委員は労働組合の推薦する者を、公益委員は使用者委員及び労働者委員の同意を得て、労働大臣が任命することといたしました。
第六に、最低賃金委員会の会議は、使用者委員、労働者委員及び公益委員の各過半数が出席しなければ、会議を開くことができないこととし、特に、すべての労働者の最低賃金額の決定及び改正の決定並びに労働協約の拡張適用による最低賃金の決定及び改正の決定は、最低賃金の趣旨に照らして、出席委員の全員の一致で決定することにいたしました。さらに、最低賃金の決定に当たっては、まず労使委員がその協議を尽くし、公益委員は両者の意見に十分な考慮を払いながら、適正な決定に到達するようつとめなければならないように規定いたしました。
以上が最低賃金法案の提案理由及びそのごく概略であります。何とぞ慎重審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/72
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073・鈴木強
○委員長(鈴木強君) 本日は、本案に対する説明聴取のみにとどめておきます。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/73
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074・鈴木強
○委員長(鈴木強君) 中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案を議題といたします。
これより質疑に入ります。質疑のある方は、どうぞ御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/74
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075・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 中小企業退職金法案、これはまだ衆議院から回ってきてないのでありますけれども、この法案については、私たちも審議勉強するために資料のお願いをしておきたい、こう思うわけでございます。
まず、第一には、二百人から三百人になるこの対象企業の退職金がどうなっているかということが第一でございます。それから、二番目には、退職金規程のあるところの退職金額はどうなっているか。これが第二。それから、三番目は、三百五十人以下の企業の資本金類、これはひとつ産業別にお願いをしたい。それから、設備拡大投資をして建設をするわけでありますけれども、投資額に対して労働者の雇用収容人数がどうなっているか、産業別に分類してお願いをしたいわけでございます。そこまでおわかりでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/75
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076・三治重信
○政府委員(三治重信君) 調べて、できる限り早いところ資料を出したいと思いますが、ただ、最後の投資額というのは、設備投資一億円に対して何人雇用と、こういうふうなことでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/76
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077・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 設備投資をいたしますと、設備投資額に対して労働者の収容できる設備投資額、たとえば機械産業ですとたくさんですけれども、化学産業等の近代産業では、非常にたくさんの設備をしないと一人の収容の場が出てこないという、この比率の問題を産業別にお願いをしたい、こういうことでございます。それから、その次に、現行法ができましてから、この現行法適用企業数、それからその人員、それから全体の企業に対しての適用されている企業労働者の比率。それから、六番目が、この法律ができた当時、退職金規程があった企業の、この法律を適用した会社のそれまでの退職金はどうなっているか。それから、昨年度は中小企業の倒産は三千件をこえておるわけでございます。倒産をした場合、新しい雇用になった場合に引き継ぐということになっておるわけでありますけれども、厚生年金を途中でやめて請求もせぬと放棄しているのが非常に多い、厚生年金に。ですから、この中小企業の退職金も、その働いた労働者がよく理解をしないで放棄をしているようなことが相当あるのではないかと私は思うわけでございます。そういう点も一々調べられる範囲で調べていただきたいということでございます。それだけの資料を、非常に数たくさん申し上げましたが、お願いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/77
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078・鈴木強
○委員長(鈴木強君) その点よろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/78
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079・三治重信
