1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十年五月十三日(木曜日)
午前十一時十六分開会
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委員の異動
五月十三日
辞任 補欠選任
和田 鶴一君 栗原 祐幸君
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出席者は左のとおり。
委員長 安井 謙君
理 事
亀井 光君
草葉 隆圓君
竹中 恒夫君
小林 武君
横川 正市君
委 員
江藤 智君
久保 勘一君
栗原 祐幸君
後藤 義隆君
鈴木 恭一君
野本 品吉君
日高 広為君
二木 謙吾君
丸茂 重貞君
三木與吉郎君
山埼 斉君
占部 秀男君
岡田 宗司君
北村 暢君
鈴木 強君
中村 順造君
渋谷 邦彦君
田畑 金光君
佐藤 尚武君
衆議院議員
修正案提出者 藤枝 泉介君
修正案提出者 多賀谷真稔君
国務大臣
内閣総理大臣 佐藤 榮作君
外務大臣 椎名悦三郎君
労働大臣 石田 博英君
自治大臣 吉武 恵市君
国務大臣 増原 恵吉君
政府委員
内閣法制局長官 高辻 正巳君
内閣法制局第一
部長 関 道雄君
人事院総裁 佐藤 達夫君
人事院事務総局
職員局長 大塚 基弘君
内閣総理大臣官
房公務員制度調
査室長 岡田 勝二君
文部省初等中等
教育局長 福田 繁君
労働大臣官房長 和田 勝美君
労働省労政局長 三治 重信君
自治省行政局長 佐久間 彊君
事務局側
常任委員会専門
員 伊藤 清君
常任委員会専門
員 鈴木 武君
常任委員会専門
員 結城司郎次君
常任委員会専門
員 中原 武夫君
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本日の会議に付した案件
○結社の自由及び団結権の保護に関する条約(第
八十七号)の締結について承認を求めるの件
(内閣提出、衆議院送付)
○公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律
案(内閣提出、衆議院送付)
○地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律
案(内閣提出、衆議院送付)
○国家公務員法の一部を改正する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
○地方公務員法の一部を改正する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/0
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001・安井謙
○委員長(安井謙君) ただいまから、国際労働条約第八十七号等特別委員会を開会いたします。
それでは、結社の自由及び団結権の保護に関する条約(第八十七号)の締結について承認を求めるの件、公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案、地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律案、国家公務員法の一部を改正する法律案及び地方公務員法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。
質疑の通告がございますので、順次発言を許します。田畑金光君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/1
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002・田畑金光
○田畑金光君 初めに、労働大臣にこれは確認という意味でお尋ねいたしますが、今回の三党修正案によれば、公労法四条三項及び地公労法五条三項の改正は、公布後九十日以内に施行されることになっておりますが、このことは先日のドライヤー委員会の提案にもありますように、八十七号条約に直接関係のある問題であるため、条約の発効を待つまでもなく、すみやかに改正することになったものだと理解しておりますが、そのように理解してよろしいかどうか、この点確認しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/2
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003・石田博英
○国務大臣(石田博英君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/3
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004・田畑金光
○田畑金光君 次に、公労法第四条第一項及び地公労法第五条第一項の改正も、同様に九十日以内に施行されることになるわけです。これもですね、ドライヤー委員会の提案でございますが、この提案自体を見ますと、はっきり条項をあげて指摘しておるわけじゃございません。しかし、四条三項や五条三項と同じように、条約に直接抵触するところから、ドライヤーの提案によりますとこう書いております。「公労法4条3項及び地公労法5条3項の廃止の如き、87号条約の条項の完全な実現に直接関係のある事項にまず注意を集中することが望ましい」というドライヤー委員会の提案の趣旨に沿うて、先ほど申し上げたように、四条第一項及び地公労法第五条第一項も、すぐ実施されるものだ。こう理解してよろしいと考えておりますが、そう理解してよろしいかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/4
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005・石田博英
○国務大臣(石田博英君) これは管理者の組合の結成を禁止した条項を解くことでございますから、そのとおりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/5
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006・田畑金光
○田畑金光君 純粋に法律的な問題として考えてみますと、この条約の発効というのが、批准書を寄託してから一年後と、こういうことになっているわけでございますから、したがって、国内法の改正もそれに間に合えばよろしいということにもなるわけです。しかし、今回の修正の趣旨というものは、もっと高い政治的な観点から直接、条約に抵触する分については、条約の発効を待たないで、これが実現を期することにしたものだと理解しておるわけです。国際的な信用という面から見ても、またこれは当然だと私は思っておりますが、そこで、私はこの際、国家公務員法の問題に関連して、政府に考え方を承っておきたいわけでありまするが、政府の考え方の前に、まず、人事院総裁にお尋ねしておきたいことは、昨年、すなわち昭和三十九年の五月十三日の衆議院のILO特別委員会におきまして、わが党の吉川兼光委員からの質問に対し、国家公務員法九十八条二項の解釈といたしましては、御承知のように現在、役員を現職の公務員の中から選ぶように限定しておるのが、従来の九十八条二項に対する人事院の解釈でございまするが、これは八十七号条約に抵触するということを人事院総裁は答えておられますが、いまもこの見解に変わりがないかどうか、これを確認しておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/6
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007・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) 条約が効力を発生いたしますれば、そのような結果にも−抵触関係を牛ずるというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/7
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008・田畑金光
○田畑金光君 その同じ答弁の中で、人事院総裁はこういうことも言われているわけです。昭和二十四年前までは、役員はだれでもよいという解釈をしていたのであって、したがって、条約との関係では、いままで、政府のとってきた解釈をば、昭和二十四年以前の解釈に戻せば、問題はないのだ、こういうことを言われております。今回の修正案では、国家公務員法関係の役員資格の問題については、直接法律の規定の問題ではないため、ことさらに取り上げていないのでありまするが、公労法四条三項が、あるいは地公労法五条三項が、条約の発効を待たず改められ、また、いま確認受けましたように、四条一項も同様に処置される。こういう趣旨が明確になったわけでありますが、人事院といたしましては、当然、公労法の改正と同時に、国家公務員法の九十八条二項にかかる解釈についても改められて、役員の選出については、自由に措置することになる。このように理解してよろしいと思いますが、そのように理解してよろしいかどうか、この点、人事院総裁から明確に御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/8
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009・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) 法律的には、条約発効と、少なくとも同時に変更の措置をとればそれでいいわけであります。しかしながら、その前といえども、簡単に変更できるじゃないかという点がお尋ねの一つのポイントであろうと思います。事柄自体としては、それ自体望ましいことであると思いますけれども、ただ、私ども、当面の問題として考えられますことは、いまおことばにも、先ほどから出ております今回の衆議院の修正の実体をどう見るか。あの中には、やはり部外者を役員にしておるという理由のために、登録を拒否してはならないというような意味でひっかかりが出てきているわけであります。したがいまして、この修正の趣旨を、一つの見方としては、やはり現状の法制を全体としてしばらくその変更を見合わす、全体としては凍結するのじゃないかという趣旨にも、私ども見ますと、読めるわけです。したがって、その辺、この修正の御趣旨というような点がどこにあるのか、私どもとしても、今後十分検討いたしまして、善処いたしたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/9
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010・田畑金光
○田畑金光君 そこで、私は衆議院の三党修正に当たられた関係者にお尋ねしたいと思いますが、まあ藤枝議員が見えておられますので、藤枝議員にお尋ねいたしますが、職員団体制度に関する部分は、すべて政令で別に定める日まで施行を延ばすと、こうなっております。そこで、九十八条二項についても、解釈を変える時期がいつかという疑問が出てくるわけですが、条約発効の一年後までは、九十八条二項の解釈については、従前の解釈でいくのか、あるいはこの際、公労法、地公労法の関係条文の施行と同時に、国家公務員法九十八条二項の解釈についても改めるのかどうか。このことははっきりしておかなければ、いろいろな混乱が起きると考えますので、この辺、修正をなされた藤枝議員から明確にひとつ説明していただきたいと考えているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/10
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011・藤枝泉介
○衆議院議員(藤枝泉介君) 先般も衆議院における修正案の趣旨を申し上げましたが、そういう関係で、国公法の九十八条はそのままにしておきまして、職員団体に関する規定は政令の定める日まで延期をすることにいたした。したがいまして、現行の九十八条二項はそのままあるわけでございますから、これの解釈は政府がやるべきものというふうに考えております。ただ、八十七号条約関係の批准の経過にかんがみまして、政府が適切なる解釈をすべきものと期待をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/11
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012・田畑金光
○田畑金光君 そこで、政府を代表して、労働大臣でしょうか、増原国務大臣になるわけですか、この九十八条二項の解釈については、政府としてどのように措置されるつもりでおりますか。その点明確にしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/12
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013・増原恵吉
○国務大臣(増原恵吉君) 九十八条二項の解釈の問題につきましては、この法の解釈、適用の問題は人事院の所管とするところでございます。したがいまして、筋は、ただいま衆議院修正の御説明のありましたような、また人事院総裁から先ほどお答えをいたしましたような筋でございまして、人事院において解釈の問題は、総裁から申し上げたように十分いろいろの経緯を考えて善処をするということでございます。政府としては人事院のその解釈に同調すると申しましょうか、人事院総裁の答えましたような趣旨で善処をしてまいるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/13
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014・田畑金光
○田畑金光君 人事院総裁にお尋ねしますと、修正提案者の意向がその辺明確を欠いているようなお話があるし、修正提案者にお聞きしますと、政府が解釈を下すのだというし、担当の政府代表の増原さんにお聞きすると、今度人事院総裁の解釈に従って−こう言うわけですが、どっちがどうなるわけですか。これは人事院総裁が先ほど来申されているように、条約の精神に照らして、この際公労法四条三項、地公労法五条三項は直ちに公布後九十日以内に施行される、この精神に照らして、人事院総裁において九十八条二項を同じような趣旨で解釈を変えれば、政府はこれに従い尊重する、こういうことでよろしいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/14
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015・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) たいへん重大な責任を私が負うようなことになりましたのですけれども、事柄は、解釈変更と申しますけれども、そう簡単に右に左に解釈をいじれるものじゃございません。これは御承知のとおりでございます。それからその解釈に基づいて、人事院規則でその結果を法制の形で出しておるわけです。それをいじるかいじらぬかということにつきましては、今度は立法の趣旨はともかく、国会の御意思というものと矛盾したことは、これはできませんですから、その点から申しまして、今回の修正の御意思というものがどこにあるかということを慎重に考えた上で善処せねば、むしろ国会に対して弓を引く結果ともなりかねない、そういう意味で、先ほどから十分検討いたしたいということを申し上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/15
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016・田畑金光
○田畑金光君 そういう大事な問題でありますから、修正提案者に私はもっと明確に、これは三党で話し合いの上に修正されたわけでしょう。当然公労法、地公労法に関連されて、国家公務員法のこの問題についても明確な解釈がなければ、今後に混乱を残すだけだと思うのです。だからもっとはっきりひとつこれはどういう趣旨なんだ、どう解釈を下すべきかということは、はっきりしておかぬと、人事院総裁のいまのお答えのとおり、人事院総裁がやるのだといっても、それは責任の転嫁に終わるのじゃございませんか、この点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/16
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017・藤枝泉介
○衆議院議員(藤枝泉介君) 先ほども申し上げましたように、九十八条をそのまま残したわけでございます。その九十八条二項の解釈は、私は先ほど政府と申しましたが、それは人事院を含めての意味でございまして、人事院でこれを解釈する、その人事院が解釈されるのは、この国会における審議の状況を、先ほども人事院総裁がおっしゃったように、ごらんになって適切な解釈をすべきものと期待をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/17
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018・田畑金光
○田畑金光君 国会の意思を尊重して人事院が適正な解釈を下すことを期待するといっても、人事院総裁みずからが、国会の意思が那辺にあるかということは慎重に重要な問題だけに考えねばならぬ、こう言われておるわけで、その国会の意思を代弁しておられるのが修正提案者のあなた方だと思うのです。あなた方としては、この問題については公労法の、あるいは地公労法の関係条文と同様に、この条約を批准したたてまえからいえば、やはり九十日以内に九十八条二項の解釈については、こうあるべきだという気持ちに重点が置かれて修正に当たってこられたのかどうか、この点は私は念を押してもう一度お聞きしたいと思うのです。それから政府を代表しておられる増原大臣の先ほどの答弁をお聞きしましても、万事人事院にまかしたようなかっこうでお答えになっておるのですが、しかく簡単な問題ではないでしょう。この問題は、八十七号条約を批准する一番の障害が公労法の四条三項、地公労法五条三項、そうしてそれに相当するのは九十八条二項であるとするならば、やはり人事院にまかしたから人事院が解釈を下せばという逃げ口上だけじゃなくて、政府自体として、これは石田労働大臣もそうだと思うのですが、まず増原国務大臣として、この辺はどうするかということくらいは明確に解釈をはっきりさるべきじゃございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/18
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019・増原恵吉
○国務大臣(増原恵吉君) 田畑委員よく御承知のように、いま御質問の条項についての解釈適用ということは、人事院が所管をいたしておるということでございまして、そういう意味で、人事院総裁がお答えをしたように善処をしてもらうということでございまして、政府がこの解釈適用の面に立っては、当面前面に出て行動をするということになっておらないという意味で申し上げたわけであります。もとより政府としても、その問題について十分考えるべき問題でございますので、これはその意味で、人事院とよく御相談を申すといいまするか、そういうことは考えていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/19
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020・藤枝泉介
○衆議院議員(藤枝泉介君) 先ほど私がお答えをいたしました、人事院がこの国会の審議の過程にかんがみて適切なる解釈をすべきであるというのは、単に私どもの衆議院の先般の修正ばかりでなくて、八十七号条約に関する長い国会における審議の過程その他を十分考慮されて、適切なる解釈をさるべきものだと期待をいたしておる、という意味でお答えをしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/20
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021・田畑金光
○田畑金光君 人事院総裁、何かお答えありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/21
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022・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) いや、別にございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/22
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023・田畑金光
○田畑金光君 この点は、ひとつこの程度におさめまして、次に移りたいと思うのですが、労働組合であっても職員団体であっても、その交渉の中心は勤務条件の維持改善ということでございます。そこで、私はこの法律改正上の交渉対象事項についてお尋ねしたいと思うのですが、公労法では第八条において、交渉の対象となる勤務条件の内容が列記されておりますが、国家公務員法改正案における交渉対象事項である勤務条件については、抽象的なことばがございますが、その具体的な内容については、公労法第八条と同じものであると、こう理解してよろしいのかどうか、これをまずお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/23
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024・増原恵吉
○国務大臣(増原恵吉君) その点、御意見のように御解釈を願ってけっこうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/24
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025・田畑金光
○田畑金光君 そこで、私これは法制局のほうにお尋ねしたがいいと思うのですが、先日この委員会で法制局の御答弁では、懲戒に関する細目的な基準の設定は、管理運営事項であって、交渉対象ではないと、こう言われておりますね。ところが公労法第八条第二号では、懲戒の基準は交渉対象たる勤務条件としてあげられております。そうしますと、懲戒の基準設定の結果生ずる勤務条件の変動というような問題、さらに懲戒の基準をどう改善するか、こういうような問題等も当然これは交渉の対象になるのではなかろうか、私はこういうふうに考えておりますが、先般の法制局の答弁とこの公労法第八条の規定、こういう関係はどうこれは解釈すればよろしいのか、はっきりしておいてもらいたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/25
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026・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) ただいま御指摘のように、公労法には懲戒の基準に関する事項、交渉の対象にされておりますが、同時にまた管理運営事項についてはこれはまた別のことになっております。そこで、管理連帯事項が問題になりますが、これは申すまでもなく、国なり地方公共団体なり、あるいは当該機関なりの権限職務に属する事項、その場合の当局がやるについての事項でございますが、そういうものに関しては、これはあくまでも国なり地方公共団体なり、それぞれの当局の職務権限に属する事項として、これ自身は交渉の対象になりませんが、その結果として勤務条件に影響を及ぼすという場合には、その勤務条件に及ぼす限りにおいて、公労法等に規定がありますように、これは交渉の対象になるということになるわけでございます。したがって、懲戒処分自身を取り上げてみれば、それ自身は交渉の対象にはならない。同時にまた、基準を設定するそのこと自身は交渉の対象にならないけれども、その中身については、勤務条件に関するものである限り話し合いの中身になり得ると、こういうことでございます。具体的に何かお尋ねがあれば、さらに申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/26
