1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年二月二十七日 (木曜日)
午前十時四十一分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 新谷寅三郎君
理事
柴田 栄君
西川甚五郎君
成瀬 幡治君
渋谷 邦彦君
天田 勝正君
委員
岡崎 真一君
川野 三暁君
栗原 祐幸君
佐野 廣君
鳥畠徳次郎君
日高 広為君
堀 末治君
木村禧八郎君
野々山一三君
野溝 勝君
原島 宏治君
大竹平八郎君
鈴木 市藏君
国務大臣
国 務 大 臣 宮澤 喜一君
政府委員
大蔵政務次官 齋藤 邦吉君
大蔵省為替局長
事務代理 鈴木 秀雄君
大蔵省銀行局長 高橋 俊英君
大蔵省主計局法
規課長 相沢 英之君
事務局側
常任委員会専門
員 坂入長太郎君
説明員
通商産業省通商
局次長 大慈弥嘉久君
参考人
日本輸出入銀行
総裁 森永貞一郎君
日本輸出入銀行
理事 斎藤 正年君
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本日の会議に付した案件
○保険業法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
○地方自治法第百五十六条第六項の規
定に基づき、税関支署及び税務署の
設置に関し承認を求めるの件(内閣
送付、予備審査)
○国立学校特別会計法案(内閣送付、
予備審査)
○関税定率法等の一部を改正する法律
案(内閣送付、予備審査)
○外国為替及び外国貿易管理法及び外
資に関する法律の一部を改正する法
律案(内閣提出)
○参考人の出席要求に関する件
○日本輸出入銀行法の一部を改正する
法律案(内閣提出、衆議院送付)
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001・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) ただいまから人減委員会を開会いたします。
去る二十五日本院先議として提出せられ本委員会に付託されました保険業法の一部を改正する法律案、また、同日予備審査のため付託せられました「地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、税関支署及び税務署の設置に関し承認を求めるの件」、昨二十六日予備審査のため付託せられました国立学校特別会計法案及び関税定率法等の一部を改正する法律案、以上四件を一括議題といたします。
四件につきまして順次提案理由の説明を聴取いたします。齋藤大蔵政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/1
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002・齋藤邦吉
○政府委員(齋藤邦吉君) ただいま議題となりました保険業法の一部を改正する法律案外三件につきまして、提案の理由及びその概要を御説明申し上げます。
最初に、保険業法の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。
昭和三十七年四月二十日公布の商法の一部改正は、主として株式会社の計算規定の整備、合理化を目的としたものでありまして、それにより、資産の評価につきましては、従来の時価以下主義が原則として原価主義に改められたのであります。その結果、株式会社たる保険会社につきましては、改正商法の規定が全面的に適用されることとなったのでありますが、その計算規定が適用になる時期までに、相互会社たる保険会社につきましても改正商法の計算規定を準用して、その規定の調整をはかることが適当であると考えられるのであります。また、保険事業の相互扶助的特質に照らし、契約者利益の確保並びに増進をはかる見地から、取引所の相場のある株式の評価に関し商法の特則を設ける必要があると考えられますので、これらの点に関し保険業法に所要の改正を加えようとするものであります。
以下、この法律案の概要について御説明申し上げます。
まず、相互会社たる保険会社についても、商法改正の趣旨に従いまして、株式会社の資産の評価等に関する改正商法の規定を準用することし、株式会社と相互会社との計算規定の統一をはかることとしております。しかしながら、保険事業の特質にかんがみ、保険会社の資産のうち取引所の相場のある株式の評価につきましては、株式会社、相互会社ともに、主務大臣の認可を受け、かつ、評価がえにより計上する利益を契約者のための準備金に積み立てる場合に限り、時価までの評価益を計上することができる道を開いておくこととしております。なお、これに関連いたしまして罰則その他所要の規定の整備をはかることにしているのであります。
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次に、「地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、税関支署及び税務署の設置に関し承認を求めるの件」について御説明申し上げます。
まず、横浜税関に小名浜税関支署を設置することでありますが、これは、現在の同税関小名浜出張所を税関支署とすることであります。同出張所は、横浜税関から距離的に遠隔の地にあるため、税関業務の処理上不便な点が多いこと、及び近年港海造成計画の進捗に伴い小名浜港等が整備され、今後相当の貿易の伸長が期待されているところでありますので、同出張所を税関支署として独立性を賦与し、現地における税関業務をさらに迅速かつ円滑に処理しようとするものであります。
次に、東京国税局に向島税務署ほか二税務署を、名古屋国税局に名古屋中村税務署ほか一税務署を設置することであります。
最近における経済の発展は大都市において特に著しく、この間の事情を反映して、都会地税務署の管内の納税者及び課税物件等は年々増加してまいりますとともに、これらの税務署の事務量、人員ともに過大となり、事務管理の面及び税務指導等納税者に対するサービスの面で支障を生じようとしております。
このような事情に対処して、墨田税務署の管轄区域のうち、旧向島区の地域を分離して向島税務署を、江東税務署の管轄区域のうち、旧城東区の地域を分離して江東東税務署を、川崎税務署の管轄区域のうち、川崎市の中原地区、高津地区及び稲田地区を分離して川崎北税務署を、名古屋西税務署の管轄区域のうち、中村区を分離して名古屋中村税務署を、それぞれ設置するとともに、昭和税務署の管轄区域のうち、千種区を名古屋東税務署に移管した上、名古屋東税務署の管轄区域のうち北区と尾張瀬戸税務署の管轄区域のうち守山区とをそれぞれ分離して、新たに、北区及び守山区を管轄する名古屋北税務署を設置し、納税者の利便と税務行政の円滑な運営をはかろうとするものであります。
以上の理由によりまして、地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づいて、国会の御承認を求める次第であります。
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以上の理由によりまして、地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づいて、国会の御承認を求める次第であります。
次に、国立学校特別会計法案につきまして御説明申し上げます。
政府におきましては、教育の重要性に顧み、従来国立学校の施設の整備及び内容の充実について特段の配慮をしてまいったのでありますが、昭和三十九年度におきましても、同様の方針のもとに所要の予算を計上して別途御審議をお願いしているところであります。さらに、国立学校の充実に資する上から、特別会計を設置し、一般会計と区分して経理することが時宜に適するものと認め、ここにこの法律案を提案することといたした次第であります。
次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。
第一に、この特別会計は、国立学校にかかわる経理を行なうことを目的とするもので、文部大臣が管理することとしております。
第二に、この会計は、一般会計からの繰り入れ金、授業料、入学料、検定料、病院収入、積み立て金からの受け入れ金、借り入れ金、財産処分収入、寄付金及び付属雑収入をその歳入とし、国立学校の運営費、施設費、奨学交付金、借り入れ金の償還金及び利子、一時借り入れ金の利子その他の諸費をその歳出としております。
第三に、国立学校の付属病院の施設を整備するため必要があるときは、この会計の負担において借り入れ金をすることができることとしております。
第四に、この会計の毎会計年度の決算上剰余金が生じた場合においては、将来の施設整備費の確保をはかるため一定の計算のもとに積み立て金として積み立てることとし、なお、残余があるときは翌年度の歳入に繰り入れることとしております。
その他この会計の予算及び決算の作成及び提出に関し必要な事項をはじめとし、一時借り入れ金の借り入れ、国庫余裕金の繰りかえ使用、余裕金及び積み立て金の資金運用部への預託、奨学交付金の委任経理等について必要な事項を定めるとともに、一般会計所属の財産を国立学校の用に供するため、この会計に所管がえ等をし、または使用させる場合は、当分の間無償として整理することとして、この会計の財政の安定に資することとするほか、この特別会計の設置に伴い必要な経過規定及び関係法の諸規定の整備を行なうこととしております。
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最後に、関税定率法等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
政府は、最近の経済情勢の変化に対応する等のため、関税定率法及び関税暫定措置法に規定されている税率について所要の調整を行なうほか、国産原油の購入にかかわる関税の特別還付制度を新たに設ける等、関税定率法、関税暫定措置法及び関税法の一部について所要の改正を行なう必要があるので、この法律案を提出した次第であります。
次に、この法律案の内容につきまして、その大要を御説明申し上げます。
現行関税率は、昭和三十六年に全面改正が行なわれ、次いで二回にわたる部分改正を経て今日に至っているのでありますが、最近の経済情勢の変化に対応する等のため、一部品目につき関税率を調整する必要があると認められるのであります。関税率の調整につきましては、昨年十一月以来、関税率審議会は、現行関税率をいかに改めるべきかとの諮問に対しまして、個々の関税率について詳細に検討し、慎重審議の結果、昨年十二月及び本年一月の二回にわたって答申を行なったのであります。この法律案により関税率が改正されることとなっておりますものは、これらの答申等に基づくものでありまして、関税定率法及び関税特定措置法を通じ、実行税率が変更されることとなるものは八十二品目となっているのであります。その内訳は、税率を引き上げるもの二十品目、税率を引き下げるもの四十四品目、従価税率から従量税率に切りかえるもの二品目、従価従量選択税率に切りかえるもの二品目、関税割り当て制度を採用するもの二品目、関税割り当て制度を廃止するもの八品目、その他四品目となっております。
なお、関税暫定措置法では、関税率の調整に関し期限を付して暫定的特例を定めることとされているのでありますが、重要機械類の免税制度等十二の暫定免税等の制度の期限が本年三月三十一日となっておりますので、それらの期限をさらに一年延長いたしますとともに、関税暫定措置法に規定されている税率で本年三月三十一日に適用期限の到来する八十四品目のうち、四十五品目について、その適用期限を延長することといたしております。
また、この法律案では、国産原油の購入に関しまして、関税の特別還付制度を新設することといたしております。すなわち、国産原油の引き取りの円滑化をはかるため、国産原油を購入する石油精製業者がこうむる負担増加の補てん措置として、その者が納付した原油関税のうち自動車用等ガソリンにかかわるものを還付する制度を新設することとしているのであります。
また、豚肉につきましては、豚肉の国内卸売り価格が畜産物の価格安定等に関する法律による安定上位価格をこえて騰貴している場合には、関税定率法第十二条を準用することとして、輸入豚肉の価格が国内卸売り価格をこえて上昇しているときに、関税を減免することができることとしているのであります。
このほか、減免税制度に関しましては、低開発国貿易を拡大するため、デーツシロップ製造用ナツメヤシの実及び落花生油製造用落花生を製造用原料品の減免税の対象に加え、輸出入取引の円滑化に資するため、輸出入貨物を試験または検査する機器に再輸出免税を適用することができることとし、新規産業を育成するため、ブラストサイジン・エスまたは蔗糖脂肪酸エステル用砂糖を新たに減税するとともに、現在免税されている給食用脱脂粉乳が変質した場合等に配合飼料製造のために転用されるときの規定を整備することとしております。
なお、関税法につきましてその一部を改正して端数計算に関する規定を改訂するほか、所要の規定の整備を行なうことといたしております。
以上がこの法律案の提案の理由及びその概要であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/2
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003・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 以上をもちまして四件の提案理由の説明は終わりました。これらの案件についての審議は後日に譲ることにいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/3
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004・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 次に、外国為替及び外国貿易管理法及び外資に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案につきましては、提案理由の説明及び補足説明はすでに聴取いたしておりますので、これから本案の質疑に入ります。
質疑に入る前に、ちょっと委員各位にお断わりしておきますが、きょうは宮津長官に出席を求めたのでありますが、同長官は十二時からやむを得ない公務のために退席をさせてもらいたいというお話でございます。同長官に対する質疑が残りました場合には、もう一度宮澤長官に出席を求めて質疑をいたしたいと思いますので、この点御了承願いたいと思います。
それでは、質疑に入ります。御質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/4
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005・木村禧八郎
○木村禧八郎君 まず、国際収支を中心とする経済の見通しについて質問いたしたいと思います。
政府は、三十九年度の予算編成の前提として、三十八年度あるいは三十九年度の経済見通しを発表しておりますが、いままで発表しました、まず三十八年度の国際収支の見通しにつきまして、大体このとおりに推移するものとお考えですか。最近、三十八年度につきましては、年度末も近くなって、大体三十八年度の国際収支の見通しもややついてきたと思うのです。最近非常に見通しと実績が違ってきておると思うのです。そこで、この見通しを修正しなければならない時期に来ておると思うのですがね。それは率直に、言いのがれではなく、これは今後の日本の経済の見通しと関連して重要な問題ですから、率直に宮澤長官の御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/5
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006・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 三十八年度の国際収支の見通しの中で、輸入を五十七億五千万ドルと見込んでおります。ただいままでの趨勢から考えますと、輸入をこの水準で押えるのにはかなりの努力を必要とする。どちらかといえば、多少これを上回りぎみの趨勢が見えておると、こういう感じがいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/6
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007・木村禧八郎
○木村禧八郎君 それだけでいいのですか。そんな簡単な御答弁でいいのですか。国際収支全体について、三十八年度の国際収支の見通しについて伺っておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/7
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008・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) それ以外には大きくこの際考えなければならない、またここで申し上げなければならないような点はないと思います、こまかい点はいろいろございますけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/8
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009・木村禧八郎
○木村禧八郎君 それでは、輸入はどのくらいの見通しですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/9
