1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年六月四日(木曜日)
午前十時三十六分開会
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委員長の異動
六月三日鈴木強君委員長辞任につ
き、その補欠として藤田藤太郎君を議
院において委員長に選任した。
委員の異動
六月四日
辞任 補欠選任
鈴木 強君 久保 等君
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出席者は左のとおり。
委員長 藤田藤太郎君
理事
亀井 光君
高野 一夫君
柳岡 秋夫君
委員
加藤 武徳君
紅露 みつ君
佐藤 芳男君
丸茂 重貞君
山下 春江君
山本 杉君
阿具根 登君
杉山善太郎君
小平 芳平君
村尾 重雄君
林 塩君
国務大臣
労 働 大 臣 大橋 武夫君
政府委員
労働大臣官房長 和田 勝美君
労働省労政局長 三治 重信君
労働省労働基準
局長 村上 茂利君
労働基準局賃金
部長 辻 英雄君
事務局側
常任委員会専門
員 増本 甲吉君
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本日の会議に付した案件
○理事の補欠互選の件
○中小企業退職金共済法の一部を改正
する法律案(内閣提出、衆議院送
付)
○労働問題に関する調査(最低資金等
に関する件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/0
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001・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
この際、一言あいさつを申し上げます。
このたび、皆さま方の御推挙により、本委員会の委員長に選任されましたが、もとより非才なものでございますので、いろいろと御迷惑をおかけすることもあろうかと存じます。幸い委員各位におかれましては、御経験、御造詣の深い方々ばかりでございますので、御鞭撻、御協力を賜わり、真に公正、かつ、民主的な本委員会の運営をはかり、負託されましたその職責を十分に果たしたいと念願いたしております。何とぞ未熟な私に対しまして、皆さま方の御支援、御協力を賜わりますよう、重ねてお願い申し上げてごあいさつにかえる次第でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/1
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002・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 理事の補欠互選に関する件を議題といたします。
昨日の委員長交代に伴い、理事が一名欠員となりましたので、その補欠互選を行ないます。互選は、投票の方法によらないで、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/2
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003・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 異議ないものと認めます。それでは、理事に藤原道子君を指名いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/3
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004・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案(衆議院送付)を議題といたします。
質疑のある方は、どうぞ順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/4
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005・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 きょうは大臣もおりますので、総括的に御質問したいと思いますが、昨年ですか、中小企業基本法というものが成立をしたわけですが、この中小企業基本法とこの中小企業退職金共済法の関連は一体どういうふうになっているのか、少なくとも、基本法というものができたからには、これに関連する法案は、すべてその基本法の精神に基づいて、整備あるいは改正をされていかなければならぬ、こういうふうに考えているわけでございますが、この点をお伺いをしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/5
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006・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) 中小企業基本法におきましては、御承知のとおり、第十六条に「(労働に関する施策)」と題しまして、「国は、中小企業における労働関係の適正化及び従業員の福祉の向上を図るため必要な施策を講ずるとともに、中小企業に必要な労働力の確保を図るため、職業訓練及び職業紹介の事業の充実等必要な施策を講ずるものとする。」、かように規定されているのでございます。労働省といたしましては、中小企業における労務問題は、従来から大企業に比較いたしまして、いろいろ社会的に困難な問題があると考えておりまするので、労働行政の監督、指導、両面にわたりまして中小企業を重点的にいたすという考えをもってまいっておるわけでございます。今年度の予算におきましても、昨年度に引き続きまして、特に中小企業に対する対策に予算も相当増額計上をいたしたような次第なのでございます。ただいま議題になっておりまする中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案も、この中小企業基本法と歩調を合わせ、中小企業の従業員の生活の安定、福祉の向上といったことをねらいとして改正しようといたしておる次第でございます。その範囲は、したがいまして、中小企業基本法に合わせまして、「三百人未満の労働者を雇用する事業」ということにいたしてあるわけでございます。今後におきましても、中小企業の労働問題は、日本の社会事情から見まして、労働問題としても最も困難な問題と考えますので、一そうの努力をいたすべきであるという覚悟をいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/6
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007・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 いまの大臣の答弁ですと、私のほうからそういう質問をしたので、そういうお答えをしたというふうにしか受け取れないわけです。と申しますのは、提案理由の説明の中には、一言もこの中小企業基本法の制定に伴って、それに関連をするこういう法律も改正をしていくのだというようなことが一言も載っておらないわけです。少なくとも、中小企業基本法が、中小企業の振興並びにそこに働く労働者の福祉の向上と労働条件の向上と、いま大臣も言われたような趣旨によって制定されておるとするならば、当然この中小企業退職金共済法の改正にあたっては、その趣旨にのっとったやはり改正というものが提案をされなければならない、こういうふうに私は思うのですが、その点再度お伺いをします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/7
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008・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) 私の申し上げた趣旨が提案理由の説明に際しまして十分に強調されなかった点は、まことに心外に存ずる点でございます。この際、遺憾に存ずるところでございます。しかしながら、ただ、その際に、簡単ではございまするが、「現行制度では、適用対象である中小企業者の範囲は、製造業等につきましては常用従業員数二百人以下に限られているのでありますが、昨年制定されました中小企業基本法におきまして、中小企業者の範囲は、製造業等について従業員数において、常用従業員数三百人以下としており、その企業の実態を見ました場合、退職金制度のないところが相当数あるのが実情であります。」と、かような実情から見てこれを提案したと、かように申し上げた次第であります。しかしながら、特に中小企業につきましては、労働行政においては、最近において重点的にこれを取り上げようという考えで進んでおるのでございまするが、その点が十分に強調されていなかったことは、私も説明が十分でなかったというふうに考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/8
