1. 会議録本文
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000・会議録情報
本国会召集日(昭和三十九年十二月二十一日)(
月曜日)(午前零時現在)における本委員は、次
の通りである。
委員長 久野 忠治君
理事 上村千一郎君 理事 小澤佐重喜君
理事 坂田 道太君 理事 長谷川 峻君
理事 南 好雄君 理事 二宮 武夫君
理事 三木 喜夫君 理事 山中 吾郎君
大石 武一君 加藤 精三君
木村 武雄君 熊谷 義雄君
田川 誠一君 谷川 和穗君
床次 徳二君 中村庸一郎君
橋本龍太郎君 原田 憲君
松田竹千代君 松山千惠子君
森 清君 落合 寛茂君
川崎 寛治君 實川 清之君
長谷川正三君 前田榮之助君
和田 博雄君 鈴木 一君
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一月二十五日
久野忠治君委員長辞任につき、その補欠として
渡海元三郎君が議院において委員長に選任され
た。
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昭和四十年二月十日(水曜日)
午前十時五十五分開議
出席委員
委員長 渡海元三郎君
理事 上村千一郎君 理事 小澤佐重喜君
理事 坂田 道太君 理事 南 好雄君
理事 八木 徹雄君 理事 二宮 武夫君
理事 三木 喜夫君 理事 山中 吾郎君
木村 武雄君 久野 忠治君
熊谷 義雄君 床次 徳二君
中村庸一郎君 橋本龍太郎君
松田竹千代君 松山千惠子君
足鹿 覺君 落合 寛茂君
川崎 寛治君 高橋 重信君
長谷川正三君 前田榮之助君
鈴木 一君
出席国務大臣
文 部 大 臣 愛知 揆一君
出席政府委員
文部政務次官 押谷 富三君
文部事務官
(大臣官房長) 西田 剛君
文部事務官
(大臣官房会計
課長) 岩間英太郎君
文部事務官
(大学学術局
長) 杉江 清君
文部事務官
(管理局長) 齋藤 正君
委員外の出席者
専 門 員 田中 彰君
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一月二十日
委員實川清之君辞任につき、その補欠として足
鹿覺君が議長の指名で委員に選任された。
同日
高橋重信君が議長の指名で委員に補欠選任され
た。
同月二十五日
委員加藤精三君及び長谷川峻君辞任につき、そ
の補欠として渡海元三郎君及び三木武夫君が議
長の指名で委員に選任された。
同日
委員三木武夫君辞任につき、その補欠として八
木徹雄君が議長の指名で委員に選任された。
二月十日
理事長谷川峻君一月二十五日委員辞任につき、
その補欠として八木徹雄君が理事に当選した。
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昭和三十九年十二月二十一日
学校警備員の設置に関する法律案(三木喜夫君
外八名提出、第四十六回国会衆法第二二号)
学校給食法の一部を改正する法律案(二宮武夫
君外二十名提出、第四十六回国会衆法第三三
号)
学校給食法の一部を改正する法律案(小平忠君
外一名提出、第四十六回国会衆法第五一号)
昭和四十年一月二十八日
産炭地域における公立の小学校及び中学校の学
級編制及び教職員設置に関する特別措置等に関
する法律案(豊瀬禎一君外四名提出、参法第二
号)(予)
二月三日
国立学校設置法等の一部を改正する法律案(内
閣提出第三二号)
同月六日
国立養護教諭養成所設置法案(内閣提出第四〇
号)
一月二十七日
すし詰め学級解消等に関する請願(綾部健太郎
君紹介)(第七四号)
同外六件(一萬田尚登君紹介)(第三一五号)
同外三件(廣瀬正雄君紹介)(第三一六号)
学校警備員の設置に関する法律案成立促進に関
する請願(上村千一郎君紹介)(第七五号)
同(山中吾郎君紹介)(第七六号)
同(落合寛茂君紹介)(第一五〇号)
同(川崎寛治君紹介)(第一五一号)
同(松田竹千代君紹介)(第一九三号)
学校栄養士設置に関する請願外九件(野田卯一
君紹介)(第七七号)
同(山田彌一君紹介)(第三一七号)
同外一件(荒舩清十郎君紹介)(第三五六号)
教科書の国家統制排除等に関する請願(山中吾
郎君紹介)(第八一号)
学校給食法の一部を改正する法律案等成立促進
に関する請願外一件(川崎寛治君紹介)(第一五
二号)
同(谷川和穗君紹介)(第二六五号)
義務教育費国庫負担法の一部改正に関する請願
外一件(川崎寛治君紹介)(第一五三号)
同(谷川和穗君紹介)(第二六六号)
教育予算確保に関する請願外一件(川崎寛治君
紹介)(第一五四号)
同(谷川和穗君紹介)(第二六七号)
産炭地教育特別措置に関する請願(上村千一郎
君紹介)(第一九四号)
同(藏内修治君紹介)(第一九五号)
同(進藤一馬君紹介)(第一九六号)
同(田川誠一君紹介)(第一九七号)
同(田中彰治君紹介)(第一九八号)
同(田中六助君紹介)(第一九九号)
同外一件(滝井義高君紹介)(第二〇〇号)
同(竹内黎一君紹介)(第二〇一号)
同(塚田徹君紹介)(第二〇二号)
同(西岡武夫君紹介)(第二〇三号)
同(野見山清造君紹介)(第二〇四号)
同(橋本龍太郎君紹介)(第二〇五号)
同(原田憲君紹介)(第二〇六号)
同(三原朝雄君紹介)(第二〇七号)
高等学校父母負担の軽減等に関する請願(丹羽
喬四郎君紹介)(第二六四号)
同外二件(華山親義君紹介)(第三三八号)
滋賀大学学芸学部付属高等学校設置に関する請
願(宇野宗佑君紹介)(第三四七号)
国立近代美術館の移転新築に関する請願(中曽
根康弘君紹介)(第三五七号)
二月五日
高等学校父母負担の軽減等に関する請願(神近市
子君紹介)(第三六五号)
同(安宅常彦君紹介)(第五四〇号)
日本育英会法の一部改正に関する請願(神近市
子君紹介)(第三六六号)
私立学校に対する一般公費助成の増額及び補助
制度確立に関する請願(神近市子君紹介)(第
三六七号)
学校警備員の設置に関する法律案成立促進に関
する請願外一件(内海清君紹介)(第四〇〇号)
産炭地教育特別措置に関する請願(滝井義高君
紹介)(第四〇一号)
同(野原覺君紹介)(第四〇二号)
教職員給与費等の国庫負担に関する請願(田中
彰治君紹介)(第四一六号)
学校図書館法の一部改正に関する請願外二百十
四件(上村千一郎君紹介)(第六八一号)
学校栄養士設置に関する請願(吉村吉雄君紹介)
(第六八二号)
僻地小規模校の教職員定数等に関する請願(鈴
木善幸君紹介)(第六九四号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
理事の補欠選任
国立学校設置法等の一部を改正する法律案(内
閣提出第三二号)
国立養護教諭養成所設置法案(内閣提出第四〇
号)
文教行政の基本施策及び昭和四十年度文部省関
係予算について説明聴取
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00119650210/0
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001・渡海元三郎
○渡海委員長 これより会議を開きます。
この際、一言ごあいさつを申し上げたいと存じます。
このたびはからずも私、文教委員長に選任されました。たいへん未熟な者でございますが、たんのうなる皆さま方の御支援によりまして、本委員会の円滑なる運営を期してまいりたい所存でございます。何とぞ委員各位の御協力をお願い申し上げまして、ごあいさつといたします。(拍手)
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00119650210/1
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002・渡海元三郎
○渡海委員長 理事の補欠選任の件についてお諮りいたします。
ただいま理事一名が欠員となっておりますので、その補欠選任をいたしたいと存じます。
先例によりまして委員長より指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00119650210/2
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003・渡海元三郎
○渡海委員長 御異議なしと認めます。よって、八木徹雄君を理事に指名いたします。
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00119650210/3
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004・渡海元三郎
○渡海委員長 文教行政の基本施策について、愛知文部大臣から発言を求められております。
この際、これを許します。愛知文部大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00119650210/4
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005・愛知揆一
○愛知国務大臣 第四十八回国会において文教各般の問題について御審議をいただくにあたりまして、文教行政に関する所信の一端を申し述べたいと存じます。
国家、民族を興し、国際社会において人類の福祉と平和に貢献しようとする国民の意欲と能力は、教育によって養われるものであります。世界各国とも、発展途上の国はもとより、すでに高度の発達を遂げた先進国においても、非常な熱意をもって教育の改善充実に力をいたしておりますのも、教育のこの役割りがあらためて認識されておるからであると考えます。
