1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十年二月二十三日(火曜日)
午前十時四十分開議
出席委員
委員長 吉田 重延君
理事 金子 一平君 理事 原田 憲君
理事 藤井 勝志君 理事 坊 秀男君
理事 山中 貞則君 理事 有馬 輝武君
理事 堀 昌雄君 理事 武藤 山治君
天野 公義君 奥野 誠亮君
鴨田 宗一君 木村 剛輔君
木村武千代君 小山 省二君
砂田 重民君 地崎宇三郎君
西岡 武夫君 福田 繁芳君
毛利 松平君 渡辺 栄一君
渡辺美智雄君 岡 良一君
佐藤觀次郎君 野口 忠夫君
平岡忠次郎君 平林 剛君
藤田 高敏君 横山 利秋君
春日 一幸君
出席国務大臣
大 蔵 大 臣 田中 角榮君
出席政府委員
大蔵政務次官 鍛冶 良作君
大蔵事務官
(理財局長) 佐竹 浩君
大蔵事務官
(銀行局長) 高橋 俊英君
労働基準監督官
(労働基準局
長) 村上 茂利君
委員外の出席者
日本輸出入銀行
総裁 森永貞一郎君
専 門 員 抜井 光三君
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二月二十三日
委員砂田重民君、地崎宇三郎君、西岡武夫君及
び渡辺栄一君辞任につき、その補欠として早川
崇君、前尾繁三郎君、賀屋興宣君及び羽田武嗣
郎君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員賀屋興宣君、羽田武嗣郎君、早川崇君及び
前尾繁三郎君辞任につき、その補欠として西岡
武夫君、渡辺栄一君、砂田重民君及び地崎宇三
郎君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
国際復興開発銀行等からの外資の受入に関する
特別措置に関する法律の一部を改正する法律案
(内閣提出第五二号)
昭和四十年度における旧令による共済組合等か
らの年金受給者のための特別措置法等の規定に
よる年金の額の改定に関する法律案(内閣提出
第七九号)
金融に関する件
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/0
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001・吉田重延
○吉田委員長 これより会議を開きます。
金融に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。藤田高敏君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/1
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002・藤田高敏
○藤田(高)委員 私は衆参両議院で過去幾たびか質疑がなされております労働者の社内預金の問題と財政投融資に関する問題について、以下大臣並びに関係部局に対して質問をいたしたいと思います。
まずその第一の社内預金でございますが、これは何回かわが党の議員を通じて国会で質疑がなされ、そういう経過の上に立ってことしの一月二十四日付大蔵省の銀行局長と労働基準局長の名前で通達が出されておるわけですが、その後この社内預金の傾向がどういう傾向をたどっておるか。まず一年間の経過の中で、社内預金の総額というものが、あるいは事業所の件数において社内預金の件数がどのように増減をしておるか。またその中で労働者の社内預金をしておる数がどういう状態になっておるか、現状をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/2
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003・高橋俊英
○高橋(俊)政府委員 お答えいたします。
これは実は労働省のほうで御調査になったものでございまして、直接の主管が労働省でございますので、少々資料が古いかと思いますが、昭和三十八年三月三十一日現在で全国的に調査をいたしましたところ、社内預金を実施しております事業所の数は約三万三千、それから預金をしております労働者の数が約四百十万人でございまして、その総額は私たちが予想したよりも少し少なく、約四千七百四十億円でございます。その後やはり少しは増加しておると思いますが、その管理、運営につきましてはかねがね労働省にお願いいたしまして、必要以上の、あるいは適正でない預金を社内預金として受け入れることがないように、またその各月の預け高につきましても限度を越えないように指導していただきたいということを申しております。直接には私どもとしても金融機関じゃございませんので、ただ関連があるという意味におきましては、十分関心を持ちまして指導をお願いしておるわけでございます。最近におきましていろいろ問題があることは承知しておりますが、まだ法律的な問題等につきましては私どもも何ら結論を持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/3
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004・藤田高敏
○藤田(高)委員 いまの数字は、これはいつの時点における集約数字であるかということをお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/4
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005・高橋俊英
○高橋(俊)政府委員 三十八年三月三十一日現在でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/5
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006・藤田高敏
○藤田(高)委員 三十八年の三月現在ということになりますと、これはたいへん古い数字だと思うのです。この数字をもとにして昨年の一月二十四日付の局長通達が出たと思うのですね。しかもこの種の問題が国会でこれだけ論議され、大蔵大臣の答弁ではございませんが、できれば歩積み、両建てではないけれども、原則的な考え方としては廃止したいというくらい、いわば重要な問題として論議をされてきておる課題でありますから、いま少し新しい調査を当局としてはする責任があるのではないか。いわんや昨年はあのように企業倒産というものが相当多く発生した。そういう中で、あとで私は触れたいと思いますが、社内預金というものが非常に犠牲をこうむっておる。こういう従来とは変わった条件というものが発生しておる時期だけに、そういう面の調査というものはもっと的確に行なわるべきではなかろうか。そのことに対する見解とあわせて、いま、まだ労働省の基準局長がお見えになっておらないようですが、少なくとも銀行局がそういった調査ができてないにしても、私は基準局は、労働省の関係は、この程度の新しい、一年後の資料というものはあってしかるべきだと思うのですが、その点についてのお考えを聞かせてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/6
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007・高橋俊英
○高橋(俊)政府委員 的確に覚えておりませんが、調査した日付は三十八年三月三十一日でございまして、その調査のまとまりましたのは昨年でございます。かなり調査の時点と調査のまとまった時点とはずれております。そういう意味におきまして、これより新しい数字がないのはまことに遺憾に存じますが、労働省といたしましては、おそらく一年に一回くらいはこの額を把握したいと思っておられることだろうと思いますので、三十九年の昨年のちょうど一年たった三月三十一日現在で調査を整理していただいておるものと思っております。私ども何しろ直接にはこの問題につきまして監督の立場にありませんので、労働省にお願いをいたしまして、一年間にどのくらい増加したかということを調査していただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/7
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008・藤田高敏
○藤田(高)委員 それでは私どものほうで調査した数字もありますけれども、一応この具体的な数字については、基準局長が見えられてからにしたいと思います。
次の質問については、これまた基準局長が、労働省関係がおいででなければ的確なお答えができないかと思いますが、少なくともこれは通産省あるいは大蔵省関係としても不即不離の問題でありますので、この点につきましては御調査ができておろうかと思いますが、先ほども触れました昨年中における中小企業を中心とする企業倒産の件数とこの企業倒産に関連をして社内預金が切り捨てないしはたな上げをされたという件数及び社内預金の総額、こういったものに対する数字とあわせて、この社内預金が切り捨てられたり、たな上げされたりすることによって労働者の権益というものがはなはだしく侵害されておる。これに対する当局の具体的な指導と対策というものがどのようになされてきたか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/8
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009・高橋俊英
○高橋(俊)政府委員 それらの数字の点につきましては、実は私手元に持っておりません。先般この問題につきまして労働大臣から予算委員会で御答弁がありましたが、そのときではそうおびただしい件数ではない、しかし確かにそのために預金が一部支払いがなされなかったというふうな傾向が出ておることは事実のようであります。しかしその間労働省があっせんに入りまして、なるべくそういうことのないようにということで、少なくともそのうちの何割かの件数は労働者に御迷惑のかからないような解決を見ておるというふうに聞いております。問題はただ法律上会社更生法の適用を受けた場合以外は、一般債権と同じで優先権がないという点でございます。この点につきまして、私も非常にむずかしい問題だと考えておりまして、法律上いかにするか。もともとこれは金融機関としての預かり金という性質でございませんで、会社が直接に従業員から金を預かる。労働基準法において、それを非常に保護しておるようなたてまえをとっておるのでございますけれども、これは元来なぜ労働省はこういう社内預金を認めたかといいますと、戦前におけるいわゆる何といいますか非常に搾取的な女工哀史の時代に、その人が逃げ出さないように給料の相当部分を会社が預ってしまう。それをなかなか払い戻さないということから、それをいつでも、払い戻しするように要求があったらどんな場合でも払わなければいけないというふうになっておるわけでございます。そういう意味においてたまたま定期預金であるとかなんとか区別はしておりますが、いかなる場合においても払い戻しの請求はできるわけでございます。ただ自分の会社のことでありますので、まあそれを信用いたしまして安心しておった。ところが意外にも会社が倒産をしたというふうなことが実際上出てくるわけでございます。どういうふうに法律的に扱っているのか、私としてもちょっと名案がないのでございます。ただ会社更生法の適用があった場合には保護されるというその趣旨につきましてもどういうわけでそういうふうなことを、一般の破産の手続によった場合とに差別があるものか、そういう点については私としても何かこうわからないというふうなところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/9
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010・藤田高敏
○藤田(高)委員 質問の半分はほとんど労働省関係になるわけですが、大蔵大臣並びに銀行局長に関連する質問を先にしたいと思います。
先ほども銀行局長のほうから御答弁がありましたが、今日の社内預金に対する法的根拠といえば基準法の十八条以外にはあまり見当たらないように思うわけであります。ところが昨年、日特金属のように企業が倒産する。そうすると社内預金が実質的にたな上げないしは切り捨てられる、こういう事態になってくると、労働者は法的には何をよりどころに権利を擁護できるのかということがやはり重大な問題になってくるわけであります。そこで本質的な社内預金の是非はあと回しにして、表現は悪うございますが、必要悪として今日の社内預金制度を認めるということであれば、また国の立場からいってもそれを黙認しておるのであれば、企業倒産が起こったようなときに労働者の権益が侵害されないような保障条件を法的にもやはりつくらなければ、対策がないということでは、これは責任のがれになって問題があると私は思うのです。そこで私の考えでありますけれども、先ほどの答弁ではございませんが、会社更生法の中にはいわゆる共益債権の条項がございます。したがって必要悪の制度としてこれを容認していくまでの間は、基準法の十八条かどこかに追加をして、会社更生法でいう共益債権的な条件を基準法に追加することが一つの権益擁護の実際の手段ではないかと思うわけです。これに対する見解をひとつ聞かしていただきたいのと、いま一つはたいへん二義的な手段になるわけですが、企業が倒産をした、大体大きな会社でいえばこれは会社更生法の適用を受けておる。これはケース・バイ・ケースによるわけですが、受けておる。そうしますと二義的手段としてはこの会社更生法の共益債権の中にも現在社内預金の条項が入ってないわけですね。ですから会社更生法の共益債権の項の中に社内預金というものを入れていくことも、今日よりは一歩前進した権利擁護の手段ではないかと思うわけでありますが、それに対する見解を承りたい。
時間的に質疑の効果をあげる観点から問題点を集約して申し上げますが、以上私が指摘した具体的な条件が、そういうことができないということであれば、これは社内預金の沿革からいって、あるいはその有利、安全、確実という預金の本質からいって、有利ばかりを追ってかっての保全経済会ですかあるいは頼母子講ですか、こういうものに半ば匹敵するような社内預金というものはやはり全廃する以外にないのではないか、こういう一つの三段論法ではありませんけれども、そういう考え方ができてくると思うのですが、この三つの考え方に対する見解をひとつ大臣からお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/10
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011・田中角榮
