1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十年二月十九日(金曜日)
午前十時三十九分開議
出席委員
委員長 渡海元三郎君
理事 上村千一郎君 理事 小澤佐重喜君
理事 八木 徹雄君 理事 三木 喜夫君
久野 忠治君 熊谷 義雄君
田川 誠一君 谷川 和穗君
床次 徳二君 中村庸一郎君
橋本龍太郎君 原田 憲君
高橋 重信君 長谷川正三君
鈴木 一君
出席国務大臣
文 部 大 臣 愛知 揆一君
出席政府委員
文部政務次官 押谷 富三君
文部事務官
(大臣官房長) 西田 剛君
文部事務官
(初等中等教育
局長) 福田 繁君
文部事務官
(大学学術局
長) 杉江 清君
文部事務官
(管理局長) 齋藤 正君
委員外の出席者
専 門 員 田中 彰君
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二月十七日
日本育英会法の一部を改正する法律案(内閣提
出第八三号)(予)
同月十八日
学校図書館法の一部改正に関する請願外三百二
十六件(上村千一郎君紹介)(第七一〇号)
同外百九十四件(上村千一郎君紹介)(第七四
四号)
同外四百二十七件(上村千一郎君紹介)(第八
二九号)
同(久野忠治君紹介)(第一〇三三号)
同(小川半次君紹介)(第一〇五一号)
同(大西正男君紹介)(第一〇五二号)
同(田中伊三次君紹介)(第一〇五三号)
同(堂森芳夫君紹介)(第一〇五四号)
同(松田竹千代君紹介)(第一〇五五号)
同(村山達雄君紹介)(第一〇五六号)
同(矢尾喜三郎君紹介)(第一〇五七号)
同(山中吾郎君紹介)(第一〇五八号)
学校給食の改善等に関する請願(池田清志君紹
介)(第七四一号)
学校栄養士設置に関する請願外三件(床次徳二
君紹介)(第七四二号)
義務教育諸学校の管理下における児童、生徒の
学業災害補償に関する請願(福永健司君紹介)
(第七四三号)
日本育英会法の一部改正に関する請願外一件
(實川清之君紹介)(第七七一号)
産炭地教育特別措置に関する請願(實川清之君
紹介)(第七七二号)
同(松本七郎君紹介)(第七七三号)
学校警備員の設置に関する法律案成立促進に関
する請願(淡谷悠藏君紹介)(第八一四号)
同(片島港君紹介)(第八一五号)
同(柳田秀一君紹介)(第八一六号)
同(伊藤卯四郎君紹介)(第八七一号)
同(只松祐治君紹介)(第八七二号)
同(井岡大治君紹介)(第九〇八号)
学校給食法の一部を改正する法律案等成立促進
に関する請願(淡谷悠藏君紹介)(第八一七号)
同(片島港君紹介)(第八一八号)
同(柳田秀一君紹介)(第八一九号)
同(伊藤卯四郎君紹介)(第八六九号)
同(只松祐治君紹介)(第八七〇号)
同(高田富之君紹介)(第九三九号)
同(畑和君紹介)(第九七六号)
高等学校父母負担の軽減等に関する請願(淡谷
悠藏君紹介)(第八二〇号)
同(片島港君紹介)(第八二一号)
同(柳田秀一君紹介)(第八二二号)
同(伊藤卯四郎君紹介)(第八七五号)
同(板川正吾君紹介)(第八七六号)
同(高田富之君紹介)(第九四二号)
同(畑和君紹介)(第九七四号)
義務教育費国庫負担法の一部改正に関する請願
(淡谷悠藏君紹介)(第八二三号)
同(片島港君紹介)(第八二四号)
同(柳田秀一君紹介)(第八二五号)
同(伊藤卯四郎君紹介)(第八七七号)
同(板川正吾君紹介)(第八七八号)
同(高田富之君紹介)(第九四〇号)
同(畑和君紹介)(第九七五号)
教育予算確保に関する請願(淡谷悠藏君紹介)
(第八二六号)
同(片島港君紹介)(第八二七号)
同(柳田秀一君紹介)(第八二八号)
同(伊藤卯四郎君紹介)(第八七三号)
同(只松祐治君紹介)(第八七四号)
同(高田富之君紹介)(第九四一号)
同(畑和君紹介)(第九七七号)
同(稲富稜人君紹介)(第九七八号)
産炭地公立義務教育諸学校の学級編制及び教職
員定数等に関する請願(片島港君紹介)(第九六
九号)
同(高田富之君紹介)(第九七〇号)
同(只松祐治君紹介)(第九七一号)
同(柳田秀一君紹介)(第九七二号)
同(畑和君紹介)(第九七三号)
養護教諭を各学校に必置等に関する請願(小坂
善太郎君紹介)(第一〇〇六号)
高等学校建築費等国庫補助及び日本育英会貸与
金等に関する請願(堂森芳夫君紹介)(第一〇〇
七号)
同外六件(村山喜一君紹介)(第一〇〇八号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
日本育英会法の一部を改正する法律案(内閣提
出第八三号)(予)
国立学校設置法等の一部を改正する法律案(内
閣提出第三二号)
文教行政の基本施策に関する件
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/0
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001・渡海元三郎
○渡海委員長 これより会議を開きます。
日本育英会法の一部を改正する法律案を議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。愛知文部大臣。
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/1
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002・愛知揆一
○愛知国務大臣 このたび、政府から提出いたしました日本育英会法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
昭和十九年日本育英会法施行以来、日本育英会は、年々堅実な発展を遂げ、今日まで同会を通じて学資の貸与を受け、その勉学を続けることができた学徒は、きわめて多数にのぼり、国家的な育英事業として多大の成果をおさめてまいりました。
日本育英会から学資の貸与を受けた者は、修業後一定の期限内にその貸与金を返還する義務を有しておりますが、特例として、それらの者が小学校、中学校、高等学校、高等専門学校もしくは大学の教員または高度の学術研究者となった場合に、その貸与金の返還を免除できる制度を設けております。
これは、学校教育が、人材育成の根幹となるものであるところから、これらの分野に有為の人材を誘致することを目的とするものでありますが、近年、幼稚園教育の振興、養護教諭の充実が学校教育の当面の課題となり、幼稚園教員及び養護教諭の人材確保の必要が強く認識されることとなりましたので、これに応ずる所要の措置を講ずる必要があります。なお、この際日本育英会の監事の機能をより有効にするため、その職務権限に関する規定を整備することが適切と存じます。
以上の観点から、現行法の一部に必要な改正を加えることが適当であると考え、この法律を提出するものであります。
改正の第一点は、日本育英会の監事の職務権限を明らかにすることであります。
改正の第二点は、大学在学中に受けた貸与金の返還を卒業後免除される職のうちに、幼稚園の教育の職を加えることであります。
改正の第三点は、今国会で別途その設置について御審議願っております国立養護教諭養成所で学資の貸与を受けた者についても、大学の場合に準じて返還免除の措置を講ずることであります。
以上が、この法案の提案の理由及び内容の概要であります。何とぞ十分御審議の上、すみやかに御賛同くださるようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/2
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003・渡海元三郎
○渡海委員長 以上で提案理由の説明は終わりました。
本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/3
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004・渡海元三郎
○渡海委員長 次に、国立学校設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
質疑の通告がありますので、これを許します。上村千一郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/4
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005・上村千一郎
○上村委員 御提案になっております国立学校設置法等の一部を改正する法律案につきまして、若干の質問をさしていただきたいと思います。いろいろと具体的な御質問をする前に、若干の問題に
ついてお尋ねいたしたいと思います。
実は昭和四十一年以降におきます大学入学志願者の急増につきましては、各方面よりこれが対策樹立を要望されておるわけでございますが、文部御当局とされましてはこれに対する何らかの計画が策定されておるのか、あらためてお尋ねをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/5
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006・愛知揆一
○愛知国務大臣 大学入学の志願者が急増する期間における大学の拡充整備計画のお尋ねでございますが、この計画につきまして、基本的な考え方といたしまして、こういうふうな考え方のもとに計画を立てておる次第でございます。
その考え方と申しますのは、一つは最近のいろいろの傾向から申しまして、大学入学の志願の率が非常にふえてまいってきておりますが、こうした状況にかんがみて極端な受験難が起こらないように、そうした困難の発生を防ぐことが一つの考え方でございます。同時にまた、大学卒業生に対して社会がどういうふうな社会的需要をするであろうか、その社会的需要の趨勢を見きわめなければならないということが一つでございます。それからまた、問題は大学でございますから、いたずらに収容力の拡大だけを偏重いたしまして、大学教育の質的な低下をかりにもすることは不適当であると思いますので、大学教育の質の低下が生じないように、こういったような基本的な考え方をもとにいたしまして計画を策定しなければならないと考えておるわけでございます。
ところが一方、現在の時点におきましては、入学志願者急増の全期間及びその後の安定期とでも申しましょうか。一定の期間を経過いたしますと、人口と申しましょうか、ある程度の減少を来たす。そしてそれに関連して安定する時期を迎えるわけでございますが、急増の期間から安定期に及ぶ長期の大学拡充整備方策を策定することは多くのまだ未知の条件や要素がございますので、なかなか基本的な計画を策定することが困難である点も十分御了察をお願いいたしたいと思うのでございます。
