1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年四月二十八日(火曜日)
午前十時四十分開会
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委員の異動
四月二十八日
辞任 補欠選任
後藤 義隆君 近藤 鶴代君
平島 敏夫君 村山 道雄君
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出席者は左のとおり。
委員長 三木與吉郎君
理事
林田 正治君
委員
源田 実君
小柳 牧衞君
塩見 俊二君
重政 庸徳君
村山 道雄君
山本伊三郎君
鬼木 勝利君
向井 長年君
政府委員
内閣法制次長 高辻 正巳君
総理府総務長官 野田 武夫君
宮内庁次長 瓜生 順良君
皇室経済主管 小畑 忠君
事務局側
常任委員会専門
員 伊藤 清君
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本日の会議に付した案件
○国事行為の臨時代行に関する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/0
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001・三木與吉郎
○委員長(三木與吉郎君) これより内閣委員会を開会いたします。
まず、委員の異動について御報告いたします。
本日後藤義隆君及び平島敏夫君が委員を辞任され、その補欠として近藤鶴代君及び村山道雄君が選任されました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/1
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002・三木與吉郎
○委員長(三木與吉郎君) では、国事行為の臨時代行に関する法律案を議題とし、前回に続き、これより質疑を行ないます。政府側から、野田総務長官、瓜生宮内庁次長、小畑皇室経済主管が出席いたしております。御質疑のおありの方は、順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/2
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003・山本伊三郎
○山本伊三郎君 それではこれから国事行為の臨時代行に関する法律案について若干の質問をしたいと思います。
まず最初に、基本的な問題として、新憲法によって天皇のいわゆる権能が大きく変更されたんですが、この国事行為の問題につきましても、憲法の第一条の、いわゆる天皇は象徴天皇――まあ俗に象徴天皇と言っておりますが、そういう第一条の規定から来る関係から、政府は、天皇は日本国の象徴であるという象徴天皇の理解のしかたを、憲法学者はいろいろ言っておりますが、それは別として、行政府としてこの国事行為の法律案を出される前提として、象徴天皇の考え方について、政府のひとつ見解を聞いておきたい。なお、質問が大きいので答弁がむずかしいかと思いますが、旧憲法では統治権はすべて天皇が総擁するところであった、したがって、一切はもう天皇に統治権は帰属しておったのでありますが、新憲法ではいわゆる重要な天皇のお仕事としては国事行為ということに限定されてきたんです。それと象徴天皇ということとはうらはらの関係にあると思うんですが、そういう意味において、象徴天皇とはどういう立場におられるかということを少し最初に聞いておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/3
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004・瓜生順良
○政府委員(瓜生順良君) いまどういうふうにお答えしていいのか、ちょっとわかりかねる点もございまするが、私の一応お聞きした範囲で申しますと、この象徴天皇ということについての考え方でございまするが、この旧憲法では天皇は統治権を総攬されるというふうになっておりましたが、象徴であられる天皇はそうした政治的な実際の権力を持たれる方ではない、また、国民の統合のシンボルというこの精神的な面を持っておられる。で、古い日本の歴史を振り返って見ましても、こうした時代は相当長い期間あったので明治憲法は違いますが、ずっと前考えますると、あるいは幕府の政治があったりあるいは摂政関白の政治があったりして、で実権は他のほうが持っておられた、しかし、国のやはり長岡の地位におられて、象徴的な地位におられたという時代が長いわけでありますが、そうした時代と比較して、いまの時代は特に歴史上かつてないというようなことではなくて、長い間あったそういう姿がいまのまた新しい憲法にあらわれておられるということで、その基礎は主権の存する国民の総意に基づくということで、この国民の総意に基づくという点も、これも新憲法において初めてぱっとできたわけではなくして、やはりこういう組織体をなしている場合の塾木は、やはり過去においても国民にあったのだと思います。そろいう国民の期待に基づいて、そうした国を象徴する、国民の統合を象徴するという地位におられた時代が、ことに長かったと思うのであります。現在は明治憲法の場合と違って、政治的な実権は持たれないけれども、しかしながら、やはり国の最高の地位にあって、そういう象徴としてのお立場をとっておられるのじゃないか。でございますから、憲法にも、「国事に関する行為のみを行なひ、国政に関する権能を有しない。」というふうに書かれておるというのも、そうした点をあらわしておられるのだと思うのでありまして、国事行為――これはいわゆるまあ国政の何といいますか、いわゆる権力的な面を行なわれるというのじゃなくて、大事なことについての国のだ有為に対してあるいは権威あるいは光彩を加えられるというような、儀礼的な意味のことをうたっているということと思うわけでごいざいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/4
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005・山本伊三郎
○山本伊三郎君 宮内庁瓜生次長からそういう御答弁があるのですが、私はこの国事行為の臨時代行に関する法律というのは、私きわめて重要な意義を持っていると思います。この法律文自体は、いわゆる憲法第四条第二項による天皇に国事行為を委任することができるという簡単な条文であるけれども、国政上から見ると、いま瓜生次長が言われましたが、なかなか言い回しがむずかしいように言っておられるが、問題のあるやつだと思う。こういうことですから、少なくともきょうはまあ総理府総務長官が総理の委任で出席されておりますが、相当これは重要な法律案だと私は見ているのです。いま瓜生次長が言われましたが、明治憲法によって、いわゆる日本の統治権は天皇に帰属するということであったように言われますが、甘木の歴史をひもといて見ますると、平安朝時代も幕府の手に、一つの政治権能は移ったようであるけれども、日本の歴史を見ると、いわゆる統治権は、やはり潜在的に天皇に属しているということが、明治維新の際の詔勅によっても明らかにされているのですが、新しい憲法でいわゆる民主主義国原ということで、新憲法はそれを否定しておりますが、そういうことから考えると、いま瓜生次長が言われましたが、明治憲法によって日本の統治権が天皇に帰属したのでなくして、歴史の示すところは、以前からやはりたとえ表面といいますか、政治権能は一時幕府とかそういう手に移っても、潜在的な統治権というものは天皇にあったというこの歴史的事実はどう考えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/5
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006・瓜生順良
