1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年四月二十三日(木曜日)
午前十時二十九分開会
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委員の異動
四月二十二日
辞任 補欠選任
鈴木 一司君 重政 庸徳君
坪山 徳弥君 古池 信三君
四月二十三日
辞任 補欠選任
宮澤 喜一君 丸茂 重貞君
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出席者は左のとおり。
委員長 中山 福藏君
理 事 後藤 義隆君
迫水 久常君
稲葉 誠一君
和泉 覚君
委 員
大谷 贇雄君
鈴木 万平君
田中 啓一君
高橋 衞君
丸茂 重貞君
亀田 得治君
大和 与一君
岩間 正男君
国務大臣
法 務 大 臣 賀屋 興宣君
政府委員
法務省刑事局長 竹内 壽平君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
説明員
法務省刑事局参
事官 伊藤 栄樹君
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本日の会議に付した案件
○刑事補償法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
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001・中山福藏
○委員長(中山福藏君) これより法務委員会を開会いたします。
この際、委員の異動について御報告いたします。
本日、宮沢喜一君が辞任をせられ、その補欠として丸茂重貞君が選任されました。
——————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/1
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002・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 刑事補償法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/2
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003・稲葉誠一
○稲葉誠一君 被疑者の補償の規程というかやり方ですね、これは訓令でやっているわけですが、どういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/3
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004・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 刑事補償につきましては、憲法の要請もございまして法律で定めることを要件としておるわけでございますけれども、被疑者補償につきましては、法律をもって定めるまでのことがないというのが消極的な理由でございます。それから検察官の不起訴の処分の内容等に関連いたします関係もございまして法務大臣の訓令で一応定めております。ただ、事柄の性質上、官報に登載して国民に周知させるという措置はとっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/4
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005・稲葉誠一
○稲葉誠一君 法律できめなかった理由というのがちょっとはっきりしないんですが、当然法律でやるべきじゃないですか。憲法四十条の関係からいえばちょっと憲法四十条には含まれないとしても、当然法律できめるのが普通じゃないですか。そうすると、あれですか、請求する人は、法律上の権利として請求しているわけじゃないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/5
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006・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 仰せのとおりでございまして、被疑者補償の関係につきましては、捜査の結果犯罪の嫌疑が全くないとされました者につきまして被疑者補償を請求する権利を設定する関係ではございません関係でございますために、必ずしも法律を要しない、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/6
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007・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、その場合に、被疑者補償規程に当たる場合は、国はその人に対していわゆる恩恵を与える、こういう考え方ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/7
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008・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/8
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009・稲葉誠一
○稲葉誠一君 しかし、その場合でも、国家機関が故意過失によって個人の権利を侵害した。だからこそ金を与えるわけでしょう。それを、だから恩恵だとか慈恵だという考え方はおかしいんじゃないですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/9
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010・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 関係の捜査官が故意過失によってそのような結果を生じた場合には、国家賠償法によるわけでございまして、これは刑事補償と性格が同じな故意過失の認められない場合であります。そのときに、刑事補償についてははっきりしたのがありますが、捜査の段階で結局不起訴になりました場合に身柄が拘束されたという場合には、従来この部分の補償が欠けておったわけなんです。その点をいまの法律でやるのには必ずしも適しないかもしれませんが、現状をよく見て均衡をとって考えた場合には、やはりこれに対して、性質は恩恵的みたいになりますけれども、補償していくという考え方をやはり確立していったほうがいいということで、先般、被疑者につきましても補償規程を大臣訓令で出しまして、まあ実質は同じにしております。刑事補償と同じような扱いにしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/10
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011・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それは、やはり補償ということばを使うわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/11
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012・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 規程の名前にも被疑者補償規程とございまして、やはり補償という考え方ははっきりさせております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/12
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013・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、補償というのは、元来補償を受ける側からいえばそれを受ける権利がある、出すほうからいえばそれを出す義務があるということじゃないんですか、補償ということばの使い方からいって、それはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/13
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014・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) それは必ずしも補償ということば自身の中に権利義務関係は私はないと思うのでございます。現に、この間稲葉委員の御請求によりまして差し上げました外国の立法例を見ましても、刑事補償そのものを権利義務という観点から規定しないで、被疑者補償規程と同じように国家の恩恵という形で補償しておるものもあるわけでございます。これは補償ということばから当然権利義務、こういうふうに観念しなければならぬ性質のものじゃないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/14
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015・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、被疑者の補償の場合には、故意・適失を含む場合と含まない場合と両方が競合している、こういう意味ですか、あるいは、故意・過失を含む場合は国家賠償なりでそれは除外されるんだ、こういうことになるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/15
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016・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 故意・過失を含みます場合は国家賠償で参りますが、補償の性格は同じでございます。国が補償をするという考え方におきましては性格は同じでございますから、両者ダブってやはり考えていいと思います。したがって、国家賠償が先に来る場合がありましょうし、場合によりましては被疑者補償規程のほうで先に受け得る場合が−むしろ逆にこの被疑者補償規程のほうで先にもらう場合が多いと思いますが、補償を受けました者が故意・過失を理由にして国家賠償を請求しました場合は、また国家賠償としての評価を受けるわけでございます。その結果金額において差があれば、刑事補償について申し上げたと同じような取り扱いで処理されると、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/16
