1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年四月二十三日(木曜日)
午前十時五十五分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 青田源太郎君
理事
梶原 茂嘉君
櫻井 志郎君
森 八三一君
渡辺 勘吉君
北條 雋八君
委員
岡村文四郎君
北口 龍徳君
仲原 善一君
温水 三郎君
野知 浩之君
藤野 繁雄君
堀本 宜実君
森部 隆輔君
山崎 斉君
小宮市太郎君
戸叶 武君
矢山 有作君
安田 敏雄君
高山 恒雄君
国務大臣
農 林 大 臣 赤城 宗徳君
政府委員
科学技術庁資源
局長 橘 恭一君
農林政務次官 松野 孝一君
林野庁長官 田中 重五君
事務局側
常任委員会専門
員 安楽城敏男君
説明員
林野庁指導部長 森田 進君
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本日の会議に付した案件
○保安林整備臨時措置法の一部を改正
する法律案(内閣提出、衆議院送
付)
○連合審査会開会に関する件
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001・青田源太郎
○委員長(青田源太郎君) ただいまから委員会を開きます。
保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き質疑を行なうことにいたします。
質疑のおありの方は御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/1
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002・北條雋八
○北條雋八君 私は二、三質問をいたしますが、時間があまりないので簡単に質問いたします。お答えはなるべく要領よくお願いいたします。
まず、保安林を初めて設定したのはいつでありますか。またその当初、保安林を設けた目的は、土砂の流出防止、あるいは崩壊防止保安林といったような、国土保全に重きを置いた、また水源涵養保安林ということは当時はずいぶんな重みを持って、むしろ国土保安に力を注いで設定したのではないかというふうに思います。その点を伺います。また当時の保安林の種顔別の面積がどのくらいでありましたか。それが今日までどのように変わってきたのか、保安林の沿革と、現在に至る推移の概要をまず伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/2
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003・田中重五
○政府委員(田中重五君) 保安林が最初に指定をされましたのは、明治三十年の森林法の制定のときでございます。それで、その当時、明治二十九年の河川法に続きまして、砂防法とともに治水三法、こういうふうに言われて、主として国土保全上の趣旨に基づきまして、森林法は国土保全、治山治水の面から規定をした、そういう趣旨でございます。そうして、その当時の面積といたしましては、保安林の面積は、明治の三十年におきましては、国有林で十二万三千三百五十ヘクタール、民有林で四十六万一千三百二十八ヘクタール、合わせまして五十八万四千六百七十八ヘクタール、こうなっておりました。それから戦争直後の数字を申し上げますと、昭和二十四年には、国有林が九十万五千九百七十七ヘクタール、民有林が百十万二千一百ヘクタール、合わせまして二百万八千七十七ヘクタール、こうなったわけでございます。それが三十七年度末には、この保安林整備臨時措置法の施行に伴いまして、これが国有林は百九十一万六千八百ヘクタール、民有林が二百十三万四千四百七十五ヘクタール、合わせまして四百五万一千二百七十五ヘクタール、こういう数字をたどっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/3
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004・北條雋八
○北條雋八君 そうしますと、参考資料の2)の保安林整備計画の進捗状況を見ますと、現在の保安林の整備十カ年計画の目標の面積というのは、国有林と民有林合わせまして約四百五万八千ヘクタール、これに対しまして、三十八年度末までに国有林、民有林合計が約四百二十万ということになっておりまして、目標面積以上に整備できたわけであります。すなわち昭和二十八年度現在の保安林面積は、二百四十八万ヘクタール、それに比べてみますと、十年間に百七十万ヘクタールというものがふえておるということになるわけです。そうしますと、その間にふえた保安林の種類というものは、どんな割合でふえておりますか、水源涵養林がふえているのですか、それともこの国土保安的の土砂流出防止、これがふえておるのですか、その割合をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/4
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005・田中重五
○政府委員(田中重五君) この保安林整備計画樹立以後に伸びましたのは、伸び率で申し上げますと、民有林国有林合わせまして、一号ないし三号保安林でございますから、水源涵養保安林並びに土砂流出防備林、土砂崩壊防備林が一六七%、それから四号以下の保安林が一二五%ということに伸び率がなっております。いまこの率でもわかりますように、一号ないし三号保安林で主として伸びておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/5
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006・北條雋八
○北條雋八君 水源涵養保安林と、それから二号、三号のあれですね、合計で見ますと、つまり国土保全のための保安とのその比較がどういうふうな割合になっておりますか、それをお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/6
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007・田中重五
○政府委員(田中重五君) その一号ないし三号保安林の内訳で見ますと、水源涵養保安林で一七八%、土砂流出防備保安林で一五一%、それから土砂崩壊防備保安林で一八五%、こういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/7
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008・北條雋八
○北條雋八君 ああそうですか、もともと保安林整備臨時措置法というのは、説明のありましたとおり、昭和二十八年の大風水害、あれを契機としましてそうしてつくられたものでありますから、その当時は、水資源の確保というような点まではあまり考えておられなかったのじゃないかと思うのです。したがって、水源涵養のための計画はあまり力が入っていなかったのじゃないかと思うのです。このたびこれを十年延長するということは、最近における経済の高度の成長に伴う水資源の培養また増強をはかるのが目的だということになれば、今後新しい整備計画を立てる上には、主として水源の滋養保安林をふやしていくというお考えなのでありますか、それとも水源涵養保安林を中心としてその他の保安林もふやしていくということなんでありますか、その点を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/8
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009・田中重五
○政府委員(田中重五君) 現行の保安林整備計画は、この保安林整備臨時措置法が制定せられましたその背後の事情にございますように、昭和二十八年の北九州あるいは近畿の大災害にかんがみまして、急速この法が制定されたのでございますから、その主体はやはり災害の防止、これに保安林整備の趣旨が置かれておったと考えます。で、あわせて水源涵養保安林につきましても、これは重要な保安林でございまから整備を行ないたい。
ところで、今回この保安林の延長を考えました理由といたしましては、近年の産業経済の発展に伴いますところの急激な水の需要、これの趨勢にかんがみまして、主とし今後水源涵養保安林を主体といたしまして、あわせて災害の防止をねらうところの保安整備を進めてまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/9
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010・北條雋八
○北條雋八君 そうしますと、今後十カ年間に、この保安林の面積はどのくらい増加するお見込みでありましょうか。水源滋養以外の保安林も含んでおるとすれば、その種類別のおよその割合はどのくらいになるか。またこの新計画を立てるのに、将来の見通しというものをやっぱり立てて、そうして十年間の計画をされることと思います。その何年先の水の需要量を目安として、そうしてこの計画を立てられるのか、またなおこれだけの水の需要量が必要とすれば、それに対してどれだけの保安林の面積をふやさなければならないのかという、つまり水の需要量と、これに対する保安林の面積との関係をどういう算式によって、どういうような因子を使ってそうして計算をされるのか、その点がおわかりなら簡単に要点だけを説明していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/10
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011・田中重五
○政府委員(田中重五君) 今後の保安林整備計画によりますところの保安林の整備につきましては、いま申し上げましたとおりに、将来の水需要の増大、これの傾向に対応いたしました水源涵養保安林を整備することを主体といたしまして進めてまいりたい、こう考えておる次第でございます。その規模といたしましてはおおむね百万ないし百五十万ヘクタール、その程度を想定をいたしております。ただそれの具体的な内容につきましては、昭和三十九年度に予算を計上いたしまして、重要な流域ごとにそれぞれ調査を進めてまいる考え方でございます。そうしてその調査をこの三十九年度一カ年で終わる予定でございます。それに基づきまして計画を進めるわけでございますが、その水の需要量の見通しにつきましては、現在関係機関、各省それぞれ現に計画をいたしております昭和四十五年度ないし昭和五十年度、そのころにおきますところの水の需要等を前提といたしまして、これに対応するところの水源涵養保安林の整備を考えたわけでございます。ただこの水の需要の確保、供給の確保につきましては、これは保安林が全部それをかかえるという考え方ではございませんが、一応その流域ごとの水に対するそこの国民生活、あるいは産業の発展、それに伴うところの農業用水あるいは工業用水、それの水依存量、それからその流域の奥地の上流水源地帯におきますところの保安林の森林の状況、これを勘案をいたしまして、その水供給量を算定いたしてまいりたい、それの具体的な個々の手順につきましては、指導部長から簡単に御説明いたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/11
