1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年四月二日(木曜日)
午前十時四十五分開会
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委員の異動
四月二日
辞任 補欠選任
近藤 鶴代君 小沢久太郎君
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出席者は左のとおり。
委員長 中山 福藏君
理事
後藤 義隆君
稲葉 誠一君
委員
植木 光教君
小沢久太郎君
鈴木 万平君
高橋 衞君
坪山 徳弥君
亀田 得治君
中村 順造君
岩間 正男君
国務大臣
法 務 大 臣 賀屋 興宣君
政府委員
法務省民事局長 平賀 健太君
法務省刑事局長 竹内 壽平君
法務省入国管理
局次長 富田 正典君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
説明員
法務省刑事局参
事官 伊藤 栄樹君
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本日の会議に付した案件
○遺言の方式の準拠法に関する法律案
(内閣提出)
○刑事補償法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○検察及び裁判の運営等に関する調査
(入国管理に関する件)
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001・中山福藏
○委員長(中山福藏君) これより、法務委員会を開会いたします。
この際、委員の異動について御報告申し上げます。
本日、近藤鶴代君が辞任され、その補欠として小沢久太郎君が選任されました。
———————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/1
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002・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 次に、遺言の方式の準拠法に関する法律案を議題とし、質疑を行ないます。稲葉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/2
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003・稲葉誠一
○稲葉誠一君 この法案の質疑ですが、最初に、大臣おわかりでしょうか、ヘーグの国際私法会議ですね、これはどういうふうな会議なんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/3
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004・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) 政府委員よりかわって御答弁いたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/4
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005・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) ヘーグの国際私法会議と申しますのは、各国の国際私法の規定が非常にまちまちでございますので、これを統一しようということでもちまして、一八九三年、明治二十六年でございますが、オランダのヘーグにおきまして各国が集まりまして最初に会議を開きまして発足をいたしたのでございます。現在は二十一カ国がこれに加盟いたしております。そうして、わが国もこの会議に入りましたのでありますが、それは一九〇四年、明治三十七年でございます。第四回の会議の際に日本もこれに入ったのでございます。自後ずっと日本も入っておる次第でございます。会議の目的といたしますのは、国際私法の統一ということを目的にいたしておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/5
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006・稲葉誠一
○稲葉誠一君 この会議の構成国は非常に少ないですね。これはどういうわけなんですか。それからアメリカは入っていないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/6
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007・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) ただいま申し上げましたように二十一カ国でございますが、大部分がこれは——大部分と申しますか、ほとんどが日本を除きましては全部ヨーロッパの国々なのでございます。
アメリカが入っておりませんのは、御承知のとおりアメリカは連邦組織でございまして、国際私法もこれも各州の法律できまっているわけで、連邦法で定まっておるわけじゃございません。そういうわけで、アメリカとしましては、この会議に加盟いたしましても、国内立法をいたします際に、各州の法律で立法しなければならぬということになります。連邦としましては、各州にそういう立法を強制する権限もないものでございますから、そういう関係でアメリカは加盟いたしておりません。しかし、アメリカは、この会議には、最近におきましては総会のつどオブザーバーということでもって審議に加わっておる状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/7
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008・稲葉誠一
○稲葉誠一君 大臣、この会議でどの程度の条約に日本は署名しているわけですか。幾つくらいの条約にどんな条約に署名しているんですか、日本として。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/8
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009・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) この会議で協議しましたもので日本が署名しているのは、いま御審議を願っております遺言の方式に関係するものだけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/9
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010・稲葉誠一
○稲葉誠一君 この会議が始まってから十一ですか条約ができておるんですね。日本は十番目の遺言の方式だけで、ほかのものは全然日本としてはノー・タッチということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/10
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011・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) ただいま大臣から仰せになりましたように、日本が署名いたしましたのは、この遺言に関する条約だけでございます。と申しますのは、日本では、御承知のとおり、国際私法を定めた法律は法例でございますが、この法例の改正という問題とやっぱり関連するわけでございまして、法例の改正も同時に検討しなくちゃならぬ。そういうことでもちまして、法務省におきまして法例の改正をすでにここ数年来検討いたしておりまして、このヘーグの条約もこれとの関連におきまして検討したい。そういうわけで、法例の規定が、御承知のとおりこれは非常に簡単でございますので、この改正がなかなかそう容易にいかないのでございます。でありますから、幾つか成立しておりますヘーグ条約を国内法に取り入れるというような形でもって法例の実質的な改正を行なってはどうだろうかということになりまして、このヘーグ条約も本格的に検討を始めたというような段階なのでございます。
なお、ヨーロッパにおける状況を見ましても、戦後十一の条約が採択されておりますけれども、まだ発効しておりますのはわずか四つでございまして、そういう状況で、ヨーロッパ各国におきましても、必ずしもこのへーグ会議が予期しておるとおりに各国においてこれが取り入れられるということは必ずしも進捗していない、そういうような状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/11
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012・稲葉誠一
○稲葉誠一君 法例の問題はいまお聞きしようと思っていたんですが、へーグの国際私法会議というのと国際司法裁判所とはどういう関係になっているんですか、全然これは関係ないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/12
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013・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 国際司法裁判所もこれはヘーグにあるわけでございますけれども、直接の関係はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/13
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014・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そこで、法例の問題ですが、法例というのは、ホウは法律の法に、レイはたとえばの例、明治三十一年六月二十一日法律第十号ですが、この法例というのも私らが見て一番疑問に思いますのは、法例という名前ですね。法律の例というわけですね。どうしてこういう法例というような名前を使うんですかね。これは大臣どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/14
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015・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 法例ということばの沿革でございますが、私どもこの点は詳細に調べていないのでございますが、おそらくは、この法律が制定されます際にていさいとして参考にされましたのがフランス民法であるとかイタリア民法あたりではなかったかと思うのであります。フランス、イタリアの法律では、これは民法の規定の一番とっぱなに一編設けられておりまして、その表題が大体この法例ということばに類するような表題なのでございます。ちょっと私いま条文を持っておりませんけれども、おそらくそれを日本式に法例というふうに翻訳したのではなかろうかと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/15
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016・稲葉誠一
○稲葉誠一君 その法例と国際私法との関係はどうなんですか。法例全部が国際私法ではないんでしょう。そこはどういうふうになっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/16
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017・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) これは仰せのとおりでございますが、日本の国際私法の法源の中で一番重要なものがこの法例でございます。たとえば民法の中にも法例に類する規定、つまり国際私法の規定が若干ございます。それから、御承知のとおり、手形法、小切手法におきましては、手形、小切手に関する国際私法規定がございます。それから先年制定されました国際海上物品運送法は、海商法に関する国際私法の実質規定と言ってもいいと思うのでございます。しかし、国際私法の法規として一番量的にもまた内容的にも重要性を持っているのがこの法例でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/17
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018・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そこで、この法例をどうしようとするんですか。改正なら改正しようとする目安だとか理由だとかそれはどういうふうになって、現在どう進んでいるというのですか。やはりこの法例というような名前を使うのですか。国際私法なら国際私法というような名前を使うんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/18
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019・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 法例を改正いたしますと、相当詳細な規定になろうかと思うのでございますが、ただいま法務省の法制審議会におきまして検討しております段階では、法例という法律の題名は、必ずしも適当でございませんので、仰せのとおりでございますので、そういう関係で、国際私法という法律の題名にしてはいかがかという意見も出ております。しかし、まだはっきりきまったわけではございませんが、有力な意見としまして、改正の暁においては国際私法という法律の題名を端的に用いたらどうかという意見が有力に出ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/19
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020・稲葉誠一
○稲葉誠一君 国障婚姻法とか国際相続とか、こういうような形で単行法をたくさんつくるというような考え方はないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/20
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021・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) いま法制審議会の検討の段階におきましては、そこまでまだ行っておりません。ただ、遺言の方式につきましては、これは条約に基づく法律で、本文だけでも八カ条ございますし、法例の中に織り込むというよりむしろ単行法にしたらいいのではないかということでこういうことにしたわけでございますが、今後さらにヘーグ条約をこちらに取り入れるということになれば、あるいはこの遺言の方式の準拠法に関する法律のようにそれぞれ単行法ということになる可能性も十分あるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/21
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022・稲葉誠一
○稲葉誠一君 大臣、これは大臣が提案されたんですから、この程度はおわかりに十分なられると思うのですが、この法律は実際にはどういう場合に適用になるのでしょうか。具体的なひとつ例をあげて御説明を願えないでしょうか。よく読んでみてもなかなかむずかしくてわからぬところがあるわけですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/22
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023・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) 私も実はそれを申し上げるのはあまり適当でもないのですが、具体的と申しますと政府委員から答え申し上げたほうがいいと思いますが、とにかくいま国際的にいろいろ人の動きがございますから、財産の所在地、それから利害関係人、利益を承継する者などが日本なら日本ばかりにおるというじゃない場合が相当多いのじゃないかと思います。そうしますと、どうしてもこういう問題が起こってくるので、国際的に人間の往来、居住の動きが非常に激しくなったときには必然的に起こることが考えられるわけでございます。具体的に日本に住居しておって、たとえばアメリカに不動産を持っておる。また、それの財産を承継する立場にある人が香港に住んでいるとか、いろいろなようなことが起こるだろうと思います。
なお、もっと明快な例がございましたら、政府委員から申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/23
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024・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) ただいま大臣から非常に適切な例で御説明になりましたが、要約して申し上げますと、何らかの点で渉外的な要素がある、そういう関係につきましてこの法律の適用があるということになるわけでございます。
たとえば、外国人が日本で遺言した。その方式が日本の裁判所で問題になった場合に、一体その方式はどの国の法律に準拠したらいいのか。あるいは、日本人が日本で遺言した場合におきましても、いま大臣が例におあげになりましたように外国に財産を持っておる。その外国にある財産につきまして遺言の方式上の効力というものが日本で問題になった場合にやはりこの法律が適用になる。日本人が外国で遺言した場合その他とにかく何らかの点で渉外的な要素がその法律関係に入っておる、そういう場合に適用があるということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/24
