1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年三月三日(火曜日)
午前十時二十一分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 中野 文門君
理事
北畠 教真君
吉江 勝保君
加瀬 完君
委員
木村篤太郎君
久保 勘一君
笹森 順造君
中上川アキ君
野本 品吉君
秋山 長造君
小林 武君
米田 勲君
柏原 ヤス君
赤松 常子君
発 議 者 秋山 長造君
発 議 者 加瀬 完君
発 議 者 小林 武君
発 議 者 米田 勲君
国務大臣
文 部 大 臣 灘尾 弘吉君
政府委員
文部大臣官房長 蒲生 芳郎君
文部省初等中等
教育局長 福田 繁君
文部省大学学術
局長 小林 行雄君
事務局側
常任委員会専門
員 工楽 英司君
説明員
文部省大学学術
局学生課長 笹木 三郎君
参考人
日本育英会理事
長 緒方 信一君
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本日の会議に付した案件
○日本育英会法の一部を改正する法律
案(秋山長造君外四名発議)
○参考人の出席要求に関する件
○文化功労者年金法の一部を改正する
法律案(内閣提出、衆議院送付)
○教育、文化及び学術に関する調査
(義務教育諸学校の教科用図書の無
償措置に関する法律の施行に関する
件)
(昭和三十九年度文部省の施策及び
予算に関する件)
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001・中野文門
○委員長(中野文門君) ただいまより文教委員会を開会いたします。
日本育英会法の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、参考人の出席要求についておはかりいたします。
本法律案審査のため、本日、日本育英会理事長緒方信一君の出席を求め、その意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/1
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002・中野文門
○委員長(中野文門君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
それではこれより質疑に入ります。御質疑のおありの方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/2
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003・野本品吉
○野本品吉君 それでは、社会党の提案にかかります育英会法の一部改正につきまして簡単にお伺いいたしたいと思います。
最初に伺いたいことは、近時、青少年の問題が非常に政治的にも社会的にも大きな関心事になっておるわけですが、この問題を突き詰めてまいりますというと、行き着くところは幼児教育の問題に向かっておるようでございます。そこで幼児教育という観点から社会党の皆様もいろいろとお考えいただいて、この提案になったように思うんでありますが、私は日本の幼児教育の問題でひとつ十分検討しなければならない点があると思うんです。それは厚生省の所管する児童福祉法に基づく保育所、保育園の問題と文部省の系統に属する幼稚園の問題であります。厚生省も幼児教育という立場から非常な力こぶを入れてこの行政を進めようとしておりますし、文部省もまた幼児教育の重要性ということを考えて幼稚園の教育の充実に向かって非常に前向きな姿勢をとっておるわけです。しかし、対象になります子供はひとつの幼児でありまして、そこで末端の実情等をしさいに見ますというと、保育園の保育と幼稚園の教育との間にいろいろな、混乱とまでは言えないかしれませんけれども、錯綜を起こしておって、いろいろな事態をかもしておるというようなのが実情であろうと思う。そこで、私が提案者にお伺いいたしたいと思いますのは、この保育園における幼児教育と幼稚園における幼児教育の問題をどういうふうにお考えになっておられますか、この点についての所見をお伺いしたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/3
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004・秋山長造
○秋山長造君 いまの御質問の点は、私ども従来から幼稚園の問題を扱う場合にいつも突き当たる一つの重要な問題なんですが、幼稚園は幼児に対しまして学校教育を施すことが目的であり、保育所は保育に限る児童の保育ということを目的としておるのでありまして、おのずからその機能は異なっておるわけでございます。ただ、しかし、従来の実態からいいますと、内容そのものにどうもはっきり区別のつかないような点もあり、それからまた一般の人の認識についても、幼稚園と保育園を混同しておるような傾向もございまして、いつも問題になるわけでございますが、この点については、三十八年十月二十八日に文部省の初中局長と一厚生省の児童局長との連名をもって、両者の関係について認識を深めるための通達が出されたことは御承知のとおりであります。大体その通達の線に沿いまして、できるだけこれが混同されないように考えていかなきゃならぬだろうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/4
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005・野本品吉
○野本品吉君 そこで、この法案を提案されますときに、保育所のあり方についていろいろお考えになっておると思うのですが、その点についてさらに御意見がありましたらお伺いいたしたいと思うのです。さらにつけ加えておきます。つまり、幼稚園の職員の問題を考えるときに、保育所の保母をどうするかの点についてお考えになっておられるかどうかと、これです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/5
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006・秋山長造
○秋山長造君 幼稚園の問題を考えるときに保育所の保母をどうするかという御質問の意味がちょっとわからないんですが、もうちょっと詳しく……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/6
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007・野本品吉
○野本品吉君 保育所の保母の処遇等の問題、資格とかですね。幼稚園の職員の問題を考えますね、そのときに保育所には保育所の保母がおって、そうして大事な幼児教育をしておる、幼児の指導をしておる、そのときに保育所の保母の問題について、資格とか、身分とか、いろいろなそういう問題についてお考えになりましたかどうか、なったとすれば、どういうふうにお考えになられたか、こういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/7
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008・秋山長造
○秋山長造君 保育所の保母の問題はまだ考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/8
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009・野本品吉
○野本品吉君 さらにお伺いいたしたいのでありますが、この法案の実施を公布の日からということにされておりまして、何月何日という時期を明確にされない点はどういうお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/9
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010・秋山長造
○秋山長造君 この点は、実は昨年度提案しましたときは四月の一日施行ということにしていたのですが、しかし、相なるべくんば、四月の一日施行よりもっと早く施行できればこの三月の三十一日に卒業する人たちにも適用ができるわけなんです。まあそういう便宜を考えまして、公布の日から施行、こういうふうに改めたわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/10
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011・野本品吉
○野本品吉君 それからこの法案が実施される場合に、この法律の適用対象になるであろうと推定されるものの数はどういうふうにお見込みですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/11
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012・秋山長造
○秋山長造君 これは対象が二種類あるわけですね、幼稚園の教員の場合と、それから養護教諭の場合。幼稚園の教員の場合については、これはどうもいままで適用がなかった人へ今度新しく適用しようというわけですから、その実態をつかむのに非常に骨が折れるわけなんです。したがいまして、私どもも正確に詳細な数字はつかんでおりません。ただ三十七年度に一応調査した数字があるわけなんですね。これは全国の幼稚園の数が分校も含めて七千六百八十七ありますが、その七千六百八十七の幼稚園のうち回答のあったのは千七百七十二しかなかったわけですが、その中で大体二百二十五名該当者があるということをつかんだわけなんです。したがいまして、それから推定しますと大体五、六百名ぐらいになるのじゃないかというように考えておるわけなんです。それからもう一つは、第二の養護教諭でありますが、養護教諭につきましては、これは一そうつかみにくいのでして、大体、養護教諭の対象人員が千人から千二、三百人くらいの数字になるだろうと想定しまして、そのうち養護教諭にいよいよ現実になる人が二割ないし四割、平均して三割くらいだと思いますので、三百人ないし四百人ぐらいが育英資金の貸与対象になるのじゃなかろうかというように推定をいたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/12
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013・野本品吉
○野本品吉君 お話のとおり、人員を確実に把握するということは相当めんどうだと思いますが、したがって、この法案が実施された場合における予算関係の数字も、人数がはっきりしないのではっきりした数字をはじき出すことが困難である、こういうことになりますかね。それからあとは養護教諭の問題ですが、これは養護教諭の養成、確保、充実等に対しまして、文部省としても相当前向きの姿勢で検討を続けておるわけですが、現在の養護教諭の不足数はどれくらいにお見込みでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/13
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014・秋山長造
○秋山長造君 これは御承知のとおり、小学校、中学校合わせまして大体三万五千くらいあるわけですから、それぞれ各学校へ一人ずつ配置するといたしますれば三万五千人要るわけです。ところが昭和三十七年度現在でおおよそ九千百人しか養護教諭はいないわけです。だから、その差額が結局これから充実していかなければならない数字になるわけです。そこで、当委員会でも決議をなさったりしまして、文部省では養護教諭の充実玉ヵ年計画というものをお立てになったことは御承知のとおりであります。そうして三十八年度から四十二年度までの五カ年閥に五千人余の養護教諭の充実をするということで、まず、初年度の三十八年度二千人という計画を立てられたわけでありますが、実績は大体三百五十人程度しか充実ができていないということになっている。これから相当馬力をかけて養護教諭の養成をし、充実をしていかなければ、とうてい五千人の養護教諭の充実すら、これは五カ年間にやれるかどうか、はなはだ疑問だろうと思っているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/14
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015・野本品吉
○野本品吉君 いま提案者からお話のありましたように、私も文部省が立てられた養護教諭の充実の五カ年計画の進行の状態に対しては、きわめて遺憾に思っておるのでありまして、この点についてはいずれ適当な機会に文部省にもお伺いをいたしたいと思っております。
そこで、次にお伺いいたしたいと思いますことは、幼稚園の教育の問題ですが、幼稚園の職員の充実と同時に幼稚園の設置その他についていろいろと考えさせられる問題があるわけです。と申しますのは、ある時期に幼稚園が多くなり過ぎたと申しますか、ベビーブームのときに幼稚園が非常に数が多くなった。その後、出生した子供の数が激減している。これによりまして、幼稚園の経営がいろいろとむずかしくなってきておる。幼稚園のこの点については今後どうしていったらいいか、どうすべきかということは、一応、幼稚園問題を考える場合に私は見落としてはならない問題だろうと思う。そういう点について何かお考えがありましたら、これもお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/15
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016・秋山長造
○秋山長造君 やっぱり、まず第一は、経費の問題だろうと思うのです。現在、幼稚園の充実がなかなか設置基準どおりいかないという一番根本の原因は何かということをいろいろ考えてみますと、結局やっぱり財政的な問題が一番大きいのじゃなかろうかというように考えます。たとえば、文部省自身にいたしましても一、新年度幼稚園振興七カ年計画を立てられまして、そうして三億二千万円の予算要求をなさったにもかかわらず、これが四分のですか、七千三百万円程度に査定を受けておるわけですね。それでも園舎の整備費の五千万円のほかに、新たに設備費の補助として二千万円という新規の経費が計上をされたわけですけれども、これはまあ当初の幼稚園振興七カ年計画という面から考えますと、非常にこれは不十分な数字だろうと思っております。文部大臣もこの委員会で所信表明をなさった中にも、幼児教育の振興を重視することを特に強調されていることは御承知のとおりです。また、私どももその点に関する限りは全面的にその趣旨に賛成するものです。したがいまして、まず国が幼稚園に対する財政的な措置というものを、もっと振興計画を裏づけるに足るだけのものを予算に計上するということが一番必要なことじゃないかと思うのです。それからさらにその一つとして、たとえば地方交付税なんかの組み力を見ましても、小学校、中学校の経費についてそれぞれ別ワクで交付税が算定されているわけです。ところが、幼稚園に関する限りは幼児教育が重要だ重要だと言いながら、独立した項目として幼稚園費というものが計上されておらぬわけです、算定されていない。その他の経費ということでばく然と含められて算定されておるに過ぎない。したがいまして、ほんとうに幼稚園教育というものを名実ともに充実していこうというならば、たとえば交付税の算定についても、やっぱり小中学校と並んで幼稚園費というものを独立した項目としてやっぱり設定すべきじゃないかということを考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/16
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017・野本品吉
○野本品吉君 法案に対する質問は私はこれで終わります。
続いて育英会に関する質問をしたい。社会党の幼稚園の職員その他に関する法案の中で、育英会の貸与金の返還の重要性が指摘されております。私は年来この問題に一応の注意を払っておったのでありますが、このことについてさらに実情をはっきり認識して、将来どうすべきかを考える必要があろうと思うので、若干質問いたしたいと思います。項目的に簡潔に申しますから、お答えのほうも具体的にはっきりとお答え願いたい。いままでの貸与をいたしました学生の総数はどれくらいありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/17
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018・緒方信一
○参考人(緒方信一君) 日本育英会が創立されましたのは昭和十八年でございますが、それから今日まで二十年続いてまいりました。その間に育英会の奨学資金を借りた数は百三十三万であります。概数であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/18
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019・野本品吉
○野本品吉君 その百三十三万人に対しまして貸与した総額はどれくらいになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/19
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020・緒方信一
○参考人(緒方信一君) 六百五十億余になります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/20
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021・野本品吉
○野本品吉君 その六百五十億のうち、すでに返還の時期の到来しておりますいわゆる要返還額、これはどれくらいになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/21
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022・緒方信一