そこで、具体的な数字の問題でございますが、実はいろいろの考え方をこの一年ほどにわたって考えてまいりましたが、四十年度の概算要求をするときにおきまして、一応四十年度においては国公私立を通じ、かつ大学、短大を通じまして二万七千人程度の収容力の増加をはかりたい、四十一年度においては約四万人の増加をはかりたいということを一応の目安として計画をその当時立ててみたわけでございます。両年度にわたりますと六万七千五百人ということになるわけでございます。ところが、一応の腰だめと申しますか、目安をこういうところに置いたわけでございますけれども、これにつきましては公私立大学や短期大学の新設、それから大学の学部、短期大学学科の増設の認可等に基づいて策定いたしました増員数と、国立大学、国立短大について四十年度において予算措置を現に講じられた学部、学科の増設、改組、学生定員増による増員数、これらを全部取りまとめましてただいまの時点におきまして確定的になっておりますものは、四十年度におきまして国公私立を通じまして一万八千九百八十四人の定員増でございます。先ほど申しました、一応概算要求当時に腰だめ的につくりましためどから申しますと、これは約八千人ほど下回るような勘定になるのでございます。したがいまして、四十年度にこれをもとに計画し、四十一年度以降の増員計画につきましては、この四十年度における志願の状況や収容の実績などを十分見きわめました上再検討を加えまして、四十年度の計画をできるだけすみやかにより確実なものに策定をいたしたい。したがって、先ほど申し上げました四十一年度について約四万人と見込みましたものについては、これをさらに再検討いたしまして、できるだけすみやかに一つの確実な計画をつくりたい、かように考えておりますのが現状の私どもの考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/6
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007・上村千一郎
○上村委員 できる限り入学志望者に対しまして勉学の機会を与える、こういう意味におきましてこの定員を増加する、それに伴うところの施設を増大するというような配慮につきましては当然なさるべきことであろうと思いますが、他面教育でございますので、その教育の質が低下するということであってはこれまたならないわけでございます。で、大学の拡充に伴いまして教育研究の水準が低下することのないような諸措置というものが講ぜられておるのか、あるいはそういうことを念頭に置きましてどんな施策が準備されておるのか、お尋ねをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/7
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008・愛知揆一
○愛知国務大臣 まことにごもっともな御意見でございまして、先ほど私申しましたような、やはり大学の資質が低下をしないように、むしろできればこの際資質を向上させたいということから、たとえば国立大学の関係で申しますならば、大学院の拡充ということは、今年度の予算におきましてもかつてないほどの拡充をいたしたいと考えておるわけでございます。こうした考え方も、一つには大学の教授になれるような人材を十分養成してまいりたいということを配慮いたしておるような次第でございますし、また国立大学自体につきましても、今回は学部の新設、増設とも思い切ってやりましたが、その内容におきましてはあくまでも大学の質的な向上をはかりたい。また一面において、社会的需要にも応じたいという考え方でやっておるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/8
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009・上村千一郎
○上村委員 この問題につきましては、非常に各方面から注視の的になっておる問題でもございますし、いろいろとその具体的な情勢の進展に応じまして、文部御当局も具体的な対策を立てられていくものだと思いまするので、これがいろいろな御質問につきましては他の機会に譲ることにいたしまして、本法案につきまして直接な点をお尋ねいたしたいと思います。
まず第一に、宮城教育大学を東北大学から分離して、独立に設置するようにいたしたという理由は那辺にあるのか、この点につきましてお尋ねをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/9
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010・愛知揆一
○愛知国務大臣 宮執教育大学を東北大学から分離独立させようとする計画は、宮城県の義務教育職員の需給関係を安定させるために、教員の養成の目的に沿って、一貫した教育指導を行なうことのできる単科大学を創設したい、こういう趣旨で考えわけでございまして、これにつきましては地元関係の各方面からの要望が、多年にわたって出ておるわけでございますし、また東北大学自体といたしましても、多年この点については困難を生じてきておりまして、学内体制の整備を促進いたしたい、かような考え方でございます。もう少し具体的に申しますと、従来、従来といいますか、現在の東北大学教育学部の教員養成課程の卒業者は、従来宮城県の小中学校に就職する者がきわめて少ないので、同県の義務教育教員を確保するために適当な機関の設置ということが、先ほど申しましたように多年の関係者の間の要望であったわけでございます。一方東北大学の教育学部は、その内部組織から見ましても、義務教育教員の養成を主たる目的としているとは言えなかったわけでございまして、教員養成課程の学生に対する教育指導も、同学部が一貫して実施できる体制ではないために、組織や体制の面からも抜本的な改善を行なう必要がかねがね痛感されていたわけでございます。これは御案内のように、戦後の新制大学学制の改正に伴いまして、東京、大阪、京都、福岡などの府県の場合などにおきましては、旧帝国大学の改組の場合に、それぞれ学芸大学、教育大学等が別個に設置されたのにかかわらず、東北大学の場合だけは教員養成課程が独立の大学でなくて、旧来の東北大学の中に含まれておりました。そういうふうな、東北大学の場合は戦後の例外的な措置であったことにもかんがみまして、この際他の旧帝国大学のありました府県と同様に、教員養成課程を分離独立させ、そしてその規模、内容の充実をはかることにいたしたい、かような考え方に立ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/10
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011・上村千一郎
○上村委員 教育の最も重要な点は、これを教える教員並びにその素質にあるかと思うのであります。それで教育の充実向上をはかるためにおきましては、教員をどう育成するのかという問題は、重要な課題であらねばならないと思いますし、そういう意味からいたしますならば、教員の養成課程を充実していくという考え方というものは、きわめてもっともなことであるし、そうあらねばならないと思うわけであります。そういう前提のもとに宮城教育大学というものが東北大学から分離独立したという経過はよく納得できるわけでありますが、しからばいま現在日本の大学におきまして教員の養成課程というものが、すべてこういう単独の一つの大学という構成になっておるのかどうか。なっていないとすれば、将来はこの構成にみな一律に持っていくお考えなのかどうか。現状と今後の御方針につきましてお尋ねいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/11
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012・愛知揆一
○愛知国務大臣 この点は先ほどもちょっと触れましたが、学制改革の際にいろいろの経緯があったと思いますけれども、この東北大学の場合等におきましては、さっき申しましたような経過になって、これが不適当である。そこで他の府県と同様にして、そしてさらに新たに独立させます以上は、新しい教育大学におきましては、教育課程、教育方法の研究など実際教育の必要に応じた教育科学の研究を一そう推し進めていくような、できるだけ理想に近い教員養成大学として成長するようにさせたい、かように考えておるわけでございまして、他の旧帝大から分離いたしました学芸大学、教育大学についてはもちろんでございますけれども、その他の教員養成課程を中心とする大学につきましては、同じような方向でさらに将来改善充実をはかってまいりたい、かように考えておるわけでございますが、なお詳しい実情等につきましては、政府委員から御説明させることにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/12
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013・杉江清
○杉江政府委員 補足いたしまして、現状につきまして簡単に御説明申し上げておきたいと存じます。
現在教員養成を目的といたしております単独の単科大学、いわゆる学芸大学と称するものは七つでございます。それから学芸学部として存在いたしますものが十八でございます。それから教育学部として存在いたしますものが二十一ございます。この中で教育学部と称しておるものは、その教員養成のための教育の、かなりの部分を、文理学部に依存しているというような現状でございます。その他学芸学部においても、これが他学部の一般教養を担当したものが多いというような実情にありまして、総体に教員養成を目的とするという性格が希薄でありまして、幾多の改善を要する点が多いわけであります。そういう点から、中央教育審議会におきましても、また教員養成審議会におきましても、もっと教員養成の目的、性格を明らかにして内容の充実をはかり、施設設備の充実をはかるべきだという御答申もいただいており、ただいまその具体的措置について検討しておる段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/13
