1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年五月十九日(火曜日)
午前十一時十二分開会
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委員の異動
五月十五日
辞任 補欠選任
二木 謙吾君 宮澤 喜一君
五月十八日
辞任 補欠選任
岩間 正男君 須藤 五郎君
五月十九日
辞任 補欠選任
坪山 徳弥君 青木 一男君
鈴木 一司君 栗原 祐幸君
迫水 久常君 野上 進君
宮澤 喜一君 野田 俊作君
須藤 五郎君 野坂 参三君
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出席者は左のとおり。
委員長 中山 福藏君
理 事
後藤 義隆君
稲葉 誠一君
委 員
大谷 贇雄君
栗原 祐幸君
鈴木 万平君
田中 啓一君
高橋 衞君
野上 進君
野田 俊作君
山高しげり君
政府委員
法務省刑事局長 竹内 壽平君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
説明員
法務省刑事局参
事官 伊藤 栄樹君
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本日の会議に付した案件
○鉄道公安職員の職務に関する法律を
廃止する法律案(中村順造君発議)
○商法の一部を改正する法律案(内閣
提出)
○逃亡犯罰人引渡法の一部を改正する
法律案(内閣提出、衆議院送付)
○刑法の一部を改正する法律案(内閣
提出、衆議院送付)
○暴力行為等処罰に関する法律等の一
部を改正する法律案(内閣提出、衆
議院送付)
——————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/0
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001・中山福藏
○委員長(中山福藏君) これより法務委員会を開会いたします。
この際、委員の異動について御報告申し上げます。
本日、須藤五郎君、坪山徳弥君、鈴木一司君が辞任され、その補欠として野坂参三君、青木一男君、栗原祐幸君がそれぞれ選任されました。また、本日、迫水久常君、宮澤喜一君が辞任され、その補欠として野上進君、野田俊作君が選任されました。
——————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/1
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002・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 本日は、鉄道公安職員の職務に関する法律を廃止する法律案、商法の一部を改正する法律案、逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律案、刑法の一部を改正する法律案及び暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案、以上五件を便宜一括して議題といたします。
御質疑のおありの方は順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/2
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003・稲葉誠一
○稲葉誠一君 現在の逃亡犯罪人引渡法が昭和二十八年に成立したときに、何か衆議院で修正されたというのですが、どこが修正されたわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/3
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004・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 修正はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/4
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005・稲葉誠一
○稲葉誠一君 おかしいですよ。あなたのところの辻辰三郎氏が書いているんですよ。「逃亡犯罪人引渡法逐条解説」で、同法案は第十六特別国会に提出され、「衆議院において一部修正の上、去る七月一七日国会を通過し、同二一日逃亡犯罪人引渡法(昭和二八年法律第六八号)として公布され、翌二二日から施行されたのである。」と、こう言っていますよ。ちょっと調べてくれませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/5
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006・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) その書かれましたものがどういうものであるかよく存じませんが、その書かれましたものをあとで拝見いたしまして研究したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/6
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007・稲葉誠一
○稲葉誠一君 あとで拝見するんじゃなくて「警察研究」の第二十四巻第十号、昭和二十八年十月十日発行のものですよ。これは前の国会で、まああなたはおられなかったでしょうけれども、どこがどういうふうに修正されたのか——ちゃんとこれは辻君が書かれたのじゃないですか。総務課長になる前にですね、二十八年ですから。はっきり書いていますよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/7
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008・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 私ども今度の改正法案をつくります際に検討しました限りでは気づいておりませんので、なお確認してみます。かりに修正があったといたしましても、字句の修正であろうと思います。なお確認してみます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/8
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009・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、現在の場合は、アメリカとの間に条約があるんだと。すると、条約のない国との間はどうなんですか。一つの国際法上の原則としてあるわけですけれども、引き渡すかどうかということは、国家の義務としてはないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/9
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010・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 条約の存在しません場合に引渡要求に応ずるかどうかということは、現在まだ国際慣習法の段階にまでなっておらないように思われます。したがいまして、引き渡すかどうかは、請求を受けた国のもっぱら裁量に属することとされておると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/10
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011・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、その場合、まあ国際慣習法というか国際法上の慣習として認められたのじゃないと言っているけれども、憲法第九十八条二項との関連はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/11
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012・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 九十八条第二項は、「確立された国際法規」ということばが使ってあるわけでございますが、現段階では、条約に基づかない引き渡しを行なうことが確立された国際法規であると断定するのは若干疑問があろうかと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/12
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013・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いまの辻君のあれを見ると、やはり辻君は、「この国際法上の確立された原則は、憲法第九八条第二項にいう「確立された国際法規」といいうるものであって、」云々と、こうはっきり言っていますよ。……もうちょっと待ってください。そういうふうに言っているんですね。これは辻氏個人の見解だと言われればそうかもしらぬけれども、少なくとも公の書物にはっきりこういうふうに書いてあって、おそらく辻氏はその当時の立案に当たっておるのじゃないですか、総務課かどこかにおってあるいは刑事課かどこか知りませんけれども。そういうふうに見解が法務省で違うのはおかしいじゃないですか。これは憲法の解釈の問題だと言ってしまえばそれまでかもしれませんが、どうもそこら辺が食い違っているのじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/13
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014・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) いま御指摘の辻辰三郎氏は、当時刑事局の総務課におりまして逃亡犯罪人引渡法の企画立案に一部関係されたように私どもも承知しております。当時の考え方として、条約の存在しない場合における世界的な引き渡しについての慣行についての調査の手段がある程度限られておりましたこと、それからこういった問題に関する諸外国の学説等の検討も倉皇の間で十分に尽くせなかった事情もあるのではないかと思いますが、そういったいきさつがあったか存じませんけれども、辻さんは個人としては九十八条二項の「確立された国際法規」に当たるのではないかというような考えを持っておられたように私ども承知しておりますが、法務省としては必ずしもそういう考えでおったわけではないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/14
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015・稲葉誠一
○稲葉誠一君 私は辻さんは個人的に知っておりますけれども、当時の立案者じゃないですか。立案者の一人であるかどうかは別として、少なくとも立案者としてこの人がはっきりそういうふうに言っているし、それから一八八
○年のオックスフォードにおける万国国際法学会においてもいろいろ決議がされており、学説もこれを認めておるんだというようなことを言ってホーレックの「国際法」やなんか引用しているし、いろいろ詳しく書いているんですよ。それで、私質問を続けるかどうするか——実はきのう国会図書館に逃亡犯罪人に対するいろいろな研究なりそれから前の国会における議事録ですね、それを出してくれということを言って、けさ私のところに届いたんですよ。たくさんあって、まだ読んでいないんです。辻さんの論文もここに来て読んだわけで、十分まだ私あれしていませんが、これに基づいたもので聞きますから、あなたのほうも読んできてからにしてくれませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/15
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016・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/16
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017・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 速記をつけて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/17
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018・稲葉誠一
○稲葉誠一君 犯罪人引渡条約と国内法とが抵触する場合というのは考えられぬですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/18
