1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年二月十三日(木曜日)
午前十一時二分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 中野 文門君
理事
北畠 教真君
二木 謙吾君
吉江 勝保君
加瀬 完君
委員
植木 光教君
木村篤太郎君
久保 勘一君
斎藤 昇君
笹森 順造君
野本 品吉君
秋山 長造君
小林 武君
米田 勲君
柏原 ヤス君
高瀬荘太郎君
国務大臣
文 部 大 臣 灘尾 弘吉君
政府委員
文部政務次官 八木 徹雄君
文部省初等中等
教育局長 福田 繁君
文部省管理局長 杉江 清君
事務局側
常任委員会専門
員 工楽 英司君
説明員
文部大臣官房総
務課長 木田 宏君
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本日の会議に付した案件
○教育、文化及び学術に関する調査
(昭和三十九年度文部省の施策及び
予算に関する件)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/0
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001・中野文門
○委員長(中野文門君) ただいまより文教委員会を開会いたします。
昭和三十九年度文部省の施策及び予算に関する件を議題といたします。
この際、文部大臣から発言を求められております。これを許します。灘尾文部大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/1
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002・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 前回、文教行政に対する所信を表明いたしました次第でございますが、その際、種々御意見や御質問がありましたので、さらに私の考えを申し述べたいと思います。
文教の施策は、すべていわゆる人つくりに関連するものと考えるものであります。私は人つくりの目標を憲法、教育基本法にのっとり、そこに定められました教育の目的がよりよく達成されるよう、普遍的に各般の施策を進めることにつとめたいと思うものであります。しかし、わが国の置かれました内外の情勢、国民生活の現実、教育施策の効果の実情によりまして、特に強調される施策のあることは申すまでもないことであります。前回の私の所信は、この観点に立って申し述べたつもりであります。
次に、義務教育無償の問題でありますが、憲法第二十六条にいう義務教育の無償は、国公立の学校において、対価としての授業料を徴収しないことであると解しております。しかし、この義務教育無償の理想をより一そう広く実現するため、国公私立の学校の児童生徒に対する教科書無償の措置を進めているところであります。昭和四十年度には、小学校一学年から五学年までの児童を対象とする予定であり、できるだけすみやかに義務教育の全児童生徒に及ぼす方針であります。なお、学校給食につきましては、父兄負担の軽減をはかる見地から、パン、ミルク代に授助を行なっておりますが、今後とも、その普及充実につとめたいと存じております。その他、教材費、学用品費、通学費等についても、公費を充実して、父兄負担の軽減に資したいと存じます。
次に、高等学校、大学等の入試の問題でありますが、高等学校につきましては、関係各方面の御協力を得て高校急増対策を推進し、本年度においては入学志願者の九八%近くが入学いたしたのであります。また、大学につきましては、志願者の急増期を控え、従来よりも競争が激化しないよう、収容力の拡充をはかりたいと考えております。しかし、最近の入試競争の激化は、能力、適性を無視した父兄の過大な要望によるところも少なくないと思うのであります。入試問題の解決には、この点について父兄の理解と協力を願いますとともに、学校における進路指導の一そうの適正を期待するものであります。
大学教育につきましては、高等学校教育課程の改定に伴い、大学の一般教養教育の改善について検討を進めているところでありますが、今後、総合的な見地から大学の整備充実をはかっていくつもりであります。とりわけ、児童生徒の教育を直接担当する教員に人材を確保することは教育振興の基本であると考え、教員養成の改善について慎重に検討を加え、すみやかに結論を出したいと思っております。
最後に、日教組に対する私の考えを申し述べます。教育行成を遂行するにあたって、教育関係者はもとより、広く一般国民の建設的な意見を聞き、これを参考とするのは当然のことであります。しかしながら、国及び地方教育行政は、教職員組合との話し合いによって決定すべき性質のものではないと考えます。従来の日教組の行動には、職員団体としての限界を逸脱したと思われるものがあり、はなはだ遺憾に存じているところであります。私は、日教組が本来の職員団体として健全に発展することを切に期待するものであり、しばらくその行動を見守ってまいりたいと存じます。
なお、申すまでもないことでありますが、文教行政の成果は、教職員はもちろん、広く国民の理解と協力なくしては達成しがたいものと心得ております。今後一そう努力をいたす所存であります。なお、いろいろ申し上げなければならぬこともあるかと存じますが、いずれまた御質問によりましてお答えいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/2
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003・中野文門
○委員長(中野文門君) それではこれより質疑に入ります。御質疑のおありの方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/3
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004・小林武
○小林武君 文教行政について文部大臣の所信が述べられましたので、それにつきまして二、三の点について質問を申し上げたいと思います。この大臣の所信表明の中にはございませんけれども、新聞紙に発表されました灘尾文部大臣の記者会見における当面の文教政策という点の中で重要な問題の一つとして、教育憲章的なものをつくって教育基本法の抽象的な面を補いたいという意味の、そういう発表はあったのであるかどうか。なお、これは単なる新聞記事であって、大臣の考え方でないのかどうか、そこらを明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/4
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005・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) お尋ねになりましたようなことはございました。私はただ、これはしかし具体的な考えを申し上げましたわけでもございませんし、いろいろ話をしておる中にそういうことばが出たというふうな次第であります。私の心持ちとしましては、教育基本法等に定められております規定が、何と申しますか、あまりにも抽象的である、そういう点もございますので、教育上特に強調すべき点といいますか、あるいは国民が最も望んでおる点が何であるかというふうな点を十分考えますと、もう少し具体的に目標を示すほうが教育上効果があがるのじゃなかろうか、こういうようなお話しをしましたときに、ちょうど児童の問題につきまして児童憲章がありますように、何か教育憲章というものがあったらどうなんであろうか、こういうような実は話をしたことはございます。別に成案があって申し上げたわけでもございませんし、また、具体的な構想をもってお話ししたわけでもない。そのときの話の中にそういうことが出た、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/5
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006・小林武
○小林武君 話の中に出たということでございますけれども、大臣のお考えの中に、教育憲章ともいうべきものが、ある程度形を持っているということをわれわれは想像してよろしいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/6
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007・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 教育憲章ということばにあまりひとつとらわれないでお考えいただきたいと思います。私は教育の目標と申しますか、特に道徳教育、あるいはいわゆる人づくり、こういうふうな問題を考えます場合に、もう少し具体的な表現というものができないものであろうか、こういうふうなことは考えております。現に中央教育審議会に後期中等教育の整備の問題につきまして諮問をいたしておりますが、その教育審議会に対しまして、期待せられる人間像といいますか、私はそのことばはどうかと思いますが、期待せられる人間像ということについても御審議を願っておる。こういう点も、今後の教育の運営におきまして、どういう点に一番目標を置いて教育するのがよかろうか、どういうふうな人づくりということについての努力をしたらよかろうか、こういうふうな点から御審議を願っておるようなわけであります。そういう意味で実は申し上げたのでありまして、別に教育憲章というものをつくるとか何とかいうような具体的な構想を持っておるわけではないのであります。児童憲章というものがあるが、ああいったふうなものがあったらどんなものだろうか、こういうふうな程度でお話ししたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/7
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008・小林武
○小林武君 児童憲章というのが、言ってみれば、きわめて抽象的なものだと思います。文部大臣はどうお考えになっているかしりませんけれども、私の見た限りにおいては、児童憲章を幾ら何べん唱えてみても、児童憲章にうたわれている内容が実現するわけでも何でもない。私は、だから児童憲章をひとつお考えになって、そうして問題点として感じますことは、教育基本法の抽象的な面を補なうというところに、私は大臣の今の御答弁とは違った意味を、もっと深いものを何か感ぜざるを得ないわけです。教育基本法を抽象的だとおっしゃるのであれば、児童憲章もまた抽象的なんです。一体そういう抽象的なものをさらに屋上屋を重ねるようにおつくりになるということは、私の推測によれば、やはり文部大臣は教育基本法そのものに御不満をお持ちになっておるのじゃないか、具体的にいって、児童憲章よりも教育基本法というものが抽象的であるということは、一体どういうことを意味しているのか、そのことをまずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/8
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009・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 私が児童憲章のようなものと申しましたのは、内容のことを申しておるのじゃございません。ああいったふうな形のものができたらどんなものであろうかということを申し上げたのであります。児童憲章のような内容を持ったものをつくるとか何とかいう、そういう具体的な考えは持っていない。そういうふうなものができたらどんなものであろうかという話をした、この程度のことにひとつ御了解をいただきたいと思います。児童憲章というものが、何といいますか、形式の問題でありまして、内容のことを別に考えて申したわけではなく、また、そういうものをつくるという考えを持っているわけでも何でもない、こういうものがあったらどうだろうか、こういう意味で話をしたということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/9
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010・小林武
○小林武君 大臣は軽くそういうことをおっしゃっておられるから、大臣のことばを信じて、教育憲章などというものはつくらないのだというふうに理解してもけっこうなんですが、私はやはり問題が、ただそれだけの問題ではないように思うわけです。少なくとも記者会見において、文教政策の当面の諸問題として数え上げられた幾つかの問題ですね。特にこの前の所信表明並びに今回の所信表明の中に取り上げられている問題と並んであるからには、私もやはり信ずるというのは、これは当然だと思います。まあわれわれはしばしば文部大臣の教育に対する所信を聞くことができなかった。わりあいに新聞その他では記者会見等の機会もあって、いろいろ話し合いができるから、大臣の真意というものはよくわかっているかもしれないけれども、われわれから言えば、そう問題を軽く考えられない気持がするわけであります。ですからお尋ねをしているわけですけれども、大臣のいま言われている教育憲章をつくらないというようなこと、たとえば教育憲章をつくらないにしても、教育基本法が抽象的であるということは、一体、児童憲章その他と比べてどういうことを意味しているのか、どの面が一体抽象的だとおっしゃるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/10
