1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十年四月二十七日(火曜日)
午前十時二十九分開議
出席委員
委員長 内田 常雄君
理事 浦野 幸男君 理事 小川 平二君
理事 小平 久雄君 理事 田中 龍夫君
理事 中川 俊思君 理事 板川 正吾君
理事 中村 重光君
小笠 公韶君 海部 俊樹君
黒金 泰美君 田中 榮一君
田中 六助君 中村 幸八君
古川 丈吉君 三原 朝雄君
大村 邦夫君 沢田 政治君
島口重次郎君 田中 武夫君
楯 兼次郎君 山崎 始男君
麻生 良方君 山下 榮二君
出席国務大臣
通商産業大臣 櫻内 義雄君
出席政府委員
総理府総務長官 臼井 莊一君
公正取引委員会
委員長 渡邊喜久造君
総理府事務官
(公正取引委員
会事務局長) 竹中喜満太君
通商産業政務次
官 岡崎 英城君
通商産業事務官
(大臣官房長) 熊谷 典文君
中小企業庁次長 影山 衛司君
委員外の出席者
議 員 板川 正吾君
議 員 麻生 良方君
総理府事務官
(経済企画庁調
整局物価政策課
長) 丸山 英人君
通商産業事務官
(企業局次長) 乙竹 虔三君
専 門 員 渡邊 一俊君
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四月二十六日
下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法
律案(板川正吾君外十四名提出、衆法第三二
号)
電気工事業を営む者の営業所の登録等に関する
法律案(海部俊樹君外六名提出、衆法第三三
号)
電気工事業及び電気工事士法案(麻生良方君外
一名提出、衆法第三四号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
参考人出頭要求に関する件
下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法
律案(板川正吾君外十四名提出、衆法第三二
号)
下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法
律案(麻生良方君外一名提出、衆法第三号)
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法
律の一部を改正する法律案(内閣提出第五〇
号)
下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法
律案(内閣提出第一二七号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/0
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001・内田常雄
○内田委員長 これより会議を開きます。
参考人出頭要求の件についておはかりいたします。
山陽特殊製鋼株式会社の倒産に関する問題につきまして参考人から意見を聴取することとし、その人選、日取り、手続等に関しましては委員長に御一任願うことに御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/1
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002・内田常雄
○内田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
なお、ただいまのところ一応参考人招致の日時は、五月十四日金曜日と委員長において考えており、また、御出頭を願う参考人は、前回その手続をいたしました対象の人々を中心として再交渉いたす所存でありますので、あらかじめお含み置きを願います。
なお、参考人の御意見は商工委員会大蔵委員会連合審査会において聴取することといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/2
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003・内田常雄
○内田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう連合審査の手続を進めることといたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/3
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004・内田常雄
○内田委員長 次に、昨四月二十六日当委員会に付託になりました板川正吾君外十四名提出の下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案を議題とし、提出者よりその趣旨の説明を聴取いたします。板川正吾君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/4
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005・板川正吾
○板川議員 ただいま議題となりました下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案について、提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
御承知のとおり中小企業問題は、今日わが国産業経済の最も重要な課題の一つであり、最近における中小企業の危機的様相は、まことに憂慮にたえないところでありますが、こうした中小企業の危機を端的に示し、中小企業が直面している各種の問題を最も集約的に包含しているのが下請企業であります。わが国の下請取引関係は、経済の二重構造のもとで、親企業が下請企業を収奪することによって自己の資本投下を節約し、雇用労働者の労働条件抑圧の効果をおさめ、下請企業を景気変動の安全弁として利用するというきわめて冷酷な日本的特殊性を持つものであります。
下請企業は、このような下請制の本質から、平常の事態においても、親企業の恣意的な下請単価の設定、長期手形による下請代金の支払い、さらにはきわめて不明確な下請契約等、常に不安定な立場に置かれておりますが、企業倒産の記録が毎月更新される最近の経済情勢においては、さらに一方的な発注の打ち切り、極端な単価の切り下げ、あるいは商取引の範疇を脱した支払い条件の悪化等が一般化しており、下請企業の苦況はきわめて深刻なものとなっているのであります。しかも山陽特殊製鋼等の例に見るとおり、一たび親企業が倒産すると、親企業自身は、会社更生法の適用によって再建されるにもかかわらず、下請企業は、下請代金は更生債権として凍結され、銀行からは約手買い戻し請求を受け、一切の私財を投げ出して債務を処理せざるを得ず、結局、親企業のために自滅するのでありまして、これは、一身を犠牲にして主君を守るという封建時代の慣習と何ら異なるところはないのであります。
このような親企業と下請企業の関係は、まさに前近代的な身分的支配従属関係が今日歴然として存在することを示すものであり、二十世紀における日本のふしぎと言っても過言ではないのであります。
われわれは、このような下請関係は、基本的には広範かつ強固に下請制の利用を許しているわが国の前近代的産業秩序に基因するものであり、その改革には、まず中小企業者の設置と公正取引委員会の抜本的強化が必要であると考えております。しかして近代的な下請関係の確立をはかり、下請企業が親企業と対等の立場で取引し得るようにするためには、こうした組織の整備と相まって下請関係の特殊性に立脚した強力かつ包括的、統一的な下請関係法制を確立することが必要であると考えているのであります。かような見地から、われわれは、中小企業等協同組合法、中小企業団体法による団結権、団体交渉権をより明確かつ強力なものにし、下請企業者の団体と親企業の間で締結された協定には法的拘束力を認め、協定の基準が一般化されるような措置をとり、中央、地方に下請関係調整機関を整備する等の点について、目下鋭意検討を進めているのであります。
しかるに、今日政府のとっている下請企業対策は、きわめて消極的な立法である下請代金支払遅延等防止法のほかは、一般的な独禁法、中小企業施策があるにすぎず、下請関係の特殊性に着目した積極的な対策は何一つないのが実情であり、今回ようやく下請代金支払遅延等防止法改正案が提出された程度であります。しかも、この改正案は、昨年末衆議院本会議で行なわれた中小企業危機打開に関する決議の趣旨、中小企業政策審議会下請小委員会の中間答申及び法施行の経験に基づき提出したと称しておりますが、その内容は、現行法の解釈を明確にするほか若干の規制を行なうにとどまり、最も重要な手形サイト、トンネル会社等の問題は、すべてこれを回避したまことに不十分なものであります。これでは、下請関係の改善は何ら進展しないにひとしいと言わざるを得ません。
もとよりわれわれは、下請関係の改善は、全般的な下請関係法制の中で初めて十分な効果をあげることができると考えるものでありますが、下請代金の支払い遅延を防止することは、当面最も緊急を要する課題であり、また、政府提出改正案があまりにも不十分な内容であることにかんがみ、その対案として、ここに本改正案を提出した次第であります。
次に、その内容を御説明申し上げます。
改正の第一点は、親事業者の範囲を拡大することであります。その第一は、資本の額または出資の総額が一千万円以下の法人たる事業である場合でも、業種によっては公正取引委員会規則で定める範囲において、親事業者とすることであります。これは下請取引の実態にかんがみ、一千万円以下のものも親事業者として規制しようとするものであります。その第二は、所定の資本の額または出資の総額を有する法人たる事業者から資本的、人的に支配を受けており、かつ、その事業者に対し物品を販売し、またはその事業者から物品の製造委託、修理委託を受けることを主たる事業としている法人たる事業者であって、個人または所定の資本の額もしくは出資の総額を有する法人たる事業者に対し製造委託、修理委託をするものを親事業者とすることであります。これは、いわゆるトンネル会社を規制するものであり、下請企業の資本力がトンネル会社を上回っている場合でも、トンネル会社を支配している企業の資本力に応じ、トンネル会社を親事業者として規制するものであります。
改正の第二点は、親事業者は、下請代金の支払いを手形で行なう場合、手形の満期が下請代金の支払い期日後でなければ到来しない手形を交付してはならないことであります。すなわち、親事業者がやむを得ず手形で下請代金を支払う場合でも、給付を受領した日から六十日以内に満期が到来する手形でなければ交付してはならないのであります。本来下請代金は、給付の受領と同時に現金で支払うべきものであり、かりにやむを得ず手形で支払う場合は手形サイトを明確に規定することが必要であります。この改正は、下請代金の支払いを本来あるべき姿に近づけようとするものであります。
改正の第三点は、親事業者が、下請事業者に対し交付すべき書面の記載事項について、下請代金の支払い方法その他の事項を追加し、その記載事項は公正取引委員会規則で定めることとし、この違反に対しては罰則を科することであります。現行法及び政府提出の改正案は、単なる訓示規定にとどまり、親事業者が交付書面を交付せず、あるいは所定の事項を記載しないことによって、下請代金の支払いを遅延することを適確に規制することができないものであります。そこで本改正案は、罰則をもってこれを遵守させようとするものであります。
改正の第四点、原材料等の対価の早期相殺等の規制、改正の第五点、遅延利息の支払いの勧告は政府提出の改正案と全く同様であります。
改正の第六点は、第五条の書類の作成及び保存の義務を下請台帳の作成保存義務とし、これの記載事項に遅延利息の支払いを追加することであります。これは、本法制定後今日まで九年間、遅延利息を支払わせた事例が一件もない実情にかんがみ、特に規定したものであります。
改正の第七点は、公正取引委員会が、本法違反に対し勧告を行ない、これに従わないため公表した場合は、独禁法の適用があることを、念のため明確に規定することであります。
改正の第八点は、中小企業庁長官は、下請事業者の利益を保護するため特に必要があると認める場合、報告をさせまたは検査することができることになっておりますが、これを「特に」を削り、必要があると認める場合行ない得ることとすることであります。
以上、提案理由及び要旨を簡単に御説明申し上げましたが、十分御審議の上すみやかに御賛同くださるようお願い申し上げます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/5
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006・内田常雄
