1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年二月七日(金曜日)
午前十時十九分開議
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議事日程 第五号
昭和三十九年二月七日
午前十時開議
第一 国務大臣の報告に関する件
(農業基本法に基づく昭和三十
八年度年次報告及び昭和三十九
年度農業施策について)
第二 昭和三十八年産米穀につい
ての所得税の臨時特例に関する
法律案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
一、請暇の件
一、日程第一 国務大臣の報告に関
する件(農業基本法に基づく昭和
三十八年度年次報告及び昭和三十
九年度農業施策について)
一、日程第二 昭和三十八年産米穀
についての所得税の臨時特例に関
する法律案
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00619640207/0
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001・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
————・————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00619640207/1
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002・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。
この際、おはかりいたします。上林忠次君から病気のため二十三日間、田中清一君から病気のため十二日間、石田次男君から病気のため十九日間、村上義一君から病気のため二十三日間、それぞれ請暇の申し出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00619640207/2
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003・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって、いずれも許可することに決しました。
————・————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00619640207/3
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004・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 日程第一、国務大臣の報告に関する件(農業基本法に基づく昭和三十八年度年次報告及び昭和三十九年度農業施策について)、
赤城農林大臣から発言を求められております。発言を許します。赤城農林大臣。
〔国務大臣赤城宗徳君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00619640207/4
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005・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 先般国会に提出いたしました「昭和三十八年度農業の動向に関する年次報告」及び「昭和三十九年度に講じようとする農業施策」について、その概要を御説明いたします。
申すまでもなく、これらの報告及び文書は、それぞれ農業基本法第六条及び第七条に基づいて政府が毎年国会に提出いたすものの三十八年度分であります。
まず「昭和三十八年度農業の動向に関する年次報告」について御説明いたします。
この年次報告は、「第一部農業の動向」と「第二部農業に関して講じた施策」に分かれております。「第一部農業の動向」におきましては、農業基本法の趣旨に沿い、他産業と比較した農業の生産性及び他産業従事者と比較した農業従事者の生活水準の動向に焦点を置き、これに関連する農業の動向を、三十七年度を中心としてできる限り最近にまで及んで明らかにしております。
その概要を申し述べますと、三十七年度のわが国経済は、景気調整の影響により成長率は鈍化しましたが、個人消費支出は引き続き旺盛で、農家世帯員の他産業部門への就職も依然多数にのぼりました。このため農業就業者は、前年度に比べて三%減少し、三十七年度平均で千二百六十四万人となっております。
農業生産は、近年選択的拡大の方向に沿って増加しておりますが、三十七年におきましては、米の増産及び畜産物の生産の著しい増大等によりまして、前年に比べ三%程度の増加となっております。これは、農業就業人口の減少にもかかわらず、農業技術の進歩や農業投資の増加があったこと等によると考えられます。