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011・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 小林さんは非常に児童憲章ということばにこだわられているが、児童憲章と比較しての話は、ただそういう形式のものができたらどうだろうかという程度の話であったわけでありまして、内容のことを別に申したわけじゃありません。また、そういうことを腹に置いて、腹案でも持って話をしているというものでもない、新聞記事にいろいろ出ておりましたけれども、きょうここで小林さんに申し上げていることを信じていただきたいと思います。ただ、現在の教育基本法の規定というものは、これは私だけじゃないと思うのでありますが、非常に抽象的に書かれているということについては多くの人がそのようなことを言っているし、私もまたこの目的だけでものを考えるということは、かなり抽象的にすぎて理解しにくい点もあるのじゃないか、あるいはまた適用上疑問を生ずるような場合もあるのじゃないかということをおそれるのです。成案なくしてものを申し上げることはまことに恐縮でありますが、もう少し目標がはっきりできたら、さらに教育上もやりやすいのじゃなかろうか、こういうふうな心持ちがいたしているものでありますから、何かもっと具体的なものを示すわけにはいかぬものだろうか、こういう意味でお話をしたというわけでございます。その程度にひとつ御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/11
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012・小林武
○小林武君 それではお尋ねいたしますが、教育基本法というものは、大臣のお考えだというと、きわめて抽象的で、このままでは、いわゆる日本の教育の基本法としては足りないものを持っている。将来これについて何らか手をつけられるというようなお考えがあると承知してよろしいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/12
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013・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) これについてもいろいろな御意見がいろいろな方面にあるということを私ども承知いたしております。しかし、現在私はいまの教育基本法を改正しよう、こういうような考えを持っておりません。きわめて抽象的であるということは、一面におきましては、きわめて包容力が広いと申しますか、この教育基本法を適正に解釈し、適用していくことによってやっていけるのじゃないか、こう私は考えておるわけでございます。現段階におきましては。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/13
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014・小林武
○小林武君 目下のところ基本法についてこれを改定するというようなお考えのないことはよくわかりました。しかし、私は非常に心配いたしますのは、過去において私はたくさんの文部大臣から教育基本法を改めたいというような御意向を相当承っておるわけです。また、そういうことが公式に述べられたために記録にもきちんと残っておるものもあるわけです。だから、教育基本法について文部大臣が、この談話はおそらく就任早々行なわれたものだと思うのですけれども、そういう談話の席上、基本法の抽象性をひとつ補う意味で教育憲章を作るというような、そういうような意味の御発言があれば、いままでの例からみて当然近いうちにそういう事態が起こり得るだろうと想像したわけであります。しかし、まあ灘尾文部大臣としては、そういうお考えがないということでありますから、私はそれを信ずるわけですけれども、一つ私はここで教育基本法の問題でお尋ねをしておきたいわけでありますけれども、教育基本法なんですが、教育は、具体的な教育活動というものは、教育基本法そのものをいきなり子供に押しつけるものでないということは、これはもう言うまでもない問題だと思うのです。指導要領もございましょうし、いろいろ教育の実際面ではやられる手だてがあるわけでありますから、私は教育基本法というものが抽象的であるというようなお話を承るというと、具体的に書かれるということはどういうことなのか。教育基本法という性格は一体どういうところまで一体教育の問題を具体化されなければならないのか。憲法の性格を持っている精神をどこまで一体明らかにしなければならないのか。こういう問題の疑問にぶつかるわけであります。私はいまの教育基本法をたいへんりっぱな教育基本法だと思っております。この点、私は灘尾文部大臣は特に戦後何度か文部大臣になられて、この面ではたいへんりっぱな経験をお持ちの方でございますから、その点についてもう少しやはり基本法はどうあるべきだということ、抽象性だということは、どういう点から言われているのか。この点ここでお聞かせいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/14
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015・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 私は、誤解のないようにお願いしたいのでありますが、教育基本法が抽象的である、だから教育基本法を改正しなければならぬのだ、こういう考え方はしていないわけでございます。きわめて抽象的であり包括的でありますが、この種の基本法は教育の根本を書いておる、こう申してもよろしい法律でございますから、一番大事な法律でありますし、同時に抽象的、包括的でありますだけに、ある意味におきましては弾力性もある。その時代、その時代の国民の要請というようなものを考えて教育を進めてまいらなければなりませんが、その場合に、いわゆる解釈、あるいは適正な解釈をすることによりまして、これを運用していくことは十分できると、現在そういうふうな考え方をいたしておるわけでございます。ただ、この教育基本法に基いていろいろなことが今お話にも出ておりますけれども、その諸施薬あるいは学習指導要領、こういうようなものも出てきておるわけでございますけれども、どうもどこか抜けている点がありはしないかという疑問が出てきているわけでございますが、そういうような国民の疑問とせられるところ、あるいは国民の要望せられるところに、はたして教育基本法がこたえているかどうか、こういうふうな問題について、私はやはり解釈適用の範囲でやっていけるものと、このように考えております。そういう場合に、何かそこにもう少しこう具体的なものでもできないだろうか、このことを実は言ったわけでございます。そういうふうにひとつ御了解を願いたいと思うのであります。今の教育基本法を直ちに改正しようとか、どうしようとかということよりも、この教育基本法の精神というものにのっとりまして、そのときどきの情勢に応じまして、解釈、適用をしていくということが、まずわれわれ行政官としての考えるべきことではなかろうか、このように考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/15
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016・小林武
○小林武君 文部省の書かれたものを見ましても、それから所信表明等を拝見いたしましても、憲法、教育基本法にのっとるとお書きになっておるから、この点については、憲法、教育基本法を尊重されているということに間違いはないだろうと私は思うのでございますけれども、やはり文部大臣の今のお話の中にも、これはことばじりの問題ではなくて、教育のかなめになる問題、人つくりの目標というのは、憲法、教育基本法にのりとって行なわれていくものである、こう所信がうたっているのですね、しかし、そうおっしゃっておりながら、何かどこか抜けているというようなこと、私は何も大臣に言いがかりをつけるつもりではございませんけれども、それではいけないと私は思う。事が教育の問題ですから、日本の少なくとも教育に携わっている教師はもちろんのこと、行政に携わっている人もだれも、どこか抜けているこの基本法によって教育を行なっているというような考え方だというと、私は尊重の精神というものは生まれてこない、私はそういう欠陥があるとお信じになったら、どこどこが悪いのだ、こうおっしゃっていただかなければ問題の解決にもならないし、それからほんとうの尊重の精神も出てこないと思う。特に私はその点と関連して非常に心配でたまらないと思っておりますことは、このごろは総理大臣をはじめとして、なかなか教育勅語を礼賛されるような、これも新聞記事でございますけれども、再々承るのです。国づくり、人つくりということに非常に御熱心な内閣で、総理大臣みずから陣頭に立たれておやりになっているということについては敬意を表しますけれども、その総理大臣の人づくりの中に教育勅語を例にとられてお話があった。少なくとも新聞面から見れば教育勅語を非常に尊重されたお考えのように思います。私はちょっとその時期は忘れましたけれども、衆参両院において教育勅語に対する態度というものは決議されているはずだと思う。いわゆる国会の中においてそのことが、教育勅語をどう扱うかということが明らかにされた今日、そういうふうなことをやられるということについては非常に不安を感ずるわけですけれども、何かどこか抜けているというようなことではなくて、基本法が教育勅語的なものでなければならない。たとえば、形は同じでなくても、教育勅語的なものでなければならないというお考えがおありになるのではないかということを若干感じているのです、率直に申し上げるとですね。だから、灘尾文部大臣はそういうことをお考えになっていないかどうか知らないけれども、基本法のことを論じられて、少なくともこの抽象性というようなものをわれわれがやはり指摘するということになりますと、何かどこか抜けているというような御指摘ではなくて、基本法にはかくかくの点でやはり欠けているところがある、こういう面が抽象化されておってだめだ、もっと具体化されなければいかぬとか、こういうひとつ御答弁をいただきたいわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/16
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017・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 現在の基本法に基本法として欠けるところがあるというふうに考えますれば、私は改正意見をいだくわけです。基本法として、現在の教育基本法について欠陥があるということでありますれば、改正の計画をするのが当然の任務であると考えます。いまそういうふうなことを私は考えておりません。基本法は基本法として、これでよろしいじゃないかという考えのもとに立ってものを申し上げている。この基本法をいただいて、そうして現実に教育のことを進めてまいります際に、何かもっとうまい方法はなかろうかというふうなことを模索しておるわけです。そういう意味でお話を申し上げておるわけ下ありまして、いまの基本法がどこか欠けておるからということでありますれば、これは基本法としての問題、基本法としてものを考えます場合に、普通の教育関係の法律と同じように私は考えていないつもりであります。基本法でありますだけに大事にしなければならない。また、そうみだりに改正とか何とかすべきものでもない。これがどうしても国民生活の上から見まして、また国民の気持から申しましていけないということになれば、これはもちろん改正しなければならぬと思うのですが、現状においては私はそういうふうには考えていないのであります。したがって、基本法のどこか抜けているからどうだとかいうつもりで申し上げているわけではないので、この基本法に基づいて教育を進める上において、何かもう少しうまいものはなかろうか、こういうふうな点でものを考えているというふうにひとつお聞き取りを願いたいと思います。総理大臣がどういう考えを持っておりますか、総理大臣個人の考え方は私は知りません。教育勅語のことを引き合いに出されたのは、何も教育勅語のようなものをつくろうとか何とかということで申されたのじゃないのであります。ただ、教育勅語の中にありますものをとらえてものを申しておられるのだと、かように私は考えたわけであります。政府がそういうものをつくろうとかいうふうな考えを持っていないということは明らかにしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/17
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018・小林武
○小林武君 それではこのように大体理解してよろしいでしょうか。教育基本法そのものを、いわゆる基本法としてのこのものには特に欠陥があるとも思っておらないと、したがって、これが抽象的であるとか何とかいうようなことは問題になるべき性質のものではないと。しかし、これが原則でございますから、基本でございますから、教育の実際の面にはさらにその精神が具体化されるというようなことは当然起こることは、これはもうあたりまえで、そういう意味で、教育基本法は今後ともこれに対して改定をするとか何とかということはまずないということが一つ。それから、それを補うところのたとえば教育憲章というようなことについてはあまり深く考えておっしゃらなかったようでありますけれども、そういう種類のものを、さらに教育基本法あるいは教育何々、憲章というような種類のもの、何か教育法とか、そういうものに並べて新しくつくるというようないまのお考えもないというふうに、こう理解してよろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/18