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010・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど申し上げましたとおり、五十七億五千万ドルで押えるということは、ただいまの趨勢からいいますと、なかなか容易なことでないという感じはいたしておりますが、それならばどのくらいになるであろうかということを、計数をもって申し上げるほど、確たるまだ見当をつけておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/10
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011・木村禧八郎
○木村禧八郎君 確たる見当をつけなくても、大体もう年度末でわかっておるはずなんですよ、大体の見通しは。それは確定数字はわからぬでしょうが、日銀あたりでは、大体政府の見通し、五十七億万千万ドルを一億五千万ドルないし二億ドルくらい上回るのではないか、大体五十九億ドルくらいになるのではないか、こういう見通しでございますが、大体そんな見当でお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/11
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012・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) そういう説がございますことは承知をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/12
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013・木村禧八郎
○木村禧八郎君 それで、企画庁としてはどの辺に……。一億五千万ドルくらい、あるいは二億ドル、その間くらいお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/13
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014・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 私は従来から、これが五十七億五千万ドルということを一応見通しに立てましたのは、一応の見通しでございますから、この数字に変動があっても、別にそれ自身で、どうという問題はないということを申し述べておるわけでありますが、ただいまのところ、関係各省が寄りまして、どのくらいのところが最もあり得る姿であろうかということをいろいろ検討いたしておりますけれども、まだ政府としてまとまった、このくらいの見通しであろうということを申し上げるほどの統一した意見を持っておらない。木村委員が仰せられましたような説が一部にありますことはそのとおりでございますが、政府として正式に申し上げる段階に立ち至っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/14
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015・木村禧八郎
○木村禧八郎君 あまり、一応政府が発表したから、その責任があるのじゃないかと、それにとらわれないで、あまり官僚的みたいに責任責任といって、発表した数字が狂ったからといって、それを私は責めておるのじゃないのですよ。日本の経済、あるいは日本の国民の生活ということが主なんで、これは数字が少しくらい狂ったりなんかしても、あなた、そんなことは何でもないのですよ。そんなことにとらわれないで、もっと率直に、真剣に、大体この見当ではないかというふうに、これは方々で試算をしているんですから、もうすぐわかるわけです。もう三月すぐ来るんですから。そう、ただ言いのがれではなく、率直に、ここでひとつお互いに検討するというような意味で御答弁願いたいんですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/15
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016・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) たいしたことでないということは私もそう思いますし、またおっしゃることもよくわかりますけれども、やはりこのぐらいであろうということを申し上げるためには、政府関係各省で一応一致した意見を持たねばなりません。まだそれができておりませんので、申し上げておりませんわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/16
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017・木村禧八郎
○木村禧八郎君 それじゃ、経常収支は大体どのくらいになります。経常収支の赤字ですね、政府のほうは大体六億二千万ドルの赤字と、三十八年度はね、これで進むとお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/17
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018・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 経常収支は六億六千万ドルと申し上げておるわけでございます。したがって、貿易外について特に予想以上にプラスのファクターがあるということでもございませんので、五十七億五千万ドルを何がしかかりに上回るといたしまして、輸出のほうの五十五億ドルという数字は、これはおそらくかたいであろう。多少プラスが出るかもしれませんが、それもどのくらいということを、これも同じように申し上げるまでに至らないわけでございます。したがってかりに輸入が五十七億五千万ドルを何がしかこえ、輸出が五十五億ドルを何がしかこえたといたしましても、傾向としてはおそらく輸入のほうの増が多いと考えられますから、したがって、貿易外収支について特段の変化がない限り、六億六千万ドルというものは若干、それだけふえる、こういうのが趨勢であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/18
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019・木村禧八郎
○木村禧八郎君 これはまあ、三月になれば大体わかるわけですが、私は大体八億ドルくらいの赤字になるのではないか。大体まあ輸入は五十九億ドルになるとして、いま具体的に計数を、数字をなかなか発表されませんが、それはまあ大体の見当はつくと思うんですが、発表できないというんならば、それで一応次に進めますが、とにかくいまの御答弁では、輸入が五十七億五千万ドルよりも上回る、したがって経常収支の赤字も六億六千万ドルを上回るであろうということだけは、はっきり御答弁になっているわけです。これは三月になればすぐわかる。私は八億ドルぐらいの赤字になるであろうと思う。そうなりますと、大体今度は三十九年度の国際収支の見通しはどういうふうになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/19
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020・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) ただいまの傾向から、三十九年度の国際収支が終局的にはどうなるかということを申し上げることは、実はさらに困難でございます。三月末の輸入かどのくらい——年度末に五十七億三千万ドルがどのくらいにふえるかということすら、実は数字をもってお答えできないと申し上げておるのでありますから、それが三十九年度にどういう姿になるかということは、さらにいろいろな要素がございまして、はっきり明確には申し上げられない。ただ、私どもは輸入を六十二億ドル、輸出を六十二億ドル、こういうふうに考えておるわけでございます。これからの政府の施策及びそれに対応する民間——民間ということばはあまりいいことばじゃないと思いますが、経済活動、消費生活等々いろいろな変化をいたしてまいると考えますので、六十二億ドル、六十二億という目標をただいまのところ変える必要はないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/20
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021・木村禧八郎
○木村禧八郎君 そこは矛盾しているじゃありませんか。これは三十八年度の国際収支を前提にして、それを基礎にして三十九年度、これを算定しているわけでしょう。ところが、いまの御答弁では、三十八年度の輸入は五十七億五千万ドルを上回るであろう。そうすると、三十九年度の輸入を算定する基礎となった、そのベースの三十八年度輸入は見通しよりも上回るのですから、したがって、それを基礎にして、それに三十九年度の輸入の増加率七・八%を掛ければ、六十二億ドル以上になるということは、理論上当然じゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/21
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022・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 私はそういうふうに必ずしも考えないわけでございます。つまり、輸入がふえるということは、それだけ原材料の手当てが行なわれるということになるはずでございますから、したがって、原材料といりものはふえ出せば幾らでもふえるという筋合いのものではございませんので、一定のところまで達すれば、今度はふえ方が減るというのが、自由経済——ことに自由化されておりますから、本来の姿であります。したがって、この際そういうトレンドが見えたからといって、そのトレンドそのものが今後十何ヵ月続くと考える理由はありませんで、そういう場合もあり得るでありましょうし、あるいはむしろそのトレンドが今度は逆に転ずるということも、経済のサイクルからいえば十分考えられることでありますから、必ずしも木村委員の仰せられましたようには考えないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/22
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023・木村禧八郎
○木村禧八郎君 それは言いのがれですよ。一応これから金融をもっと引き締める、そうすれば輸入がさらに落ちるかもしれません。それはまああとで……。政策は一応抜きにして、三十八年度の輸入は予想より、見通しより上回ったということになれば、その最後としては当然、ベ−スが上回るのですから、それに対して三十九年度は三十八年度の輸入の七・八%増というように計算しておるのですよ。だから、必然六十二億ドル以上になる。ただ、そこをもっと率直に答えるべきだと思う。もりと金融を引き締める必要がある、あるいは国民消費についていろいろな国産で間に合うものをむやみに輸入されるから、それを何か抑える必要があるとか、そういう規制についてはまたあとで質問します。けれども、一応六十二億ドル——そういうこともやらなければ、いまの金融の政策の状態、引き締めを強化しない、 この程度、それから別途この個人消費に対するいろいろな雑品輸入についてもいろいろ措置を講じないのであれば、当然六十二億ドルを上回るのはあたりまえじゃありませんか。常識からいっても、ベースが上がるでしょう。それに七・八%掛けてごらんなさい、当然上がるじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/23
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024・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) そのお尋ねには、二つの面からお答えいたさなければならないかと思います。
第一の面は、私どもの申し上げておりますことは、三十九年度の見通しと経済運営の基本的な態度ということについて申し上げておるわけでありますから、したがって、そこに示した指標には当然に政策努力というものが加味されたその結果というものが織り込まれておるわけでございます。普通の意味でただウェルデンということではなくて、こうあるべきだというゾルレンに類したものが幾らかこの中に入っておる。それは各指標についてさようでございます。ただ野放しにするというふうに考えておるわけではありません。
それから次に、七・八%云々ということをおっしゃるわけでありますが、これはそういう伸び率が前提になって数字をはじいておるのではございませんので、むろん傾向値として生産その他の関係からそういういわゆる投射といいますか、プロジェクションを無視しておることではありませんけれども、先にそういう率が出て、したがって六十二億ドルという数字に達したわけではございませんので、そこはむしろ逆でありますから、先ほど申し上げたようなこともございまして、ただいま三十八年度のベ−スが高いから、したがって三十九年度はその高いベ−スの上で考えるべきではないかということは、経済におけるいろいろな意味での循環と申しますか、サイクルというようなことから考えても、そういうふうに簡単には申せない問題ではないかというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/24
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025・木村禧八郎
○木村禧八郎君 それはあくまでも官僚的な言いのがれですよ。それは六十二億ドルには政策的意図が入っておるということは認めますよ。しかし、それは認めて、それで六十二億ドルというのが出てきているのですよ。三十八年度の輸入が予想より上回れば、その政策的意図を、六十二億ドルについて、いろいろ政策をやって六十二億ドルにすることになっているのですけれども、そうしたら、政策が今度はいままでの引き締め政策をもっと強くしなければならぬ。そういうことにしなければ、六十二億ドルとならぬですよ。いままでの考えておる政策意図がもっと強化されて……。
それから、もう一つは、いまの在庫です。左庫はかなり食もつぶされていると見なければなりません。したがって、輸入はそう減るとは考えられませんし、それから自由化になりましたら、食料品とか、あるいは消費関連の雑品の輸入もふえると見なければなりません。そうなれば、どうしたって六十二億ドルを上回ることは、これは常識からいっても当然じゃありませんか。
それだから、六十二億ドルを上回るだろう、だから、もっと締めなければならぬとか、あるいは自由化に伴う消費関連の雑品輸入をもっと押えなければならぬとか、そういう説明ならいいんですよ。それじゃなければ、前後矛盾しておりますよ。そうでなければ、むしろ輸入の増加率を七・八%じゃなく五%ぐらいに落とさなければ、六十二億ドルにはなりませんよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/25
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026・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) そこのところは、私は、木村委員の仰せられておりますことが全面的に誤っているというようには、もちろん申し上げておりません。しかし、他方で、全面的にそのとおりでございますとも申し上げておらないわけでございます。いまの原材料在庫の水準が非常に高くてこれ以上需要がないであろう、というふうには考えません。その点は、仰せられますように、原材料在庫の水準は決して高くはない、そこまでは私はそのとおりだろうと思います。したがって、何といっても、多少輸入がふえ続けるということはあり得ることだと思いますけれども、在庫補てんでございますから、これがふえ続けましたらへその趨勢をどこまでもたどると考えることは、私は合理的でないと思います。どこかで在庫補てんがあるレベルに達しましたときに終わるということは、これは過去でも、しばしばと申すより、むしろルールとしてそういうことがあるわけでございますから、したがって、 この輸入がどれだけふえ続けるかということは、たとえば経済をここで非常にいわば成長的に引き締めるのでなく、たっぷり運営するということになれば、おそらくはそういうふうに考えられるわけでございます。前から申しますように、経済の基調は引き締めの基調で運営するということが、政府の考え方でございます。したがって、ある点に達すれば、鉱工業活動なり、あるいは経済全体が締まってくる、こう考えましても、別に無理なそれは期待ではないというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/26
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027・木村禧八郎
