1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十年四月九日(金曜日)
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議事日程 第二十八号
昭和四十年四月九日
午後二時開議
第一 臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法
律案(内閣提出)
第二 石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の一部を
改正する法律案(内閣提出)
第三 公職選挙法の一部を改正する法律案(三
木武夫君外十一名提出)
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○本日の会議に付した案件
オリンピック記念青少年総合センター法案(内
閣提出、参議院回付)
日程第一 臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正す
る法律案(内閣提出)
日程第二 石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の一
部を改正する法律案(内閣提出)
日程第三 公職選挙法の一部を改正する法律案
(三木武夫君外十一名提出)
労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案
(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
午後二時八分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X03019650409/0
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001・船田中
○議長(船田中君) これより会議を開きます。
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オリンピック記念青少年総合センター法案
(内閣提出、参議院回付)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X03019650409/1
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002・船田中
○議長(船田中君) おはかりいたします。
参議院から、内閣提出、オリンピック記念青少年総合センター法案が回付されました。この際、議事日程に追加して、右回付案を議題とするに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X03019650409/2
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003・船田中
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
オリンピック記念青少年総合センター法案の参議院回付案を議題といたします。
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004・船田中
○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。石炭対策特別委員会理事藏内修治君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔藏内修治君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X03019650409/4
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005・藏内修治
○藏内修治君 ただいま議題となりました臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律案外一件について、石炭対策特別委員会における審査の経過並びに結果を御報告いたします。
石炭鉱害の復旧については、臨時石炭鉱害復旧法並びに石炭鉱害賠償担保等臨時措置法により大きな効果をあげてまいりましたが、いまなお累積鉱害が多数残存し、また、将来発生鉱害も相当量予想されております。
両案は、このような石炭鉱害の急速かつ円滑な復旧の促進等をはかるため、所要の改正を行なわんとするものであります。
両案のおもな内容を申し上げますと、臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律案は、家屋等の復旧工事にかかわる国及び県の補助率を、現行二分の一から百分の六十五に引き上げること、石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の一部を改正する法律案は、鉱害賠償基金の名称を鉱害基金に改め、新たに鉱害防止資金の貸し付け業務を行なうこと等であります。
両案は、去る二月十一日本委員会に付託され、二月十七日機内通商産業大臣より提案理由の説明を聴取した後、参考人を招致する等、慎重審議を重ねたのでありますが、その詳細は会議録により御承知おきを願いたいと存じます。
かくて、四月八日、委員会において採決いたしましたところ、両案はいずれも全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X03019650409/5
