1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十年二月十一日(木曜日)
午前十時二十五分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 西田 信一君
理 事
佐野 廣君
成瀬 幡治君
中尾 辰義君
天田 勝正君
委 員
大竹平八郎君
太田 正孝君
岡崎 真一君
栗原 祐幸君
津島 壽一君
鳥畠徳次郎君
林屋亀次郎君
日高 広為君
堀 末治君
村松 久義君
木村禧八郎君
佐野 芳雄君
鈴木 市藏君
事務局側
常任委員会専門
員 坂入長太郎君
参考人
日本銀行総裁 宇佐美 洵君
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本日の会議に付した案件
○租税及び金融等に関する調査
(金融に関する件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/0
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001・西田信一
○委員長(西田信一君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。
租税及び金融等に関する調査のうち、金融に関する件を議題といたします。
宇佐美日本銀行総裁には、本日まことに御多忙の中を参考人として御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。定刻お越しをいただきましたのに、若干開会のおくれましたことを恐縮に存じます。
宇佐美総裁には、御就任後、本日初めて本委員会に御出席をいただいたわけでございますので、本日は、まず、当面の経済及び金融に関する諸問題につきまして、総裁としての御所信を承りたいと存じます。
委員会の議事は、総裁から所信を承りました後、委員の質問に入るという順序で進めてまいります。
それでは、宇佐美総裁から御発言をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/1
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002・宇佐美洵
○参考人(宇佐美洵君) ただいま委員長から御指名がございました日本銀行総裁の宇佐美でございます。昨年十二月に、山際前総裁がおやめになりまして、はからずも私がその後任に任命された次第でございますが、前任者同様よろしくお願いいたしたいと思います。
ただいま委員長からお話がございましたので、最近の金融情勢並びに今後の見通しにつきまて、簡単に考えを申し上げてみたいと存じます。
御承知のとおり、日本銀行は、一昨年、三十八年後半から著しくなりました国際収支の悪化の傾向にかんがみまして、三十八年の末以来、政府とも協力いたしまして、金融引き締め措置を実施してまいったのでありますが、各界の御努力により、幸いにも引き締め政策の効果は次第に出てまいりました。
まず、金融面におきましては、昨年年初以来、銀行貸し出しの増加額がその前年の増加額を持続して下回るというようなことになりまして、貸し出し抑制傾向が引き続きまして、そのため頭金通貨残高も昨年後半以来著しく増勢鈍化の様相を呈してまいりました。また、策年十一月より年末にかけまして、銀行券の発行もかなり鈍化してまいったように思うのでございます。
一方、生産につきまして見ますると、引き締め後もかなりの増勢を続けておりましたものの、これまた昨年十月ごろから生産調整を行なう企業がだんだんふえてまいりまして、そのため鉱工業生産指数も十一月、十二月と、季節的調整をしてみますると、いずれも前月を下回るというようになってまいりまして、まず生産動向にも基調的な変化がうかがわれるに至ったのであります。
その間、物価の動向でございますが、卸売り物価はまずまず落ちついた推移を続けております一方、消費者物価は、特にことしの一月米価の引き上げもございまして、かなりの上昇を見ており、その点私どもとしても消費者物価の今後の動向につきましては深甚な関心を持たざるを得ないのでありますが、大勢といたしましては、騰貴率自体は一ころに比べますと鈍化してきているんではないかというふうに見られるわけでございます。
以上のごとき情勢を映しまして、金融引き締め当面の目標でございます国際収支におきましても、貿易収支、経常収支とも去年の七−九月ごろより黒字を回復いたしまして、十−十二月においてもかなりの黒字を見るに至ったのでございます。十−十二月期は例年季節的に輸出の盛んな時期でございまして、必ずしも表面にあらわれております数字で安心をするわけにもまいらないのでございますが、しかしながら、季節調整をいたしましても、この期間中の貿易収支はなお相当の黒字であるということでございます。特にこの黒字の原因が、輸出が好調であるということ、それから輸入も企業の原材料などに対する輸入態度が慎重なこと、この両面から見まして、この傾向は非常にいい傾向ではないかと思っておるのでございます。本年に入りましても、貿易収支はまず引き続き黒字を基調的にあらわしているように思うのでございます。
しかし、その反面、昨年秋ごろから企業倒産の増勢がかなり目立っておることはまことに遺憾なことでございまして、私どもとしてもその動向については非常に注意を払っておる次第でございます。特に中小企業関係の倒産につきましては、日本銀行の各支店を督励して、その原因を調査せしむる一方、その倒産が健全な企業の面まで及ばないように、各地元の金融機関とも相談して、できる限りの防止につとめておるような次第でございます。
以上のごとき情勢を総合的に判断いたしまして、日本銀行としては、まあいままで一年間続けてまいりました金融引き締めを一部解除することが適当ではあるまいかという考えで、昨年十二月には準備預金の準備率を引き下げまして、引き続き情勢を見ておりますと、ただいま申し上げたような次第でございますので、去る一月九日に公定歩合の日歩一厘引き下げを実施した次第でございます。
私どもとしては、今回の措置により景気が特に刺激されることのないようにということを考えておりましたが、現に公定歩合引き下げ後の情勢を判断をいたしますと、今回の引き下げが特に経済界に対して刺激的であったとは思われず、その意味におきまして特に問題を生じておるとは思っていないのでございますが、ただ、今後の成り行きといたしまして、国際収支につきましても、やや具体的に見ますると、海外景況の先行きがどうなるか、また、通貨価値防衛策に関連いたしまして、各国の輸出マインドがいよいよ強まる傾向にございますので、わが国といたしましても、いま非常に輸出がいいといって手放しの楽観はできないのではないか。また、企業経営の基盤強化の問題にいたしましても、消費者物価の動向などにつきましても、わが国経済がまだ手放しでこれでいいという状態では決してないわけでございます。したがって、今回の公定歩合の一厘引き下げも、程度として非常にこまかいものでございますが、この程度でまず様子を見ようということで一厘にとどめたような次第でございます。
そこで、今後の見通しでございますが、ただいま申し上げましたとおり、まず経済情勢は落ちついた様相を示しており、また調整過程もまず順調に進んでおると思っておりますが、しかし、先行きの指標から判断する限り、まず貿易収支はあまり心配はないといたしましても、しかし、これは長期的に見ますと、なお問題はただいま申し上げましたようにございますし、産業界がただいま進めております設備及び生産の調整も、はたして具体的にうまくいくか、いま深甚なる注意をもって考えておるような次第でございます。
いま一般にいわれております供給過剰が、どの程度のものであるか、またその性格がどんなものであるか、その辺の判断が今後の景況の見通し、ひいては金融緩和の進め方にも影響してまいる次第でございます。今後の政策は、その意味において慎重に考えてまいる必要があるわけでございますが、過去何度かの引き締め期におきましても、その末期におきましては、いずれも供給過剰の状態が出てまいりまして、それから次の景気回復期になりますと、その供給過剰の傾向は閥もなく解消するということを繰り返してまいったのでございますが、今回はそれほど簡単ではないのではないかと考えております。すなわち、供給過剰の程度が従来に比して大きくなってきているというばかりでなく、内容的に見ましても、投資財とかあるいは耐久消費財といった最終需要財の在庫増が著しくなっており、これまでのような中間需要財の在庫増というものは比較的少ないようでございます。したがって、それだけ現在の供給過剰には構造的も色彩濃いのではないかと考える次第でございまして、要するに問題がなかなか複雑になってきております。これに加えまして、皆さま御承知のように、最近企業間信用が非常にふえてまいり、ある人は二十兆というような大きな数字を言っているのでございます。これがこの供給過剰をささえているともいえるのでございます。この問題は私どもはほんとうに考えていかなければならぬ問題だと思います。
今後の金融緩和によりまして、供給過剰の事態がかえって深刻化したり、あるいはただいま申し上げました企業間信用が減らないというようなことでは、わが国経済の基盤が強化されたとは言いにくいわけでございまして、私どもとしては、当面の貿易収支、生産の動向とともに、これらの問題の推移を見守って、慎重に金融政策を立てていかなければならぬと考えておるのでございます。
