1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年三月二十五日(水曜日)
午後二時三十九分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 新谷寅三郎君
理事
柴田 栄君
西川甚五郎君
成瀬 幡治君
渋谷 邦彦君
天田 勝正君
委員
大竹平八郎君
川野 三暁君
栗原 祐幸君
佐野 廣君
林屋亀次郎君
日高 広為君
柴谷 要君
野々山一三君
野溝 勝君
鈴木 市藏君
政府委員
大蔵政務次官 齋藤 邦吉君
大蔵大臣官房財
務調査官 松井 直行君
大蔵省主税局長 泉 美之松君
事務局側
常任委員会専門
員 坂入長太郎君
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本日の会議に付した案件
○所得税法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○法人税法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○租税特別措置法の一部を改正する法
律案(内閣提出、衆議院送付)
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001・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。
所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、租税特別措置法の一部を改正する法律案、以上三案を一括議題といたします。
所得税法の一部を改正する法律案は、昨日衆議院から送付せられ本委員会に付託せられました。
なお、本案は衆議院において修正議決せられております。この際、衆議院における修正点の説明を便宜政府委員から聴取することにいたします。泉主税局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/1
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002・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) それでは、便宜私から、衆議院におきまする所得税の修正点について申し上げたいと存じます。
修正の個所は、十一条の八にございます今度の改正で設けようといたします損害保険料控除について修正をいたしたのでございます。その修正の個所は二点でございまして、一点は、先般ここでも御説明申し上げたと存じますが、今回設けようといたしておりまする損害保険料の控除のうち、保険期間または共済期間が政府原案におきましては十五年以上のものを長期損害保険契約といたしまして、これにつきましては控除額を引き上げておったのでございますが、まず最初に、その保険期間または共済期間が「十五年」となっておりましたのを「十年」に修正いたしまして、十年以上のものを長期損害保険として控除限度額を引き上げるというのが一点でございます。いま一つは、その長期損害保険契約につきましては、控除限度額を「五千円」といたしておったのでございますが、これを「一万円」に修正する、この二点でございます。
その理由といたしましては、こういった長期損害保険につきましては、民間の保険会社が昨年から二社始めたのでございますが、それ以外は農業協同組合などで建物更生共済というのをやっております。それがかなり長い実績を持っているわけでございます。民間のほうはまだ始まったばかりで、統計的な基礎なども、統計資料も十分に得られないのでございますが、そこで政府原案におきましては、まあ従来の建物更生共済の数字を基礎にいたしまして、十五年以上のものというのを長期保険といたしておったのでございますが、その後実情を調べてみますと、十年以上のものの数が相当多いのでございます。その点からいたしますと、十年、十五年、二十年、二十五年、三十年、こういった期間のものがあるわけでありますが、十年以上のものの件数が相当多うございますので、十年以上のものを長期保険と認めるということに修正されたわけでございまして、いま一つは、長期損害保険の損害保険料控除が五千円と政府原案はいたしておったのでございますが、これは従来の建物更生共済の平均共済金額というのを調べてみますと、それが三十七万円程度でございまして、その後の金額の伸びを見ましても、一保険当たり四十万円程度、そういうところからその保険料を計算いたしまして、さらに農家の住宅部分、農家の事業用の部分は、これは農業所得の計算上損金に算入されておりますので、農家の住宅部分について今度新しく損害保険料の控除の対象になりますが、その分として計算してみますと、五千円程度でいけるのではないかというふうに考えておったのでございますが、先般申し上げましたように、短期保険につきましての平均保険額は六十九万九千円になっております。それとのバランスからいきますと、建物更生についてそういう低い金額を基準にするのは、なるほど従来の平均共済金額はそうなっておるかもわからぬけれども、短期保険とのバランスからいって適当でない。したがって、そのバランスから見て、保険料を計算してみると、一万円ぐらいに引き上げる必要がある、こういうことから修正が加えられたのでございます。
その結果、十一条の八の第一項第一号のカッコ書きの中、これは長期損害保険契約の損害保険料と短期の契約の損害保険料と両方あった場合の規定でございますが、短期の分が二千円をこえ、それから長期の部分が八千円未満であるときには、その短期の部分については二千円が限度でございまして、したがって、その二千円と長期の分とを加えた額が一万円以内になるわけでございますが、それを短期と長期と両方がある場合の限度額にする。そうしてそれ以外の場合には一万円が限度額になる、こういう規定になっているわけでございます。
十一条の八にそういう修正を加えました結果、別表六の年末調整の際、損害保険料の控除は、給与所得者につきましては、生命保険料と同様に、年末調整の際控除することになりますので、別表六の年末調整の際の簡易税額表の場合、課税給与所得金額を計算いたしました場合にやはり損害保険料の控除を引きますので、そこのところを「五千円」とあるのを「一万円」、「三千円」とあるのを「八千円」に直すということになるわけでございます。
それからまた、附則第三条の三十九年分の所得税の諸控除についての読みかえ規定がございますが、ここにおきまして、損害保険料の控除は、三十九年分の所得税につきましては四月一日から控除を引き上げることになりますので、平年分の四分の三の控除になるわけでございます。したがいまして、従来五千円とありましたのを一万円に直しますと、その四分の三は七千五百円になりますので、従来「三千八百円」とありましたのを「七千五百円」に直す。それから、長期、短期と両方ございます場合の長期の八千円というのを、長期の三千円というのが四分の三で二千三百円になっておったわけでございますが、それが先ほどの十一条の八で「八千円」と修正されましたので、そういたしますと、三十九年分は八千円の四分の三の「六千円」になる、こういうことになるわけでございます。
それから、一番しまいに、三十九年分の年末調整を行ないます際は、改正法の附則別表の二が使われることになります。そこで、その分について「五千円」というのを「一万円」に修正して、その四分の三の「七千五百円」に修正するというふうに、これは十一条の八の規定を修正いたしましたことから自動的にそういう計算になってまいるわけでございます。そういう修正が行なわれたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/2
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003・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) これより三案に対する質疑を行ないます。御質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/3
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004・天田勝正
○天田勝正君 本来は野々山委員の質疑の続行であるべきなんでありますが、野々山委員要求の資料がまだ出されておりませんそうですから、私から質疑いたします。
そこで、まず最初に聞きますが、山林所得の計算でございますが、これは今度いささか軽減されたようになっておりますが、実をいいますと、山林所得というのは経費の見方によって、税率を下げても増税にもなれば、なかなかこれはややこしい本来性質を持っている。そこで、私はこの法文で書かれたのはこのとおりとして、問題は、経費を差し引いた金額に対して控除幾らにする、そして税率をかける、こういうことで、まずその前にある経費、これが非常にポイントになると思う。そこで、この経費の見方というのは、この際改めるのか改めないのか。それから、改めないとすれば、いままで経費の見方というのはどのようになっておるか。少しばくたる質問ですが、それをひとつお示し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/4
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005・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) お話のように、山林所得と申しますのは、植林をいたしましてから伐採するまで非常に長い年数を要するわけでございます。したがって、その間の植林費、それから管理費、伐採費等の必要経費の計算が、何ぶん長い間のことでございますので、その間物価騰貴等もございまして、この必要経費の計算が非常にやっかいでございます。その点はお説のとおりでございますが、そこで、まあ山林所得につきましては、租税特別措置法の第三十条に概算経費控除の制度が設けられておるのでございまして、一々の山林につきまして、まあものによって違うと思いますけれども、三十年とか四十年前にさかのぼって当時の植林費が幾らであって、その三十年なり四十年たつ間の管理費が幾らという計算はとうてい実行できませんので、そこからいたしまして、伐採または譲渡した場合の収入金額を基準にいたしまして、概算的な経費が幾らであるということをきめておるのでございます。これは年々定めることになっておりまして、三十八年分の山林所得の概算経費につききましては、そういった伐採または譲渡の収入金額の百分の三十ときめてございます。したがって、そういうわずらわしい計算をすることなく、その百分の三十を経費として引いた残りが所得になります。
その所得から、今度の改正によりまして、その残りの所得が三十万——従来でございますと、十五万円しか控除しなかったのでございますが、今度は三十万円。その残りの所得が三十万円未満のときには課税しない。また、三十万円から四十五万円までの間におきましては、その控除額を引き上げます。たとえばその所得が四十万円といたしますと、六十万円から四十万円を差し引きまして二十万円を控除することになります。そうすると、四十万から二十万円を引きました二十万円が課税所得になります。これを五分五乗するということになるわけでございます。もっとも、その山林の経費控除の所得が四十五万円をこえますと、以上の場合におきましては、従来どおり十五万円引くということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/5
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006・天田勝正
○天田勝正君 私がこの質問をするのは、本来農山村が所得格差が激しくなりつつある。そこへ山林所得者といえども、大部分は山林だけに依存できない。精一ぱい四、五町歩、平地ならばやっと二町足らずというところで、一ぺんにどかっと金が入るがごとくに見えるけれども、ならしにすれば貧農に属するたぐいの方が多い。こういうことで、そこで減税されることはまことにけっこうでありますけれども、経費の見方によってはえらいことになる。
そこで、いまのお話聞きますと、三十九年度分もまだきまっておらないようですね。毎年きめるのですから、まだきまっておらない。ところが、ここ数年自家用労働でやるにしましても何にしましても、どっちにしても、ものすごく人件費が上がっておるのですね。はたして従来どおり百分の三十を経費と見ればよろしいのかどうか、これははなはだ疑問のあるところだと思うんです。で、この点で経費の見方——これは法律以前の問題ですから、いかようにでも行政措置ができると言えると思います。そこで、この際その方面で、少しくやはりこれを改定する要があるのじゃないかという気が私としてはするのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/6
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007・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) 山林所得のしては、先ほど申しましたように、毎年その概算経費率というものをきめることにいたしておるのでございます。その際におきましては、お話のように、最近人夫賃などがふえまして、伐採費が非常にかかっております。そういった状況を加味いたしているわけでございますが、先ほど申し上げましたように、この伐採または譲渡による収入金額に対して一定の率できめております。そこで、伐採費などが上がりますが、同時に材木の値段も御承知のとおりずいぶん上がっておりますので、したがって、伐採費などの値上がりをずいぶん考慮いたしてはおるのでありますが、収入の金額のほうも上がっておりますので、比率として見ましては百分の三十でも少し甘いといったような感じになっているのであります。しかし、お話のとおり、そういった点につきましては、その年その年の経済情勢によって動くことでございますので、そういった点を十分考慮して、三十九年分につきましては、いずれ来年の申告時期までに、そういった三十九年中の山林所得の実態というものを把握いたしまして、概算経費の率というものをきめなければならぬ、かように考えており、そういった際におきましては、お話のような点を十分考慮しまして、計算をすべきだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/7
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008・天田勝正
○天田勝正君 そのお話の甘いか辛いか、それは実は試算をやろうと思ったってできないので、八十年ぐらい前のをいま切るという始末なんですから、その当時の帳簿もないし、また少しでも農業簿記をやろうという人が出てきたのは、これは戦後も二十五、六年ごろからでして、ですから、正直、当人に聞いたってもこれはわからない。それで、税の専門家がおよそこれぐらいだろうといえば、反駁する用意が片方にないのですから、結局、はいさようでございますかということになっちまうのですね。そういうことで、じゃ、われわれがここで議論して、どういう案があるかといえば、特別のものも実際ない。そういうわけで、結局これはやや近似値に近いものを出すということになれば、その道の専門家の意見をまとめる、これしかないのですが、この年にきめる際には、そういう人たちを何か審議の場に入れるとか、そういう処置はしておられるのですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/8
