1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十年四月二十二日(木曜日)
午前十時三十三分開議
出席委員
委員長 松澤 雄藏君
理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君
理事 藏内 修治君 理事 齋藤 邦吉君
理事 澁谷 直藏君 理事 藤本 孝雄君
理事 河野 正君 理事 八木 昇君
理事 吉村 吉雄君
伊東 正義君 亀山 孝一君
熊谷 義雄君 小宮山重四郎君
坂村 吉正君 田中 正巳君
竹内 黎一君 地崎宇三郎君
中野 四郎君 松山千惠子君
粟山 秀君 山村新治郎君
亘 四郎君 淡谷 悠藏君
小林 進君 滝井 義高君
八木 一男君 山田 耻目君
本島百合子君 吉川 兼光君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 神田 博君
出席政府委員
厚生事務官
(大臣官房長) 梅本 純正君
厚生事務官
(年金局長) 山本 正淑君
厚生事務官
(社会保険庁年
金保険部長) 實本 博次君
委員外の出席者
専 門 員 安中 忠雄君
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四月二十二日
理事藤本孝雄君同日理事辞任につき、その補欠
として井村重雄君が理事に当選した。
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四月二十二日
厚生年金保険法の一部を改正する法律案(八木
一男君外三名提出、衆法第二六号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
理事の辞任及び補欠選任
厚生年金保険法の一部を改正する法律案(内閣
提出第二号)
船員保険法の一部を改正する法律案(内閣提出
第三号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/0
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001・松澤雄藏
○松澤委員長 これより会議を開きます。
この際、おはかりいたします。
理事藤本孝雄君より理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/1
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002・松澤雄藏
○松澤委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
これより理事の補欠選任を行ないたいと存じますが、その選任は委員長において指名することに異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/2
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003・松澤雄藏
○松澤委員長 御異議なしと認め、よって、井村重雄君を理事に指名いたします。
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/3
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004・松澤雄藏
○松澤委員長 内閣提出の厚生年金保険法の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、審査を進めます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。滝井義高君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/4
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005・滝井義高
○滝井委員 厚生年金の一部を改正する法律について御質問申し上げたいと思いますが、初め少し総論的なことを御質問申し上げまして、それから逐条的にもお尋ねをいたしたいと思います。そこで、初めは大臣に尋ねますので、事務当局はしばらく控えておいていただきたい。
一体、厚生大臣としては、今後の日本の老後を保障する年金制度というものを、どういう方向に将来持っていこうとされるのか、この基本的な態度というものが明白でないと、年金制度というものが、そのときそのときの、政府の予算折衝の過程における財源の不足その他で風のまにまにゆれてしまって、方向がはっきりしないようになるわけです。いまわれわれの手元に、年金を現在受給されておる方々から、あたかも社会党が現在の年金制度をつぶすがごとき錯覚を起こした投書が舞い込んでくるわけです。これは非常に見当迷いなんです。われわれは、いまの日本の年金制度というものが、ちっとも明確な方向が明らかでなくて、ただそのときそのときの瞬間的なものの見方で処理されようとしておる、こういうことではいけないんだということを強く政府に反省を促すために、いま出ておる年金法に反対しておるのであって、老後を保障すること、老後を安定せしめるという政策を確立することにおいては、保守党に負けざる意気と情熱を持っているということです。この点だけはひとつ間違いのないようにしておいていただかなければならぬ、こう思うわけです。そこで、一体日本の年金制度というものをどういう方向に持っていこうとするのか、その基本的態度をまず明らかにしておいていただきたいと思うのです。この問題について明白でなければ、総理と経済企画庁長官にも私はこれは尋ねておきたいので、まず神田さんの意見を聞かしていただいて、不十分であれば、ひとつ適当の機会に、委員長において経済企画庁長官と総理大臣、あるいは大蔵大臣も呼んでいただきたいと思うのです。まず神田さんから見解を明らかにしておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/5
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006・神田博
○神田国務大臣 ただいま滝井委員のお尋ねはごもっともなことでございまして、私ども、この年金制度につきましては、おおむねこのように考えているわけでございます。
福祉国家を建設していくということになりますと、やはり老後の保障というもの、これはもうどなたもお考えになることは申し上げることもないと思います。そこで、政府といたしましては、すでに厚生年金につきましては、戦前よりこれを実施しようというような計画でまいっていることは御承知のとおりであります。しかし、いろいろ段階を経て、福祉国家建設の前提としてやってまいったのでございますが、いろいろな経済事情等によりまして、その給付が十分でなかったことは御承知のとおり。そこで、今回はちょうど改定期にもなっておりますので、思い切ってこれを引き上げたい、こういう計画でございます。要するに厚生年金、それから国民年金の二本立てで、労働者その他の老後の保障の十分できるようなことをしていきたい。欧米の先進国にひとつ負けないようなりっぱな制度をもり立てていきたい。そのもり立てていきますのには、いまもお話がございましたが、経済力、国力の裏づけがございますから、その国力の裏づけをもちまして、できるだけすみやかにこの制度の十分な実施をはかりたい、こういう所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/6
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007・滝井義高
○滝井委員 今後の老後を保障する年金制度は、厚生年金と国民年金の二本立てである、国力も相当発展しておるので、国力の裏づけをもってやっていきたい、これが基本的な態度のようでございます。しかも同時に、欧米先進諸国に劣らぬような体制をつくりたい。そうしますと、今度出た政府の二万円年金のほかに、もう一つ私たちが来年度においてやらなければならぬのは、御存じのとおり国民年金の改定があるわけです。これについては、今度あなた方のお出しになっておる――あとでこの問題にも触れますが、一万円年金の重要な基礎部分をなす定額部分が五千円になったわけです。そうしますと、当然国民年金もこれを下回ってはならぬわけです。なぜならば、厚生年金は定額部分と比例報酬部分と二本からなって一万円年金、ところが現在の国民年金は、四十年掛け金をかけて、五年据え置きして三千五百円です。はるか雲のかなたに三千五百円があるわけで、いまのように、昭和三十五年十一月に池田さんが天下を取って以来、物価が三割、四割と上がっておるわけです。池田さんが三十五年十一月に天下を取ったときの百円は、いま六十円か六十五円の価値しかないということなんです。そうしますと、四十五年のはるか雲のかなたに消えておる未来の三千五百円は、これは終戦の後に、われわれが千円の生命保険をかけておれば老後は安心だと思っておったのが、千円というものは一日の一家五人の食費代にもならぬという事態になっているわけですから、そういうことになったら国民年金の三千五百円は何にもならぬことになる。ところが、五千円の定額部分の一万円年金の基礎を確立したからには、国民年金も当然それにならってやらなきゃならぬと思うのですよ。そうすると、あなたは、来年の改定にあたって、国民年金をそういうことにおやりになる意思があるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/7
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008・神田博
○神田国務大臣 今年が、いまお話もございましたように、厚生年金の改定期でございまして、明年が国民年金の改定期でございます。そこで、いま御審議を願っておるいわゆる一万円年金に比例を保って国民年金を改正していきたい、これはいまお尋ねございましたような観点に立って準備をしている、こういう実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/8
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009・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、まず私は、あの五千円の定額部分は不満なんです。いずれあとで述べていきますけれども、とにかく五千円近くの定額部分に見合う国民年金の改定はやりたい、こういうことなんです。これで大体二本立ての足並みがそろうことになる。それは財政の裏づけが当然必要になってくるわけです。そうしますと、財政の裏づけはどういう形でいま意思が表明されておるかというと、池田内閣の所得倍増計画を修正した中期経済計画にその裏づけが載っているわけです。これはもう大臣、御存じでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/9
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010・神田博
○神田国務大臣 それはそのとおりに配慮しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/10
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011・滝井義高
○滝井委員 実は中期経済計画の内容は、まあ配慮しておりますとおっしゃるけれども、中期経済計画にはどういうことが書いてあるかというと、こういうことが大あらましに書いてあります。これは佐藤総理が来たら詳しく質問するつもりですが、大あらましに言って、日本の社会保障は、医療においてはもはや相当の前進を見ている、したがって今後力を入れるのは、医療では家族の給付率を引き上げることだと、こうなっている。最近における老後保障の問題を見ると、日本の人口構造が非常に変化をしてきて、そして老人に対する不安というものがつきまとっている、したがって今後重点を置くのは年金制度のいわゆる拡充強化である、同時に、児童手当についても考えなきゃならぬ、こういう形になってきておるわけです。そうしてその予算というものは、三十八年は国民所得に対する割合が五・三%だったのだけれども、これは七%にして二兆一千一百億の金を入れたい。そうすると、重点は医療よりか年金に移る、こういうことらしいのです。そうなりますと、いまあなたは二本立てであると言い、そして長期経済計画の修正をした中期経済計画では、はっきりそういうように裏づけをするようにうたっておる。ところが、現実に政府のやっておるのは、厚生年金と国民年金と二本立てとして確立する方向にあるかどうかということなんです。どうもそうないのですよ。実は昨日も私は商工委員会に行って少し悪たれをついたのですけれどもね。まず第一に私はちょっとお尋ねをしたいのは、厚生年金と非常に類似をしたものが労働省にあるわけです。それは何かというと、中小企業の退職金共済法というものです。これは中小企業の労働者を中心にどんどんやっておるわけです。現在すでにこれは百万人の被共済者を持っておるわけです。そしてこの掛け金はだれがかけるかというと、その中小企業のおやじさんが労働者のためにかけてくれるわけです。これがいまどんどん発足しておるのですよ。一方厚生年金を一生懸命やらければならぬといいながらも、同時に、中小企業の労働者のほうの退職金の問題が労働省でやられているということです。一体一万円年金をおつくりになるときに労働省とこの間の話をしたことがありますか、調整をやったことがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/11
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012・神田博
○神田国務大臣 むろん労働省と打ち合わせをしておりますが、その詳細なことは政府委員から答弁させます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/12
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013・山本正淑
○山本(正)政府委員 御指摘のように、中小企業従業員の退職金制度があるわけでございまして、事業団によって経営されておりますが、これは、中小企業におきましては現在退職金も退職一時金もないという事態があるわけでございまして、現時点におきましての退職一時金の役割り、機能といいますか、非常に重要なものがあるわけでございまして、そういう意味におきまして退職金、一時金の制度もない中小企業について退職一時金の制度を設けるということの趣旨から発足しておるわけでございます。したがいまして、厚生年金の年金額の引き上げという問題とこの中小企業退職一時金と、直接関連はないと理解いたしております。
厚生年金の改正に際しましては、もちろん労働省と打ち合わせをいたしまして、相談する場を設けまして議論をいたしまして、厚生年金改正の趣旨は十分労働省も理解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/13
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014・滝井義高
○滝井委員 中小企業退職金共済法というのは、その主たるねらいはどこにあったかというと、中小企業の労働者が非常に移動するわけです。そこで、やはり退職金くらいつくったら安定をして、そうして同じ場所に働くであろうということの、これは相当大きなねらいをもってつくられているわけです。これは、いま一つは、中小企業の労働者には老後を保障する方策がないわけですよ。たとえば五人未満というのは加入していない。したがってこれは、厚生年金が、本来二十年常々働いて三千五百円なんという生活保護よりか低いようなちゃちな状態でなくて、もっとこれがずんずん上がっておったら、こんな中小企業退職金共済法というものはできなかったのです。もっと早く五人以下を入れておれば、できなかったのですよ。ところが、あなた方がそれをやらないから、もはや労働省は、労働者の生活安定をはかり、雇用の安定をはかり、むちゃくちゃな移動を排除するためには、やむにやまれずこういうものをつくっちゃった、つくらなければならなかったのです。厚生行政が厚生年金について黙想がなかった、歴代の厚生大臣が大蔵大臣なり内閣を動かす力がなかった、政治力の不足がこういう形になったのですよ。したがって、いまやこれはずんずん目標を定めて百万を突破しておりますよ。そうすると、厚生年金の掛け金は、現法律のもとにおいては折半の原則、労使双方が負担をします。こちらは事業主自身が労働者のために負担をしてやる、退職金ですから……。そうしますと、将来あなた方が一万円年金以上のものにどんどんやろうとしたって、もう国民は、十分な退職金があるのですから、そんなものはやらなくてもよろしいと言われますよ。中小企業の企業主だって貧乏です。らちにある退職金にもどんどん金を出して、またあなたのほうの年金にも出すわけにはまいりませんと、こう言うのです。言うことはきまっておるのですよ。この調整をやらずに、このまま放置しておることは私は問題だと思う。そうしていま神田厚生大臣が、殷鑑遠からず、医療問題で全身やけどをしてどうにもこうにもならぬというのは、医療をみんなあんなに分散をしたところに問題があるのですよ。その二の舞いをあなたは繰り返そうとしておる。頭を横に振りよるけれども、現実はそうなんです。さいふを何ぼも持っておるわけじゃない。中小企業のおやじのさいふは一つだ。その一つから出すのです。まだほかにたくさん出すものがあるのですよ、私はだんだん触れていくけれども……。だからこの調整を、一体将来あなた方どうするつもりですか。一体どういうことをするつもりですか。このまま放置しておけば、片一方はどんどん伸びていきますよ。あなた方のほうは五年に一回、片一方は五年ごとに目標を定めてぐんぐん伸ばそうとしておるのですから、いまにして二葉のうちにこのものをつんでおかなければ、厚生年金は必ず千載に悔いを残すと私は予言をしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/14
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015・山本正淑
○山本(正)政府委員 中小企業の退職共済は、御承知のように任意加入になっているわけでございます。いま御指摘のように、中小企業退職共済が伸びておるということも事実でございますし、またその内容につきまして、前国会でございましたか、改善の措置が講ぜられておるのでございます。ただ、これは退職一時金を支給するというわけでございまして、御指摘のように、老後の生活保障といたしましては、公的な強制保険であります厚生年金の内容を充実していくことはもちろん必要でございますが、退職一時金の制度を充実するということも、任意加入の制度によって、可能な限度においてそれが伸びていく、あるいは伸ばしていくということと矛盾するものではない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/15
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016・滝井義高
○滝井委員 それならば、あとで言おうと思ったけれども、あなたがそういう言い方をするなら先に言っておきたいのですが、いま退職一時金だからとおっしゃるけれども、いまのようにだんだん五%、六%と物価が上がっていきますし、この掛け金の額も増加しなければならぬ。掛け金の額を増加するということは、二十万、三十万の退職金が五十万、百万にならざるを得ないことになるわけであります。そうしますと、労働者が二十年、三十年つとめていって、そして中小企業を退職したときにこれがインフレで、そのころになりますと、いま三十万か三十万ですけれども、必ず六十万、八十万、百万になる。一挙に百万の金をもらう必要はない、まず一時金で三十万下さい、あとの七十万は年金にしようという構想が必ず出るのですよ。その証拠には、いまあなた方がこの法案につけている企業年金が出てきておるじゃないですか。これはもともと退職金だったのです。企業年金という思想は日本にはなかったのですから、退職金です。ところが一挙に三百万、五百万の退職金を払うのはたいへんだから、とりあえず、三百万の退職金があるなら百五十万は一時金でやる、しかし残りの百五十万は有期の十年の年金にしますぞ、これが企業年金です。すでに大企業でそれが行なわれているのですから、労働省もこれで行なわれぬはずがない。同じことじゃないですか。あなた方が、大企業でいまや企業年金を報酬比例部分に連絡したそのものは、いま中小企業の労働者にやっているこれと、本質は同じだ。もう少し長期の、眼光紙背に徹する程度の見通しを持った政策を立ててもらわなければ、同じ佐藤内閣における厚生省と労働省で、神田さんと石田さんの顔色が違い、体質が違うように政策も違う。これを統制するのが佐藤内閣総理大臣です。その統制が行なわれずに、ばらばらに行なわれているところに問題があるわけです。これをこのままあなた方がいくから、さいぜん言ったように、二本立てですか、二本立てですと言っておるのだけれども、もうここに異議を唱えている者が出てきておるでしょう。したがって、いまのあなたの答弁は答弁にならぬ。
