1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年五月二十六日(火曜日)
午前十一時四十七分開会
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委員の異動
五月二十二日
辞任 補欠選任
丸茂 重貞君 鈴木 一司君
高橋 衞君 日高 広為君
五月二十三日
辞任 補欠選任
浅井 亨君 石田 次男君
五月二十五日
辞任 補欠選任
野坂 参三君 岩間 正男君
五月二十六日
辞任 補欠選任
宮澤 喜一君 丸茂 重貞君
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出席者は左のとおり。
委員長 中山 福藏君
理 事
後藤 義隆君
迫水 久常君
稲葉 誠一君
和泉 覚君
委 員
植木 光教君
栗原 祐幸君
鈴木 一司君
鈴木 万平君
田中 啓一君
日高 広為君
丸茂 重貞君
岩間 正男君
山高しげり君
政府委員
法務政務次官 天埜 良吉君
法務省民事局長 平賀 健太君
法務省刑事局長 竹内 壽平君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
説明員
法務省刑事局参
事官 伊藤 栄樹君
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本日の会議に付した案件
○理事の補欠互選の件
○鉄道公安職員の職務に関する法律を
廃止する法律案(中村順造君発議)
○民事訴訟法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
○商法の一部を改正する法律案(内閣
提出)
○逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する
法律案(内閣提出、衆議院送付)
○刑法の一部を改正する法律案(内閣
提出、衆議院送付)
○暴力行為等処罰に関する法律等の一
部を改正する法律案(内閣提出、衆
議院送付)
——————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/0
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001・中山福藏
○委員長(中山福藏君) これより法務委員会を開会いたします。
この際、委員の異動について御報告いたします。
本日、宮澤喜一君が辞任され、その補欠として丸茂重貞君が選任されました。
——————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/1
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002・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 理事の補欠互選についておはかりいたします。
去る五月十九日、理事迫水久常君が一時委員を辞任されましたため、理事に欠員を生じておりますので、その補欠互選を行ないたいと存じます。互選につきましては、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/2
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003・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 御異議ないと認め、理事に迫水久常君を指名いたします。
——————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/3
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004・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 本日は、鉄道公安職員の職務に関する法律を廃止する法律案、民事訴訟法の一部を改正する法律案、商法の一部を改正する法律案、逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律案、刑法の一部を改正する法律案及び暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案、以上六法案を便宜一括して議題といたします。
質疑のおありの方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/4
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005・岩間正男
○岩間正男君 私は逃亡犯罪人の引き渡しに関する法案について質問したいと思いますが、第一に、政府からもらいました「逃亡犯罪人引渡しに関する立法例」に二十三カ国の例が出されておりますが、その中で社会主義国のソ連、ドイツ民主共和国、チェコスロバキヤ、こういうものの立法例がないですね。これらの国ではこのような法律はどうなっておるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/5
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006・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) 在外公館を通じましてこれらの立法について照会いたしたのでございますが、いまだ回答がございませんために判明いたしませんが、立法としてはあるのではないかというふうにも思われるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/6
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007・岩間正男
○岩間正男君 これは実は資料がほしかったんですが、間に合わぬということになるわけですね。これはいつごろになるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/7
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008・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) すでに照会いたしましてから相当の時日を経過いたしておりますので、はたして入手できるかどうか、現在のところ不明の状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/8
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009・岩間正男
○岩間正男君 そうすると、内容もわからないわけですね。これらの社会主義諸国が日本以外の国と条約を結んでいるかどうか、こういうことは検討もされていないわけですか。在外公館からの報告がなければ内容がわからない、こういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/9
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010・伊藤栄樹