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019・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) いまのお尋ねについて御説明申し上げます前に、先ほどの問題でございますが、問題のポイントは、国際礼譲というものをどう考えるかということだろうと存じます。私どもも、「警察研究」の何巻何号ということを御指摘いただきまして、そのものを読んだかと言われますと、そのものも読んだことはございますけれども、まだほかにも辻さんの考え方を書いたものがございますから、もちろんそういうものは検討しております。問題は、国際礼譲という概念の考え方でございます。現在逃亡犯罪人引渡条約なしでも行なうということは、国際礼譲の域までは達しようというふうに見られておるわけでございますし、先ほど御指摘の万国国際法学会の決議とかホーレックの論文なども内容はそういうことを言っておるわけでございます。国際礼譲と申しますのは、申し上げるまでもございませんが、国家が便益あるいは友好の観点から取り計らいを行なう、そういったしきたりを言うわけでございますが、したがいまして、裁量に属するとは言うものの、その国際礼譲に従って行ないません場合には道義的な非難を受けるという性質のものであると存じます。こういうものを憲法九十八条二項にいう「確立された国際法規」と言えるかどうかという点については、現行法制定当時からも、あるいは関係の係官あるいは学会等でいろいろ議論があったわけでございます。それをどういうふうに見るかということを法務省としてあらためまして今度の改正法案を提出する際に外務省ともお打ち合わせいたしまして確認いたしましたところ、まだ九十八条二項の「確立された国際法規」と言うために必要な程度のいわゆる国際慣習法性を備えるに至っているかどうかについてはなお疑義があるのではなかろうかということで、一応この九十八条二項の「確立された国際法規」に当たらないというふうにむしろ考えるべきではないか、こういうことになったわけでございます。
それからただいまお尋ねの点でございますが、犯罪人引渡条約と現行国内法とが抵触することがあるかどうかというお尋ねでございますが、条約を締結いたしまして、御指摘の憲法九十八条二項でこれを順守すべき義務を日本国が負うわけでございまして、その順守に必要な国内法を整備するということが当然義務的となるわけでございます。したがいまして、将来条約を結ぶ場合には、常に条約の批准と同時に現行法をその条約の実施の必要に応じ得るように修正するということを並行してやるべきだと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/19
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020・稲葉誠一
○稲葉誠一君 あとのほうは、あなたの言われるとおりこれは常識で、その場合に条約が優先するということも当然のことで、あえて聞くほどのこともないんですが、いま言った憲法第九十八条第二項にいう「確立された国際法規」と言い得るということを辻氏が言っておって、その結果として、「わが国においても引渡条約の締結されていない国に対して逃亡犯罪人の引渡をすることは合法であるといわなければならない。」と、そこへ論理を持っていっておるわけですね。だから、ぼくは、引渡条約がない国に引き渡すには単なる自由裁量ということではなくて合法裁量ということを引っぱり出すために憲法九十八条二項の「確立された国際法規」だというふうに持っていっておるような感じを受けるんですが、この点は御本人に確かめたわけではありませんが、いずれにしてもそういうことをはっきり書いておりますね。その当時、あなたに言わせれば辻氏の個人的な意見だと言われるかもしれませんが、国会の中でもあるいはそういう答弁をされておるかもしれませんね。これは議事録を部屋に持ってきて確かめておりませんけれども、そうすると、いまの場合というか、今度の改正のときにも、外務省との間でこの問題は討議されたんですか。どういうふうに討議されたというんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/20
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021・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) この問題は、条約の締結されていない場合の引き渡しの問題は、相互主義とか、その相互主義を裏づけております国際礼譲とか国際協力とかいうふうな外交の基調になっておりますいろいろな原則、こういうものを踏んまえて処理をするということになるのでございますが、それを憲法の九十八条の二項にすぐ持っていって処置をするというのがいいか、あるいはそこまでは学問的に確認できないとしても、いまの諸原則を承認するということはこれはもう当然のことで、これは国際慣行と見ていいのじゃないかということで、その国際慣行からさらに一歩進んで国際慣習法というまでにその慣行を見るかどうかという点につきまして議論があると思うのでございますが、この前も御説明申しましたあの例のスイスとの事件につきまして、外務省当局ともとくとその問題を詰めて議論をいたしました結果、伊藤参事官がお答え申し上げましたようなラインで統一解釈といいますかそういう見解の統一をはかりまして、そうしてこの立案になっているわけでございまして、当時あるいは辻君が書物に書いておりますような考え方が政府部内に支配的であったかもしれません。その点は私もまことに不勉強で申しわけないのですが確認をいたしておりませんが、いまの私どもの立場といたしましては、伊藤君が申しておりますような考え方に立っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/21
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022・稲葉誠一
○稲葉誠一君 憲法三十三条以下の規定はもちろん刑事手続に関する規定ですね。それとこの逃亡犯罪人引き渡しに関する手続とはどういうふうに関連があるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/22
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023・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) ただいま御指摘のように、三十三条以下の規定はもっぱら刑事手続についての規定というふうに理解されておりますので、それがそのまま逃亡犯罪人の引き渡し手続に適用があるというふうには解せられないわけでございますが、やはりわが国内で身柄の拘束をいたしましたりあるいは引き渡しという強制手段を講ずるわけでございますから、この精神にのっとって、準じて、令状主義をとるとか、そういった手続を裁判所の審査にかからしめるとか、そういう配慮が必要であろうというふうに考えられるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/23
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024・稲葉誠一
○稲葉誠一君 逃亡犯罪人の身柄を拘禁する場合には、これは裁判官の何によるのですか。何によって拘禁するわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/24
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025・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 拘禁許可状あるいは仮拘禁許可状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/25
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026・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それは逮捕状なり勾留状とは違うものなんですか。もちろん違うでしょうけれども、具体的にどういうふうに違うのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/26
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027・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 勾留状は、裁判官がみずからその者を、監獄に勾留する旨の裁判をするわけでございまして、逮捕状のほうは、逮捕することを許可する一種の許可状的なものでございますから、仮拘禁許可状あるいは拘禁許可状と逮捕状と性質においてはほとんど同じである、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/27
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028・稲葉誠一
○稲葉誠一君 裁判官が逮捕状を出すということも一つの刑事手続に入るのじゃないですか。まあ刑事手続の概念の問題かもわかりませんがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/28
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029・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 刑事手続について身体の一時的の拘束のために出す令状を逮捕状というのであろうと思いますが、しかしながら、逮捕状というのを出すということが、すなわち逮捕状を出すから刑事手続になるという関係には必ずしもならないのじゃないかというふうに考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/29
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030・稲葉誠一
○稲葉誠一君 刑事手続という概念の考え方にもよると思いますが、逮捕状を出して刑事手続にならないという場合は考えられるというんですか。どういう場合でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/30
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031・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) いま御指摘の問題については、考えられないというふうにお答えせざるを得ないと思います。と申しますのは、逮捕状は刑事手続においてしか発せられないものでございますから、逮捕状が発せられる場合というのはすべて刑事手続の場合である、こういうことになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/31
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032・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それならば、いまの逃亡犯罪人の身柄を拘禁するというのも裁判官の令状によるわけでしょう。それは憲法の手続とは全然関係がないわけなんですか。外国人だから憲法が適用にならないというのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/32
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033・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 外国人であるからとかいうことでは全くございませんで、刑事手続以外の手続であるから、この刑事手続における人権保障の各規定はそのまま適用にはならない、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/33
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034・稲葉誠一
○稲葉誠一君 外国で犯罪を犯したとしても、日本に逃げて来てそこで逃亡犯罪人引き渡しの請求によった場合は一応除くとして、よらないでそして外国の犯罪について日本で日本の逮捕状で逮捕するということはできないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/34
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035・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ただいまの場合は、国外犯に当たる場合はこれはもちろん刑事訴訟法の規定にのっとっての逮捕状、これは請求し得るわけでございまして、それは純然たる刑事訴訟法による捜査、その捜査の段階において出す逮捕状でございますので、いわゆる刑事手続と申しても差しつかえないと思いますが、私はこの引渡法の手続に乗せての拘禁状あるいは仮拘禁状、そういうものによって身柄を拘束するという手続は刑事訴訟法にのっとっての手続でないという意味において刑事手続ではないと、こう申し上げておるだけでありまして、広い意味で何と申しますか犯罪に関連して身柄が逮捕される、あるいは逮捕と同じ拘禁状態が起こる、こういう手続でございますので、これを広義に解釈すれば一種の刑事手続だと申してもいいと思います。したがって、刑事手続に関する憲法の諸規定というものは十分考慮され、尊重されて——適用ということばは適当でないかもしれませんが、少なくとも準用されるというような考え方で手続を定める場合におきましてもその配慮をしなければならぬ、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/35
