1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十年五月十八日(火曜日)
午前十時三十九分開議
出席委員
委員長 濱地 文平君
理事 仮谷 忠男君 理事 坂田 英一君
理事 谷垣 專一君 理事 本名 武君
理事 赤路 友藏君 理事 東海林 稔君
理事 芳賀 貢君
池田 清志君 宇野 宗佑君
金子 岩三君 亀岡 高夫君
吉川 久衛君 倉成 正君
小枝 一雄君 笹山茂太郎君
田口長治郎君 田邉 國男君
高見 三郎君 中川 一郎君
中山 榮一君 丹羽 兵助君
野原 正勝君 藤田 義光君
細田 吉藏君 卜部 政巳君
栗林 三郎君 兒玉 末男君
千葉 七郎君 松井 誠君
松浦 定義君 森 義視君
山田 長司君 湯山 勇君
小平 忠君 中村 時雄君
林 百郎君
出席政府委員
農林政務次官 舘林三喜男君
農林事務官
(農林経済局
長) 久宗 高君
農林事務官
(農政局長) 昌谷 孝君
水産庁長官 松岡 亮君
委員外の出席者
農林事務官
(農地局管理部
長) 石田 朗君
農林事務官
(水産庁漁政部
長) 山中 義一君
農林事務官
(水産庁協同組
合課長) 関根 秋男君
専 門 員 松任谷健太郎君
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本日の会議に付した案件
天災による被害農林漁業者等に対する資金の融
通に関する暫定措置法及び開拓営農振興臨時措
置法の一部を改正する法律案(内閣提出第一三
四号)
積雪寒冷単作地帯振興臨時措置法等の一部を改
正する法律案起草の件
農林水産業の振興に関する件(漁業問題)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/0
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001・坂田英一
○坂田(英)委員長代理 これより会議を開きます。
本日は委員長所用のため、委員長の指名によりまして、委員長がお見えになるまで私が委員長の職務を行ないます。
内閣提出、天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法及び開拓営農振興臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
前会に引き続き質疑を行ないます。松井誠君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/1
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002・松井誠
○松井(誠)委員 災害関係の法律案を審議をするたびに私は思うのですけれども、個人の災害に対する政治の責任といいますか、そういう問題について、どうもやはり基本的な姿勢がぴしっとしていないのではないかという疑問をいつも持つわけなんです。
そこで、最初に、これは基本的な問題ですから、次官に一点お伺いをしたいのでございますけれども、私は、個人災害というのは、その個人の何か過失によって招いたというものでなければ、やはり政府あるいは政治が最終的には責任を持たなければならぬものだと思う。よく天災か人災かということをいわれますけれども、ほんとうに文字どおり不可抗力の天災であっても、それは個人としてもどうしても防ぎ得ないという意味で、個人には責任がない。したがって、逆にまた、そういう意味で、政治が責任をとらなければならぬ。だから、個人の災害というのを何か援助をするのは政治の恩恵だということではなしに、まさに政治の責任としてやるのだという基本的な姿勢というものが、災害を考える場合に、大前提としてどうしても必要だと私は思うのです。これは抽象的な議論でなしに、あとで具体的な問題をお伺いするときにどうしてもやはり出てくると思いますので、最初に、この点について、次官の御意見を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/2
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003・舘林三喜男
○舘林(三)政府委員 いま松井委員のお話のありましたことは、もっともでございまして、文字どおり天災でございますので、天災による災害を受けた者につきましては、当然政府としてはこれを救済する責任があることは申すまでもないわけであります。決して恩恵という立場で何か特別に救済をしてやるんだという立場であってはいかないということは、私は当然だと思います。今度天災融資法の改正をいたしましたのも、北海道の冷害等にかんがみまして、やはり政府としては、北海道その他の災害民の救済をしなければいけないという国家的な義務から出ているわけでありまして、全く松井委員のお考えと同感でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/3
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004・松井誠
○松井(誠)委員 お答えは、必ず質問をすればそういうお答えが出てくるのが通例なんです。しかし、現実には、政府の施策というのが、ほんとうに個人災害に対してそういう責任を感じておるかどうかということになりますと、また話は別になってしまう。公共的な災害については、まあ牛の歩みのようではありますけれども、ともかくだんだん改善されてはおりますけれども、しかし、個人災害をめんどう見るという点については、きわめて歩みがおそくて、まだやはり日の当たらないところにある。その中で、この天災融資法というのは、その非常に数の少ない施策の中では、非常に重要な地位を占めるべきものだと思うのですけれども、今度の改正案は、やはり依然として、金額の点にしてもあるいは利率の点にしても、償還期限の点にしても、いろんな点できわめて不十分だと思う。
しかし、この問題は、私はきょうは触れようとは思いませんけれども、そういう観点から考えてみますと、一体この天災融資法で、法律の発動する条件として、国民経済に影響を及ぼすという、そういう条件が一項入っておる。これは一体どういう理由であろうかということをお尋ねをいたしたいと思う。個人災害においてめんどう見るというのは、まさに個人の被害がどの程度傷が深いかということだけでほんとうは考えるべき問題であって、国民経済的な規模というものは、元来は必要がないのである。にもかかわらず、国民経済に影響を及ぼすという、そういう一項目を入れたというのは、私は、やはり個人災害に政治が責任を持つという姿勢からずれておる、その姿勢がぼやけておる一つの証拠ではないかと思うのですが、この項目、この限定を入れた理由というのは、どういうところにあるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/4
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005・舘林三喜男
○舘林(三)政府委員 天災融資法とか激甚災害法によりましては、国民経済に重大な影響を及ぼすという条件であるということは申すまでもありません。
〔坂田(英)委員長代理退席、委員長着席〕
ただ、その国民経済に重要な影響を及ぼすという場合において、いま松井委員のお話にありましたように、個人につきましても、経営資金等の特別の措置を講じたいというたてまえでございまして、国民経済に重要な影響を及ぼさない災害につきましては、いままでやっているいろいろの災害復旧についての制度があるわけであります。しかし、国民経済に相当重要な影響を及ぼすようなものでございますから、個人の経営資金までも貸し与えたいというわけでございます。すなわち、国民経済に影響を及ぼす場合には、非常にたくさんな人が被害を受ける。しかもその被害が激甚だという場合には、やはり政府としても特別の措置を講ずるというのが、私は、天災融資法とか激甚災害法の大きなたてまえだと思っております。したがいまして、国民経済に重大な影響を及ぼさないものは国家がほっておくというわけでは全然ございません。ただ、国民経済に重大な影響を及ぼす場合には特別の措置を講じなくちゃいけないというのが、この二つの法律のたてまえだと私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/5
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006・松井誠
○松井(誠)委員 この災害の全体的な規模というものが、なぜ一体この条件の中で必要なのか、これはいまの御説明ではやはりわからないと思うのです。つまり、個人の災害の規模、個人の災害の被害の深さ、そういうものだけで融資するかどうかということを本来は考えればいいのではないですか。個人的な災害の深さというものは、一件一件考えればたいしたことはない。しかし、地域的に非常に広がっておる。そういう意味では国民経済に影響を及ぼす。そういういわば国民経済に影響を及ぼすことを不可欠な条件として、この天災融資法の発動をしなければならぬという理屈は、私はないと思う。経営資金のめんどうを見るということがなぜ必要かといえば、個人的な傷が深いから、経営資金のめんどうを見なければならぬ。地域的に幅が広いとか、被害の総額が大きいから、経営資金のめんどうを見なければならないというわけではない。とすれば、ほんとうに考えるべきものは、元来は、個人の傷の深さがどの程度かということに、理論的には最大の基準を置いてしかるべきものではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/6
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007・久宗高
○久宗政府委員 先ほど政務次官からお答えしたとおりでございますが、もう少し詳しく申し上げますと、個人の災害につきまして、まず第一に個人自身が対処いたしますし、またそれで処理できない場合に、第一次的にはやはり地方団体なり、そういうものの自助の原則と申しますか、そういうもので対処する。ただ、その規模が非常に大きくなりました場合に、とうていそれでは対処し得ない場合に国がどういうふうに乗り出すかということが、おそらくここで申し上げております国民経済に相当の影響を及ぼすという場合だろうと思いますが、やはり原則といたしましては、個人なり地方団体の自助の原則というものが前提にございまして、それでカバーしきれないものを国がバックする、こういうたてまえになっておるものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/7
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008・松井誠
○松井(誠)委員 いまの御答弁で半分くらいわかりましたけれども、いまの御答弁がもし正しいとすれば、この国民経済に影響を及ぼす程度でない規模の災害については、この天災融資法が考えておると同じような程度の補助を地方公共団体がやるというたてまえがきちんとできておるとすれば、それは確かにいまの御答弁はそのとおりだと思うのです。これは現実にそのような仕組になっおるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/8
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009・久宗高
○久宗政府委員 具体的に災害が起こりました場合に、私は県におった経験もございますけれども、地方公共団体としてほっておけないということで、いろいろな施策が行なわれるわけでございます。もちろん、これが地方間で片づかないような大きな問題がございますれば、当然、その額が非常に大きくなりました場合に、天災融資法の発動をすべきかどうかということが、議論によくなるわけでございます。やはり第一次的にはそれぞれの地方なりあるいは県なりで、それぞれの施策を災害の度合いに応じて現実にやはりなさっておるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/9
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010・松井誠
○松井(誠)委員 こういうことであまり時間をとりたくはございませんけれども、それでは具体的にはこのようにお尋ねをすればもっとわかりやすいと思うのですけれども、個人としての被害の深さが同じである、しかし、一方は国民経済に影響を及ぼすという規模になっておる、一方ではその規模になっていない、その規模になっていない場合の被害者と、その規模が大きい場合の被害者と、個人の災害を救うというたてまえからいけば、元来は同じに取り扱わなければならぬということを前提にすれば、国がめんどうを見るほど大きな規模の場合には国がやる、しかし、そこまでの規模にいかない場合には地方公共団体がやるというたてまえができておらなければ、個人的には同じ程度の被害者でありながら差別待遇を受けるということになるわけでしょう。実際にはそういう差別がないような措置が行なわれておるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/10
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011・久宗高
○久宗政府委員 この境目の問題になりますと、具体的にはいろいろ問題があろうかと思います。今日までも、適用地域の問題をめぐりまして、運用上よく紛争が起きたわけでございますが、いま御指摘を受けましたようなところに何らかの線を引かざるを得ないため、個別の経済から見ますと、どうもおかしいという問題が現実には避けられないように思うわけでございます。ただ、運用といたしましては、災害の問題でもございますので、相当弾力的に今日まで対処してきておりますので、結果におきましては、一応いまの自助のたてまえのもとに、国がそれをバックするということで処理をしてまいっているというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/11
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012・松井誠
○松井(誠)委員 私のお尋ねは、少しニュアンスが違うのです。たとえば三人でも五人でも極端に言えば一人でも、原因は天災でなければなりませんけれども、天災で被害を受けた。この天災融資法に書いてある程度の深さの傷を負った場合に、天災融資法を受けるわけにはいかない。しかし、それを拾う道というものが——災害というものが本来政治の責任であるとすれば、どこかで拾う必要があるのじゃないか。したがって、その拾う仕組みというものが、地方公共団体はちゃんとできておるかどうか、あるいはそういう仕組みをつくるようにやはり指導をされておるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/12
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013・久宗高
○久宗政府委員 たいへんむずかしい問題でございまして、天災融資法の組み立ての根本にかかわる問題だと思います。今日までもよくそういうお話が出まして、私どもも内部でいろいろな検討はしてみました。その場合に、被害の度合いと、その被害が起こりました場合に、かりに個人で処理ができません場合、町村なり県なりのこれらの関係を考えますと、これを全部統一的に処理をいたそうといたしますと、町村の財政なり県の財政なりを全部洗い立ててやれば、結果的な公平が得られるような措置がとれ得るものと思うわけでございます。現実にはさようなことができませんので、どうしてもある一線で線を引かざるを得ない、こういうことだろうと思います。したがいまして、天災融資法のたてまえといたしましては、やはり一定の規模に達しないものにつきましては、それぞれの町村なり県の段階で処理をなさることを前提といたしまして、それをオーバーいたしましたものには国がどうしても発動せざるを得ないので御援助申し上げるというたてまえは、国の施策としてはくずせないのではないかというふうに考えております。だた、運用といたしましては、御指摘のような問題が境目に起こりますので、運用の面におきましては、弾力的に扱うというたてまえで今日までやってきておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/13
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014・松井誠
○松井(誠)委員 私のお尋ねしていることとどうも少し違うのです。境目、境目と言われますけれども、私はそういう趣旨でお尋ねをしておるのではない。つまり、国民経済に影響を及ぼすかどうかという境目を問題にしておるのではないのです。そうじゃなしに、個人的な観点から見れば被害の程度が同じだというその被害を全部国がめんどうを見るというのは、実際問題としてできないでしょう。しかし、それならば、いまあなたが言われたように、地方公共団体がめんどうを見るということを前提にしてこの法律の運用ができておるというから、その前提というものが満たされておるかということをお尋ねしておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/14
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015・久宗高
○久宗政府委員 天災融資法では、経営資金を貸す制度といたしまして天災融資法ができておるわけでありますが、災害に対します一連の施策で申し上げますれば、それに限ったものではないわけでございます。被害をこうむられた方の生活問題とかそういうことにつきましては、別途にいろいろな施策が御存じのようにあるわけであります。そこで、個人の方で非常に激甚な災害を受けられた場合には、天災融資法の発動はできないけれども、天災融資法にかおる他の措置で、しかも県段階で、あるいは町村段階で、あるいは農林省以外の施策におきまして、そういう個別のほうのそのものを対象にいたしました施策というものがありますので、現実にはそれで処理をしているということだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/15
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016・松井誠
○松井(誠)委員 具体的な実態をこまかく調べないと私もわかりませんけれども、しかし、いままでのいろいろな措置では足りないということで、天災融資法ができたと思います。そうすれば、天災融資法の適用を受けないものについては、それと同じものをやろうとすれば、やはりその行政当局が積極的な指導をして、国民経済的な規模に達しない場合であっても、個人の被害がこれと同じようなものであれば、差別待遇にならないようにしろという積極的な行政指導というものが非常に重要になってくるし、それをぜひ今後もお願いしたいと思います。
そこで、ちょっとお尋ねしたいのですが、国民経済に影響を及ぼすというきわめて抽象的な表現は、一体どの程度のものがそうなのかということがわかりません。これは何か具体的な基準があって、これ以上のものが国民経済に影響を及ぼすのだという具体的な基準というものがございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/16
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017・久宗高
○久宗政府委員 これは別に理論的にこうだという御説明ができないので、非常に因るわけでありますが、実際問題といたしましては、始終私どもも天災が起こりますたびに計数をはじきまして、財政当局とやり合うわけでありますが、今日までの運用の実態から申し上げますと、おおむね三十億をこえるもの、その辺が一応のめどになっておるわけであります。特殊な例といたしましては、これを割った場合に発動いたしました前例もございますけれども、一応のノーマルな基準といたしましては、おおむね三十億というものをめどにいたしまして処理をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/17
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018・松井誠
○松井(誠)委員 その三十億というものは、天災融資法による融資の額が三十億というのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/18
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019・久宗高
○久宗政府委員 ここでいっておりますのは被害額でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/19
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020・松井誠
○松井(誠)委員 それは天災融資法の対象になるべき被害額がおおむね三十億ということですね。その三十億という規模は、昭和三十年と現在では、財政規模がずいぶん違うわけでありますけれども、当初から三十億というものが一応のめどになって運用されてきたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/20
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021・久宗高
○久宗政府委員 これは実際から申しますと、いろいろな考え方があるわけでございますが、内幕を申しますと、大蔵省あたりは五十億くらいでなければおかしいじゃないかということで、押し問答になりまして、被害が現実に起こりまして、それの額だけではなくして、態様とか、その時期とか、その影響とかいったようなものが、計数ではじかれないものもありますので、今日までの経験では、私どもは大体三十億を前提にいたしまして交渉をし、ものごとをきめてきたわけでございます。前例といたしましては、三十億を割ったものも数件あるわけであります。そういう場合には、必ずしも三十億にこだわらず被害額をきめまして、しかも天災融資法を発動したことがございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/21
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022・松井誠
○松井(誠)委員 その三十億というのも、理論的な根拠というものは何にもない。しかも、三十年当時と現在とでは、財政的な規模が非常に違ってきておる、あるいは貨幣価値も違っておる。そういう中で、一ぺんきめた三十億というものがいまでもめどになっっておる、このこと自体、国民経済に影響を及ぼすというこの文句が、実は財政上の理由からであって、ほんとうに天災融資法の精神から出たものではないのだということを結果的に物語っておる。先ほどなぜ国民経済云々という前提を入れたのかという私の質問に対して、いろいろ言われましたけれども、私はもっぱら財政的な理由であったと思う。個人のめんどうを全部見るということになったらたいへんだ、やはりある程度のところで線を引かなければならぬという財政的な理由があって、この条件が入ったのだという御答弁のほうが、私は正直だと思う。そういう理由があるからこそ、三十億という、いわば腰だめ式な、どんぶり勘定式な数字が一度前提になると、もうそれが動かせないという形になってしまうんじゃないか。私は、この国民経済云々という前提をいますぐはずせというふうなことは申しません。しかし、これは先ほど冒頭に申し上げましたように、個人の災害は政治の責任だという、そういうきびしい姿勢からいけば、おかしいと思う。ですから、この問題について、これはもう天災融資法の基本的な問題でありますので、おいそれとはいかぬかもしれませんけれども、やはりそういう政治の責任という立場において御検討をお願いいたしたいと思うのです。
それから第二番目にお尋ねをしたいのは、この法律の適用を受ける被害者というのは、この法律の条文をまっ正面から読めば、農業なら農業を主としてやる、漁業を主としてやる、林業を主としてやるというものに限るようになっておって、したがって、第二種兼業というものは入らないというたてまえになっておるようでありますけれども、これは間違いございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/22
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023・久宗高
○久宗政府委員 第二種兼業は入っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/23
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024・松井誠
○松井(誠)委員 第二種兼業を入れなかった理由は、これは昭和三十年ごろとしては、私はそれなりの理由がないわけではなかったと思うのです。しかし、最近のように、特に農業においてはもう二種兼業も四割二分ですか、農業白書の数字によると、それくらいの比重を持ってきた。そうなりますと、その二種兼業の農民をこの天災融資法から締め出すというのは、一体いいものであろうか。この点は、おそらく昭和三十年ごろではこういう事態は予想もできなかったと思いますけれども、現在になって一体この仕組みでいいかどうか、そういう点について、最初に御意見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/24
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025・久宗高
○久宗政府委員 たてまえといたしまして、天災融資法では、前々から御説明いたしておりますように、農林漁業それぞれの分野におきまして、生産の主たるにない手であって、主たる収入を農林漁業から得ておる専業及び第一種兼業というものに着目いたしまして、融資の対象にいたしておるわけでございます。しかしながら、御存じのように、兼業関係が非常に変わってきておりますので、その点の検討が必要であるわけでございます。実際問題といたしましては、これが農林漁業を主として営むものであるかどうかといった判定、あるいは被害が起こりました場合の被害の程度の認定というものは、具体的に市町村長の認定にゆだねられておるわけでございます。したがいまして、結果的ではございますが、従来これを運用しました実績から見てみますと、相当そこに弾力的な扱いが行なわれているというふうに認められるわけでございまして、かような点から、現在の段階で二種兼業までも全部含めてやるかやらないかという問題につきましては、やはり一応これは除いておいて、そして運用の面で、市町村長の認定のところで末端におきます運用の妙を発揮したほうがよろしいんじゃないかというふうに考えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/25
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026・松井誠
○松井(誠)委員 農業共済にしても、あるいは漁業共済にしても、あるいは個人の災害復旧の補助にしても、何かこういう規模といいますか、経営規模というようなものによって差別をつけておるのはないのではないかと思うのです。私は、ですから、この天災融資法というのは、何か農業基本法でいえば、構造政策といいますか、専業農家あるいは専業者を育成しよう、そういう構造政策というような農業政策が、ここに少しも加味されておるのではないと思う。農業政策以前の問題として、先ほども言いましたけれども、個人の災害は政治の責任だという、災害前の状態になるべく復してやらなければならぬという、そういう責任に基づいておるとすれば、第二種兼業を除くという理由は、私はないんじゃないかと思う。理由があるとすれば、第二種兼業だから、そこで相当な被害を受けても、その主たる所得のほうから補えるからいいではないかというのが、実際的な理由でしょうけれども、しかし、それだとすると、この天災融資法の趣旨というものがやはりまた根本的に問題になってくる。私は、やはりそうじゃなくて、その穴のあいたところをとにかく埋めてやるのだということが天災融資法の趣旨だとすれば、一種兼業、二種兼業を区別をするという理由はないではないか。この点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/26
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027・久宗高
○久宗政府委員 天災融資法で見ておりますのは、まあ短期の経営資金であるわけでございます。したがいまして、普通いわれます二種兼業でございますと、農業経営の部分というのが相対的に小さいわけでございまして、そこで、被害を受けました場合、資金をかりに資金需要のほうから見ました場合に、いわば無理にこの資金を借りなくても運用できるような実態であろうかと思います、農業の規模から申しますと。どこかで線を引かなければならぬということになりますと、やはりいまの経営資金を見るのだという点、それがどのくらいのウエート入っているかという二つを組み合わせますと、やはり二種兼業というようなところで一つの線を引いてみる以外に方法がないんじゃないかと思います。経営資金の非常な要望でもございますれば別でございますけれども、先ほど申しましたような町村長の認定という具体的な措置を経て運用いたしました結果から見ますと、特別の強い要望がここでは出ていないと言えると思います。
それからもう一つ、この基準をもし直すということにいたしますと、相当膨大な層が入ってまいるわけでございます。そういたしますと、全体の農林漁業者に金を貸そうといたします場合の基準をさらにしぼらざるを得ないという問題が起こると思います。現在ではむしろ農業を主としてやっておられる方に限定いたしておりますので、それとの関連で、基準がいわば甘いと申しますか、妥当な線にあると思うのでございますが、その対象を非常に広げてやるということになれば、貸し付けの基準でございますとか、対象のしぼり方につきまして、逆にもっと条件をきつくするというような要望が当然出てくると考えられます。そういうものもかみ合わせて考えてみますと、大体この辺に線を引くのが、現状に即して適当ではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/27
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028・松井誠