○木村禧八郎君 それは、長官もよく知ってるくせにそういう答弁をされるんですけれども、御承知のように、非常に設備が過剰状態になってきているでしょう。それから、御承知のように、収益分岐点が非常に高くなってきておる。したがって、フル操業をしなければならぬ。この状態は、私はかなり続くと思うんですよ。借金して設備を拡張して、生産制限をするとか操短をするとかいうことは、相当困難でしょう。それは一つの事実として、非常に矛盾ですけれども、事実としてあるわけですよ。それは、私は抑えようと思っても押えることは非常に困難ではないかと思うんですよ。そうなると、どうしても輸入があまり減らない。そうすると、在庫をどんどん食うわけでしょう、売りますから。そうすると、どうしても私は、輸入を一応六十二億ドル、あなたはあまり変えないでいいだろうとおっしゃいますけれども、それを変えないためには、成長率のほうを九・七%よりも押えていかないとそうならないと思うんですよ。その点、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/27
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028・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 基本的なものの見方では、私は木村委員とそんなに違っていないと思います。第一に、相当大きな設備をかかえておりますから、収益分岐点が高い。したがって、企業はある程度かたい採算でなく、ともかく生産をしなければならないといったような動機にかられやすいということは、第一にそのとおりでございます。第二に、現在の原材料在庫の水準が決して不当に高くはない、この点も私はそのとおりだと思います。したがって、そういう自然的な圧力があるのではないかとおっしゃれば、私はあると思います。あると思いますから、そこで、経済の運営を引き締め基調に持っていくならば、そういう趨勢は、本来不合理な経済活動だと思われますから、野方図に続くわけはありませんので、どこかでそれがより合理的なものに変わっていくであろう、むしろ最後の結論のところをそういうふうに考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/28
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029・木村禧八郎
○木村禧八郎君 どこかで合理的ということは、そうすると、かなり操短とか、そういうものがやはり起こり得るということになると考えるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/29
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030・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) ただいま企業の操業度がどのくらいであるかということにはいろいろ議論がございます。平均して八割ぐらいであろうかと考えられます。それは生産者の製品在庫がふえ、流通在庫がふえ続けるならば、生産を続けるのにも限度がございますから、したがって、生産はその段階からやや落ちてこなければならない、そういう理屈だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/30
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031・木村禧八郎
○木村禧八郎君 私の見通しは、日銀の見通しを参考にして質問しているんですが、日銀あたりでは、輸入を政府が見積もっている三十九年度七・八%の増でいくと、六十二億ドルをはるかに上回る。だから、六十二億ドルに押えようとすれば、輸入増加率を五%ぐらいに押えなければならぬ。輸入増加率を五%ぐらいに押えるということになると、GNPの成長率が六・七%ぐらいでなければならない。政府の成長率は九・七%でしょう。成長率を六・七%ぐらいに押えなければならぬということになると、そうすると、全体の見通しが非常に変わってくるわけです。もし六・七%に押えられないとすれば、さっきお話しになったように、収益分岐点が非常に高いから、そんなに生産も縮小できないということになれば、どうしたって輸入は六十二億ドル以上にふえざるを得ない。そうなると、国際収支の見通しが、政府は総合で一億五千万ドルの三十九年度の赤字を見ておりますけれども、これよりさらに赤字はふえざるを得ない、こういうことになると思うんですよ。そこで、一億五千万ドルよりも総合収支の赤字はどうしたってふえざるを得ないと思うんですが、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/31
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032・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) なお、当然お気づきのことであると思いましたので、先ほど申し上げませんでしたが、五十七億五千万ドル、これが上回る公算が多いわけでございますけれども、その中には、昭和三十八年度に、ことにわが国にございました異常気象による農産物の減産を中心として、もう一度は繰り返さないであろうと思われるような輸入分がかなりございます。それから、砂糖の値上がりというものは、これは値が下がるとは思いません、急速に下がるとは思いませんけれども、これは実は五十七億五千万ドルと六十二億ドルと、両方からその分を引きましたところで比較をいたさなければ、ほんとうに来年度の輸入が今年度の正常な輸入と比べて何%高いかということは、ほんとうは、つまりわかり得ないわけであります。それを引いて計算いたしますと、七・八%よりは多少高い一割近い輸入の伸びになるという計算になるわけでございます。
それから、一億五千万ドルと言われましたのは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/32
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033・木村禧八郎
○木村禧八郎君 三十九年度の総合収支の赤字ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/33
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034・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 総合収支の赤字、三十九年度一億五千万ドル見込んでおることがどうかということでございますが、これは先刻申し上げましたように、輸出入が金額がひとしくて、輸出入からは黒字も赤字も出ない。貿易外では、したがって、経常で五億五千万ドルぐらいの赤字であります。そこで、資本収支で一応四億ドルの黒字を見ておりますから、そこで一億五千万ドルということを申し上げておるわけでございますが、輸出入の見通し、これを変えなければならないという理由が、ただいま三十九年度についてはございません。資本収支についても、どちらかといえば、これは多少内輪目な見方ではないか、幾らかそこに余裕があるのではないかという感じを持っております。逆に、貿易外の五億五千万ドルは多少きついかもしれないと考えます。それらを総合して、貿易のところに間違いがなければ一億五千万ドルというものを改める必要は別段ないと、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/34
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035・木村禧八郎
○木村禧八郎君 私は、資本収支、貿易外取引についてもあとでまた御質問しますが、ただいま御答弁がありました三十八年度における異常天候等による小麦の輸入とか、砂糖の輸入とか、そういうものを考慮に入れても、それはさっきお話ししたように、自由化によって消費関連の雑品輸入、これがかなりふえると思いますしね。それから、長官もさっきからお認めになっているように、原材料ですね、在庫はそんなに高くない、こう言っておるのですが、その上に操業率はちっとも落ちないのですからね。ずっと落ちないのですから、そういうことを考えれば、どうしたって六十二億ドル上回るだろうと思うわけです。しかし、これは将来のことですから、ここで言いのがれはどうでもできるわけです。しかし、これはあとではっきり事実となって私は出てくると思うのです。九・七%の成長率でいけば、どうしたって、倫理的にいろんな与件を同じとしてみますると、どうしたって六十二億ドル上回る一億五千万ドル以上の赤字になる。それから、三十八年度も総合収支、さっきもお話をした九千万ドルにはとどまりません。一億五千万ドルないし二億ドルにはなりますよ。そうしますと、三十八年度に三億ドルの赤字、三十九年度は、私はこのままでいけば、与件を同じとしてみますれば、どうしたってまた二、三億ドルの赤字にならざるを得ない。二年続いてそういうことになるということになると、三十六年度のあの大幅赤字に匹敵するような大きな赤字が私は出てくるのじゃないか、これは重大な問題ではないか、そこまで問題意識を一体持っておられるのかどうかですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/35
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036・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) いわゆる消費関連財が自由化に伴ってどのくらいふえてきておるかという問題が、昨今議論をいろいろにされておるわけでございますが、まあ消費関連財の範囲の切り方にもよると思います。しかし、たとえば普通に考えられております食糧までぐらいは、これは一応生活必需品であるというふうに考えてまいりますと、自由化に伴う消費関連財の、これは何と申しますか、ごく、何というのでございますか、ファンシー・グッズとでもいうようなそういうものでございます。大体三十八年度で前年度に比べて一億ドルぐらい輸入増があったと考えておるわけでございます。そういう傾向は多少は衰えましても、やはり三十九年度に続くと思われますので、まあ一億ドルはないにいたしましても、その何割ぐらいかのものはやはり続いていくであろう。しかし、一般にいわれておりますほどこの数字は実は案外に大きくない。もう大体自由化をほぼ終わっておりますから、これ以上大きな需要があるというふうには考えられないと思います。決して喜ばしいことだとは思っておりません。経済全体、国際収支にそれほど大きな影響が来ておるというふうには考えておりません。
それから、成長率九%のときにというお話でございますが、鉱工業生産の伸びと輸入の伸びとの間には、どうも、昭和三十年ごろから見ておりますけれども、はっきりした函数関係が出てまいりません。設備投資が主体になりまして、成長が高かったときにはやはり輸入が相当伸びております。それから、成長がかりに十何%−二〇%に近いというような高さにありますときは、輸入の伸びもほぼそれに見合っておるけれども、成長が五、六%のときには案外そうではありませんで、輸入がプラスで成長がマイナス、鉱工業生産がマイナスというようなときもございます。で、その間の相関関係が見出しにくい、つまり非常に深い谷間から上がりましたときには成長も高いし、鉱工業生産も高いし、輸入の伸びも高いというのが常識でございます。今回はそういう深い谷間から上がったというわけではございませんので、だから、どうという結論が、函数関係が見出せませんので、申し上げられませんけれども、両方を結びつけて考えなければならぬという、その計数関係がどうも私どもに出てこないように思います。
それから、他の与件にして同じならばという前提に立っての御質問でありますけれども、これはたびたび申し上げておりますように、私の与件が同じでないというふうに私どもは考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/36
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037・木村禧八郎
○木村禧八郎君 同じでないということを具体的にお示しいただきたい、具体的に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/37
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038・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) それは先ほど来申し上げておりますように、政府の政策努力というものがそこに加わりますし、したがって、それを反映しての経済活動の動きの変化というものもあるはずでございますし、また経済それ自体が内在しておりますところのある意味での循環と申しますか、サイクルというようなこともあると、こういう意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/38
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039・木村禧八郎
○木村禧八郎君 これはすでに六十二億ドルの輸入についてはそういう与件としてすでに織り込んであるわけですよ、さっきあなたがおっしゃるように。三十八年度のたとえば長雨による小麦の輸入とか砂糖の輸入とか、臨時的なものは除外してある。それから、引き締め政策もとるということ、財政金融について引き締め政策をとるというようなことば織り込んであるわけですよ、六十二億ドルの、さっきのお話のように。その上に三十八年度のベースが違ってくるのですから、そこでいままでの与件がさらにまたそこに加わってくる。だから、もっと金融引き締めあるいは成長率をもっと落とさなければならない、こういう新たなる与件の変化が出てくるのではないかということを質問しているわけです。
それから、もう一つ、私は鉱工業生産の伸び率と輸入の伸び率の函数関係を機械的に判断しているわけじゃない。この点は、あなたがすでに衆議院の商工委員会で久保田委員に対して御答弁しておりますが、そういう機械的なことを私は質問しているわけじゃないのです。
それから、もう一つは、日常の消費財の雑品輸入についてかなり楽観しておりましたが、しかし、私は毎日新聞の二月二十三日の新聞を見まして驚いたんですが、日用消費財ですね、これがずいぶんふえて、三十七年に比べて三十八年は十一月までで四億八千四百万ドル、前年度より三一%ふえている。ずいぶんふえていますよ。三十四年度と比較したものですが、ライターが三百倍にふえている。万年筆が九十八倍、ゴルフ用具が約六十倍、玩具が五十五倍、歯みがきが五十一倍、インスタント・コーヒーが四十倍、ハンドバッグが四十倍、それから紙捲きたばこが二十八倍、はきものが十七倍、レコード十二倍、それからまた、たばこのパイプ、ゴルフ用具、レコード、時計、皮革の運動靴、ハンドバッグが輸出より輸入のほうが多いというのです。これは何か考えなければならないのじゃないですか、この点は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/39
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040・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) どうも、決して好ましいことだと思っておるわけではございません、ただ、ただいま御指摘になりました数字でありますが、四億八千万ドルとか、四億九千万ドルとかいう数字の中には、肉でありますとか、くだものでありますとか、酒でありますとか、まあ嗜好品ではございますが、まあ生活からそんなに切り離せないと思われるもの、それが二億三千万ドルございます。で、残りが先刻御指摘になりましたライターでありますとか、万年筆でありますとか、そういったようなものでございます。これがほぼ二億六千万ドルあると見ておるわけでございます。ただいま仰せられましたようなものの伸びは確かにそのとおりでございますが、まあライターが四百倍になったと申しましても、金額で申しますと百五十万ドルぐらいでございます。万年筆が百倍になった、これが二百万ドルぐらいでございます。したがって、数量の性質上、決して私は好ましいことだと申しておるのではないのでございますけれども、合わせまして二億六千万ドルぐらい、これが三十七年度には一億六千万ドルぐらいでございましたから、そのようないわゆる奢侈品と申しますか、ファンシー・グッズといったようなものの自由化に伴う輸入増は一億ドルがらみのものであろう、こういうふうに申し上げたわけでございます。決して好ましい傾向だとは感じておりませんが、計数的にはそんなものかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/40
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041・木村禧八郎
○木村禧八郎君 では、たいしたことないから、政府はこれを放任しておくというのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/41
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042・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) その点は、私どももここ数年の経済運営の基本的な考え方の中に、やはり明治以来の富国強兵でありますとかいったような考え方でない、もう少し、つまり消費はそれ自身で悪徳ではないというそういう社会をつくりたいという気持ちが強く働いておりますので、無意味な浪費はやめてほしいということはいつも考えておりますけれども、消費そのものをあまりとやかく申しますことは、せっかくそういう気持ちが目覚めておりますところへ逆の作用を起こすであろうと、そういう気持ちがございまして、今日までできるだけ申さずに、政府としては申さずにきておるわけでございます。しかし、好ましいか好ましくないかといえば、同等の質を持っておる国産品があるのならばそれを使う、そのほうがいいというような考え方はそろそろ国民生活の中に自発的に出てきてもいい時期だというふうには考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/42