○田中国務大臣 確かに社内預金制度につきましては中途はんぱだと思います。私は、原則としては社内預金は廃止したい、こういう考えを持っております。しかし労働省の考え方は、私たちよりもそう強くはないと思います。また各企業者も労働組合もわれわれは愛社精神、みずからの企業をみずからの力でやろうというのだから、債権さえ確保されるならばいまの制度をやめることはない、こういう考え方があります。皆さんでも社内預金などというものは金融の正常化のためにもやめてしまいたい、こういう極端にも見える私の発言には、そのままなかなか承服せられないと思うのです。これは非常に長い歴史がある。ですから歴史の上でやむを得ず労働基準法の十八条に規定をしたわけでございますが、この規定も万全なものではございません。また会社更生法の適用を受けた場合には、共益債権として優先的に請求ができるということにはなっておりますが、法文上一体どこにあるのかということが指摘せられれば条文整備には欠けておる、こういう問題がございます。また私のほうからそういうものを整備をすると、社内預金制度が恒久的なものになってしまって、これを廃止して正常な金融の状態にするというような道とは遠いことになるわけであります。それで労働基準法の十八条にもっと社内預金を確保するというような条文をつくるとするならば、いろいろな理由はあっても現在あるのだから——あなたは必要悪ということを言われましたが、必要悪ということよりも、とにかく歴史的に非常に長いものだ、現実にあるのだ、こういうことからいえばどうしても保護の条文を置くべきだ、こういうことになれば、私のほうでは、では一般金融機関と同じような金利の制限をしなければいかぬ、金利の制限をされるならば社内預金そのものがゼロになるのだ、こういう堂々めぐりの議論をやっておるために、社内預金の現実というものがありながら平穏なときにはなかなか問題にならない。非常にいい制度である。これが倒産したりすると特に破産法であるとか和議法によって優先債権として認められない、こうなってくるとたいへんな問題になるわけであります。特に社員でなければならないというものが役員がやったり退職した役員がやったり、それから役員の親戚の者がほかから収入を得てきて利息が高いということをもって社内預金の状態で預金をしておる、こういういろいろな問題がございますので、まず社内預金というものを育てるのか、これを五年間でやめるのか、どっちかに方向をきめないとどうもうまくいかないようであります。そこが同じ政府で連帯して国会に責任を負っておるわけですけれども、労働省としては現にある現実に対しては、これは何年間でやめるというわけにもいかぬでしょうし、私のほうも所管でありませんから——大蔵大臣の所管であればやめる、少なくとも五年間、十年間かかってもやめるということにウエートを置きますが、労働行政の上から見ましてそうも端的にいえないだろうと思います。まあこういう御発言を契機にして毎国会にこれを何とかしろ、こういうことがありながら的確なものができない、(「怠慢だ」と呼ぶ者あり)怠慢と言われてもなかなかこれはむずかしい問題でございます。ですからこれは私は率直に申し上げますと、大蔵省でもってこれをやめるという方向でいくというならば、それでもいいと思うのですが、ただその場合、その社内預金をしておる方々が納得をしないと、いい政策でも国民の共感と協力を得なければ、なかなかやれない、時期を見ておる、こういうところでございます。まあいずれにしましても、本件に対してはいろんな問題が起こっておりますので、こういう問題を解明しまして、いまよりもより合理的な状態をつくるべく努力をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/11
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012・藤田高敏
○藤田(高)委員 社内預金を廃止するかどうかについては、労働政策と金融政策という、この二つの観点から両論あるが、廃止するとしてもその時期を見ておる、こういう御答弁ですが、先ほどからの御答弁を聞いておりましても、私は右するか左するかという場合には、少なくともここ四、五年来これは国会で論議をされてきて一おることですから、いま少し積極的にこの問題についてどうするのだという統一見解をやはり政府としてはもうお持ちにならなければ、同じようなことを毎議会繰り返して論議すること自身が論議のロスだと思う。そういう点で、政府としての統一見解を少なくとももう今日の段階では出すべき時期にきておると思うのですが、その時期判断についての御見解を聞かしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/12
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013・田中角榮
○田中国務大臣 非常に歴史のある問題でありますし、功罪相半ばという問題でありますので、広く国会の意見を聞こうと、こう思っておるわけです。ですが、国会の皆さんの意見も、どっちかやれという、こういう意見がなかなか出てこないわけであります。これは労働省と話をつけて、金融の正常化のために、また究極の目的から考えると、どうも事件が起きてから、労働者の権利が擁護されないという面のほうにウエートを置いて、これはやめたほうがいい、こういう御議論が集約的に出てくると、私たちも労働省とも話を詰めたり、また労働組合にも、企業者にもそういう問題を持ちかけて話をしようと思うのですが、国会でも、政府はどうだ、こういう御議論でございます。非常に現実的にむずかしいので今日に至っておりますが、この問題に対して労働組合の意見も、それから企業者の意見も、政府部内の意見も、ひとつできれば調整をしてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/13
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014・藤田高敏
○藤田(高)委員 私は最終的な結論が出るまでの間、現状よりは一歩前進した暫定的な対策というものがあってしかるべきじゃないかと思う。たとえば社内預金を廃止することが無理だ、あるいは社内預金を廃止しようというまでの間に、どちらになっても現在非常に中途はんぱな状態にあるわけですから、これを完全廃止だったら廃止までの間には、暫定手段として労働基準法の十八条に共益債権的な条項を追加するとか、あるいは会社更生法の共益債権の中に社内預金の条項を入れるとか、こういう中間的な対策なり処置というものがあっていいと思うのです。そのことさえもしないで、全く大臣の御答弁ではないが、中途はんぱのぐらぐらな状態に置いて、そうして結論がどっちになるやらわからぬということは、これは政府としては非常に不定見のそしりを免れない、また政府自身の態度としては怠慢のそしりを免れないと思うのですが、どうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/14
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015・村上茂利
○村上(茂)政府委員 社内預金の問題が数年来国会でしばしば論議され、先生方をわずらわしておるわけですが、私ども労働基準法十八条のいわゆる強制貯蓄に関連いたしました貯蓄金管理契約につきまして、俗称社内預金という立場から取り上げられまして、この本来の制度のねらいがやや歪曲されて、金融一般の問題に関連していろいろ問題が生じておるということについて、これをいかにすべきかという点について検討しておるわけでございますが、先生御承知のように、こういう貯蓄金の契約は認めない、禁止をするのが労働保護法のたてまえであるわけでございます。しかしその禁止を例外的に認める場合の担保は何かと申しますと、労働基準法の場におきましては金融政策の場からの担保ではなくして、一つは労働組合の代表ないしは労働者の多数の代表者との書面による協定によってなされた場合に初めて例外を認めるぞという、その労働組合の力と申しますか、その集団的な力を一つの担保にいたしまして、禁止規定の例外を認めておる、こういうたてまえである。したがって、この制度の運用につきましては、労使間の問題としてどのように運営されるか、特に労働組合の考え方なりその態度というものが非常に大きく関連をしてくるわけでありまして、それをどうするかという基本問題が一つある。もちろんその他の担保方法としては、労働基準法百十九条の罰則による使用者に対する一つの規制があるわけであります。法のたてまえとしては、労働組合または労働者の多数を代表する者、その担保と、いま一つは罰則ということになってくるわけであります。したがいまして、実は大蔵省のほうとも始終緊密に連絡をとりまして検討しておるわけでありますが、金融の場においてこの問題を扱うとすれば、一応私どもが労働者保護法という立場から扱っておりますものとのかみ合わせを考えざるを得ない。しかし金融政策として何らかの担保措置を講ずるということになりますと、実は労働保護法の場では禁止しておるというものを逆にある程度オーソライズする、こういう形になりまして、この労働基準法の一つの理念と金融政策上の理念とがかみ合わないという問題を感じまして、数年来御論議に相なっておりまして、私どもいろいろ苦慮しておるわけでございますが、そのように考えておる次第でございます。もしこの貯蓄金管理契約という制度そのものが宙ぶらりんでぐあいが悪いから廃止しろ、労働基準法の十八条の規定を改正せよ、こういうお話になりますれば、これは労働基準法改正問題という問題に発展いたしまして、御承知のように法律改正につきましては労働基準審議会を通じまして労・使・公益三者の御意見を十分伺いつつ、その改正の方向を見定めなければならない。その場合に、御承知のようにほかの基準法の条項にも影響なしとしない、こういう問題がございまして、十八条だけを改正するかいなかという問題にとどまらずほかにも発展する可能性がある、こういう問題もございまして、私ども慎重にいたしておる次第でございます。しかし問題は、現実に多数の労働者が被害を受けて、そしてこれが相当一般化しておるということになりますれば重大問題であり、私どもも監督上の責任をとらざるを得ない、こういう観点から、特にこの社内預金の問題につきましては倒産その他の場合に十分な注意を払っておるところでございます。私どもの不十分な点もあろうかと思いますが、昨年の倒産企業約四千二百件、私どもの把握いたしておりますのはその程度の数字でありますが、この企業倒産の中で社内預金の返還不能であるものとして把握された事業場は十六件、その預金額は約一億六千万円でございます。もとより発生件数はもっと多うございますけれども、現実に支払いが困難であるということでペンディングになっております件数が十六件、一億六千万円ということでございますが、これにつきましても事業主側に支払い計画を作成いたさせまして、極力努力しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/15
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016・藤田高敏
○藤田(高)委員 私はあとにも質問をかかえておるわけですが、きょうは基準法それ自体の論議をしようと思って質問したわけではないのですが、いまの御答弁を聞いておりますと、ちょっと私は問題があるように思うのです。十八条の、社内預金をさす場合の条件として、労働組合もしくは従業員の過半数の同意がなければ社内預金をさすことができない。この条件のあるのは社内預金を奨励さすという積極的意図から出たのではなくて、いわゆる社内預金というものの日本における歴史的な沿革の中から、足どめ金的な社内預金、いわゆる強制貯金というものがなされてきた。こういう歴史的な背景の中から、強制貯金というものは組合の意思ないしはその職場の過半数以上の者の賛成がなければ、貯金をやらしてはいけないぞという、強制貯金そのものを制限といいますか、やらさないという、そういう規制手段として十八条の条項というものができたのであって、いまの局長の御答弁を聞いておると、何だか社内預金をさす一つの積極的手段として、十八条のそういった手続行為があるやに聞こえたわけですが、私はそうじゃなくて、いま私が指摘したような立場の条文解釈であるべきだ、こう思うのです。その点私の聞き間違いかもわかりませんが、そのように私は考えるわけであります。
そこでなるほど一つの労働行政というか、労働政策の立場からする見解と、金融政策上の見解との間には、ある意味におけるずれのあることも理解できるわけですけれども、件数が多い、そして全国的にこれは普通化してきておるので、社内預金が切り捨てないしはたな上げされておる傾向が、慢性化されてくるような状態であればどうだといいますが、私はそういう状態が起きたらたいへんだと思うのです。これはやっぱりいまの一億何千万か、二億か知りませんけれども、そういう部分的にもせよ、労働者の権益というものが侵害されておる。そのこと自体は、量の多い少ないにかかわらず、私は重要な問題として、いわんや労働省は労働者の権益保護のサービス省である。基準法は特にその保護法としてのたてまえをとっておるということであれば、これはなるほど基準法全般の改正の問題も起こってくるかもわかりませんが、社内預金に関する限りは、現在そういうものは現存しておるという事実からいって、私は一つの救済手段といいますか、完全な権利擁護の手段というものが——それは基準法以外でつくられる
のだったらどこでもいいのですよ。いいけれども、私の考えでは基準法の十八条あたりに、そういう権利擁護の条項を暫定手段として入れることが必要ではないか。これは労働省として当然そういうお考えに賛成できると思うのですが、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/16
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017・村上茂利
○村上(茂)政府委員 私の答弁が不十分だったせいか、十八条の趣旨につきまして、先ほど申し上げました趣旨と違ったようにお考えいただいたようでありますが、基本的には先生の解釈と同じなんでありまして、奨励する趣旨のものではないのであります。むしろこれは禁止しているのだ。禁止しているのだが、ただ例外的に認めるときは、こういう労働組合の代表との書面による協定できちっとした場合にのみ例外的に認めておる。労働者保護の見地からこれはそうやたらに行なうべきじゃない。こういうのが私どもの考えでございます。
ところでそうは申しますものの、現実にこの制度がかなり広く運用されておるから、労働者保護の立場から何らかの措置を考えるべきじゃないかというような点につきましても、これは私どもも、方向といたしましては、十分その線に従いまして検討すべきであろうと思いますが、ただ労働基準法上の問題につきましては、たとえば賃金不払い問題その他の問題がございまして、中央労働基準審議会におきまして、これらの問題が審議会の場を通じていろいろ検討されてきたのでございまして、実は社内預金につきましては、一般賃金不払い問題よりは、比較的労働者の代表委員も、使用者の代表委員も積極的な御論議がなかったように記憶いたしております。しかしただいまの先生の御発言もございましたので、真剣に労働基準審議会の場におきまして、十分検討していただくように、私どもはむしろ労使側の意見提示を待って、受け身で審議会で検討いたしておりますが、本問題につきましては、ひとつ私どものほうといたしましても、問題を提示して御検討いただくことにいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/17