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006・船田中
○議長(船田中君) 両案を一括して採決いたします。
両案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X03019650409/6
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007・船田中
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、両案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第三 公職選挙法の一部を改正する法律
案(三木武夫君外十一名提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X03019650409/7
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008・船田中
○議長(船田中君) 日程第三、公職選挙法の一部を改正する法律案を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X03019650409/8
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009・船田中
○議長(船田中君) 委員長の報告を求めます。公職選挙法改正に関する調査特別委員長中村庸一郎君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔中村庸一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X03019650409/9
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010・中村庸一郎
○中村庸一郎君 ただいま議題となりました三木武夫君外十一名提出の公職選挙法の一部を改正する法律案につきまして、公職選挙法改正に関する調査特別委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
御承知のとおり、昨年七月公職選挙法の一部が改正され、衆議院議員選挙または参議院議員選挙につきましては、それぞれ次の総選挙または通常選挙から実施することとされたのでありますが、本案は、さらに制度面及び運用面について改正を行なおうとするもので、そのおもな内容は次のとおりであります。
第一は、補充選挙人名簿の登録手続及び調整手続の合理化をはかるため、補充選挙人名簿は選挙期日の公示または告示の前日までに登録の申し出をした者について調整することとし、選挙期日の公示または告示後に登録の申請ができる制度を廃止することといたしております。また、登録の申し出をするにあたり、必要がある場合には、現に効力を有する選挙人名簿またはその抄本の閲覧を求めることができることといたしており、登録の申し出及び選挙人名簿等の閲覧の請求は、市町村の選挙管理委員会の職員の勤務時間内にしなければならないものといたしております。
第二は、運行中または停止中の選挙運動用自動車、または船舶の上における選挙運動のための連呼行為のできる時間が、衆議院議員選挙及び知事選挙の場合と参議院議員選挙の場合とで相違しておるので、これを統一して一律に午前七時から午後八時までの間に限ることといたしております。また、確認団体が政治活動のために行なう連呼行為のできる時間についても、前の場合と同趣旨の改正をいたすことといたしております。
以上が、本案のおもな内容であります。
本案は、自由民主党、日本社会党及び民主社会党の三党共同提案によるものでありまして、去る四月三日本委員会に付託され、四月六日提出者の鈴木善幸君より提案理由の説明を聴取した後、慎重に審査を進め、昨八日、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X03019650409/10
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011・船田中
○議長(船田中君) 採決いたします。
本案は委員長の報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X03019650409/11
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012・船田中
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X03019650409/12
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013・船田中
○議長(船田中君) 議院運営委員会の決定により、内閣提出、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案の趣旨の説明を求めます。労働大臣石田博英君。
〔国務大臣石田博英君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X03019650409/13
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014・石田博英
○国務大臣(石田博英君) 趣旨の説明を申し上げます前に、一言発言をいたしたいと存じます。