○参考人(緒方信一君) 六百五十六億貸しておりますけれども、この中には現在まだ在学している者とか、それからさらに返還免除を受けた者、それから猶予を受けた者、それからさらにもう一つ、これは返還の方法に関係いたしますが、その返還は借りた人が学校を卒業しましたあと、二十年間のうちに自分の返還計画を年賦で立てると、こういうことになっております。したがいまして、まだその支払いの時期に到達しない額というものが相当ございます。そういうものをみんな引きますと、これは三十八年度の末、まだ来ておりませんからこれは推定でございますけれども、百十四億——百十五億に近い数字でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/22
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023・野本品吉
○野本品吉君 その百十四億のうち、先ほどお話のございましたように、まだ返還期の来ていないも一のとか、返還の免除をしたもの等を差し引いて百十四億になるのですが、そのうち返還が済んだ額と申しますか、まだ済まなくても返還の途上にあるものも含めまして、返還の額はどれくらいになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/23
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024・緒方信一
○参考人(緒方信一君) これも概数で申し上げますが、七十七億ほどはすでに返ってきております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/24
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025・野本品吉
○野本品吉君 そうするというと、返還を求めなければならないものが百十四億から七十七億差し引きますと幾らになりますかな——三十七、八億、こういうことになるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/25
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026・緒方信一
○参考人(緒方信一君) ちょっといまの点でございますが、三十八年度末で三十七億というのがいわゆる延滞額になっているわけであります。これから今度三十九年度に入るわけでありますけれども、三十九年度に新たに返還すべき金額というのがこれに加わるわけであります。したがいまして、三十九年度にはそれを加えた金額が回収すべき金額と、こういうことに相なります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/26
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027・野本品吉
○野本品吉君 そうすると、返還のパーセンテージからいいますとどれくらいになりますかな、何割が返ってきているか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/27
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028・緒方信一
○参考人(緒方信一君) まあ返還されなければならない金額、先ほど申し上げました百十四億、それに対しまして七十七億が返還済みでございますから、そのパーセンテージをとりますと六七・七%、七割足らずということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/28
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029・野本品吉
○野本品吉君 三三%が返還が滞っておる。そこでその返還の滞っておる人員というのはどれくらいになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/29
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030・緒方信一
○参考人(緒方信一君) いわゆる延滞者の数でございますが、これも三十八年度末を推定いたしますと四十万人ぐらいにはなります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/30
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031・野本品吉
○野本品吉君 四十万人のものが一応さらに返還を求めなければならない。そこで、一体どうしてそのような返還が停滞しておるか。延滞というか、停滞の理由、原因、そういうものについてどういうふうにお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/31
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032・緒方信一
○参考人(緒方信一君) これはいろいろ調べてみますと、何と申しますか、ほんとに悪意があって、自分はもう返さない、返す必要ないんだと、そういうふうな徹底した悪意のあるというものはあまり少ないんじゃないかと思います。ただ、やはりずるずるになっている、ついうっかりためてしまう。そうなりますと、若い人でございますから、たまってしまいますと、相当な経済的に負担になりますから、それがずるずるたまっていくというようなことがあると思います。それから育英会自身といたしましても、いろいろと手を尽くして回収に努めてはおりますけれども、何しろ最初から、そもそもこういう金が返ってこないということは考えないで事務態勢もとられておったようなこともございまして、請求、督促等の手だても十分してなかった点もあったかと存じます。そういうことをただいま反省いたしまして、いろいろと回収する努力をさらに加えておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/32
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033・野本品吉
○野本品吉君 私も、みな相当高い教育を受けて良識を持った人たちですから、悪意を持って返還の義務を怠っておるものとは考えたくない。しかし、事実は返還がこのように滞っておるんであります。むしろ、これは育英会側からの働きかけというか、事務的な手を伸ばすことに欠陥があるんじゃないかというふうな見方もできると思うんですが、その点についてどういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/33
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034・緒方信一
○参考人(緒方信一君) ただいま申し上げましたように、従来の手の届かなかった点は十分反省をいたしております。私ども借りた人が返すということは当然なことでございますから、かりに請求、督促等が行き届かなくても、本人が積極的に返してくるというのが本筋だと思いますけれども、しかし、何しろ実情といたしましては、若い諸君が職場に働いておりまして、ついうっかりするということもございましょうし、また勤務時間等が非常に忙がしくて、返還期間を知りながら、それを銀行や郵便局に持っていくという時間を見出せない、そういう事情もあるかと思います。でございますから、私どもとしましては、そういう人たちがなるべく払いやすいような方法を講じてあげるということが必要だろうと思いまして、一方、請求、督促等を厳重にいたします反面、その便宜を与える、払い込みのしやすいような便宜を与えるということに力を注いでいこうと思っております。そういうことでいろいろと具体的にやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/34
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035・野本品吉
○野本品吉君 育英会からの資金の貸与をいたします場合に、大学に設けております委員会というんですか、大学あるいはその他の学校で資金貸与の委員会を設けて、その委員会の推薦によって決定するわけですね。そうすると、貸与を受けるときにそういう委員会を設けてやる。その学生が大学を出てそれぞれの職場に入ってから先のことについては、そういう関係機関というものはあなた方に積極的な協力がないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/35
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036・緒方信一
○参考人(緒方信一君) 育英会の奨学金の貸与というのは、学生本人と育英会との契約、突き詰めて申しますと、金銭の貸借契約であります。しかし、これはただ普通の金銭の貸借関係にとどまるべきじゃございません。この貴重な金は国費でございますから、一応、育英会が国費を借りてそれを学生さんに貸している。そういう貴重な国費を使って人材養成のためにやっている仕事でございますから、そこにはただ金銭の貸借のみじゃなく、精神的なつながりと申しますか、公益的な観点もそこに加えなきゃならぬことは当然でございます。したがいまして、いまお話のように、これを貸し付けるときも、また貸し付けたあとにおきましても、学校当局が相当これに力を尽くす、あるいは返還等につきましても十分学生を補導していくということはやってもらいたいと思っております。現にだいぶ骨を折ってもらっております。ただ、これが社会に出て来てそれぞれの職場に就職したその後におきましては、なかなかこれを学校自体としてつかみにくい状態でございます。そこで、いまお話の最後の点でございますけれども、就職いたしました職場におきまして、これをお世話願うならば、返還等の便宜をはかっていただくということになりますと、これは非常に本人のためにもよろしゅうございますし、それから日本の育英会の貸与制度を実施していきます上におきましても、非常にけっこうなことでございます。現に民間におきましても、あるいは官庁におきましてもですが、職場返還ということが行なわれております。これは本人が勤めます会社、銀行あるいは官庁におきまして、そこに勤めます元奨学生を集めまして、そして給料日等に積み立てをさせまして、それを一括して返してやる、こういう協力体制が漸次整えられつつあります。まだ十分ではございませんけれども、漸次整えつつあるという状況にございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/36
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037・野本品吉
○野本品吉君 私は育英会と本人の個人との関係だというけれども、その中側に立って、あっせん者、学校の委員会その他は積極的に返還の問題についても学生に対して責任を感じてもらいたいということを考える。それから育英会の中に、何か貸与を受けた人たちのまじめな会合ができておって、そしてお互いにしっかり貸与金を返そうじゃないかということを話し合ったりしているりっぱな団体があるわけですね。こういう団体がある一方、今度は延滞して平然としているというようなことになりますと、これはたいへんおもしろくないと思うわけですよ。あの会に対して育英会はどういうふうな方針で育成強化しようとしているのか伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/37
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038・緒方信一
○参考人(緒方信一君) いまのお話は育英友の会というのができております。これは元奨学生の諸君が卒業した後、いわば同窓会のような組織になっております。各県に支部がございまして、それが連合して中央に中央機関がございます。いずれもこれは自分で仕事を一方持ちながら、中心になる人たちが奉仕的にこれを世話していくということでございます。まだその力は微弱でございます。しかし私どもとしましては、いまおっしゃるような意味におきまして、これはぜひ伸ばしていきたいと思います。先ほど申し上げましたように、国の金を借りてその恩恵によって学業を終え、そして社会にりっぱに立っていく、そして自分の返した金が後輩の学資にまた循環して使われる、こういう仕組みでございますから、先輩と後輩の何と申しますか、相互連帯的な、共助、お互いに助け合っていく、こういう精神が非常に大事だと思いますので、そういう精神を基調にしていまのような制度、組織を私どもは助長して伸ばしていきたい。これは直接返還の問題には必ずしも関係しないことかもしれません。そういう精神的なつながりを醸成することがいま問題のあります返還問題にも非常にプラスになる、かように思って力を尽くしておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/38
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039・野本品吉
○野本品吉君 私はいまの育英友の会というのは非常にいい考え方だと思うのです。したがって、育英会でも、その他の方面でも、ああいう良識の芽というものをどうしたら育てていくことができるか、どうしたらこれを大きくすることができるかということについては、あの人たちの自発的な会合もさることながら、やはりこれに力をかしてやるだけの愛情をもって臨まなければいけないと、かように考えておるわけです。終局的には、育英会から、あるいはその他の方面から催促などをすることなしに、ことごとく貸与を受けた者のあの良識の力によって、結集によって、この問題が解決されるように持っていくことが、根本的な解決策の一番上々の策ではないかと思っておるんで、そういうことについて、その会を育成し、助長していくための何かのめんどうを見ておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/39
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040・緒方信一
○参考人(緒方信一君) これは、まあ精神的な支援は十分いたしておるつもりでございます。まあ具体的にはどういう活動をしているかということを少し申し上げますと、たとえば講演会を友の会の主催でやるとか、それに対しまして私ども講師をあっせんしてあげている。また、育英会会長が、森戸先生でございますが、会長みずから出ていっていろいろお話しをする。必ずしも育英会の問題だけではなく、広く教養、文化の面におきまするそういう研修、講演等を行なっていくというようなこと、あるいはまた、これはやはりお互いの間の親睦、融和、協力というそういう精神を醸成することが一番大切だと思いますが、そのためにお互いでいろいろな、まあたとえば英会話の勉強をするとか、女子はいけ花の教室を持つとか、それからあるいはときにはピクニックを一緒にやるとか、そういうことを中央あるいは各地方におきましても行なっております。これに対しまして育英会としても、その活動についての事務局といったようなものは、育英会自身が引き受けておりますが、そのほか具体的にいろいろ援助をいたしております。講演会のような場合に若干の助成をするとかというようなこともやっております。しかし、その会合そのものは大体各人の会費によって運営されておりますが、それに若干の支援をしているというようなことでございます。今後、ひとつ十分力を尽くしていきたいと思います。御意見、非常にありがたく拝聴いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/40
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041・野本品吉
○野本品吉君 それから、これは返還との関係があるので私はお伺いするのでありますが、かりに高等学校から大学院を終わるまで引き続きずっと貸与金を受けた場合に、一人の人間がどれくらいの金額を返さなければならないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/41
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042・笹木三郎
○説明員(笹木三郎君) これは三十八年度現在の単価で、一応、修業年限全部貸与を受けたと仮定いたしまして計算いたしますと、これは一般貸与の場合でございますが、高等学校で五万四千円、それから大学で十三万八千円、それから大学院が修士、博士ともに全部借りたといたしますと、大学院全部で七十八万円、総計いたしますと九十七万二千円、約百万円足らずという金額にのぼるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/42
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043・野本品吉
○野本品吉君 そうすると、それを二十カ年間に返すということになるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/43
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044・緒方信一
○参考人(緒方信一君) いまのお話は、高等学校から大学、それから大学院とずっといまの単価で計算しました金額でございますが、大学院まで出た人には免除職というのがございます。特別の免除職につかなければ要返還ということになるわけであります。もう少し申し上げますと、大学を出てつく免除職としては、教育職あるいはそのほかございます。それから大学院を出てもございます。それぞれのものに該当する職につけば免除になるわけでございますけれども、ずっと借りてそういう職に全然つかないということであれば、二十カ年間に返さなければならぬという次第になるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/44
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045・野本品吉
