1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十年三月三十日(火曜日)
午前十時四十三分開議
出席委員
委員長 河本 敏夫君
理事 荒舩清十郎君 理事 伊能繁次郎君
理事 佐々木義武君 理事 永山 忠則君
理事 田口 誠治君 理事 村山 喜一君
理事 山内 広君
天野 公義君 井原 岸高君
岩動 道行君 池田 清志君
高瀬 傳君 塚田 徹君
綱島 正興君 二階堂 進君
野呂 恭一君 藤尾 正行君
茜ケ久保重光君 稻村 隆一君
大出 俊君 中村 高一君
伊藤卯四郎君 受田 新吉君
出席国務大臣
労 働 大 臣 石田 博英君
出席政府委員
総理府総務長官 臼井 莊一君
総理府事務官
(恩給局長) 増子 正宏君
委員外の出席者
専 門 員 加藤 重喜君
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三月二十六日
委員塚田徹君辞任につき、その補欠として濱田
幸雄君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員濱田幸雄君辞任につき、その補欠として塚
田徹君が議長の指名で委員に選任された。
同月二十七日
委員楢崎弥之助君辞任につき、その補欠として
河野密君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員河野密君辞任につき、その補欠として楢崎
弥之助君が議長の指名で委員に選任された。
同月三十日
委員野呂恭一君辞任につき、その補欠として馬
場元治君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員馬場元治君辞任につき、その補欠として野
呂恭一君が議長の指名で委員に選任された。
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三月二十九日
国立大学教官の待遇改善に関する請願(大橋武
夫君紹介)(第二一四六号)
同(松本七郎君紹介)(第二一四七号)
同(水田三喜男君紹介)(第二一七三号)
同外一件(椎熊三郎君紹介)(第二二〇八号)
同(古井喜實君紹介)(第二二二五号)
同(卜部政巳君紹介)(第二二三五号)
同(大平正芳君紹介)(第二三一八号)
同(坂田道太君紹介)(第二三一九号)
同(野田武夫君紹介)(第二三二〇号)
同(長谷川四郎君紹介)(第二四三七号)
同(荒木萬壽夫君紹介)(第二四五二号)
同(川村継義君紹介)(第二四五三号)
同(佐藤觀次郎君紹介)(第二四五四号)
同(園田直君紹介)(第二四五五号)
同(楯兼次郎君紹介)(第二四五六号)
同(畑和君紹介)(第二四五七号)
同(穗積七郎君紹介)(第二四五八号)
同(中垣國男君紹介)(第二四七三号)
平和の日制定に関する請願(奥野誠亮君紹介)
(第二一四八号)
同(金子一平君紹介)(第二一七一号)
同(亀山孝一君紹介)(第二一七二号)
同(大倉三郎君紹介)(第二二三三号)
同(根本龍太郎君紹介)(第二二三四号)
同(栗山礼行君紹介)(第二三二二号)
同(本島百合子君紹介)(第二三二三号)
同(上村千一郎君紹介)(第二四三四号)
同(高橋禎一君紹介)(第二四三五号)
農林省蚕糸局の機構縮小反対に関する請願(上
林山榮吉君紹介)(第二一四九号)
同(村上勇君紹介)(第二一七六号)
同外一件(倉石忠雄君紹介)(第二二〇七号)
旧軍人等の恩給に関する請願(池田清志君紹
介)(第二一五〇号)
同(池田清志君紹介)(第二一七四号)
同外二件(村上勇君紹介)(第二一七五号)
同(池田清志君紹介)(第二二〇九号)
同(西村英一君紹介)(第二二二四号)
建国記念日制定に関する請願(清瀬一郎君紹
介)(第二三二一号)
元南満州鉄道株式会社職員であつた公務員等の
恩給等通算に関する請願(永末英一君紹介)(
第二三二四号)
同外三件(田中龍夫君紹介)(第二四三六号)
金鵄勲章受章者の処遇に関する請願(中馬辰猪
君紹介)(第二四五九号)
同(池田清志君紹介)(第二四七二号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
労働省設置法の一部を改正する法律案(内閣提
出第二七号)
恩給法等の一部を改正する法律案(内閣提出第
六三号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X02319650330/0
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001・河本敏夫
○河本委員長 これより会議を開きます。
労働省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
本案については、去る二十六日質疑を終了いたしておりますので、これより討論に入るのでございますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。
労働省設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X02319650330/1
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002・河本敏夫
○河本委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X02319650330/2
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003・河本敏夫
○河本委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。
〔報告書は附録に掲載〕
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X02319650330/3
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004・河本敏夫
○河本委員長 恩給法等の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、これを許します。田口誠治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X02319650330/4
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005・田口誠治
○田口(誠)委員 恩給法等の一部を改正する法律案について、若干質問を申し上げたいと思います。
内容に入る前にお聞きをいたしたいことは、昭和三十七年に改正を行ないましたときに、提案説明の中にも、また質疑応答の中でも、仮定俸給年金額が二万四千円べース、こういう表現を行なっておる。ところが、今度の改正案を見ますると、いわゆる二万円ベースという金額の打ち出し方になっておって、これに二割相当額を増額するのだ、こういう改正になっておる。だから、二万四千円ベースだといって審議をしたその内容が、いつの間にか二万円ベースになっておるということがちょっとわかりにくいので、まず具体的に入る前にその点の説明を願いたい。
つけ加えて申し上げますが、昭和三十七年にこの法案が出されて審議をするときには、九千円のベースアップを行なって、それで三十七、三十八、三十九年の三カ年にこの引き上げを完了するのだ。したがって、そのベースは二万四千円ベースになるのだ、こういうことであった。ところが、今度出された説明書の中にも、また改定内容の中にも、二万円ベース、二万円ベース、こういう表現がなされておるのですが、一体全体これはどういうところで変わったのかというところを説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X02319650330/5
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006・増子正宏