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009・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) その点につきましては、全国森林組合連合会というのがございまして、そこにそういった関係の専門の方がおられますので、そういう方々と御相談をいたしましてきめることにいたしておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/9
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010・天田勝正
○天田勝正君 そうしていまのところは、その話し合いの中から、別段——今度の税法改正にあたって、三十九年度の経費見積もりをする場合に、従来どおり三〇%でよろしい、こういうことになっているわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/10
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011・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) 三十九年分の概算経費控除率は、来年の一月ごろにきめることになります。三十九年分について二月十六日から申告するわけでございますが、その前に三十九年の暦年が経過しましたあと、三十九年分は実態はこういう状態であったから三十九年分の経費率についてはこういうふうにしてもらいたいという要望があり、私どものほうは税務署のほうの調べた結果はこういうふうになる、ついてはどういうふうにしますかという御相談をしました上で、率をきめることになるわけでありますので、来年の一月と考えております。毎年そうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/11
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012・天田勝正
○天田勝正君 それならば、まあ先のことですから、はたして局長が言われるように、木材が上がるか上がらないか、その木材のテンポと経費の見方のテンポとが、上がるにせよ下がるにせよ、テンポが合っていればよろしい。合っていないときが問題なんですから、そういう合わないという状態のないように、その際注意をしていただきたい。これは希望をいたしておきます。
次に、寄付金控除のことについて伺いますが、今度の改正で、少なくとも税額控除が一〇%から二〇%になっている。そうして控除額が三〇%になった、これはけっこうなことでございます。そこで、教育、科学の振興をはかる見地から、これは寄付を求められるほうの側からすれば、たいてい税の関係でそういう名目でこられるということになるのですが、いまのところ、政令か何かに規制されておるのであろうと思うのです。その部分が、どれにもこれにも教育または科学の振興をはかる見地から寄付した場合にはこの恩典だということなんですか。そうではないのでしょう。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/12
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013・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) この寄付金控除の対象になりますのは、特定寄付金ということになっておるわけでございますが、その特定寄付金の範囲につきましては、所得税法の施行規則の第六条の三というのにございまして、まず国または地方公共団体に対して行なう寄付金、したがって市町村立の学校とか、あるいは県立の学校、こういうものに対する寄付金あるいは府県、市町村自体に対する寄付金は、これは全部特定寄付金の対象になるわけでございます。それから、その次は、民法三十四条の規定によって設立されました公益法人などに対しまして行なう寄付金で、「当該寄付金が広く一般に募集され、教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に寄与するための支出で緊急を要するものに充てられるものと認めて、大蔵大臣が指定したもの」ということになっておりまして、これは個人、法人が寄付を行ないます場合に、大蔵大臣が指定した寄付に該当するものが特定寄付金になるわけでございます。その目的は「教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進」ということになっております。それから、そのほかは、理化学研究所、日本原子力研究所、農業機械化研究所、日本てん菜振興会、日本科学技術情報センター、私立学校振興会及び日本育英会、これに対する寄付金は特定寄付金になっております。それから、民法三十四条の規定により設立されました法人で、その行なう事業が「科学技術に関する試験研究」、あるいは「科学技術に関する試験研究を行なう者に対する助成金の支給」、「科学技術に関する知識及び思想の総合的な普及啓発」、「学術に関する研究」、「学校教育に対する助成」、それから「学生若しくは生徒に対する学資の支給若しくは貸与又はこれらの者の修学を援助するための寄宿舎の設置運営」、こういった場合に特定寄付金になるわけです。
それから、「私立学校法第三条に規定する学校法人」、これは学校の設置を主たる目的とするものに対する寄付金、これはやはり特定寄付金ということになっているのであります。それで、大蔵大臣が指定しなければ動かないものと、それから指定しないでも動くもの、こういう二通りに分かれております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/13
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014・天田勝正
○天田勝正君 その後段の、大蔵大臣が指定しなければ動かないという部分について、その手続は結局募集者がその申請を行なう、こういう形でしょう、形は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/14
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015・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) さようでございます。募集する方が大蔵大臣の指定をいただきたいということで申し出がございまして、調べまして指定をいたすことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/15
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016・天田勝正
○天田勝正君 そうしますと、その募集金額の範囲内で許可するというふうになると思いますが、その募集金額は、必要とする金額をこえようが何であろうが、これは悪いことばですが、つじつまが合っていれば許可するということになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/16
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017・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) いえ、そうではございませんで、その募金しようとする目的に照らしまして、その必要な範囲の金額、もちろん総額でございますが、総額について指定をいたしまして、その総額の範囲内で各個人または法人から寄付を集めるということになるわけであります。場合によりますと、寄付金を集めている間に建築費などが値上がりしまして、当初予定しておった金額ではまかなえないという事態を生ずる場合もございます。そういった場合におきましては、その後、当初五千万円で予定して募金をしたけれども、五千万円では済まないで六千万円になったから、総額を六千万円に直して募集をいたしたいので、そのように変更してくれという依頼状をいただきました場合には、それに応じて総額の、これは告示をいたしておりますので、告示を直すことにしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/17
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018・天田勝正
○天田勝正君 そこで、いずれにせよ、諸外国においてはこの寄付行為はかなり慣習化している。恩典があるなしにかかわらず慣習化している。そこで、それはしかも恩典を与えるというのですからけっこうなことでありますが、これは税額控除なんですね。税額控除ですから、恩典といえばかなり恩典にもなる。しかし、支出をする側から見れば、やはり百出したものは百で、それの恩典はまあ七十なり八十なりだということになって、そこをどうも規制するのはいかがであろうかという議論がやはり出ると思います。一面から申しますと、税額控除でなくて所得控除のほうが寄付がしやすいという場合もあり得る。いま質問でお聞きしましたから、相手はむちゃくちゃなところへ行くのじゃない、ちゃんと法律で明定してあるところか、さもなければ学術科学等の研究団体に行くのだ。むやみな娯楽機関のようなところ行くのならえらい規制をしなければならぬのでありますけれども、そうでないのでありますから、しからば私は二通りに控除したらどうかという考えを実は持っているのです。税額控除もあってよろしいし、それは少額寄付者は税額控除のほうが確かに有利なんですから、寄付はしやすい。名目が立てば寄付しやすい。しかし、多額の寄付を求める場合には、今度は逆に所得控除のほうがよろしいのではないか。何かそれじゃ当人の寄付というもの自体がずいぶん曲げられるようなことになりはせぬかという、きっと大蔵当局の考えだろうと思いますけれども、しかし、いずれにせよ、政府がいろいろ学校やら何かに補助しなければならぬ分が、寄付でまかなえるのですから、税で吸い上げて政府が出すというよりも、手っとり早く、しかも自由に使える。そういうものを恩典といえば、すべてのものに恩典を与えてもいいくらいに考える。それですから、いかがですかね、局長限りで答えるのは、あるいは政府部内で文句を言われるかもしれないけれども、私はそう思うのですよ。所得控除もやるべき面にはやったってよろしい。そうしたら、一人の人がどんと学校に寄付しちゃって、アメリカあたりではそうでしょう。その人がなくなれば、資産も家族がやっと食べる程度という状況です。いまそれを引き出す立場に日本はあると思う。できるならば、私立というような学校、あるいは特殊な研究所、そういうものは特色のあったほうが私は望ましいと思う。いつでもどっからかにらまれているということでなく、研究もできれば学問もできる。これは説明が長くなって恐縮ですが、そういう意味からしても、所得控除もあり、税額控除もある。税額控除のほうは、かなり貧しい人で本少額の寄付が、いうなれば気楽にできる、こういう効果がある。この点どうでしょうかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/18
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019・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) 御承知だと思いますが、寄付金控除の制度は昭和三十七年度から初めて所得税については設けられたのでありまして、法人税のほうは以前から寄付金の損金算入限度額という制度がずっと前からございますが、所得税につきまして寄付金控除の制度を設けましたのは三十七年からであります。その際に、お話のように、税額控除でいくべきか、所得控除を認めるか、いろいろ問題になったのでございます。お話のように、外国では、国によって違いますが、税額控除の国と所得控除の国と両方ございます。所得控除の場合におきましては、お話のように、所得のきわめて多い人、そういう人から寄付をいただくには所得控除でやったほうが寄付を出しやすい、こういう点は確かにあるのでございます。ただ、たとえて申しますと、日本では課税総所得金額六千万円をこえました所得税の税率は七五%になっております。したがって、そういう方が寄付をする場合に所得控除でやりますと、宙付された額のうち七五%分は実は所得税で納めるべきであったのを所得税を納めないで寄付に回す。したがって、御本人が出した分は二五%、これに御承知のとおり住民税が加わりますので、それを計算に入れますと、国または地方が税金でいただく部分であったのがたとえば八〇%、最高限八〇%になっておりますが、八〇%、その部分を寄付に出された。御本人が負担したのは二〇%だ、こういう計算にもなりまして、いかにも寄付したと。それによってその寄付目的の事業が盛んになることになれば、国が税金でまかなわなくても済む点が出てくるから、それでもいいじゃないかというお話もあろうかと思います。現に外国でそういうことをやっておるのでございますから、そういう考え方も十分あり得ると思うのでございますが、ただ、所得控除の制度にいたしますと、いかにも所得の大きい人にとって大きな恩典になりはしないか。そういう点を考えまして、現在のところ税額控除にいたしておるのであります。
しかも、税額控除に際しまして、二〇%という税率で考えておるわけでありますが、これはいかにも小さ過ぎるという非難がございましたので、今回上積み税率三〇%という計算にいたしたのであります。しかし、それにいたしましても、お話のように、所得の上積み税率の高い人にとっては三〇%というのはたいしたことじゃないのだ。したがって、所得控除の制度をぜひ設けてもらいたいという要望もたくさんございます。
そこで、これらの点につきましては、外国とわが国とではちょっと寄付の事情が多少違うことは御承知のとおりでございまして、外国でございますと、私立学校その他に対しまして相当個人的な寄付が多いわけでございますが、日本では指定寄付金の制度というのは、どちらかといいますと、寄付をお断わりする手段に使われやすい。寄付をもらいたいのなら指定寄付にしてもらっていらっしゃいというふうになりがちであります。そこの点、多少寄付する場合の態様が違っておるのであります。そういった所得控除でいくべきか、税額控除でいくべきか、またお説のように税額控除と所得控除と両方かみ合わせていく場合、その場合にはどこら辺で限度を設けるべきか、今後なお検討すべき点が多いように考えておるのであります。三十七年から設けたばかりでございますので、その後の実態というものを十分調査して、今後検討いたしたい、かように考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/19
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020・天田勝正