また、農産物価格は、需要の著しい伸びによりまして強調を示し、前年度に比べて一〇%程度の上昇となっております。このような農産物価格の上昇は、近年の経済の高度成長に伴う農産物需要の増大と質的な高度化があまり急激に行なわれたため、生産がこれに十分対応できない面が見られ、このため需給の不均衡が発生したことに主としてよると考えられますが、農家の自己労働評価の高まりその他コストの上昇をも反映していると思われます。また、特に生鮮食料品等の消費者価格の値上がりは、流通経路の不備や流通経費の増大によるところも大きいのであります。
以上のような農業生産の増加と農産物価格の上昇によって、農業所得は前年度に比べ相当の増加となりました。また、農外所得も引き続き増大いたしましたので、農家所得の伸びは大きかったのであります。それとともに、農業の生産性及び農業従事者の生活水準も相当の向上を示しました。
農業と他産業との生産性を従来どおり従事者一人当たり実質国民所得で比較いたしますと、農業の製造業に対する比較生産性は三十六年度において二五%でありましたが、三十七年度においては二八%程度となりました。また、製造業を含む非農業に対する比較生産性は同じく二七%程度から二九%となり、生産性の格差が若干縮小いたしたのであります。
農業従事者の家計費を他産業従事者のそれと比較いたしますと、全国農家の世帯員一人当たり家計費は、全国勤労者世帯のそれに対して、三十六年度において七六%程度でありましたが、三十七年度においては七七%程度とわずかながら改善されたのであります。
このような農業と他産業との生産性の格差の縮小は、三十七年度において景気調整の影響により他産業部門における生産の伸びが大幅に鈍化したことや、農産物の相対価格が上昇したことによるところが大きいと考えられます。したがいまして、農業と他産業との生産性の格差が拡大してきた近年の傾向が改まり、今後引き続いて生産性及び生活水準の格差が縮小するとは即断できないのであります。
次に、農業経営の動向について見ますと、依然として青少年層が中心になって農家人口が流出しており、農家の兼業化も引き続き増加しております。このため、農業従事者に占める老人や女性の比率が高くなって労働力の質が一般に低下し、また農業後継者の確保も次第に困難となっております。
また、農業就業人口の減少は、現在のところ農家戸数の減少と必ずしも結びついておりません。兼業を主とする農家の増加が大きく、農地の流動化がなお十分でないこともありまして、農業就業人口は減少しても経営耕地規模拡大の動きがそれほど顕著になったとは申せない状況であります。
しかし、農家戸数がわずかではありますが減少する中で、一町五反以上層の農家が近年着実に増加し、また畜産、果樹等の成長部門を中心にして、農業経営を積極的に高度化し、相当の農業所得を得ている自立経営的農家が次第にその数を増加してまいりましたことは注目されるところであります。今後わが国農業をめぐる国際経済情勢は次第にきびしさを加えてくることと考えられます。また、経済成長に伴い農業就業人口が一そう減少することも予想されます。
このような農業の動向にかんがみ、政府といたしましては、農業基本法に即して、農業近代化施策を総合的に実施し、農業の生産性及び農業従事者の生活水準を向上させつつ農業の発展をはかるとともに、自立経営を育成するよう一そうの努力をいたすことが重要であると考えるのであります。以上が第一部の概要であります。
次に、「第二部農業に関して講じた施策」について申し上げます。これは、第一部と同様三十七年度を中心としてできるだけ最近にまで及んで、政府が農業に関して講じた施策を、農業基本法第二条に掲げる施策の全般にわたり、農業の動向との関連及び施策の実績等にも言及して記述したものであります。
最後に、「昭和三十九年度において講じようとする農業施策」について、その概要を申し述べます。
この文書は、年次報告にかかる農業の動向を考慮して三十九年度において政府が講じようとする農業施策を明らかにしたものであります。
最近における農業の動向は、ただいま御説明いたしましたとおりでありますが、このような動向に対処いたしまして、農業の近代化を促進することは、わが国経済の均衡のとれた発展をはかる上できわめて重要な課題であります。政府といたしましては、農業基本法の定めるところに従い、同法の定める施策を着実に具体化することを基本的な態度として、農業施策を講ずることとしているのであります。
三十九年度において講じようとする農業施策の重点といたしましては、まず第一に、農業生産基盤の整備を強力に推進してまいることといたしております。すなわち、農業機械化促進のための大区画圃場整備、農業生産の選択的拡大に即応した飼料自給基盤強化のための草地造成等をはじめ、土地及び水の有効利用をはかるためのかんがい排水施設整備、農用地開発等土地改良事業の積極的推進をはかることとしております。
第二に、農業構造改善事業を拡充強化することとしております。すなわち、農業構造改善事業を一段と積極的かつ円滑に推進するため融資単独事業費の増額等、助成措置の拡充強化をはかるとともに、すでに事業実施中の市町村においても、事業実施地区以外の地区で農家の熱意がある等条件の整備されている場合は、その地区で事業を実施することができるよう措置する等、地域の実情に応じて事業を弾力的に行なうこととしております。