わが国の教育は、先人の見識と努力によって、世界的にも誇り得る水準に達していると思うのでありますが、このような世界各国の教育の発展と拡充におくれをとることのないよう一段と努力をいたす必要があると思います。
心身ともに健康な青少年は、民族の原動力であります。私は、青少年諸君が国を愛する心情に満ち、伝統と歴史を正しく理解するとともに、未来からの呼びかけにこたえ、世界の平和と福祉に役立つ日本人として、またよりよき世界市民として成長することを願うものであります。
さきに、中央教育審議会の第十九特別委員会が期待される人間像の中間草案を公表いたしました。教育者がどのような人間の育成を期するかについて、自覚を深め、常に反省を加えることは、きわめて大切なことと考えます。それゆえ、広く国民各層の間から、この草案についての活発な御意見が寄せられ、教育関係者に良き指針となり得るような答申が作成されることを期待いたしております。
戦後二十年、私どもは、混乱と荒廃の中から立ち上がり、いまや世界の驚異の的となるほどの復興、発展を遂げ、昨年はオリンピック東京大会を成功裏に終え、諸外国の日本に対する認識と評価を高めるとともに、それにも増して、日本国民、特に青少年に与えた自信と夢はきわめて大きなものがあったと存じます。私は、このような青少年の自信を高揚し、未来にかける夢をすくすくと伸ばし得るよう必要な教育諸条件を整え、適切な指導を行なうことこそ文教の基本であると確信いたしております。もとより文教の施策は長期的な視野に立って着実に推進すべきであります。ことさらに新しきを求めることなく、文教年来の施策を地道に発展させつつ、国民の期待と要望にこたえて、その改善充実につとめてまいる所存であります。
私は、かかる観点に立って見ました場合、教育の機会均等の確保、教育における格差是正、父兄負担の軽減により一そうの努力をいたすとともに、学校教育、社会教育を通じて、教育施設設備の整備、教育内容の刷新充実に一段と意を用いる必要があると思います。また、幼少期における教育の重要性を考え、幼児教育及び家庭教育についても十分に配慮していきたいと存じます。なお、心身ともに健康な青少年を育成する上で、たくましい体力、気力を養うための諸方策を推進する必要があることを痛感いたすものであります。
次に、高等教育、特に大学の拡充の問題につきましては、社会的需要の趨勢と大学志願者の増加並びに大学教育の質的向上を配慮して対処すべきものと思います。このため、国立大学においては、特に地方の大学の整備充実に留意しつつ、量質両面にわたって拡充をはかるとともに、私学についてはその役割の重要性にかんがみ、かねて私学振興方策を進めておりますが、さらに適切な方策を推進するための調査会を設けて有識者の意見を承りたいと存じております。
なお、高等学校、大学等入学試験における競争の激化は、社会における学歴偏重の傾向と家族の過大な要望によるところも少なくないと思われますので、この点につきまして、社会や家庭の理解と協力を求めるとともに、学校における一そう適切な進路指導を期待いたしております。
また、最近における学術研究の急速な進展は、まことに驚くべきものがあります。かかる事態に即応して、学術研究の振興、特にわが国基礎研究の分野で重要な役割りを持つ大学の研究体制の整備は、きわめて大切なことと考えております。
さらに、わが国の伝統あるすぐれた芸術、文化を保存、継承するとともに、よりよき芸術、文化の振興のため積極的方策を講ずることもゆるがせにできないものと存じます。他面、開放経済の体制下、教育、学術、文化の分野においても、その交流と国際的活動に対する積極的な参加は、人類の福祉と平和のためにもきわめて肝要であることをあらためて認めざるを得ません。
終わりに、教育振興の第一の要諦は、教育界に人材を得、教育関係者が教育に対する正しい使命感と青少年に対する理解と愛情を基礎として専心事に当たるにあると考えます。このため、学校教育、社会教育両面にわたり、教職員、指導者の研修活動の充実強化、教育研究意欲の高揚等につとめ、その資質の向上に格段の意を注ぐとともに、教職員の待遇改善についてもさらに留意してまいりたいと存じます。
以上、日ごろ考えておりますことの一端を申し述べ、具体的なことは、予算案の概要の説明に譲ることといたしますが、もとより文教施策の推進は、ひとり文教行政当局だけでなし得るものではございません。国民全体の理解と協力にまつところきわめて大きいのでありますので、皆さま方の一そうの御協力をお願い申し上げる次第ございます。
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00119650210/5
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006・渡海元三郎
○渡海委員長 続いて、予算案の概要説明につき、文部大臣より発言を求められております。これを許します。愛知文部大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00119650210/6
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007・愛知揆一
○愛知国務大臣 昭和四十年度の文部省所管の予算案につきましてその概要を御説明申し上げます。
まず、文部省所管の一般会計予算額は四千四百六十九億八千八百五十一万八千円、国立学校特別会計の予算額は千六百七十五億八千九百七十万五千円となっており、その純計は、四千八百億千七百九十五万円であります。
この純計額を前年度当初予算額と比較いたしますと、およそ六百四十九億円の増額になりますので、その増加率は、十五・六%になるわけであります。
この増加率は決して十分とは申せませんが、一般会計予算総額の増加率を考えますと、文教予算に重点が置かれていることは明らかであろうかと存じます。また、内容的にも従来とかく見のがされがちでありました面につきまして、できる限りきめのこまかい配慮を加えたつもりであります。
以下、昭和四十年度の予算案におきまして、特に重点として取り上げました施策について御説明申し上げます。
まず第一は、初等中等教育の改善充実であります。
前年度に引き続きまして、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数を改善し、施設設備の整備を進めることといたしましたほか、さらに教科書の無償給与を推進し、学校給食の充実をはかる等の施策を進めることといたしておりますが、要保護・準要保護児童生徒に対する就学援助、僻地教育及び特殊教育の振興につきましても特に留意し、教育の機会均等の趣旨に沿うようにつとめました。
そのうち、まず、学級編制及び教職員定数の充足につきましては、学級編制の基準を原則として小・中学校いずれも最高四十八人に改めるとともに、標準法に基づいて教職員定数の充実をはかり、また、特殊学級担当教員及び充て指導主事の増員などを行なっております。次に、給与の改善につきましては、給与改定、管理職手当の引き上げ等を行なうことといたしましたほか、僻地にすぐれた教員を配置するため、僻地勤務教員の優遇策について特別に考慮いたしております。
次に、公立文教施設につきましては、既定計画の線に沿ってその整備を進めることとし、小・中学校の校舎及び屋内運動場の整備、危険校舎の改築、学校統合に伴う校舎等の整備を行なうために、公立文教施設整備費二百八億円を計上いたしました。そのうち、危険校舎、統合校舎等の事業量、建築単価及び構造比率の改善につきましては、それぞれ、実情に即して配慮を加えております。
次に、父兄負担の軽減をはかる趣旨から、小規模学校の教材の充実を含めて教材費の増額をはかりましたほか、国・公・私立学校を通じて、小学校及び特殊教育諸学校の小学部の第一学年から第六学年までの児童に、全教科書を国の負担において無償給与することにいたしております。
また、学校給食につきましては、小麦粉について従来の補助を継続いたしますとともに、ミルク給食につきましては、酪農振興の見地から、国内産牛乳の大幅な使用増加を前提として、所要の補助金を計上いたしました。
さらに、学校給食の施設設備につきましては、完全給食の実施を目途として、従来に引き続き単独校の計画的整備をはかるとともに、最近特に要望の強い共同調理場の整備費について大幅な増額を行なっておりますほか、新たになま牛乳の殺菌設備の補助を行ない、また、栄養職員の設置につきましても補助対象人員の増加をはかっております。
このほか、関係市町村のかねての要望にこたえて、小・中学校の遠距離通学者に通学費を支給する市町村に対し、新たに補助金を交付する道を開いて、義務教育の円滑な実施をはかることといたしております。
次に、僻地教育の振興につきましては、まず、僻地に勤務する教員の人事交流の円滑化に資するため、僻地勤務教員の優遇措置を講ずるとともに、教員住宅の建設について一そうの充実をはかり、また、僻地に勤務する教員の子弟の教育のために、新たに高等学校の寄宿舎建設に対する補助を行なうことにいたしました。さらに、僻地の教育環境の整備につきましては、引き続き、スクールバス・ボート、視聴覚教育設備、僻地集会室等について補助を継続いたしますとともに、小・中学校の寄宿舎の建設費及び運営費に対する補助金の増額を行なうなど、総合的、かつ重点的に施策を推進することといたしております。
次に、特殊教育につきましては、養護学校及び特殊学級の計画的な普及と就学奨励費の内容の充実をはかるために必要な経費を計上いたしますとともに、職業教育の一そうの充実を期するため、特殊学級の設備及び特殊教育諸学校の技術・家庭科の設備の充実について補助金を増額いたしております。
また、要保護・準要保護児童生徒の就学援助につきましては、それぞれの品目について補助単価の改定を行ない、その内容の充実につとめております。
