1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十年三月二十六日(金曜日)
午前十時十四分開議
出席委員
委員長 松澤 雄藏君
理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君
理事 齋藤 邦吉君 理事 澁谷 直藏君
理事 河野 正君 理事 八木 昇君
理事 吉村 吉雄君
亀山 孝一君 熊谷 義雄君
小宮山重四郎君 田中 正巳君
竹内 黎一君 地崎宇三郎君
中野 四郎君 橋本龍太郎君
藤本 孝雄君 松山千惠子君
山村新治郎君 亘 四郎君
淡谷 悠藏君 伊藤よし子君
大原 亨君 小林 進君
滝井 義高君 松平 忠久君
八木 一男君 山口シヅエ君
山田 耻目君 本島百合子君
吉川 兼光君 谷口善太郎君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 神田 博君
出席政府委員
人事院事務官
(職員局長) 大塚 基弘君
検 事
(刑事局長) 津田 實君
法務事務官
(人権擁護局
長) 鈴木信次郎君
厚生事務官
(大臣官房長) 梅本 純正君
厚生事務官
(大臣官房会計
課長) 戸澤 政方君
厚 生 技 官
(公衆衛生局
長) 若松 栄一君
厚生事務官
(薬務局長) 熊崎 正夫君
厚生事務官
(児童家庭局
長) 竹下 精紀君
厚生事務官
(援護局長) 鈴村 信吾君
委員外の出席者
厚生事務官
(大臣官房企画
室長) 網野 智君
厚生事務官
(援護局庶務課
長) 八木 哲夫君
専 門 員 安中 忠雄君
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三月二十六日
委員大原亨君辞任につき、その補欠として長谷
川保君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
戦傷病者特別援護法の一部を改正する法律案
(内閣提出第六六号)
戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法案
(内閣提出第六七号)
戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す
る法律案(内閣提出第六八号)
厚生関係の基本施策に関する件(薬務行政及び
社会福祉に関する問題)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/0
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001・松澤雄藏
○松澤委員長 これより会議を開きます。
内閣提出の戦傷病者特別援護法の一部を改正する法律案、戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法案、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案の三案を一括して議題とし、審査を進めます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。大原亨君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/1
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002・大原亨
○大原委員 戦後二十年たったわけですが、最初にこの戦争の、つまり犠牲者の実態について、第二次大戦で軍人、軍属、準軍属の死没者と傷病者の実態をまずひとつ明らかにしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/2
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003・鈴村信吾
○鈴村政府委員 お答えいたします。
第二次大戦におきましては、軍人、軍属で死没されました者が二百三十万人、それから内地における戦災等でなくなられた方が約五十万人、それから外地で、いわゆる非命に倒れたという方が約三十万、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/3
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004・大原亨
○大原委員 私は軍人、軍属、準軍属と三つに分けて言ったのですが、資料はないですか。一般戦災者はまた質問するから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/4
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005・鈴村信吾
○鈴村政府委員 遺族年金等の裁定の状況からの数字を基礎にして申し上げますと、軍人が二百万でございます。軍属が十四万、準軍属が十万五千、こういう数になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/5
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006・大原亨
○大原委員 これは死没者ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/6
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007・鈴村信吾
○鈴村政府委員 全部死没者でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/7
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008・大原亨
○大原委員 傷病者は幾らですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/8
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009・鈴村信吾
○鈴村政府委員 傷病者は十八万二千五百六十三というのが全体の数字でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/9
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010・大原亨
○大原委員 第二次大戦の軍人、軍属、準軍属という国との雇用関係あるいは命令関係等についての被害が出ていないのですか、もう少し確実なもの、それをぼくはあらかじめ言っておいたのだから、他の省のほうの資料なんか入れて、私は、いろいろ問題があるけれども、これはひとつ記録として残しておきたい、こう思って質問しているのです。戦後二十年たっておるわけです。そういう軍人、軍属、準軍属とあと一般戦災者、そういうことで戦争の犠牲者というものが大体どのくらいあるだろうか、これを的確に記録に残したい。そういうことであらかじめ質問の内容を言ってあるはずだ。援護局はもちろんそういう援護業務や復員業務をやっている。だからその他政府のいろいろな機関を調査をして、それに対して戦争の犠牲者に対するいろいろな手抜かりのない公平な対策を立てる、こういうことを審議をする前提として私はいま質問しているわけです。国との関係のものを、いろいろ根拠はあるし不明確な点もあるだろうけれども、しかし政府機関として把握しているものについてできるだけ的確な数字をこの際出してもらいたい、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/10
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011・鈴村信吾
○鈴村政府委員 もう一度先生の御趣旨に従いまして申し上げます。
第二次大戦の死亡者の合計としまして三百八万三千八十六というのが一応こまかな数字でございます。その内訳を申し上げますと、まず死亡者の欄といたしまして二百七十三万八千八百六十二人、これが死亡者でございます。それから、不具廃疾者の中で死亡した者、これが三十二万二千七百四十人、それから行くえ不明者で生存資料のない者が二万一千四百八十人ということになっております。それからいまの中でいわゆる不具廃疾者中の死亡数というのが三十二万二千七百四十四人と申し上げましたが、その内訳を申し上げますと、軍人が十一万二千五百五十七人、それから準軍属が二百人、一般邦人が二十万九千九百八十四人。それから死亡者を先ほど二百七十三万と申し上げましたが、そのうちで内地における死亡、つまりこれは一般邦人になるわけでございますが、それが二十九万九千四百八十五人、それから外地における死亡が三十万二千五百十人、合計六十万一千九百九十五人、これがいわゆる軍人以外の者の内訳でございます。それで外地における三十万二千五百十人というもののさらに内訳を申し上げますと、準軍属が九万四千八百三十七人で一般邦人が二十万七千六百七十三人、結局死亡者の内訳は、二百七十三万八千八百六十二人から六十万一千九百九十五人を引きましたものが一応軍人ということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/11
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012・大原亨
○大原委員 軍人、軍属、準軍属、一般戦災者、内地、外地、こういうふうに分けて、それから不具廃疾者による死没者その他の内訳をやって、これは資料をいただきたい。いま大体概数は出ましたが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/12
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013・松澤雄藏
○松澤委員長 大原君に申し上げますが、正式の資料要求ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/13
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014・大原亨
○大原委員 いまの点について出してもらいたい。一生懸命やればできることですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/14
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015・鈴村信吾
○鈴村政府委員 資料としてお出しいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/15
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016・大原亨
○大原委員 そこである逐次問題別に質問していくわけですが、さらに戦争犠牲者の一つである引き揚げ者についての実態——数ですね。きのうは未復員の問題について橋本委員のほうから質問がありましたが、軍人軍属を含めて引き揚げ者の数が出ておると思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/16
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017・鈴村信吾
○鈴村政府委員 全体の数で申し上げますと、昭和二十一年から現在までに引き揚げておる数は、合計六百二十八万九千百二十八人ということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/17
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018・大原亨
○大原委員 いまの引き揚げの問題に関連してちょっとお尋ねするのですが、一般の人で引き揚げの希望を持っておって引き揚げが完了してない者、その大体の推定でよろしいのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/18
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019・鈴村信吾
○鈴村政府委員 いわゆる未帰還者と称せられる方々が、昨年の十二月現在で六千六百七十七人おられますが、そのうちで大体生存しておられるであろうと推定される方が三千三百九十人おられます。この中で内地に帰還される希望を有すると思われる人が約七百二十四人というふうに把握しておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/19
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020・大原亨
○大原委員 未帰還といったら、たとえば主人が死んで妻が残る、子供が残るという分ですね。引き揚げを希望している在外邦人の実態はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/20
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021・鈴村信吾
○鈴村政府委員 いまお話しの数字は私のいま申し上げた数でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/21
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022・大原亨
○大原委員 未復員というのは軍人、軍属、準軍属でしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/22
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023・鈴村信吾
○鈴村政府委員 私、いま未帰還者と申し上げましたのは未復員者という意味ではございませんで、一般邦人を含めての未帰還者でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/23
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024・大原亨
○大原委員 この際、こういうことがあるのです。未帰還者で金がないという場合に、国はどのような措置をしておるか。その当該国内における費用はどうしているか。国外に出た場合の費用はどうしているか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/24
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025・鈴村信吾
○鈴村政府委員 最近内地に引き揚げてこられる方が非常に多いのは中共関係でございます。その実情を申し上げますと、大部分が旅費の負担ができないという方でございますので、そういう方は内地の家族へ通信等がありますと旅費の支給申請が出るわけでございます。そこでこちらで支給の手続をいたすわけでありますが、その際に、たとえば中共の場合でありますと、日赤を通じて向こうにおける中共国内の旅費を支給する。それによって本人が香港まで出てこられるわけでありますが、香港からこちらへの飛行機代とか般賃等は、帰ってこられまして、こちらでいわゆるあと払いで払っておるというような実情になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/25
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026・大原亨
○大原委員 私のところに旧満州、いまの東北ですが、そこから手紙が来ているのですが、たとえばこういう場合です。一回里帰りをした。その際に船賃その他の便宜をはかっているので、そういう人がこちらへ子供を連れて、今度は本格的に帰りたいという場合にはそういう便宜ははからない、こういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/26
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027・鈴村信吾
○鈴村政府委員 里帰りそのものは見ておりませんが、里帰りされた方が今度本格的に帰国されるという場合には、当然こちらで見るわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/27
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028・大原亨
○大原委員 その問題で、そういう希望が出ていて、だめだ、こういう話がありましたが、それはもう少し十分調査して、きめのこまかい対策を立ててもらいたい。
それから、話をもとへ返しますが、戦争犠牲者に対する援護の基本方針はどういうことなんですか。たとえば、軍人や軍属、その他準軍属、その他にはたとえば戦争未亡人なんかがありますが、そういうものに対する援護についての根本的な考え方、まあわれわれは戦争犠牲者に対する補償というものは、原則として差別があってはいけない。身分やその他によって差別があってはいけない、こういう原則的な考え方を持つわけです。軍人、軍属、準軍属その他、その中における位階等によって差をつけるべきではない、そういうふうに私は基本的に思う。たとえば、差をつけるという考え方は、次に軍備をやろうというふうなときの考え方といううがった見解もあるが、そこまではいかないにしても、戦争犠牲者に対する考え方は差別をつけるべきではない、こういう原則的な考え方を持つわけであります。政府がこういう三法の立法をする根拠、特別に援護するという根拠——この際、いろいろな法律案が出ているわけですが、これは政府委員でもよろしいが、いま政府がこれを改めるなら改めるで、三法を特別立法する根拠についてここであらためて明確にしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/28
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029・鈴村信吾
○鈴村政府委員 ただいまのいわゆる戦争犠牲者の援護について階級的な差別をつけるべきでないというお話、これは原則的に私らも非常に同感でございます。したがいまして、援護法等では階級による差別をしない一本の遺族年金を支給しているわけであります。ただ軍人、軍属とその他の準軍属等の間に現実に給付面に差があるわけでありますが、この点は階級差ということではなくて、当時の国との身分関係の違い、軍人、軍属は国との間に一定の身分関係があるが、準軍属については少なくとも身分関係においては根本的に違った関係にあったわけであります。そういう点で全く同一には現在扱われていないわけでありますが、将来においてはなるべく準軍属の処遇を上げてまいりたいというふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/29