本日午前六時三十分ごろ、日鉄鉱業伊王島鉱業所でガス爆発が起こり、現在までに七名の死亡が確認され、なお十七名について救出作業が続行されております。
労働省といたしましては、直ちに現地の長崎労働基準局長以下係官を現地に派遣いたしますとともに、三池医療委員会の専門医の現地派遣、その他緊急医療対策を進めておりますが、三井三池、北炭夕張の事故に引き続き、またまたこのような事故の発生を見ましたことは、きわめて遺憾にたえません。犠牲になられた方々に対しまして、この機会に心から哀悼の意を表する次第であります。
労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
労働者災害補償保険制度は、昭和二十二年に創設されて以来、労働災害をこうむった労働者及びその遺族に対し災害補償を行ない、あわせて労働者の福祉に必要な施設を行なうことによって、労働者及びその遺族の保護に力を尽くしてまいりました。この間、わが国経済の成長と相まって、労災保険加入事業場数も逐年増加し、保険経済の規模も拡大の一途をたどり、現在、労災保険の適用事業場数は約八十八万、労働者数は約二千万人でありまして、年間約百万人の労働者及び遺族に対し約五百億円にのぼる保険給付が支給されております。
しかしながら、従業員五人未満の零細事業や商業、サービス業などの任意適用事業に働く労働者等でいまだ労災保険の保護の外にある者も決して少なくない現状であり、最近における社会経済情勢の変化により、これらの労働者の保護をはかるため、労災保険の適用の拡大が強く望まれるに至っております。
また、労働災害をこうむった労働者及びその遺族に対して、必要な期間、必要な補償を行なうという見地から、障害者と遺族に対する保険給付については、原則として年金制を採用し、これによってその生活の安定をはかるとともに、労災医療及びリハビリテーション施設の充実と相まってその社会復帰に資することが必要であると考えるのであります。このことについては、去る昭和三十五年における労災保険法の改正の際においても、衆議院及び参議院の附帯決議におきまして、遺族年金制の採用等について要望されたところであります。
さらに、労災保険法施行十数年の経験及び最近の諸情勢に徴して、保険給付、保険制度及びその運営につきまして、なお改善すべき点がしばしば指摘されているのでありますが、特に、労災保険の適用範囲がますます拡大されようとする事態に対処して、労災保険の事務手続を簡素化して、事業主等の負担を軽減するとともに、保険者たる政府の保険運営を能率的にすることが強く要請されており、このためにも、施設の充実、運用の改善と並んで、現行法令の整備が必要であると考えるのであります。
政府におきましては、これらの問題を含めて労災保険制度の全般にわたって検討を進めてきたのでありますが、同時に、労災保険審議会においても、労災保険制度の問題点について調査研究が行なわれ、昭和三十八年十月にその結果を労働大臣に報告されたのであります。
このような諸事情を考慮し、政府といたしましては、昭和三十八年十二月に、労災保険審議会に対し、労災保険制度の改善につき諮問をいたし、昨年七月、法改正の方向に関する答申を得たのであります。この答申に基づき、労災保険法改正要綱案を作成し、これを同審議会及び中央労働基準審議会に諮問し、昨年十二月にそれぞれ答申を得ました。本年一月、右要綱案に若干の修正を加えた要綱を社会保障制度審議会に付議し、その了承を得、その結果に基づいて、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案を作成し、国会に提案いたした次第であります。
次に、その内容につきまして概略御説明申し上げます。
この法律案の内容は多岐にわたりますが、諸般の準備を整えた上、逐次これを実施に移すこととして、施行時期別に三カ条に区分しております。すなわち、第一条は、適用関係、療養補償、休業補償、支給制限、保険料等に関する改正規定でありまして、昭和四十年八月一日から、第二条は、労災保険事務組合、特別加入等に関する規定でありまして、昭和四十年十一月一日から、それぞれ施行することとし、第三条は、保険給付の年金化を中心とする改正規定でありまして、昭和四十一年二月一日から施行を予定しております。
以下、この区分に従って、法律案のおもな内容を御説明申し上げます。
第一に、改正法案第一条の規定による改正のうち、適用範囲につきましては、強制適用事業の範囲について、従来のもののほか政令で定めるものを加えて漸次拡大をはかることとするとともに、従業員五人未満の零細事業所等へのいわゆる全面適用については、二年以内に成果を得ることを目途として調査研究を行ない、その結果に基づいてすみやかに必要な措置を講ずることといたしております。
次に、保険給付につきましては、給付基礎日額の算定にあたって、平均賃金を用いることが不適当な場合には、労働大臣が別途これを定めることとし七、特殊事情によって賃金額が不当に低くなる場合等における救済をはかることといたしております。また、療養補償については、従来給付の対象としなかった少額の療養費をも支給することとするとともに、休業補償についても、待期期間を三日間とするように改めております。
さらに、事業主の責めに帰すべき事由による支給制限を廃止し、その場合にも労働者には保険給付をし、事業主からはその費用の全部または一部を徴収することができることに改めるとともに、労働者の責めに帰すべき場合の支給制限についての規定を整備することといたしております。
その他、保険料の算定、納付の方法等を簡便なものに改めるほか、技術的な事項について所要の整備を行なって、保険加入者及び保険者たる政府の事務の簡素化、合理化をはかっております。