このほか、前年度に引き続き、道徳教育及び生徒指導の充実強化をはかるために必要な諸経費を計上し、また、教職員の研究活動を推進するため、各種教育研究団体の助成を強化するとともに、都道府県に総合的な研修センターを設置するために必要な補助を行なうことといたしました。
また、幼児教育の重要性にかんがみ、多くの父兄の要望にこたえて、幼稚園の普及整備のために必要な施設、設備の補助を増額計上いたしております。
第二は、大学教育の拡充であります。
国立学校特別会計予算につきましては、前年度の当初予算額と比較して二百八十一億円の増額を行ない、約千六百七十六億円を計上いたしました。その歳入予定額は、一般会計からの繰り入れ千三百四十五億円、借入金三十五億円、附属病院収入二百十七億円、授業料及び入学検定料三十七億円、学校財産処分収入十七億円、その他雑収入二十一億円であります。歳出予定額の内訳は、国立学校運営費千三百十九億円、施設整備費三百五十二億円などであります。
まず、国立大学の拡充整備につきましては、公立一農科大学の国立移管を含む八学部の開設、三十五学科の新設及び拡充を行ない、特に多年の懸案でありました文理学部の改組を、まず四大学について実施することといたしております。
また、教員養成制度の改善につきましては、制度全般についてなお検討を進めておりますが、さしあたり教員養成大学、学部の入学定員の改定、養護教諭養成所及び必要な養成課程の新設、宮城教育大学の創設などの措置をとることといたしております。
このほか、前年度に引き続き、中堅技術者の育成のため七工業高等専門学校を新設する計画であります。
以上の結果、大学及び短期大学の学生定員の増加は、合計約三千四百人となっております。
さらに、教官当たり積算校費、学生当たり積算校費、設備費等のいわば基準的な経費につきましてその増額をはかりますとともに、新制大学における大学院修士課程の拡充についても特段の配慮をいたしております。
次に、施設の整備につきましては、財政投融資資金及び不用財産の処分収入を財源の一部に含めまして予算額の大幅な増額をはかり、一段と施設整備の促進をはかることといたしておりますが、特に土地の取得のために財政投融資資金を利用いたしましたことは新しい構想であり、今後の成果を期待いたしたいと存じます。なお、施設整備のために、後年度分について四十五億五千万円の国庫債務負担行為を行なうことができることといたしております。
次に、育英奨学につきましては、大学院奨学生及び教育特別奨学生の増員を中心として、引き続き事業の拡充をはかるとともに、日本育英会につきまして奨学金の返還業務の促進に要する経費を増額し、約八十九億円を計上いたしております。
第三は、私学振興の拡大であります。
私立学校の振興は、文教政策の今後の重要な課題でありますが、昭和四十年度の予算案におきましては、特に重点としてこれを取り上げ、格段の努力をいたしたところであります。まず、私立学校振興会に対する政府出資金及び財政投融資資金からの融資につきまして、合わせて百十億円と、これを前年度の二倍に拡大し、私学全般の施設の改善充実をはかることといたしております。
次に、私立大学等理科特別助成費及び私立大学研究設備助成費につきましては合わせて五億円増の約三十億円を計上し、科学技術教育の振興にも資するとともに、新たに私学の教職員の研修センターに対する建設費の補助を計上する等の施策を講じております。
第四は、学術研究及び科学技術教育の振興であります。
わが国の学問及び科学技術の水準を高め、ひいては国民生活の向上に寄与するため、学術研究及び科学技術教育の振興につきましては、かねてから努力を続けてまいっているところであります。
明年度におきましては、まず、学術研究について、重要基礎研究の促進をはかるために、科学研究費の増額を行ないましたほか、原子力、防災科学、宇宙科学等の研究のために必要な経費を計上し、また、電子工学研究所の新設、海洋研究所、宇宙航空研究所等の整備をはかることといたしました。
さらに、国際的な学術研究の協力体制を強化するため、引き続き日米科学研究協力事業等について所要の経費を計上するとともに、南極地域観測事業の再開に必要な経費を計上いたしております。
次に、初等中等教育の分野におきましては、中央産業教育審議会の答申の趣旨に従い、産業教育関係の施設設備の改善充実をはかるとともに、自営者養成のための農業高等学校の寄宿舎、実習施設等を整備することにいたしました。
なお、科学技術者の養成につきましては、昭和四十年度におきましても引き続き理工系学生及び工業高等学校生徒の増募を行なうため、大学、高等専門学校及び工業高等学校の充実整備をはかっておりますが、国立学校関係につきましては、先程述べました学部、学科の増設等により約二千五百人の理工系学生の増募を行なうことといたしております。
第五は、青少年の健全育成と社会教育の振興であります。
働きながら学ぶ青少年の教育問題は、学校教育及び社会教育の両面にわたって深く意を用いるべきところであると存じます。まず、学校教育の面におきましては、引き続き定時制高等学校の施設設備の整備、定時制及び通信教育手当の支給、通信教育用学習書の給与等に必要な経費を計上いたしましたほか、夜間定時制高等学校につきまして、夜食費補助金及び運動場照明施設整備費補助金を増額計上いたしております。
また、社会教育の面におきましては、勤労青少年に学習及び訓練の機会を与えるため、国立第四青年の家を新設いたしますとともに、引き続き公立青年の家の整備を進めることとし、さらに青年学級及び勤労青年学校の内容の充実をはかり、また、中学校卒業後直ちに就職する青少年のために研修を行なう経費も新たに計上いたしました。
次に、社会教育は、広く国民の資質の向上に大きな役割を果たしており、その普及振興は学校教育の充実とともに、きわめて大切なことであります。このため、まず公民館、図書館、博物館等の施設、設備の整備を一そう推進するとともに、家庭教育、婦人教育あるいは同和教育等の振興のために必要な諸経費を計上いたしておりますが、同時に、すぐれた社会教育指導者の養成は社会教育振興のため最も必要なことと存じますので、新たに国立社会教育研修所の設置に関する経費を計上いたしました。
次に、体育の普及奨励につきましては、広く国民一般に対し体育を普及奨励するため、水泳プールの整備に必要な経費を大幅に増額いたしますとともに、体育館、運動場のほか、新たに公立高等学校の柔剣道場を整備するための補助金を計上いたしております。
また、スポーツ活動の指導者養成、スポーツ教室及びスポーツテストの普及、スポーツ団体の助成等について必要な経費を増額いたしましたほか、相次ぐ登山事故の防止のためすぐれた指導者を養成する必要を考え、新たに国立の登山センターを設置するための準備を進めることといたしました。またオリンピック東京大会を記念いたしまして、選手村あとの施設を活用してオリンピック記念青少年総合センターを設立するための経費一億二千万円を計上いたしております。
第六は、芸術文化の振興であります。
芸術文化の質的向上をはかるとともに、すぐれた芸術を広く国民に普及いたしますことは国民生活の文化的向上をはかる上にきわめて必要なことであります。このため、近代文学館その他の芸術関係団体の助成を強化し、芸術祭の開催等を行なうことといたしておりますほか、歌舞伎、文楽等のすぐれたわが国の伝統芸術の保存と振興をはかるため国立劇場の建設を進め、さらには、東洋美術の公開展示のための東洋館の建設を行なう等、関係予算の大幅な増額を行なっております。
次に、文化財保存事業につきましては、保存修理事業を拡充し、防災施設の整備をはかる等、その充実について努力を重ねておりますが、特に最近、国土開発の急速な進展に伴って、史跡、埋蔵文化財等の保護対策の強化が痛感されておりますので、平城宮趾の買い上げ、発掘調査の促進をはじめ、その他の史跡につきましても、その公有化、環境の整備等をはかるため必要な経費を増額計上いたしました。
第七は、国際文化の交流であります。
国際文化交流関係の予算につきましては、まず、アジア文部大臣会議をはじめ、教育、学術、文化、スポーツ等、各種の国際会議への積極的な参加及びわが国で開催される国際会議に対する援助を積極的に行なうことなどによりまして、国際機関、団体等との協力提携をいよいよ密にするとともに、文化協定締結国等との学者、研究者、学生の交換、学術の共同研究、芸術、文化財の交流、スポーツを通じての国際交歓などをさらに推進し、また国際文化団体への助成を強化いたしたいと考えております。
次に、各国の要望にこたえて、留学生の受け入れ体制、特に日本語教育体制の整備についてくふうを重ねますとともに、新たにアジア・アフリカの学生を主として受け入れるためユネスコ国際大学院コースを開設することにいたしました。なお、最近海外勤務者が激増しつつあり、その子弟の教育が切実な問題となっておりますおりから、その教育対策につきましては、これを一段と積極的に推進することといたしました。
以上のほか、産炭地域における教育につきましては、放置できない実情でありますので、就学援助費、給食費等について援助を強化するため、一般予算措置のほかに特別の配慮を加えております。
その他、沖繩の教育に対する協力援助費につきましては、これを大幅に増額して別途総理府所管として計上いたしております。
以上、文部省所管予算案につきましてその概要を御説明申し上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00119650210/7
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008・渡海元三郎
