1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和四十年四月十四日(水曜日)
午前十時四十分開議
出席委員
委員長 松澤 雄藏君
理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君
理事 藏内 修治君 理事 齋藤 邦吉君
理事 澁谷 直藏君 理事 河野 正君
理事 吉村 吉雄君
伊東 正義君 亀山 孝一君
熊谷 義雄君 小宮山重四郎君
坂村 吉正君 田中 正巳君
竹内 黎一君 中野 四郎君
橋本龍太郎君 松山千惠子君
山村新治郎君 亘 四郎君
淡谷 悠藏君 伊藤よし子君
大原 亨君 小林 進君
滝井 義高君 松平 忠久君
八木 一男君 山口シヅエ君
内海 清君 本島百合子君
吉川 兼光君 谷口善太郎君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 神田 博君
出席政府委員
総理府事務官
(特別地域連絡
局長) 山野 幸吉君
厚生事務官
(大臣官房長) 梅本 純正君
厚生技官
(公衆衛生局
長) 若松 栄一君
厚生技官
(環境衛生局
長) 舘林 宣夫君
厚生事務官
(援護局長) 鈴村 信吾君
委員外の出席者
専 門 員 安中 忠雄君
—————————————
四月十四日
委員本島百合子君辞任につき、その補欠として
内海清君が議長の指名で委員に選任された。
—————————————
本日の会議に付した案件
清掃法の一部を改正する法律案(内閣提出第一
二〇号)(参議院送付)
原子爆弾被爆者の医療等に関する法律の一部を
改正する法律案(内閣提出第二〇号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/0
-
001・松澤雄藏
○松澤委員長 これより会議を開きます。
内閣提出の清掃法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/1
-
002・松澤雄藏
○松澤委員長 内閣提出の原子爆弾被爆者の医療等に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
質疑の申し出がありますのでこれを許します。滝井義高君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/2
-
003・滝井義高
○滝井委員 原子爆弾被爆者の医療等に関する法律案について質問をさせていただきます。
この法律案の提案理由を見てみますと、被爆者が現在置かれておる健康上の特別な状態にかんがみ、本年度においては、大きく四つのことに力を入れてやられるということが書いてあるわけです。そのまず第一は、健康診断を強化をするということになっておるわけですね。まず政府のほうから、その健康診断の強化の具体的なやり方というものは、どういう方法で具体的に健康診断の強化をやるのか、御説明を願いたいと思います。
〔委員長退席、井村委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/3
-
004・若松栄一
○若松政府委員 健康診断の強化の具体的な内容といたしましては、健康診断の回数をまずふやすことであります。従来おおむね春秋二回を定期の健康診断といたしまして、もよりの保健所、長崎、広島等におきましては健康診断の特定の施設を持っておりますので、そういう施設におきまして健康診断をやっておりますが、この定期だけでは不十分である。被爆者はいつどういう症状が起こってくるかわからない。そういう意味で随時健康診断を受けられるようにしてほしいという要望がありましたので、従来の健康診断を受けている人の実績の約四分の一の人数につきまして、年二回程度余分に健康診断が受けられるような予算上の配慮をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/4
-
005・滝井義高
○滝井委員 いままでは春秋二回やっておったものを、四分の一の人については四回やるという結論になるわけですね。そうすると、その四分の一というものの選び出す方法ですね。これは四分の一に当たる人というのは一体どういう基準の人を四回やることになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/5
-
006・若松栄一
○若松政府委員 実はこの四分の一については積極的な理由がございません。おおよそ四分の一くらいが要望するだろうという見当でございまして、これは実施してみてからもう一度実績によってさらに検討してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/6
-
007・滝井義高
○滝井委員 どうも非常に情けないことです。四分の一くらいやるのだ、しかしそれは全然科学的な根拠がなくて四分の一やるのだ。実は、私がどうしてそういうことを言うかというと、ラジオの六時五十分くらいから始まる「私たちのことば」というのがあるのですね。私きょうそれを聞いておりました。そうしましたら、昨年九月に重度精神薄弱児の扶養手当法ができた。厚生省はこれは三千人の人たちに月千円ずつの扶養手当を差し上げるのだとかねや太鼓ではやし立てた。そうしたところが現実には手続がややこしかったり何かして、たった一万人しかないのだ、しかもその所得制限は二十三万円以下だ、東京都のごときは一万人くらい重度精神薄弱児がおるらしいのだけれども、しかし実際に申し出たのは三十三人しかいないのだということを、きょう「私たちのことば」で言っているのですよ。神田さんじゃない、前の大臣はあれだけし尿大臣といわれ、重度精神薄弱児大臣といわれた、その大臣があれだけ熱意を持ってやったはずなのにこの実態なんですよ。そこで役所のやる仕事として、こういう科学的な問題を背景にする問題の処理というものは、やはりつまみ金とかなんとかじゃいかぬのじゃないか。よほど科学的にやっておかぬと、四分の一くらいというのは何も根拠がありません。春秋二回やっておったけれども、二割五分くらいしておけばそう文句も言うまいというような、こんなことでは原爆を受けた長崎、広島の諸君は情けないと思うでしょう。
〔井村委員長代理退席、小沢(辰)委員長代理着席〕
いままでやってきているのですからね。いままでの状態を見ますと、これは厚生白書によりますと、三十五年には一般検査が九万四千八十七人、三十六年が十二万二千六百八十六人、三十七年が十七万五百九人となっておる。三十八年、三十九年は出ていないのです。そこで三十八年、九年は一体幾らの一般検査をやったのか。それから精密検査をごらんになると、これも三十七年までは出ている。精密検査、三十五年が一万三千六百六十六人、三十六年が二万七百三十二人、三十七年が二万六千六百七十三人と、一般検査も精密検査も非常に増加をしてきているわけです。そうしますと、当然これらの検査の中で一体どの程度のものをもう二回程度ふやすことが必要かという科学的なデータがないはずはないですよ。しかもこれは三十八年、三十九年の数を言ってもらったらおそらくふえてきていると思うのです。予算ではちょっと減っておるところもあるのですが、私あとで質問しますけれども……。だからその実態を見ると、それは四分の一くらいは別に——語るに落ちるのですが、正直におっしゃったけれども、そんなものは根拠がないはずはない。この一般検査なり精密検査の中から学問的に、科学的に検討したらこうなるのですという確信がなかったら、そんなものは処置ないですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/7
-
008・若松栄一
○若松政府委員 三十八年度の一般検査の人員は十七万五千八百五十二名で、前年度より約五千名程度増加しております。精密検査は三十八年度が二万六千五百三十一名で前年より若干減少しております。三十九年度の精算はまだ出ておりませんが、そういう状況で、大体足踏み程度でございます。そしてもちろん被爆者といいましても、健康でぴんぴんしている人が相当多いわけでございますから、それで実際の受診率は手帳を持っている人の大体四分の一程度なのでございます。そういう意味から、そのまた四分の一ということを概略の算定の根拠にいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/8
-
009・滝井義高
○滝井委員 そういう数の上の日の子で、まあいろいろ検査を受けるのは二十六万有余の四分の一くらいだ、したがって、その四分の一検査を受けた人のまた四分の一くらいを、二回からさらに二回ふやして四回にすればいいだろうということでは科学者としてあまりにも権威がないじゃないか。しかも過去の検査があるのだから、その検査の中でこういう症状が出た人というものは、医学的に見たら二回だけの検査ではだめなのだ、やはりそれを四回なり六回なりやらなければだめだという何も学問的根拠がないのに、国民の税金を二回から四回、四分の一程度ふやしたらいいだろうということでは権威がないと思うのです。少なくとも、被爆者の中でこういう症状を訴える人はときどき医者が見て指導してやらなければ、いまの社会的生活に適応する上において、やはりノイローゼその他になっていけないのだ、安心感を与えるためにも科学的にはこういう症状の人は見てやらなければならぬということがあるのではないかと思いますが、そういうものはないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/9
-
010・若松栄一
○若松政府委員 一般検査の結果についての精密な統計はとっておりません。しかし精密検査が、そのように十七万のうち二万六千という数でございますので、いわゆる精密検査に来るというような数が、やはりもう少し頻回の検査を受けたいのではないかということからいいますと、いまの四分の一程度見積もっておけば、まあまあだいじょうぶだろうという考えでございます。しかし現実におきましては、何も四分の一に限定して、四分の一をこえたらもう健康診断はしないということではなしに、一応予算の積算は四分の一とってありますけれども、希望が多ければ、実際には希望のあるだけ実施するというやり方でやってまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/10
-
011・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、いまのあなたの御説明によると、随時検査をやるというのは、主として精密検査をやる二万六千人くらいが中心になるだろう、こういうことならわりあいに理論的にはっきりしてくるんですよ。一般検査を受ける者は、十七万程度の人よりか二万六千人のほうが病状がやはり重い。したがって、そういう人が中心だ、そういう説明を初めからしてもらったら、わりあい納得がいくんですよ。私から詰められて言うのでは困る。
そうしますと、ことしの予算を見ますと、いまの十七万人が今度は横ばいではなくて、二十一万人になっておりますね。一般検査は、健康診断費交付金一億一千六百八十五万四千円が一億五千九百六十二万二千円、これは政府の提出した提案理由の説明の裏についておりますが、四千二百七十六万八千円の増です。そうすると、この一億五千九百六十二万二千円の大部分は検査費の交付金になっているわけですね。これは一億五千九百六十二万二千円で、飛躍的に一般検査が増加して二十一万九千八百二十三件と、こういうふうになってきているわけですよ。これはいままでよりか非常に増加をしてくるという理由は、患者の実態調査をやって、そしてPRを徹底して一般検査を受けさせる態勢をとるということで増加をするのか、それともだんだん原爆被爆者の医療問題というのが原水禁の世界大会その他を通じて徹底をされて増加してくるのか。これがいままで十七、八万の横ばいというのが二十一万にことしの予算で増加してくる理由、その根拠はどういうところにあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/11
-
012・若松栄一
○若松政府委員 ただいまのお話のように、原爆対策をかなりいろいろな点で拡充いたしたいということで、いろいろな施策を進めますし、特別被爆者の範囲拡大等もございますと、こういう方面に目を向ける数が多くなってくるだろうということから配慮いたしまして、若干増加をしたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/12
-
013・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、この春秋二回のほかに二回検査をふやしますね。そのことが予算資料にいう一般検査のうち定期外検査四万三千九百六十五件とこういうようになっていますけれども、これはさいぜんの二万六千よりかはるかに数が多くなるわけですね。この四万三千九百六十五人の人たちが春秋二回のほかにプラス二回、計四回受けるという数ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/13
-
014・若松栄一
○若松政府委員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/14
-
015・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、この四万三千有余と精密検査の三万三千百二十二件との関係はどうなるのです。四万三千の中に三万三千の精密検査は入っているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/15
-
016・若松栄一
○若松政府委員 二十一万と定期外を含めましたその中から三万三千人精密検査が出てくるであろうということで、先ほど申しました前年度の二万六千五百に相当する数でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/16
-
017・滝井義高
○滝井委員 いままでやっておった二万六千の精密検査が発展をして三万三千になることはわかるのです。その場合に、新設される定期外の検査に四万三千九百六十五件という数が出てきておるわけですが、この数と三万三千百二十二件という精密検査との関係はどうなりますか、こう言っているのです。精密検査の三万三千は四万三千の中に入っておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/17
-
018・若松栄一
○若松政府委員 この精密検査は定期も定期外も含んでおります。したがって、定期から出てくる精密検査も四万三千九百六十五の定期外から出てくる精密検査も一緒にしてございます。なお、四万三千九百六十五の中から出てくる精密検査を約六千六百程度想定いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/18
-
019・滝井義高
○滝井委員 どうもちょっと予算の組み方がよくわからぬのですが、いまの精密検査の三万三千百二十二件の中に——今度は精密検査にも定期外のものを置くわけでしょう。精密検査はいま一年に何回やっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/19
-
020・若松栄一
○若松政府委員 精密検査といいますのは、一般の健康診断を受けたときに、医師がさらに精密な検査を必要とすると認めた分が精密検査に回るわけでございますから、定期外の場合も、やはりその中から精密検査に回る者が出てくるというわけでございます。したがって、精密検査は年に何回ということではなしに、検査に付随して起こるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/20
-
021・滝井義高
○滝井委員 わかりました。そうすると、一般検査を受けて、これはさらに精密検査を必要とするという者が二十一万の一般検査の中から二万三千だけ四十年度には出てくる、こういう意味ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/21
-
022・若松栄一
○若松政府委員 そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/22
-
023・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、三万三千の精密検査の中で、今度は定期外の六千五百九十五件というのがあるわけです。だから精密検査の中に定期外というものがあれば、定期の精密検査がなければならぬことになるわけです。そうすると、定期の精密検査とは何ぞやというと、それは春秋二回一般の定期の検査をやっているから、したがってそこから出てくる精密検査を必要とする分と、それから定期外に二回やりますね、その中から出てくる精密検査分と、精密検査が二つあることになるわけでしょう。そうですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/23
-
024・若松栄一
○若松政府委員 そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/24
-