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012・森田進
○説明員(森田進君) 林地から供給いたしております水は、林地の表面を流下いたしますものと、森林土壌を浸透いたしまして、地下水になりまして、再び地表に流出いたしますものとに大分されるわけでございますが、一般に、森林土壌は緑地、草地等に比較いたしまして、浸透能が非常に高いとされております。今回の計画におきましては、この森林土壌の透水能を利用いたしまして、降水を極力地下水として流出させるということに着眼いたしまして、計画を進めてまいることにいたしております。簡単に申し上げますと、全国を二百十六の流域に区分いたしまして、さらにその流域を一時支流ごとの地区に細分いたします。その細分されました各地区ごとに、上流から、林地から供給いたします量と、その地区内におきまして、林地から供給を期待いたしております量とを比較いたします。で、その結果、林地からの供給量が多い場合には、それを下流の地区に供給いたすわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/12
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013・北條雋八
○北條雋八君 その水の需要量に対して、どのくらいの保安林の面積が要るというその面積と、流出量との関係をどういうような計算で出すのかということです。その点だけ簡単にしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/13
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014・森田進
○説明員(森田進君) これは先ほど申しましたように、各流域の降水竜並びにその流域にございます森林の土壌等の状況によりまして、一がいには申し上げられないかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/14
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015・北條雋八
○北條雋八君 そうすると、各流域別に、降水量の統計から大体の流出量をはかって、一方、山に依存する依存度と、それから土壌の性質、その三つが大体因子になって、各流域でそれをはかり、それを合計するわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/15
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016・森田進
○説明員(森田進君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/16
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017・北條雋八
○北條雋八君 水と面積の割合を合計して出して、それで算定するわけですね。
次に、参考資料の三ページに、年度別の保安林の買い入れ実績というのがございます。これは二十九年度より三十八年度までの十カ年間に、国による保安林の買い入れは、目標五十万ヘクタールに対しまして約二十万ヘクタールで、目標のわずか四〇%しか実行できないということでありますので、そのできなかった理由はどういう理由であるのか、その点を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/17
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018・田中重五
○政府委員(田中重五君) 予定の五十万ヘクタールに対しまして、四割の二十万ヘクタールの遂行にとどまりました理由といたしましては、まず、この計画実施以後の木材、あるいは土地の価格の急騰のために、森林所有者がこれの売り渡しに必ずしも積極的でないという気持もございます。そこで、こちらの側との話し合いが必ずしも十分に進まなかったということもございますし、それからなお、この治山治水緊急措置法に基づきますところの治山事業の推進とともに、その計画の予定をいたしておりましたようなところで、その必要性が、その計画樹立の当時とは変化があったということもございます。なおこの森林の所有の形態等で、共有林等がございますが、その持ち分権者等、あるいはまたその森林に対する債権者等の賛成を得られなかったということもございます。あるいは境界が錯綜しておりまして明確じゃないとか、あるいは台帳の整備が十分でない、いろいろの原因がございまして、このような成績にとどまっている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/18
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019・北條雋八
○北條雋八君 いろいろ理由は伺いましたけれども、根本はやはり財政的に金が足りなかったということでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/19
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020・田中重五
○政府委員(田中重五君) 予算のワクは当然年々計上されております限度で行なうわけでございます。しかしながら、予算の制約はまず第一にあることになりますけれども、かりに予算の総ワクがあったといたしましても、その買い入れの単価におきまして、やはりこれが妥当なものであることが必要でございます。そういう点で、先ほど申し上げましたような、森林所有者の人が調整が困難であるために、その買い入れが進みかねたというようなことがございまます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/20
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021・北條雋八
○北條雋八君 そうすると、計画で、五十万あったのが、四〇%しか実行できなかった。そうすると、三十万ヘクタールというものが残っておるわけですが、前の計画の。ところが、今度の新しい計画では、二十五万ヘクタールを買い入れの目標にしております。そうなりますと、非常にこれは買い上げというものは消極的に後退してしまったということがいえるんじゃないかと思うわけです。特に二十五万ヘクタールの中でも、実際買い上げるのは十七万ヘクタール、残りの八万ヘクタールは国有林との交換でもって処理していくということでありますが、新しい計画としては、非常に消極的じゃないかと思われます。で、これはどういう理由であるのか、あるいは買い入れというものを縮小する御方針であるのかどうか伺いたいと思います。
政府委員(田中重五君) 今後の買い入れ計画につきましては、お説のとおりに、二十五万ヘクタールのうち十七万を買い入れまして、八万は交換で進めるという考え方でございますが、そこで、この保安林の整備をはかってまいります場合に、やはり国が買い入れて、そして直接国の事業として、その整備をはかっていくということも、言うまでもなくこれは重要なことではございますが、また、その森林の所有者に、森林法にございます。定の施業要件を課しまして、そうしてその制限の順守なり、あるいは義務の履行なりによって、十分にその保安林がその指定の目的に即して機能するということも、近来の森林所有者の森林経営の意欲等から見ますと、その熱意は相当にうかがえるというふうに考えられる面もございます。で、そういう意味合いからいいまして、やはり国で所有し、国が経営するというものにつきましては、特に奥地上流の水源地帯の、民営のままではその維持経営が困難であるというふうに考えられるもののみに限定をいたしまして、重点的に進めてまいろうと、こういう考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/21
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022・北條雋八
○北條雋八君 いま伺いましてわかりましたけれども、買い入れを減らせば当然今度指定がふえてくるわけでありますが、その点で実は保安林を指定する場合に、所有者が非常に制限を受けますので、いやがるわけでありますが、そういう場合に、政府としまして、もしもこれをぜひ保安林に指定したいという民有林があって、その所有者がこれに応じないというようなことが必ずあると思うのです。こういう場合に、政府といたしましてはどういう措置を講じられるのか、そういう場合には、買い入れの方向に進んでいくのも一法でありましょうが、そういう場合には大体どういうことになる場合が多いのでありましょうか、また政府としては、どういう措置をとられますか、その点を伺います。
なお、それに続いて伺いますが、これは伐採を禁じられたり、あるいは制限を受けますために、非常に所有者としましては、切って金にしたいけれども金にできないといったようなこともありますし、また土地を転用することもできませんし、非常な犠牲を受けるわけでありますが、それらの点に対して、補償をどういうふうにしておるのか。これはせんだってあるいは山崎委員から御質問があって、重複するかとも思いますけれどもね。
それからまたもう一つは、この所有者の固定資産税が免除になるというお話でございますが、これはもうあたりまえのことだと思います。固定資産税が入らないとすると、地元のほうでもそれだけ収入が減るわけでありますが、そういう地元に対する補償ということも含めて御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/22
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023・田中重五
○政府委員(田中重五君) いまの御質問の最初にございました、買い入れが減れば指定がふえるということのお話がございましたが、これは買い入れのいかんにかかわらず一それに指定の面積が影響されるということはございません。
それからこの保安林の指定につきまして、どのようにその指定の方針を貫くのかという御質問と承りますが、保安林は確かに財産権に対する制限でございますし、そういう意味合いからいいまして、この保安林整備計画を立てるその時点におきまして、あらゆる手を尽くしましてその保安林指定の必要性、それからその保安林を指定された場合の、いまも御質問にございましたようなこの保安林に対する優遇措置と申しますか、そういういろんな点についてPRも行ないます。で、そういうような次善の段取りを進めながら、その保安林の指定を行なってまいるわけでございますが、そこで、いよいよ保安林の指定を——一号、三号の保安林の場合には農林大臣の権限でございますが、農林大臣が指定をすると発意をいたしましたときに、その農林大臣の予定通知を関係の都道府県知事に行なうというところから法的な手続が始まるわけでございます。