○松井(誠)委員 災害の場合には、あなたが言われたように、自助、みずから助けるということを原則とするたてまえをもしとれば、経営資金というものを借りなくてもいい層にまでやる必要がないのではないかという議論が出てくるかもしれません。この点は根本的にやはり政治の責任としての議論のある問題ですけれども、その点は私はいまはおきます。おきますが、いまのお話で、二種兼業にまで広げると非常に広くなり、非常に財政資金がたくさん要る。たくさん要るということになりますと、限られた資金ではかえって一戸当たりは少なくなりはしないか。それは、もう天災融資法という、いわば災害の起きに出きに出す金を、あらかじめ財政の規模でワクをつくってしまうということ自体がおかしい。災害というのは、どの程度の災害が起きるかということは、その年になってみなければわかりませんから、したがって、あらかじめ災害のワクをきめて、どの程度の規模の災害があろうと、これでまかなえというのは、どだい話がおかしい。財政資金のワクがあるから、範囲が広がれば個人の手当てが薄くなるというのは、理屈に合わない。問題は、そういうことではなしに、ほんとうに救うべき必要があるかどうかということを中心にして議論するのがほんとうだ。そうでなければさか立ちをしていると思う。先ほども私が申し上げましたけれども、農民では農家戸数の四二%が第二種兼業、そういたしますと、客観的には国民経済の規模に影響を及ぼすような大規模な被害であっても、さて個々に当たってみると、もし厳密に運用すればみんな二種兼業、結局被害はたくさんあるけれども、その対象農家が一人もないという奇妙な結果も、理論的には出てくる。そういうものを救うためには、やはり二種兼業を入れるということに踏み切るよりほかにはない。だから、二種兼業の場合には、たとえば総収入の一割といういまの規定を二割にするとか、そういうことによって、個人的な総収入における被害の程度というものを同じにすることによって、差別はなくすることができるし、やはりこれだけ兼業が普遍化をしてくると、漁業の場合にも、この間の漁業センサスを見ますと、相当兼業化が進んでおりますね。そういう二種兼業というものをいま天災融資法のほうからはずすというのは、もし理由があるとすれば、やはり専業農家を育成をするという、そういう構造政策をこれに利用するという意味なら別ですよ。しかし、この法律というのは、そういう農業政策以前の問題だと思うのですね。政治の何といいますか、ヒューマニズムみたいな、あいた穴をふさいでやろうという、そういうところから出ておるとすれば、そういう構造政策上の配慮は要らない。いろいろなことを考えて、私は、二種兼業をこの際基本的にやはり考え直す時期にあるのじゃないかと思うのですが、次官、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/28
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029・舘林三喜男
○舘林(三)政府委員 昭和三十年にこの天災融資法ができましたのは、天災にあった被害農林漁業者に対して、経営資金を低利で貸し付ける、その当時としては私は非常に画期的なものだっただろうと思うのです。しかし、初めてのことでございますから、その適用の範囲につきまして、先ほど御質問のありましたように、国民経済に重要な影響を及ぼすというようなワクもはめましたし、また農林漁業者につきましても、農業をおもな業務とするということにきめたわけでございます。しかし、実際いまお話のように、二種兼業というようなものにつきましては、さような立場から除いてありますが、それは先ほど局長が御説明いたしましたとおりに、農業をおもな業務としていない、すなわち、第二種兼業につきましては、他の収入がコンスタントにある、したがって、経営資金等は要らないという意味じゃありませんけれども、何とかやっていけるだろうというたてまえで、私はこの法律ができているのだろうと思うのです。しかし、いまお話のように、私はほんとうにもっともだと思う。やはり先ほど私が申し上げましたように、政治の責任からいうと、当然かようなものにつきましても救済の恩恵を与えなくちゃいけない。たとえて申しますと、先ほどお話のありましたように、国民経済に重要な影響を及ぼさなくても、たとえば一つの谷合いの中で非常に激甚な災害があったというようなときも、これが適用されるということは、私は趣旨としてはけっこうだと思う。いままで天災融資法はそのつど必要に応じて改正いたしましたし、金利とかあるいは償還期限というようなものにつきまして改正いたしましたのも、やはり去年の北海道災害等をきっかけとして改正したわけでございまして、きのうからいろいろ御質問がありましたことにつきましての応答を承りましても、天災融資法につきましては、まだなるほどいろいろこまかい点について改善しなくてはいけない点があるということは、非常に痛切に感じたわけでございまして、今後その問題につきましては十分に研究させていただきたい。ただ、農林省としては、この二種兼業を除いたのは、構造政策というような第二次的な立場で考えているわけじゃありませんので、ただ一応天災融資法としてワクを引くならこの程度だということで、今日まできたわけです。しかし、お話の点は十分に参酌いたしまして、今後ほんとうに地についた天災融資法の改正をいたしたい、私はかように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/29
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030・松井誠
○松井(誠)委員 この二種兼業に関連をしまして、ちょっとやっかいな問題を一つお尋ねをしたいのです。それは、この法律のたてまえでは、漁業、農業、林業というように一つ一つばらばらに考えておる。しかし、特に私は島に住んでおるわけですけれども、島なんかへ行きますと、農業をやり、林業をやり、漁業をやる、そういう二本の足で三ヵ所に踏み込むわけにはいきませんけれども、無理をして二本の足で農業、漁業、林業の三ヵ所に踏み込んでおるわけです。そういう形でどうにか生計を保っているわけです。それ以外にはそういう所得はない。つまり、農業所得、林業所得、漁業所得と合わせればまさに一〇〇%、それによって生活を支えておるけれども、農業だけでは二種兼業になる、漁業だけでは二種兼業になる、そういう層というのは、半農半漁の村に行けば幾らもあるわけです。そういうものが、しゃくし定木にこれを適用すれば、当然ここからはみ出すということになる。これは、いままでの具体的な運用というもので、何かそういう問題にぶつかったことはございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/30
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031・久宗高
○久宗政府委員 はなはだむずかしい問題でありまして、現在のたてまえといたしましては、農林漁業の経営資金をまかなうのだということで、一応個別には整理をいたしております。実際問題といたしましては、主たる業種による損害というのを積み重ねまして、それに対する対処のしかたをしているわけであります。しかしながら、実際の運用といたしましては、末端での認定という問題がございますので、今日までその問題があまりやかましい形で出ておりませんのは、末端の町村長のところにおきます認定が、その土地の実情なりまた被害の態様なりに即して、具体的に処理をしていただいた結果、処理ができているものと考えておるわけであります。たてまえといたしましては一応分かれておりますので、制度的には問題がございまして、私どももこれを宿題として考えておるわけであります。これを割り切ろうといたしますと、またいろんな弊害と申しますか、逆に被害を受けた側から見て損な問題も起こってまいりますので、箇単に結論が得られないでおるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/31
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032・松井誠
○松井(誠)委員 二種兼業の場合もそうですけれども、いまの問題についても、運用で何とかということを言われるわけです。しかし、本来の法律のワクをはずすことを前提にした運用というのは、ほんとうはおかしいのですね。ですから、本来のそういうワクをはずさなければならないくらいなら、やはり正々堂々と法改正をするほうが私はいいと思う。というのは、恩恵云々という一種のアクセサリーみたいなものが実は足かせになって、財政的に苦しくなれば、この条件というものは、できるだけきびしく査定をしようということになってこざるを得ない。きちんとした適用の基準がないわけですから、財政規模で広がりもし、狭くもなる、そういう危険を考えると、運用が弾力的であるというのは、一面にはいい点もあります、しかし、こういう場合にそういう弾力性にだけ期待をするということでは、私はむしろ危険だと思う。ですから、いまの農林漁業合わせて専業であるというような場合は、やはり正式にこの対象になり得るような法改正——技術的にはちょっとめんどうかもしれませんけれども、そういうものをやはりお考えになるのがほんとうだろうと私は思うのですが、これも次官もう一。へんいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/32
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033・舘林三喜男
○舘林(三)政府委員 いままで農林漁業につきましては、兼営しているものにつきましては、その被害は被害の総額で決定しているわけでございます。天災融資法の経営資金は、農業経営に必要な資金として貸し付けるものでありますから、被害農業者の林業経営とかあるいは被害漁業者の農業経営、こんなものをすべて合わせまして計算しているわけでございまして、決して林業なら林業あるいは農業なら農業、別々に計算しているわけではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/33
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034・松井誠
○松井(誠)委員 経済局長、それでいいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/34
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035・久宗高
○久宗政府委員 いまの政務次官からお答え申しましたのは、被害を受けた方に出た金の使い方につきましては、いま申し上げたようなことなんでございます。ただ、最初の被害額そのものにつきましては、一応業種に分けまして、主たる業種についての被害を認定いたしまして、それで金が出るわけでございますので、御質問のほうはその前段階の問題だと思います。それは分かれておるわけであります。その点について、はたしてそれでよろしいかどうかという問題につきましても、私どもはいろいろ検討はしておるわけでございますが、それを割り切ろうといたしますと、漁業でございますとか、林業でございますとか、農業でございますとか、上まで全部縦割りにしてしまって処理をするということになる、制度的な組み立てから申しますと、そういう問題を派生するわけであります。そうなりました場合に、はたして全体として、たとえば林業関係者にそれでよろしいか、漁業関係者にそれでよろしいかという問題を考えますと、必ずしも利点ばかりではないわけでございますので、そこで、踏み切れないでいるわけでございます。したがって、現実にはどう処理しているかと申しますと、先ほど申しましたように、具体的にたとえば離島なら離島におきまして、あるいは特殊な漁業地帯におきましての運用におきましては、その町村長の認定の際に、そういう問題が具体的にその地方の実情に即して処理されているということで、問題が片づいているというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/35
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036・松井誠
○松井(誠)委員 ちょっとわかりにくいのですけれども、ともかく次官の先ほどの御答弁は少し違うのです。いま主たる農業の被害、主たる漁業の被害、あるいは主たる林業の被害というものを積み重ねて総額が出ている。そのときに、主たる農業、主たる林業、主たる漁業のどこにも入らない被害というのは、初めから積み重ねの中にも除外をされるということに、しゃくし定木にいけばなるわけでしょう。ですから、そういうことを初めから認める前提をくずさなければならぬじゃないかということを私は言っている。その結果、何かあなたのお話ですと、全部縦割りにして、林業なら林業の被害総額がかえって少なくなるということになって、不利益を招きはしないかというお話なんですけれども、私はその趣旨がよくわからないのです。これは総額ですから、農林漁業を合わせて主たる業をやっている者のその総収入の一割なら一割がこうだというふうに書けば、少なくともその法律の適用の上からはそれで済むわけです。具体的に被害額を計算するときにどうするかという問題は別の話だと思う。ですから、そういう不利益を受けるという局長の御答弁の理由が私はまだよくわかりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/36
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037・久宗高
○久宗政府委員 これはこの種の制度にはどうしても随伴する問題だと思うのであります。全部縦割りに処理をしようといたしますと、それについての要件をまた非常にしぼらなければならぬという問題が起こります。そこで、現在の立て方で申しますと、たとえば漁業につきましても、漁業プロパーの災害が非常に大きな災害が起こった、しかし、それの額を特別に規定しようといたしますと、国民経済との関連というような問題の割り切りにおきまして、必ずしも漁業プロパーとして処理をしたほうが有利かどうかということに、条件をきめます場合の制約がございますので、はなはだやりにくい問題がございます。そこで、現在のところでは、農業災害の関連におきましてある地域にこの施策が適用されすと、それの恩恵を受けて漁業も適用を受ける、こういうような実際の運用になるわけでございますが、これをもっと業種別に全部割り切ろうといたしますと、問題は、それが適用されます場合の条件をどういうふうにしぼるかという問題がございますので、全体と申しますか、どうもどこかで線を引かなければならぬということで、どっちにウエートを置きましても、どっちかに弊害が出るわけでございます。
そこで、現在まで運用してみて、はなはだしくまずかったかどうかということから経験的に考えますと、大体農業を主体といたしまして、林業なり漁業につきましても、おおむね普通の災害でございますと、結果におきまして実情に即した処理ができておるわけでございます。ただ、漁業につきまして、先般起こりましたような、たとえば津波が起こったというような場合に、一体激甚法を適用すべきかどうかといったような議論が出たわけでございます。こういうものにつきましては、確かに現在の制度ではまだまだ問題があるんじゃないかというふうに考えます。現在水産庁とも相談いたしまして、そのほうの問題は別途に検討を進めておるわけでございます。全般的に立て方を全部変えてしまうかということになりますと、どうも現在のところでは、弊害と申しますか、つまり、受ける側から見ての不利益のほうが多いんじゃないかということで、手をつけないでいるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/37
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038・松井誠
○松井(誠)委員 あまり時間をとりたくないのですけれども、どうも私も趣旨が実際よくわからないのです。というのは、私の質問は、繰り返しませんけれども、農林漁業の総合的な被害、これは、国民は農業なら農業だけやっているという人はむしろ珍しいので、何がしか原始産業の一つか二つを兼業していますよ。その兼業している三つを合わせれば第二種兼業というものにはならない。第二種兼業の問題は別として、少なくとも第二種兼業ということにならないとすれば、その人を対象から除外するのはおかしいじゃないか、私の質問するのはただそれだけなんです。それからあなたの言うような議論がどうして出てくるのか。私は、むしろいつも災害のたびに思うのですが、農業なら農業の被害、漁業なら漁業の被害ということにして、業種別といいますか、それで区分けをするということが書類上必要かもしれませんが、個人の立場から見れば、それが問題ではなくて、個人が受けた被害の総額が問題なんですから、むしろ、それは総合して計算して被害額を出すのがあたりまえです。私のような考え方からいくと、そうはならなくなるという、なぜそういう結論と結びつくのか、その筋道がほんとうに私にはわからないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/38
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039・久宗高
○久宗政府委員 私の説明がどうもへたで、のみ込んでいただけないので困るのですが、おっしゃっている意味は私どももよくわかるのでございます。必ずしも現在の制度の規定のままで、いま具体的に申されましたような事例にぴしゃっと合うかどうかという点については、疑問がございます。そこで、盛んに認定、認定と言っておるわけですが、ただ、ぎりぎり申し上げますと、かりにいまの第二種兼業という問題も含めて考えました場合に、減収による損失額の百分の十というものを百分の二十に上げて処理するのも一つの考え方ではないかという御提案がございましたが、この限度をいじることによりまして全体に響いてくる響き方は、相当大きい問題があるわけでございます。むしろ、私どものいまの考え方では、かりに第二種兼業でいえば、一口に第二種兼業と申しましても、この中にいろいろなケースがあると思ます。それから、特に非常に流動的でございますので、第二種兼業の中で全く農業から離れてしまったものと、そうでない、離れるプロセスのもの、あるいは常識的には非常に本来の農民であるにかかわらず、制度の上で漁業、農業、林業と分ける結果、統計の上ではあるカテゴリーに入らないというようなものがあり得ると思います。そういうものの具体的な調整といたしましては、やはり現実における町村長の認定ということで処理をしていくのが、当面むしろ合理的ではないだろうか。それをむしろ制度のもとにおいて全体系を変えようといたしますと、現在許容されておりますいろいろな基準なり限度というものを相当しぼりませんと、そういう分け方ができないという問題を含んでおりますので、総体的に見ると、この段階では、災害を受けた側から見て不利であろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/39
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040・松井誠
○松井(誠)委員 二種兼業の問題は、さっきの次官の御答弁で一応けりをつけたつもりでおったのです。また問題がそこに戻りましたが、私がお尋ねしたいのは、農村漁業は複合的な経営をやっておる、それを合わせれば二種兼業にならない、そういう場合が、この法律では抜けるではないかというお尋ねをしておるわけです。その点の答弁がさっぱり私には理解ができないものですから、もたついたのですが、この問題は、時間があまりないようですから、あとに保留して、いずれまたあらためてゆっくりお伺いをすることにしまして、質問を先に進めます。
それは漁業関係のことなんです。それも問題は二つありまして、二つともいわゆる漁船、漁業に関する問題なんです。
一つは、漁船の被害というのは、漁船の建造取得資金というのは、経営資金の中に入っておりますけれども、これは政令で定めるものに限るということになっておる。現実のいままでの取り扱いを見ますと、やはり二トン未満というように一応きまっておるようなんです。この二トン未満というところで線を引かれたのはどういう理由からなのか、そこから先にお尋ねをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/40
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041・久宗高
○久宗政府委員 昨日も出た御質問だったと思うのでございますが、天災融資法によります資金につきまして、たてまえといたしましては、経営資金でございますけれども、例外的に施設に属するもの、たとえば漁船、漁具、あるいは小規模なもの、あるいは非耐久性の性格のものといったようにものが対象に入ってくるわけでございます。その中で、漁船につきましては、従来二トン未満のものにつきまして天災融資法の補助で見るということにしておりまして、これ以上のものにつきましては、施設資金といたしまして、別途に農林漁業金融公庫のほうから融通の道が開かれておるわけでございます。そこで、どういうかっこうで線を引くかという問題でございますけれども、結局施設資金として別途に制度金融で見るような形で処理したほうがよろしいかどうかという実際問題だろうと思います。特に災害でもってどういうふうに取り扱ったかを見ますと、主として二トン未満のものにつきまして、修理関係が非常に多うございます。昨日の御質問で資料をたしか差し上げておると思うのですが、実際貸し出しましたものを見ますと、漁船関係では、二トン未満のもので修理をおもにしたものが天災融資法の面でまかなわれております。別途施設資金で見ておりますのは二トン以上でございますけれども、これは金融公庫のほうで見ることにいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/41
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042・松井誠
○松井(誠)委員 二トン以上がなぜ制度資金、制度金融で見るようになっておるのか。むしろ天災融資法の適用が二トン未満とすることによって、二トン以上は自然とそちらへいくという結果なのか、あるいはいままでの金融のあれが、大体二トン以上は金融公庫が見るということがあったために、それが原因でこの二トン未満の線が出たのですか、どっちが先なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/42
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043・久宗高
○久宗政府委員 御存じのように、二トン未満、その前後のところは、非常に零細な漁民の方々の船であるわけです。公庫のほうで二トン以上は施設資金で見ると申し上げておるわけですが、利率なんかは六分五厘でございますけれども、償還年限でございますとか、そういう条件は非常に有利になっておりますので、二トン以上が施設資金で見られていることについて、それが非常に不利なかっこうになっているとは考えられないわけでございます。
それから二トン未満のものについて、天災融資法で見ておりますのは、災害との関連におきまして、船のいろいろな修理その他があるわけでございます。そういうものはむしろ天災融資法の一連の関連で見たほうが、実際問題として処理が実情に即するということで、こういう切り方をしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/43
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044・松井誠
○松井(誠)委員 私がいまお尋ねをしたのは、金融公庫のほうで二トン以上は現実にめんどうを見ておるのが多いということでありますけれども、それは天災融資法のほうで二トン未満しか見ないものだから、そららのほうへいったのか、あるいはいままでの金融上の取り扱いがそうであったために、逆に二トン未満をそこで見ようということになったのかどうかということが一つ。それからもう一つ、先ほどあなたが、施設資金としては少額のものを見るというのがこの天災融資法のたてまえなんだと言われましたけれども、建設資金というのは経営資金には入らないのですか。経営資金とは何ぞやという、何か法律上の定義があるわけですか。きのう卜部委員の質問に対する御答弁では、例示みたいなもので、経営資金はこれに限るという意味ではないのだという趣旨の御答弁があったと思うのですけれども、施設資金は経営資金に入らないというたてまえは、一体どこから出てくるか、この二点お答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/44
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045・久宗高
○久宗政府委員 二トン未満を天災融資法で扱うようになりましたのは、むしろあとから入ってきたわけでございます。ですから、実情で申し上げますと、おそらく公庫資金で見ておりましても、見きれない分が出てくるわけでございます。そこで、むしろ天災融資法のほうにあとからそれを入れて、天災融資法で見たほうが実情に即するだろうということで、これがあとから加わったものというふうに私どもは理解しております。
それからあとのお尋ねでございますが、経営資金の内容は昨日申し上げたとおりでございまして、一応例示的に掲げましたが、これに限定するものではないわけでございます。ただ、経営資金の中で施設的なものを全然見ないかということになりますと、そうではございませんで、非常に軽微なものにつきましては、また同時に、施設的なものでございましても、経営資金と関連して見たほうが適当と思われるようなもの、たとえば漁船でございますとか漁具、こういったものにつきまして、小規模なものでございますとか、非耐久的な性格の比較的強いもの、こういうものにつきまして、経営資金の中で見ておるわけでございます。でございますので、あまり厳密な規定もできないと思いますけれども、これはやはり経営資金の概念の中をあまり厳密に分けました場合、かえって実情に即さないので、厳密に言えば、施設的なものも一部この中に入れておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/45
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046・松井誠
○松井(誠)委員 ですから、経営資金には施設資金は含まないというように初めから定義をする必要は私はないんじゃないかと思う。漁業にとっては、漁船というものは最大の基盤です。したがって、それは施設資金か経営資金かなどという定義の問題とは離れて、それがなければどうにもやっていけないということです。とすれば、これがやはり天災融資法の当然の対象になると考えるのは、経営資金という日本語を通俗的に解釈すれば、そうなるので、それを二トンというようにきめて、施設資金は軽微のものに限るという限定そのものが、どういう意味かわからない。定置やそういうものについては一千万というものを認めておきながら、漁船についてはなぜそういう軽微なものに限らなければならないのか、そういう必然性というものはあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/46
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047・久宗高
○久宗政府委員 天災融資法のたてまえをはっきりいたします場合に、これは経営資金と見るのだ、施設資金ではないのだ、こういう大きな割り切り方は必要だと思う。ただ、実際問題といたしまして、経営資金の具体的な中身になりました場合に、他の施設資金との組み合わせが当然出てくるわけであります。したがって、公庫資金のほうで、漁船につきましてはこれを施設資金として見る制度が別にあるわけでございます。それの適用との関連において、これの組み合わせでもってお考えになっていただく必要があるんじゃないか。つまり、これを切り離して、そういうものが全然なければ問題でございますけれども、公庫資金のほうでは施設資金といたしまして、利率はかりに六分五厘でありましても、全体の償還年限とかそういうものを見ますと、相当有利な施設資金としての施策が一方にあるわけであります。そこで、それとの関連におきまして、どこで線を引くのかというのは相当問題があると思いますけれども、これも実際の公庫資金として運用した結果といたしまして、またその後の災害の場合に、まだ二トン以下の処理がきまっておりません場合に起こりましたいろいろな難点、こういうものを考えあわせられまして、ここに二トン未満というものを天災融資のほうで見ようじゃないか、片方にはそれ以上のものにつきましてはもちろん公庫資金というものが前からもあり、これからもやっていこうということで、両方のコンビネーションでお考えいただいたらよろしいのじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/47
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048・松井誠
○松井(誠)委員 コンビネーションで考えるということそのものについては、私はあえて反対はしませんけれども、しかし、金融公庫の貸付の条件というものを業務方法書によって見ますと、確かに期限は長い。利子も漁業構造改善の漁船の場合には五分五厘くらいになっておる。むしろ天災融資法よりも条件がいい。だから金融公庫に行けという理由にはならない。そうじゃなしに、天災融資法の条件が悪いのはいかぬじゃないか、金融公庫の条件よりも悪いという天災融資法の条件があるかという議論になってこなければならぬ。そうじゃないでしょうか。つまり、金融公庫では一応有利な条件になっておるけれども、しかし、担保とかそういう問題で、現実には小さいものがなかなか借りられないということがあって、それでは天災融資法で見ようという趣旨からおそらくきたのだと私は思うのです。しかし、それだからといって、二つをコンビネーションで考えて、だから二トン以上のやつは金融公庫にまかせておけばいいという議論には私はならないと思うのです。漁業センサスなんかを見ましても、十トンくらいまでは、資産は何がしかあるかもしれませんけれども、負債もそれに応じて多いのです。だから、規模が大きいことは、それだけ金融能力があるということにはならない。沿岸漁業振興法では、一応十トンということで線を引いておる。十トンとまで一ぺんにいくのは無理だとすれば、三トンないし五トンというものを——政府の漁業白書によれば、中核的漁家として自立経営の育成をしようということで考えて、その辺くらいまで広げて——ほんとうならば私は十トンと言いたいですけれども、そのコンビネーションということを考えれば、あるいはその辺でも——とにかく二トンという非常に小さいところで押えないで、これは漁具とのかね合いもあると私は思うのですが、そういうことを検討される必要はないかどうか。次官、これはいかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/48
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049・舘林三喜男