以上、簡単ながら最近の金融情勢の概略を申し上げて、日本銀行といたしまして、今後の考え方、要するに、私は、日本銀行が各方面の御意見、国民各位の御意見を十分常に承りながら、この金融の大切なときを日本のために努力しなければならぬと考えておるような次第でございます。
はなはだ簡単でございますが、一応御報告を終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/2
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003・西田信一
○委員長(西田信一君) ありがとうございました。
引き続き、参考人に対する質疑に入ります。御質疑の方の発言は、便宜、委員長から指名いたします。
なお、宇佐美総裁の本委員会御出席の予定時間は大体正午までとなっておりますので、お含み願います。
木村禧八郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/3
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004・木村禧八郎
○木村禧八郎君 ただいま宇佐美日銀総裁から、日本の経済の実態が、貿易収支もだんだん好転してきている、金融も緩和され、物価上昇も落ちつきを示して安定的になってきており、調整過程もだんだん進みつつあるようなお話がありました。しかし、長期的に見ると、まだ国際収支の問題があるし、さらにまた物価にも、最近やや卸売り物価は安定してきているけれども、消費者物価に問題がある、最近落ちつきを示しているけれども問題があるというお話でした。
それで、私は主として今後の見通しの点について伺いたいのですが、見通しにつきましては、総裁は必ずしも楽観はしておらないわけですが、この日本の経済、景気見通しを行なうにあたっては、いまのいわゆる不況の実体がどういうものであり、何が原因であるかという点が、私は一番重要であると思うのです。
そこで、大体総裁のお話を聞いていますと、供給過剰、設備過剰、いわゆる供給圧力というものが非常に大きくなっている。今後設備投資なり生産調整がうまくいくかどうかということがポイントであるというお話でしたが、私も同感です。その点についてはいろいろ、構造的な原因とか、金融引き締めが原因とか、いろいろありますけれども、昭和三十一年ごろから十年ぐらいの過程をずっと見ると、やはり従来の、設備投資を続けてきまして、それがここに非常な供給過剰になってきて、長期的な景気波動からこういう、不況が来た、こういうふうに思うのです。それで、私の考えでは、このままですともっと供給過剰がひどくなるのではないかという点を問題にしているのです。
一つは物価の問題です。ことしの物価は、御承知のように、一月一日から消費者物価が上がります。あるいは医療費の値上げ、また水道料金の値上げとか、主として公共料金の値上げが非常に相次いで起こるわけです。これは私は、公共料金の値上げというものは一種の増税みたいなものだと思うのですね。いわゆる独占的な価格、料金の値上げは強制力がある。選択の余地がない。私、計算してみますと、消費者米価値上げが、昭和三十六年六百三十五億、四十年九百三億、国民負担がふえるわけです。医療費九・五%値上げで、大体国民負担が七百億といわれております。こういうように公共料金の値上げによって大衆の購買力がそこで非常に吸収されるわけですね、そうなると、いわゆる設備過剰は相対的には消費寡少ということになりますから、さっき言われました耐久消費財等の売れ行きも悪くなり、供給過剰の問題か、この物価の問題を処理しませんと、そういう点から私はむしろひどくなるのじゃないか。
もう一つは貿易の問題ですけれども、これは総裁も十分御存じと思いますが、大体ことしの上期はアメリカの景気もそう悪くないだろう、しかし下期には在庫投資が減ってくるのじゃないか、そのほかポンドの危機の問題もありますし、フランスのアメリカからの金引き揚げ等もあり、国際通貨はかなり問題をはらんでおるわけですけれども、そうしますと、買切外収支の問題ももちろんありまして、ことしの下期になると、そんなに楽観できないのじゃないか。
そういうようなことから、いまは一応調整過程が済んでおるようですけれども、私はことしの下期ごろに向かってはかえって供給過剰の問題が激化するのではないか。もちろん、設備投資や生産の調整がどのぐらい進むかということが問題で、これまでも自主調整、自主調整と幾らやっても調整がつかないわけです。結局これは私は総合的には金融政策——財政ももちろんございますけれども、金融政策が非常に重要じゃないかと思うのです。
最近、三月ごろもう一厘下げるのではないかという意見もありまして、そういう今後の見通しと、それから今後の公定歩合の引き下げの問題について、まずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/4
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005・宇佐美洵
○参考人(宇佐美洵君) ただいま御質問いただいたわけでありますが、大体の考え方は、ただいまの木村先生のお考えと私も同じように心配しておるわけでございます。
先ほど申し上げましたとおり、現状は国際収支もまずまず、信用状等のぐあいから見まして、四月あたりまではいいと考えられるわけでございます。やはり最近の各国の情勢を見ますと、戦後非常にインターナショナルの考えが強かったのでございますが、やはりその根本には、各国とも、最近のイギリスの例を申し上げるまでもないのですが、自分の国の通貨の保全に非常に今後努力してると思うのでございます。自分の国の通貨が安定しなければとうていその国は存在しない。そうしますと、各国ともいま日本が言っておるような輸出スライドあるいは輸入抑制というようなものがいろいろ、いまの国際情勢から表向きにははっきり出てこないにいたしましても、制限があるにいたしましても、内心は各国の国際競争は非常にきびしくなってくると、こういう覚悟は私はしなければならぬと思うのでございます。
決して日本だけやっておるのじゃないということを考えますと、国際収支にいたしましても、非常にまあ先行き、単にアメリカが、この間大統領が言われておるように、ことしじゅうは景気は保持するといいましても、やはりこれは各国おそらく努力して保持して私ももらいたいと思うのでありますけれども、困難な問題もあるのじゃないか。市況については楽観はできないのじゃないか。さらに、国際貿易を日本がほんとうにやっていく、輸出を振興するためには、単に国内生活というような意味だけでなく、物価の安定ということが貿易に非常に必要だと思うのでありまして、この物価と、それから国際収支の問題は、一見別々のようですが、非常に関連性があるということを考えてまいらなければならぬと思うのであります。
それで、物価の見通しでございますけれども、実は金融政策だけで及ばない公共料金であるとかいろいろのものもございまして、私どもは政府に対しましても、何とか物価の安定をしてもらうように、それぞれの事情がありましてむずかしということはよく了解いたしておるのでございますけれども、むずかしいうちにも何とか物価を安定してもらわないと、国際収支までなかなかむずかしくなってくるのではないか、まあかように考えておるわけでございます。物価の先行きにつきまして非常に注目いたしておるわけでございます。
そのためには、やはり金融面から見ますと、いまの情勢ではあまり刺激的な政策はとらないほうがいいのではないか、かように考えて各企業に言いますと、いまのような日本の産業、企業は、非常に御承知のように借金がばかに多いのでありますので、金利を下げてもらいたいという要望が当然強く出てくるのはよくわかるのでございますが、それが刺激して、いまの情勢では前のように一斉に走り出すというようなことはまずないにいたしましても、しかし楽観を許さないのではないか。したがって、さっき申し上げましたとおり、各企業の調整的気分というものはまだ去年の十一月あたりからようやく起こってきた問題でございますので、もうしばらくこれが実効面にどう出てくるか、まだ話し合いの段階が多いように見受けられますので、それが実効面にどう出てくるか。また、四月以降の国際収支の動向がどういうふうに出てくるかというようなことを慎重に考えながら、ただいまのお話の公定歩合の今後の進め方も慎重にきめてまいりたい。ただ目先国際収支がよくなったからと、それだけで、今度の引き締めが国際収支改善のためであるという理由だけで、これをよくなったからといってすぐにゆるめるということは問題ではないか、かように考えております。
ただ、最近の各企業、ことに中小企業の状態を見ますると、いろいろの、一々聞いてみますると、人手が足りないとか、あるいは賃金が上がり過ぎているとかいうような理由も多くいわれておりますし、私どももそういう面の中小企業の困難さもよくわかりますが、一方において、経営をかなり健全にやっておったにもかかわらず、ほかの理由であふりを食って困っておるという人も多数あるように聞いておりますので、それらの面は何とか金融の面からも手を差し伸べる必要があるのではないか、かように考えて、まあゆるめるにしても部分的のゆるめ方をしていくというようにいま考えておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/5