○天田勝正君 これ以上根本論で局長と議論をしても、むしろ迷惑だと私も考える。ただ、七五%は所得税で吸い上げられる部分なのが、当人が寄付したことになっちゃう、そういう見方も、いかにもお役所式見方で、実際はそれを寄付するのじゃないのだから、それ以上のものを寄付するのだし、そして外国人と日本人の寄付の考え方が違うとおっしゃれば、いま現在私は違うと思う。しかし、もともと違っておるものじゃない。公共のものについてはずいぶん資産を一銭もなくして寄付した例は、いままでだってたくさんあったのです。ここ最近それがなくなっちゃったのであって、日本だって当初の私立ができるときには、みんな私財を投げうってやった。悪いことばでありますけれども、最近は学校企業、初め学校を始めた人たちは学校企業なんというものを考えたわけじゃない。ものすごい貧乏の中から盛り立ててきた。だけれども、私立学校の例をあげて、歴史をひもといていた日には、時間がかかりますから、やめますけれども、そういうふうに寄付に対する考え方が日本人だって変わってきた。寄付して一文なしになるというくらいの者がどんどん出なければ、文部省ににらまれながら小さくなってやる私立みたいになってしまうのだし、この間、実は私立にももっともっと国費を出すという問題については私も注意して見ております。
明大総長の佐々木さんなどは、もうそれは反対です。反対というのが、金は出すべし、大学の授業については文部省口出すな、そんなこと言ったって日本ではできっこないのだから、むしろこれ以上もらわぬほうがいい。科学技術振興とか、そういう別の名目で出すものはもらうけれども、私学援助という形はやめたがいい。ずいぶん強力なる意見のようであります。ですから、自由なる教育もできるし、かつは自由なる科学の研究もできるということについては、七五%恩典という考え方のほうがおかしい。片方は一〇〇出すのですから、それがもう生涯の自分の仕事、こういう道は開いたほうがいいと思うのです。そういう根本論でありますから、とにかくいまもっと考えるべきことはあるというお答えですから、この問題は局長とはこの程度にしておきます。
そこで、いま交際費の話が出ましたが、私はそれに関連して、個人の所得についてもひとつ別途の控除制度を設けたらどうかということをかねがね考えております。それをお聞きしますが、それは法人におきましては、諸外国の例を見ても、多少の制限はありますけれども、やはり交際費というのが認められている。ところが、日本人の生活を見ると、大体交際費というものは一切世帯単位になっておりますね。これは事実です。その一軒の家で五人の人がそっくり働きに行くという場合でありましても、つとめ先の交際費は別として、それを除く交際の単位は何かというと、やはり世帯です。家です。それじゃ、世帯が十人おって、その中で一人の人が世帯主、それも同じ家単位の交際です。そうすると、一軒五人働いていても、家単位の交際です。非常に税外のそうした支出というものが多いのです。ですから、そこを調節するにはどうしたらいいか。私は、やはり世帯控除という制度を設ける以外に道がないのじゃないか。現に私の身の回りでも四人も働いていて、それぞれ相当高給だという人がいる。しかし、それは一軒単位の交際だ。一軒単位でないのは、つとめ先でどうかということだ。ところが、かなり貧しくて一人しか働いていなくても、家でもあれば、家を持っているというところから、一軒単位の交際だ。ほんとうはその理論からすれば、その倍額にして、五人のところは五倍にできるかというと、そうもいかない。それですから、そこに一律にはいかないにしても、まず第一点は、私はやはり個人にも交際費というものを認めるべきじゃないか。これは一つの考え方ですよ。法人にも認めるのだから、個人にも認めるべきじゃないか。そのやり方は、別に結論づいていないけれども、私はそういう考えは浮かんでくると思うのですがね。そういうことで政府部内で議論されたことはありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/20
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021・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) お話のように、社会生活を営んでまいります上におきまして、交際費の支出が家計の上にかなり大きな負担になるということは、よくわかるのでございます。ただ、いままでの税法の考え方を申し上げますと、まあ所得に対して課税をする場合に、差し引くのは、所得を得るために必要な経費、したがって、事業所得者でございますと、その事業所得を得るためにいろいろな交際費も必要になってくるわけでございますが、そういった事業を経営していく上において必要な交際費は必要経費に認めましょうということでやっております。したがって、そういった事業所得者とか不動産所得者といったような場合に限って交際費の控除を認めておりますが、給与所得者の場合には、まず第一に、必要経費ということを認めませんで、給与所得控除という中でそういった経費の概算的控除を含めて認めております。そのほうで処理をしておるのでございます。したがって、給与所得者の場合におきまして交際費が支出されましても、それは社会生活を営んでいく上においての所得の処分として行なわれるものであるというふうに考えておるわけでございます。
しかし、まあこの寄付金にいたしましても、生命保険料控除にいたしましても、あるいは損害保険料の控除にいたしましても、見ようによってはこれは所得の処分でございます。しかし、その所得の処分でありますが、それが寄付金とか、生命保険料、あるいは損害保険料という形になって行なわれますと、やはりその人の可処分所得の減少を来たし、そうしてまたそういった寄付金なり、生命保険、あるいは損害保険を奨励するという見地、こういったものがからみ合いまして、こういう控除の制度を設けておるわけでございます。したがって、交際費につきましても、所得の処分としてのみ考慮すべきか、あるいはさらにいま申し上げましたようないろいろな控除と並んだ控除として考えるべきか、いろいろ問題のあるところだと思うのでございます。
ただ、いまお話のございましたように、交際費というのは各人ごとのものでなしに世帯単位だということになりますのが実情だと思います。そういう実情からいたしますと、どのような控除にすべきかというのはなかなか問題の存するところだと思うのであります。ことに給与所得者の場合に、そういった交際費の控除ということになりますと、なかなかやっかいな問題も出てくるのではないかという気がいたします。したがいまして、これをいまにわかにどうするかということは申し上げかねるのでございますが、しかし、事業所得者は事業を経常していく上の交際費は損金と認められる、しかし、そうでない人は交際費が必要経費に算入されないという点につきましては、今後なお検討すべき点があろうというふうに考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/21
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022・天田勝正
○天田勝正君 これも、これから先になると議論になりますから、あまり深く言わぬほうがいいかと思いますけれども、つまりこの点こそ日本と外国と違うのですね。外国の、言うなれば、交際はパーティ式でしょうから、参加しようとすまいとということなんです。日本の生活ですとね、私は実際見ているところ、一面からすると、生活保護を受けているのに、隣の家の葬式に要するものは所得の処分の一部なんだから、そうすると、生活保護を受けているのですから、所得の処分といったって、よけいな処分なんかできないという論理になるのです、論理は。ただで行けるかというと、現実は行けない。そこで、じゃお祭りになると、なるほど格差はあります。一面何万円も寄付する人があっても、それらの人は百円でも寄付するということになる。ほんとうは所得の処分ということになると、百円だって生活保護を受けている人は実はつき合えない。それがほんとうなんです。だけれども、それで済ませられるかというと、実は済ませられない。それから、お祭りなんかの場合は、これも諸外国なんかでは宗教に対する考え方が実にきびしいですから、信じてもいない人に寄付しろとは言ってこない。日本では、ちっとも信じても何もいない人のところへも平気で来るし、やるほうもやらなければ、子供を遊びに出してやれない、こうなる。自分は家へ引っ込んでいればいいと言ったって、百円でも出さなければ子供を遊びに出すことができない。しょうがないから、出す、こうなるのですね。これが日本の生活だと思うのですよ。ですから、そういう国民の習慣というものもあるのです。
そこで、やはり私だって煮詰まっているのじゃないのですよ。なかなか問題があるのはよく知っているのです。しかし、ひとつそういう面も今後は検討してみる必要があるのではないか。実際あまり四角ばったことを言うと、生活保護を受けている世帯なんかは、子供を外へも出せないというようなことで、実は冷たくなっちゃうと思う。税法の解釈で。そこで、生活保護を受けている貧しい人たちはいずれ困るじゃないかという議論も出てくる。その世帯交際費控除という概念が出てくれば、やはりこの生活保護の場合だってその分はプラスをしてやるとか、そういうふうに自然になってくると思うのですよ。やはりどんな貧しい生活していても、最低の近所づき合いというか、それは欠かせないのだ。それでなければ、一人前として村も町も歩けないのだ。そうすると、その分だけそういう人たちにはやはり、概念さえ認められればプラスする、こういうふうになるので、私は夢みたいなことを言うとおっしゃるかもしれないが、案外具体的だと思うのですよ。政府でできないとすれば、私は税制調査会でこういうことにひとつ検討をお願いするとか、いかがですね、こういう考え方は。政務次官、一つの考え方だと思うのですがね、私としては。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/22
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023・齋藤邦吉
○政府委員(齋藤邦吉君) ただいまの御意見、私も非常に関心を持って承ったわけでございますが、先ほど主税局長から答弁申し上げましたように、将来十分検討に価するといっては失礼かもしれませんが、十分研究すべき内容だと思う次第でございまして、今後とも十分検討させていただきたいと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/23
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024・天田勝正
○天田勝正君 まあ、きょうはこれぐらいにしておきましょう。
そこで、次は、この給与所得者については、かねて九、六、四の原則なんていわれて、給与所得者は所得の九割までつかまれる、事業者は六割までつかまれる、農業者は四割までつかまれるということもいわれてきたのですが、私はそのとおりとは思わないけれども、しかし、常識的にも一番、悪いことばでいえば、ごまかしのきかないのは、これは給与所得者、何としたって一覧表で提出するのですから、まあせいぜい一割の分といえば出張でもするくらいのところが関の山だと思うのです。そこで、そういうことからいいますと、まあ今度の調査会の答申でも、控除部分——まあ一〇%、二〇%と分かれていますけれども、その区分けをする金額がちょっと十万円も違って出てきている、いまの提出された法律はね。このくらいはせめて調査会の答申どおりということにはできそうなものだと私は思うのですけれども、ここに差が出たというのは何か特別な理由がございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/24
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025・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) お話のとおり、給与所得控除の点につきましては、税制調査会の答申は、給与の収入金額から定額控除を二万円いたしまして、その残りの収入金額五十万円まで二〇%控除し、五十万円超は一〇%控除、そして最高十五万円、こういう答申になっておったわけでございます。ところで、政府のほうで減税案を作成する段階になりまして、いろいろ検討いたしますと、この税制調査会の答申にない配当軽課でありますとか、あるいは証券投資信託の収益分配金の分離五%課税であるとか、そのほかの税制調査会の答申にない租税特別措置をいろいろ実施するということになりまして、減税財源全体との関係からいたしまして、税制調査会の答申のうちから約九十四億ほどの財源をひねり出さないとそういうつじつまが合わないということになりまして、そこで結局税制調査会の答申事項のうち、この給与所得控除につきまして、定額控除後の給与の収入金額、まあ従来どおり四十万円まで二〇%、四十万円超一〇%、ただし最高は従来十二万円でありましたのを十四万円にする、こういうふうな、まあ税制調査会の答申を修正いたすことになったのでございます。
で、そのうち給与の収入金額のうちから定額控除した後の金額五十万円まで二〇%の控除を行なうことによる減収がおおむね六十億円、それから最高限の十五万円というのを十四万円にすることによって約三十五億、合わせまして九十五億——正確には九十四億でございますが、九十四億ほど財源をひねり出したのでございます。ただ、事柄の性質といたしましては、お話のように、給与所得につきましては、他の所得者とのバランスからいきますと、給与所得控除というのは、ほかの所得の場合には必要経費が控除されるのに、給与所得を得るためだって必要経費があるのに、それは一々引くのはたいへんだからというので、給与所得控除という概算控除の形になっている。しかも、それについてはかなり押えられておって、ほかの所得者とのバランスからいうと、もっと給与所得控除を上げてほしいといった要望が強いわけでございます。そういった点からいきますと、このような修正を施すことにつきましては、私どもとしていろいろ苦慮いたしたのでございます。全体の減税、財源の計画上やむを得ずこのようになったのでございます。この点につきましては、今後所得税の改正をする機会がございますれば、優先的に実施いたしたい、大臣もかように申しておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/25
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026・天田勝正
○天田勝正君 まあいまの答弁はまことに正直に言われたので、あとはもう、一体五十二万円になるべきものが四十二万円になったのは何事だというようなことになっちまうので、これも大臣が出席のときに、一体、すりかえて配当軽課措置といったような、二%でも減税すると、こういうのはけしからぬという議論はあとにすることにいたします。