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009・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 一応そういう考えのもとにこの改正もやっておるということでありますが、しからば、従業員三百人という数字は、その法に基づいて引き上げたならば、資本金の問題についてはどういうふうにお考えになっておるか。中小企業基本法の中では五千万円以下というのが一般の製造業、その他商業、サービスにおきましては一千万以下と、こういうふうに規定をされているわけですが、この法律の中では人数、従業員数のみに限っておりまして、資本金なり、あるいは投資額と申しますか、出資額等につきましては何ら触れられておらない、この点について確認をしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/9
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010・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) 確かに御指摘のように、今回の法律改正案は資本金の金額を問題とせず、単に雇用せられておる従業員の人数だけを問題としておるのでございますが、従来から、労働法規の関係におきましては、監督、指導上の便宜からいたしまして、従業者の人数によって事業の規模を認定していくというやり方でおるのでございまして、この点は、工場法以来、一貫して労働行政においてとってきた方式でございまして、今回の改正にあたりましても、従前のこの考え方を踏襲いたしたわけでございます。しかし、中小企業というものにつきましても、あるいは資本金というようなことを考えるというのが中小企業基本法の考え方であることは承知いたしております。したがって、金融の問題であるとか、そういった資金的な問題につきましては、そういったことは直ちに最初から頭に入れて措置していくということでありましょうが、今回は労働法規としてこの法案を考えておりまするので、一応従来からの考え方で人数に着眼をして規定をいたした次第なのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/10
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011・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 一般的な労働行政の中におけるそういう考え方は成り立つかもしれませんが、しかし、現在のこの非常に技術革新の激しい中で、単に従業員数のみをもってこれは中小企業だというふうに規定をすることは、私は非常に大きなあやまちをおかしかねないと思うのです。と申しますのは、先般配られました各企業。ことの「対資本限界雇用係数表」を見ましても、これは昭和三十六年ですが、三十六年におきましても、たとえば化学工業等におきましては、百万円の投資の中で、その雇用係数はわずかに〇・一くらいしかないということでございまして、現在の化学工業、あるいは電力産業にしても同じでございますけれども、私どもの地元である千葉の火力発電等を見ますと、あれだけの大きな設備を擁しながら、わずかに従業員は三百人そこそこ、こういうような職場でございます。これを見ますと、この人数のみによってこれを中小企業と限定をすることは、いわば私どもが俗に言っております大資本にますます奉仕をするというか、有利になるような法律にだんだんなっていく可能性が強くなって、本来の趣旨である中小零細企業の従業員に対して、職場の安定と、さらに福祉の向上をはかるという趣旨が無視をされて、そういう大企業に私どもの血税を融資をする、補助をする、こういう形になってくるのじゃないか、こういうふうに思うのですけれども、そういう点は、やはり十分今後検討をしていく必要があるのじゃないか、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/11
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012・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) ただいまのお話はまことにごもっともだと存じます。要するに、今回の改正案におきましては、できるだけ中小企業の恵まれない労働者のために労働行政の範囲を拡張していきたいという趣旨に出たものにほかならないのでございます。今後の運用にあたりましても、そういう趣旨で十分留意をいたしてまいりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/12
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013・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 そういう中小企業基本法で一応五千万なり一千万という規定があるわけでございますから、私は、この法律も、そういう趣旨に沿ったやはり運用というものをやってもらわないと、いま申し上げましたような非常なおかしな運用がなされる可能性があるというふうに危惧をいたします。
そこで、大企業におきましては——大企業と申しますか、人数が三百人くらいの職場におきましても、資本金が一億あるいは何億というような資本金を持った会社もあるわけですから、そういうところは、少なくとも、そういう退職金なり、あるいはその他の労働条件については、当然これは労働行政の本来のあり方からして、労働者の自主的な立場に立って、そして使用者と対等の立場できめていく、こういう労働行政の指導をしてもらって、そしてなかなかそういう方向に行けないような零細企業にこの法律を重点的に運用をしていくということが必要であろうと思います。そういうことで、この補助金の問題にしましても、この法律を適用してあげなければうまくいかないというような企業にもっと重点的に退職金を増額するための方法と申しますか、何らかの措置を講ずることができないかどうか。いま申し上げましたような二百五十人、三百人というような企業でも非常に大きな資本金の企業があるわけですから、そういうところは、ある程度自主的にやらせるか、あるいは補助金を少なくして、その分を五十人なり三十人なり、あるいは五人なりという中小零細企業に重点的に振り向けて、より退職金が多く支給されるような方法が望ましいわけでございますけれども、そういうことを考えてみることができないかどうか、その点をひとつお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/13
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014・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) お考えのような趣旨は、運用上のくふうによって、必ずしも不可能ではないように考えられます。というのは、たとい三百人以下の従業員を使用しておる工場でございましても、その経営内容、あるいは資本金等から考えまして、他の大企業に匹敵する待遇を労働者に講じ得る企業も少なくないわけでございます。そうした企業につきましては、この法律の退職金制度というようなものは、これは中小企業の恵まれない労働者に最小限度の福祉を享受さそうという趣旨から出ておるものでございまするから、堅実なる大企業的な水準から考えまするというと、事業主としては、より完備した退職金制度を労使間の話し合いによって設けるということが当然であるし、また、そういう考え方のもとに、大企業に対してはこの制度を適用しないということに相なっておると思うのでございます。したがって、御指摘のような人数は三百人以下でありましても、大企業にまさるとも劣らない内容を持っておる事業につきましては、運用にあたり、十分に労使双方を指導いたしまして、大企業に劣らないような制度に向かって前進させていくように留意をしていく、こういうことによりましてその事業の任意加入をできるだけ遠慮してもらうということにいたしまするならば、それによって浮いた金を一そう中小企業のほうへ回すことができると思うのでございます。いずれにいたしましても、そのためには零細企業等における補助金の増額というようなことが将来問題になると思うのでございます。実は、今年度の予算の編成に際しましても、労働省といたしましては、一応そうしたことも考えておったのでございますが、財源の都合で実現を見るに至りませんでした。これはまことに残念しごくに思っておるのであります。将来あらゆる機会を利用いたしまして、重ねてこれが実現に努力いたしたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/14