○舘林(三)政府委員 経営資金の解釈の問題でございますが、経営資金の中にも、もちろん炭がまとかあるいは漁船というように、いわゆる施設資金というものもあるわけでございまして、経営資金の中には、純粋の経営的な用途ではなくて、施設的な設備資金もあることは申すまでもありません。ただ、その施設の場合に、漁船につきましては、農林漁業金融公庫のほうにおきましても、やはり施設資金として制度金融の道がある。そうすると、そのどちらを適用させるかということにつきまして、いままでの現行法としては、二トンというところに一つの線を引いておるというのが、これが現実の姿であります。しかし、いまお話しのように、立法論としてはいろいろ議論もあるだろうと思いますが、現在の状況からいって、二トン以上の場合は経営が非常に豊かであるということも考えられませんので、立法論としては、私はこれから先十分研究しなければならぬ問題だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/49
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050・松井誠
○松井(誠)委員 次官が言われるように、二トン以上は経営が楽だなんてそういうものではないわけですから、ぜひひとつこれからあとの検討の問題としてお考えをいただきたいと思います。
もう一つ、最後に、やはり漁船漁業に関係をするわけですけれども、少しめんどうな問題をお尋ねをいたしたいと思いますが、いわゆる回遊魚といいますか、泳いでおる魚を相手に漁業をやっておるという場合に、天災でその魚がとれなかったという場合、この現行法のワクの中でそれをさばくということはできるのか、できないのか、いかがでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/50
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051・久宗高
○久宗政府委員 回遊魚の問題でございますが、やかましく申しますれば、やはり漁業者の収入減の数量並びに金額の関係をどう把握できるかという問題だろうと思います。したがいまして、完全な管理下に入っておりますもの、たとえば養殖漁業のようなものは、もちろんこれは対象にできるわけでございますが、回遊魚につきましては、さようなことはテクニカルにできないので、ここでは考えられないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/51
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052・松井誠
○松井(誠)委員 いまの御答弁は、どの程度の損害かという、その認定ができないという趣旨ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/52
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053・久宗高
○久宗政府委員 これはやはりおっしゃるとおり、把握できないという点が一番問題だと思います。したがいまして、天災融資法のようにはっきり数量並びに金額を明確にして処理をしなければならぬという形の施策では、フォローができないだろうと思うのです。もしやるとすれば、何らかの意味の所得政策のような形で取り上げれば別でございますが、天災融資法の場合には、そのリミットをこえますと、やはり相当問題があるということで、水産関係につきましては——ただ、養殖漁業のようなものにつきましては、被害の内容が確定できますのと、また災害との関連も一応明確に規定できると思います。また、やっておられる方の管理下にとにかく入っておるわけでございますので、処理ができるわけでございます。回遊魚になりますと、おそらく技術的に私は困難ではないかと思います。法律として何か対策を講ずるとすれば、別の体系の問題ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/53
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054・松井誠
○松井(誠)委員 いまの御答弁で、技術的に困難だ。しかし、技術的に可能ならば、いまの現行法のワクの中ででも、逆にいえば適用ができるということになるわけです。そのように理解をしてよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/54
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055・久宗高
○久宗政府委員 やかましく申し上げれば、水産資源の変動等の現象と漁業者の収入減との関係を数量及び金額で明確にし得れば、私は対象にできると思います。しかし、このことは、非常に技術的に困難でございまして、むしろ政策としては、他の政策体系で考えるべき問題であろうというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/55
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056・松井誠
○松井(誠)委員 そうしますと、いまの御答弁では二つになると思います。一つは、その損害の額と天災との因果関係がどうかという問題と、損害の額そのものをいわば押えることができるかどうかという問題と、どっち道損害額の問題ですけれども、二つの問題ですね。私は、その損害額というものを押える方法というのは、御承知のように、先年漁業災害補償法というものができて、そして漁獲共済というものができた。漁獲共済では、何年かの平均の漁獲量というようなものを基準にして、共済限度額ですか、それに満たない場合にはそれを損害とする、損失とする、そういうたてまえが制度的に確立をしたのですから、それをそのまま使えば、少なくとも例年よりはこれだけの額が少なかったという、その損害の絶対額が出てくる方法は、私はできたと思いますけれども、これはどうでしょう。
〔委員長退席、刈谷委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/56
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057・久宗高
○久宗政府委員 これはたいへんむずかしい問題なんでございます。一応二つに分けまして、天災とその被害との因果関係がかりに証明できるという問題は別といたしまして——それができました場合におきましても、最終的には、もちろんそういう天災がなければ当然得べかりし収入金額のうち、その天災によって得られなかった金額を把握するということが、おそらく、回遊魚の場合には管理が可能な状態にないわけでございますので、私はきわめて困難であろう、こういうように申し上げておるわけでございます。したがいまして、現在の処置といたしましては、そういうものにつきましては、もちろん、災害補償法のほうではその問題を検討しておられますけれども、少なくとも融資の関係におきましては、天災融資法のほうでそれを取り上げることは非常に困難ではないか。しいてやれば、つなぎ融資のような形で、別の問題として処理するよりしようがないのではないかという考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/57
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058・松井誠
○松井(誠)委員 漁業災害補償法のほうでは検討をしておるという段階ではなくて、もう制度的にできておるわけですね。漁獲共済というのは、そういう損害額の認定が可能だということを前提にしてできておる機構なんです。ですから、損害額が幾らかということは、私は技術的には困難ではないと思う。困難かもしれませんけれども、少なくとも不可能ではない。あなたが言われるように、その損失というのは、いわゆる積極的な損害だけでなく、得べかりし利益を失ったというのも、そういう消極的な損害も、この法律にいう損失だというたてまえをとるとすれば、損失額、損害額の絶対額を計算をするというのは、これは不可能ではない。問題は、やはりあなたが言われたその天災との因果関係、あるいはその天災の因果関係はあるけれども、その中で、損害額がどれだけ因果関係があるか、そういう問題だと思う。しかし、その問題は、何もこの漁業だけの問題ではないのじゃないかと私は思う。たとえば農業の場合にしたところで、これが確実に一〇〇%天災と因果関係があるということを立証するのはむずかしい。しかし、何がしかの天災以外の要素が入ってくる場合は、おそらくいろいろな場合があると思う。そういったことを考えると、漁業の場合にだけ天災と損害額との因果関係がはっきりしないように考えるのは、私はおかしいのじゃないかと思う。漁業災害補償法というものができない前ならば、そういう議論もやはり成り立ち得たかもしれない。しかし、漁業災害補償法で漁獲共済というものに踏み切った以上は、その前提というものが大きくくずれてきたと私は考えていいんじゃないかと思います。次官お聞きになっておるわけですけれども、この漁船漁業の問題について、私はいままで二つ出しました。漁船漁業というのは、なかなか養殖漁業と違ってうまくいっていない。特に沿岸の漁船漁業というのはうまくいっていない。ですから、普通ならば、天災融資法にしても何にしても、優先的に私はめんどうを見る対象だと思うのです。ところが、漁船漁業が、この天災融資法の中で、いま言われたようないろんな理由で、大事な点が抜けておるわけです。漁船漁業で、たとえば定置なら定置も漁船漁業でしょうが、あるいは船に乗って魚を追い回す、どっちみち回遊魚を相手にする場合には、養殖と違って完全に管理はしていない。管理はしていないけれども、損害額が認定できるとすれば、この天災融資法の対象からはずすべきではないと思うのですが、ひとつ御意見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/58
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059・関根秋男
○関根説明員 水産庁の協同組合課長でございますが、回遊魚を天災融資法の対象にするかしないかという場合に、局長が申し上げましたように、二つの点が問題になっていると思います。天災による災害を補償する、こういうのが天災融資法のたてまえでございますけれども、一つは、災害が特定できるかどうか、二番目は、先ほど申し上げましたように、災害によって生じた不漁であるかどうか、この点が問題であると思います。
最初の不漁の直接の原因になった災害が特定できるかどうかということについて見ますと、回遊魚の場合は、その回遊魚が回遊を始めるところの魚群がまずできるわけです。その魚群ができるところのものも、どんな規模の魚群ができるか、あるいはどういうような組成になっているか、そういうことが年々多少の変動があるそうでございます。そういうのがむしろ普通だ、こういうふうに学問的にいわれているそうでありますが、こういうような回遊魚が回遊を始めるところの来遊魚になるわけですが、その年の発生の状況、それは天災というふうにわれわれが言っておるいわゆる自然的災害とは別に、自然的な条件によってそういう状況ができるわけでございます。そういうふうに自然的条件によって発生の状況が大きく左右されておるということが一つと、それから漁期のうちに自然の災害が発生しまして、その不漁という現象が生じましても、その不漁の直接の原因が、その漁期の始まる前の自然的条件にあったのか、あるいは漁期のうちにおける自然的条件にあったのか、そういうことを判定することはむずかしいのだ、こういうことが一つの災害の特定との関連において問題になると思います。
それから次に、不漁の直接の原因となった災害を特定できる、それはわかるのだというふうに前提してみました場合に、その特定された災害によって起こった損失額の部分が把握されなければならないということが、次の問題になってくるわけであります。その場合に、回遊魚の漁期というのは比較的長い場合が多いわけであります。その結果というのは、その漁期のあとになってみないとわからないことがございます。昨年イカの不漁がありましたけれども、これは魚価の点などもありまして、岩手県では非常に被害が多うございましたけれども、北海道のほうでは魚家全体から見てどうやらとんとんになったというような話を聞いているわけであります。したがいまして、漁期のあとになってみないと、それが天災による不漁であったのかどうか、こういう点の判断がつかないということが一つと、それから不漁によりますために、魚価が非常に上がってまいります。そういった魚価の上昇の問題。それからその魚が来ないために、ほかの漁に出る、こういうような事情もございまして、ほかの魚をとる、そういう漁獲があったかどうかというようなことによって、減収された額が違ってくるわけであります。そういったいろんな条件を考えてみないと、損失額はわかりにくい、こういう点が問題になるだろうと思います。
それから先ほど局長からも申し上げましたけれども、現在の天災融資法の法体系のもとでは、無主物は対象にしておらない、こういうような事情がございまして、回遊魚を天災融資法の対象にすることは、技術的にも困難ではないか、こういうふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/59
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060・松井誠
○松井(誠)委員 いまの専門的な御説明で多少わかったのですけれども、四つばかり理由をあげたと思うのですが、一番最後の無主物については、天災融資法の適用がないということを言われましたけれども、天災融資法には別に無主物についてはとかなんとかいうようなことは何もない。ただ現実にここに書いてあるものが無主物でないというだけで、無主物については天災融資法の適用をしてはいけないという議論は、私はそこからは出てこないと思う。それから二番目に言われた理由で、その操業の前に生じた条件か、途中に生じた条件かというようなことも、どっちでもいいことなので、その天災との因果関係がありさえすれば、やはり損害と見ていいのじゃないかと思うのです。それからもう一つ、損害額について、天災との因果関係だけでなしにいろんな条件があり、条件をいろいろ並べましたけれども、それは確かにそういうことがあると思う。しかし、似たようなことは、少なくとも量の違いはあるにしても、農業、農林だってあり得ると思う。自然的条件だけにいつでも左右されておるのではなしに、いろんな場合があり得ると思う。ですから、問題は、やはりあなたの言われた一番最初の、これがほんとうに天災であるのかどうか、単なる自然的条件と考えるべきものかどうか。これが周期的に不漁がくる、周期的に豊漁がくる、そういうものは異常とは初めから考えられないじゃないかという議論ならば、これは議論としては意味があると私は思う。したがって、農業と同じあるいは林業と全く同じように取り扱えというのは、あるいは無理かもしれません。しかし、たとえば私のいる佐渡で大きな定置がある。去年からことしにかけて、雪が降らなくてあたたかくて、ブリはさっぱり来ない。何年ぶりかで大きな損害を受けた。これはまさに暖冬異変ですね。その暖冬異変というものは、一体天災と見るべきかどうか。これはまた最初の問題に返って、国民経済規模の云々にまたひっかかるという問題がありますけれども、その問題は一応別にして、暖冬異変なら暖冬異変というものが異常な自然条件、異常な天候だと考えれば、それは天災だと考えていい。どうしてもそれが天災の因果関係から説明ができない場合は、これは除くよりほかありませんけれども、説明ができない場合も説明できる場合もあるわけです。説明ができる場合があるとすれば、それは最初から対象からはずすということはおかしい、そのように私は考えるのです。次官、最後にその点についての御意見をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/60
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061・舘林三喜男
○舘林(三)政府委員 天災と被害との因果関係の問題でございますが、農業とか林業とかあるいはまた漁業におきましても、漁具がやられた、あるいは漁船がやられたというときには、因果関係がはっきりしておるわけでございますけれども、いま問題の回遊魚の問題につきましては、私は、いま水産庁の課長から申し上げましたように、因果関係の把握が非常に困難だと思う。そんな意味で、私は、農林省としては、いまの御質問に対しましては消極的な考え方を述べておるわけでございます。もちろん、これが非常にはっきりしておるという場合には、これから先の解釈論と申しますか、あるいは立法論として考えなければいけませんけれども、他の林業とか農業と相当違った性格じゃないかと私は思っておるわけでございまして、まだ必ずしも松井委員の御意見のとおりということにはなっていないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/61
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062・松井誠
○松井(誠)委員 私は、別に法律を変えなくても、現在のこの天災融資法で、天災というものについてもいろいろな幅があって、等という字が入っておるというのも、いまの御答弁のように、得べかりし資源を失ったというのも損失だというたてまえをとれば、法律を変えなくても、適用によってできる。
〔仮谷委員長代理退席、委員長着席〕
確かに天災との因果関係はむずかしい。むずかしいけれども、しかし、理論的に不可能でないとすれば、はずすという結論は出てこない。そういうことがありますので、ぜひひとつ斜陽化している漁船漁業とこれに対する特別な配慮という意味も含めて、これから御検討をお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/62
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063・濱地文平
○濱地委員長 松浦定義君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/63
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064・松浦定義
○松浦(定)委員 本法は、昨年の臨時国会で北海道の冷害に照らして改正をしたのだ、こういう御説明であります。むろん、当時の議論の中心は、北海道を中心とした冷害に対しましての対策であったことには間違いないのでありますが、当時はどういうわけか、ただ資金ワクの増大だけで、金利なりあるいは据え置き期間の延長等については、触れていなかったわけです。しかもそれは時間の関係上といいますか、いろいろな関係から、次の国会においてこれを提案したい、こういうことであったわけであります。今国会でその趣旨に沿って御提案されたのでありますけれども、私は、まず第一に、先ほどからいろいろ御質問がありましたのと観点を違えまして、それでは一応昨年の北海道の冷害に対するその後の処置としては全きを期していたかどうか、この点についてひとつ聞きたいと思うわけであります。
御承知のとおりに、当時五百七十三億という膨大な被害であったことには間違いないのでありますが、それに対して天災資金並びに自創資金等の配分についても、必ずしも現地の要望にこたえていない。それはやはり一つのワクがあってそういう形になったと思うのでありますが、最終的に決定されましたワク内においての資金融通によって、今日の北海道における冷害対策といいますか、営農に対する支障がないというふうには私は必ずしも受け取れないのでありますが、その全貌について明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/64
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065・久宗高
○久宗政府委員 この前の臨時国会でとりあえずの措置をいたしまして、残された利率でございますとか、償還期限の問題につきまして、今回御提案をしているわけであります。その後の実情と申しますと、貸し付け状況はやはり営農関係がおくれておりますので、現在のところでは三月末で見ますと、約四九・三%というものが出ておるわけであります。したがいまして、まだ半分以上はこれからの貸し付けという問題になるというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/65
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066・松浦定義
○松浦(定)委員 作付がおくれているからおくれたというのじゃなしに、これは計画すべきものであると思うのです。たとえば北海道においては、内地の経営状態と違いますから、、むろん、作付にかかるのは、平年時で四月の半ばからかかるわけであります。しかし、準備としては、もう一月からやっておるわけであります。ですから、肥料なりその他の対策については、もう一月から個人に貸し付けるところのワクがきまっておるわけであります。私の質問は、たとえば百十三億というその金額が、いまお話しのようでございますと、非常に貸し付けの作業がおくれておる。しかし、貸し付けの作業がおくれていることは、作付がおくれているといっても違いがないと思うのでありますが、ことしの気候によっておくれているというのじゃなしに、計画的に一月から順次、少なくとも三月一ぱいくらいには個人個人の計画をきめてしまって、これこれの金が必要である、しかし、政府からこれだけ来ている、これでは足らぬから、農協がどうするかということをきめておるので、私はその経営に対する配分の状態をお聞きしておるわけであります。そういう点について、もしその程度の消化しかできていないとすれば、現地の農業団体なり市町村が怠慢であるというふうに言わなければならぬと思うでありますが、そういう点をひとつ明確にしていただきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/66
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067・久宗高
○久宗政府委員 この前の改正がとりあえずの改正でございまして、あとで本格的なものが出るという前提でやってきておりますので、手続でありますとか準備は、私どもの掌握している限りはそれぞれやっておるわけでございます。ただ、現実の資金需要といたしましては、一般の営農のおくれもございますが、制度改正を頭に置かれまして、借り控えておられるという面も出ておるように聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/67
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068・松浦定義
○松浦(定)委員 そうしますと、大体において昨年度の百十三億あるいはまた自創資金の五十億で、現地においてはもう十分な対策が立てられておるかどうか、この点をひとつお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/68
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069・久宗高
○久宗政府委員 資金のワクといたしましては、当時だいぶ議論をいたしましたものですから、結果から見まして、私どもとしては、資金のワクそのものは相当潤沢であったというふうに思っております。資金のワクが足りないために非常に問題が起こっておるとは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/69
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070・松浦定義
○松浦(定)委員 私はなぜこれを聞くかというと、あるいはことしの心配される情勢からいきまして、昨年度の北海道の対策についてどうであったかということが基準になるのじゃないか、こういうことでお聞きしておるわけなのです。いまのお話ですと、まあ十分であったというようなお考えでありますが、実際問題として、五百七十三億という認定は政府がしたわけです。政府の認定によってあれだけになった。しかし、対策としては、百十三億あるいはまた五十億というものであった。その間、そういう支障がないということになれば、農家個々がそれだけの資金があったのだ、こういう結果になるわけですね。そういう見方をしてもいいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/70
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071・久宗高
○久宗政府委員 損害額といたしましては、先生がおっしゃたような数字でございますが、実際の資金需要につきましては、百十三億ときめました場合に、これはもちろん末端から全部積み上げるのではございませんで、上のほうから計算をするわけでございます。実際問題といたしましては、私どもは現実の資金需要の計画そのものの内容を聞いてみましても、非常に資金ワクが不足であったとは考えておらないわけでございます。損害額と現実に必要とする資金額とはおのずから別ではないかと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/71
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072・松浦定義
○松浦(定)委員 時間の関係がありますから、政府のほうではそれで十分であったという御認議であるのなら、そういう受け取り方をしておいて、次の問題に進みたいと思うわけであります。
今回御提案になりましたのは、金利の引き下げと償還期限の延長、こういう二点にあるわけであります。そこで、金利三分五厘を三分とするということでありますが、これは災害に対して画期的な対策だというふうに考えておられるのかどうか、その点をひとつ明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/72
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073・久宗高
○久宗政府委員 三分五厘というもとの金利そのものにつきましても、これは相当特別な金利であると考えておるわけでございます。災害の資金でございますので、いわば資金の性格といたしましては、比較的短期の金でございますので、それとの関連で、三分五厘というのも、やはり災害でありますがゆえの特別の考慮でございまして、相当これ自身が低い金利であったと思うわけでございます。私どもとしては、それをなおかつ災害の実情に即して金利の改定をしたいということでお約束しておりましたので、無理をしまして三分という線を出したわけでございます。これは長期資金なら別でございますけれども、短期資金といたしましては、たとえばこれを逆に理論的に説明してみろといわれたら困る程度に特別な金利であると私は考えております。また、実際のいままでの災害で考えますと、三分五厘資金というものが大体八割見当だと思います。特に昨年の冷害で申しますと、九割以上が三分五厘資金でございます。その三分五厘資金を三分にしたということは、相当大きな効果を持ってくるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/73
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074・松浦定義
○松浦(定)委員 いまのお話ですと、長期資金なら別であるがというお話ですが、長期資金なら安くて、短期資金なら高くてもいいというようなお考えですか。
それからもう一つは、昨年の実態からいって、この三分五厘資金が九割くらいを占めているというのは、私は、災害がひどいから、そういうように占めておるのであって、三分五厘が多いからというようなことで自慢することではないと思う。むしろ、いま政府の考えておる安い利子で貸すことは、被害が大きくて深刻だから安い利子にするのであって、その率が多いからということで、私は何もそのことが理由にならないと思うのです。むしろ、そういうのが非常に少なくて、極端に言えば、その率からいえば少ないことほど、私は被害の実態からいえば好ましいと思うのですが、そういう点の見解がちょっと違うと思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/74
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075・久宗高
○久宗政府委員 長期資金と短期資金に分けて申し上げますと、やはり非常に低い利率を出します場合に、長期であるか短期であるかというのは、相当問題になる点だと思います。そこで、本来ならば、三分資金というのは、短期資金としてはほとんど例のない非常に低い金利であるということを申し上げたわけでございます。非常な長期の資金でございますれば、借り受けた方の金利負担も非常に大きくなりますので、それとの関連で金利を低くするということは、当然出てくるわけでございます。短期資金で考えると、三分にしましたのは、これはまさに災害であるがゆえにできるだけ低い利率を適用しようじゃないかということで、踏み切ったわけでございまして、金利体系としては異例のものと考えられるということでございます。
なお、三分五厘資金が非常に多かったと申し上げましたのは、結果におきまして、三分五厘資金を貸さなければならぬような事態が、天災融資法の発動に関連して非常に多かったわけでございますので、その三分五厘資金を改定したことは、相当具体的な意味を持つものであろうというふうに申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/75
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076・松浦定義
○松浦(定)委員 政府はただ金利補給的なものをやるわけですね。何も金をそれだけ貸してどうこうというのではなしに、ただその間における金利補給的なものをやるだけですから、これはいまのように、長期資金なら長い間かかって返すのだから、利子があまり高くては困るであろう。しかしこういう冷害のような場合における短期資金だから、多少それは高くてもいいのだ、こういうお考えだとすれば、私は全く間違いだと思うのです。むしろ、そういうお考え方であるなら、災害におけるような金利はゼロであっていいと思うのです。長期資金というものは、どちらかといえば、ある程度安定的な農業経営に踏み切った人に貸す金であるにもかかわらず、こういう冷害の場合に貸す金は、そういう考え方からいけば、ゼロであってもいいのじゃないかと思うのです。私は、この審議の過程について、昨年もこの問題はずいぶん議論になったわけでありますが、今度出される場合には相当思い切った金利体系を確立されると思ったわけです。ところが、いまのようなお考えですと、やはりそれは短期資金だから下げられないということになるわけです。しかし、私は、いまの三分でもって画期的だとおっしゃるのは、これはどうも深刻な冷害に対する政府の見解としては間違っておるのではないかと思うのです。ですから、私どもとしては、たとえば先般の衆議院を通過いたしました農地管理事業団ですら、当初は二分、四十年という構想を立てられた。それがいろいろな事情で三分、三十年になった。しかし、今度の冷害に対する金利もそれと同じ三分だということになれば、何ら努力された功績というものは認められないのじゃないか。そういうような考えからいけば、これはむしろ二分なり一分なりにすべきであると思うのですが、こういう点について、政務次官は、やはり画期的な金利の引き下げをやったのだ、こういうふうにやはり自信を持っていらっしゃるのかどうか。いや、これじゃまだ十分ではないけれども、やむを得ず応急的にやったのだ、将来また改正の時期がくれば改正したいというお考えなのか、その点をひとつはっきりしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/76