第二に、改正法案第二条の規定による改正のうち、労災保険事務組合につきましては、失業保険事務組合の例にならって、中小企業等協同組合その他の事業主団体が、その構成員である事業主の委託を受けて、事業主の行なうべき労災保険事務を一定の条件のもとに代行することを認めることとし、もって中小企業事業主及び保険者たる政府の保険事務の負担軽減をはかっております。
次に、大工、左官等のいわゆる一人親方、自営農民、小規模事業主及びこれらの者の家族従業者等、労働者と同様な状態のもとに働き、同様な事務災害をこうむる危険にさらされている人々についても、申請に基づき、一定の条件のもとに、特別に労災保険に加入することを認め、保険給付を受けることができるように、特別加入の制度を創設することといたしております。
第三に、改正法案第三条の規定による改正のうち、保険給付の年金化につきましては、まず、障害補償の年金の範囲を大幅に拡大することといたしました。すなわち、従来は障害等級第一級から第三級までの重度障害者にのみ年金を支給していたのを改め、第一級から第七級までについて年金を支給することとし、身体障害者が必要とする期間必要な補償を行なうこととしております。
次に、従来一時金であった遺族補償は、原則として年金とし、一定の範囲の遺族に対し給付基礎年額の三〇%ないし五〇%の額の年金を支給することとし、もって遺族の保護の徹底をはかっております。なお、年金を受けることができる遺族がない場合等には、給付基礎日額の四百日分の一時金をその他の遺族に支給することといたしております。
また、長期傷病者に対する補償につきましては、従来の複雑な体系を改め、その内容を従来のような通院及び入院の区別を廃止して、一律に療養の給付を行ない、かつ、給付基礎年額の六〇%の年金を支給することとしております。また、厚生年金保険等の年金と労災保険の年金とが併給される場合の調整につきましては、厚生年金等の六年間併給停止の制度を廃止し、当初から厚生年金等は全額を支給するとともに、労災保険の年金については、従来の方式に準じ厚生年金等の一定率相当分を減じて併給することといたしております。
以上のほか、本改正案においては、労災保険事業に要する費用に対する国庫補助等につき所要の規定を設けるとともに、その附則において、以上の改正に伴う経過措置、制度の切りかえに伴う暫定措置及び関係諸法律の条文につき所要の整備をいたしております。
以上が、労働者災害補償保険法の一部改正案の趣旨でございます。(拍手)
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労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X03019650409/14
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015・船田中
○議長(船田中君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。八木昇君。
〔八木昇君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X03019650409/15
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016・八木昇
○八木昇君 私は、日本社会党を代表いたしまして、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案につきまして、若干の質疑をいたそうとするものでございます。(拍手)
近年、労働災害件数が著しく増加し、しかも、その内容がますます大規模化しつつあることは御承知のとおりであります。一昨年の三池炭鉱の大爆発、国鉄鶴見事故、昨年の昭和電工事件、先般の夕張炭鉱事件などはその典型的なものであります。
したがって、私の質問の第一点は、産業災害の防止に関するものでございます。
昨年の通常国会において、労働災害防止協会法が提案をされました際に、わが党は、当時の黒金官房長官を通じ、内閣より五項目の確約を得たのであります。それから一年を経過いたしましたが、私は特に次の二項目についてお伺いをいたすのであります。
すなわち、総理府に設置されている産業災害防止対策審議会についてはこれを充実強化し、産業災害の予防と対策についての全般的方策を樹立するという政府との約束は、その後一向に前進していないように見受けられるのであります。このことは、政府がほんとうに真剣になって産業災害問題と取り組んでいない証拠であると思うのであります。(拍手)あの約束はどうなっておるのであるか、今後どのようにされるおつもりであるか、総理のお考えをまずもってお伺いするものでございます。
次に、いわゆる労働者による安全パトロール問題につきましては、基準局のもとにある安全指導員制度についてその資格などを再検討し、労働組合代表をも選任するという政府との約束でございましたが、この件はどのようになっているか、これは労働大臣より答弁いただきたいのであります。