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017・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、被疑者の補償を請求してそれが当たらないということで却下された場合ですね、それを請求するのは法律上の権利じゃないのだからということで、それに対する不服の申し立て方法とかあるいは裁判の方法とか、こういうのはないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/17
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018・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これはまあ権利でないという結果から来る取り扱いだと思いますが、そういう手続はきめておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/18
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019・稲葉誠一
○稲葉誠一君 まあそこの辺が非常に問題のあるところだと思うんですが、そうすると、被疑者の補償は、外国の立法例などでも、ほとんどあれですか、いわば権利という形でなくきめられているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/19
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020・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 外国の細かいことは私どもにもわかりませんが、西ドイツではやはり被疑者補償規程がございまして、これは政府の訓令でやっておるわけでございます。こういうものを設けていない国のほうがむしろ多いんじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/20
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021・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、いまのことにも関連するんですが、刑事補償の場合は、あれですか、国が憲法四十条に従って払う義務があるという場合は、これは国家機関が適法な行為をやった場合でもその支払いの責任があるという考え方なんですか、故意・過失の場合も含まれるということなんですか、あるいは、無過失の場合も含まれるのだけれども、基本的には違法な行為をやったから払うというのか、いや違法な行為ではないんだ、適法な行為であるけれどもその場合に義務が発生するんだと、こういう考え方なんですか。ちょっとごたごたしていますけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/21
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022・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 刑事補償の場合は、それに従事しました公務員が故意または過失がない場合、そうしてその行為自体は適法な行為である——そういう場合でございましても、事柄の性質上無罪になる場合があるわけでございます。そういうものに対して補償をしていく、これが国の義務であるというのが憲法の私は趣旨だと思うのです。その憲法の趣旨を踏んまえまして法律でこれを国の義務として規定したものである、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/22
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023・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、国家機関の適法な行為であっても無罪になって確定する場合がまああり得るという考え方ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/23
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024・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/24
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025・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それはどういうとこから出てくるんでしょうか。一応無罪になってそれが確定すれば、検察官の起訴が不適当だったと、そこに少なくとも故意は別としても、起訴すべからざるものを起訴したのだというふうな形で何らかの過失があるんだというふうに通常の場合は考えられるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/25
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026・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 私は、原則としてそういうふうに推測されるというふうには理解いたしません。そういう場合もございましょう。しかしながら、法律の命じておりますたとえば逮捕の要件を見ましても、「疑うに足りる相当な理由」ということで逮捕ができるわけでございまして、また、勾留の理由を見ましても、絶対勾留理由というものじゃなくて、相対的な勾留理由になっております。そこで、これらの手続を遂行していった場合に、その捜査はだんだん発展していくわけでございますから、後になって無罪が証明されるということもあるわけであります。その場合に取り扱いの妥当とか適正であるということの当否は私は問題はあると思うのです。適正でなかった、妥当を欠いたということが過失になる場合もございましょうし、また、過失と認め得ないのもある。したがいまして、すべて無罪になった場合には過失が通常考えられるのだというのは少し行き過ぎであって、そういう場合もあるかもしれない。そういう場合にはむしろ国家補償の問題になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/26
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027・稲葉誠一
○稲葉誠一君 起訴の場合の疑いというか証拠の収集程度と、判決を下す場合の証拠の収集程度というか判断というか証拠のいわゆる濃度といいますか、そういうようなものとは違うという見解をとるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/27
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028・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 濃度が違うというのではなくて、これは運用の実情が慣行も含めましてその程度は世界各国ともそれぞれ違うと思います。日本の場合は、われわれが法律家という立場で見てこれは有罪と確信できる程度の証拠を集めてはじめて起訴の手継をとるというようなことに運用してまいっております。こういう運用がいいかどうかということは一つ問題がございまして、一応の嫌疑があれば起訴をしてそして裁判によってその点を明らかにするというほうが一そう公明であるという考え方もございます。いまの現行刑事訴訟法は、私から申し上げるまでもなく、起訴されました者も無罪と推定されておるわけでございまして、そういう考え方を突き詰めていきますと、もっと起訴の範囲を広めていって、無罪率は多くなってもそういうふうに一応の嫌疑があるならば起訴したほうがいいという意見も検察権の運用としてはあると思うのでございます。しかし、日本の検察は、まあ長い伝統の間にさような扱いはしませんで、やはり刑事政策的な考慮をして、かりに有罪と確信いたしましてもなおかつ起訴猶予にするという道を開いておりすし、したがいまして、起訴します者については起訴すべき実賀的な理由があることと、さらにその証拠は有罪を確信するに足る証拠がある、こういう場合に起訴しておるわけでございますから、その点は無罪率の点においても諸外国と比較にならぬほど無罪率は少なくなっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/28
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029・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、無罪が確定した場合に、それに基づいて国家賠償を請求するわけでしょう。国家賠償を請求するときに、無罪の判決が確定したんだから、少なくとも過失は一応国家機関の側にあったんだという推定で立証責任が転換をするんだと、こういう考え方をとっていいんじゃないですか。そこまでは考えていないわけですか。これはまあ法務省に聞いてもあるいは無理なことかもしれませんがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/29
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030・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) それは無理ではございませんで、実例はたくさんあるわけでございますが、そのような場合は検事側に過失が推定されるというようなことはないのでございまして、過失があったということは請求側で立証しなければならない。現実にそいういうふうに行政訴訟におきましては運用されております。現に幾人かの検事が国家賠償の請求を受けて、民事訴訟の被告にされたことがございますが、いずれも取り扱いはそういうふうになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/30
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031・稲葉誠一