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027・田畑金光
○田畑金光君 個々の、たとえば懲戒の基準に基づいて懲戒を受けた、こういうような個々の問題等についてはどうなんですか。交渉の対象になるんですか、ならないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/27
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028・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) 個々の懲戒処分、これは懲戒処分するのは処分権者のいわゆる管理運営事項、これはそう言わざるを得ないと思います。明確だと思いますが、その懲戒基準の適用でございますね、これは基準としては適正に適用されるのが当然でございますが、その適用にあたって適正なる運用がなされているかどうか。もし適正な運用がなされていなければ、それについて不満を表明するというようなことはむろんできる。だから、たとえば事実上の根拠に基づかないで懲戒免職がなされたというような場合を仮定してみれば、職員団体は懲戒基準が正しく適用されてないという意味で、当局に対して不満を表明したり意見を述べたりということができるというわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/28
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029・田畑金光
○田畑金光君 ですから、長官、個々の人事の問題等についても、いろいろ問題があれば、それは交渉の対象にもできるんだと、こう理解してよろしいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/29
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030・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) 個々の懲戒処分というのがきわめて大ざっぱな言い方でございますので、われわれの立場から言いますと、多少気になる点がございます。と申しますのは、懲戒処分自身は、かねがね申しておりますように、管理運営事項でございますが、その懲戒処分において懲戒基準の適正な運用がなされてない、かりに一番典型的には、事実上の根拠に基づかないで、事実上の根拠がないのに懲戒処分があったというような場合には、懲戒の基準というものは、そういう予想をしておらないわけでございますから、そういう懲戒基準の適用をめぐって、正しい適用をしてもらわなければ困るんだと。もともと正しい適用をすべく基準が設定されておるわけでございますから、そういう意味合いにおいていわゆる交渉ということができる、こういうわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/30
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031・田畑金光
○田畑金光君 大体わかりましたが、それで、もろもろの労働条件ですね、勤務の条件。たとえば、その中では懲戒や昇格などの人事の基準、こういう問題については、その設定することですね、基準の設定。また、その設定した基準に基づいて、職に対する適用の問題が出てくるわけですね、いまお話しのように。こういう問題等については、当然公労法第八条の第二号の趣旨から見て交渉の対象になる、こう理解してよろしいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/31
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032・高辻正巳
○政府委員(高辻正巳君) お尋ねの点は、おそらくこの改正法案が成立した暁の問題だと思いますが、ただいまは、御承知のとおり人事院規則で懲戒の問題は交渉事項からはずれておりますから、いまの問題としてでなく、将来まあそういう人事院規則の改正があった場合として考えてまいります場合には、いま申されましたように懲戒基準の設定そのものは、その中身についてはいわゆる勤務条件に関しますので問題になりますが、ただ、この場合に公務員の場合と一般の場合と多少違うのは、公務員の場合には、これはほかの関係でも常に申し上げることでございますが、法令によって、実は懲戒基準が設定されておりますので、さらにその中身について懲戒基準を設定するということは考えられないと思いますが、懲戒の問題は、設定のほかに適用の問題がございますが、その適用の問題については、懲戒基準である中身が正しく適用されているかどうかという観点において交渉の対象となり得る。むろん、その懲戒の基準は、ある程度の裁量の幅というものがございますので、その裁量の幅については、これは当局の管理運営事項になりますが、先ほど申し上げましたような、たとえば、懲戒理由が不存在である、懲戒すべき事実がないというような場合に懲戒に付したというような場合には、典型的に懲戒基準の正しい適用がなされておらないということになりますので、この点については、勤務条件に関する問題として、いわゆる交渉をすることができる、こういうわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/32
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033・田畑金光
○田畑金光君 それじゃ、労働大臣、今度はあなたにひとつお尋ねしたいのですが、退屈しておられるようですから。衆議院のILO特例委員会において、いろいろ政府が答えておられる速記録を見ますと、政府は、憲法に基づく労働基本権というものを公共の福祉を理由として制限するような場合は、この制限にかわって労働者の利益を十分に保護するための適当な保障措置が必要であるということをしばしばの機会に述べておられますね。これは、もう当然のことだと思うし、まだそうでなければおかしいと思うのですが、このことは労働大臣の基本的な姿勢と、こう理解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/33
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034・石田博英
○国務大臣(石田博英君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/34
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035・田畑金光
○田畑金光君 そこで、私は、公務員の場合はさておきまして、公社関係の問題について若干お尋ねしたいのですが、御承知のように、三公社五現業の場合は争議権を禁止されておりますが、その代償として公労委制度というのがあるし、強制仲裁制度というものがあるわけですね。なるほど、現在までの公労法の運用を見ますと、いろいろ変わってきたことも事実でございますが、しかし、従来の実績を冷静に見てきますと、公労委の委員の選定の問題であるとか、あるいはまた裁定履行の実施の状況などを見てみますと、はたして政府が、私が冒頭に大臣の意思を確認いたしましたが、その趣旨から見まして、はたして労働者の基本的な権利を制限したその代償措置としての公労委制度というものがりっぱに守られてきたかどうかということについては深く疑問を感ずるわけです。こういう点について、大臣としては、どういういま心境でおられるか、もう一度ひとつ大臣の気持ちをお聞きしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/35
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036・石田博英
○国務大臣(石田博英君) 公労委の仲裁裁定は、昭和三十二年から完全に実施いたしております。それから、公労委の公益委員の任命でありますが、これは国会の議決を得るということになっておりますから、公平に任命されてきたと存じますし、仲裁裁定の完全実施という方針は、今後も変わらないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/36
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037・田畑金光
○田畑金光君 まあ、公労法の問題については、いま大臣がお話しなさったように、最近はだんだん労働省並びに政府の姿勢も本来のあるべき方向に変わってきたということは、私も認めてよろしいと思いますが、しかし、まだまだ議論すればたくさん問題がありますけれども、私は、時間の制約がありますので申し上げませんが、先般来、議論されておる公社の当事者能力の問題等を見ましても、また今度の春闘における政府のとられた態度などを見ましても、幾多批判すべき、まだ争議権を剥奪した代償措置としては不十分な点が多々あると見ておりますが、まあそれはさておきまして、私は特にここで大臣にお尋ねしたいのは、ILO八十七号条約を批准されて、これにもとる公労法、地公労法、あるいは国家公務員法、地方公務員法についての改正を出されたわけでありますが、スト規制法の問題というものが何ら取り上げられていないということは、これは不可解なことだと思っておるわけです。まあ、大臣自身も御承知のように、一九五四年の結社の自由委員会においてスト規制法が問題として取り上げられて、この委員会においては、電気産業におけるストライキ制限というものは、ストライキの一般的禁止にひとしい、こういう見解で、ストライキ禁止のために職業的利益を防止するための重要な手段を奪われた労働者の利益を十分保護するための適当な保障を確認することに対して委員会が付した重要性、というようなことを述べておるわけです。強調しておるわけです。この結社の自由委員会の報告が、現在特に問題とされているいわゆる百七十九号事件よりはずっと古い第六十号事件であるわけです。しかるに、この点について政府当局の態度を見ますと、何ら検討すらせられていない。まことに私は政府の怠慢じゃないかと思うんです。公社についてさえ、いま質疑応容の中に明らかになりましたように、代償指貫についてかなりの配慮が加えられてきておる。これはわれわれも率直に認めるわけです。しかるに、民間企業について全くこの点が放置されておるということは、これは政府が重大な怠慢をおかしておると言われてもこれはしかたがないんじゃないかと、そういう私は感じを持っておるわけです。しかも、公労法関係についても今後一年間いろんな労働基本権の問題について検討しようというようなことになっておるわけですね。そういう点から見ましても、スト規制法というのは、あの法律のできたいきさつや内容や、また、限時法的な性格から見ましても、私は八十七号条約批准に関連して、当然政府としてもこの法律について再検討されてしかるべきじゃないか、こういう気持ちを強く持っておるわけですが、この点、大臣の見解を承っておきたいと思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/37
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038・石田博英
○国務大臣(石田博英君) スト規制法は、まあ石炭産業と電気産業に対して実施されるものでありますが、ともに争議行為の全面的な禁止をしておるのではなくして、電気産業については、電気の正常な供給に直接影響を与えるような行為、石炭産業につきましては、保安その他に害を及ぼす行為というふうに制限を受けているのであります。そうしてその法律ができました趣旨、またできました背景、これはこの法律ができましたときにはやむを得なかったものだと思うのでありますが、その後御指摘のように、電気産業におきましても、石炭産業におきましても、この規制法が心配するような事態は起こっていないことは事実であります。しかし、それは確かな事実でありますが、それと同時に、それじゃ法律を廃止して、そういう事態が保障されるかどうか、それから国民の不安というものが解消されるだろうか、また国民がそういうことを理解してくれるだろうかというようなことと相まちまして、同時に昨年の六月に、本院で行なわれました決議の趣旨等を参考といたしまして、この問題について、積極的な検討を行なっていきたいと、こう考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/38
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039・田畑金光
○田畑金光君 いま大臣は検討していきたいと、こういうお話がありましたから、私は早急にこの問題についても再検討すべきだと、こう思うのです。いまここでスト規制法をつくったあの当時の議論を大臣と繰り返しても、時間的な余裕もないし、ただ、いま大臣のお答えの中にありましたように、あの法律をつくった当時の経緯と背景、客観的な事情というものは大きく変わっているということも、大臣の御答弁の中に認められたとおりですね。だから私はこの際、公共の福祉の名においてということで、スト規制法というものが生まれたわけでありますが、やはり公共の福祉は、労働者の基本的な権利を守っていくところに、国民一般の福祉の向上もあろうと、公共の福祉の向上も確保できると、こう見ているわけで、どうかひとつこの点については、公務員制度審議会の中で、公務員あるいは公企体職員の基本的な権利の問題について、十分討議されていくわけでありまするが、これと並行的に、この民間産業におけるスト規制法についても、積極的に政府は前向きの姿で取り組んでいただきたい、このことを強く要望したいと思いますが、もう一度労働大臣のお気持ちのほどをひとつお聞かせ願いたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/39
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040・石田博英
○国務大臣(石田博英君) 先ほどお答え申し上げたとおりでありますが、この法律が実施されました後において、先ほど申しましたように、非常な事態は起こっておらないのであります。しかし同時に、電気産業等の従業員の特にこの賃金等の条件、これはこの法律によって争議権に制限を受けているからといって、格別に他産業に比較して非常に大きな不利を受けてはいないのでありまして、大体一般的な水準よりも少し上回ってベースアップ等が行なわれております。まあしかし、それはそれとして、やはり基本的な権利というものを守るという立場、それと公共の利益を保護するという立場から、積極的に検討してまいりたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/40
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041・田畑金光
○田畑金光君 まあこの問題、あまり深く議論しても、これは始まりませんから、答弁を聞いていても一々反駁したい点もありますけれども、そんなことも時間がないからできませんが、これはいま大臣、その基本的な権利の問題ですからね、十分ひとつ検討願いたいと思うのです。
次に私はもう一度、これは労働大臣に確認しておきたいのですが、この間佐藤総理にはお聞きいたしましたが、特に労働大臣に承りたいのですが、公務員制度審議会のこの答申の問題ですね。今回八十七号条約の批准は目鼻がついたわけですけれども、公務員法関係についても、公労法関係についても、肝心な問題はすべて公務員制度審議会に預けられた形で、重要な問題が全部あとに残されているわけです。したがって、この重要な問題を肩がわりした審議会が、どういう結論を出すかということは、非常に重要な意味を持っているものだと私は思うわけです。また、どういう答申が出るかということは、いまから予測もできませんけれども、ただ私がここで確認しておきたいことは、答申については政府が一〇〇%これを尊重するという、その精神でなければ、将来に問題をまた再び混乱させるだけじゃなかろうかと、こう思うのです。私はその点において、先般私の質問に対し、藤枝議員が同様な気持ちで述べられたことに対しては非常に敬意を表します。特に改正案の多くの部分は、答申が出るまで施行が延期されたわけでありますが、答申が出たからすぐまた施行できるのではなく、答申に沿って法律を手直ししなければならぬ場合もまた予測されると、こう思うのですね。そういうことをあれこれ考えた場合に、答申が出たならば一〇〇%これを尊重して、政府はそれにのっとっていくんだ、こういうことにしてもらわぬと、先ほど申し上げたような混乱の再現ということになるわけですから、この点ひとつ労働大臣から意のあるところをはっきりお聞かせ願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/41
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042・石田博英
○国務大臣(石田博英君) 重要な公共部門における労使関係の問題は、公務員制度調査会で御検討願うことになっているのでありまして、これはこの八十七号条約批准をほとんど全会一致で参衆両院とも通過いたします一つの柱であります。したがって、この答申を尊重しなければならぬことは、むろん言うまでもないのでありまして、総理のしばしばお答え申し上げましたとおり、その精神で対処いたしてまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/42
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043・田畑金光
○田畑金光君 最後に、もう一つだけお尋ねしておきたいのですが、その点はいまの労働大臣の答弁で私は理解したことにしておきましょう。藤枝議員の先般私の質問に対して答えられた趣旨と同様だと私は理解しておりますから、ひとつ答申が出たら一〇〇%尊重する態度で貫いていただきたいと思います。
最後に、これは増原さんにお尋ねしたほうがいいかどうか知りませんが、ただ非常に私今度の改正案で気にかかるのは、人事局を設置された、そういう仕事を担当される総務長官というものを今度は大臣にするんだ、国務大臣にするんだというわけですね。これが附則で大臣を一人ふやすということになったわけですね。十六人が十七人に、こうなったわけです。私、法律技術的にはいろいろ調べてみても、これで差しつかえないようでございますけれども、内閣の構成、大臣を一人ふやす問題が、法律の単なる附則で大臣が一人ふえたと、定員をふやして喜んでいると、喜んでいる人もあると、まあこういうことはどうかという考えを持つわけですね。附則大臣というのが出てきたわけです。やはり内閣の構成、しかも、国会に対して責任を負う内閣の構成が、法律の改正の附則で一人定員がふえるなんということは、見識を疑われても、これはしかたがない。やはりこういう問題は内閣法で堂々と扱うというようなことが正しいたてまえじゃなかろうか、政治論的に見ましてもですね、そういうような感じを強くするわけです。聞くところによれば、総務長官だけ国務大臣にして、今度官房長官はほうっておくのかという問題も出てきたようでありまするが、この問題については私はどうもその権威、見識を疑うわけでありますが、増原国務大臣の考え方を聞かしてもらえば幸いだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/43
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044・増原恵吉
○国務大臣(増原恵吉君) 田畑委員の御意見は、私どもも十分傾聴すべき御意見であると思います。そもそもはまあそういう意味の正攻法で内閣法を改正するということが本筋であるという考え方は十分成り立つと思います。ただ、この場合は、申し上げる必要もないことでございましょうが、やはりILO条約の批准に関連をして、国家公務員法を改正するという中の一つの柱として、この中央の人事機構に内閣総理大臣を当てて、その機構を整備をするという最も関連をした問題で、総務長官を国務大臣とするという機構の拡充をやるということでございまするので、その意味において、関連した改正ということでいくことも、十分認められてよくはないかという考え方で、提案をしたような改正のしかたをしたわけでございます。御意見のところは十分理のあるところとは思いまするが、そういう意味合で、別に附則大臣を置こうとかというわけではございません。そういうことで御了承を得たいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/44
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045・田畑金光
○田畑金光君 終わりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/45
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046・安井謙
○委員長(安井謙君) 暫時休憩いたします。午後は一時再開いたします。
午後零時六分休憩
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午後二時三十六分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/46
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047・安井謙
○委員長(安井謙君) ただいまから国際労働条約第八十七号等特別委員会を開会いたします。
午前に引き続き、結社の自由及び団結権の保護に関する条約(第八十七号)の締結について承認を求めるの件外関係四法案を一括して議題といたします。
質疑の通告がございますので、これより発言を許します。鈴木強君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/47
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048・鈴木強
○鈴木強君 労働大臣がまだ御出席をいただいておりませんので、最初に事務的な問題について労働省のほうに少しお尋ねいたします。ILOで現在までに採択をした条約、勧告、このうちで日本が批准をしております条約、勧告は大体幾つあるのでございますか。残りは幾つ残っておりますか。
それからもう一つは、八十七号条約の批准国は相当あると思うのですが、日本は第何番目になるか、この点を教えてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/48
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049・三治重信
○政府委員(三治重信君) 日本がただいままで批准しました条約は二十四でございます。全部採択されている条約の数は百二十二でございまして、何番目というのは、ちょっと資料がございませんが、大体加盟国が現在のところ百十二カ国でございまして、一カ国当たりの平均が二十五・八というふうになっておりまして、大体平均並みであるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/49
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050・鈴木強