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077・舘林三喜男
○舘林(三)政府委員 天災融資法の改正の場合に、金利をどうするかということが一番大きな問題でございまして、農林省としては、できるだけ少なくしたいという気持ちでいままで大蔵省とも折衝したわけでございます。そうしてその結果におきましては三分ということになったのでございますが、三分という金利体系は、もちろん天災という特殊な場合といういろいろ言い方もありましょうけれども、今日の現段階における金利の秩序と申しますか、金利の体系から申しますと、農林省としては、このあたりが精一ぱいのところだというのが率直な考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/77
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078・松浦定義
○松浦(定)委員 これは見解の相違で、時間がかかるからやめておきますが、実は私どもの聞くと
ころによりますと、この法案がここに提出されるまでに、自由民主党の政調かあるいは部会かの御審議の中では、むしろこういうものはゼロにすべきだというような、相当強い発言があったということを私は聞いておる。私ども社会党は、この三分は高過ぎる、この際二分にすべきだというので、ゼロとは言っていない。ところが、与党の中では、ゼロにすべきである、開拓者の問題等についてはなおさらのことといったような強い意見が中にあったということを聞きますと、やはり政府は押し方が少し足らなかったのではないかというふうに考えるわけです。そういう点で、これでもって画期的だとおっしゃっておるのですが、私どもとしては、この機会に、少なくとも当時私どもが対案として出しておりました、この法案からいえば、二分というのが当然だと思いますが、この点はひとつ十分また考慮していただきたいと思うわけであります。
それからもう一つ、昨年の資金ワクの増大のときに、激甚災害に対する特別財政援助の法律の中の第八条で、政令で定める場合においては五十万、こういうことが規定されておったのです。ところが、今回それを六十万に改正されたわけです。それが昨年のワクの改正のときには、この問題には何らお触れにならないで、今回これが——これは十万円でも多くされたことについては、私どもは反対ではありません。反対ではありませんけれども、なぜ去年同時に改正されなかったのか。あるいは特別に何か理由があって十万円をふやされたのか、この点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/78
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079・久宗高
○久宗政府委員 昨年の臨時国会のときも御説明したと思いますが、当時これを分類いたします資料が整備されておりませんで、つまり、経営形態別に分ける資料が不備でございましたので、手がつけられなかったわけでございます。今回はその資料ができましたので、それをバックにいたしまして、補完して改正したということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/79
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080・松浦定義
○松浦(定)委員 そうしますと、たとえば昨年の七月以降の災害に本法は適用されておるわけです。昨年七月以降本法が適用されておる中に、この政令で定める五十万を貸し付けたというワクがあるわけですか、ないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/80
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081・久宗高
○久宗政府委員 当然ございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/81
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082・松浦定義
○松浦(定)委員 あるとしたら、これはやはり昨年きめられたワクにおいても、当然さかのぼって十万円ずつふやして六十万にする必要があると思うのですが、そういう手続はとっておられるのかどうか、今度これが成立すれば、そういうふうにおやりになるのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/82
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083・久宗高
○久宗政府委員 そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/83
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084・松浦定義
○松浦(定)委員 それでは、これは昨年の場合に手続上でふやすことができなかったのが、準備ができたのでふやしたので、昨年の七月以降のものについても遡及してこれを貸し付ける、こういうことに了承していいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/84
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085・久宗高
○久宗政府委員 この法律が施行されれば、そういう手続をとっていただきまして、措置をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/85
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086・松浦定義
○松浦(定)委員 それでは次にお伺いいたしたいと思います。
まず、私が一番心配する点は、金利が高いあるいは償還期限の期間が短いということもさることながら、昨年の七月一日以降に発生しましたものについては本法を適用するということになっております。したがって、先ほど申し上げましたように、おそらく本年の一月から順次これを貸し付けあるいは計画をしておるわけなんです。この法律がおそらく今国会を通るとすれば、十九日にかりに終わるとすれば、すぐ五月一ぱいのうちには何とかなると思うのです。もし六月にこれが実施されると仮定いたしますと、この半年間の間にこの金を借りておる者については、本法は適用にならないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/86
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087・久宗高
○久宗政府委員 適用になります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/87
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088・松浦定義
○松浦(定)委員 この法律そのものは遡及になりますよ。金利が三分五厘で借りておるのは三分になるわけですか。法律の施行と同時に三分になるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/88
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089・久宗高
○久宗政府委員 これは、法律が施行されますと、所定の手続をしていただければ、三分五厘が三分にできるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/89
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090・松浦定義
○松浦(定)委員 所定の手続といいますと、これはやっぱりその簡単に、六月一日にこれが施行された、六月二日に市町村議会を開いて、待機をしておってすぐやるというわけにはまいらぬと思うのです。そうしますと、所定の手続というのは、そういう市町村の議会の議決とかなんとか、そう一いうものは要らないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/90
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091・久宗高
○久宗政府委員 この附則がはなはだ読みにくいと思いますので、一応附則の御説明だけ先にいたしたいと思います。回りくどく書いてございますが、結論から申しますと、新しい法律ができまして、所定の手続をしていただいて、とにかくこの七月以降の災害につきましては、おくれましたけれども、こういう新しい法律を適用するということに尽きるわけでございますが、少しごたごたしておりますから、一応附則だけの御説明をさしていただきます。
附則の一項でございますけれども、これは改正法の施行期日を公布の日とするということが書いてございます。改正法の適用があるのは、この公布の日以後において天災融資法による指定のあった天災に限る旨を規定したわけでございます。改正法の適用関係を天災の発生によらないで、指定の時点でとらえたのは、改正法の施行の日までの間におきまして、たとえば五月に凍霜害が発生した場合、これにつきましても改正を適用するためのものでございます。ですから、これは原則でございますが、附則の第二項は、第一項の例外を規定したものでございまして、改正法の施行の日以前において天災融資法の指定になった天災でございましても、昭和三十九年七月一日以降に発生したもの、これは例の七月の豪雨と七月——十月の低温、九月の暴風雨、秋の長雨、三月の降雪、こういったものが含まれるわけでございますが、これにつきましては、改正法の施行の日から貸し付け限度額及び償還期限について新法の規定を適用しようとするものでございます。
それから附則の第二項におきまして、改正後の天災融資法第二条第四項第一号及び第二号の規定を適用するとしまして、第三号の金利の改正規定を適用していないのは、前記五災害につきまして今後三分の利率で貸し付けようとする場合、すでに融資機関と地方公共団体との間に締結されております利子補給契約は、三分五厘で貸し付けられることを前提として、その内容が定められておるわけでございます。これは変更しなければならないわけでございますが、このためには県議会や市町村議会の議決を必要としますので、この変更手続が完了するまでの時間的ズレの間においても、被害者が緊急に必要とする資金を従来どおり三分五厘で貸し付けを受けられるように借り受け者の便宜をはかったものでございます。これはかりに金利の改正規定を適用することとしますと、三分五厘で貸し付けても天災融資法上の経営資金でなくなってしまいますので、利子補給ができないという妙な関係になってまいりますので、こういう規定が法律上は要るわけであります。したがいまして、三分の利率の適用を排際するものではございませんけれども、今後三分の利率で貸し付けられるもの及び一定期間に三分に利率を引き下げる旨の契約の変更が行なわれたものにつきましては、現行規定の三分五厘以内の規定によりまして、実態上これによる利子補給が行なわれるわけでございます。つまり、附則でごたごた書いてございますが、国の利子補給がどうなるかというような問題が含まれておりますので、こういうめんどうな書き方になっております。もう一度内容を簡単に申し上げますと、この法律が施行されましたあと、もちろん損失補償その他の手続が要りますのと、また個々の方は契約の変更をなさる必要があるわけであります。そういう手続が完了いたしましたならば、そのときからこれに乗り移れるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/91
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092・松浦定義
○松浦(定)委員 簡単に私が聞いておりますのは、たとえば北海道の場合をさしましても、ずっと借りておるわけなんです。六月一日からこれが実施されるということになると、いまのような手続をしなければならぬ。しかし、市町村議会その他の関係で議決をしなければならぬから、これは六月はできないから七月と、こう言いますと、その一ヵ月というのは、いまのお話ですと三分五厘払わなければならぬわけでしょう。私はそれを言うのです。そういう手続をするまでは三分五厘でずっといかなければならぬ。そういうことがきまったときに初めて三分になる。それではせっかくのあれがちょっと意味をなさないので、指定と同時に三分になるように、市町村の議決はそうであっても、さかのぼってそれができるといったようなことにならないかということを私は聞いておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/92
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093・芳賀貢
○芳賀委員 ちょっと関連してお尋ねしますが、いまの改正法による遡及規定ですが、これはあくまでも遡及することには間違いないと思うわけです。問題は、昨年の七月以降の天災融資法に対する遡及規定については、当然、この改正案が成立したあとで、必要な政令というものは直ちに公布されると思うわけです。その中には明確に規定づけがされておると思いますが、ただ、天災融資法の特徴からいって、利子補給なるものを国及び地方公共団体がやるわけですから、その場合に、金融機関と当該公共団体とにおける利子補給の事前契約というのが要るわけですね。それには金利の問題とか償還年限の問題に触れておるわけですから、その改正前の法規に基づいた契約というものが、今度の改正によって変更されるわけです。変更されることによって、この遡及規定というものは、変更されない以前の契約の時点までさかのぼって適用される、こういうふうなことになるわけじゃないですか。そうでないと遡及したことにならないと思うのです。たとえばことしの三月の一日に一定金額に対する一定条件に基づく契約が、金融機関と公共団体との間において行なわれておる、それと、もう一つは、今度は金融機関が被害農林漁業者に対する貸し付けというものを行なっておるわけですから、変更ということになると、利子補給を行なう団体と金融機関との契約の変更と、金融機関と被害農林漁業者との間における貸付契約の変更と、二つの変更を必要とするわけですね。ですから、農林漁業者に対する金融機関との契約のいわゆる貸し出し条件の変更の内容というものは、今度の改正によって手続がとられれば、それは最初に契約をした三月一日の時点までさかのぼって、その変更された条件にに基づいて実施されるということになるわけです。そうでなければ、これは完全な遡及ということにならぬと思います。そうでないということならば、問題は、附則第二項ではそういうことが書いてあるのであって、あなた方がそうでないということになれば、役人の立場で法律の改正点をゆがめるということになるわけです。これははっきりしておかなければならない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/93
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094・久宗高
○久宗政府委員 金利を中心といたしました適用のしかたでございますが、この法律が施行されましたときから始まるわけでございます。そこで、ここに全部一ぺんに法律施行日に切りかえてしまうという方法もございますけれども、これはすでに貸し付けておられる金融機関の考え方を調整するわけにまいりませんので、そこで、契約ということを中に入れざるを得ないわけであります。そこで、たてまえといたしましては、新しい法律ができて、金利も下がることになったので、そういう内容に変更したいという合意が成立しましたら、そこに適用するという、つまり、契約変更の手続きというものを入れざるを得ないので、入れたわけでございます。したがいまして、先ほどの御質問にもございましたように、これに伴う損失補償その他の契約が、個人の段階と損失補償をする者との関係、国との関係、三つぐらいに分かれるわけでございます。そこの手続きが完了いたしまして、初めてそれが具体的に適用されるということになるわけでございます。これをもし金融機関の考え方を調整するということで、施行日にいきなりやってしまうという方法も考えてみたわけでございますが、しかし、これは法律的にはできませんので、あくまで契約変更というプロセスを入れまして、その合意に基づいて、新法の適用に持っていく、こういうやり方を取ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/94
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095・芳賀貢
○芳賀委員 具体的にいうと、たとえば三十九年の七月から十月に至る冷害による天災融資法の関係政令、これは政令第三四三号で出ておるわけですが、この政令による経営資金の貸し出し期間は、昭和四十年七月三十一日までということになっておるわけです。ですから、七月三十一日までたとえば天災融資法に基づく貸し出しの諸般の手続きはやれるということにも理解できるわけです。ですから、政府がいま局長の言われたような考え方でおるとすれば、むしろ早急に金融機関に対して、こういう改正が行なわれるし、改正が行なわれると、どうしてもすでに貸し出しをした分については契約の変更を要することになるので、この貸し出しの正式契約というものを、改正後の公布される政令が出るまでの間延ばせ、待機しろというような指示を事前になされるほうが、親切なやり方だと思うのです。そうしておけば、最初から改正法によるところの適用が、去年の七月以降の天災資金にも適用されるということにもなると思うので、そういうことは、むしろすみやかにやられておいたほうがいいじゃないかと思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/95
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096・久宗高
○久宗政府委員 幸か不幸か、北海道では若干営農がおくれておりますが、ふだんならばこれからが最盛期になるわけです。さっきちょっと数字を申し上げましたけれども、まだ相当部分が六月になりましてからどっと出てくるかっこうになるわけです。
そこで、私どもは、法律が通りましたならば、できるだけ早く施行いたしまして、そうして二重手間にならないような方式がとれれば一番よろしいのでございます。ただ、いろいろな手続きの問題がございますために、契約変更という形式をとらなければなりませんので、若干議決その他がおくれたために、御迷惑がかかる部面がどうしても残らざるを得ないと思います。ただ、北海道では、これは私のほうは直接指導はしておりませんが、関係者の御意見では、こういうものができるということがわかれば、もちろん、営農に直接響いては問題がございますが、できるだけ一回の手続きでできるように具体的に処理しようということで、大体そういう心組みでおられるようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/96
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097・芳賀貢
○芳賀委員 完全遡及をする場合に、もう一つの問題は、損出補償を行なう当該都道府県あるいは市町村が、当然これは議会の議決というものが要ることなんですが、その議決の際に、この改正によって変更さるべき資金の種類あるいは条件等について、現行法ですでに行なわれた、天災法の規定に基づいてやった契約であっても、その契約の発生した時点にさかのぼって利子補給を行なうという議決が、公共団体等において行なわれれば、これは問題はないと思うのです。国もその気になれば、公共団体にもそうさせることができるわけですから、変更の際にそういう指導を政府としてやるという考えが持てれば、これは問題は全然ないと思うのです。
この点は、むしろ政務次官からそういうような措置をとるということをここで明らかにしていただければ、同僚の松浦委員の心配された点は完全に解消されますし、そのことが、去年の十二月十八日の当委員会における附帯決議の第二項の「次期通常国会において貸付金利、償還期限等の貸付条件の改善を含む制度の抜本改正を行なうとともに、この場合において改正規定が本年七月一日以降の天災及びこれによる災害に対しても遡及適用できるよう併せ考慮すること。」という趣旨を尊重したことにもなると思うわけです。これは当時政務次官が尊重するということを言明しているのです。そういう点から次官の明快な御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/97
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098・久宗高
○久宗政府委員 臨時国会の際に、再三大臣からもこの問題は申し上げたわけでございますが、遡及の中身につきまして、いろいろ努力をすると申し上げたわけであります。金利につきましては、議事録をお読みいただけば、おわかりいただけると思いますが、非常に慎重にお答えしておるわけです。先ほどの御質問でございますが、その損失補償その他の契約を変えてまいります場合に、さかのぼれますのは、新法が発効した日までさかのぼれます。つまり、手続きがあとで、損失補償契約その他がかりに七月からになったといたしますと、その時点からではなく、その法律が施行された日まではさかのぼれるわけでございますから、それ以前にはさかのぼりかねるわけでございます。その点ははっきりしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/98
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099・松浦定義
○松浦(定)委員 私が先ほど聞きましたのは、法律が施行されても、町村の議決がなければ、これは発効しないということになると、その町村で議決されたときからということでないのですか。先ほどはそういうような答弁だったのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/99
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100・久宗高
○久宗政府委員 いま申しましたのは、この法律が施行された日がここだといたしますと、前に三分五厘で借りておられた。法律施行日にももちろん借りておった。ところが、新たに契約変更をいたしますのにかりに一月かかって、一月あとに全部の手続が済んだという場合、さかのぼれますのは、あくまでも新法でございますので、新法の施行日まではさかのぼれるわけでございます。それから天災融資法は、御承知のとおり天災ごとに適用しておりますので、普通形式論理で申しますと、一般法の改正でございますので、この時点以後に起こった天災に本来は適用されるべきものでございますが、前回のお約束もございますので、例外といたしまして、すでに指定しましたこの七月以降の災害について、一般法の改正であるにかかわらず、これをさかのぼって適用するということにいたしました。利率につきましては、新法が施行されましたときから三分にする可能性があるわけでございまして、所定の手続を経ていただきますれば、その手続の中で、特に損失補償その他につきましては、その施行日から適用するのだということを議決していただけば、施行日まではさかのぼれる、こういう意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/100
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101・松浦定義
○松浦(定)委員 どうも最初の考え方がだいぶん私は緩和されてきたと思うのですよ。私の考え方では、法律が施行されても、町村の議決がおくれれば、おくれたときからしか三分五厘が三分にならない、こういうふうにいろいろ聞いておったことがあるから、お聞きしたのです。(「その点はよくなった」と呼ぶ者あり)それはよくなったということではなくて、あたりまえであって、その点は私はいいと思うのです。しかし、実際問題としては、法律そのものが昨年の七月一日から施行される。本法そのものが施行されるにかかわらず、その中の一番重要な利子が三分五厘、これは法律改正ですから、三分五厘が三分になった。しかし、それを借りておるものは、去年の七月一日から該当するといいながら、政府の怠慢でもってことしの六月なり七月にしか施行されないのに、その間だけは三分五厘払え、施行後のものだけは三分でいいというのは、ちょっとおかしいと思う。もしそうだとするなら、昨年の臨時国会で改定をされるときに、なぜこれをあわせてやらなかったかと思うのです。私どもは、この利子あるいは据え置き期間は次の国会で提案をいたしますけれども、その間のものについては遡及いたしますということであるから、了承しておったのです。それを、一番重要な改正すべき点の利子を今度はそのときからしかやらないというのでは、これは私どもはちょっと納得できない。もしそうだとするなら、昨年、われわれの要求するように、金利も償還期限もなぜ同時に提出されなかったか。その提案をせずして、今日かってに利子だけ、片っ方は三分で借りられるにかかわらず、三分五厘で払わなければならないというのでは、何ら恩恵はないではないですか。そういう点、政府は一つも責任を感じないのですか。またどうして昨年やろうとしなかったのですか。その点を明らかにしていただきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/101
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102・久宗高
○久宗政府委員 臨時国会の際にさんざんお答えしたわけでありますが、どうも力が足りませんで、そこまでやれなかったわけでございます。ただ、お約束いたしました改正につきましては、やっと態勢を整えまして今回の提案になったわけでございます。臨時国会の際にも、遡及適用の問題につきましては、これは繰り返し申しますように、天災融資法でございますので、災害ごとにきめるわけでございますから、新しい法律につきましては、本来ならば、これから起こる災害に適用されるのが、一般法の改正であれば当然なのでございますけれども、七月以降の災害にもこれをさかのぼって適用するということにいたまして、利率につきましては、臨時国会の御答弁の中でも、それは非常に困難だということは、再々申し上げているわけでございまして、今回の改正によりまして、ただいま申し上げましたように、法律施行日までは、変更の際にそういう内容をきめていただけば、さかのぼれるわけでございます。施行日以前までにはこれをさかのぼれないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/102
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103・松浦定義
○松浦(定)委員 どうも説明を聞いておればおるほど、不満というか、私はわからないのです。災害というものが起きたときからそれに該当するのが本法の趣旨である、昨年七月にさかのぼったのは本旨でないのだ、だからがまんせよ、こういうふうに聞こえるわけなんです。だとするならば、なぜ、昨年の臨時国会で改定をするときに、本法に準じて政府はこういう問題になるものをあわせて提案されなかったか。この提案については、整備ができてないから、次の国会でやりますということをその提案理由の中で断わっておるのですよ。断わっておいて、いまあたりまえだとふんぞり返っておられるのは、どうも法の内容がわからないばかりでなく、農林省が災害に対してあまりにも十分でない、こう思うのです。もしこれが農林省は誠意を尽くしたけれども、大蔵当局が聞かなかった、金利の話も聞かなかったというのなら、この点について、私どもも方向を変えなければならぬから、その点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/103
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104・舘林三喜男
○舘林(三)政府委員 金利と償還期限の問題につきましては、実は去年の臨時国会で貸し付け限度を引き上げるときに、一緒に解決したいということで努力したわけであります。しかし、金利体系の問題は、金利の秩序の問題でございまして、非常に困難でございます。実はこの点につきましては、農林省の努力した点は十分に買っていただきたいと思うのであります。ことに三分五厘を三分に引き下げるということにつきましては、農地管理事業団の三分、三十年と同じような意味で、初めての制度でございまして、私たちはもちろん、党におきましても、政府・農林省といたしましても、できましたら二分ぐらいにいたしたいということで努力したわけでございますけれども、いま申し上げましたような関係で、どうしてもこれは困難でありまして、とにかく一応、不満ではありましたけれども、三分ということでここに提案した次第でございます。
なお、かような天災法を適用する場合には、いままでの解釈から申しますと、これから先新しくできる天災を指定した場合に前向きのかっこうで適用するというのが、いままでのならわしでございました。しかし、去年の臨時国会におきましての皆さま方の附帯決議の趣旨もありましたから、今度はこの附則の第二項におきまして、特に今回に限りましては三十九年の七月一日からの天災に遡及して適用するということに決定したわけでございます。その点はどうぞひとつ農林省の意のあるところを御了解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/104
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105・松浦定義