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030・大原亨
○大原委員 軍の雇用員と軍人との本質的な差は今日においてはないと思うのだが、たとえば被徴用者、動員学徒、国民義勇隊、その現場現場で戦闘参加を要請されたもの、それから満州開拓青年義勇隊など、そういうふうなのが準軍属としてあるわけですね。その場合に、被徴用者、動員学徒、国民義勇隊などにしましても、これは何らかの法律の根拠があり、国との権力関係で本人の意思を拘束されてやったんだから、私は本質的に差はないと思う。徴兵、徴用あるいは軍の雇用、こういうものに差はない。これを区別するということは戦争犠牲者の救済措置としてはおかしいのではないか、こう思うのですが、この本質的な問題について、これは大臣でも政府委員でもよろしい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/30
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031・鈴村信吾
○鈴村政府委員 ただいまお話しの点でございますが、軍人、軍属につきましては当時国の使用者といいますか、国との身分関係があったわけでありまして、そういう方々と準軍属の方々との間に身分的には明確に違った点があるというように存じておる次第であります。準軍属の方々は、あるいは学徒勤労令によりまして工場に動員されたり、あるいは女子挺身勤労令によりまして工場に動員されたり、あるいは軍の要請によって戦闘参加したというような、いろいろな事由がある方々でございまして、国との何らかの関係はもちろんあったわけでございますが、軍人、軍属の身分と比べますとやはり一線を画すべきものがあったのではないかというふうに考えられる次第であります。また準軍属に対する援護を軍人、軍属と全く同様にいたしますと、その他の一般戦災者と申しますか、そういうような戦争犠牲者との間が非常に不均衡になる面が出てまいるというような点が考えられますので、その点も考慮いたしまして現在若干処遇を違えておるという実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/31
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032・大原亨
○大原委員 軍人、軍属と準軍属は国との権力関係で差があるというな御意見ですが、たとえば職業軍人、自分から志願して下士官や士官になる、あるいは自分が希望して学校へ行く、そういうことからいったって、徴兵、徴用の場合はそういう意思はない、本人の意思を無視している。しかし本人の意思を前提としてやっているたとえば職業軍人、そういうものよりも、徴用、準軍属の中には自分の家族や環境、いままでの仕事その他、そういうものを無視して一方的にやったという国との権力関係、犠牲関係においてはむしろ強いものがあるわけです。そういう差別を云々するのであるならば、私は理屈が一貫しないと思う。私ども社会党としては、原則として戦争犠牲者を救援する場合においては軍人の中における位階は中尉相当官を一つの基準にして縮小すべきだ、差別をつけるべきではない、こういう考えを持っておるわけですが、それはともかくとして軍人、軍属、準軍属の間においても差別をするのはおかしいのではないか。あなたが差があると言ったのはどういう意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/32
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033・鈴村信吾
○鈴村政府委員 軍人、軍属の方は一応国から一定の階級等に任命されまして、そしてそういう身分を持っておられた、国の公務員というような立場を持っておられたわけでございますが、準軍属のほうは身分的にはそういうものを持っておられない方で、他の法令等あるいは閣議決定等によりまして総動員業務に協力された、あるいは戦闘に参加されたという方々でありますので、身分的には確かにそこに一線を画し得ると思います。ただし、個々の事情によりまして、動員学徒の方で非常にお気の毒な方もおられるわけでございますが、やはり身分的な点で現在の法のたてまえからいきますと、若干援護に差をつけざるを得ないという状況でございます。また先ほど申しましたように、準軍属の方と一般の戦争犠牲者の方との間の均衡の問題もございまして、あらゆる段階の戦争犠牲と申しますか、そういう方がおられる状況でございますので、準軍属の処遇につきましては軍人、軍属と若干差をつけることのほうが、準軍属の処遇さえも受け得ない他の一般の方との均衡から申しますと適切ではないかというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/33
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034・大原亨
○大原委員 そこで、たとえば被徴用者でも、家族やいままでの商売その他をほうって、そして工場その他へ行く。そこが爆破される、原爆を受ける、こういうようなことでたくさんの人がなくなっておるわけです。その際においては、具体的に考えた場合には前の職場における補償はない。そこの職場はなくなっておる。そういう場合に国が補償する場合においては社会的に政治的にそう差別があるべきではない、私はこういうように思うのです。これは議論してもしようがない。
それから、戦後二十年だから総ざらいのつもりで私はやるわけだが、いま局長が御答弁になりましたけれども、その他国との権力関係があるものについて補償する、特別の援護措置をとる、こういうことですか。こういうことですね。立法の根拠をもう一回ひとつ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/34
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035・鈴村信吾
○鈴村政府委員 ただいま申し上げましたように、法令の規定による総動員業務への協力あるいは軍の要請による戦闘の参加あるいは閣議決定によるもの等いろいろございますが、いずれにしても何らかの形で国との間に事実上の関係あるいは権力関係等があった方々につきまして援護の対象にする、こういう考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/35
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036・大原亨
○大原委員 二つの例を私申し上げるのだが、これは広島で一九四五年の八月六日に死亡した医者です。広島市西新町百二十二、曽田可将、こういう人ですが、この人は地域の防空本部長——市長の命令で救護班長として医師として勤務を命ぜられたわけです。この人は原爆で勤務中に死にましたが、何らの補償を受けていない。これは公の権力関係においては明らかに本人の意思を拘束して勤務地、勤務内容について命令を受けておるわけです。こういうふうな漏れた例があるわけですね。私、具体的な問題を提起して質問するわけですが、そういうのを適用しないというのはどういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/36
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037・鈴村信吾
○鈴村政府委員 ただいまの援護法の規定によりまして、一定の範囲の方々を、先ほど申しましたような軍の要請による戦闘参加あるいは総動員業務への協力その他閣議決定によるものということで援護の対象にいたしておるわけでございますが、ただそれらによらない各種の実際上の軍への協力者あるいは国への協力というものが考えられるわけでありますが、いわば当時の日本の状況からいたしまして、一億全部が軍なり国への協力という形で働かれたわけでありますので、広くいえば全員がそういう意味の協力者であるわけでございます。したがいまして、その中で国の財政力その他から考慮いたしましてどの程度のものが実際上援護の対象にとり得るかということから一線を引かざるを得ないわけでございます。そういう見地から、現在におきましては、先ほど申しましたような一定の国との権力関係等のある者ということで線を引いておりますので、現在その他の方々につきましては具体的な協力の事実がある者でありましても、援護のワク外になられる方が出てまいるわけであります。現在のところ援護法のたてまえからいいましてその点は遺憾ながらやむを得ないというふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/37
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038・大原亨
○大原委員 公の権力関係で、そしてそういう事実があれば、今日漏れた問題については当然援護措置を講ずるということは、これは根拠なしに命令しておるわけではないのだから、その点については是正していくべき問題じゃないか。そういう問題は小さな問題でもたくさんあるわけだから、それを拡大していくことが必要ではないか。私はこの点ははっきり知らないけれども、警防団というのを当時組織して責任者をきめてやったのがある。これは実際上民防空の上からいったら軍やその他と一体の関係になっていた。組織形態も命令形態もきちっとしていた。命令系統もはっきりしていた。そういうものなども含めて、準軍属の制度についてはあとで論議いたしますが、そういう問題について妥当なものはこの際範囲を拡大すべきではないか。大臣、この点はひとつ御答弁いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/38
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039・神田博
○神田国務大臣 いま大原委員からお述べになりましたようなことは、私は、将来とも相当検討いたしまして、そして善処しなければならぬ問題だ、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/39
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040・大原亨
○大原委員 これは純粋の法律論で私は言うわけですが、おととしでしたか、戦争未亡人に対する一時金を公債で二十万円出しましたね。私どもは賛成いたしました。戦争犠牲者に対する救援措置として賛成です。戦争未亡人は、国との特別な権力関係というあなたが言われた法律論からいえば入らないでしょう。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/40
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041・鈴村信吾
○鈴村政府委員 ただいまのお話でございますが、仰せのように戦争未亡人が特に国の権力関係云々ということではもちろんございませんが、あの立法の趣旨は、いわゆる靖国の妻として特に終戦以後苦難の道を乗り越えてこられたという、夫を失った精神的あるいは経済的な苦しみに対して国として弔意を表するということでなされたわけでありまして、特に権力関係云々ということではもちろんございませんが、そういう趣旨でなされたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/41
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042・大原亨
○大原委員 戦争犠牲者の救援措置というのは一般戦災者まで拡大をすべきであるというふうに私はここで原則的には主張する。ただし、これは社会保障制度全体を引き上げていくことによって所得保障、医療保障その他社会保障の水準を上げることによって、有機的にいままでの特別措置というものはそのつながりを考えていくべき問題だ。一元的に考える。社会保障が今日日本においては非常に水準が低くて悪いから、そういう特別措置が考えられて今日まで次々と立法されたのである。社会保障全体を引き上げていくというそういう趣旨やそういう点を考えないと、あるいは官僚独善、官尊民卑のそしりというものを受ける。民間で、いま言われたように一億総動員の体制でやった。戦争の犠牲について民間だけほっておくというわけにいかない。私は社会保障との関係でこの問題を考えることが必要ではないか、その関連を考えることが必要ではないかと思う。それはともかくとして、この問題は時間があれば議論するといたしまして、特別国の権力関係はないが戦争未亡人に対する援護措置をする、このことについては私も賛成です。賛成ですが、たとえば私が常々も主張いたしておりますが、原爆の被爆者というのは特別権力関係はないけれども戦争犠牲者であり、これは戦争未亡人のような立法上の趣旨があるわけです。これは放射能を受け、そしてケロイドやその他を受けて、それで一般的普遍的に非常に大きな損害を受けている。こういうことに対しては、社会保障の基本的な考え方からいえば特別立法で救援措置をとる。したがって、医療面から援護面に手を差し伸べるということは、私はあってしかるべきであるし、政治の公平の原則から、こういう側面から援護立法の立法上の根拠が十分立ち得るのではないかと思う。戦後二十年ですから、そういう意味で公平の原則、政治上のそういう私どもの考え方から、私はこれはあまり深く入って質問する意思はないけれども、今日の社会保障の水準からいって、私はこのことは当然国としては人道上、政治上とるべき措置ではないかと思う。その点からいって、この点はひとつ大臣からお答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/42
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043・神田博
○神田国務大臣 戦争犠牲者の処遇の問題につきましていまいろいろお述べになられたようでありますが、これを戦争犠牲者として単独にいままで扱ってきたような制度でいいか、あるいは社会保障を加えた扱い方、全体の問題として考えたほうがいいかという問題について議論のありますことは、お述べになったとおりであります。しかも、それが社会保障のほうでなしに、こういった特別立法でまいったということは、いまお述べになりましたように、一つにはこれは財政上の理由もあったと思います。これは大きな理由だと思います。それからもう一つは、戦争犠牲者の精神的な問題があったのではないか、こういうふうに私ども考えております。要するに自分たちは、まだ日本の国が高度な社会保障国家でないものですから、いかにも社会保障にたよるということをきらうということばが適当かどうか存じませんが、それよりもやはり戦争という現実に結びついたことで考えてもらいたい。特定な事件として考えてもらいたいというような精神的な問題があったのではないかと私は考えるのでございます。この前ずっとこの問題を扱ってまいりました際も、そういう問題につきまして、大原さんのおっしゃる気持ちはよくわかりまして私もそういう考えはないではなかったわけでございますが、しかしこういうように踏み切ってまいったということは、一般論としては大原さんのおっしゃっている気持ちは十分わかります。これは戦争の犠牲というものをやはり直接受けたのだから、そういうもとでひとつ援護してもらいたいという犠牲者側の強い要望があった、こういうことが相当やはりこういうことになった問題ではなかろうかと考えております。
それから、第二の原爆犠牲者の問題でございますが、原爆によって戦災をこうむった、これは特別の惨禍を受けたわけでございますから、政府といたしましてこれを特別見るということは当然だと思っております。また被爆者の考え方からいたしましても、ああいう世界にない被災をしたわけでございますから、そういうことを希望されておるという気持ちはわかるわけでございます。ただ問題は、なぜそれではもっと原爆の被爆者に対してあたたかい手を差し伸べないか、こういう問題だろうと思います。国といたしましては、私が申し上げましたように、また御承知のとおり、逐次前進してこれを考えてまいっておる。今日またお願いもいたしておりますが、決してこれで全部ではない。逐次この度合いに応じてあたたかい手を差し伸べてまいりまして、そうしてこの原爆の被害者に対しては特別な考慮を払っていくべきものだ、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/43
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044・大原亨
○大原委員 この問題は私は国際法上の議論からしばしば議論したわけです。一昨年の十二月七日の古関判決その他に出ているような趣旨の議論もいままでしたわけです。しかし立法のそういう趣旨、根拠というものがなかなか明確でない、こういうことだった。そこで、私はいまいろいろな例と一緒にこの問題を総合的に考えるべきでないか、その根拠というものは戦争の犠牲者に対する救援措置として、たとえば、特別に数万の被爆者についてそういう医療について措置をしておるのだが、その立法の根拠は治癒能力が劣っている。つまり潜在的な疾病者、こういう考え方ですね。白血病やガンや白内障その他のそういう原爆による症状が出てくるおそれのある、あるいはそれによって治癒能力が劣っておる、こういうことが根拠ですから、人道上あるいは戦争犠牲という点から見ても医療を援護に進めるという立法上の根拠があるのではないか、こういう点を私はこの際、特別権力関係の点からいってもあるいはいままでのいろいろな立法例からいってもやはりそういう立法上の根拠はいまや明確にすることができるのではないか、こういう考え方です。
〔委員長退席、小沢(辰)委員長代理着席〕
これはあとであらためて原爆医療法の議論でやりますけれでも、この点に対しまして厚生大臣の簡潔な見解をこの際出しておいていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/44
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045・神田博
