1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年五月七日(木曜日)
午前十時五十二分開会
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出席者は左のとおり。
理事
上原 正吉君
近藤 信一君
田畑 金光君
委員
岸田 幸雄君
剱木 亨弘君
小林 英三君
豊田 雅孝君
八木 一郎君
吉武 恵市君
阿部 竹松君
大矢 正君
中田 吉雄君
藤田 進君
奥 むめお君
国務大臣
通商産業大臣 福田 一君
政府委員
通商産業政務次
官 竹下 登君
通商産業大臣官
房長 川出 千速君
通商産業省通商
局長事務代理 大慈彌嘉久君
事務局側
常任委員会専門
員 小田橋貞壽君
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本日の会議に付した案件
○輸出保険法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
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〔理事上原正吉君委員長席に着く〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X02619640507/0
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001・上原正吉
○理事(上原正吉君) ただいまから商工委員会を開会いたします。
まず、委員長及び理事打ち合わせ会の協議事項について御報告いたします。
本日は、輸出保険法の一部を改正する法律案について残余の質疑の後、討論採決を行なうことになりました。なお、午後は、すでにお知らせいたしましたように、視察にまいりますから、多数の御参加をお願いいたします。
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002・上原正吉
○理事(上原正吉君) 輸出保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。
前回に引き続き質疑を行ないます。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X02619640507/2
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003・田畑金光
○田畑金光君 私は、大臣に経済外交という問題で二、三お尋ねしたいと、この思っておりましたが、大臣が見えるまで、これに関連して次長にお尋ねしたいと思うのです。
実は、これは古い話ですが、記録をゆうべ読んでみますと、昭和二十九年の第十九国会で取り上げられております米国の可燃性織物禁止法、この問題が当時国会で非常に重要な問題になったわけです。と申しますのは、この法律ができたことによって、御承知のように一定の可燃性織物あるいは衣料を米国内で製造、販売すること、または米国への輸入を禁止するということ、こういうことになったわけであります。ところが、この法律が米国の議会で成立したのが昭和二十八年六月三十日、すなわち前の年の六月三十日に法律が成立したにかかわらず、日本のほうでこの実情を知ったというのがあくる年の二月下旬になったわけです。それで当時輸出業者あるいは生産者は非常な損失をこうむるという事態になって、これが輸出保険によって損失を補償すると、こういうようなことになったわけでありますが、この問題について、このような場合はいまも輸出保険で損失を補償するという政府の方針に変わりはないのかどうかという点ですね、この点についてまずお尋ねしておきたいと思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X02619640507/3
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004・大慈彌嘉久
○政府委員(大慈彌嘉久君) 先生御指摘のように、一九五四年から可燃性織物法というのがアメリカにおいて施行されまして、検査に不合格になった織物は米国内で販売を禁止される、こういうことになっているわけでございます。で、お尋ねの保険の事故の対象となるかということでございますが、非常危険の対象となりまして、保険金を支払うこういうことになっておりまして、方針は変わっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X02619640507/4
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005・田畑金光
○田畑金光君 突然質問したので、次長もあるいは資料を持ってきておらぬのかどうか知りませんが、それならなおお尋ねしたいのですが、あのアメリカの国内法律の施行によって、当時また日本としてもいろいろハンカチーフとかスカーフ等について免除措置の外交折衝も努力したはずですが、どういう結果になっておるのか、どの程度の被害であの問題は処理されているのか、現行のこの法律の実施についてはどのような状態になっているのか、この点についてひとつ資料等方あれば、御説明いただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X02619640507/5