○松浦(定)委員 その点については私どもは感謝とまではいかなくても、正常な取り扱いだ、こう思っているのです。ただ、金利の問題だけが問題になったわけですから、それを主張しているのですが、もしそうだとするならば、そういうふうに大蔵省その他についてなかなか納得ができないというなら、会期は百五十日もあるのですから、なぜ一月ごろにこれを提案されまして、そうしてそのまま——こういうのは、もう反対も賛成も、いまの段階でやむを得なかったとすれば、なかったと思うのです。したがって、その公布の日からということになれば、北海道の貸し付けはまだ相当残っておるということでありますから、いま申し上げるようなことはないわけなんです。そういうことは私は過ぎたこととはいいながら、これからもあることですから、ほんとうは大蔵大臣の出席を求めて明らかにせぬと、これは農林省の意見を聞かなくなってしまうのです。私は、この点は大蔵省の意見を聞いておく必要があると思うので、大蔵大臣にぜひ来てもらうことに理事会でお取り計らいを願いたいと思います。この点は農林大臣もおいでになってはっきりしていただいたほうが、政務次官も気が楽だと思うのですけれども、有力な政務次官ですから、十分この点を留意をしていただきまして、私どもの主張は、この施行の日からでなく、七月一日以降のものについても金利はやはり同じように適用させる、こういう主張は曲げられないということだけ御理解いただきたいと思います。
それからもう一つ問題になりますのは、この天災法というものは、あくまで災害のあったときに処置をすべきであまりすけれども、昨年の実態から考えまして、政府はそのいろいろの調査の結果、なかなか期待に沿うだけの資金は出せない、しかし、一面生活資金等については、自創資金というものを活用してほしい、こういうことで、天災資金と自創資金とをごっちゃにして一応結論を出したわけでございます。私どもは性格が違うのではないかと言っても、やはりその点はまあ上手に使い分けをする必要があるのではないかということでやっておりましたけれども、この総額をあるいは七、三に、あるいは四分六に分けたものが、そういう形で出されておることは、これは明らかであります。だといたしますなら、今回のこの災害立法の改正につきましても、同様な自創資金につきましても、金利あるいは償還期限等については前から問題になっておるわけであります。社会党は当時から対案を出しまして、いろいろ改正を要求しておりましたけれども、なかなかそういう点については御協力をいただかなかったのでありますが、なぜこの自創資金についてはこのままにしておいておくのか。同じ農民でありながら、災害を受けたら何で立ち上がるかということになれば、おそらくこの自創資金によって相当の農家が浮かばれておると私は思う。助かっておると思うのです。ところが、この問題については今度何にも触れられないということについては、私はいままでの主張からいっては非常に通らないと思うのですが、改正点に対して何ら触れなかった点と、あるいは今後それをどういうように御処置をされるのか、この二点について御意見を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/105
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106・石田朗
○石田説明員 いま御質問ございました点につきまして、お答え申し上げます。
自作農維持資金の問題につきましては、何回かその種の御質問がございまして、お答えをいたしておるところでございますが、元来、この自創維持資金の性格は、災害問題だけでございませんで、農民の疾病、負傷あるいは相続といったような各種の問題につきまして、これによって農地を失うというようなことがあってはいけないということで、できておる制度でございますので、その観点から利率及び償還期間を定めてあるわけでございます。したがいまして、利率は五分でありますが、償還期間は二十年という、かようなことがきまっておりますので、本資金の制度的な内容及び全体の計画、そういうような点につきましては、これは全体の金利体系とともに、この制度の内容からいたしまして、検討をいたしてまいる必要があるという見地から、今回の場合の改正とは必ずしも一律になってまいらないのではないかということで進めてまいったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/106
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107・松浦定義
○松浦(定)委員 いまの御説明は私はよくわかっておるわけなんです。しかし、昨年の臨時国会のときの、この法案提案のときの答弁が、自創資金について、もし天災資金で足らなくて、生活ができなくて他へ働きに出なければならぬようなことについては、自創資金で何とかしてくれということを官房長なんかはっきり言っているのです。いまおっしゃったようなことは法律の内容であって、運用については、やはり災害を受けた農家にすれば何でもかんでも金が必要なんです。金がないから、からだを売ってまで、やはり金をとることに出かけなければならぬ。こういうことでありますから、せっかく政府の親心でそういうことを言われるとするならば、今度あわせてこの法案の内容をすでに検討されておると思いますので、やはり金利についても、あるいは償還期限についても、あるいは据え置き期間についても、現行法、たとえば三分五厘を三分、四分五厘は四分とか、そういうように当然改正してくれるべきではないか。私は金利の多寡ではないのです。考え方について、もしことしまたそういう問題になりますと、これは確かにその問題と関連して、いまの御説明と別なことでこれは対処しなければならぬ。そのときに、同じ金を借りてきて、片方は三分で借りる、片方は三分五厘だということになったのでは、同じ農民が冷害のために苦しんで借りるのに、そういうことで、私は政府の資金の使い方としては妥当でないのではないか、こういうことを申し上げたのでありまして、そういう誠意がないならないということでおっしゃれば、私どもは、出てない法案まで、もうあす、あさってまでというときに、出してくれということは申し上げられないのですが、政務次官はいまの御答弁でよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/107
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108・舘林三喜男
○舘林(三)政府委員 誠意があるとかないとかいう問題と私違うと思うのです。天災融資法は、それ自身一つの独立の体系といたしまして、災害に対する経営資金の貸し付けという立場から、三分五厘を三分にいたしたわけでございます。しかし、自創資金は、災害とか、相続とか、疾病とか、負傷というようなものを対象として、農民の農業経営維持のための資金ではございますけれども、やはりこれは資金の体系といたしましては別ワクのものでございまして、すなわち、農林漁業金融公庫の資金の一環でございますので、農林漁業金融公庫の資金につきましてはそれぞれ利子の体系があるわけでございまして、したがいまして、やはり農林漁業金融公庫の資金の金利の体系をどうするかという立場から考えるべきだと私は思うのです。さような立場から、今回の改正におきましては、自創資金につきましては改正を加えなかったのでございますけれども、やはり今後といたしましては、農林漁業金融公庫の全体の金利体系をどうするかという立場から、御趣旨に沿うように再検討いたしたいと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/108
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109・松浦定義
○松浦(定)委員 それでは最後に、一点だけお伺いいたしたいと思います。
ことしはおそらく、政府の見方といいますか、一般の見方からいたしましても、開闢以来の大凶作、大冷害になるのではないか、こういうことで、いち早く政府におかれましても冷害対策本部を設置されたのです。これは全く珍しいことだと思うのです。したがって、この対策本部をおつくりになった限りにおいては、やはりそれこそ画期的な冷害対策をお立てになっておられると思うのです。いまお尋ねしたいことは、いま対策本部としておとりになっておるこの対策について、とりあえずといいますか、機構、人事あるいは目的、計画等をどういうふうにお考えになっておられるのか、この点をまず簡単にひとつ御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/109
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110・舘林三喜男
○舘林(三)政府委員 本年冷害は、気象庁の長期予報を農林省としても常時検討しておりますが、非常に異常の災害が予測されるということは、皆さん方すでに御承知のとおりでございます。したがいまして、農林大臣が四月の終わりでございましたか、すみやかにかような対策をとらなくちゃいけないということで、四月の二十八日に農林省に災害対策本部をつくるということを閣議へ御報告いたしまして、御了解を得たわけでございます。またそれに応じまして、五月の十日ごろでございますか、内閣のほうにも中央防災会議以外に災害に対する特別の対策本部をつくるということで、とにかく組織といたしましては、一応前向きのかっこうで整ってきたわけでございます。しこうして、今後どんな政策をとるかということにつきましては、いろいろ農林省でもすでに新聞発表のとおりの政策をとっておりますが、東北農政局とかあるいは北陸農政局におきましても、それぞれ地方の災害対策本部を設置して、そうして東北の防雪に対しましては、融雪の促進対策をつくるとか、あるいは苗しろについても特別の畑苗しろの保温折衷の方式を採用して、それに対する補助金もやるとか、あるいは遠隔地の苗しろ輸送に対しまして、補助金をやるとかいう対策をとりまして、とにかくおくれておる稲作につきましては、早急にその時期を回復したいという努力をいたしております。
これから先の問題でありますが、霜害対策の問題もございましょう。あるいはこれから先の長期予報に対して即応する体制もとらなくちゃいけないと思います。したがいまして、今日は農林省といたしましては、いつでも弾力的な、しかも適切な対策がとれるような体制は十分整えておるつもりでございまして、今後の災害に応じて、十分ひとつ皆さん方の御期待に沿うような対策をとっていきたいという考えでございます。また本省といたしましても、また東北農政局といたしましても、北陸農政局といたしましても、しばしば現地の知事さんその他農林部長と打ち合わせまして、実情の把握等につとめておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/110
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111・松浦定義
○松浦(定)委員 政府がいち早くそういう方針をお立てになることによって、現地の農民は、非常にそのことによって自信といいますか、逆に言えば、ちょっと心配な点があるのです。ことしはたいへんだという心配をしながらやるわけです。この結果等については、何も農林大臣が一人でことしは冷害だとお考えになるわけじゃないので、それに対しては、政府の信頼すべき気象庁なりの観測によってそういう方針を立てられるのですから、いまの段階としては、私は誤りないと見ていいと思うのです。政府の方針に沿いまして、与野党ともに、あるいは府県においても、そういう対策をつけて万全を期しようと考えることについては、これは私は全く多とするところであります。しかし、一面におきましては、たとえばいまお話にありましたように、その稲作、あるいは北海道におきましては豆作、あるいは畑作におきましても、いろいろな種子、作物の選択をするわけなんです。たとえば水稲等についてはできるだけわせをつくったほうがいい。わせになれば、これは減収することは明らかであります。また北海道の場合は、昨年の冷害にちなんで、さらにまたことしは冷害だ、こうおっしゃるので、やはりできるだけ寒冷地作物をつくろうということで、投機的だと言われれば語弊がありますけれども、現にいま相当有利な態勢にあるようなそういう豆類をやめて、あるいはビート、バレイショというものに転換しているわけなんです。これが逆になった場合はどうするかということについては、政府は、悪いと思ったけれども、よくなったから、それは一切タッチしない、それで責任をとられるというふうには考えていないのです。これはおかしな話でありますけれども、政府が少なくともこれだけ自信を持って指導され、そうしてあとはおてんとうさまでこうなったから、減収しようと、そういう点については、おれのほうは知らないということは、私は言えないと思う。そのために長い間農政を担当しておられる政府当局が、それは最大、最高の努力を払って、作付あるいはその他の指導をされるのでありますから、いわばこれについては、農民としてはことしに限っては自主性がないわけなんです。これは遺憾ながらやはりおてんとうさんまかせで、それに対する指導を仰ぐよりほかないということになれば、わせもつくるし、あるいは高く売れるような豆もやめて、安いイモをつくるかもしれぬ、あるいはビートもつくるかもしれぬ。そういう場合に、天気がよくなって、ああしまったというようなことがもしかりに出た場合には、政府はどうするのですか。そういうときには、おてんとうさんのことはわからなかった、気象庁の言うとおりにしたので、それは気象庁の責任である、かえってそのことによって忙しい目にあって、金もずいぶん使ったということの弁解に私はならないと思う。それはちょっと無理な質問かもしれませんけれども、だからといって、ほどほどにやっておきなさいというわけではないのです。自信を持っておやりになった限りにおいては、何か最後的には責任を負うということにならなければならぬと思う。だから、私は、それによって、今度の災害の立法はあまりにも場当たり的だということを先ほどから言っておるのです。去年の臨時国会で、いまの利子補給等の問題が、こういう点が明らかになっていないことによって、先ほど申し上げましたような問題が出てくる。いま政府当局がいまだかつてないような対策を立てておきながら、冷害だとはっきりしておきながら、その冷害に完全に第一回に該当させようとするこの法案としては、それは三分だとか、五年を六年にする、そんもなのじゃ農家はどうにも救えないような状態だということを前提として、この法律を考えるべきではないか。こういう点は、法律はどうあっても、該当するものがなければ、国は一銭も利子補給する必要はないのです。豊作のときにはこういうことは必要ないわけです。最悪のときのことについてのことなんですからね。こういう点については、私はこの法案の提出のしかたは、ことしのこの冷害に取り組む政府の考え方とマッチしていないのじゃないか、こういうことを申し上げたいと思うのですが、これに対する政務次官の御決意を伺いまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/111
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112・舘林三喜男
○舘林(三)政府委員 問題はかような点にあるだろうと思うのです。去年の北海道の冷害で五百三、四十億の被害があった。やはり政治の立場から見ると、あんな大きな被害を繰り返すことはいけないということは、ここで松浦委員も当然御理解していただけるだろうと思うのです。さような立場から、今日は中生種とか早生種の稲作等も奨励いたしますし、またてん菜、バレイショの指導もいたしておるわけであります。さような立場で、もしもそれが非常によくいって、ユーカラ等を栽培したらもっと収益が上がった、そういう場合はどうするかということでありますけれども、むしろ私の言いたいことは、科学的にいって、ことしは天明飢饉以来の大被害がありそうだ、それをとうするかということが、私は政治家としての大問題だと思います。どうぞその点をひとつ御理解いただきまして、中生種をつくったら、早生種をつくったらどうするということは、ぜひひとつ御了解いただきたいと思います。
それから天災融資法の改正でございますが、私は、農林省といたしましては、この天災融資法の改正は、去年の北海道の冷害をきっかけといたしまして、非常に真剣に取り組んだつもりなんです。あの異常な状態を見まして、これはどうしても天災融資法の改正をしなくちゃいけないと決意したのは、実は私が大臣に申し上げたくらいなのであります。ただ、去年は金利を下げることができなかったわけで、この点はわれわれの不徳だと思います。しかし、とにかく私は、天災融資法の改正は不十分、不満足であったかもしれないけれども、とにかく一歩前進であったことだけは理解していただたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/112
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113・濱地文平
○濱地委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/113
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114・濱地文平
○濱地委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の通告もないようでありますので、直ちに採決に入ります。
本案に賛成の諸君の御起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/114
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115・濱地文平
○濱地委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/115
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116・濱地文平
○濱地委員長 この際、松井誠君外二名から本案に附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
趣旨説明を許します。松井誠君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/116
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117・松井誠
○松井(誠)委員 私は、自由民主党、日本社会党及び民主社会党を代表して、ただいま可決をされました二つの法律案につきまして、附帯決議を付することを提案をいたしたいと思いますので、ひとつ御賛同をお願いいたしたいと思います。
最初に案文を朗読いたします。
天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法及び開拓営農振興臨時措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
政府は、左記の諸点に留意しつつ被害農林漁業者の救済に万全を期すべきである。
記
一、近時における沿岸漁業の実情にかんがみ、対象漁船の規模を五トンまでに拡大するとともに、貸付限度額の引き上げを検討すること。
二、津波高潮等漁業特有の災害に対処して沿岸零細漁民の救済が期せられるようこれらの災害につき、本法発動の被害規模の目安を実情に即し引き下げるよう検討すること。
右決議する。
提案理由を簡単に申し上げます。
この天災融資法によりますと、漁船の被害の場合は、いままでの取り扱い上二トン未満ということになっておりますし、限度額も二十万以下ということで押えられております。しかし、現在三トンないし五トンの漁家層というものが漸次ふえてまいっておりまして、これを除外をするということは、きわめて実情に沿わない点がございますので、五トンまで拡大し、かつ貸し付け限度を引き上げるというのが第一点であります。
第二点につきましては、こと天災融資法は、その発動の条件として、国民経済に影響を及ぼす、あるいは被害が著しいというような前提条件があるわけでございますけれども、漁業の場合には、津波、高潮などという、ほかの農業や林業にはほとんど影響を及ぼさない漁業特有の被害というのがしばしば起こってまいります。そうしてそれが地域的な広がりとしては相当広域に広がる。しかし、それが漁業だけの被害でありますために、この天災融資法の発動の条件であるこの前提、現実には約三十億が目安にされておりますけれども、それには到達をしない。そのために、天災融資法の発動がないという状態がいままで間々あったわけでございますが、それでは、沿岸漁民の救済に万全が期せられませんので、そういう際には、本法発動の被害規模の目安を実情に即して引き下げるということを提案するわけでございます。
以上で提案の理由の説明を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/117
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118・濱地文平
○濱地委員長 松井誠君外二名提出の動議のとおり決するに賛成の諸君の御起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/118
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119・濱地文平
○濱地委員長 起立総員。よって、本案に附帯決議を付するに決しました。
この際、ただいまの附帯決議につきまして、政府の所信を求めます。舘林農林政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/119
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120・舘林三喜男
○舘林(三)政府委員 ただいま御決議いただきました附帯決議につきましては、政府といたしましても、十分にその趣旨を尊重いたしまして、御期待に沿いたいと存じます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/120
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121・濱地文平
○濱地委員長 なおただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/121
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122・濱地文平
○濱地委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。
〔報告書は附録に掲載〕
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/122
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123・濱地文平
○濱地委員長 この際、積雪寒冷単作地帯振興臨時措置法等の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。
御承知のとおり、積雪寒冷単作地帯振興臨時措置法等は、いずれも昭和四十一年三月三十一日をもって失効することになっておりますが、これらの事業の進捗状況等にかんがみ、それぞれ有効期限を昭和四十三年三月三十一日まで二カ年間延長することが必要であると認めまして、理事会の御協議により、ここに各位の御賛同を得て、お手元に配付してあるような案を起草した次第でございます。
起草案について別に御発言がないようでありますので、この際、本案につきまして、衆議院規則第四十八条の二の規定により、内閣に対し、意見を述べる機会を与えることといたします。舘林農林政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/123
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124・舘林三喜男
○舘林(三)政府委員 ただいま御提案になりました本法律案につきましては、その趣旨につきましては、全く異存ありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/124
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125・濱地文平
○濱地委員長 おはかりいたします。
お手元に配付してあります積雪寒冷単作地帯振興臨時措置法等の一部を改正する法律案の草案を本委員会の成案と決定し、これを委員会提出の法律案といたしたいと存じますが、これに御賛成の諸君の御起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/125
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126・濱地文平
○濱地委員長 起立総員。よって、本案は委員会提出の法律案とすることに決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/126
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127・濱地文平
○濱地委員長 なお、本法律案提出の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/127
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128・濱地文平
○濱地委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
本会議散会後再開することといたしまして、この際、休憩いたします。
午後一時十二分休憩
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午後三時十三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/128
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129・谷垣專一
○谷垣委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。
農林水産業の振興に関する件について調査を進めます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。赤路友藏君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/129
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130・赤路友藏
○赤路委員 これから、先日本会議で農林大臣から報告されました漁業の年次報告、俗にいわゆる白書、これを中心にして、いまの日本の水産業問題の主たる問題、こうした点で政府の所見をお聞きしたいと思うわけです。大臣の御出席は求めておりません。水産庁の行政の責任にある方々から御所見を承ればいいと思います。ただ、御答弁のいかんによりましては、また大臣の御出席を要求する場合があり得ると思いますので、その点は申し添えておきます。
〔谷垣委員長代理退席、仮谷委員長代理着席〕
まず第一に、私は基本的な当局の考え方をお尋ねしておきたいのですが、漁業年次報告、あるいは四十年度に行なわんとする漁業施策、この漁業白書というものは、何のために出されるのか。この根本的な考え方、なぜ漁業白書を出すのかという、これをお聞かせおき願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/130
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131・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 一口に漁業白書といいましても、中身は、漁業の動向に関する報告と、当該年度までに講じた施策に関する説明、それから新年度におきまして講じようとする施策、この三つに分かれておるわけでございます。沿岸漁業等振興法におきまして、この三つの報告書を政府は作成し、国会に提出する任務を与えられましたのは、沿岸漁業及び中小漁業につきまして、あとう限りの新しいデータによりまして、その動向を分析し、沿岸漁業等振興法に基づいて政府が行なうべき施策、つまり、所得格差の是正あるいは生産性の向上に必要な施策を立てるにつきまして、参考となるべき漁業の事情を明らかにするというのが、動向に関する報告の目的でございます。また、講じた施策につきましては、講じた施策がどういうように行なわれ、それが沿岸漁業等振興法の定める方向に向かってどれだけの前進をしたかということを説明するものであります。講じようとする施策は、なぜ新年度においてこのような施策を行なうかということを、沿岸漁業等の動向と関連さして明らかにするということが目的である、こういうように理解しておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/131
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132・赤路友藏
○赤路委員 ただ、国会のほうでこういうふうにきめられたから、そういう形においてその報告書を提出する、そうして施策をという、単なるそういう表面的な問題でなしに、私はこういうふうに解釈する。間違っておったら、間違っておると言っていただきたい。
私は、漁業白書というものは、政府の水産行政の反省である。昨年、一昨年、こういうふうにやりましたということ、あるいは講じようとする施策計画、それと違いが出てくるが、そのような違いはなぜ出てきたか、こういう反省が私は当然なければならぬと思う。同時に、長官が言われるような政策運営の指針となる。水産行政の反省であり、政策運営の指針である、これが第一。第二は、漁業関係者あるいは企業家、こういう企業行動の際における判断の資料になる。俗にいうところの、これが一つの手引きになる。これが第二である。この二つがこの年次報告というものの意義だと私は思う。もしこれがないということになれば、これは意味がないじゃないか、こういうふうに思います。だから、私は、やはり基本的にそうしたかまえの上に漁業年次報告というものがなされて、初めて価値が出てくると思う。その点、ひとつ私の考え方が間違っておるかどうか、端的に御所見を、簡単でけっこうですから、伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/132
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133・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 ただいまお示しがありましたような点、全く同様に理解いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/133
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134・赤路友藏