○神田国務大臣 いま大原委員のお述べになりましたことにつきましては、私も共鳴しております。ただ、先ほど来から申し上げておるように逐次手を差し伸べていく、こういうことになっておるわけでございます。原爆被害者の実態に即しまして特別な考慮をしていくということは、これは国民的感情からいっても異議はないと思いますが、何しろいろいろな業務もございますので、一ぺんにそこまで踏み切っておらないというところに御不満といいましょうか、問題があるのではなかろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/45
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046・大原亨
○大原委員 それから次に、先ほども申し上げましたが、準軍属と軍属の差別というものは、戦争犠牲者を救済するという精神的な面からいっても、あるいはたとえば高等学校の男女の学生が徴用される、学徒動員される、こういう場合には、親にとってみれば後継者です。だからだんだんと年をとってくれば一家を支える者がいなくなる。こういう現象からいけば、これは精神的にも実際物質的にも、戦争犠牲者としては非常に大きいわけです。それを身分や位階によって差別をつけるということはいけなのんじゃないか。これは差別をなくしていく、こういう方向で努力をすべきではないか。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/46
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047・神田博
○神田国務大臣 いまお述べになりました原則論は、私の感情を申し上げますと、私も同感です。ただ、御承知のような制度でずっと参っておりますものですから、相手のあることでございまするし、なかなかそこまで踏み切っても実施面においていかない、こういう問題でなかろうかと思います。お述べになりました考え方は私も十分よく納得できます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/47
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048・大原亨
○大原委員 準軍属について、たとえばいまは年金、一時金その他大体半額ということになっておるわけですが、この格差を縮小していく。六割、七割、八割というふうに縮小していく。一度には予算関係その他があってできないから、これを縮小していく、こういうことで将来やはり公平を期するべきである。この点をもう一回、ひとつ厚生大臣のほうから御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/48
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049・神田博
○神田国務大臣 いまお述べになりましたことは、われわれとしましては努力を重ねております。将来においてもそういう努力をやりまして、そういう希望をひとつ実現いたしたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/49
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050・大原亨
○大原委員 準軍属の結核その他勤務関連疾病といわれる問題ですが、その当該者に対して、軍人やその他においては一時金が支給されていない。こういうこともやはり当時は——今日では結核というものに対する考え方は相当変っておる。しかし戦争当時は、結核というのはやはり栄養面や精神面やそういう過労によってなっておるのであって、これは関連疾病というよりも、言うなれば直接的な疾病と言えるのではないか。というのは、結核の罹病率というものが今日の事情と違うということが逆に実証している。こういうことですから、準軍属の勤務関連疾病に対する一時金などの措置についてもやはり差別を撤廃するようにすべきではないか。その点、厚生大臣はどう考えますか。政府委員でもよろしゅうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/50
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051・鈴村信吾
○鈴村政府委員 ただいまお話しの点、われわれもそういう努力を実はいたしたわけでありますが、遺憾ながら実現をしなかったわけであります。将来ともそういう線でできるだけ努力をしてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/51
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052・大原亨
○大原委員 妻の場合に、養子、養父母は先順位、後順位ですか。その援護の諸措置の恩恵を受ける、そういう立場にないのですか。——ないのはやはりおかしいじゃないですか。養子はどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/52
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053・鈴村信吾
○鈴村政府委員 正式に手続をして養子になっておる方には援護が及ぶわけでございます。正式に戸籍に入っておれば援護は及びます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/53
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054・大原亨
○大原委員 受け取るべき人が養子縁組みをした場合はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/54
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055・鈴村信吾
○鈴村政府委員 継親子の問題でお尋ねかと思います。養子はいま申し上げましたように援護の対象になるわけでありますが、継親子つまりまま子の関係につきましては、戦後民法が改正されました関係で、一定時期以後の死亡者につきましては援護の対象にならないわけでございます。したがいまして、一定時期以前の方は援護の対象になりますが、その後の死亡者には支給がないということは不合理ではないかというお尋ねが去年も実はあったわけであります。われわれもこの点につきまして、支給できるようにいたしたいということで努力いたしたのでありますが、本年度は少なくとも実現をしなかったわけであります。将来においてはまた努力をしてまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/55
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056・大原亨
○大原委員 それから療養手当の立法上の根拠は何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/56
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057・鈴村信吾
○鈴村政府委員 一年以上の長期入院患者に支給されておるわけでありまして、長期入院者の医療上あるいは生活上の負担を若干でも軽減しようということで支給しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/57
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058・大原亨
○大原委員 その趣旨はけっこうなんですが、実費に対する収入、実費弁償なんですか。それとも年金その他一般所得の収入ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/58
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059・鈴村信吾
○鈴村政府委員 一応所得の認定の対象になる収入でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/59
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060・大原亨
○大原委員 医療手当の中身というものを、たとえばいろいろな栄養の補給費とかその他日用品の不足分とかいうようなものを明確にして……。それでその打ち切りとか、そういうことで、これは税金の対象にするというのはおかしいじゃないですか。医療手当が入ってくれば、たとえば生活保護なんかもらっておる場合、ダブっておる場合があるかどうかわからぬが、他の年金との関係でそういうものが引かれる、こういうことになるのじゃないですか。そういうことになればおかしいし、課税の対象になるのもおかしい。これはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/60
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061・鈴村信吾
○鈴村政府委員 少なくとも生活保護法上の収入認定の対象になっておるわけでありますが、課税のほうにつきましてはちょっといまはっきりここでお答えできない次第であります。生活保護の収入認定にはなっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/61
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062・大原亨
○大原委員 これは医療手当をもらったために生活保護が減っていく、こういうようなことは意味ないじゃないですか。医療のために、しかも長期の療養者のためにこれは出していくのだ。そういう場合にこれはおかしいじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/62
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063・八木哲夫
○八木説明員 療養手当につきましては、実は傷病恩給そのほか障害年金等を受けておる場合には、その分を調整いたしますので、実態は年金を受けていない方にいっておるというのが実情でございますので、所得補償的な考え方で手当が支給されておる。したがいまして、増加恩給あるいは障害年金等を受けています場合には、その分は相互に調整いたしまして、増加恩給のほうが多いという場合には療養手当は支給されないということになっています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/63
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064・大原亨
○大原委員 それは私は非常に不徹底だと思うのです。たとえば、医療手当の給付者に対する課税などで、一定の制限を設けているのですか。標準家族における大蔵省の新しい五十四万四千円という方針もあるけれども、そういう問題との関係はどうなっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/64
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065・八木哲夫
○八木説明員 税金の問題は特別援護法の二十七条によりまして非課税としております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/65
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066・大原亨
○大原委員 それから無賃乗車船の範囲について、今回これの拡大措置をする、こういうのですが、具体的にどういう拡大措置なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/66
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067・鈴村信吾
○鈴村政府委員 お答えいたします。
現在は恩給法によります、たとえば増加恩給とか傷病年金とかそういうものを受けておられる方だけが無賃乗車船の扱いの対象になっておりますが、今回の改正によりまして、戦傷病者戦没者遺族等援護法の障害年金、障害一時金等を受けておる方々にもこれを適用する、さらに旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法、そういうものによる適用を受ける者にもどれを拡大するということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/67
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068・大原亨
○大原委員 それではこれから、私の持ち時間で一般質問をやります。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/68
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069・小沢辰男
○小沢(辰)委員長代理 厚生関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。大原亨君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/69
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070・大原亨
○大原委員 それじゃこれから薬の問題で……。
きのう小林委員からいろいろと質問があったわけですが、これに厚生大臣は非常に明確な答弁をされておるわけです。厚生大臣のきのうの答弁は、これはきょうの新聞紙上にも出ておるように、つまり厚生大臣がきのう答弁いたしましたのは、会社の従業員に対してパイロットがわりの人体実験をすることは言語道断である、こういうことが一つ。これに対して厚生省としては何らかの措置をとりたい、こういう二つの点について御答弁があったわけであります。私は、厚生省として今日までとるべき手段、今後とるべき手段において、なお問題を明確にする点があると思うのです。その点を中心として質問をするわけですが、その点について、まず第一点にもう一回お聞きしたい点は、厚生大臣は、会社の従業員に対して、モルモット扱いにして、自由を拘束して実験の対象にすることはいけない、言語道断だ、つまりこのことは厚生省の調査した事実や新聞記事等を見た上で、これは人権じゅうりんである、こういう厚生大臣の見解を明らかにされたものであるというふうに考えるけれども、厚生大臣いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/70
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071・神田博
○神田国務大臣 この点はきのうもお答え申し上げたのでございますが、私はそういうことはやるべきじゃない。ということは、会社の従業員と会社の経営者とは、労使関係からいえば平等の立場に立っておるわけでございますが、平等の立場に立っておるとはいっても、私はやはり多少権力関係というものはいまの日本の社会においては完全でない、こういうような考えを持っております。労使関係を正常のものにして対等な日のくることを念願しておりますが、そういう際を考えますと、従業員をそういった実験対象にしていくということは言語道断だ、こういう意味で私はやるべきものじゃない、こういう考えであります。何といってもやはり因縁もありますし情実もあるだろうと思いますが、そういう関係に立っておって、そして愛社の念だとかなんとかいうことでやりますと、いろいろやはり行き過ぎの点があろうかと思っております。もっと正確に労使関係を軌道に乗せることも必要であると同時に、こういった事業分野においてもそういうことはなすべきものじゃない、こういうはっきりした考えのもとでお答え申し上げておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/71
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072・大原亨
○大原委員 つまりこの興和という製薬会社の職場にぴしゃっとした組合がなかった、こういうこともありまして、いま厚生大臣が言われたように、やはり従業員に対して、きのうから議論になっておるように、副作用その他について明確なそういう認識を与えて、そして従業員の判断を得たのでもないし、また副作用その他に対する万全な注意義務、いわゆる当事者としての当然の注意をやったのでもない、こういうことからこの問題は起きておるわけでありますから、これは明確であると思うんですね。つまりこのようなことを、命を犠牲にしそして健康を犠牲にするようなそういう措置については、これは人権じゅうりんである——厚生大臣のきのうの再三の御答弁、また厚生次官もそのような答弁をしておられましたが、これは私は明確である。そのようなことは今日、最もいわゆる製薬メーカーについて監督、助成等の責任を持っておる厚生省としては明快な見解を出しておくべきだ、今後そういう事件の絶無を期するために出しておくべきだ、こういうふうに思うのですが、その点について、つまりこれは明らかに人権じゅうりんをした不当な措置である、こういう点について明確にしていただきたい——局長はだめだ、局長にはあとで質問する。君に質問しておるのではない。きのうからの続きだから事情もわかっておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/72
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073・神田博
○神田国務大臣 いまお尋ねのとおりに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/73
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074・大原亨
○大原委員 それで局長に答弁を求めますが、あなたはきのうの答弁では三百代言的な答弁をしておった。それで今日までどのような調査その他の措置をとったか。つまりこの中村さんが人権擁護局に告発をする、こういう環境の困難な中でそういう行動を起して初めて問題となる、しかし事実というものは今日まで日本経済その他の新聞紙上を通じて知られておった、こういうことであります。厚生省は通り一ぺんの法律解釈ではなしに、その点についてどのような調査をしておったか、そういうメーカーに対してどのような措置をとったか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/74