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014・上村千一郎
○上村委員 ちょっとことばじりみたいになりますが、教育大学というのと学芸大学というのがあります。どうもその主目的につきましては、教員の養成の単科大学であるというふうに理解できるわけでございますが、これは将来教育なら教育、あるいは学芸なら学芸というふうに名前を統一していくつもりであるかどうか、その点につきましてお尋ねいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/14
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015・杉江清
○杉江政府委員 学芸学部の名称につきましては、学芸ということばは一般に学問、学術、技芸というような意味に使われております。そして、学芸学部という名称が用いられたときには、そのような広い教育を与えるという意味合いがあったわけであります。当時のいわゆる設置基準的なもの、簡単なものがございますが、そこでも人文、社会、自然の各分野にわたって広く学習するというような趣旨がうたわれておりまして、ここには教員養成のために必要な教育を行なうという意識は強くなかったのでございます。そういう意味から、現在の学芸学部等においては、教員養成に必ずしも必要でない教育を行なう分野が含まれている事例も見られるようなわけでありまして、私どもはやはり教員養成を少なくとも主たる目的とするという観点から、その内容の整備をはからなければならぬと考えておるわけであります。そして、そういう観点からいたしますとやはり教育学部という名称のほうが適当である、かように考えております。この点については教員養成審議会における御意見もほぼそういう方向に固まりつつあるわけであります。で、今回のこの東北大学におきましては、いままで教育学部にありましたものを分離独立するわけでありますが、そのいままであった教育学部というのは、教員養成を目的としない、いわゆる教育科学科というものと、それかな教員養成を目的とする課程とが併存しておって、それがあわせて教育学部となっておった、今度はその教員養成課程を分離独立させるのでありまして、これはまさに教員養成の目的、性格を明らかにしているものであります。そういう意味において教育学部とすることが適当でありますが、他の教育学部等も広く今後その方向で検討、改善をしていまりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/15
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016・上村千一郎
○上村委員 実はもう少し具体的に申し上げると、私の質問の趣旨がはっきりするかと思いますが、現在学芸大学というものがあるわけです。その学芸大学というものは、理論的にと言いましょうか、そういう点はいま杉江局長がおっしゃったような点があったかもしれませんが、主目的は教員養成大学だというふうに世間一般が理解しておりますし、入学を希望する者は大体そのつもりで入ってくる。教育課程というものを強化拡充していく意味におきまして、教育審議会あるいは教員養成審議会などの御意見を参酌いたしていった場合、現在の学芸大学を教育大学というふうに名前を変える意思があるのかどうか。あるいは学芸大学から教育大学というものを分離独立して教員養成課程を拡充強化する御意思があるのかどうか、この点についてお尋ねしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/16
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017・杉江清
○杉江政府委員 学芸大学、学芸学部発足の当時におきましては、必ずしも教員養成のみを行なうものではないという考え方が強かったのでありますが、現実には教員養成を主とする実態を持っております。しかし、こういう名前が使われておりますために、教員養成の目的、性格を明らかにすることについての抵抗が現在あるわけでございます。しかし、教員養成の大学、学部を充実し、それに応じた教育を行なうようにあらゆる整備を行ないますには、やはりその性格を明らかにする必要がある。そういう観点から私どもはこれを教育大学、教育学部に改める方向のほうがよかろうと考えておるわけであります。そしてこの点は、学長、学部長さん等の御意見もお伺いしている現段階においてはたいへん賛成の方が多いのであります。なおよく教育大学協会等の御意見もお伺いしながら、そういう方向に漸次持っていきたいと私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/17
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018・上村千一郎
○上村委員 神戸大学農学部と長崎大学工学部の設置を、昭和四十一年度とした理由をお尋ねしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/18
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019・杉江清
○杉江政府委員 まあ一つは財政的な理由もあるわけでありまして、一挙にはできないということもありましたけれども、実質的な理由といたしましては、長崎大学につきましては土地問題がまだ解決しておらないわけであります。いろいろ地元では折衝を続けられておるわけですけれども、どうも学内の意思も統一しないし、また地元関係方面の意見も必ずしも一致しないということがあるために、一年の猶予期間を見てその間にしっかりした土地の計画を立てて発足することが必要である、かように考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/19
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020・上村千一郎
○上村委員 深い事情があるわけではない、いろいろと財政的な問題その他の理由だ、こういうふうに理解しておいていいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/20
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021・杉江清
○杉江政府委員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/21
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022・上村千一郎
○上村委員 東北大学等三大学に歯学部を設置するのは、どういう事情で設置するようになったのか、お尋ねをしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/22
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023・愛知揆一
○愛知国務大臣 これは、戦前は歯学の教育は専門学校教育であったわけでございます。戦後大学教育の水準に高められたことに伴いまして、この教育水準に達しない教育機関の廃止または収容定員数の減少を見て今日に至っておりますが、一方戦後公衆衛生思想の普及その他から考えましても、歯科医師にかかります受診率の著しい上昇を見ておりまして、近年歯科医師の不足は非常にはなはだしいわけでございまして、とうてい需要に応じ切れない。また、既成の歯科医の人たちも、最新の歯科医学医術の習得の機会に恵まれない、したがって資質の低下が憂えられる。こういうことから歯学の教育施設についての改善が強く要望されてきたわけでございます。また従来の歯科医学教育機関は東京、大阪といったようなところに集中しているような事情もございます。特に東北、北陸、中国地区におきましては歯科医師が非常に逼迫して、養成機関の設置が切望されてまいったわけでございます。そういったような関係から、これらの地区における最大の規模や組織を備えた東北、新潟、広島の大学は、いずれもすでにりっぱな医学部を有しております。また医学教育においても指導的な役割りを果たしておりますので、医学的な知識を基礎とする歯科医の養成を行なうのに適切な条件を具備しておる、かように考えましたので、ひとつ思い切ってこの際三大学に歯学部を開設いたしたい、かように考えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/23
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024・上村千一郎
○上村委員 埼玉大学に教養学部を設置するということに相なっておりますが、どのような目標を持っておるわけか、お尋ねをいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/24
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025・杉江清
○杉江政府委員 現在教養学部としては東京大学に一つございます。これは人文、自然、社会の広い分野にわたっての教養を積み、これらの総合的な知識判断力を養うというふうな目的を持っておるわけでございます。実際には卒業者はジャーナリストないしは外交官、そういう方面に相当行っておりますけれども、そういうふうな実際的必要もあるわけであります。ただこのような総合的な教育を行なうということは、これは教官組織その他教育方法等、かなりむずかしい問題になっております。そこでこのような学部の設置は相当慎重に考慮する必要がある、かように考えておりますが、ただ埼玉大学につきましては、この教養学部のあり方について十分検討をされ、その教官組織においても私ども十分教育を行なうに値する組織がつくれるという見通しも持ちましたし、また大都会の近くにあるということから、社会的な需要の面からもやはり東大の教養学部と同様な社会的要請がある、かように考えて、特に埼玉大学に教養学部の設置を認めたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/25
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026・上村千一郎