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036・稲葉誠一
○稲葉誠一君 私がちょっとお聞きしたのは、外国人が外国で犯罪を犯して日本へ逃げて来た場合に、日本の裁判所の発する逮捕状で逮捕はできないわけですか。逮捕状は出せないわけですか、そういう場合には。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/36
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037・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 刑法で定めておりますように、外国人が犯した犯罪でも国外犯を処罰する規定があるものにつきましてはわが国で刑事手続を行なうことができますので、当然逮捕状が発付されるわけでありますが、そうでありません場合は、刑事手続に乗りませんので、逮捕状が発付できないということになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/37
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038・稲葉誠一
○稲葉誠一君 どういう場合に逮捕状が発付できるのか、ちょっとそれを説明していただけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/38
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039・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 外国人の国外犯を処罰いたします場合といたしましては、刑法の第二条にございますように、内乱、外患、通貨偽造、あるいは公正証書原本不実記載、公文書偽造、有価証券偽造、こういった犯罪につきましては刑法学上いわゆる世界主義というのをとっておりますので、外国人が外国でこれらの犯罪を犯して日本へ参りました場合には、日本で捜査官憲が請求いたしますれば裁判所は審査の上逮捕状を発付すると、かようなことになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/39
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040・稲葉誠一
○稲葉誠一君 通貨偽造とかなんとかありますけれども、日本の通貨を偽造した場合ですか、そうでなくてもですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/40
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041・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) この通貨偽造の通貨がどういうものであるかという点につきましては百四十八条の関係になりますので、百四十八条、百四十九条がございますこととの関連におきましてもっぱら国内の通貨というふうに解釈されるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/41
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042・稲葉誠一
○稲葉誠一君 外国人が外国で日本の通貨を偽造したりして日本へ逃げて来た、そういうふうな場合には、もうあれですか、逃亡犯罪人の引き渡しとは関係なくなるわけですか。普通の刑事手続でいくわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/42
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043・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 御指摘のようなケースにつきましては、逃亡犯罪人引き渡しと関係がなくなるわけではございませんで、逃亡犯罪人の引き渡しの請求がありました場合には、まずわが国におきましてわが国の裁判権を行使してその者を日本国の法令で処罰するかどうかということをきめまして、その上で引き渡すかどうかを考えることになろうと存じます。そういった考えのあらわれは現行法の第二条の第五号にもあるわけでございまして、逃亡犯罪人が犯した引き渡し請求をしてきました犯罪が日本の裁判所に係属するときには引き渡せないというふうになっておりますが、これは裁判所に係属しておる場合でございますが、捜査中でまだ起訴に至らない場合におきましては、こちらで起訴するか、あるいは引き渡して向こうで裁判をしてもらうか、それらは別途法務大臣において検討することになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/43
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044・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、逃亡犯罪人を引き渡すか引き渡さないかという最終決定権は法務大臣が持っておるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/44
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045・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/45
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046・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、法務大臣が持っていて、その前段階として裁判所の審判を必要とするわけですか。これは要求があった場合必要とするわけなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/46
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047・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 裁判所の審査は、引き渡す場合には必ず審査を経なければいけない。と申しますのは、不当にその者が引き渡しをされるのを防ぐと申しますか、そういった考慮が入っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/47
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048・稲葉誠一
○稲葉誠一君 引き渡す場合には裁判所の判断が必要なんだと。裁判所が引き渡せという判断を下したならば、それは法務大臣を拘束するんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/48
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049・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) ただいまおことばの中にございました裁判所が引き渡せという決定はしないわけでございます。裁判所がいたしますのは、たとえば第二条各号の一に当たるような事由があるかないかというようなことを判断いたしまして、引き渡し得る場合に該当するかどうかということを判断するわけでございます。したがいまして、引き渡せという裁判所が命令をするわけでございませんので、裁判所が引き渡し得る場合だというふうに認定いたしました場合にも、さらに法務大臣がもう一度さてそれではこれを引き渡すことが相当かどうかということを判断することになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/49
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050・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうなってくると、よくまだあとのことを研究しておりませんけれども、裁判所と法務省というか法務大臣との間の権限というか、それが裁判所が一体どういう役割りを果たすのか、司法権独立の関係でどういうふうになるのかちょっと私もいろいろ疑問があるんですが、これはあとで裁判所の審査規則みたいなものがありますね、それをよく研究しないとわかりませんから、これをよく研究したいと思います。
続いて伺いますが、この法律は、現行法も改正案も、日本の国が引き渡しを請求された場合の手続をきめたものですね。日本の国が相手方に対して引き渡しを請求する場合はどうするんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/50
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051・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) それは本法の関知しないところでございまして、引き渡しを請求した場合に相手国が引き渡すかどうかをきめます場合には、その相手国の国内法である逃亡犯罪人引渡法によって決するわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/51
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052・稲葉誠一
○稲葉誠一君 ですから、その場合に、条約ができておれば、お互い相互の義務権利関係でそれは問題ないわけですね。日本からの引き渡しの請求というのは、日本の国内法としては関係がないんだ、相手国の法律によって決定されるんだ、こういうわけですね。そうすると、日本からアメリカに対するいろいろな請求は、特にアメリカの日本にいる軍人だとかあるいは一般市民が日本で犯罪を犯してアメリカへ帰っちゃった。捜査中に帰っておる場合もあるし、あるいは帰ってから発覚した場合もあろうし、そういうふうな場合には、一体どうなるんですか。もちろんこの法律には関係がないとしても、何ら打つ手はないということになるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/52
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053・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) いまのお尋ねの市民の場合と軍人の場合とは若干違いますが、市民の場合を考えますと、日米の引渡条約におきましては、原則としては自国民は引き渡さないということにしながらも、特別の考慮を払った上で引き渡すことがあるべきことを規定しておりますので、日本国の利益をはなはだしく引き渡しを受けないことで害するというようなことを外交ルートを通じて説明いたしまして納得を得て引き渡しを求める、こういうことになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/53
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054・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いまのは市民の場合ですね。じゃ、軍人——軍人でも、あれじゃないですか、公務中の者と公務外の者に分けて考えた場合はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/54
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055・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 原則論を申し上げますと、この犯罪人引渡法は一種の市民法でございますから、一般人についての取りきめでございます。それから駐留軍人の取り扱いにつきましては、これは地位協定に基づきまして特別な取りきめによって処理されるということになっておりまして、駐留軍人が日本で犯罪を犯して本国へ行くという場合には、この条約によって引き渡しを求めるのじゃなくて、特別な取りきめによる引き渡しを求めることができる道が開かれております。これは引渡条約よりも見方によりましてはもっと強力な取りきめになっているように私は理解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/55
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056・稲葉誠一
○稲葉誠一君 軍人の場合に、軍人であっても公務外に犯した場合には一般市民と同じように犯罪人引渡条約に拘束されるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/56