025・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、その定期の一般検査から出てくる精密検査の数が幾らで定期外から出てくるのが幾らとこう見るのかということです。この予算資料を見ますと、精密検査三万二千百二十二件、定期外六千五百九十五件、収容検査千四十件、こういうように書いてあるのですよ。だから、もう一つ何だったら、従前の精密検査の精密検査、そうならなければいかぬのじゃないですか。そこらの分類がいろいろ考えてみるけれどもよくわからない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/25
-
026・若松栄一
○若松政府委員 おっしゃるとおりでございまして、内訳として載せればそうなりますが、これはただ説明としてこの三万三千百二十二件のうちに定期外の分が六千五百九十五件入っておりますということでございまして、三万三千百二十二件と六千五百九十五件の差額が一般定期検査から出てくる精密検査でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/26
-
027・滝井義高
○滝井委員 わかりました。そうしますと、さらに入院させてやる収容検査というものが出てくるわけですね。こういう一般検査をやり、さらに一般検査のほかに定期外の検査をやり、そしてその一般検査と定期外の一般検査の中から精密検査をやるものを持って来、精密検査の中から収容検査のものを選んでいくという段階が出てくるわけですね。これは何か医師にそういう基準を与えておりますか、いわゆる治療指針というか検査指針というものを。原爆被爆者に不平を起こさせないためには、やはり何か、どの医師も検査をやる場合に、こういう人には一般検査をやった後に精密検査をやる、こういう人には収容検査をやるという一様の指針があって、そうして全国的にしておかないと、千差万別のものの考え方を持っている保健所の医師なり特別施設の医師にやらせておったら、非常なアンバランスが出てくるのです。こういう問題はきわめて科学的に合理的に全国的に不平の起こらないような一律の方針で行政の運営をされておかぬと話にならぬわけですよ。そういうことがやられておるかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/27
-
028・若松栄一
○若松政府委員 御指摘のようにおおよそのルールがなければ困ると思いますので、一般検査はどういう項目を検査する、精密検査はどういう項目を検査するというルールはございます。したがって、精密検査の項目に該当するような検査をしなければならないと医師が判定した者が精密検査に回るわけでございます。さらに今後収容検査に回す者はどういうものかということは、この月末に全国の担当者会議を開きましてルールを指示する予定になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/28
-
029・滝井義高
○滝井委員 ぜひひとつきちっとした全国一定をした基準で、被爆者に差別のないような取り扱いをしてもらいたいと思うのです。
それから、交通手当が交付されますね。それはどういう場合に出されるのですか。二十一万人の全員に交通手当が出されるのですか。それとも病状の重い人に出されるのですか。あるいは精密検査の人に出されるのですか。そしてその金額は一体幾ら出すのか、実費を全部支弁してやるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/29
-
030・若松栄一
○若松政府委員 現在交通費を支給しておりますのは精密検査だけでございます。といいますのは、広島、長崎のように医療機関が便利なところはいいのでございますが、ほかの一般の県に行きますと、非常に広い地域に患者が散らばっておりますので、一般検査は、もよりの保健所等で比較的近いところでやりますけれども、精密検査になりますと、指定医療機関に行かなければならない。指定医療機関まで行くには、相当の時間、経費がかかりますので、精密検査については交通美費を支給するというたてまえになっております。その支給のしかたは、予算としては二百五十円、大体県内の、隣あるいは近くの保健所あたりを基準にしまして二百五十円で積算しておりますが、運用においてはできるだけ実費を出すようにという指導をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/30
-
031・滝井義高
○滝井委員 わかりました。それでは、事務費の交付金というのは、どういう形でだれに交付するのですか。直接保健所に出すことになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/31
-
032・若松栄一
○若松政府委員 これは定期の健康診断等を県に委託して保健所で実施さしておりますので、保健所の職員等、あるいは県の職員が動き回るための旅費、庁費というような事務費でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/32
-
033・滝井義高
○滝井委員 動き回る費用といっても、それは別に出張の旅費をもらっているはずですからね。そういうものは交付税か何かでやるべきもので、ここに事務費の交付金、わずか百七十万ですけれども、わざわざ百七十万あげておるのだから、何かやるのにもルールがなくてはいかぬのじゃないかという感じがするのでお聞きしているのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/33
-
034・若松栄一
○若松政府委員 その原爆の健康診断というのは、一応国が責任を持って国の事務としてやるたてまえをとっておりますので、これを府県に委託してやるという形になりますので、委託料といいますか、そういう形で事務費を計上して、これは交付基準を設けまして交付しておるわけでございす。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/34
-
035・滝井義高
○滝井委員 そうすると、交付基準をきめてお出しになるというのですが、同じように予算で、原爆症の調査研究委託費というのがあるわけですね。これとの関係はどうなるのですか。これはわずか七十五万くらいですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/35
-
036・若松栄一
○若松政府委員 これは原爆医療審議会の委員等の方々が、現地の実情やあるいは原爆に関するいろいろな最新の知識を持っていただくために、原爆医療審議会の委員である美甘先生を中心とした調査班を設けまして、その調査班に対して交付している金でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/36
-
037・滝井義高
○滝井委員 そうしますといろいろと健康診断を強化をされて、精密検査なり収容検査までおやりになるということになれば、当然その学問的な成果というものは、やはり全国的にまとめて、そしてこういうようにベトナムの情勢が緊迫をしてくると、いつどういう被害が及ぶかもわからぬので、こういう実態というものは、正確に記録にとどめておいてもらわなければならぬけれども、そういうことはおやりになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/37
-
038・若松栄一
○若松政府委員 健康診断の結果については、詳細な記録は取っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/38
-
039・滝井義高
○滝井委員 厚生大臣、いままでの質問でお聞きのように、どうもただ事務的に健康診断をやり、精密検査をやるだけの感じがしておるのですね。こういうとうとい国の金を、それは一億か二億くらいで、わずかかもしれないけれども、この診断の結果なり、精密検査の成り行きというものは、非常にこれは貴重な文献ですよ、世界に例がないんだから。日本というのは、ああいう炭じんの爆発があったとかなんとかいっても、全然文献がとられていないのです。だから、さあ、起こったというときにはどうしていいんだということを三池のときだって全然医者がわからなかったでしょう。さあ、死んだ人を遺族に解剖させていただきたいと言ったって、そのときはみんな泣き悲しんでおるんだからなかなか解剖なんかさしてくれない。もうずっと昔からガス爆発は幾度かあっておるのだけれども、何もそういう貴重な文献をとっていないのですね。それであとからきたそういう研究者や治療者というのは、全く新しい場面に直面しなければならぬということになるわけです。今後の原子医学の発展のためにも、私はこういうものはやはり少し金を使ってでもきちっとして整備させておく必要があると思うのです。一つ一つの病例について、一つ一つの検査の成り行きについてやっておく必要があると思うのです。これは役所が金を出して、ある程度美甘先生あたりにいま言ったようにお頼みになるならば、こういうところの資料もやはりまとめておいてもらう必要があるのじゃないですか。そして貴重な文献として厚生省にとっておく必要がある。今後、日本でも原子力発電もやろうというような場合に、原子炉が爆発したとき同じようなことが起こってくるのですからね。そういう点でもう少し金をかけてでも資料を集める、こんなことは非常につまらぬような、じみなことだけれども、こういうつまらぬ、じみな積み重ねがやはりないから日本の科学の基礎が固まらぬと思うのです。大臣、こういう点はすでに三十五年ごろからずっとやっているのですから、そういう資料を、大事なところだけはやはり集約をしてきちっとしておくという態勢をとる必要があると思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/39
-
040・神田博
○神田国務大臣 いま滝井委員がお述べになりましたように、原爆患者の治療につきましていろいろのデータで出てくるわけでございます。このデータを分類してそれぞれ整備し、管理し、そしてこれを土台としてなお調査し研究し、そしてこれをまた活用するということは、これは当然なことでございまして、それらのことはやっていると思って実は考えておりました。いま政府委員の答弁を聞きまして、私も実はこれは驚いた、こう思っております。全く御指摘のとおりでございまして、一言もございません。これは多少金もかかり、手数のかかることは当然のことでございますが、しかしそういうわずかなものを惜しんでこの貴重な問題を見のがすということは、私は人類の将来のためによくない。ことに今後原子力が平和利用に活用されて、あらゆる面に原子力の平和利用が唱えられて、その緒につこうとしている際でございますから、いまからでもおそくはございませんから、そういう点につきましてはひとつ事務当局を督励いたしまして、そういう方向に持っていきたいと考えております。ただ私、突然のお尋ねでございまして、そういうことがなぜできなかったのか、予算がなかったからできなかったのか、あるいは事実問題として必要なかったのかどうかという議論もあったのだろうと思います。しかし、私はしろうとでございますが、しろうとはしろうとなりに、これはやるべきことをやってないんだという感じでございます。ひとつよく省内に御相談いたしまして、当然やるべきことが抜けているのじゃなかろうか、こう思いますので、そういう線に沿って検討を加えたい、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/40
-
041・滝井義高
○滝井委員 こういう貴重な資料はどこにも世界にないのですから、これは百万か二百方の予算を毎年組んでやれば、日本の学者は自分の学問の積み重ねにもなるわけですから喜んでやりますよ。それはただ行政が診断をやり精密検査をやった資料を集めてさえやればいいのです。だから、これはぜひ資料が散逸しないうちに——四、五年なら散逸していないですよ、どこか倉庫のすみっこにありますよ。だからぜひ少し予算をとって、できれば今年から何か予備費でも少しとってやるし、できなければ来年からでも直ちにかかってもらいたいと思います。
次は、そういう資料と関連をしてアメリカのABCCの資料ですね。これをこの前本会議で八十昇君が質問をして、外務大臣も、その資料はアメリカからひとつ見せていただくようにしようという発言があったのですが、これは一体厚生省としてはそいう意思を持ってやろうとしておるのかどうか。ABCCには、御存じのとおりあの当時の悲惨な状態の資料というのがずいぶんあるわけです。われわれが今後やはり身体検査をし精密検査をやれば、長期の原爆症の障害の状態は、日本の学者が資料として集めれば出てくると思う。ところが、原爆の落ちた瞬間、それからわずかの期間における状態というのは、あのときの混乱の状態からしてわからない。ところがアメリカはABCCを持ってきてやっているわけですね。この資料のある程度の公開を迫る必要がある。これは人類の名において迫る必要がある。これは秘密で、なかなか出さぬでしょう。佐藤・ジョンソン会談で、ほんとうにアメリカと日本が交流しようというならば、こういう学問的な成果から先に日本に見せてもらう必要がある。日本人はモルモットじゃない、日本人はアメリカの原爆で被害を受けたのですから。ところが、アメリカがABCCの資料を後生大事にとって、アメリカの学者だけが秘密の知識にしてはいかぬと思うのです。こういう点は強力に公開を迫るか、公開ができなければ日本の学者には見せてもらうことが必要だと思うのです。外務大臣は先ごろ本会議で、これはひとつ交渉して見せてもらうようにいたしましょうという発言をしたと思うのです。これは主体である厚生省がその推進をやらぬことには話にならぬと思うのですが、これはその後一体どうなっておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/41
-
042・若松栄一
○若松政府委員 あるいは後ほど出るのかもしれませんが、実態調査をことし計画しておりまして、今度の実態調査におきましては単に現状を断面的に調査するのみでなく、なるべく前からのいろいろな資料を全部集約的にまとめてしまおう、二十年間の経過がございますので、この際、爆発当時からのいろいろな資料をできるだけまとめておきたい、そのために特別に実態調査と並行してそういう作業をやりたいという計画をしておりますので、その際に必要な資料があって、ABCC等が持っていて日本側に持っていない資料があれば、これもできるだけ要求して収録したいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/42
-
043・滝井義高
○滝井委員 ABCCとあなたのほうとの、そういう資料を定期的に交換したり、見せてもらうような会合はあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/43
-
044・若松栄一
○若松政府委員 三十三年以降、ABCCの中に日米協議会というのを設けまして、この協議会で研究計画を設定し、あるいはそのデータを解析分析し、そして発表するという態度をとっておりまして、現在はABCCが独走しているのではなくて、ABCCの職員、それからABCC以外の日本の原子力障害等の専門学者を加えました協議会で検討いたしておりますので、現在では非常に緊密にやっておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/44
-
045・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、二十周年に当たるので、二十年の経過をまとめる場合に、ABCCの重要な資料をすべて日本に提供してくれるという自信はありますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/45
-
046・若松栄一
○若松政府委員 資料収集の段階でどういう程度の資料をどういうふうに収録するかということを、やはり委員会みたいなものを設けまして検討しなければならぬと思いますので、その線に沿って、できるだけ資料を要求してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/46
-
047・滝井義高
○滝井委員 ことしの予算に、いまのような資料を集めて二十年の経過を編さんするような予算が計上してありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/47
-
048・若松栄一
○若松政府委員 実はこの原爆被爆者実態調査の費用の中から数百万円をさいてこれに充てたいという所存でございまして、そういうやり方で作業することについて大蔵とも了解をつけております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/48
-
049・滝井義高
○滝井委員 三千七百九十三万一千円の調査費の中から数百万をさいておやりになる、こういうことでございますから、その実態調査のことはあとで質問するとして、大体健康診断のことは以上でけっこうです。
次は、医療拡充ということがいわれているわけですね。原爆被爆者に対する医療の拡充は具体的にどういうことでやられることになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/49
