1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年六月二十六日(金曜日)
午前十一時十七分開会
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委員の異動
六月二十六日
辞任 補欠選任
植木 光教君 重宗 雄三君
丸茂 重貞君 宮澤 喜一君
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出席者は左のとおり。
委員長 中山 福藏君
理事
後藤 義隆君
迫水 久常君
稲葉 誠一君
和泉 覚君
委員
植木 光教君
鈴木 一司君
鈴木 万平君
田中 啓一君
坪山 徳弥君
亀田 得治君
岩間 正男君
山高しげり君
国務大臣
法 務 大 臣 賀屋 興宣君
国 務 大 臣 赤澤 正道君
政府委員
警察庁長官 江口 俊男君
警察庁刑事局長 日原 正雄君
法務政務次官 天埜 良吉君
法務省刑事局長 竹内 壽平君
法務省矯正局長 大澤 一郎君
自治省選挙局長 長野 士郎君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
説明員
法務省刑事局参
事官 長島 敦君
国税庁直税部長 鳩山威一郎君
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本日の会議に付した案件
○刑法の一部を改正する法律案(内閣
提出、衆議院送付)
○戦争犯罪関係者の補償に関する請願
(第五八号)(第五四二号)(第一
二一一号)
○福岡法務局芦屋出張所存置に関する
請願(第七二号)
○青少年凶悪非行、少壮者狂暴犯行絶
滅法制定に関する請願(第二三六
号)
○長野地方法務局遠山出張所存置に関
する請願(第二八三号)
○福島地方法務局竹貫出張所存置に関
する請願(第三四六号)
○印鑑法制定に関する請願(第四五六
号)
○青森県鶴田町に法務局出張所設置に
関する請願(第七六〇号)
○戦争犯罪裁判関係者の補償に関する
請願(第七七一号)(第七九三号)
(第八五三号)(第八八三号)(第
八八九号)(第八九〇号)(第九一
七号)(第九四四号)(第九七一
号)(第九八四号)(第一〇一七
号)(第一〇七六号)(第一二三四
号)(第一三四二号)(第一五五二
号)(第一七四〇号)(第一八二二
号)
○厚木米海軍航空基地周辺地域住民に
対する人権侵犯事件調査促進に関す
る請願(第一二四二号)
○岐阜地方裁判所高山支部庁舎改築に
関する請願(第一九〇四号)
○暴力行為等処罰に関する法律等の一
部を改正する法律案反対に関する請
願(第一九五七号)(第一九五八
号)(第一九五九号)(第一九六〇
号)(第二三〇一号)(第二三〇二
号)(第二三〇三号)(第二三〇四
号)(第二三七一号)(第二三七二
号)(第二三七三号)(第二三七四
号)(第二三七五号)(第二四二四
号)(第二五三三号)(第二五三四
号)(第二五三五号)(第二五三六
号)(第二六三二号)(第二七四五
号)(第二七八六号)(第二八一八
号)(第二八三一号)(第二八三七
号)(第二八三八号)(第二八五八
号)(第二八八七号)(第二八八八
号)(第二九〇七号)(第二九一六
号)(第二九一七号)(第二九一八
号)(第二九一九号)(第二九二〇
号)(第二九二一号)(第二九三六
号)(第二九三七号)(第二九三八
号)(第二九六八号)(第二九六九
号)(第二九七〇号)(第二九七一
号)(第二九七二号)(第二九七三
号)(第二九七四号)(第二九八七
号)(第二九八九号)(第二九九〇
号)(第二九九一号)(第三〇〇四
号)(第三〇〇五号)(第三〇〇六
号)(第三〇一九号)(第三〇二〇
号)(第三〇二一号)(第三〇二二
号)(第三〇四四号)(第三〇四五
号)(第三〇四六号)(第三〇六七
号)(第三〇六八号)(第三〇六九
号)(第三〇七〇号)(第三〇七一
号)(第三〇七二号)(第三〇七三
号)(第三〇八四号)(第三〇八五
号)(第三〇八六号)(第三一〇八
号)(第三一〇九号)(第三一一〇
号)(第三一一一号)(第三一一二
号)(第三一五六号)(第三一五七
号)(第三一七六号)(第三一七七
号)(第三一七八号)(第三一七九
号)(第三一八〇号)(第三一八一
号)(第三一八二号)(第三一八三
号)(第三一八四号)(第三一八五
号)(第三一八六号)(第三一八七
号)(第三一八八号)(第三一八九
号)(第三一九〇号)(第三二一七
号)(第三二三五号)(第三二三六
号)(第三二三七号)
○松川事件等に関する請願(第二三〇
〇号)(第三〇四七号)
○青少年非行防止臨時措置法制定に関
する請願(第二四四六号)
○不動産の所有権移転登記に関する事
項の税務署に対する通知業務反対の
請願(第二五一二号)(第二五八一
号)(第二五八二号)(第二六六一
号)(第二七四九号)(第二八五六
号)(第二九四八号)(第三〇二三
号)(第三二三四号)
○水戸地方法務局出島出張所存置に関
する請願(第二八一七号)
○改正刑法準備草案第三百六十七条
(過失賦物罰)反対に関する請願(
第三一三〇号)
○継続審査要求に関する件
○継続調査要求に関する件
○委員派遣承認要求に関する件
○検察及び裁判の運営等に関する調査
(暴力団の捜査状況等に関する件)
(昭島市における脅迫事件等に関す
る件)
(三光タクシー丸山委員長刺殺事件
に関する件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/0
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001・中山福藏
○委員長(中山福藏君) これより法務委員会を開会いたします。
刑法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。稲葉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/1
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002・稲葉誠一
○稲葉誠一君 この刑法の一部を改正する法律案のこれは、刑法を一部改正するという形でやるようになったのはどういうわけですか。特に特別法をつくるというようなことはしなかったわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/2
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003・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) 技術的のことにも関係いたしますので、政府委員よりひとつお答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/3
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004・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 本来、この規定は刑法の規定でありますことは申すまでもないのでございますが、ただいま刑法の全面改正作業を鋭意推進しておる段階でございまして、その機会にこの営利誘拐の規定全般について検討していただくことになっておるのでございますが、最近の実情を見ますると、この改正作業がさらに数年後に持ち越されるとしか思えない現況にかんがみまして、急を要しますので、どうしても全面改正よりも早く改正をしたほうがいい、こういうことになったのでございます。そういうまあ刑法改正までのつなぎ的な改正という性格を持っておるのでございますが、そうだとすれば、ただいま御質問のように特別な法律をつくるということも検討の過程においていろいろ論議をいたしたのでございますが、やはり刑法のカテゴリーの中に入れましてつくりますことが、バランスを失しない限り、判例、解釈等を引用いたします点においても、解釈を明確にいたします点において毛、また運用に過誤なきを期する点におきましても適当であろう、こういうふうになりまして、刑法改正ということで立案をいたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/4
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005・稲葉誠一
○稲葉誠一君 私の聞いているのは、刑法の一部改正という形でやらなくても、特別法をつくってやるという形でできなかったのかということを聞いているわけですがね。その点に対してお答えがあったようにも考えるのですが、これが営利誘拐罪の加重類型というかそういうようなものだとすれば、暴力行為の場合に、暴力行為処罰法をつくったわけですから、それと同じような形で特別立法ということも考えられてよかったと思うのですが、それをやらなかったのはどういうわけかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/5
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006・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ただいまその点にもお答えをしたつもりでございましたが、特別法という考え方もあるのでございまして、現に数年前のこの参議院にも提案されたいきさつがございますが、私どもとしましては、いま申しましたように刑法の現行法の特別類型をつくる、こういう考えでございますが、営利誘拐の規定の章の中に特別規定を設ける、これが一番すわりのいい改正の手段である、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/6
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007・稲葉誠一
○稲葉誠一君 これは、前にもここにおられる中山福藏委員長を中心として幼児誘拐等処罰法案というものが昭和三十年七月に国会に提出されたことがあるんですが、この法案はどこか欠点があったんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/7
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008・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 当時、私どもの意見はこの委員会で申し上げたのでございますが、立法しようという御趣旨につきましては私どもいささかも反対ではないのでございますけれども、立法技術的に見まして若干の点で疑問が存しておったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/8
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009・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それは中山委員長の見解をお伺いするのが筋かと思うのですが、これは別として、その幼児誘拐等処罰法案というものが出たのは、立法技術的にどういう点が問題になったのですか。いかにも立法技術的に不備であったとか欠陥があったと言われると、中山委員長の名誉にかかわると思うんですが、どういう点が不備だったんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/9
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010・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 委員長の御熱心な御提案に対しまして私ども反対するわけでございまして、なんでございますが、御質問でございますのでお答えを申し上げさしていただきます。
当時の案は、幼児誘拐等処罰法案となっておりまして、幼児というのを七歳に満たない者という幼児の年齢の限定をつけておるのでございます。身のしろ金目的の誘拐の実例をみてまいりますと、幼児ももちろん入っておりますが、七歳以上の小学生の被害者になっております者のほうがかえって数字においては多いのでございますし、さらに中学生、大学生というふうに、おとなまでも含めてこの被害の対象になる者が実例としましてはあるのでございまして、そういう点に七歳に満たない者という限定につきまして私ども適当でないという考え方をいたしておるのでございます。
それから第二といたしまして、これはまあもともとこういう犯罪は日本にはなかったのが戦後に入ってきたのでございますが、外国でありますこの種の犯罪につきましても、なるほど初期のころにおきましては年齢的に制限をして、おとなの場合は身のしろ金の犯罪からはずして、多く未成年の場合、あるいはそれも年齢的には十五歳とするところもありますし、十八歳未満とするところもある等、いろいろ年齢の制限をつけておりますが、最近の学説と申しますか考え方の刑事法の発展の経過を見ますと、むしろこれは年齢を制限しないという方向に向かっておるように思うのでございまして、現にアメリカではたくさんこの種の法律が州の法律があるのでございますが、最近刊行されようとしておりますモデル・コードという立法の基準になっております法案を見ましても、これは年齢的な限定を与えないという態度をとっております。
それから第三点といたしまして、年齢の制限をいたしますと、非常に捜査がむずかしいのでございまして、特に七歳に満たないというのと七歳ちょうどというものの区別が、年齢に制限を与えますと、その認識があったかなかったかということが捜査上も裁判上も問題になるのでございまして、そういう点から申しますと、非常に捜査上も裁判上も事実認定の上で犯意との関係でむずかしくなってくる点がいろいろ欠陥があると思いますし、それからまた、現実に刑を量定いたします場合に、七歳に満たない場合であれば重い刑になるが、七歳をちょっとこした者になると一般の営利誘拐の罪で処断される、このアンバランスというのも必ずしも納得のいく筋合いではないということで、特に年齢を制限をしているというところに非常に疑問を感じたのでございます。
それからまた、法律論としまして、この案では、現行法の二百二十五条の営利誘拐の罪、これと身のしろ金要求目的の罪とは別途の罪であるという前提に立っておるのではないかと疑われる点があるのでございます。そういうお考え方は学者の中にもただいまでも抱いておられるががあるのでございますけれども、今日の判例並びに通説は、二百二十五条の営利誘拐の中に身のしろ金を目的とする誘拐も含んでおる、こういうふうに解せられておるのでございまして、そういう現行の判例、通説に反する考え方の御立案のようにも伺える点がある、こういうところが私どもとしましては疑問に感じた諸点でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/10
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011・稲葉誠一
○稲葉誠一君 このいまの刑法の一部改正案が通らないとき、まだ通っていないわけですけれども、その段階において、いわゆる身のしろ金目的の誘拐罪があった場合には、条文的にはどこでやっているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/11
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012・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 現行法のもとにおきましては、第二百二十五条の営利誘拐、これに入る。これがもう今日の判例でもあり通説になっている、かように私ども理解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/12
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013・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それは二百二十六条もそうですが、普通、恐喝が伴う場合があるから、それで併合罪になる場合が多いわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/13
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014・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 誘拐をした結果、身のしろ金を取得してしまった、こういう場合には、この取得行為は強盗になるか恐喝になるかという点は問題の存するところでございますが、おおむねただいまの判例の傾向から申しますと、そういう場合は恐喝になるということになっておりますのでで、二百二十五条の営利誘拐と恐喝との併合罪として処断される、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/14
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015・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、刑法のできた当時からいままでの営利という概念はどういうふうに理解されてきたわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/15
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016・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) この現行法の立案されました当時と、それからその後御承知のように刑法改正作業が行なわれてまいりまして、昭和十五年に仮案の発表にまでなっているのでございますが、この過程においてまだ身のしろ金目的の誘拐罪というものは日本にはなかったのでございまして——外国にはもちろんございました——ので、現行法の制定される当時におきましては、身のしろ金というような考え方はどうも議論の中に出ていないようでございまして、ここに言う営利というのは、よく私どもが常識的に申しますように、女をかどわかしてそれを苦界に沈める、それの前借金を取得しよう、こういうような形の誘拐、そういう目的の誘拐はすなわちこの典型的な営利誘拐に当たる、かような考え方、つまり被拐取者自身を金にかえるということが主たる目的、そういう目的が営利の目的、こういうふうに理解されておったようでございますが、営利目的そのものに限定がございませんので、今度は被拐取者から金を取るのじゃなくして、被拐取者の親あるいは知人等の心配している第三者から金を取る場合、やはり金を取る目的で人をかどわかした場合も営利誘拐の範疇に入る、これが最近の判例でもあり、学説、通説もそういうところに落ち着いてきていると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/16
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017・稲葉誠一
○稲葉誠一君 営利誘拐の場合、今度の一部改正の身のしろ金目的の略取誘拐、これとはいわゆる法益が違うという考え方をとるんですか、法益が同じだという考え方をとるんですか。法益にはいろいろ議論があるようですが、この点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/17
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018・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) やはり三十三章に規定をいたしますことからいたしまして、この罪が誘拐の罪であるという本質に変わりはないのでございますけれども、法益としまして被拐取者の自由を法益とするということは、これは誘拐罪のすべての罪に共通する法益でございますが、身のしろ金を目的とする誘拐ということになりますと、これは範囲がかなり広くなってくるのでございまして、被拐取者の自由を主たる法益とはいたしまするが、もしその被拐取者が未成年者であるような場合には、監督者だとかそういう人たちの保護権、監督権というようなものも被害法益になると思いますし、それからまた、特に未成年者でありませんでも、近親その他の憂慮しているというこの状態を利用しての犯罪でございますので、そういう人たちの不安、そういうものが一つの保護される法益になると思います。今度、被拐取者自身にとりましては、生命にも危険が及ぶおそれのある状態でございますので、被拐取者の生命、身体の安全ということも法益のあれになります。それからまた、それが金を結局は取ろうという目的に出ているのでございますので、財産犯的な予備、財産犯の予備罪というような形にも見えるのでございまして、そういう財産犯的なものもこの保護法益になる。こういうようにこの保護法益の範囲がかなり広くなってまいっておりますが、この主軸をなしますものは、やはり被拐取者の自由が保護法益になる。こういう意味におきまして、誘拐罪を三十三章の中に置くことによりましてその性格がはっきりといたしてまいる、かように考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/18
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019・稲葉誠一
○稲葉誠一君 自由ということを言うわけですが、その自由というのは一体どういうふうに理解したらいいんですかね。ちょっと抽象的な質問で恐縮ですが、自由の何たるかということを理解しないような人の場合でも一体自由というものはあるように考えているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/19
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020・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 略取誘拐という概念も含めまして、誘拐ということは、現在の保護された環境から離脱さしてそうして第三者の実力支配内に移す、そういう状態をつくり出すことでございます。その場合に、場所的な移転も必要だという説が通説でございますが、とにかくそういう保護された状態から保護の届かない第三者の実力の支配の中にある人を移してしまう、こういうことが誘拐罪の実体でございますので、その状態をみますると、まさしく移される人その人の自由は奪われてしまう結果になるわけでございまして、それをやはり保護しなければならないもの、かようにこの犯罪は理解されるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/20
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021・稲葉誠一
○稲葉誠一君 たとえば、自由ということに対して理解のない人がおりますね。精神病者とかそういう人がおりますね。こういう人を甲から乙の土地に移しても、その人の自由というものは別に奪われていないというふうに考えているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/21
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022・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ここで私どもが申します自由というものは、主観的な自由というだけでなくして、やはり客観的に私どもが見て自由な状態、そういう状態が失われる、そのことを法益として保護しなければならない、かように考えているわけでございます。いま仰せのような精神病者がいまの状態を自由と考えているかいないか、夢うつつであるという人が移されて他に持っていかれても、本人の主観において別段ほんとうに自由を奪われたという感じは持たないとしましても、客観的にそれはまさしく自由を奪ったのでございまして、やはり精神病者を対象といたしましてもこの罪は成立する、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/22
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023・稲葉誠一
○稲葉誠一君 これは、承諾があった場合はどうなんですか。自由というか、ほかに移ってもいいということを承諾する場合がある。そういう場合でも犯罪は成立するんですか。場合によりますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/23
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024・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) この三十三章を見ますと、一般的にすべての誘拐行為を罰しておらないのでございまして、二百二十四条は未成年者について罰して、その他は目的のある場合だけ成年にも及ぶ、こういうことになっております。そこで、いま、承諾があった場合どうかということでございますが、仰せのように、承諾のあり方を実体的に検討しないと犯罪の成否は言えないのでございますけれども、未成年者の場合には、もちろん承諾があったといたしましてもやはり犯罪が成立する場合があると思いますし、成年の場合、そういう目的をもって承諾のもとに誘拐をしたという場合に、本人が承諾しておったということが、その承諾が欺罔に出るとか誘惑に出るとかいう場合、その意思決定をするのに強盗などのような反抗を抑圧する程度の意思決定の拘束を必要といたしませんので、ある程度の本人の了解ということも前提とした条文でございますので、承諾という程度いかんによりましては犯罪になる場合があると、私はかように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/24
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025・稲葉誠一
○稲葉誠一君 未成年者の場合の承諾はあらゆる場合に違法性を阻却しないという考え方ですか。未成年者でも是非を弁別する能力がある場合があるのだから、そういうふうな場合は変わってくるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/25
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026・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 未成年者の場合の意思能力という点から御議論がございましたが、先ほどもちょっと保護法益のところで申し上げましたように、未成年者の場合には、本人の自由というだけでなくて、親権者とかあるいは監護権者、そういう者の権限を侵すということも一つの法益になっているのでございまして、本人が意思能力があってかりに承知をしたといたしましても、他面親の監護権、そういうものの侵害にはなるわけでございまして、判例はそういう場合には犯罪は成立するという積極な立場をとっているわけでございまして、未成年者につきましてはそう解するのが相当だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/26
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027・稲葉誠一
○稲葉誠一君 未成年者の場合における親の監護権というのは、同居している場合というなら話はわかるけれども、全然恥のところ、遠いところにいる場合などでは、抽象的には監護権があるとしても、具体的には監護権というのは実施できるような状況にはないというふうにも考えられるのだが、そういうふうな場合には違うのですか、やはり同じですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/27
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028・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 私は、理論的には同様に解すべきだと思っております。なるほど遊学をさしているというような場合には、親はいなかにいて子供は東京にいるというような場合はあるかもしれませんが、その場合にも、糸の切れたたこみたいになっているのじゃなくて、やはり親は親といたしまして、同居はしていなくても監護権を——権を行使していると言うとかた苦しいのでございますが、絶えず愛情をもって見守っている、この親の気持ち、親の権限、そういうものを侵すことになるので、やはり同居しておりませんでも積極に解すべきものだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/28
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029・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それはあなたの言うとおりだと思うんですが、身のしろ金ということばは、どこから出てきたのですか。これは法文にはもちろんないわけですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/29
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030・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 身のしろ金ということばは、戦後新聞、雑誌等にも出てくるのでございますが、なぜ出てきたかと申しますと、英語のランサムとかフランス語のランソンとかいうようなことばが身のしろ金というような翻訳のときの外国の法令を訳したものに載っております。そういうようなところから、人質にとってその金をとろう、そういう金は身のしろ金ということばで通俗的に呼ばれておるのだと思うのでございます。どうして出てきたか、よく私どもにもわからないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/30
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031・稲葉誠一
○稲葉誠一君 その身のしろ金というのは、条文で言うとどこに入るわけですか。条文で言うとどれが身のしろ金になるわけなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/31
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032・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 改正案の二百二十五条の二「近親其他被拐取者ノ安否ヲ憂慮スル者ノ憂慮ニ乗ジテ其財物ヲ交付セシムル目的ヲ以テ人ヲ略取又ハ誘拐シタル者ハ」とあります。この「憂慮ニ乗ジテ其財物ヲ交付セシムル目的ヲ以テ」そういう財物を交付させる、これが身のしろ金、通俗的のことばで言うと身のしろ金に当たるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/32
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033・稲葉誠一
○稲葉誠一君 この身のしろ金目的の持っているこの次元に無期懲役刑を設けたというのは、これはどういうふうな理由からなんですか。現在の刑法の体系の中で自由に関する罪で無期懲役というのは何があるわけですか、無期懲役以上のものというのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/33
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034・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 自由に関する罪といたしましては、現行法のもとでは無期懲役という刑を法定刑とした条文はないと思います。ただ、なぜ無期懲役を設けたかというと、この罪の実質から見まして無期懲役に相当であるという考えに立っておるわけでございますが、これにはいろいろ理論が存するわけでございます。いずれ御質問があることと思いますので、そのつどお答え申し上げていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/34
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035・稲葉誠一
○稲葉誠一君 現在の法律の中で無期懲役を規定しているのは、何と何があるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/35
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036・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 正確にはあるいは書面にいたしまして出してもよろしゅうございますが、一応六法全書を見ながら申し上げますと、内乱ニ関スル罪におきましては、懲役ではございませんが、無期禁錮という罪が規定してございます。それから外患ニ関スル罪の中で外患援助という八十二条の規定を見ますと、やはり無期懲役が規定してございます。それからあとは公共の危険罪といたしましては百八条の現住建造物に対する放火につきましては無期懲役を規定いたしております。あとは、普通私どもがよく申します強盗、強姦、殺人、強盗致傷、それから百四十八条の通貨偽造行使の罪にはやはり無期懲役がついているように思います。
大体、ちょっと見ましたところ、そういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/36
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037・稲葉誠一
○稲葉誠一君 公共の法益に関する罪と個人の法益に関する罪と分けて、結局この刑法の一部改正は個人の法益に関するものとして扱っているわけでしょう。そうじゃないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/37
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038・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは個人の法益に関する罪でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/38
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039・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それはあらゆるものは犯罪だから公共性を持っていることは当然ですけれども、個人の法益に関する罪であると。そうすると、個人の法益に関する罪では無期懲役があるのはどんなものですか。いま言われましたけれども、それだけ列挙していただけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/39
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040・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) いわゆる個人の法益を侵害する罪の類型に入ります罪としましては、殺人、強盗致傷、強姦致傷等があるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/40
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041・稲葉誠一
○稲葉誠一君 これは、身のしろ金目的で略取誘拐をして、その結果としてこの改正案の中には「財物ヲ交付セシメ又ハ之ヲ要求スル行為ヲ為シタルトキ亦同ジ」ですから、財物を交付せしあたならば強盗なり恐喝なりというものが当然入ってくるわけですが、それもこの条文の中に吸収されちゃうということになるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/41
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042・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 従来、強盗でやった例はあまりないのでありますが、恐喝でやりました恐喝の一つの特則になると思うのでございまして、二百二十五条ノ二の第二項になりますか、そういうふうに解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/42
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043・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、恐喝の特別という意味は、この場合は恐喝罪は成立しないのだ、こっちへ全部吸収されて入っちゃうのだ、こういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/43
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044・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/44
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045・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、この場合、略取誘拐をして、その結果として恐喝は普通伴う、だから第二項を設けたのだと。そのほかにこの方法によってたとえばあるいは強盗だとかあるいは殺人とか傷害とか行なわれるときがあるわけですね、従来の例としては。その場合には、特にこの二百二十五条ノ二の中にそういう結果的加重犯結果的加重犯と言えるかどうか問題だと思いますが、そういうふうなものは特に設けなかったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/45
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046・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) それは設けなかったわけでございます。その理由は、御議論の存するところでありますが、誘拐をして金を要求するまでの過程において被拐取者つまり被害者が傷害を受けるとか殺されるとかいろいろな問題が起こるわけで、これは社会現象としてあるわけでございますが、もしそれを故意犯をもってそういう場合に殺意のもとに殺したという場合には殺人罪との併合罪になりますので、現にそれで死刑にもなった例もあるわけでございます。もし傷害致死といった故意のない場合になりますと、一体その傷害と誘拐との間に因果関係があるかないかということは、これは継続犯と見るか状態犯と見るかといういろいろ罪の本質についての議論もございましてなかなかむずかしいのでございますが、私どもは状態犯だと見ておるわけでございますけれども、その傷が監禁の過程においてできたのか、あるいは本人の過失によってできたのか、あるいはそこの辺の傷害を生じた原因、結果というものが誘拐との関連において実際上証明することはむずかしいのでございますし、それぞれの罪について、監禁についても、傷害についても傷害結果犯の致傷罪を規定しておりますので、そういうものと誘拐致傷との関係を考えますことは、非常に法律観念の混乱も起こってきてむずかしい問題でございますために、もしそういう場合に起こった傷害致傷といったような問題につきましては、他の罪との併合罪あるいは牽連犯、そういう理解のもとに処理できる、かように考えまして、そういう結果的加重犯のような規定は設けないことにして立案をしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/46
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047・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いま言った状態犯と継続犯ということの争いがあると言われましたね。状態犯というのはどういう意味で、継続犯はどういう意味ですか。どこがどう違うのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/47
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048・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 先ほど申しました誘拐の行為は、保護された状態を離脱さして第三者の実力を支配に移す行為でございますが、移してから後にそのままずっと犯罪が継続しておって既遂になる時期がいつかということによりまして、そのときすでにある第三者の実力支配の中に移してしまいますと直ちに犯罪は既遂になるという立場をとりますると、それはあとは違法な状態が続くということだけでございまして、そういう罪は私ども状態犯、こう見ておるわけであります。それから継続犯という考えは、そうやって抑留されております限りは誘拐罪という罪が依然として行なわれておるんだということになりますと、そういう継続犯という考えをとりますと、その段階から後に入ってまいりましたものもすべて共同正犯になってくるし、もし状態犯だという立場をとりますと、共同正犯にはならないで事後収受という形になるわけであります。現行法は、既遂になるというつまり状態犯の考えを基礎にして現行法もできておりますし、私どももそういう立場でこの法律を理解して立案をそういう立場でいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/48
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049・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、公訴の時効の関係でそこに異差ができてくるわけですか。いまのような状態犯という考え方をとると、公訴の時効のほうが早く完成しちゃうんですね。継続犯のほうが公訴の時効は完成しないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/49
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050・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 時効の問題も仰せのとおりでございまして、ただ、状態犯といたしましても、身柄が帰ってこない間はすべて犯罪がそのまま続いておるというんじゃなくて、やはり第三者の手に移してしまいますと、あるいは継続犯という立場をとっておりましても、そのときの段階で既遂になるということになろうかと思いますので、ここはまあ継続犯と見るか状態犯と見るかということは他の犯罪との関連においてかなり大きな違いが出てまいりますし、まあ時効の点も仰せのとおり確かに問題点であります。
〔委員長退席、理事後藤義隆君着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/50
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051・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いまの点はそれはなかなかむずかしい刑法理論の問題にもなるし、ちょっと問題があるんじゃないかと、こう思うのですがね。これはまあここで議論をすべきほどのことというか、直接の問題ではないかと思いますが、拐取しておる状態というか、そういう犯罪状態がずっと続いているんですし、そこで時効が進行してしまったんでは、時効が場合によっては完成をしてしまって、そして処罰できなくなるというそういう危険性も考えられてくるわけですが、それはないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/51
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052・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 時効の点だけから見ますると、もし抑留の状態が続いておるということになりますと、状態犯の立場をとってみましても、今度は逮捕監禁罪という罪がその抑留中は継続犯でありますことはこれは異論のないようでございまして、それと営利誘拐罪ということが牽連の関係に達しますので、時効は進行しないことになるわけでありますね。そういうことで、抑留中に時効が完成してしまうといったような事態は私は起こらないというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/52
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053・稲葉誠一
○稲葉誠一君 その点はいろいろ議論があるところだと思いますが、そうすると、この場合では死刑はないわけですね、もちろんこのあれでいけばね。アメリカなどではあるんですか。日本のここにある二百二十五条ノ二と同じような状態の場合に、死刑が法定刑としてあるのですか。あるいは殺人が行なわれた場合だけですか、死刑があるのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/53
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054・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 外国の立法例を見ますると、致死傷というような事情の伴わない単純な身のしろ金目的の誘拐に死刑を定めた例といたしましては、アメリカのニューヨーク州の刑法、イリノイ州の刑法などがございますし、一九三五年の中華民国の刑法にも規定がございまして、私どもの知っております限りでは、いまの三つの例があろうかと考えております。
〔理事後藤義隆君退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/54
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055・稲葉誠一
○稲葉誠一君 この前にというか、この法案を改正しようとする一つの理由の中に、近ごろこういうふうな事件がたくさん出てきた。一つには島津貴子さんの事件があるということが伝えられているわけですね。島津さんの事件があったからこの改正が行なわれたというふうに考えるのはどうかと思いますけれども、この案件が一つの何というか大きな理由になったというふうにも言われるわけですが、この案件で検察庁が裁判所に対して当時の被疑者を拘置請求したけれども却下されたわけですね、二回か一回か。それはどういうふうなことで拘置請求して、どういう理由で却下されたわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/55
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056・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 島津夫人の誘拐事件につきまして検察庁側はあの事件は誘拐未遂であるという立場をとりまして、未遂の行為として勾留請求をいたしたのでございますが、裁判所の当時の勾留判事は、これは未遂に至らない予備の段階であり、予備罪を罰する規定がないというようなことで、その点で結局勾留を却下した、こういうわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/56
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057・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それは結局実行の着手の点についての考え方の相違だと思うのですが、具体的にはどういうふうなところが検察庁は実行に着手したと考え、それを裁判所側ではそこまで至らないというふうに考えたわけですかね。それは今度の法律の改正案にも関係してきているわけですね、予備を設けていますから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/57
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058・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 島津夫人の事件は直接今回の改正には私ども念頭に置いていたわけではございませんのでございますが、たまたまその問題が出てまいりましたので、今回の改正とも関連するかのごとくなってまいったわけでございます。この事件よりも発生以前に私どもはこういう案を固めつつあったことをあらかじめ御了承願っておきたいと思います。