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057・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは公務外の行為でございましても、身分が軍人ということであります場合には、引渡条約によらないで、地位協定に基づく取りきめによっての引き渡しを求める、こういうことになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/57
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058・稲葉誠一
○稲葉誠一君 この地位協定というのは、どういうふうなあれですか、何月何日のどういう協定ですか。いままでそれに基づいて引き渡しを請求したことがあるんですか、具体的に。あったとすれば、その結果はどうなっているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/58
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059・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 協定によってその協定の効力として請求をし引き渡しを受けたということに広い意味ではなろうかと思いますが、こちらから必要だということで要求をいたしました場合には、軍の機関でございますので、軍の命令でアメリカへ行った者を再び日本に配置がえをいたしましてそうして引き渡しを受けたという実例はございます。しかし、地位協定によって正式に請求をするという場合には、向こうが配置がえ等の手続をとらない場合に起こるわけでございますが、そういうのはいままでの実例としてはございません。向こうへ帰りましてから軍籍を離れてしまいました場合には、向こうとしては配置命令をするということはできなくなりますので、その場合にはどういうふうに処置するかという問題が一つございますけれども、そういう実例はいままではないようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/59
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060・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いまの問題は、逃亡犯罪人引渡法の改正に直接の関連ではないというふうにも考えられますから、これは別の機会にして、その節度は守りますが、いずれにしても、具体的にそういうふうな例がいつどのようにしてあったのかというような点は、いずれ資料としてよく整えておいていただきたいと思うんです。これは大きな問題になると思います。
そこで、いま局長の言われたのは、いわゆる自国民不引き渡しの原則を規定したものなんだ、こういうことでしょう。そのことについていま言っているわけでしょう。それは条文のどこにあるわけですか、現行法でも改正法でも。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/60
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061・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 現行の引渡法二条第七号に「逃亡犯罪人が日本国民であるとき。」は引き渡さない、こういうことになっておりまして、改正案によりましては、条文が繰り下げになっておりまして、それに相当する条文は九号になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/61
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062・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いまの改正案でいう第二条の九号ですね、「逃亡犯罪人が日本国民であるとき。」というと、外国で犯罪を犯して日本へ逃げてきた、外国から引き渡し請求があった、その場合には、原則として引き渡さないでいいということなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/62
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063・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) そういう意味でございまして、これはやはり先ほど申しました一つの国際慣行といいますか、そういうふうに見られておる原則でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/63
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064・稲葉誠一
○稲葉誠一君 私が第二条を読んで率直に感じましたのは、これは「(引き渡しに関する制限)」となっていて、「左の各号の一に該当する場合には、逃亡犯罪人を引き渡してはならない。」と、こういうふうになっているわけですね。それが非常にたくさんあるわけですが、そうすると、一体、引き渡さないというのが原則なのか、引き渡すというのが原則なのか、どうもよくわからないんですが、どっちが原則なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/64
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065・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) この法律は、もともと国際協力、国際正義を実現していくということについての友好国間の相互協力というところを基調にした法律でございますので、引き渡すのが原則であります。しかしながら、引き渡すのが原則でありますが、二条の各号に該当するような場合には引き渡しはできない。これは国際慣行として引き渡さなくても友好関係を阻害しないという国際慣行が成り立っておると、こう見ていい事由だと、かように理解しております。原則、例外の関係は、引き渡すのが原則であって、断わるのが例外である、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/65
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066・稲葉誠一
○稲葉誠一君 第二条の書き方から見れば、「左の各号の一に該当する場合には、逃亡犯罪人を引き渡してはならない。」というんですから、その反面解釈から言えば、これはいまの局長の言われたようになるわけですね。
自国民不引き渡しの原則というものを非常に強く主張し、それが行なわれるということになれば、逃亡犯罪人引き渡しというものは全く意味がなくなってしまうのじゃないですか、それが強く行なわれれば。そこはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/66
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067・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは強く行なわれていると私は思うのでございます。しかし、それは行なわれますけれども、自国民ならば犯罪人でありましてもこれを保護して知らぬふりをするという趣旨ではないわけであります。自国民の場合には、自国の法律で処罰できる場合かできない場合か、もし処罰ができるものならば、処罰をしたということで、相手方へ自分のほうは処罰をしたから送らないというようなことの事後処理の手続が規定してあるのが普通でございまして、現にヨーロッパ条約などを見ますと、そういう規定も条約の中に書いてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/67
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068・稲葉誠一
○稲葉誠一君 この前、この点に関連して、局長だったか、属地主義というようなことを言われましたね。属地主義と属人主義というのがいろいろあるわけですけれども、国籍の問題なんかにも出てきますけれども、自国民不引き渡しの原則と属地主義とは一体どういう関係があるのですか。何か属地主義だから自国民不引き渡しの原則が非常に強くなるとか弱くなるとかいうように言うのか、そこの点がはっきりしませんがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/68
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069・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 直接には関係が私はあるとも思いませんのでございますが、ただ、自国民を保護する結果、自国で自国民を処罰することができない場合があり得るわけです、属地主義をとっております国におきましては。そこで、アメリカ、イギリス等の英法系の諸国では非常に属地主義をとっております。したがって、処罰ができないという場合がありますために、自国民でありましても引き渡しを考慮しておるわけでございまして、それに反して属人主義をとっておる国では、国外犯というような考え方がございまして、自国でも処罰できるという道が開かれておりますので、引き渡さなくても自分の国で処罰をしていくということがやれるわけでございます。そういうことで、属人主義、属地主義をとるかどうかによって自国民をある程度引き渡していかざるを得ない国も出てくる、そのことを申したわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/69
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070・稲葉誠一
○稲葉誠一君 ちょっと私のほうが理解が足らないかとも思うんですが、属地主義をとっておるというと、犯罪人が自分の国に来れば自分の国に属しているのだからというので不引き渡しの原則が強く出てくるということなんですか。したがって、それによってまた自分の国ではその人を処罰するかしないかということの裁量の幅も非常に大きいのだ、こういうことなんですか。どうもよくわからないのですがね、からみ合いというものが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/70
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071・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) その点は、局長の申し上げました点を補足してちょっと御説明いたしますが、わが国をはじめといたしますいわゆる大陸法系の刑法を持っております国では、たとえば日本の刑法の第三条にもございますように、日本国民が外国で犯罪を犯しましても、ある程度重いものでございますと、日本へ戻ってきたときに日本の刑法で処罰をするわけでございます。ところが、英米法系の国の一部では属地主義をとっております。その属地主義と申しますのは、アメリカならアメリカの国内で重い犯罪だけを処罰するということになっておりますから、アメリカ人がヨーロッパへ参りましてそこで犯罪を犯しましてアメリカへ戻って参りましても、相当な重要な犯罪でも処罰ができないということになるわけでございます。そこで、逃亡犯罪人を引き渡すということが行なわれます一つのバック・グラウンドとして、犯罪人を免れしめないという思想があるわけでございます。その思想といまの属地主義とをからみ合わせて見ますと、自国民を保護することはよろしいのですが、保護するかわりに凶悪犯人でございましても処罰ができないという結果になるわけでございます。したがいまして、そのような場合には、自国民であっても裁判できる国から引き渡せという請求があれば引き渡してそこで処罰をしてもらおうという考え方が英米法系の一部の国にあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/71
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072・稲葉誠一
○稲葉誠一君 英米法糸の一部の国にあるというのはどういう意味なんですか。ことばじりをとらえて恐縮ですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/72
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073・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 英米法系の国と申しますと、東南アジアにも相当あるわけでございます。たとえばインドでございますとかいろいろあるわけでございます。一部と申しましたのは、なるべく正確を期そうと思いましてそういうものは除外する意味で申したのでございまして、具体的にはアメリカとイギリスでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/73
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074・稲葉誠一
