1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年六月十二日(金曜日)
午後一時二十九分開会
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委員の異動
六月十一日
辞任 補欠選任
田畑 金光君 向井 長年君
六月十二日
辞任 補欠選任
椿 繁夫君 岡 三郎君
中田 吉雄君 阿具根 登君
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出席者は左のとおり。
委員長 前田 久吉君
理事
赤間 文三君
上原 正吉君
近藤 信一君
委員
大谷藤之助君
川上 為治君
岸田 幸雄君
剱木 亨弘君
豊田 雅孝君
吉武 恵市君
阿具根 登君
阿部 竹松君
大矢 正君
岡 三郎君
藤田 進君
向井 長年君
衆議院議員
修正案提出者 神田 博君
国務大臣
通商産業大臣 福田 一君
労 働 大 臣 大橋 武夫君
政府委員
通商産業政務次
官 竹下 登君
通商産業省軽工
業局長 倉八 正君
通商産業省鉱山
保安局長 川原 英之君
通商産業省公益
事業局長 宮本 惇君
労働省労働基準
局長 村上 茂利君
事務局側
常任委員会専門
員 小田橋貞壽君
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本日の会議に付した案件
○電気事業法案(内閣提出、衆議院送
付)
○産業貿易及び経済計画等に関する調
査(産業災害に関する件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/0
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001・前田久吉
○委員長(前田久吉君) ただいまから商工委員会を開会いたします。
まず、委員長及び理事打ち合わせ会の協議事項について御報告いたします。
本日は電気事業法案について、衆議院における修正点の御説明を聞き、補足説明を聞いた後、産業災害に関する件の調査を進めることとなりましたから、御承知を願います。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/1
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002・前田久吉
○委員長(前田久吉君) 次に、委員の異動について御報告いたします。
昨日田畑金光君が辞任され、その補欠として向井長年君が選任され、本日中田吉雄君及び椿繁夫君が辞任され、その補欠として阿具根登君及び岡三郎君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/2
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003・前田久吉
○委員長(前田久吉君) 電気事業法案を議題といたします。
本案につきましては、衆議院において修正されておりますので、まず衆議院における修正点の説明を聴取いたします。
衆議院議員神田博君から御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/3
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004・神田博
○衆議院議員(神田博君) 電気事業法の修正案について提案理由を申し上げます。
衆議院におきましては、慎重審議の結果、次の点を修正の上修正案及び修正案を除く原案について可決いたしました。
修正案の要点は、この電気事業法の成立に伴い、電気事業法の運営についての重要事項を審議するための電気事業審議会につきまして、原案においては、単に附則において通商産業省設置法の改正を行なうにとどめてありましたが、電気事業の公益性と日本経済に及ぼす影響の重要性にかんがみ本法の中にこれを規定し、その機構等を明らかにすることにいたしました点と、第二には、電気主任技術者資格審査会につきましても、同様に電気の保安確保の必要性にかんがみて、附則より本文の中に移した点の以上二点についての修正を行ないました。
何とぞ慎重御審議をお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/4
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005・前田久吉
○委員長(前田久吉君) 以上で修正点の説明は終了いたしました。
次に、政府委員から本案に対する補足説明を聴取いたします。宮本公益事業局長から説明を聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/5
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006・宮本惇
○政府委員(宮本惇君) お手元に「電気事業法の制定について」という薄いパンフレットがまいっておると思いますが、時間の関係もございますので簡単に御説明を申し上げます。
第一ページ目に電気事業法制定の必要性ということが書いてございますが、これは御承知のように、二ページをお開きいただきたいと思いますが、昭和二十五年の十一月に電気事業の再編成令及び公益事業令が制定をされまして、御承知のような日発解体と九つの電力会社ができたわけでございます。それの事業規制を公益事業令でやっておったわけでございますが、御承知のように、昭和二十七年の十月講和条約発効とともにそのいずれも、二つのものが失効をいたしまして、二十七年の十二月までの間は二月ばかりブランクができたわけでございます。そこでとりあえず電気及びガスに関する臨時措置法という法律をつくりまして、一ぺん失効いたしました公益事業令の中の相当部分と、それから昭和六年の電気事業法の中の必要な部分をそのまま生かしたというはなはだおかしな形になっておったわけでございます。したがいまして、すみやかに電気事業に対する根本的な法律をつくらなければならないということであったわけでございますが、何ぶんにも戦後の電力不足というようなことから、電気事業自身が開発にも追われましたことと、復元問題というような問題もございまして、通産省といたしましては、電気事業法令改正審議会というもので何べんも議論ましたのでございますが、国会に御提案申し上げるまでに至らなかったわけでございます。
そこで、三十七年の五月に通産大臣の諮問機関といたしまして、電気事業審議会というものを設け、一年半にわたりましていろいろ単に法令上の問題だけでなく、電気事業のあり方等につきましても慎重審議をいたしました結果、昨年の十月に答申が出たわけでございます。通産省といたしましては、その答申の線に沿ってこの法律をつくったわけでございますが、答申の要点は三ページに書いてございますように次のとおりでございます。
すなわち、一番問題になりました電気事業の企業体制につきましては、国営論、全国一社化論、ブロック別合併論というものを慎重審議いたしましたが、そこに書いてございますように、九電力会社を中心とする現在の企業体制というものは、各社間の料金、あるいは経理面におきます若干の格差はありますけれども、過去十年間にわたっておおむね健全な発達を遂げたというようなことから、この際企業体制は現在のままでいく、しかしながら、そのままではいけないということ、すでに実施をいたしております広域運営ということをもっと徹底すればやっていけるんじゃないかということになっておるわけでございます。
四ページはこまかいことをいろいろ書いてございますが、要するに、これは法律のほうで御説明申し上げたいと思います。
五ページにまいりまして、しからば、この電気事業法案のおもな内容は何かということでございますが、電気事業が地域的な独占的公益事業であるという特性にかんがみまして、電気事業者と使用者の利益の調整をはかり、また電気施設の保安を確保するということを目的としておりましたいままでの規制はおおむねそのままにいたしまして、今回さらにそれに加えまして、日本経済及び電気事業の現状に即応するために、電気事業の広域的運営を大いに促進する。それから電気使用者に対するサービスを大いに強める。それから電気事業及び電気施設の保安の規制ということを、いままでは非常にごたごたしておりましたのを簡素化すべきところは簡素化すると同時に、また規制を加えるべきところは規制を加えるというふうに規制の簡素化、合理化をはかったということでございます。
そこで、内容に簡単に触れますと、電気事業の規制でございますが、電気事業の開始から廃止まで規制する必要がございますが、最近の実態に即応するために規制の合理化をはかりました。(イ)の事業規制につきましては、事業の許可とか譲り渡し、譲り受け、合併云々は現行のとおりでございますが、兼業の許可は、規制の必要性が特に強い一般電気事業者に限定いたしました。また、地域独占の規定につきましては、これを削除いたしまして、新たに事業許可の基準に過剰設備の防止の規定を取り入れるということにいたしたわけであります。それから業務の規制につきましては、電気の供給義務、供給規定の認可及び電気料金につきましては、原価主義を明定をしております。それから電気事業者間の電気供給及び電気料金の認可、特約料金の認可というようなことにつきましては、現在どおりでございますが、特定の需用に対する電気の供給の許可につきましては、自家発にも適用することにいたしております。(ハ)といたしましては、使用者に対するサービスの確保でございますが、電圧及び周波数維持の努力義務を課し、必要ある場合は改善命令を出せる。また、末端の業務につきましては、業務方法の改善命令を出せるということにいたしました。それから電気事業者の業務についての苦情申し立て制度をはっきり明確にいたしたわけでございます。会計及び財務規制につきましては、会計整理、渇水準備金、社債発行限度、一般担保の規定につきましては従来どおりでございますが、資本金額の変更、社債の募集、利益金の処分及び資金の借り入れの認可は廃止いたしました。そのかわり、新しく電気事業者の内部留保の充実をはかるために、通産大臣は必要に応じて減価償却あるいは積み立て金をしろというような命令をすることができるということといたした次第でございます。
それから広域運営でございますが、これは今後の問題といたしましては、ますます強化をするという必要がございますので、まず電気事業者の協調義務というものをはっきりうたいまして、さらに電気事業の許可の場合、その他の場合における許可基準に広域経済性の基準というものを導入いたしました。それから施設計画とか供給計画につきましても計画を提出させまして、通産大臣が必要ある場合には変更を勧告することができる。さらには、電気の供給、受電、電気工作物の貸借、共用等の命令ができるというふうにいたしたわけであります。
それから電気工作物に関する保安規制の合理化でございますが、これも最近の技術進歩に伴うと同時に、できるだけ自主的な保安体制をつくるという意味で、まず(イ)といたしまして、保安規定をつくらせる。それから同時に主任技術者をそれぞれのところに置かせる。さらには一般需用家の電気工作物に関する調査義務を課したというようなことが規定されております。また電気事業者は、地域を限りまして通産大臣が指定をいたします専門機関に調査義務を委託できるということといたしております。それからさらに、土地の一時使用等の公益事業特権を認めております。
最後に、その他といたしまして、電気事業審議会これはただいま神田先生からお話ございましたように、諮問機関として電気事業審議会及び電気主任技術者の資格審査会というものを設ける。その他公聴会、聴聞会、監査、検査官、水力調査、罰則というような規定を整備いたした次第でございます。
簡単でございますが、法案の内容について御説明申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/6
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007・前田久吉
○委員長(前田久吉君) 以上で補足説明は終了いたしました。
それでは、自後の審査は次回に譲ることといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/7
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008・前田久吉
○委員長(前田久吉君) 次に、産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題とし、産業災害に関する件の調査を進ます。
まず昨日の昭電の爆発事故について、政府から説明を聴取いたします。
ちょっと速記をとめてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/8
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009・前田久吉
○委員長(前田久吉君) 速記を始めて。