○政府委員(瓜生順良君) この点は、いま先生の言われるように、いまの象徴の法律的なものを掘り下げていきますと、いまの考え方と、明治前のとは違うと思います。いましかし、これを一つの社会学的な、一つの現象学的に私はちょっと先ほど申し上げましたわけでありまするが、そういたしますると、その象徴というようなお姿であったときが長かったということを申し上げたわけであります。で、そういう意味においては、「主権の存する日本国民の総意に基く。」という、このいまの新しい憲法は、一つのまた別の新しい考えが加わっております。社会学的、社会現象的に言いますと、非常にずっと古い長い間の姿とそう変わっていないということを申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/6
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007・山本伊三郎
○山本伊三郎君 世界各国の憲法、また国柄を見ても、日本のいまの憲法のような象徴天皇――憲法学的にいうと、天皇は日本国の象徴であって、日本国民統合の象徴であって、「主権の存する日本国民の総意に基く。」こういう規定になっておりますが、イギリスの王朝の場合と日本のこの象徴天皇の場合とどういう相違がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/7
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008・瓜生順良
○政府委員(瓜生順良君) 私の理解している点は、私は――法律の専門的な方がおられるのですけれども、いままでのお答えしたことで、まあ私の考えを申しますと、この英国の国王の場合は憲法上はやはり統治権を持っておられるわけであります。しかしながら、実際の面においては、「君臨すれども統治せず」ということで立憲主義をずっと貫いてきておられる。特に最近においては象徴的にやっておられて、実際は国王の、いまのクイーンの考えで統治されて、それを動かしているという面はきわめて少ない。しかしながら、場合によりますと内閣の変動のある場合に、次の総理をきめるというような場合には、やはりクイーンが最後的に、実際問題としてもきめておられるというふうに、やはり統治権は持っておられる。しかし、形の上においてはほとんどもう象徴的な立場におられる日本の場合におきましては、この統治権というものをお持ちにはなっていない。で、形の上の象徴性という点が保たれている。いわゆる法律的に考えますと基本的には違うのでありますけれども、あらわれておりまする現象的な面から考えますると非常に似ておられる。基本はだいぶ違うと思います。
なお、ほかの憲法で、国王の置かれている国でもベルギーの憲法あたりでは何かやはり国民に主権があるということをはっきり書いてある。しかしながら、行政的な統治の面を国王が持っておられるというような表現になっておるのもあります。しかしながら、ベルギーの場合におきましてもおおむね、「君臨すれどども統治せず」という形で象徴的にやっておられる。日本の憲法はそうした象徴的な点を強く出されて、はっきりと割り切って書かれておるというところが違っていると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/8
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009・山本伊三郎
○山本伊三郎君 抽象的なことはその程度に、わかったような……質問のほうもわかったようなわからぬような質問かもわかりませんけれども、この象徴天皇ということから来る憲法の条章から見ると、いわゆる第七条の国事行為とそれから六条の「天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。」第二項は「最高裁判所の長たる裁判官を任命する。」これは内閣の指名によってやることになっておりますが、象徴天皇としては、いろいろ瓜生次長が言われましたが、憲法条章から見ると、この二つの六条、七条の規定以外に天皇のされる行為というものはないと見ておるのですが、象徴天皇というものは――いろいろ言われましたけれども、実際の行為の上からいったらその二つに限定されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/9
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010・瓜生順良
○政府委員(瓜生順良君) 国事行為としては、この六条、七条それに第四条第二項でいまこの国事行為委任ということ、このことをやはり国事行為というふうに考えておりまするが、しかし、この象徴というお立場で天皇がされる行為は、公にされる行為は、これだけかといいますと、そのほかに公の立場で儀礼的にされることがあると思います。国事ではなくて。これはたとえば各国のいろいろなお祝いごととか、あるいは不幸の場合に御親電を打たれるというようなのも国の象徴としての立場で打たれると思います、単に私事ではなくて。それからあるいは地方に大会があって行幸なんかされます。そうして大会に出られる、それも象徴というお立場でされることだと思いまするし、あるいは園遊会とかに招宴をされるというのも象徴のお立場でされるというそういろ行為があると思います。そのほかにこの天皇の私的の行為というものはまた別にあると思います。これは公のことでない行為としてあると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/10
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011・山本伊三郎
○山本伊三郎君 象徴天皇ということについては、なかなか憲法学者もいろいろ論議をされておるのですが、率直に言うと、この憲法の条章からいろいろ見ますると、国政に関する権能はないということは、元首でないということは、これは明かであると思うのですけれども、この点どう考えられておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/11
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012・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) では私からお答え申し上げます。
わが憲法上の天皇が元首といわれるものに当たるかどうかという問題だと思いますが、これは多分にアカデミックな議論だと思いますが、要するに私ども、その元首というものをどうとうえるかによって日本の天皇が元首に当たるかどうかということになるわけでございますが、元首というものは歴史的にどうもそれぞれやはり当該元首であるかどうかという方の国家行為が外国に対して一国を代表するような効果を持つかどうか、そういうものを一身に持っておられるかどうかということが問題の中心だろうと思います。ところで、これも歴史的な概念として出てきておるものですから、昔の元首あるいはそれになぞらえるような国の機関というものを考えます場合には、やはり統治権を総擁し、外国に対して一国のすべての国事行為について、国家行為について代表するという立場の人が、機関が、実はほうぼうの国にあったわけでございますが、先ほど宮内庁次長が仰せになりましたように、の例をとりましても、形式的にはなるほどそういうのが残っておりますが、実質的には中身は非常に変わってきております。したがって、典型的な意味の元首というものは、いま一体どこの国にあるだろうかと言われるようなふうにさえ考えられるように、現実の法制上の最高の国の機関というものはだいぶ性格が変わってきております。そういうことでありますので、元首概念というものも、やはり相当中身を変えて――どこまで変えて考えるかといろことになると思いますが、昔のような典型的な元首概念からいいますと、日本の天皇がそれに当たるかどうかというのはやや疑問だと思います。しかしながら、憲法の規定を見ましてもわかりますように、やはり天皇は国の象徴であり、国民統合の象徴であるというような面がございますし、それからまた、憲法の七条の九号あたりをごらんいただきますと「外国の大体及び公使を接受する」と、きわめて消極的ではありますけれども、外国に対して一国を代表するような面をお持ちになっております。そういう面をお持ちになっておりますことから言いますと、やはり元首的性格があると言ってもいいのではないか、これはしかし重ねて申し上げますが、元首概念をどうとらえるかということと相照応する問題でございますので、私は御質疑の点についてはそれだけを申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/12