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043・木村禧八郎
○木村禧八郎君 いまのお話はわかりますが、妙な国産品愛用運動については、われわれもこれはあまり賛成ではないのですけれども、しかし、国際収支のこれからの見通しにも関連するのですけれども、そんなのんきなこと言っておられるかどうか。国産で間に合うものは国産でいいわけですよね。そういうことを、やはりいままでの逆ですよ、舶来品への妙なあこがれがあったでしょう、そういうものはやはり一掃する必要があると思うのですが、それは国内の中小企業、そういうものの育成ともやはり関連があるわけでして、それだから日本で生産性が高まらなかったり、優秀なものができなかったり、業者がそういう努力をサボったりすることは、これは私は好ましいことではないと思いますけれども、しかし、この辺でやはり私は自由化を契機として考え直す必要があると思うのです。何か政府がそういう指導をするとか命令するというのは僭越になるかもしれませんが、この点については何か考える必要があると思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/43
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044・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) そういう御発言がありますことは非常にありがたいことだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/44
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045・木村禧八郎
○木村禧八郎君 ただありがたいじゃ、なくて、企画庁としてはそういう何かアイデアをお持ちじゃないですか。何かやっていなきゃならぬと思うのですよ。ないというのはおかしいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/45
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046・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 実は、非常に遠慮がちにではありますけれども、そういうことをぼつぼつと申しておるわけでございます。ただ先刻申しましたような逆の効果をよほど考えていたさなければなりませんので、多少は歯がゆいというふうにお感じくださっていれば、私どもの最もそれば本意とするところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/46
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047・木村禧八郎
○木村禧八郎君 それでは、次に伺いますが、年度末ですね、三十八年度末の外貨保有はどのくらいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/47
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048・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 十七億六千四百万ドルでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/48
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049・木村禧八郎
○木村禧八郎君 三十九年度は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/49
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050・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 十六億一千四百万ドルでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/50
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051・木村禧八郎
○木村禧八郎君 そうすると、三十八年は、さっきのお話のように、輸入が予想より多少ふえる。そうすると、九十九百万ドルの総合の赤字よりもふえるということになれば、外貨保有はいまの数字より多少減るわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/51
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052・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 他に特段の措置を講じませんと、そういうことになるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/52
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053・木村禧八郎
○木村禧八郎君 外貨保有の、大体これもあまり重複して質問することは避けたいのですが、衆議院で質問しておりますから。大体二十億ドルくらいですね、外貨保有は。これは機械的には計算できませんが、国際収支が順調に伸びるという見通しがあるときには、そんなに多くなくてもいいし、大体どのくらいに押えて……。やはり二十億ドルぐらい必要と考えているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/53
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054・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) それは好んで私が二十億ドルと申し上げたのでは実はなかったのでございますが、何となく問答しておりますうちにそんなことになりまして、大体諸外国の外貨保有が正常輸入量の何カ月分くらいに当たっているか、二月分ないし三月分というようなところの国もございますし、西ドイツのようにかなりたくさん持っているところもございますわけで、せめてその辺で申しますと、二十億ドルくらいはどうも最低ほしいのではなかろうかといったようなことを申し上げたことはございますが、別にそれがそれ以下であってはならぬし、それ以上では余分だということを申し上げたわけではございませんでした。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/54
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055・木村禧八郎
○木村禧八郎君 大体十六億ドル台だと、少な過ぎるという感じはお持ちですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/55
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056・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 十六億とか十七億とかいうことが、絶対量として少ないか多いかというよりか、このように相当大きな設備投資を持っておって、それにたっぷり心配なしに食わせるだけの原材料を十分に買いにくいというのがいまの姿でございます。何となく天井が低いという姿、そのために経済政策を調整しなければならないということは、それだけの設備投資を持っているだけにやはりつらいことはつらいことでございます。これは民間の当事者はもっとつらいでありましょうし、政府としてもつろうございますから、もう少し天井が高いといいということは常々感じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/56
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057・木村禧八郎
○木村禧八郎君 そうしますと、私は、政府の見通しよりは、すでに発表された見通しよりは、国際収支の見通しをからく見ておりますし、また必ず私はそうなると思う。いまでさえ天井はあまり高くない。もう少し高くしてほしい。その上に三十八年度二億ドルくらいの赤字、三十九年度また二、三億ドルの赤字ということになると、どうしても私は成長率をうんと落とすか、あるいは落とさないでいこうとすればIMFあたりからまた償金をする。スタンドバイ・クレジット、これはどのくらい余裕があるのか知りませんが、五、六億ドルある。それがあるから、安心しているのじゃないですか。いざというときにはそれを使うのだと。また、それを入れれば、十六億ドルになったってたいしたことはないのだ、こういう考えがあるので、いざとなればスタンドバイ・クレジットを借りてしのいでいく。そして長期的に国際収支は改善されていくことがいいのだ。大蔵大臣は四十五年度までに均衡を保つなんていう非常に心臓の強い御答弁をされましたが、そういう考えじゃないのですか、大体は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/57
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058・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 所管大臣でございませんので、そこを具体的に明確にお答え申し上げるべきではないと思いますが、ただ二つのことは申せると思います。一つは、かりに外貨保有量が十五億ドルを割って、そうしてこれではもう正常な経済がやっていけないというようなことになるかと申せば、私はそういうことにはいたすべきではないし、ならないと思います。また、ゴールド・トランシェの問題もございますし、これは何も借り入れ金と考えなくてもいいわけでございましょうし、さらにその先を申せば、かりに借りるということになりましても、借りられるということはやはり経済の力、経済力でございますから、ということだけ申し上げておくべきかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/58
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059・木村禧八郎
○木村禧八郎君 それから、十六億ドル台の外貨保有の内訳ですね、これがあったら教えてもらいたい。そのうちで実質外貨と、それから債務になっている分がありますね。そういうものとの三十八年度末と三十九年度末についてですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/59
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060・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 外貨保有の内訳につきましては、従来から発表いたしております部分と、いたしておりません部分と、扱いにきまりがあるようでございますので、これは政府委員からお聞き取り願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/60
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061・木村禧八郎
○木村禧八郎君 私はずいぶん長く予算、大蔵委員をやっておりますが、前はちゃんと内訳を発表したのです。報告しましたよ。たとえば金利がどのくらいで益金がどのくらいで、それから短期資金がどれくらい、短期の借り入れ金、ユーザンスがどれくらい、やはり示しているのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/61
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062・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) その程度のことは申し上げられるのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/62
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063・木村禧八郎
○木村禧八郎君 そうすると、実質外貨というのはどのくらい見ていますか、それだけ伺いたい。実質外貨、三十八年度末の。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/63
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064・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) これは私が直接のお蔵番でございませんから、政府委員のほうから御説明をさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/64
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065・鈴木秀雄
○政府委員(鈴木秀雄君) ただいまの木村委員の御質問の外貨保有高、現在一月末で十八億五千五百万ドルでございますが、ラウンド・ナンバーで申しますと、約三億が金でございます。それから、七億程度が主として米国の銀行に貯金をしております。それから、その他の部分は、主としてこれも米国でございますが、財務証券に運用しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/65
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066・木村禧八郎
○木村禧八郎君 預金が七億ドル。証券は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/66
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067・鈴木秀雄
○政府委員(鈴木秀雄君) 証券が八億くらいになるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/67
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068・木村禧八郎
○木村禧八郎君 八億。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/68
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069・鈴木秀雄
○政府委員(鈴木秀雄君) それで、いま実質の外貨ということでございますが、まさしくこれが実質の外貨でございまして、全部あるわけでございます。それで、おそらく木村委員の御質問は、日本の短期の債務と短期の債権とを差し引いた場合のバランスがどうであるかということでございましょうが、これはいわば外貨準備というのは現在の計数というものは大蔵省及び日本銀行が持っております中央準備を言っておるわけでございまして、為銀の債務あるいは債権というものは入れていないわけでございます。これは世界的にそういう方式をとっております。ユーザンスの債務とかあるいは輸出ユーザンスの債権というのは為銀段階の債権債務でございますから、外貨としては十八億五千五百万ドルというものがあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/69
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070・木村禧八郎
○木村禧八郎君 いまの為銀関係、それからユーザンス等を含めた表ですね、差しつかえなかったら、差しつかえない程度で資料として出してもらいたい。前に出してもらったことがあるのです。
ついでに伺いますが、大蔵省ですから、今度は外貨予算なくなりますね。そのうちの外為の運用はどうなるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/70
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071・鈴木秀雄
○政府委員(鈴木秀雄君) 御質問がよくはっきりいたしませんが、外貨予算というものは、現在毎年半年ごとにつくっておりまして、輸入の割り当てとかというようなものを外貨予算の範囲内において運用するということでございます。しかし、その外貨予算が廃止後も政府の集中ということは依然としてあるわけでございまして、外為資金というものは、一定の、たとえば銀行のようなものは集中を排除されておりますが、一般には必ず銀行に売らなければならないということで規制をしております。したがいまして、外為資金というものは、いわば平衡操作勘定というようなことで残るわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/71