○鈴木強君 労政局長、百十二カ国あって、二十五・八だから平均並みだということは聞いていないのです。何番目になりますかと、こう聞いているのだから、そこを答えてもらいたい。わからなかったら調べていただけますか。労働省でわかってないのですか。わかっているけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/50
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051・三治重信
○政府委員(三治重信君) 失礼しました。ちょっと調べがつきませんで、申しわけございません。五十二番目でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/51
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052・鈴木強
○鈴木強君 その資料はいつ現在でございましょう。私の資料によりますと、昭和三十九年一月一日現在において六十六カ国が批准をしている。したがって、六十七番目じゃないかと思うんだが、その点ちょっと食い違いがありますが、間違いございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/52
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053・三治重信
○政府委員(三治重信君) 昨年の八月一日現在でございます。——先生のおっしゃるのは、八十七号条約の批准が何番目ということではございませんですね。いま答えましたのは、日本が加盟国として批准している数の順位が五十二番目、こういうことでございまして、八十七号条約の批准国の順位ではございません、いま申し上げましたのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/53
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054・鈴木強
○鈴木強君 あのね、よく聞いててください。要するに、まあこういったほうがいいかもしれませんね。批准をした国が幾つあるか。今度日本がそれに入れば、いままで六十六あれば、日本が入れば六十七になるわけでしょう。そういうことを聞いているんですよ。八十七号条約ね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/54
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055・三治重信
○政府委員(三治重信君) じゃあ、私の理解の間違いでございまして、八十七号条約は六十九番目になります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/55
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056・鈴木強
○鈴木強君 それはいつ現在でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/56
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057・三治重信
○政府委員(三治重信君) 本年の一月十五日現在でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/57
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058・鈴木強
○鈴木強君 あとは労働大臣に対する質問ですから、保留しておきます。
次に、増原給与担当大臣、行政管理庁長官増原国務大臣と佐藤人事院総裁にお尋ねをいたします。
今度の改正によりまして中央人事行政機構というものができ上がってくると思うのですが、この中央人事行政機構というのは、内容を拝見さしていただくと、現在の人事院との権限の問題、所掌事務の問題、こういったものが問題になってくると思います。私は現在の人事院というものが発足をいたしました経緯にかんがみ、かくのごとく人事院の所掌業務を人事局のほうに移行することについては、私は間違っていると思うんですね。古し間違っていないとするならば、今後労働者に対する団結権なり、あるいは団体交渉権なりという労働基本権の問題が本来の姿に戻って昭和二十三年マッカーサー指令によって国家公務員法が改正され、人事院ができた、こういう経緯からいたしますと、あくまでも人事院は団体交渉権、ストライキ権にかわるべき保護機関として設けられたものだと私は思うんですね。今度のILO八十七号条約の批准によって、なるほど多少の前進はありますが、御承知のとおり、一応審議会のほうにたな上げされている点もございますね。ですから、そういう段階において、またストライキ権、団体交渉権についても公務員制度審議会のほうで審議をして、これから結論出そうという段階に多少の面であったとしても、人事院の現在の組織、機構に私は手をつけることはあやまちだと思うんですよね。そう思うんです。だから、そういう本来の問題が昭和二十三年当時に戻って、そのときに人事院を廃止する、そして抜本的に国の人事管理制度というものを変えていくというなら私はわかる。いまの段階においてやるのは、非常に人事院の権限との問題で私は問題があると、こう思うんですね。具体的にはあとから私伺いますが、そういう思想が私にはちょっと疑義を感じますからお尋ねするわけです。従来も人事院の改組については幾たびか問題になりました。しかし、いま私が申し上げましたような理由において政府は思いとどまって今日まできていると思うんでありますね。とき八十七号条約の批准に際して、好機至れりというようなかっこうで、そういうふうな問題が、基本問題が未解決のままに、人事行政の基本にも触れるようなものが人事局のほうに持っていかれるということは、私は非常に問題があると、こう思います。したがって、大きなプリンシプルに対する増原国務大臣のまずお考えをお聞きしたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/58
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059・増原恵吉
○国務大臣(増原恵吉君) このたびの国家公務員法改正における人事局と設置と申しまするか、中央行政人事機構に関する改正は、すでに他の委員よりの御質問にお答えもいたしましたように、人事院の公務員等利益保護に関するいわゆる労働三権規制に関する代償の機能ともいうべきものについては、いささかも手を触れておらないわけでございます。この条文にありまするように、公務員に関する制度に関して調査、研究をするとか、各行政機関の人事管理についての方針、計画等の総合調整をするとか、一般職の国家公務員の能率、厚生、服務その他の人事行政、これも人事院の所掌に属するものを除きまして、ごく一部のものを行なうというふうなことでございまして、これはもう人事院の本来持ちまする公務員の利益保護に関する権限というものにいささかも触れていないというたてまえで行ないましたので、あくまでもやはり公務員の人事管理と申しまするか、そういうことについての全体の企画調整ということを人事局において行なうというたてまえをとったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/59
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060・鈴木強
○鈴木強君 増原さんそう言われますけれども、あなたが提案をされておりますこの国家公務員法一部改正法案の中の、たとえば具体的に附則の第六条三項ですね。これは「総理府設置法の一部改正」とありますね。その次の「第四条」と書いたところの終わりに「第六条の二の次に次の一条を加える。」こうなっておりまして、その中の三号に「一般職の国家公務員の能率、厚生、服務その他の人事行政に関すること。」こうなっております。それから、もう一つ問題なのは、第六号の「前各号に掲げるもののほか、国家公務員等の人事行政に関する事務(他の行政機関の所掌に属するものを除く。)に関すること。」こうなっております。現在国家公務員法の人事院の項の中で、これらの能率、厚生、服務等の問題については、当然労働者の利益に通じ、いろいろと問題のあるところであります。特に私は厚生問題などは労働組合の設立の大きな目的の一つであると思うのです。能率の問題についても、これは当然勤務評定とかそういうものも関連してくる。そのために今日労働運動の中にたいへんな問題が起きているということもあなた御承知でしょう。こういったもろもろの職員に重要な影響のある問題について、人事院からどういう権限を受けることになるか私は知りません。あなたの言うように、いささかも職員に支障を来たすようなことではない。不利益になるようなことはやらないと、こうおっしゃいますが、一体能率、厚生、服務というものは、これは労働条件の一環であるし、そのことが人事院から今度の人事局に移るということは、私は重大な問題だと思う。いささかも支障がないというようなことはない。一体人事院がやる能率、厚生、服務と、いまあなたがやろうとする能率、厚生、服務とは、どういう関係にあるのか。
それからもう一つは、第六号の、非常に幅広い、解釈によっては何でもできるような、そういうふうな、法律解釈というものはそういうことになるんであります。だから私はその点を、あとで問題になりますから、条文の解釈として、ですから私は確かめておきたいのです。だからそういうふうな、利益保護のために、いささかも従来の人事院の機構の中で支障がないとおっしゃるのはわからない。これはそんな話はないでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/60
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061・岡田勝二
○政府委員(岡田勝二君) ただいま御指摘の附則の第四条、すなわち総理府設置法の一部改正の中の六条の三、人事局の事務の中の第三号「一般職の公務員の能率、厚生、服務その他の人事行政(人事院の所掌に属するものを除く。)に関すること。」これについてまず御説明申し上げます。で、能率、厚生の関係につきましては、能率の根本基準に関する事項につきましてはすべて人事院が所掌し、したがって、根本基準の実施に必要な範囲内において人事院規則は出すわけでございます。それから能率の一つとされております研修につきましては、総理府人事局はタッチすることなく、これは人事院の所掌といたしております。したがいまして、能率、厚生の関係につきまして人事局で所掌いたしますものは、研修を除きます能率につきまして、調査、研究及び適切な方策の実施という、公務員法の七十一条の関係と、それから勤務評定及び表彰制度に関する七十二条の関係。ここで念のため申し上げますと、勤務評定も、能率のさっきの一つの仕事でございます。そういう意味で、勤務評定の基本に関することは人事院規則で定められ、勤務評定の、実施に関する細目につきましては総理府で所掌するというふうになるわけでございます。
なお、厚生のお話も出ておりましたが、厚生につきましても、たとえば厚生の中に含まれます。いわゆる健康、安全、こういった問題につきましては、事の性質上、労働基準的な面を持っておるわけでございますから、こういったものは依然人事院で所掌されるということになってくるわけでございます。で、能率につきましては、研修を除きまして、その他の能率につきまして、それらの増推計画の総合的な企画及び調整という関係の、七十三条関係が人事局の所帯になってくるわけでございます。
それから次に御指摘になりました第六号の関係でございますが、第六号は「前各号に掲げるもののほか、国家公務員等の人事行政に関する事務(他の行政機関の所掌に属するものを除く。)に関すること。」というところでございますが、これはおおむね、この前五号で掲げてあるところで、一般職につきましては尽きておるわけでございます。主として第六号で念頭に置きましたものは、むしろ特別職などがその典型的なものでございますが、特別職について言いますと、その前の五号に「特別職の国家公務員の給与制度に関すること。」ということが明示されておりますが、給与を除く、その他の、いろんな公務員制度上の個々の諸制度については、それまでのところ触れてないわけでございます。そういったものが当然考えられるわけで、そういったものを第六号で予定して書いておるわけでござい属して、それ以外の特段の意味を持つものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/61
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062・鈴木強
○鈴木強君 一体どうして人事局をつくって、いま人事院でやっているこれらの能率、厚生、服務等の仕事をやらなければならないのか、いまの人事院でやったのでは、政府が考えるような所期の目的を達成するためにはまずいというのか、その点が私によくわからないのですね、どうしてこういう人事院でやればいいものを、わざわざ人事局に移してやらなければならないかという、そういう根本的な考え方がよくわからないのですよ、ですから私は、なるほど人事院の存立の価値についてはいろいろ論議はございます。勧告を必ずしも実施してくれない、そういうふうなものに対しては、もう人事院をなくして、ストライキ権と団交権をもらいたいという意見も、組合からも聞きますけれども、聞くが、それはもう思いあまってすてばち的な気持ちになったとき考える考え方であって、やはり法治国家において労働運動をし、いろいろと国家が、それぞれの立場に立って行政をやっていく場合、法律に基づいてやっていく。これは法治国家として当然のことです。ですからわれわれは、このよってきたった経緯、人事院の設立の経緯から照らしまして、国家公務員諸君の問題については、人事院がやったほうがいいのだということで、人事院をつくったのでしょう。ですから労働問題に直接関係あることは当然でしょう、これは。ですからそういう一体の観念の中でものを考えた場合、どうも中途はんぱな改革がなされて、しかも本来の基本権というものが宙ふらりんになってくるというときに、人事院に手をつけるということはこれはおかしいのじゃないかと私は思うのです。もう少し先を見越してきちっとした柱ができたときにおやりになるなら、もっと大胆な勇敢なやり方をやっても私はいいと思う。おかしいですよ、いまごろこういう中途はんぱなことをやるということは。これは人事院総裁にしてみたって、自分が一生懸命やって成果をあげているのに、何のためにそういうものを政府が召しあげて、第三者機関として厳正中立な立場に立っておやりになる人事院というものから、少しでも権限を取ろうというような気持ちになるのか。これは私が人事院総裁であったら政府と大げんかします。おれのやることが気に食わぬとは何だ……そういう点が国民によくわからないですよ。一体何の意図をもってやるのか、政府が都合のいいような人事行政をやるために、それらのコントロールをやるのに、人事院じゃまずいからこっちへ取っておこうじゃないかといったような、うがった考え方かもしれませんけれども、そういうような考え方も出てきますよ。ですからそこいらの点をはっきりとしてもらいたい。こうしてこういう二本立てになるようなことになるわけですね、結局いずれも。少なくとも能率とか厚生とか服務というものは、人事院の所掌事務と人事局の所掌事務と二本立てになってくる。二頭馬車でなければ走れないというその理由が、わしらは一頭馬車でちゃんといいというのだ。人事行政をあずかって人事院がやれる、二頭馬車でなければやれないという、馬を一頭ふやそうということは、そのことは何かという、そのことを明確にしてもらいたいと思うのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/62
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063・増原恵吉
○国務大臣(増原恵吉君) このたびの人事局をつくりますのは、中央人事行政機構として内閣総理大臣がその責に任ずるたてまえをとり、総務長官を国務大臣として、その担当の国務大臣にする、そうして現在各省で行なっておりまする人事管理につきまして、その企画、調整をやりまして、足並みをそろえて職員団体における自主性、責任性の確立とともに、人事管理面においてもそういう企画、調整という面を、いまの状態のままでは不十分と認めて、その点を改善をしようということでありまして、職員の何と申しますか、労働権に関する職員に対しての保護の問題については、これは依然人事院にとどめてあるわけであります。まあ若干両方で所管をするというようなことが出ておりますが、これは職員の利益増進といいますか、そういう方面のこと、利益の保護という面は全部これを人事院にそのままとどめてありまして、いささかも触れていない。やはり各省それぞれやっておりますいまの人事管理の方式について、これを総務長官のところで統括をすると申しまするか、総合的に企画、調整をするという面を強化する、改善をするということがねらいであります。そういう点について、職員の利益保護についての人事院の権限というものには少しも手を触れておらない、二頭立てでめんどうなことをやろうという趣旨をもってこの改正をやっておるわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/63
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064・鈴木強
○鈴木強君 長官のおっしゃる全官庁間の総合調整をやろうということはこれは私にもわかります。なるほど各省がかりそめにもセクト的な人事管理というものが出てくる場合に、これを政府としてコントロールすることは、これは私はいいと思う。しかし、これは現在だってできるのじゃないですか。このことは、総合的な調整の中から、政府の、内閣の方針として、これこれこういう方針によってその総合的な調整をやるということは、私は法律を変えなくてもできると思うのです。いまあなたの言われる点は、かりに法律を変えるとしても、その点は多少理解をいたします。しかし、私が言うように、一番問題にしているのは、三項の「国家公務員の能率、厚生、服務その他の人事行政に関すること。」ここなんです。この中には、非常に労働者の利益に関する問題が含まれておりますから、ここについては、何も中央人事行政機構、管理機構というものを設けてやらなくても、私は人事院で十分できると思う。しかもそれが公務員保護の立場に立った人事院の大きな仕事じゃないですか。そういう問題の一部であっても、政府のほうに人事局をつくって持っていくことについては、私には理解できないから、その理由についてよくわかるように説明してもらいたい、こう言っているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/64
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065・増原恵吉
○国務大臣(増原恵吉君) 現在の機構の中でやっておりますることは、大体国家公務員担当などという制度で、私がこの担当大臣を命ぜられており、公務員制度調査室というものがあってこれをやっておる、これは何としても、機構としても、やはり全体の企画、調整として不十分とどうしても思われるわけであります。やはり担当大臣も、本来公務員制度調査室を所管しておる、この公務員制度調査室をやはり人的に質疑ともに拡充する必要もありますし、それを所管する総務長官が国務大臣となって総理大臣のもとでやるという改正が望ましいし、職員全体について行政を民主的にかつ能率的に運営をするということが職員の人事管理としては必要なわけでございます。これは政府の責任で十分能率が発揮され、職務規律が保持されるという意味において、全体としての企画、調整のいろいろの仕事を強化してまいるということが適当である、こういうふうに考えるわけで、職員の利益保護の面についての人事院の権限を弱め、そういう面について後退をさせようなどというような趣旨は絶対ございませんし、条文をごらんいただいてもそういう趣旨のものは出しておらないつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/65
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066・鈴木強
○鈴木強君 長官はうまいところに理由をつけているのですね。職員の利益保護についてはいささかも支障を与えない、それはそうでしょう、そんなことになったらたいへんなことですから。しかし、人事院の現在の所掌している業務というものは、少なくともこれは減るでしょう、現在やってるものを持っていくわけですから減るわけでしょう。ですから権限というか、組織運営機構というか、そういうものの弱体化は、これは必至ですれ。人事院はいまの形にしておいて、いまの調査室を名実ともに強化していく——陣容的にもというのかどうかこれはよくわかりませんけれども、おそらく人事局に持っていった分については、また将来にわたって、仕事が減ったからその分については人事院職員の定数をいじるということは必らず出てきますよ。いまやらぬと言ったって、これは必らず出てくると思うのです。ですから、なぜ一般職の国家公務員の能率とか、厚生とか服務とかというものを人事局でやらなければならないのか。こういうものに対する一つの総合調整といいますか、第一点のそういう思想に立っておるとすれば、ある程度わからないこともないのですけれども、独自で人事局が能率や、厚生や服務をやることになるわけですから、さっき説明が局長からありましたけれども、現行の国家公務員法の七十一条、七十二条に定められておりますその能率、厚生、服務と一体これはダブるのかダブらないのか、一体人事局でやろうというのを、もっと具体的に、厚生については何と何をどうやろうとするのか、それがいま人事院でやっておる問題と対照した場合にどういう作用が出てくるのか、こういう点をひとつ具体的に聞かしてくれませんか。たとえば厚生問題というのを、今度できた人事局では厚生の何をやろうとしておるか、人事院はどういうことをやっておるのか、それに対して人事局でそのうちのどういうことをやろうとするのか、そういう点をひとつ具体的に教えてもらいたいと思うのです。そうすれば私もわかると思うのです。おそらく分課、分掌規程をその後においてつくられると思いますけれども、これでは抽象的で一つもわからないのですよ。ちょっと見ると人事院のやっておるもののうちから持っていくことは間違いない。そうして、カッコして「(人事院の所掌に属するものを除く。)」と書いてあるけれども、現在所掌されておるうちの一体何を持ってきてやろうとするのか、そういうことがかいもくこの条文ではわかりませんよ。改正条文ではわからないのです。ですから、私はくどいようですけれども、そういう点を伺っておるのですが、ひとつ具体的に厚生だけでいいですから、一つの例としていま人事院のどういう厚生の仕事をやっておるのか、そのうちどうも人事院に置いてはまずい、人事局に持ってきて今度やったほうがよろしいと、やる場合には一体厚生の何をやるのか、具体的にそれをここにはっきり示してもらえば私も理解がいくかもしれませんから、これは局長でもいいからぜひひとつ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/66
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067・増原恵吉
○国務大臣(増原恵吉君) 仰せの点は、岡田室長から具体的に御説明をさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/67
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068・岡田勝二
○政府委員(岡田勝二君) 能率の点でございますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/68
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069・鈴木強