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013・山本伊三郎
○山本伊三郎君 それで国事行為についてお尋ねをしておきますが、いまのような論議をしてもそれはなかなか進まぬと思いますから。この国事行為は内閣の助言と承認による、こういう前提があるのですが、この助言ということは法律上いろいろ概念があると思うのですが、助言と承認ということは、天皇単独で第七条あるいは第六条の行為はできない、こういうことですから、天皇の独立意思によってこれはやるものではないのですが、そういう意味とわれわれはとっているのですが、それはもちろん間違いないのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/13
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014・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) 仰せのとおりでございます。私どもも天皇は内閣の助言と承認によって国事行為を行なわれるということでありますので、内閣の意思というものと無関係に天皇が御行為を、少なくも国家機関として国事行為をおやりになることはあり程ないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/14
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015・山本伊三郎
○山本伊三郎君 逆に内閣が助言をやった場合に、天皇が国事行為をやらなかった場合には、たとえば憲法なり法律、政令、条約、それらを公布するということをやらなかった場合には、法律上また政治上、統治権の上においてどういう影響を与えるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/15
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016・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) 憲法はただいまお話が出ましたように、天皇が内閣の助言と承認によって国事行為を行なわれるというわけで、内閣の助言と承認があって天皇が当該行為を行なわれないということはあり得ないわけでございます。天皇の国事行為につきましても、憲法には第三条がございますように、内閣がその責任を負う、天皇の国事行為についても内閣が責任を負うわけでございまして、内閣が助言と承認をしながら、天皇がその行為を行なわれない、つまり拒否をされるということは憲法に認めておらないところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/16
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017・山本伊三郎
○山本伊三郎君 あなたは法制局の専門家ですから、そういうことはよくわかって言っておられると思うのですが、私の言っておるのは、憲法第六条、第七条は、天皇の意思をここで行為にあらわすということを規定しておるのですね。それに対して内閣が助言と承認を与えるというのは、内閣が受け身の立場でこれを書いておる、この場合。内閣がその第七条第一号から十号までのものを提案をして、そして天皇がそれをやるというのではなくて、天皇の独立意思によって国事行為をやる、それに対して内閣が助言と承認を与えると、こういうふうにわれわれは考えておるのですが、そういうことはあり得ないというが、天皇の独立意思がそこで抹殺されるという意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/17
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018・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) この第七条には、いろいろな行為の性格がございますが、と申しますのは、その行為が人の意思によって生ずるものとか、そうでない単なる事実行為とか、いろいろなものがございますが、かりにその行為が人の意思によって発生するような行為についてのお尋ねと考えまして、それに合わせましてお答え申し上げますが、まさにおっしゃいますように、天皇は左の国事行為を行なうというわけでございますから、形の上では天皇の御意思によってその行為が行なわれるということに相なっているわけでございます。しかしながら、大事なことは、三条にも書いてありますように、あるいは第七条にも重ねてございますように、内閣の助言と承認により行なう、内閣の助言と承認があることによって行なわれるということに憲法上の構成ができているものでございますから、内閣の助言と承認を離れて天皇の単独意思のみによって行為が行なわれることはあり得ないということを申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/18
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019・山本伊三郎
○山本伊三郎君 それを私のほうは、いま逆になった場合にどうかということを言っているんですがね。実際問題として、法律あるいは政令、そういうものは天皇がみずからそれを発案し、やるものでないことはわかるんですが、しかし、第七の栄典を授与する、こういうことは助言と承認によってやるのだが、天皇がもし助言と承認があっても、これはわしとしてやれないのだというような場合には、法律効果はどうなるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/19
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020・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) ちょっと御質問の趣旨が私よくつかめませんので、あるいはとんちんかんのことを申し上げるかもしれませんが、お尋ねの趣旨は、助言と承認を内閣がしたけれども、天皇がなさらない場合はどうかというわけでございますか。――その点については、天皇が内閣の助言と承認があるにもかかわらず、その行為を行なわれないということは、これは憲法が全く予想しておらないところ、つまり天皇は内閣の助言と承認があることによって国事行為を行なわれるというたてまえになっているものですから、先ほど来のお話も、ない場合を仮定しての話であると思いますけれども、そういう場合は、憲法の全く予想しないところでありますので、法律上どうなるかということは、どうも論ずる余地がないというふうに考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/20
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021・山本伊三郎
○山本伊三郎君 そこで私は、冒頭に象徴天皇ということについていろいろ聞いたんですが、いわゆる主権の存する日本国民の総意に基づく象徴天皇、したがって、国会とか、内閣が助言するといえども、主権の存する国会自体がきめたものは、象徴天皇である以上は、いま言ったような、いわゆるこれを拒否するということはあり得ない。主権の存する国民の総意に基づいた天皇であるから、そういうことはあり得ないという解釈は成り立ちますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/21
