1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十年五月十二日(水曜日)
午前十時三十五分開議
出席委員
委員長 河本 敏夫君
理事 荒舩清十郎君 理事 伊能繁次郎君
理事 佐々木義武君 理事 永山 忠則君
理事 田口 誠治君 理事 村山 喜一君
理事 山内 広君
井原 岸高君 池田 清志君
上林山榮吉君 亀岡 高夫君
高瀬 傳君 塚田 徹君
辻 寛一君 綱島 正興君
中川 一郎君 二階堂 進君
野呂 恭一君 湊 徹郎君
茜ケ久保重光君 石田 宥全君
稻村 隆一君 大出 俊君
大原 亨君 高田 富之君
中村 高一君 楢崎弥之助君
受田 新吉君
出席政府委員
総理府総務長官 臼井 莊一君
総理府事務官
(内閣総理大臣
官房臨時農地等
被買収者問題調
査室長) 八塚 陽介君
委員外の出席者
農林事務官
(農地局管理部
長) 石田 朗君
参 考 人
(京都大学名誉
教授) 橋本傳左衛門君
参 考 人
(埼玉大学教
授) 秦 玄龍君
参 考 人
(全国農民総連
盟書記長) 中村吉次郎君
専 門 員 茨木 純一君
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五月十二日
委員天野公義君、岩動道行君、塚田徹君、野呂
恭一君、湊徹郎君、茜ケ久保重光君及び大出俊
君辞任につき、その補欠として上林山榮吉君、
中川一郎君、中村寅太君、松田竹千代君、床次
徳二君、高田富之君及び石田宥全君が議長の指
名で委員に選任された。
同日
委員床次徳二君、松田竹千代君、石田宥全君及
び高田富之君辞任につき、その補欠として湊徹
郎君、野呂恭一君、大出俊君及び茜ケ久保重光
君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
農地被買収者等に対する給付金の支給に関する
法律案(内閣提出第七七号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/0
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001・河本敏夫
○河本委員長 これより会議を開きます。
農地被買収者等に対する給付金の支給に関する法律案を議題とし、審査を進めます。
本日は参考人より意見を聴取することにいたしております。御出席を願いました参考人の方々は、京都大学名誉教授橋本傳左衛門君、埼玉大学教授秦玄龍君、全国農民総連盟書記長中村吉次郎君、以上三名の方々でございます。
この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。本日は御多用中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。御存じとのおり、ただいま議題になりました法律案は多大の関心を集めております重要な案件であると存ぜられますので、ここに学識経験を有せられる各位に参考人として御出席を願い、本案についての御意見を拝聴し、もって本案の審査に慎重を期することといたしたのでございます。つきましては、何とぞ忌憚のない御意見をお述べくださいますようお願い申し上げる次第でございます。
なお、議事の進め方につきましては、初めに約十五分程度において順次各位に御意見の開陳をお願いし、それが終わりました後委員からの質疑に移りたいと存じます。
それでは橋本参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/1
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002・橋本傳左衛門
○橋本参考人 農地改革は、これによってわが国の自作農主義をかなり徹底して実現しました。その点はたいへんよかったと私は信じております。しかしながらこの改革を実施しましたそのやり方には著しい無理があったと私は信じます。その無理があった結果、農地被買収者に対して不当の不利益あるいは損害を与えておると私は思っております。
その第一は、農地の買収価格が不当に低く評価されまして、被買収者は正当なる補償を受けていないと信じます。憲法第二十九条にいわゆる「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」これに根拠を持つところの農地改革と思いますが、私の考えでは、この正当なる補償ということになっていないと思う。そのために被買収者は非常な損害をこうむっております。全国にわたりまして関係者は数百万あるいは数千万の多数にのぼるのでありましょうが、それらが経済的並びに心理的に深刻なる影響を受けているのが事実であります。農地報償問題というのはまずこの点から出発して考えなければならぬと信ずるのであります。
農地買収価格を評価するにあたりまして、農地の収益価格によったところの評価法はあの場合はやむを得なかったものとして私は是認をいたします。しかしながらその評価のやり方を見ますと、評価法の原則に反した点が幾つかあるのでありまして、そして、そのいずれも農地の評価額を低く押し下げるような方向に作用しているのであります。農地の買収価格は、地租法によって農地の一筆、ことに定めてあった賃貸価格に、田においては四十倍、畑においては四十八倍という倍率をかけたものをもってきめたのであります。ところがこの四十倍、四十八倍という倍率のきめ方が妥当でない。ために全部の買収地の価格が当然あるべきところよりも著しく低くなっておる。この倍率は、要するにまず全国を通じた中庸の田の一反当たりの稲作の収支計算を行ないまして、それから一反当たりの純収益、さらに地代部分をきめまして、それから中庸田の、すなわち代表的の田と認めたものの自作収益価格が七百五十六円六十銭と出ておる、これを同じく中庸田の反当の標準賃貸価格十九円一銭をもって割りますと、その結果三九・八五という数字が出る、これをラウンドナンバーにして四〇ときめて、これがすなわち田の買い取り価格を算出するための倍率となったのであります。畑のほうは、この田の収益価格を基礎としていろいろ計算をして四十八倍となった。
ところで、この反当稲作の収支計算が問題なんです。なかんずく最も妥当を欠くものは、標準田の反当玄米の収量が事実は二石三斗九升九合でなければならぬものを、これを二石と押えておるのであります。元来この計算は、当時の食糧管理局の産米生産費調査によっているものでありまして、反当生産費は各費目を通じてこの統計調査の数字を採用しているのでありますが、それにかかわらず、収入の最も大なる部分を占めるところの玄米の収量は、この食糧管理局調査にあるところの玄米収量二石三斗九升九合というのを採用しておりません。ことさら別の農林省の統計中の米作統計の数字二石、これは代表的の田というものではありません、その二百を採用しておるのであります。この二石には生産費調査がついておりません。この計算において、収入の主体をなすところの玄米収量は、生産費というものと密接に関係しておるのは申し上げるまでもありません。いずれもこれは食管の調査によって明らかでありますが、それにかかわらず、大事な米の収量を生産費というものと全く引き離して、何ら生産費に直接的関係のない別の統計の米の収量を採用しておる。これにはいろいろ理屈が――私は妥当な理屈を聞いたことはありませんけれども、何か言っておりますが、しかしながらおかしいのは、なお米作の収入の中で、副収入のほうは食管の統計からとっておるのです。そして大事な玄米の収量は、とんでもない関係のないところの統計を持ってきている。そうして生産費調査、食管の生産費調査にはちゃんとついておるのです。そのついておるのを使わないで、関係のないところの数字を持ってきて、そうして木に竹をついだようにくっつけて、それでその収支計算をしておる。そういうことをやっておるのでありまして、これを要するに当時の政府の調査というものは、忌憚なく申しますと、これはきわめて簡単なことで、誤りようがないのです。だから、これは誤りじゃないのです。故意にごまかした、こういわれてもしかたがない、弁解の辞はないと思います。しかも、その結果として米作収支経済の純収益を作為的に激減させた勘定になっている。したがって、これによるところの価格の支払いというものは、これはむろん全国にわたって一つ残らず実施されたのでありますが、これは憲法第二十九条における正当な補償と反するもので、不当な補償であると私は思う。
なお、この米作収入の計算において計上したところの石当たりの米価のとり方、たとえば当時は生産者価格を百五十円と見た。これは法律によって農林省が告示をして実行したのでありますが、当時はインフレの進行が急激でありましたから、これをそのまま支払いのときに採用いたしますると、これは社会の情勢に合わない。それでいま一ぺん告示をやり直して、そうして倍にして、生産者価格を三百円にしてそれで払っておるのです。ところが実際払ったところの三百円という数字を使わないで、その収支計算において収入に大関係のあるところの米価というものはもとの百五十円を使っている、そういう点があります。
その他なお問題となるところの幾つかの点が指摘できますが、これらの問題となる点は、一つとして農地買収価格を安く押えるというために役立っていないものはありません。かようにして、憲法にいわゆる正当なる補償ということからはるかに下離れた価格で旧地主は買い上げられておるのであります。しかしながら最高裁判所は、あれでいいのだと、こういう判決が下っておりまするので、補償ということは行政的の措置としてはできないかもしれません。それならば、これにかわるような何か方法を考えるべきであると私は思う。こういうわかり切った統計ですね、食管、食糧管理局、いまの食糧庁の前身でありますが、あそこで生産費調査をした、そうすると収入には玄米幾らとって、副収入幾ら、それに対する生産費が幾ら、こういう順に出てきますな。ところが別の統計で、今度は全国の代表的の田について調べた反当収量というものは二百になっている。その生産費調査に関係のない二石を持ってきて、ここの生産費調査にくっついた離るべからざる数字というものをほかへのけて、そうして計算しておる。これは、統計数字を扱うことについてABCを知っている人はそういうことはしないのです。
それですから、間違うはずはないのでありまして、それで私は、これは間違いじゃない、わざとでなければやれないことなんだ、こういう次第であります。その点一つだけでも正当なる補償ということはできない。まだあるのですけれども、時間がありませんから、もし質問がありましたら………。