○内田委員長 次に、去る二月二十三日当委員会に付託になりました麻生良方君外一名提出の下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案を議題とし、提出者より趣旨の説明を聴取いたします。麻生良方君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/6
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007・麻生良方
○麻生議員 ただいま議題となりました下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明いたします。
最近、毎月のように記録を更新している企業倒産件数の約三割は下請中小企業といわれております。下請が苦境に立った最大の原因は、言うまでもなく親事業者の支払い条件の悪化であります。中小企業庁調査によりますと、昨年一〜三月で、一千二百六十一社の親事業者のうち三百六十七社が下請法違反であったし、四〜六月には、一千四十五社のうち三百四社が違反していることが判明しました。監査官庁の調査によってすら、全体の約三割が違反しているという事実、しかも、このような違反が、現行法の制定から減少するのでなく、むしろ増加している点、下請問題の根の深さがうかがはれるのであります。
政府は、現行法の不備に着目されて、総理大臣の諮問機関である中小企業政策委員会をして現行法の改正を目途とする下請対策を諮問され、現行法改正案を国会に提出されました。審議会の審議事項は、現行法の運用強化対策、現行法改正、下請企業の育成振興対策など広範囲にわたっているそうでありますが、それはそれとして、当面の下請事業者の窮状に対して、すみやかに何をなすべきか政府がこの点に着目されたことは、われわれにとってまことに歓迎すべき事柄でございます。
われわれもかねてより現行法の全面改正案を検討いたしまして、法律の名称も「下請関係調整法」と改称し、下請代金の支払遅延防止のみならず、下請関係全般にわたる正当なる秩序と取引関係の確立、下請事業の育成と振興にわたる法の全面改正案をすでに用意しております。したがって、これは商法上の契約関係に触れ、経済法の改正としては根本問題に触れる大改正となり、法案審議にも相当の長時間を要します。われわれといたしましては、このような大改正はそれとして、当面は緊急措置としての一部改正をすみやかに実現に移すことの必要性が優先すると考えます。
この方針に立って提案したのが、今回の一部改正案であります。
改正点は三点あります。
第一点は、法の解釈として、また法の運営として、まことにあいまいな扱いをうけている第二条の二の法定支払い期間と検収期間との関係を明確にした点であります。現行法では法定支払い期間が六十日以内と定められておりますが、支払いに至るまでの間に必ず行なわれるであろう物品検収の期間は、法定期間に含まれるのか含まれないのか法律に明記されておりません、したがって、親事業者の支払い期日が法定期間を過ぎるとしても、それは親事業者にとって必要とした検収期間をさらに加えた期間であったと言えば、それは違法ではないことになります。われわれの改正案の第一点は、このように支払い遅延を招く法律上のあいまいさをまず排除することにおきました。
改正の第二点は、第七条の「勧告等」の条項に新たに「親事業者が法定期日以内に支払いしない等の不公正行為を行なったと公正取引委員会が認める場合、公正取引委員会が特に必要ありと判断するときは、その不公正事実を公表することができる」ことにした点であります。第七条一項、二項には、まず不公正行為をとりやめる勧告をする規定があり、同三項には、その勧告に従わなかったときは公表することができるとの規定がありますが、今回の改正点は、勧告なしで直接に公表することもできるという改正であります。これは親事業者の故意の遅延を絶滅せしめるための当然の措置でありまして、現行法のように勧告期間を過ぎてから公表というように長時間をかけるのでは、その間、支払い遅延期間は長くなり、下請事業者の窮状は一そうひどくなる一方なのであります。
改正の第三点は、公正取引委員会の勧告の一つとして、新たに、遅延利息の支払いがおくれている場合、それを支払うべきことを勧告することができることにした点であります。第四条の二に、遅延利息が法定されているのでありますから、これが支払い遅延についても、代金の支払い遅延の場合と同じく、公正取引委員会の勧告権が発動するのは当然であります。これが欠けていたのは、現行法の不備というほかはありません。
以上三点の改正点は、いずれも、下請代金等の支払い遅延を防止するための、現行法の緊急是正点のみであります。
われわれは、以上三点の改正こそがまず緊要と判断し、あえて改正点をこの三点に限定して提案したのであります。
何とぞ慎重審議の上、本案に御賛成あらんことを希望いたしまして、提案理由の説明を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/7
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008・内田常雄
○内田委員長 以上で趣旨の説明を終わります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/8
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009・内田常雄
○内田委員長 次に、以上二法案に加えて、内閣提出の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案及び同じく下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案を議題といたします。
質疑の通告がありますので、これを許可いたします。大村邦夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/9
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010・大村邦夫
○大村委員 私は、これから私的独占の禁止並びに公正取引法の一部を改正する法律案を主として以下質問をいたします。
まず大臣にお尋ねをしたいのですが、昨年の十一月三十日に、田中大蔵大臣が、金融緩和後も日銀が金融機関の貸し出し内容についてタッチをするとか、あるいは資金統制だという批判を避けるためにでありましょう、日銀の審査のあと、産業計画会議あるいは経団連などの民間側の意見をとり入れることなどをおもな内容として選別融資の構想を打ち出されたわけでありますが、選別融資をめぐっていろいろ議論がわきまして、そうして最終的にはいかにして必要なところに金が流れていくか、いくことが保証されるのだろうかという観点から議論が集中いたしまして、一つには金利の自由化、二つ目には資金融資ルールの確立、三つには体制金融の推進、この三つが回答と申しますか、意見として浮かび上がってきたわけでありますが、この第三点目の体制金融推進論者は御承知のように通産省で、通産省の事務次官の佐橋さんあたりがその中心となっておられるようであります。この体制金融推進論について検討してみますと、資金の配分は、何よりもまず将来の産業構造の見通しに基づいて個々の企業を秩序正しくそこへ誘導するように行なわなければならない。現在もうかる産業が将来の成長産業であるということとは限らない。成長過程の企業に、融資ルールの確立論の中で考えられておりますような一律の財務比率のワクをかぶせることは成長をそぐ危険性があるから、そこで将来の産業構造のあり方あるいは現存の各企業がその中でどのような位置を占めるべきかの見取り図をまず官民協調で描き、これに基づいて融資が進められることが望ましいということのようですが、この選別融資とからんで行なわれたところの議論は、昨年の四十六通常国会で三たび提案されて廃案になりました、当時は国際競争力強化に関する臨時措置法案ということになっておりましたが、いわゆる問題の特定産業振興臨時措置法の精神といいますか、基調を受け継いだものと考えられるわけであります。そこで、符帳法は御承知のようにIMF八条国の移行、OECD加盟など、開放経済に備えて生産の専門化、事業の共同化、企業の合併などを通じて急速に生産または経営の規模を拡大することをねらいとしておりまして、特定産業に指定された業種には、官民協調によって合理化の基準をつくり、税制金融面で優遇措置を講ずるとともに、業界の共同行為に対しては独禁法の適用除外の道を開くことになっておったのは御承知のとおりであります。この両者を比較してみますと、私は、その基調においてあるいは実質的な内容において変わらないじゃないかという気がいたします。いやむしろ特定産業振興法は法律として提案をされ、堂々として議論になり、議論の対象になったわけでございますが、それが否定されたということで、今度は選別融資という形、体制金融という形で、融資を通じて特振法の精神を生かそうとしておれらると指摘をせざるを得ないわけであります。私は、過去三回にわたって特振法が議論になり否定をされたその精神からして、法律でなしに行政指導とあわせて融資の面からその体制に持っていくということは、道義的にも問題がある、こういうふうに考えるわけであります。それをあえてこういう形で行なおうとする通産省の考え方についてまずお尋ねをしたいわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/10
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011・岡崎英城
○岡崎政府委員 ただいまの御質問の点につきまして、選別融資という問題については、いわゆる銀行の立場または大蔵省あたりの金融操作の立場、または通産省の立場等で、いろいろ先ほどおっしゃった特振法の関係という場合じゃなく、そういう考えもあるわけでございます。ただ、新聞紙等におきましていろいろ出ております問題につきましては、通産省として方針をちゃんと打ち出して中外にまず発表——はっきりしたというものでもなく、またいま事務次官のところでいろいろ各方面と論議をしている問題でございますので、通産省としていまはっきりした責任のある御答弁はなかなかできないかと思いますが、いま企業局のほうで大体その問題について取り扱っておりますので、企業局の次長のほうから答弁させたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/11
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012・乙竹虔三
○乙竹説明員 政務次官のお答えを補足させていただきます。
選別融資という考え方は、実は通産省はとっておりません。通産省でとっておりますのは、融資の重点的確保と申しますか、産業資金の重点的確保と申しますか、そういう考え方で、産業上必要な資金はぜひこれを確保せねばならぬというふうな考え方でやっております。それでこれを確保いたしますためには、口で言うてばかりではどうにもなりませんので、これを処理いたします機構といたしましては、産業構造審議会に資金部会というものを設けまして、毎年この資金部会におきまして民間の投資動向を調査いたしまして、民間側から申し出のありました投資につきまして、総額において、量的な調整及び質的な調整、すなわち、その投資は質的に必要であるかどうかというふうな調整をいたしまして、調整をいたしました結果を銀行筋に通知し、また産業界にこれを公表いたしまして協力を要請するというふうなかっこうで産業資金の重点的確保をはかっているというのが通産省の融資に対する態度でございます。
なお、体制金融というものを通産省は推進しておりますが、これは特撮法の精神を受け継いでいるのではなかろうか、特振法は国会を通っておらぬのだが、その点はどうじゃというふうな御質問であったかと思うのでございますが、産業秩序をつくり国民経済の体制を固めていくということは絶対に必要なことでございます。体制金融というのは、こういうふうな産業界の体制づくりに役立たせようというふうなことで、開銀に必要な金額を財政投融資として計上しているというわけでございます。従来開銀の通産関係の金は主として合理化融資ということでございます。企業内部の合理化を進めるということで、主として設備の近代化等に使われておったわけでございますが、体制金融と申しますと、企業内の合理化を進めるだけでは国民経済の能率向上には不十分であり、企業と企業との結びつき方を合理化する必要があるというふうな見地から、たとえば石油化学につきまして後発センターの国際競争力を十分つけますために、これに対する融資をやるというふうなことと、企業と企業との結びつき、企業のあり方、こういうものにつきまして国民経済上必要な融資というものを考えておるのが体制金融というふうにわれわれ考えておるわけでございます。したがいまして、必ずしもこれは特振法の一部をそのまま行なっておるということではないというふうにわれわれ考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/12