それで、この保安林に指定することにつきましては、法のたてまえといたしましては、必ずしもその森林の所有者がその指定を拒むということで、それを控えるというようなことにはなっておらないわけでございますが、しかし、実際の取り運びといたしましては、あくまでも森林所有者との納得でこれは進めてまいる。その場合に、いま申し上げました農林大臣から指定の予定通知がまいります。で、都道府県知事は、それを受けまして、予定の告示をその県公報に載せる。そうしてそれを一般に周知させることになりますが、その場合に、その指定について異議がございますと、その利害関係人は、農林大臣に対して一異議の申し立てをすることができる。それに応じて公聴会も開くことができるというふうに、法のたてまえ上なっております。そういう手続を経ながら、その森林所有者の納得を十分に経て、そうしてその指定につきましては慎重に進めてまいるという態度で進めているわけでございます。
それから補償につきましては、これは一現在のところ、この保安林のうち禁伐林、それから択伐林につきましては、それぞれこの森林法によりまして、その森林所有者がその保安林の指定によって通常受けるべき損失に対するものを補償するということで、補償をその二つの伐採樹の保安林につきましては行なっておるということでございます。
それから、なお固定資産税の問題につきましては、これは民有保安林につきましては、保安林につきまして固定資産税は免除ということになっておりますから、一方、関係の市町村に対しましては、それぞれの華準財政需要額と、それから基準財政収入額との差の中で固定資産税分が積算をされるという形で、それはその面から補てんがされておるというふうに考えている次第でございます。以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/23
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024・北條雋八
○北條雋八君 ただいまのお話しで、大体わかりましたけれども、ただ、伐林に指定されて、持ち主としては、その指定がなければ伐期に達している林木なら当然それを伐採して自由に金にするわけです。これを金にすることもできないというような場合の損害の算定としましては、結局現在立木になっているその伐期に達した木材全部の価額を算定して、そうしてその価額に対する何パーセントかを年々資本に対する利子と同じような意味で、補償をしておるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/24
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025・田中重五
○政府委員(田中重五君) 禁伐林に対します補償につきましては、その禁伐林の標準伐期齢以上のもの、したがって、別の考え方で申し上げますと、成長量、その分につきましてこれを補償の対象といたしております。それで、いまの成長量分といたしまして五%を基準にして計算をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/25
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026・北條雋八
○北條雋八君 成長量の五%、成長量を金に換算して。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/26
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027・田中重五
○政府委員(田中重五君) 五%と申し上げましたのは、これはこの禁伐林の立木価格の五%でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/27
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028・北條雋八
○北條雋八君 そうしますと、それは同じ樹齢のものがずっとそろっておれば、この林は補償があるということがすぐわかりますが、もしばらばらに伐期に達したものだの、あるいはまだ伐期に達していない幼齢樹がまじっている場合には、そういう一々伐期に達しているものを測量して、そうして補償の単価を出すのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/28
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029・田中重五
○政府委員(田中重五君) いまおっしゃったとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/29
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030・北條雋八
○北條雋八君 すると、その伐期に達しているかいないかということは、単に樹齢だけでなしに、これは認定はだれがするのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/30
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031・田中重五
○政府委員(田中重五君) それはやはり標準伐潮齢というものを樹種ごとにきめておりますので、それで算定ができるようになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/31
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032・北條雋八
○北條雋八君 次に、この水源涵養保安林というものは、これは単に現在の森林ばかりに限らないで、遠い将来を考えた場合に、ここでどうしても水源涵養保安林を置かなければならぬというような場所もあると思うのです。そういう場合には、現場は木がないところでも、そういうものは水源涵養保安林として、これを民有林から買い上げて、そうしてそれに造林をして、保安林の整備をしていくということも必要じゃないかと思うのです。場合によれば。いままでそういうような例はありましょうかどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/32
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033・田中重五
○政府委員(田中重五君) 現在のところまだ、いま仰せのような例はないようでございますけれども、そういう場所に対する施業の考え方といたしましては、そこは保安林の存在の必要性があるのにもかかわらず何らかの気象的、あるいは地形、地質の原因によって原野になっているというような所でございましょうから、つまり森林の成立が困難な状態に置かれているということになりますので、そこで、そういう場所はやはり森林法に基づきまして保安施設地区に指定をしまして、そこで、保安施設事業からまず着手をする。保安施設事業としてのもろもろの山腹工事、その他あるいは立木の植裁、そういうことを進めながら、そこに森林の成立が可能になるような基盤をまずつくっていきたいということで進めております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/33
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034・北條雋八
○北條雋八君 次に、指定と反対に、今度は解除のことについてちょっと伺いたいと思います。
この整備計画の実行中、すなわち過去十カ年間におきまして保安林解除の件数はどのくらいあったんでしょうか。またその面積はどのくらいになっておりましょうか。また解除の理由はいろいありましょうけれども、どんな場合が一番多いのでありましょうか。耕地の庇陰になるための、庇陰障害の場合もありましょうし、また実際保安林として置いておく必要がなくなったという場合もありましょうし、また、最近では経営規模の拡大から耕地を広げたいというような事柄もありましょうが、大体どういう場合が一番多いんでしょうか、その点を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/34
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035・田中重五
○政府委員(田中重五君) 解除の事例を昭和三十七度で見ますと、国有林で二千ヘクタール、民有林で五千ヘクタール、合わせて七千ヘクタールの解除の事例がございます。それで、これらの解除の転用の目的といたしましては、いまお話のございましたような道路、それから学校敷地送電線敷地、そういうもの、公益上の必要による解除が約七割でございます。それからあとが果樹園、それから一部住宅敷地というようなものがございます。解除の実態は三十七年度について申し上げますとそういうことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/35
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036・北條雋八
○北條雋八君 もともと狭い土地を満度に利用しなければならない農山村におきましは、特に昨今は農業構造改善事業の経営規模の拡大というようなことにも迫られますし、保安林解除の申請は相当これからもふえてくるんじゃないかと思われるんですが、この保安林解除の取り扱いというものは、これは保安林指定の取り扱いとは違いまして、非常に厳密にやる必要があると思うのでありますけれども、現在では、指定の場合も解除の場合もあまり変わりがないように聞いております。たとえていうと、指定の場合、一号から三号までの保安林につきましては、これは農林大臣の権限になっております。しかし、四号から十一号までといいますか、局所保全の区域では、これは地方長官会議の権限になっておるように聞いております。解除の場合もそれと同じとしますれば、やはり四号から十一号までの保全、局所保全の区域は地方長官会議でできるわけでございます。そうしますと、非常にルーズな審査になってきて、ときには非常に無定見な、また解除をやって取り返しがつかないことになるようなことがあるんじゃないかと心配するのでございますが、その点はどういうふうに考えていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/36
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037・田中重五