それで、次に事務的なことを私伺うのですがね。過日、なかなかよく資料を出してもらいましたが、ただ、一番最後のところの、私にくれた資料の一番最後のところをひとつおあけ願いまして、ここに今度の税改正に当てはまる耐用年数が書いてあります。で、全体のはまた野々山委員からのが出ると思いますが、私は——これも私の勘ですけれども、まあずっと古くは、耐用年数とは、ある機械がとにかく一〇〇の能率があげ得られなくなる、しかもそういう一〇〇の能率はあげられないけれども、まあまあ八〇%ぐらいあげている限りでは、これは耐用年数のうちに入るという概念だったと思うのですよ。それが多少短縮されてきたけれども、今度はそうじゃないので、使えば幾らでも使えても、技術革新のために古くさいものを使っておったら、もうとても世界の競争に破れ去るのだ、そこで使えるのに更新しなけりゃならぬ、こういう思想をうんと入れていかなきゃならぬのじゃないか。そこで、私はひょっとこれを見て、まあ自分で知っている範囲しか言いませんけれども、たとえばセメントの製造設備、これなんかも、わずか二年しか短縮しないのですけれども、これはその新鋭設備をやると、従来の方式でやる人数を十分の一ぐらいに減らしても、しかも生産は多いという実例があるのです。じゃ、その合理化のために首切りが行なわれるかというと、とんでもない話なんです。それは需要のほうがおそろしく上がっちゃっておるのですから、首切りどころじゃなくて、その十分の一の人を雇うにも困難を来たしておるというのが現状なんですね。ですから、決して耐用年数を短くし、新鋭設備をつくり、そのことはもはや首切りなぞには、解雇なぞにはつながらないという実態から見ますると、私はむしろ耐用年数を短くすることによって、設備更新をこの面から刺激すべきではないか、そういうふうに考えておるわけですが、それから見るというと、どうもセメント製造設備の十五年なぞはまだまだ長過ぎる。で、どうしても税金取り上げはこれは少なくなるので、これ以上はやらぬというならば、この税法と別途に、税の当局もやっぱり加わって、設備更新については税金ではまけるわけにはいかぬから、他の融資等によって刺激をする何かの措置がないと、もう立ちおくれていくのではないかという心配をいたしております。
これは、まず聞くことは、今度の改定について、それぞれについて、これは全部専門家がこれでよろしいという結論からこうなったんですか。そうでなく、まあまあもうともっと改定したいのだけれども、しかし、いまのところの国の財政上からはまあこの程度だということでおきめになったんですか。どっちですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/26
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027・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) 今回の耐用年数の短縮につきましては、まず第一に、この減税財源の関係からいたしまして、機械装置を中心に行なうことといたしまして、全体で機械設備の耐用年数平均一割五分短縮するという目標をきめたのでございます。これはもっぱら減税財源から来ておるわけでございますが、この関係からいたしまして、耐用年数改定につきましては、各業界のこういう問題についての専門家の方にお集まりいただきまして、耐用年数改定委員会というのをつくりまして、そこでいろいろ検討していただいたのでございます。お話のように、各業界からは機械設備の最近の陳腐化の状況、技術の革新の状況等からいたしますと、もっともっと短縮してほしいといった要望もあったわけでございますが、いま申し上げましたように、減税財源の関係で平均一割五分、したがって、まあそういった技術革新とか陳腐化の激しい業種あるいは輸出産業に大きく寄与しておる業種については平均より多くの割合、そうでないような企業につきましては平均あるいは平均以下ということにいたしまして、このような改定案をつくったような次第でございます。技術だけの点から申し上げますと、もっと短縮してほしいという要望はかなりございます。
ただ、これにつきましては、耐用年数だけでなしに、御承知のとおり、租税特別措置法におきましていろいろな特別償却を設けておりますので、あの制度のほうの適用がありますと、耐用年数はともかくといたしまして、期首償却が非常にたくさん行なわれますので、そういたしますと、実際問題としてこの耐用年数まで使わないうちに償却が済んでしまうという事例は相当多いのでございます。したがって、耐用年数だけで見るわけにいきませんので、そういった特別償却と合わせて、そういった陳腐化した資産あるいは技術革新の激しい資産についての償却を考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/27
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028・天田勝正
○天田勝正君 そこでね、過日この資料をそのことのために提出してもらったんですが、しかし、一般的にはあれでしょう、特別償却制度というものは合理化機械、それから新築貸し家、探鉱用機械、こういうことで、国産第一号の新鋭機というものについては過日資料が提出されています。そういうわけですから、やっぱり全部のものにこれ適用されるというのじゃなくて、それぞれの規制のワクの中で適用されるのでしょう。ですから、やっぱりそうなるから、私は技術革新というのがもう一般化さなきゃいかぬという前提に立っているのです、私のほうは。あなた方が特別償却で配慮したということについては、それはそのままなのだが、全部を革新しなければ、やっぱりその技術の面から中小企業の二重構造という問題が今度は出てくる。
資本の面のことは、過日もここでもちょっと言いましたけれども、実は、手形のいかんを問わず、割り当て支払いというような制度が近ごろ慣行化していまして、そのことのためにあべこべに、たいした大きくもない中小法人が大企業に対して二千万、三千万という、もうたな上げで、ずっと順繰りにやっている。そうすると、三十人かそこらのところが三千万ぐらいの焦げつきみたいな形の、大企業に対する投資資本とでもいうのかな、実際考えると、大企業が中小企業にめんどう見るのじゃなくて、資金的には実に中小企業のたな上げ資金のやつがかかってその大企業の運転資金になっているのだ、こういうことにもなるのですね。ですから、その議論をいましようと思うのじゃなくて、資本的にはそうだ。
そうして、次に、今度は技術的なものまでも同じような二重構造の要素がここにますます実は重くなってきましたね。いま私が急に指摘するのじゃなくて、その面で非常に重くなってきているということは政府側も御承知なしです。ですから、その観点からいって、特にの大型機械、金のかかる機械については別のことですが、きのう野々山さんがおっしゃったと同じことですね。そういう特別な新鋭機だなんとかいうのは、それは大企業専門だよ、これは。ですから、技術革新がおくれるための二重構造、これを解消しなければならない。そのことのためには、一般の機械を全体にこう下げるのだ、この耐用年数を下げて、少しでも税法の面から全体が潤う、こういう形をとらなければなるまいというのが私の主張です。しかし、あなたは、もう財源的に一五%ということにしちゃったから、それの範囲なんだというお答えかもしれない。しかし、私の指摘も、どう考えても考慮に値するでしょう。いかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/28
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029・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) お話のとおり、まあ日本の経済全体を考えて、設備の更新をもっと早くやる、これが必要なことはお話のとおりだと思います。したがって、まあ私どもといたしましても、耐用年数を三十六年に改定して、すぐにまた今回改定するというようなこともいたしておるわけでございますが。
それから、いまお話しの、中小企業の場合、いわゆる二重構造をなくするという見地からいたしますと、中小企業の設備の更新をはからなければならないということは、もうお話のとおりだと思うのでございます。そういう点からいたしまして、私どものほうとしましても、租税特別措置法で中小企業用の合理化機械、これについての特別償却の制度を設けておることは御承知のとおりでございます。これは、まあ大企業の場合ほど精度、性能の高いものでなくても、中小企業としてはやはり現在使っている機械よりもより能率のいい、人手のあまりかからない、そういう機械を取り入れることが結局中小企業の近代化を促進する、二重構造を解消していく道と考えられますので、そういう中小企業の合理化機械につきまして、相当広範に特別償却の対象に取り入れておるのでございます。そして通産省はじめ各省のそういった要望をよくお聞きするようにいたしておる次第でございますが、今後もこういった点を広めていきたいというふうに考えますと同時に、この中小企業のそういった機械の取得につきましては、税法だけでなしに、金融面と両方相まちませんと、うまくいきません。そういった金融面の措置もこれに伴って行なわれるように期待いたしておる次第でございます。
それから、まあ実際の場合におきましては、これは天田先生御承知のとおり、企業は、耐用年数が定められておりますけれども、実際にはずいぶん長い間機械それ自体は使っております。これは、しかし、機械が物理的に使えるから、耐用年数はそれでいいというものじゃございませんで、最近はそういう点を考慮して、実際物理的に使える年数よりも、もっともっと、技術革新あるいは陳腐化の程度を考慮した短い年数にしてきておるのでございます。今度改正いたしますと、まあ外国との比較におきましては、大体西ドイツ、ものによっては西ドイツよりもわが国のほうが短い、アメリカ、イギリスより大部分わが国のほうが短い、こういうような結果になります。国際的な関係からいたしますと、相当わが国のほうは短縮いたしておるということは言えるかと思うのでございます。
ただ、お話のように、わが国の機械設備が急速に更新しなきゃならない事態になっておるという点からいたしますと、これでもまだ十分じゃないという御意見もあろうかと思います。ただ、先ほど申しましたように、今回は減税財源の関係から一割五分ということにいたしましたが、十分考慮し得なかった面もあろうと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/29
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030・天田勝正
○天田勝正君 まあ局長のところにおいては、内閣の方針がきまって、一五%と言われれば、まあそれに沿ってやらざるを得ないんですから、答弁としてはまあけっこうです。ただ、私これを議論する根本は、たいていのことが外国と比べては議論されがちですけれども、私はこの問題については、技術革新については、諸外国と比べてこっちが幾らかいいんだという現時点に立っての議論はもはやしたくないんで、それは英米だってもちろん資源があるんですよ、日本よりね。英国がずいぶんないなんて言ったって、石炭なんか無限にあるんだし、まだ植民地は、みんな離したと言ってるけれども、経済的支配というものはずっと続いて、非常に安く材料が入るんだ。西ドイツが小さくなったと言ったって、これまたしかり。その場合日本は、およそ近ごろは、水は豊富だというが、水さえ足りなくなっちゃった始末だから、こっちが向こうに劣らないというんじゃ、全然これからはだめなんであって、すべてがすぐれているという態勢にしなければ、原料として買ってきて、それを加工して売ると、こういうことなんですから、それは同じだったら、競争なんかもいつの日かできなくなると思う。それをしなければ、今度労働賃金にしわが寄る、どっかに響くと思うのですよね。ですから、ステップから、これは技術の面じゃ国全体が諸外国よりコンスタントにすぐれてるんだ、こういう議論に、私は政府も立ってもらいたいと思います。
それで、次の質問に移りますが、この低開発地域に対する投資の問題ですが、これはすでに政令案が用意されていますか。むろん政令は出されるんでしょう。それちょっと、いまお答えできるならば、項目だけでも言っていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/30
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031・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) お話のように、今度新開発地域投資損失準備金という制度を設けることにいたしまして、その、いまのは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/31
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032・天田勝正
○天田勝正君 政令案の主たるところですね。どういうワクというかね。どういうものに対してこれを適用するんだという、政令にゆだねる部分ができるんだろうと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/32
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033・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) それでは、法律と政令とあわせまして申し上げたいと思いますが、今回海外投資損失準備金を設けますのは、一つは、そういった低開発地域と申しますか、法律では新開発地域と申しておりますが、新開発地域に本店または主たる事務所を設けました、そこで活動する、いわゆる新開発地域法人というその法人の株を日本の法人が持った場合、その株につきまして、新開発地域でございますので、政変等もありましょうし、あるいはまた収益が確実にあがるということも必ずしも十分保障されないでありましょうから、その取得したときにおきまして、取得価額の半額まで準備金勘定に繰り入れることができる。そうして五年たった後、その準備金勘定を少しずつくずして、もとの取得価額にまで持っていくというような制度を考えたのでございます。そういった新開発地域の法人と、それからいま一つは、これは具体的な例をあげたほうがわかりやすいかと思いますが、たとえば、これはあまりいい例にはならぬかもしれませんが、ウジミナスに対して投資をいたしておりますが、あれには日本ウジミナスという株式会社がございます。その会社がその投資を行なっているわけです。日本ウジミナスの株は、製鉄会社、金融機関等が持っているわけでありますが、そういうふうに新開発地域に対する投資をもっぱら行なうことを目的とした法人、その法人の場合におきましては、そういう法人の株、これを日本の法人が持った場合、いま申し上げましたと同じように、準備金勘定を設けることができる、そういう二通りの制度になるわけでございます。
そこで、政令なんかできめますのは、新開発地域とはしからばどういうところかと。これは、御説のとおり、国際的に低開発地域の開発ということからいたしまして、大かたの考え方があるわけであります。それを取り入れまして、政令で開発途上にある海外の地域としてきめておりますのは、ヨーロッパの中では、アイスランド、ギリシア、スペイン、トルコ及びポルトガル、これ以外の地域は、すでに開発されたものとしまして、新開発地域に含めないのでございます。それから、ヨーロッパ以外の地域におきましては、日本と、アメリカと、アメリカ合衆国の属地と、それからカナダと、ソビエト連邦、それから南アフリカ共和国、それを除いた、それ以外の地域はすべて新開発地域に考えるということにいたしておるのでございます。