-
050・若松栄一
○若松政府委員 具体的には特別被爆者の範囲の拡大ということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/50
-
051・滝井義高
○滝井委員 特別被爆者の範囲の拡大ということになりますと、この前の予算の説明によりますと、原爆投下時より三日以内に爆心地より二キロ以内の地点に立ち入った者、それから残留放射能濃厚地帯にあった者、この二つを適用して特別被爆者の拡大をやる、こうなっていますね。医療の拡充というのはこの二つをさしておるわけですか。——首を縦に振っておるからその二つですね。そうすると、原爆投下時から三日以内ということがまず一つ、それからもう一つは爆心地から二キロ以内に立ち入ったという者、その証明のしかたというのは一体どういうことでするのかということです。二つ条件がある。三日というのと二キロという距離です。焼け野原になっておって、一体どこがあの当時爆心地であったかよくわからない。立ち入っておる人は無我夢中ですから、おれは二キロ以内におったのだ、三日以内におったのだといったって、おったところが二キロであったのか、三キロであったのか、四キロであったのか、そんなものはわけがわからぬですよ。きょうは援護のほうにも来てもらっておるのだが、援護法の関係がやはりこういう関係でなかなか証明できずに困っているのがたくさんあるわけです。一体この証明を具体的にどういう形ですればいいのかということなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/51
-
052・若松栄一
○若松政府委員 入市者には被爆者手帳を交付しておりますので、入市者は何日に入ったということがわかっております。二キロ以内に入ったかどうかという点につきましては、おっしゃるように記憶その他が非常に不明なところがありますが、二キロ以内の町名が全部きまっておりますので、どこの町をうろついたということになれば、それは二キロ以内、それは三キロだというようなことで判断いたしておるわけでございまして、これについては具体的な証明者があればそれでよろしいというたてまえをとっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/52
-
053・滝井義高
○滝井委員 そういうことが非常に科学的なようであるけれどもきわめて非科学的なんですよ。あの混乱の中でそんなもの忘れてしまいますよ。何という町におったか知らぬ、おれは大田町ととか田町とかいうところにおったといっても、いやそんな町は広島にないといわれたらそれまでだ。人間の記憶は三日か一週間したらきわめて薄いものになる。しかもはるかに月日の霧を通して二十年前の記憶を今度拡大してやるわけですからね。問題はこういうところにはないのではないか。問題の本質は二十六万人の全被爆者について、これから一般検査なり精密検査をおやりになるのですからね。そのおやりになった肉体的な、科学的な状態から見てこれは明らかに原爆症だというものは私はしてやったらいいのじゃないかと思う。これくらい確実な客観性のあるものはない。
〔小沢(辰)委員長代理退席、蔵内委員長代理着席〕
ときにはその中に原爆以外で白血病になった者が入っておるかもしれない。しかしそこらは、いまあなた方が三千七百九十三万円の金をかけて実態調査をやって、そうして医学的な審査を強化しよう、こうおっしゃっているのだから、それを何か非科学的に三日以内、そうして二キロ以内におった者ならいいんだというような、そんなのは、きわめて科学的のようであって非科学的ですよ。肉体を見てやればいいのだから、症状がある人はみんな特別被爆者にしてやったらいい。そのときに原爆地に行ったという証明さえあれば、私はしてやっていいと思うのですよ。こういうところがどうも役所的で、しゃくし定木でものを見ておるから、結局これで泣く人が出てくるのです。今度は、その人たちは二キロ以内におったという証明がなかったら、ならないのだから、三日以内、二キロ以内で——そういう点ではもうちょっと科学的に見て、症状があればやっていいのじゃないか、それ一本でいいんじゃないかという感じがするのですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/53
-
054・若松栄一
○若松政府委員 特別被爆者というものの中には、いわゆる原爆症という認定を受けた者は特別被爆者でございますし、そのほかに健康診断の際に、おっしゃるように特別の症状があって、たとえば血液関係の症状がある、肝臓機能障害がある、じん臓機能障害がある、あるいは内分泌系の障害があるというような特定の症状のある者はこれを自動的に特別被爆者にいたしております。そのほかに、現在は症状も何もないけれども、将来起こるかもしれないということも予想されますので、特にそういう現在何も症状がなくても、少なくとも三日以内に入ったものは一応特別被爆者にするというたてまえでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/54
-
055・滝井義高
○滝井委員 私は、これからずっと二十六万人の全被爆者について、これにいまのような三日以内に入っているという人があれば、そういう人たちのからだを一年に二回見てやればいいのですから、症状が何もなかったら何もする必要はない。だから、一年に二回ずつ必ずいわゆる経費を国が計上して、そうして見てやる。旅費さえ出してもらえれば、みんな自分のからだは大事だから見てもらいに行くわけです。それでいいのじゃないかという感じがするわけです。それから、残留放射能濃厚地区にあった者ということだって、一体その残留放射能の濃厚地区なんというものも、濃厚ということにまたその厚い薄いがあるわけですね。また、それはあなた方がこうきめてしまったわけでしょう。ところが、何というか、やはりそのときの風向きとかなんとかによって、あるいはそのときのからだの衰弱の状態とか、そういうものによって濃厚でなくたってなる人だっておるのですよ。テン・メン・テン・カラー、十人十色で、それぞれ体質が違うし、それぞれ受ける状態が違うのですから、私は、こういう、何もしゃくし定木なことを言わずに、広島、長崎に当時行った人、それから現実にその症状がある人ということで身体検査をやる腹になれば、こんなしゃくし定木なことをやらなくてもいいのじゃないかという気がするのですよ。まあこれは人数が四万二千百五十八人というように、八人というところまでつけておるところはなかなか科学的なように見えるけれども、私から見れば、これは、その八人をつけたところがごまかしであって、むしろ非科学的だという感じがするのですよ。まあ、医療の拡大というのはそういうことらしいのですが、医療を拡大するというなら、症状がある人は全部見てあげる。それから広島、長崎に入って神経質な人は一年に二回は必ず身体検査をしてあげます。もし希望があれば三回、四回してあげてもけっこうです。このくらいでいいのじゃないかと思うのです。あんまり法律をよけいつくって法匪といわれてもこれは困ったことになるんじゃないか、もう、その二十六万人というのに、それにプラスアルファだけですから、そんなに多くない。これを全部についてこれから実態調査をおやりになるという腹をきめたからには、私はそうしゃくし定木にやる必要はないような気がします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/55
-
056・若松栄一
○若松政府委員 おっしゃるように、全被爆者について健康診断を受けられるようにしてあるわけでございますから、二キロ以内におった、広島、長崎に入って来た者は入市者として手帳を受けておりますから、そういう人たちは定期の健康診断、臨時の健康診断を常に受けられるようになっておるわけでございます。その健康診断で特別な症状があった者は、今度は特別被爆者といたしまして特に一般医療についても医療費の負担をしてやるという非常に手厚いやり方をしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/56
-
057・滝井義高
○滝井委員 手厚くしてもらえればけっこうです。それなら、まただんだんそこに返ってくるかもしれませんが、三番目には、病床の増加をうたっているわけですね。これはどこに何床増加することになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/57
-
058・若松栄一
○若松政府委員 広島の原爆病院に、五十床、長崎の原爆病院に三十床という予定をいたしております。しかし、これは現地の事情もございますので、どういうふうに動いていくかまだ決定的でございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/58
-
059・滝井義高
○滝井委員 現地の状態でどう働くかわからぬということになりますと、それは現地の予算の負担があるということのためにそういうことになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/59
-
060・若松栄一
○若松政府委員 予算もさることながら、やはりベットの増ということになりますので、地元医師会等の意向もございまして、予算面とそういう面とがからんでなかなか簡単にはいかないようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/60
-
061・滝井義高
○滝井委員 地元医師会との関係があるということですが、これを原爆被爆者だけをする特別の病院にしてしまってもそういう関係があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/61
-
062・若松栄一
○若松政府委員 被爆者だけであれば比較的問題は少ないかと思いますが、一部被爆者でないというものも外来等で来ておりますので、そういう点で地元でいろいろ問題があるようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/62
-
063・滝井義高
○滝井委員 だから、そういうところを非常にあいまいにしているから問題なんです。羊頭を掲げて狗肉を売るというわけで、原爆被爆者のための病院だといってつくっておいて、行って見たら原爆被爆者は数えるほどしかいなかった。入っておるのは一般の患者が多かった。労災の病院がそうである。労災病院だといってつくったが、行って見れば労災患者は四割しかいなくて、六割は一般の患者だ。それで労災病院だといっている、こういうことになる。だから、そういう目的でおつくりになったらそういう目的に使うということでおやりになったらどうですか。そこらあたり、目的を掲げておいて、そうして、病院をつくったら目的以外のものに使ってしまうということがいま日本ではやっておるからいけないのです。だから、目的のために病院をつくったら、その目的だけに使うということにすべきだと私は思うのですよ。それをあなた方は、病床の増加ということを提案理由の中に掲げておいて、そうして、どうも地元の関係があって——予算の関係、医師会の関係があってどうなるかわかりませんという答弁なら、提案理由の中のこんなものは消さなければいかぬ。これはまだペンディングでございますということで、話が固まっておることではないということにしなければいかぬのだが……。そうすると、その予算はどこについておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/63
-
064・若松栄一
○若松政府委員 これは原爆対策の予算ではございませんで、病院の補助については、公的病院の補助金で、医務局の予算で、その中でまかなうということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/64
-
065・滝井義高
○滝井委員 どこかそこらの日赤とか済生会というのにくっつけるとそういう問題になるのですよ。それだったら原爆専門の病院をまずつくって、そうして、将来原爆患者がいなくなったらそれは何かほかの老人ホームなら老人ホームに転換るするとか、やはり長期展望に立って、当分の間は原爆専門にやります。他の者は一切入れません。精密検査をやろう、収容検査をやろうというような大きな展望をお持ちになるんだから、そういうことも兼ね備えた病院にして、それを専門にしてやったらよい。それだけでも十分収容して研究する価値のあるものですからね。だから、そういう点では研究、治療一切がそこで総合的にできていくということになれば非常にいい。そうして、それが全部原爆症の患者の治療が終わってしまって、みんなが安心して来る必要がなくなったというなら、今度はそれを老人ホームなら老人ホーム、他の施設に転換していったらよい。それをほかの普通の病院に転換するとか何かしていったらいいじゃないですか。それを何かどこかの公的医療機関に五十くらいのベットをつけておいてそれをやろうという、そういう一時的なその場限りの政策でおやりになるから、結局反対があってできないということになるではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/65
-
066・若松栄一
○若松政府委員 この広島、長崎の原爆病院は、それぞれ専門の病院でございまして、決してちょっとくっつけたというものではございません。広島はもちろん日赤に併設してありますが、事実上分離された病院でございますので、入院患者については、現在のところほとんど原爆症の患者でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/66
-
067・滝井義高
○滝井委員 日赤に初め併置したところに問題があるわけです。だから、先々になったら日赤の病院にしようということになるわけで、それで疑いができてくるわけです。ほんとうは、初めからそんなけちなことをせずに、やるなら腹を固めて専門の病院にしておくべきだったのです。日赤というのは、日赤本来の目的があって、入院させ、治療しているわけですから、日赤だって独立採算だから、もうけなければならぬ。原爆医療の問題というものは、国が全部責任を持ってやるのだから、もうける必要はないわけです。日赤につけるということになれば、日赤はもうけなければならぬから、原爆患者からも搾取するということになる。そもそも出発から間違っておったのです。だから、そういう点では、もう少し病床の増加その他についても、きちっとこの際やって、そういう隘路のないような、スムーズに問題が運ぶようたぐあいにやらなければいかぬと思うのです。
それから第四番目に、福祉施設の整備ということになる。この福祉施設は、被爆者のためにどういう福祉施設を整備するということになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/67
-
068・若松栄一
○若松政府委員 原爆被爆者がだんだん老化してまいりまして、老人が多くなってまいりますので、老人ホームをぜひほしいという声がございまして、そのために広島、長崎等で老人ホームをつくる場合には、優先的にこれを見ていくということと、なおそのほかに、温泉保養所をつっくてくれという要望がございまして、広島地域のために江津、長崎地域のために小浜にそれぞれ温泉保養所をつくろうという計画がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/68
-
069・滝井義高
○滝井委員 私が前に言っておったように、老人ホームをつくるとすれば、老人が単に年をとったからといって、昔の養老院的なものでなくて、お年寄りになってからも、原爆の影響による病気が起こるかもしれないということで、やはり病院と併置した老人ホームをおつくりになる構想を持っておれば、そんな心配は要らなかったわけです。何か日本の政策というのは、その場限りでばらばらで、ちっと長期の展望がないのです。私は金を——とうとい血のにじむような、佐藤さんじゃないですけれども、膏血をしばるわけだから、そのしぼった膏血は、国民に返るように、汗がまた国民に——綸言汗のことしといって、出た汗は引っ込まぬというけれども、またそれが国民に返っていくというような形にすれば、いま言ったように、原爆の病院をつくって、その横に老人ホームをつくっておけば、一貫したものになる。あとからあとからばらばらの政策になっていくということは困ると思うのです。もう少し一貫した政策で、そういう健康診断から、医療から、病床から福祉施設に至る四つの政策を掲げられてやるということ、それらを系統的に一貫したものにぜひしていただきたいと思います。
次に、いまのことに関連をして、ちょっと沖繩のことをお聞かせを願いたいと思うのです。
先日のニュースによりますと、沖繩在住の原爆患者治療覚え書きが四月六日に発効した。沖繩に住む原爆被災者の診断、治療を日本政府が行なうための覚え書きが五日の午後米民政府、琉球政府の間で調印された。これは日本政府も署名をしているというような記事が出ておって、すでに六日に厚生省派遣の専門医師団が沖繩に行ったということになっておるわけです。
そこで、その日本政府が署名をしている米民政府と琉球政府の間の原爆患者治療覚え書きなるものをまず御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/69
-
070・山野幸吉