そこで、島津夫人の事件につきましては、ただいま検察官側はやはり未遂であるという考え方を法律解釈としては持っておりまして、その点についての検事控訴をいたしておりますので、まあそれが未遂か予備かという点につきまして事実問題にわたって論議しますことはやはり私どもとしては差し控えたほうがいいと思うのでございますが、ただ、法律論としまして、着手があったかどうかという点は、これはまあ御承知のように考え方に広狭二説ございまして、狭い考え方を貫いてまいりますと、構成要件の一部を充足するような行為がなければ着手があったとは言えないという考え方でございますが、判例の従来の態度は、構成要件の一部を充足するような行為がなくても、それに密接した行為がありますると、やはりこの着手があった、こう見るという判例が窃盗罪などにつきまして御承知のようにあるわけでございます。これはまあ罪によってそういうふうに見るべきだと思うのでございますが、誘拐罪のようなものにつきましてどの程度の行為があれば密接行為つまり一部を充足したと同じような法律評価をするような行為があったかというふうに、これはまあ評価の問題になってくるのでございますけれども、アメリカの判例で、銀行から俸給の金を持って帰るというのをあらかじめ察知いたしまして、それを待ち伏せして取ってやろうという強盗でございますが、そういうことで待ち伏せしてさがしておったというその行為を未遂で起訴をいたしました。ところが、これは未遂にならぬということで、その後法律改正などがございまして、未遂類型はどういうものをいうかというようなことがモデル・コードの中にもかなり詳しく出ております。そういう経緯から見まして、島津夫人事件を私どもながめてみますると、私どもの事実の見方といたしましては、やはりこれは未遂と見るのが相当だという考え方をいたしておりますが、具体的の内容につきましては答弁を差し控えさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/58
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059・稲葉誠一
○稲葉誠一君 これは、近来こういう事件がふえてきたということですね。これは法務大臣としてはどこに原因があるのだというふうに考えられますかね。これは常識的な一般論としてでけっこうですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/59
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060・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) どういうところに原因があるかわかりませんが、一つは、やはり人間のいろいろの頭脳の働きが発達して、不当な利益を得ようという手段につきましてだんだん巧妙になると申しますか、いろいろのことを考え出すということも一つの原因であろうと思いまするし、それから外国におきましてよく似たような事件が活字あるいは映画等で紹介されて、それから着想を得る機会が非常にふえたというようなことも相当の原因になっているのじゃないかと考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/60
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061・稲葉誠一
○稲葉誠一君 まあそれは大臣の考え方ですが、いろいろあると思うんですけれども、これはおもにあれですか、いままでやってきた例は、どういう人が犯罪を犯しているんですか。必ずしも暴力団関係とは限らないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/61
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062・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) 必ずしも全部暴力団——暴力団もむろんやるかもしれませんが、暴力団でないのもやる。必ずしも暴力団に全部的に重なっているというふうにも考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/62
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063・稲葉誠一
○稲葉誠一君 刑事局長のほうから、いままでこの事件は近年どういう人がこれを犯しているわけですか、犯人というか……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/63
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064・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 過去いままでいわゆる身のしろ金目的の誘拐と思われる事例が戦後約三十件、これは未検挙のものも含めましてあるわけでございまして、承知いたします限り、その中身の検討をいたしてまいっておりますが、お許しをいただければ長島参事官から説明させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/64
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065・長島敦
○説明員(長島敦君) 審議の御参考にに「主要身代金目的誘拐事件事例集」というのをお配りしておると存ずるわけでございますが、この事例集に出ております犯人につきましてずっと見てまいりますと、大体におきまして、何と申しますか、年齢で申しますと二十歳代あたりが一番多いわけでございまして、職業等を見ますと、無職のものがかなりあるわけでございますが、あとは工員でございますとか、ちょっとした店で働いておるとかいうようなものが多いわけでございまして、暴力団の関係は、幸いにしてただいままでのところ明確に暴力団に属するようなものによって犯された例はございませんで、ただ青少年ぐれん隊と申しますか、そういうようなグループで犯された例が近年ちらほら出てきておるわけでございます。なお、この犯人につきまして精神的な異常とか何かがないかどうかも調べておるわけでございますが、こういう犯罪をやります者には、さような異常者はむしろ少ないのでございまして、模倣的な性格が非常に強く出てきておるわけでございます。これが大体の状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/65
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066・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いまの予備の点は、あれですか。検察庁が言っているように、島津さんの例を一つの例としても、犯罪行為に密接したものというのを広く解釈すれば、特に第二百二十八条ノ三ですか、予備までも処罰しなくてもいいということになるわけですか。いまの裁判所の考え方が非常に狭いんだ、だから特に必要なんだ、検察庁の考えているように広い考え方をとれば特段に予備を処罰しなくもいいんだということになるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/66
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067・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 私どもはそういうふうに考えませんで、この種の犯罪は被害者を安全に取り戻すということが何といたしましても——犯人を罰しますことは当然でございますが、犯人の検挙とともに被害者を安全に取り戻すという両面の考慮がきわめて重要な犯罪でございます。そういう被害者を安全に取り戻す方法としてはどういうやり方があるかということで、部分的には安全な場所に解放したときには刑を減軽するということが一つの方法でございます。それからもう一つは、予備の段階で犯罪の検挙ができることにして、そして着手前に自首した者については刑を減免するということもできるという道を開きますことが一そうこの犯罪予防に役立つ、かように私は考えておるわけでございまして、法律解釈論として、未遂、予備の関係の理解が、検察庁の考えますような解釈、裁判所の考えますような解釈というようなところに大きな問題があるのではなくて、やはり安全に被害者を取り戻す、こういうところに予備を設け、かつその予備に減免の規定を置くというところに立法政策上意味がある、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/67
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068・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、法務省の考えておるこの法案の予備というのは、具体的にはどんな例ですか。さっきあげたのはあなたの解釈はみな未遂に入っちゃうのだから、あなたの考えている予備というのは具体的にはどういうのがあるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/68
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069・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 私が考えておるというよりか、一つの理論として考えておる点でございますが、実際問題として思われますのは、まず第一に、犯行の場所または被拐取者に関する情報の収集でございますれ。たとえば、被拐取者方の家族の人員とか聞取りだとか、犬がいるとかどうか、そういったような防犯設備のあるなし、被拐取者の平素の行動などについて事前調査を行なうというようなこと、これは予備行為であって、未遂行為ではないと思うのでございます。
それからまた、犯罪の場所への出発でございますが、しかし、誘拐の目的で被拐取者宅に侵入したような場合には、誘拐の目的で待ち伏せをしておったとか尾行したような場合と同じく、すでに実行に着手したと、こういうふうに見られる場合もあるかと思いますが、これも犯罪の場所への距離関係等から未遂にはならないで予備になるという場合があろうかと思うのでございます。
それからまた、略取をいたしますときに使う物件を準備する場合、略取する際に用います凶器だとか麻酔薬だとかなわなどを手に入れてこれを使用できるような状態に置く。あるいは暴行、脅迫等による略取をいたします場合とは異って、欺罔誘惑によるいわゆる誘拐のような場合には、はっきりした準備行為をとらえることは事実上困難でございますけれども、いま申しましたような略取用の物件を準備いたす、そういう行為は、略取未遂にはならなくて、やはり予備になると思うのでございます。
それから被拐取者の運搬の手段の確保でございますが、特に運搬用の自動車を準備する場合とか、あるいは連れていって隠しておく場所を選定するといったようなこと、つまり隠匿の場所でございます、隠れ家を準備する、旅館等の部屋を予約する、そういうものも予備と思われるのでございます。
それからさらに予備に入るかどうか問題となると思うのは、計画を樹立することでございますが、非常な精密な計画を立てた場合、頭の中でこうしてやろうああしてやろうというふうに想を練るというのと違いまして、特に大ぜいでやります場合には、他人とそういうことを話し合うだけでなく、その数名の者と各自の分担をきめまして、たとえば時間表をつくって何時何分にお前がそこに現われ、何時何分からはそこからつけていって、それからはその次の人があとをどうするといったような計画表をつくるというところまでいきますと、やはりこれは予備であって、単なる謀議、陰謀ではない、こういうふうに思うのでございます。
予備行為をいろいろと考えてみますと、そういうことが考えられるのでございますが、それらのことは、いままでの事例の中にも、現にあとで検挙してみますとそういう予備的な行為をやっておったことがわかるのでございまして、もしこの段階で幸いにして情報を得て検挙することができますならばこの種の犯罪を未然に防止することができるわけでございまして、相当予防的効果をこの条文によって期待することができるというふうに思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/69
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070・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いまいろいろな事前調査の話があったわけですが、そういうふうな場合でも予備になるものとならないものともちろんあるわけですね。そういうふうな場合は客観的に事実としてなかなかわかりにくいところがあって、本人の主観的なものまでつかまないとそれが予備になるかならないか分かれるところが相当あるんじゃないですか、実際問題としては。それを非常にラフにやられるというと、非常に広範囲に広がってきて問題を起こすとかそういう危険性もこの予備の場合には相当あるんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/70
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071・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) まあ予備陰謀を罰しますのは例外でございますので、重い罪についてのみ現行刑法のもとでも予備罪を罰しておるわけでございます。そこで、予備とは何であるかということにつきましては幾つかの判例もすでにございますわけで、いま私が事例として申し上げましたことはほとんど異論のないところであるというふうに考えて申し上げたわけでございます。これが仰せのように非常に広く予備を設けるということにしますと、それは乱用のおそれもございますが、いま申したような点は予備行為として現実にあったことでございまして、また将来も起こり得ることでありますので、この程度の予備罪を設けることは、乱用の危険というよりもやはり犯罪予防ということで御理解をしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/71
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072・稲葉誠一
○稲葉誠一君 条文の内容に入りまして、「近親」ということばがまずあるわけですね。この近親というのは法律用語ではないように考えられるんですがね、民法上の用語では。特に民法と刑法は違うから、ことばは違ってもいいとしても、法律的な用語ではないものをどうしてこれに使ったわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/72
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073・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 「近親其他」と特に「其他」などという文字がついておりまして、「近親」という用語からして法律的な用語でないものがくっついておりますので、いろいろ御疑問を抱かれる向きも現にあったわけでございますが、これはこのことばがなくて理解をいたしましても大体この結論は同じことになるというのが私どもの解釈でございます。つまり、被拐取者の安否をほんとうに憂慮する者、そういう者を相手に金を取ろうとするというのがこの条文の骨子をなしているものでございまして、「近親其他」というのは、被拐取者の安全を全く憂慮している者の代表的なものをここに掲げたのでございます。その例示をしたのでございまして、したがいまして、とれを民法上の親族というふうに限定することは適当でございませんし、また「其他」という——御質問はございませんでしたが、「其他」の用語も、近親に準ずるという考え方でつけて、ある程度のしぼりをかけることによって全くの第三者、同情するにすきないような第三者ははずれるのだということをこの条文の上で明らかにいたしたつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/73
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074・稲葉誠一
○稲葉誠一君 これは、「親族其他」と、こう書いたのでは意味が違うのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/74
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075・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは「其他」は親族に準じて考えられる者を言うのであって、親族でない者という意味でございますから、「親族」と「其他」とは中身が違うわけでございますけれども、考え方としては親族に準ずるような者を私どもは考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/75
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076・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そういう意味じゃなくて、ここでは「近親其他」と条文に書いてあるんですね。それを「親族其他」と書いた場合では内容が違うんですか。親族というのは法律用語ですから、近親という法律用語でないものが出てくるから、そこのところに違いがあるんですかと、こういうわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/76
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077・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 親族と近親とは、親族は法律用語ではっきりと血族関係その他親族関係におきましても親等の範囲がきまっておりますが、近親という場合にはそういう限定をしませんで、その意味では親族とは違っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/77
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078・稲葉誠一
○稲葉誠一君 親族は法律的にはっきりしているわけですね。そうすると、近親というのは、被拐取者その人によってこの近親というのは範囲が狭くなったり広くなったりするわけですか。一定していないわけですね。親族なら一定しているわけだけれども、「其他」は抜きにして、これは一定していないわけですか、この近親というのは。近親というのだから親族より狭いという意味ですか。よくわからないんですがね、非常に新しいことばが出てくるから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/78
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079・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 立案者の考え方といたしましては、親族は法律上一定しておりますが、近親ということになりますと、親族の上に「近」という字がついているところは、私どもの考え方では、親族全部をカバーするのじゃなくて、親族の中の近い親族というふうに範囲を狭くむしろ理解しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/79
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080・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると「近親」というのは親族よりも狭いのだけれども、「其他」のほうが広くなっているから、結局は親族よりも広くなるのだ、こういうふうな考え方なのか、あるいは、そういうふうな考え方から全然離れて論議すべきなのか、こういうことになるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/80
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081・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) その点はむしろ離れて御論議をいただいたほうがわかりやすいんじゃないか。つまり、被拐取者の安否につきましてほんとうに親身になって心配をしておる人、こういう人を例示的に「近親其他」というのであらわしただけでございまして、親族といいますと、法律上の範囲がきまっておりますかわりに、ほんとうに安否を憂慮しておる人という感じを出しますのにはやや広過ぎるのじゃないか。近親ということばのほうがそういう憂慮をしておる人をあらわすことばとしては、語感から申しましても、そういう感じが出てくるのではないかということを一つ考えるわけであります。「其他」というのも、そういう観点からその他の近親に準ずる人を考えるべきでございまして、したがって、全く親類縁者という意味からは他人でございますけれども、たとえばサンダース・ホームのようなところで沢田夫人がお預かりしておる子供、ああいう子供は、沢田夫人にとってみれば他人でございますけれども、ほんとうに親にかわって世話をしておるわけなんで、そういう人は「其他」の中に入るというふうに思いますし、雇い人のような場合でも、うちに同居させまして親がわりになってめんどうをみております雇い主は、他人でございますし、また、雇い主というそういう雇用関係に立つ人ではありますけれども、親身になって心配するという観点からいたしますと「其他」の中に入れていいんじゃないかというふうに思いますので、主体はあくまで安否について親身になって心配する人、こういうふうに考えておるわけであります。それを例示的に「近親其他」ということで制限をしたのでございますが、この制限の意味は、それに対して同情するにすぎない者ははずれていくのだということがこれではっきりしてくるというふうに思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/81
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082・稲葉誠一
○稲葉誠一君 安否を憂慮するというのは、具体的にはどういうことなんでしょうか。という意味は、「近親其他」の者であっても憂慮していない場合もあるわけです。そういうふうな者もやはりこの中に入るんですか。安否を憂慮する者というのは、具体的にどういうふうな者を言うんですか。具体的に言うんですか、抽象的に言うんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/82
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083・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは客観的に見て憂慮しておる者と認められるものを言うわけでございますが、たとえ近親の者でございしまても、実際はちっとも憂慮していなかったという人もあろうかと思いますが、第一項の目的のほうからいいますと、犯人の主観でございますので、かりにちっとも憂慮していないということが格別わかっておれば、そんな人に金の要求はしませんでしょうから、主観的にはそういう人を目当てに取ってやろうという考えを持てば、そういう人を対象に考えて理解をした場合には、この一項のほうの罪になると思いますし、それからまた二項の「要求スル行為」という行為をする場合の中には、やはり人を目当てにそいつはほんとうは憂慮しているのだろうと思ってやったが、憂慮していない人に向かって要求をしたという場合には、「要求スル行為」としてやっぱり処罰できると、こういうふうに私どもはこの解釈をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/83
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084・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、犯人の主観的なものも何か考慮されるようなことを言われたのですが、近親その他が憂慮しているということの認識がこの犯罪では必要なんですか、行為者にとって。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/84
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085・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 二百二十五条ノ二の第一項の関係について申しますならば、犯人の主観で憂慮しておるものとそう信じておれば、客観的に憂慮しておったかどうかということは問わないで犯罪が成立すると、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/85
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086・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、犯人の主観で近親その他が憂慮しているということのそういう認識が必要なんですか、この犯罪は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/86
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087・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 認識ということばがどうかわかりませんが、そう思うこと、そういう心情を重く罰しようというのがこの規定の趣旨でございますので、やはりそういうことを利用して金を取ってやろうというのがねらいで誘拐をすると、そこにこの犯人の悪性を私どもは法文の上で認めていかなきゃならぬ、こういうふうに思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/87
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088・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、この改正案の場合の故意は一体何なんですか。どの程度までが故意なんですか。故意の内容になるわけですか。いま刑事局長の説明を聞いていると、近親その他が憂慮しているということの認識が必要であるようにも聞こえるし、必要でないようにも聞こえるし、それは情状論として言っているのじゃなくて、故意の内容として聞いているわけですよ。犯罪の成立の内容として一体何が必要なのか、何だかはっきりしないような感じを受ける。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/88
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089・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 犯意といたしましては、この目的がなければなりませんし、その目的の中がだいぶ長いのでございますけれども、「憂慮ニ乗ジテ」ということばがございます。つまり、その憂慮しておるのにつけ込んでという意思がなければいけませんので、その前後の関係からいたしまして主観的には被拐取者の安否を憂慮しておる人、その人に向かって、その憂慮しておるのをうまく利用して金を取ってやろうという目的を認識して犯行に出る、これがこの罪の犯意である、かように思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/89
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090・中山福藏
○委員長(中山福藏君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/90
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091・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 速記を起こして下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/91
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092・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、この「憂慮」というのは、結局具体的に憂慮していなくてもいいということになるわけなんですか。そこはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/92
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093・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 犯人のほうの側から見ますると、憂慮しておるものと信じていればいい。確かに相手が憂慮しておると思って犯人はいたんだけれども、客観的にその人は憂慮していなかったという場合でありましても、第一項はそういう目的をもってやればいいのでございますので差しつかえない、かように解しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/93
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094・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、「憂慮ニ乗ジテ」というのと「憂慮スル者」に対してというのとでは違うという考え方ですか。こういう特に「憂慮スル者ノ憂慮ニ乗ジテ」というふうな規定のしかたは特段の意味があるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/94
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095・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは解釈上私は多少差異が出てくると思うのでございまして、憂慮しておる者に対してといいますと、いま仰せのように、憂慮していない者に対してでは幾ら目的罪でございましてもその点ではずれるおそれがある、その認識がなければならぬという解釈が出てくるおそれがあると思いますが、その点をカバーしますためにこういう表現にいたしたのでございますが、なお、この「憂慮ニ乗ジテ」という意味につきましては、やはりこの因果関係をそういうものを利用するというところに構成要件としましては大事な意味を持りているというふうに解しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/95
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096・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いまの場合の「乗ジテ」というのは、刑法ではいわゆる準詐欺罪とかああいう場合によくあるわけですね。どういうところにあるんですか。準詐欺だけですか、ほかにもありましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/96
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097・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 準詐欺の二百四十八条の規定と、準強制猥褻・準強姦の百七十八条にございます。前者の場合は「未成年者ノ知慮浅薄又八人ノ心神耗弱に乗シテ」、それから百七十八条の場合には「人ノ心神喪失若クハ抗拒不能ニ乗シ」「猥褻ノ行為ヲ為シ」云々と、こう書いてあるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/97
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098・稲葉誠一
○稲葉誠一君 刑法の改正準備草案ではこの法律の改正についてはどういうふうに考えていたわけですか。準備草案の中にもあるんですか、同じような規定が。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/98
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099・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 準備草案の三百二条に、「釈放の代償を要求する目的」という表現でこの部分を規定しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/99
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100・稲葉誠一
○稲葉誠一君 その場合の刑は同じですか、準備草案と。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/100
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101・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 準備草案におきましては、「二年以上の有期懲役」ということでございまして、今回の改正のほうがはるかに重くなっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/101
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102・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、法制審議会というか、この準備草案を審議しているのはどこでやっているわけですか、審議は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/102
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103・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 準備草案を審議いたしましたのは、半ば公のものではございますが、半ば私的というふうに法制の根拠のないものでいたしましたので、草案の刑法改正準備会というもので審議をいたしたのでございますが、この草案は今回の法制審議会におきましては重要な参考資料にとどめておるわけでございまして、これを政府の原案というような立場で法制審議会に審議を求めておるわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/103
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104・稲葉誠一
○稲葉誠一君 この準備草案では、規制のしかたが今度の法案とずいぶん違うわけですね、刑も違うし。それはどういうわけですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/104
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105・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 三百二条の規定につきましては、理由書の二七九ページにも書いてございますが、中野次雄判事が執筆しておるのでございますけれども、「代償」という意味でございますけれども、その趣旨は、代償は釈放の反対給付を意味し、その限りにおいて財物の交付その他あらゆる行為がこれに該当をするという解釈、そして、しかもそれが必ずしも経済的利益の供与に限られないというふうに解せられるのでございますが、私どものその後の研究の結果といたしまして、どうもそれでは範囲があまりにも広くなるのではないかという考慮と、それからまた、釈放の代償ということになりますと、幾つかの欠点があることがわかってまいりました。つまり、この字義から申しまして、被拐取者の釈放または返還と対価関係に立つことを前提としたことばでございますので、もしも被拐取者がすでに殺害されておってまだ殺害されていないような風を装って金を要求したというような事実関係でございますと、対価関係に立つという意味において、悪質な点においては非常にもっと悪質な事例であるにもかかわらず、これからはずれてしまうというおそれもあるのでございまして、そういう点の狭い面があるわけでございます。また、他面、よく外国の立法例などでは親子の関係のある場合は除外するという規定をおいておる立法例がございますが、仰せのとおり、そういう場合などを考えてみますと、なぜそういう規定を外国で置いておるかといいますと、親子関係の場合には、離婚した夫婦の一方が子供を持っておって、金をくれなければ子供を虐待するとかあるいは殺すとかいうようなおどし文句を言う夫婦がないとも限らぬようでございまするが、そういう場合にに、子供をほんとうに殺してしまうなんということは親子の関係でございますので考えられない。また、そういうものをも含めて解しますことは広過ぎるわけでございまして、そういうものは除外するという趣旨の規定を置いておりまするけれども、日本ではそれは置かずに、そういうものは解釈上はずれるというような立法例がつくられるかどうかということから、過不足なくそこのところを実体に合うように規定を設けるという趣旨で、「釈放の代償を要求する」という表現をやめまして、ドイツの最近の学説の発展などを参考にいたしまして、この立案の原案のような規定のしかたをいたしたわけでございます。で、この点は、私の考えでは、最も新しい、しかも最も進歩した学説の上に立った、表現としては必ずしもうまくないのでございますけれども、実体に合った案だというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/105
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106・稲葉誠一
○稲葉誠一君 改正仮案でいくと、四百二十六条で「人ヲ略取シ其ノ釈放ノ代償トシテ財物ヲ得タル者ハ強盗ヲ以テ論ズ」という書き方をしているわけですね。これは「強盗ヲ以テ論ズ」という書き方をしたほうがはっきりしてくる場合もあるのだし、こういう規定のしかたでは欠陥があるんですか。仮案のような規定のしかたでは欠陥がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/106
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107・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 仮案におきましては、その点もやはり今日審議録は断片的なものでありますが見ますると、議論をいたした模様でございまするけれども、結局、仮案においては、いま仰せの条文は強盗の章の中に入れて、つまり財産犯としてこれを処理しておるのであって、誘拐の中に物を入れて考えないという考え方をとっておるのでございまして、これは、先ほど来申しますように、やはり本質は誘拐なんで、その取る金は恐喝というのでは刑が足りないので特別な罪を設ける、こういう形が私は正しい立法のしかただというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/107
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108・稲葉誠一
○稲葉誠一君 世の中は変化するのですから、仮案の場合でも準備草案の場合でもその規定のしかたに欠陥があったんだ、だから直さなければならないということも一つの理屈であって、それはそれで見方はあると思うんですが、そういうふうにせっかく法務省が中心となって刑法の改正案を練っているのにくるくる変わるというのは、何か見識がないといえばないというか、十分な審議を経てこういう準備草案なんかができているというふうにとれないような印象を与えるんですがね。非常におかしいという考えを与えるのですが、特にいまの仮案なんかは「強盗ヲ以テ論ズ」だから、今度の改正案よりも法定刑の下限が重くなるわけですね、五年ですからね。これは三年でしょう、今度のあれは。仮案のほうは五年以上の場合に、今度の案では三年以上とこうしたのはどういうわけなんですか。三年以上ということは、これは三年では執行猶予になるのだから、執行猶予になるということも考えて法定刑の下限を三年ということにしたわけですか。そこはどうなんですか。無期がくっついているのだから重くなったんだという意見もあるでしょうけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/108
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109・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 「強盗ヲ以テ論ズ」、これは私この考え方は、確かに強盗的な行為だと思うのでございますが、これをすべて「強盗ヲ以テ論ズ」ということは、要するに強盗とみなして強盗の扱いをするということでございますが、そういたしますると、事情によりましては、一方重くはいたしておりますけれども、下限のほうで五年というしぼりをかけますことにはややちゅうちょされるのでございまして、ただし、仮案の場合、仮案の強盗の規定のほうをごらんいただきますと、「強盗ヲ以テ論ズ」るのでありますが、強盗の罪そのものが「三年以上ノ有期懲役」というふうになっているわけであります。そこで、「強盗ヲ以テ論ズ」るということは、五年以上ということでなくて、三年以上の有期懲役、こういうふうに読まなければならない。それを参考にしたわけではございませんで、今回の三年無期の刑を出しましたのは、重いほうを無期にいたしましたが、事情としては軽い場合も考慮してみたいということで三年という刑を持っていったわけでございます。特にその三年を用いますにつきましては、準備草案の三百二条が二年という刑になっておりますので、その辺をも勘案いたしましてそういう法定刑を置いたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/109
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110・稲葉誠一
○稲葉誠一君 仮案の強盗の関係は、これはよくわかりました。四百二十三条で「三年以上」ですね。仮案は、全体として、あれですか、現行法よりも軽くなっているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/110
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111・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは、一般的に申しますと、現行刑法の一つの欠陥といたしまして、たとえば殺人のようなものでも、一本の百九十九条でまかなう、そのかわり三年以上死刑まで持っていくという幅の広い法定刑でございますが、この前もちょっと触れたかと思いますが、これは幅が広すぎるので、ある程度細分化していくという必要がある。したがいまして、細分化いたしますには、基本類型というものをまず考える、それに加重類型を考える、こういうまあ考え方。そこで、基本数型としまして考えられました刑は少し軽くなっておる。そして、加重類型になっておりますのは、現行法の最高限まで含め、あるいは現行法よりも重くなっている、こういうような法定刑の振り分け方をしておるように思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/111
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112・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、この法案が通っても、これは三年以上の懲役だから、三年で執行猶予になる可能性はあるわけですね。これはかまわないんですか。執行猶予になってもかまわないというのはおかしいと思うけれども、執行猶予にならないように下限をしておかなければおかしいのじゃないですか。委員長、これはそうでしょうね。これはおかしいですよ、執行猶予になるということは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/112
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113・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これはそういうような場合もあり得るということは法律上のたてまえでやむを得ないのでございますが、考え方といたしましては、ひとしく身のしろ金目的の誘拐と呼ばれる犯罪のうちにも、犯人と被拐取者との関係が、特に拐取後の拘束時間が短かったとか、あるいは犯人が被拐取者をどのように処遇しておったか。中には、金は取るという悪質な意図はあるのでありますが、被拐取者に対しては非常に親切を尽くしておったというか、愛情をもって処遇したというような例も実例の中にはないわけではございませんので、具体的には、結果論でございますけれども、被拐取者の生命、身体に対する危険度というものは、近親その他の者が憂慮するほどには実体はそんなに憂慮しなくても済んだというような実例もございますし、あるいはまた、数名の犯人が共犯でやったというような場合は、共犯の中には情状の軽い者もあろうかと思います。そういったような点をいろいろ考えて見ますと、三年という刑も置いておいたほうが実情に合うのではないかという配慮から三年という刑を置いたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/113
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114・稲葉誠一
○稲葉誠一君 身のしろ金目的をもって略取誘拐するというのは非常に悪質なんだ、これは無期までやらなくちゃいけないんだと言っておきながら、内容によってはいろいろあるんだ、それほど悪質でないものもあるんだ、こういうことにとっていいわけですか。何だかいままでの説明とちょっと変わってきているのじゃないですか。悪質だから重く処罰しなくちゃいかんいかんと言って、ものによってはそうではないものもあるんだ、ものによっては執行猶予になるんだ、それはちょっと説明が矛盾しているわけではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/114
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115・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) その点は矛盾していないつもりでおりますが、殺人というような罪につきましても、三年以上死刑まであるという法定刑になっておりますが、特に大ぜいで誘拐をやってというような場合は、共犯者の中には法律上は共同正犯に認められましても、情状としましては軽いものもあるわけでございまして、執行猶予をしたほうがいい場合もあり得ると思います。でございますので、こういう法定刑を掲げたわけでございます。抽象論的に申しますれば仰せのとおりでございますが、法定刑としましては幅のあるものにしておいたほうが適当であるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/115
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116・稲葉誠一
○稲葉誠一君 法定刑はわかりましたが、これは、あれですか、予備の場合に自首した者はその刑を減軽または免除するというのは、裁量じゃなくて、法定で減軽しなくちゃならぬ、免除しなくちゃならぬということになるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/116
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117・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/117
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118・稲葉誠一
○稲葉誠一君 しかし、普通は、自首の場合は、自首減軽は裁量でしょう。法定で減軽しなければならないというのは、いま何があるんですか。法定減軽は何があるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/118
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119・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 法律上の減軽は、未遂の場合の中止未遂はこれは法定減軽で、四十三条但し書きで明らかになっておりますが、各論の場合にはちょっと見当たらない——ないと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/119
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120・稲葉誠一
○稲葉誠一君 この二百二十八条ノ三の但し書きですわ、「但実行ノ着手前」云々と書いてあるんですが、実行に着手したら予備でなくなるのじゃないですか。これはどういう意味ですか。この「実行の着手」という考え方は、そういう考え方じゃないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/120