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006・大慈彌嘉久
○政府委員(大慈彌嘉久君) 前回問題になりましたのは、昭和二十九年の七月から昭和三十年の一月まででございます。損害が発生したということで、保険金の支払いが行なわれましたものは、件数にしまして四十件でございます。保険金額は八千九百四十六万七千円、支払い保険金の額は四百二十三万二千円、こういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X02619640507/6
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007・田畑金光
○田畑金光君 現在、また米国でこの法律を強化し、あるいまもっと範囲を広げるという動きもあるやに聞いているわけです。たとえば旭化成の製品であるベンベルグ等もこの中に入れるというような動きや話し合いもあるやに聞いているわけですが、この点について通産省としてはどのように情報等をキャッチしておられるのか、その法律をめぐるアメリカの国内の動き等について、あるいは議会筋等の動きについて、どうなっているのか、これを御存じであればお話し顔いたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X02619640507/7
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008・大慈彌嘉久
○政府委員(大慈彌嘉久君) 最近の経緯でございますが、御指摘になりましたように、旭化成がベンベルグの製品を輸出しているわけでございますが、旭化成は一九五八年からベンベルグの製品の輸出をいたしておりまして、いままではさして問題になってなかったわけでございますが、昨年の九月にジョーゼット・クレープという製品でございますが、それをアメリカのFTC、これは連邦の取引委員会でございますが、そこが持ち帰りまして試験をしたら不合格になったと、こういうことから問題が出たわけでございます。それで、問題になりましたときに、政府としてはしばしばアメリカの関係当局と接触をいたしまして、テストの方法に問題があるのではないかと、それから従来は試験にパスをしていたわけでございますから、試験方法が変わったというために非常に変わった結果が出るというようなことになったのは好ましくないと、それから輸入制限的な意図でこういう検査方法が変わりましたりして制限をされたのは思わしくないというようなことを、再度申し入れをいたしたりした経過がございます。で、最終的には米国内にあります同種の製品を回収処分するということになったわけでありますが、その後は防燃加工の成果もあがりまして、ことしに入りましてからはずっと回復を見ております。このような動きが輸入制限的な動きになりまして、今後ほかの絹、人絹織物等に広がっていくということは最も避けなければならないことでございまして、これは十分注意をしてやっていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X02619640507/8
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009・田畑金光
○田畑金光君 いまお話の中にありましたように、試験のやり方によって合格不合格品が出てきて、まあ試験の内容、方法を変えることによって、いまお話しのように、この法律に照らして国内で販売したやつを回収処分をしたと、こういうことになっておりますが、それによってどの程度の損失をこうむっておるのか、あるいはまたその損失カバーについてはどういう措置がとられておるのか、この点ひとつ説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X02619640507/9
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010・大慈彌嘉久
○政府委員(大慈彌嘉久君) 先ほど申し上げましたように、問題になりました期間は昨年の八月から十二月ごろであります。この期間のものにつきまして保険がかかっておりますのが百三十九件ございまして、輸出代金の金額で十五億八千万円でございます。で、検査方法が変わったために販売できなくなったというふうなことがはっきり証明ができますと、保険事項として支払いをすると、こういう方針でおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X02619640507/10
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011・田畑金光
