1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和四十年四月十三日(火曜日)
午前十時十八分開議
出席委員
委員長 松澤 雄藏君
理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君
理事 藏内 修治君 理事 齋藤 邦吉君
理事 澁谷 直藏君 理事 河野 正君
理事 吉村 吉雄君
伊東 正義君 亀山 孝一君
熊谷 義雄君 小宮山重四郎君
坂村 吉正君 田中 正巳君
竹内 黎一君 地崎宇三郎君
中野 四郎君 橋本龍太郎君
藤本 孝雄君 粟山 秀君
山村新治郎君 亘 四郎君
淡谷 悠藏君 伊藤よし子君
大原 亨君 小林 進君
滝井 義高君 八木 一男君
山口シヅエ君 本島百合子君
吉川 兼光君 谷口善太郎君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 神田 博君
出席政府委員
総理府技官
(科学技術庁原
子力局長) 村田 浩君
厚生政務次官 徳永 正利君
厚生事務官
(大臣官房長) 梅本 純正君
厚生技官
(公衆衛生局
長) 若松 栄一君
委員外の出席者
文部事務官
(大学学術局審
議官) 岡野 澄君
建 設 技 官
(住宅局住宅計
画課長) 角田 正経君
専 門 員 安中 忠雄君
―――――――――――――
四月九日
委員山村新治郎君辞任につき、その補欠として
島村一郎君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員島村一郎君辞任につき、その補欠として山
村新治郎君が議長の指名で委員に選任された。
同月十三日
委員藤本孝雄君、山村新治郎君及び長谷川保君
辞任につき、その補欠として一萬田尚登君、原
健三郎君及び大原亨君が議長の指名で委員に選
任された。
同日
委員一萬田尚登君及び原健三郎君辞任につき、
その補欠として藤本孝雄君及び山村新治郎君が
議長の指名で委員に選任された。
―――――――――――――
四月九日
労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案
(内閣提出第一二四号)
は本委員会に付託された。
―――――――――――――
四月十二日
戦没者遺族の処遇改善に関する陳情書外七件
(第三二号)
季節労働者に対する失業保険金の受給資格に関
する陳情書外二十件
(第三三号)
同(
第一五七号)
国民健康保険の財政確立に関する陳情書
(第三四号)
国民健康保険事業の強化改善に関する陳情書
(第三五号)
同外一件
(第一八四号)
健康保険法の改正反対に関する陳情書
(第三六号)
同外一件
(第一七七号)
健康保険法の改正等反対に関する陳情書
(第三七
号)
日雇労働者健康保険法の改善等に関する陳情書
外一件
(第三八号)
戦傷病者の妻に対する特別給付金支給に関する
陳情書(第三九
号)
じん肺対策強化に関する陳情書
(第四〇号)
社会福祉対策推進に関する陳情書
(第四一号)
失対事業就労者の賃金引き上げに関する陳情書
(第四二号)
原子爆弾被爆者援護法の早期制定に関する陳情
書外二件
(第四三号)
全国一律最低賃金制確立に関する陳情書外二件
(第四四
号)
保育所予算増額に関する陳情書
(第四五号)
同
(第一三一号)
保育所措置費全額国庫負担に関する陳情書
(第四六号)
保育所設置費増額等に関する陳情書
(第四七号)
盲人福祉対策に関する陳情書
(第四八号)
医療費の緊急是正に伴う財政措置に関する陳情
書(第四九号)
季節労務者の就労指導に関する陳情書
(第
五〇号)
国民健康保険事務費全額国庫負担に関する陳情
書
(第五一号)
医療費の増高対策に関する陳情書
(第五二号)
環境衛生関係営業予算確保に関する陳情書
(第五三号)
同
(第一二三号)
同
(第一八
六号)
老人福祉予算確保に関する陳情書外二件
(第五四号)
内地死亡兵遺族の年金給付に関する陳情書
(第
一〇〇号)
地方公営水道事業に対する助成措置に関する陳
情書(第一二一
号)
日光戦場ケ原の自然保護に関する陳情書
(第一二二号)
医療費値上げに伴う財政措置に関する陳情書
(第一二四号)
社会保障増進等に関する陳情書
(第一二五号)
医療費の引き上げ反対に関する陳情書
(第一二六号)
同
(第一八二号)
児童施設従事者の処遇改善等に関する陳情書
(第一二七号)
身心障害者(児)の福祉等に関する陳情書
(第一二八号)
失業保険法の改正反対に関する陳情書外二件
(第一二
九号)
同外三件
(第一八九号)
同(第二五九号)
日雇労働者健康保険の改善に関する陳情書
(第一三〇号)
同(第一八三号)
老人福祉に関する陳情書外六件
(
第一三二号)
同外一件
(第一八八
号)
原子爆弾被爆者援護法の早期制定等に関する陳
情書外一件
(第一三三号)
生活保護基準の引き上げ等に関する陳情書
(第一三四号)
低所得者の生活安定に関する陳情書
(第一三五号)
医療保障確立等に関する陳情書
(第一七八号)
戦災死没者の遺族援護に関する陳情書
(第一七九号)
季節労働者に対する失業保険金改善等に関する
陳情書(第一八〇
号)
戦争犯罪裁判関係者の補償に関する陳情書
(第一八
一号)
全国一律最低賃金制確立に関する陳情書
(第一八五号)
戦傷病者の妻に特別給付金支給に関する陳情書
(第一八七号)
国民健康保険財政の危機打開に関する陳情書
(第一九〇号)
各種医療保険制度の一本化に関する陳情書
(第一九一号)
国民健康保険の財政措置に関する陳情書外七件
(第二四四
号)
中高年令層の雇用促進に関する陳情書
(第二四五号)
港湾労働法案等に関する陳情書
(第二四六号)
へき地医療対策に関する陳情書
(第二四七号)
医学部卒業生の実地修練制度廃止等に関する陳
情書
(
第二四八号)
原爆被爆者援護強化に関する陳情書
(第二四九号)
成人病予防対策法制化に関する陳情書
(第二五〇号)
労働者災害補償保険法の改正に関する陳情書
(第二五一号)
国民健康保険改善に関する陳情書外一件
(第
二五二号)
健康保険制度改正に伴う被保険者負担の増加反
対に関する陳情書
(第二五三
号)
医療費の引き上げ等反対に関する陳情書
(第二五四号)
日雇労働者健康保険法の廃止反対に関する陳情
書(第二五五号)
国民健康保険事業の赤字国庫補てんに関する陳
情書
(第二五六号)
医療費の緊急是正に伴う財政措置に関する陳情
書(第二五七号)
失業保険法改善に関する陳情書
(第二五八号)
生活保護法に基づく保護費等全額国庫負担に関
する陳情書
(第二六〇号)
国民健康保険事業改善等に関する陳情書
(
第二六一号)
国民年金印紙購入措置に関する陳情書
(第
二六二号)
児童厚生施設に対する補助対象額拡大に関する
陳情書
(第二六三号)
失業保険受給資格改正に関する陳情書
(第
二六四号)
清掃終末処理施設に対する国庫補助金増額等に
関する陳情書
(第二六五号)
失業対策事業の全額国庫負担等に関する陳情書
(第二六六号)
失業対策事業労務者の石炭手当制度化等に関す
る陳情書
(第二六七号)
医療保険制度の強化に関する陳情書
(第二六八号)
医療行政等に関する陳情書
(第二六九号)
医療保障の確立及び健康保険法改正に関する陳
情書(第二七〇号)
健康保険財政対策に関する陳情書
(第二七一号)
は本委員会に参考送付された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
原子爆弾被爆者の医療等に関する法律の一部を
改正する法律案(内閣提出第二〇号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/0
-
001・松澤雄藏
○松澤委員長 これより会議を開きます。
内閣提出の原子爆弾被爆者の医療等に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。藤本孝雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/1
-
002・藤本孝雄
○藤本委員 私は、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律の改正案に関連して、被爆者対策の基本的な幾つかの点についてお尋ねいたしたいと存じます。
戦後二十年を経過しました今日、なお戦争のつめあとは原爆被爆者の方々の上に残っております。このお気の毒な方々のために昭和三十二年原爆医療法が施行されましたが、その後数次の改正を経まして被爆者の対策の内容が漸次手厚くなってまいり、今回の一部改正とこぎつけてきたのであります。これは昨年の衆参両院の決議にも沿うものであって、大いに歓迎するところであります。
あらためて申し上げるまでもなく、終戦直後、国民全体の被爆者に対する見方は非常にあたたかいものでありましたが、年月を経るに従って、ややともすれば次第にさめてまいりつつあるように見られる点がありますのはまことに遺憾であります。また、一方においては原爆被爆者の肉体的苦悩、精神的不安などは、まことに深刻なものがあると聞いております。特に原爆被爆の問題は、実に人道上の問題でもありますし、このような戦争のために不可避的な不幸事によって心身ともに日夜苦悩しておられる方々に、一日も早くその不安を取り除き、安んじて医療に専念され、生活の安定をはかるためにこそ、真の愛情ある政治の光を当てることが肝要であると信じます。かような立場から原爆被爆者対策を考えますとき、今回の法改正案ではただの一条のみにすぎませんが、これで十分改善策がとれるものであるか、まずこの点についてお尋ねいたします。
また、原爆医療保護の改善策として、具体的にお考えになっている点についてお答えをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/2
-
003・徳永正利
○徳永政府委員 ただいま藤本委員の御質問にもございましたように、この内容は単に一条でございますが、その他の面におきましても、福祉そのほか、いろいろな点において法律以外の改善を見ているわけでございまして、その詳細については局長から御説明申し上げますが、切々とお述べになりました趣旨は十分拝聴いたしまして、この対策に盛り込んだつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/3
-
004・若松栄一
○若松政府委員 ただいま政務次官のお答えにもありましたように、このたびの法律改正は、医療手当の限度額を政令にゆだねるという一条だけでございますが、このほかに、政令の段階におきまして、医療手当の支給制限の限度額を引き上げるというようなことを手当てをいたしますし、また省令の段階では、健康診断の内容を充実いたしますために、従来の定期健康診断のほかに定期外の健康診断を設ける、あるいは定期外の健康診断につきましても、必要に応じて入院して検査を行なうというような方法が行なえるような措置を講ずるつもりでございます。
なお、法律、政令、規則によらざる分といたしまして、予算措置をもちまして、原爆医療施設の改善あるいは福祉施設の充実というようなものを考慮してまいりたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/4
-
005・藤本孝雄
○藤本委員 ただいまの御答弁の中に、特別被爆者の範囲の拡大について、なかったように思いますので、その点重ねてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/5
-
006・若松栄一
○若松政府委員 たいへん恐縮でございましたが、特別被爆者の範囲の拡大を政令で実施する予定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/6
-
007・藤本孝雄
○藤本委員 この特別被爆者の範囲の拡大の中で、原爆放射能の強い影響を受けたといわれている地域、長崎の伊良林、磨屋地区、広島の己斐、高須地区については今回の範囲の拡大の中に入っておりますかどうか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/7
-
008・若松栄一
○若松政府委員 私ども当初計画いたしました範囲内には、伊良林、磨屋地区が入っておりません。西山地区ということで、特にフォールアウトが多量に降下したと思われる地域を検討したわけでございますが、磨屋地区についてはそのような事態を考慮しておりませんでしたので、現在のところまだ考慮しておりません。なお、地域の詳細につきましては、現地側の意向を徴しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/8
-
009・藤本孝雄
○藤本委員 それでは次に移りまして、今次の改正で医療手当が従来の二千円から三千円に増額されるというわけでありますが、この医療手当の性格上一般生活費とは異なったものでありますが、原爆被爆者に対してはその特殊な事情を十分考慮に入れられて、あとう限り増額が望ましい次第でございますので、この改正で二千円から三千円に増額を決定したのはどういう根拠によるものか、お尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/9
-
010・若松栄一
○若松政府委員 その医療手当の額は三十五年に制定されまして、それ以来五年間、金額は据え置きになっております。しかし、この間に、他のいろいろな社会保障的な給付等が増額しておりますし、物価の値上がり等もございますので、それらの諸制度の給付水準等も考慮いたしまして、約五割のアップをいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/10
-
011・藤本孝雄
○藤本委員 原爆被爆者に対しては原爆医療法に基づいて措置が講ぜられておりますが、昨年の衆参両院の原爆被爆者援護強化に関する決議の趣旨を尊重し、効果的に生かす意味合いから、また、戦争中国家との雇用関係、特別権力関係になかった者に対しては、無差別平等の原則で給付金措置などについても取り扱うという意味合いからも、戦後処理に関連して措置が講ぜられた一昨年の戦没者の妻に対する一時金の給付等に対する考え方と同等に、この際原爆被爆者に対しても、医療面のみならず、積極的な援護措置を含めた援護法を制定する意思はないかどうか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/11
-
012・若松栄一
○若松政府委員 原爆被爆者につきましては、必ずしも狭義の医療問題に限定せずに、心身の特殊な状態に適応し得るような実態に即した措置を講ずべく努力してまいっておる次第でございますが、今後もこの方針を進めていく考えでございます。
援護法を制定することにつきましては、やはり一般の戦災者等に対する処遇の均衡との問題もございますので、現在のところ検討を重ねておる次第でございます。
なお、御指摘の戦没者等の妻の給付金制度については、あくまで靖国の妻としての、その夫を通じて国と特殊の関係にある方々に対する慰謝の意を表するものでございまして、多少性格的には異なるものがあるかと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/12
-
013・藤本孝雄
○藤本委員 それでは援護法の問題は今後さらに御検討をお願いいたすことにいたしまして、これは昨年の十月三十日における当委員会での若松公衆衛生局長の発言の中に、認定患者が受療中に死亡した場合、ある程度の葬祭料を女給するということを考えているという答弁がありましたが、四十年度予算にはあらわれておりません。この点につきましてどうお考えになっておられるか、若松局長にお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/13
-
014・若松栄一
○若松政府委員 御指摘のように、当委員会で、将来認定患者の死亡の際に、葬祭料というようなものを支給するということでどうであろうかというふうに申し上げたことはございます。その後、予算編成等の手順でいろいろ検討いたしましたが、何ぶんにも、原爆被爆者医療等に関する法律が、被爆者の生存者の健康の保持、増進ということをねらいとしておりまして、もっぱら医療、健康保持ということでございますので、これが葬祭料ということになりますと遺族に対する補償ということになり、一般的に戦災者の遺族に対する補償というようなものと混同される趣がございまして、これも一般戦災者との均衡上、慰謝料あるいは葬祭料といったところまで幅を広げることは時期尚早ではないかという結論に達しましたので、今年度予算化にまで至らなかったことはまことに残念でございます。おわびを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/14
-
015・藤本孝雄
○藤本委員 最近のことでございますが、私はある新聞記事を見て非常に心を打たれたできごとがございました。それは広島の被爆者で詩人峠三吉氏の未亡人の自殺事件でありますが、記事によりますと、この未亡人は健診によって原爆症の症状が認められないと診断されながら、自分ではあくまで原爆症が残っていると思い詰めて、ついに人生に希望を失って自殺をはかったというのであります。私の数少ない見聞によりましても、この例に見られるような被爆者が必要以上に神経質になり、いわゆる原爆ノイローゼにかかる方々が想像以上に大ぜいいられるということであります。さらに、これは一つの社会的な偏見というべきでありましょうが、就職、結婚等の場合に思わざる支障が生じる事例もあるやに聞き及んでおりますが、これらはすべて被爆者全体が身心ともに安んじ得る状態になく、特に被爆者が発病の恐怖と焦燥にさいなまれていることを物語っているのであります。このような状態から被爆者を救うためにも、四十年度に行なう原爆被爆者の実態調査にあたっては、有効適切な配慮のもとに、さらにまた、思いやりのある措置を進められるために役立つよう、十分な事前研究を行なって実施することが望ましいと思いますが、当局はどのような目的でどのような方法をもって調査を行なうおつもりであるか、この点お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/15
-
016・若松栄一
○若松政府委員 ただいま御指摘のように、原爆の被爆者は、被爆者本人といたしましては常に自分のからだに自信を欠き、原爆症がいつあらわれるかという心配をして、ノイローゼの状態になるということが多々あろうかと思います。また他面、本人以外の環境といたしましても原爆被爆者に対して特殊な目をもって見る、あるいは健康上不利な条件にあるのではないか、あるいは遺伝的な劣性を持つのではないかというような偏見あるいは誤解等もございまして、本人の社会生活上マイナスの条件が多々あるととは御指摘のとおりであります。そういう意味からも、私ども、原爆被爆者の実態というものを正しく世の中に認識させ、本人も、あるいは社会もそれにあたたかい目をもって見ていって、本人の福祉に支障のないようにしたいという念願でございますので、今度の実態調査におきましてもそのような趣旨が達成されますように、被爆者の健康上の問題並びに生活上の問題、あるいはそれを取り巻く社会的な問題というようなものをできるだけ把握して、現実的な啓蒙に役立つような方向に進めたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/16