○政府委員(三治重信君) すぐには間に合わない資料もあるかと思いますが、とりあえずできる資料を出しまして、あとまた事情御説明申し上げまして、できるだけ早く出したいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/79
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080・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 私は、この際、法案の審議にあたって、補助金がついているわけでありますが、八つ資料を要求しましたが、この中で、非常に膨大な資本の会社も五%、一〇%の補助金を適用されているということがありはしないか。それから、また、これができたために、退職金のいままであったものが消えてなくなったり、退職金規程をやろうという意思が退歩したりはせんか。そういう意味からもこの資料をお願いをして、これによって勉強して適正な方向を見つけたい、こういう趣旨で資料をお願いしたのでありますから、ひとつ努力をして、これだけのものを全員に御配付をお願いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/80
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081・鈴木強
○委員長(鈴木強君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は、本日のところ、この程度にとどめておきます。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/81
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082・鈴木強
○委員長(鈴木強君) 労働問題に関する調査を議題といたします。
質疑のある方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/82
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083・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 私は、一応労働災害の問題についてお尋ねをしたいと思うわけであります。
労働災害の問題については、通産省との関係や、それから、また、労働災害を根絶するための基本的な構想について各方面と労働大臣はいろいろお話をされておると聞き及んでいるところでございますので、この点をひとつお知らせをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/83
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084・村上茂利
○政府委員(村上茂利君) お尋ねの点につきましては、通産省と特に関連がございますのは鉱山保安に関する問題であると存じますが、御承知のように、鉱山保安の問題につきましては、本年二月初めに通産省に対して勧告を行なった次第でございまして、十二項目につきまして勧告を実施し、その線に従いまして鉱山保安法の改正、規則の改正、行政指導、各般にわたりましてその改善を求めておるような次第であります。その中で、鉱山保安法の一部改正につきましては、過般来、中央鉱山保安協議会におきまして審議検討いたしておりましたが、その答申も出まして、今月の月初めに鉱山保安法の一部改正法案を提出することに決定したような次第でございます。その間に処しまして、藤田先生はじめ、諸先生から、鉱山保安の所管問題についてのいろいろ御意見があったのでございますが、鉱山保安態勢の実体的な改善整備という観点から、鉱山保安法の一部改正の内容につきましては労働省といたしましても了承いたしたわけでございますが、所管問題につきましては、なおいろいろ問題もございまして、差しあたりの問題として結論を見出すこと、が時間的にも困難であるという見解に立ちまして、しかしながら、実際上、労働省が、労働者保護の見地から、鉱山労働者の保安につきましても十分なる調査等が行ない得ますように通産省と協議いたしまして、従来行なっておらなかった保安に関する抗内立ち入り調査及び報告書の提出に関しまして鉱務監督官の密接な協力を求めるという態勢をとることにいたしたような次第でございます。事実上これによりまして、鉱山保安法上いうところの勧告権の行使、これに関連した事実上の調査実施によりまして、鉱山労働者保護のためのいろいろな調査等につきましては、従来より一そう強化充実し得るというふうに考えておるような次第でございます。
次に、御指摘の災害対策全体の構想につきましては、先日の本委員会におきましても、四月の十七日の中央労働基準審議会におきまして、具体的な対策を提案して審議を求めたいということを申し上げておりまして、その案を作成いたしておるところでございます。その間におきまして、関係各方面の意向も参酌しつつ、いま原案の作成を急いでおるような次第でございます。