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022・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) お教えをいただいたわけでございますが、そういうふうに考えてもむろんけっこうだと思います。そこまで考えなくてもそうではないかというのが私のいままでのお答えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/22
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023・三木與吉郎
○委員長(三木與吉郎君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/23
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024・三木與吉郎
○委員長(三木與吉郎君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/24
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025・山本伊三郎
○山本伊三郎君 ちょっと水が入ったようでございますが、法制局次長は、全然憲法がそういうことを考えなかったということについては私は異議があるのですよ。一国の基本法がそういうことも考えずに制定されたとは思わない。やはり象徴天皇という資格と申しますか、そういうものは、さっき言ったように、国事行為というものは国民の総意に基づいた事項である以上はこれを否定できないのだという基本的な考え方もそこにあるのじゃないかと思う。そうでなければ、第七条は内閣の助言と承認に基づいて天皇の行為を規定しておる。その天皇はどういう資格であるかといえば、第一条の象徴天皇であるというところから来ているのだという考えにおるのですが、その点はどう思われますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/25
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026・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) その点は全く私にも異議がないのでございます。天皇は象徴であられる。象徴であられるゆえにこそ、実は第七条にありますふうな、象徴天皇がおやりになるにふさわしいいろいろな国事行為をやっていただくということでございます関係から申しまして、象徴と不可分であるということは言えると思います。したがって、象徴の地位に着目いたしましてそうだという道もあると思いますが、実は私はその辺をのみ込んだ上で結論を先に言ってしまったわけでございますが、いま私が理解しておるようなことであれば全く同感でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/26
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027・山本伊三郎
○山本伊三郎君 これは何でもないようでありますが、いまの現状では問題ないが、将来そういう点は行政府においても十分この点をふんまえてやられていかなければ問題がある場合が出てくるかもわからないと思うのですが、その意味において若干、直接関係あるかないか知りませんが、その点を聞いておいたのですが、憲法学者のいろいろ本を読んでもあいまいな点が私はあるので、少なくとも政府なり、この点ははっきり把握した上で、この国事行為というものについていろいろいままでやってきておられると思うのですが、そういう点で、いま法制局次長が言われましたが、総理府総務長官として、政府を代表してこの点どう思われるか、その点ひとつ聞いておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/27
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028・野田武夫
○政府委員(野田武夫君) 天皇の国事行為は内閣の助言と承認に基づくということは憲法上に出ておりますが、その内閣の助言と承認によって天皇が国事行為を行なわれる場合に、天皇が何ゆえに内閣の助言と承認によって行なうかという基本的な考え方は、ただいま山本さんと、法制局次長の間のお二人の御意見を拝聴いたしておりまして、やはり基本的には、ただいまお話のあったいわゆる主権の存する国民の総意に基づいた象徴である天皇、したがって、天皇の国事行為は、いわゆる天皇自身が統治権をお持ちにならないのであるから、内閣の助言と承認に基づく。その助言に基づいた国事行為を天皇がおやりになるということは、いまお話の象徴天皇の意義というものとやはり重大な関連があるし、いま、お二人のたまたまその御意見が一致されたようでございまして、政府といたしましても、そのお二人の一致された御意見が最も尊重すべき御意見だ、こう私も聞き取りました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/28
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029・山本伊三郎
○山本伊三郎君 そこで本論に入っていきますが、今度の場合には、第五条の皇室典範の定める摂政を置かない場合においての天皇のいわゆる国事委任事項だと思うのですが、これは単独の国事行為の臨時代行に関する法律ということでなく、第五条の皇室典範の改正ということでもいいのじゃないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/29
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030・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) 憲法の規定をごらんいただきますとおわかりいただきますように、皇室典範は憲法の第二条に一つ出ておりますのと、第五条に「摂政を置くときは、」「皇室典範の定めるところにより」と出ております。それから問題のいま御審議願っておりますのは、第四条第二項の「法律の定めるところにより、」というふうに出ておりますので、やはりこれは単独の法律で第四条第二項の「法律に定めるところにより、」の法律として立案するのが適当であろうというふうに考えた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/30
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031・山本伊三郎
○山本伊三郎君 これは第四条と第五条に憲法は分けておりますけれども、法律の定めるところによるということは、皇室典範も法律の形式をとっているのでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/31
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032・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) 仰せのとおりに、皇室典範もまた「国会の議決した皇室典範の定めるところにより、」とございますが、これは形式は法律でございます。しかし、私の申し上げている趣旨は、特に「皇室典範」ということを明示しておりますのが第二条であり、第五条でありますし、四条二項には単に「法律の定めるところにより、」ということになっております関係もございまして、別個の法律にいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/32