-
017・藤本孝雄
○藤本委員 それでは、この失態調査の方法について重ねてお尋ねいたします。これはすでに当局にも提出されてありましょうから、おそらく御存じのことと思いますが、先般日本原水爆被害者団体協議会より、このような被害者実態調査に対する要望がまいっております。要望はいずれももっともと思われる事納ばかりでありますが、時間の関係もありますので、そのうち一、二についてお尋ねいたします。
この調査対象に未登録被爆者、沖繩在住被爆者が含まれるよう、あらゆる方法を適用してください、未登録も含め、被爆者実数を把握してください、健康、生活両面について、全被爆者の全数調査を行なってください、健康調査については、十分の一抽出ということが伝えられていますが、この調査を完全なものにするためにも、またこの調査を機に、個々の被爆者の綿密な医学検査が行なわれるためにも、全数調査をしてください、こういう要望がまいっております。この点についてどのように調査を進められるか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/17
-
018・若松栄一
○若松政府委員 実態調査の内容についての御要望でございますが、第一は、未登録の被爆者を全部調査して洗い出すようにという御趣旨かと思いますが、私ども未登録者を把握するという方法がございませんし、現在も、どなたでも被爆者であるということを申し出てその証明がつけば、これを登録して手帳を交付するという手続になっておりますので、もしも被爆者で未登録の方がございましたら、積極的に登録していただくことによってこれを把握し、調査の対象に入れていきたいと存じております。
なお、沖繩の患者につきましては、沖繩にも被爆者が百名足らずいるという情報がございまして、昨月の末に第一班、昨日第二班が調査に出かけておりますので、その結果によりまして必要な処置を加えてまいりたいと思います。
なお、調査対象は全数を対象にしろというお話でございますが、私ども現在の予定では、経済的な生活上の調査は全数これをやる。しかし、身体検査等につきましては、三十万近い全数に綿密な身体検査を一挙にやるということはなかなか実際上の問題として困難がございますので、健康調査につきましては十分の一抽出で実施したい。これも能力の点と予算の面を考えまして、それ以外にやむを得ないだろう。また健康状態につきましては、十分の一調査で十分実態が把握できるということを信じておるわけでございます。なぜその十分の一で実態が把握できるかと申しますと、御承知のように、私ども結核実態調査、精神衛生実態調査等をやっておりますが、これも千何百分の一あるいは二千分の一抽出で全国民の実態を把握して、大きな間違いがないと信じております。したがって、十分の一抽出で健康状態に関して大きな間違いはなく、総体としての正しい把握ができるという考え方を持っておりますので、現在そのような考え方で実施しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/18
-
019・藤本孝雄
○藤本委員 日本原水爆被爆者団体協議会よりの要望事項は、なお十三、四項目あげられておりますが、先ほども申し上げましたように、いずれも被爆者自身の二十年にわたる苦悩の歴史の中からにじみ出た、文学どおり切実な要望であろうと思われますので、当局におかれましても、こうした要望について十分の配慮をもって調査に臨まれますようこの際強くお願いいたしておきます。
先ほどの問題と関連もあるのでお尋ねいたしますが、聞くところによりますと沖繩在住の被爆者の数は八十余名ということでございますが、その現状は一体どういうものか、お聞かせ願いたいと思います。
また、その被爆者に対する措置については、いかようにお考えになっておられるかについてもお尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/19
-
020・若松栄一
○若松政府委員 ただいまの沖繩の被爆者の状況でございますが、御指摘のように、現在沖繩の政府によって把握されておりますのは八十余名でございますが、このほかにあるのかどうか。これは調査団が行っておりますので、現地でまたPR等をいたしまして、新しい申し出があればそれに加わってくるかと思います。
なお、原爆医療法そのものをそのまま沖繩の地に適用するということは、法律上の問題がございまして不可能でございますので、できるだけこれは予算措置等で実をあげていきたいということで、特別地域連絡局を通じましてその措置を講じておりますが、この措置をいたしますにつきましても、沖繩の米民政府等の了解も得なければなりませんが、これらの了解が昨月中に完了いたしまして、先ほどのように現在調査班が二班に分かれて現地に出向いておりまして、現地で健康診断等を実施中でございますから、その結果、もしいわゆる認定疾患というような患者が出てまいりますと、この患者を南方連絡事務局の費用によりまして内地に輸送し、内地の適切な病院で治療をするという手はずも整えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/20
-
021・藤本孝雄
○藤本委員 たびたび触れるようでございますが、原爆被爆者の問題は人道上の問題でもあります関係上、法は平等の原則によって、原爆対策の上で、個人別にせよ地域別にせよ、何らかの偏重があってはならないことは申すまでもありません。そこで、原爆対策について、広島、長崎以外の県に対してどのような指導をされておりますかどうか、措置を行なっているかどうか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/21
-
022・若松栄一
○若松政府委員 被爆者につきましては、ひとしく法の適用をすることは当然でございまして、法の施行に関する限りは、長崎、広島であろうが、他の府県であろうが、甲乙はつけておりません。ただ、被爆者が集約的に居住しておられる広島、長崎地区では、とかくいろいろな点で便宜がある。また被爆者の数の少ない地域では、とやかくと不便が起こってくるということは、まことにやむを得ない状況でございます。健康診断を行なうにいたしましても、あるいは医療を受けるにいたしましても、広島、長崎地区では指定医療機関がたくさんある、ほかの府県では指定医療機関の数が少ない。したがって、交通に日時、経費がかかるというような点が起こってまいりますことはまことに残念でございますが、やむを得ないところでございます。なお、法律の適用以外の種々の福祉措置につきましては、長崎、広島にたくさんの方がおられるということから、その便宜のために各種の福祉施設等が設置されておりまして、非常に便宜があるわけでございますが、他の府県でそのような法律以外の福祉措置がないという点は、まことに御指摘のとおり残念でございますが、何ぶんにも患者が、非常に広範な地域に少数が散らばっておるという実態でございまして、特殊な設備等を設けましてもきわめて利用度が低く、能率が悪いという点を考えまして、まことに残念ながらやむを得ない段階であろうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/22
-
023・藤本孝雄
○藤本委員 ただいまの御答弁で理解できるわけでございますが、医療施設とか福祉施設等については、せめてブロック別、ブロックごとにでも施設を考える御用意があるか、将来おありかどうか、お尋ねいたしたいと思います。全国の被爆者数が約二十六万八千名のうち、広島、長崎を除いてその他の地域のものが約三万二千名であると記憶しておりますが、確かに被爆者の数からいえば広島、長崎がほとんどで、福祉施設がある程度集中することは避けられないかもわかりませんが、たとえば、私の出身地香川県でさえ五百十一名の被爆者がおりますし、その他愛媛、高知、徳島、四国四県の合計では二千百六十六名ということでございます。そこで、たとえば四国のどこかに適地を選んで福祉施設をつくるとか、また東京等につきましては非常に数も多いように思いますので、このブロック別に将来福祉施設をつくるとか、また既存の何らかの設備を利用して、そういうものに充てるというようなことをお考えになっておるかどうか、お尋ねいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/23
-
024・若松栄一
○若松政府委員 御指摘のとおり、被爆者はもう四十六都府県全域に散らばっておりますので、各府県ごとにしますと、十名単位のところ、百名単位のところ、種々ございます。そういう意味で、特殊な施設を設けましても利用度が低いということを申し上げたわけでございますが、これをブロック別等にいたしましても、ブロックの中心地にまで来るには相当な旅費、時間等もかかりますので、全国的にブロック別につくるということもなかなか困難があろうかと思います。そういう意味で、全国の中でも比較的患者の密度の高い中国、九州、四国というようなところが問題になろうかと思いますが、それらの地域の中心的な地域といたしまして、別府に被爆者の温泉保養所を前に設置いたしましたし、今後も広島に近いところ、長崎市に近い地域で被爆者の保養所等を計画いたしておりますので、それらの集約的な患者のいる地域でそれらの施設を利用することによって、少なくとも、ただいまおっしゃいましたブロック別の施設をつくったと同じ程度の効果があげられるのではないかと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/24
-
025・藤本孝雄
○藤本委員 現在はもはや戦後ではないといわれておりますが、確かに、わが国の経済、文化の復興ぶりを見ますと、まさにそのとおりであります。しかし、しいて申しますなら、戦争の傷あとはいまだに原爆者のうちに残されております。原爆症という特殊な疾病のゆえに脅かされる不安な心理状態、一方で移りいく一般の同情と無関心という、その置かれておる現状から考えますとき、被爆者の心の傷あとはむしろ大きくなっているということも見落としてはならないのであります。考えようによりましては、かりに戦争がもっと長引いていたといたしました場合、わが国土における原爆投下はさらに多かったでありましょうし、当然原爆による被害も広範にわたり、被爆者の数も格段のふえ方があっただろうと、思うだに戦慄を覚える次第でございます。そこで、私どもといたしましては、原爆被爆者の現状に対してはもっと関心を示すべきであろうと存じますし、人道上放置できない問題であると思うのであります。下級審ではありますが、先般の東京地裁の判決理由の中で、政治と行政の責務であり、手厚く援護の手を差し伸べるべきであるということがいわれておりますのも、端的にこの点を指摘しているものと考える次第でございます。そこで、原爆関係だけ特別扱いにできがたい諸点はいままでの御説明でよくわかるわけでございますが、佐藤内閣の強調しております人間尊重のたてまえから申しましても、被爆者の心情をあたたかくおくみ取りの上、対処していただきたいと存ずる次第でございます。幸い、ことし中には、先ほど御説明のあった被爆者の実態調査も行なわれることでもありますし、この実態調査にあたっては、手段を尽くされて十分の成果をあげられるよう努力され、そして把握された実態に基づいてさらに弾力的な対策を検討され、さらにさらに万全を期して十二分に改善措置を講じられ、被爆者が安んじて生活し得るよう格段の努力を続けることを切望する次第であります。今回の法一部改正、並びに原爆対策の内容につきましてはおおよそ明らかになりましたが、私は、これをもって決して満足すべきと断定するわけにまいりません。一歩前進するという意味におきましては、今回の改正はけっこうだとは存じますが、当局が今後さらに努力されることを期待し、大臣の所信を最後にお尋ねいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/25
-
026・徳永正利
○徳永政府委員 ただいまるる述べられました点につきましては全く同感でございます。いくさが終わりましてもう二十年たってまいりましたが、まだ戦中の傷あとがいろいろな面において残っていることも事実でございます。特に原爆被爆者の対策につきましても、これをもって満足すべきものではないと思います。ただいま実態調査を進めておる次第でございますが、そういう調査等も十分慎重に検討いたしまして、また実態調査をやる上におきましても十分なる配慮をいたしまして、今後原爆被爆者の方々が精神的にも、あるいはまた経済的にも、安んじて生活できるような方向に万全の策をとってまいりたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/26
-
027・松澤雄藏
○松澤委員長 この際、暫時休憩いたします。
午前十一時三分休憩
————◇—————
午後零時十八分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/27
-
028・小沢辰男
○小沢(辰)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。
大原亨君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/28
-
029・大原亨
○大原委員 原子爆弾被爆者の医療等に関する法律の改正案が出たわけですが、昨年の衆参両院の本会議での特別決議もございますし、その前の東京地方裁判所の判決もあるわけでございますが、特に本年は被爆二十周年という戦後二十年目を迎えておる時期でもございますし、政府の法律上あるいは予算上の措置にも若干注目すべき点がございますので、この際、午前中の藤本委員の質問もございましたが、重複を避けながら私のほうから逐次問題点につきまして質問を申し上げたいと思います。
第一番目は、被爆の実態でございますが、いままでの国会における討議や政府側の答弁を聞いてみましても、原爆による被害の実態というものが十分把握されていないのではないか。もっともこれは社会的あるいは医学的問題がいろいろございますが、そういう点があるのではないか。そこで、この際お伺いをいたしたい点は、特に今年度の予算では実態調査をやるということになっておりますので、それにも関連をするわけですが、現在生存しておる被爆者の実態だけでなしに、原爆によって死亡したりあるいは傷ついたり、障害を受けた人の実態、これも私はこの際、いろいろな資料に基づいて政府側は把握をしておられると思うのですが、この点をひとつお伺いしたいのであります。一体広島、長崎の原爆でどのくらいの人が死んだのか、あるいは今日まで原爆によって直接死なないにいたしましても、その後原爆によって死亡者がどの程度出ておるのか、そういう点について実態を把握いたしておるかどうか、こういう点につきまして、これは政府委員でもよろしいから、ひとつ最初に答弁していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/29
-
030・若松栄一
○若松政府委員 被爆者の実態でございますが、被爆の直後の調査が当時の警察当局によってなされました。これは概数でございまして、軍関係者を除きまして、死者、行くえ不明を含めて十一万八千人、負傷者が六万人、その他の罹災者が二十六万六千人という記録がございます。生存者の数につきましては、昭和二十五年十月に国勢調査に付帯いたしまして行なった調査がありまして、そのときに二十九万二千人という数が出ております。また、昭和三十五年十月に広島、長崎町県内で行なわれました実態調査では、両県に約二十六万六千人、これが調査によります数でございます。現在被爆者手帳の交付を受けておる者は約二十六万八千人でございます。また、被爆者の健康状態等につきましては、それぞれ疾病の状況等がございますが、被爆者であってその後どれだけ死亡したかというような正確な数は、現在把握されておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/30
-
031・大原亨
○大原委員 当時原爆によって死亡した人で、軍関係の人についてはお答えになりませんでしたが、軍関係のものはわかりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/31
-
032・若松栄一
○若松政府委員 残念ながら、市関係の数は私どもは把握いたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/32
-
033・大原亨
○大原委員 軍人や軍属や準軍属などの実態はわかっておるわけですね。だからそういうところから推定をして、当時広島、長崎、特に広島は軍部でしたから多いと思いますけれども、これを除くと当時の死亡者の実態はわかるのじゃないか。これはそういう方面からでも明らかにすることはできないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/33
-
034・若松栄一
○若松政府委員 軍関係については、援護局に照会いたしまして、どういう方法で調べるか検討してみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/34
-
035・大原亨
○大原委員 本年は、原爆の白書を三千八百万円を計上されて実態調査するということですから、これはある意味では画期的なことであります。そういう点からいうと、現存する被爆者の生活、健康面の実態調査をすることもさることながら、やはりいままでの死没者やその他被爆当時の実態を明らかにすることが非常に大切であると思うのであります。ですから、そういう点では警察の資料や軍の資料、いろんな自治体の資料などで非常にまちまちでございますけれども、しかしながら、これは外地で行なわれることではないのでありますから、調査をする方法があると思うのです。特に軍関係は死亡者の十一万八千人、負傷者の六万名以外に、これは相当数にのぼっておる。これらの人々がやはり今日全国各地におる。こういうことが実態であると思うのであります。したがって、そういう点についても、つまり実態的にと言いますか、歴史的にもそういう被爆の実相を明らかにするよう努力をしてもらいたい。この点を重ねて要望いたしまして、見解のほどを明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/35
-
036・若松栄一
○若松政府委員 御指摘のとおり、できるだけ実態的と言いますか、歴史的な立場も考慮いたしまして、当時から現在までのことがわかるような方法で調査を進めたいと思います。なお、疾病等についても、時間的の経過等を追って、できるだけの資料を集めて整理してみたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/36