○増子政府委員 御質問の点でございますが、現行法における恩給年金の基礎になっておりますいわゆる仮定俸給額でありますが、それには、御承知のように、いわゆる普通恩給の場合と、それから戦傷病者やあるいは遺族関係の恩給、つまりその関係の傷病恩給とかあるいは公務扶助料の算出の基礎になりますいわゆる仮定俸給とは、それぞれ違っておりまして、つまり普通恩給のほうは、昭和三十四年の一般職の俸給表を大体基礎にいたしておりますので、その意味で二万円ベースと言っており、それから戦傷病者関係の公務扶助料等の基礎になっております仮定俸給のほうは、昭和三十五年の一般職の俸給表を大体基礎にいたしております。そういう意味でかりにこれを二万四千円ベースというふうに言っておるわけでございます。ですから、そういうふうに、現行法の恩給の算出の基礎に用いております俸給表は二通りある。一つのほうをいわゆる二万円ベースと言っており、他方を二万四千円ベースと言っておるわけでございます。
今回の改正案は、そのいずれを基礎にいたしたかと申しますと、普通恩給のほうを基礎にいたしたわけでございます。すなわち二万円の仮定俸給といわれておるもの、それを基礎にいたしまして、それの二〇%アップということで各種の恩給の基礎になります仮定俸給年額というものを一本にしたというのが、改正案の一つの効果でございます。内容でございます。それでは二万四千円のほうはどうかという御質問が当然出ると思うのでありますけれども、実はこの二万四千円というのは、一応通俗的にそう申しておっただけでございまして、二万四千円の仮定俸給は、二万円の二割増しというふうに簡単に言うと考えがちでございますけれども、そういう二割増しというものでは実態はないわけでございます。したがいまして、二万円ベースの仮定俸給を今回二割アップいたしますけれども、それは単純に計算して二万四千円になるのではないかというふうにお考えになるかと思いますけれども、必ずしも二万四千円ということではございません。
詳しく申し上げますとおわかりいただけると思いますけれども、先生も御承知のように、通俗的に二万円ベースと言っておりますのは、これは一般職の職員について俸給表を適用いたしました場合に、いわゆる本俸のほかに扶養手当の平均額とかあるいは暫定手当の平均額を加えましたその俸給月額の平均額が大体二万円になったという意味で、その俸給表を呼ぶときに二万円ベースの俸給表というふうにかりに呼んだだけでございます。したがって、恩給のほうではどうなるかというと、恩給の場合には、その俸給表を適用いたしましたとしても、扶養手当とか暫定手当の平均額などというものは恩給の計算の上では問題になりませんので、いわゆる俸給だけ、本俸だけが基礎になるわけでございますから、もともと二万円ベースという呼び方は、まあ通俗的な呼び方にすぎないのであって、恩給の基礎になります仮定俸給の金額をあらわしたものではなかったわけでございます。したがいまして、今回の改正案におきましては、二万四千円ベースというような表現は、私ども使わないことにいたしておるわけでございます。ただ単に現在の普通恩給の基礎になっております仮定俸給年額を二割アップするという考え方、あるいは表現で一貫しておるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X02319650330/6
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007・田口誠治
○田口(誠)委員 私はこう思ったのです。昭和三十七年の改正のときに、二万四千円ベースという提案説明がありましたが、今年度のこの改定内容を見ますと、いわゆるという表現はしてありますけれども、二万円ベースという、そういう書き方がしてあるわけです。したがって、二万四千円のベースだと思って二万四千円ベースと言ったけれども、実際に給付された金額を平均してみますと二万円になったのだから、それで二万円ベースと、こう書いてあるのではないかという解釈をいま一方的にしておったのですが、そうではないのですね。これは扶助料等の関係は一応二万四千円、それから恩給のほうは二万円、こうなるのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X02319650330/7
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008・増子正宏
○増子政府委員 その普通恩給のほうは二万円という意味は、正確に申し上げますと、普通恩給を計算いたしますときの基礎になる仮定俸給年額というものは、昭和三十四年の一般職の俸給表を基礎にしたものであるという意味でございます。その昭和三十四年の給与表というのがどういうものかというと、それをその当時の職員に適用したときには、俸給月額といいますか、本俸のほかに扶養手当や暫定手当などを入れた平均額がおよそ二万円であったという意味におきまして、その昭和三十四年の俸給表を二万円ベースの俸給表というふうにまあ通俗的に言っておりますので、そのことをあらわすために、普通恩給は二万円ベースというふうに俗に言っておったわけでございます。恩給が、計算してみますと平均二万円になるという意味では絶対ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X02319650330/8
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009・田口誠治
○田口(誠)委員 そうなりますと、三十七年の改正のときに一番問題になりましたことは、恩給法が復活をいたしましたときに、いわゆる一万円ベースからスタートをしたわけです。一万円ベースからスタートをしたときに、その一万円ベースにした基礎と申しますか、対象といいますか、これは国家公務員の賃金ベースというものが一つの対象になっておって、そして一般公務員の給与ベースの三千五百円から四千円まで下回ったものが、恩給なり扶助料の支給金額になっておるというのは、これは三十七年度の審議のときに相当論議がなされておったわけなんです。そこで、そのときのことを振り返って考えてみますと、恩給法が復活してから何回か改正をしておりますけれども、ただいま申しましたように、国家公務員の賃金ベースの四千円から三千五百円下回ったところに基礎金額が置かれてきておったのだけれども、昭和三十七年度のときには、ちょうどいまお話を聞いてわかりましたが、二万円にいたしましても、二万四千円にいたしましても、昭和三十七年度に二万四千円ベースに引き上げを行なって、ようやく国家公務員の賃金との三千五百円という開きになったわけなんです。したがって、私どもの主張をいたしましたことは、三十七年度にこの法律を改正するのだけれども、実際的には三十九年の十月一日にならなければ引き上げは終わらないのだから、そうすると、三年先のことをいま決定するのであるから、三年先のことを決定するとするなれば、三十七年度引き上げたあの引き上げ率では足りないのではないか。いわゆる二万四千円ベースに引き上げる、九千円引き上げるということは、昭和三十七年度に実施をするということで、これで恩給法が復活してから以来の公務員の賃金ベースと、それからこの恩給の基礎金額と、大体バランスがとれてきておるのだが、三十七年度にこういう三カ年かかって引き上げを行なうようなものを出されたとて、これはこうした人たちに対して非常に冷やめし扱いをしておるのではないかという点を指摘をいたしたわけなんです。したがって、そういうことから関連をして、今日の二割相当額引き上げということになりましても、非常に低いわけなんです。金額が足りないわけなんです。だから、三十七年度の改正のときに、三年かかって九千円の引き上げを行なったのですから、その行なった九千円というものが、これが三十七年に実施をして、それで恩給法が復活して一万円ベースで行なったときから以来の改正の公務員の賃金とのバランスがとれておったわけなんです。そうすると、八、九と二年、これで非常に不利な立場にこの恩給なり扶助料を受ける対象者は置かれておるということなんです。そうすると、今年の改正は、そういう点を勘案をして、二割相当額の増額というようなことでなしに、もう少し過去の経過も勘案をして、そうしてこの金額というものを出さなければならないと私は思うのです。特に最近の物価の上昇、ここ三、四年の物価の上昇率というものは、週刊雑誌等でも指摘をいたしておりますように、戦後あの特殊な経済情勢下にあったときの物価の上昇と同じ上昇をいたしておるのだ、こういうことでございます。したがって、ちょうど終戦後の物価が上昇するときには、労働者の賃金が一年に二回ベースアップされたり、危機突破資金というような名前で賃金を加給されたりして、ようやく物価の上昇にどうぞこうぞ追いついて生活をしてきたというのが、実態であるわけです。それと同じような物価の上昇率を示しておるにもかかわらず、恩給法を復活した当時の国家公務員とのバランスを大きく破って、今日の二割相当額というようなことは、私は、恩給を受ける人、扶助料を受ける人に対しては、非常にお気の毒なことであろうと思うのです。だから、どうしてそういう点を勘案をしてもらえなかったかということ、この点をひとつ御説明をい
ただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X02319650330/9
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010・増子正宏
○増子政府委員 御質問の中にいろいろと金額等が出てまいったのでございますけれども、私、伺っておりまして、それがどういう性質の金額であるかということを、どうものみ込めなかったのでございますが、おっしゃることは、三十七年、つまり前回の法律改正の内容についての御批判——あれは三十七年の十月から、いわゆるあの当時の説明で言いますと、一万五千円ベースといわれておったものを、二万円なりあるいは二万四千円ベースに上げたというのが三十七年の改正内容でございますけれども、それが三十八年、三十九年までかかって一応完成した。つまりいわば年次的な改正であって、そういう年次的な改正ということから見ると、かりに前の改正が二〇%なり三〇%アップだったとしても、その間には物価等も上がるので、上げ足りないのじゃないかということ、したがって、今回の改正も、そういった意味のことを加味して、二〇%ばかりじゃなくして、もっと高率に引き上げるべきではなかったか、こういう御意見というふうに解釈いたしましてお答え申し上げるのでございますが、恩給金額をどの程度に上げるべきかという問題は、実は非常に重大な問題でございますし、それだけにまた、その方法等につきましても、非常に論議のあるむずかしい問題でございます。この恩給金額を引き上げることについては、一般的に非常にいわれておりますことは、在職公務員の給与体系にスライドすべきであるということ、それから他方におきましては、物価等も相当上がっておるので、少なくとも物価の上がった分だけは恩給、年金額を引き上げるべきであるという、いわゆる物価指数に対してスライドすべきであるというような意見もあります。また、そういったいろいろな考え方につきましては、外国の立法例等もあるわけでございます。われわれとしましても、恩給額を引き上げるについて、このいずれの考え方をとり、またいかなる方法によるべきやということは、実は非常に掘り下げましていろいろな方面から検討してまいったのでございます。その結果としましては、前回の改正のころもすでにそういう傾向が見えたのでございますけれども、在職者の俸給表といいますか、一般職の俸給表というのがあるわけでございますが、それを直ちに基礎にして、在職者のもらっておる俸給額と恩給の基礎俸給が完全に一致する、いわゆるスライドするようにすることにつきましては、非常にむずかしい問題が生じてきておったのでございます。と申しますのは、恩給を受けておる人たちの中には、去年やめた人もある、おととしやめたというような人もありますけれども、十年前、二十年前にやめた人もおるわけでございます。ところで在職者というのは毎年毎年俸給が上がるわけですけれども、俸給が上がるばかりでなくして、給与体系というものは相当著しく変わってまいります。いままで通し号俸的な等級制度であったものが、今度は通し号俸というものは全然なくなって、何等級何号俸というような俸給構造になる。あるいは一種類ぐらいの俸給表であったのが、二種類にも三種類にもなるというようなことで、戦前には文官俸給令というような勅令で単純にきまっておりましたものが、今日におきましては、一般職、特別職に分かれるばかりでなくて、一般職も、御承知のように俸給表が十四ぐらいあるというようなぐあいで、俸給の構造、体系というものが、非常に違ってきております。その違いも、毎年のように違いが出てくるわけでございます。そういう在職者の俸給というものと、過去に退職してしまった人が持っておる俸給額、それを機械的にリンクさせるということは、技術的に困難になってきておるわけでございます。したがいまして、三十七年の改正法の場合におきましても、先ほどは三十四年の一般職の給与法とか三十五年の一般職の給与法とかいうように申し上げましたけれども、その法律に書いてある俸給表そのままをとってはいないのでございます。その俸給表に恩給法的な若干の修正を加えまして、恩給法に基づく基礎俸給の体系というものをつくったわけでございます。それは昭和三十四年と三十五年でしたから、若干の修正で間に合ったのでございますけれども、三十六年、三十七年とその後の俸給表を見ますと、その変化は非常に著しく、単純にこれを恩給法的に修正してつくり直すといいましても、そうまいらないという状況になってきているわけでございます。したがいまして、恩給法の仮定俸給といたしましては、在職者の俸給表を基礎にしてそれを追跡するという形ではなくして、現在の恩給の基礎になっておる俸給年額を何%上げるのがこの際妥当であるかという、いわば恩給独自の考え方をしようということで作業を進めた次第でございます。三十七年の改正の際にも、若干そういう要素はすでに出ておったのでございますが、今回はそれをいわば中心にいたしまして、恩給の引き上げを考えたということでございます。
そこで、私どもが今回改正案として出しておりますのは、二〇%アップでございます。そしてそれも本来の十月からの施行ということでございますけれども、直ちに全部がその日から施行されるのではなくして、ほぼ前回と同様に年次計画的に引き上げられるということになっております。したがいまして、本年の十月一日に全部の受給者の恩給が一斉に二〇%上がるのではなくして、順次に上がっていきまして、おそい人は昭和四十二年の七月になって初めて二〇%上がる、こういう状況でございます。したがって、この点につきましては、先生から先ほど前回の改正案について述べられた御意見がそのまま当てはまるということになろうかと存じますけれども、私どもとしましては、おっしゃるように、こういう年次計画が必ずしも好ましいとは思っていないわけでございます。ただ二〇%にいたしましても、二百数十万にわたる受給者でございますので、その支給に要する経費というものは、相当大きな金額になるわけでございます。したがいまして、これらの改正案を実行するにつきまして、やはりその財政上の制約というものは大きな要素になるわけでございまして、それらの点を見まして、いわゆる改正によりまして、初年度から一時に多額の財政負担はできるだけ避ける、あるいはそういう財政事情の範囲内でこの改正案を実行していくという考え方から出たものでございまして、私どもとしましては、必ずしもこれが最上であるというふうに考えていないのでございますけれども、現在の情勢としては、やむを得ないことではなかろうかというふうに考えておるわけでございまして、その点を御了承いただきたいと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X02319650330/10
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011・田口誠治