○赤路委員 私の考え方に御同調願えましたので、これからそういうかまえの上に立って御質問を申し上げていきたいと思う。
第一回の年次報告ができましてから、今回は二回目であります。したがって、まだ十分だとは言えません。しかしながら、第一回と比較してみますと、ちょうど本会議で同僚の松井議員が申し上げましたように、確かに大きく前進していることは認めざるを得ないと思うのです。ただ私は、第一回のときにも申し上げたのでありますが、この国際遠洋漁業の動向というものについては、第一回の報告では触れていない。この点を指摘しましたところ、大臣にそのことを認め、次回以降においては位置づけをすると答弁をいたしておるわけなんです。ところが、今度の報告書を見てみますと、依然としてこの点は私は欠けておると思う。報告の第一部の一、昭和三十八年における漁業経済の一般的動向の中の中小漁業の生産動向で、部分的に若干触れているにしかすぎない。何か、大資本漁業ということばが適当かどうかわかりませんが、大資本漁業の動向には全然触れない。事実どこを探してみてもない。たびたび言うことではありますが、漁業全体を把握していく、あるいは水産行政を進めていくという面で、資本漁業を無視し、これをたな上げして、一体政策というものが出てくるのかどうか。そういう面では、やはりこの大資本漁業の動向というものをはっきり押えていかなければいけない。それと関連する中小漁業の問題あるいは沿岸の問題等を総合的に把握していかなければ、日本の水産行政はまともなものが出てくるとは私は思わない。だから、一年目は最初であったから無理でしょうが、少なくとも二年目になれば、もう少しこれは突っ込んで分析し、そうしてこれらに対する一つの方向を与えるべきではないのか。何か大資本に対して遠慮しているような気味がある。これははなはだ遺憾だと思う。その点、何かお考えありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/134
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135・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 結論から先に申し上げますと、私も同感でございます。沿岸漁業等振興法で定めておりますのは、沿岸漁業と中小漁業に関する動向の分析と施策のあり方ということでございますので、全体として、沿岸漁業、中小漁業を中心にしまして分折なり説明が行なわれておるわけでありますが、しかし、御指摘がありましたように、国際漁業といいますか、大資本漁業といいますよりも、国際漁業におけるいろいろな情勢というものが、特に中小漁業の場合、いろいろ直接の関連がございます。マグロ漁業においてしかり、あるいは北洋の底びきにいたしましてもそうでございます。それはある程度までこの動向報告で触れておりまするけれども、しかし、何といいましても、従来の漁業政策が、沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋へという形で外延的に発展しており、現在の段階はむしろストップがかかった状態、従来の漁業政策をある程度転換せざるを得ない状況にあるわけです。したがって、従来とってまいりました施策によって、沿岸の漁業調整も、いわば沖合いへ押し出すことによってある程度目的を達した、そういうことがこれから困難になるというような面もございますし、基本において、沿岸、中小漁業といえども、国際的な動向と離れてはあり得ないということはございますので、今後におきましては、できるだけ国際的な面につきましても施策に役立つように取り入れていく必要があるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/135
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136・赤路友藏
○赤路委員 それではその点はひとつそれにしておきまして、具体的な問題に入っていきたいと思います。
いまのと関連いたしますが、今度南氷洋の捕鯨の件については、長官非常に御苦労願ったのですが、南氷洋捕鯨をなぜ私が取り上げるかと申しますと、これは大体大手三社による操業でありまして、中小漁業にも、それからもちろん沿岸漁業には関係の薄い、むしろないといっていいような漁業であります。ただ私は、水産庁の指導能力とでも申しますか、こういう面でこの点に触れておきたいと思うのです。南鯨は、ことしは代表の諸君の御努力によって大体四千五百頭。これは議論があると思うのですね。確かに日本の業者の立場から見るならば、四千五百頭でおさまり得たことは成功だろう。しかしながら、それを資源面から見たら、はたしてそれが正しいと言えるか、この点は問題があると思う。南鯨が年間一万五千頭から一万になり、昨年は八千になり、ことし四千五百頭になる、来年はもっと減少していく、こういう歴年落ちていく現象というものが、いままで水産庁ではわからなかったのか、政府ではわからなかったのか。そんなばかなことはないと思うのですね。わかっておるはずだ。どこかにこの南鯨の全体を含んでの欠陥がある、こう考えざるを得ないわけです。ほんとうを言うならば、水産庁が資源の面から、経営の面から、十分これにタッチして、そうして指導をすれば、今日のような事態は私は起こっていないと思う。あまりにも放てきし過ぎたと申しますか、もっと極端にいえば、相手の会社が大き過ぎるために、発言力がない、指導力がないということをこれはあらわしておると思う。今日こういうような事態になったのは、何といっても、外国の捕鯨船をやたらに買い込んできた、もっと言えば、計画性を持たないで、じゃんじゃん投資をして拡充したというところに、大きな欠陥があると思います。そたがこう毎年繰り返されておるにもかかわらず、これに対して指導をしなかったというところに、私はこういう問題の出てくる大きな欠陥が伏在しておると思う。そういう面でこれを一言いたかった。今度の御努力は、私は認めるのです。それで、業界のほうでも一応これでほっとしたというか、そういうことはわかるわけなんです。しかし、将来のこともありますから、この際、十分こういう面はお考えおき願わなければならぬと思うわけです。もっと私は指導力を出すべきだと思う。そういう面では、大資本漁業に対する水産庁の指導力というものは非常に弱い。だから、資本会社の圧力に押えられてしまっておるという形をこの南鯨が一番よく示しておる。これではいけないと思います。
そこで、具体的な面に入りますが、七船団出ておるのですが、四千五百頭とすると、どうしても整理しなければいかぬ、そういう何か具体的なお考えをお持ちになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/136
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137・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 従来拡充をしてまいりました捕鯨産業を急激に縮小する段階に入ったわけでございます。その間、水産庁事務当局の指導力の不足という御指摘がございましたが、私どもも十分でなかったという点は、まことは遺憾に思います。ただ、拡充に際しましては、常に事務当局といたしましては、むしろ反対してまいっております。いまさら言いわけを申し上げても何ともならないことでございますが……。
さて、今後の問題でございますが、来漁期問題四千五百頭といたしますと、どうしても二船団ないし三船団の整理を要する。これはやはり私どもとしましては、将来の見通しを立てながら、船団の整理をはかるべきものと思うのでございます。御承知のように、いま南鯨のための船団として未償却の資産が百八十億、約二百億近い資産を持っておりますが、その資産をいわば価値をなくすようなことでございます。また人員の整理も伴うことでございますから、どうしても先を見通した考え方に基づいて、船団の整理をやっていかなければならないと考えるのでございます。しからば、来漁期は四千五百頭といたしまして、その次の漁期はどうなるかということは、今回の特別会議におきましては、はっきり数字では定まらなかったわけでございます。文章で来漁期よりもさらに縮減するという程度の表現にとどまったのでありますが、私どもとしては、四千頭程度を次の漁期に期待するといたしますと、四千頭にいたしますと、大体三船団の整理を必要とするのではないか。したがいまして、来漁期四千五百頭といたしましても、その後の模様も考えまして、二船団にいたしましても、三船団を整理いたしますにしても、その先の状態を考えると、一船団が暫定的に残るかどうか、その辺の見通しをよく考えてきめてまいりたい、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/137
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138・赤路友藏
○赤路委員 そこで、ひとつこれは注文をつけておくわけなんですが、いま長官が言われたように、おそらく来年はまた下がる、再来年はまた下がる、そういうような今後の南鯨の総合された見通しというものを立ててやる場合、ここで問題になるのは、企業者側の立場をまるまる私は無視するということはできないと思うのですね。企業者側のほうは相当大きな資本をつぎ込んでやっておる。だから、ここでかりに四千五百頭になったから、三船団整理するといたしますれば、これは企業者の相互の中でも問題になりましょうし、相当水産庁のほうでもこれに対する確固たる指導力が要ると思う。問題は、これを整理することによって、他の漁業に影響を大きく及ぼすような整理のしかたをやっちゃならぬということですね。もちろん、それは企業者側にとってみれば、非常に大きな打撃になるでしょう。しかしながら、それを転換さすことによって、中小漁業の場に大きなしわ寄せがくるということでは困るわけなんです。従来、ともするとそういうような結果があらわれてきておる。この点は十分ひとつ注意をしてもらわなければならぬ、こう思います。会社それ自体、企業者それ自体の立場からまいりますと、これは営利でもありますし、損をするということは何といったって大きな痛手ですから、何とかつじつまの合うような、採算の合うような方法にしたいということは当然でしょう。ただ、くどく言うようですが、そのことはそのこととして別途何らかの方法を考慮するにしましても、転換そのものが他の中小漁業に大きな悪影響を及ぼすようなことをやらないように、この点だけはひとつ御注意をお願いしておきたい。
南鯨の面に入りましたので、私は、ここで少し問題が法律的な面になりますが、国際海洋法に関する日本政府の意向、その態度、これをお聞きしておきたいと思うわけです。私が言うまでもありませんが、公海に関する条約は三十七年九月三十日ですか、すでに発効をいたしております。また昨年、大陸だなに関する条約が発効を見たわけであります。もちろん、日本はこれに対して批准をいたしておりません。批准をしていないからそういう条約は無視してよろしいということではないと私は思うわけです。もし国連で審議され、そうして批准されて発効したこの条約を、日本が批准してないから無視するんだ、かってにやるんだ、こういうようなことになるなれば、私は、国連加盟というものは意味がないと思う。ここらが私は当局の方々の非常にむずかしいところだと思う。なお、あと残された領海及び接続水域に関する条約、漁業及び公海の生物資源の保存に関する条約、この二つにいたしましても、おっつけこれは批准され、発効するだろうと思う。そうした事態が前にきておると考えなければいけない。昔のような状態ではない。国際法典のもとで秩序ある操業をやっていかなければならないような段階にいまの漁業というものはきておる。こういう中で、日本政府は一体これに対してどういう考え方で対処していくのか、これは非常に大きな根本的な問題だと思う。本来ならば外務大臣に聞きたいのですけれども、外務大臣に聞いたってどうかと思うので、行政の責任の場にあるあなたのほうから、確実にこうだという割り切ったお答えはできぬかもしれぬが、少なくともこう考えるぐらいのことは御答弁できると思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/138
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139・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 もちろん、この問題につきましては、最終的には外務当局からの見解をただしてもらうのが筋合いでございますが、漁業問題をあずかります私どものほうから考えますと、いまもお話がございましたように、古典的な公海自由の原則というものでもはや縛れない。なかなかむずかしい時代になってまいったと思うのです。公海自由の内容にあります四つの自由は、いまでも現存して、四条約のうちの公海に関する条約におきまして、国際慣行として確立されておるわけでありますが、いわゆる古い形の、公海においては何でもやれるという意味での自由は、すでに古典的なものとして、われわれもこれを主張することはできない問題と存ずるのであります。そこで、この四条約のうち、現在未発効のものは漁業及び公海の生物の資源の保存に関する条約のみでございますが、他の三条約はすでに発効しておるわけであります。そのうち、大陸だなに関する条約につきましては、私どもかなりまだ異論がございます。しかし、そのほかの二つ、領海及び接続水域に関する条約、公海に関する条約につきましては、むしろ最近の情勢におきましては、漁業の面から見ましても、漁船の性能が非常によくなり、漁労の能力が高まっておる今日、従来のような国際規制がやや形が変わるのもやむを得ないということもあります。政治的にいいますならば、低開発国が続々と沿岸の漁業にも進出する状況でございますから、日本がこの四条約を全体として加入しない、あるいは批准しないという形で、何か国際的に一つの孤立したような考えを持つ姿は、必ずしもとるところではないのではないかということで、差しあたり領海及び接続水域に関する条約、それから公海に関する条約につきましては、既存の国際慣行をそのまま条文化したものでもございますし、できるだけ加入する方向で考える。日本も同じ基本原則に立つという立場に立ったほうがよいのではないかというように考えつつあるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/139
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140・赤路友藏
○赤路委員 いま長官の言われた古典的な公海の自由の原則、その古典的なというところにちょっと問題があろうと思いますが、私は、公海の自由の原則というものはあくまでも強く主張する。相手国との間に話ができて、たとえば今度の日韓の間にある共同規制区域、そういうようなものは、公海であるが、条約上話し合っておるから、それはお互いに自由という形でなしに、条約上のものとして守っていく。少なくとも公海自由の原則というものだけははっきり確立していく。この線を私はゆがめてはならぬと思います。
同時に、各種の国連における国際海洋法の関係でありますが、これは特に領海の問題と関連が強く出てまいります。今日日本は依然として三マイル説をとっております。で、現在三マイル説をとっておりますのが大体十三ヵ国、ちょっと調べてみましたら、一九三〇年のヘーグの法典編纂会議で領海三マイル主張国は十八ヵ国、十二マイルはただの一国、これはソ連です。現在三マイル説は十三ヵ国だが、十二マイル説が三十四ヵ国すでにあるわけです。この状態で進みますと、近い将来あるいはまた新しく国連へ入る新興国は大体十二マイル説をとってくるだろうことが予想されますので、大体推定いたしますと、四十四ヵ国くらいになる計算になる。こういうような世界的な動き、これはやはり無視するわけにはいかぬ。特に日本のように世界のあらゆる海を漁場にしてやる場合に、この世界的な動向というものを無視してはやっていけないと思う。戦争前のような軍艦を背景にしてやるような漁業じゃない。これからは、何といっても相手国とともに手を握り合って、そうしてその中で日本の漁業というものを伸ばしていかなければならぬ。こういうような事態にあると思います。ゆえに、この問題は相当真剣に取っ組んでいただかなければならぬ。いま諸外国へ行って問題をよく起こしておる、たとえば領海侵犯であるとかなんとか出てまいりますが、これは、やはり三マイルという古典観念、古い固定した観念が漁業者にもずっと入っておるわけです。まだなかなかそこからは出ていない。三マイルというのが頭へこびりついてしまっておる。で、依然として日本政府はあらゆる機会にこの領海三マイル説を主張しているわけなんです。私はこれこそ古典的だと思う。いまの新しい世界的な漁業情勢というものについていける説じゃありません。ここらはひとつ真剣になって今後取っ組んでいただきたいし、お考えを願いたい、このことを御要望をいたしておきます。
次に、それと関連いたしましてお尋ねいたしますが、かつてアメリカのほうで俗にいうバートレット法が成立した。大統領はこれに署名をしたのですが、そのとき私は驚いたのですが、これに対して何か手を打ったか、現在これに対してどう対処しつつあるか、この点あまり長くならないように、短く端的に言っていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/140
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141・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 バートレット法につきましては、当時民間におきましては、大日本水産会から向こうの国会方面へに対して日本の考え方を説明し、また外交ルートを通じまして、国務省に対しまして日本の見解を明らかにしました。その成立をできるだけ阻止するようにやったのでありますが、御承知のごとく、バートレット法は成立し、施行されるに至りました。日本としましては、大陸だな条約には加入しておりませんし、またタラバガニを大陸だな資源として認める立場にございませんから、一面において北米沿岸において日本の漁船がタラバガニを捕獲しておることは事実でございます。そこで、紛争を避けるということとタラバガニ資源の前途に対しましても若干の危惧もございまして、タラバガニ資源の保護ということを目的としまして、バートレット法とは、あるいは大陸だな条約とは別なものとして、交換公文によりまして、タラバガニの漁業に関する米国との申し合わせを行なったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/141
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142・赤路友藏
○赤路委員 もう私が言うまでもないのですが、バートレット法はさかのぼっていきますと、昭和二十七年のトルーマン宣言とつながってくる。同時にまた、国連の大陸だなに関する条約とも関連を持つ。結果は、アメリカ側の外国漁船に対する一つの施策といいますか、外国漁船にできるだけ魚をとらさないようにしようというそれだと思う。率直にそうとしか考えられません。当然これに対する対策あるいはこれと関連する諸般のものをちゃんと考慮の中に入れて、これに対するしっかりした対策が立てられなければならぬ。今度米ソ・タラバガニ協定が結ばれた。その中には「タラバガニは大陸だなに関する条約第二条の規定に従い沿岸国が探索及び開発の目的のために資源的権利を有する大陸だなの天然資源である」とうたつておるわけです。そうすると、アメリカとソ連がタラバガニ協定を結び、タラバガニは大陸だな条約にもいう天然資源である。したがって、これはそれぞれの沿岸主権国がこれを開発すべきものであるし、権利がある、こういうことをいっておるわけですね。これは米ソ両国の協定なんです。この協定の後でありますが、今度日ソ漁業の話し合いがなされたときに、この問題はソ連側のほうからは持ち出されていないように私は思います。どういう含みがあるのかわかりません。しかしながら、一応西カムにおけるカニの漁獲量は少なくなった。ブリストルにおけるカニの漁獲量は少なくなった。これは一年だけの問題でないのです。最近のアメリカの下院議員の発言等から見ると、非常に重大になると私は思う。日本漁船が公海上でのブリストル系紅ザケ漁を開始するなら、米漁民会議は、六月一日を期し、全米で日本品ボイッコト運動を展開する、こういうことをアメリカの下院議員は発言しておるわけですね。単にタラバガニだけではない。サケにまで及んできておる。こういう事態が次から次へ起こされてくるわけです。これに対して政府はやはり前向きで取っ組んでいかなければ、たいへんなことになると私は思う。北太平洋の公海漁業に関する国際条約、すなわち、日米加漁業条約ですぬ、これは昨年の六月十二日が条約の期間ですね。このときに、私たちは、まず廃棄せよ、そうしてあらためて改定をせよ、廃棄して新しく条約を組み直せ、これは不平等条約の最たるものだ、公海自由の原則を踏みにじって、西経百七十五度で線を引いておる、われわれはたびたびこれを主張した。これが残っておる。しかも、ずっと継続的にこう見てくると、いまアメリカの下院議員が言っているのは、アメリカ系の紅ザケが西経百七十五度からまだこちらへ来ておる、だからこれをもっと広げろ、こういうようなことを言っておる。そういう交渉を日本は受けて立って話をしているようなんですね。過去から今に至るまでの間のいろいろな条件というものを一つ一つ積み重ねてやってくると、弱い考え方じゃだめだということです。ここらが少しは骨っ節のあるところを出さなければ、どうにもこうにもならぬところへ押し詰められている。アメリカの属国じゃないのですからね。こういう面に対しては、もう少しき然とした態度で向かってもらわなければならぬと思う。なるほどいろいろむずかしい面はあると思います。私も、アメリカの資源を維持するための諸施設、そういうものを見てまいりました。日本と違って、たいへんな経費をかけてやっております。しかし、これはいろいろ考えようがあると思う。アメリカのものだということになれば——アメリカのあの近海におるものは、何もアメリカ人がつくったものじゃないはずなんですね。もう少しこういう面でははっきりと主張すべきものはどんどん主張する。そうして不平等なものはそこでどんどん切りかえていく。もっと独立性、自主性のあるその対決方法をとっていきませんと、今日の日本の国際漁業というものはますます追い詰められて、やっていきにくくなる、こういうことを私は考える。その面ではいかにも弱い。弱いという以外にありません。もう少しこれに対する何かお考え方があれば、ひとつ承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/142
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143・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 最近におきまして、沿岸国優先の思想が非常に強まってまいりました。むしろ、沿岸国優先の主張は、低開発国の切実な要求もあるところでございます。そういった低開発国の希望に対してある程度の理解を持つ必要がありますが、米国のような大国ないしソ連のような諸国との関係におきましては、われわれとしましては、最近の情勢を十分見きわめまして、あまり国際的な動向といったような動きをしないと同時に、われわれの正当な要求に対しましては、これはアメリカに対しましてもソ連に対しましても、強く主張すべきものと考えるのであります。
いま問題になりましたブリストル系の紅ザケの問題につきましては、再三米側から、百七十五度以西の紅ザケについて、こちら側の自主的規制を要望してまいっておったのでありますが、現行の日米加漁業条約からいたしましても、こちら側で規制をするというのは不当なものである。むしろ、日本が改定を要求をしておりますような公海における共同規制ということであるならば、アメリカ側と協調して、紅ザケ資源について一そう積極的な態度で臨む意図がある。しかし、自発的抑止という原則を置いて、その自発的抑止のラインの外側において日本に対してさらに追加的な規制を要求するということは、絶対にのめないということで、われわれとしてはかたく拒否してまいったわけでございます。その結果もあり、また昨年のオタワ会議におきまして、条約改定交渉で米側が多少譲歩したというような印象が米国漁業界にあるのかと思われますが、その巻き返しというようなねらいもあって、現在、マグナソン、バートレット両上院議員が出しておりますような法案が出され、また日本商品ボイコット運動が起きておるというように理解しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/143
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144・赤路友藏
○赤路委員 ただ、政務次官、考えておいていただきたいのですが、いま長官から話があったのですが、これはそれぞれものの解釈のしかた、握り方によって違うと思う。いまの日米加漁業条約がもう期限が来た、これをどうするかというので、交渉しておるわけですね。現在もなお続いているのでしょう。何か交渉しておる。交渉しておるが、率直に言って、これは外務省が主体になるか、水産庁が主体になるか、わからぬのであって、交渉に積極性がない。腰がすわってない。これはもう明らかなんです。やっているようなふりをしているだけ、いまの段階では。だから、相手から軽く見られる。ぴしゃっぴしゃっと次々に手を打たられる。こういう事態に私はあると思う。この点はよほど考えてもらわなければならぬ。同時に、先ほど来言うタラバガニは、長官もおっしゃったように、大陸だなに関する条約の天然資源ではない。私は天然資源でないと思う。あの条約にいう天然資源ということになれば、定着していなければならぬ。固定していなければならぬ。移動すべきものでないはずなんです。法文上からいけば、これはいろいろ解釈のしかたはあるでしょう。しかし、これはアメリカが言うような、ソ連が言うような、そういった天然資源でないとこちらが言う限りにおいては、それに対する科学的なものを出していかなければいけない。これはやっておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/144
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145・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 大陸だな条約による大陸だな資源は、大陸だなに定着する生物資源という定義でありますことは、お話のあったとおりであります。これについては、もちろん法理的な面での論争もやっておるわけでありますが、科学的な面でも、日本としましても、水中テレビでタラバガニが移動する状態を撮影したり、これは必ずしも成功ではなかったのでございますが、そういった生物学的な資料に基づきまして、米国側の主張に反論をしておるのでございます。しかし、米側もやはりある程度の生物学的根拠をもってやっておりまして、この議論はなかなか決着を得ない。したがいまして、法理的にも生物学的にも、日本はタラバガニが大陸だな資源ではないという立場を留保して、取りきめを行なっておる、こういうのが現状でございます。目的は、むしろタラバガニ資源の保護をはかるのを急ぐ必要があるということでごございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/145
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146・赤路友藏
○赤路委員 その問題はその程度にしておきましょう。
それからいまおっしゃった資源問題、これに少し触れておきたいと思うのですが、これはやはり古い日本の漁業界といいますか、もう最近はそういうのはなくなっておるだろうと思いますが、どうも漁業家の中には、魚は海さえあれば無尽蔵にあるような錯覚といいますか、錯倒があるように思われるわけなんです。そうしたものではないのであって、やはりよく言われるように、歴年それぞれ安定操業をやっていくというたてまえの上に立つならば、資源をどう維持し、培養するかということが、一つの大きな問題だと思うわけなんです。これはもちろん全世界的な問題だと思うのであります。日本だけではありません。各国ともそういう事態に対処していなければならぬと思いますが、特に名実ともに世界一だと誇称する日本においては、この点にもっと大きな関心を持たなければならぬのじゃないかと思うわけなんです。ところが、御承知のとおり、水産資源保護法がある。水産資源保護法があるが、これはいろいろな障害があるものに対して具体的に発動をしたことはない。それは水産庁が弱いということかと私は思う。また、水産に加害を与えるような他の面の力のほうが強い。そのためになかなか発動し切らないで、今日に来ておる。私は、やはりこの際思い切って、沿岸を中心にする資源の維持培養という点では、そういったあるべき法律を一〇〇%生かしていくという強い態度を持たなければならぬと思うのです。これは保護水面をどんどん拡張していく、指定をどんどんふやしていく、やり切りますか、そういう御意思ありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/146
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147・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 水産資源保護法の運用が必ずしも十分でないことは御指摘のとおりでございます。現在まで保護水面として指定したものは主として貝類でありまして、アユの保護のために藻場というものも若干行なっておりますが、まだまだせっかくの法律が生かされてないという点では、私どもも遺憾に思うのであります。最近におきまして、この水産資源保護法を活用するために、水質基準をきめまして、水産資源保護法の規定による都道府県の漁業調整規則の運営に一つの基準を示すというようなことを行なったのでございます。目的が十分達成されていないことは、まことに遺憾でございます。今後、水産資源保護法に限りませんが、資源保護のためにさらにくふうを加えまして、強化してまいりたいと考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/147
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148・赤路友藏