-
037・大原亨
○大原委員 武史的、実態的調査をするということですが、こういうことについての問題ですが、今回の予算に三千八百万円計上いたしました実態調査費は、先ほど申したように、また政府側も藤本委員に対して答弁しておるように、これは現存する被爆者に対する実態調査であります。そこで、死没者その他をもう一度確かめようといたしますると、やはり本年行なわれる十月の国勢調査との関連が出てくると思うのです。昭和二十五年、昭和三十五年の国勢調査において調査をされた生存者の数があるわけですが、私はそういう調査のときに、やはり過去のそういう実態を調査する方法はないか。抽出して十人に一人などというようなそういう調査も、もちろん予算上あるいは人間の力の上においてはいろんな限界があると思うのですが、もう一回国勢調査を活用して、やはり総合調査を考えるような方途を講ずべきではないか。この問題については、時間的におくれる、もう十月一日の調査は進んでおるということがあるかないかについては私は明らかにしませんが、私はこの問題を考えて、せっかく調査費を計上したのですから、その点につきましてひとつお考えを明らかにしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/37
-
038・若松栄一
○若松政府委員 実はこの調査を企画いたしましたときに、当然この前にも国勢調査の付帯調査としてやっておりますし、今度も国勢調査に対してある程度調査を行なうほうが効率的であり、非常に綿密にできるのではないかということで、統計調査部の統計専門家を通しまして総理府の統計局と話し合いをして、現在のところ、仕事が進み過ぎておりますので、いまからそれに付帯調査として行なわれるかどうか、まだ確定的になっておりません。もう一度折衝を続けていくつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/38
-
039・大原亨
○大原委員 抽出による独自の被爆者の実態調査、それ以外にやはり国勢調査において、この機会に総合的な実態把握をしていく、こういう点につきましては、いま御答弁のように、これについてはこの際またとない機会でございますから、十分努力されるようにこれは要望いたしておきます。
それから、予算に計上されました三千八百万円の被爆者の実態調査ですが、生活面、健康面にわたる調査をする、こういうことでございますけれども、この調査にあたりましては、先般の本会議の八木委員の質問にもございましたように、広く社会学者等も含めて、被爆者の意見等も聞きながらやはり調査を進めることが必要ではないか、そういう調査項目の決定等においては、民主的にかつ慎重にやってもらいたい、こういう点につきまして、ひとつ見解を記録にとどめておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/39
-
040・若松栄一
○若松政府委員 御指摘のように、この調査の企画は一応原爆医療審議会を中心として、さらにそれに、従来メンバーになかった経済学者、社会学者等を入れまして、それ以外にも臨時的に知恵ををいただくような専門家の方にお寄りをいただきまして、企画立案を現在やっておるわけでございます。なお、被爆者団体等の御意見も出ておりますので、それらも加味しながらプランをきめていきたいと任じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/40
-
041・大原亨
○大原委員 健康とかあるいは生活面の調査が平面的、事務的に処理されますと、これはほとんど、戦後二十年ですから、被爆当時以降今日までの非常に大きな苦しみというものが表面に出てこない。実態の把握ができない。前の厚生大臣の小林さんのときでしたけれども、援護法を立法する際における特殊性の問題として小林厚生大臣が答弁の記録にとどめておりますけれども、たとえば被爆ということが、被爆という事態によって就職とか結婚とか、あるいは被爆者の社会生活全般に特別の影響を与える、こういうふうな問題はいろんな対策を立てる立法上の根拠になるのではないか、こういう議論が出たわけですが、原爆を受けましてから後、今日までのそういう被爆者の苦しい火消、こういう就職、結婚等にも触れるようなきわめてむずかしい問題ですが、そういう実態が浮き彫りにされるような、そういうことの調査を進めるべきではないか。特に被爆者が現在どういう不満とか、どういう願い、要求を持っておるかという、そういう点も浮き彫りにされるような立体的な調査、被爆当時の過去の問題と一緒に、現在被爆者がどういう願いやあるいは不満や心境を持って生活をしているかという、そういう社会的な問題も調査できるような設問事項の設定、そういう問題等についても留意すべきではないかと思うのですが、その点についてひとつ御意見を明らかにしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/41
-
042・若松栄一
○若松政府委員 今度の実態調査にあたりましては、生活面調査は全数調査をやるという企画をいたしておりまして、その生活面調査の中では、個人のいままでの生活の歴史とかあるいは不満、不平、願いというようなものも、記述的な項目も設けたいというふうに考えておりますので、できるだけすなおな声を反映させるような資料を整えたいというつもりで準備をいたしております。
〔小沢(辰)委員長代理退席、藏内委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/42
-
043・大原亨
○大原委員 それから、被爆の白書をつくる際に、被爆の実態というものを明らかにするためには、先ほど申し上げたように平面的な、事務的な調査ではいけないということですが、今日まで非常に部分的ですが、専門的な被爆の実態に対するアルバイト、研究の結果というものがあるわけで、文献もあるわけでありますから、そういうものも、今回の予算の運営にあたって、調査費の運営にあたって総合的にこれを収集をしながら、可能な限りこれを分析をしてやるべきではないか。というのは、いままでとかくお役所仕事による、たとえばABCCでも、厚生省の予研支所でもそうですけれども、お役所仕事によりますと、どうしても医学上積極的に肯定されていないものについては否定的な見解を出す。したがって、被爆の実態や実情とはかけ離れてくるというふうな問題があったわけであります。したがって、そういう具体的な研究あるいはいままでのいろんな文献、そういうものを整理しながら、これをいわゆる白書の実態の中に盛り込んでいく、こういう一つの方法をとるべきであるという見解もあるわけであります。したがって、そういう今日までの部分的な、専門的な研究や、あるいは被爆の実態に触れたような文献等を整理して、そうして原爆の実態を白書にしていくという広い視野をもって調査を進めてもらいたいというふうに考えますけれども、これに対する御意見を明らかにしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/43
-
044・若松栄一
○若松政府委員 先生の御趣旨まことにもっともだと思いまして、私どもも実はそういう企画をいたしておりまして、せっかく原爆被爆の二十周年でございますし、これから時間がたてばたつほど資料等も散逸いたす可能性も出てまいりますので、この際既存の資料等もできるだけ広く整理収集いたしまして、公正な立場でこれを検討する、その記録をとどめるという形で進めてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/44
-
045・大原亨
○大原委員 先般も本会議で八木委員が質問をいたしまして、これに対しましては外務大臣だったかと思うのですが、善処するという答弁があったと思うのです。というのは何かと言いますと、善処と言うと抽象的な答弁でしたからわからないので、これを明確にしたいと思うのですが、広島、長崎のABCCが今日まで調査しましたその調査資料が、これは秘密云々という議論はあるけれども、それは別にして、これがアメリカに持ち帰られておるわけであります。これは当時、ABCCが調査した資料だけでなしに、原爆投下当時の米穀通帳の台帳あるいは医師会の報告書、昭和二十五年の国勢調査のときの付帯調査の原票、これらをアメリカは持ち帰って、そしていろいろ原爆の影響調査のデータにしておるというふうに言われておる。この問題は、今日、当時の資料を追及する学者等もあってぜひほしい、こういうふうな要望もあるわけです。いろいろ専門的な、あるいはそういう文献の問題にも関係いたしますが、この問題は、政府を通じてアメリカに対してこの資料の返還を求めて、そうしてこれをやはり実態調査の資料として活用すべきであると思いますが、この点は、外務省はいないけれども、具体的に私は項目を指摘いたしておきますが、その点についての政府としては、先般の本会議場の答弁は抽象的でしたけれども、もう少し具体的にこれについての考え方を明らかにしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/45
-
046・若松栄一
○若松政府委員 いろいろ御指摘の資料があるようでございますが、私ども存じておらないものもございますので、これらの資料を収集する際に、現地その他の専門の学者の御意見を聞きまして、必要な資料があってそれが現在ABCCにないというようなものであれば、ABCCを通じてなり外務省を通じてなりして、折衝してみたいと思います。最近におきましては、ABCCの研究調査資料は全部日英両文で書かれまして、そして共同で発表いたしておりますので、この分については全くいま非常に公明な態度でやられております。なお、二十五年の調査の資料は、現在なおABCCに原票があるそうでございますので、これは随時いつでも利用して差しつかえない、こういうことでございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/46
-
047・大原亨
○大原委員 原爆投下当時の米穀通帳の台帳は、これは当時の軍人以外の家族を含めて、やはり広島市に在住する人々あるいは長崎市に在住する当時の人々の実態を把握する資料といたしましては貴重であります。ですから、いま申し述べになりました昭和二十五年の国勢調査の付帯調査原票と一緒にこれは返還を求めて、この際ひとつ被爆の実態を把握するはっきりしたデータにしてもらいたい。特に私は、現在のABCCのあり方等について、きょう議論する意思はあまりありませんが、しかし、広島、長崎のABCCには厚生省の予防研究所の支所があるわけです。それで、たてまえとしましては、たくさんの問題があるけれども、共同研究のたてまえになっておるわけであります。ですから、私は、このことは予研の支所を通じて、当時アメリカに持ち帰った資料については明らかにすることができるのでありまして、この点につきましてはその資料を取り戻して、そしてこの際十分被爆の実態を明らかにするための資料にしてもらいたい。これは前に政府委員の答弁がありましたから、厚生大臣のほうから御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/47
-
048・神田博
○神田国務大臣 ただいまお尋ねがございましたそういった必要の資料は、御趣旨に沿いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/48
-
049・大原亨
○大原委員 それで、全面的にこの際、ぼくはできるだけの資料は収集をして、そして原爆白書、実態白書をつくるべきである、こう思うわけであります。
それから、この自讃についての活用の心がまえであります。これについて私は二つの点で質問をいたしたいのであります。これは八木委員も本会議で質問いたしましたが、質問の時間に限定があったし、答弁もこれは不徹底でありました。で、私どもは、原爆白書については日本文と一緒に英文もつくって、そして広島、長崎の原爆の実態というものがどのようであったかという点について、やはり世界的に明らかにすべきではないか、あるいはこれを国連の専門機関にも提示をして検討させるべきではないか、あるいはまた、政府が、日本の平和外交ということを口にいたしておりますが、その平和外交の演説その他の資料、データとして大いにこれを活用して、そして日本の国民の考えというものを事実に即して、実態に即して世界に明らかにするような、そういう活用方法を今日考えてやるべきではないか。和文だけでなしに、英文でも資料をつくるという考え方でやる。三千八百万円の中で予算が足りなければ、これはさらに要求するという心がまえでやるべきではないか。その点につきましてお考えをお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/49
-
050・若松栄一
○若松政府委員 現在のところ、資料がどの程度膨大なものになるか、これは全然見当もついておりませんし、大体従来の資料をまとめましたものがどのような形になるかということも見当がついておりません。また、調査の集計も当然相当の期間を要すると思いますので、これらの結果をもし発表するといたしましても、おそらく来年度以降くらいになってくると思いますので、この作成するための予算等もおそらく来年度に回るかと思います。これらの点も検討いたしまして、御趣旨の線を検討いたしまして、御趣旨の線を検討してみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/50
-
051・大原亨
○大原委員 それから、第二の活用についての一つの考えですが、これを国内のこれからの施策にどういうふうに生かすか。これは総理大臣も先般本会議で答弁いたしております。本会議の決議を実行していないじゃないかという質問に対しまして、これで十分とは思わないし、さらに改善を重ねていきたい、こういうふうに総理大臣は最初に答弁をいたしております。議事録を見ましたらそういうふうになっております。この過去の被爆の実態、これは遺旅の問題等も関係いたしますが、非常にむずかしい法律がありますけれども、しかし、現在の被爆者の生活あるいは健康面における実態、こういうものを明らかにすることによって、私は、その一つの目標というものは、いまの原爆被爆者に対する救援対策というものをさらに前進をさせる、こういう観点を持った実態調査はやはりなすべきではないか、こう思うわけです。この点につきまして、これは大臣も必要なわけですけれども、政府委員のほうで、この点についての心がまえ、何のために実態調査をするんだ、こういうことにつきましての所信を明らかにしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/51
-
052・若松栄一
○若松政府委員 お話のように、せっかくやる実態調査でございますから、これが被爆者の福祉のために役立つ方法で使われることは当然でございます。そのため金をかけ、時間をかけてやるわけでございます。あわせて私ども念願いたしておりますことは、先ほどの藤木委員の御質問にございましたように、被爆者というものが非常に自分の健康に対して自信を失っている、あるいはノイローゼになるという傾きが多い。一方、また、回りの者も、被爆者の健康に対して不当な評価あるいは不必要な危惧を抱く。そのために結局就職が妨げられ、あるいは結婚問題にも拘束を起こしてくるというような事態もございますので、被爆者の実態あるいは健康上の問題というものも、本人にも、あるいは回りの人にも正しく評価されるような資料にいたしたい。それによっても福祉の増進をはかりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/52
-
053・大原亨
○大原委員 それでは、質問を第二の問題に移してまいりますが、いまお話がありましたけれども、被爆者がノイローゼになる、あるいは被爆者であるがゆえに社会的な差別を受ける、こういうふうな事態があるわけであります。これは原因は何かと言うと、やはり原爆による被爆の影響というものが、まだ学問的に明らかにされていないのではないか。その影響に基づいて治療法、医療についての問題が明らかにされていないのではないか。しかし、臨床経験その他医者の今日までの貴重な経験があって、政府も、これらの問題の研究等も今日まで機会をつくってやっておったわけでありまするけれども、その点が明らかになっていないのではないか。そこで政府の機関の中には、これらの原爆の影響や治療について研究する機関が相当あるわけであります。一つは、これは歴史上出てきたわけですけれども、予防研究所の支所が広島、長崎のABCCに付設をされた。それからABCCは外交機関と同じような取り扱いを受けておるわけですけれども、これは政府の機関ではありません、ここにはいろいろ問題がございますが、それはともかくとして。もう一つは、科学投術庁の放射線医学総合研究所が稲毛にございます。それから文部省の広島、長崎大学の医学部に研究所が設置されております。これらは、できた時期も目的もそれぞれニュアンスが違うわけでありますが、きょう科学技術庁と文部省から御出席をいただきましたのは、研究は研究のためだけにあるのではなしに、原爆の影響というものを科学的に究明することは、平和利用の問題を含めてきわめて重要な問題でありまするし、そうしてそれに基づいて治療対策を立てるということは、いまノイローゼ云々の話がございましたが、人類が経験しなかった原爆の影響から人類を救済する上において、きわめて大切なことであることは言うをまちません。
そこで、まず科学技術庁にお尋ねをするわけですが、稲毛の放射線医学総合研究所も、設立されましてから相当の期間を経過いたしたわけであります。毎年ばく大な予算を使っておるわけでありますが、この面における——私は専門家ではありませんから長い答弁はともかくといたしまして、研究の前進というか、研究の成果というものが、はたしてどのようなものであるか、これをまず科学技術庁のほうから御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/53
-
054・村田浩
○村田政府委員 御承知のとおり、稲毛にございます放射線医学総合研究所は設立されまして数年になりますが、この研究所は、設立の目的といたしまして放射線の人体に与える障害の解明を第一といたしまして、さらに、あわせて放射線の医学利用の開発といったことを、関連する諸科学を網羅しまして総合的な研究体制をつくっていく、こういう趣旨で設けられたものでございます。したがいまして、関連する科学の広い分野にわたる専門科並びに研究施設を設けまして、現在基礎的な研究部門から臨床的な研究部門、さらに診断、治療を実際に行ないます病院部を置きまして、全体で今日では所長以下四百名余の所員を擁し、研究部としては、四十年度におきましては十一部になっております。そのほか管理部、技術部等を合わせまして、東海支部を含めますと全体で十六部支所になっております。