○上村委員 次に、国立工業教員養成所を卒業した者に対しまして大学に編入することができることになる措置を今回規定しておるわけでありますが、この国立工業教員養成所を設置する際の目的というものは、政府御提案の説明の中にもありましたごとく、現下の工業の飛躍的発展とともに、これが中堅的な工業に携わる方々を養成する必要がある。そのためには、それを養成する工業教員が不足しておる。だからひとつ国立の工業教員養成所というものをつくっていこう、こういう御趣旨かと思います。これは現下のいわば緊急と申しますか、できるだけ早く工業関係の教員を養成する、そうしてこれを社会へ送り出す、学校へ送り出すというような趣旨であるとしますと、工業教員養成所を卒業したら、できるだけすぐ役に立っていかなければならない養成の場合に、これが大学に入っていってしまったならば、いわばこの国立工業教員養成所をつくられましたところの趣旨というものにある程度反するような結果になるのではなかろうか。もちろん国立の工業教員養成所へ入られた方々が、いわば向学の精神に燃えるといいましょうか、より上級の大学教育というものを受け、そして充実をしていこうという要望もわかる。また、かかる要望が非常に強いこともよく承知しておりますし、そういいうわばいろいろな意図のもとに今回のような改正にお踏み切りになられたというように思いますが、前の国立工業教員養成所を設置するときの趣旨とちょっと反するといいましょうか、そう反するというひどい意味はございませんけれども、何となく趣旨が一貫せぬようなふうにも考えられますので、これにつきまする御所見を承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/26
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027・愛知揆一
○愛知国務大臣 この御懸念は非常にごもっともな御懸念であると存じます。したがって、私といたしましては、この新しい制度が単に大学進学の方便として乱用されるということになっては非常に遺憾でございますから、その点につきましては十分運用上の配慮を加えなければならないと考えておるわけでございます。ただ、この臨時工業教員養成所の設立の趣旨というものは、あくまで高等学校の工業教員となることを期待し、またその養成をはかることを目的としたことはただいまお話しのとおりでございますけれども、ただ、その卒業生が工業教員となりました後にさらに一段と研究もしたい研さんも積みたいという場合に、大学に編入学してもらいたい希望がありました場合におきまして、制度上これが全然窓が閉ざされておるということでは、学制改革の一つの目標でもありました、いわゆる袋小路をつくらないという趣旨にも反するかと思いましたので、この際編入学の道を開きたい、窓は開いておきたい、こういうふうな趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/27
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028・上村千一郎
○上村委員 最後に一点だけお尋ねをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
国立学校設置法の一部を改正する法律(昭和三十九年法律第九号)の一部を改正いたしまして、図書館短期大学付置の図書館職員養成所を廃止するということでございます。この図書館短期大学を設置するということになりましたことはきわめてけっこうなことであると思いますし、教育の場におきまして図書というものがいかに重要であるか、しかもそれをどういうふうに利用し、そして利用させるか、どういういい図書を選んでどういうふうにこれを利用させ、そして成果をあげるかというような問題につきましては、私は特に現下におきましての教育の実態としまして非常に重要なものであるというふうに思っておるわけでございます。そういう際に図書館短期大学設置ということに踏み切られたところの文部当局の考え方、全面的に賛意を表しておるわけでございますが、この大学ができた、だから図書館職員養成所を廃止する、ごもっともなことでございます。それで、この図書館短期大学というものを新たにつくっていく。そして、そこで養成された方々を学校の教育の場に供給いたしていくということになるわけでございますが、図書館の関係の司書教諭あるいは学校司書というような方々を今後拡充、充実していくということがこの関係におきましてはぜひ必要だと思われますが、それに関するところの御所見を簡単でけっこうでございますが、お尋ねをいたしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/28
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029・愛知揆一
○愛知国務大臣 ただいま御指摘がございましたように、図書館専門の短期大学を昨年さらに改組することになりましたわけでございますが、その関係で、現在といたしますれば従前の図書館の職員養成所が学生の募集を停止して、短期大学に付置した在学生が卒業するまでの間、従前の教習所を存続するということになったのでありますが、今日となりましてその必要がなくなったので廃止するわけになったことは御指摘のとおりでございます。今後におきましてもこの図書館の司書等の充実、資質の向上ということについては機会あるごとにこれを改善充足してまいりたい。御意見のように、私も同感で考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/29
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030・上村千一郎
○上村委員 私の質問はこれで終わります。
────◇─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/30
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031・渡海元三郎
○渡海委員長 次に、文教行政の基本施策に関する件について調査を進めます。
質疑の通告がありますので、これを許します。長谷川正三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/31
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032・長谷川正三
○長谷川(正)委員 第四十八国会の最初の文教委員会でありました二月十日の委員会のおりに、愛知文部大臣から本年度の施策について所信の表明がございました。これに関連して、私はこの際、全般にわたりまして、文教施策についての御熱意なり、その具体的な方策の概要を明らかにしていただきたいと思うわけであります。また、ちょうどその日であったかと思いますが、御所信の表明とうらはらの関係で、昭和四十年度の文部省所管予算案の概要の説明の中に、ある程度これは明らかになった面もあるかと思いますけれども、この際、さらに念を押す意味でお伺いを申し上げたいと思うわけであります。特に文部大臣にお伺いする面もございますけれども、部分的な問題の際は関係局長からの御答弁でけっこうでございます。
まず第一に、文相のおことばの中に、「先人の見識と努力によって、世界的にも誇り得る水準に達している」と、日本の教育についてこのように申されておられるのでありますが、どういう点で特に誇り得る水準に達しておるとお考えになっているのか。これは今後日本の文教政策というものを進める上において、やはり基本的な問題であろうと思いますので、その点をお伺いいたしす。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/32
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033・愛知揆一
○愛知国務大臣 まず、昭和三十九年度の「わが国の教育水準」というものを文部省から出版をいたしておりますが、その中に、いろいろの面から日本の教育の水準ということを取り上げて、国民的に御理解を願いたいと考えておるわけでございますけれども、その中でまず第一に、量的な教育の普及ということから申しますと、たとえば義務教育で申しますならば、一九一〇年当時から今日に至りますまで、常に就学率が九九%以上を引き続きずっと継続しておるというような点は、私は世界に誇り得るような状況ではなかろうかと存じます。それから最近における高等学校の進入率の状況なども、御案内のように東京都内あたりでは八六%にも達しておる、こういうこともまた相当な水準ではなかろうかと思います。さらには大学に進入しております比率、あるいは同一年令層における大学生の状況というもののパーセンテージ等にいたしましても、世界的に見まして非常に高位を占めておる。以上のようないろいろな点から申しまして、量的な水準につきましては明治初年以来の先人の努力、見識、そして実践ということにおいて相当の成果をあげておる、このことをまず第一に私としては心にあらためてとめていかなければならないことであろうと思います。
それからの次に内容の問題でございますけれども、教育内容の充実、能力開発というような点は、ただ単に量的なものを国際的に比較するように簡単にはまいらないかとも思いますけれども、これも「わが国の教育水準」にいろいろの点から取り上げておりますように、いずれの面から申しましても、足らないところもたくさんございましょうけれども、概して言えば世界的な高度の水準に達しており、あるいはまたその水準を抜きつつあるようにしていきたいということは、私どもの念願でなければならない、こういうふうな認識に立ちまして、私の所信の中にそのことを織り込んだ次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/33
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034・長谷川正三
○長谷川(正)委員 いまのお答えの中にもちょっと出ましたけれども、先人の努力という意味は明治、大正、昭和の、日本が近代国家としての体制を整えてまいりました、この全期間にわたっての時期をさしてこうお考えになったと思うのですが、それでよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/34
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035・愛知揆一