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019・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 現在の教育基本法につきましていろいろな意見があるということは、小林さんも御承知だと思います。現在の教育基本法に欠陥ありと、こういう考え方を持っている人も私はないではないと思います。いろいろな意見もあるし、批評もある。それらの人たちの考えを私はとやかく申すわけではありません。現在申し上げていることは、私の考えを申し上げているわけです。私としましては、いまこの段階におきまして、教育基本法を改正しようという考えは持っておらないということを申しました。この教育基本法のもとにおきまして、教育の効果をさらに上げていくのには、何か考えるものがあるのじゃなかろうかというふうなところをいろいろ検討をし、模索をしておると、こういうふうにお考えをいただきたいと思います。教育基本法の次元においてものは申し上げておらない、こういうつもりでございますから、さよう御了承願いたいと思います。また、教育憲章という言葉にだいぶこだわっていらっしゃるようでございますけれども、別に具体的な成案を持って申し上げているわけではございませんので、ほんとうにそういうようなもので皆さん御納得がいくりっぱなものができますれば、これも一つの案だと思いますが、いまの段階においては具体的なものを持っておらない。すべては、検討、模索の段階である、このように御承知を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/19
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020・小林武
○小林武君 まあ具体的にそういうものをつくろうというお考えがないということを聞いて安心をしたわけですが、なおあまり模索なされないで、教育基本法のもとで、ひとついい日本の国民をつくるというふうに文部大臣としてお進めいただければ、これに越したことはないと思うのですが。――では次に、大臣のお話の中にたびたび出てくる問題でございますから一応お尋ねしておきたいし、それからまた、これは池田内閣の中においても重要な、口を一たび開けばいつも出る言葉でありますからお尋ねをしておきたいのでありますが、人づくりといった場合に、人間像の問題が盛んにとらえられておりますね。私は一体、池田さんが個人的なお立場であるというようなこととか何とかということは別として、総理大臣としておやりになっておるのですから、個人的な諮問機関であろうが何であろうが、いわゆる人づくり懇談会というようなものを何度か開かれたでしょうが、その人づくり懇談会の中で、一体、結論としてどういう人間像をお考えになっているのか、文部大臣も御同席でありましょうし、また同席されないにしても、責任のある問題でございますから承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/20
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021・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 総理のおつくりになりました人づくり懇談会というものは、それほど学問的な意味で何も言っているわけではないと思います。また専門的な意味で話をしておられるわけでもないと思います、何と申しましても、日本の発展、日本の繁栄を願いますためには、そのにない手である個々の日本人がりっぱでなければならぬというところから出発いたしておると思います。ことに現在の青少年の問題は、ほんとうにお互いに心配にたえない問題でございますけれども、いろいろ非行少年というようなものもだんだんふえてきておるような状態であります。将来を考えますというと非常に心配な問題でありますので、そういうようなことのないようにするのには一体どうしたらいいか、こういうような心持ちで、各方面の方を集めて、人づくり懇談会というものをおつくりになり、将来の政治、あるいは行政の何かそこに参考になるものは得られないかということでやっておるものと考えるわけでございます。どんな人間をということを申されますけれども、なかなか一口にどんな人間といって割り切れるものではないと思いますけれども、要は、お互いが安心のできるりっぱな青少年を育てていきたい、こういう念願からこのような努力をいたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/21
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022・小林武
○小林武君 たいへん簡単にお考えになっておるようですけれども、まあ私はそうは考えられないわけです。これが学問的であるとか、専門的であるとかいうことは別個の問題でございまして、学問的であるとか、専門的ということでなしにやっているのだから、総理大臣のお道楽でやっておられる、こう考うべき性格のものではないと私は思います。池田内閣の国づくりというものは、人つくりによって、とにかくできるかできないかという問題になる、その中で総理大臣がですね、相当の人を集めておやりになっておる、そうしたら、そのことは少なくとも専門的であり得るし、学問的であり得るし、しかも総理大臣という立場でおやりになっているからには、日本の教育に大きく影響するし、文教政策を私は左右するだけの力を持ったものと思います。池田さんの庭づくりとは一緒にならない問題です。だから私は、今のような御答弁をいただくのはまことに心外なんです。少なくとも総理大臣が、みずからこのことに手を伸べたというからには、人づくりについてどれだけの一体検討がなされたか、少なくともどんな人間を作りたいという。文部大臣の今おっしゃった中に非行少年の問題がございました。これはだれでも、小にしては、ほんとうに一家の中で子供を持つ親として心配になる問題だと思うのです、どなたも。大きくいえば日本の問題であり、さらに言えば、とにかく日本だけの問題ではなくして、もっと大きなところから処理しなければならない問題だというふうにも考えられることなんです。そういうことも人づくりの中には確かに一面があると私は思います。文部大臣のおっしゃるように、人づくりというものが、その面をとらえておやりになったとは思わない。もっと積極的な意味で、日本の国づくりということについて、人づくりがいかに大事であるかということは、懇談会の席上におけるところの池田首相のあいさつにも書いてある。だから自分の目的に全力をあげたいとまでおっしゃっておる。そうするとですね、私は文部大臣の今の答弁を聞くと、どうも納得がいかない。ちょっと不親切だなあという感じがするわけなんです。もっとやはり私は率直なお話を伺いたいのですよ。これは何も別に意地悪くどうこうということでなくして、私は対立する意見だってあるし、立場だってあると思う、率直に言って。しかし、それを乗り越えるということが、少なくとも政治の中においても、教育の実際面の中においてもなければ、日本の教育上の問題の解決はできないと思います。そういう意味で申し上げているのです。今、文部大臣がおっしゃったようなことだけなんですか、何とはなしに集まって、何とはなしに散会した、こういうことなのか、何回かの会合によって委員はどういう発言をして、一体、池田首相の人づくり懇談会の一つの傾向というものはどういうものであったかということ、どういう人間を作りたいというのかということが出ておらないのかどうか、この点をひとつ。それば文部大臣、関知しないことだとおっしゃれば質問はいたしませんから、そうおっしゃっていただいてけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/22
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023・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 私が専門的とか、学問的ということばを使いましたのは、いわゆる人づくりということばについてであります。これはそういうふうな概念的にかちんとした、きちんとしたことばとも思いません。そういう意味で申し上げたわけであります。この懇談会は、もちろん池田総理としてはきわめて重要なこととして、いわゆる人づくりの問題を考えておられますので、各方面のりっぱな見識のある方々の御意見を伺って政治、行政の参考にしたいと、こういうつもりで懇談会を開かれたわけであります。池田総理の道楽とか何とか、そういうつもりでやっておられるものでないということは、まさか私から申し上げる必要もないと思います。きわめて大事な問題として、そういう人たちのお話を伺い、そこから今後の方向というものの参考資料を得たいと、こういう心持ちでやっておるものと私は考えておるわけであります。どういう人物をつくるかというふうな具体的なことまで総理が考えてやっておるものとも私は思いません。ただ、いわゆる人づくりということばの中にいろいろなものが含まれておると思うのでありますが、そういうふうな事柄についての見識のある方々のお話を伺い、参考にしたいという気持ちにほかならぬと私は思うのであります。人づくりというふうな、いわば俗なことばであります。何もきちんとした概念規定をもってこういうことばを使っておるものとは私は思っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/23
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024・小林武
○小林武君 私の質問はそういう質問じゃなかったのですよ。それでは答弁にならないように思うのですがね。私はそういうことはひとつ大臣の意見として聞いておくとしても、そうむずかしく考えてやっておらないということを言われるならいいです、それで。あえて私が、むずかしく考えておるはずだなんてがんばる、そういう必要はありませんけれども、先ほど申し上げたように、非常に重大に考えておることはあなたも御同意しておる。そうしたら、一体、委員をお集めになって、委員の方々がいろいろ御発言をなさる一つの方向なり、それに対する結論とまではいかないでも、方向というものが出ていないかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/24
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025・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 今まで人づくりについての人づくり懇談会を催しまして、私も就任以来、開催されるごとに出席をいたしましてお話を伺っておるわけであります。各委員さん方が、いろいろの御所見なり、お考えを述べておられる、それを私どもが伺っていくという段階でありまして、この人づくり懇談会から何がしかの結論が出たとかいうふうなところまでは私は至っておらない、かように考えております。要するに、お話をいろいろなさるのを伺っておる、こういうのが今日までの状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/25
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026・小林武
○小林武君 たいへん意気込みは大きいけれども、文部大臣のお話ですというと、あまり効果というものは上がっていないようなお話のようであります。少なくとも総理大臣が非常な努力をもっておやりになっておるということを言っておりますけれども、日本の教育にかくあるべしというような、そういう一つの方向は示されておらないということを聞いて、私もいささかどうも宣伝が大きすぎて、内容がこれに伴わないというような感じをいまの答弁からは受けるわけですけれども、私はもっと率直にお話をいただきたいと思って質問をしておるわけです。しかしまあ、これは押し問答になりますからもうやめますが、もう一つ人的能力政策に関する経済審議会の答申というのがあるわけでありますが、この点については、大臣があんまり問題がこまいからおわかりにならないということなら、政府委員のほうからでもけっこうですけれども、そういう人づくりの答申というものが出ているでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/26
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027・木田宏
○説明員(木田宏君) いまお尋ねのございましたのは、経済企画庁のほうでお世話を申し上げております経済審議会で、たぶん昭和三十七年だったかと思いますが、人的能力の問題につきまして各方面の方々の御意見を取りまとめ、そして報告書が出たということを御指摘になったものと思っております。そうした答申が出ましたことにつきましては、私どもも承知しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/27
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028・小林武
○小林武君 承知しているだけじゃなくて、文部省でありますから、経済審議会が答申をしたことについては全然知らないということはないと思うんですね。先ほど文部大臣のお話の中にもありましたように、各方面のいろいろな御意見を承っておるということでございましたから、特に私はその方面からの御意見については非常な積極性をもってこれを受け入れていると、このように考えておりますが、一体これは結局どういう内容を持ったものであるかという点についてお尋ねいたします。これについてはひとつはっきりしたあれをお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/28
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029・木田宏