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033・山本伊三郎
○山本伊三郎君 いや、ぼくの言っているのは、別にしたことについて間違いであるとかそういうことは言っておらないのです。第四条の第二項も、いわゆる皇室典範の中に、軽易な事故による――事故と申しますか、都合によることによっての天皇の国事行為を委任することができる規定を置いても決して憲法違反でないという考え方ですが、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/33
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034・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) 全く純粋にほかのことを何も考えませんで、皇室典範も法律であるからという観点からだけで皇室典範に規定をしたらそれは間違いかと言えば、それは皇室典範に規定しても間違いとは言えないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/34
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035・山本伊三郎
○山本伊三郎君 これは憲法を創案された人に聞かなくちゃいかぬですが、第四条第二項にこういう憲法の条章を入れたということについては、皇室典範における天皇の国事行為のいわゆる委任と申しますか代行というものと、第四条における代行というものの本質的にやはり何らか差を認めてこういう条章を入れたのでありますか。私の解釈では第四条第二項も第五条も本質的に変わらない、ただ皇室典範では皇位の継承ということに重点を置いたので、別に皇室典範という法律の形式を持っているけれども、名前からいうと若干そういう名前に変えているのであって、私はこれは同じ国事行為の委任であるから、臨時代行であるから同様な考え方で見たらいいという解釈ですが、その点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/35
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036・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) 憲法の第四条の第二項に天皇が御委任になります場合につきましては実は二つの場合があり得るわけでありまして、国事行為の中の比較的軽度であり、しかも相当頻度が高いというようなものにつきまして、天皇が一定の機関に対して権能を授与してその行為を行なわせるという場合と、それから天皇が御委任に、代理権を授与されるという方式と、実は二つございます。そのあとのほうの関係は、おっしゃいますように、第五条の摂政の場合と実は行為の性格は同じようになります。そうなされる場合につきましてはいろいろ問題がございますけれども、行為の性格そのものは同じようなことになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/36
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037・山本伊三郎
○山本伊三郎君 この第四条策二項の表現は、国事に関する行為を委任することができる。皇室典範では代行ということばを使っておるが、いま言われたように、私は本質的には変わらないと思う。これはもう愚問になると思いますが、委任されるということは、その条項を限ってされるということは、おそらくないと思う。すべて第六条、第七条に掲げておるところの国事行為は、一切、その天皇の事故の理由というものの原因というものは違うけれども、代行するということは委任も代行も同じ本質的なものであり、その事項を限って委任するということはあり得ないと思うのですが、それはそのとおりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/37
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038・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) 憲法の四条の二項で委任することができるといいますのは、平たく言えば、国事行為の処理を委託するということであろうと思います。そこでその場合に、先ほども触れましたが、実は二つの場合がございまして、特定の事項を限って特定の機関にその行為を処理させるという場合と、それからそうではなくして、まさにこの法律が考えております、たとえば海外旅行とかあるいは御病気の場合とかいうような場合になりますと、これはその事柄をあげて天皇の名でその行為が行なわれるようなしかたで、国事行為の事務の処理を委託するという場合と二つあるわけでございます。したがって、四条二項の場合が常に国事行為のすべてにわたって委任をするということであるというふうに確定的に申し上げることはできないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/38
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039・山本伊三郎
○山本伊三郎君 それはぼくはだいぶ意見が相違するのですが、特定な事項に限って委任するということは、少なくとも象徴天皇という立場から考えて、一般の場合と同じようにわれわれは考えられないと思うのですが、そういう事態はどういう場合がありますか。特定な事項に限って委任するというような場合は、どういう場合があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/39
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040・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) どういう場合があるかという御質問でございますので、その場合を想定しまして申し上げますと、たとえば栄典の授与なんかにつきまして、かなり栄典の中身には、栄典の性格は同じでございますけれども、高度の栄典というか、そういうものと、程度を比較すれば、比較的低いほうのもの、まあ両方ある。しかもたとえば勲一等と勲八等、そう申し上げてもよいのでございますが、勲入等くらいの勲章になりますと、これはかなり範囲も広いというようなことで、そういうものにつきましては、内閣総理大臣に授与を委任するということが考え得られるわけでございます。事実そういうことをするかどうか、これは全く別問題でございますが、そういう場合につきましても、四条の二項で委任するという道があるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/40
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041・山本伊三郎
○山本伊三郎君 その場合に、第五条による……第四条の二項も一緒ですが、代行するという場合も、あなたが言われるように、栄典を授与するという国事行為は、天皇自体が何も勲章を胸に下げるという意味ではなくて、栄典を授与するという国事行為は私はそう委任されるべき問題ではないと思う。国事行為としてその勲章の等級によってこれはだれがやるのだというような、こういう私は憲法の解釈はしておらないのですがね。それはぼくはちょっと異議がありますね。いままで例をとられたことはあなたの想定か知らないけれども、それであれば栄典は一体だれに帰属するのか、そういうものを委任されるということは私は考えておらないわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/41