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006・木村禧八郎
○木村禧八郎君 ただいま総裁のお話で、物価の問題、これはまあひいては通貨価値の安定の問題につながるわけですが、非常に重要視されていると。もちろん、国内的の問題だけではなく、それはかなり長期的に見て、国際収支の面からも、十分考えなきゃならぬ。そこで、これから日銀法の改正もあり、今後の日銀法の改正は、もう主として戦時体制的な、日銀法を改正して、通貨価値の安定維持を主たる目的とすると。また、国の経済に、国民経済の発展というものを主眼に置いた日銀法の改正、新聞等で発表されているところによりますと、そういう内容のようであります。
そこで、私はお伺いしたいのですが、四十年度の予算と物価との関係なんです。また金融との関係もございますが、これは四十年度の予算は、一般会計では一応均衡とっているようですが、財政投融資に非常にしわ寄せしましてね、特にその中で借り入れ金あるいは公募債をふやしたと。それだけならまだいいです。ところが、国庫債務負担行為というのを非常にふやしている。また、そのほかに鉄道なんかは、特別利用債というものを、六百八十八億ですね、認める。こういうことになりますとね、私はこういう面から、今後日銀法を改正して、聞くところによりますと、大体最高発行限度、あれを撤廃するなんていうことの案が出ておりますが、いまの日本の現状でですよ、政府保証債をどんどん出す、そうしてまた鉄道特別利用債とか、国庫債務負担行為を非常にふやす、そうなれば、そういう側面からインフレ的になるのじゃないか。
そこで、具体的にひとつ伺いたいのは、この特別利用債については、日銀の買いオペの対象にせよとか、あるいはすべきじゃないとか、議論、いろいろ問題になっているのです。こういうふうに日銀に買いオペの対象をふやしてまいりますと、私はそういろ面からインフレが促進され、通貨価値の安定に非常に障害を来たすんじゃないかと。だから、財政の面とやはり十分見合わしてやらなきゃいけないのですが、特に四十年度予算は、表面から見ると、一般会計は均衡とれているようですけれども、財政投融資、その他鉄道利用債とか、国庫債務負担行為、考えますと、決して私は健全、均衡といえないと思う。そういう点、日本銀行当局としてどういうふうにお考えか、この鉄道利用債を買いオペの対象にされるのかどうか、その点伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/6
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007・宇佐美洵
○参考人(宇佐美洵君) 一般予算は均衡を保っておって、そうして一方においていろいろの、まあ何といいますか、俗なことばでいうと、しわが民間のほうに寄ってくるというようなことは、事情やむを得ない場合も多いと思いますけれども、これは慎重に考えていただかなければならぬと思っておるのでございます。
それで、ただいま国鉄の特別利用債についてお話がございましたけれども、私ども日本銀行の本来の考え方といたしましては、一番大事な通貨価値の安定、これはすなわち物価の安定ともいえますし、インフレ防止ともいえると思うのでありますが、その点から常に考えていかなければならないと思うのでございます。私はよく冗談に言うのでございますが、普通の銀行はもう金がないから貸せないということを言えるのですが、日本銀行はなかなかそうまいらない点もございますので、どうしても常に日本銀行の立場は、筋が通る仕事をやっていくということが非常に大事であろうと思うのであります。
そのつどつど、いろいろのことで資金が出ていく。まあたとえばいまの利用債の場合も、私も率直に申しまして、石田総裁にお目にかかりまして国鉄の事情を承ると、生命に関する、こういうお話でございますので、ほんとうに国民の一人としてもまことに困ったことに思い、石田総裁に何とか金をあなたのほうとしては要りますねということは申し上げたのでございますが、ただ今度の場合は、あれは縁故債でございまして、私どもが適格担保にするという場合には、やはりこれは国民の皆さんの銀行であるという立場からいいまして、やはり担保として適正であるかどうかということは考えなければならぬと思うのでございます。御承知と思いますけれども、ああいう場合には、従来一つ一つ日本銀行の政策委員会で慎重に考えまして、それがまず目安としましては公式の公募である。公募であるいうことは市場性があるということでございます。やはり国民の皆さんの納得する担保にならなければいかぬ、こういう立場におるわけでございます。したがって、その用途がいかに国府のため、国のために必要であるといたしましても日本銀行の立場としましては、やはり担保として適正なものである、一口にいいますと市場性のある、国民の認めるものであるかどうかということに判断の中心を置かなければならぬと考えておるわけでございます。したがいまして、従来の方法は、われわれの考えからいいますと、今度の私募、私に募集なさる利用債は適当でないと考えまして、お断わりしたような次第でございます。
ただ、問題は、国鉄側がどうしてもあれだけの資金が要るという御要望、これもまた、私といたしましてはほんとうにできることなら何とかしてあげたいが、いまの日本銀行の考え方としてはできませんので、それはひとつ大蔵省へ御相談くださいと申し上げるよりしかたがないところで、いま承りますと、大蔵省と国鉄で御相談になっておるというふうに承っておるのでございます。
要するに、ただいま申し上げましたとおり、われわれは常に通貨の安定という立場から、国民の納得する担保でなければこれを適格担保として取り扱わないという方針は堅持していかなければならないと思っておるわけでございます。公募でないものは極力これは避けたほうがいいんではないかと私は考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/7
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008・木村禧八郎
○木村禧八郎君 聞くところによると、いろいろ政治的圧力によって適格担保にせいという動きがあるやに聞いておりますが、私は何も国鉄の資金調達を困難ならしめるために言っているわけじゃないのですが、しかし、全体の通貨価値の維持、特に財政と金融との一体的な調整のもとで通貨価値の維持をはからなければならぬというときに、財政面からどんどんふえたら、これは何にもならないことだと思うわけです。
そこで、ただいまの総裁の御意見大体わかりましたが、これまでの、これは私は前の山際日銀総裁を決しで批判するわけじゃないのですけれども、そのお立場もよくわかるのですけれども、大体において財政が景気をリードしていく形をとって、そうして財政面では、昭和三十年ごろから始まって、設備投資を中心とする高度成長のもとで、毎年自然増収自然増収が出てきたものですから、非常に膨張してしまって、そうして財政面でずっと景気を刺激しリードしていく、金融面はそのしりぬぐいをする、こういう形であったと思うのです。ですから、IMFでは、日本はもっと財政に景気調整の機能を持たせ、弾力的な財政を利用すべきだという意見もあるくらいです。どうもこれまでこんなに供給過剰にしてしまった責任は、日本銀行にあったと思うのです。どうしてこれが調整できなかったか。もちろん、自由経済でありますから、シェアの拡大競争をやって押えられない面もあったかもしれませんけれども、いかに金融にしわ寄せされたとはいえ、あまりにもう、一兆何千億も恒常的に貸し出し残高が残っているというのは、非常に変則的だと思うのです。ですから、もうすでに起こってしまったことはこれは取り返しがつかないわけですけれども、今後の姿勢としましては、やはり金融当局は財政についてもかなりしっかりした意見を持ち、大蔵省の、政府の言いなりになると——どうもこれまではそのように、実際にはかなり山際総裁も日銀のいわゆる中立性といいますか、健全性を保つために努力されたと思うのですけれども、実績はそうじゃない、実際顧みますと。ですから、新しく総裁になられまして、宇佐美総裁は、これまでの経過から顧みまして、こういう点、財政と金融の一体的運用という面から、財政についてもやはりかなり強力な発言をされ、そうして過去のようなあやまちを繰り返さないようにしてもらうことが必要じゃないか。ことに財政面での弾力的な運用ですね、これはわれわれ分析しますと、非常に下方硬直性となっていますから、にっちもさっちもいかないようになっているのです。そういう術についで、十分御意見を持ち、金融政策の面からやはり発言もされ、調整されていく必要があるのじゃないかと私は思いますが、その点について御意見を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/8
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009・宇佐美洵
