1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年五月十五日(金曜日)
午前十一時十四分開議
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議事日程 第二十三号
昭和三十九年五月十五日
午前十一時開議
第一 緊急質問の件
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○本日の会議に付した案件
一、日程第一 緊急質問の件
一、会期延長の件
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X02319640515/0
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001・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
————・————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X02319640515/1
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002・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。
日程第一、緊急質問の件、
石原幹市郎君から、東北、北関東における凍霜害対策並びに九州、四国地方における長雨等の被害対策に関する緊急質問、
戸叶武君から、東北、北関東の凍霜害及び西日本の長雨による被害とその対策に関する緊急質問が提出されております。両君の緊急質問を行なうことに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X02319640515/2
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003・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。順次発言を許します。石原幹市郎君。
〔石原幹市郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X02319640515/3
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004・石原幹市郎
○石原幹市郎君 私は、自由民主党を代表いたしまして、去る四月二十八日から三十日の三日間にわたり、福島、山形、宮城をはじめ、東北、北関東の十二県の農産物に甚大な被害を与えました凍霜害、並びに四月以降の九州地方において起こっておりまする長雨等による農作物被害につきまして、政府の対策をただしたいと思います。このたびの大凍霜害は、去る四月二十八日午後十時ごろより急速に気温が下降し、摂氏零度以下に下った時間が七時間にも及び、晩霜としては異例の低温、かつ、それが長時間持続したことから、桑、果樹をはじめ、多くの農作物にきわめて甚大な被害をもたらしたのであります。ことに、本年は四月上中旬の最低気温は平年より著しく向く、ほぼ六月上旬に相当する日もあり、桑、果樹等は開花開葉期を早めていましたために、一そう甚大な被害を与えるに至ったものであります。桑、カキ等の葉は黒く枯死しており、ナシ、リンゴ、桃等は花は咲いており、一見被害にかかっていないようでありましたが、小さな実の中は黒くなっており、一望の果樹園において実をつけているものはほとんど見出し得ないという惨状であります。被災農家は、夜中、あるいは重油を燃やし、あるいは、むしろでおおいをするなど、不眠不休、必死の努力を傾けたのでありますが、この惨たんたる結果を前にして、ぼう然自失、とほうにくれているというのが現状であります。ことに福島県下におきましては、養蚕に依存しておりました一山村の被災農家に自殺者を出したという、まことに悲惨な事態も起こっているのであります。この機会に、被災せられた農家の方々に対し、衷心よりお見舞を申し上げるものであります。
今回の大凍霜害による被害総面積は五万八千ヘクタールに及び、その被害総額は実に百億円になんなんとするものであります。この数字は、今後あるいは増大するかもしれません。ことに、今回の凍霜害は、福島県の被害が過半を占め、その被害額、実に五十余億円、これに、山形、宮城の両県を加えた三県で被害額の大部分を占めるという、局地的にも未曾有の被害をもたらしているのであります。
今次大凍霜害の悲報に接するや、わが党は、政府と緊密な連係のもと、直ちに、本院議員仲原善一君を団長とする調査団を、福島、宮城、山形三県に派遣して、その実態を調査し、政府も今回の被害の激甚なることを率直に認めて、去る八日の閣議で、天災融資法を発動する方針をいち早く決定されるとともに、農林省より、正式発動に至るまでのつなぎ融資についても通達を出されたのであります。これまでの政府の機敏なる対策につきましては、心から敬意を表するものであります。しかし、具体的な施策はこれからであります。今後の施策につきましては、去る十二日の衆議院本会議において、一応の質疑応答があり、重複する面もありまするが、事態はいよいよ深刻であります。御答弁のほうは、少なくとも前進した方策をお聞かせ願い、被災農民に一刻も早く希望と光明を与え、人心の安定をはかられるよう要望するものであります。