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042・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) いまおっしゃいましたことにつきましては、先生のお考えはお考えとして拝聴いたしますが、実はそういう両方の方式があるということは、これはただ私が申し上げておるだけでなしに、学説上もそういう見解があるわけでございます。むろん栄典を授与するということでございますが、栄典を授与するその中身はいろいろあり得るわけでございまして、その相違の別格のものにつきまして委任をするということは、これは認められ得るというのが一般の学説上の見解でもございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/42
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043・向井長年
○向井長年君 関連。いま山本議員が質問しておる問題は、この代行と委任の問題でしょう。これは代行といえば、ある時期、何らかの理由で継続して行なう場合を代行といって、特定の問題については場合によれば委任すると、こういろことの解釈でないのですか。そう私たちは解釈するのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/43
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044・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) いま、何といいますか、法律案の問題であると申しますよりも、憲法の問題を論じておるわけでございますので、憲法の四条の二項をごらんになりますと、「天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。」と、こう書いてあります。それで委任するという場合に、この法律案にありますような代行の方法と、それから先ほど例をあげろとおっしゃいましたので、一例を考えたままに申し上げましたが、そういう場合に一部の国事行為の類型に属する一部の行為、それの権能を特定の機関に授与をして、それがその事項を処理するということも四条の二項は妨げてはいないということを申し上げておるわけでございます。むろんそれには法律の根拠が要ります。そういう法律の根拠としては私の知る限りでは現在ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/44
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045・向井長年
○向井長年君 その文言ですが、代行、委任というものと、したがって、憲法の四条にいう委任ということばは、これは特定の国事行為に対して特定の場合に、これをかわらしてやらしめるというのが憲法の四条の委任といろことであって、いわゆる今度の法律案の改正の中で代行という問題は一つの理由があるから、ある程度継続して特定の問題だけ、国事行為じゃなくて、ある程度の期間をやはり継続して天皇の国事行為を代行してやらせる、こういろ解釈じゃないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/45
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046・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) まさにおっしゃるとおりに、本法律案が意図しておりますところは、特定の場合に天皇が国事行為を委任して代行させるということになっております。代行させるというのは、その代行きせる間、個別にちょこちょこやるのではなくて、ある程度継続的に代行きせるという考え方でございます。で、そのほうの問題につきまして本法律案ができておるわけでございます。別に申し上げました個々の権能を授与して行なわれることにつきましての法律はいまの法律案とは無関係でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/46
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047・山本伊三郎
○山本伊三郎君 そういう栄典の場合を例として言われましたが、国事行為というものは、もろ最初からいろいろ言いましたように天皇自身に帰属するものですね、それを天皇が一部事項に限って委任するということは、天皇はほかの国事行為はやり得る立場にあるということですね。この国事行為というものはいつ起こるかわからないのですから、一日もそれはなくするということはできない。日本のいまの憲法からいう政治といいますか、国事行為というか、その場合に一部を委任するということが、憲法第四条の二項に委任ということを使ってあるから、事項を限って委任するのだという、そういう解釈でずっときておられるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/47
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048・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) これは実は憲法制定当時から議論がむろんございまして、そういう二つの場合を想定して四条二項というものがあることは、何も私の発明ではございません。その当時からの話でもございますし、その後、学者が言っていることでもございます。きわめて通常のことでございます。ただ、この法律案は先生も御指摘のとおりの権能を委任をして、つまり代理権を授与して行なう場合だけについて規定しておるわけでございます。そうでない場合につきましても、実は四条二項にありますように、法律の根拠が要るわけでございますが、その点はやはり何といいますか、一つの理論上の問題として申しているわけで、実は現実にはまだその法律案というものを新憲法施行後御審議を仰いだことはございません。したがって、現実にはございません。理論上の問題としてはあり得るということを申し上げているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/48
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049・山本伊三郎
○山本伊三郎君 大体言われることもわかるのですが、先ほどからわれわれもいろいろ言っておりますように、国事行為の臨時代行ということであれば皇室典範でやってもいいじゃないか。私は第四条第二項にちょっとこだわっておるのですが、委任ということは将来問題になるだろうと思って、いま解釈を聞いたのですが、私は天皇に帰属する国事行為について事項別にそれを委任するということについては自由の問題が含まれておると思うのです。それは現実に法律が出ておらないからここで論議する必要はないのですが、今度の法律も国事行為の臨時代行ということのみに限ってやられておるところに私はどういう意図があったか知りませんが、もし第四条第二項であるならば、臨時代行と同時に委任も含めて出すのじゃないかと思っておったのですが、臨時代行ということだけに限定しておるのですが、いまの、政府の責任者であるかどうか知りませんが、法制局次長は憲法の解釈上から言っておられますが、政府部内でそういう国事行為を事項別に委任するというようなことが考えられたかどうか。いま栄典の問題を出されましたが、栄典の問題を出されたのは、私はちょっと、ぼうっと聞いたのですが、そういう点で政府部内で、どうですか総務長官、そういう論議は別になかったのですか。もっと詳しく言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/49
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050・野田武夫