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025・稲葉誠一
○稲葉誠一君 大臣、いまあなたのおあげになった例は、日本にいて日本人が遺言するのかアメリカ人が遺言するのかちょっとはっきりしなかったのですが、アメリカにある不動産のことについて遺言したという場合を一つの例として大臣あげられたんですね。しかし、アメリカはこの条約には参加していないのだし、この場合はどうですか、そういう場合も適用になるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/25
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026・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) この法律は、これは日本の裁判所で問題になった場合に適用になるわけでございまして、アメリカにある不動産につきまして日本人が遺言をした、それがアメリカの裁判所で問題になるという場合には、これはもちろんこの法律が適用になるわけじゃございませんで、これはアメリカの国際私法の原則によって処理されることになるわけでございます。この法律は、日本の裁判所で問題になった場合のことを考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/26
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027・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、法例の二十六条に遺言のところがあるでしょう。原則は遺言者の本国法によるわけですね。第一項で。ところが、第三項で、「前二項ノ規定ハ遺言ノ方式ニ付キ行為地法二依ルコトヲ妨ケス」と、こうあるわけですね。この規定がある以上は、特にこの法律がなくてもいいじゃないですか。そこのところはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/27
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028・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 現行の法例二十六条によりますと、日本法のたてまえとしましては、遺言の方式は、遺言者の遺言当時持っておった国籍の属する国の法律すなわち本国法とそれから実際遺言をしたところの地の法律すなわち行為地法、遺言当時の本国法とそれから行為地法、二つだけでございますが、この法律におきましては、そのほかに、住所地法、常居所地法、不動産所在地法、それから、日本法は遺言成立当時の本国法でございますが、遺言者の死亡当時の本国法もこの法律では準拠法とされておるわけでございます。準拠法が非常に広くなっておるわけでございます。これは、要するに、遺言者が遺言をしやすくしょう、一たん遺言をした以上は、とにかくその遺言者と何らかの合理的な関係がある国なり地の法律が全部準拠法になるというたてまえでございますので、遺言が方式上無効になるということがきわめてまれである、そういう点が現行法と違うわけでございまして、現行法ではまだまだこれは準拠法の範囲が限られておるわけでございます。その点におきまして、むしろこれは遺言が方式の点で無効になることはできる限り防いで遺言者の最終の意思を尊重したいというのがこの条約の精神でございまして、やはりその精神を国内法にも取り入れるべきである、日本の遺言の方式はまだまだ範囲が狭過ぎるのではないかという考えでございます。そういう関係で、法例の二十六条の遺言に関する条文を改めまして、もっぱらこの法律によるというふうにした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/28
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029・稲葉誠一
○稲葉誠一君 大体の場合は法例の二十六条でまかなえるんじゃないですか、普通の場合は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/29
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030・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 必ずしもそうでもございませんので、御承知のとおり、ヨーロッパの大陸におきましては、これは本国法主義、本国法を非常に重要視する考え方でございますが、アングロサクソン系の英米法におきましては、本国法ということにはあまり重きを置きません。住所地法、住所地の法律ということになるわけでございます。でありますから、英米人にしてみますと、日本でたとえばイギリスあるいはアメリカの人が遺言をするという場合に、彼らにとりましては、本国法というものよりも住所地法というものが彼らの先入観にあるのですから、彼らにしてみますと、住所地法によって遺言をするということが起こり得るわけでございます。そうなりますと、日本の法例は本国法でございますので、日本の裁判所でその遺言の効力が問題になった場合に、住所地法の方式に合っているが本国法の方式に合っていないというような事態がやはり生ずる懸念がないとは言えません。そういう関係で、日本の法例の定めている準拠法だけでは不十分ではないかということが考えられるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/30
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031・稲葉誠一
○稲葉誠一君 準拠法ということばが出てきたわけですが、準拠法というのはどういう意味なんですか。それからよく連結点とか連結素ということばが使われておるわけですね、これはどういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/31
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032・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) まず連結点でございますが、たとえば、ある法律関係につきまして、どこの法律を適用するかという場合に、国籍を基準にする。これは本国法ということになります。あるいは、住所の所在によって適用する法律を指定する。そういう場合に、国籍とか住所というものが連結点と言われておるわけでございます。国際私法におきましては、どこかの国の法律を指定しましてそれに準拠する。準拠すべき法律を指定するのが国際私法というわけでございます。そういう関係で、国際私法の規則によりまして指定されて準拠となる法律という意味で準拠法、イギリスではアプリカブル・ロウとかあるいはロア・アプリカブルとかいうことばを使っておりますが、それが日本の法律用語としましても準拠法ということばで非常に熟しておりまして、そういう関係でこの法律の題名にも取り入れたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/32
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033・稲葉誠一
○稲葉誠一君 外国法が、外国の準拠法というか、外国法が日本の裁判所で問題になったときに、現実に外国法はこういうものだということを証明するのは、当事者の立証責任になっているのですか、あるいは裁判所の職権調査になっているのですか。そこは統一した解釈をとっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/33
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034・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) これは解釈問題でございますが、やはり裁判所がその法律関係に適用すべき法律を発見するということでございます。これは裁判所が職権調査をすべき事項だと私は考えます。ただ、実際問題といたしましては、外国法の内容というのは日本では直ちにわからぬことも多うございますので、当事者の立証にまつことが少なくないわけでございますが、たてまえとしては裁判所の職権で調査する事項であろうと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/34
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035・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そういうふうな場合に、あとでも関係してくると思うのですが、日本が承認していない国がありますね。そういう外国の法律の場合はどうしますか。やはり職権調査ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/35
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036・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 国際私法におきましては、一般に外国の法律を適用する場合に、その国を承認しているかいないか、その国の政府を承認しているかいないかにかかわりがないということが一般に言われております。それはまさしくそのとおりであるわけでございます。たとえば、ここで遺言の方式については行為地法によることができることになっております。日本が承認している国の支配——国といいますか、政府といいますか、そこのその政府の支配している地域におきまして実際その地域によって行なわれている法律によって遺言をしたという場合には、行為地法によるということになって、その政府を承認しているかどうかにかかわらず、行為地法による方式によって遺言は法律上有効であるというふうに認めることになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/36
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037・稲葉誠一
○稲葉誠一君 遺言の活用状態は、英米法と日本とは相当違って、日本の場合にはあまり活用されていないのじゃないですか。その一つの原因が、遺言の方式が非常に厳格過ぎて実際に利用できない状態にあるのだというようなことが言われているのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/37
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038・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) この点は、私、外国の法制を詳しく勉強したわけではございませんが、いずれの国におきましても遺言の方式はかなり厳格なものでございます。日本の民法に定めております方式が厳格過ぎるということは、外国の法に比較いたしまして私はないと思います。遺言があまり行なわれていないというのは、日本の特殊の事情によるところが多いではないかというふうにも考えられる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/38
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039・稲葉誠一
○稲葉誠一君 この法律というのは、遺言の方式のみに適用されるのだ、こういうふうになっているわけですね。そこで、遺言が要式行為になるわけですが、これは徳川時代からそうだったようですが、あるいは前の養老令か何かでも要式行為になっていたようですが、旧民法施行前は遺書は一時要式行為でなかったことがあるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/39
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040・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) そもそもの民法施行前の遺言というものがどういうふうに取り扱われておったか、ちょっと私調査いたしてみませんと、何ともお答えいたしかねます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/40
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041・稲葉誠一
○稲葉誠一君 遺言を日本の場合は相続のところに規定してあるわけですね。これは特別の意味があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/41
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042・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 遺言に関する一般規定は、仰せのとおり民法に規定してございますが、やはり遺言は相続に関するものが実際問題として非常に多うございますし、また、相続に関して法定の相続を排除する相続の特例という意味で遺言制度が発達した沿革にもよるものと思うのでございます。しかし、御承知のとおり、民法は、遺言でできる行為はほかにもあるわけでございまして、そういう点から見ますと、相続編の中におかれておりますのは、やはり沿革的な理由というものが非常に大きいのではないかと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/42
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043・稲葉誠一
○稲葉誠一君 法例の二十五条と二十六条との関係にもなると思うんですが、遺言者が遺言後に国籍を変更した場合はどういうふうにするんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/43
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044・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 遺言者が、たとえば遺言をいたした後に国籍を変更しまして、たとえば外国へ帰化をした、そうしてなくなった、こういう場合には、この法律の適用の関係では、遺言成立当時の国籍、たとえば甲国といたしますと、甲国の法律も準拠法になりますし、それから死亡当時これは乙国に帰化したわけでございますが、乙国の法律も準拠法になるということになるわけでございます。法例の規定からいきますと、二十六条の第一項でございますが、この場合は甲国法だけしか準拠法にならない。乙国法は準拠法にならぬということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/44
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045・稲葉誠一
○稲葉誠一君 条文の中に入るんですが、第二条で国籍の問題が出てくるのですが、「国籍を有した国の法律」と、こうあるわけですが、日本がその国家を承認してない国の人は、国籍は日本としてはどういうふうに扱うわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/45
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046・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 先ほどは国家の承認ということ、行為地法に関連して申し上げましたが、「国籍を有した国」ということになりますと、その国を日本が承話していないという場合に、その本国法として、承認していない国の法律を適用できるかどうか、これは私疑問があると思います。その場合は、本国法としてその国の法律を適用することはできないのではないかと私ども考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/46
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047・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、たとえば日本から分離というか、独立したというか、朝鮮は北も南も日本としては承認していないわけでしょう。現在の段階では承認していないわけですね。そういう場合はどうするんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/47
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048・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 朝鮮の事態は非常に微妙なのでございますが、たとえば日本にいるドイツ人を考えてみますと、ドイツ人の本国法は何か。御承知のとおり、現実の問題は東と西に分かれておりますが、東ドイツ国あるいは東ドイツ政府というものを日本は承認していない段階におきましては、いわゆる西ドイツの法律をもってドイツ人の本国法とするべきものではないかというこうになろうかと思うのでございます。朝鮮の事態につきましては、いろいろ問題がございますので、法務省の従来の取り扱いとしては、先例はございますけれども、本国法と申しますときには、やはりその本国を国家として日本が承認している、あるいはその政府を日本政府が承認をしているということが前提になるのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/48
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049・稲葉誠一
○稲葉誠一君 先刻局長が言われたのは、その国を承認しているかいないかにかかわりがなく国際私法が適用になる、本国法が適用になる場合があるということを言われたのじゃないですか。そういう意味のことを言われたのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/49