○参考人(宇佐美洵君) ただいまありがたい御注意をいただいて、謹聴した次第でございますが、日本におきましては、各国よりも一そう精神面におきまして財政の国民に与える影響は大きいと思うのです。実質、財政が数字の面よりもやはり、何といいますか、財政が刺激的であるように思うのであります。したがって、財政につきましては、ぜひりっぱな予算なりなんなり組んでいただかなくちゃならないと思うのでありますが、しかし、同時に、こういうことも、実はこの席で申し上げるのはあるいは不適当かもしれませんけれども、ちょっと私の考えを申し上げることをお許し願いと思うのであります。
確かに景気が行き過ぎましたが、いままでは景気をほんとに行き過ぎさせたものは財政であるか、あるいは民間投資であるかといいますと、精神面においては財政が非常に影響したと思うのですが、実際は民間投資、特に設備投資あるいは在庫投資が大きく行き過ぎを刺激したのじゃないかと思うのであります。
その証拠には、金融政策が日本におきましてはわりあいにきいているということでございます。金融政策をうまくやるというか、じょうずにやるといいますか、それが日本においてはまだ金融政策の重要性というものが私は相当強いと思うのであります。たとえば、今後情勢が変わりまして、景気を引っぱっていくものが消費であるとかあるいは財政であるとかいうほうの力が強くなってまいりますと、金融政策というものはだんだん力が弱くなってくるのじゃないか、かように考えております。したがいまして、いまのところやはり民間投資というものが非常に重大な引っぱる力になっておるのではないかと思うのでございます。ただ、先ほども申し上げましたとおり、精神的には政府の力というものが、何といいますか、それが非常に影響しますので、精神面を無視することができませんけれども、やはり実体的には私どもが、民間におきまして結局いままでやっていたことが間違いであるということを告白するようなことにもなるわけなんですが、やはり民間投資というものがもとであった。同時に、金融政策のうまさへたさというものが非常に影響があると、こういうふうに考えておるのでございます。
で、民間の意欲というものにつきましては、いま、先ほど来非常に鎮静しておるようにも申し上げましたけれども、一方においては国際競争力をつけていかなければならぬという点、また国民自体が非常に意欲的であるという点、これはもう非常な一方からいうと強みでございますが、こういう面の企業に対する潜在的意欲というものは、私は引き続き強いものと思いますので、金融政策の重大なことを非常に痛感いたしておるのでございます。
しかし、いまのように民間投資でずっといくのかどうかということも長期的には考えておかなければいけないと思います。日本の消費が非常に最近大きくなっておることも無視できませんし、ことに心配されるのは、先ほどもちょっと木村先生もおっしゃいましたけれども、日本の財政が非常に硬直的であるということ、もしも財政が非常に民間に与える力が実質的にもふえてくるといたしますと、財政が非常に大きくなってきますので、そういう心配があるわけでございますが、いまのような硬直的であっては、いざというとき非常に困るのではないかというふうに考える次第でございます。つまり、増税にいたしましても、減税にいたしましても、容易にできない。財政面のコントロールが存外きかないというような状態では、もしも財政の力がだんだん強くなってきたときには、たいへんなことになるのではないか、こういうふうに考えます。これは長期的に考えますと、財政がもっと弾力的になるということを、私は長期的に見て、いますぐにこれはどうにもなりませんが、そういう感じを持っておるような次第でございます。先生方がひとつその辺はぜひお考えを願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/9
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010・木村禧八郎
○木村禧八郎君 ただいま総裁のお話ですと、これまで景気を刺激し過ぎたという点については日銀の金融政策にも責任があるような反省のことばがありましたが、確かに私はそういう面もあって、前に山際日銀総裁にもだいぶん質問したことがあるのですが、要するに、結局財政金融を通じての資金計画がないのですね。高度経済成長政策であって、長期的な資金計画がない。産業的な資金計画がない。ただ中期計画をつくりまして、それにもないのですね。それがなくしてどうして——財政金融を通じて総合的に通貨価値を安定するとかいうことは私はもうでき得ないと思うのです。そこに一番欠陥があると思うのですが、ですから、今後やはり財政金融面を通じての長期的なやはり資金計画の裏づけなくして高度成長政策とかあるいは中期計画をいったって無意味ではないかと、こう思うわけですが、これは私の意見で、おそらく総裁も御同感じゃないかと思うのですけれども、いかがですか、簡単に御答弁を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/10
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011・宇佐美洵
○参考人(宇佐美洵君) 私は、御承知のように金融ばかりやってきたせいもあると思うのですが、所得倍増計画にいたしましても、今度の中期計画にいたしましても、やはり金融面の考え方が確かにただいま御指摘のとおり足らないということを感ずるのでございます。ただ、金融を裏づけとしてあの計画に入れるということは、また非常に困難であることも私はしみじみ考えるわけでございまして、結局いまのような自由経済をたてまえにいたしております場合に、あの所得倍増計画にいたしましても、今度の中期計画にしましても、読み方が非常に大事だと思うのですね。あれはただ金融という一つの非常に大事なほうを別にして立てた計画だということを——いままでああいう計画を、読み方があたかも金融がついているというふうに読むところに間違いがあるので、あれは、金融という片一方に大事なものがあるのだが、これをつけてしまうと非常にむずかしい計画になって、とても私も、おまえつくれと言われても私は金融をつけられないと思うのですね。だから、そういうもんだという見方で考えていただくと、あの計画は非常におもしろく、また有意義だと思うのですが、そういうふうに、はなはだ率直にものを言って済みませんけれども、そういうような感じをしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/11
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012・木村禧八郎
○木村禧八郎君 なかなか妙味のあるお話でありますが、時間もなくなりましたので、あと二、三点要点について御質問いたしますが、先ほど日銀法の改正についてちょっと触れて質問したんですが、これは今後、今国会に改正法案が出ますから、そのときに十分また審議をいたし、その際にもまた総裁の御意見を十分に伺える機会があるかもしれませんが、さしあたり、発券制度につきまして、どうも私は最高限を撤廃してしまうことについては非常に疑問があるわけです。
発券制度の小委員会があったわけですね。あの小委員会では結局保証準備屈伸制度ですか、これを採用すべきだという大体結論になったように聞いているわけです。それが採用されないで、最高限度を取っ払ってしまう。もちろん、私はそういう昔の金とか為替も準備にしたリジッドな金本位制というものをやっていかないと思うのです。管理通貨制度でございますし、背の金本位に返るということは実際としては当たらぬと思うのですけれども、しかし、日本の実情からいって、さっきお話ししましたいろいろな面で、ある程度の制限措置がないとインフレ的になっていかざるを得ないのですから、その点は私は非常に重要じゃないかと思うのです。その保証準備の屈伸制度がいいかどうか、またいろいろ案もあると思うのですけれども、とにかく手放しであれを撤廃してしまうということについては非常に問題があるのですけれども、この点どういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/12
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013・宇佐美洵
○参考人(宇佐美洵君) 実は日本銀行法の改正につきましては、まだ最終案がきまっておらないわけでございます。いま事務的にいろいろ研究をいたしまして、いずれそれができ上がりましたら、国会のほうに大蔵省から提案されるという順序になると思います。私どもはまだその最終案がきまったというふうには承っておらないわけでございます。したがって、その問題もここで私がはっきりこうだということを申し上げにくいのでございますが、ただ、そういう前提でお聞き取りを願いたいと思いますが、確かに木村先生のおっしゃるように、発行限度を全部はずすということは問題でございますけれども、しかし、現に保証債務というものを、片一方において一応のワクとしてそういうものを置いておるわけです。