そこで、まず第一に、総理にお伺いいたしたいのでありまするが、総理は、農業に対し常々非常に深い理解を示され、農業基本法の制定をはじめ、これに基づき、画期的な施策を講じて、農業のひずみを取り戻したいと言われているのであります。その農家の一部がいまや壊滅的な打撃を受け、離農あるいは農園を荒廃せしめんとする危機に見舞われているのであります。このたびのような災害にあたりましては、その対策は、まず迅速にして果断でなければなりません。諸般の手続もきわめて簡素化し、一刻も早く被災農家に再生産への意欲を盛り上がらせるとともに、農協はじめ、関係各種団体、関係市町村、関連地域産業に及ぼす影響も極力軽微ならしめ、人心の安定をはかっていただきたいと思うのであります。今後、激甚災害の指定をはじめ、一連の施策を早急に決定し、未曾有の大凍霜害に対し、画期的な、血の通った農政を実施していただきたいと思いますが、御所信はいかがでありましょうか。
次に、緊急対策から伺いたいのであります。
以下、数項目は農林大臣から御答弁をいただきたいのであります。
第一は、天災融資法についてであります。本法の発動につきましては、すでにその方針を閣議で確認されたのでありまするが、政令はいつごろ公布する予定であるかを明らかにされたいのであります。また、現行の天災融資法によりますと、一戸当たりの融資の限度は十五万円であります。この点は、本法が制定された昭和三十年以来全く改められていないのでありまして、今日の実情に沿い得ないと考えるのであります。特に果樹経営のような多くの資金を必要とする農家にとりましては、全く実情に沿わないのであります。一戸当たり融資額を三十万円に引き上げ、これに応じて償還期限も五年を七年ないし十年に延長すべきだと考えるのでありまするが、いかがでありまするか。さらに、開拓者につきましては開拓者資金による災害融資の制度をも大いに活用していただきたいのであります。
第二は、激甚災害法が適用されるかどうかという点であります。政府は、衆議院におきまして、当然、激甚災害法が適用される見込みであると言明されているのでありますが、いつごろ発動されるか。また、激甚災害の指定は、施設の災害においてはしばしば発動されるが、農作物の災害の場合は少ないといういままでの実情から、指定の基準や条件がきびし過ぎるのではないかと思われるのであります。激甚災害の指定について、この際、明確な答弁をわずらわすとともに、指定の基準や条件についての御見解を承りたいのであります。
第三は、自作農維持資金についてであります。果樹は一年一作であるとともに、果樹農家にとっては基幹的な現金収入源であります。桑におきましても、養蚕農家は養蚕をもって出来秋までの生活資金に充ててきているのであります。本年は、これら農家は収入の道を断たれましたため困惑の極におちいっているのでありまして、現に、前途をはかなみ自殺者を出した農家すらあることは、前に述べたとおりであります。したがいまして、場合によっては生活資金としても活用できる自作農維持資金の特別ワクを拡大し、すみやかにかつ簡素な手続で融資の措置を講じていただきたい。本資金の特別融資をいつごろ開始される方針であるか。なお、被災農家がすでに借り入れております公庫資金、近代化資金その他の貸し付け金につきましては、実情に応じて償還金の延納を認める等、必要な措置をとるべきだと思いますが、これらの点も明らかにされたいのであります。
第四に、農業共済金の仮払い等について伺います。衆議院でもすでに質問がなされたのでありますが、政府は、これらの措置をいつから開始される予定であるか承りたいのであります。また、概算払いにおきましては、米麦を対象とする農作物共済につきましては、再共済金見込み額の三分の二であるのに対し、蚕繭共済につきましては二分の一までしか認められておりません。政府は、すみやかに省令を改正して、農作共済並みに三分の二に引き上げるべきだと思いまするが、いかがでありまするか。また、農業災害補償制度につきましては、果樹共済の創設が大きい課題であります。果樹共済が実施されていたならば、今回の災害においても大いにその機能を発揮していたと存ずるのであります。この問題につきましては、すでに四年間も調査が続けられているようでありまするが、その経過はどうなっており、いつから制度を発足させる予定でありまするか、その方針を明らかにされたいのであります。
第五に、国の助成措置について伺いたいのであります。これは農林大臣並びに大蔵大臣より御答弁いただきたい。今回甚大な被害を受けました養蚕業は、数年来の好況を背景として、たとえば農業構造改善事業において、多くの町村が基幹作目に取り上げる等、近年増産の傾向が著しいのであります。今回の災害は、このような情勢の中で起こったのでありまして、甚大な被害を受けた養蚕地帯におきましては、初秋蚕及び晩秋蚕において回復をはかるべく、関係農家の意欲を盛り上げることに全力を注いでいるのであります。しこうして、このためには、何といっても速効性の肥料を早急に与えるとともに、被害後多発する病虫害を防除することが必要であり、さらに蚕種の確保についても遺憾なきを期すべきであります。また、果樹につきましては、特に病害虫の防除が必要であります。収穫皆無の果樹についても消毒は続けてまいらねばなりません。かような意味から、樹勢回復用肥料及び病虫害防除用農薬並びに蚕種の確保に対して、国の助成がなされるべきであると思います。
