1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十年二月十六日(火曜日)
午前十時五十六分開議
出席委員
委員長 濱地 文平君
理事 仮谷 忠男君 理事 坂田 英一君
理事 谷垣 專一君 理事 長谷川四郎君
理事 本名 武君 理事 赤路 友藏君
理事 東海林 稔君
池田 清志君 宇野 宗佑君
亀岡 高夫君 吉川 久衛君
倉成 正君 小枝 一雄君
笹山茂太郎君 田口長治郎君
田邉 國男君 高見 三郎君
中川 一郎君 野原 正勝君
八田 貞義君 藤田 義光君
細田 吉藏君 兒玉 末男君
松井 誠君 松浦 定義君
森 義視君 湯山 勇君
小平 忠君 中村 時雄君
出席国務大臣
農 林 大 臣 赤城 宗徳君
出席政府委員
農林政務次官 舘林三喜男君
農林事務官
(大臣官房長) 中西 一郎君
農林事務官
(農林経済局
長) 久宗 高君
農林事務官
(農政局長) 昌谷 孝君
農林事務官
(農地局長) 丹羽雅次郎君
農林事務官
(畜産局長) 桧垣徳太郎君
農林事務官
(蚕糸局長) 大口 駿一君
食糧庁長官 齋藤 誠君
林野庁長官 田中 重五君
水産庁長官 松岡 亮君
委員外の出席者
専 門 員 松任谷健太郎君
二月十五日
委員加藤進君辞任につき、その補欠として林百
郎君が議長の指名で委員に選任された。
二月十日
森林開発公団法の一部を改正する法律案(内閣
提出第五三号)
漁港法の一部を改正する法律案(内閣提出第五
四号)
開拓融資保証法の一部を改正する法律案(内閣
提出第五五号)
同月十二日
農地開発機械公団法の一部を改正する法律案
(内閣提出第六九号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
森林開発公団法の一部を改正する法律案(内閣
提出第五三号)
漁港法の一部を改正する法律案(内閣提出第五
四号)
開拓融資保証法の一部を改正する法律案(内閣
提出第五五号)
農地開発機械公団法の一部を改正する法律案
(内閣提出第六九号)
農林水産業の振興に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/0
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001・濱地文平
○濱地委員長 これより会議を開きます。
この際、内閣提出、森林開発公団法の一部を改正する法律案、漁港法の一部を改正する法律案、開拓融資保証法の一部を改正する法律案及び農地開発機械公団法の一部を改正する法律案の四案を一括議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。舘林農林政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/1
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002・舘林三喜男
○舘林(三)政府委員 本日提案いたしました森林開発公団法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げます。
近日、わが国経済の発展に伴いまして木材需要は年々増大する傾向にありますが、この需要の増大に対応して林業総生産の増大をはかることが林業政策を推進するにあたっての最も基本的な課題であり、このためには何よりもまず林道の開設を積極的に行ない、未開発森林資源の開発利用を促進することが必要であると考えるのであります。
政府におきましては、これまで、森林計画に基づき、補助及び融資の両面において林道の開設または改良の促進につとめてきたのでありますが、その実績は計画量に比して不十分であり、しかもその開設状況は地域的に相当の差がある現状であります。さらにまた、林道が奥地山村地域における交通路として果たしている機能にかんがみ、単に林産物の搬出等の観点のみでなく、地域産業振興の観点をも織り込んだ林道の必要性についても指摘がなされているのであります。このような見地から、新たに、未開発の森林地域を対象として森林資源の開発を目的とし、あわせて地域開発にも寄与する幹線的な林道の開設事業を実施することとし、これを急速かつ計画的に行なうことによって開発効果を増大させるとともに、高率の国庫補助及び地元負担金の延べ払いにより森林所有者の負担軽減をはかることといたしたのであります。この事業は、従来の林道に比べましてその規模も大きく、受益地域が広範囲にわたり、さらに事業の早期完成等のため資金運用部資金の借り入れを必要とするわけでありますので、その実施主体としては、すでに熊野剣山周辺地域における林道開設等林道事業について実績を有する森林開発公団が展も適当であると考えられるものであります。このため、新たに、森林開発公団の業務としてただいま申し上げましたような幹線的な林道の開設等の事業を加えることとしたのであります。なお、今後特に森林資源開発の必要性の高い地域につき広くこのような林道の開設を行なう必要があると考えておりますが、昭和四十年度以降とりあえず農林漁業用揮発油税財源身がわりのパイロット事業としてこの事業を実施することとしております。
以上が森林開発公団法の一部を改正する法律案を提出したおもな理由であります。
以下法律案の内容についてその概要を御説明申し上げます。
まず、新たに、地勢等の地理的条件がきわめて悪く、かつ豊富な森林資源の開発が十分に行なわれていない特定の地域内において、地方的な幹線となるべき林道の開設または改良の事業を施行することとし、この事業の実施を森林開発公団の業務に加えることといたしております。この林道の開設事業につきましては、その事業による受益の範囲が著しく広く、かつその事業の施行がこれらの特定の地域における林業以外の産業の振興の見地から相当であると認められるものでなければならないものとし、従来からの補助林道あるいは熊野剣山周辺地域の旧公団林道と区別してその性格を明確に規定することとしております。
この改正に伴いまして、関連条文について所要の規定の整備を行なうこととしております。
次に、この改正を機会に、同公団の監事の監査権限を強化することとし、監事は、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、理事長または農林大臣に意見を提出できることといたしております。
なお、附則についてでございますが、この改正により同公団に新たな業務を追加することとしたのに伴い、地方財政再建促進特別措置法の一部を改正し、地方公共団体が他の公社、公団等に対すると同様に同公団に対しても寄付金等を支出することを禁止することといたしております。
以上がこの法律案の提案の理由及びその主要な内容であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
次に、漁港法の一部を改正する法律案につき、その提案理由を御説明申し上げます。
漁港法は、御承知のとおり、水産業の基盤である漁港に関する基本的法律といたしまして、昭和二十五年に制定、公布されました。それ以来、同法の規定により漁港の維持管理の適正化をはかるとともに、数次にわたる漁港整備計画に基づき、漁港修築事業の施行を推進し、着々と漁港整備の実をあげ、わが国水産業の発展に寄与しているのであります。
また一方、沿岸漁業の振興につきましては、沿岸漁業等振興法に基づき、沿岸漁業構造改善事業を実施し、わが国水産業の発展とその従事者の地位の向上をはかっているところでありますが、今後この沿岸漁業構造改善事業が十分にその効果を発揮して所期の目的を達成するためには、沿岸漁業と密接に関連いたしております第一種漁港及び第二種漁港の整備の促進が特に必要となっているのであります。
しかしながら、従来、漁港の整備に対する地元の負担は相当額にのぼり、これらの漁港の整備を促進していくためには、地元負担の軽減をはかることがぜひとも必要なのであります。
以上のような事情から、沿岸漁業の根拠地である漁港の整備を促進するとともに、沿岸漁業の構造改善に資するため、一定の要件に該当する漁港修築事業に要する費用についての国の補助につき、当分の間、特別の割合を定める措置を講ずることとし本法律案を提案いたした次第であります。
以下、この法律案の内容について、御説明申し上げます。
改正事項は、国の補助割合の引き上げに関するものであります。国が助成しております沿岸漁業構造改善事業が行なわれている都府県の第一種漁港または第二種漁港について漁港修築事業を国以外のものが施行いたします場合に、沿岸漁業の構造改善に資すると認められるときには、基本施設の修築に要する費用について国の補助割合を、当分の間、従来の百分の四十から百分の五十に引き上げることとしたものであります。
以上がこの法律案を提案する理由とその内容であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いする次第であります。
次に、開拓融資保証法の一部を改正する法律案につき、その提案理由を御説明申し上げます。
戦後緊急開拓に始まった開拓事業は発足後二十年を経過しようとしており、現在全国で約十三万五千戸の開拓農家が農業に従事しております。政府はこれら開拓農家の営農を早期に安定させるため、従来から、道路かんがい排水施設等の基本的施設にかかる建設工事及び農舎、畜舎、乳牛等の営農施設の整備を促進する等各般の施策を講じてまいりました。開拓融資保証制度は、これら開拓農家に対する助成策の一環として、昭和二十八年に発足し、以来開拓農家の信用力を補完し、その経営資金の融通の円滑化をはかる上において重要な役割を果たしております。