○田口(誠)委員 公務員は年々ベースアップを行なっておりますし、従来でございますると、ずっと何年か前に公務員をやめられた人の恩給の額というものは、きわめて少ないのであります。そしてこれからやめる人は、ベースが高いから、それは有利なのです。そういうような点も勘案したというお話でございまするが、そういう点の苦心の点はわかりますが、これからは、公務員の場合も共済年金のほうで処理をいたしますので、恩給という形で処理は行なえませんから、特殊なものは別といたしまして、従来の行き方でいきますると、ただいま答弁のありましたような内容を大きく勘案をしなければならないとも思いまするけれども、共済年金で処理するようになったのだから、その点は私もそんなに配慮する必要もないと思うわけです。
そこで、くどいようでございますけれども、今年二〇%の引き上げを行なうのですけれども、これは昭和四十年の十月一日から全額二〇%の引き上げということにはならない。そうすると、これはことしの分はどの程度に引き上げになるのですか。ことしということは、四十年度をさして言っておるのです。二〇%のうちで、何十%引き上げになるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X02319650330/11
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012・増子正宏
○増子政府委員 これは法案にも書いてございますように、実は受給者の年齢等によりまして、区分をいたしておるわけでございます。たとえば七十歳以上の受給者、つまり今年の十月一日以降におきまして七十歳以上の人につきましては、十月一日分から二〇%アップになるわけでございます。それからいわゆる傷病軍人の関係の増加恩給あるいは傷病年金、そういったものは、今年の十月一日からそれぞれ引き上げられることになっております。その他の人たちにつきましては、実は年齢等によりまして区分をいたしております。六十四歳以下の妻あるいは子につきましては、十月一日からは二〇%分の三分の一だけがまず支給されます。四十一年の一月分以降につきましては、二分の一だけ引き上げられるという形になるわけでございます。それから六十歳以上六十四歳までの受給者、さきに申し上げました妻や子の場合を除きますが、この人たちにつきましては、今年の十月からはアップ分の、いわゆる二〇%相当分の三分の一が、増額になりまして、それはずっと来年も、その一年間そういうことでまいります、というぐあいに、年齢によりましてこの改善率が違って、時期的にずれる。しかし、いずれにしましても、昭和四十二年の七月以降につきましては、全対象者が全部二〇%までは上がっておるという状況になることになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X02319650330/12
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013・田口誠治
○田口(誠)委員 法案の中にも、何回も読み返さぬと、直接取り扱った者でないとわかりにくいくらいただいまの答弁の内容のことが記載されておりまするが、答弁のありましたように、二〇%のアップを行なうんだけれども、今年は三分の一しか上昇してもらえない者もあれば、また七十歳以上の老齢者に対しては二〇%全額引き上げを行なう。したがって、三分の一しか今年は引き上げてもらえない、また二分の一しか引き上げてもらえない、全額引き上げてもらえる、この三段階になっております。要約して申しますれば、二〇%の引き上げというものは、三年かかるということになるんですね。
そこで、問題は、昭和三十七年の改正のときにも、昭和三十七年の十月一日には九千円の半額四千五百円が引き上げられる。それから昭和三十八年度には七十歳以上の人は全額になっておる。そして昭和三十九年度に全額九千円の引き上げは完了、こういうことになっておるのです。したがって、昭和三十七年度に九千円のベースアップを行なうんだ——ベース引き上げという表現を使いまするけれども、引き上げを行なうんだと触れ込んだけれども、実際には、三年先でないと九千円の引き上げは完了しないということになっておった。今度の改正案も、二〇%引き上げであるけれども、また年齢別にいろいろな段階は設けてありまするけれども、三年先でないと二〇%の引き上げは全員に完了しない、こういうことになるんです。そういたしますると、今日のように物価が上昇いたしておりまして、直接の恩給対象者でない旧軍人の戦没者の遺族の方の扶助料とか、これは厚生省の関係もございまするが、あるいは傷痍軍人の方々の扶助料というようなものは、これは非常な物価の上昇によって、この際相当金額を上げてもらわなければお困りになる方が相当多くあるわけです。わずか二万円ベースであって、それに二割ということになると四千円ですが、三年かかって四千円引き上げというような、こんな少ない金額の引き上げ方では、それぞれ給付を受ける対象者の方々は了解をされない内容だと思う。
そこで、前へ戻りますけれども、国家公務員の賃金は、もちろん人事院において民間給与の平均をとり、物価の上昇率もとり、そうした中において人事院の勧告というものがなされてきておるのですが、その勧告に基づいて今日まで公務員の給与というのが決定されてきておるわけなんです。したがって、恩給法が復活をいたしました当時に、いわゆる一万円ベースということは、国家公務員の当時の賃金ベースと比較いたしますと、いまここで数字を持っておりませんけれども、三千五百円かそこらのギャップがあったわけなんです。それからも、これも資料を持ってきて毎年の説明をいたしますればわかりまするけれども、改正のたびごとに国家公務員との賃金格差を比較してみますと、やはり三千五百円から四千円下回ったところにこの基礎金額が置かれておったわけなんです。この基礎金額の置かれておるそのことを、従前と同じような考え方で、昭和三十七年度に審議をいたしましたら、九千円の引き上げを行ないましても、三十七年度から実施するのは当然であったわけなんです。ところが、それを三年かかって三十九年にようやく完了するという、こういう法案が通ったので、給付金を受ける対象者の人は、非常に不満の意を表しておったわけなんです。ところが、今回の改正は、とめどもないこの物価の上昇、先ほども申しましたように、戦後の特殊なあの経済情勢の中における物価の上昇と同じようなパーセンテージを示しておる今日の段階において、三年かかって四千円しか金額の上昇がなされないということになりますと、私は、この恩給とか、あるいは扶助料とか、あるいは傷痍軍人に対する傷病手当金とか、こうしたものの考え方というものは、生活を保障してやるという考え方が今日はもうなくなっておるのではないか、こういう極端な考え方すら出てくるわけなんです。これはあなた、お考えになればわかりますが、私はくどく言うように、公務員の給与より三千五百円から四千円下回ったところでずっと改正されてきて、昭和三十七年度のときは一万五千円ベースから二万四千円ベース、九千円上がりました。ふれ込みはなかなかよかったわけです。ところが中身に入ってみると、昭和三十九年、三年かからなければ上がらないということで、落胆をしたわけなんです。今回の改正は、それよりもまだ悪いということになる。だから、こういう恩給等に対する考え方が、生活を緩和してやる思想が変わってきておるのかどうか、こういう疑問があるわけなんですが、そういう点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X02319650330/13
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014・臼井莊一
○臼井政府委員 田口先生から先刻来いろいろ恩給に関しての非常に御配慮のある御質問でございますが、結局、公務員のベースが上がるにもかかわらず、どうもそれに比例して恩給が上がってないではないか、こういうことに尽きると思うのでございます。