○稲葉誠一君 国家賠償を請求されてそしていままで国が敗訴になって支払ったというものは相当あるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/31
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032・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 正確なことはちょっとわかりませんが、私の記憶でも一、二件あります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/32
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033・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それは刑事補償と競合して支払っておるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/33
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034・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) それは刑事補償と競合してではなくて、いきなり国家賠償の請求を受けまして、訴訟の結果、検事のほうが敗訴になりまして支払いを命ぜられたケースでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/34
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035・稲葉誠一
○稲葉誠一君 検事が敗訴になったというのは、検事自身が何か訴訟参加か何かしたんでしょうか。検事自身が訴えられたとか当事者になったわけじゃないんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/35
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036・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) この訴訟は、国が支払う当事者でございますので、検事の行為につきまして国が支払うわけですから、被告は国でございまして、検事はそういう証人に呼ばれたことはございますけれども、訴訟参加というような形で当事者の中へ入り込んでいった例はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/36
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037・稲葉誠一
○稲葉誠一君 ちょっと刑事補償から離れるかもわかりませんが、その場合は共同不法行為になるのじゃないですか。そういう考え方でやっておるのじゃないですか。検事なり警察官の行為は国家機関の中へ吸収されちゃって、国の不法行為の責任で、検事なり警察官自身の不法行為の責任というものは発生しないという考え方をとっているんですか。共同不法行為じゃないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/37
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038・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 国家賠償による場合は、これは公務員の行為について国なり地方公共団体が補償の責めに任ずるわけでございますから、いまおっしゃるとおり当事者ではございません。しかし、個人何某という者について民事訴訟上の請求権がその場合に否定されるかということにつきましては、これは学説としては二色の考え方があろうかと思いますが、実例はございませんけれども、理論としては私は否定をし去るべきものではないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/38
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039・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そこで、今度の刑事補償のほうの金額算定の場合に、証人の費用というか日当ですか、あれと比較していますね。正式に比較しておるのか、参考にしておるのか、はっきり知りませんけれども、証人の日当と刑事補償の金額とどういう関係があるんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/39
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040・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これはまあ刑事補償の補償金の額の基準をどう定めるかという根本的な考え方から申しますと、いまの経済事情とか証人の日当とか申しますのは、やはり参考にする一つの要素だとは思うのでございますが、それはあくまで一つの要素であるのでございまして、むしろそれよりも公平の観念という立場から、国民の負担においてする補償ということ、そういう立場から見て相当かどうかというような点、あるいは補償の内容に照らしてみて相当かどうか、それから現実の補償運営の実情というようなものも考慮をされなければなりませんので、こういうものをもきめます場合の一つの要素、こういうふうにして、私は理屈としてはそういう理論で金額をはじき出すべきものでございましょうと思うのでございますが、何さまそういうふうな気持ちを金額であらわすということになりますと、やっぱりよるべきところは物価とかそういうものに還元をせざるを得ないので、たとえば証人の日当のごときものも、これもやはり経済事情を反映してそういったような金額がはじき出されておるので、それをまた分解してまいりますと、結局経済事情というようなところに分析されればなってくるのじゃないかということで、前の現行法ができますときもそういうような点を考慮にしてはじき出したというふうに私ども承知しております。
そこで、そうだといたしますれば、今回二倍程度の物価の上昇といったようなものを考慮して考えていきました場合に、四百円から八百円というような数字が出てくると思うのでございますけれども、さらにこれは経済事情を反映した証人の日当ではありますが、日当の現実はどうなっているかというと、千円ということになっておりますので、上のほうを二百円上げまして千円ということにしたわけでございまして、理屈で詰めていきますとちょっとわかりにくいのですけれども、まあ社会通念といいますか、そこら辺を考えてみますと、やはりこの辺が相当ではなかろうかというふうに思っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/40
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041・稲葉誠一
○稲葉誠一君 「参考資料」の第七表に「証人等の日当沿革一覧表」というのがあるんですが、そこで、証人は、昭和二十七年六月に法律二百十一号で百八十一円以内だったわけですね。このときは、あれですか、刑事補償は幾らだったんですか。二百円——四百円でしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/41
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042・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 二十七年当時は、刑事補償は二百円——四百円ということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/42
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043・稲葉誠一
○稲葉誠一君 昭和三十七年三月の法律四十一号で証人は千円以内になったんですね。そうすると、この間で約五倍上がっているんじゃないですか。それと正比例するわけじゃないんですが、比例すると、こういう刑事補償の金額についてはもっと上がらなければいけない、千円から二千円にならなければおかしいんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/43
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044・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 先ほど申しましたように、証人の日当はやはり経済事情を反映してこしらえたと思うのでございますが、結局、物価だけでもって証人の日当の適正かどうかということはなかなか判断しがたい。人によりまして非常に個人差がございます。千円ももらえばけっこう日当になるというふうに思う方もありましようし、これは個人差を考えますと、当不当は幾らでも議論ができるわけでございますけれども、一応ここに表に書きましたように、大正十年以来の動き方を見てみますと、やはり物価を考え、さらに個人差というようなものも勘案しましてこういう金額が出されたと思うのでございまして、つまり物価をスライドしてこういう金額を出したというのじゃないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/44
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045・稲葉誠一
○稲葉誠一君 昭和三十七年三月に証人の日当を千円以内にしたときは、竹内さんはやはり刑事局長でこれを提案したわけじゃないんですか。そのときはどういう説明をされたんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/45
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046・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) この法律は私のほうの所管ではございませんので、うちのほうとしましては司法法制調査部のほうでやったと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/46
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047・稲葉誠一