それからもう一つは、国民年金との関係です。今度、いままさに国会を通ろうとしている、これは通産省所書、中小企業庁長官所管ですが、小規模企業共済法というのが出てきた。これは三百万人の中小企業者を対象にしている。中小企業者は一体どこに入っておるか、国民年金に入っておる。国民年金でしょう。二千万の国民年金の被保険者というものは、まずだれが一番その中心になるかというと中小企業と農民、この世帯主ですよ。そして家族は、その世帯主に金を出してもらって初めて加入することができている。主体は、何といっても中小企業のおやじさん、農民自身です。そうすると、二十年、三十年たって中小企業をやめたときに、中小企業者三百万の老後安定をするためにこれではどうにもならぬ。だからやめたときの安定をはからなければならぬというので、中小企業者の共済法がいま通ろうとしておるのですよ。これは三百万人を対象にします。今年はとりあえず三万人入ります。三、四年しておるうちに三十万から五十万入ると言っておるのですよ。そうしますと、あなた方が、来年になって今度は――だから私は、もう先に言質をもらっておいた。はるかかなたの四十五年先に、月に三千五百円をやるのだ、今度はこれを五千円とか六千円にしようと言ったって、中小企業のほうは、一口五百円、月に五千円ずつ掛け金をかけるのですよ。そうすると、いま月に百円か百五十円かける掛け金さえもなかなか難儀だと言っておるでしょう。それを今度は、おやじさんが一口五百円、五千円の掛け金をかけたときに、われわれは国民年金の掛け金を上げるのだ、いや私たちはこの共済法がありますからけっこうですと言われたら、どうなるのです。これを平気でおやりになっておるじゃないですか。これも労働省の退職金共済法と同じように、だんだんこの額が大きくなると還元融資もしますよ。必ず年金化します。この関係は一体どうするのです。しかも労働省と通産省との間には、通算制も何もないのですよ。これは与党の田中君も主張しておりました。中小企業の親方というのは、でっち小僧からたたき上げていきます。だから、初めのでっち小僧のうちは労働省の退職金共済法に入っています。そうしてよわい五十歳になって中小企業の重役になったときは、今度はこれに加入することになります。ところが、重役になったとき加入するのは、二十年、三十年掛け金をかけなければ、これは金はくれないですからね。ところが、五十五で定年退職といったら、五年かけてそしてもうぱあです。でっち小僧のときに十五年、重役のときに五年、この通算がちっともないのです。連絡がない。金は巻き上げるだけは巻き上げるのです。しかし通算が何もない。これが解散になったらどうなる、答弁はできない。それは、いずれ検討して法律でもつくりましょうと言っておる。こういうまるっきりむちゃくちゃな制度が、同じ佐藤内閣のもとで白昼公然と行なわれておるじゃないですか。それを神田さんはつんぼさじきにおって、知らぬ半兵衛をきめ込んでおる。これで国民年金と厚生年金の二本立てなんかできますか。国民年金といまの小規模企業共済法との関係は、一体どうするつもりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/16
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017・山本正淑
○山本(正)政府委員 滝井先生の主張される要旨は、現在は退職金である、一方は年金であるのだが、将来年金となる可能性がある、その関連が出てくるということと、退職金であるにせよ、そういったものが出てくることによって将来の年金改正に対して支障を来たすじゃないか、こういう御主張かと理解するわけでありますが、第一点の、現在退職一時金として中小企業に対する特別の措置がなされておるということについては、それぞれの理由があるわけでございますが、要は強制年金である公的年金の内容を充実していかなければならない、これは先生の御指摘のとおりでございまして、それが内容が不十分であるために各種の制度が出てきているというのも、事実さような経緯をたどっておる面があるわけであります。そういう意味におきまして、私どもは、公的年金たる厚生年金、国民年金の給付を老後の生活保障に足りるように持っていくのが一番大事な問題である、したがいまして任意加入の退職一時金制度ができましても、本筋である公的年金制度を思い切って充実していくという方向をとっていくことによって、両者間の関係が円満に運営されるというふうに理解しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/17
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018・滝井義高
○滝井委員 なるほど国民年金が不完全であるために、もはや待ち切れなくなって、補完的に中小企業の経営者のために通産省はとった、こういうことなんですよ。だから待ち切れなかったということはどういうことかと言うと、あなたのほうがぼやぼやしておったということです、結論は。だからこういうものは、地に根をおろしてしまったら、なかなか、これをつぶそうとか一本にしようとか言ってもできるものじゃないですよ。やはりその前に、こういうものは政策的に十分与党の中で討議をし、そして同時に国会に持ち込んで、与野党が討議をしてやらなければならぬものなのです。全く綿密な計算もやらなければ見通しもなく、それもその場限りで、瞬間的な形で出てきておる。こういうのをせつな主義というのです。政策に少しも一貫性がない。筋が通っていない。
いま一つ、農民です。先日国会で赤城農林大臣は、最近における日本農業の実態を考えると、だんだん農地を拡大しなければいかぬ、少なくとも、もはや一町とか一町五反ではだめだ、二町とか三町とかの、いわばある程度の日本的な大規模経営をやらなければならぬ、そのためには、昔で言ういわゆる五反百姓、零細規模の農家というものは、その農地を農地管理事業団みたいなものに預けるとかしてもらって、農地のいわば効率的な運用をはからなければならぬ、それについても、ぽっと農民が農村からほうり出されたのではたいへんだから、農民年金を考えたいと言い始めた。そして全国の農業団体の中からも、離農者報償年金をつくってくれという要望が出てきておるわけです。そうしますと、中小企業には退職金がないので、ひとつ退職金を補給しようといって労働者につくる、中小企業者は倒産その他不安定だから、また退職金的なものをつくろう、離農農民については農業年金をつくろう、こういう形になったら、もう国民年金はお手あげですよ。それはそうでしょう。労働省が持ったら通産省が持つと言う、労働省と通産省が持ったら、農林省が持たなければ赤城さんは無能だといわれるから持つことになる。みんな持ったら神田さんのところはまる裸ですよ。だれも相手にする人はいなくなっちゃう。これが厚生年金の姿です。これであなた方が、長期のものをやろうなんと言ったってできっこないです。しかもそれらのものにはみんな国庫補助がついてくる。労働者のほうの退職金共済法には、三年までの者は五%つきますよ。十年になったら一割つきますよ。中小企業のほうは、ことしはついておりません。ことしは出資四千万円と三千万円の事務費の補助です。しかし、これはもう労働者について中小企業につかぬはずはないです。中小企業はみんな言っています。われわれも、言うのは当然だと思うのです。これは来年にはつきますよ。そういうようにずっと国庫負担がついたところを見定めて、おもむろに、平将門を非常に研究しておる赤城さんですから、ゆうゆうとあとから出ていくのです。琵琶湖のそばの比叡山に登って琵琶湖のほとりを見渡して、なるほどいまおりていけば天下が取れるというころになると、赤城さん、おりていくのです。そしてゆうゆうと農民にも国庫負担をつける、こういうことになる。そのときには、今度は予算折衝といったって、神田さんもう手おくれじゃ、わしのほうは、労働者にも農民にも中小企業にもみんな予算をつけたのだから、あなたのところの厚生年金まではつけませんよ、今度は本家本元があと回しになるのですよ。先が見えておる。だから、これはもうそういうことになるならば、厚生年金制度の中で、農民その他についてもきちっとあなたは政策的な弾力を持って考えなければだめです。一つの制度の中に包含をしながら、一体どうその矛盾を解決していくかということでないと、こういうように、もう戦国時代のように各省割拠してしまって――そしてみんな事業団をつくるのですよ。通産省にも事業団ができる、労働省にも事業団ができたのですから、役人の天下りの場所ができる。役人は、大臣をほったらかして天下りの場所をつくったほうがいいから、みんな事業団をつくる。もはやそれには国家国民はない。九千八百万の日本の国民の老後を保障する制度なんというものはない。ただ自己の生活の道を考えておるだけです。だから、これではいかぬですよ。どうですか、農民の問題についてもいまから調整する意思はありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/18
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019・神田博
○神田国務大臣 滝井委員から、いろいろ例をあげて、厚生年金、特に国民年金等についての国民の信頼性を将来一体どういうふうにして維持していくかというような、たいへん御心配の点を伺ったわけでございますが、しかし、私どもはこう考えております。年金制度というものは、やはり厚生年金と国民年金の二本立てが本筋だ、それ以外にこれでは十分でないという点があり、あるいはいろいろの事情があれば、あるいはいまの年金制度と違った一時退職金制度が生まれてくる、これは補完的作用をするものであって、いわゆる本筋を侵すというような問題ではないと私は思う。大蔵省との予算折衝その他におきましても私どもそういう感触でやってまいっておりまして、いま年金制度の将来に対して御心配をいただいておることは、われわれも激励を受けておるわけでございますからたいへんありがたいわけでございますが、そういう覚悟で、何といっても年金制度は厚生年金と国民年金の二本立てが中軸だ、あとは補完制度だ、こういうふうに理解してこの両制度をもり立てていきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/19
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020・滝井義高
○滝井委員 補完制度である、こうおっしゃるのだけれども、これは掛け金を必要とするのですよ。だから、さいふを五つくらい持っておって、こっちは厚生年金に出そう、この金は国民年金に出そう、この金は中小企業の退職金共済法に出そう、これは自分自身の倒産その他の場合の相互扶助的な、小規模企業の共済法のほうに出そうというわけにはいかぬわけです。おやじは、労働者のためにも自分のためにも、みな一つのさいふから、一つのがまぐちから出すのですから、そうはいかないのですよ。
そこで、もう一つある。この社会労働委員会で昨日提案理由の説明をされた労災法が、今度年金化するのです。長期傷病給付はさきに年金化しておりましたが、今度全面的な年金化が入ってくるわけです。いままでは、手が切れたり足が切れたりしたのは一時金だった。一時金だったときにもわれわれ不満だったのは、一時金をもらえば六年間は厚生年金を停止された。それはけしからぬ、片一方の労災のほうは企業家の責任じゃないか、片一方は事業主と労働者が町方で折半してやっておるのだから、性格が違うじゃないかと言うのに、それを連結して六年間はくれなかったのです。ところが、今度は労災も年金化が始まったのですよ。そうして、労災を年金化しただけならいいけれども、今度はそれを併給しないことになって、五十七・五はいわば厚生年金が肩がわりするのと同じことになる。だから私は、初めに労働者のことも言い、中小企業のことも言い、農民もまたくるかもしれないということを言った。これは初めは一時金だけれども、最後には必ずいまのようになるのです。なぜならば、さいふが一つ、出口は一つなのですから。事業主は、労災にも出しておる、厚生年金にも半額は出しておるじゃないか、だから脚業主の分だけは両方制度があったってやる必要はない、こうなるのですよ。厚生年金と労災とは併給はしないのです。五十七・五は削ってしまう。言いかえれば、労災まで厚生年金が肩がわりをしてやらなければならぬという形になっているじゃありませんか。この点については、一体あなた方どう考えておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/20
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021・山本正淑
○山本(正)政府委員 労災保険の千金化につきましては、昨日労働省からの提案理由の説明にもあったわけでございますが、従来は、基準法との関係におきまして、労災保険の一時金を年金的に六年間に分割払いするということになっておりましたが、それが昭和三十五年でございましたか、一部のものは年金化する措置が講ぜられまして、これは主管省ではございませんから正確なことは申し上げかねますけれども、その当時から、要するに労災保険の年金化ということは世界の趨勢として、わが国においてもそういう方向をとるという線が出ておったのでございます。今回労災保険の改正に際しまして、労使が一致して年金化の方向、労災保険を年金化していくということになりまして、それをどう厚生年金と調整するかということにつきましては、労働、厚生両省間におきましていろいろ議論を進めまして、結論といたしましては、生活保障の部分は厚生年金で担当する、そうして損害賠償の部分については労災保険において一定のルールをつくって保障していく、こういった割り切り方をするのが妥当であろうということになりまして、生活保障部分は厚生年金において担当する、こういう方向に結論を出した次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/21
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022・滝井義高
○滝井委員 はなはだ寡聞にして新学説を聞いた。労災の中に生活保障的な部分と損害賠償的な部分がまじっておるということを、私いま初めて聞いたのです。労災というのは、御存じのとおり、いままでは平均賃金の六割しかくれないのです。いままで一〇〇もらっておった者は六〇しかくれないんだから……。だから、第一あなた方のものの考え方が間違っているのは、厚生年金と労災保険とを連結するところが、もうそもそもけちな根性なんです。労災も六割で少なくて食えない、厚生年金も三千五百円で食えないというものを、その食えない同士のやつを一緒にすれば何とか食えるようになるのを、今度その食えない同士のやつを、またダブるところだけは一本切るというのですから、そんなばかなことはないですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/22
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023・山本正淑
○山本(正)政府委員 私、説明が不十分でございまして誤解されました点はおわび申し上げますが、こういう趣旨でございます。労災の損害賠償部分を年金化するということによりまして、生活保障部分、これは損害賠償と関係ないものでございますが、生活保障は厚生年金で担当して、そうして損害賠償部分を年金化して併給する、こういう形にしたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/23
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024・滝井義高
○滝井委員 だから、労災を厚生年金で肩がわりする理論なんというものはないわけですよ、労災というのは、御存じのとおり、これは経営者の責任なんだから。経営者が無過失賠償責任をとっておる。労災というのはあくまで経営者の責任です。厚生年金というのは、これは経営者ももちろん掛け金は出してもらっておるのですよ。しかし、それは労災とは本質的に違うものなんです。だから、本質的に別個なものを一緒にしようとする観念がけちくさいというのです。これが一万五千円とか二万円年金になっておるときならばいいですよ。ところが、一万円年金というのを、いまあなた方は国民にそういうムードを与えておるけれども、いまの制度のもとで、二万五千円の平均標準報酬になる人が、千七百万の被保険者のうち一体何人おりますか、言ってごらんなさい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/24
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025・山本正淑
○山本(正)政府委員 ちょっと前の問題でございますが、生活保障の部分は厚生年金で一万円年金を実現する、いま三千五百円という現行の例で、貧乏人同士がつながり合うというお話でございましたが、一万円年金を実現すると、この改正の時期におきまして生活保障部分は厚生年金で担当する、それから損害賠償の部分は、年金化してそれで支給する、こういうことでございます。
それから、いま後段の二万五千円の場合に、二十年勤続ということで標準的に一万円年金になるわけでございます。これは申し上げるまでもなく、定額分の五千円と、二十年で報酬比例部分の二割相当額との合算額でございます。現在の年金受給者の受給年金額は平均三千五百円見当でございますが、これは御承知のように高齢者特例がございまして、四十歳以上で加入した場合には十五年間で老齢年金がつくという高齢者特例が受給者の多くを占めておりますので、平均的に三千五百円になっておる面もあるわけでございますが、標準報酬平均額が二万五千円という受給者というものは現在ほとんどないわけでございます。過去の標準報酬の平均額でございますので、正確な数字はいま記憶がございませんが、過去の標準報酬の全平均は一万二千円ないし一万五千円くらいかと存じております。したがいまして現在の受給者につきましては、八千円見当の年金になるという趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/25
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026・滝井義高
○滝井委員 あなた方が、二十年間つとめてそして標準報酬が二万五千円の人には一万円もらえますよということを伏せておって、一万円年金、一万円年金というムードをやるから、みんな一万円もらえると思っておるわけです。最低保障は、五千円。五千円しかない。それで、いまそれに幾ぶん上積みするから六千円とか七千円とか八千円になるのであって、正しく背広しないといけない。われわれのところに、なけなしのさいふをはたいてたくさん速達がくる。お気の毒ですよ。ほんとうに二万円もらえると思っておる。だから、滝井さん、社会党が一万円年金をつぶすというのはけしからぬ、われわれ一万円もらえるじゃないか、いや君、一万円もらえないんだよと言っても、厚生省は一万円もらえると言っておるといって、どんどんはがきがきておる。国民にそういうその宣伝までして、法案を通そうなんというさもしい気持ちを起こしてはいかぬ。やはりきちっと宣伝をしなければいかぬ。だから、いま言ったように二万五千円の標準報酬というものはない。私はあとからその実態を明らかにしていくけれども、標準報酬は一万二千円とか一万五千円ですよ。それになると、一万円よりかはるかに下のものしかもらえない。とにかくいまのような、厚生年金と労災を年金化してこれを併給するという形になってくるのですよ。必ずなってくる。これはさいぜん私が言ったようなものにも、すでに現実に、経営者の責任である労災でさえも五十七・五をちょん切ってしまうんですからね。こういうさもしいことをやるのだから、他のものが、補完的な制度ができるとその補完的な制度にけっこう乗っかって、あなた方が乗るまいと思ったって大蔵省は乗っちゃうんです。
次は、もう一つ問題は児童手当です。厚生省は、いま児童手当を保険制度でおやりになろうという意思でしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/26
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027・神田博
○神田国務大臣 児童手当につきましては、ここ数年来調査を続けてまいっております。今度は児童手当専門調査の参事官も置きまして、今年一ぱいには、四十年一ぱいにはひとつ見通しを確立したい、こういうことでやっております。どういうふうにやるか、どの程度やるかということについての検討を進めておりますが、いまお述べになりましたように保険制度のことも考えながらひとつ早急に実施いたしたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/27
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028・滝井義高
○滝井委員 私が聞くのは、一体保険制度でやるのか全部国庫負担でやるのかということです。これはとても、国庫負担でやるなんと言ったってできるものじゃないと思います。保険制度でしょう。ひとつはっきりしておいてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/28
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029・神田博
○神田国務大臣 おっしゃるとおりでございます。保険制度で、ひとつなるたけ厚くやろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/29
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030・滝井義高
○滝井委員 保険制度でおやりになるということになれば、これも問題は、労働者が掛け金を出すか出さぬかということが問題です。事業主は出すことは確実なんです。なぜならば、いま家族手当というのは刑業主が全部出しておるのですから。ところが、この児童手当の額が千円くらいのちゃちなものでは、これではどうにもならぬわけです。これは一子からやるか三千からやるか、いろいろ議論があります。議論はありますけれども、保険制度でやろうとすれば、あなた方の気持ちでは、これは事業主と労働者両方から出すのですか、気持ちとしては。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/30
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031・神田博
○神田国務大臣 労働者の分までは、はっきりきまっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/31
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032・滝井義高