倉八軽工業局長から説明を聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/9
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010・倉八正
○政府委員(倉八正君) 昨日の昭電の川崎工場のプロピレン・オキサイドの災害につきまして簡単に御説明いたします。
この災害は、きのうの三時七分に起こりまして、原因はまたあとで詳しく御説明いたしますが、いまのところは全く調査中で、どういう原因によるかということははっきりわかりませんで、したがいまして、原因についての調査は現在のところわかりませんが、経過について申し上げますと、きのうの午後三時七分にプロピレン・オキサイドの貯歳タンクが爆発した、大体十基並んでおる三基が爆発しまして、二基が倒れて、その倒れた二基から火を吹きまして、火炎放射器のような状況を呈しまして、そこにありました工事現場の詰所が焼けて、現在までわかっている死者が十二名、それから病院にいまかつぎ込まれて手当てを受けている人が約五十名ございます。
以上がいままでの大体わかりました災害でございますが、通産省としましては、この災害が起こるとともに、さっそく所管課長と専門の技術者を六名急派させまして、徹夜できのうの調査をさせておりまして、その原因なりまた被害対策について検討しておりますが、さっそく全国の県知事に大臣名で、かかる事故が二度と起こらないように最善の注意を払えという通牒を出すとともに、またこの昭電に対しましても、この死傷者の手当て、あるいはその後の善後措置について万全の取り計らいをするように、同じく大臣名で通牒を申し上げております。
施設の被害につきましては、プロピレン・オキサイドを現に製造しております第二施設というのがこの爆風でいたみまして、復旧に三カ月ないし五カ月かかるだろうということでございまして、施設の被害としましては、まあそのくらいで済むんでございますが、何ぶんとうとい人命が十二名も失われ、また重傷者があるということにかんがみまして、さらに徹底的な原因を究明して、今後早急にこの善後策を講ずるつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/10
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011・前田久吉
○委員長(前田久吉君) 以上で説明は終了いたしました。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/11
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012・岡三郎
○岡三郎君 いま簡単な説明があったわけですが、通産省としていろいろとこの原因究明に六名の係官を派遣したと言っておりますが、通産大臣として一片の何か通達を出されたと、こういうことであるようですが、現地にやはり担当の責任者がおもむいてやるだけの真実さがなければ私はならぬと思うのです。この点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/12
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013・福田一
○国務大臣(福田一君) きのう私は四時半にこの事故を聞きまして、それからすぐに係官が現場へ急行いたしました。それから午後の十一時に昭電の社長が現場へ行っておりますので、その後の事情も聴取いたしまして、特に事故災害の罹災者の救助に重点を置いてもらうと同時に、原因の究明を特にしてもらいたいということを私は依頼をいたしておいたわけであります。いまの御質問の趣旨は、私がなぜ現場へ行って罹災者その他に対する何らかの措置をとらなかったかという御趣旨かと思います。そういう御趣旨でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/13
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014・岡三郎
○岡三郎君 いや、そういう趣旨も含めて、あなただけとは限定していない……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/14
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015・福田一
○国務大臣(福田一君) ただいま二名原因調査で現場に行っておりますが、御案内のように、われわれは産業の監督をいたしておるわけでありまして、これはまあ高圧ガスというような関係から特に関係があるわけでありますが、ガスの問題につきましては、ガスは都市ガスにつきましては、これはガスの法律がございますし、それから高圧ガスについては高圧ガス取締法というのがあるのでありますが、この問題は実は低圧でございまして、高圧ガスの取り締まりのほうには関係は直接はいまのところないようでございます。しかし、施設の一部には高圧の部分もございますから、やはりこれは関係はあるのでございますが、いずれにいたしましても、こういう二つの法律の施行は各都道府県の商工部が実際の取り締まりに当たっておるわけでございまして、私といたしましては、現場に行くのも一つの考え方であると考えまして、よく思案をいたしたのでありますが、ああいう事故のときに、われわれなどが入って行って足手まといになるおそれもあるし、また現実の問題といたしまして、私のところは、たとえばアルコールの事業などは私の直接所管でございますが、こういう場合には——私としては当然、もうそういう直接所管をいたしておることについては当然すぐ行かなければならないかと考えましたが、法律関係あるいはその他の点を考慮いたしまして、私としては、係官を派遣して十分な原因究明に当たらせるということで、私自身は現場にはおもむいておらないわけであります。しかし、これからの日本の産業は重化学工業化ということが一番大事な命題になっておるのでありまして、その重化学工業化のうちでも、この種のいわゆる石油化学的なものはなおさら重要な成長部門でありますが、こういう成長部門においてこの種の問題が起きたということについては、われわれは深く考えてみなければならないものがあると。それは一つは、こういうようなことによって、いわゆる低圧であっても非常に爆発性のあるものについての取り締まり法規がなくていいかどうかという問題、それからまた、この種のものについて、いわゆるパトロールはいたしておると会社でも言っておるのでありますが、そういう程度でいいのかどうか、そのいままでの取り締まりの方法でいいかどうかということ。それから、今度の事件は御案内のように、すぐ隣でまた増築工事をいたしておりました。その増築工事に従事しておった人がたいへんたくさん死傷をいたしております。昭和電工自体は、リモート・コントロールといいまして、まあいわゆる遠隔操作をやっておりますから、昭和関係では二名しか実は傷を受けた者がないというようなことになっております。こういうことで、そういう増設工事をする場合に、もしガス漏れでもあったようなときには特に注意をしなければならぬと思います。まあ何かへいを建てておったというのでありますが、はたしてどの程度のことをしておったか、これは明らかでありません。そうしてガス漏れがあって、いわゆるプロピレンが出ておって、それがどういう原因で火がついたか、あるいは隣で増築しておる工事場で、例の何といいますか、酸素の溶接等をやった火花がそちらのほうへ入って、そうして漏れておったガスに引火して、その引火の結果、タンクが今度は圧力といいますか、熱を受けて爆発したのではないかという一つの考え方もある、これはまあ考え方でございまして、まだ明らかでございませんが、いろいろな原因が考えられますが、いずれにしても、こういう危険性のあるところで増築をする場合の準備あるいは注意の不足があったんではないかということ等も考えられるのであります。われわれとしては、こういう点を十分究明いたしますと同時に、よくこの種の災害がございますと、原因究明ということに名をかりて、あとでどうもはっきりしなかったというようなことになったりして、どうもその取り締まりその他が不徹底になるおそれがありますので、私はすみやかに原因は調査いたさせますが、もしこれが明らかでない場合にも、想定されるような原因を土台といたしましてでも、今後の重化学工業部門の育成強化というような点から考えてみまして、また、これに関係をしておる従業員の立場を考え、あるいはその近所に住まいをしておる人たち、あるいはまた工場の人たちというような人たちのことも考えながら、もっと徹底した取り締まりをするように何らかの措置を考えていきたい、場合によっては法的な規制等も十分考慮いたさねばなるまいかと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/15
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016・岡三郎
○岡三郎君 私の質問したことについて、だいぶん親切な答弁があったわけですがね。端的に私が言っているのは、何も大臣に限らず、大臣が多用な場合は、やはり局長なり政務次官なり次官がおるわけですから、そういうふうな点で、やはり後半にいま大臣が答弁したように、これは石油化学としての事故としては一番大きな最近にない事故ですね。特に石油化学としてはこれは初めての大事故と言っても過言でない、高度経済成長の中における一つの大きな事件だと私たちは考えるわけです。つまり急激な産業の膨張、そういうふうなことにからんで安全性の確保というか、人命の尊重というものが、政治全般から軽視されている、ここに問題点があるのじゃないかというふうに私は考えるわけです。これは先年、十一月の鶴見の国鉄事故、それからまあ炭鉱災害、だいぶ続いてありますがね、根本的に言って、生産性を上げるということで、人命というものが非常に軽んじられている、こういう指摘をずいぶんしばしばされてきたわけですよ。いわゆる政治、行政全体の中において、大臣は今後どれだけやられるか知らぬけれども、失礼ですけれども、七月の総裁公選をめぐって、やめられるかもしれぬということになると、あなたはここでこれに対して十分なる対策をやらなければならぬことになると言っても、七十五日たつと、のど元過ぎれば熱さを忘れて、全然こういう問題が放置されてしまう。火薬が爆発して、ずいぶん負傷者が出た、それが神奈川県です。このごろはもう神奈川県というのは東京のしわが寄ってきて、狭いところに何でもかんでもつくってしまうから、もう道路を走っている車からして爆発して、もう毎年々々多くの人命を損傷している、こういうことなんです。そういうふうな点では担当大臣なり、それぞれの責任者が、いろいろとお忙しいでしょうけれども、やはりその中で責任者が行って、直接現場を見てくるということによって、そういう被害というものを防止するという気持が強く出てくるのではないか。ただ一片の通達でしっかり監督せいとか、注意をせいとかいう、こういう訓令的な指令で問題が糊塗されていくところに、私は問題点があるのじゃないかというふうに考えるわけです。それで、軽工業局長も出かけて行ったかどうかわからぬが、低圧のほうだから、いまの高圧ガス取締法に抵触しないから行かないなどということを私はここで聞くことは残念だと思うんです。とにかく、高圧ガス取締法もずいぶんおくれているわけでしょう。消防法が一つあるだけです。消防法なんていったって全然問題にならぬ。いまの近代的な技術革新の中に即応するいわゆる安全体制、こういうものをどう考えているかということに、日本のいまの行政なり政治の根本問題があると思うのです。
国鉄は昨年の十一月の事故にかんがみて画期的に、政府自体も初めて八十九億なりの、いわゆる一番衝突事故の多い踏切等について真剣に乗り出した。つまりこのことについては、国鉄自体の経済的な面からいっても重大な負担だけれども、あえて国に要請して、政府がそれだけの金を出したという画期的な取り組みになったと思うのです。