○稲葉誠一君 刑事裁判で証人が出頭するのは、これは法律上の義務じゃないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/47
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048・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) それはまあ仰せのとおりだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/48
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049・稲葉誠一
○稲葉誠一君 証人は義務として当然出頭しなければならないわけです。それで出頭するわけですね。その場合にもらう日当と、国家機関の故意・過失を含む行為によって個人の権利が非常に勾留されて侵害された場合の補償とが、同じというより、むしろ二十七年と三十七年と比べたということをそのまま正比例さしていけば低いということは、非常におかしいのではないんですか。片方は義務で出て行くんでしょう。そしてこれだけもらえるのに、勾留されて非常に苦痛を受けて、それと同じくらい、あるいはそれ以下しかもらえないということは、非常におかしいんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/49
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050・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) そういう議論もあるかもしれませんけれども、私どもの考えておるのは、これは一つの参考資料でございまして、証人の日当と申しますのは、二倍程度にしますと四百円——八百円になるわけです、そこのところを二百円だけ上のほうを上げましたものの参考資料として証人の日当をにらんでみた、こういうふうに私どもは考えておるわけで、証人の日当と対比しながらこれを考えるというのではなくて、この刑事補償の額をきめますのは、先ほど申したように、物価は一つの要素でございますが、それ以上に国民が負担してそういうものに補償する場合の公平の観念からきた国民の考え方、これを基礎にして私は考えるべき性質のものだと思っております。これはなかなか理屈でもってぴったりと出てこないのでございますが、以上のような考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/50
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051・稲葉誠一
○稲葉誠一君 無罪の人員の表がここに第八表、第九表にあるんですが、その第八表と第九表の関係がよくわからないのですがね。たとえば三十六年に三百八十人と書いてあるものが、下にいくと五百十五になるわけですね。第八表と第九表はどんな関係になるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/51
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052・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 第八表のほうは、無罪が確定した人員でございます。第九表のほうは、一応終局裁判があったという人員で、確定人員ではございませんので、若干ズレが出ているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/52
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053・稲葉誠一
○稲葉誠一君 終局裁判とはどういう意味ですか。第一審、第二審みんな入れてですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/53
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054・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 一応最終的な裁判があったという意味でございます。一審だけには限りません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/54
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055・稲葉誠一
○稲葉誠一君 最終的裁判があったのは、三十六年五百十五人ならば、無罪確定人員が三百八十人とすると、少し違い過ぎるのではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/55
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056・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) こういう場合もあるわけでございます。一審で無罪、それから二審で破棄差し戻しで、また一審で無罪というふうになる場合もございまして、終局言い渡し人員というのは常に確定人員より多くなっております。ダブって計算されるという関係があるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/56
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057・稲葉誠一
○稲葉誠一君 終局というのがはっきりしないんですが、終局言い渡しというのはどういうことを言うんですか。その言い渡しによって確定したということを言っているのではないんですか。そういう意味ではないですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/57
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058・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 統計をつくりますときの用語によりましてただここに終局ということばを使っておりますが、これは最終局という意味ではなくて、一審で無罪になったのも無罪のその中に勘定しております。それが控訴をいたしまして、いま伊藤参事官から申し述べましたように、またこれが変動することがあり得るのです。そしてこれが有罪になれば減っていきますし、無罪になれば二重に無罪の者が出てくるのです。そういうものを寄せ集めた数字が第九表でございます。さらに、最後に一人一人について無罪が確定したという数字がはっきりしましたのが第八表に書いてある数字と、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/58
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059・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それから第十表で、「無罪確定人員」とそれから「補償請求人員」やなんかありまして、一番最後のところで「請求棄却等人員」というのがあるわけですね。これはどういうふうな理由で請求棄却になったんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/59
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060・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) これは、刑事補償法の十五条に基づきまして、補償請求の手続が法令上の方式に違反しておったような場合、それから補償請求が三年以上経過しまして申し立てられたような場合、こういう場合に請求却下ということになりますが、そういものも含んでいるわけでございまうす。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/60
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061・稲葉誠一
○稲葉誠一君 この前のところの「刑の執行による補償」で懲役刑のものがあるわけですが、これは再審によってのものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/61
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062・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 当然そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/62
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063・稲葉誠一
○稲葉誠一君 第十一表を見ますと、「刑の執行による補償」のところで日数の欄を見ると、これはちょっと古いですけれども、たとえば昭和二十七年では人員が三で千七十九日とか、二十八年は四人で二千三十五日とかいうと、これは懲役を何年か受けた後のものですね。
それからもう一つは、死刑の場合に、今度この補償を五十万円から百万円にしたというんでしょう。死刑の場合には刑事補償というものは具体的に考えられるんですか。具体的には考えられますか。まあ考えられないこともないでしょうが、どういうふうな場合を想定しているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/63
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064・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは観念的に考えられることでこざいまが、死刑の執行を終わってから後に再審の申し立て——本人からの申し立てじゃございませんが、そういうことでくつがえされるということが観念的に考えられるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/64
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065・中山福藏