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075・熊崎正夫
○熊崎政府委員 昨日も申し上げましたように、私どもがこういう事実を入手いたしましたのが昨年の二月でございます。それで当時関係者を呼び出しましてその事実を確かめると同時に少なくとも治験例収集段階において社員を使うということについては、今後絶対にかかることのないようにということを厳重に申し渡しますと同時に、各社の学術部門担当の重役でございますが、その方方が臨床データなりあるいは動物実験をやっておりますから、こういう方々にこういうことを絶対にやってはいけないということを厳重に注意をいたしております。
なお、お尋ねとちょっとはずれると思いますが、この際でございますから、私ども調べました経過につきまして、名前をあげて御説明いたしたいと思います。
会社側は、大体三十八年三月ごろ東北大学の中村教授に、イタリア等で開発されましたこの新しい薬について研究をお願いしたいということで依頼をいたしております。それで中村教授のもとで動物実験並びに臨床実験を集めまして、大体六十例くらい集めたところ副作用はほとんどないというふうなことで、なおかつこれは健康人に対して最初は千名くらいの臨床計画を拡大したいというふうな予定だったそうでございますが、まずさしあたって二百名くらい一般人に対して臨床研究を、しかも一ヵ所でやる必要があるからひとつ協力をしてくれないかというふうなお願いが会社側にあったそうでございます。それで当時会社側は、この中村教授にお願いいたしたときに研究班を編成いたしまして、膨大な研究班でございますが、東北大学の先生、伝研の先生、予研の先生、全部で二十三名の学者によります研究班を編成いたしまして、それで動物実験、臨床実験その他全部あげて中村教授が主任教授として研究をするという班の編成をいたしておったようでございます。
それから、この新薬につきましての会社側の臨床研究に入る場合の事実でございますが、中村教授から名古屋大学の医学部の日比野教授に依頼状が出ております。それで名古屋の興和薬品の工場で投薬をする場合に、日比野内科の医局員が立ち会っております。それから東京で行なう場合には日比野内科の指示を受けまして、新聞に出ておりました佐々木薬剤師、これは課長でございます。この課長か会社員に対して服用の協力を求めたわけであります。それからあと三日後に、日比野内科から直接西村教授が問診に来ておられます。それで事故が発生したということで、あと直ちに入院するというふうな手続をとったわけでございまして、私どもの事情聴取いたしました関係から言いますと、大体主任研究員である中村教授のもとに各大学の先生方を集めて、治験のデータをとるために相当大規模な計画のもとに行なわれた。しかも一般人を対象とする場合には、日本ではあまりそう多数行なわれておらない、いわゆるダブル・ブラインド方式、つまり正規の薬とにせの薬を出す、にせの薬は、この場合はでん粉の薬だったようでございますが、これを両方二つに分けてそれで投与した。こういう方法でやってくれということを中村教授からも依頼を受けたというふうに私どもは聞いておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/75
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076・大原亨
○大原委員 きのう以来の質疑を蒸し返したくないけれども、動物実験によって副作用があり、危険性が明確にされておったということを知っていいるという事実が一つと、それから実際に発病や入院が十六名も出て、そして、これは議論を蒸し返さないけれども、ガンやその他の症状が促進されるような役割りをこのキセナラミンが果たした。結果的に見ても、あるいは事前の知識から見てもそういうことはあるのだから、副作用がないというふうなことを会社の課長がみんなに言って、そしてこれを飲ませるなどということは、厚生大臣が言われたように言語道断な話なんだ。だから局長は、新薬のいわゆる発見段階、許可を得るまでのデータをとる段階においては、医者の管理下にあれば新薬の使用等は自由であるという原則と、メーカーの立場に立った、あとからつけた説明をあなたは言っているんだ。客観的に見ると、私が指摘したような点であるし、厚生大臣やきのう次官が言ったような点は明確じゃないですか。局長と大臣の答弁は本質的に違うじゃないか。
そこで私はもう少し突っ込んで言いたいのは、厚生省としていかなる措置があったか。つまり厚生省はメーカーの代表なのか、あるいは国民の医療を、そういう命や健康を守る役所なのか、こういうことを言いたいわけだけれども、これはあとの問題として、厚生省が調査の段階で、会社の従業員をモルモットがわりにしてそういう非常な危険な薬の実験をしたということになれば、このことは非常に言語道断であり、人権じゅうりんであるということになれば、局長は昨年の二月に調査にかかったというのであるから、こういう告発を待たないでも、国民医療の立場、健康の立場から、私は厚生省が、薬事法によって取り締まる方法がなければ、人権擁護局なり検察庁にそういうメーカーは告発をすべきである、あるいは事情を通告すべきである。そういう措置をとって初めて厚生省が国民医療について責任を持つのだということになる。その点は大臣いかがですか。そういう措置をとるべきです。今後の問題を含めて、そういう措置をとるべきであったのではないかと私は思う。小林質問を私は一歩突っ込んで、大臣の見解を聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/76
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077・神田博
○神田国務大臣 いまの大原委員のお尋ねは私はもっともだと思っております。しかし、いろいろいまお述べになったようなことを厚生省が直ちにやるというには、いろいろ段階があるのではないかと思っております。私もこの話を耳にしたのは新聞に出てようやく知ったわけでございまして、一般論としてお問いになっているお気持ちは同感でございますが、具体的な問題としてこういう場合に一体厚生省がどうするかというようなことは、十分ひとつ慎重に検討して御返事をはっきりしたほうがよろしいのではないか、私こう考えますので、きょうはこの回答を保留させていただきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/77
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078・大原亨
○大原委員 私は何もあげ足をとってやろうという気持ちはないんだが、政治的に、客観的に、常識的に、質疑応答の中で大臣と次官が述べたことは、私は国民の常識にかなっておると思うのですよ。私どもの常識にもかなっておる。しかしながら、本人が環境の整備、雇用関係というものを非常に考えながら人権擁護局に告発をして初めてこれが社会問題となる、そういうことは何と考えても問題ではないか。新薬の許可される段階までの三百代言的な局長の答弁では私は満足できない。それは国民の常識との間においてみぞがある。ギャップがある。そのことを私はきのう小林委員との間の質疑応答ではっきり私は感じておった。その点を明確にする方法は何かということを私はきのう以来考えたけれども、厚生省は国民の命や健康を守るという立場に立つならば、また、再びこのようなあやまちを繰り返さないという立場をとるならば、これははっきりそういう立場から、薬事法——薬事法に基づく薬務局の権限でないならば、厚生大臣として、あるいは関係当局として、他の人権侵害その他の法律あるいはそういうものに基づいて、率先して措置をするというのが、薬務局が一番薬事行政に通じておるという立場において負わされておる責任ではないか。そういう責任を果たしていないことを私は徹底的に追及をしたい。したいけれども、そのことだけが目的ではなしに、将来絶滅を期する意味から考えて、告発をする、あるいは事情について少なくとも通告をする。この問題を調査をしてもらいたいということを通告するということは、厚生省として当然とるべき措置ではないか。厚生大臣、もう一回ひとつ答弁していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/78
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079・神田博
○神田国務大臣 一般論として、常識的な御意見としては私も同感だ、こう申し上げておるのでございます。ただ具体的の例になってまいりますと、ここでもう少し検討の必要があるのではないか、こういうふうに考えまして、具体的なところまで入ってきたほうがいいのではないか、もうお述べになっている気持ちは私は同感でございまして、当然そのようなことをやる必要がある、こう私は考えております。ただ、しかし、この件に関して、別に私は新聞記事を疑っているとかなんとかいうことではございません。やはり行政官庁としては、私も新聞で知っただけでありまして、あとはこの国会で質疑の段階で承知した程度でございまして、もっと掘り下げて、そうして御納得のいくような答弁をしたい、こういう意味で実は検討する時間をほしい、こういうことを申し上げておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/79
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080・大原亨
○大原委員 厚生省は、薬事法によるそういう法律上、手続上の問題、医療法一般による手続上の問題、そういう問題だけでなしに、国民の医療を守るという観点から、やはりメーカーを監督する、こういうことについてはこの問題を離れて原則的に異議はない、賛成である。厚生大臣いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/80
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081・神田博
○神田国務大臣 そのとおりの答弁をしているつもりです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/81
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082・大原亨
○大原委員 私は問題はまだこれからたくさんあると思うのですが、もう一つの問題は、こういうことがあると思うのです。私が予算委員会その他からずっと質問をいたしておりますが、つまり厚生省が医薬品のメーカーの育成指導をやる。つまり、この間、日本経済であったかと思うが、新聞を見ると、大正製薬の強力パブロンの問題が起きて、アンプルを回収した。そうしたら倒れかかった中小企業が出てきた。これはやはり厚生省の罪である。責任である、責任のある厚生行政の結果がそういうふうになったのだけれども、そういうことがあった。そうすると、融資をやる、何をやるというめんどうを見る、こういうことをしながら、一方においては、薬事法やその他国民の立場に立って命を損ずるような薬を、つまり医者が薬物中毒でショック死しているのだ、こういうことの診断書を明確に書くような、そういう薬を売っているわけだ。無責任な形で売っているわけだ。そういう事態があるのだけれども、その監督をする立場とメーカーを育成する立場を両方、局長中心に厚生省がやるということは、これはおかしいのではないか。つまりネコにかつおぶし、こういう関係ではないか。どろぼうに錠前を預ける、こうだれかが言っていたけれども、そういう関係ではないか。これは制度的に欠陥があるわけです。育成の行政は通産省がやるべきである。そして国民にかわっての監督はぴしぴしやることによって再びそういうメーカーをつくらない、メーカーもそういう製品をつくらないというふうな、そういうことが結果として出るように、やはり分化しなければならない。薬務局がそういう融資やその他に立ち回ってやりながら、一方では法律の実施をゆるめる、こういうふうなことはおかしいのではないか。
もう一つの問題は公取です。公取がやはり誇大宣伝その他国民にかわって宣伝の規制をすべきではないか。公取の仕事を薬事法でやる。そして、通産省の仕事も一手に引き受けて厚生省がやる。国民にかわって医薬品メーカーの監督もやる。こういうことをやるということは、そういう未分化な状況では無責任になるのではないか。へ理屈をつけて責任のがれをするような今日までのようなことが重なるのではないか。こういう制度上の問題、運営上の問題を含めてこれは通産省へ行ってくれと、こういうふうにやるのだ。できるわけなんだ。そういうことをぴしっとしなければならないのじゃないか。そのけじめをつけなければいかぬのではないか。こういう点を私は厚生大臣にただしておきたい。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/82
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083・神田博
○神田国務大臣 いまいろいろ製薬業の問題につきまして、厚生省といいますか、行政機構の面からあるいはその他の制度上から考えて、育成と監督と一緒にやっておるからうまくいかないのじゃないかという御議論もありました。そういう面も私はなしとしないと思っておりますが、御承知のように、薬は非常な専門的な、しかも化学的、物理的な深いものも内在いたしておりますので、やはり専門の知識を持っていかないとなかなか育てるということはむずかしいのじゃなかろうか。通産省が産業一般をやっておりますが、特殊なもの、専門的なものはそれぞれ他にやっぱりゆだねている問題もございます。たとえば、造船業なんかは運輸省にゆだねておるとか、こういうような事例もございまして、決して私、長い歴史と経過をたどってきているからいいのだという意味ではございませんが、やはりそれなりにそういったことがいいということでまいっておるのじゃないかと思います。この点につきましては、いまの御発言について私どもも大いに注意して再検討する必要があると思いますが、直ちに取り締まりだけを厚生省がやればいいのだということによっていまの製薬業者の指導監督がうまくいくかどうか。国民の要するに健康と生命を守るのが厚生省の仕事でございますから、具体的にそう内容に触れてまいりますと、製薬関係もやはり厚生省にあったほうがいいのだということになるのじゃないかという気がいたしております。ただ、しかし、こういう事態が出てまいりますと、マンネリズムでずっと来ていやしないかということをおそれますから、十分検討いたしてみたいと思います。
〔小沢(辰)委員長代理退席、委員長着席〕
さらに、もう一つ申し上げたいことは、結局運用の問題であるのじゃなかろうかという感じがいたします。制度もさることでございますが、運用の問題であるのじゃないか、こう考えております。いろいろ製薬関係と厚生省との間に御不審を持たれるような御議論も拝聴いたしまして、これらも私どもは十分やっぱり注意して今後に処さなければならぬことだ、かように考えております。
何はともあれ、いま新聞に出ていること、また大原委員のお述べになっているようなことが事実となってあらわれておるわけでございますから、この事実の前にはわれわれはやっぱり謙虚な気持ちで真剣に取り組んで、そして国民が不安を持たないように、薬の過大広告に酔うようなことに目をつぶらないで、適当な広告は大いに国民大衆に知ってもらわなければならぬことですからしなければなりませんが、過大な広告あるいは虚偽な広告などについては断固取り締まらなければなりません。ともかく育成しまして、そして国民に信頼される薬事行政というものをひとつやってまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/83
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084・大原亨
○大原委員 それはだいぶ事務局の入れ知恵がだんだんあなたの頭の中に入っているから、そういうあいまいな答弁になっているんだ。事務局がそんなことを言っているんだ。アメリカは、やはり連邦の取引委員会、連邦の裁判所、公取に当たるそういう準司法機関がこれをやっておるわけだ。誇大広告その他の取り締まりは、これはこの間例を引いたけれども、たばこだってデーンジャーということでやれというようなことがそこで議論されておるわけだ。それで、私が言っているのは、そういう専門的な知識は、そこへ若干の人がおればいろんな意見は吸収できるようなシステムをつくればいいのであって、これはやはり分化したほうがよろしい、こういう議論なんだ。これは渡辺公取委員長もそういう含みの、厚生省でできないとすればそうせざるを得ぬ、こういうことを言っておられる。そこで、これはやはり行政管理庁長官の出席を求めて議論してもいいのですが、通産省と厚生省と公取との関係を明確にするということ、その他まだあります。ありますけれども、私は行政管理庁長官などの意見もこれから聞いて議論してみたい。
それからもう一つ申し上げておくんだが、もう一つ申し上げたい点は、人事院見えておりますね、人事院は天下り人事についてはどのような規制のしかたをしておるのか、一般的なやつを簡単に言ってください、法律上あるいは実際上。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/84
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085・大塚基弘
○大塚政府委員 法律上は国の機関と密接な関係にある営利事業の地位についてはならない、こういう規定がございます。しかし、それに対しまして、人事院の承認があった場合にはその限りでないという扱いをしております。この人事院の承認があった場合と申しますのは、国の機関と密接な関係はあるんではありますけれども、その密接な関係の度合いが非常に強いものと、それから密接な関係ありと一応は見られていても薄い場合がある。たとえば、許認可権というようなものは非常に密接な関係が強いわけです。しかし、届け出をしたものに対する承認程度のものは、そう強い密接な関係とは見られない。その辺の職務の内容によりまして、一方、またその権限を行使するどの程度の権限を持っているかという職員の地位によっても、密接な関係のあるものの薄いあるいは厚いという判断もいたせるわけであります。そういう点も考慮いたしまして、一定の各省庁の権限を検討いたしまして、こういう場合には承認できる、こういう場合には承認できないというような基準に従って承認をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/85
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086・大原亨