最近の開拓営農の状況は、不安定な営農を続ける農家もなおかなり見受けられますが、総体としてはかなりの進展を示しております。特に昭和三十八年度からは開拓営農の振興をはかるため、開拓営農振興審議会の答申に基づき、開拓者資金融通特別会計からの営農施設資金の追加融資を軸とする新開拓営農振興対策を実施しておりますことは御承知のとおりであります。この進展に伴って開拓農家の経営資金に対する需要も現に一そう増大してまいっております。
このような開拓農家の経営資金需要の動向にこたえ、かつ系統金融の実情に即応しつつ、開拓者に対する経営資金の融通を円滑化するためには、本保証制度の拡充、合理化をはかることがきわめて必要であると考え、このたびこの法律案を提出した次第であります。
次に、法律案の主要な内容につき御説明申し上げます。
第一は、都道府県開拓融資保証協会の会員たる資格を有する者についてその範囲を拡大したことでありまして、従来会員資格のある農業協同組合を開拓者を主たる構成員とするものに限定していましたものを開拓者をその構成員に含む農業協同組合も開拓農業協同組合として同協会に加入できることに改めるほか、一定の要件を備える農事組合法人及び市町村にも新たに会員資格を与えることとしております。
次に、都道府県開拓融資保証協会の業務についての改正でありますが、このことについては、会員である開拓農業協同組合及び農事組合法人の組合員である開拓者個人の債務を保証できる道を開いたほか、会員である農事組合法人の債務の保証をも行ない得るようにする等その拡充をはかっております。
また、同協会が個人債務の保証を行ない得ることとしたことに伴い、信用事業を行なう農業協同組合及び農業協同組合連合会を金融機関として本法上規定するとともに、同協会の業務の一部を金融機関に委託できることとする等の改正を行なっております。
第二は、政府の中央開拓融資保証協会に対する追加出資に関する規定を整備するための改正であります。
本制度においては、都道府県開拓融資保証協会の保証債務をさらに中央開拓融資保証協会が保証することとして制度の安定的な運営をはかっているのでありますが、政府は中央開拓融資保証協会の保証能力を増大させるため、同協会に対し、明年度において三千万円の追加出資をすることとしており、これに必要な規定の整備をいたすものであります。
以上がこの法律案の提案理由及び主要な内容であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いいたします。
最後に、農地開発機械公団法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。
わが国の畜産は近年著しく伸長いたしておりますが、同時に、最近の畜産をめぐる諸情勢は急速かつ重大な変化を遂げつつあります。かかる事態に対処するため、政府は、畜産特に酪農についての抜本的な振興対策を講ずることとし、その一環として、農地開発機械公団に共同利用模範牧場の建設及び売り渡しの事業を行なわせることとしたのであります。
すなわち、畜産の生産性向上をはかるためには、草地資源の開発利用を促進し、自給飼料資源に立脚した多頭数飼養を推進することが緊要であり、このため政府は従来から草地改良事業の推進について努力を重ねてまいりましたが、なお多くの問題が残されております。そこで、公団が、農林大臣の指示に従い、牧場施設及び経営手段の整備を適期に一体的に行ない、経営の安定をはかり得る条件を早急につくり出すことにより、今後の草地開発方式のモデルとするとともに、草地の共同利用を基礎とする多頭数飼養経営または地方公共団体等による乳牛等の集団的な育成事業のモデルとすることがこの事業のねらいであります。このために農地開発機械公団の業務の範囲を拡大するとともに、あわせて公団の役員及び財務に関する規定について若干の整備を行なうこととし、ここにこの法律案を提出した次第であります。
以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。
第一は、公団の業務の範囲の拡大であります。以上申し上げました趣旨から、農事組合法人等の経営する牧場または地方公共団体等の経営する育成牧場につき、公団が、草地の委託による造成工事を行なうとともに、畜舎、サイロ等の農業用施設の造成と事業用機械、家畜等の経営手段の導入とを一貫して行ない、これらの施設、経営手段等を長期の年賦払いで売り渡す事業を行なうこととするものであります。
第二は、理事の増員でありまして、新たに公団が行なう畜産関係の業務の適正かつ円滑な推進をはかるため、公団の理事一名を増員することとするものであります。
第三は、監事の権限の強化でありまして、公団の業務の適正かつ能率的な運営に資するため、監事は、農林大臣または理事長に対し意見を提出することができることとするものであります。
第四は、農地開発機械公団債券の発行でありまして、公団の業務の遂行に必要な資金を調達するため、公団は債券を発行し得ることとし、これにより資金運用部資金等の円滑な借り入れをはかろうとするものであります。
以上がこの法律案を提案する理由及びその主要な内容であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/2
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003・濱地文平
○濱地委員長 以上で提案理由の説明は終わりました。
四案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
正午より再開することといたしまして、この際、休憩いたします。
午前十一時十一分休憩
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午後零時二十五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/3
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004・濱地文平
○濱地委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
農林水産業の振興に関する件について調査を進めます。
前会に引き続き質疑を行ないます。谷垣專一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/4
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005・谷垣專一
○谷垣委員 いまの日本の農村、また農民が非常に転換期に入っておると申しますか、混迷をしておると思うのであります。きょうは、尊敬する赤城大臣に、全国の農民のために、それらの基本的な問題につきまして御質疑をいたしたいと思います。
まず一番初めに申し上げたいと思いますことは、食糧需給に関しまする基本的な考え方がどういうふうになっておるかという問題であります。現在、日本の農村は、農地が相当激しく壊廃が進んでおりますし、また労働力が非常な勢いで流出いたしております。同時に、需要の面から申しましても、量的並びに質的な変化が非常に激しいのであります。こういうような需要の大きな変化に対しましても、なおかつ八〇%程度の自給率を持っておる。これは、私は日本の農民に対して敬意を表しておる点でございますが、一体その食糧の自給度と申しますか、こういうものに対してどういうふうなお考えを持っておられるか。現在、食糧の自給という問題に対して、非常に一方には安易な考え方も出ております。また同時に、これを経済的な立場で考える必要があるから、無理な増産ということは意味をなさないという意見も出ておる。こういう経済的な立場が非常に強く出ていきまして、従来からいわれておりました自給度の向上という考え方に対して、何か農政の考え方がゆらいでおる、曲がり道にきておるというような感じがする点もあるのでありますが、この問題に対して基本的にどういうお考え方になっておられるのか、明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/5
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006・赤城宗徳
○赤城国務大臣 お話のように、国際的な交流が激しくなったので、何も高くつくものをつくらぬでもいいではないか、安いものをほかから買ってまかなっていったらいいではないかというような考え方を持って、そういう主張をする向きもあります。しかし、私はそういう考え方には反対でございます。やはり食糧はできるだけ国内で自給していく、こういうことが、その国の健全なあり方としても、あるいは経済的に見ましても、そういう外貨があるとするならば他の工業の資材等の輸入に向けたほうがいいのでありまして、食糧の輸入ということによって外貨を相当使っていくということは、国の経済面からいっても好ましくない。まして農業面から考えますならば、やはり国民の食糧はできるだけ自給度を高めていく。高めることができないということでありまするならば、せいぜいいまの自給度を維持していく、こういうことが必要であろうと思います。しかし、維持していくためにも、自給度を高める方向で進めていきませんければ、現在の中期経済計画の四十三年度の八〇%程度の維持も困難だと思いますので、自給度を高める、こういう意味におきまして農業施策を進めていくことが必要だ、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/6
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007・谷垣專一