○政府委員(野田武夫君) ただいまのお尋ねでございますが、実は天皇の国事行為について個別的の委任とか、そういう問題が実は現実的にまだ行なわれておりませんで、政府部内ではその問題につきましての法的根拠とかあるいは委任事項に関する全体的な解釈とかというようなものはいたしておりませんで、いわゆる法制局次長からお答えいたしましたように、法制局といたしましては、これは当然これらの問題を想定したり、またそれに対する解釈をするというようなことは法制局の中ではやっておりますが、政府全体としては今日までこれらのことをやっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/50
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051・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) ちょっと補足して申し上げます。ただいまもお話がありましたように、政府としてどうかということにつきましては、これは全くそういう問題がいままで出てもおりませんし、現実の問題としては実は栄典に関係しまして、いろいろな法制の問題とかということが一、二ございましたが、そういう場合には実は考えたことはございます。考えたことはございますが、いま申し上げたことは、実はいまそこで議論になっておりますことは、さっきも申し上げましたが、憲法制定議会のときに、すでにその問題が出ております。もしお許しがあれば、当時の金森国務大臣の御説明をお伝え申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/51
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052・山本伊三郎
○山本伊三郎君 これは、第四条第二項を入れるについては、相当論議されておったが、ぼくはその当時からそういうことはあり得べきでないという考えでおるのです。少なくとも事、国事行為ということになれば、その象徴天皇自体が事故があって仕事ができないという場合には、これはいま言っている代行ということがあり得るけれども、一部のものを他の人に――象徴天皇というものがある、それを、国事行為を、象徴天皇が健在であるにもかかわらず、それが委任されるというようなことは、私としてはあり得ない。もしそういうことになると、国事行為自体がまたいろいろと問題が出てくると思う。先ほどからいろいろ言いましたけれども、国事行為というものは、どういうものであるかということをずっとお尋ねしてきたのですが、そういう性格から見ると、一部を委任して、象徴天皇が健在であられるのに、それが一部委任されるというようなことは、考えられないというのがぼくの意見ですが、あなたはそれはできる、法制上できるということであれば、それはまたあなたの意見として、また学者の意見としてわかりますが、行政府としても、やはりそういうことはでき得るという解釈であると見ていいのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/52
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053・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) ただいまの問題につきましては、私ははっきり申し上げますが、私ども法制の責任をあずかっておるところといたしましては、明治憲法下におきましてもありましたように、また新憲法につきましては、新憲法の制定議会において審議をされましたとおりに、いまにおいてもそのように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/53
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054・山本伊三郎
○山本伊三郎君 それではもう少し聞いておきますが、いま栄典のことを言われましたが、十項目ありますが、その他の場合でも一部事項を委任できるというような場合はどういうものがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/54
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055・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) 明治憲法時代にまずどういうものがあったかということを申し上げてみますと、明治憲法はむろん御承知のとおりに、天皇は統治権を総擁しておられます。そうして、したがって、原則としてはむろん御自身がおやりになるわけであります。権限の委任が行なわれた例といたしましては、官制大権、それから戒厳大権それから栄典大権、そういうものについてございます。新憲法のもとでは、しいて考えれば、あるいはあるかもしれませんけれども、私どもが普通にあり得るかもしれないと思われるのは、先ほど申し上げましたように、栄典のある一部のもの、そういうふうに思われるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/55
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056・山本伊三郎
○山本伊三郎君 それではその点はその程度にして、また機会をあらためてやることにいたしますが……。
次に、今度の国事行為の臨時代行に関する法律の第二条ですね、この場合は、精神もしくは身体の疾患または事故あるときは、皇室典範の規定により、というのは、いわゆる軽い疾患なんだというふうにわれわれは解釈するのですが、それは天皇御自身がそういうことを言われてそれで臨時代行ということになると思うのですが、その場合ですね、どの程度のものが想定されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/56
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057・瓜生順良
○政府委員(瓜生順良君) どの程度ということになりますと、摂政を置かれる場合は特に重い場合で、陛下の普通の意思能力として活動されるには非常に御無理なような場合でございまするが、この場合ですと、普通の意思能力を働かされるにはそれほど御無理とは考えられませんが、たとえばかぜを引かれて相当高い熱が続いておやすみになっているというような場合、それから事故の場合も――摂政のような場合ですと、憲法学者は、たとえば天皇の所在が不明だというような場合、これは特別の混乱のときなんかのような場合だと思いますけれども、そういう重大なことでなくて、いま例にあがっておりますように、外国に御旅行にでもなって国内にはおいでにならないので国事行為を自分でなさることができないというような場合、そういうような場合が考えられるわけで、そうしたことの判断につきましては、これは天皇自身というよりも、常に側近にある宮内庁のほうで模様を拝見しておりまして、やはりまあ御自身でなさるのは御無理だというような場合、しかし、摂政は置かぬでもというような場合、内閣のほうへそういう状況を申し上げる。内閣のほうでその状況を判断されて助言と承認ということでこの国事行為を他の皇族方に委任して臨時に代行させられることが適当であるというふうに申し上げる。そこで、臨時代行者がきめられるというふうなことになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/57
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058・山本伊三郎