それから、もう一つ、これは経験的に申し上げますと、実際面で、いま限度をきめましても、一体発行額というものが何できまるかということになりますと、いろいろのほかの条件、昔のように、金本位時代のように、金というようなものできめれば、これははっきりするわけでございますが、現に発行高をきめてもどんどんほかのもので変わってきてしまうというような点で、たとえば物価であるとか、それから国際収支も関係してきましょうし、賃金の問題だとか、いろいろ影響をしてまいりますと、しょっちゅう日本銀行が発券高を、ただそういうような、俗なことばでいうと、ツケが回ってくると直すというような状態で、私どもとしましても、そういう限度をつくりましても、何といいますか、かりにこれくらいのさいふでいくんだと言っていても、ツケが回ってくるとしかたがないからさいふのほうを直すというようなことで、その限度自体よりも、そういういろんなツケの回ってくるほうを何とかうまくしていただかないと、せっかく限度をつくっても無意味ではないかというような私は考えでおるわけでございまして、まあそれでもいいから、しょっちゅう直してもいいからということも、あるいは言えるかもしれませんけれども、しかし、実際は私どもが学校で習ったときのようになかなか——いまはまるで変わってきておりますので、その発行限度というものの価値といいますか、それがほとんどなくなってきておる。なくなったものならば、やめたほうがいいんではないか、こういう考えで私はいまおるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/13
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014・木村禧八郎
○木村禧八郎君 最後に、もう一つ伺っておきたいのですが、それはいわゆる金融正常化の問題に関連するわけです。それに関連しまして、大体総裁は金融正常化として今後どういうことをやるべきであるとお考えか。そのうち特に最近の公定歩合の一厘引き下げと同時に、選別融資を強化するという方針が出されていますし、それがやがては金利の自由化の問題に発展していくと見られるわけですが、この金利の自由化の問題は、やりようによっては、これはたいへんな問題になってくると思うのですね。ことに中小企業などは機械的にやればこれは非常に高い金利を払わなきゃならなくなりますので、これは非常に重大な問題であります。選別的な融資、それからやがては金利自由化の問題も非常に重要だと思いますが、この点についてどういうふうに……。今後いまの選別融資というものをどういうふうに具体的に考えられ、これをどういうふうに金利の自由化まで持っていくか、それは非常に大きな関心を持たれていると思うのです。その点。
それから、もう一つ、金融正常化の一つとして、最近大蔵大臣が盛んに金融機関の合併問題ですね、非常に放送しているわけです。そういう金融機関の整備、この点についてお伺いいたします。
私の持ち時間、もうだいぶなくなりましたので、この点について御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/14
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015・宇佐美洵
○参考人(宇佐美洵君) 実は選別融資というようなことをこのごろ申しまして、ちょっと何か非常に、私が前におった銀行がとかく大会社ばかり相手にしているので、あれが今度来たのでそんなような考えがあるというふうに思われて、実は選別融資というのはことばとしてはなはだそういう誤解が起こってはまずいと思って、何かいいことばがないかと思って考えているのでございますが、私が考えておりますのは、決してそんなことでないのでありまして、要するに、金融を引き締めますと、日本におきましてはとかく一斉に走り出しまして、ゆるんだときに必要な方面に金が十分に流れずに、まあ不必要の方面に流れやすい。これを何とかとめないと、直さないといけないのでありまして、これは一番いいことは企業、金を借りられる側が考えていただくと一番いいのでありますけれども、しかし、なかなかそうもいかないので、銀行にもそういう考えでいてもらいたい、決して形、規模の大小なんかでなくて、もっと本質的の問題を考えてもらいたい。
たとえば、国際競争力と一口に言いますけれども、そのうちには実際国際競争ができるものと、できもしないのに国際競争力をつけるために金を貸せという方もあるわけであります。またそのほか、国民生活に必要だとおっしゃっても、あるいはものによっては輸入したほうがいいというものもあるのではないか。また、中小企業のほうでも、ただ金を貸せとおっしゃって、それに無条件に貸すということではなく、その中小企業はほんとうに成り立っていくのかどうか、またほかに方針を変えるなりあるいは考え方を変えないと今後むずかしいのではないか、そういうような個々別別にいろいろ考えて、機械的にやらずにしてもらいたいというのが私のいう選別融資のつもりでございます。
したがいまして、大企業に非常に金を出して、中小企業に出さぬなんというそんな考えではございませんので、実はこの間まで私も東京商工会議所の金融部会長をしておりましたが、中小企業の方のいろいろのお話を常に承っておりまして、去年の暮れも、さしあたり大事なことは、大企業が未払いのものを中小企業に払わないのが一番いけないのではないかというようなことを申しまして、商工会議所から政府に要望したような次第でございます。また、この間、関西に行ってまいりましたが、中小企業についていろいろ御質問があったわけでございますが、私は、やはり人口の点からいいましても、また仕事の幅が非常に広い上からいいましても、中小企業の問題は、日本銀行としてはやはりこれをひとつ大いに取り上げていかなくちゃならぬ問題じゃないかと、かように考えておる次第でございます。
したがって、決して先生方の御心配になるようなそういう意味の選別融資ではなくて、ほんとうに必要なほうに流していく。この必要なというほうもそのときどきによって非常に違うのでございまして、こんなことは申し上げる必要もないのですが、オリンピック前は非常にホテルが必要だということでございまして、ホテルに開銀融資なんかまで出てやったのでございます。あれは当時はかなり必要な産業というふうに見られておりました。私は、今日においては、あれはもうこれ以上出す必要はない——これ以上出す必要はないと言っては言い過ぎかもしれませんが、しかし、オリンピックの前のような考えでなくていいんじゃないか。時によって、相手によって常に流動的に考えていかなければならぬと、こういうふうに考えておるのでございます。
したがって、先ほど最初に申しましたとおり、各界のいろいろの御意見を常に承っていくのが私の仕事ではないかと思っておるわけでございます。日本銀行はただ窓口で統計だけをながめていたのではいけないのじゃないか、もっと生きた経済というものを見てまいらなければいけないんじゃないか、かように考えて、これから勉強いたしたいと思っておる次第でございます。決してこれが、選別融資というようなことばははなはだ適当じゃございませんが、いまの日本において、ほんとうに大企業のほうだけを育成するなんていうことは、私はとうていできることじゃないと思います。同時に、大企業と中小企業との関連の問題を私はもっと考えていかなければいけないと思っておる次第であります。
それから、もう一つ、金利の自由化ですが、金利の自由化——私は、自由化といいますと、またこれもかってにやれというようにとられて非常にことばとしてはまずいんじゃないかと思うのですが、とにかくいまのように何もかも一本の金利にしておりますと、企業の側もなかなか、自分の企業を考える場合に、たとえばもっと金利を自分のところは負担できるのだというならば、そういう企業は金利が高くてもやって、できるだけ必要な金利を安くするという点が必要ではないかと思うのであります。それからまた、いま御承知のように長期、短期の金利が非常に乱れておる。そういう問題も、ただこちらが、あるいは政府が、一本でこの金利はこうしろということでなくて、だんだんおさまるところにおさまるような金利の行き方がいいんではないか。一つの事業に対しましても、すべての金利を公定値段的な、管理相場的なことにしないで、幅を持たせて、銀行も選択ができるし企業家のほうも選択ができるというふうにしたほうがいいんじゃないかと思っております。
ただ、私は根本的に見まして、これは長期的の考えでございますが、日本のようにことに借り入れ金の多い国におきまして、つまり自己資本、ほんとうの意味の蓄積した資金の少ない国におきましては、どうしても競争するためには低金利でなければならぬと。低金利というよりも、比較的安い金利にするようにつとめなければいけないのじゃないかと考えております。ただ、中間的にいろいろそのときの金融情勢によって、先ほど申し上げましたとおり、金融政策というものがぜひ必要でございますので、いろいろのことをやってあげたりする場合も当然ございますけれども、基本的にはやはり低金利で、なるべく金利の負担を少なくする。金利を高くしたほうが、自己資本の充実につとめると、借金することは不利だという考えに持ち込んだほうがいいんじゃないかという考えもございますけれども、私はやはり、早急に直る問題でもございませんし、長期的に考えて、やはり金利が安いほうがいいと考えております。しかし、安いうちにもいろいろの長期の金利と短期の金利の差は当然あっていいんではないか。そういう意味において、基本的にはそういう考えをしながら、しかし、あまり窮屈で、社債というものはこういう値段で売りなさいということでなくて、ある程度の幅を持たせるということがかえって経済のほんとうの運営上うまくいくのではないか、かように考えておる次第であります。