こういうふうな事故というものについて、いまの通産大臣のことばを聞いているというと、今後法規の改正もしなければならぬかもわからぬということではなくて、やはり率直に、高度経済成長下における石油化学という近代産業の中にあらわれた大きな災害として、これをどう見ていくかということについての私は見解を聞きたかったわけです。そういうふうな点で、いま一応説明がありましたが、具体的に言って、三十八年度の死亡者六千四百三十人を含めて災害を受けた人は七十五万人を見ている、こういうふうな非常に大きな問題なんですね。こういうことで、ことしに入っても猛烈な事故が起こってきている。そういうふうな点でこの取り締まりの方向というものについて、監督する方向については非常に何だかはっきりしない。いま大臣が言ったように、県の商工部の工業課の連中が監督しに行っている。ところが、こういう近代産業というものをやはり具体的に伸ばしているのは、政府の指導によってまあ設備投資等をやられてきているわけだ。そういうことになるならば、抜本的にひとつ近代化に伴うところの安全装置と言いますか、そういうものについてどういうふうにお考えになっているのか。たとえばこの建設事業については労働省の基準監督署等が管理、管轄している。他方いま言ったようなそういうふうな施設については、高圧の部面については、いま言ったような取締法でやっていると言っておりますが、こういう爆発するところの——低圧に限らず、こういうものについて新しい段階に来ているということは大臣も認めておると思うのです。そういう点で、これを機会に積極的にそういう面について取り組むという姿勢が端的に私はあらわれてこなければならない。そのあらわれ方が、やはり責任ある人が現地に行って、そして被害を受けたそういう人々に対して見舞いをするとともに、基本的にそういう面について取り組むのだ、こういう姿勢があって初めて禍を転じて福となすと、こういうことになると思うのです。こまかい点は抜きにして、大臣は七月にやめられたら、おれのことじゃなくなるわけですから、そういう点については抜本的に——いまの官僚機構そのものもだめなのですよ。一年ないし一年半ぐらいたてば、上の連中はどんどん変わっていくわけです。そうすると、やはりその時が過ぎてしまうと、責任がはっきりしないままにいつでもずるずるという結果になってしまっている。これはいま大臣が言われたとおりだと思うのです。そうですからひとつ、福田通産大臣のもとで、時間はたいへんないと言っては失礼ですけれども、やはり基本的な施策というものを立ててもらいたい。特に高度経済成長の中における通産大臣の果たしつつある割役りは、最近においては通産大臣のキャリアというのはかなり長いわけです。そういう点で私は端的にそういう面でいま申し上げたわけですが、そういう点について具体的にこういうふうにしてひとつやりたい、低圧でも爆発するものだから、具体的にこれはどういうふうに処理するのが石油化学全般について——やはりこういう問題だけでなくして、日常的にも四日市の問題でぜんそくというようないろいろな問題が起こっている。公害的な問題が石油からいろいろ起こっている。横浜、鶴見、川崎等においても横浜、ぜんそくとかいう公害的な問題がいろいろ起こっております。はなやかな産業伸張に伴う裏側における人間の損害というものは、この爆発だけにとどまらないのです。そういう点についてもやはり真剣に、近代産業を伸ばすとともに、その裏付けとしての安全保障というものを確立してもらわないと困るということが、私はこの問題の根本問題ではないかというふうに考えるのです。これからでもおそくないですから、高圧ガス取締法だけではだめだ、時代おくれなのだという点について率直に認めて、石油化学全体について新たにこの問題を取り上げていくという形の中で御検討をいただく意味において、やはり責任者が出かけるべきだと思うのですが、どうですか。係官六名ぐらいではだめですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/16
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017・福田一
○国務大臣(福田一君) いま御指摘のございました石油化学の問題に関しまして、石油化学だけというよりは、まず公害の問題というのが一つの私はテーマだと思います。これは爆発事故等とは直接のあれはございませんが、長い間に影響を大きく与えていくという意味で、実は私たちも非常に心配をいたしておりまして、御案内のように静岡に石油コンビナートをつくる話もございましたが、これはもしうまく公害問題が解決しない限りは、われわれは認可をしないという態度を明らかにしておるわけでありますが、この公害の問題はまた一つの問題として、今後ますますお説のとおり新しい仕組みを考える、措置を考えていかなければならないと思っております。
それから、今度の爆発事故でございますが、私は何も言いわけを申し上げるわけではございませんが、この種の工場というものは一応リモートコントロール、遠隔操作をやっておりましす、大体。そして非常に近代的な産業でございますから、建設するときに一番安全ということを考えておかなければならないわけでございます。それで、建設のときに非常に安全度を考えてやっておりますので、めったには起きない、実を言うと事故なのであります。これは度数でごらんくださればわかりますので、昭和三十年代では今度が三度目になっておるわけでございます。そのかわり起きるとなかなか大きな被害を起こすわけでありますが、今度のような大事故が起きましたのは、隣で増築工事をやっておったということが、いわゆる死傷が多かった一番大きな原因でありまするけれども、それだからといって、私たちはこれをほっておいていいというわけではない。ですから、先ほど申しましたように、法制的に不備な点があればこれを直さなければならぬ、これがまず第一点。それから今後こういうふうな増築工事をするときには、はたしてそれだけのスペースがあるかどうか、隣との関係が、隣接関係がどうなっているかというような点を十分研究をいたしまして、いわゆる災害防止という見地からもう一度増設その他の場合には検討してみる必要がある。そういうことで、実を言いますと、こういうものをやるときには、われわれの関係におきましては、資金の面で実は監督ができることに相なっているのでありますが、しかし、その場合においてもこれを検討した上でなければこれを認めるわけにいかない。法制的でなくても、実際行政的にできることでありますから、こういうような組合あるいは会社に通達を出して、今後そういうことをやる場合にはちゃんと許可を得てやるような措置をとらしたい、こう思っております。
それから、今度の場合にいろいろ問題が起きているのでありますが、実は増築工事をやっているのは千代田化工建設というのが下請けだったんですが、それが内海建設というのに下請けさして、それがまた下請けさしている、二重、三重の下請けのことになっている。一体どこがはっきり責任をとっているかというようなことが明らかでない。こういうような非常に危険度の多い工場のそばで、しかもそういう危険度の多い工場を建築するというような場合に、はたしてこういう仕組みがいいかどうか、それも私どもは将来考えなければいかぬ。ほんの何だか名もないような、実際技術的にもよくわかっていないようなところがはたしてやっていいかどうか、こういうことが私はあると思うのでありまして、建築費が安いからいいというわけのものじゃない。こういうふうな不幸なことが起きてきたらたいへんだ、だからこういう点も建設省と十分打ち合わせて考えてみなければならない、こう具体的に実は考えているわけであります。
いずれにいたしましても、こういうような諸般の施策をとらなければならないと存じておりますが、御指摘のように、われわれがそういう問題について注意を喚起しそれに熱を入れているという姿が現実にあらわれないのは遺憾であるということにつきましては、私としても十分考慮さしていただきまして、適当な時期に視察なり何なりするほうがいいということであれば、何もそんなことを私はいなんでいるわけではございません。ただ、きのう行きませんでしたのは、実際聞いてみますというと、現場の付近ではたいへんな騒ぎで、混乱の最中であります。そういうときに私が行っていいかどうかということを考えたのであります。行ったほうがいいということも考えられますが、しかし、行ってかえってそういう片づけるのにじゃまになるというようなことも考えられます。私としては、すぐに行かぬでも、これは適当な時期に行って視察もしたいとは思っておりますが、きのう行かなかったのは怠慢であるというようなおしかりを受けるということであれば、これはおわびをいたしておかなければならないかと思いますが、ただ、いまの法制上からいいますと、国鉄の場合だとか何とかいうのとはちょっと事情が違っているわけでございます。しかし、あなたが言われたように、いわゆる重化学工業化をやらなければならないということは、私もいつも言っているし、そういう意味でこういう点についてもう少し注意をし、また、そういう点に力を入れているという姿を示せというおしかりはごもっともだと私は考えているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/17
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018・岡三郎
○岡三郎君 具体的な点で一、二聞きますが、いまのいわゆる監督指導というものを県の商工部の工業課の人々にやらしているというふうな形の中で、監督が十分できるものかどうか。特にこれからいろいろと災害を伴うような産業というものはかなり多いと思うんです。そういうふうな面から考えていって、一体監督という形ですね。こういう点について通産省のほうは下へ流しっ放しで、下のほうは年に一ぺん定期の検査をせられている。事故が起こらなければいいのだけれども、こういう事故の発生にかんがみて、工場がかなり多いわけですね。そういうふうないわゆる高圧ガス取締法に基づくところの企業だけでも、神奈川県だけでも中小企業商工を含めて二百以上あるわけです。そうすると、県に監督をまかせたといっても、その県のほうがどの程度やっているかということについて、いま言ったように、年に一ぺん定期検査をする、今回の事故は八月の検査の前の事故であった。こういうふうに、もう少し事故が起こらないはずなんだが——というところから事故が起こっているわけですから、やはりそういうふうな点についてもう一歩進んだ監督指導、こういうものがなされないものか。
それからもう一点は、いま言ったような狭い土地に増設工事をする、企業のほうとしても集約していこうという考え方が強いわけです。そういうときに、建設の方面における監督は基準監督署がやるということになった場合に、やはり科学的な知識があれば、低圧にしても、これが気化されて火が散ればこれは爆発することは当然なんです。これはそういうふうな要素を持っているときに、ここにこういうふうに増設工事をする、こういう計画は通産省のほうとしては知らないわけなんですか。どういうようなことなんですか。要するに、狭いところに危険物がある、その危険物のそばにまた新しいものをつくる、そういうふうなことによって事故というものは起こる可能性があるのではないかというふうなことをお考えになっておられるのかどうか。つまり端的にいって、もう少し厳格なる監督というものがこういうふうなガスという問題については特段に必要なんではないか、こういうふうなことを考えるわけですが、監督の点について、ひとつ見解を聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/18
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019・倉八正
○政府委員(倉八正君) 第一の御指摘の、通産省は監督を各府県庁にまかせっきりにして、監督の度合いが足らないではないかという御質疑であると思いますが、全国にいま大体プロパンの販売所まで入れれば六万以上ございます。高圧ガス取締法の適用を受けるものは。そこでこの問題につきまして、北は北海道から南は鹿児島からというので、本省みずからは事実問題としてできないと思います。したがいまして、これは本省といたしましては、毎日毎日進化している技術革新に応じまして、保安はどういう基準で、どういう幅でやるべきであるかといういわゆる基本大綱、基本基準というものをきめまして、その実施を通産局及び府県庁にまかせておるわけであります。したがいまして、まず第一線の部隊と申しますか、府県のほうにおきましては、それを実施する人数が、私は率直に申し上げれば、御指摘のとおり少し足らないじゃないかと思います。それで現在全国で百九十七名の府県の高圧ガスのいわゆる担当官がおりますが、これをもう少し質もあるいは数も増しまして、もっと機動的に動けるようにするのが、監督側に立つわれわれの一つの使命ではないかと思います。それから第二には、保安の問題というのは、官だけの、われわれとしましても現業ではございませんから、国鉄あたりと違って現業ではございませんから、結局第二のいわゆる大きい問題としましては、実際それをやっておられます各企業家が、ほんとうにそれを真剣になってこれを深刻に考える。それが両々あわせて、私は初めて保安の完ぺきというものが期せられるのじゃないかと思います。
それから先生の第二の御質問の、危険物があるときに、特に密集地帯においては一定のまず安全距離をとるとか、あるいは安全装置をとるべきではないかという御趣旨だと思いますが、全くそのとおりでございます。それで、現在も高圧ガス取締法におきますと、業種によって違いますが、非常な綿密な基準を設けまして、こういうガスについてはどれくらいの壁を持て、あるいはこういうものについてはどれくらいの保安距離をつくっておかなくてはいけないということで、厳重な基準をもって立法しているわけでございますが、たまたまきのうの例は、十本入っておりましたPOのタンクというのは、さっきから御指摘ありますように低圧のものでございまして、それから十七、八メートル離れたところにつくっているわけであります。したがいまして、低圧ではあるがあぶないということから、中に防壁をつくりまして、防壁といいましても、請負人がつくったのはトタン板でございますが、これを張りまして溶接の火花を防ぐ、あるいはじんあいをそこで一部防ぐという指置をとった次第でございますが、御指摘のように保安距離の制限とそれから保安施設の設備というのは、増設及び改築の場合にもこれは最も重要なことで、今度のわれわれがいま考えております新しい基準にもぜひこれを盛り込みたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/19