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013・大村邦夫
○大村委員 そういう御答弁ですが、いろいろな新聞なりあるいはまた権威のある雑誌等には、体制金融を通産省の考え方として打ち出しているということが指摘をされておるし、佐橋さんも、特振法のときにはいろいろ抵抗したけれども、体制金融ということになったら業界もそう反対をしない、同調している、こういうことを言っておられるわけですね。私どもが特に指摘をしたいのは、特振法と同じではないかというのは、寡占的な産業体制をつくるということですね。そうして新しい企業の進出を阻止する危険性があるのではないか、これは国民経済にとって問題のあるところだ、これがまず一つあると思うのです。御承知のように、特振法には産業構造のあるべき姿という構図がやはりあったと思う。今度の体制金融にも、私が先ほど指摘したように、産業構造のこれからのあり方という構図を描いて、その中の既成の産業の位置づけをやる、こういうことが考えられて、おるようです。実施されておるかどうかは別にして、そういう方向を打ち出しておるわけです。そういう点からすれば、私は別に当時の産業構造のあり方と今日の構造のあり方を通産省が変えなければならない理由はないと思う。産業構造上の欠陥というものは、当時もいまも変わってはいない。そういう中から打ち出された産業のあり方というものは似ておるじゃないか。しかもそれがいま申しますように、寡占的な産業体制をつくる危険性がある、このことをまず申し上げたわけです。
さらに、説明するまでもないと思いますが、通産省が資金の流れの面から押えて、選別融資、投資を調整していこうという構想を打ち出したのは、私どもが推測するところでは、強力な産業体制をつくる、そうして国際競争力を強め、向上さしていくというねらいがあると思うのです。こういう構想ができたというのは、第一に、公的な見地に立つ政府と私的な利益を追う立場に立つ企業とが共通の問題について常に密接な協議と情報の交換をして生産を検討しよう、そういった共同の場を持たない限りは開放経済は乗り切れない、こういう考え方が一つはあると思う。ここで問題になるのは、生産を検討しようということが一つは出てきます。いわゆる投資調整あるいは生産設備の調整、こういうことがまず一つ問題になってくるわけです。二つ目には、企業と政府の合意を見た目標については、まず企業は責任を持って実行する、政府はそれがうまく実行できるように誘導する、そういう考え方があったからこそ体制金融というものについて特に佐橋さんより、これは特振法の非常に御執心のお方であったはずですが、出されたと思うのです。そこで協調融資の問題が出てきます。さらにそこから投資調整の問題が起きてくるわけであります。私は、先ほど特振法よりもむしろまだたちが悪い、法律でなしに体制金融、いわゆる選別融資を通じて、特振法ではできなかった、むしろより以上のことをねらいとしておるのじゃないか、この点も指摘をしたわけです。それについての御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/13
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014・乙竹虔三
○乙竹説明員 先生の御指摘の点は、まず一つお答え申さなければならぬと思いますのは、特振法は寡占体制をつくるということをねらっておったのではなかろうか。体制金融というのはその一環であると思う。特振法が通過しないにもかかわらず、寡占体制を助長しようという体制金融という制度が残っておるのはどういうことだというのがまず第一点考えられるわけでございます。これにつきましては、特振法は規模の利益というものを追求しようということで、規模の利益と申しますのはあらためて申すまでもなく、生産形態、生産上の規模の利益、経営上の規模の利益、両面を追求していかなければいかぬ。規模の利益を追求することによりまして、日本の経済の国際競争力、日本の企業の国際競争力を高めていくというところにねらいがあったわけでございますが、通産省といたしましては、この規模の利益を追求することによりまして、日本の経済、日本の企業の国際競争力というものを強めていくということは、これは絶対に必要なことであるというふうに考える次第でございます。ただこれが寡占体制と申しますか、その寡占という意味におきましても、いろいろ意味があるかと思いますけれども、いわゆるニューカマーを排除するという意味の寡占体制を目がけるのではないかというような御心配がもし世の中からあるとすれば、決してそうではございませんので、ニューカマーでございましょうと在来の業者でございましょうと、最も能率的な企業が、しかもだんだん規模を拡大していく、ニューカマーとして、もしそこに新たに大きな規模の利益を追求し得る企業ができれば、喜んでこれを迎えることであるというふうにわれわれは考えております。
それから次に、特振法でねらったのは、官民が共同の場所でものを考えて、共同の目標をつくり上げて、そしてその両者合意したその目標については、政府も民間もおのおのその実現方に努力するという思想が特振法に入っておるのでございますが、これは特振法を待たずしても、われわれとしては非常に必要なことじゃなかろうかと思っておる次第でございます。
日本の経済は、申すまでもなく、個々の企業から構成されておるわけでございまして、個々の企業の活動力と申しますか、これを強めていくということは絶対に必要なことであると思うのでございますが、その企業の活動力を強めていくという場合に、その企業の活動の方向が国家、国民の利益と合致する方向へこの企業の活動力は強めていくのでなければいかぬわけでございまして、政府、通産省といたしましては、企業の活動力をそういう方向に強めていくのにはどうしたらいいかというふうにものを考えるわけでございます。その場合、民間の自主的な発意に基づきながら、しかも政府の意図するような国民経済上の利益をそれに合致さしていこうというには、共同の場で一緒にひざを突き合わせて相談し、考えていくというふうなやり方が一番大事、しかもその場所で相談がつきました目標につきましては、官民共同で実現方をはかっていくということがまず大事であろうかというふうに考えておる次第でございます。したがいまして、この資本主義経済におきましては、民間の責任と発意で経済が動いていくということは当然でございますが、それとともに政府の意思をそこにうまくかみ合わせていくということもまた必要でございまして、そういう意味におきまして協調してものを考え、共通の目標に官民が努力していくという、いわゆる協調方式というのは、特振法を待たずして、これはわれわれとしては絶対に必要な方式ではないだろうかと思っており、したがって、こういう方式は生産を調整する場合にも、また投資を調整する場合にも適当な方法、手段ではないかというふうには考えておる次第でございます。
それからなお体制金融につきまして、さらに一言つけ加えさせていただきますと、この体制金融は、実は特振法の法案を提案いたします前から、これはすでに開銀のワクと申しますか、中にございまして、そういうことで、必ずしも特振法の一つの手段というふうにはわれわれは考えておらぬ次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/14
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015・大村邦夫
○大村委員 公社取引委員長にちょっとお尋ねいたします。いまの御答弁を聞いてみても、私はこの投資調整ですか、カルテルというものが発生してくると思うのです。それはなぜかといいますと、政府とそれから私的な利益を追う立場に立つ企業とが共通の問題について密接な協議とそれから情報の交換をして生産を検討しよう、こういうのが一つあると思う。官民協調ですね。それからさらにその企業側と政府の合意に達したものについては、それは企業が責任を持ってそれを実行しよう、こういう考え方も、無理押しではないけれどもやはり私はあると思うのです。そうしますと、いま申しましたように、投資調整ということがこの中から私は生まれてくると思うのです。公取委員長は、いま御答弁になったもろもろのことをかみ合わして、私が言うような危険性はないのかどうか、ひとつ御見解を承りたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/15
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016・渡邊一俊
○渡邊(喜)政府委員 私ども公正取引委員会といたしましては、いわゆる投資調整の問題につきましては、それが終局するところだと思いますが、法律にいう不当な取引制限ということになるかならないかが、それが独禁法の違反になるか違反にならないかという問題に帰すると思って全体を見守っております。確かに、現在におきまして、いわゆる過剰設備というものが相当あるのじゃないか。操業度が業態によって違いますが、かなり低くなっていて、生産は相当伸びておりますが、しかもなお生産設備に比べますと操業度はかなり低い、需要自身も伸びていない、そうした資本負担にたえないというところに現在の財界のかなり問題がある国民経済的に見ても相当むだな問題があるのじゃないかといったような議論をよく聞かされます。私たちもやはりそうした問題があると思っておりますが、そうした意味の、投資の調整ということばはちょっと妥当かどうか知りませんが、投資をやはり需要に合わせて順次行なっていくということは、まず企業自体が考えるべき問題じゃないか。それぞれの企業がやはり自分の持つ需要が将来どう伸びていくかということを見通しながら、それぞれの企業が企業の判断においてまずなさるべき問題じゃないか、こういうふうに私は考えております。ところが一部の方には、どうも自分の企業一つだけではなかなか判断がしにくい。したがって、やはりよその企業がどういう態度、ビヘービアをとっているかという点をあわせ判断しなければ、どうも自分の態度もきめにくい、こういったようなお話をよく聞きます。私もある程度それには意味があると思います。したがって、たとえばある業界がそれぞれの資料を持ち寄りながら将来の需要の伸びを検討する、あるいは通産省がそれに対してある程度の通産省としての意見を言うといったようなことがあったとしましても、それは結局個々の企業の自分のビヘービアをきめる材料にするという限りにおいては、これはやはりすぐ独禁法の問題になるというふうには思っておりません。その程度ならば、われわれとしては別に特に取り上げなければならぬ問題とも思っておりません。ただしかしもう一歩さらに進みまして、その特定の業界が一つの申し合わせをしまして、そしてどこの会社はどれだけの設備をするのだ、あるいは時期的にどうするのだ、どこの会社は要するにもう少しおくれてやる、それが業界の申し合わせになりますと、これはその申し合わせの程度によりますし、あるいはそれに参加したものの程度によりますが、十数社ある中で一社とか二社とかがやる程度だったら問題はそう大きくないと思います。しかしその業界全体の、あるいは鉄でいえば鉄の大部分を占めるような大企業がそれに入りまして、そして申し合わせをしたということになれば、当然独禁法としては問題になってくるわけです。独禁法の場合におきましては、御承知のように不況カルテル規定はございます。不況カルテルの規定に該当します場合においては、生産制限、出荷制限のほかに、投資の、設備の制限ということも許されます。それからあるいは合理化カルテルの場合に、いわゆる特定品種のものは甲とか乙とかの会社だけが専門にやる。あるいは別のやつは丙とか丁とかがやる。いわゆる多品種少量生産を少品種多量生産に持っていこうという場合があります。これも業界の実態を見まして、特にそれが実質的な取引制限になる、そういうことでもない、合理化のために非常に必要であるという場合におきましては、私どもとしては合理化カルテルとして認める。そのうらはらがある程度の投資調整と結びつくことはあります。しかし、そうした独禁法上許されている場合は、これはもちろんわれわれの認可を前提としまして、これはわれわれのほうとしてものをいう筋ではございませんが、しかし、そういったことにもならないで、しかも業界が申し合わせによって設備の新設をとめるとか、とめないという問題になりますと、これはもう少し具体的な内容をさらに突っ込んで検討してみなければなりませんが、おそらく独禁法に触れる問題が相当出てくるのではないか、私どもとしてはそういう態度をもちましてこの問題については終始対処しています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/16
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017・大村邦夫