また、蚕糸関係技術員、農協営農指導員等は、営農指導その他に非常な活動を要請されておりまする反面、その事務費の財源の確保が困難なものが多いのであります。特に農協におきましては、扱い量の減少、出荷用資材の滞貨等の面で相当経営が圧迫されますし、蚕業普及員につきましては、繭手数料の減収により人件費の確保すら問題になっているのであります。したがいまして、県、市町村並びに農業団体の指導事務費についても国の助成をはかっていただきたいと思います。
第六に、救農土木事業の実施についてであります。先ほどから申し述べておりまするように、被災農家は、その日の生活資金に困る者が多く、農作業を放てきして出かせぎに出ようとする傾向が強いのみならず、離農を考えている者すらあるということであります。かようなことでは、あと作を確保するためのいろいろな農作業が進まず、たとえば、果樹のごときは剪定その他の管理作業ができないことから、いわば荒づくりのおそれさえあるのであります。したがいまして、被災農家が在宅したまま賃金収入の道を得られるよう。救農土木事業をすみやかに実施されたいのであります。この点に関し、大蔵大臣及び農林大臣から御方針を承りたいのであります。
第七に、税の減免及び地方自治体の財源補てんについて伺います。被災農家に対しましては、国税及び地方税を通じて減免の措置がとられなければなりません。また、これにより税収が減少する反面、諸般の対策を進めなければならない地方公共団体に対しては、財源を補てんするための措置がとられなければなりません。元来、地方公共団体は、災害にあたりましては、国の助成の有無にかかわらず、できるだけ十分な対策を立てることが責務でありますし、複雑な現地の実情を最も正確に把握しているのであります。したがいまして、普通交付税の繰り上げ交付及び特別交付税の増額をすみやかに実施し、これらの団体が十分活動できるよう措置すべきであると思うのであります。これらにつきましては大蔵大臣並びに自治大臣から御答弁をいただきたいのであります。
次に、恒久対策について伺いたいのであります。
果樹の共済制度については、さきに申し上げたのでありますが、今回の大災害にかんがみ、凍霜害についても、単に不可抗力とのみ考えず、技術陣営を動員して、いま少しく科学的究明を加え、総合施策をぜひ確立し、寒冷地帯の農業経営の保護に当たっていただきたいのでありまして、基本的な考えを総理より伺いたいのであります。
また、凍霜害につきましては、機動的な気象通報の組織を整備し、農業改良資金を活用して、防霜のための器具及び燃料を常備するほか、集団化することによって、ヘリコプターによる煙幕、スプリンクラーによる散水等を可能にし、重油燃焼器の効率を高める等の研究指導を強化すべきであります。これら恒久対策の具体的な実施について、農林大臣から構想を承りたいのであります。
最後に、九州地方に発生しております長雨の被害についてお伺いいたします。
農林省の示された資料によりますと、九州地方におきましては、四月以降の長雨と高温により、麦、なたねを初めとして、早期水稲など農作物が甚大な被害を受け、関係県の報告では、九州全体ですでに九十六億円にのぼる被害を出しているほか、四国、中国等西日本の各県においても麦の赤カビ病が十五万町歩も発生しているということであります。しかも、事態はなお好伝のきざしが見えないようでありまして、農林省におきましても、どの段階で対策を講ずるか、調査結果を見て検討したいとしているようであります、この地方は、申し上げるまでもなく昨年長雨による大被害を受けたのでありまして、本年再びかような事態を招きましたことは、まことに痛恨にたえません。しかしながら、すでに容易ならぬ状況におちいっていることはきわめて明白なのであります。政府は、この災害に対しどう対処するお考えであるか、総理並びに農林大臣の御所信を伺いたいのであります。
以上、特に重要な事項に関し質問申し上げた次第であります。どうか政府におかれましては、被災農家の救済と民生の安定のため、実情に即して十分な対策をすみやかに確立されますよう、明快な答弁を期待いたしまして、私の質問を終わるのであります。(拍手)
〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X02319640515/4
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005・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。
東北地方を中心とした今回の凍霜害によって被害をこうむられた農家の方々に対しまして、私は衷心より御同情、御見舞いを申し上げる次第でございます。したがいまして、被害農家に対しましては、すでに天災融資法の適用を決定しておりまするが、すみやかに被害の状況を調べまして、迅速にかつ万全の措置をとる覚悟でございます。私は、これによって被害農家の苦痛を緩和すると同時に、再生産に邁進されることを心から期待いたしております。