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072・木村禧八郎
○木村禧八郎君 それは、これは宮澤長官に質問する時間がなくなりますから、資料として出していただきたいのですが、外為会計の内容を見たのですが、あの中でいまお話のあったアメリカ、主としてアメリカが多いと思うのですが、預金ですね、それから証券、この利回りはどれくらいか、それから外為証券、それがどれくらいになるか、それから外為証券の、前にも質問したのですが、外為証券の利率ですね、利率がどのくらいで、その利回りがどのくらいになるのか。おそらくこれは逆ざやになっておるのですが、そうじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/72
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073・鈴木秀雄
○政府委員(鈴木秀雄君) 非常に大ざっぱに申しますと、外局証券と外貨の運用利回りだけを比較いたしますと、逆ざやでございます。財務省証券あるいは定期預金というものは三分ないし四分ちょっと切れたようなところでございます。外為証券の利回りというものは日歩一銭五厘三毛ぐらいです。年利にして五分五厘ぐらいじゃないかと思います。ちょっと正確に私覚えておりませんが、たしか五分六厘か七厘ぐらいになると思います。そういう面では確かに逆ざやでございますが、御承知のように、外為には一般会計及び外為の会計のできます前にこういう貿易特別会計から引き継ぎましたインベントリーがございます。これはいわば無利子の金でございます。それから、現在国庫余裕金の利用ということを受けておりまして、これも無利子でございます。そういったことで、採算ができている、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/73
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074・木村禧八郎
○木村禧八郎君 それをいま計数にして出してくださいな。表にして、数字的に。これは外為特別会計の予算に出ておるのですが、その内訳が出ておりませんので、その内訳としてあとで資料を出していただきたいと思います。あとでまたそれをもとにして別に質問したいと思いますから。出していただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/74
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075・鈴木秀雄
○政府委員(鈴木秀雄君) 現在の米銀預金とか財務省証券というものは、その日ことに利率が変わるわけでございますが、その予算の積算の根拠とした数字でよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/75
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076・木村禧八郎
○木村禧八郎君 そうです。さっきの銀行とか証券の利回りが幾らになるか、それから外為のほうの支払いが何分で幾らになるか、それで逆ざやが幾らになるか、それをインベントリーのほうの無利子、それから国庫資金の利用の無利子によってどういうふうにカバーしていくか、出していただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/76
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077・鈴木秀雄
○政府委員(鈴木秀雄君) かしこまりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/77
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078・木村禧八郎
○木村禧八郎君 宮澤長官に対する質問時間はあまりなくなりましたが、次に、貿易外収支について承りたいのです。貿易外収支ですね。貿易外収支の赤字は非常に多くなっておりますし、かなり恒常的な赤字でこれを改善することは非常に困難であるといわれております。その中で特に問題になりますのは、海運収入。海運収入につきましては、二つに分けて伺いたいのですが、海運収入自体と、それから港湾の使用料ですね、これについてはどういうふうに赤字を打開しようとしているのか、その海運収入と、それから海湾収入ですね、その点について伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/78
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079・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 三十八年度の海運収入を、ただいまお話しの御趣旨に基づきますと、これはIMF方式で計算するわけでございますが、四億二千八百万ドル組み込まれております。その中で、運賃そのもののマイナスが二億一千二百万ドル。その他と申しますのは、御指摘の港湾経費、あるいは船の油や用船料、二億一千万ドル、こういう計算でございますから、ほぼ半々でございます。
そこで、運賃につきましては、これはもうどうしても、タンカーでありますとか、あるいは鉱石車用船その他のバルクキャリアを長年度計画でつくっていく、四十二年度を竣工ベースにして、おそらく二百数十万トンは少なくともつくらなければならないわけでございますけれども、それと同時に、積み取り比率を上げていくという問題があるわけでございます。で、現在の状況では、産業界では、荷物をつけてやろうにも船がないではないかという主張でありますし、海運界は、船をつくろうにも荷物を出してくれない、こういう言い分になっておりますわけでございますから、何とかその間政府もやはり入りまして、邦船に対して輸出入とも積み取り比率を上げていくようなことを、これこそ一体になりまして考えることが当面最も必要であるというふうに考えております。それによりまして、船舶の建造を大幅にふやしていく。しかし、そういたしましても、なお昭和四十二年度くらいに運賃による海運収支がバランスするかと申しますと、なかなかそれは困難であります。現在より差が広がらないというのが、私はせいぜいの努力の限界ではないか。一ぺんそうなりましたら、それからあとは差が縮まってまいると思いますけれども、なかなか四十二年度くらいまでにはそこまで持っていけないのではないか。
で、その他の港湾経費等々は、従来もわが国の港湾経費を少しずつ上げたりもいたしておりますけれども、これも外国に此べればずいぶんポート・チャージというものは低いということは、これは申せます。申せますが、それにもなかなか限度のあることでありますし、いわんや油については、これは本来的にむずかしい問題がございますわけですから、港湾経費、ことに船用の油等々の赤字をカバーするほど運賃で黒が出なければ、海運収支としてはIMF方式では黒にならない。しかも運賃だけでも、四十二年度やそこらでは黒になるということはいまのところ考えにくい。しかし、そういう方向に向かって、やはりこれは数年でなく、おそらく十年という単位のものではないかと思いますが、そういう努力を続けていくということしか方法がないのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/79
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080・木村禧八郎
○木村禧八郎君 非常に、そうしますと、日本の国際収支の赤字の一番大きい原因は貿易外収支ですね。それは資本収支の黒で埋めて、借金政策で埋めてきた。ところが、いま伺いますと、大体十年くらいたたないと、それでもまあ実際とんとんになるかどうかも私は疑問だと思うのですけれども、そうなると非常に重大な問題だと思うのですよね。どうやってこれを打開していくか。これについて、きょうの新聞見ますと、船主協会が、三十九年から年間百六十万トン船舶建造の意見が一致して、これは政府もこれを支持するように新聞に出ております。しかし、その場合問題になりますのは、OECDに参加するにあたって、海運の自由化の保留が、二年間保留したわけですね、海連は。まあ二年間というのは石油だけについて。それから、鉱石と石炭は一年ですね。そのために荷主のほうで長期契約やるのを、どうもちゅうちょする、こういう傾向がある。そうなると、船はどんどんつくるが、ところが物は荷主が、自由化になれば長期契約できるのですから、日本は安い船価でどんどんノルウェーとかに輸出しておったでしょう、その船で外国はどんどん日本の荷物を積み取るわけです。日本が安い船価で輸出した船会社と長期契約をやるのです。やりたいわけです、荷主のほうは。そのことと、日本の積極的な船舶建造計画というものの矛盾ですね。もし、ただ船舶をふやせばいいといっても、ふえた場合、そういう事態になったら、これは余ってしまうでしょう。それから、不況になった場合、非常に今度は重大な問題が出てくる。だから、ただ船をふやせば、積み取り比率をふやせばいい、いいといっておりますけれども、そんな単純なものではないと思うのです。そういう点が一つ。
それから、もう一つ伺いたいのは、港湾費です。資料として運輸省からいただいたのですが、外国と比べてあまりにも日本が低いといいますけれども、その程度が問題にならないのです。たとえば、これは七千トンないし四千トンの船が三日間停泊した場合の計算なんです。そうしますと、たとえば水先料なんか日本が一万六千二百円、ニューヨークが十一万五千二百円です。一番高いのはロンドンで、十七万四千三百六十六円です。こういう状態です。それから、曳船料でも、日本が五万一千九百九十八円、これがニューヨークでは十二万円——約十二万です。ロンドンでは二十六万。そういう、その他繋船料、とん税とか、灯台税、入港税、いろいろ合計してみますと、日本を一〇〇として、ロンドンは九七〇です。ニューヨークは二六七、ハンブルグは四三〇。繋船料なんか、日本を一〇〇として、ロンドンは三一七六、それからハンブルグが一一四一、ニューヨークが三五三でしょう。平均して六五七、日本を一〇〇として。お話にならぬほどものすごく外国の港湾費は高いのです。この間ちょっと引き上げまして、約百万ドルですか、二、三百万ドル日本の外貨収入がふえるように引き上げたといいますけれども、あまりに開き過ぎておるのです。これはもっと根本的に考える必要がある。さっきのお話で、海運収入は、赤字の三十八年の四億二千八百万ドルのうち、港湾費の赤字は二億一千万ドルというのです。約半分がそうです。これはもっと抜本的に私は引き上げる必要があるのではないかと思いますが、この点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/80
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081・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) まず前段の問題でございますが、現在の姿はまさに御指摘のような姿でございます。そこで、問題は、現在わが国の造船所が輸出船をかなりたくさん取っておるということが、国内船の建造に差しつかえる程度であれば、直ちにそこで問題が出てくるわけでございます。しかし、今年当初私どもが考えました国による計画造船が六十四万トンといたしますと、自社造船等含めましてなお船台に余りがございます。どのくらいあるかということは、簡単に割り算をいたすわけにいきませんわけで、船の大きさによるわけでございますから、説が異なっております。百万トン近く余裕があるという説と、三十万トンくらいしかないという説があるようでございますが、いずれにしても、輸出船をたくさん取っておるから国内船ができないという状態ではないと思います。いまのところそういう状態ではない。それから、わが国が輸出船を取りませんければ、世界各国とも船台は遊んでおりますので、どっかの国が取っていく、だろう。それはやはりわが国に対して立ち向かってくるわけでございます。ございますから、造船業者がいま輸出船をたくさん取っておるということは、いまの段階では当面の問題にはなってきていない。しかし、もちろん船主協会が考えておられますように、百六、七十万トンの建造をこれから本格的にやっていくということになれば、これはこの間に調整を必要といたします。
船主協会のそういう考え方が実現するかしないかということは、やはり先刻申しましたように、これに対してどの程度荷主が協力するかということであろうと思います。その際に採算を無視して協力をせよということは言えない筋合いでございますが、考えてみますと、わが国の船舶の建造原価というものはかなり安いわけです。安いから外国から引き合いがあるのでございますが、船価は安い。しかも、そのための金融は、ほとんど政府があそこまでめんどうを見ているということであれば、そうやってできました船がその船自身として外国の船と競争できない理由はないと私は思うのです。フレートとして競争できないわけはない。フレートが高くなるのは、やはり船舶会社が、海運会社が補償打ち切り以来持っておりましたいろいろな不良資産の償却をその新しいフレートに割りかけていこうと、こういうことを当然するからであろうと思うわけでございます。その点は、海運界の集中がある程度進みましたし、従来のようなことは今後そうそうはなかろうと思いますけれども、しかし、ほんとうに突き詰めて考えますならば、新しくできました新造船自身の、それだけの経理でフレートを考えるならば、これは競争できないはずはない。OECDのことを考えましても荷主としては当然に、このほうが安いか等価であれば、これは日本船に荷物をつけるということは、経済行為としてもそうされるわけでございましょうから、何かその間にひとつ仕組みが要るか、あるいは考え方をそういうふうにしていくかという問題があるのではないか。また、食糧管理特別会計で相当な小麦を買っているわけでございますけれども、これなどにつきましても、そういう船が現実にでき、そうしてそのフレートが合理的なものであれば、これは何も外国船を使う必要はない。それらの問題、財政資金の問題にも及びますが、この際抜本的に将来に向かっての計画を考え直す時期に来ているというふうに考えます。この点は、海運業界及び荷主である産業界一般の協力を得て、そういうことをこの際基本的に考え直さなければならない時期であると考えます。
それから、ポート・チャージにつきましては、仰せのとおりであります。まあロンドンの場合には多少特殊事情があると思いますけれども、ハンブルグに比べましても、ニューヨークに比べましても、まだ相当に低いわけでございます。これはいろいろな問題がありますけれども、やはりこの差というものはだんだん詰めていかなければならないものであろう。木村委員の御指摘のとおりであろうと思います。ただ、その問題につきましても、船舶の使います油、この問題はなかなか解決のしようがございませんわけで、この分だけは運賃のほうでかせいで出さなければならないということになるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/81
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082・木村禧八郎
○木村禧八郎君 時間がなくなりましたが、最後にというわけじゃないんですけれども、余った質問はあとに譲るとして、きょうでの最後の質問ですが、やはりこの船の問題は、荷主の問題との関連、OECDの参加のあれがありまして、根本的にやはり考え直さなければならぬ。ただ船をたくさんつくればいいというだけではなくて、荷主が協力しなければ何にもならぬのですから。そこで、石油とか、鉄鋼会社の自社船の建造の問題、それから船舶保有公団とかあるいは国有民営問題とか、そういう議論が出てきているわけです、すでに。そういう点についてはどうお考えになりますか、企画庁としては。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/82
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083・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) これは主管大臣でございませんから、いかにも抽象的にお答えするしかございませんが、船舶保有公団というような考え方は、どうも私は賛成をいたしかねます。国有民営ということについても同じように考えるわけでございますが、ただ、最近、御承知のように、ニューヨーク航路を統制いたしますために、新しい会社をつくりまして、政府がそこへ補助を出した例がございますが、ああいったような、これは非常に抽象的にしか申し上げられませんけれども、くふうというものは考えられるのではないだろうか。それは先刻申し上げましたように、新造船に関する限りは十分採算がとれる、国際競争力があるはずなのでございますから、それをフルにどうやって生かしていくかというくふうは、これはあってしかるべきじゃないか。まことに抽象的で恐縮でございますけれども、主管大臣でございませんので、そんなふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/83
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084・木村禧八郎