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050・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 国際私法につきましては、その準拠法として定められた法律が、日本が承認している国の法律なりや、あるいはその法律を制定した国なり政府を日本が承認しているかどうかには直接かかわりがないということが言われておりますが、それは一般理論としてはそうであるわけでございますが、それは行為地法でございますとか、住所地法でありますとかいう場合にはまさしくそれがあてはまると思うのでございますが、本国法という場合にはそれは別に考えなくてはいけないのではないか。たとえば、先ほど申し上げましたように、日本におるドイツ人というものを考えた場合、そのドイツ人につきまして本国法の適用が問題になった場合に本国法をどうきめるかという場合でございますが、これはたとえばそのドイツ人が政治的に東ドイツを支持しておるからといって東ドイツの法律というわけにはいかぬのではないか。やはり日本のたてまえとしましては東ドイツを承認していないのでありますから、西ドイツの法律、これがそのドイツ人の本国法ということにすべきではなかろうかというふうに考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/50
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051・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、日本人がかりに北朝鮮へ行って、そこで遺言なんかした場合は、行為地は北朝鮮だというので、そこの法律に従うということもできるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/51
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052・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) そういうことになると思います。その場合はそうだと思います。その地域に現に行なわれておる法律、だれが制定したかということにかかわりなく、実際その地域を支配しておる法律、これは慣習法でもいいわけでございますから、仰せのような場合にはそういうことになると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/52
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053・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それからこの第二条にあります「住所」のことですが、法務省当局としては、住所をきめるときに、その人の主観的意図ですね、ここを住所としてきめるという主観的意図までも要素として含んでいるのか、あるいは客観的なことだけで住所をきめるという行き方をとっているのか、そこはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/53
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054・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 日本の民法なんかにいわれております「住所」につきましては、御承知のとおりでございますが、この法律で言っております二条の三号にいう「住所」というのは、これはあとに第七条に規定がございまして、「遺言者が特定の地に住所を有したかどうかは、その地の法律によって定める。」、それで、遺言者が自分はイギリスに住所があったんだということを主張しますならば、その住所というのはイギリス法によってきまるということになるわけでございます。そういうわけで、あるいはドイツ法により、イギリス法により、あるいは日本法によるということになるわけでございます。
ところで、その住所の観念というものは、各国それぞれ違うわけでございます。非常に客観的に住所の概念を定めるところ、それから主観の要素を非常に重く見るところ、それからまた法定住所というような考えをとっておるところもあるわけでございます。そういうわけで、この二条の三号に「住所」というのは、ここに独立の概念ではないわけでございます。各国の法律にまかせられておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/54
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055・稲葉誠一
○稲葉誠一君 日本では、生活の本拠を住所とするという形だけで、その点は明確にしてないんじゃないですか。主観的な要素は入れないという考え方ですか、大体が。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/55
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056・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 日本の住所の観念は、ほぼ通説として言われておりますことは、客観点にきめるので、主観的な本人の意思というものも客観的な要素の一部として見ていく、客観的にきめるという考えが通説であると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/56
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057・稲葉誠一
○稲葉誠一君 四号に「常居所」というのがありますね。常居所ということばはあまり聞いたことがないんですが、居所ということばは聞いたことがあるんですけれども、日本では住所のほかには仮住所ということもあるし、それから居所、これだけじゃないですか。常居所ということばは日本の民法なんかでは使わないんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/57
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058・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) これは三号の「住所」と区別する意味で「常居所」というふうにしたのでございますが、これは常時居住しておる場所、そういう意味でございます。客観的要素というものに非常に重きを置きまして、むしろ日本法の「住所」に近い観念ではないかと思うのでございます。で、これも、条約の原語では、英文ではハビチュアル・レジデンス、それからレジドン・ハビチュアルというようなことばが使ってありますが、ヨーロッパにおきましてもこれは新しいことばでございまして、住所の観念が非常にまちまちでございまして、どこの国に行っても共通の概念というものをつくろうではないかというので、常時居住しておる場所というようなことばが最近のヘーグの条約なんかではしばしば用いられております。その新しい概念であります関係で、日本法におきましても、やはりこういう新しい、ちょっと耳になじまないのでございますが、こういうことばを取り入れたらどうかということでこういう新しいことばを使ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/58
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059・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、日本の民法との関連はどうなんですか。日本の民法の中にもこういう常居所という概念を今後入れるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/59
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060・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 日本の民法の住所と直接関連はないわけでございますが、日本の民法の住所の解釈は客観的にきめるという解釈でございますので、結果的にはこの常居所と同じようなものではないかというふうに考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/60
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061・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、三号にある「住所」というのは、条約ではどういうふうに言っているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/61
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062・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 二条の三号の「住所」というのは、先ほど申し上げましたように、各国の国内法によって差があり、日本の国内法による住所という場合には四号と一致することもあり得るわけであります。住所でもあり常居所であるということも起こり得ると思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/62
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063・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうではなくて、英語でどういうふうに言うんですか、条約のほうは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/63
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064・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) この「住所」は、ドミサイル、ドミシールということばが使ってあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/64
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065・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、あなたの考え方なり法務省の考え方は、住所というのは一つしかないという考え方をとっているわけですか。必ずしもそうではないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/65
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066・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) この法律のたてまえからいいますと、住所というのは各国の国内法できまるわけでございますので、各国の国内法によって住所を二つ以上認めるというところもあり得るわけでございます。で、一つに限るとは必ずしも言えないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/66
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067・稲葉誠一
○稲葉誠一君 日本の場合はどうしているんですか、どういう考え方をとっているんですか、住所は。日本の国内法では一つしかないという考え方をとっているんですか、あるいは、経済状態の発展してくるにつれて二つ以上あってもいいという考え方をとっているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/67
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068・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 日本法の従来の解釈としては、住所は一つであるという解釈が有力だと思いますが、御承知のとおり、二以上の住所を持ち得るという見解もあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/68
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069・稲葉誠一
○稲葉誠一君 これはここでの議論じゃないかもしれませんが、しかし、裁判所の判例で選挙権に関連して学生が現に就学しておるところも住所なんだという形で、はっきり二つの住所を認めてもいいんだというふうにきまったんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/69
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070・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 公職選挙法の関係だと思いますが、民法の住所と公職選挙法の住所がはたして同じものかどうかという問題もあると思うのでございますけれども、まあこの点は、住所が一つに限るか、二つに限るかということは、必ずしも民法の住所につきましては、はっきりした先例が、最高裁判所の判決というようなものは私はないように思っておりますが、この法律におきます限りにおきましては、住所というものがそういうわけでございますので、甲国にも住所がある、あるいは乙国にも住所があるということは当然起こり得ると思うのでございます。そういう場合には、甲国の法律でもよろしい、乙国の法律でもいいということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/70
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071・中山福藏
○委員長(中山福藏君) それでは、本件については一応この程度といたします。
ちょっと速記をとめてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/71
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072・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 速記を始めて。
———————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/72
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073・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 次に、刑事補償法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/73
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074・稲葉誠一
○稲葉誠一君 大臣、刑事補償の問題ですが、日本では日本国憲法の第四十条で刑事補償の規定があるわけですね。いままでなかったわけですね。特に憲法に入れたのはどういうわけなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/74
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075・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) ちょっとおしまいのおことばがわかりませんでした。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/75
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076・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうですか。憲法四十条に刑事補償の規定があるんですが、旧憲法にはなかったはずだと思うんです。いまの憲法に特にこれを入れたのはどういう理由があるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/76
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077・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) 人権の尊重という観念から出たものではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/77
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078・稲葉誠一
○稲葉誠一君 これは立法例ではどうなっているんですか。大体憲法にみな規定しておりますか、刑事補償のことは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/78
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079・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) 各国の例につきましては、私よく存じませんから、お答えを留保しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/79
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080・稲葉誠一