○野本品吉君 研究職とか、教育職につけば返還義務が免除される、そうでないものは要するに百万円を二十カ年間に返さなくちゃならぬ。この負担はそう軽いものでもないように私は考える。したがって、その返還の方法その他について、できるだけ親切にめんどうをみてやるように考えるべきではないかというふうに私は思う。そこで次に、先ほど緒方理事長から職場返還の問題に触れられたので、そのことについて私はお伺いいたしたいと思う。実は御承知のように昨年の十二月の十二日に、当時、政務次官を私がしておりましたときですが、私は特にこの点について皆さんと相談をして、そうして次官会議の申し合わせをして、育英資金が順調に返還されるように考えるべきであるということで話し合ったのでありますが、そのときにわれわれが問題にしましたのは、公務員の中に返還義務を完全に履行しない者が相当多数ある。そこで、これらの方々の良識に訴えて返してもらうためには、各省庁でそれぞれの責任を持ってこの返還を十分やるための便宜をはかっていただくようにしたい。そのことを育英会のほうから連絡をとってほしいということを申し合わせたわけです。その当時の申し合わせとしては、要返還のうち特に国家公務員については、関係各省に責任者を定め、日本育英会と連絡して、該当者の自覚を促すとともに、必要な便宜を供与する等、返還の促進のために積極的な方法を講ずること、二は、政府関係諸機関、地方公共団体及び民間の事業所等の職員についても、前記の趣旨に即して返還の促進をはかられるよう積極的に働きかけること、このことについては、緒方理事長も十分御承知のわけであります。そこで、ちょうどすでに一年を経過した今日、このことが現実に具体的にどういうふうな結果になってあらわれておるか、これをひとつお話し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/45
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046・緒方信一
○参考人(緒方信一君) ただいまお話のように、政務次官会議におきましてこの問題を取り上げていただきました。返還問題が非常にむずかしい時期に、私ども非常に困難を感じております時期に、この問題を政務次官会議で取り上げていただきまして、そうして御推進願いましたことは、私ども非常にその当時から感謝をいたしておる次第でございます。いまの御質問でございますけれども、私どももその趣旨に沿いまして極力その方法を推進してまいりました。今日いま政務次官会議で御勘考いただきました方法をすでにとっておる中央省庁が十五ございます。各省であれば全部で十二でございますが、そのうち、三、四の省がまだできておりませんが、中央省はほとんどこういう方法をとられました。ただ、これはお願いをする側には非常にごめんどうな、ごめんどうということだけで申し切れませんけれども、事務的に非常に繁雑なことでありまして、これを引き受けていただくにもなかなか困難があることが十分察知されるわけでございます。それからもう一つ、私のほうといたしましても、これをだんだん進めておりますけれども、一方、返還金の率を引き上げていくという関係からいたしますと、こういう方法を進めていく努力と同時に、あわせて現実に金を回収しなければならぬ仕事がございますものですから、一年間たちましたけれども、十分に御期待のように全部が実施するという状況にはまだ立ち至っておりません。まあ数でみましてもまだ半分くらい残っている、各省の本省のほうは大体いま申しましたとおりでございまして、残っている省は少数でございますけれども、いろいろ外郭機関等を加えて考えますと、まだ相当残っているという状態でございます。これは官庁に限りません。ほかの職場も同様でございますけれども、従来私どもこういうお願いをするにつきまして一番困難を感じますのは、私どものほうの事務の非常にむずかしい点でございますけれども、要返還者というのが、先ほど申しましたのは延滞者の数でございますが、要返還者は七十万近くある、七十万人につきまして、職場ごとのグループ分けというのがこちらにはできないのであります。七十万人の者を番号順にずっと整理しておりますけれども、それを中央の各省——ある省に勤務している者がどれどれかということを具体的に人を摘出することは非常にむずかしいわけでございます。結局、勤めておりますところで元奨学生を調べていただきまして、それを集めていまのような組織をつくっていただきたい、こういうことでございまして、そこに一番弱点が私のほうとしてはある。それからもう
一つは、これをやりますためには、一口で申しますと何でもないようでありますが、私どもの外務員が職場に出向きまして、その職場々々で集めてもらいます要返還者、つまり元の奨学生一人一人に会いまして、従来、育英会とかわしております契約を変更して、そういう集団的に返すという契約にし直す、それらの手続というのは相当人手もとりますし、一方、先ほど申しましたように相当な返還金の成績をあげるという、回収の成績をあげるというそのことにつきましても追われておるものでございますから、政務次官会議でおきめいただきましたあと一年たちました今日、まだいま申したような実情であることを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/46
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047・野本品吉
○野本品吉君 私は率直に、去年以来あなた方が骨を折っておることをよく知っておる。そこで政府機関のどれとどれがいままでその趣旨に沿ってそれぞれの職場で金を集めて、そして返還するようにしておるか、どことどこの省が、あるいは役所がやっておるか、それを具体的にひとつ名前を聞きたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/47
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048・緒方信一
○参考人(緒方信一君) それは何か資料で提出さしていただくわけにまいりませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/48
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049・野本品吉
○野本品吉君 簡単に役所の名前だけ言ってください、実施されておるところだけ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/49
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050・緒方信一
○参考人(緒方信一君) 現に実施中の役所としましては、ずっと上から申しますが、大蔵省、文部省、建設省、自治省、法務省、農林省、郵政省、以上が中央省でございます。それから人事院、会計検査院、経済企画庁、国税庁、宮内庁、最高裁判所、東京高等裁判所、工業技術院計量研究所、これは区分が相当でこぼこでございますが、以上が実施中のものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/50
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051・野本品吉
○野本品吉君 さらに、貸与金の返還について民間企業体でもまじめにこの問題を考えて、自分の企業に従事している者からは少なくとも延滞者を出さないという配慮のもとにいろいろと協力されているところがある。そこで、民間企業でこれに協力して、いまのような職場返還を行なっているところはどことどこですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/51
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052・緒方信一
○参考人(緒方信一君) ずっと上から申し上げますが、住友銀行が、これはずいぶん早くから協力されております。ここは非常に特殊でございまして、これは私どもが昔お願いする前から積極的で、これは頭取の意向だというふうに私ども聞いておりますけれども、延滞金のある者につきましては厚生資金を貸し付けてやって、そうして一時立てかえて返させる、そしてあとはずっと返還していくということをやられておるように聞いております。いろいろそのほかございますが、読み上げます。浦賀重工、東洋信託銀行、フジテレビ、伊藤忠商事、松下ラジオ、住友金属、上田化学、日立造船、丸紅飯田、日本レーヨン、松下電器、近畿相互銀行、神姫自動車、冨山相互銀行、井関農機、東京銀行、日生産業、それから自分のところで日本育英会であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/52
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053・野本品吉
○野本品吉君 この趣旨が地方庁にも響いてというか、あるいは前からだか知りませんが、地方庁でもこの趣旨に沿って返還に協力している県があると思う。それはどことどこですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/53
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054・緒方信一
○参考人(緒方信一君) この方法を地方庁にもお願いをしたいということで、私のほうからお願いをしかけておるわけでございます。そこで、すでに実現いたしましたところは千葉県庁だけでございます。千葉県庁と千葉県の教育委員会でございます。ここだけで実施いたしておりまして、相当これから実施しようという機運には若干なってきております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/54
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055・野本品吉
○野本品吉君 私が特にこの点をこまかくお伺いしたのは、私は返還問題について、返さない人が不都合だとか何とか不都合呼ばわりをするつもりじゃない。要するに、三十七億の金が返ってくれば、その三十七億の金によって幾千の後輩学徒がその恩恵に浴することができる。したがって、どこまでも良識に訴えて完全な返還を期待しなければならぬ。特にいまお伺いしまして私の感じますことは、つまり私はまず公務員からこのことを始めるべきであるということを提唱いたしました。と申しますのは、三十七億を順調に返るようにするためには、少なくとも公務員がその範を示して、それに一般がならってもらうような雰囲気をつくっていくようにすべきだ、で、公務員の問題に触れたのでありますが、三十七億を返還してもらいたいというときに、公務員の者がその返還義務を怠っておるというような事実が世間に起こったとするならば、幸いにしていま相当数の民間企業もこれに協力しておるのでありますけれども、全般的にこれを各職場、各事業所に呼びかけるということも効能が少ないだろう。そこで公務員の諸君にも理解ある協力を期待すべきであると、こういうふうに考えているわけなんです。私はそういう意味でいまのままで放任いたしますというと、結果的には正直に返していく者と、なかなか返さない者と、この二つになってしまって、正直者がばかを見るといいますか、そういう結果になるというと、この、返還業務というものは絶対に思うようにいかないと思う。そこで育英会としては、国の機関である各省庁のうちで、相当多数がこれに協力してくれておるのでありますから、さらに積極的にあらゆる方法を講じて、まだ実施の段階に入っておらない、そういう各省庁に対して働きかけていく努力を続けてしかるべきだと思う、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/55
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056・緒方信一
○参考人(緒方信一君) お説のとおりでございまして、私もこれからも続けて極力努力をいたしたいと考えております。そういたしまして、返還の問題の大きな中心の推進の力にこれがなってもらうようにいたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/56
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057・野本品吉
○野本品吉君 この問題は、すでに千葉県が県庁及び教育委員会があげてこの問題に協力をしておるということでありますが、やはり地方庁に対しても私は積極的にその協力を求むべきじゃないかと思う。地方庁に対して従来どういう連絡になっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/57
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058・緒方信一
○参考人(緒方信一君) これは御承知でございますが、育英会の支部というのが、各県の教育委員会の中にございます。中というのは場所が中でございますけれども、支部長に教育長をお願いしておるわけでございまして、支部に専門の職員も若干ございます。各県にございます。そういう力を通じまして、各県の教育委員会、それを通じまして、県庁とか、こういうところに連絡をとっておりまして、そこで何と申しますか、こういう事情をよくわかっていただきました上で、たとえば、私どもの職員が直接出かけていってお願いするとか、あるいは文書によってお願いするとか、こういうことを現にやっておるわけであります。先ほど申し上げましたように、相当機運ができてきたように考えております。千葉県に続く県がだんだんできてくるだろうと期待をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/58
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059・野本品吉
○野本品吉君 いろいろ育英会も複雑な事務ですから、簡単にはいかないかもしれませんけれども、ぜひ今後とも一段の努力を私は希望をいたしたいと思います。
そこで、いままでおやりになった返還業務、それから育英会全般の運営の上から、将来の育英制度のあり方、育英制度及びその運用の問題についていろいろとお考えになっていると思うのですね。それらの点についてわれわれも今後研究しなければなりませんから、この際御所見があったら承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/59
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060・緒方信一
○参考人(緒方信一君) まず、いままで返還のことにつきまして御質問がございましたので、そのほうから申し上げますと、先ほどからお話に出ておりましたように、育英会が取り扱っております、実施いたしております奨学金の制度というのは、貸費の制度、国費を育英会が借り入れまして、それを学生にさらに貸して学業の用に供する、こういうことでございます。国費は、もとより申し上げるまでもなく、国民の皆さん方の非常に貴重な税金を主体としている国費をお借りをしておるのでありますから、私どもとしての心がまえといたしましては、これを貸して学業を続けてもらう。そのことが最も有効に行なわれる。具体的に申しますと、奨学生の選考を適正にして、ほんとうに必要である人にこれを出す、またそれに値する人に出すということが必要であろうと思います。これが根本であろうと思います。それからまた、これは貸費の制度でございまして、その恩恵によって学業を終えた者はこれを返さなきゃならない、返す意味は、返した金をさらにあとに続く後輩の学徒のための学資としてこれを活用するという意味でございまして、国費でございますし、非常に貴重な資金でございますから、その資金をなるべく多数の学徒に均霑活用してもらうという意味では、やはり貸費の制度ということがそれででき上がっておるわけでごございますけれども、また一面、このことは先輩から後輩へと続く、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、相互助け合いというふうな精神にも基づくわけでございます。したがいまして、この返還のことがスムーズにいくということが、現在の育英会の事業の実施のやはり相当基本になるわけでございまして、返還の成績が上がらなければ事業の維持発展はなかなかむずかしいということに相なります。したがいまして、先ほどから御指摘のように、相当の延滞がございまして、これはまことに申しわけのない状態でございます。これは国民の皆さん方に対して申しわけない状態でございます。したがいまして、私どもとしましては、これを一日もすみやかに正常な姿に戻すということに努力しなければならぬと考えるわけでございまして、先ほどからいろいろ御指摘のようなことがございますし、まだ私の申し上げていないような点もございまして、いろいろ工夫をいたしましてこの成績を上げていく、向上にまずつとめているわけでございます。おかげをもちまして、まあ長年の努力の結果がやっとことしぐらいから実りまして、ことしの返還金は昨年と比べますと相当格段の成績が向上いたしております。さらに来年度も続きましてこの状態を維持していきますならば、先ほど申し上げましたように、今年度末の状態を推計いたしますと、七割までいきませんが、六七・七%までの成績が上がるだろうと思っておりまするし、来年同じような調子で伸びてまいりますと、八割近い返還金が確保できるのじゃないか、かように思っております。八割までいきますと、中にはいろいろ事情があるものがございますから、これはさらにむずかしいことになるかもしれませんけれども、八割までは少なくとも来年一ぱいぐらいにはこぎつけたい、かように思って努力しておるわけです。これはやはり私は相当大きな、育英会の今後の事業の基礎を固める上におきまして大きな問題だろうと思っております。それからまた一面、これは事業の運営の点から申しましても、経営の点から申しましても一大きな点でございますが、やはりこの事業の本体は資金を学生に貸し付けて、そうしてそれによって人材も養成される。また本人が才能を伸ばしていく、これを助けていくことが基本であることは申し上げるまでもございません。その観点から見ました場合に、現在の状態がこれで十分であるかと申しますと、そうじゃないと思います。たとえば、金額の面にいたしましても、各学生に貸しまする、各種ございますけれどもその金額にいたしましても、あるいは人員の数にいたしましても十分でない点が多々あると思います。そういう点をこれからどういうふうに伸ばしていき、改善していくかということが非常に大きな問題だろうと思います。いろいろこまかく申し上げますと相当こまかくなりますけれども、まあ貸し付け金の返還を十分軌道に乗せて、その基礎の上に将来の人員数、金額等、貸し付けにつきまして改善をはかっていく、非常に抽象的でございましたけれども、そういうふうに一応考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/60