なお、私は、先般夕張炭鉱の災害視察にまいり、詳しく実情を聴取したのでございまするが、夕張鉱山保安監督署は、事前にしばしばガス爆発のおそれのあることを会社側に注意し、爆発の起きましたその日も、札幌の鉱山保安監督局に会社側の責任者を呼んで注意を与えており、しかも、その者が札幌より夕張に帰る途中においてあの爆発事故が起こっておるのであります。また、けさほどは、またまた長崎の日鉄伊王島炭鉱において爆発が起こり、聞くところによりますと、現在二十九名の労働者が行くえ不明と伝えられております。この件につきましてはあらためて質問することになろうと思うのでございますが、ともかく近年わが国の各企業間の競争は激化の一途をたどっておりまして、各企業は、人命尊重、労働安全確保もさることながら、生産能率第一主義に走らざるを得ないのであります。現在、災害防止のためのきめ手になるようなものは何一つございません。私は、会社側の重大なる過失によって大災害を起こしたような場合には、営業停止を食わせろくらいのことを考えないと、とうてい災害はおさまらないと思うのでございます。少なくともこの改正法案のような手ぬるいことではなくて、重大なる過失の場合のみでなく、過失はすべて、過失の解釈ももっとゆるめまして、会社から金を取るべきだと思うのであります。また、その金額も、本改正案のように労働基準法による補償価額の限度内というのではなくて、全面的に取るべきだと考えるのであります。これらの点について総理はどのようにお考えであるか、お答えいただきたいのであります。
質問の第二点は、本改正案の内容についてでありますが、この改正案は、労働者の要求の線はもとより、昨年七月の労災保険審議会の答申の線よりも大幅に後退しているのでありまして、きわめて遺憾であります。
質問の第一は、適用の範囲についてであります。答申では、労働基準法の適用事業については即時、他のものについても一年以内に全面適用せよとなっておるにかかわらず、本法案では、「他の社会保険制度との関連をも考慮しつつ、二年以内に成果を得ることを目途として調査研究を行ない、」云々となっておるのであります。まことにもって法律のていさいとしてもおかしい話であります。政府は、まず失業保険、次いで厚生年金、健康保険の全面適用の時期との関連を考慮して、そういう弁解をしておりますけれども、これは理由になりません。最も緊急を要し、しかも、国としてほとんど財政援助をしていない労災保険につきましては、たいしてむずかしい問題もないのでございますから、この際即時全面適用に踏み切るべきでございます。この点いかにお考えであるか、総理並びに大蔵大臣よりお答えいただきたいのであります。(拍手)
第二は、給付の水準についてであります。労災保険のみならず、日本における社会保障制度は、その給付水準が国力に比較してあまりにも低過ぎるという点についてでございます。たとえば、本改正案の遺族補償年金は、その最高限度を本人が死亡前にもらっていた平均賃金の百分の五十に押えておるのでありますが、これは答申の線である百分の六十よりも下回っております。そしてILO百二号条約の最低基準よりも低いと思うのであります。しかも、ILO加盟諸国では、賃金水準そのものがきわめて高く、他の社会保障制度が完備しておることとあわせ考えます場合に、これはあまりにも低過ぎるのであります。どうして政府は答申の線すらものむことができなかったのか、近い将来改善する意思があるのか、労働大臣のお答えをいただきたいと思うのであります。(拍手)
第三は、スライド制についてであります。給付はすべて賃金水準の変動に応じてスライドするのが合理的であることは、理論的にも実際的にもこれは議論の余地はございません。しかるに、本改正案では、賃金水準が二〇%以上変動した場合に限ってのみ給付額を改定するという現行法のままとなっております。答申は一〇%刻みとなっておるのに、なぜこれを押えたのであるか。また、当分の間は現行のままとなっておりますが、この法律にいう「当分の間」というのはいつまでであるか、どういう状態となったときに改めるのであるか、労働大臣より答弁願いたいのであります。
第四は、中小規模事業主、農民、一人親方などの特別加入を認めたことについてであります。私はこのこと自体はけっこうなことだと思うのでありますが、それよりも、まずもってすべての労働者に対する全面適用のほうがむしろ先決であると思うのであります。それはさておくといたしまして、農業における業務上の災害の範囲はどのように定めるのか。伝えられるように、動力機械使用の業務に限るということにした場合、農民は保険料の掛け損になるおそれはないか。また逆に、災害の範囲を広げた場合は、給付額がむやみに増大しまして、他の強制適用者の保険料分を食うということになるのでございます。一人親方や農民につきましては、これを別ワクとして国が財政援助をするということが必要ではないか、労働大臣、大蔵大臣より御答弁を願いたいのであります。(拍手)
第五は、給付の年金化についてであります。従来の一時金制度を大幅に年金制度に切りかえること自体はよいのでございますが、ただ、この制度実施に伴って、経済変動に対する対策が不十分なため、一時金制度よりもむしろ実質的に悪くなるというおそれ、あるいは保険財政を理由に給付の頭打ちをさせるおそれなどがございます。年金制への切りかえによって、当分の間は支出が激減し、労災保険会計は積み立て金がふえますが、将来は幾何級数的に支出がふえてまいります。将来各会社の使用者側から、給付の制限や、労働者にも保険料の一部を負担させようなどというような筋違いの要求が出てまいりまして、政府が動揺するというおそれがあるのでございます。この際、この点についてのはっきりした態度を労働大臣より表明せられたいのであります。
第六は、業務上外の認定の問題と、いわゆる通勤途上の災害問題についてであります。近年の状況、すなわち、中小工場の密集地帯やコンビナートの増加、交通量の増加、新しい化学産業の開発等に対応できるような新しい認定の方式がこの際確立される必要がございます。また、通勤途上の災害は近年特にふえておるのでございまして、この機会に欧米にならって適用すべきであります。これらの点と将来への見通しについて労働大臣より答弁せられたい。(拍手)