○説明員(伊藤栄樹君) それらの国が他の国との間に条約を結んでおるかどうかという点につきましては、わが国が当事国になっておりません関係で、わが国としては必ずしも明確でございませんが、戦前国際連盟に登録されました条約が全部で約百ほどございますが、それを見ますると、たとえばポーランド、スウェーデンとかいうように、社会主義諸国とそれ以外の国との間に条約が締結されておった例もあるようでございます。ただ、これらのものが戦後なお有効であるかどうかにつきましては・それらの国々につきまして調査いたしませんとわかりかねる、こういう状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/10
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011・岩間正男
○岩間正男君 この資料が——きょうおそらく採決されるだろうけれども、それまでに間に合わないわけですけれども、これはいつごろ提出されますか。在外公館に聞き合わしたが、だいぶ時間がたっているけれども返答がない、こういうことでは、はなはだ怠慢のように思うんですがね。つまり、そういう情勢がわからない形でこのままこの法律が改正されるのはちょっとぐあいが悪いんじゃないですか。それはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/11
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012・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは同じ時期に各国にできるだけ広く資料の収集につとめたわけでございますが、残念ながら社会主義国からは回答が得られませんために、資料を提出することかできなくなっておる状況でございまして、いつまで待てばいただけるものかというようなことにつきましては、私どもとしては予測が立たないわけでございます。御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/12
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013・岩間正男
○岩間正男君 これは不満足ですけれども、もっとやはり手を尽くてほしいと思います。
次に、政府資料の日本国と諸外国との間に行なわれた逃亡犯罪人の引き渡しに関する統計、このうち、条約によるものを見ると、アメリカとロシア——これは帝政ロシア時代のロシアです。それしかないわけですが、他の国とは相互主義によってやってきたんですか。どういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/13
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014・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 仰せのとおり、条約のありましたのはアメリカ合衆国とロシアでございまして、ロシアも、先般御説明申し上げたと思いますが、ただいまでは失効状態になっておると理解いたしておるのでございます。そこで、その他の国につきましての資料でございますが、これは結局は相互主義に基づく国際慣行によって手続がなされたものでありますが、中には、この手続が不十分でありますために、ここに示しました「原因別」によっておわかりのように、拒絶をしたものもありますし、また全くそれと違った経費の点で取りやめたものもありますし、犯罪人が行くえ不明になっておりますために取りやめたものもある等の処置になっておるのでございまいまして、条約国以外には相互主義に基づく国際慣行によって手続がなされておる、かように私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/14
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015・岩間正男
○岩間正男君 この法案の第一条のいままで「締約国」とあったのを「請求国」というふうに改正するわけですが、これは本法をこういうふうに改正しないでおくとぐあいが悪い理由があるのだろうと思うんですが、その理由というのはどういうのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/15
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016・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 現行法は「締約国」とありまして、何としましても文字から見ますると条約のある場合だけの引渡法に見えるのでございますが、条約があるなしにかかわらず、いま申したような国際慣行がございますことを考えますと、やはり諸外国の立法例にありますように、そういう国際慣行によって引き渡す場合をも引渡法の中に規定しておくのが相当である、かように考えまして改正案を出した次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/16
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017・岩間正男
○岩間正男君 現行法のままでいくと、日韓会談がかりに妥結する、そういうことになると、条約を新たに結ばなくてはならないようになるんですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/17
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018・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 御質問の趣旨がちょっとわかりかねておるのでございますが、まことに恐縮でございますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/18
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019・岩間正男
○岩間正男君 「締約国」ということになりますと、かりに日韓交渉がまとまるというようなそういう事態が起こった場合には、条約を結ばなければならぬことになる。それで、「締約国」じゃぐあいが悪いので、「請求国」と、そういうようなことになっているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/19
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020・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 日韓会談が妥結をいたしまして日韓間に条約ができたといたしましても、そのことは直接には犯罪人引渡条約とは関係がないわけだと私は思います。で、別途犯罪人引渡条約ができれば格別でございますが、一応現在の日韓会談の模様は、詳しいことは存じませんけれども、犯罪人引渡に関する条約のようなものが交渉されておるとは聞いておらないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/20
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021・岩間正男