それから大体農地改革というのは、あれを実施した時期というものがこの大きな農業土地改革政策というものを実施するのに適当していない。あのときは社会及び経済の大混乱時代でありました。それでありますから、米価なんかも一年に何べんでも政府の買い上げ価格が上がっている。それから配給価格も変わっていく。そういう変転きわまりないときにあれをやったのです。そうでありますから、あれをもしあの時期をおくらして、昭和二十二年度の現在においてあれを実行しまするというと、今度は倍率、賃貸価格に四十倍をかけて買収価格を出したという、あのことがマイナスになってくるのです。倍数がマイナスになってくる、そういうふうになっちゃうのです、政府のやった計算方式でやると。マイナスということはどういうことですか、しいて考えれば、地主から土地をただで提供さして、その上に金を出させる、これでないとマイナスになりません。そういう結果が出るのです、二年ばかりおくれてあれを実行すると。だから、したがってあの時期にやるということは適当でないと私は考えます。それでないと、そんな変てこなことが出てくる。それで、アメリカ人なんかで言う人がありましたが、つまり大体あのインフレが大進行中は無理だ、永久に大インフレがあるわけはないのだから、そのうちに落ちつくだろうから、その落ちついたときにやらなければ非常な不公平ができるということを、アメリカ人あたりでも言っている人もあります。そういうわけでありまして、したがって、あの支払いを受けるのは二十五年、あるいはその以後になった人もあります。ところが土地の価格というものは、二十年の秋ですか、あの現状をもとにしてきめた、こういうのでありまして、その間にインフレが大進行をいたしまして、物価指数のごときは何百倍にも上がったのです。それですから、何か正当なような顔をしてきめた価格といえども、実際支払いを受けるときには、その貨幣価値というものは非常に減退して、それによって受くるところの被買収者の損害というものもばく大であります。そういうわけでありまするから、これはここでは言うてもいいかもしれませんが、あれは正当の補償でない。しかしながら、最高裁判所できまったというから、それに従わないということにはいかぬかもしれない。けれども大損害を与えて知らぬ顔をしているということは一国の政治じゃないと思う。しっかりした政治をやるのには、政府の作為的なやり方でもって大損害を受けたという者に対しては、あとから相当にいたわってやる。少なくとも相当多額のいたわりをしなければ、これは善良なる国民であるところのもとの地主、それは大きな地主ばかりではありません、大多数、九十何%というのはきわめて小さい地主なんです。つまり普通の百姓なんです。普通の百姓でもって、そして一方に遠くのところに土地を持っているから、それで貸すといったような者まで、つまり零細なる農業者である土地所有者がそれによってずいぶん損害を受けておる。こういうわけなんでございまして、あれは非常な問題がある。だから、それを大いにいたわってやるというのが私は至当である、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/2
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003・河本敏夫
○河本委員長 次に秦参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/3
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004・秦玄龍
○秦参考人 内閣総理大臣官房の諮問機関であります農地被買収者問題調査会の参考資料というのをいただきまして、それをいろいろ読んでみますと、そこの中のことばに「農地改革により農地を買収された者に関する社会的な問題とは、旧地主の現在における困窮その他の生活上、生業上の問題であり、正当な法律に基づいて正当な補償をもって行われた農地改革そのもの及び現行農地法の建前を検討することは適当でない。」ということが書いてあります。この前提に立って同調査会は調査、審議をいろいろ進めたそうでありまして、その調査の結果というのが概括されているわけであります。調査会は「旧地主の現在における生活上、生業上の問題」というものに重点を置いて、旧地主に一定の補償をなすべきかいなかということの客観的な判定資料というものを、実態調査の結果として提供しているのであります。
私は、まず第一にこの資料によって私の意見を若干述べてみたいと思います。その概要というものは、大体七項目あげてありますが、その第一に「被買収世帯の収入は買受世帯及びその他の一般世帯に比べて必ずしも低くない。」ということが結論として第一にあげてあります。参考の統計表を見てみますと、これは同資料の十二ページの表(3)を見ますと、たとえば農業所得金額規模別世帯数というので、四十万円以下のパーセンテージと五十万円以上のパーセンテージを見てみますと、被買収者の場合には、合計しますと七四・一%でありますが、一般の場合は八一・一%、一般の場合が七%高くなっておるのであります。五十万円以上の、一応中以上と考えられる農業所得金額規模別世帯数というのを見ますと、被買収者の場合にはこれが一二・二%でありますが、一般世帯の場合には七・八%というぐあいになっております。それから年間総所得で見ましても、被買収者の場合には四十万円以下が四五・三%でありますが、一般の場合にはこれが五二・七%というぐあいに、一般のほうがはるかに高くなっています。五十万円以上の場合には、被買収者の場合には三九・六%でありますが、一般の場合には三六・二%と低くなっている。この第一項目にあげています被買収世帯の収入が高いということは、この統計表によったものと思います。
それから第二に、田畑山林の所有及び経営についても被買収世帯は買い受け世帯及び一般世帯に比べると面積が比較的大きいということ。それから第三項に、被買収世帯の世帯員で市町村長とかその他のいわゆる公職についている人の比率というものがはるかに高い。これは戦前でも高かったけれども、戦後でもこの差は必ずしも縮まっていないというようなこと。それから第五項に、暮らし向きの自己評価、これについても一般世帯に比べて被買収世帯というのはかなり高いということがこの実態調査の結果として掲げてあるわけであります。
この生活事情あるいは経済的な状態というものが、現在そういう状態に置かれているということは一応頭に入れておかなければならないことだろうと思います。生活上、生業上としてわれわれが考える場合には、買い受け人とかあるいは一般世帯に比較して、いわゆる被買収者というものが現在特に経済的不利をこうむっているというような結論は、少なくともこの統計表から見ますと一般的には下せないということが言えるのではないだろうかと私は思います。
この調査結果に基づいて、同調査会は大体二つの項目について答申をしていますが、その第一は「生活上又は生業上困難な状況にある者に対し、生業資金の貸付の措置を講ずる。」ということと、第二項目として「その子弟を進学させるのに困難な状況にある者に対し、育英その他の制度の運用において配慮を加える。」ということをいっておりまして、補償すべきかいなかということについては確たる結論を出していないのであります。この二つの措置の理由として、農地改革が社会的経済的基盤に大幅な変動を来たし、調査の結果においては被買収世帯の中には現在生業に困難を来たしている者もあるという事実に基づくもので、この二つの措置を講ずべきであるということをいっているわけであります。
それではこの被買収者の現在の生活上、生業上の困難がはたしてもっぱら農地開放に基因するものかどうかという点であります。戦後のインフレーションの非常に急激な進行、考えられる原因はそういうことももちろんあります。それから被買収者個人の問題というものも考えなくちゃならないでしょう。そういうことを考えてみますと、一体これがもっぱらこういった被買収者の農地開放によることであるのかどうか、そういう点が必ずしも判断が非常に容易でないということが言えます。これは単に被買収者だけの問題でなくして、戦後におけるわが国の一般的な問題であるだろうと思います。こういうことに対して補償するということがかりにこの補償の主たる目的であるとしますならば、一般的な生活困窮者とか要保護世帯に対してむしろ社会保障というものがもっと広く考えられなくちゃならない、その一つの対象としてこれは当然考えられなくちゃならないものだと思います。そのためには、こうした生活困窮者に対する社会保障の充実というものこそが政策としてとられなくちゃならないということが一般的な問題としてはいえるのではなかろうか、こういうぐあいに考えます。私は、そういう観点から、特にこの被買収者のみを対象として措置をとるということについては非常に疑問を持つものであります。
以上、私は大体この調査会の参考資料というものを中心に意見を述べたのでありますが、そのほかに、この調査資料というものから離れまして、若干この補償について考えてみたいと思います。
その第一は、戦後行なわれました農地開放というものは、御承知のとおり、一九四五年の十二月九日、連合軍総司令部の例の覚え書きによって出たわけでありまして、この覚え書きに述べてある内容については、ここであらためて申し述べるまでもないことだと思います。しかしながら、この農地改革というものが、日本の戦後の経済の近代化だとかあるいは民主化というものにとって非常に大きな役割りを果たしたということは、これはひとしく認められるところであろうと思います。しかしながら、この農地開放に関しましては、その後多数のいわゆる違憲訴訟というものが提起されて、買収価格が不当に安いという論議その他が盛んに戦わされたのであります。しかしながら、この農地補償の底流として現在もその後ずっと流れていますのは、こういったこの農地開放にからまる違憲訴訟、いわゆる憲法に保障された所有権の侵害である、あるいはこの買い上げ価格というものが不当に安かったということについての論議、考え方というものが現在もなおやはり底流として流れているかと思います。この違憲訴訟に関しましては、先ほどもありましたように、最高裁判所の判決によって決着がすでに一応ついておると思います。買収価格が不当に安いという考え方は、――私、この買収価格の決定のしかたは必ずしも正確な綿密な計算によって決定されたとは考えませんが、とにかく特にそれが問題になってきますのは、その後におけるわが国の急激なインフレの進行、ことに最近における地価の暴騰、こういうことから、かつて安い価格で買い上げられた土地に対して再び問題が起こってきているのだろうと思います。しかし、もしこの買収価格が非常に安価に過ぎて被買収人がその結果経済的不利を特にこうむっているとするならば、同様のことは、たとえばその当時行なわれていたいわゆる米の強権供出、非常に低米価で米の供出が行なわれておりますが、当然こういうことも国家の補償の対象になるべきではないだろうかと私は考えるわけであります。それからまた、戦後の急激な経済的変動による被害者というものは、これは土地を開放した人も含めて、単にそういう人だけでなくして国民一般が非常に大きな被害者であるということが私はできるだろうと思う。もちろん国民の中には、その過程で一切の財産を無に帰したというかなりたくさんの国民がいることは私があらためてここに申し上げるまでもないことであります。それを一々取り上げていたならば、国家はおそらくこういう人々に対しても一定の補償をしなくちゃならないというような問題が起こってくるのではなかろうか。
それから第二に、何ゆえに農地の被買収人に対してだけ今日特定の給付金を補償として与えなくちゃならないのか、その根拠は一体どういうところにあるのかという点であります。まあこれは、戦時中はさておきまして、いま言いましたように、戦後においても戦後の急激な経済変動、あの困難な経済状態の中で、これは私たち自身もそうでありますが、やはり自分の財産あるいは家屋、不動産というものを失いながらあの困難な時代を乗り切ってきているわけであります。そういう意味では、特にこの被買収人に対してのみそういった補償が必要であるという理由を私ははっきり納得することができません。