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015・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 いまのおことばでけっこうでございますが、できれば、この国の補助金の百分の五、あるいは百分の十というものをある程度段階をつけるか何かして、下のほうにより厚くしたひとつ方法も検討されて、早急にこの本来の法の精神に基づいた運用がはかられるようお願いをしたいというふうに思います。
それから、これは前にも私ちょっと質問をしたのでございますが、やはりこういう退職金共済もけっこうでございますが、やはりそれよりも、まず手かけていかなければならぬことは、やはりほんとうに零細企業、特に現在五人未満の事業所におきましては各種保険の適用がございません。ですから、そういう点をまず解決をするということが先決な、あるいは緊急を要する問題であろうというふうに思うのです。こういう点につきましても、ひとつその実現にいま政府としては努力をしているようでございますけれども、昭和四十一年度という目安でございますが、ひとつそれは必ず実現できるように御努力を願いたいと、こういうふうに思いますが、ひとつ御見解をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/15
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016・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) 従来から、社会保険の上におきましては、五人未満の事業所に雇用されておる労働者は非常に大きな盲点となっておったようでございます。しかしながら、社会保障という観点から考えまするときに、また、わが国の零細企業の労働者の実情を考えまするときに、社会保険の最も必要なのはこれら零細企業の従事者であるということは何人も疑う余地のないところでございます。ただ、これらの零細企業は非常にその企業数が多いものでございまするから、はたして事務的にこれを保険に包括いたしましてうまく運営ができるかどうか、いろいろ事務的に検討を要する問題がございましたために今日まで放置されてまいっておったわけでございます。私、就任以来、この点を深く考えまして、あらゆる事務的な困難を克服しても、この部門に社会保険を進出せしめることが今日最も必要である、かように考えまして事務当局を督励いたしまして、これが調査を進めておるところでございます。幸いにいたしまして、やはり同様な社会保険を管掌しておられまする厚生省におきましても、この労働省の考え方に協調されまして、労働省関係の社会保険を拡張するなら、厚生省関係の社会保険の拡張も同時に行ないたいという意向を表明されておるのでございます。したがいまして、保険料の徴収機構その他につきまして、社会保険の五人未満の拡大ということを両省所管の社会保険全般について進めてまいるということになりますと、両者の事務機構の協力ということが当然前提に相なりまするので、できれば末端機関は両省共通のものにしようじゃないかというようなことまでお話し合いを進めまして、いろいろ実施方法について調査、検討をいたしておる段階でございます。四十一年度ということを実施の目標として進んでおるのでございます。当初は相当長期の準備期間が必要だというふうに考えられましたが、できるだけ準備期間を短縮いたしまして、早期に実施するという考え方のもとに、着々準備を進めておるような状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/16
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017・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 最後に、この今度新しくできました特殊と申しますか、特定の業種の問題でございますが、これもひとつ建設業ということで、今回はそれのみに限られておりますけれども、その他にもいろいろ同じような労働者があるのじゃないかと思うのですね。したがって、今後そういう点につきましても、ひとつせっかく検討をしていただいて、このせっかく中小零細企業に働く労働者の福利の向上、あるいは労働条件の向上等を目的とした法律でございますから、そういう点の有効なひとつ運用をはかられるように希望しておきたいと思います。その中で、特にこの掛け金の納付月額が、一般の企業の労働者と違って、三十六カ月というようなことになっております。したがって、この点につきましては、衆議院段階におきましても附帯決議等でなされておりますけれども、一般の労働者と同じようにこの短縮を早急にはかられるということが必要かと思うのですけれども、そういう点についてもひとつ御見解を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/17
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018・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) 実は、建設業退職金共済制度は今回新しく実施しようというのでございまして、その保険経済の実情につきましては、今後実施の過程を通じて検討をしていかなければならない問題が多々あるのでございます。さような前提のもとに一応現行の法案を提案いたしたのでございまするが、要するに、恵まれない労働者の幸福のためにできるだけ協力をしようというのが主眼でございまするから、今後、経営の実情に応じ、可能なる限り、そういったお示しのような方向に向かって善処をいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/18
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019・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 他に御発言はございませんか。——他に御発言がなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/19
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020・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 異議ないものと認めます。
それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、どうぞ賛否を明らかにしてお述べを願います。
別に御発言もなければ、討論はないものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/20
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021・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 御異議ないものと認めます。
これより採決に入ります。中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の御挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/21
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022・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 全会一致と認めます。よって本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/22
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023・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 私は、この際、本案に対する各派共同提案にかかわる附帯決議案を提出いたします。案文を朗読いたしますので、御賛同をお願いいたしたいと思います。