○稲葉誠一君 きょうは時間がありませんから、要点だけで、この次に詳しく聞きます。人権を尊重する意味で特に憲法の中に入れた、こういうふうに大臣は答えられたので、そのとおり受け取っておきますが、この条文にある「抑留」と「拘禁」というのはどういうふうに違うのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/80
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081・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) はなはだ申しわけありませんが、「抑留」と「拘禁」の区別はひとつ政府委員からお答えいたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/81
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082・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 速記をとめてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/82
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083・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 速記を起こして下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/83
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084・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) お答えを申し上げます。
憲法その他で「抑留又は拘禁」というふうに一連のことばとして使われておるわけでございますが、一応の考えとしては、「抑留」と申します場合には比較的短期の一時的な身柄の拘束状態をさす、それから「拘禁」のほうはやや継続的な拘束状態をさす、このように解されておるように存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/84
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085・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、たとえば警察が逮捕して四十八時間で、身柄を入れないで、在宅で起訴をした、それで無罪になった、という場合もありますね。そういうような場合には「抑留」だと、こういうのですか。「抑留」と
「拘禁」とは、具体的には書いてあるけれども、別に意味はないのだということになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/85
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086・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 一応、憲法を見ましても「抑留又は拘禁」と、一つの熟語的に使っておりまして、それを受けまして刑事補償法でも「抑留又は拘禁」と、こう書いてあるわけでございまして、特に「抑留」であるからどう、「拘禁」であるからどうという区別はつけがたいように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/86
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087・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、「抑留」にしろ「拘禁」にしろ、具体的にはどういう意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/87
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088・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 具体的に申しますと、刑事補償法、第一条第一項の……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/88
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089・稲葉誠一
○稲葉誠一君 憲法の四十条です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/89
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090・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 憲法の第四十条の関係で申しますれば、いやしくも刑事手続によって身柄の拘束を受けた、そういう場合を総称するものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/90
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091・稲葉誠一
○稲葉誠一君 まあそれはあとの問題にして、これは少年の場合も含まれるのですか、この憲法第四十条には。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/91
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092・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 刑事手続に関する以上含まれると、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/92
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093・稲葉誠一
○稲葉誠一君 その場合のいわゆる「拘禁」ですね、鑑別所へ入っていたときとか、そういうものは全部通算されるのですか、されない場合もあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/93
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094・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 一応すべて通算されるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/94
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095・稲葉誠一
○稲葉誠一君 これは起訴をされた場合だけですね、四十条は。被疑者の場合は、被疑者に対する補償として別な扱いをしているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/95
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096・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) さようでござ
います。被疑者につきましては、法務大臣訓令で、被疑者補償規程というのがございまして、これに基づいて補償をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/96
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097・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、被疑者に対する場合は、訓令ですか、法律ではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/97
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098・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/98
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099・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、被疑者の場合は、第四十条の中に含まれないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/99
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100・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 憲法の第四十条は、明文をもちまして「無罪の裁判を受けたときは、」と、こうございますので、被疑者でございましても、起訴に至りません場合には、一応憲法第四十条の補償の範囲外でございますので、訓令で定めておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/100
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101・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、被疑者の場合は、補償はしてもしなくてもいいわけですか。どうなっているのですか、これは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/101
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102・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 一応被疑者補償規程の第二条には、「検察官は、被疑者として抑留又は拘禁を受けた者につき、公訴を提起しない処分があった場合において、その者が罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由があるときは、抑留又は拘禁による補償をすることができる。」としてございます。したがいまして、この文面だけから申しましても補償しないこともできるという読みができるわけでございますが、実際の運用といたしましては、明らかに人違い逮捕であったという場合には、積極的に補償を与えるように行政上の運用としてやっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/102
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103・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いままで被疑者に対する関係で補償したことがあるんですか。いますぐわからなければ、あとでもいいですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/103
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104・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 被疑者の関係の補償は、お手元に「参考資料」として縦長のものがお配りしてあると存じますが、それの十一ページにございますように、昭和三十二年にこの被疑者補償規程ができましてから昨年末までに合計十三件の補償をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/104
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105・稲葉誠一
○稲葉誠一君 これはまあ直接のきょうのあれではありませんから別にしますが、そこで刑事補償のことが憲法第四十条に書いてあるのは、いま法務大臣は人権を尊重するたてまえからと、こう言ったわけですが、憲法上の権利として第四十条に規定されているのだとこういうことになるわけですね。そうすると、勾留中に限ったのはどういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/105
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106・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 別に勾留中に限ってはおらないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/106
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107・稲葉誠一
○稲葉誠一君 じゃ、どういうふうになっているんですか、いま。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/107
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108・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 一応いやしくも未決の段階で身柄の拘束を受けました場合には、すべて「未決の抑留又は拘禁」ということで補償の対象になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/108
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109・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いや、補償する場合、勾留中の日数だけしか刑事補償はしないんじゃないですか。そのほかもするわけですか。国家賠償は別ですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/109
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110・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 刑事補償法によります補償の対象になりますものは、まず第一条の第一項にございます未決の抑留、拘禁でございまして、これをさらにこまかく申し上げますと、逮捕による拘束、勾引状、勾留状あるいは鑑定留置状によります拘束、それから少年法によります観護措置、あるいは同行状による抑留、それから、これはなくなっておりますが、経済調査官が従前行ないました違反嫌疑者の逮捕こういうものが入るわけでございます。それからさらに第一条第二項の関係におきましては、自由刑の執行を受けました場合における服役しました期間、それから死刑の執行を受けました場合のその執行さらに罰金刑あるいは没収の裁判の執行がございました場合にはそれらの没収あるいは罰金の徴収、こういうものがすべてこれの対象になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/110
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111・稲葉誠一
○稲葉誠一君 罰金や科料は別として、人身の自由の場合によるというと、それが拘禁をされて自由を拘束されたときだけが結局刑事補償の対象になる、こういうたてまえをとっているのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/111
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112・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/112
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113・稲葉誠一
○稲葉誠一君 だから、その理由は一体どこにあるわけですか。非常に狭過ぎるのじゃないですか。実際には裁判勾留後保釈になるとかあるいは出てきて執行停止もあるでしょうが、出てきて長い間一審・控訴・上告にかかってくるそういう場合は、非常に長い間かかってきても、実際の勾留日数しか刑事補償の対象にならない現行法のたてまえはおかしいんじゃないかと、だれが見てもそう思うんですがね。そこを聞いているわけですよ。特に勾留中だけに限ったのはどういうわけだと。あとはまあ国家賠償でいけとかなんとかということでは、刑事補償法の趣旨というものが、特に憲法四十条に憲法上の権利として規定された趣旨がちっとも貫かれないんじゃないかということを聞いているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/113
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114・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 仰せの考え方は、いやしくも身柄の拘束があろうとあるまいと、無罪の裁判を受けた者に対しては、それ相当の慰謝と申しますか、そういうことをなすべきではないかという御趣旨のように伺うわけでございまして、一応そういうお考えも確かに考え方としてあり得ると存ずるわけでございますが、一応、刑事補償法の考え方といたしましては、この刑事補償の本質が一種の定型化されました国家賠償であるというふうに考えられるわけでございますが、いろんな裁判上のできごとのうちで、国家賠償法あるいはその他の賠償関係の法規によるほかに、一つの定型化された補償をすべき場合というのはいかなる場合であろうかということを考慮いたしますと、やはり身体の拘束を受けた、結局無罪の言い渡しがあってみますと、全く無実の者が身柄の拘束を受けておったと、そういう場合におきましては、常に苦痛が伴うのではないか。そういった意味におきまして、非常に定型化して、当然国家賠償等の措置を待たないで補償すべきものであろう。で、その意味で、憲法四十条も、特に身柄の拘束をしました場合についての補償を規定しておるものというふうにも考えられるのでございまして、要するに、無罪の言い渡しを受けましたことに関する損害補償と申しますか、その中でとりあえず定型化して補てんすべきもの、これは身柄の拘束があった場合であると、こういうふうな理解のしかたをしておるものと感ずるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/114