第三に、農産物の価格安定及び流通改善を積極的に推進してまいることとしております。すなわち、農業所得の増大と国民生活の安定をはかるため、米麦等の価格政策について適正な運営をはかるとともに、奮産物、果実、野菜等需要の伸びの大きい農産物の生産の安定的増大をはかるための施策を強化することとし、これとあわせて農産物の流通の改善による流通経費の節減と価格の安定をはかってまいることとしております。特に、生鮮食料品の流通改善対策といたしまして、生鮮食料品流通のかなめともいうべき中央卸売市場につきまして、引き続き施設の整備、取引方法の改善及び取引機構の合理化に努めることとしております。また、生鮮食料品の小売価格の合理的形成に資するため、新たに東京都に食料品総合小売市場を設置することとしております。
第四に、農業金融の改善拡充をはかるとともに、農業改良資金制度を拡充することとしております。農業近代化のために必要となる長期低利資金を確保するため、農林漁業金融公庫資金、農業近代化資金等を大幅に充実いたしますとともに、公庫資金につきましては融資条件の改善・簡素化をはかることとしております。また、無利子の貸し付けを行なう農業改良資金制度につきましても、農業後継者の育成資金及び農家生活改善資金を新たに加え、これに伴って貸し付けワクを大幅に拡充することとしております。
なお、この文書においては、以上の基本方針のもとに三十九年度において講じようとする諸施策について、農林省所管事項にとどまらず各省所管事項を含め、農業に関する施策全般にわたって記述しております。
以上、年次報告及び三十九年度農業施策について、その概要を御説明した次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00619640207/5
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006・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。大森創造君。
〔大森創造君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00619640207/6
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007・大森創造
○大森創造君 私は日本社会党を代表して、今般政府によって提案され、ただいま農林大臣から説明のあった「昭和三十八年度の農業の動向に関する年次報告及び三十九年度において講じようとする農業施策」、いわゆる農業白書について、若干の意見を申し述べ、同時に質疑をいたさんとするものであります。
私がこの一連の膨大な文章を一読して感じましたことを率直に申し上げますると、日本農業の現状に対する分析と、それに基づいて行なわれるべき施策との関連、昨年政府がとった施策とその成果についての関連が、非常にあいまいであるということであります。今回は三回目でありますが、いつでも、政府が出した農業白書と農業の社会勘定、それから予算とが、それぞれ関連がなく、ばらばらの印象を受けるのであります。なるほどその現状に対する分析は、そのほとんどの計数を三十七年度にとり、三十八年度の趨勢に及んでいるもので、従来よりも冷静で公平な見方をしていることを認めるにやぶさかではございませんけれども、どう読んでも、その間に一貫性が出てこないのであります。白書では、問題点を明らかに指摘する分析を行ないながら、その解決の方途とビジョンを故意に避けている態度が随所に見られるのであります。そのあいまいさ、一貫性のなさは、この作文を書かれたお役人の頭が悪いためではなくて、政府と農政当局そのものにあると思われるのであります。
まず、一体、政府は農業白書というものをどう考えているのか、いかなる意味を持たせて国会に提案しているのかという点であります。白書は、農業基本法の第六条と第七条に基づいて毎年国会に出すことになっていますが、私の考えでは、農業基本法のたてまえから見て、予算編成前の適当な時期に提案し、国会と国民の論議の対象にさせ、農業白書の問題点と精神を次年度の予算に反映さすべきではないだろうかと思うのであります。(拍手)
本法の条文によると、提出の時期は明らかにされておりませんが、条文の解釈上、当然そうすることが適当であると考えるのであります。三十九年度の予算は、旧年中にすでに固まってしまったのに、去る一月二十四日になって白書が閣議にかけられ、本日国会で説明される。これでは白書の積極的意味がないではありませんか。「これから講じようとする施策」の項を拝見しますと、その内容が、現実の農業の動きの分析とは無関係に、あらかじめ予定された結論を述べているにすぎなくて、すでに固まってしまった三十九年度の農林予算の説明にしかすぎません。「講じようとする施策」の項は、予算で確定してしまったものの説明をするのではなくて、いままで政府が行なってきた施策の結果を吟味し、現状を正しく認識させる資料と説明を基礎として、これから講じようとする施策、すなわち短期あるいは中期、長期にわたるビジョンを示し、次年度予算編成のめどをつける素材にすべきだと考えるのであります。現行のままでは、農業基本法にきまっているから恒例によって出すのだという形式的な意味しかなく、白書の精神と現状分析の把握は、正しく生かされないのではないかと思うのであります。提案の時期と内容について改めてほしいと思うがどうですか。また、農業基本法の精神から見て、現在の白書の扱いは間違っているのではないかと思うのであります。総理大臣並びに農林大臣の御所見を承りたいのでございます。