○滝井委員 労働者の分はきまっておらぬそうだからこれ以上追及しませんが、事業主が出すことは確実です、全部出すか一部出すか。それから問題は、中小企業、農民の子弟に児童手当を出すか出さぬかということが、また第二に問題になるわけです。これもまだなかなかきまらぬでしょう。しかし、まず一番早く実況の可能性があるのは、保険制度をとるからにおいては、これは勤労諸階層に早く実現することは確実です。いわゆる雇用関係にある者に先にいく可能性がある。なぜならば、そういうところには家族手当が出ておるですから、そうなりますと経営者はまたこれの掛け金を出さなければならぬ。こういうように、私はいま内閣でやられておるようなことをざっと攻めてきたのです。そしてこのほかに、また経営者は失業保険があるのです。これも最近は、季節的な労務者とか女子の退職者が多くて、どんどん失業保険を取るので失業保険は赤字だ、何とか締め上げなければならぬ、場合によっては保険料を上げなければならぬようになっている。保険経済は急激に赤字に転化しておる。これも事業主と労働者が出さなければならぬ。と考えてみますと、いま言ったように、事業主は一つの口しかないさいふから出すものがあまりにも多過ぎるんですよ。そうして保険料はもとみたいに低くないですね。三十とか三十五じゃないでしょう。今度は五十八とか、ほんとうに取ったら七十五くらい取らなければいかぬのを取ってないわけですから、これもまたあとで質問しますが、非常に徴収率を下げておる。この徴収率を上げなければ、先の老後は安定しないんですよ。支払いができないのです、いわゆる財源がなくなるわけですから。こういう点から考えてみますと、客観的に見て、厚生年金なり国民年金が飛躍的に前進をする方法はないわけです。だから二万円年金と掲げておるけれども、結局見てみると、いま言ったようにみんな併給をやらない、重複する分は全部切り落としていくということになるから、労働者は、今度は退職したら厚生年金がもらえる、とうちゃんがけがをしたから労災も入る、失業保険も入るぞ、こう思っておると、重複する分は全部ちょんちょんと切られてしまうから、結局もらってみたら少なかった、こういうことになっちゃう。だから、こういうのを羊頭を掲げて狗肉を売ると言うんです。そういうところは、ほんとうにあとに残った人が喜べる制度をつくらなければいかぬ。掛け金をそのために掛けておるんじゃないですか、そのための保険じゃないですか。したがって、あなたが冒頭に言われたように、国民年金と厚生年金とをほんとうに二本立てでやるというならば、希望するのならば、いま労働省が何かつくっておるのを整理してもらって、その国庫負担を全部こっちに入れて、そうしておやじさんが金を出しておるのですから、それで事業主の負担分を軽減したらいい。そうして年金額の一万円を社会党と同じ一万六千円にして、定額部分を一万円にしたらいい。これはおやじさんがみな金を出しておるんですから、ただ分散したものを一つに強力に集めると資金の運用の効果もぐっとあがるんです。資金コストはずっと安くなるんですよ。昔から毛利元就が教えてくれているんですよ。三本の矢をばらばらにしたらだめだ、一本にしなければいかぬ、こう言っている。真理というものは単純なところにしかないんですよ。だから五月改造を控えて、 このごろ、あなたの残ることを再三にわたって私は支持しておるわけだ。この際思い切ってこれをあなたがやらなければいかぬですよ。医療であれだけのみそをつけたんだから、今度は退勢挽回のためにひとつ年金で立ち直る、これをやらなければうそですよ。だから、ここらあたりに政治力をかけると、ほんとうに日本の社会保障史の中に、神田厚生大臣の名は未来永劫に残りますよ。われわれは野党ですから、残念ながらそれができない。あなたの立場にあるならばわれわれはやりたいんだけれども、やれないからひとつ身がわりになってでもやってもらう、それでわれわれは支持するわけです。だからいまからでも――やはり他のものがあまりどんどんそういう形で進んでいくということになると、厚生省は医療も持っておる、厚生年金も持っておる、なかなか手が回りかねます。回りかねますけれども、他のものが、あなた方が医療問題にばたばたと精力を費やしておるうちに年金部門は掘りくずされてしまって、みんな他の省に持っていかれてしまうということはいかぬわけです。だから農林省なり通産省なり労働省に説得をして、できればひとつ検討して、あれをずっと厚生年金に吸収する形をとるわけです。向こうを一挙につぶしてしまうというのはぐあいが悪いから、発展的解消ですね。そしてできればその部分については共管でもいいですよ。あなたがしっかりしておけば、石田さんと話し合もいいし、櫻内君と話し合ってもいいし、赤城さんと話し合ってもいいですよ。共管でもいいです。だから全部吸収してしまったらいい。そしてもう少し老後を保障する体制を、大きな柱を立てないと、いまのように、日本の家屋のように竹の柱にカヤの屋根では、こんなに人口構造が変わって老人人口がふえている日本ではどうにもならぬです。これではみな不安定です。そこで、いま基本論のところでちょっと触れたのです。一段のあなたの御努力を望みたいのですが、どうですか、あなたの覚悟は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/32
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033・神田博
○神田国務大臣 たいへん大きな御期待をかけられておるようです。いろいろお述べになっておられますが、先ほど来質疑応答でもお答え申し上げておるように、年金制度というものは、やはり基本的には厚生年金と国民年金の両立てでひとつこれを育成して、そして欧米に伍しても劣らないようなものにしたい、これが私は本筋だと思います。しかし、御承知のように、まだ激動期でございます。なかなかまだ一本で救い切れぬというような道もございます。何といいますか、退職金制度というようなものも、これはまたある一面からいえば妙味のある制度だと思います。そういうものもこういうような際には出てくるということも、これはある程度やむを得ないんじゃないか、そういう要望も強いのでございますから、これは私、一時金としてのいわゆる退職金制度としてそういう形であらわれてくることは、やはり今日の時勢から見ればやむを得ない。しかし、これがまた、御心配されておるような年金制度に変わっていくというような際には、いまも御注意ございましたようないわゆる発展的解消といいますか、やっぱり二本立ての線で、そしてこれを受けるほうも、あっちからもちょっと、こっちからもちょっとというようなことでは手続もたいへんだろうと思います。だから、そういう点はないように、国民の事務繁雑というようなものも除かなければならぬと思う。やはり本筋でどかんと流してやるのが私は好ましいのじゃないか、こう考えております。
それからもう一つ、いまのような制度でやります場合に、ことに障害年金の手当等の関係で年金がストップを食うというようなことは、これは私は、滝井委員の言われるように本筋じゃないと思います。こういう面こそむしろ改めるものは改めていく、そういうように検討をひとつ進めてまいりたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/33
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034・滝井義高
○滝井委員 御存じのとおり、なかなか経営者には頭のいい人がおりまして、まず経営者が、みずから出す金の面から手金化をはかってきておるわけです。まず第一に労災の年金化をはかり、それから退職金の年金化をはかって企業年金をおつくりになったわけです。大臣はいま、事務が繁雑になる、どかんと一つ流さなければいかぬ、こういうことだけれども、いま定額部分と報酬比例部分と、こうあるのが一番簡単なんです。それをこの報酬比例部分を企業年令に持っていき、基金をつくり、そしてまた基金の連合をつくるなんという、これぐらい事務的に繁雑な、通算するときにややこしいものはないのです。条文を読んだってさっぱりわからぬです。大臣、この条文は何と書いていますかと言っても、大臣はおそらく解釈できぬぐらいこれはむずかしいです。そういうようにむずかしいのですから、実に法律が複雑になって、事務が複雑になるのですよ。それをいまおやりになるのです。私は統一化、一本化の方向にものを進めようとする、医療だってそれをわれれわは主張しているわけです。ところが今度は、いま言ったように全部細胞分裂を起こすのです。先日テレビで宇野重吉の刺身とビフテキというのを見たのですが、みんな子供が太っていくと、タンポポの綿毛のようにみな飛んで出ていってしまう。初め二人で、結局子供がたくさんできて、最後はまた二人になってしまう。そういう映画があるのですが、まさに厚生年金がそうでしょう。発足したときは一本だった。ところが、いいやつはみんな出ていってしまう。タンポポの綿毛で、あなた一人になる。それを私は心配しておるのですよ。もう少しふんどしを締め直して、やはり長期の展望に立った政策を立てていただきたい、こういうことです。
そこで、最後にお尋ねしたいのは、各種の保険を総合したら、一体保険料負担総額は幾らになりますか。そのうちの労働費負担分は幾らで、経営者負担分は幾らになりますか。健康保険から労災から失保から、ひとつ全部通算してみてください。新しい制度になって実にたくさんの保険料の心組になるのだから、当然あなた方は自分のところだけ考えずに、経営者のふところなり労働者のふところも考えておることだと思うから、各保険の負担率を言ってみてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/34
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035・山本正淑
○山本(正)政府委員 これは各種の労働体系によりまして違うわけでございますが、一般労働者、すなわち厚生年金、それから健康保険、これは政府管掌でございます。それから失業保険、この三つにそれぞれ加入いたしております。一般労働者につきましては、男子の場合は、料率にいたしまして千分の百十二、女子の場合には百七、かようになっておりまして、これを折半ということになるわけでございます。それから労災保険は事業主負担だけでございますが、千分の二ないし千分の八十という差がございますので、これは一律にはまいりません。それから、厚生年金法の改正をするとどうなるかということになりますと、男子の千分の百十二というのが、二十三上がりますから百三十五でございますか、これは労使の折半ということになるわけでございまして、標準報酬を二万五千円としてみますと何ぼになりますか、百三十五をかけてその二分の一が労働者の負担であり、事業主負担である。事業主負担の場合にはさらに労災保険がそれに付加される、こういう結果になります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/35
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036・滝井義高
○滝井委員 やはり保険料は下がるわけですから、千分の百三十五で、率はあまり上がっていないようであるけれども、相互調整その他をとりますと、金額は非常に上がってくることになるわけです。同時に、標準報酬も上がりますから、これはもう労使双方非常に負担が重くなってくる。このほかに、いま言うように中小企業の退職金のほうにも掛け金をかけるし、小規模企業事業団にもかける、こういうことになるわけです。このほか労災にも保険料を出すことになるわけです。だから、事業主の側からいえば、そんなに多々ますます弁ずるというわけにいかぬわけですよ。これはもう少し社会保障を整理して、政府としても本格的に取り組んでもらって、長期の展望を、長期経済計画に見合ってぜひ確立をしてもらわなければいかぬ。これに児童手当が加わってくるのですからね。月二千円とか三千円になりますと、これは少ない料率じゃいかないのですよ。そうしますと、そんなにたくさんの制度が雨後のタケノコのように出てきますと、厚生年金と国民年金の二本立てでまいります、こう大上段に振りかぶって大みえを切って言われても、その額というものはスズメの涙の額にやはりなってしまう。それではいかぬ。だから、ほんとうの二本立ての制度を確立するために、さいぜんから申し上げておりますように、大臣、がんばってもらわなければならぬ、こう思うわけです。大局的総論はこの程度にして、いずれこの点は、もう一ぺん総理と大蔵大臣に少し言わなければいかぬと思うのです。
次に大臣にお尋ねをいたしたいのは、長い厚生年金の討議の中で、労使双方の意見の一致を見た点はどういう点ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/36
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037・神田博
○神田国務大臣 ただいまお尋ねがございました改善意見として労使が意見一致した問題といたしましては、大体定額部分の引き上げについて、四千円というようなものを引き上げたらよいだろうという問題、それから、スライド制の導入の問題とか保険料率についての問題、それに国庫負担について相当増額せよ、こういうようなことが、おもな点について一致した意見だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/37
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038・滝井義高
○滝井委員 そこで、いま大臣がおっしゃったように、労使双方意見の一致を見た点は、定額部分の引き上げですね、それからスライド、料率改定、国庫負担、四つが意見の一致を見た点です。そこで、私はこの四点について少しく尋ねたいと思うのです。
その前に、意見の一致を見なかった一番大きな点はどこですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/38
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039・山本正淑
○山本(正)政府委員 企業年金との調整についての項目でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/39
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040・滝井義高
○滝井委員 企業年金との調整は意見の一致を見なかった。そうすると、意見の一致を見なかったことが法案になって、意見の一致を見たことがうまくいっておらぬというのは全くおかしなことで、こういうのをうしみつどきの現象といって、石が流れて木の葉が沈むということがよく言われるが、うしみつどきは石が流れて木の葉が沈む。ほんとうは木の葉が流れなければならぬのに、石のほうが流れている。こういう問題を、利害関係といって力関係だけで決定してはいかぬ、社会保障なんですからね。労使の愚見の一致を見たところはやっていく。ILO精神と同じであって、ILO精神でやっていかなければならぬ。こういう政治のやり方というのは民主政治ではないわけですよ。(「暴力反対」と呼ぶ者あり)だから、暴力反対、こうおっしゃったですが、こういう点を力の暴力というのです、多数の暴力。
そこで、意見の一致を見た点について少しくお尋ねをします。
まず第一は、スライド制からいきましょう。スライド制に対するあなた方の基本的なものの考え方というのは、法律で言いますと、第二条の二をごらんになりますと、「(年金額の調整)」と書いて「この法律による年金たる保険給付の額は、国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるための調整が加えられるべきものとする。」こういうように書いておるわけです。一種の訓示規定です。これが赤の字で書いておるから、これは修正したところです。
その前に、ちょっとこれは山本さんに、私、赤の字で思い出したから、文句を言わなければならぬのは、大体ごらんのとおり、議員というのはみんな更年期以降の人がなかなか多い。中には若い人もおるけれども、この赤の字――厚生省というのは衛生を担当するところですよ。この法文を赤の字で書いたときに、一体どれほど目に害があるかということが、あなたわかるか。厚生年金というのは、お互いに老後を保障したり何かする法律で、いわば一種の社会保障。そういう重要な衛生も考えてもらわなければならぬ法律なんだ。ところが、こんな赤の字を読ましたら、私のように近眼の強い人は目がつぶれます。眼科の医者に聞いてごらんなさい。精神科のお医者さんも赤はいかぬと言う。こういう赤の字で書くことがまず第一に認識不足だ。衛生上の認識が足りない、だから老人を思う心がないということです。
もう一つは、関係条文が一つも入っておらない。あなた、労働省の労働者災害補償保険法をごらんなさい。これはさすがに労働者の災害を守る法律だから、全部関係条文を入れてある。そして、この前も私はあなたに注意しておったが、新旧対照表も入れてもらわなければいかぬ。それをあなたのほうは赤字で入れて、非常にわかりにくい。カッコの中に削除条文を入れてしまった。そうじゃなくて、労働省のように上段と下段で、こういう形にならなければうそですよ。こういうことをやっているのは、各省の中であなたのところだけだ。関係条文はつけず、新旧対照表もなく、変なぐあいに赤と黒でやる。非常に読みにくいし、わかりにくい。その点は労働省はたいへん至れり尽くせりで、しかも逐条解説を出している。年金はわからぬから、逐条解説がなければならぬ。労働省は、この膨大な法案に全部逐条解説をやっているのです。議員はみんな勉強せぬようでも、やっぱり勉強するから読むのです。だから、読みやすくてわかりやすいようにしなければならぬ。関係条文を出さなければならぬ。この膨大な年金法、しかも昭和十七年から積み重ね積み重ねして改正をして、うんとコケがはえておる法文ですよ。その条文を読もうとすれば、関係法律をうんと引っぱり出して読まなければならぬはずです。だから、われわれは忽忙の間に一々とても読めぬ。議員に読ませぬでさっと通したいというような、そんな謀略ではいかぬですよ。労働省をごらんなさい。労働省は変なことをやったからけしからぬと思ったのですけれども、これだけは労働省をいつもほめている。労働省は、法案の数が少ないからかもしれませんが、非常に親切丁寧です。ただ、労働省の欠陥は、資料をあとにつけぬということが欠陥です。しかし、関係条文その他は全部ついている。ところが、衛生の観念がなければならぬ厚生省が赤字で書く。電気の下では目がちらついて、ちっとも読めやせぬ。三時間勉強するところが、一時間半ぐらいになる。そういうことまで注意をしないと、厚生省というのはものがわからぬ省だから、ほんとうに残念です。
そこで、いまのような基本的なスライドに対する態度は、二条の二に書いてあるわけです。ところが、二条の二というものは全く抽象的な訓示規定で、具体性が何もない。そして、労使の意見が一致したのは、まず第一に、スライド制について意見の一致を見ておるわけです。これは八木さんがここで何度かにわたって歴代の厚生大臣に――あの人は昭和二十七年に代議士に出てから、厚生年金一本でやっておるわけです。そのたびごとにスライド制の確立を言っております。歴代の大臣は全部、やりますと言っているわけです。できるだけ努力をいたします、御期待に沿うようにいたします、こう言っておる。ところが、一向に御期待に沿わない。御期待にそむくばかりだ。しかも労使一体でこれをやるべきだというのに、やっていない。
そこでお尋ねをするのですが、この際、こういう年金の部分に、どのような具体的な方法でスライド制を取り入れていくかということです。これはいろいろあります。定額部分に取り入れろという意見もあります。あるいは報酬比例部分に取り入れろという意見、両方に取り入れるべきであるという意見、いろいろあります。しかも具体的にやる場合に、どういう経済指標を用いるかということも問題です。そういうことについて、あなた方は基本的にどういうものの考え方を持っていのるかということです。いつの日になったら、スライド側というものを具体化してくれるつもりかということです。
私がどうしてそういうことを言うかというと、このスライドするというものは、どの法律もみな同じことを書いてある。それは法制局が一つだからでしょう。われわれがかんかんがくがく攻め立てても、この城は堅固で、落ちる城ではないわけです。しかもいまの日本の経済政策を見ると、基本はインフレ政策です。そういうインフレ政策的なものに流れているところで、このスライドをつけておかなければ、年金の掛け金をよけいかける気持ちにならぬですよ。だから、このスライド制というものについて、あなたの基本的なものの考え方を、法文でそういう抽象的なことでなく、もう少し具体的に述べてください。これは大臣が基本的なことをまず述べて、各論は局長が述べてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/40
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041・神田博
○神田国務大臣 年金の給付の問題につきましてスライド制をとれということは、私も全く同感でございます。私も多年、この種の問題につきましてはスライド制をとるべきものだ、こういうふうに主張してまいった一人でございます。
そこで、今回の年金改正にあたりまして、スライド制を採用しなかったということは、しなかったというよりも、なお検討の方途がございまして、間に合わなかったというふうにお考えいただきたいと思います。スライド制をとらなかったのではなく、スライド制をとるためにいろいろ検討を加えた、あるいは賃金によるか、物価を加えるか、諸般の情勢も考えるか、いろいろなことを検討したのでありますが、それが間に合わなかった。そこで、スライド制をとらなくとも、物価の上昇を上回るようないわゆる年金の給付を考えたほうがいいのではないか、こういうことに一応今度はお願いをしている、こういうことだと思います。したがいまして、物価の変動よりも大幅に上回る年金の給付というものを考えまして、スライド制の実施は将来の問題にした。いわゆる将来検討して、早くそういう点を取り入れたい。いろいろの前提をなす問題がございますから、そういうものを整理いたしまして、また御審議を次の機会にお願いしたい、こういう考え方でございます。あくまでもスライド制をとれという前向きであったが、間に合わなかった。こういうように御理解願いたいのであります。
あとは政府委員から御答弁いたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/41
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042・滝井義高
○滝井委員 スライド制をとる方向でいろいろ検討した。そうして具体的には物価の変動を上回る年金給付をつくったんだ、しかしできなかったので、将来やりたい。その場合に、スライド制をつくるためにネックになるものというか、前に立ちふさがっている一番大きな問題点は何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/42
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043・山本正淑
○山本(正)政府委員 スライド制を実施するということは、方式としては大ざっぱに言って二つあるわけでございまして、自動的なスライド方式、それから政策的に必要なつどスライドしていく、こういう二つの分類に分けるわけでございますが、その基本は、要するに年金の実質価値を維持するというところにあるわけでございまして、どういう方法でやるといたしましても実質価値を維持すればいいわけでございまして、そういう意味におきましてスライド制を前向きで考えなければならない、かように考えております。