○山野政府委員 ただいま御指摘のございましたように、実は昨年の十月以来米民政府と政府関係各省といろいろ折衝をいたしてまいりまして、去る四月五日に沖繩で署名を終わったという報告を受けております。
まだ成文は来ておりませんが、内容の概要を申し上げますと、日本政府は、被爆者に対する医学的な専門調査を行なうために、専門家を派遣する。それが第一。第二点は、被爆者であって、右の医学的な専門調査の結果、原爆医療法にいうところの原爆症患者と認定した者については、これらの者を本土の医療機関に収容して、所要の治療を施す。第三点は、患者の本土収容に要する費用等は日本政府が負担する。こういう内容でございまして、ただいま御指摘にありましたように、現在専門家が向こうにおもむきまして、調査を行なっておる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/70
-
071・滝井義高
○滝井委員 一体沖繩にいる原爆被爆者ということになれば、当然広島、長崎に終戦のときにおったということになるわけです。一体沖繩に行っていらっしゃる広島、長崎の被爆者の数というものは、どの程度にごらんになっておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/71
-
072・山野幸吉
○山野政府委員 昨年秋、琉球政府で実施いたしました調査によりますと、被爆者は八十二名というように私ども聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/72
-
073・滝井義高
○滝井委員 わずか八十二名だったのに、どうしてこれがいままで片づかなかったのかということです。御存じのとおり、レプラや結核については、ここ数年来実施されているわけです。こういうように国内で三十五年ですか、以来一般検査なり精密検査が行なわれているにかかわらず、これがいままで沖繩で放置されておった理由というものはどこにあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/73
-
074・山野幸吉
○山野政府委員 実は原爆被爆者の問題が政府のほうへ提起されたのは三十九年、昨年の一月と聞いておるのでございます。自来外務省を通じまして米民政府との間にいろいろ折衝を重ねてまいったのでありますが、その結果、昨年の八月から十一月にかけまして、琉球政府のほうで、一体そういう原爆被爆者というのはどの程度おるだろうかということで、米民政府の意向を受けまして、実態調査を行なったのであります。昨年の十月に、実は米民政府のほうから沖繩在留の被爆者に対して日本本土ではどういう取り扱いをしておるかという照会がありまして、それに対しまして、十月の末に政府、関係各省打ち合わせまして、その取り扱いについて米側に回答いたしました。そうして本年の二月五日になりまして米大使館から被爆者治療についての了解事項、こういうぐあいに取り扱いたいという向こうの案が示されまして、翌三月の十五日に双方の了解が成立いたしまして、ただいま御指摘の四月の五日にこの覚え書きの調印を了した、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/74
-
075・滝井義高
○滝井委員 厚生省のほうでは、沖繩問題というのがここ数年来これほど大きな問題になっているのに、沖繩については何も調査もせずに、要請も何もしていなかったのですか。たとえば、厚生省のほうは結核やハンセン氏病についてはやっておったわけでしょう。そうすると、行けば当然原爆被爆者の問題が出てきたはずですよね、医師も派遣しておったはずですから。そして本土に結核患者を連れてきて治療しておったわけでしょう。そうすると、あなた方この法律をおつくりになって実施するときに、当然沖繩の問題というのは出てこなければならぬ。というのは、厚生省の中で援護法関係、恩給法関係では二百億をこえる金を沖繩にやっているのですからね。これがいまの山野さんの御説明のように去年の一月から問題になってきたというのでは、あまりにも厚生省は、どこか抜けておるのじゃないかという感じがする。あれだけ沖繩の島民が日本に復帰したいと言い、われわれ日本人がすみやかに沖繩は返還すべきだという要求をして、国会でも五回目の決議をやっているのに、この大事な原爆医療の問題について、厚生省は沖繩については何も知りませんでした、忘れておりましたというのでは、私は申しわけないような感じがするんですよ。それは結核とかハンセン氏病を何もやっていなければいいのです。ところが、これはおやりになっている。あなたのほうの所管の結核やハンセン氏病をおやりになっておるのに、あなたの所管内の原爆被爆者について、すでに三十九年一月まで、あなたのほうはやらずに他のほうからやられておるというのじゃ、あまりにも厚生省は沖繩不在といわなければならぬです。これは一体どういうことですか。何か政治的な理由があったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/75
-
076・若松栄一
○若松政府委員 原爆医療法という法律の施行は、日本の国内の法律でございますので、これをそのまま沖繩に適用するということはできません。個々の問題については、事件が発生してくればそれに応じて立つというやり方をやっておりましたために、積極的にこちらから動くということはいたしておりませんでした。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/76
-
077・滝井義高
○滝井委員 あなたの感覚はライシャワー大使の感覚と同じで、そんな、沖繩が日本の領土じゃないなんて、それはあなた方の生活保護法だって、それから結核予防法だってみんなやっているのですからね。そうすると、沖繩にどの程度の被爆者がおるということは、局長あなたのほうは全然わからぬですか。被爆者はどのくらいおるのか、全然わからぬですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/77
-
078・若松栄一
○若松政府委員 特連局長からもお話がありましたように、現地でも昨年秋に実情を調査して初めて八十二名という患者の把握ができた状態でございまして、それまでそういう話は出てこなかったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/78
-
079・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、その八十二名というのは琉球政府が調査したのであって、日本政府がやったわけじゃないでしょう。だから、この際日本政府が乗り込んでいってやるべきだと思うのですよ。失礼な言い分だけれども、沖繩の医師は精密検査、一般検査その他について、日本のなれた医師ほどこういう問題について経験がないわけですよ。そこでやはりやるとすれば沖繩に行って、そうして日本の医師が実態調査をやって、その上で確認をしてくる必要があるんですね。今度行く専門家というのはそういうことをやるのですか。ただ八十二人出たから八十二人だけのからだを健康診断しようとして行くのですか。目的はどういうところにあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/79
-
080・若松栄一
○若松政府委員 これは実態調査で、被爆者の数が八十二名ということでございますので、その全員について専門家が健康診断をしてくるということでございます。
〔藏内委員長代理退席、委員長着席〕
その専門家として、長崎の原爆病院の医師二人が第一班として出ておりますし、広島からは広島市内のこのほうにやはり経験のある医師が二人第二班として出かけております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/80
-
081・滝井義高
○滝井委員 そうすると、琉球政府がこれだけですと言えば、その出た八十二人だけを調査をして帰ってくる、こういうことですね。それでは潜在主権を持っておる日本としては、あまりにも権威がない。やはり向こうに行ってもう一回日本政府でやってやることはいいでしょう。これはアメリカは、何もそれをやることで、岸さんが言うように施政権がへこむとは言わぬと思うのだ、これはヒューマニズムだから。だから、ひとつ日本の医師で十分やりたい、そのためには日本政府は沖繩の九十万の島民に、広島、長崎におった人は全部見るからひとつ申し出てくれということで名のりをあげてもらって、やはり見てあげるということが私は親切だと思うのですよ。だからその点あまり他人のふんどしで相撲をとるような——八十二人でごいざます、しかもそれは琉球政府の調査だけをもとにしてやるということでなくて、日本政府と協力をしてやる。これは日本が直接行って琉球政府を押しのけてやるわけにはいかぬですから、琉球政府と話し合って、その上で両者協力してひとつやりましょう、こういうことは当然やるべきだと私は思うのですよ。向こうの数をうのみにすべきじゃないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/81
-
082・山野幸吉
○山野政府委員 沖繩につきましては、御案内のように現在は米国民政府のほうで施政権を持っておりますので、日本政府が直接実態調査をやるとかいうことにはいろいろ問題があると思うのでありまして、したがいまして、今度も厚生省から行かれました調査班が、琉球政府と協力されまして実態調査をやっておられるのであります。したがいまして、ただいま御指摘になりましたように、八十二名の方だけを調査するというだけではなく、私は被爆者だと名のり出られる方があれば、その人も含めて調査することになっておりますから、今回の調査で調査漏れになるということはないと考えておる次第でございます。そういう協力をした調査をやれば、実質的には日本政府で調査したのと同じ結果が出るわけでございますから、そのように御承知願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/82
-
083・滝井義高
○滝井委員 これは日本人なんですからね。したがって、琉球政府と協力をして、この法律の恩典を受けるという人は全部申し出なさいということをやはり日本政府の口からも、琉球九十万の住民に言う必要があると思うのですよ。それを琉球政府だけに言わせておくという必要はないのじゃないか。そのくらいのことはアメリカだって、寛容と忍耐のアメリカだから、自由をとうとび平和を愛好するアメリカだから、自分が原爆を落としてそのあと始末を私たち日本がやりますからというのだから、そのくらいのことは寛容と忍耐を持ってもいいと思うのですよ。またそれを言えない日本の腰抜け外交じゃないと思うのですよ。それを言って、その上で出てきた人を今度全部調査をする、これは当然あなた方の了解事項の中にも医学的な調査を実施すると書いておるのだから、だから医学的調査を実施するのためにはこれは許しているのですから、そのためには医学的調査の対象というものは全部出てもらわなければいかぬわけですよ。それをやはり一言日本政府の口からも言わしてくださいということを言えないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/83
-
084・山野幸吉
○山野政府委員 これは今度厚生省から行かれました調査団の方々が琉球政府と相談されまして、その趣旨の徹底は十分はかっておられることと思いますので、格別日本から直接この問題について呼びかけるというような実際上の必要性はない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/84
-
085・滝井義高
○滝井委員 結核患者のように相当たくさんおりますと、これは向こうから来たい来たいという希望がうんとあるのですね。しかし、これはアメリカが渡航の審査や何かなかなか厳重にやって、ずいぶん来れない者もおるということは御存じのとおりですよ。結核についてはわりわい積極的に向こうも協力しておるのですからね。これは沖繩には結核患者がたくさんおってアメリカ人にもうつるから、あるいはハンセン氏病がたくさんおってうつるから行け行けというのかもしれません。しかし原爆はうつらぬからということではちょっと困るのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/85
-
086・山野幸吉
○山野政府委員 特にそういうようなことはないと思います。ただ、すべての沖繩に対する私ども日本の経済、技術、各般の援助に関連しますやり方としましては、やはりアメリカの施政権を認めて、そのもとで日本ができるだけ実質的な援助をするという態度をとってきておりますので、そういうやり方で今後もやはりやっていきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/86
-
087・滝井義高
○滝井委員 あなた方の見通しとしては、一体その八十二人というものは、もう実際そのくらいしかいないというお考えなんですか、それと本まだ相当おるというお考えなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/87
-
088・山野幸吉
○山野政府委員 昨年の秋行なわれました琉球政府の調査は相当徹底した調査のように私どもは聞いておりますので、いまのところ琉球政府のほうで発表されました数字を信頼する以外にはないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/88
-
089・滝井義高
○滝井委員 了解事項を見てみても、医師を派遣して医学的調査をやりますね。そうして今度は原爆症であるということが調査を通じて明らかになれば、特定の治療をする者を選定しますね。そうして、その治療がどうしても収容してやらなければならぬということになれば、これを内地に連れてきますね。そういうやり方は結核と同じやり方なんですよ。そうすると、ここまであなた方が覚え書きなり了解事項で取りきめをするということになれば、やはり沖繩の八十二人プラスアルファの中にも相当治療を要する者があるという認識に立ったからこそこういう覚え書きになったわけでしょう。そういう不満が沖繩の中になければ、こんなものは起こってこないわけです。ところがやはり、われは広島で原爆を受けてどうもからだの調子が悪いという人の声が相当出てきておるからこういうことになってあらわれてきたと思うのです。それがなければアメリカもこんなことはやらないと思う。琉球政府もやらないと思うのですよ。だから、そういう点ではおよその見通しをつけておかなければ予算も組まれないと思う。一体どの程度の者を内地に収容するお見通しを立てておるのか。そうしてその予算は厚生省のことしの十六億四千四百八十一万六千円の原爆障害対策費の中に含まれているのか、それともこの「沖繩援助其他諸費」——総理府所管の福祉及び医療関係の六億二千五百万円ぐらいの中に含まれているのか、どういうことになっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/89
-
090・山野幸吉
○山野政府委員 実はこの被爆者のうち原爆症で本土に収容しなければならない患者がどの程度おるかということは、予算編成当時はっきりしていなかったわけでございます。したがいまして、私どもは一応八十二名のうち明年度は十名程度の渡航費を予算化しておるのであります。しかし、その数がさらにそれより多くなれば、他のたとえば結核なりあるいはその他の患者の渡航費等から若干の——日数のズレ等で予算の余裕が相当出てくるのでありますから、そういう経費を回してでも、原爆患者の収容にそごを来たさないようにしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/90
-
091・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、八十二名の約一割程度はおそらく収容しなければならぬだろうということらしい。そうすると、その予算はいま言った厚生省の原爆障害対策費ではなくて、総理府の予算の中に全部組まれておるのでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/91
-
092・山野幸吉
○山野政府委員 私の申し上げましたのは、患者の渡航費につきましては私どもの予算に組んでございますが、治療費は厚生省のほうの予算になると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/92
-