○木村禧八郎君 根本的にやはりいままでの海運政策のあり方を考えなければならぬ、考え直さなければならぬのじゃないかというふうに私は先ほど申し上げた、私しろうとですから。とにかく現状ではもうしかたがない。そこで、何らかの措置を講じなければならぬ。長官もそういうふうに答弁されたわけなんですが、企画庁として何か構想というものはありませんか、それについて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/84
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085・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) その点は、三月に入りましたら、関係各省集まりまして、ひとつ関係方面、民間とも連絡をしながら、基本的にこの問題の検討を始めたいと思っております。これは関係閣僚もそのつもりであると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/85
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086・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) それでは、本案に関しまする質疑は、本日のところはこれで終了いたします。
一時まで休憩いたしまして、午後一時からは、日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案の質疑に入りたいと思います。
午後一時まで休憩いたします。
午後零時六分休憩
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午後一時三十四分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/86
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087・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 午前に引き続き、委員会を再開いたします。
この際、参考人の出席についておはかりいたします。
日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案の審査のため、日本輸出入銀行の役職員を参考人として出席を求めることとし、出席者につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/87
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088・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/88
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089・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案は、去る二月二十一日衆議院から送付せられ本委員会に付託されたのであります。また、本案の提案理由の説明は、すでに聴取いたしております。
それでは、これより本案の補足説明を聴取いたします。高橋銀行局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/89
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090・高橋俊英
○政府委員(高橋俊英君) ただいま議題となりました日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案について、補足して御説明申し上げます。
日本輸出入銀行は、プラント輸出に対する金融を中心として輸出入及び海外投資に関する金融を行ない、わが国貿易の振興並びに経済協力の推進に格段の寄与をいたしておりますことは御承知のとおりであります。同行の業況は、年々着実に伸びてまいりまして、その融資残高は、昭和三十八年十二月末におきましては、輸出金融二千六百六十七億円、輸入金融四十二億円、投資金融四百五億円、合計三千百十五億円に達しており、今後とも同行の業務活動に期待するところはきわめて大きいものがあると考えます。
次に、今回提案いたしました改正法案の概要を申し上げます。
第一は、同行の業務として、外国政府等に対し貸し付けられた民間資金にかかる債務の保証業務を追加することであります。
東南アジア諸国等に対する経済協力の推進は、わが国貿易の振興上きわめて重要な課題となっております。このような観点から、すでにインド、パキスタン等の諸国に対して数次にわたり借款を供与いたしておりますが、昭和三十八年度におきましても、インドの第三次五ケ年計画及びパキスタンの第二次五ケ年計画を遂行するために必要な設備等をわが国から輸入するための資金として、この両国に対しまして合計一億一千万ドルの借款を供与することとし、その契約を締結いたしております。このような借款の供与にあたりましては、従来民間資金の活用をはかるため、借款額の二割に相当する額の協調融資を市中銀行に求めるのが例となっております。低開発諸国に対する経済協力の推進に伴い、このような借款の供与は今後一そう増加することが予想されますので、この市中銀行の協調融資を容易にするために、市中銀行が日本輸出入銀行とともに外国政府等に対してわが国からの設備等の輸入に必要な資金を貸し付けた場合、その協調融資分にかかる債務について日本輸出入銀行が保証することができることとしたいのであります。
第二は、同行の業務として、わが国からの設備等の輸入による債務の履行に必要な資金を外国政府等に対して貸し付ける業務を追加することであります。
輸入代金等の支払いが、その国の国際収支上の理由から著しく困難な場合に、その国が債権国に対して債務の履行の繰り延べ等の措置をとることを要請することがあり、過去にもアルゼンチンなどの例があります。今回の改正は、債務国の要請に応じて主要な債権国において繰り延べ等の措置がとられることが確実と認められるときは、日本輸出入銀行が当該債務国の政府等に対しわが国からの設備の輸入等による債務の履行に必要な資金を貸し付けることができることとし、このような場合の処理を円滑に行ない得るようにしようとするものであります。
第三は、政府が予算で定める金額の範囲内において日本輸出入銀行に追加して出資できることとし、この場合において同行はその出資額により資本金を増加しようとするものであります。
輸出の振興をはかるためには、日本輸出入銀行の資金の充実が緊要であり、このため年々多額の財政資金を同行の資金に充てることとしてまいったのであります。
御承知のとおり、同行の貸し出し金利は、わが国輸出業者が諸外国との輸出競争に耐え得るよう国際金利水準をも勘案して低利であることが要請されるのでありますが、貸し出し金利を低く押え、かつ、同行の経理採算を維持するためには、貸し出し金の増加に伴い、資金運用部資金のほか、無利子の出資金を追加していくことが必要となります。したがいまして、昭和三十八年度補正予算におきましては六十億円を、昭和三十九年度予算におきましては二百二十五億円を、産業投資特別会計から追加出資することといたしております。同行に対しましては今後とも年々このような追加出資が必要と考えられますので、同行に対する政府の追加出資の規定を整備いたしたいのであります。
第四は、同行の業務量の増大と業務範囲の拡大に対処するため、理事の定数五名を一名増加し六名としようとするものであります。
同行の融資残高は、昭和三十二年度末の六百三十八億円から三十八年十二月末には三千百十五億円と大幅に増加し、その業務内容もまた東南アジア諸国等との経済協力の進展に伴い一そう多様化いたしております。このような事態に対処し、同行の業務の円滑な運営をはかるためには、理事を一名増加する必要があります。
以上、この法律案について補足して御説明を申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/90
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091・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) これより本案の質疑に入ります。
参考人として、本日は、日本輸出入銀行総裁森永貞一郎君、日本輸出入銀行理事斎藤正年君が出席されております。
御質疑のある方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/91
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092・野溝勝
○野溝勝君 ただいま議題となりました日本輸出入銀行法の一部改正の点に関連いたしまして、事務的な問題に重点を置きましてお伺いしたいと存じます。
提案理由の説明にもありましたごとく、なかなか日本の財政経済も容易でありませんし、特に国際収支の点につきましては、私は非常な不安を感じております。しかし、この法案は、貿易等に重点を置き、特にプラント輸出などに重点を置きまして立案されたと思うのでございます。こういう観点であるとするならば、この際、結論的にいえば、政府はもっと大胆に、事業計画とにらみ合わせて予算をもう少し増大すべきものではないかと思うのです。
そこで、まず第一にお伺いしたいことは、午前中にも国際収支の問題について質疑が行なわれましたが、本年だけの問題ではなく、前年、前々年以来非常に国際収支が順次危機に迫ってまいっております。でありますから、この国際収支の均衡をはかるには、貿易の均衡、もちろん貿易外収支の大幅赤字、構造的赤字のいろいろな問題もありますが、基点になるのはやはり貿易の収支均衡ということだと思うのです。この問題についてはいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/92
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093・鈴木秀雄
○政府委員(鈴木秀雄君) ただいま野溝委員の仰せられましたように、貿易収支の均衡のみならず、貿易収支は黒字に持っていくべきものだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/93
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094・野溝勝
○野溝勝君 その点を確立せずに、資本収支などを当てにしておればですね、国際収支はいつまでたっても解決しないと思う。だから、貿易上の問題について政府は全力をあげなければならぬと思っておりますが、そういう点についてはどう考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/94
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095・鈴木秀雄
○政府委員(鈴木秀雄君) 貿易と申します場合、輸出と輸入とあるわけでございますが、輸出については極力これを伸長すると同時に、輸入については安定的な姿に持っていくということが、貿易収支の均衡をはかることであると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/95
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096・野溝勝
○野溝勝君 当然のことでありますが、政府は、国際収支がどういう形においてバランスがとれればよいかという点で、今日のように借金を中心にした資本収支にたよっているような甘い考えを持っておるのですね。午前中にも宮澤君からの答弁もありました。いま為替局長もそういうお答えをして、当然なことですが、輸出よりは輸入が年々多いということは、これはもう危険に危険をおかしておるのであります。輸入がなければ貿易は発展しないというようなふうにもいわれておるのでございますけれども、もちろん私どもは輸入がふえるということは必ずしも全部いけないというのじゃないですけれども、この輸入超過が年々ふえていくということは、これは均衡のとれた貿易政策としてはあやまちをおかしておると思う。主管は通商局の方にあって、為替局長は専門外のようにも考えられるのですけれども、こういう点は政府は明快になっておらぬと思う。大体、在庫品がまだ多くて解消しないうちに、こういう輸入の超過をあえて放任しておくということは、これはもう国際収支をほんとうに考えておるのじゃないと思う。たとえば、在庫品が全部なくなったとか、あるいは日本の消費経済が大体これ以上見込みがあるとかないとかいうようなことは、もちろん所得との関係もありますが、どういう展望を持っておるか、判断を聞きたい。政府は、一方では設備投資の抑制の要をおそらく考えながらも、業者の言うことに押されていくというふうに見えますが、この点、為替局長、どう考えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/96
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097・鈴木秀雄
○政府委員(鈴木秀雄君) これは年々と仰せられましたが、昨年度は、暦年にいたしまして一昨年でございますが、現年度からいえば昨年度でございます、貿易収支でも相当黒字が出たわけでございます。最近の状況というものは確かに、仰せられるとおり、輸入が非常に急増した。輸出も相当伸びておるわけでございますが、輸入が急増したという点に非常に貿易収支が悪化した原因があるわけでございます。
それにつきましては、現在の為替自由化というような観点から申しましても、直接的に輸入を制限するというような方式よりも、財政金融政策というものを健全にやっていくということが第一であるというふうに考えておりまして、昨年以来ことに金融政策等については、日本銀行等において引き締めの体制に移っておるわけでございます。ただ、こういう方策というもののきき目というものは、必ずしも即時にきくわけではございません点もございます。したがいまして、現在はその効果がいかにうまくいくかということを慎重にウォッチしておる、こういう段階だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/97
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098・野溝勝
○野溝勝君 為替局長、午前中の質問を聞いておられたと思うのですが、とにかく三十六年六月を上回った戦後最大の赤字ですね、一億五千八百万。三十六年度一億五千八百万、三十八年度経常収支は大体六億ドルとかなんとかいわれておりますが、いろいろな数字を総合して検討すると、いまの情勢では八億ドル前後の大幅な赤字になると、こう思うのでございます。大体、数字のことで、それは的確にはわかりませんけれども、私どもではそう見ておりますけれども、あなた方はどう見ておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/98
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099・鈴木秀雄
○政府委員(鈴木秀雄君) 午前に宮澤企画庁長官が答えましたとおり、確かに輸入は政府見通しの五十七億五千万ドルよりも若干ふえるというような感じを持っております。ただし、どのくらいふえるかということについて、先ほど午前の会議で宮澤長官の仰せられましたとおり、まだ政府間の全部の総合した見解がございませんので、数字を申し上げることはごかんべん願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/99
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100・野溝勝
○野溝勝君 的確な数字はわからないと言われておる、それは私もよくわかりますが、大体ぼくらの見た見通しとしてはそうです。われわれだけでなくて、日銀においても、市中銀行においても、金融関係においては大体そういう見通しなんですが、私は大きな誤りはないと思っておるのです。宮澤君の先ほどの話では、軽く見ておられるようですが、私は容易でないものを感じているのですよ。いまより好転するという見通しは私はない、国際情勢から見ても。特に、これからあとで質問いたしますけれども、政府は共産圏、中国等に対する延べ払いの問題に対しても、プラント輸出の問題に対しましても、西欧を中心としての国際経済の動向とは異なった消極的な態度をとっておるんですよ。そうすると、これは西欧諸国に対しても、あるいは東欧諸国に対しても、これ以上伸びるという見通しはいまのところでは私はない。ですから、さような大幅な赤字が出るという見通しなんです。あなたは何かいい材料が今後出てくると思いますか、為替局長の見解を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/100
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101・鈴木秀雄
○政府委員(鈴木秀雄君) 先ほど申しましたとおり、現在の段階の数字は、確かに五十七億五千万という政府見通しをつくりましたよりも若干輸入は多いということを申し上げましたとおり、決していいものではございません。そういう意味で、全然心配していないというようなことはないわけでございますが、と同時に、金融の引き締めとかそういったような効果というもののあがります時期というものも若干ずれるということもあるわけでございます。でございますから、そういった関係を慎重に検討して、今後の対策としたい、こういうふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/101