中小企業退職金共済法の一部を
改正する法律案に対する附帯決政府は、速やかに左の事項の実現に努力すべきである。一、小零細企業労働者の退職金を増
額するため、国庫補助率を引き上
、げるよう努力すること。一、建設業等の特定業種退職金共済
制度の掛金納付月数が十二ケ月に
達したときは、退職金支給が行な
われるよう努力すること。
一、五人未満の企業の労働者に対す
る各種社会保険の完全適用を速や
かに実現するよう努力すること。
右決議する。
以上でございますので、よろしく御決議あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/23
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024・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) ただいま柳岡君より提出の附帯決議案を議題にいたします。
柳岡君提出の附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/24
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025・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 全会一致と認めます。よって柳岡君提出の附帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
労働大臣より発言を求めておられますので、これを許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/25
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026・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) ただいま本委員会におきまして、中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案に対する附帯決議が全会一致をもって可決せられました。政府は、この附帯決議の御趣旨に従いまして、今後万全の努力をいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/26
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027・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) なお、本院規則第七十二条により、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/27
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028・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/28
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029・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 労働問題に関する調査を議題にいたします。質疑の通告がありますので、順次これを許します。柳岡君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/29
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030・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 きょうは賃金一般問題につきまして政府の見解を伺っておきたいと思います。
まず、最初に、先般、公労協の賃金紛争にあたりまして、公労委から仲裁裁定が出されました。これに関連して、若干公労法第十六条との関係でお伺いをしたいわけでございますけれども、公労法第十六条の規定は「公共企業体等の予算上又は資金上、不可能な資金の支出を内容とするいかなる協定も、政府を拘束するものではない。」と、こういうふうに前段なっております。そこで、この条文の解釈のしかたでございますが、こういう条文があるから、公企体労働者と申しますか、公共企業体は予算上、資金上支出不可能な協定は結べないという意見と申しますか、そういう解釈があるように伺っておるわけでございます。しかし、この条文をずっと読んでみますと、決してそういうことではなしに、「政府を拘束するものではない。」とありますけれども、しかし、「前項の協定をしたときは、」と、こういうふうにありまして、公共企業体におきましても、当然予算上、資金上不可能な内容を持った協定でも、そういう内容でも労働協約が結べる、こういうふうに私は思うのでございますが、この点についての政府の解釈をお聞きしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/30
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031・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) 予算上、資金上の問題でございまするから、多くは賃金その他給与関係、あるいは厚生関係というようなことが問題になるであろうと思うのでございます。特に賃金につきましては、各公社法等には、それぞれ賃金を決定すべき基準が規定されておるのでございまして、それには生計費、また、民間の賃金水準、こういったものをもとにして賃金を決定しなければならないということに相なっておるのでございます。したがいまして、法律上、賃金に関する団体交渉を制約する規定はこの規定だけでございまして、公労法十六条というものは、そういう規定の拘束のもとに行なわれたる賃金協定の法律上の効力を規定いたしたわけでございます。したがって、予算上、資金上不可能な支出を内容とする協定というものが団体交渉において結ばれる場合があり得るという前提のもとに十六条の規定ができておると考えなければなりません。したがいまして、御質問の、予算上、資金上不可能なる支出を内容とした協定は法律上できるかできないかということにつきましては、そういう協定ができ上がる場合も公労法十六条は十分に予想しておる、こういうふうにお答えすべきだと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/31
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032・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 法律上その協定が実施をされるかどうかという問題については、この十六条に規制をされると思いますが、しかし、それは手続の問題で、国会の承認を得ればいいわけでございますから、いずれにしても、当事者間におきましてはそういう労働協約も結べる、いまの大臣の答弁でも、そういうような解釈にお伺いしていいわけであると思うのですが、それでようございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/32
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033・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) これはいま申し上げたのは、公労法十六条の関係ではそういうことを結べるたてまえになっているということを申し上げたのであります。しかしながら、実際最近の運営の実情を見ておりまするというと、御承知のように、公社の支出につきましては、一応予算ができております。そうして、その予算の中には給与総額というものがきめられております。予算というものの性質から考えてまいりまするというと、公社のすべての支出は予算によらなければならないわけでございまして、この公社の支出を内容とする一切の契約、したがって、協定もやはり予算の範囲内においてしなければならないというのが会計法上の原則であるわけでございます。で、そちらのほうから考えまするというと、公社としては、公労法十六条では予想しておるが、しかし、実際上財政法、会計法の関係から、公社の理事者が団体交渉において予算のワクを逸脱したような団体協約を結ぶことについては会計法上の拘束を受けるのではなかろうかと、こう思うのでございます。そうした点に、いわゆる現在の公社の理事者が団体交渉における当事者能力がないのではないかという問題が起こっておると思うのでございます。したがいまして、この問題は、公労法の考えているやり方と、その後財政法、会計法等、あるいは予算編成のしかたなどが変わってまいりましたために、現在における公社制度というものの間には多少の矛盾があるようでございます。この点で、当事者間の団体交渉というものは、非常に範囲の限られたものになりがちだと思うのでございます。したがいまして、四・一七のストに際しましても、この問題が労使の間で問題になりまして、公社制度について、特に当事者能力がないという点について制度の再検討が必要であるとされたゆえんであると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/33