○稲葉誠一君 日本の刑法が大陸法系だと。これはそのとおりだと思うんです。刑事訴訟法は英米法系をとっているのじゃないですか。刑事訴訟法が英米法系をとっておれば、当然刑法なら刑法というものもそれにマッチする形をとるとか、あるいは実体法が大陸法ならば手続法も大陸法をとらなければおかしいとか、そこら辺のことがあるので、日本の刑法と刑事訴訟法との間に何かギャップがあるのじゃないですか。そこのところはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/74
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075・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) この点は、一般抽象的に申しますと、刑訴と刑法は車の両輪のようなものでございますから、同じシステムの上に立っているほうがいいというふうに言われるのでございますけれども、諸外国の法律を継受しておる国としましては、これは英米法の法律ならば全部が英米法だというのでは必ずしもないのであって、日本のような場合は独特な国だというのではございませんで、大体大陸法の実体法を持っておって手続法は英米法的な手続だという国もほかにもございますし、そのまた逆の場合もあろうかと思いますが、本来これは一致しなければならぬ性質のものではなくて、特に、犯罪人を——外国で犯した日本人、この犯罪人を日本へ帰ってきた場合に処罰するかどうかという属地主義、属人主義の考え方というものは、やはりその国の歴史的なものを無視してきめるわけにはいかないと思うのでございまして、日本も明治以後外国の法律を継受したのではありまするけれども、近く百年にもなろうとしておるのでありまして、属人主義的な考え方というものは牢固としてあると思います。そういうものでありますならば、手続法が英米法的になってきたからといって一挙に属地主義に切りかえていくということも国民感情に必ずしも合うとは考えておらないのでございまして、属人主義か属地主義かということは、やはりその国の法律沿革の歴史の中に芽ばえてきたものでございますので、この点は英米的になっておりませんけれども、そういうことはドイツにおいてもあり得ることなんで、そのことをもって両者が一致しないからおかしいというふうにもすぐは言えないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/75
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076・稲葉誠一
○稲葉誠一君 私は英米法がいいとか大陸法がいいとか言っているわけではないんですが、刑法改正案が出ているというか討議されている中で、いまのいうところの属人主義というものに対する批判、検討というものがなされておるんですか、刑法改正の準備草案で。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/76
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077・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは準備草案の段階におきましては十分論議をいたして、大体法律感情というものは無視できないという考え方から、属人主義、属地主義、こういうものの妥協したような現行法のラインで大体固まっておりますし、現在行なわれております法制審議会の第一小委員会におきましてこの問題を取り上げておりますので、やはり大体その線で議論が進められておるように承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/77
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078・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、刑法の第三条というのは、これはあれですか、変わるというんですか。変わる可能性はあるというわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/78
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079・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 中の条文をどの程度のものを国外犯とするかということについてのこまかい点は多少変化があるかもしれませんが、大筋といたしましては変わらないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/79
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080・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いま言った刑法の第三条の、国民の国外犯ですね、この規定がずっとあるわけですが、これと、引渡法の第二条にある、改正でいくと三号、四号ですか、との関係はどうなっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/80
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081・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 刑法第三条と、逃亡犯罪人引渡法の今度の改正案の新しい二条三号、四号とは、直接関係はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/81
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082・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、たとえば四号のほうを先にお聞きしますが、これは日本の国内における犯罪なんですから、それが「当該行為が日本国の法令により死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮に処すべき罪にあたるものでないとき。」ということは、「あたるもの」であるときには引き渡すのだと、こういうことになるわけですね、裏から読むというと。これは一体どういう基準であれしておるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/82
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083・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) この四号は、条約がございますると、その中身につきまして条約で規定をするわけでございますが、条約がない場合には、相互主義によって引き渡すかどうかをきめるわけでございますが、相互主義でやります場合には、やはり引き渡す犯罪の大体の基準を規定しておく必要があるというので規定したのでございまして、ここに掲げております「死刑又は無期若しくは長期三年以上」というのは、刑事訴訟法の中でもやはり用語がなじみになっておるわけですが、これはいわゆる重い罪という一つの基準で書かれております。そこで、軽い罪については引き渡さない、しかし重い罪については引き渡さざるを得ないということで、もしその罪が日本で裁判をしたとすればこれらの重い罪に該当するものであるという場合に、相互主義による引き渡しの場合に考慮すべき犯罪、こういう犯罪の基準をここへ掲げたわけでございます。つまり、重い罪という基準として掲げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/83
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084・稲葉誠一
○稲葉誠一君 三号と四号とは両方なくちゃいけないですか。一方四号だけではいけないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/84
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085・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 諸外国の立法例を見ますと、少数ではございますが、いま御指摘の四号に当たる規定だけしか置いていない国もあるわけでございます。しかし、考えてみますと、わが国では相当重い刑をもって臨む罪でありましても、引き取ろうとするいわゆる請求国の法令ではたいへん軽い罪であるというようなことになりますと、そういう軽い罪のためにわざわざ引き渡すということと、その当該逃亡犯罪人の人権保障との問題とのかね合いの問題が起こってまいりますので、その調和点を、どこに設けるかということで、大多数の立法例も双方の国で一定以上の刑に当たるものであることということを要件にしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/85
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086・稲葉誠一
○稲葉誠一君 日本では重くて外国では軽いと、同じ行為がね。そういうふうなものが——一般犯罪ですよ。これはまあ政治犯罪とかなんとかの場合は別だと思いますね。特別なわけですね。一般犯罪でそんなものはあるんですか。あったら教えてくれませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/86
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087・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) わが国で重くて請求国で軽いと……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/87
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088・稲葉誠一
○稲葉誠一君 その逆のやつもあるんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/88
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089・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) というのは、わが国の刑罰が一般的にその重くございませんので、特別な日本国の特殊事情に基づいて認められます罪以外にはあまり見当たりません。わずかに見当たりますのは、たとえば関税法違反の一部のように、他の国では非常に軽かったり、また罪とならなかったりする場合がございます。
逆の場合はしばしば考えられるわけでございまして、たとえば一例をあげますと、スパイ罪というようなものを考えてみますと、他の国では相当重い罪で処罰されますのに、わが国では罪とならないというようなことがございます。かりに当該逃亡犯罪人が公務員であったといたしまして国家公務員法違反ということになりますと、四号に該当しない低い刑の罪だということになるわけで、相当いろいろな罪種にわたって例は考え得ると、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/89
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090・稲葉誠一
○稲葉誠一君 四号で「引渡犯罪に係る行為が日本国内において行なわれたとした場合において、」云々と、こうありますね。これはもちろん法定刑を言っているのだと思いますけれども、何と何がこれに当てはまるんですか。一覧表を出してくださいよ、何と何が当てはまるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/90
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091・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) どういう罪名のものが当てはまるかという点につきましては、私どもで一応まとめたものはございますけれども、たいへん膨大なものでございまして、各種特別法にまたがってまいります。時々刻々国会がございますごとに法の改正があっていろいろ追加されたりしておりますので、若干の時間を拝借いたしませんと的確な資料は作成するのが困難ではないかと思います。一応私ども刑事局におきまして罰則の全体について通観いたしておりますから、調べてはございますが、それをまとめるということに技術的な若干の日時を要すると、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/91
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092・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それは今度の国会中に成立したものは除いてけっこうですよ。先国会までということでないと、それはなかなかまとめるといっても無理ですからね。まあ特別法の場合は特殊なものがありますから、特別法全部あれしろといっても無理ですから、特にこういうような逃亡犯罪人に関連して起きるというか関係すると思われる犯罪がありますね、特別法でも。たとえば関税法であるとか為替法とかそういうのが多いのじゃないですか、わりあいに。逃亡犯罪人引渡法に関連して起きると考えられる特別法とはどんなものがあるわけですか。これは正確にこれとこれだというわけにはいきませんでしょうけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/92