○大原委員 具体的な問題ですが、きのうも提起されましたが、昭和二十八年以来製薬課長が数次にわたって製薬会社に天下っている。このことは人事院は許可したのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/86
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087・大塚基弘
○大塚政府委員 承認にあたりましては、人事院が直接承認いたしております分と、それから各省庁の長に委任している分とございます。各省庁の長に委任している分は、大体本省の課長級以下の方が営利事業の医薬品の地位につく場合でございます。いまお話にありました薬事課長と申しますと、当然これは人事院の承認分でございますが、二十八年以降、人事院の承認によって製薬会社に入社されたという方はただいまの記憶ではございませんということでございます。ただし、これは法律が二年間しかしばってありませんから、かつて薬事課長をやっていらっしゃって、二年後に就職したという場合にはこの限りではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/87
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088・大原亨
○大原委員 課長以下については事後報告で取り扱いもできるでしょう。そこで厚生省は、連絡をとっていないというのはどういう理由ですか、厚生省から。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/88
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089・熊崎正夫
○熊崎政府委員 私のほうで製薬会社の社長付に就職いたしましたのは、昭和三十五年に退職をいたしました製薬課長につきまして人事院にあらかめじ承認申請をいたしましたところ、社長付名義という地位は厚生省との間に国家公務員法第百三条第二項にいう密接な関係がないというふうなことで処理されておりましたために、その後の課長が社長付になる場合につきましても、前例に従っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/89
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090・大原亨
○大原委員 大体そうなっておる。社長付とか何とか、何々付とか、何々室勤務というようなことになってしばらくやっておって、今度は本番に行くわけです。重役になるわけです。これが大体各省の手口です。ことに厚生省もそういう手口です。そんなことでは人事院はしり抜けではないですか。
もう一つ、具体的な質問をいたしますよ。最近、厚生省の監視課の誇大広告その他広告取り締まりの担当官が、製薬会社に就職をしておる。そのことについて、これは直接、ことにこういう議論をしている最中、誇大広告その他でくさいという問題について議論をしているときに、これは二月以降であります。議論しているときに、厚生省の広告担当官課長補佐、これが製薬会社に天下っておる。これは事後審査したところで相当大きな問題だと思うのだけれども、そういう事実があるかないかということを、まず人事院のほうから伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/90
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091・大塚基弘
○大塚政府委員 承認を各省に委任しておる部分に関しましては、年に二回報告をとっております。本年度に関しましてはまだ報告がむろん参っておらないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/91
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092・大原亨
○大原委員 厚生省のほうはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/92
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093・熊崎正夫
○熊崎政府委員 監視課の補佐をやっておりました宮田技官、薬剤師でございますが、エーザイ株式会社のほうにやめて移っておりますが、この件につきましては、人事院のほうに事前に厚生省の官房の人事課を通じて連絡をいたしまして、一応書類は人事課あてに私のほうからは出してございます。それでこれは正式の承認ということではなく、補佐であり、また向こうに移って地位がやはり社長付かという程度のことでございますので、その必要はない。ただ文書は、私のほうからは人事課のほうに差し上げてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/93
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094・大原亨
○大原委員 いまのお話は人事院の答弁と違うではないですか、どっちがほんとうなんですか。これはしかも二月二十日でしょう、いつの辞令になっているのですか、辞令はいつですか、発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/94
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095・熊崎正夫
○熊崎政府委員 二月のことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/95
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096・大原亨
○大原委員 これは衆議院の予算委員会においても、あれほど何人もの議員が立ってこの問題に関連して追及しているのだ。しかも、誇大広告その他の問題については非常に議論になっているときに、その監督を担当しておる課長補佐が製薬会社にストレートに天下っておる、こういうふうなことをしながら人事院においてはこのことの監督ができない、こういうようなことは、人事院は何をしているのです。薬務局長の言うたことがほんとうかうそかということを、答弁をしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/96
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097・大塚基弘
○大塚政府委員 事務担当者に確かめてみないとどうもはっきりいたしませんけれども、私としては全然伺っていないということでございます。
それから、人事院は何をしているかというお話でございますけれども、最初に申し上げましたとおり、少なくとも、あの百三条が改正されまして、国会に毎年報告を出すというような措置がとられなければならないようなことになりましてからは、われわれとしては審査の方針をかなりはっきり打ち立てる、一定の基準を打ち立てるというようなことをやっておりまして、これらの基準に関しましては、人事院の承認分に関しましてはもちろんのこと、また各省が委任を受けて承認なさる場合に対しましても同様の基準、考え方で扱ってほしいということは十分各省に連絡し、説明してございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/97
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098・大原亨
○大原委員 人事院の大塚局長が最初に答弁をされたように、職務と密接に関係のある企業に行ってはならぬということが一般原則なんだ。百三条の前提で、課長職と課長以下の職について、以上と以下についての取り扱いの差がある。しかしながら、この法律の趣旨からいえば——国会であれほど議論になっているのですよ。誇大広告その他について、薬価基準の問題に関連して議論になっている。人命の問題と関連して議論になっている。この国会で議論の最中に、しかも片一方は人事院に通告して了解を求めたと言う。それなのに、人事院の大塚局長は関知しないと言う。法律のたてまえからいくと、その点は明確にしてやるべきだ。大体、課長補佐で広告を担当しておった者が製薬会社にストレートに行って、何をやるかということがわかるじゃないですか、それは李下に冠を正さずということばどおり。そういう議論になっているときに、全くでたらめじゃないか、でたらめなことをやっているじゃないか。このことについては全く不統一だ。このことは明らかに法律の趣旨から言って、関係営利会社に対してそういうことはいけないということが原則であるから、その法律の趣旨に従って適確な事務処理がなされて、人事院としても、私はこの問題については明確な意思表示をすべきだと思う。これはあとで取り消しても、もう公務員の身分が離れておるのだから何もならない、こういうことになる。こういう問題をうやむやに扱おうとする薬務局もけしからぬ。厚生省もけしからぬ。この問題は法律をじゅうりんしておる。この問題は事実問題としても許しがたい。この問題について厚生大臣、いかがですか。全くでたらめじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/98
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099・神田博
○神田国務大臣 宮田技官がエーザイ会社に行ったということは、実は私もいま大原さんの御質問で承知したわけでございまして、いま薬務局長に聞いたところが大臣までこない人事だそうでございまして、大臣が関知しなかったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/99
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100・大原亨
○大原委員 大臣が関知しないといっても、こういう議論になっているときに、あなたはくさいものにふたをしないで——議事録を見ればきちっとします、そういうことを大臣は答弁になっておる。少なくともこれは課長補佐じゃないか。課長補佐については、連絡をとって承認を求めるべきだ、相談をすべきだ。こういう問題については、大臣に対しても相談をやってないし、人事院に対してもうやむやな形で、人事課を通してやっておるということではいかぬ。あとで相談しようと思っても、その人が宙ぶらりんになるからかわいそうじゃないですか。宙ぶらりんになりますし、また社会的に名誉を棄損されるし、その人間自体が問題じゃないですか。これをやろうかどうしようか、なかなかめったにないチャンスだからやれということで、やったらしい。私はそのことも聞いておる。全くでたらめですよ。国会でそういう問題を議論して、あなたも、そういう点はえりを正して粛正します、こういうことを言っておる。次から次へとこんな問題が起きておるじゃないか。そういうでたらめなことをしていて、国会だけ切り抜ければいいなどという考えは、私は許せない。厚生大臣いかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/100
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101・神田博
○神田国務大臣 申し上げるまでもなく、いま薬の問題は国会内外、国民が非常な関心を持っておる際でございまして、課長代理といっても、やはり役所といたしますれば相当の地位でございます。時の人といいますか、当面の重大な問題を処理してもらっておる際でございますから、内部の問題ですからもう少し連絡をつけなければいかぬと思います。自今注意いたしまして十分監督してまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/101
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102・大原亨
○大原委員 最後に、人事院に聞いておきますが、こういう問題は、あなたが述べた国家公務員法の百三条の趣旨から言って、当然人事院としてもきちっとすべきだ。あとでやったのでは、事後審査などでは権限が正当に行使できぬでしょう。その点については厚生省に対して人事院から厳重に注意する、そういう措置をとってもらわなければならぬ。よろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/102
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103・大塚基弘
○大塚政府委員 大原委員のおっしゃるとおりでございまして、われわれとしては、各省に対して少なくとも昨年の国会にも——また新しく承認基準を検討いたしましてから以後は、各省に対してもその基準を十分説明しております。具体的に、たとえば薬事課長が、製薬会社の役員あるいは非役員を問わず、いわゆる天下るということは承認できないということを明らかにしております。ただし、各省に委任された分でございまして、そしてこれも一昨年から一年に二回報告を出していただくように改めたのでございますけれども、これにつきましても、その承認の理由等は一々われわれとしては検討いたしまして、必要な注意を与えてまいっております。まだ取り消し権を発動したということはありませんけれども、少なくとも将来に関しましては、十分こちらの意見に従って運用されたいという注意をやっておりますし、実は厚生省に関しましては非常に件数が少ない。先ほど申し上げましたように、人事院承認件数も厚生省委任分も、申請も承認件数も昨年、一昨年いずれもないという報告がまいっておりますので、どういうお取り扱いをなさっておるかということを厚生省にお尋ねしている状態でございます。
それから、先ほどの監視課の補佐の件に関しましては、二月の九日ころですか、人事院規則の解釈に関しましての御照会はあったそうでございます。これは具体的な人事の問題ではなかったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/103
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104・大原亨
○大原委員 それで事態がはっきりしたと思うのですが、人事院のそういう態度についての抽象的な、一般的な問題についての照会はあったけれども、具体的な問題についての連絡や、あなたが答弁したあらかじめというふうなことは全体ない、こういうことだ。それから法律の趣旨から言っても私が言うとおりだ、こういう人事院の答弁です。そうすれば、事実はおのずから明らかになってくるわけです。全くそういうやみ取引みたいなかっこうでやれば、薬務行政全体にどういう影響があるかということははっきりする。これだけでも大臣は責任をとるべきです。結局そういう人事の交流や、それから大正製薬の社長の方が参議院議員だから云々ということは言わないが、そういうこと等を通じて政界とのつながりが出てきて、そしてこれは、全く国民の医寮や薬や命を守るというふうな立場でなくなってきているのじゃないですか。これは私は一党一派の考え方で言っているのじゃない。いままでずっと議論してきたことを、この事実に適合して言っているのです。そう言わなければ何ら反省の色がない。通産省やその他運輸省、大蔵省では、確かに役人はいい汁があるわけです。局長になれば重役にどんどんなっていって、金融機関の中心にすわれる、そういうこともあるでしょう。しかし、それとこれとはまたおのずから別です。それもけしからぬけれども、それとこれとは別だ。人命に関する問題です。厚生省の本来の任務に関係する問題です。大臣は、その点について重大なる決意を持ってえりを正す、こういう点について、あなたの責任と一緒に明確に態度を表明してもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/104
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105・神田博
○神田国務大臣 薬事行政につきましては、いまお述べもございましたが、厚生省の主管といたしましては非常に重要な地位にあるわけでございます。しかもまた、事柄自体が国民の生命に関するものでございます。保健、衛生すべてにわたることでございます。私といたしましても、就任以来そういう考えのもとで十分指導してまいったつもりでございますが、しかし先般来本院でいろいろ論議もございましたように、私といたしましてもこれはまことに考えざるを得ないと申しますか、何か一本しんの足らないようなところが出ているのじゃないかという感じを持ちまして、特に世論もそういう面で非常に重大な関心を持っておる際でもございますので、ひとつ早急に、これらの問題が一体どういうところから発生しているのか、またそういう問題が、伏せているものがまだあるのかないのか、今後どうしたならば薬事行政がもっと国民の医寮に直接つながって、生命を守るような非常な効果をあげる方法が出るかというようなことを込めて、心を新たにして行政を担当してまいりたい、かように考えております。いままであったことは、まことにこれは遺憾でございまして、弁明とか言いわけのことばがないと思います。十分そういう思いを新たにいたした考えのもとに行政の刷新をいたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/105
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106・大原亨