これらの機構の拡充整備と関連しまして、現在、ただいま申し上げましたような研究所の設置の目的に従いまして、着々と研究並びに診断、治療の開発ということを進めておるわけでございますが、ただいま先生御指摘の点に関連いたしまして、直接関係いたしておると思うことを一つ、二つ申し上げてみますと、たとえば十一の研究部の中にございます薬学研究部では、治療薬の合成並びにこれを生物学的な試験をいたします方法の開発、あるいは生殖腺系の障害に及ぼす生化学的な影響の解明、治療等の諸研究などを従来から行なっておりますし、また遺伝研究部におきましては、放射線によって誘発される突然変異に関するその要因、機構の研究さらに放射線の遺伝的影響の細胞学的研究等を行なってきておるわけでございます。これらのほかに、臨床的な研究といたしまして従来臨床研究部というのがございまして、ここにおきまして放射線の人体に与えます障害の機能というものの研究、並びにすでに放射線の障害を受けた人の診断、治療の開発、この二つをやってきておりました。しかしながら、この二つのものを一つの研究部で行ないますについては、範囲も非常に広うございますし、研究の促進上必ずしも適切でございませんので、四十年度におきましては新たに障害臨床研究部というものを独立させまして、ここには部長として、例のビキニ被爆の際に主任としておやりになりました熊取敏之博士を部長とし、十一名の部員をもって放射線障害に対する診断、治療に関する研究の開発を集中的に行なう、こういう体制が整ってきておるところでございます。
この障害臨床研究部におきましては、本年度スタートしたばかりでございますけれども、本年度の計画といたしましては、二つ研究室を置きまして、ただいまお話がございました原爆被爆者そのほかビキニの被災者、それからエックス線の取り扱い者における被爆者、そういったような被爆者の放射線治療患者の臨床的研究をもちろん行ないますとともに、放射線による各種血球、染色体の変化につきましてとか、あるいはまた骨髄移植に関する研究とか、放射線の赤血球代謝に及ぼす影響の研究とか、障害臨床上重要な課題について積極的な研究を進めていく、こういう計画でございます。
これらの研究部で研究されましたところのものは、同研究所に置かれております病院部に入院される患者に適切有効にこれを利用して、そうして放射線障害者の治療に資する、診断に資する、こういう態勢で進んでおるわけでございます。病院部におきましては、現在部長外六十九名の職員がこの病院の仕事に従事しておられますが、最近の実績によりますと、大体年間新しく入院してきます患者は、昭和三十八年度で四百四十一名、昭和三十九年度では、これは十月までの統計しかまだ出ておりませんが、三十九年の十月まで四百二十三名と年々増加してまいっております。なお、入院はいたしませんでも、この病院部に新しく外来患者として参ります人の数も、昭和三十八年には四百五十九名、昭和三十九年度には十月までで四百四十四名、これも年々増加してきておりまして、放射線医学総合研究所の任務というものが漸次広く理解され、このような成果を漸次あげつつあるもの、このように見ておるわけでございます。
なお、あわせて大原先生のお話にございました原爆被爆者の問題でございますが、この点につきましては、長崎医大及び広島大学との間に放医研では研究の連絡を行なっておりまして、広島大学の場合には、渡辺教授を長とする白血球の研究所のメンバーに放医研から専門家を入れ、年三回の研究会をやってきております。また広島大、長崎医大等との間の人事交流も行ないまして、治療法等の研究効果の向上をはかっております。また、先ほど申し上げました熊取障害臨床研究部長は、東京在住の約六十名の原爆被爆者の検診を年二回行なってまいっております。あわせて二十一名にのぼるビキニ被災の患者の検診も、年一回行なうようにいたしております。
こういうことが、放医研におきます最近の状況一でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/54
-
055・大原亨
○大原委員 非常に有益な御答弁ですが、放射能による影響、それから熱線による影響、これが何度ですか、何千度でしょう。熱線による影響、熱風による影響、そういうことが重なっておるのが原爆の特色だと思うのです。広島、長崎の一般的な放射能の影響だけでなしに、広島、長崎の原爆の影響、特に放射能の影響についてどういう人体上の影響があるか。あなたは専門家かどうかわからぬが、法律屋かどうかわからぬけれども、たとえば造血機能あるいはこれは遺伝の問題に関係があるが、増殖機能にも影響がある、こういうふうなことがいわれておるわけであります。しかし、このことは、決定的な意見としては出ていないわけですが、そのことが非常に恐怖心を拡大しておる原因になっておるわけであります。だからそれらの問題、影響、限界、こういうものを明らかにしていくのが政府のそれぞれの機関の大きな仕事でははないか。こういう問題について、最近までの研究成果から、大体広島、長崎の原爆はどのくらいの放射能で、そしてどのくらいの影響を与えておるものである、こういうことが、結論的に言って、大体において総合的に判断をし得るようなことに相なっておるのかどうか、この点をひとつ重ねて質問いたしますので、明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/55
-
056・村田浩
○村田政府委員 私、放射線医学の専門家ではございませんので、具体的、専門的にわたることにつきまして御答弁の資格がないかと思うのでございますが、放射線医学総合研究所におきます個々のこまかい研究内容、あるいは研究成果というものにつきましては申し上げる能力がちょっとございませんが、私どもの立場でこの問題に対して大きな関心を持っておるわけでございまして、そのことは先生も御承知の国連に科学委員会というものが設けられておりまして、この原爆症を含め、いわゆる放射線による障害、人体に対する障害影響、そういったことにつきまして、世界各国から専門の学者が毎年何回か集まりまして、今日まで数年にわたり研究成果をまとめまして報告をつくっております。わが国からは、ここ数年引き続きまして、この放射線医学総合研究所の所長である塚本憲甫博士がわが国の代表として参加しておられます。そのほか、たとえば立教大学の田島英三教授とか、そういった専門の方が参加して、わが国の放射線医学総合研究所ほか関係各機関における研究結果あるいは調査結果、そういったものも持ち寄り、さらにアメリカ、イギリスその他参加各国におけるそのような面における調査の結果を持ち寄りまして、そうして情報を交換し、放射線の人体に対する影響はどんなものであるかということを総合的に解明する努力を続けておられるわけでございますが、ただいま先生御指摘の放射線が造血機能に及ぼす影響、あるいは原爆が落とされました際の距離と、それからその距離における放射線の量の推定、そういったふうなこともその科学委員会で持ち出されまして、各国の専門家による検討が行なわれた、こういうことは聞いております。
こまかい数字はちょっと私記憶いたしませんので、もし御必要でありましたならば、担当のほうから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/56
-
057・大原亨
○大原委員 これは厚生省でもいいのですが、最近アメリカの米国原爆傷害調査委員会は——これはABCCのことですね、ABCCの本国における機関でしょう。それが、被爆の際、母親の胎内にいた子供たちに知恵おくれの傾向がある。いままでは、ABCCは調査結果については非常に消極的なことしか言わなかったのですが、やや具体的な一つの結論を、あれだけの大きな予算を使って機能調査をやりまして出しておるわけです。その中に、いま申し上げたような母親の胎内にいた子供たちに知恵おくれの傾向がある、あるいは日本においてもそうですか、小頭児ですか、そういう子供が生まれる率が非常に多いとかいうふうなことが言われておるわけです。これは非常に不安を与えておるわけです、母体に対する影響。それで、これは新聞に出ておるから公然と議論していいわけですけれども、不当に不安を与えることは避けなければならぬが、たとえば造血機能の面でしたら赤血球の場合には貧血、それから白血の場合には白血病、血液のガンだというふうに、なくなった前の日赤の都築博士が言ったことがありますが、そういう専門家が言っておられる、つまりそういう造血機能や増殖機能にそういう放射能が影響を与えるのだというふうな、そういう結論は、厚生省は予防研究所が協力しておるわけですが、そういうことが、国連というよそのことでなしに、日本が被爆の経験を持っておるわけですから、それに基づいた日本の学者としての、あるいは研究機関としてのそういう研究があれば、この際これは局長——若松さんは医者、専門家だけれども、いままでほとんど勉強せぬだろうからわからぬだろうが、それは一生懸命法律のことばかりやっておるからだんだんだめになってしまうだろうが、専門家でもいいけれども、そういう問題について相当経験があるわけですから、理事長その他で研究を進めておるのかどうか。まず実態把握をしてその対策を立てなければならぬので、そういう意味で、アメリカのその調査委員会がそういうふうなやや具体的な結論を報告しておるけれども、そういう問題についてどういう見解を持っておるのか。これは医療やそういう援護の対策のためにも非常に重要な問題で、根本的な問題ですから、だんだんと資料、データというものは年がたつに従って薄れていくものですから、今日の段階でこの問題を論議することは有意義であると私は思うのですが、それに対する見解を、どなたでもいいですからひとつ御答弁願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/57
-
058・若松栄一
○若松政府委員 ただいま御引用されましたアメリカの、最近新聞に載りましたことでございますが、これはアメリカの原子力委員会の核エネルギー研究の飛脚という、ファンダメンタル・ニュークリア・エナージー・リサーチという一九六四年の報告書の一部が紹介されたわけでありますが、さっそく取り寄せてみました。そういたしましたら、一八九ぺ−ジに、放射能の身体的影響という項目でABCCの報告が約半ページ載っておりました。
〔藏内委員長代理退席、委員長着席〕
その中に、ABCCの報告によると、白血病それから白内障の増加の傾向がある。その次に小頭症及び精薄の、ポッシブル・インクリース、まあ増加の可能性があるという表現をとっておるようでございますが、したがって、これはもちろん、この小頭症、精薄の問題は胎児被爆について論じているわけでございます。そういうことで、私どもも従来から、小頭症の発現が若干多いということは承知しておるわけであります。小頭症はそのままある意味では精薄につながるわけでございますので、新たに精薄ができるということでなしに、小頭症が若干多いということの意味で、被爆者が時間の経過によって精薄になって精薄が増加するという意味ではなくて、小頭症が若干増加している、小頭症の若干の増加ということは、すなわち精薄者の若干の増加を意味しているので、小頭症自体に着目しているんだ、その裏側が精薄ということであるというふうに理解していただきませんと、いかにも被爆した人がだんだん精薄になっていくような印象を与えるのは非常に困る、そういうふう考えております。この報告につきましては、そのようにきわめて短い報告でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/58
-
059・大原亨
○大原委員 私はやはり、原爆を受けた人が放射能や熱線その他の影響ではかり知れない影響を受けて非常な不安を持っている、そういうものについて学問的な限界や原因、対策を明らかにすることが、科学技術庁やあるいは厚生省、文部省などのそれぞれの研究機関の大きな仕事ではないかと思う。特に大臣、いまお見えになったから申し上げるのですが、アメリカのABCCも、いまお話しのように、小頭症、そういうことで知恵おくれや精薄という影響や現象があらわれてきておる、あるいは造血機能の面においては、白血球や赤血球に対する影響から血液のガンといわれる白血病、これは不治の病といわれておりますが、白血病あるいはガン、あるいは貧血症、そういうふうなもの、特に目なんかでは白内障、こういうふうにいわれているのが原爆症としていわれておるわけであります。これはもう今日になれば、論議をすることはちゅうちょする必要はなくて、徹底的に研究をしてその対策を明らかにすることが、被爆者にとっても、人類にとっても大切であると思うのであります。でありますから、私は放射能や熱線の影響というものは、これは科学的に見ても否定できないものであるという点を考えなければならぬ。その際に、私は医学上の論争をここでやるつもりは全然ありませんが、瞬間的に放射能を多量に受けた広島、長崎の原爆のような場合、あるいはお医者さんや看護婦さんたちが継続的に長期間放射能を受けて、 限界というものを越える場合、そういうふうないろいろな場合があるというようなことがこの報告で言われているわけであります。
そこで、もう一回私は尋ねるのだが、広島、長崎のそういう原爆による放射能その他の影響というものはどの程度のものなのか、今日類推をしてみて、原爆の威力あるいは結果その他からどのように判断することができるのか、このことについて各研究機関、政府が見解を統一しておかないと、そうして、実態を調査して対策を立てますというふうに白書その他で言いましても、私はやはり一つの真髄に触れた調査にならないのではないか、おざなりの事務的な調査になるのではないか、そういう点でこの点が特に大切であると思うので、どの機関の皆さんでもよろしいから、ひとつこの点について、私が申し上げた点で御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/59
-
060・若松栄一
○若松政府委員 私もお話のように放射線医学の専門家ではございませんので、私が理解しておりますきわめて常識的な線でお聞き取りいただきたいと思いますが、文献によりますと、八百レントゲンを瞬間に受けると大体即死に近い状態になり、四百レントゲンを短時間に受けますと、大体半数が近い期間内に死亡するといわれております。そうして百レントゲン以上ぐらいを受けた人は、レントゲンを受けた量に比例して白血病の増加があるということをいわれておりまして、大体現在職業的に放射線を受ける、たとえばレントゲン技師のような職業人が、一年間に許容される量が五レントゲンでございます。それで長崎、広島に落ちた爆弾がどの程度のレントゲン量、放射線量を持っていたかということを計算した資料によりますと、爆心地、これは非常に強いわけでございましょうが、七百メートルぐらいのところで約二千二百レントゲン、千メートルで六百八十レントゲン、二千メートルで十四レントゲン、三千メートルで0・三七五レントゲンという推計でございます。したがって爆心地千メートル程度のところで直接被爆を受けた方は、即死かあるいは半数くらいが比較的短い期間で死亡する可能性が非常に強い。二千メートルになりますと、十四レントゲンですから、これば非常に少なくなります。三千メートルになりますと0・三七五ですから、大体胸部の直接撮影をやった程度のレントゲン量ということになります。その大体、放射線と生体の影響、それから長崎、広島における距離との関係の放射線量の測定を文献から私は申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/60
-
061・大原亨
○大原委員 瞬間放射能による影響というものは非常に大きなものであるということがわかるわけですが、即死するとか、あるいは半数まで死ぬるとか、いろいろ身体に影響を受けるというような段階があるようですが、私がお尋ねしたい点は、第一、いまあなたが御答弁になりましたことはどういう根拠に基づいた御答弁であるか。
それから、もう一つお答えいただきたい点は、広島、長崎その他でそういう瞬間放射能を受けた人が、原水爆の実験で放射能をまた逐次受けていくわけでしょう。そういうものがどういう影響があるのか。実験によって、空気その他で放射能を受けることがいわれております。許容量が国連でも議論されていますね。そういうものが累加をしていく、加わっていくというふうなものであるかどうか、この二つの点につきまして御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/61
-
062・若松栄一
○若松政府委員 最初の問題は、原水爆実験等によって新たに大気等からおっこってくる放射能の影響でございますが、この点は、たとえば福岡に四十万カウントの雨が降ったというような場合、その程度の雨に一回当たったからどうかというと、その瞬間としてはほとんど意味のない量でございます、外から当たった量といたしましては。ただ、ストロンチウムとかいうような半減期の非常に長い放射性物質が身体に吸収されて骨等に沈着いたしました場合には、それが死ぬまで年がら年じゅう放射線を出し続けるわけでございますので、そういう問題は非常に重要な問題でございます。これは米あるいは牛乳というようなものにそういうものが入ってきますと、それが累積する場合には非常に大きな問題になると思いますが、現在のところ世界的に、特に北半球の中部地帯に放射能がたまる可能性がありますが、現在それほどまで危険な状態ということまでにはなっていないと存じております。
それから累積の問題でございますが、これは比較的微量であっても累積してまいりますと障害を起こすことになりますので、そのためにICRP、国際放射線防護委員会で国際的な規定を設けまして、それぞれただいま申し上げましたように職業的な人は年間五レントゲン以内に押えるというような指導、規制をいたしておりますが、国内においてもその線に沿ってレントゲン設備の改善あるいは放射線関係の設備の改善、従事者の指導等をやっておるわけでございます。
なお、これらの安全の運営につきましては、科学技術庁の放射線安全課が指導しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/62
-
063・大原亨
○大原委員 こまかいことを聞くのもどうかと思うけれども、いま御答弁で原爆の爆心地から七百メートルのところで二千六百レントゲンから八百レントゲンが致死量だ、こう言われている。ですから、ばく大な放射能を受けているということになる。私が申し上げたい点は、問題はみんなが常識的に考えている点は何かというと、そういう瞬間放射能の影響を受けた人が今日生存していて、それがいまのような実験その他により食物その他を通じて、空気、水等を通じまして体内に入って累積していった際に、やはりそれが許容量の限界を越えていけば人体にも影響があるのか、これはきわめて常識的な質問ですが、そういうことはどうですか。これは一つの不安ですね。現在までに瞬間放射能を受けた人——他の人は別です、放射能を受けた人がまた放射能を累積していった場合には、やはり健康上、身体上影響を受けるのじゃないか、こういう点についての学問的な常識というか、そういうものについて伺いたい。これは対策に関係あるから言うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/63