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020・岡三郎
○岡三郎君 答弁はひとつ簡単にしてもらってけっこうだと思うのですが、私が言ったのは、こういうふうに密集したところへ新しいものを増設するということになると、向こうのほうからああいうものを増設するということについて通産省のほうにも相談があるわけでしょう。それはどうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/20
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021・倉八正
○政府委員(倉八正君) ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/21
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022・岡三郎
○岡三郎君 そうすると、勝手にどこの工場でもつくっている。しかし、そのもの自体が非常に危険性があるということになると、これはだれが責任を負うかということになってくると、非常に問題だと思うのです。ですから、そういうふうなものについて、ほっておけばこういうふうな土地の価格が非常に暴騰しておりますから、やはり密集したところへ無理しても増設するという形は避け得られないと私は思うのです。ということになれば、やはり建設作業とそういう危険物との関係というものを考えていった場合には、これは新しい角度でそういうものについては十分危険性を考慮しての認可というか、許可というか、そういうものを考えていかないと、私は間違いがさらに起こるのではないかという気がするわけです。この点が一つです。
いまの全体のいろいろな事業所、それに比して監督する者が非常に少ない、これを増強するということもありますが、現在のところは労働省、通産省、警察、消防、地方自治体、さまざまな形において、ばらばらの形において注意したり監督したりしているわけです。これは、通産省にこういうことをしたほうがいいということよりも、行政全般としてやはりこういうふうに技術革新が進むという形の中で、日常的な問題として、危険物に対しては警察なり消防なりやはり地元にいる連中にある程度の力を与えて、工場の災害の防止に当たるというふうなことで、その上に立って県なり労働省なり通産省等が、それぞれの分野において一元的に監督していくという方法がとれないものか。全部がそれぞれ行って、今朝共同調査をしておりますが、それぞれの分野の範囲の中に閉じこもって、あとはこちらのことじゃないという形になっているわけです。端的に言って。ですから、調査のしかた自体も、それぞれの責任の分野においての調査のしかたという形になって、全体に脈絡一貫していかない。ですから会社自体も独自に調査機関を持ってやるといっておりますが、そういう点で県庁に対してまかせるということだけではなくして、やはり一貫した工場災害防止についての通産省の方向づけというものを一ぺん御検討いただきたいと思う。すぐそれによって法規をつくれということではないけれども、やはり行政的に見てもう少し能率的に監督する方法があるのではないかという気がするのですが、いろいろな法規がかえってじゃまして、あれはおれのほうの分野じゃないから入らない。そうすると、今度はこちらのほうはそういう分野ではないから入らない、その法規と法規の間に盲点があって、そういう点についてはどちらもさわらないということになってしまう。結局責任の所在という問題から不明瞭になってしまうということが、今回の事件でも出てくると思います。そういう取り締まりの点についてもう一歩具体的に進めてもらいたい、こういうふうに考えるわけです。ばらばらの監督というものをもう少し一元化の方向で行政全般に臨んでもらいたい、そういうことを御検討いただきたいと思うのですが、これはどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/22
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023・福田一
○国務大臣(福田一君) ただいまの問題は、政治の姿の問題でございますから、私からお答えしたほうがいいと思いますから、お答えいたします。
御趣旨に沿って検討を進めたいと思います。なお、先ほど七月改選になると、私が何か言っても、すぐ消えてしまうだろうという御趣旨の御発言がありましたが、断じてそのようなことがないように、ちゃんと措置してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/23
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024・岡三郎
○岡三郎君 力強い大臣のことばがあったので、ひとつこの点はこれを一つの問題として、石油化学にとどまらず、全般の問題としてやってもらいたいと思います。いまの法規にしても、時代おくれです。少しおくれ過ぎております。監督方法も技術革新という名にふさわしくない監督の形態がある。つまり、産業の進歩に追いつけない形がずっと出てきているのです。たとえば年間を通じて安全週間をつくられることもけっこうですが、安全週間が終わると、また今度は事故が出てくる。こういう形では困る。そういうふうな点で、ひとつじみちな方向で、現在の高度経済成長下に伴う施設の拡大、あるいは技術革新等に伴う安全体制というものをよりよりお考えいただいていると思うが、これは非常におくれているということはだれも指摘しております。そういう点について、ひとつ高圧ガス取締法を含めて、検討してもらう方向で十分やってもらいたいと思いますが、これは希望意見です。
あと、このガス漏れを検示器で調べたとか調べないとか、ガスの漏れているのをだれか通行人が、そこを通った人が聞いたというニュースも一、二あるわけです。そうするというと、建設労務者というのは、そういう知識が全然ないから、おれのほうは家を建てればいいのだ、そうしていまいったように下請ですから、まごまごしていたらもうかるどころではなくて、人件費も出てこない、こういうことで、このごろは下請ではなく孫請ということばがはやっておりますが、子供の下に孫の下請がいて、そこまでくると、しかもその上に、支払遅延防止法があるけれども、これはさっぱり役に立たない、ざる法である。働いても手形がだんだん延びてしまって、そういうふうなことで切り詰めて無理な作業をする、そういうことが潜在的ないろいろな災害の一つの原因だともいわれておりますが、そういうふうな点を考えると、ガス漏れとかそういうような点について、これは高圧ガス取締法の中でどういうふうになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/24
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025・倉八正
○政府委員(倉八正君) これは、ガス漏れというのはちょっと一がいにずばりお答えしかねますのは、高圧ガスが空気に触れて、それがガスになったというような場合には、これは高圧ガスの取り締まりを受けますが、たとえば天然ガスとかそれから一般のタウンガス、これは低圧のガスでございますから、これは高圧ガスの対象にはなりません。きのうの事件の場合はプロピレン・オキサイド、POというのが入っております。それが漏れたという、これは高圧ガスではございませんから、法規解釈からすれば高圧ガス取締法の対象にはならない、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/25
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026・岡三郎
○岡三郎君 そういった通り一ぺんのことを聞いているのじゃなく、現に爆発したじゃないですか。低圧だから爆発しないから取り締まらない、こういう考え方では、いまの法規がこうなっているから、それはおれは監督できない。そんな無知文盲みたいな答えを聞いているのじゃないですよ。行政的に取締法の法規の外だって、高圧以上のような爆発力があるのです。そとへ漏れれば気化するわけでしょう。気化した中において点火すれば猛烈な爆発力を持っているということはみんな簡単にわかるわけです。そういうものを、どうしてそういうふうな答弁をするのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/26
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027・倉八正
○政府委員(倉八正君) 私の舌足らずでございまして、この高圧ガスの取り扱いをどうするかというお尋ねだから、私はそういうお答えをしたのですが、いまのPOが蒸気化しまして出たそのガスの取り締まりは、法規上からいえば消防法の対象でございます。しかし、工場内の有機的なつながりにおきましては、工場の災害という面については同じ効果を持ちますから、われわれのほうとしましては、工場に対する注意というのは、高圧ガスは法規に基づき、その他のガスにつきましては行政指導に基づきまして、災害を起こさないように万全の策をとれということをわれわれのほうは指示しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/27
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028・岡三郎
○岡三郎君 端的にいって、そうすると、高圧ガス取締法ではだめだから、だから低圧もそういう危険性があるということが現実に証明されてきたわけです。これの取り締まり法規はつくりますね。これはつくらなければたいへんですよ。あなたのいったようなことで、法の対象になっていないから、これは検査ということも法規の対象になっていないから監督のほうは十分にしないというふうにもとれるわけです。ワク外の問題だから。それは低圧にしてもこういう危険なものについては、当然そういう法規をつくるべきだと私は思うのですが、それはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/28
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029・倉八正
○政府委員(倉八正君) さっきからの先生の御質問のように、非常に新しいこういう物質が毎年々々出ておりまして、それでいわゆる法規の対象が追いつかないというのが現状でございます。このPOというものは四年前から出てきた、したがいまして、そういう場合に消防法の対象でいくか、あるいは可燃性ガス取締法というものをつくりまして、そうして工場内のそういう取り締まりを一元的にやるがいいか、こういう問題であろうと思います。この問題につきましては、各官庁との問題もありますから、各官庁とも十分打ち合わせをして、前向きの態度で進みたい、こういま考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/29
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030・岡三郎
○岡三郎君 最後に。時間がありませんようですから終わりますが、先ほど言ったように、ガス漏れに対する検査の機械ですね、こういったものは必ずやはり必置して、それによって定期的に、毎日でもこれはできるわけですから、保安の立場としてガス漏れの検示器というものを必ずそこに備えなければならない。それによって定期的に毎日巡回して、そういうものについては火気があろうがなかろうが、それは問題ですから、それについては厳重にそういうことをやるということで、まずできるところからやってもらいたいと思うのですが、その点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/30
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031・福田一
○国務大臣(福田一君) ごもっともな御意見だと思います。さよう取りはからうように措置いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/31
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032・岡三郎
○岡三郎君 早急にやってもらいたいと思います。それではこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/32
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033・阿具根登