○愛知国務大臣 先ほど申しましたように、これは一世紀にわたる努力の成果であると認識していいのじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/35
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036・長谷川正三
○長谷川(正)委員 確かに仰せのとおり、明治以来の努力で日本の教育水準が非常に高まってきており、普及率も伸びてきておるということはそのとおりでございますが、ただなぜ私がこのことを特に伺ったかと申しますと、これをただ直線的に向上したということだけで押えていいかどうかということに問題があろうかと思って御質問したわけでありまして、特にこれは本委員会でも従来も幾たびか問題になったかと思いますが、この際さらにあらためてお伺いしておきたいことは、いわゆる戦前の教育と戦後の教育の中には、一貫しているものもありましょうけれども、ここに大きな一線を画す問題があるのではないかと思います。特に戦前の教育については深い反省がなされて、その基礎の上にさらに戦後の教育というものが発展してきていると思うのでありますが、その点についてどのようにお考えになり、特に戦前の教育と戦後の教育について、そのどういう点を反省せんとしてお考えになっており、どういう点を戦後教育として非常に大切な点とお考えになっておるか。このことについて御所信をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/36
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037・愛知揆一
○愛知国務大臣 先ほどども申しましたように、この量的な水準という点につきましては、私は別に戦前、戦後を問わない、客観的な事実をあらためて認識し、かつこれは誇り得ることであろうかと思いますが、確かに今日の状態から考えますれば、量的の充実もさることであるけれども、質的な充実が大切である、こういうふうに考えるわけでございまして、質的な充実ということになれば、やはり終戦後日本全体が生まれ変わったこの時期におきまして、何と申しますか、民主主義国として新たに生まれ変わったその時代をになうに足り得るような資質の人材を養成するということが、質的内容の問題になってくる。この点においては戦前とは非常に大きな違いを見出さざるを得ないように思うわけでございます。
私の考え方から申しますならば、現在の時代というものは、たとえばこれはいろいろな面から取り上げられると思いますけれども、たとえば経済の自由化ということを一例として引いてみましても、こういうことに日本として踏み切ったということは、もはや戦争を前提にしてものを考える時代は去ったというふうに理解すべきではなかろうか、つまり経済においてさえアウタルキーの経済、あるいは若干でも戦争というようなことが念頭にあるような考え方はこれをもう放棄した時代なんでありますから、おのずから教育の内容についての考え方についてもそういうふうな認識が必要ではなかろうか。したがって日本の民族としては、ほかの民族に負けないで、より早くより高く、世界の平和や世界全体をあげての国民の福祉の向上のために寄与し得るような、そういう人材を養成するというようなことが教育の指針でなければなるまい。それにはしかし、同時に日本人として過去の先人の残されたいろいろのことを正しく理解し、それをまたよりどころにして、役立つものを将来に大いに役立たせるようにしなければならない、こういうふうな考え方が教育の内容についての考え方としては非常に必要なことではなかろうか、こういうふうに私は考えるわけでございまして、今後においてそういった方向にいろいろの教育施策の向かうべきところとして考えてまいりたい、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/37
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038・長谷川正三
○長谷川(正)委員 次に、期待される人間像の中間草案が公表されましたが、私は本日は私見を差しはさまずにずっと質問だけを申し上げておきます。
この問題についても、内容についてはいろいろ議論があろうかと思いますが、本日はそれには触れずにに、ただ御所見の中に、国民各層から意見を十分寄せていただいてりっぱなものを仕上げてもらいたい、こういうふうに述べられておりますので、この意見を聞くということは直接はあの特別委員会の仕事でありましょうが、文相としても、それについてどのような方法で意見を聞いたらいいとお考えか、またこれが正式に結論が出た場合にこれをどういうふうに取り扱われることか。前回もこの点について御質問があったように存じますけれども、もう一度明確にひとつ——これは非常に大切な問題だと思いますので、お伺いを申し上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/38
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039・愛知揆一
○愛知国務大臣 これは二、三年前に、中央教育審議会に後期中等教育のあり方について、当時の文部大臣が諮問されました。後期中等教育のあり方を考えるについては、期待される人間像というようものが同時にやはり考えられなければならないというような当時お考えであったと思いますが、期待される人間像についての諮問も、同時にその関連においてなされたと思うのであります。そこでこの一月十日でございましたか、中教審の中の人間像を担当された部会の方々が中間的な草案を総会に、とにかく中間草案として報告をされ、そしてその報告を同時に世間にお問いになったわけであります。このやり方は、私としては非常にけっこうなやり方であった思っているわけでございます。なぜかと申しますと、諮問された当時の状況あるいは考え方はともかくといたしまして、こういった期待される人間像というようなことがこの時期に国民的な話題になり、そのきっかけがこの中間草案によってつくられるということは、国民が教育というような問題、あるいは期待される人間像というようなことについて、だれ一人として一家言を持たざる方はないとかねがね私は考えておりますので、こういうことがあらためて話題に提供されること自体が喜ばしいことであると考えたわけでございます。
そこで各界、各層からの意見を大いに期待していると申し上げ、かつその方法論はどうなるかという次のお尋ねでございますが、これは中教審の問題でございますが、中教審の委員の方々にもひとつ大いにいろいろ意見を謙虚に率直に聞いていただきたい。場合によれば懇談会でも座談会でも演説会でも、求められればどこにでも、ひとつ街頭に出ていただいて、いろいろの意見を聞いていただきたいということを私は望んでおるわけでございます。また一方四十年度には、十分とは申せませんけれども、文部省としてのモニターというような制度も置くことを考えておりますので、たとえばそのモニターをお願いをする場合におきましても、若い方とかあるいは女性であるとか、各界、各層にわたっていろいろの意見を求めることにしたならば、さらに効果があるのではなかろうかというようなことも考えております。幸いに私から申しますれば、報道界、これは民放等も含めまして、相当の活字といいますか、スペースを提供し、貴重な時間を多くさいてくださっておりまして、この期待される人間像論議がいろいろと行なわれておりますことは、たいへんありがたいことだと思っておりますが、いま申しましたような、しいて方法論とでも申しますならば、さらにそういうことで論議を展開していただきたいと考えておるわけでございます。そうやってだんだんに広く意見を取り上げていって、聞くべきものは十分取り上げていただいて、りっぱな答申をしていただきたいと期待しているわけでございます。
しかし同時に私は、この答申によって一つの鋳型をつくろうというような考え方はございません。いわんやそこで出てくるものを鋳型にして、これを強制的に押しつけていくというような、そういう不遜な考え方はとるべきではないと思います。したがって、最終の答申というものも、場合によれば複数であったりいろいろの注釈がついたり、そういうものであってもかまわない、あるいはそのほうがむしろもっと望ましいのではなかろうかとすら思っておりますけれども、これはあくまで中教審の先生方の自主的な御判断でおやりくださることを期待をいたしておるわけでございます。それが出てきた場合、どういう形で出てまいりますかわかりませんけれども、いま申しましたような私の気持ちでございますから、これを種にしてどうこうするというようなことはいまは考えておりません。むしろあらゆる立場の方々からいろいろの御意見が出てくる、そのことをひたすら待望しておるような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/39
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040・長谷川正三
○長谷川(正)委員 大臣のお考えはよくわかりました。
次に進みます。大臣の所信表明の中に、「青少年の自信を高揚し、未来にかける夢をすくすくと伸ばし得るよう必要な教育諸条件を整え、適切な指導を行なうことこそ文教の基本である」、こういうふうにおっしゃっておられます。これはまことに私も同感でございます。また、「文教の施策は長期的な視野に立って着実に推進すべきであります。」ともおっしゃっております。そこで、そういう意味で具体的に幾つかの項目をあげて、さらにその内容づけをしておられますので、それにつきまして今年特にどのように具体化されるおつもりか、また将来についてどのように展望されておるのか、これを逐次伺ってまいりたいと思います。この点につきましては、場合によっては関係局長からの御答弁でもけっこうでございます。そこでまた予算の先ほど申し上げた概略説明に出ておる部分もあると思いますが、しかしそれらを合わせてもう一度お答えを願いたいと思うわけであります。
特に第一番目に教育の機会均等の確保ということを申されておりますが、この点につきましては、文部当局をはじめ教育関係者がずっと逐年努力をなさってきておると思いますが、なお多くの解決すべき問題を残しておると思います。そこで、今年はこの教育の機会均等というような面についてどういうところに特に大きい前進をはかられようとなさっておられるか、この点をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/40
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041・愛知揆一