○説明員(木田宏君) まあこの人的能力の問題につきましての経済審議会の答申は、政府が長期にわたります経済政策を進めてまいります上で、最近とみに人の労働力と申しますか、人の問題がかなり重要な隘路になっております。この少ない労働力でもって、いかにして経済成長を高めていくかという、そういう経済的な観点から、人の能力の問題をつかまえまして、これを養成の問題、あるいは訓練の問題、あるいは職場におきまする労働環境の改善だとか、生活環境の改善だとか、この人の能力を有効に活用し、発揮していけるような問題、あるいはその需給の問題が、どういうふうな様相を呈するかといったような、そういう経済の観点から、人の労働問題というものをつかまえ、また教育、訓練の問題をつかまえて、各般の検討をされるものでございます。その中には、いま手元に資料がございませんから、正確に申し上げるわけにはまいりませんけれども、今後の人の問題といたしましては、一番大きいのは、やはり自主的に技術を開発していけるような能力を養成しなければならぬだろうというような課題もあり、あるいは少ない労働力の中でも、特に技術関係のところに一番の需要が高まっているわけでございますから、そういう点の対策というようなこと、教育の問題につきましては、まあそうした能力を、個々人の能力によって高める主たるねらいということが、その報告書の中にあがっておったかと思います。これはただいま申し上げましたような、政府が全体としての経済政策を立っていきます場合に、その経済政策という観点から、労働力を教育、訓練という立場で確保していく課題としてのものでございますから、教育として私どもが受け取ってまいります上におきましては、ただその経済という観点からだけ、教育の仕事を考えるわけにはまいりません。どうしてもそこには盛られてこない要素も、教育自体の問題として起こってくるわけでありますから、そうした御意見のあることをくみ入れまして、文部省としては教育の立場で、それをどのように考えるかということは進めてまいりますけれども、向こうの注文が、すなわち教育であるというふうには考えておらないので、教育の立場から、後期中等教育問題にいたしましても、先ほど大臣が御説明申し上げましたように、中央教育審議会に、その立場としてのあり方を御相談申し上げているような段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/29
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030・小林武
○小林武君 そのことにつきましてはいずれまたひとつ、あらためて御質問いたしますから、それはそれといたしまして……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/30
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031・中野文門
○委員長(中野文門君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/31
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032・中野文門
○委員長(中野文門君) 速記を始めて。
午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時から委員会を再開することにして、これにて休憩いたします。
午前十一時五十八分休憩
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午後一時二十五分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/32
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033・中野文門
○委員長(中野文門君) これより委員会を再開いたします。
午前に引き続き質疑を行ないます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/33
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034・小林武
○小林武君 文部省が三十七年の九月二十二日ですか、文部省人つくり文教政策要綱案というのを出しましたね。これは出しませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/34
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035・木田宏
○説明員(木田宏君) 今お尋ねの点は私心おぼえがございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/35
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036・小林武
○小林武君 全然ないわけですか。出したおぼえは全然ないと、こういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/36
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037・木田宏
○説明員(木田宏君) そういうものを文部省として外に示した記憶がございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/37
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038・小林武
○小林武君 先ほど来、人づくりの問題に関連して、どんな人間を作るかということを大体お尋ねしたわけでありますけれども、どの点についてもはっきりしたお話がないわけでありますが、しかし、それでは一体、文部省なりあるいは政府なりに、人づくりについての考え方がないのかというと、私はそうでないと思うのです。今の青少年に対する不満というようなことは、あらゆる機会に述べられているわけです。そのことが発展していって、今度は教育基本法にさかのぼり、さらには憲法の問題にまで立ち至るというような工合に至っているわけでありますが、私はそういうあいまいな態度でやられるということについて非常に不満を持ってるのです。たとえば文部省の文教政策を見ましても、占領政策下にあったとか何とかいうことは、理屈は別にいたしまして、文部省が教育に対する方針を何度か変えている。この前の荒木文部大臣のときには、最初に日本の教師に示した教育指針に対して、マッカーサーがいなくなったのだからマッカーサーの宣伝はやらぬでもよろしいというような、そういう報告をわれわれは受けたわけでありますけれども、私はそれだけで一体済まされる問題なのだろうかどうか。あの中に示されている過去の教育に対するさまざまな反省、そこからつくり出された日本国民の人つくりに対する少なくとも誤った行き方というものが、日本の運命というものを非常に大きく変化さしたということを文部省みずからこれを認めている。そうして全国の教師に、今後このような教育があってはならないというような、こういう態度で示しておきながら、これが今度はいつの間にかなしくずしに変えられるということ、ああいう程度のものはマッカーサーがいなければ、用事がないというような、そういう言い方で教育をやられたのでは私はたまらないと思う。人つくりの問題を文部省が本気になっておやりになるならば、私はもっと現在の青少年に何を望むか、どんな人間を作りたいかということをやはりはっきり打ち出すべきだと思う。また、それが、途中で言い出されて途中でやめたかどうかは別として、教育基本法に一体、抽象的なことばかり書いてあって、ほんとうの人つくりの基本にならないというならば、このことを明らかに示してやるという、そういう手段を私はとるべきだと思うのです。ところがそうではなしに、教育の現場を通して、これがなしくずしでやられるというようなやり方がとかく行なわれているということになりますというと、私は過去の誤った教育というようなものを再び再現するということになると思いますので、この点については、私は文部大臣に御要望を申し上げますが、今後ははっきりお出しになるものは出していただいて、少なくともここで討論していただいてお進めをいただきたいと、このように希望するわけであります。この問題とからみ合いまして、私は文部大臣が非常に強く要望されておりますところの教員の養成問題について、次にお尋ねをいたしたいわけであります。
人づくりを考える上では、教員の資質向上が一番基本的な問題だから、教員養成制度について改善を検討している、こういうお話であります。これはもちろんいま始まったことではなくて、昭和三十二年の六月の十日でありますか、当時やっぱり灘尾文部大臣は文部大臣の職にあられて、そのときに中央教育審議会に諮問を出された。そういう点から考えますというと、これは灘尾文部大臣としては、教員養成制度にかなり以前から一つのお考えをお持ちになっていると思うのであります。でありますから、きょうはここで、灘尾文部大臣から、どのような一体改革をやろうとしているのかということについてお尋ねをいたしたいわけでありますが、その前に、やっぱり灘尾大臣にお願い申し上げたいのは、先ほどの大臣の所信の表明の中にございましたが、現代の教師に対する不信がやはり私はあるように思われるわけです。また、はっきりほとんどの教師の加入している団体にきびしい批評を下されているわけでありますから、教員養成という問題をお考えになっている灘尾文部大臣としては、どういう教師というものを求めていらっしゃるのか、この点についてお答えをいただきたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/38
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039・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 先ほどの人づくりの問題についてのお尋ねと同様に、どういう教師を求めているかというような問題について、一口にお答えするということは困難なことであります。ただ、これは私の考えといたしまして、現在の教職員に対しまして、一人一人のことを申すわけではございませんけれども、もっと教育に真剣に取り組んでもらえるような教師がほしい。またその能力あるいは見識等におきましても、もっとすぐれた教員が多数ほしい、こういうような気持は前から持っているわけであります。したがいまして、だいぶ昔の話になりますけれども、いまお話になりましたような時期において、私は教員養成に関して適切な方策がないものかということで、中央教育審議会に諮問したこともあるわけでございます。現在もやはりその意味におきましては教員の人いかんということが日本の教育の振興の上に何と申しましても一番関係の深い問題でありますので、できるだけりっぱな教員を多数得たいという気持ちを持ち続けておるわけであります。どうしたらいいかということになりますと、これはやはりその道の専門家、もちろん権威者の御研究に待たなければならないと思うのであります。そういう方向で教員養成の問題について私は取り組んでまいりたいという気持ちを持っておるわけであります。どういう教員をと、具体的にこれをことばで表現するということはなかなか実は困難なことだと思うのでありますが、その教育に対する熱意ないしまた教育に対する能力と申しますか、力というものを十分に身につけた人をできるだけたくさんほしい、こういうふうな気持ちでこの問題に当たっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/39
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040・小林武
○小林武君 そうすると、現在の教師の問題点というのは、教育に真剣に日本の教師は取り組んでおらないということでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/40
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041・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 一人一人のことを私は申し上げるわけではないということを申し上げたのであります。私は現在の日本の教師、すべてがどうとかこうとかというわけではございませんけれども、必ずしも教育そのものに真剣に打ち込んでおるとは認められない、こういう人も少なからずあるように思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/41
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042・小林武
○小林武君 現場の指導主事というならば今の文部大臣のような御答弁があっても、われわれはそのことに賛成するかしないかは別といたしましても、そういうのもいるかというようなことを考えますけれども、文部大臣として、一体真剣に取り組んでいないものがあるというような断定は、どういう根拠からなされておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/42
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043・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 現在の教育の実情から考えまして、そう思わざるを得ないというふうな事柄が少なくないように思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/43
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044・小林武
○小林武君 きわめて抽象的でございますが、今の教育の実情というのはどういうことでしょうか。私はなるだけそういう、何といいますか、ことばじりをつかまえたようなものの言い方はしたくないのですけれども、あなたの答弁がそういう答弁ですから、勢いそうならざるを得ないのであります。しからば教育の実情、一体、実情を見てこうだというならば、その実情はどういう実情を具体的に言うのかということになるわけであります。私はなるだけそういう議論はしたくないから申しますが、正直に私はおっしゃっていただきたいと思うのですよ。少なくとも教員養成に問題点を感じたというならば、その問題点はこことこことにあるという、そういうものが示されないで、今のようなものの言い方でやられては、これはたまらないと思うのですよ。文部大臣が全国五十万なり六十万なりの現場の教師の動きというようなものを一々把握しているというようなことは、これは言われない。そうだったら僭越しごくだと思います。そういう僭越なものの言い方は私は少なくともできないと思うのです。幾ら文部大臣でもですね。そういうことをおっしゃるからには、一体どういう資料に基づいて、どういう調査に基づいて、あなたの下僚がそういうことをおつくりになったのだったら、それも示してもらいたいと思うのでありますけれども、一体、実情とはどういう実情をおっしゃるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/44