御質問の中に総評との関係というおことばがございましたように存じますけれども、総評と申しますか、今回の春闘と関連いたしまして、総評が中核になって災害対策についてのいろいろな意見を提示いたしておりますが、最近、私どもが接触を保って煮詰めた問題点としては、五つばかりあるように了解をいたしております。ここで一々申し上げるのはいかがかと思いますけれども、特に労使対等の立場で安全問題を処理したいという点、それから、さらに、労働者の意思をどのように反映するかというような問題につきまして、かなり具体的な問題についていろいろ意見を交換しておるような次第でございます。このような総評の意向などをも事実上承りまして参考にいたしておるような次第でございますが、何ぶんにも、労働基準審議会という公の機関において審議をいただくという手続もございますし、原案作成におきましては、審議が願えるような形のものとして扱うかどうかという点について、なおここしばらく検討を要する点もありまして、慎重に検討を続けておるような次第でございます。なお、話し合いは今後も継続いたす予定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/84
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085・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 そういたしますと、私はどこの組織とか総評とか何とかとは言っていないわけですが、関係方面にどういう手続で話し合いをされたかといま初めに聞いたのですが、総評と話し合いをした話を聞いたわけですが、問題は、それが具体的に法律による規制とか、具体的な安全保安の対策処置として行なえるようにならなければ意味がないわけでございます。そうなりますと、その基本的な労働災害、安全衛生の問題について、基本的に抜本的な改正が、いまのお話ですと、四月十七日の基準審議会ですか、にかけられるということでありますが、この四月十七日から審議会がスタートしてこれと取り組むということになるわけです。その審議会に諮問をする案を関係方面に相談をして、いま努力をしてまとめ中である、こういうぐあいに理解していいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/85
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086・村上茂利
○政府委員(村上茂利君) 先日の委員会でもお答え申し上げたところでございますが、労働省といたしましては、まず災害対策上の問題点をどのように把握すべきかという観点から、産業構造上の問題とか、企業内の問題、企業外の問題というふうに、かなり広範に問題を提起いたしまして、そうして、それらの問題をどうするかということで具体的に対策を練りつつあるわけでございます。問題点が問題点でございますので、産業構造なり企業の体質改善に関連するような基本的な問題になりますれば、対策と申しましても、やや抽象的、かつ、長期の見通しに立つというものもございますし、それから、たとえば有害ガスだとか有害な粉じんなどについての規制をどうするか、その基準をどうするか、防護施設はどうしたらよいかというような問題になりますれば、きわめて具体的な問題でございますし、基準審議会の衛生部会などでもさっそくにでも取り組める段階でございます。そういう問題は早急にやるというような姿勢で内容を明確にいたしたい。
それから、たとえばILO百十九号条約のように、防護施設に関する条約の問題を国内関係法令と関連せしめましてどのように改めるか、その水準をどういうふうにして国内法規で採用するかという点になりますと、かりにその条約の水準に従って法令を整備する、こう申しましても、次の手順としましては、さらに法令改正の個別的な諮問と申しますか、審議を要するというようなことになりまして、実は内容もさまざまになるわけでございます。ここで一々申し上げますれば、内容もかなり複雑多岐でございますし、対策の明確度、程度、範囲といったようなものもそれぞれございまするので、ここでは個別的には遠慮させていただきたいと思いますが、そういうようなものにつきまして関係方面の意向を内々伺いつつ、審議会の審議が円滑にいきまするように原案作成を行なっておる、こういういきさつでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/86
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087・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 いや、私は、かまえの問題をお伺いしているのです。だから、労働災害を根絶しようというたてまえに立って、いまのあなたがお話になりましたようないろいろの面を含むと思います。しかし、問題によっては何年計画でやらなければならぬ問題も出てきようと思います。または具体的に処置のできる問題もある。それから労働災害全般についてのかまえの問題と取り組む、成案を得て実行に移す。少なくとも、この国会でその成案を得て実行に移すというかまえで基準審議会にかけられようとしているのかどうかということを聞いているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/87
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088・村上茂利
○政府委員(村上茂利君) 御指摘のように、労働省としましては、従来これほど総括的、かつ、体系的に問題を提起し、かつ、対策を考えるというような態度をとりましたのは、私が申し上げるのは恐縮でございますが、かってないほどの姿勢で臨みたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