それから、あとは、法人が合併した場合にどうなるかという、こまかい技術的な手続を考えておりますが、これはきわめて技術的なことでございますから、省略さしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/33
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034・天田勝正
○天田勝正君 地域はわかりました。
そこで、実際には、いまウジミナスの例を引かれたんですが、日本ウジミナスのような会社があれば、これはきわめて簡単です。ところが、今後の新開発地域は、現地法人という形をとった場合、それに対応する日本の投資会社がない、そういうのの指定はこれは閣議できめるということになりますか、いかがですか。どこできめるのですか。地域は指定されておるのですけれども、現地法人ならどこでもというわけじゃないでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/34
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035・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) いま申し上げました新開発地域におきましてもっぱら事業を営むことを目的とする法人で、その事業活動をそういった目的に沿って行なっておるということ。それから、現地法人としては投資を行なうことを目的としてはいない。日本ウジミナスのような場合には投資を目的としておるということになるわけでございますが、現地法人の場合にはそれは投資を目的としない法人ということにいたしまして、またそういう法人を要件としてきめておりますが、それがこういう政令できめた要件に該当する法人でございますれば、別に閣議の指定等を要しないで、この新開発地域法人ということになりまして、その適用を受けるということになっておるわけでございます。ただ、そういう法人がはたしてそれに該当するかどうかということにつきましては、やはりそういった事実がはっきりしないといけませんので、税務官庁のほうにそういう事実を明確にしていただくことは必要であろうと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/35
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036・天田勝正
○天田勝正君 まあこの準備金はいずれ、据え置いて、そしてまた繰り入れというか、繰り戻しかするのですが、言うなれば、一面から見れば、無事故でありさえすれば、税金をしばらく納めるのを延ばしておいたといっても差しつかえないのですから、私はそのこと自体に問題があるのではないが、私が心配するのは、いまおっしゃった低開発地域でこれこれの条件で当てはまれば、別に政府がきめなくてもいいのだという答弁を聞いたのですが、まことに危険のような気がします。その現地法人がしっかりしたものかどうかというのは、やはり手足のある政府ででも調べるほかに手はないのではないか。アメリカみたいな大企業が一ぱいにあるならば、企業独自で向こうに出ていって調べて、そうしてやる。しかし、それでさえもウルグアイやアルゼンチンでは失敗していますね、アメリカでも。そのくらいなんですよ。大資本をもって調査をして行っても、なおかつ失敗している。これは条件に当てはまれば閣議できめなくても、所管大臣がきめなくてもいいのだ。どうも危険のような気がしますね。どうなんですか。やはり指定というのは、現地に在外公館等もあることですから、そこに専門家をやるというような処置をすることによって、政府が責任を持って調べたそのものに対してはいわば準備金で税金の繰り延べを認めるのだ、そのほうがよさそうに思うのですが、そういうことにはならないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/36
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037・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) お話の御心配、ごもっともと存ずるのでございますが、やはり結局わが国がそういう現地法人に投資することになるわけでございますので、したがいまして、為替局——今度四月から名前が変わることになりますが、そこに投資課というのがございまして、そこで全部めんどうを見ておりますので、そこでわかるような仕組みになっているのでございます。したがいまして、おそらく閣議できめるということなくしても、こういう要件に該当するものはどれであるかということは、そこの投資課のほうで全部資料があることになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/37
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038・天田勝正
○天田勝正君 これもまた議論になるけれども、なるほど手足としては、為替局ですか、その中に一つの課か係を設ければといったところで、一般的な資料が集まるという程度じゃないですか。新しい企業を現地でやるんですからね。その場合には、やはり何もかも政府でどうせい、規制せいという議論を私はしているんじゃないんですが、いわば今度の準備金制度をやれば、無事故ならそれはそれでいいですがね。ところが、事故が起きた場合、それは取るべき税金が取れない。そのことは結局他の国民に負担がかかる、こう解すべきだと思うんですよ。だから、やはり国損を防ぐという面で、むしろ企業に恩典を与えるという面も二面あるけれども、一面ではそういうことは必要であろうが、国損は招かない、他の納税者に迷惑がかからない、こういう措置のためにも、私がいま指摘したように、政府できめる、そのきめるということについては、政府が十分調査については責任を負う。しかし、その調査をしても、なおかつ損害のかかってくることもあり得るんですから。しかし、事前にそういうこまかい措置もしておく必要があると思いますがね。どうもこれは行ったりきたりですから、答弁は……。どうなんだろう。おかしい気がするな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/38
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039・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) 御心配の点はまことにごもっともでございまして、ただこれには段階があると思うのでございます。一つは、日本の企業がそういう新開発地域で投資を行なう、その投資を行なうこと事態について十分調査してやりませんと、アメリカが各地で失敗いたしておりますように、基礎調査が十分でなかったために失敗することがある。これは日本でもいろいろ外国に投資して、従来の実績から見ますと、成功と言えないようなものもあるわけでございます。そういった投資自体について十分調査を行なった上で、確実と申しますかというような投資にすべきだという点。しかし、この点につきましては、何しろこの新開発地域に投資することでございますので、完全に十分採算が合うということは、当初からなかなか保証できない面があろうと思うのでございます。やはり先進工業国としては、ある程度損を来たすような場合がございましょうとも、そういった新開発地域の開発ということを通じて、世界全体がよくなるためのある程度の犠牲は忍ばねばならないという面があろうかと思います。
それから、そういうふうな投資を行なうこと自体についていろいろ十分調査して、正確な調査に基づいた投資を行なうということが一点。ほかに、さらにそれについて租税特別措置の適用を認める場合に、もう一つ、ほんとうにその事業というものがうまくいくのでないと、一たん課税の軽減をしておいて、それがそれなりになりっぱなしで、その軽減によることのために税収が減るほかの人がその迷惑をこうむるという点があるわけでございます。その点の心配もお話のとおりでございますが、その点につきましては、やはり投資をするときに、為替局の投資課で全部、どういう目的のためにどういう投資をする、日本からはどういう法人がどれだけ出資をするということが全部きちんときまっておりますので、その後の投資をしたのがうまく運営されているかどうかということまでは、これはなかなか現地の大使館なり、公使館なり、あるいは領事館でないとわかりかねると思いますけれども、しかし、投資課へ報告されることになっておりますので、その報告を基礎にして、そういった点の心配は相当程度解消できるのではないかというふうに考えているのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/39
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040・鈴木市藏
○鈴木市藏君 関連して、この間の輸銀の改正案をやったときに、条文はたしか十八条の九項の新設の問題があったと思う。それは簡単にいえば、つまり海外投資の場合に、それが焦げつきになった、不良債権になったという場合には、それは国の借款として切りかえるのだ、いろいろな条件はありますけれども、一口でいえばそういうことなんです。ですから、そのことと、輸銀法の十八条の九項の改正と、今回のこの海外投資損失準備金ですか、これとの関係は一体どういうことになっておるのか。まして、それは具体的にあなたのほうから出された、つまりブラジルのウジミナス、あれは輸銀のときも非常に出ている問題です。だから、それとの間には何らかの意味で政策的な一つの考え方があるのではないか。その点、どうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/40
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041・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) この海外投資損失準備金のほうと輸銀法の十八条のほうとは事柄が違うのでございまして、輸銀法のほうは融資のほうでございます。ところが、ここで海外投資損失準備金といたしておりますのは、海外の新開発地域の法人の株式そのものを日本の法人が持つ、それから、日本ウジミナスのように、海外投資法人の株式そのものを日本の法人が持つ、こういう場合でございますので、輸銀の融資とはちょっと内容が違いますので、その点は私ども違うと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/41
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042・鈴木市藏
○鈴木市藏君 私は関連ですから、取ってしまってお話しするのは申しわけないのですけれども、そうではないですよ。あなたは考え違いをしておりますよ。それはわからないならわからないと、はっきり言ったほうがいいですよ。そのときにやっぱり、輸銀が融資するのではなく、輸銀も一枚加わって、日本でもって融資の特別会社をつくって、たとえばそのときに出た問題は、いま、天田さんの質問にもあったとおりに、ブラジルのウジミナス、いまあなたがはしなくも、どういうものを想定しているかというと、ウジミナスのことを想定したでしょう。だから、同一会社に対してああいうふうな場合になったときにどうするか。金は取ればしないのだという場合には、とにかくいろいろな条件がありますよ。その条件はここでは抜きますけれども、最終的には国の借款にしよう。そういう、つまり十八条の九項が今度輸銀法の改正で出てきたわけです。そのことと、いま問題になっていることとの間には関係がある、一口にいうならば。いわゆる新興諸国ですよ。低開発国ということを言っておりますけれども、ことばは私は正確でないと思いますけれども、この新興諸国に対する、つまりOECD加盟に伴うこの開発に対して、日本政府が当然負わなければならないであろうと予想されるその投資について、何らかの意味で保証を講ずる、そういうことだと思うのですよ。そのことと輸銀法の改正で出てきた問題とは、政策的には一致しているのだ。それはあなたのほうでどういう話がされたか、あるいはされないか知らないが、問題の本質はまさに一致しているのだ。だから、それとの関係についてはどういうふうに理解しておられますか。私、さっき会議が始まる前にちょっと、為替局長は来ているかということを聞いたのは、このことなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/42
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043・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) その点につきましては、よく私は輸銀法の改正の内容と十分打ち合わせたわけではございませんので、為替局長のほうからお答えいただきたいと思いますが、ただ、日本ウジミナスの問題につきましては、海外投資損失準備金と申しますのは、本年四月一月以降そういった海外投資法人を設立した場合のことでございますので、あるいは増資を行なった場合のことでございますので、日本ウジミナスの現在の株には適用がないのでございます。日本ウジミナスが今後増資を行ないました場合におきましては、その増資株については適用があるのじゃないか。従来のものについては適用がございません。その点は違っております。
ただ、お話のように、輸銀法を改正したことによって、新開発地域に対する日本の責任と申しますか、そういったものが今後加わってこようと思いますが、それと、この海外投資損失準備金とは、もちろん関係があると思います。ただ、この海外投資損失準備金のほうは、これを設けることによってそういう新開発地域への日本からの投資が行なわれやすくなれば、日本の品物も買ってもらえるであろう、そういうことを期待しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/43
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044・天田勝正