○鈴木強君 厚生でいいですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/69
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070・岡田勝二
○政府委員(岡田勝二君) 御質問の厚生も、公務員法上は能率というきわめて広い概念の中に包括されておるわけでございますが、それはそれといたしまして、厚生の中には、先ほどもちよりと触れましたが、職員の健康保持、労働基準法的に申しますれば、衛生それから安全保持、つまり災害防止というふうなこと、それからレクリエーションに関すること等の事務が現在人事院で推進されております。それらの仕事のうち、安全、健康そういったものにつきましては、ちょうどそれらの規則は労働基準法あるいはその下部をなしております労働安全衛生規則というふうなものに大体性格的には相当するわけでございます。で、そういった基準法の関連からいたしましても、それらの点はいわば各省共通的な一つの基準を定めて、院規則できめて曲るわけでございますが、やはり省庁の特性によりましては、もっと安全を推進すべきもの、あるいはもっと健康管理を推進すべきもの、こういうものもあるわけであります。そういった面につきまして、それぞれの省庁の特性に応じまして、そういった必要な面を、もっと人事院の定める範囲以上に伸ばしていくというふうなことは、これはむしろ政府と申しますか、総理府人事局で各省間の調整をとりつつやっていったほうがよろしかろう、あるいはレクリエーションに関するものにつきましても、これは特段に労働基準とかいうものとは直接関連するものではございません。これを推進する必要は十分あるわけで、人事院でもむろんやっておられるわけでございますが、そういったものを所掌するといったふうなことが御指摘の厚生という面に関して申し上げることができようと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/70
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071・鈴木強
○鈴木強君 そうしますとね、いま室長のお述べになった御答弁ですと、人事院でやっていることをみんな持っていってしまうんじゃないですか。現在の健康増進なり衛生、安全、災害防止、こういったものについて、各省庁の特性に応じたものをレベルアップしてやるように調整するというような御説明もあったのですけれども、そうしますと、人事院のほうでは何か全然各省庁の特性というものを考えないで、ただ一律的な総花的な一つの基準をつくって、それを人事院規則なら人事院規則でもってやらしているのだ、それじゃ各省庁の特性が生かぜないから、やっぱり各省庁の特性に合ったような安全衛生対策なりあるいは健康増進対策なりあるいはレクリエーション対策なんというものをやらすのだ、こういうふうに受け取れたのですけれどもね。そうすると、人事院のほうでは、どうも仕事をやらしているけれども、そういうふうな目的に沿うようなことができない、だから人事局のほうでやればできるのだ、こういうふうに考えておられるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/71
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072・岡田勝二
○政府委員(岡田勝二君) 先ほど私が申し上げましたこと、あるいはことばが足りませんでしたかと存じますが、安全及び健康保持、いわゆる衛生、こういったものに関しまして人事院規則が出て、現在その基準に従って各省庁実施しておられる。しかし、これは一つのいわゆる基準でございます。したがいまして、各省庁で、それよりももっと、うちは人事院が定める基準以上にもっと安全の管理を徹底したい、あるいはうちは非常に結核が多いから結核の予防についてはもっとやっていきたい、これは各省庁それぞれやっぱりそういう仕事の性質なりあるいは現実の職員構成の実態等から差異はあろうと思います。そういったものをよりよく推進していくということにおいて、人事院が定める基準以上にと申しますか、やっていくことは、これは差しつかえないどころでなく、たいへんけっこうなことだと思います。そういったことをやっていこう、こういう趣旨で申し上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/72
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073・鈴木強
○鈴木強君 佐藤人事院総裁にお尋ねしますが、ただいま室長がお答えになりましたようなことが現在人事院のやっている健康増進の対策あるいは安全対策、衛生対策であると、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。要するに、人事院では、一つのスタンダード、各省庁とも全く同じスタンダードにおいて基準をつくったものを示して人事院規則でやらしている、したがって、各省庁から、おれのところはこういう事情があるから、結核罹病率が職業病的にも非常に多い、したがって、これに対しては特段のひとつ配意をしてもらいたい、こういうふうなかりに申し出が人事院にあった場合に、それもけしからぬ、そんなことはできないのだ、これは一律の基準で、人事院の仕事じゃないからおれは知らぬ、権限外だ、こういうふうなことになっているのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/73
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074・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) ただいまお尋ねのようなことは、現在は人事院でやっているわけです。かつ各庁との個別的な接触も保ちながら、これはもちろんよくしていくほうはいいわけで、それを阻止するはずはありませんから、調整をとりながらやっているわけです。ただ、今回の改正案になりますというと、いま岡田室長の申しましたようなことになりますけれども、結局この公務員法の条文から申しますというと、たとえば能率、厚生については七十三条というのがありまして、その根本基準は人事院規則で定めると現在なっております。これは変わりがないわけです。それから服務につきましても、服務の根本基準は九十六条で、人事院規則で根本のことはきめる、これはそのままになっておるわけです。したがいまして、結局実際どうなるかと申しますというと、現在それらのことについてももちろん実施は各庁でやっておるわけです。その各庁のおやりになっておる実施の取りまとめを人事局がおやりになる、根本基準は依然としてわがほうでお預かりしておる、こういう関係になるのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/74
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075・鈴木強
○鈴木強君 そうです。私もそういうふうに理解をしておりました。ですからいまの総裁の御答弁はそのとおりです。したがって大臣、いま室長がお述べになりましたような思想は、考え方はいまの人事院でもできるんです。これはできるんですよ。だからその根本の基準を能率の場合でも、衛生その他の基準の問題についても、一応現行のとおり人事院でやってもらう、基準については。そうしてただそのお話しのように、各省庁間の特性に応じた調整というものをやるためだと、こうおっしゃる、そういうことは人事院でも現在やっておるじゃないですか。そうであるならば、なぜことさらにこれを政府の人事局でやらなければならないかという理論に通じてくる。だからそういうことは、こっちのますの中に入っている米をこっちのますの中に持ってくると同じであって、ほんとうに政府の一貫した人事行政というものが確立しておれば、私は事実上はできることじゃないかと思うのです。いま人事院のほうが一生懸命苦労されて、そういうコントロールもやりつつあるというのに、どうして人事院からそれを取り上げて、こっちは根本基準は人事院、総合調整は人事局、これは行政機構の複雑化ですよ。決してそのことが室長が言うように、これこそやるべきだというようなそういう飛躍した理論には通じない。これはもう少しわれわれがなるほどなあというふうに理解できる根拠がなければいかぬと思うのですよ、これは。われわれは人事院というものをやはり正しく見詰めておりますから。どうか人事院が公正、中立、厳正な立場に立って国家公務員の諸君の権利を擁護してもらいたい。ストライキ権はない、団体交渉権はない、それにかわるものとして昭和二十三年の国家公務員法改正によって人事院の設置が認められたのだ。そこでやりなさい、国家公務員に関する限りはやりなさい、そういって設置されたんじゃないですか。それを十数年たって今日、政府の手にこれを取り戻そうとしているわけだ。それもいい、それなら団体交渉権なり罷業権というものをやはり労働組合に与えて、そして労使対等の立場に立って、人事院はもう要らなくなったから、ひとつ政府のほうに吸収してやろうじゃないか、これなら私は賛成します。そうじゃないでしょう。増原さんの提案理由の説明を拝見しますと、ILOが批准され、労働者側の態勢が、言うならば一つ確立していく、したがって、政府側もそれに対して態勢を整備していくのだ、こういう考え方、これはわかりますよ、思想的には。しかし、何が一体態勢の確立になるのですか。依然として団交権やストライキ権、基本的な問題について一切たな上げで、これもしかしどっち向いていくかわからないような公務員制度審議会の中でやろうと、こうおっしゃるんでしょう。だから、そういう段階で少なくとも私は、人事院の権限をいささかなりとも減退さすがごとき変革はやるべきではない。これは非常に労働者諸君にとっては政府に対する不信を買いますよ、これは。そういう意味において私はいまこの意見を述べているわけです。その辺が皆さんとどうも少し合わない。しかもわれわれだって耳を持っているのですから、耳を。なるほどというような御説明があれば、ああそうか、人事院がある程度これはだいじょうぶだ、よりよい人事行政、管理というものが国家公務員諸君についてやれるのだ、厚生問題でも能率問題でもやっていけるのだ、ああ、なるほどこれはベターだ、いいことを考えてくれたと、こういうふうに理解できるなら私たちはいいんだが、そこまで理解できない、ますます何か中央集権的な、コントロールを人事院から少しでも奪い取っていって、政府がみずからの手でもっておやりになりたい、そういうようなふうにしか理解できませんよ。これは一体人事院総裁にもう一回私は聞きたいのですけれども、これは長い懸案ですよ。持ってくる、持ってこないの具体的な問題は別として、人事院の改組というようなことについては。ですから、たまたまILOの批准に便乗して、私が言うならば、やりいい時期にやろうというふうに受け取れないこともないのです。人事院は私はこういう変革に対して決してもろ手を上げて賛成しているとは思えない、率直に言って。現在の人事院が現存している限りにおいては、これは私はそんなことを欣然として賛成するような人事院だったらおかしいと思うのです。そういう人事院総裁としてみずから一生懸命に努力して、足りないながらもせい一ぱいの努力をしている人事院に対して、こういう政府のやり方について私は憤激をすべきではないかと思うのです。あなたは政府機関の人だから、そんなことをここで答弁をやれと言ったって言えないと思うのでありますけれども、およそ良識のある人間であるならば、心の底でそういう危惧をみんな持っていると思うのです。率直なひとつ御心境をお聞かせいただきたいと思うのです。これはもう非常に公務員諸君は危惧しているところですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/75
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076・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) 鈴木委員が先ほど来お述べになりました根本的な考え方というものは私ども全く同感であります。また、そういう考え方はこのILOに伴う公務員法の改正が問題になりまして以来、ずっと私どもは強く各方面にこれは訴えてまいったつもりであります。むろん今日の法案になったわけでありましたが、結局従来の法案と今回の御提案になっております法案とを比べますと、まあ相当の御理解と言いますか、だいぶん前の案とは変わってきておるわけであります。そこでいま残ります問題として、ただいま御指摘のような問題がございますけれども、これらはわれわれとしては先ほど申しましたように、基本的立場からいうと、結局はやはり審議会でもよく練っていただいて、それから手をつけていただきたいという気持ちは依然として持っておりますけれども、ただ、しかし、国家公務員法の基本精神から言って、今回の機構の改革が人事院に与えられた根本の使命に致命傷を与えるかどうかという観点から言いますと、前の案に比べると、よほどこれはことばは非常に俗でございますけれども、傷は浅い。そこをあえてこの際これを現状どおりにしていただきたいということをわれわれが申し上げますのは、ちょっとなわ張り根性と誤解されるおそれも、これは率直に言えということでございますから率直に申し上げますが、したがって、この程度の案ならばまずまず正直言って。そういうことで、従来は非常に声を大にして、われわれの希望を申し上げてきました、衆議院の特別委員会でも申し上げてきましたが、今回はわりあいその点はあまり強いことばも申し上げられないと思います。あとは国会の御判定を待ってしかるべきではないかという気持ちでおるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/76
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077・鈴木強
○鈴木強君 私は佐藤総裁の 発言は、総裁としてまことに適切な、りっぱな御意見だと思います。少なくとも人事院が何者にも動ずることなく、所期の設立目的に向かって進んでいただくということは、これは私は当然のことであって、いまの御心境まことによくわかります。
そこで、これはもう幾ら質疑をやっておりましても果てしがない、しかも時間には制限がある、こういうわけでございますから、この問題に対する増原国務大臣のひとつ決意を私は伺いたい。あなたが最初に言われたように、今度の改正、すなわち六条三項の追加をいたしておりますことについては、法律上、条文上いろいろ表現的には受け取れるが、その精神は、少なくとも現在の人事院の設置をされておりますその目的ですね。権限その他についていささかも変革を加えるものではない、微動だもするものではない、よりよく人事院とタイアップをして人事局というものは公務員諸君に対する利益保護のためにやっていくのだ、ですからこのことによって従来の人事院の権限なり、機構なり、組織というものにつきましてはいささかも変革を加えられるものではない、こういうふうに私はさっきのあなたの考え方を受け取っているんですが、そのことについて私ども明確にこの際してもらいたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/77
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078・増原恵吉
○国務大臣(増原恵吉君) このたびの公務員法改正によりまして、人事院の職員保護の権限、職能というものを阻害しようとしている意思は少しもございません。そのつもりで法案をつくり、改正をしているつもりでございます。したがいまして、人事局は各省の人事管理を改善するための企画、調整をするというところに主眼があるわけであります。事実上総務長官を国務大臣とし、その人事機構を整備することによりまして、実際上法律の文句に書きあらわす以上の企画、調整による人事管理の改善が行なわれるというところをねらっているわけで、職員保護の点については、従来の人事院の権限をいささかもこれを損傷しようという考えはございません。そういう運用のしかたはしないという決意でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/78
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079・鈴木強
○鈴木強君 これは岡田室長に最後に私は念を押しておきたいんですが、いま大臣のおっしゃったような人事局に対する考え方はよくわかりました。そこで特にこの二、三あるいは一、この新しく追加をされます六条三項の人事局の事務のことについて、従来の人事院の権限、職能その他については一切微動だもしない、こういうことですから、したがって、将来にわたって人事院のいまやっている仕事は一つも変わりはない、したがって、所掌事務の面におきましても一つも変化はない、したがって、そこに働いている職員その他の用員問題も含めあるいは予算問題も含めて、今後人事院に対する対策というものは人事局の設置によって軽減され、縮小され、削減されるということはない、こういうことをひとつ確認したい。これはあなたが荷が重かったら大臣からでも伺いたい。それでなければおかしい、いま言ったこと。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/79
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080・増原恵吉
○国務大臣(増原恵吉君) 御審議を願っている法案の中に書いてあります事項が若干人事局に移るということでございます。そういうものについては人事局に人事院から若干移ってくると思うのでございますが、そういう法案に明記してあります点について若干の移動があることは申し上げるまでもないことでございます。しかし、基本的な考え方として、人事院の機構を縮小し、予算を削減する、そういう方向を持っておらないということはお述べになったとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/80
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081・鈴木強
○鈴木強君 だからね、私はこういうことを最後に聞くんですよ。皆さんはうまいことを言うんだな。私が聞けば、基本調査について人事院がやっていることについては全然手をつけません、それから各省庁からの苦情が来る、こうやってもらいたい、ああやってもらいたい、これもやはり人事院がやっていることだから、そのことについては手をつけない、それじゃ何を持ってきて、人を持ってきてやろうというんですか。そういうところが頭隠してしり隠さずで、基本的にりっぱなことをお述べになっているけれども、具体的にそういうところで、われわれはなるほどこういうことを言っているけれども、裏には相当のものを持ってくるんだなと思う。これは人事院の機構の縮小、権限の縮小は少しもしないと言っておきながら、一方ではそういうことをやるのはおかしいじゃないですか。そういう答弁は私は聞こうとは思わないんです。むしろそういう人事院のいままでやっておったことの上にさらにいまあなたがお述べになったようなことをやって、そうしてそれが両々相待ってよりりっぱな人事行政、公務員擁護というものができる。こういうふうに理解するならば、これは従来やっていることは大いにやってもらい、そうして新設の人事局でこれをやる上の体制をつくったらいいじゃないですか。人を引っこ抜いてきたり、予算を引っこ抜いてきたりするということはおかしいじゃないですか。それではもう権限の侵害もはなはだしいですよ。これは理屈に合わない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/81
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082・岡田勝二
○政府委員(岡田勝二君) 附則の六条の三、人事局の所掌事務のところをごらんいただきますと、そういうお感じをあるいはお持ちになるかと存じますが、基本的に人事院と人事局との所掌の分配の全貌をここで説明させていただきます。
まず第一に、職階制でございますが、これは現在どおり人事院で一切所掌いたします。それから試験及び任免、これも現在どおり人事院で所掌いたします。それから給与に関する事務につきましても、給与勧告を含めまして、給与実施をも含めまして一切人事院で所掌いたします。それから職員の分限、懲戒、保障、つまりいわゆる不利益処分の審査、行政措置の要求、それから国家公務員災害補償法の取り扱い及びそれの異議申し立ての審査、そういったものも現在どおり人事院ですべて所掌いたします。なお、職員団体に関する事務も現在どおり一切人事院で所掌いたします。したがいまして、人事院から人事局に移ると申しますものは、先ほど申し上げました能率、厚生の関係で一部、これとても、先ほど人事院総裁から御説明がありましたように、能率、厚生の根本基準の実施に関する必要な事項は、人事院が所掌して人事院規則できめられるわけですから、そういう意味で、能率、厚生に関して大きな基本事項は大尾根はかぶるわけでございます。大屋根をかぶったその下での実施のこまかいことをやっていく。服務につきましても同様でございます。で、服務の根本基準につきましても、やはりその大屋根は人事院規則で人事院が扱っていかれる。特に服務の中で政治的行為の制限、これは現在どおり人事院規則で定められるわけです。それから私企業からの隔離、よくいわれます天下り、これを制限いたしておりますが、これを解除するかどうかの事務、これらにつきましても、やはり現在どおり人事院で所掌する。それから給与につきましては、先ほど一切人事院と申し上げましたが、給与以外のいわゆる勤務時間であるとか、休暇であるとか、そういった関係のいわゆる勤務条件、これらに関する事項につきましても、やはり人事院で所掌していただくということで、たとえば、服務につきまして人垣局に移るものと申しますれば、職員が採用された場合に行ないますところのいわゆる宣誓でありますとか、あるいは職員として勤務しながら他の仕事に携わる一たとえて申しますれば、どこか大学なり学校の講師を兼ねるとかいうふうな、そういう他の事業への制限、あるいは秘密を守る義務とかいうふうな、この程度の若干のものが移るだけで、そうしてあとは人事記録に関することと、それから人事統計報告に関すること、これが人事局に移るということで、その範囲で人事院から人事局に移るということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/82
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083・鈴木強
○鈴木強君 そういうこまかいことを言われましても、そのことはたいした問題ではなくて、ぼくが言っている基本的な問題について、やはりおっしゃっておるが、将来、いろいろな形において人も減り、予算も減り、分掌も減っていくとこういうふうになるという御説明なんですけれどもね、これがいわゆる浅い傷か深い傷かのことだと思うのだが、これはやはり少なくとも二十三年以来人事院が果してきた使命、これは不満足な点もあったかもしらぬが、そういったことにかんがみて、その根本的な体質の改善については、私がさっき申し上げた基本権の問題と同時に手をつけるべきであって、いまその問題が未解決のときに、その人事院の組織、機構、権限に手を加えることは間違いである、こういう思想は依然として私いま質疑を聞いた中で動きません。ですから、皆さんはうまいことを言って、根本は一つも変わらないとか、権限は動かさないとか言っているのだが、一城、一城おとしいれていこう、こういうふうな考え方が明らかになりました。これは非常に私は遺憾なことであって、少なくともとるべからざることであると、こう思います。しかし、どうも多少なり人事院の仕事をこっちに持ってくるから人も持ってくるのだという、そういうふうなお考え方のようです。これについて私は、さっきから述べているあなた方の考え方のほんとうの気持ちというものがそこにあるのだということがよくわかりました。これは断固私は反対です。しかし、まあ質疑の段階ですから、これ以上私申し上げてもしようがないと思うのですけれども、どうかひとついま私どもが心配をしているようなことの起きないように十分配慮をしてもらいたい、これはひとつ希望意見として強く申し上げておきます。