この点につきましては、先刻から恩給局長もいろいろ御説明を申し上げておりますが、第一には、そのまま公務員の給与にスライドできないということの理論的なあれといいますか、それは一つは、公務員の給与のベースアップは、人事院が民間の給与と比較して勧告して、国家公務員におきましては上がるわけでございますが、その要素の中には、そのときどきによる、まあ砕いていえば需要供給と申しますか、今日のように人手が足りなくなりますと、自然にどうしても給与、ことに初任給を引き上げないと人が来ないというので、民間においてはそれが作用して初任給が特に上がっていく。初任給が上がりますと、中だるみや何かを是正する意味においても、中堅階級も上げていかなくちゃいかぬ。そのほか民間における生産性の向上、こういうようなことから民間は上がりますので、公務員についても、能率をあげて、それに対応するだけの仕事の能率をあげるようにしなければならないのでありますけれども、一つはそういうことが非常に作用いたしまして、したがって物価の上昇とか生活水準の上昇ということばかりでなく、まあそういうことがある。ところが、一方恩給を受ける受給者の方々は、すでにその職にない。これも砕いていうことばで語弊があるかもしれませんが、いわゆる需要供給というような関係の立場にないので、したがって経済的な原則からいって、そういう点の考慮が一つは省略されている。しかし、今日のように物価の上昇が激しく、また生活水準も上がってくる、こういうことでございまするから、したがって、その点につきましても十分考慮をし、さらに公務員のベースアッブ等にも考慮は加えまして、三十七年も、また今回の引き上げも、行なうわけでございます。しかし、御説のように、これで私ども十分かといいますと、必ずしもそうばかりは考えられないし、また受けられる方も、これで十分満足されているかというと、必ずしもそうでないかもしれません。しかしながら、今度の改正におきましても、現在の財政的に許す範囲においては政府としても極力これに努力をいたしまして、御提案、御審議いただいているような案になったわけでございまして、したがいまして、また即時に本年の十月から一ぺんに実施しないのか、こういうことも、一つの大きな原因はやはり財政上の事由で、三十七年もやはり同様でございましたが、これを三カ年間で実施さざるを得ないということは、ここに大きな財政上の事由があるというわけでございます。
なお、若い方にはひとつがまん願って、あとのほうでこれは上げる。七十歳以上のお年寄りの方とか、あるいはまた未亡人、戦没者の妻等に対しましては、これはできるだけ早くというようなことでございまして、その点では確かに御意見のあれもよくわかるのでございますが、以上申し上げたようなわけで、こういう案を決定したということも、ひとつ御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X02319650330/14
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015・田口誠治
○田口(誠)委員 長官からの答弁でいきますると、財政上の問題が大きな支障になっておるようでございますが、いまお話しのありました現在の公務員の賃金が、民間事業所の労働者の平均を採用しておるということについて、人手不足だから初任給も上げる云々ということがありましたが、そのこともございますけれども、いまの日本の賃金体系というのは、これは能率給でなくて、生活給であるわけです。食うだけの金を差し上げるということなんです。奥さんをもらえば、扶養家族は手当がつく。子供が生まれればそれに手当がつくということで、生活給であるわけです。この生活給が今日の給与体系をつくっておるわけなんです。そこで、最低の生活給をいま公務員の場合でも受けておるわけでございますので、したがって、私が先ほど来何回か同じようなことを申し上げておりまする、戦後二回目のこの大きな物価の上昇をしておる今日においては、公務員労働者にしても、民間労働者にしても、七千円、八千円という賃金の要求をいたしておるわけなんです。これはやはり生活実態からそうした金額の決定をいたしておるわけなんです。結論的にはそうした引き上げを行ないませんけれども、そのくらい生活が苦しいわけなんです。したがって、健全でつとめておる公務員労働者にしても、民間労働者にしても、この物価上昇に追いつかないからといって、賃金上昇を大幅に要求をしておる、このことは見のがすことができないと思うのです。したがって、一家の大黒柱である夫を戦争のためになくした未亡人に対する扶助料、そうして一人前の仕事のできない傷痍軍人、こういう人の場合には、こういうとめどもない物価上昇によって非常に生活難に追い込まれているというのが実態であるわけなんです。だから、そういう人たちには、扶助料なりあるいは傷病年金なり、いろいろな形で給付されておるのでございまするが、それが昭和三十七年から三十九年までだけでなしに、現在非常に物価が上昇し、また上昇しつつある今年、この四十年度から実施する恩給法の改正の案が、三十七年度に出された半額しか上昇しないという、こういう案のつくり方は、財政上の問題もあろうけれども、これは私は認められない内容のものだと思うのです。昭和三十七年から三十九年度まで九千円の引き上げを行なったのに、今度は昭和四十年から昭和四十二年までかかって、三年かかって四千円の引き上げというようなことは、だれが考えても、いかにもこれは水くさい、冷淡な取り扱いの引き上げであって、妥当なものではないと思うのです。
そこで、比較をしてお聞きをいたしまするが、三十七年度の改正のときに三年かかって九千円引き上げたものを、物価がこのように上昇して、国民生活は非常に生活難に追い込まれておる今日、その半分にも足らない四千円の引き上げ、すなわち二万円ベースの二〇%ですから四千円の引き上げ、しかも三年かかって引き上げを完了するというようなことは、昭和三十七年度の引き上げと、今年、四十年度の引き上げの額と比較をして、どう考えられるか。常識的に考えてみましても、三年かかって三十七年度に九千円であれば、少なくともそれを維持するか、それより以上のものを引き上げていかなければならないと思うのですけれども、その半額にも足らないようなものを、恩給法の改正として今国会に出されておる。その真意が私は非常にわからないし、疑うわけなんですが、この辺のところ、なぜ今年は四千円の引き上げしか法案として出せなかったのか。先ほど総務長官が財政上の関係もあると言われましたが、もちろん財政上の関係もありますけれども、財政の関係は、昨年の総予算と比較をして、本年度の総予算は、御案内のとおり、相当大幅に引き上げられておるわけなんです。というのは、あらゆる支出関係が多くなっておるということなんです。ただひとりこの恩給を受ける人、あるいは扶助料を受ける人、傷病年金を受ける人、こういう人だけが日の当たらない冷やめし扱いをされておるということは、私はどうしてもわからないので、この辺をやはり明確にしてもらわなくてはならないと思うのです。この点だけひとつ御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X02319650330/15
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016・臼井莊一
○臼井政府委員 いまのお話のような一万五千円のあれが二万四千円に上がったから九千円、単純にそういう計算になるのですが、恩給の計算というのは、まことに何かややこしくて、どうも私どもにもなかなかのみ込めないような複雑なあれがあるのですが、ただ公務扶助料の例をとってみますと、この前の三十七年のときに、兵の階級で五万三千円が七万二千四百二十円、そこで約一万九千円ばかり上がったわけです。これが今度は九万三千四百五十七円でありますかに、兵の階級で公務扶助料が上がります。そこで今度は二万一千円ほど兵の階級で上がりますので、よく私どもは公務扶助料では兵の階級をとるのですが、それの比較においても、額にいたしまして前回よりは二千円ほど多いという計算になるわけです。この点は、また計算のやり方についての御不審があれば、恩給局長にただしていただきますが、ですから、必ずしも前回に比べて額におきましてそう下回っておるということには、結果的にはならない。もちろん上がったところへさらに割合をかけますから、絶対額においてはそれはふえるのはあたりまえだということになるかもしれませんが……。ですから、今度のあれについても、前回と比較して、そう一見してのいまのような率から考えるほどに悪いあれではない、こう考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X02319650330/16