関連性、一貫性がなく、内容がばらばらで、迫力に欠けているという第二の理由は、基本法が目ざすところに向かって、一体どういう新施策を打ち出すべきかという農政の中心課題に対して、政府並びに農林当局が確固としたものを持ち得ないからであると思うのであります。
これから、内容の具体的施策について逐次質問をいたします。
その第一は、いわゆる自立経営農家に対して阻害条件を取り除くことであります。経営規模拡大のため、農地制度の改革を具体化することが必要であると思いますが、その点どうでありましょうか。白書には、その必要性の示唆をうたっておりますが、何らの具体性も示しておりません。自立経営の確立のためには、すでに示唆の段階を過ぎて、実行に移すべき時期に来ていると思うのでございます。現状をもってしては、経営規模の拡大への契機は少しも見出されません。昨年、農地法、農協法の一部改正を実施して、農地の集中化をねらったのでございますが、農家の実情にそぐわず、ほとんどその効果をあげ得なかったわけであります。ちなみに、お聞きしますが、農地の農協による信託は、現在どの程度利用されておりますか、お伺いいたします。利用されていない要因は一体どこにあるのか、あわせてお聞かせいただきたいのであります。
三年前の農業基本法制定当時、政府自身ですら、ほとんど予想しなかったであろう兼業農家の圧倒的増加について、政府の注意を、この際、促したいのであります。白書によると、昭和三十七年十二月現在で、第一種兼業が全農家の三三・七%、第二種が四一・五%、合計七五・二%の多きに達しているのであります。日本の全農家の七割五分以上がすでに兼業化されているという事実を直視しなければなりません。自立経営農家を一方に踏まえ、同時に、この兼業農家の安定的成長のために、新たな観点から施策を打ち出すべきだと考えます。政府と農林省は、この兼業農家に対して、いたずらに三ちゃん農業として、一方では自立経営農家の足かせとなり、また一方では、第二次、第三次農業の景気調整の安全弁となり下がらせて、万事成り行きまかせという態度しか見られないのでありますが、この問題について、いかなる施策をお持ちか、お尋ねしたいと思います。
一方、白書には、農業の協業化、共同化が最近頭打ちになったとしておりますが、事実はそうではないと思うのであります。困難な要因は多々あるにしても、それを克服する、適切で、しかも、強力な指導と援助があれば、明るい見通しが持てると思うのであります。開放経済を前にして、農業の本格的体質改善は、協業化、共同化の方向にのみあると思わざるを得ないのであります。現に、三十八年三月末現在で、全国で四千件近くの事例を見たのでありますが、これこそ、新しい日本の農業の芽ばえであります。財政的、制度的にこの芽を積極的に育てる用意があるかどうか、お尋ねいたします。
白書には、西ドイツ、スエーデンなどの例をあげて、離農推進の根拠としておられるようでありますが、私の調べたところによると、西独では、農業基本法成立後、農林予算を倍増し、スエーデンにおいては、全予算のうちの三六%を社会保障費に投入し、さらに、小農補助金制度も、日本と比較にならぬほど確立されているのであります。しかるに、日本においては、全般的社会保障制度の不徹底、住居の不足、職場におけるエスカレーター式年功序列賃金等々のために、離農、脱農しても、先行き不安から、農地を手離さないで、兼業農家に停滞するのが通常であって、挙家離村などにならないことは御承知のとおりであります。農業の革命的近代化などは、いかに困難であろうとも、この面の解決ができない限り、単なる口頭禅、行き当たりばったりに終わるでありましょう。総理のお考えをお聞きしたいと思います。
さらに、白書によれば、第二種兼業農家の生活水準は比較的高いと書かれておりますが、はたして実態はそうでありましょうか。私の見るととろでは、もよりの工場など、あるいは職場などに勤めている場合を除いては、その多くが、農業ではとうてい生活できないので、長期にわたる出かせぎ、あるいは季節労務者、人夫、日雇いなどに出ている者が、ここ数年来むしろ漸増の傾向にあると考えられるのであります。白書は、これら不安定な雇用の実態について何ら触れていないのはどうしたことか、お伺いいたします。
次に、白書は、農業と他産業の生産性の格差と従事者の生活水準の格差は、かなり縮小されたとして、基本法の目標に近づきつつあると論断して、楽観ムードさえ、におわしておりますが、このことは、景気調整で他産業の伸びが大幅に低下し、需要超過で農作物価格が上がったという、外的条件と価格基調の変化によるところが多く、農業自体の発展的要因からではないと思うのであります。格差の解消傾向と生活水準の向上が三十九年度以降に引き続きもたらされると考えられるかどうか、経済企画庁長官の見通しをお伺いしたいのであります。