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115・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いまのお答えではどうも納得できないですね。なぜ勾留中のものに限ったかという根拠が出てこないと私は思うんですよ。非常にこれを狭く解釈をしてできておるというふうに考えるんですが、たとえばいまの定型化された国家賠償ということなら、国家賠償の場合には、故意、過失が要件になるわけでしょう。この場合には、故意、過失は要件にならないんでしょう。故意、過失は要件にならないし、だから、結局、損害賠償というのとは性質が変わってきておるというふうに刑事補償はいくんじゃないですか。そこはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/115
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116・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) まあ本質は一種の損害賠償であると思いますが、一般の損害賠償、特に国家賠償の場合と異なりますのは、仰せのとおり、故意、過失を要件としておりませんということと、それから、補償します場合の補償金の額が定型化されておる、この二点が違っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/116
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117・稲葉誠一
○稲葉誠一君 法務大臣、いま憲法四十条で人権を尊重するために設けられたと、こう言うんですが、身柄が勾留中だけしかこれは補償しないわけですよ。裁判がもう三年かかっても、四年かかっても、あるいは十年かかっても、結局定型化されて、同じ額しか出さないんですね。いろいろなことで起訴されて、結局無実の罪がわかって無罪に確定したということになれば、それの受ける精神的な肉体的な苦痛というのは、何も勾留中だけに限ったわけではないはずだと、こう思うんですね。ですから、非常にこれは狭過ぎる考え方をとっている。あとは国家賠償法でやれといったって、国家賠償法でやるにはたいへんな手数がかかるわけです。いやもう五年も六年もかかって、えらい費用がかかるわけです。ですから、刑事補償法は、そういう点はもっと拡大をして、勾留中だけでなくて、も一つと広げていっても、幾らでも定型化はできると、こう思うわけなんですよ。私思うに、そういう意見もだいぶ強いわけです。この点について大臣はどうお考えであるか、ちょっとここで承っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/117
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118・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) 損害賠償であると思うのでございますが、この場合は、国のほうに故意、過失がない。まあくだけて申せば、検察当局に故意、過失がない、しかし無罪になった。その被告になった人は、たいへんそこに損害があるということは事実なんです。そういう場合に、どの限度にやるかということは、いろいろな角度から問題になると思うんです。そこで、故意、過失のない場合であるから一つの定型化したものをやろうという考え方が出たように思うのでございまして、その場合には、やはり勾留とかいうそういう身柄を拘束したという一定の何人にも共通な客観条件というものが一つのわかりやすい目安になるんじゃないか。それで、憲法には、お話のようにはっきりどの範囲と書いてございませんが、「抑留又は拘禁された後」と書いてある。「後」にはいろいろなことがございましょうが、この事実に重きを置いておる。で、これ以上にやる場合は、故意、過失の問題に具体的に一々そのケース、ケースでいくというのがいまの考え方だと思うのでございます。この考え方が完全であるか、不完全であるか、見方によりましてはむろんこれ以外にも損害があれば不完全とも申せましょうが、そういうものを故意、過失がない場合に定型化して一定の額をやるという制度にします場合には、これは抑留、拘禁されて無罪になった人の個人差はたいへん多いので、非常に困難じゃないか、こういうことでございます。
先ほど各国の憲法の規定等でお尋ねがございまして、はなはだ申しわけないのですが保留しておきましたが、それで各国の憲法にどういう規定があるか、それに基づいての各国の刑事補償の立法例があるのか、これは調べて適当のときにお答え申し上げるように政府委員と話しておったところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/118
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119・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いま大臣が刑事補償の場合には警察官なり検察官に故意、過失はないんだということを言われましたけれども、これはそうじゃないと思うんですよ。故意はない場合が多いでしょうけれども、過失があって誤って起訴したというふうなことによって裁判が進行していったこともあるわけで、過失がある場合も含んで刑事補償の場合はきわめておられるのだけれども、そこを要件としないで刑事補償の金額を算定し下付するのだと、こういうことじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/119
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120・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) それはお話のように要件にしないで、こういう故意、過失が明らかの場合にはまた別の観点から問題に対して解決のことを考えなければならぬので、それはお話のように故意、過失を問わず——問いました場合には、実際になかなか故意、過失が出ないで、無罪になった人も何ももらえないという、何と申しますか、普通の常識に合わない点が出ますから、問わないでいくということは、お話のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/120
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121・稲葉誠一
○稲葉誠一君 きょうは、もう一点だけにしておきますが、三十九年度の予算では、この刑事補償の金額というのはどの程度を考えておるわけですか。どの程度の事件数があるというようなことを見込んでおるわけですか。あるいはほとんど予備費から出すという考え方をとっているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/121
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122・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 一応、予算としては千二百万円ということでございます。それをこえれば、予備費から出すわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/122
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123・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それは法務省として最初から無罪がたくさん出るという前提のもとにやるわけにもいかないでしょうけれども、 この千二百万というのはどの程度の根拠ですか。一年間にどのくらい無罪の件数が出るだろうという推定ですか。それは過去何年間かを平均したとかなんとか、いろいろあるんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/123
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124・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 一応お手元にも一資料として差し上げてございますが、従来の実績と申しますか、俗なことばで申します実績に、単価増と申しますか、これを掛け合わせますとおおむねその程度になる、こういうことできまっております。
なお、この予算は、最高裁判所のほうについておる予算でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/124
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125・稲葉誠一
○稲葉誠一君 きょうは私いいです、これで。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/125
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126・岩間正男
○岩間正男君 ぼくも、この額の問題とかその他のこの法律に関係した問題はこの次に譲りたいと思うのですが、二、三点だけ先にお聞きしておきたいと思います。
それは、この刑事補償法だけでは損害はとても償うことはできない。つまり、さっき稲葉委員の質問応答でもわかると思うんですけれども、物心両面のそういう損害を償う、そういうところにこの刑事補償法は立っていないのだということもこれは確認してようございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/126
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127・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) 損害ということに立っておりまして、ただその金額につきましてそれが十分であるかないかという点にはいろいろ考え方はあろうと思います。考え方はその損害をやはり補てんするという考え方に立っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/127
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128・岩間正男
○岩間正男君 損害補てんにはなっていますけれども、経済的な損害、それから精神的ないろいろな損害、取り返しがつかない損害があると思うんですね。その中で勾留された期間だけのものをとりあえずこれは定型化してそれで補償するんだと、こういうたてまえなんで、これだけで全体が解決するなんということはこれは念頭に置いていないものだというふうに考えるんですね。したがって、当然これは国家補償と同時になければ、この刑事補償だけでは無罪者に対するそういう補償は完了しないのだと、こういう観点に立っていると解釈しないと、この補償法というものは非常に微々たるもので、問題にならないのじゃないかと思うんですが、その点はどうですか、たてまえとして。これは大臣にお聞きします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/128
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129・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 私から答えさしていただきますが、仰せのように刑事補償は物心両面の補償を一応前提としているのでございますけれども、必ずしも全損害を賠償しようというのではございません。仰せのように、法律で定めた一定の額を補償するという趣旨でございますから、全部の損害にまで及ぼされるかどうかという問題が残っておるわけでございます。もう一つ国家が賠償する制度としまして、御承知のように国家賠償法がございます。国家賠償法におきましては、それに携わりました公務員が職務執行にあたって故意、過失があった場合を前提として賠償をする。これは民法の賠償の規定、つまり損害賠償の規定を踏んまえたものでございますが、それと両々相まちましてできるだけ国家賠償の責めをふさいでいくという考え方に立っておると思うのでございます。
なお、立法論としましてなお検討を要する問題が御指摘のような点が多々あるものと存じますので、将来の検討をさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/129
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130・岩間正男
○岩間正男君 その点はわかりました。そうすると、国家賠償を併用することなしには完全な補償というものはこれだけじゃできないんだと、この点は確認したいと思います。
それで、ちょっとこの法案を進めるにあたって具体的な例として聞いておきたいんですが、松川事件です。松川が、事件が無罪になりまして、それで刑事補償が昨年の暮れですか、これが行なわれた。そうして補償金も支払われたはずです。これの資料はございますか。二十人が十四年にわたってほとんど青春を奪われたという形で、国際的にも歴史的にもこんな例はないわけなんです。これに対するその額は総額で幾らですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/130
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131・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 松川事件につきましては、総額千五百十二万九千六百円が補償されております。各人別の内訳もわかっておりますが、全員につきまして、一日四百円の割合で最高が支払われております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/131
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132・岩間正男
○岩間正男君 そのうち、最高と最低を言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/132
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133・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) すべての被告人であった方々につきまして一日四百円ということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/133
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134・岩間正男
○岩間正男君 その二十人のうち、最高額をとったのは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/134
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135・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) それで、最高額と申しますと、杉浦さん、あるいは鈴木さん、本田さん、このあたりが百四十万円、正確に申しますと、一番多いのが鈴木信さんで、百四十二万八千円と、こうなっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/135
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136・岩間正男
○岩間正男君 それから最低は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/136
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137・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 最も少ないのが横谷園子さん、この方が二十二万九千二百円、こうなっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/137
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138・岩間正男
○岩間正男君 これは詳細を、これからの参考になりますから、ちょっと資料にして出してほしいと思うのです。これは、法改正になると、大体この二倍程度になるわけなんですね。ところが、昨年の暮れですから、ちょっと半年の違いで、この額の何ぼですか、わずかに四〇%。今度の法改正の四〇%しかとれなかったわけです。そのほかに例をあげると、吉田石松氏の場合などをお聞きすればいいと思うんですが、吉田さんのは、かりに参考のために、いまわかりますか、幾らですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/138
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139・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 吉田石松翁の場合は、合計補償金額が三百十五万五千六百円でございます。これも一日四百円の割合で支給しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/139