そこで、いま御指摘のスライド制を実施するとどういうようなネックがあるかという点でございますが、一つには、年金制度の実質価値を維持するということは当然考えなければいかぬ問題でございまして、その際に、年金制度だけで実質価値の維持という問題はあるかといいますと、ほかにもたくさんあるわけでございまして、関連する項目におきまして、厚生年金、国民年金以外におきましてそういった実質価値を維持するという問題はあるわけでございます。そういう点が、他の制度との関係において、年金なり恩給なり、そういったものの実質価値の維持という問題が一つございます。それから、第二点といたしましては経済的な問題でございまして、これはすべての制度を通じての問題でございますが、スライド制を実施する、要するに既裁定の年金を何らかの指標に基づいて改定していくという際には、どうしてもそこに追加費用の問題が生じてくるわけでございます。原資の、その費用をだれがどういう形で負担していくか、この二点がスライド制に関連する大きな問題でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/43
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044・滝井義高
○滝井委員 実質価値を維持する場合に、年金自体以外の関係があるということ、それから追加資源の負担をだれがどういうぐあいにやるか、要約すれとその二点が大きな隘路である、こういうことです。
そこで、私たちがさいぜんも指摘をいたしましたように、実質価値が保障されない限りにおいてはその年金に対する不信感が起こって、そうして他の制度が補完的という名のもとにまかり通ってしまっておることは、さいぜんるる指摘したとおりです。他のものがそういう形でまかり通ることは、年金に不信感を与えると同時に、老後に不安を与えることになる。この年金の異質価値を維持するということ、大きくいえば社会保障の制度的確立をするということの根底は、やはり貨幣価値の合理的な安定保持の政策がどう行なわれるかということです。そうすると、このことは、もう経済政策の根本論に年金がさかのぼってくるわけです。いわゆる経済政策というものがいかに安定成長の形をとっていくか。いまのインフレ的な、むちゃくちゃな過剰設備投資をやって、そうして声ばかりの貨幣価値、名目的な価値は大きいけれども、実質価値は少ないということになったのでは、年金というものは成り立たぬわけです。あるいはそういうことを激動期と言い、変動期と厚生大臣は言っておるのかもしれない。そこまでわれわれが掘り下げて論議をして、その上で一体どこを、どういう指標を定めていくかということになるわけでしょう。そうすると、大体定まっておるのは、私は三つしかないと思うのです。それは消費者物価の指数というものをどう見ていくか、これでひとつやれないかどうかということです。いま一つは、賃金指数でしょう。いま一つは、生計費の指数でしょう。大体その三つを組み合わせるかどうか、どれか一つを用いるか、二つを用いるか、その組み合せでやる以外にないのじゃないか。根本的な経済政策の問題を論議しておったのでは、いつの日にか年金のスライド制ができるかということになると、これはなかなか見通しがつかないことになる。そこで、ある程度踏み切って――それは物価にしても賃金にしても生計費にしても、経済の変動に応じてやはり動いていくものなんですから、そこを何か一つのてことして、あるいは経済変動に対応せしめる指数として取り扱っていく以外にないのじゃないかと私は思うのですよ。あとの第二の国庫負担の問題は、もう少しあとで論議するのですが、これは当然、スライドすればその問題は必然的に出てくる問題ですから、第二の問題でいいと思うのです。根本は、いまあなたが貨幣価値維持の上においてネックになると言われる厚生年金とか国民年金の指標を一体どこに求めるかというと、いまの三つ以外に考えられないのではないか。だから、あなたのほうのこの中にも、「国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた」、きわめてあいまいにその他という、たったの国民生活水準という大ざっぱなものをあげておるけれども、この国民生活水準というものの中には消費者物価が入り、賃金が入り、生計費が入ってきているわけですから、そこらをもう少しかみ砕いて、具体的に取り組んでいって打ち出す必要があるんじゃないか。厚生年金が出さないと他のところは出さない。これは何といっても神田厚生大臣が言われるように、国民年金、厚生年金が柱です。特に厚生年金が柱です。なぜならば、国民年金よりもはるかに長い歴史を持っているからです。やはり歴史の長さというものはたいしたものです。代議士でも、川島副総裁なんというものは非常に何回も当選して、年数何十年とこうなるのです。やっぱりそれは歴史を背中に背負っておるところに権威が出てきておるわけです。それと同じで、やはり何といっても厚生年金が、昭和十七年からできて、戦争のあらしに耐えてきておったというところにそれだけの価値があるわけなんですからね。それにあなた方がスライド制を入れることができなかったら、話にならぬです。他の制度は入らない。そこで、いまの三つのようなところが妥当なところだと私は思うが、あなた方は一体どう思っておるのか、そして、そういうことで一体やる意思があるのかどうか。将来将来と言っておる間には鬢髪白きを加えて、毎年菜の花が咲き、チョウチョウが飛んでも、将来はわれわれはだめになってしまって今度は受ける側になるのですから、いまのうちにきちっと確立する必要があると思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/44
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045・山本正淑
○山本(正)政府委員 今回の厚生年金の改正に際しまして、やはりその点は検討いたしたわけでございます。いま先生が御指摘のように、スライド制を採用する際の基準として何を考えるかということになりますと、せんじ詰めるといま御指摘のような三項目になるのではないか、かように考えております。また諸外国の例を見ましても、大体何らかの物価指数と、それからドイツのように賃金指数、それによって年金の実質価値を維持する方策が講ぜられておるという現状でございます。今回の改正に際しまして、スライド制の技術的な問題も考えましたが、まず物価をとって考えますと、昭和二十九年の改正の際にかりに物価指数によってスライドするという規定があったといたしますと、今回の改正に際しましては、もちろん一万円年金に達しないわけでございまして、今回の改正は、そういった昭和二十九年の改正によって現在の体系ができました際以降における物価の変動、消費指数の変動、賃金の上昇といったものを総合的に勘案いたしまして、政策的にそういった実質価値の維持を含めましてベースアップ、大幅な給付改善ということを行なったわけでございます。そのほうが、現在の厚生年金を充実する意味においては、そういった単なる物価なら物価だけによってスライドするよりは、やはりまだ現段階として、あるいはこの次の段階といたしましては、政策的に年金そのものを上げていく必要もあるわけでございまして、そういうような意味を勘案いたしまして、大幅なスライドによってすべてそういうものを吸収していくという措置を講じたわけでございます。ただ事務的には、その当時におきましても、今後の問題としてスライド規定を考えまして、一つの案といたしましては、厚生年金の定額部分につきまして物価にスライドする方式を今後考えていってはどうかという試案は発表いたしましたが、ただいま大臣も申されましたように、スライド制を実施するに際しましては基本的な問題もあるし、かつまた物価にスライドするということだけでいいかどうか、定額部分だけでいいかどうかといった問題もなお検討を要する事項でございまして、そういう意味におきまして具体的なスライド方式につきましては今後もさらに検討を進めたい、こういうことに相なった次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/45
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046・滝井義高
○滝井委員 ちょうど区切りがよくもないのですけれども、少しスライド制をもう三、四点討議をしなければならぬ問題点がございますから、ここでやめたいと思いますので一応中止をしたいと思いますが、いまのあなたのほうの御答弁によると、結局昭和二十九年以降の物価の変動を見ると、一万円年金に物価だけではならないのだ、だから物価変動を上回る一万円をぽっとつくって政策的なスライドをやったのだ、こうおっしゃるわけです。ところが、これはまた、五年も後になると、また同じようなことを言わなければならぬことになるわけです。それで物価がいまのような激しい変動をするときには、被保険者にとっては非常に不安定なんですよ。だからこれは、やはり五年を待たずして何らか措置しなければならぬと思う。
そこで、もう少し定額部分その他の問題について議論を戦わしたいと思いますが、これから入るとまた二十分くらいかかりますから、ちょっとこれで休憩させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/46
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047・松澤雄藏
○松澤委員長 午後一時まで休憩いたします。
午後零時二分休憩
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午後一時二十五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/47
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048・松澤雄藏
○松澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続けます。滝井義高君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/48
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049・滝井義高
○滝井委員 午前中に引き続いて総括的な質問をさせていただきます。労使双方の間で意見の一致を見た、非常に大きな問題点である四つのうちの一つのスライド制の質問中でございましたが、途中で時間がきたので中止をしておったわけですが、政府の御答弁によりますと、今回の一万円年金というのは、いわば政策的なスライド制をとったものである。当然、二十九年以来の物価の変動その他を総合的に検討してみても、物価だけでは一万円年金に達しない、したがって、総合的な立場に立って政策的なスライド制をしいて一万円にしたのである。今後どのようにスライドしていくかということについては、具体的に検討をするということでございました。そこで、具体的な検討をする場合のやはり問題となる点を、少しく政府の意見を聞いておきたいと思うのです。
御存じのとおり、社会保険審議会における公益委員の意見というものは、年金の調整に関する事項については、この政府原案のような精神的な規定というもののほかに、少なくとも基本年金額の定額部分についてスライド制を具体的に決定すべきであるという、非常に親切な指針を出してくれておるわけです。今回の改正にあたって、私がさいぜん申し述べましたように、定額部分についてのみやるのか、定額部分と報酬比例部分についてやるのか、それとも報酬比例部分のみについてやるのか、これらの点について政府の検討をした方向と申しますか、そういうものがあれば一応ここでお聞かせを願っておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/49
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050・山本正淑
○山本(正)政府委員 年金額の実質価値の維持ということがスライド制の問題の基本になっておるわけでございまして、さような意味におきましては、年金額の全体といたしまして実質価値を維持するという方向で基本的には考えなければならない、かように考えております。
そこで、厚生年金のように定額部分と報酬比例部分との二つの要素で構成されております場合におきましては、定額部分について物価の変動等に伴う実質価値の維持ということが一番端的にあらわれるわけでございまして、さような意味におきまして社会保険審議会における公益委員の意見としては、少なくとも定額部分についてスライドの具体的方法を講ずるような、たしか権威ある調査会を設けて検討するということであったかと存じますが、定額部分についてスライド問題というのか切実であるということは、先生御承知のとおりでございます。それから報酬比例部分につきましては、これがたとえば最終貨金にリンクしているというふうな形のものでありますならば、実質的なスライドというものが行なわれるわけでございますが、厚生年金におきましては過去の標準報酬の平均額でございますので、さような意味におきましてその実質的な報酬比例部分を実質的に増大するという意味も含めまして、今回の改正においては、従来一年間について千分の六となっておりましたのを千分の十、すなわち二十年勤続では一二%相当額であったものを二〇%相当額に報酬比例部分をするということによりまして、実質的なベースアップを行なったということに相なっております。
具体的に事務当局で検討しておったことがあるかという点でございますが、その問題につきましては、定額部分についてスライド制を考えるとすると、やはり消費者物価を基準にいたしまして、消費者物価が一定割合上がった場合においては、定額部分の年金額をその割合で加算していくという方法が考えられるという検討はいたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/50
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051・滝井義高
○滝井委員 権威ある調査会を設けて、なるべくすみやかに結論を出す措置を講ずべきであるということを言っておるわけです。したがって、当然また五年したら同じことを繰り返すことになる。何もやっていない。したがって、こういう公益側の意見が出て、しかもスライド問題については労使双方ともスライド制をつくらなければいかぬということになっておるわけです、意見一致を見ておるわけですから。しかも具体的な指針を公益側が出しておる。とすると、直ちに政府は、当面大蔵の折衝その他国庫負担の問題ともうらはらの問題として関連があるわけですから、これはすぐには今度の法律の改正に間に合わなければ、直ちにやはりそういう制度は発足をさして検討すべきだと思うのです。少なくともそれが権威あるからには、この法律の中にやはり入れなければいかぬと思うのですよ。入れて、そしてスライド制はこういうことで訓示規定になっております。原則規定ですけれども、具体的にはこの委員会でやります、こういうことになれば私たちもまあ一歩譲って、なるほどやはり政府は熱意があるのだと黙って引き下がるのですよ。ところが、訓示規定だけ書いてそういうものを何もしないから、あなた方は何もしないんじゃないか、こう疑うことになる。その点はどうですか。そのくらいの修正はして差しつかえありませんか。スライド制の問題については権威ある機関をつくりなさいと書いてあるのだから、そのスライドの実施についてはひとつ内閣にこういう調査会を設けてやるんだということを入れても差しつかえありませんでしょうな、政府としては。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/51
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052・神田博
○神田国務大臣 滝井委員のたいへん御熱心な御質疑というか、献策のようにお聞きいたしました。どうも少し私のほうから御答弁しにくい問題じゃないかと思うのであります。その辺でひとつよろしくどうぞ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/52
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053・滝井義高
○滝井委員 なかなかはっきり断わらないところは、沈黙は承諾を意味するというのはすでに言われておることで、これはひとつ与党のほうとよく話し合ってやらなければいかぬと思うのです。
そこで、少なくとも定額部分というものは、私はやはりこの際斬新的にものを進めようとすれば、最小限定額部分のスライド制くらいは入れなければいかぬと思うのです。その場合に、いかなる割合まで経済指標が変動した場合にスライド制を入れるかということ、それからそのスライド制を入れる時期――ある程度の経済指標の変動があったときに、どの程度の変動があったときにいつ入れるかということ、この二つのことが非常に重要になるわけです。
〔委員長退席、井村委員長代理着席〕
たとえば失業保険のごときは、二〇%上下があったときには失業保険を改正することになっておるんですね。スライド制が具体的数字で入っているのは、あれくらいのものじゃないかと思うのです。ほかにはないですね。そこで、いかなる割合まで経済指数の変動があった場合に、いつ入れるかというこの問題ですね。これは何も権威ある機関をつくらなくたって、あなたのほうの法案にも、「諸事情に著しい変動が存じた場合」と書いてある。「暫しい」とは一体何ぞや、こういう質問にいまの質問はかえてもいいんです。そのときはやらなければならぬことになる。これは何も五年を待たないでもやらなければならぬです、こうなれば。したがって、それをもう少しきめこまかい質問にすれば、いまのようなことになるわけですよ。それを一体どう考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/53
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054・山本正淑
○山本(正)政府委員 御承知のように、ただいま先生が言われましたように――これは失業保険でなくて労災保険の問題でありますが、労災保険では二〇%の変動があった場合に具体的に労働大臣が告示をいたしまして、そうして改定するということになっております。そこで考えられますことは、どの程度指標に変動があった場合に、そういった主管大臣が告示をするという方法をとるかということでございまして、その点が、いま法律にございます「著しい変動」ということはどういうことを考えているかという御指摘でございますが、この同じ文句――そのまま文章が同じなわけではございませんが、同じような趣旨は、国民年金法ができました際に国民年金にもそういった調整措置の条文がございまして、「著しい変動」をどう考えるかということは常識的に考えなければならないと思います。一割変動ということが常識的であるならば一割程度、あるいは一年に一回は現在のような情勢のときには改定するということを考えますれば、まあ物価が六%なり八%変動した場合には改定するといったようなことが考えられるわけでございまして、その「著しい変動」ということは幾らであるかということにつきましては、常識的に判断して今後処理してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/54
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055・滝井義高
○滝井委員 きわめて常識的に考えて一割ぐらい変動したらとか、一年に一回六%か八%ぐらい物価が上がったらということをきちっと言うならそれでいいのですよ。ところが、そういうような常識的に、こういうことでは、常識というのはなかなか幅が広いのですよ。時計の振り子でも、幅というのはやはり一定のきちっとしたものしか持っていないのです。だから、そこらの幅というものをやはりある程度きちっとしてもらわなければいかぬ。いまあなたは労災と言ったが、労災には二〇%というものがある。人事院の勧告は五%ですね、民間給与との差。こういうものはきちっとしているわけですよ。だから、年金でも、そこにやはりある一種の基準を据えなければいけない。六%でもいいのです。一割なら一割でもいいのです。一割を基準として上下にどのくらいの振幅を持った場合というような、こういうものをやはりきめてもらわなければいかぬ。それはいまあなたが常識の線でございますと言ったって、常識はいろいろあるのですよ。山本年金局長の常識と、神田厚生大臣の常識と、滝井義高の常識と、松澤委員長の常識と、常識がうんと違っておったらこれは話にならぬと思う。そこに一つの柱を立てて、その左右にどの程度の振幅を持たせるか。それがやはり常識の範囲だ、そうすれば、時計の針はまっすぐ前に進む、前に進む方向でなければいかぬですよ。どうも常識が各人各様ばらばらであって、そうして針が進まぬでは困るのです。そこらの常識をつくるためには、やはりこれは客観的な権威を持つ委員会をつくってやってもらう以外に方法はないと思うのです。そこで、その場合に定額部分が一番問題になるのですが、一体定額部分というものを決定するいままでのものさしは何であったかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/55
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056・山本正淑