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018・武藤山治
○武藤委員 関連して。
いまの藤田委員の質問を聞いておって、私どうも理論的にもおかしい。この際明らかにしておかなければいかぬ。その点を端的に聞きますから、端的にひとつ率直に答えてもらいたい。
一体これは貯蓄なのか、貸し金なのかということです。いま労働省の説明では、労使間の契約に基づいて行なわれるのだから、その面を強く見ると貸し金ですな。組合員が会社側に貸している金だと解釈が立つ。今度は銀行局のほうから、これは銀行業務のような金融機関と見れば、監督をして、さっき大臣が言うように、利子の制限をしなければならぬ。貯蓄ならば、こういう問題が出てくる。これは貸し金なのか貯蓄なのか、それをまず明らかにしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/18
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019・村上茂利
○村上(茂)政府委員 ストレートに社内預金とは何ぞやという点には私ども実はお答えいたしかねるのでございますが、労働基準法第十八条に基づくところの貯蓄金管理契約は何かということになりますれば、法律に書いておりますように、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理しようとするときは云々、こういう文言になっておりますように、私どもは俗に社内預金と称しましても、労働基準法にいうところのものはいま申し上げたものであるというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/19
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020・武藤山治
○武藤委員 そうすると、いまの労働省の解釈では貯蓄ですな。貯金ですな。そうすると銀行局長、貯金だということになりますと、これは臨時金利調整法の適用を受けるのじゃありませんか。利率についてはきちっと法律を守らなければいかぬのじゃないか。現代は守っておらぬじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/20
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021・高橋俊英
○高橋(俊)政府委員 これは相手が金融機関でないという点は違いますけれども、私は預金だと思います。しかし臨時金利調整法が適用されないのは、臨時金利調整法は社内預金に及ばないことになっております。これは要するに労働基準法で認められた非常に例外の預り金でございます。臨時金利調整法は金融機関の預金について規定しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/21
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022・武藤山治
○武藤委員 しかし金融機関ではないけれども、金融機関と同一の性格と運営を持っておるわけです。労働省のほうの、基準法の規定で見ると………。それを野放しに、何ら保護の規定も何もない、検討します、しますで、五年間うっちゃっておく、こんな怠慢はないと思うのです。もし貯蓄だとするなら、少額貯蓄免税で五十万円までは税金をかけないように今日の制度で恩恵を受けておる。なるほどそういう面から見ると現状の取り扱いは貯蓄ですな。しかしそれが何も国家から保護される規定もつくられない、つぶれたときはパーになるというようなことで一体いいのだろうか、もし貯蓄だという解釈が成り立つならば。私はそこらがどうもノーズロのような気がするのです。もう少し真剣に労働者保護の立場から考えなければいかぬと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/22
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023・高橋俊英
○高橋(俊)政府委員 その点について、これは政府の統一見解でも何でもなく、私の考えております方策を一言述べさせていただきたいと思います。
社内預金の中に制限がないのです。その人の受けている俸給から比べればやや過大ではないかという気味もしばしばある。私はこれはやはり労働者が、自分がもらった給料の中から、本人の所得の中から積み立てていくものである、そういたしますならば、やはり適正な限度を、社内預金について、その人の受ける所得から判断して、適正な限度を設けまして——その限度というのは、おそらくそう高いものじゃないと思う。これにつきましては、また別個に考えておりますけれども、ある標準を設けましたら、そこまでの限度においては、先ほどの倒産等の場合におきましても、先取り権がある、それを越えた部分についてはない、こういうふうにすれば、これを基準法で規定することは、私はむずかしいと思います。それ以外の方法でも、現に会社更生法というような規定もございますから、そういうようなことによって、一定の限度内においては先取り特権を認められておる、それ以上の部分については必ずしも保護されない、そういうふうにするのが適当ではないかと思いますが、これは私の見解でございまして、まだ労働省その他ともお話はできておりませんが、そういうことを考えてはおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/23
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024・武藤山治
○武藤委員 そうすると、参考のために伺っておきますが、社内預金というものは、利息制限法の規定の範囲内で制限されるのか。年一割五分までは元本百万円以上の場合でも利息がとれる、あるいは十万円未満は年二割まで利息を支払う、この利息制限法の適用でいくのですか、それを参考のためにちょっと伺っておきます。労働省のほうに聞いておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/24
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025・村上茂利
○村上(茂)政府委員 労働省としましては、基準法第十八条の規定によりまして、「命令で定める利率による利子を下るときは、その命令で定める利率による利子をつけたものとみなす。」利率をつけなさい、つけない場合には、いま申しましたような形で「命令で定める利率による利子をつけたものとみなす。」こういう規定をしておるわけでございます。これは先生御承知のとおりでございまして、法定利率を下回らない、それを最下限にして、上ならよろしい、こういう考え方を労働者保護の見地からとっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/25
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026・武藤山治
○武藤委員 利率というのが、利息制限法の規定の範囲内までの利率なのか、それとも金融機関並みに扱っている利率なのかということが問題なのだ。貸し金なのか、貯金なのかということで分かれてくるわけですから、労働省は一体どういうふうに考えておるのですか。利息最高限は二割までとれるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/26
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027・村上茂利
○村上(茂)政府委員 労働基準法の解釈といたしましては、利率の最下限につきまして、法定利率を下回ってはいけない、こういうたてまえをとっておるわけでございまして、その最高限につきましては、法的にこれを規制するという措置は講じていないわけでございます。これは労働者代表と使用者との書面による管理契約を締結する際の任意の合意にまかされておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/27
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028・武藤山治
○武藤委員 もういいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/28
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029・藤田高敏
○藤田(高)委員 武藤委員のほうから質問をされた点については、必ずしも的確なお答えが得られないように私は思うわけです。これはきょうの持ち時間の中ですぐ結論を出すことについても、これは政府のほうに何か手助けするような言い方でありますが、ちょっと結論が出にくいと思いますので、まずこの社内預金は——私ども社内預金ないしは社内預金と言っておりますが、これは法律上の預金なのかどうか、そうしていま武藤委員が質問された利息制限法の適用を受けるのかどうか、こういうものについての統一見解、これをひとつ次会までに政府の統一見解を出してもらいたいと思う。それと私が質問した、いろいろいままで四、五年来の論議の経過を通して、最終的にこの社内預金はやめるべきか、あるいは当分の間現状を黙認していくということであれば、労働者の権益擁護の立場から、より積極的な権利保証の条件というものを何らかの形で法律改正するかどうか、この三点についてひとつ次会までに統一見解を出してもらいたいと思いますが、大臣の御答弁をひとつ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/29
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030・田中角榮
○田中国務大臣 非常に長い問題でございますから、次会までと確約できるかどうかわかりませんが、ただいまの論議を通じましても定義を下すべきであります。私もそう思いますから、政府部内において早急に検討いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/30
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031・藤田高敏
○藤田(高)委員 それでは近く統一見解が出るということで了承いたしたいと思います。ただちょっと本質的な問題から前後いたしますが、最近社内預金がボーナスをもらうとき、賞与をもらうときに、賞与の一部を社内預金にするということを条件として使用者、経営者側が出してくるわけであります。ボーナスは各人がもらうわけですから、労働組合との交渉で云々ということになっても、労働組合はこれは各人の自由意思だということで、各人の自由意思にまかしておるケースが最近非常に多くなってきております。各人にこの社内預金をするかしないかということをまかせますと、極端に言えば、だれかが社内預金をするとおれもやはり少しはやらぬと会社に対して調子が悪いというようなことで、実質的にはこれは労働者の根性といいますか、性根の問題といえばそれまでかもわかりませんけれども、いわば基準法十八条の精神的に拘束をする強制預金的な性格を持っていると思う。これに対する基準監督署といいますか、基準局の見解を聞かしてもらいたい。そうしてまたその見解に基づく指導方針というものをお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/31
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032・村上茂利
○村上(茂)政府委員 御指摘のような事例がありますことを私どもも承知いたしております。この点につきましては、いやしくも強制にわたることのないように、労働基準法に基づく監督、指導を行なっておるところでございますが、特に引き出し制限期間を設けるというような事例につきましては、労働者が預金の返還を請求してもこれに応じないという趣旨のものであれば、これは労働基準法に違反すると認められる可能性が強いものでございます。したがいまして、このようなことのないように十分注意してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/32
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033・藤田高敏
○藤田(高)委員 この点はいま少し論議したいところでありますが、時間の関係で次に進みたいと思います。ただ要望としては労働省の行政指導の方針としては、やはり賞与を支払う場合に、社内預金として取り扱うことについては、それはなすべきでない、そういう方向で指導をしてもらいたいということを強く要望しておきたいと思う。これは実際問題として一たん労働者に十万円だったら十万円の賞与が渡って、それから自主的に一万円、二万円なり持ってくるのだったらいいのですけれども、極端に言うと、支払うときに、支払う先に、社内預金の分を差し引いて賞与を渡しているのです。こういう実態は私自身幾つも知っております。こういうあり方は、これは私は形の上においても十八条に厳密にいって抵触すると思う。そういうことはひとつ厳に戒めるように、行政通達といいますか、行政指導をやってもらいたい。これはいいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/33
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034・村上茂利
○村上(茂)政府委員 はい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/34
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035・藤田高敏
○藤田(高)委員 それでは時間の関係で次に進みたいと思いますが、財政投融資の関係についてお尋ねをいたしたいと思います。この財政投融資が一般財政に比較して前年度対比で非常に大きな伸びをしておることは、今次国家予算の財政投融資を含めた一つの特徴としてあげられておることはだれ人も認めておるところでありますが、まず第一にお尋ねしたいことは、ここ二、三年来の財政投融資の資金が年度末でどれぐらい余ってきておるのか。いわゆる翌年度にどういう形で繰り越されてきておるのか。全体の何割ぐらいが年度末において残っておるのか。この実態をひとつお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/35
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036・佐竹浩