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102・野溝勝
○野溝勝君 これに関連しまして、通商局長のほうから意見を聞きたいのでございますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/102
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103・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 野溝委員に申し上げますが、通商局次長の大慈弥君がやがて出席する見通しでございますので、もうちょっとお待ち願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/103
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104・野溝勝
○野溝勝君 これは為替局長とお二人いるところでお聞きしたいと思います。それでは、為替局長、あとで通商局長と一緒におられる際に。
前後になりますが、国際情勢は、ドゴールが中共を承認して以来、非常に活発になってきまして、対共産圏や低開発国関係の貿易推進という面で顕著な動きが見られます。特に、英国などは共産圏に対して無差別の貿易政策をとっておるわけです。その他の国でも、プラント輸出をどんどんと積極的にやっております。こういう際に、日本が国際収支、特に貿易の輸入超過がばく大にのぼる傾向にある際でもあり、政府は従来の方針を改めるべきだと思う。輸出入銀行法一部改正についての銀行局長の提案説明を見ると、資金計画と事業計画について、財投として出資二百二十五億、融資七百十二億、自己資金として輸出入銀行は六百六十三億、トータルで千六百億、前年度と対比いたしまして百五十億ばかりの増になっております。こうした国際情勢の際に、このくらいのものでは前向きの貿易ができるかどうかということに対して非常に不安なんです。不安というか、私はだめだと思うのです。しかし、出さぬよりはいいから、この点、特に中堅の当局の諸君はどう考えられておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/104
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105・高橋俊英
○政府委員(高橋俊英君) 輸出入銀行の業務、これは御承知と思いますけれども、輸出が中心でございますが、これの金の出し方というものは、民間ベースで外国の業者と輸出、プラント輸出の契約が締結されまして、そうしてその相当割合が輸銀の融資申請ということになってまいりました。でありますから、他の普通の金融機関等には若干受け身以外に積極的な面もございまするが、輸出入銀行は自分みずからが積極的に金を貸して、契約を促進させるという態勢ではない。契約ができ上がればそれを受けて立つということでございまして、今日までのところで、資金が不足するという理由で、そういうせっかく輸出契約ができようとするものを押えたということはございません。輸銀のほうにもってくれば必ずそのまま——もちろんこれは非常に不健全なものでは困りますけれども、そうでない限り、これを見るというたてまえになっております。そのほかに政府間で契約されますところの円借等、インド、パキスタン等への円借がございますが、これにつきましても、その計画が実行に移されるときには、輸出入銀行は必ずそれに融資をつけるという態勢でおりまして、今年度の当初計画は千三百億でございましたが、これを実際の実績見込みが上回るようなことになりましたので、千四百五十億に計画を改訂しております。来年度は千六百億の融資ワクを予定しておるのでございます。これは非常に最近——最近といいますか、昨年じゅうの船舶の輸出契約が非常に多かったと、予想を非常に上回るほど出たということが主たる原因になっております。この結果、一応私どもの計算におきましては、それを見込みましても大体千六百億円程度でおさまるという見通しでございまするが、しかし、先ほど申しましたように、実際にやってみた結果、資金がもっと要るというふうな場合には、それに対しては必ず資金をつけるというふうな心がまえでやっております。過去におきましても全部そのような方針で資金の不足から輸銀の活動が妨害されるとか、民間の輸出が思うようにいかない、こういう事例はないようにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/105
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106・野溝勝
○野溝勝君 もちろん、輸出入銀行は契約ができたものに対して活動するのでございますから、その点はそれは政治的なものではないからよくわかるが、この輸出入銀行の予算というものが多くなれば、それだけ事業が活発になったということなんですよ。だから、その事業を活発にするにはどうするかということは、事業が活発になるということは貿易の拡大になる、貿易の拡大になるということは国際収支の均衡になると、こういう意味で質問しているわけなんですよ。中堅当局の方が来ておりますから、よく大臣、政府閣僚等とひとつ、この点の話し合いがあったときには、積極的に意見を開陳してもらいたいと思うのです。
これは参考ですが、昭和三十八年三月二十六日本委員会において池田総理と私との一問一答の中で総理が言われたことなんです。私はいまのような趣旨で、一そう中共並びにソビエト方面の貿易も何とか積極的にやってもらいたい、特にアメリカのチンコム、ココムの方式に盲従しているようではいけない。あくまでも日本の現在の事情から見て、また中共自体あるいはアジア、アフリカ、さらには全般の国際の情勢等から見て、中共貿易などは積極的にすべきです。西欧諸国でももう手を打っておるじゃないか。いまヒューム氏は総理大臣でございますけれども、ちょうど三十六年の二月だと思いますが、中国に出てきて、積極的に無差別貿易を打ち出しておるのです。そういう際であったのだから、私は総理に特に要望いたしました。ところが、総理は、アメリカのチンコム、ココムの問題にはとらわれない前向きの姿勢でやるということを言っておる。特に、今後は延べ払いの問題さえ片づけば、中共貿易は大胆にやりたいと思うと答えています。そこで、延べ払いの問題どころじゃない、いま申しましたプラントの問題ですらももう無差別でやっておる。日本は六年だとかなんとかいって、時限を限っておるのです。英国は現在ですらも十五年の延べ払いをやっておるわけです、十五カ年の。こういうようなことを総理も言われており、さらには、最近におきましては、大平君も、総理の意思を体してといいましょうか、さような意見を出しています。
こういう際ですから、輸出入銀行の資金計画がもっと拡大され、事業計画が拡大されるというときに、初めて貿易の拡大ができる、そのような基本的態度をとるべきです。さもなければ、総合収支の大幅赤字を押えていくには弱過ぎるというふうに感ぜざるを得ないのです。そこで、この問題をあわせまして、特に中堅当局である諸君にお伺いするのですが、通商局の次長はまだ来ておりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/106
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107・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 来ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/107
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108・野溝勝
○野溝勝君 いま為替局長と一応貿易の拡大の必要性について質疑をかわしておったのですが、特に為替の面から局長はお答えされておると思うのですよ。だから、通商当局は、貿易の将来性といいますか、輸入が非常に多くて、輸出が追いつかず、非常な先行き不安をもっているということを私は言っておるのですよ。だから、今後輸出が拡大する見通しがあるかないか。努力するということはみんな言っています。しかし、世界情勢を展望してみて、そういう情勢にある。それといま一つは、こういう方面に努力したらできる、こういうふうに努力したらできる、その場合問題になるのは延べ払いであるとかプラントの問題であって、そういうようなことを改革するのならばできる見込みがある、ない、こういう点についてひとつあなたの見解をざっくばらんに聞いておきたい、こういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/108
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109・大慈弥嘉久
○説明員(大慈弥嘉久君) 今後輸出がどの程度伸びる見込みがあるかということでございますが、今年度の輸出の見通し、これはもうたびたびいわれておりますように、為替ベースで五十五億ドル、来年度は六十二億ドルというふうに見込んでおりまして、もちろんこれは努力目標といいますか、ほうっておいてもいくということではなくて、大いに輸出振興のいろいろな方策を講じなければいけないわけです。そういうことで増加を期待をしております。
今後どの程度伸びるかということでございますが、これはまだ見通しにすぎないわけでございますけれども、戦前に日本の総生産に占めます輸出の比率というのは一九%程度でございました。最近は一〇%を割っております。そういう点からいいましても、国民総生産に占める比率から見ましても非常に低いわけでありまして、さらに輸出の振興に努力をしていけば増加する可能性はあるというふうに考えます。ぜひ、またそうしなければならないと、こう考えます。
それから、第二点は、延べ払い、プラント輸出の場合の問題とかございましたが、これらにつきましても、輸出振興策の一環としていろいろな措置を講じないといけないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/109
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110・野溝勝
○野溝勝君 私は、通商局次長ね、あなたたちを追及するとか、そんな気打ちでやっているのではないのですよ。いま貿易は、何といっても業界ですから、業界の意向というものがあるわけなんですよ。それから、いままでの貿易の最も障害となった点も監督官庁のほうとしてはわかると思うのですよ。ですから、そういう場合の障害となっているような点を解決すれば、貿易はまだ伸びる傾向にある。そういう点をあなたのほうからひとつお話を願いたいと言っておるんですよ。だから、為替局長のほうには、やはり貿易の障害になっている一つの点として、いつまでも為替レートを三百六十円なんて言っていることはおかしい。こういうような点についても貿易の障害の一つの事項だと思うのです。こういう点について君たちの内部ではどういう話をされているか、そういうことも聞いてみたい。だから、通商局のほうからは、今後、貿易の障害となっているこういう点がある、具体的にこういう点はひとつ何とかしてもらいたいと思っている、そうすれば貿易拡大の見通しがあると。貿易に努力すると言ってみたところで、帳面づらや指令や通達ばかり出しても、それは、だめなんですよ。そういう点を腹蔵なく聞きたいというのです。それを言ったからあなたの責任を問うと、何もそういう問題ではない。やっぱりわれわれはしろうとで、国際上の問題、経済上の問題で心配しているからこそ聞くのですからね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/110
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111・大慈弥嘉久
○説明員(大慈弥嘉久君) 十分まとまりました御納得のいく返事ができるかどうか懸念もされますが、輸出振興策という意味でなおどういう障害があるかということで、少し申し上げさせていただきます。
御承知のとおり、日本はまだ対日差別待遇といいますか、そういう輸入制限を受けておりましたり、それからガットの三十五条の援用をしている国も残っておりますし、これらについては国内において輸出秩序の確立をはかるといいますか、秩序ある輸出をすることも大切でございますが、そういう輸入制限の撤廃、それから差別待遇の是正、そういうことが大切であろうと思います。国際的にもいろいろOECDへの加盟とか、IMFの八条国移行とか、それから開放経済体制と申しますか、そういう体制に入っております。それから、ガットの場とか、いろいろ国際的な機関もあることでございますから、そういうところにも大いに差別待遇の是正ということで、一番障害になる点は除去していかなければいけないと思います。
そのほかの輸出振興策でございますが、輸出金融、これは先ほど延べ払いの御指摘がございましたが、そういうふうな輸出金融面についても適用することが、大切であろうと思います。
それから、輸出の振興税制についてでございますが、輸出所得控除というのが四月から廃止になりますので、それにかわるものというと語弊がございますが、輸出振興税制についても配慮が必要でございます。で、現在大蔵省のほうを主にいたしまして、いろいろそういう検討が進められております。
それから、対外的な市場調査、それから見本市その他の宣伝でございますが、そういう点につきましては、ジェトロ——日本貿易振興会でございますが、ジェトロを強化いたしまして、各般の輸出の振興に役立つようなPR、そういうことをする必要があろうかと思います。
それから、輸出マインドといいますか、何より輸出が大切だという気持ちを国民の方々が実際に持っていただくことが大切でありまして、そういう点から、来年度につきましても、貿易記念日、これは六月二十八日にやっておりますが、貿易記念日を中心にいたしまして、輸出振興のための国民運動を展開する。それから、輸出に貢献した企業を輸出貢献企業であるという認定をするとか、いろいろそういう知恵をしぼりまして、輸出が第一だというムードといいますか、心がまえといいますか、そういうものを国民に持っていただくようなことを考えております。
それから、先ほどの輸出秩序の維持確立、これは海外の市場に対して殺到する、相手国の市場を荒らすということではなくて、秩序ある輸出をするような方策を考える。
それから、一番初めに申しました対外経済交渉でございますが、これは先ほどのような国際的な機関、さらに二国間といいますか、そういう点でも交渉を強化いたしまして、輸出の振興に役立つようにしなければいけない、こう思います。
もちろん、根本的には、国内産業の体質改善といいますか、国際競争力をつけるということが、根本にあるわけでございますが、直接の輸出振興策としては、大体そういうようなことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/111
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112・鈴木秀雄
○政府委員(鈴木秀雄君) 野溝委員の御質疑の輸出振興策について、個々の問題につきましては、いま通商局の次長が申しましたとおり、いろいろきめのこまかい方策も必要かと思いますが、本質的には、日本の生産品を国際力に打ち勝つごときコストなり、そう競争いったもので競争力をつけるということで、政府の役割りとしては、たとえば物価を上げないというようなことが一番大切なことではないかというふうに、私ども大蔵省のほうでは考えております。
延べ払いにつきましても、私ども決して消極的ではございませんで、現在相当多額の外資導入をしている。これらの外資というものは、将来返還しなければならないわけでございます。一方、日本が延べ払い輸出をしたというものは、いつの日か日本に返ってくるものでございまして、将来の何年か先の国際収支対策を考えまする場合には、本質的には返すような外資と、それから向こうから取り立てるような延べ払いの債権というものが見合っているようなかっこうのものが一番望ましいということで、外資を抑えるだけではなく、むしろそういったような健全な債権をたくさんつくっていくということも、一つの国際収支対策であるというふうに考えております。ただ、何分にも非常に後進国の外貨事情が悪い、あるいはそういったプロジェクトについて適当なものがないということで、うまくできないという問題もございますし、それから、条件等につきましても、これはもっぱら国際競争力ということから考えまして、個々別々に弾力的にそれに耐え得るような条件を出せばいいわけで、一律的に甘くするというだけが能ではないというふうに考えております。
それから、第二の、円のレートが三百六十円はおかしいというお話ですが、この点は、私は、三百六十円というのは現在の円の実勢に全く会っている、何ら変更する必要はないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/112
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113・野溝勝
○野溝勝君 通商局次長のほうにお伺いしますが、この振興策の事情の中にも、延べ払いのほうも積極的にやってもらいたい、こういうことも振興策の中にあるのですね。私は、こういう点について通商局のほうもやはり強く要望しなくちゃいかぬと思うのです。これはあなたたちが見た目から、こうすれば振興できるという事情を、具体的に大蔵当局と折衝をして、そうしてこの方面に幅を広げるように努力しなければならぬと思うのです。個々の振興策もいろいろありますが、それもやらなければいかぬが、特に私はそう考えているのです。