それから第三には、調査会の答申には、前述のように、二つの項目について必要な措置をとることということが答申としてあげてありますが、この農地被買収者等に対する給付金の支給に関する法律案というものを見ますと、被買収地全部に対して給付金を支給するという内容になっているようであります。その点は一体どういうことなのか、私はこれは答申と若干違っていると思いますが、そういうことを考えてみますと、その理由として、これはけさの新聞に出ていたと思うのですが、田中大蔵大臣は、この農地開放というのは、その後の経済の民主的あるいは近代的発展のための原動力、基礎になっているから、そのために特に農地の被買収人に対して補償をする必要があるのだというお答えであったように読みましたが、もしそういう考え方からしますと、現在のこの高度経済成長政策というような政策、これは確かに日本経済の発展ということに一つの大きなプラスになっていると思いますが、しかし、それと並んで、中小企業とかあるいは農業に対する大きなひずみがあらわれていることも周知のとおりであります。中小企業では多くの倒産者が出ている。それから農民の間には出かせぎ、そのために家がめちゃくちゃになるというような事態も出ております。そうしますと、国家のそういう政策によって、それが経済発展のためにやむを得ないという考え方からしますと、たとえば中小企業の倒産あるいは農業の血における大きなひずみ、それによる被害というものに対して、われわれはやはり国家の補償ということを考えなくちゃならないのじゃないだろうか、こういう考え方も論理的には出てくるわけであります。そういうことになりますと、やはり同じような考え方からいいますと膨大な金というものが必要になるでしょう。これは、この農地補償面積というものが被買収地、買い上げ地全部にわたっている、その金額というものもすでに膨大なものでありますが、さらにそういり同じ論理で進めますと、他に補償すべき問題というものは、あの戦後の動乱の中に、数え立てればこれは数限りなく出てくるだろうと思います。私は、この被買収人に対するそういう補償とかあるいは何らかの援助というものは、生活上非常に困難な人があるならば、これはやはり当然やらなくてはならない。しかし、それには、特に被買収人だけを対象にして行なうものでなくして、社会保障の一つの対象として当然取り上げるべき問題だという持論でございます。
概括的に、私はこの農地補償の問題に対しては大体以上のような考え方を持っております。(拍手)
〔「ばかなことを言う」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/4
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005・河本敏夫
○河本委員長 次に、中村参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/5
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006・中村吉次郎
○中村参考人 私どもは、戦後の農地開放のときには政府に協力いたしまして、農地開放を推進したものでございます。その当時からすでに気の毒な地主もありました。けれども、ああいう大事業、革命的な事業をやるために一線を引くということになりますと、やはりそこには無理が起こることは当然でありまして、今日のように気の毒な地主を救済するという親心があるならば、あの当時にやはり別の方法で気の損な地主を救済する方法をとるべきであったと思います。しかしながら、やはり諸外国では血を流して革命をやるようなことにならなければできないような農地解放という事業を平和裏にやったというような点で、戦後の非常に大きな功績であったと思います。
それから、いま旧地主さんに報償するということでございますが、ほんとの意味は、私は追加補償ではないかと思います。しかし、これが今日被買収者の問題になりましたのは、少なくともあの当時の農地開放の目的が農村の民主化とか、ひいては日本の民主化あるいは食糧の増産、そういう非常な緊急の事態と将来の日本の再建のために基礎となるべき大事業をやったわけでございまして、そこに犠牲になるべき地主というものがあったことはやむを得ないことであります。
しかも開放された開放農地というものは、これがその後わずか五年たつかたたぬうちに法律を改正いたしまして、その開放農地の転売、転用を自由にした。ここに大きな問題があったと思います。もし開放農地の転売を禁止して、その開放農地は再び政府が買い上げるということになれば、今日の土地暴騰も抑制できたし、あるいは構造改善事業による農地の拡大もできたし、公用土地の取得の問題もできた、そして旧地主のこのような大きな社会的な反撃といいますか、運動にもならなかったと私は思います。そういう不始末な政治の結果を、報償という国の自由な意思によって行なう。報償というのはよく意味がわからないのですが、わけのわからないばく大な金が出るということでございます。
その当時の価格は、私どもは不当に高いとも安いとも思いません。要するに当時の農地の実情からいって、農業経営に使用する農地としての値段としては当然であったと思います。その後のインフレ、あるいは土地の転用によって農業以外に使用するために土地が暴騰し、そのために開放農地、ほんとうに耕作農民に渡るべき土地が、耕作農民でなくして投機の材料になっておる。そこに被買収者の大きな不満というものがあったと思います。したがいまして、廣川農林大臣であったかと思いますが、ああいうむちゃな、つまり約束を旧地主に守らない政府がだらしがなかったといいますか、そういうことを守らなかった、そこに問題があると思います。
それから私どもは、その価格が当時安かったから、その後価格が上がったから追加補償しろということになりますと、今日の公用土地の取得におきましても、土地買収は時価買収ということになっております。したがって、いまのような状況で土地を買いまして、すべての農民は、公用土地といいましても、これは強権によって臨時措置法まで出まして、賠償価格のきまらないうちにその工事が始められるような措置法ができております。このような状況で、その後土地が上がったからまた追加賠償を要求するということになりまして、そのようなやり方では、今後の公用土地の取得におきましてもいろいろな問題が起こると思います。ただ気の毒な地主というものはいま始まったものではなくして、以前から、最初からあったのであって、これらを救済する方法は、このようなやり方でなくして、やはり先ほど申されたとおり、前向きの姿勢で解決していかなくちゃならぬ。そのためには、やはり社会保障というものを国の責任においてもっと徹底し、すべての国民が生活を保障されるという形で解決していくべきじゃないかと思います。したがいまして、私どもは、この報償というよく意味のわからないお涙金を旧地主のすべてに与える、困っている人にも困っていない人にも一定限度のものを平均して与えるというやり方、そういうことがはたして国の金を使う上に非常に有意義であるかどうかということに対して疑問がありまして、ほんとうに困っているものにはやはり国の責任において生活を保障してやるという方法を確立してこそはじめて前向きによる解決の方法じゃないかと思います。
それから、今日のこのばく大な金で追加補償をすることによって弊害が起こるということが考えられる。今日いろいろな人の意見を聞きましても、世論によりましても、そのことが非常に心配されているようでございます。したがって、私どもはやはりその弊害、つまり犠牲者は旧地主だけじゃないのだという国民的な感情があると思います。また地主にしてみれば、当時革新政党は山林の開放まで要求していたはずであります。山林開放をせずに農地だけ解放したのは片手落ちじゃないかということもあったわけでございますが、そういう点に対する旧地主の不平不満もあったかと思います。そういうことを考えますと、今回の被買収者に対する報償によりまして、さらに他の犠牲者に対しても報償とか補償を国がやらなくちゃならぬというようなことになってきますと、これからの政治の面でかえっていろいろな困難が大きくなるのではないか。したがいまして、私どもは、このようなやり方によって旧地主を救済するやり方については疑問があり、また妥当ではない、こういうふうに考えるわけでございます。
そういう点を考えられまして、この農地報償についてはやはり前向きの姿勢で旧地主の救済ということを考えるべきじゃないかと思います。
以上簡単でございますが終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/6
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007・秦玄龍
○秦参考人 ちょっと私の先ほどの陣述の途中で、ばかだということを聞いたのですが、私はきょう参考人として出てきているので、そういうことばはここで取り消していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/7
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008・荒舩清十郎
○荒舩委員 ただいま参考人から御発言がございましたが、参考人はあくまでもお忙しいところをおいでいただいたのですから、非礼なことばがあったといたしましたら、やはり取り消しをすることがいいと思います。さようひとつ委員長、お取り計らいください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/8
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009・河本敏夫
○河本委員長 秦参考人に申し上げます。
先ほどもし失礼な言辞があったとすれば、委員長からも深くおわびいたします。
ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/9
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010・河本敏夫
○河本委員長 速記を始めて。
これより質疑を行ないます。高田富之君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/10
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011・高田富之
○高田委員 橋本先生にお伺いいたします。一点だけでございますから……。
お話を承りますと、私の理解いたしましたところによりますと、先生は今度の給付金の支給に関する法律案、これに対してもちろん御賛成の立場でございますが、賛成なさる趣旨でございますね、この趣旨が、提案されております政府のこの法律案の趣旨と完全に一致しておるという立場からの御賛成であるのかどうか。ちょっと必ずしも明確でなかったものですからお伺いしたいのでございますが、あなたはこの政府の給付金支給に関する法律案の趣旨、この考え方に対しましても賛成なんでございますか。反対の立場から、金を出すことには賛成だけれども、こういう考え方で出すことには反対だ、こういうのでございましょうか。もう少しはっきり御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/11
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012・橋本傳左衛門