093・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、厚生省もいま言ったように十名なら十名というめどをつけた予算を組むとすれば、まさか医療の専門家のいない総理府の言ったことをうのみにするわけにもいかぬでしょう。やはりそれだけの何か科学的な根拠があって予算は組まなければならぬわけでしょう。これはわずか十名のようにあるけれども、問題はやはり予算編成の態度につながる問題ですよ。日本の少なくともいま言った血と汗の結晶である税金を、税金を納めていない沖繩住民に使うのですから、そのときはやはりアメリカに言うて、たとえ小さなことでも外交折衝をして、日本政府が乗り込んでやるぐらいの権威がなかったら、日本の自主独立外交なんということはないですよ。そうでしょう。予算を組むからには、やはり去年の一月から問題が起こっておるのですから、組むのだったら去年の八月か九月ごろには係官をアメリカに派遣して、八十二人の身体検査ぐらいはやって、その上で予算を組むということでなければ、向こうから言われて、八十二人だ、そうするとその中のおよそ一割ぐらいだろう——もう予算が今度通っちゃってからようやく覚え書きが出てくるでしょう。全部沖繩の予算はそうですよ。これは山野さんの前任者のときにも私はもう三回にわたって沖繩の予算をやったんですよ。ことしは初めてやらなかったんです。沖繩の予算というのは全部でたらめですよ。率直に言ってでたらめですよ。日本の予算を組むんだって昨年は二十億、今年は三十億の予算を組んでおるけれども、昨年の二十億がまだ使われていないでしょう。アメリカとすべて一つ一つの項目について覚え書きができなければ使えないのですからね。とにかくわれわれが血のにじむような税金で沖繩に金を出すというのに、その出す金さえアメリカは一つ一つチェックして使わせないでしょう。全部了解が成り立たなければだめでしょう。しかも、去年ぐらいの予算がことしの二月になってから了解事項ができてくるのですからね。だから、こういう行き方というものは私はやはりいけないと思う。少なくとも外務大臣がライシャワー大使に強硬にねじ込んで——やはりずれるのは、アメリカの会計年度は七月から始まるしこちらは四月だから、そのズレぐらいはやむを得ないと思う。しかし、やはりきちっと予算ができる形をとらせなければいかぬですよ。それをピンからキリまでアメリカの了解を符なければできぬなんというのはあまり情けないですよ。この際日本政府は、ダレスのつくった法律の怪物、いわゆる潜在主権というものをある程度破るためにも、少しふんどしを締め直してやらなければならぬ。そのためには、まっ正面からの外交上の問題はむずかしいでしょうから、こういうヒューマニズムに通ずる世界の人心に訴え得る原爆の問題子の他から沖繩に乗り込んでいくべきだと思うのですよ。その勇気がないから、ライシャワー大使が沖繩は日本の領土でないなんというかってなことを言うことになるのですよ。だから、こういう点からひとつライシャワー大使にねじ込みなさいよ。どうですか。もう少し公衆衛生局長しっかりしなければだめですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/93
-
094・山野幸吉
○山野政府委員 いろいろ沖繩援助予算の執行の点で御指摘がありましたが、実は三十九年度からは日米協議委員会、技術委員会もできまして、予算執行促進についても非常に日米、琉三者の協調が進みまして、三十九年度の予算執行では覚え書きは七月にさっそくできたのであります。三十八年度までの予算につきましては御指摘のように非常におくれて、二割、三割という非常に低率でございましたが、だんだん消化が荷まりまして、三十八年度から繰り越した予算は全部三十九年度内に消化ができる見通しでございます。それからまた、三十九年度の予算につきましても、六割程度までは三月末までに執行できる。なお四、五、六月がありますから、そういう点でだんだん平常の年度化してきておるわけであります。この御指摘の原爆被爆者の予算につきましては、ただいま申しましたように、秋におきまして初めて数字が出てきた。しかも御案内のように、日本政府の予算を組む前に沖繩援助費は日米協議委員会でいろいろ話し合わなければならぬたてまえになっておりますので、さしあたり八十二名のうち十名程度ということで米側の了承をとったものでございます。なお、しかしこれはその数にこだわらず、そういう治療を要する患者がありますれば、所要の措置は今後ともとってまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/94
-
095・滝井義高
○滝井委員 大臣御存じのとおり、わざわざ日本の領土である沖繩から結核患者や原爆症の患者を日本の施設に連れてくるということもまた権威のないことなんです。それならば、御存じのとおり沖繩には医療体制というのが非常にないわけです。社会保険もないでしょう。だからこの際、そういう結核とか、原爆というようなものを一緒にして、日本政府が沖繩にいわゆる国立病院をつくったらいい、金が出せるのですから。施設費を出すのです。そして日本の専門医を派遣して、結核とか原爆症とかハンセン氏病というのは日本政府が責任を負って見ましょう、これでいいじゃないですか。何もはるばると親子の水杯までさせて日本に連れてこなくてもいい。どうして水杯をするかというと、結核で日本で死ぬかもしれぬですからね。だから向こうでつくってやったらもっと安心ができる。これはできぬことはないはずですよ。気象の観測所その他のものはみんなつくっておるし、今度のテレビのああいう施設だって日本が材料をやり金をやってつくっているのですから、病院も日本が金を出します、だから琉球政府もアメリカも出しなさい、医者は日本から定期的に送ります、これだってできぬことはないはずなのですよ。こういう人道に通ずる面から私は積極的に日本政府というものはアメリカに攻勢をかけるべきだと思うのです。それをわざわざ重い患者をアメリカから文句を言われるといって日本に連れてきて、そしてまた帰すなんという、こんなばかなやり方は実際問題としてないですよ。これは一体どうしてやらないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/95
-
096・山野幸吉
○山野政府委員 沖繩の結核、ハンセン氏病、精神病者のいわゆる病院施設でございますが、これらにつきましては、おそらく御案内のとおりだと思いますけれども、南方同胞援護会等を通じまして例の年賀はがきの資金とかその他の政府の援助資金をもちまして、精神病院をつくりましたり、あるいはその病床をふやしましたり、そういう病院の新設、増設等は十分にやっておるのであります。しかし、何と申しましても沖繩全体を見ますと、御指摘のように医療施設はまだまだ不足しておりまして、したがって患者の収容能力がない。そういう者は本土に収容して治療を受けさせる、こういうことになっておるのであります。今後とも、私ども、沖繩のそういう医療対策等につきましては、御指摘のような病院の新設あるいは病床の増設その他医療援助を強化してまいりたい、かように考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/96
-
097・神田博
○神田国務大臣 いまの山野局長からの答弁で尽きておるように思いますけれども、われわれといたしましても、沖繩の現状が、こういった原爆はもちろんでございますが、あるいは結核とかハンセン氏病等についての治療が十分でない、内地で引き受けてやるというようなことよりも、国がみずから了解をつけてやるような方法をとる、あるいはまた民間団体をしてやらせるか、沖繩自体が支援をしてやるようにするか、いろいろやり方の方法はあろうかと思いますが、私も大田主席以来現主席といつも来日するたびにお会いしておりまして、沖繩のいわゆる衛生状態というような面につきまして非常に大きな関心を持っております。何か手は打たなければいかぬという考えは持っております。しかし、いろいろな事情で今日このようなことになっておることは御承知のとおりでございます。将来の問題といたしましては、いま申し上げたような方向で検討して、そこに本土とできるだけ変わらないような状態に持っていく、あたたかい手を差し伸べるということが必要だ、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/97
-
098・滝井義高
○滝井委員 私は、沖繩から日本に半生が留学をしてくるとかいうようなことは、これはやむを得ないと思うのです。しかし、結核患者のような人たちを日本に連れてくるという行政のやり方は私は間違っておると思うのです。少なくとも将来沖繩は日本の鹿児島県や佐賀県くらいのレベルにまでアメリカも上げようというし、われわれもそうしたい、そうして、いつでも祖国に復帰したときには少なくとも日本の県のレベルには沖繩があるのだということにしたいというならば、一番おくれている社会保障の中核である医療の問題について、たとえば農場のようなものはモデル農場をつくりますし、水産の増殖のセンターみたいなものをつくりますし、それから気象観測なんかはあるいはアメリカ自身も必要だからかもしれませんがつくるのですから、そうすれば、モデル病院みたいなものを一カ所つくっても悪くはないのです。那覇に百か二百床のモデル病院をつくってやって、そこに被爆者なり結核の患者を収容する、心臓病とか何とか、むずかしい病気の者をそこに収容してやるとか、こういう手助けくらいは日本政府が当然やるべきだと思うのです。そして、そこに専門の医者を二年か三年の交代で派遣をする。いままで毎年医師を派遣するし、歯科医師も派遣している、そして今度は医師がありながら結核患者は連れてくる、そうでなしに、患者を連れてこずに医師の派遣だけをして、モデル病院をつくる。こういうことがアメリカを納得させないはずはないですよ。アメリカだって、見てごらんなさい、中国の奥地に宣教師を派遣して——植民地主義をとるときにはまず宣教師をやって、ホスピタルをつくったんだから、そんなものはアメリカがかつてみずからやっておるのですから、まさか日本が同じ同胞の沖繩人に対して、あそこに病院をつくって日本の医師を派遣し、私たちが責任を持ってやりますというのをやらせないはずはないです。そこらを日本の外交なり特連の事務局がやり切れぬといったら、佐藤内閣の外交はないですよ。それではわれわれから追随外交、従属外交と言われたって、何も言うことはできないはずです。来年からは、沖繩の結核患者や原爆の患者を日本に連れてこなくたって、あそこに病院をつくってやるだけの予算要求をやりましょうと言えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/98
-
099・山野幸吉
○山野政府委員 御指摘のように、医療の関係におきましては沖繩は本土と比較してまだまだ相当格差がありますので、私どもとしましては日本の援助の中心を社会福祉、医療等の問題に置いてやっておるのであります。社会福祉関係は、昭和三十九年度には二億五千八百万の援助費でございましたが、これを五億二千万に増額いたしたのであります。そしてその内容につきましても、できるだけ社会福祉、医療関係の本土との格差がなくなるようにという面から、相当くふうを加えておるつもりでございます。ただ、それをもってしましても早急に、沖繩のたとえば病院なり病床を現在ある患者の数に比例するまで持っていくには、これは相当の予算と年月がかかるわけでございまして、その間におきましては、現在のような結核患者の本土収容等のことはさらに続けていかなければならぬ、かように考えております。いずれにいたしましても、御指摘のような点を十分配慮いたしまして、明年以降の予算編成等も十分検討してまいりたいと考えております。ただ、日本が沖繩に医療施設をつくります場合に、日本の施設として直接つくるということは、現在のたてまえ上アメリカとしても認められないという意向だろうと思うのでありまして、やはり間接に施設をつくっていくという方法をとらざるを得ないというぐあいに考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/99
-
100・滝井義高
○滝井委員 日本政府が直接沖繩に施設をつくることをアメリカ政府は許さないということは、いままでいかに施設関係の予算をつけても、さいぜんあなたも御指摘になったように、三十八年まではアメリカは一つ一つについて非常に厳重な査定をやって、そしてようやく覚え書きで許してくれたわけです。これは岸さんじゃないけれども、日本政府の行政が沖繩に出ていけば、それだけアメリカの施政権がへこんで日本の施政権が出っぱっていく、だからアメリカはなかなか許しませんと岸さんが答弁しておるが、あのときからちっとも変わっていないのです。佐藤路線というものは池田路線を受け継いだものだけれども、いまのようなことばを聞いておると佐藤路線は依然として兄さんの岸路線に復帰しつつあるわけですよ。だから、まず一発はアメリカに向かって日本人なんだから日本の施設をつくらしてくれ、それで幾ぶんアメリカの行政権がへこむかもしれぬけれども、これは日本国民の感情として許されぬ、これを一ぺん主張すべきだと思う。そしてアメリカがそれは困るというならば、強硬な主張をして、それなら琉球政府にひとつつくらせよう、日本が金を出すからやれ、プライス法の中からアメリカも幾ぶん出せ、こういう形でどんとつくらせれば、沖繩の住民は、なるほど日本政府はわれわれ九十万同胞のことを考えてくれておるということで、その気持ちがやはりお互いに通じていくわけです。そのことが沖繩住民に元気をつけて、日本復帰ということが早くなってくることを意味するわけです。そういう点、微妙な政治的な作用を起こさせることが、沖繩に対するわれわれのつとめでもあるのですよ。だからどうですか、来年度はひとつ結核と原爆症あるいはハンセン氏病、これらのものについて、いま言ったように三十億もあるのですから、二百ベッドくらいの病院だったら二億も出したらりっぱなものができますよ。だから変なところに金を使わずに、まずここをやるということでやってみたらどうです。私は額は言いません。もし少なかったら、結核患者というのはそんなにたくさん日本に来ておらぬのですから、その来るくらいのものを収容するのを初めは建てる。そうして重症な、たとえば日本でも因っているような脳外科とか心臓とかいうようなものをわざわざ日本に来らせなくたって、重症なものは那覇の日本が主導権をとった病院でやってやる。そのためには日本は相当の金をつぎ込みますという態勢を一ぺんくらいとってみて、やはり日本はあっぱれだとアメリカのライシャワーやワトソンを一ぺんくらい感心させる政策をとってみたらどうですか。来年それをやる意思はありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/100
-
101・山野幸吉
○山野政府委員 御指摘のような病院施設等の援助につきましては、明年以降も先ほど申し上げましたように重点を置いて援助費をきめてまいりたいと思うのであります。ただその場合に、直接日本の施設としてつくっていくということは、やはり現在の段階ではなかなかむずかしいと思われますので、日米協議委員会等で、従来からも日本援助につきましては施設を明らかにして援助額をきめるのでありまして、日本援助でつくられた施設につきましては、沖繩の住民の方々も非常にそれを認識されて感謝されております。私も昨年秋参りまして、いろいろ日本の援助でつくった施設を見て回りましたが、その場合も逐一その施設を現地の方は十分認識されて、日本政府の援助を感謝しておられるのであります。したがいまして、今後ともひとつ日米相協調しまして、実質的に沖繩住民の福祉が向上するように日本の援助の充実をはかってまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/101
-
102・滝井義高
○滝井委員 なかなか答弁がうまくて、大臣答弁みたいな答弁をされるけれども、私が言いたいのは、年々結核患者なりハンセン氏病の患者を内地に連れてきておるが、それを連れてこなくたってそれらのものを沖繩で収容できるだけのりっぱな病院をおつくりになったらどうだ。それは日本政府がつくりましょうといって、アメリカがそれは困るというならば、よろしい、日本が金を出すから琉球政府につくらせなさい、そのかわりアメリカも相当出しなさいといって、アメリカが金を出せば、五億くらいの病院はすぐできます。そして優秀な医者を内地から定期的に送ってそこでやる、こういう形をつくったらどうですか。病人をばらばら沖繩から日本に送ってくるというのは、あまりにも権威がないじゃないかと言っているのです。だからそれを那覇なら那覇に一カ所どんとおつくりなさい。それを協議委員会で日本政府から強硬にやってできませんかと言っている。そのくらいのことはやるべきですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/102
-
103・山野幸吉
○山野政府委員 御趣旨は十分拝聴いたしましたので、十分検討してやりたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/103
-
104・滝井義高
○滝井委員 私はまた来年やりますからね。来年の予算のときまたやりますから、ぜひ来年度予算までには日本政府の主導権によって、そういう施設が那覇にできたという態勢をひとつぜひつくってもらいたいと思います。
神田厚生大臣、いま総理府のほうがやるといったから、厚生省は受け入れのほうですから、あなたのほうが押してやらぬとこれはだめなんです。沖繩に二、三億の病院をつくるという確約ができるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/104
-
105・神田博
○神田国務大臣 これは御承知のように総理府の所管でございまして、総理府がそういう予算をとりますれば、私どもは一〇〇%応援いたしまして、りっぱな病院を完成させたい、こう考えております。また国務大臣でもありますから、その面からひとつ大いに協力してそれの実現をはかりたいと考えて一おります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/105