○佐竹政府委員 財政投融資計画の実行にあたりまして、ただいま御指摘のように必ずしも年度内に全額支出を終わっておらないのが実態でございまして、翌年度にずれますのが、年度によって必ずしも一定をいたしておりませんが、従来ある程度のものが翌年度にずれておることは御指摘のとおりでございます。各年度の率につきましては、いまちょっと資料を調べました上でお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/36
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037・藤田高敏
○藤田(高)委員 昨年と一昨年ぐらいの金額でいいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/37
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038・佐竹浩
○佐竹政府委員 ちょっといま資料を調べまして後ほどお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/38
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039・藤田高敏
○藤田(高)委員 概数はあとで聞かしてもらうことにしますが、理財局長なり事務当局として、三十八年度末あるいは三十七年度末で大体何割程度ぐらいが翌年度へ繰り越されて、翌年度の財政投融資と合算した形で使われておるか、その何割程度というぐらいなことは、これは管理当局としてはおわかりでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/39
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040・佐竹浩
○佐竹政府委員 先ほども申し上げておりますように年度によって必ずしも一定いたしませんが、大体のところを申し上げますと、感じでありますが、大体二割ないし三割の見当であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/40
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041・藤田高敏
○藤田(高)委員 これはあとで具体的な数字を聞かしてもらいますが、その数字とほぼ何割程度という感じですね、それとの違いが出ましても、その数字自体の食い違いについては私は一切責めようとは思いませんが、いま聞いて率直に感じましたことはかなりそのワクが多いということなんですね。二割ないし三割——二割でも去年の分でいきますと二千六百億ですか、三割になれば三千五、六百億でしょう。これは社内預金ではないけれども、全国の社内預金の額にかれこれ匹敵しますし、相当ばく大な金だと思うのです。こういうものが幾ら国会の承認を得るという手続を経なくて処理される資金であるとはいえ、いま少し翌年度に繰り越すようなものは——それはケース・バイ・ケースによっていろいろ事情があるでしょうけれども、国家予算の場合は翌年度繰り越しに対してはそれなりの報告がなされて、そうして何々の理由によって翌年度へ繰り越されるのかというそういう審議、承認がなされるわけですね。財政投融資の場合はそういう措置がなされない。これはあとでも触れたいと思うのですが、特に今年度のように財政投融資のワクが拡大をされてきて、世間で言われておるように第二の予算と言われるような性格を帯びてきますと、この財政投融資の取り扱い、運用について、今日段階において一つの新しい性格を持たす必要があるのではないかと思うわけであります。結論的に申しますと、これはいろいろ論議のあるところかもわかりませんけれども、一兆六千億からの財政投融資のワクが四十年度で資金運用をされるということになれば、これは予算のかれこれ四割にも匹敵する、こういうものが一執行機関といいますか、政府の考えだけで処理をされて、そうして国会に対しては単なる参考資料として御検討願う、こういうものではこれはもはやいかぬのではないか。いま理財局長の御答弁にもあったように二割ないし三割程度というものが翌年度に繰り越されるということであれば、これはたとえば三十九年度の繰り越しが三千億ないし四千億かりにあったとすれば、これは合わせて二兆円からのものになるわけですね。こういうものが政府機関だけの考え方で執行できるという点については非常に問題があると思うのです。そういう観点から、これは大臣にお尋ねをしたいのですが、財政法との関連においてこの財政投融資というものは一般会計予算と同じように、もしくはそれに準じた取り扱いをするように、ひとつ今年度を契機に、もうことしは出しておりますけれども、翌年度あたりからそういう方向に財政投融資の取り扱いを切りかえていく必要があるのではないかと思うのですが、それに対する見解をお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/41
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042・田中角榮
○田中国務大臣 本件につきましては間々御質問があるわけでございますが、財政投融資は一般会計と一般金融との中間にありまして、まあ補完的任務を行なっておるわけでございます。でございますし、財政投融資は一般会計と違いまして時の情勢に対応して弾力的に運用する必要がございます。私は一般会計の案件と同じように国会の議決案件とすべきであるという議論には賛成いたしておらないわけであります。それでこの財政投融資の投資先というものは、政府関係機関及び地方財政、各種公団等でございまして、法律及び政府関係機関予算という形で国会の御審議、御議決を経ておるわけでございます。でございますので財政投融資そのものが議決案件というケースのものではないという考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/42
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043・藤田高敏
○藤田(高)委員 これはいろいろ見解の存するところでしょうけれども、先ほどもちょっと触れましたように、資金ワクが非常に膨大になってきておるということが一つ。いま一つは、あとでも触れたいと思いますが、四十年度の計画に見られるように産業投資会計に出資するものが減って、そしてその肩がわりとして利子補給というものがなされてくる。これは財政投融資との関係において私は非常に質的な面において重要な要素を持ってきておると思うのです。また今日国債発行については非常に財政法のたてまえからいって厳格な規制がある。したがってなかなか国債の発行ということは、今度の財政投融資で言えば公募債等の実質的には国債を発行しておるような性格を持った処置をとっておるわけですけれども、そういう実質的な、これは表現が悪いですけれども、一般財政で財源的にどうにもならない。その調達財源として国債を発行したい。しかし財政法の厳格な制限があるからできない。それを財政投融資という手段によってそういう財源調達をやろう、こういう性格が、今日のこの財政投融資の額なりあるいは四十年度の財政投融資計画の内容というものを検討すると、少なくともそういう見方が有力な見方としてあるわけであります。こういう性格を帯びてきた段階では、やはり国会の議決案件として取り扱うことのほうが、より私は、予算公開性の原則といいますか、そういう観点からいっても大切なことであるし、当然ではないかと思うのですが、あらためてそういう新しい要素が加わってきたという今日段階における財投の性格上から、議決案件への方向ということが正しいと思いますが、それに対する見解をもう一度お聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/43
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044・田中角榮
○田中国務大臣 財政投融資につきましての基本的な考え方は先ほど申し上げたとおりでございます。事情が変わってきた、いわゆる産投会計に対する出資のほうを利子補給制度に切りかえたというような問題もあるのでということのようでございますが、先ほどから申し上げましたように、議決案件にするかしないかという法律的な問題だけしか残っておりません。この投資先の問題に対しては、各省関係機関予算として御審議をいただいておりますし、また財政法の規定等の改正につきましては、法律として御審議をいただいております。それで一般会計につきましても当然議決をいただいておるわけでございますので、また御審議も一般会計と同じくこうした御審議をいただいておるわけであります。ただ、法律に基づいて、一般会計予算と同じように、特別会計予算と同様に、財政投融資計画につきましてこれを議決案件にするかしないかという一点だけの問題でございます。これは財政投融資計画、地方財政計画でございまして、これは一般会計予算、特別会計予算、政府関係機関予算、こういうものとは性質が違うものでございます。金融に非常に近い、こういうものでございます。でありますので、財政金融の一体化の中にあって、財政投融資としての補完的任務を果たす役割りを持つものでありますので、この計画を御審議されるということはもう当然のことでございますが、議決をするということになりますと問題がある、こういうことは言い得るわけであります。財政投融資計画について議決案件にしなさい、もう一つは決算に対しても議決案件にしなさいということは、過去長い間議論せられた問題でございますが、やはり法律に基づく一般会計、特別会計、政府関係機関予算等は議決案件でありますが、あくまでも財政投融資計画、地方財政計画、これは議決案件ではなく審議案件だということが正しいという認識であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/44
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045・藤田高敏
○藤田(高)委員 この問題は、過去においても論議をされてきておることでありますが、私の持ち時間の関係もありますので、これは議決案件にすべきである、こういう主張をして、以下具体的な論議の点については留保したいと思います。
時間の関係もありますので、以下やや具体的な問題点について質問をしたいわけですが、今度の四十年度の財政投融資計画の内容の中で一番顕著にあらわれてきておる財源調達のワクというのは、厚生年金の増額あるいは公募債の増額、借り入れ金の増額、こういう点が非常に顕著にあらわれてきております。そのものずばかりでひとつお尋ねをしたいのですが、この厚生年金の一千八十億の増額分は、この厚生年金法の改正によって、いわゆるこの保険料を中心とする増額分をここに見込んでおるわけなんですね。これはいわば健康保険法の改正ではございませんけれども、昨年この法案が出されて、ああいう形で成立を見なかった。われわれの立場からすれば、こういったむちゃな厚生年金法の改正に対しては賛成することができぬわけです。早い話が、この厚生年金法の改正が通らなかったという場合には、それだけ財投の原資面で一千億からの穴があく。そういう場合は、全体的に財政投融資計画の計画案をつくり直すわけですか。つくり直すとすれば、どういう——現在いろいろここにこまかくありますけれども、この厚生年金を、たとえば福祉事業団、そういうところに百何億か持っていっておる。そういうものをはずしていくのか、それとももしそういう面の歳入欠陥が生じた場合には、全体的に財政投融資計画というものをつくり直すのか、そういった点についてお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/45
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046・佐竹浩
○佐竹政府委員 四十年度の財政投融資計画の原資の見積もりの中で、厚生年金関係の原資は、法律改正を前提として見込んでおるのではないかというお尋ねでございますが、まさに御指摘のとおりでございまして、これは厚生年金法の改正が五月一日から施行されるという前提で収入を見込んでおります。これは御承知のように、本国会に厚生年金法改正法案が提出をされておりますが、この政府提出法案の中におきましても、施行期日五月一日ということで御審議を仰いでおるわけです。したがいまして、当計画の中におきましても、その実施期日に合わして収入を見込んでおるわけでございます。ただいまの御質問のように、万一法律改正がおくれるというような場合に一体いかなる影響があるかというお話ですが、これはただいま政府といたしましては、五月一日施行の原案でもって法案の御審議をお願いいたしておるわけでございますから、これが延びるというようなことは、ただいま実は考えられないわけで、もっぱらこれは国会の御審議の経緯を通じて見ませんと、ただいま何とも申し上げかねるわけでございます。かりに御指摘のように延びるという場合、その施行期日がいつからになるのか。たとえば八月施行になるのか十月施行になるのかといった時期の問題もございましょう。その時期のいかんによりまして収入の額もおのずからいろいろ変わってまいります。その状況に直面をいたしませんと、さてその場合一体いかなる措置をとるのかということは、そのときになって考えなければならぬかと思います。ただいま政府といたしましては、五月一日施行の原案を本国会において成立させていただくということで臨んでおりますものですから、ただいまのところそれは何とも申し上げかねる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/46
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047・藤田高敏
○藤田(高)委員 それでは第二点として、公募債のあるいは借り入れ金の関係ですが、かれこれこれまた九百億近くの増額を見ておりますが、こういう公募債あるいは借り入れ金のワクが増大するということは、性格上非常に民間資金の運営を圧迫する危険性を持っておると思うのですが、それに対する見解、あるいはそういう民間資金を圧迫する要素が、あるいは側面が出てきた場合には、どういう面でそれをカバーするお考えなのか、その見解を聞かしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/47
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048・佐竹浩