○岩間正男君 現在は、そうすると、この法律で相互主義で韓国との間ではやっていくと、こういうことになるわけですね。そうすると、現実的に考えると、韓国から日本に脱出逃亡して来る者は非常に多い。しかし、日本から韓国に脱出逃亡するというような者はほとんど考えられないですね。相互主義というけれども、非常に一方的なものになると思うんですが、この点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/21
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022・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 相互主義はあくまで相互主義でございますので、一方的になるようなものは相互主義とは私ども解しておらないのでございます。したがって、今日まで相互主義に基づいて正式の引き渡しをした、あるいは引き取りをしたことは、日韓関係におきましてはないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/22
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023・岩間正男
○岩間正男君 次に、政治亡命、難民の問題ですね。法務省で言っておる相対的政治犯罪について、衆議院の法務委員会でたぶんこういう答弁をされていると思うんです。「一般の傾向としまして、引き渡す範囲を広めていこうという動きが、最近の世界の立法例の中にむしろだんだん認められるように思う」、これはどういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/23
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024・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは正しい見方であるかどうか私もあまり自信がないのでございますが、逃亡犯罪人引渡に関するヨーロッパ条約というのが一九五七年十二月十三日パリで調印されておるのでございますが、これに参加しております国は十五カ国でございますが、その条約の第三条を見ますると、「政治犯罪」という一項目があるわけでございまして、1から4まで項が分かれております。で、そこにも政治犯罪ということの定義が掲げてないのでございますが、第一項は、「政治犯罪又は政治犯罪に関連する犯罪であるとみなされるときには、逃亡犯罪人の引渡しは、認めてはならないものとする。」と、こう規定してございまして、第二項に、これに準ずる政治犯罪、準政治犯罪ともいうべきものが規定してございます。「普通の刑事犯罪についての逃亡犯罪人の引渡しの請求がその者の人種、宗教、国籍又は政治的意見を理由として起訴又は処罰するという目的のためになされているか又はその者の身の上がこれらのいずれかの理由によって危くされるおそれがあると被請求国が信ずる十分な理由のある場合にも、前項と同様とする。」と、こういうことになりまして、政治犯罪の範囲がやや広がっておるように思うのでございます。それから第三項に参りまして、「国の元首又はその家族の生命を奪う犯罪又はその未遂は、本条約の適用においては政治犯罪とみなさないものとする。」と、こういうことでございまして、この範囲がさらにまた、政治犯罪は引き渡さぬといいながら、また生命犯に対しましては政治犯罪とみなさないという考え方がここに出ておるのでございまして、こういうようなところから、広がっていくという意味は、国際間においてやはり国際協力を増進していく、そして国際正義を実現していく、そのために各国が協力をするという考え方が強く出ておる結果であろうと思うのでございまして、右のような新しい条約として多数国間できめられたヨーロッパ条約にそういう考え方が出ておるという意味におきまして、そのようにお答えを申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/24
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025・岩間正男
○岩間正男君 政治犯の解釈が、非常に人権を認める、そういうほうに広がっておると、こういうような精神ですね。そういうたてまえに立つとすれば、例をあげてお聞きしたいんですが、韓国の場合、国家保安法というのがありますが、その適用を受けた犯罪人があって、たとえば密入国で日本に逃亡してきた、こういうような場合ですね。これはどういう態度をとっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/25
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026・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) お尋ねのような場合に、今回の改正で明らかになったように、その者が韓国において刑事訴追ないし裁判の執行と、こういう刑事手続に乗った者として引き渡しを請求された場合に、はじめて政治犯罪引き渡しの問題がそこへ起こってくるのでございまして、そういう請求がなくて密入国した者が、帰れば自分の身があぶないからこちらに保護してほしいというようないわゆる申し立てをし、保護を求めてきた、こういう場合には、いわゆる政治亡命の問題になるわけでございまして、前者については、この法律によって引き渡すかどうかが問題となると思いますし、後者だけにとどまる場合には、入管令の問題として処理をされることになると思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/26
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027・岩間正男
○岩間正男君 現在の朴政権下で国家保安法が適用されておるわけですが、これは非常に極端な反共治安立法というふうに考えられます。これは中身を見てもそうですし、そうすると、さっきの精神から言うと、韓国との関係でこういう者に対する適用の解釈というものはこれはどういうふうになるんですか。非常に反共的な法案ですよ。しかし、いまの政治情勢の中ではそういう事態が、なんじゃないですか、政治情勢による判断で、法的なあくまで人権を守るというそういう立場というものが侵害されるという事態が起こり得る可能性もあると思うんですが、これは法務省の立場としてはどういうふうに考えるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/27
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028・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 法務省といたしましては、たびたびこの席から御説明申し上げておりますように、政治犯罪というものの一般的な定義は抽象的に申し上げ得るのでございますが、具体的にはやはり事件ごとに判断をしてきめるべき事柄でございますので、政治犯罪不引き渡しの原則のあります法律の趣旨等を十分慎重に検討いたしまして、もしそういうような事態が起こってまいりました場合には、解釈運用において遺憾なきを期していく所存でございますが、一般抽象的に申し上げることはすこぶる困難であるように思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/28
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029・岩間正男