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034・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 今回の仲裁裁定の実施にあたって、政府は補正予算は組まない、それぞれの企業体の中の予算の移流用なり、あるいは生産性を向上することによってそういう資金はできる、こういう方針をとっているようでございますが、そうしますと、資金上、予算上不可能なことではないという解釈もそこから成り立たないかと思うのですが、この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/34
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035・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) 公社が予算の移用、流用をいたしますにつきましては、御承知のとおり、大蔵大臣の承認を受けなければならぬのが現行法のたてまえでございます。したがって、大蔵大臣の承認がない限りは、公社自体にとりましては、予算のワクをこえた契約を結ぶということはできないと思うのです。で、その点に公社の当事者能力がないという原因があると思うのでございます。しかし、公労法におきましては、政府というものを問題にいたしておるわけでございます。公社がどうこうということではなくて、政府というのでございますか、大蔵大臣を含めた行政の最高責任者としての政府、この政府が予算上、資金上不可能であるかどうかということを判定するにあたりましては、現在の予算のたてまえに拘束されることなく、一段高い立場から予算の移用、流用をも含めまして、予算全体を検討した上で、実施できるかできないかということを判定していく、こういう立場にあろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/35
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036・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 公労法十六条を見てみますと、まあ「政府を拘束するものではない。」と書いてありますが、そういう協定をした場合は、政府は、その締結後十日以内に、事由を附し、これを国会に付議しなければならぬ。で、国会の承認が得られなければだめだというふうになってるのですね、政府が承認をしないのはだめだというふうにはなってないのです、国会の承認ですからね。そうすると、今回の、政府が予算の移流用なり生産性の向上による利潤の増加によってできるということになれば、私は、この公労法十六条の規定からいっても、これは資金上、予算上不可能な協定ではないと、こういうふうに解釈せざるを得ないんですがね、その点はいかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/36
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037・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) そのとおりでございまして、政府が移流用を決定し、予算上の措置を講じた場合におきましては、それはもはや予算上、資金上可能な支出に相なるのでございまするから、したがって、先般の公労委の仲裁裁定は、政府がその手続をとったときにおいて政府を拘束することに相なったわけでございます。したがって、現在は、政府はあの裁定に拘束されておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/37
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038・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 生産性を上げて、そこから上がってくる利潤によって裁定を実施していくということになれば、これは当然生産性を上げるということになりますれば、労働者の非常な協力が得られなくちゃならぬわけですね。したがって、協力を得るためには、賃金その他の労働条件についても相当考えていかなくちゃならぬということになるわけでございますから、国会の承認を得ないでそういう形で裁定の実施ができるということであれば、私は、しかも、生産性の向上によってできるんだということであれば、これは労使の自主性にまかして、そして労使の自主的な団体交渉によって、この賃金引き上げのために、お互いにそれじゃ生産性を上げるために協力をしていこうじゃないかと、こういう態勢をつくったほうが、公共企業体の運営上も、あるいは能率向上にも非常にいいんじゃないかというふうに思うんですね。しかも、今回の裁定は平均して二千円ちょっとですが、そういうことになれば、千円から二千円ぐらいの賃上げならば、これは企業努力によって、また、労使の協力によって自主的にこれは賃上げすることができるということに私は相なるのではないかと思うのですが、こういう点は、政府は、こういう公労法の十六条だとか、あるいはその他の条文をたてにして、当事者能力を、故意にと申しますか、極端にこの法の解釈を曲げて狭めているような感じを私は受けるんですが、そういう点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/38
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039・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) 団体交渉におきまする理事者側の態度というものが予算のワクというものに拘束をされて、ほとんど当事者としてのなすべきことをなさずにいるという感じは、これは一般に行なわれている見方であると思うのでございまして、私は、その点については全くそのように考えます。そこで、これを打開いたします方法としては、たとえばあらかじめ増額分をも含めて予算を用意しておくとか、あるいは、また、予算は予算として置いても、移流用については、大蔵大臣が理事者に対してある程度の了解を与えて、その了解の範囲内で団体交渉をやらせるとか、方法はいろいろ現行法のもとにおいても、団体交渉をもう少し実のあるものにするための行き方は考え得るのではないかと思うのでございますが、これらの問題をも含めまして、公社の制度についての再検討ということが、先般の総理と太田議長との会談でも約束されているのでございまして、この再検討が現在政府部内において準備されている段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/39
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040・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 いずれ私は、機会を見ましてそれぞれの公社当局に来ていただいて、この問題について、さらに掘り下げてまいりたいと思いますが、政府は、あるいは企業家は、生産性は上げなさい、生産性を上げれば賃金も上げてあげましょうと、こういうのがいつも言うことばですね。そうなれば、当然労働者は賃金引き上げのためにも——そういう考えではないにしても、とにかく俗に、うちの会社をつぶしちゃいかぬとか、あるいはうちの会社をもっとほかに負けないようにすればおれたちの給料も上がるんだというような気持ちも多分にあって、一生懸命努力をすると思うのです。で、そういうことが今回の仲裁裁定の中でも、政府も、そういうことを言わないにしても、裁定の実施にあたっての資金上のやりくりとして、生産性が当然上がって収入が上がるだろうから、それによってまかなえるのだという方針を出しているわけです。しかし、一方では、幾ら働いても、賃金の問題については、一切いま言われた政府、大蔵大臣が許可をしなければ上げることはできない、こういうことでは、私は、公共企業体の運営が、本来の公社制度の発足した趣旨からいって、非常に曲げられてきているのだというふうに思うのですね。公企体労働者の生産意欲と申しますか、勤労意欲というものは、非常にこの点からも阻害をされているのじゃないかというふうに思うわけでございまして、まあこの点については、ひとつ太田・池田両氏の会談の確認もあるわけでございますから、ひとつそういう点で早急に政府としても前向きの形での結論を出していただきたい、こういうふうに思うのでございます。