○田畑金光君 この種問題というのは、また他に波及するというような危険性もなきにしもあらずだし、問題はそれを事前に情報をつかんで、それに対する善後措置、防止措置を講ずるということが大事だと思うのですが、そういう点についてはどういう当局としては努力を払っておられるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X02619640507/11
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012・大慈彌嘉久
○政府委員(大慈彌嘉久君) 先生の御指摘のとおりほかの製品——特に絹、人絹等にこういう問題が波及をするということは非常に心配でもございますし、大きな影響もあるわけでございますので、十分注意をいたしまして、情一報のキャッチをし次第アメリカ政府当局にも注意を喚起する、そういうことで対処していきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X02619640507/12
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013・田畑金光
○田畑金光君 私、大臣に二、三経済外交という点でお尋ねしたいのですが、いま輸出保険法の一部改正が採決の段階にきているわけで、この法律の趣旨にもありますように、輸出保険の強化であるとか、対象の範囲を拡大するとか、保険料率の引き下げ等によって輸出の振興をはかることが、国民経済の発展に必要であるということ、このことは輸出保険審議会の答申のとおりだと、こう思うわけです。ただ先ほど大臣の来られる前に、次長に二、三お尋ねしたわけですが、それはかつてこの国会で問題となりました米国の可燃性織物禁止法の成立をめぐって、この法律が昭和二十八年の六月三十日にアメリカの議会を通過した、ところが、日本でこのことがわかったのは、あくる年の二月前後だ、こういうことですね。結局問題は、輸出業者や生産者の損失は輸出保険でカバーされたわけです。しかも、もしその情報が事前に明らかであり、またそれに応ずる対策等がとられて、保険を必要としないようなことになれば、なお一そう国家的な利益が確保されたことだと思うのですね。そういう点から見たとき、私はこの経済外交の非常な欠除が、あの問題についてはああいう結果を生んだと、こう考えているわけです。
その後事例がなかったかということを先ほどお尋ねしますと、昨年の秋に、すでにアメリカにおいては旭化成の製品であるベンベルグについて、同じような取り扱いを受けた事例があるわけですね。そういうことを見たときに、この経済外交を通じ、情報を正確に把握して、随時適切な手を打つということが、非常にこれは大事なことだ、こういうような感じを持つわけで、その点についての大臣のひとつお考えを承っておきたい、こう考えたわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X02619640507/13
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014・福田一
○国務大臣(福田一君) まことに適切な御意見でございまして、われわれといたしましても、ままその種のことがないわけではないので、そこで私は非常に御心配の点について、あるいは誤解されている面があるのではないかと思うのですが、これは私はイギリスにしてもアメリカにしても、どこの国でも相手は万全のものだ、絶対よその国に対して変なことはしないのだ、こう思い過ぎてやっていきますと、なかなかそうはいかない。これは自由主義の一つの欠陥があらわれておると思う。それは選挙制度にどうしても依存しますというと、選挙地盤とか選挙区の人とか、こういうものの発言力が強くなる。あるいはその業種から選ばれておるというと、その業種の利益を先行きせるというような場合が、これは日本においてもあるが、アメリカ、イギリス等においてもその事実は全然ないとは言えないと思うのであります。そういうようなことをもっとよく認識をいたしまして、実を言うと、取引のかけ引きなんかもいろいろ問題があるわけなんでございまして、私はそういうことは、日本としては間違いなくやっておる場合、向こうがそういうような変な手に出てくるというと非常に不愉快な感じを持つ、国民自体から言っても、われわれはちゃんとしているのに、何で向こうはそんなことをするのかというような感触を持たれる場合が非常に多いと思いますが、これはもっとアメリカのいわゆる民衆に、こういう思想というか、そういうことでは困るのだということをよくわからせるようにいたしませんというと、実際問題としては、案外政治がそういうふうに場合によってはいわゆる陳情によって曲げられておるという場合もあると私は思っております。それをなくする工夫はどうすればいいかというと、日本の真意というものがどういうものがどういうところにあるか、アメリカの政府がほんとうに筋を通してこういうことを考えておる、それとは全然相反するようになるのではないかというようなことをよくわからせるということ以外に、なかなか私は道がないのじゃないか、こう思っておるのでございます。