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140・岩間正男
○岩間正男君 どうしても、いまの額を見ましても、具体的にこれは資料をいただいてからもっと詳細に論じて見たいと思うんですけれども、十四年間も心身両面の被害を受けた、それから著しく被告の名誉が棄損された、そういう点を総合して考えれば、とてもいまのような補償金ではこれは問題にならないということは、だれが見ても常識的にわかると思う。当然これは国家補償の問題が起こらなくちゃならない。ところが、国家補償の手続は非常にめんどうで、また故意か過失かという判定の問題でいろいろめんどうだということになると思うんですが、昨日、賀屋法務大臣が、国家補償の場合の証人等の被害についての給付に関する法律を適用された、初めて。そうして遺族に対して百八万ですかの補償をされたということを聞いたわけです。こういうものと比べて、松川事件の場合の国家補償などということは、これは当然何十倍の重要なウエートをもって取り上げられるべき問題だというふうに考えているわけなんですけれど、現在、松川事件の前被告たちから、このような国家賠償の請求は出されているのですか、それについてまたどういうような考え方を持っているか、お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/140
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141・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 松川関係の元被告人であった方々から国家賠償の請求が出されているということは、私どもはまだ承知いたしておりません。その点は不明でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/141
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142・岩間正男
○岩間正男君 大臣、どうでしょうか。いまの社会的に与えた影響から考えましても、それから持っておる裁判の大きな性格から考えても、国家賠償が要求された場合には、この遺族に対する措置を大臣は初めて踏み切られたわけですが、こういうものと比べてどういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/142
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143・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) 松川事件につきましては、裁判所が法律によりまして判断をいたし、最高限のものじゃないかと思いますが、現在におきましてはあれ以上やる方法が、国家賠償、で別に賠償する義務があるとなりますまでは、ほかに方法はないわけでございます。
それからただいまお示しの事例のようなものも、やはり法令の認めます範囲で、私どもはなるべく厚い方法をとりたいと考えました結果でございまして、ただいまのところのきまった法律の中の運用としましてはあれ以上はいたし方がない次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/143
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144・岩間正男
○岩間正男君 ちょっと先のことが聞きとれなかったんですが、国家賠償でやる方法がないとおっしゃるのです
か。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/144
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145・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) それは、訴えがありましたような場合に審査しなければいま何とも申し上げられないと
ころでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/145
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146・岩間正男
○岩間正男君 これは方法があるでしょう。先ほどの御答弁では、刑事補償法だけでは一半しか補償できない。当然全的な補償をしなければならないときには国家賠償と併用しなければならぬ、こういうことを先ほど言っておるんです。当然そうでなければつじつまが合わない。大臣と刑事局長の答弁は食い違っておるということになるのじゃないですか。この点ははっきりしておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/146
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147・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 大臣から申し上げましたことと私の申したことは決して矛盾するのじゃございませんで、もし松川関係の方々から国家賠償法に基づいてその手続に従って請求が出てくるということになりますれば、裁判所が裁判をするわけでございますが、この場合は、刑事補償法の場合と違いまして、それに携わりました公務員の故意または過失ということが立証されなければなりません。それからまた額の認定につきましても裁判所が判断をするわけでございます。その結果、すでに刑事補償法で受けておる額よりもさらに高い額が認定されるということになりますと、その差額を支給されるわけでございます。そういうことで解決するのでありまして、これは国家賠償法の手続に従ってやることでございまして、行政権の作用として当然にやる筋合いではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/147
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148・岩間正男
○岩間正男君 法的なたてまえは確かに違いがあるということになっているわけです、現行法では。それは現行法の不備かもしれぬという点については法改正の問題が当然起こってくると思う。問題の性質から私はいま大臣の見解をお聞きしているわけですが、お礼参りで殺された遺族に対してこういう補償がなされている。そうして同じく国家の行為、そういう結果起こったそういう被害について、一方のほうはあれだけ重大な問題でも等閑に付されるということになると、これは公平の観念からいってどうかという感じを持つんです。こういう点については、そういう要求があれば、これは裁判の問題ですけれども、法務大臣としてもこの問題についてどういう考えを持たれるのか。事の比重から考えてみても当然そういう要求が起こるのはあたりまえだというふうに考えますが、法務大臣、そういう要求についてはどうですか、支持されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/148
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149・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) 刑事補償法にきまっております金額がどうもいまの時勢にあって少ないということが、今回刑事補償法の金額の増額を御審議願いますおもな理由でございます。大体二倍強まで——二倍強になりましても金額は少ないのでございますが、増し方としては相当急テンポで増しているというのも、あまりいままでが少なかったということを考えました結果でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/149
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150・岩間正男
○岩間正男君 この問題は、内容それからワクの問題とかはこれはもっと詳細に論議しなくちゃならないのが、それはこの次の委員会でやることにして、きょうはとりあえずこれだけにしておきます。さっきの資料をいただいてからいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/150
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151・中山福藏
○委員長(中山福藏君) それでは、本案については一応この程度にいたしたいと思います。
ちょっと速記をやめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/151
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152・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 速記を起こして。
———————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/152
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153・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 次に、検察及び裁判の運営等に関する調査を議題とし、入国管理に関する件につき調査を行ないます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/153
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154・亀田得治
○亀田得治君 例の中国経済貿易展覧会が近く行なわれることに関連いたしまして、中国のほうから南漢宸の一行が訪日をされる、こういう段取りになっておるわけでありますが、日本への入国という問題につきまして、特にこの随員の一人である呉学文氏の入国につきまして相当紛糾しておるようでありまするので、この点につきまして特にお聞きをしたいと思います。
で、ぼつぼつ問題点は後ほど聞きますが、最初に、ひとつ当局のほうから、いままでの経過、どの点で一体問題がこじれておるか、そういう点について明らかにしてほしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/154
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155・富田正典
○政府委員(富田正典君) 南漢宸を団長とする訪日中国経済友好代表団の入国申請につきましては、三月の中旬でございましたか、非公式に事前に打診がございまして、三月の下旬に一応書類が出されてまいったわけでございます。一行のメンバーは、南漢宸を団長といたしまして、団長夫人、その他、秘書長でありますとか、団員でありますとか、随行記者——問題になっております呉学文、こういう方々を含めまして、通訳、秘書の方も含めまして、一行十二名の申請があったわけでございます。しかしながら、そのうちの一名の蕭向前氏はすでに入国しておりましたので、十一名が入国を許可するするかどうかという対象になったわけでございます。問題になりました呉学文氏は、昨年夏の原水禁大会の際におきましても、従来来日した際の言動が好ましくないということで一応入国を拒否しております。今回も、同様な理由によりまして、呉学文氏についてはこちらとしてはいろいろ問題がある、その他の方についてはいつでも入れる用意があるという態度で今日まで来ておりまして、昨日、呉学文氏を除く十名につきまして、外務省に、入国の渡航証明書を香港の総領事館で発給しても差しつかえございませんといって法務省としての返事を差し上げたわけでございます。
これが大体の経過でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/155
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156・亀田得治
○亀田得治君 問題点を後ほど聞きますが、その前に、今度一行十二名が来られるわけですが、その正式の名称ですね、並びに月内、その点はどういうふうになっておるでしょうか。それからさらにこの呉学文氏の肩書きですね、資格、これはどういう立場で今度は来るということになっておるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/156
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157・富田正典
○政府委員(富田正典君) 来日の目的は、約二カ月滞在いたしまして、東京、大阪、北九州市など各地を訪問して、民間経済貿易関係者と隔意なき意見を交換する、また、産業界の実情を視察して相互の理解を深めて、今後の日中経済関係の発展に資するということを目的としております。それから今回の中国見本市につきましても、そのセレモニーにも出席するということが入国の目的になっております。
呉学文氏の資格は、一行の随行記者ということでございまして、その肩書きは、中華全国新聞工作社協会国際連結部副部長、中国日本友好協会理事、新華社記者、こうなっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/157
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158・亀田得治
○亀田得治君 そこで、端的にお伺いしますが、呉学文氏だけに入国についての許可を渋られた理由ですね、これは具体的にはどういうことなんでしょうか、明らかにしてほしいわけであります。特に入国管理令第五条のどの条項によって、まあたぶん十四号だと思いますが、どういう立場で十四号の適用というものをされておるのか。抽象的じゃなしに、具体的にひとつ御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/158
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159・富田正典
○政府委員(富田正典君) 入国に関する一般基本的方針を先にまず説明したいと思います。
外国人の入国を許すかどうかということは、一国の自由裁量に属しておるところでございまして、国の利害という点をいろいろ考えまして通常の自由圏の場合にも処理しておるわけでございます。まして、未承認国に対しましては、政治体制も異なりますし、いろいろ対立政権もあることでございますから、内政外交上のいろいろな問題点を検討いたしまして入国の可否を決するというたてまえになっておるわけでございます。
そこで、入国の手続でございますが、一般的には有効なる旅券に査証を持って入ってこなければならないということになっております。そうして、この査証の発給の権限はこれは外務省の権限に属するわけでございまして、在外公館において日本渡航の申請があった場合に査証をやるかやらないかということをきめるわけでありますが、国交未承認国につきましては在外公館がございませんので、もよりの在外公館がございませんことと、それから未承認国のパスポートを正式に認めるというわけにはまいりませんので、もよりの日本国の在外公館に出頭してそこで査証にかわるべき渡航証明書というものを発給してもらう。それが査証にかわるわけでございます。
そこで、入管令の五条にいろいろ入国拒否事由を規定しておりますが、これは、有効なる旅券に有効なる査証を持って入ってきた者でも、羽田で、あるいは入国港において、こういう事由に該当する場合には拒否することができるという規定でございまして、の段階におきましては、国の利害という点から判断いたしまして好ましくないと思う者は査証の発給を拒否できるというたてまえになっておるわけでございます。したがいまして、本件の渡航証明書の発給問題は、その査証にかわる渡航証明書の発給という段階において、呉学文のかつての言動が日本の内政干渉にわたる言動があったということで入国を認めることは好ましくないというので、法務省に事前の協議の段階でいろいろ相談がありまして、協議の結果、渡航証明書の発給をしない、まあ査証を与えないということに相なったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/159
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160・亀田得治
○亀田得治君 ただいまの説明ですと、出入国管理令以前の問題として扱っているんだと、こういう意味でしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/160
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161・富田正典
○政府委員(富田正典君) 査証発給の可否という段階の問題に相なるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/161
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162・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、出入国管理令第五条というものを特に適用しておるわけじゃないという御説明でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/162
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163・富田正典
○政府委員(富田正典君) 理論的にはそういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/163
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164・亀田得治