次に、この災害防除でございまするが、農産物は自然的条件による災害が非常に多いのであります。したがいまして、私は、科学技術の研究成果をこれに向けまして、今後できるだけ災害の予防に万全の措置をとりたいと考えております。したがいまして、いまお話のございました農業災害に対する米麦あるいは繭等の共済制度を拡充して、お話のとおり、最近選択的拡大に向かっておる果実等に対する共済制度を早急に実施いたしたいと考えておるのであります。
なお、九州、中国、四国地方の長雨につきましては、お話のとおり、非常な降雨量と、異常曇天日数が多いのであります。したがいまして、いろいろな病虫害が発生していると聞いております。したがいまして、政府といたしましては、病虫害駆除に対しまする技術指導その他の方法をいま講じつつあるのであります。防除につきましては、この上とも措置をいたしたいと考えております。(拍手)
〔国務大臣赤城宗徳君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X02319640515/5
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006・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 天災融資法を発動することにいたしておりますが、いつごろに発動するかということであります。損害の確定を二十日くらいまでにいたしたいと思っております。その後、急速に天災融資法の発動をいたしたい、こう考えております。そのワクあるいは償還期限等が十分でないじゃないかということでありますが、これは損害の程度に従いまして検討していきたいと思います。同時に、激甚災害法の指定ということになる見込みを私は強く持っておりますので、その面におきまして融資のワク等の拡大はできると、こういうふうに思っております。
自作農維持資金の資金ワク等を広げる必要があるじゃないか、こういうことでございますけれども、これは天災融資法の発動と同時に、自作農維持資金の融資のほうも措置をとっていきたいと思っております。従来借りておりますところの公庫資金あるいは天災融資の資金等の繰り延べをすべきじゃないかということでありますが、これは当然その措置をとりたいと思います。
農業共済金の仮払いを急ぐ必要があるじゃないか、こういうことでございますが、すでに東北など十三県につきましては、仮払いの措置をとるよう通達いたしておりますから、これはすぐ実現すると思います。
蚕繭共済の限度が低いじゃないか。これは実態を見て措置いたしたいと思います。
それから、肥料、農薬の助成あるいは養蚕技術員、改良普及員の指導、こういう点につきましては、災害対策の一環として、被害の実情を検討しつつ善処いたしたいと、こう思っております。
果樹共済につきまして、いつごろ実施するかということでございますが、三十八年度の試験調査の結果を見、四十一年ごろから本格的な実施になるように運びたいということで、ただいま試験調査をいたしておりますので、その調査の結果に基づいて、前向きにこれを検討していきたい、こう考えております。(拍手)
〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X02319640515/6
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007・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) お答えいたします。
第一点は、所得税の軽減ないし免除の問題でございますが、農作物につきましては、損失額が農業所得の計算上控除され、控除し切れない損失の金額は三年間の繰り越し控除を認めることにいたしております。なお、所得税の予定納税額につきましては、減額申請に基づく減免を行なうとともに、納税の猶予を認めるようにいたしたいと考えておるわけであります。
第二点は、肥料及び農薬等についての補助でございますが、今回の災害につきましては、現在被害額の調査中でございます。判明次第検討を加えてまいる所存でございますが、経営資金の融資で措置することがよいのではないかというふうに現在のところ考えております。
第三点は、地方公共団体の財政需要に対する資金的な問題でございますが、今年度の特別交付税の配分にあたりましては、十分に勘案善処をいたしてまいりたいと思います。なお、緊急な資金需要につきましては、必要に応じ政府資金の短期融資の措置を講じてまいりたいと思います。
第四点は、救農事業についてでございますが、被害地の実態を十分調査をいたしまして、三十九年度公共事業の繰り上げ施行等を行なうことによって処置してまいりたいと、かように考えます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X02319640515/7
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008・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 自治大臣の答弁は、議事の都合により後刻に譲ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X02319640515/8