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093・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 考えられますのは、いま御指摘の関税法とか外国為替管理法は、わが国では罪となりましても、外国では罪となりません。たとえば日本へ密輸入する罪というのは、アメリカでは処罰の対象になりません。そういう意味におきまして、逃亡犯罪人引き渡しにかかってくる場合というのは比較的少ないのではないかと思います。特別法で考えられますのは、常識的に予想されますのは、たとえば麻薬取締法というようなものであると存じます。
先ほどの御要望の点でございますが、刑法あるいは準刑法、それに麻薬取締法、この程度でございますと、比較的簡単に出せるのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/93
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094・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それは当然できているのじゃないですか。ある程度の調べで、あなたのほうでできているものでけっこうですよ。この次に出していただきたい。
いま言われた密入国の場合なんかは、アメリカから日本に入ってくるときはアメリカでは犯罪にならないんですか。アメリカから日本に密入国するときに、アメリカとしては犯罪にならないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/94
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095・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 日本へ密輸入したということは、日本の法律ではじめて罪になることであって、アメリカでは罪にならないと、こういうことを申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/95
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096・稲葉誠一
○稲葉誠一君 密輸入ですか、密出国の話ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/96
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097・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 関税法でございますから、密輸入でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/97
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098・稲葉誠一
○稲葉誠一君 ちょっと前に戻って恐縮ですけれども、第一条でいう「犯罪人」というのの定義はどういうふうにするわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/98
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099・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 第一条で申します「犯罪人」は、特に定義規定を置いておりませんので、一般常識的な意味における犯罪人、犯罪を犯した者という程度の意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/99
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100・稲葉誠一
○稲葉誠一君 しかし、この場合は「引渡犯罪」の定義がきまっておるのじゃないですか。引渡犯罪を犯した犯罪人ということになるのじゃないですか。それより広い範囲ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/100
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101・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) ここで定義をしておりますのは「逃亡犯罪人」というものを定義しておるわけでございまして、犯罪人というのは非常に広い概念で、そのうち引き渡し請求がなされたものが逃亡犯罪人ということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/101
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102・稲葉誠一
○稲葉誠一君 逃亡犯罪人というのは、引き渡し請求があった犯罪人が逃亡犯罪人だと。だから、犯罪人よりも概念としては狭いわけですね。これはあたりまえなわけですが。
そうすると、犯罪人ということに対する定義はないわけですか、日本では。普通、刑法で犯罪人ということばを使う場合に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/102
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103・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 刑法では犯罪人ということばは使っておりませんで、「罪ヲ犯シタル者」というような言い方をしておるわけでございます。しかし、国際社会で一般的に犯罪人という概念がございますので、それをそのまま使っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/103
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104・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それなら、犯罪人というものの定義があるのじゃないですか。犯罪人とはどういう定義かということを私聞いておるわけですけれども、その定義があるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/104
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105・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 一般的に定義をいたしますと、ある国の法律に違反して罪を科せられるべき者ということになると存じますが、この法律におきましては、「逃亡犯罪人」というものを「引渡犯罪について請求国の刑事に関する手続が行なわれた者」というふうに定義をいたしますれば、自後は、「逃亡犯罪人」ということで受けて規定してまいりますので、犯罪人そのものを特に定義をする必要はないということが言えるかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/105
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106・稲葉誠一
○稲葉誠一君 逃亡犯罪人というのは犯罪人よりも狭い範囲の概念になるわけですね。それはやっぱり犯罪人という概念を受けてこなければ逃亡犯罪人というものは出てこないと思うので、犯罪人とは何であるかということはやっぱり日本の刑法上はっきりしておるのじゃないですか。そうでないとはっきりしないのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/106
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107・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) これはわが国の刑法で定められた罪を犯した者であるかどうかというようなことに関係なく、要するに世界じゅうのどこかの地域でどこかの法律に違反する行為をした、いわゆる犯罪を犯した者ということでございまして、第一条の三項にもございますように、「請求国からの犯罪人の引渡しの請求において」云々とございますように、犯罪人の引き渡しという概念は、あらためて定義をするまでもなく、諸外国あるいは国内法においても通用する概念でございますので、特に犯罪人というのが何であるかということを定義づける必要はどうも薄いのじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/107
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108・稲葉誠一
○稲葉誠一君 私の聞いておるのは、犯罪人というものの定義というよりも、むしろ犯罪人の要件というものが各国において違うのじゃないかということを言っておるわけですよ。ここにいうところの第一条の第三項ですか、「「引渡犯罪」とは、請求国からの犯罪人の引渡しの請求において」云々というのだけれども、そうすると、これは、官憲の発する令状なら令状によって逮捕された者とか、逮捕状を執行されたけれども逃げておるとか、逮捕状が出ておるとか、そういうふうなものを犯罪人と言うんですか、あるいは、それ以前のものであっても犯罪人と言うのかということですね。時期的な連関の中でどこで犯罪人というものを断ち切っておるのかということですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/108
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109・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 御趣旨がわかりましたが、犯罪人と申しますと、その罪を現に行なったときから刑の執行を受けて終わるまで、さらに終わってからもそういう概念が考えられ得るかもわかりませんが、広い概念でございますが、逃亡犯罪人と申しますと、四項にございますように、「請求国の刑事に関する手続が行なわれた者」ということになりますから、いま御指摘の、逮捕状が出たとか、あるいは公判中に逃亡したとか、そういうものに限られてくるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/109
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110・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると刑事に関する手続というのはどこから始まるのですか。どこからが刑事に関する手続として認めるわけなんですか。日本の場合はどうなんですか。各国の場合は、いろいろあるけれども、たとえばアメリカの場合はどうなっているんですか。いろいろあるんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/110
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111・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 日本の場合を例にとってみますと、いやしくも外国に引き渡しの請求をするわけでございますから、身柄を引き取るだけの法的根拠がなければいけないわけで、そういう意味におきまして、令状が出ておる——逮捕状が出ておる、あるいは勾留状が出ておる、あるいは公判中に逃亡したために収監状が出ておる、あるいは刑の執行中に逃亡したためにやはり収監状が出ておる、そういうものになろうと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/111
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112・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、単に犯罪の容疑というかそういう段階のものが日本へ逃げてきたという場合には、これには当たらないわけですか。——そういう意味ですね。
そこで、「「引渡犯罪」とは、」云々と、こう定義があるんですが、引渡犯罪をきめるというか規定する方式はどういうふうにしているわけですか、日本では。刑によって引渡犯罪をきめるという行き方をとっているわけですね。いまの、死刑、無期とか、または三年以上とかという形をとっているわけですけれども、必ずしもそういう形じゃなくて、いろいろな立法例があるんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/112