ただ、先生がおっしゃいました今国会でという点になりますと、法律案につきましては、これは時間的にほとんど無理なようでございます。ただ、すでに提出いたしております労働災害の防止に関する法律案につきましては、全体の災害対策の中の一部といたしまして、たとえば経営者の安全意識の高揚をはかるという場合に、災害防止団体がそのような機能を発揮するとか、あるいは数次の請負によりまして、一定の場所に多数の請負業者が入っておるというような場所における安全管理をどうするかといったような問題は、それぞれ労働災害防止に関する法律案が成立いたしましたならば処理され得る問題であります。しかしながら、さしあたって考えております労働災害防止対策は、非常に広範多岐にわたっておりまして、先ほど申しましたように、ILO百十九号条約の基準を取り入れるにはどうしたらよいかという問題になりますと、今国会に法案を提出するということは、これは時間的にほとんど不可能でございます。方向だけを対策として明らかにしつつ、そのような法律改正なり規則の改正なりは今後にまちたい、しかし、できるだけ早急に出したいというふうに考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/88
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089・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 いまあなたがおっしゃったように、いま出ておる労働災害防止に関係する問題は、労働災害防止の全体の中の一つである、それは私たちもそう理解をいたしております。あれは一部であって、全体の構想は一応研究してみるけれども、緊急にやらなければならない問題と、時間をかけなければならぬ問題があることは、私もそれは理解をいたします。しかし、全体の中で長期にまたがる問題は計画を明らかにされなければなりませんけれども、短期にやれる問題は、いまの労働災害防止法のみに掲げられておる以外に、私は問題があろうと思う。そういう問題は、何としても全体の計画の中で摘出して出てこない限りは、問題があるという気がいたすわけでございます。そういうものを含んでやろうというかまえなのか、そのかまえの問題を私は聞いておるわけであります。ですから、今度の国会において問題の処理はあれだけなんだ、あとの緊急の問題もこの国会では云々ということになってくると、少しどうももの足らぬ気がするわけです。全体の問題が前に進んで、あとで足りない緊急に処理しなければならない問題はこの国会でやっぱり処理をしていくということがなければ、全体の計画が生きてこないのではないかという気がするのですが、そこをどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/89
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090・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) 先ほど来、藤田委員から、災害防止対策につきましての再三の御質問でございまするが、ただいま労働省で災害防止対策につきまして全般的な検討を進めておりますことは、先ほど来政府委員から申し上げたとおりでございます。元来、今国会には災害防止に関する一つの法案を提案いたしておりますが、実は、この法案は昨年の通常国会に提出をいたしましたが、審議未了となった案件でございます。これも災害防止上必要と存じまして今国会に提出をいたしたのでございまするが、しかしながら、御承知のとおり、昨年末におきまする三池並びに鶴見の大事故によりまして、災害防止対策の問題が非常に国民全般にその緊急性が認識されておりまする今日、災害防止に関して法案を出しまする以上は、それを含めた国としての災害防止に関する政策全体を確かめる必要がある、そうして、その一つの法案が、全体の対策の系統の中でいかなる位置づけをされるものであるか、そうして、また、全体の災害防止対策というものが、今日の災害防止対策の必要性というものに照らして、どれだけの価値があり、また、はたしてそれで十分であるか、そういうことの検討がなされなければ一つの法案の審議も完全でない、こういう御意向が国会に相当高まっておることを承りまして、私もまことにそのとおりであると存じたわけなんでございます。そこで、この災害防止対策全般について労働省の考えをまとめ、そして、ある時期においてこの考え方を審議の御参考にお示しをいたすということも必要な場合があろう。その準備をするということになったのでございますが、災害防止対策のことでございまするから、他の労働政策と同じように、労使双方に関係のある問題であり、労使双方の十分な理解と協力がなければならない事柄でございますので、一応労働省として全般の考え方をまとめた上で、これを非公式に労使双方の機関にお示しをいたしまして、忌憚のない御批判と、また、必要があれば修正についての御意見をいただきたい、かような次第で御相談を申し上げたわけなのでございます。ただいまのところ、大体それについて労使双方の御意向もある程度はっきりいたしましたが、労働省といたしましては、かような問題を処理するにあたりましては、申すまでもなく、労働基準審議会の御審議をわずらわす必要のある事柄である、かように存じまして、近く審議会をお開きいただくような段取りと相なっておるわけでございます。したがいまして、どういう形でその労働省の考え方を審議会にごらんいただくか、これについてはいろいろ審議会の審議の御方針によりますので、労働省としては、ある程度の考え方はほぼまとまっております。