今後もわれわれはいま仰せになったように、そういう情報を知らないで、あとでわかったなどというようなことのないようには十分努力はいたしますが、しかし、たとえば今日関税一括引き下げの問題があったり、あるいはまた低開発国貿易開発会議等があったりいたしまして、そういう場合に臨んでいろいろな発言があるのを見ても、われわれとしては先進諸国必ずしも理想的な言動をされておるとは言えない。それで日本が一体どういうふうにしておるかということを考えてみますと、日本もまた同じでございます。これは向こうだけ責めるわけにはいかない。私は日本の民主主義の姿においても、やはりかなりそういうような弊害が一部において出ておるということは認めないわけにはいかない。向こうもちゃんとそれを指摘してきます。こっちがやはり指摘するように向こうが指摘するのでありますがそれをままこちらにもあるということも考えて、よくないと一方的に責めるわけにもいかない面があると思うのであります。いずれにしても、国際道徳というものを今後ますます高める、また各国の国民がやはりその国の道徳を高め、いわゆる皆が国際人として動くような世界を築くようなPRというものこそ最も大事ではないかと私は考えておるのでございます。しかしながら、そこまで行く過程においては、いろいろそういうような不合理なことが起きることは、われわれとしてはまことに遺憾でございます。今後は十分そういう面にも注意をいたしまして、そうして経済の動向、あるいは政府の動向、あるいは業界の動向、あるいはその地域の動向、こういうものをすみやかに情報をとるということでなければほんとうの輸出振興なんてできるものじゃないのであります。そういう意味において、こまかい手段をとるように今後一そう努力をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X02619640507/14
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015・田畑金光
○田畑金光君 いま大臣からお答えになりましたように、それぞれの国がそれぞれ利益を中心に動いておるということはこれは当然のことであって、問題は国際的な通商関係から見た場合に、行き過ぎた国内的な動きについてわが国が情報を事前に察知して、それに対して早くいろいろな外交上の手を打つとか折衝を試みるとかいうような、技術的な問題と申しますか、そういうあとの問題について私は重点を置いてお尋ねをしておるわけなんです。いまお話しのように、わが国の経済が海外の依存度が非常に高いということ、国際収支に構造的な欠陥があり、外貨準備も決して十分でない。しかも国際経済——いまお話しのように協調的に見えておるが、自国の経済中心に激しい競争が行なわれておるという今日の私は国際経済の実情だと、こう思うのであります。あまつさえ、たとえばEEC諸国に見られますように、国境を越えて幾つかの国が共通の通商政策を持つとか、共通の農業政策を持つとか、こういう状態に入ってきておるわけです。したがいまして、この経済外交と申しますか、語義そのものがこれははっきりしないわけでありますが、要するに海外経済行政事務というものが非常に複雑広範にわたるようになってきているわけですね。こういうことを考えるとき、私の言いたいのは、外交一元化という名のもとにおいてこういう複雑多岐にわたる通商その他の問題、貿易その他の万般の問題が外務省の窓口を通じ一元化されておる。こういうようなあり方について、一体これでいいのかどうかということもこれは考えてみる必要がありはせぬだろうか、こう思うわけなんです。海外の経済行政といっても、お話しのように、政府対政府だけの問題ではなくして、貿易をやるのは民間人であり企業会社であり商社である。すなわち、政府対政府の話もあれば政府対民間、あるいは商社、民間、団体、いろいろその仕事も複雑広範にわたってきているわけです。そういうような情勢のもとにおいて、どっちかというと、経済はしろうとと外務省は見られているわけですが、しかし、最近の外務省も経済的に非常に勉強しておるということもこれは事実でしょう。しかし、外交一元化の名のもとにおいて、すべて外務省の窓口を通じてやっていくといういまの経済外交のあり方等というのは、今後の複雑広範な海外との経済関係の接触を見せた場合に、それでいいのかどうかというような問題等も根本的に考えていい時期じゃなかろうか、こう思うのですが、こういう点については大臣はどのような御所見であるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X02619640507/15
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016・福田一