○愛知国務大臣 私の申しましたことばをお取り上げいただいて非常にありがたいのでありますが、同時にちょっと一言申し上げたいと思いますのは、私がこの未来からの呼びかけということをスローガンにいたしておりますのは、たとえば歴史というものを考える場合にも、過去の歴史というものをいろいろの意味で正確に理解し、評価し、あるいは反省しなければならない、それは現在に通ずるものであり、同時に未来ということに結びつけて考えることによって、いたずらなるいわゆる反動というような考え方はとるべきでない。これは未来と結びつけることによってそこに立体的な歴史観の上に立ったものの考え方が確立されるのではなかろうか、書生論でありますが、私は一つのそういう考え方を持っているわけでございます。したがって、私よく引用いたすのでございますけれども、たとえば明治三十五年が二十世紀に入った時期である。その年の正月の当時の時期などを見ましても、二十世紀の終わりごろには、世の中がこういうふうに目ざましい、いまでは予想もされないような発展をするであろうというようなこともそこに掲げられておりますが、現在これを読んでみますと、もうすでに、そのときに予想もできないような、こういうこともできるであろうかと掲げられてあることは、すでに現実の実用の時代に入っておる、こういうことを考えてみましても、特にたとえばいま二十歳の人ならばいまから三十五年たてば五十五歳になる、あるいは十歳の人なら四十五歳になる、そのときが二十一世紀なんだ、こういうことを若い人たちがよりよく意識の上に乗せて、そして将来への夢やビジョンを持ってもらうことが非常にいいことではないか、私はこういうふうに考えているわけでございます。しかしそういうことを申しましても、いたずらに新しいことを言うても何もできないこともございますから、やはり現実にじみちに教育の施策は進めていかなければならない、こういう思想を持ってこの間の所信にも書いたような次第でございますことを御理解いただきたいと思います。そこで、それならば現実にじみちにどういうことを具体的にやっていくかということになりますと、いま御指摘ありましたような教育の機会均等の確保をしたい、あるいは教育の地域的その他の面からいう格差を是正していきたい、それから父兄負担というものをできるだけ軽減していきたいといったようなことが、まず当面最大の重点を置くべき問題ではなかろうかと存ずるわけでございます。
機会均等ということからいえば、一、二の例を申しますと、僻地教育の問題につきましては、はなばなしい施策ではございませんけれども、われわれとしてはできるだけきめこまかく配慮をしてまいりたいということで、予算の上にもある程度の、四十年度にはいままで試みられなかったことを計上いたしておるつもりでございます。それから就学奨励、育英奨励というようなことも御同様でございます。あるいはまた特殊教育ということも同様の観点からとらえられるかと思います。また大学拡充ということももちろん必要なことでありますけれども、一方においては、定時制、通信制の高校教育というようなところにはなお一そうの努力を傾けなければならない、あるいはまた勤労青年学級というようなものも拡充しなければならないと考えるわけでございます。
格差の是正ということから申しますと、いま申しました地域的には僻地教育というようなことがその中の問題であると思いますけれども、経済的な格差の是正ということから申しますと、要保護、準要保護家庭の児童生徒に対する育英奨学の拡充というようなことが例として取り上げられるかと思います。また身体的といいますか、肉体的な格差是正ということからいえば、さっきも申しましたが、特殊教育の振興ということが取り上げられると思います。またさらにはこれが非常に大きな問題になっているわけでありますが、国公私立の大学から幼稚園に至りますまでの関係を考えてみますと、国公立と私立との間には相当のいろいろな意味で格差がある、これを何とかその格差は幅を狭めてまいりたいということがその大きな焦点になろうかと思います。
それから父兄負担の軽減ということになりますと、教材費や教科書や給食や、あるいは新たにくふうをこらしたつもりでございますが、遠距離通学費の補助でございますとかいうような点についても格別の配慮をしてまいり、また今後ますます拡充しなければならないと思います。さらにはいろいろの意味で父兄に対して教育費が転嫁されることをできるだけ狭めてまいりたい。
いろいろ申し上げたいことは多々ございますけれども、この予算の説明にも掲げておきましたようないろいろの施策が、結局じみちにやってまいらなければならない諸般の措置である、こういうふうに、基本的な考え方としていま申しましたような考え方で進めてまいりたい、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/41
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042・長谷川正三
○長谷川(正)委員 それでは、いま教育の機会均等、格差是正、父兄負担の軽減等についての御所見を承りましたが、続いて、教育内容の刷新充実ということをあげておられますが、これは抽象的にはもちろんだれでも認めるところですが、しかしこの内容の問題はまた重要でありますので、特にことし刷新充実の具体的内容としてお考えになっていることがありましたら、それをお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/42
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043・愛知揆一
○愛知国務大臣 この点は一般論としては先ほどもちょっと申し上げましたが、そういう気持ちでやってまいりたいという考えでございますけれども、同時に現在具体的にやっていく方法といたしましては、従来から心がけておりますことを伸ばしていくということがまずさしあたってやるべきことではなかろうか。あるいはまた教職員の資質の向上ということも、これに関連して非常に必要なことであると思いますので、教職員の研修を活発にやるというようなことが一つの重点になろうかと考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/43
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044・長谷川正三
○長谷川(正)委員 次に、御所見の中に「幼少期における教育の重要性を考え、幼児教育及び家庭教育についても十分に配慮していきたい」とお述べになっておられますが、特に幼児教育についてことしは何をなさるか、ことに将来のどういう展望をお持ちであるか。それからさらに家庭教育への配慮という点については、先般も参考の文献をお出しになられたと思いますが、さらにこれらについて具体的に本年お考えになっておることがあるならばそれをお示しいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/44
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045・愛知揆一
○愛知国務大臣 まず幼児教育の問題でございますけれども、これにつきましては、幸いに灘尾前大臣が非常な意欲をもって七カ年計画というようなものの立案と実現に着手されましたので、これを踏襲し、かつできるだけ伸ばし、またできれば時期をもっと繰り上げて実現いたしたい、かように考えまして、四十年度は幼稚園の増設につきましてできるだけの勧奨、指導、奨励をやってまいりたい。その幼稚園の数等につきましては政府委員から御答弁をいたすことにいたしたいと思います。
それから社会教育については、やはり従来から御案内のように帰人学級、家庭学級、青年学級、あるいはまた公民館の建設の促進といったようなことを中心にいたしまして所要の補助を増加し、あるいは個所を従来にも増して設置をするというようなことを四十年度において計画をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/45
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046・福田繁
○福田政府委員 ただいま大臣からお答えになりました幼稚園の振興計画の第二年目にあたります昭和四十年度の計画を申し上げますと、計画設置の分につきましては、新設百十二園、既設幼稚園の学級増六十八学級分につきましては、公私立ともに施設整備に対する補助ないし援助を行なう予定にいたしております。そのために公私立の設備費は約三千五百万円、それから公立の幼稚園の施設整備費の補助金といたしまして一億一千五百八十一万三千円、私立幼稚園につきましては、振興会から施設の融資を行なう予定になっております。さような計画になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/46
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047・長谷川正三
○長谷川(正)委員 それでは次に進みます。また所信表明の中に、「心身ともに健康な青少年を育成する上で、たくましい体力、気力を養うための諸方策を推進する必要があることを痛感」しておられる、こういうように書いておられますが、これについて新しい具体的な対策としてはどのようなことを考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/47
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048・愛知揆一
○愛知国務大臣 私が痛感いたしましたことの一つに、オリンピックを契機にいたしまして、たとえば十二歳の男の子の体力を比較してみますと、たとえばアメリカから見ると、身長、体重ともに相当まだ劣っております。イギリスについても同様、まだ相当のおくれをとっております。こういうようなことが私痛感したことの具体的な一つでございます。ところが一方におきまして、たとえば純粋の日本人の血であって、いわゆるアメリカ在住の二世の子供さんたちはすでに身長、体重とも、単純な比較でございますが完全に世界の水準の第一級にいっている、こういう点を考えますと、たとえば一つは食物の問題もあろうかと思います。そういう点から学校給食というようなことについてはできるだけ早く全国的に普及をいたしたいと考えますが、同時にこれには一つの大きな、また雄大な計画をつくることが必要ではなかろうかと思いまして、保健体育審議会あるいは科学的な研究は科学技術庁におきましてもすでに着手をいたしておるわけでございますが、しかし先ほど来申しておりますように、いたずらに新しきを求めても、なかなか一挙にはできませんので、さしあたり四十年度におきましては、たとえば共同調理場をできるだけ多く設置をする、それから栄養士をできるだけ多くして、五百人足らずが今回の予算で認められておりますが、こういったようなところに私どもの意図を具体的に出しておるつもりでございます。