○橋本参考人 お答えいたします。政府の提出した法案の説明書の趣旨ということでございましょうか。私はむろんこれは賛成をいたします。そして私の議論は、あるいはその以上にいっておるのだろうと思うのです。というのは、困っているからそれを救済するということも必要なことでありましょう。しかしながら私の論旨をもってすれば、あれは不当な安い価格なんだから、困ろうが困るまいが不当なものは正しくしなければいかぬという感じを私は持っておる。だから、その中途で報償というようななまぬるい意味だけれども、しかしながら、今日最高裁判所の決定というものもあるのだから、政府はそれを破ることはできないと私は思うのです。だから、そのいたわりとして、経済的の影響、心理的の影響、これは大きなものでありますから、それらをひとつ緩和するようにできるだけおやりになったらよかろう、こういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/12
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013・高田富之
○高田委員 だいぶはっきりいたしました。そうしますと、政府のたてまえは、例の最高裁の判決によって、農地改革による対価というものは正当なものだから補償の必要はないんだということがまず前提になりまして、そのことではなしに、別の角度からこの給付金法案というものが出てきているのだと思うのですが、あなたのあれでいきますと、そうではなしに、最高裁の裁決自体が間違っておる、したがって対価が不当に安く、これは憲法違反であるという立場から、名目はこういうふうであっても、実質的には補償をさせておるという意味において賛成なんだ。名目はちょっと違いますけれども、そういう再補償という意味において賛成である、こういうことでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/13
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014・橋本傳左衛門
○橋本参考人 お答えいたします。
私が申し上げましたとおり、あれは最高裁が何とおっしゃろうが、この生産費調査には収入と支出が離るべからざる関係でくっついておるのを、それを頭だけ、収入だけ取り除いて、ほかの関係のないほうから持ってきておるということを私は認めることができない、こういう趣旨です。しかしながら、それを訂正しろといま言ったってしかたがないのだ、まあできるだけ政治の面においてその欠陥を補うということをお考えになったらよかろう、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/14
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015・高田富之
○高田委員 これで終わりますが、そうすると、説明書きにどう書いてあろうとも、政府のこの出している法律案というものは補償である、こういうふうに御理解なさって賛成されておる、こういう意味なのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/15
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016・橋本傳左衛門
○橋本参考人 お答えいたします。
十分の補償と私は考えておりません。なぜかというと、額がのぼるに従って逓減しておる、それで百万円で切っておる。完全な補償であればどこまでも同じ割合でいくべきだ、だがそうじゃないのですから、これは補償とは言えないのですな。しかしながら、今日の実際問題として、補償しろと言ったってなかなか有効にそれが実現されるとは思いません。ゆえに、なるべくそれに近いほうに持っていきなさい、こういうのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/16
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017・河本敏夫
○河本委員長 石田宥全君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/17
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018・石田宥全
○石田(宥)委員 時間の都合がありますので、秦参考人にお伺いしたいと思うのであります。
戦争前から、地主・小作の間におきましてはいろいろな社会問題がございまして、全国至るところに小作関係で紛争が起こっておりました。当時われわれもその信念で戦ってまいったのでありますが、地主というものは盲腸にひとしいものだ、これはなくていいんだ、むしろあることによって、医学の発達しない時代においては命さえも奪われる危険性がある、もう地主というものは必要はないんだ、ばかりじゃなくて、これはもう有害なものだという議論があって、相当な学者の中でも論争があったわけですよ。であればこそ、私どもが農民にそのことを呼びかけて、土地を農民へというスローガンのもとに戦いを進めてまいりましたが、私などは四回も五回も刑務所に入った。しかし農民は強くわれわれの主張を支持して戦ってまいりましたが、私は、戦後の処理が行なわれなかったとするならば、日本の農村、日本の政治というものはもっと変わったものになっておる。すなわち農民の力によって農地というものは解放されておったのではないかと考えるのでありますが、秦参考人の御意見を伺いたい。
それから、次にもう一つの問題でありますが、開放経済体制のもとにおける国際競争力の点で見た場合に、時間がありませんから端的に申しますが、たとえば畜産と果樹は成長作目だといわれておるけれども、畜産物のごときは、わが国のような状態では、放牧体制をとっておる外国の乳製品と輸入飼料に基づくところの日本の畜産ではとうていこれは競争し得ない。何といっても牧野の開放というものが絶対的な条件にならなければならないと思うのでありますが、いま問題になっております農地報償が実現をいたしますると、大面積を所有しておる地主諸君の心理的な影響から、今後そのような土地の高度利用というものに対して、土地の値上がりとあわせて非常に大きな障害をもたらすのではないか、こう考えるのです。内閣はかつて河野さんが農林大臣のときに、農地の値上がりに対して適当な措置を講ずべきではないかという質問に対して、その意思はないということを答弁をしておられましたが、今日土地の値上がりと、一面地主的な意識とその心理的な悪影響というものは、そういう日本農業を前向きにさせる上においての歯どめの作用をするのではないかという点について私は心配をするのですが、この点はいかがでしょうか。
それから第三点といたしましては、いま千五百億ほどの給付金を出そうということでありますが、今日のわが国の農業では、構造改善事業をやるといっても、農民を生体モルセットにしておるものだといわれておる。まさにそのとおりなんでありまして、何ら自信を持たないところの機械化、近代化を進めておる。一番極端なのを見ると、鶏でありますが、鶏は、種鶏をはじめ、ひなを大量にアメリカから輸入して養鶏をやらなければならないほど日本の畜産の技術というものはおくれておる。これはたくさんありますけれども、一つだけ実例をあげたいと思うのでありますが、たとえば機械化にいたしましても、日本の農業に適するような機械が、コンバインにいたしましてもその他のものにいたしましても、まだ見出されておらない。それは農民を試験台にしておる。千五百億という金を旧地主に出すくらいならば、なぜもっとそういう面で前向きに日本の農業を国際競争力に耐え得るような姿勢をつくるための予算の措置をしないのか。そういう点を怠っておって、そうして旧地主に補償をするというようなことは、いわゆるうしろ向きの措置であって、全然前向きにならないのではないか。これは単に農業と農民の問題だけでなしに、私は、日本の国全体の面から見て非常に重大な問題だと思うのです。たとえば日本の輸入総額が七十九億ドルでありますが、農林水産物資の輸入総額は三十四億ドルで、約四〇%に及んでおるわけです。この上さらに農林水産物資を外国に依存するというようなことになるならば、国際収支の面から見て、日本の国の経済の将来にとって憂うべき問題になるのではないか。そのうしろ向きの第一歩となるおそれがあるということを私は憂うるのです。
ひとつこの三点についての秦参考人の御意見を承りたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/18
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019・秦玄龍
○秦参考人 いまの御質問でありますが、第一点で、戦前の地主に対する一般農民の考え方ということから解き起こされまして、こういう土地所有の形態というものが経済の進歩とともにどういうぐあいに変化していくかということでありますが、これは、世界の歴史から見ましても、いわゆる封建社会の土地の所有のしかたというものからだんだん変化してきて、資本主義社会においてはやはり資本主義的な土地所有といいますか、近代的な土地所有と一般に呼ばれています、そういう所有形態に変わってきているわけであります。少なくとも終戦に至りますときまでは、日本の土地の所有のしかたというものは必ずしも近代的な、と私たちは呼んでいますが、ヨーロッパ的ないわゆる近代的な土地所有の形態でなかったということは、これは一般的に言えることだと思います。イギリスなんかの場合には、そういう近代的な土地所有の形態に変わってきたというのは、すでに産業革命の直前あたりに完全に近代的な土地所有の形態に変わってきているわけであります。日本の場合には、これが終戦直後のときに至りますまで、たとえば小作料というのは五〇%以上払っていた。近代的な土地所有の場合には、こういう高率の小作料を払うということはないのであります。これは、いまおっしゃったように、すでに戦時中からそういう小作料率に対する問題は、国としてもあるいは農民の間でも広く取り上げられていた問題であります。したがって、終戦後日本がこの戦後処理の過程で、先ほど言いました総司令部の覚え書きによって農地改革というものに着手したのでありますが、経済の動向から考え、ことにあの時代の一般的な世界経済の動きという方向から考えてみますと、日本でもおそかれ早かれ必然的にこういった土地所有の近代化ということは当然に行なわれていたはずだと思うのであります。日本の場合は、それが総司令部の覚え書きというもので強力に働きかけられて動いていったということでありますが、それがなくとも、必然的にそういう方向に進んでいったに違いないということは、世界のそういう動きから考えてみても当然に言えることだというぐあいに私は考えます。