○谷垣委員 食糧自給を極力やるという基本的な考え方は拝承したわけでありますが、問題は、それの限度、あるいは現在いわゆる選択的拡大という表現をされておりますけれども、これは要するに、需要の面からくる変化に対応しての、供給する農産物、食糧品の変化ということであろうと思います。また同時に、これは対外的な競争に対する限度という問題、両方から、いわゆる内容に入りますれば、選択的拡大あるいは食糧自給の分野の問題が出てくると思うのであります。
一例を申し上げてみたいと思うのでありますが、ミカンの非常な増産が選択的拡大ということでいわれております。ところが、ミカンの生産地に行ってみますると、農民の諸君の心配は、いつ過剰生産のときがくるのだという心配であります。養鶏の問題、これも選択的拡大という形において、非常な養鶏の奨励が行なわれてきたわけでありますが、これはもう昨年くらいから、そろそろ需給の関係において過剰供給の段階に入っておるのではないかという心配が生じてきております。また一方、甘味資源の海外からの輸入の中において、何とか国内における生産をやろうとして、ビートなりあるいはケイン・シュガーの栽培が行われてきておるわけでありますが、つまり、こういう選択的拡大あるいは大きな意味におきまする食糧自給度というものの少なくとも維持というような問題におきまして、その限度、またそれに対する一つの生産限界と申しますか、需給の見通しにつきまして、実は非常な不安な感じを農民が持っておるのが現状であろうと思います。これは主食の米に対しては万々ないと思いますけれども、その他の分野におきましては、選択的拡大といわれておる問題について不安な感じを持っている。一体これらの需給の見通しは非常に困難であろうと思いますけれども、先ほどおっしゃいましたように、食糧自給度をできるだけ維持していこう、しかもその各項目を見ると、選択的拡大ということで、それぞれ生産の対象になるものが動いておる。しかも一人一人の農民がそれに対してどこまでやればいいのかということの不安を持っている。計画性といいますと、非常にむずかしいと思います。むずかしいと思いますけれども、やはり農政の責任者としては、そこに何らかの需給に見合った将来にわたる計画が必要ではないだろうか。あるいは指導というものに対する一つの限度が必要ではないだろうか。非常に困難ではあろうと思いまするけれども、食糧自給度というもの、また需要の変化に伴った選択的拡大ということを言いますならば、ほうっておくだけでは不十分であるというような感じがいたします。その適例を国内産の甘味資源の問題にも見ておりますし、また最近の例では、いま言った養鶏の問題にも出ております。ミカンの増植の問題はすでにそういう心配がある。一体そういうものに対してどういう態度で臨んでいかれようとするか。むずかしい問題ではあろうと思いますが、その点に対しましてのお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/7
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008・赤城宗徳
○赤城国務大臣 自給度と関連して考えまするならば、生産面をとってみれば、私は、選択的拡大という面も、一つの適地適産——やはり大きい意味での適地適産的な作付ということが、選択的拡大といえども必要だ、こう考えています。でありますから、米との関係なんかもございます。
そういうふうに考えます。それから需要面から考えますならば、やはり需要に見合った生産という調整が必要だと思います。たとえば卵でございますが、卵等は御指摘のように、これは畜産の部類はで自給度が強い生産物でございます。でございますが、現在におきましては、需要をオーバーしている生産というふうな形になっておりますので、その点につきまして調整の指導をしております。また調整保管というような価格面の操作もいたしますけれども、調整をしていくということも必要だと思います。ミカン等につきましても、これは果樹、畜産は四十五、六年ごろまでには八、九割も伸びるというような見通しでございますから、決して果樹、畜産物の需要が減退するというようなことはありません。あるいは足踏みすることはございましょうけれども、しかし、それに見合っての生産がなくてはならないと思っております。また、そういう意味におきまして、輸出に向けるべきものは向けるというふうなことも考え、生産と調整していかねばならぬ。甘味資源等につきましては、国内の甘味資源そのものばかりではなく、砂糖との関係もございます。こういう全般的なものからの考慮もしていかなくてはならないと思いますが、統制というわけにはいきませんけれども、しかし、計画生産といいますか、需要に見合った生産をするような調整を常にしていかなければならない、こういうふうに考えて、それぞれ強弱の程度はありますけれども、そういう方向に沿ってやっておるということを申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/8
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009・谷垣專一
○谷垣委員 需給に見合いました指導というものは、遠いある程度の将来まで見通してやることはなかなかむずかしいのでありますが、やはりだんだんとこの問題は、計画生産というと語弊がございますけれども、やはり一種の調整作用をどこかで持つようなこと、これは作物別にいろいろ考え方は違うと思いますが、そういう作用がありつつ増産を奨励していくという態勢が必要であろうと思うのでありまして、先ほど大臣のおっしゃいました御意見はそういう点に触れておると思いますので、次の問題に入りたいと思うのであります。
実は非常な増産を言われておりますけれども、裏作の放棄が行なわれておる。あるいは粗放化された耕作のままで打ち捨てられておる。ことに麦作を中心といたしました裏作の減退が非常に激しく出てきておるのであります。ところが一方、えさの輸入の問題、きわめて急激に伸びておって、すでに三百万トンをこすような輸入が行なわれておる。将来その倍にもなることは決して実現できないわけではない。もっともっと伸びの大きな飼料輸入を考えなければならぬ状況であろうと思うのでありますが、一体そういうことを考えてみました場合に、裏作の放棄されておるものに対してどういう考え方を持つか。これは経済性からいうと、それぞれ理由があって放棄しておるものだと思うのでありますが、しかし、これに対して、この利用を何とかはかっていく必要があり、それに対する指導方策が必要じゃないか、こういうふうに考えるのでありますが、これに対してはどういうお考えを持っておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/9
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010・赤城宗徳
○赤城国務大臣 確かに人手不足も原因でありまするし、あるいは経済性等から見まして、裏作がなされていない耕地が相当見られます。全体として百六十万町歩くらいと白書にありましたが、裏作その他も含めて作付されないものがあります。これはやっぱり労働力の不足があるのでございますので、少ない労働力でもやっていけるという体制を推進しなければならないと思います。そういう意味におきましては、機械化を進める必要があります。その機械化につきましても、労働力が少ないときでもございますので、農協等に機械を導入さして、それを中心として共同的にやっていくというようなことやら、あるいはその他の省力的な栽培方法と申しましょうか、あるいは飼料作物というものの作付を進めるというようなこともあると思います。あるいは経済性から見ましての問題もあろうと思います。残念ながら裏作の放棄が非常に進められておりますが、いまのような方法、あるいはまた裏作地がもっと土地改良されて乾田化され、あるいは圃場が整備されるということも、裏作放棄を除いていくといいますか、少なくしていく大きな要件だろうと思いますので、そういうような方法もとって、裏作が作付されるようなことにしたい、こう考えています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/10
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011・谷垣專一
○谷垣委員 冒頭に大臣の言われましたように、食糧の増産あるいは自給度の向上というものに否定的な見解が一部出てきておる。このようなことは非常に憂うべき問題があると思うのであります。従前のような戦時的な封鎖経済のときにどうするかという対策は別といたしましても、国民の重要な構成員である農民に生活の基盤を与えるというようなこと、あるいは国際収支の上におきましてこれを改善していくという立場から言いましても、食糧増産の必要度というものに対してもっと強い施策を行なっていただきたい。基盤の整備の問題、あるいは省力栽培等の機械化形態が統一のとれた形で進んでいくような問題、あるいはまた考え方によりますれば、裏作の放棄されておるものに対する耕地として役立つその他の施策という問題について、一段の御努力をお願いいたしたいと思います。これはこちらからも希望を申し上げておきたいと思います。
次に、農家の動向、特に兼業問題につきましてお尋ねをいたしたいと思うのであります。