○阿具根登君 岡委員の質問と、ちょっと一緒の問題ですが、いま答弁されておりました問題について一、二質問したいと思います。
プロピレン・オキサイドというのは、これは高圧法に入りますか、高圧ガス取締法の定義の中に入っているか、入っておらぬか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/33
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034・倉八正
○政府委員(倉八正君) 入っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/34
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035・阿具根登
○阿具根登君 私は専門家でないからわからないのですが、圧力云々の中のこれはどのくらいになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/35
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036・倉八正
○政府委員(倉八正君) それは零気圧でございます。気圧がございませんで、三十六度になると〇・二気圧くらいになる、きわめて低い圧力のガスでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/36
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037・阿具根登
○阿具根登君 そうしますと、新聞等でこの原因が大体三つぐらいあげられておるわけです。正常な状態ならタンク内の圧力が非常に増大しても、安全弁があるから云々。しかし疑問とするところは、タンク内で圧力が非常に大きくなって爆発したのじゃないかという疑問が一つなんです。それだけの圧力があってもこれは低気圧として放置されるのかどうか。そういうものに対する取り締まる法はないのかどうか。それが一点です。それからプロピレン・オキサイドというのは非常な臭気がある、ごく少々出てもすぐわかるのだということを言われておる。だからそういうことはあり得ないということをいま言われておる。それからこれだけいわれておるように引火性が非常に強いのです。ごく少量であれども非常に引火性が強い、こういうことになっておるわけです。そういう引火性の強いものが、これはできてから何年になるかよく知りませんけれども、今日事故の起こるまで放置されておった、法の取り締まりがなかったということは一体どういうことになりますか。これだけ引火性の強いものを、高圧ガス取締法で取り締まることができないということになれば、何でこれは取り締まるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/37
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038・倉八正
○政府委員(倉八正君) 高圧のガスというのは、常用の温度において二気圧以上のものでございますから、いまお話しのように、非常な過熱状態になったという場合には……、いまの第一の問題、技術的な問題ですから、ちょっとあとで何させていただきますが、第二の臭気があった、したがってその三十分前に、きのうの検査員の回ったときはなかったじゃないか、どうも臭気がなかった。それでガス漏れによる引火というのが原因ではないのじゃないかというような先生のお話ですが、これは調査中でございまして、こういう原因によるものか、あとの分子化合による原因か、その点は厳重な調査を進めておりますから、その調査の結果を待ちませんと私はどうとも言えない。それから第三の、非常に引火性の強いというようなものを、できましてから三年間どうしてほうっておったかという御質問でございますが、このPOというのは消防法の対象になりまして、消防法の規定によりまして認可を受け、それを施設したあとには完成検査を受けるということになっておりまして、決してこれが無法状態のまま放置されておったものではないということでございまして、法の対象というのが高圧ガス取締法ではなくて、消防法の対象であるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/38
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039・阿具根登
○阿具根登君 それではこの消防法の取り締まりで、この種の危険物に対するどういう規制措置があるか。たとえば高圧ガスであったならば、何人といえども事業所の指定する場所では火気を扱ってはならないという厳然たる規定があるわけです。法律できまっておるわけです。それに匹敵するのは消防法に何があるか教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/39
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040・倉八正
○政府委員(倉八正君) この消防法の規定はいまも申し上げましたように、設備の許可と完成検査でございますが、それからそれができたあとでは法の定むる基準によってこれを運営しなければいけないという規定がございます。したがいまして、その法の規定に基づきまして、たとえば近くで火気厳禁、私もその消防法の内容は詳しく知りませんが、その消防法に基づきまして火気厳禁とか、あるいは火気持ち込みについての規定があるわけでございまして、したがいまして、今度の場合にもそういう消防法の取り締まりの対象があったからこそ、工事場との間にトタンを持ってきまして障壁をつくったということになったかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/40
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041・阿具根登
○阿具根登君 大臣にお伺いしますがね、消防法があったから隔壁をつくった、こういうことを言っておりますが、新聞で見ますと、会社の調査課ですか、そこが発表しておるのを見ますと、まあ建設現場の酸素溶接の火花が引火したのではないかと思う、先ほど私が二つ質問しましたのは、そういうことはあり得ぬということを否定しているわけです。会社側は。これにも私は疑問があるのです。十数人の死者、数十人の人をけがさせておきながら、こういう疑いがある、こういう疑いもあるということを第三者が言った場合に、当然その責任者たるものはそれでもない、これでもない、ああでもないという最初から否定してかかるそのものに、人間の生命尊重というものが行なわれておらないと私は思うのです。ところが否定しておる中に、酸素溶接の火花が引火したものかもしれない、それは考えられる、こう言っておるわけです。そうすると、そういう非常な引火力の強いもののところにそれを許可した責任は一体だれなのか、消防署がそれを消防法によってへいをめぐらしてそこにやったけれども、それで引火したとするならば消防署の責任です。それを許可していないのに会社がやらしたとするならば会社の責任。会社の許可も受けずに下請が勝手にやったとするなら下請の責任だ。いずれにしても、法で認められていないことをやったからこういうことになっておると思うのです。だから、それについてはどういう御見解をお持ちになるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/41
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042・福田一
○国務大臣(福田一君) こういう事故が起こりますと、とかく新聞にはそういう原因究明、だれでもが原因を知りたいわけであります。だからどうしてもその原因は何かということを新聞社は取材に当たっているわけであります。こういうときに、なるべくしゃべらぬようにと言っておっても、考えられるとすれば、こういうこともあるということを言うと、そういうことも一つ原因になるわけであります。これは私が新聞をやっておった関係からそういうことはよくわかるわけなんであります。それをやめろというわけにもいかない。そういうことを一切しゃべっちゃいかぬということにもいきませんから、私はそういうことは間々出るだろうと思う。これからもやめるわけにはいかない、みんなが知りたいところですから。そこで、そういうことでありますが、それだからといって私はよく原因が不明のままに終わる場合が非常に多いということは非常に残念で、今後高度化していきます重化学工業の分野において、そういう何が原因かわからないからと、将来の災害の問題をほっておくというわけには私はいかないと思う。だから先ほども岡委員の質問にもお答えいたしたのでありますが、これはわれわれは別途に十分な原因調査をすると同時に、想定され得る原因についてもこれはひとつ何らかの措置をとる必要がある、こう私は考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/42
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043・阿具根登
○阿具根登君 高圧ガス取締法では保安管理員を置くようになっているわけですね。そうしてこれは通産大臣の諮問機関になっておるわけです。これはまあプロピレン・オキサイドですか、これはこの法律に適用されないからといって、これと準ずるかこれ以上の危険物であって、いずれも同じような性格のものである。それを取り締まる法律がないというのがおかしいですね。こういう新しい製品が出てくるならば、新しい工業が発達してくるならば、それを許可するときにはすでにこの危険性というものはわかっておるはずです。三十六度のときに〇・何度とかおっしゃったけれども、こういう危険物ということはわかっておるのに、なぜ保安の法律は考えずに生産だけ許可するかというのがいまの資本主義の行き方なんです。だから生産さえ進めばいいんだ、そうして数年たってもこういう危険なものがどうして高圧ガス取締法にも触れないだろうかといわれるような危険なものが残っておるわけですね。そうすると、ここにはちゃんとこういう保安管理者なるものがある、その保安管理者なるものがあって、通産大臣の諮問機関でもあるならば、当然こういう工場が申請された場合、これはここにでも諮問して、これは一体どうあるべきか、別に低圧ガスの取り締まり法をつくるのか、あるいは高圧ガスの定義を少し拡大するのか、こういうことをしなければ私は取り締まりできないと思うんですがね。そうしませんと、こういう事故が起きて、そして十数人の人が死んで、数十人の人が重軽傷負って、初めてこういう問題が国会で論議されるというのはまたおかしいと思うのです。だから保安管理員に対する諮問をされるか、それとも別に高圧ガスと違った低圧ガスに対する取り締まり法を早急におつくりになるかどうか、これを聞いておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/43
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044・福田一
○国務大臣(福田一君) 私はいずれの方法をとるかということはここでは申し上げません。いずれかの方法をとってこの種の問題は起きないようにしなければならぬ、こう考えております。実際をいえば、法律的には何か責任がないような感じですが、私はやっぱり行政をやっておるという立場からいえば、もう少し気をつけなければいけないじゃないかという道義的なやっぱり責任は免れないと思っております。しかし、そうはいってみても、日進月歩のことでございますし、一応は消防法というもので取り締っておったんだけれども、それだけで十分であったかどうかというところまでこまかい配慮をすべきであったのではないかという御趣旨であれば、われわれとしてもまことに遺憾であったとおわびしなければならないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/44
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045・阿具根登
○阿具根登君 局長にもう一つお尋ねしておきますが、この種の化学工場が日本に現在幾つありますか。この法律の対象にならないこの種の化学産業が日本にどのぐらいありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/45
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046・倉八正
○政府委員(倉八正君) この種の対象にならないというのは非常に定義がむずかしいのでございますが、たとえばこのプロピレン・オキサイドあるいはプロピレン・グライコールというのは引火性が強い、それが全国に約十二、三すでにあります。ほかの所に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/46