-
064・若松栄一
○若松政府委員 非常に専門的になりましたので、私から明確な答弁はできないのでございますが、相当量を受けた方に累積していく場合には、累積の効果は常識的に普通のそうでない人よりも多いだろうという予想はつきますが、それを数量的にどうかということになりますと、これはなかなか困難の問題であろうと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/64
-
065・大原亨
○大原委員 他の人と違った影響を持つことは、常識的にも学問的にもこれは認められるところではないか。私は被爆者に対する対策の一つの根拠を明らかにするためにいろいろ議論しておるわけですが、そこで被爆後急性的な症状が被爆者にあったわけです。これはどなたが答弁してもよろしいけれども、つまりやけど、外傷、嘔吐、それから悪心というのは何かわからぬが悪心、発熱、下痢、出血、出血は喀血、吐血、下血、血尿、歯齦の出血、鼻出血、皮下出血、それから脱毛や咽頭痛や口内炎、それから無月経、それからひどいのは全然性的能力がなくなる、こういう人も出ておる。男女ともあるわけだ。こういう現象が相当期間持続をしているわけです。そうして一定の期間を通じてぼつぼつ正常な形になっておるわけです。しかしながら、これがいろいろな病気の現象等を通じて、そういう症状が繰り返されるというふうに言われておるのであります。
そこで私が質問したい一つは、今度の実態調査で相当金をかけてやるわけですから——私は被爆者がそういう経験をしていると思うのです。そういういま申し上げたようないろいろな経験をやはり調査をしてもらいたい、これが一つ。それから、そういうふうな異常な現象があるということは、被爆者は身体上これは非常に大きな影響を受けた障害者というか、被害者ではないか、こういう判断ができるのじゃないか。こういう二つの点につきまして、各省のどなたでもよろしいけれども、補足説明を加えてもらってもいいが、御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/65
-
066・若松栄一
○若松政府委員 第一の被爆当時のいわゆる原爆の急性症状でございますが、これを調査しろという御意見でございましたけれども、これについては、もう二十年を経過しておりますので、二十年前の記憶を集計するということは統計的に非常に誤りの多いことでございますので、統計的な信憑性を疑われる点がございまして、私ども必ずしもこれについて積極的な気持ちは持ち得ないのでございます。全数調査をいたさないでも、現実にすでに相当数の調査が、広島、長崎等の現地におきましては、どの程度の距離でどの程度の地域に住んでいた人がどの程度の症状を持っていたというような相当な記録もございますし、記録が少なくともかなり正確性の高いものでございますので、むしろそういう記録を集めて集大成することが必要ではなかろうか。そういう意味で、先ほど来も過去の文献についてもできるだけ集めたいということを申し上げておりますので、過去の比較的信頼性のあるそういう資料を幾つか集めれば、全貌をうかがうに足るのではないかというふうに存じております。そういう意味で、二十年後の現在、全数について不確かな記憶をたどって調査するということは適切ではなかろうというふうに存じます。
第二点は、それらの急性症状が強かった者ほど将来の症状あるいは影響も大きいのではないかという御意見でございました。これは私もそのとおりであろうと思います。といいますことは、急性症状はほとんど放射能を受けた量におそらく比例的にあらわれていると思いますので、そのようなただいまの嘔吐、出血、咽頭痛あるいは脱毛というような典型的な急性症状の強かった人は、やはり将来にも影響があるというふうに考えていいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/66
-
067・大原亨
○大原委員 私は、これはしろうと的な質問ですけれども、専門的な質問が必要だと思うのは、そういうだれが考えても鼻血が出る、歯ぐきから血が出る、嘔吐する、下痢をする、脱毛する、斑点が出る、健康状況が悪いときには斑点が繰り返すというふうな現象が、その部分部分だけを今日とってみると、これは原爆症であるということはなかなか言わない、原爆の影響というのは。者さんは、専門家というものは、とかく消極的な判断をするわけです。しかし私は、歴史的に経過的にこれを見るということは、きわめて大切な問題ではないか。そういうことは記憶が薄れるという問題ではなしに、今日だって記憶は当日被爆した人ははっきりしておる。そこで私は、文部省の広島大学の研究所の渡辺所長などにも意見を聞いたわけですけれども、私は専門家でないから正確かどうかわからぬが、とにかくそういうデータをそろえて、電子計算機と言われたけれども、そういうことで統計的にも研究をずっとやっていくと、原爆症の原爆による影響、どこに作用をしてどういう影響があって、そうしてそこからどういう治療方法をやるべきだというふうな総合的な判断をするような、そういう研究の方法もあるんだ、こういうことを私は聞いた。したがって私は、そういう点で、それぞれの機関の機能を動員して、この実態調査においても予算が足らなければ予算追加を要求して遺憾なきを期してもらいたい。あなたがなまはんかな学者の残りのような常識でのそういうことの答弁ではなしに、そのことは記憶が薄れてない。そのことはきわめて被爆者の実態を浮き彫りにする上において大切なことではないか。あなたは他の文献でこういうことをやりたい、こういうことなんですけれども、被爆当時のあなたの症状はということで、脱毛その他ずっと加えていったら、これはきわめて簡単にできるんじゃなかろうか。被爆の距離その他も当然出てくるでしょうから、私は、その点はひとつ被爆者対策の根源でもあるし、あるいは治療対策の根源でもあるデータとして有意義ではないか。これは全員調査といかなければ、抽出法等において考えるべきではないか。この点について御意見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/67
-
068・若松栄一
○若松政府委員 渡辺先生も調査委員に参画していただきますので、十分そこらの意見もお聞きした上で、もしこういう方法が現在にあってもなおかつ有意義なものであるとすれば、実施してみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/68
-
069・大原亨
○大原委員 それからこの前、私は一回質問したわけですが、これは文部省からもお聞きをしたいし、それに関係しておる方々からもお聞きしたいのですが、いまABCCや原爆病院や大学の病院などで、原爆の被爆者の死体解剖をやりました標本が残っておるわけであります。これが三千体、四千体というふうに残っておるわけであります。しかしその収容の場所がない、予算がないわけであります。これは、ここの新聞にも出ておるが、放射能は両刃の剣だというふうに書いておるけれども、放射能の影響を研究すれば平和利用にもなるわけです。成人病の研究にもなるわけです。そういうことで、そういう解剖死体を標本として維持しておく、これから廃棄処分にしない、廃棄処分にしようかという意見もあるそうだが廃棄処分にはしない、こういうことで、ひとつそういう施設をつくって解剖死体の標本を活用するというふうな行政上の措置をやってもらいたい、こういうことを文部大臣に質問いたしましたら、文部大臣は、関係者の意見を聞いて善処するように、だいぶ前でありましたが答弁があったというふうに記憶をいたしますが、文部省等におきまして、この点につきましてその後具体的に御検討になったことがありましたならば、ひとつ明らかにしておいてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/69
-
070・岡野澄
○岡野説明員 ただいまの御質問のことでございますが、実は私ども何も存じておりませんので、この間渡辺所長がお見えになりましたときにいろいろお話を承りましたが、大学当局としてはそういう必要性を検討いたしまして、実は来年度の予算に要求しようと思っていた、こういうお話でございますので、大学の具体的な要求を拝見しまして検討してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/70
-
071・大原亨
○大原委員 厚生省は、予防研究所の支所がABCCと併置されておるわけです。したがって、この解剖死体を引っぱり合うというような理由はないわけですから、研究のセンターとして、最もふさわしいところで場所等を考えながらやればいいわけです。一定のルールをきめて、その標本の研究への公開をすればいいわけですから、そういう点について予研の支所等を通じて、そういう計画に対して現地の医者等の専門家の強い要望でもあるわけですから、そこの点については協力をして、実態を把握した上で対策を立ててもらいたいというわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/71
-
072・若松栄一
○若松政府委員 ただいまのお話、先生から直接承りましたので、この点は予研の所長に話しまして、そういうような事情があるかどうかということを聞きましたが、存じていないということでありましたので、その点は予研を通じて支所長に適当な機会に話をしてくれという依頼をしておきました。そのときも実は、私も病理学を専攻したことがございますが、病理をやった人間が、死体解剖の材料を廃棄するなどということは常識的に考えられないことだと申し上げまして、全くそのとおりだ、もしそのような事態があれば、もし建物がないというようなことでそういうような事態が起こるならば、広島大学とも協議した上で、とにかく何らかの形で将来とも保存できるような杉に持っていこう、相談をしていこうというようなことにはなっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/72
-
073・大原亨
○大原委員 今回の法律には出ておりませんが、予算措置の中で特別被爆者の範囲を拡大されておるわけであります。特別被爆者の範囲の拡大でけさほど藤本委員からも質問があったわけですけれども、三日以内に爆心地から二キロ以内に入った者は、これは特別被爆者として認定をする、こういうことでありますが、この方針がきまっておるというふうにわれわれは承知いたしておりますが、このことはともかくといたしまして、もう一つの点の、いままできめておりました爆心地から三キロ以外において被爆をした人であっても、放射能を多量に受けておると思われる地域については地域指定をする、こういう問題が起きていると思うのです。その地域指定について、具体的に広島、長崎においてどういう地域を濃厚地区として指定するのか、この点を、相当調査が進んでおると思うので具体的に御答弁いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/73
-
074・若松栄一
○若松政府委員 お話の、特別な地域の増加指定でございますが、長崎につきましては、西山地区というところに爆発のあとに黒い雲が流れていった、そしてあとに茶色がかったしぶきみたいなものが落ちたという記録がございまして、そこら辺を二十年の十月三日から七日の間にわたって日米共同の委員会が放射能調査をいたしました結果、そこら辺に非常な放射能が残っていたということから、いわゆるフォールアウトがそこに流れていったであろうということが予想されるわけでございます。また広島地区におきましても、爆発後一時間から一時間半の間にいわゆる黒い雨が降ったといわれる地域がございまして、それが己斐、高須地区というところに原爆の黒い雨が降ったということをいわれております。そしてその地区をやはり十月三日ないし七日間に調査いたしました結果、ほかの地区より若干放射能が多かったという点もございますので、それらの成績を考慮いたしまして、フォールアウトによる被爆を受けた者がそこらの地区にはいるはずだということから、その地域を追加指定したらいかがであろうということで、現在それに該当すると思われる具体的な町村名を書き出して知らせてもらうように現地と連絡をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/74
-
075・大原亨
○大原委員 それはたとえば広島の場合でしたら己斐、高須地区、あるいは長崎でしたら西山地区というふうに町を指定いたしますか、地域を指定するのですか。そうすると、その町が入り組んでおる場合には、他の町の一部も指定しなければならぬというふうな事態もある、こういうことは十分予想できますね。そういうのはどういう基準でその地域を指定するのか、もう一回ひとつ具体的にお答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/75
-
076・若松栄一
○若松政府委員 実は先ほど申し上げました十月三日から七日間にわたる日米調査委員の測定も、地面を漏れなく測定したわけではございませんで、飛び飛びの地点を測定いたしております。したがって、ちょうど気象図の等温曲線のように、きちっとした線を引くわけにはいかないのでございます。したがってどこで線を引くかということはきわめてむずかしい状態でございますので、やはり当時の実情から見まして、西山地区に黒い雲が流れて、黄色いしぶきが降ってきたというような地域を地元の力たちにもよく聞き合わせて、およその地域を判定する。広島の場合も黒い雨が現実にどの程度降ったか、ばらばらというところでは問題ないと思いますが、相当量の雨が降ったというような地域を包含するという形で具体的に町名をあげる。町名をあげますと、お話のように多少の出入りというものがあるかもしれませんが、それはやむを得ないと存じます。現在の二キロの線、三キロの線を引く場合でも多少の出入りはやむを得ませんので、町名でいかざるを得ないと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/76
-
077・大原亨
○大原委員 この件に関しては法律にないわけですが、法律があってもなくても、予算が通れば行政上できるわけであります。そういうのは、いつから特別被爆者の範囲を拡大することを具体的に作業いたしまして実施する、こういうおつもりなのかお聞かせをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/77
-
078・若松栄一
○若松政府委員 この適用は、もちろん予算措置でございますが、十日以降実断ずるという予算が組んでございますので、十日までに指定したい。そのために現在、現地との調査、打ち合わせ等を進めておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/78
-
079・大原亨
○大原委員 それで科学技術庁その他の方々は——もう文部省はお帰りになっていただくわけですが、やはり各研究機関は、いままで研究機関の経緯からいいますと、科学技術庁が文部省や厚生省が対立しておったけんかの中に入って、科学技術庁に持っていったというふうなこともあるというふうに私は記憶するのでありますが、そういうことでなしに、各研究機関は、研究においてもあるいは今回の白書の作成、実態調査におきましても協力できるようにやってもらいたい。科学的な根拠があるから、あらゆる英断と経験を結集するような方法でやってもらいたい。これは御出席でありますので特にこのことを強く要望いたします。これは厚生大臣にお尋ねしたいと思うのですが、関係者機関の十分なる協力のもとに実態調査をやる、こういう方針を明らかにしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/79
-
080・神田博
○神田国務大臣 いまお尋ねございましたように、被爆者の実態調査は時日もたっておりますし、またそうたびたび調査するわけにもまいりませんから、これだけの大がかりの調査で完ぺきを期したい、こういう考えございます。そこで、そうなるからには、先ほど来いろいろ御意見あるいは御議論もございましたように、各方面の御支援と御協力を得たいと思っております。いま例示されました大学のほうも当然ひとつ中に入っていただきまして、いろいろ助言、またお手伝いといいましょうか、御協力をお願いいたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/80
-
081・大原亨
○大原委員 特別被爆者の範囲を拡大する問題で、一つは立証方法ですね。当時は、本人が二キロとか三キロとかいう観念なしに爆心地をさまようというような現象もあるし、あるいは死体の処理とかあるいは家の整理とか、いろいろな命令を受けて——命令といいましてもこれは軍の命令とか国の命令というようなことがないから、今日は援護措置はないわけです。ないのですが、しかし半ば公然と、これはそういう動員体制の中でやられたわけであります。そこでなかなか立証の方法がむずかしいと思う。たとえば市外の他の町村から動員がかかって行ったということになれば、こういう仕事だということが立証されれば、現場を見ていなくても現地の町村なりあるいは近所の人が立証することもできるだろうし、あの人はあのほうで三日以内に爆心地から二キロ以内に入ったに違いない、こういうことを立証する方法はいろいろあると思う。そういう立証方法については、私はあまり四角四面なことを言ってもいけないから、あるいはこれに便乗する人があっても困るわけですけれども、その点については私は十分実情に沿うような方法が考慮さるべきではないか、立証方法についての御見解があればこれを明らかしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/81
-
082・若松栄一
○若松政府委員 おっしゃるように、立証の方法は現実にきわめて困難でございます。したがって現在の手帳の交付におきましてもそううるさいことは申しておりませんで、証明者が二人あればすなおにその証明を受け取るという形をとっております。今度の場合でも、ことにすでに古いことでございますので、なおさら目撃者とかあるいは町内会長というようなものをさがし出してやるというようなことも困難でございますので、証明する適当な人であればよろしいという程度にしてまいりたいと思います。しかし、御指摘のように、また最近におきまして広島等で不当に原爆手帳の交付を受けたということで警察にあげられるというようなことがあり、したがってまたおそれて自発的に返還をしてくるという例もございますので、そこらの辺は十分考慮いたしまして、緩急を失わない方法でやってまいりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/82
-
083・大原亨