○政府委員(田中重五君) 保安林の解除につきましては、確かに御説のとおりに、特に慎重を期する必要があるというふうに考えます。そこで、保安林の解除の場合といたしましては、まず、保安林の指定の理由が消滅したというような場合、さらに公益上のそれの転用の必要性が生じてまいったというような場合でございますが、そこで、その保安林の解除につきまして、その取り扱いが乱用をされませんように、その方針の統一をはかる意味で、林野庁といたしましては、「保安林の転用にかかる解除の取り扱いについて」という通達を特に昭和三十六年に発しまして、そうしてその手続の慎重を期している次第でございます。それで、その解除の場合におきましても、この保安林の重要度に応じまして、これを三つの種数に分けて、そうして特に渓流、河川の河岸、そういうところで傾斜の急なところ、これもそれぞれ価斜度が示されておりす。けれども、そういう急激な、急な傾斜の場所であるとか、あるいは一たんそこの林地が裸地になれば再び林地に回復することが困難である半面、そこの崩壊が生じやすいというような場所につきましては、特に第一位といたしまして、その解除はこれをつとめて避ける、それからその保安林によりましては、その必要性の比較的軽微なもの、そういうものを第三位に置きまして、その中間のものを第、位といたします。そうしてそれぞれの保安林のそのような重要度に応じて解除するにいたしましても、つとめて軽微なものから、それを利用するような指導も行なうというふうな手続上の方針を示しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/37
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038・青田源太郎
○委員長(青田源太郎君) ちょっと予定を過ぎましたね。まあどうぞ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/38
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039・北條雋八
○北條雋八君 現在水資源の対策といたしまして、保安林をもっとふやしていかなければならないという整備を促進すべきときに、また一方では解除の申請がだんだんふえてきて、保安林を解除していくというような非常にこれは不合理なことだと思いますから、解除の取り扱いにあたりましては、調査を厳密にしまして、そうして大局的の立場で慎重に処理していかなければならぬと思います。昨年八月に、池田蔵相が青森の一日内閣で、国有林の開放を言明しました。それで、帰京されてから首相の指示によりまして、次官通達など出されておるということでありまして、国有林の開放の行き過ぎが現実の大きな好ましくない課題になっておる際でありますから、国有保安林にまでその影響を及ぼしたらそれこそ一大事でございますから、保安林の解除に対しましては厳正な配慮を持たれて、そうして将来に悔いを残さないようにしていただきたいということを最後に申し上げまして、これに対して長官のお答えをいただいて、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/39
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040・田中重五
○政府委員(田中重五君) そのお説まことにごもっともでございまして、そこで、いまお話しのございました国有林野を農業構造改善事業に活用するという場合におきましての一定の指針を示しておりますが、その冒頭には、国土の保全等の国有林の地域は農用地の転用を原則として避けるというふうに明記もいたしておりますし、そういう御趣旨につきましては十分に慎重に進めてまいる所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/40
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041・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 時間もあまりありませんから、問題をしぼってお尋ねをいたします。
元来この法律は、緊急に保安林を整備するために十年を限って出されたものでありますが、その法律が出てから、進捗状況は全体としては当初計画目標に対しては一〇三%という実績を示しておる。しかしながら、その間における高度経済成長政策というような中で、水の需要というようなもの、そういうものの新しい課題が提起されて、さらにこの時限法を十年延長するという提案理由の説明から理解されるのでありますが、その十年をさらに延長をするという根拠が一体どこにあるのか、先ほどの質疑の間にも、今後保安林の整備の予定というものが百万ないし百五十万ヘクタールという答弁だったとうかがうのでありますが百万と百五十万では、これはおそろしく違うことであって、大ざっぱ過ぎるのではないかと思うのであります。一体十年をさらに延長しなければならないというその基礎的なものが、精密な調査は別として、なければならぬと思う。でないと、従来緊急に整備をしなければならぬというので、十年の時限立法をやったと同じように、さらに今後十年を経過しても、再びまた期限延長しなければならぬというようなこともなきにしもあらずと思われるわけです。一体十年を延長するというそのよって来たる計数を踏まえての根拠はどこにあるか、これがまずお伺いをいたしたい点であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/41
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042・田中重五
○政府委員(田中重五君) 現在の保安林整備臨時措置法をさらに十年延長をいたしまして、保安林の整備をはかってまいりたいという考え方の最も根本になりますものは、今後のわが国の産業経済の発展に伴いますところの水需要の増大、それに対応するために、水源涵養保安林を主体といたしまして保安林の整備をはかりたい、こういう考え方でありますがゆえに、そこで、将来の水需要につきまして、当面、昭和四十五年ないし昭和五十年の時点を目標といたしまして、その時期におきますところの水の需要量に、この保安林の整備によりまして、その水の供給の重要な部分について供給の確保をはかりたいというのが考え方の根本でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/42
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043・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 私のお尋ねするのは、そういう大上段の考え方はわかるわけでありますが、したがって、実は時間さえあれば、水資源についての担当庁である経済企画庁からも総合的な、水資源開発促進法に基づいてその後作業をされてきた総合的な利水の計画というものも伺いたかったのでありますが、それはまあさておきまして、少なくともこれから三十九年度に予算がついた調査費をもって調査をするということは、私は非常にどうも時期を失しているという感を抱かざるを得ないわけです。というのは、今後さらに保安林を積極的に整備しなければならない外因的な要因というものは、何も三十九年度に出たことではなしに、かなり前からこういう点は従来も保安林整備計画を再検討して、さらに大局的に前進しなければならないという課題はあったわけであります。したがって、ここで時限法がぎりぎりというときに、あらためて調査をし、その内容を盛り上げるということは、いささか本末転倒の感を抱かざるを得ないわけです。もっと前に、それらの実態をよく踏まえて、その中で十年がはたして適切なのか、あるいはもっと短期間に——私とすれば、この保安林の整備というものは、国土保全なり水資源の涵養保安林の整備を中心とする計画がスタートを切らなければならない。その内容の中で、期限延長の点も十分納得するということでなければならないと私は思うのであります。この法律が通ってから、あらためて調査をして、その上で、百万ないし百五十万というのではいささかどうも政府のこれに対応する態度といいますか、かまえ方は遺憾に考えられるわけです。一体今後さらに保安林を整備していかなきゃならないというものに取っ組んでいく場合に、この百万ヘクタールないし百五十万ヘクタールという中にも、国有林あり民有林ありでしょう。そういうものをどういうふうに配慮をしていくかということも実は問題はあるわけで、国有林の中の配置という問題もありましょうし、民有林の買い上げという問題もありましょう。買い上げる場合には、法律にきめておるように時価で評価するということもきわめてこれは困難な問題である。これはすでに、衆議院の農林水産委員会でかなりの時間を費やして質疑をいたしておりますから、私は重複を避けてそういう点は触れませんけれども、何かどうもこの保安林の整備ということに対する政府のかまえ方というものは後手後手というふうな感じを抱くわけです。その点はまあ内容に入って伺えば明らかになることだと思います。
そこで私は、きょう科学技術庁に資料を要求して出席を求めておるのでありますが、すでに科学技術庁では、治山治水に関する具体的な調査を遂げられておる。一つの河川に三カ年をかけて筑後川、木曽川、石狩川、吉野川という流域を中心とする水資源という課題に取っ組んでおる。特に筑後川においては、森林の水源涵養機能という立場から具体的な調査をしておる。これがすでに三十二年にできておるのであります。したがって、衆議院ではこの内容まで触れた問題が審議されていない。私は、こういう具体的なデータがあれば、そういうデータをもとにして、一体政府は総合的に、その大きな筑後川なら筑後川の流域を中心とする保安林の整備というものがいかに打ち立てられておるかということを具体的に伺いませんと、全体がばく然としているだけに、なおそういう現実に提起された課題の解明なしには、この法案に対する納得する理解というものが出てこないわけであります。そこで、順序として資料を要求いたしたのでありますが、余分がないというところで、各委員には配付がなかったようでありますから、科学技術庁の局長から、特にこの筑後川に対して、「森林からみた治山治水上における河川流域の現況および考察」が出ております。その保安林の立場から一体どういうふうにその考察がなされておるか、そういう点をかいつまんで説明を願いまして、それに対して農林省としてはいかに取っ組んでおるかということを次に伺いたいのであります。すでに三十二年にこういう課題が提起されているわけでありますから、特にこの筑後川の上流地帯はかなり問題が保安林の整備の立場からは提起されております。たとえば保安林のさらに奥地に原野が存在しておるというようないろいろ問題があるようでありますから、その点をまず科学技術庁から、一つの具体的な流域を中心とする課題がどこにあるかということを御説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/43