さらに、成長作物の中枢である畜産物について見ると、立地条件にあまり制約のない養鶏がやや目立ってはおりますが、酪農にせよ、豚にせよ、価格の不安と飼料基盤の弱さから、多頭化飼養はあまり伸びていないのが実情であります。現行の農安法、畜安法あるいは事業団の運用等によっては、畜産物の安定的成長は心もとないと言わざるを得ません。ことに、濃厚飼料の四割も輸入に仰いでいる現状では、将来に非常な不安を畜産農家に与えているのでありますが、この際、政府の飼料対策についてあらためてお伺いしたいのであります。
さらに、成長農産物に対する価格、生産、流通の施策について幾ぶんの前進が見られるが、一そうの突っ込みがほしいのであります。価格支持制度、出荷対策、市場対策などについて、構想をお示し願いたいのであります。
また、構造改善事業の実績に対する反省がおありかどうか。すでに三年目を迎えた今日、ある程度の成果と反省が白書に載せられてよいのではないか。実施状況の反省の中から政策変更の必要は生まれてこないか、この際お聞かせいただきたいのであります。
さらに、貿易の自由化についてお伺いいたします。池田総理は、機会あるごとに、自由化するのは世界の大勢であり、わが国が貿易立国を建前とする以上、輸出するためには輸入するという常識的見解を示されておりますが、今日の自由化は、OECDに見るごとく、自国の利益を守る立場から、国内製品の保護を優先的に考えなければなりません。最も競争力の弱い農産物について非常な危惧を感ずるのは、私のみではないのであります。昨年八月三十一日、砂糖の自由化が一夜にして行なわれたということも、その一例であります。特にこの際指摘しておきたいのは、去る三十七年の乳価切り下げは、単なる夏場の市乳消費の伸び悩みによるものではなく、自由化態勢を急ぐ乳業資本の合理化攻勢のはしりであって、すでに自由化が及ぼしている深刻な影響について、白書には全く検討されていない、不可思議な態度であります。現に、バナナの自由化によってもたらされた打撃はおびただしいものがあります。自由化に対する農作物の国内対応策はどうあるべきか、総理と農林大臣にお伺いいたします。
本格的貿易自由化に当面し、農産物価格の下落が起これば、上層農家といえども、自立経営の基礎をくずしてくるのではないか。いわんや兼業農家は、文字どおり切り捨てられていくのではないだろうか。しかして、農業基本法のねらう農工間の格差の是正をはかるためには、小手先流儀ではとうていなし得ないのであって、それこそ、総理の言う革命的施策が必要であります。各方面にわたり何ほどかの施策の前進はありますが、この程度では、高度経済成長政策のもと、大企業を中心にして、農業はただ成り行きまかせだという感じしか持てないのであります。年間七十万人をこえる若年労働者の農業外への流出、そのほとんどの農家が、あと取りにすら困っているという事実を、白書はあからさまに伝えております。これこそ、今までの農業ではとうてい希望が持てないという端的証拠ではないでしょうか。総体的な予算編成の事情から見て、農林予算を画期的に増額するということの至難さは、私にも了解できますが、一国の総理が、しかも大国の総理が、選挙を前にして何回か農業の革命的近代化を呼号した事実を、私のみならず、全国の農民はまざまざと記憶しております。そうして、まさしく革命的近代化は焦眉の急務であります。しかし、口で何と言おうと、問題は予算の裏づけであります。今年度の農林予算総額は、その公約に対してあまりに少額であります。農林予算の心がまえのほどを総理並びに大蔵大臣にあらためてお伺いいたしまして、私の質問を終わりといたします。(拍手)
〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00619640207/7
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008・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 年次報告の提出時期につきましては、御意見を、私、十分尊重いたしまして、今後善処いたしたいと思います。
次に、兼業農家の問題でございますが、これは、経済の急速な発展の場合におきまして、私は前から考えておりますごとく、農家の人口がだんだん減っていく、そうしてまた、その減る過程におきまして兼業農家がふえていくことは、自然の趨勢であります。お話にもありましたように、ドイツのごとく戦後の産業が非常に進んでおるときには、よくいわれておる婦人その他が農業に従事するのが例になっております。日本もその例をたどっておるのでございます。兼業農家自体は、これは生産性が低いから望ましくはございませんが、また農家所得を増大するという意味からいうと、兼業農家をそう非難すべきではございません。私は、農業の基盤強化によって、いわゆる二町五反歩に向かって進むその過程において、ある程度の兼業農家ができることはやむを得ないことと考えておるのであります。