それからその次に、新しく設置されます公務員制度審議会のことについて伺いたいと思いますが、すでに同僚議員その他から質疑があったと思いますから、もしありましたらその点はもう前にあったからと言ってください。
まず第一点は、ストライキ権あるいは団体交渉権等を含めて、この審議会は労働問題の基本について審議をするように私は理解をいたします。第十四条の三項によりますと、「審議会は、内閣総理大臣の諮問に応じて、国家公務員、地方公務員及び公共企業体の職員の労働関係の基本に関する事項について調査審議し、及びこれらの事項に関して内閣総理大臣に建議する。」と、こうなっております。したがって、深く私は伺いませんが、まずストライキ権、団体交渉権の復活について、この審議会が設けられました暁、政府としては何がしかの方針をおきめになってストライキ権についてはこうだ、団交権についてはこうだ、こういうような御方針をおきめになった上でその審議会に御諮問なさるのか。それとも、そうでなくて、これらの問題についてひとつ御審議いただきたいということでおやりになるのか。この点が、運用の問題だと思いますけれども、大事なところですから伺っておきたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/83
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084・増原恵吉
○国務大臣(増原恵吉君) 公務員制度審議会に対する諮問のしかたについては、まだ具体的に政府としてきめておるわけではございませんが、おおむね包括的に労働関係の基本についての改善策について諮問をするという、まあ包括的な諮問のしかたをすることがいいのではないかと現在の段階において考えておるところでございます。ただ、この法案審議の過程等から考えまして、このたび政令をもって別に定めるという形で施行延期になりまする分などはまず取り上げて審議をしていただく、あるいは公社等における当事者能力の問題などは取り上げてまず審議をしていただくようなことになろうと思います。ただいまお述べになりましたような労働権の基本についての団体交渉あるいは争議権等についても審議がされると思いまするが、諮問のしかたは、現在の段階においてはまだ具体的にきめておりませんが、大体包括的な諮問のしかたをすることがいいのではないかという程度にいまのところは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/84
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085・鈴木強
○鈴木強君 このいまのストライキ権、団体交渉権の審議をここでなさるわけですから、その際に、人事院機構の改善その他の問題について、この公務員制度審議会において関連をして政府が諮問をするお考えがあるかどうか、これはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/85
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086・増原恵吉
○国務大臣(増原恵吉君) 現在のところ、申し上げたように、包括的な諮問のしかたがいいのではないかという、これもまだ決定ではございませんが、そういう考え方でございまして、特に具体的な問題を取り上げるというふうにはいまのところまだ考えがきまっていない、そういう段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/86
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087・鈴木強
○鈴木強君 これはたいへんな仕事をすることになると思うのですから、なかなか時間もかかるでしょうし、たいへんな御苦労をいただくことになると思います。そこで、今回この審議会に付託をされて、実質的には凍結されるところが、重要なところがほとんどでございますから、そういう問題が公労法の適用下の公労協諸君の当事者能力の問題とも関連をして、団交権、ストライキ権、こういうふうに審議が進められていくと思うのでありますが、おおよそ審議会がこの目的を達成するためにできるだけの努力をして促進をして早く結論を出すということにねらいを置かなければならないと私は思うのであります。したがって、いま、にわかに半年とか一年とか述べられないかもしれませんが、そういう審議会の今後の活動あるいは諮問の問題等とも関係がありますから、ちょっとむずかしい御答弁を要求するかもしれませんが、おおよそこの審議会についてはどのくらいの期間においてその結論を出そうとなさっておられるか、こういう点を一つお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/87
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088・増原恵吉
○国務大臣(増原恵吉君) この点は御意見のとおりたいへんむずかしい問題で、期限をきめるということは困難と思います。基本的には、審議会がやはり自主的な審議をしていただくということでございますから、ただいまの段階で期限をどれくらいということはちょっと申し上げかねるわけでございます。ただ、現在の修正案のとおりに、この関係法案が成立をしますると、施行延期になりますような部分については、条約発効の一年以内——条約発効するまでの期間にこの答申が出ることを期待しておるという程度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/88
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089・鈴木強
○鈴木強君 それでは、人事院総裁と増原国務大臣に対する質問は以上で終わります。あと公労法関係についてお尋ねしたいのですが、これはどなたが答弁してくれますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/89
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090・安井謙
○委員長(安井謙君) もう間もなく、労働大臣が本会議が終わって来ると思いますが、それまでしばらく労政局長がおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/90
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091・鈴木強
○鈴木強君 それでは、政治的な問題に関する点はあとで大臣が来てからお伺いすることにして、私はこういう点をまず伺いたいのです。
現行公労法というものは、よって来たった歴史的な経過から見まして、いろいろこれは問題点が指摘されると思うのであります。特に第八条の団体交渉権と、それから第十三条の資金上、予算上というものの関連ですね、あるいは地公労法第七条の団交権と第十条の予算上、資金上の問題等の関連、こういった問題については、あるいはまあ後ほどから伺う退職手当、これが団体交渉事項であるかどうかというような、そういったもろもろの問題が今日まで法解釈上というか、法律上の不備として指摘されておったのです。ですから、私は今回ILO八十七号条約の批准がせっかくなされることでありますから、そういった問題も少なくとも御研究を長い間なさっておるわけですから、この法律改正の中で足らざるを補い、よき公共企業体の運営をするために、そういった懸案の問題の解決はこの際やるべきではなかったかと思うのです。ところが、そういう大事なところは全然改定の中には出てこない。むしろ当事者能力の問題については、これは長い間の懸案でいまさら始まったわけではないのです。なぜそういった問題をもう少し煮詰めてこの機会にやっていただけなかったか。こう思いますから、この点を一つ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/91
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092・三治重信
○政府委員(三治重信君) 今回の公労法、地公労法の改正につきましては、これはILO八十七号条約と直接関連する事項についての改正、若干地公労法につきましては、この前公労法を改正したときに、地公労法が同じように改正されなかった部分につきまして、公労法と同じように若干手続または規定を改正したところはございますが、基本的には、このILO八十七号条約と関連する事項についての改正、ことに当事者能力の問題その他予算上、資金上の制限の問題、こういうような問題は、御指摘のとおりに私たちも感じておりますが、これはいずれにしても非常に重要な問題でありますので、昨年の次官会議におきましても、これはひとつ根本的に審議会で検討された上で、その御審議を待った上で検討したい、こういうふうにしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/92
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093・鈴木強
○鈴木強君 労政局長ね、私は普通の場合ですと、そういう御答弁でわかるのですけれどもね、この問題に関する限りは、私にはそんな甘っちょろい答弁では絶対に納得できないのです。これは。あなたも労政に長いこと携わっておるでしょうから釈迦に説法だと思いますけれども、昭和二十四年に国鉄が公社に分離したときに公労法ができた。そのときから団体交渉権というものが与えられたにかかわらず、大事な給与問題は制約を受けておる。これでは、本来労使間における団体交渉権というものは名目的に与えられておっても、一番労働者が要求をしておる賃金についてはできないということになるのです。これは。だから、形式的な名を与えて何もできないというのが公労法なんですよ。そのために紛争が続いてきておる。だから、日本の公共企業体というのが、昭和二十三年、日本共産党の指導下に日本の労働運動が進んでおった当時、これは心ある労働者は民主的組合を、つくるために立ち上がった、民主運動が進んできた、そういう中でマッカーサーの書簡を受けて日本の公労法というものができてきたのです。しかも、これはアメリカのTVA方式をとったわけです。その後二十七年には電電公社が発足して、新たに専売と国鉄と電電が公共企業体になった。その後五現業が公労法の適用を受けて、いま三公社五現業といっておるのはそういう発展過程で来ておるわけです。いずれもそういう矛盾をはらみつつ、矛盾した公労法の中で労働運動をしておるわけです。だから、これを直してもらいたいというのは長年の懸案です。たとえば、電電公社のこの問題に関する経過をちょっと申し上げてみますと、昭和二十九年十一月の四日、臨時公共企業体合理化審議会、これは原三郎安さんが会長で、時の吉田茂総理大臣に対して、臨時公共企業体合理化審議会の答申というものが出ておる。もう一つ、昭和三十二年十二月二十五日、これは公共企業体審議会の会長石坂泰三氏から、時の内閣総理大臣岸信介氏にあてて、公共企業体審議会の答申というのが出ているんですね。この内容を見ますと、いずれも公共企業体にもっと自主的な権限と能力を与えてやるべきである、給与総額制度というものはやはり考えなきゃならぬ。そのためには組織機構をこういうふうに検討したらどうか、こういう答申が、政府が諮問をして二回も出ている。昭和二十九年、いまから十一年前です。私はたしか三十一年に国会へ来たと思うのですけれどもね。毎国会において内閣総理大臣以下この問題を取り上げてきている。ところが、検討します、検討します。たなざらしをして、十数年の間、検討、検討で終わってきている。昨年、臨時行政調査会からも同様な答申が出ている。四月十七日には、太田・池田会談によってこの問題が取り上げられてきた。社会党は具体的にこの法律改正を国会へ出した。そういった過去十数年の歴史がある。これらの問題を政府は放置して、そしていまのような公共企業体の紛争というものが続いてきているんです。この事実をあなたは知っているはずなんですね。そうであるならば、私はなるほど八十七号条約が批准される、それに関連して四条三項、五条三項というものが、団結権の侵害になるからというのでこれは直すのはあたりまえであります。しかし同時に、こういった問題は一つの問題としてやはり解決すべきである。もしかりにこれが荷が重過ぎるというならば、今日三公社五現業諸君の退職手当というものは、残念ながら国家公務員等退職手当暫定措置法によってこれは律せられておる。団体交渉事項であると私は思う。これは公労委の調停委員会でもそういう判決を下しておる。にもかかわらず、一方では法律によってこれが規制されておって、せっかく給与その他の問題について公労法第八条は団体交渉事項の中に入れておきながら、法律によって規制されているものが出てきている。せめてこのくらいのものでもなぜ出せないのですか。私は非常に、日本の労働行政、労働対策というものについては戦後まだ日は浅いかもしれません。しかし、真剣に祖国発展と、平和と生活の擁護を考えて、日本のこれらの諸君が一生懸命努力してくれていると思うのです。そういう人たちに、やはり与えるべきものは与え、行き過ぎはためていく、押えていくということであればいいんだけれども、正当な要求は押えて、足も手も出ないようにしておって、そして弾圧だけやっているという、そういうけしからぬ労働運動というものが日本にできてきている。私はそういう、あまり何回も何回もだから言いたくないことなんだが、あまりにもこれらの問題に対する政府の熱意がないから、私はこういうふうに声を大きくして言うんです。十年間、私は毎国会やってきました、予算委員会で。もう少し積極的に不合理な点はどんどん直していったらいいじゃないですか。当時者能力が大きくて、どうも手がつかなかったというなら、これも不満であっても多少これはわかるんだが、せめてそのほかの管理運営事項等についても、一体紛争がずっと続いている。経営者諸君は、管理運営事項だと言ってみんな団交からはずしてしまって、管理運営事項とは一体何か、この定義をはっきりしてもらいたいと思うのですね。そういうふうな、やはり明確にできる点はすみやかに是正をし、改革を加えて、一歩でも二歩でも政府の誠意というものが見えてくれば、労働組合の諸君だってもののわかっている諸君なんだから、なるほど政府に誠意がある、一歩、一歩ながらも前進してくれているなあ、おれらの気持ちもわかってくれているなあ。ところが、何を持っていっても全部十ぱ一からげにして逃げられておったんじゃ、皆さんが、幾ら誠意があるとか、一生懸命やるとか言ってみたって、大衆諸君は信用しないと思うのです。だから、そういう観点に立って、私はこの公労法の改正というものをながめたときに、せめてそれらの点についてなぜできなかったか、こういう気持ちを非常に強くするわけですよ。これに対して、これは労政局長に大きな声をしてやっても響くかどらかわからぬけれども、私のぐちかどうかわからぬですけれどもね。そう聞いてもらったらそういうふうに聞いてもらってもいいけれども、少なくともあなたは次官の下にいる担当の労政局長だから、私の言うことがよくわかると思うのです。そうでしょう。まあ労政局長としてのこの問題に対するひとつ決意を含めて意見を聞かせてください。もし荷が重いなら、重いでもいいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/93
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094・三治重信
○政府委員(三治重信君) まあ私の責任で答弁というのはまことに荷が重いわけでございますが、ただ、従来大臣が国会において答弁されておる点をお伝えを申し上げますれば、問題点があることは十分承知しておる。しかしまあ、国会の予算審議権、政府の予算編成権というものとのからみ合いがあるので、この点はなかなか解決がむずかしい問題で、そのために今日まで延びているんだ。したがって、ここでILO八十七号条約の通過を機会に、根本的に公務員制度全体との関連もあり、公共企業体の運営についても、またそれを労働基本権との関連においても審議してもらうことにして、これについてはひとつ十分審議していただいた上で、基本的に政府として、まあ何と申しますか、積極的に対処していきたい、こういうのが従来労働大臣がお答えになっている線で、われわれはその線に沿って今後努力してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/94
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095・鈴木強
○鈴木強君 まあ、当事者能力の問題が荷が重いと言うなら、それじゃ三治さん、さっき私が言った退職手当はこれは団体交渉事項かね。事項であるかないか大いに論議があるところなんだが、せめてそのくらいの改正はできなかったのですか。これはどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/95
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096・三治重信
○政府委員(三治重信君) 公労法のたてまえからいきますというと、退職手当そのものは団体交渉事項であることは法の解釈上間違いございません。ただ、御指摘のように、現在退職手当法ができておりますので、この法がある限りにおいて、その限度においては、団体交渉をして他の取りきめをしても実際上機能しないであろうという意味において、当局と労働組合と退職手当の問題について話をしても、これはなかなか実効があがらないという問題は確かにある。ただ、この退職手当と、そういうふうに法律できめてある問題については、非常に基本的には退職手当というものはやはり勤務条件の一つの重要な事項でございますので、団体交渉事項であるという解釈には間違いございませんが、そういう法律がある場合には、その法に優先して、協約と申しますか、先にそちらのほうが効力を発揮するというようなことはなく、ただ、それを廃止するか、どうかという問題は、今後の検討に待ちたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/96
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097・鈴木強
○鈴木強君 さっきの人事局の解釈じゃないけれども。皆さんは法律を出すときにはうまいことを言ってぼやっとしておいて、そして今度いよいよ解釈するときになると、こういう解釈だ、ああいう解釈だと理屈づけているのです。この問題だって、人事局の問題だって必ず出てきますよ、これは。私が証言しておきますよ。で、退職手当が団交か団交でないかだって、昭和二十四年に国鉄法ができて、二十八年まで大紛争をしたんだこれは。あると言う。ないと言う。それで二十八年の三月十日に国鉄の労働協約の解釈に関する紛争というやつが出てきて、そのときに初めて退職手当は団体交渉事項だというふうに明確になったとぼくは理解しているのですよ。ですから、もし、いま三治労政局長が言われたように、確かに団体交渉一項であるというならば、その団体交渉によって労働協約が結び得るようにいまの制度があればそれを直していくのが筋じゃないですか。もしかりに百歩譲って、そういう国家公務員等退職手当暫定措置法の適用は受けているが、しかし、労働協約が結べられて、団体交渉のほうがきまれば、きまったものは法律よりも優先して生きていくというなら別だけれども、そうきめてみたってきめられないんだこれは。そうでしょう。だから、そういった矛盾が八条との間にあるわけですから、それならば私は百歩譲って、いま直ちに三公社五現業については退職手当暫定措置法から抜いて、これは三公社の場合と国家公務員の場合、法律上から抜いていって、そして、それぞれの独立の——独立というか、その法律の内容だけでもいいから団体交渉をとりあえず結んでおいて、それで法律を廃止すればいいのですよ。それから、今度また団体交渉を重ねていって、いいものはよくしていけばいいのですね。そういうことは幼稚園だってできるのだよ、これは。たいして法制局で頭を使わなくてもできるのですよ。だから、そういうようなことぐらい、せめてあなたやってやったらどうですか、これは。団交事項が阻害されるということは、これはできるのだから。それができないということをさっき聞いたのだが、その大事なところをひとつ聞かしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/97
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098・三治重信
○政府委員(三治重信君) そういう御意見も傾聴に値する御意見だと思いますし、その当時の事情は、先生も先ほどお述べになりましたように、暫定的に、この当時は一年、一年国家公務員の退職手当の暫定措置になっておりまして、そこで非常にまあ争いが繰り返されてきている。今日においては恒久立法になっておって、争いがなくなったわけでございます。しかし、昨年電電の合理化について特別なやつをやる場合には、やはり立法措置をとっておる。そのときに労働大臣も、当時は大橋労働大臣だったのですが、そういう新しく特別の何かやる場合には、予算上の措置をとる上からいって、やはり立法措置をとることが適当であるという政府の判断だけれども、そういうような特別の措置をとって、特別な退職手当のことを法律にやるにしても、その中身については十分団体交渉してほしいというふうなことを申されて、いろいろもんだ末、了解なって、ああいう特別な合理化に伴う一種の退職の追加の法律ができたわけでございます。そういうふうな便法的な措置はあるかと思いますが、しかし、退職手当法は、今後やはり社会保障の進展とともに、恒久的な、まあ何と申しますか、人の考後の問題とも、いわゆる社会保障、年金ともからんでくる問題でございますので、こういうふうな長年の資金計画、あるいは恒久的な制度というようなものは、まあ立法にするか、協約がいいかの基本理念は別といたしましても、いずれにしても、相当安定的な制度としてきちんと保障されることが必要じゃないかという意味において、形式は法をとっても、その中身の問題についてのやつについては、今後とも政府、労使ともども、国の恒久的ないわゆる社会保障、あるいは老後の保障というような問題の見地から、いろいろ内容的に改善していく努力は惜しむべきではないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/98
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099・鈴木強
○鈴木強君 昨年の電電公社の女子職員の、合理化によって退職した人たちに特別な措置をするというのは、これは法律で出ました。しかし、その出てきた根源がこれは不純なんだ、私たちに言わせると。問題は大蔵省が金を出さない。よって法律によってきめれば金が出てくる。なかなか団交でやってみたって給与総額があるからふくらまぬというようなところからやってきた一つの方便であって、だから、私は百歩譲って、あなたに言っているように、国会のお世話にならなくてもいい。現行の基準、すべてですね、退職手当法の中にあるそういったものを、とりあえず労使間において協定をする。そしてその法律は廃止していく。あと、これは当事者能力もやがてくるわけだから、ですから、団体交渉によって資金面については是正していく。たとえばスエーデンあたり行くと、六十七歳になったら五十一万円の年金がばっと支給されるのですね。それは西欧並みなんと言たって、日本のやつはそこまでとても行かないのだから、まあそれは余談ですけれども、そういうふうにして労使間でもって協約でやって、初めて公労法第八条の団体交渉事項の中の給与その他という問題が生きてくるわけですから、そういうふうにしてやるのが、これはもう労働運動上、労働行政上正しいのですよ。だから、そこのところをせめておやりになるだけの意欲はどうして持たなかったのでしょうか。かりに、これが国会に予算措置を特にお願いしなきゃならぬとかなんとかということであれば、なかなかこの法律をはずすということもむずかしいかもしらぬが、ひとつも支障ないじゃないですか。そういうふうなことを一応政府がおきめになって、これはどうだろうかというくらいの話はしたことはあるのですか、労働組合側に。そういうこともないのでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/99