率直な感じから申し上げますと、従来の政府の農政に対する基本的な態度の中に、兼業問題に対しまして、これを避けて通っていこうとする態度があったのではないという感じがいたすのであります。間違っていればしあわせでありますが、そういう感じがいたすのでございます。御存じのように、第二種兼業農家が四二%という報告がされておりますし、しかも総耕地の二十数%が第二種兼業のものである。しかも一戸の農家として考えてみた場合には、兼業収入がすでにその半分を平均してこしておる、こういう状況になっておるわけであります。もしこれを生産力を向上する立場から見ますれば、確かに専業自立農家を育成するということが大切な問題でございますが、各農家としての収入増加の立場から見ますと、兼業農家のほうが収入がいい、こういう御報告が大臣の御説明にもあったと思いますし、あるいはグリーンレポートにも出ておるわけであります。しかし一方、兼業農家の増大ということが、地方におきまして、たとえば村へ行ってみますと、消防団の構成一つ見ましても、非常に不自由になっておる。あるいはまたその他のいろんな仕事をいたしますのにも、自治活動としての阻害が行なわれておるような状況にありますし、また、このことが農家主婦の精神的、肉体的な負担を増大しておる面も、見のがしにできない問題であろうと思うのであります。しかし、といって、兼業農家がなくなる筋のものではない。一体、この専業自立農家あるいは兼業農家というものを農政の分野でどういうふうにお考えになっておるのか。専業農家の育成ということに非常に重点を置かれておるそのこと自体、私は否定をいたしませんし、それは一つの大道であろうと思うのでありますが、従来の農政のあり方から見まして、兼業というものに対する顧慮、それに対する対策というものが、何となく手を抜かれておった。あるいはむずかしい問題でありますがために、避けていこうとする態度があったのではないかという気がいたすのでありますが、あるいは言い過ぎかもしれませんが、この点に関しての農林大臣の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/11
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012・赤城宗徳
○赤城国務大臣 兼業農家問題を避けてきたのじゃないかということでございますが、収入面から言いますならば、いまいろいろ御指摘のように、兼業の農家のほうが収入が大体いいわけでございますので、そういう面でほっておいたというふうな傾向はあったと思います。しかし、先ほどからお話がありますように、国の食糧を自給するというような体制から考えますと、生産面におきましては、どうしても兼業農家は劣っておる。雑なことばで言えば、荒らしづくりをしておるというようなことでございますので、産業としての農業面から見れば、兼業はあまり好ましくないのであります。好ましくないけれども、兼業というものはどうしても相当程度ある事実は認めなければなりません。ことに農業そのものが季節的でございますから、いま農閑期はないといいながらも、やはりある程度他産業から収入を得るということは、農家個人個人にとっては必要でございます。でございますので、最近問題になっておりますように、出かせぎで社会問題化しておるということは、これは非常に憂慮すべきことでございますが、そういうことも考えて、やはり兼業の機会を遠くに求めないで、近くに求め得られるようなことを、国の全体の施策で行なっていくということが必要だと思います。しかし、その場合においても、農業と他産業との調整の問題がもちろんございますが、そういうことを考慮しながら、兼業が近くで収入を得られるような道を講ずることも一つの方法であろうと思います。そこで、第一種兼業というものはどうしてもあるものだ、なくすることはできないと思います。農家の収入が農家だけでほんとうにやっていけるような体制にまだいっておりませんので、他から収入を求めるということは避けることができないと思います。問題は、農業は副業的になっている第二種兼業、いまお話しの四二%の第二種兼業の問題でございます。これは私は二つの道を考えていかなくちゃならないと思いますが、一つは、第二種兼業の人々は、家族の働き手も少ないものでございまするし、あるいは耕地等も少ない人に多いと思います。そういう面からいいまして、こういう第二種兼業の人々も含めて、農業の協業化といいますか、共同化を進めていく。大型機械等を入れることを中心とし、あるいは農協等の指導を中心として協業化を進めていくということが必要であろうと思います。もう一つは、第二種兼業の中で、他産業の仕事に安定してつけるというような態勢が整いますならば、また、そういう職業上の訓練とか安定とかを得させるような方途をもあわせ考えて、そのほうで安定的に仕事をしていけるということでありますならば、これはそういうことが可能でありますならば、土地を手放すというようなことに踏み切ると思います。そういう場合におきましては、いま考えておりまする農地管理事業団のような構想で、これを他の者の経営規模の拡大に資する方向において、その土地の移動をあっせんしていく、こういうようなことが必要であろうと思います。農業の生産からいいまするならば、あるいは所得等からいいまするならば、白書の中にも申し述べてありまするように、一町五反以上の農家でありますと、生産性につきましても、一般が二七%程度のものが、一町五反以上ですと四〇%から五〇%の生産性の格差、所得につきましても、一般が他産業に比較して七七%程度でありますが、一町五反以上の農家をとってその地元の他産業の人々と比較しますと、やはり九〇%ぐらいになっております。そういうことでありますので、専業の自立農家が多くなることは、これは日本の農業生産のためにも、あるいは農家の生活のためにも好ましいことだ、こういうふうに考えておりますので、兼業農家につきましては、協業化と、自立経営の方向へ方向づけるのと、二つの面で対策を進めていきたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/12
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013・谷垣專一
○谷垣委員 政府がこの専業自立農家をつくっていくことに重点を置いて考えていくということ、これは私も賛成であります。やはり農村の中心になりますのはそういう諸君であり、生産力の安定した供給、向上をはかりますのもそういう層であろうと思いますので、それはけっこうなことであり、また同時に、いろいろ問題はあとに残りまして、後日論議になると思いますが、農家の経営形態をそういう方向へ持っていくための事業団構想も、それは意味を持っておると思いますし、従来手のつけられなかったところに手をつけられたことに対して、むしろ敬意を表するのですが、そのことはまたあとで議論があることと思います。
ただ、兼業の農家、それは一種であれ二種であれ、この兼業農家の存在というものは、ますます都市が広がってまいりますればまいりますほど農政上無視できない。ますます現在までのところはふえてきておる。ことに二種兼業はふえてきておるということでございますので、私は、政府のこれに対するもう少し綿密な指導行政が必要であろうと思うのであります。よくいわれますが、兼業の農家というものを生産力を向上するようなことをやっていくと、兼業農家が固定化してしまって、いわゆる自立専業農家をつくるためのむしろじゃまになるというような意見もあるのではないかと思うのでありますが、私は、これは非常に見解の浅い意見だと思っておるのであります。兼業は兼業として、それをもう少し内容に入った形で対策を考えていただく必要があるのではないか。一例を申しますと、出かせぎの問題がございます。これは同僚委員からも御質疑があったのでありますが、これは昔から農村ではあるわけでありまして、最近オリンピックブームあるいは建設ブームによる急な形におきまする出かせぎが問題になっておりますが、昔から安定した出かせぎとして、たとえば酒男として農閑期に出ていくというようなもの、これは非常に安定した形において農村生活というものに寄与いたしております。でありまして、この出かせぎが悪いのでは決しない。その出かせぎ問題の中にもっと突っ込んで入っていって、そしてその中における農民というもの、あるいはその裏にあります農村生活というものを守っていく施策が必要であろうと思うのであります。たとえて申しますと、酒男で出ておる諸君あるいは北海道方面の漁場に出ておる農村の出かせぎの諸君に対する失業保険問題がある。これらの問題は、決して労働問題という形でとることのみが正しいのではないのでありまして、やはり農政の一つの重要な部門としてこれを終始考えていただいていきませんと、まことに農政というものがものの半面しか見ていないというふうになるのではないかと私は心配をするのであります。私は、よくこのごろいわれておりますが、東北その他から建設事業等に出ておる出かせぎの悪い面のみが強調されておりまするけれども、出かせぎをしておる農民の立場から見れば、そのほうが、農家にあって農業生産をするよりも農家収入の増大になるといういい面もそこにある。ただ問題は、それが安定した形でいき得るかどうかという問題であります。これらのものも、その安定度を高めていくことはできるものであり、せなければならない。そうすれば、すでに固定してなっておりまするような酒男としての出かせぎのような安定した形で、農村生活にそれが寄与してくると思うのであります。これらに対しては、私は明瞭に従来の農政が不十分であったと思うのでありますが、それに対しましての御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/13
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014・赤城宗徳