で、この問題はいずれあとにすることにいたしまして、きょうは最低賃金の問題について若干質問をしていきたいと思いますが、先般のILO条約八十七号の批准に関連をいたしまして、日本政府はなかなか条約を批准しないということから、ILOの中で、日本に対する実情調査調停委員会が設置をされて、その委員長であるドライヤー氏が、先般書簡を日本政府並びに日本の労働組合に出してきております。その中で、あらゆる日本の労働法令を送れと、こういう要求があろうかと思うのですね。その中には最低賃金法も含まれていると思うのです。こういう状況の中で、現在の最低賃金法が、そういうILOという国際舞台に引き出された場合に、はたしてこれがILO当局と申しますか、調停委員会の中でどのような見方をとられるか、あるいはこれに対して政府はどういう考えを持っておられるか、その点をまずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/40
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041・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) 現行最低賃金法の制定に際しまして、ILO条約二十六号を批准をいたしたい、そのためにこの法案が必要だということで提案をされておったわけなんでございます。幸いにいたしまして、当時法案は国会で御採決になりましたが、その後ILOと打ち合わせをいたしました結果、ILO条約第二十六号におきましては、特に関係のある使用者、労働者は最低賃金決定制度の運用に参与しなければならないという第三条第二項の規定がございます。この規定との関係において、現行最低賃金法が採用いたしておりまするいわゆる業者間協定の方式は、はたしてこの条約の要求する要件を満たしておるかどうか、この点にいささか疑問があるわけなんでございます。そこで、ただいまILOの専門委員会におきまして、この問題について引き続き検討中でございまして、その結果、条約の要件にかなうということでございまするならば、ILO条約二十六号は直ちに批准し得るものでございます。しかし、なかなかその検討も、もう相当前から続いておりまするので、早急に結論を得るということもむずかしいのではないかというふうに私どもは一応考えざるを得ない状況でございます。さような状況のもとにおきまして、最近において、国内において最低賃金制度の再検討という機運が高まってまいりましたので、労働省といたしましては、最低賃金の趣旨から考えて、業者間協定という方式から、行政機関が職権で決定していくという方式に移行させることが適当だ、かように考えまして、この問題についての労使間の意見調整機関でございまする最低賃金審議会に対しまして検討をお願いいたしたのであります。その結果は、この審議会においても、最低賃金法の運用として、いままで業者間協定一本に偏しておったのを、今後においては行政機関の職権による決定方式をも並行して行なっていく、そうして三年間の実績を見た上で、日本の現行制度について根本的に再検討を行なうのが適当だという方針を答申されたわけなのでございます。政府といたしましては、この答申を直ちに採用いたしまして、これに従って、目下最低賃金の普及につとめたいと思っておるのでございまするが、いずれにいたしましても、早晩、現行最低賃金法につきましては再検討の時期が来ておるように思いまするので、運用の実績の固まるここ二、三年の推移を見た上で、この審議会において将来の制度についての根本的な考え方を御決定いただきたい、それに従って必要な法律の改正に進みたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/41
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042・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 政府は、よく検討してとか、あるいは審議会の意見を聞いてとかいうことが常套の手段というか、ことばでございますけれども、しかし、ドライヤー書簡によって最低賃金法がILOに送られ、それが克明にされて、その中でいま検討中だということで、はたしてILOという機関に対してごまかすことができるかどうかということを私は危惧するわけですね。いままでILO条約の批准についても、何とか批准をするように努力をしておりますとか何とか、何回かILOに回答しておきながら、いまだに批准をしないで今回のような強硬措置がILOによってとられたということになりますれば、この最低賃金法の問題にしても、私は、その内容からいって、いま大臣が認めておられるように、決して労働者が参画をする内容ではないし、企業者の支払い能力のみが優先的に取り扱われてきめられるというようなこの業者間協定の現行の最賃法が、ILOの舞台でこれが検討中だからということだけで、ILOで了承されるというふうには、私は、ちょっと問題があろうかと思います。特に今回の検討にあたって、職権方式をこれから重点的にしていくということでも、職権方式ということ自体、やはり本来の賃金の決定にあたり、労使対等という原則からしても、私は問題があろうと思うのです。したがって、そういう点を私は非常に危惧をいたしますし、日本の政府の立場も、非常に困難な立場に追い込まれるのではないか、こういうふうに思いますのでお伺いしておるわけでございますが、そういう点をひとつ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/42
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043・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) ILO条約八十七号につきましは、御承知のように、ILOにおいても重大な問題となり、今回結社の自山委員会から調査調停委員の派遣ということにまで発展をいたしてまいっておるのでございます。しかしながら、これは八十七号条約の内容となっておりまする結社の自由、団結権の保障という問題は労働基本権の問題でございまして、ILO憲章前文、あるいはフィラデルフィア宣言等においても、特にILOの最も基本的な条約とされており、また、加盟国でありまする以上は、たとい条約批准の手続をとっておらない国においても、この問題はILOの重大なる関心の的となるべき性格の事柄なのでございます。しかるに、ILO条約二十六号の内容となっておりまする最低賃金の問題は、これらの基本権の問題と違っておりまして、従来からこれに対するILOの取り扱いは、批准をいたしたる国が条約を尊重するということになっておるわけでございまして、わが国といたしましては、現在最低賃金法を制定いたし、実施いたしておりまするので、これで二十六号条約の批准ができるものならば直ちにしよう、こういうことを考えておるわけでございまして、この日本政府の考え方は、日本政府としての自主的な判断に基づくものであり、ILOとして、この日本政府の態度についてかれこれ申すべき立場にはないと考えておるのでございます。ことに、また、今回の実情調査調停委員会は、ILO理事会によって付託された案件についてのみの調査でございます。日本における最低賃金の決定の制度というようなものを調査するということは、その当然の権限には入っておらないように思います。ただ、本来の事件の調査の必要な参考資料として国内法令すべてを提出するようにと言われておるのにすぎないのでございます。したがって、最低賃金法についての先ほどの政府のとっておりまする措置というものは、これはILOに要求されて、あるいはILOとの関係上、責任としてやっておることではなく、日本の労働行政ということを考え、日本の最低賃金制度というものを考えた場合において、労働省としては自主的にこういうふうに進むべきだという判断をいたし、その判断のもとに進めておる日本の自主的な政策上の問題であるのでございます。この点を御理解いただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/43