○大原委員 時間もきましたから申し上げておくのですが、最後に私は、問題は、いままでずっと指摘してきておりましたが、こういうところにもあると思う。つまりメーカーの書類審査で——最近は書類によって相当きびしくやっているようだが書類によって新薬の製造、販売の許可をやる、あるいは保険薬としての採用、薬価基準への登載ということ等がなされる、そういうことにも問題がある。だからメーカーが金残上その他、財政上相当大きなイニシアをとって、学者を動かして云々というふうな問題が出てくるわけです。その資料をつくるためには従業員をモルモットにして人体実験もする、こういうような、あるまじきことをやるようなことも出てくるわけです。それによって新しい薬が国民の前に出現をして、これが宣伝によって国民に普及されるということにもなってくる。だから薬事行政その他の問題を含めて、医薬品の許可のしかたを含めて——大渡順二君は、この新聞には、相当金をかけてもいいから、国の予研その他の機関を強化してきちっとして、そうして国が責任を持って、公文書で薬のそういう許可やその他についてもやれと言っている。アメリカでは、そういう政府の機関と一緒に、医師会のそういう自主的な機関、二つがチェックして、それが国民に責任を持つようになっている。日本においては、メーカーの一方的に提出した書類で、メーカーが頼んで金を出してやるのですから、メーカーが従業員の前にあらわれて、こういうモルモットのような問題が起きてくる。こういう問題についても、私はいままでの議論をさらに発展させていきたいと思ったけれども、これは前にも議論をしているから、ここでは私は問題点を指摘するにとどめる。そういう点で、私は、この問題については法務局その他各省の御出席をいただいたけれども、きのうも問題は相当議論されているが、まだ問題はたくさん残っているので、この際さらに究明をしていきたい。それで厚生省のほうもおざなりなことをしないで——これは一熊崎薬務局長の時代の問題でもない。いままでの長い間のしきたりがあるし、解釈があるから、それをおざなりにしたことはけしからぬけれども、しかし、これは長い間の積弊である。いままでの行きがかりである。そういうものから考えて責任をおろそかにするわけにはいかぬけれども、それによってやれば、また次にこのことを繰り返すことになる。最近薬の問題で問題が頻発している。大正製薬の問題からこの問題まで、とどまるところを知らない。浜の真砂みたいなものだ。事件が尽きない。ですから私は、抜本的な対策を強力に立てるように強く要望いたしまして、大臣に最後の見解を聞きまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/106
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107・神田博
○神田国務大臣 いまのお話がございまして、これは先ほど来申し上げましたように、心を新たにしてひとつ取っ組んでみたいと思います。同時に、いまお話がございましたが、薬務局でいろいろやっておりますことは御承知のとおりでございますが、厚生省といたしましては、またいろいろ研究機関もございますから、それらのほうの担当者の意見もひとつ聞きまして、またよく学者の意見も聞く、いろいろそういう識者の声も聞きまして、善処いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/107
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108・松澤雄藏
○松澤委員長 午後零時四十分まで休憩いたします。
午後零時七分休憩
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午後零時五十一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/108
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109・松澤雄藏
○松澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続けます。吉村吉雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/109
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110・吉村吉雄
○吉村委員 厚生省では、医療費の職権告示以来、薬の問題でたいへん薬になるような意見が多かったと思うのですが、あんまり薬になることばかりでもどうかと思いますから、これから私は、社会保障の今後の政策上の問題、特に社会福祉の関係について若干御質問を申し上げて、いままでの厚生大臣の失地を回復されるように、またそういう趣旨の決意を特にお聞かせを願いたいというふうに思うわけです。
初めに、これは事務当局でけっこうでございますが、政府の中期計画によりますと、昭和四十三年度の国民所得に対する振替所得は、その割合を七%というふうに見込んでおることが発表されています。
〔委員長退席、小沢(辰)委員長代理着席〕
三十八年度の実績は五・三%、こういうふうにこの計画は示しておりますが、この計画に含まれる社会保障のもろもろの要素、これは社会保障といいましても、そのとらえ方によってたいへん違った結果が出ますので、この中期計画に基づいた社会保障費というものによって出されるところの昭和四十年度の振替所得というのは、国民所得に対して何%になるかをまずお尋ねをしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/110
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111・竹下精紀
○竹下(精)政府委員 昭和四十年度の振替所得の国民所得に対する比率につきましては、実はこの問題につきましては企画室のほうでやっておりますので、私承知いたしておらないのでございます。後ほどまた、関係と連絡をとりまして……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/111
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112・吉村吉雄
○吉村委員 中期計画というのは、これは国の今後の方針として定められたものだと思うのです。私がいまお尋ねをしておるのは、その計画の全貌とかなんとかいう問題ではないのでありまして、この中における社会保障の関係の予算というものは、どういうふうにもくろんでいるのかということをお尋ねをしているわけですから、少なくともこのくらいの事柄は、各担当の局長は承知をしているのが筋合いじゃないかと思うのです。
局長が知らないということであるならば、これは大臣はもとより知らないということになるのかどうかわかりませんが、国の施策の中心をなしている中期計画なんですから、その中での社会保障関係費を、計画の目標年度ではどのくらいに押えようかということくらいは承知しておいてもらわなければ困ると思うのですが、大臣は御存じですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/112
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113・神田博
○神田国務大臣 中期計画、いまお述べになりましたように、今後の見通しの五年間を計算に入れまして、そして作成したわけでございます。計画でありますので、そう正確にというわけでございませんが、一応の基準にして、見通しとして立てましたということで、閣議了解をいたしたわけでございます。同時に、この見通しを立てるにつきましては、この閣議の前後を通じまして、この見通しの間には社会保障をひとつ画期的に伸ばしたい。ことに児童手当等も、この機会に織り込んでもらわなくちゃならぬというようなことで、大幅に実は振替所得をふやしてもらっておるはずでございます。いまちょっと表を私、用意しておりませんからあれでございますが、ずいぶん折衝いたしまして、大幅に載せてございます。あとで表が参りますればお答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/113
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114・吉村吉雄
○吉村委員 中期計画の中に明確に示してありまするのは、三十八年度の振替所得というのは九千六百十億、こういうふうに開示をしておるのです。四十二年度は、その割合は七%であって、額は二兆一千一百億というふうに示してあるわけです。そうしますと、三十八年度九千六百十億から、四十三年度においては倍以上にならなければならないということになります。四十年度はその中でどのくらいの振替所得を計画をし、予算の中に盛り込まれているのかということが明確でなければ、この計画は単に作文にすぎないということになるのではないか、こう思います。しかし、これはいまお聞きしましたところが、局長も大臣も本年度の振替所得額については知っていないようですから、これ以上追及してもしようがない。私の心配するのは、三十八年度九千六百十億のものを、四十三年度においてその倍以上の二兆一千百億にするということであるとすると、四十年度においては相当の金額、相当の計画になっていなければならないはずだ、こういうふうに思うので、いまの大臣の答弁からしますると、振替所得の増額のために努力をしてまいりました、これからもします、こういうことでございますけれども、だとするならば、四十年度は一体どのくらいの金額を計画しているかというくらいは知っておくように、特にお願いをしておきたいと思うのです。
その次にお尋ねをしたいのは、厚生省の本年度の予算の総額は四千八百十九億であって、前年度に比較いたしまして八百二十九億円増ということになるわけであります。この八百二十九億の内訳を、政府が提出する予算の説明の中で、項目的に分ければどういうふうになるのか。たとえば生活保護は幾ら、あるいは社会福祉関係は幾ら、社会保険、このごろは環境衛生ということばを使わずに、保健衛生というふうに言っておりますけれども、これは大体どのくらいずつになっているのか、その占める割合は一体どうなっているのか、これをひとつお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/114
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115・小沢辰男
○小沢(辰)委員長代理 吉村君に申し上げますが、予算の総括的な問題については、会計課長と企画室長がいま向かっておりますから、おそらく児童局長では児童局所管以外のことはわからぬと思いますので、すぐ官房を呼びますからちょっとお待ち願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/115
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116・吉村吉雄
○吉村委員 それでは、あと会計課長が来てからということになるでしょうが、この中で社会福祉費という項があるのですけれども、これの増額された総額は、一体昨年度に比べてみてどれだけの数字かということはおわかりになりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/116
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117・竹下精紀
○竹下(精)政府委員 社会福祉費の四十年度予算額は四百二十九億円でございまして、三十九年度の当初予算が三百七十二億でございますので、増加額は五十七億でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/117
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118・吉村吉雄
○吉村委員 この社会福祉費の増額五十七億というのは、厚生省の増額予算の、各項目的に言えば何%くらいになるかは御存じですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/118
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119・竹下精紀
○竹下(精)政府委員 御質問の意味は、厚生省の増額八百二十九億に対して五十七億の比率という意味でございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/119
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120・吉村吉雄
○吉村委員 そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/120
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121・竹下精紀
○竹下(精)政府委員 社会福祉関係四百二十九億の前年度に対する増加比率は一五・六%でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/121
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122・吉村吉雄
○吉村委員 いまの数字は私は少し疑問に思いますけれども、あと会計課長が来てからこの点は詳しくお尋ねをすることにいたします。
大臣にお尋ねをしたいのですけれども、昭和三十七年に、御存じのように社会保障制度審議会のほうから答申と勧告が出されております。この答申、勧告の中で特に低所得階層に対する対策、こういうことを述べておるわけですけれども、この中で社会福祉についての見解を述べ、こうあるべきだということを勧告しておりますが、大臣は一体この勧告と答申の社会福祉の動向について、これに賛意を表せられておるかどうかお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/122
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123・神田博
○神田国務大臣 いまお述べになりましたのは、三十七年の八月でございますか、社会保障制度審議会から答申と勧告のございました、いわゆる「社会保障制度の総合調整に関する基本方策についての答申および社会保障制度の推進に関する勧告」、これは非常によくできておりまして、私もこれを指針として、そして厚生行政を進めてまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/123
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124・吉村吉雄
○吉村委員 この中の社会福祉の項に、次のようなことが載っておるわけです。「つぎに、社会保障は救貧から防貧へ発展するといわれる。すなわち、救貧についで防貧が社会保障の目標としてあげられるが、防貧のなかでは、低所得階層対策が、それを目標とする社会福祉政策がこの際としては重視されなければならない。」こういうことを言っておりまして、なお最後に、「社会福祉は社会保険を補完するものであるが、そのため第二義的なものではないから、税金による一般財源は、公的扶助についで、この面に優先的に投入されるべきである。」こういうふうに述べております。この見解には大臣は賛成ですか。
〔小沢(辰)委員長代理退席、井村委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/124
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125・神田博
○神田国務大臣 この見解に賛成いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/125
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126・吉村吉雄
○吉村委員 そこでお尋ねをしたいのですけれども、先ほど児童局長のほうからお話がありましたが、本年度の厚生省予算というものを若干分析をしてまいりますと、社会福祉関係の予算が非常に少ない。その占める割合は、先ほどの局長の御答弁では一五・何がしというお話でしたけれども、私の調べたところによりますと、厚生省予算の中で占める社会福祉費というのは八・九一%で四十二億前後、こういう状態です。これはいま大臣が述べられた社会保障制度審議会の答申と勧告、これに載っておるところの社会福祉に対する考え方、こういうものからすると、私は数字的にはだいぶ違った結果になっているのではないか、こういうふうに考えるのですけれども、この点はどのように説明をされますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/126
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127・神田博
○神田国務大臣 先ほどもお話しございましたように、今年度の厚生予算の伸びは約八百三十億でございますから、前年度に比べまして、パーセンテージにしまして二〇・八だと記憶いたしておりますが、御承知のように国の予算の伸びが一二・ちょっとでございますが、それらと比較いたしますと相当伸びておるのじゃないか、こういうふうに考えております。ただ、申し上げたいことは、その前のことでございますが、ことしは非常な財源難でございまして、自然増収も非常に乏しいというようなことでございまして、予算の最初の編成も、一昨年までは、前年度の予算に比べまして五割程度の要求を認められておったわけでございますが、本年度は三割頭打ちというようなきびしい要求予算にするようにというようなことでございまして、これらも私は閣議等におきまして、厚生予算だけは違うのだ、三〇%ではバランスのとれた社会保障の予算としては心もとないということを主張いたしたわけでございますが、私だけでこだわるわけにもまいりませんので、その大筋には賛成しながら三割予算を組んだ。しかし、結果は二〇・八でございますから、これは私も不満でございますが、先ほど来申し上げておりますように今年は未曽有の近来ない財源難だ、自然増収が少ない、こういうような事情もございまして、吉村委員からお話しございましたように少ないのじゃないか、こう言われますと決して多くないということになります。まあがまんしてくれということでございましたが、これは非常に耐えがたきを忍んでおるということでございましょうか、できるだけ努力をいたしましたが結果においてやむを得なかった、こういうように御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/127
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128・吉村吉雄