○大原委員 これは保険財政に関係をしておることなんですが、保険局長がおられぬから厚生大臣にお答えいただくことがいいと思うのですが、こういうことであります。これは結論的な答弁はなかなかむずかしいかもしれぬけれども、問題は、こういうふうに特別被爆者の範囲が拡大をするということは、これは救援措置の前進といたしまして好ましいのであります。これは非常にいいことであります。そこでこの特別被爆者になりますると、当然のことですが保険財政の問題に、特に国民健康保険の財政に影響を及ぼしてくるのであります。他の財政も同じことですよ。ですけれども、特に国民健康保険に多いのであります。というのは、定職を持たないあるいは零細な自営業者や失業者が多い、あるいは老齢者が多い、そういうことから当然国民健康保険が対象になるわけであります。そこで大体最近の資料を見てみますと、一般の方々に比較をいたしまして、被爆者の医療費は四倍ないし五倍ほど金額がかさんでくるわけであります。そういたしますと、特別調整交付金その他で厚生省、大蔵省等におきましても今日までいろいろな措置をやっておる、その点は私は非常にけっこうだと思うのですが、しかし、それもいまや限界にまいりまして、やはり財政上、精神衛生法とかあるいは結核予防法などというような特別法と同じ取り扱いをして、一般法からはずすというような財政措置をとらないと、地方財政の負担が非常に過重になってくるんじゃないか。医療費が四倍、五倍ということにもなっておるのですから、過重になってくるのではないか。これは立法の趣旨からいいましても、一地域の自治体、広島、長崎あるいは佐賀、福岡、山口、岡山その他近辺のそういう人たちだけが負担をするというふうなことは、合理的ではないと思うのです。したがって、その保険財政の面からもそういう特別法としての扱いをする、そういう問題についてこの際抜本的に私は考えていただくときじゃないかと思う。これはきょうこまかな議論をするわけにいきませんが、問題として厚生省の中にもそういう賛否両論があることは私は知っておるわけですが、しかし、この点については、いまやそういうことをすべき段階ではないかという点につきまして、ひとつ厚生大臣の所見を明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/83
-
084・神田博
○神田国務大臣 原爆一般疾病医療の国庫からの助成は、いまもお述べになりましたように、特別調整交付金からそのうち八割まで見るというような制度になっていることは、御承知のとおりでございます。そこで、今度の特別被爆者の範囲拡大等によって、なお一そう市の負担がふえてくるというようなことが調査の結果予想されると思います。われわれといたしましても、いまお述べになったようなことはごもっともなことでございますので、十分検討いたしまして、被爆者に対しましてはあたたかい気持ちで制度的にも考えていきたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/84
-
085・松澤雄藏
○松澤委員長 本会議散会まで休憩いたします。
午後一時五十三分休憩
————◇—————
午後二時五十七分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/85
-
086・松澤雄藏
○松澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続けます。大原亨君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/86
-
087・大原亨
○大原委員 今回の法律改正で医療手当を二千円から三千円、こういうことで認定された被爆者、これを対象に出すわけです。所得制限を緩和することと金額を増大する、それから第三は範囲を拡大するという問題があったわけですが、第三の問題はともかくといたしまして、所得制限の緩和とそれから金額の増大、いわゆる三千円の医療手当の法律上の理由づけといいますか、これは何の費用に充当するのであるか、こういう問題につきましてお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/87
-
088・若松栄一
○若松政府委員 この制度を開始する当初から、この金の性格が非常に議論されたわけでございますが、疾病を治療するための医療費あるいは生活費の補いということでなしに、原爆被爆者が精神的、身体的に特殊な状態に置かれていて、ノイローゼあるいは不安というものがありますので、それらの精神的安定をはかって治療効果が促進されるような手段に使いたいという趣旨でございまして、この法の制定当時、具体的にはどういうことかという質問がありまして、それらに対しても、記録によりますと、たとえば手習いをするとか刺しゅうをするとか、あるいはお花を習うとかいうような、主として精神安定のための手慰みあるいは趣味的な費用に充当されるものであるというふうに言われてまいりましたので、現在もそのつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/88
-
089・大原亨
○大原委員 原爆被爆者は、特にこれを認定された被爆者ということになると、白血病とか白内障とか、あるいはガンとか、そういう病気であると思うのですが、そういう該当者は、長い間の生活ですから、少々自分のうちに財産があったからといっても無制限の支出をするわけにいかないわけです。したがって、安心して治療するためには、治療に要する入院費だけでは足らぬ、認定被爆者に対する入院費だけでは足らぬわけですから、これに付随する費用が当然要るわけであります。それと一緒に、完全に医療費の保険で支出をまかなうことはできません。これがいまの実態であります。それ以外に家族等の生活問題があるわけでございますから、栄養とか医療に伴う交通費とかいうふうな形で、言うなれば実費弁償という形でこれに出して、普通の所得とば違ったような取り扱いをすべきではないか。そういう点で税金上の取り扱い、あるいは生活保護との併給の問題、他の所得保障との関係、こういうものにつきましてその性格を明らかにしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/89
-
090・若松栄一
○若松政府委員 ただいまのように、この医療手当は、所得の補給あるいは出費に対する補償という意味ではございません。したがって、この手当はもっぱらそういう本来の目的に使われるものであり、したがいまして現在も生活保護との併給はいたしておりますし、またこれに対する所得の課税等は行なっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/90
-
091・大原亨
○大原委員 この医療手当は、当然被爆者が医療をすることに伴うさらに生活の裏づけになる。入院して治療しようといたしましても実際に家族の生活その他を考えてできない、こういう問題があるわけです。だから、あまり性格が明確でない医療手当の範囲からもう少し脱却をして、そうして安心して医療ができるような、そういうそれ相当の扶養家族等も考えながら、それに相当するような所得保障に前進をさしていくべきではないか。そういう点につきまして、ひとつ考え方を明らかにしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/91
-
092・若松栄一
○若松政府委員 おっしゃるように、原爆の患者も相当長期にわたる者もございますので、単に医療費だけを国がめんどうを見るというだけでは決して十分ではないと思いますけれども、現在までのところ、やはり各種の社会保障の制度の態様、あるいは一般戦災者に対する扱いとの権衡等の問題から、若干でも所得保障という線にまで踏み切れないでまことに残念でございますが、そういう事情で、たとえば生活保護の給付における日用品費というような、生活にまでもまだ発展していない状況でございますので、将来の問題として、どの程度まで発展させるかということが将来の懸案であろうと存じておりまして、今後大局的な検討ができれば幸いだと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/92
-
093・大原亨
○大原委員 医療法を援護法へ、こういうことは多年の懸案であります。そこで、昨年の衆参両院の本会議の決議も、現行医療法を所得の裏づけのある援護法に前進をさせるべきであるという、これはここにおられる与党の諸君も全会一致できめた本会議の決議でありますから、これを政府が忠実に履行すべきであるし、また内閣総理大臣佐藤榮作君も、先般の本会議におきましては現在の施策だけでは不満足である、これをさらに改善するように努力をしたい、こういうことを御答弁になっておるわけであります。私はそのことを踏まえながら、当然もう少し、前から質問しておりますように、やはり実態に即して援護法に前述をさせるべきではないか。総理大臣が答弁をされ、あるいは本会議におきまして決議をされました趣旨をどのように具体的に立証されるのか。援護法と言った場合、時間の関係ではしょって申し上げますが、先ほどから質問いたしておりますように、たとえば結婚とか就職とかその他に非常に大きな影響を及ぼすような、そういう原爆の被害者の身体障害に対して、前の厚生大臣も若干そういうことについて答弁で触れておりますが、そういう特殊な被害者、身体障害者に対する保障をひとつ考える。
もう一つは、認定被爆者だけでなしに、特別被爆者に対して医療手当的なもの、健康手当と言ってもよろしいのですが、そういうものをやはり裏づけとして出すべきではないか。あるいはもう一つは、原爆によってなくなった人に弔慰金、葬祭料というのがございますが、この弔慰金なども、これは逐次段階的に考えて拡大していくべきではないか。遺族の問題もございますが、遺族の問題の一つの最初の糸口といたしまして、そういう葬祭料、弔慰金の問題を今日まで議論しておったわけですが、その問題と被爆者に対する特殊な身体障害に対するそういう保障、そうして認定被爆者の範囲をさらに特別被爆者の必要なる限度に拡大をいたしまして、安んじて治療ができるような裏づけをすべきではないか。そういうのが援護法の中身ではないか。それが中身の全部ではありません、中身の重要なる部分ではないが、そういう問題に対しまする厚生大臣の見解をひとつ明らかにしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/93
-
094・神田博
○神田国務大臣 ただいま大原委員のお述べになりましたことは、私も感情論といたしましてはそういう気持ちに変わりはないつもりでございます。しかし、いままで政府のとってまいりました一貫した考え方は、そこまではなかなか踏み切れないというのが実情と考えております。先般の衆議院の共同決議案の趣旨に従いまして、できるだけ御趣旨に沿うように努力してまいったつもりでございますが、先ほど来、午前中からいろいろ質疑応答の際にもございましたように、何と言っても被爆を受けたということは、これは有史以来のことでございますし、また広島、長崎に限定されるものでございますので、できるだけのことをひとつ相当長期に考えなければならないという考え方も私は同感でございますが、一般的な、いまお述べになりましたようないわゆる援護措置というものまで政府はまだ踏み切っていないのが現実でございます。しかし、また実態調査もございますから、その実態調査に応じまして、また適切な手段を拡大していくということはあり得ると存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/94
-
095・大原亨
○大原委員 総理大臣は本会議で、ひとつ将来改善したい、こういうのは本気の答弁ですか。厚生大臣、お聞きになっておられたでしょうが、どういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/95
-
096・神田博
○神田国務大臣 これは本会議も委員会もみんな本気の答弁でございます。決してうそ偽りを申し上げておるようなことはございません。しかし、先ほど来申し上げますように、なかなか一ぺんにまいらない。漸を追ってこういう方式と申しましょうか、考えであるというように御解釈を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/96
-
097・大原亨
○大原委員 とにかく近い臨時国会あるいは来年度においては前進をする、総理大臣も厚生大臣もそういう決意であるということについては間違いありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/97
-
098・神田博
○神田国務大臣 これはそういう考え方で前向きで原爆の被害者の処遇をとっていきたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/98
-
099・大原亨
○大原委員 午前中以来の特殊事情云々ということがあったし、あるいはことばじりをとらえるわけではありませんが、厚生大臣は限定されたということがあるのですが、広島、長崎に限定されたといっても、北海道にも千名内外の人がおられるし、全国におられるし、全国におられるわけです。しかも三十万の死没者と三十万の障害者ということになれば、戦争全体の被害からしても非常にウエートが大きい。日清、日露どころではない。関ヶ原どころではないのです。いままでの大戦の被害を調べてみても、そういう戦争に比較いたしましても、あの瞬時の被害というのは、量において、普遍性において、そして深刻さにおいてその比ではないわけです。したがって、限定された問題というのは、大臣としては少し軽率なことばではないか。
そこで、立法上の根拠につきまして私は長い時間をかけて議論したいのですが、そういう時間がないので問題だけを指摘しておきますと、戦争未亡人に対する一時金は私どもは賛成をした。しかし、これは国との間において権力関係はなかったのであります、雇用関係はなかったのであります。しかし、これは戦争犠牲者として賛成であります。一方、地主補償については、私どもは公平の原則からいって反対であります。憲法上も法律上も、これについて裁判所の判決は出ているわけですから、公平の原則からいって、戦争の最も深刻な最大の犠牲者である原爆の問題を放任しておいてやるということは、私は納得できないのであります。そういう点におきまして、厚生大臣は、被爆者の救済の問題については党派を趣えて、もう少し人道上の立場からも思い切った措置を講ずべきではないか、この点について公平云々、いろんな議論がございましたが、私の考え方に対しまして、厚生大臣の今後のあり力に対する所信を明らかにしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/99
-
100・神田博
○神田国務大臣 先ほど私が申し上げました広島、長崎ということは、原爆が直接投下されたという意味のことを申し上げたのでございまして、被爆者が全国に散っておりますことは、お述べになったとおりでございます。これはむろん含めた問題で考えておるわけでございます。この点、私のことばが足りなかったかもしれませんが、さようにひとつ訂正しておきます。
それから、いまの問題でございますが、私どもといたしましても実はこれ以上の考えであったのでありますが、なかなか財政上の都合もありまして、今回、このようにとどまったという問題でございます。それから戦没者の妻が、お述べになったような処遇を受けた、そういうのをこの原爆を受けた女性、残られた方々にもすべきものではないかという御意見は、私どももできるだけ尊重いたしたいと思うのでありますが、予算がかさむとか、やはりいろいろな事情がございます。他の戦災者の例もあるというようなことでございまして、なかなかそれらの問題がまだ十分処理されておらぬというようなことも一つの原因でございまして、なくなられた方、あるいは残ったという立場からいえばこれは同じでございますというような議論でございます。しかし、被爆をされたということは、これは日本だけの、しかも先ほど来申し上げておるような広島、長崎に限ったことでありまして、これを特殊な、あたたかい考え方で前向きに見ていくという考え方、これはどなたが厚生大臣になっても、政府の担当者になられても同じだと思います。前向きで、あたたかい気持ちでなおひとつ前進さしていきたい、こういう考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/100
-
101・大原亨
○大原委員 小林厚生大臣も最後にいい答弁をしておいて逃げたのですが、あなたも逃げてもらいたい面もあるし、おってもらいたい面もある。
そこで、予算の審議で大切な点は、立法の根拠として、つまり十数万人を特別被爆者として医療については不完全だが見ていこう、こういう措置をとることは医療の面では前進です。これは立法体系からいって大きな前進です。その際においての立法上の根拠は、これは治癒能力が劣っている、放射能その他の深刻な被害によって、そういう造血機能や増殖機能がおかされている、こういう問題もあるわけであります。これは他の問題と別で、瞬間放射能の影響は深刻である。そして熱線や爆風等による被害もある。こういうことで治癒能力が劣っているという者は生活能力が劣っているのですから、当然所得も保障しながら健康管理をしていくという、そういう立法上の根拠は十分に保守党の立場に立っても立ち得るのではないか。こういう点につきまして私はそういう考えを持つのでありますが、その点につきまして厚生大臣から所信を明らかにしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/101
-
102・神田博
○神田国務大臣 大原さんのお考えのお気持ちは、私も変わっていないと思います。ただ、具体的にここまで踏み切るという問題になりますと、先ほどから申し上げたようないろいろの事情がある。そういう事情をいろいろ処理したあとでないと、なかなかうまく到達しない、時間がかかるのではないかという意味のことを申し上げているのであります。一ぺんにおっしゃるようなところまでまいれば、これはほんとうにけっこうなことでありますが、なかなかそこまで踏み切れないと申しましょうか、そこに難点があるのではなかろうか、こう思っております。しかし、事柄が事柄でございますので、そういう努力を続けてまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/102
-
103・大原亨