○国務大臣(福田一君) これもたいへんけっこうな御発言でございまして、実はそういう御意見は外務委員会その他においてひとつ大いに言っていただくとありがたいと思うのであります。われわれとしても同じような考えを持っておりますが、しかし、外交というものの一応のルートというものは、やはり事実問題として外務省が持つようにしておかざるを得ないと私は思っておるのでありますが、これをやっていく場合においては、通産省であろうと農林省であろうとすべての役所がいわゆる外交もやっておるのだという考え方に基づいて処理をいたさねばいけない、それから民間のほうもまたそういう民間外交をやっているという考えでやっていただきたいと思うのであります。同時に、また昔のいわゆる宮廷外交、マナー外交というものではもう外交はできません。現実には経済を離れた外交などというものはないのでありますが、しかしこれもやはり時世の移り変わりでございまして、いまから十五年か二十年前に入られた人だというと、外交官になられた人は、どうしてもやはり国が安定しておって、そうしてあまり動揺がない時期ですから、そこでそういう儀礼とか、あるいは宮廷でどういう食事をするときには最初にどうしてというふうな問題から、極端な例だが、そういうところから入る例、そういうことを覚えるということが第一になっていたこともあります。今日はそうじゃない。世界全体が非常に流動的になって、そして常に変わっている。しかもその間において経済のウエートがうんと上がってきているときでありますから、これはもう外務省のほうでも十分ひとつ経済という問題に力を入れて、外交官自体がそういうようなふうに訓練をされていかなければならないと私は考えております。したがって、外務省においても今後はそういう方向でやっていかれるものだと思っております。また、事実そういうような考え方を持っておられると聞いておるのであります。私といたしましては、根本の理念としては、いまあなたのおっしゃるように、全部で外交をやる、全部で経済問題にぶつかっていく、こういうような考え方で今後は処理をいたしてまいりたい、一応の窓口は外務省と、こういうことにしておいてはどうかと思っておるのであります。まあ今後はそういう御趣旨を体して、政治の面において極力あなたの御意見が実現するように努力をいたしてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X02619640507/16
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017・田畑金光
○田畑金光君 私、こういうようなことをお尋ねするのは、まあ一昨年欧米諸国を歩いてきたとき、在外公館には通産省派遣、大蔵省派遣、あるいは農林省派遣、また労働省派遣といろいろ相当な人が派遣されておるわけですね、海外駐在員として。それぞれまあこれは外交官の特権を与えられて担当の仕事に従事しておると思うのですが、しかし在外公館に配属されると、やはり大公使あるいはそれにかわる人方の指揮のもとに動いておるわけです。いわゆる公務員として、あるいは役人としての、あるいは勤務年限とか、いわゆる地位等から言うと、むしろ派遣されている人が上なんだが、本来の外務省の人でないということによって、外務省の人を通じてでなければ仕事ができぬ。しからば、たとえばいま言ったような通産省の問題等が、輸出入関係に非常に大きな問題等が、かりに通産省の出先の人が事情を把握して、そこでそれを本国に伝えるということになった場合に、それは在外公館を通じて直接通産省にいくような手続になっておらずに、外務省を通じてさらに通産省に回ってくると、こういうふうないきさつだと、こう思うのです。そういうようなところに、せっかくりっぱな人材を経済官庁が海外の在外公館に派遣し、常駐させて置いておるが、ほんとうにその人方が十分にその才能を発揮できるような仕組みになっているのかどうか。こういう問題等もいまお話しのように流動する、弾力的に動いておる今日の国際経済競争を考えた場合に、これでいいのかどうかと、こういう問題等ももっと考えてみる必要があるのではなかろうかと私は思うのですが、こういう点等については政府部内の問題として、これは当然機構の問題、あるいはまた事務の配分の問題、その他万般にわたって私は方針を検討し樹立すべきじゃないかと、こう思うのですが、その時期にきていると判断するのですが、そういう問題を私は経済外交のあり方という観点の一つとしてながめているわけです。この点について政府としてはどのようにまあ今日まで取り上げておられるか、承っておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X02619640507/17
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018・福田一
○国務大臣(福田一君) その問題につきましては、たとえば連絡等について大使が——配属されますいとうとやはり大使の指揮下に入ってしまいますから、大使の許可がないというと通産省から出て行っても通産省と連絡がとれない。外務省の経済局を通じて、そして今度は通産省へ情報がくる、こういう仕組みになっているわけであります。私は、そういうのでは十分にいかない面もあり得ると思うので、これはもう少し考える必要があるじゃないかという発言をしたこともありますが、現実のいまの段階においては、経済局では、何かそういう情報があった場合には、できるだけ早くこちらに知らせるということで、いまのところ運営がされておるわけでございます。