それから体位の向上ということにつきましては、従来からやっておりますプールを全国的に普及したい、あるいはまた高等学校に柔剣道の道場をつくることに対する補助を新たに行なうということもその一つでございます。それからオリンピックの残された施設を総合青少年センターとして、別にお願いしております特殊法人に、法律をもって新たなる施設をつくって、これに原則的に選手村その他の残された施設を国から出資をしてもらいまして、これを青少年に大いに活用してもらいたいと思っております。また国立青年の家も引き続き第四のものをつくる予算を計上しておりますし、地方青年の家、その他これに準ずるような施設につきましてもできるだけの国としての後援も続けてまいらなければならないといったようなことで、各般にわたりまして体位の向上ということにできるだけの努力を注いでまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/48
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049・長谷川正三
○長谷川(正)委員 時間がだいぶたっておるようですから、それについてあともう一、二点だけ伺います。
高等教育、特に大学教育の充実についても触れられておりますが、この中で社会的需要の趨勢、大学志願者の増加、いわゆる大学教育の質的向上、こういう三点を押さえて配慮をされる、そうしてあと地方大学の充実の問題、あるいは私学の振興の問題等も触れておられますが、これらについては三木委員その他からもいろいろ御資疑がありましたし、今後もあると思いますので譲りまして、ただ一つだけ、社会的需要の趨勢ということについて、どういうふうに把握をされておるか、この点をひとつお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/49
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050・愛知揆一
○愛知国務大臣 実はこれは非常に大きな問題であるとかねがね考えておるのでございますけれども、たとえば率直に申しますと、長期経済計画とか、中期経済計画というものが策定されておりますけれども、そういった面からだけの人間に対する社会的需要ということだけでとらえてはいけないのではなかろうかと思います。人間の問題でございますから、いたずらに社会的な需要趨勢ということだけにとらわれてはいけないと思いますけれども、しかし同時に他面から申しますと、私は、高等学校以上の年齢層になりますと、おのずから天与の資質や特性も違うのでありますから、画一的な教育の制度でこれに対処することもまた不適当ではなかろうか。やはり大学というようなところは、本来でいえば、学のうんのうをきわめ、あるいは学術を研究し、あるいは後進の指導をするということに一つのまた大きな使命もあるのではなかろうかと思うわけでございますが、それらの点については私もまだ十分考えがまとまりませんで、たいへん申しわけないのでありますけれども、一面においては、やはり経済界その他ではそれなりの社会的需要というものを相当に考えておるようで、それらの考え方のいいところは大いに参考にしなければならない面もあろうかと思います。それから一面から申しますと、先ほどもちょっと申しましたが、定時制や通信制の教育を受けている若い世代の人たちには非常な、何というか、日本人としてのまことに尊敬すべき、また期待すべきような人材がたくさんおられるので、こういう方々の勉強したいという気持ちをどういうふうな形で伸ばしていくかということも同様に重要な要素であって、これも長期の展望に立って考えていかなければならない。これは必ずしも別に御提案申しております臨時私立学校振興方策調査会でそういうことまでもなかなか取り上げていただけることができるかどうかわかりませんけれども、私学振興策ということを徹底して考えます場合には、やはりそういう種類の問題をも、できるならば調査をする対象の一つとして取り上げることができれば多大の参考になるかと思っているわけでございまして、これは考え方を御提案しただけでありまして、人間の立場でどういう方面でどういうふうに伸ばしていったらいいかということを、長期的展望で、かくすべきであろうかというような内容のある具体的な提案を申し上げるまでには、まだ至っておらないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/50
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051・長谷川正三
○長谷川(正)委員 それではさらに進みまして、入学試験の競争の激化は、学歴偏重の傾向と家族の過大な要望によるところが少なくないという点を指摘されておられますが、これはまことにそのとおりだと思いますが、しかしさらにもう一歩えぐりまして、じゃどうしてそういう風潮になるかというふうにお考えになっているか、分析されているか。社会や家庭の理解と協力あるいは学校の進路指導に期待するというふうにおっしゃっておられますが、それだけではなかなか解決しないと思いますが、その点についてえぐって考えた場合には、どういうところにあるか。これはやはり文教施策を進める上に非常に大事な点だと思いますので、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/51
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052・愛知揆一
○愛知国務大臣 これは確かに御指摘のとおりでございまして、たとえば大学に例をとれば、国立大学に入れば月謝は一万二千円、入学金は五千円、私立大学は、いろいろの幅がございますけれども、平均すれば従来でも授業料が六万一千円の平均になる、そして入学費、施設費その他相当な額になっているということは、今日周知の事実でございます。したがって国立と私立と比べてみれば、親の立場からいい、本人の気持ちからいえば、月謝が安く、入学金もとられないようなところへどうしても入りたい、そしてよい教育を受けたい、これはもう人情のしからしむるところであって、こういう点からも有名校偏重というよりは、むしろ国立偏重ということが底にあるかと思うのでありまして、そういう点は先ほど申しましたように格差の是正という点からとらえても、私学振興策というのは非常に大切なことであると思うわけでございます。しかし一面においては経済的な条件の比較だけではなくて、いわゆる有名校に殺到するという傾向はまた周知の事実でございます。これについてはいろいろの原因もございましょうけれども、まあ私から言わしていただければ、何も世にいわゆる有名大学だけに無理をしていかないでも、いまのところは有名校でないところでも、その学生なり生徒なりが存分に天分を伸ばすような勉強のやり方も大いにある、またそういう人に対する社会的需要もある、また人間形成も十二分にできるということがあるわけでございますから、そういう点についてもあまり無理をして激しい入学試験に追い立てるようなことはいかがであろうかという私のありのままの気持ちをここに掲げたわけでございまして、これもやはり今後の教育施策の上には考えていただきたい一つの要素であるということをあえて取り上げたようなわけでございます。そういうふうに御理解をお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/52
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053・長谷川正三
○長谷川(正)委員 それじゃもう一つお尋ねいたします。
基礎研究の分野で重要な役割りを持つ大学の研究体制の整備はきわめて大切なことと考えていると申されておりますが、この点ですでに国立大学についての法案等も出ておりますが、これで十分とは当然お考えになっていないと思います。特に今後整備しなければならない問題として、どのような点をお考えになっているか、この点を御質問いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/53
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054・愛知揆一
○愛知国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、たとえば例を国立大学にとりますと、大学院については昭和三十八年度から三十九年度にかけて二十四の研究科が増設されているわけでございますが、それに比べまして四十年度だけでも十六の研究科の新設をいたしておりますので、これは最近一両年に比べてみましても画期的なものであるかと考えておるわけでございます。それからなおそのほかに学術研究の面につきましてはこまかく申し上げると切りがないわけでございますけれども、たとえば東大を中心とする宇宙開発の研究でございますとか、あるいは南極の観測でございますとか、あるいは巨大加速器、これは学術会議でも非常に要望されていた基礎的研究でございます。一、二の例をあげますとそういうところには、この四十年度予算としては日本の財政事情からいえばかなり思い切って予算を計上することができたように考えております。そういった面については四十年度でかなり新しいところが出ておりますが、これはどんどん押し広げてまいりまして——諸外国に比べましても学術の基礎研究に対する政府の予算の出し方はまだまだ非常に少いのでありまして、これは今後大いな努力を必要とする点かと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/54
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055・長谷川正三
○長谷川(正)委員 以上で私質問を終わりますが、非常に懇切に大臣からお考えのほどを述べていただいたことを感謝いたします。なおこれらの個々につきましてはいろいろ意見を持っておりますので、今後の質疑においてこれを深めさしていただきたいと思います。