次に、貿易の自由化につきましては、農業については特に細心の注意を払いまして、りっぱな企業としての農業が成り立つことを頭におきながら、貿易の自由化をはかっていっておることは、すでに御承知のとおりでございます。今後もその方針で進みたいと考えております。
なお、大蔵大臣がおりませんので、かわって御質問に答えまするが、農業に対する予算措置が非常に少ないとおっしゃいますが、従来の状況から申しますると、私は相当予算を認めておるのであります。また金融の面からいたしましても、従来のいわゆる低金利政策というものをもっと徹底いたしまして、無利子の金融もしますし、また各九段階に分かれておった利子の問題も、これを集約いたしまして、低金利に向こうようにし、予算の支出と金融政策によりまして、従来の施策よりもよほど進んだ方向でいっておるのであります。
なお、この問題は一年だけで考えるべきじゃございません。そういう低金利と無利子と、そうして構造改善に対しまする熱意、これは年とともに出てくるものであります。三十九年度予算だけを見て、これはどうだとかこうだとかいうことは、少なくとも農業問題については当たらないと思います。われわれは十年計画——農業基本法によりまして、長い目で見て、革新的な施策を講ずる第一歩であることを申し上げて、私のお答えといたします。(拍手)
〔国務大臣赤城宗徳君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00619640207/8
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009・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) お答えいたします。
農業白書の国会提出時期が非常におくれておるために、いろいろ支障があるじゃないか。——できるだけ農業白書を早く出したいと思いますが、第一部は農業の方向に関する問題でございますし、第二部は前年度に実施したものの報告でございます。ただ第三部は、これから講じようとする施策——これにつきましては、ただこうしたいというビジョンだけではまいりませんで、やはり予算の裏づけがありませんと、まあ絵にかいたもちのような形になります。どうしてもこの第三部のほうは予算の裏づけをもって、そうして予算とともに御審議を願う。予算はまだ確定しておるわけではございませんから、そういうことで、第三部を早く出すことは、なかなか困難だと思います。
第二番目の、農業政策といいますか、講じようとする政策の内容はどういうことか。——一言で言えば農業の近代化でございます。その近代化の中で、農地制度について抜本的に改めなければだめじゃないかという御意見、ごもっともでございますが、実はこの点につきましては私も苦労いたしまして、農地あるいは土地、農地法等の問題について検討を続けておるわけでございます。いまお話がありましたように、三十七年度でございますか、農地法の一部改正をいたしまして、さらに経営面積を拡大するために制限を排除する、あるいはまた農協への信託制度、あるいはまた農業生産法人をつくって協業化していく。その中で、いま御指摘の信託——農協に信託する。不在地主といいますか、兼業農家等においては信託することになっておるが、ちっと本進んでおらないじゃないか。こういうお話でございますが、そのとおりでございます。進んでおりませんで、たいへん少ないのです。というのは、この信託制度ができましてから、農協のほうで信託を受けるというふうに規約を改正して、そういう糸口を開かなければなりませんが、それが非常におくれております。しかし昨年度に、全国農協の過半数が信託を受けると、こういう規約の改正をいたして認可を求めてきておりますので、いま非常に少ないのでございますが、兼業農家が御指摘のようにふえておることとにらみ合わせて、この信託制度を活用するといいますか、これがふえていくと思います。しかし、それがふえない原因はどこにあるかということですと、土地に対する愛着といいますか、それがあることと、もう一つは兼業で他産業に入ったものの雇用が安定していない。したがって、ときによってはまた戻るかもしらぬというような、決断をし得ないような状況にありますので、他産業に入りましたものの雇用を安定させるというようなことが必要だと思いまして、その方面は労働行政等と緊密に連絡いたしながら、それを強化していくと、こういうふうに考えております。
一方、またそういう意味で、兼業農家が非常にふえておるじゃないか。——白書に申し上げましたように、四割近くの兼業農家がふえております。その兼業農家に対してどういう対策を講ずるのか、こういうお問いであったと思います。兼業農家が、いまの信託あるいはその他によって自立経営農家に土地を譲渡するといいますか、売り渡すといいますか、そういうことで、自立農家経営が成り立っていく、育成されていくということは、望ましいことだと思います。しかし、諸種の原因によりまして、土地を移すというようなことになっておらぬような現状も御指摘のようにございます。そういう面におきましては、兼業でありましても、農家の所得というものが非常にふえておる、農業外所科も含めてふえておるという現状もございまするので、農業方面といたしましては、経営の指導、あるいは協業を進めるということによりまして、兼業農家に対する施策を講じていくつもりでございます。また、そういたしております。