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113・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) お答えいたします場合にちょっとお断わりしておきますが、一条三項で申します「引渡犯罪」というのは、こういう犯罪を犯した者だから引き渡してくれと言ってきた具体的な犯罪を言っているわけであります。お尋ねの場合にお使いいただきました「引渡犯罪」というのは、引き渡し得る犯罪という御趣旨だろうと思います。その御趣旨に沿ってお答えしたいと思いますが、条約があります場合には、条約で罪名を列挙するという行き方と、それから法定刑でもって下のほうを切って捨てる形で規定するのとございます。その条約に基づかない場合につきましては、引き渡す側の国の国内法で適当にそれぞれの考えで規定するわけでございますが、多くの立法例を見ますと、お手元にも差し上げてございます「立法例集」にございますように、法律上引き渡し得る犯罪の罪名を列挙する行き方と、それから引き渡し得る犯罪に科せられるべき刑の下限を切って制限をするという行き方と二通りございまして、比較的古い時代につくられました立法例は罪名を列挙するという行き方をとっており、比較的新しい立法は後者のすなわち法定刑の下限で切るという定め方をしておる場合が多いわけでございますが、なお、そのほかにも、引き渡し得る犯罪の中でも、今度は引き渡し得ない場合として、政治犯罪でございますとか、自国民とか、いろいろなものを列挙しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/113
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114・稲葉誠一
○稲葉誠一君 日米犯罪人引渡条約では、第二条で十五項目ですか、ずっと列挙しているんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/114
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115・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) さようでございます。十四項目でございまして、それから追加条約で若干補正されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/115
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116・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、この引渡法を改正されてくると、改正法の第二条の三号、四号との間で食い違ってくるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/116
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117・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 現在、日米犯罪人引渡条約に列挙されております犯罪で、わが国の法令によって長期三年未満の刑にしか当たらないものはございません。米国におきましても同様でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/117
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118・稲葉誠一
○稲葉誠一君 現在はないとしても、これがあなたの言われたように特別法が出てくる、あるいは刑法も改正になる、こういうようになってくれば、逃亡犯罪人引渡法の第二条の三号あるいは四号というものは自主的に内容が拡充してくるわけですね。ふえていくわけでしょう。そうすると、日米犯罪人引渡条約との範囲が食い違ってくる、そういうことが考えられるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/118
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119・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) その心配はないわけでございまして、二条のいわゆる柱のほうに、第三号、第四号等につきましては、引渡条約に異なる定めがあればそちらが優先するということをうたってございますので、たとえば日米引渡条約に非常に軽い法定刑の上限が二年というようなものがかりに入りますと、自動的にその部分は広がっていくということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/119
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120・稲葉誠一
○稲葉誠一君 引渡条約に別段の定めがあれば、もちろんそちらが優先するわけですが、そうすると、引渡条約がある場合と、それからないところでこの改正法でいくところとでは、その犯罪の内容が食い違うこともあり得るわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/120
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121・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) さようでございます。食い違う場合があり得ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/121
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122・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それは国によって食い違うというのは、それはそれだけの理由があるかもしれませんけれども、やはりこれはある程度万国共通のような形をとったほうがいいということになれば、日米犯罪人引渡条約もこの改正案に近づけるような形で規定のしかたを変えていく必要があるのじゃないですか。そのほうがいいのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/122
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123・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 理論的には食い違う場合があるのでございますが、仰せのように、国際正義を実現する、協力すると、こういう趣旨からいたしますと、ばらばらになるということは適当でございません。先ほど伊藤参事官が申しましたように、日米間の犯罪人引渡条約によりましても、ただいま二条に規定しておりますような、以下の、それよりも軽い罪は引渡条約にも入っておりませんし、したがって、これで歩調が合っておるわけでございますが、将来アメリカ以外の国と引渡条約を結ぶとか、あるいは多国間の国際条約を結ぶというような場合には、やはり三号、四号の一定の基準の犯罪以下のものが引渡条約の中に入ってくるということは、やはり条約を結ぶ際に慎重に考慮しなければならぬことだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/123
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124・後藤義隆
○後藤義隆君 さっき稲葉委員からの質問があったのでありますけれども、憲法の九十八条の第二項ですね、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」、この「国際法規」というのは、慣例法とかあるいは慣行とかそういうものまでも含むのですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/124
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125・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 国際法のことにつきましては、十分な知識を持っておらないのでございますけれども、私どもの理解しておりますところでは、「確立された国際法規」と、こう書いてありまして、法規でございますので、これは成文法的になっておりますのは国際条約でございます。成文法になっておりませんでも、法的評価を受ける程度に確立しておることが必要でございます。そこで、国際慣行というのは一つの慣習でございますけれども、国際慣習法というふうになるかどうかということになりますと、慣習法と認められるものにつきましては、憲法九十八条二項のいわゆる「確立された国際法規」と解していいと思いますが、慣習法にまで至らない慣行という程度でございますと、国際法規と見るかどうかということにつきましては疑念が存するわけでございまして、先ほどそういう意味でお答えを申し上げたのでございますが、国際法の法源を探究してまいりますと、学者によりましては、非常にこの国際法の法規という範囲を広く見る方もありますし、狭く解する見方もあると思いますので、国内法との関係において理解をいたします場合には、やはりそこは判断は慎重でなければならぬというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/125
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126・後藤義隆
○後藤義隆君 それからやはり憲法の三十三条、あるいは三十四条にも関連を持つことでありますが、そうして刑法の第二条とは全然関係はないのですが、逃亡犯罪人が日本の国内に居住しておるというようなときに引き渡しを求められたときに、実際に引き渡す方法ですね、それは、拘禁状を出して拘禁するんですか、どうするんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/126
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127・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 実際に引き渡す手続はこの法律にずっと書いてあるわけでございますが、拘禁状を出します場合は、条約に基づいてやる場合と、それから相互主義の保証があって引き渡すことに決定して引き渡ししようとする場合と、両方にこの拘禁状を使うわけでございますが、さらにこの法律によりますと仮拘禁状というのがございます。この仮の拘禁というものは、条約で引き渡しをする場合だけに限っております。その限りましたのは、できるだけ人権を尊重していこうという考えに立っているのでございますけれども、手続を見ますと、条約にあります場合には、どういう犯罪人の引き渡しの請求をしてくるかということは、もう条約そのものに規定してございますので、その点の疑いというものはない。問題は、その指定されておる人が当該人であるかどうかということがむしろ問題なのであります。ところが、条約に基づかないで請求をしてまいります場合には、その以前の問題として、引き渡すかどうかを検討する段階がございます。そこで、そういう検討をしている段階に身柄を確保する必要があるというので仮拘禁状を出して身柄を拘束するということになりますと、勢いその拘束期間というものは長くなるわけでございまして、そういう点は適当でございませんので、それをやめまして、いよいよ引き渡すことが相当だという判断をする段階になってもし必要があるならば身柄を拘禁する。それは拘禁状によって拘禁する。しかし、それは必ずしも拘禁せねばならぬというのではなくて、身柄さえ確保される道があるならば、しいて拘禁する必要はございませんので、その判断は検察官が責任を持ってする、こういうたてまえに法律はなっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/127
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128・後藤義隆
○後藤義隆君 それからこの条文の第二条の三号と四号の関係ですが、これは日本の法律で無期もしくは長期三年以上の懲役に当たらなくても、請求国の法律でもって非常に——日本では罰してなくても、あるいはまた非常に軽いものでも、請求国の法律で非常にそれを重く処罰するような場合に、国情によって違うのですが、そういうようなときには、請求国が必要があって請求するのだから、引き渡すようなふうに、むしろ四号を抹消して、三号だけにしたほうが適当なんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/128