○大村委員 ちょっと話がそれますが、御答弁の中から、公取委員長にさらにお尋ねしたいのですが、お互いに企業が情報の交換をやる、あるいは研究会組織をつくる、これはお互いに参考資料にするならば問題はない。しかし、これによって協定を結ぶなり、申し合わせをするということになると、これは独禁法にひっかかる、こういうことですが、その申し合わせば非常に確かめにくい問題ではないかと思うのです。やはりお互いに情報交換をすれば、そこからいろいろ、単に参考だけでなしに、申し合わせという可能性が生じてくるのではないかと思うのです。そういう点の危険性はもちろん委員長は御承知と思いますが、これの査察ですね、どういうようにして行なわれますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/17
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018・渡邊一俊
○渡邊(喜)政府委員 確かにお話しのように名前を、いわば研究会といいますか、それにかりまして、そのうらはらで、陰に隠れて申し合わせをするということのあり得る可能性はわれわれもあると思います。ただしかし一応お互いが情報交換をするだけを、それもいかぬということは、現在の独禁法ではこれを違法だとしているとは私は思っておりません。ただ、お話しのように、その裏に危険性があるということは事実です。そういう事実があれば、われわれのほうとしましては、その情報交換そのものについてもずっとトレースしてまいりまして、結局最終的にはあるいはそれが企業の実際の行動にどういう姿でもってあらわれてくるか、こういう問題と結びつけながら、そこに違反になるかならぬかという判断をすべきじゃないかというふうに思います。これはあえて投資調整に限りませんで、生産統制とかあるいは出荷統制の場合におきましても、独禁法というものについてだいぶこのごろ勉強なすっていらっしゃる大企業としましては、そう簡単に申し合わせを書面で残すとかなんとかいうようなことをしない場合はずいぶんあります。ただしかし、一応それが企業自身のビヘービアになってあらわれてきます場合におきましては、われわれのほうとしてはその事実としてあらわれたところからやはりその申し合わせが推定できるのではないか、そうした状況証拠というものとかね合わせながら、われわれとしては判断するという問題になってくるんだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/18
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019・大村邦夫
○大村委員 その査察のしかたなり判断のしかたというのは、きわめてむずかしいと思います。
そこでさらに質問を続けますが、公取委員長は、資本主義経済の中で経済の自由ということが原則である、したがって企業の調整というものは、あるいはその体質改善というものはみずからが行なうべきであって、だから介入をすべきでない、これをまず申されたと思うのです。一方、私が先ほど申しました通産省の体制金融というのは官民協力ということが入っているのです。この中では、私はかなり介入ということが行なわれるのではないかと思うのです。そのことは、なぜ申しますかといいますと、これはいろいろ物議をかもしたところですが、過ぐる二月の十九日の主要新聞に「公正取引委員長投資調整で注目の発言」、「行政指導なら合法、業界の実行強制は困る」という見出しで、公正取引委員会の渡邊委員長ら各委員が十八日午前東京の赤坂プリンスホテルで通産省の佐橋事務次官、島田企業局長ら幹部と投資調整カルテル問題を中心に話し合ったが、渡邊委員長は投資調整について次のような見解を明らかにしたのである。それで、一つは「官民協調懇談会で行なう投資調整は通産省の責任の限界さえはっきりすれば認める。即ち通産省が責任を以て行なう行政指導による投資調整は独禁法の違反にしない。
(2) 民間業者の協定による投資調整のうち適法なものには公取委がネガティブ・クリアランス(合法性確認、若しくは事前了解)を示すようにする。」三つ目として「投資調整カルテルには、現行独禁法の認めている不況乃至合理化カルテルの規定を適用して、その認否を決定する。」こういうように出ておるわけでありまして、このことは「投資調整問題をめぐる独禁法的混迷に一つの終止符を打ったものであり、準司法的官庁としての性格上、ともすれば国の産業政策には理解不充分といわれていた公取が、投資調整に関する限り極めて前進的姿勢を示したものといっていいのではあるまいか。」これはいろいろ反論があるところと思うのです。こういうような公取の見解に対して「経済界にも大きな波紋を投げかけ、経済界としては最近の経済構造的不況即ち供給過剰の圧迫を回避し、安定成長に転換し国際競争力をつけるためには、投資調整が何よりも急務とされているおりから、このような公取委の解釈基準の伝えられたことを歓迎しているようである。さらにまた、今後予想される金融緩和を契機として民間企業の設備投資競争が激化し、過剰投資や二重投資などの国民経済上好ましくない事態の出現を憂慮していた通産省は、今回のこの公取委の柔軟な態度の打ち出し方に手放しの喜びようである。通産事務次官が「これで特振法(国際競争力の強化を狙った特定産業振興法案)に近い効果をあげることができる」」——これは二月十九日の朝日です。「と語っているのは、この間の事情を物語るものである。このような通産、公取委両者間の協調ムードは遂に、「独禁法後退の歴史にまた一ページを加えたという印象が強い」」ということが新聞に載っておったわけであります。しかし、私はそのことを直ちに信用しようというのじゃない。それは、その後の新聞を見てみましても、これとは反対なことが出ております。またこの投資調整カルテルは独禁法第三条の不当取引制限の禁止という点から当然第一義的に禁止されておるのでありまして、公取委としてもこの点はかなり厳重に守られてきたと思うのです。それが、こういうことをいわれて通産省では非常に喜んだということが出ておるわけでありまして、これは私は何かの間違いではないかと思うのですが、その点についてまずお尋ねをしたい。それから続いて、通産省、公取委がこの投資調整問題を中心にしてなぜ話し合わなければならなかったのか、一体どちらがこれを持ちかけたのか、そこ辺についても、私は体制金融との関連があるからお尋ねをしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/19
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020・渡邊一俊
○渡邊(喜)政府委員 通産省と公正取引委員会とが御指摘の日に一応投資調整という問題を中心にしまして話し合いをしたことは事実でございます。ただ、その結果についての各新聞が伝えるところは、私も翌日の新聞をずっと見てみましたが、新聞によりかなりまちまちでございます。私のほうもそうしたまちまちな発表が出ることを通産と同じようにおそれましたので、特に私のほうの事務局長と通産の人とをまた一緒にしまして新聞記者に一応話し合った内容を話したわけですが、どうもその後におきまして特定の人を相手に新聞記者が一応取材した。その人の発言を中心にして、会った人の話したところがやはりそれぞれの新聞にあらわれたというので、ある新聞はいまおっしゃったような、いわば手放しになったような書き方をするし、ある新聞は必ずしもそうでもないということになっておる。その後、幾つかの機会がありましたので、その機会に私のほうの真意を、誤解を避ける意味におきまして私は発言し、それがあるいは雑誌、あるいは新聞に載っているわけでございます。結局通産の行政指導はよかろうといいますのは、それは結局行政指導は行政指導の範囲にとどまる限り、それはわれわれのほうとしては別に何も申すことはなかろうという意味は、結局行政指導という範囲においては一つのリコメンデーションではないか。通産省としては、現在重複投資なりいろいろな過剰投資のあることは事実ですから、したがってこういう姿において将来進んでいかなければ、またその業界における過剰投資が出てくるというような意味の通産としての判断を業界へ述べる。これ自体としては私はやはり先ほど言ったような一つの判断材料という範囲のものだと思っております。ただ、私たちは一番注目しておりますのは、業界の中でいわば一種のそうした協調ムードでもって、一つの投資カルテル的なものをつくって、それが通産の行政指導の名前に隠れて、そして実質はそうだったということになれば、それは私は行政指導の名前をかぶせようがかぶせまいが、その実態をつかんで、はたして独禁法違反になるかならないかという問題として問題は追及すべきである、こういう考え方でして、行政指導という名前があれば、それは何でもよろしいんだというようなことを私たちは話し合った覚えもありませんし、また、そういったことを外部に発言したこともございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/20
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021・乙竹虔三
○乙竹説明員 ただいまの委員長のお話のとおりでございますが、その懇談会は、独禁法の解釈、特に投資調整の解釈につきましてはいろいろ確かめておかなければいけないという点もございますし、また現在の民間投資の動向等をよく公正取引委員会にわかっていただくという必要もございますので、通産省側から公取委員会に独禁法の解釈を伺う、それからまた民間側の投資の動向についていろいろ通産側から説明を聞いてもらうというふうな趣旨でお願いをし、何と申しますか正式な交渉というふうなこと、折衝というふうなことではなくて、ほんとうの懇談会、意思を相通じ合うという意味の懇談会ということで行なわれたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/21
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022・大村邦夫
○大村委員 あなたはそうおっしゃいますが、公取委員長が、先ほど私が述べたようなことを言ったということが新聞やその他週刊誌等に出て、その後、あくる月の三月十五日ですか、「通産省の行政指導でも独禁法は適用される投資調整カルテル公取委員長が言明」こういうことで出ております。その中で「通産省側が、同省が加わって行なわれたカルテル行為は独禁法の適用を受けないという見解を了解事項として発表した」。これに対して公取委は、そういう了解を与えた事実はない、こういうことになっているのです。私は、企業局のおっしゃるように、ただ話し合いという程度のものでなしに、やはりあるべき産業構造の姿、それに近づけるため、あるいは今日過剰設備なり過剰生産、こういうロスといいますか、そういうものを防ぐために、投資調整というものをかなり私は考えておられたと思うのです。だからこそこういうように了解事項として発表し、業界にもひとつ富んでくれ、こういうことに私はなったと思うのです。こういう点はどうなんですか。それから、いま私が申しましたように、了解事項として発表したということですが、発表した事実はないのですか、あるのですか。もしあるとすれば、公取委員長はそれは間違いだ、こうおっしゃるのですが、その食い違いは一体どこから出るのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/22
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023・乙竹虔三
○乙竹説明員 通産省と公正取引委員会と、その懇談会の結果をおのおのの担当者が共同で発表したことは事実でございます。ただ新聞の報道は、その発表されたものどおりであるかどうか、おそらく新聞社としてはその後いろいろ調査をし、確かめた結果——確かめたと申しますか、いろいろ調べまして、ああいうふうないろいろな記事が出たのではないかと思います。なお、各紙ともいろいろニュアンスの相違がございますのは、先生もおそらくお認めになるのではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/23
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024・大村邦夫
○大村委員 えらいくどいようですが、その後新聞もいろいろ調査した結果、いま私が申し上げたように食い違いがあったということを指摘をしたわけですね。そして了解事項としておたくのほうでは発表をされたということです。了解事項として業界に発表されたのかどうか、それをお聞きしたいのです。ずばりお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/24