○佐竹政府委員 御指摘のように、来年度におきます公募債、借り入れ金、総額において三千九百十億円、前年度計画に比べまして約二八%程度の増額を見込んでおるわけでございますが、このうち主たるものは、いわゆる政府保証のつきました政府保証債でございますが、これが二千二百七十億円ということでございます。前年度計画千八百十億でございますので、それに対しましてかれこれ四百六十億円、約二割五分の増加になっております。これは主として消化先が金融機関でございます。金融機関の四十年度におきます預金の増加状況がどういうことになるか、それらによっていろいろ情勢が動くわけでございますが、私どもといたしましても、民間金融を圧迫するということがあってはならない。したがって、政府保証債の発行総額につきましては、民間において無理なく消化される、その可能の限度にとどめるべきであるという方針を従来引き続きとってまいっておりまして、来年度におきましても、これまた少しも変わるところではございません。そこで今後の経済金融情勢等を見通しまして、関係機関、金融界ともいろいろ相談をいたしました結果、このような金額を見込んだわけでございまして、これは先生御承知のように金融機関資金審議会というものが大蔵大臣の諮問機関としてございます。この金融機関資金審議会の中には、全国銀行をはじめ相互銀行、信用金庫あるいは生命保険等々の各種金融機関、農林中央金庫も含めて各種金融機関の最高責任者がメンバーとなっておられるわけでございますが、その審議会におはかりをいたしまして、まあこれならば消化は大体引き受けられるということで実は御了承を得ておるわけでございます。したがいまして、この政府保証債を中心といたします公募債、借り入れ金等につきましては、民間金融を圧迫するものではない、かように実は考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/48
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049・藤田高敏
○藤田(高)委員 それでは続いて財投の、産投会計の出資が非常に大幅に減っておるわけなんですが、これが減少しておる最大の理由は何か、これをお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/49
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050・佐竹浩
○佐竹政府委員 これは先ほど先生も御指摘になりましたように、従来各機関におきまして政策金利と申しますか、たとえば農林漁業金融公庫あるいは住宅公団といったところでかなり低利の政策金利を出して仕事をしておるわけでございますが、その機関の資金源といたしまして、運用部の金利は御承知のように六分五厘でございますが、その六分五厘をもってしては政策金利が出しがたいというような場合に、その資金コストを低下いたしますために、産投会計からの出資をもってこれを薄めてまいったのはもう御承知のとおりでございます。それが来年度におきましては、各機関ともかなり従来の出資の累積もございまして、経理の基礎も非常にかたくなってまいりましたということもございまして、これを一部利子補給の方式に切りかえたわけでございます。結局利子補給方式に切りかえたことによる減少が大部分でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/50
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051・藤田高敏
○藤田(高)委員 御説明では利子補給による減少だということですが、これは率直にいって、一般財政の歳入財源が俗にいう税の自然増の頭打ちといいますか、自然増が少ない、予算の硬直的な傾向によって、一般財源が非常に窮屈になった、こういうところから、そのしわ寄せの一つが——昨年はたしか一般財源から産投に対しては五百七十億程度のものが出されておったと思うのです。それがことしはわずか百二十五億程度に減っておるわけなんですが、こういうふうに産投に対する出資金、一般会計からの資金が減るということは、いま御説明のあったようないわば無利子の資金というものを土台に資金運営をやって、そして政策的な効果をあげていこう、このねらいが半減するのじゃないのでしょうか。そして、いま利子補給というふうに簡単に言っておりますけれども、利子補給は事務的にはどこどこで幾らになるかということもお聞かせ願いたい。たとえば農林公庫、住宅公庫あるいは住宅公団、開銀の石炭関係、こういうところがおそらく対象になると思いますが、こういうところで利子補給に肩がわりをしたために、この分野の予算が減ったのだ、こういうことでありますけれども、利子補給をするということは、一般財源から金を向けていかなければならぬ、こういうことになると、これは財政投融資が昨年に比べても二割からの増大、四十一年以降はどういうことになるかわかりませんけれども、少なくとも財政投融資の活用ということは、横ばいあるいは拡大の方向をとるのではなかろうか、こういう前提に立ちますときに、利子補給制度をこういう形で農林公庫にもあるいは住宅公団にも公庫にもあるいは開銀にもという形でワクを拡大していくということは、一般財政それ自体の財政構造のひずみというものを非常に拡大していくのではないだろうか、また財政投融資の金融構造というものに対しても、ひずみが拡大されていくのではないだろうか、そういう点からいって、私は今度の財政投融資の一つの特徴は、いま答弁にもあったような利子補給に産投の分を切りかえたのだというこの点は非常に問題があると思うんですよ。率直に言って、一般財源をこういった方向に振り向けていかなければならないような利子補給制度というものはやはりやめるべきではないかと思いますが、それに対する見解をひとつ大臣のほうからお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/51
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052・田中角榮
○田中国務大臣 それは御議論としては非常に超健全思想であります。いままでわが党政府はやってきたことでございます。しかしこれは政策を行なう場合に、政策金利を採用するという場合に、普通から考えると利子補給という制度を考えるのが普通であります。その効果があがった場合には、利子補給を打ち切るということが普通でありますが、いままではいわば超健全政策ということも言えるわけであります。ほかの国に比べてみても、よく日本はこんなことをする、こういうことを言われたわけでありますが、これはどういうことかといいますと、非常に超高度の成長ということで自然増収が非常にたくさんあるというところに問題がございます。でありますから、一つには国債整理基金に繰り入れる額も剰余金の二分の一、それが国債の残高と繰り入れ額との差額が非常に大きくなって、戦前の最高限度でも三・何%というものが今度法律のままで繰り入れれば八・三九%になるというように非常に高いところへ積んでおった。まだございます。インベントリーを取りくずすなということを言っておりますが、こういうことで積み立てている、また利子補給をすべきところに対して原資を繰り入れる、一厘引き下げるために四十億、五十億という原資を繰り入れ出資をする、こういうことでございます。まだございます。いろいろな補助金をもらうということに対しまして何十億か資金を繰り入れてもらって、その利息でもって運営しよう、こういうことをやっております。でありますから、いままではある意味においては超健全、そういうことが続くということは好ましいことかもしれませんが、正常な予算の状態になりつつある、こう評価して間違いはないと思います。ただ利子補給というものも無制限にこれを拡大して、将来財政の圧迫になるということに対しては当然考えなければならない問題でありまして、政策効果があがったものに対しては、またこれを打ち切ったり、新しい分野に転換をしていく、こういうことによってバランスをとるべきでありまして、いわば超健全から健全な基調というふうに言えると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/52
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053・藤田高敏
○藤田(高)委員 これは事務的な数字ですが、あとでひとつお答えいただきたいのですが、この利子補給の額は、それぞれの公庫なり公団に対してどういうことになっているか、これをちょっと聞かしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/53
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054・佐竹浩
○佐竹政府委員 ちょっとその前に、先ほどの宿題をいただきました、あのずれでございます。三十八年度で見ますと、約千六百億円でございまして、このときの財政投融資計画当初計画一兆一千億円に対し一四・五%でございます。ちょっと私少し過大に申し上げましてたいへん失礼いたしました。
そこで利子補給でございますが、住宅金融公庫につきましては二億四千七百万円、それから住宅公団につきまして三億三百万円、農林漁業金融公庫につきましては四億六千七百万円、それからあとこまかいことでございますが、農地管理事業団というものがございますが、これが千七百万、それから鉄道建設公団二億円。先ほど先生開発銀行に利子補給をしておるかのごとき御指摘がございましたが、実は開発銀行に対しては利子補給はございません。以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/54
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055・藤田高敏
○藤田(高)委員 大臣の答弁を聞きますと、いわゆる超均衡財政から均衡財政と、いわば正常な形に返ったのだ、だから産投の資金が一般財源からの繰り入れの資金についても、四十年度のこういった財投の資金源というものは、むしろ全体計画の中から見てもこれは正常な状態なんだ、こういうふうに御答弁があったわけです。そうして片や利子補給に対しては、利子補給をやっていっておるが、一つ効果があがったらそこで切ったらいいのだ、こういう御答弁で、今回の処置についてのいわば合法性というようなものを裏づける御主張をなさったわけですが、やはりこれはちょっと私ども新人議員として、あまりこの種の問題について勉強していない者には、大臣のそういった答弁で、これはまあ悪くいえば、そうだろうか、こう思うかもわかりませんが、いま少し専門家の立場から見たら、大臣の答弁ではこれはちょっと納得がいかぬのじゃないか。というのは、産投会計の
一般会計からの財源が少なくなったということは、一般財源自身の調達が、歳入財源というものが非常に苦しくなった、そのしわがこの産投会計にこういう形で出てきたのだ、これはやはり率直に認められなければ、われわれとしては承服できぬ。この点が一つ、
それと、そういうことであるとするなれば、この産投資金のいわゆる資金源というものが、無利子でいま言ったようなところへ金が出されておった。それが今度利子補給で肩がわりするわけですから、これはやはりいわば財政投融資資金制度の基本的な性格に重大な影響をもたらす問題点だと私は思う。そういう点については、遺憾ながらいまなったような一般財源、一般財政とのからみ合いにおいてまずいかもわからぬけれども、こういうことにならざるを得なかったのだ、こういう御答弁をなさることのほうがすなおであって説得力があるのじゃないかと私は思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/55
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056・田中角榮
○田中国務大臣 第一の問題、いままであり過ぎた、いままで十分自然増収でまかなえた、それが安定成長に入りましたから、いままでのように財源を十分潤沢に確保することができない、そういう意味で、利子補給制度を導入したということは事実であります。
しかし、その結果非常に不健全なものになった、こうは考えておりません。これは認識の相違、見解の相違ということになるかもわかりませんが、これは私はそうは考えておりません。一体どこの国に原資を繰り入れられるというようなものがあるのか。これは比較論であります。これはもうそういうことは実際においてあり得ない。日本において、超高度という異常な状態において、とにかく三千億も二千五百億も補正予算を組める。組んでなお剰余金が非常に多かった。こういう自然増収が非常に高い水準において確保されたときと、これから少なくとも八・一%の正常な安定成長を四十三年まで続ける。またそうしなければ物価問題等にも対処できないのだ。こういうことを是認するならば、私は当然八・一%から考えて四千四、五百億、こういう財源の中で、相当な減税も行なっていかなければならない。こういうことでバランスをとる場合に、利子補給制度を導入するということに対しては、不健全な方向ではない。これは現状認識の問題であります。でありますから、いままでが超健全であった。私たちも与党議員でありましたときに、なぜ一体利子補給制度を採用しないのかと、さんざん言ったわけでありますが、私の時代になって利子補給制度を採用した、こういうことでございます。これは社会党の皆さんでも、もっと社会保障にうんと金を出せ、そういうときには、大きな原資を繰り入れるよりもこれはもっと合理的な組みかえによって原資ができるじゃないか、こういう御指摘があったというところから考えてみて、私は利子補給制度、その次には公債論ということになるわけですが、利子補給制度というものを採用したことが不健全財政である——まあ不健全財政でないともいえません。それは比較の問題で、去年よりも一体どうか、こういうならば、比較の問題でいろいろ議論の存するところでありますが、まあ世間一般、普通の財政理論で考える場合、評価をする場合、極端な大きな自然増収が確保できないような正常な状態、安定的正常な状態になった場合の予算の姿としては適切なものだ、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/56
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057・藤田高敏
○藤田(高)委員 この点は、今日段階では、一つの見解の相違といいますか、対立になろうかと思うのですが、非常にオーバーな言い方をされるので、非常に不健全だとか、そういうことばのあやで、こういった予算問題なり財政投融資というようなものの論議は、やっぱり数字というものは冷厳ですから、そういう点では、政治的なことばの抑揚や表現によって論議することは、私ははなはだ不健全だと思う。だから、そういう点からいって、私も決して非常に不健全だということでなくて、前年度対比というような面から見て、これはやはり公債発行への第一歩を踏み出すような危険性があるのじゃなかろうか。そしてまた、こういった利子補給のワクが、間口が広がっていけば、そのしわ寄せがやっぱり一般財源にかぶさってくるということは、財政構造のひずみを拡大する要因になるのではないか。そういう意味における不健全性というものを指摘しておるわけですから、その限りにおいては、政府も率直にそれをお認めになって、今後の財政運営についての対策なり処置というものを講じられることが、すなおな国会論議の姿であるべきだと私は思う。その点について、もう私の持ち時間をずいぶん超過いたしておりますので、そういう私の意見を強く主張した形で、この点については終わりたいと思います。
それで、最後に、このあと財政投融資について、もし質問の機会がありましたら、勉強を兼ねて質問をさせてもらいたいと思っておりますが、率直に二、三のことをお尋ねしたいと思う。