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121・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) この二百二十八条ノ三は、仰せのような御疑問が出ると思いますが、自首は一般の総則の自首と同じように解すべきだと思いますが、なお、若干自首の間に発覚しておっても自首するという場合も含まれるかもしれません。しかし、この点はよくもう少し検討してみませんとわかりませんが、「着手前自首」というふうに書きましたのは、共犯者がたくさんあります場合に、その中の脱落者の一人が自首して出る、まだほかの者が実行に移していないというようなこういうような状態の場合ならば、その自首は減免の恩典に俗し得るという道を開く必要がある、こういうふうに考えてこのような「着手前自首」という表現をしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/121
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122・稲葉誠一
○稲葉誠一君 よくわからないんですが、「実行ノ着手」というのは、未遂と予備と区別する実行の着手、こういう意味なんでしょう、これは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/122
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123・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/123
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124・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、共犯者の一人なら一人が、二人にしろ、それが実行に着手すれば、全体としてもう予備の段階はなくなっちゃうんじゃないですか。未遂の段階になっちゃうんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/124
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125・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) それはそのとおりでございます。でありまするから、共犯者のありまする場合に、全体としてだれかが着手してしまえば、もはやそれはこの適用はないわけでございますが、脱落した者があるといたしまして、その脱落者がほかの者が着手する前に自首して出た場合には、その者に対してその刑を減軽、免除すると、こういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/125
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126・稲葉誠一
○稲葉誠一君 その「実行ノ着手前」というのは、あれですか、自分が実行に着手する前にと、こういう意味なんですか。ほかの者が実行の着手をしちゃってもかまわない場合ですか。そういう意味なんですか。共犯者なら共犯者が一つの、いわゆる共犯団体説でもないけれども、まあ一つの団体みたいなものをつくるわけですね。一人の者が実行に着手すれば、全体としてもう予備の段階はなくなって、未遂の段階になっちゃうわけですね。そういう場合、だれかが実行に着手していても、自分が着手していないんだから、そういうふうな場合には自首して来た場合はその人はまだ予備の段階だと、こう見るというんですか。あるいは、予備の段階ではない、理論上は未遂になるんだけれども、特に個別的にそれだけを政策的な考慮から分けてこういうふうに規定したんだということになるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/126
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127・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) それはそうではございませんで、犯罪全体として予備の段階でなければならない。で、共犯のことでございますると、いまお述べになりましたように、他の共犯者が犯罪の実行に着手すれば、もはや予備ではなくなってくるわけでございます。したがって、そうなってから後の自首は、情状として酌量されることはありましても、この二百二十八条ノ三の減免規定には適用はない、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/127
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128・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、予備の場合だから、実行の着手前ということはさまっているわけですから、当然この「但実行ノ着手前」という文句は要らないんじゃないですか。あたりまえじゃないですか。実行の着手前でなくて予備ということは考えられないんだから、この文句は要らないんじゃないですか。そこのところがよくわからないんですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/128
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129・長島敦
○説明員(長島敦君) 説明がたいへんむずかしいわけでございますが、共犯者がございます場合に、予備の段階で共犯者のうちの一人が自首して来たわけでございます。一人が自首して参りまして、したがって、共犯関係からも完全に脱落してしまったわけでございます。で、その後残りの共犯者が犯罪を実行したというような場合でございましても、その自首した者は実行の着手前に自首しておるわけでございますので、この減免規定が適用になるということになるわけでございます。その趣旨を明らかにする趣旨で「実行ノ着手前自首シタル者ハ」というふうに特に明らかに書いておるわけでございます。
なお、ちょっと例は違うわけでございますが、内乱罪の場合にやはり自首の規定がございまして、八十条でございますが、これも「末タ暴動ニ至ラサル前自首シタル者ハ」というのが入っておりまして、これとのニュアンスと申しますか、同じような形ではっきりとここへ入れたほうがそういう場合の解釈上明確であるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/129
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130・稲葉誠一
○稲葉誠一君 前の二百二十五条ノ二に戻って、問題になっているのは、「其財物ヲ交付セシムル目的」というので、「其」というのは、これは何にかかる「其」になるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/130
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131・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) この「共」は、「近親其他被拐取者ノ安否ヲ憂慮スル者」にかかる「其」でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/131
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132・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、それ以外の者が、その財物を近親その他の者にかわってというか、まあ意思を通じないでというか、いろいろ類型があると思うんですが、財物を交付した場合は、これに入らないわけですか。入る場合もあるし、入らない場合もあるというんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/132
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133・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 「其財物ヲ交付セシメ」というときにはそういうのは入らないわけでございますが、後段の「又ハ之ヲ要求スル行為」というときには、そういう財物を交付させましたが、交付という点では入りませんが、要求する行為をしたという類型に当てはまりますので、そういう場合でも処罰される、こういうことになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/133
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134・稲葉誠一
○稲葉誠一君 二百二十五条ノ二の一項と二項とは、これはよく読んでみればわかるんでしょうけれども、具体的にはどういうふうに違うのですか。例をあげて説明を願えませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/134
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135・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 第一項は、誘拐を規定したものでございます。第二項は、恐喝の特則を規定して、財産犯的色彩の強い条文であります。つまり、普通の形で申しますならば、そういう身のしろ金を目的として誘拐をして、段階的には、今度はその金を出せという脅迫行為があって、持ってこさせてとってしまう、こういうのが通常の成り行きだと思うのでございますが、犯罪学的に見ると、そういう一連の行為の中で法律的にこれを処罰の対象として取り上げておりますのは、第一項のほうは、誘拐する、人質にとるというこれを罰する規定でございます。それから第二項は、金を受け取る行為と、受け取る行為をする行為、受け取ることの未遂をも含めまして、受け取るという行為をして要求をする行為、これをとっているので、助産犯として金を取ったか取らぬかというようなことは第二義的に考えたことでございます。取り上げ方がそういう面で取り上げた第一項と第二項、そういうふうに解したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/135
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136・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、第一項の「略取又ハ誘拐シタル者」が第二項を犯すという考え方ですか、別個の人が犯す場合ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/136
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137・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 第一項の誘拐をした者が金を要求するのが通常の形だと思いますが、それだけではなくて、第二項の冒頭にありますように「人ヲ略取又ハ誘拐シタル者」と、こうございますので、その「人ヲ誘拐シタル者」という中には、第一項の身のしろ金目的の誘拐もあれば、未成年者誘拐もあれば、結婚目的の誘拐もあるというふうで、いやしくも刑法に規定してあります誘拐罪に該当をする誘拐行為をした者がということで、第一項の誘拐者だけが入るわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/137
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138・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、第一項と第二項と同じ人である場合は、第一項ですでに犯罪は既遂になっちゃうのですから、第二項の要求をしようがしまいが、法定刑も全部同じわけですね。そうすると、そういう人の場合には第二項は要らなくなっちゃうのじゃないですか。要らないと言うと語弊がありますが、なおかつ適用されるんですか。全く同じじゃないですか、条文なんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/138
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139・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 罪の形としては、第二項と第一項はそういう場合には牽連犯というふうに考えて、両方の責任を負うという形をとって処罰されるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/139
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140・稲葉誠一
○稲葉誠一君 牽連犯とする必要はないじゃないですか。第一項だけでもう完全に済んじゃうのじゃないですか。同じことじゃないですか。牽連犯にすることによって法条の取り扱いなんかもかえってややこしくなっちゃうし、「無期又ハ三年以上ノ懲役」にすでに第一項で処せられるわけでしょう。だから、第二項は要らなくなっちゃうのじゃないですか。のんじゃったほうがかえって早いのじゃないですか。簡単じゃないですか、そのほうが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/140
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141・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 第二項はその第一項の誘拐犯人を含むのでございますが、その他の誘拐犯人が金を要求しようというような場合には、危険度からいいまして第一項と第二項とちっとも差異がないというところに着目をして第二項の規定を設けたのでございますが、何と申しましても第二項は非常に財産犯的な色彩を持っているのでございまして、第一項の罪を犯した人がねらっているところはそこにあるということを考えてみますると、この規定を第一項の場合から特にはずさなければならぬ理由もないということで、そのことを含めまして第二項を規定したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/141
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142・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いまの刑事局長の話を聞くと、第二項が刑が重くなっているなら話はわかるんですが、重くならないで、同じ法定刑だから、その必要はないんじゃないかという感じを受けるんですよ。重くなっているならわかりますがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/142
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143・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 準備草案を引き合いに出して恐縮でございますが、準備草案の三百二条の第一項で、今回と中の表現は違いますけれども、第一項に二百二十五条ノ二の一項に相当する規定を置きまして、第二項で二項に相当する規定を置いておりますのでございますが、私がいま申しましたような趣旨から、やはり二項を置きませんとおさまりが悪いわけで、二項の中から特に一項をはずすという理由もまたない、こういうことで二項が置かれておるわけで、それを立法刑式を踏襲したのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/143
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144・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、さっき言ったように、「其財物」ならば、近親その他が普通だと思うのですけれども、第三者が近親その他にかわってとかあるいは意思を通じないでとかいうふうに交付する場合もありますね。そういう場合はどうなんですか、それは考えられないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/144
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145・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) そういう場合も考えられますが、その場合には、先ほどもちょっと触れましたように、二百二十五条ノ二の第二項の前段の「交付セシメ」という中には該当しないのでございます。そういう場合に、もし後段の「又ハ」以下がなければ未遂行為になるのだと思うのでございますが、そういう場合は、後段のほうの「要求スル行為」に該当するわけでございまして、「要求スル行為」として処罰される、こういうことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/145
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146・稲葉誠一
○稲葉誠一君 「財物」というふうにここに規定したのは、意味は特にあるんですか。財産上の利益は含まないという考え方ですか。そこはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/146
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147・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは財産上の利益は含まない、含ませないほうがいいという考えでいたしたのでございますが、財産上の利益ということになりますと、まず債権債務の関係などがあるのでございましょうと思いますが、その免除を求める行為、そういうものまでも含めるということになりますと、いまの親身になって心配するという心配の程度がかなり広くなってくるのでございまして、もちろんそういう場合でもこれと匹敵するような悪質なものも予想されないわけではございませんが、一般論として、そこまで範囲を広めますと、この罪そのものが重い罪として理解をしておりますので、範囲が広くなってくるということから財物にしぼったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/147
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148・稲葉誠一
○稲葉誠一君 しかし、刑法上は、財物と財産上の利益と一緒に含めて立法しておる場合が多々あるんじゃないですか。財産上の場合はほとんどじゃないですか。ほとんとでないかもしれないが、大体判例なんかそれ含めているんじゃないですか。特に財物に限定したのは、何かちょっと狭きに失するような気もするんですがね。これはしかしこれだとずいぶんいろいろな抜け道が出てくるんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/148
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149・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) この「財物」以外のものとして考えられますのは、いま申しました債務の免除とか、あるいは債権の設定とかもあるいは労務の提供というようなことが考えられるのでございまするが、しかもその本人からそういうものを取る場合をも含めて規定した外国の立法例がございますが、今回の改正においては、本人そのものから取る場合は入れない。要するに、「其」ということが被拐取者自身から取る場合をはずしておるという意味をそこで明らかにしておるのでございますが、そういう点を考えてみますると、実際問題として身のしろ金目的の誘拐で債権の免除を求めるために人質に取ったとか、債権を設定するために人質に取ったとか、あるいは労務を提供させるために人質に取ったなんということは実例としてもほとんどないばかりでなく、想像もしにくいのでございますし、なるべく範囲を限定して刑の重さというものの意味をはっきりさしたほうがいいという考えに立っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/149
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150・稲葉誠一
○稲葉誠一君 一応私はこれでいいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/150
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151・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 岩間君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/151
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152・岩間正男
○岩間正男君 法務大臣にお伺いしますが、身のしろ金目当ての幼児誘拐事件ですね、これは戦後にできた新しい犯罪だということが先ほどから説明されたのですが、特に戦後にこういうものができたという原因についてはどういうふうに考えられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/152
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153・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) 先刻も同様なお尋ねがございましてお答え申し上げたわけですけれども、やっぱり一般になかなかみんな知能が発達しまして、犯罪でも巧妙になり、強盗のような場合に比して犯人のほうから申して危険が比較的少なくて、しかもその財物を得ることが容易で確実な方法というようなことをだんだん考える知恵が増してきてこういうくふうもするようになったということが一つじゃないかと思います。
他の一つは、外国におきましていろいろこういうふうな事例があり、それがいろいろな文書あるいは映画その他で紹介されまして、そこで模倣するといいますか、そういうことをやる者が起こってくる、こういうことが原因だろうと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/153
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154・岩間正男
○岩間正男君 特にそうすると戦後の日本の実情とこれは関係があるように思うのですけれども、戦前にはほとんど身のしろ金目当てのものはなかった、あったにしても当人を誘拐して芸者に売るとかそういうようなことはあったけれども、こういうようないわば知的犯みたいなものはなかった、こういうことなんですが、これは日本の戦後における実情と考えてみて、そこのところをもっと掘り下げた答弁が必要なんじゃないか、こういうふうに思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/154
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155・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) 戦後は、一般に、善悪とか法とかいうものを重んずる考え方が少なくなった、というのが言い過ぎなら、そういう面がずいぶんございます。そういう一般の原因は影響しているかもしれませんが、この種の犯罪につきましては、特に戦後だからという原因はほかには私どもは見当たらないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/155
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156・岩間正男
○岩間正男君 戦後というはっきりしたこれは線が引かれるわけですね。日本の置かれておる実情が変わっているところからきたというふうに見ているのではないですか。つまり、賀屋さんはよく戦前のことを問題にされます。そして、道義の問題なんかを池田内閣ではよく問題にするわけです。賀屋さんもそういう立場からよく道義の高揚とかなんとかということを言っておられる。戦前と比べて、戦後はやはりはっきり日本の置かれている立場というものが違ってきているのではないですか。そこの区切りをもう少し私は明らかにするということが非常に重要だと思うんです。
私はなぜこういう質問をしているかというと、これは刑罰を重くするだけでこの犯罪をなくす——むろんそうは言っていないでしょう。しかし、刑罰を重くすることで犯罪をなくすることに非常に大きくウェートをかけているわけですね。そういう点から、私は単にそれだけでこれはできるのか、もっと根源を明らかにする、その点が明確でなければこのような法改正だけで目的を達することはできないのではないか、こういうふうに考えるわけですが、どうもいまの説明だけでは不十分だと思うんですが、私ははっきり申しますと、戦後、日本は、かつての独立したそういう姿を保っていない。現在日本の置かれている立場というやつは、いまだ二百有余の軍事基地がある。米軍が依然として日本に存在する。そして、戦後における米軍の犯罪というものは、国民の道義にもやはり影響している点が大きいのではないか、こういうふうに考えるんです。
これは警察当局に伺いたいんですけれども、米軍の凶悪犯罪がずいぶんあったと思うんです。殺人、強盗、強姦、こういうような犯罪の傾向ですね、これは最近どうなっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/156
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157・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) 私は、この問題では岩間委員のお述べになったようなことはあまり関係がないと思うのです、私の考えでは。あなたの御意見は伺いましたが、米軍の駐在と別に何も関係がないと思うのです。それから日本が米軍の何かの下にあるようなお話ですが、これは戦後の世界状勢というものをお考えになったらわかるんです。イギリスにもフランスにもおります、米軍は。それは、第二次大戦前のような他国をコントロールするためのものではない。駐兵の意義が一変しているんです。集団防衛の必要な世の中になって、その意味でおるのでございます。何もおっしゃるようなことは関係ないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/157
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158・岩間正男
○岩間正男君 それは、賀屋さんはそういう持論を持っておられる。私はそんな議論をここでするのではなくて、私がいま聞いているのは、米軍が戦後十数年、日本に依然としているわけです。そして、犯罪が非常に目に余るものがいままであります。そういうものと国民の道義との間に関係がないとあなたは言われますが、そういうことは納得できないと思うんです。
そこで、お聞きしますけれども、どうですか、米軍の犯罪の最近の傾向は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/158
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159・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 米軍の犯罪の傾向につきましては、私どものほうである程度資料を持っておるわけでございますが、ただいま突然の御質問で、資料を持ち合わしておりませんが、一般的な傾向といたしまして申し上げますと、進駐されましたその当初においては、かなり凶悪犯罪があったように思うのでございます。その後だんだん減ってまいりまして、特に独立後におきましての駐留軍の犯罪傾向というものは、逐年減少してきております。最近では、犯罪の主体を占めておりますものは、道交法関係、あるいは自動車による業務上過失致死罪といったような犯罪が多数になっておりまして、凶悪犯ももちろんそれは絶無ではございませんが、その数は非常に少なくなってきておる。これは駐留軍の数も減ってきたせいだと思いますが、一般的な傾向を申しますと、以上のような状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/159
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160・岩間正男
○岩間正男君 そういう統計はあるわけですね。これはあとでいただいてもいいわけだが、独立してから——講和発効後のことを言うんでしょうけれども、それは必ずしもそうなっていますか。その中で問題にしたいのは、人命の尊重の問題、人権に対する考え方、ことに日本人に対する米軍の考え方、この点が非常にやはり大きな問題だと思う。たとえばロングブリーのこういう問題が起こっているわけです。ああいうような人命を非常に軽く見る、こういうことと今度の身のしろ金誘拐の問題などというようなものは、これはやはり深い関係がある。とにかく身のしろ金というような何か物件として人権を使うという考えは、戦前には先ほどの説明のようにこれほどひどくはなかった。身のしろ金という金の代償として誘拐している。いわばこれは人命というものを物件にかえて見る、そういう考え方です。これは新しい性格を持ったものだ。こういうことと、米軍が日本人に対する犯罪をいままでやってきたその問題に対する処理も非常に不十分に行なわれてきた。こういうアメリカの占領政策そのものが与えた影響、戦後そのような影響が非常に日本の国民の間に浸透したというこの事実というものは、これはいろいろな事実の中から私ははっきり立証することができると思うんです。したがって、身のしろ金誘拐のこの原因というものをもっと根本からその点分析して見る必要があるんじゃないかというふうに考えるんですが、法務大臣の先ほどの答弁は、米軍との関係はないのだ、それから米軍がいるのは集団防衛の立場からいるのであってということです。しかし、日本の現状というのは、依然としてどうですか。最近、ことにアメリカの戦略体制の中で依然として米軍は日本を使い、そうして日本に原子力潜水艦の寄港を求めたり、F105を持ってきている。最近はインドシナに対するいろいろなこれに対する援助を要請してきている。日本の政府は、これに対して、当然日本の立場から、日本の平和と安全の立場から、関与すべきでないという意見を持つんです。ところが、政府はこれに対して協力するというような体制をとっているわけですね。その弊害というものは、物心両面、あらゆる面にやはり依然として深い影響を持っていると思う。こういう中において、最近の新らしい、いわば欧米式の、ことにアメリカ式の知的犯罪という性格を明確にする必要があると思う。どうもあなたの説明ではそこのところがどうもはっきりしていないんです。この認識の程度がこの問題をやはり根本から解決するためには必要だ、私はこう考える。法改正だけで達せられる問題じゃありません。もっと根本的にこの問題は政治的に究明しなければならぬ問題だと思う。どういうように考えていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/160
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161・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) お説を伺っておりますと、身のしろ金目的の誘拐犯罪などをなくするのには、米軍の駐留なんかあってはいけないというようにとれますが、私はとんだ議論だと思う。それがいま非常にこの法案に深い関係があるとは思いません。もう一つ、米軍の日本にいるのは、その基礎の安保条約、これは極東の平和を維持している根源なんですから、そのお説であれば、これは別の機会に岩間さんに十分申し上げたいと思いますが、それは全く見解を異にしております。
それからまた、この犯罪には米軍が駐留しているからこういうものが起こるのだ、そういう検討は私は必要がないと思うのであります。むしろこれは一般的傾向でございまして、私が承知しているところでは、アメリカ軍人が日本において身のしろ金目的の誘拐をやったということは、私は承知していない。むしろそれは、アメリカの場合と申しますより、ヨーロッパにもたくさんある。むしろそれは一般の東西文化——文化と言えばいいですが、映画が来たり、そういう小説みたいなものが出たり、そういう影響で、何も米軍の駐留がそれに影響するとはわれわれは考えていない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/161
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162・岩間正男
○岩間正男君 私は、米軍が身のしろ金の誘拐犯罪をやったというようなことを言っていませんよ。それが直接影響したなんて、そんなことを言っていない。ただ、人命尊重、それから人権を真に守るという立場にこれはもう立っていない。しばしばそういうことを侵犯し、ことに日本人の人命に対しては非常に軽々しく取り扱ういい例としてあのロングプリーの問題があるわけです。そういう風潮というものがやはり占領下の日本人の中に浸透してきているのではないか。そして、新しいこういう犯罪の種類が発生してきているのじゃないか。私は、この点を明らかにしなければ、この問題を単に法改正ということで押し込めちゃいかん、こう考える。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/162
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163・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) 占領当時にお話のような傾向が相当あったことは私も認めます。第一、ソ連軍が第二次大戦の終わりにベルリンに進入しますや、三日間強盗、強姦お勝手なりというお触れを出した。たいへんなことだった。それが、だんだんソ連軍もこれはやめなければいかんというので、犯罪を犯す者にはピストルを放ってもいいとか、いろいろそういうことがあったと思うのです。そういう戦争に伴い、日本にも米軍がどういうことをしたか、おもしろからぬ実例もあったと思いますが、それはもう漸次改善されておりまして、むしろわれわれは、日本の民主主義は、ある意味では遺憾ながらアメリカから教えられたのです、戦争後に。それで人命の尊重、人権の尊重ということは、そのときから急に言われまして、それはいいことだから日本人も受け入れたのでしょうが、いろいろな法令も改正され、その方面に非常に進んでいると思う。私は、あなたの説より逆に考えている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/163
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164・岩間正男
○岩間正男君 何もソ連のことなんか聞いていません。あなたはソ連のドイツで起こしたことを引き合いに出して米軍の犯罪とはかりにかける、そういうやり方はひきょうですよ。そういうことを私はなにしているのじゃないんで、とにかくこういう体制の中でいま起こっている新しい犯罪の原因というものの追及のしかたが、この問題を解決するためには非常に重要だ。しかし、そういう点は、あなたの一般的風潮だとか、それから欧米式の知的犯罪だとか、そういうようなことだけでこの問題を解決するわけにいかない。むろんそういうことはありましょう。しかし、日本の置かれている現在の実情、終戦後置かれているこの半植民地的な形の中から発生してきているこういう新しい犯罪について、私ははっきり明確にする必要があると言っているんです。これは議論をやってもしょうがないから、この点についてはあらためてやることにします。
次にお聞きしたいのですが、誘拐犯人の経済条件はどうです。いままで、犯罪の件数がどれくらいあって、そして犯人の身元を調べたと思うんですが、大体経済の状態はどんなです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/164
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165・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) ちょっと政府委員よりお答え申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/165
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166・長島敦
○説明員(長島敦君) 私どもが調査いたしました限度で、被疑者、被告人で判明いたしておりますのが二十数名あるわけでございますが、その経履を見ますると、無職というのがかなり多いわけでございまして、ざっと見まして全体の半数程度が無職の者でございます。そのほかは、工員をいたしております者とかいうようなものが多いようでございまして、年齢から申しますと、二十歳代あるいは十八、十九というような若年者がかなりの数を占めているというような状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/166
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167・岩間正男
○岩間正男君 これは収入の状況は調べましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/167
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168・長島敦
○説明員(長島敦君) 収入までは調べておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/168
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169・岩間正男
○岩間正男君 その中で、いまの御説明でも大体察知はできるのですが、無職が多い、それから工員なんかの比較的収入の少ない貧困層に多いのです。そういうふうにとっていいですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/169
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170・長島敦
○説明員(長島敦君) おおむねそういうふうに推定できるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/170
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171・岩間正男
○岩間正男君 法務大臣にお伺いしますが、こういう人たちがこのような犯罪を犯すその根源については、経済的な理由ですね、こういう面についてどういうふうに考えていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/171
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172・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) 私どもは、いわゆる生活に困窮しまして、ほんとに食えないから起こる犯罪と思いませんです。十分に富んでおって自分の物質的欲望を充足させることに不自由のない者かというと、むろんそういう人とも思いませんが、どちらかというと、多少の収入があっても生活があるいは不確定なような状態にある人とか、なおそれ以上に金銭的欲望がある人とか、むしろそういうふうで、絶対に困って、いわゆるほんとに貧ゆえの盗みというようなものではない、こういうふうに大体見ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/172
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173・岩間正男
○岩間正男君 これは動機について調べているでしょう。その金を略取したら一体何に使う目的をもってやったとか、そういうことを調べてないんですか。いまの収入の状態、それからそういうような動機、かりにその金を取ったらどういうふうに使うか、そういうものを調べてみなければ、私は背景というものは明らかにすることはできない。そういう点に対する調査が非常に不十分じゃないですか。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/173
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174・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ただいま長島参事官からお答え申し上げたのでございますが、無職というものの内容でございますけれども、無職ということから、徒食をしてその日暮らしをしている者が多いだろうという推定はつくわけでございまして、なお、調査に当たりました者の意見といたしまして、徒食をしております無職といわれている者は、まじめな困窮者ではなくて、どちらかと申しますとぐれん隊まがいの徒食者が多いというふうに申しておりますので、無職の内容は、そういう種類の人が多いというふうに御承知願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/174
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175・岩間正男
○岩間正男君 私は、この問題を解決するには、やはり調査をもっと深くやる必要があると思うんです。どうもいまの答弁を聞いておりますと、非常にばく然としている。少なくともこういうものの発生の根源というものを明確にする努力をすることなしに、法改正だけでこの問題を解決しようという、そういう刑事政策の面からだけでこの問題を遂行するということは、これは根本的な解決に役に立ちません。ここに一つの大きな矛盾があるというふうに私は考えざるを得ないのです。非常に不十分です。二十数人の犯人、被疑者があるそうですけれども、こういうものについてどういう角度から一体調査し、そうしてこの根源を突きとめる努力をされているのか、ここのところは非常に私は明らかでないと思うんです。この点はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/175
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176・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) この調査をいたしましたのは、身のしろ金を目的にして犯罪を犯し刑に処せられました者はもちろんのこと、新聞報道等によって身のしろ金目的の犯罪ではないかと報道されましたものにつきましても、全部それぞれの所轄検察庁並びに所轄の警察御当局の協力を得まして調査をいたしました結果、新聞には身のしろ金目的の誘拐のごとく報道されましたが、実はそうでなかったという例も多々ございまして、結局、犯人未検挙のものも数件ありますが、とにかく身のしろ金目的の誘拐だと私どもが判断されますものにつきまして終戦後起こったもの全部について調査をいたしまして、その状況を明らかにした上でこの罪の危険性というようなことなどを知ったわけでございまして、この被告人の心情等につきましては、中には精神病質の者もあるようでございますし、またやや魯鈍の者もあるようでございますけれども、大体におきましてこの種の知能犯は相当知能程度の高い者に行なわれておることがうかがわれるのでございますし、それからまた、こうやって得た金をどこに使ったかという点におきましても、先ほど申し上げましたとおり、ぐれん隊まがいの、いわゆるまじめな意味の困窮のあまりやったというものではなくて、全くそういう徒食者の犯行でございますので、その使い道などは、おそらくは酒色に使ってしまったのではないかというふうに思われるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/176
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177・岩間正男
○岩間正男君 私はここでお聞きしたいのは、これは戦後起こった犯罪の類型だ、そういうことを言っているのですから、当然もっと科学的な犯罪学の立場からも科学的に調査をするという組織を確立して、これをもっと十分に検討するという立場に立たなければならぬのじゃないか。
そういう点から、これは米軍の半占領下における日本の置かれている実情の問題。もう一つは、これはここずっととられてきた自民党の治政下における経済政策、これによって格差がますます増大する、そういうことから一方で貧困層が発生してきている。そういう中から暴力的な行為というものも起こったり、このような犯罪も発生してきた。こういう点を仮借なく科学的にメスを入れるという態度が必要なんじゃないか。これをそこまでやる機構をあなたたちお持ちですか。それを徹底的にやれば、突き当たるものがあるのじゃないか。壁にぶつかるのじゃないか。いまの政治の実態にぶつかって、結局それはいまの政治自身を批判することができないということになれば、科学的な限度というものが出てくる。私はこの前も少年非行の問題で国会から視察に参りました。仙台に行って、あそこで高裁、高検、地裁、地検の関係者、その他少年院とか、三十数人出た。総合的なそういう犯罪の根源というものを一体調査できるのか。それで裁判所の側に聞いてみると、全然それはやはり自分の仕事の上だけのことでしか答えることができない。検察庁はどうかというと、検察庁にはそのような組織というのはない。関係者に聞いてみると、総合的にこの問題を徹底的に深く掘り下げてその根源を明らかにするという組織がない。ましてや科学的にやるという体制にない。なくしているのがこれはいまの政治の盲点になっておる。そういうのが先ほどの御答弁の中にもうかがわれる。どうも調査が不十分だと思う。もっとやはりそういう点についてこの問題を明らかにするという態度の上に立たないと、刑事政策だけを重刑主義でやっていく、そういうことで、しかもこれはいま考えている刑法改正の草案の中で一つの体系がくずれてくるのじゃないか。これをピックアップして何かつまみ食い的に、非常に問題が騒がれてくるから、ここだけでこの法改正をやるんだというかっこうでいったのでは、全く政治の根源に触れないところの、何といいますか、ほんとうに対症療法、それも不十分なことで、結局犯罪は根絶できない。かえって犯罪を増加させる、こういうことに終わる危険性が多分にある。これは暴力対策と似た点が非常にあります。こういう点についてはっきりした、そのような方針を持っておるんですか。これは法務大臣、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/177
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178・賀屋興宣
○国務大臣(賀屋興宣君) 毎々申し上げますように、犯罪というのは社会のいろいろな事象の複合的原因でございますから、一般的にいろいろ考えられるというお説は同感でございます。ただ、いま一つとして例示にあげられました重要な問題として、現内閣の経済政策の結果貧富の格差がますます広がっている、それだから——これは事実が違っていると思う。統計をよくごらん願いますと、貧富の格差は大体におきまして縮まりつつある。これは認識のもう根本が違っていると思う。アメリカ占領軍がいるからこういうことが起こる——それも、先ほど言いましたように、われわれはそうは思いません。その二つは、私はもう御議論とだいぶ説が違う。ほかの問題ではいろいろ社会現象がみな相関しておりますから、研究すべしという説はもっともでございますが、この身のしろ金の問題につきましては、それを研究しなければこういう犯罪に対する刑の量定を変えるという案は審議できないというほどのことじゃ私はないと思います。悪性であり、これは刑の量定を変えてしかるべしと思えば、これはそれだけで御詮議を願ってもいいのじゃないか。もちろん社会全体をよくしまして犯罪の根源を断つということは必要でありますが、ただいま政府委員から申し上げましたように、これは生活が非常に苦しくて盗みをするというような立場からでなくて、むしろ幾らかあぶくぜにをもうけてそれでおもしろい目をみようという動機が多いものでございますから、これは一般の経済生活、社会状態をよくすれば絶滅するというふうなものでもないと私どもは思っております。この警察問題についていま御詮議願ってもいいのじゃないか、こういうふうに考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/178
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179・岩間正男