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047・阿具根登
○阿具根登君 これじゃなくて、普通の石油関係の低圧はないですか。これは全部高圧ですか。この種の爆発危険性のあるもので、爆発あるいは引火の非常に可能性のある危険物で、しかも圧縮されたやつで高圧ガス取締法にかからない産業は幾つありますかと聞いておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/47
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048・倉八正
○政府委員(倉八正君) いまの御趣旨のような工場が大体三十近くございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/48
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049・阿具根登
○阿具根登君 時間を節約するためにはしょりますが、それだけのものがあるとすれば、こういう法の取り締まり対象からはずれて、消防法でこれが守られておる、こういうことは早急に直してもらわなきゃいかぬと思うのです。
それから先に進みますが、通産大臣に——労働大臣が見えるまでと思っておったのですが、まだお見えにならぬから、石炭の問題もありますので、あわせてお尋ねいたします。石炭で現在四人の人がなくなって、二人の人がまだ上がってこない。今度川崎で十二名の人が死んで重傷が五十六名、軽傷が五十四名、こういうことになっておるわけです。ところが現在政府に出されております労働災害の防止法についての答申案は人命尊重が第一であるのに、人命尊重に対する考え方が薄い。だから人命尊重というのをまず考えろということがいわれておるわけなんです。そこで、そういう立場に立ってお尋ねしますが、大臣の答弁によりますとこの十二名死んだ、五十六名重傷を受けた人たちは請負の下請のまた下請だ、こうおっしゃるわけです。そうすると、その人たちは実に少ない賃金で働いておると思います。これが労災法の適用を受けても千日分です。そうすると、これはわずか何十万かの保険金で私は打ち切られるのではないかと思う。その観点から見る場合、人間の生命の尊重というのを何と一体考えておるのか。小企業の人は三十万か五十万の命か、大企業の人は百万か二百万の命か、こういうことでいいのかという問題なんです。こういう質問をすると、すぐそれは会社の経理内容によってこのくらいしか払われないとか、このくらい払われるとかいって人間の生命の尊重の前に経済を考えられるのがいまの政府のあり方です。私はそれが逆だと言っておるのです。きょう本会議でこれは質問したくてしょうがなかったのです。しかし、ついに質問させられなかったので、やむを得ずここで質問しておるのですが、人間の生命というものはその企業の能力によって軽重が問われるものではないと思う。金で換算することはできないけれども、人間の生命というものは、その人がなくなったならば、その人の家族がある一定の時期になるまでは生活のできるだけの責任は当然これは政府なり会社なりが持たなければならぬと思う。そうすると、政府自体の考え方が、一人の人が事故によって死んだならば、その子供が何歳になるまではこのくらいの費用が要る、あるいは年金という考え方も出てきます。これだけの金を払わなければならぬ、こう最低をまずきめなければならぬと思う。それが今度は中小企業なり、いま犠牲になられた十二名の方、下請の下請、こういうような方ですとそれまで払えない、そういう人たちの払う方法をどうするか。これは労災補償の考え方を変えて、保険の考え方を変えて、そうしてその人たちに払えるようにしてやって初めて私はできると思う。先ほど岡君も言っておりましたように、六千四百名の人が死んでおる。これは五カ年計画で半分にしようと政府は言っている。半分にしても三千二百名の人が死んでいる。そうして自動車事故とか、あるいはこういう下請の下請の人なんかはおそらく最大四、五十万で私は泣き寝入りだと思う。だから事故の起こらないようにするというのが第一であるけれども、その根底に流れておるものは人命の尊重だ、こうなる。人命の尊重は何かというと、そういう基準をまず引かなければならぬ。自分が仕事しておった会社の経済力によって上げ下げされるということは私は間違っておると思う。だから一応最低の線を引いて、それから上の線は出すべきである、こう思うのですが、そういう基本的な人命尊重という立場に立って、労働大臣がお見えにならないからひとつ通産大臣からお尋ねし、基準局長が見えておりますからお尋ねしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/49
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050・福田一
○国務大臣(福田一君) この労働災害が起きました場合のいわゆる保険の問題等につきましては、労働大臣は閣議の席上においてもできるだけすみやかに支出をする、こういうような発言をいたし、その他あらゆる万全の措置を講じたい、こういうことを言っておりますが、私といたしましては、そういう労働災害法の適用以外に、この場合昭和電工等をしても私は相当なやはり措置を、いまから話をするのですが、法律的に強制はできませんけれども、私はできるだけのことをさしてやりたい、そういう交渉をするつもりでおります。これはちょっと向こうの内容を探らしておるのであります。向こうもそういう気持でおるようであります。いずれにいたしましても、人命尊重という立場は、われわれもその見地に立って十分努力をいたしたいと思っておるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/50
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051・村上茂利
○政府委員(村上茂利君) 先生の御指摘の点は、私は人命尊重という観念に立脚して考えました場合には非常なすぐれた御意見であるというふうに先般来傾聴いたしておるのでございますが、ただ、具体的な補償の帰責原因、だれに責任を帰めしめるかということに関連いたしまして、具体的な補償額の決定等にはなお検討を要すると思うのでございます。特に先生の御指摘の、補償の一つのめどといたしまして、遺家族が年齢的にあるいは経済的に一定の状態に達するまで遺家族の生活を保障するようにという観点から考えました場合、それは一つの社会保障的な国民の最低生活ないしは平均的な生活を保障するという観点に立って処理するか、あるいは使用者の責任によって処理するかといったような問題があろうと存じます。しかしながら、方向といたしまして、現在の平均賃金を基準にして千日分の額を遺族補償費として支払って、それですべてが足りるんだという考え方には、これは率直に申しまして反省すべき点がある、こういう考え方から現在労働省の労災保険審議会に、遺族補償の問題も含めまして根本的な検討をわずらわしておる次第でございまして、方向としては、年金化の方向を考えつつ補償額をどうするかという点につきましてできるだけの配慮をすべきものであろうというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/51
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052・岡三郎
○岡三郎君 関連して。まあ、安西社長ができるだけの補償をするというふうに言っておりますが、実際から言うと、いま言ったように、昭電の社員でない下請の人たちがおもに被害を受けているわけです。そうしますと、これは時間が経過すると非常に問題があとへ残されていく危険性があるんじゃないか。そこで端的にいって、将来の事故についての補償の問題とは別に、こういうふうに端的に内海建設なり辻鉄工というものがそれだけの母体を持っておらぬということになってくるというと、千代田化工はかなり大きな会社ですから、ある程度は処理できると思うが——ということになってくるというと、昭電自体としては請負に出してそこに事故が起こってきたということで、できるだけの補償をするということばの内容は非常にいいけれども、具体的になってくるというと、これは問題があとへ残ってくるんじゃないか。そこで、いま言われたように、国鉄等ではホフマン方式を最近ではとっておりますし、それからこの間の米機の墜落等によって死んだ方についての補償の問題についても新しく問題点が提起されておりますが、炭鉱災害も含めて、全体的にいって、はっきりと親会社がどっしりしていればある程度めどがつくけれども、こういうような間接的の場合にいままでどの程度具体的にこれは補償されてきたか、この点をちょっと聞きたいと思います。いわゆる直接的ではなくて、間接的に仕事をさしてきた親会社がどの程度尊重するという内容を持っておるか、この点をちょっと聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/52
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053・福田一
○国務大臣(福田一君) ちょっと私にも関係のある御質問だと思いますから、私からお答えいたしたいと思います。
私は、そういうことは、実は金額をいまここで明示せいとおっしゃられれば言うことはできませんが、これがうやむやになるというようなことは断じて安西社長はしないと思っております。私は信用しております。また、われわれもそれはさせないつもりです。させないという権限があるわけではございませんけれども、それはやはり人を信用の問題でございまして、また、われわれを信用していただく以外に道がないわけであります。実際にまだ額も、これから死人が何人も出るかもしれません。そのときに、一人どうするとかこうするとか、そこにはいろいろな問題もありましょうから、私はやはり社会的責任というものを感じてやってくださる人であると、私は人を信用しておるわけです。決してそんなことはないと私は考えておる。ただここで金額を幾らだと言われても、これはわれわれとしては申し上げるわけにはいかない、こういうわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/53
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054・阿具根登
○阿具根登君 労働大臣がお見えになりましたので、ただいまの質問を少し蒸し返すようになりますけれども、御承知のように川崎で十二名の人が昭電でなくなった。また炭鉱で六名の人がなくなった。こういうさなかに災害防止法を審議しておるわけなんです。そこでこの労災法によって千日分というのはきめられておりますが、これはもう十年以前にきめられたものであって、そうしてその当時の考え方というものは、一家の柱が死んだ場合に十年間はこのくらいで食っていけるだろうというような考え方が柱になって立てられたものだと思うのです。そうしますと、今日これだけ物価が上がっておるのに、この労災法の死亡した場合の千日分というのがいいかどうか、私は当然これは変えるべき時期がきておる、こう思うのです。だからこの労災法の千日分を依然として適用される考えであるかどうか、これが一点。
それから一点は、先ほど申しましたが、通産大臣は、今度の場合は安西さんという人がおるから、その人を信用して金を出させよう、こう言われるんだけれども、それそのものはいまの場合はやむを得ぬとしながら、その考え方が私は人命尊重に通じておらないと思う。安西さんという人が金がなかった、あるいはそうしなかったというなら、どこから金を持ってくるか。それは人間の生命が尊重されておる発言ではなくて、安西さんの人柄をそれは説明されておるわけです。私はその金を持っておる人、持たない人、そういう人の発言は聞きたくないんで、人間の生命というものはそういうものじゃないんだ。いかに貧乏な会社であろうと、零細企業であろうと、いかに大会社の従業員であろうと、私は人間の生命というものは同じだと思う。この人は下請の下請であったけれども、親会社がりっぱだからとか何とかいって、気の毒だから同情金を出してやろうというような、そういう考え方が何で人命尊重に通ずるものかと思う。口を開けば人命尊重とおっしゃるけれども、そうやじないんです。それは。私の言っておる人命尊重というものは、金がなかろうがあろうが、人間が一人死んだならば、この残された家族がやっていけるだけの補償をしなければならぬ、これが基本になっておる、私の考え方は。その基本から、中小企業はそれではやっていけない、やっていけなかったならば保険制度をどうすべきかという問題に入っていかなければならぬ。いまの考え方は、その会社の経理状態、あるいはその会社の営業状態において補償していくようになっておる。それは私は逆だと思うんですが、今度こういう事故も起こっておりますし、特に労災防止法を審議しておる過程でもございますので、これを明らかにして諮問される場合にその基本線を示されて、このためには一体保険制度はどうあるべきか、労災の千日分はこれが適当であるか適当でないか、そういう基本線が立っておらなければ、いまのような答弁になって、幸い親会社が安西さんで、人を信用しなければならぬので、この人に言って相当な金を出してあげましょう。そういうような考え方は私は人命尊重の上に立っておらないと考えるんですが、大臣いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/54