○赤城国務大臣 出かせぎ問題に対する御認識等につきましては、私も同感でございます。単作地帯等におきまして、いわゆる農閑期において酒男等に安定して出るというのは、これはむしろ好ましいといいますか、やむを得ざることなのでございますが、その間に、最近におけるいまのお話のオンピックブームとか建設ブームのために、家庭を忘れてしまうような出かせぎが多いということが、社会問題化しているわけでございますので、そういう問題につきまして、いろいろ正規の労働行政のルートを通じて外へ出るように指導しているわけでございますが、出かせぎ問題につきまして、確かにいままで関心が薄かったといいますか、そうい面があろうと思います。でございますので、労働行政そのものが、やはり農村の問題とこの出かせぎにつきましては関連いたしておりまするし、労働行政面あるいは社会保障面——いまの労働行政面でも、あるいは失業保険の問題とか労災の面とかございます。そういう総合的といいますか、ほかとの関連において、この問題につきましても取っ組んでいきたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/14
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015・谷垣專一
○谷垣委員 ぜひそういうふうにしていただきたいと思うのでありまして、農林大臣は、この問題に対しまする山田委員からの質問に、兼業問題については総合施策によって指導していく、こういうお話がございましたが、その総合施策というものの中に、いま言ったような問題をぜひお考えを願いたいと思うのであります。
もう一点、同じような種類でございますが、少し違っておる問題、しかも現在の農村で大切な問題だと思いますのは、農村の農家の副業の形が変わってきておるということでございます。昔わら仕事をやっておったとか、夜なべ仕事をやっておったという形のものは、いまはほとんどございません。メリヤスの下請をやるとか、あるいはまた賃機のあれをやるとか、あるいは二、三の機を持ってきてやるとか、あるいは電気器具の下請をやっていくとかいうような形、つまり、農村におきまする農産物の加工という問題でなく、農村のそういう形の副業が広範に実は入ってきております。これは一面から見ますと、安い労賃でそういうものをさせるのだという非難もあろうと思いますが、また逆の面から申しますと、農村におる諸君が、その活用されなかった労力というものを十分に活用していくという面もあるわけでありますが、問題は、そのものが一つの政治の対象からはずれておるような形になっておるのではないかと思うのであります。たとえば経済的な動揺が非常に激しい場合に、それの景気の変動をもろに末端のこういう下請をしておる農家が受ける、こういうことが行なわれがちであります。あるいはまた何と申しますか、非常に古い形における請負形式というものが行なわれておる危険もあるわけであります。そうかといえば、新しい形においての地方の農村工業と申しますか、機械等におきまする部品の仕事までが農村の中に入っておる面もある。
昔あったと思うのでありますが、昭和初頭の農村恐慌のあと、農林省では、たしか農村工業とか農村副業というものの専門の課を置かれて、長い間指導してこられたと思うのであります。その性質がすっかり変わってきておりますけれども、新しい意味におきまする農家の副業の形に対して、それが直接農家に非常な重荷がこない、いわば重荷ばかりくるような形でない副業というものに対する新しい指導が必要であろうと思うのであります。これは従来の農村副業、農村工業ではなかった問題でございまして、あるいはあったといたしましても、その関心度が変わった形になってきておるわけでありまして、私は、農政の中に、先ほどの出かせぎ問題とは変わった形ではございますが、農村におけるこれらの副業の問題について、どうしても政治の手を差し伸べていただく必要があるという感じがいたすのでありますが、御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/15
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016・赤城宗徳
○赤城国務大臣 私から申すまでもなく、御意見につきましては同感でございます。ただ、そういう機構を農林省内に置くかどうかというような問題でございます。これはいまの機構いじりというよりは、いまの機構の中におきまして、出かせぎの問題とか、あるいは副業の問題とかに相当指導及び対策を講じていくべきだ、こういうふうに考えていきます。考えようにによっては、いま行なわれている構造改善とは違いますけれども、農村の構造が相当変わりつつあるのでありますので、その改善の一つの方向を出してやるということが必要だろうと思います。そういう意味におきまして、出かせぎ問題とかあるいは副業の問題とかいうことを十分扱っていきたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/16
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017・谷垣專一
○谷垣委員 次に、農家の後継者問題について、簡単にお尋ねいたしたいと思うでありますが、農家後継者の問題は、すでにかなり論議されておる問題でございますが、農村に入ってみて、やはりこれは最大の問題であります。後継者の足りない、あるいはいなくなる、また同時に、それは若い諸君の嫁の問題も含めまして、農村へ入りますと、実は一番痛切な訴えを聞く問題でございます。これは要するに、新しい農村あるいは新しい形における農民像がまだ出ていないというところに根本の問題があろうかと思うのでありますが、同時に、これは、私は、広い意味におきまする教育の問題が、この分野については非常に重要であろうと思います。幸い赤城農林大臣は、以前から農業教育の問題につきましては熱心な見解を持っておられる方であることはよくわかっておるのでありまするが、現在私が心配いたしますのは、農業教育へ進みまする生徒は、いわば普通教育へ進む生徒よりも一段おくれた青年である、普通高校へいけない諸君がはみ出されて農業高校あるいは普通高校の農業コースへ入っていくというような形が、最近はことにはなはだしいような感じがいたします。それは農業関係の学生諸君の一種の劣等感をますます拡大するにとどまらず、実は農業教育に従事しておる教師の諸君が、全体的にそういう空気を持ってきつつあるのではないかという心配をいたすのであります。これは従来からいろいろと、いわゆる学校教育というものが次代の農民を養成するには不十分であるという議論がいわれておりました。そのために別個のいわゆる研修農場的なものも農林省等でつくっていかれたのも、その一つのあらわれであったと思うのでありますが、実はいまはその時代よりももっと根底から農業教育の問題がゆさぶられておりまして、学校教育の中における農業教育というものが、それを教える先生自体が自信を失い、そこへ入ってくる生徒の諸君も、二級品のごとき考えを持って入ってきておるのではないかという実は心配をいたすのであります。そうでなければ幸いでありますが、私は、農業教師の諸君、農業高校等の実態を見ますと、そういうような状況になっているのを心から憂えているものであります。これは、単にこのことが文部省の行政下にあるとかないとかいう問題を越しまして、日本の農村の問題、農業の問題の根本的な注目しなければならぬ問題であろうと私は思うのでありますが、これは所管外であるとかないとかということを抜きにいたしまして、この問題をどういうふうにして解決していく必要があるのか。単に文部、農林の両当局が緊密な連絡をするというような程度では不十分でありまして、もっと基本的にその問題を議論して、そうして立て直すべきものは立て直していかなければならぬ。幸い赤城先生等が非常な御努力を願ったというお話を聞いておりますが、農業教育の教育施設の基準が改善されたり、あるいは高度の施設を持った農業専門の高校を各県少なくも一つずつつくるというように施設が進んできているようでありますが、はたしてその程度でこれが済むことなのかどうか、非常な危惧の念を持つわけであります。文部大臣ではない、かえって農林大臣であるがゆえに、さらにこの問題に対しては御関心を願いたいと思いますし、日本の農政がこれを捨ててはいけない問題ではないかと思いますが、それに対しまする御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/17
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018・赤城宗徳
○赤城国務大臣 農業後継者の問題、非常に重大でございますし、いろいろな施策を施していますが、根本的に言えば、やはり農業の経営面積の多い後継者は、とどまってよく指導しているという傾向が非常に強いのでございますので、そういう点からも、経営の規模が大きくなることは、後継者の問題からいっても望ましいことだと思います。その他個別的にいろいろな対策を講じておりますが、いまお話しの教育が根本だと思います。その点につきまして、いささか最近の情勢は、農業が斜陽産業みたいに何か全部が暗いという面が少し強調され過ぎている。少しオーバーのような気味があります。私どもも農業の将来について憂慮しておりますので、手放しでそういうことを申し上げるわけではございませんが、いささか農業の将来につきましても不安感というような点がありますので、政策の面におきましても、あるいはいい農家も相当育っておりますので、そういう面のPR等もつとめまして、そういう農家にならってやっていけるようにすれば、農業の将来も悲観すべきものばかりではないというようなことにつとめたいと思います。しかし、いずれにしましても、いまの農業の使命感というと上から押しつけるような感じがしますが、農業というものに愛着を感じてやっていけるような、そうしてこれが産業として、企業としてやっていけるようなことにしていくことを教育するといいますか、実地面におきましても考え方の面におきましても教育していくことが必要だと思います。そういう面におきましては、私の考え方からいいますと、いわゆる文部省流の学校よりは、やはり農林省的な教育制度のほうが効果がある、こういうふうに思われます。御承知のように、谷垣さんも骨折ってくれまして、農業高等学校等の教員の産業手当等を出しまして、実習を指導している先生たちに手当をふやしてやるというような法律もつくって、そうして教員の養成もつとめておるのでございますけれども、どうしても文部省系の教員よりも、伝習農場的の指導者のほうが地についているといいますか、そういう面におきましてすぐれておるように私は見受けられます。しかし、教育の本元でありますから、農業高等学校等をどんどん増設していかれることは、農業に相当深い関心を持っていくことでございまするし、好ましいことだと思っておりますので、文部省行政についても、私は非常にこれに賛意を表しておるわけでございますが、農業面からいいまするならば、いまの民間の伝習農場、あるいは地方公共団体の伝習農場、あるいは私の伝習農場的なもの、その他機会を見ての研修あるいは実地の指導、こういう方面から農業のよさ、また農業を企業としてやっていくことの可能性、こういうものを指導していくことが大事だと思います。そういう面におきまして、この農業関係の伝習農場的な教育には一段と力を注いでいきたい、こういうふうにいま考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/18