○渡海委員長 次に、昭和四十年度文部省関係予算の詳細につきまして説明を聴取いたします。岩間会計課長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00119650210/8
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009・岩間英太郎
○岩間説明員 お手元にお配りしてございます事項別表に従いまして大臣の説明を補足して御説明申し上げます。
まず、初等・中等教育の改善充実でございますが、その第一は、義務教育費国庫負担金でございます。給与費関係の総額は約二千三百十七億円でございまして、前年度当初予算に比べて二百九十四億円の増加となっておりますが、そのうち給与改定分が二百十二億円を占めております。教職員の定数につきましては、明年度は約七十五万人の児童・生徒の減少がございますので、これに伴う教職員の減があるわけでございますが、その反面、学級編制の最高を一学級四十九人から四十八人に引き下げる等の標準法の実施のための増員、充て指導主事三百二十人の増員、特殊学級一千学級の増設に伴う千三百二十六人の教員の増員、既定計画による養護教諭及び事務職員の計千八百三十二人の増員などが見込まれておりますので、総体といたしましては若干の増員となる見込みであります。
次の給与の改善につきましては、給与改定、昇給、暫定手当の本奉繰り入れ等に伴う増額を見込んでおりますほか、管理職手当を校長一〇%、教頭八%に引き上げ、また、僻地教育振興の見地から僻地に勤務する教員につきましては、平均いたしまして三年に一度の特別昇給を行なうことができるようにいたすことになっております。
次は、父兄負担の軽減の関係でございます。まず、教材費につきましては、一〇%の単価の引き上げを行ないましたほか、小規模学校の充実をはかる意味で、その補正係数を改善するため五千万円を増額いたしております。
次に、義務教育教科書の無償給与につきましては約六十億円を計上いたしておりますが、その内容は、昭和四十年度の小学校一年から五年までの児童の後期用教科書と転学児童の教科書及び昭和四十一年度の小学校一年から六年までの児童の前期用教科書の購入費などであります。
次は、学校給食費でございます。まず、準要保護児童生徒の給食費の補助につきましては、対象となる児童・生徒の率は前年どおり七%でありますが、給食内容につきまして約一一%の単価の引き上げを行なっております。学校給食施設につきましては、小・中学校の単独校の施設、夜間の定時制高等学校及び僻地学校の施設等に対する補助は、前年度とほぼ同様の規模で継続することといたしておりますが、要望の特に強い共同調理場につきましては、補助対象を前年度の四十カ所から百四十カ所に大幅に増加いたしましたほか、なま牛乳の生産地の学校に対して殺菌設備の補助の道を開くことといたしました。夜間の定時制高等学校の夜食費補助につきましても、約一一%の単価の改定を行なっておりますほか、なま牛乳使用二万石を見込んでおります。また学校栄養職員の補助につきましては、前年度の二百一人から四百七十七人にその対象を拡大いたしました。
次に、義務教育諸学校のミルク給食の補助は、なま牛乳六十八万石の使用によりまして、金額が減少いたしておりますが、脱脂粉乳に対する補助を百グラム四円から四円六十銭に引き上げております。また食糧管理特別会計への繰り入れば、小麦粉に対する百グラム一円の補助でございますが、使用量の増加を見込んで七千五百万円を増額いたしました。
次は遠距離通学費の支給に関する補助金でございます。学校統合の推進などのため、児童生徒の通学費を負担している市町村におきましては、通学費の負担が大きくなって、他の教育費を圧迫しているような事実があるため、かねてから、その実現を要望されていたものであります。補助対象は約五万人、一人当たりの平均単価は約六千円でございます。
次は道徳教育及び生徒指導の充実でありますが、道徳教育資料の部数の増加及び生徒指導研究推進校の増加のほかは前年度の事業の継続でございます。
次は僻地教育の振興でございます。僻地教育につきましては、大臣から御説明のありましたように、比較的きめのこまかい改善をはかっております。すなわちスクールバス、ボート六台、シート式磁気録音機六十七台の台数の増加、教員宿舎の戸数百戸の増加、僻地集会室等の一〇%の事業量の増加などをはかりましたほか、寄宿舎居住費の補助につきましては、新たに小学校児童を対象に加え、また僻地学校の健康管理のため新たに歯科医師を派遣することとし、さらに僻地子弟のための高等学校寄宿舎の建設費補助につきましては、僻地に勤務する教員の子弟のための寄宿舎も含めることといたしております。このほか教材費の増額、遠距離通学費の補助、僻地勤務教員の特別昇給などにつきましては、先ほど申し上げたとおりであります。
次に、特殊教育の振興につきましては、まず既定の計画に従いまして、養護学校十六校及び特殊学級一千学級の増設をはかっておりますほか、中学校の特殊学級設備の補助単価を十六万円から三十万円に引き上げ、また特殊教育諸学校の中学部の技術、家庭科の設備費を新たに補助するなど特に職業教育のための設備の拡充について補助金の増額を行なっております。また就学奨励費補助金及び交付金につきましては、新たに幼稚部の学校給食費をその対象に加えましたほか、全般的に単価の改定を行ないました。
次は、要保護、準要保護児童生徒の就学援助でございます。対象となる児童生徒は、前年どおりそれぞれ全体の児童生徒に対して三%及び七%でございますが、児童生徒数の減少により、若干予算金額の下回っているものもございます。しかし内容につきましては、単価の改定等の改善が加えられております。
次の、教職員の研修の充実につきましては、まず都道府県に対して総合的な教育研修センターを設置するための補助金を新設いたしております。来年度は一カ所三千万円の補助で五カ所を予定いたしております。また教育研究団体に対する補助金を五千万円近く増額計上いたしましたほか、各種の研修会の開催等の教職員の研修等に要する経費を引き続き計上いたしております。
次は、幼稚園教育の推進でありますが、就園希望者の増加の実情にかんがみまして、約倍額の一億五千五百万円の予算を計上いたしました。設備費の補助につきましては、新たに百十二園の新設と六十八学級の増加を見込んでおります。
次は、公立文教施設の整備でございます。昨年新しい五カ年計画を策定して、基準坪数等の改善を行なったのでありますが、来年度はその第二年目になるわけでございます。したがって基本的にはこの既定計画に沿って予算が組まれておるのでありますが、さらに改善を加えたおもな点を申し上げますと、まず事業量につきましては、幼稚園園舎六〇%、危険建物一五%、僻地集会室等、統合学校校舎、特殊教育建物及び定時制等建物について一〇%の改善が行なわれております。また建築単価につきましても平均約八%、構造比率につきましては五%の改善を行ない、総額二十八億円の増額を行なったのであります。
第二は、大学教育の拡充であります。まず国立学校につきましては、本年度から特別会計の制度が設けられておりますが、そのうち歳入予算の内容につきましては、ただいま大臣からお話のあったとおりでございまして、大筋におきましては本年度と大差はございません。ただ大阪大学の移転のための土地購入費二十億円につきまして、財政投融資資金からの借り入れが可能になりましたこと及び予備収入が二億円計上されましたことなどが目立った点でございます。
次に、歳出につきましては、前年度に比べて約二〇%の伸び率を示しており、他の予算よりもかなり優遇されております。その内容といたしましては まず教官当たり積算校費、学生当たり積算校費、設備費等の基準的な経費がございますが、これらはいずれも一〇%程度の増額が行なわれております。
次に、大学の拡充整備の具体的な内容といたしましては、新たに宮城に教育大学を新設いたしますほか、八学部の創設を行なうことといたしております。なお、このほか、公立の農科大学の移管及び工学部の二学部の新設があらかじめ四十一年度に予定されております。また四文理学部の改組、三十五の学科の新設及び拡充改組、主として夜間の短期大学の十学科の新設、七高専の創設案があり、大学及び短期大学におきまして合計三千三百九十四人の学生定員の増加になっております。
研究所等につきましてはあとで御説明することといたしまして、次に国立学校施設整備費につきましては、不動産購入費三十五億円を含めて三百五十二億円が計上され、前年度より約七十九億円の増加となっておりますが、昭和三十三、四年ごろの予算と比較いたしますと約十倍にふえている計算になります。また、このほか国庫債務負担行為が学校施設及び病院につきまして合計七十三億円認められており、そのうち四十一年度分として四十五億五千万円が認められております。
次は、教官の待遇改善といたしまして大学院の担当教官の調整額を八%に統一しまた教官研究旅費を八%増額いたしております。
次に、公立の大学及び短期大学に対する助成は二千万円増額いたしまして七千万円となっております。
次は、育英奨学事業でございます。育英会の貸し付け金の予算額は八十一億八千万円でございまして、本年度より約一億五千万円の増額でございますが、このほか、返還金からの充当を三十六億円ほど見込んでおり、事業量の総額は百十八億円となりますので、本年度より十億円の増加となるわけでございます。貸し付け金の内容につきましては、備考に内訳がございますが、特に力を入れました点は、通信教育の学生に対する貸与額を倍額にしたこと、大学院修士課程の奨学生及び教育特別奨学生の採用を大幅に引き上げたことであります。なお、日本育英会に対しましては引き続き返還回収業務の機械化等、事務能率の促進をはかるために補助金を増額いたしております。学徒援護会に対する補助金は、建物の移転が終わりましたので、金額が減少いたしております。