-
106・滝井義高
○滝井委員 ぜひひとつその確約を実行するために、もう一ぺん五月の改造には厚生大臣に残ってもらってがんばってもらいたいと思います。
次は、あと二問ありますが、この法文の十四条の八の中で「月額二千円を限度として、」というのを削っておるわけです。これは予算を見ると、二千円が三千円になることになっておるわけです。現在支給限度額が法律で定められておるわけです。これを三千円にするのだけれども、二千円を削ればこれから国会にはそういう金額のことはかかってこないことになる。ある意味では、これは国会の審議権の制限にもなるわけです。あなた方は将来、これをどんどん上げていくために削ったのだろうと善意に解釈するのですよ。解釈をするのだけれども、一体これを削らなければならない理由はどこにあるのです。二千円を、三千円を限度とするとしておいたらいいじゃないですか。また来年やるときにはもう一ぺんわれわれ議論するからというので削ったのかもわかりませんが、二千円を三千円にすることさえも実は少ないのです。少ないのだけれども、この前、援護法のときも二千円を三千円にする問題があった。どういう理論的根拠があったかというと、何も理論的根拠がなかった。そこで厚生省のこういう手当みたようなものは、全部何らの脈絡がないのですね。ばらばらだ。だから一ぺん厚生省の手当の一覧表をつくってみて、そして予算のときには軒並みに一つの引き上げ基準をつくってずっと上げなさいということを私は援護法のときに主張したのです。こういう予算編成のときには、少なくとも予算折衝に行く大臣には一覧表をやって、そして大蔵省に負けぬような科学的根拠のある引き上げの方針を討議してきめておかないと、今後審議するであろうたとえば国民年金の老齢福祉年金なんかは、千百円を二百円上げて千三百でしまう。こういう医療の手当は、今度は二千円が三千円になるわけですね。それから同じようなもので、あなたのほうのベースで千円が千五百円になるものがあるのですね、今度のあれで。医療手当の交付金か何かで千円が千五百円になるものがある。五百円しか上げていないのもあるのですよ。千円上げたり五百円上げたり二百円上げたり千差万別なんですよ。だからおそらくそのときそのときの感情、気持ちで予算をちょっちょっとつけよるのですね。それじゃいかぬと思うのです。千円をもしこういう手当のものにやるならば、みんな千円をやらなければならない、みんな何らか人生の貧しさを持っておる人たちばかりですから。そこらあたり何か上げる原則がちっともないのですよ。これが私わからないのです。「月額二千円を限度として、」というのを削った理由はどういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/106
-
107・若松栄一
○若松政府委員 おっしゃるように、随時今後物価の変動その他によりまして引き上げてまいりたいと思いますが、その際に引き上げがスムースにいくような政令にしていただきたいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/107
-
108・滝井義高
○滝井委員 これは沖繩の人にも二千円はやるのでしょうね。今度は沖繩の、日本に来る住民の方にも、こういうのを差し上げるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/108
-
109・若松栄一
○若松政府委員 沖繩から患者が来ました場合には、やはり内地で原爆手帳を渡しまして、日本人と同じ扱いになりますので、当然必要な手当はやることになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/109
-
110・滝井義高
○滝井委員 実はそうなりますと、いま言ったように来年沖繩に病院をつくりますね。そのときにはやはりそういう形を行なっていいのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/110
-
111・若松栄一
○若松政府委員 沖繩に病院をつくりました場合には、これは沖繩の行政になりますので、現在の原爆医療法は日本国内で適用されておりますから、それは日本国内の原爆医療法の手当としてやるわけにはまいりません。したがって、それは沖繩の政府の措置として何らかの同じような方法を講ずるというような便法でいくことになると思います、もしそういう場合が起きれば。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/111
-
112・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、援護法はおかしいんじゃないですか。沖繩に在住する戦没者の遺族等にはお金がいっておるじゃないですか。二百数十億いっておるじゃないですか。どうしてこの手当が沖繩におる日本人にやれないのですか。援護法はいっておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/112
-
113・若松栄一
○若松政府委員 原爆医療法が沖繩には適用されませんので、どうしてもこちらのほうの執行としてやるわけにはいきませんので、もし同じような制度を沖繩でつくって、その必要な金を日本政府が援助するというような形ならできると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/113
-
114・滝井義高
○滝井委員 それじゃ日本の戦傷病者戦没者遺族等援護法は沖繩に適用され、同じ日本の国会を通ったこの原子爆弾被爆者の医療等に関する法律は適用しないというのは、これはおかしいですよ。これは理屈が通らない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/114
-
115・神田博
○神田国務大臣 いまのお尋ねたいへんごもっともなお尋ねでございますが、援護法の場合はこれは適用の範囲を人を対象として属人的な考え方で立法されておる。だから日本人であればどこに行ってももらえる。こういう原則なんです。原爆のほうは属地的な考え方を持っておる。だから日本国内以外はこれを適用しない。日本国内においでになればいつでもやる、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/115
-
116・滝井義高
○滝井委員 法律にこの法律は属人的に運用し、この法律は属地的に運用すると書いてない。どこに書いてありますか。この原子爆弾被爆者の医療等に関する法律とそれから援護法のどこに属人的とか属地的にやると書いてあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/116
-
117・鈴村信吾
○鈴村政府委員 援護法についてお答えいたしますと、法律に特に属人的云々と書いてございませんが、法制局の解釈といたしまして、この法律は属人的な性格のものであるから、日本の国籍を持っておる者には、たとえ沖繩に行っても適用すべきであるという法制局の見解でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/117
-
118・滝井義高
○滝井委員 沖繩人が日本の国籍を持っておるということは——この原爆医療法を適用される沖繩人も援護法を適用される沖繩人もみんな日本の国籍を持っておる日本人ですよ。あれはアメリカ人ではないのです。
実は、いまから数年前に沖繩人がアメリカに行って、ハワイで住所の移動を黙ってやったのです。そうしたら官憲が来て、けしからぬ、おまえは外人登録法違反だ。そこでその沖繩人が開き直って、ばか言うな、おれの国はおまえの国が占領しておるではないか、おれはアメリカ人だと言って裁判になった。裁判になったらアメリカの裁判所は困ったのです。そうして国務省に連絡したら、沖繩人は日本人だという裁判を連絡をとった結果下した。いま沖繩人が日本人であるというアメリカにおける証明はたったそれが一つです。それと戸籍事務を日本が持っておるというだけのことです。この二つの証明がある。そこで私は外務省に、それならば沖繩人は日本人であるという証明をするならば、外務省は公式の文書をアメリカからもらってくれという主張をしたのです。ところが外務省はもらい切れないのです。沖繩人が日本人であるという公式の外交文書をアメリカからもらえといっても、いままでもらえ切れません。だから、彼らが外国旅行をするときは、琉球人なんです。そうしますと、日本人が日本の戸籍を持っているならば、援護法を適用する。この原爆医療法も同じ日本人でしょう。ここなんですよ。こういうところは、援護法は属地主義とか属人主義とかうまいことごまかして、金は取る。しかし、こういう大事な行政の問題になると、いま言ったように、わずかに千円の金ですらも受け取らせぬというような、ばかな行政はないですよ。だから、私は実は問題の核心をえぐりたいからこそ、さいぜんから苦心をして、病院をつくってくれ、そしてつくりますという言質をとった。そこまで医療の立場から持っていかなければならぬ。私は援護法がぴしゃっといって、二百数十億の金がすでに沖繩の住民に差し上げられておるということを知っておるわけですから、この医療法で沖繩に病院ができて、金がやれないというようなばかなことはないのです。論理が通らぬですよ。属地主義とか属人主義とかごまかしたって、同じ日本の戸籍を持っているのですよ。ただアメリカで証明してくれと言ったら、アメリカの裁判所だけは日本人だと言ったのです。だから、私はいつか大平外務大臣のときに、沖繩人が日本人であるという証明をしてくれといったのです。いま言ったように、証明できないのです。アメリカの手形をもらい切れない。私はきょうはとことんまで詰めません。ただ、いま言ったように、大臣の所管の援護法で二百数十億の金がいっているのです。しかし、このものがもし実施されて、今度沖繩でするときに、いま言ったように、病院に通う手当とか医療の手当とかというようなものがやれないということは、納得がいかないと思うのです。その点、もう少し、きょうは詰めませんから、研究しておいてもらいたい。
そこで最後についでに——これでやめますが、いま援護法が出てきましたから、少しこれと関連して詰めておきたいのは、この前、援護三法の質問の最後に、弔慰金とか年金の裁定未処理の案件に対して、その未処理の大部分というのは、公務死に対する確認が得られないためなんだということを申し上げた。そこで、この際、もう終戦後二十年の記念にもなるのだから、公務死の確認ができなくて、援護三法なり恩給法の恩典を受けていない人たちは、非常に国をうらんでおる。彼らは数はわずかになったのだから、ひとつこの際、公務死に対する確認の問題については、ある程度寛大な指貫をとって、援護処置をしてくれぬかという質問をしたら、大臣は、お説ごもっともだ、私も実はそう考えておる。こういうお話があった。そこで、事務当局の援護局長はいまの大臣の気持ちを拳拳服膺して、今後事務処理をやってくれ、こういうことだった。そこで、現在未処理になっておる内容をざっと見てみた。
まず第一に、在職中の発病証明というものがはっきりしないのが相当ある。私の兄は長く軍隊にいて、病気になって帰ってきて死んだ。ところが、どうも在職中に発病したということがはっきりしません、こういうことが一つある。それから、退職後の療養状況が完全でなかった、彼は隊でかかった病気は軽かったが、退役をしてからの療養が不完全であったために、あるいはいなかに帰って、そこがたまたま無医地区だったというようなことで、売薬その他でやっておったというような者もあるわけです。それから、在職中の発病が原因で、併発症で死んだというのが多い。たとえば、マラリヤのキニーネを飲み過ぎて、胃が悪くなって、帰ってからガンで死んだというのがある。あるいは胃炎から胃かいようを起こして、かいようからガンが起こった。そのガンはあまり進行しなかったが、転移して、肝臓にガンがうんと多くなった。死んだときの病名は、医者が解剖するわけではありませんから、それは肝臓ガンで死んだということになる。もちろんその病気は戦地に関係はない。肝臓ガンは内地で発病した、こういうこと。それから心労があって、血圧が高かった。帰って、狭心症で死んだ。こういうような場合だってある。明らかに戦地で発病しておったが、併発症というものが大きくクローズアップされて、だめだということがある。それから、医者の証明がとれないのがたくさんある。見た軍医を日本じゅう探し回ったが、どこに行ったかわからぬ。あるいは、行ってみたら、その医者は死んでおった。きのうまでそこにおったが、先日どっかに引っ越して、いま住所不定でわからない、こういうのがざらにある。それから、医師の書いた証明がたまたま適切でなかった。たとえば、いまの原爆症です。こういう原爆症というものは、アメリカが原子爆弾を落として間もなくはわからないわけです。一体何という病気だろう。おれはいままで見たことのない病気だといって、医者はそのときは原爆症という病名を知らないものだから、適当な名前をつけておった。これは一種の誤診になるかもしれませんが、こういう場合。あるいは、退職後間もなく——三年とか六年とかありますから、間もなく発病した。しかし完全な療養ができてなかった、あるいは本人の生き抜く体力が強かったというようなことで、非常に長期に生存して、最近になって死んだ。しかしその病気は明らかに戦地で起こっておったけれども、あまりにも期間が長かったために、かからないというのがある。それから、戦地から帰って、病気があったけれども、めしが食えないから、病を押して再就職をした。そのために死亡した。
こうやってみると、七つ八つくらいのケースがあるわけです。それらのものを確実に証明をするために、いま遺族の皆さんがどういうことをやっているかというと、なき夫、なき父、なき兄の仏を弔うために、資料を集めるために相当金を使っている。それから、この事務というのが非常に複雑だから、相当事務能力がなければならない。ところがあっちこっちに行って元の軍医をさがしたり、戦友をさがすということは金が要る。したがって、事務能力と金がなければ、こういう問題の解決はできないということで、もはや貧乏の人はどうにもならぬ。ところが、御存じのとおり、いまや自由民主党は、千五、六百億から二千億を出して、地主さんが貧しいから何とかしよう、こういうことなんです。地主さんにさえ千何百億の金を出して救済しようという自由民主党のヒューマニズムがあるならば、この三万や六万の残っている人——一生懸命いままで集めてみたけれども、どうにもならぬ、刀折れ、矢尽きて懇願しておる遺族の諸君に、私はもうこの際、もし公務扶助料がやれないとすれば、五万か十万の弔慰金をやって、そしてきちんと打ち切る態勢をとる必要がある。しかし、それでは何も書類がなくて出すわけにいかぬから、したがって、そのためには、県知事とかあるいは市町村長あるいは県の世話課、そういうところが本人の申し出に応じて、実情調査をして、町内なり部落の世論を聞いてみて、そうして本人の申し立てを出させてみて、なるほどこれならばまあまあ公務死にしてやっても差しつかえなかろう、こういうものは——もう終戦二十周年にもなってなお書類を探してこい、そうしなければだめだということではなく、私はもうこの際片づけるべきだと思う。この前、一応念を押して大臣の了承を得ましたけれども、今日原爆症の問題は、こうして全員の調査をやろうというような段階がきておるとすれば、やはりわれわれは問題を一つ一つ片づけていく必要があると思うのです。もう遺族の問題はこの際全部片づけてしまう。そういう意味でいままでの認定の基準その他をぐっと緩和して、そしてピリオドを打つべきであると私は思う。そうして、こういう戦後処理の原爆症の問題を全員の実態調査をやって、それの上に立って確固不動の対策を立てたら、それでそれは終わる、次は一体何だというように、あまり長引かして二十年もずるずる引っぱっていって国民に迷惑をかけることはいかぬ。もうこの際、二十年を契機としてやるべきである。現代医学から見ればなるほどそれは問題がある。肝臓ガンで死んだものが一体戦地と何の関係があるんだ。まじめなお医者さんはそう言うかもしれないけれども、やはり人体の微妙さ、あの戦地、戦後の混乱、こういうものから考えれば、兵隊でとっておって、そしてそれと幾ぶんでも関連があって五、六年の間に死んだということになれば、少しく寛大な処置で処理すべきである、こういうことなんです。まず原爆医療というものはやはり非常なむずかしい問題を含んでおるものであるし、それに、その原爆医療の問題は医師の診断その他にも関連がありますから、だからここで大臣に再確認をしてもらって、そうしてひとつ事務処理を促進をしよう、こういう意味です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/118
-
119・神田博
○神田国務大臣 いま滝井委員からいろいろ例をあげられまして戦後処理の問題についてお尋ねがあったわけでございますが、同時にまた、私先般この問題につきまして御答弁申し上げた事情もございますので、重ねて所信を表明するようにということでございますから、簡単でございますが率直に申し上げたいと思います。