○岩間正男君 これは国家保安法そのものの内容を検討すればわかると思うんですが、人権宣言なんかの精神から見れば、これは非常に違反しておるのじゃないか。反共的な思想、信条の自由を圧迫する、しかもそれは極端にそれに対する弾圧的な傾向を持っておるんですね。そういうものに対して、向こうから刑事犯罪人であるといって引き渡しを要求してくる、こういう事態に対しては、これは直ちにこれに同意するというような形をとるとすれば、そこのところはこの立法の精神からははずれるんじゃないか。あの法律そのものについての検討ということが非常に重要になってくると思うんですが、そうでないというと、現在のような政治情勢の中にある南朝鮮人の人権、ことに政治犯罪、政治亡命、そういうような点で法的にはっきりさしておくということが非常に必要だと考えるのですが、その点はどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/29
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030・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) まあ韓国との場合は引渡条約というものもないわけでございますから、かりにそういう事態が起こったといたしましても、相互主義によって引き渡すということになるわけでございますが、私は詳しい法律の内容はわかりませんが、いま仰せのような法律違反ということで訴追を受けておるという者が入国してきた場合に、そういう犯罪は日本では犯罪にならない案件だと思うわけでございまして、そうだとしますと、相互主義に乗らないことでございまして、引き渡すことはできない、かように思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/30
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031・岩間正男
○岩間正男君 実際の例ですね、日本から引き渡しを求めた事例について資料をいただいて読んだんですが、その中で、これと関連して聞きたいんですが、数年前にBOACのスチュワーデス殺し事件というのがベルギーの神父によって行なわれましたね。これは逮捕前にベルギーに逃亡した。この事件については具体的にはどのような措置をとったのか、この点お伺いしておきたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/31
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032・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは法務省としましては取り扱っておりませんので、警察当局としてもう少し日本にいて調べを徹底さしたいという気持ちがあったようでございましたが、何としましてもきめ手がないために出ていく者を押えることができなかった、こういうような実情に伺っておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/32
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033・岩間正男
○岩間正男君 これは、刑事で起訴されたという場合でなく、たとえば容疑者の逃亡の場合には、本法の適用というものはないわけですか。こういう場合はどうするんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/33
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034・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) この場合、稻葉先生の御質問でお答え申し上げたのでございますが、容疑の程度ではこの問題に乗ってこないのでございまして、少なくとも官憲の適法に出された逮捕状とか、勾留状とか、公判係属中とか、あるいは刑の執行のための収監状といったような、司法官憲の出された令状によって追及されておる者、かように考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/34
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035・岩間正男
○岩間正男君 私はこの問題と関連して最後にお聞きしたいんですが、米軍犯罪の問題ですね。たとえば例をあげますと、昭和二十七年春に仙台市中で運転手殺しが起こった。日本側の警察がピストルを発見して犯人を指摘したが、当時米軍側はこれを納得しない。ついにうやむやにしてしまって、本人は本国に送還されてしまったことがある。こういう例は相当起こっているのじゃないかというふうに思うわけですね。そうすると、当然この問題は在日米軍の問題ですから、安保による地位協定の問題と関連してくると思うんですね。こういう事態についてはどういうふうに処理してきたんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/35
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036・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 地位協定の第十七条第五項(a)によりますと、「日本国の当局及び合衆国の軍当局は、日本国の領域内における合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族の逮捕及び前諾項の規定に従って裁判権を行使すべき当局へのそれらの者の引渡しについて、相互に援助しなければならない。」と、こういう規定がございます。これには日米間の犯罪人引渡条約のような条件も何も書いてないのでございまして、私どもの理解としましては、この条約に優先して、事軍当局に関し対象が合衆国の軍隊の構成員等であり、裁判権がもし日本国にある場合の犯罪人の引き渡しに関します限りにおいては、軍当局と日本政府との間で「相互に援助しなければならない。」というこの規定に基づいて身柄の引き渡しを求めることになると思うのでございまして、アメリカに帰りました後も、もしその者がやはり軍の構成員でありますならば軍当局に協力を要請する、かような扱い方になると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/36
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037・岩間正男
○岩間正男君 いままでこういう案件は何件くらいありましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/37
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038・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 数件あったと思うのでございますが、そのうちのたしか一件は明らかに日本側に引き渡されているように承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/38
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039・岩間正男