この財政計画の資金計画の中を見ますと、今度顔を出した公害防止事業団、これには厚生年金の還元融資十億、資金運用部資金が十億で、二十億でこの事業団の仕事をやろうとしておるわけですが、政府が公害防止に積極的な姿勢を示したということは、私は歓迎すべきことであるし、当然だと思う。しかし、この種のものは、これは公害防止法との関係もありますが、やはり原則的には公害防止は私企業がやるのだ、この原則は、やはり私は一つ大きく打ち立てておく必要があると思うのです。そういう点で、この二十億の出資についてはいかがだろうか、こういうふうに思うわけでありますが、この点についての見解を聞かしてもらいたい、これが一つ。
それから、もう時間がありませんので、質問点だけあと二つ追加しますが、帝都高速度交通営団ですか、これと首都高速道路公団の違いはどういうところにあるのか。率直に言って、公団が今度の財政投融資の中ではさらに幾つか新しく顔を出してきておる。こういうふうに公団や公社というものが軒並みにふえてくる傾向に対しては、いま少し行政機構の簡素化、合理化ではありませんけれども、公団、公社あるいは何々というようなものをいま少し集約をして効果的な事業ができるようにすべきではなかろうかということが第二点。
第三点は、私の一方的な意見を入れての質問になりますが、政府は池田内閣以来地域開発を中心に、新産都ではございませんが、産業あるいは人口のバランスをとっていくのだ、そういう形で、佐藤内閣でいえば社会開発をやっていくのだという方向が打ち出されておりますが、この財政投融資の内容一つを見ても、依然として都市集中の財投計画というものが組まれておると思うのです。これは道路一つをとってみても、いま私が指摘した首都高速道路公団あるいは帝都高速度交通営団、これなんかはほとんど東京を中心にやられておるわけです。これは資金運用部計画を立てられる場合に、いま高速道路の関係でも、北海道と四国だけが——私は四国の出身だから特にこの点は主張したいのですけれども、北海道とか四国というのは非常に開発がおくれておるわけですよ。ですから、この資金運用部資金を使って縦貫道路なり高速道路をやられる場合に、都市中心のこういった計画を、おくれた地域に対していま少し優先的に、積極的に投融資計画を組んでいく、こういう姿勢が当然あってしかるべきではないかと思うのですが、それに対する見解を承りたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/57
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058・田中角榮
○田中国務大臣 第一点の公害事業団につきましては、お説のとおりであります。経営者責任を原則とすべきである、こういうことでございます。私も強くそれを主張いたしました。そのためにはあるべき姿、指定地域内において公害が非常に多いというところに対しては、ある意味においては工場を禁止する、こういうことも考えるべきでありますが、私権制限をやってはいかぬという思想、戦後そういうものばかりが前提になりまして、すべてのものがあと始末は全部国でやる、こういう思想で続いていくと、どうも健全財政などは守れるはずはないのであります。私はそういう意味で、過密都市の中において公害が発生するようなものに対しては相当な地域制限を行なうとか、設置制限を行なうとか、こういうものも当然やるべきだということを前提にいたしております。
もう一つは、工場法の取り締まりは、戦前は警察がやっておったわけでございますが、このごろは工場法による取り締まりを通産省がやり、それから道路交通法に基づく自動車等の交通は運輸省がやり、それから建築の許認可事務は都道府県でやっておる。これが戦後変わったところであります。戦前はみなこれらは警察でやっておったのでありますが、東京の郊外などは八〇%違反建築だ。こういう実態から考えまして、やはり企業者責任というようなものをもっと明らかにすべきだ、行政の分担も変えなければいかぬというくらいに私は強い考えを持っております。でありますから、公害問題に対して、ただ事業団をつくるということが漫然と公害問題に対処すると言われるおそれがあるということで、十分各省間で努力をしたわけであります。調整したのです。ところが公害がもう社会問題になっておる。公害発生という問題に対しては、これからまた新しく考えるにしても、現在どうにもならないというものに対しては何らか政府も対処しなければならないということで、政府及び地方公共団体または企業責任者というものが三位一体になって公害防止に対処しようということで、私はある意味ではやむを得ざる処置として公害事業団の発足を認めたわけでございます。しかし、この公害事業団をつくるために、われわれはやらぬでいいのだという思想が起こるとしたならば、これは十分注意をしながら公害防止に万全の対策をとるべきだというふうに考えます。
第二の、首都高速道路公団と帝都高速度交通営団、一体何で同じものを二つつくったのかということですが、御承知の首都高速道路公団は高速道路を建設いたしております。それから帝都高速度交通営団は地下鉄から転化したものであります。こういうものを一緒にして首都建設公団というものか、また首都交通公団というものか、また都市改造公団というものの一環として統合すべきかという議論はあります。これは国会においても十数年間超党派で議論をしてきたものでありますが、やむを得ずいまの状態になっております。これは両方にもまだまだ専門の仕事をやらなければならない焦眉の問題がございますので、こういう状態になっておりますが、将来合理的なことを考えると、やはり首都高速道路公団、地下鉄、都電、こういうものは同一の切符で乗れるように、相互乗り入れももう行なわれておるわけでありますから、こういう問題に対しては組織の統合、合理化というものは積極的に考えていくべきだと思います。これはただ率直に申しますと、東京都と政府というものとの権限調整という問題、生々発展の歴史からくる競合点はありながら、なかなか話は進まない。こういうところに首都圏庁をつくろう、首都法をつくっていこうという問題が起こってくるものでございまして、こういう問題は積極的に取り組んでいくべきだと思います。
第三点の、地方開発をやりながら、財政投融資の内容は都市の過度集中法だ、こういう意味の御発言であります。私もどの財政投融資計画をつくりますときに、同じ議論を事務当局との間に何回かやったのであります。それで地方開発債をふやしたり、開銀の地方開発融資のワクをふやしましたり、北東開発公庫の資金をふやしましたり、こういうことにも努力をいたしたわけでございますが、財政投融資というものは、やはりその性質上ペイするものに投資をする、こういう基本が貫かれておりますために、私、率直にいってやはりこういう姿になると思うのです。ですから一般会計、財政投融資、それからもう一つは金融ということを考えますと、国が長い間投資をして、大きな、過度に集中しておるようなところで事業をすれば金融的にもペイするというものは、金融によってまかなうものだと思います。同時に、ちょうど中級のクラスで、金融ベースだけではやれないというものに対して、補完的に財政投融資が働くべきだと思います。低開発地区とか、また離島とか、そういうものに対してはやはり一般会計を主力にして働いていくということでないと、なかなかうまくいかないのだと思います。明治初年から北海道に対しましては全額国庫負担、こういう原則が確立せられて今日に及んでおるということを考えますと、やはり一般会計、財政投融資、金融というものの区分を明らかにしながら、その調和をはかっていくということにならなければならないという考え方で、万全の策ではございませんが、新産業都市や離島や、そういうものに対して高率補助の道を開くという措置をとったのはこういうことに基因するのでございます。しかし、都市の過度集中の排除、未開発地域の開発促進ということに対しては、より積極的でなければならないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/58
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059・藤田高敏
○藤田(高)委員 私の持ち時間がずいぶん超過しましたので、これで終わりたいと思いますが、特に地域開発に関連をする財政投融資の関係については、一応こういう計画案が示されておるわけですけれども、新産都の問題についても、昨日も私は別の分科会で質問をしたところですが、新産都関係だけで財政資金のなには四十億しか組んでいないわけです。そして例の利子補給が八千百万ほど。これでは将来に地方自治体に対して財政負担を残しても、現実にはいまの階段で政府が金を出しておるのは幾らだといえば、これは県に対しては八千百万であるし、市町村に対しては十五億か二十億程度のかさ上げ法による分しか考えていない。これでは、私は地域の開発はできないと思います。一方、財政投融資資金の計画、内容を見ると、どうしても都市中心主義に流れておる。これは何としても政府の積極的な姿勢において改革ををする、この点だけ強く要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/59
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060・吉田重延
○吉田委員長 国際復興開発銀行等からの外資の受入に関する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案及び昭和四十年度における旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等の規定による年金の額の改定に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
これより質疑に入ります。
通告がありますので、これを許します。武藤山治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/60
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061・武藤山治
○武藤委員 私は、時間が一時まででありますから、約四十分しかないので、当面特に緊急と思われる問題を最初にお伺いをしたいと思います。
まず、事務的に輸出入銀行の総裁に御答弁を願いたいのでありますが、どういう趣旨で輸出入銀行というものができたのか、これをます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/61
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062・森永貞一郎
○森永説明員 輸出入銀行は昭和二十五年の十二月に設立されたのでございますが、当初は本邦からの輸出の振興ということが目的でございまして、輸出銀行と称しておりました。その後目的を拡大いたしまして、海外諸国との経済交流の促進、その手段としては輸出なり投資なり、海外市場等の金融があるわけでございますが、そういったやや広い目的に拡大する。同時に、輸入資金の金融についても担当し得ることとなりまして、名称も輸出入銀行と改称されまして今日に至っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/62
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063・武藤山治
○武藤委員 したがって、輸銀の趣旨というものは、端的に言うならば、諸外国で、特にヨーロッパは安い金利の国の政策に基づいて輸出が非常に強い。そこで、これと競争上、種々な点を考えるならば日本もヨーロッパ並みの金利で競争しないとどうも輸出競争において劣勢になる。どうしても国家的な機関がほしい。こういうことでできたものだと考えておりますが、大ざっぱに言って、ヨーロッパとの競争ということも考えると、これは非常に大きな金利差の問題でこういう機関をつくらざるを得なかった、こういうように私も考えるのでありますが、そういう要素もありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/63
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064・森永貞一郎
○森永説明員 大まかに申しまして、輸出金融と投資金融と輸入金融と三本立てでございまして、このうち輸出金融が八七、八%並びに一一%が投資金融、残りが輸入金融。この金利でございますが、国際金利その他国内の経済情勢等を勘案して決定することにいたしておりますが、この銀行ができました当時金融事情が非常に窮屈でございまして、長期の輸出金融資金を市中に求める手だてがございませんでした。そこで、この現状に即しまして輸出金融でできない金融を輸銀が補完をする。その補完の意味には、量的補完もございましょうし、あるいはまた国際的に競争し得るという、金利という質的な面もございましょう。質的、量的両面にわたりまして補完的金融をいたす、こういうのが私の銀行の役割りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/64
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065・武藤山治
○武藤委員 すなわち、金利の面や延べ払いの面で業界をある程度保護してやらぬと国際競争でとても太刀打ちができない、こういう立場から輸銀ができているのだ、そのことはわかりました。私もそう考えております。
そこで、あまり長い期間のことは御無理でありましょうから、昨年度、さらに本年度の十二月までの間に中共に対する延べ払いあるいは低金利の輸銀のワクでめんどうを見てくれた額、これは一体どのくらになりますか。二カ年か三カ年のトータルがありましたら、ひとつ明らかにしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/65
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066・森永貞一郎
○森永説明員 昨年末現在における中共向けの融資総額累計でございますが、九十四億でございまして、貸付残高は六十六億円ということになっております。さらにそれを年度別に申し上げますと、三十七年度が、これは融資の実績で多少数字が食い違いますが、十五億円、三十八年度が五十一億円、三十九年度が二十九億円、さような融資実績になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/66
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067・武藤山治
○武藤委員 中共に対して延べ払いを認めた件数は三十九年においては何件ございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/67
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068・森永貞一郎