それで、あなたも御承知のように、いま為替局長のほうはばかに消極的なことを言っておるが、出す身になれば、そういうことも言わざるを得ないと思うけれども、一体経済力というものは、よその国だって同じことだと思うのですよ。外国だってそんなに外貨がたくさんあるわけじゃないのだ。その中で最も有力な市場をこの際確保しなければならぬというわけで、英国はじめフランスその他も、みな全力をあげているのだと思う。私は、同じ品物であれば、輸送料その他についても非常に格安にあがるのだから、中共は大いに歓迎すると思うのですよ。大体において、後進地域だって、アフリカもありますけれども、何といったって東南アジアがありますから、その方面に幾らでも市場はあるのだから、その方面に手を伸ばすには、あの国々に外貨のあるところなんてありゃしない。そういう経済力の弱いところでさえも全力をあげておるのですから、日本は少し考えなければならぬと思う。このごろ大平君は、お互いに貿易駐在員を置くことは認めてもいいというところまでいっておるのですから、それは政経分離は別だ、そんなことはどうでもいいから、とにかく貿易の拡大、いまから足場をわれわれは得られないようなことでは、とんでもないことになる。中共貿易は数%ですからね。
では、英国はどんな経済力か、フランスはどんな経済力か。日本は外貨が二十億ドルあるか十八億ドルあるか、完全なことはまだわかりませんけれども、とにかくそれらの国から見れば外貨は持っておるほうだから、その内容をこまかく分析すればいろいろあるけれども、そういう事情のもとにあるのですから、積極的にこの際有力な市場をなくすようなことをしないように、特にドゴールの中共承認以来大きく変わっておるのですから、このチャンスをのがしてはいかぬという点に私の力点があるのですよ。どうかそういう意味で、まあこれ以上私は質問いたしませんが、あなたのほうでも積極的に大蔵当局と交渉されまして、この見通しを誤らぬようにひとつ努力してもらいたいと思うのです。
それから、為替局長代理は、三百六十円のレートは正しいと思っておると言うが、頭がどうかしていやしませんか。それな戦後の三百六十円レートが正しいなんといえば、笑い殺される。皮肉のことばではないけれども、そういう感覚でおったんでは困る。政治的にはそういう意見も出せるかもしらぬ。しかし、これだけ大きく変わってくる経済史的な動きの中で、戦後のままでいいということはないですよ。これはまあ政治問題になりますから、うっかりした発言はできないだろうから、それは私もよくわかる。これは決定的にいいということでなくて、十分これは主管大臣とも話してみますということさえ聞けば、ぼくはいいんでね。できる、できないということ、それは聞かない。あなたに言えといったって無理だから、私はそう思うということを開陳して、あなたの見解を聞いておるのです。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/113
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114・鈴木秀雄
○政府委員(鈴木秀雄君) 野溝委員の御意見は大臣にお伝えしますが、私は三百六十円というものが決して実勢に即していないということは思っておりません。それだけを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/114
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115・野溝勝
○野溝勝君 君個人としての考えは、いまの三百六十円でいいと思うと、こういう考えなんだね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/115
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116・鈴木秀雄
○政府委員(鈴木秀雄君) 少なくとも政府としては、現在はそういう考えだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/116
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117・野溝勝
○野溝勝君 しかし、それは、考えではあるけれども、政府としてはそういう考えであっても、これだけ大きく、通貨の問題にしても大きな動きのあるときに、これを戦後のときのそのままでいいと思っておるということ、今日まで思っておるのですか。何とかしなけりやならぬというふうに思っていますか、どういうふうに思っているのですか。何も思わぬというのか………。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/117
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118・鈴木秀雄
○政府委員(鈴木秀雄君) 非常におこられるかもしれませんが、何ともする必要がないと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/118
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119・野溝勝
○野溝勝君 これはまた大臣とあれするといたしまして、この前、大蔵大臣とこの論争をやったときも、大臣は非常に答弁しにくいような態度をとられておりましたので、どうもこれは高等政策かなんかありそうですから、私はいずれまた大臣が来たときにしましょう。
次に、私は銀行局長にお伺いいたしますが、いま申したように、私の大体言わんとする気持ちもわかってくださったと思うのですが、私はこう思うが、どうですか。国際収支の均衡をはかるには、対策といたしまして、まず輸出増進を積極的にやること。そのためには、先ほど通商局長のほうからも話がありましたが、いろいろ振興策もあるが、同時に私は貿易業者も反省しなきゃならぬと思うのですね。後進地域に行って競争をやって、そうして日本の産業人がでたらめだというような不信を起こしておるのでございますから、要するに品物の競争をやって売り込みをやっておるんでございますが、そういう点についてはジェトロのほうも反省しなきゃならぬと思うのです。だから、そういう点は、ここにちょうど通商局と為替局、銀行局、三者の当局が来ておられますから、私はその反省すべき点は反省するように十分に注意して、まず、しかし対策としては貿易の輸出増大をはかる。それから輸入は、これは国際収支の点から見て、極力押えるようにしていかなきゃならぬと思う。そういう点は、業界等に押されないで、十分考えてもらいたい。また業界あるいは、銀行自体も自制すべきです。
それから貿易外、特に海運界については、先ほどお聞きしますと、非常によくなったといいますけれども、まだまだ私は是正する必要があると思う。
それから、次には、金融の引き締めを強化する必要があると思います。先般日銀では、金融引き締めをやろうとして歩合の問題をやったところが、それは押えられてしまった、この点はどういう点でそういうようになったのか、よくわれわれはわかりませんけれども、われわれから言うならば、依然として公定歩合引き上げを含む金融の引き締めというものは強化していかなきゃならぬと思います。金融方面に対しては特にこの点を強行する必要があると思う。それがために金融引き締めを強化しろというわけで、一般の中小企業にまでやれと、こういうのじゃないですよ。
それから、三番目は、共産圏貿易です。先ほど申した、東西を問わず、対外信用の供与等に画期的な措置をとる必要がある、それには、先ほど申したとおりの事情でよくおわかりだと思います。
これらは国際収支の均衡をはかる上で、特に経常収支改善上で重要な問題だと思いますけれども、銀行局長はどういうお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/119
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120・高橋俊英
○政府委員(高橋俊英君) 最初に、いまおっしゃいました輸出の伸長をはかる上で、先ほど通商局の次長も簡単に答えられておりましたが、輸出秩序の確立といいますか、輸出秩序が保たれておらないことが、しばしば相手国のいろいろ評判を悪くしまして、かえって非常に安い値段で売りながら評判が悪くて、ときどきシャットアウトを食うようなことにもなる、そういうことは、私ども直接の係ではございませんが、非常によく耳にするところでございます。いま野溝委員がおっしゃいましたとおり、その秩序をいかにしてこれを保つかということは、非常に大事なことではないかと思います。これは輸出そのものに対する一つの現象的な問題でございますけれども、日本の商社活動は、大小を問わず非常に熱心でございますけれども、熱心なのはけっこうでございますが、非常に行き過ぎて、他人の契約したものを、常にそれを下回るような値段で契約を取る、さらに第三の商社が行って、それを下回るような値段で取る、一体日本の商品価格はどれがほんとうかということになって、しかも最低値段で売らなければならぬということで、輸出の面で非常に損をしておるのです。相手国に対する信頼を得ることは非常に大切なことです。
もちろん、輸出の対策としてはそれだけではございません。いろいろな方策があると思います。特に私は、いま輸入の増大と関連いたしまして、輸入が非常に増大するような状態が輸出に対して悪影響を与えている。輸入の増大で国内の需要が全体として大き過ぎるというところにあると思います。特に今回の国際収支の逆調が何によってもたらされたかという点につきまして、しばしば犯人がいないということをいいますが、実際には総需要が高過ぎるということでございます。前回三十六年の当時でございますと、民間の設備投資が当時において適当と考えられる水準を非常に大きく突破した、非常に高い設備投資になりまして、それが過熱の主軸になると。今回の場合を見ますと、民間の設備投資は当時の水準を若干下回る水準でございまして、設備投資が高過ぎるかどうかはともかくといたしまして、非常に行き過ぎがあるというふうには見られません。
それから、在庫の問題にいたしましても、輸入は非常にふえておるのでございますが、統計で見る限り、輸入の原材料の水準は高くないということになっております。あれだけ輸入がふえておるのでございますが、統計上は、少なくとも数字は、非常に在庫率は低いということになります。むろん、こうした統計にはいろいろの時間的なズレ等もございますので、統計面で在庫が多過ぎないから、今後も絶対的に輸入はふえざるを得ないというふうに見る必要はないと思う。やはりいろいろな関係で、統計にあらわれないような蓄積があるという感じもいたします。しかし、大体においては、消費に見合って、国内原材料の消費、あるいは原材料ではなくて、普通の消費に見合って輸入が逐次増大して、急激な増大ではないが、非常に着実なベースで増大をし、それが輸出の水準を上回っておるということ、したがって貿易外収支を合わせますと、かなりの経常収支の赤字が見通されるのでございます。
こういった経常収支の赤字は私は全体として改善されなければならないので、貿易外だけを取り上げて云々するという考え方にあまり賛成できないのでございますが、いずれにいたしましても、年に数億ドルあるいはそれ以上の赤字の傾向が続くということは、将来を考えますときには、非常に日本にとってたいへんな負担になる。たとえ一時的に短期、長期の外資によってこれを補うといたしましても、いつまでもそういうことを自転車操業みたいにやっておるわけにいきませんので、逐次そういった借金の部分を減らして、経常収支のそれ自体の均衡をはかるという方向に向かうべきである。なるべくそれも早いベ−スのほうがよろしいというふうに思います。
それにはやはり全体としての需要が大き過ぎるというところを見ますと、金融だけで解決できるとは思いませんが、しかし、金融の引き締めをもう少し強めていくくらいの心がまえでないと改善の方向に向かわないのじゃないかという感じがいたします。何しろ生産の水準も、前年同期に比べて一月末は二一%以上も上回っておるということで、非常な高いベ−スで増大しております。この調子が続くとは思いませんが、やはり生産水準が高過ぎるということ、これを落とすようにしなければならない。それには引き締めの強化もやむを得ないというふうに考えます。
なお、最後に、中共その他ソ連圏との貿易の点につきましては、いろいろ政治的な高度の判断が必要とされるわけでございますけれども、民間ベースといいますか、そういう政治的な問題を一応できるならば切り離して、相互の貿易額を着実に増大するという努力を今後も払っていくほうがよろしいのじゃないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/120
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121・野溝勝
○野溝勝君 銀行局長、なかなかまじめな答弁でございました。大臣は政治的であるし、諸君らはやはり真実でなくちゃいかぬ。それはもちろん、大臣は上長だから、その命令に服さなければならないことはしかたがない。少なくともやはり現実というものを見誤らないようにするのは諸君らにあると思う。だから、諸君らは正しい意見を大臣に進言して、日本の向かうべき方向を誤らないようにやってもらいたい。これは強く私は中堅諸君にお願いしておく。
特に私が中共貿易とかあるいは東南アジアの貿易とかいうことを強く言うのは、こんなことはしろうとでもわかることですが、先進国だの西欧諸国などはいままでにちゃんと経験を経てきておるわけです。市場獲得に対する経験を経てきておるわけです。日本は戦争前は力によって市場を獲得しようとつとめてきた。これがあやまちをおかしたのです。今後新しい手で市場を獲得するにはどうするかというならば、親切に正直に勉強してやるという以外にないと思うのです。そうすれば国際収支の穴もだんだんと片づく。全部一括して片づくというわけにはいかぬけれども、漸減するわけです。こんなことはわかっていることです。わかっていることができないわけです。そこで、最近では前向き前向きというようなことをいわれているが、その前向きを一そう前進させるためには、あなた方の意見なり資料というものが内閣を動かすことになると思うのです。ですから、そういう意味で諸君らに強く希望しておきます。
もう諸君らは御承知だと思いますけれども、どうですか、英国では共産圏に対して無差別貿易の推進を決定しておる。英国、フランス、イタリア、オランダ等では、各種化学プラントの輸出契約ができております。西欧の対中共貿易は六一年、六二年が一億五千万ドル、六三年には一億九千万ドル、フランスが一番のしております。わが国では対共産圏貿易は依然として全体の数%、こういうわけです。この事実を何と見るかということから、私は先ほどから質問しておったわけです。どうかひとつそういう点を、十分御理解願っておると思うのでございますが、ひとつ拡大のために努力願いたいと思います。
私、最後にこういうことを考えていますが、これはあなた方の意見を求めようとするのじゃありません、私の考えです。まず、これは政治的な面もありますから、御答弁は要りません。国交の正常化をはかる、承認をするということ、中共承認、国連加盟を促進させるということ、こういうことに努力を政治的にはやるべきものだと思います。しかし、これは政治的な問題でございますから、まあお聞き願えればけっこうだと思います。どうしても日本で現在にやるべきことは、先ほど申した貿易の拡大に全力をあげる。そのためには、輸出入銀行に対する政府からの財政資金を大幅にふやす。しかし、みんな全部まかせることは、膨大な資金、組織を要するから、なかなかできない。ですから、それには都市銀行等に対しては輸銀の業務の一部をこれにまかす、その利子補給金をめんどう見るというようなことをやっていけば、先ほど申しましたプラント輸出、その延べ払いの問題も大幅に伸びていくし、貿易も拡大すると思うのです。
はなはだ、私の私見でございますが、参考までに申し述べておきます。あなた方はどうかひとつ、上長の言うことはもちろん聞かなければならぬのでございますが、ドゴールの中共承認以来大きく変わって動き、さらにアメリカでも場合によってはやろうというような動きを出しております。本日の外電を見るというと、周恩来も、アメリカが軍隊を引き揚げるならば、中共とアメリカと交渉する用意があるとさえ言っているじゃないですか。これは私はおそろしい急激な動きだと思います。今後日本がまごまごしていれば、アメリカに先を越され、背負い投げを食うのです。私は中共との貿易が往年のごとくすぐに増大できるとは思いません。先ほど申しましたとおり、何としても近いところとは貿易したいという気持ちになっているのですから、どうかそういう点をひとつ十分御理解願いまして、皆さんの御努力を願いたい。これをもって私は終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X00919640227/121
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122・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 他に御質疑もないようですから、本日のところは本案に対する質疑はこれで終了いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後二時三十九分散会
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