最後に、職業病についてお伺いいたします。産業の高度化、近代化に伴い、職業病の問題はますます重要となってきております。私は、この際、現行法を再検討し、労災法上、その範囲、取り扱い条件について明らかにすべきであると考えるのであります。少なくとも答申にあるとおりに、じん肺は管理区分一より補償の対象とすべきであります。腰痛、キーパンチャー及びこれに準ずる障害については、補償条件を明らかにすべきであります。その他、有毒ガス、薬物、高温多湿等による機能障害や疾病についても規定すべきであります。
特に、あの三池大災害は、直接爆発によって死亡した人はわずか二十名でございまして、残りの千百名に及ぶ被災者はすべて一酸化炭素によってやられたものです。CO中毒は、記憶喪失、知能低下等のおそろしい後遺症を伴うものであることは皆さん御承知のとおりでございまして、人によっては、社会復帰が永久にできないのはもちろん、一生廃人となるのであります。特にCO中毒については、特別法を制定するか、しからずんば労災法の中に明確に項目を設けるべきであると思うのであります。この点はできれば総理より、具体的には労働大臣よりお答えいただきたいのでございます。
以上のほかに、実は労災問題に関しましては実に広範多岐にわたって問題が多くございますが、時間の関係もございますので、労働福祉事業団問題等々、各般の問題につきましては省略いたしまして、幾つかの要点についてのみ私は質問をいたしたのであります。政府の誠意ある答弁を期待いたしまして、質問を終わる次第でございます。(拍手)
〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X03019650409/16
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017・佐藤榮作
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 答弁に先立ちまして、一言発言を許していただきたいと思います。
先般の夕張炭鉱事故に引き続きまして、本日また伊王島に災害が起こりました。まことに残念であります。さっそく現地に係官を派遣いたしまして対策を講ずることにいたしております。不幸にして災害をこうむられ、その犠牲者となられた方に対しまして衷心より哀悼の意を表するとともに、今後再びかかる事故の発生しないように、徹底的に原因を究明して、十分な対策を講じてまいる所存であります。
次に、お答えをいたします。
産業災害防止対策審議会、これは昨年の十月に発足いたしまして以来、真剣に審議を重ねております。その審議活動の状況はすでに御承知のことだと思います。ただいま整理の段階に入りまして、専門的な調査の方向に取り組むようになっております。
同審議会は、申すまでもなく、産業活動に伴う労働者及び設備、施設等の災害を防止しよう、その防止対策を立てよう、こういうことで審議、研究を続けておるのでございますが、ただいまお話のありました、あるいは交通災害、またその他の公害等も、その関連におきましていろいろ研究が進められることだと思います。この種の災害等に対する対策に必ず資するようなりっぱな資料を得ることだ、かように私は確信いたしております。
次に、社会保険のいわゆる全面適用の問題でございます。この点につきましてはたいへん事情を詳しく御承知のようでありますので、私、重ねて申し上げるまでもないことだと思いますが、各種の保険制度につきまして、いわゆる全面適用、こういう事柄が問題になっておりますが、今回の改正法案を出します際までに十分の対策を立てることができない、見通しが十分つかないで今回案を提案いたしておるのであります。で、やむを得ず段階的に実施する、こういう方向で取り組んでまいるつもりであります。もちろん、これで全面適用の問題をたな上げするつもりは毛頭ございません。今後とも引き続き十分検討を進めてまいりまして、そして具体的な効果をあげるような方向に方策を立ててまいるつもりでございます。御協力のほどをお願いいたします。
あとは関係大臣からの説明をお聞き取りいただきたいと思います。(拍手)
〔国務大臣田中角榮君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X03019650409/17
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018・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) 第一の問題は、保険給付額のスライド制につきまして、賃金水準が一〇%上下の場合行なうべきであるという問題でございますが、現行の労災補償保険法では、賃金水準の二〇%以上の変動に基づいて給付額の改定を行なうということになっておるわけでございます。この二〇%というのは、労働基準法における休業補償の問題と同趣旨のものでございます。しかし、このところ賃金水準の顕著な上昇等もありますので、最近おおむね二年ないし三年で給付額の改定が行なわれておりますので、受給者の生活水準確保と改善に寄与いたしておるわけでございます。
年金額改定の基準につきましては、種々の案があることは御承知のとおりでございます。労災保険は、労働基準法との関連も考慮することはもとよりでございますが、他の社会保険制度との関連も慎重に検討を要するわけでございます。その意味で、今回の労災補償保険制度の改正にあたりましては、原則として現行の制度のたてまえを継承することといたしたわけでございます。