○山本(正)政府委員 定額部分を決定するものさしという問題でございますが、やはり年金制度を考えます際には、年金の総額が老後の生活保障をするのにふさわしいものであるかどうかという観点から考えなければならない、かように考えております。したがいまして、定額部分のみについてかくあらねばならないといった基準はないわけでございまして、これは日本だけでなしに、各種の年金を考えてみます際に、賃金水準というものがあまり格差がないという実態におきましては、必ずしも定額部分ということは必要ないわけでございまして、賃金に比例した年金で十分にその生活を反映するわけでございます。ただ、わが国においては賃金格差が非常に大きいという実情からいたしまして、昭和二十九年の改正に、定額部分と比例部分の両方で構成して所得再配分を強度に行なおう、かような観点から定額部分の考え方が取り入れられたわけでございまして、そういう意味におきまして定額部分が幾らでなければならないということは、一がいに言えないと存じます。わが国の賃金水準にあまり格差がなくなってまいりますれば、定額部分の比重が少なくても、所得再配分の観点からいっても問題がなくなるわけでございますが、今日の情勢におきましては、大体報酬比例と定額のバランスというものを、従来のバランス程度を維持するという意味におきまして、一万円年金の場合においては定額部分が五千円、報酬比例が五千円、そして三十年勤続ということが今後の勤務状態の通例になってまいりますから、さような場合におきましては一万五千円年金になるようにいたしまして、その際には定額部分が七千五百円、そして報酬比例部分が、平均標準報酬二万五千円の場合やはり七千五百円になるといったようなバランスを考えまして、定額を五千円にいたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/56
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057・滝井義高
○滝井委員 国民年金をつくる場合に、国民年金の三千五百円の算定の基礎は一体どこに置くかというと、それは生活保護基準における老人の扶助費を基礎にしたという答弁があったわけであります。昭和二十九年当時においても二千円の定額部分をつくったわけです。この二千円は一体何だ。この二千円は、当時の生活保護における老人一人の生活費が二千円であった、大体これにならった、こういうことだったのですよ。あなたの先輩は大体そういう答弁をしておった。いまは全く生活保護のほの字も言わなかった。たまたま五千円年金というのは、いまの御老人の生活保護と同じところなんだ、そういうことを今度は一つ基礎にしたのではないのですか。いま賃金のことをおっしゃったんだけれども、賃金は、標準報酬が教えるように七千円以下の者もまだあるんだから、七千円以下はどうするか、これを全部七千円で見るということになった。そうして最高は六万でしょう。標準報酬の歴史的な経過をごらんになると、昭和十七年六月から十九年五月までは、当時は等級は一級から十五級までだったのですが、十円から百五十円、それが二十九年にはどうなっておるかというと、二十九年五月から三十四年の四月までは三千円から一万八千円です。こんな低いベースだった。もちろんこれは頭打ちしています。しかし、一万八千円以上の俸給を取っている人はそんなによけいいない。百万人もいない。ずっと下ですよ。当時ですから、おそらく十万から二十万ぐらいじゃないかと思う。非常に少ないと思う。いまでも五万とか六万の頭打ちにしますと、それ以上の者は百万以下しかいないのです。いわゆる五万をこえる者というのは百万以下しかいない。そういう賃金の低い状態ですから、あなたが言うように賃金を見てというと、非常に格差が出てくる可能性もある。だから、どうしてもフラット額というものは、生活保護みたいなものを持ってこざるを得ない。日本の年金というものは、いままではみなそれを持ってきた。いまの説明ではなかなか進歩的なような答弁があったのですが、そういうことなんですか。これは生活保護の基準というものはちっとも考えなかったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/57
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058・山本正淑
○山本(正)政府委員 生活保護と年金の定額部分との関係問題でございますが、これは理論的にはこうあらねばならないというふうには考えておりません。ただ、いまも御指摘がございましたが、昭和二十九年の当時、これも立案当時は、もちろん生活保護基準がどうであるかということを頭に置いて定額部分ということは考えたわけでございましょうが、政府原案で千五百円でございまして、国会修正によりまして二千円になったという経緯がございます。そして国会を通りましてあとにおきましては、たまたま当時二級地の生活保護基準が二千円見当であったので、生活保護基準との関連で説明したということは事実ございます。
それから国民年金の例をおあげになりましたが、国民年金は、御承知のように二十五年で二千円という国民年金の額があるわけでございまして、この際におきましても、たまたま当時生活保護基準の四級地が二千円見当でございまして、国民年金は農村中心だからというので、これとの関連において、これも通俗的に説明したんじゃないかと思います。
今回の改正におきましても、実際は生活保護基準がどうなっておるかということはもちろん念頭に置きまして、その点も見合いながら考えたわけでございますが、理論的には、生活保護の基準と定額部分とが同一でなければならないというふうには考えていない次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/58
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059・滝井義高
○滝井委員 通俗的に、当時、二十九年のときも二千円だった。だから国会で千五百円の原案を二千円に修正した。実は千五百円を二千円に修正したのは、生活保護でさえも二千円じゃないか、こういうことで逆にわれわれのほうから攻勢をかけて二千円になった。だから、それは生活保護と同じようにというか、偶然生活保護を足場に攻勢をかけられて、かけられた側がよろめいてなっちゃったんです。だから、何といいますか、その痕跡というものは依然として底流に残ってきているわけです。だから今度だって、五千円というのはそういうところからきているわけです。おそらくいろいろ対論した過程を見ても、生活保証から出てきていますよ。そこで、そういう形で五千円というものは、生活保護は最低生活を保障するということに右へならえして年金にきていると思いますが、それではやはりいけないと思うのです。生活保護基準というものが、これはあのとおりに食べておると、われわれが実態調査したところによると栄養失調になる。生活保護基準で生活しておる人をわれわれがかって三、四年前に調べたときには、生活保護基準で支給したお金で生活をしておる人は、六十歳のおじいちゃんたった一人しかいなかった。そのおじいちゃんは栄養失調で、全身浮腫があって、そして貧血があって生きるしかばねの状態であることを知った。そこで当時われわれは、これはたいへんだというのであなた方に大攻勢をかけた。あなた方もこれはたいへんだ、社会党が実態調査をしてそんなにやるならということで、あの三、四年前のとき生活保護基準はずっと上がったわけですよ。だから、いまようやく五千円近くに、一人の六十歳の老人が生活するのに五千円くらい要るのだ、こうなってきているわけでしょう。そこで生活保護基準と合わせたのでは困るので、その上をいかなければいけない。そうして定額部分というのを五千円よりか上に上げなければならぬというわれわれの理論的な根拠が、こういうところから一つ出てくるわけです。だから、今度の年金は一万円年金だけれども、定額部分に一つ重点を置いて、しかも定額部分にスライド制を入れるという基本方針だけは確認をしてもらわなければならぬ。お互いに与党と野党が、そういう確認のもとに一つの権威ある委員会をつくって速急に定額部分だけやってください、こういう形にならないとこれは論議が進まないですよ。どうですか。そういう点は非常に議論をしぼった、権威ある機関をつくる、そうして速急に定額部分について生活保護基準の五千円でなくて、むしろその上にいくような形の原則というか、ルールを――あなた方は、医療費の問題についてルールをつくることは非常にお好きなんです。ルールをつくることのお好きな大臣方、厚生省のお役人方が、自分たちのベースの年金になると、ルールづくりのルの字も言わないわけだ。こうして調査会をつくりなさいと言っておるときにつくらない、そうしてルールをつくってはいかぬというときにルールをつくる、こういうのをあまのじゃくというのです。だから、すなおにつくりなさいというときにはお互いにつくったほうがいいのです。それをつくって、速急に定額部分についてのスライド制だけをまず発足させていく。そうして少し時間をかけて比例報酬部分をどうするか、こうやらないと、権威ある機関ができない、来年度以降において大蔵省に予算折衝をした場合に、国庫負担その他が全然方針が立たないのですよ。方針が立たないで、いまのままでこれができたらおれのほうもやるのだ、こうなるのです。だから外堀から順々に埋めて天主閣に迫らなければいかぬです。お互いにお互いの戦術、戦略は与野党統一しなければならぬ。与野党統一する前に、政府とわれわれと統一しなければならぬ。どうですか、その点は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/59
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060・神田博
○神田国務大臣 ただいま滝井委員から、スライド制をとるために何か調査会というか、ルールを確立して早く実施をする意図はないか、こういう意味にお聞きいたしました。私どもといたしましても、先ほど来御答弁申し上げているように、スライド制そのものについては好ましい、これはそういうふうにあるべきものだという考えは同じだと思っております。ただ、先ほど来申し上げたように、いろいろの事情で今回は採用し得なかった。しかし、そう遠からぬうちにひとつ検討してこれをとっていきたい、こういう考えであることも明らかにしたとおりであります。
そこで、いますぐとれぬかということでございますが、いろいろそれにつきまして検討いたしてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/60
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061・滝井義高
○滝井委員 ぜひひとつ権威ある機関をつくって、少なくとも定額部分に関するルールだけを早く確立する必要がある。そうしてこれをてこにして、来年度につきましては国民年金の中にそれをまず入れてくるということです。これは修正でなくとも、どうせあなた方はやらなければならぬ運命に迫られておるわけです。そこでまずきちっと地盤を築いたら、今度その翌年か翌々年くらいに厚生年金の改正を国会に出してくる。こういうように一つ一つ石を置いて大蔵省を攻め立てていかないと、金を出さなければならぬものが一ぱいあるのですから、さいぜん私が年金あるいは退職金類似のものについても総括していろいろ言ったように、たくさん補助金をとろうとして虎視たんたんですから、その虎視たんたんの中で科学的、合理的な石を置いていかないととれないのですよ。
そこで、そういうように持っていくとすれば、次に問題になるのは、このスライドの原資の調達を一体どうするかということが問題になってくるわけです。ここでスライド制のルールをつくったならば、今度そのルールの裏づけをどういう形でやるかということが問題になるわけです。このスライドに対する原資の確立を一体どう考えておるか。これはあなたも御存じのとおり、地方公務員共済法あるいは三公社五現業の共済法等、これらのものを全部計算してごらんなさい、何千億円という追加資金を必要としております。これらの長期の年金は、全部これは自転車操業です。だからこれをもし入れさすとすれば、おそらく八千億円とか九千億円とか一兆円の追加資金を必要とします。そしてさいぜん私が申し上げたとおり、昭和十七年とか十九年ころには十円とか百五十円なんです。私が初めて学校を卒業したときには、昭和十七年に百三十円の給料をもらったのです。そのとき、労働者は三千人から四千人おった炭鉱ですが、私は医者だったから給料は高かった。その百三十円の給料は、上から数えてみたら二十五番目に給料が高かった。百三十円でそのくらいだったのです。だから当時としては、百三十円というのは相当の高給です。いまは百三十円といっても、一回昼めしを食うほどもないのですから、ものの数にならぬ。そういう実態ですから、この原資をいまの物価水準に直して調達するということになると、ばく大な金が要るわけです。だから、大蔵省というものは、スライドについてはがんとして拒否し続ける。そうすると、年金は非常に不安定なものになってくるわけです。だから、ここらあたりで年金の権威を確立して、他のものに退職金類似のものをつくったり、そして金がだんだん蓄積してくると年金的なものに切りかえるような道をふさぐためには、やはりここを踏み切らなければだめなんです。そうすると、年金に対する信用、魅力というものは、期せずしてわいてくるわけです。だから、一体この点に対する原資調達の方法というものを具体的にどうやるか。これはやはり構想として、あなた方がわれわれに示してくれなければ話にならないわけです。大臣、スライドを実施していく場合の原資調達は、一体どういう方針でやっていくつもりなのか。年金法をここで出すについては、当然これは検討済みの問題でなければならぬ。初めての年金の改正じゃないのです。十七年以来、再三再四にわたって改正されてきておるわけです。しかも改正されるたびに同じ質疑が繰り返されてきておるわけですから、一万円年金確立のこの機会に、やはり原資調達の具体的方針を明らかにしておく必要があると思う。
〔井村委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/61
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062・神田博
○神田国務大臣 ただいまお尋ねのありました原資調達の問題でございますが、年金制度を推進してまいりますのに一番重大な問題でございます。また、大事な問題であるわけでございます。われわれといたしましては、労使分担のほかに適当な国庫資金の投入を得まして年金の制度を確立したい、こういう考えであります。そこで、この資金投入をどういうふうにするかという問題でございますが、せっかく検討を重ねておるというのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/62
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063・滝井義高
○滝井委員 この問題は、神田厚生大臣だけの言明ではなかなかたいへんなところがあるので、大蔵大臣と総理大臣にもう一ぺん来てもらって、ここは明らかにしてもらわなければならぬと思います。
委員長、別の機会に、ぜひ大蔵大臣と総理を呼んでいただきたいと思います。
そこで、このスライドの問題で原資調達をやる場合に、緊急なものが一つ出てきておるわけです。その緊急なものは一体何かというと、さいぜんから山木さんも触れておりましたが、既裁定の年金に対する原資の問題です。これは、いま働いている労働者の皆さん方が自分のためにやるのならば、いまの保険料を上げるとかその他でわりあいにやることができるわけです。しかし、すでに前に裁定を受けた人のものは処置のしょうがないわけです。いまの急激なインフレのもとにおいてはますますそうです。そこで、恩給法その他においては本年も二割のアップをやりました。そういう形になりますと、ことしは、いま提案をしておりますところのこの厚生年金法一部改正は、既裁定分についても最低五千円という線を引いて改定しているわけです。しかし、それに対する原資は一体どうなっておるのだというと、何もないわけです。したがって、これはいわば自転車操業になっているわけです。いわゆるだれかのものを食っているわけです。だから、だれかのものは、先にいったときにはお手あげになるわけです。そのことは厚生年金だけではなくて、さいぜん御指摘申し上げましたように、国家公務員共済年金も、三公社五現業関係の共済年金も、地方公務員の長期給付もみなお手あげです。それもばく大な原資の不足を来たしているわけです。それを知らぬ顔の半兵衛をきめ込んでやっている。そこで、まず柱はやはりこの厚生年金で、一番緊急な既裁定分の年金をどうするか。これをそのままだんだん食っておればどういう結果が出るかというと、年金運用の原資が減ってくることになる。年金運用の原資の急激な減少は何を意味するかというと、いまかけておる人の将来の年金の改作に支障を来たすことになる。したがって、それだけよけいに将来掛け金をかけなければならないという悪循環が起こってくる。そこで国家としては、長年の間日本の生産に寄与し、あるいは国家公務員、地方公務員として国の仕事に公僕として奉仕したとするならば、当然既裁定の分については何らかの措置を緊急にしてもらわなければならぬ。この問題に対する問答をここで明らかにしてもらわなければならぬ。一体これはどうするつもりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/63
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064・山本正淑
○山本(正)政府委員 ただいまおっしゃられましたとおり、既裁定年金の扱いというものは非常に大きな問題でございます。したがいまして、こういった年金の諸制度につきまして給付の改善をいたします際に、一般的には、給付の改正時点以降に給付改善の部分を適用するという行き方があるわけでございます。これは、共済制度につきましては、ほかの共済年金制度で改正の時点以降に適用して、既裁定のものについては適用しないという形を現実にとっている例があるわけでございます。ただ、厚生年金の場合に、今回改正をいたします際にどうするかという問題でございまして、現存の厚生年金の金額はいかにも低い、これはどうしても新しい算定方式を適用して、全面的に改正方式を適用しなければならないということで、既裁定の年金も同様にベースアップをするという措置を今回講じたわけでございます。これはいまも御意見がございましたように、原資の問題があるわけでございますが、幸か不幸か現在厚生年金の受給者の数が比較的少ないわけでございまして、その原資というものがそれほど大きな額でもありませんので、とにかく給付を既裁定のものも一括して引き上げるという措置を講じましたが、ただいま御指摘のように、全年金の諸制度を通じまして、将来ベースアップを行なった場合に追加財源をどうするかという問題は大きな問題でございまして、なお政府として十分検討しなければならぬ問題と考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/64
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065・滝井義高
○滝井委員 一番大事なところにきたのですが、既裁定分については、今度の改正では財源措置をされていないわけです。したがって、あなたのいまの答弁では、現在幸か不幸か裁定を受けた人が少ない、だから、これですでにある原資を食いながらやっていくのだ、こうおっしゃる。ところが、四十年以降は急激にずっとふえていくのですから、四十年以降どういうカーブでふえていくのか、そのふえ方をちょっと言ってみてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/65
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066・山本正淑
○山本(正)政府委員 現在老齢年金の受給者の数は、四十年度で二十万人と見ております。これは遺族年金、それから障害年金がさらにございますので、全体で五十万くらいでございますが、老齢年金の受給者は、たとえば昭和四十五年度では約五十万近く、昭和五十年度では九十万人、それから昭和六十年度では二百二十万人、七十年度では三百七十万人、昭和八十年度では六百三十万人、九十年度では七百八十万人というふうにふえてまいります。そのほかに遺族年金と障害年金の受給者並びに通算老齢年金の受給者がございますので、実数としては相当な数になります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/66
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067・滝井義高
○滝井委員 大臣、いまお聞きのように、昭和四十年以降は日本の人口構造が老人人口が非常にふえるし、それから通算年金が入ってくるし、遺族、障害が入ってきますから急角度に上昇してきます。これはあとで積み立て金運用のときに尋ねますけれども、三兆とか四兆にピーク時にはなります。なりますけれども、確実に相当の財源を食っていくわけです。相当な財源を食うだけに運用の利回りがだんだん低くなっていく、食われるだけ低くなってくるわけです。そういう点で、どうしてもここでこの既裁定分に対する原資を補給してもらわなければならぬわけです。現実に年金をかけておる人のスライドの問題と既裁定の分のスライドの問題とは、緊急度が相当違うわけです。だから、緊急度の激しいものからある程度金を入れておいてもらわぬと、これは先になって年金の見通しというものが非常にあぶなくなる。これは山陽特殊製鋼が倒れて困ったというどころじゃないわけです。すべての年金受給者に大被害を与えることになる。山陽特殊製鋼ならば一部分ですが、これは全国民に重大な影響を与えるわけです。そこで、この問題についてはひとつ神田厚生大臣もふんどしを締め直して、大蔵省にやはり要求する必要があるわけです。その場合に、既裁定のものの額を、一体何を基準にしてどの程度上げていくかということが、また一つの問題になってくるわけです。ここらの問題の科学的な腹を固めておかないと、折衝するときにぐらつくわけです。ここらは、腹はあなた方固めておりますか。今度はなるほど五千円となった。生活保護と同じようなものです。しかし、これはいつもいつも生活保護と同じならば、それも一つの方法です。いつでも生活保護基準と同じ程度のものは、既裁定のものは確保していくのだというならば、それも一つの、原則です。何か一つ原則をきめておいてもらわないと――今度は最低五千円という線を引いたのです。しかし、これはいろいろ考えたときにこうなったという答弁だったのですが、それでは困るので、何か右へならえするものが必要になってくるのです。右へならえするものを確立してその原資をきちっと入れさせるという、この二つの問題をはっきりさせる必要がある。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/67
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068・山本正淑