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061・野本品吉
○野本品吉君 私は育英制度の問題はさらに研究して前向きに取り組まなければいけないということをだれもお考えになっていると思う。そこで、対象になる学生を事情の許す限り拡大していくということ。それからして、貸与金をできるだけ増額して、少なくもアルバイトが主で学校が副になっておるというような、悲惨なといっていいくらいの状態なんというものは解消すべきであると強く考えておる。そこで、対象の拡大あるいは貸与金の増額の問題は、それとうらはらの問題として、返還金が完全に返ってくるということが条件になってくると思う。貸与対象者を拡大する、それからして貸与額を増額する、しかし、ざるへ水を入れたように漏ってしまって、そして返還金が返らないということになりますと、育英制度の将来というものは非常に心配になるわけなんです。そういう意味で、この返還の問題については、関係者らが全部協力して、そして新しい若い後輩の諸君の育成のために、自分たちは義務を完全に履行するのだというふうにしませんというと、本年度も育英会に対する国の支出等は相当増額されておるのでありますが、増額の必要を感ずれば感ずるほど、返還の問題を十分にしなければいかぬ、こういう考え方でいろいろと御質問申し上げているわけです。そこで、今後さらに一段の御努力をお願いしたいのでありますが、幸いにその後の状況を見ますと、六七%の返還をみたということであります。これは一番悪いときはどのくらいでしたかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/61
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062・緒方信一
○参考人(緒方信一君) お手元に資料として出しました中にも、これは最近の五年間だけでございますが、三十四年を見ますと、五二・八%ということになっておりまして、まだ悪かった時代があったかと思いますけれども、この五年間くらいに一五%以上伸びてきたということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/62
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063・野本品吉
○野本品吉君 五年間に何%くらいの上昇率ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/63
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064・緒方信一
○参考人(緒方信一君) 昨年三十七年度が五八・八%でございますから、一割までにはなりませんけれども、それに近い上昇がことしの末には、三十八年度末には期待できると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/64
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065・野本品吉
○野本品吉君 いろいろ伺いまして大体の様子がわかりました。先ほども申しましたような意味におきまして、私どもとしては、育英制度の拡充発展のためにこの問題にさらに深い関心を持っていきたいと、かように考えております。育英会におきましても、十分の御努力を特に要望いたしまして私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/65
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066・中野文門
○委員長(中野文門君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/66
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067・中野文門
○委員長(中野文門君) 速記を起こして。
本法案に対する本日の質疑はこの程度にいたします。
午後一時まで休憩いたします。
午前十一時三十九分休憩
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午後二時十四分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/67
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068・中野文門
○委員長(中野文門君) これより委員会を再開いたします。
文化功労者年金法の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、文部大臣から提案理由の説明を聴取いたします。灘尾文部大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/68
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069・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) このたび政府から提出いたしました文化功労者年金法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容を御説明申し上げます。
文化功労者年金法は、文化の向上発達に関し特に功績顕著な者に年金を支給し、これを顕彰することを目的として、昭和二十六年四月に制定された法律でありまして、以来、今日までの間に文化功労者として決定された者は、百五十六人にのぼり、わが国文化の振興に資するところ大なるものがあったと信ずるのであります。ところで、文化功労者に支給される年金の額は、制定以来五十万円とされてまいったのでありますが、その間における国民の生活水準の向上、社会、経済事情の変遷には著しいものがあり一また、文化国家として文化の向上発達を一段と期する見地からも、この際、年金額を改定して、この法律の趣旨の達成をはかることが必要かつ適切と考えられるに至りました。そこで、このたび年金額を百万円に引き上げることといたしました。
以上が、この法律案の提案理由及び内容であります。何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御賛成くださるようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/69
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070・中野文門
○委員長(中野文門君) 以上で本法案の提案理由説明聴取は終了いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/70
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071・中野文門
○委員長(中野文門君) この際、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律の施行に関する件について、文部大臣から発言を求められております。これを許します。灘尾文部大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/71
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072・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 先般の委員会において、米田委員から文部省主催の都道府県教育委員会教科書主管課長会議における事務当局の指導について御指摘がありましたが、その後、調査の結果、都道府県の教育委員会の行なう指導助言については誤解を与えたようでありますので、この際それを明らかにしたいと考えます。
まず、ABC等の評点をつけたものを資料として与えるべきであると文部省の説明を受け取ったとすれば明らかな誤解であり、文部省としてはそのような指導をする考えはありません。この指導助言は、あくまでも採択のための基準となるもの並びに採択の対象となる教科書の特徴、特色等について簡明な表現をしたものを資料として提供し、採択権者の自主的な採択を間接的に援助しようとするものに限られるものであって、具体的な教科書に対し採択の可否をあらわすようなものであってはならない点をこの際明らかにいたします。
次に、都道府県教育委員会に、数種を選定してその中から採択させるような指導をする考えはありません。この点については、法律制定の趣旨を十分尊重して誤りのない指導をいたします。
次に、なお、採択地区の設定については法に定められたとおりでありまして、文部当局としては、これに干渉する考えは毛頭持っておりません。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/72
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073・米田勲
○米田勲君 前の二回の委員会で、この教科書主管課長会議において文部当局が指導を加えたその指導の内容に法律上きわめて疑義があり、ところによっては明らかに違法であると思われる指導があったことについて事態を深く憂慮いたしまして、詳細な点にわたって質問をし、法の誤りのない行政指導の確立を願って、相当、長時間にわたって質問をしたわけです。いま文部大臣の報告をお聞きしますと、前回の委員会では、私もよく事情を承知しておらないので、十分調査の上、もし誤りがあるなら是正をいたしましょうという約束に基づいて文部大臣のただいまの発言があったものと考えます。私はこの段階になってから、もうこれ以上問題について追及することをやめる考えであります。しかし、私はここで一言申しておきたいのは、文部大臣の調査の結果、事実はどうであったかということはお聞きをしませんが、私が前二回の委員会で問題にした主管課長会議の内容は、まことにいまもって私としては了承ができないのであります。これは、この主管課長会議だけでなくて、文部省の行政指導全体の姿勢の中に、どうも日本の教育行政全体のたてまえをくずして、文部事務当局がしきりに権限外のことにまで及んで、——強力な指導助言だと考えておるのかもしれませんが、やっておることは、私は行政の秩序からいって、十分に自戒をしてもらわなければならぬと考えておるところであります。特に今度のように、お互いにずいぶん苦労をして修正議決したような法律が、行政指導の段階で、原案に近いと思われるような行政指導をされたということが事実であるとすれば、これはゆゆしき大事であります。文部大臣も二度目の文部大臣としての就任でありますが、その間、相当期間は文部事務当局の間には空白があったと思いますが、ぜひこの際、そういう文部事務当局の逸脱をしたような行政指導の姿勢、立法府の趣旨を転視したり無視したりするようなおそれのある行政指導については十分に責任を持って、誤りのないように今後努力をしていただきたい。初中局長は今回の主管課長会議の当面の責任者であります。もちろん責任者だから何もかも知っておらなければならぬ。私は無理なことは言いませんが、大事だと思われる点については、めくら判でなしに、要点を確かめた上で事務を遂行するようにしないと、今度のような思わない問題が発生して、そのためにわれわれもまた、考えてみると、むだな回り道をしてもとのところに戻さなければならないということになりますので、今後はそういうことの起こらないように十分に注意をしていただきたい。私はもっと別な考えがございましたが、与党の諸君のいろいろなお話もありますし、文部大臣の考えもはっきりしましたので、この際はこれ以上この問題を取り上げて追及することはやめにいたします。その点を十分お考えをいただいて、今後とも民主的な教育行政を進めていただきたいことを切望をいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/73
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074・中野文門
○委員長(中野文門君) 次に、昭和三十九年度文部省の施策及び予算に関する件を議題といたします。
過日の委員会に引き続きまして質疑を行ないます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/74
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075・小林武
○小林武君 文部大臣にお尋ねいたしますが、前の質問のときにも若干触れたのですけれども、大臣が就任されました当初、幾つかの点について大臣の所信が発表され、これはすでに本委員会で所信表明をされる以前にあったわけでありますが、それを見て、私は非常に重大な問題だと一つ考えておりましたことは教員養成の問題でございます。その後、本委員会で所信表明をなさった中にも教員養成の問題について述べられております。私は、ここで大臣の御意見を十分にお伺いしたいわけであります。私は、まあ教員養成の問題について、最近では大学の科目に関する省令の問題について、かなり教員養成大学の中で議論が巻き起こっておることを知っておるわけであります。こういう行き方の中に、どうも私のひがみかどうかしりませんけれども、教員養成の問題について、大臣からはっきりした案が示されないうちに、だんだんものごとがなしくずしの形でやられていくのではないかというようなことを非常に心配するわけであります。そういう心配の上に立って質問を申し上げるわけでありますから、どうぞひとつ隔意のない御答弁をお願いいたしたいわけです。なお、文部大臣は昭和三十二年の六月十日に中教審に対して答申を求めております。教員養成についての答申でございますが、その際、諮問がございまして、そうして、その後、三十三年には中教審からの答申があった。さらに昭和三十七年の十一月十一日には、教育職員養成審議会というものの建議も一あったというような、こういう経過もございますので、大臣が記者会見において述べられました教育の中心になる本格的な教員づくりを考えたいとおっしゃったのも、これはわけのないことでもないと私は考えておるんです。そこで、大臣から率直なひとつ御意見を伺いたいわけでございますけれども、大体、大臣のおっしゃることは、教員養成を改めるということの理由の一つに資質の向上ということを申しておられます。この資質の向上の角度から、どういう二体養成制度の改善を検討なさっているのか、これはもう先ほど申しました経過からいたしましても、検討はしておらないとは申されないだろうと思うのでありますけれども、それをひとつ概略お話をいただきたい。なお、その際、開放的な制度をただ否定するだけでなくと、こうおっしゃっておりますけれども、開放的な制度をただ否定するだけではなくということになりますと、これもまた具体的な一つの問題点がここに示されていると思いますので、教員養成について一体どのようなお考えを持っているか、ひとつきょうはお知らせをいただきたいわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/75
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076・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 教育養成制度の問題につきましては、ただいま小林さんからお話もありましたとおりに、文部省としましては、ここ数年来この問題を手がけてきておるわけでございます。関係の審議会等に対しまして、あるいは諮問をし、あるいは建議をいただきと、こういうふうな経過もあるわけでございまして、文部省としましては、この問題が一つの大きな懸案になっておるわけであります。教員養成制度を改善したいというのは、できるだけりっぱな資質を備えた教育者を得たい、教育能力の充実した教育者を得たいと、こういうふうな考えから出発いたしておるわけでございます。この問題は、しかし、具体的に検討するとなりますというとなかなか問題の多い仕事でございます。容易に結論を得るわけにまいらないのが今日までの実情でございます。私は、いわゆる人つくり政策というようなことがやかましく言われておる今日におきまして、文部省がやはり一番考えなけりゃなりませんことは、教育者の資質をできるだけ向上させまして、それによってよりりっぱな教育が行なわれるように期待したいと、こういうことであろうかと思うのでございますので、この問題については、私もまた解決に努力をしたい、このように考えておる次第であります。ただいま省内におきましては、過去における答申あるいは建議等を参考といたしまして、いろいろ検討を加えておる段階であります。まだ具体的に、このようにするというふうな結論を得るに至っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/76
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077・小林武
○小林武君 昭和三十二年の諮問のときの問題点は、要訳すれば、教員の資質について必ずしも十分とは認めがたくと、いわゆる教員の資質については十分ではない。そういうことが一つと、それから需給の調整が問題だということを取り上げて理由といたしておると思うのであります。この後、答申があったわけでありますけれども、その答申の中に、私は教員の資質というようなものに関して、一体、教員の資質の向上しない理由、あるいは資質が劣っていると、こういう見方もおそらく文部省の中にはおありだと見ているんですけれども、そのような考え方に対する答えのようなものがひとつ出ていると思うのであります。この答申の中に。こういう点の、いわゆる答申に対する検討というものはどのようになさっているわけでありますか、教員の資質について。ただ検討もしないで現在もいるのでありますか。それとも、検討なさってどういう結論をお出しでありますか。あったらひとつお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/77