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100・三治重信
○政府委員(三治重信君) 私が承知している限りにおきましては、先ほど先生がお述べになりました、国鉄の要件について公労委が問題にしたとき、それから昨年電電公社の合理化に伴う臨時的な退職手当の問題というふうに、その当時の差し迫った状況に基づいて議論をされておりますが、それ以外のときに、具体的に、まあこういうふうにしたらいい、どうだというような問題が基本的に議論されたようには聞いておりませんし、事実、われわれのほうも、そういう問題についてそれほど頭を悩ました経験はないわけでございます。ただ、先ほど一部申し上げましたように、こういうふうな、何と申しますか、非常に長い年月の関係のことを規定しておりますのは、同じ勤務条件と申しますか、福利厚生にも関係するわけですが、共済組合、あるいはたとえば年金にしても、国の法律で、一般の民間においても厚生年金法というのがあるし、それから、まあ三公社五現業のほうでやっております共済組合法につきましても、民間のほうでは厚生年金とそれから健康保険法というようなもので、やはり国がそういうふうな一定の相当大きな——長年月かかる、それでしかも長年月もかかってそういう条件がきまる、しかも、それには非常に財政的あるいは資金的な措置が要るというような問題については、国が法律でやはりある程度していったほうがいい。しかも、それが社会保障制度にも通ずるというようなことで、基本的には労働条件ということに関係することでも、そういう、何と申しますか、非常に国の施策としてある程度統一していったほうがいいという問題については、法律で積極的に規定していく。ただ、この中身の改善につきましては、たとえそれが法律で、法律という形式を持っても、中身の改善には、労使双方お互いに話し合って改善の方向についての努力をやっていけば、そう形式にこだわらぬでもいいではないかというのが私の率直な気持ちでございますが、今後とも大いに研究努力してみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/100
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101・鈴木強
○鈴木強君 これは労政局長、非常に消極的です。もう一歩、私はそういう団体公渉事項であるということがはっきりしたならば、制度上の不備を是正するために前進すべきですよ、これは。そうすることが初めて公企体におけるよき労使慣行を築き上げるいしずえになると私は思いますからね。だから、もう総理もお見えになっておりますし、時間の関係もありますから、私はこの点についてはこれ以上は言いません。むしろ、公労法のよって来たった原因がさっき申し上げたようなところにありますから、私は率直に言って、アメリカのTVAの労使関係の労働協約等についても、いまの団体交渉事項は管理、運営であるかないか、こういった問題にわたってもう少し私はお伺いしたかった。しかし、時間の関係でこれは省略いたしますけれども、退職手当制度そのものがいまのような法律で実施されていることについては公企体職員は非常に不満を持っておりますから、これを早く、本来の団体交渉事項であると言っているこの八条に即応する姿に戻していただくように、これはひとつぜひ積極的にやってもらいたい、こういうようにお願いしておきます。
それから、労働大臣、総理がお見えになりましたから、私はちょっとお尋ねします。
先般ドライヤー調査団が日本に参られまして、日本の労働事情についてつぶさに御検討いただいたと思うのです。その結果、調査団から一つの提案がありまして、これを政府は受諾をなさったわけですね。今日までいろいろ御苦労いただきまして、予備折衝等を労使とも重ねてまいりました。で、聞くところによりますと、十八日ですか、定期会談が持たれるようになったことは、非常に私はけっこうなことだと思いまして、御苦労には深く感謝いたします。その内容について私はとやかく伺おうとはいたしませんが、ただ、ここで確かめておきたいのは、この提案の中に、条約を批准するというようなことはこれは大きな問題の中の一つである、根本的にこの日本の労使関係というものに対して、相互信頼を目ざすということがやはり基本であろう、したがって長く延びておる、五年間も六年間も延びておる、この批准がおくれておるということについては、直ちに措置をしてもらいたいが、これがかりにできたとしても、批准ということはその措置の中の最初のものでなければならない、こういうふうに述べておるわけです。したがって、今後私は定期会談の中で、ひとつ総理も御出席のようでありますから、ここに提案をされました内容をよくかみしめていただいて、そしてその本来の姿の方向に持っていっていただきたい、こう思うのであります。それに対して御所見を最初に承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/101
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102・石田博英
○国務大臣(石田博英君) ドライヤー氏の提案は、お話しのように条約の批准は出発点であるということが指摘されておるのでありまして、問題は、それを出発点として、わが国の労使関係が相互の理解と信頼の上に近代的工業国家としてふさわしい姿に成長していくことが大切であろうと思っているのであります。したがって、十八日には総評、それから二十一日には同盟側の人々と定期会談を行ないます。この定期会談に出席する相互のメンバーは新聞等で御承知のとおりでありますが、そういう趣旨で、まず会合の運営、議題等も十分配慮して、お互いの信頼を築き上げる方向に向かって努力をする。この労使関係というのは相対的なものでありますから、それぞれがお互いの責任を追及し合っておったのでは問題は処理されないのでありまして、良識と理解と反省の上に立って前進をしてまいりたい、こう考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/102
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103・鈴木強
○鈴木強君 それから、日本には総評と同盟と中立労連というのがございますね。まあ、中立労連に官公庁ないしは公共企業体ですね、こういった職員が入っているかどうかよく私も知りませんが、そういう組織と定期会談をするというようなことは、どうなんでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/103
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104・石田博英
○国務大臣(石田博英君) ドライヤー提案を受けた形の定期会談は、公共部門における労使関係ということにさしあたってはなっておるのでありまするから、公共部門の組織体であります総評と同盟、それから、総評にも同盟にも入っていないという公共部門の組合がございます。それは、その組合についてはその組合自体の希望を聞きまして、その希望するどちらのほうかに、折衝してどちら側かに出席していただくようにきめたいと、こう思っております。しかし、将来の問題といたしましては、日本の労使関係全体、こういうことについても民間部門においてももっと話し合いの機運ができ上がってくることが望ましいと思います。しかし、その場合の使用者、民間の場合の使用者というのは政府ではございませんので、そういう場合の組み合わせ等は別の問題として考えなければならないと、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/104
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105・鈴木強
○鈴木強君 それから、六月にILOの総会があると思いますが、この提案によると、労働大臣にも出席してもらいたいという要請がございますね。これは内閣改造がうわさされておりますから、まあ、石田さんに行ってもらいたいところなんだが、おそらくどうなるかわからぬから、それは別として、労働大臣という固有名詞を使いますが、労働大臣はやはり出席して、ドライヤー提案によってこうなりましたという報告をするスタンドバイはできておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/105
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106・石田博英
○国務大臣(石田博英君) むろんその方針であります。時間的その他の関係がありまして、一応政府代表として始関政務次官を考えて準備を進めておる次第でありますが、それはそれでありまして、いわゆるヴィジティング・ミニスターとして、この提案を受諾した一つの義務としてそういうことを行なうべきだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/106
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107・鈴木強
○鈴木強君 私は時間がありませんから、もう一つだけお尋ねをして横川委員にバトンタッチをいたしたいと思います。ほんとうはもう三十分ぐらい先に総理大臣も労働大臣も来ていただけばよかったんですけれども、私は今度持たれる公務員制度審議会の中で、労働基本権の問題が議題になるようでございます。お伺いしますと、具体的にどういう提案をするかということは、増原国務大臣のお話ですと、まだきまっておらないということでございます。したがって、この基本問題の解決は非常に大事なことでございます。特に三公社五現業の公労法上からの、あるいは人事院勧告上の問題からしても、非常にこれは問題の多いところですから、私は新しくできるこの公務員制度審議会の中で、それこそ従来十数年間われわれが叫び続けてきたところの意見、いま佐藤さんが総理大臣になっておられますが、かつて大蔵大臣当時も公共企業体の自主権の確立、予算制度等に対する改革等については私はずいぶん意見を申し上げたのでありますから、私はよく覚えていただいておると思うのです。そういうわけで、われわれが今日まで当事者能力、労働基本権の問題が未解決になっておるということは、非常に遺憾であるという気持ちを持っておりました。ですから、どういう答申をするかは別として、この公務員制度審議会の中でこれらの問題についてはすみやかに結論を出してもらいたいと、こう思うのですね。これはひとつ総理大臣からも、私は非常に大事な問題でありますから、太田・池田会談等によってもクローズアップされ、いまここにことしの公労協の労働運動を見ましても、これが原因で大へんなトラブルが起きております。公務員諸君が、院勧告を完全に実施してくれない、それでストライキや団交権を奪っておるじゃないか、こう言っております。このことは労働運動における相互不信の大きな原因になっておることは事実でありますから、これらの問題を含めて、私は佐藤内閣、手がけたことでありますから、きちっと解決をつけるようにこの審議会の中でやってもらいたいと、こういう私は強い希望を持っておりますから、このことに対して私はお二人から御所見を承って終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/107
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108・石田博英
○国務大臣(石田博英君) 公務員審議会は、ただいまお話しのありましたような問題を含めて、まず第一には、今度の八十七号条約の批准について三党の共同修正によってぺンディングになっておる国内法の問題、それから当事者能力の問題、さらに公共部門における労使関係の基本の各種の問題、これらが当然議題になって御検討されることと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/108
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109・鈴木強
○鈴木強君 いや、なっていると思うのですけれども、それに対して積極的に政府がイニシアチブをとって解決してくれるかということを聞いておるのです。それはおまかせきりですか、どうぞよろしくお願いしますと言って、おまかせきりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/109
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110・石田博英
○国務大臣(石田博英君) しかし、政府としては委員を委嘱し、その委員の方々に御検討を願う、その御検討を願う議題はこれこれ、これこれについてひとつ御回答願いたいということ、こういうことでございまして、方向等はすでにたとえば臨時行政調査会等の意見もございますし、そういうようなものについて十分御参酌の上、世論の動向を見きわめて適当なる答申をしていただくものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/110
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111・鈴木強
○鈴木強君 総理に御答弁いただく前に、問題は、さっきも私は増原国務大臣にも御質問したのは、一体諮問のしかたはどうするのだと聞いたのですね。たとえば具体的に団交権はこうあるべきである、スト権はこうあるべきであるということを政府がおきめになって、これをどうでございましょうかという諾問のしかたもあるわけでしょう。それから基本権について——基本権ということで団交権、ストライキ権を含めて基本権についてどうしたらようございますかといって、総理大臣があそこであいさつをし、説明をし、それで大ざっぱにやっていく方法と、二つぼくはあると思うのですね。そのいずれにしても、もし前者であるとすれば、積極的にこれから内閣は検討しなければなりませんよ。そうでなくて後者としても、その関係資料なり、あるいはその委員諸君の頭の中にすみやかに入れておかなければならぬものがあるものですから、そういったPRなり、そういうものをどんどんやって、熱意を持ってその問題を解決するのだという、そういうやはり積極的な姿勢を持っていなければいかぬと私は思うのですよ。ただ審議会におはかりして、審議会諸君に資料をあれ持ってこい、これ持ってこいというような状態ではなくて——もちろん自主性は尊重しなければなりません。事務局はどうするかよくわかりませんけれども、政府はできるだけ審議会が進行しやすいように、早く結論を出しやすいようにいろんな配慮をしてやるということはこれは当然ですからね。ですから、まず諮問のしかたですよ、諮問のしかたがわからぬから、私はその答弁じゃ納得できないわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/111
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112・石田博英
○国務大臣(石田博英君) 諮問のしかたは、政府が一定の案を持ってその可否を問うという方法をとりません。問題点をあげて、それに対する御意見を伺うのでありますが、その問題点についての資料は、現在までの論議の経過、実情、そういうものについてはむろん十分の準備をしなければならぬと思います。いずれの問題一つをとりましても、長い間議論をされたことでありまして、しかも、それを比較的短い間で結論を得なければならぬことでありますから、それに対する所要の準備をすることはむろんであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/112
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113・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。ただいま石田労働大臣の答弁でいいかと思いますが、私自身は——終戦後始まった組合のあり方、同時にまた公務員制度、これも戦後新しくスタートしたのであります。ことにいま公共企業体といわれておる三公社五現業、こういうようなものは全然新しいものであります。在来からありましても、その性格も戦後においては変わっている。そういう意味におきまして、この公務員制度審議会が取り上げる問題は非常に基本的なものであり、また時代に即したものでなければならない。そういう意味で、重要性も在来の考え方よりもひときわ大事なのでございます。在来からしばしば申し上げますように、審議会の答申は私ども尊重する、かように申しておりますが、今回のこの問題についてこそ、ただいま労働大臣から申しておるように、政府自身が一応の腹案を持ってそれを審議会にはかる、このような形でなしに、ただいま申し上げるような新しい制度であり、また今後いかにあるべきか、こういう点につきまして慎重に各界の御意見を聞く。そうして、しかる上で、政府の責任をもって政府の責任において最後の案をきめる、こういうことでありたい、かように思います。どこまでも答申を尊重していく、その気持ちには変わりありません。やはり国会や国民に対して責任を負うものは政府である、このたてまえだけはくずしたくはございません。そういう意味でただいま申し上げた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/113
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114・安井謙
○委員長(安井謙君) 横川正市君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/114
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115・横川正市
○横川正市君 今日、ILO条約の批准案件を審議する最終段階を迎えておるわけでありますけれども、その最終段階を迎える審議の段階に至っても、なおかつ、多くの問題点が残されているわけであります。ことに審議会へ大幅な問題が移されておりますけれども、大体いままで論議をいたしました問題のうち要点となるものについて総括的に質問をして、総理と関係大臣からの答弁をいただいておきたいと思います。
まずILO条約を批准しようとする日本国の場合には、すでに憲法第二十七条、二十八条で、まあ、言ってみますと、この条約の精神を上回るような規定というものが憲法条項の中にすでに明確にあるわけであります。私は、政治というものは力関係だというふうには実は考えたくありませんが、政治が力であるというような考え方をどうしても持たれるような諸情勢というものが出てまいりますから、そこで労使間におけるところの相互不信というようなものも、当面いろいろな問題をはらんで抜き差しならぬ不信感というものが私は出てきているのだと思うのであります。しかし、与野党、衆参を通じまして、この問題を審議する間に、一応良識としてお互いの立場というものを表明して一致点というものを見出してまいったわけでありますが、その中でも私が非常に残念に思うのは、この案件が今日まで来る間にすでに与野党間において、ことに倉石代議士の政府における代表者の資格といいますか、池田総理大臣からの委嘱といいますか、政府を代表し、あるいは衆議院の与党を代表するという形で委員会に出席をし、与野党間で折衝をされた問題というのができておりましたのに、そのことが、事実上与野党間における折衝の経過が、結論が出たというにもかかわらず、衆参におけるところの審議の爼上にのぼってこなかったということは、私は非常に残念なできごとだったと思うのであります。そこで、一名倉石修正案といわれるこの案はさておくといたしまして、少なくとも与野党間でこういうように議会内で問題を解決させる精神というものは、私は依然としてあるのだろうと思うのでありますけれども、この点について総理から、一体その精神はいまも生きているのかどうか、これは、この問題と関連して私は議会審議の姿勢の問題にも関連すると思いますから、総理から答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/115
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116・石田博英
○国務大臣(石田博英君) 私が先に申し上げまして、あとから総理が申し上げます。
議会運営の基本の問題は、これは総理からお答えを申し上げるのが適当であろうと思うのでありますが、いわゆる倉石個々の修正案というものは、御承知のような経過をたどりました。それに対する政府の考え方というものは、しばしばこの委員会でも、予算委員会等でも申してまいりました。しかしながら、今回の政府が提案いたしました国内法の改正案も、ドライヤーの提案の中にも言われておりますように、提訴者の意見、あるいはドライヤー委員会の審問の経過をできるだけ取り入れましたし、また、前国会におきます特別委員会の審議の経過等を十分参酌いたしたのであります。しかも、それが三党共同修正案ということで処理をされたのでありますから、そういうような精神は生きておる、こう私は考えておるのであります。ただ、われわれは政党内閣でありまして、議会に対し、国民に対して政府が責任を、政党を背景として、自由民主党を背景として持っておるわけでありますから、この法律案を提出する場合におきましては、まずその立場から提出する、そうして審議その他を通じて十分野党の意見も伺って、そうして良識ある結論を求めていくということでなければならぬと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/116
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117・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま倉石修正案についてのお答えがございましたが、私は、いわゆる倉石修正案というものを国会において各党間で話し合いをしていく。今回の場合は、これがいわゆる三党共同修正ということで話ができ上がった。こういうことを考えてみますると、いわゆる審議を通じ、国会の内外を通じて、各政党間においての議会運営のあり方としては、それぞれが話し合いを続けていく、こういうことにあったと思います。いわゆる倉石修正案なるものが今日生きておるか、生きてないかという議論よりも、今回出た三党修正案のこれが、たいへん私は国会審議上意義のあることと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/117
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118・横川正市