それから、合併の問題でございますが、私はやはり企業が大きくなっていく場合に、日本の中にも大きな銀行があっていいんではないかと考えております。世界的に見ましても、日本の銀行は必ずしも大きいというわけでもございません。ただ、これはあくまでも、第一には国家的見地、あるいは地方銀行の場合にはその地方的見地から、その合併統合が日本経済のため、あるいはその地方の経済のために役立つ、いいということがまず必要だと思います。ただ大きくするということは決していいことではありません。これはもう第一は、その合併が、あるいは合併することによって両方の欠点を補うようになって、そして日本経済に寄与するところが大きくなるということ、それからもう一つは、その取引先なり、あるいは預金者なりがいい合併と感ずるような合併でなければいけないと思います。また、従業員自体もその合併を歓迎するという合併でなければならないと思うのであります。いたずらに順位争い的な合併は、これは決して許されることではないのでありますが、もしもそんな考えでやるといたしましたら、これは非常な間違いであろうと考えておるわけでございます。あくまでも、ただいま申しましたとおり、その合併が日本の経済のために、あるいはその地方の経済のために、ほんとうに役立つ合併ならば私は賛成でございます。なかなかそれはむずかしいことじゃないかと思うのでありますが、しかし、もしそういうことができればたいへんけっこうじゃないかと思っております。
ちょっと委員長にお願いしてよろしゅうございますか。先ほど発行限度のところで、私は保証債務というようなことを申しましたが、これは保証物件というのがいいようでございます、ちょっと御訂正を願っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/15
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016・西田信一
○委員長(西田信一君) 承知いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/16
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017・津島壽一
○津島壽一君 時間もありませんから、私は簡単に質問を一つだけ申しまして、状況報告を願いたいと思います。
その一つは、国際決済銀行、これは総裁よく御存じだと思いますが、日本が自由化その他の関係で、国際金融機構の中で、今後日本の対外経済のみならず対内経済についても非常な関係を持たしていこうと、こういう方針はすでに伺っておるわけですが、国際決済銀行は、あれは日本がチャータード・メンバーというか、設立委員というような役割りで昭和五年につくったわけでございます。その後、戦争になって、日本はそれに参加しないのみならず、戦後はそれから脱退してしまっておる。こういう状態でございますね。そこで、私は、日銀が中心であるのですから、これは役員も入れておってきたものですから、これは早く復帰するのがほんとうじゃないか。これは非常に重大な意義を持っておるということは、これはおわかりになっておると思いますので申しませんが、山際口銭総裁が非常に熱心で、昨年もオブザーバーなんかの資格で役員会に出席したという事情もあるのです。これは、銀行がただ金を出して、銀行だけで株を持った。本来ならば日銀が株を持つのを、法制上できないので、民間側でもいいということでなったのが、その当時の事情でございます。そこで、それに復帰する問題がどの程度具体化して今日おるかということについての情報を、こういう機会ですから、総裁から承っておきたいと、こう思うのです。国際決済銀行復帰の問題の現状はどうであるかと、こういうことをお聞きしたいわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/17
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018・宇佐美洵
○参考人(宇佐美洵君) いわゆるBIS、国際決済銀行につきましてただいまお話がございましたが、これは戦前、日本も非常に努力いたしまして設立いたしたのでございます。ただいまお話しのとおりに承っておるわけでございます。戦後、山際総裁が非常に努力されまして、ただ、私は詳しく存じませんが、多分、株主にはまだなっていないのではないかと思っておるような次第でございます。日本とアメリカとカナダはオブザーバーになっております。
この問題につきまして、おっしゃるとおり、国際関係が非常に密接になってまいりましたので、そういう正式メンバーに加わるように努力いたしたいと思う次第でございます。また、日本がこういう国際問題に非常に関係が深くなってきておることは御承知のとおりでありまして、ここでもさらに日本の地位を高めるように、引き続き努力いたしてまいりたいと考えております。
ただ、いまのところ、その程度に私は聞いておりますが、また詳しく聞いて報告さしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/18
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019・津島壽一
○津島壽一君 それでは、私は希望を申しますが、総裁御就任早々ですけれども、どうせこの春あたりはこの役員会とか総会ございましょうから、総裁御自身で御出馬になって——これは人的な接触を非常に尊重するところです。だから、代理とかなんとかいうのじゃ、これは効果はあまりないですね。そういう意味において、総裁ぜひ、日銀法の改正後でもいいでしょうし、それを希望いたす次第でございます。
そこで、ついでに、また他の機会に具体的に質問したいのですが、私のこれは卑見ですが、日銀の通貨膨張、発行高の増加、日銀券のこれを毎週報告をいただいて読んでみれば、これはなるほどたいへんな膨張になっておると。この状態では、これは物価抑制といっても不可能じゃなかろうかと。不可能ということばは言い過ぎでございますが、そこで、この点をひとつ十分納得いくように、資料を他の機会に私はいただきたいと思うのです。個人的にもらう機会はありますが、これは大きな問題ですから。
大体、物価が上がるから日銀の通貨が膨張するのか、日銀の通貨が膨張しておるから物価が上がってくるのか、これは非常に幼稚な質問ですけれども、これはほんとうに仕事をしている人にとっては、非常にその点を見て、たとえば株価の何というか、維持に金が出るのが膨張の原因だったら、私は、これは物価が上がったから当然に取引刊の増加において必要な通貨が要るのだというような、そういうことではないように思えるのです。それから、物価が上がれば、これはもう自然に流通通貨というものは必要なんです、日常取引に。ですから、あとフォローしていくような形なんですね。日銀の発行高はそうでなくて、日銀の発行商が増加したら、これは押えておっても、これは昔から通貨数量説なんていうオーソドックスな考えがありますが、その観点からものを見ていくということは、私は何年かの経験でそれをにらむのが一番早いのです。ですから、物価の問題は、もの自体直接に需給の関係を調節するという部面もありますけれども、日銀の通貨というものは非常にこれは微妙に反映してくるものですから、そういった観点から、これは日銀で資料をつくって、発行増加の原因はこうだという何か四、五日番いておったんですが、最近の情勢を見まして、どうも日銀の通貨は、どうしても通貨増加というものはどんどんいっておるのですね。年末何兆円だとか、こういうような調子でね。これは年末の需要に応じるという、これは流通市場に必要なものであるかと思いますけれども、その還収が全部帰らなくてたまってくる。毎年たまるから、通貨膨張になる。これだけ通貨が出ると、なかなか私は物価を下げるということは……。大勢の議論、大局の議論であるが、個々のものに対して、あるいは地価を下げるとかなんとかいっても、これは大勢上動かすことができないのですね。そういう個々の物資、サービスに対して……。その点で次の機会また何かあるだろうと思います。これは通貨の安定という非常に重大な職能を持っておられる日銀としては、その点非常に常識的な議論ですけれども、そこに意義がある。そういう意味においてのひとつ御見解なりそういった資料なりを、次、もし総裁がここへ参考人としてでもお見えになるときには御用意願って、これは日銀法の提案が出た時分には、私は十分にいろいろ御質問もし、卑見も述べたい。
どうもそういう大勢論をやっぱり頭の中に置くということは必要なんで、御承知のように、第一次世界大戦中に英蘭銀行総裁のカンリュウさんが委員長で、カンリュウ委員会という委員会ができた。戦後の通貨問題をどうするか、物価をどうするかという問題についての研究を、権威者を集めてやった。そのカンリュウ委員会の報告の実行にあたり目安をつくっているのですね。これは法律には書いてないが、前年度の同期に比して発行額は増しておるか増していないか、カンリュウさんは増さないという方針を出しておる。これだとわれわれは常識ですぐわかる。昨年の二月十日には何ポンドだったのが、今年は増していない。そういうふうにやったのですね。そこで物価はもちろんそれに即応して、安定性と言っちゃ悪いのですが、そういうものを保っていったという時代があるのです。