次は、私学振興の拡大でございます。
まず私立学校振興会に対する政府出資は十億円でありますが、このほか財政投融資資金からの融資百億円が見込まれており、これによって明年度に予定されております約一万五千人の学生増募に伴う施設設備の充実も可能になるわけでありますす。
次に、私立大学等理科特別助成及び私立大学研究設備助成につきましては、合計約五億円の増額を行ない、理科設備及び研究設備の充実をはかっております。
次の、私立学校教職員共済組合補助は、共済組合の長期給付及び事務費に対する補助でありますが、これによりまして国立大学の教職員と均衡のとれた内容の給付が実現することが可能になるわけであります。
次は、私立学校教育研修センター設置に対する補助でありますが、これは都道府県に教育研修センターの補助を行なうことになりましたので、これと並行いたしまして、私立学校の教職員の研修のため、中心的な施設一カ所に対して五千万円の補助を行なうこととしたのであります。
次は、臨時私学振興方策調査会でございますが、大臣から申し上げましたような趣旨で、十五人の委員と同数の臨時委員によってあらゆる角度から御検討いただきますために、この調査会の運営に必要な費用を計上いたしております。
次は、学術研究及び科学技術教育の振興でございます。
まず第一は、大学院の拡充整備でございまして、新たに新制大学に修士課程十六研究科を設けることにいたしましたほか、既設大学院につきましても不完全講座の充実、研究設備の整備等をはかることといたしております。
次に、科学研究費等の拡充でありますが、科学研究費、科学試験研究費、研究成果刊行費等につきまして一〇%の増額を行ないましたほか、特にガン研究のために一億円を増額いたしております。また、民間学術研究団体に対する補助金につきましては、東洋文庫に対する補助金を含めまして千百万円を増額いたしております。
次は、重要基礎研究の推進でございまして、まず大学付置研究所につきましては、静岡大学に電子工学研究所を新設いたしましたほか、原子力、防災科学、宇宙科学、海洋研究の推進等のため研究所の整備充実をはかっております。この中には、原子力研究のための大強度加速器の基礎研究について二億五千万円、ロケットの観測経費についてミユー一型ロケットの飛しょう実験を含めて約二十億円、海洋研究のための研究船の建造について国庫債務負担行為十六億五千万円等が含まれております。
次に、国立教育研究所につきましては、研究体制の整備をはかりますため二部三室の拡充を行なうことにいたしております。
次に、南極地域観測事業につきましては、かねてから再開の準備を進めてきたところでありますが、明年度は、いよいよその実施の段階になりましたので、観測船等の仕上げ及び隊員経費、運航費等に必要な経費二十一億円を計上いたしております。
次は日本学術振興会補助及び日米協力研究事業費の補助でございますが、前者につきましては、新たに国際共同研究事業を開始いたしますための補助金を増額いたしましたほか、従来の事業の拡充をはかり、また後者につきましては、事業完了のため一部補助金を減額いたしましたほかは、従来の事業を継続することにいたしております。
次の在外研究員につきましては、従来どおりの二百三十九人の派遣人員を見込んでおります。
次は理科、産業教育の振興であります。まず理科教育設備費の補助につきましては、既定計画に基づき、前年度とほぼ同額の補助金が増額されており、これによって現行基準の七〇%までの充足がはかられることになる見込みであります。
次は、産業教育関係の負担金、補助金であります。負担金補助金の額はほぼ前年どおりでありますが、内容的に見ますとかなり変更がございます。すなわち中堅技術者約八万五千人の増員計画は、千四百人を残してほぼ完了いたしましたので、工業高等学校の新設学科の施設整備費の補助が約八億六千万円ばかり減少し、また農業近代化の促進のための補助金は学年進行を除きまして事業が完了いたしましたので一億一千万円ばかり減額になっております。その反面、一般設備につきましては、基準の改定による設備の充実を促進いたしますため八億円の増額を行ない、また農業自営者養成高等学校の拡充整備を行ないますため、補助対象を五カ所から七カ所に引き上げ、約一億円を増額計上いたしております。なお中学校の技術家庭科の設備補助金は大体前年度の規模を維持いたしております。また家庭科の設備につきましては一千万円を増額してその充実を急ぐことといたしたのであります。
次は高等学校視聴覚教材整備費の補助金でありますが、これは新しい補助金であり、学習指導の改善と科学技術教育振興のため、多年高等学校長からも要望のあったものであります。来年度はとりあえず三千万円を計上し、映写機、録音機、テレビ等を順次普及してまいりたいと考えております。
次は青少年の健全育成であります。
家庭教育の振興につきましては、新たに録音教材の複製配布に必要な経費を計上いたしましたほか、従来の事業を継続することにいたしております。
婦人教育の振興は、前年度と同じ内容で行なうことにいたしております。
次は勤労青少年教育の振興でございますが、まず定時制通信教育の充実につきましては、従来どおり定時制高等学校の理科及び一般の設備、通信教育の教科書の無償配付、夜間の定時制高等学校の給食設備の充実などを継続いたしますとともに、定時制通信教育手当を管理職について三%から五%に引き上げ、夜間照明施設の整備費を六十二校分から七十五校分に増額し、夜食費、校舎整備費等の補助につきましてもそれぞれ増額をはかっております。次に社会教育関係につきましては、勤労青少年学校運営費補助金の補助対象を四十校から六十校に増加し、また新たに青年の家を利用いたしまして、中学校を卒業して新しく職業につく青少年の研修を実施するために必要な経費、及び、特に健全な少年団体の育成を促進するために必要な経費を新たに計上いたしましたほか、引き続き社会通信教育、青年学級、青年の国内研修等に必要な経費を計上いたしております。次は社会教育指導者の養成でございますが、従来の講習会、研修会等に必要な経費を計上いたしましたほか、新たに社会教育研修所を新設することといたしております。これはもとの上野の図書館職員養成所の施設を利用することにいたしております。次は、社会教育施設の整備費でございますが、公民館につきましては補助対象を百二十八館から白七十一館に拡大し、公立図書館、博物館につきましてもそれぞれ補助の対象を増加いたしましてその普及をはかることといたしました。また国立第三青年の家に引き続きまして国立第四青年の家の建設に必要な経費を計上いたしております。次は同和教育の振興でございます。この点につきましては集会所の設置のための補助金を十五カ所分から十八カ所分に増額いたしましたほか、かねて要望されておりました集会所の運営に必要な経費を新たに計上いたしております。次は、スポーツの振興でございます。まず第一にスポーツ施設に対する補助を大幅に増額いたしております。すなわち水泳プールにつきまして三日四十カ所を四百七十カ所に、国民体育館は十六カ所を二十三カ所に、国民運動場は三カ所を十カ所に増加いたしております。また、新たに柔剣道場のない高等学校に対し、選択必修となりました柔剣道を普及するために、さしあたり約一億円をもちまして、年次的に柔剣道場の整備を行なうことといたしております。来年度は柔道場六十三枚、剣道場三十五校分を予定いたしております。次は、スポーツ指導者の養成でありますが、新しい施設として国立登山センターの建設準備について、一万坪の敷地購入及び建物設計のための経費が計上されております。また引き続き体育指導委員の研修等スポーツ指導者の養成につきまして所要の経費を計上いたしました。
次に、青少年を中心といたしまして広くスポーツ活動を普及するために、スポーツ教室の育成、スポーツテストの普及奨励のための予算を増額いたしますとともに、職場スポーツの振興のために、新たに全国研究大会に必要な経費を計上いたしております。また国民体育大会等の実施に関する補助及び日本武道館を含めて各種スポーツ団体に対する助成を強化しております。
次はオリンピック記念青少年総合センターの新設であります。これは代々木の選手村あとの施設を利用いたしまして、オリンピックを記念して広く青少年の宿泊訓練のセンターを設けようとするものでありまして、施設整備及び運営のために必要な経費といたしまして一億一千万円を計上いたしております。
次は、青少年の安全保健でございます。まず、前に述べましたとおり、へき地学校の保健管理のため、医療機関から離れたへき地学校に医師のほかに歯科医師を派遣することといたしております。
次に学校の環境衛生設備の整備につきましては、先般保健体育審議会からの答申もございましたので、とりあえず水質、空気、照明等の検査器具に対して補助を行なうことといたしております。
学校安全の事業につきましては、日本学校安全会の支部の人員に対する補助を四人から五人に引き上げる等、一そうその充実をはかることといたしております。
次は、芸術文化の振興でございます。まず芸術関係団体の助成につきましては、日本近代文学館の建設を補助するために必要な経費を新たに一億円計上いたしましたほか、芸術の国際交流を中心といたしまして、一段と助成の強化をはかっております。また、地方芸術向上のため、芸術選奨及び芸術祭、地方巡回美術鑑賞指導等について引き続き必要な経費を計上いたしました。
次に国立劇場でございますが、二十五億円の国庫債務負担行為を行ない、明年度はそのうち約十五億円を計上いたしまして建設を進めることにいたしております。その結果、四十一年度中に開館の運びとなる予定でございます。
なお、国立博物館の東洋館の新設につきましても、同様に四十一年度完成を目ざして約三億円を計上いたしました。
次は、文化財の保護でございます。