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044・橘恭一
○政府委員(橘恭一君) ただいま渡辺先生が言われました資料は一昭和三十二年の資源局資料「森林からみた治山治水上における河川流域の現況および考察」の「筑後川流域の部」でございます。その前にちょっとお断り申しておきますが、その調査報告は、森林あるいは保安林等の重要であることを実際の筑後川についてケース・スタディを行ない、そのように有効であるという現象を主として述べました。
しからば、実際にどのように水源涵養としての保安林を整備すべきかというその調査、検討のメソッドについては、まだ当時論及するに至らず、三十八年後半に至りまして、「流域別一次利水の概況」という別の資料で調査メソッドについて提案したような現状でございます。
本論に入りまして、筑後川について申し上げますが、これは昭和二十九年度から三十一年度にわたりまして、資源調査会が専門委員を動員してやったわけでございます。筑後川を取り上げました理由は、これは非常に、例の筑紫二郎という大きな河川で、たとえば東北でいえば北上川、あるいは信濃川とか、吉野川、利根川そういうものに肩を並べる重要な河川で、いろいろ資源的にも、また自然条件、社会経済的な流域の条件等も、非常にこの下流に大平野を控えまして重要な意味合いがあり、この保全上の価値が非常に大きいということであります。森林関係としてひとつ別個にこの水の問題を取り上げておりますのは、日本の地形から見て、また森林の占める面積から見て、森林のファクターが非常に大きいという点もあわせて申し上げたいと思います。そこで、さらにその取り上げた理由といたしましては、上流に非常に有名な林業地帯、たとえば日田の林業地とか、小国の林業地、そういうものがありますにもかかわらず、原野が多くて森林の率が低いということであります。そういう特徴があります。それから保安林が比較的少ないのでございます。流域の全部の森林面積に比べまして保安林が。これは大部分水源涵養林であります。そういうような特徴があることを念頭に置いておいていただきたいと思います。
大体やりましたことは、森林から土砂が流出する状況、あるいは洪水時の大量の流出、あるいは普通、雨が降ったときに地表に水がどう出ていくかという実態の過去の記録、あるいは現地の技術的な測定等をやりまして、いかに森林というものが水収支あるいは流域の保全に影響しておるかという、そういうことを明らかにして、その一つの有益な資料としたのであります。報告書は分厚いものでございますが、その中から特に要点を簡単に申し上げたいと思います。大きく分けまして、森林と水との関係、それから森林と土砂の流出、あるいは土地の崩壊、そういうような土との関係、もう一つは、しからばどのような保全対策が必要なんだろうか、そういう三つのことをいまから申し上げたいと思います。
まず水でございますが、水につきましては、大体五点ぐらい特記すべきことがあります。そもそも森林の機能は、その森林土壌の浸透度と申しますか、先ほどもお話ございましたが、そういう機能が非常に決定的な大きなメリットでございますが、ここでは、そう言えば一言で済んでしまいますけれども、そういうことによって起こってくる非常に有利な現象を、逐次御説明申し上げることになるかと存じます。
水の第一番目は、林地と草地、それを比較しますと、林地のほうが地表流下量が草地の流下量より少ない。特にそれがどしゃ降りの雨と申しますか、強い雨が降ったときに非常に著しい。一見傾斜が急であれば、だだっと流れるかと思うのでございますが、逆転現象が起きまして、たとい急な場合でもかえって少ないことさえもある。そういうぐあいにその森林のメリットが出てくる。それから次は洪水時に多量の水が流出する、そういうような場合も、林地からの流出というのは非常に少ないのでございます。たとい雨量が多いとか、傾斜の分布が非常に不利だとか、あるいは河川勾配が非常に大きいとか、そういうような不利な条件がありましても、林野の占める森林率が多い場合には、けっこうそれを補って逆に流出が少ないのだという結果になっております。もちろんこれは何の比較かと申しますと、ちょうど筑後川の上流のほうがY字形になっておりまして、Yの一方は例の熊本県の小国のほうからの一つの川、それからYの片方のほうは大分県の英彦山系から出ます玖珠川というのですか、その二つのY字形の川を比べまして、いまのような結論を得たわけでございます。それから水の三番目といたしましては、ややその流域を広い範囲で考えていきますと、ちょうどそのすぐ前に、昭和二十八年に例の水害がございまして、そのときもはたせるかな、その林野の森林率の大きい流域のほうが流出が少なかった。洪水でどっと出るのが少なかった。こういうことで、いわゆる洪水というのはピークがあり、どっと出るから困る。そういう最大洪水量を押えることができれば非常にぐあいがいい。その最大洪水量も、やはり一見こちらのほうがたくさんあるかと思ったところが、やはり森林がうまくできているほうが逆に最大洪水量を押えた。いわゆる逆転現象と申しますか、そういうのが起きている。それから四番目としては、結局川の水の流量がなるべくコンスタントに平均していくほうが、これは当然便利なわけでありまして、そういうリザーブ、貯蔵機能的なものもありまして、その平均化にいたしても、やはり森林のファクターが大きく響いて、ほかの不利の条件をカバーしている。それから最後は、ちょっと小さいのですが、やはり戦争中から、かなり森林が荒れているわけでございます。この日田なんか二百年も前からいろいろな植林をやっている。杉などで有名なところですが、多少そういう増伐のきらいがあるときに、われわれとしては、ちょっとした小規模な洪水がちょこちょこ出ている。そういう林相悪化と洪水の関係も、やや一定の相関関係を持っておる、そういうようなことがわかります。以上五点ばかりが水に関することです。
次は大きい柱の二番目の土砂あるいはそういう土との関係でございます。これはすぐに思い当たることが、いわゆる水が流れまして、何と申しますか、土壌の非常な侵蝕でございます。そういうこととか、あるいは亀裂が入った、ひいては崩壊を起こす、そういうようなことにつきましても、やはり例外なく森林の発達しているところが、森林に恵まれているところが害が少ない。かりに亀裂が入っても、それがあまり発達するのを押える、あるいは発生そのものも押える、そういうことです。ついでながら、いわゆる木の種類、あるいは木の年齢、樹齢と申しますか、森齢と申しますか、林ですから林齢と呼んでおりますが、そういうものの一般論を申しますと、壮齢、まあ人間で言うと、壮齢の林のほうが幼齢の林とか老齢の林よりは効果が大きいのです。役に立つ。それから木の種類でいえば、松、ヒノキ、そういうもののほうか、杉とか竹に比べて——杉なんかは経済性はありますが、そういう点ではちょっと弱い。天然林はもちろん人工林よりいいということ、これはついででございます。それから土砂に関しましては、やはり渓谷等の石ころ、土砂がどんどん出ていく、こういう状況も、やはりその渓谷をはさむところの流域の森林の森林率が高いほど、こういう害も少ない。以上土関係。
それから三番目には対策的なことで、どういうようなことを念頭に置いて対策を行なうべきかという点につきまして、その資料の第五章に述べてあるのですが、四点ばかりあります。まず、洪水防止とか山地の荒廃防止、そういうことで草地より林地は有効でありますので、森林の面積を増大するほど効果が大きい、これは当然のことであります。したがって、洪水防止、先ほど申し上げましたそういうことのためには、いわゆる早期治療と申しますか、上流の水源地で森林の洪水調節をやらせば非常にいい、もとで押える。それから先ほどもちょっと森林が荒れたとか、そういうことを申しましたが、森林の質の向上、保安林の適正な施業、それからさらにあの辺は、特に阿蘇地方で感じたことでありますが、原野を林地に転換する、そういうようなことも総合的に判断し、傾斜の限界等も考えて、やはり判断して転換というものが必要ではないだろうかというようなこと。それから三番目は、上流地域における林野の保全施設、そういうものが比較的十分じゃない、そういう場合に二十八年の水害が起きた。そういうようなことで、どうしてもいま言いました水源について、林野のそういう必要性から治山事業が要請される。これは川のことについて調査した委員の希望です。それから、最後は申すまでもなく結局経済的な目的と、それから保全、いわゆる防災的な目的、両方の見地からの森林の経営が必要である。まあそういうことで保安林などの施業の問題についても、いろいろ総合判断をしなければいけないというようなことが私は重要な点だと思います。
以上、何もかも非常にいいことづくめでいささか面はゆい感じがいたします。やはり事実そのとおりであるかと存ずる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/44
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045・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 そこで、私は本論に戻って農林省にお尋ねするのですが、いま私が特に科学技術庁の局長に伺ったのは、森林の立場からこの筑後川流域を治山治水の観点で考察が出ておる。こういう具体的なデータが出ておる場合に、それにすでにもう取っ組んでおると思うのです。この保安林の考察に対しては、筑後川流域で県有、民有林が四千百四十四ヘクタールある、これを水源涵養保安林をその中から三百ヘクタールを解除する、逆にさらに六千二百十ヘクタールを指定する、合わせて水源地涵養保安林としては一万五十四ヘクタールを目標として計画を立てておる、こういうことが指摘されておる。それから土砂流出防備林や土砂崩壊防備林についても一千三百八十億ヘクタールを目標として計画が立てられておる。ところがこの筑後川流域の森林は約十三万ヘクタールであるけれども、そのうち国有林は一四%程度にすぎず、大部分は民有林である。県別に見ても国有林は、上流の大分県で二%、熊本県で六%、中下流の福岡県で一二%、佐賀県で約四〇%、保全上重要な上流水源地帯でも、森林の保全機能に期待されるところは、国有林よりも民有林の比重が大きい。これはいま数字で指摘されたところでしょう。しかし、面積的には少ないが、英彦山系なり九重山糸などの最上流水源に存在する国有林の中には原野、灌木地など立木のない地帯の状況がかなりある。この改良によって森林の保全機能を最大に発揮させる課題が出ておる、こういうことを言うておるんでありますが、現実には従来経過してきた十年の保安林の整備の中で、これがいかなる農林省としては整備の態様をしてきたのか、また今後これがどういう方向で整備をされるか、それが先ほど長官の言うた今後の展望の具体的な内容にもなると思うのであります。河川別に整備をしていくということの中で、すでにこういう課題が出されているものに政府はどう対応していき、今後どう対応するのかということを具体的にお伺いをいたしたいわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/45