しかし、はたしてしからば、それが十分であるかということになりますと、これはどういう機構をつくってもなかなか十分というまではいかないんですが、まあまあがまんできるというところまでいっているかということになると、まだ、私たちとしては、もう少しやってもらいたいという気はもちろんいたします。そのことは常に外務省によく伝えて、今後もそういうような不備欠陥があらわれないように努力してまいりたいと思いますが、要は、やはり外交官になられた人、なる人、外務省に入った人がまず経済を勉強してくれる、こういうシステムに持っていかれるべきではないかと実は私は考えておるのであります。まず経済を一応勉強し、いまは語学を一応勉強しているが、もう少し経済の問題を勉強して、それから外交官として行動するような仕組みになるのが私は姿ではなかろうか、まあ私はこう思っている。そうすると、一年なり二年の間というものあくわけであります。その穴が埋められない。というのは、予算の問題が、大蔵省なりほかの外務省なりもそういうことに反対ではないと思いますが、今度予算の問題でそんなことで二年も遊ばしておくわけにはいかないということの問題もあって、なかなかそういったことでうまくいかないようでありますが、しかし、声を大にして、そういうことが野党の方々からも、政府の与党の方々からも出てくるということになれば、たとい、そういうシステムができないまでも、外交官になった人自身が自分で勉強する、一方において仕事をしながら経済の問題にもっと力を入れて勉強する、こういうことになると思うのであります。そういう意味でいい発言をしていただいていると思うのでありますが、今後ひとつそういう面を大いに強調していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X02619640507/18
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019・田畑金光
○田畑金光君 その点は、外務省の役人が経済の勉強をやられればいいことは私わかりますが、現に外務省の役人も勉強しているわけです。しかし、国際金融の問題であるとかあるいは通商、貿易為替あらゆる専門的な問題を外務省の役人がやるといっても無理なんですね。だからこそ大蔵省あるいは通産省がそれぞれの関係者を派遣しているわけで、もっとそういう事実に即して、そういう出先の人方が十分にその手腕、力量を発揮できるような、いまの機構のあり方等についても、政府自体としても検討したらどうか。現に臨時行政調査会では、そういう問題も専門部会を設けて検討しているわけですね。いずれ私は、臨時行政調査会の答申が出ると思いますが、そういう場合には、こういう問題等についても十分政府としては検討していただきたい。このことをお願い申し上げます。
それからもう一つ、関連して、この際お尋ねしておきたいのですが、松村さんがきのうお帰りになったわけです。先ほど、たしか総理と会見されて報告されておるようでございますが、政経分離ということが私たちとしては非常にのみ込めない、というのは、政経分離ということ自体が一つの政治的なものの考え方だと私は思うのです。昨年の八月、たとえば中共にプラント輸出をなされたときも閣議決定をなされている。閣議で決定されていることだから、これも一つの政治的な問題だと思うのです。近くまた、日紡の原社長が中共の問題で第二次のプラント輸出を交渉なさるということも新聞で見ておりますが、こういう場合についても、これは閣議の了解のもとに輸出が実現する、しないということになろうとこう見ておるわけです。今回、松村氏が行かれて、いろいろな取りきめをなされたが、これも見方によっては一つの——見方ではなくして一つのりっぱな経済外交だと思うのですね。新聞記者の交換の問題、あるいは貿易事務所の連絡員の相互派遣の問題についても、昨日の通産大臣の記者会見によれば、六月中には認める方針だ、このように言われておりますが、こういう問題は、これ自体が一つの政治的な問題の処理のしかたであって、政経分離という範疇、概念から一体どうこれは理論づけをなさるのか、われわれとしてはなかなかどうも政府の言われる政経分離という考え方がのみ込めないのです。ひとつこの際大臣から政経分離とはこういうものだというぐあいに定義をしていただいて、経済は経済、政治は政治、こんなにはっきりしているのだ、明確にこういう壁があって、両者の中には共通の分野はないのだ、こういうような何かわれわれにも理解、納得できるような定義があるならば、教えていただきたい。でなければ、私たちは政府のいまなされておる政経分離ということは、それ自体が一つの政治的なものの見方であり、進め方であり、判断だと、こう理解しているわけで、この点ひとつ松村さんのお帰りになったこの機会に、特に大事な所管をあずかっておる通産大臣から承っておきたい、こう思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X02619640507/19
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020・福田一