○岩間正男君 米軍人の犯罪は、現行犯でない限り直接逮捕はできない、それから目撃者もなければ犯人を特定することは非常に困難である、犯人が基地内に逃げ込めばなおなかなかわからない、こういう事態が起こるわけです。こういう形で、相当凶悪な犯罪がそのまま消えてしまった、うやむやのうちに処理された、それで結局米軍はいつのまにかそういう犯罪をかくまってこれを本国に帰した、こういう事態が起こってきているんです。そうすると、行政協定があるので、日本に裁判権があるのだということで、一般論でこの問題はいかにも日本の主権が尊重されているようなことになっておりますけれども、実質の運用ではいまのような事例が非常にあると思う。米軍がそのような処置をした場合、これは非常に重大な問題だと私は考えるわけですね。そうすると、あなたたちは日米合同委員会の分科会で——刑事問題に対する分科会を持っておる、そういうとき、どうでしょうか、あの行政協定の適用される範囲というやつが非常に問題になってくると思うんですね。これは日本国内だけで終わってしまうんですか。米軍が本国のアメリカに帰っていった、逃げた、こういうような場合にはもう適用されない、こういう認定に立っているんですか。これはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/39
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040・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) さようでございませんで、日本国が裁判権を行使することにきまった事件につきましては、ただいま私読みました条文によりまして、身柄がかりにアメリカ本国に帰っておりましても、引き渡しを要求いたしておるのでございまして、現に引き渡されたものもあるという状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/40
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041・岩間正男
○岩間正男君 数件といいますが、その資料は、きょう法案は上がるでしょうけれども、いただけますか。資料はございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/41
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042・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは軍の関係もございまして、資料として出すことが相当であるかどうか、ただちに判定いたしかねますので、検討いたしました上でお答えを申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/42
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043・岩間正男
○岩間正男君 この問題は、日本人の権威の問題として、ことに日本の主権尊重の立場から、日本人に劣等感を与える問題なんですね。実際起こっている。で、私は、この引渡法の前に、当然これは行政協定の適用をもっと厳格にしなければならぬ、合意書の取りきめの線をもっと強力にしなければならぬと考えているんですけれども、どうも、どうもそうじゃない例が非常にあると思います。これは形の上では一応成り立っているかもしれぬが、ロングプリー、ジェラード事件、非常に発生しました。それなんかについても、これは非常に不十分だと国民は考えていますよ。十分だとは国民は考えていないんですね。そこへ持ってきていまのような引き渡された例が一つあるというんですけれども、もう米本国へ逃げて帰ってしまうと、なかなか実行されない、そういう事態が非常に多いと思うんです。で、いまの点は、明確にこれは米国に帰ってもその適用は受ける、そしてあくまでやはり引き渡しを優先してやる。だから、逃亡犯罪人の法律よりももっと優先する形で、そうしてあくまで行政協定のこの地位協定の精神というものを貫いていくという点は明確になっていますか。それからこれは合同委員会なんかでこういう問題はいままで討議されたことがありますか。これに対する政府の主張はどうなのか、これに対する米軍の態度はどうなのか、こういう点をここで明確にしていただくことがこの法律との関連で非常に私は重大だと考えますが、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/43
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044・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) この点は御心配はないのでありまして、私は明確になっておると思います。つまり、引渡条約よりも五項(a)は優先して適用されておりますし、条件も条約のようにしぼってはございませんので、これがまず優先適用を受ける。この点につきましては米軍側も異論のないところでございまして、法律的にははっきりいたしておると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/44
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045・岩間正男
○岩間正男君 そうすると、それは書類か何かで確認されておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/45
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046・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは一般法と特別法のような関係の、国際条約についての一般法と特別法でございまして、事軍に関しましては、これが特別法の立場でございますので、法律解釈として当然なことでございまして、これは相手方も異論を唱えていない事項でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/46
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047・岩間正男
○岩間正男君 合同委員会で問題になったことがありますか。日本側がこれを主張し、米軍が回答する、こういう事態がありましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/47
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048・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これはもちろん議論になりまして、現に引き渡しを受けた者もあるということを申し上げたわけでございまして、その点は何ら異論をはさむ余地のない事項でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/48
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049・岩間正男