まず文化財の保存修理、防災施設の整備等でありますが、全般的にその充実をはかるための予算を増額いたしております。そのうち、特に最近問題となっております埋蔵文化財につきましては、新たに重要遺跡の緊急指定を行ないますために必要な調査費を計上いたしましたほか、遺跡の環境整備、埋蔵文化財包蔵地図の刊行等に必要な予算を計上いたしております。
次に平城宮跡の買い上げ及び発掘調査につきましては、来年度約六万坪の土地の購入と一万七千五百坪の発掘調査を行ないますために必要な経費を計上いたしました。
次に、無形文化財の保存、活用につきましては、引き続き伝承者の養成、記録の作成、資料の買い上げを行ないますほか、あらたに民俗芸能の指定候補者を緊急に調査いたしますための予算を設けております。
次は、教育、学術、文化の国際交流の推進でございます。まず外国人留学生教育につきましては、新規受け入れ人員は本年度と同様二百人でありますが、来年度は日本語教科書、辞典の編さん等、日本語教育の充実をはかり、また試験問題の作成、試験官の派遣、寄宿舎の整備等、受け入れ態勢の強化をはかることとして所要の経費を増額いたしております。
次は、国際文化交流の促進でございますが、引き続き文化協定締結国等との学者の交流、日米交流、国際会議の開催及び参加等について必要な経費を計上いたしておりますほか、学術、芸術、文化、スポーツ等の各界にわたる国際交流を推進いたしております。
また、ユネスコの国際協力につきましては、新たに東京工業大学に化学の国際大学院コースを設け、アジア、アフリカの大学卒業生十三人を受け入れることになっております。
次は、海外勤務者子弟の教育の推進であります。明年度におきましては、この対策を強化するため、教員の派遣人員を三人から六人に増加し、また試みに、帰国いたしました子女のために東京学芸大学附属中学校に三学級の特別学級を設けるとともに、教員の派遣が行なわれない地域の子弟のために、学習指導書の作成、配付を行なう等、総合的な措置を講ずることといたしました。
その他、能力開発研究所に対する研究費補助を増額し、また全国学力調査につきましては、小学校五、六年の児童及び中学校二、三年の生徒について二〇%の抽出調査を行ないます等のため必要な予算を計上いたしました。
なお、それぞれの事項につきまして備考に書いてございますが、産炭地教育の振興のため就学援助費、学校給食費、医療費等につきまして、合計五千万円の特別の予算を一般の予算のほかに準備いたしております。
以上で補足説明を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00119650210/9
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010・渡海元三郎
○渡海委員長 三木喜夫君から発言を求められておりますので、これを許します。三木喜夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00119650210/10
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011・三木喜夫
○三木(喜)委員 ただいまの文部大臣の所信表明について、なお、予算要求額の説明につきましては、後日われわれとしましては質問をしたいと思います。非常に真摯な態度で臨んでおられることに対しましては、この所信表明ないしは予算説明において認める点もございますが、ここで多少要望をしておきたい点がございます。と申しますのは、今回の予算につきましては、特に大学生急増対策、私学振興対策、こうした対策面から見れば、ここ一、二年重点的にどのような見通しでこの予算を組んでいくかということは非常に問題だろうと思うのです。たとえば大学生の急増対策にいたしましても、十万人、それから六万人になり、さらに減ってまいりまして本年の一万数千人、こういうことになってまいりますと、来年度にかなりウエートがかかってくるだろうと思うのです。そのときに、本年の予算規模で来年の予算がどのように膨張していくか、こういうように考えると、一年のがれの予算ではこれは困ると思いますので、いま岩間課長のほうから説明がありましたけれども、文部省としては、どうしても本年、来年の見通しの上に立った説明をしてもらわなければ、この予算審議の意味をなさぬと思う。特にそういう重点的な問題が本年ありますから、それをひとつ要望しておきたいと思います。
それから、社会党といたしましては、国政調査の面で当委員会から体育に関する面をはずすことについて、そしてこれを体育の振興に関する特別委員会に移すことについては、理事会では反対の意を表明いたしました。しかしながら、社会党といたしましては、これについての態度を委員全員寄ってきめなければならぬと思いますので、これについてはその態度がきまるまで保留していただきたいと思うのです。しかしながら、政府あるいは自民党のほうにおきましても、この問題はよくその間に意見の統一をひとつしておいていただきたい、このことを要望いたします。
なお、これに対する質問は本日やらないということを申し上げておきますが、しかし私学の問題につきまして、私学の危機だといわれておりますので、本日特に私学問題について若干の質問を社会党のほうからしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00119650210/11
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012・渡海元三郎
○渡海委員長 国政調査の点につきましては、後刻理事会等におきまして、協議さしていただきたいと思います。
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00119650210/12
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013・渡海元三郎
○渡海委員長 次に、国立学校設置法等の一部を改正する法律案及び国立養護教諭養成所設置法案の両案を一括して議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。愛知文部大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00119650210/13
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014・愛知揆一
○愛知国務大臣 このたび政府から提出いたしました国立学校設置法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
この法律案は、昭和四十年度における国立大学、国立高等専門学校及び国立大学の大学院及び付置研究所の新設並びに昭和四十年度及び昭和四十一年度における国立大学の学部の新設等について規定するとともに、国立工業教員養成所を卒業した者に対する大学編入学資格の付与について定めようとするものであります。
まず第一は、宮城教育大学の新設についてであります。宮城県における義務教育諸学校の教員の供給については、これまで主として東北大学教育学部の教員養成課程での養成に期待してまいりましたが、現状では、各種の事情により期待どおりこれを確保することが困難となっておりますので、このたび、地元からの強い要望にもこたえ、東北大学の協力も得て、教員養成を目的とする単科大学を新設し、その改善をはかろうとするものであります。
第二は、国立大学の学部の新設についてでありまして、北海道大学に薬学部を、東北大学、新潟大学及び広島大学に歯学部を、弘前大学及び静岡大学に人文学部及び理学部を、埼玉大学に教養学部、経済学部及び理工学部を、鹿児島大学に法文学部及び理学部を神戸大学及び島根大学に農学部を、鳥取大学及び長崎大学に工学部を、それぞれ設置することとし、これをもって、昭和四十一年度以降の大学入学志願者の急増に対処する国立大学の拡充計画の一環としようとするものであります。
このうち、神戸大学及び島根大学の農学部は、県立の農科大学を国に移管して設置するものであり、また、弘前大学、埼玉大学、静岡大学及び鹿児島大学の各学部は、既設の文理学部を改組してその教育研究体制の整備をはかろうとするものでありまして、これに伴い、埼玉大学の工学部を廃止するとともに、既設の四文理学部を経過的に存置することといたしております。なお、神戸大学の農学部及び長崎大学の工学部は、予算その他の都合により、昭和四十一年度から開設することにいたしております。
第三は、国立大学の大学院の新設についてでありまして、これまで大学院を置かなかった国立大学のうち、充実した学部を持つ八大学に、修士課程の研究科を置く大学院を設置し、もって、その大学の学術水準を高めるとともに、研究能力の高い職業人の養成に資するものであります。
第四は、国立大学の付置研究所の新設についてでありまして、近年重要性を増してきておる電子工学に関する研究をさらに推進するため、静岡大学に電子工学研究所を付置することといたしました。
第五は、国立高等専門学校の新設についてでありまして、科学技術教育振興の一環としての中堅技術者の育成を一そう推進するため、釧路、小山、東京、石川、福井、舞鶴及び北九州の七工業高等専門学校を新設することといたしました。
第六は、昭和三十九年度における宇都宮大学工学部及び図書館短期大学の新設に伴って経過的に存置してきた宇都宮工業短期大学及び図書館職員養成所を廃止することといたしております。
第七は、国立工業教員養成所を卒業した者に対する大学編入学資格の付与についてであります。このことについては、国立工業教員養成所が発足いたしまして以来、養成所の目的、性格を考慮して、慎重に検討してまいりましたが、このたびその卒業者に対し、大学に編入学することができるように改めることが適当であるとの結論に達したものであります。