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017・増子正宏
○増子政府委員 前回の改正案と今回の改正案との比較につきましては、いま総務長官から申し上げましたように、私どもの計算では、一万五千円から二万円になったとか、あるいは二万四千円になったということで、そこの数字の間に単純に差し引き計算で金額を出すということは、全然採用していないというか、そういう計算はまああまり重きを置いていない。と申しますのは、恩給法では、そういった数字は直接何も響いてこないからでございます。つまり、二万円が二万四千円になるといいますのは、一般職の月額の収入が二万円であった当時、それは昭和三十四年の十月からの場合がそうである、それから三十五年の十月以降は大体二万四千円程度であったという、そのときの意味にすぎないわけであります。ですから、恩給を計算するときに、この二万円が二万四千円になる、これが二割アップということでは全然ないわけでございます。恩給の場合には、在職者の俸給月額を大体十二倍いたしましたものがそれぞれ基礎俸給、仮定俸給ということで、恩給法の附則できめております。それに在職年と、それから比率でもって百五十分の幾つかをかけるというようなことで、恩給年額が出てくるわけでございます。それは二万円とか二万四千円ということとは非常に違った数字であるわけです。ですから、私ども三十七年の場合の改正案を理解するにいたしましても、普通恩給の場合には、いわゆる一万五千円ベースといわれておった俸給表を二万円ベースといわれる俸給表に移しかえまして、それをもとにして恩給の仮定俸給をつくった。ですから、各人の仮定俸給は、この二万円ということに関係はなしに、年額十何万円とか二十何万円とかというふうにきまっておるわけです。それを基礎にして恩給を計算する。したがって、前の計算した場合の恩給年額と新しい改正法による恩給年額の差はどれだけあるかということのほうが、実際問題として意味があるわけでございます。その点からいいますと、前回の改正では、普通恩給の場合には大体二〇%アップ、それから公務扶助料等につきましては大体三六%アップというようなふうに御説明してあったと思います。今回の場合につきまして、そういう観点から申し上げますと、普通恩給につきましては大体二〇%アップ、それから公務扶助料につきましては、階級によって違いがございますけれども、少ない場合でも三〇%以上はアップになります。それから傷病恩給の場合も、増加恩給と傷病年金がございますけれども、これもまずまず三〇%程度以上の増額ということに、今度の改正案ではなることになっております。したがいまして、率からいいますれば、まあ前回の改正案とはそう違わない、ものによっては前回の改正案より非常によくなるというものもあるわけでございます。
なお、先ほども御質問中に、こればかりの数字しか上げないということでは、恩給の性格というか、機能というものが変わってきたんじゃないかと思うという御質問があったわけでございます。その点につきましては、恩給が受給者の生活の上にとっても非常に大きなささえになっておる、そしてまた大きな役割りを果たしておるということにつきましては、私ども十分に注意を払っておるわけでございまして、それだからこそ、こういう経済情勢においては、できるだけ改善をしなければならぬというふうに考えておるわけでございます。ただし、恩給をいただく人々が、それによって完全に十分な生活ができるかどうかということになりますと、確かに問題はございます。それはもちろん在職者につきましても議論のあるところであろうと思います。現在もらっておる俸給、賃金等が十分な生活費であるかどうかということには、疑問がある向きもあると思いますが、恩給の場合におきましては、これは共済組合でも同様でございますけれども、その在職時代にもらっていた俸給というものを基礎にして、その何分の一かの恩給なんでございますから、そもそもその恩給が十分な生活費だということは、実は非常に困難なことではないかと、初めから思っております。そういう点を解決するとすれば、恩給法なりあるいは共済年金の率にいたしましても、相当抜本的な改正をしなければ、おそらく不可能なことではないかというふうに思うわけでございますが、しかし、いずれにしましても、恩給なりあるいは共済年金等が、退職者の退職後における生活におきまして相当大きな役割りを果たしておるという事実は、これは十分重要視しなければならないわけでございまして、それらにつきまして、先ほど総務長官から申し上げましたように、できるだけ財政事情の許す限り手厚い改善を加えなければならぬわけでございますが、現在のところにおきましては、先ほど来申し上げておりますような事情のもとに、必ずしも十分とはいえないけれども、この程度の改正案につきまして御審議を願うということになったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X02319650330/17
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018・田口誠治
○田口(誠)委員 給付を受ける受給対象者は、いろいろなケースがございまして、一口に申し上げることはなかなかむずかいです。そして、提案説明の内容等においても、なかなかそれを事こまかく一つ一つ解明するということは困難であるということは、これはわかっております。したがって、いまそれぞれ三十七年の改正と今回の改正との引き上げパーセンテージを一応数字でお示しになりましたが、これは三六%が三〇%になっておるというのは、きちょうめんにやりますとちょっと違っておると思いますけれども、まあ答弁は答弁として聞いておきますが、いずれにいたしましても、これも生活の足し前に支給をするということであって、物価の上昇とか、あるいはその他働く労働者の賃金の上昇率というようなものと、全然無関係に考えることもできない。したがって、そういうことから考えていきますと、ただいま説明のありました個々のパーセンテージからいきますと、まあ大体のところ予算獲得をいたしてこの法案を出されたように見受けられますけれども、提案説明書にもあり、また改定の内容をずっと書いてある文章の内容からいきますと、昭和三十七年法律第百十四号によって昭和三十七年十月にいわゆる二万円ベースに改定され、三カ年にわたって逐次増額し、昭和三十九年七月から完全実施、現在に及んでおるが、こうきて、そうして今度の改正の場合には、普通恩給及び扶助料の関係が文章化されておりますが、それも普通恩給及び扶助料については、恩給年額の基礎となりまする現行仮定俸給年額、いわゆる二万円ベースにその二割相当額を増額した仮定俸給年額を基礎としてその年額を算定することとした、こういうことなんですから、これを基礎にして算定すれば、それぞれのケースによっていろいろ違う点はございまするけれども、ここに法律案の概要が文章で配られておりまするので、それを見ますると、先ほど来私の申しましたように、三十七年度には一万五千円から九千円引き上げて二万四千円にして、しかもそれに三カ年かかった。今度はいつの間にかその二万四千円といったのが二万円ということになっておるが、しかし、それは別といたしましても、いわゆる二万円ベースに二割相当額を増額した仮定俸給年額を基礎としてその年額を算定する、こうなっておりまするから、これはやはり一番最初にあなたのほうからも御説明のありました二〇%のアップですから、このアップの金額でいきますると、これは二万円の二〇%なら四千円。この四千円を三年かかって支給完了するということになりますると、これは前回よりもだいぶ後退をした内容になるから、私は、物価の上昇の今日において、これでは不十分でないか、こういう点を指摘をしておるわけなんです。