○委員長(中山福藏君) ちょっと関連してお尋ねしておきたいんですが、憲法第十七条では、公務員の不法行為による損害は、法律の定めるところによって国または公共団体は賠償する義務があるということになっておりますね。そうすると、先ほどから黙って聞いておりますと、適法な場合であっても、やはり無罪というようなことになると、刑事補償法の規定によって賠償すると、こうおっしゃるわけですが、これは不法行為という観念は全然除外されるわけですか、この場合は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/65
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066・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは憲法の条文が違いまして、憲法四十条に規定してございまして、憲法四十条によりますと、「何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の装判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。」と、こうございます。そこで、いまの御指摘の条文から来る国家賠償と、四十条に基づく刑事補償と、両方あるわけでございます。したがって、国家賠償のほうには、不法行為——故意または過失によって違法である行為につきましての補償でございます。こちらの四十条のほうは、事柄は抑留、拘禁という場合でございますけれども、その場合に
つきましては、適法な、故意・過失のない場合でございましても、結果において無罪と同等の装判を受けたということを条件といたしまして、これに対して物心両面からの、きまった額ではございますけれども、国が補償をしていく、こういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/66
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067・中山福藏
○委員長(中山福藏君) そうすると、憲法第四十条のほうは、全然不法行為がない場合でもそういうふうにやっていい、こういうことにおっしゃるわけですね。——わかりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/67
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068・稲葉誠一
○稲葉誠一君 刑事補償の補償の金額が上がると、被疑者補償の場合も、訓令ですけれども、当然上がる考え方なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/68
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069・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) そのとおりでございまして、すでにそういう予算措置もいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/69
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070・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それから、被疑者の補償の規程は、これは訓令だからということでしょうけれども、昭和三十二年の四月十二日にできて、同年の四月一日にさかのぼって適用されたんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/70
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071・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは仰せのようにさかのぼって適用をすることにいたしましたのは、もともとこれは性格が法律上の義務というのじゃなくて、国家の恩恵という性格を持っておりますし、幸いに四月一日からから予算もついておりましたので、できるだけ補償の機会を多くの人に与てやりたいという考え方から、予算のあります四月一日から適用するということになりましたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/71
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072・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いまのに関連するんですが、ことしになって四月一日からいままで無罪の裁判があって確定した者はあるんですか。もしそれがあるとすれば、被疑者補償規程のように遡及しないと非常に不公平になると思うんですが、その辺の調べはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/72
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073・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 法律上の権利義務ということになってまいりまして、この刑事補償法は全文二十六条まであるきわめてこまかい規定を持ったものでございまして、これはまあ捜査上の被疑者補償の場合とは性格が私かなり違うと思うのです。できるだけ広げてやりたいということは、私どもの気持としてはないわけではございませんが、法律の定める請求権発生という時期、そのときに請求権が出てくるのでございまして、そういう点を正確に考えてまいりますと、むやみやたらに広げるわけにもいかないと思っております。
それから無罪判決でございますが、本年のやつははっきりわかりませんけれども、昭和三十八年それから三十七年と、こう二年分だけを統計によって拾ってみますと、昭和三十七年のほうを先に申し上げますが、四月中に六十八人の無罪が……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/73
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074・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いや、そうじゃないんですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/74
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075・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 確定したやつはわからないわけでございます。先ほど申しましたように、確定しませんとこれは問題にならぬのですが、九表、十表で御説明申し上げたように、終局裁判のものしかわからない。で、これがどうなっていくかということは、これから先になりませんと、どれだけ確定したかということはわからないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/75
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076・岩間正男
○岩間正男君 私も二、三点お伺いしたいと思うんですが、最初に法務大臣にお伺いしますが、大体この刑事補償法の精神ですね、これはどうなんですか、無罪が確定した当人の精神的、物質的な損害を補償するという立場に立っているのか、あるいは、国家がそういういろいろな損害を受けたものをまあ一部分補償してやる、そういうような立場なんですか。全面的に補償する立場に立っているのか、あるいは一部分の補償でまかなうという立場に立っているのか、その点はどちらなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/76
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077・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) これは一つの定型的な補償でございまして、各個人に対しますと全面的にならない場合も多いと思いますが、定型的の補償をする、こういう立法のたてまえでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/77
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078・岩間正男
○岩間正男君 そうすると、なんですか、補償してやるというようなまあそういう立場ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/78
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079・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) いや、別に補償してやるというような——起訴されまして、しかもそれが無罪になって、その間身体の拘束を受け、心身に対してこうむった損害、これに対して国家が補償したいという考え方、それを立法措置としては一つの無過失の場合の補償でございますから、定型的に持っていくのが適当なりと、こう考えていますから、各個人から見ますと、その損害を補てんすることにならない——たいした金額ではございませんから、そういうことにならないかもしれませんが、観念的にいえばそれ以上のものがあるということもあり得る、こういうものだろうと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/79
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080・岩間正男
○岩間正男君 これは何か恩恵的なにおいが非常にすると思うんです、補償してやるんだと。したがって、先ほどからの質疑応答なんか聞いていまして特に感ずることは、検察官の立場というものを本位にして考えている。大体ほんとうに無罪確定人のそういう立場に立ってこれは考えておるのか。たとえば、先ほど国家賠償の問題がありました。それで、故意・過失があった場合には国家賠償を請求することができる。ところが、実際は、これは無罪確定人の立場からいえば、たとえば故意だろうが過失だろうが、その間とにかく長い間獄につながれ、ひどいのは十年、松川事件の場合なんか十四年にも及ぶ、そして全部青春をすり減らしてしまう、取り返しのつかない、そういう立場に立っているわけです。故意・過失があった場合は国家賠償を請求することができるんだと。しかも、それはやってみると手続がめんどうで煩瑣で、さっきのいままでの例を見ましても、わずかに一件か二件しかそれが成立した場合がない。ほとんどこれは名目、単にアクセサリーみたいに国家賠償というのはあるわけです。しかし、無罪確定人の立場から見れば、これは故意だろうが過失だろうが、もう関係なしに非常に大きな被害を受けている。そうすると、どっちの立場に立って一体刑事補償というのは行なわれるのか、その点……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/80