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045・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 一つ一つの例を申し上げる資料を持っておりませんけれども、しかし、世間にあらわれております教育界の実情から見ましても、また教師の行動から見ましても、真に子供のために教育と真剣に取り組んでおるとはどうしても考えられないというふうな事態も少なからずあるように私は思うのであります。この点につきましては、その教師それ自体、あるいは養成というような方法などにも関係があるのではないかというようなことから、教員養成の問題をまじめに取り組んで考えてみたい、こういうふうに存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/45
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046・小林武
○小林武君 答弁にならぬですね。もう少し私は文部大臣にまじめに答弁を要求いたします。世間にある、世間にある、不まじめな教師とは一体何をさしているのか、あるいは教師の行動を見ればとはどういう行動をさしていうのか。私は日本の教育の現場あるいは個々の教師というようなもののすべてが万全とは思っておらないのです。もっと謙虚になってその足りないところを補うために、教師はやはり努力をしなければならないという気持は持っております。しかしながら、あなたがおっしゃるように、世間で見られるような一体教育に大きな弊害を及ぼしているような事実が、日本の教師の中に充満しておって、日本の教育を誤っておるとは考えておらない。それから行動とは何のことか、行動といってもたくさんあると思うのでありますが、行動とは何だ。こんな抽象的な議論で、私は日本の教育を誹謗するというような、そういう文部大臣の態度に非常な怒りを感ずるわけでありますが、もう少し具体的に私はここで説明をしていただきたいと思うのです。こういう程度のことで、少なくとも教員養成制度が云々されたり、日本の教育界の現状をかれこれいわれるようなことは、これはあってはならないと思うのです。そういう権力主義が教育の中に入ってきては、日本の教育は重大なあやまちを犯すことになると私は思うのです。私はいまの文部大臣の御答弁にはどうしても納得がいかない。もしあなたがはっきり指摘するだけの事実を、資料をお持ちになったならば、ひとつここへ出して説明してもらいたい、一々の資料は持ってこられないというなら持ってくるまで待ちますから、ひとつやってもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/46
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047・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 私は日本の教師の状態につきまして必ずしも小林さんと見るところが同じであるとは思いませんけれども、私は現在の教師の中にほんとうに教師としてその職務に忠実に、仕事に取り組んでいる人ばかりとは考えられない。あるいは勉強の不足ということかもしれません。しかし、そういうふうな教師が少なからずおるということは、ひとり私だけの認識ではないと私は思う。やはりもっと教師の資質を向上すべきであるという声はずいぶん高いと思うのでございます。そういうふうな見地から教員養成の問題を考えておるわけでございますが、一つ一つの事例を一々取り上げて申し上げても、それが別にこの討論と関係があるとは思わないのです。全体的に見ましたときにそういうような批判があるので、また私もほんとうに教師としての職務を忠実にやってくれておるのかどうかということについて疑いが持たれる場合がある、世間のその声も高いのであります。そういうことでありますから、誹謗するとか何とかということじゃございません。日本の教育の水準を上げていく、日本の教育の効果を高めていくために、ほんとうにりっぱな教師にやってもらいたいというその気持から、いままでのようなことを申し上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/47
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048・加瀬完
○加瀬完君 ちょっと関連。小林委員は、そうおっしゃるならば、もっと具体的に、問題は教員養成制度を変えなければならないという御発言なんで、そうすると、教員養成制度を変えなければならない何か理由、原因というのはあるのではないか、こういう質問をお出しになったわけであります。そうしますと、大臣は、いろいろ教師として仕事に真剣に取り組んでいないいろいろの向きがある、それは具体的にどういうことなんですかということなんですから、世間でそういう評判があったとか、あるいは一部にいろいろ教師に対する批判があるとかいうことではなくて、そういう批判を、現在、文部省としてどういうものを取り上げて改革をしなければならない要素と考えていらっしゃるのか、それらを具体的に取り上げていただかないと質問は展開をしないと思うわけです。ここは委員会でございますから、率直に、それは小林委員と先ほど大臣のお答えのように、大臣のお考え違うでしょう。違っていいと思うんですよ。文部省のお考えを具体的にあげていただいて、それで小林委員の質問をその点でさらに進めていただくというようにお取り計らいをいただきたいと思います。具体的におあげを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/48
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049・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 一人一人の教師について言いますれば、いろいろと事情も違っておろうかと思います。一つ私が申し上げてみますれば、たとえば、文部省としましては、学習指導要領というものをつくりまして、そうしてその基準に従って教育をやっていただきたい、こういうことを申しておるわけであります。この学習指導要領に対して熱意を持って、これが実施にあたっていただいておるとは思わないところも少なからずあるのであります。文部省の示した学習指導要領に対しましては、こういう天下りのものは問題にならない、こういうようなことでやっていこうとせられる教師もおるのであります。また、道徳の時間というものを設けまして、道徳教育の効果をさらに一そう進めたいということでお願いしておりましても、その道徳の時間について何ら顧みるところがない学校もあるのであります。こういう事態は、私は現実の教師としての職務に忠実な態度ではない、このように考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/49
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050・小林武
○小林武君 それではあれですか、もう一ぺんお尋ねいたしますが、教育に真剣に取り組まないと、こうおっしゃるのは、いまのような場合のことをおっしゃるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/50
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051・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 教育に真剣に取り組まないという内容にはいろいろあろうと思いますけれども、私は現場の教師に課せられた職務につきましては、やはりその職務として忠実にやっていく熱意を持ってやっていただきたいと思うのであります。その教育方針なり、その指導なりに対しましていろいろ御批判もあり得ることであります。また、研究すればさらに改善の余地もございましょう。そのことをかれこれ言うのではございません。批判は批判、研究は研究といたしましても、現在、教師に対してこういうふうにやっていただきたいということにつきましては、少なくとも熱意を持ってひとつ事にあたっていただきたい、忠実にその職務を遂行していただきたいということを私どもは考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/51
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052・小林武
○小林武君 それではこういうふうに確認してよろしゅうございますね。あなたのおっしゃる教育に真剣に取り組んでいないというようなことは、たとえば道徳教育のしかたの問題、それから学習指導要領をそのままうのみにするかしないかというような問題、あなたのほうから言えばそのとおり教えるということ、忠実ということでおっしゃっておるわけでありますが、道徳教育、学習指導要領というようなものそのものの見方から、教育に真剣に取り組むとか取り組まないとかいう、そういう判定が下されているわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/52
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053・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 私はそれでもって尽くしておるとは思いません。思いませんが、いま一つの例と申しますか、そういうことで申し上げたわけであります。また、学習指導要領を一字一句違えずにやれというようなことを申し上げておるわけでもございません。ただ、学習指導要領に示したその趣旨に従ってやっていただきたいと思う。批判がかりにあるとします。批判がかりにあるといたしましても、教師の職務としてなすべきことをちゃんとやっていただきたいのであります。これは気に入らぬからやらないというようなことで方向違いなことをやられては、私たちとしても困るのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/53
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054・小林武
○小林武君 だから、あれでしょう、いまの文部大臣の言い方は、いわゆる学習指導要領――道徳教育、学習指導要領と同じこれは内容が含まれておりますから、その学習指導要領を文部省の言いなりどおりやらないというところに、教育に真剣に取り組まない、取り組むというような判断を下す基準がある、そういうことでしょう。一例々々と言いますが、一例ではなくて、あなたがおっしゃるからには、真剣に取り組まないということだけは少なくとも明かにしておかなければいかぬと思うのです。やはりこの委員会で議論されましたことは、少なくとも議員同士だけが見ているわけじゃないのです。そのことはまた将来教育をいろいろ検討する上にも重大なことでもありますから、一例をもって真剣、真剣でないというようなことの判断を下すというようなことは、こんな軽率な話もない。だから正直に言っていただけばよろしいのです。文部大臣としての考え方は、道徳教育、学習指導要領、この観点から、日本の教師は教育に真剣に取り組んでおらないという判断を下していると、こうおっしゃっていただけば、あとはその問題についてはいいのです。そういうことになりますね。そのほかに、何かほかのものがいろいろあるならば、ひとつおっしゃっていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/54
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055・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 学習指導要領とか、道徳教育のことだけで私は申しておるわけじゃございません。ただ、学習指導要領、道徳教育もその範疇に属すると思うのでありますが、こういうふうな問題につきまして、教師の任務として示しておる事柄については、まじめに真剣に取り上げて、これをやっていただきたいのであります。また、現在の指導要領とかいうふうなものに欠陥があるとするならば、これは改正してよろしいものだ、そういうことについての御研究もけっこうであります。しっかり研究していただきたいと思いますけれども、しかし、与えられた任務については、忠実にひとつ熱意を持ってやっていただきたいと思っております。どうもそう思われないものが少なからずあるように私は考えておるのであります。そのほか、熱意というふうなことになりますと、これは口ではそう申しますけれども、一人一人のことについてかれこれ言うわけにもまいらぬと思いますけれども、現在の青少年の状況を見ましても、私はもちろん教師だけを責める問題とは思いません。教師だけに責任を課する問題とも思いません。すべての人がやらなくちゃならぬ問題でありますけれども、現在のような状態を見ましたときに、はたして学校教育として、青少年の教育について、ほんとうにみんな真剣に熱意を持ってやっていただいておるのかどうだろうかということも思わざるを得ないような要素がたくさんあるように思います。そういうことでありますから、何も学習指導要領とか、道徳教育のことだけをとらえて、要領に従わないから熱意がないというだけの問題ではもちろんないのであります。いま申しましたように、学校の先生、現場の先生として、研究ももちろんけっこうでございます。討論もけっこうでありますが、やはり子供さんの教育に日々当たっておるわけであります。その教育につきましては、現に示しておりますような指導方針に従って、忠実に熱意を持ってやってもらいたい、こういうことを申し上げているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/55
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056・小林武