○岩間正男君 これはいやしくも統一的な政策ですから、それを単に量刑を上げるだけで、そういうようなことだけでこの問題は解決できない。私は、もっとその背景になっている根本の問題を明らかにしなければ、総合的な対策なしにこの問題を解決しようということはできないことだと思う。そういうやり方でかえってうまくいかなかった例がたくさんありますから、そういう点から私は明らかにしたいと思っているんですが、いまの御答弁では総合的な対策はない。それでは、その対策をやってトコトンまで科学的にこれを厳密にやろうとしたら、あたりさわりがあって非常にぐあいが悪いんだ、そういうふうにすぐ考えますよ。そんなことはないんですか。この点は議論になるからやめます。お聞きしますが、一体、諸外国の例ほどうなんですか。略取誘拐についてこういう例を調べられたと思うが、ずっとあげてください。それから社会主義国と資本主義国のを簡単でいいからあげてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/179
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180・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 私どもは諸外国の立法例につきましてはできるだけ資料の収集につとめてまいったのでございますが、その立法例を調査しております過程において外国の書物に書いてありますのを見ますると、主としてまあアメリカの例でございまして、社会主義国のは資料がないのでわかりませんが、アメリカの例について申し上げますと、アメリカにおきましては、一九二〇年から三〇年代にかけま
してこの種の事件が非常に多発しておったようでございます。そのために、アメリカでは身のしろ金目的の誘拐罪の刑が飛躍的に各州とも上げられたのでございまして、現在も先ほど申しましたように死刑が残っているという状況でございますが、外国の書物によりますと、一九三二年にシカゴの警察には過去二年間に二百件のこの種の事件が発生いたしまして、その支払われた身のしろ金は二百万ドルにのぼったという報告がございます。それから一九三二年の三月には例の有名なリンドバーグ大佐の生後十八カ月の男児が誘拐されたという事件が発生いたしまして、この事件が契機となりまして連邦で初めて誘拐罪のこの種の規定が制定をされましたし、それと前後いたしまして多くの州の刑法が先ほど言いましたようにできたわけでありますが、それにもかかわらず、一九三三年から三五年にかけまして多数の誘拐事件が続発をいたしまして、身のしろ金と引きかえに返還された被害者もあれば、身のしろ金を得た後に証拠を抹殺するために被害者を殺害した例も少なくなかったというふうに報告されております。
なお、FBIの活躍が、この種の犯人にギャングが関係しておったものも少なくないので、そのギャング団の検挙と処罰のために非常に効果をあげたということが報告されております。そうして一九三五年以降は著しく減少しておるということでございまして、さらに一九三九年の連邦のアドミニストレーションの年次報告によりますと、三十二年の六月二十二日に連邦の誘拐法が通過成立して以来、FBIによって百五十六の事件が捜査され、現に捜査中の二件を除く全事件が解決されたというふうに報告されております。これらのケースにつきまして、連邦または州の裁判所で三百十七の有罪判決があって、科せられた刑は、死刑が十七、無期刑が四十二、その他これらの刑期はこれを合算してやっておりますが、三千六百四十九年八月六日となるという報告がなされておるのであります。かように、アメリカでは、リンドバーグ事件を契機として法制が整備され、その後しばらくの間は続発をしたのでありますが、いま申し上げましたように一九三九年の終わりころになりましてから事件はずっとFBIの活動によりまして少なくなってきて今日に至っておるということでございますが、今日といえどもそのあとを断ったわけではないようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/180
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181・岩間正男
○岩間正男君 アメリカの様子がいま報告されたわけですが、これについて詳細な質問はやる時間がないからやりませんけれども、あなたは社会主義国のことをあげられなかった。これはそういう例がほとんどないんです、おそらく調べたって。その点をさっきから賀屋法務大臣に対して私は質問している。そういうあなたが答弁されている答弁の根拠は、非常に知識が希簿だということの証明だと思います。
私は最後にお聞きしたいのですが、吉展ちゃん事件は一体どうなっているか、これに対する反省はどうなのか、これははっきりここで明らかにしておいてもらいたい、国民の前で。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/181
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182・中山福藏
○委員長(中山福藏君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/182
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183・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 速記をつけて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/183
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184・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) お答えを申し上げますが、吉展ちゃん事件につきましては、いまだに犯人の検挙を見るに至っていないのでございまして、はなはだ遺憾に存じておるのでございますが、あの事件の捜査にあたりましては、警察当局が主になりましてあらゆる手を尽くしたのでございますが、ついに金を取られるその段階で犯人の検挙を逸しまして、自来、今日まで、私どもの漏れ聞いておるだけでも非常な努力を払って、まあ何千名という人たちについても調査しているようでございます。現に、私どもも、録音放送等もやりましたので、ある程度の公開捜査に今日ではなっておりますので、われわれの立場からもこの捜査に協力を申し上げるような体制を整えて、特にこういう犯罪は累犯になるものがかなりありますので、刑務所にいた者の中で誘拐犯人の前歴を持っている者等につきまして、かつまた、東北弁だと言われるあのことばづかいなどからも、いろいろと参考。になります資料は警察当局に差し上げまして裏づけ捜査をしていただいておるような状況で、全力をあげて犯人検挙につとめているのが現状である、かように私は存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/184
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185・岩間正男
○岩間正男君 私は、それでは警察についてはあとにします。あれだけでは国民は納得しないと私は思うんです。あれだけ協力して、しかもこれに対する反省がされていない。これが聞きたい。この法案との関連で、この点はいま間に合わなければしかたがないが、あとではっきりさせてもらいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/185
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186・中山福藏
○委員長(中山福藏君) それでは、他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/186
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187・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 御異議ないと認め、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/187
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188・岩間正男
○岩間正男君 私は、日本共産党を代表して、刑法の一部を改正する法案に反対するものであります。
反対理由の第一は、この法改正は、刑を重くすることによって犯罪を減らそうとする重罰主義の刑事政策のあらわれであり、わが党はこのようなやり方には根本的に反対であります。犯罪のよって起こる根源をそのままに放置しておいて、単に刑罰を重くするだけで犯罪を減らすことはできません。これではかえって犯罪がふえるばかりであることは明らかな事実であります。政府答弁でも明らかなように、身のしろ金目当ての略取誘拐は、戦前にはなかった犯罪であり、戦後発生した新しい犯罪であります。つまり、ここにわが国の現在置かれている特殊事情があるという点を明確にすることが私は重大だと思う。そういう中には、アメリカの日本支配はいまだに続いている。そして、米軍が二十年近くも日本にいて、いろいろな犯罪がいままで非常に累加されてきました。その傾向を見るというと、人権を尊重しない、それから人命というものを非常に軽く見ている。これはロングプリーの例なんかではっきりしている。結局、このような考えは、目的のためには手段を選ばない、金を取る目的のためには人命を物件祝していく、こういう考え方だと思うんです。私は、最近こういうような風潮が日本の社会の中に行なわれ、そして略取誘拐をますます激発させていることは争うことのできない事実であると思います。さらにまた、池田内閣の経済政策の破綻等から非常に格差が起こって、貧困層が多くなって暴力発生の要因になっている、こういう背景も指摘しなければならない。このようなわが国の置かれている根本的な矛盾を解決することなしに犯罪を減らすことはできないと思う。この矛盾をなくすためには、この根源を科学的に総合的にもっと突き詰めて、そうして単に刑事政策の面からでなくて、もっと根本的な政治的な対策が必要だと考えます。
反対理由の第二は、現在、刑法の全面改正が当局によって検討され準備され、新しい刑法体系をつくりだそうとしております。今回の法改正では、過般強引に通過させたあの新暴力法などによっても明らかなように、日本の刑事政策をなしくずしに反動的な方向に持っていくという刑法の全面改正の既成事実をつくろうとするものであると思います。本改正案もその一環としてここで取り上げられており、われわれはこのような態度を了承することはできません。
第三の反対理由は、このような重大な背景を持つ法案の審議がまことにずさんに行なわれている事実であります。先ほど法制審議会の議事録が配られましたが、これを十分に見る時間がない。国会の会期もあと数時間後に迫った今、こういうものを出され、そして審議をしろといったって、どうしようもない。これでは責任のある審議というのはできない。この前の新暴力法のときに、新暴力法を通すためには他の法案を犠牲にしてもしかたがないというような意味のことが主張された。そういうようなやり方をした政府自民党の諸君が、せっぱ詰まった今、このようなやり方で法案を通すことは、私は絶対許されないと思う。私は衆議院の審議の状況を見たんですが、本法案は、三月三日から十日、十二日、十三日、十七日、十九日、二十四日、二十六日と、七回も審議されているのです。そうして本院にこれは送られたものであります。ところが、きょう初めてこれは審議するというかっこうで、しかもわずかに短い時間でどさくさまぎれの中でこの法案を通過させるということは、私はこういう運営のしかたというものに賛成することはできません。
われわれ共産党は、幼児をさらったり、これを身のしろとして金を略取したりする犯罪行為というものは、最も卑劣な許すことのできないものだと思います。わが党もこれに対してすべての国民とともに憎しみをもってこのようなやり方を絶滅するために努力することに決してやぶさかなものではありません。しかし、この犯罪をなくすることを口実にしてますます反動化する刑事政策の突破口をつくるためにこのような無理なやり方でこの法案を通すことには、われわれは賛成することはできないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/188
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189・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 他に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/189
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190・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 御異議ないと認め、これより採決に入ります。
刑法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/190
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191・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 多数と認めます。よって本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本会議における口頭報告、議長に提出すべき報告書の作成等は、先例によりこれを委員長に御一任願いたいと存じます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/191
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192・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 次に、請願の審査を行ないます。
第五八号戦争犯罪関係者の補償に関する請願外百三十六件を一括して議題といたします。便宜速記を中止して御協議を願います。
速記を中止してください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/192
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193・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 速記をつけてください。
ただいま速記を中止中に御協議をいただきましたとおり、法務局出張所存置に関するもの四件、裁判所営繕に関するもの一件、厚木米海軍航空基地周辺の人権侵害事件調査促進に関するもの一件、すなわち、二八三号、三四六号、七六〇号、二八一七号、一九〇四号、一二四百万、以上六件の請願は、これを議院の会議に付し、内閣に送付することを要するものと決定して御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/193
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194・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
なお、報告書等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/194
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195・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 次に、継続審査要求についておはかりいたします。
鉄道公安職員の職務に関する法律を廃止する法律案、売春防止法の一部を改正する法律案、商法の一部を改正する法律案、以上三法案につきましては、会期中に審査を終了することが困難でありますので、閉会中もなお審査を継続することとし、右三法案の継続審査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/195
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196・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
なお、要求書の作成等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/196
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197・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 次に、継続調査要求についておはかりいたします。
当委員会は、検察及び裁判の運営等に関する調査を行なってまいりましたが、本調査は会期中にこれを完了することは困難でありますので、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/197
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198・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
なお、要求書の作成等は、これを委員長に御一任願いたいと存じます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/198
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199・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 次に、委員派遣承認要求に関する件についておはかりいたします。
従来の例により、検察及び裁判の運営等に関する調査のため、閉会中委員派遣を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/199
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200・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 御異議ないと認めます。
つきましては、派遣委員の人選、派遣地、派遣期間等は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/200
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201・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
なお、議長に提出する要求書の作成、手続等についても、これを委員長に御一任願いたいと存じます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/201
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202・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 次に、検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。
ちょっと速記をとめてください。
〔午後二時十九分速記中止〕
〔午後二時三十三分速記開始〕
〔委員長退席、理事迫水久常君着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/202
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203・迫水久常
○理事(迫水久常君) 速記を起こして下さい。
亀田君から調査に関し発言を求められておりますので、これを許します。亀田君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/203
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204・亀田得治
○亀田得治君 新聞で拝見いたしますと、松葉会なり住吉会なり、なかなか中心人物に手をつけておるようでありますが、その辺につきまして実情を若干御報告願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/204
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205・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 松葉会幹部及び住吉会会長の摘発事件で今回逮捕しました実情につきまして申し上げたいと思います。
松葉会幹部による恐喝事件でございますが、これは、被疑者は、松葉会の常任総務中央支部長志賀三郎、それから松葉会顧問の志賀竹夫、それからあと、松葉会幹部の早崎幸八、証券ブローカーの藤綱久二郎、巽証券社長の小路三郎でございます。被害者は、札幌の丸井今井デパート社長の今井道雄、経理部長の青木三作でございます。
事件の概要でございますが、ことしの一月二十九日、三十一日ごろの両日に、丸井今井デパートの株券を、志賀三郎名義のものを一万五千株、藤綱久二郎名義のものを六千五十株、合計二万一千五十株を、東京興業の睦会員百八名の名義に書きかえを行ないました。丸井今井デパートは、株主総会を間近に控えまして株券を分割されたことに不審をいだきまして、社内で調査した結果、東京興業の背後に松葉会のあることを知りまして、また、松葉会の近江絹糸総会荒らしの記事を見て、社長らが驚いて、もと丸井今井デパートにつとめたことのある小路三郎を介して、分割された株券を買い戻すことにいたしたわけでございます。二月の十三、十四日ごろに、青木経理部長から、電話で、分割された株券を、小路に対しまして、一株二百四十円から五十円相当のものを、三百五十円から四百五十円で買い戻すように依頼した。そして、小路は、この依頼によりまして、二月二十四日から二十八日ごろの間に、巽証券事務所でもって志賀竹夫、藤綱久二郎、早崎幸八三名と三、四回株券の買い戻しについて折衝いたしましたが、この折衝中に小路は志賀らに引き入れられ、その仲間に加わりまして、二月二十八日に小路が青木経理部長に対しまして、電話で、四百円や五百円ではとても売りそうもない、六百円でなければだめだ、もし六百円で買い取らなければ、松葉会の者がレクリエーションのつもりで総会に乗り込む、こう脅迫いたしましたので、会社のほうでは緊急役員会を開きまして協議した結果、商売上の信用をおそれて、小路の申し入れを入れることといたしまして、一万五千株を一株六百円、六千五十株を一株五百五十円で、合計して千二百三十二万七千五百円で買い取る旨を回答いたしております。
〔理事迫水久常君退席、委員長着席〕
そうして三月一日の午前十一時ごろ、小切手で株券と引きかえに代価を受領し、二日の午前十一時三十分ごろ、巽証券の事務所で志賀三郎に九百万円、藤綱久二郎に三百三十二万七千五百円、これを渡しまして、小路はこの二人から一株五十円の割りで百五万七千五百円を謝礼としてもらい受けております。
こういう事件を今回検挙いたしたわけでございます。このうち、二名につきましては逮捕いたしましたが、他の三名は、小路が逮捕されているところから所在をくらましましたので、逮捕はできなかったので、全国一斉に第一種の指名手配を行なっております。なお、捜索、押収につきましては、六月二十五日、七十二名を動員いたしまして松葉会の本部、事務所、会長宅、東京興業社等十二カ所につきまして捜査をいたしまして、書類並びに玩具の拳銃等を押収いたしております。
それからもう一つの住吉会の会長の恐喝事件でございますが、これは被疑者は住吉会会長積上義光でございます。この事案は、江戸川区長島町に住む工場経営者Iが、昭和三十六年七月ごろ、当時居住しておりました墨田区緑町の自宅——これが住吉会の事務所と地続きでございました。その一部を改造すべく工事に着手いたしましたところ、その工事に因縁をつけて、そのころ現金十万円を喝取されております。それが第一の恐喝事件でございます。それからこのIは、改築工事を中止いたしましてこれをNという男に売却しておりますが、積上はこの売買に因縁をつけまして、三十七年六月ごろ、不動産業者二名から十五万円、元の持主Iから五万円、計二十万円を喝取いたしております。これが第二の恐喝事件であります。それから第三の恐喝事件は、Nは、この家屋の改造を中止いたしまして、これをまた一という者に、これは前の一と違いますが、Iという者に売却いたしております。Iはここに居住したわけでございますが、三十八年の三月ごろ、町内の告別式についての回覧板を一晩とめたことに因縁をつけまして、夫婦とも住吉会事務所に呼びつけられまして、子分の頭をしないで打ちながら始末書を持ってこいというように脅迫をいたしました。さらに、子分をつけて遺族の家に謝罪に行かせた上、茶菓子代名義で現金三万円を喝取いたしております。この三つの恐喝事件によって検挙をいたしたわけでございます。
なお、積上を同行の後、直ちに積上の自宅、住吉会本部事務所の二カ所につきまして捜索いたしました結果、猟銃五丁、日本刀五振り、木刀七本、わきざし一本、短刀一本、猟銃弾二百発くらいを発見して、これを任意提出させまして保管をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/205
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206・亀田得治
○亀田得治君 これはいずれも恐喝でおやりになっておるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/206
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207・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/207
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208・亀田得治
○亀田得治君 それから最近錦政会ですか、この関係も若干おやりになっておるようですが、事案の内容を明らかにしてほしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/208
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209・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 錦政会の関係の資料を持って参りませんでしたが、拳銃等押収いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/209
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210・亀田得治
○亀田得治君 何か新聞で見ると、団員の者が就職をして、そしてそれが会社から何らかの理由でやめさせられた、そういう事態に自然になるのか、あるいは何か問題を起こしてなるのか、はっきりしませんが、そういうことを理由にして開き直って恐喝をしたというふうに書かれているわけですが、内容はそういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/210
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211・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 忘れておりましたが、お話のとおりの事情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/211
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212・亀田得治
○亀田得治君 それから、これも新聞を拝見しておりますと、なかなか警察は近ごろ相当高姿勢で始めたという印象を受けておるわけですが、頂上作戦、こういうことばがあるわけですね。そういうことばを平生からお使いになってやっておるわけでし、ようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/212
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213・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) この最近の二つの事件から新聞が頂上作戦ということばを使っておるようでございますが、これはどこから出たのか私も十分存じないのでございますが、私どものほうとしては、頂上作戦というようなことばを特にいままで使ったことはございませんが、ただ、幹部をねらわなければ組織の根絶はできないという考え方は従来からあるわけでございまして、本年度当初に要綱をつくりました後におきましても、ただ末端の者ばかりやっていたのではだめだ、したがって、末端から積み上げていって上へいく、しかしそれがなかなか非常にむずかしいということであれば、これはこの前もお話があったのでございますが、特別法を活用して財源の関係からやって締めつけていったらいい、あるいは直接幹部のほうを締めつけるような方法を十分考えていかなければならぬということは私どもの方針で毛あったわけでございます。まあそういうような方針からここ数カ月間の内偵の強化によりまして、最近こういうように直接幹部へいけるような体制ができ上がってきたというふうに言えると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/213
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214・亀田得治
○亀田得治君 それは非常にけっこうなことだと思いますから、大いにひとつやってもらいたいと思います。当然そういう収入は表に出ていないわけですが、国税局との関係というものはどういうふうに扱われておりますか。あなたのほうでちゃんと国税のほうに連絡をして、国税は国税なりに動くということができておるのかどうか、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/214
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215・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) まあ私どものほうとしては必要のつど連絡をいたしておるわけでございますが、府県によりましては国税局と定期的に会合を持つというようなことをやっておる府県もございまして、十全の体制とは言えないかもしれませんが、できるだけの連絡はとるようにいたしておるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/215
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216・亀田得治
○亀田得治君 最近、国税局は、財源さえあればあちこちかぎつけて相当強くやっているわけです。一部、たとえば文化人の中なども、税法がどうなっているかしらぬが、とにかく実情に合わぬじゃないかというふうな批判などもずいぶん出ているわけです。いわゆる有名文化人という人じゃなしにですよ。そういうふうに国税というのはあちこちあさっているわけだが、なかなかこういう関係はあまり実際は手をつけておらぬのじゃないかと思われる節があるわけなんですが、これは国税庁長官に来てもらうといいのですが、実際はどうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/216
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217・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 結局、私どもとしては、三本柱の一つとして暴力団を締めつけていく方向として資金源というものはやはり非常に重要な要素を持っていると思うのですが、ただ、これがはたして完全に把握できておるかと申しますと、なかなかこれは——もちろん合法面と非合法面とあるわけでございまして、非合法面は見つけ次第検挙していくわけでございますが、合法面について完全なこれが把握ができるかということになりますと、これは国税局でもなかなかむずかしいことではないかと考えておるわけでございます。もちろん、お話のような点もありますので、私どものほうも協力をいたしまして、また国税局のほうでもそういう面をできるだけ公平な税の負担という意味でやっていってもらわなきゃならぬと思いますが、実際問題としてはなかなか把握がしにくいという悩みがあると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/217
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218・亀田得治
○亀田得治君 たとえば、非合法で入った金ですよね、さっき御指摘になったようなのは。これはちゃんとはっきりしているわけです。しかし、国税関係としてはちゃんと収入と見るわけでしょう。だから、私の言うのは、非合法面として出たものが一体きちんと国税庁が扱っておるのかどうか。せっかく警察が最近——以前よりは私はなかなか態勢ができてきた感じはするわけなんです。そこまでいっとるが、国税のほうははるかにおくれているんじゃないか。全部の収入というのはなかなか明確を欠く点があると思いますが、私の言うのは、あなたたちが手をつけて表へ出たものでもきちんと処理されておるのかどうかという点を聞いておる。これはどうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/218
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219・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 恐喝事件等でそのまま押収できる金額でありますれば、これはまあ押収というのは対象になりますから、完全に把握できるわけですが、それ以外の面についての課税の関係は、ちょっと私どものほうではわかりかねるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/219
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220・亀田得治
○亀田得治君 これはやはりちゃんとあなたのほうも把握しておってもらわぬといかんです、それは。それは君らのほうが幾らやっても、国税のほうが、いや、ともかくあれなんだと、手をつけちゃうるさいからとかいったような感じを持ってほったらかしてあるかもしれない。それじゃやはり片手落ちだと思うんです。これは長官がずいぶんきつくあちこち税金取り立てておるから、おそらくこんなところもやっておると思うんですが、ちょっと呼んでもらいましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/220
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221・中山福藏
○委員長(中山福藏君) いや、いま言いました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/221
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222・亀田得治
○亀田得治君 じゃ、それはあとから聞くことにします。
それから、これも新聞に出ておって、当然なことなんですが、お札参りなどに対する防止の手続ですね。事件をこういうふうにしてあげて、参考人等をあなたのほうで呼んでいくわけですから、そういう点に対する対策、手当て、これはきちんとできておるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/222
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223・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 今回のこの二つの、先ほど申しました事件につきましてもそうでございますが、やはり証人、参考人等の点に十分な保護を加えなければ、これらの者の余罪、あるいはこれからこれを突破口として暴力団その他の犯罪を摘発していくためにはぜひとも必要なことでございますので、これは本年当初作成しました要綱につきましても特にその点は念を入れて、従来のような通り一ぺんの保護措置だけでなしに、はっきりと責任者を定めまして、そしてそれが責任をもって保護の万全を期するということで、今回も特にこれらの事件の被害者になりましたものにつきましては、それぞれの県へ連絡いたしまして、十分な保護措置をとることに指令をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/223
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224・亀田得治
○亀田得治君 現在のところは、そういうお礼参り的な仕打ちというものはあらわれておらぬわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/224
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225・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) これは、この二つの事件につきましては、もちろんございません。ただ、年間を通じて見ますると、多少お礼参りの事件があるわけでございまして、これらにつきましてそれぞれそのつど検挙をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/225
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226・亀田得治
○亀田得治君 この六月二十日にできました関東会ですね、これはどういう性格のものですか。その構成団体並びに目的ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/226
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227・江口俊男
○政府委員(江口俊男君) 資料が刑事局長のほうでいまわかると思いますが、これは去年できております。それで、これは、関東の今度あげました二つの会はもちろんでございますが、それ以外に、義人党だとか、錦政会だとか、たぶん六つか七つのそういう類似の団体が、初め親睦団体としてそういうものをつくろうということになったのが、単に親睦というだけじゃなしに、もう少し政治的な綱領を掲げて、関東親睦会というような案もあったのだけれども、関東会という名前にしたのはそういう精神をもって去年の十一月か十二月ごろだったと思いますが、熱海で発会式をやっているようであります。ところが、その後、御承知のように、関東の松葉会の会長の藤田何がしという者と、関西の本多会の会長との間に縁組みができたのを機会に、それじゃ関東会というものの意味がないじゃないか、初めできた趣旨は、関西のそういうものの関東に対する進出に対抗する意味でできた、ところがそのうちの一員が関西の本多会と杯をかわすというようなことになればその趣旨に反するというようなことで、多少の部内におけるいざこざがあったようでございます。そういうことを契機として、松葉会の会長が初代の理事長になっておったのでありますが、最近今回の事件で検挙を見ました積上という住吉会の会長が二代目理事長として交代しておる、これがたぶんただいまおっしゃったような時期、最近の六月とかなんとかいう時期じゃなかろうかと私想像します。こういういきさつの団体でございます。そこで、資料があれば、もっと詳しく補足いたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/227
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228・亀田得治
○亀田得治君 もうちょっと目的など、綱領とかなんとか、そういうものをきめているんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/228
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229・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 綱領がございまして、
一、関東会は世界の平和、国家の繁栄に寄与し民主々義国家の国民としての義務を「責任のある行動を以って」遂行するものである。
一、関東会は自由民主主義を擁護推進し、これを阻止するものがあれば呵責なく粉砕し徹底的に戦うものである。
一、関東会は共産主義に対し、これを撲滅すべく全面的に闘争を挑み、また国民の愛国精神を発揚するものである。
一、関東会は自由主義陣営にあるアジア諸国と積極的に国際協力を計り、アジア大同団結の実現を念願するものである。
一、関東会は常に民衆の立場にあり、民衆に対して迷惑を与えるものに対しては、その理由の如何を問わず強固なる行動をもって一致団結これにあたるものである。
一、本会は外部の何れの団体にも拘束されず、常に各々の団体は自主独立の立場において国家的見地から行動せねばならない。
こういう綱領でございますが、松葉会、住吉会、国粋会、錦政会、東声会、義人党、北星会、この七団体で三十八年の十二月二十一日発会式が持たれて結成をされたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/229
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230・亀田得治
○亀田得治君 関東会自身は、政治結社の届け出はするような方向ではないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/230
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231・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 関東会自身は、政治結社の届け出をまだいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/231
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232・亀田得治
○亀田得治君 いまお読みになった中身を聞きますと、ずいぶん政治的なことを書いておるわけですね。やはりそういう方向にはあるわけでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/232
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233・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 一応、綱領、宣言などから見ますと、政治活動を標榜しておるとあわして相互間の親睦連携強化というようなものをうたっておるわけでございますが、その真のねらいとなりますと、やはり自己の存在の正当化、あるいは関東地区へほかのほうから入ってくるのを阻止するための団結、あるいは親睦団体というふうに見られるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/233
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234・亀田得治
○亀田得治君 この関東会の構成メンバーが七つあるわけですが、この七つとも、いま関東会の綱領でおっしゃったような大体同じようなものを持っているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/234
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235・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) ちょっと御趣旨の意味がわからないのでございますが、一応関東地域の博徒団体の親睦機関というふうに見られるわけでございます。もちろん、その中の東声会は、一応ぐれん隊と考えられるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/235
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236・亀田得治
○亀田得治君 松葉会と錦政会は、これは政治団体の届け出をしておりますが、それ以外はしていないでしょう。しておらないが、関東会の綱領と同じような何か取りきめというものを内部で持っておるのかどうか、そんなものはないということなんですか、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/236
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237・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 二つだけ政治結社の届け出をしておって、あとはしておらないのでございますが、やはり活動の実体から申しますと、それほどはっきりと区別するのでなくて、やはり同様な傾向を持っているということが言えるのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/237
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238・亀田得治
○亀田得治君 はっきりした区別はなくて同様な傾向というのは、どういう意味ですか。暴力団的な要素と、そして政治結社のベールをそこにかぶっておる、そういうような意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/238
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239・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) そういうような趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/239
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240・亀田得治
○亀田得治君 それからこの松葉会の手入れがあった後に、これは松葉会の藤田会長がしゃべっているわけですがね。毎日新聞です。「志賀はバカなヤツだ。組織をくずすようなヤツが一人いると純粋に運動(政治活動)をやっているものまでが迷惑する。」、こんなことを言っておりますがね。これは警察じゃどういうようにこれを理解しているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/240
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241・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 一応私も新聞でそういうふうな記事を拝見いたしたわけでございますが、その点は何とも言えないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/241
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242・亀田得治
○亀田得治君 そのことばだけ見ますとね。本筋は政治活動なんだが、たまたまふらちなことをする者がいる、けしからぬというような、こういう感じにとれるわけですが、実際は本筋と例外が逆なんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/242
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243・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 私どもの普通いままで事件を検挙した分から考えますと、上のほうは、下のほうがかってにやっているので自分たちは全然そんな考えは毛頭持っていないということを言われる場合が非常にたくさんあるわけでございまして、ただいまの新聞にありますような発言が本心から出たものか、あるいはまゆつばものであるのか、この点はいまのところ、具体的な事実に基づいてではございませんので、一応差し控えておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/243
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244・亀田得治
○亀田得治君 差し控えぬでもいいわけでね。自分の見解をしゃべるわけですから、どんどんとしゃべったらいいんです。そうすれば、向こうのほうも、ははあそういうふうに見られているのかなあということで、筋の通っている団体なら反省をするだろうし、私はそういうところが大事だと思う。この前よりはきょうはだいぶざっくばらんに答弁されているようだが、やはりこう微妙なところにいくと、批判したり意見を述べることを遠慮される。もうそんなことは必要ないと思うんですよ。そのかわり、この被害者に対しても、さっきおっしゃったような万全の措置をきちんと整えてやはりやっていくということが非常に大事です。
それで、これは公安委員長のほうが適当かもしれぬと思うんですが、現在の制度でいきますと、政治結社の届け出は、一応形式的にちゃんと要件がそろっておれば、受け付けることになっているわけですね。それでいいのかどうかということですね。これは、ともかく結社の自由ということは憲法上の大事な基本的人権だけれども、明らかにいわゆる政治結社という範疇からそれて、ただそれをベールに使うのだというようなことがはっきりしておっても、形式的に受け付けなければならぬのかどうかね。これは長官、どういうふうにそういうことを考えているんですか。どんどんまだそういう可能性のあるのが五十ほどあると、こう聞いているんですが、それがどんどん持ってきたら、一応要件がそろっておったら受け付けなければならぬなにが前提において間違いがあるように思うんですが、どうなんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/244