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081・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) そういう範囲のものが社会制度の上に必要だろうと思うのであります。これは恩恵でも何でもありません。恩恵という観念じゃない。そういうことを補償するのが適当なり、刑事補償法の補償はそう考えているので、別に恩恵とか慈善とかいう観念ではないのであります。
後段のお尋ねは、私も法律はしろうとですが、たとえば違法の行為でも刑罰法令がないというものもあります。適法の行為でもそれが最終の法的判決で間違っている場合もある。そういうカテゴリーが大きな法の制度の上に必要だということが認められておりますのがいまの制度です。たとえば、一審の判決で有罪で二審で無罪、一審の判決は不適法、違法かというと、決して違法じゃない、そういう判決をやった判事は。これは制度上認められた自分の権利義務を正確に行使しまして結論が出た。しかし、上級審ではそれは間違って無罪だ、あるいは刑の量定が違うこともございます。そういうようなことで制度があることが、国民の権利を守り、社会の秩序を維持する上に必要なんです。長年の法制史の発達によって認められておるのが現在でございます。検察と裁判の覆審とは違いますけれども、やや趣が似たことがあると思うのであります。故意・過失であるか、そうでなければ全然判決と合致するものが検察の行為でなくてはならぬ、そうでなくて、適法なる検察の行為であっても、あたかも上級審が下級審と違うように、裁判に持っていったら違う、こういうことがあり得るのが法の秩序を維持する上には必要な行為であります。故意も過失もない、しかし結論はそれは無罪だ、こういうことが一つの観念として成り立つのであります。その上に故意・過失があった場合には、これは故意・過失があったんですから、また国家賠償という別の制度が設けられておる。ですから、国家賠償のような故意・過失で検察陣が不当だと認められる行為をしましたものと、起訴はしたが無罪になるというものと、起訴をし有罪になるというものと、こういう違った態様があるということは裁判の制度に必要じゃないか、かようにわれわれは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/81
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082・岩間正男
○岩間正男君 いまの法務大臣の答弁を拡大して解決してみるというと、非常におかしいことになるんです。正当な手続きをとって、故意・過失があろうがなかろうが、その結果しかし無罪になったんだと。そうしたら、何も国家賠償なんかしなくていい。国家賠償をするという限りは、とにかく無罪の者を長く勾留し、抑留して人権を非常に圧迫した、こういうことに対する補償なんです。むろん、いまの法律の中で形式論的に言ってみれば、それは引っかからないような手段をとっておるかもしれぬけれども、しかし、判断なり大きな前提なりそういうところで大きな何か過失をおかしておる、あるいはまた道義的に考えてもそういう過失というものが成立しなければ、いまの刑事補償法というものの存在はおかしくなってくる。だから、あまり極論されるとおかしいと思う。しかも、いままでのなにを聞いておりますと、検察官なり裁判官のそういう立場に立って考えておる。ほんとうに無罪確定人の人民の側に立って考えておれば、ほんとうに心身両面の賠償をするということ。しかも、その人たちから考えますと、先ほども言ったように、どういう過程をとってきたろうがひどい目にあっているということです。それに対する補償なんで、この点が非常に私は不明瞭だと思う。
こういう問題と関連してお聞きしたいんですが、旧刑事訴訟法でどういう精神で刑事補償はやられてきましたか、これをちょっとお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/82
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083・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 旧刑事訴訟法のもとにおきましては、憲法に規定はございませんでしたが、やはり岩間委員のおっしゃるように。官吏の立場でものを考えたのじゃなくて、そういううき目にあった不幸な人たちの立場から見ますると、官吏に故意・過失があろうがなかろうが、そういう目にあったということで、これに対して物心両面の損害を補償してやるという必要があるわけです。そういうことから、国は、憲法には規定はございませんでしたが、刑事補償法という法律によりまして、これを一つの権利として認め、そうしてそれの補償をしておる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/83
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084・岩間正男
○岩間正男君 旧刑事補償法の精神はどうですか。恩恵的なものでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/84
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085・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) いま申したとおり、恩恵ではないということを繰り返し申しておるわけでございます。刑事補償というものは、役人の立場から見ると、故意・過失のないものが何で補償する必要があるか、こういうのが、先ほど岩間委員のおっしゃったとおり、官吏の立場から見ればそうです。しかし、今度は、勾留を受け無罪になった人の立場から見れば、故意・過失などは問題でないので、そういう目にあったということで問題があるわけです。そういうものに対して補償をするというのが旧刑事訴訟法のもとにおける刑事補償法でも同様に考えられておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/85
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086・岩間正男
○岩間正男君 ここに昭和六年成立当時の委員会議事録があります。それによりますと、当時の司法大臣の答弁にこういうことを言っておる。「国家ガ賠償スル義務モナシ、補償スル義務モナイノデアリマスケレドモ、国家ハ一ツノ仁政ヲ布キ国民ニ対シテ同情慰藉ノ意ヲ表スルノガ、此法律ノ精神デアリマシテ」と明らかに恩恵的なものだということをうたっておるわけです。そうすると、そういう精神から見ると、この答弁の精神にもありますけれども、大体司法官、検察官には故意・過失などというものはあり得ないんだと。もうほんとにこれはあらゆる場合に正当なんだと。だから、そういう意味からいうと、まさに切り捨てごめん的な思想を貫いていると思うんです。こういうところからきめられた。ところが、今度のやつは、これは憲法にも保障され、あくまでこれは旧刑事補償法と違うと思うんですね。そこのところが明確にされるということが必要だ。当委員会の論議でもその点が明らかにならなけりゃ、私は大前提としてのこの刑事補償法の精神というものが国民のものにならぬと思っております。国民の権利を守るという立場から、国民として、これははっきり一体どういう立法の趣旨によって、憲法との関連においてもどういうような権利を有するかということを明確にしておくことが必要だ。その点の論議がないものですから、私は特にお聞きしている。
刑事補償法と旧刑事補償法と比べて、新刑事補償法の立法の精神においてどこが違うのか、そしてどういうふうにそれが具体的に実現されようとししているのか、お伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/86
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087・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 明白になっておらぬということでございますが、きわめて明白でございまして、憲法四十条を踏んまえての刑事補償法、これは現行法のもとでもすでにこの国会で論議をされて性格ははっきりしているわけであります。ただ、旧刑事訴訟法のもとにおける刑事補償法はどうであったかという御質問でございますが、これは、なるほどその当時は憲法の規定がございませんので、恩恵であるか権利であるかということはいろいろ理論としては議論があったと思います。しかし、当時も通説ははっきりとこれは権利であるというふうに見てきておるわけで、憲法に規定がなければ権利でないということじゃないんで、やはり法律で定めて、法律の規定そのものから恩恵的なものであるか権利であるかということは刑事補償法を見ればわかるわけであります。私は、権利としてこれは請求もできるし、国はその補償の義務を負うておるものだと、かように考えておるわけで、通説はそうなっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/87
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088・岩間正男