○森永説明員 いま手元に資料があるはずでございますので、ちょっと御猶予をいただきまして、さがしまして申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/68
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069・武藤山治
○武藤委員 田中大蔵大臣、いま聞いておっておわかりのように、池田内閣は中共に対するプラント輸出に延べ払いを認めた。輸銀の使用を認めたわけですね。池田内閣は認めた。しかもその当時大蔵大臣であったのは田中角榮さんです。なぜ佐藤内閣になったらそれを認めないのか。佐藤内閣は池田内閣の施策のひずみを直す内閣だ。基本路線は踏襲する内閣だ。これは本会議を通じても、予算委員会を通じても国民だれにも公約をしている路線であります。それが、池田内閣がやってくれた施策が佐藤内閣になってやれないというのは、国民としてはどうしても理解できない。なぜ今回は輸銀の使用許可を与えないのですか、その理由をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/69
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070・田中角榮
○田中国務大臣 やらないとは言っておりません。いま検討をいたしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/70
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071・武藤山治
○武藤委員 たいへんけっこうな御回答をいただいて私も内心安心をいたしたわけでありますが、やらないとは言っていない、いま検討中である……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/71
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072・田中角榮
○田中国務大臣 やらないとは言っておりませんし、検討中でございます。ただ、いま池田内閣から佐藤内閣に続いておって、池田内閣のちょうど最後の段階から佐藤内閣の初めの段階においてストップ状態になっておるということはニチボーのビニロン・プラントの問題を中心にしてでございます。これは現在の段階においては、政府の考え方を申し上げております。吉田書簡がまいりまして、吉田書簡に対しては池田内閣も最終段階においてこれを追認をしておりますし、また佐藤内閣におきましてもこれを認めておりますので、これに対して現在の段階において輸銀の資金は使わないということのやはり拘束を受けます。こういうことで答弁をしているわけでございます。しかし、まだ現在の段階においては、さしあたり輸出許可をニチボーの問題とかまた貨物の輸出というものに通産省が与えましたけれども、内容的な問題は、まだいま金が要る段階ではないのであります。頭金三〇%、こういうような状態で、いますぐ要るものでもありませんし、慎重に検討しておる、こういうことを申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/72
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073・武藤山治
○武藤委員 いますぐ金の要る問題ではないとおっしゃいますが、大臣それではいつごろまでに政府の態度を明らかにすれば、この契約が無効にならず輸出ができるとお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/73
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074・田中角榮
○田中国務大臣 どういうことをお示しになっておるかわかりませんが、この契約等につきましては、三月三十一日まで先方側が延ばしたというようなことを仄聞いたしております。しかし、これは輸出入銀行を使うとか使わないとかということよりも、一体どの程度の利息でもって延べ払いをしているのかという問題でございます。六分とか六分五厘とかということも耳に入っておりますが、そういう問題は輸出入銀行を使えばもちろん安い金利にもなりますし、輸出入銀行を使わなくとも、各銀行がシンジケート等をつくってやろうということになればできないことではないわけであります。でありますから、一体どのくらいの金利が契約条件になっておるのか、一体それが契約者、いわゆるプラントの輸出者がそれを消化できない状態にあるのか、輸銀というものが四分の利息とか四分五厘とか、五分とか、また五分五厘とか、相手によっての問題でありますが、一体どういうことを対象にして契約をせんとしておるのか、こういうような問題はまだ明らかになっておりませんし、輸出許可を与えたということだけでございます。いますぐ要るものじゃないことは御承知のとおりでございます、延びるにしても来年かと思います。そういう問題に対して、どういうことになるのか、また輸出者だけでもってカバーできないのか、初めから輸銀を対象にして契約をしようとしておるのか、こういう問題がおいおい明らかになると思いますし、こういう問題を中心にして目下慎重に検討中、こういうところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/74
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075・武藤山治
○武藤委員 私は一国の大蔵大臣が、日中貿易の現在の締結状態をそんな程度しか把握していないとは、実は私は考えておらなかった。がっかりしたのです。総理大臣名あてに日本の業界から陳情書がちゃんと出ておるじゃないですか。さらに、日立造船にしてもニチボーにしても、おそらく自民党に対してもかなり詳しく、締結された内容については陳情がなされておるはずであります。野党のわれわれですら、日立造船の重役やニチボーの重役、あるいは日綿の重役、東洋エンジニアリングの社長等が陳情に来ておるのですから、これは自民党の諸君も民社党の諸君も、全部そういう陳情を一緒に聞いておるのです。それによりますと、契約時に輸銀を使うということは、確かに契約文書の中には入っていない、ところが、政府は民間ベースでおやりなさい。政府は一切めんどうを見ないという態度ですね。じゃ一体民間ベースでやればできるのだと大臣おっしゃいますけれども、民間ベースで、かりにニチボーの百億円の取引を保証する、どういう方法でニチボーに保証してくれますか。おそらく、取引銀行以外に二十社の銀行の保証書が要る。その保証書を一体政府があとで追認をしてくれるという見通しもない。政府は、民間ベースでかってにおやりなさいという態度をとっておって、この二十社が一体保証書を出しましょうか。出しても出さなくても、そんなことは大蔵大臣関知したことではない。日本の貿易が伸びようが伸びまいが、中国に対しては、そんなことはかまうことはない、こういう態度ですか。それとも保証書を各銀行が出すようにあっせんの労をとろうとするのですか、民間ベースの場合。あなたのお考えはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/75
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076・田中角榮
○田中国務大臣 全然知らないわけではありません。知っております。知っておりますが、これは商売でございまして、いますぐ輸銀を使わなければならない、こういうものでもないと思います。私がいま中共貿易をやっておると考えれば、将来を見通せばばたばたとやります。まあきちんときめて、すべてのものがいかなければ商売ができない、これは国家貿易であって、ソ連の貿易とは違うのですから、われわれやってはいかぬ、ひっかかるぞ、こういうものでもどかどかとやっているものもあるのです。南方や後進国向けのものなどに対しては相当手広くやっております。私も国際収支の問題を、言うまでもなくこれは輸出を伸ばさなければならぬ、こういうことは人後に落ちるものではありませんが、こういうものは相手のある話でありまして、中共貿易につきましては、ただ契約当初において輸銀を使う、政府からオーケーをもらわなければいかぬ、こういうものでもないと思うのです。またいま国府との問題があるということも現実なんです。それも何もかまわぬで、ただ押せ押せ、こういう議論では商売にならぬのです。ですからこれからまだまだ日中間の貿易というものはどんどん大きくなっていくんでしょう、そういう事実を考えるときに、いま向こうが輸銀を使わぬとはけしからぬ、こういうことを言っておるときに、業者もまわりもそれ輸銀に判こを押せ、政府はオーケー出せ、こういう短兵急にものは片づくものではありません。ですからこの問題に対しては事情を十分考えながら、現在の時点におけるものも十分考えながら、将来どうあるべきかということに対して検討する、時が解決するというふうに私も無責任に申し上げるのではありません。しかしこういう問題に対しては、ただ政府がいま現在の時点においてニチボーのビニロン・プラントに対してどうするということを明確に言えるような段階でもありませんし、いま通産省を中心にして検討しておることは事実であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/76
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077・武藤山治
○武藤委員 そういたしますと、池田内閣がやれた倉敷レーヨンのプラント輸出は許可をする。今度は同じ自民党内閣でも、吉田書簡が出たら自主外交を放棄してうしろ向きの外交に逆戻りをした、決して前向きではない、この態度は。そう私たちは理解する。ひずみ是正どころではなくて、ますますひずみを拡大する経済外交のあり方である。こうきめつけられても弁解の余地はないと思う。事実が証明する。大臣はすぐ金は要らないだろうとか、民間でやりたいものはやればいいんだ、商売なんだと言わぬばかりの態度は、国家的利益をそこなう態度ですよ。具体的に私はこれらの陳情を聞いてみると、確かに中国では輸銀の許可を契約の条件にはしていない。何が何でも輸銀の取りつけがなければ契約は破棄しますよというようなことは一言も中国は言っていない。それはいいですよ。では、日本の業者の立場になって民間ベースで二十社の銀行の保証書がいただけるかどうかという現実問題はどうですか、これはなかなかいただけないと思うのです。同時に輸出入銀行を利用すれば、年四分の低利資金が利用できる、しかも延べ払いで完全に保証がつく、こうなれば業者としては安心して外貨を獲得しよう、日本の経済の発展のために遊休施設を遊ばせずに、輸出でひとつ金もうけをしよう、こういう業者の今日の切実な要望すら実現をしないという大蔵大臣の態度は、私は少しかたくな過ぎて国家利益を失うと思うのです。具体的な例を申し上げますと、日立造船の場合は井上取締役が、われわれとの会見のときにこまかく私たちに陳情したのでありますが、その中身を見ると、輸出許可を二月十五日までに取りつけて、しかも支払い条件なども約束どおり履行できる保証書をこちらは全部とって返事をする、それがとうとう政府の中国に対する、ああいうあやまった、うしろ向きの施策のためにだめになり、一カ月間中国は契約期間を延ばそう、三月十五日が期限になっております。三月十五日といえばもうすぐですよ。この三月十五日に、日本の業者から中国側に回答がいかない場合には、契約は失効するという契約文書になっておる。ですから、金が輸銀からすぐ出なくとも、契約自体が失効するかどうかという期限が三月十五日、日立造船の場合、船の場合。ニチボーの場合はこれまた契約期間を延期して、四月末日までということに電報で了解を取りつけたというお話であります。取引額は百億円であります。これは業界にとっては大きな金額です。国家予算を操作する大蔵大臣から見たら、百億ぐらいの商売はと思うかもしれないけれども、業界にとってはたいへんな問題です。こういうような差し迫った契約失効期間が目前に迫っているのにもかかわらず、大臣はいま輸銀を使わせないとは言っていない、検討をする。その検討を一体、この期限までに検討の結論を出さないと業界は非常な窮地に追い込まれると私は思うのです。これまでの期間に何とかもう一回検討してみたいという冒頭の答弁は、期間的にこのころまでに間に合うような政府間の意思統一あるいは検討の決着がつくのかどうか、それをひとつ明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/77
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078・田中角榮
○田中国務大臣 まず第一番の池田内閣においてやったものがどうだ、こういうことでございますが、これは吉田書簡が出たのは池田内閣の時代でございます。私も承知いたしております。でありますから、池田内閣の後期におきましてはこの問題がもうすでに起こっておったわけであります。それを引き継いで佐藤内閣はいま問題に対処しておるということでございます。
それからビニロン・プラントと日立造船の問題特に日立造船の問題は、政府が許可しなかったから契約ができなかったというようなお話でございますが、そんなことはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/78
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079・武藤山治
○武藤委員 そんなことは言っていないですよ。そういうかってな解釈をしてはいけない。もう一回言い直しましょう。
ぼくが言っているのは、日立はすでに契約を締結した、締結したけれども、期限までに中国側に対して契約条件どおりの返事をこちらができない、というのは、業界とすれば輸出入銀行が利用できるかできないかということによって利益率にえらい差が出てくるでしょう。支払いにも延べ払いなんですから。なかなか、民間の銀行から借りたのではたいへんでしょう。そこで、政府がああいう態度をとっておるから延ばしてくれということをこちらから申し入れて、中国側は契約期限の延期を承認した。本年の四月末日までに実行しなければ契約は失効する。あるいはこちら側とすれば、責任上民間ベースで普通銀行から借りなければならない。そのどちらかを四月末日までに業界はきめなければならぬ、こう言っておるのですよ。私は、契約は政府が許可するとか、しないから契約ができない——契約はできているんですよ。四月末日までにこちらの業界から返事が行かなければ効力がなくなるということなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/79
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080・田中角榮