そういうような意味から、先ほどの発行限度をきめたほうがいいか、きめないほうがいいか。これは限度を法律できめる必要はなく、これは日銀として実行問題として考えるべきことでもいいのだろうと思います。この部面からの物価対策なり金融対策というものをどういうふうにすべきかということも、一つの考え方じゃないかということを常に私は思っておる。そういう意味において、ひとつこの次にそういう観点から見た調査なり計数なり、事実をひとつお教えを願いたい、こういう次第であります。これはいまここでお答えをいただく趣旨じゃないのです。時間もありませんから、ただ一応のそういうことを卑見の一端を述べて、それに即応した調査でもございましたら、後日お教えを願いたい、こういう次第でありますから、お答えは期待しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/19
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020・西田信一
○委員長(西田信一君) それでは、津島委員からの御要望の資料はしかるべき機会にひとつお願いできましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/20
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021・宇佐美洵
○参考人(宇佐美洵君) かしこまりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/21
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022・天田勝正
○天田勝正君 宇佐美総裁、これは委員会の内輪話ですが、昨日の打ち合わせで実は私は二十分という時間をいただいているわけです。いま九分しかなくなってしまった。あなたが帰られる時間を私のほうも守りたいと思う。そうしますと九分ですから、私の質問が当然舌足らずになって本意でないことになりますし、あなたのほうにおかれても本意でないかもしれないけれども、イエスかノー式に答えていただきませんと、とても、質問が一問くらいで終わってしまう、こういうことになりますので、その点お願いしておきたいと思います。
まず第一に、先ほどの説明の中で、九日の公定歩合一厘引き下げ、これはわずかのことで云々、こういうお話でありました。確かにそうだと思いました。しかし、これが契機として銀行融資のルールを確立する、設備投資の行き過ぎを防止する、産業体制の秩序づけをはかる、こういうふうに世間では伝えられて、その意味から重視しておるわけなんです。この融資ルールの確立と、さらに先ほどお話のありました通貨価値の維持、こういうことが日銀として重大なる使命だと思うのです。それで、通貨価値の維持のほうは、どうも先ほどの木村委員の最後の質問に対する答弁を聞くと、何かワクをはずしてしまったほうがいいような話に聞こえて、どうも私としては心配なんです。ですから、それを論じている間はありませんから、次の機会にしまして、要するところはこの問題。
私十年前にヨーロッパを回ったときに、十年前EECも何も問題にならないときでありましても、実はポンドなんかよりもマルクのほうが価値が高かった。これは町を歩いて簡単にわかる。町の店で、なるほどヨーロッパ人というのはおもしろい表現を使うものだと思って感心したのは、ドルはいただきますと書いてある。日本流にポンドはだめでございますと書かない。うまいことを言うなと思った。ドイツを回ってからフランス、イタリアを回ったのですから、今度私、別の人に頼みました。ところが、別の人がドイツの中央銀行の総裁に会っての結果は、通貨価値の維持ということは二つや三つの何がつぶれることよりももっと大切なことだ、私はそのつもりでやっております、こういうことでありましたので、ひとつその勢いでやっていただきたい。これは希望であります。
それで、最初指摘しましたように、融資ルールを確立するとか、あるいは産業体制の秩序づけをはかるということは非常に意義があるのでありまして、ただし、その投資の計画というものがもう変わらなければならない。ところが、いままでの日銀法におきましても、さらに今回改正されるであろう日銀法の要綱でありましても、どうも注意が足らぬのだが、それはどうしてもしろうとの意見というものがかなり重要な役割りを果たす場合があるのでありまして、そういうものに、たとえば計画会議とかなんとか、名前は別といたしましても、あるいは総裁の諮問会ということでもいいのですが、そういう際に、労働代表、消費者代表を学識経験者とともに入れる必要があるのじゃないか、私はそう思っております。この点はいかがですか。
それから、先ほど選別融資ということばはきらいだというお話でありましたが、私もあまり好きじゃないが、現実はそのとおりいっておるという事実が日銀の統計からも出てくるのであります。それは全部ここに調べておりますが、全部は言いません。昨年の十月、町で非常に金繰りが苦しくてどうにもしようがないということがありましたが、月別にずっと中小企業向けの融資を見てみますと、三十九年のことでありますが、三十八年、前年同期から見ると全部比率が下がっておる。特に十月におきましては一九・三でありましたか、そういうことから、前年同期の半分以下でありまして、ちょうど金融引き締めというものが大企業にはちっとも影響がなくて、選別融資の結果、中小企業だけに来る、これは数字の面からはっきりいたすのであります。そういうことでありますから、その他中小企業向けのパーセントが全体としてどうなったかという数字も持っておりますが、時間がありませんからやめます。こういうことで、実際問題は中小企業のほうにだけしわが寄るということでありましては、新しい日銀の出発、あなたが民間からなられて期待されたところがどうも消えていくのじゃないか。まずこの点、その姿勢がいかがでありますか、伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/22
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023・宇佐美洵
○参考人(宇佐美洵君) ただいまお話しの点は、私も全く、先ほども申し上げたのでありますが、大企業偏重ということになっては非常に日本の経済がゆがめられる、かえってまた新しいひずみができるということになっては、まことに申しわけない次第であります。したがいまして、ただいま御指摘の点はわれわれも十分気をつけて、私どもは中小企業に直接融資するとかなんとかという立場ではございませんけれども、しかし、各銀行に対しましても、その御趣旨の点は十分にお考え願わないと、結局日本経済が曲がった形になってしまうようなことになるわけであります。従来もやっておったと思いますが、私としては、先般も初めて一月の末に全国の支店長会議をやったときに、中小企業の問題については特に関心を払ってくれということを注意いたした次第であります。もうしばらくひとつごらんを願いたいと思う次第であります。お約束をいたしまして、十分注意いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/23
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024・西田信一
○委員長(西田信一君) 委員長から総裁にちょっとお願い申し上げますが、私の議事進行の不手際で、天田委員の質問時間がもう非常に短くなりましたので、お許しがいただけるならば、もう十分ほどひとつお延ばし願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/24
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025・宇佐美洵
○参考人(宇佐美洵君) けっこうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/25
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026・天田勝正
○天田勝正君 きょうの質問は時間の関係で飛び飛びにならざるを得ないのですが、それで唐突に飛びますが、過日東南アジアを私回りまして、これが三度目でございますが、いつも日本からの企業進出に対して私は注意しながら実は見てまいりました。ところが、どこでもあることですが、国内においても過当競争をずいぶんやるし、外国に行っても過当競争をやる、こういう始末で困ったものであります。これを決してあなたの責任だとか日銀当局の責任という意味で私は質問するのではございません。ただ、金融の元締めとして関心を払わなければならない問題だ、こういうつもりであります。
そこで、これも多くの例は言いませんが、一つ言いますと、バンコックでいま産業奨励法の適用を受けて操業しているものが十五あります。そうして同様の法律で準備中のものが二十四、その他が四つ、こういうことであります。これがもうすでに過当競争なのです。これは大使館等でもまことに寒心にたえないということを言っておりました。ばかな話であります。