それから離農——農村から労働力が非常に出ておる、これも御指摘のとおりでありまするし、白書にも申し上げておるとおりでございます。これにつきましては、私も、先ほど兼業農家の場合に申し上げましたように、やはり一面においては、雇用関係の安定あるいは社会保障制度の拡充ということによって、農地を手放しても他の産業で生活がしていける、こういう対策が必要であろうと思います。同時に、農業経営が近代化するようなことになって、そして重労働から解放されて農業というものに希望が持てる、こういうことに根本的にいたしませんと、なかなか農業者が他産業に行くということをとめるというようなことは、非常にむずかしいかと思います。そういう意味におきまして、後継者対策という対策も講じておるわけでございますが、その他いろいろな関係から自立経営を育成して、農村にとどまる、こういうような方向を進めております。その中で、季節労務者が相当多いんじゃないか。——これにつきましては、農林漁家就業動向調査等もいたしまして、現在その動向を注目しつつ、労働行政方面と職業紹介あるいは職業訓練等につとめておるわけでございます。
飼料の問題、流通対策の問題でございますが、飼料につきましては、輸入飼料が非常に多いのでございます。これは、どうしても自給飼料を多くしていきませんと畜産の経営も成り立ちません。そういうことから、草地の造成その他におきまして自給飼料を増大していく、こういう方向を強力に進めていきたいと思いますが、同時に、輸入飼料等につきましては、飼料需給安定法に沿うて調整その他の対策を講じていきたいと思います。
構造改善対策事業につきまして、三年たつのにちっとも報告もないし、あまりはかばかしくないんじゃないか。——三年目でございますので、いま成果を申し上げるほどの成果はおさめておりませんが、私は、農業構造改善というものは、御指摘がありましたように、日本の国内における農業と他産業との関連、ことに、経済成長下の農村、あるいは国際的な波を寄せられてきておるところの農業と、こういう面から考えまして、これは好むと好まざるとにかかわらず、農村が自分たちの体質を改善していくと、こういうことから構造改善をせざるを得ない、また、していくべき段階だと思います。そういう意味におきまして、全部の農村が構造改善をしなくちゃならぬと思いますけれども、特に指定された農業構造改善指定地域、その地域におきまして進めておりまする経過におきまして、いろいろ思わしくない面等もありまして、そういう面から考えまして、あるいは地区を二つふやすとか、あるいは予算面によりましてあるいは財政面によりまして、それを増額していくとか、実態に応じて弾力的になお指導していきたいと思うのでございます。
貿易の自由化につきましては、すでに総理大臣からお話がありました。また御指摘のように、日本の農業、農産物というものは、国際的に比較いたしますると、非常に脆弱なコスト高になっておるのが日本の農業でございます。ことに日本の農業形態が、非常に大きな人口をかかえ、そうして零細農業というような形でございますので、国際競争力が非常に弱いのでございます。でありますので、この自由化する場合には、やはり関税率の調整あるいはまた国内の農業、農産物に対する対策——価格対策とか保護対策というものを講じて、そうして自由化をしていくということにいたしませんと、波に流される、こういうおそれもありますので、従来もそういうふうにとってきたのでございますけれども、今後とも、自由化する場合には、関税率の調整とかあるいは国内の保護対策とあわせて自由化を進めていくと、こういう態度で進んでおります。(拍手)
〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00619640207/9
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010・宮澤喜一
○国務大臣(宮澤喜一君) 農業の生産性の問題についてお尋ねがあったわけでございます。所得倍増計画では、農業の生産性を大体年率で五・八%ぐらい伸びるであろうという想定をいたしております。そこで、先ほど農林大臣から報告のございました昭和三十七年度までをとってみますと、基準年次から年率にして七%生産性が伸びております。したがって、農業それ自身の生産性の伸びは、決して順調を欠いておるということではないと思うわけでございます。