○田中国務大臣 よくわかりました。政府は契約については輸出承認を行なっております。おりますから、あとはただ、両方で確認し合うということだけだと思います。何かいまの御発言の中で、日立造船の問題もビニロン・プラントの問題もこちらから延期を要請したというような御発言のように思いましたが、そうじゃないと思います。向こうのほうから輸銀を使わなければというふうに私は理解をいたしております。輸銀を使わなければいかぬ。だから、えこひいきするな、こういう考え方を前提にして正規な回答があるまで延ばそう、こういうことになっておるようでありまして、こちらのほうから契約を延期するというような状態ではないと思います。それで、先ほどから申し上げておりますが、いますぐ金は要るのじゃないのです。ですから私は、日立造船の方の陳情がございました。ございましたが、政府貿易じゃないんだから少しは積極的にやったらどうですか、こう言ったのですが、ああ、そうですがな、こういうことでお帰りになっておるわけです。私はいままでまだ原ニチボーの社長と会っておりません。この問題では陳情を受けたことはありません。ですから、こういう問題は政府が、頭金もあることだし、実際の金が要るのはまだまだ先の話でありますから、そういう資金を必要とする時期まで慎重に検討しておると先ほどから申し上げておるわけであります。契約する者は、そのときになって輸銀の資金が使えないということになったらそれはたいへんだから、やはり念には念を入れて、契約に慎重を期するという気持ちはわかります。わかりますが、しかしいま吉田書簡との問題いろいろなことを考えて、政府もるる実情を述べておりますから、そういうことを右か左か、こういう解決のしかただけでなく、業者ももう少し積極的に、また相手方の中国側もそういうことに対して何か感情的になるとかそうことではなく、事情さえ折り合えばというような気持ちになぜなってもらえないのかというようにいま私は感じております。
それから輸銀の問題でもって、輸銀と契約ベースの金利の間に非常に差があるというようなことはございません。輸銀でも四分でありますが、民間との協調金利を合わせれば五分以上にもなるということでありまして、日立造船がいま契約しておる金利は五分だと思います。ですからそのシンジケートをつくって、ある時期金融がこれをカバーできないというものではないと私は思うのです。まあそういう問題に対しては、これは民間ベースで交渉をいま行なっておりますから、政府としましては、いますぐ輸銀をどうするとかいう問題よりも、慎重に検討しておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/80
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081・武藤山治
○武藤委員 大臣の認識は、私と業界の陳情の事実と全然違うのです。輸銀を使わなければ契約が失効するというようなことは、中国側は一言も言っていない。日本の業界が、延べ払いで輸出入銀行を利用できないと自分たちが不安だから、そこで何とか輸銀の許可が出るまで待ってくれぬかということで、こちらから延期を申し入れておるのです。それに対する回答が日立は三月十五日まで、ニチボーが四月の末日までという回答を中国側が電報で送っておるのです。私たちはその電報を読んで聞かされたのですから、それは事実が違っていますね。大臣の認識の事実が違っている。それからもう一つ私らが心配するのは、このアジアの地域に位して長い日本とのおつき合いをしてきた中国、人口も非常に多い、資源もたくさんある中国、この中国と日本が、こういうことで七年前に起こったあの日中貿易中断のような事態になったら、それをまた再開させるために非常に多くの日時を必要とし、その間にヨーロッパはどんどん中共貿易をやっているのですよ。今度も百本がごたごたしておるためにイギリスは二隻、フランスは二隻、オランダが一隻、これだけの貨物船を中共はつい最近契約を締結した。尿素プラントにしても、すでにオランダからプラント輸入をするという計画を中共は発表した。向こう側としては、できれば近い日本から買いたいということで商談がまとまったにもかかわらず、政府が政治的な立場から、これを再び中断をさせるようなことになったら、将来日本が中共貿易を大いにやろうと思ったときには、ヨーロッパのプラントがみな中国に入ってしまうということであります。これは日本の長い将来まで考えたいときに重大な問題です。田中さんが大蔵大臣のときに、しかも佐藤内閣の最も実力者といわれるあなたのときに、日中貿易が好ましい方向に展開されていないということは、日本の歴史上、田中さんの政治生命に大きな汚点を残すと私は考える、私はそういう点を心配して国家的利益をそこなうと最初に言ったのであります。このプラント輸出がヨーロッパに先がけられるか、日本が取るかということは、日中貿易の将来の拡大に大きな影響を与えるのです。影響ありませんか。あるかないかをまず聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/81
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082・田中角榮
○田中国務大臣 政経分離で中共貿易はやっておるのですから、これを進めてもらいたい、こういうことであります。進めればいいのです。あとは金利差の問題だけであります。こういうことは、しかも日本は輸銀という制度がございますが、輸銀というような制度があるということ自体が、これはほかの国とは非常に違っておる制度であります。ですから何か戦後二十年間貿易は自主的にやるといいながら、輸銀以外はプラント輸出ができない、そういうものの考え方に執着しているところに問題があると思うのです。それはもちろん中共貿易に対して私にも考えもありますし、中共貿易を阻害しようというような考えは毛頭ありません。ありませんが、さっきから申し上げておるように、吉田書簡の問題もありますし、相手のある話で、政府もいろいろ苦慮しております、こういう状態は、これは御理解いただけると思うのです。ですからいま私は、中共に輸出されるものに対していますぐ資金が要るわけじゃありません。だから資金が必要な時期まで慎重に検討いたしておりますとこう言うのだから、相手も少しは——私は日本の業者もそういうところに自主性を持ってやるべきだと思います。私はいまの段階において直ちに輸銀資金をどうするかという決定をすることは、やはりあらゆる意味において困難だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/82
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083・武藤山治
○武藤委員 そうすると大臣の答弁は、実際に金を必要とするときには検討する。ということは、まだ輸銀を使わせないと断定をしておるわけではない、こういう答弁ですね。今度はそれに予盾する、貿易はおやりなさい、民間でどんどん御自由におやりなさい——一体民間でやる場合には民間の金融機関が保証書をつけてやらなければならぬ。契約書を中共と結んで、さらに保証書をつけないときちっとそれが製造されて一体中共に届くかどうかという向こうも不安があり、業者のほうもそれははっきり保証書をつけましょうという契約内容になっている。その民間ベースの保証書は二十社の金融機関からとらなければ、実際問題として保証書ができない。そうすると大臣は民間でどんどんプラント輸出をおやりなさいと口で言うけれども、事実問題は民間ベースではやれないというのが業界の主張なんですよ。それを総理大臣殿あてに陳情しておるのですよ。それが今日のような政府の態度では業者はそれは不安でできませんよ。ということは、日中貿易なんかやめちまえということですよ、結論は。またこの前の中断、七年前のような事態がここにいま起こり得る可能性は九〇%ある。前回のああいう問題が起こったような事態になっても政府は責任がない、知らぬ、こう言い切りますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/83
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084・田中角榮
○田中国務大臣 そんなことは考えておらないのです。相手があるのですから、商売はもっとうまくやればいいのですよ。それでしかも政府は一体いま中共貿易に対して、国府問題に対してもそんなものは無視してやれ、こんな考えには、いずれにしましてもなれません。外交問題もありますし、これだけ、政府が吉田書簡に対しても拘束を受けますと、こう言っている以上は、そういう政府の立場にも私はなるべきだと思うのです。国の利益は、中共貿易だけによって国の利益を得るものではございません。いままで長い歴史が今日を築いておるのであります。ですから、中共貿易に対しても民間ベースでいままでもやれてきたのです。しかもまだ金が要る時期ではない、金を必要とする時期までに慎重に解決をしておりますと通産大臣は言っておるじゃありませんか。ですから通産大臣がいま私に対してこれをどうしても輸銀ベースにしてくれと、こういう強い申し入れもありません。お互いがこういう問題に対しては理解できるはずであります。その間の金利というものはいまここにございますが、日立造船の金利は五分五厘であります。ニチボーの金利は六分であります。輸銀と民間ベースで合わせてやれば五分五厘になるのであります。なせ輸銀だけに——半年や一年、二年の問題を輸銀というものの承認が前提でなければ中共貿易はできないのか。そこに商業ベースというよりも政治ベースのような考え方、それはみずからの債権に安全を期すというだけではない。私はそういう問題をいま静かに考えるときに、中共貿易というものに政府が輸銀ベースに対して明確な結論を出さないということが日中貿易を阻害するものでないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/84
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085・武藤山治
○武藤委員 それは重大な発言です。輸銀ベースを使わせないということは日中貿易を阻害しないという発言は、これは重大ですよ。これはやがて大反響が出ることは間違いない。
そこで輸出入銀行の総裁にちょっとお尋ねしますが、ヨーロッパと貿易競争をやる際に——純事務的なベースでいいですよ、あなたの答弁は……。中共に対してオランダやフランスやイタリアが、西ドイツまでプラント輸出をしようというので交渉をしている。一覧表もここにあります。輸銀を使わずに民間の都市銀行、地方銀行の融資で一体ニチボーなり日立造船というものが中共貿易をやった場合に、輸銀を使ったのと使わないのではどういう点に業界としては違いがありますか。有利な点、不利な点……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/85
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086・森永貞一郎
○森永説明員 その前に先ほどの件数ですが、大体百件でございます。しかしこれは倉敷レイヨンのビニロン・プラントを除きまして非常に小口のものが多いのでありまして、鋼材とか農機具等の中小案件が大部分である、そういうふうに御承知ください。しかもこの期限は二年程度のものが大部分でございます。
ただいまのお尋ねの件でございますが、西欧諸国が中共に対してどういう条件で取引しておるか、その実態はなかなかつかめません。これは日本ですと、すぐに業界の新聞に出たりなんかして、これが外国に知れ渡って競争上不利な立場に立つような例が非常に多いのでございますが、欧米の業者はその辺がなかなかかとうございまして、容易にその条件、的確なところをつかめない実情でございます。しかし倉敷レイヨンの場合のような条件程度のものがオファーされておるのじゃないだろうか、そういうふうに考えます。輸銀を使わない場合にどういう影響が起こるかという問題でございますが、これは市中銀行がどういう金利で貸し付けるかということにかかっておるわけでございまして、その辺のところは実際問題にぶつかってみなければなかなか的確な答えが出にくいわけでございます。のみならず業者のほうの採算にもいろいろなファクターが入ってまいります。それをどういうふうに組み合わせるかというような問題もございまするし、一がいにどれだけ輸銀を使う場合に比較して不利になるということは現在は私どもとしては申し上げかねるという実情を御了承いただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/86
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087・武藤山治
○武藤委員 それからさっきの金利の点で何か倉敷のビニロン・プラントの場合と今度では金利が違うようなことをちらっと大臣は特に印象づけようとして強く発言していましたが、(田中国務大臣「言っていません」と呼ぶ)そんなことはないですよ。ビニロン・ブラントの場合の場合も金利六分、五年延べ払い、今度のニチボーの場合も金利六分、延べ払い五年、こういう条件ですね。(田中国務大臣「そうです。」と呼ぶ)日立造船の場合、金利は五・五%、これが少し違うだけですね。とにかく日本の業者がもう超高度成長・政策によって設備を十分つくって、国内に設備をしようとしても、もう大体過剰生産ぎみの状態にある。どこか輸出のはけ口を見つけたい。そうしなければ失業者が出る、あるいは利益率が減る。なんとか打開をしたいと思って安定成長に協力をしようとしていま生産をいたしておる。その会社が売ろうとするのを、政府はまあ商売だから民間ベースでおやりなさい。ヨーロッパへ行くのは全部輸銀を使っているではありませんか。これは共産圏でもそうでしょう。ヨーロッパの共産圏には輸銀を使ってやっておるでしょう。中国だけ吉田さんの書簡にあまりにもこだわり過ぎて将来の中共貿易の道を閉ざしてしまうというこの政府の態度は、まことに国家的利益をそこなううしろ向外交であるといわなければなりません。佐藤内閣の第一人者であり実力者である田中大蔵大臣が、ここで腹を固めて、あなたが通産大臣を説得し、総理大臣に進言をするならば、今日の自民党の政権の施策は動くのですよ。そのくらいあなたは今日発言権を持っている。私はそう思う。国民はそれをあなたに期待しておる。その期待を、ここ数日間の間に、田中さんの英断が、決断ができるかどうかということは、日本国民の多くの人が注目をしておるのです。どうかその注目にこたえられるように、今晩よく寝ながらじっくり考えて、あなたの英断を私は心から切望するものです。政治家は、最後には勇気と決断が必要です。あなたに足りないのは、私はそれではなかろうかと思います。どうかあなたにそういう英断を私は切望して、時間でありますから、質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/87
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088・吉田重延
○吉田委員長 次会は、明二十四日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後一時二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804629X01119650223/88
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