だから、物価の上昇等で勘案してやれば、いまパーセンテージを言われましたけれども、これは概算であろうと思うので、この三〇%というのはちょっと違っておると思うのです。違っておると思いますが、これは少し違っておっても、それはそれといたしまして、いずれにいたしましても、三十七年度のときよりも引き上げ率が下がっておるということが、私はどうも納得がいかないわけです。その理由というのは、物価が非常に上昇をしておるわけですから、そういう点の勘案が十分なされたかということと、もう一つ、この法案の出されるのは、もう三十七年度の改正のときから三年計画で出されるわけなんですね。三年計画で出されるたびごとに——これは参議院の選挙のある年です。だから、この前の九千円の引き上げのあったときにも、ぼくらが慰霊祭に招待を受けてそこへお参りをしておりますると、いろいろ弔辞の中とか、あるいはあとで戦傷病者の遺族の人を集めていろいろと説明されておる内容を聞きますと、今度は九千円引き上げたとか、そうすると、聞いた人は、こまかいことは聞かぬで、九千円上がった、ありがとうと言って手を合わせて拝むぐらいありがたがって帰ったけれども、よくよく調べてみれば、それは三年かからなければ九千円上がらないのだ、こういうことで、どうもこの改正の三年ごとというのが、もう参議院の選挙対策のように受け取れるわけなんです。どうしてこれを一年ごとにやれないのかということです。昭和三十七年度までは、大体一年ごとにやり、あるいは二年ごとにやっておりまするけれども、三十七年の参議院選挙の年からは、もう三年計画なんです。それで三年たてばまた次の参議院選挙がある。こういうことで、参議院対策のように受け取れるわけなんで——また受け取れるぐらいではない、これは利用する人もあるわけなんです。だから、私はそういう法案の出し方に一つの疑義もございまするし、なぜ三年にしておるのか、こういう物価の変動のあるときに三年というような出し方をしておるのはどうかということが疑問でならないので、その点の解明をひとつしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X02319650330/18
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019・臼井莊一
○臼井政府委員 この前に、文官が二万円ベースで、それから公務扶助料がたしか二万四千円ベースくらいに当たる、こういうふうに三十七年に直したわけでございます。今度軍人恩給も、普通文官の恩給も、一応計算の基礎を二万円に置いたということは、軍人恩給につきましては、倍率を直しまして、そうしてその格差といいますか、二万円と二万四千円ベースのこの前の差と同じように今回は計算した、こういうわけなんでございます。そこで一様に基礎としては二万円ベースの一応二割、こういうことで、倍率を、軍人におきましてはこの前が三五・五の倍率、今度は四三・二の倍率に直した。倍率で直しましたから、そこで軍人恩給については、公務扶助料等についてはそこに実際的には非常に差がついて上がっている、こういうことでございまするので、その点はひとつ御了承いただきたいと存じます。
なお、これがなぜ一時に行なえないかということでございますが、これも実際は行なえれば一時に行ないたいのでありますけれども、私どもも、この計算をした基礎は、物価の上昇並びに生活水準の向上とともに、また一般公務員のベースアップもあったからということで、主として生活水準の向上と物価上昇ということを基礎にして今度いろいろ案をつくったわけでございます。そこで、これは一時に行ないたい。ところが、先刻来申し上げているように、財政上の事由でどうも一ぺんにはなかなかこれを行なえない。たまたま三十七年のときにおきましても、これがやはり三年がかりでいたしましたので、そこで今回もやむを得ず前回と同様なやり方、ただ、七十歳以上のお年寄りについては、これは即時にというように、できるだけそういう配慮をいたしましたが、やはり三年がかりでやらざるを得ないということになったわけでございまして、いま御指摘のように、これがたまたま参議院選挙の三年に回数がめぐり合ってきていることを御指摘されると、なるほどそんなふうにぶつかるようにたまたまなるようでございますが、私どもは、参議院選挙の回数に合わせて云々というようなことでは決してないのでございまして、これは一にかかって財政上の事由で、ことに前回やむを得ずそういう三年でやった例がありましたものですから、今回もやむを得ずそういう方法をとらざるを得なかった、こういうことでございますので、御了承いただだきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X02319650330/19
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020・増子正宏
○増子政府委員 総務長官から申し上げましたほかに、こまかな点でつけ加えますと、私、公務扶助料等につきまして三〇%程度と申し上げました率について御疑問があるようでございましたけれども、私が申し上げましたのは、現在の現行法による公務扶助料と改正案による公務扶助料とを比較いたしますと、兵の場合におきまして約三〇%程度増額することになるというふうに申し上げたわけです。それはなぜそうなるかと申しますと、仮定俸給におきましては、もちろん三〇%も二〇%も上がりません。公務扶助料の場合は、現在いわゆる二万四千円ベースといわれている仮定俸給を基礎にして公務扶助料を計算しておるわけでございますから、今度の案によりますと二万四千円の二〇%アップではなくて、二万円ベースといわれておる仮定俸給を二〇%アップいたしまして、そして兵の仮定俸給年額というものを定めます。その定めた俸給額に対しまして、新しい公務扶助料の倍率というものを掛けるわけでございます。従来は三五・五割でありましたのが四三・二割ということでありますから、相当の増加になるわけでございます。この新しい公務扶助料の倍率を乗じまして算出いたしました兵の場合の公務扶助料、それが先ほど総務長官から申し上げましたように九万三千四百五十七円ということになるわけでございます。これは最終的に受給者に支給される金額のことを申し上げたわけでございます。そして、その人はそれじゃ現在幾らもらっておるかというと、七万二千四百二十円でありますから、大体二万一千円程度、率にいたしますとおよそ三〇%程度現在よりふえる、こういうふうに申し上げたわけでございます。したがって、仮定俸給のいわゆるベースを三〇%上げたというふうに私申し上げたわけではなくして、いろいろ恩給年額の増加につきましては方法があるわけでございます。どの部分を直すかということ、いわゆるほとんど掛け算で出てくる計算式になりますものですから、その中のどれを上げるかということによりまして答えは相当違ってくるわけであります。私、先ほど申し上げましたのは、仮定俸給を何%か上げるということもありますけれども、そればかりではなくして、要するに受給者がもらうところの恩給年額というものは何ぼになるかという、最終的にもらう金額をいろいろな方法で増加する道があるんじゃないかということを申し上げたわけであります。そういう意味で、増加恩給とか傷病年金につきましても同様でございます。これは大体前回の改正にならいまして、公務扶助料がかりに三〇%上がるとすると、増加恩給も大体三〇%上げるというような方式で計算いたしましたほかに、各項症あるいは款症の間の比率がございますが、それを間差と私ども言っておるわけですが、その間差も是正いたしまして、したがいまして、第一項症に対する第四款症の比率は従来一〇〇対九でありましたのを、今回は一〇〇対一三というふうに上げましたので、第四款症の比率がずっとよくなったということでございます。したがいまして、四款症の傷病年金は、現行法でいいますと二万一千円でございますが、今度の改正案によりますと三万九千円ということになるわけでございます。したがいまして、この場合には相当の比率で改善されたことになるわけでございます。このように各種別の恩給につきまして、最終的に本人にいく金額についてみますと、相当の改善がなされている、こういうことになっているわけでございます。