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009・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 戸叶武君。
〔戸叶武君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X02319640515/9
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010・戸叶武
○戸叶武君 私は、日本社会党を代表し、東北、北関東の凍霜害及び西日本の長雨による災害対策について、総理大臣並びに関係大臣の所信をお尋ねいたします。
まず、質問に先立って、このたびの気象異変により大きな災害をこうむった農家の方々に対して、心から御同情申し上げます。
皆さん方も御承知のとおり、日本の国土はアジア大陸に接した太平洋上の島国であります。日本海を隔ててシベリア及び中国大陸及び太平洋の気象の変化を敏感に受ける位置にあるのであります。自然災害の問題でありますが、過去数年間にわたる中国及びソ連の激甚な被害にかんがみ、各国とも今日ではその基本対策並びに応急対策を真剣に講じつつあります。自然災害に対する基本対策として特に直視しなければならないのは、気象予報の完ぺきを期することであります。日本の気象がアジア大陸及び太平洋の影響を受ける以上は、日本はソ連及びアメリカと気象観測の緊密な提携が必要であります。一昨年はソ連で、天文、気象観測の国際的学術会議が催されました。天文、気象の学問並びに施設の発達したアメリカ、ソ連、日本の三国が提携すれば、気象観測について今後すばらしい成果があげられると信じます。各国の指導者並びに科学者は、宇宙旅行のほうにのみ眼を向けず、もっと人間の住む地上に関心を払うべきであります。自然災害は単に凍霜害だけではない。やがて台風の季節ともなります。現在たまたまソ連からミコヤン副首相が来朝しておりますが、この機会に、気象観測に関する日ソ両国間の協定の取りきめを行ない、国際的協力を積極的に前進させていただきたいのであります。(拍手)
私は、この趣旨からして、今次の大凍霜害についても、第一に気象予報についてお尋ねいたします。
今回の凍霜害では、去る四月二十八日午後十時ごろから急速に気温が下降し、翌二十九日午前六時ごろまでに、実に七時間にわたって、零度以下の低温の連続により、かってない被害を受けた地域が多いのであります。その際に、各県では気象の予報措置をどのようにとられたか、またその成果について承りたいのであります。
第二に、被害状況についてであります。被害面積は、東北六県だけでも四万八千ヘクタールの多きに及び、各県の報告によると、福島県の五十一億円を筆頭に、山形県の二十億円、宮城県の十億円、秋田県の四千万円、栃木県の八千万円、それに群馬、山梨、長野の諸県を加えると、合計九十四億円にのぼるとのことであります。ところが、農林省統計調査部の五月十三日の調べによる中間報告だと六十三億円であります。ここで問題になるのは、被害高の調査が、各県の報告と統計調査部の報告とでは三十一億円、約三割の開きがあることであります。いつの災害でもこのギャップが問題になるのでありますが、調査報告は、最終結論までにお互いに正確を期してもらいたいのであります。
第三に、農作物別の被害高であります。農林当局の報告によりますと、最高は果樹の四十九億円、第二位が桑の三十五億円、第三位が野菜の六億円、第四位が麦の一億五千万円とのことです。この報告を聞いて私が一点心配なのは、麦の被害が過小評価されているのではないかという点であります。過去の事例によりますと、麦の被害は、出穂期にならないとわかりにくいのであります。再度にわたって間違うような場合はないでしょうが、被害調査にあたっては慎重を期することを希望いたします。
第四に、災害対策基本法による中央防災会議について、この機関は予防対策について、いままでいかなる具体的措置をとったか、承りたいのであります。
第五に、自然災害に備えての国内の気象観測の整備拡充はいかようになっているか、この際御説明を願いたいのであります。
以上について内閣総理大臣及び農林大臣に御答弁を願います。
次に私は、凍霜害の応急対策について具体的な質問を行ないます。
第一の質問は、天災融資法の発動についてであります。赤城農林大臣は、去る七日、農林水産委員会での私の質問に対し、天災融資法を発動すると言明し、直ちに翌八日の閣議で了承を得ております。天災融資法の発動は、農林省統計調査部の最終的確定報告を待って発動する慣例になっておりますが、発動は早いほどよいのです。いつ行ないますか、これを明確に答弁してもらいたい。
第二に、天災融資法の発動の際には、あわせて激甚地災害援助法を適用していただきたい。天災融資法だけだと融資のワクが十五万円だが、激甚災害の指定を受ければ五十万円となり、期間も延長されるから、災害者はこれによって救われるのであります。
第三に、自作農維持資金のワクの拡大であります。今回の災害は果樹の災害が多い。その回復は長期を要します。したがって、償還期限の長い自作農維持資金の活用によって救済手段を講ずべきであります。
第四に、農業共済保険金の概算払いによって麦作者を救うとともに、蚕繭共済も同様の措置をとってもらいたい。