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019・谷垣專一
○谷垣委員 伝習農場的な教育に重点を置かれるという考え方は了承いたしますが、やはり農家の後継者問題等を考えました場合、教育の問題が重要である。そういたしますと、私は、農林、文部、あるいはそういうものの範疇にとらわれない、もっと民間の方々も入れました、いわゆる農業教育というものに対しましての一つの審議会と申しますか、調査会と申しますか、新しい形において、現代に適した農業教育というものをどう持っていくかということについての一つの研究機関と申しますか、あるいは新しい体制を整えるための一つの委員会と申しますか、そういうものをつくって、そして現在の農業教育全般に対しての立て直しをやろうとする意思はありませんか、ありますかという点が一つ。
それからもう一つは、私は考えるのでありますが、やはり一つの農家後継者を養成いたします手段といたしましては、農民は農民をして学ばせるという一つの方法、いわゆる先進農家あるいは先進地に対しまする国内留学等の制度、見学等の制度をもっと活用する必要があろうと思うのでありますが、それは若干できておりましても、実は指導する農家、先進農家あるいは先進の農村に非常に重い負担をかけた形でこれが行なわれておる今日の現状というものは、改めなければならぬと思うのでありますが、これに対しまして、何らか国からのこれに対する指導補助というようなお考えを持っておられるかどうか、この二点につきまして御返答を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/19
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020・赤城宗徳
○赤城国務大臣 農業教育を総合的に検討する審議会を設けたらどうかということでございますが、実は御承知のように、農業後継者対策審議会というようなものを農林省内には設けて、教育関係の人、実地関係の人、そういう人々に集まっていただいて、いろいろ審議を願っておるわけでございますが、それをさらに拡大していくかどうかということにつきましては、よく検討してみたいと思います。いますぐにどうするということを申し上げかねますが、検討してみたいと思います。
また農業は、いまのお話しのように、先進農業地帯とか先進農家とか、こういう実際の面を見、ならってやっていくことが必要でございます。いわゆるパイロット的なものをつくっていくということが必要でございますが、そういう先進農家等に相当経済的な負担をかけさしてやっていくのは考えものじゃないか、指導等につきまして、そういう先進農家に負担がそうかからないようにしてやっていくべきじゃないかということでございますが、それはそのとおりに、その方向に考えていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/20
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021・谷垣專一
○谷垣委員 農業基本法でうたっておりますように、実は農業と非農業との生産性及び所得の格差是正の問題があるわけでありますが、現在まで生産性等におきまして、また所得の向上におきまして、農業自体かなり高い上昇率を示してきておりつつ、他の非農業の部門に比べますと、その格差は是正されていないというのが今日の現状でございます。これらの格差の是正を開放経済のもとにおいて生産力を増強しながら行なうということが、今日の農政の課題であるわけでありますが、しかし、その基本的な考え方である農業構造改善等が現実には長期を要する状況では、この所得格差の是正の問題におきまして、いわゆる価格政策あるいは農民の所得政策の受け持たねばならぬ分野がかなり出てくると思うのであります。生産性の向上というようなものが非常に強く早く行なわれれば、その分野が少なくて済むと思いますけれども、現在のごとき状況では、経済政策の上で価格政策あるいは所得政策をやっていかないと、この格差の是正と申しますか、なかなかそれが困難であるという問題が起きてきております。これは政府のほうで中期経済計画を立てられました場合にも、ある程度認めておられる点であろうと思うのでありますが、一体農産物価格の維持政策について、これをどういうふうに今後やっていくのか、あるいは農産物の価格を高く維持するという考え方のほかに、いわゆる農村におきます社会保障制度的なものを取り入れて、農民年金等の制度を新しく考えていくとかいうような形においてその問題を何らか解決しようとされるのか、それとも、農村の環境を整備いたしますような、いわゆる社会投資を拡大していって、それらの点に対して施策を考えていこうとされるのか。要するに、農業と非農業との間におきます生産性並びに所得格差の是正という問題に対して、現実にどういう政策を行なおうとされておるのか。構造改善等が進まない、長期を要する現状では、どうしても価格政策、所得政策の受け持たねばならぬ分野が出てくると思うのでありますが、それはそうといたしましても、いま申しましたように、これに対応する方策としては、価格政策、あるいは社会保障の政策、あるいは農村の環境整備をいたしますための社会投資を大きく拡大していくというような方法がいろいろ考えられるわけであります。これらの点に対しまして、一体政府は今後どういうふうなお考えで進もうとされておるのか、それをひとつ明らかにしていただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/21
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022・赤城宗徳
○赤城国務大臣 生産性の向上が、農業におきましては短日月になされるものではございませんから、価格対策というものは必要欠くべからざるものでございます。しかし、これが価格政策にばかり甘んじて、これを農産物の価格だけ維持していけばいいじゃないかというようなことに甘んじておりますと、申すまでもなく、国際競争力の点から言いまして、日本の農産物が駆逐されるというような形になって、農業が成り立たないような形にもいきます。これに対して保護政策を相当講じても、なかなかそれに対抗できないということでございますから、私は、価格政策というものは、価格政策オンリーでいくべきものじゃない、補完的な形でいくべきものであると思います。それにいたしましても、現状のような状況におきましては、価格政策に相当重点を経過的には置かなければならぬ、こういうふうに考えております。しかし、価格政策だけで農村、農業の立て直しをするということは困難でございます。佐藤内閣におきまして、社会開発というようなことを唱えておりますが、社会開発というのはどういうことかということで、いろいろこの間もその定義等に議論があったようでございます。しかし、私は私なりにこれを解釈すれば、社会開発というのは、恵まれない人々、恵まれない地域そのものをよくすることじゃないか、こういうことで、私なりには社会開発を定義づけておるのでございます。そういう意味から申しますと、いまの農村地帯は恵まれざる人あるいは恵まれざる地域でございますので、農業政策ばかりでなく、社会保障の制度等も相当取り入れていかなければならない、こういうふうに考えまするし、また恵まれざる地域でございますれば、この社会環境をよくしていく、そういうことが一つの後継者対策でもございます。そういう方向も一そう進めていかなければならない。幸いに社会開発というようなことを一つの目標として、今度の佐藤内閣で唱えておりますから、その肉づけを農村でも農業面からしていきたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/22
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023・谷垣專一