○国務大臣(福田一君) まずお断わりを申し上げておきたいと思いますが、プラント輸出のときにこれは閣議にかけたことはございません。閣議で決定したのではないのでありまして、私からただ報告をした点はあります。これは輸出入銀行において処理をいたします場合に、通産大臣のところまではものによっては伺いがくるわけであります。それをこういうふうにしましたと、こう言ったのです。でありますから、閣議でどうしたということではないということはおわかりを願いたい。ただし、今度は政経分離の問題でございますが、これはもうひとつの何といいますか、表現の問題なのでありまして、およそ一つの経済が政治に全然関係のないということはございません。また政治というものは、およそ経済と全然縁のないというものはないと思うのです。だから、それは積み上げ方式でだんだんやっていくんだというような表現を使ったり、あるいは政経分離というような一応の観念でという、幅が政治のほうへウエートがいっているか、経済のほうにウエートがいくか、私は政治経済はほとんどみんな一緒だという考え方のほうが理論的には正しいと思いますけれども、そのときに一応これくらいのところ、一応というようなことばがはいらなければ、政経分離ということばの解釈もできないだろうと思っておる。われわれは一応という感じで入れておるわけであります。でありますから、これは国交のないところと経済をやる、民間の貿易が行なわれておる、それを認める。国交のないところなんかとは国民としては民間の貿易もしないでもいいんじゃないか、こういう考え方もある。政治からいえば国交のないところとは全然何もしないがよろしい。こういう考え方もあるが、しかし、そういうわけではない、隣国におって、昔から歴史的な関係もあるし、地理的な関係もあるし、同文同種の関係もあるし、いろんなこともあるから、そういうやはり民間の貿易は認めていったらいいじゃないかというようなことで、いまこれが行なわれておるわけであります。だから、それを、ことばには政経分離ということばでまあ言っておるのは、一応これは中華民国というようなものもまだ存在しておるときでもあるし、あるいはアメリカというようなあまりそういうことを好まない人もおいでになるときでもあるし、まあまあそういう人に、政経分離でやっておりますと、こう言うのが一番ぐあいがいい。ぐあいがいいから言っておる。これくらいのことであって、それを理論的に文字の解釈からこれをするということになることは、政治というものには相当融通性のあるものだということをお考えを願えれば、これ以上私がお答えを申し上げないでも御理解賜わるのではないかと、こう私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X02619640507/20
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021・上原正吉
○理事(上原正吉君) 速記とめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X02619640507/21
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022・上原正吉
○理事(上原正吉君) 速記を起こして。
他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X02619640507/22
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023・上原正吉
○理事(上原正吉君) 御異議ないと認めます。
それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——他に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X02619640507/23
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024・上原正吉
○理事(上原正吉君) 御異議ないと認めます。
それではこれより採決に入ります。
輸出保険法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X02619640507/24
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025・上原正吉
○理事(上原正吉君) 全会一致と認めます。よって本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X02619640507/25
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026・上原正吉
○理事(上原正吉君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X02619640507/26
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027・上原正吉
○理事(上原正吉君) 速記を起こして。
本日はこれをもって散会いたします。
午前十一時三十六分散会
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