なお、先ほど申し上げましたように、なるほどこういった改正案が本年の十月からすべての人についてまんべんなく適用されるということが、一番好ましいことであると私ども思っておるわけでございます。しかし、そういたしますと、この改正案に要します経費が相当の額になるわけでございまして、それらが現在の財政事情の点から考慮いたしまして非常に困難な状況に逢着いたしまして、いろいろ勘案の結果、先ほど来申し上げておるような内容になったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X02319650330/20
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021・田口誠治
○田口(誠)委員 内容的に説明を受けてだいぶ了解できる点もありますが、いまの最後の答弁の二万一千円というのが三万九千円になって、一万八千円増ということになった、これは三年かかってのことでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X02319650330/21
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022・増子正宏
○増子政府委員 最初に申し上げましたように、傷病恩給のほうは今年の十月から全額実施いたしますので、この傷病年金は、これを御可決いただきますれば、十月から直ちに上がるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X02319650330/22
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023・田口誠治
○田口(誠)委員 そこで、今後のこういう問題の提案のしかたですが、先ほど来私が申し上げておりますように、この法案が通るということになりますれば、四十二年まではこの法案でいくわけですね。四十一、四十二と、三年かかる。だから四十三年にまた改正案が出されるということになる。そうすると、その時点で私は考えていただきたいことは、最近のような大きく物価の変動というものがない場合には、三年計画というような出し方もそれはあり得ると思いますけれども、非常に物価の変動のあるときには、これは毎年出してもらわなくてはいけないではないか、こう考えておりますので、その点をまず強く要望を申し上げておきます。
それから三年間は全然これを修正することができないのかと言えば、そうではない。また改正案を出していただければ、三年計画にはなっておりましても、途中で給付金を引き上げるというようなこともできるわけであります。したがって、私の希望といたしましては、ただいまそれぞれケースケースによって内容は違いますけれども、やはり平均して考えてみましたときに、従来、昭和三十七年度以前の取り扱いと違っておりますので、その違っておるということは、公務員のベースとの格差がそのままスライドされておらない、こういう点を指摘しているのですが、そういうこともやはり検討をしてもらわなくてはならないのじゃないか、こう考えておりますので、その点についても、ひとつ研究していただくということで強い要望を申し上げておきたいと思います。
そこで、こういうむずかしい、計算のしにくい法案を出す場合には、予算要求等でもなかなか苦心されると思いますが、昭和三十九年までの総金額と今度の改正によるところの総金額というものは、これは率からいうとどういう上昇率になるか。これはきょう恩給法の一部を改正する法律案をやるということを理事会できめて、すぐ質問に入ったのだから、私のほうも部屋へ行って資料を持ってきてお示しすることも十分にできませんし、従来ならお聞きをする内容の重要な点は、前もって当局のほうへ連絡をしておいて、そうした数字の準備もしてもらっているわけなんですけれども、きょうはそういうことがなかなか時間的にできなかったので、答弁としてできない面もあろうと思いまするが、大まかなところでよろしいですけれども、三十九年度の完了した時点と、そうしてこの改正案を三カ年かかって完了するということになりますれば、およそ予算の面でどの程度のアップになるか、わかりましたら、ひとつ御説明願いたいし、もしわからなかったら、次のときに資料で出していただいてもよろしいですし、また答弁をいただいてもよろしいですが、そうでなかったら、ただいままで質疑応答をいろいろしておりましたけれども、内容へ入っていきますると、大まかな質問の内容とそれから具体的に個々に事例をあげられるものと比較してみると、どうも頭にぴんとこないものがあるわけです。だから、総予算の面で、いろいろなケースはあろうけれども、どのくらいのアップになるかということは、およそあなたのほうで計算されておると思うので、年次計画で予算要求もされておるのだから、そういう数字はおそらくわかると思いまするし、過去のものはわかっておると思いますので、ひとつその点がわかりましたら、ここで説明をしていただきたい。いまわからなければ、次のときでよろしゅうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X02319650330/23
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024・増子正宏
○増子政府委員 数字は一応あるのでございますけれども、御質問の点、内容でございますが、三十九年度の予算ということでよろしいのですか。三十九年度……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X02319650330/24
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025・田口誠治
○田口(誠)委員 いや今度の改正。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X02319650330/25
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026・増子正宏
○増子政府委員 基礎がですね。それと最終年度と言われますのは、昭和四十二年の七月からはすべて上がるわけでございますけれども、四十二年度ということで計算をいたしますれば、できるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X02319650330/26
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027・田口誠治
○田口(誠)委員 それで総額になりますね。それから以前のものは三十七年度から三十九年度までの、これは完了したのだからはっきりしておると思うのです。だから、それと今度の改正とは、その予算の面で実際的にどのくらいのアップになるか、このことをきょうでなくてよろしいです。総務長官十二時に席を立たれなくてはならないようですから、私はこの辺で終わりますが、次に若干私は引き続いて質問申し上げて、また次の質問者に譲りたいと思いますので、ひとつそういう数字的な準備をしてさておいていただきたいと思う。長官の関係で、きょうはこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X02319650330/27
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028・河本敏夫
○河本委員長 次会は、明三十一日、水曜日、午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後零時十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X02319650330/28
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