○山本(正)政府委員 スライドの問題というのは、本質的には、いま御指摘のように既裁定年金の扱いが一番切実な問題であるわけでございまして、それがスライドの問題の中心になるわけでございます。そこで、それはどういう基準があるかとおっしゃられましたが、先ほど来御論議されておるような実質価値の維持という意味において物価を考えるか、消費支出との引き合いにおいて考えるか、あるいは賃金において考えるかという問題を、原則を確立していかなければならないと考えておるわけでございまして、今日既裁定年金はどうあるべきかという考えを持っているかという点でございますが、これは今後の問題として確立していかなければならない、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/68
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069・松澤雄藏
○松澤委員長 この際、本会議散会まで休憩いたします。
午後二時五分休憩
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午後三時十七分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/69
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070・松澤雄藏
○松澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続けます。滝井義高君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/70
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071・滝井義高
○滝井委員 スライド制の問題について午前中から本会議まで引き続いてやりましたが、大臣の御意見では、スライドにおける原資の調達方針というのは、労使分担の、ほかに国庫負担を導入するという方針が明らかになったわけです。大方針が確立をしたけれども、さてその大方針を具体的にどう実現をしていくかということについて明白でないわけです。あのネコさえいなければわれわれの生活は安定をする。あのネコがいないというわけにはいかぬので、ネコがどこにおるかということを一番早く見つける方法は、ネコの首に鈴をつければいい。しかし、だれが鈴をつけにいくかということで、はたと行き詰まった、こういう状態ですね。労使分担と国庫負担の導入ということまではわかったんだけれども、いかなる方途をもって導入をやるかということになると、はたと行き詰まっているわけだ。そこで、これはやはり私が鈴をつけるからネコを連れてきてもらわなければならぬが、これは大蔵大臣か総理大臣ということになるわけだ。そこで、ここらあたりは次に譲って、今度は国庫負担の導入というものはどの程度のものをやるかということです。法律によりますと、八十条に国庫負担のことが書いてあります。八十条のところを見ると、第一項だけ赤字で書いて、そして一番大事な第一項の一号と二号は黒字なんです。だからこれは改正がないということです。一万円年金を実現したけれども、国は一文も出さぬで一万円年金を実現するというのだから、ちょっとおかしいわけだ。やはりこれは他人のふんどしで相撲をとることになる。それではいけないわけです。国庫負担を導入をしますという基本方針は立ったけれども、それを具体的にレールを敷いて導入をしていないというところが問題です。そこで、年金局長にお尋ねをしたいのですが、昨年国家公務員の共済法が改正をされた。このときは一体国庫負担を導入したのですか、しなかったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/71
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072・山本正淑
○山本(正)政府委員 まず法律の八十条の御指摘の点でございますけれども、国庫負担を導入してないということに仰せられましたが、国庫負担は率を変更いたしてございません。ただ、年金を引き上げることによって原資が増額されるわけでございまして、その増額された原資の一五%は従来どおり国庫負担で持つということになるわけでございますから、導入してないというふうに御理解願うことは実態にそぐわないんじゃないか、かように思う次第でございます。率は上げておりません。
それから国家公務員共済の負担は、ご承知のように事業主が国でございますから、被保険者と国との負担割合という形で、従来は国庫負担一〇%相当分と解される部分が事業主負担として、事業主の割合が高くなっておったのでございますが、昨年の四月末でございましたか、法律改正ではないはずでございますが、事業主の負担割合が増額されまして、結論的には、従来の労使負担部分に相当するものは千分の八十八の折半であって、国庫負担と違うとは言っておりますが、私どもが国庫負担と同じような性格のものであると考えております専業主負担割合は、従来の全体の費用に対する一〇%が二五%になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/72
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073・滝井義高
○滝井委員 大臣お聞きのように、昨年の四月というのは、厚生年金法は去年から出しておるわけで、そのときに国庫負担が、結果的には国家公務員共済組合は一〇%から一五%に五%アップしたわけです。向こうさまから言わせると、厚生年金が一五%だから、低かったから五%上げたんじゃ、こうおっしゃるかもしれない。しかしその場合は、使用者である国は、片やその事業主であり、片や国家、こういう形で二重の性格を持っておるわけです。したがってこれは、いままでそういう意味で低かったわけです。ところが、今度は五%を上げたというのは、やはり整理資源その他が相当ベースアップに伴って要るわけです。起債程度分もやらなければならぬ。そこでこういう処置をとっておるわけです。今度民間の厚生年金の一部を改正する法律案を提出するときには、なるほどいま局長が言われるように、給付がアップされた分については最終的には国がそのうちの一割五分見るんだから、それはわかっております。これは水が高きから低きに流れるがごとく、自然の姿なんです。そうじゃなくて、意欲的な、積極的な姿が見えてないということなんです。私が言いたいのは、政策というのは自然の流れだけでは前進がない、積極性がない。その積極性がないということなんです。そこで国家公務員に五%上がったならば、当然民間の厚生年金にも五%つけて二〇%にするというのは、これは最低の願いであり、労使双方、公益もみんな意見の一致しておるところでしょう。それは一体いかなる理由によって行なわれなかったのかということです。いかなる理由によって、一万円年金というにしきの御旗をお立てになったのに、なぜ労使のみにそれを負担させ、しかも労使の負担も、あとで触れていきますけれども、十分に一万円年金に対応するだけの保険料率ではないわけです。暫定保険料率ですよ。平準保険料率でないわけです。だから暫定的なものにしておるということは、ますます将来に向かって整理資源の不足を拡大することになるわけですね。負担が多くなることになるわけです。だからここは、将来の負担を軽くしていくためにも、どうしても国が出してもらわなばならぬと思うのです。それが一体なぜ出されなかったか。その出されなかった理由は一体どこにあるかということです。これは大臣が御答弁できなければ、大蔵大臣に来てもらわなければならないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/73
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074・神田博
○神田国務大臣 いまの改正にあたりまして、国庫負担をなさなかった事情はどこにあるか、ことに国家公務員の共済組合が五%増しておるのに、均衡がとれないじゃないか、こういう御趣旨のお尋ねがございました。あけすけに申し上げまして、厚生省といたしましては、やはりこの機会に、率を引き上げて原資を導入したいということで折衝いたしたわけでございます。それがいろいろの夢精でうまくいかなかった、こういうことでございます。これは、正直な話でございます。さりとてこの改正を見送るというわけにもまいらないものですから、ひとつ御審議を願おう、こういうことでございまして、われわれとしては原資の導入ということを期待しておったわけでございますが、事志と違った、こういうわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/74
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075・滝井義高
○滝井委員 もろもろと大臣はよく言われるのだが、いろいろではぐあいが悪いので、やはり問題の本質を究明していくためには、国庫負担が――今回こういう大幅な、あなた方から言えば、重要な参議院選挙対策のスローガンにもなるわけです、正直に言って。そういう重要なにしきの御旗をお掲げになったのに、それに対して国庫負担が入っていなかった、前進していなかったということでは、画竜点睛を欠くうらみがあるわけです。したがって、一体どこに隘路があったかということを、この際ここで明らかにしておく必要がある。また来年国民年金を改正するときに同じことが行なわれるわけですから、そこで一体いかなる理論的な根拠から、いろいろの事情ということになったのか。いろいろの事情の中で、二つ、三つくらいは重要なものがあるはずなんです。どういう理論的な根拠から、国庫負担の前進が行なわれなかったのかということです。これをひとつ明らかにしておいてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/75
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076・山本正淑
○山本(正)政府委員 先生も御承知のように、社会保険におきまして、国庫負担の何がしが適当であるかという理論的根拠は、非常にむずかしい問題でございます。もちろん社会保障という観点から、私どもは制度の前進をはからなければなりませんので、そういった観点から、国庫負担ということにつきましても改善していくという希望を強く持っておりましたけれども、国庫負担についてはこうなければならないという理論的な根拠のある問題でございませんで、政策の問題として、やはり諸般の情勢から、国庫負担の率の引き上げには至らなかったということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/76
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077・滝井義高
○滝井委員 社会保険に対してどの程度の国庫負担をすべきかという理論的な根拠というものは、なかなかむずかしいのです。しかし、国庫負担については、社会保険の全体系のバランスから考えて、たとえば国民健康保険は二割五分の定率をやっておる。しかし健康保険には予算補助は何もないんだ、厚生年金はすでに一割五分やっておるんだ、失業保険は三分の一を四分の一に、財政事情がよかったというので減らしてきた。別にそれは理論的な根拠はないわけです。ないけれども、この際一万円年金という、こういう大幅な前進をあなた方が言うとおりにやろうとすれば、それを全部労使だけで持たせるということは、将来の年金の展望からいっても非常に行き詰まりが出てきやすいわけです。やはり国も今度の一万円年金の実現にあたっては、将来の展望を考えてこれは一割五分を二割にしたんだ、こういうことになれば、これはずいぶんてこ入れになって、前進しやすくなって、年金に対する信用と魅力も高まることになるわけです。ところがそれも国がやらないといえば、幾ら神田さんがここで百万べん、おれは老後を保障するものは国民年金と厚生年金の二本立てでやるのだと力まれても、それは絵にかいたもちになる。笛吹けども国民は踊らぬことになる。やはり神田さんの音色のいい笛に国民が踊るためには、そこに一割五分か二割になりますよという、その音色が出てこぬと踊りにくいのですよ。こういう一番大事な、肝心かなめのところが抜けているのです。しかもすべての関係者が、国庫負担を増額すべきである、少なくとも二割はしなければならぬと言っている。最低の線は二割だ、こうおっしゃっておるわけでしょう。その意見の一致を見ているところができないということになれば、どこに一体ネックがあるかということを、もう少し明らかにしてもらわなければいかぬと思うのですよ。たとえば財政上の理由でことしはできませんでしたらできません、大蔵省の抵抗が非常に強くてどうにもならなかったというのなら、これは大蔵大臣に来てもらって、もう一度やらなければならぬことになる。あるいは法律を修正してやらなければならぬことになる。これは法律を修正してもすぐ予算には影響がないわけです。いま金があるのですから、あるやつから払っておけばいいのです。ただ問題は、年金の基礎を確立するためには、やはりそこに五%というものが入ってきますと、労使関係その他のネックになっている問題点の解決が非常にしやすくなってくるわけです、そういう意味でこれは潤滑油の役割りを演ずるのです。潤滑油があるということはモーターも足軽く回ることになるので、そういう意味でもう少し具体的に隘路を言ってくれませんかね。たとえば大蔵省が強かったら強かったでいいです。いかなる財政上の理由で大蔵省はこの年金に熱意を向けなかったのか、あとで尋ねますから、ひとつもうちょっと詳しく言ってみてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/77
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078・山本正淑
○山本(正)政府委員 年金の大幅改正に伴いまして、やはり負担の問題ということは大きな問題でございます。現実に労使の負担も増額されるという形になりますので、国庫負担の率も引き上げたいということは、厚生省としては希望いたしておりました。先ほど来御議論がございましたように、国庫負担につきましては、やはり一律の国庫負担の問題と、それから既裁定の年金のベースアッブに伴ういわゆる整理資源問題という二つの面におきまして、厚生省としては一つの考えを持ちまして政府部内の折衝に入ったのでございますけれども、諸般の情勢と申しますのは、個々の問題ということでなしに、整理資源の問題等も将来結論を出すべき問題であって、簡単に結論は出ないという問題ともからみまして今回は見送られた。将来さらに検討をして前進していきたいということで、現状どおりの国庫負担率による法案を提出した次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/78
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079・滝井義高
○滝井委員 既裁定分やベースアップ分については、厚生省としてはその分だけをできるだけ国庫負担をやりたいと思ったのだが、諸般の事情、刀折れ矢尽きて引き下がらざるを得なかったということのようでございます。まあそういうことであればやむを得ないことかもしれませんけれども、やはりあなたの言われるように、ベースアップ分や既裁定分は今度二万円年金になるにつれて料率が上がるわけです。そうすると、零細な中小企業の労働者もおり、あるいはその事業主もおるわけで、そういう者のこともやはり考えて、国庫負担というものは当然やるべきことなんです。これはいずれ与党さんとも話し合いをさしてもらわなければなりませんし、大蔵省とももう少し折衡しなければならぬので、その分については保留をしておきます。もう少し大蔵省に真意をただしたいと思います。
もう一つ、あれだけ問題になった石炭産業の第三種の被保険者ですね。これについても、見ると黒字で変わっていないわけですね。これは有沢調査団の答申の中にも、石炭産業については特別の年金をやはり考えてもらわなければならぬ、こういうことなんですね。そうしますと、特別の年金を考えるまでは、少なくとも石炭産業のいわゆる坑内夫については、百分の二十の国庫負担でなくて、ここらくらいはやはり二十五か三十くらいにはしておかなければいかぬです。これはやる上において絶好のチャンスですよ。それもやられていないのです。だから、その政策が非常に緊急で重大な状態にあるにかかわらず、その緊急性と重大性というものが織り込まれていないということなんです。こういう点は何か折衝が行なわれましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/79
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080・山本正淑
○山本(正)政府委員 御承知のように、石炭の坑内夫につきましては、保険数理計算も一応別ワクといたしまして、国庫負担も一般と違って二割ということになっておるわけでございますが、有沢調査団の報告によりますと、一つは、現在予定されておる厚生年金保険法の改正の措置のほかに、別途炭鉱労務者に対する特別の年金制度についてすみやかに検討する、かように相なっておりまして、この答申をいただきましてから、私どもといたしましては、さしあたり国会提案中の厚生年金法の改正を希望するとともに、なおそのほかにどういった措置が講ぜられてしかるべきであるかということにつきまして、関係者省で懇談会を設けまして、そしてこの答申の趣旨をどう生かしていくかということを検討いたしておる段階でございまして、こういった特別の年金制度というものを考えるといたしますと、国庫負担等とからんでどういった問題を考えていくかということに相なるわけでございまして、この有沢調査団の答申の問題は今後の問題として検討を十分続けていきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/80
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081・滝井義高
○滝井委員 今後今後と言っておると、年金局長は出世して年金局長でなくなってしまうわけです。だからこういう問題は、恒久的な政策の面と、気息えんえん、いま息がとだえようとしておる炭鉱なんですから、緊急にとる政策と、二つの政策が並行していかなければいかぬと思うのです。そこで、こういう千載一遇、五年に一回の改正期にあたっては、とりあえず二十は三十にしておきましょう、これでまず一つ大蔵省からとっておくことです。その上で恒久的なものはどうしましょう、そうなると、大蔵省も三十出しておるのだから、恒久的なものもやらなければぐあいが悪くなる。それで三十でやることになる。それでやっていて恒久的なものはまたそのときに手直ししてやる、こういうふうに間髪を入れずにちゃんと一本とらなければいかぬ。向こうからお胴ととられて、そして今度三年くらいしてお面と言っても、これは役に立たぬですよ。どうもこういう点の政策上の気合いがかかっていないんですな。この前から炭鉱の厚生年金のことはもう五回くらい陳情をして、再三再四言っておるのだけれども、まだいまから検討します、検討しますでは、どうも話にならぬわけです。やれる機会をつかんだら、やはりそのときすぐにやっておってもらわなければ……。スライドと国庫負担、一応これで終わりました。
次は、保険料率です。今度の改正で第一種の被保険者を中心に議論をしていきますと、千分の三十五が千分の五十八になったわけです。この保険料は、数理計算上かちっとこれだけ納めたならば、必ず一万円年金がもらえるという計算に立ったものではないわけですね。これでは一万円年金には足らぬわけです。したがって、足らぬ部分だけは、支払いをするときには原資を食うことになるわけです。だから、これは一万円年金になるような率に直していかなければならぬことになる。一体、一万円年令にするためには、率は幾らになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/81
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082・山本正淑
○山本(正)政府委員 今回の一万円年金案の構想によりまして、改正の時点から所要の原資を完全積み立て方式で取るといたしますと、一般男子の場合でございますが、千分の七十五ということになります。
〔委員長退席、井村委員長代理着席〕
そこで、現在は暫定料率で千分の五十八――これは原案は千分の六十でございましたが、社会保険審議会の答申をいただきましてから、手直しいたしまて千分の五十八にいたしまして、そして今後これを段階的に引き上げていくということになっております。これは実は審議会に諮問しました原案におきましては、五年ごとに千分の五ずつ引き上げていくということを明記してありましたが、これも審議会の御答申で、明記するのは適当でないということになりまして、段階的に引き上げていくというふうに原案を直しまして御提案申上げている次第でございまして、これをかりに五年ごとに千分の五ずつ引き上げていくといたしますと、最終的には千分の百九になって、そして横ばいになるという計算に相なります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/82
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083・滝井義高
○滝井委員 千分の五十八を千分の百九まで引き上げなければならぬとすると、今度上げたものの二倍に上げなければならぬことになるわけです。そうしますと、千分の七十五にしなければならぬものを千分の九十八に区切ったわけです。そのために、一体一年にどの程度の原資の損失になってくるわけですか。入るべき金が入らぬことになるわけですか。十七だけ入らないですね。この十七の入らない額というのは、一年でどの程度になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/83
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084・山本正淑
○山本(正)政府委員 いま正確な計算はいたしておりませんけれども、千分の七十五と千分の五十八の差額でございますので、保険料といたしまして年間千億ないし千二百億ぐらいになるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/84