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245・江口俊男
○政府委員(江口俊男君) これは、御指摘のように、公安委員長であれば、両方兼ねていられるので、あるいは責任をもって御答弁になる立場かとも思いますが、政治資金規正法によるところの政治結社の取り扱いを、そういうふうに形式的な要件がそろえば受け付けるようにするのか、あるいは、実質審査をして、その価値のあるものだけを受け付けるようにするのかというのは、これこそ批評を差し控えるという意味じゃなしに、実質的にやはり相当問題だろうと思うのです。私は、いまのたてまえでは、やはり形式的な要件が整っておれば自治省としても届け出を受けざるを得ないのじゃなかろうかと思いまするが、それとまた私たちの取り締まりとは全く無関係でございますので、政治結社の届け出をしているしていないというのは、ただいま日原局長が申し上げたように、そう本質的に違うものと考えておりませんから、あらわれた犯罪、あるいは予想される犯罪については、そういう区別なしにやっていくという以外は方法はなかろうと、こう考えます。しかし、政治資金規制法によってある程度の実質審査をすべきだという議論も一つの意見でございますから、それはまたその方面で御論議を願えれば、私は特別な反対はございません。しかし、むしろこういうはっきりしたものはいいのでしょうけれども、そうでなしに、ある者はこれは非常に政治的なことだというふうに考え、あるいは政府のほうではそれは政治とは無関係だというようなことで考えて受け付けないというようなことがあると、また逆にその方面の心配というものが起こってくるのではないかというふうに思いますから、警察の立場としては、そういうことはたいしたウエートにはなっていないということだけを申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/245
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246・亀田得治
○亀田得治君 公安委員長にもちょっとその点だけ聞きたいと思いますので、短時間でよろしいから、ちょっと来ていただくようにしていただけませんか。明らかに警察の名簿に暴力団として載っておる、それがまた政治結社の届け出をすると、それを受け付けなきゃならぬ、これはちょっとおかしいと思うんですね。だから、これは公安委員長から一ぺんここで見解を聞きたいと思うんですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/246
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247・中山福藏
○委員長(中山福藏君) いま連絡をとりましたから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/247
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248・亀田得治
○亀田得治君 では、後ほどにします。
それでは、国税と公安のその一点ずつ残しておきまして、具体的な問題がまた新たに一つ起きておりますのでお聞きするわけですが、東京の内山観光というバス会社の労働組合ですが、ここでせんだってから労使間の紛争が起きておるわけです。ところが、そのこまかいことはいま抜きにしますが、会社がその車両を点検するのだと称して、小菅の刑務所に車を入れておるんですね。何か刑務所が会社とぐるになって車を動かさぬようにして労働組合と対決しているようなかっこうが出ておるわけですがね。理由のいかんにかかわらず、紛争中に刑務所が近所の車を預かってやるというのは、ちょっとはなはだしく筋が通らないわけですが、こんな話は聞いておりませんか。私もけさ聞きまして、これはまた何しておるんだということで……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/248
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249・江口俊男
○政府委員(江口俊男君) 私はただいまここで聞いたことでございまして、しかし、紛争中の事件で何らかの事故が起こっておりますれば、当然警備局のほうには情報が入ると思います。現在私にはそういう点の報告はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/249
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250・亀田得治
○亀田得治君 これは矯正局長にちょっと来てもらってお聞きすることにします。
まあいろいろありますが、一応この程度に私の質問はしておきます。先ほど残った点だけを、御本人たちが来られたら追加して聞くことにします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/250
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251・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いまお話がありましたたとえば松葉会の事件というのは、いつごろの事件でしたっけ、ちょっと聞き漏らしたんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/251
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252・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 松葉会の事件は、ことしの一月二十九日ごろからいろいろ話し合いがありまして、現金の喝取がありましたのが三月の二日でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/252
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253・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、松葉会の事件がまあ事件になるだろうというふうなことが警視庁にわかったのはいつごろなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/253
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254・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 三月下旬ごろでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/254
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255・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、三月下旬にわかってから今日までの捜査は、どういう形のものをやっていたわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/255
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256・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) これは、三月下旬ごろ、警視庁の捜査四課員が証券界で事件情報を収集中に本件の情報を聞き込んだのでありまして、それ以後ずっと内偵をいたしまして、そうして被害事実がはっきりしたということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/256
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257・稲葉誠一
○稲葉誠一君 こういう事件はむずかしい事件ですから、いろいろ御苦労があったと思うんですが、住吉会のほうは、これはだいぶ前ですね。三十六年ごろから事件があったわけですが、これは警視庁にわかったのはいつごろなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/257
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258・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) この事件の端緒は、ことしの五月二十四日でございます。二十四日に情報を聞き込んだものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/258
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259・稲葉誠一
○稲葉誠一君 住吉会の事件は、三十六年、三十七年の事件がおも——おもというか、だいぶあるわけですね。それをことしの五月二十四日にその端緒を握ったというのは、これはあれですか、その間は全然そういうふうな問題については警視庁なりは住吉会の会長にそういうふうなことがあるということは全然わからなかったんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/259
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260・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) この事件につきましては、五月二十四日に初めて端緒を得たわけでございまして、それまではわからなかったわけであります。事件は結局あとからさかのぼっていったようなかっこうになるわけであります。なお、このほかに二、三件情報があります。ただ、非常にはっきりした確実のもので逮捕をしたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/260
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261・稲葉誠一
○稲葉誠一君 これは捜査ですから、なかなかここで論議するようにいかないのはよくわかるんですが、住吉会の問題にしても、何かこう、そういうふうないろいろのものがあるのに、ことしになって五月になって端緒を握ったというのは、これは捜査のしかたというか、マークのしかたというか、そういうふうなものが非常に不十分だったという印象を与えるわけなんですがね。まあこれはいろいろ問題があるから別として、どうも少し古い事件をだいぶおくれてとり上げているという印象を与えるので、もっと積極的な形で、そういうふうな指定団体というふうな形ならば、当然マークして捜査なり何なりを進めることができるのじゃないか、こういうふうにまあ考えるわけですけれども、どうも少しそういう点について足りなかったのではないかとこれはいわば第三者的な考え方が出てくるわけですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/261
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262・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) この点では、私どものほうも悩みがありますのは、被害者がはっきり証言してくれるかどうかということに、被害者が決意するまでに相当の時間がかかる事件、この住吉会の事件なんかそうでございまして、そういうようないきさつもありまして、はっきり被害者が証言してくれる、事件が確実に立つということがございませんと、非常にあとでもたついてくるというようなことになりますので、事実が多少古くなりましてもはっきりした事実で逮捕したいということでこの事件をとらえたようなわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/262
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263・稲葉誠一
○稲葉誠一君 こうやっていわゆる頂上作戦か何か非常に積極的な熱意を見せてくれたのは非常にいいことだと思うんですが、一部の人は、これは国会の中で非常に私どもがやかましく徹底的にやれということを言ったので、それで一応これをやったんだ、国会が済めばまた少したつとしぼんじゃうのじゃないか、こういうふうな見方をしている人もいるわけですよ。これはいわば底意地の悪い見方かもわからぬけれども、そういう見方をしている人もいるんですが、これは長官、あなたのほうとしてはこうした組織暴力というものについては徹底的になくなるまでやるんだという強い決意というものをあなた自身は表明できるわけですか。できると思うのです、なくなるまで徹底的にやるんだということを。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/263
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264・江口俊男
○政府委員(江口俊男君) 現在、ただいま御指摘になりましたような相当の大物のところまで事件が立っていっているということについては、私たちもやっとそういう時期にまできたのかということで非常に力強く思っている次第でございます。これはずいぶん前にも御説明をしたと思いまするが、われわれが暴力対策要綱というものをつくりまして、まず視察内偵、そういうものをやるには基礎的なものをずっと積み重ねていかなければ、ただあらわれた現象だけに終始したのでは根っこのほうにはどうしてもいかないということで、第一着手は、各暴力団の内部の系統なり従来のあり方なりというものの調査に時日をおいておったわけであります。それがおそらく夏の初めになれば全国的にある程度の成果をあげるのじゃなかろうかということは、これはほぼ四、五カ月前にどこかで申し上げたわけでございまするが、そういうことの結果、こういう事件が——事件が古いので、これはその時期に気づかずにいま気づくということについては御批判もございましょうが、そういうことに力を入れた結果、こういうものが出てきたということでございますから、ほかのところも、事件が過去においてあったものは、もちろんいまから新しいものができまする場合におきましても、同じような方向でやっていって、大いに効果があがるものだと、こう私は考えております。
また、同時に、今度の事件が上がりましたのは、おそらく従来の相当の聞き込み、あるいは捜査にもかかわらず、被害者あるいは関係者が情報を提供されなかったのが、いまの国会等の論議の報道等が大いにあずかっておると私は考えまするが、こういう風潮によって、それではおれも言うてやろうというのがだんだん出てきたというふうに考えられまするので、ひとり私たちの努力が実を結んだということを考える以上に、一般の協力というものがここまでやってきたというふうに私考えまするから、これがだんだん助長されますならば、絶滅という日は、それはすぐ来るとは思いませんけれども、その方向に向かって進んでいくということについては確信を持って言えると、こう考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/264
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265・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いまの話はよくわかるんですが、結局、あなたのほうとしては、こういうふうなものは絶滅するまで徹底的にやるんだ、途中でくじけないんだ、そういう強い決意を持っているんだということは、はっきり表明できるわけですね。そこまでもう少し強くはっきり出せないものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/265
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266・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 警察としては、ただいまおっしゃったような強い決意を持っておりますから、一般の方々にもそういう意味の御協力をお願いしたい、こういうことをはっきり申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/266
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267・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そこで、よくこういう事件がありますと、もらい下げという、ことばは悪いかもしれませんけれども、財界の人とか政界の人とかいわゆる名士と称する者が警視庁なり何なりへ電話をかけたり、もらい下げに行ったり、何とかしてくれないかと言ってよく行く例があるわけですね。この松葉会の事件とか住吉会の事件が上がってから、いままではそういうことはまだないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/267
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268・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/268
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269・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そういうような例がかりにあれば、——電話をかけるものもあると思うし、電話をかけてそれでどうかしてくれというようなことでなくて、なぞをかける、いろいろあると思うんですが、そういうものがあったら、しっかりあなたのほうでノートをしておいてもらいたいわけですれ。ノートをしておいてもらって、しかるべき機会にこちらが聞きますから、聞いたときにははっきり遠慮なく発表してもらいたいと思う。案外なのが出てきて、何とか勘弁してやってくれと言っている例があるわけですね。だから、そういう点はしっかりやっておいていただきたい、こういうふうに思います。
それから、そういうような政界とか財界とかいろいろ各方面の名士連中が頼みに来ても、決してそういうようなことに応じないんだということは、当然だと思いますが、それはお約束できるわけですか。当然ですね、これは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/269
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270・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 今度のこういう幹部に直接執行してやるという決意のときからそういう覚悟で臨んでおりますので、その点は御心配はないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/270
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271・中山福藏
○委員長(中山福藏君) ちょっと申し上げますが、矯正局長が来られましたから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/271
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272・稲葉誠一
○稲葉誠一君 これは警察庁に対する要望ということになるんですが、徹底的にこれをやるというわけですね。そうすると、これはおそらくずっと続けるわけですから、毎月一回くらいは、その間どういうふうなことをやって、どれだけの検挙をしたかというふうなことを、当然あなたのほうでまとめてあると思う。まとめてあれば、当委員会から要求があり次第必ずそれを当委員会に明らかにしていただきたい。これは国民も注視しているところだし、それによって国会全体なり何なりがさらにいろいろな面からそれを支持するというか、そういうこともできるわけですから、こっちから要求があれば、月に一回程度のものをまとめて、必ずその経過、結果を——成果というか、それを発表していただきたい。これは私のほうの要望ですが、それはどうですか。それくらいのことは当然やれると思うんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/272
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273・江口俊男
○政府委員(江口俊男君) 今度のようなはっきりした事項については、もちろんやれます。ただ、捜査の過程、内偵の過程というようなものについてはもちろんあげられませんから、数が非常に少ないというような場合は多少気がひける場合もございますが、とにかくある事実について御報告申し上げることはここでお約束できます。ちっともはばかるところはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/273
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274・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いまさっきあなた三本の柱と言われましたね。暴力団対策の三本の柱というのは、よくわからないんですが、何と何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/274
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275・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 暴力団対策として、これは方針はもちろん要綱に基づいてやっていくわけでございます。ただ、さしあたり私どものほうの刑事局の関係としてどういうふうにやっていくかということになりますと、とにかく、現象事犯を捜査検挙し、また掘り出していく、現象暴力に対して対処していくということ、それから不法資金源をつぶしていくということ、凶器の取り締まりを十分にやっていく、ということをさしあたり考えているわけでございますから、先ほどそういうことを申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/275
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276・亀田得治
○亀田得治君 国税庁は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/276
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277・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 国税庁は、直税部長が来られるはずです。まだですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/277
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278・亀田得治
○亀田得治君 矯正局長だけに先に聞きます。
足立区の千住に内山観光株式会社というバス会社があるわけですが、観光バスの会社で最近労使の紛争が起きておるわけですが、会社のほうが小菅の敷地に会社の車をしまい込んで車を動かさぬと、こういう問題が起きているわけですがね。あるいは、刑務所のほうじゃ、場所があいておるからそこを使わしておるのか、どういうことか、よく事情はわからないわけですが、外から見ると、何か刑務所がストライキの応援をしておるようなかりこうがあるわけでして、それで実情を聞きたいわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/278
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279・大澤一郎
○政府委員(大澤一郎君) ただいま突然の御質問でございまして、事実詳細はまだ存じておりませんのでございますが、ただ、小菅刑務所におきまして、刑務所の作業といたしまして、一昨年来、自動車の整備工場を準備いたしまして、現在の就職状況におきまして自動車の修理工というものは非常に就職率がいいし、また、賃金も相当いい。彼らの将来の授産としてきわめて適切なものというふうに考えまして、一昨年来、自動車整備工場をつくりまして、二級整備工の免許を取りまして、指導員も入りまして、受刑者の訓練かたがた外注も受けて自動車の修理をしておるわけであります。事情は詳細存じませんが、もし民間の自動車が刑務所に入っておるといたしますれば、何かの修理の注文を受けてその修理のために入るというわけでございます。しかし、その間の事情、また、これが必要以上の長期にわたるということになりますれば、何かまた事情があるのじゃないかということも考えられますが、至急この点調査いたしまして、正当な注文であればそれ相当の仕事を早くしてそうして引き渡すというような方法をとるように督促いたしたいと思いますが、何ぶん個々の事情についてつまびらかにいたしませんので、ただ、応援をするために預かるということはおそらくあるまいと思います。また、単なる置き場のために刑務所が一民間会社の自動車を預かるということも考えられないことでございます。おそらくその作業としまして自動車修理の注文を受けて預かっておる、かようじゃないかと存ずる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/279
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280・亀田得治
○亀田得治君 ほんとうに修理するなら、それはいいと思います。ところが、車体検査だと称してそこにみんなしまい込んでしまっているんですね。実際はそういうことをする必要がない車のようです。だから、組合員のほうじゃ、おかしいじゃないかと、こういうことが真相のようでありまして、だから、従来の関係もあるのかもしれませんが、いま起きておる事態というのは、必要がないのにそこへしまい込んで、結果において会社の応援をしているようなことになっておるということで、ほかからいろいろ意見が出ておるわけですから、真相を調べてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/280
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281・大澤一郎
○政府委員(大澤一郎君) さっそく小菅刑務所のほうについて調査いたしまして、労働争議の片棒をかつぐというような疑いを持つような行動のないように十分注意いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/281
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282・中山福藏
○委員長(中山福藏君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/282
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283・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 速記をつけてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/283
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284・稲葉誠一
○稲葉誠一君 もうさっき話があったのは、特別法を活用していろいろ暴力団を取り締まるというような話がありましたね。特別法というのは、おもに何を言っておるわけですか。この前言った秘法とか著作権法、これなんかも入るわけですね。そのほかに何があるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/284
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285・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) いままで主として活用しているのは、売春禁止法とか麻薬取締法とか銃砲刀剣のこういう特別法がございますが、これを先ほどお話のありましたようないろいろな範囲に広げていきたい、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/285
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286・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いろいろな範囲に広げるといって、これは法律の許す範囲で、許さない範囲に広げたらたいへんなことになるのだから、それはおかしいですが、いま私の聞いた特別法の活用というのは、主として税法とか著作権法のようなものじゃないかと思ったんですがね。たとえば、興行をやる場合に、著作権法に違反してほとんどやっているわけでしょう。だから、全国でどういう興行をやっているか調べれば、著作権協会と連絡して調べれば、すぐわかるんです。これは岡山と広島か、二つでやったですね。それからここから所得が入ってくるのですから、脱税問題も起きてくるのだし、そういう形で幾らでもいけるのじゃないかと、こういうふうに思うわけですよ。それから非合法でたとえば恐喝なら恐喝で金が一千万円入れば、それだけ所得が入ったんだから、そのことを税務署に通報してやれば、それだけ所得税が入ってくるわけだし、こうなってくると思うのですが、ただ、松葉会とか住吉会は税法でどういうことになるかというと、国税徴収法の関係で任意組合というようなものだと思うんですが、国税徴収法の関係で出てきますから、これは国税庁が来てからにしますが、非合法の面だけでなくて、合法の面でやったって、税務官吏の立ち入り検査の権限もあるのだし、そういう面も活用していけば出てくるわけですから、非合法だけのものに限ると言えない。これはもっともあなたのほうに聞くより国税庁のほうに聞くべきだと思いますが、著作権法の問題だとか税法の問題だとかはもっと幾らでもやり方があるのじゃないですか、連絡を密にとれば。著作権協会との話し合いなんかだって十分やっていないのじゃないですか。これはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/286
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287・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) お話のように、税法関係の脱税、これもいろいろございまして、法人税の問題や入場税、酒税の問題やでいろいろございます。著作権法違反の問題もあるわけでございます。私どものほうとしては、こういう税法等の特別法の活用による取り締まりということに今後力を注いでいきたいというつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/287
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288・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 国税庁かお見えになりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/288
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289・亀田得治
○亀田得治君 直税部長に端的にひとつお伺いしますが、暴力団が恐喝等をして金を取った、こういうものはもう公然と明るみに出ておるわけですね。こういうものについての課税ということはきちんとやられておるのかどうか、お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/289
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290・鳩山威一郎
○説明員(鳩山威一郎君) 暴力団の関係のことにつきましてただいま至急調査して参ったのですが、ただいま急に取り調べてきたので、あるいは不正確なことを申し上げるかもしれないのでありますが、まあ一般的に、所得というものは、一応その原因のいかんを問わず所得であると考えるのでありますけれども、これが明確な犯罪行為自体であると、たとえば他人のものを窃取強盗したという者がその際に所得があるかというと、これは犯罪行為自体と不可分のものでありますから、強盗して取ってきたものに所得税を課するということはいたしていないわけであります。それは他人のものであって、まだ自分のものではないというような考え方であると思うのでありますが、だんだん事が普通の平常な状態に近い、かりに詐欺とかあるいは脅迫が伴った行為によって特定の者が所得利益が生じたというような場合は、これは一応所得が発生をする。しかし、これは犯罪事実行為が刑事裁判によって確定をいたしますれば、これは当然取り消されるはずでありますし、そういった際は、これは所得自体も消えるという論理になるかと思うのであります。まあ一般に、いろいろ脅迫的なことによって金銭が取られるという場合に、多くの場合は泣き寝入りになるケースが非常に多いのじゃないか。こういった場合は、その犯罪行為自体も警察のほうへ届けられない。そういうようなものになりますと、その支払い者のほうもそれを隠すという場合が非常に多くて、いわゆるわれわれは資料と言っておりますが、支払い資料がなかなか出てまいらないということが多いのでございます。で、そういった場合はなかなか追及がむずかしいのでありますけれども、まあ支払ったんだけれども支払い先は言えないというような答弁があった場合に、使途不明であるというようなことで支出自体が否認されるというような実際の解決になっておる場合も相当あるのではないかと、私はそう想像いたしておるのでありますが、こういった明確に支払ったということであれば、当然それは課税をされるべきものであると思います。ただ、現状は、残念ながらわれわれの力として従来なかなか及び得なかった部面があるのではないか。今後は、警察当局のほうと緊密な連絡をとりまして、警察のほうで資料が握れました場合には、それについて課税をいたしていきたい。私どもも極力私どもで努力をいたすべきだと思いますが、実際問題としては、なかなか現在ではそこまで至っておらないので、今後大いに努力をしなければいかぬというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/290
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291・亀田得治
○亀田得治君 まああまり手がついておらぬような感じを受けるわけですが、統計によりますと、年間の恐喝事件の約四割、四割に当たるものが暴力団による恐喝ということになっている。私がいま申し上げるのは、表に出て裁判になっているやつですよ。だから、これは数字的にもはっきり表に出ているわけです。しかし、そういうふうにして、恐喝したものは、おそらく取って費消されてしまっているのではないかと思う。大部分はそんな被害者のほうに返すというようなことはほとんどなかろうと思うんです。だから、私は、これだけでも国税庁が当然きちんと捕捉しておるべきではないかと思うわけです、表に出ているのですから。そういう角度から検討されたということはないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/291
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292・鳩山威一郎
○説明員(鳩山威一郎君) 刑事事件になりまして、それが不正な所得であるというような刑事事件になるという場合には、これは刑事裁判によりまして所得を国が没収といいますが、そういった措置が当然とられるべきものでありまして、私は課税をすべきものとは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/292
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293・亀田得治
○亀田得治君 それは犯罪物件の場合とちょっと違いますからね。それはちゃんとやはり恐喝した人が使っているわけです。ただ、裁判など、普通の恐喝とかということであれば、しろうとが一回やったというような場合には、裁判になれば、返して、情状をよくしてなるべく罪を軽くするというような場合はあっても、暴力団の場合はそんなことは聞いたことはない。国だってそんなものは没収しない。多少意味が違うのだから。これは、刑事局長、そうでしょう。これは犯罪の結果の果実なんです。没収できないでしょう。刑事局長、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/293
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294・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ちょっといまの場合はできないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/294
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295・亀田得治
○亀田得治君 だから、できないわけですね。年間件数にしてこれはずいぶん多いわけですよ。私は統計をあちらに置いてきましたが、これは法務省、警察庁から出た統計にちゃんと載っているわけです。だから、国税庁は、最近ずいぶん文化関係でも税金を取り過ぎるというて、いろいろのことを言われているので、こういうところをもっときちっとして、そうして有効な社会的活動をしているような面は多少は考えるということにしないと、そんなところはもう全然どうもほったらかしのような感じで、没収できないようなものをできるような錯覚をだいいち直税部長も持っておられる。それは問題を扱っておらぬということですわね、初めから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/295
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296・鳩山威一郎
○説明員(鳩山威一郎君) ただいま御答弁いたしましたことで間違ったことを申し上げて恐縮でございますが、かりに脅迫によりましてある会社から金員を巻き上げたという場合には、その行為は取り消し得る行為になりまして、かりにその被害を受けた会社のほうがその金を返せということになった場合に、現在利益が何らかの形で残っていれば、当然脅迫を受けて取られた会社に戻るべき筋合いのものであろう。そういったことになれば、その部分は所得ではなかったということになるかと思います。ただ、これが現実に会社が金員を戻せなくて、かりに一千万円取られたのだけれども、百万円ぐらいしか取れなくて、九百万円は取れなかったという場合に、じゃ九百万円についてはこれは債務免除をするというようなことになるかと思います。これは会社のほうがそれだけ免除を明らかにするというようなことになれば、これは免除益という課税の問題が起こるかと思います。ただ、理屈はそういうことになると思うのでありますが、実際問題として利益を追及していく場合に非常に困難を伴いますもので、従来からあまりはっきり申せば手がつけられていなかったというのが、私は率直に申し上げまして実情だろうと思います。今後、警察当局のほうとも緊密な連絡をとりまして、課税できるものは極力課税をしてまいるということにいたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/296
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297・亀田得治
○亀田得治君 まあ暴力団が恐喝で取った金をあとから返したなんというのは、話は聞かないわけでして、それは理屈から言うたら取り返す権利があるかもしれない、そこだけ認めると。また、正規の何というか損失、あるいはしたがって暴力団の収入になっておらないように見えるかもしらぬけれども、それは理屈ですよ。実際上は、それは取ってどんどんいろんなことに使っているわけだから、それは国税庁のほうで新たな一つの徴税の分野として開拓してもらわなければだめですよ。それだけ要望しておきます。それで、いずれ一ぺん国税庁で過去何年かの恐喝事件——年間約一万件あるわけですからね、暴力団によるものが。これは表に出ているやつですよ。それを一ぺんずっと検討してみてください。約束できますか。いろんな因縁をつけられても困るというようなそんな考えじゃ、それはだめです。警察は大いにやると言って、いまやりかけているんだとおっしゃっているわけです。あなたのほうはどうですか。過去二、三年のやつをとりあえず調査してみてください。それだけのものをやる決意がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/297
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298・鳩山威一郎
○説明員(鳩山威一郎君) 私どもといたしましても、こういった面で非常に従来手が及ばなかったということを反省をいたして、まあ私ども内部ではいかにしてこういった面の拡充ができるかということについて常々非常に心配をいたしておりますが、やはりこれは警察当局と密接な連絡をとりつつやりませんと、私どもも、何というか、いわゆる丸腰の職員を使っておるわけでありますから、命を心配しないでやれというほどのことはなかなか申しにくいのでございます。まあ私どもも調査力の及ぶ限りのことをやりたい。また、いろいろ法人あるいは個人によりまして当然査察事件として取り上げていかなければならぬというふうなこともあり得ると思うのでありますが、そういった際でも、警察当局と密接に連絡をとりながらやってまいりたいと思います。
一万件の調査につきまして、これは私一存でお引き受けをしても、まだどの程度の事務量がかかるか、ちょっと見当もつきませんのでございますが、そのうちいろいろ大きなケースにつきまして極力努力したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/298
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299・稲葉誠一
○稲葉誠一君 国税庁にお伺いするのは、たとえば松葉会とか住吉会とかあるでしょう、これは国税徴収法上どういうことになるんですか。法人格とか社団とか任意組合とか、いろいろあるでしょう。何になるのですか。一がいに言えないかもわかりませんがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/299
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300・鳩山威一郎
○説明員(鳩山威一郎君) これは実体を調べてみたのでございますが、公表といいますか合法的活動の部面では、あるいは会社の組織をしているところもありましょうし、個人のところもあるかと思います。その合法面の活動とうらはらに非合法活動をやっているような面がございまして、合法面のほうはいろいろ調査も及ぶわけでございますが、非合法方面の活動は、何としても私どもとしては解明しにくい部面でございます。けれども、課税の面では、実際はあるものは赤字の申告が出ておりましたり、あるいはわずかな申告が出るというようなのが実情でありまして、大半の実際の所得というようなものが逃げているのではあるまいか、こういう想定はしているのであります。ただ、実際私どもある程度資料的な基礎づけがありませんと、なかなかやみくもに課税するわけにいきませんので、その点が非常に悩みの種であります。もちろん、警察のほうの御努力で実体がつかめるようになれば、私どもも警察のほうと緊密な連絡をとって、課税すべきものは課税しなければならぬ、またしたいと、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/300
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301・稲葉誠一
○稲葉誠一君 警察のほうで暴力団の名簿なんかあるわけですね。構成員全部の載った名簿があるんですが、東京におけるおもな団体、これはすぐ警察でわかるわけですが、これから一体税金を取っているのか取っていないのか。大体、松葉会とか住吉会というものから税金を取っているのか取っていないのか。取れないとするならば、取れない法律的な根拠がどこにあるか。法律的には取れるんだけれども実際取っていないんだ、これはこういう理由によるんだ、いろいろあると思うが、これはいますぐというわけにはいかないと思いますが、あなたのほうでよく警察と連絡をとって調べてくれませんか。この次までに一カ月ぐらいまでの間に明らかにしていただきたいわけです。これはできますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/301
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302・鳩山威一郎
○説明員(鳩山威一郎君) 私どもも至急そういった勉強をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/302
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303・亀田得治
○亀田得治君 それじゃ、公安委員長に二点ばかりお尋ねします。
一つは、例の十五団体というものの政治結社が出ているということを明らかにしてもらったわけですが、さらに届け出は出ておらぬが同じようなものが相当あると。そこで、今後そういうものが届けを出してくれば、受け付けなければならぬものなのかどうか。一応現在の制度のもとでは、結社の自由ということになっているわけですから、届け出が来れば受け付けるのがたてまえであろうと思うが、しかし、一方では、いわゆる暴力団名簿、リストに載っているわけですね。そういうのが届けさへ持ってくればどうしても受け付けなければならぬのか、矛盾を感ずるわけですね。決して政治結社の自由というものはそんなデモクラシーに反すること自体を目的としているものに認めておるわけでもないと思うのです。まあむずかしい問題ですが。だから、現行法ではどうしても受け付けざるを得ぬのだということであれば、何かそこに法律自身を検討してみる必要があるのではないかという問題もあるし、一体、こういう現在のままでいいのかどうかということですね。これが五十も六十も百もどんどんどんどん持ってきたら、何かこうおかしいかっこうになっちまうのじゃないか。正規の政治結社として活動しておる自民党なり社会党なり共産党なり、そういうものの数はわずかだ。あとから、何かベールをかぶせるようなものばっかしふえて、その数がえらい多うなってしもうておる。外国の政治学者でも来て、何か日本の政治の現状の研究なんというようなことで来られた場合、私ははなはだ驚くのじゃないかと思うのですね。そういうような点、公安委員長として直ちに割り切った結論が出せないのかもしれませんが、何らの矛盾も感じないでおやりになっているわけでもないと思いますし、ひとつ高邁な見解をお聞きしたいわけなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/303
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304・赤澤正道
○国務大臣(赤澤正道君) もちろん、言うまでもなく私どもも割り切れぬわけでございますが、現行法をもってしてはいかんともしがたい。そこで、割り切れざるものをどういつだ形でこういうことが起こらないで法文化するかということについては、亀田委員並びに稲葉委員のほうが本職だと思いますので、むしろうまい方法があればひとつ御教示にあずかりたい。もちろん、私どもといたしましても、高邁にも何も、こういったことは全くおかしいわけであります。いかに結社が許された自由であるとはいえ、また、資金規正法だったって、届け出たものも届け出ないものも、金集めは勝手にやっておる。むしろ届け出たもののほうがそれだけでも多少正直だということも言えるし、きめ手をどこに置いたらいいかということはなかなかむずかしい問題じゃなかろうかと思います。やっぱり私は課題であると思うのでして、こういうことはやっぱり将来に向かって検討すべき一つの題目であると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/304
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305・亀田得治
○亀田得治君 どういう方向で検討すべきものですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/305
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306・赤澤正道