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046・田中重五
○政府委員(田中重五君) 筑後川流域につきましてのこの科学技術庁資源局で作成をされております数字の根拠とあるいは相違をするかもわかりませんが、この同じ流域につきまして国有林につきましては経営計画、民有林につきましては全国森林計画に伴うところの地域森林計画、そういうものの数字等の根拠に基づきまして、ただいま資源局で調査指摘をされました趣旨を体しながら実行をいたしました数字を、その当時と現況について見ますと、その数字につきましては、いま申し上げましたように根拠を異にしているので一致をしないかもしれませんが、この傾向はわかると思うのでございますが、この筑後川流域におきまして、森林の状況でございますが、まずその面積におきまして、昭和二十八年当時十二万九千ヘクタールであったものが、その後の原野その他への造林が進みました結果、三十七年度末で十四万八千ヘクタール、一四%の増を見ております。それからその蓄積にいたしましても、その当時千四百六十一万立方メーターが千七百八十一万立方メーターで二二%の増となっております。
で、これが森林の状況でございますが、一方重要河川の流域におきますところの保安林整備計画に基づく保安施設事業でございますが、これにつきましては、この地域におきます治山十カ年計画に基づきますこの部分の十カ年の計画量が、治山とそれから保安林改良事業等を含めまして千六百十七ヘクタールと、こういうふうに数量で計上され、その事業費といたしましては七億三千二百万円と、こういうふうになっております。その十カ年計画に対しましては、現在はこれを金額で申し上げますと四七・二%の進度でございます。保安施設事業につきましてはそのような進度でございます。
なお、保安林の面積につきましては、その当時国有林、民有林を通じまして七千七百九十七ヘクタールございまして、この保安林の面積はこの流域の森林面積に対しまして六%であった。ところが、現在は保安林の配備が進んだ結果といたしまして十七万五十七ヘクタールと、したがって、その森林面積に対しましては一二%となり、またその当時の保安林の面積に対しましては二一九%というふうな進度を示しております。それでただいまたびたび重ねてその重要性を指摘をされました筑後川の流域に、これの流域保全の重要性にかんがみまして、今後その保全のために御指摘の御趣旨を体しまして慎重に保安林の事業を進めてまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/46
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047・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 どうも具体的な課題についてもここで出されている考察とはかなり実態が違うようであります。私どうもこういう具体的なことについてこれ以上貴重な時間の中で質疑を進めることを、非常にまあ時間的に惜しいので、この点は他日機会を見て、もっと具体的にひとつ検討さしてもらうこととして、答弁の中にあった保安施設事業、そういう中でいまの筑後川の場合は千六百十七ヘクタールというものが出されておるわけでありますが、大体この治山治水緊急措置法に基づく治山事業十カ年計画というものは、すでに三十九年度で計画の前期を終了するわけでありますが、この復旧治水なり、予防治山なり、あるいは予防林なり、保安林の整備なり、地すべりというようなこの十カ年計画というものは、現在ある荒廃林地なりあるいは荒廃移行林なり、三十四年からはさらにそれを細分化して、災害危険林地、要改良林地と、こういう四項目に出しておるのでありますが、この荒廃林地の実態、既存のこういう実態に対して、治山事業の十カ年計画は、およそ既存のこれらの面積に対して何割を取り上げておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/47
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048・田中重五
○政府委員(田中重五君) この現行の治山十カ年計画の始期におきましては、その当時に現存するところの荒廃地、約三十二万ヘクタール程度でございますが、それからその時点で、年々発生しております荒廃地四千八百ヘクタール、約五千ヘクタールでございますが、そういうものを復旧あるいは予防をしながら、その七割、それから年々発生する荒廃地につきましては、それをほぼ年々千あるいは千二、三百ヘクタールの発生にまで縮減をするということで、結局、昭和の初期に比較的国土の安定しておったと考えられる状態、つまり荒廃地約十万ヘクタール前後、年々の荒廃発生面積千ないし千二、三百ヘクタールの状態に復元をしたい、こういう考え方で計画ができております。重ねて申し上げますと、大体その当時の荒廃地の面積の七割をこの十カ年計画でおさめたい、こういう計画でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/48
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049・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 いずれこれは私は大臣にお尋ねをするのでありますが、現在、既存の荒廃林地の七割が、この治山事業の十カ年計画の対象である、これが一つの大きな問題であります。それから新たに発生する毎年の荒廃地が約五千ヘクタールある。これも予算的な裏づけ等は、七年くらいを要するような実態であるということは、とりもなおさずこの保安林に対する政府のかまえ方というものは、かなりどうも消極的である。それは財政、予算の制約等を受けてそういう形になっておる。私はこれでは保安林の整備計画は今後十年を経過しても、なかなかその目途とするところに到達することは至難であると考えるわけであります。なぜこういう荒廃林地の七割程度が治山事業の対象になるのか、これはもとより高度経済成長政策の中に組み込まれておる項目であってみれば、なおさらこの点については、もっと積極的な施策をこれに講ずるということがなければ、私は十年延長しても、この保安林の整備というものは、日暮れて道遠しの感が今後十年後には出るのではないかということを憂うるのであります。そこで、こういう問題については、最高責任者であるこれは農林大臣に午後お尋ねをいたすことで、私の午前の質問はこれで打ち切っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/49
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050・青田源太郎
○委員長(青田源太郎君) ここでしばらく休憩し、午後一時二十分から再開いたします。
午後零時三十六分休憩
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午後一時四十五分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/50
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051・青田源太郎
○委員長(青田源太郎君) ただいまから委員会を再開いたします。
この際おはかりいたします。
住宅地造成事業に関する法律案について、建設委員会に対し、連合審査の開会を申し入れることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/51
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052・青田源太郎
○委員長(青田源太郎君) 御異議ないと認めます。さよう決定いたします。
なお、連合審査会の開催の日時につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/52
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053・青田源太郎
○委員長(青田源太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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054・青田源太郎
○委員長(青田源太郎君) 保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、休憩前に引き続き質疑を行なうことにいたします。
質疑のおありの方は、御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/54
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055・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 提案されております保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案でありますが、従来、この法律が出発をいたしました際は、昭和二十八年の大災害によって、これらの保安林整備が緊急の課題として立法化、された経過があるわけでありますが、再びこれを十年期限延長するということでありますが、この十年を限ってさらに延長するというそこには、具体的な内容を当然踏まえて出されたものだと期待をいたしておったのでありますが、いままで審議の経過を通じて明らかになった点は、それは具体的には、三十九年度に予算化された調査費というものによって、全国の河川別の流域を中心として実態調査をした中から具体的に出てくるというふうに答弁がなされたわけでありますが、そのことは当然、ことしの四月末で期限が切れる法律であることは、前から明らかであったわけでありますので、もっとこの点を早急に今後さらに期限延長しなければならない実態というものを把握して、その調査のデータに基づき期限延長というものが取り上げらるべきものだと考えるのでありますが、
〔委員長退席、理事櫻井志郎君着席〕
結果的には、調査をこの法律が通過したあとにした上でなければ明らかでないということは、何としても納得しがたい点があるわけであります。しかしながら、事務的にはそういうことであっても、大臣としては、大局的な見地から、この時限法を今後十年延長することによって、国有林の場合、民有林の場合どれだけのさらに保安林の整備を目途とするかということは、十分勘案の上に出されたと思うのでありますから、その点をまず大臣からお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/55