○小林武君 文部大臣としては質問に答えておらないので非常に残念であります。私はそういう、何というか、悪くいえば質問をはぐらかすような答弁はしていただきたくないと思うのです。もっと忠実に真剣にやっていただきたいと、こちらのほうから逆にお願いを申したい。私は、いまの教師というのは、大かたは教育に対してきわめて真剣な態度で取り組んでいると思います。少なくとも子供を教えるという点については真剣に取り組んでいると思います。しかし、教師という仕事のたてまえから見れば、これが完全であるなんていうことを考えるのはとんでもない間違いである。もっとより以上に教師は真剣にならなければならないし、それからいわゆる資質も高めなければならない、そういう責任を負わされているわけでありますから、そのことについても、私は相当真剣な態度で日本の教師は取り組んでいると思います。あなたと私は考え方が違うといったが、見方が逆なんです。あなたはとにかくいまの教師は信用できないと、こう言う。教師はどうあるべきかという問題の以前に、あなたは、いまの教師はなっておらぬ、こういうものの言い方です。能力も劣れば見識も劣っている。教育には真剣に取り組んでおらない、こうおっしゃる。しかし、具体的な例をあげて下さいといえば、あまりないようですね。私は正直に答弁をしてもらいたいというのは、だんだん出てきましたから申し上げますけれども、少年の非行化の問題も一つ今度はふえた。これもあなたは全部教師の責任だと、こう言いたいのだと思う。何か大学の問題を取り上げて、この前の参議院選の前でございましたか、大学の革命教育がどうしたとか何とかいうことを演説されたことも、あなたでありませんけれども、あなたの党の責任者がそういう演説をやられたということも聞いている。そういうことをお考えになっているとしたら、もっとやはりはっきりこの点は、この点はということを言ってもらいたいのです。非行化の問題も教員の責任だとあなたがおっしゃりたいなら、そうひとつはっきりおっしゃっていただきたい。いまの話では、責任であるかのごとく大衆には理解できるように話ししながら、一面また教師ばかりの責任ではございませんけれどもというような逃げ口上をおっしゃっている。そういう言い方で、あいまいな言い方で、いまの教師の問題を議論されてはたまらないと思うのです。教師の問題がいま真剣に爼上にのぼっているとするならば、私はもっと厳密な意味で、いまの教師に何を望むべきか、こうあってほしいというものがなければ、私は理由にならないと思うのです。納得するかしないかは、あなたと私の立場の相違だからそれはわからぬ。納得するところも相当あると思います。この三点だけだというなら、それでけっこうなんです。この三点と理解していいかどうか、それをお尋ねします。三点以上にあるというならば、もっと具体的になってもらいたい。あなたのほうで、とにかく勤務評定というものを全国的にやられている。相当いろいろなデータもお持ちのようにも思う。遠慮しないでやっていただきたい。日本の教師をあなたたちがいまのような筆法で徹底的にこきおろすなら、こきおろして下さい。この問題をひとつ徹底的にやらぬことには、いまの教員の評価というものはできない、私はこう思いますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/56
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057・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) どうも小林さんの私の意見に対する御所見は、少しオーバーじゃなかろうかと私は思うのでありますが、教員をこきおろすとか、教員を誹謗するとか、そういう気持で私は申しているのではございません。ただ、現在の学校教育の実情から考えまして、その教育効果というものがはたしてわれわれの期待するがごとく上がっていっているのかどうかということにつきましては、これはひとり私だけじゃない、国民の多数の人たちが教育についてはかなり心配しておることも、これは現実であります。そういうようなことから考えまして、もっと日本の教師の教育に対する熱意を高め、また教育に対する能力を高め、また識見も高めていくということが必要ではないか、こういう考え方に立つわけであります。教師に対する何か底意があってかれこれ申しておるわけでも何でもないのであります。いい教師ができるだけ多数ほしいというような気持から、教員養成の問題を取り上げて検討したい、こういうことを申し上げておるわけであります。そのつもりでひとつお聞き願いたいのでありまして、何か教師に対して、私が教師を誹謗し、あるいはまた教師に対する不信感というようなことを申し上げて何の得がありましょう。私はそんなことは考えていない、教員全体の資質を向上させる。教師としての心がまえもしっかりしてもらう。そしてしっかり熱心に教育してもらいたいというところから出発しての話であります。かようにひとつ御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/57
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058・小林武
○小林武君 だいぶ初めと御答弁が変わってきたように思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/58
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059・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 何も変わってはおりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/59
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060・小林武
○小林武君 変わっておる。あなたのいま言うようなことをおっしゃるならば、私はある程度賛成しようとしておる。たとえば現状に満足している――現状の満足ということは、これはあり得ませんけれども、ある程度いまの教師はよくやっているというような状態にありましても、世の中の大きな飛躍的な進歩がなされておる現代の中において、一体これに追いつくだけの人間の能力を高めるにはどうしたらよいか、そのためにはやはり教師というものが将来の飛躍に備えて、もっともっと資質を高めなければならぬというようなこと、これはわれわれも理解もするし、それに対する真剣な努力を必要とすることはわかっておる。それはいい。そういうことをまずひとつ――一面に教員の養成制度というものは持っておる。あなたがおっしゃるまでもなく持っておる。同時に私は、あなたの所信の中にあるから言っておるのですよ。いまの教師に対する不信の言動が明らかにされておるから申しておる。だからそれに加えるのに、あなたはいまの教師というものをどう一体お考えでございますかと、こう聞いたら、あなた何と答えたかというと、教育に真剣に取り組んでおるかどうかわからぬような教員だと言っておる。能力や識見の点からいってもどうかと思う、こう言う。それじゃ平たくいえば教師をこきおろすことになる。そういうこきおろし方をするというのであれば、具体的な資料に基づいてこの場では討論する責任がある。あなたのほうでは説明する責任がある。この委員会はそういうことについて討論する責任を国民から負わされておると思う。そのことでえらく何といいますか、けんけんごうごうとしてやり合うというような気持ではなくして、もっとやはり何というか、お互いが教師を高めるという意味から討論していく必要が私はあると思うのです。わりあいにおとなしくかかっておるつもりです。そうは思いませんか。だから、そういうことについてあなたに御答弁を願っておるのだが、あなたはいろいろなことを言って答弁をはぐらかしておる。ただ明らかになったことは、道徳教育をやっておらぬというようなこと、これは誤解ですけれども、学習指導要領についてどうだと批判する。青少年非行化の問題も、教員ばかりとは言わないけれども、教員の責任は大きい。教員がなっておらぬからだぞと言わぬばかりの先ほどからの二つの個条から見れば言えるようなお話があったから、こきおろすというならばもっと徹底的に資料に基づいてやってもらいたい、こう言っておる、間違いありませんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/60
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061・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 文部大臣が教師をこきおろすとか、あるいは教師というものが全部だめだというふうなことを言って私は何の利益も何もない。そういうふうな心持ちで言っているわけじゃございません。先ほども申しましたような心持ちで、現在の教育界の実情を見ましたときに、もっと能力があり、熱意もあり、職務に忠実な先生がほしい、そういう意味で申し上げていることであります。この教師に対する批判というのは、これは私は相当国民の中にあると思います。と同時に、教師に対する期待というものも国民の中にあるわけでありますから、そういう面で日本の教師を上げていこうと申しますか、というふうな努力をしていかなければならぬものと、そういうふうに考えて申しているのであります。繰り返して申し上げておきますが、何もこきおろして、それでもって快哉を叫ぶという気持はさらさらありません。むしろ、りっぱな教師を多数つくるということが、われわれ文部省に職を奉じている者の義務であり責任であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/61
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062・米田勲
○米田勲君 関連。小林先生の円満な質問の進展を妨げるような関連質問になったら恐縮ですが、私はこの際、先ほどの大臣の発言に意見を述べて少しはっきりしてもらいたいことがある。それは先ほどお二人の間の話し合いを聞いていると、文部大臣は、日本の教師の中に真剣に教育に取り組んでくれていないものがいるという話から発展して、道徳教育の問題、時間特設の道徳教育の問題が出てきたわけです。私は総理の所信表明の中で、時間が二十七分という限られた時間でございましたから、文教の問題についても的確なことを申し上げて質問する時間はなかった。その中で、抽象的にしか私は触れませんでしたが、いまの文部省の文教行政の姿勢の中に危険な姿勢があるということを私は感じている。そのことといまのことと関連してあなたに申し上げたいのですが、たとえば道徳教育の問題ですね、これは先進諸国における日本の文部省的な役所のやっておるやり方と、日本の文部省がやっておるやり方には相当大きな違いがあるという結論を持っておる。それはどういうことかというと、道徳教育が必要であるとかないとかということは論の余地がないと私は見ておるのです。日本の教師にしてもそれは問題ない。民主的なこの社会に生きていくための倫理観を確立させることは教育の場でも絶対必要なんだ、だから、そのことを否定しておる教師がおるとすればこれは大問題だ。だから、私はあくまでも民主的な社会に生き抜いていく、そういう社会の連帯の中で生きていくために必要な倫理観ですから、何か前の文部大臣だと、灘尾さんになられてから幾らもたっておりませんが、やたらに日本の教師は道徳教育に反対しているというふうにとられる、これは私は根本的に間違っておるのじゃないか、こう思うわけです。日本の教師が問題にしているのは、民主的な社会に絶対に必要な倫理観を植えつけるということに反対しているのじゃなくて、違う方向に、古い時代の倫理観を植えつけるということに一生懸命になる向きがあるのじゃないかということを危惧しているだけで、そのことをまずひとつ灘尾さん、はっきり理解してもらいたい。そこから疑ってかかったのじゃ話にならない。その次に私は、文部省は、文部省の仕事というのは日本の教師に向かって、新しいこの民主的な社会に生き抜く青少年を教育していくためには、その社会に生き抜けるだけの倫理観をぜひ確立させるような教育の仕方を進めてもらいたい。こういう要請を発するにとどめて、その具体的な方法論は現場の教師の相当長い期間にわたる研究と実践に一応待つべきでないか、こういう感じがするのです。それを道徳教育が必要だと提唱したらいきなり反対のような声が起こってきたからといって、今度は時間を特設する。時間を特設して道徳教育をやるか、あるいは教科の中でそれぞれ倫理観を確立さしていくような教養を身につけていくかというのは、あくまでも方法論なんです。その方法論までにわたって文部省がこれでなければだめだと、まだ現場の教師が実践研究の段階にあるにもかかわらず頭から持ってくる。そして、それに従わない者は全部この考えに反対なんだというふうにして排撃をし、敵側にますます回すように追い込んでいくところに、私は文部省の教育行政の幾つかの姿勢の中に問題があると思う。その道徳教育の大事なことを提唱することは大事ですよ、国の文教政策の責任あるあり方ですよ。もっと提唱をして、その実践は現場の教師の研究と実践に当分の間はまかせて熱心にやってもらう。そして全国の現場の教師が熱心に研究実践をして、その世論の中から、これはどうも各教科の中でそれぞれ同時に道徳教育といったような問題をやっていくのは方法的に見て効率的でない。むしろ時間を特設したほうがいいではないかという世論が教師の実践の中から生まれてきたとき、初めて文部省はその世論と研究実践を信頼して、そういう行政措置をとって教育の効果のあがるように援助する。こういう姿勢が私は必要なんじゃないか。何でも頭からこれをやれ、少し抵抗があると、今度はそれをやらざるを得ないように時間の特設だと、それをやらないと今度は本を出して、お前はこの中に書いたとおりのことをやれ、だんだん方法論の細部に向かってまで文部省が次々に手を打って、それに批判をし、抵抗をしようとする者は、これはまじめな教師でないとか、国の文教政策に対して反旗をひるがえしている異端者だ、けしからぬ教師だと、こういうふうにきめつけて、そんな教師と話したくないというところまで発展していく。こういう行き方は、灘尾さんはそういうことは言っていないけれども、前の文部大臣はそういうところまで発展をしていっている。そういう全体の姿勢がもっと私は大臣としては反省が必要なんでないか。教師のやり方について小林委員も言っているように万全だとはだれも考えておりません。いまの教師に考えてもらわなければならないことは山ほどあります。やってもらいたいものも山ほどあります。しかし、それより先に、私は小林委員も言っているように、相手をまず信頼するところから出発しなければだめだ。そんな信頼もできないものに何を頼もうがだめです。まず日本の教師を信頼して、その研究と実践を尊重して、その活動をよりよく助けるために世論も尊重しながら行政措置を次々に講じ、条件が必要であれば、その条件を予算の面からも整備していってやる、こういう両方の行政と実践者との態勢であれば、私は相当、日本の教育も過去十カ年間にこんな状態にならないで、もっと前進を遂げたのではないか。そういう姿勢がいままでの文部省にはないのではないか。灘尾大臣の先ほどの質疑応答を聞いておっても、やはり一応は否定するところから始まっている。私はそういう否定するところから、文部大臣ともあるものが、日本の教育の問題を論じ始めては間違っているのではないか。そういう否定の中から出てくるから、次々に方法論の果てまでも全部指示をし、法で拘束し、基準で、規則で拘束をしなければ、もう矢もたてもたまらない。何をされるかわからない、こういうことに発展していくのであって、もう少し文教行政の姿勢について根本的に文部省自体が考え直すべきでないか。教師のあり方を批判すると同時に、みずからもそういうふうに反省をしていく必要があるのではないか。そうすれば、もっと日本の教育はいい形で前進ができるのではないかと思うのですが、ちょっと質疑応答の中からそれるかもしれませんが、私はそれをこの際お話しして灘尾さんの考えを聞きたいわけです。なるべく率直にお話をしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/62