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055・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) 阿具根委員のお説には私も全く同感でございまして、現在では私どもも千日分の補償では今日いかがであろうかというふうに考えておるのでございます。したがいまして、これをある程度まで引き上げる、引き上げるについては、同時に制度としていままでのような一時金がよろしいか、あるいは性質的に見て年金制度に移行するほうがよろしいか、ことに外国の実例等を見まするというと、年金制度が今日国際的な水準に相なっておるのでございまして、少なくとも年金制度を主体として、そして一時金をいかにあんばいしていくかというような考え方が考えられるわけなのでございますが、これらの点につきましては、ただいまおくればせではございまするが、すでに労災保険審議会におきまして御検討をお願いいたしておるところでございまして、その結論を待ちまして、すみやかに国会の御審議をいただきたい、かように取り計らっておるところでございます。今回の災害は、その運びがついていない前にでき上がったでき事でございます。法律の要求する最小限度といたしましては、千日分の補償金ということでございまするが、この法律はあくまでも最小限度を考えておるものでございまするし、したがって労災保険といたしましては、これは法律による要求額を支払することを目的とした保険でございます。これにおいてそれ以上の金額を考えるというわけにはまいりません。しかしながら、使用者等の理解ある措置をできるだけ勧奨いたしまして問題の解決をはかりたい、かように存じておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/55
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056・阿具根登
○阿具根登君 大臣の話を聞いておりますと、非常に私の言うことに賛成しておられるようだけれども、そうでもないように聞こえるわけなんです。審議会に諮問されるのはけっこうなんですけれども、その考え方が私はこれでいいのか、これではもう時代おくれのようだと思う。外国でも年金をやっておるからどうだというようなお考えに立っておられるのではないかと思うのです。私はそれでは少しもの足りぬのじゃないか。そうではなくて、これは人命尊重というものはどんな零細企業であろうと、大企業であろうと同じだ、こういう基本線に立ってもらいたい。というのはなぜかと申しますと、最近東京の弁護士の皆さんも、たとえば自動車事故なんかで死んでいった人たちが、非常に小さい金で裁判する金もないので泣き寝入りしておる。そういう人たちを何とかしようじゃないかという話まで出ておる。ということは、そういう基本線がないからなんだ。自動車事故にあって死のうと、あるいはどこで死のうと、人命の尊重というのは同じだ。ところが二、三十万の金で泣き寝入りしているのが現実じゃないか。ということは、そういう小さい企業、零細企業で犠牲になった人はその生命は実に安い。それは人命尊重ではないと私は思う。だからどういうふうにして支払うかという問題は一時置いておいて、そしてたとえば子供が三人おったら、一番小さい人が二十歳なら二十歳になるまで生活を見なければならぬのだ。それを諮問しちゃどうですかと、こういうわけです。そうすると、諮問されたほうはそれを実現するためには一体どうしたらいいかという研究をされてくると思う。そうしないと、いままでのように、千日分があるいは千二百日分に上がるかもしれぬ、あるいは千五百日分に上がるかもしれません。ところが一方は五万円取っておった、ところが一方は一万五千円取っておった、そうすると、その人の生命の価値というものに開きが出てくるわけです。だから、一つの線を引いて、それが最低線で、それから上は会社の状態あるいはその他の状態でいいではないか、一定の線を、その基準線を示せば、自動車事故にあった人も、あるいは学生なんかで途中で死亡した人でも一応の線というものはできてくる。だから、そういう基本的な線を示して、この不幸な災害にあった方々を救うことはできないか、こう聞いておるわけなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/56
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057・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) 御質問の趣旨よくわかりました。ただいま労働省では労災保険の改善といたしまして、特に業務上の災害の範囲を拡張する必要はなかろうか、特に通勤途上の事故に対して業務上の災害補償をする必要があるのではないかというふうなことまで検討を進めておる段階でございます。そうなりますると、いろいろこの交通事故などと工場内の事故などと当然同じ扱いにしなければならなくなりまするし、そうすれば、一般の自動車保険における給付などともバランスをとらなければならないというような新しい問題も生じてくると思うのでございます。したがいまして、お説のように人命事故に対しては最小限度一律にこの程度までは出すべきだというようなことを当然考えてしかるべき段階だと思うのでございます。御趣旨はよくわかりましたので、なお検討いたしまして、審議会にも御相談いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/57
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058・阿具根登
○阿具根登君 それからもう一つ質問しておきたいと思いますのは、これは炭鉱災害のときに、いつも労働省が所管すべきか、通産省が所管すべきであるかというのを論争しておりますが、もう今日のように各産業が高度に発達してまいりますと、これはもういまのままじゃいかぬのじゃないか。港湾で事故が起きた場合はこれは運輸省である、今日のように化学産業で事故が起こった場合はこれは通産省である、これは労働省にも責任があるけれども、今度は石炭は通産省であるというように、その所管所管でいろいろやっておるが、もうこの種のものは、労働省でできないとするならば、内閣なら内閣に一本の強力なものを持っておって、それから、ずっと下部に流さなければもういけないという時期になっておるのじゃないか。何か災害のあるたびに問題が起こってまいりますのは、この災害の責任者は会社である、使用者であるということにきめつけられておるので、使用者は、今日の川崎の昭電の事件でも、いち早くきょうのラジオ等で、何のためにあれだけオートメしておるのが爆破したのかわからない、新聞でこれこれいわれているけれども、そういうことは認められない、会社側はこういうことをもうすでに発表しておるわけです。まだ原因もわかっておらない。ここで聞いてもだれもわからない。それに会社側は会社側なりに、そういうことはあり得ない、新聞にはこれこれ三つの疑いがある、こう言っておるが、会社はそういうことは考えられませんということをもう盛んに言っておる。一番責任をとるべき人が最初からそういうことを否定してかかるということが、私はこの種災害に対してまた人命尊重を否定している、こう思うのです。だから、こういうものをやる場合は、これは責任は確かに業者にあるけれども、こういうものを扱うのは業者にやらすべきじゃないと私は思うのです。ところが、すべてのこの種災害については、業者が責任で、業者が組合をつくり、協会をつくってやるようになっている。だから、うやむやになって、済んでしまう。そういう問題に業者も入っていいかもしれませんが、しかしそれは炭鉱だけに限らず、一般のその対象になる方とか、学識経験者の方とかを網羅した一つの強力な機関をつくるべき時期にきておりはしないか。確かにこの表を見れば減ってはおります。表を見てみますと、これは昭和三十三年をら昭和三十八年まで出ておりますが、四七・八%であったものが三二・六%に減ってはおりますが、これは率が減っておるだけのことである。これは産業労働者が多くなって率が減っただけであって、数は昭和三十三年に七十万二千件あった、それで五千三百六十八人死んだ。それが昭和三十八年には七十四万四千件、六千三百人死んである。事故の数も多いし、死んだ数もうんと多い。ますますこれはふえていく。そうならば、いまのような対策では、いつもこういうことを繰り返さねばならぬのじゃなかろうか、こう思うのです。きのう私が社労で質問いたしましたときに、いまこうして私は質問しておるが、いまどこかで事故が起こるかもしれない、だれか死ぬかもしれないと言って質問したら、もう帰ってみたらこれだけの事故が起こっているのでしよう。一日に二十人から死んでおるのですからね。ですから、もう少し人命尊重という問題について真剣に考えていただかねばならぬと思うのですが、その機構のあり方についてどういうふうにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/58
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059・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) 実は災害防止対策につきましては、お述べになりましたように、いろいろな各省の権限が錯綜いたしておりまして、これにつきまして全般を統括する機構が必要だということは前々からも言われておったところでありまして、私どももその必要を痛感いたしておるのでございます。したがいまして、さしあたりの措置といたしましては、産業災害防止対策審議会、これは総理府設置法の一部改正案をお願いいたしております。これによりましてこの審議会を総理府に設けて、その活動を強化してまいりたいと思っておるのでございます。この審議会の運用につきましては、先般総評からもいろいろ意見が出ております。内閣におきまして目下それらの意見に基づきまして、今後の運用につきましても万全を期して検討中でございます。私どももこの審議会ができましたならば、これに全面的に協力いたしまして、その統制のもとに各省と手を握って進むような体制をとりたいと、かように考えておる次第でございます。
なお、昨日の事故に関しまして一言申し上げますると、私もああいう事故が起こりましたので、役所の人たちからいろいろ話を聞いてみたのでございますが、その感じたところを申し上げまするというと、石油化学という新しい産業部門につきまして、実は役所のほうではいままで残念ながらその装置並びにその危険性についての完全なる認識というものが必ずしも十分でなかったような気がいたしておるのでございます。従来から役所のほうではボイラーでありますとか、あるいは工作機械等につきましては、これは昔からのものでございますので、相当権威ある人もおられますけれども、石油化学につきましては、新しい分野であるだけ、まだその方面の専門家がそろっていないというような状況でございまして、このことの結果、化学工業、ことに石油化学に対する危険防止対策というものは、私が聞いた範囲内においては完全とは言いがたいように思うのでございまして、そうしたことがやはり今回の原因の一部に相なっておると思うのでございます。労働省に関する限り、これらの新しい産業につきまして、急速に監督の基準を設けまして、今後は重点的に監督いたしてまいりたい、そうして二度とかような災害がないように万全の措置を講ずるようにいたしたいと思っておるのでございます。それらにつきましても、この総理府に設置される審議会等においてさらに検討をお願いし、労働省の方針についてさらに万全を期するようにいたしてまいりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/59
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060・阿具根登
○阿具根登君 もうこれでやめますが、この問題も通産大臣がおられたときに岡委員なり私なりからずいぶん質問いたしましたから、もうやめますが、いま言われたように、今度のこの災害でも四キロも五キロも離れておるところに爆発音が聞こえて、そして震動するというような、こういう危険な爆発物が高圧ガス取締法で取り締まれないということを所管の省の人がぬけぬけと言っておるわけなんですよ。こんな危険な爆発物を消防署で取り締まるほかないと言っておるんですよ、消防法で……。高圧ガス取締法で取り締まれないと言っている。この定義に入っておらないというのです。これは科学の進歩が早いからおくれたのはやむを得ぬとしても、早急にひとつ取り締まり法律をつくってもらうように、そして保安につきましては、どこまでいっても万全ということはございません。まあ労働省も考えられておられるように五年間でこの半減です。これもなかなか困難だと思うのですけれども、特に災害の起こったたびにこういう論争をしないでいいように、十分なひとつ措置をとっていただくように特に要望いたしまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/60