もう一つ申し上げますと、丸善がシンガポールにたいへんな製油所をつくりました。つくったとたんに、英国資本に身売りいたしました。これはほかの人にはわからなくても、丸善の幹部は自分の本家のほうに火がついていることはわかっていなければならない。二年も前にわからなければ、経営者としての資格はないので、そういうのに出している。しかも、石油という国際商品というものは、流通がきわめて大切なので、そのほうは日本を見てもわかるとおり、英米資本に握られている、こういうわけであります。海外で競争するには、ずいぶん長期間にわたっての財政余力がなければ、投資余力がなければ、太刀打ちできないほうがむしろあたりまえなんです。そのあたりまえのことがいまや起きて、あれだけ膨大な設備をしたものがそっくりそのまま向こうさまにちょうだいと、こういう形になる。
こういうことも政府のほうでも多く気づいて、そうして対処してもらわなければならないことだと思いますが、日銀におかれても、多くの市中銀行が協調融資やなんか当然されるのでありましょうから、そういう際の発言というのは私はきわめて重要なことだと思うのです。単にそれが過当競争十のうち二、三をとどめ得たとしても、日本の国損国益、こういう面に立つならば、たいへんな役割りである、こう思いますが、そういう点についてのひとつあなたの見解を承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/26
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027・宇佐美洵
○参考人(宇佐美洵君) ただいまのお話は全く私も同様でございます。国内だけでなく、海外で過当競争やっている例を私も聞いておるわけであります。なかなか、片方においていろいろ輸出奨励というようなこともやっておるわけでございます。その辺のかじのとり方はまことにむずかしいのでありますが、おっしゃるとおり、まことにむだな争い、あるいはむだな投資を海外にしておるということは、これはほんとうに考えなくちゃならぬと思っているところでございます。市中銀行が、あるいはその他の輸出入銀行もいろいろ関係ございましょうが、おりがあれば常にそういう点は注意してまいるつもりでございますので、御了解願います。御意見のとおりであると思っております。どういうふうに注意するかという具体的な問題はなかなかむずかしいのでありますが、しかし、つとめてそのとおりだということを申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/27
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028・天田勝正
○天田勝正君 おかげさまで十分延ばしていただきましたので……。これは重要でありますから、私のほうからお願いしておくことでありますが、どこの責任とか言っておらないで、日銀のほうから通産省やあるいは大蔵省、こういう面にも働きかけていただく。かつは、大蔵委員会でありますから、われわれのほうからも政府側に注意を申し上げて、何とか、どこの責任であるのないのと言っていたのではらちがあかないので、何とか改善しなければだめだと思う。
具体例をあげますと、こういうのがあるのですよ。味の素がクアラルンプールに進出しております。ところが、そのにせもの——こういう場で公式に言って国際間の感情に影響すると困るのですが、実はにせものが台湾から二十二種類入っています、これは私の目にしただけで。こういう状態の中で、ところが、マレーシアというのは、進出企業の製品というものは、国外品からは完全に守ってやるという方針です。しかし、国内的には競争させる。つまり、同種のものを二以上装置させる。そうした場合に、ああいうものはよその国から出てくることはないということはわかるのです。ところが、日本の他の企業がどこかの国に権利を売ってしまうと、製法が違います。特許は別でありますが、しょせんグルタミン酸ソーダを製造するのですけれども、製造は塩酸もあれば硫酸もあるということで、いろいろ特許が違う。その特許を売られると、何にもならない。ほんとうはコストからすると、こっちでつくってそっちで売ったほうがいいのだけれども、それは将来にわたってあそこの市場を失うということになるから、いまのところは損でもそっちに出ていく。大体の企業はそういう形をとっている。その場合、いま言ったように、別の特許で同じものができる特許を売られてしまうと、先に行ったほうが自滅するより手がないということでありますので、よけいな注意みたいなことでありますが、申し上げた次第で、ひとつよろしくお願いします。
もう一点伺ってやめにしたいと思いますが、これは先ほど木村さんからは鉄道債券のことが出ておりました。私は電話債券のことについて伺いたいと思うのであります。
まあ昨年暮れで、電話債券の額は五千二百七十八億円の巨額に達しております。公募債を含めて、全体から見ましても、八割八分が小さい債券の累積でございます。これはもちろん登録されておりませんから、えらい範囲に散布をされておるのです。この一つ一つは小さいけれども、五千二百七十八億というのでありますから、これは日本の電話事業に対してえらい貢献をしておるわけなんです、中身は。ところが、そこでこれは当然市場にも出回っておりますから、まあこの種のものでは唯一の上場銘柄として、東京、名古屋、大阪等で上場されて、これが一つの商品として通っている。そしてこれに対してなかなか、公社側のほうの会計に二十二億というものを計上して、これが調整をはかっておるというのが現状でございます。
ところが、日本銀行のほうのきめによると、担保能力がないと、こういうことになるはずであります。これは先ほどあなたが鉄道債券についてもお答えになられた。だから、先ほどの話とは私の言うことはまるで逆になるようでありますけれども、これは日銀側から見た場合には、銀行も持っていないし、たいした効果がない、実益性がない、あるいは消化面に心配はないのだと、こういうような理由のようでございます。ところが、さっき申し上げた重要性、そして実際の担保力という事実と照し合わせた場合に、むしろ担保能力ありと認められたほうが、価格の変動も防止できますし、むしろ適当ではないか、こういう考えに私としては落ちついておるわけであります。このことは指摘しました結果、政府側におきましても、それは研究をいたしておりますと、こういうことになったのですね。だけれども、対応いたします日銀のほうでは、あくまで採用まかりならぬ。その根拠が先ほど来言われておる通貨価値の事情、これはさようなことをやれば阻害するという、こういうことになれば話は別になります。けれども、いまのところは、いままで何分か述べたようなことだと私は信じておりますので、政府側が研究するという以上は、やはり日銀側でもひとつ研究するなり何かの処置をとらるべきではないか、こう存じます。この点、いかがでございましょうか。時間がありませんので、これだけでやめたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/28
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029・宇佐美洵
○参考人(宇佐美洵君) 非常にむずかしい問題でございますが、日本銀行といたしましては、やはりそういう縁故債のようなものを全部適格社債にするということは、いまのおっしゃった通貨価値の点からもどうかと。それから、だんだんふえてまいりますと、非常に問題が影響するところも大きいんではないか。それで、担保適格にする場合には、私どもとしてはなるべく、まず国民の皆さんに消化していただくということをたてまえにいたしまして、われわれとしては厳重にこれは、あるいは慎重にと言ったほうがいいかもしれませんが、考えさしていただくようにいたしたいと思うわけであります。むろん、大蔵省が御研究になることもけっこうだろうと思うのでありますが、その結果またいろいろ教えていただくこともあるかもしれませんが、いまのところでは、やはり日本銀行というたてまえから申しまして、やっぱり筋を通して通貨価値の保持ということを重点的に、あるいはインフレにならないということを考えていかなければいけないんではないかと、まあこういうふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/29
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030・天田勝正
○天田勝正君 遺憾であっても、しようがない。きょうはやめましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/30
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031・西田信一
○委員長(西田信一君) 以上で質疑は終わりました。
宇佐美総裁には、御多忙中御出席いただきまして、かつ有益なる御所見を承ることができましたことを、当委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。
本日はこれをもって散会いたします。
午後零時十一分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104814629X00419650211/31
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