○吉村委員 政府のこの予算編成に対する態度自体については、私はたいへん問題があると思っておるのです。このことは、先般来八木委員から追及があったところです。と申し上げますのは、各省ごとに五割なら五割、三割なら三割の線で要求をしなさい、そういう態度というものが一体いいのかどうかということについては、私は非常に問題がある。特に今日のこの経済成長によってもひずみが起こっておる、このひずみ是正ということを看板にしておる、あるいは社会開発というものを看板にしておる、そういう中での予算編成ということを考えるならば、その社会開発なりあるいはひずみ是正なり、そういう立場に立って重点的に予算編成方針というものがとられるべきが至当であろう、こういうふうに考えるのですけれども、それを一律に各省何割、こういうようなやり方自体はたいへん問題があるところだと思うので、これは政府全体としてそういう姿勢を直してもらわなければならない、このように私は思います。特に厚生大臣の場合には、社会保障という非常に重要な分野を受け持っておる責任者でございますから、しかもいまの政府は、社会開発とかあるいは人間尊重とか、こういうことを言っておるわけですから、各省同じような割合で予算要求をするという今年度の予算編成方針に対しては、当然それを変更させる、そういう努力が前堤でなくてはならないと思うのです。この点は、先般来八木委員からもずいぶん追及があったところですので、私は同じようなことは繰り返したくはないと思う。しかし、いまの大臣の答弁をお聞きしますと、そういうような予算編成の方針であって、その中で厚生大臣として一生懸命努力をしたけれども、これでがまんをせざるを得なくなった、そういうお話でございますが、そういうようなことではいつまでたっても私は、社会保障というものが充実をする、こういうことにはなっていかないではないか、このように思います。初めに指摘をしましたように、社会保障に関する振替所得の計画というものが、中期計画の中でこれだけにするということを明確に閣議決定の方針として示されておるわけです。そういう中で、四十年度では振替所得というものは幾らにすべきかというようなことも大臣は知らない。その額は一体どのくらいにしなければ、目標年次に目的を達するということにならないというようなことも知らないでおったのでは、委員会で幾らそのために努力しましたと言われても、私は納得しがたいのです。ですから、中期計画なりあるいは所得倍増計画なりというものを立てた場合、一応の社会保障に対する計画というものがあるわけですから、目標がありますから、あるとするならば年次的に計画を立ててそこに到達をする、政府全体がそういう姿勢になる、こういうような方向での努力というものがまず前提でなくてはならないというふうに思うのですけれども、どうもその点が私は納得できない。そこで、大蔵省との折衝でこうなりました、ああなりましたというのは、政党政治のもとなのですから当然内閣としては責任は同一にとらなければならない、こういう状態の中で、先ほどの大臣の答弁では、私は、社会保障を重視をしている政府の態度というわけには納得できない。その内閣の一員としての厚生大臣のいままでの努力というものについては、これまたどうも具体的に数字も知っていないという中では、本気になって努力しているというように理解をするわけにいかないのですけれども、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/128
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129・神田博
○神田国務大臣 中期計画との関係でございますが、中期計画はあの当時、初めはだいぶ高度成長のつもりで考えたのでございますが、途中から、先ほどお述べになったように七・ちょっとに変えたことは事実でございます。そこで、社会保障の費用が少ないじゃないかということでございますが、これは私も決して多いと思っておりません。しかし、努力したことは事実なのでございまして、ことに予算要求の際は池田内閣でございまして、三割頭打ちということできまりました。これは私も最後までがんばりまして、今年度だけに限って私は涙をのんで三割要求に応ずるが、来年はそういうわけにまいりませんよ、ひずみ是正という大きな部門を担当している厚生行政として、そういう一律におやりになることには承服できないということをずいぶん申し上げたのでございます。当時、池田総理まだ御健康な時分でございまして、そう言うてもそんな全体で三割以上伸びた例がないじゃないか、大体二割台だ、だから予算査定でひとつ協力するから、厚生省だけ三割をオーバーするというわけにもいかぬから、神田君ここはがまんしろということになった。これは内輪話を申し上げて恐縮でございますが、そこで折衝に入ったわけでございます。折衝に入りまして、いまお述べになった、私の申し上げたような数字でございますが、これは少ないことはよくわかります。しかし、この折衝の過程におきましては、いろいろ難航いたしました。ことに、私どもといたしましては低所得者階層の問題を一番重視しておりますので、それらの問題について協議いたしたわけでございます。低所得者階層の対策にはいろいろあるわけでございますが、特に日本の現状からして児童手当がおくれている。これは世界じゅう、少なくとも八十カ国くらい児童手当をやっていると聞いておるのでございますが、わが国だけがおくれておりますから、これをひとつどうしても目標にしたいというような折衝をいたしまして、財政当局もその事態はよく承知して、これをやれば大きく伸びるのだということでございましたが、といって調査が十分でございませんから、ひとつ調査を早く完了して踏み切ろうじゃないか、こういう了解もございまして、事四十年度においては児童手当制度の創設の調査費もとりまして、すみやかに児童手当制度がしかれるような仕組みにしようというようなことも配慮しておるわけでございまして、将来といいますか、ここ二年、三年先のことを考えますれば、先ほど長期計画で四十三年にまいりますと三十八年の九千六百億台が二兆一千億台になるということも、そういう制度を並行的に考えた結果でございます。これはなかなか議論があったのでございますが、ねばりましてそういうような計画に入れてもらった、こういう次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/129
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130・吉村吉雄
○吉村委員 私は、この社会保障費全体のワクの問題については、いまの政府の政策の中心をなしておる中期計画で議論をするしかないと思って、初めからその質問を進めたわけです。大臣は、社会保障費全体のワクを増大させるために努力をされたというお話でございますけれども、国の一つの基本方針があるならば、三十八年度から四十三年度までの間にこうしたいというのであれば、その中間の本年度においてはどうすべきか、ここに基本を置いて閣議なり何なりで主張をしなければ、正しい意味での政府の方針に対する大臣の努力ということにはならぬではないか、またそういう基本に中心を置いた要求をしなければ、その発言力、説得力も弱いであろうと思います。いまの大臣の答弁では、具体的には児童手当のことに触れられましたが、それ自体はたいへんけっこうでございます。しかし、児童手当の制定のための予算は、昨年度よりはむしろ減っておるというのが現実の姿でしょう。しかし、これは調査費でございましょうから、必ずしも昨年度より多くなければならないということを言わんとするものではないのです。それはそれなりに、私は児童手当制定のために——すでにおそきに失しておるのですけれども、当然これはILO百二号の条約の関係から見ましても実現をしなければならないと思いまするし、この点は、これから政府がつくるであろう原案についてもいろいろ私ども意見を持っておるので、この児童手当の問題についてはしばらくおきます。しばらくおきますけれども、児童手当の問題について努力をしたと言われますが、これはもうすでに前からの厚生省の方針でございまして、こういうものについて、もうやらないような態度をとるというふうに大蔵省なりあるいは閣議全体がもし進んだとするならば、これはたいへんな間違いであって、これは当然のことが当然そこまでいっている、むしろおそいというふうに言わなければならないと思います。そこで私は、社会保障の全体の予算の問題については、先ほど申し上げたような立場で、十分これからワクを拡大する政府の方針を明示しているわけですから、国民が納得できるような、そういう予算編成あるいはその努力をしてもらいたいということを申し上げておきたいと思います。
その次に、そうして確保されたところのきわめて少ない社会保障予算、その中て失業対策費を除きますと、厚生省予算ということになるでしょう。この厚生省予算の中で、社会福祉関係の予算というものが非常に少ないと私は思うのですけれども、大臣はどのように考えていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/130
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131・神田博
○神田国務大臣 私はそういうふうには考えないで、厚生行政として、やはり全体を通じてバランスのとれるような予算にしたい、こういう考え方でやってまいりまして、各費目、これはいろいろ御議論はあろうかと思いますが、バランスのとれているものにおおむね妥結した、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/131
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132・吉村吉雄
○吉村委員 大臣、先ほどあなたに、社会保障制度審議会の答申と勧告、この中における社会福祉に対する見解についてどうですか、こう質問しましたところが、あなたはそれに賛成です、こう言われた。賛成だとするならば、この社会保障制度審議会の答申と勧告の中における社会福祉に対する見解というものは、いまの大臣の答弁の内容とはだいぶ違うだろうと私は思います。まず重視をされなければならないのは、社会保障は救貧から防貧に向かっていかなければならぬ、防貧という政策に重点を置いていくとするならば、まず社会福祉というものを重視をし、その中に税金というものをよけい使わなければならない、こういうことを勧告は言っておるわけです。ところが、本年度の予算の編成を見ますと、あるいは昨年もそうでありましたけれども、八百二十九億の増額の中で、社会福祉関係のふえた分というのは五十七億にしかすぎないのですよ。八百二十九億の増額分のうちで、約六割強というものは社会保険費ですよ。これまた、私はもっと増額しなければならないというふうには思います。社会保険費も、今日の医療制度のあり方から見るならば、これはもっともっと増額しなければならないというふうには思いますけれども、しかし、もっと社会保険というものを防貧という観点で進めていくという立場に立つならば、もっと重視しなければならないのは社会福祉だということをこの勧告も言っておる。私はこの勧告と答申に全く賛成の立場なんです。大臣も賛成だと言われた。ところが、予算編成は全くそれと別になってきているということを私は指摘したい。どうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/132
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133・神田博
○神田国務大臣 御指摘されると、そのように御批評を受けることも私は無理からぬことだと思います。しかし、御承知のように、社会保険費のふえたということは、おおむね国民保険がすでに約束済みになっておりまして、計画の実施後の二年目を迎えておりまして、そういうような費用がやはり相当多く見込まれております。その関係でございまして、これはまあ既定計画による増ということになりましょう。われわれといたしましては、それもふやす、こっちもふやす、両方ふやしたかったのでございますが、何といっても予算の全体の伸びが一二%台、しかるに厚生省は二〇%台になった。その二〇%台になった内訳を見ると、社会保険のほうが伸びて、そうして福祉関係が伸びていないという御批評はおっしゃるとおりでございますが、両方伸ばしたかったのだが、なかなかそうはいかなかった、こういう苦しい事情であることもひとつ御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/133
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134・吉村吉雄
○吉村委員 会計課長来たのでしょうか。——それでは、私のほうで調べたので申し上げますと、なるほど厚生大臣としては、どれもこれも伸ばしたいということはわかるのです。ただ、今日の社会保障政策の中で、どれを重点に考えるかということが、私は大臣として必要だろうと思う。遺憾ながら今日のわが国の社会保障政策というものは、防貧というよりも救貧になっておる。それではいけないということが、勧告であり、答申であると私は思うのです。その勧告と答申にあなたは賛成だと言われておる。賛成の立場に立った責任者であるあなたが、予算編成をするのにあたって、どれもこれもというふうに言っても、どこに重点を置くかという方向だけは、あなたはやっぱりなくてはならないと思うのですよ。そこで、今年度の予算というものの伸び率を大体見てみますと、生活保護は、これまた少ないとはいいながらも——比較をして言うのですよ。相関関係の問題ですから、私はこれでいいと言うのではないのですよ。伸び率を比較しますと、大体前年度に比して、生活保護の関係は一八・三%ですよ。それから社会福祉の関係は一五・四%ぐらいです。社会保険が四五・一%ぐらいです。保健衛生の関係が一六・三%、失業対策費、これは労働省の所管でございましょうが、一二%ぐらいです。こういうような状況になっておるのです。この例から見ましても、あるいは予算総額全体から見ましても、厚生省予算の中で占める各項目ごとの額から見ましても、社会福祉費の伸び率というもの、あるいは額そのものも非常に少ない、こういうことを数字が明瞭に示しておるのです。そうなってまいりますと、どれもこれも伸ばしたいということで努力をされたけれども、結果的にまま子扱いされたのは社会福祉の関係でございますということを、これは物語っている。それでは、あなたが先ほど、今日の社会保障の状態の中では、答申と勧告の線に従って社会福祉を重視をする、そういうようなことに賛成だという趣旨と全く違うことになってはいませんか。そうじゃございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/134
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135・神田博
○神田国務大臣 いまあげられた数字をまともに見た場合には、いまお述べになったような御意見もあり得ると思います。しかし、私どもといたしましては、この中でも、低所得者階層のために母子保健対策等をはじめ、いろいろ後年度において相当予算が伸びるというものを用意しておりますので、今年度は伸び足りなくとも、来年度以降は当然伸びていくというような予算措置をしておる、こういうところもひとつまた御承知願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/135
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136・吉村吉雄
○吉村委員 どうも大臣の態度は私は納得できないのです。いまの日本の社会保障政策の中で、やっぱり欠陥となっておるのは、あと始末に追われておるということだと思うのですよ。したがって、救貧対策に国の税金がよけい使われておる。これは救貧政策ですから、どうしても使わなければならないお金であって、これを私は否定しようとはしない。ですけれども、政策を推進する立場からするならば、防貧という立場に立った政策が充実をしていけば、救貧の政策費というものは減るはずだと思うのです。答申と勧告もそういうことを強調しておる。ですから、社会保障の政策という観点からすれば、防貧の主要な役割りは社会福祉というものが果たすのだ、したがって、社会福祉にできるだけ税金をつぎ込むべきである、こういうことを述べておるのですよ。そういう見解に賛成だとするならば、私は、予算の面でそれが明確に出てこなければならないはずだと思うのです。今回の四十年度予算の中で、社会福祉として特に目新しいものを言うとすれば、いま大臣が強調したところの母子の保護対策だろうと思うのです。これは将来伸びるという可能性もあるというお話でございますけれども、これまた社会党が二年ぐらい前から言っておった牛乳無償給与法案というものをまねをしてやったくらいで、低額所得者に対してだけというのですから、それはちょっぴり芽を出したという意味で、ないよりはいいということは言えると思うのです。しかし、そこまで考えるならば、このことだってもっと本気になって、もっと充実をしたものにしなければならないと思うのです。私はこのことを悪く解釈したくはございませんけれども、参議院選挙も近いのでというようなことを、考えようによっては考えられないことはない。ですから、もっと根本の問題として、いまの社会保障政策というものを、防貧に重点を置いてやるとするならばどうあるべきかということを私はお聞きしたがったわけです。大臣に質問をしておるのは、数字的な問題は別として、そういう意味で私は質問をしておるのです。ところが答弁自体は、一生懸命やりましたと言うのだけれども、どうも数字の上でそれがあらわれてこないものですから、それでは一生懸命やったということにならぬだろうということを申し上げておるわけです。
それから次に、社会福祉費の中でややこまかい問題に入っていきます。こまかい問題を議論しないと、大臣もよく実情がおわかりでないようですから、ちょっとお尋ねをしますけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/136
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137・井村重雄
○井村委員長代理 吉村君に申し上げますが、会計課長がお見えになりましたから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/137
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138・吉村吉雄
○吉村委員 そこで、社会福祉費の増額分というものは約五十七億三千万ですね。このうち、社会福祉施設に働いておる職員の処遇改善費というものは、児童局と社会局と別々にしてどのくらいずつになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/138
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139・戸澤政方
○戸澤説明員 来年度、社会事業施設関係の職員の処遇改善費としましては、総額で三十二億二千三百万ほど計上しております。局別に分けますと、そのうち社会局分は五億五百五十八万五千円、それから児童局分が多いわけで、二十七億一千七百万程度でございます。内容は職員の待遇改善その他であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/139
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140・吉村吉雄