それから農家所得——農業所得でなく、農家所得、非農家所得の格差というものも、理由はいろいろございますけれども、幾らか縮まりつつあるというところまでは、比較的問題がないと思うのであります。しかし、そこで大森議員のおっしゃいましたように、農業と非農業との生産性そのものの格差が決して縮まっていないではないかとおっしゃいますことは、まさにそのとおりだと申し上げざるを得ないのであります。で、昭和三十七年度においてたまたま生産性の格差が縮まったが、これは、たとえば景気調整期で他産業の生産性の伸びが悪かったこと、あるいは農産物の価格がいろいろな理由でかなり高かったこと、そういうことに大きな原因がありはしないかという御指摘に対しては、私もそのとおりだと思います。この点は農林大臣の報告もやはりその点を認めておられるわけであります。
そこで、その後の年度はどういうふうな見通しでおるかというお尋ねでございますが、三十八年度につきましては、いまのところ、大まかな見通しを申し上げるしか方法がないのでありますけれども、生産性の格差はあるいは縮まらずに、逆に少し開くのではないかという心配を持っております。それは、何といっても麦の不作というものがございまして、農業所得の中で麦の所得が通例大体六%ぐらいございます。それが五割何分、六割近い減産でございましたから、ポイントにして、三・五、六ポイントの所得の減少があるということになるであろう、大まかなことでございますが、そういうふうに考えられます。したがって、三十七年度では二九%まで生産性の格差が縮まったわけでありますが、三十八年度ではあるいは多少またそれが開くかもしれない。三十九年度には、しかし、逆に今度は多少縮まるのではないかというふうに考えられますけれども、三十八年度は、ともかくそういうふうに思われます。つまり、他産業に対して農業の生産性がなかなか三割という壁を破れないわけでございます。これを、どうやって三割あるいはそれ以上まで持っていくかということがたいへんに大きな問題だと思いますので、私ども所得倍増計画の中間計画をつくりますときに、これを一つの大きな課題にいたしております。また、具体的な方策としては、過般来、総理大臣あるいは農林大臣からしばしば申し上げておりますような、そういう基本的な方策のじみちな積み上げということが、やはり政府として当然とるべき方途ではないか、こういうふうに考えております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00619640207/10
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011・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
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012・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 日程第二、昭和三十八年産米穀についての所得税の臨時特例に関する法律案(内閣提出)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長新谷寅三郎君。
〔新谷寅三郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00619640207/12
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013・新谷寅三郎
○新谷寅三郎君 ただいま議題となりました昭和三十八年産米穀についての所得税の臨時特例に関する法律案につきまして、委員会における審査の経過及び結果を御報告いたします。
本案は、昭和三十八年産米穀を、生産者が事前売り渡し申し込みに基づいて売り渡した場合、同年分の所得税について、売り渡しの時期に応じ、一石当たり千七百五十円ないし千百五十円を非課税としようとするものであります。
委員会の審議におきましては、米価政策に対する政府の基本的な考え方、総合的な農民の税負担のあり方、本特例措置を存続させる意義等について、熱心な質疑が行なわれましたが、その詳細は会議録によって御承知を願いたいと存じます。
質疑を終了し、採決の結果、本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00619640207/13
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014・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00619640207/14
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015・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 総員起立と認めます。よって本案は全会一致をもって可決せられました。
次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時十四分散会
————・————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00619640207/15
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