○横川正市君 私は、審議の経過の中で、ことに政治が流動しているわけでありますから、その流動しているという状態を否定するわけではありませんけれども、実際には信、不信という問題が爼上にのぼる場合には、私は当然両党間の信義について、守られていないという点に問題があるのだろうと思うのであります。当然与党の持っております政府との関係や、野党の持っております任務とか、当然の責務というものは、これはお互いそれぞれの立場の違った面で重要なものがあろうと思うのでありますけれども、少なくとも、ある意味で一致点の出たものについては、お互いそれを履行するという、そういう慣行といいますか、そういうものはぜひひとつ樹立していくように、与野党努力すべき問題だと思いますし、これは内閣の当然責任の問題だと思うのであります。そこで、そういう問題があるにもかかわらず、実は信、不信の問題にまいりますと、実は衆議院での三党の修正案による凍結された部分等について、当然これは審議会での審議を経るわけでありますけれども、その、審議会の審議を経るにいたしましても、政府の考え方は一体どういう考え方を持っておるかについて、ここ五日間にわたって、審議をいたしてまいったのでありますけれども、その審議の経過からいきますと、実は非常に大きな考え方の違いというのが随所に集まれてまいっておるわけであります。その考え方の違いは、私は、これは日本の行政を担当する人たちの行政上のいろいろな経過的ないきさつといいますか、そういったものが、いま新たに批准をしようとする新しい事態に対して、新しい事態を認識するよりか、旧態然たる態勢の中で、これを少しでも有利に消化をしようとするそういうずるさといいますか、あるいは保守性といいますか、そういったものがあって、意見が一致しなかった点が非常にたくさんあると思うのであります。そういう、まあいわば私自身の不信感というものを持っておりますので、これに対して、項目はあまり多くありませんから、それぞれひとつ答弁をいただきたいと思うのでありますが、たとえばドライヤー提示案というのがあるわけであります。提示案というのは、条約とか勧告とか、そういった意味のものと比べてみて、政府はどういうとらまえ方をしているのか。提示案というそのもの自体についての政府の見解というものをお聞きをいたしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/118
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119・石田博英
○国務大臣(石田博英君) 条約とか決議案というものは、そのさし示すことがきわめて明確になっておりまするし、それを比准するということは、いろいろ具体的な法律上の、国内法の処理上の義務を当然伴ってまいります。それは条約や決議案の示す精神を尊重するということと同様に、そういうことが伴うのでありますが、ドライヤー提示案の場合は、これは八十七号条約批准という問題と、それから日本の労使関係の前進ということについてのドライヤー委員会のお考え、示唆、こうとっておるのでありますが、政府はそれを受諾いたしましたので、その精神に基づいてその具体化をはかってまいるのでありまして、その具体化の過程までこまかくは書かれてはおりませんけれども、その精神は、われわれがILOに加盟し、その精神を尊重するということと同じ立場において、ドライヤー提案の精神をくみ取って、そうして具体化に努力いたすつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/119
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120・横川正市
○横川正市君 そうすると、その受けとめた政府側の態度というものは、言ってみますと、条約とか勧告等の効果と全く同一のものだと、こういうふうに理解していいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/120
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121・石田博英
○国務大臣(石田博英君) 条約や勧告や、批准を受諾したときに伴うような明確な義務関係というような受けとめ方ではないのでありまして、その精神を受諾をいたしまして、受け取りまして、その精神を尊重して、そうしてそれを具体化するのは政府の責任においてやってまいる、こういうふうに考えておる次第であります。提案自体もそうこまかい方法まで指示しておるわけじゃございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/121
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122・横川正市
○横川正市君 その点、労働大臣、私が一番最初前提にしたと同じように、私もいまこの問題が批准され、それから審議会に移って、なおかつ事案というものは一年ないしそれ以降に持ち越された状態にあるわけであります。いまこの審議の今日において。しかし私は、不名誉であるか不名誉でないかは別問題といたしまして、そういう論議は、この際差し控えますが、組合側あるいは職員団体側から、字句その他の解釈に至るまで全部これを結社の自由委員会に持ち込んでいかなければ日本の国内で処理ができない、こういうことであってはならぬと思うのです。いまあなたの言うような態度でいけば、もちろんこれから中央における総理と組合側とのいろいろな会見が大きく行なわれますから、その定期会見の中で、ある程度のものは緩和をされるものと私どもは期待をいたします。しかし、なおかつそういう期待を持ちながらも、非常に危惧するのは、いろいろな面で、再度、一体これはどういうことなのでしょうかというお伺いを立てる結果にならないか、その点を非常に私どもとしては遺憾な点だと思っているわけです。ですから、これから起こってくる幾つかの問題については、これはもう政府は責任を持って解決するのだ、こういうことでなければならぬし、それから字句の解釈について、実は先ほど言いましたように、行政担当者は、いわゆる現状における行政担当者の態度を変えないで、保守性を持ちながら問題を読み取ろうとするために起こってきている幾つかの紛争、あるいは不信感というものがあるわけでありますから、そういった面までも解決していく努力というものが必要じゃないかと思うのであります。この点について、ひとっこれは担当の労働大臣から、これからどうされようとするのか、具体的に事案が起こってまいるわけでありますが、その心がまえ等を聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/122
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123・石田博英
○国務大臣(石田博英君) ドライヤー提案のさし示す方向というものについては、われわれは別に解釈上の問題というのは起こらないと思っております。それは、そんな解釈上の問題が起こるようなこまかいことまで言っておるわけではないのであります。大きな方向をさし示しているのであります。ただ、ILOの条約についての解釈、特にわが国が批准をいたしましたものについての解釈等についても、これはやはり字句上の解釈その他、できればこの定期会談等において意見の一致を見るように、ジュネーブまで一々お伺いを立てて、その御判断を得なければ何もできないというようなことではないようにいきたい、政府は、むろんそういう態度をとってまいりたいと思うのであります。
それから、先ほどおそらく国内法の改正等をさしておいでではないかと思うのですが、その中に、行政担当者の中に批准という新しい時点に立たず、従来の行政担当者としてのやり方をより都合よくしようという意図が底に流れているのだと、こういうお話でございますが、批准に伴う新しい労使関係の上に立って行なうべきことは、政府としては積極的に改正案の中に盛っておるつもりであります。ただ、行政担当者あるいは労働組合というだけでなくして、自分の立場から見れば、従来の慣行というものが、そのとっておる立場によりまして、それは古いものだ、古い慣行だというものでも、また別の立場にある人は、外国の例にはないかもしらぬけれども日本にとっては必要だ、こういうような議論も出てまいることは非常に多いのであります。それはどうもやむを得ないことでありまして、議論を尽くし、そして今度は公正な第三者を中心といたしまする公務員制度審議会等において、そういう議論の分かれるところは、ひとつ御答申をいただくようにしたいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/123
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124・横川正市
○横川正市君 これは審問関係の資料の中に、これは法務省の刑事局の参事官の証人としての喚問された中にあるわけですけれども、こういうふうに言っているわけですね。いろいろなことは起こるけれども、いままでの日本政府のとっておった労働組合ないしは職員団体に対する行政上の制裁とか、あるいは行政上のいろいろな行為は、たとえば八十七号条約が締結された暁にあっても一向に食わらない。なぜ変わらないかというと、われわれは八十七号条約を批准したと同じ態度でその行政を執行してきたからだという意見があるわけなんです。これはとらえてみますと、一体八十七号条約のとらまえ方をどうされたかについても不明確でありますが、観念としては、私はこういう観念があるのだと思いますね、実際上。それを実に非常に私どもは新しい事態に対する心がまえとして、いかにも現状にとどまっているという保守性を持った態度ではないかというふうに思うのです。しかし、これは具体的にそれがどうかこうかということを、ここで明確にするわけではありませんけれども、少なくともいろいろな論議の中で、解釈とかなんとかというのは、日本の行政担当者というのは非常にこまかに、もうどこから突っつかれても心配ない、いわゆる自分の見解というものは、これは絶対に間違いないのだというような、石橋をたたかなければ渡って行かないという、そういう態度から起こってくる幾つかの問題というものが、実は大きな不信感を持たせたり、それを呼び起こす原因になったりしているわけですね。だから私は、解釈についてはいろいろあるのはこれは当然でありますけれども、これを実行する場合には、やはりこのILOの条約の精神というものを、もっと前向きでとらえて解決をするという指導があってしかるべきではないか、こういうふうに思っておるわけです。そういう点から、たとえばドライヤー勧告の中に、労使間に根強い不信感がある、こういうふうに言われている。一体ドライヤー勧告が言った根強い不信感というのは何だと、たとえば、というふうに抽象的には何回か答弁されておりますけれども、おそらくこれは労働大臣並べてみて、こういう事態、こういう事態、こういう事態がお互いの不信感を呼び起こしていることだから、これに対してはこう対処するというような、そういうものは私はないのじゃないかと思うのです。不信感というものは、私は率直に言ってみますと、労働組合あるいは職員団体が黙って仕事をしていれば、あなたのほうがそれに対して満足のいくような労働賃金とかあるいは福利厚生施設だとか、そういった条件の改正をしてくれる、そういうような状態ならば、これはあなたのほうでは労働組合に対して不信感持たないと思う。ところが労働組合は、そういうふうにしてくれないから要求をする。これはもう要求を受けたほうは、それを受けたその立場に立って主観的にいろんな面でそれをとらえるわけですよ。それで、そのとらえ方をする相手側が、もう極端に保守的であれば、全くお願いしますと言ったことでも、これはもう不信行為になるし、それからある程度の実力行使をやっても、まあそれはやむを得ないことでといってそれを容認するといういわゆる受け取り方があるわけですね。その受け取り方を、私は政府に、この不信感を除去する一つの問題としてあげ、そしてそれは、たとえばILO精神にのっとってものを解決する場合には、いまの政府やいまの労使間にあるところのいろいろな問題については、これはこうしたら不信感が除けますよという具体案というものはあってしかるべきだと思うのです。それがないでしょう、実際には。だからここの問題を、ドライヤー勧告の不信感の問題一つとらえてみても、実はこれは解決しようとしますと、いろいろな点でぶつかり合うか、これが不信感だ、これは不信感じゃない、いやこれは正当だ、これは正当でないと、そういう問題に私は発展していくんだと思うのですよ。これをどうとらえて政府としてはこれを解決しようとするか、その点どう労働大臣はお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/124
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125・石田博英
○国務大臣(石田博英君) 前段のドライヤー委員会の審問の記録のごときものを提示されましたが、その審問は秘密会議でありまして、その記録のごときものは全然世の中に出す性質のものではございませんから、それに基づいての答弁は差し控えたいと存じます。
そこで、不信感の除去の問題でありますが、不信感のよって来たるところは何かと言えば、これはやっぱり一つには歴史的経過であります。もう一つには、やっぱりお互いが大きな壁なりみぞなりを隔てて、接触し合わなかったというところにあるだろうと思います。さらに言うならば、世界観の違いとかなんとかいろんなことが言えると思いますが、その世界観の違い自体でも、私はやっぱりお互いの考え方をそれぞれが遠くから察して批評し合ったりしているところに問題がある。これを処理してまいりますためには、やっぱり一つには、しばしば会って話をしていくことだと思います。これは民間の労使関係という場合は、いろんな争いがありましても、やはり信頼関係がその底にありますのは、やっぱり民間の労使は、結局はしょっちゅう会っているということにもあるだろうと思います。それからもう一つは、やっぱり実績の積み重ねでなければならぬと存ずるのであります。まあたとえて申しますと、労働運動に対する、あるいは勤労者に対する権利付与の問題でも、そういう権利や自由を与えればすぐ多くの人に迷惑をかけるようなそういう行為をすぐするのではなかろうか、これはやっぱり不信感から出た結論であります。同時に、何か労使の従来の間違いを訂正する法律を出せば、それはすぐ組合を弾圧するのではなかろうかと、まあそういうふうにお互いに裏を、悪いほうに取り合うところに、やっぱりその問題の解決を困難にしているものがあるのでありまして、やっぱりお互い人間同士でありますから、善意を土台といたしまして、そうして接触によって理解を深めていく、これが具体的に問題を処理するゆえんだろうと私は考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/125
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126・横川正市
○横川正市君 議会答弁はこういうものですという漫画入りの新聞記事を見ますと、うそを非常に上手に言うのが議会答弁だと、これは、まあ議会における最たる不信感だと私は思うのですよ。そうではなしに、もっとこういうきわめて重要問題については、現実をとらえてきわめて徐々ではあっても解決のためには努力をしていくという方向さえ確認できれば、私どもは少しぐらいの時間をかけてそれを持つということはやれるわけですね。ところが不信感の最大のものは、対決しているわけですよ。まず相手を信用しておらない。言っていることには必ず裏がある。しかもそれを実体に証明されるそういう事態が起こってくる。そういうことがあるから、私はこれはいかぬのだと思うのです。もっと端的に言えば、たとえば石田労働大臣のいま言った速記録に残ったような精神は、内閣改造であなたがやめたらこれは消えてなくなってしまうものでは困るのですよ。これはやはり労働行政の中に一環として残っていかなきゃいけない問題だと思うのです。実際には。ところがいままでの日本の議会におけるいろいろなことは、たとえば日教組の関係の大臣との折衝なんていうのは、あれは荒木さんの出てくる前まではみんな自由にやっておったことなんですね。だからそれがちゃんと慣例になっておったかというと、いつの間にか政策が変わったのか、今度は荒木さんになったら絶対に会わないということで、会わないから多くの問題が起こってくる。私は議会答弁におけるいわゆる政府側のもっと信頼のおける、信用されるそういう姿勢というものを強くこれは期待したいと思うのです。
そこで、一体いまドライヤー勧告の中で政府案が出されております。しかしその政府案に対しては、きわめて多くの不満が表明されている。また、解釈についても非常に大きな問題があるが、一応これは審議会に移すとして、そういうような不満とか疑義とか、そういったいろいろなものがあるというそういう問題を受けとめての現時点における政府の一体態度というものは、どういう考え方でおられるのか、これはもちろんドライヤー勧告の中に必要適切な立法措置をとってこの不信感を除けとあるわけですが、これと関連してひとつ所見をお伺いしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/126
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127・石田博英
○国務大臣(石田博英君) 政府のただいま提出いたしました国内法の改正案は、ILOの精神あるいはドライヤー勧告の精神を受けついでおるもので、それに背馳するものであるとは考えていないのであります。
それから労使関係の不信を取り除くためには定期会合その他においてよい結論が出まして、その結論を実行に移すために立法措置等が必要であれば、むろんそれをすみやかに行なうというかまえでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/127
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128・横川正市
○横川正市君 これはちょっと総理に見解を聞いておきたいのですが、抽象的に申し上げますが、具体的な例がありますからわかっていただけると思うのですが、たとえば全逓が一年八カ月団体交渉ができませんでした。ところが藤林あっせん案という三行ぐらいのやつが出たら、いま団体交渉ができるわけなんです。ところがその三行というものは、これは一年八カ月もかからなければできないものなのかどうかという点について、実は私どもは非常な人間の英知の至らない点について残念にも思うし、それからその点に遺憾だと思っているわけなんですが、団体交渉を一年八カ月もできなかったという事態の中で何が起こったかといいますと、まず馘首問題が起こりました。それから全職員のうちの三分の二が行政処分を受けるという問題か起こった。いま三行の問題が出たために、それでは政府側の言い分が通って団体交渉をしなくてもいいという結論になったかというと、そうではない。結論は組合側が要求しておったように団体交渉しなさいという結論が出たのです。こういう事態というものを考えてみますと、私は、非常に残念ながらお役所の次官から局長そういった人たちの行政担当者としての、何といいますか、あり方といいますかね、そういった点についても非常に大きな疑義を持ちますし、それから企業に対する能力その他の面から突いても疑義を持ちます。しかし、そういったことは一応おくとして、一体この組合側が言ったことが時間的に経過的に正しく評価され認められて、いわゆる団体交渉を拒否しておった役人のものの考え方が、妥協の産物であっても間違いであるというふうに一応社会情勢の中で決定づけられている。しかもこのILO条約を批准することによってさらに労働組合側の言う意見が十分世の中を濶歩して通れる。ところが行政官やそういう人たちの言っていたことが数歩後退せざるを得ない、認められない、こういう事態が起こっているということに対して、総理はどういう考え方を持ちますか。まあ現状そういう事態は時間的に経過的に解決されるので、結果がよければいいというような答弁でなしに、もっと傷を負うている人の立場にも立って考えていただきたい。ことに役人が首を切られるということは、これは次官が首を切られて参議院に出るのと違うのです。これは次官が首切られて他に転出するというのと違って、再びその職場に戻ってこない。いわば刑事法で言えば、死刑の宣告を受けた状態と同じくらいきびしいものを持った行政処分というものを受けているわけですが、そういう傷を負わせておいて、しかも結果は組合側の主張が通っているという、そういう事態に対してのいまの行政のあり方について、ひとつ明確に答弁をいただいておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/128
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129・石田博英
○国務大臣(石田博英君) 総理は藤林あっせん案のことを御存じないそうだから、その藤林あっせん案の部面について私がちょっとお答えをいたします。まあ藤林あっせん案によって団体交渉の問題が処理されたと、これは問題点は二つあると思います。一つは現行の公労法の規定、これを守りますると、つまりその職にない組合の代表者と会うのは、代表者として認められないという行政当局の立場は、現在の公労法の上からいえば正しいわけであります。しかし労働者の条件等を向上させるために、それを団体交渉によって解決するという要求も、これはごもっともであります。で、藤林さんという人をわずらわさなくても、お互いに話し合えば、あの程度の妥協案みたいなものはお互いが少しゆっくりした気持ちで話し合えばつくものだと思います。私も正直に申しまして。ところが、それが相対立している。人間が感情の動物でにっちもさっちもいかないところの悲しさでありまして、そこで労使問題を第三者機関で処理してもらうということが適当だということになってまいった。そこで藤林さんのあっぜん案は、御承知のごとく法律のたてまえもくずさない、つまり現在職にある人を役員の一人にして、そしてその役員と交渉の結果協約をするというのでありますから、まあ両方の顔をと申しますか、立場を立てたというのであって、私は全面的に組合側の要求が通るとか通らぬとかという性質のものでなく、まあ適当な大岡さばきだと思います。大岡さばきだと思いますけれども、あの程度の大岡さばきなら、人をわずらわさぬでもできるだろう、これは全く私も同感であります。そこで考えなければならぬことは、公労法というものが現在あります以上は、やっぱりその法律を守らなければならない。そこで、それに欠点があるなら議会を通して修正をしていくということでありまして、間違っているものなら、もう悪い法律なら、そんなめん、どうくさい手続を必要としないのだということではやっぱり困るのじゃないだろうかと、私は法治国家のたてまえから思うのであります。それから、八十七号を批准したことによってその問題は解消されました。しかし、そういう公労法の規定が今日までずっとある。できたというのはできたときのやっぱり理由があった。それを今日批准によって解消するに至ったのは、その長い年月の間の労使関係の成長がそういうことを可能ならしめたのだ、その法律がでたき時限において労働政策が間違っておったとは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/129
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130・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 私は藤林あっせん案なるものを知らなかったので、いま労働大臣から説明さしたのですが、事情は非常によくわかっておりますが、こういう事柄がいわゆる問題なんだと思います。私、戦後始まった組合、また公務員制度あるいは三公社五現業ということばを使いましたが、やはり相当経験を積んでこないと、なかなかいい解決案に出てこないんじゃないか。これあたりは問題のないことなんで、藤林あっせん案では、とにかく職員である人を、これを組合の役員として、その方と方渉をしたという、それでもうりっぱな話なんだが、どうもみんながそこに知恵が及ばなかったというのは、どこかにまずい点があったと思います。今度はILOを批准すれば、こういうことはもう必要なくなりますけれども、さような意味合いにおきまして、やはり経験がすべてのものを克服していく。やはりりっぱな労使関係を打ち立てるんだ、かような考え方に立てば、必ずいい解決案が見つかる。良識的なものは非常にある。私自身が鉄道でいろいろ交渉してきた。これあたりはほんとうにもう隔世の感がするのでありますよ、今日は。ここに、皆さん方の中にも私が交渉をした方が直接いらっしゃいますけれども、当時から見ると、よほど変わってきた。だから、こういう事柄はあまり心配しないで、先ほど来、いわれる不信感、これはもう不信感ということばが示しておりますように、これはどこまでも心理的な問題だと思います。不信の事実というのなら、これは議論の対象にもなりますけれども、不信感といいますと、これは心理の状況だと思います。そうすれば、やはりお互いが不信感をなくするという、もっと誠実な気持ちで人と取り組む。先ほどは労働大臣はお互いの善意がこういうことを解決するんだと言われましたが、新しい労使関係を打ち立てて、その誠意を持てば必ずこの不信感というものは払拭されるだろうと、かように私は思います。そういう意味で、短い経験ではありますが、私どもとうとい経験を積んできたのでありますから、今後さらにこれを前進さしていく、一そうの協力をしたいものだと、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/130