それから開放体制下における問題でありますが、これは私が申すまでもなく、いま例を畜産にとられましたが、日本における畜産経営というのはなぜ非常に困難な状態に置かれておるか、ことに外国から入ってくる酪農製品に対する太刀打ちというものは現在非常に困難な状態に置かれております。そのためには、農業政策としてそういう外国からの酪農製品の輸入に対して当然に対抗できるような十分な措置というものが国内にまずとられなくちゃならない。少なくとも日本の農業を発展させるという前向きの立場で考えられるならば、当然そういうことが言えるのであります。たとえば飼料の問題にしましても、あるいは飼料を確保すべき牧地の問題にしましても、外国から酪農製品が入ってくる前に、十分そういう措置がとっておかれなくちゃならないのは当然のことであります。非常に残念なことですが、日本の場合には、たとえば牧地の確保というような点では必ずしも十全ではなかったということが言えるだろうし、あるいは安価な良質の飼料の国内における確保ということが、現在から考えてみますと必ずしも十分でなかった。そのために、御承知のように、いま酪農家は乳価と飼料高のはさみ打ちにあって、非常に困難な立場に置かれているという現状であります。その前に自給飼料の率を少しでも高めて、酪農製品のコストの切り下げ、畜産における生産コストを切り下げて日本の畜産を発展させるという見地をとりますならば、当然にこれは自給飼料のもとであります牧地の確保ということが必要になってくるわけであります。国有林はもちろんのこと、あるいは非常に広大な土地を安く確保してやるということが当然に必要になってくるわけであります。その場合に、農地報償というようなことがもし行なわれるならば、地主のそういう心理的な影響から考えてみて、牧地の払い下げあるいは牧地への転換ということが非常に困難ではないかという心配であります。これは払い下げられる対象になるような牧地だけではなくして、一般に地価が非常に暴騰しております。そのために山林地の価格というのも必然的に現在は一ころに比べますと高くなっている。そういうことから考えてみますと、牧地のための土地の価格というものに対して、やはり大なり小なりそういうことが所有者に対して一定の心理的影響を与える。牧地への転換というものが、安く転換をしていくということがかなり困難になってくるだろうということは私も心配する一つの点であります。
それから第三点でありますが、この千五百億円の給付金の問題であります。これは、私も先ほどちょっと述べましたように、日本の農業を少なくとも近代化し、もっとしっかりして外国の農業と、完全にといわなくても、相当根強く太刀打ちできるような、そういう農業に持っていくためには機械化も必要でありますし、いわゆる土地基盤の整備というものももっともっと積極的に進められなくちゃならないわけであります。せっかく農地改革によって農民が土地を持つようになる、そして自分の土地で積極的に農業生産をやるという意欲を持っている現在、どうして日本の農業にひずみが起こり、非常に困難な立場に置かれているか、やはり現在行なわれている構造改善政策にしましても、いわばこれは全国的な耕地の面積からいいますと単なる点にしかすぎない、非常に小さな面積についてのみ行なわれています。しかもそれがかなりやりにくい形で行なわれているわけでありますが、これをもっとほんとうに日本の農業を近代化し、あるいは合理化していこうとするならば、もっともっと金をつぎ込むべきであります。農業の発展ということを少なくとも前向きに考え、積極的に日本の農業を発展さしていくという方策をとろうとするならば、やはりこの千五百億という金はそういう日本の農業の発展のためにプラスになるように使っていただきたい。私、日本の農業というものを特に心配する立場から、積極的にプラスになるように、これを日本農業の発展のために使っていただきたいということを心から願うものであります。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/19
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020・河本敏夫
○河本委員長 村山喜一君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/20
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021・村山喜一
○村山(喜)委員 委員長にお尋ねしますが、社会党の割り当て時間はあと幾らありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/21
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022・河本敏夫
○河本委員長 社会党の割り当て時間は四十分でありますから、まだ残り十五分ございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/22
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023・村山喜一
○村山(喜)委員 私は橋本先生にお尋ねをいたしたいと思います。
先ほど橋本先先のお話をお伺いいたしておりますと、反当二石ということで設定をしたところに第一の間違いがある。しかも、それは食糧庁の米価の生産費調査に基づいてやるべきのに、その資料を使わないで、政府は補償の金額をきめる場合においては別な統計、農林統計を使った、こういうことからこの問題について錯誤を起こしておるのだという説明でございます。そこで、当時のことでございますが、先生が橋本鑑定書を裁判所にお出しになったということも本を通じて聞いておるわけであります。この内容を見てみますと、当該農家の個別的な米の生産費を算出する場合においては先生のお説の場合が適当であろうと思うのでありますが、しかしながら、はたしてその食糧庁の米の生産費調査の農家というものが農家の全部の階層を代表していたものであるのかどうか、そこに問題があろうと思うのであります。当時の生産費調査をやります農家の場合の選定要綱を見てみますと、これは明らかに富農的な、優秀な農家が選ばれて、しかも経営面積を見ましても平均反別以上のものがあり、しかも農機具なりあるいは家畜等も完備し、地力の高い農地を耕すというような、そういうものが条件として設定をされておった。このことについては、昭和二十四年の農林省の農家経済調査を新しい要綱によりまして改正するときにあたりまして、改正の最大の目標というものは、全農家の階層を代表するようなサンプル調査でやるべきだということで、これらの問題については農林統計のほうが正しい当時の資料としては示されるものではなかろうか、私はこういうふうに考える一人でございますが、これには食糧庁の米の年産費調査の農家というものが該当すべきものであるという客観的な事実がございましたら、この際御説明を願っておきたいのであります。
それと関連性がありますのは、昭和二十八年の十二月二十三日の最高裁の判決の判旨の内容でございます。その内容を第二項において見てみますと、自創法六条三項の定める買収対価の算出のしかたは、その計算の項目において合理的であるばかりでなく、その算出過程においても不合理ではない、また「対価算出の項目と数字は、いずれも客観的且つ平均的標準に立つのであって、わが国の全土にわたり自作農を急速且つ広汎に創設する自創法の目的を達するために」云々と書いてあるのであります。そういう立場からいうならば、先生が鑑定書としてお出しになりましたその主張をされる学問的根拠といいますか、そういうものは一応の価値があるといたしましても、最高裁の判旨の中において取り入れられましたものは、先生の主張というものが退けられておる、こういうふうにわれわれは受け取るのであります。そういう角度から見ました場合に、先生の学問的な権威というものを侵す気持ちは毛頭持っておりませんし、尊敬をいたしておりますが、しかしながら、最高裁においてその論理は否決をされておる、こういう立場から考えてまいりますならば、補償ということは成り立たない。しかも、当時のそれらの数字の押え方というものについては客観的に妥当であったということを政府みずからもこれを認めているわけであります。とすれば、その補償でない、いわゆる報償的なものをつけなければならないという考え方に立ったときに、これはどういう形において考えるかということになれば、憲法の上から考えてまいりましても、当然最高裁の判決というものは、三権分立という立場から、国会としても、立法府としても尊重をしなければならない、こういうような考え方に立つのが正しいと思うのであります。そういうような考え方に立ってまいりますと、先生のお説というものは私納得ができない点があるのでございますが、その点について憲法上、専門は憲法学のほうではなかろうと思いますが、憲法上これらの問題について、その補償に準ずるような報償が行なわれるということがはたして正しいとお考えになるのか、この点についての御解明を賜わりたいと思うのでございます。
なお、この際先生にもう一つお尋ねをいたしたいのは、自作農収益価格の問題につきましては、計算の方式が示されておりまするが、これについてはあまり争う余地がないようにお聞きするのでありますが、この自作農収益価格の算出についても、なお問題がありまするならばこの際お示しを願いたいと思います。それと、当時におきましてはいわゆる自作収益価格のみならず、三町歩以下につきましては、御承知のように、地主採算価格に基づいた報償が地主報償金として反当たり二百二十円たんぼについては出され、畑については百三十円も出されているのであります。そういうようなことから考えてまいりますると、これは単なる計算やその他のやり方の問題ではなくて、そこにはやはりこの農家の被買収者の土地開放がなされた時点においては適切であったけれども、いわゆる国のインフレ政策というものの結果、ただみたいなものになった。そこから旧地主の不平不満というものが生まれてきている。だからそれを今日の時点において、ただみたいな価格で取り上げられたものを再補償をしなければならない、こういうような意味合いにおける法案としてわれわれは受け取っているのでありますが、その問題について私たちはそのような立場に立っておりますけれども、先生の御見解はいかがであるかをお尋ねいたしたいのであります。以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/23
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024・橋本傳左衛門
○橋本参考人 お答えいたします。
農地買収価格算出の基礎として当時の政府当局があげたあの計算において二石をとったのは無理であると私は申し上げました。ところがこの二石というのは、全国の米の収穫量を調べるための調査の平均でありました。これは、たとえば山の中の一反歩当たり三俵かあるいはそれ以下しかとれないというところも入っておるのです。理屈上は全部について入っている。しかしながら、それには生産費の調査というものはついておりません。ただ収量の調査こっきりでありまして、それだけです。それは今日の農林統計を見ても、毎年やっているのですから出ているのです。ところが食管のほうは、つまり標準田と申しますか、標準田というのは、むずかしいことはいろいろありましょうけれども、とにかく全国を代表するものと公に認めた田であります。ですから代表田といってもいいのです。政府がそう認めているのです。それの収入が幾ら、それから生産費が幾ら、こう出ておるので、これは食管の統計を使ったのがいいか悪いかということでありますが、政府が一番いいと思って当時は使ったのです。またあれ以外には官庁統計で米の収支計算を全国的に計算して出すことのできるものはありません。あれ一つしかないのです。ですから、あれをおとりになったということはやむを得ないと思う。今日の進んだ統計の技術、学問から見ますると、あれはいまおっしゃるように、どうかと思うという点が多々あると思いますけれども、しかし当時政府が標準田、すなわち代表田として認めるのにはあれ以外に方法がなかったのであります。それを、じゃ正しく完全でないからあれをとっちゃいかぬといったら、農地改革というものは行なわれないのです。だから、農地改革を行なうためにはあれをとらざるを得ない。それを、二石という玄米収穫というものをほかの統計から持っていって、当然くっついている、頭と胴とくっついているようにくっついているのをとって、そうして関係のないところの、政府が代表と認めていないところの数字が二石なんです。だから、政府のやっていることをそのまま私は採用したのでありまして、その点は政府のやり方を採用しているのです。数字を採用しているのではない。だから、もうあれ以外の方法はない。そこで、あれをやむを得ず認めておる。今日はもう統計法が比較的完全になりまして、そうして各階層別のものが漏れなく、その代表的なものが含まれるという組織になっておりますから、あの当時と比べると非常に完全に近いものでありますが、いま言ったってそういうことはしょうがないのです。あのときはそういうものはないのですから。