○国務大臣(赤澤正道君) 先ほど国税庁の人に御質問があったようですが、私どもは、資金源のことについてずいぶん悩んだわけでございます。しかし、警察をもってしてはなかなかこの資金源がつかみにくいが、私はちょっと思いつきまして、税務署ならなかなか隠し財源や資金源をたたくことは得意中の得意ですからひとつこれを活用したらどうかということまで私は言ったわけであります。しかし、そういうことは、税務署自体に負わされた一つの、何といいますか脱税が行なわれている事実があればあくまで摘発するでしょうけれども、暴力団対策として国税庁まで動員することはいかがかと思いましたので、私もそれ以上続けなかったいきさつもあるわけでございます。しかしながら、これをどういう形で押えるかということにつきましては、先ほど申しますように、妙案が思い浮かばぬわけでございますが、しかし、明らかに暴力が主体になっている団体であって、警察がその意味で特に取り締まろうとしている団体が、ぬけぬけと政治団体であるということは、私どもも割り切れぬものがある。ただ、かといって、暴力団に所属しておりましても、立候補の自由はあるでしょうし、いろいろむずかしいことがからんでまいりますし、国民に与えられた基本的な権利にみな関係してくるわけでございまするので、非常に私はむずかしい点があるのじゃないかと考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/306
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307・亀田得治
○亀田得治君 選挙局長にわざわざお越し願ったわけですが、そういう点について何か検討されている点がありましたら、この際見解を聞かしてほしい。明らかに民主政治に反する暴力団、それがこう届け出をしてくれば、形式上は受け付けなければならぬ。しかし、規制のしかたを間違うと今度はそれが何といいますか一つの誘い水になって、規制してはならぬような団体にまでこう入り込んでくる、規制がね。そういうことになっちゃ、これまたたいへんな問題であります。だから、これはもうしかたがないならしかたがないということも一つの見解かもしれませんが、まあそのポストにおられる関係上いろいろお考えになっておると思いますが、おそらく、暴力団のほうから届け出がきた場合に、ああよう来てくれた、御苦労さんというような顔じゃおそらくなかろうと思うんです、あなたのほうは。だから、そこら辺のところをひとつあわせて見解を聞かしてほしい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/307
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308・長野士郎
○政府委員(長野士郎君) 政治団体につきましては、御承知のように現在政治資金の公開ということをさせまして、そうしてまあ民主政治の発展、ガラス張りの政治が行なえるようにするというのがたてまえで現在の政治資金規正法はできておると考えるわけであります。ここからさらにどこまでいくかということになりますと、いろいろの問題がございますが、選挙制度審議会が今後検討いたします課題といたしまして、結局、政党というものについてどういう法的な地位なり資格なりというものを与えていくかということが最終的な課題ではないだろうかという気がいたします。現在は、そういう政党なり政治団体というものを正面から規律する体系になっておりませんで、何かの政策を推進するとか、そういうような意図をもって行動しようと思うものの資金面だけの届け出ということに終わっているわけでございます。そうしてまた、受け付ける機関、選挙管理委員会その他につきましても、実質的な審査権というものは、結社の自由その他の関係からでもございましょうが、持つべきでないということになっているわけでございまして、したがいまして、その限界をどこに考えるかということになりますと、現在の政治資金規正法の延長としてはなかなか考えにくいのではないか。むしろ正面から政党法とか政党のあり方、そういうものをどうするかというところに目標を持ちまして考えていくということでなければ、なかなか合理的な解決ができないんじゃないかと、こう考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/308
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309・亀田得治
○亀田得治君 長野さん、やはり問題に取っ組んでおられるから、なかなか一つのポイントをお示しになったと思うんですね。政党法ができれば一番はっきりするわけですが、政党というもの自身を積極的に明確にできるかできぬか、そういう点が私も一つの問題点だと思うんですね。もしそういう角度で政党というものを定義づけようとした場合に、非常にこれをしぼって定義づけると、基本的な結社の自由を阻害するというふうな場合もあるだろうし、あるいは、広くやり過ぎると、何のために一体政党の定義づけをするのかわからぬということにもなろうし、その手かげんが非常にむずかしいと思う。いずれにしましても、そういう政党、政治団体を定義づける場合に、いま世間で言うておる暴力団、こういうものがその概念の中に入ってくる余地があるかどうか、こういう点、長野さんはどういうふうに思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/309
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310・長野士郎
○政府委員(長野士郎君) そこのところはよくわからぬのですが、当然入ってくるべきではないということにつきましては、私ども気持ちとしては全くその通りに思っておりますけれども、そういう場合に、そういう資格なり基準なりというものにはまっているかどうかという実体を明らかにしていくということになりますと、勢い団体そのものを規制していくというまた逆の弊害血というものが出てくるかこないか、そこら辺の限界が一番の問題だろうと思うわけであります。現在、選挙法におきましては、たとえば立候補者の数に応じまして確認団体という制度をとりまして、何人以上の立候補者を持っていれば、特定の選挙運動期間中だけでございますけれども、政治活動ができるというような、そういうやり方も全然ないわけじゃない。一定の限界を引いておる点もあるわけであります。これは政党の政治活動を選挙運動期間中に特定の方法でやることだけについてのことでございます。これを一般化していくことが必ずしも妥当なのかどうかということも詳細に検討しなければなりませんでしょうし、外国の立法例その他につきましても研究を遂げてまいりませんと、十分なことが見通しがなかなかつきにくいのじゃないか、かように存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/310
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311・亀田得治
○亀田得治君 まあその程度にいたしておきます。いずれにしても、真っ正面から政党、政治団体というふうなことを規定する場合に、暴力団がそこに入りにくいということがこれは私は常識だと思うんです。ところが、現制度のもとでは、それが混淆しておるようなかっこうに事実上なっておるわけです。だから、これはひとつ公安委員長のほうで十分御検討願いたいと要望しておきます。
それからもう一点お尋ねしたいのは、せんだって本会議でお聞きした例の六・一五事件に関する判決の問題ですが、まああのときはなかなか大臣は高姿勢な御答弁をされたのですが、あとからは実はあのときはジュネーブにいて現場はよく知らなかったというお話でありましたが、教授の人たちが集まってきたのは、学生の人たちがずいぶんけがをしておるということが伝わって、そうしていろいろ心配をして集まってきたわけです。で、したがって、警察のほうでも十分識別できる状態であったわけです。結局、警察が、第五機動隊ですか、学生が憎けりゃそのおやじのほうも憎いといったようなことでぶつかっていったことが実は真相なんです。それが証拠に、これはみんな裁判で明らかになっているのですよ。君らが学生を扇動しているんだろうといったような言い方をして突っかかってきているわけなんです、一団の教授陣に。しかし、まあ刑事関係としては、私本会議でも申し上げたように、加害者と被害者の結合ができないということで、まあ起訴ということはできない。これは準起訴手続は一応とっておりますがね。刑事事件になりますと、具体的な結びつきということが非常に重要になってくる。しかし、民事裁判では、結局そこまで特定する必要がない。ともかく、警察、東京都に所属しておる警察が、それだけの被害を与えたということなら、当然それは損害賠償を負うべきだ、こういう趣旨なんです。これはまあ国家賠償法の解釈として一つの新しい解釈を与えたことにもなるでしょう。事柄は、相手が、教授、研究者のグループですね、そしてそれが起きたときの事情というものが、先ほど私が申し上げたような状態なんです。
そういう点をやはり十分検討してもらって それはだれでも間違いはあるんですよ。それはどんなりっぱな人でも、間違った場合には、なるほどああ悪かったと、こう言ってもらえば、これはやはりそういうことを否定することになりますからね。ところが、間違いの事実があったことを、今度特定の加害者がわからないからというようなことで法律論で責任のがれをするというふうなことは、ちょっと公の立場にある人としてはよほど気をつけなければいかんのではないか、暴力を否定するということが非常に重要な問題であるならばです。そう私たち逆に思っているわけなんです。だから、まあ裁判所がそういうふうに判断したのなら、ここいらでピリオドを打とう、だれがやったのかわからぬが、事実あったことも間違いないようだから、それは相すまんかったと言うてきれいに出るほうが私は警視庁なり警察の名誉を高めるものではないかと、逆に思うのですがね。まあ勝った負けたということにあまりとらわれないでね。そこが総理大臣なり担当大臣に高い次元の行政指導をお願いしたいと言うたところなんですよ。その後若干検討もされたことと思いますが、どうなんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/311
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312・赤澤正道
○国務大臣(赤澤正道君) そのときのことについて若干話し合いましたけれども、検討というほどのことは実はいたしておりません。私はあのときに本会議の席上に立ちまして、実は失言をしてはいかんと思って、あのときだけはちゃんと書いたものを読んだわけでしてはいかんと思って、あのときだけあります。私はいまだかつて高姿勢などということは言われたことがありませんので、いんぎん丁寧に私としては、まあ新しい大臣でもありますし、答弁申し上げておるつもりですけれども、何がかんにさわったか、亀田委員から高姿勢だときめつけられて、はなはだ残念だと思った次第でありますが、あのときはちょうど私はILO総会に日本政府代表として行っておったわけであります。たまたま、ILOの問題につきまして、また今日国会でうまくいかなかったことについて、何がしか意見などモース事務総長の部屋で説明しておったわけであります。新聞を見ましたところ、世界各国の新聞が集まってきておりまして、ひょっと見ますと、一面にどの新聞にもあの乱闘が出ておる。これはと思って見ると、日本の乱闘だものですから、私もがっかりしましたし、モース事務総長もそれを見て苦笑いをしておりましたが、私は恥ずかしい思いを事実いたしました。
日本に帰ってきましてから状況等も聞いたわけでありますけれども、宵やみ迫った暗い中で、かがり火をたいた中で大騒動をやったということを聞きましたけれども、実はそのときのいろいろの議論なども大かた私忘れてしまいましておったんですが、いきなりあの問題が出てきたわけであります。いま亀田委員の申されたように、そういうことで、勝った負けたということではございませんで、あっさりやったほうがかえって国家のためにもいいではないかということは、私は一面うなずけます。しかしまた、いずれも負けましたといったようなことだけでなくて、片っ方が勝ったと言うと、片っ方のほうでも、勝った、勝たなければならぬ、どっちも勝った勝ったということになってくるものですから、まあああいう際にいざこざを起こさぬのが一番いいし、しかもこれは盗んだ、なぐったというわけではありませんから、ああいうデモの行き過ぎということがありましても、おさまりましたら、両方悪かったと思う気持ちで水に流すのが一番いいと思います。いいと思いますけれども、かりに警察のほうで水に流そうと思ったところが、勝った勝ったと片方で言えば、やはり片方の取り締まり当局のほうでも、これは間違ったことをしたと思われるわけですから、やはりそこは自分の職務としてこういう場面に遭遇した人の立場というものを考えてやらなければならぬと思いますし、私は率直にどうもあのときはあの判決は不本意であるということを言いましたけれども、それがだいぶかんにさわったのではないかと思うわけです。こういう平静な際に冷静に考えてみました場合、全く亀田委員御指摘のとおりでございまして、何かああいう結末になったということは残念でございます。地方裁判所だって、ああいう判決をしましたのは、一つの見識をもっておやりになったに違いないと思うのですけれども、また、それを見るものの考え方はそれぞれ人によって違うわけでございますので、私は何も他意もなくああいう感想を申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/312
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313・亀田得治
○亀田得治君 それで、都のほうはどういう態度になっておるのでしょう。東京都の態度ですね、判決に対する。つまり、控訴するかしないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/313
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314・江口俊男
○政府委員(江口俊男君) 私の聞いておりまする範囲におきましては、やはり大臣が本会議でお答えになったような気持ちで、これはしかし訴えられておりまする都のほうと警視庁のほうとの間になお意見の調整をして、大体控訴をする方向で考えておる、こういうふうに私たち理解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/314
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315・亀田得治
○亀田得治君 まあ教授、研究者の諸君が長い間裁判をずっとやっていくというのは、これはたいへんな労力なんですね。ともかく負傷させられたことはこれはもうはっきりしているわけなんだし、その事実は動かせないわけなんです。で、教授の人達が善意な気持で行なっていることもこれは事実なんです。ただ、おそらく、警察側としては、その間違えて攻撃するについて過失がそれほどなかったんだという気持ちがあるんだろうと思うのですが、しかし、そこは見方の違いになってくるわけですね。いずれにしても、的がはずれたところへ突っ込んで、そしてけがをさせられた、たくさんの人が。中には、あなた、追いかけられてやられている者もあるんですからね。そこまでいくと、それはもう感情的なんです。だから、警察がとっ始まりは多少、一歩譲って、間違いについて若干無理がない点もあったと認めるにしたって、途中で気がつかなければならない。そういう年配の人もたくさんあるのだし、それを追いかけてまで負傷さしているんですからね。そういう点はやはり実質的に考えてもらって、何とかおさめる方法はないかということを真剣に考えるべきじゃないか。じゃこれが二審、三審に行ってさらに警察の立場が否定されたといったら、これはいよいよ私は悪い影響を残すと思うんですね。そういうことは考えないのですか。いや、もう二年、三年どうせ先になるだろう、そのときにはおれはいつまでもこの地位におるわけじゃないからといったようなことをあるいは腹の中じゃ考えているかもしれませんが、現在の当事者はそれじゃ済まぬと思う。警察機構なりそういうものは、これは続いていくわけですから。だから、まあどんな御相談をされているのかわかりませんが、当事者あるいはまたそれについておる法律家、代理人というものは、負けたらやはり控訴するとかといったようなそういう気持ちに普通はなると思う。なるが、どうもこの事件については私はもう少し深く検討してもらいたいものだと思っているんですがね。ほんとうにその気になれば、やる方法があるのじゃないか。これは、あなた、教授の皆さんにすれば、そんなものにいつまでもつき合いさせられるのはかなわないですよ。都のほうは法廷闘争をやるくらいのお金は幾らでもある、これは税金でやっているから。そうして、弁護士さんにまかして知らぬ顔でやっている。こっちはたまったものじゃありませんよ。少しでもそういう実情を考えてもらったら、そんな、理屈だけで、多少気に食わぬところがあるからもう一ぺん判断を求めるとか、そういう事案では私はないと思うんですがね。どうなんですか。そういう場合には、私は、大臣がほんとうにいろいろな良識的な高度な手を打ってほしい。あなたの考えをひとつもう一ぺん聞かせてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/315
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316・赤澤正道
○国務大臣(赤澤正道君) 先ほど申し上げたようなことを言うようで恐縮でございますけれども、実は、あのときの騒動を外国で見ました新聞というものを買い集めまして、私は現にスクラップをして持っております。残念ながらあまり人相のいいのが写っておりませんで、組んずほぐれつやっている大乱闘のさまが世界じゅうの新聞を飾ったものでございます。それをたくさんスクラップして持っておりますが、あの状況から考えて、教授諸先生が学生のこういう行動というものをやはり度が過ぎないようにということで御注意に入っておられたのかどうか。ただ、取り締まるほうの者の身になってみますと、教授と学生は年が違って、よく見ればわかるのかもしれませんけれども、あの大混乱の中で、これが教授、これが学生という区別はおそらくできなかったのではないか。事実、警察に聞いてみましても、あの状態では何と言われてもとても区別ができるような状態ではありませんでした、そういうようなことを言っておるわけです。
そこで、勝った負けたに返るわけでありますけれども、この際さらりと水に流してあとにしこりを残さぬということでございましたが、まあ刑事のほうも別に進んでおるようでありまして、私は内容はよく知りませんけれども、しかし、それによって民事での賠償ということになれば、御承知のとおり東京都の金だって都民の血税に違いありませんけれども、勝った負けたということでなくて、さらりと水に流すことが一体可能かどうか。しかしながら、その方法がありませんと、また、東京都がこれでほこをおさめようとすれば、片方が勝ったと言われれば、片方は負けたと言われることになるわけで、実にこの方法は私はむずかしいと思うわけでありまして、本来ならば、こういう平静のときにあれを思い起こせば、全くばからしいと思うのですけれども、現にあのころにはああいう事態が起こったわけですから、あのころの考えといまの考えをよほど人の頭の中が違っておるというわけでござまいしょうが、ですから、私は、東京都がこれに対して判決をしさいに読んだ上で態度をきめたいというふうに言っているわけですから、それをいまの状態で自治大臣としてどうするのが妥当であろう、こうすべきであろうということを勧告するなどということは妥当を欠くわけでありますので、東京都の態度というものを見守っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/316
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317・亀田得治
○亀田得治君 じゃ、この程度にいたしておきますが、私は、実は本会議で、ともかく理由のいかんにかかわらず、教授の諸君がそういう警察によって負傷をさせられたこと自体については、やはり一応の陳謝があって、ともかく暴力団排撃を言うておる以上は、取り締まる警察のほう自体にそういう間違いがあった、理由のいかんにかかわらずそういうことが一つでもあっても、はなはだ相すまぬことだというふうにおっしゃってもらえるものだ、こう実は思っておった。そうして、少なくともその点のあとの扱いについては、それはなかなかそう簡単に言えない、それは検討してみなければならぬというふうにおっしゃるだろうと思っておったのだが、それがなかったものだから、はなはだ私にとっては高姿勢に聞こえたわけなんです。まあ、いずれにしても、大臣もまだ、いまお聞きしても、当時の事情をなかなかよくのみ込めておられないようですね。決してそれほど間違う状況ではない。もし本気にひとつこの際おさめようというのでしたら、それはひとつ裁判長に会って実情を聞いてください。双方の言い分を全部証拠を出させて、これは刑事でなくて民事ですから、すっかり両方から出させて、検証もやりして判断しているわけですからね。どの警察官でもあの状態じゃ間違うのはしかたがないというのだったら、裁判長はああいう判決はしませんよ。だから、本気で何とかおさめたいというなら、裁判長は喜んで会いますよ。それくらいの積極性を持った動きをやってほしいと思います。これは要望しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/317
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318・稲葉誠一
○稲葉誠一君 この前私が質問しました昭島市におけるいろいろな事件がありました。ことに、新聞社に対する脅迫事件その他がありましたが、それに関連をして、これは時間の関係がありますから、要点だけお聞きしますが、昭島市の市会議員がいろいろ事件を起こしているわけですが、刑事事件もあり、刑事事件でないのもありますが、これをどういうふうな事件であるのか、ちょっと説明をしていただけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/318
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319・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) いろいろあるわけでございますが、一つは、昭島市議会議員の無免許運転でございます。五月十二日の午後八時ごろ、山本市会議員が軽四輪自動車を運転しまして、昭島市宮沢町百四十八番地先の交差点で、高校二年生の日下部恵造君運転の軽二輪自動車と接触して、相手方に全治五日程度と思われる傷害並びに、当該軽二輪前輪パンク等の被害を生じさせたほか、警察官に対する事故報告を怠っていた事実がございました。これは、被害者並びに目撃者の供述に基づきまして山本市議の出頭を求めて取り調べた上、六月六日立川の検察庁に送致をいたしております。
それからいま一つの事件は、有価証券偽造、行使、詐欺の事件でございます。宮崎市会議員でございますが、被疑事実は、借財の返済に窮した結果、金融ブローカー小島正行と共謀の上、日野市日野酒商中島明が内山信一という別名で振興信用組合日野支店に預金していることを利用しまして、偽造手形を振り出すことを企てて、今年の三月二十八日、小島正行方におきまして内山信一振出名義の約束手形十六枚、これは額面額合計七百四十三万九千円でございます、これを作成偽造いたしました。さらに、ことしの四月二十三日、西多摩郡の福生町のバー「チャンス」こと藤野定男方で、同人の妻藤野あやに対しまして、偽造手形のうち、金額十三万円、支払期日昭和三十九年六月二日、支払場所振興信用組合日野支店、こう記載したもの一枚を真正に成立した手形のように装って差し出して飲食代金の支払いに充てて行使したものであるということを被疑事実といたしまして、ことしの五月十九日に逮捕いたしました。六月九日に起訴になっております。
それから昭島市会議員の不正事件等を報道した毎日新聞立川通信部に対して脅迫事件がございます。これは、六月三日以降六月十日までの間に二十回にわたって毎日新聞立川通信部に脅迫の電話があったわけでございます。
内容を申しますと、六月三日の七時五分ごろ、低い男の声で、「なまいきなことを書くな」、それから七時半ごろには、「なぜ毎日だけ昭島をやるのか。交通安全協会はふだん警察に協力しているのに、あんなにはでに書くとはけしからぬ」、それから午前八時ごろ、「奥さんですね、あんまり出歩くとけがをするからよく旦那さんに言うておけ」ということを、それから九時五十分から零時半ごろの間に五回にわたりまして、「毎日は特定の者の足を引っぱるつもりか」、「だれに聞いて棄白いたのか」とか、あるいは、「おまえは山本さんになまいきなことを言ったそうじゃないか」とか、「おまえは何という名前だ。だれがおまえにしゃべったか見当がついているから、二人ともしゃべれないようにしてやる」という電話をかけてきました。それから午後一時から四時までの間に五回にわたりまして、留守番をしております土屋記者の妻に、「昭島の記事を書いた記者はいるか」というような電話をいたしております。それから六月六日——これはいろいろありますが、きょうは簡単にあと管路いたします。六月六日にも、毎日新聞の夕刊全国版に加藤市議の市有地不正使用の記事を掲載した際に、やはりかかってきております。それから六月十日には、昭島市議が歌謡ショーの興行に市のバスや市の職員を使ったという記事を掲載したときに、やはり電話がかかってきております。これらの電話は、いずれも男の声でございます。その後、十日の電話以後は、脅迫の電話はかかってきておりません。一応捜査を行なうこととして態勢を整えて、現在捜査中でございますが、聞き込みによって容疑者の発見につとめておりますが、聞き込みから現在のところまだ容疑者の特定はなされておりません。
先ほどの電話にもありましたもう一つの昭島市会議員の市有地不正使用の問題でございますが、これは隣に酒類の販売業をしております加藤という市会議員でございますが、昭和二十九年にこの市有地の上にありました消防団が使っておったポンプ小屋が消防団の解散によって空小屋として放置されていたのを、いずれ取りこわされることになろうが、それまでの間使っていようという気持ちで倉庫に使用していたようでございます。これは都市計画に基づきまして来年は道路拡張のため削り取られるという予定になっているそうでございます。これにつきましては、現在まで民事上の問題はありますが、刑事上の問題では現在までのところ考えられないのでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/319
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320・中山福藏
○委員長(中山福藏君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/320
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321・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 速記を起こして。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/321
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322・稲葉誠一
○稲葉誠一君 いまのお話を聞いて大体わかったんですが、この無免許というのはだいぶ前からやっていたんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/322
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323・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) この点は、従来から警察官が認知しておれば検挙しておるわけなんでございますが、したがって、この事件によって初めて警察のほうとしては知ったわけでございますが、そのときの取り調べによりますると、御本人は昨年の九月からときどき運転しておるという話でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/323
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324・稲葉誠一
○稲葉誠一君 交通安全協会が云々という話がありましたね。ちょっとはっきりしなかったのですが、何でしたっけ。交通安全協会が何とかと電話の中に……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/324
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325・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 「交通安全協会はふだん警察に協力しているのに、あんなにはでに書くとはけしからぬ」という電話が六月三日毎日新聞社立川通信部にかかってきたというふうに聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/325
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326・稲葉誠一
○稲葉誠一君 その山本という市会議員と交通安全協会とは何か関係があるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/326
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327・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) そのときまで昭島市の交通安全協会の理事、中央支部長でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/327
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328・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、いまの脅迫の電話というの問題ですね。これは、いま聞いただけでも、非常に事情をよく知った人であるということがはっきりしてくるんですね。しかも、山本という人なら人の身近にいると言うと語弊があるかもしれませんけれども、それに山本さんだけじゃない、別の人もいて、非常に近い人だということはもう想像つくわけですから、捜査の範囲も相当しぼられていると思うんですが、しぼられているというふうに見ていいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/328
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329・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 聞き込みなどもそういうところへ重点を置いてやっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/329
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330・稲葉誠一
○稲葉誠一君 これは新聞社がそういうようなことを書いた、それに対してこういうような脅迫が非常に出てくるということは、これはいま毎日新聞は組織暴力のことを書いている。ほかの新聞などでも、きょうの朝日なども大きく書いている。読売でも書いている。ほかの新聞などでもどんどん書くようになると思いますが、書かれたらすぐ脅迫の電話をされる、ことに奥さんや何かに朝早く電話をかけたりなんかしているということは、悪質だと思うし、権力をかさに着ているようにも考えられるし、これはもう徹底的に捜査をして、そのままにしないように、ケリをちゃんとつけるようにしてもらいたいと思うんですが、警察庁長官、その点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/330
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331・江口俊男
○政府委員(江口俊男君) もちろん稲葉委員のおっしゃるとおりの考えでやってまいります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/331
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332・稲葉誠一
○稲葉誠一君 こういうような市会議員とか町村会議員とかというのが役職をかさに着てあちこちで、刑事事件になるものもあるだろうし、ならないものもあるだろうし、いろいろあると思うんですが、いずれにしてもほかの市にもいろいろあると考えられるので、こういう地方議員だからといって遠慮することなしに、徹底的にこういうものが各都市にあればやるということだけの決意が警察にあるか、どうも警察はいままで地方議員というかボスに対して弱いのではないかというような印象を持っている人もありますから、そのようなことは絶対ないんだ、徹底的にやるんだということならやるんだということをはっきりさしてもらいたいと思うんですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/332
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333・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 私どもの立場としては、そういう議員さんであろうが何であろうが、はっきりした犯罪に対しては断固たる態度で臨むという覚悟でおります。また、そういう意味でいままでにも検挙した者も相当ございます。先ほどお話のありましたこの事件の電話のことにつきましても、私どももそういう意味で断固たる態度でいるわけでございますが、たまたま、この事件につきましては、土屋記者は、立川通信部を本拠にいたしまして、立川署と昭島署等の担当区域の中の各署を巡回して取材に当たっていたのでありますが、本件につきましては全然何も話をしなかった。したがって、警察でその事実を知らなかったという状況にあります。六月の十一日の午後十一時ごろに、毎日新聞の本社の記者から立川署にこの事実について話がありまして、初めてこの事実を認知した。六月十二日に土屋記者夫妻の出頭を求めて、被害届を受理すると同時に、被害調書を作成しているような状況でございます。したがいまして、こういうふうな事件がありますれば、できるだけ早く連絡をしてもらえば、その他の捜査の方法も可能であったのではないかというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/333
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334・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それから、この事件だけではなくて、各新聞がいろいろこういうようなことを書くとか取り上げる。新聞だけではなくて、いろいろ政治家が取り上げるとか一般の人が取り上げますわね。そういうようなことを取り上げると、電話であるとか文書であるとかそういうような形でいろいろな脅迫なり何なりが行なわれる危険性があるわけですから、こういうようなものについても徹底的に取り締まって、そういうようなことのないように、あればすぐつかまえられるような形に、十分徹底的に一つの体制というものをしいてほしいということを要望するわけですが、当然そういうようなことはやるという答えだと思いますが、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/334
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335・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 電話による脅迫等の事件につきましては、御承知のとおり、非常に犯人が捕促しがたい。ある程度回数を重ねますと、私どものほうも捕促しやすくなるわけでございますが、ただ、この点につきましては、電話局等の協力を得られる体制になりましたので、まあそういうような面、その他録音装置その他いろいろの手段を使いまして、できるだけのことはやってまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/335
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336・中山福藏
○委員長(中山福藏君) ちょっと速記をとめてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/336
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337・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 速記を起こしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/337
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338・岩間正男
○岩間正男君 先ほどの法案審議の中で、吉展ちゃん事件、これがまあ迷宮入りみたいな形になったんですが、その後の経過と、それから警察側のこれに対する反省はどうかということをさっきぼくは質問したんですが、ちょうど長官は退席されたあとだった。それで、法案の通過後ですけれども、こういうことについてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/338
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339・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 吉展ちゃんの事件につきましては、結論から申しますと、現在なお本部員三十八名によって捜査中でございまして、結論を得ておりませんが、この事件につきましては、従来非常に全国的に協力を得られまして、情報件数も相当得られております。容疑者の指名情報などにつきましても相当寄せられまして、一つ一つ検討しておりまして、まだ完全に白と断定してなく保留のものも何件かございます。ただ、この事件につきましては、犯人は電話の声から東北または北関東出身の相当年配の男という推定がなされるだけでございまして、このほかに捜査の手がかりになるようなものはございませんので、下谷北署にいまもって捜査本部を置きまして、各種情報の裏づけ捜査、あるいは広範な捜査活動を続けておるわけでございますが、いままで犯人を捕捉できないでおるわけでございます。
お話の反省という点でございますが、これは、もちろん、あの当初における初動捜査の面で遺憾の点があったと思われるのでございます。被害者の家族との連携の方法、あるいは初動における十分な捜査体制というものができておれば捕捉できたんじゃないかと考えられるわけでありまして、この事件の経過にかんがみまして、最近におきましては、その点の遺漏のないように研究し、あるいは事件の想定等を行ななって、現実の初動捜査体制に遺憾のないような方法をできるだけ検討し、また、指導をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/339
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340・中山福藏
○委員長(中山福藏君) ちょっと速記をやめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/340
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341・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 速記をつけてください。
それでは、これで暫時休憩いたします。
午後四時五十六分休憩
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午後六時二十九分開会
〔理事後藤義隆君委員長席に着く〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/341
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342・後藤義隆
○理事(後藤義隆君) 委員会を再会いたします。
休憩前に引き続き、検察及び裁判の運営等に関する調査を議題とし、質疑を続行いたします。岩間君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/342
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343・岩間正男
○岩間正男君 時間の関係もあったんだけれども、警察庁長官の出席を要求しておったんですが、見えないわけですね。こういうときはやはりはっきりした態度をとってもらいたい。こんなまぎわになってから自分の都合で病気か何かわからぬけれども出席しない。自宅に帰ったというようなやり方では、国会の運営のやり方としてまずいのじゃないかというふうに思います。これは警察庁のほうではっきり長官に言っておいてください。あとで釈明してもらいたい。こういうやり方ではいかんです。そういうまるで相手をみるようなやり方をするわけではないであろうけれども、そういうことのないように、国会の運営のために要望しておきます。
私は、丸山事件の問題について質問したいと思う。
これは、この前、今月のたしか五日だったと思いますが、川崎で昭和電工の工場爆発事件が起こりました。私はあの見舞いと調査のためにかけつけたのですが、その途中、あそこの観音町の丸山君の自宅に寄って、遺族のその後の情勢を聞いたわけです。その場を見せてもらったりして、ちょうどあれから考えてみると二年の月日がたっているわけです。遺族としては、あれは埠頭に通ずる国道ですが、しかも六月二十日の八時二十分といいますから、ちょうど日が暮れて薄暗くなったとき、そこで刺殺された。そうして、しかもその凶行があってから五分後には絶命するというような、しかも、それを見ておったのは、丸山君と一緒に連れ出された五歳になる愛児の面前であのような凶行が行なわれた。しかも、これについていまだに犯人があがっていない。しかも、その後の捜査のやり方、そういうものを見ておりますと、非常にいろいろな点から問題になる点があるのじゃないか。これはあとで明らかにします。
そこで、奥さんとおかあさんに会ったのですが、非常に耐えがたい気持ちをあらわしておりました。私は、人道的にみても、この問題はこのままに放置されるというような筋合いのものではないということを考えるわけです。大体、これに対する警察のいままでの捜査の概要ですね、こういうものはわかっていると思うんですが、この点を最初に警察庁の側に伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/343
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344・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) この事件は、お話のとおり、三十七年の六月二十日の午後八時二十分に起こった事件でございます。事件発生後、県本部捜査一課並びに所轄の臨港警察署で捜査を開始いたしておるわけでございますが、結論から申しますと、遺憾ながら今日まで犯人を特定し得る段階に至っておりません。当時の状況は、私も就任前でございまして、十分知らないのでございますが、この現場の状況につきましても、遺留の物件もない、それから有力な情報もございましたのですが、逮捕令状請求の疎明資料にしては不足であるというような状況から、まだ捜査本部を設置して現在継続捜査を実施している最中でございます。今後も懸命に捜査を推進してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/344
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345・岩間正男
○岩間正男君 これは捜査本部はもうすでに解体したんですか。最初から設けたんですか設けないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/345
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346・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 現在もなお捜査本部を所轄の川崎臨港警察署に設置いたしまして、継続捜査を実施しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/346
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347・岩間正男
○岩間正男君 その後、先ほども言われましたが、有力な情報というようなことがありましたが、それについては逮捕の理由としては不足とかなんとかいうことで、これについてどの程度あなたのほうでは追及しておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/347
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348・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 情報を得ましたし、あるいはそれに対する裏づけ等をいたしておりますが、捜査の内容に立ち至っては、現在まだ捜査中でございますので、内容の詳細は遠慮さしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/348
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349・岩間正男
○岩間正男君 これはあとで関連の点から聞きたいと思いますが、その前に明らかにしたいのは、初動捜査で非常に不十分だと思われる、そういう事態であったと思うんです。第一に、非常線をあのとき張ったんですか、張らなかったんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/349
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350・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 六月二十日の八時三十分に一一〇番で交通事故らしいという連絡がございまして、八時四十五分には川崎署のパトカーが現場に到着をいたしております。九時十分に傷害致死事件として署長に報告するとともに、署員を招集いたしまして緊急配備をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/350
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351・岩間正男
○岩間正男君 これはあなたのほうで調べたと思うんですけれども、背後から刺殺をされた、二カ所突かれたと思うのですが、それから何分後に死亡しておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/351
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352・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 報告は、二十分後に出血多量で死亡ということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/352
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353・岩間正男
○岩間正男君 これは犯行が起こったのは八時二十分というさっき話がありましたね。それから十分後の八時三十分ごろに病院に入れたんでしょう。病院に入ってあとの手当てをやったけれども、全然だめで、そのときはすでに死亡、死亡確認で警察にすぐに知らせがあったはずです。その時間は何時です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/353
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354・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) これは臨港病院へ収容をいたしております。八時五十分に川崎署の司令室から臨港署に電話して、ひき逃げ事件発生、場所観音町二千百三十六番地先路上、被害者丸山、臨港病院に収容、こういう電話をいたしております。八時五十八分に当直主任の田崎警部補外四名が現場に到着いたしまして、傷害事件と判断した。それから九時十分に傷害致死事件として捜査を開始した。九時三十分に田崎警部補が病院で死亡を確認した、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/354
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355・岩間正男
○岩間正男君 私たちの調べたところでは、病院で警察に通知したのは八時三十五分から四十分の間で、そしてその前に、斉藤刑事という非番の巡査が現場を通りかかっている。交通事故などというものではない。もうあそこは国道が一面の血の海だ、そういうことでこれははっきり報告しているはずです。ところが、これに対して、臨港警察署は非常線を張った形跡はない。これはいろいろな例をあげることができます。全自交の役員がかけつけた。そうして、六郷橋交番のところでは何も知らなかった、駅前交番でも何も知らなかった、こういう事態から、これは非常線も張られていない。捜査上非常に重要な当然指紋を採取しなければならない。指紋をとったあとも全然ない。
ここで一番大きな問題になりますのは、傷害致死だということを言っておるわけだけれども、これは傷害事件だというふうな判断を現在でもしているんですか。犯行が起こってもう五分後にはほとんど絶命するような犯罪というものを、傷害というふうに考えることができるんですか。これは殺人じゃないですか。どうしてこれは殺人犯とはっきり推定できないのか。なぜ傷害致死というふうな推定をやっておるのですか。この点が非常に警察の態度としておかしいのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/355