本日はこれで質疑を終わらしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/55
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056・渡海元三郎
○渡海委員長 三木喜夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/56
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057・三木喜夫
○三木(喜)委員 大臣もおせきでありますので、一点だけお伺いして、答弁は保留してもらってけっこうです。そのあと事務局のほうに要請して私の質問を終わりたいと思います。
この間から私は科学技術対策特別委員会にも所属しておりますので、大臣に接する機会が非常に多い。そしてたびたび大臣とこんな論議を通じて接触してまいりまして、非常に理想主義的な、しかも穏健な考え方で、教育行政、そして教育の大きな目標を立てていこうというお考えには、私は基本的に賛成するものです。特に文相の好きなことばで、一年を計画する者は花を植え、十年を計画する者は木を植え、百年を計画する者は人を育てよ、こういう一つの信念を持ってやっておられること、非常にけっこうなんです。しかしながら、理想主義といい、あるいは理想郷を描こうとするときに、ともすれば痛切な現状に対する反省というものが忘れられがちになるのじゃないだろうかと思うのです。いまこの文相の所信表明を見てまいりまして、そうした深甚な反省の上に立って、日本の教育がどちらに曲っておって、どのように苦しんでおるかというその認識、分析が希薄である。依然教師は労働過重にあえいでおります。これは真剣に見てもらいたいと思うのです。
次に、学力テストの問題から全国的に非常に不信の念を高めてまいりました。教育不在の教育、こういうものがほうはいとして下にある。それをどう分析していって、その反省をどう積み重ねていくか、これをひとつ文部当局も大臣もこのような非常に——大臣を置いておいておべんちゃらを言うようで悪いですけれども、得がたい大臣を得たと私は思うので、この機会にひとつそういうふうに考えていただきたい。私が得がたいという意味は、私学の問題を灘尾文相から愛知文相にかけて真剣に考えておられるということに敬意を表しているわけです。それをお願いしておいて、どうぞ向こうに行っていただきたいと思うのです。
それから事務局のほうにひとつお願いしたいのですが、大臣はいま格差の問題を言われましたけれども、格差からくるところの人間の苦痛、人類の進展の上に、あるいは国民の進歩発展の上に何が隘路になるかというと、格差だけが隘路じゃないのです。人間を尊重するということを自民党の憲章もうたっておりますし、それから総理も人間尊重を言っておられますけれども、その苦痛をどういうぐあいに解消するかということを教育の面にあらわさなかったら、それは単なるうたい文句にすぎないことになってしまうと思います。
そこで、いま何が一番苦痛かといいますと、アメリカでも民主主義をいっておりながら黒人差別をやっているのです。日本でも依然として人種的な偏見といいますか、人間の差別がのけられていない。悲しいビジョンを掲げ、過去の業績をたたえ、教育の業績をたたえておきながら、その底辺には依然として差別観念がなくなっていない。そこで、文部省の予算のこれを見ましたら、これもあとの私の要請の中にあるのですが、同和教育については、おしまいのほうにほんのちょっと書いてあります。書いてないよりいいですけれども、こういうことこそ、今後どういう見方を持ってやっていくという一つの計画を出してもらいたいと思うのであります。これはわが国の教育の進展の中の一つの恥部です。だからこういうところにどう対処していくか、この三点を踏まえてひとつ次に私は要請を申し上げたいと思います。
これは委員部を通じあるいは文部省の出先を通じあるいは文部省の出先を通じて私は再三要求しておるのですけれどもいまだに出てこない。委員長にも要請したわけなんですけれども、資料要請です。
大学急増計画と、それから給食の計画と教科書無償の計画と、南極観測の計画、これを出してもらいたい、こう言っておりますけれども、しかしぼうっとした話ですから手のつけようがないのだろうと私は思います。
大学急増の計については、いま大臣も未知の点があるように言われまして、はっきり立たないのだという意味を言われましたので、それなら申し上げておきたいと思うのですが、文部省では十万計画から七万におり、さらに六万七千五百におりた、その六万七千五百におりた計画の上でけっこうですから、昭和三十九年の在学生とその年の入学生を積んでグラフにしてもらえば非常にわかりやすいと思います。その横にその年の希望者がどれだけあって、その希望者の内訳を新卒とそれから浪人——四十年、四十一年、四十二年、四十三年は進学、高等学校の新卒は推定になりますけれども、その推定の上に立って、これも線が出ておるのですから、その推定の上に立って新卒者と浪人というものをひとつ出してもらいたい。ここにも浪人が激増するようになれば差別と劣等感が並行していくわけなんです。山中委員はよく優越感と劣等感が二つ混合していくいまの日本の情勢を指摘しておられましたが、私はこういう中に、こうした劣等感とかあるいは適応しないところの人の問題をどう考えていくかということが大事だと思いますのでこれをお願いしたいと思う。大学局長ひとつお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/57
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058・杉江清
○杉江政府委員 三十九年度の実態についてはこれは資料が集まります。ただ推計につきましてはいろいろな仮定の上で数字を出してこなければならぬものですから、そこの点が非常に出しにくいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/58
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059・三木喜夫
○三木(喜)委員 出せば責任があると思うからでしょうが、いま申し上げたように推定でけっこうです。六万七千五百のいまのままの計画でいいから、それでできるだけ出してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/59
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060・杉江清
○杉江政府委員 お話のようにできるだけ努力して調製いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/60
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061・三木喜夫
○三木(喜)委員 これは私予算委員会の分科会でこの問題を取り上げたいと思いますから、来週の初めごろまでに少しでも早くお願いしたいと思うのです。
それからいま申しました同和教育の財政的な裏づけ、計画はたくさん要りません、こういうところに重点を置くのだ——なぜこれがやれなかったかったという反省の上に立った重点だけひとつ出してもらいたい。
それから給食については、なま乳をどういうぐあいに取り入れるかということがあります。これも四十、四十一、四十二年といまの粉乳がなくなるときを目当てにして計画を出してもらいたい。
それから四番目に教科書無償の問題ですが、これはことしは残念ながら六年生で終わってしまった。来年は中学校の三年までいくのかどうか、計画でけっこうですから、これは政治情勢がありますから、そう言っておってもできなかったということがありますから、これはとがめることではないのですが、文部省としての信念を持った計画をひとつ出してもらいたい。それには来年度は一年生にはこれだけのお金が要る、二年生にはこれだけのお金が要る、三年生にはこれだけのお金が要る、総計幾ら要るか、こういう一つの見通しを立ててお願いいたしたいと思います。
それからこれは学問の学術研究の問題になってくると思いますが、幸いいままでやめておったところの南極観測が今度再会されることになりました。まことに私はけっこうだと思うのですが、これについても論議をしなければならぬ問題が残っております。これは文部省だけの問題ではございません。自衛隊がこれに参加する面もありますし、内閣委員会でもいろいろ論議されると思いますけれども、論議の資料といたしまして、南極観測に対する予算、計画、これを四十年、四十一年、四十二年の三年間にわたってお願いしたい。
こういう資料要求をしておきまして、それについて御意見がありましたら言っていただいて、もう大臣がおられませんから私の質問なり要請は終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/61
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062・西田剛
○西田政府委員 給食関係のなま乳につきましては、農林省のほうの計画の調整の都合がございますから、これは計画がはたして立つかどうか一応連絡をとってみます。文部省としては独自に立てにくい事情にありますから、あらかじめ御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/62
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063・杉江清
○杉江政府委員 南極観測の計画につきましては、まだ不確定の要素が多分にありますが、できるだけ御希望に沿うように努力いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/63
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064・渡海元三郎
○渡海委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
午後零時二十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805077X00419650219/64
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