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025・乙竹虔三
○乙竹説明員 ただいまの御質問の投資調整カルテルが認められた、通産省の行政指導のもとに行なわれるならば投資調整カルテルが認められたというふうな了解に達したというふうな発表をしたことは全然ございません。また現在通産省といたしましても、そういうふうには考えておりません。なお独禁法の解釈は、当然これは公正取引委員会の権限でございますので、われわれは独禁法の解釈、運用につきましては、公正取引委員会に十分見解をただし、解釈を伺うということでやっておるつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/25
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026・大村邦夫
○大村委員 まあ、ある、ないでやってみてもいたし方ありませんが、しかし私が考えますのに、主要日刊紙に大々的にその後訂正的に書き立てられ、あるいはその他の権威ある機関紙、週刊誌等に出ておることを見ると、私はどうもそれを信用したくなるのです。それは先ほど申しましたように、体制金融そのものがやはり業界の投資調整カルテルというものを志向しておる、考えておる、そのことがこういう形になってあらわれてきたんだ、私はそういうように指摘をしたいわけです。それを、いや絶対にそうでない、こうおっしゃいますと、どちらを信用していいかわかりませんが、私はそういうことが取りざたされるということは非常に遺憾だと思うわけです。
公取委員長にお尋ねしますが、通産省の行政指導ですね、つまり「介入の有無にかかわらず、独禁法本来の建て前からその時の経済情勢を勘案してケース・バイ・ケースで判断する」、こういうことになっておると思います。独禁法そのものが非常に抽象的でありますから、こういうことになるのでありましょうが、経済情勢を勘案してケース・バイ・ケースというこの指標といいますか、一応の基準があると思うのです。ただ場当たりといってはおかしいのですが、何も考え方がなしに、そのときの経済情勢に応じて考えるんだ、こういうことでは私はないと思うのです。もしそうであるとすると、きわめてここら辺がデリケートになるし、危険性をはらんでおるのではないか。それでなくとも、先ほど私がちょっと言いましたように、私はそのほうがいいと思うのですが、公正取引委員会が独自の立場で自主権を持って厳然としてあるというのは、これは私は通産行政に協力するとかせぬとか、ほかのほうから文句を言うことでもない、独禁法の番人でありますから、それを実行されるのはけっこうでありますが、このケース・バイ・ケースですね、経済情勢を勘案してという、ここら辺の指標についてひとつお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/26
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027・渡邊一俊
○渡邊(喜)政府委員 われわれは一応独立した権限に基づきまして独禁法を執行していくわけでございます。したがいまして、その判断はわれわれ独自の判断においてイエスかノーかといいますか、これをきめていくという点は、私はそう思っております。ただ通産行政としていろいろな考え方があり、指導のやり方があるわけですが、通産行政としてはどういうバックグラウンドに基づいてそういう考え方をしているかということについては、われわれとしてもいわば雲の上でもってものを判断すべきものじゃありませんから、これはいろいろわれわれの判断材料として勉強させていただくということはあっていいんじゃなかろうか、そんな意味で通産省との懇談会におきましても、一体通産省はどういうことを、要するに業界の将来について考えているかというような点について、われわれとして聞かしてもらう、これは一つの勉強じゃないかと思いまして、同時に通産省としては独禁法の運用についてどういう考え方を持つかという解釈の基準などを聞きたい、こんな意味で先ほど言ったような懇談会が持たれたわけであります。ただ最後に私も非常に遺憾だと思いましたのは、せっかく一緒になって共同で発表したのが、その後新聞社等で他の取材をしたせいだと思いますけれども、新聞によってかなりまちまちの報道になったということは私は遺憾だと思います。まあ事後のいろいろな機会において、私は経団連に行って、話をいろいろ聞かせろといったときにも、私のほうの真意をよく伝えておいたという事実はございます。
それから、いまの御質問の経済情勢に応じてケース・バイ・ケースという、その経済情勢に応じてという場合は、御承知のように現在自由化がだんだん進んできており、さらに、残された点においても自由化が進んでいく、このこと自体は、結局一定の取引分野といいますか、日本のマーケットにおける競争関係というものが、やはり相当変わってきているんじゃないか、変わってくることもあり得るんじゃないかと思います。どの業界がどのように変わって、どの業界がどう変わるということはすぐここでは申し上げられませんが、結局そういったような意味で、自由化前後、いわば閉鎖的な経済の場合と、自由化された経済という場合においては、やはりわれわれとしてはそこにおける競争の姿が変わってくることがあり得ますから、その変わってくる競争の姿というのは、われわれのほうとしては、やはり競争制限の場合において判断の中に入れるべきじゃないかということを一つ頭に入れております。それから、ケース・バイ・ケースという場合におきましても、これは先ほどちょっと触れましたが、たとえば先ほども規模の利益という話が出ましたが、特に経済企業の場合におきまして施設をやはりつくるとすれば、相当大型のものになる。その場合において、一社だけでつくることをやりますと、どうもそれじゃほかの社もやるということでもって、非常に設備過剰になる危険がある。二社、三社が合同して、共同利用のつもりでもって一つの施設をつくるというような場合もありますし、あるいはさらに進みますと、先ほどもちょっと話題に出ましたように、全体としての投資の順序をきめるとか、やれ設備の大きさをきめるというところまでいってしまいますが、まあ十社ある中で三社、三社が共同して一つの施設をつくるといった程度のものは、これはしいて投資調整の名前に値しないものであり、同時にこうした取引制限の問題ともそう結びつかない問題があるんじゃないかというふうなことを考えてまいりますと、やはり結局それも投資調整という名前をつければつかぬこともありませんから、したがって、われわれの方としては、その姿がどういうものであるかということを見まして、結局それが独禁法の違反になるかならぬかという点を判断するということでありまして、ネガチブクリアランスの問題につきましても、先ほど来申し述べましたように、われわれの方としては事前に一応こういうことをやりたいがどうだろうかという相談があれば、これは最終的な決定でもありませんので、審決ほど権威を持つものではありませんけれども、しかし、一応われわれのほうとしては、それはだいじょうぶだ、それはあぶないという判断は下して、そしてその後の行動についての参考に資するということが、やはり親切なやり方じゃないか、あるいは事前にやることが、やはり事後にでき上がったものをわれわれのほうとしてあとで追っかけるよりもより予防的な効果もあるんじゃないか、こういう判断のもとに、ネガチブクリアランスを求めてきたときに、われわれのほうは事前にイエスかノーかは申し上げておきたい、こういうことを申し上げておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/27
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028・大村邦夫
○大村委員 これは企業局の関係だと思いますが、今日綿紡、それから合繊、石油精製、セメント、普通鋼、特殊鋼、工作機械、電気機械、カメラ、専門商社、こういうものは相当ふくれ上がっていると思うのです。そうして、いまかなり深刻な不況に見舞われておるこれらの業種の体質改善を今後の金融緩和を通じて行なうということになるのだと思いますが、さらに設備投資を協調的にやらせる、そうして体力を回復さしていくということは、これは独禁法との関係でいろいろ問題があるところであります。そうしますと、これらの業種について、一体これからどういう方法で振興対策をとるのか、その結論についてちょっとお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/28
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029・乙竹虔三
○乙竹説明員 非常に大きな御質問でございますが、われわれといたしましては、各不況産業につきまして、これから秩序ある経済活動が行なわれるように誘導をしてまいりたい。秩序ある経済活動と申しますと、相当過当競争が行なわれましたために、正当なコストもカバーできないような値段で売りましたり、ないしは非常に長い販売期間で月賦ないし年賦の期間を与えたりというふうな、非常に過当な競争が行なわれたわけでございます。その過当な競争の結果、非常に企業体質が弱くなってきたというふうに考えますので、競争の秩序づけを誘導してまいりたい。もっとも、競争の秩序づけを誘導してまいるということでは、ただそれだけではこの不況は何ら乗り切っていけないと思いますので、大いに輸出を振興し、国内の必要な景気対策等についても手を打ってまいりたいというふうに考える次第でございます。
なお、先ほど先生のお話に、設備投資については独禁法上問題があるがというお話でございましたが、われわれといたしましては、やはり今回の不況の一つの原因、相当大きな原因だと思いますが、これは設備投資の秩序と申しますか、これが必ずしも十二分ではなかったというふうに考えるわけでございまして、もちろんこの点は、やり方によりまして独禁法上問題があることは十二分に承知をし、また、公正取引委員会とも密接に連絡をとってまいるつもりでおりますけれども、民間側の共同の意思によります設備投資調整、投資調整カルテル、これはもちろん独禁法上違法であるということは当然でございまするけれども、政府側が、設備投資は穏当と申しますか、穏健に行なわれてしかるべきである、需要に見合い、企業の収益性を考え、そのマーケットを十分考慮し、将来のマーケットを十分考慮して行なわれるのがしかるべきであるというようなガイドポストを政府が与える、そのガイドポストを与えます場合に、民間側に十二分に相談してガイドポストをつくり上げていくというふうなやり方、先ほど委員長からもお話がありましたが、その政府側の勧告に対して民間側も従ってくれることを希望する、その設備投資の秩序づけということが、長い目で見ますと、日本の経済体質を強化する上においてやはり絶対に必要であるというふうに考えております。ただ、その設備投資の秩序づけにつきましては、おことばにもございましたが、確かに独禁法上に十分問題がございますので、この辺のところは十分指導監督してまいりたいというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/29
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030・大村邦夫
○大村委員 先ほど幾つかの業種をあげましたが、結局これらのいわゆる深刻な不況というのは、寡占的市場力が著しく弱化した、こういうことにもつながってくると私は思うのです。つまり、いろいろな過当競争が行なわれて、結果的には利益率の低下を来たしておる。この利益率の回復というのは、そう私は簡単には行なわれないと思うのです。これを克服するためには、一つには特定産業振興法のような法の力、そういうものの力を借りてカルテル的市場力を手に入れるといいますか、あるいは自主調整こういう方法が一つあると思うのです。これはある人の説でありますが、私はそうだと思うのです。それからいま一つは、再び新技術、新製品、それから新市場の開発によってもう一度創業者的利潤を確保する、こういう方法があると思うのです。前者の方向をたどるとすれば、これにはまたかなり問題が出てきます。つまりあぐらをかくといいますか、一番安心した方法を業者がとって企業努力をやらない。後者のほうについては、これはやはり日本経済の成長のテンポは貢献するところがかなり大きいと私は思うのです。その後者の道を、先ほど言いましたようにいわゆる投資調整カルテルというのがなかなかできない。自主調整と言っても、これもなかなかむずかしいところでありまして、そうしてくると、私はやはり後者の道をかなり力を入れなければならないし、そういう力を入れるということになれば、研究体制というものについても国はもっと力を入れなければならないと思うのですが、通産省はその点どうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/30