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061・向井長年
○向井長年君 先ほど通産大臣が言われたように思っておりましたが、しかし私が質問しようとする問題につきましては、先ほどから岡委員から、あるいは阿具根委員からほとんど言われましたので、重複を避けたいと思います。
労働大臣に一点申し上げたいことは、特に今回のこの災害について、先ほどいみじくもこの科学の進歩に従って危険防止のいわゆる技術的な措置が十分でないということが明確に言われております。したがって、これに尽きると思いますけれども、しかしながら、特にこれは工場安全管理、あるいはまた労務管理この二つの不備というものがこういう危険、いわゆる災害を起こしておる、こう言えると思う。そこで問題は、この川崎の問題につきましては、死者がほとんど下請の下請の業者である。そこで特にこれは通産大臣も先ほど言われましたが、こういうシステムがいいかどうかということは、今後十分検討しなければいかぬ、こう言っておるわけなんです。そこで問題は、こういう大きな会社に対する施設増強なり、その他の問題について下請下請というかっこうで出すのですけれども、これに対する労務秩序、あるいは規律というものはどこでこれが監督されるものであるか、いわゆる危険物のそばでそういう下請の施設の仕事をするそういうところが、小さい下請の下請ならば、十分でない業者もおるわけですから、そういういわゆる労務管理あるいは労務秩序、あるいは危険の場合においての監督、こういう問題はどこが責任を持ってやるのか、下請したところがやるのか、あるいは下請させたところの親会社がやるのか、あるいはその役所がやるのか、この点、まずどういうように考えておられるかお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/61
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062・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) 従来からその点は労働基準法におきましても盲点とされておったところでございます。もちろん労働基準監督官が全般について監督上の全責任のありますことは、これは申すまでもございません。問題はそこで働いておる労働者に対して保安上の責任をとる者はだれか、使用者としての保安上の責任をとる者はだれかという点でございます。この点が従来から労働基準法の盲点とされておったのでございます。そのことがまたこの種災害の発生の予防の上において一つの隘路となっておったと思うのでございます。そこで現在社労委員会において御審議をお願い申し上げておりますように、労働災害の防止に関する法律案におきましては、そうした場合の安全の責任をきめまして、その場合には第一次的に請け負ったところの業者、すなわち元請人が下請の労務管理についても安全上の全請任を負うという法律構成をいたしまして、従来の欠陥を補う運びをつけることにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/62
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063・向井長年
○向井長年君 その責任の所在はそういう形で明確になってくると思いますが、しかし、こういう石油化学とか高度ないわゆる化学工業になってまいりますと、それに伴うところの監督というものは、やはり技術を習得した人が当たらなければならないという結果になってくる。それで今回の場合においては一般の業者がそこで施設増強をやっている。しかも、どこに原因があるか、これから探究されると思いますけれども、ほんとに現場で働く方はその部分的な技術を持っておっても、それに伴うところのいわゆる技術というものは非常に不足しておるんじゃないか、したがって、それに対しては十分技術を持った監督者が必要である。そういう意味において少なくとも請負者の中に必要であると同時に、請け負わしたところの親会社自身がそれに対する高度な技術を持った技術監督者がついて、これに対するところの指導をすべきじゃないか。このきのうの事故の場合においてはそういう監督者がいなかったんじゃないか、こういう感じを持つわけです。そういうことをわれわれ考えるわけですが、こういう点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/63
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064・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) その点は私も全く同感に存じます。役所のほうの監督官と申しましても、何ぶん最新化学の工業でございますので、適当な知識を持った者が必ずしも十分にはおりません。したがって、これにつきましてはどうしても現場に直接しておる技術者、それが工場の技術者でありましょうと、あるいは請負人側の技術者でありましょうと、そういう人に技術的な責任を持ってもらうということは、これは絶対的に必要な事柄だと思います。その点につきましては、現在の法律においても明確な規定はございませんし、御審議をいただいておりまする法案においても、元請人の責任だということだけははっきりしております。現実に技術者のない場合にはどうするかという規定もいたしてございません。これは全く私どもも今度の事故によりまして、初めて大きな欠陥があるということに留意いたしたわけでございます。これにつきましては至急検討いたしまして、急速に何らかの措置、また必要ならば法的措置を講じなければならない、かように存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/64
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065・上原正吉
○上原正吉君 阿具根委員の質問に関連いたしましてお尋ね申し上げたいのですが、御質問の数々をここに拝聴しておりまして、たいへん心を打たれたわけでございます。そして私考えますのに、災害を防除するということは非常に大事なことではございますけれども、そうしてまたこの災害防除が各省の管轄に分かれておりまして、なかなかうまく運用されないということもさもありなんと思われます。大事なことは、災害の発生を防ぐことにあることは間違いない。それでも起こった災害に対しては、何より大事なことは災害を補償するということだと思うのでございます。そうして災害の補償は、各省に分かれて管轄が違うなんということがあるはずのないものでございますから、幸い労働大臣御出席ですから、発生した災害に対しては企業の責任なり、場合によっては国の責任なりにおいて十分の補償をやらすべきである、こう思うのでございます。この点は労働省一本でやるべきだと思います。ぜひひとつこの際お考えをいただいて、労働者の生命が失われても、たった千日分の給料しかもらえないなんていうことでは、安心して私は国のために、社会のために働くことが不可能じゃないかと思うのでございまして、もう少ししっかりしたものを労働大臣の責任において確立することをこの機会にひとつお願いしておきたいと思いますが、お考えのほどを承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/65
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066・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) 監督上の機関はそれぞれ各省にございます。労働者に対する災害補償の問題は、これはあくまでも労働省の仕事でございます。労働省として責任をもって善処いたしたいと思います。もちろん災害が発生いたしました場合に、それに関係しておる労働者以外に、一般公衆に対する災害というものもございますので、これはまあおのずから別でございますが、労働者に関する限りは労働省で責任をもって解決いたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/66
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067・岡三郎
○岡三郎君 ちょっと一つだけ。
さっきの下請のことですがね、たとえば政府が、また会社が仕事を請け負わせますね、そのときに単価というものがありますな。たとえば学校を建てさせるときに一応の基準単価というものがある。まあ大体安いのが普通ですがね。それを元請が受けて、そうして下へこれをまたおろす、それから入札でもさしたときに、全体を見て、まあこの工事ならばこのくらいの金がなければ安全工事はできぬと、基本的な要素を含めて。ところが、元請が受けて下へくるときには実際の単価が減っちゃっているというこの事実ですよ。実際はだから表は単価になっているけれども、下請にいけばその単価がおろせない。これは詐欺的行為に私はなると思う。政府自体もおかしいと思うのですよ。その人間が受けたらその人間が一貫して仕事をして、責任をもってやればいいのに、下請におろすときには頭をはねて下請に受けさせる。これでは一体何のために単価をきめて予算措置をするのか、また仕事を出すほうもこれだけ実際にかかるのだから、これだけ金を出すといっていて、実際はそうじゃなくて、下のほうで粗漏工事とか、危険工事というものが出てくるというふうな点について、これは労働大臣に伺うことはおかしいか知らんけれども、根本的な問題が私はあると思うのです。これは建設省なんかにおいても、この工事をやるというと、ばらばらになってはどうもいかんからというので、大きなところにどんどん請け負わしても、大きなところはそれを今度こまかい会社にみんなやって、下はばらばら工事になっているのですよ。国としてはばらばらではいかんから大きなところへやらせるといっても、大きいところは実際には下のほうがばらばら工事でやっている。こういうことやはいけないのじゃないかと思うのです。これは粗漏工事にもなるし、それからいま言ったように、いま労働大臣の責任が明確でないなんておかしいですよ。仕事を受けたものが下請に出しても監督して責任をもってやるべきが当然なんだけれども、下へもうトンネル会社じゃないけれども、やらしちゃうと、下のほうに責任を持たせてやらせる形ですね。だから基準監督局のほうでも監督するのに困るから元請人が責任をとれと、そんなことは事業の性質からいってあたりまえのことなんです。あたりまえのことができていない。ほとんどいま言ったように、仕事をさせれば長期の手形を出して金は払わぬ、それでもついてこなければ、お前のほうは系列からおっぽり出す、これでは事故が起こるのは当然ですね。その点単価の問題と、引き受けさしたときにおける事業の引き受け経過ですね、こういうものをもう少しきちっと監督していただいてやってもらわにゃ困ると思うのですが、その点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/67
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068・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) 建設業は、わが国の産業別から申しましても最も災害率の多い産業でございまして、私ども産業災害の防止対策を立てまする上からいきましても、一番大事なお得意さんになるわけでございます。この点につきましては、特に今回の災害防止に関する法律案でも、それがための責任問題の明確化など特別の規定を入れておるばかりでなく、業種別の災害防止協会をつくるにあたりましても、第一番に指定しようという業種でございます。今後労働省といたしましても、事柄が他省の受け持ちになるかもしれませんが、災害防止の原因に現在の請負制度というものがかなり大きな役割りを占めているという事実を認識いたしまして、これらの点につきましても今後検討を進めて、有効な対策を確立するように努力いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614461X03419640612/68
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069・前田久吉
○委員長(前田久吉君) 他に御発言もなければ、本件はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
午後三時三十三分散会
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