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078・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 教員の資質につきまして、この中央教育審議会の答申では、要するに、教員としては一般教養、専門学力、それから教職の教養、この三つが必要である。しかもこれらが、要するに学校の先生として有機的に統一されることが必要であるというようなことを言っているわけでございます。私ども大筋といたしましては、答申のおっしゃることはきわめて妥当であると思っておりますが、ただ、この点だけについて特に研究するということではございませんで、この中央教育審議会の答申のうち、基本方針なり、あるいは具体的な措置全体についていろいろと検討をいたしたわけでございます。特に資質だけについて考えたわけではございません。ただ、しかし、小林先生御承知のように、教員養成制度の答申につきましては、当時いろいろ批判もございましたし、また、一面この答申を具体的に実施いたすためにも、大学制度全般についてやはり検討する必要があるというようなことから、三十三年に出ました答申の具体的な実施は、その後ずっと見合わせてまいったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/78
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079・小林武
○小林武君 文部大臣にお尋ねしたのですけれども、局長の答弁でけっこうです。それでは重ねて局長にお尋ねいたしますが、開放制度に由来する免許基準の低下、いわゆる開放制度に由来するそのことが、ずっとあとを見ると、結局、教員たらんとする者に対して職能意識はもとより、教員に必要な学力、指浮力すら十分に育成がされてない、実情にある。こういうふうに書いてある。このことに対しては、いろいろな異論があるというような話でありますけれども、文部省としてはどうお考えなのですか、開放制度そのものに田共議があるというような態度でありますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/79
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080・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 御承知のように、現在の免許制度は、要するに大学において教員の養成は行なう、しかも免許法に定める一定の単位を履修した者に対しては、すべて教員の資格を与えるということでいっているわけでございます。いわば開放的な最低基準の主義ということでございますが、これにつきましては、すでに中教審の御審議の際にも、やはりこういった制度では必ずしも十分な教員養成が実質的にできないのではないかという議論がきわめて強かったわけでございます。答申にも一部その制度が盛られております。要するに開放性を全面的に否定したものではございませんけれども、やはり教員養成のためには、それを本来の目的とする機関を置くべきであるということを言われているわけでございます。私どもも大筋としてはそういった考え方は妥当ではなかろうかというふうに思っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/80
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081・小林武
○小林武君 ここでちょっと文部大臣にお尋ねいたしますが、文部大臣が談話その他で発表されておりまするところの開放性をただ否定するだけでないというのは、いまのようなことをおっしゃったわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/81
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082・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 私はどういうふうなことばを使いましたか記憶はございませんけれども、現在の開放制度を抹殺するとか、そういうふうな考え方は持ってておりません。ただ現在の開放制度に伴ういろいろな批判というものもあるわけでございますので、これらを十分検討してみたいと思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/82
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083・小林武
○小林武君 大学局長にお尋ねいたしますが、こういう開放制度に由来するところの免許基準の低下というような問題、あるいは需給関係等による級別免許状制度の採用、そういうようなことが教員に必要な学力とか、指神力、そういうようなものが十分に育成されないというような理由をお認めになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/83
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084・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) すでにその当時から、要するに開放制に利害得失があるわけでございまして、開放制のためにまあ比較的資質も一十分でない先生も出てくるということが言われておりますし、その点は私ども当たっておるところがあると思います。ただ開放制には先ほど申しましたように、悪い点ばかりでなく、いい点もあるわけでございますので、私どもとしては、よい長所は今後制度を改善する際にも認めていくべきではなかろうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/84
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085・小林武
○小林武君 重ねてお尋ねいたしますが、いい点というのはどういうところですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/85
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086・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) いろいろあるかも存じませんけれども、たとえば、狭い分野の学問的なものについて十分な学力を得られるというようなこともひとつは考えられると思います。それから、これはいろいろ議論のあるところでありますが、いわば比較的バラエティーのある教師が形成し得るということもいわれておりまして、そういうような面もあろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/86
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087・小林武
○小林武君 もう一つ、一体、免許状の欠陥の問題ばかりでなくて、教員を養成するに必要ないわゆる大学の教育が十分に行なわれないような教員組織、施設、設備というようなもの、こういう点についてはどうなんですか、当時ばかりでなく、現状においても私は非常に重大な問題がある一と思います。この点について文部省はどのようにお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/87
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088・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 教員養成に関するたとえば学芸大学なり、あるいは学芸学部、教育学部等の先生の組織あるいは施設、設備について、十分でない点があるんではなかろうかというお尋ねでございますが、私どももこの点はお尋ねのように考えております。従来からもこの教員組織につきましては、できるだけ定数を確保していくということで教官定員の確保ということも行なってまいりましたし、また施設、設備についても、もちろん不十分ではございますが、努力をしてまいっております。ただ、現状いかにも不十分な大学もございますので、今後もこの点につきましてはできる限りの努力をいたして参りたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/88
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089・小林武
○小林武君 私はまあ教師の資質を高めるということについては、これは文部省と同じに賛成なんであります。教師の資質を高めるために文部省は努力をしなければならないし、その他これに関係するものは、あらゆる面から協力をしなければならないと思うのですが、的をはずれておっては、私はほんとうにりっぱな教師を得るというようなことはできないように思います。いま大学局長からお話を承って、やっぱり教員養成についての大学の一体実情というものをほんとうに見ていられるかどうかということについては、きわめて私は問題を感ずるわけであります。一体、大学の格差というようなものは、年々なくなっていきつつあるのか、それともだんだん格差が大きくなって、教員の養成を受け持っているような大学がだんだん、だんだん大学らしからぬような状況に陥っているというふうに私は見ているのですけれども、一体これはどうでしょうか。たとえば財政的な一面から見てもどんなものなんでしょうか、大体格差は年々歳歳大きくなっているのじゃありませんか、東京大学の予算というようなものは、新制大学の二十校分に当たると、こういわれております。こういうような事実はないのでしょうか。そうして大学が大学らしからぬ状況になっていくのに対して、何らの手も打たずに、いたずらに一体制度をいじっていい教員を得なければならぬというようなことを盛んにいうのは、いささか的がはずれておるし、私はそういうやり方を見ておりますというと、何か別に意図があるのではないかという考えさえ出てくるわけであります。いまの一体、学芸大学というものを、われわれの目の触れたものだけ見ましても、全く大学などというのはおこがましいといわれるような状況に私は置かれていると思う。この点どうなんですか、大学の格差というような問題を文部省が最も責任を持たなければならない財政の一面から見て局長はどうお考えになっておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/89
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090・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) りっぱな教育を行なうためには、申すまでもなく、りっぱな先生の養成が大事でございまして、したがって、教員養成大学に十分力を入れていかなければならぬことは、ただいま御指摘のございましたとおりでございます。従来も教員養成大学の施設、設備、また教員組織等につきましては、先ほどお答え申し上げましたように、努力はしたつもりでございますけれども不十分でございまして、ただいまお叱りをいただいたようなわけでございますが、しかし、事態といたしまして、特に他の学部、あるいは他の分野のものに比較的格差が次第に大きくなるというような状況ではなかったのではなかろうかと思います。もちろん、これはいわゆる自然科学系の分野のものと、人文社会系の分野のものとの差違はございますが、同じ人文社会系のものだけを取り上げてみますれば、必ずしも年々その格差が大きくなっていくような状況ではないと思います。ただし、きわめて不十分でございましたことは御指摘のございましたとおりでございまして、今後この点について最善の努力をしてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/90
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091・小林武
○小林武君 私は教員の資質の問題を取り上げるときに、一方的な見方はだめだと思います。開放制がどうであるとか、あるいは免許状のあれがどうであるとかいうようなこと、あるいはもっと意地悪くいえば、いまの教員はどうであるとかいうような一種の偏見を持った考え方を持って教師の資質というようなものを判定する、そうしてこれをある方向に教育するというような考えが、もしあるとするならば、私は教員養成の建前からいって、これほどおそろしいことはないと思うのです。そういうしかし、疑いがどうしても起こってくるわけであります。それはなぜかというと、文部大臣に、教員の資質とは一体どうだ、どういうことかとお尋ねしても、あまりはっきりした御返事がないわけであります。大学局長はきわめて形式的に、教員に必要な資質は、一般教養とか専門学力とか、あるいは教職教養の三つが必要だというようなお話がございましたけれども、いまの教師に対して、どういうお考えを持っておるかというようなことについては、それは日教組に対しては、どうだというようなお話は承りましたけれども、いまの教師に対して、一体どういう注文があるかということについては、これはお答えが、いままでなかったように思うのです。私はそういう意味で、文部大臣に教員養成の一番の中心になる資質とは一体何か。その資質の中で、日本の将来の教育を考える場合において憂慮しなければならない点は何か。それを補うための、一体、大学における教員の養成はどうかというようなことをお伺いしないというと、なかなか納得がいかないわけでありますが、大臣に、この点についての御説明をひとつお願いするわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/91
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092・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 教員の資質をできるだけ向上させたいということを申し上げておるわけでございます。その資質とは何ぞやというお尋ねのようですが、私はやはり教師としての教育力をできるだけ持った人に教育に当たってもらいたい。それからまた、その人格、またその職務に対する態度というふうなものにつきましても、とかくの批判のない姿で教育に当たってもらいたい。すべての先生が変だとか何とかいうような心持は毛頭ございませんけれども、日本の教育の充実、向上をはかりますためには、できるだけそういう点において、充実した資質を持っておる人が教育に当たるようにいたしたい、こういうつもりで資質の向上ということを申し上げておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/92
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093・小林武
○小林武君 まあ、味もそっけもない答弁でございますけれども、私は教員養成の問題を大きく取り上げていくというためには、やっぱり必要観がなければだめだと思うのです。いまの日本の現状の中で教員養成というものを、どうして重大視しなければならないかという、その点が明らかにならないというと、私どもは、先ほどいささか気を回すような考え方も出てくるし、ほんとうに教員養成に当たる人たちも力が出て来ない、迫力もなくなると思うのです。その点についての大臣の御答弁は、この前の質問にもありませんでしたし、今度もいまのような、そういうそっけのないことなんです。私はいまの世の中がどんどん進んでいく、いわゆる科学時代だ。この科学時代に即応して、一体日本の国民をどう養成するかという問題になると、教員養成については、十分考慮をしなければならないと考えるのは、ひとり日本だけじゃないと思うのです。これはどこの国も、皆やっていると思うのです。そういうことであるならば、そういうことを一言言ってもらえばいいし、いまの、さらに教員に不満がある、いまの制度を改めなければならないところの行政上の欠陥があるというならば、その点も明らかにしてもらわなければならない、したがって、そこから出てくる教員に、どのような欠陥があるということもあるならば、明らかにしなければ、私は教員養成の問題が、国民全体として、ほんとうにりっぱな成果をあげることはできないと思うのです。
その点私は、一番初めに教員養成の問題を取り上げて、さらに、もうその当時からみたら、昭和三十二年ですから、七年たっております。その間に、先ほどからくどく申し上げましたけれども、答申もあれば建議もあった、そうして、文部大臣の所信としても、教員養成を大事にするという限りにおいては、私は、はっきりしたもっと具体的なものをお示しになる必要があるのです。率直な御意見を私はほんとうは承りたいのですね。人格がりっぱで教育力があってとかというようなお話ですというと、これはあたりまえのことなんです。そうすると、どうですか、これは世の中が進むから、その世の中の進むのに相応じたりっぱな教師が必要であるから、教員養成にひとつ、一大改革を与えなければならぬとお考えであるのか、そのほかにもあるのか、あるいはないのか、その点を文部大臣からお聞かせいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/93