近く開きます審議会の御了解を得た上で、適当な時期に国会の関係の委員会にも御説明を申し上げなければならないと思っております。先ほど来、局長から申し上げましたように、行政処分で処理するものもあれば、また、法令の改正の必要なものもあります。法令の改正の必要なものは、いままでの習慣といたしまして、基準審議会の御審議をいただいてから出すということがたてまえになっております。それらを考えますると、ずいぶん急ぐ事柄ではございますが、今国会にこの上他の法案を出すということが間に合うかどうか、ちょっとむずかしいだろうと判断せざるを得ないのでございますが、私どもといたしましては、審議会において御相談がまとまり次第、それぞれの方法を通じまして、すみやかに実行に移して全般的な対策を進めてまいるようにいたしたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/90
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091・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 そういたしますと、大臣のお気持ちもよくわかりました。そこで全般的な構想を立てて成案をつくって、成案というたって審議会にかけないのだから、押しつけるわけには私はいかないと思うけれども、しかし、一応積極的な行政上の処理の考え方を、審議会にかけるまでにいろいろの意見を聞いて、いま成案中だ、間に合うなれば、その中から行政措置のできる問題はやっていく。だから、審議会そのものが重要な任務を含んでおるわけですから、早急に問題の処理がないと困る。これは労働省のほうもそうだし、われわれのほうも困るわけです。では、そういうぐあいにまあ理解をいたします。
そこで、私は、きょうはあまり深く入る時間がないわけですが、ちょっと午前中にお願いをしておったわけであります。というのは、法律事項、それから規則の事項、そういうものによる外国の産業国の法案、要するに労働災害防止のかまえですね、それから、もう一つ私はあると思うのでございます。そのもう一つは、やはり人命尊重というか、業務上の災害をなくそうという全体のかまえというものが私はあるのではないか。この前のたしかこの委員会の議論であったと思いますが、ドイツで災害が起きたら国民が弔旗を出して、炭鉱災害について喪に服したという話が阿具根委員からあったと記憶するわけでございますが、こういうやっぱり人命尊重のかまえというものが国民の中で理解向上していくことでなければ、私は、災害防止というのは、今日七十余万件も労働災害を受けておるものを減らそうというのは、法律規定上からも、それから、全体の国民の人命尊重のかまえ、言わず語らずにおいてそういうことをやろうということの二つの方向からいかなければこれは防止ができないのじゃないか、私はそう思っているわけであります。規定がこうだから、これでとにかくその責任がないのだというような責任の有無の議論をしておっても災害はなくならない。だから、そういう意味では、私は、外国の労働災害に対するこの二つの点からの事態がどうなっているかということをお話いただきたい、こういうぐあいに午前中お願いしておいたのであります。どうぞひとつお話をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/91
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092・村上茂利
○政府委員(村上茂利君) とりあえずの調査でございますので、満足をいただけるかどうかと思いますが、大体立て方としては二段のかまえになっているのが一般でございます。それは直接使用者に義務を課しまして、監督機関がその実行を監督するという立場から、それぞれの法規について使用者に義務を課すというたてまえが一つございます。御承知のように、わが国の場合は、一般法としては労働基準法の中にいろいな規定がございます。ドイツでございますと営業条例、イギリスでございますと工場法など、フランスでございますと労働法典の中に関係規定がございます。アメリカでございますと、州際産業以外は、各州の工場法などによりまして使用者に対する義務規定が設けられておりますが、その内容はそれぞれ違いはございますが、共通しておりますのは、一つは機械の危険な部分に対しまして安全装置をしなければならないというような、施設についての制限をしておる。それから、特殊な設備についてのある程度の許認可等、制限を加えておるということ。それから、労働者の中で、特に女子年少者についての危険有害業務についての制限をしておるといったような点が各国共通の規制事項であると理解をいたしております。それと、いま一つの方法といたしましては、災害の予防のためにどうしておるかということでございます。予防手段になりますと、これはいろいろの方法がございますので、必ずしも法律では規制しておらずに、別な機関を通じまして予防対策を促進するという措置を講じておる例が多くございます。たとえばドイツで申し上げますと、労災保険組合という組合がございまして、その保険組合が組合の基金を用いまして予防に関する規程、たとえば災害防止規程をみずからつくり、その実行を組合員に対しまして徹底を期するといったようなたてまえをとっておりますし、それから、フランスにおきましても、これは保険団体でございますが、全国社会保障金庫及び地方社会保障金庫が、その事業の一部として、労働災害及び職業病の予防活動を行なっているということでございまして、もっぱら予防活動の資金面を金庫で負担しつつ、具体的な災害防止活動を展開いたしております。また、同じような例といたしましては、カナダのオンタリオ州におきましては、事業主団体でございますが、防止協会を設置いたしまして、そしてこの災害防止協会が予防活動を行なっている例があるわけでございます。で、個別的な産業ごと、職場ごとの災害防止につきましては、具体的なきめのこまかい施策を必要といたしますので、このような団体を使い、かつ、労災保険などのような保険の基金をそれに充当いたしまして活動を促進するという態勢をとっているのでございます。