○大原委員 私の本来の考え方、私どもの党の考え方は、一昨年十二月七日の東京地裁の古関判決にあるように、原爆の投下は国際法に違反をする、当然国が被爆者の損害に対しては賠償することが法律の精神である。法律自体であるとは言わないが、法律の精神である、こういうことを私どもは当然のこととして主張し、下級裁判所である地方裁判所ではあるけれども、古関裁判はそのことを明らかにしているわけです。したがって、そういう立場に立ちますならば、たとえば日韓会談における請求権の問題、在外資産の問題と同じように、法律的にも十分根拠があり得る。しかし、このことの議論にとどまるのではなしに、現在の法体系においても、人道の立場から、治癒能力が劣っているものは当然に生活能力が劣っているのだから、医療に必要なる生活の保障ということは最小限度することが、古関判決ではないけれども、戦後二十年間たって経済が相当大きくなっているこの段階においては、最も率先してやるべきことではないか。このことは単なる議論の問題ではなしに、現在政府がとっている、治癒能力が劣っているためにそれを基礎として特別被爆者の制度があるのだから、そのことは当然に、生活能力が劣って就職や結婚その他において差別扱いを受け、ハンディキャップがあるのだから、これは人道の立場からいって、政治の立場からいってやるべきではないか。その十分の根拠があるのだから、その施策の前進においてはこのことを十分議論し、そして納得の上でその施策の基本とすべきであって、焼夷弾云々の問題もさることながら、その問題にとらわれる必要は私はないのではないか、それを越えて実施すべき問題ではないか、こういうふうに私は集中的に議論をしているのです。それに基づいてどういう施策をするかということは次の段階ですが、そういう私の見解に対しましては、大臣として明快な見解を示されて何ら差しつかえないのではないか、私はそう思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/103
-
104・神田博
○神田国務大臣 いま大原委員のお述べになりましたことは、私どもも気持ちではまことに同感だ、こういうことをたびたび申し上げておるわけでございます。また、保守党といたしましても私は変わりないと思います。政府もそのような考えでございますが、いろいろな他の事情もございまして、一足飛びにそこまでまいらないというのが実情でございます。前進また前進、そういうことでひとつ解決してまいりたい、こういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/104
-
105・大原亨
○大原委員 援護政策の中の一部といたしまして、福祉施設の問題を取り上げられて実行に移されているわけでありますが、保養所の問題ですけれども、保養所を広島、長崎の周辺に一カ所、別府に似たようなものをつくるということを、午前中の藤本委員の質問に対して答弁をされておりますが、どのような予算規模で、どのような経営主体をもってこのことを進めているかという、の進行段階についてお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/105
-
106・若松栄一
○若松政府委員 広島につきましては、島根県の江津に予定しておりますものが約五千万円程度のものを考えております。長崎県の小浜につくる予定のものは約四千万円程度と考えまして、それぞれ広島、長崎の原対協につくるべきではないかという試みでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/106
-
107・大原亨
○大原委員 原対協の法人格について私ははっきり認識をしていないのですが、たとえばそういう保養所的な経営をいたしますと、税金その他がかかるのではありませんか。これは安く、できるだけ民主的にサービスをするということですけれども、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/107
-
108・若松栄一
○若松政府委員 何ぶんにも福祉施設でございますので、これが事業によって大きな収益があがるというようなことは予想できませんが、財団法人でございますから、収益事業について利益があがれば税金はかかりますけれども、そういう利益が大きくあがって税金がかかるというようなことは、いまのところ予想できないのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/108
-
109・大原亨
○大原委員 老人ホームとか他の原爆病院のベッドの増床とか、あるいは収容検査のためのセンターとかいうようなことも、これも進んでおりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/109
-
110・若松栄一
○若松政府委員 お話のように、健康管理施設としての原爆センター等に施設を充実するというようなこと、それから老人ホーム簿を市につくってもらうということで話を進めております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/110
-
111・大原亨
○大原委員 その際に、地元負担が二分の一というふうなことになりますと、これは地方交付税その他の財政措置があるのかどうかという点も問題ですけれども、結局自治体の負担にたえられないというようなことで、消化がなかなかできないのではないか。こういう問題は、二分の一とかいうふうなけちなことでなしに、全額負担というふうなそういう措置をするか、あるいは起債その他の問題等も考えて、十分の財政措置をすべきではないか。これは自治省の問題でもありますけれども、厚生省としての考え方を明らかにしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/111
-
112・若松栄一
○若松政府委員 地方自治体が責任を持ってやる施設につきましては、これは当然自治体もその住民に対する責任を持っておるわけでございますから、国、地方自治体でやはり応分の責任を分担するということが筋ではないかと存じておりまして、すべて国でやるということは、少し行き過ぎではないかというふうに考えております。しかし、資金面等で困難がございますれば、年金融資等の面でできるだけ有利な資金面の援助をいたしたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/112
-
113・大原亨
○大原委員 年金融資等の面で資金上の手助けをしたい、努力をしたい、協力をしたい、こういうことですが、これは十分にしてもらいたいと思うのです。
それから、いわゆる原爆スラム街の問題なんです。これは建設省も御出席していただいておるわけですが、広島の場合を例にあげますと、現在約六千戸、そのうち被爆者が二千戸ほど中に住んでおる。これは、原爆により広範な中心地域の焼失によって生活基盤を失った被爆者が、やむなく河岸、堤防、公園、緑地その他の公共用地にバラック住宅を仮設した、その地域に若干便乗した人もそこに入ってくる、それはもちろん住宅に非常に困っておる、こういう現象が出ております。
〔委委長退席、齋藤委員長代理着席〕
例として原爆スラム街が点状にあるわけですが、それについては、やはり被爆者に対する、特殊な事態に対する対策として、建設省と十分連絡をとってやってもらいたいということは、与野党の諸君が現地調査をされましたときに一致した意見であったと思うのであります。与党の自民党の諸君も、よもやそういうことを忘れてはおらぬと思うが、そういうことでどのように今日まで努力をされたか、これは厚生省と建設省の双方からお答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/113
-
114・若松栄一
○若松政府委員 これは、原爆医療法を私ども主管しておりますが、これは住宅政策でございますので、厚生省では社会局が建設省と協議の上で、両者の意見を十分しんしゃくして促進をはかるということで建設省のほうにお話し合いをしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/114
-
115・角田正経
○角田説明員 御指摘の点につきましてはいろいろとお話を承っております。私どもといたしましても、原爆被災者のために特に住宅対策ということでございませんで、その中で非常に住宅にお困りの方等につきましては、当然公営住宅等を重点的に充てることにいたしておりますし、先生から御指摘のございましたスラム街につきましては、不良住宅改良法を使います改良住宅でスラムクリアランスをやっていこうということにしておりまして、現在スラムクリアランスにつきましては福島町の地区につきまして実施をいたしておりますが、その他の地区につきましては、点状になっております関係で法律の適用が多少むずかしい面がございますので、この点につきましてはなお今後十分検討を進めていきたいというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/115
-
116・大原亨
○大原委員 点状というふうに言われたけれども、点々とあるのではないのです。これは広島の場合でしたら、基町地区の川岸地帯に被爆者が追いやられたかっこうで、応急住宅をつくって住みついた。それに対しまして、いろいろな住宅難の人が便乗したと言ってはなんですが、そういう地域、一帯があるわけです。それは点状ではないわけです。したがって、その問題を、河川の改修、埋め立て等をも考えながら、総合的な計画を立てるということが私は可能であると思うし、必要であると思うのであります。そうしないと、あるいは一たん火災その他になりますと、全然ポンプなどが入る余地はないわけです。そういう地域がずっとあって、その密集地帯がスラム街を形成いたしておるわけですから、これはいわゆる未解放部落の問題とは別に、与党の諸君で井村委員なども小委員で行かれたはずであります。行ってその実情を見て、与野党ともこの問題を取り上げるというようなことを現地調査では言っておられるわけですが、これはあなた方、建設省のほうとしては熱意が欠けておる、あなたの答弁は。だからもう少し住宅局、都市計画その他全体の調和をとりながら、一般的な施策の中で、公営住宅の一種、二種、改良住宅等の総合的な中でこの問題を解決していくというような特別の配慮と、そういう計画的な努力をしてもらいたい。このことを厚生大臣と建設省に要望いたしておきますが、これに対する見解を明らかにしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/116
-
117・神田博
○神田国務大臣 いま大原委員のお述べになりました被爆者の住宅対策というのは、最も親切にやるべきものだと思います。そういう意味におきまして、私どもはかねがね努力をいたしてまいっておりますが、問題の解決を急がれるということはたいへんそのとおりでございますので、今後なお一そう努力をいたしましてこの完成を見たい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/117
-
118・角田正経
○角田説明員 先生からお話がございましたように、住宅の面からでございますと、公営住宅、それから改良住宅等、地方の広島市それから県のお話を十分承りながら、重点的に充当するというふうな形でやっていきたいと思っております。それから、改良住宅等につきましては、現行法では、先ほど申し上げましたように法律の体系から言いましてどうしてものらない面がございます。お話のように住宅の立場だけでなしに、都市計画その他の面からもあわせて検討すべきだというふうな御意見でありますので、なお戻りまして、十分今後そういうふうな対策の立ち得るような方向に検討を進めていきたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/118
-
119・大原亨
○大原委員 その点は強く、住宅局だけでなしに、都市計画その他の面からも総合的に計画を立ててもらわないと、河川その他の考え方を立ててもらわないとにっちもさっちもいかない、こういうふうな現状であります。
〔齋藤委員長代理退席、井村委員長代理着席〕
したがって、この点については、ひとつ抜本的な対策を立てていただくように強く要望いたしたいと思います。
いままでずっと質問をいたしてまいりまして、なかなか、この事態については理解をするけれども、政策は遅々として進まない。ある面では一歩一歩努力のあとはあるわけですけれども、なおこれは十分じゃない。戦後二十年たちましてもなおこういう現状では、唯一の被爆国であるというふうなことを世界に向かって言えることではないのではないか。私どもが原水爆を絶対に禁止するのだというたてまえから、初めから世界に訴えていくという面においても、なお私どもは国際的にもじくじたるものがある。特に今回は、三千八百万円かけて被爆の実態を調査するということでございますが、こういう点は、平面的な、事務的な調査でなしに、立体的な総合的な調査をする。これは他の政治の分野等も考えて取り上げられたが、しかし、公平の原則から考えて、後世に私どもが決して非難を受けることのないように前向きの努力をすることは、一党派のことでなしに、みんなの責任ではないかと思うのであります。その点で、最後に厚生大臣の御所信を明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/119
-
120・神田博
○神田国務大臣 先ほど来大原委員から、被爆者の対策につきましてるる解明がございまして、また最後に結びといたしまして、いま重要な点をお述べになったわけでございますが、私も、先ほど来お答え申し上げておりますとおり、これは何といっても有史以来の事件でございまして、国が復興するに伴いまして、できるだけひとつ被爆者の気持ちを考えながらその施策を進めていくということは、ずっととってまいったわけでございますが、今回調査費もちょうだいできたような事情もございますので、いまお話にもございましたように、平面的な調査でなく、総合的なあるいは立体的な十分なる調査をひとついたしまして、そしてこれをもとといたしまして被爆者対策というものを再検討してみたい、かように考えております。先ほどからお答え申し上げておるように、前向きで手厚い施薬を講じてまいりたい。かような考えであることを申し上げまして、お答えにかえたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/120
-
121・井村重雄
○井村委員長代理 谷口善太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/121
-
122・谷口善太郎
○谷口委員 大臣、この問題は、つまり原爆被爆者に対する援護を強化せよという問題は与野党一致した問題でありまして、共産党もこの場合は意見が一致している。そういう点で、別に特別な質問は私にはないわけであります。ただ、この間の本会議での社会党の八木君の質問に対する大臣あるいは大蔵大臣等のお答えでは、つづめて言えば、原爆被爆者だけを特に考えるわけにはいかないというような意味の御答弁をなさっていらっしゃるわけであります。
そこで、まず伺いたいのは、昨年の国会で、衆参両院とも、先ほどからも問題になっておりますように、援護を強化すべきであるという特別決議がなされております。戦争が終わった直後であれば別といたしまして、二十年もたっておる現在、普通の一般の戦争犠牲者あるいは生活困窮者について、本会議で特別の決議をやるということはない。しかし、原爆被爆者に関してだけ毎年こういう決議が出ているわけであります。ここのところに、私どもの考えによれば、特別の意味があると思うのであります。そういうことについて、政府としてはその意味をどう解釈していらっしゃるか、あるいは理解していらっしゃるか、それをまずお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/122
-
123・神田博
○神田国務大臣 いまお述べになりましたように、被爆者対策の改善につきましては両院の決議で明らかでございまして、またこの決議に対しましては、総理または担当大臣といたしまして、その御趣旨に十分沿いたいということを申し上げたことは、いまお述べになったとおりでございます。それを土台にいたしまして、被爆者の対策を立ててまいったわけでございます。先ほど来他の委員からもいろいろお尋ねがございましたように、十分でないという御批評を受けていることに対しましては、私どもも、これは十分だと考えて提案しているわけではございませんで、御承知のように、いろいろ関係方面の御意向もございますので、その方面といろいろ折衝した結果、まあ四十年度はこの程度でというようなことで御審議を願っておるわけでございます。したがいまして、われわれといたしましては、年々この処遇を改善してまいりたい、こういう考えでございまして、決して両院の決議を軽く見ているというようなことではございません。そのとおり重視いたしまして、しかも今年のごときは、いままでかってなかったような被爆者の実態調査をしよう。この実態調査も、相当金も時間もかけて、ひとつ徹底的にこの対策を立てる資料にもしたい、こういう考え方でございまして、いろいろ政府全体でございますから、予算の大小の問題につきまして議論のあることはやむを得ませんが、とにかくそういう腹がまえでやっております。この事情だけは了とされたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/123
-
124・谷口善太郎
○谷口委員 たいへん御丁寧な御答弁のようだが、私の伺っておりますのは、あの決議の線に沿って、予算上いろいろ関係もあるが、大いに努力している、しかしまだ不十分だという点を大臣はおっしゃったわけでありますが、そういうことを伺っておるのではないんです。戦争が終わった現在、なお両院がああいう特別決議をやるというのには、特別の意味があるわけであります。そこいらのところを政府としては根本的にどう理解しているか。普通の戦災者については特別決議はされていない、あるいは普通の生活困窮者についても特別決議はない。ですけれども、原爆被爆者については、両院が特別にこういう決議を現在なお繰り返しているわけです。そこに特別な意味があるわけでありますね。それについて政府はどう理解していらっしゃるか。対策の問題は、いま伺いません。その根本問題、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/124
-
125・神田博
○神田国務大臣 これは、言うまでもないことでございますが、原爆、こういったものを戦争兵器としては使わないということを、とにかく言われておるということも御承知のとおりでございます。その原爆によって被害を受けた、こういうことでございますから、これを特別の対象として被爆者の対策を立てて、その改善をはかっていくことは当然だと考えておりますが、結局戦争兵器としてそういうものが使われた、この深刻な問題を認識して、両院でこの対策を立てるということであり、政府もまたそのとおりひとつやっていきたい、こういうことだと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/125
-
126・谷口善太郎
○谷口委員 そのとおりだと私も思うのであります。同時に、原爆という兵器を使う行為は、将来にわたって、もちろん行なわるべきじゃないし、だから兵器としても認めるわけにもいかない。それによっての戦争は、もちろん反対しなければならない。そういう意味で、大臣のおっしゃったことばは、わが意を得たと言っておいてもいい。