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063・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 私は教育を進めてまいります上において、これに関係する者、一口には全国民ということになるかもしれません。何と申しましても学校の教職員あるいは教育行政関係者-文部省も含めてですが、そういうふうなものが同じ目標に向かって力を合わせて進んでいくということが私は一番望ましいと思います。そういう心持ちが根本にあるわけであります。またそういう意味でお互いに信頼し、お互いに協力してやっていくということができれば、これほどしあわせなことはないというふうに私は思っております。ただ、現場がはたしてそのとおりいける状態にあるかどうかということになりますと、あるいは米田さんと私の考え方が違っておるというところがあるかもしれませんが、心持ちにおいては、根底においてはそういう考え方をいたしております。やはりお互いに手を携えて日本の教育というものを全うしたいというふうなつもりでやってまいりたいのでございます。いまの道徳教育に関する御意見はお話のとおりに、道徳の時間を設けるとか、あるいはそれに対する参考資料を配るとかというようなことは方法論です。その必要がなければ何もやる必要はない。したがって、学校におけるいわゆる道徳教育というものは、何も道徳の時間だけで道徳に関する知識を教えればいいのだというようなものでないのはもちろんないと思います。もちろん先生の行往座臥が子供さんの道徳教育でなければならぬと、このようにも思います。また、各科目を通じまして、いつもこれが道徳教育、そういうことにもまたこれに関係することでありますから、それぞれの科目においてやってもらうことも当然のことであります。道徳という時間の設けられました趣旨は、さらに道徳教育の効果をあげようという方法論として出されたものと私は心得ておるわけであります。したがって、これがその必要がなければ、もちろんやめても差しつかえないわけです。そういうふうな問題と私は考えておるわけでございますけれども、しからば現在の実情はどうであるかということになりますというと、必ずしも米田さんのおっしゃるとおりに、そのとおりということは申し上げかねるわけであります。道徳教育等の問題につきましても、すぐに文部省が何か言えば天下りだ、官製教育だと、こういうふうにして、もう直ちに排撃せられる、こういうやり方はいかがであろうかと思います。ともどもにいいものとしていくという努力はしてまいらなければならぬと思いますけれどもそうでなくて、お互いに協力してその趣旨の達成を期していくというふうな趣旨で御協力願えれば、たいへんありがたいと思っております。頭からもう天下りだ、権力主義だということで言われることはいかがかと私は思うのであります。文部大臣としましては、御承知のように、現場における学校教育の基準を示すいわゆる学習指導要領というようなものの作成についておまかせを願っておるわけです。文部大臣のやることにつきましても、もちろん欠陥もございましょう、あるいは改める点もございましょう。しかし、おまかせ願ってやっておるわけでありますから、これについては権力主義だとか、天下りだということでなしに、御協力をぜひいただきたい。また、そういうものが必要がないということになれば、これはやめればいいし、現在の状態のもとにおきましては、そういう建前になっておるのでありますから、この建前はひとつ尊重して、これに御協力をいただきたいものと、私はかように考えておる次第であります。米田さんのほうからごらんになりますというと何か押しつけがましいことをやっているというふうにあるいはお考えかもしれませんか、そういう心持ちでは全然ございません。文部省としての役割を果たしていくというつもりでやっておることでございますから、さように御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/63
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064・米田勲
○米田勲君 引き続き聞きたいという気持はあるのですが、これ以上横道へそれては小林委員の質問を妨害することになりますから、まあ保留しておいて、また機会があればやりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/64
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065・小林武
○小林武君 やはり文部大臣ね、質疑の問題についてはっきりするところははっきりして、対立するところはしてよろしいと思うのです。これはあとでまたいろいろ議論できると思うのですけれども、ただ私は、さっきから大臣の話を聞いていて二転三転するので非常にどうとらえていいかわからないので困っているわけです。先ほど言ったような、あとで言ったような、教員をさらに向上させるというような意味、そういう意味で教育をよくやろうという建前から教師にいろいろな期待を持つということ、あるいは教員養成もやろうというようなことであるならば、これはそれとしてあると思うのです。それは私も同感であります。一面そういうものがあると思うのです。同時に、やはりあなたが問題として取り上げているし、私が問題としてあなたに出しているのは現在の教師です。現在の教師に対してあなたがどういう認識を持っておいでになるか、どんな教師をよい教師だとあなたはお考えになっておるかということに対して、あなたはいろいろなことをおっしゃったけれども、道徳教育とか、学習指導要領とか、青少年の非行とかというような問題をあげられた。これがいまの教師に対してやはり批判すべき点であると、こう言うなら、こうはっきり言われたほうがいいのですよ。これもまた一つのあれであって、またそのほかにもあるということをおっしゃるから、あるならばおっしゃいなさい、こういうことになるわけです。問題点がこれだと、こう区切られてしまえば、それでここで質疑はもう、それで賛成するかしないかは別として、次の問題になるわけです。いま米田委員との間の質疑を聞いておりましても、やはり私の先ほどの議論のところにお戻りになっている。道徳教育、学習指導要領それに忠実でない青少年の非行化の問題もお考えの中にあるだろうし、そういう角度からいまの教育に取り組んでおらぬ、こういう判断を下しておる。能力や見識の点についても非常に問題点がある。こうお考えになっているなら、そのようにひとつ御答弁を願えればいいのですよ。それをいろいろ何か気がねされているようなことなんですけれども、気がねされる必要は私はないと思う。日教組のばかやろうと言ってやはり大みえを切った人があるわけですから、これはもう教員をばかと言おうが、御意見ですから、それは何でもけっこうです。私はかれこれそれについて申し上げるのじゃないのです。ただ、やはり討論をしようとするなら、教師に対して一体両者の食い違いはどこかというところが明らかにならないと、私がほんとうはこれから聞こうとする教員養成の問題も重要な問題点の何点かが討論のしょうがないから聞いているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/65
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066・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) この得質問の発端から申しますというと、私は個々の教師をより高めていきたいということを申し上げたわけであります一この点について最初に申し上げましたように、一口でお答えすることがなかなか困難だということを申し上げたわけでございますが、要するに、現在の学校教育の実情からみまして、学校教師に期待するところが大きいのでありますから、したがって、もっと真剣に教育と取り組んでもらう人がほしい、もっと能力のある人がほしい、もっと見識のある人がほしい、こういう個々の教師に対しましての期待というところから出発いたしまして、現在の教員養成の制度について検討を加えよう、こういうことを申し上げたわけでございます。この問題はひとつそういうふうにお考えをいただきたいと思うのでありますが、小林さんの御質問の中にも、あるいは教師の団体である日教組というような立場からのあるいは御質問があるのではないかと思われるふしがあるわけでございますが、私のいままで申し上げておりましたことは、個々の教師というものを対象としての話でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/66
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067・小林武
○小林武君 そこにはちょっと入る予定ではなかったのですが、先ほど米田委員からのお話もありましたし、ちょっとつけ加えて質問しておきたいと思うのですけれども、私も先ほど大臣がお話になりましたことの中に、教師と、それから文教行政をやっている文部省、あるいは教育委員会その他のところにおいて、ともども話し合って、理解し合うものは理解し合っていくというのが望ましいということをおっしゃった。これが大臣の本意であるならば、やはり私は個々の教師というものと教師の集団というものについてどうお考えになっておるか、個々の教師と教師の集団ですね。教師は集団をつくってならないのかどうかということも一つあると思うのです。教師の集団、それから現実にいまある教師の集団、すなわち日教組という組合は日本の教師のほとんどで結成されていると言っても、これは過言ではないと私は思う。教師も幼稚園から大学まで全員ではありませんけれども、大学までその中に入っている、教師以外にも職員も入って教職員組合というものをつくっておるということになると、一体これらの問題について、文部大臣は、ともどもに、とにかく協力し合っていくという観点からこの問題をどうお考えになっておるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/67
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068・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) もとより教師が団体をつくってはならないということはないわけでございます。これは申すまでもないことであります。現に教師の団体ができておる、いまおっしゃったように、日本教職員組合がそういう意味におきまして最大の教師の団体ということも、それはそのとおりであります。ただ、私は個々の教師の資質の向上という問題を先ほど来申し上げたわけでございますが、それらの教師をもって構成しておりますところの教職員団体ということになりますというと、必ずしも同じ議論ができない、こういうふうな気持がいたすのであります。ごく一般的に言えば、教師の集団もやはり教師の集団でありますから、そのような点において、かれこれ批判せられることもないんじゃないか、堅実な組合として進展せられることは先ほども申し上げましたとおり、私はそれを期待いたしておるわけでございますが、現在存在いたしておりますところの教師の団体というものに対しましては、私ども必ずしも全幅の信頼を寄せるわけにはまいりません。同時にまた、必ずしもすべてについて感心をしているわけでもないわけです。もう少し何とかやりようがありそうなものだという気持がしてならないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/68
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069・小林武
○小林武君 もう少し何とかしたらよさそうなものだということをおっしゃらないでどうですか。一体あなたの仕事と非常に関係のある教師の集団なんですから、それについてもっと具体的な御批判があっていいんじゃないですか。それはそういうことを言えば、政党の中においても労働組合から政党を見た場合においても、もっとしっかりやったらいいじゃないかとか、なっとらんとかということをそれぞれ申すことは、自由ですから。しかし、そういうことでは問題の解決にはならないと私は思う。傍観者になれる場合と、なれない場合とある、私は文部大臣と教師団体というものとは、傍観者になれる性格のものではないと思っております。だから、あなたも所信には書きましたよね。しかし、これではよくわからぬ。あまり悪口をたくさん言われるのも業腹のような気もするけれども、しかし、せっかく言われたことですから、遠慮なくひとつやってみたらどうですか。やってもらいたいと思うですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/69