きわめて簡単でございますが、大体の状況はそのような状況にあると私ども理解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/92
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093・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 これは主として具体的な法規上、法律上の問題と、それから予防に対する問題ですけれども、精神運動上の問題はどういうぐあいになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/93
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094・村上茂利
○政府委員(村上茂利君) この点につきましてはいろいろ差があるようでございますが、最も有名でございますのはアメリカにおきます安全運動、「安全第一」ということばが使われまして、積極的な安全第一主義が唱えられまして運動が展開されましたのはアメリカでございますが、そのような考え方は、ただいま申しましたように、ドイツ、フランス、それぞれの団体が中核になって推進いたしておるようでございます。
で、わが国の場合どうするかという問題がございますが、実は、既存の団体として全国産業安全連合会などのような団体もございまするけれども、もっと幅広い全国民的な立場から安全運動を展開する必要があると存じまして、国民安全の日の設定、それから、国民安全会議の設置などという構想がございまして、これは具体化したのでありますが、何分にも、国民安全会議の活動状況を見ますると、その活動が全国民的な規模において展開されているとは必ずしも言い得ない実情にあるかと存じます。したがいまして、目下作成しております災害防止対策の中におきまして、その国民安全会議をどうするかといったような問題をも問題として提起いたしまして、その改善、拡充といった問題も真剣に考えてみたい、かように考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/94
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095・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 いま外国のお話が出て、前段においては法典、後段の予防措置については、いろいろな組合組織、自主的な組織とか精神運動のお話がございました。しかし、一番大きいものが、局長控えて忘れられたと言うか知らぬけれども、抜けていやせぬかと私は思うわけです。それは、日本では安全衛生の運動がスローガンを掲げてやりましても、その企業における、または国全体の人権尊重という問題が私は何といったって根本をなしているんではないか、こういう気がするわけでございます。私も見てまいりましたが、いまヨーロッパの各国で社会常識になっている問題というのは何かというと、人間の能力で新しい機械をつくって生産を高めるのであるから、その主権者国民たる者は、その人生を楽しもうというところに、私は、経済においても、これがやはり基本になって生産と消費のバランスがとられて、人権尊重ということが企業の生産手段のあらゆるところに浸透しておるということが、この安全――災害をなくしていくという根本の問題ではないかと、私はそう思う。土曜、日曜を休んで、完全雇用をして、まだその上で機械の生産が高まれば労働時間を短くして、そしてその人生の幸福をもたらそうという、経済政策においても、あらゆる政策においてもこれが非常に浸透している。経済政策の根本にこの問題があるのではないかということが、何といってもこの災害をなくしていくということの根本問題ではないかというぐあいに私は見てまいったのですが、この点についてのお話がなかったので、ひとつお聞かせいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/95
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096・村上茂利