○谷垣委員 農産物の価格制度に関しましては、いろいろ議論があって、直さなければならぬ点もありますが、わりあいにいままで農政当局はこの問題に対しては手をつけられてきておったと思うのでありますが、いまお話しになりました農村の社会保障制度の拡充という問題、これは農民年金の考え方だとか、いろいろ出ておりますけれども、どうもいままで農政の面では、議論はされておったのでございましょうが、かなり不十分ではなかったろうか。これは他の省の所管であるがごとき形において見のがされておったのではないかというふうな感じを持つのであります。この分野に対しまして、ここに一つ今後重要な問題があると私は思うので、これは農村の立場、農民の立場からもう一回、従来の日本の社会保障制度自体の中でつけ加えるべきものはつけ加える、主張すべきものは主張するという形で、農林省自体がもう少しこの問題に対して考えを重点的に持ってもらいたい、かように考えるのでありますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/23
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024・赤城宗徳
○赤城国務大臣 農民年金というふうに限定するのはいかがかと思いますけれども、国民年金等の強化等も、農民年金的な考え方が相当入っていくと思います。しかし、お話しのような農民年金というようなことも、検討していく必要があろうと思います。ことに今度の農地管理事業団等につきましての離農の問題等につきましては、国民年金に上乗せした農民年金的なものを考えたらどうかというようなことも、実は検討いたしておるわけでございます。一般的に社会保障の面から、年金制度等につきまして再検討といいますか、前進する意味におきまする検討を加えることは必要だ、こう思っておりますので、なお検討を続けていきたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/24
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025・谷垣專一
○谷垣委員 冒頭に申し上げましたように、非常な形で農村あるいは農民の生活が変ってきております。もちろん、生産性を向上する意味におきまして、農業を一つの産業としてつかまえて、そしてこれを合理化していかなければならぬという立場は、十分によくわかるのでありますが、しかし、そこにこれだけ大きく基本的に農村が動いておりまする場合には、単に農業を産業としての物という立場からのみつかまえては、本来の生産性の向上自体も私はできないのではないか、不十分なのではないかという考えを持つのであります。農政の中に、もう少し物から人へ、産業としての合理性を追求するためにも、農村の問題、農民の問題というようなところに一つの農政の目が届かなければ、農村や農民の現在の気持ちにこたえることもできないし、また、農業の生産性の向上という、産業からつかまえました立場から見ましても、不十分なことがあるのではないか。一例を申し上げますと、失礼でありますが、一毛作地帯で、たとえば農民の月給制の問題が取り上げられて効果をあげております。これは、その月給制、そして農家の生活が合理的になるということそれだけではないのでありまして、その地帯にたとえば機械を入れる、あるいはいろんな経営の上の協業作業をやるというような場合に、その機械あるいは経営の改善をいたしまする基本の合理的な考え方、農民の生活のそれに対応する基礎ができてくることだと思うのでありまして、こういう面に関して、私はもう少し農村、農民の問題を考えていただきたい。物から人へという表現は、いささかほかの意味も入ってまいりまするけれども、そういう立場の農政の展開をしていただく必要があろうかと思うのであります。農民や農村がわが国の構成分子としていかなる位置を与えられるべきかという問題、これは単に食糧生産者としての立場のみではなく、わが国の国民、さらに次の世代に入っていきまするわが国の国民の中で、わが国の社会の中で、どういう立場の農村というもの、どういう人間というものが必要であるかというような観点から、議論がせられる必要があるのではないか。農業は産業である、農業というものをあまりそういう物の面からだけつかまえておっては、今日の農政が、生きておる農村、農民をつかまえるのには不十分ではないかという感じがいたしておるのであります。いささか言い過ぎかもしれませんが、それらの点につきまして、私は農林省の考え方が間違っておったと申すわけではございません。が、もっと基本的にそれらの問題に対する研究あるいは発言、あるいはまたそれらに対しまする分野の拡大をお願いをいたしたいと思うのでありますが、御意見はいかがでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/25
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026・赤城宗徳
○赤城国務大臣 いささか、従来、農業というものが、採算がとれなくてもほかの人の犠牲において農業をやっていけというような形が、ずっと明治以来続いておったといいますか、そういうことでありましたので、農業者といえども、企業として所得が十分得られるような体制に直していくべきであろうということから、産業として農業も成り立つべきものでなくてはならぬ、あるいは企業的な農業、こういう面が強調されたといいますか、そういう傾向はあろうと思います。しかし、それもせんじ詰めれば、農民としての生活、まあ憲法でいう健康にして文化的な生活といいますか、そういうものを得させるためのことから出てきておると思います。でありますので、政治といたしましては、結局人の問題でございます。農業の問題も農民の問題でございます。そういう意味におきまして、政治としては、人を相手にして、そういう人々が健康で文化的な生活が営めるようなこととしなければならないのでございますので、人の問題は、非常に重要であり、そういう問題を中心としての、あるいは産業としての農業、企業として成り立っていくような農業、所得が相当得られるような農業ということを考えておるのでございます。人を無視したり、人を粗末にするというような考えは持っておりませんが、お話の点もよく頭に入れて、農民をよくしていくようなことに力をいたしたい、こう思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/26
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027・谷垣專一
○谷垣委員 この問題に関しまして、地方農政局というものの役割りが非常に重要であろうかと実は私は思うのでありますが、地方農政局ができまして二年ほどたったかと思います。もうそろそろ、当初これを立てられましたときの地方農政、地方計画と申しますか、地方の農政のこまかな対策というものをやるのだということに対して、ひとつもう一歩進んでいただく必要があり、地方農政局設置の目的を達成するようにやっていただきたいと思うのであります。いま、農村、農民の大きな変動に対しまして、地方農政局がその問題をつかまえるに非常に適当な機関として活躍できるはずでございます。ところが、まだ寡聞にして地方農政局がそういう問題に対してこういうことだと言うのを聞いておりません。まだ二年しかたっておりませんから、無理がないと思いまするけれども、私は地方農政局の一段の活躍を期待せざるを得ない。一例としまして、たとえば統計のごとき問題におきましても、現在統計調査部が全国一本でやっております。しかし、地方農政の、地方地方の地域行政、地域農政に対しまして、この統計の持っておる能力、この分野をもっと活用する必要があるのではないか。いわば地方農政局の中にその機能を吸収して、中央は中央としての統一をとるけれども、この機能なんかはもっと活用する必要があるのじゃないか。統計の機構等を地方農政局でひとつ掌握させるということをやられるかどうか、あるいは地方農政局の活用に対してもう少し具体的なお考えがあるかどうか、お聞きをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/27
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028・赤城宗徳
○赤城国務大臣 せっかく地方農政局をつくったのでございますから、地方農政局が十分その機能を発揮するようにいたしたいと思います。ことに農政局長会議などをやってみますると、ずいぶん地域的にバラエティーがございます。日本は狭いようでございますけれども、農業面を見ましても、南北に長く延びておる国でございますので、その地方地方、農政局の区域内のバラエティー、日本の中のバラエティーが相当農政局にあらわれておるようでございます。でございますので、冒頭申し上げましたように、その活用をはかって、広域的な観点、たとえば構造改善等につきましても、もっと広域的に考えられる面もあろうと思いますし、深くなくても、浅くてもいいけれども、もっと広域的に調整をとるような点も必要だと思います。でありまするので、農業経済圏の育成あるいは新産都市との関連において、農業振興対策をどうしていくか、こういうことも考えていきたい。広域経済圏というような考え方も入れて、実は少し手をつけておるのもございまするし、調査を進めておるところもございます。統計等の話もございましたが、結論といたしましては、ともかくせっかく地方農政局をつくったのでございますから、これが地方の農業等の振興のためにもほんとうに寄与できるように、機能を十分活用していくということにつとめたいと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/28
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029・谷垣專一
○谷垣委員 統計調査部の移管はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/29