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094・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) いまさら申し上げる必要もないかと実は思っておったのでありますが、今日、御承知のように、人づくりということが非常に大きな問題となっておるわけであります。あるいはまた、人間能力の開発であるとか、あるいはまた、道徳教育の充実であるとか、いろいろのことばが言われておるわけでございますけれども、要するに、りっぱな人を、また力のある人をできるだけたくさん養成していかなければならぬということは、これはもう日本だけではなく、お話のとおりに世界どの国も関心を持っておる問題であろうと思うのであります。私はこの要請にこたえるためには、やはり教えられる側の勉強も必要でございますが、同時に教える側の陣容も整備する必要があろうかと思うのであります。そういう意味合いにおきまして、教員養成の問題が文部省として考えます場合には、人づくりの一番本格的な問題ではなかろうかと、かようにさえ実は思っておるわけであります。長い間の懸案になっておりまして、なかなか急速な解決をみないことは、まことに残念に思っておりますけれども、しかし、事柄が事柄でありますから、また、国の財力その他等の関係もございますし、技術的にむずかしい問題もございまして、容易に結論を得がたいのでありますが、何とかその意味におきまして、現行制度よりも、もっと目的に合うような制度を作りたいという、この気持を持って教員養成制度に取り組んでいるわけでございまして、現在の教員が、どなたも力がないとか、どなたもだめだとかというようなことを言うつもりはさらさらございません。ございませんけれども、現在の教師の中には、やはり教師としての資格が必ずしも十分でないのじゃなかろうか、こういう人もあろうかと思います。また、教育力においても、必ずしも十分でないというふうな点もあろうかと思います。これらは、あるいは時勢が進歩している、そういうことに即応して必要とせられる要素もあろうと思うのであります。
そういうような現在の教師につきまして、いろいろの注文があるわけでございます。教員養成の面から、そのほうの御注文に対しましては、基本的にこたえていくようにいたしたい。また、現職教員につきましても、御承知のようにいろいろと、その資質の向上に努力しておるわけであります。根本的には教員養成の面において、従来の欠陥とせられております点を是正していくのには、一体どうしたらいいかという問題として私は取り扱っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/94
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095・小林武
○小林武君 いまさらとおっしゃられると、ちょっと引っかかるんですけれども、いまさらなどと言われる理由は私はないと思います。教員養成の問題を取り上げて七年間たっている。その七年の間に、いろいろ御検討なさっている、その御検討なさっている方に、教員養成の一体改革をされようということをお考えになるからには、どの点から一体お考えになっているかというようなことを聞くことは私はいまさらでないと思う。ただしかし、そういう言葉じりのけんかをやりたいとは思いませんから、そんなことについては申し上げませんけれども、いろいろな教師に対する注文が出るのは当然だろうと思うんです。これはいつの場合だって完全なものはない。しかし養成制度をいじるということは、これは相当な理由がなければならぬわけですから、これについては、私はかなり慎重な検討を要するのではないかと実は思っているんです。
特に大学で教員を養成するということをお考えになったのはどこにあるのか。教員養成の旧制度といいますか、古い師範制度のあれにかんがみて、大学において養成する方針を確立したというようなことを、大学で養成する場合に言われておるわけでありますけれども、本委員会の中にも、旧制の師範学校の卒業者というものはかなりいる。また大学を出られた方もたくさんいらっしゃると、その中で、一体どういう教員の養成のしかたが一番いいかということを考えるということですね。私はきわめていい意見が出てくるように思うんですよ。私は旧制師範学校の卒業生として、大学で教えるということはたいへんいいことだと思うんです。日本の、少なくとも教育を誤りのないようにやるためには、大学で行なうという大方針が立てられたことは、これは最も喜ぶべきことだと思う。
そうなりますというと、大学で行なうということのために、その理由がどこにあるかということが私は問題になると思うんです。なぜ大学で行なうか、旧制師範学校ではなぜいけないのか、もちろん長所、短所を拾えば、両方にだってないわけではありませんけれども、しかしそれらをいろいろ考慮してみるというと、大学で養成するということが最も正しい。なぜ大学で一体教育するのかということになると私は思うんです。
そこで私は大学局長にお尋ねしたいんですが、学科目調査というのをやられましたね、文部省で。そして学科目に対する省令も出された。この際に、一体教員養成をしている大学の中から、いろいろな反対意見が出たと私は聞いているんです。そういう反対意見を大学局長はお聞きになっているかどうか、また、その反対意見のおもなものは、一体どういうことであったか、それをお尋ねしたいんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/95
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096・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 御承知のように四十二国会で国立学校設置法を一部改正いたしまして、従来国立大学につきましては、学部及び講座については統制的な規定の根拠があったわけでございますが、学科なり学科目については規定がございませんで、その辺、アンバランスになっておりましたのを是正するということにいたしたわけでございます。で、その法改正に基づきまして、昨年要するに三十八年の初めから、各国立大学の学科、講座、学科目等につきまして、現実の状態を調査いたしまして、それにまた、いろいろと説明会等も十分いたしまして、この省令を作る段取りを進めてまいりました。ただいまお尋ねのございました要するに教員養成大学なり学部での反対意見ということでございますが、この点につきましては、要するに一つは誤解をされておった点があろうと思います。
と申しますのは、要するに課程制になると、教員養成大学につきましては、課程制をとったわけでございますが、課程制になると、要するに教育だけが行なわれて、学校の先生方の研究が行なわれなくなるのではないかという点が一つでございました。これにつきましては、およそもう大学というところは、教育と同時に学問の研究をやるのであるから、課程制をとったからといって、決して教官の学問研究を否定するものではないということを十分御説明を申し上げまして御了解をいただいたと思っております。それからもう一つは、要するに課程制をとりました場合に、学問的なフィールド別の、分野別の区分けをこまかくしてもらいたいという点がございました。しかし、その辺も、まあどこまでこまかくするかという点が、いろいろと議論の分かれたところでございまして、いろいろ学界等からも御要望もございまして、その辺につきまして、私どもできる範囲での裁量はいたしたつもりでございます。現状におきましては、各国立大学ともすべてこの一月中に御了解をいただきまして、もちろん御不満もあろうかと思いますが、一応御了解をいただきまして、ただいまお尋ねの省令を作ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/96
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097・小林武
○小林武君 局長が言うように、いろんな不満が、悪く言えば、泣き寝入りみたいなことだと私は思うのですね、まあ省令を出したというようなことについて、これは文句をつける気持もありませんし、またそのこと自体は、たいしたことでもないように思うのです。この七条の改正というやつは、その以前においても、講座またはこれにかわるものというのがありますからね、学科目のあれを省令で出したところで、別にこれは前の場合といえども、たいしたことはないと私は思うのです。でありますから、そのこと自体は、私はたいしたことはないと思うのですけれども、一体、学科目をこまかく文部省の基準に合わしてやらなければならぬという理由は、どういうわけなんでしょう。文部省の原案を示して、ここにある大学のあれだというと、文部省案に合わせるまでに何度か訂正をさせられて、そして最後は、文部省のひな形に全部合わせられる。一体、これで大学の自治とか学問の自由とか、そういうことが言えるのかどうかということが一つです。
この分け方が、学問の研究という立場からいって妥当なのかどうか、この点について、文部省は当然のことをしたというふうにお考えでございますか。これはほかの講座を持っている大学と同じ取り扱いをしたとお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/97
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098・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 教員養成学部につきましては、ただいまお尋ねのございましたように、課程制をとったわけでございますが、これは大学の他の学部と違いまして、これは申すまでもないことでございますが、主として小学校の先生、あるいは中学校の先生の養成ということでございまして、他の学部のように、特定の学問の領域の中の細分化された、きわめて狭い分野について教育をするというのではございませんで、教員養成学部では、比較的広い分野にわたって、先生になるために必要な科目を、いわば総合的に勉強するということがあるわけでございます。
で、これは、今回の省令で、初めてそういうことにいたしたわけではございませんで、従来から各教員養成大学なり学部では課程制をとって、実際、ここしばらくずっとやってきておるわけでございます。この省令で新たに、そういった制度を創設したわけではございません。もちろんこの課程制の中の学科目、これにつきましては、私どものほうで一つのパターンと申しますか、表現のパターンをお示しいたしました。それは実際は、各大学で非常にバラエティに富んだ科目をお持ちになっておる。しかも、それが、たとえば先生の、教官の定数も持たずに、きわめて狭い分野の特殊な科目についても、そういった科目を設けておられるというようなところがございまして、そういうところについては、あまりそういった細分化された学問の領域について教育をすることはいかがであろうかということを申し上げたわけでございます。しかし、私どものお示しいたしました、そういった表現のパターンに、すべてを統一したわけではございませんで、大学のそれぞれの実情なり沿革等に基づいて、ある程度個性のある科目を組んでおるわけでございまして、全部の教員養成大学が、ただ一色になっておるというわけではございません。
いずれにいたしましても、特にこのことによって、大学の教官の学問研究を押えるというような考えは毛頭ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/98
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099・小林武
○小林武君 いま誤解だというようなお話もございました。しかし私は、これは誤解ではないと思っております。私の聞く範囲では、結局文部省に押しつけられた、このことが将来教員養成の上に、どんなに影響してくるかということを憂慮している教官がたくさんいるわけです。いま、いろいろお話がございましたけれども、大学の中へ一体、どういう学科目を置くかというようなことは、これはそういうことの自由、これがあるから大学であるのではないですか。どういう講座を置くかというようなことについても、それは大学自体の問題としてやるところに、ほんとうに大学で教育をするということの意味があるのではないでしょうか。でありますから、たしか学術会議だと思いますけれども、学術会議の結論としても、教員養成は大学で行なうというような、総合大学で行なわなければならないというような、こういう一つの意思表示もあるように聞いているわけであります。で、あなたが何とおっしゃっても、一つのひな形を示して、これに合わせろという事実は、この例を一つ見たって明らかなんです。一々読み上げる必要もないと思いますから申し上げませんけれども、どうして、こういうふうに大学の意向というものに干渉をして、私から言えば干渉なんです。押しつけて、一つの型にはめなければならないのか、これでは、私は大学において教育をやるという意義がなくなってしまうと思うのです。
何とあなたがおっしゃっても、大学が自主的に、そういうものを決定するということを、あなたは、あれですか、教員養成の大学に関する限り不適当だとお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/99
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100・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 御承知のように、国立大学では授業科目と申しますか、学科目につきまして、先生を充当する場合には定員が必要でございますので、いろいろな財政的な折衝も、これから起こってくるわけでございます。したがって、大学だけのお考えで、自由に新しい科目をおつくりになるという点は、ある程度拘束されるわけでございまして、大学が、そういうお考えになったから、直ちに実施できるというわけではございません。
ただ、もちろんこの学科なりあるいま講座ができますと、一応この学科とかあるいは講座の一的、あるいは性格といった点から、おのずと基本的な学科目というものは出てくると思います。しかし、それをはずれたからといって、一がいに非難はできませんし、また、特にそういった先生の異動を伴わないようなものであれば、ある程度大学のお考えというものは、当然、私どもも尊重すべきものと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/100
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101・小林武
○小林武君 それでは、念を押しますけれども、あなたのただいまの答弁によりますと、こういうひな形を示して、われわれはひな形に大体合わさしたと見ているのですが、そうではなくて、大学の自主的な学科目の決定というものは、これは認めるということに理解してもよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/101
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102・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 今後、もちろん新たに増設される学科等もあり得るわけでございますし、そういったものにつきましては、大学当局とお話し合いをしてきめていかなければなりません。したがって、そういう場合に、すでにきめたものについても、いろいろ御要望があれば、十分私どもも検討いたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/102
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103・秋山長造
○秋山長造君 関連でちょっと。いまの点ですが、私なんか見ておって、どうも文部省は、ちょっと矛盾したことをやっておられる感じを受けるのですが、今度、大学財政は全部特別会計にされますね、大学の財政を一方では特別会計にして、それで大学の自主的な、自主性を大いに尊重するんだというような説明を一方でされておりながら、片方では、こまかい、いままで大学の自由にまかしておったような、こういう科目だとか、課程だとかいうようなことまで、一つ一つこまかく省令できめなければならぬという、ちょっと逆行したことを同町にやっておられるような感じを受けるのですが、特別会計に、いままで一般会計でやっておったものを、特にここで全部特別会計で別ワクでやろうというような画期的な、いい悪いは別として、画期的なこの方針を打ち出されながら、どうして、そういうことなら、なおさら、いまでこれでやってきて、別に差しつかえなかったものを、そのまま大学にまかせないで、特に今度こまかい点まで、一々文部省令できめなければいかぬというのは、どうも矛盾しているように思う、まかしたらどうですか、そうしないから、やはり特別会計にされたことについても、いろいろ裏を勘ぐられる理由が出てくると思う、これは特別会計という名のもとに、実際には、この文部省の大学管理をますますこまかく強化していくんではないかというような疑問が出てくると思うので、やはり文部省自身が、要らぬ疑惑の種をまいておられるのではないかと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/103
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104・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 先ほどのお尋ねの中でお答え申し上げたと思いますが、従来は、要するに国立大学につきましては、学部からすぐ講座というものについて、法制化をしておったわけでございますが、現実の問題としては、学部の下に学科があるわけでございます、一般的に申しますと。この学科については何ら規定しておらなかった。したがって、その辺法制上の手抜かりがあるということが従来からいわれておったわけでございます。それから、新制大学では講座に相当する学科目について、何ら規定がされておらぬ。こういう点も不十分じゃないか、法制的に不十分じゃないかということが前々いわれておりましたので、法律の改正をお願いいたしまして、その制度をこしらえたわけでございます。決して、これによって新たに規制を強化しようというような気持は全然ございません。
もちろん、今後、国立学校の財政を特別会計にしたいというふうにいたしておりますことは、一つは、一般会計で、いろいろと一般会計に属しておったんではやれないような財源措置が、特別会計になればできるという点と、それから、できるだけ大学の自発性というものは尊重していきたいという気持はもちろんあるわけでございます。特にこの特別会計制度に切りかえるということと、今回の省令が、観念的に背違しておるというふうには、私どもは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/104
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105・秋山長造