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031・乙竹虔三
○乙竹説明員 いまのお話はまことに仰せのとおりでございまして、私のさっきの舌足らずの説明の中にも、マーケットを広げることに努力しなければならないということを申し上げたのでございますが、マーケットを広げます一番いいやり方は、これは新しい技術によります新製品をつくり上げていく。そして特にできますならば海外マーケットを広げていくということが必要かというように考える次第でございます。通産省といたしましても技術振興行政、これは毎年力を非常に入れておる次第でございまして、ますますその方向を強化してまいりたいというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/31
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032・大村邦夫
○大村委員 次に公取委員長にちょっとお尋ねします。
第十五条の企業合併についてでありますが、合併が禁止される場合は御承知のように「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」あるいは「不公平な取引方法によるものである場合」こういうときに禁止されるということになっておりますが、条文が非常に抽象的であります。この運用解釈はそれだけに非常にデリケートといいますか、むずかしいと思うのです。そのむずかしい独禁法が昭和二十二年に施行されて、今日まで企業合併というものがかなり行なわれたと思うのですが、一体どれくらい行なわれたか、わかりましたらひとつお尋ねしたい。と同時に、大企業の合併と申しますか、大企業とは定義はいろいろあるでしょうけれども、おおむね十億円以上の企業合併がどの程度行なわれたか、それからこの企業合併が独禁法上抵触した件数は幾らあるか、それをお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/32
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033・渡邊一俊
○渡邊(喜)政府委員 横の集計が実はできておらないので、二十二年から三十九年までどのくらいというやつが、ちょっといまここですぐお答えできません。ただ各年の計数はわかっております。三十九年が八百六十四、三十八年が九百九十七、三十七年が七百十五、三十六年が五百九十一と、各年の数は二十二年までずっとわかっておりますから、この横の集計をとれば御質問の数字はわかりますが、それはいまちょっと申し上げかねます。
それから合併後の資本金額が十億をこえる分、これも各年の数字はわかっておりますが、これも実は横の集計ができておりませんので、それが御必要ならあとで申し上げますが、三十九年について申しますと、十億から五十億未満までのものが十七件、五十億から百億未満までのものが四件、百億以上が九件、各年いずれも数字はございますから、別に資料として差し上げていいと思います。
それから大きな会社の合併として最近特に話題になりましたのは、三菱三重工のようなものがございます。この場合におきましても、結局現在の独禁法では、ただ企業が大きくなるということだけをすぐ独禁法違反としているわけでもあるまい、やはり一定の取引分野における取引制限ということになるかならないかという問題で判断すべきではないかというので、これは前の前の国会ですか、いろいろ御質問がございまして、詳しくわれわれの見解を御披瀝申し上げたこともございますが、そういった観点であれも承認しました。それでは過去において合併を不承認とした例があるかという点でございますが、実は大体合併をしようとする会社は事前に私のほうへ、特にそれが独禁法に抵触する心配があるといいますか、公取であるいは問題に取り上げはせぬかという心配のある会社ほど、事前に私のほうに、先ほどのネガチブクリアランスではございませんが、どうだろうかという相談がまいっております。その相談の過程におきまして、それはちょっと無理だろうということで、会社のほうもなるほどと思って引き下げた例はございますが、しかしそうした相談もなしに合併をしてしまったあとで、私のほうでそれを否とするような審判を開始したという事例はございません。ただおそらくは、いま申しましたように多少とも疑問である場合におきましては、会社の経営者自身が大事をとりまして、事前にわれわれのほうに話を持ってくるということが、一つの事実が出たあとでわれわれのほうでそれを排除するという事例が出なかった主たる理由ではないだろうかというふうに私どもは思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/33
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034・大村邦夫
○大村委員 関連してちょっとお尋ねいたしますが、ネガチブクリアランスですね、これは一体合法的なのですか、どうなんですか。これはカンニング行為じゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/34
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035・渡邊一俊
○渡邊(喜)政府委員 ネガチブクリアランスというのは、これはEECなどで盛んにやっております。あそこも御承知のようにローマ条約の八十五条、八十六条でEEC内の独禁法を持っているわけです。それからアメリカでも、本によりますと、当初はあまりネカチブクリアランスはやりたがらなかった。と申しますのは、ネガチブクリアランスを出しますと、いわば業界としてはそのすれすれの線をねらってそこをやってみるというふうなことになるというのでやらなかったらしいのですが、しかしやはり業界のほうとすれば、とにかく役所のほうで、やるならやってみろ、悪かったらおれのほうで文句つけるぞというのはあまり親切でないじゃないかというので、最近やはりネガチブクリアランスを出すということになってきた。われわれのほうとしましては、結局一種のネガチブクリアランスというのは独禁法相談所のようなものだと私は思っております。ただそれにしましても、われわれのほうとしましては一応委員会の判断に待ちまして、そしてそれは問題ないじゃないか、あるいはそれは問題になり得る。もちろんネガチブクリアランスが出ましても、それは法律的に見ますれば親切でも何でもございませんが、ネガチブクリアランスでそれはオーケーだといったようなやつが、事後においてそれはノーだということもあり得ると思います。というのは、ネガチブクリアランスを持ってきた場合においての提出材料が、一から十まで全部持ってきてやれば、やはりもうそれはあとでそう判断が変わるとは思いませんが、提出材料を自分に都合のいいところだけしか持ってこなかった、それがあとになって都合の悪いものが出てきたということもありますから、したがって、それは私は最終的な結論とは思いませんが、しかし材料が全部出そろっていれば、委員会として、きのうよろしいと言ってきょういけないと言ったというわけのものでもない。独禁法についてはお話しのようにかなり解釈の幅がございますので、やはり一応企業のほうでどうだろうという相談がきたときにわれわれのほうとして、やるだけやってみろ、悪かったらあとはおれのほうで文句を言うというのもあまりに親切が欠けているんじゃないか。それは独禁法違反のおそれがあるということが事前にわかっていれば、それはやはりもともとそういうことを排除することが一番中心の課題なんですから、事前にそういうことが防止できれば、これはやはりそれでそれなりの意味を持つんじゃないか、こういう意味で私のほうではこの扱いを考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/35
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036・大村邦夫
○大村委員 そうしますと、二十二年から今日まで七、八千くらい企業合併があったと思うのですが、その中で独禁法上問題になったり抵触したものがほとんどないというのは、いわゆる事前診断ですか相談ですか、そういうことが行なわれたからなかったと解すべきですか、それとも、そういうものもほとんどない、企業に独禁法のあり方が浸透しておるために抵触が出なかった、こういうように解していいのですか、どっちなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/36
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037・渡邊一俊
○渡邊(喜)政府委員 先ほどの説明にもう少しつけ加えさせていただきますと、合併の数が実にかなりの数になっておりますが、かなりの分は中小企業的な会社の合併というのが数の上からいえば非常に多いわけです。われわれが一見しまして、これは問題にならぬだろうといってきわめて事務的に処理し得るケースが大部分でございます。しかしその中には、先ほども言いました三菱三重工のように、これは相当問題だというような問題はございます。こういう場合におきましては、三菱三重工のような場合には公聴会を開くとかいろいろなことをして、われわれのほうとしては最終的な判断を下した。しかし、そこまでいかない間に、それは無理だろうというやつも幾つかあったように聞いております。したがいまして、おそらく企業の経営者としましては、合併は済んでしまった、公取で審判が開始されて、そしてまた合併をもとに戻さなければならぬということになりますと、経営者としてもやはり相当の責任を感ずるわけでしょうから、できれば、この合併は承認される合併だろうか、そうでないだろうかという点をあらかじめ知りたいところだと思います。したがって事前に私のほうへ、どうだろうかという意見をよく聞きにくる場合がございますので、われわれのほうとしても先ほど言った程度の判断はしておるわけでありまして、事後においてわれわれが審判を開始したが問題がないというのは——数は非常に多いのでございます。繰り返し申しますと、中小企業的なものでほとんど独禁法上問題にならないのが大部分の数である。幾つかのそうした大きな問題につきましては、先ほど言ったような点がありまして取りやめた例も幾つか聞いておりますが、そういったこともございますので、審判開始といった問題にまで至らないで現在に至った、こういうふうに私は解釈しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/37
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038・大村邦夫
○大村委員 独禁法上抵触した企業合併はあまりなかったが、委員長が言われたように、三菱重工あるいは雪印とクローバー乳業との合併、それから亀屋パンと日糧製パンの合併、こういう問題はかなり問題になったと思うのです。その問題になった点は幾つかあげてありますが、その中で、問題になったというよりも公取で容認をされた基準の中に、同業者の進出の容易なこと、こういう問題が入っておると思うのです。あるいは自由化によってかなりの低額なものが入ってくる、こういうことも認定をされた上で一つの判断の基礎になっているようでありますが、はたしてそのことがその後そういうような見通しでいったのかどうかという点について査察をされ、あるいは検討されているのかどうか、そこら辺についてお尋ねしたいのです。判断ですから、先を見越して将来こうなるだろうということでやられて、それがそのとおりにいっているのか、そのとおりと言っても、大勢的にそのとおりにいっているのかどうか、これあたりはかなり問題のあるところではないかと思うのです。その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/38
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039・渡邊一俊
○渡邊(喜)政府委員 従来の判断の基準は、将来こういうふうになるだろうということを、先を見通してまで判断の材料にしていくということはあまりやっておりません。先ほど言いましたように、自由化なら自由化が実行されて、そして新しい競争がそこにできてきたという場合において、そうした一つの事実は当然判断いたします。単に自由化されるとすればこういうことになるだろうとかなんとかいうより、どちらかといえばかなり大事をとったものの判断として、よほど蓋然性が大きい、ほとんど確実だという場合以外は判断の材料の中には入れていないというのがわれわれのやり方でございます。過去に認めた合併が、その後あれを認めたためにあとでぐあいが悪かったというふうに、そのときの判断自身をわれわれが特に後悔しなければならなかったというほどの事例は私は聞いておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/39