それからその次に、最高裁はいろいろあれの内容について検討して、あれがいいのだと言った。それだからそのほうがほんとうじゃないか、こういうお説のようでありますが、そうじゃないかという御質問でもありますが、私ははばかりながら農業経済の専門であります。数十年来農業評価の問題も私の専門として研究してきておるのであります。しかしながら、専門的のむずかしいことを持ち出すまでもなく、いま申し上げたように、離れるべからざる収入と支出とあるものを収入だけを掘り出して、ほかから関係のない生産費支出の計算のくっついてないものを持ってくるというのは、これは専門以前の問題でありまして、常識の問題であります。ですから、どちらから申しましても、最高裁が何と言おうと、専門学というのは最高裁の支配を受けません。専門的立場に立って正しいことを主張するのがわれわれの義務であります。そしてその見地からして、あれは当を得てない、こういうことを私は確信するものであります。
それからこの問題につきましては、農地被買収者問題調査会の私は委員でありました。あの席においてもずいぶんこの問題を政府当局に説明してくれと言った。農林省の関係の人でしょうか、あのときは農林省でこれをつくったのですから。言ったところが、言を左右に託してこの問題は絶対に返答しません。ほかのことは、いや地主が困っているそうだからそいつを調査するのだとかなんとかいうようなことでありまして、私は明快なる農業評価学上からの説明なんというものは一つも聞かないのみならず、常識的なことでも返答はもらえませんでした。一つつけ加えておきます。
それから、自作収益価格をおまえはとっていないじゃないか、こういう自作農収益価格はとるべきではないか、こういうことをおっしゃったんですな。ところが、私は初めから自作の収益価格のことを言っているのです。これについて最もよけい言っているのです。それですから、私の申し上げたのは、大部分が自作農の田における稲作の収益価格、それをとっておる。それについて言っておるのでありまして、それを無視しているどころじゃないのです。それが私の中心の話なんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/24
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025・村山喜一
○村山(喜)委員 時間がありませんので、私省略をいたしますが、この全国平均反収二石でもってするのは過小に失するという御意見は、先生の専門の学者的な立場からするならば、これは妥当な一つの御意見だとわれわれもお伺いをします。しかしながら、先ほども申し上げますように、これは倍率を計算するために用いられた標準田であって、その倍率の定め方がはたして悪かったかどうかという問題にもかかってくると思うのでありますが、これにつきましてはすでに政府みずからが争う余地はないのだという形をとっております。先生の御意見は、これが根本の間違いなんだ、だからやるべきだという見解であります。ところが、政府はこれは正しかったのだ、これについては争わない。そのほかの内容のものについて、いまの高度成長をした時代において考えてやらなければならないというのが政府の考え方でありますので、いわゆる学問的な立場から論及をされる先生の意見というものと、政府の見解との間には、その点においては食い違いがあるというふうにわれわれは受け取って、これで私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/25
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026・河本敏夫
○河本委員長 綱島正興君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/26
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027・綱島正興
○綱島委員 秦参考人にお尋ねをいたします。
あなたの御意見によると、違憲訴訟が出されておるが、それは違憲でないという判決がすでにされておる、こういう御意見であります。それからいま一つは、内閣における調査会においても、これは正しいということに一応されておる。そのことを前提としてのお話でございました。ここで思い起こしていただきたいことは、今日参考人としてこの国会に来ていただいているのは、ここは立法府なんです。ここは行政府じゃありません。また下級裁判所でもありません。したがって、立法府におけるところの立場というものは裁判所の制裁を受くるものではございません。また覊絆内あるものでもございません。この点を基礎において考えていただかないと、これを行政府の中にあるものというようなお考えでしていただけば、実は議論が全くだめになってしまうのであります。不幸にして、日本はかってこの立法府というものが、政府の中に法制局を持っておって――世界じゅうどこにいったって、立法とは立案、提案、審議、採決の四要素よりなると書いてある。それを政府が立案、提案をする。政府がまるで立法府の半分を持っておるというような形であり、本案もそういう形をしておるものだから、これは間違いが起こっておるので、こういうことこそ実は立法というものを完全にいたさなければならぬ問題なんです。
そこで、あなたがこの問題の解釈に対して、最高裁でこう言うておるからいかぬと言うが、最高裁の判決でもしばしば変更になりますよ。最高裁自身の判決でも訴訟でたびたび変更になっております。しかし、これは何もそれが変更になるからどうこうというのじゃありません。ここは立法府でございますから、最高裁の判決がどうあろうが、悪ければ事態に合わなければ、なおさら立法府でこれを修正していかなければならぬので、それが実は立法府の役目であります。民主主義というものは、立法府を通じて社会の進化に沿った是正をしていくというもので、裁判所がしたとおりだということになったら、一体どうなりますか。専制君主と同じことになる。そういうものを一体あなたはどう考えておられるのか。私は、あなたが何か路傍の人ならいいけれども、学校の先生というのだから、どういうお考えか、ひとつそれを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/27
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028・秦玄龍
○秦参考人 いまたいへん懇切丁寧に、この立法府の意義というものを御説明いただきましてどうもありがとうございました。私も、いま御説明になりましたように大体立法府というのは心得ているつもりであります。私が違憲訴訟について最高裁の判決を持ち出しましたのは、私はこの最高裁の判決はもっともだと考えるからそう申したのであります。そういう観点から私はものを言ったわけでありまして、私の見解として最高裁の判決は正しいと考えたわけであります。
それから内閣調査会の問題が出ましたが、その点もここに書いてあります。私、先ほど続み上げたと思いますが、ここにありますのは「正当な法律に基づいて正当な補償をもって行われた農地改革そのもの及び現行農地法の建前を検討することは適当でない。」ということをこの答申の参考資料の中に書いてあるわけであります。私はそれはまさにそうだと思うのであります。ただ、ここでは問題になるのは「旧地主の現在における生活上、生業上の問題」からこれが出てきているのだということを説明してあるわけであります。私はこのことを前提にして、これは実に明快に述べてあると思うので、私もまさにそうあるべきだと思いますので、そういう観点からこの問題を取り上げたわけであります。現在の農地報償法の問題も、私はまさに政府がそういう観点から取り上げられているのだと考えたわけであります。私、それはもっともだ、そうしたならばこういう点でも自分は疑念を抱くという見解を述べたにすぎないのであります。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/28
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029・綱島正興
○綱島委員 ただいまの御説明によりますと、政府が立案、提案に際して考えられておることは、結局この法案自身と予盾しておる。それだから実は提案の基礎の理由及び内閣調査会の理由自体が正しいのだから、そのとおりするが相当だというふうにお考えになっておる、こういうお説でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/29
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030・秦玄龍
○秦参考人 ちょっとおっしゃっている意味が私、はっきりしない点が若干あるのでありますが、もしそういう形でこの法案が考えられているのだったら、そこで調査された結果から見ても、これはどうも疑問を抱かざるを得ない。納得できない点が多々あるということを申し上げたのであります。そういうことなんであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/30
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031・綱島正興
○綱島委員 最後に申し上げておきますが、どこまでもここは立法府でありますから、政府ではない。政府は、総理大臣であっても提案者にすぎない。立法行為については提案者たる地位にすぎないのです。総理大臣たる地位じゃございません。提案者たる一つの地位にすぎません。提案者の意思を重んじておやりになる、こういう意思は必ずそれは多少尊重されますが、そのことについてはたびたび説明がございましたように、実はこの法案は世間を見渡したところ、最高裁判所でもこうきめているのだから、それをまっこうからぶちこわすのもおかしいから――おかしくはないのだけれども、世間がまだそこまで来ていないから、やむを得ぬから報償というようないいかげんなことで一応けりをつけておこう、こういうことでございますから、それで提案の理由というものも至ってその点は不明確になっておるのでございますから、どうぞそういうようにお受け取りを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/31
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032・河本敏夫