第五に、被害果樹、桑、バレイショ等の樹勢回復のため、速効性肥料購入費、病害虫除用薬剤費の助成措置。
第六に、被害激甚地域の転作の必要な種子等購入費の助成措置。
第七に、防霜対策施設及び燃料費の助成措置。
第八に、いままで借金している営農資金、農林漁業資金に対して、延納、利子補給等の措置。
第九に、被害農家に対し、所得税の減免並びに欠損金の繰り越し控除の措置。
第十に、果樹の被害が多い事実からして、果樹共済を四十一年から実施する予定をもっと早めてもらいたい。
第十一に、農業改良普及員、開拓営農指導員、蚕糸関係技術員、農協営農指導員が行なう災害復旧促進指導に要する事務費の助成、これらの人々は、災害のたびに縁の下の力持ちとして活動している人々であります。これを援護してやる必要があります。
第十二に、被害農家の就業対策として、失業対策事業の割り当て、救農土木事業の実施により、生保資金としての現金収入の道を開いてもらいたい。
第十三に、災害対策で出費のかさむ地方自治団体に、特別交付税の増額を願いたいのであります。これも来年の二月というようなことでなく、繰り上げて支出してほしいのであります。
この東北、関東の凍霜露に匹敵するのが、西日本の四月以降の長雨による災害であります。各県の報告によると、鹿児島県の二十一億円、長崎県の十九億五千万円、宮崎県の十六億八千万円、熊本県の十四億五千万円、これに次ぐ佐賀県、大分県、福岡県その他、四国の高知、愛媛、香川、中国の山口、岡山等の各県を合わせると、実に九十六億円にのぼる大災害であります。農作物の被害の最高は、麦類の六十六億円となっております。これに対しても、東北、北関東の凍霜害と同様に、直ちに天災融資法が発動されなければならないと信じます。自然災害に打ちひしがれている受災農家救済のために、池田首相及び各閣僚の熱意ある答弁を期待し、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X02319640515/10
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011・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。農業の自然災害を防止するためには気象の予報が必要であることはお話のとおりでございます。したがいまして、ただいまにおきましても、一応体系的には農業気象業務を国内でも実施しております。そうして国際的には、国連の下部機構でありまする世界気象機関によりまして連携をとっております。しかし、いままでの状態では、まだ十分ではございませんが、国際的にも、また国内的にも、災害防止のための気象の通報につきましては、あらゆる努力をいたしたいと考えております。今回の予防警報につきましても、利用者側との連繋におきましてある程度手落ちのあったことはいなめないと思いまするが、今後におきましては、そういうことのないよう努力いたしたいと考えております。
なお、中央防災会議は、具体的に個々の問題を処理するたてまえになっておりません。防災基本計画を立てたり、あるいは重要な問題につきまして政府の諮問に答えることになっておるのであります。個々の災害につきまして具体的にどういう措置をとるというたてまえではございません。しかし、激甚法の適用等につきましては、政府の諮問に中央防災会議が答えるたてまえになっております。そういう諮問がありましたときには、中央防災会議を開いて万全の措置をとる覚悟でございます。(拍手)
〔国務大臣赤城宗徳君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X02319640515/11
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012・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) お答え申し上げます。天災融資法の発動をいつごろするかということでございますが、先ほど御答弁申し上げましたように、二十日ごろまでに被害を確定いたしたい。被害の確定ができましたならば、急速に発動いたしたいと考えております。
また、九州、四国等の長雨対策等につきましては、被害の確定を待ちまして金融措置あるいは助成の措置等を講じたいと思います。その中で、被害の調査に慎重を期すべきじゃないか、ことに麦等につきましてはあとから害が相当出てくる実情であるというお話でございますが、まさにそのとおりでございますので、被害調査につきましては慎重に進めていきたいと思います。
自作農維持資金のワクを拡大すべきでないか、いつごろそれをやるか。これは、現在、天災融資法の発動と相まってこの措置をとっていきたいと思います。
なお、天災融資法の発動に伴いまして、激甚地災害の指定をすることに私は大体いまの被害の状況ではなると思いますが、それによりまして融資のワク等も当然拡大されることでございますが、そういう措置をとっていきたいと思います。
共済金、保険金の仮渡しのことにつきましては、先ほど申し上げましたように、すでに十三県等につきまして実施態勢を整えるように通達いたしております。共済基金からの融資あるいは国の再保険の概算払い等につきましても、その準備を進めております。