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040・大村邦夫
○大村委員 聞いていないというよりも、それを積極的に確かめたかどうかという点ですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/40
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041・渡邊一俊
○渡邊(喜)政府委員 そういう点につきましては、われわれのほうとしてはもちろん絶えず問題をその後においてもトレースしておりますが、その結果として、あの合併を認めたことが非常にわれわれのほうとして反省すべきであったというようなことはなかったということを申し上げたつもりだったのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/41
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042・大村邦夫
○大村委員 次に、歩積み両建てについて公取委員長にお尋ねいたします。
歩積み両建ては大蔵省等の積極的な指導や業界の自粛もあって、数字的には、前回、いわゆる昭和三十九年の五月末の調査と、その後の三十九年十一月現在の調査とを比較対照してみますと、かなり傾向的に減っておりますが、私はしろうとでございますからはっきりわかりませんが、ただふしぎなのは、不公正な取引方法、二十八年の九月一日の公取委の告十一ですか、この第十号によって明らかに禁止をしておると考えるわけです。禁止をしておるのにもかかわらず、これがなぜ横行というのですか、実際に現存しておるのか、どうもそこら辺が条文を見てもよくわからないからひとつお教えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/42
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043・渡邊一俊
○渡邊(喜)政府委員 われわれのほうも、不公正な取引方法の一般指定の第十号ですか、それに該当する場合が非常に多いというふうに思っているわけですが、この歩積み両建てというのは私どもも非常に反省すべき問題があると思います。終戦後、特に朝鮮事変の後におきましてといいますか、二十八、九年ごろからかなり弊害が顕著になってまいりまして、大蔵省がこれに対して相当取り締まりをする、あるいは業界でも自粛するのだといったような話がたびたび出てまいっておりましたので、われわれのほうとしては、一応大蔵省が第一義的な監督官庁でもございますし、したがいまして、いわばそちらのほうにまかせていたというきらいは確かにございます。しかしその後、私ちょうど就任直後でございましたが、三十八年の四月ですか、当時見てまいりますと、大蔵省の数次の指導にもかかわらず、あるいは銀行協会等の何回かの申し合わせにもかかわらず、それが横行していて、かなり弊害の著しいものがある。したがいまして、われわれのほうとしては、この問題をこのまま放置するわけにいかぬ、十号によりますと、何と申しましても規定のしかたが抽象的な一般指定になっておりますので、それよりももっと具体化した姿においての特殊指定という制度がありますから、特殊指定にして、そして容認されるものと容認されないものともっとはっきり区別するような基準をつくるというふうなことで、大蔵省から、われわれのほうでやるからまあちょっと待ってくれという話もありましたが、われわれのほうとしては、もうずいぶん長い間たつのにやってないのだから、君のほうに一がいにまかせるわけにいかぬというので、われわれのほうとしては特殊指定の——一般指定でもできないことはございませんが、かなり広く行なわれ過ぎておりますから、特殊指定でもってこれを順次直していこう、こういう気持ちで進んできたわけであります。この前の国会でも、予算委員会でも問題になりました。大蔵委員会でも問題になりました。そして大蔵省あるいは銀行協会としましては、できるだけ自分たちのほうでやるから特殊指定ということはちょっと待ってくれないかという話もあり、われわれのほうとしましては、結局改善がされるなら別にそれほどのことはないが、改善されないならわれわれのほうとしては特殊指定でもってまず基準を示すということでずっと話が進んできているわけであります。お話しのように、銀行協会のほうで出しました数字は昨年の十一月の数字ですが、一応かなり改善されたような姿になってきております。しかしわれわれのほうとしましては、必ずしもその数字にすぐ信頼を置いていくというわけではございませんで、どうも聞いてみますと、やはり個々の銀行により、あるいは都市銀行とか地方銀行とかそういう範疇分けよりむしろ個々の銀行の心がまえというものに相当まだ差があるようでございます。したがいまして、私の耳に入りますことも、かなり改善されたという話も入りますが、相変わらずちっとも変わっていないという話も耳に入ります。したがいまして、私のほうとしましては、昨年来すでに二回やりましたが、直接中小企業の方、債務者側のほうにアンケート調査をする、そうしてこれは昨年の三月末現在、六月末現在で一応数字ができております。したがって、今度ことしの三月末現在をつかまえましてアンケート調査をやるというので、すでにこれは東京、大阪を中心にしまして四千通のアンケート調査をいたしております。今月、四月末が一応報告の最終期限でございますが、現在までにおいて四百数十通は出てきております。私のほうとしましては、このアンケート調査の裏づけによって、はたして銀行から出しておる、同時に大蔵省がそれに基づいて銀行検査としてやっている一しかし大蔵省の銀行検査は、どこまでも銀行側の話からきておりまして債務者側のほうまでいっておりませんので、したがって、その裏づけとしてのアンケート調査というものを今月いっぱいでまとめるつもりでやっております。その集計のできましたときに、銀行協会で出しておる数字あるいは大蔵省で発表しておる数字と、そのアンケートとがどういうふうなからみ合いになってくるか、そこに相当のそごがあるとすれば、それは一体どういう理由か、もう少し突っ込んでみる必要があるのではないか。したがいまして、現在としましては、大蔵省の調査のように改善されるとすればけっこうだと思いますし、同時にそれは絶滅を期すべきものですから、さらに進めてもらうべきだと思いますが、われわれのほうとしては、多少疑心暗鬼的な面もあるかもしれませんが、やはりもう少し債務者のほうからの声も聞いてみたい。今月いっぱいで集める予定なんですが、ただ従来の例によりますと、なかなか期限どおりでは回答の数が少ないので、多少期限を延ばしまして催促いたしまして、前回のときは二割八歩程度の回答を得ていますから、せめてその程度の回答を得て集計してみたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/43
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044・大村邦夫
○大村委員 歩積み両建ての廃止についての熱意には大いに賛意を表しますが、厳然としてあることは事実でございます。私は公取委の性格といいますか、自主性と権威においても、すみやかにその解決に踏み切っていただきたい、できるだけ早くやってもらいたいと思います。このことを強調しておきます。
次に、企業集団の傾向と独禁政策との関係ですが、御承知のように、最近では企業集団系列化というのが非常に大がかりに行なわれております。私ここに分厚い資料を持っておりますが、これを全部読み上げるわけにもいきませんので読みませんが、一つの金融機関がそれぞれ系列下の企業に対して融資なりあるいは持ち株を持っておるわけです。あるいはまた系列企業間のいわゆる株の持ち合い、企業間でお互いに株を持っておる、こういう傾向が出て、企業の支配力を金融機関が強めておる、こういう形態が出ておる。これは独禁法上には問題はないが、また過度経済力集中排除法がいうようになって、さらに独禁法ができ、合併等についても、一定の条件以外についてはこれは許可されておる、そういう点その他もろもろの点を考えれば、独禁法には触れないと思いますが、しかし独禁政策としてこの点については若干問題があるのじゃないかという気がいたしますが、この点についてどうお考えなんでしょうか。これは将来この種の傾向がますます強まって、あるいは持ち株も、独禁法の関係もありますけれども、ふえていくのじゃないか、そのことはやはり支配力を高めることになるのじゃないか、こういう気がいたしますが、その点についてどういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/44
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045・渡邊一俊
○渡邊(喜)政府委員 お話のように、そうした企業集団といいますか、これは現在の独禁法の条文からはすぐこれを規制するという問題は出てこないと思いますが、ただ独禁法を見てまいりますと、その第一条に経済の民主化ということをうたっておりますし、それから持ち株会社の禁止ということをうたっております。それはやはりいま言ったような企業集団というものに対して独禁法がある程度、完全ではありませんが、幾つかの手がかりを持とうとしておるのじゃないかというふうに思っております。まあ立法の問題になりますと、私たちあまり責任あるものを申し上げるのはどうかと思いますが、われわれのほうとしましては、現在の段階におきましてはお話の企業集団というものが一体経済的にどういうようなビヘービアをとり、それがどういうようなインフルエンスを与えておるか、こういった点については絶えず注目して見ております。昨年アメリカへ参りましたときに、向こうの独禁法の当局者ともいろいろ話したときに、アメリカでもやはりこの問題がありますが、それがすぐにシャーマンアクト、クレートンアクトの違反じゃないけれども、こういう問題を将来どう考えていくのかという点は向こうでも問題に取り上げているようでございます。日本は日本なりにこうした問題を将来どう考えていくべきかという点については、われわれも一つの大きな課題としてそのあとづけをしていく。同じ企業集団といいましても、実は程度はいろいろまちまちであると思います。その内部がかなり密接に結びついているものから、一つのグループとして相当ルーズな集団的なものがいろいろあるように思います。それなりに、やはりそれが日本経済、特にいわゆる経済の民主化という問題とどう結びついていくか、これはわれわれも研究しておる問題でございまして、いま直ちにこれに対してわれわれとしてはこういう回答を持っておるというだけの用意はございません。今後ともこれについては十分注目しながら勉強を続けていきたい、こういう問題だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/45
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046・大村邦夫
○大村委員 いまおっしゃいましたように、経済の民主化の立場から、私どもはこれはかなり問題があるところだと思うのです。つまり御承知のように、だんだん企業集団がマンモス化してきますと、それ以外の、系列に入れない企業の存立を危うくする、これはやはり経済の民主化からいっても、私はまず問題としてあげられる点だと思うわけです。そういう傾向が逐次深まりつつある今日ですから、私はこの問題については十分御検討を願いたい、こういうことを申し上げておきます。
それから経済企画庁おられますか。——政府の物価対策なるものが年度当初に打ち出されておると思いますが、この物価対策の中に、公取としていろいろ手がけなければならない問題もあるのじゃないかと私は考えるわけです。なぜならば、これは管理価格とかあるいはカルテルとか、そういうものが産業の価格形式の基盤になっておる。そういう点を考えるならば、非常にこれは重要視すべき問題だと思いますし、当然物価対策の中に織り込んであるのじゃないかと思うのです。そこら辺につきまして、あればひとつ簡単に承りたいと思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/46
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047・丸山英人
○丸山説明員 物価対策といたしましては、この一月二十二日に「物価安定のための総合対策」というのを閣議了解いたしておるのでございますが、そのうちの第五番目に、「競争条件の整備」という項を設けまして、「価格が競争機能を通じて適正に形成されるようにするため、次の施策を講じる。」というふうにいたしまして、違法な価格協定の取り締まり、あるいは不当な価格形成が行なわれているおそれがある商品についての実態調査を推進するとか、再販売価格維持についても実態を調査するとか、いろいろそういったような問題につきまして、独禁政策の適正な遂行について掲げております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/47