○山本伊三郎君 皇室典範とこの国事行為の臨時代行に関する法律案との相違は、皇室典範ではそういう臨時代行をされる場合には皇室会議の決定においてやる。この場合は内閣の助言と承認によってやるということで、手続上はきわめて簡素にされておる。いま瓜生次長は側近におられて、いままで相当無理をしておられると思うんです。今後はなんですか、ある程度かぜをめしてちょっと仕事が無理だというときに、官庁における代理のように、相当軽易にやっていかれる考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/58
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059・瓜生順良
○政府委員(瓜生順良君) 今後も、従来のように、御陛下がある程度の御不快がありましても、しかしながら、そう重いことでもございませんし、ちょっとおやすみになればお元気になられるというような場合には、一々臨時代行を置かれるようにと、内閣のほうへ連絡したりはしないつもりで、相当やはり長く続いて御無理だと思うような場合でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/59
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060・山本伊三郎
○山本伊三郎君 それはそうだと思うんです。やはり第五条では「天皇の国事に関する行為が委任され、又はその委任が解除されたときは、内閣は、その旨を公示する。」とあるんですが、そういういろいろな手続上から見ると、そう簡単に、きょうはちょっとぐあいが悪いからかわるんだというわけにはいかないと思います。
そこで、ちょっとこれは文言にこだわるかしれませんが、法律は臨時代行といってるんですが、これを解除するときには委任、あるいは公示するときには委任ということばを使われておるんですが、これは何か意味があるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/60
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061・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) 特別に取り立てて申し上げることはございませんが、憲法は、国事に関する行為の委任、天皇がなさる行為としては委任ということでありますが、委任をするというのは、通常の形で出てまいるわけでございますが、第二条にありますように、委任して臨時に代行させるという意味は、先ほど来ちょっとお話が出ましたような、むろん法律の根拠は要りますが、特定の権限を特定の機関に与えるというような場合は、別に立法をするとすれば立法をするわけでございますが、いまそういうことを考えているわけでは毛頭ございませんけれども、そういうものとの対比において、委任して臨時代行ということができるというふうにかみ砕いて規定したというわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/61
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062・山本伊三郎
○山本伊三郎君 こういう重要な国の基本に関する規定であるから、その用語自体もやはり十分考えて使う必要があると思うのですが、第二条では、「委任して臨時に代行きせることができる。」と、臨時代行ということに重点があるようですが、あとのほうにいくと「委任」ということをいわれている。少し吟味していくと、いま言われたように、別にそうたいした意味はないのだ、臨時代行の委任といろ法律上の事項であるから、委任というふうにやっているんだと言うが、臨時代行解除ということにやはり改めておいたほうが、私は、意味は変わらないと言われるけれども、事は重要な国事行為に関する問題であるから、そういうことに用語を統一されておったほうがいいのではないかと思うのですが、その点どうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/62
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063・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) この法律は、先ほど来からお話が出ておりますように、第一条で、この法律の趣旨が出ております。その法律の趣旨は、「憲法第四条第二項の規定に基づく天皇の国事に関する行為の委任による臨時代行については、この法律の定めるところによる。」この法律は、そういうことについて規定したものである。ほかの場合を考えているわけではありませんということを受けまして、第二条で、先ほどかみ砕いてと申し上げましたが、行為の中身そのものを明示したいときには、かみ砕いた表現をいたしております。その必要がない場合は、もう三条以下につきましては、十分にこの法律の趣旨がわかっておりますので、「委任」というふうに、そのまま用いたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/63
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064・山本伊三郎
○山本伊三郎君 それは私が言っているように、別に法律の解釈にはそう間違いはないけれども、われわれはこれは先ほどから言っているように、臨時代行を委任することで、事項別の委任でないという考え方から来ているわけです。それはどうも委任だというと、そこにわれわれの概念上から考えて、二つの考え方が錯綜しているのではないかと、ちょっと見ると、そういう感じを持つのですが、委任による臨時代行を終了するといろことを入れても、私は別に間違いでもないし、そのほうがはっきりすると思う、この法律自体の趣旨を考えると。先ほど言われたような事項別の委任も含まれているというならば、これでいいわけですが、臨時代行ということにこの要点があると私は見ているが、そういう意味から言ったら、そういう法律文言を用いられたほうがいいじゃないか、こう言っているのですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/64
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065・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) むしろ委任というものの中身には、こまかく分けていけば、二つの態様がある。その二つの態様の中のいずれをも、この法律案で規定しているのではなくて、その一つのほうを規定しているのだ、その統一的な法律案であるということを明らかにしたいために、一条、二条というような表現をしたのでございます。しかし、実は委任をするとかあるいは委任を解除するというようなこと自身は、この法律の上に乗っかっての問題になりますれば、もうそこまでやる必要もないであろうというわけで区別ができ上がっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/65
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066・山本伊三郎
○山本伊三郎君 それじゃあ、私もちょっと時間が来ましたから、きょうはこの程度でおきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/66
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067・三木與吉郎
○委員長(三木與吉郎君) 他に御質疑はごいざませんか。――別に御発言もなければ、本案の質疑は、本日はこの程度にとどめます。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時五十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614889X02819640428/67
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