○天田勝正君 それは鈴木さんのお説のように、ちょっとおかしいのだ。おかしいが、根本がどうも私と局長との質疑応答がすれ違っている。そのすれ違っている根本は、私の考えは次のようなんです。結局、この税法だけの狭い部分だけ見れば、確かに無事故でありさえすれば、あとで税金が入ってくるというかっこうになるので、その意味では税金の免除をしたとか減税したとかいうことよりも、繰り延べてやった、徴収猶予してやった、こういうことになってしまうのです、狭い部分においては。ところが、私どもの考え方は、結果においてこれが損失を招いたときに、国内取引、資本取引でも物の取引でもなんでも、国内取引の場合は、特定の投資した法人が損したというのは、国内のうちにだれかが得したものがあるというだけなんです。だけといえばおかしいけれども、いえばそうなんです。それが経営がずさんだからそんな始末になってしまったという理屈が言える。この準備金制度というものは、御説明のとおりなんだ。海外へ投資した場合なんだから、海外へ投資した場合に、海外で取れない、そのものが回収できないということになったときは、この間輸銀のときに議論したように、日本の部分だけは取れるといってみたところで、諸外国、債権国が幾つもあって、そこから申し出たりなんかされて、日本も融資しているんだから、自分らも待ってやるから、まあ待ってやらぬか、こうなったときに、国際情義上も拒否できな、そういうときには、しかたがないから国の借款にする、こういう話であったのです。国の借款にするから、民間企業に、おまえらが損だからかってにしておけというわけにはいかない。結果においては、そういう場合は国がしょって、民間企業の焦げつきというか、損とはきまらないが、焦げつく予定であるから、とにかく不良債権というものを肩がわりする、してやる、肩がわりしてやったって、ずっと明治時代とわけが違いますから、これをまた、約束をちょっと向こうは守れない。昔なら、約束を守れないから、ある特定の場所を九十九年ぐらいおれのほうに貸せというようなことができたけれども、そんなことはもはやできる国際情勢ではないでしょう。だから、引きかえができないこともあり得るのですね。だから、そのことをまずあなたに答弁に先立って頭に入れておいてもらわなければならぬことと、国内取引なら、だれかが損すれば、だれかがもうかったということも言えるけれども、海外投資の場合ですから、それは結局において不測の事態というものは国損になるのだ。私は前提がそうなんです。国損になるのだ。どうやったってそうならざるを得ない。そうした場合に、それは国際的な友好の関係上、先進国がそれは損があってもこれを助ける、何らかの面で助ける。それも私はわかるのです。しかし、損をせざるように最大のことをやっておいて、なおかつ、できた場合には、最後的に国の借款という形で、これがいついつまでも取れないのだ。ただ借款のままで、西原借款のようになってしまうというようなことになってしまうけれども、前提としては、国損になるということだから、やはりできるだけ調査は事前に十分やる、こういうのでないと。どうもこういうことになりはしないか、ここなんですよ。
ですから、私は、いま政令ができていないのですから、政令を予定しているだけなんです。だから、その政令においては必ず政府によって調査をするとかなんとかきめておいて、不測の事態というものを最小限に食いとめるという措置をしなければならないんじゃないか。現実にこの税金と違って不測の事態がウジミナスだって何だって生じているのですから、ほんとうからいえば、投資した会社だってそうでしょう、ウジミナスに投資して何年間かにそれが返ってくるなり、あるいは投資しっぱなしでも利益があがるつもりだったのでしょう。それがすっかり狂ってきた。いま現在でも繰り延べの申し出がある。いつまでも民間は繰り延べのままでやっておけば、それはできない。できないから国の借款、こういう形になる。かなりあれは調べたけれども、それにもかかわらず、そうなんだ。今度は何だか調べそうもないので、企業だけが行って調べる。それは危険だというのですよ、私は。企業で調べ方をやっているのは大体アメリカですけれども、その組織をもってしてもウルグァイやアルゼンチンでは、金のある国ですから泣き言をいわないだけです、ほとんど失敗、私の知る限りでは計画どおりやったのは一つもない。こういうことですよ、局長。だから、それはどうかな、もう少し政令で考えたほうがいいということじゃないですか。それはそうしろということの質問じゃなくて、誘導尋問みたいで悪いけれども、おかしいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/44
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045・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) 御心配の点は私もよくわかるのでございます。ただ、私どもといたしましては、為替局の投資課のほうにおきまして、そういう海外投資を行ないます場合に、十分調べた上で認めることにいたしておりますので、それでいいのではないかという感じを持っておったのでございますが、お話のように、輸銀法のほうの改正が行なわれて、それが将来国損になるということでございますと、なお十分慎重を期さなければならないと思いますが、そういった点、政令のほうでなお検討さしていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/45
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046・天田勝正
○天田勝正君 まあこのことについては、むしろあなたに誘導するのはかえって迷惑かもしれない。この点は私は大臣ともはっきり実は約束しておきたいと思っております。
それで、実はこれは答弁が出たあとで言うことで、実際引例はあまりしたくないことですが、私はその方面の海外調査というのは日本はまことにうといということになるのです。本来からすれば、在外公館というものが常時そういう調査をしていなければならないし、実際西独の機械がいいの何のといっても、私からいえば、日本だってそれに匹敵するものは幾らもある。中近東といえども、ほとんど英国も圧倒されて、ドイツの機械に席巻された。私が行ったとき、そのときの大使は山田久就氏ですよ、非常にくやしがっておりました。ところが、そのやり方というのは、国益になることだから、商社が利益になったって何だってかまうことじゃないのだ。言うなれば、そういう態度で向こうの通産省に大使なんかは日参しておるのです。それに対してわが国のほうは、山田さんはくやしがるだけで……。これはいいほうの例を述べたのですけれども、大かたのところでは昔のとおり、おれは元首の代表者なんだと、一言でいえばお高くとまって、一向そういう俗っぽいことに手をつけない。だから、そのときの一行は、たとえば伊藤卯四郎氏や成田知巳氏が一緒でした。どこに行ってみたって、その国の予算をちょっと聞いてすぐ答えられた在外公館にお目にかかったことがない。これは私はある研究会で発表して、そいつはえらいことだと、みんな一致したのです。新聞の論説委員もその実態にたまげた。いま帰ってきて、ばかに地位的に偉い人になった人が一人いるから、名前はあげられないのですけれども、ちょうど成田君とある北欧の国でその国の予算を聞いたところが、何と驚ろくなかれ、十倍も違う。一割違うということだって在外公館として困ると思っておるのに、十倍も違う。帰ってきてそれを質問したところが、もっとも私の調べたのは三年前のことですから、冗談じゃない、三年前のことを言われたって処置がないという事態もあります。いまその記録は実は別のところにあります。ですから、そのくらい日本はうといのですよ。それでなおさら、いま先進国づらして仲間入りして、後進国のめんどうを見ようったって、とてもこっちの材料がないという——記録をとるところで言うのはいやだけれども、実際そうなんです。それを何だか為替局に事前に資料が集まってきておるということじゃ、とても安心したものじゃないということです。
それで、次に進みますが、銀行局の人、来ていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/46
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047・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 来ておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/47
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048・天田勝正
○天田勝正君 それじゃ、このことは銀行局の人に聞いたほうがいいと思うのですが、今度、証券取引責任準備金というものをつくりましたね、新しく。それで、これの累積限度額というのがきまっておるのですが、これは過去全部調べてみて、これだけの限度額で——両方ありますね、繰り入れと累積と。これで十分責任が負えるのだという結論がどこからか出たわけですかね。どこからというのは銀行局だと思うのですが、それはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/48
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049・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) この証券取引責任準備金の制度につきましては、理財局の証券部のほうと、それから現実に、この証券取引責任準備金は証券業者が準備金を設けるわけでございますが、その準備金は証券業協会へ積み立てることになっておるわけでございます。したがって、そういった証券業協会のほうとも連絡をいたしまして、この割合を考えた上で、意見が一致したところでこういうふうに御提案申し上げておるわけでございますが、この毎期の繰り入れ限度額につきましては、その期の株式売買高一株につきまして三銭を乗じたもの、これを毎期の繰り入れ額にいたしております。それから、累積の繰り入れ限度額につきましては、その三年間のうち一番取引の多い——まあ証券業は、御承知と思いますが、一年一事業年度で九月決算ということになっております。その三年間のうちで一番株式売買高の取引の多い年、この年の売買取引高に十銭を乗じた額ということになっておるわけですが、いままでのいろいろな証券事故の実態というものを調査いたしてみますと、これだけの準備金があれば十分ではないかという結論に到達いたしまして、このようになっておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/49
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050・天田勝正
○天田勝正君 一々質問の趣旨を言っていたんじゃらちがあきませんが、要するに、われわれと縁もない証券のことを言うのは、最近大衆投資家というのもいるわけですね、零細な。そしていまはなくなりましたが、銀行なんかが左前になったときは、いまみたいな規制がなくても、常識的に少額預金者は全額を払い戻せるときは払い戻す、多額のほうの人は何分の一とかいうような措置、これは当時単なる大蔵省の行政指導だけでして何の規定もないのです。規定はなくても、何かそういう面ではやはり一つの道義があった。それから、地方の銀行なんか、昭和の初めのパニックでほとんどつぶれましたけれども、それを主宰しておる人たちは、株式会社であったけれども、私の知る限りでは、みな私財を投げ出しているのですね。これも株式会社なんですから、個人と違って責任を負わないとすれば法的には負わなくて済んでいる。負わなくて済んでいるけれども、まだそういう明治的な道義というものですか、いい面もそれは残っておった。埼玉なんかでもたしか五つくらいはつぶれたのですが、その人はもうほんとうに家屋敷もなくなっている。一面気の毒で、今度は取れない。しかし、そういう場合も少額の預金者の立場は実際守られておった。ところが、このごろはそういう道義もないところへ持ってきて、大衆投資家というものが盛んに出て、それでそれは間接のもありますよ、信託投資なんていうのがあります。しかし、もとのように株に投資するというのは、まるでわれわれとかけ離れたお金持ちだという時代でないことは間違いない。そういうことは税措置のほかにこれもやはり何か規定しなきゃならぬとすれば、少額投資家については優先的に守るとか、そういうものがあれば完全なんだけれども、なかなかそれもややこしいだろということになると、結局全体がいざとなれば保証できる額にして置かないと困るんではなかろうかというのが私の心配なんです。それは管財局ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/50
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051・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) 理財局の証券部です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/51
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052・天田勝正
○天田勝正君 それでは、なおひとつ、理財局の人がもし来たときには、その点を聞いてみたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/52
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053・鈴木市藏
○鈴木市藏君 いささか原則的な問題も入れて、大綱で五つ六つ質問したいと思っているのです。
一つの問題は、今度のこの租税三法の中でも一番重点としなきゃならない所得税の問題についてですけれども、つまり課税最低限ですね、課税最低限の問題については、実はこれは昨年の本委員会においてもずいぶん問題にいたしまして、当時の村山主税局長は、もしこの課税最低限において現在主税局がとっている方式、つまりマーケット・バスケット方式以外に適当なものがあるとするならば、これを変えることはやぶさかではないという言明もいたしております。それから、税調のほうも、マーケット・バスケット方式でやってみても、どうしても特に勤労者の場合には課税最低限が最低生計費に食い込むというような指摘もしておるようでありますが、一体、この課税最低限というものについて、現在やられている方式以外に適当なものがあればというその適当なものについて、主税局なり大蔵省なりは検討したと思いますけれども、一年たった今日、どのような経過的な措置を検討を行なったか、その辺のところを明らかにしてもらいたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/53
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054・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) 従来、課税最低限を検討する場合におきましては、お話のように、私どもはマーケット・バスケット方式によりまする食料費を基礎といたしまして、そこから生計費を算出して、その生計費を基準生計費と見ているわけでございますが、その基準生計費と課税最低限とを見比べて、課税最低限をどのように引き上げるべきかという検討をいたしておるのでございますが、お説のように、マーケット・バスケット方式によって食料費を出して、そこから生計費をはじくだけでなしに、それ以外の課税最低限を導き出す方式はないかという点につきましては、実は昨年、税制調査会に基礎問題小委員会というのを設けまして、そこで検討していただくことになっておりました。具体的にこういう方式でやるというような方法論は、まだ固まっておらないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/54