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129・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 御意見ごもっともな点もあるのでございますが、やはりわが法権のもとにある——日本人であろうと、外国人であろうと、いやしくもわが法権のもとにある人を外国の要求によってその外国に身柄を引き渡そう、こういう場合でございますので、請求をする国において重い罪に当たる犯罪を犯しておるということはもちろん必要でございますが、これを日本の法律に照らしてみてもなおかつそれは相当重い罪であるという、両国の側からそれぞれ見てなお重い罪であるという場合にのみ引き渡すということがやはりこれは人権を全うしていくことと、わが国の法権を持っておるという立場から考えまして、その辺に線を引いてまいりますのが妥当であるというふうに考えておるわけで、この原則も、大体私は各国でそういう原則を貫いておると思うのでございます。ことに第三号、四号は、条約に基づかないでやる場合の一つの基準を定めておるのでございまして、そうだとしますと、相互主義でございますので、日本では犯罪にならない、向こうでは重い罪になるのだというので、要求があれば引き渡すという場合に、今度はこちらからほしいという場合に、相互主義でございますと、こちらは犯罪にならないようなものを引き渡すというようなことになりますと、今度はもらうときに困るわけで、やるにしても、もらうにしても、お互いにそれぞれどこの国と両方の国の法律評価をいたしましても大体同じ程度の罪であるということでないとそれは相互主義にならないわけでございますから、これはやはり三号と四号とは同じような文言が使ってございますけれども、両方の国で見て重い罪であるという一つの基準を定めたものとして、やはりこれは必要だというふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/129
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130・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いまの相互主義ということばが盛んに出てくるんですが、第一条第二項に「外国」というのがありますね。「「請求国」とは、日本国に対して犯罪人の引渡しを請求した外国をいう。」、こうあるわけですね。まあこれはわかったといえばわかったようなことですが、外国といえば、日本以外の国だというようなことになるんですが、この「外国」というのは、どういうようなこれは範囲なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/130
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131・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) おっしゃるとおり、日本国以外の国でございますが、法律的にもう少しこの中身を詰めて申しますと、日本国の施政権が排他的に及ぶ地域は、これは日本国の領域でございますので、その地域以外の地域であって、しかもその地域に対して外国の施政権が排他的に行なわれている国、そういうところをまあ外国と、こう申していいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/131
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132・稲葉誠一
○稲葉誠一君 具体的に言うと、その国を日本が承認しているとか、お互いに承認しているとか、それから国交が回復しているとか、いろいろあると思うんですが、そういうことがその条件になるんですか、ならないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/132
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133・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 外国という解釈のもとでは、未承認国、国交未回復国も、いま申したような地域でございますれば外国と、こう見ていいと思うのでございますけれども、ただ、この引渡法の背景をなしております原則、考え方というものは、先ほど申しましたように、国際法上、国際間におけるいわゆる犯罪人を見のがしてはおかないというその国際的な正義を実現するために国家の間で協力をしていく、そしてそれは友好関係を増進することにも役立つのだというところにその背景があるわけでございますので、いま申しました未承認国とか、あるいは国交未回復国というものにつきましては、外交ルートというものがないわけでございまして、逃亡犯罪人の引き渡しの請求は外交ルートを通じてなされるわけでございますから、その外交ルートがございません場合には、外国という文字の中にはそういう国も入るといたしましても、そういう国からの引き渡し請求に対しましてこの法律で引き渡しに応じなければならぬということは出てこないわけで、その点はいまの趣旨で拒絶できるわけでございまして、その点を書いてありますのが四条の第一項三号、四条の第二項などの規定だと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/133
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134・稲葉誠一
○稲葉誠一君 たとえば韓国ですね、それから沖繩は、これはどういうふうになっているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/134
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135・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 韓国も外国という概念の中に入ると思いますし、それから沖繩につきましてもやはり外国という概念の中へ入れざるを得ないというふうに思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/135
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136・稲葉誠一
○稲葉誠一君 これは非常に重要な問題ですね。それで、この次に、裁判のことにも関連することですから、これは最高裁は刑事局長ですか、最高裁にも来ていただき、あるいは外務省からも来ていただいて、韓国と沖繩との関連で一体法律解釈はどうなるのだ、こういう点を聞きたいと思うんですがね。韓国は国交を回復していないんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/136
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137・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 私は、いま、外国という中に韓国が入るか、沖繩が入るか、こういうことの御質問と思いましてお答え申し上げたのでございます。未回復国でありましょうとも、未承認国でありましょうとも、日本国以外の国、先ほど申しました日本の施政権の及ばない地域であって、その国が施政権を排他的に持っておる地域、そういう地域の国ですね、それをまあ外国と、こういうふうに理解いたしますが、そういたしますと、韓国も外国という中へ入る、それから沖繩も残念ながら外国という中へ入れざるを得ないのじゃないか、この法律の解釈としましては。そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/137
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138・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、その外国というのがイコール請求国とはならないわけでしょう。請求国の概念の中に、請求できる外国と請求できない外国とあるわけでしょう。ちょっと変な言い方かもしれませんがね。その場合に、韓国なり沖繩はこの法律で言う請求国という外国の中に入ると承ってよろしいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/138
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139・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 私、正確なことはお答えできないのでございますが、まあ韓国につきましては外交代表部というのが東京にありますし、ある程度の国を代表して仕事をしておるように思うのでございますが、そういう場合にはこれを外国でありかつ請求——現実に許すかどうかは別として、請求し得る国の中に入れて理解すべきかどうかという点があると思いますが、私正確にはお答えしにくいのでありますけれども、そういうふうに思いますし、それから沖繩につきましては、これはアメリカが施政権を持っておりますので、この引渡法に関する限りはアメリカと同じように理解をすべきであるか、また、そう理解をするのはおかしいという議論も成り立つと思います。昨年の暮れでございましたが、沖繩の高等弁務官から、沖繩人で外国に行っておる者について、あるいは外国で犯罪を犯して沖繩に来ておる者ですね、そういう者に対しては外国からの請求があれば犯罪人引渡法によって引き渡しをするのだというような声明のようなものを出したようでございますが、それの法律的効果というようなものにつきましては、私ども慎重に検討を要する問題だと思います。その考え方は、はたして沖繩をアメリカの一つの州と同じように見ようとするのであるか、そこら辺がまだわかりませんので、これは検討を要する問題だと思いますので、確実な確定的なお答えがまだしにくい事情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/139
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140・稲葉誠一
○稲葉誠一君 確実な確定的なお答えというのは一体どこがするんですか。法務省がするのか、外務省がするんですか、どっちがするんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/140
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141・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) この引渡法の建前から申しますと、まず第一次的には外務省が受けまして、そこら辺の認定をした上で外務省の考えでこれは引き渡しすべき条件がそろっておるということになりますと、法務省にそれを移送をしてくるわけでございます。法務省が中身の実体的な問題を審査する、その審査で引き渡しすべきものだと考えた場合に裁判所の審判を仰いできめる、こういうことになっておりますから、外務省がそういう問題はきめる事項ではないかと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/141
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142・稲葉誠一
○稲葉誠一君 外務省は、いまの韓国と沖繩に関連すると、アジア局ですか。これは沖繩の場合は特別ななにがあるんじゃないですか、総理府の中に局が。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/142
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143・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 沖繩につきましては、総理府の中に特別地域連絡局、大竹さんが前にやっておられたあそこが取り扱っておるようでございます。韓国の問題はむろん外務省だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/143
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144・後藤義隆
○後藤義隆君 いまのに関連して。この法律から見てみますと、外国というのは、未承認国であっても国交未回復国であっても、やはりこの法律のいう外国の中には入るのではないか。ただ、引き渡すか引き渡さないか、あるいはそういう国は引き渡しの要求が事実上できないかもしれませんが、この法律自身としては、未承認国だから除外する、あるいは国交未回復国だから除外するというような区別をすべきじゃないんではないかというふうに思われるんですが、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/144
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145・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) そのとおりでございまして、先ほど来そういうふうにお答えを申し上げたわけでございます。ただ、仰せのとおり、それでは請求ができるかどうかといいますと、外交ルートを持っておらないわけでございますから、請求ができないだろう、こういう意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02419640519/145
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146・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 本案の質疑は一応この程度にいたしまして、本日はこれをもって散会いたします。
午後零時四十八分散会
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