○秋山長造君 観念的に背違しておらぬと、——されておらぬとおっしゃる。それはあなたのほうは背違しておるといったらたいへんだから。だけれどもね、それはあなたのほうは、そうおっしゃるけれども、私のほうは、常識論ですよ、常識から考えて、私はおかしいと思うのですね。いままで、そこまでこまかく規定していなかったことが、いろいろ問題があったんで、その懸案をこの際解決したのだというようにおっしゃるけれどもね、それは監督とか管理とかいう角度からだけ大学の運営ということを見られれば、それはあなた方の立場としては、それは不十分だったとか、いままでも問題だったとかいうことは言えるかもしれぬけれども、それは、大学側自身が、それは不十分だったとか、これではいかぬ、こまかい省令できめてもらわなければいかぬと言うておったわけじゃない。大学のほうは、これでよかったんだ、また伝統的にも、それでしかるべくこれは適切にやられておったと思うのです。ですから、特別会計というものは、それはいまも局長がおっしゃったように、いろいろな理由もあるが、やっぱり大学の自主性というものを一そう強く貫いていくのだ、尊重していくのだ、国としては。ということが、一本入らなければ、特別会計を、ただ財産処分が簡単にできるとかいうようなことだけでは、大した理由にはならぬと思うのですよ。ですから、やっぱり大学の自主性を尊重するというたてまえを一番大きく貫いていこうということが特別会計のねらいだとすれば、やっぱりいままで、それで別に差しつかえのなかったことを特に、こと新しくこまかく規定していかなければどうも安心ならぬというのは、ちょっと私、どう考えても矛盾していると思う。もっとも、その特別会計というものは、あなた方が、こういうことを考えられたあとに飛び出してきた、だしぬけに、ひょうたんからこまが出たかもしれぬけれども、経緯からいうと。しかし、まあそれは経緯の問題であって、少なくとも一国の大学行政というようなものが、予算折衝の過程で、ひょうたんからこまが出たように飛び出してきたということでは、笑い話では済まされぬ問題だと思う。やはりこれは一番、文教行政の非常に大きな、根本的なたてまえの問題ですからね、そうなりますと、やはり学科から、講座から、そうして課程から、一々省令できめなくちゃならぬというような理由は、あまり立たぬのじゃないか。かえってそういうことをしたら身動きがならぬようになって、せっかくそれぞれの大学において、一つの伝統なり何なりを生かし、またローカル・カラーを生かし、さらに持ち味を生かし、バラエティーに富んだ大学というものをつくっていくという趣旨からも、これは反するのじゃないかというように思えてならぬ。
もう一度その点についての御見解をお伺いしたいが、同時に特別会計の問題については、いま別に法案が、ここでかかっているわけじゃないので一特別会計のときに、いろいろ突っ込んでお尋ねしたいと思うのですけれども、何とかこれを考え直されたらどうですか。事態が変わったのですから、経過的には、あと先になっているけれどもね、それはやはり大学の特別会計に切りかえという問題は、なかなか単に小手先だけの技術的な問題ではないと思う。また、小手先の技術的な問題に終わらしたのではいかぬと思うので、この際、やはり大学の自治的な自主性というようなものを、正しい音心味でやはり確立をしていくということが、ぜひ一本、私はなければいかぬと思うのですがね、大臣たるものには……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/105
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106・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 特別会計のお話が出たわけでありますが、これはそのうち御審議を願うと思うわけでございますが、大学の自主性という点を、この特別会計と結びつけられまして強調せられているわけでございますが、私は大学の自主性は、もちろん尊重すべきものと考えておりますが、これは特別会計であろうと、一般会計であろうと、大学の自主性というのは、十分尊重していかなければならぬものと考えているわけでございます。この特別会計は、制定の理由にも申し上げておりますように、大学の充実をはかっていきたい、それから経理を明確にしたい、こういうことが主眼として制定したものでございます。
自主性の問題は、もちろん私は、いかなる形の会計におきましても、尊重すべきものであるというふうに考えますけれども、特別会計の設置の理由につきましては、むしろ私どもの強調いたしたいのは、大学の充実をはかり、経理を明確にしたい、こういうところにある、かように御了承いただきたいと思うのでございます。またそのときには、十分御質問等に対してお答えもいたしたいと思いますけれども、そういう心持ちでもって御審議をお願いしたい、かように考えているのでありますから、御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/106
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107・小林武
○小林武君 いま秋山委員からも質問がありましたが、問題は大学の、一体自主的な研究というふうなものを、なぜ一体、それほど拘束しなければならないのか、大学特別会計の趣旨からいってしも、そうじゃないかというような、いまの御発言であったのでありますが、私はやはり、そういう一方での特別会計のねらいと、これは逆行していると思うのですが、だから、先ほど局長がお話しになった中に、 私はちょっといままで聞いておったところと違うと思いましたのは、新しく設ける学科目については、これはある程度大学の自治的なものを認めていくのだというお話があった、それもやぶさかでないというようなお話があった。そうするなら、その他の一体、諸学科目の設定についても、私はどうして文部省が、それほどこだわらなければならないのか、ひな形を示して、それをどうしても鋳型にはめなければならぬか、先ほどのお話だというと、あなたのお話は、結局大学で教育はやっていても、教員というやつは、学問の研究というところから離れていって、大体免許状に示されているところの科目、そういうようなものに合わしてやるというようなお考え、そういうことになると、いわゆる大学の人たちが反対いたしましたように、教育と学問の研究との切断ということがそこに行なわれるのは当然だと思うのです。どこまでも研究ということを離れたところに大学の存在価値はないわけですから、私はそういう意味で、もう少し幅を持ったお考えを現在は文部省がお持ちなのかどうかですね。持つべきだと思うのです、これは当然。
大体、先ほどのお話だというと、御了解をいただいたというが、それは御了解をしなかったならばたいへんなことになるという話を私は聞いたのです。ある学長が、とにかくこれを持っていってきめてこないことにはたいへんなことになると言って、教官に説明したという話を聞いたんです。これは裏話です。それは別として、こういうようなことをこれは、たとえ事実かどうかしりませんが、私は大体事実だと思っておるのですけれども、こういうようなことが、大学の中から流れてくるということは、私はきわめて不明朗だと思うのです。一体文部省は、どうしても学科目の設定については、大学の自立的な立場というものを認めないと、こういうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/107
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108・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) この教育養成大学につきましては、先ほどもお答え申し上げましたように、教育養成——小学校の先生あるいは中学校の先生を養成するという一つの目的があるわけでございまして、この目的に合わせたような教育を、どうしても行なう必要がある、そういうことから課程制をとり、また課程の下について、学科目というものを立てることにいたしたわけでございまして、この大筋は私正しいと思っております。
もちろんこの学科目の分け方につきまして、いろいろと御要望があったことも、私どもも知っておりますが、これについては先ほども申しましたように、いろいろと説明の不十分な点もあり、誤解を招いた点もありましたので、一年間かかりまして、いろいろと大学の先生方とお話し合いをしたわけでございます。個々の大学に出かけていって御説明をしたこともございますし、また、地域的に集まられたところへ行って御説明をしたこともございます。決して私どもも脅迫によって、脅迫と申しますか、強いて、とにかくまとめたということは私毛頭考えておりませんし、そういう事実は私の部下の者にも、おそらくはなかったのじゃなかろうかと思っております。学科目の今後の問題につきまして、もし大学でいろいろと御要望があり、それがまた妥当であろうというふうに考えられれば、私どもとしても検討するつもりはございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/108
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109・小林武
○小林武君 課程制大学にするということについては、これはもう一種の何と申しますか、職業人養成という、いわゆる目的大学になることになりますね。こういう考え方で教員を養成するということについては、どうでしょうか。戦後の教員養成を大きく改善いたしましたときに、旧弊にかんがみというような、旧制度の弊にかんがみというような立場から、大学において教育を行なうという方針とは、これは逆行しないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/109
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110・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 中教審の御審議の際に、要するに戦前と異なった制度でいくべきであるということをいうてありますが、これは必ずしも課程制だけをどうのこうのと言っておるわけではございませんが、先ほどお尋ねのございましたような、大学でない師範学校でやっておったようなことについて、いろいろ批判がなされたと思います。課程制は御承知のように、今回の省令で初めて国立大学に制度化をいたしたわけではございませんで、従来から、各教員養成大学においては、小学校教員養成課程、中学校教員養成課程ということで、実際に学則に明記をいたしまして、実施をしてまいったのでございまして、それをそのまま今回の省令に規定をいたしたということでございまして、したがってこれが、これを実施をしたからといって、戦前の制度のほうへ戻っていくのだということにはならぬと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/110
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111・小林武
○小林武君 昭和三十七年の十一月十二日の教育職員養成審議会の教員養成制度の改善についての建議において、「小学校、中学校及び高等学校の教育課程の改定とその実施を見、さらには大学教育の改善について検討されることになるなど教員養成制度改善の専門的、具体的な検討はこれらの事情を考慮して、あらためて行なわれる必要を生じていた。」こう書いてある。
これはあれですか、教育課程の改訂に合わして検討されていったのじゃないかという疑いを、こういう事例の中から、私はひそかに心配しているのです。先ほどあなたのおっしゃった中に、教員の養成というようなものは、学問の研究という立場からばかりではなくて、教員という一つの職業人の養成という角度からやるから、学科目の設定について、文部省がひな形を示したということをおっしゃることになりますというと、教育課程の改訂の問題、この問題と一体、これはひっかかり合いがあると、こういうふうに考えるのはどうですか。間違いですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/111
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112・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 教員養成審議会の建議についてのお尋ねでございますが、これは要するに、従来ございました三十三年の中教審の答申が、その後年数を経て、かなりの年数がたっておる。その間に、こういうこともありましたということであろうと思います。
これは御承知のように文部省から特に教員養成審議会に諮問をしたわけではございませんので、教員養成審議会として、いろいろ検討をして建議をしたいという自主的に始まった御相談でございまして、これは私の推測でございますが、要するに三十三年以後今日までの間に、こういうことがあったという事情を述べられたものと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/112
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113・小林武
○小林武君 推測というようなことは、あれですか。三十七年の十一月十二日というと、もう二年、三十九年ですからね、いま。その間に、教員養成制度について検討を続けておられる文部省が、その建議について推定するとか推し測ってみるとかなんという、そういうことで、一体われわれが納得すると思っていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/113
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114・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 先ほど申しましたように、これは審議会のほうで自発的にいろいろ検討をなさって、この建議をなさったわけでありまして、この建議自体について、文部省がたとえば指導したとか何とかという事実はございませんので、この建議についての文章その他については、先ほど申しましたように中教審の答申以来の時間的経過における経緯をお述べになったものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/114
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115・小林武
○小林武君 私は逆なことを聞いておるんです。文部省の最高幹部といわれる方が出かけて行って、建議したらどうかとおっしゃったというようなことを聞いているんです。これはもちろん私は聞いた話ですから、しっかりした証拠をあなたの前に提出することはできませんけれども、そういうことが世間に流布されております。しかも高坂さんという方は、これは中教審のメンバーじゃありませんか。中教審のメンバーであって諮問を受けるほうの一人であります。その方が建議をされる。どういうわけで建議をしたのかよくわかりませんけれども、一体、教育職員養成審議会なるものが、一体どういう性格のものか、実は疑問を持ってくるわけでありますけれども、そういう文部省のすすめによって、これは建議されたということが言われているわけです。中教審のメンバーであり、しかもそのほか高坂さんというのは様々な審議会の主要な立場をとっておられると聞いておるのでありますが、そういう方の責任をもってやられた事柄を、あなたのほうでは、推定とか推測とかで一おっしゃっては困ると思うのです。このことは、少なくともあなたの職責の上からいっても、十分検討されなければならぬことだと思うのです。この中に示される四項の問題点は、教員養成をこれから考えていく上において重大な問題ばかりなんであります。さらに高坂さんは外部の人に対しても、教員養成の建議の真意はこうだという文書を出して、われわれの意見は、こうなんだという真意を理解してもらいたいということを努力されておるようでありますが、そうしてその中で、この中に重大な問題が二つあるということも指摘されておる。
私はいま、そのことをもって大学局長をあえて責めようとはいたしませんけれども、それはそのくらいにしておきまして、あなたにお尋ねしたいのだが、この教育課程の改訂に伴う教員養成の検討ということが、この中にちゃんと書いてあるんです。あなたお持ちでありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/115
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116・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/116
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117・小林武
○小林武君 そう読めるでしょう、これは。そのことともう一つは、それを受けておりますから、四項の中に書かれておりますところの国家基準の問題なんです。高坂さんは、その点について、外部に出された文書の中にも書かれておる、教育課程の基準を国が定めるということに対する、この点は非常に問題になったと、こういうわけです。教員養成大学の教育課程の基準を、国家基準をつくる、このことと、この科目設定のあなた方のひな形との関係はないのかどうか、まことに疑わしいと思っているのです、ほんとうのことをいうと。
あなたたちは、一体教育課程の国家基準というのを、どういうふうに理解されておりますか。高坂さんからお聞きになったことはないんですか、されたことはございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/117
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118・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 先ほど申しましたように私どものほうから、文部省のほうから養成審議会に対して、建議をしたらどうかという働きかけをした事実は、少なくとも私の知っている範囲におきましてはございません。もしそういうことであれば、これは諮問をしてもいいんじゃなかろうかということになると思います。私どもは諮問をするつもりはございませんで、審議会のほうで、要するに養成制度について中教審の答申が出たと。その後、時間的な経過はあったが、その後に大学制度改善に関する中教審の答申が出ました。その中で、やはり三十三年の中教審の答申の線を確認しておるわけでございますので、その点に関連して、養成審議会のほうで御研究になったものを建議されたというふうに私は理解をいたしております。