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055・鈴木市藏
○鈴木市藏君 マーケット・バスケット方式というのは、もはやこれは基準生計費を導き出すものとしては不適当なんだ、不適当になってきたのだということだけは認めますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/55
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056・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) そう簡単にはいかないのでございまして……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/56
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057・鈴木市藏
○鈴木市藏君 それだったら、根拠を示してくださいよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/57
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058・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) 問題は、マーケット・バスケット方式によって食料費を計算し、そこから生計費を出すわけでございますが、問題は、その食料費として見ておる、まあこれは国立栄養食研究所に頼んでつくっていただきました献立表、その献立表の内容が、はたして今日の生計費として見る場合に適当であるかどうかという問題が一つあろうかと思います。それから、したがって、その点につきましては、実は最近の食生活の向上ということを考えまして、今回におきましては、三十七年の献立表より三十八年の献立表はかなりいいものにいたしたのでございます。そういうふうに献立の内容を検討していくのが一つと、それからいま一つは、食料費を算出いたしました上で生計費を算出する場合に、エンゲル係数を使っておるわけでございますが、そのエンゲル係数がどうかという問題、この二つの点において、なお今後検討すべき点があろうと思いますので、やはりマーケット・バスケット方式による食料費を基礎として算定した生計費というのも、課税最低限を考える場合に一つの資料には十分なり得ると思うのでございます。
ただ、それだけから課税最低限をきめるべきかどうかということになりますと、なおほかの資料も十分用意すべき必要があろうと思いますので、そういう方法について検討をしてもらいたいということで、学者の方にいまお願いをいたしておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/58
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059・鈴木市藏
○鈴木市藏君 このマーケット・バスケット方式というのは、どこで採用されて、どのような経過をたどって日本に入ってきたのか、その経過について御存じですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/59
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060・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) 私は、そのほうはあまり詳しく存じておりませんが、経済安定本部で、あそこで物価局がありました当時、このマーケット・バスケット方式によって計算する方法を取り入れまして、生活水準の問題をいろいろ検討したことがあると思うのです。それがわが国で戦後そういったマーケット・バスケット方式を検討したときじゃないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/60
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061・鈴木市藏
○鈴木市藏君 このマーケット・バスケット方式は、これは出所はイギリスですね。そして結局イギリスは、御承知のようにほとんど輸出にたよる国ですから、したがって、国内の食糧の事情をあらかじめ調査しておかないと、つまり把握しておかないと、国民生活にかくかくの支障を来たすというようなこともあり、かたがた当時のイギリスが非常な外貨危機に陥ったために、このマーケット・バスケット方式で国民生活の最低限をひとつ維持しようという形で出たものですね。これがあるときには労働者の賃金を決定する一つの目安となる、そういう形でこれが日本に入ってきたのは昭和二十五年です。昭和二十五年で、そして初めていまのつまり公務員の賃金の基礎をなしている職階制賃金の中にマーケット・バスケット方式が人事院によって組み込まれたことは御承知だろうと思うのです。そういう経過をたどってきたのです。初めは日本に入ってきたときには、日本の賃金をきめる一つの目安としてマーケット・バスケット方式を取り入れるということだったのです。
ところが、マーケット・バスケット方式は日本では賃金をきめる材料にならないといって、いま労働組合全部こんなもの使っておりませんよ。なぜそうなったかといえば、結局日本の低賃金、低生活費を基礎として、カロリーが幾ら、何々を買えば幾らということをきめるのですから、この低賃金制を打破しようという労働者がみずからマーケット・バスケット方式を基礎にするということは矛盾もはなはだしいということで、なくなってしまった。だから、このマーケット・バスケット方式というのは本来低賃金を基礎にしてつくられていく、そういうものとしてだけしか存在価値はないのです。それを、いまあなた方のほうでこれを取り入れているということは、日本のやっぱり低生活水準をそのまま取り入れていっているということになって、非常にこれはダウンしてくるのがあたりまえのことです、いまの事情に合わないのは。
それと、もう一つ根本的な問題がある。このマーケット・バスケット方式というのは、これが結局マーケットへ行ってかくかくの、つまりカロリーに見合う品物を買ってくるわけでしょう。だれが買ってくるのです。持ってきやしません。買ってくるのです。しかも、安いところをさがさなきゃならない。だれがさがすのです。家庭の主婦じゃないですか。主婦のさがすという労働力は一体見積もっていますか、あなたたち。これはお互いに苦しい生活してみると、よくわかるのです。一日かけずり回って安い物をさがしてこなければならない。その主婦の家庭の労働力というものを金額に換算してごらんなさい。換算してないからこそ、このマーケット・バスケット方式というものは成り立っているわけです。こんなばかな話ないです。
だから、そういう点からいっても、このマーケット・バスケット方式というのは何人をも首肯せしめることのできないような時代おくれのものになってきている。これをあなたたちが依然として課税最低限の一つの基礎に使っているという点は驚き入ったものです。私も去年こんなこと言って、だいぶ当時の主税局長ともやり合ったのですけれども、これ根拠ないです。
だから、それでは聞きますけれども、ここから出てくる、一体いまあなたたちが基準にしているカロリーは幾らです。また、そのカロリーをマーケット・バスケット方式でとるための金額は幾らですか。実情に合いますか。言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/61
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062・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) お話のように、マーケット・バスケット方式によりまして食料費を出し、そこから生計費を出すということは、まあ賃金決定のために一時使われたことがございますが、その後使われていないことはお話のとおりでございます。ただ、私どもが課税最低限を検討する場合に、一人世帯の場合、あるいは夫婦世帯の場合、あるいは夫婦子一人、子二人、子三人と、こういったような世帯の場合に、基礎控除なり、配遇者控除なり、扶養控除というものをどういうふうにあんばいすべきかということになりますと、やはりそういった世帯の生計費というものの実態というものを基礎にすべきじゃないかと思うのでございます。もちろん、その場合にマーケット・バスケット方式でやるか、あるいは勤労者世帯の調査のカードがございますから、それを基礎にすることも一つの考えでございましょう。そういうやり方もあろうと思います。したがって、そういう世帯構成の差異に基づくところの課税最低限の差異をどういうふうに組み合わすべきか、この検討にはやはり一つの材料になり得るのではないかと思っております。
もちろん、しかし、マーケット・バスケット方式以外のいろいろな方式によってそういう生計費の実態は十分調査し得ると思いますので、そういった点を考えなきゃならぬということはお説のとおりだと思います。それからまた、日本の現在の低い生活水準というものを前提とした制度を考えるべきではなくて、もっと今後高い生活水準に向かうということを考えて課税最低限というものを考慮すべきだという点も、お話のとおりと思います。したがって、そういった点は今後の課税最低限の検討の場合に十分取り入れるべきだと思うのでございます。なお、念のために申し上げておきますが、マーケット・バスケット方式で計算いたします場合に、成年男子の摂取カロリーは一日二千五百カロリーとして計算いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/62
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063・鈴木市藏
○鈴木市藏君 金額は幾らですか。マーケット・バスケット方式による金額は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/63
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064・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) 金額は、これは国立栄養研究所にお願いしましてつくりました献立は、春夏秋冬四季に分けまして、そしてそれぞれについて一日朝昼晩の献立を何んぼかの例をつくっていただいておるのでございます。したがって、そのときどきによって金額は多少違っておりますが、三十八年の場合を平均いたしますと、成年男子一日当たりの食料費としましては百五十円四銭、これはもちろん素材だけでございまして、光熱、調味料等は全然含んでおりませんが、そういう金額になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/64
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065・鈴木市藏
○鈴木市藏君 そのエンゲル係数は幾らになっているのですか。エンゲル係数は幾らになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/65
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066・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) エンゲル係数につきましては、これは総理府に勤労者世帯調査がございますので、そこでいま申し上げましたような食料費を支出しているような家計のエンゲル係数をとってまいっております。一人世帯では三二・七六、二人世帯では三六・四四、三人世帯では四〇・一二、四人世帯では四三・八〇、五人世帯では四七・四八と、こうなっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/66
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067・鈴木市藏
○鈴木市藏君 つまり、このエンゲル係数の問題ですね。いま池田総理はよく、日本国民がつまり所得倍増政策でたいへん豊かになったという実例で、いつもエンゲル係数を引くわけですよ、下がった下がったと。でも、事実は何か。そのエンゲル係数が下がった事実は何かといったら、二千五百カロリーをとるために、まあとにかく苦労してマーケット・バスケットでさがし歩いて、しかもその一日の食料が百五十円、これはエンゲル係数が下がったから生活が上がったのではなくて、こんなものの程度しか現在においても食っていないから、エンゲル係数が下がっているわけですよ。これはだから、かえってこういう点からいって、いかにマーケット・バスケット方式を採用することが、ますます、そういった意味で勤労者に税金だけでなくていろいろな意味でもって、社会生活において低いほうにしわ寄せされてくるかということの実例になるわけなんですよ。だから、私はこのマーケット・バスケット方式を採用してはいかぬのだということを、去年も強く要求したわけです。そして同時に、課税最低限について、もっと働く者、つまり勤労者、労働者の立場に立って問題を見るという目がないから、課税最低限をいつもこういうふうなところへ持っていくのですよ。
どうすれば勤労者を、最低生活に食い込まないように課税最低限を引くかという点について、問題を見ていく場合に、やはり世界共通のいま立場があるわけです。どういう立場かといえば、それは労働力の再生産費、労働力の再生産に必要な経費、これには課税するなということなんです。労働力の再生産に必要な経費、これには課税するな、これを課税最低限として押えよというのがほとんど常識になっているわけです。しかも、最低賃金制の実現している国では、常識になっています。日本では、つまり真の意味の最低賃金制ができていないから、こういう方法を講じて、一種のいわばごまかしで、しかも勤労者からよけいに税金を取る材料にしておりますけれども、この最低賃金制の、全国一律の最低賃金制をつくるということなしには、課税最低限のほんとうの詰まるところは出てこない、これを私たちは常に主張しているわけです。いま日本の労働者はみな主張していますよ。真の最低賃金制の実現、だから真の最低賃金制を実現することによって、課税最低限を、やはり労働力の再生産費に課税するなというこの大前提が実現するように、あなた方自身これを努力する、そういう方向に向かって、こういうふうにしなければいけないと思うのですが、どうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/67