○岩間正男君 権利だとすれば、もう少し無罪確定人、国民の立場からこの問題をやはり取り扱っていかなきゃまずいという感じがするわけです。どうもそういう点では額の問題が、定型的なものだとさっきお話がありましたけれども、定型的なものだとしても、実際これでまかなうことができるというふうにお考えになりますか。たとえば、ここに例を、私この前資料として要求したんですが、松川の場合が最もいい例だと思います。一番抑留拘禁日数が多いのは三千五百七十日の鈴木信君をはじめとしまして、十七人の累計が三万七千八百二十四日、これは百五年に当たります。これの補償が、鈴木君の百四十二万八千円を最高としまして、それから加藤謙三君の六十一万四百円まで、十七人の総計が千五百十二万九千六百円、こういうことです。平均一人七十万そこそこということになりますか、こういうことで、十四年間にわたって勾留され、中には死刑を言い渡されて長い間苦しんだ。そうして青春が奪われてしまう。それから家庭の状態なんか私たちもよくつぶさに見ていますけれども、とても見るにたえない。そこをよくもあれだけ忍んでやってきたと思うんです。これに対する補償として物心両面の償いをするに足るものだというふうにお考えになりますか。今度の改正によれば、大体倍にはなって、三千万円ぐらいになるわけですが、とにかく無罪確定当時の二百円から四百円、これで処理をされるんですね。これはどうです。私たち、ここで論議するよりも、実際は社会通念の上に立ってこの問題を明らかにするということが非常に重要だと考えるんですよ。これで刑事補償法の憲法の四十条に保障されたところのそういうものが具体的に満たされている、それを満たすに足るところの法案だというふうにお考えになるかどうか。この点はどうです。私はとてもそういうふうには考えられない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/88
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089・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) 岩間委員は国民の立場で考えろと。国民の立場で考えておるんです。それで、無罪になった方はお気の毒ですが、そればかりが国民じゃないんです。刑事補償法で出ますお金はどこから出るかということをお考えください。それは国民全体が租税を払って出すわけなんです。その租税は皆さん高過ぎる高過ぎる、所得税も高い、これをまけろと始終仰せになる。それから、その租税で払います社会保障もまだ少ない少ないと仰せになる。だれか金持ちがおりましてそのポケットから出すんならいいんですが、国民の負担によって出すんですから、それだから、無罪になった方から見れば、その立場から見れば、これは非常にお気の毒でございます。しかしながら、その金というものは政府が自分のポケットからかってに出すんじゃなくて、国民の負担によって出すのでありますから、双方かね合いで見まして、まあまあこれでは少ないけれどもやむを得ぬだろう、ここでいくほかない次第でございます。そういう意味で、国民ということを広くごらん願うことをわれわれは希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/89
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090・岩間正男
○岩間正男君 いまの答弁なんか絶対了承できませんよ。大体額にして一体どのくらい予算に組んでおりますか。そして、実際に被害を受けている人は非常に深刻なんですよ。これは全国民の問題ですよ。全国民はやはりこういうものは正当に補償されることを求めておりますよ。その点から見れば、国家財政の三兆四千億になんなんとする財政の中で、何億組んでおりますか。そういうようないまの一般論でその問題を転嫁するなんということは、これは許されない。だからこの額が三倍、五倍になったって、こういう無実の罪で、しかもこれは国際的にもかってない歴史的な問題ですよ。こういう問題で非常に大きな波害を受けた人たちに対して、いまのような答弁で一体まかり通るというのは許すことができないと私は思うんです。だから、そんな一般の財政論をここに出されても、なんですよ。国家予算を見てごらんなさい。そして一体どういうふうに使われているか。そういう中で、そんなことをいまここで議論するなにはありませんけれども、わずかに一千五百万円ぐらいで、二十人、そしてしかも十四年間の青春を奪われた人たちの補償として、しかもこれは憲法に保障されたものの実際の施行をするための法律だなんといって出している。こういうかっこうでは私は非常に不十分だと思う。だから、依然として私の言いたいことは、やはり旧刑事補償法の恩恵的に与えてやるんだという精神が抜け切れない。憲法の精神によってほんとうに今度は変えているというふうには考えられない。定型的なものだと話がありましたけれども、旧刑事補償法の場合だって一日五円以内というふうにきめております。ところが、物価指数を見てごらんなさい。あれから考えて見て、五円は、いま大体五百倍でしよう、貨幣価値は。そうすれば、少なくとも二千五百円くらいのものを出さなければ補償にならぬと思う。旧刑事補償法の恩恵的なものに劣るところの金額じゃないですか。そう言われたってこれは返すことばがないでしょう。私は、時間がありませんから、こまごま資料をあげてやりません。物価指数の変動とか、そういうことはやりませんけれども、そういうことではやはりこれはまかなわれない。もう少し人権というものの尊さというものをほんとうに実際の政治の上に反映しなければならぬ。
もう一つは、こういうことを繰り返さないという、こういう問題もあります。こういうことを再び繰り返さないための、いわばこれは、処罰と言っちゃ悪いだろうが、そういう責任をやはり追及する問題があります。こんなことを繰り返されてはたまったものでない。そうなったら、もっと検察官なり関係者が人権に対して慎重にやっていく、こういう立場をとらせるための意味もあるんです。そういう告示的なものかしれない。そういうもののをはっきりさせなければ、刑事補償というものの大きな意味はありません。政治的な意味というものは明確になりません。法律的にそんな単純な問題じゃありません。
そう考えてくると、これはとにかく旧刑事補償法にも実質的には非常に劣るわけです。昔は五円以内という規定があった。そうすると、こういう点で、今度改正になりましたが、その額はいままでに比べてとにかく約倍になった。その点は直接該当者には利益を与える。その点について責めているわけではありませんが、しかし、根本的にこの法のよって立つその精神の上に立てばどうすべきか。そうすれば、先ほど定型という話がありましたが、額というものについてもおのずからこれは考えなければならない、こういうふうに考えるんです。この点はどうです。あなたたちこれで十分だなどとは言い切れないと思うんです。ただ、まあ残念ながらいまの段階でそれしかできなかった。あるいは、あなた方の政治力不足ということはここで問題にしますまい。これは大臣をここで追及しようとは思わないが、しかし、少なくとも人権を守るという立場に立てば、これは違ってくる。しかし、いまのような御説明をされる立場に立つというと、やはりこれは何か無罪の確定した者に対してほんとうにこれを擁護するという立場というふうには考えられない。
そこのところは議論になりますから、御答弁はいただかなくてもいいんですが、最後にもう一点お聞きしたいのですが、これはどうですか。もう少しこの問題を検討して、同時にあれをとったらどうかと思うんですがね。つまり、今度のやつは何年間据え置きになったわけですかな。私はスライド制をとったらどうかと思うんですが、これはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/90
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091・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) 私も十分だと申し上げていないのです。先ほどの答弁におきましても、無罪になった人の立場から見ますればお気の毒なことが多いと思います。一方は、国政の問題でございますから、財政、租税負担の点から考えて、まあ残念ながらいまのところこれにとどまるしかしかたがないという意味を申し上げておるので、この委員会でございましたか、あるいは衆議院でございましたか、私はこれで今後増額を必要とするようなときには、おくれないように、なるべく早く経済情勢に合わせて増額をしたい、こういうことを申し上げた次第でございます。
スライド制のお話ですが、これはあらゆる問題に共通でございまして、できればとりたいわけでございますが、一方、また財政のことを言うとおしかりを受けるかもしれませんが、歳入のほうはなかなかスライド制をとっていくということが非常に困難でございますから、したがって、あらゆる給与のスライド制をとるに、とってみたら非常にいいだろうという考えはございますが、まだそこまで踏み切るわけにまいりません。いわゆる一つのものだけ踏み切るわけにまいりませんので、その点は全般にわたって非常に考慮を要する問題である、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/91
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092・岩間正男
○岩間正男君 私はほんとうにこれは国民の立場に立ってその人権を守るんだ——いやしくも無罪で長年苦しめられたというのは、法の不備なり、実際司法官の運営の非常に至らなさ、あるいは故意・過失、意図的なものさえ考えられます。特に国家の権力犯罪といわれるような場合には、背後の力、これは意図的なものがはっきり考えられます。そういうような場合、当然どこを基礎にして守るのだか、ここのところは非常に重要な問題だと思うんです。とにかく先ほどから論議を聞いておりますというと、どうもやはり検察官の立場を擁護するとか裁判官の立場を擁護する、元来これは過失は犯さないものだという前提に立っておる。ところが、人間でありますから、そういうことはあり得ないし、またいろいろな背後の力によっても動いている現実というものは否定できない。権力によって左右されておるという事実もこれは否定できないというのは事実だと思います。そういう点から、どうもやはりこれは立法の精神をどう踏まえてどこにほんとうに基本的な立場を置いてこの問題を処理していくのかという点が私は前後の当委員会の審議を通して不十分さを感じざるを得ないわけです。
それからもう一つ、そういうものと関連しまして、国家賠償のやり方ですね。いまのままではとてもこれはどうもならぬのじゃないですか。刑事補償は取れたと、まあ一応請求して取ったと、しかし、それはとても償うものに足りないと。そこで、故意・過失があるというなら国家賠償でやりなさい、国家賠償というのがあるんだからということで、実は今度のこの刑事補償の額が御承知のように非常に少なくなった。ある場合には、実際考えてみて、必要な額の半分ないしは三分の一くらいしかない。そこに一つの逃げ道がある。そうすると、国家賠償法というのは、何といいますか、刑事補償法の額を非常に少なくすることの一つの逃げ道になっていますよ。口実になっていますよ。ところが、実際これが成立したのは一、二件だということですよ。そうすると、有名無実で、アクセサリーにすぎません。そうすれば、国家賠償法そのものをもっと、これは少なくとも無罪になったのですから、これはもう故意・過失という問題もあるし、それだけでなくても、とにかく現実は無罪にはっきりなった。そうして、その無罪になるまでの間に非常に多くの肉体的精神的経済的あらゆる苦痛をなめてきたというこの現実をやはり補償する、こういうことなんですよ。だから、私は、国家賠償法をもう少し改正するか、あるいはまたこの刑事補償法そのものをもっと実際に国民の被害をちゃんと補償するに足るだけのものにするか、この二つの方法だと思うけれども、こういう点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/92