○岩間正男君 その点は、これは資料としてはむずかしい問題かもしれませんが、もっとやはり国民にも周知徹底させていい問題だと思うんです。日本のやはり主権をあくまで尊重するというたてまえで、とにかく安保条約そのものというものは非常に主権をじゅうりんする立場に立っていろいろな事態が起こっているわけですから、そういう中で、はっきり日本人の持っている権利というものはこういうものだ、しかもこれははっきり地位協定によって明確にされている、この線に沿って合同委員会の合意書によって確認されているんだということを、これはやはり私は明確にしたほうがいいと思う。秘密にしておくべき事項ではないと思うんですけれども、こういうものについてもっと明らかにする必要はないでしょうか。また、そういう点を明らかにする手段を考えておりますか、おりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/49
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050・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 地位協定は、六法全書にもちゃんと載っておりまして、ただいま読みました十七条五項(a)は、はっきりしておるのでございまして、この点について当事者間に争いのないことでございますし、きわめて事柄は明確でございまして、私の申し上げますことを御了承賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/50
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051・岩間正男
○岩間正男君 先ほどの仙台の例については、これはだいぶ前のことですけれども、これはどうなったか御存じありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/51
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052・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 具体的事件につきましては、私、調査をしてみないとお答えしにくいのでございますが、ただ、まあ強盗などの事件で、しばしばことばの行き違い等から強盗のように見られる事件がよく調べてみるとそうでないという例は、これは間々あるのでございまして、ただいまお示しの仙台の事件がどういう事件でございますか、中身をよく検討してみませんといずれともお答えしにくいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/52
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053・岩間正男
○岩間正男君 米軍犯罪に対する資料は、これは当委員会ではまだもらっておりませんですが、これは発表して差しつかえないんだと思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/53
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054・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ただいまの点は、この法案と直接関係がないという考え方に立ちまして、資料を用意いたしませんでございましたけれども、具体的にはいまの仙台の事件というふうにして御指摘がございますれば、調査をいたしまして、何ぶんのお答えを申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/54
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055・岩間正男
○岩間正男君 仙台の事件もですが、米軍犯罪に対する最近の傾向というものは、これはまだよく私たちは具体的につかんでいないわけです。いままで犯罪白書の中ではこれは出てきていないわけですが、やはりこれは一応資料として当委員会に出してほしいと思います、どういう傾向をたどっているか。もっともこれは事件が少なくなっているかもしれませんけれども、犯罪の割合はどうなってきているのか、これはいかがですか。これは出してもらえるでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/55
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056・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 統計等は私どもの手元にございますので、それを差し上げますことはいささかもあれはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/56
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057・岩間正男
○岩間正男君 委員長、それを要求してください。
これで私は終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/57
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058・中山福藏
○委員長(中山福藏君) それでは、逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律案についての質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/58
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059・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 御異議ないと認め、これより討論に入ります。
御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/59
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060・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 御異議ないと認め、これより採決に入ります。
逃亡犯罪人引渡法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案どおり可決することに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/60
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061・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 全会一致でございます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本会議における口頭報告、議長に提出すべき報告書の作成等は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X02619640526/61
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062・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 御異議ないと認めて、さよう決定いたします。
それでは、本日はこれをもって散会いたします。
午後零時二十六分散会
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