○亀田得治君 査証の段階だから出入国管理令以前の問題だと。これは形式論としてそういうことは君えるかもしれませんが、しかし、査証を受けるということは、つまり、入国をしたい、または入国をさせましよょうということとこれは同じことなんですね、事実上は。形式的には査証のあとに出入国管理令の問題が出てくるかもしれませんけれども、何かこう形式論で出入国管理令の対象からはずして、したがって、こういう場合には日本政府がもう出入国管理令よりももっと広い立場で自由にやれるのだというような御見解のように聞くわけですが、こういうことはいままで私たちは実は聞かなかったわけです。たとえ国交未回復の国でありましても、出入国管理令というものが現にあるわけですから、やはり実質的には第五条というものを検討して、その精神に反しないようにということでやっておられるというふうに理解しておったわけですが、どうもちょっとその点の理解のしかたに食い違いがあるわけですが、そういう解釈は、今回の呉字文の問題が起こったことを契機にして新たにそういう態度をおとりになったのでしょうか。従来の法務者の考え方とは違うように私感ずるわけですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/164
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165・富田正典
○政府委員(富田正典君) 根底にはやはり外国人を入れるか入れないかは一国の自由裁量に属するのだという考え方がございまして、まず第一の段階で査証がそれを受けるという考え方は従来から法務省として統一した考え方でございます。そういう考え方に基づきまして、ソ連からの入国の方でも、あるいはその他の自由圏からの方でも、好ましくないということで断わっている例が相当ございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/165
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166・亀田得治
○亀田得治君 しかし、次長がいまお答えになったようなことは、従来ははっきりおっしゃっておらないわけなんです。現に今度の代表団の入国の問題にいたしましても、皆さんのほうでは書類を受け取って、そうして実質的には出入国管理令第五条の立場に立って検討されておるわけでしょう。その拒否をされたのは、やはり第五条によって、第五条をまっ正面からあるいは適用しておらぬかもしれませんが、第五条の立場に立ってやはり検討されたものと私たち考えているわけですが、そうでないんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/166
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167・富田正典
○政府委員(富田正典君) 第五号の十四号に「日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者」という規定がございますが、これにぴたりと当てはめなければならないとは考えておりませんが、根底にはやはり日本国の利益ということがあるわけでございます。しかしながら、十四号でやったというわけじゃもちろんないわけでございます。十四号というのは、わざわざ日本の港までおいでになった、そこでお帰りいただくという場合には、相当はっきりした根拠がないといけないという考え方でいろいろ書いてございますが、それ以前の査証申請の段階は、これにはとらわれないで、フリーに処理できるのだという考え方は従来からとっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/167
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168・亀田得治
○亀田得治君 しかし、今回は、香港で査証を出せば、そのままこちらにも入ってもらう、実質的にはそういう理解のもとにおいてみんながそれがいい悪いと、こう言っておるわけでしょう。その点は間違いないわけでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/168
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169・富田正典
○政府委員(富田正典君) 理論的には、渡航証明書が発給されましても、日本の港に来た場合に拒否するということがこの拒否事由に該当すればできるわけでございますが、実質的に審議を事前に遂げておるわけでございますから、香港で渡航証明書をもらって来た者は、羽田で審査して上げるという結果に相なるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/169
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170・亀田得治
○亀田得治君 そういたしますと、羽田でやるべき研究を実は事前にやっておるわけなんです。したがって、羽田の研究というのはこの出入国管理令五条であるわけですから、だから実際上変わらぬじゃないですか。出入国管理令第五条になかなか当たらぬおそれがあるのじゃないか、そういう心配が法務省側にあるものだから、それでいままで聞かなかったようなそういう形式論を展開されて、いや出入国管理令五条なんかの問題じゃないのだ、もっとその前の立場でやっているんだというふうに、何かことさらにこう説明をされておるように思うわけですね。そうなりませんかな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/170
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171・富田正典
○政府委員(富田正典君) 今回に限ってそういう解釈をしたわけではございませんで、査証というものは全くフリーに処置し得るんだという考え方は、これはもう従来からとっておるわけでございます。ただ、そういう説明をするような問題が起こらなかったということに相なるのかもわかりませんけれども、従来からそういう考え方はとっていたわけでございます。ただ、もちろん、たとえば鼻が曲っているから、目がちんばだから断わるという、そういうような査証のあり方はこれはまずいと思いますけれども、とにかく日本にお客さんとして来て日本の政府のことを誹謗したり友好国を著しく中傷誹謗したというような方を一体なぜ入れなければならないのかという議論もあると思いますし、そういうような場合には査証の段階でお断わりするというのがこれが査証の当然のあり方であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/171
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172・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、ただいまの説明からもわかりますように、日本の国への入国を認めるか認めぬか、結論的にその立場から前段階の査証の問題を扱っておる、これはそう理解していいわけですね、適、不適は別の問題だとして。どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/172
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173・富田正典
○政府委員(富田正典君) もちろん、査証の段階におきまして、日本国にこれを入国を許していいかどうかという判断が査証付与の段階におきましてあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/173
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174・亀田得治
○亀田得治君 そうなりますと、実質的には出入国管理令第五条の十四号というものの解釈の適用を実際はやっているわけじゃないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/174
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175・富田正典
○政府委員(富田正典君) それはそうではございませんので、十四号にぴたりと当たらない場合にも、査証の段階でもっと広い立場で考えて拒否することができると考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/175
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176・亀田得治
○亀田得治君 いや、今回は、査証を香港で与えること即入国というこれは結びついているわけです、実質的に。だから、今回はまっ正面から管理令五条の判断をやっている——やっているかどうかと聞かれますと、多少そこに問題があるかもしれませんが、実質的にはやはり管理令五条の十四号というものを問題にされてそう判断をされているわけじゃないでしょうか。そう聞きましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/176
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177・富田正典
○政府委員(富田正典君) 第五条十四号を背後において考えているかという御質問に対しましては、必ずしも十四号というものを背後において考えているわけではありません。たとえば、十四号の問題になりますけれども、五条の四号に「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、一年以上の懲役若しくは禁こに処せられたことのある者。」、これは入国拒否できるという規定がございますが、かりに懲役四月、六月の者であってもそういう者は日本に入れたくないということに相なりますれば、査証の段階で拒否できるわけでございます。はるばる日本の玄関までやって来た者については、こういうことで該当しない限り入国を許可するというたてまえになっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/177
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178・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、外国人の入国を許すかどうかということについては、何らの基準がなしに、政府として政府のそのときの考えで決定していいんだ、そういう議論になるように思うんですが、これはどうも国際交流が盛んになる今後の世界の傾向というものから見ると、はなはだ何か逆戻りをするような感じのように受けるわけでありますが、そういう考え方でしょうか、査証段階というものは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/178
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179・富田正典
○政府委員(富田正典君) もちろん恣意にわたるということがあってならないわけでありますが、抽象的に申し上げますと、良識によって処理する。その良識の根拠というものは、やはり国の利益と外国人の人権とのバランスということに相なるわけでございまして、それはそのときそのときのやはり国の内外の情勢というものに応じてそのバランスがいろいろと動いてくることになるのはやむを得ないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/179
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180・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、国の恣意によってやってはいけないという考え方だけはあるようですね。恣意によってやっちゃいかんということになれば、何か基準がなきゃいかんわけです、基準が。基準といえば、現行法上この管理令しかないわけでしょう。管理令に付属した各種の決定等はあるかもしれませんが、ともかく基本になるものは——先ほどたとえば第五条の四号について、これは刑事処分を受けた者で一年以上となっておるわけですが、たとえば六カ月の刑を受けた者はどうか。そういうものも、場合によっては、四号には該当しないが、取り上げてもいいんだというお話がありましたが、それは結局四号からくるわけじゃないわけでして、やはり第十四号に私はいくんだと思うんです。四号でこういうふうにちゃんときめてある以上は、その刑期の問題につきましては、一年よりももっと短い者についてはやはり入れてあげるんだと、こういうことが私は前提になっていると思うんです。たとえば六カ月といったような人は、これはもう入れてあげるたてまえですよ。しかし、その六カ月の場合であってもほかに特殊な事情があるというなら、それは十四号にいくわけなんです。そういうふうに解釈しなければ、この第五条で一号から十四号までこまかく書いてあることが意味がないことになっちまう。そうなりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/180
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181・富田正典
○政府委員(富田正典君) 先ほどからも申し上げましたように、これはあくまでも港の玄関口まで来たときの基準でございまして、それ以前の段階については、もちろんこういった考え方が基盤にはあるとは思いますけれども、必ずしもこれにぴたり乗ってこなくてもフリーに決し得るのでございます。十四号は、一号から十三号まででカバーし得ないものを規定しているわけでございまして、この解釈にあたりましても、たとえば一年以上の者を入れないという立場で規定してあります場合に、六カ月は十四号でやれるんだということは言えないのではないかと思います。六カ月の者を拒否する場合に十四号でやれるのかということになりますと、懲役一年以上に処せられた者と四号で規定してありますものをさらに十四号で緩和するということには参らないわけでございます。緩和と申しますか、片方では一年以上ということになっております。ところが、懲役六カ月に処せられた者が入って来て、それは四号でやれないが十四号で拒否できるのだということにはならないのじゃないかと思います。あくまでもやはり一年以上の者でなければ入国拒否はできない……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/181
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182・亀田得治
○亀田得治君 いや、違いますよ。あなたは先ほどたとえば四号というものを例にとられまして、一年以上の懲役の者は四号で排除できると書いてあるけれども、しかし、まあ一年以下のたとえば五カ月、六カ月の懲役を受けた前歴のある人でも国としては排除できるんだ、こういう説明をされたから、それはおかしいじゃないかと。一年以下の者は認めるんだ。逆に言えば、四号というものはそういうふうに言っているわけです。だから、そういう場合に、かってに五カ月でも六カ月でもやれるんだという解釈は、四号からは出てこないわけです。どうしたって。だから、それはやはり当然はいれるわけですから、なおかつはいれないという理由があるなら、十四号に持っていく以外にはないわけでしょう。そういうことを言っているわけです。そうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/182
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183・富田正典
○政府委員(富田正典君) ただいまの御質問の場合は、十四号でも拒否できないとわれわれは解しているわけでございます。一年以上というしぼりが四号で書いてあるわけでございますから、それを十四号でさらに引き下げて六カ月程度の者でも十四号で拒否できるんだということには相ならない。したがって、査証の段階で好ましくないという考え方で六カ月程度の者を拒否はできますけれども、羽田の港まで来た者を、お前は六カ月だ、十四号だといって断わるということはわれわれはできないと考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/183
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184・亀田得治
○亀田得治君 まあそういうふうにお考えになっているのを、特に狭く私からしてくれという必要はありません。しかし、そういうような解釈はちょっとおかしい点がありますよ。しかしそれは非常にこまかくなりますし、多少中心からはずれますから、この程度にして置きますが、そこで、いずれにしても、先ほどの説明を聞いておりましても、呉学文氏が前に来たときにどういう行動があったといったようなことがやはり根拠になっているわけです。それは条文を適用するしないは別として、結局十四号に書いてあることと一緒なんです。頭の中で考えておるその基準を条文として書いてみいといえば、やはり十四号みたいな書き方になる。前段階における基準というものを何か紙に書いてみいといえば、十四号のようなことになる。だから、そこでお聞きしたいのは、呉学文が一体どういう言動をいっされたという点を明らかにしなくちゃいけない。時期と中身ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/184
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185・富田正典
○政府委員(富田正典君) この問題につきましては十四号で考えておるわけではないということを何回も申し上げましたが、その点はもう一度申し上げておきます。したがいまして、彼の言動が十四号に当たるかどうかという判断で拒否したものではないわけでありまして、あくまで査証の段階における裁量権の行使という考え方で拒否しているわけでございます。