私はこの考え方としてはもう滝井委員と同感なのであります。私もずいぶんいろいろな例を直接間接承知いたしておりまして、何とかひとつこれは早く処理すべきものだ、もうここまでまいって証明を持ってこいなんて言っても、なかなかこれは持ち込めるわけはない。みんな死んでおり、散らばっておるというようなことでございます。そういう関係でございますから、先般もお尋ねがございました際に、そういう趣旨でやるということを、私みずからもそういう考えを持っており、滝井委員からの発言によって私は大きな支援を得たというような感じでございます。事務当局を督励いたしまして、十分そういうような気持ちで処理したい、こういう考えでございますことをこの機会にはっきり申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/119
-
120・滝井義高
○滝井委員 これで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/120
-
121・松澤雄藏
○松澤委員長 午後二時に再開することとし、この際休憩いたします。
午後零時五十三分休憩
————◇—————
午後三時二十六分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/121
-
122・松澤雄藏
○松澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続けます。内海清君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/122
-
123・内海清
○内海(清)委員 原子爆弾被爆者の医療等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして若干の御質問を申し上げたいと思うのであります。
戦後すでに二十年経過いたしておるわけでありますが、この原爆被爆者の実態を見ますときに、今日なお多くの問題を残しておるのでありまして、すなわちこのことが原爆スラムと原爆孤老を生みまして、被爆者は終生消えることのない放射能障害を内包する生命の不安におびえておるし、焦燥にかられておる、こういう悲しむべき実態にあることは、御承知のとおりでございます。政府におきましては、今日まで若干の被爆者対策を行なわれてきたわけでありますけれども、これはなお満足すべきものではない。今日なお被爆者の多くの人々が原爆症に呻吟し、生活にあえぎながら、後遺症あるいは遺伝の恐怖におののいておる。この実情は、人道的社会問題として見のがすことができない問題であると思うのであります。特にわが国の経済の高度成長に伴いまして、占領政策も逐次そのひずみが是正されてきております。戦後処理の問題もだんだんと行なわれてきておるのでありますが、こういうふうな状況にかんがみますときに、やはりこの戦後処理の第一に取り上げらるべきものは原爆被爆者に対する処置でなければならぬ、こういうふうに私は考えるのであります。
これらについて考えてみますと、私は大体三つの問題があると思うのであります。一つは、原爆に基因すると思われる病気、これに悩んでおります被爆者に対しましては、病勢の進行と悪化を阻止する万全の医療方途が講じられなければならぬ、こういうことであります。それから二番目といたしましては、一応健康は今日維持しておるといたしましても、生命の不安を感じつつありまする原爆の被爆者に対しては、安んじて余生を送り得るような健康管理の強化が必要であると思うのであります。それから、三番目といたしましては、原爆の被爆によりまして生計維持の困難なこれらの人々に対しましては、その救済措置を実行に移す。この三つが原爆被爆者に対する基本的な問題でなければならぬと思うのであります。これらの三つの問題に対しまして積極的に国家施策を講ずること、これこそ福祉国家建設を目ざしておりまするわが国といたしましては、当然とらなければならぬ問題であると思うのであります。
〔委員長退席、齋藤委員長代理着席〕
そこで、まず大臣の原爆被爆者に対しまする基本的な考え方、これをひとつお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/123
-
124・神田博
○神田国務大臣 ただいまお尋ねのございましたいわゆる原爆に基因する方々の病勢の悪化とか、あるいは病勢の進行をまず食いとめる、これを阻止したいということ、また生命の不安なからしめるよう、健康状態を管理するような環境に置く。さらにまた被爆者の生活を保障と申しましょうか、生活に不安なからしめるような措置をとること、これが国家があたたかい手を差し伸べて当然やるべきことだというお考え方につきましては、私も全く同感でございまして、そういう考えのもとに被爆者のいろいろな施策を進めてまいっておる、こういうふうに考えております。ただ、いまお話もございましたように、決して政府も十分だとは考えておりません。いろいろの事情もございまして、やはり漸を追って、できるだけいまお述べになったような三点を少なくとも基本として、そして福祉国家、いわゆる文化の恩恵に浴するようなところに持っていく、それが被爆者に対する思いやりだ、私はこういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/124
-
125・内海清
○内海(清)委員 基本的な考え方につきましては、私どもの考え方と一致しておることをたいへんありがたく思うわけでありますけれども、現実の問題といたしましては、この三点についていまなおその施策はきわめて不十分である、かように考えるのでありますが、すでに戦後二十年を経過いたしておるわけであります。この戦後処置の問題をいろいろの面で行なわれておるのでありますが、特に先ほど申しましたように、この原爆被爆者に対する問題は、まずもって第一義的に取り上げなければならぬ問題ではないか、こう思うので、特に原爆によりまする悲劇というものは、いままで私どもが持っておりました戦争手段に対する常識としては理解しがたいものである、こういうふうに考えるのであります。したがって、こういう特異の戦争の災いを受けた者に対しましては、国といたしましても特異の施策を講ぜられなければならぬ、こう思うのであります。これは人道上の観点から見ましても私は当然のことだと思う。したがって、今後これらの三点につきまして特に早急に進めなければならぬ問題が多いと思いますが、今後の問題につきまして、これらの三点についてのお考えがありますればまずもってお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/125
-
126・神田博
○神田国務大臣 原爆の犠牲者の処遇と申しますか、ここに至りましたことにつきましては、われわれ国民としても当然でございますが、政府としてもできるだけの処遇をするということは当然である。これは内海さんのお考え方も私どもの考え方もちっとも変わっておりません。そこで政府といたしましてはどういうことを考えておるのかということでございますが、ちょうど今年は被爆してから二十年にもなりますので、もう一度被爆者の実態調査をいたしまして、根本的に今日までまいったことを振り返ってみて、そして将来の目標の一つの材料にいたしたい、こういう大きな考えを持っておるのであります。御承知のように、いままでいろいろ調査いたしてまいりましたが、今度やろうとする大じかけな調査はかつてなかったのでございます。ちょうど二十年になりますので、ひとつ振り返ってこの実態調査を十分いたしたい。その上で対策をまた検討しなければならぬ、こう考えておるのであります。それからさしあたっては、いままでやっておりましたことにつきまして、被爆者の被害等を勘案いたしまして、被爆中心地からその地域をなお広めるとか、あるいはまた手当を増額するとか、いろいろこまかい思いやりをいたしまして、できるだけ前進と申しますか、前向きの処遇をいたしてまいりたい、こういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/126
-
127・内海清
○内海(清)委員 今後これらの三点については、きわめて不十分であるが、戦後二十年を期して実態調査を行なう、それによってこれらの基本的な三つの問題に対するそれぞれの施策を考えたい、こういうことでございます。確かに二十年たっておりまして、もし実態調査が行なわれますならば、今日まで被爆者自身が政府に対していろいろ陳情し、要望してまいりましたことも十分おわかりになるだろう。実際の調査の結果は、政府におかれましても、今後、いままでよりも格段に施策を講じなければならぬということが十分おわかりになると思うのであります。私ども、直接広島ではありませんけれども、県内に住居いたしておりまして、そういうことをおりに触れて実際にいろいろ考えさせられる問題に突き当たっているわけであります。そこで私は、いままで多くの同僚の委員の皆さんから質問がありまして、いろいろこまかいことまで御質問があったようでありますので、なるべく重複いたしませんように、若干の問題について以下御質問申し上げたいと思うのであります。
原爆被爆者に対しましては、今日まで法律といたしましては医療手当の問題があるだけでございます。ところがこの医療だけの問題ではなしに、生活の実態を調べてみましても、被爆したためにその影響というものが非常に大きいのであります。生活状態におきましてもこれが出ているのであります。医療と健康管理の問題と、これをもっと広範囲な対策を進めなければならぬと思うのであります。医療手当のこの法律は、ただこれらのいろいろな施策の一つの足がかりとしてつくられたものにすぎないと私は思うのでありまして、総合立法が私は必要だと思うのであります。その総合立法として私どもが考えておりますものは、被爆者の援護法でございます。これも今日までいろいろ論じられたと思いまするが、この援護法を制定する御意思があるかどうか、これは早急に制定すべきであると考えるのであります。これに対しまする御所見をお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/127
-
128・神田博
○神田国務大臣 被爆者の援護の問題に関しまして、総合的な、具体的な援護法を制定して、そしてその処遇をもっと突っ込んで考えたらどうか、どういう検討をしているかという意味のお尋ねにお聞きいたしました。私は、内海委員がそういうことをおっしゃることは、よくわかるのでございます。わかるということばははなはだ不徹底かもしれませんが、そういうお気持ちについては、私も同感と申しましょうか、共鳴を持っております。
先般来、この法案の審議にあたりまして、いままで幾多の方々からもそのことが論議されております。その際にもお答え申し上げておるように、そのお気持ちはよくわかるのでございますが、御承知のように、特殊の関係でございますから、特殊の事情に基づいて、そして政府としてあたたかい、しかもまたかような事態を再び世界の民族にも招かしめないというこの至高の意味から考えても、そうあるべきではなかろうかという気持ちを抱いているのでございますが、検討を重ねておりますが、いろいろな事情がございまして、直ちにその結論をつけて、そういう処遇をするという段階でないことを遺憾といたしておるわけでございます。お気持ちの点は、他の委員からもお話がございまして、私もよくそのお気持ちに共鳴を持っておるわけでありますが、いろいろ事情がございまして、いま用意をしているとか、あるいは準備が整ったというところまで申し上げる段階にないのでございまして、目下検討をいたしておるというような事情であることを了としていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/128
-
129・内海清
○内海(清)委員 総合立法としての援護法の問題につきましては、大臣もそういうふうなお考えもあるようであります。今日なおその準備段階と申しますか、直ちにこれを制定するまでにいっておらぬということであります。これは先ほどの実態調査が行なわれますならば、私は必ずそういう事態が生じてくるだろう。政府におきましても、十分この点は調査の結果、そういう結論を出さざるを得ないということに至るであろうと私は想像いたしております。私ども、総合立法としての被爆者援護法というものは、今日までたびたび政府のほうにも訴えてまいったものであります。これはひとつ早急にこれが実現を見ますように、格段の御配慮をお願いいたしたいと思います。これは強く要望いたしておきたいと思います。
次に、被爆者の医療と健康管理の問題であります。現在被爆患者であって、入院できない、入院を希望しても、あるいは医者からその必要が認められながらも、収容できない患者がかなりあると私どもは聞いておるのであります。どのくらいな数がございますか、ひとつお示しいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/129
-
130・若松栄一
○若松政府委員 原爆症で入院して治療しなければならない患者、これは主として広島、長崎が多いわけでございますが、広島、長崎にはそれぞれ専門の病院がございますので、専門の病院に入りたいということで、原爆病院に入ることを希望して入れないという患者が、広島には常時若干実はあるようでございます。長崎に関しましては、それほどの窮屈はないように聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/130
-
131・内海清
○内海(清)委員 数はわかりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/131
-
132・若松栄一
○若松政府委員 これもその時点時点によって多少違いますので、一番新しい最近の時点における数は存じておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/132
-
133・内海清
○内海(清)委員 私どももはっきりした数字はつかんでおりませんけれども、今日なお百名をこすということも承っておるのでございます。これはいずれ調査ができましたらはっきりいたすことだと思いますが、四十年度の予算で原爆病院の病床の増加が行なわれたと思いますが、何床行なわれましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/133
-
134・若松栄一
○若松政府委員 私どもとしては広島に五十床、長崎に三十床程度増加したいという心組みで、現地と折衝いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/134
-
135・内海清
○内海(清)委員 広島が五十床、長崎が三十床ということでありますが、これではなお入院の必要があると認められている被爆患者の希望を満たすことができないと思う。今後これに対しましてはどういうふうな施策を考えておられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/135
-
136・若松栄一
○若松政府委員 ただいま先生のおことばで、待機患者が百名以上というように拝聴いたしましたが、私ども聞いているところでは、百名というような数では決してございませんで、十数名というような数でございますので、そういう意味で、広島に五十床程度増加すれば、十分まかなえるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/136
-
137・内海清
○内海(清)委員 いま資料を持ってきておりませんが、私の調査いたしたものでは、大体そういうふうな数字になっておる。これは後刻また私のほうでも調査いたしますが、役所のほうでもひとつ御調査願いたい。
現在、役所でお考えになっておるのは、広島に五十床、長崎に三十床やれば入院を必要とする患者は全部収容できる、こういうお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/137
-
138・若松栄一
○若松政府委員 原爆の患者といいましても、原爆症といいましても、いわゆる原爆が直接影響した直接的な原爆症というものは非常に少のうございます。御承知のように、原爆被爆当時、直接放射能を受けたために発生した病気が直接的な原爆症でございますが、最近起こっております患者というものは、いわゆる原爆被爆者に発生する病気で、しかも被爆との関連を否定できないという病気を原爆症というふうに通常申しております。したがって、この中にはガンもありますれば、あるいは高血圧、脳出血というものもあり、あるいは肝臓病、心臓病というものもございますので、そういう限りにおいては、通常の疾病の手当てと相違のないものが大部分でございますが、そういうものは一般病院等にも随時入って治療しておりますので、原爆被爆者が全部原爆病院に入るということではございません。そういう意味で一般医療機関も使っておりますので、現在のところ待機の状況等も勘案をいたしまして五十床という数をはじき出したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/138
-
139・内海清
○内海(清)委員 私の申し上げましたのは、やはり原爆症の患者であって入院が必要と認められ、本人も希望しておるというものでございます。その点はひとつお間違いがないようにしていただきたいと思います。そういうものが今日なお入院できないで待機期間が相当ある、ことにこれは原爆病院が多いわけでございます。三十日以上の待機期間があったりいたしておる。しかもなかなか入院が認められないというのが相当あるということでございます。これはいずれ実態調査が行なわれればはっきりすることだと思いますので、この点は早急に御調査の上、善処していただかなければならぬ、こう思うのであります。