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068・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) お話のように、所得税の課税最低限を検討する場合には、労働力の再生産に必要な経費には課税しないという考え方でやっていく、これは一つの考え方として、りっぱな考え方だろうと思うのでございます。それでは、いかにしてその労働力の再生産に必要な経費というものを算定するかということになりますと、これはまだ確定した方式があるわけではございません。したがって、今後そういう労働力の再生産に必要なための経費というものの算定方式を考えていかなければならないと思うのでございます。そういう算定方式ができるまでは、やはり、まあマーケット・バスケット方式によるのは、いろいろないきさつはあり得ると思いますけれども、一つのやり方ではないか。お話のように、簡単に計算することは、労働力の再生産に必要な経費というのはなかなか算出がむずかしいのではないか。もちろん、最低賃金制をとりました場合、これも最低賃金のやり方を全国一律の最低賃金で考えるべきか、それともそうでない最低賃金制で考えるべきかによって考え方は違うと思いますが、所得税の考え方からいたしますと、全国一律の最低賃金というのでないと基礎にはならぬのではないかというふうに考えるのでございます。そういう点から、労働力の再生産に必要な経費というものをどうやって算定すべきかという点を、今後検討する必要があると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/68
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069・鈴木市藏
○鈴木市藏君 昨年より前進した答弁だと思うのですよ。昨年は、とにかく労働力の再生産というのは認めないのだから、そのことば自体を村山主税局長は。だけど、それはその点では、確かに、日本においては全国一律の最低賃金制が実現していないということが、やはり最大の欠陥だと思う。これを、先ほどちょっと出ましたエンゲル係数や、成年男子一日の食費が百五十円昭和三十八年、これで一体所要のカロリーがとれ、しかも労働力の再生産が可能であるというふうにほんとうに考えていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/69
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070・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) この点につきましては、私どももいろいろ調査いたしたのでございますが、百五十円というと、まあ一般に食堂で提供される食事代と考えると、それはもちろんこんなもので食えるはずがないのじゃないかということになるわけでありますが、先ほど申し上げましたように、調味料とか光熱費なんかは全然含んでいないところの、全くの食料素材としての食料費だけでございます。そこで、銀座の、中小企業の同族会社が相当あるわけでございますが、そこでまあ従業員に朝昼晩と食事を提供いたしております、そういったところの食事の代がどうなっているかというようなことを実態調査をいたしたのでございますが、それで見ますと、材料費でやはり百三十円から百四十円ぐらいでまかなっておるという実態調査もございます。もちろん、それは日本のそういった中小企業の従業員が低い生活に甘んじているからだとおっしゃられればそれまでだと思いますけれども、しかし、そういうことで一日の食費が百三十円ないし四十円、もちろん材料費だけでございますけれども、そういう生活をいたしておる実態もあるわけでございます。百五十円という点からいたしますと、それよりはまだ少し上だという感じをいたしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/70
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071・鈴木市藏
○鈴木市藏君 そこで、次の問題に移りたいと思いますけれども、日本の勤労者は、いま言ったように、つまり真の意味の課税最低限である最低賃金制を実現していない。それで、一日百五十円の食費で押えられて、税金がかかってくるというだけではないのですね。もう一つ非常に大きな拘束を受けておるわけです。それは、源泉徴収制度ですよ。これはほんとうに、ざこ一匹のがさないように取り立ててしまうわけだ。こういう制度というものほど、むごいものはないと思うのですよ。昨年もこの問題についても質問をいたしました。一体、この源泉徴収制度というのは戦時法なんですね。戦時に、たぶん昭和十五年だったと記憶しておるのですが、つくられたのですね。そして都合がいいものだから、ずっとそれが今日まで引き続き、さらにそれが一そう整備されてきた。これは労働者をこういう形でもって、ほんとうに税金の面から抜け道のないようにしぼるだけではなくて、実はいまの税制がこの勤労者に対する源泉徴収制度の方向に向かって右へならえさしてきている。そういう方向へ進もう進もうとしておるわけですね。ですから、ひとりこれが勤労者に対して過酷な税制であるだけでなく、すべての税制にこの方向にしわ寄せられてくるであろうという意味においても、全くそういう点ではこれは悪税だと思うのですよ。これを今日なお依然としてあなた方が固執しておられる。それは取りやすいし、一番抜け道がなくて、いわば居眠りしていて取れるということもあるでしょうけれども、これはもはや戦後ではないといって、もう総理も大みえを切っておりますけれども、この勤労者に対してだけこのような過酷な税制を課しておるという現状から見て、この源泉徴収課税は取りやめる、少なくとも将来に向かってはこの源泉徴収課税は取りやめるのだというふうに、あなた方そういう方向に向かってもらいたいと思うのですけれども、あなた方の見解はどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/71
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072・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) おことばを返すようで恐縮でございますけれども、給与所得に対する源泉徴収制度は、なるほどわが国では昭和十五年から行なわれたのでございますけれども、イギリス、西ドイツ、 アメリカ等、世界各国とも給与所得に対しまして源泉徴収制度をとっておるのでございます。わが国で昭和十五年に、まあ大東亜戦争開始直前にそういう制度がとられたから、いわば戦時の遺物だというふうにお考えになるのは、いささか違うのではないかと思うのでございまして、結局、源泉徴収の制度は、国のほうにいたしましては徴税費があまりかからぬで済むし、また源泉徴収義務者はそういう事務員あるいは労働者を雇用いたしておりますから、その雇用主の立場としてやはりそういう源泉徴収の義務を負うし、またそういう労働者は源泉徴収されることによって申告納税の場合に比べて手数を要せずして自分の納税ができるという、この三者が見てそれぞれ源泉徴収制度に合理性があるから、世界各国でもそういう制度がとられておるのでございまして、したがって、源泉徴収制度ということそれ自体が悪いというのではなくして、問題は、そういう給与所得に源泉徴収制度をとっておる場合に、給与所得の控除とか所得税の税率といったようなものが、その生活の実態と比べてはたしていいかどうかという点に問題があるのではないかと思うのでございまして、給与所得に対する源泉徴収制度それ自体を非難するのは当たらないので、そういった場合の控除なり税率がはたして適正かどうかということが問題なのだと私は思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/72
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073・鈴木市藏
○鈴木市藏君 それは税率は、つまりそれ自身必要な経費をひねり出すときにかかってくるものですが、制度それ自身が民主的ではない。これは納税申告制度が基本であるべきいまの税制の中で、申告制じゃないでしょう。自主申告制じゃないでしょう。これはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/73
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074・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) それはお話のとおり、所得税は申告納税を基礎といたしておりますが、給与所得者に対しては源泉徴収という制度になっておりまして、それは申告納税の例外になっております。しかし、給与所得者も給与所得以外の所得がございますれば、これは申告納税をすることになるわけでございます。それからまた、ひとり日本がそうであるというだけでなしに、アメリカにいたしましても申告制度でありますけれども、給与所得については源泉徴収をいたしております。また、ドイツは、御承知のとおり、申告納税制度でございませんで、賦課課税制度でまだございますが、それでも給与所得につきましては源泉徴収をいたしておるのでございます。イギリスもドイツと同じように、所得につきましては現在まで賦課課税制度でございますが、給与所得につきましては源泉徴収の制度をとっておるのでございます。したがって、やはりその国その国に課税の方式として独自の方式があるわけでございますが、給与所得についての源泉徴収制度というのは、そういった国もそれぞれみな採用いたしておりますので、したがって、私どもとしては、その制度自体に問題があるというよりも、その制度の基礎になっておるところの控除とか税率とかということが正しくあるかどうかということが問題ではないか、このように感じておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/74
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075・鈴木市藏
○鈴木市藏君 それは私は制度そのものを聞いているので、その税率がどうのこうのということはあとの問題ですよ。まあしかし、これをやりとりしていても、おそらくあなた方がうんと言うわけはないし、これはまあ水かけ論に終わるかもしれませんけれども、あなたの指摘したとおり、これは例外だと思っておりますけれども、例外がつまり一種の既得権化し、税制上においては何か不動のようなものとなっておる。アメリカとかドイツとかイギリスとか、いろいろ例を引きましたけれども、諸外国においては日本のようなこういう源泉徴収の形じゃない、これは。私も昨年この問題について若干二、三の国の問題を調べてみましたけれども、日本のような形じゃない。たとえば、それが事業主があらかじめ定められた税率によって天引き、つまり課税をされるといったような形のものをとっておりまして、日本のように個人個人の給与からこのような源泉徴収をしておるというのは、かなりそれこそ日本が例外的じゃないかと思うのです。そしてそれだけではなくて、この例外を拡大した今度の場合でも、芸能人に対してまた源泉徴収をするというように、例外だと言いながら、例外を拡大していくということは、どういうわけなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/75
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076・泉美之松
○政府委員(泉美之松君) 日本のように給与所得に対して源泉徴収するのは世界では例外ではないかというおことばでございますが、これはイギリスにいたしましても、西ドイツにいたしましても、またアメリカにいたしましても、それぞれ給与者につきまして各人ごとに源泉徴収をいたしておるのでございます。もちろん、その源泉徴収の税額のきめ方は日本とイギリスとではいろいろ違います。しかしながら、その基礎になる考え方は同じになっておるのでございます。
それから、いまお話しの芸能人の源泉徴収のことでございますが、従来個人たる芸能人が放送あるいは出演いたしました場合、それに対して報酬または料金の支払いを受けます場合におきましては、源泉徴収一〇%の税率でいたしておるのでございますが、ただ、最近芸能人で法人組織をつくるものが多うございまして、そういたしますと、放送局などで報酬料金を支払う場合におきまして、個人でございますと、いままでの規定では源泉徴収することになっており、法人の場合には、報酬料金を受け取るものが法人である場合には源泉徴収しないということになっておりますので、それを利用してそういった法人ができたという面も見受けられます。しかし、そういうふうになっておりますことは、報酬料金の支払いをします放送局などでは非常に、一々どういう資格でこの報酬料金をお受け取りになりますかというようなことを聞かなければなりません。非常に手数であるから、そういうことでなしに、もう放送、出演等に対して報酬料金を支払うときには、個人の資格で受け取ろうと、法人の資格で受け取ろうと、一律に源泉徴収し得るようにしていただきたい、こういう要望が強いのでございます。そういった点を考慮いたしまして、芸能法人がそういう報酬料金を受け取る場合に源泉徴収をするという制度にいたしたのでございます。なるほど、わが国の源泉徴収制度は、諸外国に比べると、給与以外の面にも相当手を広げているという点は、これは確かに事実でございます。しかし、いままでの実績から見ますと、個人と法人ということで取り扱いが違うのはどうもおかしいという点からいたしますと、今回のような改正が適当ではないかと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/76
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077・鈴木市藏
○鈴木市藏君 時間がなくて、租税特別措置法に対して二、三質問したいと思っておりましたが、これは翌日に回しますから、だから、質問が終わっていないということで、これは租税特別措置法のほうは、ひとつ翌日に回して、それで、先ほどちょっと天田さんとの関連の質問の中で言いましたけれども、海外投資の問題ですね、あそこでどうしても出してもらわなければならない——これは資料でもいいし、あるいは私個人だけでもけっこうですけれども、ほしいと思いますのは、昭和三十六年以降に、つまり日本が海外に投資した投資の総額、その経過ですね、それとその現勢をひとつほしい。現勢というんですから、見込みですね。もし見込みがどうだということがあるならば、見込みまで一緒に入れてもらいたい。
それから、二つ目には、今度は日本へ来た外資。やはり年度は同じです。その経過並びに現勢をひとつぜひ出してもらいたいと思います。
じゃ、租税特別措置法のほうは、後日に回しましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/77
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078・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/78
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079・新谷寅三郎
○委員長(新谷寅三郎君) 速記を始めてください。
本日はこれにて散会いたします。
午後五時十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614629X01919640325/79
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