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044・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 ILO八十七号条約は、もちろん労働基本権にかかわる問題であろうかと思いますが、しかし、最低賃金も、私は決して無関係ではないと思います。特に日本の最低賃金法の内容を見ました場合、一体何のために労働者は団結をするのかということです。団結をするのは、やはりみずからの労働条件を向上させるという、労働条件の中心は何かといえば賃金の問題です。賃金は何かということになりますと、これは労使対等の立場で決定をするというのが原則です。これはILOでも認めておると思うのです。二十六号の中でも、最低賃金を決定する場合には労働者を参考させなければならぬということを言っておるのですからね。ところが、日本の最低賃金法の中には労働者がはいれない、使用者が一方的にきめる内容になっておるということになれば、これは労働者の基本的な団結権というものを日本では政府は認めていないのじゃないかということに私はつながっていくのじゃないか、こういうふうに思うのです。したがって、ILO八十七号の問題とこの最低賃金法の問題は、私は決して無関係ではない。ですから、ドライヤーの書簡によっても、おそらくこういう法令もすべて提出をしなさいということで言ってきたのではないかと、こういうふうに思うのですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/44
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045・村上茂利
○政府委員(村上茂利君) 先ほど来、ILO第二十六号条約の問題について御指摘がございましたが、この二十六号条約自体は、第一条に規定されておりますように、「労働協約その他の方法により賃金を有効に規制するいかなる措置も存在しておらず、かつ、賃金が例外的に低い若干の産業又は産業の部分において使用される労働者のため最低資金率を決定することができる制度を設立し、又は維持することを約束する。」と、こういう規定のしかたになっておりまして、一方においては団体交渉権なりその他の労働基本権が認められており、労働協約が締結し得る、それによって最低賃金が決定し得るという制度が確立しておる場合は、この第一条で指摘しているような心配がないような状態であるわけでございます。しかしながら、若干の産業においていろいろ問題があるという場合には、この第一条の趣旨、目的はかなり達成しておるとしましても、さらに政策的配慮から最低賃金制度を確立する、こういうことでなければならないという立場からわが国におきましても最低賃金法が制定されたというふうに私どもは理解いたしておりまして、直ちにこの二十六号条約から、どんな場合でも最低賃金制度を創設しなければならないという解釈は導き出されないと思うのでございます。しかし、それは条約の解釈の問題でありまして、精神といたしましては、できるだけ適切な最低賃金制度を確立するということは望ましいことでございますので、先ほど大臣がお答え申し上げましたとおり、この二十六号条約の中でも、解釈に非常に微妙な点、または技術的な点につきまして解釈を固めると同時に、実体の面からもそういった水準に近づける努力が根本的に必要じゃなかろうかと考えまして努力をいたしているような次第でございます。端的に申しますならば、たとえば関係労使の代表という場合に、それは審議会方式ではたして満たされるものかどうか、そういった審議会なり委員会の方式自体について、どの程度の状態であるならば当該関係労使の代表の意見を聞いたことになるのか、そういった問題もあるわけでございまして、それは法律で確立されなければならないか、あるいは制度上、運用上当該業種の労働者の意見を別に聞く制度をつくったならば条約が批准可能ではなかろうかといったような問題もあるわけでございます。しかしながら、先ほど申し上げましたように、職権決定方式を幅広く行ない、かつ、業種の選定、最低賃金額の目安の決定そのものを行なって、業者間協定からそういった方向に大きな転換をいたそう、こういう段階に臨んでいるわけでありまして、そういった運用上の成果を見つつ、この二十六号条約批准の問題についても対処したいというふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/45
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046・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) なお、ちょっと補足して申し上げたいと存ずるのでございますが、御承知のとおり、わが国の最低賃金は法律をもって制定されております。したがって、この制度を改正するには法律の改正が当然必要なのでございますが、この法律の改正を実現しようといたしまするというと、単に労働者の理解と協力を得ることばかりではなく、やはり使用者の理解と協力を得るということがこの法律の改正を可能にし、また、その後の運用をスムーズにし、もって法律改正の趣旨を実現するゆえんである、こういうふうに私としては考えているわけなのでございます。したがいまして、総評その他の労働組合から、最低賃金制度の改正につきまして、強い要望が出ていることは申すまでもないのでございますが、これを実現するために使用者の理解と協力を促す、こういうことが当然労働省としてまず第一にやらなければならぬ責任だと、こういうふうに考えまして、私どもといたしましては、一昨年以来、この線に沿って努力をいたしてまいっているわけなのでございまして、決してこの問題をいたずらに延期しようというような考えで二年とか三年とか申しているのではございません。できるだけこれを円滑に、そうして労働政策の前向きの正しい線に沿ってすみやかに解決をしたい、そのために努力をいたしているわけなのでありまして、ただ、われわれが微力でありますので、相当長い期間を要することばまことに残念でございますが、しかし、われわれとしましては、できるだけ前向きの努力を続けておるということを御理解の上、この上とも御指導、御鞭撻をお願いいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/46
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047・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 委員長が発言して悪いのですけれども、柳岡君のいま言っておるのは、二十六号という、これは四十年前の条約ですけれども、条約は批准して一年の間に国内関係法律を改正したらいいというのがILOの決定になっておるわけなんです。そこで、最低賃金をこしらえようというのでありますから、いまの問題は、いかなる場合においても労使が同数の代表によって云々というのが大体賃金をきめる勧告の制度の規定やその他にも出ているわけですから、そういうのと、いまの大臣がおっしゃっている業者間協定から職権を中心にした最低賃金でいこうという努力の問題があって、それがそのまあ最低賃金委員会の答申が三年の間にということであるけれども、そこらあたりの問題が少し何を基本にして出てくるか、形の上で何をどういうかっこうで労働省が検討されていくかということを、ずばっとひとつ例をあげてお答えになれば柳岡君の解明が一ぺんにできるのじゃないか、私は聞いていてそう思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/47