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056・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 調査費も計上いたしておりますけれども、従来とも保安林の整備を進めておったのでございますから、この法律の施行を延長いたして、いままでの調査もありますから、その調査に従って、緊急急速に整備をはかってまいるべきである、また、まいりたいつもりであります。
〔理事櫻井志郎君退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/56
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057・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 急速に整備をはかるということでありますが、政府から出された資料を見ますと、昭和三十八年度においても、推定でありますけれども、荒廃林地なり、あるいは荒廃移行林なり、災害危険林地なり要改良林地なるものが、四十万ヘクタールの多きに達しておるわけであります。ところが、この荒廃林地の実態に対応する施策の一つの具体的なめどとなるものは、治山治水緊急措置法に基づく治山事業の十カ年計画があるわけであります。これはいまの現存しておる荒廃林地あるいは要改良林地、これに対して七割をこの治山治水事業の目標に立てておるわけであります。ここに私は問題が二つあると思うので、二点にしぼってお伺いをいたしますが、なぜこの治山事業そのものの十カ年計画に、既存の荒廃林地に対して七割だけを計画にのせるに過ぎなかったのかということであります。もっと端的に言えば、既存の荒廃地は十カ年の治山事業計画の中で、完全に解消すべきものではないか、こういうふうに考えるわけです。なぜ七割にこれを制約をしておるのか、これが第一点。
それから第二点は、既存の荒廃地三十万ヘクタールのほかに、年々発生する新たなる荒廃地がおよそ五千ヘクタールと推定されるのでありますが、この既存荒廃地を七割に見、新たに毎年発生する大体五千ヘクタールというものを一体何カ年でこれを復元するということになっておるのか、この点をまず問題としてお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/57
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058・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 治山計画との関係で、保安施設事業が十割計画すべきものが、七割という少ない対象であるのはどういう理由か、実は十割やるのが当然の計画でございますが、財政上の関係、建設省の治山治水事業関係等との調整から、資金の可能性の限度ということで、七割を対象にしておる、これは実情でございます。実情はそういうふうなことで七割ということであります。あるいはまた、年々五千ヘクタールの荒廃林が出ているのでございますが、これは七カ年で復旧するということでしておりますけれども、これを、完成年数をおくらす措置をとるのはおかしいじゃないか、こういうことだと思いますが、これは私はいままでの実績が御承知のように、事業量では五カ年で六二%でございますが、そのわりあいに経費は八六・四%、荒廃地が五千ヘクタール以上になったり、あるいは人件費が多かった結果、事業費に比較いたしまして経費がよけいにかかっているわけです。しかしながら、いまお話しのようにできるだけ早い機会に復旧するように、完成年数を短縮するように検討させたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/58
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059・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 念を押して伺いますが、既存荒廃地に対して治山十カ年計画は七側を見ておる。それを十割を見るべきであるけれども、資金、予算の面等によって七割を余儀なくされている。しかし、これを十割まで完全に治山事業の対象として保安施設事業の分量に高めるよう努力をするという旨の御答弁がありましたが、ぜひこれはこういう荒廃林地に対しては、これらの計画の中で七判しか見ないという財政、金融の制約というものを排除して、完全にこの法律が意図しておる保安林整備を完成するように、これは大臣としては特段の善処を望むものであります。
なお、毎年発生する新しい荒廃林地五千ヘクタールは、いまも大臣の御答弁にありましたが、予算措置で七年という年限が制約をされておるそうでありますから、こういうものも期限を半減することはむずかしいという御答弁でありますが、圧縮するように努力するということでありますから、私もその大臣の御答弁を全幅的に信頼をいたしまして、七年というそういう予算の年限というものを、少なくとも四年くらいにこれは圧縮をしませんと、この緊急措置法に基づく趣旨は一〇〇%達成されないと考えます。繰り返しますが、既存の荒廃林地に対しては、十割を完全に保安施設事業の対象として盛り込んでいく、新しく発生する荒廃林地約五千ヘクタールも、これは従来の約束ごとにとらわれることなく、大臣の大局的な善処によって、少なくとも四年くらいにこれを圧縮して、保安整備の対象にしていくということについて、大臣の重ねての御答弁をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/59
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060・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) そのとおり考えて進めていきたいと思います。ただ、最後の七年を四年間と、こうはっきり年数についてお約束はなかなかむずかしいと思います。できるだけ短い期間に復旧するような進め方をしていきたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/60
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061・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 では関連してお伺いいたしますが、すでに樹立されておる治山治水緊急措置法による治山事業は、三十九年をもって前半の五カ年を経過する段階に来ておるわけであります。今度の法律を一郎改正する趣旨からいいましても、水資源の涵養、保安林の当初考えた以上に重要な役割り、国土保全の一そう緊要な役割り、一方には水利用の高度経済成長政策に基づく大きな変貌等があるわけでありますから、この際治山治水緊急措置法に基づく従来確立された十カ年治山事業というものを白紙に返して、新たなる立場からこれを長期計画として確立をし、具体的な実体法の中でそれを実施していく必要が、今回の保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律の趣旨からいっても当然なことだと期待をいたすわけであります。一昨日の委員会では、田中長官からは、そういう意味の答弁もあったのでありますが、その点についてこの際新たなる角度で、この客観的な情勢の変化に対処して、治山治水緊急措置法に基づく長期の計画の確立をされる御意思があるやいなやをお伺いいたしたいのであります。もとより私が申し上げるまでもなく、この計画は高度経済成長政策に織り込まれているだけに、これに対するまた国民の期待も大きいから、それを特に大臣にお尋ねをいたすわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/61
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062・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 御承知でしょうが、ことしの予算を提出する際に、いろいろ計画を審議したわけでございます。道路の計画その他十カ年計画、五カ年計画を立てたのでございます。その際も問題になりました治山治水計画改定をして早く出すべきじゃないか、こういう議論が閣議でもありました。私などもその線から進めようとしたのでございますが、いまお話のようにもっと根本的に検討した上でつくる、時間の余裕を必要とする、こういうわけで延びてきておるのであります。そういう実情でございますが、三十九年度、ことしはどうしても計画を立て直して、いうところの前向きでやらなければならない。建設省の治水計画等とも十分調整して、保安林の整備によるこういう治水事業等につきましても、十分私どもの考えを盛り込んで進めていきたいと、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/62
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063・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 次にお伺いいたしたいのは、現実に三十九年度に保安林を民有買い入れの場合、買い上げる措置というものがあるわけであります。その際に十カ年計画という今後の期限延長の法律の中で買い入れの対象となるものが、一万七千ヘアタールと予算の上で出ておるわけであります。で、これを買い入れる単価が問題の一つであります。単価は四万七千円というヘクタール当たりの単価を計上しているようであります。政府から出ている資料によりますると、二十九年から三十八年までの買い入れ実績に対する実績単価は四万六千九百八十八円、約四万七千円であります。おそらく過去の買い入れ実績の平均単価を、三十九年の買い入れ単価に予算上立てられたと思うのでありますけれども、この年次別の買い入れ単価の動向を見ましても、逐年この買い入れ単価が、一応傾向としては高くなってきている。ただ三十一、三十二年は非常に買い入れ実績も低い。これはまあ当時木材価格が高騰した等のことによって、買い入れが鈍化をしたことであろうと、この表のうちでは読み取るのでありますが、少なくとも三十六年も七万一千七百八十八円、三十八年はまだ締めておりませんから予想のようでありますが、七万七千円、こういうヘクタール当たりの単価なのに、二十九年から三十八年までの年度を通じたところの算術平均の四万七千円という単価では、またぞろ、この三十九年一年における保安林の進捗も、この予算に制約されて、困難な事態に立ち至るのではないかというふうに考えるのであります。繰り返しますが、三十八年は単価が七万七千円であります。それを四万七千円という単価で、三十八年対象保安林を買い入れるということでは、このことでまた十カ年延長しても、こういうような予算の制約では、私は保安林の買い入れというものは、非常に大きな暗礁に乗り上げるだろうと心配をいたすのでありますが、まあ数字のことでありますから、大臣に伺うのもどうかと思うのでありますが、私は大臣に伺いたいのは、予算単価が一応四万七千円だけども、現実にそれ以上対価を支払う必要がある場合には、これを弾力的に運用して、少なくとも予定された買い入れを進捗させるという大臣の措置が考えられるかどうかということを、大臣にお伺いをいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/63