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085・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、千分の七十五取るところを千分の五十八しか取らなかった、すなわち十七だけ取らなかったわけです。それが千億ないし千二百億だ。そうすると、一年にそれだけでしょう、五年すれば五千億になるわけです。したがって、これは五年ごとに、条文ではもと千分の五ずつ上げることになっておったけれども、五上げたってなお追いつかぬわけです。六百億か七百億は不足してくるわけです。したがって、これに複利で利がついていきますから、ばく大な額の不足になってくるわけです。当然この分について、私は全部国が見よとは言いません、しかし、その分の五ぐらいずつでも国が見てくれておけば、これは先になって非常にやりやすくなるわけです。いますぐの医療の問題ならば、六百億や七百億の赤字があったって、これは何とかごまかしがつくんですよ。ところが、こういう長期の二十年、三十年先に勝負をしなければならぬものというものは、そのときそのときにできるだけの勝負をしてやっていかないと、先になってからもう間に合わない。それは深山幽谷から発するせせらぎに、左岸と右岸とは手を差し伸べれば手が届くようなものですよ。しかし、それが野を越え山を越えて大洋に注ぐときになると、もう左岸と右岸は手が届かぬ、呼べども向こうに手が届かぬというのと同じですよ。年金というものはそういう形ですよ。だから、この年金の暫定料率を用いたならば、やはり国が幾ぶんそこに補てんする措置をとっておらなければ、これははね返りがだれにくるか、その被保険者自身に全部返ってくるのです。これは被保険者のものなんです。だから政府と事業主は、それはどうなったってかまわない、自分のことでなくなるのだから。原資がないものを、しょうがないと言えばそれまでかもしれません。しかし、労働者は泣いても泣き切れない。一万円もらえると思っておったときに、原資がなくなって一万円もらえなくなったということになれば、たいへんなことなんです。だから、こういう点については、百億とか二百億とか、百億円台の金ではないのです。勝負は五千億、六千億のものなんです。だからこういう点については、もう少し厚生大臣がんばって、しっかりしてもらわなければいかぬと思うのです。
そうしますと、いまのような保険料の積み立て方式でずっとやっていくと、しかも暫定料率でいって平準料率を用いてこないということになると、これは先になったらたいへんなことになるのですが、あなた方としては、長期の展望に立つ場合に、いまの積み立て方式だけでずっとやってかまわないのかどうかということです。そこにたとえば修正賦課方式をとるとか、将来の展望として何か新しい手を打つ考えがあるのかないのかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/85
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086・山本正淑
○山本(正)政府委員 先ほど申しましたように、千分の七十五という料率を千分の五十八で発足いたしまして、かりに五年ごとに千分の五ずつ上げていくといたしますと千分の百九になると申し上げましたが、これはいまの計算によりますと昭和九十五年から千分の百九になる、こういう計算に相なります。したがいまして、数理計算といたしましては収支が合うようになっておるわけでございます。五年ごとの再計算と申しますのは、先生も御承知のように、五年間における基礎率の変動というものがあるわけでございますから、それはプラスの面もあればマイナスの面もある。そういったものの要素を算定して、また昭和四十年度の基準における、現在の給付における千分の七十五という計算がどうなるかということを算定するわけでございまして、またそのときに制度を改善いたしますれば、その際における所要の保険料率というものが出てくるわけでございます。
そこで、いま先生御指摘のように、そういった積み立て方式ということでいくとしても、やはり賦課式といった方式が考えられないかというような御意見かと存じます。これは諸外国の例を見ましても、現在賦課式の国が相当あるわけでございますが、これは制度がもう成熟期に達しておる国々でございまして、大体人口の一割程度は老齢年金の受給者であるといった段階に達しておる国々におきましては、賦課式で毎年の所要の保険料を徴収しているという形に相なっております。
それでは、わが国の制度において将来それがどうなるか、またどう考えるべきかという点が疑問として出てくるわけでございますが、現在のように受給者がまだ非常に少ない、先ほどもお話がございましたように、今後は、制度ができまして二十数年たちますので急速に受給者がふえてまいりますが、現在の計算におきまして被保険者数を一定いたしまして算定いたしますと、一番ピーク時に達するのは、老齢年金の受給者で七百数十万人、こういった時代がくるわけでございます。その際におきましては、老齢年金、遺族年金、降任年金、さらに通算老齢年金を含めまして、この二万円年金という構想で年間の年金支出額が三兆に達する、こういう計算に相なるわけでございまして、そういった成熟期に達する時期に近づいたときに、どういった方式をとるかという問題は出てくるかと存じます。現在の段階におきましては、現在の受給者を相手に賦課式を考えると非常に少ない料率で済むのだが、将来の場合に、その当時の労使というものが非常に大きな負担となるということがありますので、当分の間は、今日の方式を続けていくのが適当であるというふうな考え方に立っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/86
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087・滝井義高
○滝井委員 その点は、私も、昭和九十年になったときに七百八十万、いまの千分の百九、すなわち昭和九十五年くらいになると八百万人ちょっとこえる数だと思います。そのときになると、あなたの言うように、三兆とか三兆ちょっとこえる給付を出すことになるでしょう。私が言いたいのは、それまで、いまのあなたの御答弁では、積み立て方式をずっとやっていくんだ。そうすると、それまでにいまのような保険料率の状態では、日本の大衆というものは非常に貧しいのですから、いまの料率以上に飛躍的に上げることはほとんど不可能だと思うのです。だからこそ、今度だって暫定料率の五十八になっていると思うのです。そうしますと、穴が非常にあいてくるわけです。そうしていよいよ日本の老齢人口が、諸外国と同じように、いま六十五歳以上が九千八百万の中で六百万台です。しかし、これはやがて一割にはすぐなるのです。その時期になったときに、やはり百万とか百五十万くらいの老齢給付を出さなければならぬと思うのです。しかしそのとき、いまから十年、十五年後になりますと、これは物価が非常に上がってくるわけです。そうして保険料率でまかなう額よりか、給付額を上げないと食っていけなくなるのです。それは過去の状態を見ても、歴史は繰り返す。人生はらせん状のごとくやはり回っていくとすれば、いまから十年前の昭和二十九年くらいを見ると、標準報酬が三千円から一万八千円でしょう。そうすると、今度は、十年たったいまは七千円から六万円でしょう。最低は二倍くらいだけれども、頭打ちのほうは一万八千円が六万円になるわけですよ。三倍ちょっとになるわけです。そうしますと、この一万円年金というものは、十年か十五年しますと二万円か二万五千円年金になるわけです。そうしてそういう掛け金をかけたものは、たとえば昭和十七年に厚生年金ができたときに最低十円でしょう、十円から百五十円かけた人が、いま一万円年金の最低五千円をもらうことになるわけですよ、それと同じ状態が出るのです。だから原資の食い方が非常に激しくなるわけです。いまの計算でいけば、ピーク時には三兆とか四兆の金がたまるという計算になっているけれども、しかし、これは年金を急激に上げなければ生活ができないのですから、食い方が激しくなっているから、ピーク時の三兆か四兆にならなくなってしまうのです。問題はここなんですよ。そうして非常に不安定な年金になりますから、積み立て方式でなくて、いま何か積み立て方式から幾ぶん傾斜した、賦課方式そのものにならなくたって、賦課方式の側に幾ぶん傾斜したような方式を考えておく必要があるんじゃないかという感じがするのです。労働者の負担が暫定料率じゃないか、そんな少ない額しか出しておらぬで国庫負担をふやせとは何事だと、必ず田中大蔵大臣は言いますよ。だから、やはりある程度国庫負担させるためには、われわれも幾ぶん負担してよろしいという形が出てこなければいかぬと思うのです。その場合労使折半でやるかどうかということは、なおこの次の議論になるわけですが、そこらあたりを、一体いまのままでずっといって、自信があるかどうかということです。あなた方が積み立て方式でよろしい、いま言った九十五年までは変えないという御答弁だったけれども、それでいっていい、だいじょうぶという太鼓判を押してもらえば、そしてそのあと大蔵大臣がよろしい、その段階になって何か問題が起これば、わしのほうが全部しりぬぐいをしますということになれば、またこれで私も安心して引き下がりますよ。しかしそうでなくて、いままでのようにけちくさくて、一割か一割五分の国庫負担しか入れなくて、そしてだいじょうぶだと言ったって納得ができないわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/87
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088・山本正淑
○山本(正)政府委員 御承知のように、この厚生年金の制度ができました昭和十七年におきましては、先生の言われたように標準報酬十円からという額でございましたが、その当時の料率というものは、昭和十七年のときに千分の六十四、それから昭和十九年に千分の百十、それから戦後千分の九十四、こういうふうな高い保険料率を労使が負担いたしておりまして、その当時におきましては国庫負担は一割であったわけでございます。その当時と比べましての現在の生活水準、あるいは賃金水準からいいまして、千分の五十八の負担というものは、その当時の負担から比べて過重なものではない、かように判断いたしておるのでございます。そこで先生の言われたように、今後物価が上がるじゃないか、いろいろな要素というものが変動してまいります。ただ保険数理の計算といたしましては、さような要素というものは動態的に把握いたしていないわけでございまして、その意味におきまして五年ごとの再計算というのが意味があるのでございまして、五年間の経緯をたどったその過程における物価の上昇、賃金の上昇、それから年齢構成の変化といったようなものが、五年ごとの再計算にはね返ってくるわけでございます。丘年ごとに年金をどうするかと考えまして、そうしてその際に将来の見通しというものを立てるわけでございますから、途中で原資が足りなくなってどうこうなるといったようなことはあり得ない、かように考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/88
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089・滝井義高
○滝井委員 それはいま一挙にみんなが六十五歳になるわけじゃないので、今日の紅顔の美少年も明日は白髪の老人になるのは人生のならわしで、徐々になっていくわけだ。だから一挙にならないので、退職金と違うので一挙に退職金をくれと言うのではないから、白紙車操業しておったってこれはわからぬわけですよ。わからぬわけですけれども、保険経済の内容というものは、だんだん脆弱になることは確実なんです。そうして脆弱になるということは、給付の改革、いわゆる給付の前進に非常にブレーキになることも明らかなんです。そういう点を心配するわけなんですよ。今後これを非常によくしなければならぬのに、財政基盤が脆弱ではよくならないです。私は最近、過去の保険料率の動きを見て一つ心配をするのです。いまあなたが御指摘になったように、それは昭和十七年の戦争のころは千分の六十四だった。そして戦争たけなわのころ、終戦のまぎわになりますと千分の百十になっておるのです。そうして戦争が終わったとたんに千分の三十に下がっちゃったわけです。三十にずっと下がっておって、三十五年の五月まで三十だったのです。ところが安保が改定される、いわゆる再軍備政策が強化されるにつれて、だんだん料率を上げ始めておるわけです。今度は五十八でしょう。そうしてまた、これは津さんじゃないけれども、軍備調達に持っていくんじゃないかなという疑いがかかってくるのです。そうしていまのうちに料率をうんと上げて取っておいて、これを財政投融資とか軍備調達に回す、それは三矢研究その他が出ているのですから。ベトナムについても北伐を支持しておるのだから。そうしてこの数字は案外真実を語るのです。国はあまり金を入れない。国が金を入れてくれればそういう疑いを起さぬ。国は金を入れなくて、労働者のふところから余分な金を吸い上げてしまって、そうしてこれを軍備調達に持っていくという、そういうにおいがしてくる。だからこういう疑いを私に起こさせまいと思えば、国の負担を入れなければいかぬ。入れてない、ここなんですよ。どうも歴史的な経過を見るとそういう感じがする。昔は、いま言ったように昭和十七年のときには、こんなものは二十年先のことですから、うんと労働者から巻き上げよといって、これは一種の強制貯蓄です。強制貯蓄の形で全部軍備に持っていって、インフレにさせてしまって、厚生年金の価値をゼロに近いものにしてしまったのです。そうしてまた立て直しを始めた。初めは安い保険料で、おまえたちの、はるかかなた二十年老後を保障するぞといって夢を与えておいて、そうかそうかと一生懸命かけて、そうして命がたまると、これは二割五分の還元融資でごまかしながら、初め二割五分やると言っておったのだけれども、近ごろでは二割五分を一つも上げない。これはまたあとで触れますけれども、そうしてその金を集めておって、だんだん世の中が騒然となってくる、煙硝のにおいもし始める、軍靴の音も耳を打ち始めるということになると、今度はこれをまた上げていく。これは、一ぺんわれわれはそうして経験を持っておるから、疑わざるを得ないのです。これが国庫負担をうんと入れてくれると、なるほど国は社会保障をほんとうにやるのかなという気持ちになるけれども、やっていないのですね。そうして歴史的な経過を見ると、いま言ったように戦争中は高い率、そうしてずっと戦後は三十ぐらいにしておって、だんだんまた上げていくという、こういう軍費調達のにおいが非常にしてくるわけです。それに何か言いわけがあれば、ひとつ言いわけをしておいてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/89
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090・神田博
○神田国務大臣 どうもただいま滝井委員から、私どもの想像もつかないようなことをお聞きいたしまして驚いたわけでございますが、御承知のように、この厚生年金の改正をしようというのは一昨年からの動きでございまして、昨年の通常国会に御審議をお願いしたわけなんです。今日とだいぶ違って、まだベトナム問題もそういう情勢になっていないことはもう御承知のとおりでございまして、労働肴の老後の生活を保障しよう、福祉を増そう、こういうことで、厚生年金本来のねらいをそのまま忠実に守り抜こうということで改正を志したわけでございます。そこで、御承知のとおり、昨年の通常国会でこれが流れたものでございますから、ことしの通常国会になお再検討して出すのも一つの方法だと考えたわけでございますが、それをやっておりますとこの通常国会に提案することがむずかしいのじゃなかろうか、それよりも、一応昨年の通常国会で御審議を願ったのですから、そのまま提案をいたしまして、そうしてこの国会の場で御審議を願おう、修正の問題も込めて大いにひとつ御審議を願って、そうして現下における最良な厚生年金法の改正をお願いいたしたい、こういう趣旨でございまして、いろいろいまお述べになりましたことはどうも私ども全然そういう意図がないことをはっきり申し上げまして、滝井委員もどうか誤解のないようにひとつ御了承を願いたい、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/90
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091・滝井義高
○滝井委員 実は私は、厚生年金の保険料率の推移を見てそういう感じがしたから言うわけです。だから、推移がそういう形になっているということです。
そこで、これは将来、昭和九十五年までには百九に上げなければならぬけれども、それは一万円年金を基礎にしてのことでしょう。そうすると、これが五年ごとに改定をしていくことになって、そうして一万円が一万五千円になる。というのは、御承知のとおり、生活保護が、四人家族で東京で一万八千八十四円になったわけです。さいぜん私が指摘を申し上げましたとおり、一が八千八十四円で生活をしておる家族はほとんどないのです。みんな何か――こんなことを言っちゃなんですけれども、ケースワーカーなり民生委員なりの目を盗んで、何らかの収入を入手して栄養失調を免れているわけです。われわれが調査したところでは、それで食っていらっしゃる方はたった一人、六十歳のおじいちゃんで、しかも身体検査をしてみたら栄養失調で全身浮腫、全身むくんでしまって生けるしかばねの状態だった、労働できる状態じゃなかったということを言っておるのです。そういう状態なんですよ。そこで、いずれにしても今後料率を上げなければならぬことは確実です。いまのままでいっても、千分の七十五にしなければならぬわけですから……。それでその場合に、いまの労使折半の原則というものを貫き通すことは、やはり問題があるんじゃないか。これは御存じのとおり、使用者側が出しても経費で落としてもらえるわけですよ。だから自分の腹は痛まぬことになる、経費で落としてくれるのですから。だからこの際、折半方式をある程度緩和する必要があるのじゃないか、そうしてこの暫定料率を平準の保険料率に徐々に近づけていくということが必要じゃないかと思うのです。それについて、一体あなた方はどういう見解をお持ちか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/91
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092・山本正淑
○山本(正)政府委員 保険料率の負担割合という問題でございますが、これは社会保障を考えます際におきましては、労使と国庫というものを含めまして、公的なものを含めましてどういった負担割合が一番望ましいかというようなことになるかと存じます。それで、具体的な問題として労使の負担割合の問題でございますが、これは確かに、事業主が出す場合におきましては、経費としての法人税の関係がございますし、それから被保険者が出します場合には所得税における保険料控除という問題があるわけでございます。そこで、労使の負担割合というものにつきましては、現実問題といたしましては、やはり制度の歴史的な経過ということが非常に重要な意味を持ってきておるわけでございまして、当初制度出発のときからどういった形でなければならぬということでなしに、やはり当初出発当時において労使折半という原則に基づいて制度ができてきた、備わってきたという歴史的経過が非常に重要でございまして、政策としてそういった折半の負担のほうがいいか、あるいはまた負担割合を変えるほうがいいかといった問題は、あるいは経済情勢の発展の度合いとか、いろいろな関連におきまして歴史的に出てくるものじゃないか、かように考えておる次第でございまして、今日のところ従来の歴史的経過、二十数年もたちました期間ずっと続けてきた労使折半原則というものを、いまここで法律的に改めていくということはむずかしい事情にある、かように考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/92
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093・滝井義高
○滝井委員 御存じのとおり、今度は、あなたはむずかしいとおっしゃるけれども、企業年金になった場合に、企業年金、税制適格年金とそれから報酬比例部分とを連結する場合、報酬比例部分が税制適格年金へ肩がわりされる場合には、これは労働者が出していない場合だって多いのですよ。そうしますと折半の原則はくずれてしまう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/93
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094・山本正淑
○山本(正)政府委員 企業年金との調整の問題でございますが、調整年金の調整部分、いわゆる政府の報酬比例の代行にプラスアルファのついた企業年金で一定の条件のものを認可するということになっておりまして、その場合において、プラスアルファ部分の負担割合というものは労使の協議によっていかようにもきめてよろしい。しかし、政府相当部分についてはやはり労使折半の原則を貫いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/94
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095・滝井義高
○滝井委員 これは力関係になるわけですから、もし企業年金をおつくりになろうとするならば、それは折半の原則をくずさなければつくれぬことだ、こう言って事業主が労働協約で約束したらいいのでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/95
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096・山本正淑
○山本(正)政府委員 政府管掌の報酬比例の代行部分については、労使折半ということにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/96
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097・滝井義高
○滝井委員 だから、労働協約でそういうことをきめたら、折半でなくてもいいでしょうということです。その基金は、金さえきちっと出せば問題ないでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/97
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098・山本正淑