すでに借り入れておりますところの公庫資金その他天災融資法の延納をすべきではないか。まさにそのとおり措置をとることにいたします。
養蚕指導員とかあるいは改良普及員のいろいろ骨折った費用、あるいはまた防災施設あるいは燃料、これは融資をすることになっておりますが、その他いろいろ助成措置、肥料の問題、これは助成措置一般として検討を加えていきたいと思います。
現金収入が非常に減ったので、災害の土木事業等を起こす必要があるのじゃないか。——被害の状況を見ましてそういう方法をとっていきたいと、こう考えております。(拍手)
〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X02319640515/12
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013・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) 第一点は税の減免の措置でございますが、今回の凍霜害につきましても、減免措置等適切な運用によりまして、その救済をはかってまいりたいと考えておるわけであります。
御承知のとおり、損失額は農業所得の計算上控除されるわけでございますが、控除しきれない分につきましては、三年間の繰り越し控除を認めることにいたしたいと存じます。
なお、所得税の予定納税額につき減額申請があるわけでございますので、減免を行なうとともに、納税の猶予もいたしてまいりたい、かように考えます。
地方税の減税につきましては、自治大臣からお答えがあると存じます。
共済組合の再保険金の仮払いその他について第二点の御質問でございますが、保険金の仮払いにつきましては、被害の実情に応じまして早急に実施できる態勢をとっております。国の再保険金の概算払いにつきましても、請求があり次第、遅滞なく実施できるよう準備を進めますとともに、概算払いの限度額を引き上げることについても検討いたしております。
救農土木工事につきましては、先ほど申し上げたとおりでございます。
なお、被災地の地方公共団体に対する特別交付税の問題等、先ほどお答えをしたとおりでございます。
また、九州の問題につきましては、農林省において調査中でありますので、調査の結果を待ってしかるべく措置いたしたいと考えます。(拍手)
〔国務大臣赤澤正道君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X02319640515/13
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014・赤澤正道
○国務大臣(赤澤正道君) まず最初に、戸叶議員の御質問にお答えいたします。
自治省といたしましては、地方税の減免と交付税に対する特別の配慮の二点があるわけでございまして、地方税につきましては、条例の定めるところによりまして減免または徴収猶予の措置を講じてまいるつもりでございます。
それから交付税におきましては、普通交付税の場合は概算繰り上げ交付をいたしますが、第一回は四月に終わりましたけれども、さらに来月はこれをいたしますので、それぞれの町村の財政の操作に便宜があろうかと思いますが、なお、特別交付税につきましては、被害の額あるいは財政状況等、よく調査もいたしまして、あたたかい配慮を十分いたしたいと考えております。
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それから前段の石原議員の御質問でございますが、全く同感でございます。ただいま戸叶議員にお答えいたしました問題についてでございますが、全面的に同感でございますので、御期待に沿う措置をいたしたいと考えております。(拍手)
〔戸叶武君発言の許可を求む〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X02319640515/14
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015・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 戸叶武君、御登壇願います。
〔戸叶武君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X02319640515/15
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016・戸叶武