そこで、どういう言動がいつあったかという御質問でございますが、これにつきましては、彼が過去九回来日しておりますが、その際に、入国目的以外の活動をさせない、あるいは内政干渉の言動にわたるようなことはさせないというような、いろいろ誓約をスポンサーのほうがいたしております。それにもかかわりませず、いろいろ政治的な言動をしておりますし、池田政府のいろいろ誹謗をしておる。したがって誓約違反でもございますし、池田政府自体あるいは池田政府の政策というものをいろいろ誹謗し、干渉的な言動をしておる。もうこれだけのことがあれば、当然断わり得る。大体、日本にお客さんとして参りまして、一番最初申し上げましたように、中国との間の関係は、経済交流、貿易、その他国の経済的発展のために、あるいは純粋な文化交流であるとか、スポーツであるとか、そういう面だけについて特に入国を日本国の利益になるというたてまえで認めておるわけでございますが、その他の面では未承認国でもございますし、政治的な言動にわたるような場合には認めないという方針をとっているわけでありまして、したがいまして、その方針に基づいて、本人がこれはいろいろ誓約いたしませんので、関係団体に誓約させておりますが、それがどうも実行されておらない。そしていろいろ先ほど申し上げましたような言動がある。もうこれだけで入国をお断わりする理由は十分であろうと考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/185
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186・亀田得治
○亀田得治君 具体的にどういう言動がいつあったかということは明らかにされないわけですが、政治家の言動というものは、これは相当どこでも自由にやられるわけですよ、たとえ立場が違っておりましても。しかし、立場の違っておるほうは違っておるなりに、あの人はああいう立場だからというふうにやはり解釈をしていくわけなんです。だから、そんなことを言うたら、われわれにしたって、外国へ行った場合に、一々そこの総理大臣なり政府の考え方というものを頭に入れてかからなければ歩けぬということになる。それは昔の考えです、そういうのは。ことにあなた、政治信条というものを一つの使命として活動をしているような人がざっくばらんにしゃべったことを一一取り上げておること自身にちょっと問題があるんじゃないかと私は思うのです。それは日本でそういう言動のあるなしにかかわらず、ほかでもおやりになっているわけでしょうし、同じことなんです。だから、国際間の交流というものが今後激しくなれば、もっと激しくなるでしょうが、そういうことはあまりみんなが気にしなくなりますよ。気にしなくなる。したがって、当然出入国管理令の解釈にしても、あるいは前段階における政府の判断のしかたにしても、もう少しおおらかなところがあっていいんじゃないかと私たちこれは思っているんですよ。これは自分らがまたその逆の立場に当面するもんですから、実はそう考えておるわけなんです。
そういうふうにこうじっと見ますと、たとえば管理令の条文を見ても、第五条の第四号、先ほどから問題になった一年以上の刑を受けた者は上陸をとめれるとなっておるが、「但し、政治犯罪により刑に処せられた者は、」そういうことはしない、別個だと、ちゃんと書いてあるわけですね。やはりそういうところに一つの精神というものは出ているわけなんですよ。あるいはまた第五条の九号ですか、これらを拝見しましても、以前に入国を拒否されるような問題があったとしても、それから一年経過しておれば特にやかましく言わないと、こういうことも書いてあるわけですね。だから、政治家の言動、しかもそれが相当時間がたっておる、そういう問題をいつまでもこだわって何かこうやっておることは、管理令の精神からいっても、あるいはその前段階における政府の取り扱いの方針としても研究の余地があるのじゃないか。これは私たちどの国がそういうことをおやりになっても文句を言いたいところですね。そういう立場から考えますと、どうも少し過去の言動にとらわれ過ぎておるという感じがいたすわけですが、私のそういう基本的な考えというものは、一体間違いでしょうか、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/186
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187・富田正典
○政府委員(富田正典君) 内外の情勢の推移に応じましてきわめておおらかに考えられる時が来ればまた別問題でございますが、やはりいろいろ日本の現在の段階におきまして問題にせざるを得ない状況にあると、ただいま仰せの点につきましては、将来の問題といたしましてわれわれ事務屋といたしましても十分念頭に置いて考慮してまいりたいとは存じますが、現在の段階においてはやむを得ない措置であろうと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/187
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188・亀田得治
○亀田得治君 それはなかなかあなたのほうでは説明しにくいのだろうがね。それはあなた何か犯罪行為があったとかなんとかいうなら別ですが、しゃべったことが——犯罪の場合だって一定期間経過したらそんなことは問わないんだと、こういうふうな管理令等の精神等もちゃんとにじみ出ているわけですよ。政治家というものは、これはしゃべるのが商売なんです、大体。そして、実際の被害ということも少し考え過ぎておると思うんですよ。聞くほうはみんなそれなりにやはり考えて聞くわけですから。私はほんとうはうわさなり情報を聞きますよ。だから、政府のほうでいつ幾日のどこのしゃべったどの文句をどういうふうに理解しておるからこれがいかんのじゃということを実は明示してほしいわけなんです。しかし、どうもそこまでやりましても、あまりこう何といいますか、それこそもう少しこちらとしても何とか研究してほしいと思っておるところじゃから、そこまではしいて言いませんが、私がいま言うたような感覚でそれらの文革をもう一ぺんあなたは見直してもらったら、それほどのことはありはせぬ。それは岩間君や共産党の諸君はもっともっと強いことを言うておるかもしれません。それはしょっちゅう言うておる。そんなことをなにしておったら、私は世界的に笑いものになると思います。
一応この程度にしておきますが、富田さん、いろいろ聞きますと、事務的な相当進んだ段階に行っているようにも聞いておるわけですが、法務委員会におけるこういう論議というものを素材にしてもらってもう一度検討してほしい。一部伝えられるように、もしこういうことが機縁になって、じゃもう訪日代表団は行かない、したがって、もう経済貿易展覧会も中止だ、そんなことになったら一体どうなるか。これは池田総理が貿易関係等は大いに前向きにやってもらうのだと言われるようなことから見ても、結果は逆になりますよ。そうして、世界的なそれに対する批判というものは、どうも日本政府の言っていることは、少し議論がこまか過ぎる——二、三日前にどこそこでこういうことを言うたということなら、それはまた別です。だから、そういう点等、もう少し大きな立場から検討してほしいと思っているんです。いやもうこれは上まで行ったからあかんというのじゃなしに、大臣がいたんじゃあなたも答えにくいだろうと思って、実はちょっとよけてもらったわけですが、富田さんはわりあい良識のあるほうですから、そういう立場でぜひこれは検討してほしい。その点だけ希望しておきます。
これで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/188
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189・富田正典
○政府委員(富田正典君) 当委員会における亀田先生の御質問の趣旨をもちろん私一存でいろいろとやかく申し上げる筋合いじゃございませんので、一応上司に報告をいたしますことをお約束したいと思います。ただ、中国も大国でございますから、こういった問題にこだわらずに、ひとつ大きな立場で考えていただきたいということはこちらもお願いする次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/189
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190・岩間正男
○岩間正男君 いま、これは事務屋としても将来の問題としてはいろいろ考える、こういうお話です。これは今度の問題で実は考えてもらいたいと思うんですが、その考えというのは、むろん法の運用については、富田さんはよく世論を聞いたり、国民の動向を判断したり、そういう情勢の上でやはり賢明な処置をとってこられたと思うんです。
そういう点から私は二、三の問題を聞きたいのだが、とにかく今度の見本市、これは去年行なわれた中国側の見本市、このときは日本から自民党から共産党までの議員連盟の人が行きました。自民党の諸君の中では、この中でずいぶん中国の批判をやっている人もあるわけです。だから、向こうは、いま大国という話はあったけれども、向こうはよほど寛大ですよ。日本で呉学文氏の問題を問題にするというのは、一年前のそういうような問題をいままたここでやっているのだが、私ここでお聞きしたいのだが、今度は、なんでしょう、向こうを呼んだような形になっているのでしょう、民間で。政府でも呼んでいるのじゃないのですから、民間で向こうを呼んでいるんでしょう、お客さんとして。そうでしょう、その点はどうです、あなたの判断は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/190
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191・富田正典
○政府委員(富田正典君) これは、石橋会長、宿谷理事長らの方々が連名してお呼びしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/191
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192・岩間正男
○岩間正男君 そうしたら、呼んでおいて、向こうで最も適当な人だといって十二人の代表を南漢宸氏を団長として構成したのでしょう。それに一体一一あれがいいとかこれがいいとかそういうことにけちをつけるというのは、国際的な慣行としてどういうことですか。どうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/192
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193・富田正典
○政府委員(富田正典君) 政府がお呼びしたお客さんなら、そういうことも申されるかわかりませんが、一応民間の団体の方がいろいろお呼びしたその者の入国に当たりましては、一人一人いろいろ検討するということも、これはわれわれの仕事ではないかと考えております。また、昨年の原水禁の大会のときに呉学文氏は一応拒否されたわけでございますから、もしそのことを中国の側でも念頭に置いていただくならば、やはり今回も難色を示しているということで、それじゃ先にすでに新聞記者の方も入っていることだし、また別な方にしようというような大きな考え方で処理していただいても私はけっこうではないかと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/193
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194・岩間正男
○岩間正男君 そういうことをあなた言い出してはまずいと思うんですよ。大体去年拒否されたそのことに根本的な問題があるのであって、あのときは世界原水禁の代表として来たわけです。そうして、これは平和の立場で主張したりいろいろな言説をなすのは当然ですよ。むしろ積極的な意味でこれは意味を持っているわけだ。今度はしかし見本市の代表ですよ。そうしてしかも日本の政府は呼んでいない。なるほど形はそうなっている。しかし、池田内閣の方針からいったらどうですか。政経分離の立場をとっている。政府間の協定はいまだにできない、しかし貿易は拡大するという方向をとっているわけでしょう。したがって、いま形の上では政府が呼ぶことはできないけれども、まあいわば政府と相当深い関係にある前首相の石橋湛山氏がこれを呼んでいる。いわばこれは国民の総意に近いものです。単にこれは石橋氏が呼んでいるだけじゃない。これは実業界の中には相当の大きなところも参加しているじゃないですか。もう八幡製鉄をはじめみんなこれなんです。そうしていまこれの歓迎代表者会をほとんど超党派的につくっている。国民的なまさに一大運動として展開されているのはよく御承知だと思うのです。そうでしょう。そういう中で、呉学文氏を向こうで検討して必要であり、そうしてそういう見本市の代表としての任務を果たすために向こうでそういう構成人員にメンバーとして加えているんです。それに対してどうですか。日本の政府がそれに何だかんだという茶茶を入れるような形で、しかもこれはほんとうに一体はたして政府の意向かどうかわからない。たまたまある一閣僚が相当それに対して固執した、そういう考えを持っている、そういうことで実際は入管のあなたなんか相当迷惑をこうむっているのが実情じゃないかというように、これはうがった言い方かもしらぬが、そういうところに追い落とされているんですよ。
そうすると、私はやっぱりこの法の適用というやつは、現実に国民の世論の上に立って、しかも日本の政治はいまどこを指向しているか、そういう点から考えましても、どこから見ても、このようなことで、そうして南氏をはじめとする代表団が入国ができない、十日からの見本市がやれない、こういう事態が起こった場合には、これは一切あなたたち責任を負わなきゃならないということになるんです。この結果は非常に私はたいへんなことになると思う。国際的に見てもぐあいが悪い。そうしてこのことは、単に見本市だけの問題を言われるものでなくして、アジアの平和に一つのうまくないそういう影響を与えるということは明白だと思います力そういう点から、富田さんが、将来の問題として検討する、今度は何とかなるんだと、そういうことでなくして、事務局として大臣を補佐するという立場から考えても、私は当然条理を尽くしてこれに対して、当面する民族的な一つの大きな国民的な要望なんですから、これにこたえていくという方向をとられるのは私は当然だし、また冨田さんらしいと思うのですが、かつてやってきたんですから、あなたの決意はわかっているつもりだし、ここでなにするつもりはないけれども、そういうようにこれは行かれるのが当然だと思いますが、管理令に対する解釈そのものを非常に過去に引き戻して、うしろ向きの方向で、そうして上のほうにそういう決定をしそうだ、そういう者がいるのでそこのところで歩調を合わせなければならないということでは、この前のときとだいぶ違う。今度は前向きの方向に行くのが国民の要望だと思うんです。それが当然だと思うんですが、どうでしょう。いかがでしょう。自民党でもみな望んでいるのですから、見本市の問題をここであなたぶっこわして、そうして長崎の国旗掲揚事件の二の舞のようなところに追い込むということは愚かなことですよ。どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/194
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195・富田正典
○政府委員(富田正典君) 本件とは関係ございませんが、周鴻慶事件のときにも、法務省として法律を守る者としての筋を通したわけでございます。本件の場合におきましても、日本にお客さんとして来ていろいろ日本政府の誹謗をしたというような者はやはりこれをお断わりするという筋を通さなければならない。その点については、いろいろ亀田先生、岩間先生からも御意見がございまして、結局、考え方というものの違いと申しますか、立っている場所が若干違うために今回のようなケースとなったわけでございますが、いろいろお申し出の趣旨をひとつ上司にも十分御報告したいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/195
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196・岩間正男
○岩間正男君 とにかくこれは管理令に直接よるのじゃなくして、その前に外国人の入国については自由裁量のそういう権利があると、こういうことに立ってこれはやられていると思うんです。その説明によるわけなんですがね。そうすると、いわゆる自由裁量の基礎、これを判断する基礎材料を私たちはいま提供したつもりなんですよ。そういう立場に立ってやっていけば、何も管理令そのものとはまっこうから対決するわけじゃない。あなたは筋を通すということを言われているけれども、一年たたねば絶対にいけないということではないでしょう。あれから何ヶ月たちますか。二カ月くらいで一年になる。向こうがあれだけ寛大で、そしてちゃんと見通しを持っている。この中国の国際貿易促進委員会、南漢宸氏がわざわざそういう場合問題を起こすために呉学文氏を入れたとか、そういうふうに解釈すべきじゃないと思う。そうじゃなくて、だいじ上うぶだと、そして今度は見本市のそういう任務をやるそのために来るのはだいじょうぶだと。それを何とか誓約を入れなければならないとかなんとかいうみみっちいことをやっていたのでは、向こうの代表団としては、いわばこれは国民から呼ばれておって民間という名前ですけれども、国をあげているようなかっこうでこれは期待を持たれて呼ばれている。そうしてそのメンバーについて一々けちをつけられるということでは、国際的な常識として、疑いをはさんでいるというような結果になりますよ、考えてみれば。そうでしょう。だから、筋というけれども、筋にもいろいろ筋がある。全く食えないようなごちごちの、牛肉にしたらほんとうに問題にならないような、こういうような筋じゃなくして、もっとほんとうに前向きの筋を立てるという、そういうところで大きく努力してもらいたいと思います。私の質問は終わりますけれども、それでいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/196
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197・中山福藏
○委員長(中山福藏君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/197
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198・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 速記を起こして。
それでは、一応この程度にとどめまして、本日はこれをもって散会します。
午後一時十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X01619640402/198
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