なお、国の定める基準でございますが、この点につきましては、すでに御承知のように、三十三年の中教審の答申でも、教員の養成は国の定める基準によって大学において行なうものとするということを言っておるのでございまして、養成審議会で初めて、そういうことを打ち出したわけではございません。
なお、先ほどの学科、課程等の省令は、国で定める教育課程の基準ということとは直接の関係はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/118
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119・小林武
○小林武君 直接の関係がないと言いますけれども、教育課程の国家基準というのは、一体あなたがいまおっしゃったように、中教審の答申の中にもあるのですね。建議の場合には、さらにそれがよけい書かれているというだけであります。
一体、その国家基準が一番問題になったというのは、その国家基準ということと学問の自由というようなこととは、どういうことになりますか。国家の基準というようなものによって学問をやらなければならないのか、教員養成大学においては、そういう勉強の仕方をしなければならぬのか。それでは学問の自由ということはないのじゃないですか。たとえばある学者は、こういうことを言いますね、教員養成大学というような大学で、憲法をひとつ、憲法学を教えるとしたら、憲法を教えるのについては、基準に定められた同一の学説でなければ通用しないのではないか。そのことはやがて、あなたたちも、すでに実施しているから言うのですけれども、目的大学という
一つ出てきている。いろんなことばの端から認定大学というのもある。認定大学も、また目的大学と同じように教員をとにかく出そうと思えば、当然そこに国家基準の制約を受ける。その他の大学といえども、教員になろうとする者を、もし国家試験などで検定試験をやるということになると、その者もまた、国家基準に影響されるということになりますると、結局、日本の学問全体が大学教育全体に波及する問題ともなると私は考えています。一体、国家基準とは、どういうことなのですか、国家基準と大学教育とは、一体どういうことになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/119
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120・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 要するに、教員養成の大学、あるいは学部では、先ほどお答え申し上げましたように、一つの教員養成という目的を持っておるわけでございまして、その目的を達成するためには、教育のまあ組織と申しますか、につきまして、基準がやはり必要になってくるだろう、免許状授与のために、やはりある範囲の組織的な教育、あるいは総合的な教育が行なわれなければなりませんので、そういった基準を作るべきであるし、またその基準については、国で基準を作れというのが中央教育審議会の御答申の線でございます。
しかし、先ほどのお尋ねの中にございましたように、たとえばその中で、教員養成大学で憲法を教えるということが載りましても一、その憲法の教え方と申しますか、学説の中身まで、これで云々するというようなことは毛頭、こざいませんので、それによって先生方の学問の研究をどうしよう、あるいは学問の自由をどうしようということには私はならぬのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/120
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121・小林武
○小林武君 文部大臣にお尋ねをいたしたいのですけれども、いままでの灘尾文部大臣以外の大臣の口からも、直接われわれは聞いたことでございますけれども、教育課程というようなものを、一歩でもそれるというような教師は不届きである、こういうようなものの考え方に立っておられる。これを受けて、一体、大学の教員養成制度をひとつ考えていこうというのが基本的な考え方だと、そうしておいて、大学の教育課程の国家基準ということを言った場合に、教員養成大学におけるところの学問の自由というのはどうなるのか、もう少し具体的に、ひとつ大臣からお話を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/121
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122・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) 教育制度あるいは教育の課程というふうなことになりますと、専門的なことでありますので、しろうとがかれこれ言うのもいかがかと、かように存じておるわけでありますが、私は義務教育諸学校等の 教育に関するいわゆる学習指導要領、これは、これにひとつ血を通わせ肉をつけるのが先生の仕事だろうと思うのであります。それと反する方向において教育をせられては、これは困る。この点はさように考えるわけでありますが、教員養成大学でありますから、大学でありますから、もちろん学問研究の自由ということは、これは尊重しなきゃなりません。同時に、大学は高度の専門家をつくるという使命もあるわけでございます。教員養成大学に私どもの期待しております点は、学問研究もけっこうでありますが、同時に、現実に教育界に出て、そうして教育をする人をつくっていただくということに非常に大きな期待をかけておるわけであります。この面につきましても、今後先ほど申しておりますように、りっぱな教育家、力のある教育家をつくってもらう、こういう点で、うんと教員養成大学では努力していただきたいものと念願をいたしております。
いまの国家基準云々のことは、私もよくわかりませんけれども、学問研究について国家基準を設けるなんということはあり得ないと私は思うのであります。もししいていえば、いまのように社会に出まして、学校教育に携わる人に対する教育を、どの程度に行なうかというような点が問題になってくるのじゃなかろうかと、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/122
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123・小林武
○小林武君 結局しかし、いろんなことをおっしゃったけれども、教育課程を、とにかくよく教えてもらうような教員を養成するんだ、教育課程の肉づけをするような、そういう教師が必要なんだということをおっしゃっておる。そうすると、大学教育において、一体、そういうことを要求されるわけですね。それがいわゆる教育課程の国家基準、大学における国家基準だと思うわけです。それは旧制の師範学校とどこが違うかということ、旧制の師範学校というようなものが、そういうところに弊害があって、教育の中にいろいろな問題を持ち込んだ、教育が未来をつくるというために大きな使命を果たし得なかったと、私は自分の経験から、そう考えております。教員の一番罪悪は私は無知なことだと、そう考えましたときに、大学の中で一つの方向しか見れないような一体教育課程というようなものをつくるということを目標としている大学なんというものは、
一体何の価値があるか、大学といわれるかどうか。それと、大学局長は何といわれても、この問題と引っからまして考えないわけにはいきません、学科目の設定の文部省のひな形の問題とを。国家基準というような問題があるから、あなたのほうで、しゃにむに合わせなきゃならぬ。私は必ずしも省令によって公布されたというようなことは、内容いかんによっては肯定してよろしい、それは。大学の自主的な立場でもってやられる範囲において、大ざっぱにそういうことを国が示すということは、これはかまわない。だからぼくらもこれは賛成した。この七条の改正については反対はしておらない。しかし、ここまでくるというと問題だ。大学の自主的な立場をとって教官が反対する。それは学問の自由の拘束になりませんか。それは教師の養成というようなことからして、単なる職業人の養成という大学に堕してしまわなければならぬ。それは日本におけるところの過去のいろいろな問題点を、また再びおかすことになりはしないかという大学の連中のそういう声を、一体あなたたちは脅迫ではなく説得なさったらしいのでありますけれども、しゃにむに一つの鋳型にはめてしまうということと大いに関係するのであります。大臣は、学問の研究の国家基準というのはおかしいと言いますけれども、それは大臣がそうおっしゃるのは、私のほうから見れば、ちょっとおかしい。教育だって同じ。子供の教育でも何でも一、その中には自由が保障されなければならぬ。真理にそむくようなことは教えてはならないはず、教えられてもならないはず。そういう自由というものは保障されている。そういうことで、国家基準をつくって、国家基準から一歩でも一間違ったものは、非常なこれは、とにかく反逆児であるというような、そういう扱いをするのは、戦前の考え方と何ら違わない。そういうものをこの中教審や建議の中に書かれておる。しかもそれが、これへ出てきた。私はそこに問題点を感ずるんですよ。
私は文部大臣に、一体どういうお考えでございますかと、あなたは教員養成について、もうそろそろ腹案みたいなものができたんではありませんかという質問をしたら、全然ありませんと、こう言われたけれども、私は中教審の中に書かれている目的大学、認定大学その他の大学において教育を行なうんだということは、ちゃんと型ができておる。このことによってできている。さらには、学科目の設定に一つのワクをはめることによって、国家基準というものもほのめかしておる。私は文部行政の一番の欠点であるところの、わけのわからぬうちに、どんどんものを進めていって、なしくずしで、ものをやっていくというやり方、みんなの理解を深めて、そうしてみんなが賛成するとか協力するとかいう形をとっておらない。だから、非常な大きな問題だと思うんですよ。結局、目的大学というものをここで設定しているんでしょう。認定大学というような、名前は別として認定大学といわれている——中教審の答申の中には、認定大学というようなものも置くつもりでしょう。それから、その他の大学というのも、ある程度の方法によって、教員になる道を開くでしょう。それを文部大臣は新聞記者諸君に、ただ開放性を否定されるだけではなく、こう私は言われているんだと思うんです。なぜそこまで言ったならば、文部大臣がはっきり、ここまでは考えているということをおっしゃらないんです。それが不満なんです。文部大臣はそこまで言っているんではありませんか、やっているんでしょう、事実。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/123
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124・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) いろいろとどうも、だいぶ私の意中を勘ぐられておるような気がするのでありますが、私は、はっきりきまっていることなら、ちゃんとはっきり申し上げます。そこまでまだ至っておらない。中教審からの答申、あるいは教員養成審議会からの建議というふうなものを参考にいたしまして、いろいろ検討はいたしておりますけれども、まだ、こういうふうにするんだとか、ああいうふうにするんだということを申し上げる段階でないのでありまして、そのようにひとつ、あっさりと御了解を願いたいと思うのでありまして、かれこれあまり勘ぐられるということになりますと、私もものを申し上げにくい。そういうつもりはございません。
また、いまの教員養成大学に対する養成課程というふうな扱い方は、これまでもやっておることであります。その養成課程の中で、どういう学課目をやっていくかという問題について、いろいろ御意見があるわけでございます。私の承知いたしておりますところでは、私も念を押したのでありますが、大体話はついておるのかということで念を押しまして、各大学とも話がついておるということでありますので決裁をいたしましたようなわけであります。もちろんすべての人が、これに賛成であるかどうかということになりますれば、いろいろあろうかとも思いまするが、文部省と大学との間におきましては、円満な話し合いのもとに事を進めたものと考えております。
なお、詳細なことはよく知りませんけれども、今日の各大学のコースとか養成課程とかというようなものの内容は、これをしさいに検討しますと、かなり混雑しておるような点があるように、思っております。したがって、予算をとるのは文部省の仕事でありますけれども、予算のときに、たとえばある課目の人が要るのだということで予算をとりましても、大学でいろいろいわゆる自主的にやられます結果、その点において、先生が一体どこへ行ったのかというようなことも、しばしばあるように聞くのであります。この辺で一度、交通整理をしまして、課目と、それからそれに必要な職員というふうなものに対する定数等も、はっきりいたしまして、それからまた前進するとい一三とが時宜を得ているのじゃなかろうか、かように私も考える次第であります。
いずれにしましても、いろいろ御意見もありましょうが、大学と文部省との間におきまして、無理無理に押しつけて、どうしたというふうなことにはなっていない。かように私は了解いたしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/124
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125・小林武
○小林武君 大学局長にちょっとお尋ねいたしますが、あれでrか、いまの教員養成の学科は、目的大学になっているのでしょう。大体、そうでありませんか。あなたのほうでは目的大学と、これを言いませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/125
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126・小林行雄
○政府委員(小林行雄君) 厳格な意味での目的大学ということではないと思います。要するに、その教員養成学部におる学生は、事実上単位をとりまして先生になる者が大部分と言えると思いますが、そこの学生は、すべてが教員になるという形の、いわゆる教員養成を目的とする大学では現在はないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/126
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127・小林武
○小林武君 文部大臣にお尋ねいたしますが、勘ぐるなと、こういう話でありますけれども、勘ぐるなというのは、勘ぐるだけの理由がなければ、あまりぼくは勘ぐらんほうであります。勘ぐるだけの理由があるから、勘ぐるわけですけれども、それはさておいて、それでは文部大臣は教員養成の問題は、非常に重要な問題で、先ほどから申しておりますように、中教審の答申もあったし建議も一あった。こういう段階で、文部大臣も、とにかく本格的な教員養成をひとつ制度を考えるということになると、そういうときは、一体あれですか、どういう形で、一体そういう問題の決定をなさるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/127
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128・灘尾弘吉
○国務大臣(灘尾弘吉君) この問題は、いわば心はやたけにはやれどもという性質の問題ではないかと思うのでありまして、私の心持からいえば、なるべく早く結論を出したい、こういうふうに思いますけれども、しかし事は、かなり重要でもありますし、同時に、また困難な問題であります。予算的な問題もございましょう。あるい一は各大学について、いろいろ問題も起こることでありましょう。あるいはまた、私学その他に対する影響はどうあろうかと、こういうふうないろいろ困難な問題も控えているわけでございます。そう簡単に結論は出せるものではない、かようにも私は考えております。急いで、また慎重にというふうな心持で、この問題に対処いたしておるわけでございますから、現在は文部省の内部において、いろいろ検討いたしております。しかしこれを実施に移す段階までには、まだまだいろいろな方の御意見も伺わなくちゃならない、あるいは各方面の批評というものも聞かなくちゃならない、世論というものも十分耳を傾けなければならない、いろいろな段階もあろうかと思うのであります。
だからして、心持からいえば、私はなるべく早くと思いますけれども、そう簡単には結論は出しにくい問題だと、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/128
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129・小林武
○小林武君 それでは、時間が参りましたから、もう終わりたいと思いますけれども、文部大臣にひとつ念を押しておきたいことは、少なくとも文部行政を進めるにおいて、なしくずしでやるようなやり方だけはやめてもらいたい、はっきりこの教員養成については、この方針でいくというようなことを確定して、反対されようが、何されようが、だから内容の問題についても、教育課程の問題についてもこうだと、あるいはきょうは時間がありませんでしたので、質問はしませんでしたけれども、試補制度というようなことが建議の中に出ている、こういう試補制度という制度は、非常に問題点のあるところです。そういう問題は、十分討論されないまま、一つ一つ、とにかく実施だけはしていく、最後に、いつの間にやら教員養成制度というものは全く変貌したというようなやり方だけはしてもらいたくない、この点については、ひとつ十分お考えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/129
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130・中野文門
○委員長(中野文門君) 本日の委員会は、これをもって散会いたします。
午後四時六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615077X01119640303/130
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