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048・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) ただいま委員長から御懇篤な御注意がございました。その点について申し上げたいと存じます。私どもは、日本の最低賃金制度につきましても、国際基準としてILOが採択いたしておりまするILO条約二十六号の実現に向かってすみやかに進めたいという熱意を十分に持っておるわけでございます。ところで、五年前におきましてILOの二十六号条約の要求を満たすという意味で制定された現在の最低賃金法が、残念なことに、いろいろ疑問点があるようでございます。そこで、この疑問点について、ただいまILOの専門委員の解釈の決定を待っておるのでございまするが、かりにこれがILO条約二十六号に照らして適当であるという判定が下されたにいたしましても、ILO条約二十六号の趣旨、精神から申しまして、業者間協定を主体とした現在の制度というものは、決して今後の日本の進んだ労働行政というたてまえから言うと、満足すべきものとは考えていないのでございます。したがって、これを改善してILO条約二十六号の要求しておる完全な形にすみやかに持っていきたい。それについては、先ほど申し上げましたるごとく、法律の制定、あるいは改正法の実施等については、労働者ばかりでなく、使用者側の十分なる協力も得なければならない。そこで、使用者の理解、協力を得るようにしなければならぬのでございますが、なかなか二年前の状況では、労働省が直ちに二十六号に完全に適合するような改正案を思いついたところで、それが使用者側に受け入れられるような状況ではなかったのであります。しかし、前進するためには道を開いていかなければなりません。その道を開く方法といたしまして、現行制度においては、幸いなことに業者間協定のほかに、行政機関の職権による決定方式というものがある。ところが、法律制定当時の周囲の情勢から、当分の間は業者間協定を主体にして運用すべきであって、職権方式は用うるべきではないというような空気でございまして、そういう趣旨で運営されてきておったのであります。そこで、この空気をまず打破する必要がある。そこで、労働省といたしましては、職権方式を用いて、もっと徹底する必要があるのじゃないかということで、審議会の労使のお話し合いをいたしましたところ、幸いにして職権方式もやっていこうじゃないかということに相なったのであります。したがって、職権方式というものを通じて、この最低賃金をもっともっと普及させていきまするなら、最低賃金の決定というものは、決して使用者にとって危険、不利益なるものではないということがわかっていくだろう、そうすれば最低賃金の正しい方式というものについての使用者側の理解も進められ、新しい法律の制定に対して協力するような機運が必ずやできる、その機運をつくりながら新しい制度の調査、研究をして、機運のでき上がったところで新しい法律を国会に提案しよう、こういう考え方で着々スケジュールを進めておるというのがただいまの段階でございます。微力でございまするので、なかなかどうも御期待のように早期に実現はできませんけれども、いましばらく御猶予を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/48
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049・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 ILOに対しての疑問点についてただしておる、こういうことですが、そういうこそくなことをやらずに、やっぱりこの際抜本的に改正して、すっきりとILO条約の趣旨に沿って改正をしていく方向をとるのが一番いいというふうに私は思うのです。しかし、いま大臣の言われたように、使用者の協力も得なければならないというようなことで、過渡的に職権方式をとっていきたい、かようなことでございますが、私も、やはり職権方式というものは、そうやたらにやるべきものではないというふうに思うのですね。やはり賃金というものは労使対等の立場で決定をするというのが原則ですから、やはりそれでなおかつうまくいかない場合に、このいわゆる権力による決定方式というものが出てくるというふうに、これは一般の常識じゃないかと私は思うのですが、お互いに労使が話し合って、そして、これでいいということをきめるのが私は一番いい方法であって、それでまとまらない場合に初めて職権方式というのが出てくるということでございますが、しかし、現在の情勢はなかなかそうもいかないということで、職権方式でやっていくというのがこの答申案の内容にもなっておるのでございますが、しかし、私は、こういう問題は非常におそいと思うのです。というのは、所得倍増計画が昭和三十年、あるいは三十二年ころから急速に進められて、日本の産業構造、あるいは経済上の非常に大きな変革を来たしてきたわけですね。したがって、政府の所得倍増計画の中におきましても、やはり今後の労働者の賃金はどうあるべきかというものは、一応ビジョンとして計画をされておったと思うのですよ。ですから、その際に、この最低賃金法についても、当然本来の最低賃金のあり方に沿った法の制定というものをやるべきではないかというように思うのです。私ども社会党が、いわゆる三十四年にこの制定をされた現在の業者間協定を内容とする最賃法に強力に反対したこともそこに私はあろうかと思うのですね。したがって、二、三年前から、日本の賃金のあり方というものを非常に大きな問題として提起をされる、政府も、賃金というものは一体どういうところから見て検討していったらいいかというようなことを賃金研究会に諮問いたしておるわけですね。この賃金研究会で言っておるように、この労働力の需給関係の問題、あるいは技術革新の進展と産業構造の変革の問題、あるいは戦後における労働者の意識の問題、こういうものから在来の日本の賃金制度というものを根本的に検討していく必要があるんじゃないか、こういうことを言っておるわけです。ですから、私は、政府は当然所得倍増計画を策定する際に、いまのようなILOに疑問点をたださなければならぬような内容の最賃法ではなくして、もっとすっきりした最賃法をその際決定をして、そして所得倍増計画を進めれば、中小企業、零細企業ではこういう事態が起こってくるのですよ。政府は、おそらく現在のような状態が起こるとは思っていなかったかもしれませんけれども、そういう状態がいろいろ想定をされるということをやはり使用者側にも啓蒙をして、そして最賃法の本来のあり方の法制定を私はすべきではなかったかと、こういうふうに思うのです。しかし、それは過去のことでございますから、いまさら私は言いませんけれども、今後の賃金のあり方ですね、これについて、労働大臣は、今回の第四十六通常国会の開会にあたっての所信表明の中で、労働力の需給関係の不均衡の是正、労働力の有効適切な活用について施策を述べられております。その中で、一つには職業安定機能の充実、それから労働者住宅の建設、確保、こういうことを言われておるわけですが、もちろん最低賃金制についてもそのあとで述べられております。しかし、私は、こういうことも必要であろうけれども、この賃金というものについて、労働力需給関係の不均衡を是正するためにも、あるいは労働力の保全をして有効にそれを使うためにも、私は、最低賃金という問題について、もっと積極的な方針なり施策というものをこの国会あたりに提案されてしかるべきではなかったかと、こういうふうに思うのですが、そういう点、非常に大臣は先ほどからいんぎんに答弁されておりますので、あまり追及はしたくないのですが、そういう点についてひとつお答えを願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/49
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050・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) 私も、周囲の情勢が許しまするならば、この国会で提案したいぐらいの気持ちでございます。何ぶんにも最低賃金の制度は日本では非常におくれてきておるのでございます。元来、最低賃金の制度というものは、これは一般の賃金水準を引き上げるというような考え方から出発したものではなく、特に低賃金労働の解消という趣旨から出発したものでございまするが、それらの点についての一般の考え方もまだはっきりしていないような点があるような状況でございます。しかし、事柄はできるだけ急速に運ぶべきだと存じますので、この上とも前向きの姿でもって、急ぎ足で進みたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/50
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051・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 きょうは総括的な問題について御質問いたしまして、いずれまた現在の業者間協定を内容とする現行法についての問題点、あるいは今後の方針等について私どものほうの一応の方針もございますので、そういう点も含めて討論をしてまいりたいというふうに思いますので、一応きょうはこれで質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/51
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052・藤田藤太郎
○委員長(藤田藤太郎君) 他に御発言がなければ、これをもって委員会を終わりたいと思います。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X03019640604/52
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