○政府委員(村上茂利君) 御指摘の点、まことにごもっともでございまして、労働省といたしましても、災害防止対策の第一の問題は人命尊重にあると存じまして、問題点の冒頭にこれを指摘いたしております。で、人命尊重観念を徹底するにはどうしたらよいかという点につきまして、その必要性を認識しつつも、具体的な手段、方法になりますと遺憾な点が少なくなかったようでございます。労働省といたしましては、安全衛生問題を義務教育課程及び中等教育課程において十分取り上げていただくように、実は相当長い期間折衝を続けておったのでございますが、三十六年度の教科書編さんにあたりましては、中等教育課程などにおきましても、労働安全、労働衛生に関する事項が教科書にかなり取り入れられたというような実績がございます。しかしながら、まだ十分とは申せませんので、今後の対策といたしましては、義務教育課程なり中等教育課程における労働安全、労働衛生の問題、さらには職業専門教育課程における教育という点につきまして、さらにさらに充実を期してまいりたいと考えておる次第でございます。しかし、その教科内容等につきましては、かなり具体的、技術的な問題がございまするので、関係機関に調査研究を依頼いたしまして、教科内容も充実したものにいたしたいと思っております。しかし、それは教育課程を通じての問題でございますけれども、全国的な、国民的な盛り上がりを期しますために、先ほど申しました国民安全の日の設定、安全週間なり衛生週間の運用方法をもっと改善するように検討を加えたい。また、国民安全会議なども設置いたしておりますけれども、これをほんとうに実のあるものに持っていきたいというような観点から、対策の一つとして取り上げておるような次第でございます。こういった点につきましても、さらにいろいろ御意見がございますれば拝聴いたしまして、さらにその充実を期してまいりたいと思っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/96
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097・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 その国内のそういう精神的な運動も、安全日をやるとか、安全をするためにどういう会議でどういうものをまとめて、何を実施して防ぐかというような問題も重要な問題だと私は思います。そのことはそのことでよろしいのでございますけれども、私が先ほどから言っている人命尊重というか、人間の能力で生み出した社会で人間が幸福になろうという心がまえの問題が、安全、災害防止に一番重要なウェートを持つのではないかということを私は申し上げているわけでございます。たとえばいま産業国といわれている国は土曜、日曜みんな休みで、家族と一緒に休養をし、再生産のために休養をとり、そうして人生を楽しんでいるわけでございます。それで、まあ規定以上のオーバー・タイムというようなものはほとんどございません。アメリカやカナダはないといっていいくらいですが、ヨーロッパに行きましても、せいぜい一週間に二、三時間の労働オーバー・タイム。これには、非常に栄養をつけるために、オーバー・タイムの給付といいましょうか、手当も非常に過大に手当が行なわれてカバーする努力がされておるわけです。ですから、トータルの労働時間といいましても、せいぜい四十五時間か六時間でございます。私は、日本の労働者が、農民も含めておりますけれども、労働省がお出しになる労働経済事情を見ましても、週四十八時間労働基準法できめられておって、四十九時間以上働いている人たちが、労働省が資料を毎月お出しになっておられますけれども、これを計算しても、四十九時間以上働いている人が二千五百万もおるというこの現実でございます。毎週六十時間以上働いている人が千二、三百万おるというこの現実でございます。私は、こういう現実というものがもっと摘出されて、労働災害のいま申し上げる対策の非常に大きな柱として取り上げていかるべきではないかと思う。私は多くは議論いたしませんけれども、また、働いている人がそう働かなければ暮らしが立たないという人もございましょう。わずかなウェートであっても、その中で、それを働かなければその発注、受注の生産が間に合わないから時間を働いている方々もございましょうけれども、概してその長時間労働をやっている人がどういう位置にあるかということ、私が見れば、やっぱり生活の問題が一番大きなウェートではなかろうかと思う。だから、そういう面でからだを切り取っているような感じの中で災害が多くなっているということも、私は考えてみる価値のある重要な問題ではなかろうか。こういう点が、先ほどの外国で行なわれた一つの法規または災害防止の自主的な運動、それから、全国民的な学校教育の中から生み起こしていく精神的な、国民全般的な運動との関連において労働災害というものを、やっぱりなるべく減していこう。だから、もしも万が一労働災害が起きたら、ドイツの炭鉱のように、二百何名ですか、一時に災害で死んだ、そして大統領命令で国民全部が喪に服するようなやっぱり運動が自然発生的になっていくというこのかまえが大事ではないか。私は、労働災害というものは、単に法律だけきめたってどうにもならぬ、労使の関係ですから、それを使用する経営者の頭、経営者ばかりとは申し上げませんけれども、そういう社会的な人命尊重の良織というものが生み起こす母体を労働災害の面から私は取り上げるべきではないか、こう思うわけでございます。そこで、外国の例を聞いてみたのでありますが、外国のそういう運動についての把握が、どうもあまりないようでありますけれども、そういう面をひとつとらえてやらないと、昭和三十二、三年ごろの七十万件からひとつも減っていない。最近また少しずつふえて、七十二、三万というところで毎年労働災害があるということは、実際外国に対しても、形の上においても恥ずかしい、国民にとって不幸ですから、外国と関係なしに、われわれの手で防いでいく方法を抜本的に、今度、労働大臣のお話のように、労働災害をなくそうという根本的なファイトで臨まれるようでありますから、私もぜひそういう問題に手をつけてもらわなければ、法規の問題や、その運動を起こしても、私はあまり実のあるものにならぬのじゃないかという気がいたすわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/97