○戸叶武君 災害は忘れたころ来るという話がありますように、常に災害が来るのに対して予防態勢がしかれていなければならないのだと思うのです。そういう関係で、きょうは気象その他の予防措置に対して力点を置いて質問したのですが、運輸大臣は結婚の仲人をされて、これもおめでたいことでありますが、総理大臣がかわって答弁するというのでありますから、当然それの引き継ぎがなされておったと思いましたが、ミコヤンさんのほうに忙しいというので引き継ぎも十分になされておりませんが、ミコヤンさんならミコヤンさんが来られたときにでも、単なる虚礼的なレセプションでなくて、その機会にタイミングをしっかり持って、そうしてこの日ソ間においてでも、気象の問題なんかでも、もっと具体的に話を進めるというきっかけを持つのが、生きた政治なんですが、どうも官僚政治家というものは、そういう生きた政治の活用というものができないようであります。私たちは、こういう虚礼的な宮廷外交的なもの、虚飾な外交では救えないと思うのでありまして、いまここで、災害で日本の東北なりあるいは九州の人が苦しんでいる、この実情を見たときに、それに対しては、人道的立場からどうやって国際的協力をしようという、こういう気持がにじみ出てくる、そういうときに、ぱっとそこに外交が躍動してこそ、外交躍動の意義があるのですが、どうも池田さんにはそれがないのか、何かタイミングがぴったりいかないのです。私は、こういうふうに、これは池田さんがいなくても、苦労人の赤城さんがそこにおりますが、ソ連との魚の交渉に行くばかりでなくて、やはり農林大臣というものは米のことも考えなくちゃならないし、麦のことも考えなくちゃならない。日本のような国におきましては、何といっても、強みは、アメリカの経済統計学者も言っているように、日本の災害と思われる台風と、もう一つは人口が多いのに日本はかつて悩んでいるようだが、日本の資源はこの台風と人口だ。これをうまく使うべきだ。これほど気候的に恵まれているところはないのです。そのマイナスの面をどうやって防ぐかという対策がいま講じられなければならないときに、あとからだけその災害をどういうふうにやるかというようなことを、いつでも火事が済んでから拍子木を鳴らして歩くようなことばかりやっているのでは、これは対策としてはきわめて幼稚です。そういう意味におきまして、私は、この予防対策に対してもっと政府が確固たる一つの対策を持ってもらいたいと思うのでありまして、大蔵大臣も、そういうことならば幾らでも出し惜しまないというように、こっくりしておりますから、間違いはないと思うのです。問題は、やはりそういう具体的な提案というものがいま必要なのでありますから、まあ総理大臣にかわって、運輸大臣もあなたの仲間でしょうから、それを補って、もう一つ私たちが納得のいくような答弁をしてもらいたいと、こういうふうに私はお願いする次第であります。(拍手)
〔国務大臣赤城宗徳君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X02319640515/16
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017・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) 災害をあらかじめ予期していくということ、それに対して対策を講ずるということは、お話のように必要でございます。でありますので、気象等につきまして、国際的に協力し合うという方向を進めていくことは、これは好ましいことだと、こう考えます。
また、災害対策を講じていないじゃないかということでございますが、私どもも、たとえば北九州等におきまして、災害の来る前に米ができるような、早く実るような対策等も講じ、また、東北等におきましても冷害の来る前に米の収穫ができる、こういうような対策もまた講じておるのでありまして、対策につきまして十分措置を講じておるのでございますが、足らない面はさらに一そう進めてまいります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X02319640515/17
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018・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) これにて休憩いたします。
午後零時一分休憩
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午後四時八分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X02319640515/18
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019・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 休憩前に引き続き、これより会議を開きます。
この際、会期延長の件についておはかりいたします。
議長は、衆議院議長と協議の結果、会期を来たる六月二十六日まで四十日間延長することに協定いたしました。
議長が協定いたしましたとおり、会期を四十日間延長することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X02319640515/19
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020・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって、会期は四十日間延長することに決しました。
次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X02319640515/20
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