○赤路委員 長官、これは「昭和四十年度において沿岸漁業等について講じようとする政策」ということで、特に沿岸漁業というところに重点を置いている。これは三十九年のものもそう。四十年のものもそう、だから、このことは、先ほど長官が触れたような、沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋へという戦後の日本の水産行政の柱、これをやってきた。その間、沿岸漁業に対する施策がやや軽視され、等閑視されたことは事実。これを何としてでも漁業内における格差を縮める、また、漁業とその他の産業との格差も縮めていこうというので、沿岸に対して大きく力を集めていこうというのがこの一つのねらい。それだけに、沿岸の魚族をより培養していくということが考えられなければならぬ。ところが、現実は、逆に一般産業がどんどん伸びていく、いわゆる高度成長のために漁場がどんどん埋め立てられていく、あるいは汚水がどんどん流される、こういう事態にあることは事実なんですね。であればこそ、今度政府のほうでも、公害防止事業団というようなものをつくることになった。それで公害をなしていこう、こういうことなんです。ところが、この公害防止事業団では、一番大きな被害者である水産側はまるでどこにおるか、いないんだ。だから、外のほうからも漁業関係は軽視される、内部からは大きな突き上げがないということになれば、漁業者は踏んだりけったりということになる。だから、もっと資源を維持培養するということ、こういう面では、あるべき法律を生かしていく、もっと積極的にそれぞれの面に対決をしていく、こういうような態度を今後とってもらいたいと思う。これは希望です。
そこで、この資源と関連いたしますが、サケ・マス人工ふ化放流、これはかなり進められておるわけなんです。確かに、以前からいたしますと、これは大きくなっておる。ところが、ちょっとどうにもふに落ちないのは、自然に川に遡上するサケ、遡上する川が少なくなってきている。これは北海道はもちろんですが、内地をも含めて、これに対しては何か対策がありますか。要するに、サケの親魚が遡上する川の数というものが少なくなってきている。そのことは、やはり全体として減少していくということになろうかと思うのです。これに対して何か対策を立てられておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/148
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149・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 サケ・マスの遡上が少なくなり、あるいはそういった川が減ってまいっておるわけでありますが、これは奥地の開発が進むとか、それによって水質が汚濁するというような原因がかなり働いておると思うのであります。これについては、もちろん水質二法によります指定河川として調査し、指定をやり、水質基準を定めて排水規制等を行なうように進めておりますが、やはり水産資源保護の面からも、同様に産卵水流面を保護するということも必要であろうかと思います。また、原因として、沿岸において雑網等によってかなりとられてしまうというようなこともあります。それらに対する対策も、これはまだ検討中でございますが、進めていく必要があろうか、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/149
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150・赤路友藏
○赤路委員 検討中というなら、それでいいでしょう。
それではもう一点聞きますが、大体北海道で遡上する川というのは、もう日本海岸のほうでなくして、オホーツク海のほうが残されておるだけなんですね。あるいは内地にいたしましても、ずっと見てまいりますと、東北の太平洋岸のほうでは、やや量的に多いと思われるのは津軽石川ぐらいのものです。そこで、ただ一点お聞きしたいのは、先ほど言うように、川の奥地が荒らされますね。要するに、開発がどんどん進んでくる、ダムができる、あるいは川底が荒れてくる、いろいろな現象があると思いますが、川が荒らされると、遡上がなくなってくるということは、これはもういままでの資料からはっきりしていることです。そうすると、川が荒れないようにということが一つの大きなポイントになる。その場合、現時点において、この川はサケの資源維持をするための重要な川であるからというので、荒らさないように、開発をむちゃにしないように、その周辺を保護設定をした、あるいは森林の保護設定、あるいは流域の保護設定、こういうようなことをやったことがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/150
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151・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 まだそこまでの施策はやっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/151
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152・赤路友藏
○赤路委員 それではもう一点お聞きします。
十勝川が昨年の約倍、昨年は大体十一万余りであった。ことしのものは二十六、七万上がっておると私は聞いておる。倍以上上がる。倍以上この十勝にサケが遡上した原因は一体何なのか、これはどういうふうに推定しておるか。推測でもよろしい。原因がはっきりわからなければ、なぜそれが上がったのか、それだけでもよろしい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/152
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153・山中義一
○山中説明員 はっきりした原因はわからないのでございますが、十勝川に例年に比較してことし非常にたくさん上がった理由は、北海道の温度が低かった、あるいは奥山の雪が非常に多かった、雪解けの水が豊富であった、川の水量が豊かな年には、北海道あるいは内地の裏本日側におきましても、従来サケの遡上あるいはマスの遡上は良好であるということは、はっきりしたデータは持ち合わせておりませんですけれども、経験的には言えることだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/153
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154・赤路友藏
○赤路委員 それを言ってもらいたかった。それで私が言いたいことは、いま言うように、水温が低いということ、それから水量があるということ、このことが、川へサケが上がっていくという原因なんです。私もしろうとだからわからぬが、水量が多いと、ずっと海の中へ真水の延びる距離というものは長いはずなんです。だから、サケが乗りやすいという現象が出てきている。これは水量です。もう一つは、いまのおっしゃるようなあれですね。岩手県の閉伊川が当然上がるべき川だと思いながら上がらないのは、入り口にラサ工業の工場があり、あれの排水が温度を高めておるということが原因だと思う。そこで、私がこの答弁をいただきたかったのは、水量が少なくなると、上がるのが悪くなる。だから、川の水の量をどう維持するかということが非常に大きな問題になる。私に率直に言わせると、この点がいままで欠けておる一津軽石川を私見てみました。ちょうど川の上流と下流との中間が全部干上がってしまっている。川底へトラクターが入って、砂利をとっているのです。それで、伏流水になって水温が下がるから、津軽石川はサケが遡上する、こういう現象だと思う。そういうものをやはりつくり上げていくといいますか、そういったものを保持していく、少なくとも荒らさない、そういう措置が積極的にとられなければいかぬと私は思う。それがない。この前からやっておりますえつけ放流は、まだことしのものではないと思う。来年あるいは再来年になれば、えつけ放流の結果が出てくると思う。それと相まって、そういった措置をとっていただく、ならば、ある程度これはずっと伸びてくると思う。あなたのほうからいただいたこの資料で見てみますと、三十八年の親魚の採捕量と放流した魚数とを比較してみますと、歩どまりは六百七十四分の一である。こういうことをやはり考え、そうしてこの歩どまりをよりよくするためにはどうあらしめるべきかということを考えていきたい。これはわずかの金の問題じゃありません。この点をひとつ十分今後の研究のあれにしていただきたい、こういうふうに思います。
そこで、もう一つお尋ねしますが、これは私もうかつでありました。サケの養殖というのは、人工ふ化したものを放流するまでの間のえつけをしておるのをサケの養殖と実は考えておった。ところが、そうでないサケの養殖をやっておる。そこで、国会図書館のほうの御協力を得て、世界的にこれがどうなっておるかというので、調べていただきました。ところが、いまのところは世界的にありません。サケの養殖をやっておるのは日本だけである。
〔仮谷委員長代理退席、谷垣委員長代理着席〕
私は岩手県の大槌に行ってきました。これを一応見せてもらったわけでありますが、これは四年前からふろ屋のおやじがやっているのです。私が行ったときは、先生、家庭争議を起こしましてなんて言っているのです。ところが、四年間も世界にないサケの養殖をやっておるのに、水産庁は一体何をしておったのだ。これに補助、助成でもやりましたか。やっていない。世界的なものなんです。民間人のやることであったらほうりっぱなしというような考え方ではいかぬと私は思う。もちろん、私は、これが経済的に採算がとれるとかなんとかということでなしに一これはなかなか経済的に採算をとるということはむずかしいと思う。しかし、少なくとも養殖したサケで、雄のほうから精液をとって、卵にかけてふ化しておる。こんなことは世界中どこにありますか。そういうようなものをただこれは民間でやっておるのだからほっておくということは、私はどうかと思う。水産庁の諸君の頭の動き方を私は疑わざるを得ない。どうです、何かありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/154
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155・山中義一
○山中説明員 お説の大槌の例につきましては、水産庁の調査研究部あるいは漁政部のほうで見学に行った例もございます。きわめて珍しい、けっこうな事例だというふうに考えております。それを率直に申し上げますと、ヒントにしてというとおかしいのですが、もう少し経済ベースともからみ合わせた研究をしたいということで、来年度から東北のほうの海のやや深いところでもって、水温が低いわけでございますから、そこで、その水を利用したサケの養殖、これを実験してみたいというふうに考えております。ただいままでそういう篤志家のものに補助が出ませんでしたのは、これは役所のいろいろ補助要項その他でなかなか出しにくいかっこうになっておりまして、まことに遺憾なことだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/155
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156・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 大槌の篤志家の研究につきましては、私も最近聞いたのでございますが、いままでの成果を水産庁の担当官あるいは県等から調査に行ったところによりますと、確かにおもしろい研究でございますが、淡水を井戸水でもって海水と中和させて温度を下げる、それからえさのやり方については、いわば科学的なえさと肉との関係が検討されないでおるというような点にいろいろ不満もあるようでございます。しかし、これは非常におもしろい研究としまして、われわれも今後十分注目してまいりたい。それと、いま漁政部長が申しました同じ性格の研究を実はもう多少水産庁関係でやっておるわけです。というのは、いまの大槌の人の研究は、人工的に井戸水などを使ってやっておるわけですけれども、これは水温を低くするために、夏季においても二十度以下に水温を保つ必要があるということでやりますと、むしろ、海の深いところを使ったほうが大量に養殖する上ではよいのではないかということで、実は宮城の試験場でそういう研究をやって、多少サケを大きくした写真もできております。そういう試験研究もございますので、できればことしの予備費あるいは来年度の予算におきまして予算化して、もっと半産業的規模の試験を行ないたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/156
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157・赤路友藏
○赤路委員 あなたの言うことはわかるのだが、私の言っていることは、少し違うわけです。要するに、民間の研究家がほんとうに自分の一切のものをなげうってやっておるものを白眼視してはいかぬ。どんどん育成をしていくかまえがないといかぬ。これを私は水産庁のほうに持ってほしい。いままでも二、三それとは違うが、私は聞いておるわけだ。水産庁自体が研究をし、進めていくことはもちろん、民間にあるそういうような研究家をやはり育成していく、そうしてそれのいいところをどんどん吸収していく、これでこそ科学的に伸びていくわけです。そういう点に対する配慮が足りなさ過ぎる。四年間も民間人が一色懸命になってやっておるものを、いまから私たちはここでやりますと言っても、そうしたものにきっかけをつけた者の功績などというものは、やはり認めてやらなければいかぬ。私の言いたいことはそういうことなんです。現に大槌は井戸を掘ってやっておる。あれは海岸から五十メートル離れたところに井戸を掘っておる。それで揚げておるのは海水なんです。井戸に入ってくるから、海水がその間海から直接とるのでなくて、温度が下がっておるわけです。津軽石漁業協同組合がやっておるのは、淡水魚ですでに一年間これはもう成功しておるわけです。だから、私は、政府自体の手でやっていただくことはもちろんだが、こういう民間の研究家を見殺しにしないようにしなさい、もっと育成することを考えなさい。考えていただきたい、こういうことを申し上げておるのです。
それから私は、同じく試験問題に関連してお聞きしておきたいのです。きょう新聞を持ってこなかったのですが、前々からある話ですが、マグロなんです。漁業白書の中にもこの点に触れて、カツオ、マグロ、まき網、底びき漁業については、向こう三年間調査をして必要な対策を立てると、こううたっておるわけです。それはそれでいいでしょう、ややのんびりしておりますけれども。マグロなどというものは、もう当面行き詰まってしまっておる。三年間たったらどうなるか。しかし、それは言いません。それはおやりになってけっこうですが、いま当面ここでどうマグロ漁業をするかということは、これは大きな問題だと思う。過去のことは私は言わない。こういうような事態になったということは、われわれにも一つの大きな罪があるわけです。いままで政治家もっとこれに対して真剣に取っ組むべきであった。あるいは業者自体も考えなければならなかった。しかしながら、より当面の責任者である水産庁としては、いまの時点において真剣にこれに取っ組む必要があると私は思う。調査資料をもらってこれを調べてみたのですが、三十七年、三十八年、三十九年は大体五十三万五千トンから三千トン、ところが、漁船のほうは三十八年から三十九年にかけて六万四千トン、隻数にして千七百隻ほどふえておるわけですね。もちろん、近海カツオ・マグロの関係もあるでしょう。いずれにしても、ここ三年間は漁獲量は五十三万トンのところで大体横ばいになっておる。ところが、トン数、隻数がふえるということになれば、これは当然一隻平均の漁獲量は下がっておるということなんです。これは経営に対して非常に大きな問題が生じてくる。これがいま一番問題の焦点になっておると私は思う。これをどう取り上げていくか。ただきょうちょっと新聞を見てみると、大体ピンチョウが十三万七千トン、その中で、三万トン程度を保管して国内消化に充てる、そうすると、あとは大体対外的に勝負がつくから、何とかマグロ漁業というものはやっていけるのじゃないかという、これは日鰹連のほうの考え方のようです。このことは、前から私も聞いておった。問題は、それでいいのかということです。これは日鰹連日本鰹鮪連合会という一つの団体、これは全部業者が寄った団体ですから、業者が寄ってやる場合は、できるだけ自分たちの被害のないように、何とかその中でやっていけるように考えることは当然だ。そうしていろいろ協議をした結果が私はこれだと思う。これは私は聞いておりません。ただ新聞をちょっと読んだだけですが、これだと思う。私が永産庁に聞きたいのは、それで一体いいのか。今日、マグロの窮状といいますか、大きな転機にきておると私は思うのだが、それで打開できますか。それでやれるという自信をお持ちになりますか。この点をお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/157
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158・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 マグロ漁業の不振の原因につきましては、いろいろ考えられると思うのであります。確かに数年前に漁船の数を二万トンばかりふやしたことがございます。これがどれだけ響いたか、必ずしもはっきりわかりませんが、漁獲量が比較的安定しているのに、漁獲努力量はふえてきたということも、一つの原因だろうと思います。それから労賃が上がってきておる。居住性の悪い漁船でございますから、特に労務者の労働条件を改善しなければならぬのはもちろんでございますが、そのコストは事実上は上がっておる。それから輸出の値段がさえない。いろんな原因が重なりまして、今日のマグロ漁業の不振をもたらしているかと思うのであります。先ほど三年間調査をした上でというお話がございましたが、これは中小漁業対策一般としまして、まき網、底びきを含めて調査した上で、許可の一斉更新等の際に備えて、さらに再検討するという意味での調査でございますが、私どもとしても、マグロ漁業の現状は、もちろん、これは政府がやるべき筋合いかどうかということに多少問題がございますが、とにかく現状を明らかにして、やるべきことはやらなければならぬというたてまえから、実はすでにかなりの審議が進んでおるわけでありますが、漁業の省力化懇談会をつくりまして、専門家による省力技術の検討をしてもらったのであります。これはかなり好評を博して、直ちに実用化できるような成果があがっておるようでございます。それから明日、あさって、別な、これも専門家でございますが、そういった技術的な面だけでなく、経営的なものも含めた専門家の懇談会を新たに開催いたしまして、いわゆる業界代表的な意見でなく、むしろ専門家として、マグロ漁業を経営なりあるいは流通面でどう考えていくかということの自由な意見をかわしながら、その中からわれわれとしてもよい施策を考え、やるべきものを実施に移してまいりたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/158
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159・赤路友藏
○赤路委員 なかなかむずかしいことなんだが、私が冒頭に南鯨問題を取り上げたときに申し上げたように、水産庁としてはいろいろむずかしい点はあるだろうが、ほんとうにいま危機に当面しておる日本の漁業、特にマグロはその最たるものなんだが、これに対処する場合、よほどの強い決意と積極的なかまえがなければ私はやれぬと思う。まことに私は言いにくいことをむき出しに申し上げてすまぬと思うが、大体従来の水産庁のあり方を見てきて、ときどき感ずるものは、上層の諸君は一年半か二年でかわっておるのです。自分の在職するときだけは何とか問題がないようにという考え方ではよくなっていきません。思い切ってやってもらわなければならないと思う。で、いまのあなたのおやりになろうとすること、それはよくわかる。そう私がいまここでしゃべるように無鉄砲にはやり得ますまい。その点はわかる。ただ、一つ一つ調査をし、研究をし、ものを固めながら、まあ俗に言えば、石橋をたたいて渡らなければならないというようなことになっては意味はないのです。そこのところをよほどしっかりしていかなければならないと思うのです。
そこで、率直にお尋ねいたします。資源と労働と経営の三者、これが問題ですね。経営的に成り立たなければいけない。資源を十分保持するといったってむずかしいのだが、資源を維持培養しつつ、その中で経営が成り立っていく。同時に、労働がこれに伴わなければ意味がない。この三つを一体にして踏んまえて、現時点を考えて、総トン数が三十八万七千トンですか、それを踏んまえて考えたとき、現在のままではいけない。私は率直に言って、十三万七千トンのビンチョウがとれる、三万トンだけ何とか保管すればというような手は、これは一つの方法であろう。しかし、それによって解決がつくと私は考えない。思い切ってここで、ある程度のトン数、隻数をたな上げするというようなことを一応検討してみる必要があると思うが、その点はどうですか。率直に検討するかぜぬか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/159
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160・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 業界の内部におきましても、実質減船をやるべきだという声がかなりあるようです。私どもも、減船の問題は実にむずかしい問題であると率直に思います。しかし、これは検討を必要とするものであると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/160
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161・赤路友藏
○赤路委員 かつて北洋の独航船、これは廃業したときに、業者が寄って補償を年賦払いにしておる。この方式はおそらくマグロのいまの現状ではとれないと思う。何かそうすることを考えていかなければならない。この点ひとついまおっしゃったように御検討を願いたい。
次に、もう一つ、こういうことが検討の材料になるかどうか。海区別に操業をやらしめる。たとえば近海カツオ・マグロは北緯十度、この線から南へはおりてはいかぬ、こうなっております。ああいう形に太平洋は太平洋、大西洋は大西洋、インド洋あるいは近海、これはどういうふうに区分するかわかりませんが、一応海区別に隻数、トン数をきめて操業をやらしめるということが考えられるかどうか、検討の資料になるかどうか、この点ひとつ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/161
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162・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 これはそういう意見もございます。水産庁の中にもあります。私は検討に値する考えだと思うのでありますが、私自身の考え方を申しますと、逆なのでございます。むしろ、あまりめんどうな条件はできるだけ今後廃止したほうが漁業を健全化する上にいいであろう、これはまだしかし結論ではございません。私はそういう感じでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/162
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163・赤路友藏
○赤路委員 非常に具体的な問題で、これはきょう一日かかっておってもなかなか済まぬことですが、大体大まかに押えていきますが、中漁審の近海カツオ・マグロに対する答申に、これは大型化をうたっておるわけです。これに対してどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/163
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164・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 先ほど来のお話がございましたように、マグロの資源の状態、漁獲率の状態からいたしまして、近海の三十九トン九九型をさらに大型にするというのは、現状からしても、ますます経営の困難を来たすゆえんではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/164
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165・赤路友藏
○赤路委員 最近三十九トン九九の近海カツオ・マグロの業者が寄って、現在規制されておる区域を適用するのは延ばしてほしいという陳情があるわけです。これと、元般発表されました海上保安庁の白書に、三十九トル九九の船の海難事故数がばかにふえておるのです。これとの関連を十分考えてみなければならないが、そういうことを考えて御検討中であるかどうか、この点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/165
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166・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 三十九トン九九型の海難が非常に多いので、四十一年から北緯十度以北に制限するというような措置をとったわけでございます。そういう問題を含めまして検討中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/166
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167・赤路友藏
○赤路委員 もう一つ、カツオ・マグロ関係で聞いておきます。三十七年度に沿岸漁業振興のためにというので、かなりの許可数を出したわけですね。これを日付別にずっと見ていきますと、急速に出して、わずかの間にこれが大量に売買されておる、こういう事実があるのですね。これは資料にはっきり出てきているわけです。これは好ましいことではない。この沿岸漁業振興を出したことそれ自体にも、いまになってくれば問題が出てくる。しかし、これは起こったことだから言わないにしても、そうすると、こうした問題、あるいは学校の練習船あるいは兼業許可船がありますね。もっと率直に言えば、権利だけを持って、自分ではひとつも操業せぬで、権利貸ししてやっておる船主というのがあって、それは全国にはすばらしい数があるのです。こうした問題も含め、先ほどから言うようないろいろな要素を勘案して、この際、カツオ・マグロに対する根本的な対策を立てていく必要があるのではないか。それをただ単にこの際はというので、こう薬ばりでやっておったのでは、いつかまた問題を起こしてくる。こういう面では思い切った前向きの姿勢、強い態度でやっていく必要があると思うわけです。この点に対して簡単に一言で所見があれば承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/167
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168・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 現在のマグロ漁業の問題は、その解決はきわめて困難な問題でございますが、ただいま御鞭撻を受けました御趣旨を体しまして、大いに前進してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/168
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169・赤路友藏
○赤路委員 大体カツオ・マグロのほうはその程度にいたしておきます。
それから私は、ちょっと資源問題で以西の点に触れてみたいと思う。私は先ほどから資源に対してかなりやかましく言っているのですが、三十八年度の水産の水揚げ高は大体四千八百三十億ですね。かなりな金額に上がっているわけです。これだけの水揚げをやるということは、あらゆる業種にわたって操業が行なわれて水揚げがされている。ところが、先ほどから言うように、だんだん資源が少なくなってくる、あるいは魚体が小さくなってくる。いろいろな資源上の問題が出てきているだけに、これは問題としては非常に大きいわけであります。とりさえずればよろしいということではないわけです。限界があれば、とり尽くしてしまえば自殺行為と同じことです。そういうことをやっちゃいかぬ。またやらしめてはいけない。そこで、問題になるのが資源調査です。これは業者にやれと言ったって、業者がやれるものでない。だから、これは当然政府の手で資源調査をやらなければならぬ。四千八百三十億の水揚げに対して、一体四十年度予算で資源調査費を何ぼ見ているか。これは一億九千万円、生物資源というのはそれだけ。それに今度は八水研のものがあるわけです。だが、この入水研のものが何ぼあるかわからぬ。この表によると、大体一億三百八十一万六千円が研究費のようになっているのだが、このうち資源調査に一体どれほど使われるのか。半分としたら五千万円。一体これで何を調査しようとするか。こう言ったら悪いようだけれども、一例を以西にとってみる。以西トロール底びき漁業資源調査費三百三十八万八千円。これで一体何を調査しますか。南シナ海から東シナ海、黄海にかけて、いま以西のほうはだんだん魚体が小さくなってきている。これは相川先生が九大におられる時分から以西の資源問題は出ているわけです。これに対して三百二十八万八千円。これは何の調査をおやりになりますか。これで十分だとお感じになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/169
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170・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 資源調査に関する費用は必ずしもただいまあげられたものだけではないのであります。たとえば調査船の建造でありますとか、その他の費目に含まれているものもございます。それから資源調査は水準庁の調査船だけでなくて、都道府県の調査船等によって行なっています。その間の連携もとっているわけです。さらに一つは、資源調査の相当の部分は、実際に漁労している民間の漁船の報告による分析がかなり重要でございます。サケ・マスにいたしましても、以西の底びきにしましても、そうでございます。以西底びきについての資源の分析は、これはすでに一冊の報告となっておりますが、なかなかしっかりした報告が出ておるのであります。私がいま申し上げたのは、決していまの状態で十分であるというわけではございません。特にマグロ漁業等についての資源調査はまだきわめて不十分であるわけであります。これは漁労の結果を分析したのが主でございまして、もっと強化する必要があるのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/170
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171・赤路友藏