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064・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 二十九年から三十八年の平均が四万六千余だと、こういう過去の平均で出すということが単価としていいかどうか、これは私も疑問だと思います。また昨年あたりが七万七千円だということですが、これもどういう根拠か私も調べておりませんか……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/64
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065・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 実績ですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/65
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066・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 平均ですか……。そういう点から見るというと、予算の立て方が少し過去の平均ではどうかと思います。最近の単価を計上したほうが、まあより適当じゃないかと、いまお話を聞くとそういうふうな感じがするのでありますが、しかしまあ、これは過去の平均で予算単価を計上して、予算も通っております。したがいまして昨年度の平均が七万七千円だという——市街地とは違いますからそう上がることはなかろうと思います。奥地ですから。といたしましてもだいぶ予算単価と昨年度違っております。でございますので、いろいろ実際に保安林として国が買収する場合において、予算単価をこえるような場合があるかと思います。そういうときにはやはり必要経費の確保について十分考えていくべきだし、そうして保安林を整備していく、こういうことが国の政治の全体としてなすべきことだと思いますので、十分予算といいますか、単価の高い場合には現実的に必要経費の確保につとめていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/66
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067・田中重五
○政府委員(田中重五君) なお補足して申し上げたいと思いますが、今回お認めをいただきましたならば、この法律に基づいて進められるであろう買い入れの事業につきましては、買い入れの一方で合理化等の措置を合わせ行ないながら進めてまいる所存でございますが、今後の水源涵養保安林を主体にするところの保安林の買い入れにつきましては、その位置的には相当奥地になるであろうことが予想されますのと、またその地帯の立木蓄積のきわめて少ない、粗悪な林相の地域が多くなるであろう、こういうふうに考えられますので、在米の貰い入れの実績単価が、必ずしも標準になるとも考えられないのでございます。できる限り買い入れ単価の妥当適正を期して進めてまいりたいと、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/67
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068・渡辺勘吉
○渡辺勘吉君 適正妥当を期すということでありますけれども、私の心配するのは、現実に三十八年は七万七千円の単価であるものを、過去十数年の平均をとって四万七千円にするために、適正妥当ということの運用が、不当に安い値段で民有林の買い上げをすることがあっては、これは困るということです。だから長官の言うように、適正妥当というものは一体どういうことかということが、また問題になるわけであります。第七条には、これらの買い入れの価格は、時価主義をとっておる。それでこの時価というものが一体民有林の場合には、流通性のない、こういう特定の山林に対しては流通性がないのに、これは時価というものが一体発生するのかどうかということが問題なわけです。流通性があれば、これは近傍の売買価格とか、あるいは地価で算定するわけですけれども、これはそういう地形上からいって近似値を求めることすら、なかなか、困難であるというような問題があるわけでありますし、前回の委員会の質問にもありましたように、地租免除のために地価の算定ができないという実態にこの保安林が置かれておる。税務署でも相続税で一番頭をかかかえているのがこの保安林の時価の評価であります。不動産研究所の統計でさえも、山林地に、保安林を除いて山林地の平均単価を出しておる。こういうふうに保安林自体を適正妥当な時価で買い上げるということがきわめて困難である。であるから、私は過去の実際民有林から買い入れた過去十数年の平均単価をとって適正に運用するということでは、これは事務的な範疇において適正ということは、なかなかこれはむずかしいと思うので、この保安林を整備する、機能を発揮する意味において、大臣にひとつそういう場合は現実に即して弾力的にやるという答弁をいただいたのでありますから、そういうひとつ大臣の考え方というものをさらに体して、まさに長官が言うように適正妥当ということを、困難な中にも客観性を求めて、保安林の整備に当たっていただく必要があろうかと思うのであります。まあ大臣の答弁で、私はこれも必ずしもこういう過去十数年の平均、算術平均を単純に見た四万七千円というものではなしに、できるだけ近い三十八年の七万七千円ということもあり得る。そういうときには、大臣としては十分保安林買い入れ促進のために配慮するということでありますから、その御答弁に信頼して、この保安林整備が計画どおり進捗するように、これは期待を申し上げるわけであります。
いろいろこの問題について、大臣にお尋ねをしたい点がございますけれども、そのうち、私は最後に一点だけにしぼってお伺いいたしたいのであります。それは、関係はないものではありましょうけれども、最近国有林の開放というものがムード的にきわめて高まってきております。このことと保安林整備が一応有機的な関連はないのでありますけれども、一体これを大臣は国有林開放というムード的な一つの最近の現象と保安林を整備しなければならないというものと、客観的にどういうふうにお考えになっているかをお尋ねをして、私の最後の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/68
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069・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 最初に、先ほどの林野庁長官が適正妻当に買い入れをしたいということについて、つけ加えて申し上げておきます。事務当局でございますから、予算を離れて買い入れるということは非良心的などと考え、できるだけ予算に計上したものに沿うような考え方をまず持たなくちゃならぬという意味だと思います。しかし、同時に政治的に見るならば、より以上に保安林の整備ということが第一のことでございますから、必要な経費については十分努力するように指示いたしまして整備をいたしたいと思います。
それから、いま国有林の開放と保安林の整備との関連いかん、非常に国有林開放ムードがあって、保安林がなくてもいいんじゃないかというような一面にムードが出てくるということであれば、憂うるべきことではなかろうかと思います。そういう意味におきまして、国有林の開放につきましても、国土保全、こういうことを中心として、国土保全の必要を感じないようなものであって、農業その他の体質改善あるいは構造改善などに必要なものの国有林の開放といいますか、国有林を払い下げるという方針で進めておりますが、このいま議題になっておりますることは、保安林の積極的整備の問題でございます。国有林の開放等におきましても、消極的に保安林を開放するように、治山治水に影響のあるようなものはもう絶対といいますか、開放するものではない。消極的にこれはそういう面で国有林の開放と間違を持っているわけでございます。国有林につきましては、開放すべきものはすべきと思いますが、これは慎重に具体的に考えていきたい、取り扱いをしていきたい、こういう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/69
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070・青田源太郎
○委員長(青田源太郎君) 他に御発言もなければ、これにて質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんですか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/70
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071・青田源太郎
○委員長(青田源太郎君) 御異議ないと認めす。
これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もなければ、これに討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/71
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072・青田源太郎
○委員長(青田源太郎君) 御異議ないと認めます。
これより採決に入ります。保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/72
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073・青田源太郎
○委員長(青田源太郎君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、諸般の手続等につきましては、先例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615007X02819640423/73
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074・青田源太郎
○委員長(青田源太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。
本日はこれをもって散会いたします。
午後二時二十一分散会
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