○河本委員長 上林山榮吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/32
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033・上林山榮吉
○上林山委員 まず第一にお伺いしておきたいことは、原則としてはもちろんのことですが、特に国民の権利を奪う場合、これは立法府も反省しなければなるぬ点があるのですが、不遡及の原則は尊重しなければならぬと思います。中村参考人は非常にこの問題について御研究が深いようであり薫ずし、また一部を除いて共鳴するところがあるようでございますので、まず端的に私が伺いたいのは、この不遡及の原則を農地開放の中に取り入れたことはきわめて自然な立法処置であったかどうか、不自然じゃないのか、原則としてはもちろん、ことに権利を奪う場合は、これは立法府としても行政府としても反省しなければならぬ点であろう、こう思うのですが、この一点をまずどう思われるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/33
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034・中村吉次郎
○中村参考人 私は不遡及の原則はあくまで守るべきだと思います。その点で追加補償はできないので報償ということになったのじゃないかと思います。今日すでに公用土地取得に関する特別措置法におきましても、強権をもって時価買収する。したがいまして、現在も地価は暴騰しておりますが、現時点において強権をもってすべての農地も補償価格がきまらない以前に取得できるようになっております。そういう時代に、現在そういう遡及することが行なわれますと、今後もいろいろな公用土地に対して農民は遡及の要求をする。あるいは電信柱一本にしましても、去年度の補償はことしは要求できないことになっておる。そういうことで、過去何十年という間、一切、農民の農地に立てられておる電柱はすべてこれはゼロになって、過去の要求をすることができないことになっております。その原則が農地の補償においては守られなければ、今後収拾つかなくなるのじゃないか。もしこういう原則が確立されるならば、われわれは電信柱一本についても過去数十年来の要求を戦わなければならぬ、こうなると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/34
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035・上林山榮吉
○上林山委員 農地法を改正する場合は、不遡及の原則をじゅうりんしたわけでしたね。だから報償という問題も起こってくる、こういう結論でございますので、その点了承いたしました。
第二点は、御承知のように農地開放の目的は、言うまでもなく不在地主の農地を強制的に取り上げて耕作農民にこれを与えていく、これがその目的でございましたね。しかるに昭和二十七年にこの法律が改められて、いわゆる転用が認められた。現在の地主の転用、あるいは政府が農地法によって農民から取り上げているこのものも転用を可としてきたのですね。これは法的に見ても、実際の政治の内容として見ても、非常な矛盾だと思うのです。この矛盾をこういう法律によって調整をする必要がある、私はこう思うのですが、この見解、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/35
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036・中村吉次郎
○中村参考人 私もそのことを最初から感じたわけです。また、昭和二十七年の転用、転売を自由にしたことがこの問題の発火点になったのじゃないかと思います。したがいまして、私どもは今日現在においても、開放農地の転売というものについて何らかの措置をすれば、農地管理事業団ですか、いまああいうものを新しくまたつくってやるわけですが、そのことも要らなくなっているのじゃないかと思います。ただ、ああいう政府のふしだらな農地政策のあと始末をこのような形で行なわれるということについては、私どもは納得できないのでございます。だから……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/36
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037・上林山榮吉
○上林山委員 非常に明快なので、簡単でけっこうでございます。
そこで私は秦参考人にお伺いしてみたいのでございますが、いま私が中村参考人にお尋ねをしたとおりの事情ですね。いわゆる転用を最初は絶対やっちゃならぬといったのが、転用してよろしい、こう変わってきている。不在地主は絶対に認めない――。あなた方が考えているロシヤ式の地主というのは日本にはほんのわずかしかないので、大部分は額に汗を流した農民の土地です。それがたまたま不位地主という名のもとに処理されたことは御承知でしょうが、この場合、衆議院をこの前通過いたしました農地管理事業団によりますと、不在地主を認めておるのです、わずか十何年たちまして。こういうことの矛盾をどういうふうに調整したらいいと、ごらんになりますか。
それともう一点、時間の関係で申し上げますが、先ほど片りんを申し上げましたように、政府はいわゆる地主、農地所有者から取り上げたものを、昭和二十五年八月一日の農林統計によりますと、三万二千三百七十町歩持っておるのです。十何年たった今日においてもなお七千八百町歩持っておるのです。これなども、私は考えようによっては財源の一種になると考えておるのです。だから、これを政府が十何年も持っておるということをどういうようにごらんになりますか。そんなにたくさん政府が取り上げて、まだそれを消化できないで持っておるということ、これは国民は案外知らないのです。ですから、こういう問題についてもひとつ御説明願っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/37
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038・秦玄龍
○秦参考人 最後の点から逆に申し上げていきますが、政府が七千何百町歩持っておるということは私は存じておりますけれども、私は、これはもちろん日本農業の発展のためにこういうものは大いに活用すべきだと思います。もしそれが耕作地であるならば、耕作地として日本の農業のために積極的に使うべきであり、そうでなく、たとえば宅地とかあるいは山林であるならば、それに適するようにもっと合理的に使うべきであって、それをもし全然そういうぐあいに使っていないならば、私はこれは早急にそういう方面に使っていただきたいというぐあいに考えます。
それから、農地管理事業団が不在地主を認めているというお話でありますが、もしそうであるならば、これは私、そういう管理事業団というのはよくないと思います。これは現在の農地法からいいましても不在地主は認められていないわけでありますから、もし管理事業団が認めているならば、端的に申しまして私はそういうやり力はいけないと思うのであります。
それから、もう一つは農地転用の問題だったと思うのですが、この点は、私は農地転用ということは原則としては開放農地についてはいけないことだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/38
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039・上林山榮吉
○上林山委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/39
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040・河本敏夫
○河本委員長 受田新吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/40
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041・受田新吉
○受田委員 橋本先生、私はごく簡単に先生の御所見に対して私の立場から御質問申し上げてお答え願いたい点が一つほどあります。それは先生の御所論は、この農地開放に対して、開放させられた農地の所有者にたいへん損害を与えているから、これを何らかの形でこの法律によって救うことは当然であるというお考えのようです。ただ理論的に言うならば、報償ということはけしからぬやり方で補償が筋が通るという御意見のようです。私はただ今度の調査会の目的が、そうした法律論争でなくて生活上、生業上の問題としてこの問題を処理しようという目的が明らかにされ、この法案が出されている関係上、先生の御所論に対してひとつはっきりさしていただきたいのは、この出された法案は、生活上、生業上の問題として開放地主に対して何らかの補償をしなければならぬ、いわゆる報償でなくて補償をしなければならぬという立場をこの法案の中にも盛るべきであったとお考えでございますか、あるいはこの法案をやむなき手段として肯定されるというお立場でございますか、その点がどうも先ほどからのお話ではっきりしませんので、明確に御答弁を願っておきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/41
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042・橋本傳左衛門
○橋本参考人 お答えを申し上げます。
私は前段、私の信じておるところを申し上げたとおりです。あの農地の買収価格の決定は、それに使ったその数字の扱い方が非常に当を得ていないから、あのときの補償が正当な補償になっていない、それだからこれを正当な補償にしろということを私は主張しているのではありません、今日はそういうことを主張にきたのではありません。いろいろ考えて御質問に応じたりするのでありますが、生活上の問題からして報償金を出すということが問題になっておるのだ、こういうことでありますが、私は今日の段階において立法府で補償問題を取り上げて、そうしてつまりこれは非常に大きな問題なんですが、大きな問題として扱え、こういうことを勧告しているものでありません。報償という問題が出ておるのでありまして、私の見地からすれば、補償は今日の段階において期待することが無理であるから、これは報償問題というふうにして考えるべきであるだろう、こういうのでありまして、私に言わせれば、どっちがいいかといえば、それは理屈に合っているのは補償なんです。補償が理屈に合っておるのだけれども、しかし、そういうことを言ったって今日の実際の社会状態、政治状態からいって無理だから、ひとつ何らか損害を受けた者に対してはいたわりをしてやるがよかろう、こういうのでありまして、生活に困っていない人でもおやりになるがよかろうということは入っております。この法律の趣旨もそうだろうと思うのです。生活に困っている人だけやるのだ、そうではない者はやらぬというふうに私は解しておりません。みんなにやるというのだから私の考えと同じです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/42
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043・受田新吉