○赤路委員 長い間かかって、私も資料をもらおうと思ってあちらこちらへ要求してきたのだが、どうも資源調査の経緯というものがなかなか出てこない。あなたがいま言うようなわけに出てこない。だから、これは参考でけっこうですから、いま長官がおっしゃるように、少なくとも県段階はおいでおいで、国段階において、一体どの程度資源調査に四十年度経費を出しておるか、これはどうということなしにひとつお出し願いたい。私は資源というものに非常に大きな不安を感じるわけです。だから、政府のほうではもう積極的に資源に対する調査をしていただきませんと、あらゆるところでバランスが破れてきているわけです。これが今日の非常に大きな漁業の問題点になっておるわけですから、もっと資源調査をやり、そうしてその上に立って許可なり何なりというものをやらないと、許可が先にいっちゃって、資源調査が十分できていない、どんどん魚をとっていく、お手上げになる、これが私はいまの状態だと思うのです。この点はひとつ十分御考慮おき願いたいと思うわけです。
これは労働組合のほうから私の手元へきたわけなんでありますが、先生、資源の保護という前提が一つある、それは何かというと、人間尊重だと、こう言っている。人間尊重イコール資源の維持培養だ、保護だ、こういうことです。それは一体どういうことか聞いてみると、以西底びきにおける洋上転載がある。業者としては少なくともより多く利益をあげよう、よりよき経営をしようといたしますから、魚をとりたいということはよくわかるわけです。しかし、そういうような労働強化をやり、洋上転載のようなことをやって、どんどん魚をとっていくということは、まず人間尊重をやれば魚が保護されるのだということも、一面の見方としてはこういう見方もあると思うのです。こういうことも水産庁のほうでは十分してもらわなければならぬと思う。そういう面ではあれがなさ過ぎると思います。
ここへ話がきましたから、ついでにお聞きしておきます。ボーナストン数、これはあなたのほうから資料をもらいました、三十九年十二月末、カツオ・マグロ・ボーナストン数を与えて増トンしたものが五百四十、沖合い底びきで二百十九、以西底びきで百八十二、まき網が百四、サケ・マス流し網で三百三十四、はえなわ十一、合計して千三百九十隻、これだけ三十九年十二月末でマル十、ボーナストン数をもらっておるわけです。全部増トンしておるのでしょう。この船員設備改善に伴う増トン分が目的どおりに使われておるか、調査したことがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/171
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172・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 おおむねそのとおり増トンされておりますが、中には悪質の違反をしているものがあるようであります。というのは、船員設備の改善のための増トン、さらにまた改造していくというような例があるやに聞いております。これはさらに調査をいたしまして、悪質のものについては処分をいたしたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/172
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173・赤路友藏
○赤路委員 長官、マル十を許可するのは水産庁、増トン許可は水産庁、そして検査をやるのは運輸省、だから許可を出すほうと検査をするほうとは違うわけです。そこに一つ問題点がある。しかし、その通達によりますと、改造をしたその図面は見やすいところに掲示しておくということになっておる。私の聞く範囲では千三百九十隻、それはまるまるやっていないというのはないでしょうけれども、いずれにしても、ほとんど他のものに増トン分が使われておるというのが大半のように聞いておる。通達は出すが、出しっぱなし、実際問題として検査なんかしたことはない。これだけ問題になりながら、一隻も処分したやつはないでしょう。一隻でもありますか。ないんだ。やっていない。これは一つの例です。少なくとも政府が責任をもって通達をし、それが行なわれておるか行なわれていないかくらいのことは調べなければいかぬ。しかもそれは今度許可の更新期になった場合、これが一つのポイントになる。法律にはちゃんとあるわけです。こういうところにも問題が生じてくる。これは従来の水産行政のマンネリズムの一番大きな欠陥です。これは今後のあれもあることからでら、十分注意をしておいてもらわなければ困る。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/173
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174・湯山勇
○湯山委員 関連して。
いま赤路委員から私どもの非常に聞きたいことを聞いていただいておりますが・具体的なことでぜひ御要望申し上げ、御答弁いただきたい問題は、資源に関連する問題でございます。例をあげて申しますが、テングサなどは相当多量にメキシコあるいはアフリカ、スペインその他から輸入されております。しかしながら、民間研究の中に、テングサの養殖について相当進んだものがある。これについては水産庁としては、そのやり方にはこういう欠陥があるのだというようなことで、これを排除しておられます。しかし、排除すべきものじゃなくて、協力して完成してやるというかまえが私は必要ではないかと思うので、この点は、先ほどサケについて赤路委員から御質問がありましたが、テングサ等についても、これが完成されれば、ずいぶん輸入が少なくなってまいりますし、さらに真珠のいかだあたりも、下へつり下げて養殖するというようなことも私は可能じゃないかと思います。こういうこともぜひ進めていただきたいし、これと関連して、ワカメの人工養殖、取る漁業からつくる漁業といいますけれども、海藻資源などは全くつくるのにふさわしいもので、ワカメはすでに人工養殖されておりますが、コンブは一体どうなんでしょう。そういう研究が進められておるかどうか。さらにまたアマノリ、アマノリの優生世代は、実はアマノリを食べておるのは日本が本場でありながら、日本では結局見つけることができなくて、ヨーロッパのほうでこれを見つけた。しかし、そのことが、今日日本のアマノリの養殖に非常に大きな貢献をしておる。これは御存じのとおりです。そこで、そういった基礎的な研究、こういうのはぜひ水産庁として取り組んでいただきたい。現に残っている問題は、ウナギの生活史だと思います。これなども大西洋のウナギは生活史がはっきりしておる。ウナギを一番よく食べる日本が、ウナギの生活史がわかっていない。これなども、いまのアマノリの世代交番と同じように、これが一体解明されれば、ウナギの養殖にどんなに大きく貢献するか、これははかり知れないものがあると思うのです。さっきサケの川にさかのぼってくるということについてお話がございましたが、ウナギの稚魚なども、必ずしもいまのようにいつまでも川に上がってくるのに依存するということもできない時代が来るのではないかと懸念されるわけで、こういったような問題とほんとうに取り組むのかどうなのか、ひとつ御所見を伺いたいし、ぜひ取り組んでいただきたいという御要望を申し上げたいと思いますが、ひとつ御答弁をお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/174
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175・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 海草類の人工養殖あるいはウナギの養殖研究は、かなり水産庁としましては力を入れてやっている事項でございます。
養殖技術の進歩はかなり目ざましいものがあると思っておりますが、いまお話がありました中で、テングサの問題でございますが、これは私も詳しくは存じませんが、確かに民間に非常に熱心に研究している人がおります。国からこれに補助金をつけて実用化するように要請したが、水産庁がいつも断わるというような不満があり、国会請願なども出たということを聞いておりますが、これは必ずしも水産庁は断わっていないのでございます。構造改善事業で、そのテングサの養殖をやろうとする者には補助を出してほしいということにしておるのでございますが、都道府県は必ずしも取り上げない。やってみると、うまくいったり、うまくいかなかったりというのが事実のようでございます。
〔谷垣委員長代理退席、仮谷委員長代理着席〕
ウナギの生活史など、確かに、私しろうとでございますけれども、まだわかっていないところが相当ございますが、養殖には詳細なことがわかればもっといいわけでございますけれども、いまかなり進歩しておると思います。ヨーロッパの場合に比べて、日本の場合生活史を調べることが非常にむずかしいのではないか。沖縄沖で育つのじゃないかとか、いろいろいわれておるようでありますが、大西洋で発見されたものも、どうもかなり偶然的な要素があったやに聞いておるのであります。なかなかむずかしいのでありますが、調査は日本としてかなり進んでおると私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/175
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176・湯山勇
○湯山委員 申し上げておる点は、テングサにつきましては、研究は個人の犠牲においてやった。いまおっしゃったように、成功する場合もあるし、しない場合もある。それを成功するように協力して仕上げてやるということが、私は大切じゃないかということを申し上げておるわけで、県のほうで、うまくいくことといかぬことがあるからどうにもならないというのでなくて、ここまで来たものを——そして研究のポイントというものは、これが成功すれば非常に大きいと思います。そこで、ぜひ取り上げてひとつ完成するということに協力をすべきじゃないかということをお尋ねしているわけですし、ウナギの問題も、これも偶然の要素もあろうけれども、常にそういうことを心がけていなければなかなかできないことだし、アマノリの場合などは、世界で一番研究が進んでいるのは日本であったということですけれども、実はお株をヨーロッパのほうに奪われておるというようなことから、いわばもっとそういう方面に力を入れて、むだのようでもその金はどこかで生きてくるということですから、ひとつぜひそういう方面に画期的な力を入れていただきたいということを御要望申し上げまして、関連でございますから、終わることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/176
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177・赤路友藏
○赤路委員 それでは今度は日韓問題でお尋ねしますが、かなり重要な要素を含んでおります。日韓交渉の結果、仮調印が行なわれた。まだ正式調印に至っておりません。その仮調印の中の請求権の内容ですが、この合意内容の中に、韓国側により捕獲された日本漁船の損害賠償請求権は、公海における安全操業の維持を条件に白紙に戻す、こういうことが書かれているわけです。これは新聞発表だけがそうなっているのか。公海における安全操業の維持を条件にと、こうあるが、これはどういうことなのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/177
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178・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 日本漁船の拿捕されたものについての請求権につきましては、日韓交渉の妥結のための大局的な見地から、日本側が放棄したわけでございますが、その際に、これは日本としては李ラインを実質的に撤廃してもらって、日本の漁船の安全な操業をはかってもらうという大前提があることでございますから、そういう趣旨で日本側も放棄する、こういうことでありまして、条件といいますか、従来のように拿捕が続くようでは、そういったことではもう意味がなくなります。そういう考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/178
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179・赤路友藏
○赤路委員 ここが問題なんですね。これはことばの定義といいますか、これは非常にむずかしくなりますが、われわれは先ほどから言いましたように、公海における操業というものは自由でなければならぬ。公海自由の原則というものはどの国も異存はないと私は思う。公海における安全操業、そうすると、公海は公海でないということになる。公海における安全操業の維持ということ自体がおかしい。公海は自由でなければならない、こう解釈する。だから、公海でこちらが漁業をやろうとすることを、安全を維持するために何とかやってくれと向こうの相手国に言うということになるので、それはもう公海でなくなるわけです。これは変な理屈になるわけですけれども、これが共同規制水域内における操業についてはというならば、これは話はわかる。今度の場合は共同規制水域内においては旗国主義なんですからね。日本の船を監視し、日本の船が間違いを犯したとき、それを処置するのは日本国がやるので、相手の国がやるわけではない。だから、公海における安全操業を維持するために白紙に返して請求権を放棄するというのでは、話にならぬ。第一、筋が通らぬ。私は、共同規制水域内とかいうのなれば、それは認めましょう——というと変だけれども、これは納得しましょう。条約のもとで行なわれることだ。少なくとも公海と頭に打つ限りにおいては、こういうばかな話はない。日韓の問題だけじゃないのだから、これはあとへ悪い影響を及ぼしますよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/179
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180・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 私、合意事項を手元に持ってまいりませんでしたので、厳密なことばの面における解釈について申し上げるのはいたしかねますが、この請求権問題につきましては、私どもの了解している限りにおいては、日韓全体の懸案の解決の一環として処理するということでございまして、安全操業云々の問題というものは、確かにおことばのとおり、理論的には多少問題があるかもしれませんが、実質的には、とにかく拿捕漁船というものは、いままでひんぱんに拿捕が行なわれ、その結果として起きた問題でございまして、今後拿捕が続けられるようでは、拿捕漁船に対する請求権を放棄した意味がなくなる、こういうことであると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/180
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181・赤路友藏
○赤路委員 これは少し見解が違う。これは水産庁というよりも、むしろ請求権問題については、外務省が中心になってやっておったようでありますから、一応これは外務省のほうの見解をはっきりたださなければならぬと思います。先ほど来私が言うように、これが公海ということでなしに、共同規制水域ならわかる。政府は拿捕船に対して七十二億という損害賠償要求をやった。この損害賠償要求を出すゆえんのものは、李承晩ラインを認めていない。これは公海における操業であるという前提の上に立つわけです。だからこそ、要求は堂々とできるわけです。そして要求したのだと私は思う。日本が認めていない公海上において拿捕した。ただ、ここで論理的に言えることは、ある相手国と話しい合をして、公海の中に何らかの線を置いた、そこで問題を起こした、こういう場合は、これは別なケースになる。少なくとも日本が認めていない公海上において拿捕したということになると、これは不法拿捕だ。これから向こうとの間で日韓の問題を取り上げると、韓国と日本との中でそうした諸条約ができる。諸条約ができるときに、共同規制水域があり、専管区域がある。専管区域の中で操業をやられては困る、やりません、こういう約束をしておれば、たとえ日本側が三マイルという領海線を堅持したとしても、これは守らなければいけない。そういう中で操業をして、拿捕された場合は、これは不当拿捕ではない。操業するほうが間違っておる。共同規制水域の中でやる場合は、公海であっても共同規制水域でありますから、一つの自主的な規制がなければならぬ。これは守らなければならぬ。だから、その中では、したがって、旗国主義というものが主張されておる。こちらのほうがちゃんと約束を守ってやる限りにおいては、相手は手はつけられないはずだ。それで手をつけるようでは、この条約というのは何になりますか。その点では、公海における安全操業を維持することを条件にしておることは、大きな間違いだと私は思う。この点についてここでやったって、水かけ論のようになるかと思うから、あらためて外務大臣に出席を求めて、これは外務大臣のほうから十分見解を聞きたいと思う。
そこで、私はひとりつずばりお尋ねしますが、李ライン内で拿捕されたものは不当と考えるかどうか。先ほど言うように、不当であるからこそ、七十二億という損害補償を要求したのだと思うが、念のために聞いておきますが、不当であると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/181
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182・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 お答えする前に、先ほどあげられた文章は、合意事項の文章ではないと思うのでございますが、何からとられたのか、その点私どもには明らかでないので、お答えは少しあいまいであるかと思います。
それからいまの問題は、李ライン内で、領海の外で拿捕されたということは、不当なものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/182
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183・赤路友藏
○赤路委員 そうすると、不当に拿捕されたものであるから、当然損害賠償要求をした、こういうことになると思う。私もそう思う。七十二億円ということを聞いておるのだが、それはそのとおりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/183
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184・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 ただいままでの計算の結果では、大体七十二億程度と推定いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/184
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185・赤路友藏
○赤路委員 その内容をいまここですぐ提示せよと言っても無理だと思いますから、内容はひとついただきたいと思います。それで、七十二億という損害賠償要求をした内容の主たるものは、何と何か、いまわかりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/185
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186・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 船舶、漁具にこうむった損害、それからそれによって乗組員等が受けた損害、そのほか、これは一定の限界があると思いますが、得べかりし利益を失うというようなもの、そういうような考え方で計算されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/186
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187・赤路友藏
○赤路委員 おしまいのほうがよくわからなかったのですが、それじゃ私のほうからお尋ねします。
拿捕されたことによって受けた損害は、船はもちろん、漁具もそのまま持っていかれた。要するに、操業が不可能になった。これに対する損害。それから抑留船員が抑留期間中いろいろ虐待を受けたり、病気になったり、今日に至るも病床におる者がおる、あるいは不具になった者もおる。こういう乗り組み員のその間の損害あるいは将来に対する損失。それから小さな漁家なんですが、それが拿捕されたために倒産をした、あるいは廃業をして、今日生活保護法のもとにある。こういうような者があるやに私は聞いているし、現にここに一つ出てきているわけなんだが、そうしたものの損失もこの七十二億の中に入っておるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/187
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188・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 この数字の内容につきましては、さらに検討中でございますので、いまこまかく申し上げることもいたしかねますが、さらに実態的にいろいろなケースがあると思います。したがって、それを取り上げた話の計算ではないのでございます。大体考え方としては、漁船、漁具、積載物、それから事件に伴う出費といっておりますが、操業できなかったことによる損失といいますか、それから乗り組み員の賃金、休業の損害、そういった事項でございます。倒産による損害等も含めております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/188
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189・赤路友藏
○赤路委員 それでは、私は手元へ来ておる資料で、あなたのほうへも来ておるかもしれぬが、参考のために申し上げておきます。
これは以西底びき第二十二昭徳丸の甲板員一野万吉、これは四十三歳になりますか、「昭和三十七年十月十三日午前一時三十分より、韓国警備艇より追跡を受け、午前四時三十五分拿捕されたのであるが、拿捕の際移乗してきた韓国警備艇に銃の床尾板で頭部及び腰部を強烈に数回殴打された。釜山連行後、簡単な手当を受けたが、痛みがとまらず治療を受ける事も出来ないまま同年十二月十四日釈放、帰国し、福岡市浜の町病院等で精密診断を受けた結果、腰椎の複雑骨打と判明した。爾来現在尚入院加療を続けているが、ギブスを入れて横臥したままである。」これがこの四十三歳の乗り組み員。もう一つありますが、それは言いません。これはまた変わっている。変わっているが、言いませんが、これに対する病院の医師の診断ですが、浜の町病院の有沢修というお医者さんの診断です。ずっとこまかく詳細に書いておりますから、それは抜きます。「今後の見通しについて 尚現在神経根症状が残存しているため、今後之に対する検討、処置を必要とすると思われるが、将来海上勤務を含めて、重労働につくことは出来難いものと考えられる。」こういうことです。だから海上勤務、重労働はできない、こういうことを医師は証明をしておるわけです。これに対して、それではどういう計算でこれの将来を保障してやるか、損害賠償をどういう形でとるか、これが問題になると思うのです。だからこれは一例だ。これからあなた方が計算をするというのなら、こういう者もあるという形で、ひとつはっきりと聞いておいていただきたい。先ほどの四十三歳の人、本人の事件が起きてから今日までの収入、これは船員保険傷病手当金、これを受け取っております。これが本人の当初のやられたときの配当金をも含めて九十万三百七十九円、これが船員保険の傷病手当金の総額なんだ。三十七年の九月ですから、それから四十年の三月まででこれだけの金額なんです。これに対して、会社側からの見舞い金が月額六千円、合計いたしまして、十一万四千円、そうしますと、この事件を起こして現在までの収入が百一万四千三百七十九円、あとはあまりこまかく言いませんが、ざっと百万円、これがいままでの収入。これをかりにこの期間事故がなかった、本人が元気で就業をしておったといたしますと、本人が受け取るべきこの間の金額は百七十八万円なんです。こまかい点は捨てましょう。百七十八万円なんです。月に平均いたしますと、五万七千四百三十円と出ておる。これは私どもが、ちょうど一ヵ月ほど前ですが、以西底びきの五つの労働組合の諸君に来てもらって、いろいろこまかく調査いたしましたが、大体以西底びきにおける普通一人前の甲板員の月給は五万七、八千円、だからこれはこのとおりだと思う。そうすると、百七十八万円は、当然元気で事故がなければ収入があるわけです。それが百万しかないわけですから、先ほど言ったように、船員保険の関係が百万円しかないから、ここで大体七十七万ほど収入が減じておることになる。それから先ほどお医者さんのを読んだように、この人はもう重労働につけない。だから、これを一応換算すると、四十三歳から五十五歳を定年として、この間の収入、これを見ていきますと、大体月額五万七千円ですから、四十三歳から五十五歳まで十二年七ヵ月、これを計算すると、八百六十七万円になる。これが収入可能の金額。それから船に乗って操業をする間の一日の食事、これは全部船主持ちなんですね。三百円、月二十日間とすると、これが九十万六千円になる。それから退職金がこの間もらえるのが二十三万五千円、これを全部合計いたしますと、千五十七万八千八百九十円になる。だから、通常事故がなくて働いて、そうして定年までいってやめた場合のその間の収入というものは一千五十七万八千八百九十円になる。こういうことが少なくとも一つ前提になっていかなければいけない。これが一〇〇%かなえられるか何パーセントかなえられるかは、これは別。しかしながら、現に政府が認めない公海において、相手国に拿捕され、しかも殴打され、病気になり、現在なおかつ病床にある。もう重労働はできない。船には乗れない。ほうっておくという話はない。当然要求してしかるべきだと私は思うわけだ。ところが、先ほどから言ったように、大局的見地の上に立って、これを白紙還元して放棄したことになれば、これらのことは政府が補償する責任が生じてくると私は思う。これを何らできないということがあっては、これは人道上の問題だ。これは一つの例にしかすぎない。萩であるとか、山口県のあの近海の小さい船主で、すでに倒産をし、今日生活保護を受けて生活しておるということを私は聞いておる。これも大きな犠牲なんです。農地報償法案で千五百億も出す政府が、少しは考えてみたらどうか。こういうものがあるが、いずれもこれは資料としてお出しいたします。私のほうへこれは来ているものです。だから、こういうことを十分ひとつ勘案をし、そうして落ちなくやってもらいたい。簡単なものじゃありませんよ。
ここで一つお尋ねしますが、倒産をして生活保護を受けている人間が何人あるか、こういうように不具になっておる者が何名おるか、あそこでやられて、もう船へ乗れないで、ほかの職場で働いておる者も何名あるか、そういう調査はできていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/189
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190・松岡亮
○松岡(亮)政府委員 手元に資料を持ってまいっておりませんが、障害で再起不能と認められる人は二人おられる、大体そういうようなことです。倒産した方も若干おると思っておりますが、手元に遺憾ながら資料を用意しておりませんので、正確なことは申し上げかねます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/190
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191・赤路友藏
○赤路委員 おそらくこの点はできていないだろうと私は思う。そこで、まだ正式調印をしたわけでもない。私が先ほど言ったように、大局的見地の上に立って、損害賠償請求を放棄したわけです。当然政府は責任を持たなければなりません。そのためにも、そういうものをよく調査すること。黙っておる者がばかを見る、何かかんか言った者だけが何とかしてもらえるというようなことでは、これはほんとうに正しい政治のあり方ではない。行政のあり方ではありません。現にそうしたものがある。それだけに、私は、ぜひひとつ詳細に十分それらの点を調査し、その人たちに、たとえどういう姿であるにしても、少なくとも納得のいくような万全の処置をとる、そうしてこそ、放棄したことが、大局的見地から放棄したのだと認められる。放棄するだけは放棄してしまって、あとは野となれということで、ほうりっぱなしにしておくことは、私は筋が通らぬと思います。この点、要望をいたしておきます。
もう一点だけで、あとは次回へ譲りますが、そこで、聞きたいのは、正式調印がないのだからやめておきましょう。私は、いますでに仮調印の中で決定された出漁隻数、これをどうするかということは、今後のかなりの問題点だと思うわけです。何を一体基準にしてやるのか。こうしたものが単なる陳情の度数であるとか、あるいはもっと率直に言って、政治的圧力であるとか、何か変なものでやられるというと、事後に非常なしこりを残す。少なくとも、どの面から考えてみても妥当である、正しい、こういうような一つの基準をすっかりきめて、その基準の上に乗ってこうしたものは決定していく、そうあるべきだと思います。まだ正式調印がありません。おそらくいま作業中であろうと思うが、その作業にあたっては、いま私が申し上げたようなことをひとつ十分腹の中へ入れて、これに対処してもらいたいと思う。いずれこれは後刻答弁を求めることにいたします。
もう大体五時半も過ぎたようでありますから、本日はこれで終わりますが、なお、きょうは特に松井委員にも出席を願っておるわけなんでありまして、私は沿岸問題にもほとんど今日は触れておりません。したがって、この漁業問題につきましては、後日また足らざる点は私のほうから、あるいはまた松井委員のほうから御質問申し上げますから、これで本日は私のほうの質問を終わることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/191
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192・仮谷忠男
○仮谷委員長代理 次会は明十九日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後五時三十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805007X03919650518/192
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