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356・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 非常手配の関係は、事件を認知しました後、署長が直ちに全署員を非常招集するとともに、全パトカー及び県警察本部の機動捜査隊員を動員いたしまして初動の捜査をいたしておるわけでございます。
傷害致死の点につきましては、傷は、左手のひらの切創と顔面の右ほおの擦過傷、右大腿部貫通刺創、右臀部刺創ということでございます。こういう傷創の部位の状況等から、一応傷害致死事件として捜査を開始いたしたわけでございますが、県本部捜査一課からも捜査班を派遣いたしまして捜査本部を設置して、殺人事件と同様の捜査体制でもって捜査をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/356
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357・岩間正男
○岩間正男君 そこのところが私は非常に重要だと思うんです。最初は傷害だということに見て、そういう手配、初動の捜査もそういう観点からされたのじゃないか。ところが、実際はどうですか。大体、あれだけの犯行をやる。そして、し損ずれば、当然当人が目撃すれば、犯人がだれだかということがすぐわかるでしょう。だから、このような殺人事件というものは、殺すかどうかなんです。そうでなければ筋が通らぬですよ。もしもなまはんかなことをして逃げてしまえば、犯人ははっきりわかるわけです。当人に目撃されておるわけです。だれか氏名もわかっておる。だから、当然最初から殺す意図でやったのだということはわかるのじゃないですか。ところが、臨港警察署長のごときはこれに対して何と言っておるかといえば、犯人は殺すつもりじゃなかったんだということをあのときにかけつけた全自交の諸君なんかに話している。会った人たちにもそういうことを漏らしている。これはどうなんですか。こういう見解で、そのような予定観念を持って事を処しておるという疑いが十分あるんです。こういうことでいいんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/357
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358・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 殺人か傷害致死かということは、犯人の故意に関係するわけでございますので、正確なところはやはり犯人をはっきりつかまえなければいずれとも断定しがたいわけでございます。ただ、それ以前の段階において一応どちらでやるかという問題があるわけでございますが、この場合は、一応右大腿部の刺創、臀部の刺創ということから判断して、傷害致死としてやった、しかし殺人事件と同様の捜査体制をしいた、こういうことであろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/358
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359・岩間正男
○岩間正男君 いまのはどうですか。署長の、これは殺すつもりはなかったんだというような、まるで犯人を弁解するような言い方、これは捜査の責任に任ずる署長の言として正しいと思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/359
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360・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 先ほど申しましたとおり、犯人をつかまえて故意の内容がはっきりしませんと、いずれとも断定しがたいわけでございまして、私どもへ参っております報告から申しますと、私から申しましたような趣旨であると報告されておりまして、署長がどういうようなことばを申したかよく存じませんが、創傷の部位等の状況から、一応傷害致死事件としてやった、しかし殺人事件と同じような体制をもってやったというふうな報告を受けております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/360
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361・岩間正男
○岩間正男君 とにかく、われわれの調べたところでは、署長がそう言ったのは事実ですから、そうすると、それは不謹慎だということになりますね。いまのあなたの御答弁からすると、どっちともつかない、犯人をつかまえてみなければわからない、こういう点に立っていかなければいけない。少なくともそうでしょう。さっき私が述べたように、あれだけの大腿部を突き、臀部を突いた。そして、これは大動脈を切っておるんです。ほとんど五分で死んでおる。そういうことからいえば、殺人犯という判定をするのは当然だと思うんです。かりにその判定が急速に過ぎるとしても、少なくともどっちかわからないという態度をとらなければならないと思うんです。ところが、署長は、犯人は殺す意思がなかったんだというような立場に立っておる。そこのところ私はどうも納得のいかないところです。それから非常にこの問題に関心を持っておる人たちも納得のいかないところです。こういう点について十分にあなたたちは調べておられないようですけれども、これは警察庁としてはどういうふうに考えますか。署長のこういうような言い方というものはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/361
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362・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 私ども、先ほど申しましたとおり、正式な報告としては、創傷の部位等の状況から一応傷害致死事件として捜査を開始したというふうに報告を受けておりますので、先ほどから申し上げておりますように、最終的には犯人の故意の内容いかんによると思うのであります。いずれとも断定はできないというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/362
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363・岩間正男
○岩間正男君 そうすると、いずれとも断定できないという少なくともそういう立場に立たなければならないと思う。ところが、傷害だ傷害だというので、初動捜査に欠けるところがあるというのもそういうことからきた。それはどうなんですか、傷害致死というそういう認定の場合と、殺人犯だというような認定の場合で、初動体制は同じですか、違いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/363
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364・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 事件によっていろいろでございましょうと思います。しかし、この場合における体制としては、殺人事件と同様な体制で一課からも人を出して強力な捜査を進めたというような報告を受けております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/364
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365・岩間正男
○岩間正男君 あなたたち、その報告をもとにしてここで答弁されることは一面やむを得ない点もあると思いますが、しかし、さっきから申しましたように、警察の態度そのものにも必ずしも十分でない。むしろ非常に不思議に思っている。関係者はそういう感じを持ってやっている。したがって、こういう問題については、もう少し立ち入った——これはあなた方が指導する立場からいってもそういう態度はとるべきでないと思いますが、こういうことを再調査する必要がありますかどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/365
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366・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 事件当初の捜査体制につきましては私どもは十分は存じないのでありますが、この事件の内容については私ども調べまして一応いまのような報告を受けておりますので、当時としては十分な捜査体制で殺人事件と同様に、ただ一応傷害致死ということで捜査を開始したということで、体制としては殺人事件と同様の体制をもってやったという報告でございますので、私はいまの考え方としては当時そういう考え方で関係者が処置したのだと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/366
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367・岩間正男
○岩間正男君 これは非常線を張らなかったのは事実です。それから指紋をとらなかったのは事実です。少なくとも自宅のその附近の指紋をとるべきだと思います。少なくとも手であけているんでしょう。そういうことをやった報告を受けておりますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/367
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368・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) これが犯人が単車に乗った犯人らしいということで捜査を開始いたしましたのが一時間半ばかり経過しておるということから、実質的には全パトカー等の初動捜査隊が動いて初動捜査をやったというふうに報告は書いてきております。
なお、指紋採取の点につきましては、被害者方前の藤田テルの供述から、被害者方のドアは開いていたと認められて、それで採取活動をしていない。また、格子戸がきめが浮き出ていたがために採取不能の状態にあったというような報告を受けております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/368
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369・岩間正男
○岩間正男君 開いていたといったって、これはたずねていって開いて、それから出てきてそのままになったのか、そこのところは念には念を入れてという立場を当然とらなくちゃならないと思うんです。
さっきのあなたの御答弁では、単車に乗っていたというが、これはどういう推定をしたんですか。少なくともそれを知っていたとしたら重大なことですが、これはどういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/369
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370・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) これは当初ひき逃げ事件として一一〇番に連絡があったわけでございますが、単車に乗った犯人らしいということで当時は判断をしておったようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/370
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371・岩間正男
○岩間正男君 らしいだけですか。これはまことにあいまいじゃないですか。単車に乗っていたという推定をやったというのは、これはおかしいのだな、何かそこのところに根拠がなければやれないと思うんですよ。そういう一体何か物的根拠でもあってそういうことを判断したのか、この点はわからないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/371
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372・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 事件を見まして、これは当時の判断なんでございますが、その九時十分のときの判断でございますが、これは特にそういう単車に乗ったという証人がおってやった判断じゃなくて、この九時十分の当時におきましてはそういう判断をしたようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/372
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373・亀田得治
○亀田得治君 ちょっと関連して。単車に乗ったという判断、特に証人もおらぬ、目撃した人もいないようなお話ですが、どこから単車というものが一体出てきたのか。前に一ぺん私もその直後に質問したことがあるんですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/373
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374・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) この一番最初のときの状況でございますので、非常にはっきりしないことかも知れませんが、一応運転手が見ましたときに、路上に倒れている被害者を発見した。そこで、これをひき逃げと判断して病院に運びまして、もう一人の、二人の者で運びまして、そうして一一〇番にひき逃げ事故らしいと届け出た、ここからそういう判断が出てきたのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/374
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375・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、最初ひき逃げかもしれぬと思ったからといっても、ひき逃げの場合だって、単車もあれば、普通の自動車もあるわけですね。なぜ単車単車というものがそんなにはっきり出てくるのか。それから現在ではそんな単車というようなことは考えておるのですかどうですか。その当時一一〇番のそういう連絡だったから、瞬間的に多少そういうふうに感じたという程度ならいいわけですが、現在でもやっぱりそういうふうに思っているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/375
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376・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) なお、当時、子供が、断片的のことなんでございますが、「テレビをみていたらせのたかいおじさんがきて、オートバイに乗ってきた。おじちゃんととうちゃんがおはなししていてふたりででていった。ぼくもあとについていった」というような表現がございます。
それから現在の段階では、これは必ずしもそういうふうに考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/376
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377・岩間正男
○岩間正男君 いまのその小さい子供というのは、これはだれのことをいうのか。子供ですか、愛児雅之ちゃんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/377
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378・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 雅之君でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/378
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379・岩間正男
○岩間正男君 ここに「社会の裏窓」というのの三十八年の七月十二日日本放送の録音録取書がありますが、そういうものには全然出てませんよ、そんなことは。「おじさんみたいのひとがねえ、あそこんとこにねえ、ひとりね、しゃがんでかくれてたの」「そのひとぼくがねえ、むこうえいったあとにねえ、むこうのほうえ、トコトコといっちゃったの」それから最後にこの子供は近所のパーマ屋さんにかけつけるのです。そうして、おとうちゃんがたいへんだというのでこのパーマ屋さんのおじさんが車を雇ってきて病院に運ぶんですよ。だから、あなたの調査なんかとまるで事実が食い違っているんだね。これはあなたのほうは報告だから、当事者でないから、そこのところは詳細にわからないかもしれませんけれども、そういう報告がされているとすると、事実に全く反しますよ。日本放送で非常に小さい子供が言っておりますが、信憑性がありますよ。これは放送されたものです、当時。七月十二日です、去年の。こういうのを見てごらんなさい、単車で来たなどということは一言も言っていない。いま言ったように、運んだ人の話は違います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/379
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380・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) いま、雅之君に尋ねました断片的なことをつないで申したわけでございますが、それはただいま申しましたのは前段のほうでございまして、そのあとのほうで、また「おはなししていてふたりででていいった。ぼくもあとについていった。おじちゃんととうちゃんがけんかをした。おじちゃんがとうちゃんをいじめるので、ぼくはいしをなげた。とうちゃんがまけそうになったので、パーマやにいった」というような供述をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/380
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381・岩間正男
○岩間正男君 単車が出てきますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/381
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382・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) これは、私どものほうでとりました初動体制の状況を受けました報告書の文章でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/382
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383・岩間正男
○岩間正男君 そこが事実が食い違いがありますから、もう一ぺん詳細に調べてください。
それじゃ、時間の関係もありますから、次にお聞きしたいんですが、今年の四月二十五日ですか、丸山事件対策委員会から、妻の丸山治子さん、それから母親の丸山いちさんの名義で告訴状が出されていると思います、最高検に。それで、この告訴状についてはこれは御存じでしょうか、それからこれについてどういうふうに取り扱っておられるか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/383
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384・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ただいまのお話しの、四月二十五日、丸山さんの事件につきまして、丸山さんの奥さんの丸山治子さん、おかあさん外弁護士さんの名前多数の方の連名で、検事総長にあてまして井上清という名前をあげました外数名の方を被告発人とする告訴、告発が提出されました。
この件につきましては、最高検で内容を検討の末、五月六日に所轄横浜地方検察庁に捜査指揮をいたしております。横浜地方検察庁におきましては、神奈川県警察本部と共同いたしましてこの事件の捜査に当たっておるのでございます。私のほうで承知しておりますところでは、横浜地検で現在までに関係者五名でございますか、を取り調べておるようでございます。ただし、この件につきましては、警察当局が事件発生以来捜査をいたしておりまして、犯人を確定するにまだ今日至っておりませんために、事件の送致を受けていないのでありますが、この告発以前におきましても検察庁としましてはいろいろ警察の捜査に協力いたしまして、聞き込み等で一部容疑者と思われる者が別事件で検察庁に取り調べを受けておったというような等々の情報を得ました場合にも検察庁におきましてはその者について取り調べをする等の協力をしてきたのでございますが、いまや告訴、告発状を受けまして、いま申しましたように、本部と共同捜査の形で捜査を進めておると、こういうのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/384
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385・岩間正男
○岩間正男君 殺人犯の場合にその容疑者を告訴するというのは、よほど事実についても確信がなければならない。それからよほど勇気が必要かもしれません、ことにこの事件については。そういう態度で、いわば犯罪捜査に協力している態度だというふうに思うのですね。それはそう解釈してようございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/385
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386・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) ちょっといま御質問の趣旨がわかりかねましたので、隣の者に聞いておったのでございますが、もとより名前をあげての告訴、告発でございますので、告訴人、告発人といたしましては、相当な確信とまではいかないにいたしましても、容疑ある者として考えて告発をされたものと考えます。それからまた、そういうふうにいたしました以上は、捜査当局に協力をされるという御趣旨であるというふうに私どもは解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/386
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387・岩間正男
○岩間正男君 そうしますと、そういうときの検察庁側の態度ですね、最高検の態度は、当然協力者に対して協力しやすいようなそういう態度で接しなければならないのじゃないかと思います。ところが、実際には、これに当たった公安部長は、こういうことを言っている。「松川事件にしても証拠もないのにきみたちは真犯人がだれかと言って騒いでいる。人を殺人容疑で告訴するなんてたいへんなことだ。こういうことをやって起訴されて裁判にかけられているあなたたちの仲間がいるがそれは知っているはずだ」と、かえってこれは脅迫的な態度に終始しているということをわれわれ聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/387
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388・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) さようなことは申すべきでないことは申すまでもございません。さようなことを担当の部長検事が申したとも実は私信じられないのでございますが、かりにそういう趣旨に受け取れるような発言があったといたしますれば、はなはだ遺憾に存じます。
〔理事後藤義隆君退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/388
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389・岩間正男
○岩間正男君 その点は確認しておきたいと思うんです。まあ名前をあげるまでもないと思うんです。これは最高検の公安部長ですから、松川事件に関係があった。したがって、明らかだと思う。これじゃ私はまずいのじゃないかと思う。
それから横浜地検の状態です。昭和三十九年四月二十一日、この告訴事実について調べたそのあとに、石原検事は、この告発をした弁護人たちに、「あなた方は告訴はしたが、一体島田君——あとで名前が出てくるが——この身体の安全に責任を持つか」、こういうようなことを言っているんですね。これはどうなんですか。この犯罪に協力をして、勇気を持ってとにかく率実を——これはあとでお聞きしますけれども、これは有力な証拠だと思いますが、そういうものをあげて言っているわけでしょう。ところが、逆にですね、そういうことをおどかすような言い方をしている。こういう態度はこれはどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/389
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390・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) そこのところは、私のほうも確かめておりませんので、何とも意見が申し上げかねるのでございますが、かりに協力をしてくれる告訴人、告発人に対しまして、おどかされているのじゃないかというような感じを持つような言い方なり発言なりということは、これはよろしくないことは申すまでもありません。そういうつもりで言ったのではないと私は確信いたしますけれども、言動等につきましては十分注意していただくように申しておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/390
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391・岩間正男
○岩間正男君 これはまあその辺についてそのとき石原検事に会った弁護士は、「真実を述べ殺人の疑いのある事実を官憲に話すのは勇気が要ることである」、「この人たちを保護するのは警察庁、検察庁の任務ではないか」、そういうことを切り返しているわけですね。これはそういうふうに確認してようございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/391
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392・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) それは当然でございまして、庶民の立場にあります方々の供述がそのために脅かされるというようなことになりましたならば、これは刑事司法運用上にも重大な支障を生ずるのでありまして、警察も検察庁もともども万全の保護に力を尽くすということで私どもは仕事をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/392
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393・岩間正男
○岩間正男君 ただいまの御答弁は、これは確認しておきたいのですが、事実はそういうことになっていない。石原検事は、たとえばさらにこんなことを言っています。「井上を逮捕しても自白しなかったら、どうするんです。これだけ騒いだ後だから、彼が犯人としても準備してるだろう」などということを口ばしっている。それに対して、一体そのまま放置しておけば何をやり出すかというような反論をしているわけですけれども、それについては答えない。そういうような事実がありますので、何か最初からこの告訴が不当なものであり、いかにもそれが行き過ぎた行為であるかのごとき圧力をかけている。こういう事態が、これは私たちの調査では数々のそういう事実を指摘することができます。これは臨港警察の場合なんかもっと、あとで申しますけれども、そういうことをやっている。
そこで、もとに戻ってお聞きしたいんですが、この告訴状の一番中心と思われる——これは相当な分厚いものですが、全部についてお聞きしてもいいんですが、焦点と思われることはどういうことですか、これをお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/393
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394・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) この告訴状は最高検に出されまして、審査の上で東京高検を通じて横浜地検に送付され、指揮された事件でございまして、私のほうは、その告訴状のコピーを——まだ報告を受け取っておりませんので、告訴状自体を私ども見ておりませんのでございまするが、横浜地検からの告訴状に基づいた報告と思われますが、それによりますと、告訴状は、井上清外数名の者が、三十七年六月二十日午後八時二十五分ごろ丸山良夫を自宅から戸外に誘い出して、そのうちから約三十メートル離れた道路わきで犯人の一人が鋭利の刃物で丸山の大腿部を突き刺し、同人を殺害したものであるというのがその告訴状の内容になっておるように承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/394
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395・岩間正男
○岩間正男君 その中で、最も有力なこれを裏づけするような証拠と思われるのは、容疑者とおぼしい井上清の友人から、これについての全く裏づけになるような、符節を合わせたようなそういう供述が出されていると思うんです。これはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/395
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396・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) この井上清という名前は、私はこの告発が出る前から実は承知しておるのでございまして、先ほどもおことばにありました昭和三十八年の七月十二日でございますか、日本放送で、これも先ほどお名前が出ておりましたけれども、島田光男さんという方ですか、の話としまして、島田光男さんが、井上がこういうことをしゃべっておったというようなことをこの放送の中で述べられておるというようなこと、そういうことに関連をしてこの島田さんという人は有力な証人であるというふうに考えておるわけでございまして、おそらくそういうところが告発の根拠になっておるのじゃないかというふうに思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/396
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397・岩間正男
○岩間正男君 この内容については、詳細については御存じない、こういうわけなんですね。これは実は調べていただけば、もうこの犯罪を追及するために、結論を出すためには、欠くことのできないものである。われわれのしろうと目ですけれども、しろうと目で見まして、これはほんとうに裏づけが要るのじゃないかと思うんですが、これは進められているのでしょうか、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/397
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398・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 鋭意捜査を進めておるというふうに承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/398
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399・岩間正男
○岩間正男君 井上についてはまだ逮捕というようなことには運んでいないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/399
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400・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) まだ逮捕に至っておりませんのでございますが、そこまでの逮捕状をとるに足るだけの証拠がまだ固まってきていない現状のように聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/400
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401・岩間正男
○岩間正男君 この井上という容疑者は、どういう経歴の人ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/401
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402・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 告訴状に詳しく書いてあるのかもしれませんが、告訴状を見ておりませんので、告訴状からはわかりませんのですが、島田さんとは、中学で島田さんのほうが井上よりも二年ぐらい先輩に当たる人らしくて、懇意な間柄のように承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/402
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403・岩間正男
○岩間正男君 井上の経歴はある程度御存じですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/403
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404・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 私のほうといたしましては、まだ経歴ははっきりわかっておりませんが、井上清がどういう前歴を重ねてきた人かということはある程度調査してわかっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/404
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405・岩間正男
○岩間正男君 団体の所属はどこでしょうか。かつて所属したのはどこなのか、現在はどうなっているか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/405
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406・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 私どものほうの調べでは、護国団の関係に三十五年六月入団して、三十八年一月ごろ退団しておる。それから犯罪経歴は、前科傷害四ほか犯歴五件でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/406
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407・岩間正男
○岩間正男君 この前の安保闘争のとき、そこの参議院のわきで起こった維新行動隊の襲撃事件に関係があるのですかないのですか、あなたの調査では。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/407
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408・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 関係がございまして、東京地裁に起訴され、当時処罰されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/408
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409・岩間正男
○岩間正男君 これは昭和三十五年十二月十三日ですか……一たん逮捕され、これは七月二日ですね、傷害容疑で起訴され、保釈で出所して、保釈違反で十一カ月問逃亡したので再逮捕された、三十六年十一月十五日。それから新劇人襲撃事件の刑に服して懲役六カ月ですか甲府刑務所に服役した。それから出てきたのがこれはいつですか、出所したのが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/409
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410・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは懲役十カ月に処せられまして、三十七年六月十三日甲府刑務所を出所したというふうに承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/410
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411・岩間正男
○岩間正男君 それじゃ、もとに戻ってお聞きしますが、そうすると、島田さんという方の証言の中身をお聞きにならなかったというんですが、これはこう言っているんですね。これはあとで十分調べていただいて、なお詳細にこれは別の機会に質問したいと思いますが、私たちが、この告訴状、それからいろいろ調べた結果では、島田光男は、被告訴人井上とは、妹が同級、井上の姉が同じ中学の一年上にいたという関係で小さいころから知り合っていた。先ほどお話のように、昭和三十年から三十一年ごろの島田さんのつとめ先の神田「多幸八」というおでん屋ですが、そこに一緒につとめた。いまから七、八年前ですね。「多幸八」で一年くらいともにつとめた間柄だ。しかも、事件のあった、つまり昭和三十七年の六月二十日ですか、その二日前くらいに井上が島田をたずねてきた。午前十時ころ、営業時間中だったので、時間つぶしに「多幸八」で飲んだ。それから仕事が終わってから翌日午前三時閉店後、二人で連れ立って浅草の「ふくひろ」というところへ行って午前四時から六時くらいまで飲んだ。飲みながら井上は次のような話をしたということが告訴状に書いてあります。「近いうちに大きな仕事をやるから、まとまった金が入る」「やばい仕事だけれど、おれがやらなくちゃならない。しかしやれば金になる」「一人当たり十万円くらいになる」「三人くらいでやり、最後に自分がやらなくちゃならない」「前金としてきょう一万円もらってきた」「組合の幹部を二、三回おどかしに行ったけれども、ききめがないので、最後の手段をとる」、こういうような話をしておるということを供述しているわけですね。島田君は、組合幹部というのはタクシー会社かと思った。なぜならば、井上は二千円ぐらいずつタクシー会社から集めて回っており、その帳簿をかつて島田さんに見せて頼んだことがある。そういう点から、そういう判断をしている。
酒の上で以上のようなことをしゃべってから、しまったという顔をしていた。島田さんは心配で不安だったので、新聞を注意して読んでいた。ところが、翌々日の新聞に丸山委員長殺しの記事が出ていた。そして、直観的に彼がやったなと思っていた。そのやさきに、井上から島田さんのところに電話がかかってきた。「この前言ったことはおまえにしか話をしていないから、だれにも話さないでくれ。ないことにしてくれ」、島田さんは、「新聞に出ていたが、おまえがやったのでないか」、井上「そうではない」と一応否定はしたが、島田さんの声が大きいので、「大きい声でしゃべるな、人がいないか」と盛んに気にしながら、自分は小さい声でしゃべっていた。そのあと、連続して三回ほど電話がかかってきた。「おれは関係がないのだ。おれのしゃべったことを人に言わないでくれ。新聞に出たのは偶然だ」、どこにいるんだと聞いても、居場所は言わない。島田「おまえがやったんなら出てこい」、井上「おれじゃない、おれじゃない」、しかし、電話のたびに小さな声で押えたように言い、「あたりに人はいないか」といつも気にし、きまって「しゃべらないでくれ」と念を押すので、彼がやらなかったのだとはとうてい思えなかった。何度も電話をかけてくるのは口どめだと思った、こういうような供述を言ったんですね。このように、どうもこの事件と関係が深そうな供述をしています。
そこで、どうでしょう、私はお聞きをしたいんですが、警察庁の刑事局長にお伺いしますが、この一昨年の六月二十日前後に、このような労組幹部が刺殺されたという事件はほかにございませんでしたろうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/411
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412・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 私としては聞いておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/412
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413・岩間正男
○岩間正男君 なかったと考えていいですね。これはなお当時の事件を調べていただければわかるんですが、調べた上ですか、いまのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/413
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414・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) いまの記憶で申しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/414
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415・岩間正男
○岩間正男君 そうすると、その前後になかった。そうして、話をしてから二日後にあの丸山事件の丸山委員長の殺人事件が起こった。
さらに、この供述の中で、丸山事件があってから間もなく、これは湯河原が郷里のようですが、郷里の友だちである小松厚雄君が島田君のところへやってきた。小松厚雄君の供述が供述書にあるようです。島田さんが「清が川崎でこういうことをやって新聞に出ている」と言って、浅草の「ふくひろ」で井上から聞いたことや電話のことを話した。そうしたら、小松は驚いていた。その後、小松は井上にこのことを話した。つまり、島田さんから聞いたことを話した。小松も井上とは郷里での知り合いで、小松も井上も島田さんも友人関係なんです。
そのときの模様を、小松は供述書でこう述べている。それから 丸山事件後、島田さんから井上の話を聞いてから——一カ月くらいたったと思うころ、井上が私のところにたずねて来た。井上「京都に行く、当分帰ってこない」、それに対して小松さんが「川崎で事件を起こした、やばいことをやってふけるんじゃないか」と追及した。それに対して、井上は、「そんなことおれ知らねえ」と否定はしたが、それ以上触れるのを避け、あいまいな態度だったので、「やはり島田の話はほんとうなんだな」と思った。
その後、一カ月くらい後、井上から島田さんのところに電話があり、「黙っててくれというのに、なぜ小松にしゃべったのか」とおこっていた。島田は「新聞に出ていることとおまえがしゃべったことを小松に言っただけだ」と言うと、井上はおこって電話を切った。畠田は、小松が井上に、私から聞いた話を話したのだなと思った。
この電話のあと間もなく十日くらいして、井上が島田のところをたずねてきた。今度は事件のことはあまり話をせず、ただ、井上「小松には言ったけれども、ほかの人には言っていないか」島田「おまえほんとうにやったのか」と追及したところが、井上「やっていないよ」、その話はやめ、話題を変えて、井上「五万円くらいの金はそのうち入るから、五万円くらい貸してくれ」、島田はしかたなく二千円だけ貸した。十日ほどしてまた電話、金を返すのを待ってくれ」、井上がそう言ったので、島田さんは「金は返さなくてもよいから、おまえのようなでたらめをやるやつは一切出入りするな」と電話を切った。そのあと一度もやってこない。会ったこともない。
こういうような前後の実に詳細な供述がされているわけなんです。この問題について、これは検察庁が取り上げて調べていると思うんですが、その後の進展状況はどうなのか。そうして、当然これだけの容疑者については取り調べをやったと思うんですが、やったとすればどういうところか。これはまだ逮捕に踏み切られない理由は何なのか。先ほどもちょっとお話がございましたが、これを明らかにしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/415
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416・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) この鳥田の供述の関係と、それから井上の供述の内容につきまして、両人の申し立てには相当の食い違いがあるわけでございます。したがって、それぞれの供述について現在裏づけをとっている最中でございまして、その点はいませっかく捜査中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/416
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417・稲葉誠一
○稲葉誠一君 関連して。いまのをお聞きしていたんですが、これは検察庁で捜査されたようなんで、いまの島田という人を検察庁で調べたことがあるんですか。調べたとすれば、何回くらい調べて、いつ調べたんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/417
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418・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは毎々申し上げますように、調べの内容につきましては申し上げかねるのでございますが、井上清という人につきましては、先ほど申したようなラジオの一件がございまして、もちろんその当時から捜査線上にあがっておった人だと思うのでございますが、島田という人がそれを結局ラジオであげたわけでございますので、今回の告訴もそういうようなところが根拠になっておると思われますので、私は島田につきましても当然調べておるという意味で先ほど来お答え申し上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/418
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419・稲葉誠一
○稲葉誠一君 当然調べておるというのは、当然調べておると思うんですが、一体いつごろ島田という人を調べたのか。一回で調べて済まなくて二回、三回調べたと思うし、調書をとっているのかとっていないのか。その調書の内容までここで聞くのはどうかと思うが、その辺のところがはっきりしないと進まないですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/419
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420・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 私のほうで聞いておりますところでは、五月二十一日からこの捜査に着手しておるようでございますが、六月十日までの間に五名取り調べをしておるようでございまして、その中の一人に島田光男さんがいることは間違いございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/420
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421・亀田得治
○亀田得治君 ちょっと私も納得できないんですが、非常に重要な問題点に触れる告訴、告発を出しておるわけですから、よほど警察なり検察庁がしっかりしたことをやってもらいませんと、非常な問題を残すと思うんです。それはここまで具体的な疑問点というものを指摘して書類を出しておるのであれば、両方読んでああでもないこうでもないというようなことを任意捜査でやってもらうということは非常に困ると思うんですね。やはり島田がそれだけ具体的な材料を出しておるのであれば、極秘に島田に対して警察なり検察庁がやはりこれで間違いないのか、おまえの言うことはとそこはやはり念を押してもらって、で、間違いないということになれば、それを根拠にしてやはり一応逮捕に踏み切る、一か八か。島田の言うことが非常に実はあとから間違っておったということが出てくれば、それはそれでまた考えたらいいでしょう、誣告とかなんとかあるのだから。やはりもっと思い切ったことをやってもらわなければ、そんなあなた対立しているものを任意捜査で適当に聞いているようなことでは、ほんとにっかめないように思うのですがね。しかも、私はいままでの経過を聞きますと、島田がどういうふうに警察、検察庁でしゃべって、そうしてどういう動きをしているかということは、これは井上は全部ツーツーですわな、いままでのような調べであれば。だから、すでに最初の告訴、告発を受けての扱いというものがすでに間違っているんじゃないかという感じがするのですがね。決して私はそんな軽率な逮捕等によって人権じゅりんなどの危険を侵してもらうことをすすめるわけじゃないですよ。ないんだけれども、ともかく丸山さんが殺されて、そうしてみんながこれをどうするか心配しているところに出てきておるただ一つの材料なんでしょう、私たちがいままで聞くところでは。そうして、相手の方が前科もある。そういう傷害について前科があるから色目で見て多少のことはやってもいいという意味じゃないですよ。なぜもっとそこら辺を慎重にやって、そうして逮捕してやれないのか、その点が一つ。