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131・横川正市
○横川正市君 いまの労働大臣それから総理の答弁もありますから、私は実は勧告の中でですね、九十八号条約の問題について、ちょっとその各勧告や、条約適用委員会の内容というのを読んでみたわけですが、それによると、政府の見解としては、九十八号条約は四条三項、五条三項に直接関係のある条文ではないというふうな見解を終始とっておるようです。しかし、結社の自由委員会の三十六年の五月の五十四次報告を見ますと、これは明確に四条三項、五条三項に抵触する条文として取り上げられておる。それから同時に、政府の疎明内容がありまして、それは条約勧告委員会でもう一回これは論議をされた。その条約勧告委員会の場でも、やはりこの問題については抵触をするという立場をとりながら、なおかつ、ここでの解決のできない問題は八十七号条約にというふうにですね、再度の勧告文というのを出している。経過的には一応そういうような経過を私はとっているだろうと思うのですが、本来的には政府の姿勢がちゃんとしていれば、九十八号条約のときに、すでにいまの四条三項、五条三項の問題は解決されていなければならなかったと思うのです。それをやることによって、いろいろな問題が出てくるというふうに考えられたのでしょう。いろいろな理屈をつけて八十七号条約へ持っていったというようないきさつがあるわけです。だから今日の段階では、まあ総理もいい経験をされたと言われておるわけですから、この十分な経験をいかされて、再びこういう問題で紛争が起こらないような、そういう処置というものを、私は当然とっていただけるものと、この点強く期待をいたしておきたいと思うのであります。
そこで、問題の第三点目は、端的にいいますと、これは条約の中の五十四次及び六十四次報告の中にこういう文章があります。「すべての公営企業がそのストライキ権の制限の点において、その業務の中断が公共の困難を惹起するが故に真に必要不可欠な企業と、この基準によれば必要不可欠でない企業とを、関係法令上区別することなく同一の基盤において取り扱われていることは、適当であるとは思われない」、これが五十四次と六十四次報告に基づくものなんであります。私は当然知っていらっしゃるから特別につけ加えませんが、条約解釈については、ILO条約解釈が国内の解釈に優先するというそのたてまえをとれば、私はこの点についても、政府というもののいまの態度というのは間違っているんじゃないか、そう思うのでありまして、これは労働大臣が答弁をしたあとで、ひとつ総理からお答えをいただきたいのでありますけれども、いま三百万くらいな争議権剥奪された職員がおるわけです。これはピンからキリまで全部剥奪されております。しかし、勧告によれば、これは適当でないということになっておるわけですよ。その適当でないのはどこで区分すべきかはいろいろ問題があろうと思います。まあ度合いによってですね。この勧告を受けて、一体政府としては、これにどう対処されるか、まあひとつ関連のある問題ですからお聞きをいたしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/131
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132・石田博英
○国務大臣(石田博英君) まあ御議論及び勧告は、鉄道とか、あるいは電話電信、あるいは郵便とかというようなものは、これは公共の生活に、非常に多くの人々に影響を与えるが、まあこれはアルコール専売とか、造幣局とか、それからたばことかいうものは、たとえば、専売公社のたばこをつくることとビール会社のビールつくることと大した区別はないじゃないかと、それがただ組織体が違うからといって、企業の形態が違うからといって、一緒に禁止されるのは不当ではないかと、こういう御議論であろうと思います。私はその御議論の筋には、賛成、反対は別といたしまして、十分理解できるのであります。そこで、そういうことについて、やはりその範囲その他については、これもまた公務員制度審議会等の御検討の議題にしていただき、政府としても検討を加えなければならぬ問題だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/132
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133・横川正市
○横川正市君 総理は労働大臣の答弁と同じですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/133
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134・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま労働大臣がお答えしたように、その主張については理解を持つというお話でございますが、しかし、どうもいわゆる片一方で一つの権利があり、片一方で同時に一つの義務があると、こういう場合がしばしばあるのでございますので、いわゆる待遇そのものをそういうストライキ権を持つものと、それから公共性からそういうものは与えないのだと、こういう場合に、いかに待遇上に区別するか、なかなかむずかしいことだと、かように私は思います。ただいままでは三公社五現業、いわゆるそういう名目のもとに同一の待遇がされておると、かように私は思っておりますので、そこらにやり方を、ただ理論だけで処理しても、実際の解決にならないんじゃないだろうか、こういう点が労働大臣は今後、どういうようにするのか、政府としてもそういう場合にはよほど慎重に討議して、そして最終的結論を出さないと、意外の結果を生ずるのではないかと、私はその点を心配します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/134
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135・横川正市
○横川正市君 いま非常に何回かも問題にされておりますから、すらすらと労働大臣から問題点が明らかにされましたけれども、たとえば、貯蓄関係をあるいは、金融関係を担当する銀行と郵便局の貯金関係をやる公務員、それから民間の保険関係をやる保険会社の職員と郵政の保険関係を担当する職員、それから郵便関係に従事する場合でありましても、これは幾つかの職種に分かれているわけです。あるいは庶務、会計担当者……。そういうふうに判断をしてみますと、私は問題はいわゆる公共性というものをたてにして、そうして一番だれが何をしているかというと、これは総理大臣も役人をやられたんですからおわかりでしょうが、やはりやんや言われれば、みこしをあげるけれども、言われなければみこしをあげない。それからできるだけやんや言われないように、がんじがらめにしておいたほうがゆっくりとタヌキの昼寝ができる。いってみますと、この公共企業体のストライキ権禁止は、何を言っているかといったら、高級役人の非常に惰眠をむさぼる結果になっているんですよ。企業に対して熱心ではなくて、それはもう腹の立つほど、前車の踏襲を、ずっと歴代、踏襲をして一向に改善されない。これは何かといったら、これは労働組合が無理じい言ってストライキをやるのはけしからぬということだけでなしに、労働組合だってはかじゃないですから、ストライキをやれば、組織が分裂したりなんかするということもありますので、この点は十分組織の内容についてはものを考えていると思う。ただ、総理大臣は、先ほどこの中にも団交の相手になった方がいると言われるので、私は、全逓の書記長のときにあなたは郵政大臣だったから、何回か話をいたしました。しかし、総理、当時の労働組合は、これはどうでした。私はもっと常識があったとか話がしやすかったとか言われるような環境にあったと思うんですよ。ところが、いまあなたは非常によくなったと言う。当時はうんとよかった。だんだん悪くしたのはだれがしたかというと、これはやっぱりなまくらをしておった人たちの罪だと私は思うんですよ、実際には。その点をもっと理解して、信、不信はもっと労働組合というものを信用して、与えるものは与え、それから当然そのことによって要求をされれば、夜寝ないでものを考えろとは言いませんけれども、まあ勤務さえしてしまえば、あとは自分の時間だから何でもしてもいいというような、そういう怠惰な勤務条件ではなくて、もっと真剣に企業に取り組むようなかっこうというものを私はとらせるべきだと思うんです。しかも、そのスト権というものは、ある程度与えられれば、そういう効果がてきめんに出てきます。これは。そういう点を、私は一つの行政上の民主化といいますか、そういった点で、当然私は考えていい問題だと思うんですね。この点、ひとつ総理の考えを聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/135
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136・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいまの、労使双方の問題だ、争議はただ労使双方の関係だ、これだけでものごとを処していけば御説のとおりだと思います。しかし、この公共性というものをしばしば取り上げ、それの影響のないようにというか、その公共の利益を守る、こういう観点に立ちますと、ただいまのストライキ権を行使すれば、公衆が迷惑をする、大衆が困る、国民が困る、こういうことだと思う。それから、その争議権が、ただ単に労使双方だけに限られるような形において行なわれることならば、これは非常に見やすいことだと思いますが、ただいま申し上げるように、善意の第三者、しかも、国民大衆が困る。かようなことは、これはやっぱり避けていただかなければならない。しかし、これを避けるがゆえに、いわゆる管理者が惰眠をむさぼるというようなことかあっては、それは相済まないことだ、そういう意味においての十分な監督なり、指導なり、また内閣においても、また各大臣におきましても、そういう立場でものことを見ていく、私はかように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/136
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137・横川正市
○横川正市君 問題の一つの考え方として、何回かこれは労働問題懇談会あたりで議論になったんじゃないかと思うのでありますが、一つの第三者機関というものを持つ性格が、現状についてはあまりこれは信頼させる状態ではないわけですね。私は一つの方法としては、中央に労働裁判所というような意味のいわゆる純然たる第三者ですね、というような機関というものを設けて、紛争解決に当たったらどうか。たとえば、ストライキ権を与えておいて、ストライキ権を与えておくけれども、裁判所に問題が提起された場合には、これはストライキはできないというような一応の規定があるにしても、いまのようなあまり信頼がされない、しかも能力のあまりないような第三者機関に問題をまかさないで、もっとしっかりとした第三者機関というものを私は設定する考えがないかどうか、この際、お聞きをいたしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/137
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138・石田博英
○国務大臣(石田博英君) 第三者機関のあり方についていろいろ議論がございます。私も実情が現在の状態のままでいいとは思わないのでございます。たとえて申しますと、国家公務員、地方公務員というような場合は別といたしまして、企業体は民間も公共も一緒の第三者機関を設けたらどうかというような議論もあります。それからその第三者機関の調査機能、それ自体を充実いたしまして、十分な仲裁ができるようにしたらどうかという議論もございます。それからまた、経済の成長に伴いまして非常に事件が多いところと少ないところとがあります。東京都とか大阪市とか九州とかというようなところは非常に事件が多い。それを同じような数で運営していくという状態についても議論がございます。そういうことを総括して検討をしなければならない問題だとは思っております。また、労働裁判所というような御議論でございますが、ニュージーランド等では、これは賃金、、ベースアップの率まで労働裁判所できめているというような例もございます。非常に第三者機関を権威あらしめ、そうしてその機能を充実するということは、ぜひ必要なことだと存じますが、いかなる方法がいいか、これはさらに検討を加えなければならない問題だと思います。もう一つは、裁判所で決定されたもの、裁判所をほんとうに善意の公正な第三者と見るならば、裁判所の決定、そうしてその決定に基づく執行、それについては全国民が全部無条件で従うという態勢でなければならぬのでありまして、裁判所の決定を執行しようと思うと、それを大ぜいで妨害するという実情では、これはやっぱり裁判所の善意で幾ら決定しても工合が悪いのでありまして、そういう点はやはりそういうことと相待って検討を、充実をはかってまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/138
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139・横川正市
○横川正市君 私は現状をいつもにらみ合わせながら答弁されることについては、きわめて迷惑をします。裁判所が取り巻かれようが、公労委に対していろいろな陳情をしようというようなことが、労働大臣の立場とすれば、これは遺憾なことかもしらんけれども、こっちの立場の者にすれば必死なんですから、そういったことをかみ合わせて一つのりっぱなものをつくろうとするところの障害になってしまっては困ると思うのです。ただ私のほうからいえば、いま一般に下級審については、労働問題についてある程度の判決というものが出ます。ところが高裁、最高裁はどうであるか、だんだん古い人、いわゆる明治の人になると、労働問題に対する認識というのは、だんだん欠けるわけですね。そこが一つの不信の原因にもなっている、裁判所自体の。だから私は労働裁判所のようなものができたとすれば、言ってみれば、裁判官の養成からしなければいかぬと思っている、いまのような裁判官では。そういった点で、当然ひとつ私は労使の、あるいは政府と職員団体との間のきわめて有効な第三者機関として考える必要があると、かように思いますので、ひとつぜひこれは検討していただきたい、かように思います。
そこで、これは総理にちょっとお伺いをいたしたいのでありますが、先般もこれは個人意見として労働大臣から表明をされましたそれは百五号条約の批准問題です。この百五号の条約は、客観的に言いますと、経済に対する政治の干渉がきわめていま大きくて、その責任を十分果たしてもらわない限り、組合というのは政治問題に頭を突っ込まざるを得ないというような状態から、政治問題については、そういう客観性があるから、事実上は経済団体だけれども、政治にまで関係をするということになるわけですね。しかし、この公務員は、非常に残念なことだけれども、佐藤内閣にあまり協力的じゃない。なぜ協力的でないかは、これはおのずと雇っている側に立っている総理は十分承知だと思うのですが、私はそういったものが解決されれば、特段にこの問題は必要があるとかないとかという、そういう点での論議というのは、あるいは爼上にのぼらない問題かもわかりません。アメリカのように、公務員には全くの政治活動を禁止されている場合があります。しかし、日本の場合は、公務員法の百二条あるいは人事院規則の十四の七等によって、各項目についていろいろな制限規定がありますけれども、これで制限しておったら、それはたいへんなことになるような、いわゆるふんまん、不満というものが内臓いたします。私はいまのようにある程度、人事院が十四の七の解釈について解釈規程が浅井総裁のときに出されましたけれども、その解釈によってそのふんまんがある程度助けられているんだと思うのです。しかし、現状これを根本的に直してくれと言っても、なかなかむずかしいわけでありますが、いわば権利義務の関係で条約の百五号を私は当然現段階で批准すべきではないか、こういうふうに思います。で、労働大臣も個人的には批准したいという意見を持っておったようですが、総理のひとつ見解をお聞きをいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/139
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140・石田博英
○国務大臣(石田博英君) 百五号条約について一応総理にお聞きをいただく必要もあるかと思いますが、その前に私からお答えをいたしておきたいと存じます。
言うまでもなく、百五号条約は強制労働禁止に関する条約でございますが、この条約の批准を妨げておりますのは、国家公務員法における政治活動に対する罰則規定であります。で、第一強制労働禁止というようなていさいの悪い題目の条約が批准できないということは、あまりみっともよくございませんし、もう一つは、ほかの職業にある人ならば許されるということが、国家公務員であるから、地方公務員であるから許されない、その許されないことを犯したという場合は、その地位から去る、国家公務員でなくなる、あるいは地方公務員でなくするということでいいのではないかという議論がございます。私はその議論、個人的には、政府の一員としてでなく、個人的には私はその議論をとるものでありまして、したがって、もし必要であるならば行政罰でいいのではないかと私は考えるのであります。ただし、そうでない意見も政府部内、関係者に非常に多いのでありますから、調整を要することであります。私はそういう考え方で、私の個人的な見解を申し上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/140
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141・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) どうもこの問題は私あまり研究しておりません。ただいま労働大臣からいろいろお話しでございましたが、総理大臣としてこれ、結論を出すならば、もっと検討した上でお答えをしたいと、かように思いますので、保留をさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/141
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142・横川正市
○横川正市君 申し述べたような趣旨でありますので、十分ひとつ検討していただきたいと思います。
最後に、いよいよこの案件の結末を迎えるわけでありますが、前段でも申し上げましたように、実際の重要案件は公務員制度審議会に移されて、一部で問題は一年ないしは一年半あとに残されたというふうにとられております。私はこのとらえ方については、現状そういうような判断をされる情勢もありますから仕方がないということもありますけれども、私はできれば、今日の段階におけるいろいろな問題解決に、ひとつの英知が問題を解決したというような、そういう時点に立ってものを考えたいと思います。しかし、これは私の考え方でありますが、一体この問題を最も適切に処理できるというのには、やはり審議会の人的構成という点が問題であろうと思いますが、ひとっこれは総理大臣から人的構成についての所見をお伺いいたして、私のきょうの質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/142
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143・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) これ、委員がただいま二十名ということになっておりますし、労使双方の代表はこれを同数にする、公正妥当な方、第三者を、できるだけ多数にして、そうしてこの審議会を運用していきたい、かように私は思います。どうか御賛成を得ますようにお願いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/143
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144・安井謙
○委員長(安井謙君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/144
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145・安井謙
○委員長(安井謙君) 御異議ないものと認めます。
それではこれより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/145
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146・安井謙
○委員長(安井謙君) 御異議ないと認めます。
それでは、これから採択に入ります。
まず、結社の自由及び団結権の保護に関する条約(第八十七号)の締結について承認を求めるの件を問題に供します。
本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/146
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147・安井謙
○委員長(安井謙君) 全会一致と認めます。
よって本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/147
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148・安井謙
○委員長(安井謙君) 次に、公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案、地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律案、国家公務員法の一部を改正する法律案及び地方公務員法の一部を改正する法律案の四案を一括して問題に供します。
四案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/148
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149・安井謙
○委員長(安井謙君) 全会一致と認めます。
よって四案は全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。
なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/149
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150・安井謙
○委員長(安井謙君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日は、これにて散会いたします。
午後五時二十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814312X00719650513/150
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