それから次の問題は、被爆者のガンの発現が非常にいろいろ問題になっております。つまり被爆して原爆の患者になってガンが発生したというものであります。そのような事実は今日厚生省として認められておるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/139
-
140・若松栄一
○若松政府委員 被爆者のガンの発生率が一般の人に比べてやや高いということは事実でございまして、特に白血病におきましては、相当の率で高いということは事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/140
-
141・内海清
○内海(清)委員 この問題も実態調査の必要があると思いますけれども、その被爆者に発生する独特のガンでありますが、その防止と早期治療、これがありとすればこれの防止と早期治療をどうしておられるか、こういうことです。これに対しての処置はどういうふうにしておられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/141
-
142・若松栄一
○若松政府委員 防止並びにその治療という問題でございますが、防止ということはなかなか積極的にこれを防止するという手段がございませんで、結局できるだけ早いうちに発見して、できるだけの手当てをするという以外にないわけでございまして、そういう意味で毎年二回健康診断をやる場合に、血液を調べて白血病等の早期の発見につとめるという努力をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/142
-
143・内海清
○内海(清)委員 これは私どもそういう患者側からも強い要請を常に受けておるわけでございます。ただいまのお話によりますと、健康診断の際に、血液検査をして早期発見につとめるということでありますが、年に二回の健康診断で事足りるかどうか、そういう憂いのあるもの、それらについてはもっと積極的な健康診断なりその他これに対する早期治療の方法が講じられるべきじゃないか、こう思いますが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/143
-
144・若松栄一
○若松政府委員 早期診断等の機会をさらに充実する意味を持ちまして、在来定期の健康診断ということを春秋二回を定めてやっておりましたが、そのほかにも随時健康診断を受けられるように、本年度から措置をいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/144
-
145・内海清
○内海(清)委員 この問題は、特にガンという健康上非常に患者としては神経質になる病気、これらにつきましてはひとつ十分早期治療のできるように、すみやかにこの措置を実現していただきたい、こう考えるのであります。
なお健康管理につきましてはできるだけの手段を尽くさなければなりませんが、健康診断の受診率はいまどの程度になっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/145
-
146・若松栄一
○若松政府委員 大体手帳を持っている者の四分の一程度が受診に来るという実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/146
-
147・内海清
○内海(清)委員 非常に受診率が低いわけであります。二五%程度では非常に低いと思うのですが、診断を受けぬ理由はどういうところにあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/147
-
148・若松栄一
○若松政府委員 診断を受けに来る者と受けに来ない者について、それぞれ理由の調査をいたしておりませんが、大部分の方々は平生自分の健康にあまり不安を持ってない方も相当多数おられますので、やはりそういう不安がない方はあえて受診に来ないという実情ではなかろうかと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/148
-
149・内海清
○内海(清)委員 ただいまの御答弁では、健康に不安を持ってないということのようでありますが、今日の広島市におきまする被爆者のスラム街、これらの状況を見ますと、あるいは生活に追われてそういう健康に対してあまり意を用いる余裕がないという人もありましょうし、さらにまた原爆症という診断を受けることが本人には非常にこわいという面がある。なお原爆患者ということになれば社会的にもきわめて不利である、したがって、これは生活的にも響いてくるというようないろいろな条件が私はあると思うのです。それらについてそういうふうないろいろな条件を、ただ健康に不安を持ってないというそういう面のみしか厚生省としては把握しておられぬのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/149
-
150・若松栄一
○若松政府委員 その詳細な内容について、あるいは自分の健康に対する意識調査というようなものは現在やっておりませんが、今度の実態調査におきましては国民の被爆者の実情を明らかにいたしまして、その結果から、ある意味ではノイローゼ的に心配し過ぎる人たちに対してはむしろその心配を解いてやり、逆にまた就職、結婚等の問題で被爆者に対して過度の偏見を持つような者に対しては、これもまた是正していくというような形に、啓蒙教育という仕事もあわせてやっていきたい、そういう実態調査の結果も、そういう意味の効果も大いに活用していきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/150
-
151・内海清
○内海(清)委員 これも実態調査の結果にまつということであります。それは政府の今日までの処置としてはこれらの面はあまりにおそ過ぎると思う。今日までもっと実態を把握して、それに対する施策が行なわれておらなければならぬ、私はこう思うのであります。これが援護法について今日までほとんど考えられなかった一つの原因ではないかというふうに私は思います。もっと厚生省当局において、受診率が低ければなぜそれが低いのか、この原因は十分探究されるべきであったと思うのであります。私どもがいろいろ聞きますところでは、ただいま申し上げましたようないろいろな理由があげられておるのであります。もしこういうふうな理由がそうであるといたしますならば、そういう面にもやはり国としては援護の手を伸ばさなければならぬ、こう思うのであります。それはいまおっしゃったような、国民に対していろいろPRも必要でありましょう。けれどもまた、それらの原爆患者ということによって生活が脅かされるとするならば、これの保障もいたさなければならぬと思う。今度実態調査が行なわれますならば、生活の実態も明らかになると思いますが、そういうふうなことによって発病を予防する処置、これらも早急に実施されていかなければならぬと思うのでありますが、そういうふうなことに対するお考えをひとつお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/151
-
152・若松栄一
○若松政府委員 そういう御趣旨に沿いまして、実態調査の結果等も十分にそれに役立てるような方向で施策の改善をはかってまいるつもりであります。
〔齋藤委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/152
-
153・内海清
○内海(清)委員 なお、これも患者側から強い要望が常にあるわけでありますが、この被爆者の健康相談、それから健康診断、それから治療、検査等のために通院する場合、これも実態調査で明らかになると思いますが、実際今日困っておるのは、やはりそういう被爆者であるためにいろいろ生活の脅威を覚えて、そうして通院する場合の交通費等にもこと欠く、あるいは一日働きをやめていくことによって生活に脅威を感ずるというふうなものもあるように私どもは承っておる。でありますから、そういうふうな通院する場合の交通費や一日仕事を休まなければならぬということで健康診断等が十分に行なわれないという面が現実の問題として相当あるといたしますならば、この交通費ぐらいは支給すべきではないか、こう思うのであります。これに対しまするお考えはいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/153
-
154・若松栄一
○若松政府委員 被爆者の中には確かに生活に困窮しておる方もありますので、そういう方々には交通費の負担がかかってくる場合もあろうかと思います。しかし二十六万人という多数でございますので、多くの方々は健康診断に来る程度の交通費はそれほど負担にならないかと存じております。ただし、精密検査ということになりますと、かなり離れた地域の病院等に行って診察を受けなければなりませんので、そういう場合は交通費が事実上数百円というようなことになる可能性がありますので、そういう精密検査を受けるためにかなり距離の離れた施設に出向く場合は、現在も交通費を支給いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/154
-
155・内海清
○内海(清)委員 精密検査を受ける場合は、今日あることはわれわれも承知いたしております。ところが普通の通院の場合にはこういうことは考えられていないのであります。現に患者として治療を受けなければならない人で、治療を受けるための通院ができないというような者に対しましては、これは今後十分考えなければならぬと思うのでありまして、これらの点を考えてみましても、やはり総合立法としての援護法がぜひ必要である、初めに返りますけれども、私どもはこういうふうに考えておるのであります。この交通費等の問題は、実際通院する患者というものがそれほど多数の者ではない。これらも今後の実態調査で明らかになりましょうが、実態調査で明らかになってまいりますならば、これらの点についても十分考えらるべきではなかろうか、こう思うのであります。その点も今後ひとつできるだけ早い機会に実現を期されるよう強く要望しておきたいと思います。
それから次にお伺いいたしたいと思いますのは、先ほども申しましたが、広島、長崎に原爆が投下されましてから今日まで二十年になっておるのであります。ところがいまだにこの医療手当法にも不備があって、種々の要求が出ているのはまことに遺憾なことでありますが、その原爆の被害を受けたときに年齢が四十であった人は、いま六十である。五十であった人はいま七十なのであります。当時は働き盛りの人であったのでありますが、今日はすでにいわゆる老境に入って、老人と相なっておる。そういう点から考えますと、今日この原爆補償の中心も、これは時間が経過するに従いまして変わってきて、いわゆる老人対策ということに相なると思うのであります。この点は十分おわかりだと思います。したがって今日原爆の孤老というものがだんだんと増加をして、原爆患者であり働きが十分できない、こういうことが一そう悲惨な現実を生み出しておる、こういうことであります。そこで私は強く要望いたしたいのは、被爆者の老人ホームを建設する段階にきておるのじゃなかろうか、こう思うのです。これに対しましてはどういうお考えか、これはひとつ大臣にお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/155
-
156・神田博
○神田国務大臣 いま内海委員から被爆者の年とった方々の老人ホームを、ひとつあたたかい気持ちでつくるようにという御趣旨でございますが、これはおっしゃるとおりでございまして、私どもといたしましてもそういうような設置をいたしたい、こう考えまして、これは主管が社会局のほうの関係でございまして、社会局が地元のほうと御相談して、そしてしかるべく処置したい、こういうような考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/156
-
157・内海清
○内海(清)委員 この被爆者の老人ホームの問題は、これは今日すでに、特に広島、長崎等におきましては緊要な問題だと私は考えておるのであります。これは五十の人が七十であり、それ以上のまだ年輩の人があるわけであります。これらの問題は当然今日まで、すでに二十年たたないまでに考えらるべき問題であったと思うのでありますが、それが今日なお手がつけられていないということははなはだ遺憾に思います。これはひとつできるだけ早く実現するようにお願いいたしたい。四十年度はすでに予算も決定いたしております。少なくとも来年度、いまから早目に御計画になって、これは地元関係もございましょう。それらと十分御連絡の上に、一日も早く実現さしていただきたいと思いますが、その点につきましてもう一度お答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/157
-
158・神田博
○神田国務大臣 たいへんごもっともなことでございまして、厚生省といたしましては四十年度でやりたいという希望を持ちまして地元と折衝しておるという段階でございます。今年度でやりたい。いろいろ地元の事情があるようでございまして、よく相談いたしまして御趣旨に沿いたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/158
-
159・内海清
○内海(清)委員 ただいまの大臣の御答弁は、四十年度にこれを実現さしたいということでございす。まことにけっこうなことであると私ども考えております。これはひとつ一日も早く実現しますように強く要望申し上げておきたいと思います。
それから、これもすでに論ぜられたことかとも思いますけれども、住宅の問題でございますが、被災住宅のうち経済的な立ち上がりがおくれた者はいまだに応急住宅に住んでおるという実情でございます。これはかなりの数が広島でもあるわけです。これは普通の住宅難と同一に考える問題ではないのじゃないか、これはゆゆしい社会問題である、私はこういうふうに考えておるのであります。このことがひいては、また広島市の場合を考えますと、市の都市計画の推進にもいろいろ影響いたしておるように見ておるのであります。これは市営住宅だけで解決するものではないと思います。国の補償を要求するのではございませんけれども、市だけでこれを解決せいということでは、これは無理である。性格が違うのじゃないか、こういうふうに考えるのであります。国の被爆者に対しまする住宅対策をひとつ十分進めるように施策が行なわれるべきではないかと思いますが、これに対しまするお考えを承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/159
-
160・神田博
○神田国務大臣 被爆者の住宅問題、これはもう長いこと重大な問題になっておりますことを私もよく承知いたしております。また、先般他の委員からも、この問題につきましていろいろ関心をお持ちになって、要望もございました。厚生省といたしましては、直接担当いたしておりますのが御承知のように社会局でございます。住宅の建設は建設省の住宅局でございまして、両方密接な連絡のもとに、いまお述べになったような問題もございますので、そういういろいろなことを込めて解決していくようにということで督励をいたしております。一ぺんにすぐすぱっといくとは申し上げかねますが、その方針に沿って早くひとつ整備をいたしたい、こういう計画でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/160
-
161・内海清
○内海(清)委員 ただいまの住宅の問題は、普通の住宅でありますならばもちろん建設省関係でございますが、これは普通の住宅難と同一に考えるべきでない、かように考えますから、特に厚生省のほうにこの問題を御要望申し上げるわけでございます。十分御趣旨を御了解いただきまして、一日も早くこれを解決いたしますように御善処願いたいと強く要望いたしておきます。
私、以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/161
-
162・若松栄一
○若松政府委員 先ほどの広島、長崎における原爆病院の待機患者の問題、ただいま調査した資料がまいりましたので御報告申し上げます。
三十九年の十二月の調査で、広島で五十九名、長崎で四十三名の待機患者があるということでございまして、数字が多少食い違いましたので、失礼いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/162
-
163・松澤雄藏
○松澤委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明十五日木曜日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。
午後四時十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X01919650414/163
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。