第二の問題は、農民や一人親方等の特別加入につきまして、一般労災保険の別ワクとして国の財政支出が必要であるという御説でございます。一人親方や中小規模の事業主等の加入を認めましたことは、これらの方々が一般労務者と同様な業務災害の危険にあるということを考慮したものでありまして、特に一般労働者に対する取り扱いを越えて特別な国庫補助を行なうことは妥当を欠くものだと考えておるのでございます。
第三点目の、全面適用、早期実現のための検討につきましては、総理大臣が申し上げたとおりでございます。(拍手)
〔国務大臣石田博英君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X03019650409/18
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019・石田博英
○国務大臣(石田博英君) 災害の防止について努力をいたさなければならないことは当然でありまして、政府は鋭意努力をしてまいっている過程において、本日の事故等が起こりましたことはたいへん遺憾でございますが、さらに一そう引き締めて、姿勢を正して努力をいたしたいと存じております。
質問の第一点の、労働者の代表を安全。パトロールに採用するという、つまり安全確保の制度上の問題でございますが、これはただいま中央労働基準審議会でその制度についての御審議を願っておるところであります。政府は指導員の予算、人員等を増加いたしまして、効果をあげるように努力いたしております。
それから適用範囲の問題は、先ほど総理大臣がお答え申し上げたとおりでございます。
給付の制限が答申に六〇%とあるのを五〇%にいたしましたことは、国際的な水準に比べて低過ぎるじゃないかという御質問でございますが、しかし、これは遺族補償が年金に切りかえられたことによりまして、事実上従来の二倍程度が支給されることに相なるのであります。たいへん大きな前進であると考えております。また、ILO百二号条約は、妻に子供二人の場合四〇%、こう規定してあるのでございまして、そのほかの規定はございません。今度の改正におきましては、家族が多くなるに従って五〇%までを認めたのでございます。むろん、これについて高いところもございます。たとえば、イタリアのごとく、妻に対して五〇%というところもございますけれども、他の国におきましては、妻に対して二〇%というところもございます。したがって、今回の給付の制限は、国際的に見て特に低いとは考えておりません。
スライド制の問題については、ただいま大蔵大臣がお答えになりましたとおりであります。
それから農民、一人親方等に対して適用いたしました問題でございますが、これは元来、労災保険の運用から申しますと、いわば本来の筋を離れた、ことばはよくありませんが、一種のサービスであります。したがって、そのサービスをする部門が、本来補償する労働者諸君に対する補償よりも高くなるということ、大きくなるということは、本来の制度上から違ってまいります。そういう観点から具体的な施策を講じてまいりたいと思っておる次第でございます。詳細はこれから農林省、農業団体そのほかと検討をいたしてまいりたいと存じておる次第でございます。
次に、年金化された場合の将来の支出増、その場合、労働者に負担をさせるようなことはないか、こういう御質問でございますが、この支出増に対しましては、その前に生じてまいりまする積み立て金の運用、それから、これからわれわれの努力によりまして災害を防止する、これに主力を注ぐことによって、これを処理してまいりたいと考えているのでありまして、労働者諸君に負担させるような意思は全くございません。
それから通勤災害、特に交通災害をこの対象にすべきだという御議論でございますが、会社の通勤バス等によって生じました場合は、これは従来どおり対象といたしておりますが、一般の交通災害を使用者の責めに付し、使用者の負担による保険で補償させるのは筋違いでありまして、これはやはりけがをさせ、あるいは障害を与えたその加害者に補償させるべきが至当であると私は考えるのであります。
それから、職業病については、特別の補償というようなこと、あるいは特別の立法ということは、制度上検討を要すると思いますけれども、運営上その効果の徹底を期してまいりたいと存じておる次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X03019650409/19
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020・船田中
○議長(船田中君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X03019650409/20
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021・船田中
○議長(船田中君) 本日は、これにて散会いたします。
午後二時五十一分散会
出席国務大臣
内閣総理大臣 佐藤 榮作君
大 蔵 大 臣 田中 角榮君
文 部 大 臣 愛知 揆一君
通商産業大臣 櫻内 義雄君
労 働 大 臣 石田 博英君
自 治 大 臣 吉武 恵市君
出席政府委員
内閣法制局第二
部長 真田 秀夫君
労働省労働基準
局長 村上 茂利君
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104805254X03019650409/21
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