同町に、そういう兵器を使った結果、被爆している多くの人間に与えているその影響も、かつてない特別の意味があるわけであります。これは被爆していることを世間にも言えないでいるような状況、あるいは被爆しているために、生活あるいは就職、あるいは就学その他に非常な苦しみを余儀なくされている実情——つまり特別な苦しみがあるという問題。同時に、現在健康であっても、いっそのために不治の障害を受けて、病気になって死んでいくかもしれぬという、常に脅かされている問題。それが現在生きている人だけではなくて、将来子孫にまで及ぶという問題、そういう問題なんですね。だから被爆者の問題、たとえば生活困窮の問題からいえば、普通の生活困窮者の場合はもちろん国で援助すべきだと思うのですが、しかし、それは立ち上がる機会がある。被爆者の場合はそれがないのです。根本的にそういう残酷な立場に置かれている人々です。と同時に、これに対する援護という問題を通じまして、大臣がおっしゃるとおりに核兵器は絶対に人類としては使ってはならぬ。使った者は犯罪者という、こういう人類としての将来にわたっての決意が込められている。そういう点で、私はやはり国会では常にああいう特別決議が出る。特に去年の場合は、生活問題も含めまして、単なる医療対策だけではなくて、生活問題も含めて、そうして援護を強化するということですね。医療の問題だけじゃなくて——これを被爆者に対する法律的な観点で言ったら、援護法というようなものですね。現在ある医療対策ではなくて、特別な意味を持っているこの人たちに対する援護、これをつくれという意味だと私は思っている。そういう点から言いますと、予算があるからないからということから、まあ一挙にできないとかいうような事柄じゃなくして、私はそういうことも予算上ほんとうはあり得ると思うのです。しかし、根本的な態度はやはり違ってこなければならぬ。
そういう点で二、三の問題を伺いたいと思うのですけれども、この原爆を被爆したということから、いま健康であっても、その人が何か原爆症といいますか——私はしろうとですから、医学上どういう名前がつくかわかりませんが、とにかく原爆を被爆しているということから、そのことを原因として、いま健康であっても、いつおそるべき不治の病気になるかわからぬ、しかもそういう障害が起こった場合は、いまの医学ではなおらぬ、そういう残酷な立場に置かれている。そういう問題であります。どうです、これはなおりますか。その点はどうですか、現在の医学でなおりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/126
-
127・若松栄一
○若松政府委員 原爆症という病気、通常私ども原爆症と呼んでおりますけれども、先ほども話がありましたような直接被爆によります急性症状は、確かに原爆の被爆放射能の直接の影響としての症状がございますけれども、その後におきます疾患というものは、つまり半年なり一年なり過ぎてから起こってくる疾患、それから将来起こるかもしれない疾患というものは、特別に原爆というものがはっきり因果関係を示しておらない状況でありまして、たとえば白血病であるとかガンであるとか、肝臓病、じん臓病、脳出血というものも、全部いまは一応認定疾患にいたしておりますけれども、そのような普通の病名がついておりますように、普通の人間でもかかる病気でございまして、原爆を受けた人がそういう病気にかかりやすいかもしれない、また、そういう病気にかかった場合にあるいはなおりにくいかもしれないというような配慮から、そういう疾患に対して国が医療費を出しまして、全面的に負担をしているという実情でございまして、そういう意味で、はたしてどの程度これらの疾病が、本人の一生あるいは寿命に影響するかということについては、まだ必ずしも明確な答えが出ておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/127
-
128・谷口善太郎
○谷口委員 それらのことになりますと、私も実はわからぬのであります。けれども、いまお答えになったとおりではないかと思うのです。原爆の被爆者であるから、健康体であったが、ガンその他の病気になりやすい。したがってそこに因果関係があるかないかという問題についてさえ、現在はまだ科学的に結論を出すところにいっていない、そういうように私も思っておるのです。したがって、その問題について結論を出し、対策を立てるためにも、政府の科学的研究活動が大いに大切になるわけですが、科学的研究の上では現にどういうことをなさいましたか。先ほどからいろいろ質問応答がございまして、その中に、たとえば現在ございます長崎大あるいは広島大に付属研究所を持っていらっしゃるようですね、こういうところでは一体どういう研究をなさっていらっしゃるか。あるいは予防衛生研究所で長崎、広島に支所を持っていらっしゃる、ここらでどういう研究をなさっていらっしゃるのですか。私の聞いているところによりますと、これはもう基礎的で、動物実験をなさって放射能に対する影響、そういうものを研究なさっていらっしゃるようでありますが、ところが日本では、何十万という原爆を受けた被爆者がおるわけですね。生きた生体があるわけです。それを対象にして研究し、科学的に、政府として研究し、これに対する対策あるいは治療法、そういうものの研究はなされていないように伺っているのですが、そういう点はどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/128
-
129・若松栄一
○若松政府委員 ただいま、いわゆる原爆症というものが、少なくとも病名的には普通の病気であるということを申しましたが、そういう意味で治療方法そのものについて、原爆症の特有な治療方法といいますか、特別な特効薬といいますか、そういうようなものはないと考えていいと思うのです。ただ、原爆の被爆に引き続きまして白血病が増加するとか、白内障ができるとか、あるいは遺伝的にも、先ほどお話が出ましたように、小頭の子供が生まれるのが若干多いようであるというような点がございますので、そういうようなものにつきましては、被爆者全体を長期にわたって観察しないことには結果が出てまいりません。そういう意味でABCC並びにそこに支所を設けております予防衛生研究所におきましては、原爆被爆者の一生を追及いたしまして、その結果によって結論を出すというような非常に長期なかまえをとっております。白血病とかそういう特殊な疾病につきましては、ある程度すでに、いままでの期間においても発生率が若干高いということは、これは明らかになっておりますが、寿命が全体としてどのくらいほんとうに短くなるであろうかというような問題につきましても、これも今後とも、二十年経過いたしました後も引き続いてそれらの研究を続けていく所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/129
-
130・谷口善太郎
○谷口委員 長期に被爆者を追及して研究するというそのやり方、これはいままでの研究のデータの発表がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/130
-
131・若松栄一
○若松政府委員 長期にわたるといいますのは、結局ABCC及び予研の支所が一番重大に考えておりますのは寿命調査という健康調査でございまして、本人の健康度を追及していきまして、的にほんとうに被爆者が疾病の量が多いか、あるいは現実に寿命が他の者に比べて短くなるかということを見きわめることが最終的な結論でございますので、ある意味では、極端に言いますと、被爆者全部が最後の転帰をとったときに初めて最終的な結論が出るというような調査も引き続いてやっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/131
-
132・谷口善太郎
○谷口委員 そうすると、たとえば中間報告なんという発表は、国民の前になさったことはないですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/132
-
133・若松栄一
○若松政府委員 それはそのときどきまでに集まったものは、すべて逐次発表しております。したがって、これはたとえばそういう意味で白血病が少し多かったとか、あるいは小頭症の発現がある、そういうようなことがわかってくるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/133
-
134・谷口善太郎
○谷口委員 そうではなくて、そこで研究されたデータ、必要なものは全部アメリカに送っているでしょう日本の国民が知りたいことを全部アメリカに送って、国民に発表していないでしょう。その点どうですか。やはりはっきりしておいたほうがいいですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/134
-
135・若松栄一
○若松政府委員 終戦直後の時代で、占領時代におきましては、あるいは一部日本国内に発表されないでアメリカに直送されたことがあるかどうか私存じませんが、少なくとも近年におきましては、日米の研究者の協議会を設けまして、研究方法及び研究の成果について全部協議会にかけて、そしてそれを両方の側で合意した上で日米両国語に印刷して発表いたしております。したがって、最近のものはすべて日米両国語で発表いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/135
-
136・谷口善太郎
○谷口委員 時間がないので追及できないのは残念ですけれども、いまお答えになっただけでもよくわかります。占領中のものは、日本が国勢調査をやったものまで全部向こうに行っている。その後のものは日米が協議して、アメリカがこれはよかろうというものだけ発表している。これはたいへんなことだと私は思う。
それからABCCの問題をあなたおっしゃったけれども、私が先ほど聞きましたのは、広島大や長崎大学における付属研究所や、あるいは予防研究所の広島、長崎の支所での研究は、ほんとうは被爆者を集めてやっているんじゃないでしょう。日本だけが持っている、人類にとっては許すことのできないような被害を受けた生体があるのです。これについて研究し、これについて対策を考えるという態度を政府がとってやっているのじゃないでしょう。動物実験をやったり、基礎研究をやったりで、臨床的なことは一つもやってないでしょう。そんな発表がありますか。研究の結果発表したものがありますか。そういうようなものはみんなアメリカに行っているのじゃないですか。われわれは、原子爆弾で被害を受けただけじゃない、さっき大臣がおっしゃったとおり、人類として許せぬことをやられたわけです。また、やるように日本の当事の支配者はやったのである。そして日本国民が何十万被害を受けた。この被害の対策は医学上未知のことだ。将来その子孫までがおそろしい被害を受けるという問題は未知のことであって、科学対策としては非常に重要なことです。それに対して日本の政府は、科学陣を動員してこれをどうするかということをやり、現在被害を受けている人たちに対して対策を考えるのではなくて、研究所をつくって動物実験をやって、被爆者をほったらかしておる。被爆者についてやっている研究はABCCであり、その成果はみなアメリカに行っている。これは自民党の諸君だってよく聞いておいてもらいたい。そういう態度は、大臣がさっきおっしゃったああいう原則的な態度ではなくて、まさに逆だと思う。アメリカのための研究であり、日本人民のための研究でない、これはやはり私はやめるべきだと思う。政府としては、ほんとうに日本国民の中に、これは世界の人類の上でもそうですか、そういう被爆者がたくさんおる。幸か不幸か生体実験の研究対象になる人がある。徹底的に研究し、科学的な対策を講ずるという方法も発見して、そうして被爆者を救う上で積極的に対処するという根本的な態度がないことは、私はやはり許せないと思います。
〔井村委員長代理退席、委員長着席〕
この点は大臣、非常に大切なことだと思うので、これは他の医学上の問題でも同じように言えますけれども、この科学的態度というのは非常に大切なものだと思うのだが、その点でやはり私は政府の態度は違うと思う、政府のいまの態度は。そこをひとつはっきりしておきたいと思うのであります。
実は、これは皆さん御承知だと思いますが、最近浜松市で、これはビキニ被爆者が対象だと思うのですが、一極の注目すべき研究と対策が行なわれました。それによりますと、被爆者に対する健康管理あるいはその対策というのは、医療対策の上からいいましても、先ほどから問題になっております早期発見、早期治療対策という態度が絶対必要だということ、また被爆者には必ず栄養を十分にやるべきだという問題、それから常に健康管理をやるという組織的な態度が必要であるということ、これが結論づけられました。これはデータとして非常に重要なことだと私は思うのですが、この研究によりまして、いままでのように年に二回だとか、あるいは今度、被爆者の要求があったら健康診断をやるということがつきましたが、そんなことじゃなかなか問題にならぬということです。浜松の調査、研究では、毎月一回やりまして、これは去年の十月からことしの三月までやっております。やった人は、浜松の被爆者の会の主催で、これは高等学校の先生が中心だったらしいですが、浜松市の衛生検査研究所に依頼して、毎月一回ずつ被爆者の健康診断をやった。そうしますと、その中で、たとえば便の中に出血があるとか、白血球の異常がある、赤血球の異常がある、あるいは糖尿病、そういうものが、被爆者であるということとの関連でおびただしく発見された。つまりそういう症状を早期に発見するためには、月一回ぐらい健康診断をやる、それが必要であるということがわかった。同時に、原爆の被爆者であるからガンだとかなんとかに非常にかかりやすいという、それもわかった。そこでこの問題に対する具体的な対策をやっておるという貴重な経験があるのであります。こういう態度でもって全被爆者に対処する必要があるし、そのためには、はっきり生活を援護して、そしてその健康管理を十分にやっていくというようなことまでも含めた援護法とでも申しましょうか、そういうものをつくる必要がある。現行法のように単なる医療対策だけではなくて、こういう方法ではなくて、根本的な態度として、やはりこの際日本政府としては、あるいは日本国民としては、やらなければならぬ義務とまた必要があるのじゃないか。この点を私どもは強調しておきたい。だから、そういう根本的な態度でこの問題に対処される気があるかないかを、ひとつ最後に大臣に伺っておきたいと思います。もしないならないと、はっきりおっしゃっていただいてけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/136
-
137・若松栄一
○若松政府委員 研究の問題でございますが、日米両側の協議会を設けて検討し、発表しておると申し上げましたが、都合のいいものだけ発表して、都合の悪いものはアメリカへ送っておるのじゃないかというお話でしたが、この点は、現在、研究計画から研究データ、全部を日米両国で検討いたしまして、お互いにそれに異議がないという結論を得まして両国語で発表しておりまして、決して一方的に持ち去っておるというようなことはございません。
それから研究の方法につきましても、二十数万人のりっぱな生体材料があるのにこれを使っていないで、基礎的な動物実験ばかりやっているじゃないかというお話でございますが、これは少なくともABCC、予研の研究計画は、現に被爆をされた人たちを中心にした研究でございまして、広島、長崎における数万人の固定した集団を綿密に追及いたしております。そういう意味で、被爆者をほんとうに追及しておるのでありまして、決して動物実験その他の基礎的なものに終始いたしておりません。大学その他においては、比較的基礎的な分野があるかとも思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/137
-
138・神田博
○神田国務大臣 いまお尋ねございましたこの被爆者に対する対策、これらの措置を、一体政府として基本的にはどういう考えを持っておるかというような意味のお尋ねに承りました。
これは、先ほどから申し上げておりますように、いま現にやっております対策にどんどん前向きにプラスしていこう、そこでわれわれの仲間の犠牲でございますから、その苦痛をともにするというような気持ちで、愛情のある気持ちでひとつ考えてまいりたい、私はこういう一貫した考え方を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/138
-
139・谷口善太郎
○谷口委員 これで終わりますが、若松さん、私の聞いておるのは、ABCCなどというアメリカの機関に日本の科学者が協力して、先ほど申しました予防衛生研究所のどなたかが二つの支所の所長になって行っていらっしゃるそうですか、これはABCCの研究所の何か副所長らしいのですが、そこでアメリカの研究に参加していらっしゃる。ここでは被爆者を対象としたいろいろなデータが出ておるのでしょう。しかもこれはみなアメリカヘとられている。日本の科学者がその活動に参加し、相談に乗っている。そういうやり方にわれわれは反対なのだ。何で日本政府が、大学その他でつくった研究所でそういう方向でやらぬか。アメリカに占領されて押えられている中でやっているのだから、科学活動までアメリカにしてやられている。そういう立場ば、日本国民としては許せぬと私は思うのです。なぜ日本政府の自主的な研究機関でそれをやらぬのか。ここでは動物実験しかやってない、臨床的なことはやってない。(「そんなことないだろう」と呼ぶ者あり) ここに全部資料がありますけれども、時間がないから言わぬだけのことだ。それをやるべきだということを私は強調しているんです。これは私は非常に愛国的な発言だと思っている。
それから、これは大臣、前向きでやっていただくことはけっこうでありますが、しかし、生活保護の給与があるとそれを差し引いたり、あるいは医療保険との競合をやらせて、いろいろなことをやったりするやり方ではだめなんで、被爆者の手帳を持っていたら、生活がきちんとそれだけで保護され、それから医療の問題も、健康管理から何からすべてきちんとやれるようなそういう援護と、それから同時に、この二つを科学的に、人類に対する一つの使命として、日本政府はこういう災害に対する科学的な対処ができるような研究機関の確立ということも含めて、やはり積極的な援護法をいまのような医療対策ではなくて、援護法をつくるべきだという意見を私どもは持っております。そういう点にひとつ前進していただきたいと思います。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/139
-
140・松澤雄藏
○松澤委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明十四日、水曜日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。
午後四時一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01819650413/140
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。