以上が、この法律案の提案の理由及び内容の概要であります。
何とぞ、十分御審議の上、すみやかに御賛成くださるようお願い申し上げます。
次に、このたび政府から提出いたしました国立養護教諭養成所設置法案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
この法案は、国立養護教諭養成所の設置等について定め、養護教諭を養成し、確保しようとするものであります。
すでに、文部省におきましては、公立の小学校及び中学校の養護教諭について、昭和三十九年度以降五カ年のうちに、約五千二百人の増員をはかるものとし、大学、短期大学及び文部大臣の指定する養護教諭養成機関の卒業者並びに公立学校に養護職員として勤務する者のうち正規の資格を有する者の採用等により、必要数を充足しようとしてきたのであります。
しかしながら、一般に大学、短期大学においては他の資格とあわせて養護教諭の資格を取得させるものであって、実際に養護教諭となる者の数にはおのずから限度があり、また、国立大学における養護教諭養成課程も看護婦の免許を受けた者を入学せさ、これに対し所要の資格を取得させるものであって、これ以上この制度の拡大は困難であり、他の養成機関についても、多くは本来保健婦の養成を行なうものでありますため、養護教諭となる者は卒業者の一部であり、したがって、養護教諭の供給の拡大は不確実な事情にあります。
これらの事情にかんがみ、国立養護教諭養成所を設置して、養護教諭として充実した教育を施し、計画的に養成する必要があり、昭和四十年度に二養成所を設置することとし、さらに将来養護教諭の充足の事情と増員の検討に伴って、増設をはかりたいと考えている次第であります。
次に、この法案の概要について申し上げます。
まず、北海道学芸大学の旭川分校及び岡山大学に、養護教諭の養成を行なう教育施設として、国立養護教諭養成所を付置することにいたしました。
この養成所には、教育上、運営上必要な職員として、所長のほか、教授、助教授、助手等の職員を配置することとし、その教員の身分取り扱いにつきましては、教育公務員特例法の所要の規定を準用することとしております。
第二に、この養成所の修業年限は三年とすることとし、その入学資格は大学の入学資格と同じにすることとしております。
また、養成所を卒業した者については、一定の条件のもとに、大学に編入学することができるよう措置いたしました。
第三、この養成所における授業料その他の費用の免除及び猶予について、特別の規定を設けることといたしました。すなわち、養成所の学生に対し、授業料の一部の徴収を猶予し、かつ、これらの学生が卒業後六カ月以内に義務教育諸学校の養護教諭となり、引き続き一定の期間養護教諭として在職した場合には、その猶予された授業料の納付を免除することができることといたしました。
なお、学業優秀な学生で、経済的理由によって、授業料その他の費用の納付が困難であると認められる場合等につきましては、大学の学生の場合と同様、授業料その他の費用を免除し、またはその徴収を猶予することができることといたしました。
第四に、養成所を卒業した者に対して、養護教諭二級普通免許状を授与することができるようにするとともに、中学校教育の実態に即して、保健の教科についての中学校教諭二級普通免許状をも授与することができるよう教育職員免許法の一部を改正いたしております。
この法律は、昭和四十年四月一日から施行することといたしております。
以上が、この法律案の提案の理由及び内容の概要でございます。
何とぞ十分御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00119650210/14
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015・渡海元三郎
○渡海委員長 以上で提案理由の説明は終わりました。
両案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00119650210/15
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016・渡海元三郎
○渡海委員長 先ほどの文教行政の基本施策についての文部大臣の説明に対し、質疑の通告がありますので、これを許します。山中吾郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00119650210/16
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017・山中吾郎
○山中(吾)委員 私の質問を申し上げるのは、慶応義塾の入学金その他の増額によっていま世間をして注意を喚起しておる問題があるので、こういう問題を国会で無視してそのまま黙過するということは、われわれ文教委員会として無関心というふうに思われてはいけないので、きょうは時間がございませるが、この問題のきっかけだけは質問の中で明らかにして、大臣の今後の方策についての基本的態度を聞いておきたいという趣旨であります。
戦後日本の大学については、ヨーロッパの人々は、能力さえあれば大学にも入れるというので、日本の文化国家に非常に羨望の目をもって見ておったことは事実なんです。ところが現在になりますと、金がなければ大学に入れないという状態に逆転してきておると私は思います。この点については、やはり国の文教政策の貧困、貧しさということをいわれても私はやむを得ないのじゃないかというふうに思うので、その観点に立ってお聞きいたしたいと思うのです。
その質問の前提として、まず大臣に理解をしていただきたいことは、これは学校の経営者の立場から論議をするのでなくて、国民の立場から論議をすべきである、私はそういう信念でお聞きいたしたいと思うのですが、そういう立場に立ちますと、大学に進学をするという立場に、憲法にいう能力に応じて教育を受ける権利という思想も頭に含めながら考えますと、入学一時金に二十万以上一十万、多いところは五十万、これを一時に納めるということは、おそらく中産階級以下は、いかに子供が能力があっても入学不可能という限界にきておる、慶応の問題それ自体の問題ではなくて、その裏にはそういう問題がある。一方さらに考えてみますと、国立大学には年間千二百億以上の国の税金を払っておるわけでありますから、年々千二百位の税金を納めておる国民の父兄の立場からいいますと、子供は国立大学に入れられないで、数倍の学費を要する私学に入れておることは、二重課税であるという論議も出てくる。そこで愛知大臣もその問題については切実に考えなければならない一つの問題であると思うので、まずああいう慶応の現在起こった問題を前提としながら、この私学を国民の立場から、とにかく能力があれば進学させられるということについてどうお考えになっておるか、具体的に恒久政策と当面の政策を考えなければならぬと思いますが、その点についてまず大臣の考え方をお聞きして、具体的に一、二質問をしてきょうは終わりたいと思うので、その基本的なお考えをお聞きしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00119650210/17
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018・愛知揆一
○愛知国務大臣 慶応の問題はともかくといたしまして、この慶応の問題に象徴されている私学問題、これはわれわれとしても非常に重大な関心と将来決心を持たざるを得ない、かように考えております。
先ほどもお示しがございましたが、特に大学生の——大学志願者の急増対策というほうが正確かと思いますが、これに対しましては追って詳しく御説明申し上げたいと思いますが、ただその基本的な考え方として、まず大学一般につきましては、大学の資質の向上ということが非常にやはり大事なことではないかと思いますし、それから最近の私学方面から出てまいります新しい学部、学科等の増設の希望などに徴してみましても、教授陣容を充実しなければならないということが、やはり一つの隘路になっておるということも現実の事態のように見受けるわけでございます。それからもう一つは、社会的需要と申しましょうか、これから日本がどんどん伸びていく上においてどういう教育、どういう家庭を期待しているかということも十分考えてまいらなければならないと思いますので、ただ単にいわゆる入学難が従来よりもある程度ひどくなるということについて、それだけからこの問題をとらえることはできないのではなかろうかというふうに考えるわけでございます。これは追って詳しく私の考えも申し上げたいと思いますけれども、そういう意味から申しまして、私が就任当時世に伝えられておりました十万人急増ということは、率直に申しまして少し多過ぎるのではなかろうか考えまして、いろいろの点から検討いたしまして、先ほど御指摘がございましたように、その当初伝えられておるものよりは相当この四十年度の計画は縮小されておりますことは否定できない事実でございますが、これには私どもとしても非常な苦心をいたしました結果と、あえて申し上げたいわけです。