○山本(正)政府委員 保険料の納入義務は事業主にございまして、事業主から算定された保険料が納付されるわけでございまして、そうして政府管掌につきましては、それが労使折半ということになっております。実際問題としてどうしているかという問題は別といたしまして、法律上は、政府管掌において、また今回代行を認めます代行部分、報酬比例相当部分については労使折半ということにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/98
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099・滝井義高
○滝井委員 それは法律の条文でいえばどこになりますか。赤と黒で書いてあるところのページで言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/99
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100・山本正淑
○山本(正)政府委員 一四五ページの第百三十九条でございまして、法律の条文を読みますと、「加入員及び加入員を使用する設立事業所の事業主は、それぞれ掛金の半額を負担する。」かようになっております。それから第三項で、「基金は、前項の規定にかかわらず、政令で定める範囲内において、規約の定めるところにより、設立事業所の事業主の負担すべき掛金の額の負担の割合を増加することができる。」かように相なっておりまして、プラスアルファ分については、これは労使の協約によっていかような負担割合でもよろしい、こういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/100
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101・滝井義高
○滝井委員 「基金は、」というところの二項ですね。これは私の質問の中にも、逐条のときに入っておったのですが、二項はプラスアルファ分とは読めないでしょう。労働協約で折半の原則をくずしたらそれでよろしいということでしょう。私はそう読んできたのです。これはおそらくあなたのほうが間違いだ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/101
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102・山本正淑
○山本(正)政府委員 法律上は、第二項によりまして、政令で定める範囲内において負担の割合を増加することができるとなっておりますが、ただ問題といたしましては、政府管掌の場合におきましては折半の原則でやっておりますので、企業年金、調整される企業年金につきましても代行する場合は、政府の報酬比例相当分は、政府管掌による場合と同様な負担割合でいくように指導してまいりたい、こういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/102
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103・滝井義高
○滝井委員 行政指導の問題は別にして、法律論を言っているのです。法律論では、折半の原則はこれでくずれておるというのが私の見方なんです。だから、原則的には、それぞれ掛け金の半額を負担をする事業主と、それから被保険者とが負担をすると書いてあるけれども、二項で、それは力関係でそうでなくてもよろしいのですよということだと思うのです、そういうことでしょう。これはあなたはプラスアルファ分だけだと言うけれども、プラスアルファ分ではないはずだ。全部プラスアルファと言ったってわかりはしないのだから、百三十九条は、私はそういう解釈なんです。だから、定額部分と報酬比例部分とが連結をして保険料が千分の五十八になってくるんだから、そうすると、その圧一八を二で割ったものが労使折半になるわけです。二で割ったものを労使それぞれ持つわけです。だから、五割以上負担してもよろしいということは、労使折半の原則がくずれるということなのです。そこをひとつはっきりしておいてもらいたい。二項で例外は設けてもいいということなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/103
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104・山本正淑
○山本(正)政府委員 御趣旨のように、「政令で定める範囲内において」ということで、どういった指導をしていくかということを別にいたしますれば、負担割合はくずれるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/104
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105・滝井義高
○滝井委員 そうすると、あなた方は、「政令で定める範囲」というのはプラスアルファだけを言うつもりだったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/105
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106・山本正淑
○山本(正)政府委員 企業年金、調整される企業年金は概して言うと大企業でございまして、中小企業の主体はもちろん政府管掌になるわけでございまして、中小企業のほうが労使折半であって、大企業のほうはそうでなくなるというバランス問題を考えますと、やはり指導で政府相当分は同じような扱いにするのが適当であるのじゃないか、かような考えでございます。
〔井村委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/106
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107・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、いまの答弁は非常に重大です。健康保険は労使折半でないわけです。国家公務員共済組合だって同じでしょう。力関係で違ってきている。組合管掌なんか全部違う。たとえば日本銀行や何か調べてごらんなさい。千分の十一しか初めは納めていない。それであなた方は十一はけしからぬと言って、これは折半に近づけなければならぬという指導をしたから、われわれはやかましく言ったことがあるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/107
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108・山本正淑
○山本(正)政府委員 健康保険法におきましては、健康保険における事業主の負担割合が二分の一以上でなければならない、こういう規定のいたし方をしておりまして、政府管掌は折半でございますが、組合の場合には、その規定によって、要するに事業主が二分の一以上負担しなければならないという規定によりまして、負担割合が異なっておるのが多いわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/108
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109・滝井義高
○滝井委員 だから、短期の健康保険で二分の一以上してもいいんだという規定をつくっておきながら――これは政府提案ですよ。政府提案で健康保険組合の法律というのはつくられたんだから、議員提案じゃないんだ。いままでつくっておきながら、今度は年金の場合に、企業年金をつくろうというのに、以上でというのは変えちゃいかぬというのは原理に合わないじゃないですか。矛盾しておる。同じ厚生省の中で精神分裂を起こしているですよ。河野さんに一ぺん診断してもらわなければだめですよ。よく精神分裂を起こすからいけないですよ。こういうところは、もう少しきちっと統一をして――保険というのは同じなんですからね、同じわけですよ。しかも厚生省所管ですよ。そして同じ労働者を対象にするのです。そんなばかなことはないですよ。――よろしいです。そこは修正します。ちょうど健康保険の組合と同じように書きかえたらいいんだから、そうでしょう、大臣。それは私は無理な理屈は言わないつもりです。勉強して、きちっと質問しておるわけですからね。あげ足をとるつもりはない、やっぱり間違っているところは直していかなければならぬという気持ちでやっておるのですから。大臣、それいいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/109
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110・神田博
○神田国務大臣 お答えいたします。考えられておる趣旨、よくわかります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/110
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111・滝井義高
○滝井委員 けっこうです。趣旨がわかっていただければ、大臣が了承すればこれは修正されてもやむを得ぬという気持ちになったことになるわけです。
次は、保険料灘の再計算です。これを五年ごとに再計算をすることが、一体どういう理論的な根拠から出てきたのかということです。いまのように六%も七%も物価が上がるということになると、三年すれば二割以上上がるわけです。そうすると、二割上がれば、あなたの言うように、労災ではこれはスライド制を用いて、給付の金額を変えるわけですね。当然これは最低生活を保障する、老後を保障するものだから、それはやっぱり変えなければいかぬわけですよ。五年が金科三条のものではないと思うんですよ。そうすると、いまのようなインフレが高進するときには、むしろ三年くらいにするほうがいいのじゃないかという意見もあるわけです。こういう点について、あなた方のお考えは、一体どういう考え方を持っておるかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/111
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112・山本正淑
○山本(正)政府委員 再計算は、いろいろの基礎データを整理しなければならぬわけでございまして、通常の状態におきましてはやはり五年という期間で、過去の五年間におけるたとえば年齢構成の変化とか、あるいは寿命の延長、あるいは賃金の変化といったようなものをとりまして、そうしてそういった基礎データの変動ということによって算定いたしますから、通常の状態におきましてはやはり五年くらいが適当な期間ではないかと思われます。ただ、先生がいま御指摘になりましたように、現在の時点としては非常に変動期にあって、変動が激しいのじゃないかというような観点からの問題といたしましては、やはり三年にしろということもあり得ると思います。ただ実際、これは事務の関係等も考えますと、やはり五年に一度くらいが、事務的には基礎データを整理して、そうして数理計算をするということを考えますと、事務的には五年くらいが適当ではないか、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/112
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113・滝井義高
○滝井委員 その点は、私も五年くらいは常識だと思います。思いますが、いまのように非常に物価の変動の幅の大きいときは、これをやっぱり五年ごとでは、給付を受ける被保険者にとっては、退職者にとっては非常に不安なんです。したがって、五年ごとの計算というのは、経済変動が激しいときにはそれを三年に縮めるというようなことができるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/113
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114・山本正淑
○山本(正)政府委員 たしか法律には、少なくとも五年ごとに再計算しなければならぬとなっていると思っておりますが、政策的に、たとえば三年で次の再計算をやるということも可能ではあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/114
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115・滝井義高
○滝井委員 過去において五年以内にやったことがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/115
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116・山本正淑
○山本(正)政府委員 五年以内にやったことはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/116
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117・滝井義高
○滝井委員 これは私がいま言うように、五年というものをあまり固定化しておると、年金に対する信用がなくなってしまう。信用がなくなると、他の各省が今度は補完的なものをやるという、こういう論法になってくるわけです。いま私、条文を見ようとしておるけれども、何せ多いから、どこに五年のあれがあったかわかりかねるのですが、もし条文に五年以内ということがきちっと書いてあれば――わかりました。八十一条ですか、これには「少くとも五年ごとに、」と書いてあるのですね。だから、この「少くとも五年ごとに、」ということは、五年以上になる可能性があるのじゃないか。少なくとも五年ということだから、六年、七年でもいいことになる。そうはならぬのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/117
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118・山本正淑
○山本(正)政府委員 この法律の読み方でございますが、私どもは、五年ごとに少なくとも、とこういうふうに読んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/118
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119・滝井義高
○滝井委員 私は「少くとも」が上にあるからと思ったが、読むときには、五年ごとに少なくともと、こう下に持っていくのですか。これは私も寡聞にして初めて聞いた。一つえらくなった。上に「少くとも」がついておりますから、私は六、七年が普通で、五年というのはどうも珍しいことかと思ったのですが、わかりました。そういう解釈を法制局長官代理がおやりになるならば、そういう理解にしておきましょう。
そうしますと、女子ですが、女子は十五年でもらえますね。十五年掛け金をかけたらもらうわけでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/119
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120・山本正淑
○山本(正)政府委員 年金の受給資格年限は、男子も女子も二十年でございましまして、女子が異なっておるのは、受給の開始の年齢が五歳低くなっておるということでございます。それから、男女を通じまして四十歳以上の加入者につきましては、十五年で年金がもらえるという特例があるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/120
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121・滝井義高
○滝井委員 いま女子の保険料率は、平準保険料率になっているのでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/121
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122・山本正淑
○山本(正)政府委員 当時の算定されました保険料率におきましては、やはり暫定保険料率がございまして、ただ暫定料率とそれから平準保険料率との差が比較的少なかったということは言えますが、五年前に保険料率を女子を千分の三十といたしました際におきましては、暫定保険料率でございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/122
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123・滝井義高
○滝井委員 そうすると、女子の三十というのは、三十五年の四月までは、第一種、第二種ともずっと三十できているのですね。そして三十五年になりましてから、男子のほうが三十五になり、女子が三十と続いてきているわけです。そしてこのときまでは、女子は平準料率であったはずなのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/123
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124・山本正淑
○山本(正)政府委員 昭和三十五年でございますが、そのときには三十四年に法律を出しましたので、その当時におきましては女子については千分の三十一何がしというのでありまして、暫定料率として千分の三十、かようにいたしたはずでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/124
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125・滝井義高
○滝井委員 わかりました。そうしますと、女子は、あなたの言うように平準保険料率に非常に近い、相似的なものであったわけです。そうしますと、男子の暫定料率に比べてアンバランスがあるわけです。これは一体どういうふうに償ってくれることになるかということです。それはいま言ったように、五年の差があるからそういうことにするのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/125
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126・山本正淑
○山本(正)政府委員 前回の改正の当時におきましては、男子の平準保険料率は千分の四十一でございまして、それが千分の三十五の暫定料率になっておったわけであります。その意味におきまして、両者の比較におきましては、女子の場合暫定料率が高いということになっておったわけであります。今回の改正におきましては、男子の千分の七十五を千分の五十八という暫定料率に、女子の千分の五十七を千分の四十四という暫定料率にいたしておりまして、その男女の間の暫定と一般との比率は合わせてあるわけであります。これは再計算の時期において修正してまいりますので、そういう結果に相なるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/126
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127・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、過去において女子が納め過ぎておるのですね。だから、この納め過ぎた償いは何らかの形においてしなければならぬ。こまかいことを言うようだが、これは一生の問題だから、こまかく言うておかないといけない。その部分は女子に何か恩典が与えられるかというと、たいして恩典はない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/127
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128・山本正淑
○山本(正)政府委員 納め過ぎにはなっていないわけでございまして、世代と言っては大げさでありますが、後代の者と当時の者との配分において、男子と女子との負担割合が違っておるという結果でございます。これは後代の分で負担すべき保険料率が低くなると、暫定料率が高ければそういう結果になるわけでございまして、納め過ぎと言うことは適当でないのじゃないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/128
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129・滝井義高
○滝井委員 こういう年金というものは一身専属のものですよ。滝井義高以外、その遺族以外は、納めた金に見合う給付はもらえないわけだ。なぜならば、これは保険だから、私が納めたものを今度は神田さんが持っていくわけにはいかないわけですよ。それは賦課方式ならばそういうことはいいです。いまの若者が現在の御老人方をまかなうわけで、そのかわりに料率は高くなる。しかし積み立て方式は、私のために私が積み立てておるので、次の世代のためには、少しは貢献するけれども、そう大きくは貢献しないんですよ。それで女子の問題は、いまいったように、たまたま本を読んでおったら女子は平準の保険料率だ、だからこれは男子と不均衡だという説があるから言うわけです。あなたがいま言ったように、私はこれは平準料率そのものだと思っておったのでありますが、それに非常に近いものだということがわかったから幾ぶん納得してまいりましたが、そういう点、やはり納め過ぎがあるわけですよ。それはそれでいいでしょう。
委員長、ちょうど四時半で切りのいいところにまいりましたので、これから積み立て金の運用に入るわけでありますが、きょうはこの辺でいいでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/129
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130・松澤雄藏
○松澤委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明二十三日、金曜日午前十時より委員会、委員会散会後理事会を開会することとし、これにて散会いたします。
午後四時三十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804410X02219650422/130
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