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098・村上茂利
○政府委員(村上茂利君) 御指摘の点、まことにごもっともと存ずる次第でございますが、大統領が命令を出しまして喪に服するというような状態にまで高められますためには、一般的な認識なり労働態勢なり、いろいろな点においてさらに前進しなければならないと思うのでございますが、御指摘の中で、労働時間の問題のいろいろ御指摘がございました。労働省といたしましても、先ほども申しましたように、問題の第一として、人命尊重という理念的な面を指摘しておりますが、それに引き続きまして、第二の問題点として指摘いたしておりますのは、産業の構造なり体質からくる問題、労働市場の構造上のいろいろな問題からくる災害といった点につきまして問題を提起しておるような次第でございます。わが国全体の問題は別といたしまして、労働災害の基本的な要因としてそれらの問題が基本にあるということは、われわれも認識いたしておりますが、ただ、産業全体の問題としては、今後におけるわが国経済の成長発展の過程において解消されるべきものとは存じますけれども、たとえば港湾荷役事業とか、交通運輸事業というように、さしあたって問題のあります事業につきましては、関係審議会の答申もございますし、単に安全衛生という技術的な観点からばかりでなくて、当該事業の体質改善というような問題も基本問題として十分把握いたしていきたい。先生の御指摘の点は、非常に広範、かつ、深遠な問題でございますから、行政的に具体化するとすれば、そのような点から手がけてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/98
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099・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 そこで、まあきょうはちょっと時間がなくなったので、あまり議論することはできませんけれども、大まかな労働者の構想はわかりました。ですから、私もひとつ意見を申し上げて、そういう問題もぜひ労働災害の根本問題として関係審議会におかけになるなら、そういうことをもう一つ皆さん方の中で、外国のいまやっている安全衛生運動の表面の法律とか規制という運動、それから、国民運動ばかりでなしに、そういう基本的な問題についてもひとつ取り組んでいただいて、そしてやっていただかないと、きょうはそれ以上の議論はいたしませんけれども、これは何といっても経済上の問題にも非常に関係をしてきているわけでございますので、そういう点でも、ひとつ労働省は、労働者の保護、日本の生産の唯一のにない手である労働者、いまこそ産業労働力の中の五二、三%でありますけれども、どの国を見てみたって、日本と肩を並べてといいますか、日本と同じような産業労働力の中の雇用労働者というのは七〇から八〇ということになって、その労働力というものが国家の経済や国民生活のもう柱になってその国の経済が回転し、栄えていく。日本もこの状態でいけば、もうほんの短い期間のうちにそういうぐあいに整理されていかなければなりませんと私は思うわけであります。そんな六十時間以上千何百万人も働いているというようなことでいつまでも許しておける問題ではないわけでありますから、そうなってくると、何としても安全衛生の問題が真剣に考えておられないでいまの状態のままでいきますと、私はたいへんなことになりはせんかということを心配しているわけでございます。まあ労働大臣も、先ほどのような、あのような決意によって進められておるわけでありますから、きょうはもうこれ以上申し上げませんが、そういう意味で、あらゆる面がいまの労働大臣の決意のように、できるだけ短い期間で生きてきますように私はお願いをしたい。われわれも、具体的な問題で何がよいか、労働災害にいま何がいいか、どうすればいいかというような、むしろ労働大臣、労働省から、この担当をしている両院の社労委に、どういうことをすればできるかという、むしろそういう意味から意見を聞かれるような場をつくられたほうがいいんじゃないかくらいに私は思っておるわけです。これはそういう意味で、ひとつ機会があるたびにこういう問題をとらえて、よりよいものができますようにわれわれ申し上げていきたいと思いますから、ひとつ努力をして、いま労働大臣がこの労働災害の基本的な問題と取り組んでやろうというものに期待をしている人がたくさんおるわけですから、がんばっていただきたい。きょうのところはこれでやめておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/99
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100・鈴木強
○委員長(鈴木強君) 他に御発言もなければ、本件についての質疑はこの程度にとどめておきます。
本日はこれにて散会いたします。
午後二時五十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02019640409/100
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