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048・大村邦夫
○大村委員 そのことは大体毎年毎年いわれるようなことですが、しかし毎年毎年いわれても、前向きの形で公取委を強化する、また独占価格の、あるいは協定価格の取り締まりを厳重にするといのことになっていくと思うのですが、そういうことを考えますと、公取委の強化という点については、かなり私は力を入れなければならないと思うのです。しかしこれも毎年の増員を見てみますと、たいした増員は行なわれていないようであります。こういう点について総務長官はどういうお考えを持っておられるのか、ひとつお尋ねをしたい。
それから、昨年はたしか広島にも地方事務所を実現してほしいという公取委の要求があったと思うのですが、附帯決議もなされておるようであります。ところが広島が消えて、今度は仙台に変わっておるわけであります。これはどういう考え方からでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/48
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049・臼井莊一
○臼井政府委員 公正取引委員会の予算総額は、四十年度におきましては二億五千九百二十五万五千円でございまして、前年度に比較しまして三千七百十五万七千円の増額になっておるわけでございます。したがいまして、機構、定員につきましても、いまお話がございましたように、仙台に事務所を設置いたしまして、定員も十一名増加するわけでございます。ただお話しのように広島にという要望もございますので、予算要求といたしましては、仙台、広島、高松、人員にいたしましても四十五名くらいは増員いたしたいということで、政府部内、大蔵省等々に折衝いたしたのでございますが、諸般の事情で逐次やっていきたいということで、本年、四十年度においては仙台に地方事務所をやることがよかろう、こういうことに決定いたしたわけでございまして、広島より仙台を先にというのは、やはりいろいろ検討した結果そちらのほうが先になったわけでございます。昨年は札幌、ことしは仙台ということに、逐次ひとつ整備していきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/49
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050・大村邦夫
○大村委員 広島と仙台が入れかわったのはたいした問題でもないようでございますが、考え方としては、通産局が地方にあるところは、当然そこに地方事務所を設けるのがたてまえだと私は考えます。それに向かって逐次やられておるというのが現状だと思いますが、しかし、たしか去年は、公取委から、札幌と広島を要求しましたということが、参議院の商工委員会ですかで、答弁されておったように私は記憶をするのですが、この札幌と広島というのは公取委の考え方だと思います。それを、いろいろ検討した結果と、こうおっしゃいますが、これは、公取委員会の考え方も、広島よりも仙台のほうがいい、こういう考え方に変わったのですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/50
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051・渡邊一俊
○渡邊(喜)政府委員 それは、あるいは私のほうからお答え申し上げたほうがいいかもしれませんが、公取委員会の意見としまして、広島がいいだろうか、仙台がいいだろうかという点は、いろいろ検討してみました。当初はもちろん両方を要求したわけでございますが、一カ所ということになればどちらがいいだろうか、どうも広島は——最終的には仙台がよかろうという結論になったわけであります。と申しますのは、広島のほうは福岡と大阪と両方から手が出ますので、がまんをすればがまんできないこともない。もちろん十分とは言えませんが。ただ東北地方は、東京にしても札幌にしても手が出ませんし、東京からですと、ちょっとそう始終行ける問題でもありませんし、しかも、わりあいに独禁法というものが十分理解の普及ができていないためにやはり相当問題がありまして、局地的な問題ではありますが、幾つか問題も出てきているということで、この際としてはまず仙台のほうというので、私のほうで一カ所選ぶとなればどちらかという判断のときには、公正取引委員会としまして、そうした事情を考えまして、仙台のほうが望ましいということは総務長官のほうに申し上げてございましたが、結局一カ所となれば仙台ということにおきめになったのではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/51
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052・大村邦夫
○大村委員 この議論は、あまりしたってたいして問題でもございませんが、私の言いたいのは、公取委のほうで、昨年度は札幌と広島を要求されて札幌だけになった、こういう経緯があるようでありますから、広島を云々と言われても、当時の情勢も今日の情勢も変わりがないし、むしろ仙台については、札幌ができたのですから、そういう関係からすれば、当初の要求というものをあくまでも主張をして、権威あるいわゆる要求をすべきじゃないか、こういうように私は考えるのです。このことを御指摘をしたかったわけでございます。
時間も経過いたしましたから、最後に一点、不当景品類及び不当表示防止法についてちょっとお尋ねしたいのですが、最近、各業界で懸賞つきの販売が大規模化しておる傾向があります。公取委もこれについては十分監視をしておられるというように承っておるのですが、特に、歌合戦、それからクイズ番組、こういうものに対する高額な賞金等が出ているわけでございます。ときには海外旅行もやる。これについて、一定の技術に対するものであるから、これが規制は困難だという見解を公取委では持っておられるように聞くわけですけれども、これの取り締まりというのはできないのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/52
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053・渡邊一俊
○渡邊(喜)政府委員 いまおあげになりました歌合戦、クイズ、それから海外旅行というふうなものは、これは私は二つに分けて考えるべきものだと思います。と申しますのは、歌合戦とかクイズというのは——私のほうで現在不当景品と結びつけて取り締まっておりますのは、商品の取引に関連して大きな懸賞を出すということについての規制をやっているわけであります。したがいまして、いわゆるクイズ、歌合戦というのは、これはほとんどの場合において、別に特定の商品を買った人だけに出場資格を与えるというふうなことにはなっていないと思います。要するに、だれでも申し込んで、その中から適当に選んでいく。こういう場合ですと、商品の取引に関連しての懸賞でございませんので、私のほうとしまして、これは現在の法規と結びつく問題ではないというふうに考えております。ただ、あとのほうで御指摘になりました、やれヨーロッパ旅行であるとか、やれハワイ招待であるとかという問題になりますと、これには、実は商品の取引に関連しての部分がかなりございます。もちろん、それが抽せんによる分でございますと、これは現在のところ一定の金額を限られまして規制がございますから、とてもヨーロッパ旅行なんていうのはできないだろうと思います。ところが、現在のところでは、法律の上では必ずしもそうなっておりませんが、公取の規則が、結局抽せんによる懸賞というものだけを規制するという姿になっております。したがって、そこの間を縫いまして、取引に関連したといいますか、ある特定の商品を買った人に応募資格を与えるようなかっこうをとりまして、そうして、それも標語の募集でありますとか、あるいはその商品を使っての簡単な作文でありますとか、あるいは商業写真のコンテスト、そういうようなものをやっているようでございます。そうしますと、やはり相当の審査員を依頼して審査しているわけですから、したがって、必ずしも抽せんという解釈には入らぬ。そこはいまの穴だと思います。したがいまして、私どもとしては、法律は必ずしも抽せんに限定しているわけじゃございませんから、法律で認めている範囲内のものはやはりある程度広げるべきじゃないかという考え方のもとに、現在規則の改正といいますか、そういう点をもっと検討してみようということでせっかく検討中でありまして、ただ、商品の取引に関連しないという問題でありますと、これは不当景品類の法律の外でもございますし、独禁法としましてもちょっとそこまでは手が及ばない。ただ独禁法あるいは不当景品類防止法の手の及ぶ範囲においては、もう少し現在のものよりは——規則ができた当時はあれでよかったと思いますが、その後、規則ができたために一つの規制を受ける。そうすると、その次の穴をねらうという空気が多分にございますので、われわれのほうとしても新しい事態に対処して、あまり弊害の大きくならぬ間にしかるべき措置を講ずるべきではないか、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/53
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054・大村邦夫
○大村委員 週刊誌を買いますとクイズがありますね、これはどういうことになるのですか。これは「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引に附随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の」、これに抵触しないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/54
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055・渡邊一俊
○渡邊(喜)政府委員 抵触する場合と抵触しない場合と二つ考えられると思います。一つは、その週刊誌なら週刊誌に私製はがきがついている。そしてその私製はがきでもって応募しなければ応募資格がないという場合には、われわれのほうの法律の取り締まりの範囲に入ります。ただそういうような限定なしに官製はがきでもってどんどん買っても買わなくても応募資格はありますということになりますと、ちょっとわれわれの取り締まりの範囲からはみ出るのじゃないか、こういうような解釈を現在しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/55
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056・大村邦夫
○大村委員 前者の場合が私はいまもあると思うのです。どうですかというより、あるという自信が私はあるのです。そういうものについてもう少し十分監視をしていただきたいということを要望しまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/56
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057・渡邊一俊
○渡邊(喜)政府委員 ちょっと補充的に答弁させていただきたいと思いますが、先ほどの私製はがきの場合も、全部が全部いけないのじゃなくて、最高額二万円というふうな一応の限定がございまして、その商品の値段の二十倍か一万円か、いずれか低いほうの額といったような限定がございまして、その範囲内は認める、それをこえてはいかぬ、こういうたてまえになっていることだけ補充させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/57
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058・内田常雄
○内田委員長 次会は、明四月二十八日水曜日午前十時十五分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会をいたします。
午後零時四十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804461X03119650427/58
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