それから、私学の問題については、すでに予算委員会その他でも御質疑もあった点でございますけれども、私は基本的には、古い考え方かもしれまんけれども、私学の振興については政府が金を出す場合、金は出すが口は出さないというのがたてまえではなかろうかと、しろうと考えですが、実はそう考えております。そういったような場合においては、たとえば私学振興会による助成というようなことが、最大公約数としての方法論としては当面考えられる、だれにも異存のないことだと思いましたので、私学振興会の融資額は大体四十年度は百五十億あるいはそれ以上の計画で、私学の助成に融資をいたそうという計画になっておるわけでございます。さらにそのほかに理科教育あるいは教職員の共済組合、いろいろの助成もございますけれども、一応そういうことで四十年度はやりまして、その間において、文部省だけでもなかなかいい考え方ができてまいりませんし、それから問題全体はやはり総合的に検討する必要があると思いましたので、いささかおそまきの感はございますけれども、私学助成方策調査会というものを法律によってつくっていただきたいということを私就任直後から考えておりまして、今国会に提案いたしたわけでございます。これは二年余りの期限で作業をしていただきたいと思っております。それには相当恒久的な考え方も御審議をいただきたいと思いますが、特にこの四十一年度についてはいわゆる大学志願者急増のピークの始まりでもございますので、これから諮問をいたします事項についても、そういう緊急を要する事項についてはなるべく早くいろいろの御意見を出していただきまして、これを四十一年度の施策に反映いたしたい。大ざっぱでございますが、そういうふうなかまえ方でこれから一生懸命努力してまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00119650210/18
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019・山中吾郎
○山中(吾)委員 基本的なお考えはわかりましたが、当面の問題については、解決策は実はいまお答えになっていないのであります。いま調査会を設置されて二カ年というが、二カ年の間の問題が私は重要な問題だと思うので、二カ年のあとに総合結論を出されるならば、その二カ年の間は——いわゆる授業料は別です、入学金あるいは学校債というものをさらに増額しないために、それだけの増額を必要とする分は、二カ年間に限ってその内容を見て特別融資をしてやる。そういう措置をとりながら設置法を出さなければならないのじゃないですか。だから私は最初から国民の立場からと申し上げているのです。二年あとしか結論が出ない、その二年の間をどういうようにお考えになるかというのが愛知大臣のいまの切実な問題であり立場であると思うので、そういうことをお考えにならなければ、この総合問題の結論は出ないと思います。現実に慶応問題について塾債というものを出されておる。塾債を出さなければ入学を認めないということは法律上も問題があろうと思います。しかし一方にそれはそれとして、国がどうしても学生の研究のために、教育水準を高めるための施設である限りは、特別融資を特にしてもいいんじゃないか。いませっかく調査会の設置まで考えておられるならば、結論が出るまでの措置をいまどういうように考えるかということは当然必要ではないでしょうか。その辺のところをお聞きしたいわけです。いまの基本的な方針については、しさいに分析すれば私も意見がありますけれども、その方向については同じ意見でありますが、具体的なその方策の裏づけとして、現在そういう方向を頭に置きながら、措置すべきものは措置すべきじゃないかと思う、そこのところはいかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00119650210/19
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020・愛知揆一
○愛知国務大臣 その点は、いまお答え申しました中にも含めてあるつもりであります。私といたしましては、四十年度に政府の出資なりあるいは財投からの融資がこれだけで、三十九年度に比べれば倍になっておるし、したがってまたおそらく融資のワクからいえば、これはまだ精細に私学振興会あるいは関係方面と正式に結論を出したところまでいっておりませんけれども、融資のワクについても百五十億あるいはそれ以上にいく、それと四十年度における当初の計画よりは下回っておりますけれども、一万九千八百人でございますか、その四十年度の要するに大学としての収容の増加、これを国の予算あるいは公立大学はそれぞれの予算措置がございますけれども、私立大学については、私学振興会の融資の中で私学に担当していただきたい収容増加量に見合うだけの融資は一応できる、こういう組み方をいたしておるつもりでございます。そこで四十年度はそれで進めていきながら、かたわら四十一年度に措置がうまくできるように、さらに進んではたとえば経常費、私立大学の教授の給与というようなものについてまで国庫が助成すべきであるか、せざるべきであるかというふうな恒久的な問題については、また調査会において十分御審議を願って、これはむしろ恒久対策じゃないかと思いますので、そういうふうに分けて取り上げていくことが能率的ではなかろうか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00119650210/20
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021・山中吾郎
○山中(吾)委員 少し私の質問と答弁がずれるわけです。もっと具体的に申しますと、この次で答弁はけっこうですが、この二カ年の間各私学において研究設備その他を増設するために必要な学校債を増額をしないことを指導されて、必要な分は融資をしてやるという指導をなさるべきじゃないか、これが一つなんです。いまの一般論でなしに、具体的に出てまいりますから……。ことに大学急増の時期に入ってきて、そこに非常に競争も激甚になるから、学校の経営者の立場からこの機会に学校債を増設すればとりやすいという考えも出てくると思うのですが、受ける国民の立場からいいますと、二年後のものはいいかもしれぬが、この二カ年をどうするかということについては、私は具体的にそれだけの財政融資を私学振興会に出しておるのだから、私学振興会を指導されて、さらに学校債を増額する場合、しないかわりその分だけは投資をしてやるということの指導は必要ではないかということを申し上げておるので、そういう具体的な対策は次でけっこうです。
それからさらに二十万、三十万の金がかかる場合、月々一方あるいは一万五千、二万の学資は出せても、三十万というのはこれはもう農村の中産階級はみな借金になっておる。だから育英制度の中でそういう入学一時金の貸与制度はおとりになれないかどうか。これも次でけっこうです。
さらに、そういう一定の水準までに達する寄付については、全面免除くらいはもうすべき段階のぎりぎりまできているんではないか。いわゆる中小企業その他の純粋営利事業にさえ国が補助を出し融資をしているんですから、教育事業に税金をとらなければ寄付を認めないなんというばかな思想は私はないと思う。そういう点について、調査会の結論でなしに、当面の問題として具体的な大臣のお答えをお聞きしておきたい。そういうことをこういう通常国会の中で結論を出して、私学に入学させる、父兄の立場からもう少し具体的な対策をお立てになるべきであって、それなしに設置法案を出されても、それだけでは、私らは、よろしいでしょう、いい案でしょうと賛成できがたい。それを申し上げておきたいと思います。
それから、私学のあり方について、私学法に公共性と自主性という二つのものがございます。公共性の内容は何か、自主性の内容は何かを吟味して、そうして具体的に公共性と自主性というものの中身を論議をして、その中で妥当なる私学対策をお立て願いたい。
さらに申し上げておきたいのは、やはり、憲法の、能力に応じて教育を受けるという権利は、すなおに文教政策を立てるときは確認をしていただきたい。そうでないと、たとえば、現在の医学などは、もう現実に貧乏人の秀才は入学できないのは事実なんです。二百万三百万裏口入学に要る。開業しておるところの父兄は、五百万出しても自分の施設を子供に与えたいというので、二百万三百万は常識になっておるでしょう、裏から。これはここでは申し上げませんが、そうすると、人間の命を担当する医者が、しかも世界で最も水準の高い日本の医学というものが、だんだんと能力は低いが金はあるという者が入って、人間の命を預かる者があまり賢くない者が担当するのでは困る。それがそういうところまでいっておるわけですから、その点を含んでひとつ対策を立てていただきたい。入学は別にして卒業資格だけは厳格にして、入っても卒業は永久にできない制度を持ってもいいじゃないか。そういう中で不合理な入学競争、過当競争を防止することもあります。大体、学校制度全体の中を検討して方策をお立て願う、ただし、その結論が出たあとでなければ私学に対する融資制度とか、そういうものをやらないというのは私は反対だ。現実の立場においては、先に手当てをされたあとで根本的な対策を立てるべきだと思うので、その二つの面を申し上げておるので、いま申し上げた三つの具体的な政策について次の機会に発表していただきたい。いまお答え願ってもできないことですから、それだけ申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00119650210/21
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022・渡海元三郎
○渡海委員長 次会は、明後十二日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後零時二十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00119650210/22
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