○吉村委員 その次に、社会福祉施設というものはだいぶ老朽施設も多い。したがって、改築もしなければならぬというような要望は前からあったわけですが、この社会福祉施設の拡充計画も含めて、当然物価は上がっていますから、施設に対する補助単価というものも増額をされなければならぬと私は思うのですけれども、そういう社会福祉施設の拡充あるいは増設、こういうことに要する費用というものは一体どのくらいになっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/140
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141・戸澤政方
○戸澤説明員 来年度、社会福祉施設整備費としまして、社会、児童合わせまして二十八億組んでおります。前年度の予算が二十四億六千万でございましたので、約三億四千万近い増額をはかっておるわけでございます。これは国の補助金として出すものですが、それ以外に、従来ともやっております老朽施設の整備につきまして、前年同様、年金福祉事業団のほうで還元融資をもって整備をもたらすことになっております。この還元融資の分が約四億ほど予定されております。
それから、ただいまの整備費の単価でございまが、お話のとおり実際の単価に比べて低いというようなこともありまして、来年度はさらに増額をはかりたいと思っておりますが、全体として前年の単価の六%程度を引き上げる予定で、目下財務当局と交渉中でございます。これは地域別とか種類別によっていろいろまちまちでございますので、全体を平均しまして六%上げたいという予定でもって、目下交渉中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/141
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142・吉村吉雄
○吉村委員 大別しますと、この約五十七億三千万円のうちで、施設職員の処遇改善費というのが三十二億くらいになる。それから社会福祉施設の拡充あるいは単価の引き上げに対しての予算が二十八億、残りの金はたいしたお金ではないのですけれども、それらは母子保健の充実のための牛乳の無償給付というのですそがういう方向に大体充てられるのではないか。そのほか身体障害者の補装具や何かの増額もあるだろうと思うのです。
そこでお尋ねしておきたいのは、施設職員の処遇改善費というのは、社会福祉政策の中に含まれるべきものかどうか、これは大臣にお尋ねします。社会福祉施設で働いておる職員の待遇というものは、公務員に比べてたいへん低いということがここ二、三年来問題になっておったわけです。本年、厚生省としては相当思い切ったアップだと私は思うのです。このこと自体は、私はその御苦労に敬意を表するのですが、社会福祉政策というのは、本来社会福祉の対象となるべき身体障害者とか、母子家庭とか、あるいは老人とか、そういう人たちに対するところのお金というものが社会福祉費だと私は思うのです。ところが、今度の予算を見て若干問題を感じましたのは、五十七億の増額分のうちで、社会福祉施設の職員の処遇改善費というのが三十二億を占めておる。これは一体社会福祉の政策に要する費用、こういうふうに理解すべきかどうか私は疑問を感じておるのですが、この点、大臣はどのようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/142
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143・神田博
○神田国務大臣 いまお述べになりましたような考え方も、考えられないわけではないと思います。しかし私どもは、広義の意味で社会福祉の費用だ、こういうふうに解釈しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/143
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144・吉村吉雄
○吉村委員 社会福祉施設、たとえば保育所なりその他についても、国が本来やるべきことを、それぞれの民間の事業家なりあるいは地方公共団体にということで委託して、そこで働いておる職員の処遇の問題については、今回政府がアップしなければならなかったということは、国に責任があるということを認識されてアップをしたものと理解するのです。そうだとしますと、この費用は、広義の意味では確かに入るでしょう。しかし、増額されたこの五十七億のうちで、約半分以上が職員の処遇改善費ということになるならば、社会福祉政策それ自体は、あるいは対象者が多くなったとか、あるいは給付を厚くしたとかいう問題とは全く違うのですから、これを社会福祉費の中に見るということはあまりにも広義に過ぎるのではないか、こういうように思うのですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/144
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145・神田博
○神田国務大臣 いろいろなおことばでございますが、施設というものは、やはり人がなくちゃ施設にならぬと思うのです。物と人を一体にして考えていく、そこで初めて施設と言えるのではないか。だから、そういう意味でこれはやはり福祉関係の費用に考えていいのではないか、こういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/145
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146・吉村吉雄
○吉村委員 そういう見解もあるだろうし、いままでそれでやってきたと思うのです。ただ、今年度の予算というものを見ますと、社会保障費全体の増額分というものはきわめて少ない、このように私は考える。特に社会福祉費の増額というものはその中でも少ない。そういうような状況の中で、増額をされた五十七億のうちで半分以上というものが、施設に働いておる職員の処遇改善費ということでとられてしまう。実際残ったお金は二十五億くらいになるわけですが、二十五億ぐらいでしか祉会福祉の政策は具体的には進めることができ得ない、こういうふうに結果づけられると思うのです。それがどういうふうにあらわれているかはこれからお尋ねをしておきたいのですけれども、児童局と社会局でいままで調べられた、たとえば老人の福祉についてはどのくらい保護の措置をしなければならないのか、あるいは児童についてはどのくらいを保育所に入所せしめなければならないのかというような数字を実は厚生省で調べていただいたわけですけれども、この数字は記録上必要だと思いますから、児童局長のほうから、社会局を含めて措置を必要とする人数、今日措置をしている人数を発表してもらいたいと思います。
〔井村委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/146
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147・竹下精紀
○竹下(精)政府委員 まず、老人福祉関係について申し上げます。
老人の健康ということは非常に大事な問題でございますので、働康診査という制度をやっております。六十五歳以上を老人と考えておるわけでございますが、その総数は六百十八万三千人ございまして、その中で健康診査を必要とする数は同数のはずになるわけでございますが、実際に健康診査を受けた数は三百九万二千人でございますので、大体半分が措置をとった数になるわけでございます。
それから、老人クラブ助成費関係でございますが、三十九年七月の推計で、総数が約五万クラブございます。その保護を要する数も同数の五万クラブでございますが、措置をとった数は四万クラブでございます。
それから、養護老人ホーム等に収容するものは、三十九年度末の推計で、昭和四十五年度までに十一万五千人と考えております。その中で四十年二月現在で措置をした数が五万六千七百人でございます。
次に、要保育児童でございますが、これは三十九年六月一日の実態調査によったわけでございますが、総数が二百六万七千三百十五人、保護を要する数が百二十一万四百三十一人でございます。その中で措置をとった数、つまり保育所に入所というような措置をした数が八十四万七千二百四十二人でございます。
母子家庭について申し上げます。三十九年度の厚生行政基礎調査による推計によりますと、約九十五万世帯になっております。その中で保護を要する数と申しますのは、いろいろ御議論のあるところでございますが、一応収入一万五千円未満のいわゆる低所得者ということで考えてみますと、その数は四十一万四百世帯でございますので、全体の四三・二%に当たります。この中で、現在何らかの対象になっておるということで考えてみますと、生活保護世帯が約九万一千世帯でございます。それから、国民年金法によります母子福祉年金の対象になっております世帯が十九万四千二百二十二世帯でございます。それから、児童扶養手当を受給しております世帯が十六万七千六百二十四世帯でございます。母子寮に入寮いたしております世帯が九千七百六十一世帯でございます。次に、母子住宅に入居いたしております世帯は四千二百九十五世帯であります。母子福祉貸付金の対象になっておりますのは、この制度ができましてから三十八年までの人員を一応考えておりますが、その数が六十一万二千人でございます。いま申し上げました数字につきまして補足いたしますが、生活保護世帯は三十八年七月一日現在でございまして、母子福祉年金、児童扶養手当、母子寮、母子住宅は三十九年三月三十一日現在でございます。
次に、身体障害者でございますが、三十五年の実態調査によりますと八十二万九千人という数字が出ております。この中で保護を要する数と申しますのは、これはなかなか正確に把握できませんので、一応措置をとった数を申し上げますと三十七万九千九百七十五人でありまして、その内訳は、更生医療の対象になった者が一万二千九十五人、補装具の支給交付をした者が三十三万四千七百六十六人、施設へ収容いたしました者が三万三千百十四人、こういう内訳になっております。
精神薄弱者でございますが、三十六年の実態調査によりますと三十四万三千人という数字が出ております中で、保護を要する数は、私どものほうでは一応収容を要するという意味で約五万人と考えておりますが、実険に施設へ入っております数は二千八百五十四人、こういう現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/147
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148・吉村吉雄
○吉村委員 厚生省の調査によっての数字がいまのような数字です。概観して言い得ることは、厚生省で措置を必要とする対象人員の大体半分程度しか国としては措置をしていないというのが、今日の社会福祉政策の実態だということをいまの局長の答弁が示していると思うのです。私が特にこのことを数字をあげて説明していただいたのは、大臣にそういう実情を知ってもらいたいということなんです。先ほどあなたは、広義に考えるならば、社会福祉施設の職員の処遇改善というものも当然社会福祉費の中でいいだろうというお話でございました。私はそのこと自体を否定しようとはしないけれども、そういう広義な考え方をするならば、社会福祉の対象として国が措置しなければならない問題というのはこれほどある。国の責任というのは、厚生省の調査によっても、それぞれ老人福祉なりあるいは児童福祉、母子福祉、あるいは精神薄弱者、あるいは身体障害者、こういうものに対してこうしなければならないと考えている数字の約半数しかまだ措置をしていないというのが今日の実情なんです。こういう状態を放置しておったのでは、私は、社会保障というものはいつまでたっても充実しっこないと思う。本来、こういうことにもっとお金が使われるならば、救貧対策費というものは少なくて済むはずだと思うのです。そういう意味合いで、先ほど来私は、この社会福祉というものについてあなたが勧告なり答申なりの線を尊重し、その答申に賛成をしているのだとするならば、それは具体的にどう対策を進めるのかということが、お金の面でもその他の面でも、現実的になっていなければならないはずだと思うのです。いま局長が説明をされた数字、そうして今日における社会福祉対策の貧弱さ、こういう実態から見て大臣は一体どうお考えになられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/148
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149・神田博
○神田国務大臣 いま政府委員から説明しましたことにつきまして、具体的の数字をもとにして吉村委員の国の施策が非常に貧弱である、非常に道遠しじゃないかというお考え方については、私も全くじくじたるものでございまして、かるがゆえに予算の増加を主張したわけでございますが、なかなかうまくいかなかったと申しますか、結局金の問題でございまして、ないそでは振れないということになりましたが、非常に残念に思っております。しかし、決してそれであきらめておるわけではございませんので、これはどうしても、年を追ってひとつなるたけ近い機会に解決しなければならぬ、こういう考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/149
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150・吉村吉雄
○吉村委員 いまの社会保障政策の中で、社会福祉対策というものがきわめて不十分だということを大臣も認められており、それを先ほど局長は数字的に説明をされておる。したがって将来これを充実するように努力していきたいというお話でございますけれども、だとするならば、中期計面の中で具体的に年次的にどういうような計面をもってこの社会福祉政策というものを推し進めようとしているのか、ひとつお聞かせを願いたい。
委員長、だいぶ時間をとっているようだから、本会議も近づくので、私のこの質問は若干保留をしてまたやることにしますから、いまのはちょっとなにしてください。
私が何回も言っておりますのは、社会福祉というものについて、ややもするとこれは軽視されがちな政策なんです。非常に弱い層なものですから、あまり具体的な声となってあらわれてこない。しかし、それを放置しておけば、結局救貧対策費というものが多くならざるを得ない。今日までの日本の社会保障政策の欠陥は、そこにあったと私は思うのです。生活保護費というようなものが多くならなければならないのはやむを得ないとしましても、生活保護対策人員というものは、ここ十年来あまり変わっていない。これはやはり国の政策の失敗を意味しておると思うのです。国の政治というものは、やはりそういう困っている方をなくしていくというのが政策の中心でなければならない。ところが、この人数というものも同じような状態に停滞をしておる。減りもしない。こういうようなことを考えてみますと、根本的な原因は、生活保護対策者の出入りがあるということなんです。ですから、生活保護から浮かび上がって、そして法の対象からはずれる人もおるけれども、同時に、今度は生活保護に組み入れられる人もあるということを意味しておると思うのです。なぜ一体そうなるのかということは、防貧政策というものがなっていないからそうなるのだ、このように考えざるを得ない。ですから、限られたお金の中でやることはわかりますけれども、その限られたお金の使い方というものについては、やはり防貧政策、その中での社会福祉政策、こういう社会的な弱者、いつ貧困におちいるかわからないような方に対する政策というものを強力に推し進めなければ、いつまでたっても社会保障は充実をしないだろう、こういうふうに考えるから申し上げておるわけでありまして、そのことは社会保障制度審議会でも明確に指摘をしておる。常に大臣は、その答申なり勧告には賛成だと言っているけれども、ここ二、三年来の予算編成の状況を見てみましても、それがふえていないということを私は強く指摘しておるのです。ことばの問題ではないのです。具体的にどうするかということによってわれわれも納得をし、国民も納得をする。今日の政府の社会保障政策はどういうことを目ざしているのかということを国民が納得しなければ、国の政策に対して協力しっこないと思うのです。ところが、ここ二、三年来のそういうような社会保障というものは、重点政策の一つに唱えられておりながらも、内容的にはいまのような状態に終始をしておる。これではいけない、こういうふうに私は考えますので、再度これを指摘しておるわけです。
私の昨年の社会福祉予算に対する質疑の過程で、職員の処遇改善の問題については、前児童局長が、あるいは前大臣が約束をし、それを実施してくれました。ただ、私は、新たな疑問として、一体この職員の処遇改善費というものを社会福祉対策費の中で見るべきかどうかということに疑問を感じた。そこでずっと増額をすると、ほかのほうが軽視をされてしまう。これではもう社会福祉政策は前進をしたということにはならない。それは数字的には、先ほど局長がお読みになった結果にあらわれておる。これではいけないというふうに考えるのであります。
きょう私は、そのほか幾つか具体的な例をあげて大臣の見解をただしたいことがありましたけれども、本会議の時間の関係で一応留保をします。留保をしますけれども、特に社会保障で、防貧という立場からそれに重点を置いているとするならば、もっと本腰を入れて、これからの政策というものを進める決意をしてもらわなければならない。あとになって、こうだああだという言いわけでは、私は納得できないと思う。何年来繰り返しておる問題である。しかも社会保障の中での社会福祉というものはもっと重視をしなさい、税金をもっと投入しなさいということを社会保障制度審議会が勧告も答申もしておる。ですから、これを裏づけとして、閣議なりあるいは予算折衝なりでやり得るはずです。そういうことに重点を置いた社会保障政策を進めていただくように特にお願いをして、私はきょうは質問を留保します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/150
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151・松澤雄藏
○松澤委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる三十日、火曜日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。
午後一時五十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01219650326/151
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