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070・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) これは、いまさら私が申し上げなくても、小林さんが十分おわかりのことだと実は私は思います。かれこれ申し上げる必要のないことだと思います。文部省がどういう心持ちを持っておるとか、あるいはまた日教組の組合がどんな心持ちを持っているかというふうなことについては、いまさらここでかれこれ申し上げなくても、小林さんのほうでも十分おわかりになっていることと私は思っております。一々それをかれこれ申し上げようと思いませんが、ただ、私が先ほど申し上げましたように、どんな団体ができようと、それをかれこれすべき立場にはございませんけれども、文教行政をあずかるものの心持といたしましては、教職員団体の諸君ともほんとうに心を合わせて日本の教育のために協力したいという基本的な心持ちは持っておるわけであります。遺憾ながら現在の日教組の諸君の考え方、あるいはまたその行動というふうなものにつきましては、私としては意に満たぬことがたくさんあるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/70
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071・小林武
○小林武君 文部大臣に誤解していただきたくないんですけれども、私は日教組という組合には責任者としていたことはありますけれども、いま文部大臣からそういうことを言われるような立場にはいまはないわけです。まさか日教組の前の委員長をここに呼んであなたと質疑をやってるわけでもないでしょうから、その点は間違いないんでしょうな。お間違いないように私は願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/71
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072・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) かつて小林さんとも日教組委員長時代に私も数回お目にかかったことがあります。しかし、現在その立場にいらっしゃらぬということもよく承知いたしております。しかし、日教組と文部省との関係については最もよくお知りになっている人だ、こういうふうに思いましたから、先ほどからお答え申し上げたわけでございます。参議院議員の小林さんとして私は申し上げておるつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/72
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073・小林武
○小林武君 それでは、基本的な考え方としては相ともに協力していきたいと。その差しさわっている点は何ですか、結局。あなたは、基本的にはそういう考え方に立っている。その基本的な考え方に立っているということについては、そういう基本的な考え方については私も全く賛成であります。また、そうなければならないと思うんです。ところが、それができないということですね。そのことについてはきわめて私は遺憾だと思います。そういう点について一体どういう点があるのかですね、ちょっと承っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/73
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074・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 私は、これが私の誤解であれば幸いであります。ただ、今日までの日教組の動き方、行動というふうなものを見てみましても、また、その発表せられた事柄を拝見いたしましても、根底において私どもと違った考え方に立っておられるんではなかろうか。たとえば政府を、政府はいわば日教組の諸君とはまつ正面から対立しておるものである。ことばが過ぎるかもしれませんけれども、あるいは日教組の、あるいは教育の敵である、こういうようなお考え方に立っていらっしゃるんじゃなかろうかと思うのであります。そういうような考え方に立っておられますというと、これはどうやっていこうとしましてもどうにもならない。また、その基本的なお立場というものについて、私どもにはともに手を携えていくということを非常に困離とする事情がある。こういうふうに思うのでありまして、そういう意味におきまして、願わくはお互いに一緒にやっていけるような団体になっていただきたい。これが私の希望であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/74
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075・小林武
○小林武君 賢明な文部大臣が、まさか自民党と同じ考え方に教師の集団がならなければ勘弁ならないとはおっしゃらないと思う。そういうことを言ったら、世の中の問題、諸団体一切存在を許さないとか許すとかいう問題にまで発展するわけですから、そういうことは私はおっしゃらないと思います。ただ、文部大臣が大きく誤解しておられることは、根底において違った考え方を持っておる、こうおっしゃって、とにかくどうにもこうにもならない立場にあるというふうにお考えになるのは、これは私はどうかと思う。なぜならば、文部省の書かれたものを見ましても、憲法並びに教育基本法に従って教育をやる、こう書いてある。日本教職員組合という教師の集団を見ましても、憲法並びに教育基本法に従って教育を守っていくのだ、これは国民全体に責任を負ってやっていくのだ、こう言っている。私はその立場の中においては共通点を見い出し得る問題がたくさんあると思う。お互いが協力し合い、話し合いもできる要素があるのに、やらないということは、少しおとなげないじゃないですか、誤解が過ぎやしないですか。発表せられた文書がどうのこうのと言い出したのですが、自民党さんの出された文書、文部省の出された文書にも相当なものがある。この前の一体首切りの問題のときの文書なんぞ、あまり文部省として名誉の文書でない、ああいうもので一体行政指導をやっているということについては。しかし、そういうことを一々取り上げてけんかをする段になったら、いつまでたっても、誤解は誤解を生んで、これは深まっていく。お互いに憲法並びに教育基本法に従って教育をとにかくやっていこうという基本的な考え方、条件が一致しておれば、その他のところは、私はかなり話し合う余地があると考えているのですけれども、文部大臣がそういうことについてまるっきり日教組を信じないということは、あなたのおことばのとおり誤解ではないのですか。誤解をお解きになる時期が来ていると思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/75
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076・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) なるほど日教組のほうでも憲法、教育基本法を尊重するということを言っております。そのことばから言えば、その点においては共通点があるということは言えるかもしれませんけれども、現実に日教組が考えておられることと、また行動しておられることをみますというと、私どもはどうも根底から考え方が違っているのではなかろうか、政治についても、教育についても、そういうふうに思われる節がたくさんあるのであります。文部省のごときは独占の手先である、こういうふうにきめつけられて、そうして批判せられるということは、どうであろうかと実は私は思う。そういうことでなしに、ほんとうに胸襟を開いてお互いに信頼し合い、話し合い、ができるということならけっこうでありますけれども、今のような指導原理に基づいてものを考えられ、あるいはまた行動をおやりになるというと、なかなか一致がたいものが、私は根底にある、こういうふうに思うのであります。何を考え、何をなさろうと、それは自由だとおっしゃればそれまでのことでありますけれども、お互い教育の問題を実り多いものにするためには、それでは思うようにいかないということが私の嘆きなのです。何とかそういうことでなくやっていただきたいと思いまするけれども、従来からの日教組の指導方針なり、あるいはまたおやりになったことをみますというと、どうもその根底においてお互いに手を携えていきにくいところがあるというの、が、日本の教育の大きな不幸だと思う。そういうふうに考えているわけでありますので、そのようにひとつ御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/76
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077・小林武
○小林武君 灘尾文部大臣らしくない御意見だと思うのですけれども、たとえば独占の手先と書かれたので頭に来た、そう言われれば、ソ連の手先と書かれたほうもまた頭にくる。学校で革命教育をやっているのではないかと言われれば、やはりこれは不愉快になると思う。こういうふうにお互いにやり合っていることを解かないというと、私はいつまでたってもあれだと思うのです。対立は対立を生んで、あなたが非常に望んでいらっしゃるところの両者が協力し合うという態勢は出てこない。私はそういう意味では、灘尾文部大臣はちょうどそういう誤解を解くいい時期に文部大臣になられて、しかも前からのいろいろないきさつもごらんになって、いろいろな点で両者のあれもおわかりになっておるのですから、そういう誤解を解くいい時期だと思いますので、まあ何とか誤解を解かれたらどうかと、こう思っております。あなたのあれは、誤解を解いて、とにかくその方向に行くというようなことを極力避けられるためかどうか知らぬけれども、出てくる問題はどうも少し子供っぽい気がするのです。独占の手先だと書いたからどうだとか、敵だと言ったからどうだというような、そんなことを拾い出したら幾らあるかわからぬです。これはあなたのおっしゃるとおり、日本の教育の世界における不幸なのです。そういう不幸をいまわれわれは思い切って取り除くことができないのかという、そういうことがとにかく当事者の間でできないならば、政治をやっているところで一体そういうことについていろいろ話し合ってみる心要がないのかどうか。私はいまどこどこと話し合えなんという、あなたに押しつけがましいことを申すのではありませんが、ただ、あなたの心配しているように、そういう時期がきているように思う。だから、一ぺんに氷解するということはできなくても、基本法の問題とか、それから憲法の問題でやればいろいろあると思うのです。やり口を見るということをおっしゃいますけれども、私は相手方の肩を持つわけじゃございませんけれども、純潔のほどはむしろ向こうのほうが純潔だと思う。平和に対するものの考え方でもですね。憲法の、たとえば九条に対する理解の問題でも、むしろ日本の政府が日本国民に訴えたそのことを、ずいぶん純粋に守り続けていると私は思っております。だけれども、そのことも取り上げて言えば、議論はいろいろあるでしょう。そんなことじゃなくて、問題が憲法や、教育基本法まで落ちついたら、いままで言った何の手先だ、かんの手先だというようなことは抜きにして、誤解を解いてひとつ相互に協力し合うというような態勢を私は文部大臣にまず御要望申し上げたいと思います。それで、どうもだんだん横道にいっちゃって、教員養成のほうはきょうはできませんから、あとにしていただくようにしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/77
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078・中野文門
○委員長(中野文門君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/78
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079・中野文門
○委員長(中野文門君) 速記を起こして。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/79
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080・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 小林さんの御意見は御意見としてよく承ります。ただ、現実の日教組がはたしてそのとおりであるかどうかということになりますと、そう簡単に考えるわけにはいかない、このような気持で現在おるわけであります。先ほども申しましたとおりに、私としても、教育教師と文部省とがいがみ合っている、対立する、敵だとか、こういうふうな関係は、一日もすみやかに解消するようにありたいものだという心持でもって文教行政に当たってまいりたいと思っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/80
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081・中野文門
○委員長(中野文門君) 本日の委員会はこれをもって散会いたします。
午後二時四十四分散会
――――・――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X00619640213/81
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