それから島田に対する保護措置ですね、そういったようなものはきちんと警察等ではできているのかどうか、それが一つ。
それからもう一つ疑問に思うことは、井上の事件当時における行動ですね、こういうものは任意捜査ではつかめないでしょう、実際のこと。だから、それをつかもうとすれば、どうしても逮捕しなければならない。任意捜査でそんなことを簡単に言うわけがないですよ。
まあそこらの点で非常な捜査のやり方に不満を感ずるわけですがね、私自身として。
この三点をひとつ解明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/421
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422・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは、傷害致死の事件であるか、殺人の事件でありますか、先ほどの議論がございましたとおりでございますが、私はその罪名はいずれにしても事実が解明されればきまることなんで、問題はないと思いますけれども、いずれにしても重大事件であることに変わりはないし、本件は、言うなれば強力犯という類型に入る犯罪でございます。したがって、犯人の目星がわかってくれば、当然逮捕してやるべき事件の範疇に入る事件でございます。でありますから、捜査当局が逮捕にちゅうちょするということは、事柄の性質上ないと思うのでございます。それじゃなぜ逮捕しないかということで、その点のいろいろ意見を申し上げますと、またこの事件についての捜査当局の考え方もある程度申さなければわからないわけでございます。まあ抽象的なお話の範囲にとどまるわけでございますが、それは、はたで見ておりますと、先生方には一そうそういうふうにお思いなさる場合もあるかと思いますが、私どもが見ておりましても、はたで見ておる者の立場としましては、よほど批評を入れる余地があるような取り扱いぶりもないとは言えないのでございます。しかし、この事件につきましてはもうすでに二年も経過しておる事件でございまして、告訴、告発がなくても捜査をしておりましたやさきへの告訴、告発を受けたわけでございます。しかし、検察庁も、いまでは従たる立場でなくて、積極的な共同捜査という形で乗り出しておるわけでございまして、どうか捜査当局の今後の捜査の展開ぶりにじっとしばらくの間信頼してまかしていくという形が私はいいのじゃないかというふうに考えておるものでございます。いつも申し上げますように、捜査の過程におきましては、あれこれと質問をいたしますと、その質問に答えるほうにばかり熱中してしまいまして、実際のほんとうの捜査というものは、実際にやってみますと、これは一々違うこともございますし、もう少しある程度まで進展をいたしませんと、何とも現場としても上に報告のしようのないという事態もある時期にはあるわけでございまして、ただいまは捜査の緒についた段階でございますので、そういう感じが私個人といたしましてはするわけでございます。そういう意味で、もうしばらくしんぼう強く見守っていきたいという気持ちでございます。
それから島田さんに対する身柄の保護措置につきましては、ただいま当局におきまして十分配慮しておる状況でございます。何と申しましても、捜査は証拠を積み上げて一歩一歩前進していくものでございますので、そういう点につきまして、皆それぞれその道で長らく捜査に従事してきた人たちが知恵をしぼっていろいろ捜査を進めておると思います。それを信頼してもう少し様子をじっと見守ってまいりたいという気持ちでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/422
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423・亀田得治
○亀田得治君 どうも、私の具体的な質問にほとんどお答えにならぬようなお答えになっておるわけですがね。私の言うのは、島田という人と井上というものは非常に関係のある人なんです。その親しい人が具体的にそれだけのことを持ち出すということは、うそっぱちなことで、そんなことが言えますか、人間として。それは殺人罪の証拠なんです。それがあなた、親しい人がそんないいかげんなことで持ち出すことができますか。もしそれを持ち出したとしたら、この人自身が問題にされたらいいわけです、社会的に見て。普通はそんなことはありません、普通の人間なら。だから、普通の人間という立場で、やはりこの出された貴重な証言というものを根拠にして一か八か思い切って強制捜査でやってみる。なぜもっと早い機会にそれをおやりにならなかったか、非常に私は残念です、この経過を聞いておって。島田さんのそれだけの証言があって検察庁がやったということであれば、万が一それが的がはずれていても、それによって不当な逮捕だとか拘束だとか、そういう問題には私はならぬと思うんです。だから、そういうわけですから、しんぼう強く見守ってくれというようなことを言われたって、これは日がたつほど公の文書がそういうふうに出てしまって、それが相手方にも通じて、日がたつほどそれは細工されるし、ぼけるじゃないですか。じっと見守ってくれと言うたって、そんなわけにいかぬですよ、関係者から見れば。私の言うのは無理でしょうか。そういう親しい人がそれだけの具体的な材料を出している。これを信用しなければしょうがないじゃないですか。それを信用してやったことは、私ははずれないと思うんです。はずれたとしても、検察庁は責められる立場じゃないと私は思うんです。どうでしょうか。その点だけについてひとつあなたに批評を聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/423
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424・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 先生のようなお考え方も私は確かにあると思うのです。ただ、私が申し上げにくいと思っておりますのは、いま捜査の機微な段階にあるから、私がいろいろと申し上げることが支障を生じてはいかぬという考慮から私は抽象的なことを申し上げておるのでございまして、先生の意のあるところは、この席でお述べになりましたことでございますので、当然速記録にも載りますし、私は現地当局に私自身でお伝えをいたしまして、こういう考え方もあるよということはしかとお伝えをしてまいりたいと思います。ただ、それについて私が意見を述べますことは、私の立場として非常に微妙な段階にあるということで差し控えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/424
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425・岩間正男
○岩間正男君 これは警察が逮捕に踏み切らない理由はどこにあるんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/425
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426・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 昨年七月に日本放送編成局の記者から提供された情報に基づいて慎重に捜査しておるわけでございますが、現在までの捜査の過程では井上清を犯人と認める証拠は十分でないからでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/426
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427・岩間正男
○岩間正男君 島田、小松のこの供述書ですね、これは信頼しているんですか、しないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/427
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428・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 先ほどからのお話を聞いておりまして私も考えておるのでございますが、この捜査がもうこれ以上進展しないという前提、あるいは裏づけ捜査で供述をそれぞれやってもこれ以上できないという状態を私ども前提としておりませんので、裏づけ捜査なりその他の捜査によってまだ捜査は進展する、こういう前提に立っておるわけでございますので、お話のような点もあろうかと思いますけれども、その私どもの内容、裏づけ捜査の状況なりその他をお話しするとまた御理解いただける点もあろうかと思いますが、その点はこの席ではいまのところまだ捜査の途中でございますのでお許しを願って、いま少し裏づけ捜査なりその他の捜査の進展を見守っていただきたい、かように考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/428
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429・岩間正男
○岩間正男君 そういう捜査上の機微の問題もあると思うのですが、先ほど亀田さんからも話があるように、もうすでにこれは告訴、告発を出されましてから二カ月になるわけです。事件はすでに三周忌を過ぎておる、こういうことですね。しかも、これが告訴状として正確に出されたのが本年の四月二十九日ということになっておりますが、従前からこういういわゆる島田情報というものはずっと早く出された。これはいつごろですか、あなたたちのほうで入手したのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/429
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430・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 事件後一年近くたちました三十八年の七月十一日ごろでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/430
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431・岩間正男
○岩間正男君 すでに一年ぐらい。そうしていまだにこれだけのこの有力な容疑者というこれが逮捕されていない。ほかに何かあなたたちは別件で捜査を進めておる点があるんですか、ないんですか。これだけがいまきめ手というようなことじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/431
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432・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) ほかのほうの犯人ということを全然考えていないわけではございません。ただ、それでは具体的に何か考えておるか、ということはございませんが、全般的に真犯人を追及するという捜査態勢でおるわけでございます。ただ、この捜査がやはり一年たってこういう情報が入ってきたという点からも非常に捜査しにくい、また、裏づけ捜査にいたしましても非常にしにくいという点があって延びてきてはおると思います。最後の追い込みという意味で、裏づけ捜査なりそれ以外の面の捜査も十分やってまいるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/432
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433・岩間正男
○岩間正男君 やっぱり、裏づけ捜査の中で一番重要な問題になってくるのは、アリバイの問題ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/433
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434・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 一つ一つについて申し上げることはお許しを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/434
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435・岩間正男
○岩間正男君 そういう情報も私たちは受けるんですがね。それで、このアリバイというものが一つの根拠になっているようにわれわれ聞いておりますけれども、どうなんです。これはアリバイだといったって、いつ調べたんです。この告訴状が出されてからアリバイについてアリバイくずしを十分にやっておりますか、どうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/435
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436・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) この三十八年の七月の情報を得ましてからいろいろ調べておるわけでございまして、必ずしもまたアリバイに限定しておるわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/436
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437・岩間正男
○岩間正男君 そうすると、これはいろいろ関係者からも調査したんですが、いま一つきめ手がほしい、アリバイをくずせない、そういうことをこれは漏らしておるんじゃないですか。その中で、そのアリバイというものを調べてみるというと、事件発生後、一般的な右翼関係を調べたとき警視庁のほうでとった調書にそうなっているということが根拠になっているというように聞いておりますが、そうしますと、新たな段階でこの問題についてはいま現在追及を進めているんですか、いないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/437
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438・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 私どものほうとしては、いまの段階では、やはりアリバイの関係も、供述全般の問題も、また、それ以外の面におきましても捜査を進めておるわけでございまして、現在のところはそれ以上のことを申し上げるのは適当ではないと考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/438
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439・岩間正男
○岩間正男君 もし私たちの得たような情報で、当人から聞いてアリバイを確かめるというのは、いわゆる談合アリバイのやり方で、これを逮捕の口実としておったんでは話にならないと思うんですが、そうじゃないですか。われわれのいままでいろいろ調べた範囲内では、それ以外に私のいまの質問を否定するようなそういう立場でほんとうにアリバイをあなたたちのほうから追及してアリバイくずしをやっていく、こういう態勢をとられていないように思う。アリバイが口実になってそうして逮捕に踏み切らないというふうに聞いているんですが、そういうことでは、これは暴力団の取り締まりの問題が暴力法の審議の中でずいぶん当委員会でやかましく問題になったんですけれども、これじゃ全く問題を追及することはできないんじゃないですか。これはどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/439
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440・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) まあ一か八かというお話も先ほどあったのでございますが、私どもの立場としては、とにかく捜査でできるだけのことをやって、そして十分な資料を整えてやりたいという気持ちでございまして、今後の捜査がもう進まないという前提には立たずに、捜査によって極力十分な資料を整えたいということで鋭意やっておるわけでございますので、その点は御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/440
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441・岩間正男
○岩間正男君 もう二年になるんですよ。先ほど私は冒頭に話をしましたけれども、ここに写真がありますけれども、遺族の気持ちになってみてくださいよ。ここに奥さんとそれからあれの写真、念のために見てください。ほんとうに切実なものですよ。私は住宅に行ってみた。長屋ですよ、ほんとうに。ひと間の小さい長屋だ。労働組合の委員長というものの置かれている立場を見たように思った。そして四軒続きの長屋です。工場に入っていった四軒目のところですよ。そこから出てきて、それでちょっと曲がって、それから今度道に出るんだ。そして、その後には草山みたいのがあるんです。そして、おそらくその草山から出てきたのが背後から突いたと思われるのですよ。わびしい姿を見てください。あなたたちは一体こういう立場から問題を検討しているのかどうか、私は問題にしたいと思うのですがれ。二年ですよ。これを見てください。これは、私がさっき話した昭和電工に行ったときに、ついでに寄ってみた。暴力団をばっこさせておいてですよ——ここにあります。それから実際の現場なんかあなたたちごらんになっていないでしょうけれども、ひどいものですよ、これは。胸が締まりますよ、実際。遺族の気持ちになってごらんなさい。ちょうど三周忌が迫ろうとしておった、私の行ったのは。今月の五日です。それから半月後の二十日に、ちょうど私が暴力法の討論をやったあの日に三周忌に当たっておるんですよ。そして、いまだにこの問題が明らかにならない。しかも、この告訴状の内容、焦点については、これは捜査当局だってこれを信頼しないわけにいかないでしょう。事実、この問題が一つの大きないま手がかりで、ほかの案件というのはないんじゃないですか。こういうかっこうで、追及をしている。その点はわかりますけれども、程度問題があるんじゃないかと思うのです。そして、逮捕に踏み切れない一つの理由として、アリバイだと。そのアリバイは何かといえば、これは独自に警察が科学的な捜査を進めて明らかにしたものじゃない、談合アリバイです。こういうかっこうで問題を暗箱に投げ込んできているのが現在この事件に対する態度じゃないかと言われても、これは何とも弁解しようがないんじゃないですか。暴力団の取り締まりを厳重にやるというんなら、何よりもやはりこのような殺人犯に対してこれを明確にする。しかも、これは一労働組合の委員長が殺されたというんじゃなくて、やはり労働者に対する大きな暴力の手です。だからこれは東京の労働者たちは大きな問題にしているんですよ。しかし、警察の態度については釈然としないのです。検察庁の態度についても釈然としないのです。現在そういう実態をあなたたちはっきり見なくちゃ、その上に立たなきゃ、暴力団の取り締まりとかなんとか言ったって、話にならないじゃないですか。これについて、時間も相当きておりますから、いろいろもう少しあなたたちのほうでも調べて、もう一回これを詳しくお聞きしたいと思います。その後の進展によってお聞きしたいと思うんですがね。さっきも亀田委員から念を押されましたが、その問題を徹底的に明らかにして、そしてぽっきりやはり逮捕に踏み切って、これを調べることなしにこの問題は明らかにならない。
それから現に島田氏に対してはいろいろな圧力が加わっておる。身辺の危険さえ実は保証されていないというようなところに置かれているようなかっこうじゃまずいので、先ほどそういう事実はないだろうって竹内さん言われましたけれども、実際あるんですよ。ないことをこんなこと言うわけはない。実際は最高検の公安部長がまるでおどかしのようなことを言っているでしょう。それから検事もどうも煮え切らないことを言っているんですよ。これではやっぱり問題にならない。この供述をやるというのは、ほんとうにこれは情において忍びないところが一つあったかもしれない、友だちだし。しかし、やはりあくまでも真実をしなきゃならないし、それはことに遺族の気持ちになれば黙っていられない。この惻隠の情忍びがたきものがあって踏み切ったのでしょう、おそらく島田さんは。そういうものに対して、当局の態度がそれを保護するどころか、逆に何か圧力をかけているというような印象を与えたんでは、これはたいへんな問題じゃないかと思うのです。警察では、詳しく具体的にこれは言ってください。どういうことをやっておりますか。島田その他の小松、三人ほどありましたね、供述をして告訴状の中に出てくる人たちが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/441
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442・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) この事件は、確かに非常に凶悪な事件であると思います。その意味でも、われわれとして十分な捜査をやって早く真犯人をあげなければならないと考えておるわけでございますが、問題はやはりだれが真犯人であるかという問題であるわけでして、そこにわれわれとして捜査を強力に進めていっておる最中なのでございます。
島田の身辺保護の関係につきましては、警視庁とも連絡をとりまして従来もやっておるのでございます。なお、今後とも十分に身辺の保護の関係で努力してまいりたいと思います。
なお、調書の作成は、島田につきましては八月十二日にいたしております。その他の者につきましても八月におおむね調書を作成いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/442
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443・岩間正男
○岩間正男君 さっきの保護はどうです。保護は警視庁にやらしているのですか。これは十分ですか。だいじょうぶですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/443
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444・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) なお今後とも努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/444
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445・岩間正男
○岩間正男君 どういうことをやっているんですか、具体的に。どういうことをやっているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/445
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446・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 結局、島田に絶えず保護者がついておるというようなわけにもまいらぬと思いますので、やはり責任者を指名して保護させるというようなやり方にいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/446
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447・岩間正男
○岩間正男君 いまの説明を島田さんが聞いたら、安心できますか。ちょっと安心できないですよ。いまのあなたの説明だけじゃ。万全を期すことができますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/447
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448・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 万全を期してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/448
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449・岩間正男
○岩間正男君 あらためて指示してちゃんとそれをやらせる、そういうことはできますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/449
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450・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 連絡いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/450
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451・岩間正男
○岩間正男君 とにかく、こういうことは、これを明らかにする勇気と、それから捜査に協力しているという態度については、これは当然もう守る、保護するだけじゃなくて、あくまで一つの正義感を尊重するという基本的な立場に立たなくちゃならぬですね。ところが、事実は、どうも何かこれに対するいろいろな背後からの工作みたいなことが行なわれたり、それからいろいろな圧力が加えられるというような事態だったら、これは真犯人を追及するのじゃない、全く逆の方向に行くと思うんですがね。そういう態度についてはどうなんですか。はっきり今後警察庁が責任をもってそういう点を明らかにすることができますか。それは単に今度だけの問題じゃなくて、実際は事件捜査に当たっての協力者に対する態度というものを警察はどうするか。基本的にはどうなんだ。そして、はっきりそういうような具体的な措置をとるかどうかということにかかってくると思うんです。この点についてはどういうふうに保証するんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/451
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452・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 従来、島田に対して相当に圧力が加えられたということは、具体的に私も聞いておらないのでございますが、お話しのように、協力者——将来の参考人、被害者になる者、証人になるような者につきましては、私どもとしては十全の対策を立てなければ、今後の取り締まり、被害の届け出の促進というようなことは期待できないと思いますので、その面につきましては一そうの努力を傾けてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/452
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453・岩間正男
○岩間正男君 基本的な態度ですけれども、だれかが供述をした、どうもよくあることですが、警官がこれに対してのしかかるような態度で調べるというような事態が起りやすいんです、こういうときに。それじゃ問題にならないと思うのです。当然これは事件の協力者として、しかも勇気を持って一つの正義感に燃えなければできないことです。人を告発して、こんなことをして三文の得にもならない。よほどの覚悟が必要だ。なおかつこういうことをやった。こういう点について、警察はこれに対してよほど評価しなければならないと思うのです。こういう人がなくなってくれば、これは真実というものは遠ざけられてしまう。そして事実は迷宮入りになってしまうのです。私は、そういう点から考えて、基本的に、こういう告発の勇気を持ってこれをやったそうした人たちに、はっきりしたやはり態度をとるべきだと思うのですがね。
まあいままで申し上げたように、いろんな点で十分でない。それからある場合には逆に圧力を加えてきている。こういう態度、こういう事実は、厳重に私は改めるべきだと思うのです。それで、これはさっき竹内局長の当然これについて圧力を加えることは不当だというような表現がありましたから、この点を確認して、しかも、その趣旨を徹底するように、法務省としては、最高検なりそれから係の検事、それから地検、そういうところに対して、どうもいままでけしからぬ態度がある、こういう点について、調査もするし、そしてこれに対する適当な措置もとるべきだと思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/453
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454・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 先ほど申し述べました趣旨を厳重に徹底させまして、今後そういうことのないように十分注意いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/454
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455・岩間正男
○岩間正男君 その結果をこちらに報告してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/455
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456・稲葉誠一
○稲葉誠一君 ちょっと関連して。警察で調べていた、そこに検察庁のほうへ告訴が出る、こういうふうになってくると、警察のほうは、結局自分のほうが信頼されていない、不信だから検察庁のほうに告訴が出たんだ、こういうかっこうになってしまって、おもしろくなくなってやられなくなってしまう例が従来ある、実際問題として。理屈は別ですよ。実際問題としてはそういう例がよくあるわけですが、これは一体どこがいまは主体になってやっているんですか。検察庁に告訴が出たからそっちのほうがやる、警察のほうは補充的になってくるのかどうなのか、そこのところはどういうことになっているんですか。どうも聞いていてはっきりしないんですがね。法務省のほうはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/456
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457・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 戦前は、御承知のとおり、指揮権を持っておりまして、すべて司法事件、刑事事件につきましては検事の責任でやっておりましたわけでございますが、実際は手足がございませんので、司法警察官が捜査に当たっておりました。現行におきましては、警察と検事との関係は協力関係ということになりましたが、検察官もまた独自の捜査権を検察庁法で認められております。そこで、一般的に申しまして、捜査は現実にどうやっておるのだろうかということでございますが、私どもの考え方としましては、事件によりますけれども、大部分の事件は警察官が第一次的に捜査をされる。そうして、検察庁が受けて、さらに起訴、不起訴をきめる段階に至って足らぬところがあるならば、みずから補充するか、あるいは警察官にお願いしてさらに補充をしてはかるか、そういうような立場をとってきております。しかし、告訴、告発につきましては、これは検察庁に出てまいります告訴、告発というものは、一応検察官に調べてもらいたいという趣旨でなされるものでございますので、これを右から左に警察官にお願いをするというようなことは現在いたしておりませんが、事案によりまして、現に警察が捜査をしておるという事件でございまする場合には、この告訴の趣旨を検察庁と警察とで協議いたしまして、共同捜査という形にするか、あるいは警察が自分が現にやっているから引き受けてさらにやりますということになるか、そういうところは具体的にケース・バイ・ケースでやっております。
本件につきましては、告訴、告発の出ません以前におきましては、警察が主になり、検察が協力をするという形でやってまいりまして、告発と告訴が出ましてからは、検察庁と本部とが共同捜査をするという形で検察官も片棒をになって捜査に当たっておりますが、実際問題としては、やはり主体をなしておりますのは警察でございますので、警察の活動に期待するということになるわけでございまして、いままでとどういうところが違うかといえば、警察本部と検察庁の検事正がこの事件を直接責任者として監督しながら捜査を進めておる、こういうところに告発以前と告発以後で違っておる面があるのではないか、こういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/457
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458・稲葉誠一
○稲葉誠一君 警察のほうでは、事件として検察庁のほうに告訴が出たというので、いままで調べたものは立件はしない段階だと思うんですが、証拠書類なんかは、証拠書類と言えるかどうか、供述書なんかは、全部検察庁に送っちゃったんですか。主要なものはどうなっているんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/458
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459・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) そこのところまではまだ聞いておらないわけですが、まだ捜査中でございまして、見せたり、内容をお話ししたりはしておると思いますけれども、現物は送っておらないのじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/459
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460・稲葉誠一
○稲葉誠一君 そうすると、検察庁と警察との間で、この事件について合同で捜査会議みたいなものを開いたことがいままであるんですか。特に告訴が出てからあるんですか。そこまではわかりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/460
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461・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 最高検の指揮によりましてこの捜査を横浜地検が引き受けました以上は、当然そういう捜査会議を開いて打ち合わせをし、検事がどこまで応援をしていくかというようなこと等、詳細に打ち合わせをしておると思いますし、それから書類の正規の送致は、もちろん事件にされておりませんので、警察の書類が当然には検察庁には来ておりませんが、調書の内容等は十分検察官も見せてもらっておるはずでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/461
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462・稲葉誠一
○稲葉誠一君 関連質問ですから、長くやりませんけれども、いまの検察庁と警察との間の本件についての捜査会議というのは、具体的にいつ開かれたか、何回開かれたか、これはいまここでわからなくても、調べればすぐわかることですから、そこまでどういうふうにやっているのかぼくは疑問に思うものですから、これは調べていただきたいと、こう思います。
それからもう一つ、最終的な問題として、一体いつごろ——おおよそですよ。捜査ですから、いつというふうにはっきり言えないと思うんですけれども、おおよそいつごろになったらこの事件については目鼻をつけるという一つの気組みなのか、これは警察なり法務省はどうなんですか。おおよそですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/462
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463・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) これは、稲葉先生も御経験があると思いますが……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/463
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464・稲葉誠一
○稲葉誠一君 おおよそでいいですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/464
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465・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) めどをつけて、それまでにというようなやり方はできないわけでございますが、早ければ早いほどいいわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/465
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466・稲葉誠一
○稲葉誠一君 ですから、おおよその気組みを聞いているわけです。客観的なことを聞いているのじゃないんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/466
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467・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 簡単に申し上げるならば、私宅大いに申し上げたいところでございますが、これは一刻も早く犯人をあげたいという気組みでやっておることは間違いございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/467
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468・稲葉誠一
○稲葉誠一君 それはそうだけれども、結局はどうなんですか、おおよそのことは。おおよそいつごろになったら目鼻をつけるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/468
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469・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 大体、目鼻がつく時期がわかりましたなら、捜査も完結していると思いますが、私どものほうへこれと思う資料が出てきますと非常に早く解決するし、それからそうでなければ克明にやっていってということなんで、おおよそと言われても非常に困るわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/469
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470・稲葉誠一
○稲葉誠一君 気組みの話ですよ。こういうところまでには解決したいということは一つの気組みとして言えるわけですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/470
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471・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) 気組みとしては一刻も早くということなんですが、ちょっと日にちを指定することはむずかしいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/471
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472・亀田得治
○亀田得治君 もうこれで今国会の最後の質問にしますが、これも暴力法のときに中途はんぱになっておる点ですが、例の司自動車の樽沢に対する告訴告発ですね、いずれ調べた上でということでありましたが、検察庁における扱いはもう終了しましたか。これはもうはっきりしているのだから、証拠もすべて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/472
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473・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 本月十六日藤江英策という者を公判請求をいたしておりますが、なおその余の事実につきましてはさらに捜査を続けている段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/473
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474・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、樽沢専務は起訴しておらぬのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/474
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475・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 総沢社長の……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/475
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476・亀田得治
○亀田得治君 社長じゃない、専務です。樽沢正というのが社長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/476
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477・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 樽沢正が社長、樽沢早人というのが専務ですね。これは事件が七件に分かれておりまして、そのうちの一つがすでに起訴をしたわけですが、他の六件につきましては捜査中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/477
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478・亀田得治
○亀田得治君 その樽沢専務が四月九日に榊原、宮崎、こういう諸君に傷害を与えたというのが本件の暴行の中で一番ひどいやつなんです。そのひどいやつがあと回しになるというのはおかしいじゃありませんか。
それと、そのときもお聞きしておいたんだが、検事がいまだに四月九日事件の現場を見にも来ぬ、ほったらかしになっているという不平を聞いているわけです。いまだにそういう状態ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/478
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479・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) さようなはずはないと思うのでございますが、いつごろの先生の情報に基づいての御質問でございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/479
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480・亀田得治
○亀田得治君 私があれは十七日でしたね、質問しましたときは。そのときにまだその処分もきめておらぬし、検事が四月九日の現場をまだ見にも来ておらぬ。はなはだこの一連の各種の暴行行為の中の最大なる事件を放置されて、竹内さんは調べてお答えしましょうということになっているわけですよ。もう一週間ほどたつわけですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/480
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481・竹内壽平
○政府委員(竹内壽平君) 重ねて現場当局に意見を伝えて善処するようにさせますが、なお、いま申しましたように、告訴、告発のありますもののほかに、現地で認知して逮捕したものもございますし、先ほど申したように起訴したものもあるわけでございまして、鋭意捜査中というのがただいままでの私の承知している状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/481
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482・亀田得治
○亀田得治君 これを一つだけ申し上げてやめますが、これは四月九日事件というのが一番ひどいのです。これはそれが抜けているというのははなはだ不満でして、明日でもまた事情をどういうふうになっているか電話でお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/482
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483・岩間正男
○岩間正男君 最後に一つだけ。この前質問半ばでこれはお伺いできなかったのですが、樽沢正という社長が暴力団を連れて会社へ入ってきたときに、これは警察と暴力団とちゃんと打ち合わせができている。お前たちつべこべ言っても話にならぬ、こういうような訓示をしている。この問題で私は千住署長に会ったときに、こういう事実があるかと言ったら、いやそんなことあるもんか、こういう返事です。それならば、警察としては、暴力団と関係があるとかなんとかいうことを樽沢が一方的に言うことは、これは非常に名誉に関する問題であって、当然これに対して取り消しを要求するなり、それからこの樽沢に対して追及すべきじゃないか、こういうことを言ったわけです。ところが、全然これに対しては答えもできないんです。これは、あなたは公安のほうでないから、直接関係はないと思いますが、しかし、お聞きになったと思う、あの席にもおったわけですから。こういう警察の態度でいいんですか。なまぬるい。だから、暴力団とツーツーと言われてもしかたがないと思う。この点についてのこの千住署長のこういう態度について、一体どう考えますか。その点についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/483
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484・日原正雄
○政府委員(日原正雄君) あの事件につきましては、私のほうの所管でございませんのでもよく内容を存じておりません。警備局長の所管でございますので、何ぶん私は事情を存じません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/484
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485・岩間正男
○岩間正男君 お伝えください。これはこの前聞こうと思っておるうちに時間の関係で聞けなかったので。この前私が警察庁に行って後藤田警備局長に抗議をしたそのときは、すぐに千住署長に通達をして、そして暴力団を擁護するようなことは全然させないとかなんとかいうような話があったんですけれども、しかし、暴力団との関係というやつについては実にあいまいです。いま言ったようなき然たる態度なんかとれない。口では非常に大きなことを言って、何か警察庁から通知が行ったとみえて、興奮して私に食ってかかるような態度をとっておりましたけれども、実際そこのところを押えてみると、暴力団に対して何一つできないというのが現在の実情ですから、これはこの次に回しますけれども、これは伝えておいてください。こういう態度では話にならぬ、千住署の態度は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/485
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486・中山福藏
○委員長(中山福藏君) 本日はこれをもって散会いたします。
午後八時二十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615206X03619640626/486
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