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093・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) 国家賠償につきましては、すべての訴訟がそうでございますように、要求するほうからその理由、証拠を明らかにする、これはやむを得ぬことだと思います。
それで、逃げ道にするとかいろいろございましたが、そういう御断定のもとでいろいろ御議論になる点は私はどうかと思うのでございまして、この基準につきましては、すべての給与が基準をどこに求めるか、一般の賃金論争などでもいろいろな議論が非常に複雑に起こっておりますことは御承知のとおりでございまするが、基本的にどういう金額が正しいか、これは賃金あるいは俸給的のものすべてに非常な困難な問難がございます。前にも御答弁申し上げたように存じまするが、大体の場合には現行を基準にして、その後の経済状況の変動——これは収入面もございます。支出面を考えれば物価面もございます。そういうものを考えまして決定をする。その前の基準が著しく疑いなく不当であって、高過ぎるか安過ぎるということがあれば考えますが、ことにそういうことがはっきりいたしません場合には、前の基準が定められた後の経済情勢の変動、これを主として参考にしてきめると、こういう行き方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/93
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094・中山福藏
○委員長(中山福藏君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/94
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095・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 速記をつけてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/95
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096・後藤義隆
○後藤義隆君 刑事補償の請求権は譲渡とかあるいは相続の対象になるかならないかという点と、それからもう一つは、時効の起算点はいつからで、そうして何年で時効にかかるか、時効が完成するかという点をちょっとお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/96
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097・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) この請求権は、法律に規定がございますように、請求権発生から三年ということになっております。
で、権利が譲渡できるかどうかということも、これまた法律に規定が二十二条のところにございますが、「補償の請求権は、これを譲り渡し、又は差し押えることができない。」と、こうございます。ただ、相続の場合は、これは認めております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/97
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098・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/98
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099・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 御異議ないと認めます。
それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/99
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100・稲葉誠一
○稲葉誠一君 この法案について賛成はしますが、いろいろ要望があるわけです。国家機関によって勾留等をされまして無罪になった国民に対する憲法に規定された補償としては不十分であると考えられますし、また、被疑者の補償にしても、同様少額に過ぎるというふうに考えられます。現行法は勾留だけに限っておるようですが、これに対しても十分なる理由があるわけではありませんので、在宅事件の場合でもこれを拡大するように考慮する余地があるというふうに考えます。
それから無罪の裁判が確定した場合の国家賠償のやり方については、この場合には一応国家機関に過失があるのだというふうに推定をされて、立証責任を国家側に負わせるというふうに改正をすべきではないかと、こういうふうなことも考えられるわけであります。
これらの点について今後十分考慮をしてもらいたい、こういうことを要望しまして、討論にさしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/100
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101・岩間正男
○岩間正男君 私も、この法案は次善なものとして賛成するわけです。
ただ、質問の中でも、二、三申し述べたのでありますけれども、第一に、これは憲法四十条の精神と旧刑事補償法の精神を全面的に変えるというような立場には立っていない。依然としてやはり検察官並びに関係者を擁護する、そうしてその人たちは過失や故意を行なわないのだ、そういうことは頭からやらないのだ、ただ恩恵的に無罪確定人に対して補償するのだ、いわばそういう恩恵的な精神というものがこの法案の中に依然として含まれているように考えられます。元来、刑事補償法の精神から考え、また、憲法の精神から考えてみるときに、あくまで国民の不当に抑圧され侵害された権利を守る、そうして精神的物質的な損害を補償する、そういう立場にこれは立つべきだと思います。したがって、そういう点から見ますというと、予算の不足とはいいながら、この額ははなはだ僅少に過ぎると言わざるを得ない。旧刑事補償法でも、一日五円以内といっております。貨幣価値から見れば。当然四百倍から五百倍でしょう。したがってこれは当然一日二千五百円ないし二千円という線が妥当じゃないか。日弁連の人たちの意見でも、当然二千円ということを言っております。そういう点から、この改正は、とりあえず物価の変動に伴って引き上げがなされたということになっておりますけれども、基本的にこの問題を検討し、しかも、これは国家予算から考えれば、先ほど法相の答弁がございましたが、ああいうことじゃなくて実に微々たるものです。それで人権が守られ、そうしてそのために幾ぶんでもあやまちを繰り返さないという司法行政のそういう面をはっきり打ち立てるために、これは必要だというふうに考えられます。
それからもう一つ、この法案はこのように内容が非常に貧弱だ。その理由として故意・過失のある場合、その名誉を回復するとか、それから補償をもっと適正に行なわせるためには、国家賠償法があるじゃないか、こういうことが言われています。しかし、先ほどの審議でも明らかなように、これはいままで一件が二件しか成立した例がございません。いわば全くこれはこの刑事補償法の内容が貧弱なことを擁護するためのアクセサリーになっておる、あるいは抜け道になっておる。こういうことでは非常にこれは現実に沿わないのでありますから、こういう点についてやはり根本的にこの問題を再検討する必要があるのじゃないか。
それから、物価の変動が激しい時代でありますから、当然スライド制を考える必要があるのじゃないか。これも、毎年毎年というふうにかりにいけなくても、三年ごとに検討するとかなんとか方法はあり得るのじゃないかというようなことを考えます。
私は、以上のようなことを希望条件としてこの法案に賛成の意を表します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/101
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102・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 他に御意見もないようでございますから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/102
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103・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 御異議ないと認めます。
それでは、これより採決に入ります。刑事補償法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案どおり可決することに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/103
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104・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 全会一致でございます。よって本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本会議における口頭報告、議長に提出すべき報告書の作成等は、先例により委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/104
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105・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時四十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02019640423/105
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