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030・赤城宗徳
○赤城国務大臣 統計調査部は、これは中央へまとめるということが、統計としては必要と私は考えています。でありますので、その資料を農政局として使うということは必要であろうと思いますが、統計調査部を地方農政局の中に入れるかどうかということにつきましては、私も機構問題あまり詳しくありませんが、よく検討してみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/30
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031・谷垣專一
○谷垣委員 少し小さい問題になりますが、実は地方へ参りますと、農協の働きがだいぶ変わってきております。また形態も変わってきております。ところが、農協合併がどんどん進んで、かなり大規模なものになってきつつありますが、実は農協合併の問題について、いろいろ地方では苦労をしております。苦労をして合併をし、また運営をうまくやっていこうということで努力をいたしておるのでございますが、現在農協合併助成法の期限が、これはたしか経営の計画書を提出いたしまするのが、昭和四十年の十二月末一ぱいになっておるかと思います。法律の期限は四十一年の三月一ぱいだと思いますが、計画書を提出いたします期限がこの十二月になっておる。したがって、いま全国では、この法律の期限の最終限になりまして、どんどん合併促進の動きがあるわけでありますが、反面、法律の期限がきたということで、少し強引な指導も行なわれる傾きがあると思います。これはもちろんある程度指導等の力がなければできませんが、またしかし、ここまできておる状況でございますので、もう少し念を入れたやり方をいたしますると、その後の運営においてうまくいくということが考えられる面が多々あるのであります。したがいまして、ことしの十二月一ぱいで、期限切れになるようなこの状況というものを、この際さらに、長くは必要はないかと思いますが、この期限を延ばすお考えがあるかどうか、そういうことによって農協合併の最終の美をうまくまとめるという、そういう立場から、この助成法の期限を延ばすお考えがあるかどうか、これをひとつお伺いいたしたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/31
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032・赤城宗徳
○赤城国務大臣 農政局長からちょっとお答えいたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/32
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033・昌谷孝
○昌谷政府委員 三十六年の四月から合併助成法によって進めておりまして、三十八年末で、当初予定いたしました参加合併組合のおおむね八割弱が合併に参加しておるというような実績を示しております。かなり御理解が進んで、成果があがっておるというふうに考えております。仰せのように、本年十二月三十一日が、合併経営計画の届け出の終期ということに定められております。私どももいろいろ検討いたしてみておりますが、やはり所定の期限内に計画を立てて合併を進められたところが、ひより見で様子を見ておられたところと扱いが最終的に同じようになるということでは、やはり今後のこの種指導行政の問題としてもいかがかという観点もありますし、また所定期限内に合併の進まない組合の実態を見てみますと、いまの合併助成法のねらっておりますいろいろの観点から見て、単純に延長しただけで合併がにわかに円滑に進むというふうにも実は考えられない実態を背景として持っておるように私は考えます。そこで、そういった行政の公平というような見地その他から申しましても、また合併がおくれておるところの事実関係、背景等から察しましても、単に合併のこの十二月三十一日という期限を延長することが、問題の円滑な収束に役立つというふうには考えられない点が多いように思います。そこで、ただいまの私どもの方針としては、やはり当初計画どおり、所定の期限内にこの行政の一応の締めくくりをして、なお将来の団体行政のあり方については、さらに別の見地から、今回の合併助成法の経験等も織り込んで十分検討はいたしたいと思いますが、単なる延長措置はとらないほうが、むしろ円滑な収束が期待できるのではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/33
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034・谷垣專一
○谷垣委員 時間がありませんので、もう一問だけで終わらせていただきます。
最近の状況で非常に心配しなければならぬ問題に、蚕糸の問題があろうと思うのであります。四千五百円の取引所の相場が五千三百円まで一カ月少しの間に急騰しております。相場が上がること自体は必ずしも悪いことではございませんが、このような乱調子なやり方というものが、かってございましたと同様に、海外に対しましての輸出の問題について、非常な悪影響を及ぼす。国内の問題におきましても、また同様に、いい影響を与えない。しかも海外の市場は、中共の生糸あるいはまた韓国の生糸というようなことで、ことに中共の生糸のために、日本の海外の生糸の重要な市場がだんだんと置きかわられつつある。蚕糸業自体は非常に有利な事業であるにかかわらず、そういう状況がある。これをどういうふうにしてやっていっていいかということが、今日の問題であろうと思います。特に今日生糸の取引所が相当な熱い形の状況を呈しております。これに対しまして、農林御当局としてはどういうような処置をなさり、また今後なさろうとしておられるか、御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/34
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035・赤城宗徳
○赤城国務大臣 お話のとおりで、私ども心配しております。いきさつは、アズキの投機業者が生糸のほうに集まってきて、非常に乱調子の投機に狂奔しておるというようなかっこうで、非常に値段が上がったということでありますので、蚕糸局長が生糸取引所に対しましていろいろ手を打っております。きょうも声明を発表したわけでございますが、蚕糸局長がおりますから、その手段等につきまして答弁いたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/35
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036・大口駿一
○大口政府委員 生糸の価格が、昨年の暮れから最近に至るまで相当短期間に急速に上がってまいっておりまするが、一昨年の生糸の暴騰暴落のときと若干様相が違いまするのは、取引所における各仲買い店の取引数量が、きわめて異常なまでに大きいという点が、今回の糸価の変動の一つの特色ではないかと思います。ただいま大臣が申されましたように、昨年のアズキ相場の変動に対する規制等の結果、生糸の取引所に対して投機筋がやや興味を示したということが、一つの原因になっておる点もあろうかと思いまするが、いずれにいたしましても、この過大な数量の取引というものを何らかの方法によって静めたいということから、本年の一月二十日、それから二月三日、第一回、第二回と証拠金の引き上げとか、あるいは両建て証拠金の徴収とかいう手を打っておりまするが、昨日全ぎりについて五千三百円という相場が出ております。そこで、今後さらに、蚕糸局といたしましては、取引所に対する規制措置を強化してまいりたいというふうに考えております。と申しますのは、現在現出しております相場が、生糸そのものの需給が著しく逼迫しておるためにあらわれておる相場とばかり言えないのでありまして、在庫状況その他からいたしますと、さまで逼迫をしておるというようなことにはなっておらないのでありますので、現在のところでは、取引所に対する過当投機の熱を、証拠金その他の規制措置によってできるだけ冷やしていきたいということで、手を打っておるわけでありますが、今後さらに糸価の高騰が続くようでありますれば、さらに第二、第三の手を打って、何とかして繭糸価格安定法にきめております最高価格を突破するような事態を再び現出しないように努力をしてまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/36
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037・谷垣專一
○谷垣委員 蚕糸問題については、今日の問題としてまだまだ重要な問題がたくさん残っておると思いますが、本会議の時間等もございますので、機会があればまた後に譲ることといたしまして、本日はこれで私の質問は終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/37
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038・濱地文平
○濱地委員長 次会は明十七日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後一時五十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X00419650216/38
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