○受田委員 先年、私そこをちょっと確かめさせてもらいたいのですが、生活に困っている人に差し上げるということであれば、ある程度の償い、報いという意味が私よく成り立つと思うのですけれども、生活に困らない豊かな方々に対してこれを与えるということは、これは補償の性格を持つものではないと思うのでございますが、それはいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/43
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044・橋本傳左衛門
○橋本参考人 お答えいたします。
この法案は、その人の生活が楽であるからとかなんとかということで、条件としてやるのじゃなくして、一斉に同じ取り扱いでいくのだ、こういうことになっておるのですね。これはこの法案の理由書にも書いてあるとおりです。ああいう意味でおやりになるのだろうから、あれは私は間違っているとかいけないとは申しません。けれどもただ不十分に私は感じる。だからもう少しいったらよかろうと思うのだが、今日の立法府の状態でそれ以上にいけなければ、これはやむを得ません。私はそれ以上いきり立って社会に反論を唱えたりなんかする気持ちはありませんけれども、せいぜいおやりになったらよかろう、この趣旨を実現するように気ばっておやりになったらよかろう、こういう趣旨です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/44
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045・受田新吉
○受田委員 わかりました。先生は農業政策の大家でいらっしゃると思いますので、そこでちょっとだけ経済政策についてお尋ねしたいのですが、終戦当時、土地に投資した人もあればまた預貯金に投資をした人もあります。その生産財から、土地の投資の人は地代や小作料が入ってきたし、それから預貯金の人には利子が入ってきた。預貯金をした人は、インフレの強度の進行で、昔のままの金額を元金にして、それを生産財にして利潤が生まれておった。土地の投資の入は、一応農地開放で適正な価格と判断される――ある程度政策的なものは入っておりましたけれども、それで処分をされた。こういうことでございますから、この農地の開放をされた人に対するこれから後の報償ということをやるならば、当然預貯金の、その後におけるインフレの進行によって著しく購買力を失って、貨幣価値を減退した人々に対する問題ということも、これは生産財から得る利潤という意味から考えて、当然考慮される問題だと思うのです。こういう問題もありますし、さらに戦災その他の生命を失った問題等もありますので、こういうところから単に開放された農地にだけあとから追加払いのような形式の報償というものがとられることになると、これは必ず他の問題に波及するということは、これは政策的に見て先生御自身も御判断されておるのじゃないかと思うのです。この点はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/45
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046・橋本傳左衛門
○橋本参考人 お答えいたします。
政策というのは、その範囲がきりがありませんから、将来どういうところまで発展していくかわかりませんし、外国で見るように、いわゆるゆりかごから墓場まで心配なくいくというふうに進むかもしれません。けれども現在の段階あるいは農地改革当時の事情を考えますと、あのときに預金した者が利息をとって、その利息の購買力が非常に少なくなっちゃった、それも気の毒じゃないか、私は大いに気の毒だと思います。しかしながら、土地の場合と預金をした場合とはひどく違うのです。だからそれを同じにして考えるべきものではないと思うのです。どこが違うかというと、あれは当時の政府が進駐軍のディレクティブによって、指令によってこれをやらざるを得なかったのでしょうが、とにかく政府の政策としてあれが行なわれたのです。だからあれは人為的なんです。インフレなんというものは、これはだれがどうしてインフレを起こしたというものではありません。だからそれは時期がきて、そういうものを救うということになるのは、それは決して悪いことであるとは思いませんが、いつごろくるかわかりません。ところが、それと農地の買い入れの問題とを混同しているんじゃないでしょうか。同じに見ることは、これは私の専門的見地からいうと絶対にできないと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/46
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047・受田新吉
○受田委員 私は先生の御所論で、政策的にものごとを考えていかなければならない国会の場でございますが、参考人として御出席を願った先生に御所見を承ったことを感謝すると同時に、少なくともこの法案が政策的に提案されたということになりますと、政策的見地から他の関連の諸問題もあわせて検討しなければならない。参考人として御出席いただいた場合に、そういう関連する他の政策的問題もあわせ御研究願って御意見を承るのが私としてはありがたいことだと思うのです。
そこで中村先生、先ほど、二十七年の広川農林大臣のとき開放農地の転売を許したことは大失敗であったという御意見があったのですが、私たちもその点を強く痛感しております。これは旧地主に確かに心理的な悪影響を与えているりっぱなお手本だと思うのです。この問題等で政府の独立国家となって後に犯した問題のしりぬぐいをここに出されるような形になっておる。この問題についていまついでにお答えになった中に、山林の開放を同時にすべきではなかったかという御意見もおありのようでございましたが、農地だけを開放して山林が残されているという問題がやはり農地開放者に対して不満を与えているということでございました。この問題はどうですか、三先生ともひとつお答えを願いたいのですが、農地開放と山林開放――山林の開放については国有林の開放というものがひそんでくるのでございますが、あわせて農地開放に非常に重大な関係を持つのでございますが、山林の所有者は依然として広範な地域を持って、その立ち木によって大所得を得ている。こういうものについては農地開放とあわせて考うべきではないか、それがやはり今度の農地被買収者の報償の問題に影響する問題とお考えではないか、御三人の先生からそれぞれ一言だけお答えを願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/47
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048・中村吉次郎
○中村参考人 山林開放は当時問題になっておりましたのですが、なされなかった。そこに旧地主の平等じゃなかったという不平不満があるのじゃないかと思いますが、今日の日本の農業の近代化からすれば、やはり山林も開放すべきではないかと思います。ことにいま問題になっている国有林の開放はすみやかにやるべきじゃないか、そういう手だてを進めていただきたい、私としてはそういう希望を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/48
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049・秦玄龍
○秦参考人 山林の問題に関しましては、ことに構造改善政策の中で選択的拡大の重要な柱として畜産という問題が出ておりますが、先ほど述べましたように、この畜産というものを日本で自立的に発展させていくためにはどうしても牧野の確保ということが必要になるでしょうし、そういう意味から、そういう目的の必要限度に応ずる国有林の開放あるいは一般の私有林の開放ということも私ぜひ考えていただきたい点であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/49
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050・橋本傳左衛門
○橋本参考人 お答えいたします。
農地改革の当時、山林の開放は除外されました。あれについては、当時から御承知のとおりずいぶん議論があったと私は承知しております。ところが、あれを開放の目的物にしなかったというのは、私の聞いておるところでは、もしあれを開放する、農地のごとくにやると、当時それでなくてさえ戦争中非常に乱伐が行なわれたのでありますが、あれを開放する、しかも農地のごとく強制的に、そしてああいう式の価格で算出したり何かしてやられるとたまらぬ、早く木を切って売ってしまえ、こういうことになって、あのためにまた全国の山林が非常に荒廃する。そうすると国土の保全ということができません。それから非常な弊害が起こり、そしてその弊害のほうが大きいから、そこで山林をほうっておくということにはいろいろの問題もありましょうけれども、まああのように放置しておいたほうが国全体から考えてむしろベターだ、こういうことからああいうふうになったのだと聞いております。それで、私はもうやむを役ないと思うのです。それですから、私はあれがいいとかなんとか簡単に言い切れませんけれども、まあやむを得ない。しかしながら、国有林というものはその成立の経過から考えまして、御承知のとおり地方的に非常に不公平があるのです。東北地方なんかに行くと、軒下から国有林になって、ちょっとたきぎをとろうというと、窃盗罪に問われるというようなことがあったりして、ずいぶん問題がありました。一方から、今度は農業の近代化ということを考えると、やはりある程度国有林などは開放したほうが全体のためによろしい、こういうお考えのもとに、しかしながら国有林の経営に差しつかえを起こすようなところはやらない、差しつかえなき限りにおいて開放する、こういうことでありますから、私はいまのやり方でけっこうだ、少なくともやむを得ない、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/50
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051・受田新吉
○受田委員 終わりにします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/51
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052・河本敏夫
○河本委員長 参考人各位には、御多用中のところ長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、ありがとうございました。委員会を代表してここに厚く御礼申し上げる次第でございます。
本日午後一時より、大蔵委員会、農林水産委員会との連合審査会を開会いたします。
この際、暫時休憩いたします。
午後零時三十七分休憩
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〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104804889X04319650512/52
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